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1962-04-25 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十五日(水曜日)     午前十時四十六分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 石田 宥全君 理事 片島  港君    理事 中澤 茂一君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       大野 市郎君    金子 岩三君       仮谷 忠男君    倉成  正君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邊 國男君    谷垣 專一君       内藤  隆君    中山 榮一君       藤田 義光君    米山 恒治君       角屋堅次郎君    栗林 三郎君       東海林 稔君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    芳賀  貢君       安井 吉典君    山田 長司君       湯山  勇君    稲富 稜人君       玉置 一徳君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         業保険課長)  中野 和仁君         農林事務官         (農林経済局農         業保険課調査         官)      下浦 靜平君     ————————————— 四月二十五日  委員久保三郎君、稲富稜人君及び玉置一徳君辞  任につき、その補欠として芳賀貢君、西尾末廣  君及び伊藤卯四郎君が議長指名委員選任  された。 同日  委員芳賀貢君、伊藤卯四郎君及び西尾末廣君辞  任につき、その補欠として山田長司君、玉置一  徳君及び稲冨稜人君が議長指名委員選任  された。 同日  理事中澤茂一君同日理事辞任につき、その補欠  として足鹿覺君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  参考人出頭要求に関する件  農業災害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出、第三十九回国会閣法第四七号)  農業保険事業団法案内閣提出、第三十九回国  会閣法第四六号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  理事辞任の件につきお諮りいたします。  理事中澤茂一君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次に、理事補欠選任の件につきお諮りいたします。  中澤茂一君の理事辞任に伴い、理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、この際先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。  それでは足鹿覺君を理事指名いたします。      ————◇—————
  5. 野原正勝

    野原委員長 参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案の両案について、明二十六日午前十時より参考人出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、参考人の人選につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ————◇—————
  8. 野原正勝

    野原委員長 農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案の両案を一括して議題とし、審査を進めます。  この際、中澤茂一君より発言を求められております。これを許します。中澤茂一君。
  9. 中澤茂一

    中澤委員 これはちょっと時間がかかりますから、冒頭に資料要求しておきます。  今度の改正案によると、別表によれば相当な掛金値上げが出てくる。なお、農単でも値上がりが出てくるのだから、一筆になったらなお値上がりがよけい出てくるということが考えられる。そこで大体千百五十組合値上げになる。それがもし間に合わなければ農林省が前に試算したものでもけっこうですから、組合名値上げ率——これは選択の問題があるからなかなか単純にはじけないと思いますが、かりに長野県の場合四十四組合値上がりになる、こういうものが出てこないと、この法案について反対か賛成か簡単にきめかねると思う。長い間農民に、抜本改正をやって今度は賦課金人件費負担でまかなうのだから君らの掛金は減るということで、われわれは解散機運事態もしばらく待てということで押えてきておる。だからその掛金率が改定になって上がったということになれば、これはむしろ制度崩壊きっかけを作るのではないかということを私は危惧している。ですから一応農林省はなるべく早く、前に試算したものでもけっこうですが、一筆の場合はどの程度単位値上がりになってくるかという問題も、これは簡単にはいかないと思うから、一応この前に四千組合試算したものを至急出していただきたい。その資料要求しておきます。
  10. 坂村吉正

    坂村政府委員 中澤委員資料の御要求でございますが、できるだけ早く調製して出したいと思いますけれども、今のところ四千組合のものについての、おっしゃる通り前に試算したものはございますが、組合別になるとこのくらいの大部のものになるわけです。これは部数の関係がございまして、一年前の試算でございますけれども、これを相当部数刷るということは、印刷についても相当時間がかかるわけであります。それは農単方式で試算をいたしております。ですから、政府原案一筆ということを建前に考えておりませんものですから、一筆試算というものはございません。そういう関係で、もしなんでございましたら、これだけのものの印刷は非常に大へんでございますので、総括をいたしまして全国的にどうなるか、各県別にどういうことになるか、こういうような表で御了承いただければ、至急に調製いたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  11. 中澤茂一

    中澤委員 いかに膨大なものになろうが何になろうが、たとえば私の県だって、解散機運組合が相当数あるのだから、それを納得させるにはやはりそれが出てこないと、先生、法律は通ったが、通ったとたんに値上げになるとは何事だという解散きっかけ制度崩壊きっかけになることを私はおそれているのです、だからそれは膨大であろうが何であろうが、一応県別に上がる組合のものだけは出していただきたい。下がる組合の率というものは、率からいえば非常に少ないわけだから、場合によれば下がる組合のものは省いてもらってけっこうです。とにかく値上げになる組合の千百何十組合というものははっきり組合別に出してもらいたい。要求しておきます。
  12. 野原正勝

    野原委員長 委員長から申し上げます。  農林省事務当局はでき得る限りのものを一つ御用意願いたいと思います。  質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。西宮弘君。
  13. 西宮弘

    西宮委員 それでは農業災害補償法に関連いたしまして若干御質問いたします。  ただ委員長にも特にお願いをいたしておきたいと思いますが、実は私、トップ・バッターを仰せつかりましたので、いわゆる総括的な問題についてお尋ねをしたい点が多々あるのでありますけれども、これは実は大臣おいでになったらぜひ大臣お尋ねをしたいと考えておりましたので、きょうはおいでにならないとすれば、この次おいでになった機会にぜひお尋ねをさせていただきたいと思います。その点どうかよろしくお願いいたします。  実はそういう意味で私もお尋ねをしたい要点を準備をしておりましたので、大臣おいでにならないということになると、そのうちから特に局長その他にお尋ねをしたいことを拾い出してお尋ねをするということになりますので、何となく私もちぐはぐになってしまいまして、今整理に非常に困っておるのでありますが、幾つかの点をとにかくお尋ねをいたします。  第一にお尋ねをしたいのは、この前、昭和三十五年の四月に例の農業災害補償制度協議会を作りまして、そのときいろいろ問題にされました事項、今日でもその問題の事項は変わっておらないかどうかということからまずお尋ねをいたしたいと思います。一昨年の四月にあの協議会が発足をいたしますその前に、国会におきましてはいろいろ抜本改正に関する決議が行なわれたわけでありますが、その決議にはかなり詳細に問題点を拾い上げております。続きまして、協議会の劈頭にも、これは当局の方から問題点指摘して提出をしておるわけです。ですから、これら二つをまぜ合わせまして、そこに提示されております問題は、二年たった今日も全く同様であるかどうかということを、まずお尋ねをいたしたいと思います。  つきましては、そのときの国会で議決になりましたいわゆる抜本改正に関する決議でありますが、ちょっと朗読をいたします。大半の方は御承知だと思いますけれども、一応朗読しておきます。   〔委員長退席田口(長)委員長代理着席〕   農業災害補償制度は、昭和二十二年農業災害補償法制定以来十余年を経過し、年々百余億円の国庫負担と、ほぼそれと同額農家負担とをもって運営され、逐年その改善が図られてきたにもかかわらず、この制度に対し農家から種々の面について不平不満が絶えない。これがため、昭和三十二年第二十六国会において、一筆石建制の採用、農家負担の軽減、共済事業市町村移譲特例等改正が行なわれたのであるが、最近における農業生産基盤の整備、耕種技術改善病虫害防除進歩等による生産安定化傾向等、本制度をめぐる諸条件の変化により、制度内容は、農業災害および農業生産実態からますます乖離し、農業共済組合解散事業休止等農家の本制度に対する不満は依然として絶えず、すみやかに制度抜本改正を行なうべく要請されている実情である。   かかる現状は、本制度が(一)最近の農業災害および農業生産実態に合致しないこと、(二)掛金も高いが、賦課金が相対的に増嵩するとの非難に加え、低被害地においては、無事戻制度は徹底を欠き、掛金掛捨となることが多く、全般的に農家負担が過重であるばかりでなく、災害時においては充分にその機能を果さない、すなわち基準反収農家の考えている平年反収よりも遙かに低いこと、損害評価が手数と経費を要するにかかわらず、災害実態に即応していないとの非難があること、支払共済金実情に対し著しくすくないこと、(三)病虫害が発生しても農薬および防除技術進歩によって減収という災害発生とはならないで、防除のために多額の労力および費用を要するという損害に変ってきているにもかかわらず、防除労力費用増嵩に対しては共済金支払われないこと、(四)制度が画一的であるとともに複雑であること、(五)農村の実情および農民感情と遊離していること等によるものである。   以上の実態にかんがみ、政府は左記の点を考慮し、農業災害補償制度協議会の結論を得て、農業災害補償法改正法律案をすみやかに今国会提出すべきである。      記  一、前文に掲げる諸欠陥を是正し、災害を受けた農家農業所得の損失を十分に補償しうる制度とすること。  二、制度の設計に当っては、最近の被害発生の態様と農業生産農業経営実態に即応せしめること。  三、農家負担については、大幅にこれを軽減するものとし、特に基幹的な事務費は国の負担とし、その合理化を図ること。  四、従来の画一的強制加入制度を再検討するとともに、基準収量の設定、損害評価等については、農家自主性の尊重を図るよう考慮すること。  五、実施機構については、その責任の明確化を図るとともに、制度簡素化を図ること。  六、災害金融との調整を図り、災害対策総合的効果を期すること。  七、制度改正後の予算については、現在の予算規模以上を確保するこ   と。  八、建物の任意共済事業については、この際根本的な解決を図ること。  九、農業共済団体の職員の身分安定については、十分な配慮を加えること。  右決議する。これが当時の衆議院農林委員会における決議でありまして、いわゆる抜本改正決議と呼ばれておるもののようでありますが、ここにはかなり詳細に問題を指摘をいたしまして、具体的に問題を取り上げておるのでありますけれども、ここで取り上げられておるような問題は、二年たった今日やはり依然として残っておるか、あるいは二年前はそうだったが、今日はもう問題はなくなったというようなものはありますかどうですか。まずその点を一つお伺いしたい。
  14. 坂村吉正

    坂村政府委員 御質問の問題でございますが、農業共済制度実態につきましては、御指摘のような衆議院農林水産委員会抜本改正の御決議がございましたときと問題点としてはおおむね同じ状態であろうと思います。ただ程度の差はございまするけれども、たとえばその中で、あるいは一、二の問題につきましては、その後の政府の努力である程度その当時に比べますると事態改善されておる、こういう点はございます。一例を申し上げますると、たとえば共済団体事務費国庫負担の問題、こういうようなものは制度改正をするという前提のもとに、昨年度、、三十六年度から末端共済組合につきましては、従来三分の二の国庫負担でございましたのを基準事務費については全額国庫負担、こういうことにいたしまして、その結果、そういう三分の二負担という建前をとりますときに比べますと、相当額予算増額をいたしております。ですから、三十五年には共済団体事務費が二十六億の補助金でございましたけれども、三十七年度の予算は四十二億というふうに大幅な増額をいたしておるようなわけでございます。しかしこれは必ずしも十分であるとは申し上げませんけれども、そういうような状態で、ある程度改善、されておるという点はございます。それからまた、基準収量問題等につきましても、これもだんだん調整をいたしまして、最近におきましてはおおむね申し上げますると、基準収量が低いから困るというような不満は局地的な問題を除けば大体解消しておるというふうに見えるのじゃないかというような感じもするのでございます。ただそういう一、二の点についてはある程度改善された点もございまするけれども、全般としての状態は同じ問題を含んでおるというふうにお考えいただいていいじゃないかというふうに考えております。
  15. 西宮弘

    西宮委員 それでは一昨年の国会特別決議のありました当時と大体において変わっていないということで、変わった点について二つほど御説明があったわけでございますが、もう少し立ち入ってお尋ねをしたいと思います。この国会決議、今のでもかまいませんが、それでもいいと思いますけれども、それより、農林省で当時お出しになったいわゆる問題点がありますから、そっちを中心にしてお尋ねをしていきたいと思います。これは一昨年のこの国会決議がありました直後でございますが、「農業災害補償制度問題点」こういう表題で農林省が出されまして、特にこれは制度協議会の検討の資料として出された問題点であります。要するに制度協議会での協議をする素材として提供された問題点でありましょうから、この方がわかりやすいかと思いますので、これは農林省自身資料でありますから、これを中心にしてお尋ねをしたいと思います。これによりますと、問題を八つほど指摘しておりますが、第一は「農家負担に対し共済支払割合減少傾向にあること。」二「賦課金掛金に比し相対的に増加の傾向にあること。」三「被害実態に即応するよう掛金率を設定すること。」四「基準反収が低いこと。」五「損害評価に対し不満が多いこと。」六「支払共済金が実損に対して著しく少いうえに支払がおくれがちであること。」七「無事戻制度の実効があがっていないこと。」八「病虫害共済事故とすることについて問題があること。」この八つの点を指摘いたしまして制度協議会の研究にまかせたわけであります。今申し上げました八つにはそれぞれ注釈もついておりますが、繁雑でもありますし、なお大方の皆さん十分御承知でありましょうからもちろん朗読等をいたしませんけれども、まず一番最初に指摘されておりますのは、農家負担に対し共済支払い割合減少傾向にあるという点であります。この点は最近の実情はどうであるか。かなり前の、今から十年ばかり前だと、この点は相当大幅に農家負担に対して支払い金額が非常に多いという、今日から見ると、たとえば全国平均で六五〇%、自分のかけた掛金に対する六倍半の共済金を受け取っておる、こういう実態等があるのでありますが、それらに比べると次第に減っておるというのが当時指摘をされた事実でありますけれども、最近はいかようになっておりますか。先日この委員会でちょうだいをいたしました「農業災害補償制度概要事業実績」という農林省経済局から出された書類がありますが、——それではとにかくお尋ねをいたします。前には今申し上げたようにかなり大きく自分掛金に対して支払われるというような状況にあったわけでありますが、今日はだいぶ減っておるという状況、最近の実績はいかがでしょうか。
  16. 坂村吉正

