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1962-03-01 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月一日(木曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 丹羽 兵助君    理事 山中 貞則君 理事 足鹿  覺君    理事 石田 宥全君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       金子 岩三君    仮谷 忠男君       小枝 一雄君    坂田 英一君       谷垣 專一君    綱島 正興君       内藤  隆君    福永 一臣君       藤田 義光君    本名  武君       米山 恒治君    角屋堅次郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       安井 吉典君    山田 長司君       湯山  勇君    玉置 一徳君  出席政府委員         農林政務次官  中馬 辰猪君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         水産庁長官   伊東 正義君         水産庁次長   村田 豊三君  委員外出席者         農 林 技 官         (農林経済局金         融課長)    立川  基君         農林事務官         水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         農林漁業金融公         庫総裁     清井  正君     ————————————— 三月一日  委員飯塚定輔君及び本名武辞任につき、その  補欠として前田正男君及び辻寛一君が議長の指  名で委員に選任された。 同日  委員辻寛一君及び前田正男辞任につき、その  補欠として本名武君及び飯塚定輔君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四号)      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。西宮弘君。
  3. 西宮弘

    西宮委員 それでは農林金融につきまして一つお尋ねいたしたいと思うのでありますが、農林金融についてお尋ねをするということになりますると、何と申しましても、まず第一に、これは古くしてしかも常に新しい問題でありますけれども農民の金を農民に使わせろ、農民の金を農民へという一つのスローガンがあるわけでありますが、これがなかなか文字通り実行されておらない、理想の通りに実行されておらないということに常に問題があるわけであります。つまり、せっかく農民の金が集まりましても、農民融資されないで他に流れ出してしまうという問題、あるいは同時にまた、農民がぜひとも金が借りたい、のどから手が出るほど金がほしいと言っておる農民には金が渡らない、こういう悩みを常に持っておるわけであります。この問題は何もきのうきょうの問題ではないので、古い問題ではございますけれども、非常に困難な問題でありますから、従って、そう奇想天外な名手があるとは思いませんが、しかし、それにしても一番基本的な問題でありまするので、こういう問題についてどういう方向考えておられるのか、その方向だけでも一まず伺っておきたいと思う。
  4. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り農業金融の問題におきまして農民資金が最近相当系統金融機関に集まっておるのでございまして、これはほんとう農業のために還元されることが非常に大きな問題であろうと思うのであります。現在の状況を見ますると、大体昨年の十二月末で末端農協預金は一兆円を突破いたしております。それから信連預金が六千億、農林中金へ上がってきておるのが二千七百億という程度で、昨年の同月に比べまして預金の増加は全体として大体二千億くらいふえております。そういう工合に毎年の伸びが相当大きくなってきておりまして、この金がほんとう農民に還元されることが必要なわけでございますけれども、御承知通り系統金融の問題を考えてみますと、農協に預け、信連に預ける、それから農林中金に預けるという格好でほとんど預金として集まっておるという状況であります。そのために系統金融にはいろいろコストがかかっておるのでございまして、やはりそこが一つの大きな問題でございます。それからもう一点は、御承知のように農民は非常に信用度が低い、こういう点でせっかく農協に集まりましてもなかなか農民には貸せないという問題がありますので、そういう点から将来の問題としては、農業協同組合系統資金十分農民に還元される方向系統充実されることが必要であろうと思いますけれども、現在の段階ではなかなかそこまで参りませんから、とにかく政府でもこれに対して援助をしよう、こういうことで三十六年度から近代化資金制度というものを作りまして、先ほど申し上げました問題点の、金利を下げるという問題と信用度の低いのを補完してやろう、こういうことで金利を下げるのと利子補給信用保証協会に対する補助、こういうことをやっておるのでございまして、これを通じまして農業協同組合経営合理化一つ進め、そうして政府援助と相待って農民の金を農民に還元できるような方向に進めて参りたい、こういう工合考えております。
  5. 西宮弘

    西宮委員 今のお話の中に、第一の問題は系統充実であるという点が指摘をされたのですが、その系統充実というのは具体的にはどういうことですか。
  6. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在の農業協同組合状況を全般的に見ますと、総合農協で一万一千くらいでございます。簡単に申し上げましてその中の、三分の一は大体赤字組合、残りの半分、すなわちあとの三分の一はどうやら動いている、あとの三分の一が大体健全な組合だという状況でございまして、このために農協整備促進とかいろいろなことを今までやって参りましたが、なかなかそういう状態を解消するようなところまで参っておりませんので、三千六年度から農協合併促進法を作り、これに対して合併援助をいたしまして政府でも援助をする、そういうようなことで補助金等も組んでおりまして、そうして農協規模を拡大して経済的にもやっていける状態にまで持っていって、経営内容合理化もはかっていくように進める、こういうことで現在進めておるわけでございます。
  7. 西宮弘

    西宮委員 そうすると、具体的な方策というのは合併を推進するということだけですね、たとえば金融にはいろいろとコストがかかり過ぎるという問題についていろいろ指摘をされる問題もあるわけですけれども、今のお話ですと、要するに合併を推進するということだけでございますか。
  8. 坂村吉正

    坂村政府委員 ただいま申し上げましたのは政府が本年度取り上げました施策として一番目についたものを申し上げたのでございますが、そのほか、御承知通り農業協同組合への経営指導といいますか、あるいは経理の指導といいますかそういうようなものにつきましては、私ども中央会等を通じまして常時指導監督をいたして参っておりますし、また全国の農協中央会等におきましても農協体質改善というところに頭を向けまして、体質改善運動というような姿で経営合理化についての指導を進めて参っております。
  9. 西宮弘

    西宮委員 たとえば先般本会議でわが党の代表者から質問いたしたのに対しまして、大蔵大臣が非常にコストがよけいかかり過ぎる、それを大蔵大臣は五段階くらいに話をしておりましたが、単協信連支所信連中金支所中金ということで五段階段階があるんだ、そのたびごとコストがかさむのだというような答弁をしておられましたが、そういう問題についてはどういうふうに考えておられますか。
  10. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り単協信連中金と、少なくともそれだけでも片道三段階ございまして、これが返って参ります場合には三段階かかる、こういうようなことで、ございますので、そういう点につきましてはこれは団体制度の根本問題にもなりますので、軽々にこれをどうこうするというわけには参らぬと思うのでございますけれども、少なくとも具体的に考えた場合には、先ほど申し上げましたように一兆円の預金単協段階にありますか、これが六千億は信連に上がってしまう、こういう状況でございますので、問題は、その預金があったものがほんとう末端段階農民単協から貸される、こういうことはコストをかけないで金利を安くして農民に還元する一番いい方法じゃないかと考えられるのでございます。そこで私どもといたしましては、とにかく末端段階でできるだけ貸せ、こういう指導をして参りたいと思っておるのでございます。これについて今までいろいろ不便なり手数がかかりましたのを、信用保証協会なりそういうものを活用いたしまして、末端で貸せるようにできる、だけ持っていきたい、こういう工合考えておるわけでございます。
  11. 西宮弘

    西宮委員 私も今の御答弁通り、少なくとも三段階あることだけは間違いがないと思うのです。大蔵大臣支所を加えての五段階という説明は私は適当じゃないと思って聞いておったのであります。三段階もそのままでいいのかどうかということにはもちろん問題があると思いますけれども支所も加えて五段階というようなことでそのたびにコストがかかる——支所存在そのものはそこでコストがよけいかさむという筋合いのものではないと私は考えておるので、大蔵大臣説明は少し実情に沿わないと考えるわけであります。  ところで、ごく最近の数字として一兆円の預金信連あるいは中金に集まっておる状況を今伺いましたが、ただ傾向として、ここ数年間の例を見ますと、信連に集まった金がさらに中金に吸収されるものがパーセンテージで非常に減っておるわけですね。これは一体どういうわけですか。
  12. 坂村吉正

    坂村政府委員 傾向といたしましては、信連からの中金に参ります金は減っておるという傾向はございます。これは昨年から私ども単協でできるだけ貸せ、単協で余ったものは信連に持ってくる、信連段階でできるだけ貸すように指導をしておるのでありまして、そこで余りましたものは中金に持っていっていいじゃないか、中金では全国的な資金調整の機能と、それに余るものについては関連産業への貸し出しはやってもちっとも差しつかえないじゃないか、こういうような考え方指導しておるのでございまして、必要量以上に何でもかんでも上へ上げろ、こういう指導はかえって農業金融実態からいいまして適当ではないのじゃないかというような考え方でおるのであります。そういう結果からある程度そういう現象が出ておるのじゃないかという感じを持っております。
  13. 西宮弘

    西宮委員 いわゆる系統利用という観点からもう一つお尋ねしたいのですが、最近の地方銀行進出状況はどういう工合ですか。
  14. 坂村吉正

    坂村政府委員 地方銀行状況につきましては、最近農業に対する投資というものはなかなかそう進んでおりません。しかし昔から地方銀行農業融資につきましてはある程度の役割を果たしておるのでございまして、本年度設けました近代化資金等につきましては、先ほど申し上げましたように系統資金を積極的に活用しよう、こういう趣旨でございますので、地方銀行の金をこれの対象にすることは一応除いておりまするけれども、いろいろ今後の問題としては検討せねばならぬ問題じゃないかというふうな気持は持っておりまするけれども、現在は積極的にこれを使おうというつもりで考えてはおりません。
  15. 西宮弘

    西宮委員 特に最近のいわゆる成長農産物といわれる、しかも規模の大きなそういうものには、かなり銀行が金を貸そうということで、銀行自身もずいぶんPRに努めておるようでありますが、そういう面から見た地方銀行農村進出という傾向はどうですか。
  16. 坂村吉正

    坂村政府委員 先般来地方銀行協会等からも陳情がございまして、近代化資金についても地方銀行資金を使わしたらどうか、こういう話もございます。そこで私どもといたしましても、地方銀行筋農業投資を相半積極的に考えているという状況にはあろうと思うのでございます。しかし問題は、農業近代化ということを考えました場合に、大体設備投資中心でございまして、五年、十年あるいは十五年という設備投資地方銀行農業に対してできるだけの自分の受け入れ態勢がはたしてできているかどうか、こういうところが問題でございまして、三カ月、六カ月の手形を切りかえ切りかえ三年なり二年なり貸していくというような態勢ではたして長期投資ができるかどうか、そういう点に相当問題があるのじゃないかということで、私は、地方銀行十分長期投資ができる態勢を作るべきではないか、こういうことを昨年来申しておるのでございまして、そういう問題については地方銀行の中でもいろいろ検討しているのじゃないかというふうに思っております。
  17. 西宮弘

    西宮委員 現実に、大きな養鶏あるいは養豚などの畜産の施設などに——非常に規模の大きな企業と申しますか、そういう共同経営にはかなり地方銀行が金を出しておる。これは現実にそういう結果が出ておるわけですが、ただ私ども心配をいたしますのは、そういういわゆる今後の成長産業成長農産物といわれる面だけ地方銀行が取り上げて、あるいはそこに進出をしていく。従って、そういう工合に、これから伸びる農業だけ地方銀行進出をしてしまう。いわばつまみ食いをしてしまって、あとなかなかそろばんに乗らないというようなものだけが普通の系統金融にまかされてしまうようなことになっては困ると思うのですが、そういう心配はありませんか。
  18. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通りでございます。そういうこともいろいろ心配しまして、私ども慎重に検討いたしておるのでございまして、地方銀行の中の態勢がどういう工合にできるかというようなこととあわせまして十分検討いたしたいと思います。
  19. 西宮弘

    西宮委員 もう一つ、やはり系統の問題でありますが、個人貸借ですね。これは農家経済調査などから見ても必ずしもふえてはおりません。むしろ傾向としては、そのパーセンテージで見ますると若干減っているかと思います。しかし依然として相当個人貸借が行なわれているということは非常に困ったこと、だと私は考えるのですが、その問題についてのお考えはどうですか。
  20. 坂村吉正

    坂村政府委員 農民がどういうところから借金をしているかということを農家資金動態調査で調べてみますると、これは三十五年までの数字でございまするけれども個人貸借が、三十一年度におきましては、三八%くらいございました。それが、三十二、三十三、三十四年と、三七%、二五%、二五%、それから三十五年には一九・七%と減っております。ですから、そういうような関係で、農業協同組合その他からの借り入れがだんだんふえて参りまして、個人貸借が減っておるという実態になっておるんじゃないかと思うのでございます。  しかし農業協同組合の方を見ますると、農業協同組合の方からの借り入れというのは、三十一年には四三%。ところが、それがほとんど横ばいでございまして、三十先年には四五・八%、大体四六%になっております。そういうような状況で、三十五年になりますと、農協からの借り入れの率が相当ふえてくる、こういう状況になっておりまするし、財政資金が、三十一年には七・八%でございましたが、三十五年には一七・四%で、財政資金借り入れのウエートが非常にふえております。  そういう状況で、個人貸借というものは、これを皆無にするというわけにはもちろん参らぬと思いますけれども傾向といたしましてはそれが減って参りまして、それの置きかわりが農協なり財政資金に移っているというような状況でございまして、傾向としては政府施策もこれでだんだん惨透しつつあるというふうに見ていいのではないかというように考えております。
  21. 西宮弘

