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1962-03-08 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月八日(木曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 片島  港君       安倍普太郎君    飯塚 定輔君       大野 市郎君    金子 岩三君       草野一郎平君    倉成  正君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邊 國男君    内藤  隆君       中山 榮一君    福永 一臣君       藤田 義光君    本名  武君       松浦 東介君    米山 恒治君       有馬 輝武君    角屋堅次郎君       川俣 清音君    栗林 三郎君       東海林 稔君    永井勝次郎君       楢崎弥之助君    山田 長司君       湯山  勇君    稲富 稜人君       玉置 一徳君  出席政府委員         調達庁次長   眞子 傳次君         農林政務次官  中馬 辰猪君         林野庁長官   吉村 清英君         水産庁長官   伊東 正義君         水産庁次長   村田 豊三君  委員外出席者         外務事務官         (アメリカ局北         米課長)    西堀 正弘君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      高尾 文知君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      松下久米男君     ————————————— 三月八日  委員有馬輝武君及び川俣清音君辞任につき、そ  の補欠として栗林三郎君及び永井勝次郎君が議  長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  森林法の一部を改正する法律案内閣提出第八  九号)  競馬法の一部を改正する法律案内閣提出第一  〇四号)  農林水産業の振興に関する件(木更津等におけ  るのりの被害問題、日ソ漁業交渉問題)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  森林法の一部を改正する法律案議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 私は、今議題となっております森林法改正にあたって、日本山林行政あり方森林行政あり方を総括的に質問をいたしまして、次に林政全般にわたる各論を進めて、最後に法案を逐条的に質疑をして参りたいと思います。なぜ私がこの問題と真剣に取り組むかと申しますと、日本林業はまだ固定した政策が十分出ていないと思われるわけであります。従って林業あるいは山林歴史的観察を試みて、将来どう発展するであろうかという見通しをつけながら政策を打ち出していかなければならないと思うわけであります。そういう意味で、私ども国民に与えられた天然資源であるわが国十を、国民すべての生活を豊かにするために最高度に活用しなければならないという立場に立って、国の政治の最高の責任であるという点からこの問題を進めて参りたいと思うのでございます。  まず第一に、長官にお尋ねいたしたいのでございますが、長官は実際の経験も積んでおられますし、誠実に林政と取り組んでこられたのでございますから、私はここで質問をして窮地に陥れるなんという考え方は毛頭ございません。そういう心配なしに御答弁願いたいのでありますが、ただ漫然と林政をやっておられて後世に悔いを残す結果になっては相ならぬ。特に政治家意見をあまり聞かれる必要はないのじゃないかと私は思うのです。あるいは国会意見をそう重要に考えなくてもいいのじゃないかとすら思うのです。ただしそれは、政治家国会は目の前の現象に非常に敏感でありますから、目の前の現象についてしつこく対策要求いたすでありましょう。しかしながら、山林というものはただ目の前のことだけをやっておりますと、最後には行き先を見失う結果に相なると思うのです。ですから、私どもはここで問題にいたしますけれども、あえて追随したような答弁でなしに、真剣に取り組んだ意味で御答弁願わなければならないと思うのです。これだけを前提といたしまして一つお尋ねをいたします。  日本山林歴史を見ますと、徳川時代以前から日本治山治水立場から山に対する政策ができております。これが日本古来のものであるか、中国から渡来したものであるか別にいたしまして、今日の恵まれた——恵まれたという言葉は必ずしも妥当かどうかわかりませんけれども、これだけの森林資源を保有するに至りましたのは、やはり徳川時代以来の林政があずかって力があると思うのです。また山村住まいをいたした者が、自分の山あるいは領主の山、住民全体の山としてこれを保護育成してきたという恩恵の結果である、私はそう思うのです。従って今顧みましても、主として国有林になっておりまするととろは東北に偏在いたしますが、これは秋田藩なりあるいは伊達藩なりあるいは庄内藩なりあるいは南部藩なりが、熊沢群山影響を受けて林政に志いたしました結果、今日の蓄積を持っておると思うのです。従って、これらはわれわれの先祖の大きな努力によるものでありまして、この努力に感謝する気持がなければ、今後の林政は進められないんじゃないかと思うのです。この点についての所見を伺いたい。
  4. 吉村清英

    吉村政府委員 ただいまのお説でございますが、確かに徳川幕府時代に、特に幕末に近くなりまして、わが国山林はかなり荒廃をする形になって参ったようでございます。先生の特にお親しい秋田地方あたりはかなりそういった面で乱伐も行なわれ、荒廃をしたのを、当時加藤景林翁が出まして、親子二代にわたってあの秋田杉美林を造るもとを作られたということを私どもも聞いております。あの非常な国としての資源がいかに血のにじむような労苦の中に育てられたかということを私どもいろいろなもので読み聞きいたしておるのであります。こういった林政上の非常な変遷が次々に行なわれまして、現在の森林が残されておるわけでございますが、そのときそのときの林政に非常に力を入れた時期を振り返ってみますと、どうも私ども考えてみまして、最近の事情というものもかなりそういった時期に当たるような情勢下にあるように感じておるのでございます。木材需要は非常に上がりました。にもかかわらず国土保全を重視はしなければならない、同時にその需要もいたさなければならないというような時期に私どもは立たされておると思っておるのであります。お説のように、私どもがこの際こういった時期に、古い歴史に多く出ておられる先覚者の業績をしのびまして、特にこの際力を入れなければならないというように考えておる次第でございます。
  5. 川俣清音

    川俣委員 そこで森業というものの本質に触れていかなければならないと思うのですが、林業と同じような地位を占めております産業として鉱業があると思うのです。この鉱業は御承知のように、最初鉱山心得から鉱業条例になり、鉱業法になり、今の新しい鉱業法になったのですけれども、こういう時代変遷に伴い、国民経済成長に伴いまして、国民生活発展に伴いまして、鉱業法が、鉱産物に対する考え方が具体的に法律となって変遷をしております。ところが林業だけは依然として旧態のままであると思うのです。さらに漁業についても同様でございまして、海域にあります漁族をどう保護しながらどう漁獲をするかということが水産政策の基本でありましょうし、鉱山につきましては、日本古来国土に埋蔵されておりまするものをどう採取するかということが問題であろうと思います。また林業は、日本国土先祖からいろいろ保護育成して参りましたこれらのものをどう今日の国民生活の上に寄与するように、また将来のわれわれの子孫の上にどのように残していくかということが重要な使命だと思います。  そこで、鉱山の方の例を申しますと、最初は、徳川時代は全部鉱物領主または国のものであるという考え方であった。明治初年になりましてからも鉱山心得によりますと、「鉱物ナルモノハスベテ政府所有トス 故二独リ政府ノミコレラ開採スルノ分義トス」こういうふうになっております。そういう意味で現在でも終戦後の鉱業法改正によりまして違って参りましたけれども終戦前までは「未ダ掘採セザル鉱物ハ国所有トス」ということで、国内にあります資源はすべて国の所有だという考え方を続けて参りましたが、終戦後は民主主義の発達とそれからアメリカ占領政策も加わりまして、鉱物の民主的な運営というところから変わって参りましたけれども、それでもやはり依然として国民資源としてどう活用するか、こういうことが主眼になっておったと思うのです。そういうふうに考えますと、日本林産物もまた国民資源としてこれを活用すべきものであると思うのです。ただこの際、国民資源として活用するという場合に問題が二つに分かれると思います。今経済発展に伴いまして木材需要が非常に増大して参った、それに対応する供給をしなければならないと同時に、従来の国民生活に深い関係のありました山林をどう資源として保護していくかという二面の政策をとっていかなければならないと思うのであります。  そこで、長官も御存じのように、森林というのはどんなものだ、学問的な問題もありますが、どんなものかといいますと、かつて私ここで申し上げたことがあると思いますが、森林の森(シン)は、植え立てをいたしまして、あがめ奉ってこれを切らざるを森(シン)という、木立茂りても切らざるを森(シン)という、こういうふうになっておる。これが森だということになっている。森というのは、木へんに土を書いてももりであるし、示へんに土を書いてももりと読ます。神社もあえてもりとまで読ましたというわけで、これはやはり国民生活シンボルとして何か尊敬していくものでなければならないという宗教上のこともありましょうし、しかしながら何といいましても、今日不安なく生活できることは森林に負うところ大きいということであろうと思います。今すぐ林産物だと申しますると、木材あるいは樹枝であるとか樹葉であるとか、あるいは果実であるとかキノコであるとかタケノコであるとかいうふうに局限いたしまするけれども、今日の世界の情勢から見まして、木材というもの−森林というものを面接に利用するだけを森林効用と言うわけにはいかないじゃないか。一面何といいましてもわれわれの住まいをいたしておりまする環境を整備する大きな役割を果たしておると思うのです。たとえば温暖につきましても、森林のあるところによって温暖の緩和をはかり、あるいは乾湿、かわいた、しめるという調和の役目もいたしましょうし、今日のように工業発展して参りますると、空気が非常に汚れて参りますが、その浄化作用としての役割も非常に大きいと思うのです。こう考えて参りますると、単に林野庁が今力を入れておりまする木材供給だけを頭に入れておったならば、先祖子孫のために残しましたこれらの森林を枯渇せしめるような結果になって、先祖に対して申しわけないし、国土愛というものが生れまてこないのじゃないかという不安も出てくるわけであります。われわれが生活するのにどこかによりどころがなければならないと思います。郷里へ帰りまして山村を見て一つの喜びを感ずる、愛着を感ずる、こうした日本国土愛というものがほんとう国民の中になければならないと思うので、そういう意味でも、単に木材供給源だとだけ考えるというのは誤りじゃないかと思うのですが、この点いかがですか。この答弁によりまして、いろいろまた入って参りたいと思います。
  6. 吉村清英

    吉村政府委員 お説の通りでございます。私どもも、デンマークのダルガス氏があのような荒廃した国土から豊穣の土地を作ったというあの陰には、今先生の御指摘のような森林間接的効用というものが非常に大きな力になっておるということを聞かされておりますし、また私ども身近に信じているわけであります。私ども使命といたしましては、そういった問題の経済的な問題の調和をいかに技術的によくとるかということを慎重に考えながら、政策を進めて参らなければならないと思います。
  7. 川俣清音

    川俣委員 それでお尋ねいたしたいのでありますが、いろいろな生産物の中でどれだけの範囲のものが林業部門の中に属するとお考えになっておりますか、お尋ねいたしたいと思うのです。これはなかなか一々にはきめられないと思いますけれども長官の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  8. 吉村清英

    吉村政府委員 ちょっとどういうあれかと思いますが、林産物といたしましては、木材、薪炭、副産物といたしまして、林内の灌木、草。土石も副産物の中に入れて処理しております。そういうことに私ども考え方の中には考えております。
  9. 川俣清音

    川俣委員 つまり社会的にどれだけの生産段階の幅が林業として理解されるかということは、国の歴史的な発展事情にもよりましょうし、国民経済成長の度合いによってきまることだと思うのです。従って長期見通し計画を立てる必要があると思う。林業政策に入るべき生産段階の幅はどこまでにすべきか、どれだけ小さくすべきかということは、そのときの国民経済状態または歴史的な過程から判断して参らなければならないと思うのです。  そこで、長期的な見通しを立てなければならないということになりますると、やはりことに基本的な林業政策というものが生まれてこなければならないのじゃないかと思うのです。それなしには一体政策というものが立っていかないのじゃないか。農業政策でも五年、十年先の見通しを立てなければ、混乱を来たすわけでございますが、林業政策というようなものになりますと、長期的な成果期待するものでありまするから、やはり目の前のことではなしに、相当長期にわたる根本施策というものが立てられていかなければならぬ、そう思うのです。そうなれば、林業基本法的なものがここに打ち出されてこなければならないのじゃないか。従来の惰性の林野行政では行き詰まるのではないかと思うのです。一方においては、経済需要によりまして、あるいは化学工業発展によりまして乱伐をしなければならないような要請が強く起こってきております。あるいは価格が暴騰いたすことによって増伐をしなければならないという問題が起こって参ります。一方では逆に、いかにして日本水資源を確保するかという要請が起こってきております。今日工業用水にいたしましても上水道にいたしましても、将来十年後を考えますると、危機にくるという不安を生じております。そうなりますると、やはり根本的な対策を講じておかなければ、その日その日に引きずられておったのでは、林政をになう者としては不十分だという非難を受けると思うのです。私はそういう意味において長官の御意見を伺いたい。
  10. 吉村清英

    吉村政府委員 その点につきましては、私ども森林法なるものはそういった面での一つの基本的な法律だと思っております。第一条にその目的があげられております。そういう目的に沿ってこの森林政策を進めて参らなければならないと同時に、今回の計画制度改正によりまして、長期見通しを立てて、その線に沿って短期の政策を進めていくという考えでおります。この需要の非常な旺盛に対します増産対策その他につきましても、どこまでも将来に対する保続その他国土保全という問題を十分に検討をいたしまして、将来に悪い影響の及ばぬような方策を講じつつ、増産等の実施もいたしておるのでございます。
  11. 川俣清音

    川俣委員 天然林伐採していくだけでありまするならば、資源が枯渇をするわけです。そこで、造林をするということになりましょう。そうなりますると、林業経済学と申しますか、林業経営についての一つの方向がなければならないと思うわけであります。ところが、今のところ、林業経営成果を判定するに足るような標準があまりできておらないのじゃないかと思うのです。皆さん林学専門ですが、林学概念規定や体系は、近代科学に基礎を置いておらないというそしりもあるようでございます。従って、絶えず動揺いたしまして、この林業経営については、しろうとから見れば、諸説ふんぷんたるものがあると思うのであります。専門家が見ればなおそうだと思うわけです。いろいろ林業経営につきましては、土地純益主義をとる、これは地代の大きさをもって経営成果と見る、こういう見方もあります。あるいは森林純益主義をとりまして、地代及び林業における企業利潤の合計を経営成果と見るというふうに、大きく二説分かれておりますが、今ここでその論争をするという考えはございません。従いまして、林業経営につきましては、標準的なものが見出されてこなければならないと思うわけです。そうしなければ、現状経済情勢に押し流されまして、造林が不可能になるという結果も出てくるのじゃないか、そう思うのですが、この点についてどうお考えですか。
  12. 吉村清英

    吉村政府委員 むずかしい問題でございまして、先生の御指摘のようにいろいろな意見がございまして、なかなかこれという点もきめかねるかと思うのでございますが、まあ林業経営して参りますその森林所有者それぞれにも、一律にきめかねる、それぞれの目的というものが違ったものがあるかと思うのでございます。たとえば造林植栽の本数にいたしましても、あるいは生産をいたします期待経級等にいたしましても、一律にはなかなかいかぬかと考えておるのでございます。そういったような、それぞれの森林所有者経営する目的というものも、なかなか一律にきまらないものでございますから、私どもも、それに従って十分弾力性のある指導をして参らなければならないかと考えておるのでございます。
  13. 川俣清音

    川俣委員 この造林にいたしましても、現状民有林を見まするというと、これを経営利潤を生ませるための造林であるのか、または、今の労力を蓄積するあるいは資本蓄積するという造林考え方もあると思うのです。その考え方いかんによって、増伐を命令いたしましても、受け入れられないという事態が起こってくると思うのです。これは必ずしも、私どもも、ただ天然過熟を待つような森林は好ましくないとは思いますよ。私は確かにそう思います。現在の国民生活に寄与できないように、過熟の林木を持っておるということは好ましくないと思います。しかしそういう山を持っておる人であればこそ、造林に対する意欲もあるんじゃないか。眼前の利益だけを採算ベース考え造林をするということになりますると、これはどの程度造林をするのが目的なのか、あるいは造林を途中でやめて別な方に土地を利用するということに切りかえられないとも限らないと思うのです。経済ベース考えますると、そういう結果が出てくると思うのです。そうすると、造林についていろいろな計画をしたり補助助成をいたしましても、土地を別に利用するということによって収入を上げる場合には、途中で伐採をするという事態が起こってきます。それでは林業に対する方針が立たないんじゃないですか。そこで、やはり将来の林業経営というものをどの程度に安定させるのかという方針がここになければならないと思うのです。しかしなかなか旧来の——これは不景気時代に、国有林もやってきたことでございまするし、民有林もやってきたことでございましょうが、非常に労働が過剰であった場合、失業救済的に、それらの労働力を将来に備えて蓄積する。労働力蓄積なんですね。過剰労働があった場合には、それを植えつけさして蓄積をしておく。林木にかえて蓄積しておく。資本蓄積しておくというやり方もあったわけです。あるいは不時に備えまして、これほど社会制度発展いたしておりません時代で、自給自足で、自分で被害を防止し、自分生活を守らなければならなかった時代におきましては、自分自給自足の建前から、危険負担にたえ得るような造林をしておったでございましょう。今日でもなお、山村に参りますると、政治恩恵が薄いところにおきましては、やはり自己防衛としての山を持つ。これは採算ベースじゃなくして、危険、危害、不時災害等を防止するために、あるいはそういう災害の復興に役立たせるために、採算ベース考えない造林もあるだろうと思う。それを一様に、木材の需給が窮屈になったから伐採せいと言いましても、これはできないことじゃないですか。やれるといたしますれば私はけっこうだと思います。植えたものを強制伐採できるとすれば非常にけっこうなことだと思う。これができるならば、土地所有形態についても、もう突っ込んで何らかの処置をすることができる時代だとも言えると思うのです。そういう意味では、今日の造林を進めて参りますときに、ただ単に補助あるいは指導奨励だけでは、日本の山を森林化するということができないのではないか、こう思うのですが、この点について伺いたい。
  14. 吉村清英

    吉村政府委員 仰せのように、森林を持つに至りました森林所有者のそれぞれの目的というものはいろいろございます。特に自分造林をした立木に対する愛情というものは御指摘のように非常に深いものがありまして、なかなか簡単に切ろうという気持にならないということも確かにあると存じます。しかしながらそういった情勢は確かに認められるのでございます。一方国民経済上から見まして木材需要、また国全体の産業の向上という意味合いからも、この木材生産の持続的な増大ということはぜひとも必要なことであります。そのためには仰せのように指導であるとか補助であるとかいうだけでは十分でないということも私ども考えなければならないかと考えるのでございます。そこで私どもといたしましては、個々森林所有者それぞれがほんとう時代に目ざめると申しますか、置かれておる日本の全体の経済情勢社会情勢十分目を開いてもらいまして、それによってみずから進んで計画的な経営をしてもらうように、普及事業その他の強力な推進によってこれを進めて参らなければならないと思うのでございます。ですからどこまでも私どもは、個々森林所有者森林の持つ使命、同時に国家社会要請というものを十分に認識してもらう、そういう面に努力をするということがまず大切ではないかと思うのでございます。それに従いまして造林その他の諸施策も大いに強化して進めて参らなければならない、かように考えております。
  15. 川俣清音

    川俣委員 長官の今の説明は非常にもっともらしいんです。そう説明をされても決して不当だとは言えません。時代要求に目ざめた造林計画をすべきである、時代要求に応じて国民的にお互いが協力して伐採もしなけれはならぬ、それはその通りだと思うんです。それは現状経済情勢というものはみんな、はだで、頭で感知することができるでし、占う。しかし三十年後、四十年後の情勢というものを個々に判断をせいということは無理なことなんです。今の時代はわかります。しかし木材造林成果が上がるのは四十年後あるいは四十五年後なんです。あるいは三十年以後なんです。経済情勢がどうなるかということは、国民個々には見通しができないはずなんです。個々に判断せいというなら、投機的になります。山師になります。一走の計画を持てと言いましても、三十年後、四十年後の個々計画というものは全体の計画から押し流されてしまいまして、期待したものの効果が上がらない。個々期待が現れてこない。そういたしまするならば、やはり国が四十年後、四十五年後、五十年後の見通しはこうなるであろうということがまず示されなければならない。そうして現状を認識せよ、十分現状を見てほしいということはよくわかりますよ。お説の通りだと思います。おのおの社会生活をしておるのでございまするから、社会状態を無視したやり方は許されないと思いまする。お説の通りですよ。三十年後、四十年後を見通さなければならない事業なんです。そうするとやはり国が責任を持った、今助成するとか補助するというのではなくて、四十年後、五十年後にはこうなるであろうということを示さなければならない。その長期間にわたってこういう施策をするのだという裏づけがなければならぬだろう、こう思います。そう思いませんか。
  16. 吉村清英

