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1962-02-20 第40回国会 衆議院 農林水産委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十日(火曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 野原 正勝君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 山中 貞則君    理事 足鹿  覺君 理事 石田 宥全君    理事 片島  港君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       稻葉  修君    大野 市郎君       仮谷 忠男君    草野一郎平君       小枝 一雄君    坂田 英一君       田邉 國男君    谷垣 專一君       綱島 正興君    内藤  隆君       中山 榮一君    福永 一臣君       藤田 義光君    本名  武君       松浦 東介君    米山 恒治君       角屋堅次郎君    東海林 稔君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       安井 吉典君    山田 長司君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         農林事務官         (大臣官房長) 昌谷  孝君         農林事務官         (農林経済局         長)      坂村 吉正君         食糧庁長官   大澤  融君         農 林 技 官         (水産庁次長) 村田 豊三君  委員外出席者         農林事務官         (農林経済局農         政課長)    岡田 覚夫君         農林事務官         (農地局参事         官)      富谷 彰介君         農林事務官         (畜産局参事         官)      保坂 信男君         農林事務官         (蚕糸局糸政課         長)      中里 久夫君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    中西 一郎君     ————————————— 二月十七日  委員山田長司辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員安井吉典辞任につき、その補欠として永  井勝次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員永井勝次郎辞任につき、その補欠として  安井吉典君が議長指名委員に選任された。 二月十五日  てん菜生産振興臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第九六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 野原正勝

    野原委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出があります。順次これを許します。西宮弘君。
  3. 西宮弘

    西宮委員 私も二、三の問題につきましてお尋ねをいたしたいと思いますが、私はほんとうの新入の一年生でございますから、どうぞよろしくお願いいたします。従いまして、私お尋ねすることは、ほんとういろはばかりでございますので、そのおつもりお答えいただきたいと思うのであります。  まず第一に、いろはのいの字としてお尋ねいたしたいのは、いわゆる所得格差をなくなすということについて、一体これを本気でやっておられるのかどうかということであります。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 一生懸命やっておりますが、御承知のように長年にわたる日本農政の弱点もあるのでございますから、なかなか思うにまかせないのでありますが、できるだけ一生懸命やっておるつもりであります。
  5. 西宮弘

    西宮委員 ただいま農林大臣お答えがございましたが、今の問題は内閣全体として本気で取り組んでおられるのかどうかということをお尋ねいたします。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 内閣全体としてということはどういうことだか、よく理解いたしかねますが、少なくともわれわれ政治に志すものは、どなたもみなひとしく今の農村について特別に関心を持って、何とかしなければならぬということについてはみな同じであろうと思います。閣僚諸君にも十分了解はして協力は願っておりますが、それぞれの立場もございまして、ときにそういう批判を受けることがあるかもしれません。申しわけないと思っております。
  7. 西宮弘

    西宮委員 この問題は非常に大平な問題でありますので、なおもう少しお尋ねをしたいと思うのですが、その目的を達成するということは可能であるというふうにお考えでございましょうか。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 なかなかむずかしいことでございますが、これを不可能と申すわけには参りません。むずかしい問題ですが、やり上げなければいかぬ、こう考えております。
  9. 西宮弘

    西宮委員 この格差を是正する、あるいは格差をなくなすという問題は、農民の側から考えた場合に、これはいわゆる農政最大の問題あるいは唯一目標である、こういうふうに考えてよろしいかということを伺いたいと思います。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 こういうお答えが適当であるかどうかわかりませんが、何の仕事でも、いいものもあれば悪いものもある。農業にいたしましても、非常に収益を上げ、他の産業と少しも格差がないまでに経営している方もいらっしゃるということでございますので、これは政府施策だけでどうなるものでもない。農民御自身にも十分御努力願って、そして官民一体となってその実を上げることに鋭意努力しなければなかなかむずかしいだろうと思うのでございますが、幾ら努力しても実を上げにくい環境もあるわけでございます。それについてはそれぞれ地方に応じ、実際に即して施策を考慮していかなければいかぬだろうと私は思うのでございます。
  11. 西宮弘

    西宮委員 私が今お尋ねをいたしましたのは、この問題を農政上の最大の問題として、あるいはさらに唯一目標として取り組んでおられるかということをもう一ぺん簡単にお答えをお願いしたいと思います。
  12. 河野一郎

    河野国務大臣 しいて申せばどういうことになるかしれませんが、最大の問題、唯一の問題かどうかということになりますと、結論的にはそういうことになるかと思います。しかし、その過程において、いろいろものの考え方、やり方によって時々に角度が違う場合があるのじゃないか、こう思いますが、結論としては、そこへ行くことができればより以上に所得がふえるということを期待して参るべきものだと考えております。
  13. 西宮弘

    西宮委員 お答えでわかりましたが、要するに、過程としてはいろいろな問題が出てくるが、終局の目標としてはそれが最大の問題というか、あるいは唯一の問題というか、要するに格差を是正する、あるいは格差を解消するということが農政の一番大きな問題だということについては、大臣もそういう意味の御答弁であったと思います。  それでは、いわゆる十年計画というものが立っておるわけですから、そういう観点から考えて、十年後にはどうなるとお見通しでございましょうか。
  14. 河野一郎

    河野国務大臣 私は十年後を一応想定して施策を立てておりますけれども、御承知通り、だれがやりましても、十年計画は五年たったらまたその事情に応じてさらに第二次改定をしていくというようなことが当然なさるべきことであって、常に努力を続けていくということでなければならぬと思います。
  15. 西宮弘

    西宮委員 もちろん、その努力を常に続けられることは当然だと思うのですが、十年後にはどうなるというお見通しを持っておられるか。
  16. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り政府といたしましては、所得倍増計画に見合いまして農村所得をこれに接近さすための一応の案はあるわけであります。しかし、実際にこれを担当いたします農林当局といたしましては、さらにこれを検討し、これが具現に鋭意努力をするという目標を立ててやっておるということが実際でございます。
  17. 西宮弘

    西宮委員 そういう目標のもとに鋭意努力をされるということはよく承知をしたのでありますが、十年後にはどこまで達成するのか、そういう見通しを持っておられるかということをお尋ねしているので、見通しを持たないというはずはないと思う。十年後にはどの程度格差の解消なり縮小なりができるかということをお尋ねしたい。
  18. 河野一郎

    河野国務大臣 所得倍増計画と相見合いまして農林施策の案といろいろ立っておりますが、御承知通り国際環境変化等も非常に大きな問題を呼び起こします。それから、主生産たる米麦についてもいろいろ変化が起こって参ります。そういう変化が刻々に起こって参りますので、これらと対応しつつやって参らなければなりません。昨年出発の当初には一応の案を持ちましたけれども、その後随時これを改定してその実現に努力するということでございまして、今申し上げた程度——さらに具体的に数字を出す必要があれば参考資料として差し上げてもけっこうでございます。すでに昨年農業基本法審議の当時差し上げた数字はあるわけであります。
  19. 西宮弘

    西宮委員 お話のように、予想しないようにいろいろ事情も変わって参りましょうから、それに応じて改定の必要が出てくるということは、もちろん当然だと思うのであります。しかし、何にも目標を持たないということは、大問題で、しかもそれが最大の問題あるいは唯一の問題だというふうに理解している中で、十年後にどの程度になるかということについて何も具体的な目標がないということはあり得ないと思う。抽象的になってもやむを得ないけれども、しかし、十年後にはこうなるべきだということは当然示さるべきだと思うので、もう一ぺんお尋ねしたい。
  20. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げましたように、所得倍増計画と見合って農林施策をこれにどう接近さしていくかという目標数字は皆様に差し上げたものがあるわけであります。しかし、農林省としてこれをさらに掘り下げて検討いたします場合に、いろいろな問題をそれぞれについて持っております。たとえば、第一年度の今年現に作業いたしております十年先にはどういうふうにおもなる農産物がなるだろうかというような見通しについても報告せいということになっておりますから、いずれ近日御報告申し上げるつもりであります。これを御報告申し上げれば、同時にこれに対する対策もそれを基礎にして立てるということになっておりますので、今お話のように、これだけの重大な問題を目標がないことはないだろう、それは当然目標がなくてやるわけには参りません。しかし、その目標たるや、今申しましたように時々刻々と客観情勢が変わって参ります。その変わって参るのに対応しつつ修正してやって参らなければなりませんから、確固たるものを、これでいいんだというものがあるかということになりますと、それはなかなかそうはいきかねるのじゃなかろうかという御答弁を申し上げておきます。
  21. 西宮弘

    西宮委員 それでは、私の方からこういうふうな質問の仕方でお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、たとえば昭和三十五年の十月、自由民主党でお出しになりました「繁栄への指標」という書物がございますが、これを見ますると、今後十年間に日本農業生産性はせめて二倍ないし三倍に引き上げる、こういうふうに書いてあるのでありますが、そういうことは今でも変わらないかどうか承りたいと思います。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 党の方で出しましたものでございますから、党の方は数字を積み上げて発表したものと心得ておりますが、ただいま私、手元に数字を持ち合わせませんから、いずれ調べまして御報告申し上げます。
  23. 西宮弘

    西宮委員 そういたしますと、今のはいわゆるせめて二倍ないし三倍に引き上げるというふうに述べておられるのでありますが、これは数字を積み上げた結果であるからその通りであると思う、ただしこまかいことはさらに検討するという御答弁であったようであります。そうするとこれは昭和三十五年の十月、ちょうど選挙の直前でありまするけれども、そのときに考えられたことは今日でも要するに積み上げた数字の上に立てられた計画だ、こういう御答弁でありましたので、そういうふうに理解をしてよろしいわけですね。
  24. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げました通りに、党から発表いたしましたものは党の政調におきまして数字を積み上げて出したものと心得ますから、よく党の方と相談をしまして調査いたしまして御報告申し上げます。
  25. 西宮弘

    西宮委員 さらに同じ時期に「わが党の農林政策と」いうようなものを自民党からお出しになっておられるのでありますが、これも大体似たり翻ったりのことを、これは農林政策一本でありますからかなり詳しく書いておるわけであります。さらにもっと新しいことを申し上げると、昨年農業基本法ができました後に、すなわち四月五日に出された自民党の冊子でありますが、これを見ますと、「今後は農業生産性向上が他産業のそれと均衡し、さらにそれを上回って」云々、こういうふうに説明をしておられる。他産業のそれと均衡し、さらにそれを上回るということを昨年の四月五日に発表された文書の中にこれは明らかなんでありますが、やはりその通りにお考えでございましょうか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 その点は、私は先ほどから答えましたのが私の考えでございます。
  27. 西宮弘

    西宮委員 農林大臣は今私の申し上げたことを両方とも肯定をされたわけでありますが、もしそうだとすると、先般経済審議会答申をいたしまして、その中に、農業問題についてだけは農業近代化委員会報告というのがあるわけであります。これは経済審議会内閣総理大臣に対して三十五年の十一月一日に答申をいたしておりますが、それによりますると、こういうふうにしるされております。「この計画最終年次である十年後において現状よりわずかに改善される」これは所得格差の問題でありますけれども、「わずかに改善される程度である。」とこういうふうに書いておるのであります。なお詳しく読めばもっと続いて出ておりますが、ただいま申しましたように、「この計画最終年次である十年後において現状よりわずかに改善される程度である。しかし、従来拡大をつづけた所得格差が少しでも改善されるということは大きく評価さるべきことであろう。」こういうふうに書いて、要するに、十年たっても現状よりはわずかに改善されるにすぎない、とこういうふうに言っておるのでありますが、どちらがほんとうだということになりましょうか。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 その審議会答申審議会委員諸君は十分検討してお出しになったものでございますから、それを私は信憑性がないということは申し上げるのではございません。御承知のようにわが国の農業につきまして最近の変化、変遷というものを考えますと、予想せざるような事態が起こっております。従いまして、客観性変化、もしくは技術更新等によりまして、私はここに施策よろしきを得、もしくは関係者一同努力結実等考えますときに、われわれがこの道一筋努力して参りますれば、今ここでそれが数字的に積み上げてどうということは申し上げかねますけれども、必ずしも私はわずかに改善されるという程度ではいかぬのでございまして、何にしても格差を是正して、これが均衡のとれるまでいかなければならぬという命題のもとにわれわれは努力しなければならぬのでございますから、鋭意努力いたしましてそういうことにいたしたいと考え行政を続けて参る所存でございます。
  29. 西宮弘