    西宮委員 私の農家経済調査で見てきた数字と若干違いますけれども、しかしそれにしても、傾向としては、私も申し上げ、また今局長の御答弁にもあったように、個人借り入れの分はだんだん減っておりますから、それは非常にけっこうなことだと思うのです。ただしかし依然として相当量これが残っておるということは、貸し出しをする農協が弱体である場合もありましょうし、あるいは借りる組合員が弱体である場合もありましょうし、あるいはまたその組合員の借りる資金の使途がきわめて消費、的なものだというような場合等も非常に多いと思う。いずれにしても、どの理由にしても、まことにけっこうでない理由だけでありますから、これは、今後とも一つこういう点には重大関心を持って、これはゼロにはならぬかもしれませんけれども、さらに改善されるように努力をしていただきたい、努力すべきだと私は考えるわけですが、その点はその程度にいたします。  それから、今回の特に近代化資金ですね。これなどは、貸し出しの目標、あるいは政府としてどういう考え方指導しておられますか。というのは、自立経営を推進する、それからもう一つ協業を育成する、いわゆる共同経営を育成するという、大別をすれば二つあると思うのですが、そのどっちに重点を置いて政府としては指導しておられますか。
  22. 坂村吉正

    坂村政府委員 近代化資金融資考え方につきましては、農業基本法にもありますように、近代化を進めていく場合におきましては、自立経営の育成という問題と、それから、それではできない問題がございまして、どうしても協業化とか共同化、そういう方向でやっていかなければならない問題が実はあるのでございまして、これらについては、金融の面では同じように考えていくべきではないかというつもりで指導いたしておるわけでございます。従いまして、たとえば県で、いろいろ各地々々によって自立経営中心にしていく場合もございましょうし、あるいは共同化を非常に推進していかれる場合もございましょう。そういう各地実情に応じまして、県の計画等に従ってこの融資がつきますように、こういうような意味で、そういう考え方のもとに指導いたしております。
  23. 西宮弘

    西宮委員 そうすると、政府としてはそのどっちに重点を置くというような考え方はない、こういう意味ですな。要するに、地方実情にまかせてあるということで、政府としては特別の考えはない。こういうことですね。
  24. 坂村吉正

    坂村政府委員 金融の問題でございまするから、各地々々の実情で、いろいろな実態があろうと思いますので、それに応じて有効に融資がつきますように、こういう考え方指導いたしております。
  25. 西宮弘

    西宮委員 数字を見ますると、ほとんど大部分がいわゆる自立経営と申しますか、要するに個人対象になっているわけですね。協業共同という面はきわめて少ないわけです。これはもちろんいろいろ原因があると思いますけれども、私は、もう少しその共同経営あるいは協業経営というものが伸びていいんじゃないかと思うのですが、これに対する、その今の貸し出しをされている現実に対してのお考えはどうですか。
  26. 坂村吉正

    坂村政府委員 三十六年の実情を見てみますると、これは十二月末でございまするけれども、三十六年度の年度中途で、秋になりましてから法案が通過したというような関係もございまして、いろいろごたごたはいたしましたけれども、大体十二月末までに、三百億円のうち百五十七億ばかりの融資が行なわれております。その中で、個人施設が百三十六億でございまして、農協等共同利用施設が二十一億になっております。この個人施設の中には、協業でございます。要するに数人共同していろいろ中業をやっておる、こういうようなものも含まれておるのでございますが、これが大体五%ないし一〇%、こういう状況でございます。これから見ますると、協業というのが案外少ない、こういう実態が出るのでございますけれども、御承知のように、農地法改正、それから農協法改正法案等が継続、審査になっておりまして、まだそういう協業というような問題につきましての積極的なものが、政府としてもなかなか出ていないわけでございますので、末端でも、協業というのを積極的にやっていこうというようなことで、融資の面までなかなかはね返ってこないのじゃないかというような感じがいたしております。農協法なり農地法改正案通りますれば、この問題がずっと進んでくるのじゃないかというふうに私は考えておるわけでございます。
  27. 西宮弘

    西宮委員 それでは数字お尋ねをいたしますが、今までに貸し出されたのは、金額で一件どのくらいずつになっていますか。
  28. 坂村吉正

    坂村政府委員 協業の問題でございますか。
  29. 西宮弘

    西宮委員 両方です。
  30. 坂村吉正

    坂村政府委員 全体でございますか。
  31. 西宮弘

    西宮委員 ええ。
  32. 坂村吉正

    坂村政府委員 一県当たり三億余りになります。
  33. 西宮弘

    西宮委員 一県当たり——そうじゃないですよ。貸出件数一つのケース。
  34. 坂村吉正

    坂村政府委員 個人施設につきましては、今までのものを見ますると、大体一件当たり三十万前後のものが多いようでございます。それから、協業の場合には、百万前後くらいまで、実績はそういう実績を示しております。
  35. 西宮弘

    西宮委員 私の持っておる数字でも、傾向は全く同じであります。要するに私が言いたいのは、三十万、四十万、多いところで四十万というのが実情であります。従って、これではほとんど今の新しい時代要請に応じての大きな経営なんということはとうていできないということが考えられるので、私が言いたいと思うことは、この点について結局そういうことにならざるを得ないと思うのでございますが、去年の予算では三百億、それを地方に分ける、あるいは単協単位考えてみたりいたしますると、その平均の数はきわめて少ないので、それを相当数の人間に貸すということになると、まあ三十万、四十万、私の数字でも多いところで四十万というような数字なんですが、結局こういうことになってしまって、ほとんど新しい時代要請に応じて発足しようとする仕事にはとても取り組むことができない、こういうことがきわめてはっきりしていると思うのですが、そういう点で、ことしは去年の三百億が五百億になりましたけれども、私は、それでもとても思ったようなことはできないと思うのですが、その点についてはどうですか。
  36. 坂村吉正

    坂村政府委員 三十七年の各県の近代化資金融資希望をとってみますると、これは県の希望数字でございまするけれども、私どもで取りまとめたところでは五百十六億ぐらいになっております。県がはたして末端まで実態をつかんでそういう希望を出しているかどうか、その点については私もそこまでは調査はいたしておりませんが、一応県を相手にしてとりました数字は、その程度でございます。だから、三十七年の五百億の融資ワクということは、実情の県の要望に比べましてそう低い数字じゃないんじゃないかというふうな感じはいたしております。しかし何と申しましても、制度の発足の当初でございまするので、なかなか運用面でもそうスムーズに動いていない面もあると思いますから、今後その実施の状況等を見まして、農業協同組合系統資金の集まり方、そういうものも考えまして、当然必要なものについては必要な増額をできるだけ努力して参りたいというふうに考えております。
  37. 西宮弘

    西宮委員 もし今これに対する地方からの資金の需要が五百億をちょっとこえた程度だということで、要するに今準備している資金と大体パーだというようなことであるとするならば、私は、この制度自身にいろいろ問題があるのではないか。と申しますのは、今言うように、三十万ないし四十万、あるいは今度五百億になったらそれより少しふえるかもしれませんけれども、それにしても大した違いじゃないわけで、少しふえるという程度だ。そんなことではとても農業近代化をはかるというような、そういう目的は容易に速成できないのではないか。そもそも農業近代化というのは何をするのかということ、いわゆる近代化の定義から始まらなくちゃならぬかもしれませんけれども、たとえば機械を導入するという問題、あるいは従来の穀物を作っておった農業からいわゆる成長農産物に切りかえるという問題があったり、あるいは従来の自給自足的な考えから商品作物を作るというようなこととか、常識的に考えられる近代化という概念はそんなことだろうと思うのですけれども、かりにそうだとすれば、そのいずれをとってみても、それが三十万や四十万、五十万の程度でできる筋合いのものじゃないと思うのです。ですから、近代化を促進しようとしてこの新しい資金制度ができて、ところが、その貸し出し現実は、三十万ないし四十万、あるいは今度伸びても五十万あるいは六十万の程度だというのか現実であり、さらに農村からの需要もその程度でとどまっているというのであるとすれば、制度自体に問題がある、つまり、近代化を促進するには十分でない要素を持っている、こういうふうに考えざるを得ないと思うのですが、その点はいかがですか。
  38. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り、現在までの貸し出し状況を見ますと、そういう感がいたすのでございまするが、私いろいろ情勢を見ますると、たとえば三人、五人の協業化でも、養豚事業をやっている、あるいは養鶏事業をやっているというような場合に、おそらく五、六百万あるいは七、八百万の金が必要、だ、こういう状況を見ましても、平均大体百万円前後で協業化資金が出ているということは、まだどうもそこいら辺に、積極的にこの近代化資金を使って、ほんとうに資本装備を充実していこうというようなことが、具体的になかなか動いてこないのじゃないかというふうな感じがするのでございまして、ただいま申し上げましたように、個人施設についても三十万が平均だというような状況では、おそらくほんとうに資本装備が十分にできるとは思われません。そういうような状況でございまして、何としても発足当初でございますので、いろいろ運用状況等についてもよく見まして、必要な指導をし、それからいろいろ指導方向等も考えて、十分にほんとう重点的にこれは近代化のために使われるようにということで処置をして参りたいと思っております。
  39. 西宮弘

    西宮委員 その重点的に使わせるというのは、そういうふうに三十万、四十万というふうなことで、こまかくばらばらに分けないで、これはたしか今年の五百億の予算で計算しても、一農協平均にすると大体四百万くらいの金だと思いますが、そうするとそれを三十万、四十万というふうにこま切れに使わないで、かりに四百万なら四百万を一カ所に使わせる、そういう方針でいこうというわけですか。
  40. 坂村吉正

    坂村政府委員 そうはっきり割り切るわけにも参らぬと思うのでございますけれども、何といたしましても、金を農協平均で全部割ってしまうということになりますれば、これは非常に小さなものになって、農協では使えない、ほとんど一人か二人しか借りられないというようなことになろうかと思いますので、県なら県におきましても、近代化あるいは構造改善等につきましても、いろいろ計画がありますので、そういう計画に沿いまして、できるだけ重点的に考慮して指導して参りまして、そして必要なものについては、融資の額も必要な額は融資がされるように、そして有効に全きるように考えていかなければ、この制度を作った意味がないと思いますので、そういう工合指導いたして参りたいと思っておるわけでございます。どこでも必要なだけいくということになりますれば、現在の状況では相当膨大な金が要りましょうし、はたしてその膨大な金がそれだけ十分にほんとうに生きるかということを考えますと、必ずしもそうじゃないというふうにも思われますので、金額の総ワクにおいては、現在ではまだそう十分ではございませんけれども、これの使い方を見ながらふやしていく、こういう考え方指導していった方が、着実に伸びるのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  41. 西宮弘

    西宮委員 そういう考えならば、こういう構想はありませんか。三十万でも五十万でも、おそらく借りたところは三十万なら三十万なりに何かやっていると思うのです。むろん必ずしも効率的に動いていないかもしれないけれども、一応われわれこっちからながめる場合には、三十万は三十万で生きていると考えざるを得ないのですから、それはそれ相当の効果を上げていると思うのですが、それとは別個に、今お話にもありました数百万を要するというような大きな企業といいますか、企業的農業、そういうところに思い切って貸し出しをする。たとえば乳牛の場合なら三十頭飼っても、少なくとも六百万から多ければ三千万くらいかかるといわれますし、あるいは豚なら二百頭飼えば少なくとも百五十万はかかる。あるいは鶏二千羽飼えば、これまた少なくとも二億五十万はかかる。こういうふうに常識的にいわれておるのでありますから、そういうのを思い切って育成するというのであれば、それは今やられておる五百億とは別に、もっぱらそういうものを対象にした新しい金融制度考える、こういう構想はありませんか。
  42. 坂村吉正

    坂村政府委員 ただいま申し上げましたように、近代化を進めていく場合におきましても、協業というものが相当各地で行なわれつつありますので、これらはやはり一緒に考えて参りませんと、これだけ取り上げて特別な金融制度を作るということが、はたして農村の実情に合うかどうか、これは相当疑問じゃないかと思っております。ですからそういうような意味で、たとえば五百億なら五百億のワクの中で、とにかくその地帯の実情に応じまして、個人自立経営育成に重点を置いていく場合もございましょうし、それから協業なら協業重点を置く場合もございましょうから、そういう各地々々の実情に応じて重点的な指導をして参る方が能率としてはいいのじゃないか、全体の農村の実情にもその方が合うのじゃないかというふうにも考えております。
  43. 西宮弘

