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1962-04-25 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十五日(水曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君    理事 草野一郎平君 理事 堀内 一雄君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 山内  広君       安藤  覺君    内海 安吉君       大森 玉木君    倉成  正君       島村 一郎君    辻  寛一君       藤原 節夫君    保科善四郎君       飛鳥田一雄君    緒方 孝男君       田口 誠治君    受田 新吉君       片山  哲君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  笹本 一雄君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  小野  裕君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         防衛庁参事官         (装備局長)  久保 忠雄君         調達庁長官   林  一夫君         調達庁次長   眞子 傳次君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁総務部         会計課長)   大濱 用正君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     沼尻 元一君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         運輸事務官         (航空局長)  今井 榮文君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁不動産         部連絡調査官) 高野藤吉郎君         外務事務官         (アメリカ局安         全保障課長)  高橋正太郎君         運輸事務官         (航空局国際課         長)      林  陽一君         運 輸 技 官         (航空局技術部         管制課長)   泉  靖二君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 四月二十五日  委員高橋等君及び受田新吉辞任につき、その  補欠として安藤覺君及び片山哲君が議長指名  で委員に選任された。 同日  委員片山哲辞任につき、その補欠  として受田新吉君が議長指名で委  員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第八七号)      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  前会に引き続き質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 いろいろなことを伺いたいのですが、まず最初に、先般小田原で起こりました自衛隊機墜落の問題について、防衛庁長官に伺いたいと思います。  自衛隊機の航行について、いろいろな航空法条文適用除外が出ておりますが、航空法七十五条は適用除外にはなっていない条文だと思うわけです。この七十五条を見ますと、「その航空機に急迫した危難が生じた場合には、旅客の救助及び地上又は水上の人又は物件に対する危難防止に必要な手段を尽し、且つ、旅客其の他の航空機内にある者を去らせた後でなければ、自己の指揮する航空機を去ってはならない。」こういうふうに、他の安全を守るための条文です。こういうものが適用になっているはずなのですが、この点について、小田原事故の場合に必ずしもそういう結果をもたらしていない。この点について伺いたいと思います。
  4. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先般小田原付近で起こりました航空事故につきましては、すでに御承知と思いますが、四機編隊で帰還の途中でございました。その二番機と三番機が墜落をいたしたわけでございますが、エンジンがとまりまして、事故の起こることが予想されまして、両機とも常に今おあげになりましたような地上に対する被害を避けるための航法をとり始め、しかも、事故のなかった一番機と四番機がこれを誘導しておったわけでございます。一つ飛行機海上に出ることが不可能という判断のもとに、山中に落ちるようにいたしまして脱出した後に、その機体が山の中に落ちたわけであります。もう一機は海上に出るべく努力いたしまして、そうして自分飛行機が完全に海岸線を出たことを確認いたしまして、そのときには、高度が、ベイル・アウトするためには相当危険な高度にあったわけでございますが、海上に出ましたことを確認して脱出をいたしたわけであります。しかし、不幸にいたしまして、機体が非常な損傷を受けておりまして、海上に向かわずに、反転をいたしまして地上に落ち、非常な損害地上に与えましたことは、はなはだ遺憾でございますが、当時の状況判断いたしますと、パイロットといたしましては、そのように海上に出ましたことを確認し、しかも、機首を海の方に向けて脱出したわけでございます。飛行機損傷等のため反転いたしましたことは、はなはだ残念でございますが、それだけの注意を払いましたことは御了承をいただきたいと存ずる次第でございます。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 朝日新聞の「声」というところに、航空幕僚監部がその事故調査をいたしました結果を投書しておられるのですが、今、長官の言われたような状態で、「ただ遺憾ながら損傷を受けた機からは脚がとび出ており、折柄南西風を受けて機体が傾き、海上から陸地の方向に逆転し、海岸より一五〇メートル付近に落ちて損害を生ずるに至りました。」こう書いてある。しかし、南西の風を受けて機体が傾いたために地上に落ちた、こう言っておられるのですが、不思議なことには、パラシュートで脱出した人は海に落ちているわけです。そういたしますと、重い機体の方が風にあおられて方向転換し、軽いふわふわ動いている。パラシュートの方はちゃんと海に落ちた。まあ、石が流れて木が沈むという妙な現象を生じているわけです。こういう点から考えてみても、十分な措置が行なわれたとは私には思えないわけです。むしろ、海上の方に機が行ってしまわないうちに飛び出したんじゃないだろうか、こういう疑問が出てくるわけです。一つ、石が流れて木が沈む理由を説明していただきたいと思います。
  6. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私も専門家でございませんので、十分な御説明ができないかとは存じますが、ただいま申しましたように、パイロットは完全に自分飛行機海上に出たことを確認いたしまして、それから飛び出したわけでございます。たまたま非常な悪気流のためと、機体損傷をいたしておりまして、その後地上において被害を与えた状況等判断いたしますと、完全に横になったと申しますか、翼で家屋を切ったような状況もございます。従いまして、脱出した後、機体が横になりまして、その結果反転をしたのではないかというふうに判断をされるわけでございます。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 現地の人は、パラシュートは海に落ちて、機体だけが陸上に落ちたということについて、非常に割り切れないものを持っておるわけです。先ほどずいぶん皮肉っぽく、石が流れて木が沈むということを申しましたが、これは僕の言葉ではなくして、現地人たちが言っているわけです。この点については、当然もっと詳細な発表をなすって、現地の人を納得させることが私は必要だろうと思うわけでございますが、そういうことについて善処していただきたいと思います。  そこで、人家その他のものに対する安全ということは、事故を起こしたときだけではないはずで、この小田原前後は、いわゆる航空上の管制区になっておるはずです。この管制区を自衛隊機飛行いたします場合には、当然フライトプラン通報事前に行なっていかなければならないのじゃないですか。
  8. 小幡久男

    小幡政府委員 お話のように、商業航空路を飛びますときには、基地の司令からフライトプラン幕僚監部の万に簡単に電話をしまして、そこで航空局中央管制本部に連絡いたしまして、許可を受けて飛んでおります。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃ伺いますが、この事故を起こしました四機のフライトプランは、すでに通報が行なわれておりましたか、私の調べた範囲では、事故前にはないのですが、いかがでしょう。
  10. 小幡久男

    小幡政府委員 その点あらかじめ調べておりませんので、なんでございますが、私は必ず受けておると思います。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃもう一つ、ついでに、機が遭難をいたしたり事故を起こしますと、すぐ事故報告というものを航空局にするはずですが、これはすぐ行なわれましたか。結論から先に申し上げると、私の調べた範囲ではすぐ出ていない。一週間くらいたってから出ております。
  12. 小幡久男

    小幡政府委員 おそらく事故の詳細がやや的確に判明しましてから出しておりますので、御説のように、若干の時日を経過してから出しておると思います。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 事故報告というのは、原因調査を済ましてから、全部わかってから報告するものですか、そうじゃないんでしょう。この事故報告というのは、事故が起きましたということをすぐ通報しなければならぬもの、事故が起きると同時に報告しなければならない責任があるはずなんですね。たとえば自衛隊法の百七条の第四項を見ますと、事故報告義務というものは、防衛出動をしたときだけ免除されているので、防衛出動をしていないときには、事故報告義務航空法でも免除されていないわけです。それが一週間もたって事故報告が出たなんということでは、小田原被害を受けた人たちが納得するはずないじゃないですか。
  14. 小幡久男

    小幡政府委員 自衛隊法施行令の百二十八条によりまして、機長報告する建前になっておりますが、機長事故でなくなったような場合には、防衛庁からすぐ報告するようになっております。ただしかし、事故調査を徹底的にやってからではなしに、とりあえずの報告ができる内容のものが固まったら、できるだけ早く報告するというふうにしておりますので、一週間程度はあるいはかかるかと思っております。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 航空局長がお見えになっていらっしゃるそうですから、一つおそれ入りますが、自衛隊機小田原墜落をいたしまして事故を起こしました。これは四機編隊で飛んでおったんだそうですが、これのフライトプランが届け出てあったか。同時にまた、事故を起こしました場合に、事故報告というものがすぐに行なわれたかどうか。私の知っている範囲では、一週間くらいたったあとで、事故報告がしぶしぶ出てきたということですが、そういう事実かどうか、一つ教えていただきたいと思います。
  16. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 自衛隊機フライトプランにつきましては、計器飛行の場合には、当然に管制本部フライトプラン通報されますが、管制区外における有視界飛行の場合には、現在航空法によりまして、フライトプラン自衛隊基地機関に提出するということに権限を委任いたしております。  それから事故報告につきましても、事故調査そのものは、純然たる自衛隊機事故につきましては、自衛隊がこれを調査することになっておりますから、法律上当然に航空局の方に事故報告が提出されるということにはなっておりません。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで、私は非常に疑問が出るのです。自衛隊機は始終管制区を横断いたしましたり、あるいは管制区域という意味ですか、圏といいますか、管制区域を飛ぶわけです。そういたしますと、他の民間機との関係が当然出て参ります。それが有視界飛行であるからといって除外されるべき理由はないのじゃないだろうか。もしフライトプランが、管制区を横切ったり何かするのに、そのまま航空局の方に来ないということになりますと、民間機との調整、そういう点は非常に困難になるのじゃないか。かりに高度差があったとしても困難じゃないかと思う。これは有視界飛行計器飛行を問わず、そうあなたの方で要求をなさる責任があるのじゃないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
  18. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 現在計器飛行有視界飛行につきましては、日本航空法と同じような取り扱い各国もやっておるような状況でございます。従いまして、各国とも同じような方法有視界飛行並びに計器飛行に関する飛行規定をいたしておるわけでございます。現在のところは、計器飛行につきましては、御承知のように、軍用機民間機もすべて管制木部の統一した指示に基づいて飛行を行なっておるわけでございまして、その限度におきまして、有視界飛行の場合に、操縦士責任によりまして他機とのセパレーションなり、あるいはまた衝突防止というようなことで、運用をいたしておるわけでございます。現在のところ、そういった面で非常なトラブルが起こるというふうなケースはございません。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 各国の情熱でそうなっているとおっしゃるのですが、ICA ○の標準方式などを見ますと、やはりこれは届け出なければならないような形になっていると思うのですが、どうでしょうか。
  20. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 ICAO規定におきましても、有視界飛行の場合に、フライトプランを提出するということが規定されておるわけではございません。計器飛行の場合のみフライトプラン管制本部に提出する、こういうことになっております。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ICAOの場合には、有視界飛行計器飛行を区別していないように思うのですが、どうでしょう。
  22. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 御承知のように、ICAO国際航空についての一つ機関でありまして、国際航空につきましては、有視界飛行ということは現在ほとんど考えられないのでございます。たとえば日本におきましても、太平洋を横断する定期旅客機というようなものにつきましては、現在有視界飛行というものを全然認めておりません。すべてが計器飛行飛行さしておる状況でございます。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 しかし、現実にコントロール・ユニットが高度、時間、距離、こういう問題を正確に把握していなければ、民間航空とその他との衝突がないという保証はできるのでしょうか。今までのところ大丈夫であったというだけであって、今後そういうものがないという保証があなたはできましょうか。やはり私は、こういう将来起こり得る可能性を考えてみて、事故が一たび起これば非常に重要なことなんですよ。万全の措置をお講じになるということは当然じゃないだろうか。少し運輸省は、そういう点で自衛隊なり米軍なりに権限を大幅に委譲し過ぎているのじゃないか。もう少し厳格な態度をおとりになる必要があるのじゃないかという疑問を私は持つわけですが、どうでしょうか。
  24. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 先生のおっしゃる骨子は、十分私どもとしても理解できますし、また、御趣旨に沿うように、今後私どもとしても研究いたさねばならないと思いますが、現在自衛隊機あるいは米軍機飛行する区域であって、特に民間機との関係において安全上十分に配慮すべきであるというような区域につきましては、演習区域の設定であるとか、あるいはまたきわめて短時間ではございますが、時間時間によりましては、ある区域をブロックするとか、それからまたスクランブル・コリドーのごとく、ジェット機が常に演習その他のたびに傾斜的に飛行する区域であるとか、そういうようなものにつきましては、安全上の措置は十分とっております。しかしながら、今先生がおっしゃいましたように、一般有視界飛行で飛び自衛隊機と、それから航空路を飛ぶ民間機との衝突防止というふうな点につきましては、先ほど、現在のところそういうトラブルはあまりないというふうに申し上げましたが、今後航空機高速化というふうな観点からしまして、十分先生の御注意を頭に置きまして研究いたしていきたいと思います。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう一つ、基本的な疑問があるのですが、F86DなりFのようなマッハに近い、あるいは今後はロッキードF104Jなんというものが出てくる。これはマッハをこえている飛行機です。こういうものが飛んでおりますのに、有視界飛行という扱いをするのですか。私は、ちょっとその点、常識をはずれているのじゃないか、こう考えないわけにいかない。なるほど理屈からいえば、目で見て飛ぶことはできます。しかし、これは有視界飛行扱いにすること自身がどうでしょうか。僕は、やはりこういうジェット機マッハ、あるいはマッハ以上で飛ぶ飛行機について、有視界飛行扱いにすることに問題があるように思うのですが、どうでしょうか。
  26. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 全くおっしゃる通りでございまして、飛行機高速化に伴いまして、管制方式その他につきましても、十分私どもとしては新しい体制をとるべく、今検討いたしております。たとえばジェット機、特に今先生が御指摘のような、非常に高速軍用機の飛ぶことも考えまして、この五月五日からいわゆる高々度管制を実施いたしまして、ある一定の高度以上の区域につきましては全面管制を行ないます。それからまたさらに、かりにそういった高度が、高々度管制以下の場合でございましても、ある区域につきましては、航空路あるいは管制圏というものとかかわりなく、一定区域管制圏の中に置くというふうなことも現在研究いたしております。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで、防衛庁に伺いたいのですが、F86FとかD、こういう飛行機有視界飛行扱いにして、航空局フライトプランを出さないということについて、私はかねがね疑問を持っておったのですが、一体それはどういうわけですか。今度の小田原事故の場合も出ていないわけです。
  28. 海原治

    海原政府委員 ただいま先生の御質問になりましたF86F、F86Dの飛ぶ場合でございますが、これは私どもの打ち合わせが十分にできておりませんで申しわけございませんが、私どもの知っておる限りでは、有視界飛行飛行する場合におきましても、それが法律上許されておりましても——、当該航空機交通管制圏以外に自由に飛べるところがあるわけであります。その場合にも、あらかじめフライトプランを出しまして飛んでおるというように私どもは了解いたしております。この点は、先ほど航空局長から言われておりますものとちょっと内容が違っておりますが、この前の四機編隊の場合も、私どもはあらかじめフライトプランを提出いたしまして、入間川からの許可をもらいまして飛んでいるはずでありますが、しかし、なお調査の上、回答を申し上げたい、このように考えますので、御了承を願いたいと思います。   〔委員長退席草野委員長代理着席〕 今まで私の承知するところでは、必ず事前に、たとえば小牧から千歳に飛ぶ場合におきましては、小牧管制塔を通じまして、これからどういう飛行機がどういう方法でどちらの方向に何時に飛ぶからというフライトプランを出しまして、これが直ちにジョンソンに参りまして、そのジョンソンの指定を待って飛行機は離陸をいたしております。これが従来の例でありますが、この場合に、先生の御調査ではフライトプランを提出していないということでございますので、なお調査いたしたい、このように思います。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうおっしゃっても、先ほど航空局長もおっしゃっているように、フライトプランは出ていないわけです。しかし、出ているか出ていないか、議論をしても仕方がありませんから、次の問題に移ります。  事故報告、これは一つ航空局長、じっくりと調べてみて、その上で原因結果がわかってから報告をすべきものなんですか、事故が起こったら、すぐ今ここで事故を起こしましたという通報をすべきものなんですか。
  30. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 民間機事故の場合に、事故を起こした直後、直ちに航空局に対して事故報告を出し、私の方から検査航務事故調査のための関係官を直ちに現地に派遣する、こういうことをやっております。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 自衛隊法百七条によって、治安出動のときだけその事故報告が免除されている。すると、事故報告は、やはりこの場合でもすぐなさるべきものではなかったのでしょうか。こまかいことを申し上げるようですが、こういうふうに一つ一つをあげて参りますと、何か自衛隊特権意識の上にあぐらをかいて、日本の法規を無視して勝手に飛んでいるという印象しかないので、こういう小さなことを一つ一つ私は申し上げているわけです。一体この事故報告を一週間後に出されるという理由は何か、事故報告事故直後に報告すべきものだと私は思うが、一週間もおくらせてよろしいという法律上の根拠があったら教えていただきたいと思います。
  32. 小幡久男

    小幡政府委員 お話通り事故報告は直ちにいたすべきものと思っておりますが、しかし、おそらく書面にして格好をつけるのに若干の日時がかかったのではないかと思います。おそらく口頭とか電話とかでは自衛隊から報告しておることになっておるのではないかと思いますが、なお調査して、その点、そういう疑義が若干見えます際には、即刻報告するように気をつけたいと思っております。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 書面にして出されるのに一週間かかるというような事務能率は、一つ一つ長官の方から監督をなさる必要があるだろうと思います。問題は、そういうところにあるのではなくて、やはり事故調査、こういう問題について自衛隊が専断的な調査を行なっておられるというところにあるのではないだろうか。  むしろ、これは航空局長に伺いたいのですが、自衛隊機であろうと、米軍機であろうと、民間機であろうと、事故調査には当然航空局の方が参加をせらるべきじゃないか。そうしてその事態を究明するということが、被害を受けた国民——被害を受ける場合が多うございますので、被害を受けた国民に対して納得をいかせるゆえんでもあるし、それからまた、将来航空管制、あるいは航空というものについて集中的なコントロールをなさるあなたのところで、たとい自衛隊機であろうとも、いかなる原因に基づいて事故が発生したのかということを自分たちが直接タッチして調べてみるということは、私は重要じゃないだろうかと思うわけです。ところが、今までの事例を見ますと、自衛隊事故は、自衛隊の中だけで事故調査会を作って調べてしまう。米軍の場合にも米軍だけで調べてしまう。こういうことで、航空局というものはほとんど関与なすっていらっしゃらない。私は、これはあやまちじゃないだろうかと思うのですが、どうでしょうか。
  34. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 先生の御意見も一つの考え方だと思いますが、現在日本航空法建前から申しますと、先生も御承和のように、航空法の百三十二条の事故調査権というものは、自衛隊機につきましては適用が除外されております。従いまして、私どもといたしましては、自衛隊機だけの純粋の事故につきましては、航空局事故調査権がないというのが現在の法律建前になっております。しかし、こういった立法がなされた趣旨について考えますと、現在一般民間機軍用機との間には、機種あるいは飛行態様等にも非常な相違がございます。また、機体検査あるいは乗員試験というふうなものにつきましも、自衛隊検査あるいは試験というふうなものが、航空局と全く違った制度、あるいはまた実態にある程度なっておるのではないかというふうなことも考えられるわけでございます。従いまして、現在の航空局機体検査あるいはまた乗員試験というふうなものの担当官が、直ちに軍用機事故調査が十分やり得るかどうかというふうな面について、多少の問題があるのではないかと思います。それからまた、現在航空機事故につきましては、かりにそれが自衛隊機である場合でも、また米軍機である場合でも、日本一般民間航空機との衝突あるいはそれとの関連における事故というふうなものにつきましては、現在共同調査を行なっておる。その事故原因について、両者が緊密に連携を保ちながら共同に調査しておるというのが実情でございます。おっしゃいましたように、自衛隊機プロパーの事故については関与できないという建前になっております。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の法律の状態は私も知っております。しかし、当然参加をなすってお調べてなることがむしろ理想的なんじゃないかということを私は申し上げているわけで、他に実例がないわけではないわけです。私はアメリカのトランスポーテーションと称する法律を調べてみますと、やはり軍用機事故といえども、行政官がその事故調査に関与し得る規定があるわけです。御存じだろうと思いますが、そういう規定がアメリカでさえあるわけです。ところが、日本では、軍用機に関しては一切一般行政官はシャット・アウト、これではほんとうの航空局としての管制ができないのじゃないか、こう私は考えて、当然そういうことを要求なさる必要があるのじゃないか。そしてまた、かりに法律自衛隊の専断になっておっても、自衛隊の方もまた、事故が起こったときには、任意にあなたの方の方に参加を求めて、事故調査をフェアにやられる必要があるのじゃないだろうか、こう私は思っているわけです。こういう点について、自衛隊の方で、事故が起こったときに、航空局の人の参加を求めてフェアに事故調査をなさる、こういうようなことを今後おやりになる気持があるかどうか、外国には法律的にももうすでにその例があるのですから、いかがでしょうか。
  36. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 飛鳥田さんのおっしゃる御意思はわかるのでございますが現在の法律建前はそうなっておりませんし、また、航空局の機構、その他どういうことでございますか存じませんが、しかし、おっしゃる趣旨を生かす意味における今後の研究は十分いたしたいと存じます。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういうことをなさらないから、事故が起きた、おれたちのところで調べればいいのだという考え方だから、フライトプランの通告もしていない。そういうところから出てくる気のゆるみにこれがなるわけです。また、事故が起こっても、事故報告というものを、一週間もたって、もう気のきいたお化けなら引っ込んでしまうころになさる。こういう現行法上における懈怠する出てくるわけです。そういう意味で、今度の小田原事故はかなり重要ではないだろうか。何か自衛隊という特権の上にあぐらをかいている気配がここにはっきり見える。そういうものが、何となしに被害を受けた小田原の人々の納得を得られない原因になっているわけです。  そのほか、いろいろなことをこの問題にからんで申し上げてみたいと思いますが、時間もありませんから、次の問題に移ります。  同様なことは藤沢で起こりました。これは調達庁長官に伺うのでありますが、藤沢で一月二十七日午後二時十七分ごろ、ジェット機の音速突破時に生ずる衝撃波によって、非常に広範な被害が生じたわけです。この問題について、米軍の方にあなたの方から強硬な抗議を申し込まれたということについては、私たちも感謝をするのにやぶさかではありません。その点は感謝をいたしますが、これについて米軍は何と言ってきたのですか。
  38. 林一夫

