○二瓶参考人 二瓶でございます。自分のことにわたるようで恐縮でございますが、私、学校を出ましたのが大正十三年でございまして、約四十年前、ちょうど日本の
農業の
機械化というものがようやく始まったときから、今日まで約四十年間
農業機械の方の勉強をいたして参りました。それで確かに今の
農業機械化というものは、発動機の数が二百万台とか、モーターが百万台とか、あるいは動力耕耘機が百万台というようなことで、非常に
機械化が進んだようでありますが、これはあくまで個人的な小さな機械の
機械化なんでありまして、それによってほんとうの労働の生産性なり、
土地の生産性が上がっているかと申しますと、ここに非常な疑問があるのであります。どうしても将来は、ただいまの井関さんとは違いまして、やはり大きな
機械化というような問題に取り組んで参らなければ、日本の
農業というものが産業として成り立たなくなりますし、また
国際農業との競争におきましても完全に脱落することは火を見るより明らかだと私は信じております。こういう点につきましていろいろ時間をかけて参るわけに参りませんし、近藤先生と井関会長さんから申されましたので、いろいろ申し上げませんが、今回のこの
機械化促進法の一部の
改正につきまして率直に私の感ずるところを申し上げます。
機械化促進法の一部
改正となっておりますが、非常に大きな改良がこの中に含まれておりまして、
一つは
機械化研究所——機械研究所でなく
機械化研究所、ここにまた非常な含みを持っておるのだろうと思います。これが促進法に加わったこと。それから農機具の検査の方法が完全に前とは違った形で現われてきたという点に注目しなければならないと思います。この検査の方法におきましてはいろいろございますが、非常にうれしく思いますことは、検査の時期が随時検査になったということ。今までの検査でありますと、不合格になりますと、早くて一年、おそければ三年ないし四年間次の検査を待たなければならない。こうなりますと、出品されるところのメーカーさん、農機具を製造される方々が非常な苦難に陥っておるのであります。こういう点をいつでも検査ができるというふうに思い切って改革されました点は非常によいと思います。それから検査の発表のときに成績が発表になる。これまた需要者であるところの農家にとってありがたいことで、これまた非常にうれしい改良を加えていただいたと大へん喜んでおります。それからもう
一つは、今までは同じ機械でありながら、作っている人も、これを売る人も、出品して検査を受けなければならないというような非常にむだなことが多い。同じ機械を、三軒から出ておりますと、三回の試験を繰り返さなければならないというような、時間から見ましても、お金の点から見ましても、非常なむだをしておりますのが、これがなくなった点、こういう点におきまして、私はこの改良を非常にうれしく思います。ただ、検査の合格、不合格というものを研究所だけでこれを決定してしまうということが第八条の二にうたってございますが、これは私はどうかと思います。今までの
国営検査ですらも、国の検査でありながら
機械化審議会において
審議いたしまして合否を決定しておったのであります。これが半官半民の研究所に
委託して、そうしてその合否を決定する。もちろん
機械化審議会におきまして試験の方法なり、それから試験の基準というものをきめておりますから、これに照らし合わせれば合格か不合格かということは立ちどころにわかるようになっておることも
承知しております。しかしながら、やはり半官半民となったときに、対世間的に見て、これをどう信じるだろうかという点に多少の疑問を持っております。あるいは農林御
当局の方では、
審議会とかなにかを開くのは大へんだ。今までならば三カ月に一度、あるいは半年に一度開けばよかったのであるが、今度は随時検定になって、ちょこちょここの
審議会を開くということは大へんであろうというような親心からでもございましょうが、これはやり方によりまして、この
機械化審議会の
委員のうちの検査
関係の
審議委員のメンバーをきめるなり、あるいは
審議と申しましても、月に一回くらいの
審議で済むと思いますから、こういう点が改良されたならばと私はお願いしたいのであります。
それから研究所であります。これまた非常にありがたいことでありまして、今まで国の
農業試験場の一部なり一課でやっておりましたことが、今度は大きく取り上げられたことはまことに喜ばしいことでありますが、この仕事の
内容であります。業務の
内容には、
農業機械化の促進に資する
ための農機具の改良に関する試験研究及び
調査を行なうとありますので、これは
考えようによっては、何でも入ってくる。こんなうまい
法律用語というか、巧みに逃げておられますが、これはもう少し具体性がないものか、
機械化研究所の大きな仕事は、
農業試験場の仕事とはおのずから違っております。そういう点で新しい開発、今までの日本
農業の機械と申しますのは、米麦一辺倒の機械でありましたが、果樹の機械あるいは畜産、そういう方面の機械で新しく開発しなければならない機械が、農林御
当局の御
調査によりましても七十種類と言われております。あるいはもっと多くあるかもしれません。こういうふうな非常に急がなければならない仕事でありますから、官と民とが一緒になった研究所というところに
意味があるのでありますが、開発研究というようなところに重点を置くような業務の