    西宮委員 ただいま大臣の御答弁を聞いて非常に意を強うするのでありますが、要するにこの道一筋努力を続けて、単にわずかに改善をされるというような程度ではとうてい満足できない、これは大いに改善をしなければならぬというお話でありまして、その点は非常に意を強うする。さらに大臣お話の中にもありましたように、いろいろ思わざる情勢変化によって最初計画通りいかないということがあり得ることは当然だと思うのであります。私はいずれもそういうことは、むろん事情変更のやむを得ない場合はありましょうけれども、計画としてはそれぞれ綿密な周到な計画のもとに計画ができ上がっておるもの、かように考えるのでありますが、その際に、先ほども申し上げたように、たとえば自民党でお出しになっておるものには、十年後には二倍、三倍になるのだ、あるいはまた他の産業均衡をとり、さらにそれを上回るのだというようなことを言っておられるのであります。それを専門的に調査をいたしました経済審議会との開きはあまりにも大きく開き過ぎておる。大臣はこの道一筋努力をすれば、そんなわずかに改善をされる程度ではないというふうに言われておるのでありますが、たとえばあの所得倍増計画の中では農業所得率向上は毎年二・九%になっておるはずですね。それから、従ってそれが十年たちますると、複利計算計算すれば三割五分になるはずです。片や工業生産は三・三倍に伸びるということになっておるわけですね。ですから工業生産が三・三倍に伸び農業生産は三割五分伸びる、これが所得倍増計画の具体的な内容でありますが、そういう現実を前にして、こういうふうに他産業を上回るのだとか、あるいは二倍、三倍になるのだ、こういうことがむぞうさに言えるのかどうか。その点一つもう一ぺんお尋ねしたいと思います。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、今御指摘になりましたように農業生産伸び幾らである、工業生産伸び幾らである、それもその通りと思います。しかし、経営内容というものに立ち入って考えますと、そこにはまた違ったものが出てくるのではないかと思うのであります。たとえば農業の一部でありますところの御承知通り畜産の一部等につきましては、養鶏で言いますと、今までだれもが想像しなかった十万羽養鶏というものが簡単に両三年の間に変化を来たしております。蚕糸においてもそういうことがいわれます。こういうものを一体どういうふうに計算するかということになりますと、私は、おそらく農林省政府当局が予定した動物蛋白需要量というものは毎年当たったことがないというのが最近の事例じゃないかと思います。いつでも消費需要を上回っておるという事実をわれわれは見せつけられております。従って、たとえば食肉のごときでも、たまたま今豚が非常な大増産で下落しておりますけれども、最近の例は、常に海外からこれまで見なかったほどの多量の肉の輸入をしている。酪農にしても、牛乳に対する消費量が非常に増加しておる。こういうふうなものは今までの計算の上に数字が出ております。従いましてそういうふうな伸びを一体どういうふうに計算をなさったか。農業農業それだけで計算したら、そこに非常に誤差が出てくる。一般国民経済が上昇しますれば、それによってくるところの消費の増大、それによって農業を刺激する面というものは、いろいろな面において——私が先ほど申し上げたように、客観性変化というものは相互に非常に大きな変革を要求するということになりますから、現在想定するようなそろばん、そのそろばんが間違いとは申しませんけれども、将来はたしてそれだけでわれわれは悲観しなければならぬかということは少し早計ではないか。そこにわれわれの施策努力というものがあるのではなかろうかということも私は期待いたし、同時に、技術の革新ということを非常に強く要望して、この方面の行政に強く力を入れて参る必要があるのではなかろうか、こう思っておるのであります。そういう次第で、もしくは、社会党の皆さんもおっしゃるように、経営上の問題、共同経営がいいか、われわれの言うような協業でよろしいかという点についても、大いにこれから具体的にいろいろな問題が起こってくるだろう。私は、これらについても、どれがいい、どれが悪いと言うわけじゃない。そのものそのものによって、または地方によって、民俗、風俗によって適する経営形態があるだろう、その一番適する経営形態をもっていくことが一番いいのではないか、こう私は思うのでありますが、これらについても大いに今後検討いたしまして、最も収益を上げるのに妥当な方式で進むべきだ。あらゆる点において改良し、もしくはこれらに対して助成して参る道が多分に残されておる。これを、鉱工業生産の合理化された経営もしくは資本が十分に入れられた生産等に比べますれば、助成をし、これに対して協力することによって、まだまだ伸び得る余地は非常に多いのではないか、こう思うのでございまして、そういう点についてこれからの行政上の努力というものに非常に大きな期待をかけられる点があろうかと考えます。従いまして、今、どれがうそで、どれがほんとうだと直ちに断定を下すのは困難である。今、自民党出したパンフレットについて、これはどうだろうかということでありますが、これは執筆者がどういうことでお書きになったものか、意見の交換をしたことはございませんが、それにはそれなりの一つの構想があってお書きになったものと私は思うのであります。なおよく勉強いたしたいと思います。
  31. 西宮弘

    西宮委員 ただいま、たとえば畜産物などは非常に大幅に伸びておる、常に需要生産を上回っておるということで、御説明があったわけでありますが、もちろん所得倍増計画の中にはそういうのはこまかく計算をいたしております。特に畜産伸びるという点については、卵は幾ら、肉は幾ら牛乳幾らということで非常にこまかい計算をいたしておりまして、しかもそれは非常に大幅に伸びることになっているわけです。そういうものを全部計算いたしまして、その結果が毎年二・九%の増だということが倍増計画内容なんです。今、大臣お話しになったような点は、十分計画の中には盛り込んでおるはずであります。それでなおかつそういう程度なんです。ですから、さっき申したことをもう一ぺん要約して繰り返して申しますならば、そういうこまかい周到な計画のもとに十年後の農業生産伸び、あるいは所得伸びというようなものを明確にいたしておりまするし、それは倍増計画の中にもうたわれておるし、あるいは経済審議会答申の中にもこまかに出ておる。それにもかかわらず、一方、党のPRということになれば、こういうようにきわめて簡単に二倍になる、三倍になる、あるいは他の産業を上回るんだというようなことを簡単に言い放ってしまうけれども、そういうことは私は許されないのではないかということを申し上げたかったのであります。ですからその点をぜひ御留意願いたいと思う。ただ、私は冒頭に、この所得格差の問題について、一体政府本気でやるのか、しかもそれを内閣全体として本気でやるのかということをお尋ねをしたのであります。それに対する大臣の決意を伺ったのであります。私は、一体政府全体として本気にやるというほどの熱意を持っていないのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。それは、先ほど、そうではない、およそ政治に関与する者はだれでもそれに重大関心を持って努力するんだという、一番最初大臣の御答弁であったのでありますが、それならば先般の総理大臣施政方針の中で農業問題について述べておるのは、こういうことであります。「農業生産選択的拡大農業経営近代化は急速な進展を見せ、農業所得も堅実に増加して参っております。」これだけしか述べてないわけであります。それから言葉だけを申せば、「農林漁業中小零細企業に対し」云々というのが一カ所ありまして、そこに「農林」という言葉一つ出て参りますが、要するに、あの数千言を費やした大演説の中で、農業問題を取り上げておるのはこれだけなんです。今申しましたように、「農業生産選択的拡大農業経営近代化は急速な進展を見せ、農業所得も堅実に増加して参っております。」というので、今の農業伸びを大いに謳歌し、礼賛をしてというだけで、所得格差問題等には全く触れておらない。一体これはどういうおつもりでございましょうか。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 総理大臣施政方針演説の中で、農林関係のことの演説が少ない。私は、同じようなことを演説をやるたびにしゃべるというのは一体どういうことだろうか、われわれは営々として常に、たとえて申しますれば、本年度の予算におきましても、むろん満足はいたしません、満足はいたしませんけれども、各省の予算に比べて少なくとも農林省予算はその増加率において、明年度の予算の中に占める比率は上がっておると思います。予算をよけいとったから、施政方針の中でたくさんしゃべるというようなことじゃないだろうと思います。施政方針演説にしゃべることが必要なら、これだけしゃべってくれということを言いますけれども、しゃべることはどうでもいい、内容としては、私は私なりに相当に努力してやっておるつもりでございます。おそらく、この内閣におきましても、農林省関係の問題ならば、考えることは大てい各閣僚の協力を得て実行しておるというつもりであります。今のお話のように、どうも施政方針演説中に少し少ないじゃないか、この点はせっかくの御意見でございますけれども、私はその点はちょっと意見が違いますので、施政方針演説中に述べることも強く私は要請いたしませんでした。
  33. 西宮弘

    西宮委員 私は、その言葉の分量が多いとか少ないとか、そういうことはもちろん問題じゃないと思う。もちろんどんなに少なくてもけっこうだと思う。ただ、私の指摘したのは、要するに、非常な伸展を見せておるとか、あるいは所得も大いに増加しておるというようなことでいたずらに謳歌したり礼賛をしておるだけで、今問題になっておるのはどういう点だということについての指摘が全然ない。つまり最初お尋ねしたように、この所得格差をなくなすという問題が最大の問題だというふうに理解をされるならば、それは当然に指摘さるべき問題だ。こういうふうに伸びてはいるけれども、ただし所得格差の問題が大問題として残っているというようなことは、そういう認識があるならば当然に述べるべきだと思う。ですから何も言葉が多いとか少ないとか、そんなことを私は言っているのでは毛頭ありません。しかし問題の本質を全然はずして、大へんけっこうだ、農業生産伸びて大へんけっこうだということだけを言っているということは、全然はき違えではありませんか。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 しかし、いろいろ今までお話がございましたが、長期にわたっては先ほどお話を承りました通り、私の申し上げた通りでございます。しからば過去一年間の経緯について申しますれば、総理の演説いたしておりますように、農村所得経営というものは相当に進んでおるということは言えると私は思うのであります。ただ、しいて申せば、他産業——政府も政策として取り上げておりますように設備投資が非常に過熱した、従って一方は伸び過ぎてこれを今押えて横ばいにさせておる。農業生産は昨年度は平常の伸びとしては予定通り伸びておる。従って本年度も引き続き従来通りの方針で伸びることに努力しておるという姿ではなかろうか、こう思うのでございます。
  35. 西宮弘

    西宮委員 時間がなくなりますから、その点はこの程度にいたしますが、ただ私が申し上げたのは、要するに大へんけっこうだということだけをいわば自画自賛というと誤弊があるかもしれませんけれども、そういう点だけを述べて、問題がどこにあるかというようなことについては全然触れておらないというのは、はなはだ無責任だ、いわゆる総理大臣施政方針としてはまことに無責任だということを言いたかったわけであります。  しからばその格差の是正あるいは格差の解消ということをどういう方策でやっていかれるのか、これはお尋ねをすれば、それは現在の農業政策全体、たくさんあります政策全体を取り上げられるのだろうと思いますけれども、それでは大へんに長くなってしまいますので、私は私の方からむしろこういうふうな形で御質問をいたしたいと思います。要するに農業経営の規模を拡大する——零細性ということが一番の問題だということを常に指摘しておられるのですから、農業経営規模を拡大する、それによって農業生産性を高めるのだ、こういう御方針であることは、これはまずまず間違いはなかろうと思うし、またそれがおそらく根本の問題だというふうに言われると思うのでありますが、その点いかがでしょうか。私の認識で間違いないと思うのですが……。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 間違いございません。
  37. 西宮弘