    ○林(一)政府委員 今先生からお話しのように、米側に対しては、三十一日に調達庁長官名をもって、この事故原因の究明、そして今後このような事故の再発を防止するために適切なる方法をとるように、厳重に申し入れを行なったのであります。その申し入れに対しまして、文書をもちまして、在日米軍司令官から、遺憾の意を表するとともに、今後このような事故防止するための指令を各基地司令官に発出した、また、日本人及びその財産に損害をもたらすような行為を回避するためにあらゆる努力を払うという旨の回答をよこしております。このような事故が起こったのは、ただいま仰せの通り、音速でもって低空を飛行したということが原因でございます。そのために衝撃波が起こり、相当多数の民家の窓ガラスその他螢光灯を破壊したというような事態が起こったのであります。米軍に対しては、かねがね、このような低空飛行をするということについては、できるだけ市街地の上空におけるこのような飛行は避けるように申し入れをいたしておいたのでございます。さらにこの事故が起こるとともに、ただいま申し上げたような点につきまして申し入れをいたしたのでございます。その回答がただいま申し上げましたような点でございます。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 航空局長に伺いたいのですが、一体これは、あなたが専門家であられるかどうか私わかりませんが、航空局長であられるので向うのですけれども、衝撃波が地上にこれほど大きな影響を及ぼす、こういうことは、水平飛行をやっているときに、音速以下から音速に移る、いわゆる音の壁を越すときに起こるものでしょうか。普通私たちは、この衝撃波というものが水平飛行をやりながら起こった場合に、地上に影響の及ぶという例をあまり知らないわけですが、いかがですか。
  40. 海原治

    海原政府委員 私も専門家でございませんけれども、一応書物で知ったところによりますと、水平飛行の場合にもダイビングをする場合にも両方ございます。水平飛行の場合といたしましては、先般、かれこれ二カ月前と思いましたが、アメリカでB47かB57が四時間の世界記録と申しますか、滞空をして、あのときに、通過後におきましていろいろと衝撃波による人家のガラスその他の破壊が起こりました。この例を見てもわかりますように、これはその飛行機が飛びます地表からの高度の関係、速度の関係、そのときの気象条件、たとえば晴れている場合あるいは曇っている場合、そのときによりまして衝撃波が起こる。いろいろな状況が違って参りますから、一がいには申せませんが、水平飛行の場合にも、ダイビングすると申しますか、突っ込みます場合にも両方ございます。
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 水平飛行で衝撃波が起こりました場合には、それが人家、いわゆる地上に影響を及ぼす場合というのは、かなり高度の低い場合だと私は思うのですが、いかがでしょうか。
  42. 海原治

    海原政府委員 その通りでございまして、この米軍の場合にも、私の記憶に誤りがなければ、一応高度五万フィート以下では飛んではいけないことになっておると思います。何分にもスピードが早かったために、かつ、先ほど申しましたように、気象条件がそういう衝撃波を起こしますのに容易な状況だったために、思わぬ衝撃波が起こりました。今後そういう水平飛行の場合には、さらにいろいろな条件を検討する、こういうことが新聞に伝えられております。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 防衛局長と林さんのお話でよくわかりましたが、低空で飛んではならぬ、こういうふうに米軍に申し入れをなすっていらっしゃる、こういうことです。そこで、航空局長に伺いたいのですが、エアリアル・ブロックという通報がしばしば米軍からあなたの方へ来るはずです。一日〇・八件ぐらい平均して来るというお話ですが、ありますか。
  44. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 先生のおっしゃったいわゆるブロック・アルチチュードと申しますか、アルチチュード・ブロックと申しますか、一定の空間を限りまして、その空間における一定の時間における飛行を禁止するというふうな措置は、きわめて短い時間でございますが、大体月に二十四、五回ございますから、おっしゃる通りだと思います。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局エアリアル・ブロックという通報が参りますと、そのエアリアル・ブロックの中を米軍機が飛ぶということになるわけですね。
  46. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 こちらが一応承認しました時間、空間の間を飛ぶ、こういうことになるわけであります。
  47. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その結果は、承認をいたしますと、他の飛行機をその中に入れないということになるわけですか。
  48. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 おっしゃる通りでございます。
  49. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ところが、このエアリアル・ブロックの通報というのがしばしば参りますのに、普通の場合に一万フィート以上あるいは四千フィート以下というふうにあなたの方で指定をなさっていらっしゃる、こういうふうに伺うのですが、いかがですか。一万フィートから四千フィートの間は他の飛行機が飛ぶので、これから上に設定をしてやる、これから下に設定をしてやる、こういうことになっておると伺うのですが、いかがですか。
  50. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 特に高度によって指定するということではなくて、航空交通の現状によりまして、非常に交通の少ないところを指定するというふうに設定をいたしております。従いまして、そういうふうな要求がありました場合にも、それを拒否する例があるわけでございます。
  51. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 承認する例もあるのでしょう。
  52. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 そういうことでございます。
  53. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、林さの方は低空で飛んじゃいかぬと言い、そしてまた、海原防衛局長の方は高々度だけだとおっしゃていながら、現実にはアメリカに対して四千フィート以下で飛べという指定をしているわけです。そんなばかな話がありますか。これじゃ米軍の方だって、どっちにしていいかわからぬじゃないでしょうか。困るのは米軍の方ですよ。林さんの調達庁の方からは、低空飛行をやっちゃ困ると言われ、航空局の方からは、一万フィート以上か四千フィート以下というふうにエアリアル・ブロックを指定してある。これじゃ米軍だって四千フィート以下を飛ばざるを得ないでしょう。僕はこういうところに問題があると思うのです。
  54. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 補足して説明いたしますが、四千フィート以下をかりにアルチチュード・ブロックとして指定します場合に、先ほど先生が御指摘のような非常に高速ジェット機等につきまして、そういう高度のブロックを指定するということは全然考えておりません。たとえば無線機が故障して飛行する飛行機に対する他機の接近を避けるためというふうな場合には、そういった低高度を指定することもございますが、通常いわゆるハイ・スピードのジェット機に対して、そういうふうな低高度の区域を指定するということは全然やったことはございません。
  55. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 普通飛行機が飛んでいる場合なら、無線機が故障した場合とかなんとかいうお話はわかりますが、エアリアル・ブロックというのは、空輸の訓練の場合とか、あるいは演習の場合に要求が出てくるのじゃないですか。これは、そういうふうにちゃんと合同委員会なり何なりで約束がついておるはずですよ。
  56. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 おっしゃる通りでございますが、その場合に航空局がアルチチュードをブロックする場合には、常にその飛行機の性能なり機種というものによって適否を判断するわけでございます。従いまして、非常に高速ジェット機に対し低高度のブロックを割り当てるというふうなことは、全然やったケースはございません。
  57. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、この藤沢でジェット機の衝撃音が出ましたときには、米軍は明らかにあなたの方で持定なさったエアリアル・ブロックに違反して飛んでおったということになりますね。
  58. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 その点につきましては、その当該機の飛行につきましてアルチチュード・ブロックの請求があったかどうか、現在私は資料がございませんが、あるいはそういったうよな御請求はなかったのじゃないかというふうな気もいたす次第でございます。
  59. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、エアリアル・ブロックの請求なしで、基地以外の、いわゆる民家の上空で米軍機が訓練をするということはどうなんでしょうか。
  60. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 航空局の立場といたしましては、先ほども申し上げましたように、計器飛行の場合にはフライトプランは常にセンターに提示されまして、それによって高度の指示、速力等についての指示は与えられるわけでございますが、有視界飛行フライトプランが提示されました場合には、その有視界飛行計画に従ってその飛行機が飛ぶということでございますので、この場合のケースについてもそれに該当するのではないかというふうに考えております。
  61. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 はなはだ無礼な言い方ですが、アメリカの三角翼型のジェット戦闘機で、見た人はF108Aデルタ・ダートじゃないかと言っているのです。これは僕も、僕自身見たわけじゃありませんからわかりません。ある見た人はF4H−1ファントム2型じゃないかと言っておりますが、いずれにしてもけっこうです。いずれにしても非常に高速飛行機です。これを有視界飛行だなんておっしゃる方が、少し航空局長としておかしくないでしょうか。私はそんな皮肉っぽいことを申し上げるつもりはないのですが、しかも衝撃波が現実に出ている。そうすると、音速を越したということが明らかになるわけです。F108Aデルタ・ダートだとか、その他の種類の飛行機が、音速を越して衝撃波を発するような飛び方をしているものが有視界飛行というのは、どうも僕らのようなしろうとでは納得できないのですが、どうでしょうか。
  62. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 おっしゃる通りでございまして、先ほど私がお答え申し上げました通り航空機の非常な高速化に対応いたしまして、たとえば高高度管制であるとか、あるいはまた低高度におきましても、一定のブロックについては全面管制を実施するというふうなことを現在検討いたしておる状況でございまして、ただいまの法制のもとにおきましては、一応計器飛行あるいは有視界飛行という区分によってその飛行の計画が出され、またその指示をしておるというのが現状でございます。
  63. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは有視界飛行であるか、計器飛行であるかは、向こうの届け出をそのままめくらでのみ込んでしまうのじゃなくて、あなたの方である程度の判断をなさる権利があるのじゃないですか。かりにロッキードF104Jが有視界飛行をやりますと言ってきても、あなたの方では、それは有視界飛行じゃないではないですか、計器飛行じゃないですかとおっしゃる権利はないのですか、私は航空局にはその判断の権利があると思うのです。従って、そのフライトプランの出し直しをあなたの方で要求なさる権利権限は、航空法に基づいて私はあると思うのですが、ただ、何でも向こうから持ってくれば、その持ってきたものをめくらのみ込みにのみ込んでしまわなくてはならないのですか。それはどうでしょうか。
  64. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 実質的には先生のおっしゃる点は非常によくわかるのでありますが、現在の制度の建前としましては、有視界飛行というものは、要するに、航空機操縦士自体の責任において飛ぶという制度でございます、それが非常に高速になるということによって、有視界で飛ばせることがはたして適当かどうかという問題になって参りますと、今度はその飛行機飛行する区域そのものについて管制権を実施するというふうな方面でこの問題を考えていかなければならぬ、こういうことになるわけでございます。従いまして、今後の問題といたしましては、管制空域を拡大するというふうな方向で問題を考えていく必要があるのじゃないか、かように考える次第でございます。
  65. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 御研究中だというのですから、私はあまりしつこくは申し上げませんが、どうも今申し上げたように、みんな違うのじゃないですか。もっと自衛隊米軍も——米軍に関しては調達庁、それからあなた方がきちっと御相談になって、一つ日本航空の大元締めとしてのあなたの方で、権威のある統制をしていただきたい。そうでありませんと、さっき申し上げように、米軍米軍で勝手なことをやる、自衛隊自衛隊で勝手なことを現にやっている。そして被害がたくさん出ているのです。私たちは事故調査に関与できませんから、どうしてその事故が起こったかは、藤枝さんのおっしゃるのを、はい、さようでございますかと信ずるほかに仕方がないのですから、それじゃ困るのです。はなはだ失礼ですが、あなたの方でもっと権威を持ってきちっと統制をしていただくように、一つ御研究の方向を進めていただきたい、こう思います。  そこで、私は林さんに伺いたいのですが、との場合、エアリアル・ブロックの通達が出ていなかったのじゃないか、調べてみなければわからないけれども航空局長はおっしゃるのですが、エアリアル・ブロックの通達がないのに、今申し上げたように、高速度の飛行機がダイビングをやったり、急上昇をやったりを市街地の上でやる、そこでこういうことになった。これについて何か文句を申し込まれたですか。
  66. 林一夫

    ○林(一)政府委員 御承知のように、米軍機飛行につきましては、航空管制につきましては航空法適用になるわけであります。従いまして、航空法の手続によって、事前に運輸省に通報しなければならないということは聞いております。それに基づいてあすこで飛行した、こういうふうに私ども考えております。
  67. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 また航空局長に伺って申しわけないのですが、航空法八十五条がなぜ米軍機適用除外になっているのか、僕はどうしてもあれが納得できないのです。申し上げましょう。八十五条は、「航空機は、運航上の必要がないのに低空で飛行を行い、高調音を発し、又は急降下し、その他他人に迷惑を及ぼすような方法で操縦してはならない。」こう書いてあるのです。なぜそれが適用できないのか。
  68. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 これは、私も、立法趣旨についてはもっと研究する必要があるのでございますが、私どもの通常の考え方で申し上げますと、こういうふうなことは、通常の民間航空については非常に危険な飛び方でございます。従いまして、八十五条によりまして、こういうふうな方法で操縦してはならないというふうな規定があるわけでございますが、自衛隊機そのものにつきましては、本来戦闘のための航空機であると私どもは考えております。そういったために、その訓練については、民間機の通常の飛行のやり方というふうなものは適用除外することが適当ではないか。ことに低空飛行であるとか、あるいはダイビングであるとかいうようなことについては、本来そういうことを訓練の一つの項目として加えておるので、そういう種類の飛行機であるように考えますので、そういう趣旨から八十五条の適用を除外しているのではないか、かように考える次第であります。
  69. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それは横道でしたが、林さんに伺いますが、海上の空中演習場とか、あるいは陸上にかかる場合でも、空中演習場を設定いたしますのには、閣議決定を経るのじゃないでしょうか。
  70. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この区域を設定する場合においては、閣議決定を経て合同委員会の合意を得ることになっております。
  71. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 防衛局長が、今調査ができたから報告しておきたいということです。
  72. 海原治

    海原政府委員 先ほどの四機の場合、フライトプランを出したかどうか調査いたしましたところが、実はフライトプランという言葉の意味でございますが、先ほど私が御説明いたしまして、F86F、F86Dでも、有視界飛行で飛ぶ場合にはあらかじめフライトプランを提出して、それに従って許可を得たと申しますか、それに従って飛んでおります、こういうことを申し上げたのであります。有視界飛行の場合には、先ほどいろいろ御意見がございましたが、現状におきましては、そのプランを出しまして、それに従って飛べばよいことになっておる。従って、許可ということはございません。そうして問題の四機の場合も、区域管制塔を通じまして、有視界飛行フライトプランは提出いたしてございます。入間のフライト・サービス・センターにそれが届けられております。それに従って飛んでおりましたもので、あらかじめ許可を得るとか得ないということは、これとは直接関係ございません。計器飛行の場合と有視界飛行の場合と、私混同して御説明して申しわけないと思います。フライトプランといたしましては、一応有視界飛行の場合の手続を完了しております。この点御報告いたします。
  73. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 エアリアル・ブロックというのも、現実には一定区間を限って日本飛行機その他の飛行機の出入を禁じ、そうしてその中における空輸の訓練あるいは演習、こういうことをやるようになっているわけです。だとすれば、これは一種の基地——基地と言って悪ければ、区域の設定じゃないだろうか。ただ、それが時間的に短いというだけであって、海上演習場の設定その他と少しも変わらないのじゃないだろうか。法律的な性質から言えば、こう思うのですが、何かそこに法律上の性質で違う部分があります。
  74. 林一夫

    ○林(一)政府委員 米軍機の戦闘訓練、演習等の地域としましては、先ほど申し上げましたように、合同委員会の合意を得まして指定をするということになっております。その指定区域内において、戦闘訓練、演習をやるという建前になっておるわけです。エアリアル・ブロックというのは、これは多分に一時的な使用区域だ、こういうふうに考えております。その点において、ただいま申し上げましたような合同委員会の決定による指定区域とは違うものと考えております。
  75. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 時間的なものであろうと一時的なものであろうと、それが排他的な使用を設定するという点においては、少しも違わないのじゃないだろうか。しかも、そのエアリアル・ブロックという通報が、米軍から航空局に一日に〇・七件くらいくる。先ほどのお話によりますと、一カ月に二十四件くらいあるというのですね。そうすると、日本じゅの空は始終エアリアル・ブロックが設定されておるということになって、考えてみますと、日本の上空はほとんど米軍演習場になっているということなんですよ。これを合同委員会、閣議決定という手続を除外して、米軍から無電あるいは電話通報がくるそうです。それだけで設定しちゃうのです。そんなばかなことを調達庁はなぜ黙っていらっしゃるのですか。ずいぶんおかしいと思いませんか、あなたでも。あなたでもというのは無礼ですが、そういう関係に携わってなれていらっしゃるあなたでも、おかしいとお思いになりませんか僕もこのエアリアル・ブロックという話を聞いて、がく然としたわけです。何だ、それじゃ、日本基地がだんだん少なくなっていっていると思いきや、実は全部基地なんだというので、びっくりしたり、げっそりしたりしたのですよ。なるほど、一つのエアリアル・ブロックは三時間か五時間、あるいは十時間であるかもしれない。しかし、そういうものが次々と一カ月に二十四件も設定されていくとすれば、事実上日本の上空は全部エアリアル・ブロックだと言わないわけにいかないじゃないですか。こういうことについて、一体今まで調達庁はどういう態度をおとりになっていらっしゃったのか。米軍の方から無電ないし電話航空局にちょっと一本通知があれば、それでいいのか、こういうことにならざるを得ないわけです。
  76. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほども申しましたように、米軍の戦闘地域は、地位協定によりまして提供しているわけでございます。従いまして、当方の関知しておるところでは、米軍の戦闘訓練はすべてこの指定地域内において行なわれておる、こういうふうに承知いたしておるのであります。このエアリアル・ブロックのことにつきましては、実はまだ十分承知いたしていないのであります。一つ、この点につきましては、航空局とよく協議をしまして、今後この方面についての検討をいたしたい、こういうふうに考えております。
  77. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃ困りますよ。だって、このエアリアル・ブロックをアメリカ軍がすっと電話通報してくる。そうすると、航空局長お話では、四千フィート以下というのはあまり指定しないそうですが、ともかく一定の区間を限って、そこへ他の飛行機も入れないで、そこで演習できるようにしてやるのでしょう。そうすると、それはすなわち米軍基地ですよ。あるいは区域ですよ。そういうものが勝手気ままに米軍通報一本でどんどん設定されていくとすれば、日本は完全なアメリカの支配下、従属下にあると言わざるを得ないじゃないですか。そして、その中で勝手気ままな訓練を連中がやるから、次々に事故を起こして落っこちるのですよ。あるいは衝撃波を発して民間に大きな被害を与える。その根源はエアリアル・ブロックにあるのじゃないかと私は最近気がついたんですが、ところが、私みたいなやつでさえ気がつくのに、調達庁の長官がお気づきにならず、まああまり研究もしておらぬ、これから何とかしょうと言う。だって、考えてみますと、昭和二十七年に安保条約ができてから十年、この間岸さんが強引にやられてからすでにもう二年たっているのでしょう。十年間そういうことが公然と行なわれて、そして幾つかの被害がたくさん積み重ねられているのに、今これからじゃ、ちょっとひどいじゃないでしょうか。ひどい、ひどいと僕が言ってみたところで、女のぐちじゃありませんから、どうにもなりませんけれども、しかし、これは明らかに僕は基地の設定だと思うのです。従って、合同委員会なり閣議決定を経ずしてそのことを決定するのは、国内法的な違反じゃないだろうか、私はこう思うわけです。この藤沢の上空の被害も、衝撃波の問題も、この問題と切り離して考えていくわけにはいかない、私こう考えます。航空局長、あなたをお相伴に使ってはなはだ申しわけないのですが、厚木の基地周辺に対するエアリアル・ブロックの指定要求というのは、どのくらいな頻度で出ておりますか。
  78. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 現在調査資料を持っておりません。
  79. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 厚木の周辺におけるエアリアル・ブロックの指定を何べんかなさったことはあるわけですね。
  80. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 調査資料は持っておりませんが、何べんかはあると思います。
  81. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 林さん、お聞きの通りですよ。航空局の方は、純粋に航空法の立場から、エアリアル・ブロックを厚木の周辺に何べんか指定なさっていらっしゃるわけです。あなたが幾ら民家の上を飛ぶな、飛ぶなとおっしゃったって、エアリアル・ブロックとして使用された以上、その中で空輸の訓練、演習をやるのは向こうの権利です。そうでしょう。これじゃ意味をなさないですよ。私はそういうととろに問題があると思うのです。ですから、航空局の方は技術的な問題だけをお取り扱いになっていらっしゃるのでしょうから、今後あなたの方から、なんじは厚木の周辺あるいは民家の上に、市街地の上にエアリアル・ブロックの指定を要求しては困る、こういうことを米軍に対して強くお申し出になっていただきたいと思うのですが、申し出ていただけるでしょうか。
  82. 林一夫

    ○林(一)政府委員 先ほども申しましたように、まことに申しわけないことなんですが、このエアリアル・ブロックのことについては十分承知していなかったおけです。この点については実態をよく調査しまして、関係機関とよく協議しまして、申し入れるべきことは強く申し入れたい、こういうふうに考えております。
  83. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃ一つそういうふうにお願いしたいと思います。  それから日米合同委員会の合意書によりますと、「日本政府及び米軍の行なう航空交通管制ICAOの定める標準方式を使用する。」「米軍に提供している飛行場周辺の飛行管制業務、進入管制業務を除き、すべて、日本側において運営する。」こういうことになっておるわけですが、藤沢の上空は航空管制区になっていると思うのです。この航空管制区を横切るアメリカの飛行機については、当然やはりフライトプランがくるはずだと思うのですが、これもみんな有視界飛行ということで見のがしていらっしゃるのですか。
  84. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 先生のおっしゃっております通り計器飛行米軍機が航行する場合に、かりに藤沢の上空から厚木に着陸する場合におきましても、全部わが方の管制本部の指示に従っておりておるわけでございます。
  85. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 計器飛行としての届出というのはどのくらいきておりますか。一日に何件くらいきておりますか。
  86. 今井榮文