    西宮委員 私は、これは根本的な問題にもなると思いますが、今申し上げたように、とにかくその必要に応じて思い切って金を出す、そういう金融の組織が一つないと、何もかも中途半端に終わってしまうのではないかということをほんとうに心から心配するのです。たとえばさっき冒頭に取り上げた問題でも、せっかく農民の集めた金が農民に還元されないで農業以外に流れてしまうということも、これは資金としては安全度の高いところにいくわけですから、その意味ではこれはやむを得ないと思いますが、そういう点から農業の場合の資金回収ということになると非常に不安があるのでございます。そういうことで農業はいつも不利な立場にあるわけです。だからその金が借りられない、借りられないからいつまでたっても一人前になれない、だからいつもさらに資金を借りようと思ってもその資金が導入できない、こういう悪循環が常に繰り返されておると思うのです。ですからそういうことを思い切って断ち切って、農業にも他の産業と同じように金融機関が喜んで金を貸してくれるというようなものを作るためには、一ぺん思い切ってその悪循環をどこかで断ち切らなければならないわけです。ですからその断ち切る手段として、その実情が十分につかめるならばそれには思い切って貸し出しをする、そういう制度が当然考えられてしかるべきじゃないか、私はそういうことを痛切に感ずるのでありますが、むろん今やっておることが悪いというので言っておるわけでもありませんし、また、それが地方実情に沿っておるということがしきりにいわれておるので、そういう考え方を否定をしておるわけでは決してございません。しかし、それはそれとして、今申し上げたように、いつまでたっても農業金融機関等から一人前に扱われないということを断ち切るためには、一つ思い切った施策をやる必要があるのではないかということをつくづく感ずるので、その点についての構想はないかということをお尋ねしておるわけであります。
  44. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り考え方もございましょうが、現状は、近代化といいましても、一時に金をつぎ込んだがためにすぐ近代化ができて、そうしてほかの金融機関からも金が借りられるような状態農業がなるというようなことは、なかなか今の農業実態からしてそういう状態ではないと思います。そこで、御承知のように構造改善事業というものをやりまして、あの事業にはモデル地区も作りますし、それから実際の実行をやっていく地区もあるのでありまして、モデル地区等でほんとうに構造改善ができて、その地区の農業近代化が進んでいくという実態がだんだん具体的になって参りますと、そういう意欲が相当強く出てくるのじゃないかという感じがするのであります。そういうものとも考え合わせまして、この近代化資金の運用については、この制度の範囲内においてできるだけそういうような方向に逐次指導して持っていく、こういうことがとりあえずの問題としては、一つのいくべき適当な方法ではあるまいかというように私は現在考えておるわけでございます。
  45. 西宮弘

    西宮委員 局長の、いわゆるこの制度制度として生かしていきたいというお考えはわかります。ですから私は、それはあえて否定はいたしませんが、今申し上げたのは私の意見でありますから、もし参考になるなら参考にして、近い将来そういうことを十分研究していただきたいということを要望する程度にとどめておきたいと思います。ただ、それほどの何百万、何千万というような大規模なものでなくとも、今貸し出しておる、たとえば三十万、四十万で切られておるということも、もう少し考えてもらえば、あるいは三十万で切られたものが五十万、五十万のものが七十万なり八十万なり百万借りられれば、どうやらやれるというようなものが切られておる例が、これまた少なくないと思います。それは平均して三十万ないし四十万程度にとどまっておるからそういうことになると思うのですが、これは各県におります農業改良普及員のなまの声がそのまま上がって参りまして、これを取りまとめておる機関があることを御承知かもしれませんが、そこで出ております農村金融についての要望を見るとその意見がすこぶる多いんですね。これは皆さんの最末端のいわば手足であります農業改良普及員のそのままのなまの声なんですが、その声を取りまとめたものを拾ってみますと、一々朗読はいたしませんけれども、思い切って貸してくれ、けちけち、ちょびちょび貸されるんでせっかくの大事な金が死んでしまうということを訴えている声が非常に多いのです。ですからこれは十分研究をしてもらいまして——私がさっき申し上げた大規模なものは、これは単に私の意見でありますから意見として申し上げるにとどめておきますが、そうではなしに今言ったような程度の、そういう意味実情に沿わない、いわゆる牛の片足資金だとかなんとか言われるようなそういうことに終わっておる例が非常に多いということを、農村の現実に生きている普及員が口をそろえて言っておりますので、これは一つ十分御指導願いたいと思います。
  46. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通りどもも普及員の実情を反映した意見は聞いております。そういう実情でございますので、そういう実態も十分考慮し、それから御質問の御趣旨にも沿うように、今までもそういうつもりでやっておりますけれども、来年度は特に私どもは留意をいたしまして指導して参りたいと思います。
  47. 西宮弘

    西宮委員 それでは方角を変えますけれども、あの近代化資金農協の金をそのまま使っているわけですが、これを政府の財政投融資でやるという考えはありませんか。
  48. 坂村吉正

    坂村政府委員 御承知通り政府の直接の財政投融資金融機関といたしましては農林漁業金融公庫があるのでございまして、こちらはこちらでその面で充実をして参りたいと思っておるわけでございます。本年度は融資総額が七百十億で昨年の六百億に比べると一八%の増加をいたしておるのでございますが、今後ともこの政府の直接融資の面は充実をしたいと思っておりますけれども、この近代化資金は、先ほど申し上げましたように、農協にたまっております金が今までどうも農村に還元されない、こういう点が非常に問題になっておりましたものですから、農業金融充実するという点とあわせましてその点の改善をはかることを考えました制度でございますので、この点はやはり農協の金を使うという点で続けていくという考え方で割り切って考えて参りたいと思っておるわけでございます。
  49. 西宮弘

    西宮委員 私はその農協の金を農村へ使わせるという考え方はもとよりけっこうだと思うのですが、ただ問題が二つばかりあると思うのです。一つ農協の金はどうしても長期資金には不向きな金だと思うのです。ことに最近のように食糧の統制、いわゆる食管制度の改革とかいうふうな問題等が問題になるとますますそういう点に不安を感ずるというような面が出てくるのが一つ。それからもう一つは、この金をその目的のために使うということにいたしましてもし返せないものが出るというふうな場合にはその危険負担が一般の農協組合員に及んでいくというような問題が問題であると思うのです。ですから一般の貯金者に脅威を与えるというような点が問題になると思うのです。そういう二つの点で私はかなり心配がある。ですからそういうことを一掃するためならば政府の財政投融資というようなことでいけばその点は救われるわけなんですが、その考えはいかがですか。
  50. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り農協の金を使います場合にはいろいろ困難な問題がございます。ですからその点で一番大きな金利の問題とか信用の問題とかについてはとにかく政府でも援助をしよう、そういうような考え近代化資金制度考えたわけでございますけれども、ただ、農協の金は農協の金で、現状あるいは今までのように系統機関に預金さえしておけばいいのだという考えで、農民の金を集めて預金だけしておくということになりますと、農協はどちらかといいますれば貯蓄機関になってしまうのでございまして、農協ほんとうに経済機関として動く余地がなくなってしまうじゃないかという感じがするのでございまして、せっかく農協金融機関として認められている以上は、これはやはり金融業務がほんとうにできるような態勢に持っていくのが一番大事なことじゃあるまいかということが考えられるのでございまして、一時は農協の金は全部中央に集めて、それから貸す方のものは別にまた流したらいいじゃないかという議論もございまして、いろいろな問題を検討いたしました結果、農協系統の金は系統で貸すという態勢農協の強化をはかっていくという方がいいんじゃないかということで考えている次第でございます。
  51. 西宮弘

    西宮委員 いわゆる政府の財政投融資から貸すのは農林漁業金融公庫を通じて貸すのだ、さっきそういう御説明でありましたが、まさにその通りでありましょうが、ただそれでちょっとお尋ねをしたいのですが、金融公庫に政府が出資をする中の無利子の金というのが、最近毎年々々減っておるわけです。パーセンテージで申しますと、たとえば昭和二十六年には七五%あったのですが、あるいは六〇%、五七%、五〇%というふうに落ちてきて、昭和三十五年では三九・五%と、四〇%も割ってしまって、私の手持ちの二十六年に比べると大体半分になってしまっているわけですが、これはどういうわけですか。
  52. 坂村吉正

    坂村政府委員 全体の資金構成から見ますと、これはおっしゃる通り比率といたしましては落ちておりますけれども、発足当時の資金の総額は非常に小さなものでございまして、最近はだんだん資金の総額が大きくなってきておるのでございます。その中で財政投融資の額は、三十六年度は政府の出資は八十九億でございましたが三十七年度は百二十三億というふうに、伸び方といたしましては相当力を入れてやっているつもりでございます。そのほかに公庫では最近だんだん自己資金が非常にふえて参りまして、償還財源が相当ふえて参っておるのでございます。そういう関係から見ますれば、資金の中身の無利子の金というのは、比率は減っておりますが中身ではこれでやっていけるというような状態に相なっておるのでございます。
  53. 西宮弘

    西宮委員 低利、長期の金を貸す、つまり低利の金を貸すためには、政府が無利子の金を出資することが一番の問題だと思うわけです。それが、確かにお説のように絶対額はふえておるけれどもパーセンテージから見ると中金の発足暫時に比べて非常な減少ふりなわけです。これは私は問題として指摘をしておくので御答弁は求めませんけれども、ぜひ一つこの点は研究をしてもらいたい。私ども低利な金を農村に流してもらうためには政府の無利子の金を出資してもらうことが最大の要件なんですから、一つそういう点を十分御研究を願いたいと思います。  それから一つこれまた指摘をしておきたいのですが、たとえば今度の近代化資金等にしても、貸す金は農協の金です。しかしそれに政府利子補給をするとか、そういうことでいわゆる制度金融として扱っているわけですが、これについて系統機関としては、わずかと言っては失礼かもしれないが、利子補給等をすることによって行政庁の息がかかり過ぎる、もっと自主的にやらしてもらいたいという意見が多いので、これも一つ聞いていただきたいと思うが、何かお答えがあればいただきたい。
  54. 坂村吉正

    坂村政府委員 農協の事業に対して政府援助をすることは、考えようによっては農協の自主性を害する、こういう考え方もあるのでございますが、それでは援助なしで農協の今の一兆円の金がほんとうに使えるかと申しますと、これは絶対使えないのでございます。そういう状況でございますので、政府援助をしてその金が使えるようにということを考えておるのでございまして、農協の中でもそういう自主性を非常に強調する人もございますが、実務的にいろいろ考えておるところでは、政府援助してでもこの金が使えるようにしてもらいたいという希望相当あるのでございます。いろいろ意見はございましょうが、現状からいいますれば、やはり政府援助でもしてこの金が使えるように、農民に還元するようにやるべきではないかというふうに考えております。
  55. 西宮弘

    西宮委員 援助はけっこうだけれども、ただいろいろワクをはめてそのために非常に窮屈になるということをおそれているわけです。さらに、こういう制度を作って農協の金を使わせてそれを近代化資金と名づけるやり方についてこういう不平も言っているわけです。たとえばそういうやり方をするについて、その系統金融機関等には何の相談もなかった。要するに、こっちの金を使って政府の政策を打ち出すのに事前に何の打ち合わせもなかったということは、私どもとしてははなはだ心外だということを言っている。答弁は別に求めませんけれども、そういう役所的なワクをはめたりいろいろな制約が多過ぎるということを言っています。政府の方からいえば人の金を使うのですから、それについては十分相談も必要でございましょうし、さらにできるだけ自主性を尊重するということも必要でございましょうから、一つぜひ考えていただきたいと思います。  それからもう一つお尋ねしたいのは、改良普及員等が、自分たちは今度の近代化資金等にはどういうふうにタッチするのだといろいろな疑問を持っておる向きがあるわけです。農協の金ですから、むろんその第一段階指導農協が当たるでありましょうし、またそうすべきであると思うのでありますが、いろいろ過剰投資とかその他困った現象も出ているわけです。ですからそういう面をチェックして、ほんとうに農村が近代化していくためにはそういう指導面を強化しなければならぬと考えるわけですが、その点についてどういうふうにお考えですか。
  56. 坂村吉正

    坂村政府委員 お話はございませんでしたが、先ほどの農協の問題につきましても一つお答えしておきたいと思うのでございます。  農協関係者が近代化資金制度を作るについて一言も相談を受けなかったということは非常におかしな話でございまして、東京では初めから十分この問題について相談しております。その当時の意見では、利子補給をもらったり債務保証の補助金をもらったりするのは自主性が阻害されるから困る、あるいは会計検査院から検査されるから非常に困るということもございましたけれども末端実情は非常に要望しておる声が強いのでありまして、そういう点で農協の中央部の方々にも、必ずしも全面的にこの制度がいいじゃないかということではないかもしれないが、納得していただいてやったわけでございます。ですからその点を明らかにしておきたいと思います。  それから普及員の問題につきましては、末端ではおっしゃる通りで、大体普及員が中心になっていろいろ計画等指導していただくことが必要でございますので、これは町村で近代化計画なり構造改善の計画なりを立てていく場合には、当然普及員が中心になって相談にあずかろうと思いますので、そういうところにタッチしていただいて、そうして農協関係している金融についてもそういう指導性を十分発揮してもらいたい、こういうつもりで考えておるわけでございます。
  57. 西宮弘

    西宮委員 末端の普及員のもう一つの声でありますが、手続が非常に繁雑た、それをどうするんだと言ったら、できるだけ簡単にやるようにすればいいんだという御答弁だと思うのでありますが、しかし現実問題としてその点は普及員の声としては異口同音に出ておるわけです。しかもそのために農協もおっくうになってしまって、新しい制度ができましても、それをPRするのをむしろ避けておるような農協さえもあるというようなことを言っておるので、これはほんとうに思い切って徹底的に考えてもらって、ことに相手は農民なんですから、あまりむずかしいことを言わないように——いろいろ具体的な問題をあげておりますが、時間がなくなりますから省略いたしますけれども、これは一つ十分に考えていただきたい。これは要望いたしておきます。  最後に一つたけお尋ねをいたしますが、最初の七分五厘、今度は六分五厘ということになりますが、これは今度の制度として末端金融を七分五風ないしは六分五厘にとどめるおつもりですか、あるいは将来は単協の一般金融をここまで持っていこう、こういう指導的な考えを持っておるわけですか。
  58. 坂村吉正