    吉村政府委員 確かにその必要がございます。造林をして林業経営していく経営者の個々が将来の見通しを持たずに造林をしていくということは、いかに要請が強いとしても非常に不安なことでございますから、従いまして、私どもといたしましては少なくとも林木の一代程度——四十年程度長期木材需要供給見通しについては森林計画によって農林大臣が立てることにいたしておるわけでございます。
  17. 川俣清音

    川俣委員 長期計画を立てる、確かに今度の法律改正の中には長期計画を立てるというふうになっております。法案についてはあとで触れますが、まず基本的に、日本の将来の国土保全あるいは水資源の涵養等からいたしまして、どういうところにはどの程度造林が必要であろう、どういうところにはこれは国民一つ資源として持っておるのだ——これは簡単に言うと、保安林として持っておる、こういうことでしょう。水資源でもあるとともに国民一つのレクリエーションの場としても、あるいは国民生活一つの慰安的な風貌と申しますか、国土の美化の上からも持っていなければならぬ点はあるだろうと思います。私どもよく飛行機で飛びまして山に木のないところを見ると非常に情けなく思う。これがわが国土かと思うと、これは人の土地でありましても大へん情けなく思う。そういうようなことになると思いまするから、どういう点については造林をするのだ、どういうところはある程度過熟をいたしましても保護していくのだという考え方が出てくるだろうと思う。そういたしますと、長期計画の中におきましては限度的に切れないものも出てくるだろうと思います。いかに需要が旺盛でありましても需要にたえ得るように増伐ができないという結果も出てくるだろうと思います。そうすると外材を輸入しなければならないという問題も出て参ります。国内の資源を確保する上から一億万石以上を今切るということは将来に大きな禍根を残すのじゃないか、輸入によって今カバーをいたしまして国内資源を確保する必要があるのじゃないか、確保したからといいましてもこれは何にも損失にならないのです。国全体からいって。今切ることもまた必要でありましょうが、切らずに残しておくことも決してこれは損失にならない、私はそう理解する。従って、どうも林野庁ということになりますると業界の圧力が強くて、今度は政府の施策によって増伐をいたしましたけれども、そうじゃない、いわゆる業界の需要の圧力にたえかねて必要以上伐採した、どんな計画案を立てましても計画案以上に伐採したこともあるのじゃないですか、部分的には。これは例をあげてもいい、あるのですよ。それは何かというと、その時点においてはその地域社会の強い要望であって無理はないと思いまするけれども、総合的に見ると必ずしも国の資産の運営からいって妥当であったかどうかということになると思います。年々生産されるものでありますればこういう問題は起こって参りません。けれども長期に育成しなければならないものでありまするし、また伐期四十年と申しましても、地形的にあるいは地質的にいって、もう少し置く方がより良質のものを生産するということになりまするから、四十年伐期で切るべきだとか、四十五年で切るべきだ、あるいは小径木は二、十年で切るべきだという簡単なものではないと私は思うのです。それは需要に従った伐採計画であって、国の資源というものをどう活用するかという伐採の仕方ではないと思うのです。本質的な森林の活用ではないと思うのです。国民生活の上から利用度が高い、需要度が高いから切るということは一つの方法でしょうが、必ずしもあなた方が学んで参りました林業のオーソドックスな考え方ではないと私は思うのです。私は勉強して参りませんけれども、あなた方そう教わってきたと私は理解しておる。その切り方じゃないんじゃないですか。あなた方は金をかけて勉強してこられたんだからおわかりだと思いますから、一つ説明願いたい。
  18. 吉村清英

    吉村政府委員 伐期の問題でございますが、私どもがこの森林計画におきまして伐期齢をきめて参りますのは、標準伐期齢でございます。標準伐期齢は、総平均成長量最大の時期を見て標準的にこの辺が一番経済的に適当であるというような時点をきめるわけでございますが、そのほかに個々森林につきましては、お説のようないろいろな問題があるかと思うのでございます。そういう点につきましては、私どもといたしましては、個別経営計画を立てる際にそれぞれの方途を講じまして、あるいは普及員がカルテを持って、それによって個々の山の状態を見きわめながら指導をしていく、あるいは個別経営計画の立案を指導いたしまして、その伐採あるいは造林については十分その地方に、またその土地に、また需要にマッチしたような経営の方式を考え指導をして参るというように考えておるのでございます。その経営を立てます上には、やはりその地域森林計画を順守するという範囲内で指導をして参りたい、かように考えております。
  19. 川俣清音

    川俣委員 長官、私の質問を誤解されておるのです。それは確かに地域経済の上からいいまして、その伐採についての適期というものは、その地域社会からいけばあると思います。私はそうじゃなくて、本質的に木材というものとまた森林というものの価値を、ただ需要にだけマッチして適齢期をきめるということは適当じゃないんじゃないかということなんです。それによって全体的、国民的な損失が起これば別ですけれども、今日的に有利でありましても、その地域社会だけで、小さい地域社会だけでは有効でありましても、国民全体から見た場合に必ずしも必要だということにはならないんじゃないか、こういうことなんです。しかしそれはよろしゅうございます。そういう意味でお尋ねをしたのでございます。  そこで一つ、基本問題調査会で打ち出されました家族経営林業というものがございます。これにつきましても、家族経営林業というのは、おそらく家族の労力をもって、農業に付属した土地、または隣接または近いところの土地の利用方法として農民が利用する、こういう意味で家族経営林業というものが考えられると思います。これは確かにあると思います。しかし、一方木材需要の市場性から見まして、価格の変動から見まして、もっと企業経営をやらなければならないのだ。企業経営をやるとすれば、小規模経営ではだめだ、できるだけ技術を導入いたしまして、効率を上げるということになると、大規模経営が企業形態として望ましいのだ、こういうこともいわれます。長官、どっちをおとりになるつもりですか。私は別にどっちをとれと、今この返事を聞きたいのじゃないですよ。そういうことが基本問題と基本対策で問題になっておるのであるからして、そいつをただ逃げていくのではだめじゃないか。これは、どっちをとるという基本的な研究なり施策を、私は今打ち出せというのじゃない、今返事を聞きたいというのじゃない。これはなかなか答弁はむずかしいと思います。また軽率に長官として、現実に林政の統括責任者としての長官がこれを答弁するということは、なかなかむずかしいと思います。また、誤解を生じてはいけないから私は答弁を求めないのですが、これは基本法を打ち出しておかないというと、長官答弁できないということになるのじゃないか、そういうことなんですが、あとの点だけでけっこうです。
  20. 吉村清英

    吉村政府委員 十分に検討が進んでおりませんので、この森林経営所有規模と申しますか、その問題についてはせっかく検討を進めておるところでございます。ただ、現状におきましては、御指摘のような点もございますので、さしあたり森林組合を中心にいたしました共同的な事業ということには、これは改善のために進むことにいたしております。
  21. 川俣清音

    川俣委員 協業といいますか、共同経営といいますか、そういうことで今後の林業を進めていくということは、これは無難ですから、この答弁はちっとも差しつかえないと思うのですが、さてそれじゃ、先ほど申しましたような家族経営林業ということを調査会では打ち出したわけですね。こいつはすぐいただけないということで、なかなか基本法が生まれてこないのだと、そう私は理解する。決してなまけておって基本法を作らないのではなくて、こういう問題の解決ができないために延びておる、そうは理解しますよ。それだからといって、森林法の一部改正で逃げようと思いましても、これは逃げ切れないと思うのです。あなた方は巧みに逃げようと思いましても、あるいはこの国会だけは逃げ切るかもしれませんけれども、世間に対しては逃げ切れない問題なんです。あるいは内輪ではまだ勉強、検討ができていないので、むずかしいからということで、説明がつきましょう。国会でもこで説明はつきましょう。しかし、国民に対しましては、まだその点はどっちなんだかわからないということでは済まされないことではないかと思うのです。そこでやはりすみやかに基本法をお作りにならなければ逃げ切れないということを感ずるのですが、この点の御答弁はできると思います。
  22. 吉村清英

    吉村政府委員 私は、この森林法の一部改正で逃げたということではなしに、とにかくあの調査会の答申に基づきまして、結論の出たものから、ほっておかずに進めて参るという考え方でやったわけでございますが、しかし仰せのような批判は確かにあるかと考えております。さらに大いに勉強をしなければならないわけでございますが、この基本法というものの解釈という問題もあるかと思うのでございますけれども、現在の森林法におきましては、やはり資源政策的な面が大きく取り上げられておりまして、その中で林業経営の改善あるいは所得の向上というような問題は、森林計画を適確にと申しますか、合理的に実施をする過程においてはかって参れるという考え方もあるのでございます。しかしながら、私どもといたしましては、逐次検討を速めて参ります段階において、やはり林業振興に関する点の制度的な打ち出しと申しますか、私どもの態度をはっきりしなければならなかったということも痛感して参っておるところでございます。従いまして、そういう方向に向かいまして検討を進めておるのでございます。いずれにいたしましても、問題がきわめて広範にわたっておりまして、非常にむずかしい問題もあることは御承知の通りでございます。そういう問題を早急に結論を得る努力をいたしまして、この態度をはっきりいたしたいと考えております。
  23. 川俣清音

    川俣委員 軽率に結論を出すべきではなくて、相当研究を要するという態度については理解するのであります。しかし、それだからといって、じんぜん日を延ばすわけにはいかないと思うのです。もう調査会の結論が出ましてから相当の月日を経ておるわけです。これに対して、その通りであるかその通りでないかは別にいたしまして、やはり何らかの施策を打ち出して世の批判を請いながら、また末端の方面まで批判を請いながら、最後の仕上げをするという順序をとるべきだと思います。何といいましても森林経営者には大小幾つもありますし、土地条件も違いますし、環境も違います中において進めるのでございますから、大綱を作るのすらなかなか容易でないと思いますが、作ってすぐこれを実行するのではなくて、広く世間の批判を受けて修正をし、考えを新たにして基本的なものを作るべきだと思いますけれども、何といっても出発しなければ批判は出て参りません。何を考えておるかわからぬようではいい批判も出てこないと思います。そういう意味で私どもはまことに疎漏であったかもしれません。批判を受けるかもわかりませんけれども山林政策大綱というのを打ち出した。私どもがわざわざ山林と申したのには意味がある。林業というと従来の林業というものにとらわれやすい、現下の林業にとらわれやすい、森林というとまたとらわれやすいものもありますから、本来の姿に返って山林政策ということを言葉だけでも打ち出したわけでございます。そういう意味でこれらをこの通りとは決して申しません。しかしながら、少なくとも野党のわれわれが資料不足の中においてこういう問題を出したのでありますから、これに対して大きな批判を加えて、ここはだめじゃないか、ここはこういうふうに進むべきじゃないかという道筋くらいは出すのが林野庁としての態度じゃないか。私は何も賛成してくれと言っているのじゃないのですよ。これは現実に合わないとか、将来性がないとか、実施できないとかいう批判を下さることが一歩前進になると思うのです。無条件でこれを受けてくれなんということを言ってはおりません。これについてはどうです。
  24. 吉村清英

    吉村政府委員 大綱も見せていただきまして勉強させていただいたのでございます。私どももそれには同感の面もありますし、なかなか現状では無理だということもございますし、また私どもも十分に検討してみなければそれに対する批評というようなこともできないものもあるわけでございます。さらに次の段階で林業ないし森林施策を進めるにあたりましては、十分私どもの案を確立いたしまして、広く御批判を仰ぎながら、また御指導を得ながら進みたいと考えておる次第でございます。
  25. 川俣清音

    川俣委員 もう一度ちょっと戻りたいのですが、先ほど申し上げたように、基本問題調査会の部会では、農業と同じく土地生産については土地経営が行なわれるのであるから、西欧型の家族労作経営が妥当である、こういう一つ方針を打ち…しておると思うのです。これを家族経営林業、ヨーロッパではむしろ農家林業と申しますが、しかし何と申しましてもあなた方が方針を出しませんから一般に非常な勢いで進んでおるのです。それはどういうのかと申しますと、やはり事業的大経営というものが着々と進行しておると思います。そうじゃないですか。最近の。パルプ資源の枯渇からいたしまして、かなり集約的な経営をしようとい面が出て参りましたし、また一面、木材の高騰から造林意欲が相当出て参りまして、集約経営をするために地上権を買い集めたりあるいは所有権を集めまして、そして本式な企業に入ろうという動きがあるわけです。これは見のがせない。一方では家族経営林業は幾らかでも進んでおるかというと、全然進んでいない。時代要求じゃないかといってそのままに放任するのかどうかという問題が出てくるのです。あとから基本方針を立てて、いや家族経営農業に戻すんだ、こういうことはなかなかむずかしくなってくるのじゃないかということも考えます。従って、この際、長官は私らの大綱を読んでおられましょう。しかし長官が読み、部長が読んだからじゃなく、やはり林野庁の組織として検討してもらわなければならない。長官の個人の意見とかあるいは部長の意見とかいうようなものではなくて、やはり組織としてこれを検討してもらいたい、こういうことですから、それは十分検討してほしいということよりもあなた方が案を立ててほしいということです。案を立てる前のブルドーザーの役目をはたしたということですから、どうかそういう意味で御検討願いたいと思うのです。  次に移ります。もう時間もないようですから、宮崎さんが来ておるので一つお尋ねをしたいと思います。なぜ林業経営国有林経営をしなければならないか。従来からの答弁によりますと、民有林経営であろうと国有林経営であろうと、適当に需要供給に応じた伐採が進めば同じだというような答弁じゃないけれども、そう伺われるようなことであったと思うのです。  そこで宮崎さんにちょっとお伺いしたいのです。なぜ国有林業というものは国有林経営でなければならないとお考えになって予算上の処置をしておられますか、一つお尋ねしたいと思います。
  26. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 大へんむずかしい問題で、お答えになるかどうかわかりませんが、先ほど先生の御質問で出ておりますように、森林の非常に大きな機能として国土保全というようなもの、あるいはその他広く国民経済的な観点から出た要請があると思うのです。そういう観点でわが国山林を見て参りますと、重要な水源山林であるとか、あるいは私経済では開発が困難なような条件の悪い山とか、あるいは大規模な開発をするのが資金的に困難であろうというようなことがいろいろあるかと思います。もともと国有林の成り立ちは沿革的なものであるというふうに伺っておりますけれども、結局そういった経済的、社会的な立地というものがあるために、国有林として国が経営していくということの意義が認められておるというふうに私どもは理解しております。
  27. 川俣清音

    川俣委員 宮崎主計官、なかなか理解があるじゃないですか。ほんとうにそう考えて予算の査定でもしておられるなら非常にけっこうだと思うけれども、必ずしも今お説のような基本方針でやっておられるとは私は理解しにくいのです。  そこで一つお尋ねしますが、林野の特別会計は企業会計であるか、管理会計であるか、議論のあるところであると思います。これだけ大きな事業をやっておるから、事業会計と同時に企業会計だと認められるところが妥当だとも思われます。しかし今宮崎さんが言うようなことになりますると、国土の管理会計だとも言えないわけではない。一画大きな国土保全の管理会計だと見るべき点も出て参ると思うのです。そうすると単なる一年の収支計算で、バランスがとれているから運営がうまくいっているんだ、赤字が出るから運営がまずいんだというような、いわゆる純企業会計的な批判は出てこないと私は思うのですが、この点は宮崎さんはどうですか。
  28. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 国有林野事業特別会計は御承知のように一応企業会計としての発生主義の形式をとっております。その内容といたします事業は、本来の企業計算をいたすような森林経営という部面のほかに、治山でございますとか、あるいは民有林に協力するための各種の施策というようなものも含めまして実施いたしておるわけであります。三十五年度からは御承知のように民有林の治山のための治山勘定もその中に設けられておりまして、そういった意味国土保全とかあるいはそういう民有林に対する森林政策の推進というような機能もあわせ持っておるこの特別会計が運営されておる、こういうふうに考えております。従いましてこれはまあ国の企業でございますから、ほかの場合でもある程度同様でございまするけれども、単に利益を追求するというようものでこの特別会計が運営されているのではない。それは当然その前に公共の利益といいますか、国民全体に対する利益というものがあってこれが国の企業として営まれておる、こういうふうに私どもは理解しております。
  29. 川俣清音

    川俣委員 そこで宮崎さん、こういうことだと思うんですね。鉄道の特別会計とかあるいは専売の特別会計などと違って、これは赤字を出さないと思えば、幾らでも赤字を出さないで済むんです。もし長官が腕を上げたと称せられて、赤字を生じないというのだったら、必要以上の伐採をすれば、必要以上の財産を売り払えば、これは黒字になりますよ。持っている財産を全部売ってしまえば一番成績が上がったということになるんじゃないですか。こういうことになりやせんですか。そういうことをさせないということが特別会計の本来の任務だと私は思っている。道楽むすこがうちの財産をみんな売ってしまって金にかえたら黒字になったということをほめるといたしますれば、とんだことだと私は思います。そこで歳計剰余金というのがつけられまして、いわゆる純益計算でない歳計剰余金を生んでおるわけですが一この歳計剰余金を宮崎さんはみんな純益だというふうにはお考えになっておらないでしょうね。この点どうですか。
  30. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 御指摘通りでございまして、この特別会計が大きな剰余金を出すということは好ましいことではないと私も考えております。もちろん剰余金というものと企業会計上の損益というものは別途の概念でございまして、利益が非常に大きい場合には現金の方も余ってくる場合も多いかと思いまするけれども、当然それは同じ金額になるというものではございません。たとえば最近の事例で見て参りましても、三十五年度の決算では歳計剰余金は四十五億出ておりまして、利益は百十億になっております。剰余金はあまり大きな金が出るということは、こういった予算の運営上としては必ずしも好ましいことではないのではないかと考えております。これは木材の価格が非常に変動がございますので、そういった事態を生じている事例もあるようでございますけれども、そういうふうに考えております。
  31. 川俣清音

