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1962-04-27 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十七日(金曜日)    午前十時四十一分会議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 内田 常雄君 理事 草野一郎平君    理事 堀内 一雄君 理事 宮澤 胤勇君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君    理事 山内  広君       安藤  覺君    上村千一郎君       内海 安吉君    小笠 公韶君       大森 玉木君    金子 一平君       島村 一郎君    藤原 節夫君       保科善四郎君    前田 正男君       緒方 孝男君    田口 誠治君       受田 新吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  笹本 一雄君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  小野  裕君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         防衛庁参事官         (装備局長)  久保 忠雄君         調達庁長官   林  一夫君         調達庁次長   眞子 傳次君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     沼尻 元一君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁刑事局         捜査第一課長) 本多 丕道君         検     事         (刑事局総務課         長)      辻 辰三郎君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 本日の会議に付した案件 ○防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第八七号)      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を継続いたします。質疑の申し出がありますので、これを許します。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 同僚の各委員からすでに御質問があったわけでございますけれども、私も、最初に、新しく自衛隊装備しようといたしておりますナイキの問題について若干お尋ねをしてみたいと思います。   〔委員長退席草野委員長代理着席〕  説明によりますと、この秋には訓練部隊ナイキ・アジャックス一式を持って帰ってきて部隊に配属されるということになるわけですが、そのナイキ所属がいまだにきまっておらないということはどうもふに落ちないわけであります。最近、いろいろと、シビル・コントロール、特に内局に対する批判が盛んに行なわれておるようでございます。その批判一つの対象としても、この所属問題がいまだにきめかねられておるということが取り上げられておるようでございますが、一体なぜ陸幕所属させるのが妥当かあるいは空幕所属させるのが妥当かという結論を出しかねておられるのか。ナイキ装備するという方針はたしか昭和三十四年赤城さんが公式に表明したのが始まりだと思うのです。あれから三年たっておるのですけれども、いまだにその決定を見ないというのはふに落ちない。いかにも優柔不断という感を受けるわけでございますけれども、この点について、きまっておるのかおらないのか、おらないとすれば、なぜきめかねておるのかということを、一つ納得のいくように御説明願いたいと思います。
  4. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 必要に応じまして政府委員からお答えさせますが、非常に形式的なことを申し上げますと、御承知のように、訓練部隊が今秋帰ってきたときに所属決定するという防衛庁方針が立てられておるわけでございます。もちろん、その決定をすることにいろいろの問題がありますことは申し上げるまでもございません。あるいは、これを導入するのにどのような形をとっていくのがいいか、あるいはまた、これが配属された上においてその運営をどうすればいいかということは、いろいろ立論の基礎がございますが、今申しましたように、とにかくこの秋の訓練部隊の帰還を待って決定するという方針でございますので、そのときに決定をいたしたいと考えておるわけでございます。
  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 秋に決定したいという気持であることは、もうお聞きしてわかっているわけなんです。それが、実際に訓練部隊が一式持って帰ってこなければきめられない理由があるというのですか、それとも、陸と空とが自分の方でほしいと言って争っておる、それに対して決断力を持って裁定を下しかねるというのですか、どっちなんですか。
  6. 海原治

    海原政府委員 ナイキ所属問題に関連しまして、事務的に長官を補佐する立場でございますので、私ども考え方を申し上げたいと思います。  御存じのように、この秋基幹要員訓練が終わって帰ってから適当な機会に所属決定するということに御決定を見るように長官の方にお願いいたしました理由といたしましては、何分にも、最も近代的な知識経験を要する部隊編成でございますので、これが陸に所属した方がいいのか空に所属した方がいいのかという、いわゆる指揮運用の面の検討ももちろん大事でございますけれども防衛庁全体といたしましては、この部隊十分目的に沿って作り上げるということがまず第一の問題でございます。先生御存じのように、このナイキは、米陸軍の手によって開発されたものでございまして、いわば高射砲の進歩したものでございます。従いまして、そのための基礎的な知識を持っております者は、何といっても陸上自衛隊高射砲関係部隊にその要員として多いわけであります。それから、空の方におきましても、同様な経験知識を持っております者は、同じような武器体系研究をしておる者が当然出てくるわけであります。そうして、まず、自衛隊といたしましては、この最初の一個大隊というものを計画通りに整々と作り上げるということになると、陸及び空の自衛隊の全力をあげてこの建設に協力することが最も適当であるというふうに私どもとしては判断をいたしたわけでございます。ナイキ米陸軍の手によって開発されております関係上、日本におきます顧問団の中におきましても、この関係部隊建設についての知識を持っておられる方はやはり陸軍でございます。また、その陣地の建設等につきましていろいろ助言を得るに際しましても、やはり米陸軍部顧問団関係が最もその知識が豊富でございますので、その関係からいろいろと連絡を受けることもまた必要でございます。このような事情をいろいろと考えまして、とりあえず、この大隊建設にあたりましては、空及び陸の両者が持っておりますところの力を総合的に利用して整斉と作り上げていきたい。そのためには米陸軍部からのいろいろな援助ももちろん必要でございます。そういう点も勘案いたしまして、部隊建設後の指揮系統の問題は別といたしまして、建設までは、陸上自衛隊において経費を積算し、この所要要員というものは空、陸の両方から差し出す、こういう形に御決定をいただくように私どもとしてはお願いをした次第でございます。  その方向で現在考えておりますので、先ほど申しました第一回の基幹要員が帰って参りましたあと、適当な時期に、どちらの自衛隊所属させることが防空上最も適当かということを十分検討いたしまして、この所属決定  してもらうつもりでおります。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今の説明では納得いきませんよ。本来、このナイキ・アジャックスを開発してきたのも、装備しておるのも、アメリカ陸軍である。日本におる米軍関係では、マーグの方でも、陸軍関係がいろいろな問題について熟知しておる。また、高射砲の進化したものであるというような意味なら、これまた本来陸の装備だということになるわけですね。そうすると、さっさと陸幕所属決定をすればいいではないですか。現に、まだきょうあすのうちに来るという見通しが立っておらないホークの方は、早くも陸幕所属をきめておるではありませんか。そうすると、何とかかんとか理屈は言っているけれども空幕がぜひほしいと言うものだから、その意見を無視できない、陸との間で、どちらもほしいというので、その裁定を下しかねておるというのが本心じゃないのですか。そういうだらしない状態だから、内局批判が出てくるのだと私は言っておるのですよ。  それでは、なぜ陸なら陸という裁定ができないのですか。それをすると空幕が協力しない、そういうことですか。そういうわがままを空幕が言った場合に、統幕にも内局にも長官にも押える力もないのですか。その点をはっきりさせてくれと言っているわけです。
  8. 海原治

    海原政府委員 きめられないのじゃないかという趣旨の御質問でございますが、私どもとしましては、先ほど申しましたように、今はきめない方がいい、こういうふうに判断をしたわけであります。  それで、私の説明から、それは当然陸に所属させていいのではないかという御趣旨でございますが、これは、先生御存じのように、諸外国でいろいろとその所属については分かれております。アメリカでは、ナイキ陸軍所属でございますが空軍司令官指揮を受けている。いわゆるオペレーション・コントロールということをやっておるわけであります。従いまして、かりに陸上自衛隊所属であっても、防空面におきましては航空自衛隊の総隊司令官あるいは方面隊司令官指揮を受ける、昔で申しますと作戦に関する限定指揮を受けさせるという方法もございます。しかし、それよりもあるいは航空自衛隊の中に全面的に入れた方がいいのじゃないか、こういう考え方もあるわけでございます。これにつきましてはいろいろと一長一短ございます。先ほど申しましたように、ナイキにつきましては現在アメリカでいろいろと訓練を受けている最中でございます。向こうにおきまして十分そういう運用面研究もいたしましたあとで、過誤のないように決定をしたい、こういうことを実は考えておるわけであります。現在決定するのと、この秋に決定するのと、時間の差によって今後のナイキ部隊編成訓練、育成に別にマイナスはないと私ども考えております。また、今秋以後におきまして長官決定がありました場合に、いずれに決定いたしましても、関係者は十分これに協力をする心がまえであるということは、私ども事務的にこの問題を討議いたしております間においても十分感知できますし、また、みなそのつもりでおりますので、どちらかの思惑をおそれて決定しないのだということではないことを一つ御了解願いたいと思います。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 防空体制の一元化ということになるならば、戦闘機ナイキホークもみんな一緒に扱われるべきじゃないのですか。
  10. 海原治

    海原政府委員 一般的に防空体制ということでございますが、先ほど御指摘のありましたようなホーク、これにつきましては、主とした任務が、昔で申しますと、いわゆる野戦高射砲的に運用されるものである。具体的に申しますならば、たとえば陸の方の方面隊単位に配属いたしまして、もっぱら局地的に運営されるものでありますから、大きな目で申しますと防空体制の一環にはなりますが、しかし、これは特に戦闘機との協同関係であまり問題はない。従いまして、これにつきましては陸上自衛隊所属にして、ただいま、その配置につきましては、北海道に配置する案と、東京周辺ナイキと併置する案と、どちらが効果的かということについて検討している次第であります。  それから、ナイキにつきましては、要撃戦闘機との関連、あるいは今度決定を見るかもしれないところのいわゆる半自動警戒指揮組織というものとのかみ合いがございまして、それらのいろいろ連絡調整関係をどうしたらいいかということにつきましては、先ほど申しましたように、なお一段と慎重な検討をいたしたい。さらに具体的に申しますと、私どもが書面の上で検討いたしましたMSQという関係の機材がございます。これなんかも、初めは当然一個大隊にも必要であると考えておりましたけれども、いろいろその後の情報によりますと、必ずしも一個大隊のためには必要でないというようなことも判明いたしております。  従いまして、全般防衛指揮組織というものの体系をどのようにすれば最も効果的かということについては、今慎重に各方面に当って検討しておる段階でございますので、これらもあわせまして、この秋以降において決定をしていただきたい、こういうふうに私どもとしては大臣にお願いしている次第でございます。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先日の防衛局長の答弁によっても、何かナイキ中央直轄にしたいという意向が述べられておったようです。また、藤枝長官も、これは東京新聞の三月二日の記事でありますが、陸空統合ミサイル防衛司令部を設けて統幕指揮下に置くことにしたいというような意向を述べられておるようでありますので、大体そういう構想は固まっておるのじゃないですか。これが、防空の面からその方がいいのだということであるならば、また一つ考え方でしょうけれども妥協産物として出てきておるとするならば、これはもってのほかです。その辺お伺いするわけですが、まず、長官、先日出ておりますこういう構想は、固まったものとしてお述べになったわけですか。
  12. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 その記事が必ずしも私の真意を全部伝えているわけではございませんで、各国例等陸海空統合的作戦方向に進んでおる、そうして、今後の日本防衛考えていくときに、その統合ということを直視しなければならないという意味のことを申したわけでございます。しかしながら、統合やり方につきましては、たとえばアメリカの例を見ましても、おのおの陸海空ともその任務を持ちながら、しかもその上に立って統合していくということが考えられるわけでございます。従いまして、ナイキ所属につきましても、陸に所属して、防空体制としては全体として空でやる、あるいは初めから空でやるというような幾つかの考えがあり得るわけでございます。作戦指導方向としてそういう統合ということが望ましいのでありますが、そのやり方幾つかの方法があろうと私は考えております。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 こういう構想でいくとするならば、何も最初から陸空統合ミサイル部隊といったようなものを持つ必要はないわけです。昨年法律が改正になって、統幕議長権限強化と私どもが指摘いたしましたように、統合部隊に対する指揮統幕議長がやれるようになっているわけです。所属がどこであろうと、その方が能率的であるということになれば、現行法で十分にやれるわけです。それをなおかつ最初から統合のものを作ろうという線が出てくるというところに妥協産物的なくさみが出てくるわけです。ナイキについては陸空最初から一緒に扱うようにしておいた方がいいんだ、その方が空を守るという意味からいいんだという信念に基づいてやられようとするなら、まだ私はそれなりに納得できると言うのです。そうではなくして、どうにも扱いかねてこういう扱いをしたくさみが非常に強い。そんなことで一体防衛とか防空とかいうことを真剣に論議していると言えるか、責任を持っていると言えるかと私は言いたいのです。今までの御説明ではどうしたって妥協産物としか思えない。このナイキの部分だけ最初から陸と空とを一緒にした部隊を作らなければどうにもならぬ、そんなことはないじゃないですか。陸に責任を持たしておいて、そうして空との統合をはからなければ能率が上がらないというなら、統幕はちゃんと権限を持っているじゃないですか。そうじゃないのですか。
  14. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 その通りなのでございまして、私の申したのは、そういう運用統合的に行なうというだけでございまして、このナイキ所属について何か妥協的なものをやろうという考え方は毛頭ございません。先ほど申しましたように、訓練部隊が帰りまして、各般の情勢を勘案いたしまして、陸か空かにはっきりと所属をさせる所存でございます。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、いよいよナイキが来たあとの問題についてお伺いするわけですが、まず訓練です。特に発射訓練、これは国内でやらないのだということをこの間田口委員質問に対してお答えになっておられたようです。また、各地で、今ナイキ基地が設けられる予定地とされておりますところで反対運動が起きておりますが、その説得に当たっておる防衛庁責任者も同様なことを言っておるようであります。たとえば、土浦の市長や阿見の町長に対して防衛庁側が言った言葉として週刊朝日に出ておるのですが、ナイキ基地土浦陸上自衛隊武器補給廠の敷地内に設置されることはすでに確定しているが、実射訓練アメリカへ行ってやることになっているから心配ない、こういうことを盛んにPRしておるようでございますが、これはほんとうですか。
  16. 海原治

    海原政府委員 さきにもお答え申し上げましたが、ナイキ発射訓練は、米国内あるいは場合によっては沖縄ということも考えられるということを申し上げたことは、その通りでございます。と申しますのは、実際にナイキを発射いたしましてこれの訓練をする場合にはいろいろな施設が要るわけでございます。御存じのように、相当長距離の射程もございます。その目標も必要でございます。そういうものを完全に具備した射場というものを建設いたしますことは、これは大へん膨大な金がかかりますし、所要施設も必要です。そういうものにつきましては、もしかりに日本国内にそういうものが求められれば別でございますけれども、さしあたりのところは、NATO諸国におきましてもアメリカ要員を派遣して訓練いたしております実情から申しましても、第二次計画策定なしいは現在におきましても、私ども発射訓練というものはアメリカ本土の現在強勉に行っておりますところでやらせることにしようということで話は進んでおります。
  17. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 訓練を一々外国に行ってやるなんということは全くナンセンスですよ。そういうことで実際の場合に間に合う兵器だということが言えるのか。また、もう一つは、そこにやはり国民の前にさらけ出したくない何物かがあるのではないかという感じを受ける。これは間違いありませんよ。日本国民の見ている前でできないのじゃないか、何かそういう特殊なものじゃないかという疑いを国民が持つであろうことは十分覚悟しておりますか。
  18. 海原治

    海原政府委員 ただいまの点は、先ほど申し上げましたように、現在ナイキ・アジャックス及びハーキュリーズを装備しておりますところのヨーロッパ諸国、あるいは極東におきましては韓国とか台湾、こういう国々におきましても、全部アメリカへ行って訓練を受けておるわけです。その理由は、先ほど申し上げましたように、この発射訓練計画通り行なうためには膨大な施設と多額の経費がかかる。それを各国の中に持つということは決して得策ではない。かりにアメリカに行きますと、その場合に相当な留学費用がかかるわけでありますが、これは現在幸いにしてMDAPということが行なわれております。その費用を払ってアメリカに行ってやった方が、その国それぞれのところでもって訓練するよりははるかに効果的であり経済的である、こういう立場から、各国とも教育訓練を米国内で行なっておる実情でございまして、決して国民の前に隠さなければならぬようなものがあるということではございませんことを、この際はっきり申し上げておきます。
  19. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたが何とおっしゃろうと、セコハン兵器アメリカからもらってくるだけではなしに、訓練までアメリカに行って里帰りしてやらなければできないというようなことが、国民感情にどういうふうに映るかということぐらい、もう少し考えるべきですよ。それ以上申し上げません。  それから、そのナイキ・アジャックスは、当然にミサイル防御には役に立たないわけで、爆撃機の飛来に対して対処する兵器として装備するものだと考えるわけですが、そこで、この性能の問題が出てくるわけですけれども、はたして役に立つのだろうかという感じがするわけです。私は今セコハンと言いましたけれども、前にF104の国内生産決定する論議を本委員会でやりましたときに、当時の防衛局長加藤さんがいろいろ説明しておられましたが、日本の空を守るという立場から、爆撃機が来るときにはどの程度のものがやってくるのかということが一つの問題として出てくるわけです。当時、三年前に、爆撃機の高度は六万フィート、進行速度は一・五から一・八マッハぐらいで攻撃してくるだろうということを加藤さんが言っておられたのですが、それは一体どこの爆撃機を頭に置いておるのかといえば、言うまでもなくソ連だと言わなければならぬ。それ以後ソ連爆撃機は相当また進歩しておるというふうに私は見ておるわけです。一昨年でしたか、パレードに現われた爆撃機のスピードは三マッハという説すら流れておりました。そうすると、三年前に述べられましたこの一・五、一・八マッハ、高度六万フィートというふうな線は今でも固定的にお考えになっておるのかどうか、この点お尋ねいたします。
  20. 海原治

    海原政府委員 昨日も申し上げたことに関連いたしますが、私ども装備いたします各種の装備品というものがどの程度に効果があるかということにつきましては、当然その能力に限界があるわけでございます。そこで、昨日もここで全面戦局地戦かということも問題になったわけでございますが、ただいまの御質問もこれに関連いたしますけれどもナイキというものは、昨日か一昨日でございましたかに申し上げましたような性能でございますので、当然それ以上のものに対してはこれは無力でございます。しかし、そういうものだけしか来ない、あるいはそういうものが来る公算の方がきわめて多いのだという前提は、実は私どもとらないわけであります。  今の御質問について具体的に申し上げますと、某国の爆撃機ということでございますが、昨年ソ連のモスクワのショーに現われました爆撃機能力の推定でございますが、三マッハというのは、実は一人か二人の方が推定しておられます。最も新しい当時注目を引いた爆撃機につきましては、それはおそらく一・八ないし二マッハ前後のものじゃないか、こういうのが私の知る限りにおきますところの一応の判断になっております。従いまして、当時加藤防衛局長が申されましたわが防空体制前提としてのそういうものの性能は、依然として現在も私どもそのように考えております。  なお、つけ加えますことは、そういうものだけを目標にしたものではないということでございまして、私どもとしましては、昨日も長官からお話しになりましたように、一応現在の国際情勢下において起こり得るであろう具体的には局地戦以下の侵略に対処するということでございますと、ナイキ・アジャックスというものの性能は十分であるというふうに私ども判断をしておる次第でございます。
  21. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 海原さんは現役で優秀な防衛局長ですが、先輩の加藤さんも優秀だと私は思う。加藤さんが言ったことを上手に否定されておる印象を私は受けます。自信を持って加藤さんは本委員会説明しているんですよ。「一九六〇年代におきましては、大体高度六万フィートを標準に考えなければならないと思います。もちろん超低空の場合もございますけれども、一応の考え方としては、高度六万フィート、速度は一・五マッハから一・八マッハくらいで攻撃してくる、こういうことを考えたわけでございます。」、こういう想定のもとに防衛庁装備考えなければ意味ないのだ、F104はこれに適合する装備である、こういう説明が自信を持ってなされておるのです。そうしますと、これに適合しない兵器というのは意味ないじゃありませんか。同じ防空兵器として、あなたは三マッハを否定されましたが、一・五から一・八という加藤さんの当時の推定は、今度は一・八から二というふうに進歩していることはお認めになりました。それでもいいですよ。あなたが認めたものとして、私はかまわないと思いますが、とにかく、一・八から二マッハのスピードで、高度は変わらないわけです。大体終始六万フィートくらいの高度を保って進行してくるということを想定して、それに対応できる装備をしなければならぬ、こういうことは考えておられるわけでしょう。
  22. 海原治

    海原政府委員 先ほどの私のお答えが前局長の答弁を否定したことであるというふうなお感じになったといたしますと、それは私の説明が不十分でありまして、私としましては、変わっていないということを最後に申し上げたつもりであります。と申しますことは、このナイキ・アジャックス性能は、先般も申し上げましたように、一応高さは六万フィート程度まで到達するものである、までということはそれ以上飛ばないということではございません。一応そういう公表のものであります。速度も二・五マッハ程度。従って、今先生のおっしゃいましたような具体的な爆撃機に対しては、これは十分対抗し得る能力を持ったものでございます。かつ、現在の爆撃機がはたして高度六万で来るか、五万で来るか、五万五千で来るかということは、いろいろそのときの状況によります。御存じのような爆撃機の巡航速度的な高度の面もございますので、必ず六万で来るというわけのものでもございません。ただ、一概に申せますことは、アジャックスというのは、大体高度六万フィート程度のものまでに対して一応到達できるものではある、こういうことでございまして、御説明になっております爆撃機に対しては当然有効なものと私ども判断いたしております。ただ、ハーキュリーズは、その際申しましたが、大体十五万フィートの高さまで到達するものでございます。従いまして、アジャックスとハーキュリーズを比較すれば、その間にそれだけの能力の差が出てくることはやむを得ないところでございます。
  23. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 頭がいいからあなたは先へいきよりますけれども、あなたのこの間の田口委員に対する答弁をここにメモしているわけです。有効な射程が高度六万フィート。そして、今爆撃機が進行してくる場合も常識的に一応六万フィートということを想定して対処しなければだめだという加藤防衛局長の答弁をあなたは肯定された。そうすると、ナイキではぎりぎりではありませんか。六万フィートがさらに七万フィートで来ることもある。あなたの言うように五万フィートで来ることがあるかもしれませんけれども、高度六万フィートが大体有効な到達距離ということになりますと、どうにかぎりぎり間に合うかどうかということですね。これが一つ。もう一つは、このナイキの速力です。あなたはこの間は一・五マッハから二・五マッハと言っていましたが、きょうは上の方だけ言いました。これも週刊朝日ですが、藤枝さんは、アジャックスはどの程度の敵に対抗できますかという記者の質問に対して、マッハ一・五までの爆撃機なら、数にもよるが押えられる、こう答えている。大体常識的にソ連爆撃機が一・八から二マッハということも今あなたはお認めになったのですが、スピードの面でもちょっと問題が出てきませんか。あなたは間に合いますとおっしゃいますけれども、こういう数字を並べていけば間に合いそうもないじゃありませんか。一生懸命飛ばした場合に一・五から二・五マッハとあなたは言うけれども藤枝さんは、一・五と、下の方を押えておりますよ。これまでなら自信があると言う。あなたは一番上の方を取り上げて大丈夫だと言う。そういうごまかしは、事防衛の問題ですから、およしになった方がいいと思います。特に責任の持てる範囲でお答えになるのが至当だと思うのです。それでは、藤枝長官はこの記者会見のときにうそを言ったのですか。
  24. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 までと申したのじゃなくて、一・五マッハ程度のものということを申したので、そのときには、もちろん、先ほどから話がありますように、一・八というようなものも頭に入れておいて、そして一・五マッハ程度ということを申したわけでございます。
  25. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 三年前に大体標準が一・五から一・八マッハ爆撃機を仮想しておったのです。今それがさらに進んでいる。どんどん進歩していくのです。三マッハのスピードがあるという認定をした者すらおる現状なんです。そういうときにナイキを導入する。導入するからには、間に合うのだ、役に立つのだという宣伝をしなければならぬでしょうが、それは非常に苦しいわけです。やはり、有効に対処するためにはハーキュリーズがほしいというのが、実際に防衛を担当しておるあなた方の本音じゃないのですか。いずれはハーキュリーズに切りかえたいという意向をお持ちになっておるわけでしょう。その点、長官いかがですか。
  26. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 防衛のことでありますから、一面においてできるだけ優秀な兵器を導入したいという考え方はもちろんございます。しかしながら、日本を取り巻く各種の情勢考え、そしてまた、国内における財政的な見地、あるいはその他各般の事情を考慮して、その判断に立って、そうして、その中で最もよきものということで選んだのがアジャックスなんでありまして、私は、そういう意味では、このナイキ・アジャックスを導入するということはわが国の防空上に相当の威力を加えるものと考えておる次第であります。
  27. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 うまいことを言っておりますけれども、本音は、やはりハーキュリーズ、しかも核弾頭つきのハーキュリーズ、これを装備したいということであることは想像できるわけですよ。その目標に進んでいくための第一段階としてアジャックスを持ってくる、そうしてある程度国民の免疫性をここで確保しよう、そういう露骨な意図があるとしか思えません。今までのやり方から言ってもですね。  そこで、ちょっと参考までにお伺いしておきたいのですが、このナイキ・ハーキュリーズにつけられます核弾頭の爆発力はどの程度のものですか。広島型の原爆に比較してお答え願いたいと思います。
  28. 海原治