    坂村政府委員 御指摘通り、その当時の問題点といたしましては、掛金をかけました金に対しまして共済金をもらいます金額がだんだん減少傾向にあるといいますことは、被害がだんだん少なくなって参った、こういう実態を反映しておった問題でございますが、そこに農家不満がありましたわけでございます。しかしこの問題は、その年々によって災害が起こるか起こらないかによってだいぶ違って参るのでありまして、大体最近の三十三年ころからのものを申し上げますと、三十三年におきまして、掛金総額が、水稲で申し上げますと九十七億でございます。そのときに支払いました共済金額が五十六億、それから三十四年におきましては、掛金総額が百三億、それに対しまして支払いましたものが七十四億、それから三十五年におきましては、掛金総額が百八億でございまして、これに対しまして支払いましたのが四十五億、こういう、工合になっておるのでございまして、支払い金額掛金状況は、ここ二、三年はそういう状況でございまして、しかし三十六年におきましては掛金総額は、正確にはまとまっておりませんが、大体百八億前後でございます。三十五年と同じような金額でございまするが、それに対しまして共済金支払いは百十億をこえるという内容になっておるのでございまして、三十六年の被害が非常に多かったものですから、このときには掛金総額よりも支払い金額の方が多い、こういう実態になっておるのでございます。ただ、ただいま申し上げました掛金総額の中で、農家負担は大体三八%ぐらいとお考えをいただければいいと思いますが、残りの六二%は国庫負担でございます。
  17. 西宮弘

    西宮委員 ただいま三十六年の水稲について特に一番最後お話があったので、それで申し上げると、掛金の百八億に対して支払いが百十億、ほとんど同額、二億の違いがあるだけでありまして、掛金支払いパーだと言って差しつかえないと思うのであります。ただし、そのうち、農家負担は大体三八%程度ということでありますから、その意味では農家自分で出した金よりは若干上回っておるということにはもちろんなると思うのでありますが、ただし、農家の場合は、これ以外にいわゆる賦課金をかけておるわけであります。それを加えるとどういう結果になりますか。
  18. 坂村吉正

    坂村政府委員 御指摘通り掛金のほかに農家といたしましては賦課金負担しておるのでございまして、最近の状況から申し上げますると、だんだんこういう被害が減って参りまするので、掛金負担部分が昔に比べますると減って参っておりまするが、そのかわり事務費というものは人件費の高騰その他もございまして減っておらない。そういう結果、県によっては掛金とそれから賦課金と、これが逆転をいたしまして、賦課金の方が多いという県が出て参っております。そういう県が全国で見ますると十二、三県あるのでございまするけれども、そういう実態で、その点につきましての農民不満が従来からも多くありましたのでございまするし、今もその問題があるのでございます。しかし、先般の三十六年度からの、末端組合に対しての基幹事務費全額国庫負担、こういう措置を予算上講じました関係上、その実態は幾分緩和をされまして、現在掛金賦課金とを比べてみまして、賦課金の方が多い県というのは五県ぐらいに減って参っております。
  19. 西宮弘

    西宮委員 ただいま配られました「概要事業実績」という書類で拝見をいたしますると、今お話しの賦課金掛金とを合計したものと農家が受け取る方の金額と対比をすると、しかも水稲以下、蚕繭から家畜まで全部合わせた合計で比較をいたしましても、ここ数年間、ほとんどパーもしくは、ごく最近、昭和三十五年の数字などは、掛金賦課金合計の方が農家のふところに入った金よりも多いということに表われております。昭和三十五年が多いし、三十四年、三十三年、三十二年、三十一年、いずれもまあ大体パー、それからその前の三十年も、農家の出した方が多い。もらった金よりも出した方がはるかに多い。ことに三十年のごときは、農家負担した方が農家がもらった金の倍近くになっているわけであります。こういう数字が出ておるのでありまして、ただ、今もお話があったように、三十六年から賦課金について国の財政負担が変わってきたのでその点は大きな問題ではなくなったという、一番初め御説明でありましたが、もしそういうことで問題が解消しておるなら、ここでその問題にあまり時間をかけて議論をすることは意味がないと思うのですが、さっき、たとえば賦課金の方が掛金よりも多いという県が十数県あったが、今ではそれが五県程度になったという、これは県の数でのお話があったけれども、数字的には全体としてどういうことになりますか。
  20. 坂村吉正

    坂村政府委員 昭和三十五年の数字で見ますと、お配りしてございます「概要事業実績」の十九ページと二十ページの表をごらんいただきますればはっきりするのでございますが、十九ページにおきましては水・陸稲、蚕繭家畜全部を入れましてそのほかに事務費、こういうものまで入れたものの合計が一番最後の欄のCプラスDというのが、その全部の経費でございます。そこで三十五年の欄をごらんいただきますと、使いました金が全部で二百三十七億七千五百万円というのが、国庫負担農家負担を入れましての総額でございます。二百三十七億七千五百万円のうち、農家負担が、事務費もそれから掛金も突っ込みまして、百十五億九千百万円でございます。この百十五億九千百万円に比べまして三十五年、次の二十ページの一番最後のところでございますが九十七億五千五百万、こういうのが農民支払いを受けました金額総額でございます。ですから大ざっぱに申し上げますと、百十五億の金を農民が出しまして、九十七億の金を三十五年にもらった、こういうことになっておるのでございます。こういう実態から申しますと、先ほど申し上げました問題は現在でも解消はしていない、こういう工合に言えるのではないかと思います。しかし三十五年は割合平穏な年でございましたので、三十六年で見ますと、数字はまだできておりませんけれども、全体としては相当農民の手取りの方がふえる、こういうことになろうかと思います。支払い総額が合わせて百五十億ぐらいになるのではないかと思います。
  21. 西宮弘

    西宮委員 三十六年は百五十億ぐらいになる見込みだというお話ですが、その際の農民負担はどうなんですか。
  22. 坂村吉正

    坂村政府委員 正確には出ておりませんが、大体三十五年程度と同じように考えていただいてけっこうだと思います。百十五億程度の金を出しまして百五十億ぐらいの金をもらっている、こういう実態になろうかと思います。
  23. 西宮弘

    西宮委員 もちろん災害の多い少ないによって移動があるのですから、三十六年は特に多かった。たとえば三十五年より前の三十四年、三十三年、三十二年、三十一年、三十年とこれを今いただいた書類で見ましても、今お話のあった三十五年の九十七億五千五百万、その前の年は百二十七億であり、その前は百四十二億、百二十三億、百七十一億あるいは六十八億というような数字でありまして、その三十五年より前、三十四年、三十三年、三十二年という年も掛金ともらった金は大体パーなんですね。それから三十年は被害がわずかに六十八億しかありませんから、もらう金が六十八億しかありませんから、その年は掛金の方がはるかに大きい、しかも倍近い数字なっておるのでありますが、それに比べると、なるほど三十六年は大へんに被害が多いと思うのです。ですから、もしこれが三十五年のような被害あるいはそれ以前の、今申し上げたようなここ数年間の被害程度であるとすれば、大体農家の出した分ともらった分とパーだという計算だと思うのです。農家が百十五億程度出すものと仮定すればここ数年間の被害状況は大体パー、言いかえれば、三十六年で大いに改正をいたしまして国庫負担を大幅にふやして農家負担を軽減したというのだけれども、もし被害程度昭和三十年以来今日までの被害程度であるとすれば、大体農民が出す金ともらう金がパーだというようなことになるので、これではさっぱりありがたい制度だとは——三十六年で大幅に改善をされたというふうなことは言えないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  24. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り、昨年、基準事務費を全額負担するという制度でそういう予算的な措置を講じましたことによって、大幅にこの問題が解消されたというふうには考えておりません。まだ不十分でございますけれども、とにかく一歩でも改善をしようということでやりましたわけでございまして、御指摘のように、被害があまりないような状態、ここ数年来の状態を見ますと、農民のかけました金と、それからもらう金とはそう大きな違いはないということでございますが、それが、たとえば昭和二十八年のような大災害のときを見ますと、やはり倍以上の金をもらっておるというような状況でございまして、やはり保険システムをとって参ります以上は、普通の状態のときにあるいは損をすることも、あるいはパーのこともございますけれども、いざ大災害が起こったときにはもらえる、こういう制度が、保険システムをとっております以上は一つ制度じゃないかと思うのでございます。それだからといって、この制度が万全であるとは思いません、いろいろ欠陥はございましょうけれども、そういう点を逐次改善をする必要があるのではあるまいかというふうに考えておる次第でございます。
  25. 西宮弘

    西宮委員 保険制度でありますから、お話のような点は当然だと私も思いますけれども、ただ最近こういうふうに被害が減っておるということは、いわゆる昭和三十年以降の神武以来の大豊作と言われたのが、むしろ今日ではノーマルな状態になりつつあるので、そういう点をまず第一に考えなければならないと思う。私は、そういうことであるならば、ここ数年来続いたあの大豊作というのが今の日本の農業としてはそっちの方がむしろノーマルなんだということであるならば、それに対応した措置が当然とられなければならない。それでもなおかつ農民がその恩恵にさっぱりあずかっておらないということであるならば、その国庫負担の問題なりその他に大幅に手を加えていかなければならないと考えるわけであります。  ところで、問題がたくさんありますから、その次の、今いただきました資料の二十一ページでありますが、これを見ますと、要するに賦課金が多いということの一つの例証になり得ると思うのでありますけれども、下の方の三十五年から拾って参りますと、たとえば水稲の場合の共済掛金最後賦課金を比較すると——水稲の共済掛金だけを比較するのは適当ではないのではないかと私も思いますけれども、まことに便宜でありますが、便宜比較してみると、その水稲掛金の場合、最初の方はずっと掛金の方が多くて賦課金の方が少なかったのでありますが、だんだん下の方になるに従って、特にたとえば昭和三十五年とか三十四年とかあるいは三十三年とか、そういう年はいずれも賦課金の方が多い。その前の年あたりは大体同じになっておるというような状況で、ここでも要するに賦課金が非常に多いということだけは明瞭に読み取れると思うのでありますが、この問題について、今度は特に昭和三十六年は賦課金について軽減措置を講じたわけでありますから、これには三十六年の数字は出ておりませんが、三十六年はここだけを比較するとどういうことになりましょうか。
  26. 坂村吉正

    坂村政府委員 ただいま御指摘の表でございますけれども、この三十六年のものについては一戸当たりの計算をまだいたしておりませんので、すぐに計算をいたさせますが、大体この三十五年の八百八十九円よりは差があるものと思っておりますけれども、そう大きな違いはないと思います。そこで、結局、だから問題といたしまして、この表をごらんいただきましても、二十八年、二十九年、三十年とだんだん年を経るに従いまして、大体賦課金の方がウエートといいますか、金額が多くなって参りまして、全体の人件費その他の経費がかかって参りまして、こういうような状態になっておるのでございますので、この点を何とか改善をしなければならぬ、こういうことで今までも努力をして参っておるわけでございます。
  27. 西宮弘

    西宮委員 昭和三十六年は政府としては大英断をもって予算増額をして、大いに農民負担軽減をはかったということを昨年あたり非常に宣伝をされたのでありますが、その結果若干はよくなったと思うが、まあ大したことはないであろうというただいまの御説明で、私どもは少なからず失望するのでありますが、ただ数字が出ておりませんから、数字なしに議論するわけにはいきませんので、それではあとで数字一つお示しを願います。  それから先ほど読みました、農林省が一昨年お出しになった「農業災害補償制度問題点」その中で、先ほど私が朗読いたしましたが、つまり第二の指摘事項、そして今この資料についていろいろ御説明を願った点でありますが、その「賦課金掛金に比し相対的に増加の傾向にあること。」という説明の中に「組合合併等による経費の増大が賦課金の相対的増加を招き」云々と、こういう言葉があるのでありますが、これはこの通りなんでしょうか。つまり組合合併を進めて、その結果経費がふえている、こういうことなんでございますか。
  28. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通りそこにはそういう説明があるのでございまして、常識論からいいますと非常におかしい説明であろうと思います。しかし、実態は、今まで合併をしない前に農業共済組合は大体農協と一緒におったとかいうようなことで、建物等も農協の中に一緒に住んでおるとか、それから農協の職員等もいろいろ手伝っておったという実態が非常に多かったのでございます。それが町村合併に伴いまして、農協とは性格が違うからということで町村単位にできるだけ合併するようにということで指導いたしまして、そのためにいろいろ合併のための予算措置等も講じまして促進したわけでございますが、その結果おもやを離れて独立をした、こういう関係になって、むしろかえって経費がふえた、こういう実態が現われて参っておるのでございまして、この点は普通の考え方からいいますと非常におかしな現象ではございますけれども、実態はそういうことでございます。
  29. 西宮弘