    今井(榮)政府委員 これは相当時間をかけて調べないと、実は計器飛行の承認は、月間に六万枚くらいのストリップを調べるということになりますので、米軍の分がその中に何件あるかというふうな点につきましては、御必要とあれば、時間をかけて調査することにいたします。
  87. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 一つ念のためにお調べをいただきたいと思いますが、ほとんどないはずです。みんな有視界飛行という形で勝手に入ってきちゃっているわけです。その点お調べいただいて、そのお調べいただいたものを基準にして、今度は厳重な申し入れをしていただくようにお願いをします。とにかく藤沢上空で衝撃波が起こったということ、これはエアリアル・ブロックの設定ということにからんでいますし、それから基地外の訓練という問題をどこまで許すかという点にもからんでいますし、そして現実に目撃者がみんな異口同音に言っておりますように、ダイビングの練習をやっておったということ、こういう彼らの操縦方法にも関係いたしますし、この点について、林さんのところには厚木基地対策合同委員会だとか、あるいは藤沢市長だとか、こういう人たちの要望書がたくさんきているはずです。そういう要望書にこたえるためにも、きちっとなさっていただいて、できれば善後の措置をこういうふうにしたということをこれらの人々にきちっと通報してやっていただきたい。被害に対する弁償の態度について、非常に林さんの御尽力をいただいたということは、僕もわかっています。ですが、同時に、そういうことについてきちっとしていただきませんとみんな納得いたしません。エアリアル・ブロックの問題については、あらためてまたあなたの方で御研究をいただいたあとで申し上げます。  そこで、第三の問題として八丈島の問題ですが、何かロランCという基地を設定するということでありますが、これについて二十二日までに調査を終わって、あとは米軍が使用するかどうかをきめるべき時期にきている、こういうふうに現地に対して調達庁で御説明になったそうですが、米軍が使用するかどうかをもうきめましたか。
  88. 林一夫

    ○林(一)政府委員 現在立ち入り調査をやっておりますが、この調査の予定期間は今月一ぱいであります。二十二日というのは、いささか誤報ではないかと思います。米軍の考え方は、最初ロランCを日本に作るという場合、八丈島と北海道の十勝太とがあらゆる点において、技術上の点においてもその他の点においても、最も適当なところであるということで、八丈島に置くという前提のもとに、立ち入り調査の要求をしてきたわけでございます。そのような条件のもとに、現在立ち入り調査を行なっておるということでございます。
  89. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これについて、測量のくいを町道に打ってしまったり、あるいはそれを抜けという要求をした人に対しては、公務執行妨害だからお前名前を言えだとか、そういういやがらせを非常に現地の方々がやっていらっしゃるそうですが、そういうことはない、あるいはそういうことをやらせないというお話一つ聞かしていただきたいと思います。
  90. 林一夫

    ○林(一)政府委員 お説の通り、町道にくいを計十一本打ち込んだ。これは測量のために必要であったので、十分にそういうような点に心を配らず、うかつに打ち込んだわけであります。あとで悪い点に気がつきまして、さっそくそのくいは全部抜きまして、跡の穴は埋めまして原状回復はいたしておきました。ただ、地元の係官がどういうようなことを言ったかというようなことにつきましては、実は詳細には存じておりませんが、今後地元の方々の気持もよく察して、十分にそういう点について注意をするように厳重なる注意を与えておきました。
  91. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その測量は、米軍が一緒になって測量したそうですが、そんなことがありますか。
  92. 林一夫

    ○林(一)政府委員 今度の測量は米軍が主体でございまして、測量は米軍が主としてやっておるということでございます。
  93. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 やはりこれは調達庁がなさって、その結果を米軍報告なさるという形が至当なのではないでしょうか。いきなり米軍調査をするというのは、どういう権限に基づくのですか。
  94. 林一夫

    ○林(一)政府委員 権限法律的な根拠というようなことは、ちょっと私申し上げられませんが、もちろん、米軍日本の調達庁の係官も立ち合って調査をいたしておるのであります。その調査事項と申しますのは、あそこの土質がどうであるとか、あるいは高低がどうなっておるかという点、すべてにわたりまして調査をするということでございます。調査方法につきましては、できるだけ地元の気持をそこなわないようにやるということは、米軍の方にも強く言っておりますし、もちろん、調達庁の職員にも強く注意を与えております。
  95. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 提供することをきめちゃったあとで、引き渡し後に米軍が測量するのは、これは現行法でもやむを得ないかもしれません。しかし、提供するかしないかきめてない、まだその土地所有者が納得をしていない、その土地に米軍が来て調査するなんというのは、これは屈辱ものじゃないでしょうか。僕は、その法律上の根拠はわからぬがとおっゃしる理由が、ちょっとわからないのですが……。
  96. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この立ち入り調査につきましては、米側から合同委員会を通じて要求がありました。合同委員会の合意によって立ち入りを認めたわけでございます。もちろん、立ち入り調査につきましては、先ほど申しましたように、米軍ばかりがやるということではなく、日米協力して調査をやるということでございます。   〔草野委員長代理退席、委員長着席〕
  97. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 合同委員会がきめれば何でもできるのですか。私はそんなことはないと思うのです。合同委員会がおきめになっても、それは日本の政府とアメリカ政府の話し合いだけで、日本国民には関係ないですよ。ここで議論したって仕方がないですから、そういうことを今後なさらぬようにお願いしたいと思うのですが、どうでしょうか。やはり都合が悪ければ米軍に測量させますか。
  98. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申しましたように、合同委員会の決定によりまして立ち入り調査を認めたのでございまするが、立ち入り調査をするにつきましては日米共同でやる。しかも、立ち入る場合においては、地元の御協力を得て、御承諾を得た土地に限って入る、町道もなるべく避けて県道を通って入るというように、承諾を得ない方方の土地には一歩も入らないようにいたしております。そういう点は、十分土地所有権を尊重しまして、地元の人の御協力を得てやっておる次第でございます。
  99. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 現に町道にくいを打ったじゃないですか。立ち入らないようにといって、入らないでくいが打てるのですか。僕はそういう幽霊みたいな話はいやですよ。私もここであなたをやっつける意味じゃなしに、そういうことを今後やらないようにと申し上げているので、今後やはり必要があればおやりになるおつもりですか。
  100. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま申しましたように、町道にくいを打ったのはまことにうかつなことでございまして、その点はあやまちを改めて、さっそくくいを全部打ち抜きまして、あと原状回復をいたしておいたのでございまするが、(草野委員「くいをあとに残さぬようにやれ」と呼ぶ)その他の点についても、このような不注意な点のないように十分注意してやるように、厳重なる注意を与えております。
  101. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今草野さんの不規則発言によると、くいを残さぬようにやれとおっしゃるのですが、全くあとで問題が起きないように、ほんとうに悔いを残さないようにやっていく必要があるのじゃないでしょうか。そこで、八丈島でも反対の人もたくさんおるわけです。そういう人に対して、今後強権を振りかざしたりしてお進めになるおつもりですか、それともあくまでも話し合いでやるおつもりか、それを一つ伺っておきたいと思います。
  102. 林一夫

    ○林(一)政府委員 このような地元の方々に相当関係のある仕事でございますので、十分地元の方々の御理解、御協力を得て話を進めていくつもりでございます。
  103. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 八丈島の問題については、きのう大柴君も質問をされたそうですから、私は以上で終わりますけれども、最後に、実はこの前の予算委員会でちょっと私伺った、厚木にありましたJTAGと申しますか、米軍技術顧問団について、少し外務省の方に伺いたいと思いますが、この米軍顧問団は解散になり、その存在を消したわけです。しかし、その解散になります際に、そこに勤めておりました人々は、そのまま解雇になって、退職手当も出ず、何も出ず終わってしまいました。私たちは、この技術顧問団という団が米軍であるとはとうてい考えられなかった。やはり軍以外の機関であると考えないわけにいかなかったわけですが、この点についてどのような御調査が行なわれたか、聞かせていただきたいと思います。
  104. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 ただいま飛鳥田先生の御指摘になりました点は、前にこの問題が国会で持ち出されましたときに、あれは米軍であるかどうかという御質問がございました。そのときに、直ちに米軍にこの点は確認をいたしました結果もございますが、それによりますと、JTAG、連合技術顧問団と申しますのは、当時お答えしておると思いますけれども、在日米軍の司令部に付属をしておるものであって、兵站補給任務に服しておる。それがただいま御指摘になりましたように、昨年の一月末日に解散をした、こういうふうに思っております。
  105. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この問題について、こまかいことを申し上げている時間がないのですが、軍でなかった証拠に、いろいろな労働者の使用について、労働協約みたいな就業規則のようなものを作って、厚木の監督署に届け出たり、その他のことをやっているわけです。もし軍ならば、そんなことをやっている必要はないわけです。そういう点で、私たちはこれが軍の一部であるとは考えられませんし、また、軍の一部だとすれば大へんなことです。諜報機関を軍の一部としてやっておられたということについて、われわれは納得できなくなってくる。そういう点で、民間のものだと私たちは考えて、ここに働いている人たちの退職金なり何なりの点をいろいろあなたの方で御配慮をいただいているわけですが、そのことについてどうなっているのでしょう。
  106. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 お答えいたします。ただいま先生が御指摘になりました点で、お言葉を返すようでございますか、情報活動に従事をしておったものか軍の機関であるはずがないということでございますが、その点につきましては、毎々たびたび答弁してあると存しますけれども、その通りに、これは米軍に確かめた結果もそうでございますが、情報活動には従事をしておらない、それは行なっていないということがはっきりわかっております。米側の申しますには、あれは兵站補給任務で、物資の貯蔵とか荷作りとか輸送、そういうものに従事をしておったのだということでございます。それが第一点。  第二点の、退職金を支払われなかったのだけれども、それに対してどういう措置がなされておるかということにつきましては、これは飛鳥田先生十分御案内の通りに、昭和三十二年に厚木の労働基準監督署に対しまして、当時雇用されておりました労務者約二百数十名でございますが、そういう人たちの大多数と申しますか、ほとんど九九%の賛成を得た就業規則が届け出られております。それは、日本の国内法に違反してないということはすでに確認済みでありますが、米軍であればそういう就業規則を出さないでいいではないかという御指摘がございましたけれども、これは御指摘の通りに、ただいま調達庁の方でやっておりますいわゆる間接雇用の労務者につきましては、確かに就業規制というものは届け出はしてないと思います。これは、先日来、そういう間接雇用労務者に対しては、就業規則を適用すべきではないかと申しますか、それを作るべきであるということの御指摘がございましたが、それに対しましては、あれは米軍の労務担当官と調達庁の長官との間で労務基本契約というものができておるので、それがすなわち就業規則と同じことである、労務者には周知徹底をされておるというふうな経緯から、間接雇用の労務者に対しては、従来就業規則というものが届け出られてなかったというふうに私は了解をしております。本件につきましては、就業規則というものが届け出られておって、その中には、御存じのように退職金の規定というものがない。アメリカ側に対しましては、例のJTAGの解散にあたりまして、就業規則には規定がないけれども、何とかしてくれないかという話を、公然ということではなしに、一つ考えてくれないかという気持で申してみたのでございますけれども米軍といたしましては、ここの人がサインをしておる就業規則には退職金の規定がないのだということで、遺憾ながら支払うことができないという返答を得ております。従いまして、その後は、日本側でできるだけのこと、離職者の対策とか、それから就職あっせん、その他万般のことにわたりまして、たとえば労働省の方から出向きまして、現地で転業のあっせんをするというような、できる限りのことをやっておると承知しております。
  107. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 米軍で現実に就業規則を労基法に基づいて労働基準監督署に提出をした例というのは、ここ以外にほかにありますか。
  108. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 お答えいたします。  間接雇用の例では、先ほど申し上げました通りに、やっていないということでございますが、直接雇用、これはちょっと例外的でございまして、直接雇用の例は、これ以外にはない。米軍に当時照会をいたしまして確かめました結果、これは例外的なものであるが、残っておったということでございます。従いまして、これ以外に直接雇用で就業規則を出しておるものがあるかというお問いに対しましては、ないというように思います。
  109. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 やはりそのことが、そのグループの所属を明確に物語っておるのじゃないだろうか。これは軍の一部でないからこそ、こういう就業規則の届け出をきちっとしているわけです。私たちはそうとしか思えない。ですから、これは軍の一部ではない、こう考えていくのが当然であると私は考えますが、その点について、なぜ君の方ではこういう届け出をしたのだ、こういうふうにあなたの方が反論をなすって、向こうの意見を聞いてごらんになったことがあるのですか。
  110. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 これは先ほどもちょっと触れましたけれども、労務者が二百四十数名おられたわけでございますが、その労務者と米側とが話をした結果、労務者がこれでよろしいということで、就業規則が制定され、それで届け出たというように承知をしております。従いまして、米軍とJTAGで働いておられた方々との間の話し合いで、納得ずくでできた、こういうふうに承知をしております。
  111. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 軍の一部なら、そういうものは適用除外されておるのですから、何も届け出る必要はないのじゃないか。幾ら納得ずくだからといって、それじゃほかでも納得ずくならばみんな届け出ることになるのですか、ずいぶんおかしな話じゃないかという気がするのです。
  112. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 これも飛鳥田先生十分御存じのこととは思いますけれども、地位協定の十二条の5には、日本の例に従うということが書いてございまして、従いまして、これは労働法の何条だか忘れましたけれども、そこで、すべて就業規則その他は届け出るべきだということが規定されておるわけでございます。
  113. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今まで米軍は、日本の労働法規を守らないので有名なんですよ。地労委なり中労委なりで米軍を呼び出したって、本来ならば出てこなければならない責任があるのですが、出てこない。そのために非常に困っておる。それからまた解雇された者が訴訟をやって、その解雇無効であるという判決を得ているにもかかわらず、米軍は戻さない。当然日本の判決を尊重して、解雇無効である以上、原職に復帰させることは、日本に駐留している以上当然なんです。ところが、それさえもやらない。まだあげていけば百も二百もあるのです。隣に林さんがいらっしゃるから、聞いてごらんなさい。日本の法規を無視し切っている人が、この部分だけについてちょこっと法規を守ったという話なんか、あなたそのまま聞いていらっしゃられるのか。もし聞いていらっしゃられるといえば、ちょっと常識を疑わざるを得ないと思うのです。外務省にはなはだ失礼ですが…。やはりこのことが、逆に彼らが、自分たちが軍でないといとことを自分で自白している非常に強い証拠じゃないだろうか、こう私は考えるわけです。いずれにせよ、その点について、きょうは時間がありませんから、いずれ他の事例をあげてゆっくり申し上げてみたいと思いますが、もし軍でないとして、しかもそういう諜報的なことをやっていらっしゃらないとおっしゃったのですが、これは幾らだって例があります。やるとすれば、これは安全保障条約に違反しているわけです。僕ら安保条約自身をもよくないものだと思っておりますが、それに対してすら違反していると言わざるを得ない。そういうところで働かされた労働者に対して、もっと真剣にその擁護も考えていただくようなことは当然じゃないだろうかと思うわけです。このことについて、なおもっとできるだけ交渉をしてみていただいて、もしだめなら、訴訟でも何でもこっちで起こしますから、一つあなたの方で御努力をいただけるものかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  114. 高橋正太郎

    ○高橋説明員 結論だけ簡単にお答えいたします。  今飛鳥田先生に御指摘をいただきました点につきましては、従来も、当初問題が提起されましてから米側と交渉しておったわけでございますけれども、これは交渉すべき問題かすべからざるかということは別にいたしまして、とにかく米側と話を進めておったわけでございますが、米側の反応といたしましては、これは就業規則に、先ほども申し上げました通りに、退職金の規定がない、労務者の方は皆さんこれに同意をしておられるということで、それからまた、その新しい就業規則を昭和三十二年に作りました際に、その有資格者に対してはすでに退職金が支払われているという事例もあるということなどから、根本的には退職金というか、そういう規定が就業規則にないということで、アメリカ側はそれは払えない、それをしいて日本側から裁判にまで訴えてやるという性質のものであるかどうか、大へん残念でございますけれども、御本人たち承知しておられるわけでございますから、できないことと考えます。
  115. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 林さん、こういう問題についてあなたの方にもいろいろお話が行っておると思うのですが、どうなんでしょうか。もしかりに米軍の一部だというふうに外務省の方がおっしゃるのならば、それはそれとして、また保護の方法が当然考えられていいのじゃないだろうか。何もなしにいきなりほうり出されて、それでおしまいというものであっていいのだろうかという感じがするのですが、いかがでしょうか。
  116. 林一夫

    ○林(一)政府委員 JTAGが米軍の一部であるということは、私どももそう考えております。従いまして、これはその前提のもとに立って、軍とこれを話し合いによって供給したのでございますが、もちろんこれは直接雇用でございます。直接雇用の場合におきましては、政府雇用でございませんので、この駐留軍関係離職者等臨時措置法による特別給付金の対象にもならないし、また退職金というようなことについても、支給はできないというようなことでございます。先ほどから、就業規則を届け出たというようなことでございますが、それにつきまして、何か駐留軍関係の政府雇用の労務者について、労働条件その他の労務管理について、法令に違反しておる点が非常にたくさんあるというようなことでございますが、これはいろいろな見方があると思いますが、私どもは法令に違反しておるというようなことはやっていないつもりでございます。御承知通り、就業規則を労働基準局に届け出るということになっております。この場合も、就業規則を作りまして、合意の上で労働基準局に届け出たと聞いております。いずれにしましても、これは政府雇用でないというところに問題があるのであります。そのために、特別給付金なり退職金の支給ができないというようなことでございます。今後外務省ともよく連絡をとりまして研究はいたしたい、こういうふうに考えます。
  117. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう十二時も相当過ぎましたので、他の皆様方に御迷惑ですから切り上げますが、ともかくこういうみなしごのようなものがあちらこちらに出てきているわけです。こういうものについても、政府として相当な配慮をして、最大限度の努力をしていただかないと、国民の保護という点に欠けるんじゃないだろうか。いずれあらためてJTAGの問題について全部資料をそろえて、次の国会ででもお知らせしたいと思います。ともかくその間ここに働いた人々に対する御尽力だけは強く要請しておきたいと思います。  以上で終わります。
  118. 中島茂喜

    中島委員長 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後一時二十分開議
  119. 中島茂喜

    中島委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  防衛庁設置法等の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山内広君。
  120. 山内広

    ○山内委員 長官に、主として第二次防衛力整備計画に焦点を合わせてお聞きしておきたい。  この壁頭に「わが国内外の諸情勢の推移を見通し、」と書かれておりますが、具体的にはどういうことか、それをお聞きしたい。
  121. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 わが国をめぐる各国等の各般の事情を将来にわたっても十分考慮をしながら、それに対処するような防衛力を整備いたしたいという考え方でございます。
  122. 山内広

    ○山内委員 それでは答えにならないので、同じことだと思います。具体的にどういうふうな見通しをされておるのか、あまり詳しくなくてもいいのですが……。
  123. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そのあとに続くわけでございますが、現在の国際情勢の状態、すなわち、一方において二大勢力が核装備をいたしておる。しかしながら、その核装備というものは、それを使用することに対する抑制力とはなれ、これを使用するということはほとんど不可能な、いわゆる核手詰まりの状態にある。しかしながら、そういう中においても、世界の各方面に局地的な紛争が起こっておる。こういう状態において、そうした局地戦以下の紛争が起こり得る状態にある、こういうものを考慮に入れて防衛力を整備していくという考え方でございます。
  124. 山内広

    ○山内委員 それでは、私の方から具体的に質問を出したいと思います。もちろん、核兵器使用の全面戦争は、われわれお互いに何人もきらっておるわけです。実験に対しても、この国会でも決議がされておるわけです。そこで、今の軍縮会議は、そういう意味で、何とか二大勢力の円満な話し合いの解決を私ども希望しておるわけです。そうしますと、この話し合いがうまくいけば、世界はあげて軍縮の時代に入る。そして、どちらも将来は徹底的な全面軍備の撤廃を理想として歩むわけです。努力されるわけです。そういうときに、長官としては、今どんどん自衛隊の増強、強化をはかられておる。こういうときに、あなたは、この軍縮に対してどういうお考えを持ち、たくさんの自衛隊を持っておるこの始末についてはどういう見通しをされておるのか。アメリカでは、不景気のない軍縮、撤廃は可能だという意見もあるわけです。その点についての長官のお考えを承りたい。
  125. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御指摘のように、われわれも、有効な軍縮協定が一日も早く成立し、さらに進んでは、全面的ないわゆる恒久平和というものが確立されることを望んでおるわけでございます。しかしながら、すでに御承知のように、現在の軍縮会議の情勢等を見ますと、われわれのこうした願望とは違った方向に進んでおる現実も、また考えていかなければならないと存じます。将来の大きな見通しとして、軍縮協定の成立あるいは完全なる軍備撤廃、こうしたものが世界を支配することを希望しつつも、やはり現実の事態につきましては、それに対応するだけの用意、準備はいたさなければならないのではないかということを考えておる次第でございます。
  126. 山内広