    海原政府委員 ハーキュリーズに装着しますものの爆発力につきましては、秘密になっておりまして、私ども承知いたしておりません。
  29. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 承知しておりませんと言うが、情報としてもわからないのですか。どの程度の破壊力を持っておる兵器であるということもわからないのですか。
  30. 海原治

    海原政府委員 その通りでございます。と申しますのは、わが方でこれを装備する意図がございます場合には、先方に連絡しましてある程度のものが入手できますけれども、私の方で装備いたす意思はございませんので、これはとっておりませんし、また、情報としても一般に出ておりません。
  31. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 全く無責任なたよりない話ですね。大体、世界の兵器の開発状況あるいは装備の状況から言えば、もう常識的な兵器である。そのものの能力といいますか、性能といいますか、そういうものすら把握していない。まことに私は無責任だと思います。しかし、答えられないならやむを得ません。  次に、バッジ・システムの採用が二次防で予定されておるようでありますが、これはどの程度の作業が進められておるのか。聞くところによると、本年の八月ごろまでに大体どの会社のものを作るか内定して、調査団をアメリカに派遣するといううわさもあるわけですが、その点いかがですか。
  32. 海原治

    海原政府委員 現在アメリカ関係会社からそれぞれの特徴を盛りました一つの技術的な案が来ております。それにつきまして現在担当の幕僚監部におきましてこれを詳細に検討いたしております。従いまして、この検討の結果ある程度方向がわかりました場合には、調査団を組織をして、その時期につきましては、先般も私の個人的な見積もりといたしましてはこの八月前後になるのではないかということをお答えしたのでありますが、ほぼその時期にアメリカに出しまして調査をいたしたい、このように考えております。
  33. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカの三つないし四つの会社から設計書が防衛庁に出されておるというふうに言われております。たとえば、ゼネラル・エレクトリック、ヒューズ、リットン、マーチンといったような会社から設計書が出されておるというふうに聞いておりますが、これは事実ですか。もし違っておれば訂正していただきたい。
  34. 海原治

    海原政府委員 アメリカの三社から出ております。
  35. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると、今私が申し上げたうちのマーチンを除く三社ですね。
  36. 海原治

    海原政府委員 その通りでございます。
  37. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その三社が出しておりますものは、性能は違うわけですか。
  38. 海原治

    海原政府委員 私もまだその内容につきましては報告を受けておりません。しかし、これも、御存じのように、アメリカ国内におきまして、空軍であるとか、あるいは海兵隊であるとか、陸軍であるとか、それぞれの防空組織につきまして十分な経験知識を有するところの会社がそれぞれの特徴を発揮した設計を持っておりますので、一長一短があるように私としては結果的に一応報告を聞いております。
  39. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると、一部にはこのバッジの一部国産化を考えておるという報道もなされておるのですが、それはどうですか。
  40. 海原治

    海原政府委員 どの程度の国産化が行なわれるかということにつきましては、この米国三社がそれぞれ日本国内関係会社と連絡がございますので、それぞれの会社におきまして、当該組織が採用されたならばどの程度のものが国産されるだろうかということについては会社としての検討を行なっているかと思いますけれども防衛庁といたしまして、まだその面までの検討をする段階には至っておりません。
  41. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 大臣にその点お伺いしておきたいのですが、あなたとしては、電子部門においては特に日本は高度の技術を誇っておることでもあるし、この国産化ということを考えたいというふうに政治家としてお考えになっておるのですかどうですか。
  42. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 バッジ・システムそのものについての各社の提案については、私まだ全然報告を受けておりませんが、方向としては、国産できるものは国産した方がいいのではないかという気持は持っております。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いろいろ設計が出ており、見積りも出ておるわけですが、一体一組でどの程度経費がかかると推定しておりますか。
  44. 海原治

    海原政府委員 その点につきましても、実はまだ私は内容の詳細の報告を受けておりません。それぞれの組織がそれぞれ特徴を持っておりますので、かつ能力的にも差異がございますので、その見積り単価にも相当な開きがあるように実は私としては聞いております。先般、バッジ組織として必要だと思われる経費の見積りを委員会に申し上げました際には、一応これは総経費約二百八十億円前後ではないかということを申し上げた次第でございますが、これは、各社の中で最も広範かつ包括的な、簡単に申しますと、非常に能力はよいが高いというものの場合にその程度までいくであろうという事務的な見積りを申し上げた次第でございまして、具体的にこの三社につきましての価格につきましては、私は承知いたしておりません。
  45. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私どもも常識的に約三百億円と聞いておるわけですが、低い目におっしゃっておる。これはいつものことですから、大体符節が合うのではないかと思います。最初は安く言っておいて、しまいに高くなるというのが防衛庁の物の買い方のようですから。そこで、この高いバッジ・システムを採用しようというわけですけれども、各防空管区に一組要るわけですか、それとも全国一つでまかなうというようなものなんですか。
  46. 海原治

    海原政府委員 私どもの希望といたしましては、全国を一組としてまかないたい、このように考えております。
  47. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今後ますます莫大な金のかかるものがどんどん取り入れられようとしておるわけですが、次に、最近第一機が到着いたしましたF104Jについてちょっとお尋ねをしてみたいと思うのです。  これは、もうすでに現物が到着して、公衆の面前で飛行もやっておるわけですから、いろいろと性能テストも行なわれたと思う。そこで、問題は、このF104Jが採用されました当時、私どもを通じて国民説明された性能がはたして十分に発揮できておるのかどうかということが一つの問題です。  そこで、私は一つ一つこれをお尋ねして参りたいと思うのですが、まず第一に、F104Jを推奨いたしました理由の第一として、無類の上昇力を有しておる、こういうお話でございましたが、この第一機のテストの結果、どのの程度の上昇力を持っておったか、お答え願いたいと思います。
  48. 久保忠雄

    ○久保政府委員 その点は、要求性能通りの結果が出ております。
  49. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 要求性能は私知っておりますよ、そのテストの結果をお聞きしておるのです。
  50. 久保忠雄

    ○久保政府委員 テストの結果も、要求性能通り、六万フィートまで行っております。
  51. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 六万フィートというのは、これは毎分ですか。
  52. 久保忠雄

    ○久保政府委員 これは、六万フィートまで要求性能通り七分程度で行っておるということでございます。
  53. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私、ここへメートルで書いておりますから、ちょっと計算しなければいかぬのですが、できれば国法に基づいてメートルでお答え願いたい。
  54. 久保忠雄

    ○久保政府委員 一万八千メートルでございます。
  55. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 本委員会説明されました実用上昇限度は二万メートルであります。要求性能を満たしておるというお言葉は当らぬじゃありませんか。  もう一つ、毎分何ぼになりますか。
  56. 久保忠雄

    ○久保政府委員 海面上で一万メートル、一分間に一万メートルでございます。
  57. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたは要求性能を満たしておるとおっしゃいましたが、私どもが本委員会において責任ある答弁として当時の赤城さんや源田さんからお聞きしたのは、実用上昇限度二万メートル、毎分約一万二千メートルという説明ですよ。あなたの感覚では二千メートルやそこらは問題じゃないわけですか。一分間の上昇機能が二千メートル違っても問題ないということですか。事戦闘機性能を論じておるのですから、そういう大ざっぱな感覚で一つものを言わないようにしていただきたいと思います。
  58. 久保忠雄

    ○久保政府委員 私の今申し上げましたのが要求性能というように私は聞いております。
  59. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたはだれに聞いたか知りませんけれども、これだけ優秀な飛行機でございますから一つお認願いたいというのが、本委員会に対する説明ですよ。本委員会に出された資料に基づいて私は質問せざるを得ないじゃありませんか。あなたが聞いておる要求性能をもとにして論議はできませんよ。ここで説明したことは国民説明したことなんです。戦闘機能力で一万八千メートルと二万メートルではずいぶん違いますよ。一分間の上昇機能一万メートルと一万二千メートルじゃずいぶん違いますよ。そういう大ざっぱな論議をするのでは、あと続けられないじゃありませんか。私は一つ一つお聞きするのですから。
  60. 久保忠雄

    ○久保政府委員 先ほど申し上げたのが現状で要求性能であるというふうに私は確信をいたしております。
  61. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたが幾ら確信したって、それでは、国会用の答弁と実際内部での引き継ぎ説明とは違うということですよ。これは認められませんよ。しかし、一つ一つ照合してみましょう。  次は、最高速力はどれだけ出ましたか。
  62. 久保忠雄

    ○久保政府委員 二マッハでございます。
  63. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 高度何メートルでですか。
  64. 久保忠雄

    ○久保政府委員 フィートで出ておりますので、ちょっと換算を正確にしたいと思います。それで、フィートでしたら、高度四万フィートで二マッハ出ております。
  65. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 一万何千メートルですかね。
  66. 久保忠雄

    ○久保政府委員 約一万二千メートルでございます。
  67. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私ども説明には、高度一万メートルで二マッハという説明でした。  それじゃ、次に、行動半径。
  68. 久保忠雄

    ○久保政府委員 これも二百ノーチカル・マイルでございます。
  69. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 増装なしでですね。
  70. 久保忠雄

    ○久保政府委員 そうでございます。
  71. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それもメートルで出して下さい。  それから、この104Jが一番危ぶまれたのが安全性です。これは源田さんも認めておりました。いろいろと改良を加えなくちゃならぬと言われておりましたが、それはさておいて、 エンジン停止の際の沈下速度は何ほどでしたか。
  72. 久保忠雄

    ○久保政府委員 今手元にこまかい資料を持っておりませんので、後日調べまして報告いたします。
  73. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 後日じゃだめですよ。そこですぐ調べて下さい。私きょう104Jの質問をいたしますと言っているのですよ。何を聞くと思いましたか。104Jのことを聞くとなれば、まず性能を聞かなきゃ話にならないじゃありませんか。  次に、いろいろありますが、最も重要な問題、安全性に関連してですが、エジェクション・シートが下部についているのを上部に改装するというお話でしたが、これは改装されておりますか。
  74. 久保忠雄

    ○久保政府委員 改装されております。
  75. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 もう一つは、全天候性を付与するためにナサールを装備するというお話でしたが、これも装備されておりますか。
  76. 久保忠雄

    ○久保政府委員 装備されております。
  77. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、今のナサールが装備されるということになりますと、その面から全天候性は確保できるかもしれないけれども、安全性あるいはスピードの面で影響を受けるのではないかという私どもの指摘がどうやら当たってきているのではないかという感じがする。ただ、走る場合には二マッハといってもなかなか把握困難ですが、上昇機能という一番大切な能力の点において落ちてきている。  もう一つ私お伺いしておりますこの沈下速度というのを聞かなければわからないのですけれども、ナサールのようにかさばる重たいものをあの針のようにスマートなF104Jに取りつけたのでは、非常に重いものでもあるし、安全性の点で問題があるのではないかと私は指摘したのですが、これはお答えがないから私ここで断定的に言えないのですけれども一つの方はどうやら当たったような感じを受けるわけです。早くこのもう一つの沈下速度の方を調べてくれませんか。  その間に、所要滑走路、何メートルで飛びましたか。
  78. 久保忠雄

    ○久保政府委員 これもフィートで出ておりますが、離陸のときに三千二百フィートでございます。
  79. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 着陸のときは。
  80. 久保忠雄

    ○久保政府委員 三千三百フィートでございます。
  81. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、大体どの程度の滑走路があれば間に合うわけですか。
  82. 海原治

    海原政府委員 ただいま装備局長からお答えしましたのは、104のある一定の状態における離陸時及び着陸時でございます。これが実際に第一線の部隊に配属されまして所要任務に応じて行動するということになりますと、当然、御存じのように、増装の場合もありましょうし、武装のいろいろな種類でその重量も変わって参ります。従いまして、これに対しては一定の安全係数をかけたものが基礎になるわけでございますが、それに基づきまして、先般来国会におきます御審議の際には、二千四百メートルあれば間に合う、こういうことをお答え申してきたわけであります。しかし、その後、私どもといたしましては、再々繰り返して恐縮でございますけれども、貴重な人命の保護のために、かつは大事な機体の保護のために、もしほかの条件が許すならばさらに三百メートル程度延ばしまして二千七百メートル程度の滑走路を持ったものに配置することが望ましい、こういうことで申し上げてきております。ただし、このことは、二千四百メートルの滑走路のところには配置しないということではございません。滑走路が延長できるならば、さらに三百メートル程度延ばしたい、二千七百メートル視度の滑走路を持ったところに104の部隊を配置したい、こういうことで従来お答えしてきております。
  83. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 従来お答えしておりますと言うけれども、このF104Jの決定を論議するときにはそんなことは言っていませんよ。二千三百メートルあれば足ります、十分安全に離着陸できますという答弁が本委員会においてなされていますよ。ここでまた水増ししているじゃありませんか。本委員会は、二千三百メートルあれば足りる、日本のように十分に余裕を見た滑走路を作れないところでも大丈夫でございますという説明を聞いているのですよ。できてきたら、今度は二千七百メートルなければだめだ、これは何ですか。
  84. 海原治

    海原政府委員 ただいま私がお答えしましたことは昨年の当委員会でも申し上げております。当時の速記録を調べてみましても、一応八千フィート程度あれば間に合うことは間に合う、しかし、他の条件が許せばこれは延長したいという意味のことを、当時の赤城長官からもお答えいたしております。私どもといたしましては、昨年の衆参両院の内閣委員会におきましてこの問題が出ましたときにお順いいたしまして、二千四百メートル程度で間に合うのだ、間に合うけれども、さらに安全性を確保して三百メートル程度は延長したいんだ、従って、二千七百メートル程度の滑走路で104の部隊は行動させたい、このように御説明しております。従いまして、私が従来と申しましたのは、昨年の国会以来でございます。
  85. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私はこの決定する前の論議の話をしているのです。きまってしまえば欲ばってくることは目に見えてわかっていますよ。こういう条件で使用できるのだからという説明がうそであったということを私は立証しようとしているのですよ。いかにも優秀な性能を持っておるかのごとく、滑走路も短くて済むかのごとく説明をしておいて、作ってしまえば、さあ滑走路も広げてくれ、どうも思うように上昇機能もございませんというのでは、国民に対して詐欺じゃありませんか。あれは源田さんが説明したことだ、おれたちは知らぬとおっしゃるなら別ですが、そうはいきますまい。そう言いたい気持はわかりますけれどもね。  沈下速度は出ましたか。
  86. 久保忠雄

    ○久保政府委員 しばらくお待ちをいただきたいと思います。
  87. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 上昇能力一つだけ数字が出てきたわけですが、私どもが心配した点が現実の問題として現われているのじゃないかという印象を受けます、あなた方の説明を聞くと。ナサールを積んでエジェクション・シートを改装することによって能力が低下するのじゃありませんか、スピードなり上昇機能なり安全性なりに問題が出てきやしませんかと疑問を呈したのに対して、絶対にそんなことはないと源田さん胸を張ったけれども、どうやら私たちの言うことの方が当たったようだということになってきております。少なくともこれに増装も必要となるでしょうし、サイドワインダーもつけることになるわけでしょう。いろいろな装備をやっていくと、まだまだ能力が落ちてくるということを考えなくてはなりません。普通の品物を買うときでも大切ではございますけれども、事こういう重要装備を論議する場合に、そういう水増しをやったりごまかしをやって承認を求めるという態度が許されるはずはないと思います。  長官、どうですか。こういうふうな食い違いが出てきているのですが、これは長官責任でもあるわけですよ。ほんとうはあなたではなしに赤城さんですけれども、同じ仲間ですから、一緒責任感じてもらわなければいかぬわけです。全く、文官なり政治家たる長官が、制服の言いなりに、まるのみしておったということになってきませんか。まるのみしても、そのまま性能が発揮できればいいです。こういうことでは、私あとでゆっくり論議したいと思うのですけれども、私どもが心配しております、また現に制服の側からいろいろと批判が出ておりますシビル・コントロールに問題が出てくると思うのです。しろうとどもに何がわかるか、第一、兵器のことなどに内局や政治家が口をさしはさむことがけしからぬのだというたんかを切っておりましたが、その点は一つは裏づけられておるわけです。しかし、それをいいことに、制服の連中は今度はごまかしを言っておる。それを看破できなかった責任もありますけれども、こういう問題は根本的に解決しなくちゃならぬ問題になってきませんか。いかがお考えになりますか。
  88. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 104につきまして、今私も手元に試験の結果の詳細なものを持たないので、一々のお答えができないことは非常に残念でございます。しかしながら、104を決定いたしました当時の要求されました性能に合致をいたしておるという報告を受けておるわけでございます。ただいまの上昇速度の問題等につきまして御疑問があるようでございますが、これは試験の結果につきまして後ほど詳細に御説明できると思います。  それはそれといたしまして、何かこの制服の方が武器その他につきましては専門家であるから内局あるいは長官等に口出しをさせるなというような気分があるのではないかということでございますが、そのようなことは絶対ございませんし、また、内局におきましても、おのずから専門家を集め、そうして、制服の主張に対しましても十分な検討を加えましてやっておるわけでございます。今後のやり方といたしましても、もちろんその方針を踏襲する考えでございます。
  89. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなことをおっしゃったって、現に答えられない部分があるじゃございませんか。飛行機を作ってしまったら、もうあとのことは知らぬ、国会でどんな説明をしておろうとも、それとはたして能力が一致するかどうか、そんなこと内局は無関心ですか。きちっと頭の中に整理されて、上昇機能は何ぼ、スピードはどれだけ出た、行動半径は何キロ、沈下速度は何ほどというようなことが頭の中にたたき込まれておれば、なめられませんよ。だが、現に、こうしてお聞きして、だれも答えられないじゃありませんか。私ども、しろうとですら、飛行機ができた、ああそうか、それではあのときいろいろ説明を開いたがあの説明通り優秀な飛行機であろうかとすぐ思いますよ。だから、すぐ調べてみました、あれはどうだったというので、あなた方も制服に負けるもんかという気魂があるならば、それくらいのことはさっと説明をさせて、頭の中に整理しておいて、どんなことを聞かれたって、はいはいと答えられれば、胸を張っておっていいでしょう。そうなっていないじゃありませんか。いまだに答えが出られないということは、資料もお持ちじゃないのじゃないですか。  安全性ということが一番論議されたのです。それはスピードが出るだろう。あんなに針のようにスマートで、翼らしき翼もないんだから。しかし、それはもしエンジンでもとまったときにぐっと沈下してしまう危険性を多分に持っておる。ずいぶん論議されたわけなんです。一番心配されたその安全性の問題についてお答えができないという現状において、長官が何と言われようとも、これは弁解にしかなりませんですよ。こういう状態だから、完全なシビル・コントロールができないじゃないかという批判を甘んじて受けなくちゃならぬことになる。私はそういう批判は残念です。完全にあなたたちに掌握してもらいたいという立場に立って私は質問しているわけなんですけれども、そういう批判を裏づけるような結果が現われてくることはまことに心外なんですよ。あなた方は毎日こういう問題を研究しておられる方じゃありませんか。私なんか、ほんとうのしろうとです。間に合わせの勉強で間に合わせにお聞きしておるだけですが、その程度のことにすらすらお答えできないということでは権威に関しますよ。しかし、わからないものを幾ら言ってもしょうがないから、もう少し待ちましょう。とにかく、私たちしろうとが心配しておったことが的中したような気がしてしようがないわけです。今御説明がありましたのですが、完全なものであったかどうかも実は私もあなた方の裏づけのしようがないわけです、制服の報告でしょうから。その報告の中においてすら現実に食い違いが出てきておる。また、あなた方が把握できない部面がある。非常に問題ですよ。一千億からの金をかけて、莫大な血税をしぼって作った飛行機だということをお忘れにならないで下さい。上昇機能が一万メートルと一万二千メートルくらいの違いは大したことはないじゃないかという感覚で日本防衛を論じておるとするならナンセンスです。戦闘機の生命じゃありませんか。日本のような地形では縦深が浅いから一分一秒を争うのだということを絶えずあなた方は口にしておるじゃありまんせか。それならすぐにでもこの問題については制服の諸君におかしいじゃないかという質問が発せられるべきです。そういう疑問をすら持たなかったというのなら問題ですよ。ましてや、その安全性の第一である沈下速度について答えもできないというような状態では話にならないと思います。質問を移します。  次は、ヨーク調査団のことについてお伺いをしたいわけです。これは本年の三月二十六日にたしか来日したはずであります。団長はアメリカ陸軍研究開発部国際課長ロバート・ヨーク大佐。一応発表されております調査団の目的は、日米双方の兵器技術資料の交換、日本に対する技術援助の可能性の調査、日米双方の効果的な研究開発、こういうものだと言われておりますけれども、実は私どもを含めて国民の中には非常な不安を持ってこの調査団の来日を迎えておる向きがあるのであります。これはもうすでに各種の新聞等で報道されておりますから十分に御承知のことと思いますけれども、この不安はどういうところから来ているかと言いますと、一つは、日本がアジア向けのいわば兵器廠になるのじゃないか、こういうところにあります。これは朝日新聞、東京新聞その他から私抜粋したのでございますが、南ベトナムでのベトコンとのジャングル戦に手を焼いた米軍は、従来の装備を再検討することとし、このため、日本を初めアジア各国で開発中のもの、または開発の可能性のある武器の中で、その目的に適合するものを調査したい、こういう意図を持っておるのではないか、あるいは、アジア諸国では、地形的に見ても、兵隊の体格から見ても、アメリカの大型な兵器は向かないかもしれない、核ミサイル時代のアメリカが、アジア向けだけに旧来の兵器を作るのも不経済である、地理的に近く、コストが安いこの地域の唯一の工業国日本が注目されて、そのために来たのではないか、あるいは、第三に、以上のような理由から、日本で生産される兵器を買いつける、いわゆる域外調達をすれば、アメリカ兵器の弱点をカバーできる、さしずめ、第二次防衛五カ年計画で生産が予定されている小銃、機関銃、中型戦車、装甲車、対戦再ミサイル、さらに、日本が特に抜きん出ているといわれる衣服、冷凍食糧などは、文字通り東南アジア向け兵器として格好のものである、しかも、日本から調達すれば、輸送料が安く、その上に日本兵器産業の育成にもプラスとなる、まさに一石二鳥ではないかというわけだ、こういうふうな論評が各紙に加えられておりますが、こういう事実があるのかないのか。ないとすれば、ほんとうにどういう目的でヨーク調査団なるものが日本にやってきたのか、納得のいくように御説明を願いたいと思います。
  90. 久保忠雄