    西宮委員 そうしますと、今の組合の合併という問題ですね。今日まだ合併しない組合が若干残っておるわけだけれども、ちょっと今の問題と話がそれるきらいがありますが、そういう未合併の組合の合併を勧奨する際には、どういう点を合併の利点として進めておられるのですか。
  30. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在の状況では、未合併組合に対しまして特に強力な指導をしてこれを合併しなければならぬというような指導は現実にはいたしておりません。今まで合併しなきゃならぬような組合は大体合併が終わりまして町村単位になっておるわけでございます。そこで総体の組合数も四千になり、町村の数に比べればそう大きな数ではないという状況になっておるのでございます。合併をいたしました考え方は、事業面からいいましても、独立して事業をやって、そうして合理化をしていって経費が償える、こういう形でなければ独立体としての団体としても都合が悪いのでございまして、そういう意味からいって、人のうちに住んでいてやっていけるんだ、こういうような団体では、むしろこれは合理化というものもなかなか進まないだろう、こういう感じもいたしまするので、できるだけ自分合理化を進めるためには合併をして、そうして自分の経理あるいは仕事、そういう内容自分自体で合理化されるように、こういう意味で指導して参りましたわけでございます。
  31. 西宮弘

    西宮委員 ただいまの問題にちょっと本論からそれましたから本論に戻しまして、続きましてさっきの問題点の第三の、「被害実態に即応するよう掛金率を設定すること。」これは要するに全国的に、全般的に被害は低下をしておりましょうけれども、それと同時に、いわゆる安定地帯と被害の高い地帯と截然と分かれてきた。こういう実態に即応して制度を考えなければならぬ、こういうことだろうと思いますが、その点については現在当局はどういうふうに考えておられますか。
  32. 坂村吉正

    坂村政府委員 御指摘通りでございまして、現在の制度は県単位に被害状況を一本できめているわけでございます。従いまして、同じ県内でも場所によって被害状況が非常に違うのでございまして、これは片寄って参っておるのでございます。そういう状況でございまするので、そのために県内におきましても同じ被害率で共済をかけさせられますことが、人のところの金を負担しているんだという感じが非常にはっきり、露骨に出るという面があるのでございまして、これを実態に合わせるためにはもう少し下におろした方がいいんじゃないか、こういう感じがするのでございまして、そこで今度の政府原案改正案におきましても、少なくとも通常災害の責任は共済組合に負わす、それから共済事業をやっておる場合には、末端共済組合単位でいろいろな仕事をやっていくようにしたらどうか、こういうようなことで考えたわけでございます。その場合には、県単位で一本できめて圧縮をいたしておりますものに比べれば非常に実情に沿ってくる、こういう考え方をいたしておるのでございます。
  33. 西宮弘

    西宮委員 さらに、かつて農林省の調査を実行された例の研究会ですね。農業災害補償制度研究会、あの研究会の考え方として発表されておるのを見ますと、安定地帯については別個の扱いをする。安定地帯と高被害地帯と考え方の基礎を変えるべきであるという意味の答申といいますか、意見といいますかが出ておりますけれども、その考え方はどうですか。つまり、考え方としてそれが直ちに採用されるかどうかは別問題だけれども、そういう完全に安定地帯ははずしてしまうとか、あるいは全く自由にしてしまう、そういう考えが考え方としてはあり得ると思うのですが、そういう点についてはどうですか。
  34. 坂村吉正

    坂村政府委員 農業の保険のようなものを考えています場合には、自然の条件に支配されるものが非常に多いのでございまするから、安定地帯と被害の多い地帯とを一緒にやって初めて保険とか共済とかいうようなものが可能であろうというふうな考え方もあろうかと思いますけれども、また非常に被害の多い地帯といいましても、初めからわかり切ったような、たとえば土地改良工事等ができておりませんで毎年必ず水をかぶるというようなところがあるといたしますれば、そういうようなところについては、実際問題として保険は成り立たない。たとえば生命保険なんかでも、高血圧のような場合には生命保険に入れないというようなことになりますると同じような意味で、保険としては成り立たないんだ、入いれないんだというような考え方もあろうかと思うのでございます。そういうような意味で、研究会におきましていろいろ検討いたしました段階では、そういう常襲災害地のようなものについては、保険設計の中に入れること自体おかしいじゃないか、こういうような議論も出ました。あるいは考え方としては、そういうものを除いたところで、毎年の出入りがあるから、それによって保険あるいは共済は成り立つんだとか、常襲災害地で毎年必ず被害が来るようなところについては、それからはずしてもいいじゃいか、別途の措置を考えなきゃいけないんじゃないか、こういう議論が出ましたので、そういう考え方も一応研究会では整理をいたしておるわけでございますから、全体としてそういう切り離し方をいたしていくのも一つの方法であろうと思います。政府原案では、その料率その他をできるだけ調整をいたしまして、そういうようなところも一本でとにかく取り込んで、全体の制度として運用していったらどうか、こういう考え方のもとに考えておるわけでございます。
  35. 西宮弘

    西宮委員 そこの点がわかりません。それじゃその次に参りますが、その次は基準反収の低過ぎるという点でありますが、これはさっきの御説明だと、最近はほぼ実態に合うように修正をしてきた、こういうお話でございますね。
  36. 坂村吉正

    坂村政府委員 基準反収に対しまする不満は数年前は非常に多かったのでございますが、大体年次別の上がり方を見ますと、三十一年が三百三十二キログラム、三十二年が三百三十六キログラム、三十三年が三百四十八キログラム、三十四年が三百六十キログラム、三十五年が三百七十一キログラム、三十六年が三百七十九キログラム、三十七年は大体三百八十七キログラム、こういう見当でございまして、これは石にいたしますと、二石六、七斗くらいになっております。そういうような状況でございまして、毎年だんだん上がって参りまして、現在の状況でこれ以上基準反収を上げますと、それに応じます掛金負担が今度ふえて参りますので、そういう関係もございまして、基準反収はそう上げなくてもいいんじゃないか、全体としてはそういう趨勢でございます。
  37. 西宮弘

    西宮委員 今朗読されたのは全国平均ですね。
  38. 坂村吉正

    坂村政府委員 米についての全国平均です。
  39. 西宮弘

    西宮委員 実態に即して、しかも掛金とにらみ合わせの問題でありますから、そうむやみにべらぼうに上げてしまうということはもちろんできないと思うのですが、おおむね農家が納得をする程度にまで至っているならばまあそれはそれとしていいと思うのでありますけれども、どうなんですか。むろんその掛金とのにらみ合わせを考えながら基準反収を論ずるということになると、基準反収の問題は、一昨年の資料では問題点として指摘をしておるのだけれども、もう今日は問題からはずしていい、基準反収は問題にはなっておらない、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  40. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在の状態農民が必ずしも満足している状態ではないと思います。しかし、まあ全体としては先ほど申し上げましたような情勢でございますので、特に不満の多いところについてはできるだけ調整をして、上げるなら上げていく、実態に合うように上げて参る、こういうことを考えるべき段階であろうと思いますが、このままでもういいんだという状態ではございません。
  41. 西宮弘

    西宮委員 それではその次に参ります。  その次の問題点は、損害評価に対し不満が多いということであります。これはまさにその通りなのでありますが、この点はどういう状態になっておりますか。たとえば末端組合あるいは県の連合会、そこから出してきて最後に国の査定を受けるという場合の、末端組合ないしは県の連合会の主張と、最後に国の査定をした結果は、何割くらいを承認したということになっていますか。
  42. 坂村吉正

    坂村政府委員 損害評価につきましての問題は、末端からいろいろ問題があろうと思います。その一番のもとは、やはり基準反収が、農民自分のたんぼでは四石とれるのだ、こういうように考えておりましても、実際基準反収は三名だというようなことできめられております場合は、それは保険制度上の基準反収でございますから、そういう点が農民が実感として頭に入っていない。そういう場合にその点から一つ問題がございます。それから三割以上の被害につきまして共済金を払う、こういう制度でございますけれども、その三割の足切りをいたしますから、その点が農民感情とやはりぴったり合わないという点があろうと思うのでございまして、三割以上の被害のものについてだけは共済金支払う、こういうところが、三割が農民の頭からは消えてしまっているというようなことで、非常に損害評価が低いじゃないか、こういうことがあろうと思います。それから、非常に残念なことではございますけれども、そういうような意味で、たとえば共済組合から損害評価いたしまして被害としてあがって参りましたものを、連合会で取りまとめをいたしまして査定をいたしまして、そうして農林省に持って参るわけでございますが、連合会におきまして、現在は単位の組合がやっておりますものにつきましてサンプリングで実測調査をして、それを基準にいたしまして連合会は損害の評価をいたしておるわけでございます。それと、一面、国が再保険金を支払います場合におきましては、国といたしましても何らかの基準が要るのでございますので、これは統計調査部を使いまして被害の調査をいたしております。それらのものを比べてみますると、今までの実績——この連合会の要求農林省で統計調査部の被害資料に基づいてやりましたものを比べてみますると、全体平均をいたしまして、大体三十五年で八六%くらいの査定に相なっております。その前の年は八四%、それからその前の年は九三%というふうなところで、平均いたしますと大体八〇%ないし九〇%くらいのところの査定になっておるという状況でございます。
  43. 西宮弘

    西宮委員 古い資料でありますが、九〇%以上というのが二十三県、七〇%以上というのが十三県、七〇%から五〇%というのが十県、それから三〇%以下というのもあるわけでありますが、今日は平均八六%というお話でございますけれどもそういう五〇%とか三〇%とかいう極端なのは今日はないのですか。
  44. 坂村吉正

    坂村政府委員 連合会が持って参りましたものを直接そのままなまのもので比べてみますると、そういうものもございます。三十六年あたりは四〇%、五〇%というふうな開きのあるものもございました。しかし、それは統計調査部の調査の面におきましても、また連合会の調査の面におきましても、いろいろ実態がどの程度反映しておるかという問題もございますので、そういう点を十分再調いたしまして査定をいたしますと、平均して大体八六%くらいになる。最近におきましては、三十五年では一〇〇%の県が十九ございます。それから一〇〇%から九〇%の県が十五ございます。ですから九〇%以上のものが三十四県になっておる。三分の二のものは大体九〇%以上になっておるということで、おおむね連合会の評価はそういうようなことで、統計調査部の調査に比べましてもそう大きな違いはなくなって参った、こういう現状ではないかと思っております。
  45. 西宮弘

    西宮委員 今のは連合会と国の査定を対比したのですか、末端組合との対比はできないのですか。
  46. 坂村吉正

    坂村政府委員 末端組合と対比いたしますと、これは非常に違うのでございますが、三十五年で六一%、三十四年で六五%、三十三年で六八%、こういうことになっておりましてもここでは一〇〇%になるものが二県、それから九〇から一〇〇までのものが十県、こういうことで九〇%以上のものはわずか十二県でございます。それから一番多いところは八〇から七〇くらいのところが十一県ございます。ここら辺が相当多いということになっております。三%から二〇%というような県が一県、四〇から三〇というのが一県という非常に極端なところもございます。
  47. 西宮弘

    西宮委員 こういうふうに、特に末端組合と比べて、農林省の最終的な査定が大きく開いていくというのはそもそもどこに原因があるわけですか。
  48. 坂村吉正

    坂村政府委員 根本的には共済制度、保険制度というものがほんとうに農民まで浸透していない。そうして特に何か災害が起こった場合には、要求をすれば補助金みたいにもらえるのだ、そういうような観念がまだ相当あるのじゃないかという感じがいたします。従いまして、山をかけていけばとにかく何とかなるだろうという観念で動いておる面も私は必ずしもないではないのではないかと思っております。そういうようなことで、それらを何とか是正して、そうしてまともな損害評価ができるようにということで連合会の実測調査というようなこともだんだん拡充してやって参っておるのでございますけれども、これはまだ十分に解決をされたというような状況ではございません。
  49. 西宮弘