    川俣委員 主計官、なかなか理解があるんですね。そこでその理解の上に立って一つお尋ねいたします。  木材価格の変動がありまして、非常に安いときには赤字と申しますか、これは赤字とは言えないでしょうけれども、バランスがとれないということで苦慮するわけですが、しかしこういう林業経営の上からは、かなり生産物に高低のあるものですから、安いときに損をし、高いときにもうかったのを、長年月でバランスをとるという考え方をしなければならぬのじゃないか。そうしなければ、完全な林業経営というものはできない、また造林計画もできないのではないかと思います。  そこで剰余金がだんだん出てきたときの一つの方法として、かなり国有林を売り払った過去の実績もありまするから、保安林等の買い上げを初めといたしまして、主計官も公共事業をやっておられて御承知でしょうが、今後工業用水であるとか都市用水であるとかいうものの枯渇がだんだん出て参る。これは地下水でありますから、地下水というものは大体学説的には一つの底の流れでございましょう。従って高いところから低いところにいく。山が繁茂しておりますれば、そこに保持された地下水が低いところへいくことは当然であります。その補給ができないと、地盤沈下が起こる、こういうことになると思います。そこで都市の付近に、必ずしも従来の保安林的なものでなくとも、都市美の上からも、都市の国民健康の上からも——国民健康といいますると、これは割合等閑視するんです。私どもがときどき山へ行きまして、確かに空気が甘いとかうまいとか一都市生活をしているとそういう感じを受ける。そういう点でも、都市の付近の山を深緑で守るということが、国民健康の上に、また国民生活の福祉の土に私は必要だと思うのです。そういうためにこれを民有林にしておくというと、企業経営の中に入れられてそういう福祉増進に役立たないということになるおそれもありまするので、国有林として当然これらを買い上げておくことも必要なんじゃないか。今のところは保安林だけですが、国民健康の上から必要な保安林という——保安林というのはちょっと違いまするけれども、自然林を持っておるという必要性が出てくるんじゃないか。こういう歳計剰余金が非常に出たときには、現金を国有林野の資産として持っておるというととは、決してこれはバランスがとれないということではないと思うのです。現金が資産になったら、資産をくずして現金にするかということだけですから。そういうふうにお考えになりませんか。
  32. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 非常に宏遠なお話でございまして、実はそういう問題について私十分検討したことがございませんので、さっそくの意見も申し上げられないわけでございますが、大都市の近郊における無制限な都市の発達については、都市計画上いろいろな問題があることは、先生御承知の通りであります。たとえば東京都の場合の首都圏整備の構想などにつきましても、大体現在の市街地の外周五十キロ圏くらいのところまでをグリーン・ベルトにしようというようなことが、首都圏整備計画としてもきまっておる次第でございまして、そういう構想に基づきまして、このグリーン・ベルトの地帯に国が土地を買ってはどうか、こういうようなことが首都圏整備委員会などからも提案されているようなわけでございます。これはまあロンドンの例をまねたわけでございますが、ただ、そういったものを国有林野事業特別会計で資金を持ってやるかどうかということについては、かなりこの事業の本来の目的なりあるいは今後の活動分野という点から見て問題があるかと思います。私、まだこの問題について十分検討いたしたことがございませんので、御意見については慎重に検討していきたい、こういうように考えております。
  33. 川俣清音

    川俣委員 わざわざ宮崎さんにおいでを願ったのは、単なる林野庁の見解だというと、非常に狭くなる。あなたは広範な公共事業をやっておられるでしょう。水が不足するためにどれだけの公共事業費を国家から出さなければならぬかということを、あなたは十分御承知の立場にあるわけです。それでわざわざおいで願ったのですから、研究が足りないのなんのじゃ済まされないわけです。今後の川の水の流量にいたしましても、だんだん枯渇するような傾向がございます。枯渇というのは、年の流水量は減らないにいたしましても、季別的には非常に減る。そこで、まあダムを作って調節しようということでしょうが、これは林野庁にも聞きたいのですが、利根川の上流である水上の上流へ参りますると、これは保安林の中にダムを作って——ダム・サイトに必ずしも保安林がない。その上流に保安林がある。ところが、そこはダム領域内の渓谷で、急傾斜です。そこに満水するために埋没して全部木が枯れてしまった。この間行ったときには、ちょうどダムが水がためていないときでした。そこで、満水時の状態がよく一望にはっきり望見できたわけです。ところが、その渓谷が全部土砂くずれでだんだんダムが堆積が多くなるようなことが見えてきておるのです。従いまして、ダムを作ること自体必ずしも私は悪いんじゃない。適時につかまえて、そうして保存をして、これを流すというのですから、これは悪いんじゃないですよ。しかしこういう計画をするときには、やはりダムの効率が上がるような計画をしなければならぬ。ただ作ったからそれで満足すべきではなくて、一定量のものを貯水をするというのですから、貯水能力が上がらなければならぬ。ところが、林野庁も、ダムを作るんだということになると、公共事業だということで、保安林の使命というものを考えないで、すぐそのダムの中に入れられることを、力がなくてできないで、あんなことになったのじゃないかと思うのです。そればかりでなくして今後、私、雨量の調査を今いたしておりますが、どうも年々日本の雨量は減るのではないか。だんだん日本は乾燥してくるのではないか。いやそんなことはない、黒潮があるからして、日本が乾燥するなんていうことは永久に考えられないという人もあります。しかしインカ帝国の歴史を見ましても、決して水のないところ、砂漠に帝国を作ったのじゃないのです。もちろん、地理的に乾燥するような状態にあったのに、それに対応しなかったということ、文化におくれないために、あるいは進めるためにも対応できなかったでありましょうけれども日本もまた、木材需要というものに押されてしまってあまり木を伐採いたしますると、だんだん蒸発力を増して参りまして、保水力を失うという結果になったのでは、将来水不足ということが深刻に起こってくるのじゃないか。日本は雨量があり過ぎて、しかも地勢がいいために、水には非常にしあわせをしておると言われてきております。このしあわせを失わないようにしなければならないと思うわけです。そういう意味で、ここに将来の水の需要量が出ておりますが、これは産業計画会議で出したものですが、昭和五十年の水の必要量を出しておりますけれども、とうていこういう計画ですらなかなか達成できないと思われるのに、この計画を上回るような上水道の必要量が出てくるのじゃないか。東京地域の上水道の需要計画は、都市用水ですが、三十五年の総人口を八百二万と見て、五十年の推定を八百八十七万と見ている。ところが、もうすでに一千万を突破している。従って、水の需要もこれに即してもっと増してこなければならぬであろうと思われます。少なくとも五十年には一千四百万人と推定されるから、給水人口が千二百六十万人になろう。一人当たりの配水量も増してくるであろう。こうなって参りますると、従来の多摩川、利根川、江戸川、相模川等の水を工業用水及び上水道だけになかなかキャッチできないのではないかという事態が起こってくるのじゃないか。五十年というともう二十年光です。まだ宮崎さんなんか健康な時代に、もう水飢饉が出てくるというおそれも出てくるのじゃないか。そういたしますると、東京でも大阪でも——東京は特にそうでありますが、やはり東京の武蔵野の外にありまする各林山、これらに対して、単に木材供給源としてじゃなく、水の供給源としての森林計画というものが立てられなければならぬじゃないか。もう水はなくなってしまってからじゃおそいのです。何としてもこれは処置できない。木材でありますればまだ外国から買ってきて間に合わせることもできましょう、あるいはパルプとして仕入れることもできましょうが、水だというと、これはどうにもならないのじゃないか。長官、どうですか。
  34. 吉村清英

    吉村政府委員 御説のようにあるいはそういうことになるのかもしれませんが、どうも私ども勉強が足りませんで、十分なお答えができないわけでございますが、聞くところによりますと、降水量は大体六千億トンとかいうことでございます。まあそういう雨量の中で利用されておりまするところを見ますと、まだ余裕があるように考えられます。一例をあげますと、利根川あたりでは、まだ一二、三%程度の利用だというようにも聞いております。こういう将来に対する心配につきましては、仰せのようなダムあるいは保安林は、そういった将来に対する需要の補完的な役割を持つものだと考えております。
  35. 川俣清音

    川俣委員 どうもその答弁じゃ足りないのですがね。牧野の場合、おかしいのですよ。これは法律を見ますと、牧野が保水力を失った場合には、これは改良を命ずるということになっております。ところが森林が一番保水力があるのだということを強調しておられるあなた方が、保水力を失った場合にはこれに改良を命ずるというようなことがないのですね。かつて山林局の中で作られた牧野については保水力を失った場合には指示、助言をして、保水力のあるように改良を命ずるということになっておる。見てごらんなさい。牧野法にあるのです。牧野ですら保水能力が欠除してはいけないという方針を立てておられるときに、森林というのは漫然と保水力を持っているのだからということで、それに安閑としてはおられないのではないか。単なる保安林だから保水能力があるのだということは、必ずしも技術的に科学的に妥当とは言えないと思うのです。そういう意味で、大都市の付近の上流地においては、特に保水を考えた、いわゆる水源林としての機能を十分果たさせる施策を講ずる必要があるのではないか、こう思うのですが、この点はどうでしょうか。
  36. 吉村清英

    吉村政府委員 先ほど簡単に保安林と申し上げましたが、水源保安林につきましては、やはり水源林の荒廃と申しますか、結局は保水能力が低下したということになるかと思うのでありますが、その場合、保水力というものは森林土地状態が非常にいい場合に完全に機能が果たせるというような考え方を持っておるわけであります。伐採をして、それによりまして土地状態が心配が出てくるということを考えまして、伐採後に植栽がなされない場合には植栽の命令を出して植栽をさせる、それをきかない場合には代執行もやるというような制度にいたしました。
  37. 川俣清音

    川俣委員 二十九年国有林野事業特別会計法が改正され、治山事業をこの会計で行なうこととなった。この改正によって、利益を一般会計に繰り入れるのは、予算をもって繰り入れをきめたときだけとし、との会計の利益で、民有保安林を買い入れて、治山事業を行ない、国土保安に努め、なお余裕があれば内部に積み立てて、国有林の充実に充てることとした、こうなっております。そのために森林資源の維持増強のために基金を設けることになっておったはずですが、これはどうしてできないでおるのでしょうか。
  38. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 二十九年の特別会計法改正によりますただいまの森林基金の問題でございますが、これを作ったときの考え方と申しますのは、ただいま先生お読みになったような森林資源の維持増強ということをやっていこうということであったと思います。その後の経緯を見て参りますと、結局基金の積み立てをいたす場合の具体的な構想といいますか、そういった点がどうも法律策定の際に十分に明確にされておらなかったということと、もう一つはこの間におきまして、国有林野事業特別会計の事業の経緯と申しますか、非常に変動がございまして、二十九年の風倒木の問題、あれが大体三、四年かかったわけでございますが、そういったようなことがございまして、非常に経緯が安定しなかったということがございます。それから三十五年ごろからは、民有林の協力のためにすぐに資金を出せというような要請が非常に強かったわけでございます。こういうような事態にかんがみまして、この二十九年の法律で基金を作ってやっていくかどうかということについて至急検討する必要があるということになりまして、三十五年に国有林経営調査会が設けられて、こういった問題を議論したわけでございますが、それが結論としましては、三十六年に法律改正をいたしまして、国有林の利益についてはその半分を損失補てんの積立金として、これは国有林の損失に充てるために積み立てる。残りの半分はこれは特別積立金という形にいたしまして、これを国有林民有林に対して協力するための資金として今後使っていこう、こういう制度に改めたわけでございます。そういうことで従来の森林基金というもののかわりと申しますか、これをより具体的な実行可能な制度に改めるということによってやってきたわけでございます。森林基金が実際に積み立てられなかった経緯は、今言ったような次第でございます。
  39. 川俣清音

    川俣委員 ここで問題が二つあるのです。一つは二十九年の改正のときに森林資源の維持増強のために新たに基金を設けるということを国会で政府が答弁をいたしております。そういう施策を打ち出すということを明らかにしておるわけです。それが風倒木の事態でおくれておるということは認めます。しかし、法案を出して審議をするときにはこういう声明をしていながら、そういう説明をしていながら、あとでまた変わってくるということになると、常に出す法律が三年後、四年後には変わるということを、声明かあるいは説明が変わるということを懸念するわけなんです。今も森林法を出しておりますけれども、今の説明とまたあとの説明と違うかもしれぬ。これは林野ではたびたびやっておることなんです。初めてのことではないのです。たとえば水源林につきましては一般会計で国の負担で水源林の造林民有林についても、民有林というよりも、これは公有林においてやっておったわけです。それを今度は法律民有林にまで拡大をしたわけです。当時の会計は一般会計でやっておった。ところが今度は間もなく公団造林をやる、分収造林をやる、こういうふうに変わったわけです。今の基金制度につきましても、国会の要望や政府の声明と相待ちまして作るということが、今宮崎さんの言われるように変わってきております。そこでもう一つの問題は、確かに風倒木等があって、これは林野にとりましては重大な事態でありましたから、おくれることはやむを得なかったと思います。しかし昨年から国有林におきまして八百万立方メートル、おととしは四百万立方メートルの増伐計画を立てておる。木材価格も上がっておりますし、自分の力ではなしに経済の力で、林野庁の力でなく経済の力で、それだけの収入を上げたのでありますから、やはり森林資源の維持増強のための基金というものを設けてもいいときになってきたのではないか、あるいはこの基金をもって民有林の保安林を買い上げるという制度もできておるわけでございまするから、これを拡大していく必要があるのではないか。これはあなた方の力で余裕ができたんじゃないですよ。国民経済成長の中で、国民経済に浴して出てきた収入なわけです。しかも増伐という国の要請に従って増伐した結果の収入増なんです。収益とは言わないにしても収入増なんです。これは収入であるかどうかは問題でありましょうけれども、これを今のうちに何かの形で基金にしておく必要があるのではないか、あるいは民有林をもっと買い上げる、また保安林地域を拡大していくとか、あるいは民有林の十分造林の行なわれないところを買い上げて造林をするとかいう方策をやるために必要な収入と見てよろしいじゃないかと思うが、便宜どうですか。
  40. 吉村清英

    吉村政府委員 その点につきましては、三十六年度に、先ほど御説明もございましたように、利益金の半分は特別積立金といたしまして、それから半分は利益積立金といたしまして積み立てることにいたしまして、国有林経営の将来のために備えることにいたしまして、森林基金制度は廃止をしたことになっておるのであります。
  41. 川俣清音

    川俣委員 この会計が始められた当初におきましては、固定資産が百四十四億、流動資産十億、合わせて百五十四億で出発したのでございますが、当時は木材及び木炭は公定価格によって統制されており、収入も少なかったものですから、こういう評価をしたのでございましょうが、さらに一般の経済界が二十六年の朝鮮事変を境にいたしまして好況になって参りましたので、二十九年に再評価いたしております。その結果、再評価前の総額は三百五十三億であったが、再評価後は六千二百二十億となり、約十七・六倍となった。なお、三十一年度には国有林野事業特別会計法施行令を改正して、勘定科目を改定したわけでございますが、そこで、今後の造林をする場合に、過去の資産をどの程度に見るかということが、もう一ぺん検討されなければならぬと思うのです。今までにある天然林の評価あるいは土地の評価をもう一度いたしまして、これから造林したものの利益はどのくらいになるか、あるいは損失はどのくらいになるか、これをごっちゃにしておったのでは、造林経済効果がどれだけ現われたかということがなかなかわからない。勘定科目がかなり明確になって参りましたから、出てこないわけではないのです。ですけれども、基本的に一体、林野の売り払い等もいたすのでありますから、やはりもう七度、これはいわゆる帳簿上の再評価かどうかということは、宮崎さん、なかなか問題だと思いまするけれども、部内としてはどの程度の評価かということを検討しておかなければならないのではないか。ほんとう造林の効果を期待していくならば、今持っておる資産はどの程度なんだ、その持っている資産から収入がどれだけ上がってくるのか、造林したものの収益と、古来から持っておる財産の収益とをやはり分離しなければならない。この分離は今できてないですよ。造林したものからの収益と、古来から持っておる財産の収益の分類はないのです。ないからこの際やはり、民間に造林経営すればこれだけの企業成績が上がるのだと人に勧める前に、みずからの造林計画に基づいた収益がどのくらい上がるのかということの目安を立てなければならぬだろうと思う。これは決してあなた方を苦しめる意味じゃないのです。世間に林野の実態を知らしめておく必要があるだろう、こういう意味で申し上げておるのであります。それにいたしましても、大蔵密なんというのはほんとうはこういうことについて非常にやかましいのですから、宮崎さんのところで相当検討されておることだと思うのです。過去の蓄積から上がってくる利益はどのくらい、造林の利益はどのくらい、こういうことはあなた方の方は非常にやかましいのですよ。造林の費用なんか出す場合でも、いやそれはどうだこうだと、だいぶんこまかいことでやかましいのですから、それはそれだけの企業効果が上がるのか上がらないのかという問題についてはもっと検討されておると思うのですが、宮崎さんどうなんですか。
  42. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 御質問の趣旨が若干理解しかねるわけでございまして、あるいは間違ったお答えをするかもしれませんが、もちろん私どもとしましても、国有林野の資産の額と、それから上がって参ります利益の関係については、非常に注意をいたしておるわけでございます。ここ二、三年のところ、大体百億をこえる利益を出しておりますが、国有林の資産としては約七千億の資産でございますので、この程度の利益が出ることが妥当かどうかということになれば、必ずしも利益が多過ぎるとも思ってないわけでございますが、従来の経緯を見ますると、必ずしもこういった利益が今後続くということも言いかねることもございます。そういう点からいろいろ分析して参りますと、先ほど申しましたような一種の公共負担と申しますか、そういったものがこの特別会計の仕事として相当行なわれておりますので、これをどのように評価するかということによって、いわば利益率といいますか、そういったものの評価も変わって参るかと思います。造林事業だけの問題として見ますれば、これは一種の仮定計算ではございますが、大体その投下した資金が、ほぼ金利として通常国の場合に使います五分以上には回るだろうという程度の見当はつけてやっておるわけでございます。
  43. 川俣清音

    川俣委員 私のとり方が悪かったのか、宮崎さんが勘違いされたのかは別にいたしまして、造林計画から今後三十年なり四十年を見通しまして、どれだけいわゆる再造林による利益が上がってくるのかという問題については、やはりまだ検討されていないのじゃないか、そう私は思います。今後再造林計画を強力に推し進められるには、大蔵省といたしましても、林野庁といたしましても、この国会の終わったあとの比較的ひまなときに大いに検討しておいてほしい、こういうふうに思います。  時間がないので、委員長、もう十五分ぐらいで終わりたいと思いますから、ごかんべんを願います。  それでは総論を一応終わりまして、今度は法律案についてお尋ねをいたしたいと思います。  この法律案に入る前に、最近また木材が非常に強気になってきた。これは在庫不足という点もありましょうし、政府の増伐計画によって増伐をしてみたものの、経済ベースにおいては大体底をついたのではないかというところから、切り惜しみ、売り惜しみという問題も出てきたのであろうと思います。そこに在庫不足ができて参りまして、石四千円以上の市場価格が再び現出するのじゃないかという、不安もあるようであります。それは林業政策の上から必ずしもいいか悪いかは別にいたしまして、そういう問題があるようでございますが、林野庁は楽観をいたしておりまして、この増伐の成績が上がってくるのはこれからであるから、まだ十分上がっていたのではないから、今後これらが市場に出回ることによって価格の暴騰を押えることができるんだという考え方のようですが、そうですか。
  44. 吉村清英

    吉村政府委員 必ずしもそういうふうに断定しておらないのでございますが、きのう月別に申し上げました、一月までは、八月次のピークからずっと下がっておりまして、二月に若干反騰しております。その理由は、やはり今仰せのような在庫不足と申しますか、そういう点がかなり強いようでございます。それでこの在庫不足のために手当をする、その手当をするために競争が起こるということになっておるかと思うのでございます。この緊急増産計画は、実際に着手をいたしましたのは昨年の九月以降でございます。伐採が始まって、それが実際に市場に供給をし始められますのは、やはり近いところでも一カ月、二カ月かかるかと思います。遠いところになりますと、やはり今ごろがかなり出回ってくるころだと思います。と同時に、木材業界が昨年の秋から暮れにかけての値下がりの傾向を見まして、若干立木の手当を控えておるというような関係もございまして、その反騰が出てきたのではないかと思っておりますが、私どもといたしましては今までの対策をゆるめずに進めまして、特に各地の地方の実情に沿った弾力的な措置を講じまして、ひどい反騰を防ぐように努力をいたしたいというように考えておるのが私の今の実情でございます。
  45. 川俣清音