    坂村政府委員 三十七年度から個人施設協業施設等について六分五厘ということで考えておるわけでございますが、はたして末端農協金利かそこまで下げられるかどうかという問題は、日本の全体の金利水準から考えてみますと、なかなかむずかしい問題であろうと思います。御承知ように濃化から預る金が一年定期で大体五分六厘でございます。銀行等との競争もございまして、奨励金等もありますから、大体六分見当じゃあるまいかと思います。そういう状況で六分五厘まで全体の金利水準を下げることばなかなかむずかしいことじゃないかと思っております。当初七分五厘の段階のときには、七分五厘くらいまでは農協の自主的な金利でやっていけるという目標にもなるのじゃないかと考えておりましたが、六分五厘になると今すぐこれを全体の金利情勢の中で目標にすることはなかなかむずかしいのじゃないかと思っております。
  59. 西宮弘

    西宮委員 今手元に持ってこなかったのですが、去年の春ごろの記録を見ると、自主的に金利を引き下げたいというので何とか委員会とか協議会を作って、農林省も参加されてそういう研究をしておられたようですが、そのやさきに政府の今度の近代化資金が七分五厘という形で出てきた。いわば自主的にやろうというので考えておったやさきにそういうのが出てきたというので、その自主的な意欲をそいだ結果になったと思うのですが、これはどうなんですか。一番理想的なのは、制度金融だけでなしに一般の金利がそこまで引き下がっていくならばまことにけっこうなんで、そういうことでさらに指導しようというお考えはありませんか。
  60. 坂村吉正

    坂村政府委員 農協の一般金利の引き下げの問題については、今後とも十分研究もし、それからできることについてはその日からでもとにかく手をつけるように指導して参りたいと思っております。しかし先ほど申し上げましたように、全体の情勢が必ずしもあるいは五分とか六分とかいうようなところまで農協金利が下げられるかどうか、非常に問題であろうと思います。実は昨年私どもも、三十六年度近代化資金七分五厘ということで発足をいたしましたものですから、農業金融というものははたしてどの程度までのものが適正であろうか、こういう問題を少し突っ込んで検討してみたいと思いまして、いろいろ専門家等も入れまして研究会を持ってみたのでございます。これはなかなかむずかしい問題でして、ちょっと簡単に結論は出ません。そういうようなことでございますので、全体のほかの金利のバランス等も考えまして、とにかくやっていくよりしようがないじゃないかというようなことで考えておるようなわけでございます。
  61. 西宮弘

    西宮委員 その五分とか六分とかいうのは非常にむずかしい研究問題だとしても、今度のものは少なくとも末端を九分五厘で押えているわけですね。ところが現実には一割をこえているというような例も今までたくさんあったと思うのです。それを九分五厘に押えてしまうということには無理はありませんか。
  62. 坂村吉正

    坂村政府委員 現状から言いますると、全般的に平均してみますると、九分六、七厘のところが大体平均になるのでございますが、高いところは一割以上というふうなこともございます。そうでございまするけれども、せっかく政府援助し、農協が自分の金を近代化のために貸していこうということでございまするから、農協自体も少し勉強して自分で合理化部分を持っていいじゃないか、こういうような考え方もございまして、一応九分五厘という考え方で、平均よりも幾分低いところで抑えまして、そうしてやっていく場合に政府援助をする、こういうような態勢を作ったわけでございまして、そういうことを通じまして、農協金利の低下、合理化、こういうものをできるだけ積極的に進めて指導して参りたいと思っています。九分五厘は、もちろんこれでとどめるつもりはございませんで、農協自体がもっと下げて参りますれば、それだけ末端金利も下がるわけでございますから、その点は積極的に指導して参りたいと思っています。
  63. 西宮弘

    西宮委員 現実には一割をこすのもあったというようなことでありますと、それも九分五厘で抑えてしまうということになると、自主的な合理化をやらせるというお話であったが、かりに自主的な合理化がでぎなければ、この制度金融だけは九分五厘で抑える結果として、それがはね返りまして、ほかの力では従来以上に高くなるという面、一般融資の方は従来よりもかえって高くなってしまうというような面が出る懸念はありませんか。
  64. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在、全体の単協についての調査はございません。各信連の問題を取り上げまして、信連の経理内容とかそのほか実際の貸出金利とか、そういうものを当たりまして、はたしてその基準金利でやれるかやれないかという問題を検討いたしました。大部分のところはこれで大体やっていける、ほかに特殊な影響を与えないでやっていける、こういうようなことでございまして、特殊なところでこれではなかなかやれないというようなものについては、それ相当にいろいろ手当をしながらやっていけるように指導いたしております。
  65. 西宮弘

    西宮委員 これで私は質問を終わるわけでありますけれども、何分にも近代化資金は発足早々の問題でありますから、いろいろ今後さらに研究を、し、改善を要する問題もたくさんあると思うのです。一つ十分御研究を願いたいと思う。さらに私繰り返しませんが、今まで質問の中で幾つか私の希望なりないしは意見なり申し上げたので、そういう点も十分参酌をしていただいて、さらによりよいものにするために、一つ御努力を願いたいと思います。
  66. 坂村吉正

    坂村政府委員 十分御趣旨を尊重いたしまして、いろいろと勉強いたしたいと思っています。
  67. 野原正勝

  68. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 公庫融資で私らが将来とも一番気がかりになりますことは、原資の構成の問題でございます。三十七年度予算では当局の努力で近年にない政府資金利が見られるようでございますけれども、しかし大勢としては資金総額に対して借入金が非常に多い、こういうようなことになって、今公序融資で一番重大な、低利の資金を長期でというこの要求は、おそらく将来ともますます強くなるわけでございます。従ってその方向に一歩々々進んでおられる。しかるに資金構成の関係上、この表を見ますと、原資の借入金の利息も年々上がっておる、そうして償却積立金というものが極度に、だんだんと減っている。こういうような状態で公序の融資考える場合におきまして、非常に重大問題と思うのでございます。もちろん政府でもこの点については非常に努力して、本年などはすでにその成果を上げておられると思うのでございますけれども、この低利、長期の資金の要求という問題と借入金が多くなるという原資構成、この矛盾を将来とも当局においては努力されなければならぬと思うのでございますが、その点についてどうお考えになっておられますか。
  69. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通りでございまして、私どもも非常に心配しておることでございます。ただ、御承知のように、現在農業に対する長期、低利の金融の需要が非常に強いのでございますので、そういう関係からやむを得ず融資ワクの拡大というところに重点を置いて考えておるわけでございます。そういう関係上、必ずしも十分な出資がこれに対してやられないという結果が起こっておるわけでございますので、この点は十分注意して、今後も努力して、経理の改善をやらなければならないと思っておりますが、今のところそういう転換期に立っておるわけでございまするから、とにかく金融融資ワクの面でできるだけ農民の要望に沿うように、そういう考え方でやっている関係上、やむを得ない実態になっておるというふうに考えておるわけでございます。しかし現実の経理の内応を見まして、たとえば償却引き当て等の実際の中身の金額等については、率は低下いたしておりますけれども、今までの積み立て等もございますので、償却のために困るような実態ではございません。御趣旨によって今後十分資金構成については努力いたしたいと思っております。
  70. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 この原資構成の問題は非常に重大でございますから、この上とも努力を願いたいと思うのでございます。  次に、公庫では数年前から支所制度をとられたわけでございますが、今支所を設置されております場所は、どことどこでございますか。
  71. 坂村吉正

    坂村政府委員 三十六年度は八カ所でございまして、三十七年度から、東京につきましては、今まで営業部といっておりましたものを、大体支店と同じように扱って独立させよう、こういうことを考えておりますので、九カ所になります。札幌、仙台、金沢、名古屋、京都、岡山、福岡、高松、三十七年度に東京の支店。こういう九カ所でございます。
  72. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 その支所設置によりまして、非常に能率化あるいは貸し出しが簡単になる、こういう方向を目的として支所を設置されたと思うのでございますが、何だか屋上屋を重ねたようで、支所でも一通りのむずかしい手続をし、さらに本所においてもそういうことを繰り返す、こういうようなことで、どうも本所たけでやっておった場合と比べますと、従って何だか手続上貸し出しが非常に時間がかかっておるような、そういうようなことを金を借りる人は言うておるわけなんですが、これは結局におきまして、支所と本所との職権の区分の問題、それから支所を作ったか人間を配置しない、この二つの問題に帰するのではないかと思うのでございます。支所を作った以上は作っただけ、簡素化という方向で進まなければならぬと思うのでございますが、ただいま申し上げましたその二点について、経済局長は、その仕事の分野ということははっきりとお考えになっておらないと思うのでございますけれども、人間が足らないということは、これはもうどこの支所をごらんになりましても、一人程度係があるような状態でございますから、この人員の充実ということについて従来一つぜひお考えにならなければならない問題だ、こういうふうに考えるのですが、どうですか。
  73. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り、公庫の支所を作りました場合に、これと本店との連絡は十分、これはよく事務の処理等については、分野をはっきりさせて能率を上げるようにしなければいかぬと思うのでして、この点はそういう目的で支店を作っておるのでございますから、もしかりに支所を作ったために非常に能率が落ちるというようなことがございましたら、そういうことがありませんように十分実態も調べまして指導いたしたいと思っております。現在職員は、本店で百九十二名、支店で三百九十三名、そのほかに役員として九名、総計で五百九十四名でございます。こういう状況でございますが、三十七年度におきましては、今までの状況等考えて、三十八名の増員を考えております。そうして本店及び支店につきまして、もう少し能率を上げるように、こういうつもりで考えております。今後とも十分努力をいたしたいと思っております。
  74. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 特にこの水産担当関係の人が、これは支所を設置される前に本所におった人が非常に少なかったわけですが、それを人員の増加を大してやらないで支所を設置したために、一人ずつ配置をしなければならぬ、こういう事情になっておるのですから、その点も一つぜひ御研究を願いたいと思います。  それから仕事の分野につきましては、ここで突っ込んでお伺いいたしませんが、ぜひ一つ引き続き本所と支所の仕事の分野ということについて御研究願いたいと思います。  それから第三に、公庫融資と農中融資関係ですが、たとえば漁船なら漁船について、農中もやっておる、また公庫もやっておる、こういう実情になっておるのでございますが、この公庫の場合は、本所、支所関係なんかで手続が非常に厄介だ、そうして事が早く運ばない、こういうようなことで、一方、農中の方は、どうも損をしないような事業であれば支所長権限ででもどんどんきまっていく、こういうような関係でございますか、どうも最近の傾向を見ますと、安定した漁業に対しては農中、そこに多少でも疑問のあるといいますか、安定度の少ないものに対しては公布、こういうようなふうに漸次実際問題としては分かれつつあるような実情だろうと思うのです。これは一方が政策金融であるし、一方は系統金融でございますから、それも一つ考えでございましょう。そうして全体として水産の方に融資がふえる、こういうことからいいますと、喜ぶべき現象だとは思いますけれども、この方向を何ら研究しないで自然のままに放任しておく、こういうことになりますと、またいろいろな弊害も出てくるんじゃないか、こういう実情でございますから、この問題について一つ経済局として将来よく研究していただきまして、ほったらかしておいていいか、あるいは何らかの線を引くか、そういう問題について一つ将来研究してもらいたい、さように考えます。  それから今回新設されました漁業安定資金の問題でございますが、これは多年漁業関係者が、どうも農業あるいは林業と比べて漁業関係だけが差別されておる、こういうことで熱望しておった問題でございますが、それが今度の予算で初めて実現したので、漁業者としては非常に喜んでおるのでございますが、ただ、私らの立場からいたしますと、法律の建前から申しますと、この安定資金というものは恒久制度の形をとっておる。しかるに、この資金ができるその過程を考えると、どうも恒久制度でなしに、沼津漁業の構造改善を遂行しているその間だけの資金である、こういうふうにも考えられるのでございますが、御承知通りに、農家の方には自作農維持創設資金、これは恒久的の制度としてあり、あるいは林業の方には、林業の維持改善資金とかこれも恒久のものがある。この漁業の経営安定資金だけが暫定的の意味を持っておる、これがどうも了承のできないことでございまして、私どもは、改善期間の間の制度だ、こうは考えないで、やはり法律そのもののように恒久制度だ、こう考えるのでございますが、その点について経済局長はどうお考えでございますか。
  75. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り、今度三十七年度から新たに沿岸漁業経営安定資金というものを公庫から貸す、こういうこと、それから構造改善事業のために必要な資金を貸す、こういうことが新しく加わりましたわけでございまするが、これらは水産庁当局でいろいろ考えております沿岸漁業の構造改善事業というものに即応いたしまして、これに対する資金の融通を公庫で行なっていこう、こういう考えのものでございます。自作農創設資金は特殊の法律がございますが、これについては法律がない。三十六年度に発足をいたしました林業経営安定資金も、やはり同じ性格のものでございまするけれども、これも必ずしも法律がなくとも、公庫から金を貸すという制度ができれば、これによって救済ができるんじゃないか、それが動くんじゃないか、こういう考え方で、特別な法律がないわけでございます。従いまして、沿岸漁業の経営安定資金につきましても、必ずしも法律がなくとも目的を達成することはできると思っております。しかしこれを、今後法律がなければ恒久的なものじゃないじゃないかというようなそういう考え方もあるかもしれませんけれども、それは法律のあるなしにかかわらず制度自体を恒久的なものとして考えるか、あるいは暫定的なものとして考えるか、こういう問題になるのじゃないかと思うのでございまして、この点私どもはそういうつもりで公庫につきましては扱っておるわけでございますが、中の考え方につきましては必要があったら水産庁の方から……。
  76. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 今私が質問しておりますことは、この制度は自作農維持創設資金と同じように恒久的の制度でなければいかぬ、にもかかわらず何か予算編成の途上といいますか、そういう点からいって、沿岸漁業構造改善の期間だけこれを適用しよう、こういうような話もありますから、これは当然恒久制度でなければいかぬ、こう考えるが、局長はどうですかと聞いているんです。
  77. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先生御指摘通り法律的には恒久制度であって、その過程において構造改善事業の期間というものに考えるのはどうかという御質問でございますが、交渉いたしましたときには確かにそういうことになっております。ただわれわれといたしましては、構造改善事業は実は漁場等については十年ぐらい考えております。近代化の促進というようなことにつきましては、大体四年ぐらいで事業をやり遂げようというようなことで、構造改善の中でも漁場改良と近代化促進というものの完成の年度を若干違えておりますが、水産庁としましては、構造改善事業をやってみまして、その結果また付か手を打たなければいかぬということがありますれば、この経営安定資金は私どもとしましては、その時点に立って当然またこれを活用して参りたいというような考え方を現在持っております。
  78. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 ただいまのところ、構造改善のその期間中こういうことを実施してみて、結果によって一つ考えよう、こういうような御意見のようでございますが、国会といたしましては、この資金は当然に恒久制度でなければならぬ、こういうような強い意見があったことを御承知願っておきたいと思うのであります。  次の問題といたしまして、もしこの資金が構造改善に結んでいった資金、こういうことになりますると、構造改善の地区の指定の仕方が非常に重大問題になって参ります。また調査あるいは手業の実施、こういうような期間があるのでございますから、この時期の問題が非常に重大問題になってくると思うのでございますが、私どもば、かりに構造改善のそれと並行してやるんた、こういうようなことを言われましても、これはその地区だけにそういう業者がおるのじゃなくて、全国的におるのですから、この事業を遂行されるその地区たけの漁業者に対してこういう措置を講ぜられても大部分の全国のものは救われない、こういうような考えを持っております。従いまして、この構造改善の地区の指定、この地区の指定が各県ごとには非常におくれるといたしましても、構造改善に着手した地区だけは少なくとも一県全部の漁業者に均霑されることが好ましいと考えるわけですが、その地区指定を水産庁としてはどういうふうにお考えになっておるか、その点一つ明らかにしておいていただきたいと思います。
  79. 伊東正義