    西宮委員 私はそういう点で農業経営規模を拡大するということも大へんけっこうなことであると思うのでありますが、ただいわゆる経営規模を拡大する。その拡大するための施策であります。これに対して、いわゆる農家の人口を減らすという問題、実はこれは前に池田総理が農家人口を削減するという言い方をして非常に誤解を受けたということで、その後この問題をいろいろ弁明をしておられます。池田さんの弁明は、要するに農家人口を削減するのではなしに、農家人口がひとりでに減っていくのだ、こういうことを言っておられるのでありますが、その点についても私どもは総理の言っていることは十分了解ができるわけであります。総理が言おうとしていることが何であるかということはわれわれにも十分理解ができるのでありますが、ただその点について農林大臣にさらにお尋ねをいたしたいと思いますのは、やはりさっき、経営規模を拡大するということが所得格差のためにとられる方策だ、その点は間違いないというお話であります。さらにその経営規模拡大については、要するに農業人口が他産業に流れていくということによって達成するのだ、こういう点も私がお尋ねをした通りでございますか。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 私は経営規模を拡大することが第一に考えられることでありまして、経営規模拡大以外の点はないかといえばそうじゃない。格差を是正し、自立農家を建設して参りますためには、経営規模の拡大、さらに農業経営内容の充実というような点があげられる。第三番目には、兼業農家の整理ということも考えられるということでございまして、今お話しになっておりますように、農業人口が減るということが、その考え方、取り方がどういうふうに、原因と結果がどういうことに考えていいかということについては問題がいろいろあります。今私が申しますように、農業者自身が他の産業に従事し、そうしてその家庭の本体は引き続き兼業農家としてやっていく。これらについても兼業農家として大いに育成をして参りまして、そこに一つの固定した型の農業経営が生まれてくる。これもとるべきである、こう考えております。また経営規模、要するに耕地面積がいわゆるある程度拡大いたしませんでも、そこにたとえば畜産とか果樹とか園芸とかいうような特殊な農業経営を創造することによりまして一つの固定した自立農家が生まれるということも可能である。また最初お話がありました通りに、経営規模を拡大する形式も大いにとるべきであるということで、形式はいろいろございます。従ってそれら地方に、これらの形式をそれぞれによって内容を充実し、自立農家の育成奨励に私たちは専念いたします。それとは別個に他産業に流れていかれる人は、それぞれの立場において、それぞれの計画においでおいでになる人、これを無理に食いとめてそうして絶対に行かれちゃ困るという考え方をするがいいか悪いかということになりますと、これはまたおのずから別であります。われわれとしては、どこまでも農村の構造を改善し、ただいま申し上げましたような自立農業経営農村に創造いたしまして、その中に農業者の安住の地を創設して参ることがわれわれの理想でなければならない、こう考えて大いに指導して参るというつもりでございます。
  39. 西宮弘

    西宮委員 そのいわゆる経営規模を拡大するという問題と格差の問題でありますが、要するに他産業農業人口が流れていくということによって残った農業者の経営規模が拡大されるということはあり得ると思うのです。むろん土地の購入資金の問題とかいろいろ問題がありましょうけれども、とにかくそれは可能ではあると思う。ただ問題は、格差を是正するという問題と、他に労働者が流れていく、労働力が流れていくという問題とは矛盾をする問題で、その点の調和はどういうふうにお考えでしょうか。つまり他に農業人口が流れていくということを期待するならば、これはできるだけ格差が開いておった方がよろしいわけなんです。その点はどういうふうに考えられますか。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 そういう議論をなさる人もありますけれども、私は外へ流すために格差が開いた方がいいというようなことはとるべきではないという考えでございます。  ちょっと申し上げておきますが、先ほどから数字をお示しになりまして、そうして農業所得はふえない、ふえないということの考えで御立論のようでございますが、私はその際に一番大きく影響するものはその計数の要素に取り入れてない農産物の価格だと思うのであります。価格について現状を基盤にして数字的な増産面は計算に入っておりますけれども、その価格自体は固定したものを取り入れておると思います。たとえば米にしても同様であります。しかし米価は依然としてくぎづけが想定できるかどうか。現に昨年のごときは米価のあれだけの相当の幅の値上げがあるわけであります。数量については大した増加はありませんけれども、価格の上昇があるわけであります。他の農産物についても、むろん上下はあるけれども、大勢としては、国民所得が増加して参れば、そこに生活必需物資は他の鉱工業生産に比べて値上がり率が多いのはあたりまえじゃないかというふうに私は考えられます。そういたしますと、そこに農家所得の点においても期待するところのものがあるのじゃないかというふうに考えられます。しかしそうすれば生活が困難になるのじゃないかというような議論はぐるぐる回りになりますけれども、大局としては程度の問題はあります。従って今の計算には現状において価格は同一の数字に立って今の二・何%ということになっておりますけれども、そういう点について私は先ほど申しました通りに計数は計数としてこれを否定するものではありません。そこに議論が及びますとまた議論がぐるぐる回りになりますからする者ではございませんが、農業政策、農業経営というものを考えて参ります場合には、農産物の価格と生産というものと両々相見合って政策の基盤に立っていくことは申すまでもないことでございますから、従って今お話がありました通り格差を開いておいた方がよけい都会へ出ていくからその方がいいじゃないか。米の値を高くすることによってかえって経営規模の増大に支障を来たすのじゃないか、新しい農業は発展していくのに困難があるのじゃないかという議論も昨年あたりからだいぶございましたが、私はそういうふうに考えておりませんと御了解いただきたいのであります。
  41. 西宮弘

    西宮委員 大臣から価格の問題について特に農産物の価格が上がっているから、だからあの当時の計算の基礎にしたのとは違うのだという特にお答えがございました。お答えというか御説明があったのでありますが、それは少し違うのじゃないですか。もちろん農産物の価格も上がっております。しかしそれ以上に経営費も上がっておるのです。いわゆるそのための所得率というのはここ数年来毎年々々下がってきておるのですから、所得率は低下をしておる。何か今の大臣お話だと全く逆のお答えがあったのですが、それはいかがですか。
  42. 大澤融

    ○大澤(融)政府委員 所得率の低下ということは事実でございますけれども、所得率がなぜ低下するかということは、いろいろ理由があると思いますが、そのうちの一つの理由をおっしゃったと思うのです。それは農産物価格と農業用資材との価格の関係が、農業側にとって不利に発展するということならば、そういう面から所得率の低下ということが言い得ると思うのでありますが、ここ数年の価格の交易条件を見ますと、むしろ今までよく行われた生産ということではなくて、逆に、三十五年度の農業の動向に関する年次報告の中でも言われておりますように、かえって農業側に有利になっておるということで、その面からの所得率の低下ということは言われないのじゃないか、こう思います。
  43. 西宮弘

    西宮委員 三十五年度のいわゆるグリーン・レポートに三十五年度の分だけは出ておりますけれども、ここ数年来ずっと低下を続けてきておるいわゆる所得率の低下ということは、これは明瞭に数字が示しておるのであります。さらに農産物価格が上がりましても、あるいは一般の消費物資ももちろん上がっておるのだし、そういうことで基礎数字に使った当時よりも物価が上がっておる、農蔵物の値段が上がっておるから、だからよくなっているのだということは、これは大臣の議論としては大へん失礼ながらまことにお粗末だといわざるを得ない。それは農産物の物価が上がる際には当然消費物資も上がっておるので、むしろ生活水準は苦しくなっておるということが明らかなんであります。その点は先ほど大臣の御説明を私どもの方ではとうてい納得できません。さらに私が先ほどお尋ねいたしましたのは、所得格差の問題と、さらに農業労働力が他に移動する問題との関連性についてお尋ねしたのでありますが、大臣はそのためにその所得格差が開くというようなことは考えないというお話でありました。ところが、農業基本問題調査会で総理大臣答申をいたしました農業の基本問題と基本対策ですね、この中には価格問題に触れてこういうふうに言っております。農産物の価格の水準についてでありますが、「農産物の価格の水準は、特に供給過剰の恐れあるものについては、農業からの労働力の移動を阻害するはどのものであってはならない。」 こういうように書いておる。これは私はきわめて重大なことを言っておると思うのであります。「農産物の価格の水準は、特に供給過剰の恐れあるもの」という、たとえば米なども供給過剰のおそれがあるということをこの答申の中で他の面で言っておりますが、米なども含むでありましょうけれども、要するに「農産物の価格の水準は、農業からの労働力の移動を阻害するほどのものであってはならない。」つまり農産物の価格を高くすればいつまでも農業に見切りをつけない、だから他に労働力を移動させるためには早く農産物の価格に見切りをつけて他に移動させるようにしなければならぬ、こういうふうに言っておるのでありまして、これはまことに重大な点だと思うのでありますが、基本対策の中にすでにそういうことがうたわれておるわけであります。大臣はそういうことは考えないというお話でありましたが、総理大臣に対する答申のいわゆる日本農業の基本対策という中にはそういうことがうたわれておるので、その一点だけ大臣はどういうふうに御了解をしておられるか、お尋ねいたしたいと思います。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど来私は御答弁申し上げた通り考えておるのでございまして、決してさればといってその答申を根底から否定するものではございません。でございますから程度の問題であるということを先ほどから申し上げておる通りであります。
  45. 西宮弘

    西宮委員 それではさらに話を進めます。ただいま価格の問題が大臣からも御指摘がありましたので、もう少しお尋ねをしたいと思うのですが、私は根本的に農産物の価格の問題というのは、いわゆる価格政策というものが今になってみると最も大事な問題だ、今まで生産政策におもに追われてきたと思うのでありますが、それに対して今や価格政策が農業政策の最重点として押し出されてきたというように考えるのであります。ただその際とられておる価格政策がややもするといわゆる流通過程における所得が多くなる、つまり、言いかえれば農業生産者の所得があと回しにされておると考えられる場合が往々にしてあるのでありますが、そういう点について大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 たびたび私は申し上げますように、生産も大事でございますが、これが流通過程において最終消費者と生産者との中間をどう合理化するかという点に意を用いる必要がある、そういうことによって最終消費者にもなるべく利益するように、生産所得も増大するように考える点、施策する点はないかという点に力を入れていきたい、こう考えております。
  47. 西宮弘

    西宮委員 私が今お尋ねをいたしましたのは、大臣もすでにこういう点は十分御承知だろうと思いますけれども、たとえば農家が買ういわゆる農業資材と農家が売る農業生産品との間において、生産者の手取りがはなはだしく違う。たとえば農家が買います肥料について申し上げると、値段のうち、硫安ならば九四・一%、尿素ならば八九・九%と、大体九割以上でありますが、農家の払う金の中の九割以上が生産メーカーの手に納まるわけであります。ところが逆に農業者に入る農業生産品の場合で申しますと、米のやみ売りの場合でも消費者が買う価格のうち農家の手取りになるのは七七・三%、牛乳が三一・三%、リンゴが三二・四%、キャベツが四五・三%、こういうわけでありまして、ほとんど六割、七割というものが途中の経費に食われてしまう。こういう形になっておるわけであります。これが現在の農家の売ったり買ったりする場合の大きな開きでありますけれども、こういう点についてどういうふうにお考えでございましょうか。
  48. 河野一郎

    河野国務大臣 何か硫安、尿素等と一般のくだもの、野菜等とお比べになりましたが、私は比較をなすってお考えになっても、それはまあどういうことでございますか知りませんが、買う場合に安く手に入るのはけっこうなことで、他のものもなるべく安く手に入ることを期待するということもあるし、一方の売る場合においては、それぞれの食料品が販売の経路、過程においていろいろな必要な経費が含まれておるということなのではなかろうか、こう思うのでございます。そこでこれをどういうふうに合理化するという点があるか、これをどういうふうにしたらもう少し消費者と生産者の中間の経費が安く済むかという点について配意をする必要があるということではなかろうかと思うのでございまして、先ほど申し上げましたように、その点に鋭意努力をいたしておるわけでございます。何と申しましても、先般申し上げておしかりを受けましたが、これはしいて申せば、アメリカその他の国の実情を見ましても、やはり四割以下のものが農業生産者の手取りであり、最終消費者にはそれに六割以上のものを加えたもので販売されておるというような実例は非常に多いと私は承知いたしております。従って外国がそうであるから日本もそれでいいということじゃない。日本の場合はこれをどういうふうに合理化したらよろしいか。しいて申せば、従来中間経費と申しますか、中間機関の排除というようなことにのみ力を入れておりましたが、私は中間機関の整備——排除ということよりも、むしろ中間機関に対してもう少し合理的な育成をしていくということに力を入れることの方が必要じゃなかろうかという考えで、とつおいつ今せっかく検討中というわけでございます。
  49. 西宮弘

    西宮委員 中間機関の排除ではなしに、中間機関の合理的な育成だというお話であったので、私は言葉だけではわかりませんので、その内容を聞かなければ何とも議論の仕方がありません。従って今ここではその議論を避けたいと思います。私どもは要するに農民が売る品物の場合にはほとんどその中間で食われてしまうということが非常に問題だということを申し上げた。しかもそれが政府の政策として行なわれる場合にもそういう方向で進んでおるということであれば、これはきわめて重大だと思うわけであります。たとえば畜産物の価格の問題についても、政府が買い上げるのは乳製品だけだというようなことになると、そういう問題が当然に起こってくるわけであります。従ってそういう点が問題だということを私は指摘したわけでありますが、時間がなくなるのでこの程度にしたいと思います。ただこういう農産物価格を根本的に考える場合には何を基準にするか。生産者の所得を補償する、生産費を補償する、あるいは再生産を確保するということをねらいにすべきか、あるいはいわゆる需給の安定、需給均衡価格と申しますか、そういうことを考えるか、どっちに重点を置くべきであということについて、これは大事な問題ですから一つお尋ねしたいと思います。
  50. 河野一郎