    川俣委員 国民が消費者の立場から懸念しているように、今後木材の高騰が他の物価の高騰を引き起こすことのないようにということが、一つの願望になっておるだろうと思う。それにこたうるに八百万立方メートルの増伐をしたのですが、この上また増伐計画をやるといっても、それはかけ声だけになって力を示さないと思うのです。そこで今度上がったときにはどうされることになるのですか、お示しを願いたいと思うのですが、これは簡単でよろしゅうございます。別に深く問うつもりはありません。  もう一つお答え願いたいのは、今後造林を進め林道を開発していくということになると、従来のように山村の雇用が得られないのではないか、雇用が非常に悪化しておる。特に安定所あたりは、これは秋田の安定所の大きな掲示板でございますが、県内外の土建業、林業、水産業その他臨時に就業することはやめましょう、雇われるのはやめましょう、それで失業手当をもらったりするようなことはやめましょう、それよりも今の経済成長に伴いまして、満二十五才未満の独身者であるならば、将来性のある、安定した職業に責任を持って旅費その他の便宜をはかるからそちらにおいでなさい、できるだけ本所としては、国の方針に従ってそういう臨時な事業に行くことをやめることを勧奨するんだ、こういう大きな張り出しが出ております。県の内外の水産業(カン詰工場を含む)林業、土建業その他——林業という雇用の状態は、これは臨時的な形を今後もとるであろうし、従来もとってきた。通年雇用ではない。そうすると安定所からいうと、これも臨時的な就労の場所と、こういうふうに見るであろう、そういうところにはできるだけ行くなとこう言う。そうすると林業に行くなということですね、通年雇用じゃないですから。今通年雇用が非常に必要な段階にきておるのだからして、そういう通年雇用じゃないところには国の方針で行くな、こういうのです。そうすると、いよいよもって国有林といえども民有林といえども、この通年雇用をいたさないところは、今後の雇用の状態が円滑に行なわれないのではないか。そういうことを考えますと、との森林法の一部改正というようなことは、確かにりっぱなことが文章の上では表われておりますけれども、実態は底がないんじゃないか、宙に浮いた法案となるおそれがあるんじゃないか、こう思うのですが、との点どうでしょう。
  46. 吉村清英

    吉村政府委員 まず第一点の、木材価格が再騰をした場合はどうするかという御質問でございますが、私ども木材の価格を直接的に上下するということにつきましては非常にむずかしいことで、これは私どもの力としてはなかなかできがたいのではないかと考えております。従いまして、私ども考えで実行をしなければならないことは、やはりどこまでも需給のバランスをとる、需給を安定させるという方向に向かって進まなければならないと思っております。で、増伐あるいは輸入あるいは木材の利用の合理化というような各種の方途を講じまして、木材の需給のバランスをとる、その上において価格を安定させるという考えで進みたいと思っております。  それから労働力の臨時就業の問題でございますが、林業には行くなということになるとまことに困るわけでございますが、その点につきましては私ども、やはりこの新しい森林法の趣旨に沿いまして、林業経営を近代化し、それと同時に、先ほどもちょっとお触れになられました規模をなるべく大きくして、共同の作業あるいは協業というような方式で、できる限り安定した雇用の形を作れるように、国有林民有林ともに努力をしなければならないと考えております。そのためには林業の季節性というものを技術的にも解決していかなくちゃならぬ。たとえば造林の季節であるとか伐採の季節であるとか、それと同時にまた、伐採の作業と造林の作業とを同じ人が組み合わせてやっていけるかどうか、またやっていけるような方向へ、あるいは機械を導入し、重労働を軽減するというような方向で、一人の人が長く林業に携わっていけるように改善をしていかなければならない。と同時に、また山の事業の環境の改善——環境の改善と申しますと、まず一番大切なことは、やはり何と申しましても道路、林道を十分にしまして、これによって、今まで作業員が歩いて行かなければならなかったようなところを、バスその他の交通機関を利用して都市の、工場へ連れていくように、やはり国有林におきましても、三十七年度は、そういった意味でバスの設備も実施をしたいと考えておりますし、大森林所有者の中にも、バスを使って送り迎えをするとか、あるいはオートバイを各作業員に買って与えて、そういった環境を改善していくというような方法を講じておるような人もいるようであります。そういう形をさらに進めていかなければならないと考えております。
  47. 川俣清音

    川俣委員 今後、農業が余剰労力を生み出すような農業でなくして、完全に年間活動ができるような農業に進もうとしているとき、かつての余剰労力を使って林業をやるというような形態が、だんだんできなくなってくる。林業の合理化あるいは造林計画化ということになりますると、やはりそれに必要な年間雇用なり、何年かの雇用関係を結んでいかなければ、計画通り造林はできないし、計画伐採もできないということになるのじゃないかと思う。相手の力が余剰労力を出してくれると思うだろうけれども自分も合理化していこうというならば、相手も合理化するということは、当然考慮しなければならぬ。自分の方だけうまいわけにはいかなくなってくるのじゃないか、この事態が、ことに山村に急激に起こってくるのじゃないか、こういうふうにも見通されるわけでございます。  そこで、具体的にお尋ねをいたしたいのですが、森林法の一部改正の趣旨として、「最近における林業の動向及び森林資源の現況にかんがみ、」こうあるのですが、一体この法律は、今後何年くらいを見通し改正をしようとするのでありますかどうか。最近における林業の現況は把握しておられるかもしれませんけれども、何年くらいを見通し法律改正なのでありますか、この点一つお尋ねをいたしたいと思います。五年であるのか、十年であるのか、あるいはもっと長くて三十年であるのか四十年であるのか、この法律を有効ならしめる必要な見通しは、何年くらいなのか。
  48. 吉村清英

    吉村政府委員 大へんむずかしい問題でございますが、最近における動向と申しますか、従来たどって参りました過程、それから最近における動向も考えまして、この改正をいたしたわけでございます。私どもといたしましても、この改正によりまして、なるべく長い期間安定した制度によって林業経営を合理化し、向上をいたして参りたいという考えでございまして、今何年と仰せになりましても、ちょっと予想につきましては申しかねます。
  49. 川俣清音

    川俣委員 法律を出されるからには、やはり何年くらいこの方向で進むんだということにならなければ、法律改正意味をなさないと思うのです。林野庁としては、何年くらいはこの方向で進むのだということが明らかになった改正でなければ、意味をなさないと思う。また親切じゃないと思うのです。これは、どうしてもこの法律を通してくれとおっしゃるからには、現状において必要だということはわかります。しかし、一体何年くらい見通しして必要だというお考えなのか。それがわからないと、委員長が、これはどうしても早く質問を打ち上げろと言われましても、この見通しが立たなければ、賛成するにも反対するにもしようがない。五年か六年先の見通しだ、こういうことになると、あとの方で出て参りますが、長期計画を定める、こうなっている。長期計画というのは、三十年か四十年でしょう。だからこの法律全体としては、三、四十年有効な法律を作ろうとお考えであろう、こう思うわけです。そうすると、三、四十年後の見通しというものをお持ちにならなければならないのじゃないか。最近の動向はお持ちになっているでしょうが、三、四十年後の長期計画に見合う社会情勢がどうであろうか、経済情勢がどうであろうか、物価がどうであろうか、こういう見通しというものを一応持っておられるのでございますか、持っておられれば御説明願いたい。持っていないからというわけで、今すぐ反対するわけじゃありませんよ。反対するわけじゃないけれども見通しは、実際おそらくないのだと思います。経済企画庁では、木材の将来の見通しということについては、非常に困難だということでございますが、木材需要、水の需要、そういうものが将来非常に起こってくると思います。従ってまた価格などについても大きな変化があると思います。そこで、十年とか二十年の経済成長計画は立てられておりますけれども、三十年、四十年というような見通しは、政府にはないのです。物価、国民生活水準の上昇などの見通しは、せいぜい二十年まではあるが、三十年、四十年という見通しは、政府自体にないですよ。政府自体にないものを、林野庁がつけるというのは非常にむずかしいと思うのです。だから、今無理に聞こうとはいたしませんよ。聞かないでもいいけれども、政府自体がないですよ。経済企画庁でも、三十年、四十年先の見通しをつけておらないのです。これは物価や国民生活の伸び、一般消費の伸び、そういうものの中に価格構成というものが出てくるわけですから、そういう見通しが立たなければ、どのくらいの価格になるのかということも見通しができていないはずだと思います。また、木材需要その他林産物の全体の、需要がどう伸びてくるかという見通しも、おそらくできていないと思うのです。ただ、こういう長期計画を定めるんだというりっぱなことを打ち出さないと、改正ができないからおやりになったと思うのですが、その点どうですか。無理だったら無理だと言われればよろしいですから……。
  50. 吉村清英

    吉村政府委員 一昨日も御質問があって、ちょっと触れたのでございますが、この木材需要あるいは供給に対する見通しというものは、一応立てております。それは、将来十年間については例の所得倍増計画、その後につきましては、経済企画庁の長期見通しの伸び率、こういうようなものをとりまして、一応の計画を立てているわけでございます。需要におきましては、昭和五十五年において約一億立方メートル、供給は、素材の生産を六千六百七十万立方メートル、廃材あるいはチップを一千三百五十万立方メートル、輸入は、ことしが九百九十万立方でございますが、これを大体倍加できると見まして二千万立方。これは需給の例の方式でいきますと上限、下限とございますが、上限が償う。その後は現在の造林、人工林が逐次増加して参りまして、むしろ供給が割に楽になるというような考え方を一応立てております。
  51. 川俣清音

    川俣委員 それは従来の経済機構あるいは産業構造がこのままで進めばこの程度需要になるであろうという林野庁見通しであろうと思います。しかし、今後世界的にも産業構造の変化あるいは消費構造の変化というものが当然起こってくることであろう。これは四十年後の消費構造あるいは四十年後の産業構造の変化を織り込んでいない。それを織り込んだのを経済企画庁で出さなければならぬが、それは出ない、こう言うのですから、出ないものをあなたの方で出せるわけがないじゃないか、こうお聞きしたのです。ほんとうに仮の気休めの、従来の産業構造、消費構造であればこの程度であろうという八掛にも当たらない見通しだと思うわけでございます。それを無理に詰めようというのじゃないのです。ただ、長期計画ということをあまりにりっぱに打ち出すというと、そういう問題も解決しておかなければならぬじゃないか。長期計画というのは何かと言われると説明ができないんじゃないか。これは反対するならば、そこで食い下がって反対するのですけれども、まだあまり反対するともきまっていないようですから、その程度にいたしておくわけです。  次に保安施設についてでございます。指定施業要件の通知をいたすことになりますが、その保安林の指定施業一要件の「方法及び限度並びに立木を伐採した後において当該伐採跡地について行なう必要のある植栽の方法、期間及び樹種をいう。」こうなっておりますが、これは一歩進歩したようですけれども、退歩しているんじゃないかと思う。文章からいうと非常に進歩したように見えますけれども、むしろ私は退歩じゃないかと思うのです。保安林のあり方について、木があれば保安林の機能を果たす——植えてから四十年なり五十年なりたつと機能を果たすでしょうけれども、あらためて植栽すると機能が一時停止することはおわかりの通りです。しかし、保安自体というものは一日の停滞も許さないことなのです。そういたしますと、これは非常に進歩したようだけれども、むしろ気休め的なことではないかというふうに感ずるのでございます。一つここで実態を申し上げたいと思います。先ほど例に引きました水上の奥へ行きましたときに、非常な急傾斜地なんです。そこを結局水源林であると同時に保安林に指定する。こういう急傾斜地に皆伐しないそうですね。そうすると、皆伐と同じようなことが水没によって行なわれるわけです。湖水にするわけですから皆伐と同じ結果が出てくる。そのために土砂の流出などが行なわれるのでございます。こういうのを安易に考えられ、保安林の機能を十分発揮させるためにあるべき水源涵養林が手前から水没地帯に入るわけですが、それについて注意も何も与えずに必要だからといって保安林を解放して水没地帯にするということは、本来の保安林行政から見て落度があるではないかというふうに私は思うのです。公共の要請だからと習う。ダムを搾るのは確かに公共の要請でしょう。しかし、保安林の機能を発揮するということも公共の要請である。もっと高度の要請かもしれません。保安林を解除して水没地帯にするということについて従来はどういう取り扱いをしてきたのですか。公共のためだからということで、ダムをやる者も考えてくれるだろうというふうに善意に理解をいたしまして大てい無条件に提供いたしているではないかと思うのです。保安林の制度をあらためて改正するからには、そういうことが入ってこなければならぬと思うのです。今後ダムの建設が非常に進むのですが、それは保安林地帯、水源林地帯に人ってくるダムなんです。今までは下流にありましたけれども、だんだん上流に向かってできてくるのです。上流になってきますと、水源林、保安林の領域に入るわけです。
  52. 吉村清英

    吉村政府委員 ダムでございますが、私どもの方で上流地帯に作っておりますダムは土砂の防止の、ダムでございまして、これは別だと思いますが、御質問は発電所とか灌漑ですとかそういうダムだと思います。そういうダムを保安林の地帯に作ります場合には、従来ともそれぞれの現地に当たりまして、十分慎重な検討を行なった上で設置をきめておるわけでございますが、この新しい制度によりましても、同様に個々の保安林の保安機能というものを十分検討いたしまして解除も指定もやって参ることになっております。
  53. 川俣清音

    川俣委員 ダムの水準がありますね。その上は依然として保安林、水源地帯である。従って、下が崩壊したためにもう崩壊が始まっているわけです。これは水没して木がなくなって洗われますから崩壊したのです。ダムの満水時以上のところ、依然として水源地帯、保安林地帯が、下が崩壊したから崩壊を始めている。当然これは予想されることなんです。ですから、許可をするとか、申請が出たときには非常にやかましく言うけれども、あとについてはもうほうりっぱなしということが現に行なわれておるのです。そればかりではありません。たとえば林町整備でやって町村の基本財産として売り払っている場合、売り払うまではずいぶんやかましいことを言いますけれども、売り払った後にどんな運営をされておるか、これは放任しつばなしです。すぐ皆伐をしまして、数年たってもなお皆伐した跡のままになっている。そうすると、その四、五年の閥皆伐しないで保存しておった方がどのくらいその町村のためにも、また国全体の資源のためにも役立ったかというようなことはあるわけです。そのときの町長、そのときの村長が、皆伐すると非常に村財政がよくなるからやったでしょうが、伐採して四、五年ほうりっぱなしにしておるということは、土地の利用度からいいましても好ましくないのです。また財産の保全の上からも好ましくないのです。許可するまでは非常にやかましいけれども、あとは見のがしてしまうというところに欠点があるということを、この際喚起しておきたいと思うのでございます。そういうことが保安林施設の中に当然入るべきじゃないか。入れていないのですね。ただありますのはこういう点です。保安林については、法令に基づく義務の履行、除伐等一切の場合を除き「都道府県知事の許可を受けなければ、立竹を伐採し、立木を損傷し、家畜を放牧し、下草、落葉若しくは落枝を採取し、又は土石若しくは樹根の採掘、」——これは、多目的ダムあたりにいくと、土石の採掘と申しますか、樹根の採掘と同じ機能を果たすのです。結局ダムの水の高低によりまして、流れによりまして、石は落とし、岩石はくずれてくる。あるいは樹根は失うということになるのですが、おそらくこのことは、この法律のこの用語はダム地帯などを含んでいないのじゃないかと思うんです。なぜかというと、知事などがこれらの大きな建設省の直営事業についての注意を喚起するなどということはなかなかできないようです。次にもう一ぺん、「開墾その他の土地の形質を変更する行為をしてはならない。」といいますが、これは地形の変更だと思います。これは造林をするという場合には開墾と類似行為が行なわれるだろうと思うんです。これからの造林は、計画造林でありますならば、土壌に加えられる、表土に加えられるところの状態は、開墾と同じような状態が起こるであろうと思う。形質の変更が行なわれるだろうと思います。そうすると、これは造林までできないということになるのだろうと思います。そうなってもよろしいと思いますよ。そういうことを意味しているのか、この点、事務当局でけっこうです。
  54. 吉村清英

    吉村政府委員 造林につきましては、伐採の許可をいたします場合に、指定施業要件によって造林の樹種あるいは植栽の方法まで指定をいたしますことになっておりますので、造林は別途、この許可を受けずにしてけっこうだと思います。
  55. 川俣清音

    川俣委員 そうするとおかしいじゃないですか。開墾その他土地の形質を変更する行為をしてはいけないということは、造林もしてはいけないということだと思うんです。従来のようにぽつぽつと穴を掘って植えるのはいいけれども計画造林のように一定の面積を開墾と類似行為を行なって、抜根をして焼き払って整地をして、そして最も効率のある造林の仕方をするということができないのだ、こういうことだと思うんです。私はそれも一つの方法だと思いますよ。だけれども、どうもこれはそういうことを意味しておらないようなんです。
  56. 吉村清英

    吉村政府委員 開墾その他は許可を受けなければできないということで、許可を受ければできることになっております。造林の場合にはあらかじめ指定をされておるわけでございますから、その点は差しつかえないように考えておるのでございます。
  57. 川俣清音

    川俣委員 許可を受けなければできないということを本則にしておるのですか。本則なんですか。造林の場合は別だということには、この法律としては十分じゃないと思うのです。これは検討を要する。ですけれども、これはよろしゅうございます。  次に、森林所有者が保安林の立木を伐採した場合ということがございますが、今後水源造林について森林公団が森林所有者になるという形をとる場合に、森林公団がこの森林所有者と見るのかどうか。従来は、公有林野等官行造林法等におきましては、国が森林所有者という形をとる。そこで公団もまた森林所有者ということになるのではないかと思いますが、森林公団が保安林の立木を伐採した場合には、当該保安林にかかる森林所有者は、伐採があったことを知らないことについて正当な理由があるとき等、一定の場合を除き、指定施業要件に従って伐採跡地について植栽しなければならないものとする。こういうことになると、これは伐採後の植栽の責任は森林公団が負うべきだ、こういうことになる。これは契約によらないでも植栽をしなければならないという義務づけになっておると思うのですが、これはどなたからでもいいです。
  58. 吉村清英

    吉村政府委員 分収造林でございますから、森林公団も森林所有者の一人になっておりますが、切ったときには解約をされますので、その関係はなくなるかと思います。
  59. 川俣清音

    川俣委員 多分そういう答弁をするだろうと思った。これは実際は解約などというものは即時行なわれておらないのです。たとえば官行造林でも、いまだに伐採したあとになりましてもまだそのままの地籍になって、国有林がそのままになっておるところがございます。そういうふうに、処理はそうすみやかにいかないことと思います。そこで、こういうことにつきまして、あとで政令等におきましては十分問題があるということを喚起しておきます。  それから次に、都道府県知事に保安林制度に関して負うべき使命についていろいろな義務づけをしておりますが、「有効な指導及び援助を行ない、」こうなっておりますが、これは市町村あるいは知事に対して財政援助をするという考え方ですか。ただ責任だけ負わしておるのですか。
  60. 吉村清英

    吉村政府委員 森林法の百九十四条で、国は予算の範囲内で補助をすることができるようになっております。
  61. 川俣清音

    川俣委員 これで終わりますが、保安林の機能を十分発揮させるためにいろいろな指導や監督を知事をしてさせるということは、これは適当なことだと思います。しかし保安林の機能というものは、その県だけのためにある保安林でもないわけです。事下流の他県に及ぶ場合が非常に多いわけでございますから、監督上の責任を知事にしてやらしめることが適当でありますけれども、十分な監督機能、指導機能を発揮させるためには、国が相当な財政上の処置を知事に講じてやらなければだめじゃないかと思うのです。この点を強く強調いたしまして私の質問を終わりますが、最後に、すみやかに基本法を作られまして、一つ将来の日本林業のために長期計画を立てられまするよう期待をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  62. 野原正勝

    野原委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
  63. 野原正勝

    野原委員長 これより本案を討論に付します。  討論の申し出がないようでありますので、直ちに採決に入ります。  森林法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  64. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。
  65. 野原正勝