    ○伊東政府委員 地区の指定によって若干時間的にズレのあることは先年御指摘通りでございますが、一県の中の地区の指定でございますが、これはわれわれとしましてはなるべく広く指定したいという気持を持っております。具体的に申し上げますと、たとえば県内で干拓計画がありますとか、あるいは通産省関係の工場の誘致計画に指定されまして現実に近く工場がその辺に建ちます地区とかいうことがはっきりいたしております地区は、これはせっかくそこにいろいろ近代化資金あるいは構造改善の補助事業をやりましても、結局投資がむだになるということになりますので、そういう明瞭なところは除きまして、それ以外のところは、県内につきましては大部分は地域指定をして参りたい、なるべく広くというような考え方を持っております。
  80. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 その他の地区あるいは府県は何とか同時に救う方法はないものですか。少なくとも最後の指定に当たった府県は、ここ十年間は、あるいは事業着手ということを考えますと七、八年は、この恩恵にあずからない。しかるにそういう地方にも経営改善しなければならぬような漁業当が非常にたくさんおるわけなんですが、その点を何とか救済するような道をぜひ考えなければならぬ問題じゃないかしらんと思いますので、そこのところをお尋ねいたします。
  81. 伊東正義

    ○伊東政府委員 この制度は、構造改善事業の一環としてやっていこうという考えをとっておりますので、実はまだ計画の立たないところまで一般的に広めていくということは、制度考えました趣旨からいきまして若干違ったものになりますので、私どもは、現在十三指定されており、今年から構造改善事業を始めるわけですが、来年は、大体半分は三十八年度指定を終わります。自余のものにつきましては、私ども考え方としては、大蔵省に話しまして、なるべく早く地域の指定を実現するというような考え方で、やって参りたいと考えております。
  82. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 その点については、地区の指定を急ぐという問題も一つの方法でありましょうが、これは農業近代化資金もいろいろ議論のあるところですけれども、何かこれ自体の制度を適用するような方法ももう二度研究されてみる必要があるのではないか。その場合におきまして、融資は結局漁業協同組合を通じてやられると思うのですが、今小型漁船なんかの建造資金組合を通じてやっておるのでございますけれども、その実情を見てみますと、組合がうまくいっているところは金融機関として認めてどんどんやっておる。ところが、御承知通りに、再建整備をしなければならぬ漁業組合が非常に多いのでございまして、そういう漁業組合に属しておる漁業組合員もまた、隣の組合では非常な恩典にあずかっておるにかかわらず自分のところでは漁業組合が貧弱であるがゆえに相変わらずのことをやっておる、こういうことで、これは、沿岸漁業者の場合、漁業組合がしっかりしておらなければならないのですけれども、しっかりするまでに相当年月がかかる。その間どうも貧弱な組合に所属している組合員というものは船も作れない、こういうような実情なんですが、おそらくこの経営資金の問題も、これは負債が固定化しておるようなそういう漁業者でございますから特にひどい漁業者が多いと思うのでございますが、その場合でも、漁業組合がしっかりしておる場合は金が借りられると思うのでございますけれども、多くの漁業組合員ではこの資金といえども実際には金を借りるということはなかなかむずかしいと思うのです。そうなりますと、せっかく一つこの構造改善計画と結びつけてと言われるけれども、また内部に入ると非常にむずかしい問題がある。ここで漁業組合をにわかにいい漁業組合にする、これは努力しなければならぬですけれども、そう早くいかないですから、何か市町村かあるいは県かが補償するような——これは自治省の関係もあって相当むずかしいと思いますけれども、すでに住宅関係ではそういう問題もあるわけなんですから、そういう点もお考えになって、一人前でない漁業組合に——それがほとんど大部分の漁業組合ですから、こういうところの組合員にもこの資金が回るような一段の工夫をされなければ、制度を作ってもなかなかそううまくいかない、こう考えるわけですが、ここでどうしなさいということはなんでございますけれども、そこに一つの隘路があるようでございますから、それをぜひ一つ研究を願って、適当な道を開いてもらいたい、こう考えるわけですが、どうですか。
  83. 伊東正義

    ○伊東政府委員 御指摘のようなことがあると思います。私の力でも検討いたしますが、場合によりましてはいろいろな信連を通じまして直接個人にいけるようなことを考えてしなければならぬか、その辺のところをもう少し検討させていた、たきたいと思います。
  84. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 この資金は今年度は一億と記憶しておるのでございますが、これは三十七年に調査が終わって一部事業に着手する。その府県が数が少ないから一億である。もしこの地区がだんだん多くなればそれにつれてこの資金は多くならなきゃならぬ、こう考えますが、いかがでございますか。
  85. 伊東正義

    ○伊東政府委員 その通りでございます。
  86. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 ついででございますから伺いますが、この構造改善事業は漁場の改良造成事業と漁業経営近代化促進事業の二つに分かれておると思うのでございます。これは事業の対象者によって金の出しどころが非常に違ってくると思いますが、大きい仕事だけでよろしゅうございますから、そういう仕事はだれが事業の対象者になるか、こういうことを一つ説明願います。
  87. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先生の御質問は安定資金ではなくてほかの構造改善事業の関係だと思いますが、構造改善事業の中にはいろいろございまして、漁場のことは一応別にいたしますれば、たとえば養殖施設を作る、養殖漁場を作るというような場合には組合が作るということがおそらくよけいだろうと思います。漁船とかいうふうな問題になって参りますとこれは個人が作ることが多くなりましょうし、また漁船の中でも指導船というようなことになりますればあるいはこれはまた組合で作るというふうなことで、組合が事業をする場合と個人がする場合と両方だと思います。ただそのほかにもしも環境改善というようなことになって参りますれば、道路の問題等になりますと県もありましょうし市町村もある。あるいは病院等になりますれば組合がやったり市町村が、やったりいろいろな事業主体が出てくると思いますが、これは、県が作ります構造改善事業計画の中で、県がそれぞれ事業主体である関係者の希望を聞いて出してくる、それを国が承認していくというふうなことになろうかと思います。
  88. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 大型魚礁あるいは漁村の環境改善あるいは海面の大きな養殖場、そういうようなものをもし県がやるということになりますと——組合がやる場合におきましては公庫に資金がありますから国庫補助以外のものはそれで解決すると思いますが、県がやる場合にはやはり国庫補助外の資金源をどうするかという問題も相当考えなければならぬと思うのでございますが、県などの起債その他、そういうことも御研究になったのだろうか、お伺いしたいと思います。
  89. 伊東正義

    ○伊東政府委員 まだ構造改善計画としてはあがっておりませんのでそこまではやっておりません。漁場につきましては先生おっしゃいましたように、大型魚礁は県営でありますので六割国が出す、あとは県、地元が若干出すことがあると思いますか、これにつきましては私どもとしましては、県費負担等については自治省に頼みまして、困る県等については何とか起債をやってくれというようなことを頼みもし、今後もまた頼んでいきたいと思っております。
  90. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 時間がないようですからこれを最後にいたしますが、この問題で私が一番心配しておりますことは、やはり、どうかいたしますとこの制度が暫定的で構造改善の期間だけだというような解釈になることをおそれる次第でありますから、この構造改善地区以外に同じ困っておるものが非常に多いというその点を十分御配慮になって、恒久制度とするとともに、その地区の連中にも何とかそうおくれないで均霑させられるような道をぜひ考えてもらいたいという問題。それから金を貸すと称してもなかなか借りられないような漁業者でございますから、おそらく借りられる漁業者というのはごくわずかだと思いますから、そこに実際に金が回っていくような工夫を一つぜひ考えてもらいたい。この二点を特に強調するわけですが、今時間がなくて切り上げろということでございますからこの程度で終わります。
  91. 野原正勝

  92. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農林漁業金融公庫法の一部を一改正する法律案について審議が行なわれているわけですが、まず委員長にちょっとお伺いをいたしますが、政府側から、大臣の都合が悪ければ政務次官が通常法案の審議においでになるわけです。同時に、農林漁業金融公庫法の一部改正ですから、こういう法律案を審議する際には公庫の総裁も通常おられて審議するわけですが、そういう点がどうなっているか、まずお伺いしたいと思います。
  93. 野原正勝

    野原委員長 政務次官はさっきちょっと見えましたけれども、ほかの方に引き取られてしまった。総裁は呼びましてただいま到着いたしました。従って経済局長、水濃庁長官、農林漁業金融公庫総裁、こういう方々に御質問願いたいと思います。
  94. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 田口さんの力で漁業関係の問題を取り上げられておりましたから、その辺のところから最初やりたいと思います。水産庁の長官に、日ソ漁業交渉、漁業法の改正、水協法の改正その他でおそらくいろいろ関係があろうと思いますので、田口さんの質問を受けて水産関係の問題からお伺いをいたしたいと思います。  これは去年でありましたか、農林漁業金融公庫法の一部を改正の問題を論じたときに、農林水産委員会の附帯決議で、農業における自創資金あるいは林業における経営改善資金、これに準じて沼津漁業等の水産関係についても制度金融としてそういう道が開けるようなことを速急に検討すべきである、こういう附帯決議を付して満場一致決定をしたわけですが、おそらくそういう意味の決議等も受け、同時に農林漁業基本問題調査会の漁業関係の答申、あるいは漁業制度調査会の漁業制度に対する答申、こういうことから沿岸漁業振興を今度強力に推進しなければならぬ重要な一環として、漁業経営安定資金というものが今度すべり出すようになったと判断をいたしておるわけでございます。先ほど田口委員からも御指摘がございましたが、そうであるとするならば、今日まで沖合いあるいは遠洋等に力点が置かれておった日本の水産行政を、この際非常に問題を持っておる沼津漁業の振興にある意味では力点を置きかえてやる、こういうことからいけば、制度金融の重要なすべり出しとしての漁業経営安定資金も単に暫定的な性格を含みながらすべり出すのではなくて、やはりそのもの独自で今後長期にわたってこれが大きな役割を果たしていくという考え方に立たなければならなかったと思うのであります。そういう点が、先ほど来の質疑応答でも明らかなように、いわゆる沿岸漁業関係の構造改善ということが今後十カ年計画で推進をされていく、こういう形の中で特に調査圏あるいは実施圏、こういうところの具体的実施の場合に四カ年計画でこれを促進するというような形で進んでありますが、こういうものを一環として、それに該当した地区の、しかも経営安定資金の貸付申請のできるものというのは、私ども承知をしておるところでは、事業または第一種兼業の漁業者、無動力漁船または十トン未満の動力漁船を使用して漁業を営む者、年間漁家所得が五十万円以下の漁業者、次に疾病、負傷、災害、海難、拿捕及び不漁が原因で国または地方公共団体の制度金融以外の債務で償還不能となっている債務を持っている漁業者、こういうような諸条件を持つものに対してこれを貸していこうということになると、今非常に立ちおくれており問題を持っておる沿岸漁業振興の段階に、国が制度金融を積極的に活別していこうという考え方から見ると、きわめて弥縫的なものでないかと率直に感ぜざるを得ないわけですが、こういうことに相なった経過というものを一つ率直に農林経済局長並びに水産庁長官からこの際お答えを順いたい。
  95. 伊東正義