    河野国務大臣 そのものによって私は違うと思うのです。全体としての考え方は、生産者の所得を補償するという考え方で参りませんことには、所得格差を是正するとか所得を増大するとかいうようなものの考え方をいたしますときに、最小限度再生産を保障するということは必要でございます。しかし、そうは申しましても、何さま生鮮食料品その他につきましてこの価格安定を政府考える場合に、ただそれだけで考えたところがとうてい施策の立てようがないので、生産事情消費事情等を勘案いたしまして、そこに支持を求めるということよりしようがないのじゃないかと思います。その場合その場合によって基本方針に合致するように持っていくべきではないかと思います。
  51. 西宮弘

    西宮委員 その場合々々で検討するというお話でありますが、それでは具体的な例としてお尋ねします。先般決定された豚肉の問題でありますが、あれはいわゆる所得補償という考えできめられた価格でありましょうか。
  52. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、先般の答申にもありますように、暫定的に下値価格として一応二百四十五円というものを私は指示いたしました。しかしこれは最低保障価格でございます。従ってその中間にあるべき価格につきましては、この一割上を中間価格にする、さらにまたその上を上の価格にするというものの考えであろうと思います。従いまして今のお話は、これはしいて申せば、生産事情消費事情等を勘案してこういうものを作った、こういうことであります。
  53. 西宮弘

    西宮委員 豚の値段の問題は当向いたしました具体的な問題としてきわめて重大な問題でありますが、非常にこまかい問題になりますから他の機会にお尋ねをいたしたいと思う。私は一言だけ米価についてお尋ねをいたしますが、もとより米価の問題は大事な問題として特別な機関で審議をされることになっておりますので、そういう具体的なことをお尋ねするわけではありませんが、一体現在の米価は百姓の農業経営からいうと安いと見ておられるか、あるいは高いと見ておられるのか、お尋ねしたい。
  54. 河野一郎

    河野国務大臣 これは非常に適当ないいところだと思います。(笑声)
  55. 西宮弘

    西宮委員 適当な値段であるということであればまことにけっこうなことでありますけれども、私は農業基本法に関連をいたしましてこの問題を一つお尋ねしたいと思うのです。と申しますのは、農業基本法をどういうふうに理解するかということにかかわる問題でありますから非常に大事な問題だと思いますので、その意味でお尋ねいたします。と申しますのは、昨年米価の問題が非常にやかましかった当時、新聞等の言論機関は、米価を上げるなという説をしきりに唱えたわけであります。その際にほとんど全部が、これは全く申し合わせたように、米価をいたずらに上げたのでは農業基本法の精神が死んでしまう、農業基本法の精神に反するということで議論をされました。米価問題で論議をした新聞は、ことごとくといってよろしいと思いますが、農業基本法を引き合いにして、米価を抑制すべきであるという主張をいたしておったのでありますが、その問題に関連いたしまして、大臣農業基本法をどういうふうに理解されるか、一言お尋ねしたいと思います。
  56. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどもお触れになりましたように、米価もしくは農産物が高値に安定いたしますと、それによって農業労働力が他に転換して参るのを阻害するという意見があります。これも今お話の点の一つの論拠だと思います。さらに申しますならば、農業生産の中におきまして、米価が今の値段でありますると、他の成長農業への転出も阻害するというようなことも一つの論拠のようでございます。しかし私はこれとは全然逆な立場をとるものでございまして、少なくとも農業基本法に言うところの農業所得の増大、他産業との所得格差均衡ということを基本の目的といたします以上は、少なくとも米価を一万一千五十二円五十銭という程度にきめるということも、先ほど申し上げたように最も妥当なきめ方である。成長農業のごときは、この米価を上回った所得のあるような産業のあり方、農業のあり方にするということが、当然農業施策として必要な考え方であるというふうに考えておるものでございまして、私は大方の言われておる所説はとらないのであります。
  57. 西宮弘

    西宮委員 それではそういう点は、いわゆる言論機関等の説と反対だという態度でありますので安心をいたしました。農林大臣がそういう考え方であるということについては安心をいたしましたけれども、ただ依然として農業基本法それ自身が、今申し上げたような性格を持っておる。少なくともその言論機関等はいずれもそういうふうに理解をいたしておるわけであります。そういうことであれば、これはきわめて重大な問題であります。単に現在の農林大臣が、いわゆる言論機関のそういう考え方とは別だという御所見でありましても、そもそも農業憲法と称される基本法が、そういう点を原則としておるということであるとすれば、私はきわめて重大な問題だと思うのであります。従ってそれでは河野農林大臣がどう考えるかという、今の御意見はわかりましたけれども、基本法は一体どうなんだ、基本法はどういう性格のものなんだということについてお尋ねします。
  58. 河野一郎

    河野国務大臣 基本法自身も、私が解釈いたしておるように解釈いたすべきであって、運用も私のやっておるように運用いたすべきものであると確信して疑わないものであります。
  59. 西宮弘

    西宮委員 それならば、一つ基本法の中でどういう点が今大臣の御答弁説明づける根拠になっているのかお聞かせ願いたいと思うのであります。たとえばいわゆる言論機関の考え方、むろんこれは何も政府機関でもありませんから、勝手だといえば、それまででありますが、そのうちの一つだけ取り上げて例を申し上げたいと思うのであります。たとえばこれは日本経済の社説でありまするが、いわゆる河野構想と称されまする食管制度の改革に関連をいたしましてこういうふうに論じております。「政府が無制限に買い入れるべき米の価格を、農業基本法の方向に従ってでなく、現行食管法に沿って決定するというようなことになれば、食管制度の改善どころか改悪にもなりかねない。」こういうように社説は論じているのであります。つまり言いかえますならば、これから無制限に政府は米を買い上げる、百姓の希望に従って買い上げるというのが河野構想でありますが、その際に買い上げる値段が農業基本法の精神に従ってきまるならばけっこうだ、そうではなしに、現行食管法に従ってきまるならばそれは大へんな改悪であるというふうに論じているのでありまして、これなどは農業基本法というものは何をねらいにしているかということを端的に表明していると思いますが、私はこの農業基本法を読んでみまして、ただいまのは一新聞の社説でありますが、こういう見方をしているというのはきわめて当然だと思う。あるいはこれは日経の記事だけを申し上げましたけれども、その他たくさんありますから、心要ならば説明をいたしてもよろしいと思う。さらにまた基本法自身の中から幾つかそういう点を申し上げてもよろしいと思うのでありますが、要するに農業基本法の精神として、いわゆる経済合理主義というような、そういう思想のもとにでき上がっているのが日本農業の基本問題と基本対策であり、それを受けた基本法であるということは明確だと思うのでありますが、大臣は基本法もそのように読むべきであり、そのようにというのはもちろんさっき大臣が御答弁になったように読むべきであるというお話であったが、私は実は基本法の中から大臣が言われたように読み取ることができないわけでございます。今それでは大臣が言われた通りだとするならば、その根拠を示してもらいたいということを申し上げたけれども、おそらく短い時間でそれを求めるのも条文の中を探さなければなりませんから困難でありましょうし、もう少しお尋ねしたいことがあるので、この程度にとどめておくことにいたします。
  60. 河野一郎

    河野国務大臣 日本経済の社説を引用して御議論でございましたが、私はその社説の考え方が間違っているのではないかと思うのであります。農業基本法の基本となるべき精神は、先ほど来御指摘の通りに、格差を是正する、自立農家を造成して参る、農家経済を安定していくということが基本の方針でなければならない、この基本の方針を貫くために、農産物の価格につきましては、先ほども一部を申し上げましたが、この基本法全体を通じて、私は、今申し上げるように、農業の安定を基盤にしていることは間違いないと思うのであります。しかしそこにたまたま食管法によって価格をきめるということが農業基本法をじゅうりんするものだということの書き方は、そうではない、農業基本法先ほどお話通り農業の憲法だ、これを個々の農業経営については、施策については、それぞれのものによって、法律で規定してあるものによって定めて参ることで、少しもそこに矛盾もなければ撞着もないと私は思うのでございます。御承知通り農業そのものにはそれぞれによってウエートが違っております。重要性が違います。違いますから、その重要性の違うものについては、それぞれ準拠して法律上規定すべきものには規定を、そのそろばんの入れ方まで書いてある。畜産物についてはそういうものはあまり示しておりませんが、審議会の議を経てきめるということになっている。いずれも総合してやって運用して参りますときには、そこに出てくるところのものは、今私が申し上げたところのものである。そして、われわれ行政を担当している者として考えなければなりませんことは、たとえば成長農産物についても、その成長農産物の受け入れが、今申し上げました食管法に規定するところの米価で定めましたものよりも、さらに有利な成長農産物であるような施策をいたさなければならぬということを要請していると私は思うのでございます。米をそういうふうにきめれば成長農産物の発展を阻害するじゃないかというふうに逆にとってものを運んで参りましたのでは、所得格差は開いていくばかりである、農業の安定向上というものは期せられないというふうに考えるわけでございます。どうか一つそういう御解釈に御協力をいただきまして、世の中の間違った議論を粉砕するようにせっかく御協力いただきたいと思うのでございます。
  61. 西宮弘

    西宮委員 私もその世の中の間違いを訂正するように努力をいたしたいと思いますが、残念ながら基本法にはそういうことが明確になっておりません。基本法は御承知のように抽象的な規定でありますから、基本法の前提をなします農業の基本問題と基本対策、これなどを見ますとその点がきわめて明瞭だと思うのでありますが、たとえば農産物の価格についても、さっきも申し上げたけれども、あんまり値段を高くすると、よその産業に移ろうとするものが移れないのではないかというようなことまで堂々と書いておるのですね。堂々とそういう点をうたっておるので、私はたくさんそういう点を引き合いにしたいと思いますが、時間がありませんから省略をいたします。そういうのを基礎にしてでき上がった基本法であるということであれば、先ほどの日本経済等がああいう社説を掲げておるということは、基本法を誤って解釈しておるのでは断じてないと私は考えるのであります。私はそういう点をもう少し論議いたしたいのでありますが、要約して申し上げると、要するに農業基本法なるものは、農業保護を原則にして、それを目標にして作った法律か、あるいは経済合理主義という考え方のもとにできたのか、そういう点で分かれると思うのであります。もう少し徹底してその点について私も意見を申し上げ、大臣の所見も伺いたいと思いますが、時間がなくなるおそれがありますので、残念ながらこの程度にいたします。ただ、繰り返して申しますが、私が申し上げていることは、決して私の勝手な解釈を申し上げているのではないので、せっかく出されました総理大臣あての答申等をそのまま取り上げて申し上げておるのですから、その点だけは十分御了解願っておきたいと思います。  あと二つばかりお尋ねをしたいのですが、農民があんまり好まないこと、好ばないこと、こういうことでも農林大臣はおやりになるおつもりかどうかということを伺いたいと思います。
  62. 河野一郎

    河野国務大臣 好むとか喜ばないとかいう趣旨がよく理解しにくいのであります。農民とおっしゃいましても、どこに限度をとったらよろしいか、個々の農民諸君が全部というわけにいかぬ場合があると思いますので、もう少し具体的にお尋ねいただかないと答弁がしにくいと思います。
  63. 西宮弘

    西宮委員 それで私お尋ねをしたいのは、実は食管の問題と最近の肥料の問題なんであります。そういう問題について、これは大方の農民大臣考え方と違うと思うのでありますが、そういうものでもやはりおやりになるおつもりであるかどうかということです。
  64. 河野一郎

    河野国務大臣 食管の問題につきましては、前国会で十分私の考えは申し述べました。農民が好んでおるかおらぬかということは、私は私なりに、世論調査等によりましても、大多数の農民諸君は一応御理解いただいておると思いますけれども、しかし、これはそうは参りません。参りませんから、今せっかく懇談会を開きまして、各方面の方々の御意見を聞き、さらに検討するということにいたしておるわけであります。この結論を得て、あらためて再検討をいたしたいと考えております。  それから、肥料につきましては、これは農民諸君が喜んでおられるとか、おられないとかいうこと、この点についても私は必ずしも農民諸君がひどくきらっておるというわけじゃないと考えるのであります。
  65. 西宮弘

    西宮委員 食管の問題についてはよく調査をして、相当の農民が支持しておるという情勢がわかったというお話でありますが、すでに今日まで——もちろんそういう人も中に全然ないわけじゃないと思うけれども、ほとんど大半の農民がこれに反対しておるということは、まず明瞭だと思います。  さらに、肥料の問題は、今後起こる問題でありますから、まだ十分な世論として起こってこないかもしれませんけれども、すでに一部かもしらないけれども、これについても相当な農民の反対意見が出ておることは、大臣も十分御承知だと思います。そういう問題等で、あるいは食管の問題にしても肥料の問題にしても、大半の農民が反対をされましても、それはやはり大臣としてはぜひやりたい、こういうお考えでありますか。
  66. 河野一郎