    ○山内委員 その問題についてはいろいろ意見もありますが、これ以上の談議は、後日機会があったらゆっくり聞かせていただくことにいたします。  次に、これはきのうの田口委員に対する御答弁の中にもあったわけですが、「在来型兵器の使用による局地戦以下の侵略に対し、」と明確にこの中にうたってあるわけです。そうしますと、この局地戦以下の侵略に対応するだけであるので、核武装などは考えていない、それは従来の政府の方針を貫き通すという言葉でたしか表現された。私どもは、やはりこういう情勢で核武装ということを一番おそれておるわけです。これは総理にもきようおいでになれば一応お聞きしたいと思うのですが、こういう局地戦以下に限定された第二次防衛計画であるならば、しかも、核武装しないという方針であるならば、世界じゅうに対して、われわれは核武装をしないのだ、非核武装だということの宣言をするだけの、はっきりした態度をお示しにならないと、先ほどの全面軍縮に対してもまだ世界の大勢はそれほどでもないという、私どもとは逆な見方をしておる際でもありますし、この非核武装に対しては、あなた方の態度をもっと天下に声明する必要がある。特にこの前は、核武装も自衛のためならば持つことも憲法違反ではない、政策として持たないのだということの、われわれとしては非常に奇怪な答弁を総理もしておるわけであります。しかし、今第二次防衛計画の内容を聞けば、第二次五カ年計画完遂の四十年までは核武装を持つ必要もないし、絶対に持たない、そういうことをはっきりと天下に表明していただきたいと思います。
  127. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 核武装をしないということは、政府の一貫した方針でございます。そして、これはしばしば当国会を通じて言明をいたしたところでございまして、その方針は国民の皆様も十分御理解をいただいておるものと私は信ずるものでございます。  第二次防衛計画につきましては、すでに御承知かと存じますが、そうした核武装をするような手段を持っていないことは当然なのでございまして、もちろん、この第二次計画の五カ年間において核武装するようなことはございません。
  128. 山内広

    ○山内委員 この第二次防衛計画の完遂年である四十年までは絶対に持たぬと長官は言われておるわけでありますが、その前に、政府の声明は国民に浸透しておると言っておりますけれども、これは逆だと思うのです。やはり国民は非常に心配しておる。現在核実験も、今の交渉がどうなるかわかりませんが、今月の末ごろにはまたアメリカがやり、ソ連がやる、あるいは中共も核武装をしてくる。非常に小型化しておる核兵器は簡単に使用もできる。日本の原子力の研究も進んできた。それに、これはあとで触れますけれども、ミサイルがどんどん強化拡充されてくる中にあって、ただ議会の答弁だけでは、まだ国民は信じておらない。そういう点でもう少し、これは、私どもも、何らか有効適切な政府のそういう意図もくんだ方法を考えたいとは思っておりますけれども、この点についてもう一度念を押しておきます。
  129. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国民の一部の方々に、あるいは日本も核武装をするのではないかという危惧を持たれておる面もあることは、私どもも存じております。しかしながら、歴代の政府がはっきりと、国権の最高機関であります国会を通じまして、核武装をしないということを一貫して申し上げておることをお考えいただきますならば、われわれの意図というものは御理解をいただけるものと考えておる次第でございます。
  130. 山内広

    ○山内委員 この論議も蒸し返しになりますから、次に進むことにいたします。  第二次防衛計画作成の趣旨の第二のところに「おおむね一カ月分の弾薬等の備蓄等に重点をおくものとする。」この前も何かの会合で、この「おおむね一カ月」という考え方について防衛庁の方に聞きましたが、あまりいい回答がない。しかし、局地戦にたえる、こういうことが前提になっておりますが、局地戦が一カ月で終わればいいのですが、そういう局地戦というものも、これは原爆で処理をつけたらあるいは三十分で処理がつくかもしれませんが、そういうことではない局地戦は、今のベトナムの姿を見ても、何カ月、何年と続く、そういうことで、一カ月の備蓄ということについては、何か理論的な、科学的な積算の方法があるのか、また、なければならぬと思いますが、その点について……。
  131. 海原治

    海原政府委員 この第二次計画におきまして、弾薬の備蓄の基準を一応一カ月で出しましたのは、先般も御説明したと思いますが、ともかく一カ月くらいの間は自力で持ちこたえる程度の弾薬を自衛隊において保有したい、こういうことでございます。今先生がおっしゃいましたような非常時におきましては、当然それの前提といたしまして、いろいろ国際情勢の変化もございます。日本国内には御案内のように弾薬の生産設備もございます。従いまして、自衛隊に一カ月分弾薬があるということは、それだけしか戦えないということではございません。こういう弾薬の備蓄につきましては、もちろん多ければ多いほどいいわけでございますが、そういう後方兵站関係、国内におけるそういう関連産業等の能力を考えますと、一応この程度のものは自衛隊としては保有しておきたい、そのことによって、われわれの予期しないような非常時におきましても何とかしのげるのじゃないか、こういうことから、一カ月という基準をきめたわけでございます。従いまして、今後自衛隊の整備が進むに従いまして、あるいはこの数字も、二カ月程度を持つことがいいというような判断になりますれば、そのような措置をしたい、こういうふうに考えております。
  132. 山内広

    ○山内委員 そうすると、現在の自衛隊では何日持ちこたえるだけの自衛隊自体の備蓄があるのですか。
  133. 海原治

    海原政府委員 現在の自衛隊の平均いたしました能力といたしましては、やはりここに書いてありますものに近い数字のものがございます。ただ、これも先般御説明いたしましたように、各弾種の間に不均衡があります。たとえばある大きな口径のたまは四十日分ある、五十日分ある、しかし、あるものにつきましては二十日分くらいしかない、こういうふうに、従来の弾薬等の入手状況に基因いたしましたでこぼこがございます。そういうものをきちっと整備いたしまして、一応各自衛隊の現在及び将来に保有いたします火器に見合った一カ月程度のものを持ちたい、こういうことでございます。
  134. 山内広

    ○山内委員 今の防衛局長の話の中で、これはちょっと補足して長官からもお聞きしたいと思いますが、自衛隊自体は一カ月分くらい戦えるものを持ちたい、あとは後方の工場なり何なりに発注して、すぐそれが届けられるようにするというのですか。そこの工場で持っている。そういうことになりますと、これは政府のこういう軍需産業に対する基本的な考え方の問題にひっかかると思う。政府は必ずしも軍需産業を奨励するのじゃない、平和産業でもやっていけるのだ、そういうことは、総理もたしか何かの機会で答弁があった。そうしますと、防衛庁は軍需産業を——すぐたまを作れと言ったからといって、作れるわけじゃない、平時においてそういう方向に向けて、いつ注文を出してもそれにこたえられて、二カ月なり三カ月なりの日本防衛庁の注文に応ぜられる体制をこれから作ろうとしておるのかどうか、その点の考え方について……。
  135. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 全般論といたしまして、できるだけ自衛隊の装備その他につきましては国産のものを使用したい。従いまして、それに応ずるような産業界の体制も作っていただくことが必要だと思っております。しかしながら、何分にも自衛隊自体、防衛庁自体の発注いたしまするこうした装備につきましては、全体の鉱工業の生産からいたしますと、非常にわずかなものでございます。従いまして、むしろ、いわゆる軍需産業というようなものでなくて、一般の平和産業をやっておる工場等に対して防衛庁も発注するというのが建前でございます。今の弾薬に限りまして、何かそういう有事の際にはすぐに弾薬ができるような工場を整備させるのかということでございますが、現に弾薬を製造いたします工場はございます。先ほど防衛局長が申し上げたのは、そういう工場もございますので、自衛隊に一カ月分保有を持っておれば、それでおしまいにはならないで、さらにその工場に発注することができるということを申し上げたのでございまして、これからそういう弾薬を製造する工場を育成していくという意味ではございません。
  136. 山内広

    ○山内委員 それからこの第四項に参りまして、「情報機能を整備充実し、」とありますが、これを具体的に一つ御説明いただきたい。
  137. 海原治

    海原政府委員 ここに情報機能の整備充実と書いてございます意味は、具体的に申しますと、たとえば現在アメリカ、イギリス、ソビエトその他の国国に防衛駐在官が出ておりますが、こういうものの数をふやす、あるいは派遣先の国をさらに増加していきたいというような国外的な措置のみならず、国内におきましても、現在の防衛庁の中のいろいろな情報関係の機構というものをさらに検討いたしまして、整備する面が多々ございますので、そういう機能的な面を今後十分に充実していきたい、こういうことを端的に「情報機能を整備充実」ということで表わしたのでございます。
  138. 山内広

    ○山内委員 その次に、災害救援、公共事業への協力並びに自衛隊のいろいろな努力の方向がうたわれておるわけですが、この第二次防衛計画の中で、公共事業は将来の規模はどれくらいにする構想で今お考えになっておるのか、その点を伺いたい。
  139. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 特にどれだけのものをやるという計算は持ってございません。実は部外協力工事と申しますか、これについては非常にお申し込みは多いのでございますが、ただ、そういう部外の協力のことでございますが、一カ所に集中したりなどしないように、また一これが民業の圧迫になってもいけませんので、そういうような点を考えて、できるだけ地方の御希望に応ずるようにいたしておりますが、特に目標をどれだけというようなものを防衛計画の中できめているわけではございません。
  140. 山内広

    ○山内委員 長官も御存じと思いますけれども、公共事業というのはいろいろな目的がありますけれども、特にこれは失業対策事業として、国も地方も非常に、重点的な施策として、ここには何人、何%の失業者を吸収せいという法的な縛り方があるわけです。そういうことで、自衛隊は喜ばれるからというので、どんどん公共事業のこういう失業対策事業の任務というものに進出すると、ここにも問題が一つ出てくると思います。こういう点についての御配慮をどういうふうにされておりますか。
  141. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいま申しますように、これはできるだけ御便宜ははかるべきでありますが、一面において民業の圧迫になってはならぬ。また、ただいま御指摘のような失業対策事業等によって行なわれるようなものに食い込むということになりますと、これは一方の失業対策に非常な支障を来たすわけでございます。従いまして、そういう配慮をしつつ、部外から地方公共団体等の御要求に応ずるようにいたしております。
  142. 山内広

    ○山内委員 それでは次に進みまして、防衛力の整備の目標なんでありますが、第二次計画の目的を達成いたします昭和四十一年度、これは政府もいろいろ経済の成長を考え、また、この中には、平均百九十五億円ないし二百十五億円の漸増を見積もられておるわけです。そうしますと、四十一年度の国民の総所得はどれくらいになり、そのときの防衛費は何%ぐらいになるのか、その計画の帰結を一つお知らせ願いたい。
  143. 海原治

    海原政府委員 これは整備の目標にも書いておきましたように、何分にも五カ年にわたる長期の計画でありますので、その間にどの程度の経費増があるかということにつきましては、確たる見通しはございません。従いまして、かりに毎年平均百九十五億円ないしは二百十五億円程度あれば、当時におきまする状態におきましてはこれだけの目標ができるだろう、こういう推定をいたしたわけであります。従いまして、かりに百九十五億円と二百十五億円のちょうどまん中でございまする、毎年平均で約二百五億円ぐらいふえていった場合にどういうことになるか、こういうことは、実は事務的な試算はございます。それで申し上げてみますと、一応四十一年度におきますところの国民所得の推定でございますが、これも政府といたしましては持っておりません。従いまして、三十五年度の実績でありますところの十一兆八千二百十七億円というものを、かりに三十六年度以降年平均七・二%の成長率ということでふえていったものといたしました場合には、これは仮定でございますが、四十一年度におきまして十七兆九千四百十一億円になる。その場合に四十一年度の一応の推定いたしております額、防衛庁費は、二千六百八十二億という数字はございます。これは両方とも仮定でございますが、この仮定の数字で比べてみますと、その四十一年度における推定国民所得に対しまして一・四九%、大体一・五%になる、これが先般大臣からお答えしました数字でございます。
  144. 山内広

    ○山内委員 この見通しについては、私も私なりの考え方はありますけれども、今これに触れることは避けたいと思います。  それから第二次防衛力整備によりまして、主要なる装備の見通し、これは確かにあなたの方ではお立てになっており、まだ私どもも実は資料としてはいただいておらぬのですが、手元に持っております。そこで、その内容について若干お聞きしておきたいと思います。  この装備調達についての内容を見ますと、国内産のできないもの、外国によらなければならぬもの、あるいは国内でまかない得るもの、いろいろあるようです。この調達見込みの中で、外注によらなければならぬものがどれだけなのか、あるいは国内で満たし得るものがどれくらいの額になるのか、一つ内訳をお示しいただきたい。
  145. 海原治

    海原政府委員 ただいま先生の御要求になりましたような区分けをいたしました数字は、実は、持ち合わせておりません。ただ、私どもといたしましては、この五カ年間に先ほど申しましたように、かりに毎年平均二百五億程度の増加を見たというときには、これは陸上、海上航空全部合わせてでございますが、少し類別に申しますと、主要装備品の調達額といたしましては、陸につきましてはこの五カ年に約九百億、海につきましては八百八十億、空につきましては千八百八十億、合計約三千六百六十億円程度の国内発注を見込むわけでございます。しかし、この中には、たとえば船の例で申しますと、船体そのものは国内で作りますが、それに搭載いたしますところの砲であるとか、その他関連装備品につきましては、これは外国から購入するものもある、こういうことになって参りますので、冒頭にお断わりいたしましたように、国内発注見込みと海外からの購入見込みという区分けは、相当時間をかけてやらないと実は出て参りません。従いまして、もし御要求でございますれば、あらためて資料として提出することをお許しいただきたい、このように考えるわけであります。  なお、アメリカからの援助額といたしましては、大体年平均百八十億程度のものがこの五カ年間を通じて、総計約九百億になりますが、この程度のものが援助をされるだろうという一応の前提をとっております。
  146. 山内広

    ○山内委員 資料は後ほど出していただけるそうですが、これはできておるはずです。これは今の輸出入の問題で政府は血眼になって政策を樹立しておるのであって、一番注文の多い防衛庁がアメリカからどれくらいの注文をするのか、国内でどれだけの需要が満たせるかということはちゃんと計算済みのはずです。どうぞこの資料はお出しになっていただきたい。  それから実は陸上自衛隊のこれからの装備充実の中に、中特車というのを、予算は九十八億円でありますが、百二十両ほどを計画の中に入れておられます。これは新聞にも出て承知しておるのでありますが、それは五カ年間の計画的な発注ということになっております。そこで、私は防衛庁の方からいただきました予算書を見まして、非常に奇異な感じに打たれたわけですが、この中に、国庫債務負担行為として三十七年度に四百三十九億四千五百万円あるわけなんです。それから同じような性格のもので継続費というのが、総額で二百十六億一千百万円、これを合わせますと約六百五十億、これはその年度国会にかけないで、事前に国会の承認は受けておるけれども、次の年からになると、防衛庁が勝手にというと言い過ぎかもしれませんが、業者に支払い得る膨大な金額がここで議決されておるわけなんです。これも国の経済に及ぼす影響は非常に大きいと思いますけれども、それはまずしばらく伏せましても、この四百四十億に近い国庫債務負担行為を検討しますると、実にふさわしくないものが中に含まれておると私は考えておる。ただ、内容は、詳しく資料をもらっておりませんのでわかりませんけれども、先ほどあげました中特車というようなものも、これは艦艇のように三年も四年も建造にかかるというのなら、こういう予算議決をしておいて、でき上がったつど払うということも考えられますけれども、百二十両を毎年区分して、何十両ずつ作らせるかわかりませんけれども、これがたとえば五カ年であれば、二十何両ずつ作っていくわけです。当然、これはこういう国庫債務負担行為の特別な議決をしないで、毎年度予算を組んで、二十五両なら二十五両、ことしは三十両というように、個数を限って発注していくのが正しい姿だ。それをどうしてこんなに膨大な予算を一般会計の中からはずして議決をしておるのか、私は非常に奇異の感じを抱きます。そこで考えられることは、国庫債務負担行為というものは、あなた方はどうお考えになっておるのか。これを抑制しておきませんと、先ほども申しました通り、特定の工場、会社と契納を結んで恒久的に——恒久的というと悪いが、五年以下ですけれども、もう注文をしてしまって、そうしてなお、防衛庁はそこと五年間しばられて注文していく、こういうところに日本の政府が独占企業に奉仕する形が現われる、非常に弊害が生ずると思うのです。なぜ、こういう中特車のような毎年発注できるものを国庫債務負担行為として取り扱いをしておるのか。そして、この継続費とも合わして六百五十億に上る、あなたの方は二千億ちょっと切れる防衛費の中で、これだけの膨大な予算を組んでおるということは、まことに私は心外である。その点についての納得のいく御説明をいただきたい。
  147. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 防衛庁費の中に国庫債務負担行為あるいは継続費が多いととは、御指摘の通りでございますし、一般論としましては、あるいは艦艇であるとか、航空機その他のような、相当期間のかかるものを計画的に発注しなければならぬという点がありますことは、すでに御承知通りでございます。ただいま御指摘の中特車等につきましては、なるほどお言葉のように、場合によっては、毎年度単年度主義で発注することも可能でございます。しかし、一面において、先ほども申しましたように、なるべく自衛隊の装備品等については国産化を奨励して参りたい、そうして安定した形で生産をしてもらいたいということになりますると、できるだけ長期の一括購入契約を結ぶことが、将来の計画を受注側に立てさせるためにも好ましいことでございます。そういう意味で、この中特車とか装甲車あるいは機関銃等につきましては、本年から長期一括契約のできまするような予算の立て方をしていただいたわけでございます。もちろん、一面においてある特定の業者にフィックスされるという点もございます。しかしながら、戦車であるとかそうしたものにつきましては、やはりある程度業界が限られますので、むしろ、さきに申しましたような、受注者側が計画を立てて、そうして十分安定した生産をし、さらにまた、その意味におきまして単価の引き下げその他もできまするような、そうした要素も加えまして、この国庫債務負担行為をお願いしたような次第でございます。
  148. 山内広

    ○山内委員 確かに注文を受ける側にしても、一年きりで、そのあとが続くか続かぬかわからぬでは、非常に迷惑な話であります。ですから、注文を継続するということは、安心して、確かに単価も安くなります。そのことは私も理解できないわけではない。けれども、これがもし民間であれば、これは独禁法違反になると私は思う。ただ、これはあなたの方は行政官庁でありますから、公正取引委員会の問題にはならないけれども、注文を受ける側の業者にすれば、防衛庁ともう五年間の長期契約を結んで、そうしてずっと安定した注文を受けてしまう。こうしたことはやむを得ないものと私はわからぬではありません。けれども、先ほど金額を指摘した通り、これをあまりに乱用されて、どんどんこういう形である特定の大きな事業だけに結びつけていくというと、いろいろな弊害がここから起こってくると思う。そういう点については、長官は十分な御配慮を持ってやっていただかないと、国の会計検査も、防衛庁の予算は、話を聞くと、ほとんど手をつけておらない。そういうことなんで、こういう点からも、私は、好ましくない結果が生まれてくるであろう、こういうふうに思うわけです。
  149. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 確かに御指摘のような点もございます。何分にも防衛生産というものがまだ緒についたばかりでございますので、そうした意味において、こうした一括長期発注というようなことも必要だと考えて、御承認をいただいたわけでございますが、将来の問題といたしまして、一方においてそういう防衛生産等も安定して参り、その他の関係がございますれば、その点は十分留意をして参りたいと思います。まして、特定の業者にだけ何か防衛庁の生産が片寄るというようなことにつきましては、十分留意いたします。と同時にまた、こうした方式につきましては、最も必要な面のみに限りまして、乱用をするようなことは避けて参りたいと存じます。
  150. 山内広

    ○山内委員 今の御答弁で了解いたしました。今の国庫債務負担行為と継続費の問題は、財政法の二十八条によりまして、国会にその調書を提出することに義務づけられております。これは私予算委員をやっておりませんので、あるいは予算委員会に配付になったかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、私どもこれは重大な関心を払っている問題でありますので、この委員会にも継続費と国庫債務負担行為の調書を一つお出しになっていただきたい。  総理がお見えになりまして、質問者がかわりますので、これで終わります。
  151. 中島茂喜

  152. 片山哲

    片山委員 本日の議題でありまする防衛庁案件に関連いたしまして、憲法問題について総理大臣に質問いたしたい。  憲法問題は、今日のような国際緊張、東西が冷戦を続けておりまする状態の際においては、これに手をつけてはいけない、これをいじらない方がいい、国内の治安安全のためにも、また平和維持のためにも、今日憲法に手をつけるべきではないという立場を私は持っておるのであります。従って、憲法はどこまでも擁護すべきものであるという見地に立ちまして、総理に、あなたのお考えはどういうお考えであるか、聞きたいのであります。法理論あるいは形式論は除いて、率直にあなたの所信を開陳していただきたいのであります。  第一に、お尋ねしたい点は、五月三日が憲法記念日になっておりますが、ここ数年来、保守党内閣の手によりまして、式典あるいはまた憲法を祝う行事は一切省略されておるのであります。幾多の陳情も出ております。また、われわれもこれに対して陳情をいたしておりますけれども、一向それに対する反応がないのであります。たまたま四月の二十八日はサンフランシスコ平和条約成立の記念日だということで、首相主催によりまして、政府において式典が行なわれるそうであります。そこで、そういう問題について、国家的な行事を行なうのにもかかわらず、もっと大事な、もっと根本的な、国家の運命に関する重要なる憲法が、今年は十五年、まさに画期的にこれを祝うということは、国民に対する影響も大へん重要であります。その十五周年を記念して何らかの行事を行なうべきではないかと思うのでありまするが、総理大臣は何ゆえか黙して語らず、何らの行事も行なわない、本日はやれという以外に、何ゆえにやらないのか、なぜこれを馬耳東風に聞き流して何らの反応も示さないのであるか、そうして、平和条約の式典を盛大にやるというその理由を、まず最初に伺いたいのであります。
  153. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法制定、施行当初におきましては、数年間五月三日に式典を挙行しておりましたが、過去七、八年、十年近くは特に式典を催さずに、国の祭日といたしまして、国民が静かに憲法のありがたさと申しますか、憲法尊守のことを思い、祭日にすることが私は適当であると考えておるのであります。なお、お話の四月二十八日に、平和条約成立十週年記念として私は——式典という意味ではございません。当時の関係者が集まって、いろいろのことを話し合おうということで、式典とかなんとかという大それたものではないのであります。
  154. 片山哲