    ○伊東政府委員 私からお答えいたします。  安定資金というものが漁業についてできませんでした理由は、先生十分御承知と思うのでございますが、要するに沿岸漁業者の小さいものにつきましては担保力が何もない、何もないと言いますと言い過ぎかもしれませんが、自作農創設資金等でございますと、御承知のように半分くらいは農地が担保になっており、林業につきましては山が担保になっているということで、沿岸漁業者は担保力が非常に弱いというような関係で三十六年度までなかったわけでございます。私ども国会の御審議、御決議もございますので、財政当局といろいろ交渉をいたしました。今のもので私も十分だとは思っておりません。今後この制度の拡大といいますか、活用ははかっていきたいと思うのでございますが、その場合に何を担保にしてそれじゃ貸していこうかということが非常に問題になったわけでございます。貸し出しの条件等まだ十分最終的には詰めてはございませんが、一体どうやったらこれをまた返せるんだということでいろいろ議論しましたときにも、構造改善事業を一つやりまして、そしてそこから上がってくる漁獲物等につきましても、これは協同組合の共販というものを通してやっていく、その場合にそれ自体が担保じゃございませんが、共販をやるというようなことによって返していこうという人にこれを貸す以外にはなかなか担保がないのじゃないか、そういうことも条件の一つに実は考えておるのでございます。先生がおっしゃいますように、制度自体としましては、全般的に一挙にということになりませんで、やはり構造改善の事業をやる、その前提に過去の負債が重圧になっておるのでは困るので、そういうものを肩がわりして、そして構造改善近代化資金を借りて何とか企業として安定化していくという人にまずこれを貸していこうということでスタートしたわけでございます。御指摘のように、これをもって私ども十分とは思っておりませんが、それで初年度はスタートしたのでございます。制度としての欠陥は政府としてもできるだけ直しながら、今までなかった新しい制度でございますので、これを生かしていきたいというふうに考えております。
  96. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁業経営安定資金というのはこれは自創資金の場合と性格的に一応分けてみると、維持的な性格のものにこれを考え、創設的な意味においてこれを考えていくという意味は、漁業経営安定資金の場合に薄いのかどうか。われわれの判断ではむしろ消極的な面における金融の一部としてこの問題が出てきておる。積極的にいわゆる構造改善に結びつけておるという考え方を今とろうとしておるわけですけれども、構造改善に結びつけていくという考え方をとる場合には、先ほど言ったような、たとえば年間漁家所得が五十万円以下とかいろいろな諸条件を具備しておるようでありますけれども、そういうことで前向きの沿岸漁業における構造改善の前進のために要する漁家のいわゆる所要資金に充てる性格がこの中からはたして出てくるのかどうか。農業の場合には先ほど来西官君の方で論じておりましたが、農業経営近代化資金、いろいろ問題を持っておりますけれども、しかしいずれにしても相当資金量をもって農業経営近代化一つの役割を果たそうという意味で出発をしておる。ところが、鳴物入りということじゃございませんけれども、とにかく新しい芽として出て参りました漁業経営安定資金というのは、いわば創設的というか積極的というか、そういう意味よりもむしろ跡始末をする、そしてそれが将来の前進のてこ入れになるというふうな程度意味であって、しかも資金量から見ても当面すべり出しは私どもの見通しでは一億円だと思いますが、そういうふうなことでいく場合には、一体積極的な農業経営近代化資金に該当するような前向きの資金とどういうふうな形で並行していこうとするのか、その点はどうですか。
  97. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先生御指摘通りでございまして、安定資金そのもので、農業考えておる近代化資金というふうなところまで踏み込んではおりません。農業方面の近代化資金に該当いたしますものは、本年の公庫の漁業関係融資のワクの中で漁船あるいは漁網具等につきまして約一億五千万くらいのものをいわゆる近代化資金として用意しております。これにつきましては金利は最終決定としてまだ申し上げる段階ではございませんが、大体農業と一緒に六分五厘というような金利で、これは別に用意して貸していくつもりでございます。それでそういう近代化資金を借りまして、新しく経営を安定化していこう、企業として安定化していこうという人で、スタートにあたって個々の負債等で非常に困っておるという人につきましては、これは安定化資金等で安い金利で肩がわりするという仕組みを実は考えておるわけでございます。
  98. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁業経営安定資金の貸付条件を見ると、たとえば年利で五分五厘、償還期限二十年以内、据置期間三年以内、貸付の限度額は三十万円以内、こういうことに相なっておるわけですが、この場合自創資金ではこの委員会でもいろいろ論じられまして、年利五分等の問題につきましてはさらに引き下ぐべきだ、さらに償還期限の三十年の問題についても少なくとも三十五年には持っていくべきだ、いろいろな論議があるわけでございます。たとえば年利という問題を見ましても、自創資金の年利五分に対して、沿岸漁業のきわめて悪条件下にある人々に貸す経営安定資金が年利五分五厘、さらに若干の高利で考えられておるという点については、これは問題があろうかと思うのですが、この自創資金の年利五分、漁業経営安定資金の場合の年利五分五厘、こちらの方が少し高くてもやむを得ないんだという理由について、正確な説明ができるのであれば、これは坂村さんの力になるかもしれませんか、お話を願いたいと思います。
  99. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り自創資金は年利五分でございまして、これについてもいろいろ御意見はございます。しかし、はたして金利をどれくらいにしたらいいかという問題については、非常にこれはむずかしい問題でございます。とりあえずこの沿岸漁業経営安定資金につきましては、昨年林業経営安定資金を創設いたしました場合にも年利五分五厘、それから二十年以内、こういうことで発足をいたしておるのでございまして、これについてもいろいろ御意見はございました。しかし林業なり自創資金なり、そういうようなものに比べれば、先ほど水産庁長官からもいろいろお話がございましたように、沿岸漁業というものは償還財源をどういう工合考えるかということが非常に問題になるわけでございまして、そういう点も十分考えまして、さしあたりとにかく林業経営安定資金等に比べますると、条件としては借り入れ経営体の経営条件としては、これよりもなかなかむずかしい状態じゃないかというふうな感じもいたしまするが、少なくとも一応林業経営安定資金と同じレベルで出発して、実行の状況を見ていくべきじゃないか、こういう考え方で一応五厘、こういうことで考えておるわけでございます。いろいろ計算をいたしますれば、いろいろな理屈もつきまするけれども、そういう理屈じゃございませんで、実際問題として発足当初でございまするから、前例にならいまして考えた、こういうことを率直に申し上げたいと思います。
  100. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農林漁業金融公庫総裁にお伺いしたいのですが、漁業金融関係で、いわゆる制度金融に依存する部面あるいは農林中金等の系統金融に依存する部面、あるいは市中銀行等一般に依存する部面、これはいろいろ調査の方法によってあるだろうと思いますが、たとえば農中の場合で言えば、従来からいわゆる農中に集まる漁業関係資金よりもはるかにオーバーしたものが漁業関係に貸し出されておる、オーバー・ローンの形になっております。というふうなことでいろいろ指摘をされるわけですけれども、漁業金融の場合の今言った制度金融面——制度金融といっても農林漁業金融公庫ばかりでなくて、地方自治体等がいろいろな利子補給、その他債務保証、そうでなくても特別のそういうものを設けてやっているといういろいろな形を今日とって参っております。そういうものの現状について、公庫の総裁でなくてもいい、一つお話を願いたいと思います。
  101. 坂村吉正

    坂村政府委員 漁業金融の問題でございますから、あるいは水産庁長官の方が適当かと思いますけれども、一応お答え申し上げます。  御承知のように、系統金融といたしましては、先ほど御指摘のように、漁業関係農林中金に集まって参りまする金は、せいぜい四、五十億でございます。それに対して漁業関係に出ている金は三、四百億ということが大ざっぱに言えるのではないかと思います。おっしゃる通りオーバー・ローンでございます。これは漁業関係系統資金充実をしていないという現状によるのでございまして、この点は農業からカバーをしている、こういう実態に相なっておるのでございまして、このために今後も漁信連あるいはそういうようなものの充実をはかっていく必要があるのではないかというふうに考えております。それから中小漁業の融資保証制度がございまして、これはある程度国からも援助いたしまして、融資の保証をやっている、あるいは信用力が非常に低うございますから、これに対して基金を設けまして、債務保証をやっている、こういう制度がございます。それと直接の制度融資といたしましての公庫融資。大きな筋から申しますと、こういう三つの筋になっておるのではないかというふうに考えております。
  102. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 数字の具体的な説明を非常に大ざっぱに触れられたのでありますけれども水産庁長官にさらにお伺いしたいのです。  漁家の負債問題あるいは沿岸漁業の漁家の負債問題というものはどれだけあるか、実態はなかなかむずかしい問題だと思いますが、沿岸漁業に従事する諸君の負債というか経済の実態というか、そういうものはどういうふうに調査の上で、漁業センサス等で判断しておりますか。
  103. 伊東正義

    ○伊東政府委員 全般的な調査はまだ十分なものはございませんが、この安定化資金等をやります場合に、沿津漁業者が割合に多いと思われる北海道外五県、全部で六県調査したことがあります。これで系統外の金融で固定化しているというようなものを調査いたしましたが、大体九十四、五億、百億足らずのものに、全国を延べてみますと、なるのではないかというふうにわれわれは見ております。
  104. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いずれにいたしましても、漁業金融として現実に動いている姿というものを見ますと、制度金融も必ずしも大きな額ではありませんし、しかも従来の漁業関係における制度金融の活用状況というものを見て参りますと、残念ながら零細な漁家の金融需要に応ずるという面がまだごく少なくて、むしろ従来からとられてきた沿岸から沖合い、沖合いから遠洋へという政策の重要な一環として、沖合いあるいは遠洋方面の資金需要というものに重点的に充てられてきた。それがやはり今後手直しをしなければならぬということが、今申しましたような漁業経営目安資金の問題なり、構造改善に関連をする若干の資金の問題、こういうことで出てきたのだろうと私は思うのでありますが、そういうことの中で農林中金等に依存している状態を見てみますと、しかも現実にわれわれ第一線で見ておりますと、相当高利の市中銀行等に依存をしておる、あるいはまた親戚その他いろいろな関係で苦労しながら資金を求めておる、こういう実態にあると思うのでございます。従ってそういう面からいけば、今日新しく前向きで発足しようとする漁業経営安定資金の問題にいたしましても、あるいは構造改善に関連をする漁網あるいはまたここで出て参っております漁船の建造、こういったふうな問題にいたしましても、まだまだこういう形だけで十分なる資金需要に応ずる段階にはいかないだろう、さらに構造改善の問題で、農林漁業基本問題調査会の答申の中でも、これは論議としては問題がありまするけれども経営構造の改善対策としていわれている、沿岸養殖事業の推進、あるいは魚類養殖事業の推進、特に沿岸から沖合いへの進出促進、こういうふうなことが強調されておりますし、さらに、健全な漁家経営の育成ということで、経営の不安定性の克服、資本装備率の高度化による年産性の向上あるいは協業組織の発展、漁村加工の推進、流通の合理化、漁場資源の維持培養、こういうふうな形で経営構造改善の対策が要請をされており、また、就業構造の改善対策として、教育問題や、あるいは職業転換問題や、あるいは職業補導の問題や、さらには転業助成の問題、まあ就業構造の問題については、これは今日農林漁業金融公庫法の一部改正を審議する問題でありますから、これは問題は多いのでありまして、論じませんけれども、いずれにしても、構造改善という中で内容をなします経営構造の改善問題あるいは就業構造の改善問題、さらに、農林漁業基本問題調査会の中では、近代的漁村の建設ということの中で、漁業経済圏というものを確立をしなければならぬ、こういうふうな考え方全般からいきますると、そういう水産の重要な一環としてすべり出そうとする構想としては、きわめて積極的な意図というものを読み取ることができないのですが、これは本年度まずこの芽を出したとして、今後の問題としての構想というものについては、水産庁の長官は、この沿岸漁業を中心にした構造改善、それに対する資金需要というものをどういうふうに制度金融あるいは系統金融、主としてこういう方面の形の中で解決をしていこうというのか、その辺の今後の考え方というものについてお伺いしたいと思います。
  105. 伊東正義