    河野国務大臣 民主政治のもと、大半の人の反対するものをやるということはあり得ません。私は先ほども申し上げましたが、農民諸君が食管法についても反対だということをおっしゃいますけれども、断じてそうは考えていないのであります。しかし、これについては大半というわけにはいかぬ、全部の農民諸君の御理解がなければいかぬという建前をとって私は主張しておるのであります。  また、肥料につきましては、現在私の考えております肥料に対する考え方は、肥料行政に対して使うだけの国費を他の農業施策に使った方がより以上の効果をあげるのではなかろうかという立場を第一にとっております。と申しますのは、現に肥料に心要な通滝省関係その他従来の赤字補てん等に所要しておりまする経費、これらをいずれも肥料の対策資金として、あたかも食管法の赤字補てんが農村対策費であるという考え方と同じような意味において、それが農村施策費であるかのごとくに解釈されておる。ところが、現にわが農村におきましては、数量においては全然心配がない。四割以上のものを海外に輸出するわが国は肥料の生産国である。従って、数量的に心配がない。第二には価格の問題であります。価格につきましても、すでにたびたび申し上げます通りに、現在の肥料価格が、農業経営上他の農業資材と同様に高いから何とか下げなければならぬというほど切実な声が農村にあるとは考えていません。安い方がけっこうでございます。しかし、将来の見通しにつきましては、肥料審議会等で、すでに通産当局から示されました通りに、明瞭になっておる。これについて、通産当局は万全の肥料振興方策を講じて、肥料の値下がりは期して待つべきものがあるということでありまする以上は、価格についても一応の目安が立っておる、数量についても心配がないということであれば、むしろわが国の肥料政策は、農村政策としてよりも輸出対策として考慮さるべきであるという意味において、輸出が可能であるということは、価格の引き下げだって、それが国内的にも妥当な、非常にわれわれとして歓迎すべき方向である。ただし、手放しでこれを期待するわけに参りませんから、そういう精神にのっとって、この二つの点が農村のために完全に保障ができますならば、それで十分であるというような意味合いから、輸出についての通産大臣農林大臣共管のもとに、同意を得て輸出の認可をするということにしておきさえすれば、所期の価格で国内に販売ができないという場合には、輸出について農林大臣の同意をとれぬということにするならば、輸出が押えられれば国内に肥料がだぶつきます。肥料がだぶつけば肥料の価格が下がります。よって私は、所期の農家の取得する肥料の価格を保障することができるという考えのもとに、農林大臣として今後肥料政策としては、輸出肥料について農林大臣の同意がなければ輸出の許可をいたさぬという点で一本かんぬきを入れておきさえすれば、価格の点でも肥料の点でも農家の諸君に心配をかけることはないという考えのもとに、むしろ価格、肥料に対する政策は輸出対策、振興策として通産大臣にまかして、行政において十分に一つそれぞれの業界との間に振興をはかっていただくことが適当であろう、この点を大方の農民諸君に御理解願えば反対をされることはなかろう、また私自身としても責任をもって農家のふためにならぬように、自分が行政の責任は持てるという確信のもとに、私は肥料対策を考えておるのでございます。しかるに一部の方々が、米の場合と同じように、終戦後の非常に事情の違った時代に作られた法律の上にみずからの業務を遂行するという安易さを忘れることができなくて、そうして現状におるべきだ、現状におるべきだ。現状と同様の成果、結果が農林大臣として責任が持てるならば、私は変えることに踏み切って差しつかえないのじゃないか、むしろ国家的見地に立って輸出の振興を期することが適当ではないか、こう思うのでございます。そういう意味において、せっかく通産大臣が御検討しておられますので、通雄大臣の御検討の結果を待って私としての最終的な判断はいたしたい。もしそれ、通産大臣が、今私が申し上げますような所期の目的を達成することに支障がありますならば、私はこれに同意をいたしません。現状通りでやって参るということよりほかに仕方がありません。通産大臣が国家的に、今、申し上げましたようなことについて大いに成果の上がることを期待いたされますならば、私も農林大臣としてこれに御協力申し上げることが適当であろう、こう考えておるのであります。
  67. 西宮弘

    西宮委員 肥料の問題はあとからお尋ねをいたしたいと思いますが、その前に食管の問題をちょっと一言だけお尋ねしておきたいと思います。  これはすでに懇談会にもかかって論議中の問題でありますから、あるいはまた昨年もずいぶん論議した問題ですから、繰り返されることはあまり大臣としてもお好みでないと思いますので、私もそういうことをくどくど申し上げるつもりはございません。ただ要するに、いわゆる河野構想と称されるものが、正しい名称で申しますならば、米穀の管理制度の運営の弾力的改善とその根幹の堅持に関する構想、こういう名前のもとに昨年発表されたのであります。これを中心にいたしましていろいろ賛否両論がありました。たとえば言論機関等は、おおむね賛成をいたしました。これらが賛成をいたしましたのも、これまた先刻申しましたように、米穀の問題と同じように、農業基本法をたてにとりまして、これを論拠にして、これこそが農業基本法の精神に沿うのだということで議論をしておったのが、当時の言論機関の大半であったと思うのです。ところが農民の反対と申しますか、そういう反撃がだいぶ強くなって参りまして、いわゆる河野大臣の構想なるものもだんだんに緩和された、あるいは後退してこられたというふうに私は考えるのであります。あるいは新聞等もそういうふうに伝えて参りました。そうなりますと逆に言論機関等は、いわゆる河野構想と称する河野農相の考え方に対して非常に疑問を持ち、あるいはこれに批判的になってきたということが言えるのであります。言えるというか、そういうズレがたくさんに出て参ったのであります。新聞等は社説を掲げて、どうも最初河野さんの意気込みはどこに行ってしまったのか、そういうことならば意味がないじゃないかということを指摘をするようになって参りました。これはたくさんの新聞がそういう指摘をいたしております。ですから河野大臣最初考えは、いわゆる運営の弾力的な改善をして、ただし食管制度の根幹は維持するんだ、こういうふれ出しで始まりましたけれども、そういう表現でありましたけれども、当時の言論機関等が期待をいたしましたのは、それによって日本の食管制度を根本的に改革するんだ、そこまでいかなければおよそ意味がない、こういうことから支持いたしておったのであります。ところが河野構想がだんだん後退をするということで、逆にこれを鞭撻する、それじゃ何も意味がないじゃないかということを主張するようになってきたのであります。私はくどいことを申しませんから一言だけお尋ねいたしておきたいのは、いわゆる根幹の堅持に関する構想というのでありますか、ああいうやり方をして今の食管制度に何らひびが入らないかどうか、つまり根幹にはいささかも支障を来たさないかどうかということだけお尋ねしておきたいと思います。
  68. 河野一郎

    河野国務大臣 端的に申し上げまして、食管法の根幹とは何かということに尽きると思うのであります。この解釈によると思います。私は、食管法の根幹とは食管法を施行することによって生産者には価格の安定、所得補償方式によって再生産を保障する、そうして農業経営上の安定感を与えるというところに食管法の根幹とする目的がある、消費者に対しても同様に国民生活の安定に支障を来たさない価格でこれを配給するという、この両点にあると思うのでございます。この両点について支障を来たさないということであれば、食管法の根底に支障を来たさないということが言えるのではなかろうかと私は解釈しておるのであります。これは人それぞれによって解釈は違う場合があるかもしれませんが、私はそういう解釈に立って私の考えを実行することによって、その根底に支障を来たすものではない、変革を来たすものではないという解釈をとっておるのでございます。
  69. 西宮弘

    西宮委員 その点になりますと、やった結果どうなるかという、これは見通しの問題でありますが、その点はわれわれと根本的に解釈が違うので、これは解釈の相違ということになればやむを得ないと思います。  それではもう一つだけお尋ねをいたしますが、たとえばあのやり方をすれば従来やみに流れておったものがいわゆる自由米になるだけだ、政府が扱う点は従来と少しも変わらない、要するにやみが自由米になるだけなんだということを強調しておられますが、見通しとしてその通りでございましょうか。
  70. 河野一郎

    河野国務大臣 私はそう思います。
  71. 西宮弘

    西宮委員 それならば重ねてお尋ねをいたしますが、河野さんが去年の四月中央公論に述べられたのによりますと、あの私の提案に従えば、つまり河野さんの提案に従えば、政府が扱う分はせいぜい五割ないし六割程度になるだろうというふうに言っておられるのはどういうわけでございますか。
  72. 河野一郎

    河野国務大臣 それはたびたび申し上げます通りに、昨年四月中央公論に私が書きましたものと、いわゆる河野構想として発表したものとは全然違います。
  73. 西宮弘

    西宮委員 全然違うと言われますけれども、私どももつぶさに読んでおりますから、それはわれわれは十分に間違いなしに理解をしておるわけでありますが、私どもはそういうやり方で食糧管理制度の一角に手をつけるということになれば大きくくずれていくということだけはこれは全く論議の余地がなく明白なことだと思う。あえて私どもがそうだというだけでなしに、さっき申し上げたように、言論機関等はみんなそういうふうに判断をしておるわけです。当時の社説等は。だからわれわれは河野構想を支持するのだということを言論機関等は言っておるのであります。決してひとり私たちだけがそう思うのではなしに、いわゆる言論機関等はそういうふうに見ておったのであります。ところがだんだんそれが後退するというので、今度は言論機関は逆に批判するようになってきた。そういう一事を見ても、私は河野さんのあの構想ではやみが自由米になるというだけでとどまるという保障はどこにもあり得ないと考えるのでありますが……。
  74. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと一つ非常に誤解がおありのようでありますから、はなはだ失礼ですが、ごく簡単に一言さしていただきます。  第一に、四月に書きました中央公論に述べてありますものは、いわゆる私の考える間接統制でございまして、これは中値一本の考えでございます。売り値、買い値を一本にきめております。政府は一万一千円を中値として、それより高くなったら売り、安かったら買うということを明瞭に指摘いたしております。これは私の中央公論に書きました当時の考え方でございます。ところがいわゆる河野構想として述べておりますところのものは、ただいまも申し上げました通りに、生産者価格、消費者価格というものを二つの要因として考えております。つまりもっとはっきり申し上げますれば、中央公論に書いてありますものは、生産者価格は消費者価格の下値である。生産者から一万一千円以下の場合には幾らでも買います。一万一千円以上の場合は売りますと書いてある。ところが今度の場合は一万一千五十二円五十銭で幾らでも買います。高値で買うのでございます。そうして消費者価格たる安値で光るのでございます。ここに根底に違いがあります。この点は一つお見落としのないように願いたいと思います。
  75. 西宮弘

    西宮委員 要するに、従来やみとして流れておったものを自由米という形において取り扱うということでありまして、私どもはその自由米ということになりまして、今お話しの価格の問題、これも確かに重要な要素になるには相違ないと思いますけれども、私はそういう自由米として扱うということによって、要するにその統制と自由が同時に行なわれるというきわめて不自然な状態になると思うのですが、しかし私は、そういう価格操作の面等もありましょう。ですから中央公論に述べたように、政府の扱いが五割か六割になるということはあるいはその通りではないかもしれません。それは値段の問題、価格操作の問題等でいろいろありましょうが、その通りにはならぬかもしれないけれども、しかしそういうやり方によって、従来のやり方が大きくくずされてくるということだけは間違いがないと思うのです。そこで私は、これは私の考えでございます。大臣の御批判を願いたいと思うのでございますが、私は、およそ食糧というような国民の生命に直接関係する問題、こういう問題はあくまでも最後まで国が国の責任においてこれは管理すべきものである。自由な売買の対象等に付すべきではないので、国が国の責任において管理すべきものであるというふうに考えておるのでありますが、その点私の考えは間違っておるかどうか。
  76. 河野一郎

    河野国務大臣 間違っておるかどうか知りませんが、私はそうは考えません。
  77. 西宮弘

    西宮委員 それでは私と根本的に考えが違うのでありますからやむを得ません。私はおよそ国民の生命をささえる食糧というものは、これは最後まで国が国の責任においてコントロールすべきものであるというふうに確信をいたしておりますので、私の議論が出てくるわけであります。ついでではなはだ恐縮でありますが、その中央公論にお述べになりましたものの中に、こういう一項目があるので一つ伺いたいと思う。赤字が出て困るということを述べた中に、食糧の増産及び管理について年々支出が増大し云々とあるわけです。食糧管理のために赤字が出るというのは、いわゆる食管会計の赤字として、すでに天下周知の事実でありますが、河野さんのお書きになったのには、食糧の増産及び管理について年々支出が増大し、食糧の増産についても年々公費がかさんでいく。これはまことに困ったものだという書き方をされておるわけでありますが、こういう増産についても国費の支弁がふえるということは困るというお考えでございましょうか。
  78. 河野一郎