    西宮委員 確かにそういう面もあろうと思うのであります。同時にまた、農林省といってももちろん神様ではないのですから、いろいろ資料の不十分な点もなきにしもあらずであると思うのです。私は先日農業災害補償制度協議会会議録を読んでおったのでありますが、中には実に悲痛な叫びをもって、たとえばそういう問題について末端の主張がいれられない、しかもそれが、農林省説明によると、いかにも末端がルーズで、そういう山をかけて申請する、それがために切られるのはあたりまえというようなことで、もちろんそういう場合もなきにしもあらずだけれども、しかしそうではなしに、ほんとうに現実はそういう実態ではないのだけれども、どうしても農林省は聞いてくれない。そういうことになれば、聞いてくれないときには、再保険審査会という制度があって、その再保険審査会に提訴をするればよろしいということになっている。しかし、そこに提訴をして、金をかけ時間をかけてやってみたところで、それは長い時間がかかってしまって、さっぱり実際問題としてはその恩恵にはあずかれない。従ってほんとうに泣きの涙で農林省の査定に服しているのだということを、まことに悲痛な叫びをもって訴えている代表者があるのでありますが、そういう点について反省される点はありませんか。
  50. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り農林省の調査といいましても、統計調査部でやはり人間がやる調査でございまするから、必ずしもこれが絶対間違いないものだというふうには思っておりません。しかし、いろいろの調査の一応の基準になりますのは、やはり統計調査部の調査が基準になるのでありますから、それを基準といたしまして、農林省としてもこの保険金の支払いについての査定をいたしておるのでございます。ただ末端損害評価が必ずしも十分でないという面もあるのでございますが、それは今の末端共済組合は共済責任の一割しか持っていないわけでございます、ですからその一割の掛金共済組合に保留をいたしておきまして、あとの掛金は全部連合会に納めてしまう、こういう状況でございまして、一割のものも災害が起こって支払いが不可能のときには削減をしてもいい、こういうことになっておるのでございますから、どちらかといいますれば、末端共済組合は、共済事業については無責任状態であるというふうに言っていいのじゃないかと思うのでございます。その点が共済事業についての運営に非常な熱意といいますか、そういう点がなかなか入らないのじゃないかという感じもするのでございますので、その点をやはり根本から直す必要があるだろう、こういう工合に考えまして、政府原案では、末端共済組合に少なくとも通常災害の責任を負わせよう、こういう考え方で案を考えたわけでございます。
  51. 西宮弘

    西宮委員 それでは、今私が申し上げた再保険審査会、これには毎年何件くらいが提訴され、何件くらいが、提訴されたのはみんな解決しているでしょうが、提訴をした方の、つまり組合側の主張が通っているのか、こういう実績を聞かして下さい。
  52. 坂村吉正

    坂村政府委員 農林省の再保険審査会でそういう問題について提訴のありましたものは、今まで一件もありません。
  53. 西宮弘

    西宮委員 その再保険審査会という制度があっても、提訴をしたものが一件もないというところを見ると、今私が申し上げたように、あるいはまた速記録の中にまことに悲痛な叫びをあげているごとくに、おそらくそれは提訴したって、結局実際の役には立たないのだということで、ほんとうに泣きの涙で泣き寝入りをしてしまっているという状態なんだろうと思うのです。だから制度としてそういうものを残しておくから、文句があればそこに言ってくればいいじゃないかといえばそれまでだと思うのだけれども、一件も提訴する人もないということは、全く完全にないのと同じだ。そういうものを残しておいて、だから、文句があればこっちに言ってこいということだけで、農林省が一方的な査定を押しつけていくというようなところに、地方の関係者を納得させ得ないものがあるのではないか。またいろいろ問題が多く、損害評価の問題について今日までいろいろ不満が絶えなかったのも、そういう点にあるのではないか。もちろん私ども、その最末端において、わずか一割しか持っていない末端組合でありますから、さっき局長が言われたようなことがないとは決して申しません。そういう事実が確かにあると思うのでありますが、初めからそれはもうあるものときめ込んで、そういう態度で臨むというところに、その地方の関係者としてはほんとうにふんまんやる方ないそういう悲壮な問題が出てくるのだ。そういう点について、もう一ぺんだけお聞きしておきたいと思います。
  54. 坂村吉正

    坂村政府委員 共済金の査定の問題は非常にむずかしいのでございまして、たとえばかりに再保険審査会のようなものに提訴をされましても、現実にそれではそのときに損害がどうあったかということの調査は、そのときには現物はもうないのでございまして、大体圃場で損害評価をするのが建前になっておる関係上、取り込んでしまいますと、はたしてどういう状況にあったかというのは非常にむずかしい問題でございます。そういう関係もございますので、再保険審査会等でいろいろ議論されるような機会が今までなかったのだろうと思うのでございます。従いまして、どうしてもそれは現実に圃場にありますときに、末端におりますものがほんとうの損害評価をやり、それが上まで信頼される形で整えられる、こういうことがぜひとも必要なんじゃないかというふうな感じがするのでございまして、その点は現状におきましては必ずしも十分ではございませんので、今後の制度改正あるいはそれらの運用につきましても、その点は十分一つ考えていかなければいかぬというふうに考えております。
  55. 西宮弘

    西宮委員 私はこの点についての質問をしないつもりだったのですが、今の御答弁で、提訴をされても、もうそのときはすでに圃場には作物はないので、調べようがないじゃないか、それならば何のために再保険審査会というようなものを作っておくのですか。
  56. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在は、再保険審査会では料率改定をする場合にいろいろ相談をお願いいたしております。それからそういう制度の問題につきましても、再保険審査会でいろいろ御相談をいただいておるのでごさいますが、たとえば損害評価をどうするかという問題になりますと、おそらく再保険審査会にいきましても、なかなかほんとうに実態に即した審査はできにくいのじゃあるまいか、むずかしいのじゃないか、実態がそうでございますので、そういう結果になっているのじゃないかというふうに考えておるのでございまして、料率とかその他、いろいろそういう制度上の問題につきましては、現在も再保険審査会に御審査をいただいております。
  57. 西宮弘

    西宮委員 もちろん料率改定の問題等はその通りでしょうけれども、そうじゃなしに、損害査定の問題に意見の相違があったときには審査することになっているのでしょう。それならば、それは実際にはできないのだということであるならば、当然にそれは規定からはずすべきじゃないですか。
  58. 坂村吉正

    坂村政府委員 ただ、できないということではございませんで、実態輪としては非常にむずかしい問題でございますと申し上げたのでございまして、そういうことでございまするから、再保険審査会におそらく提訴がないのじゃあるまいかというふうに、推定といいますか、想像して申し上げたわけでございます。私の方から、再保険審査会ではそういう審査はできないから、提訴をしてもだめだというようなことを考えたこともございませんし、言いましたこともございません。ですから、そういう提訴がございますれば、これはあるだけの資料をいろいろ検討いたしまして、できる限りの審査をいただく、こういうことは当然考えておるわけでございます。
  59. 西宮弘

    西宮委員 この問題に長々と時間をさくつもりはないのですけれども、私が言いたいことは、査定等について文句があるなら向こうに持っていけばいいじゃないかという、そういう制度制度として残しておいて、しかもそれは持っていってみれば、実際問題としてほとんど審査能力がない。能力がないという言葉は適当じゃないかもしれないけれども、とにかくいずれにしても現実の審査には当たらない。そういうことを制度として残しておくということ自体が、私は非常に問題だと思う。つまりそういうことを残しておくから、だから文句があればこっちにこいということがそれで言えるので、そういうやり方はまことに民主的でないし、きわめて不親切な官僚的なやり方だといわざるを得ないのです。もしそれがどうしてもだめならだめで、むしろそれはできないのだということにして、あくまでも末端の納得を得させるような指導なり説得なりをすべきだと思うのです。だからそこを制度として置くことがいいのか悪いのか、それを一つ伺いたい。
  60. 坂村吉正

    坂村政府委員 現実問題といたしましては、連合会の調査の資料を十分持ってきていただいて、それから農林省の調査の資料も十分提出をいたしまして、そうしてよく中身を詰めまして、連合会との話を詰めて、連合会の納得の上で損害評価をいたしておるというのが実情でございます。そういう運用をいたしておるのでございますので、必ずしも再保険審査会に提訴しなければならぬとか、あるいは別に、してはいけないということは今までもあまり考えたことはございませんので、その点はそう気にしないで運用して参ったわけでございますけれども、今後の問題といたしましては、その運用等につきましても十分検討いたしたいと思っております。
  61. 西宮弘

    西宮委員 ただいまの審査会に対する局長の答弁はまことに不満でありますが、時間がありませんから一応先へ進みます。  次の問題は、支払い共済金が実損に対して著しく少ない、それから支払いが少ない上におくれがちであること、こういう点が指摘をされておるのでありますが、その実損に対して支払い金額が非常に少ないという点は、今日の状況はどうですか。
  62. 坂村吉正

    坂村政府委員 その点は現行制度上、共済金支払いは選択制になっておるのでございまして、最低千五百円から最高四千九百円まで——一石当たりの全損の場合でございますが、そういう幅で六段階で選択ができる、こういう制度になっておるのでございます。平均をいたしますと三千六百円ぐらいでございます。そういう状況でございますので、石当たりの値段を見ますると御承知のように一万円をこえておるという状況でございますので、それに比べて全損した場合にも三千六百円しか平均ではもらえません。こういう今状況でございますので、その点が支払い金額は感じからいいますと非常に実損に比べて少ない、現状もその通りでございます。
  63. 西宮弘

    西宮委員 石当たりもけっこうですが、一戸当たりの共済金額というのはきわめて常識的にわかりやすいと思うのですけれども、一戸当たりどのくらいずつもらっておりますか。
  64. 坂村吉正

    坂村政府委員 水稲で申し上げますると、年次別に見まして特殊なところでは昭和二十八年には七千百六十八円、それから三十年が千六百八十六円、三十一年が五千円余り、三十二年が三千円余り、三十三年が二千五百円、三十四年が三千円、三十五年が二千二百円という程度でございます。三十六年はもう少しふえるかと思います。
  65. 西宮弘

    西宮委員 少し古い統計を見ると、たとえば千円あるいは千五百円程度で、大体もらう農家の半分ぐらいを占めておりますけれども、今日はそういう状況はございませんか。
  66. 坂村吉正

    坂村政府委員 ただいま申し上げましたのは全国の平均でございまするので、実態を見ますると非常に共済金の低いところを選んでいるのが多いのでございます。そういう非常に低いところで広く共済がかけられておるというような実態があるのでございまするので、千円以下とか千円前後というようなものが非常に多いのじゃないかと思っております。
  67. 西宮弘

    西宮委員 この点は今度の制度改正にあたってはまたいろいろ検討されておる点でありますから、これ以上お尋ねをしないことにいたします。  問題の第七番目は無事戻しの実効が上がっておらないという点を指摘をしておるのですが、その点についてはどうですか。
  68. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在無事戻しの制度は、三年間無事故の場合に一年分の掛金の半分を無事戻しをしてもいい、こういう制度になっておるのでございます。その点が制度といたしましても非常に十分でないという点もございます。それから組合によっては、無事戻しをしようと思っても今まで非常に災害が多かったために金がありませんで、無事戻しができないというようなものもございまして、そういう点で現状では無事戻しがそう広く効果的に行なわれているというような状況ではございません。
  69. 西宮弘

    西宮委員 なお今の無事戻しの問題の前の、さっきの支払い金額の問題ですが、支払いの方法として数年前に行政管理庁が指摘した指摘事項の中には、たとえばみんな平等にばらまいてしまう、あるいはこれは行政管理庁の指摘だけでなしに、農林省の役人が書いた書物の中にもそれが現実だというようなことを書いた書物もあるので、そういうことはたびたび行なわれておったのだと思いますが、そういう問題、要するに災害の有無あるいは多寡にかかわらず頭割りでみんな平等に分けてしまうというようなやり方とか、あるいはまた共済掛金と相殺、差っ引きをするとか、そういったかつて行管等から指摘された事項は今日はどうですか、なくなっておりますか。
  70. 坂村吉正

    坂村政府委員 御指摘のような点は、まことに遺憾でございまするけれども、前々から行管あるいは会計検査院等の指摘が非常に多くございまして、その後いろいろそういう点についての指導も十分やって参っておりまするけれども、絶無であるという状況ではございません。特に非常に災害の少ないようなところで掛金をかけるのはばからしいじゃないかというようなところへ参りますと、掛金をかけないでおいて、いざ災害が起こったという場合には金をもらって、それで共済金掛金を相殺するというようなものがないでもないのでございまして、そういう不正不当な運用が絶対に行なわれていないという状況ではまだございませんので、その点は今後も十分検査、指導監督を進めなければいかぬというふうに考えております。
  71. 西宮弘

    西宮委員 その相殺、差っ引きをするというのもまことに困ったことなんでありますが、私が最初にあげた例のような、みんな平等にばらまいてしまうという例は最近はございませんか。
  72. 坂村吉正

    坂村政府委員 その点も、まことに残念でございまするけれども、全国組合の中には絶無ではございません。別に形として平等にばらまくというような姿をとっておるかどうかわかりませんけれども、実際、中をしさいに検討してみますと、大体平等にばらまこうじゃないか、みんなに配ろうじゃないかというようなつもりでいろいろ操作してやっているものも見受けられないではございません。たまには検査等に参りますとそういうものがございまするので、これは非常に困ったことだと思っておりまして、十分検査も厳重にやるということで指導いたしております。
  73. 西宮弘