    ○久保政府委員 ただいまのヨーク調査団につきましては、先ほど先生がおっしゃいました、研究開発をしておりますものの技術資料の交換、技術援助、これを目的として来ております。事実その通りの内容の打ち合わせがあったわけでございます。まだ資料交換の協定その他はできておりませんけれども、資料の交換の協定を作りたいということでございます。従来も事実上いろいろもらっている面がございましたけれども、はっきりした協定等ございませんので、便宜上もらっておるというだけでございます。それをはっきりした形で資料の交換ができるようにしようというのが目的でございまして、事実そういう打ち合わせをしたわけでございます。
  91. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 こういうアジア各国向けの兵器日本で域外調達するというような話は全然ありませんでしたか。
  92. 久保忠雄

    ○久保政府委員 ヨーク大佐を初め、調査団全部技術屋でございまして、調達系統の人は一人も入っておりません。新聞にそういう記事が出ましたので、特にわれわれの方からも団長に聞いたわけでありますが、そういう目的は全然持っておらないということで、事実、話し合いの過程においてもそういうことは全然出なかったということでございます。
  93. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 大臣にお伺いします。もしかりに、こういう一般紙に報道されているような状態をかもし出した場合に、アジアにおける日本の地位というものが非常に微妙なだけに、特殊な目をもって見られるおそれがあるわけです。あるいは共産圏諸国を刺激する面もあると思います。そういう観点に立って、もしかりにこういった話し合いがアメリカから持ち出されてもやりたくないというお考えをお持ちになっておるかどうか、国務大臣としての御見解をお伺いしたいと思います。
  94. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私の立場からお答えするのはあるいは不適当かと存じます。しかし、今仮定の問題としてあげられたような問題は、確かにお説の通り方面に与える影響も甚大でございます。従いまして、こういう点につきましては、十分政府として態度をきめて参りたいと考えております。
  95. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 少なくとも、閣僚の一人としては、そういう話に応じていくことは不適当だ、特に防衛を担当している大臣として適当でないと考えておるというふうに理解してよいわけですか。
  96. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 いろいろな条件がございましょうからあれでございますが、今おあげになりましたような問題につきましては、私自身といたしましては、今とるべき措置ではないと考えております。
  97. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 最近アメリカからこういう面にわたっての訪日が非常に多いわけです。もう一つあるわけですね。これも相前後して日本を訪れておると思うのですが、三月二十八日にたしか来ておると報道されております。一行は、米海軍省兵器局計画部次長ですか、FWSロック博士、同じく航空水陸部長GEデズモンド、同じく航空機機体部次長RFスピーカー、こういうふうな人たちが日本に訪れたという報道がなされております。これは日米相互武器開発協定なるものを締結するという目的を持ってそのために下調べに来たのではないか、こういうふうに報道されております。これは昨年から新聞の記事面では現われておったわけです。昨年の十二月十一日の東京新聞によりますと、もう相当話し合いが進んで、マーグとの間で検討が加えられて、ことしの、四月ころには正式に協定調印の段階までいくんではないかというような報道がなされておりました。私はそれ以来注目をしておったのでございますが、そういうような早いスピードでは進んできておらないようでありますけれども、少なくともそれを裏づける一つの事例として、今申し上げたような一行の来日という形が現われてきておるわけです。この方は一体何しに来ておるわけですか。私が今申し上げておるような協定の締結、そういうものに関連はないわけですか。
  98. 久保忠雄

    ○久保政府委員 その点も全然関係ございません。それも純然たる技術屋でございまして、現在新明和工業で研究開発をやっております飛行艇につきまして、技術的なアドバイスをするという形で参っておもるのでございます。従来もP2Vの生産等の場合もそういった技術屋が来てアドバイスをしてもらうというような例があったわけでございまして、それと全く同じものでございます。
  99. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アドバイスしに来たとおっしゃいますけれども、この新明和工業で研究開発をやっております飛行艇というのは、日本独特の非常にすぐれた技術を発揮しておるその産物だというふうに言われておるのですが、アドバイスしに来たのではなくて、向こうの方が参考のために見に来たということじゃないですか。逆じゃないのですか。
  100. 久保忠雄

    ○久保政府委員 今おっしゃいましたように、確かに日本の飛行艇の技術はすぐれているわけでございますが、アメリカでも、今まで開発したものとしてはっきりしたものはございませんけれども、その方の専門家もおりますので、そういう面の専門的な意見を聞くということでございます。
  101. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その新明和工業で研究開発をしております飛行艇はPXのSというふうに普通言われておるわけですか。
  102. 久保忠雄

    ○久保政府委員 そういう名前ではございませんで、現在やっておりますのは、アメリカからUFの飛行艇をもらいまして、それを改造して一つの試作機を作ってみるということでございます。
  103. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この点について、いろいろとこれまた情報が流れておるわけでございますが、現在生産いたしておりますP2V7、これは本年度で生産は打ち切る予定でございますか。
  104. 久保忠雄

    ○久保政府委員 四十二機のあとにさらに六機追加して、先般予算でお願いいたしまして、御承認をいただいております。
  105. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それで、四十二機の計画だったのが、六機本年度追加されたわけです。計四十八機になるわけです。もう墜落したやつもあるでしょうが、そのあとは追加生産をおやりになるおつもりですかと、こう聞いておる。
  106. 久保忠雄

    ○久保政府委員 その点は現在まだ何もきめておりません。
  107. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 きめてないというと、P2V7で当分大丈夫、性能的に見てもより進んだ対潜哨戒機あるいは対潜飛行艇、そういうものを生産する必要はない、あるいは装備する必要はないというふうに防衛庁ではお考えになっておるわけですか。
  108. 海原治

    海原政府委員 二次計画に関連いたしますので、私からお答えさせていただきますが、二次計画の中では、このP2V7の六機生産のあとは特別に予定したものはございません。ただ、現在、今お話のありましたようなUF1というものにつきましての飛行艇としての研究開発の過程は進んでおります。これは一応試作まで持っていくということで計画としては考えております。試作いたしましたものが非常にいいものであれば、これは防衛庁としても採用する可能性はございます。しかし、そのことは、おそらくは、第二次計画の進行します後年度、すなわち今から三年後くらいにおいて検討される問題ではないかと事務的には考えております。もう一度申し上げますと、二次計画の中には、新しいそういうものを製作することは一応は考えておりません。
  109. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 一応は考えておりませんというけれども、現に営利会社であり軍需工場であるところの新明和工業が研究開発をしておるというこの事実はあるわけでしょう。そうすると、防衛庁で採用してくれるかどうかもわからない、海のものとも山のものともわからないけれども、とにかくやってみようという、そういう冒険心をもって新明和はやっておるのですか。
  110. 海原治

    海原政府委員 新明和がどういう考えでこれの開発をやっておりますか、将来のことについてお答えをする資格はございませんが、ただ、研究開発をする、これを試作するということは、直ちにこの生産に結びつくものではないというふうに私ども考えております。いろいろな会社でいろいろな企業の創意工夫をこらして研究開発をしておられますが、これらがすべて防衛庁装備として取り入れられることは、事実問題として不可能でございます。従いまして、具体的なUF1を研究開発いたしまして、それに基づいて試作までいくということで計画の面では打ち切っております。その範囲内において所要費用が煩われるものと私ども考えております。しかし、先ほど申しましたように、このものが非常に優秀なものであり、かつ将来の自衛隊装備として必要なものであるならば、それを装備するということは可能性としてはございます。現在においてはそれを装備するという前提でものが進んでおるものではございませんことをはっきりと申し上げておきます。
  111. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 なるべく含みのあるような、あとに含みを残したような答弁をしようというそのお気持、その裏から私どもがうかがい知ることは、大体話し合いしているんじゃないかということなんです。それでなかったら、こういう一行がアメリカの海軍省から来ておることから見ても、アメリカの海軍省と日本の海幕と新明和あたりが、ちゃんともう話をつけて、あとからあなたたちがまた乗せられるということになるのじゃないですか。そういう懸念は多分にありますよ。それでもかまわぬというなら何をか言わんやですが。
  112. 海原治

    海原政府委員 私のお答えから先生がそのような懸念を持たれますことは、まことに残念でございますけれども、私どもはそういうふうに事が運ぶものとは決して考えておりません。私も二次計画を一応事務的に取りまとめました立場で、五年間にどの程度のものがどの程度の金で作られるかということは十分考えておるわけです。現在の状態におきましては、この五カ年間においてこの飛行艇というものが生産されるということはまずないと申し上げたいのでございますが、将来のことでございますから、先ほどのような御答弁を申し上げた次第でございます。私としましては、二次計画を事務的に取りまとめました責任者として、こういうものがこの計画期間中に作られるものとは考えておりません。しかし、今後情勢の変化によりましてそういうものが取り上げられる可能性は十分ございます。と申しますことは、一昨日以来御説明しております二次計画につきましても、毎年検討を加えていくんだ、新しいものを取り入れていくんだということは、これは当然に防衛力の整備を考えます者の立場として必要なことでございます。絶対に作らないとは申し上げられない。しかし、計画を作ったときにはそういうことでありましたということを申し上げておるのでございまして、決して海幕と業者とがグルになってそれに内局が乗せられるというようなことは絶対にないと私は信じております。
  113. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しかし、現実に過去において例があるのですからね。F86Fの生産が終わった、そのあとの新三菱重工の設備を遊ばしちゃいかぬというので、F104Jの発注が行なわれておる。これはたしか先日防衛庁長官国内軍事産業の育成というような形で発言をされておったと思うのですが、過去においてもやっているのですよ。F86Fの生産が終わった、さあこれで次の仕事がなければ会社は大へんだ、何か発注しなくちゃならぬ、そういう形でF104Jが出てきているのじゃありませんか。今度も現実にP2V7の生産はいずれ終わるでしょう。あなた方としても、そんなにいつまでも古い型で満足しているはずはないでしょう。そうしますと、会社としても当然次のものを何か頭に置いて研究開発をしておるわけなんです。そんなことをお前たちやったって知らねえよ、おれはP2V7を生産してもらったらあとはもう知らねえよ、こういう立場をおとりになるつもりですか、大臣
  114. 海原治

    海原政府委員 過去においてその例があるじゃないかということで、104の例を御引用になりましたが、これは多少事実と違っておりますので、私から補足御説明申し上げたいと思いますのは、先生御存じのような第一次の防衛力整備計画におきまして、86Fのあとにおきましては、FXという形でございますけれども、センチュリー・タイプと通常称せられます新しいタイプの戦闘機の生産整備というものを考えておりました。その当寺から、こういうものは持つのだということは一応政府としては方針決定いたしました。具体的にFXが何になるかということで、御存じのような経過がございましたが、104が生まれてきたわけでございまして、決して先ほどお述べになりましたような例としてのものではないというふうに御了承願いたいように私としては考える次第でございます。
  115. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 御了承いたしませんよ。F86Fは新三菱重工が作っておった。だから、新三菱重工が作るのに工合がいいという形でグラマンが出てきたじゃありませんか、F111Fが。それがひっくり返されてロッキード104になった。本来ならば、104のロッキード会社という会社は川崎航空と緊密な連絡があったし、このロッキードの104にきまれば川崎が主契約社になるだろうと思われておったが、これをやめて、やはり新三菱重工にやらしているじゃありませんか。そのことだけが条件であったような印象すら受けているのですよ。何はともあれ、新三菱に仕事をさせれば、ロッキードだろうがグラマンだろうが大して変わりはないのだ、そういう感覚でものを見ておった人がおらないとは言えない。あなたたちはもっとまじめに考えただろが。だから、私は、御了承願いますと言ったって、御了承できませんよ。私が言っていることは事実です。新明和だって自信満々でおそらくやっているでしょう。あなただって含みを残した答弁をしておられる。もっと率直にお答えになっていいのじゃないかと思うのです。絶対にP2V7のあとUF1を新明和で作らせるようなことはないという断言はできないでしょう。それが純然たる国産という形をとるか、あるいはロッキード方式をとるか、あるいはまた、今指摘いたしておりますようなこの相互武器開発協定というものに基づいてもっとアメリカに拘束された形で生産をするのか、そういう問題はまだ結論が出ておらないかもしれないけれども、大体これを作ろうということは腹の中でもうあるのじゃないですか。どうです、大臣、あなたは浮かされて知りませんか。
  116. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど来防衛局長がお答えいたしたようなことでございまして、これを直ちに第二次計画の中に取り入れるというものではございません。ただ、私ども防衛に携わっております者として、現在の兵器のうち消耗しあるいはその性能が劣って参りましたものについて、さらによりよき性能のものを作るということにつきましては、常に研究をしていかなければならないわけですし、また、適当なものは装備をすることについて予算その他で御審議をいただかなければならないわけでございます。何か、私が国内防衛生産を助長していきたいと申しましたことに関係して、会社の都合だけを考え装備をするのではないかというような御印象を持たれたようでございますが、私どもはどこまでもわが国の防衛のために必要なものを最も適当なところで生産をするということでございまして、会社の設備その他ということを考慮に入れてやるわけではございません。
  117. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それは大臣説明で、私が聞いているのは、P2V7のあとに、今新明和で開発しているUF1というものを防衛庁が発注して作らせるというようなことはないのかということです。それは一応考えている、しかしどういう形の生産方式をとるかということを今検討しているのだということなのかどうかということをお聞きしているのです。
  118. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在のUFにつきましては、どこまでもこれは研究開発をして試作機を作るという段階まででございます。P2V7の後にいかなるものを採用するかということにつきましては、十分情勢を見、またその飛行機の性能等を検討をいたしてやるわけでございます。従いまして、現在試作をしようとしているものが非常に優秀な性能で、むしろP2V7よりもよりよき対潜能力を持つようなものでありますならば、採用することも将来に向かってはあり得るかと思います。それはどこまでも将来の問題でありまして、第二次防衛計画の中でそのようなことはおそらくないであろうということを申し上げているわけでございます。
  119. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 会社の立場考えてはやらぬとしきりに強弁されますけれども、それじゃ、当初のP2V7の生産目標四十二機を上回って追加生産をされた理由は何でしょうか。P2V7は一体防衛上何機あれば足りるのですか。
  120. 海原治

    海原政府委員 これは、P2V7の生産に入ります場合に、今先生からお話がありましたように、一体どのくらいの機数があれば目的を達するかということを検討したわけであります。そのときの数字がございますが、当時、いろいろ検討の結果、四十二機でいいということで、四十二機の生産に入った。ところが、その四十二機の生産のほぼ完了の見通しが立つ時期になりまして、アメリカではこのP2V7の生産をやらない、従って、もしこの種の飛行機が将来海上自衛隊において必要となれば、この時期でないと所要の部品が得られないという情報を実は入手できたわけです。従いまして、私どもとしましては、この種の対潜哨戒機はこういう範疇では世界一流のものでございますので、もう一度どの程度の保有数が必要であろうかということを検討いたしました結果、さらに六機程度のものを持ちたい、合計いたしまして四十八機、五十機前後のものを持ちたい、現在の海上自衛隊の対潜のための諸施策、訓練の進度から考えまして、わが国周辺の対潜哨戒のためのこの種の飛行機としてはその程度の数でいくという結論を得ましたので、予算で新たに六機の生産をお願いした次第でございます。
  121. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そういうきれいごとでは、だれだって納得できませんですよ。初め検討したときは四十二機が妥当だと思った、もう一回練り直してみたら四十八機が妥当だと思った、そうすると、もう一回練り直すのではないですか。次の新しい機種がきまるまではこれを続けていくのではないですか。これで生産がとまって新明和が困ろうと何しようとかまわないのだ、われわれは防衛上ということから討議した結果これ以上は必要はない、そういうきぜんたる態度はないじゃありませんか。さらに追加する。これは結局次の機種がきまるまでの穴埋めでそうやっていくのではありませんか。F86Fのときもやりましたでしょう。どうです。
  122. 海原治

    海原政府委員 先ほどからお答えしておりますことと同じ趣旨でございますが、特にこのP2V7の六機ということにつきましては、ただいまも申し上げましたように、アメリカにおける関連資材、特に発動機の生産とも関連がございます。従いまして、向こうでは、——向こうと申しますのは米海軍でございますが、米海軍では、もうP2V7の生産をやめまして、今後は、P3Vという、これより大きな、いわゆるコンステレーション・タイプの生産に入っております。従いまして、この六機生産のあとでかりに日本でまたさらに追加生産をするということになりますと非常にその価格も高くなりますし、かつ、その時点におきましては、先ほどから申しておりますように、一応現在におきましてはこの種の飛行機はこの程度でいいという私どもとしての結論がございます。従いまして、防衛局長としての立場での判断を申し上げますと、私はP2V7をこれ以上作っていただくような気持はございません。しかし、私の気持が直ちに防衛庁の今後の方針をきめるのではございません。先ほどから申しておりますように、海上自衛隊の将来の対潜哨戒の任務ということを考えますと、この種の飛行機であるとか、あるいはヘリコプターであるとか、いろいろな手段が今後開発されてくることは皆さん御存じ通りだと思います。そういうものを今後どういうふうに均衡をとって整備していくかということは今後の問題でございまして、現在ただいまにおいて、もう絶対に生産をしないということを言えとおっしゃいましても、これは将来のことで私が申し上げるわけにも参りませんし、ただ、私の立場での意見といたしましては、P2V7は一応四十八機で終えるつもりでおります。
  123. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカが生産をやめたということ自体が事実を物語っているわけですよ。もう古くなったということなんです。あなたは優秀だとおっしゃいますけれども、少なくともアメリカにおいてはもうこういう兵器は間に合わなくなった。次の新しいよりよきものの生産段階に入ったということをおっしゃっているわけです。そうしますと、日本においてももっといいものがほしいということになっていくのは、その面から言ったって必然ですよ。そこで、これは飛行艇とも普通言われておりますけれども、どういうものかわかりませんが、とにかく、対潜哨戒機にかわる次のものを生産する場合に、今問題にいたしております日米相互武器開発協定というようなものを締結して、このワクの中で生産するというようなことは考えておらないのですか。また、その可能性等について、今度のこの訪日視察団ですか調査団ですか、この一行と何らかの話し合いをしたというようなことはないわけですか。
  124. 久保忠雄

    ○久保政府委員 ただいまお話のございましたMWDPにつきましては、今われわれのところで検討中でございまして、防衛庁としての方針はまだ何もきまっておりません。ただ、私のところの所管でございますので、いろいろ諸外国の例、特にNATO諸国の例その他を調査をしておるところでございます。先般新明和の方に参りましたその調査団につきましても、そのMWDPの問題につきましては何も話がなかったというふうに聞いております。
  125. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 このMWDPですが、非常に過酷な義務規定を持っておるというふうに私ども聞いているわけです。たとえば、絶対にこれは秘密保護法が必要で、日本でこれを受け入れようとしても困難になっておるのは秘密保護法がないからだというふうなことすら言われている。それほど条件の第一に完全な秘密の保護という保証がなければいかぬということが言われておる。それから、第二に、かりに日本側がこの協定に基づいて何らかの装備の生産をやるとすれば、米国に対して六カ月ごとに武器開発計画に基づく研究の開発状態に関する情報を報告しなければならない、そういう報告義務も負わされる。次に、同計画を締結した結果開発された装備品の生産販売などについては経済的利益を求めてはならない。第四に、この計画のもとで実施される作業から生ずるかもしれないいかなる苦情についてもアメリカ責任を負わない。こういったような過酷な条件があるというふうに聞いておりますが、この点はいかがですか。検討されておるというならわかると思うのですが……。
  126. 久保忠雄

    ○久保政府委員 ただいまおっしゃいました点はあるいは新聞に出ておったことだと思いますが、これはNATO諸国がパンフレットを作っておりまして、その中にそういうことを書いております。NATO諸国はそういう形で協定を結んでおるわけでございますが、先ほど御指摘のありました秘密保護法との関係日本のいろいろな事情もございますので、そういう点を目下検討しておるわけでございます。
  127. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカNATO諸国との間の条件よりも有利な条件が日本において確保されるというようなことは、大体常識的に考えられないのではないかと思う。こういう協定に基づいて何らかの武器の開発をやるというようなことになると、それこそますます日本の自主性というものは失われていくという印象を私どもは受けておるわけです。しかし、今申し上げました程度で私は質問を終わりたいと思います。  次に、われわれが一番懸念をいたしております、この文民優位といいますか、政治優位といいますか、シビル・コントロールと普通言われておりますこの原則について、いろいろ懸念が出始めておる。前からでございますけれども、最近特に露骨に批判をする向きが出ておるようでありますので、少しお伺いをしてみたいと思います。防衛庁の中で何かこのシビル・コントロールを批判した文書が流れたというふうに報道されておりますが、そういう事実はございますか。
  128. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そういう事実はございません。   〔草野委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 もう一つ防衛大学校で大学生を対象としてアンケートをとった場合に、自衛隊の悪い点として、給料の安いこと、転勤の多いこと、文官優位の絶対が指摘されておるというふうに報道されておりますが、この事実はございますか。
  130. 小幡久男

    ○小幡政府委員 アンケートの事実は、まだ聞いておりません。
  131. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アンケートの事実は聞いてないとおっしゃいますけれども、私が読んだこの文書の中にそういうことが書いてあるわけです。防衛大学校の中でかりにそういう意見が多数出てきたということになると、これは大へんな問題だと思うのです。積極的にそういうアンケートをとったのか、そういう結果が出てきておるのかということをお調べになる意思はございませんか。
  132. 小幡久男