    河野国務大臣 増産についても限度がございまして、御承知のように余るものを増産する必要はないと思うのであります。これは需給の見通しによって議論は分かれると思うのであります。私は食糧の増産についてはある程度限界がきておるという考えに立って、今後の食糧の増産については、今後の食糧の需給関係からいたしまして、一つ見通しを立てて意見を述べておる、こういうことに御了承を願いたいと思います。
  79. 西宮弘

    西宮委員 今日まで食糧の増産のためにたくさんの金が使われてきたということは、非常に困ったことだという今の御指摘でありますけれども……。
  80. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと……。足りないときに使うことは、これは当然でございまして、たとえば食糧と申しましてもいろいろ種類があります。足りない部分の食糧については、あくまでも増産をすることにやぶさかではございません。ただ余るものについては、これ以上増産する必要はないのじゃないか、こういうことであります。
  81. 西宮弘

    西宮委員 もちろんその余るものについて余分な金を使うというようなばかなことはないと思う。ここで論議をしておりますのは、今申し上げた通り、食糧の増産及び管理について年々支出が増加するということで、食糧の問題である。それでは私はお尋ねをいたしますが、食糧については、あくまでも国内自給という目標で、あらゆる施策をとられるのかどうか。
  82. 河野一郎

    河野国務大臣 国内において、食糧の自給の方針でいくことは間違いがございません。そこでいうところの食糧は、私は米をさしておるということを御了承いただきたいと思います。
  83. 西宮弘

    西宮委員 ここでは米だけをさしておるという意味でしょう。ですからその米の増産について、年々国費がふえてきたということについて批判をしておられるので、私はそういう考え方は、いやしくもかつて農林大臣であった人、あるいは農政の最高権威といわれた方がその食糧増産のために国費が年々ふえてきたということを慨嘆をされるというのは大へんな間違いではないかと思う。
  84. 河野一郎

    河野国務大臣 私はそこに述べておりますところの議論は過去のことを言っておるのではない。将来について私は述べておると理解しております。従って一応米についてはそこにもあります通りに、米とか麦については現在日本の食糧は一応バランスがとれておる、従ってこれから先のことは云々という意味に御了承いただきたいと思う。もし文意が足りなければそう御了承いただきたいと思う。
  85. 西宮弘

    西宮委員 これは食糧増産及び管理について年々支出が増大しというので今日までのことを言っているわけです。
  86. 河野一郎

    河野国務大臣 それは間違いでございます。
  87. 西宮弘

    西宮委員 それがお間違いだということであれば私もそれで了承いたします。  ついでにお尋ねをいたしますが、最近の新聞によりますと、韓国米を買い付けるということを決定されておるようでありますが、その通りでございますか。
  88. 河野一郎

    河野国務大臣 別の機会にも申しましたように、今年度の産米が比較的良質米が少のうございますので、韓国ともし適当な米質のものが適当な価格で入手できるようならば、ある程度の量、ごく少量でございますが、要求があれば買ってもいい、むろん韓国のことでございますから、そう大きな量を望んでおるわけではないのですが、商談に応じようという方針をとっておるわけでございます。
  89. 西宮弘

    西宮委員 新聞によりますと、十万トン程度というふうに書いてありますが、その通りでございますか。
  90. 河野一郎

    河野国務大臣 最終の数字はきめておりませんけれども、そういう数字考えておりません。もっと少のうございます。
  91. 西宮弘

    西宮委員 特に韓国から入れなければならぬという積極的な理由はどういうことですか。
  92. 河野一郎

    河野国務大臣 特に韓国から入れなければならぬというわけではございません。台湾もけっこうでございます。韓国もけっこうでございます。期待する米質のものがあれば買ってもいいのじゃないかと思います。
  93. 西宮弘

    西宮委員 今度の韓国米の買付の問題が、いわゆるただいま行なわれております日韓会談とどういう関係があるわけですか。
  94. 河野一郎

    河野国務大臣 日韓会談とどういう関係と申しますと、別にこれを意識するわけではございませんが、御承知通り日韓関係が最近とみに好転いたしております。そういう事情にございますから、向こうから米を買ってくれということでございますから、商談に応じよう、こういうことでございます。
  95. 西宮弘

    西宮委員 私どもはかって韓国から米を買った場合が一回あったわけです。あのときは抑留された漁民を釈放するというようなことで、いわば人道的な問題だ、こういうことでそれとの交換条件ということで買ったのでありますが、今回はそういうことは何もないわけでありまして、今大臣お話だと、日韓関係が好転しておるということだったが、そういうことの一環としてこの問題を取り上げておるのではないかと考える。私どもとしてはこの点はどうしても納得できないわけです。ぜひこれはもう一ぺん再考をお願いしたい。
  96. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘のような政治的意図を持ってやっておるのではないのでありまして、従って数量について幾ら買うということをきめておりません。聞けば、昨年は朝鮮は非常に豊作で、良質の米があると聞きますので、適当な価格でこの良質な米が入るということであれば、一つ商談に応じようということで、これから商談を始めようということでございます。
  97. 西宮弘

    西宮委員 もう一つ肥料の問題でお尋ねしたいのですが、韓国米の買付は肥料との交換条件ということにはなっていないのですか。
  98. 河野一郎

    河野国務大臣 何もありません。全然ございません。
  99. 西宮弘

    西宮委員 大臣が否定されるならばやむを得ないのですが、業界新聞等はそういうふうに報道いたしておるわけであります。私どもはそういう点でもいろいろ問題があるのではないかと思っております。  時間がなくなりますので、さっき申し上げた肥料の問題でちょっとお尋ねいたします。
  100. 野原正勝

    野原委員長 ちょっと速記をとめて。    〔速記中止〕
  101. 野原正勝

    野原委員長 速記を始めて。  それでは西宮さん、あとでお願いします。
  102. 西宮弘

    西宮委員 それではさらにお尋ねすることといたしまして、中断いたします。
  103. 野原正勝

    野原委員長 本会議散会後再開することとしまして、この際暫時休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後二時三十八分開議
  104. 野原正勝

    野原委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西宮弘君。
  105. 西宮弘

    西宮委員 それではだいぶ長くなったというお話でありますから、ごく短く御質問いたしまして終わりにいたします。食管の問題にしても、あるいは肥料の問題にしてもそうなんですが、私冒頭にお尋ねをしたのは、要するに農民が喜ばないことでも、農林省としてはときによってやらざるを得ない、そういうこともあるのかということですが、その際必ずしも全部の農民が反対しているわけではないというお話で、そういう点についてちょっと一つだけお尋ねというか、あるいは私の感じたことを申し上げておきたいと思うのです。私は、そういう農民の世論のとらえ方でありますけれども、たとえばこれはほんの一例にすぎませんけれども、しかも私のタッチしたのはごくわずかでありますから、わずかな例しかあげることができないのでありますが、食管問題で去年私の地元であります仙台で会合が持たれまして、河野農相がおいでになったのでありますが、その際は農村の諸君がたくさん集まったのでありますが、そこにいろいろな人が入り込んでいろいろな意見を述べたわけであります。ところがあとでその反対の意見を除いて、つまりいわゆる河野構想と称するそういう考え方に反対の意見を除いて、賛成の意見だけを録音をして、録音は全部したのでしょうが、それをあとで編集し直しをしてそういうものを作って、全国に録音をまいておる、そういう事実がありまして、それが一つ農民の世論だというふうに宣伝をしているというようなことは、私ども、やり方として非常に適当ではないと考えるわけであります。これは何も河野農相みずからやられたわけではないと思います。だれか適当にやったんだろうと思うけれども、そういうやり方で世論をつかむ、あるいは世論として紹介するというようなやり方は、われわれは非常にまずいと思うので、一つ何かその点について御説明があったら伺いたいと思います。
  106. 河野一郎

    河野国務大臣 初めて承ることですが、参考のためにもう少し詳細にお聞かせ願えれば大へんけっこうでございます。今のお話はだれからも聞いたことはございません。今初めてそういうことを承るので、おわかりでしたら、どういう機関がどういうふうにしてやったということをお聞かせ願えれば、厳に戒めねばならぬと私は考えます。私、そういうことは全然想像もしておりませんので、お聞かせ願えたら大へんしあわせだと思います。
  107. 西宮弘

    西宮委員 それではもう一言だけ申し上げておきますが、仙台で昨年やりましたのが九月の五日でありますが、その際にやった、いわゆる農民大会とでも申しますか、そういう会合で大臣お話があり、また農民の側からいろいろ意見の開陳があったわけであります。その際に、反対の意見もあり、賛成の意見も、いわゆる農民と称する、集まった人の中から出たわけでありますが、それを適当に収録をいたしまして、その賛成の部分だけをあげてこれをテープにいたしまして、各地方に宣伝用に回してこられたのでありまして、もしさらに必要があれば、そのルートなどもあらためて詳しく聞きまして御説明をいたします。
  108. 河野一郎

    河野国務大臣 今申し上げましたように、そういうことは全然聞いておりませんが、参考になることでございますから、あとでお調べいただいてお聞かせ願えたら、よく調査をいたしまして善処いたします。
  109. 西宮弘

    西宮委員 それではその程度にいたしますが、これに関連をいたしまして、これも大事な点でありますから、こういう問題についての大臣の所見を一言伺っておきたいと思います。その際に大臣は、今度の食管制度の改革について反対をしているのは農協の諸君だけだ、あるいは農協の指導者だけだ、農民は決して反対しているのではないというふうにまず冒頭に述べられておったのでありますが、一体農協と農民の関係をどういうふうに考えておられるのか。およそ農協というのは、農民が作って、そして農民がみずから選んだ代表がその理事者になっておるはずなんでありますが、それを農協と農民とを別々にして説明をされるのはどういう意味か、お尋ねしたいと思います。
  110. 河野一郎

    河野国務大臣 お話のありますようにも受け取れるのでございますが、全部の農民の代表であるかどうかということになりますと、私は、農協が全都の農民の代表というわけにはいかぬということは、これまたいえると思うのでございます。端的なことを申し上げますと、御承知通り、北海道の例をとりますると、北海道で、昨日もお話がありましたが、米の場合と、最も重要な農産物でございます豆、雑穀というものとを例にとってみますると、米の場合の集荷量と雑穀の場合の集荷量とは全く問題にならぬほど違う。従って米の場合と雑穀の場合と全然違った処置をとらなければならぬということも御承知通りでございます。こういう意味合いからして、私今申し上げるように、農協が農民の代表であるということはもうその通り。ただし全部の農民の代表といい得るかどうかということは、そこで疑問があるということも私は間違いない事実だと思うのであります。
  111. 西宮弘

    西宮委員 私がお尋ねをしたのは、食管の問題について農協と農民とは別だというふうな大臣の態度なので、それをお尋ねをしたので、もちろん農作物のいろいろな問題について利害が一致しない問題もたくさんあると思う。だから全部の農民が全部一つの意見になるということはない場合も、それはたくさんありましょう。私がお尋ねをいたしましたのは、食管制度の改変という問題について、農民は賛成なんだけれども、反対しているのは農協だけだ、しかも農協の理事者だけだというふうに述べられるので、そういうことは全然事実と違う——事実と違うというか、要するに、その際の農協はあくまでも農民の意思を代表したものだというふうにわれわれは考えるので、そういう今の食管制度の問題に限って農協と農民とを別々に考えられるという考え方についてお尋ねをしたわけです。
  112. 河野一郎

    河野国務大臣 私も北海道から東北、それから岐阜、神戸、熊本、全国相当の範囲にわたって、農民の代表、農協の代表諸君と懇談の機会を持ちましたが、その懇談の結果等に徴しても、食糧事務所等からの報告を聞きましても、私は、一部の農協の幹部の諸君が強く反対をされ、これが一部の農民諸君に反映をし、そこに私の意思と反した理由によって反対をしていらっしゃる人がおるということは間違いないと思っておるのであります。
  113. 西宮弘