    西宮委員 検査、監督を厳重にするということも大事な点だと思いますが、たとえば農林省がお出しになった、さっきの問題点指摘にも支払いがおくれるということを書いておったけれども、そういう点も問題を起こしやすい一つの大きな理由になるのではないか。つまり保険金をもらうころにはもう米の収穫時期とは大へん時期が違ってしまって、災害等についてはほとんど感覚がなくなってしまっておるというときに金がくるから、何ぼ損害があったのかもらう方もさっぱりわからぬというようなことでそういう結果に陥ってしまうのではないか、私はそういうふうに思うので、農林省みずからおくれがちで困るということを指摘をしておるが、そういう点について大いに改善の方法はないか。それからもう一つは法規そのものが非常に複雑で農民には難解だということがさらに大きな理由ではないか。つまり自分は幾らかけて災害のときには幾らもらえるはずなんだということが生命保険、火災保険のように、特に生命保険の場合のようにどんぴしゃりでわからない。だから結局もらえればもらったといってありがたいというつもりになってしまうのではないかということを私どもは非常におそれるわけですが、そういう点についての考え方はどうですか。
  74. 坂村吉正

    坂村政府委員 支払いがおくれるという点も御指摘のように今までの実情では否定するわけには参らないのでございまして、しかし非常に大災害等が起こりました場合には、農民にはすぐに現金が届くようにということで、概算払いあるいは前払い、こういうようなことをやっております。そういう関係で、あとから全体についての損害評価その他の調整はやりまして、そうしてそういう資料に基づいて、農林省であとから数字はきめますけれども、概算払い、前払いというものを至急にその災害が起こったときにやる、こういうことを熱心に実行いたしておるわけでございます。ですからその点はそういたしましても、なかなか損害評価という問題が非常にむずかしい問題でございまして、時間がかかりましておくれがちでございますので、十分農林省でも早めるように努力いたしておりまして、数年前に比べますと現在でも相当早まってきております。  それから法規が難解だという問題は御指摘通りでございまして、これは、私は法学士でございますけれども、あれを見てもなかなかわからないというような法律でございまして、自分の所管している法律でもなかなかわかりにくいというような状況でございますので、これはあの当時作りました立法者が非常にむずかしい法律を作ったという関係もございましょうけれども、何かやはりあの法規ではなくて、だから法規をわかりやすく農民にわからせるようなそういうことを今までもやってはおりますけれども、今後十分一つやらなければいかぬのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。非常にむずかしい法律でございまして、御指摘通りでございます。
  75. 西宮弘

    西宮委員 その点もう一ぺんお尋ねしたいと思うのですが、たとえばかりに生命保険などだと、生命保険ほど単純にはもちろんいかないと思うのですけれども、何才で幾らかければ死んだとき幾らもらえるとか、あるいは死ななければ幾らもらえるということがきわめて明瞭に機械的にはじけるし、またそういう表を作って配っているわけですね。ああいうことがポアッソン分布とかなんとか、そんなむずかしいことはもちろんわかりっこないのだから、そういうものは全部表示する必要も何もないけれども、要するに結論的に幾らかければ、そして何ぼの被害のときには幾らもらえるのだということを表にして各農家に配付できるような、そういうあれはできないものですか。
  76. 坂村吉正

    坂村政府委員 そういう農民に対する普及指導の仕事は、農林省の特別会計におきましても、いろいろ経費を使ってやっておりまするし、また連合会あるいは末端共済組合等でもやっておるのでございますけれども、なかなかそれが徹底しない、こういう状況でございます。といいますのは、保険会社と違いまして、発足の当初から強制加入でとにかく全部発足をいたしておりまして、そうして組合にいたしましても連合会にいたしましても、率直に申し上げますと、そういう制度でございますから、制度の上に乗っかっておるという面もないでもないと思うのでございます。ですから、むしろ積極的に連合会、共済組合が、この事業に農民をPRし指導して、そうして積極的に意欲を持って取り組ませるようなそういう指導が必要であろうと思うのでございますが、そういう点が必ずしも十分ではないのではないかというふうな感じもするのでございます。この点は今後制度改正をいたしましても、この問題は非常に大きな問題であろうと思うのでございまして、十分一つ考えていきたいと思っております。
  77. 西宮弘

    西宮委員 私は局長の言う強制加入なればこそなおさらのこと、そういう点が明瞭でなければ——任意加入ならば少なければ少ないで自分でがまんすればけっこうなんだけれども、いやしくも強制加入だということになればそういう点でごまかされてしまう。ごまかされると言っては語弊があるかもしれぬけれども、とにかく何ぼもらえるのだかわからぬ、要するにもらっただけそれが自分の当然もらうもののように思って、そういう扱いをされておるというところにそもそも間違いがあるので、これはさっきも申し上げたように、生命保険ほど単純な表はできないと思います。しかし、少なくともそれに類する表を作ることは決して不可能ではないと思う。ですから、そういうものを作って農家の壁にでも張らしておくというようなことができれば、さっき申し上げたようなことは起こり得ないと思う。そういうふうに、幾らかけて幾らもらうのだというようなことがはっきりしないから、その間にいわゆるボスの跳梁を許す結果になるだろう、これは非常に遺憾千万なことだ。だからどんなに農林省がりっぱな制度を作っても、単に制度として完全に整備されておるというだけで、それが農民に消化されておらなければ何の意味もないということになってしまうわけですよ。ですからその点はもう一ぺんだけお尋ねをいたしますが、生命保険会社で出しておるようなものに類するようなものを作って配る程度のことはできますか。
  78. 坂村吉正

    坂村政府委員 先ほど申し上げましたように、従来もやっておるのでございます。しかし、それが必ずしも農民にほんとうに理解ができてわかりやすくいっておるかどうかという点については、御指摘のようにまだ制度がそこまで農民に徹底していないという点からいえば、必ずしもこれは十分でないのではないかというような感じもするのでございまして、全面的に私はその問題については同感でございますので、全国には共済協会というような団体もございますし、またそういうようなところでも一つ積極的にそれを具体化して指導するようにやって参りたいと思っております。
  79. 西宮弘

    西宮委員 それでは、これは今後の農林省の努力に期待をすることにいたしまして、次に参りたいと思います。  最後指摘をされておりますのは病虫害の問題でありまして、これを共済事故とすることが適当かどうかという点を問題点として指摘をしているわけですが、これについて何か特別御説明を聞くようなことはありましょうか。
  80. 坂村吉正

    坂村政府委員 病虫害を事故とする、しないの問題は、昔からこの制度の上におきましては問題があったわけでございますが、現在は全面的に事故になっておるのでございますけれども、現状を見ますと病虫害防除態勢というものがだんだん進んで参りまして、農薬も進んで参りましたし、そういうような関係病虫害というものは人工で防除ができるのだという態勢がだいぶ強くなって参っておるのでございます。そこで、そういうふうなものをしいて病虫害の事故にしておかぬでもいいじゃないかという問題もございますし、また病虫害防除にもっと力を入れたらいいじゃないか、こういう問題もあるのでございます。そこで、この辺は実態に即して考えますと、むしろ現状では病虫害共済事故からはずすという方向で問題を考えるべきじゃないか、しかし急にはずすというわけには参りませんので、とにかく病虫害防除態勢がはっきりとできておるようなところにおいては、これは場合によったら病虫害の事故からはずすということにいたしていってもいいじゃないかという考え方もあるのでございますから、政府の原案におきましては、防除態勢がきちんと整っておりますところにおいては病虫害を事故からはずして、その分共済掛金の割引をする、また一部防除事業に対しまして国から補助金を出す、こういうことをからめて一緒に考えていったらどうだろうか、こういう考え方のもとに政府の原案は考えておるのでございます。
  81. 西宮弘

    西宮委員 それで私一番初めに、一昨年制度協議会ができたときに農林省問題点として指摘をした点は今日もやはり依然として問題であるかどうかということをお尋ねするために、当時農林省がお出しになったいわゆる問題点八つを取り上げまして、その八つの問題についての最近の状況お尋ねいたしましたので、続いてそれに関連をいたしましていろいろまた新しい問題、つまり現在の問題としてお尋ねをしなければならぬ点が何項目かあるわけでありますが、これはあとで引き続いてお尋ねをいたします。
  82. 田口長治郎

    田口(長)委員長代理 午後一時半から再開することとし、この際休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時十三分開議
  83. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農業災害補償法の一部を改正する法律案及び農業保険事業団法案を議題として審査を進めます。  この際、足鹿覺君より発言を求められております。足鹿覺君。
  84. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいま審議が始まりました農業共済関係二法について、とりあえず次の資料を御提示願いたいと思いますので、委員長においてもお取り計らいを願いたいと思います。休憩中に事務当局には、いきなり申し上げてもお困りであろうと思いまして、ざっとお打ち合わせはしておりますが、その後若干私の気持を訂正したところや追加したところがありますから、あらためて申し上げます。  第一、伊勢湾台風による災害につきまして、共済基金より建物共済等の支払い不足金処理のために特別融資が行なわれました。特にこれは本委員会の特別な配慮によって、特別措置法を作って基金を取りくずしたという異例の措置を講じたものでありますが、その後融資を受けた連合会は順調に償還をしておるかどうか。また当該連合会は、運営に支障等は起きておらないかどうか。それらの点について参考となるべき資料をお示しいただきたいのであります。  第二が、都道府県共済連合会に対する農林省の検査成績及び都道府県が市町村共済組合に対し施行いたしました検査とその成績、それに対する農林省の自己批判、どこにどういう欠陥があり、その欠陥にはどういう指示をし、是正をせしめて健全運営に努めたかというような点、従来この種の資料がないのであります。農協等については世論調査等相当ありますが、こういったことについて当委員会で長いこと私も調べておりますけれども、ありませんので、でき得べくんば詳細にお願いしたい。特に会計検査院が昭和三十五年度決算検査報告書において、その三十九ページにおいて青森県外九都道府県に対し検査を行なった「農業共済保険事業の運営が適切でないもの」という条項を示しておるのであります。その内容は、追って質問の際に申し上げますが、特にこの三十五年の会計検査院が指摘しておる山梨県、岐阜県、愛知県、三重県、奈良県、和歌山県、香川県等の関連における私がただいま指摘した農林省の検査の成績、またそれらの県が市町村組合を検査した成績等を比較検討してみたいと思いますので、特にこの点御提示をお願いしたい。  第三が市町村移譲の現状及び見通しについて、移譲後の運営状況はどうであるか。たとえばその運営の基準は何によって運営されておるか。抽象的に言えば、市町村議会が運営の衝に出たることになるのであるが、これは大きな機構であって、おそらく運営できまい。従って市町村条例等ができて、農業共済運営委員会のようなものができてくることをわれわれは期待し、三十二年の法改正の際にもそのことを指摘したのでありますが、農林省はその後いかようにこれらに対して指導を行ない、その運営が官僚化したり、あるいは非民主的な、民意を反映しない運営にならないように善処されたか。三百幾つの市町村移譲後におけるその運営の基準について、それらの実情があればお示し願いたい。  それからこれに関連をしまして、賦課金掛金の徴収状況、職員の待遇状況等は、移譲前と比較してどういうふうになったか、そういったような点について、また市町村移譲後において掛金賦課金等の強制執行等が行なわれた事実があるかどうか。行なわれたならば、その理由とかいろいろな実情を知りたい。  それから市町村移譲後における任意共済事業の取り扱いはどうなっておるか。私どもが聞くところによれば、協議会のようなものができて、その経理その他等がきわめてあいまいであると聞いておりますが、元来市町村移譲を法改正によって進めた趣旨に必ずしも合致しておらない運営がなされておるのではないか、そういう疑問もあるようでありますので、その点も明らかにしていただきたい。  それから第四が農協の建物更生共済と農災の定期預金共済掛金との比較、これは時点の違うものを比較して高い安いを云々する議論が巷間横行しておるようでありますが、これらについては、監督官庁としても責任のある比較をされて、正しい認識を与えられる必要もあると思いますし、われわれも知りたい。  第五が無事戻しの年次別、都道府県、市町村別の実績があれば伺いたい。この種の資料はいただいたことがかつてありません。今問題になっておる無事戻しというのは、従来において法律になっておるがほとんど有名無実化しておる。またこれからも無事戻しをするということを言いながら、事実においてはこれはなかなかむずかしい問題である。従ってこの内容を、過去の実績等を十分検討してみる必要があろうかと考えられるからであります。  第六が共済基金運営の実情、それを知る資料であります。たとえば、御承知かと思いますが、機構なり役職員の構成、給与、年間予算等、農業団体関係の中でもきわめて堅実なこの基金の運営を私ども知っておりますが、堅実過ぎて仕事がないのじゃないかと思われる節もある。取り扱い件数は年間に二百五十八件くらい取り扱って、連合会を三十一ぐらい対象にして金融をやっておれはいいので、あまりにもひまではなかろうか、やはりこれは検討の余地があると思うのです。その他これに関連して必要な点がありましたら御提示を願いたい。  それから第七ですが、共済組合解散ないしは事業休止の状況、これらはいただいた資料にも若干出ておりますが、特に三十三年三月十日の四十六条に基づく解散条項を経済局長通牒によって押えておる、その原文と、それから三十六年の十月十一日付で新しい次官通牒が出されておる、その次官通牒全文を一つ参考のために御提示を願いたい。最近組合解散の新しい傾向として、家畜共済の場合でも、法律に基づく組合解散して、自分たちが金を出し合って、自分たちの気持で積み立てて、いざというときに共済金を支給していくという傾向が各地に出てきておる、これはこの制度に対する一つの不信を農民がみずからの手によって解決していこうという注目すべき傾向だろうと思うのであります。これらの点について農林当局でお調べになった、そういった私が今指摘したような新しい解散の動き、またそれに対する農民の動きというようなものを知ることができる資料がありましたらいただければ幸いだと思います。  第八が家畜共済を多頭羽飼育の実情に即応せしめる具体策が、本年度予算においてモデル地区とかいうのができたそうでありますが、その具体的などこどこを指定し、どういう計画によって、最近の家畜の飼養実績の変わった状況にこの制度を組み合わせていくかということについての具体案をお示し願いたい。   〔委員長退席、小山委員長代理着席〕  最後に、果樹共済対策を検討中と言ってからすでに久しいものがございます。その検討の段階なり内容があれば示されたい。なお同時に、北海道における大豆、あるいは九州における菜種、その他蔬菜地域における蔬菜園芸等に対する今後の総合的な共済制度をどう考えるかということを知るに必要な資料がありましたら、それも御提示を願いたい。  以上であります。
  85. 坂村吉正