    ○小幡政府委員 御指摘もありまして、ぜひ調べたいと思っております。
  133. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 とにかく、私は、このシビル・コントロールの原則が次第にくずれていきつつあるのではないかという感じを率直に受けます。いろいろと批判が出ておりますが、そういう批判を今のうちに克服しなければ、ほんとうにどうにもならないような事態を招くのではないかという感じを強く持っております。  そこで、いろいろと言われております批判点を取り上げてみたいと思うのですが、まず第一は、この内局機構の非能率ということが指摘されておるわけです。私が持っておりますこの文書では、非常に極端な例があげられておるわけでございますが、一つは、さっき指摘しましたナイキ所属問題です。これなどは、昭和三十四年の夏に、たしかあれは北海道であったと思いますが、赤城さんが記者会見の席上で公表したのが表に出た始まりだと思うのですけれども、あれから三年もたっておるのにいまだにきまらないというのは、結局、内局あるいはその長たる長官の優柔不断、責任回避にあるというきめつけをしている向きが非常にあるわけなんです。また、その極端な例として、こういうことが述べられております。「ナワ張りと派閥、年次への気兼ねなど奇妙な官僚の習慣が入りまじって、最近の庁議などは会して議せず、議して決せず、珍しく庁議の論議が活発だったのは隊員の徽章をどう決めるかなどという問題だったという。装備品の調達などということになると各幕で起案した書類が関係係官の手を経て長官の手元にとどくまで、ものによってはハンコ数百、数カ月もかかるものがあるという。軍の独断専行をチェックする仕組みとしては十二分以上ではあろうが、常在戦場といった制服自衛官たちにとってはトテモまさかの時には間に合わぬ、角をタめて牛を殺すものだといった批判も出るわけだ。」、こういう極端な引用がなされておりますが、私はここまではなかろうと思いますけれども、こういう事務の渋滞を来たしておる向きがあるのですか。
  134. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 このシビル・コントロールを十分に発揮するためには、内局側におきましても十分この趣旨を体し、そうして、さらに事務能率を、また専門的な知識を勉強するという内局側の反省も必要だと思います。そういう点も十分注意しつつ、しかも常に文民優位の原則を貫いていくように心がけて参りたいと思うわけでありまして、今おあげになりましたような事務の渋滞はないものと私は信じますが、さらに十分に督励をいたしたいと思います。
  135. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ほんとうにこんな大げさなことはないにしても、こういううわさが流れるような事務の渋滞、非能率というものがあるとするならば、これは一日も早く改めていただかなければいけないと思います。  それから、批判の第二にあげられておるのが、内局の人たちが「日進月歩の兵器、戦術に追いつけずチェックし切れなくなってきている」という指摘であります。これは先ほどF104Jの性能の問題で私もちょっと申し上げたわけですが、これも全然ないとは言えないのじゃないかと思う。何人かの少数の人たちが真剣に取り組んでおる事実は認めますけれども、そういう人たちだけが一生懸命がんばってみたところで、防衛庁内局全体の雰囲気として、こういうものに取り組んでいってほんとうにマスターしようという気魂がなければ、かりに少数の専門家がおったって間に合いません。私はこれはあながち批判のための批判とばかりは言えないのじゃないかと思う。特にあとの問題と関連してくるわけですけれども、いつも私申し上げるように、防衛庁で一生を貫こうというお役人が少ない。このことは仕組みに問題がある。これは池田総理大臣にもお尋ねをしたいと思っておるほどでありますが、やはり、防衛庁で働く以上、もう少し真剣に研究をし勉強をしていく必要があるような感じを私自身も持っております。  この問題に関連して一つ重要な点が指摘されるわけですが、新しい安保条約のもとにおいて、これは日米安保協議委員会の下部機構になるのかどうか、私ちょっと忘れましたが、日米軍事専門委員会というものを設置することになっておるはずです。藤枝さんは就任早々札幌で談話を発表いたしております。どうも歴代の防衛庁長官が第一声は札幌、北海道でやるような慣例になっておるようですが、それも実施できればまだいいですよ。どうも不発が多いようですね。藤枝さんの談話も、ほとんど全部、令の全然かからぬやつ以外は不発じゃないですか。当時どういう談話をされたかは覚えておられると思いますけれども、その中で、今私が指摘いたしました日米軍事専門委員会の設置ということをあなたは訴えておられます。いまだにできません。そのできない原因が、率直に申し上げて、長官あるいは文民と言った方がいいのですか、そういういわば軍事のしろうとが相手で話し合ったのじゃもうどうにもならぬというような気持から、アメリカの方できらって作らないんだというような指摘がされておるのですけれども、これはどうですか。一体なぜできないのですか。大臣、就任早々作るのだとおっしゃりながら、どうにもならぬというのは、一体どこに原因があるのですか。
  136. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御承知のように、安全保障会議日本側としては外務大臣並びに防衛庁長官でございます。そのいわば下部機構と申しますか、常時連絡一つの機構として軍事専門委員会というものを機構的に作る方が望ましいのではないかという考え方を持っておるわけでございます。現在でも米側とは随時連絡をいたしておりますが、さらにそれを機構的にする方が妥当ではないかという考え方を持っております。しかしながら、これは単に防衛庁だけではございませんで、外務省と十分な打ち合わせの必要がございます。外務大臣とも随時にわたってこの打ち合わせをしつつ、適当なときに安全保障会議を持ち、そうしてこうした問題についても検討をして参りたいと考えておるわけでございます。
  137. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 安保協議委員会のお話をされましたけれども、これも、新安保が効力を発生してから二年になりますが、ほとんど開かれておらないじゃありませんか。何回開かれましたか。
  138. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 新安保になりまして、まだ開いたのは一回だけでございます。もちろん、たとえば昨年の秋にはああいう日米の経済関係委員会等も持たれたわけでございまして、そのような関係で、適当なタイミングを考えて外務大臣と相談をいたしておるわけでございます。
  139. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 二年間にたった一回、どういう話をしたか知らぬが、一回では顔合わせくらいでしょう。しかも、新安保条約を国会で審議いたしまた際にはそれを金科玉条のように振り回しておったのですよ。アメリカが突然の行動を起こすというようなことはない、第四条に基づいて安保協議委員会というものを設けられ、随時協議することにもなっておるから、情報交換は絶えず行なわれるのだ、だから全く唐突な感を受けるようなことはありませんという説明すら行なわれておりましたが、二年の間に開かれたのはたった一回。その間に、世界は、極東は全く平穏そのものであったわけですか。何ら緊迫した情勢はないと大臣考えになりますか。それこそ、思い出しただけでも、ラオスにおける紛争が非常に問題であったこともありますし、韓国のクーデターもありましたし、最近ではベトナムが非常に急迫しております。極東情勢がどうあろうと、安保協議委員会一つ開かれないつんぼさじき、それでも日本側から一つ開いてくれという要請をしたこともない。これは話にならないじゃありませんか。「締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」、この点については、当時の加藤局長の説明によると、これは非常に狭義のもので、ロジスティックな面まで協議するのだというお話があった。どのように緊迫した状態があろうと、安保委員会一つ開かれないというところがやはり問題なんです。ましてや、その下に作られる軍事専門委員会ができようはずがない。幾ら機構ばかり作ったって、やらないのだから、今あるものすら十分に機能が発揮されていない。ましてや、その下にもう一つ余分なものを作る必要はない、こういうことになるじゃありませんか。こういうところから、デマかどうか知らぬが、国防とか防衛とか軍事とかいう問題を文民を相手にして幾ら話したって何にもならないのだとアメリカが思っているからやらないのだよ、こういう中傷も出てくるわけです。私は、もっと積極的に姿勢を正して、どんどん情勢を把握しておく必要があるんじゃないかと思うのです。沖縄が非常にあわただしくなってきておる。これはベトナムの紛争が原因です。そういうあわただしい状態の中で、閣僚の皆さんが、あれはよそのことじゃ、そういう気持で安閑としておっては仕事は勤まらないと私は思います。影響を受けているところはすぐ目と鼻の先です。もう少し極東情勢について的確な把握をする、日本政府独自でもやっておられるでしょうが、より切実に当事者であるアメリカの情報をキャッチしておこう、そしてあらゆる体制を整えておこうという気魄、そういうものがないところに、今申し上げたような批判も出てくると私は思う。大臣、どうお考えになりますか。
  140. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 なるほど、安全保障協議会という形では一回だけでございます。しかしながら、世界の情勢あるいは極東の情勢の時々刻々につきましては、私が在日米軍司令官あるいは米国大使等とも常に連絡をとっておるわけであります。また、軍事的な面につきましては、幕僚幹部と先方の首脳部との会合も持っておるわけでございまして、もちろん安全保障協議会というものも今後開いて参りたいと思いますが、いたずらに対岸の火災視して何もしていないのではなく、常にそうした努力を払っておることだけは御理解をいただきたいと思います。
  141. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これまた、御理解を願いますといったって、安保協議会の構成メンバーは防衛庁長官だけじゃないのですよ。あなた一人が大使館なり米軍の方と接触を保って情報交換をやっているからいいというなら、こんな大げさなものは要らないのです。あんなにぎょうぎょうしい説明をつけ加えて条約の中に織り込んでいく心要もないと言ってもいいかと思う。実際には、それじゃ、いざ米軍が出動する、あるいは核装備をする、重要な装備の変更をするというようなときの、いわゆる事前協議の対象になる項目を論議するだけ、通告を受けるだけの機関ということになるじゃありませんか。そういうような説明ではなかったはずです。やはり、こちらもそろい、向こうからもそろって来てもらって情報交換をすることが、あなた方の立場で言う日米防衛体制を確立する上において必要だとお考えになってこの条約はできたわけでしょう。おれがやっているんだから大丈夫だ、まかしておけと言われるのかもしれないが、このごろ、まかしておいたらあぶないですよ。池田さんに経済をまかしておいてもあぶないように。そういうことでは御説明になりません。もし、そういうふうに、私が接触を保ってよく把握しておるとおっしゃるのならば、実はお伺いしたいところなんです。第二次防衛整備計画の前文にも、わが国内外の諸情勢の推移を見通し、こう書いてありますから、一体どういう見通しを持ってこの二次防をお作りになったのかというところも、その博学な見識のあるところをお聞きしたいと思うのでございますけれども、時間の関係上後日にお伺いすることにしますが、この安保協議会というものは、私だけが接触を持ってきておるからいいというようなものではないはずです。やはりこういうところにもこの防衛問題に対する池田内閣の姿勢というものが現われてくる。また、そういうところから制服の批判も出てくる。私はその制服の批判の方を心配して言っておるわけです。どうせあるものだから、この原則をもう少しちゃんとしてもらいたい、この原則だけはくずしてもらいたくないと思えばこそ、指摘されておる点で事実に符合する面は改めてもらいたいと思うのです。そういう積極的な姿勢でお答えを願いたいと思うのです。  ほかにも指摘されておる面はたくさんございます。たとえば、国防会議運用の問題につきましても、P2Vとかロッキードとか、そういう装備決定とかいう問題だけが論議されて、肝心かなめのものが国防会議で真剣に論議が行なわれておらぬのじゃないかというような批判も出ております。また、防衛庁長官がくるくるかわって、私もびっくりしたのですが、ずいぶんかわっておる。覚えておりますか、警察予備隊からこのかた、あなたは何人目か。十二年の間に十四人。防衛庁の中にも覚えてない人がおるのじゃないかと思う。よくかわっておるということはわかっても、何年の間に何人かわったということは忘れておるのではないかと思われるくらいに激しい交代が行なわれて、ちょっとわかったと思ったらさようなら、こういうことを繰り返しておる。あるいは、先ほど申し上げたように、出向官僚によって、本省に帰る日の一日も早からんことを願いつつ仕事をされておるということも指摘されておる。やはり、こういうことを一つ一つ改めていかなければ、私はこれを読んでなるほどなと思う面が多い。ずいぶん極端な表現も使われておりますけれどもね。安閑としておりますと、この間私は冗談のように言いましたが、ほんとうに制服の諸君からどういう目にあわされるかわからない。これは冗談に書いてありましたよ、クーデターが起きたときに一番最初にやられるのは内局の人だと。一つ用心して下さいよ。  きょうは、午前中の質問はこれで終わります。
  142. 中島茂喜

    中島委員長 本会議散会後直ちに再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時四十七分休憩      ————◇—————    午後三時十五分開議
  143. 中島茂喜

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑を許します。石橋政嗣君
  144. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 非常に時間を制約されておりますので、私の方もなるべく要点だけ簡潔に質問をいたしたいと思います。  質問の第一は、この間片山先生からも御質問がございましたが、憲法と自衛力との関係であります。今さら言うまでもなく、歴代内閣は憲法九条の拡大解釈を続けて参っておるわけでございますが、今、池田内閣の手においても、またもや一そうの九条の解釈の拡大が行なわれておる印象を受けるものであります。その一つの例が昨年国防会議において決定を見ました第二次防衛力整備計画でありますが、この前文において、「わが国内外の諸情勢の推移を見通し、わが国に対し起り得べき脅威に対処して、有効な防衛力の計画的、かつ円滑な整備を図るため、」云々と書いてあるのでありますが、従来の第一次防衛三カ年計画におきましては、「国力、国情に応じた必要最小限度の自衛力」という表現を使っておったわけであります。これが、今朗読いたしましたように、「わが国に対し起り得べき脅威に対処して、有効な防衛力」というような表現に変わっております。この点非常に微妙な変化が私は読み取れるのであります。もちろん、そのあとに、「国防の基本方針に則り」という断わりはついておりますけれども、実質的には、二次防達成後における日本自衛隊の力というものは、この基本方針を乗り越えたものになるのではないか、実質的に基本方針を変更しておるのではないかという印象を私としては受けております。現に池田内閣は核兵器といえどもそれが自衛のためのものであるならば保有することは憲法の容認するところであるという解釈を下しておるのでありますが、これと関連いたしまして、申し上げたように、一そう憲法九条が拡大解釈をされておる、そういうふうに私たちは見ております。現在ミサイル時代に入ってきておるわけですが、ミサイル時代にミサイルを持つのは当然じゃないか、これがまたさらに発展して、当分はナイキ・アジャックスでがまんするけれども、いずれはナイキ・ハーキュリーズがほしいということににもなってくるようであります。また、ミサイルが飛んでくる可能性があるのだからアンチ・ミサイル・ミサイルも装備するのが当然だというふうに逐次拡大していくことは明らかなのでございますが、この点で私は特にここで確認をしておきたいと思うのです。というのは、憲法論としては自衛のための核兵器を持つことはできるのだ、しかし政策としてそういうことは考えておらないのだという池田内閣の憲法解釈、これは非常に不安定なものです。政策はいつでも変えられるわけです。現に池田さんの総裁をしておられる自由民主党の中に安全保障に関する調査会というものができて検討を始めようとしておるではありませんか。また、週刊朝日の四月二十七日号に記者と藤枝長官との問答が出ておりますが、その中でも、「第二次防衛計画の初めに核兵器は持ち込まないが、その運搬手段は保有するという考え方がありましたね。」、こういう質問がありました際に、「以前論議に出たことがありますが、今の段階ではありません。」と答えられて、防衛庁の内部において論議がなされておるということを認めております。自民党の中にも、現在、これは二月二十三日の自民党総務会の決定だと私は受けとっておりますが、政務調査会の中に安全保障に関する調査会なるものを設けて、現実にこの検討を始めようとしておる。新聞の伝えるところによりますと、「この調査会で検討の対象となる問題は、つぎのようなものとみられる。」という中に明らかに書いてある。ちょっと読んでみますと、「憲法第九条の解釈の統一——自衛隊の実体は拡大発展をたどっており、これに対応した憲法解釈をとる必要があるかどうかを検討する。」、「核装備問題——世界的な核戦略体制のもとにあるので、将来の自衛隊の核装備、在日米軍の核兵器持込み問題をどう考えるか。」、こういうことも自民党の党内ですでに論議が始まっておる。下地は十分であります。政策はいつでも変えられるという観点から言って、絶対に政策的には核装備はしないと言うならば、こういう不必要な論議をなぜ総理大臣責任を持ってとどめるという措置を講ぜられないのか、絶対にやらせないという意思を持つか、それからまず御質問したいと思います。
  145. 池田勇人

    ○池田国務大臣 たびたび申し上げております通り、われわれは核兵器は持たない。また、原子力基本法におきましても、核は平和利用にのみ使うのだとはっきり法律にもきまっておるのであります。私はその基本方針はくずさない考えでございます。
  146. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しかし、総理は自民党の総裁であります。その自民党の中においてそういう論議がなされることはかまわぬというお考えですか。
  147. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、いろいろな研究をし論議をするということを差しとめるという考えはございません。しかし、党の方針といたしましては、ここで言明しておる通り、核兵器は持たないということをはっきり申し上げております。
  148. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 自民党の党内において、今私が申し上げましたように、「世界的な核戦略体制のもとにあるので、将来の自衛隊の核装備、在日米軍の核兵器持込み問題をどう考えるか。」、こういう論議が現実に行なわれておるということ、先ほど申し上げたような防衛庁内部にもそういう意向があるということ、その点から必然的に次の段階においては自衛隊の核装備の問題も出てくると私は断定したいと思います。  次いで、憲法第九条の改正の問題でありますが、さきの片山質問において、憲法改正については憲法調査会の報告を待つんだ、調査会の調査の途中で改正の是非を軽々しく言うべき筋合いではないと総理大臣は言っておられますが、それじゃ首尾一貫していただきたいと思う。現在、農地被買収者問題調査会というものが結論も出さないのに、自民党の両院議員総会において、総理は、補償についての予算措置、立法措置をとるということを確約して、一応その場をおさめたということが報道されておりますが、これは別問題だというお考えですか。農地被買収者問題調査会の報告は待たなくともかまわぬ、これは審議の途中であろうと、結論を、自分の考えをはっきり補償という方向で出してもかまわぬ、憲法調査会の方は工合が悪い、こういうことですか。
  149. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法の問題と農地補償の問題と一緒にお取り扱いになるのはいかがかと思います。しこうしてまた、私が議員総会において申し上げましたのも、農地被買収者の問題につきましては、早晩と申しますか、もう一、二カ月のうちに出てくることはさまっておるのであります。従いまして、その答申も考え、党で研究された事項も考慮して、三十八年度でということにいたしたのであります。従いまして、憲法問題のように非常に重大な根本問題について、しかも国民投票に待たなければならぬ憲法九十六条の規定等から申しまして、私が今ここでどうだこうだと言うことは、私は言い得ないし、また、言うべきでないと思います。
  150. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 憲法調査会と農地被買収者問題調査会の軽重を言っておられますけれども、本質的にそう変わりませんですよ。なお、憲法というような重大な問題について総理が自分の考えというものを持たないということの方がおかしゅうございませんか。  それじゃ、もう一つ、特にこの九条の改正で、片山さんの質問に対して、これまた憲法調査会の結論を待つんだというふうに一昨日私お伺いしたのですが、この点、その通りですか。
  151. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法問題全部でございます。
  152. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと、総理はここ一年の間に考えが変わったわけですか。昨年の四月十三日に、本委員会において池田総理は、憲法の九条は絶対に将来にわたって改正する必要はないとおっしゃっておりますが、後退したのですか。
  153. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私の記憶で、憲法第九条を絶対に改正しないという答弁はしていないと思いますが、私は、常に、こういう憲法問題につきましては、十分検討した上でないと結論が出ない、こう言っておるはずであります。
  154. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 答弁した覚えがないとおっしゃいますから、速記録をお読みいたします。三十六年四月十三日、本委員会ですよ。受田委員との質疑応答の中です。受田さんといろいろやりとりしておられますが、最後の段階で、「日本の置かれている立場から、憲法の第九条の改正は将来においても必要としないというお考えをお持ちになるかどうか。」という確認をしたのに対して、総理は、「私はそう考えております。」と言っておるじゃないですか。どうなんですか。これは、言った覚えがないと言ったって、速記にとどまっておるじゃありませんか。
  155. 池田勇人

    ○池田国務大臣 前後をずっとお読み下さればわかると思いますが、もし、今あなたの言ったように、憲法第九条は将来にわたっても改正しないと言ったとすれば、これは誤りでございまして、私はそういう気持で言っておりません。前後をずっとお読み下さればわかると思います。
  156. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 前後を通じて私は読んでいるのです。そのあともそれじゃ読みましょうか。「きわめて明快な将来に対する宣言もされておりますので、憲法第九条の改正の必要なしと明快な総理の答弁をいただいたと私は了解します。」と、ちゃんと受田さんは確認していますよ。おかしいじゃありませんか。一年前は、憲法九条だけはほかの問題がどうあろうとも絶対に改正する必要はないという所信を総理大臣は表明しておられる。一年経った現在においては、それが大幅に後退して、九条の問題も調査会の結論を待たなければどうにもならない、自分の意見は述べられないと言われる。明らかに後退ですよ。憲法調査会の結論がことし中にも出ようとしておる。また、今度の参議院選挙においては一つの争点になろうとしておる。自民党の方はその争点になることを避けようとしておるようでございますが、そういう重要な時期になってきたので、これは前言を翻したものというふうに理解していいわけですか。
  157. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは受田さんがそうおっしゃっておるので、その質問だけでなしにほかの場合もずっとお考え下さい。私は憲法九条を改正するとかしないとかいうことを自分で言った覚えはないと思います。私の考え方は、組閣する以前から常にこう言っておるのでございます。
  158. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 委員会で正式に答弁されて、速記録にとどめておるものを、そういうことを言った覚えがないと言うのじゃ、一体国会審議というのは何のためにやっておるのですか。時間ふさぎですか。全く無責任でありませんか。私たちは応ぜられませんよ、こんな無責任な審議には。何度読んでみたって、明らかに、「憲法の第九条の改正は将来においても必要としないというお考えをお持ちになるかどうか。」という問いに対して、「私はそう考えております。」と言ったら、ほかにとりょうがないじゃありませんか。それはどういうふうにとるわけですか。
  159. 池田勇人

    ○池田国務大臣 現在の自衛隊の状況から言って、今の自衛隊のあのあり方について憲法第九条を改正しなくてもいい、こう言っておるので、将来憲法を改正いたしますとかいたしませんとか言った覚えは、私の記憶ではございません。従いまして、もしそこをおとりになるなら、他の機会に私は今お答えしたと同じようなことをたびたび言っておりまするから、総合的に御判断願いたいと思います。
  160. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 他の機会で言ったかどうか知りません。私は、本委員会委員として、本委員会で述べられた総理大臣の答弁を問題にしておるわけなんですから。だから、そういうことをもし言ったとするならば、これは取り消すとおっしゃるならまた別ですよ。少なくともこの日この委員会で述べている限りにおいては、憲法九条の改正は将来においても必要としないということを総理は確認しておりますよ。何と言われたって確認しておりますよ。取り消されるなら取り消して下さい。明らかに心境の変化を来たした、こういうふうに私ども受け取りますから。
  161. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私の心境の変化は来たしておりません。従いまして、当委員会におけることをおっしゃるならば、ほかの機会に、私は、ただいま申し上げましたようなことを本会議その他ではっきり申しておるのであります。総合的にお考え願いたい。ただ、私は、自衛隊の今のあり方は憲法を改正する要があるんじゃないか、こういうような質問であったかと思います。しかる場合において、今の自衛隊の状態においては憲法を改正する必要はありません、こう言っておるのでございまして、言葉じりをとらずに、全体の私の考え方を、本会議その他のあらゆる機会の発言一つで御判断を願いたいと思います。
  162. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それじゃ前の方から読んで聞かせますよ。この日にも、その前で受田さんが、「現状において自衛隊の増強について憲法の改正の必要はない、この点もはっきり言明ができますか。」という質問に対しては、おっしゃる通りです。「私は、自衛力の今の状態は、憲法の認めるところであると確信しております。」、一つ区切りがついておるのですよ。それで、その次の問題として、今私が提起しております問題の質疑が始まっておるわけです。「日本の置かれている立場から、憲法の第九条の改正は将来においても必要としないというお考えをお持ちになるかどうか。」と尋ねている。これはさきの問題と今度の問題と別々ですよ。それで、それに対して、「私はそう考えております。」と答えておられる。どうしてこれが前の質問とつながりますか。そういう気持に読みとれと言う方が無理じゃありませんか。この一年前の答弁は言い間違いというのですか。
  163. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ずっと前から、私は、自衛力の今の状態は憲法の認めるところであると確信いたします、こういうことで来ておるのでございます。従いまして、この意味において、私は、自衛隊の現状から申しまして憲法を改正する要があるかないかという質問があったので、私は憲法を改正する必要がないと答えておるのでございます。これは私はほかの場合に常にこう言っておるのであります。第九条の状態から言ったら憲法違反じゃないか、それは憲法違反じゃございません、憲法が認めておる範囲内であります、従って今の自衛隊の状況では憲法改正する必要はないと、こう言っておる。これが質問趣旨でございます。
  164. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これほどはっきり質疑応答が行なわれておるのに、どうも私はおかしいと思います。質問は二つ続いておるわけですよ。最初質問においては、自衛隊が漸次増強されてきた、しかしこれは憲法のワク内だという結論を総理は出しているわけですよ。それでは、このように自衛隊を増強していっても、憲法の許すところだから、将来にわたっても憲法の改正の必要はないということなのか、その通りだと言っておるのですよ。今の憲法九条があっても十分に望むところの自衛力の増強はできるから、将来にわたっても憲法改正をする必要はないと断定しておるじゃありませんか。少なくとも防衛問題を論議するのは本委員会が私は主たる場所だと思います。その場所でこれほど明確にお答えになっておることを、今改めるなら改めるようにまたお答え願いたいと思う。あのときのは間違いであったというならば、私は、大幅に心境の変化を来たし、われわれから言えば後退したというように受け取るだけの話です。ぜひこれは参議院選挙前に明らかにしてもらいたいと思いますので、しつこくお尋ねするわけです。何度読んでもわかりますように、二つの質問が続いて行なわれておるのですよ。一つずつけりがついているわけです。今の自衛隊は憲法違反ではないということが一つ、それは総理の見解として結論が出ている。これはどんどん増強していっても今の憲法九条に抵触しない、自衛力の増強は十分に可能だから、将来にわたっても九条については憲法の改正はやらぬと、はっきり述べておるじゃありませんか。それを否定されるわけですか。
  165. 池田勇人