    片山委員 今までやっておったのを途中でやめて、しかも十周年だからというので、ほかの行事をやるのにもかかわらず、十五周年という重大な記念を行なうのにまことに適当せる回り合せになっておる際に、これを国民に対して単に休みの日であるというだけでは事足りないのであります。どうぞ総理大臣は九十九条を見てもらいたいのであります。それには、天皇以下国務大臣はもちろんのこと、憲法を擁護するだけではない、尊重するということを特に書いておるのでございます。私は、憲法尊重の観念をあらゆる面において国民に示さなくてはならないと思うのでございますが、はたして憲法を尊重する考えをお持ちになっておりますか。またこれを擁護する考えをお持ちになっておりますか。これが総理大臣に課せられた憲法上の責務であります。憲法のおしまいをこれで締めくくっておりますから、まことに重大なる規定であると思うのでありますが、この考えをお持ちかいなやを聞きたいのであります。
  155. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法は国の基本法で、最も重大な法律でございます。従いまして、国民全部が等しく尊守しなければならぬことは当然でございます。
  156. 片山哲

    片山委員 ただ心のうちで尊重するだけでは足りないのでありまして、形の上にこれを現わさなくてはならない。一番よき表現であろうと思うのでありますが、形だけの答弁ではまことに不満足であります。  しからば、進んで、憲法調査会のことについて伺いたいと思います。よく総理は、憲法の改正是か非かという問題につきましては、調査会の結論を聞いた上で、国民の盛り上がりに相応じて、そのときに意見を述べるとか、あるいはそれから意見をきめるとかいうような表現を用いて、まことになまぬるいのであります。いやしくも一国の政治を担当しておる限りにおきましては、憲法問題については、今言われました、人後に落ちず擁護する、あるいはこれを尊重する考えを持っておるならば、それを現わして、調査会にまかしてしまう、顧みて他を言うような逃げ口上ではなしに、どういう考えをお持ちになっておるか、憲法改正是か非かという、今国民に与えられたる課題について、いかなる考えを持っておるか、これを国民の前にはっきり示してもらいたいと思うのであります。
  157. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法は先ほど申し上げましたごとく、国の基本法でございます。従いまして、これを尊守すべき義務は当然でございます。しかし、だからといって、今の憲法の制定の経過、運用の状況等々につきまして研究をし、調査することは何ら差しつかえないと思います。私は、今一国の総理大臣として、調査会で研究してもらっておる途中で、憲法をどうするとかこうするとかいうことは、軽々しく言うべき筋合いのものではないと考えております。従いまして、憲法調査会の調査の結果を見、また、その調査に対する国民の世論を聞き、慎重に考えなければならぬ問題と考えております。
  158. 片山哲

    片山委員 あなたも御承知通り、この調査会は、改憲を白的として結成せられたものであります。これは委員会の経過を見ればよくわかります。鳩山内閣から岸内閣に続きまして、どうしても変えなくてはならないということを、嶋山元首相も岸前首相も改憲論者でありまして、はっきり言いました。その目的に従いまして、調査会をして改憲の内容調査せしめるのである、こういうことを委員会の経過は明らかにいたしておるのであります。なるほど調査会の法文にはその改憲の目的ということは載っておりません。しかし、これは法文の体裁上そんなことを載せるものではないのでありまして、事実の上において明らかになっておるのであります。それによりまして、今日調査会の仕事は、改憲を目途として、改憲のために作られたるものであるということは、常識になっておるのです。周知の事実なんです。従って、当時、これは国会内に置くべきものであるという所論に対しまして、政府部内に置いてしまったのであります。これもあとで論じたいと思うのでありまするけれども、これもわれわれは憲法に違反するものであると考えておるのでありますが、こういう国会内に置くべき本筋を逸脱いたしまして、政府部内に置き、しかもまた、改憲をはっきり目的として、無言の——条文のうちには明文としては載っておりませんけれども、それが周知の事実であるという、こういう調査会に一切をまかして、その間口を減して何事も語らず、所信を述べないということは、これはどうも憲法を擁護するとか、あるいは尊重するということは、口で言うだけであって、実際上において、その実ありやいなや、大へん疑わざるを得ないのであります。国民の疑惑も大へん深まってくるわけでありまして、池田総理大臣はやはり改憲論者であるというふうに世間では考えておるのでありまするが、改憲論者でなければ、はっきりここで改憲論者ではないということを言ってもらうし、また、何にもまだ考えていないというならば、怠慢の責任もあると思いまするが、そういうお考えならば、お考えを明らかにしていただきたいのであります。
  159. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど私の答弁でおわかりいただけると思います。憲法調査会は、その所掌事務所に書いております通りに「日本国憲法に検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告する。」こういうことだけでございます。しこうして、私は、先ほど申し上げましたごとく、調査会の答申を待ちまして、そうして世論の動向、国家の将来を考えて、そのときにどうするかということをきめるのでございます。それを改憲論者と言いますか、改憲反対と言いますか、それはとる人の御自由だと思います。私の考えは、従来からこういうふうに申し上げておるのであります。
  160. 片山哲

    片山委員 調査会は自主的な考えを持ってその態度を決定するということを高柳会長が表明しておるようであります。多数決によらずして、全会一致の方式をとりたいとも新聞で発表されておりまするが、いずれにいたしましても、これはいわゆる総理大臣の諮問機関ではないようであります。そうして独自の意見を表わすという構成のように私は解釈をいたしておるのでありまするが、近く本年の秋ごろ、おそくとも来年早々、その結論を見出すというふうに世間では伝えられておるのでありますが、総理大臣としてはこの処置をどうするのですか。総理大臣のお考えでは、諮問機関で答申を待ってと今申されましたが、答申によってやるとするならば、あなたの管轄内の会議でありまするから、これをいかに指導するか、あるいはまたいかに処理するか、調査会の結論を見て決定をするというお考えに対して、具体的にもっと調査会とあなたのお考えとの関連を説明していただきたいのであります。
  161. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法調査会法第二条にありますごとく、この調査会は「関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告する。」こういうことになっております。調査会は独自の考えでいろいろ調査審議しておられると思います。報告があった場合に、その報告をどうするかということにつきましては、私は、その報告を受けまして、その後におきまして自分の考えをきめたいと思います。
  162. 片山哲

    片山委員 しからばそれまで待つよりしようがないわけですね。待って、今は憲法問題については改正是か非かについて何も言えない、こういうふうに解釈してよろしいですか。
  163. 池田勇人

    ○池田国務大臣 改正是か非かは私が考えることでございますが、その考えることは、報告を待ち、世論の帰趨を見、そしてまた、国家の将来を考えてきまるべき問題でございます。
  164. 片山哲

    片山委員 あなたの言う、新聞で伝えられておりまする国民の盛り上がりというのは、どういう意味でしょうか。調査会の経過を見ますと、擁護論者と改憲論者と相まざっておりまするし、また、公聴会における国民の世論、国民の意見も、擁護論者と改正論者との数は半々のようにわれわれはとったのであります。そういう際に、盛り上がりというのはどういうふうな——改憲のムードを助長して、改憲運動の一助とするというようなことは、これは許さるべきことではないのでありますが、盛り上がりというものを、ほんとうに自由に、国民の世論を正式に反映せしめなければならぬと思うのでありますが、どうも盛り上がりによってやるとも言うし、また、調査会の結論を聞いてから決定をするとも言うし、決意のあるところを明らかにしてもらいたいのであります。
  165. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいまお答えした通りでございまして、報告があって後、そして国民がどう考えるか、いわゆる世論の帰趨を見きわめ、そしてまた、私としてはいろんな国家将来のことを考えてきめるべき問題であると思います。一国の総理大臣として、こういう重大な問題を今ここでどうこう言うことは、私はとらないところでございます。
  166. 片山哲

    片山委員 遺憾ながら、この調査会は違憲であるというわけで、野党が一人も委員を送っていないのであります。一方的な与党のみによりまして、あるいは与党を支持する学者が多数お入りになっているというような状態で、一切万事をそれに嘱するとか、あるいは、それにたよっておるということは、まことに情けない話であろうと思うのであります。もっときぜんとして、自己の所信を明らかにして、そして国民の盛り上がりに対して首相としてのお立場を明らかにすることが至当と思うのであります。調査会にのみたより過ぎているということに対して、われわれはすこぶる不満を感ずるのであります。これをどう処理するかということについて押し問答でありますので、私は特に首相に対しまして、近く迫っておりまするこの処理をいかにするかということと、あなたの所信をそのうちに明らかにしてもらいたい。それが当然の責務である。憲法を尊重するという義務を負わされているのでありますからして、その点に関する責務を明らかにすることが、国民としても要望していることであろうと思いますので、これを明らかにしてもらいたいということを要望いたします。  次は、これも予算委員会でしたか、問題になりました発議権と発案権の問題でありますが、これは法律的な事務的な解釈は別といたしまして、重大なる憲法を改正するために、特別に九十六条を置きまして、そしてこの発議権は一切国会において取り扱うという特別規定を置いたのが特色であろうと思います。一般の法規は、なるほど政府が発案権あるいは立案等もして準備をすることができると思うのでありますけれども、しかし、憲法の重大性にかんがみまして、この憲法問題についての九十六条の特別規定は特例になると思うのであります。その条文の解釈は聞こうとは思いませんが、しかし、重大なる問題を一切がっさい国家の最高機関であります国会に一任することが最も適当であろうと思うのであります。発案権も含めて発議権の中に入れてしまう、発案権というものは立案すること、いろいろ準備することも発案権の中の準備行為であるというふうに解釈をすることが、また、そういう運営をすることが、最も至当なりと考えるわけなのです。それについて首相のお考えを聞きたいのであります。
  167. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法改正の問題につきましては、いわゆる発案権と発議権がございます。私は、法律解釈論としては、議院内閣制のこのもとにおきまして、憲法七十二条の、内閣総理大臣内閣を代表して議案を提出する、このうちに発案権は含まれると思っております。しかし、九十六条の問題は、憲法改正は重大問題でございますから、国民に対して発議するのは国会だけでございます。国会議員が三分の二以上とった場合に、国民に対しての発議権は国会にのみございます。しかし、その前提でございます、憲法改正について議会にどうするか、三分の二あるかないか、その国会に対しましての発案権は、私は国会議員のみならず、内閣総理大臣にもあることが、この憲法改正のためには当然のことだと考えております。この問題につきましては、以前もいろいろ議論がありましたが、内閣といたしましては、この解釈を続けておるのであります。私も従来の解釈が適当であると考えております。
  168. 片山哲

    片山委員 そういう解釈はすこぶる古いと思うのです。憲法という重大なる問題を、特に国家の最高権威である国会にゆだねて、国民投票という方式までとらざるを得ないというふうな特別例外規定をやっておるのでありまして、そのあとが国民投票になってくる。その前提としても、やはりそれに相応するだけの発議権を仕立てていく、発案権というものも、それに付属した準備行為として解釈することが至当と思うのでありますから、それはなお一応研究を願いたいのであります。そうして、ほんとうにふさわしい——ただ戦術として上手に言いのがれをするというだけじゃなしに、ほんとうに国家的に考えまして、どの方式がいいか。議院内閣制をとっておりまするわが国において、国会は最高の権威であるという規定を置いて、しかも七十二条以下、そのあとに最後に、九十六条をもってこれに対して制限を加えて、特例を規定したという精神にかんがみてみますならば、発議権の重要性にかんがみまして、発案権というものも中に含まれた準備行為として解釈することが、将来至当なるものである、これの方が適当であるというふうな意見を私は持っておるのでありまするが、この点については十分御考慮、御研究をわずらわしたいと思うのであります。  次に、政府及び国会が、世界に向かいまして原水爆の実験の停止を要求いたしております。これはまことに至当のことであり、まことに喜ばしいことであります。そういう運動を起こして平和が実現することを望んでやまないのであります。進んでは一切の核兵器を禁止し、戦争を世界から駆逐して、真に平和なる世界を実現するということに対しまして、 いろいろと考慮を払っていかなくてはならないと思うのでありますが、つきましては、核兵器を持っている、これを実験する国々に対して、わが日本がやめなさいということを言い得る力強さはどこから出てきておるかと申しますならば、それは憲法第九条があってこそ、戦争を放棄しておる国の発言権は有力である。自分で持っておって、相手方だけやめさそうというようなることは、それはずるい話であります。みずからもやめてしまって、いな、核兵器のみならず、一切戦争を放棄してしまって、そうして輝く平和に対する信念の強さを現わしておりまして、そうしてもって核兵器の禁止あるいは実験の停止を要求するというところに、傾聴に値するし、世界各国をしてほんとうに首肯せしめる真剣な運動としての値打ちが出てくると思うのであります。こういう意味から、この憲法を今国内の動きで変える、そして第九条は行き過ぎである、再軍備をしなければ外敵の侵入に備えることができないというようなることを言って、どこに核兵器禁止運動の力強さがありましょうか。私は、そういうような意味から申しまして、断然再軍備を阻止いたしまして、ほんとうに九条はそのまま堅持しなければならないと思うのでありますが、そういうふうにいたしまして、もって世界のために貢献し、世界がだんだんと九条と同じような条文の憲法を持ち得るようになりましてこそ、ここに世界の平和を、戦争のなき世界を実現することができると思うのでありますが、そういう運動をしておる、核兵器の実験の停止、禁止、一切の核兵器を排除していくということを主張しておるわが日本において、憲法第九条を持っておることは非常な特色になるのでありますが、そうは思いませんか。そういうふうにお考えになるべきはずであると思うのでありますが、あなたの憲法改正の所信云々にかかわらず、そのことは切り離してお答えを願いたいと思います。
  169. 池田勇人

    ○池田国務大臣 憲法第九条におきまして戦争を放棄しておることも、お話通りでございます。しこうしてまた、われわれが世界に向かって核兵器実験禁止、核兵器保有禁止ということを主張しておることは、国会でもたびたび申し上げておりますように、わが国民の、またわが政府の基本的の方針でございます。そうしてまた、われわれ日本国民が唯一の被爆国民であるということも、核兵器禁止につきまして非常な力強さを加える一つのあれだと思うのでございます。従いまして、私は核爆発実験停止、そうして行く行くは核兵器放棄ということにつきましては、最善の努力を今までも続けてきております。今後も一そうこの努力を進めていく考えでございます。
  170. 片山哲

    片山委員 そういう意味において、九条を堅持するお考えはあるべきはずだと思うのですが、おありでしょうかという点をもう一度重ねてお答え願いたいのであります。
  171. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申し上げた通り、現行憲法を順守いたします。しかし、現行憲法につきましての検討は、私はしなければ——改正するしないの結論はまだ出しておりません。
  172. 片山哲

    片山委員 しからば、防衛の問題について関連してお尋ねいたしたいと思います。いろいろ科学の発達やら、世界の情勢の変化に従いまして、防衛ということも幅広くなってきました。私はこれを分類いたしまして、事前の防衛と直接の防衛と、二つに分けて考えることが適当と思うのであります。事前の防衛は、侵略されるような不幸のないようにするために努力するという政治外交の問題であります。あるいはこれを外交防衛と呼んでもよろしいと思います。あらゆる手段を尽くして国際紛争を解決するように、話し合いでやらなくてはならないという九条の規定を厳守いたしまして、そうして外交上の方式によりまして、侵されることのないように、あらゆる面において努力するということが必要であります。しこうして、直接の防衛ということは、昔であるならば帝国主義侵略等の方式がありましたけれども、今日においては、事実と見ますならば、みんなやっぱり国際紛争であります。インドのゴアから、あるいは西イリアンの問題から、あるいは竹島の問題から、台湾問題、ベルリン問題は言うまでもない。いろいろ今日いわれております国際的な紛争によって、ひょっとしたらそういう心配があるのではなかろうかという、直接侵略等の憂いなきにしもあらずでありますけれども、理不尽にして、しかも何らの理由のない狂気のさたの侵略ということは、もう今日はあり得ないと断じても差しつかえはないと思うのであります。よって来たるゆえんがあるのであります。よって来たるゆえんを解決するのが政府の責任であります。外交上、政治上の問題で、侵略されることなからしむるように努力するという外交防衛、あるいは政治的に内乱を防いで秩序を保っていくということについては、最大の努力を払うべきでありますが、しかし、それによって今日目的を達するだけの自信を持たなくてはならぬと思うのです。いやしくも一国の政治を担当しておる限りにおきましては、どうして国民を安堵せしめて——いわゆる旧式なる戸締まり論、古い武器で用意をするというようなことよりも、全力をあげて国民の力を求めて、そうして外交上においての防衛を計画をするということが、もう今日は最大の重要事項になってきておるのであります。そういう意味から申しまして、こういうふうに二つに分けます。そうして、日本は特にそれらを十数年前から心いたしまして、国際紛争を解決するには武力を行使せず、戦力はこれを放棄する。一切を話し合いに求める。ケネディ大統領とフルシチョフ首相とがジュネーヴにおいて会談をする、その会談の成功を世界の人々はあげて望んでおったではありませんか。そういう話し合い外交を率先主張したのは、わがはえある九条であります。世界的に率先の栄誉をかち得なければならないくらいに思っておるのであります。そうして国防は、国内においては社会保障制度の充実、あるいは道路の完備やら教育やら、一切秩序保持のために努力をするし、外交におきましては樽爼折衝、話し合いを活発に誠実に真剣に行使いたしまして、ほんとうにその独立と自由を守っていく、こういう新しい外交防衛方式をとることが最も必要であろうと思うのでありますが、これに関する首相の御意見を聞きたいのであります。
  173. 池田勇人

    ○池田国務大臣 国土の安全と国民の平和であることを願うことは、政治の根本でございます。お話しのように、こういう方向で外交関係を進め、そうして世界の平和に貢献するよう努力いたしておるのであります。
  174. 片山哲

    片山委員 はなはだ物足りなく、われわれから見ますならば、大へん弱いと思うのです。武器にたよる必要はもう今日ない。しかも、時代おくれの武器で、莫大な費用をこれのためにかけて、国内の諸政策をおくらしておるということは、実に残念しごくであります。でありますからして、この九条というものをあらゆる面から検討してもらいたいのであります。ただ、国際紛争を解決するに武力を行使せず、これは、国際紛争ではない、理不尽な侵入である、狂気のさたであるというような工合に安閑としておられない今日の情勢であります。もし世界があげて九条のごとき憲法を持つようになって参りますならば、ほんとうに世界の平和はそれによって実現すると思うのであります。今世界があげて世界連邦問題について関心を深めて参りました。EECの問題が政治統合へと、あるいはアフリカがアメリカ合衆国へと進んでいこうとしております。そういう状態のときに、せっかく十四、五年前に世界に率先して、紛争は一切話し合いで解決しようとまで決定した、この意義深い第九条を、ただ調査会に一任をして、調査会の結論によって態度を決定する、これはまことに情けないと思うのであります。どうぞきぜんとして、日本の立場は武力で立つのではない、文化と科学をもって立たなくてはいかぬのである、しこうして、防衛は、新しい外交と新しき政治体制をもって国を守っていくのである、こういう態勢で進めなくてはならないと思いまするが、もう一度首相のこれらに関する、平和に対する——再び戦争を起こしてはならないのである、これは憲法前文に、政府の行為によって戦争の惨禍を再び起こさざるようにすることを決意して、主権が国民にあることを宣言して、この憲法を確定するという堂々たる宣言をしておるのでありまするから、この宣言の趣旨をどこまでも尊重して、そうして調査会の報告いかんにかかわらず、あなたの平和に対する所信を伺いたいのであります。
  175. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど来申し上げておる通りでございますが、憲法調査会は、いかにも憲法を改正し、ことに九条を廃止してしまうような前提での御質問でございますが、そういう前提での御質問では、私はちょっと聞き取れないのでございます。先ほど申しましたごとく、あくまで国の平和、国土の安全を保つ最全の努力をしていくというのが私の念願でございます。従いまして、今九条を廃止するとか改正するとかいう問題につきまして触れることは適当でない、それよりも、いかにしたら国の安全が保てるかということを考えるので私は十分であると思います。
  176. 片山哲

    片山委員 遺憾ながら時間が参りましたので、これでおしまいにいたしまするが、注意を喚起し、注文をし、私の意見をごく簡潔に申し上げておしまいにしたいと思います。  時代の先覚者でありまするわが憲法、国民主権——国民主権のもとに警察制度も変わって参りまするし、教育基本法も制定されまするし、自治法も制定され、その自治法が——各市町村におきまして、各県において、だんだん平和宣言をするような時代に今日はなってきたのであります。そういうふうな進み方をしておる際でありまするからして、この憲法の精神をどこまでも生かさなければならない。東西緊張、冷戦のさなかに立ちまして、この悪法を変えるといいまするならば、それは再軍備をするのである。もとのような兵隊を置いて、徴兵制度までそれか進むのである。日本は再び軍国主義になってきたのであるということになったならば、これは大へんなことであります。アデナウアー老首相が八十五才の老齢にかかわらず、EECをしてそれを政治統合へと持っていきたい、しこうして、ドイツの国家主義、ナショナリズムを払拭したい、戦争の責任者であるという罪滅ぼしをしたい、罪滅ぼしをするために、ここにきぜんとしてヨーロッパ合衆国へと進んで、仇敵でありましたフランスと手を握ろうとしておるということ、これは殊勝な事柄であります。わが日本も、失敗をしたあの戦争にがんがみまして、今後一切戦争の中に巻き込まれない、断じて戦争を起こさないし、巻き込まれないで、国民を平和に守っていくべきであるということが、あなたに課せられたる大きなる責任であろうと思います。それがあいまいなことを言って時をかせいで、あとへ延ばそう延ばそうということでは、まことに国民としても不安でありまするから、願わくは、どうぞはっきりと——今ここで言うことができなければ、まことに残念であります。私は聞こうと思って待ちかまえてきたのでありますけれども、おっしゃらなければしょうがない。どうぞ最も早い適当なる機会において、憲法に対するところの所信を明らかにして、国民の自由と独立を外交によって、政治によって、社会保障制度によって、福祉政策によってけっこう守ることができるのであるという信念を持たれんことを要望いたすのであります。しこうして、盛り上がる運動は、憲法を守りたい、憲法を尊重したいという運動が、必ずやわが国においては盛り上がってくるに相違ないと信ずるのであります。そういう意味において、十分なる御検討をこいねがいまして、時間が参りましたので、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)
  177. 中島茂喜