    西宮委員 それではその問題はその程度にいたしまして、肥料の問題についてごくわずかだけお尋ねをいたします。  先ほど概括的なお話がありましたので、気のついた一、二だけお尋ねをしたいと思いますが、第一は、現在行なわれておりますいわゆる肥料二法は、昭和三十八年までこれをやるということででき上がっている法律でありまして、いわば昭和三十八年度までこれを継続するということが公約されているわけでありますが、それを急に廃止をしなければならぬ理由は、大臣のお考えとしては先ほどるるお述べになったようでありますが、私は一点だけ、それは公約違反であるのではないかということをお尋ねしたい。
  114. 河野一郎

    河野国務大臣 公約に違反すると仰せられるのはどういうことか私わかりませんが、御指摘のように、昭和三十八年まで有効の期限がある時限立法でございます。しかしその期限内において、先ほど私が申し上げましたような事態、すなわち肥料の輸出によって生じた赤字を解消するということを契機にいたしましていろいろ調査検討いたしました結果、われわれは所要の手続をとることが適当であると考えて、今それに対して研究中であるというわけであります。
  115. 西宮弘

    西宮委員 私がそれを公約違反と申し上げたのは、要するに昭和三十八年度までの時限立法なんでありますから、そして農民はそれによって少なくとも肥料の問題については今日まで何の不安もなしにきたわけです。ただ農民が期待するほど肥料が下がらなかったという不満はありますけれども、とにかくこれによって農民は安心してやってきたわけでありまして、それはあくまでも昭和三十八年度までの時限立法ということでありますから、これは当然それまでは継続をして、そのあとはまたそのときの話になると思うのだけれども、少なくとも三十八年度までは継続するというのが当然だと思う。その意味で、公約ということを言ったわけです。
  116. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうお考え方もあるかもしれませんが、その法律を施行することによって農民にもたらす利益と同様の利益を保障しつつ、さらに積極的に輸出の振興をはかるという処置を必要と内閣が認め、これを改廃するということは、所要の手続として私は考えていいんじゃないか、こう思うのです。
  117. 西宮弘

    西宮委員 その今の肥料二法の問題は法律が時限法、従って三十八年度までは公約だということだけでなしに、先ほど申しました、自民党でお出しになりました「繁栄への指標」であるとか「わが党の農林政策」であるとか、こういうものにはいずれも肥料二法を高くうたって、これで肥料の合理化をするんだということを非常に強調しておられるわけです。あるいは肥料は非常に重要だ、だから肥料企業の合理化を強く推進をして、その原価の引き下げをはかるんだということを言っておるわけでありますが、そういう書物を出されてからその後の一年間には実はわずかに八円十五銭しか下がっておらないわけです。しかも実際はもっと大幅に下がるべき客観情勢があったはずでありますが、下がっておらない。これでは、肥料の合理化を強く推進をして原価を引き下げるというようなことを約束しておられるのだけれども、そういうことが実行されておらない。従ってわれわれはあくまでもこの時限法の最終年次まではこの法律を存続をさせて、公約をされておる値下げを大いに遂行すべきだというふうに考えておるわけです。
  118. 河野一郎

    河野国務大臣 私も同様に肥料二法によって期待するところの値下げ、その値下げは当然期待をいたしておるわけであります。それをさらに積極的にプラス輸出の振興という面を含めまして、さらに化学振興をしていこうということでございまして、二法にプラス振興策を加えて参るということで考えておるのでございまして、決して二法を廃止することによって肥料政策を退歩しよう、後退するという意思は毛頭持っておりません。
  119. 西宮弘

    西宮委員 最後にお尋ねをしたいのは、それではそのいわゆる肥料価格の合理化というか、引き下げというか、そういう目的のもとにこれからとられようとする方策はどれとどれですか。
  120. 河野一郎

    河野国務大臣 今せっかく通産省で立案中でございますが、化学肥料振興に関する法律、どういう名前になるかまだきまっておらぬようでございますが、その法律の中に肥料輸出、アンモニア肥料といいますか、硫安を輸出しようとする場合には通産大臣農林大臣の同意を得てこれを輸出するという一項を加えてくれということに私はしてあるわけであります。このことはあらかじめ予期いたしておりまする肥料の値下げ政策、その値下げ政策は実行されるということを期待いたしまして、そして所期の価格で取引されるという場合に私は輸出に同意を与える。そういうふうに期待される価格で取引されないで製造業者が売り惜しみをし、価格の引き上げをはかるような場合には輸出に同意をしないという一点を確保することによって所期の目的は達成できる、こう考えております。
  121. 西宮弘

    西宮委員 伝えられるところによりますると、たとえば価格も役所が見て適当でないと認められる場合はその価格を命令するというようなことが入るのではないかというようなことも一部伝えられておりますが、そういうあれはないわけですか。要するに輸出の同意権だけですか。
  122. 河野一郎

    河野国務大臣 取引に勧告はするつもりであります。命令はいたしません。勧告をし、勧告がいれられない場合は、今申し上げるように、農林大臣としてはやむを得ず所、要の措置を考えておるわけであります。
  123. 西宮弘

    西宮委員 そうしますと、要するに、その最後のいわば伝家の宝刀というのは輸出に対する同意権という一点、だけですね。
  124. 河野一郎

    河野国務大臣 あらかじめ通産大臣と肥料の適正な価格については話し合い、同意を得ておきますことは申し上げるまでもございません。価格の取引に対して変更命令を出すということに最近の立法はそういう案に変わっておるようでありますが、まだ最終的には案がまとまっておりませんので、そういう傾向で今案を整備しているということでございます。
  125. 西宮弘

    西宮委員 それではたとえば価格には変更命令を出すというような際の命令の基準でありますが、これは例の昭和三十八年度の最終年次におけるいわゆる合理化価格、これをあくまでも基準にしてそれが三十八年度でありますから三十六年、三十七年度と順序がありましょうけれども、あくまでもそれを基準にいたしますか。
  126. 河野一郎

    河野国務大臣 そういうつもりでおります。今お話の三十八年度四十三ドル五十セント、それを目標にいたして、その傾向によって年々下げていくというつもりでおります。
  127. 西宮弘

    西宮委員 最後の答弁で私ども非常にその点は意を強うするのですけれども、私はさらにだめ押しといいますか、もう一ぺん重ねてお聞きしておきたいと思うのですが、あくまでも三十八年度を四十三ドルにするということを目標にして、従って三十七年はその一歩手前ということになるわけですが、そういう値段で価格をきめるということに間違いありませんね。
  128. 河野一郎

    河野国務大臣 これは肥料審議会にも通産当局から合理化五カ年計画として示されておる数字でございます。通産省はそれを目標として合理化の推進をすることにいたしております。われわれはその合理化の進行を期待いたしております。それをぜひ実現できるように通産当局にお願い申し上げる、こういうわけでございます。
  129. 西宮弘

    西宮委員 それでは私はその大臣の御答弁を得て一応の私の質問を打ち切りにいたしたいと思うのですが、重ねて申し上げますが、私どもは今までの実績から見ると第一の合理化計画の際にも第一の目的を達成できなかったわけです。そういう過去の実績から見ると、かなりそういう点に不安があるのではないかと考えるのでありますが、大臣はあくまでも昭和三十八年度四十三ドル五十セント、従って三十七年度はその一歩手前、こういう値段で肥料価格をきめるというお話でありますから、私どもはあくまでもそれに期待をいたし、信頼をいたしまして、私はこれで質問を打ち切ることにいたします。
  130. 野原正勝

    野原委員長 玉置一徳君。
  131. 玉置一徳

    ○玉置委員 農林大臣にお伺いをいたしたいと思うのです。今各地の農村を回って青年諸君とお話をしてみますと、一番困っておりますのは、選択的拡大、成長財はこういうものだ、だからしかもこの農村の何とかしなければいかぬということはあらゆる報道機関、もしくは国会の審議等を通じて全部が感じておるわけでありますけれども、御承知通り農協あたりで豚がいいとか、畜産がいいとかいうことで奨励をしましたとたんに、ちょうど成育時期になりますと、全般の値下がりがくる。で、価格対策をどういうようにやっていただくかということがはっきりしないとなかなか手をつけてもそれが思わしくいかないのじゃないかということを非常に不安に感じております。この点、先般農林大臣もわざわざ青果物市場もしくは枝肉市場等においでをいただきまして、ずいぶん御腐心をいただいておりますのはありがたく思うわけでありますが、そこでそういう価格安定対策につきまして、少し重複するかわかりませんが、二、三お伺いをしてみたい、こう思うんです。  ことしの三十七年度農林省予算の説明の項目を見ますと、十六ページの生果物生産農家経営安定対策として五千万円新しく芽を出していただきまして、「青果物価格の変動に対処して農家経営の安定を図るため、新たに全国的な生産出荷調整事業と併行して青果物の市場価格が一定水準以下となった場合における差額の補てん事業を行なわせることとし、三十七年度においては差し当りたまねぎについて実験的事業を実施するに要する資金造成に対し二箇年計画により助成を行なう。」こういうように出ておるわけでありますが、この生産出荷の調整とそれからこの価格安定の対策は、具体的に一体どのようにしておやりになるか、まずその点をお伺いしてから次に話を進めたいと思います。
  132. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り生鮮食料品の価格安定は非常に困難でございます。とりわけ蔬菜類につきましては、この貯蔵等が非常に困難でございますから、非常にむずかしい。さればといって放擲いたしておくわけにも参りませんので、まずお示しのようにタマネギを一つ試験的にやってみようということでこれに手をつけることにいたしたのでございます。しかし今タマネギの取引状況、もしくは貯蔵、売り渡しの時期、もしくはこれらの実施機関等についてせっかく検討中でございまして、まだ具体的にどういう方法で何をどうするかというところまではいっていないわけでございます。
  133. 玉置一徳

    ○玉置委員 いずれ、この問題は京都府で今もやりつつありますものに少し手を加えられておやりになるようにお聞きしておりまして、御研究の上りっぱな施策になることを希望するわけであります。  そこで問題は、先般の市場見学に見ましても、ある程度の出荷の調整がとれなければ、いかに冷蔵し貯蔵しようと思ったって、膨大なあれをできるわけのものでもありません。なかなかむずかしい問題じゃないか。農協もしくは政府がおっしゃっております主産地形成といい、あるいは成長部門の選択的拡大といい、それぞれの農村はいろいろなことを考えておりますが、全国的な視野において、これがはたして自分のところで力こぶを入れてやり出して、全国的な観点から見てそれがうまく入り込めるかどうかということを非常に心配しておりますというような関係で、やはり、出荷調整といいましてもなかなかむずかしい問題でございますので、作付の自主調整ができなければなかなかこの問題は言うべくしてむずかしいのじゃないか。そこで、全国の中央市場、東京、大阪、神奈川、名古屋というような中央市場ごとに毎年入って参ります主要な作物は大体どこからどのくらい出てくるということがおのずからきまっておるのじゃないか、そういう主産地がお互いに自主調整をするような仕組みにものを持っていけば、この問題はあるいはやりやすいのじゃないかというような感じがするわけでして、しかもそれをやらない限りは、なかなか政府がいろいろな施策をしていただきましても、無統制なやり方でこられたのでは手がつかないのじゃないかというように思うわけでございます。こういう観点からしまして、農協のあり方ということまで考えられるのじゃないか。デンマークその他でやっておいでになりますような工合に、県段階の農協が経済連というような、何と申しますかすべてを扱うようなああいう百貨店式じゃなくて、畜産、果樹、園芸、そういうようなものに分かれてそれが農民まで直接につながる、全国的にもそういう形になれば自主統制が容易じゃないか、こういうふうに思うんですが、大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  134. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘まことにごもっともでございます。私も大体同じように考えておるのでございます。  そこで、進んで申し上げますならば、現在あります農協の組織は、今お話しの通り百貨店式になっているということも、その通りだと私は思います。また三段階になっておる段階も多過ぎると思います。しかもこれが、米麦を主体とした農業経営の中におきまして、これを中心にして販連であり購連であるというような立場、それに付帯する事業ということでやっておりまする関係から、これらについて非常に研究の余地がある。まずさしあたり考えられますことは、業種別農協と申しますかそういうもの、農業の共同体がそれぞれ生産物によって分かれる必要があるということが第一に考えられることだと思うのでございます。  第二には、段階が、一体今のような三段階が適当であるかどうかという点についても考える余地があるだろう、これを画一的にそうしなければならぬという理由もないだろう。この点は、金融について考えられると同時に、一般の農業団体について私は再検討する段階にきておると思う。しかし、これはあくまでもわれわれ政府が指導してやるべきものじゃないのであって、自主的にそういう世論が醸成されましてその上でわれわれも相談相手になって、そういう結論に一日も早く到達するように期待をいたすわけでございます。さればといって、一方において構造改善の事業を進め——しかも今回の豚の例を見るにつけましても、豚にいたしましても、もう一カ月早くわれわれが準備を整えますればああいうことなくして済んだことでございまして、一カ月準備がおくれたために非常に御迷惑をかけたということもあるのでございますから、諸般の事情を勘案いたしまして、全国各農村もしくは指導者の諸君にそれらのことについて一段の御奮発を御要請申し上げたい、かように考えておるわけでございます。
  135. 玉置一徳