    ○池田国務大臣 昨年の四月十三日に、内閣委員会におきまして、受田君の質問はこうでございます。「実際は戦力として憲法に抵触するほどのものを蓄積されたと一部では見られておる。こういう段階で、憲法の規定からいって現在の自衛隊は合憲であるというお立場をとっておられると思うのです。現状において自衛隊の増強について憲法の改正の必要はない、この点もはっきり言明ができますか。」と言われている。だから、私は、「私は、自衛力の今の状態は、憲法の認めるところであると確信しております。」、こう答えておるのであります。そして、受田君が、「日本の置かれている立場から、憲法の第九条の改正は将来においても必要としないというお考えをお持ちになるかどうか。」ということでした。私は、今の自衛隊の状況から言って、しかもまた最小限度の自衛力の増強ということは憲法の改正の必要はない、こう考えておるのであります。憲法全体の改正をどうこうする問題のときに、九条についてどうこうするという議論は出てくると思います。ただ、初めの質問が、今の自衛隊のあり方というものは合憲かどうか、もし合憲でないとすれば憲法の改正の必要があるか、こういう御質問だと考えて、今のように答えておるのであります。だから、私は、将来永久にこの九条の改正はいたしませんという意味じゃございません。今の状態が合憲であるかどうか、これが前提で、憲法改正の必要は今の状態ではありませんと、こう言っておるのであります。
  166. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 どう考えてもおかしいですよ。これほどはっきりした質疑応答すら、一年たったらほごにするというのでは、全く国会審議も権威がないと思うのです。私が言っていることも、今総理大臣が確認した通りでありますよ。自衛隊を増強していっても、今の憲法で十分に認めておる範囲だからかまわない、だから自衛力の増強というのは今の憲法九条のもとにおいて十分にできるのだ、そうおっしゃっているわけでしょう。今の憲法で十分にできるのだから、何も今後憲法を改正する必要はない、その通りじゃありませんか。かりに、ほかの項目について、百般の問題にわたって憲法改正の論議が結論を見、どのような九条についての結論があろうとも、池田総理大臣としては九条だけは改正する必要はないのだという所信を表明したというふうにこれはとらずしてどうとるわけですか。これは明らかに後退していますよ。一年の間に軽々しくこんな重要な問題についてそういう釈明をしなくてはならないような答弁をしておる。先ほど総理は、憲法調査会の重要性、憲法の問題とほかの問題を比べることはできぬとおっしゃたじゃありませんか。それほど重要な問題ならば、一言一句慎重に発言していただきたいと思います。私は、少なくとも当時一年前においては、九条の改正は、今後にわたっても、かりにほかの憲法問題がどういう結論になろうとも改正は必要ないというふうに池田総理は考えておったのだ、それが、最近どうも自信がなくなって、九条も込みで、まあ先のこととして結論を出したいというふうに後退したもの、その裏には十分に九条の改正というものが意図されておるというふうに理解したいと思います。  時間がありませんので、あと一点だけ質問をしたいと思いますが、先ほど午前中の質疑の過程でも私申し上げたのでございますけれども、最近、文民優位の原則、いわゆるシビル・コントロールの原則というものがどうもだんだんくずれ去っていきつつあるきらいがあるということを指摘したわけであります。その理由としていろいろな問題があげられております。たとえば、内局官僚機構の非能率とか、あるいは内局が日進月歩の兵器・戦術に追いつけず、チェックし切れなくなっているとか、あるいは防衛庁の職員が他省からの出向役人によって占められておるためにほんとうに熱意を持って仕事に取り組まないとか、いろいろなことが指摘されておるようでございますが、その中で、総理大臣が考慮しなければならない問題として、防衛庁長官の閣内における地位というものがあると思うのです。   〔委員長退席草野委員長代理着席〕 警察予備隊が発足してから十二年、その間にかわった長官が実に十四人、一人平均一年未満の就任期間であります。こういうところから、結局制服を完全に掌握する能力を持ち得ないという弊害が出ておるということが、批判する側から強く指摘されておるのでございますが、そんなことはないというふうに総理はお考えになりますか。そうでなければ、どういうふうに改めたいとお考えになりますか。
  167. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は文民優位の原則は確保されておると確信いたしております。また、確保されていないという理由として、防衛庁長官がたびたびかわるということを御指摘になったようでございますが、御意見は御意見として私は承っておきます。ただ、質問の根本の文民優位の原則は、私は確立しておると確信いたしております。
  168. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 確立しておると信じますとおっしゃっても、それは形の上だけは確立しているかもしれません。しかし、痛烈な批判がどんどん出てきておるのですよ。これらの矛盾に気がつかないということになりますと、これは問題ですよ。先ほど私が指摘しましたような問題を直視して、今のうちにこれを手を打っていかなければ、もう完全にこれは掌握できない事態が早晩やってくるというふうに、私はもっと真剣に考えていただきたいと思います。形の上で確立しているからいいというような問題ではないと思うのです。  それでは、もう少し時間をとってもいいという話でございますので、国防会議運用についてお尋ねをしたいわけでございますが、政治優位の原則を批判する側から出ておる声でございますけれども、本来当然やらなくてはならない使命を果たさないで、国防会議がそうタッチしなくてもいいような問題に口出しをし過ぎるのじゃないか、こういう批判が出ております。たとえば、引用されますのがこの間のロッキードのF104Jの決定の問題でございますけれども、あのロッキード騒動に見るごとく、高度の専門知識を要するような戦闘機機種の決定などになると非常に大きな関心を国防会議は示す、国防の大綱を握っていればよいものが、本来制服自衛官にゆだねてよいような兵器の選択などに競ってくちばしをいれたがるという本末転倒のシビル・コントロールが行なわれる、制服自衛官側から文民優位制に対する不信と軽侮がつのってくるのはゆえあるかなというふうな批判が出ております。私もこの意見は幾分傾聴に値すると思う。こういう問題よりも、もっと国防会議に諮らなくてはならない重要な問題があるのではないかと思う。たとえば、一つの例をあげますと、統幕議長の人事、でき得れば陸海空幕僚長の人事、こういうものは国防会議に当然諮るべきだとお思いになりませんか。アメリカ統合参謀本部の議長などは上院の勧告と同意を得て大統領が任命するというふうな規定が行なわれておるといわれておりますが、こういう点については総理は何らお考えをお持ちになりませんか。
  169. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この兵器の選択につきまして国防会議へ全部かけるということは、これは行き過ぎだと思います。しかし、第二次防衛計画の基本をなしますこういう戦闘機等につきまして、私は、国防会議へかけることが行き過ぎであるというようには考えません。  それから、人事の問題でございますが、もちろん、これは、防衛庁長官と国防会議の議長である私か十分相談をいたしまして、そして閣議にかけることにいたしておるのでございます。慎重に私はやっておる考えでございます。
  170. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 閣議にかけるから国防会議にかけなくてもいいというのだったら、国防会議にかけるものは一つもございません。国防会議にかけられるものは全部閣議にかかるのです。最終決定は閣議がやる。それじゃ国防会議は要らぬじゃありませんか。閣議にかかるから国防会議にかける必要はないという議論は成り立ちませんよ、総理。ほかの理由ならともかくとして。
  171. 池田勇人

    ○池田国務大臣 閣議にかけるからというのではございません。防衛庁の人事につきましては、国防会議の議長である私と防衛庁長官が十分検討してやるのであります。従って、それによって閣議にかける、こういうことにいたしておるのでございます。御承知の通り、国防会議の議員はおおむね閣僚をもってできているのであります。人事につきましては、国防会議で幕僚長をどうするかこうするかということは、私はしいてかけなくてもいい問題だと考えておるのであります。
  172. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 P2Vの生産まで国防会議にかけているのですよ。P2Vの生産と統幕議長以下の人事と一体どちらが国防上里要だと総理大臣はお考えになっているのですか。
  173. 池田勇人

    ○池田国務大臣 P2Vを日本で持つか持たぬかということは、やはり国防上の一つの大きな問題であると考えております。ことに、海軍の方につきましての作戦上の問題でございますから、以前にかけたと考えております。しかし、この人事の問題を国防会議でどうこう言うことは、私は、先ほど答えた通りに、いかがなものかと思います。
  174. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 重要だということならば、今後バッジ・システムも採用するかもしれない、それについて一部国産も防衛庁長官考える、こういうことを言っておられますが、それじゃ、P2Vが国防会議にかけるほど重要な問題ならば、どのようなバッジ・システムを採用するかというような問題も当然国防会議にかけなくちゃならぬ、そういうお考えですか。
  175. 池田勇人

    ○池田国務大臣 P2Vの問題は、さきほど申し上げましたように、海軍の作戦上の問題でございますので、かけたと思います。しかし、その範囲につきまして、どうするかということは、やっぱり防衛庁長官判断によってかけるかかけぬかはきめるべき問題であるのであります。  それから、バッジの問題につきましては、私は詳しく存じませんので、防衛庁長官から答えてもらいます。
  176. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 防衛庁長官にお聞きする時間がございません。そういう問題は防衛庁長官がきめるとあなたはおっしゃる。とんでもない話だ。防衛庁設置法の第四十二条をお読みになって下さい。第二項の第五号に、「その他内閣総理大臣が必要と認める国防に関する重要事項」をかけるとなっております。どこに防衛庁長官が必要と認めるものをかけることになっておりますか。
  177. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは、国防会議議長は私でございますから、私がやることでございますが、その前提といたしましては、防衛庁長官と相談してやるということを言ったのでございます。責任はあくまで私でございます。
  178. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そこで、さしあたりバッジ・システムの採用の問題が当面の問題として出ているわけですよ。あなたはP2Vの問題は海軍のとおっしゃったけれども、海軍はないはでずす。海幕の重要な事項だからという意味でおっしゃったと思うが、バッジ・システムはそれなら、なお必要ですよ。空幕にとってこれはP2Vよりももっと重要な装備品ですよ。これの国産化というようなものが一部行なわれるというようなことになったら、それではP2Vもかけたんだからバッジ・システムの採用についても当然かけなくちゃならぬということになるのかとお尋ねしているわけです。
  179. 池田勇人

    ○池田国務大臣 バッジ・システムについてどういうふうにするかということは、まだ防衛庁長官から私聞いておりません。従いまして、国防会議にかけるかかけぬかという問題のところまでまだいっていないと私は思います。従いまして、バッジ・システムのあり方等を聞きましてから私が決心いたします。
  180. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 話が横道にそれてしまったのですが、P2Vやバッジ・システムや、そういうものをどういうふうにして国産するかというようなことよりも、あるいは採用するかどうかというようなことよりも、各幕あるいは統幕議長の人事といったような問題の方がよっぽど重要ではないかと私は聞いているのですよ。こんなものくらいまでかけるのならば、当然統幕議長なり各幕議長の人事あたりは国防会議にかけるべきじゃないか。閣議にかけるのだからかまわぬというならば、ほかのもの一切国防会議になんかかけなくたってかまわないことになりますよ。その軽重のほどをお伺いしているわけです。
  181. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは、人事が重要だということはわかっております。しかし、国防会議の性質から申しまして、人事まで取り扱うということは、私はいかがなものかと思います。従いまして、実質的には私が防衛庁長官と相談してやるのでございまして、国防会議の議題に人事まで持っていくということは、私は国防会議の性質から言っていかがなものかと思います。従って、人事は重要でないとは申しません。非常に重要なことでございますが、国防会議の議題としなければならぬという理屈はいかがかと思います。
  182. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 総理のその程度の感覚では、とてもシビル・コントロールなんというものは保てませんよ。もうやがて音を立て崩壊てしていくでしょう。そういう事態が起きたときに幾ら反省してみたところでこれは始まらないということを指摘するにとどめたいと思います。  もう一つ防衛出動、これは国防会議にかけることになっておるのですが、命令による治安出動、この場合には国防会議にかける意思がございますか。命令による治安出動というのは、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては治安を維持することができないと認められる場合に、自衛隊の全部または一部を出動させることです。間接侵略まで入っているわけだ。非常に重要な出動でございますが、これなども、先ほど読み上げました防衛庁設置法四十二条第二項の第五号、総理大臣判断の中でやる問題だと思いますけれども、当然国防会議にかけるべき問題だとお考えになりますか。
  183. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛出動のときにはもちろん国防会議にかけなければなりません。しかし、今のお話のような点につきましては、法律的に国防会議にかけなければならぬということにはなっていないのでございます。従いまして、事態の状況によりまして私が判断いたしたいと思います。
  184. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そこで、もう一つお伺いしておきたいのは、防衛出動とか命令による治安出動とかいうようなものが国会の承認を必要とすることになっております。ところが、この国会の承認についての規定が全然ないのですけれども、これは一体どういう様式をとられるわけですか。条約の場合には、何々について承認を求めるの件として、一枚紙がついて、その下に理由というのがついて参りますね。こういう形式になるわけですか。なるとすれば、その理由の中にはどの程度の内容が盛られるわけですか。たとえば、出動の目的とか、日時とか、場所、兵力、総理大臣の命令の内容、あるいは新安保条約の第五条に基づく米軍出動の有無、そういうものが一切含まれて提出されるものであるかどうか、この際はっきりしておいていただきたい。
  185. 池田勇人

    ○池田国務大臣 法の規定の問題でございますので、法制局長官からお答えいたします。
  186. 林修三

    ○林(修)政府委員 形は、結局、防衛庁第何条の規定によって国会の承認を求める件という形になると思います。しかし、文書上どの程度までいろいろ理由を書くか、あるいは口頭の説明に譲るか、これはやはりそのときのいろいろの状況によると思います。性質上そう詳しく文書で書けない部面ももちろんあると思いますが、これはその事態にあたってよく国会の事務当局とも御相談の上考えたい、かように考えております。
  187. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その事態にあたってとおっしゃいますけれども、すべてこれは緊急事態でありますし、どういう形で国会の承認を求めるかというようなことは、何もその場にいかなければわからないという問題ではないではございませんか。今からでも検討を加えておいていい問題ではないですか。
  188. 林修三

    ○林(修)政府委員 形式は、大体、先ほど申しましたように、何々について承認を求める件ということだと思います。そして、これは御承知のように、承認を求める事案についても、たとえば人事のように理由を書いてないのもございます。従いまして、理由を書くか書かないか、これは理由は口頭によってもいいのじゃないかという考えもむろんあるわけでございますが、その点は、ただいまのところ直ちにこうしなければならぬという方に確定的には考えておりませんけれども、形は、やはり、承認を求める件、こういうことになる。理由等の問題については、やはり問題の性質上そう詳しく書くわけにはいかない。やはり口頭の説明に譲るということじゃないかと思っております。
  189. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 時間が参りましたからもうやめます。しかし、繰り返して申し上げておきたいのですけれども、シビル・コントロールの批判が最近防衛庁の中でしきりに行なわれておる。防衛大学校の学生のアンケートの中においてすら、最も自衛隊の悪い点は文民優位の原則があることだというふうな露骨な答えが相当出てきておるということまで指摘されております。これはゆゆしき問題です。最高の責任者として、この原則を形だけでなくして実質的にもゆるぎないものにするというかまえがなければならぬと思う。そのためには、経済はまかしておいてくれとおっしゃいましたけれども、もう少しこの方面についても真剣に勉強されて取り組む必要があるのじゃないかと思う。安保条約で規定されました安保協議会にいたしましても、二年間の間にたった一回しか開かれていない。日本の文民どもを相手にして話をしたって何の価値もないという米軍の態度がここに現われているのだという指摘まで行なわれています。あなた方は、新安保条約ができましたときに、非常に大げさにこの安保協議会の意義を述べておられましたが、実際には、二年間に一回顔合わせをした程度で、何にもしておらない。ベトナムで何が起きようと、韓国で何が起きようと、全くつんぼさじき。こういう状態では、いかに安保条約が日本の自主性を確保したものだ、日米平等の立場に立って作られたものだと強調されてみましても、空文ですよ。このことだけ申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  190. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、お話のような点も考慮いたしまして、防衛関係につきましては、従来にも増して、勉強と申しますか、常に接触を保って事情を聞いておるつもりでございます。重要な国務でございますので、まかせっきりで何も関心を持たぬということではございません。そうして、安保条約によりまする日米の問題にいたしましても、関係当局には常に連絡を密にしていっておることをここにお答え申し上げておきます。
  191. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先日、佐世保の基地の中で米兵が日本人労働者をピストルで撃った事件についていろいろお尋ねをしたわけでございますが、数点にわたって明確な御返事が得られませんでした。その後再調査をしていただいたと思いますので、質問をいたしたいと思うわけです。私の方も、あれから帰りまして、病院なり、あるいは労務管理事務所の所長、あるいは被害者本人、あるいはまた報道陣の記者諸君、いろいろな方面に会いまして、新しい事実をつかんで帰ってきておるわけであります。  そこで、そういった問題を含めまして、十分な答えが得られなかった問題について質問を続けたいと思うわけですが、まず第一に、一体なぜピストルの弾が飛び出して日本人労働者をけがさせたのかということについて、点検をしたからだということをおっしゃっておるわけですが、このラングという兵隊は、便所に行ったのであります。便所に行って帰ってきた。そのためにピストルの点検が必要だというふうに警察がお考えになったこと自体、私どもは納得がいかない。哨兵が正規の時間に交代する場合には、今まで立哨しておりました兵隊が持っておるピストルをもらいますから、そのときに点検をするのだそうですが、今度の場合は、巡察の兵隊と、このラングという哨兵と、それぞれ自分のピストルを持っているわけです。自分のピストルを持ったまま便所に行って帰ってきた。それだけのことなのに、一体なぜピストルの点検が必要だったと御判断になったのか。過去においてこういう場合に点検が必要であったか、あるいはそんなものを行なっておったかどうかということをお調べになりましたか。私は基地の中で働く者に相当数聞いてみましたけれども、絶対に行なった例はない。被害者本人もそう言っております。また、こんな場合にピストルの点検が必要なはずはないとみんな口を揃えて言っておりますが、警察は、点検をしたというこの事実をいかなる理由に基づいてお認めになったのですか。その点からお答え願いたいと思います。
  192. 本多丕道

    ○本多説明員 お答えいたします。ただいま御指摘の点につきましては、私の方でその後現地にもいろいろと調査をしてもらいました。また、米軍の拳銃に関する諸規定についていろいろと検討さしたわけでございますが、結局、米軍側の規定によりますると、ただいま御指摘のように、歩哨交代の場合に拳銃を授受するという場合においては、必ず点検をしなければならないという義務づけを行なっておるようであります。それ以外にはそれではどうかといいますと、別にそういう規定はございません。結局、実際の規定に基づく指導要領というようなものがあるわけでありますが、それによりますると、実際の指導は、拳銃を自分が手から離して一回他の場所に置いたというような場合においては、それを再び着装する場合には点検をするというように指導をしておるという状況になっておるようでございます。そういう意味から、今回の場合におきましては、ラングが便所へ行きまして、そこで一応事務所の机の上に拳銃をのせて、それで用便をしておりますので、これを着装した場合にこれを点検するということは、一種の習慣になっておるというふうに見られるわけでございます。その結果、便所から帰って参りまして、弾が入っておるかどうかということを確かめるために、あの場所においてさらに点検をいたしたとしても、特にあれがいたずらであったとか、そういうようには私どもとしてはとっておらないわけでございます。
  193. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しかし、それでは加害者の一方的な陳述を全部うのみにしておるということになるじゃありませんか。過去の捜査の段階においては裏づけ捜査ということが行なわれるはずですね。今あなたも御指摘になりましたように、正規の哨兵の交代の場合には、これは点検をする規定になっておりますから、兵隊はやっておりましょう。ところが、今の便所へ行ったというようなときには指導しておる、こういうふうにはっきり違いのあることを認めておられますが、指導はしておるかもしれませんけれども、実行しておる例があるかどうか。基地で働いておる連中が一番よく知っておるのですよ。被害者を含めて、見たことがないとみな口をそろえて言っておる。そういう証言は一つもとっておられないじゃありませんか。加害者の言っていることだけをうのみにしておるじゃありませんか。これが問題なんです。  それから、もう一つ、拳銃をもてあそんだかどうかという問題については、哨舎に帰ってから暴発が起こるまでの時間が非常に短かった。だから、特に兵隊が拳銃をもてあそんだとはとれないというような状況であったと見ましたというようなことを言っておりますが、これにも問題があります。一体、それじゃ、これがどのくらいの時間だったのか。もてあそぶのに一体どのくらいの時間がかかるのですか。アメリカの兵隊はしょっちゅうやっておるのです。西部劇でやっているように、くるくるっと回してぽんと入れたりするようなこと、こういうことも全然基地の人たちに聞いているというようなこともないわけですね。ただ、時間的に、もてあそんだかどうか、ちょっと時間が短いから考えられないと言うけれども、くるくるっと回すのに何秒もかかりませんよ。そんな遊びが何分なければできないのですか。これも納得いきません。もし私が納得いくように説明できるならば、説明して下さい。
  194. 本多丕道