内容、それから民間の金も出ておるのでありますが、今井関さんが言われましたように、民間の方の研究所というものは最近非常に拡充されております。大きな工場になりますと、三千名の工場に対して三百人の研究員がおる。一千名の工場におきまして百人の研究員がおるというように、
農業機械の方の工業も進んで参りましたが、やはりこれもそろばんからはじきますと、ほんとうの基礎的な研究などになりますと、非常におろそかになってくる。やはり目の前の仕事の研究に追われますので、
農業機械の設計上の基礎原理という面になりますると、非常にむずかしい問題がある。これをだれがやるのか、これは国の
農業試験場でもやりません。
機械化研究所の方でもあるいはおやりになる目標がおありになるかと思いますが、やはりこれも強くうたっていない。
農業機械設計上の基礎原理と申しましょうか、あるいは基礎資料の
ための研究、これはすぐには金の方には
関係いたさないにいたしましても、りっぱな
農業機械、特別な産業機械の中でも私は
農業機械は非常にむずかしいと思う。今の動力耕耘機は自動車以上に設計やなんかにおいて困難さがあるのであります。そういう点におきまする基礎の資料が非常に不足している。こういうものをどんどん提供してやらなければいけないと思います。また規格統一というような問題がございますが、妙な規格統一をやると、機械の発達を阻害いたしますが、部品の統一というくらいのことは、これはぜひお願いいたしたい。通産省のJISはございますが、現在たとえば新たに生まれようとするところの十馬力ないし二十馬力のトラクターにつきましての規格の問題でありますが、こういうような点は世界的にも、小さなトラクターにJISみたいなものはきまっておりませんが、せめて作業機とのヒッチ、すなわち結合部分、こういうものの統一というようなこと、こういうふうな部分的なJISの——JISと申しては弊害があるかもしれませんが、こういう点につきまして、いわゆる部品の規格統一というようなことをだれもやらないでおる。ぜひこの研究所の方に私はお願いいたしたい、こういうふうに
考えます。
なお、
機械化審議会というものが前からございまして、今度の法令からも除かれておりませんが、これはちっとも前と変わっておりません。ただ農林御
当局に非常に苦言を申し上げるようで恐縮でありますが、私自身もかつては
農林省の役人でありましたものでございますが、先輩づらしまして妙なことを申し上げるようでありますけれ
ども、この
機械化審議会におきまして検査部会の
審議会がございまして、これはなるほど
昭和二十八年に——実を申しますと、
昭和二十八年の前の
昭和二十四年ごろから
国営検査をやっております。それから今日まで約十五年間
国営検査に
関係するところの
審議会というものが非常によく活動して、今日の日本の
農業機械のレベル・アップに功績があったことは、どなたも御
承知の
通りであります。しかしながら、この
機械化審議会は、
審議の
委員が二十五人、専門
委員が四十五人おられまして、日本の
農業機械化の将来などについて、
昭和二十八年から今日まで十年間のうちに一回も開かれておらない。もちろんこの
審議会は政令がございまして、
審議会の
会議の招集は
農林大臣、その会長がやるのでありますが、
農林大臣が一回も集めていない。
農林大臣の河野さんからおしかりを受けるかもしれませんが、お忙しい河野さんに言うのではありませんけれ
ども、これはあるいは事務局がいけない。
農林省の事務局は何をしているのか。今、
農業の構造改善であるとか、あるいは
基本法とかいうことで大きな
機械化の動きがあるくせに、日本の将来の耕地の一枚の面積はどれくらいにしたらいいのか、あるいはどれくらいの大きさのトラクターならば何町歩の経営ができるかというような基礎的な勉強が
一つもできていない。
昭和二十八年にできてから今日まで十年間勉強ができておりましたならば、こんなに今あわてる必要はない。そのような
意味合いにおきまして、この
機械化審議会は
法律がございますので、要するに、この
法律を直せというのではございませんで、この法令を十分に生かしまして、こういうような
審議を着々おやりになるようにお願いしたいと思います。
また、ここにお集まりの衆議院の先生方に特にお願いしたいのでありますが、今、日本の
農業の
機械化の
重要性は
皆さん方がよく御存じなのでありますが、この
機械化に対する研究施設なり、あるいは研究の
ための金の使い方は、国といたしまして何という情けない状態になっておるのか。口を開きますと、日本の
農業機械化の
重要性を先生方はみな論ぜられる、ところが、はたしてこういう方々が、国の施策に対して、どれほどの研究費やなんかをお出しになろうとなさるのか。これは、どうしてもここにお集まりの
委員長初め、ほんとうの専門の
皆さん方のお力をかりる以外にないと思います。
皆さんもまた日本の人民の代表としておられるのでありまして、私は四十年の経験から見まして、ほんとうに
皆さん方に頭を下げてお願いしたい。どうか、日本の
農業機械化の
ために、もっともっと惜しげのない御協力あるいはお教えをいただきたい、こういうようにお願いいたしまして、私の大へん乱暴な話で、
農林省の方々、あるいは先生方に御迷惑をかけたと思いますが、どうか私の意のあるところをおくみ取りいただきまして、御了承いただきたいと思います。(拍手)