    野原委員長 この際、足鹿覺君外二名より、自由民主党、日本社会党及び民主社会党共同提案にかかる本案に附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  趣旨弁明を許します。足鹿覺君。
  66. 足鹿覺

    足鹿委員 三党を代表いたしまして森林法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を付するの動議を提出いたします。  案文を朗読いたします。   政府は、速かに、林業基本政策に根本的な検討を加え、当面左記事項について適切なる措置を講ずべきである。      記  一、生産対策としては、造林事業の積極的実施及び林道事業の拡充整備に努め、補助制度並びに融資制度を改善するとともに、林業に関する試験研究、指導普及事業の拡充を図ること。  二、林業経営改善対策としては、民有林国有林野の利用の合理化、土地利用区分の明確化及び林業の機械化対策等につき施策の確立を図るとともに、林業経営の協業化について検討すること。  三、流通対策としては、外材輸入、国内木材生産の調整を図り、木材価格の適正化、木材市場制度の改善等、流通機構の近代化並びに木材利用、加工等の合理化を図るとともに、港湾及び貯木施設の整備等輸出入対策の拡充を推進すること。  四、国土保全対策としては、治山事業十ケ年計画の再検討、国による保安林の買入れ及び保安林配置の合理化等について恒久対策を講ずること。  五、民有林労務者の安定的確保のため、労働条件の改善、社会保障制度の確立等その福祉並びに所得の向上を図ること。  六、国有林野事業の運営に当っては直営生産を堅持し、従業員の身分の安定、労働条件の改善に努めること。  七、中央及び地方の森林審議会の委員については、広く人材の参加を求め、森林計画制度の運営を民主的にすること。  八、森林組合制度について再検討すること。 右決議する。 以上であります。  各党間の意見を調整いたしますために、案文を皆さんのお手元にまだ御配付を申し上げておりませんが、御了解をいただきたいと思います。  この案文につきましては慎重に各党間で十分意見の交換を行ないまして、相当時間をかけまして検討、成文化したものでございますが、特に六並びに七の条項につきましてはその表現はこのようになっておりますが、若干趣旨等について補足を申し上げておき、その点について政府当局においても十分附帯決議の趣旨、また説明の意のあるととろについて御言明等をいただきたいと思っております。  すなわち、第六の「国有林野事業の運営に当っては直営生産を堅持し、従業員の身分の安定、労働条件の改善に努めること。」となっておりますが、との点につきましては、最近の労働事情を見ましても、特に国有林野事業におきましては漸次請負の方向に拡大される傾向があるようであります。このことは直ちに国有林野事業に従事しております従業員の身分に大きな影響をもたらすことを憂うるものでありまして、いやしくもそのようなことがあってはならないことをこの六の条項において強くうたっておるのでありまして、その点については十分政府当局なり林野当局において意のあるところを理解をせられ、御善処いただきたいと思います。  七の「中央及び地方の森林審議会の委員については、広く人材の参加を求め、森林計画制度の運営を民主的にすること。」となっておりますが、この点につきましては、たとえば林業労務者をもって組織されておる団体の代表、あるいは小規模林業経営者の代表等、現在審議会の委員の中には全然加わっておらないのであります。学識経験者をもって組織、構成されておる審議会でありますので、その学識経験者の範囲については、今私が申し上げましたような点を十分に考えられ、最近の労働情勢、また労力事情等、また、ややもすれば下積みになって、その意見の反映を見ざる小規模経営者の意向等が十分に審議会に反映をし、そして計画制度の運営が民主的に円滑にいくように御努力を願うという趣旨をこのように表現申し上げておるのでありまして、この点についても政府当局なり林野当局においては十分われわれの意思をくみ取られて善処せられんことを付言しておきたいと思います。  他の問題につきましては過日来の熱心な審議によって明らかにされた点を案文化いたしたものでございますので、あえて説明することを省略いたしたいと思います。
  67. 野原正勝

    野原委員長 採決いたします。  足鹿君の動議に賛成の諸君の御起立を願います。   〔賛成者起立〕
  68. 野原正勝

    野原委員長 起立総員。よって、足鹿君の動議の通り本案に附帯決議を付するに決しました。  本決議について中馬政務次官より発言を求められております。これを許します。中馬農林政務次官
  69. 中馬辰猪

    ○中馬政府委員 ただいまの附帯決議につきましては、政府においては十分に検討を加えたいと思います。  なお、第六項については、特に今まで直営を減らしたという方針をとったつもりはなくて、今後も御趣旨の線に沿って参りたいと思っております。  第七項については、長官の方からお答えがあると思います。
  70. 吉村清英

    吉村政府委員 第七項については、現在までも十分御趣旨に沿うような審議会の委員の選定というものを考えて参っておったわけでございますが、さらに慎重に検討をいたしまして、山林所有者森林経営者全般にわたって十分に意思が反映できるような体制に進めて参りたいと思っております。     —————————————
  71. 野原正勝

    野原委員長 なお、本案議決に伴う報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 野原正勝

    野原委員長 御異議ないものと認めます。よって、さように取り計らいます。      ————◇—————
  73. 野原正勝

    野原委員長 次に、競馬法の一部を改正する法律案議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。中馬農林政務次官。    —————————————
  74. 中馬辰猪

    ○中馬政府委員 ただいま提案せられました競馬法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  さきに内閣に設けられました公営競技調査会は、昨年七月競馬を含む各種公営競技を現状以上に奨励しないことを基本的態度とし、その弊害を除去するための改善方策について答申を提出いたしたのであります。  一方施行以来すでに十数年を経過した現行競馬制度につきましては、その後の社会情勢変遷及び最近の施行状況から見ますと、種々の改善すべき点があると考えられるのであります。すなわち、地方競馬の施行主体につきましては、現在競馬を行なっております指定市町村は、全市町村の四%に満たない百三十五市町村であり、そのうち約五割は戦災という事由により指定を受けておりますが、復興もほぼ終了した現在、現行の施行体制を整備する必要があると思われるのであります。  また、競馬の実施につきましては、射幸心の過熱を避け、紛争を防止するという見地から勝馬投票法の改善、その他競馬の実施に対する規制を強化すること等によって競馬に伴う弊害を除去するとともに、その公正かつ円滑な実施を確保する必要があると考えられるのであります。  このような現状にかんがみ、公営競技調査会の答申の線に沿って、競馬の施行体制、実施方法等につき改善を加えるとともに、競馬の収益を畜産の振興、社会福祉の増進、教育文化の発展等に充当し得るよう所要の措置を講ずることといたしたのであります。  以上がこの法律案を提出した理由であります。  以下、改正法律案の主要な点につきまして御説明申し上げます。  まず、第一に、地方競馬の施行者についてでありますが、地方競馬施行の趣旨並びにその収益を広く配分するという点からいたしまして、施行者は原則として都道府県といたしたのであります。しかしながら、著しく災害を受けた市町村等につきましては、当該市町村の財政上の特別の必要性を考慮して自治大臣と農林大臣が協議して指定するものに限り、一定の期間を定める等条件を付して競馬を行なうことができることといたしております。  なお、現在指定を受けている市町村につきましては、昭和四十年三月三十一日まで競馬を行なうことができることといたしたのであります。  第二に、競馬の実施方法についてでありますが、的中率を高め、射幸心の過熱を避けるため、勝馬投票法は、重勝式を廃止し、その種類を単勝式、複勝式、連勝単式及び連勝複式の四種とし、必要に応じこれらを制限し得る規定を設けるほか、競馬の開催回数、日数、日取り等につきましては、公営競技調査会の答申の趣旨に従いまして、自粛のための規制措置を講じたのであります。  第三に、収益の使途でありますが、地方競馬の収益の一部を馬の改良増殖その他畜産の振興をはかるための経費に充当するため地方競馬の施行者から売得金の一定率に相当する額を地方競馬全国協会に交付させ、地方競馬全国協会において、畜産振興事業に対する補助を行なうことといたしたいのであります。また、都道府県は、競馬の収益をもって管内の畜産振興事業のほか、社会福祉の増進、教育文化の発展等の経費に必要な財源に充てることにいたした次第であります。  第四に、地方競馬全国協会について申し上げます。地方競馬全国協会は、従来都道府県または都道府県の組合が行なっておりました馬主及び馬の登録、騎手の免許を全国的に統一して行なうとともに、審判員等の養成等を実地するほか、前述の畜産振興事業に対して補助する機関として設立いたすものであります。  なお、これに伴いまして、協会の組織、業務運営等につきまして所要の規正を設けることといたしております。  以上のほか、興奮剤等の投与に関する処罰規定その他罰則を整備することにより、より一そう競馬施行の公正の確保に資することといたしたのであります。  以上がこの法律案の提案理由及び主要な内容であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さいますようお願い申し上げます。
  75. 野原正勝

    野原委員長 本会議散会後再開することといたしまして、この際休憩いたします。    午後一時六分休憩      ————◇—————    午後三時十四分開議
  76. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。農業水産業の振興に関する件について調査を行います。木更津等におけるノリの被害問題及び旧ソ漁業交渉の経緯について質疑の通告があります。順次これを許します。角屋堅次郎君。
  77. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 委員会のお許しを得まして、千葉県のノリの被害等の問題について、まず関係方面の従来の経過なり今後とるべき態度等についてお伺いいたしたいと思います。  御承知の通り本問題は、昭和三十七年の二月十四日に横須賀港を出港いたしました米国の油送船イーグル・コーリアー号が、千葉県君津郡富津町の第二海堡西側に衝突座礁しまして、多数の重油を流出したため、君津郡富津町青堀漁業協同組合から、同郡大佐和町の大貫漁業協同組合にわたる、五組合、組合員大体千三百九十五名を含んでおりますが、この関係者の二万五千百二十さくのノリ養殖場をこの重油のために壊滅状態にした。さらにノリのみならず貝及び海草類まで壊滅状態影響を与えた、こういうことで私ども被害の実態については写真あるいは資料等もいただいておりますが、そういうことに基づいて関係方面においては、ちょうどノリの採取でこれからの生計を立てていく、楽しみにしておる時期に外船によってこういう被害を受けましたので、それぞれ関係市町村あるいは関係漁業協同組合等が二月十四日、本事態が発生しましてから、県はもちろん、農林省あるいは国会等に対しても、連日のように熱心にこれが善処を要望して参っておることは御承知の通りであります。本問題については、衆議院の農林水産委員会で取り上げる前に、参議院の関係委員会でも取り上げられた経緯がありますけれども、現地の地元としては重要な問題でありますので、特にお許しを得て本委員会で取り扱うことにしていただいたわけであります。  この際まず最初に、本問題について水産庁が従来とってきた経緯あるいは今後とろうとする方針、こういうようなものについて水産庁次長から最初に御説明をお伺いしたいと思います。
  78. 村田豊三

    ○村田政府委員 ただいま御指摘のございました米国の油送船イーグル・コーリア一号が千葉県の沖に座礁いたしまして、そのために油の被害があの周辺のノリさくに甚大な影響を及ぼしましたことにつきましては、ただいま角屋先生から数字をあげて御説明がございましたが、私どもが被害組合から入手いたしておりまする数字と、ごく軽微な数字の食い違いはございますけれども、おおむね御指摘程度の被害があったことは事実でございます。これにつきましては、もとより、被害を受けましたノリの養殖漁民の被害は相当甚大なものがあると私どもも予想をするのでございます。ただいまの段階では、県当局におきまして、県庁では率直に申し上げまして事は損害賠償にも関連する問題でございますので、非常に厳密に一さく一さく調査を鋭意続行中でございます。しかし水産庁といたしましても、ただ県庁の報告が参りますのを手をこまぬいて待っているわけにも参りません重要な問題でございますので、これはとりあえずでございましたけれども、先般担当官を現地に派遣をいたしまして、新聞紙上あるいは現地の被害組合員の陳情等に照らして、どの程度の被害であるかという、これはきわめて概略でございますけれども、取り急ぎ調査をさせて帰って参りましたけれども、先ほども申しますように正確な、公に出し得る正確な調査はただいま鋭意県当局が責任をもちまして調査中でございまして、この調査はきわめて近い朝日に農林省の方にも報告がある予定になっております。  概略でございますが、以上でございます。
  79. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の水産庁次長の御答弁はきわめて事務的でありまして、何といってもこの問題は直接水産庁の所管をしておる沿岸漁民の問題でありますから、おそらく現地には係官等も派遣をされ、あるいは今後の問題に関連をして、県あるいは関係方面に対する行政指導等もやられる、あるいは水産庁としてこの問題の善処をどうするかということについてはいろいろ考え方を立てられ、そういうふうな方面も含めてお話があるものというふうに実は考えまして御質問申し上げたわけでありますが、ただいまの件等について重ねて一つ答弁を願いたい。
  80. 村田豊三

    ○村田政府委員 御指摘の点ごもっともでございます。私どもも決してこれは人ごとだとは思っていないのでございます。本件の場合は、まず加害者が非常に明確になっております。えてしてこういう事例は加害者が不明確な場合が多いのでございますけれども、本件の場合非常に明確でございますので、この事件が発生いたしましたときに、どうせこの問題は加害者に対する損害賠償の問題が出るであろうということでいち早く、国際的な問題にもなる案件でございますので、外務省の方にも事態の連絡に参りまして、かりにそういう損害賠償の手続が発生いたしますようなときには、外務省の御助力も願わなければなりませんので、そういう連絡もとっておるような次第であります。また、被害を受けましたノリ養殖漁民の応急の措置をいかがしたらよいか、当面応急の措置の問題と恒久的な対策と、両々の問題があろうかと思うのでありますが、さしあたりの問題は、地元千葉県で、地川の漁協等を通じまして、次のノリの仕込みの時期——大体九月ころから始まると存じますが、その仕込みの時期の準備のための資材手当その他についての応急の措置等は、現地で現にとられておるようでございます。農林省といたしましては、先ほど申しましたような千葉県の正式の被害報告を受けまして、県庁とも十分の連絡をとりながら、今後の具体的措置というものは検討して参る必要があると考えております。
  81. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本問題は、今次長からもお話しのように、アメリカの貨物船であります。これはニューヨークのユナイテッド・マリタイム会社の所属船というふうに承っておりますが、これを米軍が雇い入れまして、横浜港で荷揚げの仕事を飯野海運が引き受ける。そして所要の積荷をおろしたあとの帰り道において座礁してこういう事態が発生したということに相なっておるわけであります。従いまして本問題について当今もお話のように農林省、特に、水産庁はもちろんでありますが、調達庁関係あるいは外務省関係、あるいは直接請負をやりました飯野海連関係、あるいぼ本問題の地域である第三管区海上保安本部の関係、こういうところがそれぞれ関係方面に相なるわけであります。きょうはそういうことで外務省並びに調達庁からもおいでを願ったわけですが、こういう関係の問題では、特に調達庁等の関係が深いわけでありますから、この際本問題について、問題発生以来、調達庁として措置してきた経過についてまずお話し願いたいと思います。
  82. 眞子傳次

    ○眞子政府委員 去る二月十四日、お説のように東京湾第二海堡西側岩礁において座礁しましたイーグル・コーリア一号による油のために、ノリの被害を富津街道方面に与えたという問題の事件が発生いたしまして、との案件に対しまして、調達庁といたしましては、横須賀在日米無海軍司令部及び在日米軍賠償部に本件の事故を通知いたしますとともに、この会社の日本側代別居であります飯野海運、その他いろいろの関係方面と状況の調査をいたし、あるいは責任の所在等について調べましたところ、今、水産庁からのお答えでは、この船の油が直接ノリの被害に原因を与えておるというようにも聞こえるようなお話でございましたが、その点につきましては、なお目下調査中のように私の方は承っておりますが、かりにその船の油によりまして損害を与えられたとしても、これが責任はどういうふうになるかということを、今申し上げましたような関係方面、各機関と連絡し、調査しましたところ、その船は米海軍が航海用船によって契約して、運航されておるのでありますが、その船に油を積んで入港し陸揚げするまでは、米海軍の被用者の立場に立つけれども、荷揚げしてしまえば被用者の関係に立たない。積荷の荷揚げまでの用船契約であって、荷揚げが完了したときは契約は終わるんだ、こういう関係の契約でありまして、米海軍とは座礁当時においては関係がない、被用者という関係に立たないということでございまして、そういたしますと、地位協定第十八条第五項の所定の条件を欠きますので、米軍の責任にならない。従って日本政府が米側と、二五%、七五先の割合で負担するあの条項に該当しない、こういうことになるわけでございまして、米側では、横須賀海軍司令部におきましても、賠償部においても、米軍の責任でないという何等をよこしておる次第でのありまして、目下のところ調達庁は、直接この船の事故による責任事項としては取り扱えない段階でございます。
  83. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私ども、この水産新聞を通じて承知しておるところでは、本問題については、本月の六nに、外務省、調達庁、水産庁の代表がアメリカ大使館を訪れまして、正式に損害賠償を請求することになった、こういうふうに承っておるわけであります。しかも、先ほど来のお話のように、調達庁関係では、ノリの被害の生じた原因が、百パーセントこの貨物船の座礁によるものかどうかということについては、ちょっとお茶を濁されました。お茶を濁されましたが、いずれにしても水産庁の次長のお答えのように、ノリの被害額そのものについては、地元側と水産庁で考えておるところでは、軽微の差はあるけれども、そう大きな開きはない、こういうことで、私ども承知をしておるところでは、本問題の被害は、ノリの予想生産高というものが六億一千五百万円、さらに海草類において四千五百円、清掃費などを含めて参りますと、締めて七億五千万円の被害に上るというふうに、現地側からは承っておるわけであります。そこで冒頭に私が言いましたように、本件は国際的な問題でありまして、対アメリカの関係があるわけですけれども、水産新聞を通じて私どもが承知をしております。六日の日に外務省、調達庁、水産庁の代表がアメリカ大使館を訪れて、正式に損害賠償を請求するということに相なった問題について、一つどなたか代表して御答弁を願いたい。
  84. 西堀正弘