    ○本多説明員 ただいまの点に関連いたしまして、この前のお話の中に時間の問題がございましたのですが、その点について私の方といたしましてはさらに再調査をいたしました。  それを若干説明いたしますと、四人ばかりの基地の労務に従事しておる人たちに当たっておるわけですが、まず第一番目には、佐世保基地の衛生責任者をやっております来山さんという人がおるわけでありますが、この人に事情を聞いてみますと、当日の状況は、その来山という人は事務所の中で仕事をしておったようでございますけれども時間は、この人は、はっきり時計を見ておらないようですが、大体十時二、三十分ごろというような程度の話でございますが、事務所内の通訳をしておる浦田雅男という人、この人はあとから出て参りますが、この人から、メイン・ゲートに負傷者が出たからすぐ兵隊と一緒に行ってくれ、それから、早岐町の樽美病院に運んでもらいたいというような指示を受けておるわけであります。この人が直ちに救急の薬品箱などを持ちまして、兵隊の車に乗って、二分くらい現地までかかるそうですが、二分間くらいで到着した。そのときにはどういう状況にあったかと申しますと、中尾さんが車の運転台に倒れておる。それから、アメリカの兵隊が二人ばかりいて、その血をふいたりして介抱している状況であった。そこで、これはいかぬというので、すぐ担架を持ってくるようにということを言いまして、直ちに兵隊が担架と毛布を持ってきた。担架を持ってきて、それにみんなで手伝って中尾さんを寝かせまして、自分の車で運ぼうとしたときに、早岐町の方からものすごいスピードでサイレンを鳴らしながら救急車が到着した。そこで、結局その救急車に乗せて運んだ。こういうふうに申しております。  それからまた、佐世保基地の輸送隊に勤務しておる運転手の須山という人、この人は救急車の運転手でありますが、この人の話を聞きますと、この人は佐世保基地におるわけですが、当日の十時二十五分ごろ、ディビス一等下士官から、針尾の警備隊で負傷者が出た、すぐ救急車で行ってくれという命令を受けたので、自分は直ちに支度をして基地を出発した。そのときに時計を確かめた。これは出発と到着は必ず記録するようになっておるらしいのですが、時計を見たら十時二十五分であった。十時二十五分に出発したわけですが、人命救助ということで、非常に急がなければならないというので、サイレンをならして時速六十キロ以上のスピードで出発、車内には兵隊と下士官が一人ずつ乗っていた。事故現場に到着したのが十時四十分ごろ、これは時計で確かめておりますが、十時四十分であった。結局その間十五分を要しておる。このとき現場の状況はどうであったかと申しますと、日本人の労務者が二人ばかりと海軍の兵隊がおって、中尾さんという人をほかの車に乗せようとしておった。自分は直ちにそれを中止させて、この救急車に乗せなさいということで救急車に乗せて、すぐまたサイレンを鳴らして六十キロのスピードで引き返した。そうして、佐世保駅の近くに来たときに、同乗しておりましたディビス一等下士官が、日本人の病院に運んだ方がいいだろうということを言ったそうです。そこで、自分が知っておる比較的施設がいいといわれておる共済病院に運んだ。この共済病院に着、たときが十時五十五分であったということを言っております。  それから、もう一人は、針尾警備隊の通訳をしておる浦田雅男さんという人ですが、この人が当日針尾の事務所で仕事をしておったようですが、十時二十三分ごろ、事故現場の哨舎から、自分の側におるペイン一等下士に電話がかかってきて、電話を聞いてみると、負傷者が出たという報告であったそうであります。そこで、直ちに一等下士の命令でキャセディ兵長がすぐ自動車で出て行った。自分は、これはいけないというので、ボーガスという兵隊がその車でこれも現場に行くということになっておったので、来山という衛生責任者の人に一緒に乗って行ってくれということを言ったそうであります。  それから、もう一人の人は、これは針尾警備隊の労務安全責任者である吉田さんという人ですが、この人は、当日は自転車に乗って基地の弾薬庫を回って歩いてその異常を確めて歩くというような仕事をしておった人らしいのですが、この人は十時二十分前後表門の方に向かって自転車で走っておった。そうすると、事務所の方から非常なスピードで自動車が走って来た。非常にいつもと違ったうろたえたような感じを自分は受けたので、それを見ますと、それには衛生主任の来山さんが乗っていた。これは何かあったのではないかと自分は直感したので、そのあとから自転車でついていった。そうして、現場に到着してみますと、そこでは、来山さんとそれからアメリカの兵隊が、運転席に倒れておる中尾さんを抱き起こして、流れている血をふいたりして手当をしているところであった。それで、その来山さんという人が、これは衛生兵出身でそういうことがよくわかるそうですが、すぐ担架を呼んでくれということを米兵に頼んだ、それで、二、三分くらいで担架がそこへやってきたので、自分も手伝って担架へ乗せて、そのとき現場にかけつけてきた救急車に移したということであります。  それから、もう一人は西川さんという人でありますが、この人は基地の警備員で、事件の当日は、弾薬庫見回りのためにちょうど十時ごろ基地の北端の弾薬庫に着いたのだそうです。この弾薬庫から事故現場のメイン・ゲートまでは約二千メートル近くあるというのでありますが、そこで、弾薬庫で時計を見たときはちょうど十時だった。それから、そこを回ってちょっとたったときに、本人は大体一、二分ということを言っておりますが、例の被害者である中尾さんの運転する車が北の弾薬庫にやってきて、そこから折り返してメイン・ゲートの方に向かっていったということを言明しておるわけです。  こういう状況から検討いたしまして、中尾さんが最初にその歩哨の位置に行ったのが大体十時五分前後ということが言得ると思います。それから、そこでラングという兵隊を乗せまして事務所へ行って、用便を足して帰ってきておる。その間、本人の中尾さんの話では、大体自分は十五分くらいかかったように思っているというように言っておりますが、大体まあ十二、三分から十五分程度が経過しておると見るのが至当であろうと思います。そういうふうに計算して参りますと、どうしても大体十時二十分前後に帰り着いたというように判断せざるを得ないわけであります。十時二十分ごろにそこに到着して、ラングという兵隊がおりて、一たん哨舎の中に入りまして、それから出てきて点検をやって暴発をした。こういう事態で、その暴発の電話を受けたのが、その事務所では十時二十三分、こういうことになっておりますから、まず、われわれの判断といたしまして、きわめて短時間であるということは、動かし得ないということに考えているわけでございます。  こういう状況で、しかも、この前もちょっとお話いたしましたが、中尾さんの話を聞いてみますると、ラング二等兵あるいはペイト二等兵というものと中尾さんは、前から顔見知りであるわけですが、決してこの連中は平素から日本人に対してとやこういう感じを持っているわけではなしに、今まで自分に対してもそういうことをやったことはない、また、その当日も何事もなくきわめて順調に仕事をしておったので、とうてい自分をねらったとかそういう悪意があったとは受け取れないということを言っております。そういう諸般の状況を考えまして、そこで拳銃をもてあそぶというような状況にはなかった、また、中尾さんに対して悪意を持ってそういうことをするというような状況もなかったということを判断したことは、それで一応妥当であるというふうに私ども考えております。
  195. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 まことに加害者にとってこれほど同情的な理解の仕方はないと思うのです。これから、日本人が犯罪を犯した場合にも、どうかそういう気持で一つやっていただきたいと思います。  この間の答弁では、アメリカの当直日誌に載っておる時間が十時二十七分というはしたまでついた正確なような時間でしたが、これがきょうは警察の方では二十分ということになっているわけですね。この二十分ということにいたしましても、今の説明を聞いても、私はどうも納得ができない。現場に四十分に救急車が着いて、そうして共済病院に五十五分に入院した。一体どういう早わざだろうかと思うのですね。向こうの当局から、どういう道筋か説明はございましたか。一直線でもなければ何でもないのですよ。曲がりくねった道です。一直線の線路を走るディーゼル準急でも十四分かかります。これは佐世保駅から早岐駅までです。ところが、共済病院も海軍病院も佐世保駅から相当かかる。針尾は早岐の駅からまた相当かかります。どう考えたって、救急車が四十分に着いて、そうして収容の行動を起こして共済病院に五十五分に着いたということ自体、地理を知っておる者としては納得いかないのですよ。一回そういう芸当をやって見せて下さい。  それから、一体救急車はどこから出発しているかということはお調べになりましたか。
  196. 本多丕道

    ○本多説明員 まず、救急車の出発したのは佐世保基地から出発しております。  それから、道順、距離の問題ですが、これは警察としても実際実測をいたしました。大体十五キロ余りあるようであります。それで、その当日の運転手である須山さんの話を聞きましても、ともかくも自分は人命にかかわるということで猛スピードで走ったのだ、とにかく六十キロ以上は確かに出ておったということをはっきりと言っておるわけであります。それで、その猛スピードで走ったのを現認しておる者も非常に多いわけでありまして、警察官も何人かは、猛スピードでサイレンを鳴らして走っていくのを見て、何か起こったということを感じておる者があるわけであります。そういう状況で、ただいまのお話ではございまするが、大体十五分程度で行かれるのじゃないかというふうに私ども考えております。
  197. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 電話をかける時間、車が出発する時間、それから被害者を収容する時間、そういうものを全部勘案して、とにかく、事故が発生してから病院に入るまで三十五分間というのは、これはちょっと算術が納得いきません。しかし、これは、あなたの方でやれるというならば、水かけ論ですから、もうやむを得ません。  それでは、お伺いしますけれども、病院に着くまで全然応急手当が施されておらなかったということは確認いたしますか。
  198. 本多丕道

    ○本多説明員 事故現場におきまして、ともかく、とりあえず応急措置は、その衛生責任者あたりも手伝って、血を押えるとかそういう程度のことはしたようであります。また、それを毛布にくるみまして担架に寝かせるということで、それから病院に到着するまでは、中にそういう専門家が乗っておりませんから、おそらくそのままであったろうと思います。
  199. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私、病院で聞いてきたのです。直接受け取った看護婦さんにも会ってきました。何らかの応急手当をしておりましたかと聞いたら、全然しておりませんと、自信を持って私に証言しております。何でしたらお調べになっていただきたいと思います。全然しておりません。  それから、実地検証をやったとこの間も答弁しておられましたが、この間の御説明によりますと、二十二日の朝にやったというふうに言っておられますけれども、私が帰って聞いたのと時間が違いますが、間違いありませんか。
  200. 本多丕道

    ○本多説明員 実況見聞は、二十二日に、県本部の捜査一課長、鑑識課長、それから米軍のトレント大尉、それから長崎検察庁の検事の人と、これだけで実況検分をやっておるわけでありますが、午前中であるかどうか、ちょっと今調べてみます。
  201. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私の方が早いですよ。聞いてきたんですが、二十二日の午後三時ごろやったということです。朝ではありません。それから、今あなたがお述べになりましたような日本側の人たちと米側の人たちが一緒になって実況検分をやったという御説明がありますが、間違いありませんか。ほんとうに一緒にやりましたか。
  202. 本多丕道

    ○本多説明員 これは、報告はそうなっておりますが、常識的に考えましても、基地内で仕事をする場合には、相手方の合意に基づいてやる以外には方法はないわけでありまして、おそらく、現場においては憲兵なり何なりが立ち会うということが常識であろうと思います。
  203. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 基地内といってもゲートですから、基地内と基地外とのすれすれのところですよ。それは別として、一緒にやったとおっしゃって、いかにも日米合同の共同の捜査が行なわれたようなことを言いますけれども、やってないですよ。私行って聞いてみたら、日本側が行ったときには、もう向こうだけで終わっちゃって、ラングという兵隊はさっと連れて行かれちゃっているんですよ。日本の捜査陣は、日本人をラングに仕立ててやっているんですよ。これが一緒にやったということですか。一緒にやったというのはそういう意味ですか。自分たちだけで先にやったかやらぬか知らぬけれどもとにかくやって、そうして、日本側が着いたとたんにさあっとラングを連れて帰っているんですよ。これが一緒ですか。
  204. 本多丕道

    ○本多説明員 実況検分でございますので、被疑者がそこにいなければならないという問題じゃないと私は思います。その現場においてどういう状況でどういうふうな工合なときにどういうふうな事故が起こったかという実際のそのときの有様を再現してみるということでありますので、あるいは現場において先に米軍側がすでに実況検分を行なっていたかもしれません。しかし、日本側もその後に行って実況検分をした、こういうことになっております。
  205. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 だから、一緒にやったというのは事実ですかと聞いている。あなたの御説明では、二十二日の朝に一緒になりまして現場の実況検分を行なっておりますとこの間も言っておるし、今も一緒にやったとおっしゃった。一緒にやったというのは、今申し上げるような意味ではないはずです。なぜ別にやらなくちゃならぬのですか。しかも、瞬間的に、こっちが着いたとたんにさっと連れていかなければならぬというようなやり方をなぜ向こうはしなくちゃならぬですか。全く誠意がないじゃありませんか、捜査自体について。しかも、日本側が着いたときにラングがどういう態度をとったかというと、一緒におった日本側の新聞記者、報道陣に対して、新聞記者帰れと叫んでおるんですよ。そして記者諸君は六十メートルぐらい下げられているんです。私は、何で日本の領土の中であなたたち遠慮して下がったのだ、基地の外におればいいじゃないですかと言ってやったんですよ。しかも、本人がわめいて、記者帰れと言う。どこにその謙虚な気持がありますか。あなたが一生懸命弁護するような、そういう気持が現われておりますか。私はもう新しい事実を聞くにつけて全く情けないと思うんです、日本の警察側の態度が。なぜそう日本人の被害者に不利なように、加害者を弁護するような態度を終始とらなくちゃならないかということです。くやしくてしょうがないのですよ。しかも、完全な基地の中ではありません。何度も申し上げるように、ゲートですから、すれすれのところですよ。しかも、そのときに自動車の運転台のシーツはきれいに取りかえられております。血痕も何もついてないものを持ってきております。そのことも知っておられますか。
  206. 本多丕道

    ○本多説明員 ラングという兵隊がいろいろ日本側に対してとった態度というものは、私自身も遺憾であると思う点は多々あります。また、私は決してラング二等兵を弁護するという気持はありません。ただ、われわれとしては実際の事実をつかむということに主眼を置いて今お話ししておるわけでありまして、私は決して感情をまじえてものを言っておるわけではありません。そこを一つ御了解をお願いしたいと思います。  今のシーツの問題も、私の方で調べまして、確かにお説の通りのようでございます。しかし、これは、シーツを特に隠した、故意に日本側に隠したというふうには受け取れない。と同時に、また、そういうものを隠すことが何ら意味をなさないのでありまして、犯罪といいますか、そういう事故が起こったという事実ははっきりとすでに証明されておるわけでございますから、そのシーツを隠したということは、私は、故意に隠蔽するという趣旨ではないというふうに解釈しております。
  207. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、正確を期するために感情をまじえずにやったとおっしゃるなら、この実地検証の仕方についてもう一つ私は問題を提起します。これは記者の諸君が望遠レンズで写真をとっております。私は確認してきたのです。車の位置が、実際に犯罪が行なわれた場合と違うような位置に置かれてかまわないのですか。そういう実地検証が意味をなしますか。一般論でいいです。
  208. 本多丕道

    ○本多説明員 ここに実地検分の写真もございますが、これは主として被害者の話をもとにして実況検分の事実の再現をやっておるわけであります。自動車の位置が違うと言われますが、その哨舎から車に至る道路の幅が何メートルあったか、大体の実況検分では一・八メートル程度ということになっておりますが、この点は被害者自身もはっきりと何メートルということは記憶しておりませんので、あるいは若干その点は差があるかもしれませんが、その後の調査によりまして拳銃のたまを発見しております。拳銃のたまは、そのゲートから反対側にある土手に埋まっておったわけでありますが、ゲートでラングという兵隊が拳銃を持っていてそれが暴発したという場合に、その運転席を抜けてそこにいったということになるとどういうことになるかということもあわせてその現場を検討してみたわけでありますが、大体間違ってはおらないと思っております。
  209. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 大体間違っておらないとおっしゃいますけれども、大間違いです。なぜ私がそう断定するかというと、被害者本人が一つの習癖を持っておるわけなんですよ。哨舎が建っておりますところに哨兵が立つ踏み台があります。この中尾という人は、自動車をこの踏み台すれすれにつけて、そうして、ぽんと飛びおりたらそのまま立てる位置に持っていっていると言うのですよ。私はそうしております、それがこんなに離れております、こう本人が言っているのです。これこそ間違いないでしょう。本人が言っているのですから。もう踏み石にぽんと飛びおりればそのまま立てる位置に車をつけておると本人が言っておるのに、二メートル近くも離して、何の実地検証ですか。少しでも事件当時の姿に近づけて復原してやっていくところに実地検証の意味があるのでしょう。法律できめられておるから格好だけやればいい、そういうものなんですか、実地検証というのは。自動車の位置も違う。シーツがあろうとなかろうとかまわぬといったって、向こうは保存しているはずですから、復原するためには、誠意があれば当然持ってきていいはずです。どういう角度でたまが飛んできたかというようなことも一応検討していいはずです。これでは全然検討できないじゃないですか。しかも、先ほど指摘いたしましたように、自分たちだけで格好だけやって、日本側が着いたらさっと帰ってしまう。そういうようなことまでやっておって、一緒にやったとか正確を期したとかいうことは、私は言えないと思うのです。こういうことで、やはり、本人はもちろんのこと、一般市民もいよいよ疑惑を深めていくし、捜査当局に対する不信感を高めていくんですよ。たよりにならぬ、アメリカ兵にやられたら日本人はもうおしまいだ、日本の司法当局、捜査当局は全然われわれの立場なんか考えてくれない、そういうふんまんが国民の間に出てきてかまわぬというのですか。私は実際にみんなに会ってきました。おとなしい人ですけれども、やはりそういうふんまんが現われてくるのですよ。そういう形だけの実地検証をやったといって、正確を期したと私は言えないと思う。やはり、やるからには、もう少しほんとうに正確を期してもらいたいと思うのです。  それから、ラングの前科については確認されましたか。
  210. 本多丕道

    ○本多説明員 その点につきまして調査いたしましたわけですが、御指摘のように、ラングは前に二回ばかり犯罪を犯しております。これは、昭和三十六年の九月四日に、ペイトと、このペイトというのは、この前もお話がありましたが、おそらく今度の事件のペイトであろうというふうに考えられるわけですが、ラングとペイトが佐世保市の水族館に行きまして、その標本室から標木であるカメの甲ら一個とフォルマリンにつけてあるタコのびんを一つ盗んだということで検挙されまして、十二月十五日に起訴猶予になっております一それから、もう一回、ラングは、同年の十二月二十六日に、これも佐世保市のスタンド・バーで酒を飲んでおりまして、隣にいた日本人と何か口論をして、興奮をしたあげく本人をなぐりましてけがをさしておるということで検挙されました。これは三十七年の一月二十五日に起訴猶予になっております。
  211. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 はっきりいたしました。ラングは過去において窃盗を一回やっている。日本人に対する暴行を一回やっている。いずれも起訴猶予、非常に温情あふれる措置です。今度は三度目です。それでもなおかつ日本人に対しては特殊の感情を持っておらない兵隊でございますと弁護これ努めておる。私どもには納得いきません。それから、本事件における唯一の証人ペイトがどろぼうの相棒である。このペイトの言葉をまるまる信用して、業務上過失傷害、こんなばかな話がありますか。同じグループで一緒にどろぼうをする仲間の証言というものをどの程度信用できるのですか。しかも、この間の御説明にありますように、これが決定的になっているのですよ。ラングの弁明書によると、「自分は便所に行って、そこで一たん拳銃をはずしておるので、帰ってきてからもう一回たまの数を調べるつもりで、拳銃を取り出した。そのときは、拳銃を上の方に向けて、絶対に安全な方法をとりながら点検したつもりだ。そのときに哨舎内におったペイトが何か言ったそうであります。その言ったのがよく聞こえなかったので、それは何かということで、ペイトの方をちょっと見て返事をした。そのときに、またペイトが何か言ったが、自分はよくわからなかった。そういうことを思ったその瞬間に、暴発をしてしまった。」、この事実をお認めになって、そうして業務上の過失傷害として判断を下しておられる。唯一の証言、これはペイトの証言です。そのペイトなる者は、ラングと一緒にどろぼうした相棒です。そんな者の証言を決定的な材料にして、それで罪状を認定するというようなことは不見識だと私は思います。少なくとも私どもの感覚では納得できません。とにかく、この事件は、片手間に私が調べれば調べるほど、片手間に調べただけでも、納得のいかないことだらけ。それにもかかわらず、終始米用側なり加害者なりの弁護に努めているのが現地の捜査当局である印象を強く受けます。  このような認定が下りまして、すでにラングはアメリカの軍事法廷で十日間の重禁固か何かに処せられたという話がございますが、それは事実ですか。
  212. 本多丕道

    ○本多説明員 四月十日に軍法会議に回されたということは聞いておりますが、判決については聞いておりません。
  213. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私がうわさで聞いた範囲では、十日間の処分だそうです。日本人の命もこれほど安くなれば、もう申し分ありません。しかし、これに対して、これ以上どうしようもないというのなら、私どもも言いようがないわけです。全くくやしくてたまらぬけれども、あなた方が一生懸命になって向こうさんの立場をかばってくれるのでは、どうにもしようがない。  大臣も、先日から本日と私がるる申し上げたことについて一つの御感想があろうかと思います。もし司法上の問題としてこれ以上どうにもならぬというならば、少なくとも、あなたは、日本人の生命を預かる閣僚の一人として、本人なり被害者なりあるいは同胞の日本人がやる方ない気持を持っておるこの気持を代表して、この間お約束になったように、アメリカ側に厳重なる抗議をして自後絶対にこれをやらせないという誓いをしているわけですが、早急にそれを実施していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  214. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 捜査当局が捜査された方法等については、十分やられたものと私は信じます。ただ、今後、ただいま御指摘のように、こうしたことが起こらないことを期さなければならないわけでございます。従いまして、こうしたことの再び起こらぬように、厳重なる抗議を近くいたし、その反省を促す所存でございます。
  215. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、大臣の確約を信じて、一応この問題についての質問は、時間がおそくなりましたから、終わりたいと思います。引き続いて防衛庁設置法の問題について質問したかったのでございますが、非常に時間がおそくなっておりますから、明日に譲りたいと思います。
  216. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 受田新吉君。
  217. 受田新吉

    ○受田委員 私からまず法律的の立場から自衛隊のあり方について、及び自衛隊の特に行動についてお尋ねをしたい点があります。  それは、この法案が出されるつど問題になって解決されない一つの大きな問題点は、自衛隊法に規定された第七十六条の防衛出動と七十八条の命令による治安出動の関係のこの法律的条項に基づく質問を現段階で重ねてしなければならないと思っております。  藤枝さん、あなたは法律立場から自衛隊をどう国民説明するかということについて、まず自衛隊の行動面における重要な任務である防衛出動と治安出動の関係を一応基本的に御説明を願わなければならない点があるのです。それは、七十八条の方には「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」という内閣総理大臣に対して強権が与えられておりますけれども、これは今まで幾たびか私からもお尋ね申し上げておるのです。この事柄は非常に重大であるから、国会の承認を事前、事後に得る規定を中に当然入れるべきであるというお尋ねをしたことがあるんです。ところがその後いろいろ議論をかわすうちに問題になったのは、間接侵略というこの侵略の方式でありますが、この間接侵略の中には、直接侵略と競合する場合があるのではないか。間接侵略と離れて直接侵略があり、直接侵略と離れて間接侵略があるという前提で、自衛隊当局はこの問題を考えておるのかどうか、基本的な問題を一つだけ最初にお尋ねしておきます。
  218. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この問題は、昨年も本委員会で問題になったことでございますが、この自衛隊法で考えておりまする間接侵略とは、一または二以上の外部の国の教唆または扇動による大規模な内乱または騒擾というふうに申し上げておるわけでございます。そこでその形態はいろいろあると思います。ただ考えられますることは、外部の国の教唆は別といたしまして、干渉による騒擾または内乱というふうな場合には、その干渉の形が、場合によりましては、義勇軍というふうな形で干渉してくるというふうなこともあり得ることではないか。そういたしますと、これはやはり一つの武力を持った攻撃ということに該当する場合もあるのじゃないかというふうに御説明を申し上げておるわけであります。
  219. 受田新吉

    ○受田委員 その間接侵略の態様ですが、いろいろな場合がある。直接侵略と同じ形式をとり得る場合の間接侵略というのがあり得るかどうか。直接侵略と競合する形で行なわれる間接侵略の場合があるかないか、これを一つ御答弁願います。
  220. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは直接侵略が他面にありまして、それと一緒に間接侵略をやるという場合でございましょうか。
  221. 受田新吉

    ○受田委員 そうです。
  222. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは、事態によっていろいろ考えられることでございますが、まあ直接侵略ということになりますれば、私は間接侵略という事態は、全体としてやはり直接侵略という大きな範疇の中に包含される場合が普通じゃなかろうかというふうに考えます。
  223. 受田新吉

    ○受田委員 直接侵略の大きな規模の中に間接侵略が包合される場合がある、その場合はその間接侵略の方が消えて、直接侵略だけでこの侵入を阻止するための防衛出動一本でいく、こういう形ですね。
  224. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 これは受田さんも御存じと思いますが、自衛隊法の九十二条で、防衛出動時には、同時に自衛隊に対しましては、公共の秩序維持のための権限も認められておるわけであります。
  225. 受田新吉

    ○受田委員 そこで問題になるのは、公共の秩序維持という立場で、治安維持という形で同時にとられる直接侵略に対抗する防衛出動によって、その方も一緒にやられる、こういうことで簡単に片づけられておるわけでありますが、実際問題として間接侵略が行なわれて、そこへ直接侵略がかかってくる場合がありますね、その場合はどうなりますか。
  226. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 今お尋ねのような場合には、初めは、間接侵略があれば間接侵略としてこの事態を処理する方法がとられると思うのでありますが、そこに直接侵略がかかってくるということになりますれば、今度は直接侵略として防衛出動その他の必要な手続がとられるということになろうと思います。
  227. 受田新吉