    中島委員長 石山權作君。
  178. 石山權作

    ○石山委員 私どもの先輩である片山さんが平和憲法を論じたあとで、私どもが社会悪のような、あるいは私どものからだの中のできもののようにも考えられる自衛隊戦力というようなことを話し合わなければならないことは、非常に残念に思います。しかし、当委員会の任務は、現実に即して日本国民の平和というもの、あるいは民生安定というものをやはり守り切らなければならないという任務を持っておると思っておりますので、直接に防衛の問題に入りたいと思います。  一昨年、日米安保条約が制定されまして、岸総理の次を池田総理が継いだわけです。同じ保守党内閣のことでございますから、安保条約の解釈については相違はないだろうと思いますけれども、一応話の初めとして確かめておきたいことがあるわけです。それは条約五条に関係いたします防衛義務の問題でございます。その当時の長い間の与野党の論争というよりも、政府と野党の論争の中の特異な点をあげてみますと、野党側は、日本基地ばかりでなく、日本の領海、領空内にある米軍艦や米軍機に対して、日本には無関係な攻撃が加えられた場合、日本はこれに対して共同の行動をとる必要に迫られるとしております。これに対して政府側は、どこまでも米国の場合は集団的自衛権の発動であるが、日本の場合には日本の領土、領空、領海が侵されるのであり、そのときに限るのであるから、個別的自衛権の発動であるというふうに答弁をいたしまして、いつまでたってもこの問題は並行線をたどったという形になっております。そこで、政府の見解といたしましては、今でも、その当時岸首相を中心にして答えられ、解明を与えられていた問題については、変わっておりませんか。
  179. 池田勇人

    ○池田国務大臣 五条の問題につきましては、ほかの問題もあの当時と同じ考えで進んでおります。
  180. 石山權作

    ○石山委員 先ごろF104Jが初めて一機日本にできまして、試験飛行を行なったわけですが、その当時の形容詞としては、丸太ん棒がひゅうっと目の前を飛び去ったようだ、流星のようだというようなことが出ております。私は何でこの早さという問題を申し上げておくかと申しますと、近代の戦争というものは、領空、領海というふうな言葉ではなかなか限定しにくいのではないかということなんです。これと五条の防衛の義務をになうということは、非常に密接な関係があるのではないか。たった一機のF104Jでさえも丸太ん棒のように、流星のように飛んでしまう。一体この飛んでいる姿が、領海十二海里であろうが三海里であろうが、これは侵したということの認定はなかなかむずかしいのではないかと思います。  それからもう一つは、最近偶発的に大戦争が巻き起こされるのではないかという危惧が、国民の間に大へん深いわけであります。それともにらみ合わせてみますと、偶発的にミサイル等を積んできた飛行機が、丸太ん棒のように日本の領海をかすめていった、そうしてたまたま日本海の中にあるアメリカの潜水艦に被害を与えていった、こうした場合に、日本自衛隊はどういうふうな判定をするだろうかというような疑問が起きてくるのです。こういう場合の判定装置が自衛隊の中にあるわけですか。
  181. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 兵器の発達によって、わが国に対する侵略の態様というようなものが非常に複雑になって参りますることは、確かに御指摘の通りでございます。われわれは常に申し上げておるように、わが自衛隊というものは、わが国に対する万々一の不幸な事態に対して、これを防衛するという考え方に立っておるわけでございます。従いまして、ただいま御指摘のような点はなかなか判定がむずかしいという面はあろうかと思いますが、しかしながら、やはりわが国の防ぐ体制というその根本から割り出した処置というものは、十分とり得るものと考えておるわけでございます。
  182. 石山權作

    ○石山委員 それでは日本の安全を担当される防衛庁長官としてはまことに不適当な発言だと思う。私は領海の話をしておるのですよ。領海、領空をいかにして認定するか。だって、あなたたちの方で答えておるじゃありませんか。領土、領空、領海が侵されるのであれば、そのときに限りというふうに表現しておる。そのときに初めて日米共同の行動を起こすことになっておるのでしょう。判定がわからないで済むということはあり得ない。判定がわからないで共同行動を起こすということは国民を欺くものでしょう。そうしてこれからの戦争は、さっきも私ちょっと申し上げましたが、速度のある、破壊力の大きな戦争になります。ですから、きょうは時間がないので、十分この論争を続けることが不可能なのは非常に残念ですが、この問題についてだけ集約を申し上げるとするならば、去年池田さんがアメリカに総理としておいでになるとき、私はちょっと質問に立ちました。そのとき、あなたはアメリカにおいでになれば、おそらく第二次防衛計画をばアイゼンハワーと御相談なさってくるだろう、こういうふうに申し上げましたが、そのときには池田さんは、いやそんなことは絶対にないと言いました。私はそれになおさらつけ込んで、いやそうじゃない、腹の中に何か持っているのだ、あなたは腹の中に何もないと言ったが、私はつかんでみても見たいというふうに申し上げたわけですが、まずアメリカとの関係一つ考えてみても、非常に私はこれからいろいろな問題が起きてくると思います。特にアメリカの場合は、日本のような仮想敵国がないなどとは申しておりません。国連に中国の加入をまだ力一ぱいはばんでいるというのがアメリカの現状です。ですから、日本の国が仮想敵国がないと言っていながらも、日米安保条約を結んでいる建前からすれば、日本は非常な危険な立場に立たされている情勢にあるということも、これは御理解していただけると思う。  そこで、私が申し上げたい点は、あなたがアメリカにおいでになるときも申したのですが、原子力潜水艦、これは大へん今防衛庁の中では魅力を感じているわけです。これは自衛隊が持つことのできないミサイルを原子力潜水艦は持つのでございますから、何とか便法があればこれの基地をば提供したいという意見が、かなりに防衛庁の中にあるというふうに聞いております。私はそれは反対していただきたいと思う。小坂・ラスク長官のアメリカにおいての折衝には、小坂外相は、日本国民感情もあるから、基地をば与えることはできませんというふうに断わって、去年はそのままで済みました。それだけれども、ことしは九州に例の人工衛星の観測をしたいと言ってきょうとしておりました。で、私は、この問題は、大小にかかわらず新しい基地のようなもの、軍事基地と申し上げた方がもっと手っ取り早いでございましょうが、貸与しないのだ、日米安保条約からすればなかなかそれは言いにくいことだろうけれども、貸与しないということをこの際おきめになっておくことが、お互い様この際日本の安全性を守るにはよろしいのではないかと思うのですが、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  183. 池田勇人

    ○池田国務大臣 人工衛星についての観測の観測所を設けること、これにつきまして、二月の末か三月の初めかに、アメリカ政府よりわが国に観測所を設けることについての問い合わせがきたことは聞いております。その後、フィリピンの方に観測所を設けることになるやに聞きました。日本への申し出は今中断しておると聞いております。私は、この人工衛星の観測、平和的のいわゆる研究としてやるのならば、これは自分として内容をよく検討しなければいけませんが、こういう平和的なものをむげに初めから断わるということはどうか、やはり研究してみなければいかぬと思います。これが戦争目的とかなんとかということなら、これは新しいものは私は断わりたいと考えております。
  184. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 何かポラリス潜水艦の日本基地を提供するようなことが防衛庁の中の意見にあるようなお話でございますが、そういうことは全然ございません。
  185. 石山權作

    ○石山委員 その次に、私は、第二次五カ年計画と日本経済とのにらみ合わせをこの際お聞きしておきたいと思います。今の防衛費は御承知のように一千九百億程度でございますが、もし関連としてのものを入れるならば、次のような数字をわれわれは見ることができるのではないか。たとえば国庫債務負担行為によるところの四百三十九億、艦船建造継続費の二百十六億、相互援助防衛費によるところの使用額三億二千万円、賠償等によるところの特殊費二百九十二億、施設費六十億、遺家族あるいは軍人家族の千億円をこえる額でございます。これらは二千億をこえる数字になるそうでございます。ですから、純防衛庁の費用は確かに二千億でございましょう。しかし、防衛力をば強め、そして後顧の憂いなからしめるように、そしてアメリカの関係も約束を果たすとするならば、そのほかに概算二千億円以上のお金がかかっているということでしょう。これを満足にやらなければ、これ以上私たちは防衛力をば進めるということはできないのではないか、こう思っておるのですが、いかがございますか。
  186. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛関係費用本年度二千億円近くという数字は私は認めますが、軍人恩給等を防衛に関する費用だとお考えになるのは、私には納得いきません。そして継続費あるいは国庫債務負担行為の分は、これは将来の分でございます。そしてその出てくる年度の分は、その年度の防衛費として出るのでございますから、今後防衛費が二千億円足らずからだんだん毎年ふえていきます上におきまして、そのふえる部分に入っていくのですから、別にこれがこぶになって上に乗っかるわけじゃない。やはり防衛関係経費は千九百数十億円と見るのが適当だと思います。
  187. 石山權作

    ○石山委員 見るのが適当だというのは、池田さんのお考えでしょう。軍人遺家族、旧軍人等の問題も、やっぱり軍隊がなければこういう補償のようなものはしなくても済んだわけでございましょう。ですから、これは古くから新しい時代に連なっていく経費でございます。負担行為の問題にしても、これはいつかは出さなければならない問題でしょう。六百億をこえるこの額も、年々であろうが出さなければならない額です。  それから、きのう大蔵省で発表になった貿易の問題を見てみます。これはあっちから見てもこっちから見ても、いろいろなやりくりをして、銀行から金を借りて落としたように見えますけれども、実質赤字は六億七百万ドルを下らないということが推定されております。これと、この三十六年度の経済の現状、収支決算の三十六年度の現在と、これから来るべきところのここ一、二年の貿易の赤字、物価高、防衛庁費の中に占める人件費、こういうものをにらみ合わせてみると、第二次五カ年計画四十一年までの達成はやや難渋なのではないかと思うのですが、金はどこからでも持ってくるからやり遂げる、こういうのでございましょうか、御意見を承りたいと思います。
  188. 池田勇人

    ○池田国務大臣 防衛関係経費は、国力その他各般の事情を考えてきめることは、国防計画できめておる基本方針でございます。従いまして、私は、国の力の増していくのに連れまして、最小限度の防衛力の充実ははかっていかなければならぬと考えております。従いまして、四十一年度までの第二次計画におきましては、おおむね毎年百九十五億から二百十五億までの間でまかなっていく、平均二百五億程度でまかなっていけるのではないか。これも経済の成長率と見合って一応のあれを予測して計画を立てておるのでございます。先ほどのお話の継続費あるいは債務負担行為の分は、このうちから出すことに相なっておるのでございます。そうして、日本の経済状態が非常に悪いとか、輸入が非常にふえているとかいうことでございますが、日本の経済に対します各国の信用は一つも落ちておりません。日本の高度成長が行き過ぎた場合におきまして、総合収支で三億数千万ドル、そして今の六億という数字は、経常収支でもなしに、総合収支でもなしに、三億数千万ドルの総合収支の赤に、多分アメリカの三銀行の借入金の二億ドルとEXIMの二億五千万ドル、そのうち三、四千万ドルしか使っておりませんが、これを入れての御判断でございましょうが、日本の経済が、昨年あるいは今年三兆六千億の設備投資をし、会社の増資が一兆円になんなんとするとき、国民生活がここまで向上しているときに、ちょうど個人経済でいえば、非常に仕事をふやそうとするときに、ある程度の借入金はこれはやむを得ない、喜ぶべきことでないが、やむを得ぬことである、伸びていく場合の下ごしらえと私は私えておるのでございます。
  189. 石山權作

    ○石山委員 まあ、経済のことには自信満々のようでございますけれども、私ならば、国庫債務負担行為を年次的に支出をし、そうして年間二百億ないし二百十億程度の総額では、所期の目的を達することはどこから勘定しても不可能だということです。それはまあいろいろな兵器をば国産化すると言っておりますが、国産化して、アメリカよりも三割方値段を安く入手できるというふうな摩詞不思議な妙手があれば、これは達成できるでございましょうけれども、われわれの調べるところによれば、兵器をば国産化すれば、アメリカから購入するよりも割高につくということがはっきりしている現状でございます。だけれども、あなたがおっしゃったように、二百十何億程度でやるというのだから、二百十何億以上は出さないということだろうと思う。これは私たちはきちっと頭に入れておきたいと思います。私は、こういう事態だから、無理をして増強する必要はないだろうということを申し上げたいために言っておるのでございます。  国防費を私たちが考えてみる中で、もう一つ、これは池田総理に聞いておいていただきたい点は、われわれは戦後十数年を経てもう戦後ではないという考え方を持っているわけです。そのためでしょう、池田さんは気前よく、東南アジアを歩いてぽいぽいお金を払ってきた。タイ特別円なり、インドネシアなり、ベトナムなり、まあいろいろあるようで、保守党の方々はみなやったということでしょう。それと同時に、国内でいろいろな問題が起きているということです。その大きな問題としては、旧地主への賠償が二度行なわれようとしておるこの現実、これは何も旧地主だけではなくして、引揚者が財産補償をしてくれという意見が最近猛烈になってきております。国策会社に勤めた者には、内地の公務員と同じに恩給年月をば通算してくれということを盛んに言ってきております。軍需産業の会社や工場では、あの当時の未払いのお金をばそろそろちょうだいできないだろうかと言い始めております。その他戦災を受けたいろいろなものがあるのではないか。放射線に倒れた人々の判定はむずかしいものでありますから、この点では泣きの涙にくれて、補助を受けられない方も相当あるやに聞いております。これらをよくめんどうを見てあげないで、表面的な再軍備の費用だけをばお出しになる努力をするということは、当を得たものではないのではないかというふろに考えているわけでございます。そこで、池田さんに押して聞くのは、あなたは二百億ぐらいでこれをやってみせる、第二次五カ年計画の四十一年までは年次二百億の総額でやってみせるという御意見のようでありますが、それは確実にできますか。それと同時に、今私が五つ六つあげたような、いろいろなまだ未整理になっている問題が油然と起きつつあります。それをも処理してやっていけるという見通しを持ったお答えをいただけるでございましょうか。
  190. 池田勇人

    ○池田国務大臣 第二次防衛計画は、昭和四十一年までに、一応、大体先ほど申し上げました五生間二百五億前後でやっていこうとしておるのであります。ただ、こまかい計算につきましては、外分自衛隊員のベース・アップの点は見ていないようでございます。大体防衛計画といたしましては、これでやっていけるということで、私のみならず、国防会議で決定いたしておるのであります。そうして、農地問題等戦後処理の問題につきましては、私はただいまはっきり申し上げるわけにいきません。今後の問題として検討していきたいという気持を持っております。
  191. 石山權作

    ○石山委員 非常に残念ですが、総理は別のところにおいでにならなければいかぬというのでございますから、まとめて申し上げたいのでありますが、私は、これについて、アメリカとの関係においては日米安保条約等の関係がありますけれども、軍事に類した便宜あるいは基地等をあまり与えていただきたくない、与えてはいけないのではないかという強い意見でございます。それともう一つは、経済界がこういうような状態、また補償問題をいまだに片をつけないような今日において、無理をして第二次五カ年計画を進める必要はないのではないか、ふところのあり金でやっていくべきものではないか、こういうことを強く申し上げたいのでございます。もう一つは、これは説明を申し上げないとおわかりにならぬので、残念でございますけれども、防衛力が強くなりますと、どうしても軍人の発言力が非常に強化をされてきます。これをばとういうふうにして——われわれの身の回りに、いろいろ反革命とか革命とかクーデターとかいう言葉で、いろいろ問題を起こしておりますが、こういうことのないようにするためには、われわれは一体どういうふうな工夫と施策と、その機構を持てばいいのかということでございますが、この点に関しましてはよく御考案をしていただかなければならないと思います。  残念でございますが、時間がないというので、私は以上のことをば要望して、質問を終わりたいと思います。
  192. 中島茂喜

    中島委員長 緒方孝男君。
  193. 緒方孝男

    ○緒方委員 私は、大あらましなことを聞いていきたいのです。  実は三代の防衛庁長官にわたって練りに練り上げた第二次防衛計画というものが、半紙の半分くらいで切るくらいな結論になっておる。その内容の中には、いろいろ問題とすべきなにがありますが、私は全く期待にはずれた面がある。   〔委員長退席草野委員長代理着席防衛庁のあなた方と私たちと、国防という問題についての見解の違いはあろうけれども、その違った見解の中においても、もう少し現実の実態をよく検討した上での防衛計画というものが練られて出さるべきが当然ではなかろうか。国土、国民の安全を保障するための防衛であるとするならば、今日本がどちらの方向に危険があるとか、どういう方向からの侵略が予想されるとか、それに対してはどういう方法を講じなければならないだろうとか、その見解が当たっておるかおらないかは別として、せめてそれくらいな検討の上に立って第二次防衛計画というものが練られるものではなかろうかと思うておりましたが、そういうことが論議になったかならなかったかは存じませんが、世上——といえば悪いかも存じませんが、鳴りもの入りの第二次防衛計画が出されたわけなんです。これについて私は端的に質問していきますが、昨年の正月ごろから、アメリカにおいてはものすごい防空壕の設備、退避壕熱というものが行なわれておる。大統領の教書を初めとし、民間並びに政府一体となって防空壕施設、退避壕施設といろものが行なわれておるが、防衛庁調査の中では、それらの事情がおわかりになっておるかどうかを一つお伺いしておきたい。
  194. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 詳細をきわめたわけではございませんけれども、ただいま御指摘のように、退避壕と申しますか、要するに、原水爆の攻撃に対しても耐え得るような退避壕の存在があり得るのだというようなことで、いろいろな研究の行なわれておりますことは存じております。
  195. 緒方孝男

    ○緒方委員 退避壕そのものが、原爆なり水爆の被害から保障できるかどうかということの問題はありましょうが、アメリカ自身においても、ベルリン問題その他の国際的な緊張の状態の中から見て、もし戦争状態に入るとするならば、敵の攻撃も受ける危険性と可能性があるという前提に立たなければ、こういう退避壕なんて作る必要はなかろうと私は思う。もしまかり間違えば、敵の原子攻撃の被害を受ける危険性の上に立ったがゆえに、アメリカでは官民一体となって生き残るための戦い、どうして生き残るかということが、政府民間一体となって真剣に、神経質になるほど考えられておると私は聞いておるわけなんです。そういう事態の中に、日本だけは超然として、原子攻撃を受ける危険性も何もないという情勢判断を出されたのかどうか、これを一つお伺いしておきたい。
  196. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん、各国とも、防衛の第一義は、そうした相手からの攻撃を未然に抑制するということであろうかと思います。しかしながら、万々一不幸な事態になった場合に、それに対処する手段というものはやはり講じておるわけでございますが、そうした中で、ただいま御指摘のアメリカばかりでなく、他の国におきましても、原水爆に対する退避壕と申しますか、そうした原水爆攻撃に対する対処の方策というようなものについて考究しておることは事実でございます。われわれといたしましては、こうした世界の情勢を頭に描きつつ、しかも、わが国としてやるべき防衛力の整備というものは何かという判断の上に立ちまして、お示ししましたような第二次防衛計画を樹立したわけでございます。
  197. 緒方孝男

    ○緒方委員 アメリカが退避壕を作りおるから日本もなぜ作らぬかと私は言っているわけじゃないのです。私は、何も退避壕を作ったからというても、決してこれが退避壕にならないと信じておりますから、まさにアメリカのやっているこの退避壕政策というものは狂気のさたなりと、私は言わなければならない。これは、戦災をこうむった人間でなければ、実際はわからない問題だろうと思う。だから、何もアメリカが退避壕を作りおるから、日本もなぜ第二次防衛計画の中にその面を入れなかったかと言っているわけじゃないのだが、前の防衛庁長官西村さんが、日本自衛隊はいわゆる国内の防衛だけをするのであって、私たちはいわゆる内野を守る任務を持っておる、外野は日米安全保障条約に基づいてアメリカに守ってもらうんだと、こういう御説明をしておった。しからば、外野を守らなければならないアメリカさんが、自分の家に対する攻撃から生き残るための設備に、狂気じみた政策までとらなければならないという事態に直面して、日本だけはその脅威は全くないという超然たることで、国防ということがはたして真剣に考えられておるのかいなかという、あなた方のお考えの所在を私は疑いたい。アメリカの退避壕を作るということが、私は適当じゃないとは思うが、少なくともそうしたならば、何%かの人間でも生き残ることができはしないかと思うのは、ワラをもつかむ一つの親心だろうと思う。アメリカ自身がそうしておる。アメリカさんが守り切れぬときには、日本人はみな死んでしまわなければ仕方がないんだという前提に立ってのこの防衛計画であるならば、国防なんというのはおこがましい話じゃないかと思う。その点についてのお答えを伺っておきたい。
  198. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいまも申しましたように、アメリカにおいてそうしたことを——これの価値判断についてはいろいろ問題もあろうかと思いますが、研究をしておる。あるいはスエーデン、スイスなどでも、原水爆攻撃に対するある種の研究をやっております。こういう世界の情勢に立って、そういうものの全体をにらみ合わせて、そうしてわが国としてとるべき防衛力の整備はどういうものかということを、今回の第二次防衛計画で策定をいたしたわけでございます。
  199. 緒方孝男