    ○玉置委員 大臣お話でよくわかったのでありますが、そういうようにいたしまして、最後は、先般の見学を通じましても考えられますのは、市場に、そういう自主統制のできる、作付統制、出荷統制のできる団体が若干運営にタッチできるような公共性も持たせなければ、今のままで、ほかの人がほとんどわからぬような手の仕組みでやられておるような仕組みでは、だれが考えてもちょっとまずいのじゃないかと思うのですが、大臣の御所見はいかがでしょう。
  136. 河野一郎

    河野国務大臣 全く私も同様に考えまして、品川の市場はもう例外にいたしましても、神田にいたしましても築地にいたしましても、必ずしも今の程度で適当であるというわけには参らぬ。もう少し生産者の立場が市場にどう作用するかということがすぐ出てこなければならぬ。そういうことについてもあわせて考究をする必要に迫られておると思います。
  137. 玉置一徳

    ○玉置委員 そういう方向で一つ十分御検討いただきますことを切にお願いを申し上げておく次第でございます。  そこで、話が飛びまして恐縮でございますが、先ほど申しましたように、近ごろ農村を回りまして、非常に農村の青年諸君が弱っておりますのは、いろいろ農林省のおっしゃることもよくわかるのでありますけれども、いつか大臣答弁をされておりましたように、五反未満の、しかも大体定年を過ぎたような方々がお帰りなさっておやりになっております第二種兼業と申しますか、そういったような方々で、しかもその方々が大体まだ村々の指導的な立場にそれぞれお立ちになっておる。あと三十年、五十年農業をやらなければいかぬという青年諸君は、今日の事態に立ち至って何とかしてこれを切り抜けなければいかぬということをずいぶん考えながらも、大圃場主義もとれるわけじゃなし、非常に弱っておる。その方々があと十年すればなくなるのではなくて、五十五才定年で帰農なさる方々がどんどん同じようにできるわけです。そういうことを非常に心配しておるわけです。それでモデル的な何かを作っておやじさんたちが安心して若い青年にまかすようなものを一つ考えていただけぬかということを痛切に叫んでおります。ただ、このたびお出しになりました構造改善事業は、私はそのままいきにくいと思いますのは、あれは現在までにすでに果樹なり畜産で日本的なところまで進んだところはあのままのお金を入れていただきましたらそれだけの効果を上げると思いますが、そこまで成長していない各地の普通の農業地帯におきましては、これからどうしたらいいかということを非常に今そういう意味で心配しておるわけです。これにつきまして、そういった青年諸君の希望にもこたえ、かつ日本の非常に古いしきたりの農村でも構造改善のような形に持っていけるような空気を作るには何かの妙策があってしかるべきじゃないか。この点につきまして、大臣、こういうのがあるんだということを一つお話しいただければ非常にしあわせと存じます。
  138. 河野一郎

    河野国務大臣 実は来月の十日、十一日にも京都でこの前の新農村建設運動当時の熱心な研究者、学会の諸君がお集まりになって、反省もしくは事業の報告会を開くことになっております。全国的に言いますとほとんど問題になっていないこの前の運動さえ、一部にはそういうふうに非常に強く支持され、実を結んでおる面もあるわけであります。しかし、いかんせん今申し上げた通り、この前のがしり切れトンボになったという通念のようになっておるものでございますから、今回大規模に、また少し線を太く、構造改善の運動を徹底的に推進して参る、少なくとも一県において最小限も、八カ所の町村を指定してそれを初年度に行なって参るということになりますれば、相当大きな農民運動として私はここに一つのものが出てくるだろう、こう思うのであります。近在にそういう運動が出て参りますれば、これは相当に強く農村の青年を刺激する。また一方においては、私は最近全国の技術者の諸君等ともしばしば会談をするのでございますが、相当に農業に対する考え方等も今お話しのように非常に固定しておる中に、一方には非常に前進した面もあるわけでございます。こういうものがやはり農村が動揺期にあるということをそのまま私は如実に示しておると思うのであります。従ってそういうものが順次固定の中から立ち上がっていくというような段階に今日あると思いますので、今お示しのような点も確かにあることは私もその通りと思いますが、そういうところに黎明日本農業というようなものを見聞できるのではなかろうか、またその努力をしていかなければならぬのではなかろうかと思っておる次第でございます。
  139. 玉置一徳

    ○玉置委員 次に今年度の予算の農地防災事業でございますが、農地防災事業のうちで湛水防除事業というのがございます。この問題につきましては、昨年河野農林大臣御就任早々のときでございましたが、私は質問の際にお願いをいたしました。御承知通り内水面の水つかりであります。それが非常に大きな地区になりますと別に農地の上に降った水だけではなくて山からあるいは町からの水が全部流れまして、ただ何かの場合に土地改良という名前でお百姓だけがやっておったために、一切の公共事業的な金が入らずに農家だけがそれに苦しんでおる。大体そういうところは災害常襲地帯であります。これにつきまして何とかして公共事業で必要な部分だけは見てやっていただきたいということを去年一年お願いし続けたわけでありますが、ことしは建設省の方でもようやく願を出しまして、農林省も顔を出していただきまして、聞きますと全国で三百町歩以上のものが六カ所、以下が十五カ所、計二十一カ所にことし着手したいのだ、こういうお話で喜んでおるわけであります。これにつきまして建設省との公共事業関係の調整をしなければ農林省に持ち込めないと思います。そういう問題につきましてどういうようにやっていくか、大臣でなくてけっこうでございますから一つお答えをいただきたいと思います。
  140. 富谷彰介

    ○富谷説明員 湛水防除事業につきましては地元の負担が問題でございまして、従って関係の都道府県あるいは市町村といったような自治団体の方に何がしか持っていただくような道が必要かと思いまして、建設省と直接建設関係の公共事業と関連させていくということはただいま考えておりません。
  141. 玉置一徳

    ○玉置委員 そういうところに準用河川が入り込んでおるのが非常に多うございます。しかも準用河川をぴしゃっととめてしまいますので、準用河川の水を現在お百姓がかい出しておるという事態が京都なんかにもかなりあるわけであります。こういう問題につきましては地元でよく調整をいたしましてそれぞれお願いに来ることになると思いますが、そこでもう一つは、結局自治体にこれをある程度受けていただくことになると思います。自治体の受ける分につきまして——府県のは別でありますが、町村のような場合になりますと自治省の交付税の計算に入れる。これは今まで市は入れておったわけです。町村は認めていなかったわけです。こういうことにつきましても、一つ農林省の方から自治省の方へ御折衝してやっていただきたい、かように思いますが、よろしくお願いいたします。  それから農林大臣からお答えをいただきたいと思うのですが、去年もありました通り災害が毎年同じようにやって参りますが、ほとんど同じところへ来ております。この湛水地帯も同じでありますし、その他の河川につきましても大体同じところが同じように毎年やられることになっております。そういう場合に建設省で上流部にダムを作るとかいろいろな考え方でこれをなくするようには努めていただいておりますが、一つのダムを作るのでも調査の段階から家屋の買収からかかって参りますとまず七、八年くらいかかるのが普通であります。その間毎年つかっておるというような現状でございます。たとえば私の方の京都の桂川の上流の亀岡あるいは三重県の伊賀上野の盆地、これは実力で狭いところを爆破するという意気込みを農家は持って県に折衝するわけです。そういう事務的なあるいは技術的な問題でそう簡単に片づくものではありません。そういうところが全国に相当多いと思うのです。それがせめて災害補償法の反当最高限までいつもつかるものは上げたいのですが、つからないものと一緒の率の決定が、つからないものを半分、つかるものを半分になっておりますので、つかるものを上げたくてもつからないものを上げたくないということで非常に低い反収になっております。そういうような関係で災害常襲地帯のいつもつかる部分の人に対しては、国から何か見て上げるわけにはいかぬだろうかというように思うのですが、災害常襲地帯法と申しますか、あるいはせめて災害補償法のいつもつかるときまっておるような人を、その他の人に迷惑がかからぬような形で国が手をつけるか市町村が手をつけるか公共的に取り扱ってあげる方法が考えられるのではないかと思うのですが、これに対する農林大臣考え方を一つお述べいただきたいと思います。
  142. 河野一郎

    河野国務大臣 お話のような点がございましたならば、一々現場に当たりまして調査の結果、しかるべき方法をもってこれを一つ匡救するということにいたしたいと思います。そういう個所については、後刻具体的にお話を伺いまして係官を派遣して善処いたします。
  143. 玉置一徳

    ○玉置委員 先般安井さんから御質問がありまして重複するのですが、ちょっと違ったことを聞きたいと思います。  もう一度農林大臣お答えをいただきたいのですが、農村の青年諸君が心配しておりますもう一つの事項は、何とか御答弁はあるけれども、実際はEECの関係、その他の関係によりまして、日本が東南アジア貿易をせざるを得ないところへ追い込まれるのじゃないかということです。つきましては、農林省なり政府は、絶対に慎重にやるとはおっしゃっておりますが、数年ならずして農産物の輸入もだんだん自由化されるのじゃないかということを非常に心配しております。われわれもそういう可能性を否定できないわけです。そういう場合に、これにつきましてもう一度大臣のお見通しなり御所見を伺いたいと思います。
  144. 河野一郎

    河野国務大臣 私も同じような考えに立ちまして、同様の憂慮をいたしておる一人でございます。従いまして、このことの発令する前に日本の農業態勢を整えておく必要がある。しいて申せば、積極的に東南アジアの後進国の農業を受け入れて、そうして日本とこれら地帯との経済の交流を盛んにすることのできるように積極的にするということが、日本農業を指導する責任者の立場でなければならぬというふうに思うのでございますが、しかし、これは一人の指導者によってできることではございません。各方面の方々がいずれもその重要性を認識されて、そうして日本農業のあるべき姿に対して協力、共鳴を願って、そうしてたとえて申せば、変な話ですが、現在道路交通が非常に困っているじゃないか、国をあげて道路交通対策をやらなければいかぬじゃないかというような、東南アジア農業日本農業との関連性の将来性を考慮して、一つの国内運動が起こってくるというような方向にまでいくことを私は期待いたすものでございます。そのくらいまでしてやるのでなければ、とうてい日本農業をその位置まで引き上げることはむずかしいと思いますので、この問題について各方面より深き御理解と御検討を賜わりまして、一つの方向が打ち出されることを私は念願しておる次第でございます。
  145. 玉置一徳

    ○玉置委員 私はこれは念願しておる方じゃなしに心配しておる方で、立場は反対なんです。そこでそういうことにつきましては保護貿易その他の外交交渉とかいろいろな手をお打ちになると思いますが、それにしろ生産性を高めるという問題は非常に大事だと思うのです。今年度の予算ではいろいろな事情があるだろうと思いますが、生産性を高めるということにはまだもう一つ積極性が欠けているのじゃないか、その点について今後思い切った手を打っていただきますことをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  146. 河野一郎

    河野国務大臣 お話の点ごもっともでございます。ただ現在の農林行政が非常に困惑いたしますところのものは、現状において相当の保護農政に国家資金を必要といたします。今御指摘の点に向かって積極的に努力する面と従来の保護農政の面とが相錯綜いたしておりますから、そこに非常に日本農業の混乱性があるわけであります。まず第一に保護の面に十分な手を打ちつつ将来に向っての積極的なものを打っていかなければならぬということで、私としてははなはだ僭越でございますが、その初年度でございますので、将来に対する施策につきましてはまず準備時代ということで、従来の保護農政を踏襲しておる中に準備を今進めつつあるということに御了承いただきたいと思うのでありまして、明年度以降におきまして相当活発に積極性を持った方向を打ち出していかなければならない、こう考えております。      ————◇—————
  147. 野原正勝

    野原委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  明二十一日午後一時から、ドミニカ農業移民問題調査のため、参考人の出頭を求め、その、実情を調査いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 野原正勝

    野原委員長 御異議なしと認め、そのように決定いたしました。  なお、参考人の人選等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 野原正勝

    野原委員長 御異議なければ、さよう取り計らいます。  次会は明二十一日午後一時より開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時二十六分散会