    ○受田委員 問題はそうした間接侵略の態様から直接侵略が伴うてくる、そういう場合も想定してこなければならぬことがあるのですね。その場合に、防衛出動の前に行なわれる治安出動、その際にはすでに非常に緊張した事態になっているはずです。緊張した事態に対処するのに、治安出動をする部隊の出動命令権が総理大臣だけにあるということは、これが一つの問題である。私からかねて申し上げておいたことですが、治安出動に対処するための出動命令権というものは、少なくとも国会という最高機関を通じてなさるべき性質のものであって、内閣総理大臣考え一つでそういう緊迫した事態に対処するのは、あまりにも総理が強権を持つことは不当である、これをこの際考え直していただきたいと思うのです。
  228. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 法律の解釈その他適用等につきましては、先ほど来申し上げた通りでございます。そうして、この間接侵略、いわゆる治安出勤の場合の現在の規定というものは、その性格からいたしまして、私は現法規で適当なのではないかと存じております。
  229. 受田新吉

    ○受田委員 こうした強権が、この規定は二十日以内という規定で、次の三項があるのです。あっても、内閣総理大臣権限というものによって出動させてしまうのですね。これは事前に何ら措置ができないことになるのです。そういうあまりにも強い権限が総理の腹一つできめられるということに対して、非常に危険がある。特に間接侵略から直接侵略に発展する過程が予想されるような事態においては、それが治安出動であっても、当然国会の事前の承認を得るという強い規定を書いておく必要があるのではないか。ただ単なる間接侵略でなくて、事態が急迫して、直接侵略を伴うような事態に対処する権限というものが国会の承認という一応の過程を経る必要があるというその場合は、私は特にあなたに考え直してもらいたいと思うのです。治安出動の内容の中にもいろいろあるのですよ。単なる警察事務的なものと間接侵略、しかも直接侵略に波及するような危険な事態、いろいろあるのですが、非常に強い場合をあなたもお考えになっておかれないと、総理に与える権限のはなはだ強大さが、かえって無謀な出動ということを、特定の閣僚たちの判定に基づいて総理がなす危険があるわけです。
  230. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 防衛出動をいたします場合に国会の承認を得るということは、これは対外的な関係その他もございますので、そうしておるわけでございます。そうしてまた、今受田さんが設問されました直接侵略があとからついてくるような間接侵略という場合を考えまするに、先ほど官房長がお答えしましたような、干渉の態様がある程度計画的な組織的な武力攻撃に該当するような、すなわち義勇軍というような形で組織的、計画的な攻撃が行なわれるような事態、それがさらに直接侵略に結びつくというような事態ではないかと考えられるわけなんです。そういう場合には、すでにその義勇軍等の形による組織的、計画的な干渉というものは、これは防衛出動とみなしておるわけでございます。従いまして、そういうものを除いた他の治安出動につきましては、現行の規定でよろしいのではないかと考えておるわけでございます。
  231. 受田新吉

    ○受田委員 私がここでもう一つ掘り下げてお尋ねしたいことは、そうした事態が起こった場合に、ただ単に総理大臣権限でやっていいということでなくして、この国防会議任務である「防衛出勤の可否」ということとあわせて、その次にある「国防に関する重要事項」その他の規定をもって、当然国防会議にこれを諮るという段階がもう一つ要るのじゃないか、こう考えるのですが、防衛出動の可否だけで、今あなたも納得されたような危険な状態における治安出動に対処して国防会議の相談すらも必要としないというお考えを持っておりますか。
  232. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど総理も石橋さんにお答えをいたしたのでございますが、間接侵略、あるいは少なくとも治安出動をするような事態というものにつきましては、これはもう非常に態様が多いと思います。従いまして、その態様いかんによりましては、国防会議の議を経るというようなことも当然考えていかなければならない問題であると存じます。
  233. 受田新吉

    ○受田委員 そこまで考える事態ということになると、国防会議と同時に、当然そうした全国的な規模で予想される間接侵略に対処するための部隊の行動ということになれば、それはもう局部的なものじゃないですからね。間接侵略の態様が非常に拡大された立場で全国的規模で行なわれるという場合に、治安出動を命ずるという場合に、国防会議と同時に、もう一歩前進して国会の事前の承認ということがどうしても必要になってくるのじゃないですか。これは法律を改正されるような重要な意義のある事項じゃないかと思うのですがね。
  234. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほどから申しておりまするように、そういう全国的な規模、しかも他国の干渉が相当に露骨であり、計画的であり組織的であるというような場合は、これはもう防衛出動にかかるわけでございます。従いまして、それ以外の点につきましては、やはり現在の規定でよろしいのではないか。しかしその中におきましても、やはり態様いかんによっては国防会議にかけた方がよろしいというようなものがあり得るのではないかというふうに考えているわけでございます。
  235. 受田新吉

    ○受田委員 この問題はある程度はっきりした法律的根拠を持っておかないと、政府の考えで国防会議にかける、あるいはこれは防衛出動であるというのでその方へ持っていくとかいうようなばく然とした態度で臨まれるということになりますと、その場に臨んで適切な措置がとれない危険がある。私はこういう少なくとも重大な治安出動の要素を持っている事態に対しては、国会の承認を得るというはっきりした規定、特に間接侵略の場合にはこれを特に摘記して、治安出動の際における大がかりな間接侵略に対する規定だけは、はっきりと国会事前承認という明文をここへ書き込む必要があると思います。どうですか。
  236. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在の規定におきまして、直ちにすべての間接侵略について防衛出動と同様の処置をとるということにつきましては、私はその必要はないのではないかというふうに考えております。しかし、今後におけるいろいろな間接侵略の態様その他を十分研究をいたして参りますならば、またそこにおのずからいろいろな意見が出るかと思いますが、現在におきましてはこの規定でよろしいのではないかというふうに考えております。
  237. 受田新吉

    ○受田委員 自衛隊の全部の出動と一部の出動があるのですね。自衛隊の全部の出動を命ずるような場合に、国会の承認を必要としないことは、これは片手落ちだと思うのです。自衛隊の全部が出るという場合は、非常に重大事態なのですからね。この点、全部の場合も一部の場合も内閣総理大臣の出動命令権で動けることになる。自衛隊の全部が動くという場合はどういの事態か、おわかりになりますか。
  238. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 間接侵略あるいは治安上必要だというような事態については、これはもう非常にいろいろな態様が考えられるわけでございます。従いましてたとい他国からの義勇軍その他のようなものがなくても、あるいは全国的に飛び飛びにいろいろな事態が起こって、全部の自衛隊を出動させなければならないというような問題もあろうかと思います。従いまして、単に自衛隊の全部を出動させるからというだけで防衛出動と同様の手続をとるということは、いかがかというふうに考えるわけでございます。
  239. 受田新吉

    ○受田委員 ここで長官。官房長でもけっこうですが、間接侵略の態様について、最近における国際間の紛争等で見られるいろいろな形式があると思うのです。どのような間接侵略の方式があるか、防衛庁として一応いろいろな場合の間接侵略を想定されていると思うのです。それは一または二以上の外部の国による教唆干渉云々という、そんななまぬるい解釈だけでなくして、自衛隊は、自衛隊法の七十八条に規定する間接侵略という場合には、かくかくかような場合の想定を前提にして自衛隊の出動を命ずることであるという一応の研究はできていると思うのです。その研究されている態様を、方式を御説明願いたい。
  240. 海原治

    海原政府委員 ただいまの御質問は、非常に広範かつ時間的にいろいろと変化をしていく部面を一挙に答えろ、こういうような御要求のように思うのでございますが、私ども防衛計画を検討いたす場合におきましては、今先生のおっしゃいましたようにいろいろな段階、事態の進展がございます。たとえばこの四つの島のあるところで一つの騒動が起きた。これが逐次ほかの島に移っていくこともございましょう。同時に二つまたは三つの地点において問題が起こったということもございましょう。あるいは純粋に申しますと、内乱的な場合もございましょう。そこで、ここには「間接侵略その他の緊急事態」と書いてございますから、たとえば内乱というものを想定いたしました場合には、これは間接侵略になるかどうかということは、そのときの状態によってやはり判断は違うわけでございます。私ども防衛計画を策定いたします場合には、その法律の解釈は別といたしまして、技術的な面だけをとらえて参りますので、ただいま御質問がございましたような自衛隊全部が出るということも段階的にはあり得る。しかし通常の場合においては、自衛隊の一部が出動を命ぜられる、しかしそのことがほかに波及していきます情勢の推移を見ておりまして、それぞれの他の自衛隊も所在において行動の準備をするということもあり得るかと思います。これがどういう形かということで直ちに御説明申し上げ得るような一つの設例そのものは、それ自体困難ではないかと思いますので、一つ御了承を願いたいと思います。
  241. 受田新吉

    ○受田委員 防衛の形をどうしていくかという基本的な問題に、間接侵略の様式というものを一応考えておられなければならぬと思う。それは地域的に、あるいはそのやり方の手段的にいろいろな場合があると思うのです。そういうものの研究はできていないのですか。
  242. 海原治

    海原政府委員 一応、一般的、抽象的には各種の事態の研究はできております。
  243. 受田新吉

    ○受田委員 その大まかに分けた間接侵略の様式を、ちょっとごめんどうですが御説明願いたい。
  244. 海原治

    海原政府委員 分類についての御質問でございますが、実は間接侵略の事態を想定いたしますためには、単に武力的な面だけでなしに、わが日本を取り巻きますところの国際政治、あるいは国内政治、あるいは経済情勢その他の要素がございます。従いまして、わが国を取り巻く情勢が非常にまずくなってきた場合に、ある地方におけるある一つの事件を契機にして、言うなれば内乱の芽のようなものが起こったということを契機といたしまして、ほかの地方に、たとえば具体的な設例を申し上げますと、国籍不明の潜水艦によって人員なり器材が運ばれてくる、こういうことはあり得るわけであります。何も潜水艦のみでございません。あるいはその他の水上艦艇によっても所要の人員が送り込まれてくる、こういう態様もございます。しかしこれは、北に起こった場合に必ず南に来るか、南に起こった場合に必ず北に来るかというようなことについては、私どもは防備計画を策定しますときに、一応各種の想定を立てまして検討いたすわけでございまして、その様式として分類する、A式、B式、C式というような形においての検討はいたしておりませんことを御了承願いたいと思います。
  245. 受田新吉

    ○受田委員 間接侵略の様式というものが分類されていない、具体的には申し述べることができないということでございますが、しかし実際に自衛隊を動員していく場合に、その場でその場で場当たり的に対処させられるような立場のものではない、いろいろな場合を想定して訓練がされておると思うのです。訓練方法においても、間接侵略のいろいろな態様を研究されておると思うのです。それをもしやっておられないとするならば、はなはだ怠慢である。私はそのように思うので、防衛庁長官、ただ単に間接侵略その他などと言って片づけないで、間接侵略にどういう形のものがあるか、最近における国際情勢その他の地域的な紛争等で事実の例が示しておるいろいろなものを前提とされて研究をされておく必要があると思うのです。必要がないのですか。
  246. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国防計画を立てます場合に、そういうあり得べきいろいろな事態というものを想定をいたし、それに対処するような方途は研究をいたしております。ただ受田さんが御質問になるような、一型、二型というような形ではございませんけれども、こういう場合にはどういう対処をするというようなことは、常に研究をさせておるわけでございます。
  247. 受田新吉

    ○受田委員 私が、それをお尋ねしてさらに次の質問に移りたかったのは、この治安出動の中で非常に重大な要素を持っておる重大事態に対処するための出動について、事前の国会承認というこのことだけは、一つ国会を尊重するという防衛庁立場からぜひそこへ切りかえていただけば、国会で十分討議してその結果治安出動したということであるならば、国民もある程度納得する面が起こると思うのです。総理だけの権限のもとにあまりにもこれが強く置かれてあるというところに問題があるので、もうこれはとらわれる時期ではないと思うのですね、重大な事態に対処する治安出動に対して、国会の事前承認を得るという一項を入れるのにやぶさかでない時代に来ていると思うのです。国民に、自衛隊立場というものを、これが制服の諸君が総理や防衛庁長官を動かして自由に行動できる部隊という印象を与えさせぬためにも、国会承認という一応の経路を踏むということは、あなた方の自衛隊を特に強化されようというお立場からも、国民の理解を深めるのにはなはだいい条件だと思うのです。長官、踏み切るべきときではないでしょうか。
  248. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 繰り返して申しわけございませんが、現状と申しますか、現段階において、私は現行法規で適当と考えております。また受田さんの御指摘になりますような重大な間接侵略と申しましても、いろいろの態様がございますので、なかなかそれをどう分けるかということも困難かと思います。しかしながら、せっかくの御提案でございますので、われわれもさらに研究は進めたいと思います。
  249. 受田新吉

    ○受田委員 せっかくの提案ですから、研究を進めていただきましょう。これはもう踏み切っていい、国民自衛隊立場を理解させるというあなた方の御主張からも、この規定はぜひ一つ改正をしていただく御用意を願いたい。研究の結果が善処される方向に行くことを期待しております。  さらにこの機会に、この間接侵略につながる緊急事態、内乱、暴動、こういう場合の具体的な例として、昨年の末末無に発覚してそれが防止されたのでございますが、例の旧軍人の一部と、また旧軍人が一部自衛隊にも働きかけたということが伝えられておるのですが、あのクーデター事件というものは一体どのような取り扱いがされ、そうして自衛隊に働きかけたというあの関係の善後処理はどうされたか、まだ正式に防衛庁当局からお聞きしておりませんので、クーデター事件の跡始末を御報告願いたいと思うのです。
  250. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先般の国史会事件と申しますか、三無事件と申しますか、これに関連いたしまして、自衛隊員の中で何かの働きかけを受けた者があるのではないかということでございます。この点につきましては、われわれといたしましても事前に察知をいたしまして、十分警察当局と連絡をとりつつ調査を進めました。一部、この事件に関係した者と面会その他をいたしております者がございます。しかしながら、このクーデターの計画そのものその他を打ち明けられた者はございません。一般的な国情について、あるいは国内情勢等について意見を求められた程度でございます。しかしながら、その結果、そうした事件の当事者の供述その他の裏づけのために、参考として捜査当局に出頭をいたしたものはございます。なおこれに関連をいたしまして、上司への報告その他につきまして、必ずしも万全でなかった点もございますので、これらに対しましては、さらに厳重にこうしたことについて、十分な注意を払うように訓告を与えております。
  251. 受田新吉

    ○受田委員 訓告を与えられて、一応片づいたという形になっているわけですか。今後の自衛隊の教育方針訓練方針等に関連して、クーデター事件に関与するようないろいな将来の懸念というものを一掃をするために、防衛庁長官としてどのような決意を表明されているか、御答弁を願います。
  252. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 どこまでも民主主義と申しますか、民主的手段というものの尊重ということが中心であります。従いまして、従来の教育、訓練といえども、十分その辺を留意して幹部が訓練をいたしておるわけでございます。今後も常に民主的な手段、ことにみずからの使命を十分察知いたして、また広い視野に立った判断というようなものを十分に養成をいたしまして、クーデターのような民主的手段によらざる処置というものがいかに民主主義の敵であるかということについての十分な教育をいたして参りたいと思います。
  253. 受田新吉

    ○受田委員 私は、先日来の質疑応答を通じて、文官優位の原則が適当でないという声が政府の皆さんの中にもほうはいと巻き起こっている事態もよく承知しておりますし、また現実に内局の皆さんを率いておられる長官としても、少人数で、ただ単に部員だけで大事な企画運営をされておられるお立場というものを一応御理解はできるのでございますが、このクーデター事件というようなものを契機として、私たち非常に懸念しておるのは、制服をまとうた方々が自分の力を過信視して、何をしでかすかわからないという危険に陥ると私は思うのです。これは全然さようなことはないと仰せられたとしても、一応そのことを前提にして、そういう事態も含めて、防衛庁長官は部内の統制をおはかりにならなければならない。特に源田空幕長が参議院に立候補されるというような事態を考えてみますときに、防衛庁という制服を中心としたお役所の中のどこかに、権力の座にありつきたい、何かの機会に芽を吹きたいという内蔵した力がひそんでおると思うのです。長官、この点特に御留意されて、部内の統制に十分注意をされることを希望しておきます。  いま一つ、これに関係をすることでございますが、この国防の基本となっていく大事な規定に基づいて防衛力を増強される防衛庁立場から特に問題として取り上げてみたい点は、あなた方のお考えの中に、国防省にしたらとか、省という名がつけば何とかなろうとか、降級が大将、中将であるならば何とか階級的な意識が高まろうという、そういうさもしい気持でこの問題をお考えなされることなくして、真に今あなたの前に私が要求しているような強い立場を部内統制の基本とされようとするならば、防衛庁でいいじゃないですか。階級も、今のままでいいじゃないですか。これを前進させようという気持を持たないで、現状において十分目的を果たせるように思うのでございます。不要な防衛省とか国防省への昇格とか、大将、中将の名称の復活というようなことはお考えになられないで、実質的に長官権限が十分行使されるような空気をお作りになる方が賢明だと私は思うのですが、長官、御反省の意思があるかないか、答弁を通じてお伺いいたします。
  254. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 現在の防衛庁の構成、組織その他は、私は各省と同様な立場にまで成長をいたし、従って、そういう意味での省にするということにつきましては、その内容はできておるのではないかと思います。しかしながら、事防衛に関することでありまして、そうしたことがよいか悪いかというような問題につきましては、広く各方面の御意見を聞きつつ決定をして参りたいと思います。しかし、その前におあげになりました、よく部下の統率をいたし、またその間にあって十分に自衛隊全体を把握するという心がけにつきましては、私は努めてそれに努力をいたし、そして御懸念のようなことのないように今後も努めて参りたいと存じます。
  255. 受田新吉

    ○受田委員 私はあまり時間をかけないで、ポイントだけをお尋ねしておきますが、今のあなたの御決意、これを具体的に表わす方法として、私は大へんお気の毒な立場にある自衛官の身分を考えてみたいのです。最近は非常に解放されてきたと思うのでございますが、自衛隊そのものに対する国民批判の分野が相当大きいので、それに対して小さくなっている自衛官という身分の皆さんに対して、われわれとしては、自衛隊のこうした伸び方に対しては絶対に承認ができないのでございますけれども、しかし、一たび自衛官として採用された人に対して、卑屈感とかいうものがなくてその勤務に精励できるような、そういう立場を与えてあげなくちゃならない。最近における陸上だけの自衛官の不足が二万九千と御報告をいただいております。この莫大な不足ということを考えてみましても、募集の上にも心を配られて、自衛官の身分というものが十分保障されるような形で、長官としては御措置をされなければならぬと思います。最近における自衛隊員の募集の方式などを伺うと、新聞等の報道を見ると、武蔵野警察のごときは、警察官が戸口調査のリストを作って、そしてこれは自衛官によかろうという、警察事務の防衛庁に対する協力がされている。これはもちろん自衛隊法の、募集事務の一部委任という九十七条の規定に基づいておやりになったのかもしれません。それでやられたならやられたでけっこうです。しかしやられたにしても、一警察官が戸口調査をもとにしてリストを作るということは、これは行き過ぎだと思います。こういう問題について、私は幾つもの資料を持っておりますが、昨年の暮れに海上自衛隊航空自衛隊のそうした応募手続に、中学の子供が年令を偽ってこれに応募して、そして仮合格書を発行されております。こういう事件が幾つも出ている。またついこの間でしたが、広島の原爆のあの中心地においてすわり込みをした原水協の人々に、自衛隊みずからが乗り出して、隊員応募のビラを配っているということも、これは新聞報道で確認をしておるのでございます。最近における募集方式というものの中には、自衛隊の権威を疑わしめ、自衛官の権威を失墜するような幾つもの事態が起こっておるということは、これは私防衛庁長官として忘れてはならない、御注意を徹底させなければならぬ事項だと思います。御答弁を願います。
  256. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 自衛官の募集については非常な困難を伴っておりますので、いろいろな方式を工夫し努力をいたしております。しかしながら、その間において自衛隊の権威を失墜するような方法というお話でございます。われわれは努めてさようなことのないように注意をいたしておりますが、そういう御注意については十分に今後も心してやって参りたいと思います。要は十分に国防なり国の防衛なり、あるいは自衛隊のあり方等について国民の皆様方の深い御理解をいただくことが中心でございまして、そのように努めて参りたいと思います。
  257. 受田新吉

    ○受田委員 特に中学校の家出少年のような者にまで、これは千葉連絡所の事件になっておるわけですが、仮合格書を出して、そしてそれが非常に悪いことをしておる少年であるので、学校当局も大へん迷惑をされておる。仮合格書を出されるというときには、もう少し実態を把握してお出しになるべきです。この中学校の受け持ちの先生にしても、自分の教え子がこういう事態になっておるので非常に残念がっておられるわけです。原水協のすわり込みをしておる人々に募集ビラを配るなどということも、これはちょっと常識では考えられないことです。警察官の協力事務というものは、委任された事務の中に戸口調査をやるということがあるのでしょうか、自衛隊法九十七条の規定その他によって、これは人事局長さんでけっこうだと思いますが、こまかい規定のようでございますが、防衛庁の威信に関する根本問題でございますから、募集の方法で具体的事例を引いて私はお尋ねをしておきます。
  258. 小野裕

    ○小野政府委員 千葉具の仮合格書の問題でございますが、御承知のように一応願書を出しまして、試験がございます。さらに身元本籍の調査等もあるわけでございます。その間ある期間がかかるわけでございます。かりに試験に合格いたしまして、さらに正式に採用になるまでの期間というものは——本人の方では、やはりその間安心をしたいから仮合格の証明書をくれというような申し出がある場合もあるわけであります。そういうようなことで渡したのだと思うのであります。ただ、この者につきましても、本籍その他の調査をいたしましたときにおもしろくない者であるならば、もちろん採用いたしておりません。この点につきましては、別に問題になりました街頭で募集した者につきましても同様でありますが、これも、あまりに一見しておかしい者は勧誘をいたしません。しかしながら一応まともな話をする、まともな人間であるということで、本人もその気になって試験を受けまして合格いたしますと、やはり本籍照会、住所照会がございます。そういうようなことで、いわゆる浮浪人、愚連隊あるいは住居不定とか、こういう者は身元調査をするときに当然調査ができないわけでありまして、そういう者は入隊できないわけでございます。そういう意味で、今の場合仮合格書を出したことは、おそらく一つは足どめであろうと思いますけれども、また一つは、本人からの希望ということもあるわけでございまして、こういうものの出し方については、時と場合によってこれを区別すべきであろう、その点は反省いたします。  それから武蔵野関係でございますが、警察官が戸口調査をする際に勧誘して回ったということでございますが、この点につきましては、本来は警察官はそこまで募集事務に協力していただく建前になっておりません。しかしながら、非常に自衛隊に好意を持ち、自衛隊の現状について同情といいますか、好意を持った警察官が、ついでに、お前のところの若い者は遊んでおるようだが、自衛隊にどうだと口をきいてくれた好意であると考えます。これもまことに例外的なことでありまして、警察署はそうした第一線の戸別の勧誘、募集まで手伝っていただくということは、建前としてはございません。  広島の例でございますが、この場合も、いろいろな考え方がございますが、また大勢の方の中には、原水爆そのものについては心から反対であるけれども、自衛官として身を守るということについては同感する者もいないこともないわけでございまして、これも程度の問題、あるいは状況によるのでありますが、一がいにけしからぬというようなことでもないのではないか、このように考えております。
  259. 受田新吉