    ○伊東政府委員 水産に入っております金融を見ますと、先生さっき御質問になりましたが、全部で残高千九百六十億くらいございますが、このうちで千二百四十億くらいか一般の市中金融になっております。系統金融が四百七十億、公庫から二百三十億というようなことで、やはり今の水産の金融全般を見ますと、市中金融に負うているところが非常に多いのでございます。こういう形でありまして、これはまあ水産全部でございますので、沿岸がそのままそうだとは申し上げませんが、構造改善をやっていくということにつきましては、私ども金融だけでなくて、金融とともに、今度の予算でも大体八億くらいの予算を御審議願っておりますが、構造改善の事業の国からの補助金ということを考えておるわけでございます。これは大体一地域六億くらいの事業費を考えまして、漁場改良と経営近代化の促進、両方あわせまして一地域六億くらいの事業費、大体そのうち半分くらいは国が補助をしていこうというふうなことで、漁場改良でございますとかいろいろな経営近代化の事業をやって参りたい。これについては補助金を国から出す。それにあわせまして、今年度からいわゆる近代化資金といたしまして、また最終的に金利はきまっておりませんが、農業と一緒に六分五厘くらいでやりたいと思っておりますが、これは一億五千万ございます。そのほかに、安定資金一億ということで芽を出したのでございますが、次年度からは、これは金融等につきましては、近代化資金は、本年はまだ構造改善の計画が出てきておりませんで、これが出てきますれば、近代化資金としてどのくらいほしい、あるいは安定化資金として、どれくらいほしいということが、当然また計画となって出てくるだろうと思います。実は、沿岸漁業振興法等もまだ出しておりませんので、こういうものの取り扱いと一体といたしまして、私どもは、水産庁の行政の中心は、沿岸漁業の振興だ、企業としての安定だというふうに考えまして、法律、それに基づきます計画に基づきまして、金融等のワクも広げて参りたいというふりに考えております。
  106. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 たまたま沿岸漁業安定費金というものが構造改善に結びついておるために、先ほど田口委員からも指摘のように、これからいろいろな諸問題、たとえば政府がやろうとしておる貿易自由化等の問題の関連、あるいは経済の高度成長の中における消費需要構造のいろいろな変還、その他各般の問題がありまして、どこの県でも非常に問題を持っておる沿岸漁業の問題については、速急に前向きの姿勢ですべり出したいという意欲を強く持っておると思う。そういう場合に、去年御承知のように調査県として十三地域を指定し、そうしてことしさらに八地域を新年度指定をしよう、こういうことで、特に去年の十三地域の中から、計ができたということで、五地域については事業にすべり出すんだ、こういうことで、宮城、愛知、京都、山口及び長崎県の一部ということに予定をされておるようでございますけれども、これは新年度からすべり出していくであろうということになりますが、先にすべり出すところ、あとに持っていかれるところ、たまたまこの沿岸漁業安定資金が構造改善に結びついてそれに関連したものでなければ貸さないというだけに非常にアンバラが出てくる問題、これはどうしても否定することができない。そういう問題を補完するものとして具体的な方法というものは考えないわけですか。それはもうそういう方針でいく限りはやむを得ないのだということで考えられるのですか。その点はどうなんです。
  107. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほども答弁いたしましたように、この安定化資金がおくれました理由考えてみますと、先ほど申し上げました担保力その他で全然今まで創設できなかったわけでございます。それを今度作りましたにつきまして一番大きな理由は、沿岸でもこれは漁業構造の改善事業をやって所得を上げて、またその担保としては、漁業協同組合の共販をするというような手段を講じてこれは返していくん、だというようなことを強く考えまして、この制度を実は創設したわけでございます。先ほどから御質問がありまして、地域によって時期の前後があるんじゃないかというお話でございますが、私どもはその点は認めます。ただ、どの県からどういう事業をやっていくかということを考えますと、いろいろ事業等について時期的に、県内でも早いところもあり、おそいところもある。県でも早いところ、おそいところが出て参ります。これは全部が一緒に事業がスタートしません性格上からどうしてもそういうことが出てきますので、私どもといたしましては、なるべく早く指定をよけいしまして、今のようなことの間隔を縮めていこうというようなことに努力をいたしたいというふうに現在考えています。この制度ができたばかりでございますので、これをどういうふうに改善するかということにつきましては、もう少し時間をかしていただいて、われわれとしましてはなるべくこの制度の改善をはかっていきたいと考えております。
  108. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 沿岸漁業構造改善対策の推進として本年度八億三千六百万円という予算が計上されておるのであります。それで、内容は、先ほど来質疑の中でも明らかなように、これを漁業経営近代化促進対策事業というものと、もう一つは漁場改良造成事業というものとの二つに分けて、一方は四カ年計画でやっていこう、一方は十カ年計画で、やっていこうというふうに二つに区分されておるわけですが、この第一項の漁業経営近代化促進対策事業の中に第二項に類するものが入っている、あるいは第二項の問題の中に第一項の問題が入っている、こういう相互関連の問題ではないかと思うのですが、これを明確に分けて、表題的にも、漁業経営近代化促進対策事業として推進すべきものと、それから漁場改良造成事業として推進すべきものとの二本立にした最初の考え方はどういうところにあるわけですか。
  109. 伊東正義

    ○伊東政府委員 従来は、構造改善事業といいまして一応計画に立てておりましたのは、先生御指摘になりました近代化促進系統のものを構造改善事業として考えております。そのほかそれとは全然別に漁場改善の事業をやっていたわけでございます。しかしこれはよく考えてみますと、近代化促進事業費だけで、はたして沿岸漁業の構造改善ということが考えられるかどうか、その根本にはやはり資源の面等から考えていかないと、これは十分でないのじゃなかろうかということで、漁場改良につきましても、これは構造改善事業の一環として実は考えたわけでございます。ただし漁場改良の問題につきましては、これは計画ができた地域だけにやりますということでなくて、従来から計画をおっておりまして——この事業は全国的にやっておるわけでございます。でありますので、計画の先行投資といいますか、そういうような意味で、十分構造改善計画ができます前にも、漁場改良だけにつきましても先行投資として全国的にこれはやっていこうということで、計画の中を二つに分けて、四年間で早く仕上げてしまうものと、それから漁場改良のように相当規模投資ということになりますものと、若干完成の時期は変えていく、しかしこれは全国的に広げていくというような従来通り考え方で計画を作っているわけでございます。
  110. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁場の造成に伴って私が申しております第二項の事業の十カ年計画の推進に伴ってやはり漁業経営近代化事業として第一項に考えたようなことが四カ年で全く終わってしまったのではなしに、漁場造成に関連をしてやはり地域的には出てくるんじゃないですか。そういうふうに、一方は四カ年で速急にやっていく、一方は十年でやっていくというふうに分けられないと思うのですが…・。
  111. 伊東正義

    ○伊東政府委員 その近代化促進の事業をやりますときには、やはり重点的に漁場改良をやっていきたいというふうに思っております。そこはどうしても重点的に先行してやっていくということに相なろうかと思います。先生おっしゃいましたように、漁場改良だけであと近代化促進というようなことが当然ついてくるのじゃないかということはその通りだと思いますけれども、その点は、たとえば養殖漁場を作るのに相当長い間かかって作っているということではまずいので、そういうふうに集中的に早くやらなければならないものについては、四年というふうに区切りまして漁場改善をやる。そのほかにも漁場改良については近代化促進事業と離れてもやり得ることも考えられますので、地域の指定がまだおくれているというふうなところにつきましても、資源の保護といいますか、そういうところは先行投資的にやっていこうというふうな考え方でございます。
  112. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁業経営近代化促進対策事業の事業種目として、養殖漁場造成事業、養殖及び畜養施設設置事業あるいは漁船漁業近代化施設設置事業、処理加工改善施設設置事業あるいは流通改善施設設置事業、漁村環境改善施設設置事業、その他水産庁長官が特に必要と認める事業、こういうことで、何となく近代的漁村の建設のあれの中に言われている項目のものを含んでいるようですが、特にこういう漁業経営近代化促進対策事業の中で、事業種目のどこに力点を置いてやっていこうという考え方を持っておられるのですか。
  113. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今先生のお読み上げになりましたような事業を考えておりますが、これは地域によりましていろいろ特殊性があると思います。たとえば同じ地域指定しました中でも、ノリをやっているところあり、あるいはそうじゃなくて養殖の養魚をやっているところもあるというようなところとか、いろいろ地域の中でも実はこれは違っていると思います。また漁船漁業の形態を考えますれば、これもいろいろな漁船漁業の形態が考えられますので、私どもは構造改善計画は、これは今のところの考え方でございますが、県が市町村段階関係者の意見と漁業協同組合などの意見を聞いて、その地域々々の特性を織り込んだ計画を持ってこられたならば、それが妥当ならば承認してもいいということを考えておりますので、農林省としてこれたということでなくて、これは知事さんあるいは協同組合ひいては沿岸の漁業者の人の意見もいれまして作り上げて、その地域々々で重点的に考えていくというようなつもりでおります。
  114. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 それでは、「その他水産庁長官が特に必要と認める事業」というものは具体的にはどういうことを考えておりますか。
  115. 伊東正義

    ○伊東政府委員 今そこまで考えておりません。これは何年かの間にはいろいろな新しい漁法が出てきましたり、あるいはそれに基づく施設等も出てくるのじゃなかろうかと思いますので、今これという限定はいたしておりません。それで、ただそういうものを入れたいで抑えてしまいますと、われわれの考えつかぬものもあるかもしれませんので、入れておるわけでございます。
  116. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 漁業関係の問題については、先ほど来、田口委員の方からも出ておりましたように、せっかく沿岸漁業経営安定資金というものを設けられる以上は、これは当然構造改善と直後結びつけて、暫定的なものとして発足するのではなしに、このもの自身として長期的な法的根拠を与えて出発をするということが考えられなければ意味をなさない、こういうふうに思いまするし、同時に、今進められようとしておる沿岸漁業構造改善対策というふうな問題についても、これはいずれ沿岸漁業等振興法を政府としても準備しておられて、近い機会に出されると思い申すので、それらの問題についてはその機会に譲りたいと思います。従いまして、当面の問題としては金利償還期限等の貸付条件の問題あるいは資金ワクの問題、貸付対象になるべき魚価の条件の問題、こういうふうな問題については、いろいろ先ほど来のように意見があるわけでありまするけれども、この問題については時間の関係もありますのでこの程度にいたしたいと思います。  そこで、農林漁業金融公庫法の一部改正全般の問題について若干お伺いをいたします。  これは河野農林大臣が、直接何らかの機会に言われたのかどうか、はっきりした点については今資料を持ち合わせておりませんが、あれは私、日本農業新聞で目についたのか他の関係で目についたのか知りませんが、大臣のお考えとして、今後農地銀行的なものを考えるというふうな見解が出ておったやに承知しておるわけですけれども、農林行内では、今日の制度金融関係あるいは系統金融関係等をにらんで、特にまた農林金融等の今後の構造改善等を中心とした政府、与党の考え方を推進する重要な一環として、今の形以外の別個の金融機関が必要かどうかということについて検討はされておるわけですか、いかがです。
  117. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在の公庫融資制度、その中におきます自作農維持創設資金の問題、それから今度の近代化資金制度、こういうようなものをいろいろ通じて考えてみまして、私は必ずしも農業金融として現在の規模あるいは制度が万全だということで考えておるわけではございません。もちろん系統金融の問題にいたしましても団体問題との関連等もいろいろございまして、非常にこれはむずかしい問題でございますけれども、よりよく農業金融合理化されますようにいろいろ検討はいたしておりまするか、具体的にいわゆる農業銀行だとかあるいは農地銀行、だとかそういうような目標を持って検討している段階ではございません。
  118. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 農林漁業金融公庫の総裁にお伺いしたいのですが、先ほど来各委員からの話にも出ておりましたけれども、最近の農林漁業金融公庫の出資金及び借入金、こういうものの構成について、あるいは公庫の年次別の運用利回りの変遷、こういうふうなものを見て参りますと、たとえば運用利回りについては、政府の出資等の関係の比率が低下をしてきておる関連等から、悪化の傾向にある。しかもそういう状況の中で、先ほど来の論議にもありますように、長期低利の資金需要の面というのは法改正等を通じてだんだんとふえてくる。たとえば昭和三十七年度当初計画に基づく利率別区分による状況を見ましても、三十五年度で五分五厘以下が五六・五%であったのが三十六年度には五九・五%、三十七年度には六三・八%ということであり、六分以上のものについては三十五年の四三・五%から・三十六年の四〇上五%、三十七年度の三六・二%というふうに、いわゆる低金利の方面の比率がたんたんと逐年ふえてくる。あるいはそれ以上の、いわば高利のものが比重的にはだんだん減ってくる。しかもそれにもかかわらず資金運用利回りの関係を見ると、資金構成の関係等で必ずしも十分な条件にない。こういうことになっておるわけですが、これらの問題について実際に公庫をあずかる農林漁業金融公庫総裁の立場から、今後の問題に対する希望あるいはお考えというものがあれば、この機会に一つ承っておきたいと思います。
  119. 清井正