    ○緒方委員 どうも私の質問の仕方がまずいのか、受け取り方とそごがあるのかわかりませんが、私の言うのは、米国のそれは、日米安全保障条約を結び、日本政府の外交、防衛と一体となって自由国家群の安全を保障するための一つの防衛体制といわれておる。アメリカさんの危険は日本の危険である、日本の危険はアメリカの危険だというほど、今日は一体となった防衛体制をとり、国際的な危険の一致点を見出していこうとする中に、ベルリン問題がどう発展するかわからない、また南ベトナムの情勢がどうなるかわからない、コンゴの問題がどうなるかわからぬという国際情勢の一番緊迫した中に、場合によったならばわれわれも撃とうし、また撃ち返されるかもしれぬという危険を感じておる。同じ自由国家群の中の最重要な役割を持つアメリカがその危険を感じておるときに、日本だけはその危険のらち外にあるという判断の上に立たれるのかどうかということです。
  200. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 そういういろいろな危険性、可能性、もちろん、そういうことは万々一にも起こるべからざることではございますが、そういう各般の情勢を判断いたし、その上に立って日本のやるべきものはやった、こういうことでございます。
  201. 緒方孝男

    ○緒方委員 そういうことをあまり論争の種にしたくないのですが、西村長官が言われたように、われわれは内野を守る、外野はアメリカに守ってもらわなければ仕方がないというこの考え方を、この時点においては考え直さなければならないのじゃないか、こう私は考えるのです。外野はアメリカに——いろいろなロケットもあるし、戦略空軍もあるから、向こうから撃ってきたら撃ち返してやるぞ、だから日本は、直接海岸に上陸してくるところの侵略軍だけを撃退する軍備を整えておこうというその思想、その考え方、そのこと自体が、今日の段階において再検討されなければならない事態に立っているんじゃなかろうか、こう考えますが、その点はどうですか。
  202. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 緒方さんの御質問の要旨が、もしも、西村前長官の例によれば、外野はアメリカに守ってもらうんだ、しかしそれじゃまだなかなか心もとないので、日本みずから外野を守るようなことを考えなくてはいけないのだということでございましたならば、私は、日本の現在の自衛隊、そして憲法その他自衛隊法等に規定されました自衛隊の権能なり、そういうものからいたしまして、現在計画を進めておりますもので差しつかえないのではないかというふうに考えるのでございますが、ちょっと御質問の要旨が受け取りかねるものですから……。恐縮でございます。
  203. 緒方孝男

    ○緒方委員 そういうふうに質問の言葉を解釈もできるでしょうが、私が質問しているのは、何も、アメリカに守ってくれと言うても守れないから、日本がこのICBMやIRBMもやる、最近代的な武装をして対抗せよなどと言っているわけじゃない。ただ、アメリカと一緒になって侵略を防ぎ得るというようなこの結びつき、必ずしも安全でないということが再検討されなければならないのじゃないかと思う。たとえばイギリスの国防会議の中においても問題になっておる。今かりに戦争になります。たとえばソビエトならソビエトからICBMなり何なりが来たときに、イギリスにおいては四分前に、来るぞということを知らされるだけだという。ただ、その瞬間にわれわれの方も相手に撃ち込んでおりますよということを知らされて、国民は死んでいかなければならぬという状態に置かれている。今アメリカにおいても相当の巨費を投じて、アンチ・ミサイル・ミサイル開発の研究が進められておる。しかし、これをもってしても、十五分以内にそれをキャッチし、残りの十五分間でもってこれを撃ち落とす方法を考えなければならぬというので、盛んに研究が進められておるはずです。ワシントンとモスクワの距離なら三十分という時間があるかもしれません。ところが、日本とモスクワということになりますと、三十分の時間というものが相当短縮されなければならない。それを途中で要撃するなどということは絶対に不可能であるという結論になっておる。その十五分間の余裕がある中においてすら、生き残るための処置を考えなければならぬというとの事態の上に立ったならば、三分、四分の時間しかない日本においては、全部これは不可能であるという結論が私は出てくると思う。してみれば、外野を守ろうと言っても守れないでしょう。これでもって外野が守れるとあなた方はお考えになっておるならば、どうも私はその点の不安を感ぜざるを得ないわけですが、その点専門的な御説明をわずらわしたいと思います。
  204. 海原治

    海原政府委員 二次計画を事務的に取りまとめた者といたしまして、お答え申し上げますが、ただいま御引用になりました前長官の、内野は日本で、外野はアメリカでということは、一つのたとえでありまして、日米安全保障体制のもとにおいては、どういうふうな形になって日本の防衛ができるかということをわかりやすい比喩で申し上げると、日本は四つの島を守る内野である、外野の方面はアメリカ、こういうことで、当時の西村長官が御説明になったものと私も記憶しております。私もまたそのように申し上げたこともございます。ただ、今の先生お話を承っておりますと、言うなれば、アメリカとソ連とICBMの撃ち合いによる全面戦というものを前提にした場合には、日本の現在の防衛力というものは無力ではないかというように考えられるという意味の御発言であったと思いますが、熱核兵器を使用しましての全面戦争ということを考えますと、そういうことになると私は考えております。二次計画を事務的に検討いたしますときには、そのようなICBMの撃ち合い、熱核兵器を用いましての全面戦争ということは、とりもなおさず現代人類文化の破滅になるということで、まずまず起こり得ないだろう、少なくとも二次計画の前提といたしましておりまする五年間は、そういう全面戦争は起こり得ないというふうに一応判断いたしました。しかし、同時に、現在の世界の情勢は、先生も御承知のように、あちらこちらでいろいろな紛争が起こっております。現に武力による衝突が依然として絶えないのが、現在の不幸なことでありますが、世界の情勢でございます。そういう情勢に対して、万々一というものを考えて、最小限度の防衛力を持つということは、防衛というものを担当いたしまする者の責任として当然のことだと思います。そういうことはあり得ないかもしれないということでございますが、防衛とか国防とか申しますものは、これは国民一般が防衛の安全感を持つということだと思います。どの程度の力があれば安全であるかということは、そのときの世界情勢、周囲の環境によって異なるわけでございますが、私どもといたしましては、日米安全保障条約というものを前提といたしました場合におきましては、この五年間において、先ほど御説明いたしましたような防衛力を持つということで、一応十分ではないかということで、この計画ができた次第でございます。従いまして、全面戦争の場合に、ある国から日本にICBMが撃ち込まれ、その時間が何分だ、全然対抗手段がないじゃないか、こういう御質問でございますけれども、私どもといたしましては、この冒頭に書いてございますように、在来型兵器の使用による局地戦以下の侵略というものに対処するということを明瞭に宣言していただいたような次第でございますので、その点は一つ御了解願いたいと思います。
  205. 緒方孝男

    ○緒方委員 私はそこに問題が出てくると思う。防衛については、どの程度が安全であるかという基準は出ないにしても、防衛は国民に対する安全感の一つのなにでもありますが、私はこの前提が違っている。現在ことさらこの防衛力を持ち、かつ、日米共同作戦をしていく形の方が、むしろ安全度というものを阻害しておるであろうことを私たちは考えておるわけです。あなた方からするならば、全面戦争というものはないだろう、核兵器の撃ち合いなどというものはないだろうと言うて今日まできたから、まあけっこうなことなんですが、当のアメリカにおいては、全面戦争もあり得るという状態の中で昨一年度は神経をとがらしてきたことは、あなたも今さら否定することはできないでしょう。それが前提になっておればこそ、急遽待避壕を作れ、避難行動はどうするという、連日にわたる防空訓練や、それに伴うような方法がとられてきている。安全保障条約を結んだ一方の国は、全面戦争の危険性の前に立ちながら、日本だけはないというのは、私は、どうも理解の仕方にちぐはぐが出てきておりはしないかと考えるわけなんです。むしろ日米安全保障条約を結んでなくて、日本があくまでも中立国として厳然たる地位にあるならば、いかにソビエトとアメリカの間がもつれていかなる熱い戦争になろうとも、ここまで飛び火はないだろう。それは前提の安心感はあるかもしれませんよ。しかし、安全保障条約を結び、外野を守ってくれる役目を持つアメリカの中では、全面戦争肯定、その上に立っての一切の施策が行なわれておるときに、日本だけが超然とする条件は私はないだろうと思う。日本国民がアメリカほど緊迫感を感じてないからこそよかったものの、アメリカともっと接近し、もっとアメリカの事情がわかっておったならば、日本国民はどれほど不安な状態に陥るかわかりませんよ。国防が安全度を保障するどころか、むしろ安全を非常に傷つける結果にしかならないだろう。そのこと自体が、防衛庁は、今日の防衛ということよりも、むしろアメリカに対する義理立ての軍備、おつき合いの軍備、こういう形の中にしか——意識は別として、実質的にはそうなっているとしか私は考えられない。それは防衛庁ですから、国土の安全、国民の安全保障という面について、長官長官なりに心胆を砕いておるかも存じません。しかし、もし侵害を受けるとするならば、受ける当人はわれわれです。私も、同様な意味において、国家の安全を願わぬものではありません。ただ、それがほんとうに現実を心配する、現実の危険というものを感ずるならば、そう外野にまかしておけということだけでは、今日解決のつかない事態にありはしないか、国防というものを根本的に再検討する時期にありはしないかということを私はお伺いしておる。
  206. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御立論が私どもと違いますので、その点の食い違いのあることはお許しをいただきたいのでありますが、もちろん米国において——これはなお詳しくは政府委員からお答えしますが、原水爆に対処するようないろいろな処置が研究されていることは事実でございます。しかし、アメリカといえども、アメリカの全体の考え方は、要するに、核の手詰まりと申しますか、核戦争は起こり得ない、また、起こり得ないようにみずからの軍備を充実するんだということを中心にアメリカは考えておるわけでございます。私は、そういう前提に立ちまして、わが国に起こり得べき脅威というものに対処する防衛力を充実することは、やはり政府に与えられた義務であると考えるわけでございます。従いまして、前長官のいわゆる内外野論というものは、全面核戦争を予定しての意味ではございませんで、われわれが一応想定する、起こり得べき局地戦以下の紛争、これの場合においても、わが自衛隊は国内において侵略を排除する。もしそれがこれ以上に出る場合には、日米安保体制によってアメリカとの共同の作戦をやるという意味において、西村長官は言われたと思うのでございます。その点は一つ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  207. 海原治

    海原政府委員 ただいま先生から、アメリカのシェルターに関連してお話がありましたが、実は私、個人的なことを申して恐縮でございますが、私もワシントンに二年前まで約二年間おりました。そのときにおきます体験とか、その後私の友人が向こうに参りますので、いろいろ事情を聞いております。  御存じのように、アメリカにおきましては、数年前から民防衛の組織が普及しております。大きな都市には、地下には全部シェルター、いわゆる避難所という施設がございまして、かりにワシントンに何かのことがあった場合には、どこからどこまでの人はどこに逃げる、どこからどこまでの人はどこに移る、官庁はどこに移転する、こういう計画が実はできておるわけであります。それで、こういうことはアメリカのみならず、先ほど長官からもお話がありましたスイス、スエーデン、その他各国におきまして、従来から行なわれておることでございます。スイスの例を申し上げますと、人口三千以上の都市におきまして新たに家を作る場合には、必ず防護室を作れというような法律も実はできておるような次第でございます。これは第二次大戦以後からずっと継続いたしております。最近特にアメリカにおきましてシェルターの問題がやかましくなりましたのは、従来、全面戦争になった場合には双方が共倒れになるんだ、アメリカもかりにICBMの攻撃を受ければ全滅するんだという考えでおりましたのが、必ずしもそうじゃない。もし万々一そのような全面戦争になりましても、いわゆるフォールアウトと申しますか、放射能降下による被害というものは、ああいう避難壕に入っておりますと十分防げる。かりに五十メガトンの水爆が落ちた場合を想定いたしましても、一マイル以内は幾ら、五マイル以内は幾らという計算ができておりまして、その範囲内においては家もこわれ、人も死ぬけれども、フォールアウトの被害は、一応施設を持っておりますと防げる、こういうことが研究の結果わかって参りました。従いまして、われわれはかりに攻撃を受けても生き残れるんだし、またあくまで生き残らねばならないというふうに、一般の人の考え方が変わってきたわけであります。それで、その面の研究が進んで参りました結果、今ニューヨークで展示されております待避壕というものは、自動車を買う程度の値段で実は買えるわけでございます。アメリカの家庭は、一般的に申しまして、地下室が子供の遊び場になったり、あるいは油の貯蔵庫になったりしておりますが、そういうところへ若干の設備をすれば、簡単に待避壕ができる。だから、そういうものを作って万一の場合に備える用意をしたらよかろう、こういう運動が実は昨年から非常に起こって参りました。このことは事実でございます。ですからと申しまして、現在アメリカの全土がシェルターを作るのに騒ぎ立っておるというような状況ではないように聞いておりますので、御参考のために申し上げる次第であります。  なお、ものの本によりますと、ソ連におきましても、最近民間防衛に関するいろいろなパンフレットが配布されておるという事実が報道されておりますが、これは特に最近にそういう傾向が顕著になったというものではなしに、従来から考えられておりましたものが形が変わって推進されておる、こういうふうに御了解願いたいと思いますし、私どもはそのように判断しておる次第でございます。
  208. 緒方孝男

    ○緒方委員 五十メガトンが落ちた場合でも、五マイル以内のところは防空壕に入っておれば助かるとお考えになるのは、何ですか、あなた方もそれを信頼しておるのであれば、日本だけはそういうことをしないのはふまじめじゃないかという結論が出てくる。私は、皆さん方が待避壕などというものを作らさせないのは、作ってもつまらないという前提があるからこそ、そういうばかげたことはさせないのだろう、私はこう思っておったけれども、アメリカさんの言われるように、われわれは戦争のときには、家の下に防空壕を掘れ、近所に防空壕を掘れということだった。しかし、防空壕に入っておった者が全部やられてしまって、逃げた者だけが助かった経験を持っておる。そういう意味からすれば、われわれは、こういう防空壕が原水爆の被害からのがれる道ではない、こう考えておる。あなた方も多分そうだろうという判定に立っておるけれども、しかし、もしアメリカさんの言う資料が権威のあるものであるなら、あなた方がそれを信頼していないのは、ふまじめきわまる問題じゃないだろうか。  いま一つ、あなた方は、ただ局地戦争はするけれども、全面戦争はわれわれはしないのだということを盛んに言っておる。局地戦争をして、局地戦争からくる全面戦争の場合に、もう日本はこれ以上しないのだという方法があるのですか。原爆だけはおれ方へ入れぬでくれ、それを打ち込まれぬ範囲ではおれの方は戦争をする、そういう勝手なことが国際社会の中で通用するのですか、それを一つお伺いしたい。   〔草野委員長代理退席、委員長着席〕
  209. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 われわれが防衛力を整備する、その根本として、先ほど来申し上げるように、核戦争等の全面戦争は万々起こり得ないのだという前提に立つ。しかも、そういう全面戦争は起こり得ないけれども、世界の各地に局地的な紛争はある。従って、その局地的な紛争に対処するだけの防衛というものは考えていかなければならないというふうなことを申し上げておるわけでございます。従いまして、この全面戦争を誘発するような紛争というものは、まずまず起こらないということを前提にいたしておるということを申し上げたのでございます。不幸にしてそういう紛争が起こったときには、これはもうあらゆる場面に対処してわが国の自衛力を十分に発揮するということに相なると存じます。
  210. 緒方孝男

    ○緒方委員 そういう御説明があれば、どうも先に進まない問題があるのです。全面戦争はあり得ないというこの情勢の判断と見通しは、日米両国間においても共通した御見解ですか、これをまず先にお伺いしておきたい。これはアメリカは違うけれども日本だけは全面戦争は絶対にあり得ないという立論の上に立っておるならば、その立論を作り出された一つの根拠を私は示してもらいたいと思います。
  211. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 これは、単にわれわれがわれわれだけの判断で全面戦争はあり得ないと申しておるわけではございません。もちろん、世界にはいろいろ違った意見を持っておる方もおりますけれども、世界的に見まして、通説と申しますか、一般的にいわれておることは、現在のような情勢においては、核の投げ合いによる全面戦争は起こり得ないのだ、起こることは万々ないのだということをいわれておるのでありまして、そうした判断のもとに立ってわれわれは防衛計画というものをやっておるわけでございます。
  212. 緒方孝男

    ○緒方委員 まことに希望的な御意見のようにしか私には聞こえないわけであります。全面戦争、核戦争というものが全然起こり得ないのだという前提が世界の至るところに浸透しておるなら、今世界の人たちが、戦争の危険というものに対して血道をあげてこの事態を悲しみ、平和を願おうとする世界的な人類のこの祈りというものは、全く気違いのようにしか聞こえてこないわけなんです。その危険が目の前にあり、そのおそれがいつ起こるかわからないという不安の中から、全世界をあげて軍縮あるいは平和という問題が今世界の大きな課題となっている。そういう中に戦争は絶対あり得ないという立論を作ることは早計であるし、危険であるし、これこそ帆足さんの言葉ではないけれども、おとめの祈りにすぎない言葉ではないだろうかと私は思うのですが、その立論の上に立ちますと、もうそれは、われわれが音速を越すようなジェット機を購入したり、あるいはミサイル兵器の備えつけをしていく必要もなくなってくる。もしそれが確固たるあなたの信念ならば、第二次国防計画というものは、もう一ぺんそういう戦争はあり得ないという前提の上に立って再検討してもらわなければならないと思うのでありますが、その点はどうでございますか。
  213. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 繰り返して申し上げるようでございますが、核の投げ合いによる全面戦争というものは起こり得ない。万々一にも起こり得ないということでありますが、在来型の兵器による、しかも、それが年とともに近代化され、新鋭化されてきておる、そういう在来型の兵器による紛争というものは、御承知のように世界にしばしば起こっておるわけでございます。従いまして、そういう在来型の兵器による局地戦以下の紛争には、わが国としてもみずからの力で対処するような方向に持っていかなければならないのだというふうに私ども判断をいたしておるわけでございます。
  214. 緒方孝男

    ○緒方委員 昨年の夏ごろだったと思いますが、世界大戦争という映画ができました。この映画は、原爆のお互いの投げ合いによって東京の町は一瞬にしてくずれ去り、この国会議事堂は熔岩の中に埋まっていくというような、悲惨な状態の映画がございました。そのあとで、どの週刊誌かよく記憶いたしませんが、そのシナリオを作るのを担当したかどうか知りませんが、軍事評論家の林君でしたか、防衛庁の幕僚の人とが、いろいろ直接対談でなくて、電話で、見解の問い合わせに基づく対談みたいなものが載って、そのときの防衛庁側の見解を総合してみると、全くばかげた話だ、こういうふうな見解に尽くされている。こういう戦争なんというものはあり得ないのだ。これは今長官が言われた御説明と相通ずるものがあるわけなんです。そこで、私は、そういうことがあればこそ、ことさらきょうお聞きしておるわけなんです。あの映画は、私たちが見るならば危険の一つ可能性を表現したもの、こう考えてみなければならない。危険の可能性を表現したものである。実際に映画に出たのは、どうも朝鮮の三十八度線じゃなかろうかというふうな印象を受けましたがね。かりに今度は三十八度線を一つの例にとってみましょう。どういう事態でもってあすこがもつれないと保証ができるでしょうか。あすこでのもつれが、機関銃の撃ち合いだけで済めばけっこうだが、あの映画に出てきたように、もしいずれかが戦車にロケット兵器でも積んで、一発でも二発でも撃ち込んだとしたら、それに反応して相手はまたその戦車に対してミサイル攻撃というものを開始しなければならない。あなた方も、もしそういう事態があるならばやろうというて対戦車ミサイルあたりの準備をなさろうとしておる。もし相手側から戦闘機がやってきたならば、これに対するミサイルを撃ち放すということにならざるを得ない。その発展の過程で、戦略基地に対する攻撃が絶対にあり得ないと保証することができますか。どういう立論の根拠に基づいて、そういう危険は全くないという結論を防衛庁は出されておるのか。これは私は長官だけの見解じゃないと思う。あの世界大戦争の映画に対する論評から見て、防衛庁内部における一つの思想だろうと思う。危険はないという前提に立っている。その危険がないという前提の立論的な根拠を私は示していただきたい。
  215. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 どうも繰り返すようで恐縮でございますが、現在のいわば両陳営と申しますか、そこに核兵器が装備されておる。そういう核兵器が装備されておるという事実は、この核の使用ということは、今おっしゃっておられまするように、結局両方の撃ち合いになる、両方共死にになるということでございまして、従って、核装備というものは、核を使用することに対する抑制力にこそなれ、それを使用するということはとうていできない。いわゆる核の手詰まりになっておるということは、これは単に私ども防衛庁だけの見解ではございませんで、一般的な、世界的にいわれておることでございます。そういう情勢に立って判断をいたしておるわけでございます。
  216. 緒方孝男

    ○緒方委員 あまり一つ事ばかり論議もしたくありませんが、多分今の軍備が戦争の抑制力としてなされておるという御答弁があるだろうという前提なんですが、私は、軍備の拡大強化が戦争の抑制に役立つかどうかということに大きな疑問を持たざるを得ないわけであります。もし軍備の拡大強化というものが一たん間違い、一たんそごすれば、直ちに全面戦争に行く大きな危険性をはらんでいるということ、俗に今日いわれております偶発戦争、この偶発戦争の危険性は全くないのか。これは一たん小さなそごから生じた過誤でありましょうとも、そのこと自体がすでに核の投げ合い、撃ち合いという非常事態を招来する危険性を持っておる。これに対しては何らの憂いも感じておられないのかどうか、その点についての御回答を承りたい。
  217. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 核兵器の使用については、これはおそらくソ連側も同様だと思いますが、米国等におきましても、何段階かのチェックの制度がございまして、そしていわゆる偶発的な核の発射が防げるような有効な安全措置が段階を設けてとられておるようでございます。従いまして、私は、そういう何か非常な偶発的なものでなるということは、まずまずないのではないかというふうに判断をいたしております。
  218. 緒方孝男