    坂村政府委員 足鹿委員のただいまの資料の御要求につきましては、できるだけすみやかに調製をいたしまして提出いたします。
  86. 小山長規

    ○小山委員長代理 これより質疑を続行いたします。西宮弘君。
  87. 西宮弘

    西宮委員 私は午前中の質問に引き続いて、なお二、三お尋ねしたいと思います。  先ほど、一昨年農災制度改正についての協議会ができましたとき、その際の問題点として農林当局から提示をされた八つほどの問題について、それが現在はどうなっておるかということをお尋ねをいたしたのでありますが、結局結論として、当時指摘をされた問題は、今日もなお依然として農災制度における問題であるという御答弁があったわけであります。もちろんその中には一、二例外的なものもないわけではありませんけれども、全体としては、一昨年の問題は依然として引き続いて今日の問題であるというふうに伺いましたので、それを中心にして今後どういうふうに改善をしていくのかということをお尋ねしたいと思うのであります。ただ、その数字にわたりますところは、ただいまいろいろ資料提出について要求がございましたが、まだその数字面について何ももらっておりませんので、私もそれらをもらいましてさらにお尋ねをしたいと思うのであります。つきましては、ほんの抽象的なことでありますが、二、三お尋ねしたいと思います。  たとえば一昨年はあの制度協議会ができまして、農林省から提示された各問題について、慎重なまた真剣な検討がなされた結果、昨年二月答申が行なわれたわけであります。その答申の内容についてはもちろん十分関係者御承知でありますが、ただ、その後その答申通りに実施をされない。今日提案をされております法案は、答申とかなりの面で食い違いを来たしておるものがあるわけでありますから、私は当時の答申が今日の新しい制度でどういうふうに消化されているか、どういうふうに取り上げられておるかということをお尋ねするのが、お尋ねの仕方としてはよろしいと思うのでありますが、むしろ問題をわかりやすく取り上げるために、そうではなしに、答申にうたわれておることでそれと違った法案になっているのはどういう点か、そういう違った点を逆にお尋ねをしたいと思います。まずそれを一つ説明願います。
  88. 坂村吉正

    坂村政府委員 お尋ねの一昨年の協議会の答申と、現在提案しております政府原案の中身の違いでございますが、制度内容については、答申の考え方を大体そのまま踏襲をいたして取り入れまして政府原案を作成いたしております。しかし、そこで一番大きな問題といたしましては機構の問題、この点が、その後いろいろ検討いたしました結果、協議会の答申通りにすることは、その当時の情勢上適当でないという考え方で、機構の問題だけは、協議会の答申と変わっております。会の答申におきましては、共済事業実施の機構といたしましては、中央地方を通じまして事業団の設立をいたしまして、その事業団が末端共済組合の共済について直接保険をする、こういう考え方で答申は出されておるのでございますが、現在の政府原案におきましては、中央の現在の農業再保険特別会計のやっております仕事の部分を事業団にいたしまして、県には連合会を残しまして、そうして責任は、米については末端共済組合におろしますけれども、末端共済組合が、県内の実情で、自分の自由な意思でもって、県内で再保険をかけたい、再共済をしたい、こういうような場合には、県の連合会に一部を再共済することはできるのだ、こういう考え方のもとに現在の政府原案ができておるわけでございます。その他の点につきましては、共済事業内容は、大体答申に沿いまして政府の原案を作っております。
  89. 西宮弘

    西宮委員 機構の問題について申しましても、たとえば中央段階のもの、それから県段階あるいは組合、この三通りに分かれると思うのでありますが、機構の問題については、今、いわば県段階の連合会の問題についてお話がありましたけれども、中央段階についても、答申と食い違っておる点があると思うのですが、それを一つ……。
  90. 坂村吉正

    坂村政府委員 答申におきましては、中央段階におきましては、先ほどお話し申し上げましたように、保険事業実施の機構として事業団を作る、その事業団は、中央の再保険特別会計と、それから現在融資のために設けておりますところの農業共済基金、これを一本にいたしまして、中央ではそういう機構を作る、それから県段階には、現在の連合会といいますか、そういうような形で、事業団の支所を置くのだ、こういう考え方で答申はなされておるのでありますが、その点が政府原案では、中央については農業再保険特別会計のやっておる仕事だけを一応切り離して事業団にしよう、こういう考え方になっておるわけでございます。
  91. 西宮弘

    西宮委員 今お話のありました農業共済基金の問題でありますが、これは答申と違って、今回政府で考えた事業団の中にも含まれないということになるわけですが、それを特に独立させねばならぬ理由はどこにありますか。
  92. 坂村吉正

    坂村政府委員 基金の問題だけを特に独立をさせなければならぬ、別にこういうことで考えたわけではございませんけれども、協議会の答申のように、中央・地方を通じまして、今の連合会段階までが事業団、こういう仕組みになりました場合には——たとえば現在、連合会段階におきましても、いろいろ事業上の赤字とか黒字とか、そういうようなものがございます。それで、連合会の事業上の赤字というものは、共済基金から融資をいたしました金、基金に借金をしておる、こういうものが大体事業上の赤字、こういうことになっておるわけでございまして、そういうような意味からいたしまして、全体の連合会段階までのものを一本の事業団にいたしまして、末端共済組合に対して保険をするのだ、こういうことになりました場合には、筋からいいまして、いわゆる基金も一本に取り込んだ方が、実際の運営上は楽にいくのじゃないか、こういう考え方でございましたけれども、政府の原案では、連会合というものをそのまま残しておるものですから、そういうあれからいいますれば、現在の連合会の赤字、黒字という問題は基金の存立と直接つながる問題でございますので、これは長期的に将来も見ていく、こういう考え方で、とりあえず基金を中央の事業団に取り入れなくてもいいんじゃないか、こういう考え方のもとに離しておるわけでございます。
  93. 西宮弘

    西宮委員 もしそういうことであれば、今日までいろいろ論議されて、たとえば制度協議会の記録等を見ましても、基金のあり方についていろいろ論議されておる。たとえばああいう形で独立させなくても、現在あります公的な金融機関、こういうものと一緒にして、そのうちの一つのセクションとしてやっていってもいいんではないかという議論などもなされておるようでありますが、そういう点については検討はされませんでしたか。
  94. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃるような点も十分検討いたしました。しかし御承知のように、現在の基金は半分が民間出資、半分が政府出資、こういう格好になっておりまして、基金の会員が、各県の連合会が出資いたしておるわけでございます。そういう関係で、たとえば農林漁業金融公庫のようなああいう政府の金融機関で融資する、こういうことを考えました場合に、その会員の出資者との関係はどういう工合にするかというような問題が根本的にあるわけでございます。そういうようなものを返してしまって、そして政府出資だけを動かしまして、そういうものに持っていくか、あるいは出資分は何とかやはり一緒にそのまま出資の姿で持っていくのがいいのか、そういう根本問題もございますので、せっかく政府出資、民間出資という特別な機関を作っておるのでございますから、これが共済事業におけるところの専門的な融資の機関として持っておってもいいじゃないか、こういう考え方でございます。
  95. 西宮弘

    西宮委員 ただいま足鹿委員資料の、要求をいたしましたので、そういう資料を見ないと何とも言えないのでありますが、たとえば政府出資は半分であります。今日の基金の運営状況等からいって、半分で済むということはむずかしいかもしれないが、最近の各連合会等の運営の実態ですね。要するに、最近非常に被害が少なくなってきた。そういう実態等から見ると、もう少し少ない金額でもやれるのではないかという、これは単なる常識論にすぎませんけれども、そういう気がするのですが、それはいかがですか。
  96. 坂村吉正

    坂村政府委員 御指摘でございますけれども、現在基金の出資金は総額三十億でございまして、そのほか幾らかの積立金がございますけれども、ことしの三月末の基金の貸付状況を見ますと、四十六億貸し付けております。そういう状況でございますので、災害が少なくなったからといいまして、三十六年度のようなああいう各地に大災害が起こりますと、各地の連合会が金の支払いに足りなくなるという状態も起こって参るものでありますから、今の資金の規模で必ずしも十分であるとはいえない、むしろまだ足りないのではないかという状況でございます。
  97. 西宮弘

    西宮委員 この共済基金の問題については、そういう点でこの前の制度協議会の中でもいろいろ論議されておりますし、当然検討されてしかるべきだ。従って、協議会としては事業団の中に吸収する、もちろんそのときは地方の各県の連合会の権利義務も承継する、こういう形になっておりましたから、その際その問題がそのうちの一つとして取り上げられたことは、さっき局長のお話しの通りだと思うけれども、しかし私どもとしては、協議会の答申を尊重するということであれば、当然そこまでいくべきだと思うんだけれども、そこまでいかない今日においても、私は、共済基金は、たとえば今お話しのあった金融公庫等の中に、そのうちの一部門として取り入れるとか、そういう構想が当然とられてしかるべきだと思うのでありますが、しかし運営の実施等については、今資料要求がありましたので、それを見た上で、またいろいろお尋ねいたしたいと思います。  機構問題として局長からお話のあったのは特に連合会の問題でありますが、この点について、その協議会の答申と違わせた理由は何ですか。
  98. 坂村吉正

    坂村政府委員 協議会におきまする検討の段階におきましては、主として米についてやったわけでございますけれども、この場合に協議会におきましては、末端共済組合と事業団とが直接保険関係に入る、こういうことでいいじゃないか、こういう結論に至ったわけでございます。その他にやっております共済事業といたしましては、家畜もございますし、蚕繭もございますし、こういうようなものについては、今後制度改正といいますか、現状をもう少し検討いたしまして、改善する、こういう問題が一緒に控えておったわけでございまして、そういうものが現在やはり県の連合会の仕事として残っております関係上、これはやはり連合会をそのまま急に政府原案でつぶしてしまう、連合会を抜きにして保険の仕組みを組み立てるということは必ずしも時期的に適当でないんじゃないか、こういう考え方のもとに、これは協議会の答申を修正いたしまして、考え方を変えまして、政府の原案を作りましたわけでございます。
  99. 西宮弘

    西宮委員 今の局長のお話の中の、時期的に適当でないというのはどういうことですか。
  100. 坂村吉正

    坂村政府委員 いずれ家畜の問題であるとか、蚕繭の問題であるとか、そういうようなものも検討いたしました結果、全体の共済事業として最後にどうしても連合会なんか要らないのだという結論が参りますれば、そのときにまたそれは考えるべき問題であろう。しかしその場合に、また連合会というものがやっぱり要るのだというようなことにならないとも限りませんし、そういう問題はまだ未検討でございますので、そういう点を検討が済まないままに置いて、連合会の段階を機構の上で要らないものにするということは少し尚早じゃないか、こういう考え方でございます。
  101. 西宮弘

    西宮委員 共済制度協議会はずいぶん長い時間をかけて論議をしてきたのですが、そういう問題については、その当時は協議会としては何も検討せずに、ああいう結論を出してしまったわけですか。
  102. 坂村吉正

    坂村政府委員 共済制度協議会は、先ほど申し上げましたように、大体米作を中心に研究いたしたわけでございまして、現在特にうるさく問題になっておりますのは米作でございますので、水稲について検討いたしたわけでございます。家畜の問題その他につきましては、これは制度の検討と別の機会にまたやったらどうか、こういうようなことになっておるのでございます。
  103. 西宮弘

    西宮委員 そうしますと、その家畜の問題、蚕繭問題等を含めて考えると、協議会の答申そのものは間違っていたのだ、そういうことになるわけですか。
  104. 坂村吉正