    ○清井説明員 ただいま御指摘がございましたような点は数字的にはその通りでございます。私、農林公布に参りましてから約三年たっておるのでございますが、毎年問題になって私ども苦心をいたしております問題は、ただいま先生が御指摘になった問題でございます。  農林漁業金融公庫は、申すまでもなく、政府機関でございます。貸付の対象が農林漁業でございますので、政府機関であるという性格と農林漁業を貸付の対象とするという関係から申しますと、当然これは漸次利子を安くする、あるいは条件を緩和していくというふうに、農林漁業の経営実態に即応するように融資条件を適正ならしめていくということが、私どもに与えられた使命であると考えております。  従って、そういう観点から申しますと、だんだんだんだんと公庫の仕付の平均利率というものが下がってくる、高利で貸付をする部分が減って参りまして低利で貸付する部分がふえて参るということは、これは私は当然だと思うのであります。ことに近代化資金ができまして、公庫で貸し付けるよりもっと高い利率である七分五厘の共同利用施設が全部近代化資金に参りましたので、そういう関係からいたしましても公庫の平均利率が非常に下がって参ったのでありますが、これは当然だと思います。  しかし金融機関の立場として申し上げますと、政策的には当然でありましてもやはり金融機関であります以上、私どもといたしましては、この金利の低下傾向に即応いたしまして、公庫自体の健全性と申しますか、公庫自体の運用の健全性というものを責任を持って考えなければならぬ立場にあるわけでございます。そこで私どもといたしましては、公庫が設立されて以来まだ九年目でございますが、貸付対象が非常に長期のものに貸し付けておりますために、いわゆる償還金へ充てられるものかまだ二百億程度でございます。ところが貸付は、御承知通り来年度は七百十億ということに予定されておるわけでございます。七百十億の中に二百億程度の貸付金の回収でございますので、どうしても差額は政府からの出資及び借入金に依存せざるを得ないという現状でございます。これがある程度時期がたちますと回収金がふえて参りますから、やがては自立して、政府からの出資なり借り入れがなくても公庫が貸付し得る段階になると思いますけれども、これはまだちょっと間があると思います。そこで現在といたしましては出資と借入金に依存する。そういった場合におきましても、ただいまの公庫の貸付の状況から申しますれば、どうしてもいわゆる出資というものに多きを依存しなければならぬという建前になるわけでございます。借入金の方は、申すまでもなく、年六分五厘で借り入れをいたしておりまして、平均の貸付率は五分五厘でございます。約一分近い逆ざやになるわけでございますので、どうしても公庫自体の運営を考えますれば、なるべく出資金をよけいいただきまして、借入金に依存する部分をなるべく少なくするということにならざるを得ないわけであります。そういうことで、私どもも常に政府にその実行方を陳情いたしますし、また政府におかれましても十分その点を考慮に入れまして予算の編成に努力をしていただいておるわけでございます。幸いことしは昨年度に比べますと割合に平均比率もよくなりました。出資の方の比率が借り入れの方の比率に比べまして非常によくなりました。ただし今までの累計がありますので、今までの金額を累計いたしますとまだまたでございますが、最近におきます出資と借り入れの比率は向上しておるとはっきり申し上げられると思います。ただ、今までの比率が十分でありませんので、総計いたしました累計といたしますと、まだまだその域に達していないという現状であります。私どもといたしましては、公庫の金融機関である性格上、今後金利がある程度下がっていくことはやむを得ないことだと思います。また条件が相当緩和されていくこともやむを得ないことだと思います。そのことによって公序の政策金融としての効果が上げられまして、農林水産業が幾分でも進歩向上することがあれば公庫の使命が果たせるということでございますから、私はそこはその方向でやっていっていいと思います。ただ運用のためにはどうしても、出資金なり借入金なりの関係でできるだけ出資金の比率を多くするなり、あるいは将来回収金がふえて自己融資ができるようなところまで早く持っていきたいということで私どもは努力しなければならぬことだと思っております。幸いただいまのところ毎年度の利益が出ておりまして、償却準備資金も四十億をこしておるような状況でございますので、ただいますぐにどうこうという問題ではありませんけれども、公庫自体の傾向といたしましては、なるべくこれは金利というかいわゆる政府の出資と借り入れの割合等を通じまして、公庫自体の採算をよくしていくことに努力しなければならぬものだと思います。今後も私どもそれに努力していきたいと思います。  貸付の方の実態につきましては、私は、支店を九つも持っておりますが、さらに各金融機関を下請機関にいたしますので、今後貸付金額がふえますにつれまして借入者の便益を考えて努力していくつもりでございます。ただ公庫自体の運用の問題につきましては、私どもといたしましてはこの点を千分考えまして、政府にも努力していただいておりますが、私どもも常に公庫の実情を是正いたしましてますます公庫自体の財政の健全化ということについて今後努力を進めて参らなければならない、こういうふうに考えておる次第でございます。
  120. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 時間の関係もありますから最後に坂村さんにお伺いしたいのですが、先ほど来農林漁業の金融の問題について、制度金融という立場から農林漁業金融公庫総裁お話が出ましたが、そういう問題について新しい政府金融機関を作るかどうかという問題については、事務当局としては先ほども答弁があったわけですが、これは政治的な問題を含みますから、さらに触れないが、この際系統金融関係について——系統金融の金が、先ほど来、西岳君も言ったように、お互いの預けた金をお互いがダイレクトに使えるような形というものを本旨としながらやっていくというために今日問題になっている点をいかに打開をするか。近代化資金等の問題もありますけれども系統内部における経営あるいは組織というものの方向を今後どういうふうに持っていって、金融機関的な性格もあわせ考えながら系統金融の役割を十分果たすという指導について、従来から出ておるように、これは組織的な問題というものまである程度改めていかなければ系統金融としての十分な役割は果たせないということであるのか、組織は現状のような形に置いてもなおかつ工夫できる画を工夫して、系統金融としての役割を果たすように指導していこうというのか、これらの問題も含めて、農林経済局としての系統金融の今後の指導の問題について考え方を承りたい。
  121. 坂村吉正

    坂村政府委員 仰せの通り系統金融というものは農業金融で非常なウエートを占めるものでございますので、現状のままではよくないと思っております。根本的にはその組織の問題にまで触れなければなかなか片づく問題ではないというようなこともございましょうけれども、そこまで手をつけるということは非常に大きな問題でございまして、これは将来の問題としては十分検討を要する問題であろうと思います。しかしそういうことを考えませんでも、現状におきましても系統の中でもっと合理化し、それから能率化する面があるのでございまして、そういう点につきまして私どもは十分指導して参りたいと思っております。たとえば規模を拡充いたしまして、合併を奨励いたしまして中身を充実していく、経理につきましても十分な指導をして参る、こういうことでございまして、現在の考え方が、たとえば農民から預かったものを特に安全に預かろう、これだけのことで動いている面が非常に多いのじゃないかと思うのでございます。先般もたとえば預金が一兆円を突破したといって大きな祝賀会をやっておりますが、一兆円が集まるのが能じゃないのでありまして、去年に比べると二千億円ふえております。二千億円ふえたのは信連預金がふえているのでありますから、これでは何のために金融機関なのかということで私は反対の話をしたのでございますけれども、そうして農協ほんとう金融機関として動くのだということで、そういう態勢を作るように指導をして参りたい。御趣旨の通りでございますので、十分一つ努力して参りたいと思っております。
  122. 野原正勝

    野原委員長 仮谷忠男君。
  123. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 先ほど田口先生の御質問がありましたので、関連をいたしまして、きわめて簡単に一、二点水産庁長官にお伺いをいたしたいと思います。  農業で自作農創設資金があり、林業は林業で経営安定資金というものが制度化されまして、同じような立場にある漁民のためにという、これは長い間の念願であり、要望であった漁業の経営安定資金というものが今回実施されるという段階に至りました。これはまことにけっこうであり、われわれ心から努力に対して敬意を表するものでございます。ただ、この運営の面を見ますと、一方で漁業の構造改善事業というものをやろうとしている。そこでこの漁業改善卒業と経営安定資金の貸付とを並行しようという御趣旨のように伺っておるのでありますか、漁業改善事業は一気にできるものではないのでありまして、それぞれ計画に従って、年次を指定されて除々に改善事業が実施をされていく。従いまして全国の県にそれが行き渡る場合に、最初の場合と最後の場合には、十カ年間の開きが生ずるということであります。これと並行して安定資金を貸すということになると、ほんとうに必要な漁民であっても構造改善事業の指定を受けないと貸付を受けることができないという現実が生じてくるわけであります。この点は承知の上でこの制度をお考えなのかどうか、まず御意見を伺いたいと思います。
  124. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほどから御答弁申し上げましたように、時期的に違いがあることを承知いたしております。
  125. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 ほんとう経営安定資金が漁民のために必要だということで設置されるものとすれば、これは全漁民を一応平等に扱うことを考えなければならぬと思うが、その点どうですか。
  126. 伊東正義

    ○伊東政府委員 先ほどから何度も御答弁しているのでございますが、林業につきましては去年できましたが、実は私の記憶では伐採調整資金というものもあったはずでございます。それが形が変わってきたということを私記低しているのでございますが、それでは今までなぜ漁業だけになかったのか、これは掘り下げてみないといかぬと思うのでございます。先ほど簡単に御答弁いたしましたが、ほんとうに漁業に貸して返ってくるのかということが、財政資金でございますので、実は非常に問題になったわけでございます。われわれも先ほどから答弁いたしますようにこれで十分だとは決して思っておりません。ただこれの償還をいたしますことを人に保証するというような意味で、それにはどうしても構造改善事業というようなことで国も補助金を出し、近代化資金も貸し、あわせて漁業経営を安定化していって、それで初めて返せるようなことになるということで、初めて資金を作ったわけでございまして、私自身もこれで十分だ、満足だとは決して思っておりませんが、先ほどから申し上げましたようになるべく早く指定をいたしまして、先生は十年とおっしゃいましたが、五、六年の違いが今の予定では出て参りますので、これをなるべく早く繰り上げてその問題を何とか解消したい。しかし制度自身としましては、私もこれで十分とは思いませんので、時期をかしていただいて、なるべく改善の努力はいたしていきたいというふうに考えております。
  127. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 大体長官の気持はわからぬでもない。漁業の実態というものが農業や林業と比較して決して金融のベースに乗れるものではないということをわれわれは重々承知をいたしております。ただしかし構造改善事業と並行せなければならないというその理由か、漁民のすべてがいわゆる建造、改造、取得等の融資の担保となっているのが通例であるといったような考え方、余力がないのが実態とされているといったような一般的な論拠によって一律に処理してしまうということに私はいささか承服しがたいものがある。中にはあなたのおっしゃるように全体的にはそういうような者があるかもしれませんけれども、必ずしもそういう漁民だけではないということもおわかり願えると思うのでございまして、現実農民あるいは林業者と同じような担保力を備え、しかもその必要を生じて借り得る条件の備わった者も、一律に一方的な論拠によってこれを差別をしていくというのでは、私はどうも承服できない問題があると思う。その点はどうですか。
  128. 伊東正義

    ○伊東政府委員 制度として作って参ります場合に、先生のおっしゃるように、返せる、担保余力があるというものについてだけなら貸せるじゃないかということも、御意見としては私わかります。ただそういう安定資金を作りますときに、そういう選別融資的なものでいけるかどうかということも私は非常に問題だろうと思います。そうでありますれば、私は今までにとうにできたのではないかという気がするのでございますが、なかなか先生のおっしゃいますような実情の沿岸漁業者というものは比較的数が少ないのではないかと私実は考えます。財政当局といろいろ交渉いたしまして、私もほんとうにこれで十分だとは決して思っておりません。先生の御意見もわかりますので、これは将来の問題といたしまして、何とかその時期というか、ズレを縮めることについては、私は最善の努力をいたすつもりでございます。
  129. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 私は時間の関係もありますからこれ以上申しませんが、本来からいえば、漁業経営安定資金というものは自作農創設資金あるいは林業経営安定資金と同趣旨で生まれたものである。構造改善の資金というか、援助と申しますか、これとはおのずから別個のものだ、性質が全然区別されたものだ、それとこれを抱き合わせにしてやるということは私は苦肉の策であるということはわかりますが、それでは実際に漁民諸君は浮かばれないのではないかということを切実な問題として申し上げたい。早急に考えると仰せられますけれども、あるいはその指定の期間が十年もなりはしない、あるいは三年後だということを申されますけれども、この問題を関係者が要望いたして参ったのは何年来の問題である。しかもこれを制度化されると現実の問題となって現われてくる。甲の県においては指定をされて、甲の県の漁民は金を借りたが、その隣の県は三年先にならなければ借りられないという税実が生じてくるわけであります。ここにわれわれは非常に問題もあり、現実の問題として問題が生じてくると考えております。従ってこういった面について、制度の上でいま少し救われる道があれば早急に検討いただきたいことを特に御要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  130. 足鹿覺

    足鹿委員 資料の要求をいたしたいと思います。それは森林法の一部改正の審議に参考にいたしたいと思いますので、伐調資金制度制定以来今日までの年度別、都道府県別資金ワク及び利用実績等その他参考となるべき事項を一つ、これは少し無理かもしれませんが、明日の開会の際には私どもが見ることができるように御準備をいただきたいと思います。
  131. 坂村吉正

    坂村政府委員 承知いたしました。
  132. 野原正勝

    野原委員長 明二日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十一分散会