    ○西堀説明員 本件につきましては、われわれ、水産庁から通知を受けまして、最初これは在日米軍の地位に関する協定によってあるいは処理できる問題ではないかと考えまして研究いたしましたところ、イーグル・ダリア号というものはヴォェジ・チャーター、と申しますのは航海用船と申しますか、それによって米軍が油を運んで参りまして、それを陸揚げいたしましてその後に起こった問題であることが判明いたしております。そういたしますとこのヴォェジ・チャーターの条件では、積荷をおろしたその瞬間に用船契約というものが済むことになるということだそうでございます。かりにこれがこの航海用船の範囲内すなわちこちらへ油を持ってそのイーグル・ダリア号がくるときに座礁したものでありますならば、今申し上げました在日米軍の地位に関する協定によりまして、もしアメリカ側に責任があるものでありましたならばアメリカ側が七五%、日本側が二五%損書を持つことになるわけでございますが、あいにくこの点は、積荷をおろした後に、すなわち帰路に起きた問題でございますので、全然在日米軍の地位に関する協定は適用がないということがわかりました。そうするとどうなりますかというと、本件は全くの民事事件でございまして、直接損害を受けた漁民の方々と、その損害を及ぼすに至った船のオペレーター、この場合にはユナイテッド・マリタイム・コーポレーションでございますが、その間の全くの民事事件であるというととがわかった次第であります。しかしながら、関係いたします漁民の数が非常に大きく、従いまして、これを放置いたしますときはいたずらに反米感情というようなものも起こしかねない、こう存じましたので、米大使館に通知をいたしまして、担当の書記官を呼びまして、その担当の書記官に事情を詳細に通知をいたしました。その場合には水産庁の方からいただいておりました実情に関する写真等も添えまして、詳細に説明したのであります。当初、アメリカ大使館の担当の書記官は、これはやはりあくまでも民事事件であるからというようなことでございましたけれども、こちらが条理を尽くして説明いたしましたところ、それはよくわかった、このまま放置するときには対米感情におもしろくないというようなこともあり得るだろう、アメリカ大使館ないしは米政府としてもできるだけのことをしたい。こちらの方も、法律的にはなるほど民事事件で政府が直接的には介入できる問題ではないけれども、このような、非常に利害関係が多いという関係で日本政府も非常に関心を持っているから、アメリカ政府の方におい七も、法律的なやかましいことはともかくとして、これが円満解決をするように、できるだけの労をとられたいということを要請いたしましたところ、その担当書記官もこれを非常に了といたしまして、さっそく米政府の方にもこの旨を通知する、こういうことでございました。
  85. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今外務省関係からお話しになられた点は非常によくわかった話でありまして、米軍の雇用船が荷揚げをするまでの段階であれば、法律的に規定されたところに基づいて、それが雇用した船によって起こった被害だということであれば、アメリカ関係が七五%あるいは日本関係が二五%によって処理する。ところが法律的にいえばこれは帰り道で関係がない、というばかりでは済ませない、そういうことがある以上はやはりそれに準じて、国際的な問題だから配慮するということが日米間の関係で非常に重要な問題だということで、米大使館にこれを申し入れ、善処を要請されたというととは、これはいわゆる外交的な問題の取り扱いとして適切な考え方だろうと思う。先ほど調達庁関係でいうと、法律的に説明をされて、これはこれでチョンでございます。こういうことでは、同じ政府部内でも外務省はこうと言い、調達庁はこうと言い、水産庁は別のことを言う——ということでなくて、今日時点で調達庁の関係もあれば、水産庁も関係があり、外務省も関係がある。やはり三者同じような立場に立って、この問題を、沿岸漁民の被害を救うという立場からどうするか、こういうことでやらなければならぬ。そういう点ではやはり今外務省が言われた立場で、国際的な問題については、法律的規制がどうだということを離れて、法律的規制に準じて円満に話し合いをつける。ただしかしこの問題については、今外務省からお話がありましたけれども、じんぜん日を過ごすというこでなくて、現実にノリ被害を受けて生活の実態が今日困窮し、あるいは明年度以降の生計をどうするかということで困っておる諸君には、一刻も早く目鼻をつけなければならぬ。そういう問題については、今外務省からお話しのような方針に基づいて折衝されて、一体いつごろまでに対アメリカ政府との関係においての話し合いが結着するというふうに判断をしておられるのか。これはやはり関係沿岸漁民としては非常に関心を持たれるところだと思いますので、当面の段階における見通しというものをお話し願いたいと思う。
  86. 西堀正弘

    ○西堀説明員 どのくらいの期間のうちにこれの解決がつくか、その見通しについての御質問でございますけれども、この点につきまして、私先ほど申し上げましたときにちょっと申し忘れました。それは、これは当然日本の領海内で起きた問題でございますから、民事事件として日本に裁判権がございます。従いまして漁民の方々が日本の裁判所に訴訟を提起するということになりますと、御承知のようにこれはうまくいって二、三年、下手をすると四、五年、大へんな期間がかかるということは、アメリカ大使館の書記官もよく存じております。従いまして、できるならばアメリカの方といたしましても、これは法廷ざたにする前に示談でもってやりたい、その方が漁民の方々の現在の生活状況を救う意味からも望ましいし、またアメリカ政府の立場からいってもできるだけ早く解決したいという見地から、そのような示談になることを希望する、従ってアメリカ大使館ないしは米国政府としてもそのような方向に指導するように持っていく、こういうことでございました。われわれもそれに大いに賛意を表した、こういうことでございます。御質問の、どのくらいで解決するかという点につきましては、われわれとしてはできるだけ早くするように最善の努力をすると申し上げる以上には今のところちょっと申し上げかねるかと存じます。
  87. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 水産庁長官が御出席でありまするから、先ほど次長からもお答えをいただいたわけでございますけれども、今の問題について外務省からお話しのように、対アメリカの関係についてはしゃくし定木に民事裁判ということではなくて、日米間の友好関係というものの今後の問題とも関連して、従来、ある任務を果たすまでの段階であればきちっとしている、任務を果たした以降における問題だというので、これは直接的には今の日米間の取りきめの中ではそれは該当しない。しかしそれに一つ準じて、と私は言いたいわけだが、準じてということにいかないまでも、そういう考え方の前提に立って対アメリカの関係について今折衝を進めておる。そうするとその折衝がいつの時期までに結着がつくかということについては、今にわかに外務省関係からも御答弁がなかったわけですが、そうなると当面水産庁としては、とりあえず行政的な問題として、この問題をどういうふうに沿岸漁民の実態の中から善処していくか、との点についてはどういうふうに考えておられますか。
  88. 伊東正義

    ○伊東政府委員 あるいは次長の答弁とダブるかもしれませんが、その点は失礼いたします。今外務省からも御答弁がありましたが、これは正式な民事の訴訟というようなことになりますと、非常に時間がかかる問題だと思っております。私ども水産庁としましては、もちろんそれも一つの方法でございますが、その前に何か話し合いでもできれば、訴訟という形でなくて、もっと早い時期に解決ができるならば一番望ましいのじゃないかというふうに私は思いまして、実はこの前、私の方の係官を会議に出しましたときにも、水産庁としては、そういうことにした方がいいのじゃなかろうかという意見を述べさしたような次第でございます。それはそれといたしまして、現実に被害を受けている人の問題でございますが、これは実は県と連絡をいたしております。私の方からも係官を出しまして、どの地域はどの程度だろうというような一応の訓育もさして参りましたが、県が、たしか来週初めに持ってくるはずでございますけれども、県といたしましてこういう対策を講じたい、ただし、これとこれは一つ国で頼むというようなこともあるだろうから、仕分けをして、県は大体どのくらいの被害で、それに対してはどういうことをやりたい、そのうち県がどれだけ持つから、国はどれだけ持ってくれというような仕分けをした要望書があれば至急持ってきてほしいということを実は県に言ってございます。私どもとしましては、これは天災というようなことと若干違いますので、予算上、今直ちに災害復旧というような金をこれに使うわけに参りませんで、おもにいろいろな資材の購入費のめんどうを見てあげるとかいうような点で、一つ県とよく相談をして参りたいというふうに思っております。漁業者の諸君が参りまして、漁場の清掃費数億円を出してくれとか、今いろいろ要求はございますが、まだ県から詳細参っておりませんので、それを見た上で、今の行政でできるだけの範囲でやりたいというふうに私は思っております。
  89. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この点は、私は、現地の関係者のなまの声々代表して、地元の實川さんにこの問題についてはさらにあとでやってもらうつもりでおりましたが、こういう問題は、現地側では非常に深刻な問題でありますので、きょうも現地へ行っておるわけです。そういうことで、なまなましい現地の実態に基づいてのお話というのは、遺憾ながら實川氏の場合、きょうは間に合わなかったのは残念です。この問題の取り扱いに対する私の考え方としては、対アメリカの関係については、日米間で取りきめておる協定の前提に立って、なるべくやはり円満に話し合いを処理していく、そして国内問題の、水産庁が災害あるいは沿岸漁業振興という立場で取り扱う場合には——今長官は、直ちに災害問題の適用というわけにいかぬけれども、と言ったが、災害立法としては、ノリの問題についても、資材の復旧についても、昨年以来の台風に対しても申しました三万円以上のものについて九割なら九割で処置するとか、いろいろなことを、いわゆる災害問題としては立法があるわけですね。あるいは、天災融資法の関係は、災害融資についてはこうだということもある。そういう問題については、国内問題としての水産庁の考え方としては、客船で生じた災害ではあるけれども天然災害でないということは、それは事実だけれども、人為的な災害ということであるが、災害に変わりはない。沿岸漁民の立場からすれば、壊滅的な打撃を受けたというのは、むしろ通常の、いわゆる天然災害以上の深刻な事態が現実には出ておる。従って、当面行政的にやる立場としては、災害のときにノリ被害に対してとるであろうそういう措置に準じて、やはり資材復旧の問題清掃の問題、あるいは融資その他の問題、こういうものも考えていくということが、やはり私は関係漁民の要請にこたえる重要な項目になるのじゃないかというふうに思うわけです。対アメリカ関係の問題についても、なるべく早い機会に解決するということに努力され、それとの見合いということが今後出てくるのでしょうが、当面水産庁でやるべき主体的な問題としては、天然災害のときにとるべき措置というものに準じて、やはり処理、すべきものである。県と相談をしながら処理を進めていく、こういうことは大蔵省との折衝その他はあるかもしれませんが、そういう折衝の中で了解を求めて進めるということは可能だと思うのですが、その点はどうですか。
  90. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御質問でございますが、天災融資法の発動とかあるいは災害復旧の場合は、これは実はみた天災処理、自然災害のときだけでございます。それも実は、ある程度の規模があって初めて国民経済影響するというようなことで、あれを発動いたしております。でありますので、あの法律の関係からずばりとこれをやるということは私は困難だと思っております。ただ、先生おっしゃいましたように、そういう気持といいますか、それに準ずるといいますか、融資の問題で、たとえば公庫から何か金利の安い金が出ないかとか、資材の場合にあるいは何か系統資金を世話するとか、そういうようなことは私どもも実は極力お世話したいと思っております。ただ、あそこの漁場の清掃の問題となりますと、油を流したという人がもしはっきりしておれば、あの因果関係がはっきりしておれば、そういう人にこれを相当やってもらうということは、国が金を出すのではなくて、これは当然であろうと私は思いますけれども、その辺のところはもう少し研究を要しますし、また、やるときは財政当局と十分相談しなければならぬ。港湾の中でありますれば運輸省のことになりますし、その辺は関係省ともよく相談したいと思っております。
  91. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 本問題についてはさらに湯山委員からも関連質問がございますから、それに譲りたいと思いますが、やはり国際的の問題での話し合いということは一定の時期が必要でありますから、それまでの当面の措置の問題は、やはり水産庁が主体的条件においてやるべきことを——法的根拠をどこに求めるかといえば、そこに求めるものは災害という関係に基準を置いて、それに準じて折衝すべきところは折衝して当面処理していく、その問題の最終的な対アメリカの関係の結着がついた場合の仕分け処理という問題については、あとの場合にきちっとやろうじゃないか、こういうことでいいと私は思うのです。そういうことで、さらに調達庁との関係もあり、外務省との関係もあり、お互いに意思統一をして国際的の問題の処理をする、そして国内的な、水産庁が主体的にやるべき問題については水産庁がやっていくということでやられないといけない。いまだに連日、きょうも関係市町村の方が  こちらに参っておられますけれども、連日来ておられるというこの実態を認識されて、今後の問題についてはこうするというはっきりした明確な方針をすみやかに打ち出して、そうしてその方向で被害を受けられた諸君がすべり出していけるようにぜひお願いをしたい。
  92. 湯山勇

    ○湯山委員 関連。水産庁長官、それから北米課長さんにお尋ねしたいのですが、実は私、今の御答弁で納得のできない節があります。ということは、今の御答弁では、当然これは民事裁判によって決すべきものである。しかし対米感情の関係があるからそういう形で解決をはかりたい、こういうことですけれども、そうじゃなくて、日本の政府には当然国民の生命財産を守る責任、義務があると私は思うのです。そういう観点からいけば、対米感情云々でこの問題が処理されるべきものではなくて、国の責任においてこれは処理すべきだ、こういうことでなければならぬ。単に一介のそういう協定とかいうもので処理すべき問題ではないと私は思う。従って長官もごく簡単に、これは災害の適用はない、本来ならば裁判すべきものだけれどもというような、そういうことじゃなくて、政府としては当然その漁民たちの生命財産を守る責任がある。そういう責任において、政府においても、その形はどういう形をとられるかは私は申す意思はありません。かりに裁判されるとしても、その間の財産、生計の保障は国がするならばする、そういう形で政府が責任を持つとか、それならいいと思います。今の示談の場合にも、とにかく政府が責任をもってそういうふうに持っていくのだということではなければ、先ほどのように、これは当然裁判によって決すべきものだけれども対米感情が悪くなるというようなことで、向こうもそういう話を納得して、こういう運びになっているのだということでは、私は国の責任が果たせないと思いますので、この点ははっきりしておいていただかなければならないと思います。  なお、これに関連いたしまして、今の工場汚水によるノリの披露というものは各所にあると思うのであります。先年も愛媛県でもそういう例がありましたし、最近では浜名湾でございましたが、そういう事例があったというお話が今出ておりましたが、このことについての水産庁の御答弁が私は大へん納得できないのは、災害の因果関係がはっきりすればというようなことですけれども、ノリの被害の因果関係というのは非常に立証しにくいということを、これは水産庁の方ですからよく御存じのはずだと思います。ノリは成長し切ったときは、もう胞子の形成期に入って先から枯れてくるわけです。そうするとそれがはたして工場汚水というようなものによってできたものかどうか、また気候の変わり目ですから、潮流もうんと移動してきます。そうするとはたして当時どういう状態であったかということを確かめるためには、一年待たなくてはならない。一年待ったときに同じような外的な条件を作り出すということは、ほとんど不可能だと言ってもいいわけです。そこで多くの場合、ノリの被害についての争いというものは、加害者と被害者とが対立する。今おっしゃったように示談の形をとろうとするけれども、それについて両者の主張というものはなかなか一致しない。しまいには仕方がないから漁民が船で押しかける、こういう事態になることが往々にしてあることは、水産庁の長官も御存じだし、皆さん御存じだろうと思ます。そこで私が今ここで希望したいことは、今後臨海工業地帯というようなものの造成に伴って、そういう事象は各所にずいぶん出てくるだろうと思います。もうすでに二月の初めにあったこういう事故に対して、今これを精密検査するといってもとてもできるものじゃありません。潮の流れも流れていますし、一時的なものであればそれはもう流れてしまっている。そのうちにノリは自然に枯れてくる。そうなってくるともう立証の仕方がなくて、結局泣き寝入りするか船で押しかけるか、それ以外に道が残されないわけです。そこで、こういうことに対しては、あるいはこういう事件があった、そういうことの申請があった場合には、権威ある調査機関をすみやかに水産庁の力で編成して、直ちに現場を調べていく、そういうことをしていただかないと、ことしの場合でもたまたま今度は油という明確なものがありましたからいいのですけれども、薬物等の被害の場合だと、それはことしは雪が降らない、暖冬だからそういうふうになったのだろうとか、いろいろ理屈をつけて、結局弱い漁民の方が泣き寝入りする、こういうことになりますので、こういうことについては、私はこの際一つ水産庁として、それに対する適切な対策がとられるような態勢をすみやかにとっていただきたいと思います。それについての御答弁と二つ——第一点は、今のようにただ単に外交的な手続の問題ではなくて、生命財産を守るという国の責任の大原則に立ってこれを処理すべきではないか。そのためには将来にわたってもこの件については国が責任を持つべきではないかということと、第二点は、今の、ノリ被害というような特殊な形態ですから、それについて国の方でそれに対する適切な措置をおとりになる、そのことについてのお考え、この二点をお尋ねいたします。
  93. 伊東正義

    ○伊東政府委員 最初の問題でございますが、私どもこの訴訟あるいは話し合いというふうなことにつきましては、かりに対米感情がどうとかということだけでなくて、実は水産庁としては漁業者の希望も聞きまして、訴訟ということになると非常に長くかかる、でありますので、できるだけその前に話し合いがつくというふうな方法でやってもらうのが一番望ましいというようなことを漁業者も言っておりますので、できればそういうものも一つの方法でないかということで、会議意見を述べてくれということで、私の方の係官を出したわけでございまして、私どもは、訴訟になりましてもあるいはこれを話し合いでやっていくということになりましても、国としてはできるだけの応援をする、水産庁としては漁業者のお世話をしていくところでございますので、できるだけの応援なり協力はしようというふうに考えております。ただ、いろいろな費用等につきましてどういうようになりますか、これは国でそういう費用を見るということもなかなかできませんので、どんなふうにしてやっていったら一番いいかということは、国と県でよく相談いたしたいと思っております。あくまで私の方はこれは水産庁の立場としましては最後までお世話をしてあげたいというような気持でおります。  もう一つ、先ほど因果関係ということを申し上げましたが、これは油の問題、非常にむずかしい問題でございますので、今度の件につきまして海上保安庁で、船から出ております付近のノリに付着した油をとりまして神奈川県の工業試験所でございましたか、ちょっと名前は忘れましたが、そこに鑑定を実は海上保安庁として頼んでおります。それから県はノリに付着しました油を、川口の工業試験所でございましたか、あそこへ実は鑑定を県として頼んでおります。そういうようなことをしまして、そういう因果関係につきまして今調べている最中でございます。  私どもとしまして、沿岸の汚水といいますか、水質汚濁の問題は、一つは例の水質汚濁防止関係の法律が企画庁にできておりますので、この水質の基準をきめるというふうなことについて一方やっておりますが、こういう問題につきましては、私どももどうも原因の問題、いつもわからなくなるということが多うございますので、一つ試験所あたりの機構をもう少し活用することを考えたらどうかなというふうな実はつもりでおります。別な組織でどうということよりも、私の方にも水産試験所は別途にございますので、こういう機構をもう少し私は活用して、敏速にやれるならやるということを考えた方がいいのではないかということを現時点では考えております。
  94. 西堀正弘

    ○西堀説明員 ただいまの御質問の、政府として単にこれが関係している漁民の方々の数が非常に多いから、対米感情を顧慮して、これに仲介の労をとる、この点私先ほど申し上げましたときに非常に強調いたしましたので、あたかもこの点のみから外務省が在日米大使館員も呼んで申し入れをしたというようにあるいは印象を与えたかもしれませんけれども、それはアメリカの諸機関と交渉いたしますときに、彼をして納得せしめますためにはそういうふうに論法を持っていかなければならなかったということでその点を強調したのであります。と申しますのは日本の外交官といたしまして、日本国民の利益その他をはかる、その点を強調いたしましても、これは向こうに言わせますと、それは当然その通りだ、そのかわりしかしアメリカの外交官としては、アメリカ国民の利益をはかるのは当然だということで水かけ論になるから、それは当然の根本原則といたしまして、私、交渉の場合にあまり強調しなかった、それを先ほどの御説明のときに、実は交渉のありのままを申し上げましたので、強調した点だけを申し上げてそういうことになった次第でございます。従いまして根本的にはやはりわれわれといたしまして、日本国民の利益を代表するという一点、それからもう一つは、向こうの係官をして信憑せしめるために例の対米感情にも非常に悪い影響を及ぼすであろうという点を強調したような次第でございます。御了承いただきたいと思います。
  95. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の千葉のノリ関係の問題については、今後の事態の推移、水産庁を初めとして調達庁、外務省等でとられる、今申しました関係沿岸漁民の被害を救済し、今後の生計の問題について明るい展望を確保する、こういう立場から、対アメリカの関係で処理すべき面については円満に話し合いを早期にまとめる方向で努力する、その間における問題については、長官が言われましたように、県あるいは関係市町村、漁民とも十分連繋をとりながら、適時適切に必要な措置をとっていくということで、積極的に進めてもらいたいと思いますし、その推移のいかんによって、また本委員会でこの問題を取り上げてやるという、そういう考え方をとりたいと思います。  次に日ソ漁業交渉の問題でありますが、この点については過般二月二十二日、私が水産政策に対する一般質問の中で、河野農林大臣の出席を求めて、まず冒頭に日ソ漁業交渉のこれからの政府の方針等についてお伺いをしたわけであります。御承知の通り、先月の二十六日からすでに交渉に入っておりますし、三月下旬には高碕代表もソ連に渡られる、こういう段階にきておるわけでありますが、今回特に重点的に問題として取り上げ、これに対する政府あるいは水産庁の見解をお聞きしたいと思いますのは、いわゆる北洋サケ・マス漁業の自由規制に関連する問題であります。この問題については私が河野農林大臣に日ソ漁業交渉の問題をお尋ねしたときには、まだソ連に代表団が渡りまして、いろいろ向こう側の意向も聞きながらその際の状況と見合わして具体的に考えて参りたい、こういうことで具体的な内容については当時の状況では触れられなかったわけであります。ところが今回御承知の通り北洋サケ・マス漁業についてはいわゆる規制区域内の地域についての母船式漁業の独航船の規制については、一割四十一隻、四十八度以南の流し網を中心にした大臣許可、知事許可等も合わしても、漁船については八十一隻のいわゆる減船措置をやる、こういうきびしい自主規制の水産庁案が出て参っておるわけであります。これについては数日前のそれぞれの関係の協議会、あるいは関係するところの都道府県の代表を集めて、この案を示された、こういうふうに承っておるわけでありますが、本問題については私どもが従来から考えておるところでは今度の偶数年における不漁年の実態、あるいはまた日ソ漁業交渉におけるソ連側が規制区域の拡大等をきびしく要請をしてくる問題、あるいはマスの資源論争の問題等から、自主規制の問題をどうするかということが、日本の場合非常に重要なポイントになると判断をいたしておりましたが、この自主規制案を示されるまでの経緯についても非常にとっぴな感を与えられますし、承りますと党与の関係の政調会あるいは水産部会等にも、必ずしもそういう案については事前の相談があったことは承っておりませんし、また関係業界においても、いわゆる水産庁から突如としてこの案が示された、こういう経緯ではないかと思いますが、この今回の北洋サケ・マス漁船の試案を示すに至った経緯と、この問題を出す考え方について、まず長官から御説明を願いたいと思います。
  96. 伊東正義