    坂村政府委員 間違っていたということを申し上げているわけではございませんので、水稲について協議会としては協議会の立場でそういう結論を出しましたけれども、そのほかに家畜の問題もございますし、蚕繭の問題もございますし、協議会の答申をどういう工合に取り入れて政府法律を直すか、あるいは施策をきめるかという問題、そういう全体の問題は、同時にこれはやるべきものであろう、こういう工合に考えまして、その点については協議会の答申を取り入れなかったわけでございます。
  105. 西宮弘

    西宮委員 今回の改正案について、農林省がお出しになった制度改正要綱というのがありますが、その中の第七ですか、実施機構の整備という一項目がありますね。実施機構の整備と称するその整備は何をさすわけですか。
  106. 坂村吉正

    坂村政府委員 農業災害補償制度改正要綱の第七でございますが、実施機構の整備というのがございます。この内容は、一つは農業保険事業団の設立。中心は農業保険事業団の設立の問題でございまして、それに伴いまして実施機構を整備する、こういう内容でございます。
  107. 西宮弘

    西宮委員 何も言葉を論議するわけではありませんけれども、実施機構の整備といううたい文句でありますが、その内容は保険事業団を作った、これは要するに、従来の特別会計を看板をかえただけですね。それ以外に何ものもないわけです。およそ整備の名に値するでしょうか。
  108. 坂村吉正

    坂村政府委員 言葉としては、どの程度が整備でどの程度が整備でないか、非常に問題があろうと思うのでございますが、今まで特別会計でやっておりましたものを切り離して、事業団という組織を作って、それを中心にして連合会それから末端共済組合との結びつき、そういうようなものをここで統一的に考えましたものですから、言葉として整備という言葉を使いましたのでございますが、整備という言葉が非常に不適当であれば、これは直しましても差しつかえございません。内容はそういう内容でございます。
  109. 西宮弘

    西宮委員 先ほど私が朗読いたしました昨年三月三十日の衆議院で議決いたしましたいわゆる抜本改正決議ですね、その中には、「実施機構については、その責任の明確化を図るとともに、制度簡素化を図ること。」こういう一項目があるわけです。私は、いやしくも整備と称するからには、たとえばもっと簡素化をはかるとか、あるいは合理化をはかるとか、そういう積極的な内容が当然あるべきだと思う。ただ看板の書きかえだけでそれを整備というのは、まことに人をばかにした表現だと思う。ただ言葉が悪ければ訂正するという話であったけれども、私はそういうところにも何といいますか、今度の改正についてそういう積極的な考え方が全然盛られていないということが露呈しているのではないかと思うのです。
  110. 坂村吉正

    坂村政府委員 言葉でございますけれども、単に事業団と特別会計の塗りかえということではございませんで、中央に事業団を作りまして、末端共済組合と直接保険関係を結ぶ、こういうことが機構といたしましては、簡素化し、強力化した、こういう内容になっておるのでございます。今までは連合会を通じ末端共済組合に結ばれておったわけでございますけれども、現在の政府原案におきましては、保険関係は事業団と末端共済組合とで直接保険関係に入る、そういう内容になっておるのでございまして、ただ実際問題といたしまして、その場合に県の範囲内におきまして末端共済組合だけでは非常に災害状況等によって不安な場合もあるというようなことがございますものですから、その際には末端共済組合の通常責任の一部を連合会に再共済するという例外的な規定はございますけれども、考え方としては、そういうような意味ですっきりと簡素化させたという内容になっておるのでございまして、そこで整備という言葉も必ずしも不適当でないのではないかというふうな感じがいたします。
  111. 西宮弘

    西宮委員 お話のように、非常にすっきりさせたということであれば、確かにそうだと思うのですけれども、実際はすっきりさせた結果になっておらない。むしろきわめて複雑というか、あるいはあいまいなものになってしまったというところに今日そもそもの問題があるので、それがお話のように非常にすっきりしたのだということであれば、だれもこういう問題について論議をするはずはないと思うのです。今日非常にやかましい問題になっておりますのは、そういう点がすっきりしなかったというところにあるので、いろいろ説明をしておられるけれども、十分そこは反省をしてもらわなければならぬ。  局長は機構の問題として今までお話の点をあげておりましたが、もう一つ協議会の答申と今回提案されている案との間で一致をしていないのは、いわゆる任意共済の一元化の問題であります。協議会の答申にはこれは一元化するということを明瞭にうたっているわけですが、その点今回の提案とはどういう関係になるのですか。
  112. 坂村吉正

    坂村政府委員 農業災害補償制度と建物の任意共済の問題とはこの制度改正についてのつながりは直接はないわけでございます。制度上の問題といたしましてはございませんで、ただ実質的に農業共済団体と農業協同組合とが建物についての共済事業をやっている。そういう面で競合がありますので、この制度の裏におきましていろいろ関連のある問題になっておるのでございます。そこで協議会の答申におきましては、一元化する方向で検討するという答申を得ておるのでございまして、その後十分この問題については農林省におきましても検討いたしまして、何とかこの問題をすっきり片づけますことが農業災害補償制度の本体の制度にも非常に影響する問題であろうということでいろいろ検討して参ったのでございますが、やはり事は団体の問題というかそういう性格にもなって参るのでございまして、なかなか簡単に両者がうまく調整をとって仕事を進めていくというような段階にはならないというような状況でございます。現実問題といたしましては、全般的に見ますと、大体長期の共済は農業協同組合がやっておりますし、それから短期の共済は共済組合がやっておりまして、そういう関係で、大ざっぱに言いますと大体地図分け、色分けはできて、非常に争ってうるさい問題になっておるところもございますけれども、全体としてはそういう姿で動いておるのでございますので、この制度改正についての政府案を作ります場合になかなかその問題までは片づけることができなかった、こういう実情でございます。
  113. 西宮弘

    西宮委員 局長の御答弁のように、二つの団体が長期と短期でおのおの分野を分けておってそれでしかるべくやっている、だから大して問題なしにやっているのだということであれば、もちろんそれはお話のように団体の問題でもありましょうからそれでけっこうだと思うのですけれども、しかし現実は長期と短期とに分けて適当にりっぱにやっているというような状況ではなしに、これは私どもよりもむしろ局長の方が十分御承知のように、この問題は非常に大きな問題として現在論議されておるわけであります。そういうことになりますと、農林省としてももう少し積極的な気持を持ってこれに取り組んでいくことが必要だと思うのです。そこで、たとえば例の建物共済事業調整懇談会ですか、それが昨年の六月二十六日に会合を開いているようですが、その後どういう状況になっておりますか。
  114. 坂村吉正

    坂村政府委員 御指摘のように農政上も非常に影響するような問題でございますので、農林省といたしましても、何とかこの問題が片づくようにということで、昨年度でございますか、学識経験者を集めてこの問題について検討会をやったわけであります。数回にわたっていろいろ実情等を分析いたしまして検討いたしたのでごさいますが、いろいろ意見はございましたけれども、大体委員の皆さん方の御意見も、結局団体の問題ではないか、そういう気分が非常に多いのでございます。これを農業災害補償制度の中でどうしなければならぬというような制度的な問題としてはなかなかこれは結論は出ないのではないか。最終的な結論を出しておるわけではございませんけれども、大体そういうような意見のうちに、これはなかなか締めくくりがつかないということで、一応私どもその後懇談会の討議は打ち切っておるわけであります。実際問題といたしましては、先ほどおっしゃいましたようになかなかすっきりはいっていないのだというお話ではごさいますが、いろいろ県によって実情が違うのでございます。極端な例を申し上げますと、北海道では全部農協がやっております。埼玉県では全部農業共済団体がやっております。そのほか大ざっぱに言いますると、先ほど申しましたように共済と農協といろいろな分野はございますけれども、いろいろ重複しているところもあるというところで問題になっておるのでございます。同じ農民を相手の共済事業がそうした農業団体の間でいろいろ議論になるということ自体も考えようによってはおかしいことでございまして、これらはもう少し団体の自主的な解決というものも必要じゃあるまいかという感じもするのでありまして、政府としてこうしなければならぬという結論は現在までまだついていないというのが率直な実情でございます。
  115. 西宮弘

    西宮委員 今の懇談会は六月に開かれてから何回くらい重ねておりますか。
  116. 坂村吉正

    坂村政府委員 三回ばかり検討いたしまして、結局最終的なきちっとした結論を出すというわけには参りませんものですから、そのままで打ち切っております。
  117. 西宮弘

    西宮委員 これは団体の問題だから、それにそういう人が集まって論議をするということ自体がおかしい、あるいは制度の問題としてそれを取り上げて議題にすることがおかしいというようなことで打ち切ってしまったというお話でありますが、たとえばさっきも朗読をいたしました一昨年の衆議院抜本改正決議の中には「建物の任意共済事業については、この際根本的な解決を図ること。」という一項目があるわけです。こういうふうに衆議院が、すなわち国会の意思として決定したということであれば、やはり農林省としてはそれについて十分に積極的に取り組んでいくということが当然必要だと思う。当然の義務だと思うのです。むろんやった結果どういう結論が出るかは、これはやってみなくてはわからぬでしょう。要するに、みな団体のことだからわれわれの知ったことじゃないということで投げてしまうというのは、少なくとも国会決議に対して忠実なやり方ではないと私は思うのですが、その点はどうですか。
  118. 坂村吉正

    坂村政府委員 言いわけをするようなあれではございませんけれども、懇談会としては打ち切りましたわけでございまして、その後も農林省といたしましては、そういう国会決議もございまするし、何とかこの問題の調整をはかりたいとして関係団体等にもいろいろ働きかけあるいは話をし、いろいろやって参りまして、最善の努力をして参っておるのでございますけれども、なかなか結論までにはいっていないという状況でございますので、あしからず御了承いただきたいと思います。
  119. 西宮弘

    西宮委員 懇談会としては打ち切ったけれども、農林省としては引き続いてやっておるというお話であります。どういうことを農林省としてやっておるのか知らないけれども、従来の経過から見ると、それは農林省としてなかなか容易じゃないというので、この懇談会を設けてそこで結論を出してもらおうということで、農林省の構想としてこの懇談会が生まれてきたにもかかわらず、今度はもう一ぺん農林省の責任でやることにした。はたしてそれで農林省としては積極的な御意図を持ってこれに取り組んでいるのかどうか、私どもは非常に疑問に思わざるを得ないのですが、これは非常な意気込みでやっているわけですか。
  120. 坂村吉正

    坂村政府委員 非常な意気込みでやっておるわけでございまするけれども、実際問題といたしましては、こういう団体間のいろいろ利害の非常に強く対立する問題でございますから、たとえば理論上これを割り切って、こうあるべきだというようなことできめてかかりましても、なかなか動かないわけでございます。ですから、関係の団体がほんとうに自分で納得をしてそうやろうじゃないかというようなところまで持って参りませんと、この問題は片づかないものですから、そういうような観点から、関係の団体等に対しての話等におきましても、いろいろそういう意気込みでやって参っておるのですが、なかなかそれがほぐれてこない、そういうのが実情でございます。
  121. 西宮弘

    西宮委員 大体において成り行きにまかせるということですな。私も今まで長い経過をいろいろな記録からずいぶん調べてみたのですが、農林省だけではとうていその解決ができないというので、いろいろな機関に諮ってその協力を求めてやってきた。たとえば衆議院はそういう決議をするし、あるいはさっき申し上げたように、制度協議会は一元化ということを決定をしておる。そういうところでそれを受けて、それを消化するためにいろいろな努力をしてこられたのだけれども、そういう特殊な機関を設けてそこで審議をしようとしてこられた。もしそれが団体の問題だから容易に手が出ないのだ、あるいは団体の問題だから理論的な決定をしてみたって始まらないのだ、そういうことであれば、そもそも懇談会等を設けてその意見を徴するということもすでに意味のないこと、あるいは全く趣旨の違ったことを懇談会に一応かけてみたということだけのことで、全くこっけいなことだと思うのですが、私は局長をこれ以上追及してもこの問題について明確な答弁を得られないと思うのですが、ただこういう状態に放置して、こういう問題のために争っている。しかも局長が指摘されたように農村内部の問題で争っているということは、私どもまことに遺憾千万な状態だと思うのですね。今いろいろ局長のお話を聞いておっても、あたかもはれものにさわるようなそういう気持でおられるのじゃないか。さわるならまだいいんだけれども、さわってもいない。いわゆるさわらぬ神にたたりなしというような心境じゃないかと思うので、こういうようなことではとても問題の解決にならない。一つ、一はだも二はだも脱いでこれに飛び込む勇気はありませんか。
  122. 坂村吉正

    坂村政府委員 非常に前々からの長い間の問題でもございまして、どちらかといいますれば相当政治的な問題にもなっておるようなわけでございまして、それは実際問題といたしまして、率直に申し上げまして、一役人が一はだ、二はだ脱ぎましてもなかなか片づく問題ではないと思うのでありますが、これは関係者の方々がほんとうにその気になって、とにかく農村内部のそういう問題を何とか片づけなければならぬ、そういう気持になってやってもらわなければいかぬと思うのでございまして、そういう意味におきまして、今までほんとうに私どももそういう事態を心配しまして、そのために農村の内部がいろいろ工合悪くなるとか、あるいは農業災害補償制度がそのためにゆがめられるとか、そういうことがありませんように最善の努力をして参っておるのでございますけれども、どうも力が足りませんで、まことに申しわけないことだと思っておる次第でございます。
  123. 西宮弘