    ○受田委員 募集には無理がいろいろな面に出ております。十七才という年令まで募集年令を引き下げようという計画があるのでございましょうか。
  260. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 募集の問題に関連いたしまして、年令を下げたらどうかというような意見もございます。しかしながら、これはいまだ研究の段階でございまして、今後さらにいろいろそうした場合の起こり得べき事態その他も考えなければなりませんので、今後も研究を続けたいという程度でございます。
  261. 受田新吉

    ○受田委員 十七才という年令に引き下げることが適当かどうかを今研究しておる、こういうことですね。私は年令の問題をあまりこまかく取り上げたくもないのでございますが、しかし十八才というのは、これがもう公務員の採用の最低の基準であることは長官御存じ通り、十八才の青年男子がすべて標準生計費の基準にもなっておる。防衛庁がこれを十七才に下げるということになれば、心身の発育等において差しつかえない面もある。生徒のような立場で、一応自衛隊に入れたいというような立場とつながりもあるわけですけれども、自衛官として採用する年令として十八才という基準を引き下げることは、この際お避けになった方がいいと思う。いかがですか。
  262. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろんそういう一般的な問題もございます。御承知のように、いわゆる少年自衛官というような制度も自衛隊にはございますけれども、いわゆる一人前と申しますか、一人前の自衛隊員として採用するのにどの程度の年令がよろしいか、十八才をさらに引き下げていくのがいいかどうかという問題については、十分慎重に研究しなければならない問題だと私は思うのでございます。
  263. 受田新吉

    ○受田委員 順調に募集が進めば、そういう問題も起こらなかったと私は思います。そうですね。
  264. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 募集が非常に困難であるから年令を引き下げるというだけの問題ではございません。早くから自衛隊に協力し、また自衛隊になじむというような問題も考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても、御指摘になりましたように、他の公務員との関係もございますし、また十七才という年令が一人前の自衛官として適当かどうかという問題もございます。慎重に考慮をいたしたいと考えております。
  265. 受田新吉

    ○受田委員 さらに募集の無理といいますか、これはちょっと別問題のように見えて、募集に関係するのですけれども、国際オリンピック大会が東京で開かれることを契機にして、自衛隊の実力を大いに競技面でも発揮したいという無理が手伝っておるのでしょうか、重量上げとか、レスリングとかいう選手を、この間沖縄の人でしたか、どこかそうした競技の選手を好ましい人物だというので特例で採用したとかいうことも聞いておるのですが、そうした競技面における実力を持った者は、多少自衛官としての素質が悪くても採用する、オリンピック勝利のためには手段を選ばずというお考えがあるかどうか、実態を十分御報告願いたい。
  266. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん自衛官に採用いたしますのには、自衛官の適格性を備えた者でなければならないのでありまして、単にスポーツ面ですぐれておるからというだけで採用するような考え方は持ちません。ただ若い人がたくさんおる自衛隊でございますから、中には非常に能力のある者もあって、これは訓練いかんによりましては相当な能力を発揮できる者もございます。そういう者につきましてはそれらの特技を生かして参りたい。ことに、たとえば近代五種というような他の一般の学生や社会人においてはなかなかやりにくいというような問題につきましては、特に勉強させたいと考えておりますが、オリンピックに関連いたしましては、むしろ私はこの支援業務を十分に研究させ、そしてオリンピックがスムーズに行なわれるように努力をいたしたいと考えておるわけでございます。
  267. 受田新吉

    ○受田委員 そうした募集面のいろいろな問題をさらに突き進んでほかに進めまするならば、なかなか人材の得がたい職種があるのですね。たとえばお医者さんの自衛官など、あなたの方の資料を拝見しましても、採用の計画数と応募者数と比べてみますると、非常に応募者数が少なくて、医官のごときは十分の一のような応募者のところもあるわけです。これで自衛官の健康保持ということが可能であるかどうかという懸念さえあるような情勢であるわけです。こういう問題は、防衛大学の出願者が多いからという安心感でなくて、一般自衛官、特に陣上自衛官などの下級自衛戸の採用が非常にむずかしい、応募者が少ない、お医者さんが少ない、こういう事態に一つ一つ解決の糸口を見出して、自衛隊の全体の権威を保つ努力をしなければならぬと思うのです。こうした具体的な問題について、何らか防衛庁の権威を保持するための対策があるかどうか、御答弁を願います。
  268. 小野裕

    ○小野政府委員 医者の充足対策でありますが、お話のように、現在衛生自衛官は定数の約半数程度欠員でございます。しかし、一方におきまして衛生貸費学生制度を設けまして、現在四百数十名のワクをちょうだいしております。年々百名前後の卒業生が出るわけでございます。この大学の医学部を貸費学生として出ました者を直ちに幹部候補生として採用いたしまして、またインターン等をやらせまして、一年たちまして免状をとりましたならば二尉として採用しておる、そういうような形で、徐々ではありますが、回復に努めております。また一度任官いたしました衛生自衛官につきましては、昇進、昇給というようなことにつきまして特別な考慮を払っております。年々予算面で出ておりますが、その確保というような形で、できるだけお医者さんにも長く続いていていただくようなポストを作りまして、あるいは定年も若干延ばしておるのでありますが、このようにして、若干ではありますが医者の優遇策をとりながら、逐次埋めて参りたいと努力しておるわけであります。
  269. 受田新吉

    ○受田委員 自衛官の下級者の募集がなかなかむずかしいということ、それとあわせて、自衛隊に入ってから一等の下士になった程度でやめなければならぬというときの停年という問題がある。四十才で停年にされたのでは、それからどこへ行くかという問題がある。こういう現実の問題に防衛庁はどう取り組んでおられるか、優秀な自衛官を得ようとすれば、退職後の保障も当然考えておられると思うのですが、御答弁願います。
  270. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 第一に一般的ないわゆる士のクラスにつきましては、自衛隊に二年、三年あるいは四年勧めまして除隊をした者が、有利な条件で第二の人生のスタートを切れるというようなことにつきまして、十分経営者側とも連絡をとりまして、逐次改善の方途を考えております。今御指摘の、長く隊おります者の停年制の問題でございますが、自衛隊の性格といたしまして、停年制のありますることはやはり必要だと存じます。しかしながら、必ずしも各国等に比べまして停年の年令が高いとは言えない、むしろ低いわけでございます。これらについては、単に曹のクラスばかりでなくて、全体といたしまして考慮していかなければならないので研究をいたしております。何分にも相当財政的な負担もあるわけでございますから、これは十分な研究を積まなければなりませんが、そういう方向研究をいたしますと同時に、先ほど来お話のありまするような自衛官全体についての待遇という問題につきましても、ぜひ有形無形の待遇の改善をはかりまして、自衛隊に喜んで入隊してもらえる人が多くなることを期待しておるわけでございます。
  271. 受田新吉

    ○受田委員 自衛隊の中へ一度入ってやめた、しかしまた自衛隊員を希望しようという者のために、再就職希望者に対していかなる措置がとられておるか。
  272. 小野裕

    ○小野政府委員 ただいまのところは、曹以下の階級につきましては、一度任期満了あるいは任意に退職いたしましても、再任用してほしい、再就職したいという希望者に対しましては、やめたときの階級で再任用するということに昨年来規定を改正いたしまして、現にそうして戻ってきている者がふえてきております。
  273. 受田新吉

    ○受田委員 私は、自衛隊から民間航空に行きたいというパイロット、また民間航空から航空自衛官の幹部になる、こういういろいろなケースが出てくると思うのですが、そのケースも考えたのですか。その分も含んでおりますか。
  274. 小野裕

    ○小野政府委員 特別な技術、あるいは経験を持っております者は、幹部及び曹につきましても、これは士からやらず、あるいは防大からやらないでも採用のいたしております。たとえば技術者であるとか、あるいはパイロットであるとか、こういうものについては、採用の制度がすでにあるわけであります。ただパイロットにつきましては、今のところは全部自家養成でございますが、一度やめました。パイロットについても、再就職のこともあり得るわけであります。幹部及び曹につきましては、技術及び経験を持っておる者は特別の任用をする規定がございます。
  275. 受田新吉

    ○受田委員 その規定があっても、パイロットが自衛官に逆戻りした例がございますか。
  276. 小野裕

    ○小野政府委員 パイロットにつきましては、まだその例はございません。それは現実には、これまではパイロットはもっぱら養成過程にございましたので、出すことを控えておりました。やめる者はよほどの事情でやめていったわけであります。それがまた戻ってくるということはまずなかったのであります。まあ今後、先になりますればそういう道は当然開けてくる。そういうことも起こってくると予想されます。
  277. 受田新吉

    ○受田委員 募集について、また退職した後の再応募等について、常に親切な心で、その処遇について心を傾けておかれないと、自衛官の権威を保持するということが不可能になってくるわけです。自衛官として一たび採用された皆さんに対しては、少なくとも国家として、たとい自衛隊に対する批判はあろうとも、その人自身については何らかの形で一応その生活を守って、将来に希望を与えなければならぬ、私はそういう立場をとっておるわけです。この点を十分留意せられまして、適切な御措置を願いたい。  いま一つ、陸上が二万九千人も足らぬということでございまするが、これは装備との関係で、はなはだ私たち不安があるわけですが、今の進み行く自衛隊装備は、予定された定員をもとにされておるのか、あるいは現在の定員に足りない人々の実態に即して装備考えておるのか。この装備と人員との関係について御説明願いたい。
  278. 海原治

    海原政府委員 装備と定員との関係でございますが、現在私ども考えております装備は、あくまで定員を前提にいたしております。
  279. 受田新吉

    ○受田委員 定員に対して三万近くも足りない立場で、その装備を使いこなせるのかどうか、御答弁願います。
  280. 海原治

    海原政府委員 先ほど御答弁のありました予備自衛官制度というものがございまして、現在定員は一万七千、今度二千人ふやしていただきまして一万九千人にしたい、こういちことでお願いいたしておりますが、ただ予備自衛官というものが、現実には事態が起こりました場合の差しあたりの補充になることは、一つ考え方でございます。と同時に、この第二次防衛五カ年計画が完成いたします四十一年度末には、先般来いろいろと御説明申し上げましたが、いろいろな施策を講じまして、定員の充足率というものは現在よりもはるかに改善されるという前提のもとに、装備そのものは一応定員を前提にして私ども考えております。
  281. 受田新吉

    ○受田委員 定員を前提とした装備ということになっておる以上、三万人近くも足りないということになりますと、実際はその装備を使いこなしていないということですね。また隊員が非常に無理をしているということですね。もしそれが足りなくても済むなら、初めから定員を十五万にして、装備に対応させるところの定数としておきめになっておく方がいいわけです。これは現実の問題として、防衛庁として当然私は考えるべきじゃないかと思うのです。
  282. 海原治

    海原政府委員 各部隊におきます装備品というものは、今お話のありました点も考慮いたしまして、たとえばかりに連隊に車両が五百あるといたしますと、通常部隊の用に供しますもの、あるいは演習に供しますものはその一部、二百両でございます。残りの三百両は、いわゆる保管車両といたしまして、直ちにこれは解除できる形にありますが、一応状況の良好な状態において保管する、こういう形でやっておりますので、かりに定数通り装備がございましても、その保管、整備のために非常に苦労しているということではございません。と同時に、編成装備表に書いてございます装備品につきましても、現在これが全部整備されているというものではございません。それぞれの品目につきましては、予算との関係もありまして、一応この装備品は何%、この装備品は何%ということで逐次計画的な充足をいたしておりますので、現在のところでは、先生の御心配になっておりましたような人員不足のために装備をもてあますというような事態は招来いたしておりません。
  283. 受田新吉

    ○受田委員 実際それでありますならば、定数を引き下げることもいいわけですね。無理をしなくてもいい、こういうことが言えますね。機械がだんだん近代化されて、オートメ化されてくると、人が足りないという問題とは別の問題ですから、従って、この定数を埋めるという現実の問題は、はなはだ困難であるという段階は当分続きますか。
  284. 海原治

    海原政府委員 当分続くかということの当分の解釈でございますが、私どもといたしましては、第二次計画の期間におきまして事態が改善されますことを確信いたしております。と同時に、もし万一この間に何らかの緊急事態を招来いたしました場合には、先ほども申しましたような予備自衛官のほかに、かつて自衛隊に職を奉じておりました者が急遽大量に応募してくるものという期待を実は私は個人的には持っております。こういうかつて自衛隊におりました者が、相当なそれぞれの職種に応じた技能を持っております。その際におきましては、予備自衛官の定数の増加ということを国会にお願いいたしまして、これによりまして現在の編成表に予定しておりますところの装備は完全に充足し得る程度の人員が得られるものと、こういうふうに考えております。
  285. 受田新吉

    ○受田委員 第二次長期防衛計画の完成年度においては充足が可能である、こういう見通しだとおっしゃいますけれども、これまで自衛官の不足は年を追って進んできているわけです。これは毎年々々ふえているわけですね。陸の自衛官の不足が累積されて、二万九千になっている。この累積された過程で、この不足分が補われた年があったでしょうか。昨年とことしはどれだけふえたでしょうか。
  286. 小野裕

    ○小野政府委員 自衛官の定数が九五、六%、ほぼ充足いたしましたのは昭和三十四年度まででございまして、五年度、六年度と落ちたわけでございます。
  287. 受田新吉

    ○受田委員 年を追って減っているわけです。この傾向が急に改善されようとは思いませんし、それを可能として、その可能という前提のもとに装備の強化をはかっていかれることになると、人的資源と物的資源との間のつながりにはなはだちぐはぐが起きると思います。第二次長期防衛計画を前進させようという毎年々々の計画も実は伺いたいのですが、その年次計画、そしてその年次計画を進めるのに、三十七年度予算の中に第二次長期防衛計画のものがどのくらいあって、前の継続分がどのくらいあるかという分類もお伺いしたいのでございますが、そうしたことに関係をして、この人員不足を補う対策、装備の近代化、進展という問題とのつながりは、第二次長期防衛計画をお進めになろうとする最高責任者の一人である藤枝さん、自信をお持ちでしょうか。
  288. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいまもお話がありましたように、三十五年度あるいは三十六年度の上半期等におきましては、この欠員というものの状態、あるいは自衛官の募集状況が漸次悪化しておりまして、その後のいろいろな施策と相待ちまして、募集状況その他はやや改善の方向に向かっております。御承知のように期別ごとに隊員の入隊を見ますので、そのときそのときでの変動はございますが、全体としての傾向は改善の方向に向かっております。もちろん経済の発達に伴う年少労働者の需要の増加とにらみ合わせて、なかなか困難なことではございますけれども、私はこの施策を遂行して参りますならば、相当な充員を見ることができるというふうに考えているわけでございます。しかもすでに御承知のように、そういう意味も含めまして、陸上自衛隊におきましては、定員の増加よりも、その定員を充実するという面を強く打ち出しているような次第でございます。
  289. 受田新吉

    ○受田委員 陸上自衛隊の定員増を漸次縮少されてきていることは、最近において十分承知しております。しかしこの際二万九千人も不足しているという現状は、非常に厳粛な現状ですから、この現状に対処するために、陸上自衛官を十五万人と抑えて、整理して、それで定員一ぱいが満たされているという形で計画をお進めになるという方が、むしろ現状に即した賢明なやり方ではないかと思う。現実にいない人を相手に定員ばかりがはみ出て、その予算が、自衛官の給料を一万円として、三万人で五十億くらいのお金が結局定員を満たしていない部分で節約できるわけですが、そういうような形を変則のままでこのまま続けるよりは、はっきりと装備の近代化に対処するために、人間は減らして、十五万人で押えて再編成する、そういう形の方が国民にもはっきりして、自衛隊に対する信頼も深まると思う。自衛官が足らないそうだというよりも、むしろ定員減によって、新しい体制に即応した防衛計画を進めるという賢明な策をおとりになる英断をお持ちかどうか。
  290. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私といたしましては、現在お願いをしております定員は、わが国の陸上自衛隊としては必要な定員だと存じております。欠員があるから、その分だけはむしろ減らした定員にしていろいろ考えたらどうだというお話でございますが、むしろこの必要な定員を満たすための各般の諸施策を強力に進めていくということが必要と考えております。
  291. 受田新吉

    ○受田委員 最近では人をふやすという問題よりも、装備の強化をはかっていくという方に重点が置かれておると思います。そういう際に、一応獲得した人数がいるからという立場ではなしに、あっさりとこの際方針を転換されるという賢明な策をおとりになる方が、私は自衛隊の現状を打破するのに一番いい方法だと思います。  それから予備自衛官をもって埋めるとおっしゃっておる。今までは陸上だけのようですが、最近では海も空も予備自衛官の募集の対象になっておりましたかね。
  292. 小野裕

    ○小野政府委員 海空も従来から予備自衛官は採用できる建前でありましたが、実際には採用して参らなかったわけであります。また少なくとも海空は、現在のところ充足状況も良好でございますので、今のところもっぱら陸の方で予備自衛官を集めていくということにいたしております。
  293. 受田新吉

    ○受田委員 予備自衛官というものも、現役を離れてくると、機械の使いこなし方も遠ざかってきておるわけで、なかなかこれは現役と比べて思うように使い得ないと思うのです。昔の現役と予備役と同じようなものですからね。その意味では、現役ではっきりしたものをつかんでいくという立場をおとりになることが賢明だと思います。私これ以上お尋ねしますまい。一つの賢明な解決策として進言を申し上げておきます。  いま一つ、だんだんと文明の進歩、兵器の進歩の過程において、有人機が無人機にかわろうという時代が来ておる。最近のようにああして航空自衛隊員がどんどん死んでいくような事態を考えるときに、私は尊い生命が自衛隊のためと言いながら、しばしば葬られていくというこのことに対しては、あの新聞記垣を読むたびに胸が詰まるのです。実際そういう事態をなくするためにも、有人機から無人機へ切りかえをするという形をおとりになる方が賢明な策じゃないかと思うのです。そして攻撃的な性格でなくて、今のようなF104のような形のものではなくて、もう人がいなくてももっと簡単にこれが調達できるような形で、無人機時代に対処する防衛庁方針をおとりになった方が賢明じゃないか、かように思います。無人機を全然研究していないのかどうか、御答弁願います。
  294. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 特に防空用の飛行機といたしましては、だんだんと有人機とミサイルとの両方の比率が、ミサイルの方に傾きつつあるという全体の大勢だと思います。しかしながら、有人機にはまた有人機としての必要性もございますので、全部が全部無人機等に変えていくということはなかなか困難なことと思います。またその他の任務を持った有人飛行機もあるわけでございます。しかしながら、特に防空用等につきましての地対空のミサイルその他につきましては、今後も研究をして参りたいと考えております。
  295. 受田新吉

    ○受田委員 もちろん誘導弾と航空機の両分野にわたる無人機の問題でございますから、これは研究するとしてもよほど骨が折れることだと思います。しかし航空機のこの大きな犠牲を前に、私たちはこうしたミサイル時代を迎えたときには、有人機のみをたよりにする方式ではなくて、無人機の研究ということ、無人機へ切りかえていくという考え方防衛庁の中にあるかないか、今のところ無人機の製作、調達ということは全然考えていないという立場をおとりになるのかどうか。
  296. 海原治

    海原政府委員 ただいま大臣からもお答えいたしましたように、無人機につきましては各国とも研究いたしておりますが、まだ有人の飛行機にかわる程度のものは開発されておりません。具体的に防衛庁といたしましては、標的機といたしましては無人機を使用することについて、この研究開発はある程度進んでおります。現に試作機として一、二のものはテストを終っておりますが、この第二次計画の期間中には、今先生のおっしゃいましたような意味における無人機の出現ということは、現在の状況から申しまして非常に困難なことではないか、このように考えております。
  297. 受田新吉

    ○受田委員 無償援助から有償援助、さらに輸入、国産というふうな形でいろいろな兵器が作られてきておるわけですけれども日本国自身としてこの人的資源の犠牲を多くしないという立場からの研究をお続けになる必要はないのか。  もう一つは、現状がパイロット養成に事を欠いて、飛行機はできたけれどもF104——が四十七機ですか、ことしもできるようですが、これに対するパイロットがいないというような現状で、なぜこの増産を急がれるかということも別の方で起こってくるわけです。そういう意味で、特に航空機の場合は数をふやすことのみにきゅうきゅうとされないで——しかも一機の生産に非常な費用をかけるという現状を考えたときに、少なくとも現在ある兵器を大事に使って、人間を大事に使っていく、粗末にしないという基本方針をお持ちにならぬと、自衛隊を希望される人にしても、いつ事故が起こるかもしれぬという不安を抱きながらやるということは、承詔必謹の時代は別ですけれども、現状においては自衛官幕集に事を欠く理由一つにもなると思うのです。ここを一つ特にお考え願って、装備の近代化とあわせて、そうした人的資源の確保、経費の節約というところに重点を置かれて、信頼される自衛隊としてしっかりがんばっていただくことが自民党の立場から見て賢明だと思うのです。長官、御答弁願います。
  298. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん自衛官の安全ということは最も中心に考えなければならないわけでございます。さような意味におきまして、今後とも十分注意をして参りたいと思います。
  299. 受田新吉

    ○受田委員 ことにまたアメリカが太平洋で核実験をやっておるのです。このような事態を考えてみたときに、来月の中旬にはこちらに死の灰が来ると予想されておるのです。自衛隊の御研究が、こうした戦時状態でない平時的な立場において、そういうでたらめをやる国々の核実験の犠牲を多く受けないためのいろいろな手だても同時にしておかれる必要がある。来月中旬に降りかかる危険のある死の灰対策を、自衛隊としてどのような御措置をされようとしておるか。やはり一番たよりにしておるのは、科学技術庁の関係もございますけれども、こうした災害対策という意味からもぜひ早急に御研究をされなければならぬ問題だし、ある程度の対策が出されておると思うのです。
  300. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 放射能の対策につきましては、御承知のように科学技術庁が中心になってやっております。これは単に防衛というような考え方でなくて、国民生活の全般にわたることでございますので、その形はけっこうだと思います。  それから高々度の放射塵の収集等については、自衛隊は協力をいたしておるわけでございます。今後科学技術庁を中心にいたしました対策本部の施策の中におきまして防衛庁がいかなる役割をするかということにつきましては、十分各省と連絡をいたしまして果たして参りたいと思います。
  301. 受田新吉

    ○受田委員 自衛隊任務が、国内における災害対策というところに重大な使命を持っておると同時に、こうした不時の災害——でたらめをする国々の暴挙に伴う災害防止という点についても、現在の自衛隊の機能を最高度に生かす道を十分考えていただきたい。戦争目的でなくして、平時にいろいろな災いを防ぐために貢献をされるというところに自衛隊に対する感謝の気持が国民にあるわけです。災害出動などに御協力いただく自衛隊に対する感謝が、自衛隊に対する批判をある程度押えておるわけです。日本自衛隊をすなおに育てるために、どうか死の灰対策につきましても防備庁のあらゆる機能機関を動員されまして、科学技術庁などという特定の役所におまかせされるだけではなくして、装備の点においては何かの形で一番貢献できる役所でございますので、むしろ藤枝さん御自身が、防衛庁の中に死の灰対策に協力できる面はないかと、いろいろ内局も制服も動員されて懸命に研究されて、形だけの協力でない、本質的な協力を要望しておきます。  質問を終わります。
  302. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 さきに石橋委員質問に対して答弁を留保されておりました久保装備局長から発言を求められております。久保装備局長
  303. 久保忠雄

    ○久保政府委員 けさほど御質問のありましたロッキードF104の沈下速度でございますが、一分間に千五百五十メートルという数字が出ております。
  304. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ちょっと問題がありますけれども、この質問はあしたに譲ります。
  305. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次回は明二十八日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時十一分散会