    ○伊東政府委員 考え方から申し上げます。ことしの北洋の鮭鱒の漁業でございますが、昨年の十一月末から十二月にかけまして、両国の科学者が集まりまして、会議をやりましたのは御承知の通りであります。あの場合に資源の問題を進めまして、両方の科学者の間で合意を得ましたことがございます。いろいろ、シロについてはどう、ベニについてはどう、マスについてはどうという資源の討議をやりまして、特にマス等につきましてはかなり悪いのではなかろうかというような点で合意はいたしております。ただこの原因につきましては両方食い違いがございますが、結果としましては今年の北洋の、マスについてはかなり悪いのではないかということで、実は合意をいたしております。  それから実はもう一点、これは日米間で話の出た問題でありますが、ことしはアラスカ系の魚群につきましては、非常に遡上量が少なくなっている、それでこれにつきまして、ある程度の措置をとってほしいというようなことも、実はアメリカ側から強く要請があった事実もございます。私どもはまず資源の問題からいきまして、特にマス等につきましては最近偶数年、奇数年を問わず沖合いでとれますものと沿岸、これはソ連でございますが、ソ連でとれますものとを合計いたしてみますと、毎年実は減少いたしております。特にマスにつきましてはマスの画生産というものについて非常に危ぶまれるというような事情が、資源的に見てございますので、これにつきましては相当な資源保存という意味からいたしましてある経度の措置をする必要があるという判断を実はいたしておるわけでございます。  もう一点は、規制区域の問題でございまして、これは従来から特にソ連側は規制区域を拡大するということをいつでも強く主張いたしているわけでございます。日本側としましては四十五度以南に規制区域を及ぼすということについては、絶対反対ということでやっておりまして、昭和三十六年の交渉では規制区域は広げないということにしまして、実はしかし区域外では約七万トンということにしようじゃないかというような約束のようなものをいたしまして、実は操業いたしたのでございますが、八月末の統計では七万が八万になっております。十二月末になりますと、おそらくまたこれがある程度上回ってくるだろうというふうに思われます。それで日本としましては規制区域外についても数量をある程度約束いたしまして、これを守るということでいろいろな措置をしたのでございますが、結果においては実はそういうことにならなかったということで、この点は十二月のときにも向こうから話があったということ言っておりますが、そういう不信を買っておることは事実でございます。  それで私どもはこの二点、つまり資源の問題、もう一つは規制区域拡大を絶対防止するというような二点の考え方からいたしまして、これはある程度自主規制の強化をする必要があるという判断をいたしたわけでございます。大臣もよく自主規制の強化ということを言っておられますが、その具体的な問題として先生が御質問になりましたようなことを考えたわけでございます。  経緯でございますが、これは実は団体の人々、特に顧問の人は、今度は実は一人、前の研究部長の藤永さんが科学者の立場で顧問として行っておりますが、そのほかの団体代表の顧問はまだ立っておりません。全鮭連の顧問もこの前立つという話があったのですが、私どもとしましては、これは今度の交渉はどうしても自主規制というものの強制をしなければ円満に妥結することはなかなかむずかしい、また将来の資源のことを考えてもそうであるので、一つ立つことは延ばしてほしいというようなことを申しまして、先月二十二日の出発も実は延ばしてもらったような次第でございます。具体的に休漁というような内容を言いまして残ってもらったわけではございませんが、どうしても近日中にはそういう措置を決定する必要もあるので、これはぜひ残ってほしいということを言いまして残ってもらっております。この案を実施いたしますには、先生のおっしゃいましたように、党の方へ御相談するというようなことはいたさなかったことは事実でございます。これは行政の問題として考えて、大臣と御相談の上、案を決定して、水産庁の責任で案を示して協力を要請したというのが実態でございます。
  97. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この前この日ソ漁業交渉の問題でお尋ねをしたときに、今長官からお話のようなことで、今度の第六回の交渉の場合でも、規制区域の拡大という問題が自主規制以上の数量をとっておるというソ連側の不信感の問題と関連して出てくる。であるとするならば、規制区域外については日本側は自主的な規制でいくんだという以上は、具体的のプランというものがなければならない。そういう場合には、場合によっては減船措置等も含めて自主規制ということに具体的にはなってくるのじゃないのか。そういう点はどうなんだと言ったときには、大臣はその答弁をほかされたんですね。そして今日一刀両断、関係方面には相談をなされずに、とこういうことで、今言われましたように、自主規制案といってきわめてきびしいところの、規制区域内一割、規制区域外二割という、こういうきびしい水産庁案が出てくる。きょうは大臣が出ておられませんが、最近の農林大臣の農林水産関係の方面の考え方をつらつら見て参りますと、食管構想の問題にしても、米審の傍聴のシャット・アウトの問題にしても、今回の自主規制に対するところの一刀両断的な、相談をやらずに出してきて、これでどうだ、とこういうやり方にしても、非常に非民主的なやり方という印象が強いわけです。私どもは、自主規制という問題で、必要がほんとうに政府、水産庁にあるならば、誠意を尽くして関係方面と十分話し合って、その話し合いのもとにおいてお互いの納得の上でまとめたものを、高碕代表がソ連へ持っていくなら持っていく、あるいはそうでなければ、その後やはり所要のものをソ連に行く者に送る、こういうことでやるべきであって、今回のこの水産庁の自主規制案の示し方というものは非常に非民主的である、一方的である、こういう点で私は、この内容ももちろんだけれどもやり方そのものに強い不信感を持つわけです。これは時間的ゆとりがなかったのですか。こういう問題については相談をすれば非常に紛糾をするから、水産庁が独自の立場でまとめて一方的にこれを示すというやり方の方が本問題についてはいいという考え方でやられたのですか。その点はどうなんです。
  98. 伊東正義

    ○伊東政府委員 この案を示すまでに案そのものとして業界等に出しておらぬことは確かでございます。ただ、ことしは強い自主規制をすると言いましたときに、いろいろな業界の人は、たとえば減船は非常に困る、いろいろな意見を言われたことはございます。ただ私の方は案を示して、この案でどうですかという相談はいたしませんでしたが、業界からは、私の方は休漁と言っておるのでございますが、減船とかそういう措置をやられることは非常に困るのだということを言われたことは確かでございます。ただ案としまして、その場合にこの案でどうだといって相談した結果あの案を出したことでないことは確かでございます。私の方は案を出しまして、一つこれで協力してほしいという要請をいたしておるわけでございます。
  99. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この減船の水産庁案というのは業界あるいは関係都道府県の関係者と話し合う場合のいわば相談を出す提示案であって、これは今後関係団体、たとえば母船式漁業の場合においても、あるいは規制区域外に直接関係の深い流し網漁業の場合においても、いずれも今回のきびしい自主規制案については反対をしておる。さらにまた本規制案に関連をして、減船方面の本年度の用途としてはカツオ、マグロ関係にこれを転業するんだというけれども、カツオ、マグロ関係では数年来そういう北洋漁業からの転業というのは、これはやはりカツオ・マグロ漁業の今日の実態から見て賛成できないということをまた言っておる。そうすると、北洋のサケ・マス漁業に関連する団体側の反対、あるいはこの案で示されておる転業の問題としての関連するカツオ、マグロ関係でも反対、こういうことで、それぞれこの問題が、やはり取り扱い上どうするかという問題が非常にむずかしい問題である。しかもこれは日ソの漁業交渉という国際的な問題にも関連をしておる。この場合に今後のこの問題の自主規制案の取り扱い、進み方というものは、私どもが新聞報道その他を通じて聞いておるところでは、これでやるんだ、これで話し合いがつかない場合でもこれでやる、そしてこのワク内で許可をぴしっと与えていくんだ、こういう強い方針のように私どもは受け取っておるわけであります。そういう考え方なのか。こういう考え方を示したけれども、今後関係方面の団体あるいはまた関係するカツオ、マグロの関係、こういうものとも十分話し合いをして現実に即した案というものをやはり考えていく弾力的な考え方を持っておるのだ、こういうことなのかどうか。その辺のところを一つ事務局の考え方としてお伺いしておきたい。
  100. 伊東正義

    ○伊東政府委員 カツオ、マクロが反対しておられるということも聞いております。これは私はこういうふうに解しております。実は今度の漁業法をやるときも問題があったのでございますが、ただ単にカツオ、マグロだけとは申し上げませんが、大体新規なものは入ってきてもらいたくないというのが業界の大体の考え方でございます。今Aという漁業は百ぱいでやっておる、その漁業には百ぱい以上のものは入ってもらいたくないというのが大体今までの考え方でございまして、私どもはそういう考え方はおかしい、これは資源的にまだ余裕があるというようなものであれば、新規なものも入ってくることは必要だと行政庁としては実は考えております。それでカツオ、マグロの問題についても漁業法を中で今相談をしておる段階でございますが、どうしても国際的な問題、あるいは資源の問題、あるいは漁業調整上の問題等で転換をする必要がある、あるいは沿岸漁業の構造改善のために転換する必要がある、あるいはその漁業の従事者がその漁業を新規にやるというような場合に、資源の余裕があれば新規を認めるというような考え方で漁業法の草案に  ついて中で相談をいたしておりますが、私は資源的に余裕があれば、国際上の問題とか、そういう場合には、これはあるいはほかの方に入るということは当然じゃなかろうかというふうに考えておるわけでございます。昨日、県と団体の人にも実は話しました。県の力にも協力を要請しまして、私は大きい県等については知事さんにもお話し合いをしようと実は思っております。県にも御協力を要請し、団体にも要請したわけでございますが、きのう話した中でも、いろいろニュアンスはございます。ニュアンスはございますが、現時点ではまだ賛成とは言えぬといって実はきのう二つの団体は帰られました。それで私としましては、考え方としては、これは今年の漁業交渉あるいはまた将来の資源の保存という面から考えれば、この案で一つ何とかことしはやっていきたい、ぜひ協力してほしい、話がまとまった上でありますので、話し合いのまとまった上で許可を出しましょうというような態度でおります。
  101. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今の水産庁の長官のお話を聞きますと、これは関係方面と相談をするために提示をした水産庁の案というのじゃなくて、これでやっていくという、そういう、いわば最終案とは言わぬけれども、これはもうあまり動かし得ない原案だという考え方に立っておるわけなんですか、どうなんです。
  102. 伊東正義

    ○伊東政府委員 われわれとしてはその通りでございます。
  103. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これはしかし、今後の日ソ漁業交渉の規制区域内の漁獲の問題、あるいは規制区域外において双方で紳士的に話し合う日本側の漁獲量の問題、こういう問題も双方に関係してくる問題だと思うのですが、そういうことで実際はこのようなきびしい案を示されたけれども、やはり今後の日ソ漁業交渉の問題としては、当時私は河野農林大臣と話の中で言ったけれども、やはり資源問題は両国の共通の問題になる、その中でやはり日本側の主張としては、なるべく日本側の漁獲量というものを、規制区域内においても規制区域外においても、できるだけ多くもらうように円満に話し合いを進める、これがやはり日本側の主張の立場であろう、こういうことを申し上げたわけです。やはりこれからある程度の期間話し合いをやらなければならぬ。事前に相当にきびしい案で臨んでいくということ自身が外交交渉の全体的な立場から見てどうなのか、こういうふうにも思うわけですが、その点はいかがですか。
  104. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今月末に高碕代表が政府代表として向こうに行かれるわけでございますが、今年の交渉は、昨年の資源状態を討議しましたときと考えてみまして、かなりの自主規制の強化という案を持って参らない限り、なかなかむずかしいのじゃないかという点が一点と、もう一点は、先生おっしゃいましたが、資源の問題がこれは基本でございます。資源の利用という面からいきますと、なるべくよけいその年とるというようなことは利用の面はよろしゅうございますが、資源の保存というもう一つの面から見ますれば、将来のことも考える必要があるということで、この自主規制の措置をいたしたわけでございまして、私どもはこういうことをいたしまして、そのかわり資源につきましては将来のためにソ連も沿岸であまりとってくれるなということを強く言いまして、ソ連にも要求すべきことは強く要求するという態度で臨む方がよりよいという判断をいたしまして、こういう自主規制の案を作ったわけでございます。
  105. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この今回示された水産庁のいわゆる自主規制案というのは、関係方面と前に十分話し合いをしなかった点にも手落ちがあるし、また今日そういう段階で自主規制案のきびしいものを出してきましたけれども、これは今後の日ソ漁業交渉を進めるという段階の中では、やはり日本側の主張として自主規制のブランというものを持つ必要はあるけれども、そのものがやはり固定した考え方だということになると、この自主規制案にわれわれとして賛成するわけには参らない、こういうふうに思いますし、同時にこの自主規制案の水産庁案を見ますと、たとえば減船になる——水産庁の表現でいけば休漁になる問題については、関係業界の相互救済でやっていくんだ、政府あるいは水産庁としてはそういう問題についての補償的なことは考えていかないんだ、こういうことも言っているわけですけれども、それら全体をにらんで参るとこの自主規制案には非常に問題がある。今後の話し合いの中では双方の関係団体との自主規制の内容について、実際に休漁あるいは減船すべき問題については、そこで起こってくるいろいろな諸問題については、当然政府なり水産庁として十分安心のできる方途というものを見出すことも必要である。これは今後の問題であるけれども、そういうことも含めていわゆる減船の場合におけるところのこれは関係業界の相互救済でやるべきであって、政府が、国がめんどうを見るというようなことはやらないんだ、こういうふうな方針も出ておると思うのですが、それらの問題についてはどうなんですか。
  106. 伊東正義

    ○伊東政府委員 過去において三度ですか、いわゆる減船をやった、一年は休漁でございますが、二回減船措置をしたことがございます。このときも政府からお見舞金を出すとかいうやり方は実はやっておりませんで、相互に見舞金を出すというようなことをやっております。三十五年にやりましたときには、一部カツオ・マグロの許可を借りてきなさい、借りてきてその上に国から新規に五カ月を——たしか四カ月を借りてきなさい、五カ月は新規の許可を差し上げましょう、裏作でカツオ、マグロをやらす、こういうような措置をいたしましたが、今年度はその点は借りてきなさいということは言いませんで、実際一年間休漁するという人には一年間の臨時のカツオ・マグロの兼業の許可を借りてきなさいと全然言わないで、新規に許可をやるということを言っております。また廃業を希望する人には、これは新規にある程度の許可をいたしますというようなことをいたしておりまして、過去においてやりましたよりは私はそこは有利に考えているつもりでございます。
  107. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今回のこの自主規制問題については、この自主規制案を出されるまでの経緯についてもあるいはこの内容そのものについても、今後の日ソ漁業交渉との関連からいっても、この強い、きびしいサケ、マスに対する自主規制案というものは、私どもは賛成することはできないという立場を表明したわけですが、これについては特に現地側で専門的に関係しておられる永井委員の方から、さらにこの自主規制の問題についての御質問があるので、私はその方に譲りたいと思います。
  108. 野原正勝

  109. 永井勝次郎

    ○永井委員 この問題については日ソ両国の外交上の問題もあり、あるいはこの地域における漁業政策の問題もありまして、事務当局だけにこの問題をお聞きするというのは無理であります。できれば大臣の出席を求めなければならないのでありますが、今日の事情でありますので私は長官にお尋ねをいたすわけであります。従って長官の御答弁の中で、これははっきりと答えられる、これは私は答えられない、こういうものがありましたら、その区分を明確にして一つお答えをいただきたいと思います。  第一にお尋ねいたしたいことは、日ソ漁業交渉がこれから始まる——もう始まっておるわけでありますが、今年は新たな議題が提示されておるのかどうか。ただ従来のように漁獲量の問題とか期間の問題とか区域の問題とか、こういった問題が中心なのか、もっと従来とは違った新たな議題が提示されているのかどうか、これを伺いたい。
  110. 伊東正義

    ○伊東政府委員 向こうから言って参りました議題には実はいろいろ新しい問題がございました。たとえば日本の港を根拠地とする漁船についての規制の問題、それから今申しました四八の問題でございますが、そういう問題を提起してきております。またマスの資源の回復についてというような新しい問題も提起しております。それからベニザケについても問題を提起してきております。いろいろ問題はございましたが、議題として決定いたしました中には、実は先ほど申し上げました日本の港を根拠地とする漁船の規制の問題、この問題につきましては落としております。というのは、四十五度以南については条約の対象外じゃないか、そういうものをこの委員会で議題として議論する必要はないじゃないかということで、そういう意味議題からは正式に落としております。落として決定はしましたが、しかし議題として落としておりましても、これは毎年強く議論されることでございますので当然議論になるだろうと思っております。ベニあるいはマスの資源の回復等につきましては、これは議題として載っております。
  111. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうすると条約で定めたように四十五度以南は条約の区域外である、こういうふうに了承してよろしいわけですか。従って日ソ漁業交渉の対象外である、こういうふうに理解してよろしいですか。
  112. 伊東正義

    ○伊東政府委員 四十五度以南の問題については、これは日本が自主的にやる問題で、条約の規制区域内ではないということで、われわれ考えております。
  113. 永井勝次郎

    ○永井委員 従って四十五度以南における漁場の問題については、これは日ソ漁業交渉の対象外である、ただ条約後において四十八度までの区画線において、ここへ流し綱で入っていった、こういうことで母船と流し網との間の区域が区画された、従って漁業交渉における流し網の対象としては四十五度から四十八度の間のたんさく型の海域だ、こう了解してよろしいですか。
  114. 伊東正義

    ○伊東政府委員 四八が規制区域内に入りますのは、先生今おっしゃいました四十五度から四十八度のところに入っておりますので、四八が条約でノルマを受ける、そういうことになりますのは今の区域だけでございます。
  115. 永井勝次郎