    西宮委員 力が足りないで申しわけないというようにかぶとを脱がれると、どうもこれ以上追及のしようがないのでありますが、私は、とにかく農村の中でこういう問題が争われておるというのは、ほんとうに一つの悲劇だと思うのです。これは今過去を責めても仕方がないと思うのですが、こういう制度が始まったときにこれは当然に論議すべき問題、そのときに将来起こるであろう問題を予測をして十分にそれに対処すべきであったと思う。またあるいはその途中でも、何回かそれを円満に解決する時期があったと思うのですね。私は、古いことを必ずしもよくわかりませんが、記録等を見るとそういう時期があったと思う。そういうチャンスをはずしてしまった。そうして今日ますますどろ沼に入り込んで身動きができないほど、その問題に入り込んでしまっておるということは、何といっても農村の大きな悲劇だと思うのです。これは一つやはり局長、政治的な問題にもなっておるので、役人が一はだ、二はだ脱いでも解決できない問題だと言われるけれども、やはり私は役所が、つまり政治的にいろいろ考えない純粋な立場で考える役所が、この結論を出すということが一番やりやすいんじゃないか、あるいはさらに場合によったら、たとえば純粋な第三者、そういう人だけ選んで、そこで結論を出してもらうという方法もありましょう。とにかく何らかの形でそういうところで結論を出すべきだと思う。私は、今は意見を述べる機会ではありませんから、質問をしている段階ですから、これ以上申し上げませんけれども、一つそういう点でこれはぜひとも本腰を入れて取り組んでもらうようにお願いをして、おきたいと思います。  さて、そういうふうに協議会の答申と、それからただいま提案されております改正案との間には、食い違いの面もあるわけでありますが、しかし、同時にまた、当時の協議会の案をいろいろ採用しておる点もたくさんあるわけです。そこでお尋ねをしたい一つの点は、先ほど八つの問題を農林省からお出しになったので、その八つの問題についてそれぞれ質問をして参りましたけれども、要約していうならば、要するに金の問題、そろばんの問題、農民不満なるものは。むろん、それに伴ったいろいろの取り扱い上の問題もありますけれども、せんじ詰めたところ、金の問題が一番問題だ。要するに掛金が多いとかもらう金が少ないとか、そういう金の問題になるわけであります。そこで一つお尋ねしたいのは、今度かける掛金は、どの程度までが末端組合にとどまるということになりますか。
  124. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在政府案で考えておりますものは、末端共済組合に通常責任の全部を持ってもらう、こういう考え方で今おるのでございますから、その際におきましては、ですから通常災害掛金の部分はこれは末端組合に残る、こういうことに相なるわけでございます。
  125. 西宮弘

    西宮委員 つまり掛金全体からいうと、何割ぐらいが、どの程度までが末端組合にとどまりますか。
  126. 坂村吉正

    坂村政府委員 通常災害掛金全部がとどまるといたしますれば、これは大ざっぱな計算でございますが、大体四割前後でございます。
  127. 西宮弘

    西宮委員 せっかく農民のかけた掛金の四割前後しかとどまらないということになると、末端組合自分のかけた金は目の届くところで処分される、それが今度の改正の一番大きな眼目であったはずだと思うのだけれども、そういう点も全体からいうと四割程度しかそれが達せられないというのでは、依然として農民の失望が大きいと思うのですが……。
  128. 坂村吉正

    坂村政府委員 あるいは舌が足りなかったと思うのでございますが、四割といいますのは、国庫負担を含めての全体の掛金の四割でありまして、それは農民がかけております金が大部分そこにとどまる。農民負担が大体四割、それから国庫負担が六割ちょっと、こういうことになっておりますので、そういう意味で四割と申し上げたわけであります。もちろん、いろいろ被害率の関係それから通常災害の線をどこに引くか、こういうような問題によりまして、農民のかけたものが必ずしも全部が全部きちっと組合にとどまるんだというわけには参りませんで、いろいろ技術的には幾らか出入りはございますけれども、大ざっぱに申し上げまして農民のかけたものはおおむねその末端組合にとどまる、こういう考え方でございます。
  129. 西宮弘

    西宮委員 これは、先ほど中澤委員等から要求いたしました資料をいただかないと、抽象論で議論をしてもさっぱり意味がないと思うので、具体的な数字を見ないとわからないと思うのですが、私ども心配することは、せっかくかけた農民の金が、国庫負担を入れての話ではなしに、農民の出した掛金が、これはお話のように通常災害の基準をどこに置くか、その線の引き方によってもちろん違ってくるわけだと思いますけれども、その線をどこに引くかということが資料を見ないとわからない。ただわれわれの手近なところだけを計算をして取り上げてみると、これはかなりの部分が——今局長の言われた程度のものではない、局長の言われたのは四割、従って農民負担が四割だから農民の出した金はほとんど全部末端組合にとどまるのだ、全体からいうとそういうことなんだという今の御説明であったけれども、われわれが手近なところで計算したところでは、おそらくそういうことにはなっておらない。これはさっき申し上げた資料を見ないと全体的なことは言えませんけれども、ただ私ども身近なところで計算してみるとそういうことになるわけです。それではとても改正の第一のねらいが達成できないということを心配しておるものですが、どうですか。
  130. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通りでございまして、この点は今度の改正の非常に大きなねらいでございます。ですから、組合によっては、いろいろの条件によって、ある程度は上に持ち出さなければならぬというようなものもございましょうけれども、今までは大体末端共済組合に残っておりましたものは一割でございます。一割の金の保有を——全体の一割でございますからこれは非常に小さなものでございます。その一割のものを保有いたしておったわけでございますけれども、これが、農民のかけたものは大部分がそこにとどまる、こういうことになりますれば、農民としては災害がないのに、自分のかけた金がどこにいってしまったのだろうかという、そういう不満は少なくとも解消するだろう、自分のかけました金は自分の地元に残っておるのだということでありますれば、その不満は今までに比べれば相当解消するのじゃないか、そういうふうに考えております。
  131. 西宮弘

    西宮委員 それは、もちろん今までに比べればその点は問題なしに末端に大きく残る、今まではたった一割なんですから、それに比べれば比較にならぬほど残ると思うのです。ただわれわれの身近なところを計算してみると、末端に残るのではなしに、むろん事業団からくる組合もあるわけです。しかし逆に、末端組合員が納めたものがその上に吸い上げられてしまうという組合も私どもの計算した範囲では相当多い。ですから、そういうのが非常に多いということになると、今申し上げた今度の制度改正の第一のねらいどころがはずれてしまう、そういう組合全国には相当あるのじゃないかということを私どもは非常におそれているわけです。
  132. 坂村吉正

    坂村政府委員 御承知のように、被害率あるいはその他によってこういうものは変わるものでございますから、四千の組合が全部一文も上には持ち出さないでいいのだというようなことにはなかなかならぬと思います。しかし、さらっと計算してみますると、相当部分が持ち出さなければならぬというような計算も出ます。ですから、そういうようなことであってはいかぬというので、私どもはできるだけ大部分のものが持ち出しをしなくてもいいようにというような意味で、いろいろの危険率をどうするか、通常災害の線をどこに引くか、そういう事務的な問題で、そこら辺は全体の趣旨に沿うように調整をして、もし法律通りましたらそういう内容で実際の設計はやりたい、こういうことを考えておるわけでございます。今後法律通りましたあとにおきましても、そういう調整は今後の問題でございまして、今まではじいたものは中途の段階でいろいろはじいておりますから、そこで非常に持ち出しが多いような組合も出てくるというようなものもございますから、そういう点を実施の段階においてはできるだけ調整をして、全部が全部一〇〇%持ち出さないでいいのだというようなわけにはいかぬと思いますけれども、そういう方向でやりたいと考えているわけでございます。
  133. 西宮弘

    西宮委員 法律ができたらあとで調整を考えるというお話であったが、私どもは、そういう法律を作ること自体が問題なんで、そのために議論をしているのですから、法律ができてしまってあとでその地ならしを考えるといってみても、これはおそらくあとの祭りだと思う。しかもお話のように、全部が全部ふえないということは保証できない、こういうお話であると、とにかく法律は作ってしまえ、あとは適当に考えるんだというようなことでは、われわれとうてい安心できないと思う。これは先ほど要求されておりました資料を見てから具体的にお尋ねをすることにいたします。  ただ一つだけ申し上げておきたいのは、例の農林省でお作りになった研究会の答申の中にも、農家掛金負担が現行に比し増加しないように配慮すること、こういう一項目があるので、今言われたような、組合の中にはふえるものがあっても仕方がないのだ、こういう考え方でやられたのでは目も当てられない。   〔小山委員長代理退席、丹羽(兵)委員長代理着席〕 これはぜひともこの研究会の答申通り掛金負担が現行に比して上がらないということを確保してもらわなければならぬ。そもそもそういう法律を作ってもらわなければならぬというのが私どもの趣旨ですから、その点を十分含んでもらいたいと思う。大丈夫ですか。
  134. 坂村吉正

    坂村政府委員 ただいまのお話の点で、たとえば末端共済組合から事業団の方に掛金を持ち出しをする、しないという問題と、料率の問題とは、これは別の問題であります。持ち出しをする、しないという問題は、全体の掛金のうちの六二%は国庫負担をやっておりますから、筋から申し上げますと、農民の納めました掛金は、共済組合を通じ、それから事業団に掛金として参るというのが本筋でございまして、それに対しまして農林省では、国では掛金国庫負担をやっておりますから、六二%はそれを農民に交付をする、こういうところが筋でございます。しかし実際の事務の便宜上、現在の法律では、それを中途の段階で相殺することを認めておりますので、そういう関係で、国から金のいく分と農民からとって上がってくる分とが、中途の段階で相殺されるわけでございます。そういう相殺の関係で、出入りが余りますれば共済組合に国から金のいくものもございますし、一部はまた国に納めるというようなものも出て参りますことは、保険のそういう設定上やむを得ないものがある、こういうことを申し上げたのでございますが、ただその際に、できるだけ自分の村でかけました金はほかには出ないように、できるだけ地元にとどまっておるように、そういう工合に配慮をいたしまして、通常災害の線をどのくらいに引くかということを実際の段階においては考えて参りたい、こういうことを申し上げたわけでございます。  それから掛金率の問題は、研究会でも、できるだけ現在の負担がふえないように、こういうことで考えておるのでありますが、全体といたしまして当然掛金率が下がる、こういう方向で新しい制度は考えねばいかぬと思うのでございますけれども、御承知のようにこの制度におきましては、今までは掛金率をきめます場合に、各県単位でこれを一本できめまして末端組合に配分いたしたわけであります。ところが今度の考え方は、これを個別化をいたしまして、町村別といいますか、組合別に非常に詳細に分割をされます。そういう関係上、被害が多いところは掛金が上がりますし、被害のないところは掛金が下がる、これは保険の理論上当然なことでございまして、それを被害のないところが今まで被害の多いところの分まで金をかけているのじゃないか、安全地帯では非常にこういう文句が多いわけでございまするので、その点は細分化することによって、被害がしょっちゅう出て、金をしょっちゅうもらっておるところはある程度掛金が上がってもいい、高くてもいいのだ、被害のないところは当然掛金は下がるのだ、これはあたりまえの筋でございます。ですから、そういうようなことで細分化すればするほど上がるものも下がるものも出て参るのでございますので、ただ上がることだけを見て、上がるから困るという理屈は、実際問題としてはおかしいのじゃないかと思うのでございまするけれども、非常に極端に上がるというようなととがございませんように、これはいろいろ料率の設計上も十分努力をいたしたいとは思っておりますが、筋としてはそういう筋になるわけでございます。
  135. 西宮弘

    西宮委員 そういう末端組合農民の納めた金が残っているということと、掛金の問題は違うのだというのは全くその通りなんですが、私が一緒にしてお尋ねしたので、それで混乱したのかもしれません。それはもちろん違う。制度研究会は、掛金負担が現行よりも上がらないようにしろということをいっている。今局長は、そういうものが細分化すればするほど出てくるのだ、こういうお話だけれども、かりにそれが理論としてはその通りだとしても、末端組合あるいは組合員としては、制度改正になったおかげで今度は上がったのだということでは、とうてい通らないと思うのです。実際問題としてこれは絶対に通らない。ですから、そういうことでは何のための制度改正なのか、農民には全く理解されない。これはもちろんそれじゃ解散しろというようなことに直ちになってしまうと思う。だから、その点はそうならない法律を作らなければならない。   〔「与党が一人もいないじゃないか」「休憩々々」と呼ぶ者あり〕
  136. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)委員長代理 では暫時休憩いたします。    午後三時二十九分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