    ○永井委員 漁獲量の経過についてはいろいろ数量が減ってくるに従って経過がありましたので、その経過については長官はよく御承知の通りであります。母船と流し網とのこの漁獲量配分について、母船を十とし流し網を二とした。この二としたについても、これはおかしいじゃないか、いろいろな従来の経験から見てこの数量配分は不均衡ではないかという問題が起こったときに、当時のこの委員会等における論議の中では、流し網にはこの四十五度以南の漁場があるのではないか、そういう漁場があるんだから区域内における漁獲量はこれでがまんしてほしい、四十五度以南の漁場が流し網に保障された区域であり条約対象外の地域なんだ・これがあるんだから区域内における配分は二でがまんしてほしい、こういうことでこの配分が決定いたしました経過については、今日もお忘れないと思うのであります。あらためて確認をいたしたいと思いますが、いかがです。
  116. 伊東正義

    ○伊東政府委員 私は当時おりませんので、私が言ったことでございませんが、そういうことを言われたということは聞いております。ただ先生のおっしゃいます規制区域内の分け方の問題、これは年によって実はいろいろでございます。母船が一番高いときは、一〇〇を割ってみますと母船が八四で流し網が一六というようなときもございますし、一九六一年、三十六年は八二と一八になっている。若干数字は何%かの範囲で異同いたしております。
  117. 永井勝次郎

    ○永井委員 三十六年度における流し網の以南の漁獲量が、先ほど角屋君の質問に対しましても、大体七万トン予定をしていたところが、八万トン以上とった、そういう乱獲傾向があるから自主規制が必要である、こういうように答弁したと、こう私は理解するわけでありますが、この日ソ漁業交渉の中では直接条約の対象区域でもなければ、あるいは両国の間で直接の問題になる地域でもない。この地域に対する規制が非常にきびしく行なわれる、こういうふうになりました原因は、先ほど日ソの間におけるマスの漁獲量の問題がありましたが、そのほかに今言ったような国内的な事情があったのかどうか。四十五度以南の自主規制を強くやらなければならないような、そういう国内事情があるのかどうか。あるとすれば、それは何なのか。その条項を明確に示していただきたい。
  118. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほど七万トンと申したのは以南の流し網だけではございません。以南、それからはえなわ、沿岸、日本海を含めて、全部で約七万トンというようなことを約束したわけでございます。それが八月末の統計で八万になった。十二月になればおそらくもっとふえるだろうということを申し上げたのでございます。でありますので、以南だけで七万ではございませんから、そこは御了承願いたいと思います。  それから四十五度以南についてなぜそういう規制をしなければいかぬかという問題でございますが、これは先生も御承知と思いますが、ソ連等も強く主張しております資源の問題からいきまして、あそこで線は引いてありますが、マスの資源と大体同一資源でございます。それであの線内だけを議論してみてもしようがないじゃないか。やはり四十五度以南の問題もある程度約束をするとか何かしなければ資源の維持ができないじゃないか。であるから四十五度というものをもっと広めろというのが常にソ連の主張するところでございます。これを聞きますと、四十五度以南に一々出漁するのはノルマがきまらなければ出られぬということに結果として相なるわけでありまして、私ども資源としてはこれは当然一つであるけれども、この四十五度以南というものは条約の規制区域内ではないので、これは何かする必要があれば、日本側が当然これを自主的にやるということで、常に規制区域拡大については反対したわけでございます。今年度これをやります理由は、特にマスにつきましては、実はとれる漁種から言いますと、以南の流し網が一番多いわけでございますので、これにつきましては、資源保護という面からと、規制区域拡大を避けるという面面から、先ほど言いましたように自主規制措置を考えたらどうかということでやったわけでございます。
  119. 永井勝次郎

    ○永井委員 四十五度以南における小型、はえなわ、定置、合わせて総量これこれということであります。長官の方では大体三十六年では総量幾らぐらいになるという見通しですか。
  120. 伊東正義

    ○伊東政府委員 これは統計調査部の方で実は統計を出しますので、私の方で、今ここで十二月末は幾らということは、ちょっとまだまとまっておりませんので申し上げかねますが、八万と言いましたのは、先ほど言いましたように八月末の統計でございます。
  121. 永井勝次郎

    ○永井委員 大体政府の方では七万トン前後を期待しておる、また約束した、こういうことですが、その七万トンというのは、どういうような方式で七万トンという約束が確保されるということが期待されたのか。どのような行政措置、あるいは業者間の調整なら調整、具体的にどういう措置を講じたから七万トンの限度でそれが守られるだろうと期待されたのか。単に言いっぱなしなのか、あるいは七万トンというのが、それほど、こえたらこういう強い規制をするぞというほど、七万トンと八万トンとの一万トンの差というものは重大な関係を持つ数字なのか、これを一つ伺いたいと思います。
  122. 伊東正義

    ○伊東政府委員 政府としましては、七万を、たとえば以南に幾ら、はえなわに幾ら、日本海に幾ら、沿岸の定置に幾らというような分け方はいたしておりません。ただ以南につきまして、域内に入る漁期を短くするとか、あるいは操業期間の問題である程度操作はいたしましたが、七万を一々ノルマとして、以南に幾らと割り当てて、それをさらに一船々々に条約区域外に割り当てというようなことをしますことは、そういうことをすることが規制区域を広めてもいいのではないか、川船川船の割当をするというようなことであれば、規制区域を当然広めてもいいのではないかというような議論をまた誘発いたしますので、これはそこまでのところはやっておりません。
  123. 永井勝次郎

    ○永井委員 現地に行きますと、一船当たりの漁獲量というのはちゃんと許可をもらったり、許可の範囲内でやっておるので、一船々々を見れば、決してこれは違反をしておらないし、許可の限界においてこれを守ってやった。ただ水産庁が無計画にはえなわにも定置にも一こういう定置の関係はいろいろとれたりとれなかったりすることがあるでしょうが、違反じゃないのだ、一船々々守ってとって、総計してみたら八万トンになっていたのだ、こういうことを言っておるわけです。ですから違反者があった、道義的に操業をやらなかったという者があるなら、それはどこの部分にそういうものがあったのか、これは明確にしていただきたいということが一つ。  それから沿岸以南漁獲の中には、母船にくっついていった独航船が従来うんとやっておるように、ベコというのをやっている。これは最後に引き揚げるときに満船するようにとって持ってくるのです。これは当然区域内の漁獲であるが、隠して持ってくるのだから、沿岸に揚げたときにそれが沿岸漁獲量の中に計算される。こういうものもみなこの中に入っているわけですが、そのベコなんか一体水産庁はどのくらいに計算し、それから一船々々は許可された範囲でやって違反はないのだ、ちゃんと守っているのだ、ただ隻数が多いから、無計画な当局の許可によって総計の数量がふえただけである、こう言っておるのですが、この二点についてはどうですか。
  124. 伊東正義

    ○伊東政府委員 域内に入りますものは、一船々々漁獲の割当をいたしておりますので、これについては私は違反というものはないだろうということを信じたいと思っております。  先生のおっしゃいました、どこにそういう違反があったかということでございますが、今度の漁業交渉等でも違反船の通報をするわけでございますが——百数十ぱい通報をいたしておりますが、おもに日本海のものがオホーツクに入ったというようなのがかなりの部分を占めております。  あとは統計の問題でございますが、先生のおっしゃったベコ等につきましては、われわれといたしましては、統計の中でそういうものは幾らというふうには出てはおりません。ただ以南でとりましたものは、さっき私は七万トンが八万トンに総体でなった、こういうことを申し上げたのでありますが、大体六万五千くらいが以南の数字だろうというふうに見ております。
  125. 永井勝次郎

    ○永井委員 とにかく以南の漁業区域、あるいは流し網あるいははえなわ、定置の関係で、日ソ漁業の交渉にマイナスになるような条件を作るから、ここの部分に自主規制を強化しなければならぬ、そういう対象としてここを先ほどから水産庁長官は言っておられるが、その規制しなければならぬという対象は、七万トンと期待したのが八万トンとったからだ、こういうことを言っておる。だから、それならばその一万トンという差額というものは、それほど重大な国際的な影響を持つものかどうかということを私は聞いたわけです。そしてそういうものの中から、ベコから何から、これは沿岸の流し綱なんかの責任を負うことのできない分量がそこに相当あるのだ、そういうものをけじめをちゃんと分けて——そうしなければ、責任がどこにあるかということは実際出てこないのじゃないか、こういうことを私は言ったわけであります。  さらに、そういうことを一つ漁業交渉の前途として問題にするならば、母船の方でベニを七百七十万、一万五千トンをとろうということは、これは申し合わせてやっておる。ところが昨年はこれが三万四千トンとった、こういうようなことは、これはやはり規制区域内における問題だけに、対象区域外のところとは違って、こういう一万五千トンの予定よりとれないという申し合わせが三万四千トンとった、こういう問題こそやはりきびしく問題にしななければならない問題じゃないでしょうか。長官、これはいかがでしょう。
  126. 伊東正義

    ○伊東政府委員 永井先生は、七万が八万になった責任があるからこういうことをやるのだというふうにおとりになっておるようでございますが、そういうことだけではございません。先ほどから申し上げておりますように、特にマスの資源につきましては、将来非常に心配されるというので、日本も、ソ連もとらぬでほしいということを強く言おうと思うのでございますが、そういう資源の問題と、もう一つは、以南の四十五度を拡大して、一々一船一船ノルマがきまらなければ出漁できないという状態になることは絶対困るという二つの立場から、これをやっておるわけでございますので、この問題は、七万が八万になった責任でこういことをやるのだというふうには私はとっておりません。  もう一つのベニの問題でございますが、先生御承知のように、あそこのベニはアジア系のベニとアラスカ系のベニと両方ございます。実はアラスカ系のベニも相当多量にとっておるわけでございます。来年度等におきましては、このベニの問題も資源としては非常に少ないということがいわれておる年でございますので、特にアラスカ系ベニにつきまして、あの区域内でも、独航船についても、資源の面から見れば弾力的に考えたらどうだろうか、資源が来年度いいのであればまた出るというようなことで、弾力的に考えたらどうかということで、独航船につきましても、実はある程度のものを休漁してほしいということを言ったわけでございます。
  127. 永井勝次郎

    ○永井委員 そうしますと、四十五度以南の流し網の自主規制の二割整理という問題は、これは昔封建時代にあったように、敵の国に使いするときに、うちの方の責任者の首を切って、そうして箱に入れて、このように処分して参りました、どうかその他の点はよろしくというふうに、敵の膝下にみずからの城の安泰を守るために、部下の者の犠牲の首を持っていく、そういう意味におけるこれは整理なんですか。どうなんですか。
  128. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先生とその点は見解の相違でございますが、私ども資源の問題、それから四十五度の規制区域拡大は絶対反対だという二つの点からこういうことをしたのでございます。
  129. 永井勝次郎

    ○永井委員 われわれはやはりこの日ソ漁業交渉の関係においては、事のなるはなるの日になるにあらずで、私は今日このようにいろんな問題が提起されて、そうして両国の間で科学的に漁場その他を検討して、そうして資源の保族をやりましょうという共通の課題については、平行線のままこれがまだはっきりとした合意に達する点まではいっておらない、こういう平行線のままにしておいて、こちらがまず第一にオホーツク海のこの地区を全部放棄した、そうしてこの区域に出ていた母船二隻を犠牲にして、東の方に一万トンの漁獲量をふやすためにあの地域の漁場を放棄した、それから流し網その他独航船も漁獲量の減るにつれてどんどんどんどんこれを犠牲にしてすぼめてきた、こういうような一つの経過をたどっておると思うのであります。そうして日ソ漁業交渉の関係についてはもう少し慎重にやるべきであったにかかわらず、二十七年発足当時においては母船三隻、独航船五十隻、調査船七   これだけの出漁であったにもかかわらず、河野農林大臣になるや、三十一年には太平洋において母船十四隻、西カムにおいて三隻、実に十六母船という膨大な数にこれをふやして、しかも十六母船団で足りないで、この年度十七船団から十九船団を組もうと計画した。そこでソ連の方からブルガーニン・ラインを設定するというような問題が出てきまして、大あわてにあわててこれを引っ込めた。独航船については五百五十七隻、こういうような急激な膨大なふやし方をして、われ先に利権的にそういう漁場を争おうとする、そういうような無計画な問題を提起しましたために、先方から資源の保族だ、こういう問題を出されて、のっぴきならなくなってだんだんだんだん追い詰められてきておるのが現状だと思う。そうして母船の安泰を確保しながら、そのしわ寄せを独航船に持ってくる、さらにそれより弱い流し網に持ってくる。長官は休漁だ、こう言っておりますけれども、休漁ということはどういうことですか。言葉で休めといったって、これは首切りということと同じでしょう。マグロ船や何かに転換するといったって、資金の関係から、漁具の関係から、規模の関係から、漁師の関係から、こんなもの簡単にできるものではありません。ちょっとやそっとの金でできるものではありません。こんなものはやめろということです。ただお前が力があったらやりなさいという、絵にかいたもちです。見せるだけのものです。ほんとうに漁民の生活の内容にわたってこれを転換させるための問題を論議するなら、もっとまじめな答えが出てこなければならぬ。そのためには角屋君も言ったように、この問題はもっと民主的な、それぞれの審議会か何なりにかけて、これからの方向をもっと民主的に打ち出して、そうして納得させてやるという、こういう手続、方法が講じられなければならないにもかかわらず、そういうことはしないでいきなりやってきた。その内容はだれが見たって、どういう口実をつけようと、母船の利益を確保するために、そのしわ寄せを独航船と流し網に持ってきた、こういわざるを得ないのです。そうして船の関係からいたしましても、流し網の大臣許可関係が最初のころはほんとうにわずか、二、三十隻くらいよりなかったのが、現在は二百六十四隻にふえた。知事許可船は千七百幾らあったのが現在は百五十一隻に減った。短い間にこういう減り方をしておる。それは大きな三十トン以上、こういうふうに固めさせるためには、実績船のトン数を持ってこいということで、どんどん買いつぶす。五十トン、八十トン以上の大きな独航船についてはやがてそういうものを持ってきますからという念書を入れれば認めるという差等のあるやり方で、独航船をふやして、沿岸漁船は買いつぶしていく、こういう形でどんどん個人の漁業権益を縮めてきて、そうしてこの縮める過程においては、補償金を何回かお前の方で出せというので、残っているものが出して、大きな負債をしょって自主調整をやってきた。この段階にきて、この条約の対象になっておらない区域にまで手を伸べて、そうしてこれを縮めて、この犠牲において規制区域の母船の漁獲量とその利益とを守ろう、こういうようなやり方は、私は非常に悪性のやり方だと思う。行政権限の上に立って民意を無視した悪性なやり方だと、こう私は思うのでありますが、これに対して長官はどういうふうにお考えになるのか、お伺いいたしたいと思います。
  130. 伊東正義

    ○伊東政府委員 何か先生のお話を伺っておりますと、条約規制区域外の方をだんだん小さくして、母船か何かそういうものの利益だけをはかるというようなことを先生おっしゃいましたが、現実の漁獲数量なんか見ますと、規制区域外の方が過去三カ年ぐらいからずっと多くなっておるのでございます。以前においては母船が操業します区域の漁獲量の方が多かったのでございますが、傾向としましては、昭和三十四年から規制底域外の方が数はずっとよけいになってきております。また、今度やりました措置につきまして、こういうことをやって母船の側の利益をはかるのだという御質問でございますが、私どもは全然そういうことは考えておりません。以南の人もやはり将来にわたってこの資源を円滑に利用できるということには、こうやることが一番妥当であるという見地に立ってやったのでございまして、これで私は条約規制区域内だけをよけいにするとか、そういうようなことは毛頭考えておりません。
  131. 永井勝次郎

    ○永井委員 いや、考える、考えないという問題でなくて、あなたのおやりになる現実の効果というものが、沿岸流し網の犠牲において母船が守られるという形になっておるわけです。規制外なんです。日ソ漁業交渉が始まってから流し網漁業は沿岸でやっているのじゃない。ずっと親代々やっているわけです。そういう地域に対して、この規制の手を差し伸べるということはふらち千万だ、私はこう言うわけです。これらの問題については、私はまた資料をもってもっと時間のあるときに大臣に対していろいろ具体的にお尋ねしたいと思いますが、先般予算委員会の分科会で、母船がぼろもうけしているの辺という話をしたら、大臣は、いやそうじゃない、流し網がぼろもうけしているのだ、ぼろもうけしているからこれは何とかしなければいけないのだ——長官もお聞きであったでしょうが、こういうような大臣のお話があったわけですが、沿岸流し網がぼろもうけしているということはどういうことなんですか。数字的に私はこの際長官から承っておきたいと思います。
  132. 伊東正義

    ○伊東政府委員 私もそばで聞いておりましたので、その当時のことを覚えておりますが、私の記憶に間違いなければ、大臣はこうおっしゃったと思います。四八の以南の流し網を沿岸漁業、沿岸漁業という、しかしいわゆる沿岸漁業の概念からいうと、大部分のものは違うんじゃないか、いわゆる沿岸漁業というのは、層からいえばもっと低いものだ、あの四八の流しをもって普通のいわゆる沿岸漁業と同じように見るということは間違いだろうという意味のことを大臣が言われ、もう一つは、規制区域内でとるものよりも、規制区域外でとる数字の方が、四八は六万五千ぐらいとっております。独航船はたしか五万三千ぐらいでございますので、一船当たりに割ってみても漁獲量は多いのだという意味のことを大臣は言われたのだというふうに、私は隣にすわっていて記憶いたしております。
  133. 永井勝次郎

    ○永井委員 だから、そのぼろもうけしておるという数字的根拠を示してもらいたい。
  134. 伊東正義

    ○伊東政府委員 大臣はほろもうけということは言われなかったと私は思います。漁獲量が一船当たりに割ってみると独航船より以南の方が多いのだということを言われたと私は記憶しておりまして、ぼろもうけということは言われなかったと思うのでございます。
  135. 永井勝次郎

    ○永井委員 私の手元にある数字によれば、母船の関係は、独航船と母船の間に取引が行なわれておる。それによると、ベニは一キロ百九十八円、シロの場合九十五円、マスの場合八十三円五十銭、ギンスケの場合百三十二円五十銭、こういう取引の価格です。ところが流し網沿岸漁民が漁獲したものの取引は、ベニが一キロ三百十円、マスが百二十円、これは非常に高い価格で取引されておるので、漁獲量はふえなくても、母船の一方的な価格による搾取というものがないから、沿岸漁民の収益は上がっておる。独航船の方は母船にピンはねされているから、このような価格で取引するから収益が上がらない、こういうことによる収益差は私は出ていると思う。こういう収益差があればあるほど、独占資本に利益を独占させないために沿岸の漁獲をふやしていくという方向をとることが、私は水産庁の行政の方向であろうと思う。それを逆に、こういうふうにぼろもうけしておるのだから、それを削って、そしてもうからない方へくっつけてやらなければいけないのだ、こういうような考え方というものは、そういう表面に表われた現象だけを、非常に皮相な見解、浅薄な考えで判断して、そしていかにしたら母船の利益を守る理由がつくだろうかということにきゅうきゅうとしているやり方だ、こう私は思うのであります。このことは水産庁長官に言ったところで解決しない問題だと思います。ただ、水産庁は事務当局でありますから、水産庁長官以下やはり良心的な作業をし、そして正しい一つの資料というものが出てこなければいけない。違った価値評価を結論づけるために数字をごまかしたり、作業を左右したり、そういうことはすべきでない。そういう一つの正しい資料の上に立ってわれわれはお互いに価値判断をするというところに、政治なり行政の進歩がある、こういうふうに確信するのであります。  これらの問題については本日は時間がございませんから、私はこの程度にとどめまして、いずれ大臣出席の際もっと突っ込んだ具体的な問題について質疑をしていきたいと思います。本日はこの程度で私の質問を終わります。
  136. 野原正勝

    野原委員長 次会は来たる十三旧開会することとし、これにて散会いたします。    午後四時五十九分散会      ————◇—————