    ○緒方委員 またも同じような、これはおとめの祈りみたいな長官の御希望だけしか聞かれないようでありますが、現に昨年ですか、十月、アメリカにおいて、この探知機の故障に基づいて、全世界の派遣米軍、戦略空軍千五百機が、原水爆を積んだまま非常事態の状態でもって三十分という間、命令一下で飛び立たなければならないという事態が起こってきている。まことに恐怖の四分間だったとか三十分だったとかいわれておりますが、まことにこれは危険な様相であったと言わなければなりません。まあ一発撃ってみよう、向こうから三発きた、今度十発撃てというゆうちょうな戦争の状態でないことは、あなたは御承知でしょう。いずれが先制攻撃をかけるかわからない。一たん先制攻撃をかけなければならないという事態に直面した場合には、これは相手の反撃は全くゼロにするための攻撃でなければならないでしょうし、先制攻撃でなくて、報復攻撃であったにしてからが、一瞬にして全能力を投入しての攻撃でなければならない。これが今日の戦争の性格であるとわれわれは判断しております。安全装置の段階的な戦争の持っていき方ということは、私は可能性がまことに薄いと思う。もちろん、機械的な安全装置はそれぞれあるでしょうが、一たん間違った場合は、一瞬にして消えていかなければならない運命に直面しているのが今日の事態ではないかというふうに考えます。あまり甘い御希望だけじゃわれわれは安心するわけにいかないのですが、もう少し突っ込んだ、こういう場合はこういう保障の道があるとか、こういう危険があった場合はこういう立場で対処するのだとか、もっと、国防の責任をになわされているのならば、国民が安心してあなた方に、よろしくお願いいたしますというような条件だけは、一つ示してもらわなければ困ると思うのです。
  219. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先般のアメリカにおける事態につきまして、詳細は政府委員からお答えさせますが、その故障であったという発見等も、伝えられておりますように、四分とかそういう時間ではございませんで、非常に短い時間に発見をいたしております。  それから先ほど安全な措置と申しましたのは、一つ一つのあれではなくて、発進をする場合には、どういう段階ではどういう命令であるとか、あるいは飛行機が飛び立つ場合にも、どういう段階にはどういう形でいくというようなことが、何段階かに分かれてそういう措置がとられておる。従って、一時の非常な偶発的なものでそれが一挙に飛び立って、あるいはミサイルが撃ち込まれるというようなことにはなっていないということを申し上げたわけであります。この間の通信の故障から起こりましたサックの問題につきましては、政府委員からお答えをいたします。
  220. 海原治

    海原政府委員 ただいま先生の申されました戦略空軍の危険な四分間というのは、この四月一日ワシントン発AP電で報ぜられたものでございますが、これにつきましては公式な発表はございません。ただ、その後四月十二日付のニュース・ウィークに詳細な報道が出ております。それによりますと、事件は、昨年の十一月二十四日、東部標準時の午前四時五十二分に北米司令部におきまして、北米グリーンランドのチューレーからアラスカのクリアーというところに弾道弾の警報組織ができておりますが、この弾道弾警報組織と北米司令部との間の通信線が故障したというサインが出たわけであります。その故障した理由につきましては、数種類の原因が考えられますけれども、故障したということで、直ちに担当の将校が北米司令官に連絡をした、これが午前四時五十二分三十秒でございます。それと同時に、グリーンランドのチューレー付近で哨戒をしておりますところのB52に、その付近に故障があったのじゃないか、あるいは襲撃があったのじゃないかというような調査をさせております。この報告を受けましたパワー将軍は、直ちにサックの待機しておりますB47とB52に対しまして、飛行場のラン・ウエイにおいて待機せよという指令を出しております。これが先ほど申し上げました四時五十二分三十秒で、片一方でチューレーの方に連絡しておりました結果、誤りなしと判明したのが四時五十三分十五秒であります。それで故障いたしましてから一分十五秒後に、そういう事件はない、従って、通信線の故障であるということがわかったのでありますが、この記事によりますと、北米司令部におきましては、これを機会に演習をやったということでございます。それで、どの程度で戦略空軍の待機状況が一応飛び立ち得る態勢になるかということのテストをしたわけであります。その結果、先ほど申しましたように、通信線の一部に故障があった、その原因は、コロラド・スプリング付近に超短波リレー・ステーションがございますが、そこのモーターが過熱したために、通信線がショートしたということですが、直ちにこれは復旧されております。これが当時の事件の最も詳しい報道でありますので、おそらくこういうことであったろうと私どもは考えております。従いまして、今おっしゃいましたような千何百という飛行機が飛び出したというようなことはございませんし、実際そういう通信的な面の故障は、事故が発生いたしましてから一分で全部原因がわかり、これに対する諸報告ができております。このように一切の安全的な措置ができておりますので、先ほど大臣からお答えいたしましたように、偶発的なことによる不慮の事態ということは、いろいろな手を尽くして避けるようになっております。このことにつきましては、昨年、アメリカの空軍参謀総長が記者会見をいたしまして、詳細にいろいろな安全装置につきまして語っておりますが、これは重複いたしますので、また長くなりますので、省略させていただきます。
  221. 緒方孝男

    ○緒方委員 私はその報告書を反論しようとは思いません。しかし、われわれの聞いたのとはだいぶ事情が違っておる。何も私は、千五百機の戦略空軍が全部飛び立ったとは言っていない。待機の態勢にあったということを私は聞いております。ただ、映像を映すカメラの中に、敵機か射撃的ミサイルらしいものの映像が映った、しかしすぐあとで、それはお月様の出るときのなにで、間違いであった、その報告をしようとしたところが、時悪くさっき言ったグリーンランドのどこかで氷塊が海底電線を切って、その連絡ができなかったという事態のために、この連絡が三十分ばかりおくれた、その間みんなは異常な緊張のもとに待機しておったということをわれわれ聞いておるのであります。何もその聞いたことを私は真実だとして主張するわけではありませんが、しかし、私が言いたいのは、これは一つの例だということです。また、水爆や原爆を積んでパトロールしておる飛行機が、水爆を落とした事件もある。もちろん、これは安全装置がありましたから、不発に終わっておるが、飛行機が途中で衝突して落下した事件も起こっております。今日そういう危険は枚挙にいとまのない状態ではなかろうかと私は思う。しかし、そういう通信機関によるところの機械的な安全装置が今日まで安全を保障しておるから、今後も機械的に、人為的に全く間違いも故障も起こらないという保障は、どこにもないのじゃないか。もっと危険を予想されることは、その監視に立っておるところの人の精神的な動き一つにしてもが、大きな危険があるといわれておる。それほど危険な状態の中で、今日までこれが戦争を抑止する力として大きく役立ってから、将来もこれが戦争抑止の大きな力になっておるという見解は、私は非常に危険な内容を持っておりはしないかというふうに考えるわけです。それについて、あくまで安全は保障されるかどうか、もう一ぺんお伺いしておきます。
  222. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど来申しますように、これはおそらくソ連側もそうだと思いますし、アメリカ側としても、いろいろそうした偶発的なものに対してそれをインスペクトするいろいろな段階を持ちまして、偶発的な事故のないことを保障をいたしておるわけでございます。従いまして、私は、そうした何段階から安全措置によりまして、そういう偶発的な事故は起こり得ないと考えておるわけであります。
  223. 緒方孝男

    ○緒方委員 これも水かけ論をいつまでもやろうと思いませんが、もう少し突っ込んでお伺いしておきたいことは、皆さんはどうか知りませんが、しかし、今日アメリカの当局にしてみても、かくのごとき軍備の競争をいつまでもやって危険な状態に置くことは適当ではない、だから、国際的に可能であるならば軍縮の実現をはかりたいという意思表示をされ、国連にも具体的な案を出されておる。これを日本防衛庁はどうお考えになるか。軍備がなくなったらおれの首にかかわるとでも思われたらはなはだ遺憾だと思いますが、その点の御見解を一つ承っておきたい。
  224. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 世界的な軍縮という問題に各国が非常な熱意を持って取り組んでおるということは、われわれといたしましても大いに歓迎するところでございます。原水爆実験の中止はもちろんのこと、原水爆の保有禁止、あるいは進んで計画的な軍縮というものが友好な協定に達することは、われわれといたしましても心から希望をいたしておるのでございます。そういう事態に相なりましたならば、そうしてこの地球上から一切の戦争が払拭されるということに相なる事態に対しまして、われわれはそれを非常に歓迎いたしますと同時に、それに対しましてわが国はわが国としてなすべき努力を続けて参りたいということでございます。また、それらの世界情勢とにらみ合わせまして、わが国の防衛という問題についても考えて参りたいと思います。
  225. 緒方孝男

    ○緒方委員 私は、これは防衛庁長官に聞くのが適当かどうかわかりません。総理大臣に聞くのが一番適当かと思うのですが、これは外務省がわれわれのところに配ってくるものなんです。これを見ても、今アメリカの国内で、軍縮が経済というものにどう影響するかということを非常に真剣になって考えて、研究をやっている。国際連合の中においても、同様な研究機関を持って今やっております。これらの資料の中をうかがってみましても、軍縮ということを考える場合に、アメリカ国内においてはまことに悲壮じみた一つの問題が投げかけられている。備えあれば憂いはないと言っておる。百パーセントの備えをして、計画的に平和産業にでも切りかえていかない限りは、アメリカは大へんなことになるという前提の上に立っておるわけであります。こういう事態になりますと、平和のために軍縮が非常に望ましいという概念的なことは考えられても、自国の経済に大打撃を与え、経済界に一大不況をもたらすような事態というものは、これは深刻な問題だと考えなければならない。アメリカも今具体的な軍縮案を出さなければならない事態に、世界の世論の中から推し進められてきたけれども、これが実現するということは、アメリカの経済全体を見て、私は実にゆゆしき問題だ、こう判断せざるを得ないわけであります。軍需産業が、今日は平和か戦争かということだけで軍縮を論ずることはできない事態に立たされておりはしないか、こういうふうな判断をせざるを得ないわけです。あなた方の御見解を一つ承っておきたい。
  226. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私は経済の専門家ではございませんので、お答えするのがあるいは的はずれかと存じます。もちろん、軍縮という問題が、国内の産業、特にアメリカのようなところにおきまして、国内の産業に非常な影響のあることは当然だと思います。しかしながら、アメリカの中の議論といたしましても、経済の繁栄をもたらす軍縮はあり得るのだというような意見を持っておる者もございます。また、現在のアメリカの納税者の負担というものは相当に重いものであることは、御承知通りでございまして、そういう納税者の負担の軽減という面から考えますならば、それらが他の消費その他に使われるというようなこともございますので、軍縮すなわち不景気、そうして経済の破壊ということばかりではないのではないかということも考えられるわけでございます。従いまして、この軍縮そのものについては、納税者の負担その他を考えまして、各国とも真剣に軍縮に取り組んでいるというのが実情であると私は考えるわけでございます。
  227. 緒方孝男

    ○緒方委員 納税者の立場から考える、納税という面から考えるならば、軍備に膨大な支出をするということは負担の増加になるから、軍縮をすれば税負担の軽減になるという状態で好ましいかもしれません。しかし、今アメリカが検討をしておるのは、納税者と軍縮の問題ではない。軍需産業をしておる諸会社、これらに雇用されておるところの人たちに直接影響してくる諸問題と取り組んでおるわけであります。軍縮の影響について国民が抱いている非常な関心、軍縮が経済活動の急激な低下、つまり、不況をもたらしてきはしないかという一つの懸念、国防支出の持続的低下がアメリカ経済の長期的な安定と成長をそこなうかもしれないという一つの不安である、こういうふうにいろいろ検討しておるわけであります。国防計画と深く関連しておるところの諸会社の今後の収益の見通しは、すでに株式市場できわめて高く評価されている。従って、国防支出の大幅削減が行なわれた場合、これらの諸会社の普通株の現在の株価水準は急激に危険にさらされるかもしれないという、こういう幾多の問題をかかえてきている。軍縮ができたら、アメリカの中においては、相当な軍需産業の株を持っておるがゆえに、没落して行かなければならない人がずいぶん出てくるでありましょう。大きな資本を投下していって作っている諸会社、諸工場が烏有に帰していくでありましょう。こういう事態が軍縮を実現させる熱意に大きな影響を与えているものと考えなければならない。その点の御見解はどうです。
  228. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 もちろん、この国内的な諸施策なしに急激な軍縮が行なわれた場合に、軍需工場等に与える影響の大きいことは、御指摘の通りだと思います。しかしながら、一面において、軍縮を行なう際におきましては、国内産業をいかにするかということは、おそらくアメリカの政府としても十分な関心を持ち、その対策を講ずるものと考えます。また、先ほど申しましたように、納税者の負担軽減による消費の増というようなものも考えられるわけでございます。もちろん、軍縮がいかに軍需産業に影響するかというようなことにつきましての非常な懸念、あるいは研究等が行なわれておることは事実だと思いますが、しかしながら、軍需産業に大きな影響があるからといって、その軍縮に対する熱意を欠くというようなことにならないのではないか。むしろ軍縮の全般的な傾向は、なかなか難航はしておるようでございますが、世界各国ともこの軍縮については非常に真剣に取り組んでおる。それと同時に、それが行われる場合の国内対策というものは、また別途に講ぜられるものと私は考えます。
  229. 緒方孝男

    ○緒方委員 私の質問の内容も、あえてアメリカの軍縮に対する熱意を疑えということを言うわけではありませんが、これらの諸事情から考えてみても、もし軍縮という方向に進む場合には、これらの軍需産業というものは、一つの対策として重大な問題であるということだけは事実ではなかろうか、こう私は考えるわけであります。  そこで、これはアメリカのことですので、そうよその国のことに介入する権限はわれわれは持ちませんが、私は、こういう事態に間違っても日本はなってもらっては困るということであります。間違ってもこういう事態に日本が進んでいっては困るということです。現在経済界の中においては、この兵器の国産化をはかろうとする大きな動きが出てきておる。現在多少これも進んでおる。ようやく一機でき上がった104のジェット機も、これはむろん機械は向こうから持ってきたかもしれませんが、組み立てば国産でやっておる。話に聞けば、八戸沖で落ちた飛行艇の建造も、防衛庁は国産化をしようとするお考えがあるらしい。そのために、アメリカから技術官も招請したらしい。うそかどうか知りません。あなた方の中で、やはり兵器の国産化をはかった方が好ましいというお気持と御計画がありはしないかというふうに考えられますが、それに対して長官からの御説明を承っておきたい。
  230. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御承知のように、わが国の自衛隊の装備、兵器その他艦船、飛行機と、当初においてはアメリカの贈与、貸与等もありましたことは御承知通りでありますが、だんだん国産化も進んで参ります。そうして私どもといたしましては、装備品の相当部分はむしろ国内調達をいたすべきだというふうに考えておるわけでございます。そういうことで、先ほど山内さんからも御指摘がございましたが、そういうものの国産化を円滑にやるためには、長期一括契約というようなことも必要かと存じて御承認いただいておるわけでございます。しかしながら、しばしばいわれるのでございますが、現在防衛庁が国内で調達いたしておりますものは、金額にいたしましても、全体の鉱工業生産からいたしますと一%にも足りないものでございます。もちろん今後多少はふえて参ろうかと思いますが、そういうことでございますから、先ほど例におあげになりました、アメリカの軍縮と軍需産業というような関係は、まずまず起こらないものと考えております。
  231. 緒方孝男

    ○緒方委員 私も、今の現状がそういう危険性をはらんでおるとも思っておりません。ただ、私は、一つの現実の問題として、貿易収支の悪化、外貨の不足、その現状だけをとらえて考えれば、何もよその国からものを買わなくとも、自分のうちでできるものは作った方がいいという一つの立論もそこに出てくるわけなんです。しかし、この立論だけで今後の問題を律するということは、非常に危険な内容を持っておりはしないだろうかということを心配しておるわけなんです。潜水艦建造についても、造船技術は日本においては非常に優秀な技術を持っておる。だから、何もよそからこれをなにせぬでも、民需がなければ軍需で、民需の不足の分を軍需で補うという一つ方向が出てこぬと保証することはできない。やがては駆逐艦も作ろう、また航空母艦の一つも作ろうという——これは十年先になるかどうかわかりませんが、やがて軍の仕事、防衛庁の仕事をとって一たん甘い汁を吸い始めたものが、執拗にそういうことを助長する方向に動いてくる危険性を私は感じておるわけなんです。だから、私は、貿易収支の問題について、現実に外貨の不足の中で多少困るという問題はあろうとも、将来に禍根を残すような軍需産業というものを日本の国内に、悪い言葉でいえば、はびこらせるようなことのないように、一つ十分注意をしていただきたいと思うわけなんです。  最近になって、ミサイルなどの研究や整備などを国産化しようということが一昨日の新聞に出されてきて、こういう研究開発を——防衛庁とちゃんと入っておりますから、あなた方のやったことに間違いはない、防衛庁の中で、ミサイルなどを国産化していこうとする、業者と結びついた一つの運動が行なわれていき、計画が進められておるということは、私は将来に及ぼす影響は実に重大なものがありはしないかと思う。今の長官の話によるならば、現在は国内生産の一%にも当たらない少量だから、何も心配することはないと言うが、造船建設からミサイル研究開発まで手をつけ出すということになれば、やがてこれは、飛行機日本の技術というものは劣っているとは思いませんから、そういう分野に広がっていくとするならば、あながち今日の状態だけを見て律することのできない重大性を含んでおりはしないかというふうに考えますが、その点については、長官はどういう御見解を持っておられるか、お伺いいたします。
  232. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほども申しましたように、自衛隊の装備、火器あるいは艦艇、航空機、こういったものをできるだけ国産化したいということは、方針としてとっております。もちろん、非常に少数なもの、あるいは特殊な技術の必要なもので、外国の技術に待たなければならないようなものは輸入もいたし、あるいはまたマップ供与等も期待をいたすわけでございますが、その他のものについては、国内生産というものを中心に持って参りたいということは、方針として考えております。従いまして、その国内生産ができるような体制を作ることについては、われわれといたしましてもこれに力を貸しておるわけでございます。ただ、ただいま緒方さんが御指摘のように、何か民需が足りなくなったらそれを防衛生産の方で補うというようなことで、業界からのいろいろな圧力が来るのではないかというようなお話でございますが、私は将来にわたってそのようなことはないと考え、また、十分に注意をして参りたいと思っております。  なお、ミサイルの国内開発について非常に重大なようにお考えでございますが、これらは、たとえば対戦車の有線誘導弾等は、もちろん国内で研究開発をいたしております。これはミサイルと申しましても、必ずしも核弾頭をつけるようなものを考えておるのではございませんで、小型のものを中心にして研究開発をして参りたいと考えておるわけでございますし、先ほどお話飛行艇につきましても、日本には相当優秀な飛行艇の技術もございますので、そういう点は生かして参りたい。  なお、こういうことを申し上げるのはいかがかと思いますが、たとえばヘリコプターのごときは、防衛庁の発注が機となりまして、民間のヘリコプターの受注等も非常にふえているというような実例がありまして、必ずしも防衛生産が一般の平和産業と関連のないものではなく、一般の平和産業等を開発する一つのきっかけに相なることもあるわけでございます。そういうことでございますので、緒方さんの御指摘の点は十分注意をしながら、国産化の方向に進んで参りたいと思います。
  233. 緒方孝男

    ○緒方委員 先ほどちょっと例の引き方が悪かったかもしれません。軍需産業に従事している業者から、その甘い汁を引き続き吸いたいということから、何を作れ、かにを作れというふうに、圧力がかかるかもしれないというふうに受け取られたら困る。何もそういう業者の防衛庁への直接的な圧力を意味しているわけではない。ただ、われわれ通念的に考えられることは、軍需産業というものがもしここに一つの形として現われたならば、この軍需産業の栄枯盛衰と軍縮とは並立しないということです。そうでしょう。軍縮ということが今当面の問題となって考えられるときに、そのことによって栄枯盛衰の運命をになうてくる軍需産業というものは、軍縮ということに大きな敵意を持たなければならぬということは事実である。のに、国防という観点から考えた場合に、軍縮以外に救い道がないのに、日本国民の中から軍縮に敵意を持つような業態を作ってもらいたくないということです。私はそれを憂えている。軍需産業というものが復興してくれば、それらの中でもって生きておる、生存しておる資本というものは、当然軍備拡大の方向に進んでいかなければならない運命を背負っていると思う。そういう危険な生命を日本の中に芽ばえさせるということ、兵器の国産化の方向に進むということは、非常に危険な様相を持っているということから、長官に警告をしておるわけです。もう一ぺん御検討をしていただく要がありはしないかと思いますが、どうでしょうか。
  234. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 わが国の工業技術その他の状態からいたしまして、兵器の国産化という方向は私はとるべきだと考えております。しかしながら、たとえば第二次防衛計画で計画された程度のもの、あるいはそれから考えられるその後のものを考えましても、いわゆる軍需産業というような、防衛庁の発注にほとんどその会社が依存するような工場というものは、まずまずできないものというふうに考えております。もちろん、緒方さんの御心配になるような点は、私どもも十分注意をいたしますが、現状と申しますか、ここ当分の展望をいたしましても、御心配のような方向には進まないものと考えております。ただ、緒方さんは、そういう芽ばえも来たしちゃいかぬということでございます。一般の軍縮の熱意に敵意を持つような、そうした軍需産業というようなものは、まずまず芽ばえる心配がないのじゃないかと考えておりますが、さらに十分な研究はもちろんいたして参ります。
  235. 緒方孝男

    ○緒方委員 おそくなって何ですが、あと一つ二つ具体的な問題で話をまとめていきたいと思います。そういうことについては、また論争を後刻に留保しておきます。  きのうの質問に対して、自衛隊員の募集状況が海空非常に優秀であるというふうな御説明が教育局長からあったが、陸のことだけは言わぬだったですね。去年の今ごろ、陸上自衛隊の欠員数は二万七千程度だった。本年の三月はたしか三万二千人にふえているはずです。数字に大きな狂いがあるなら指摘してもらいたい。
  236. 小野裕

    ○小野政府委員 昨日も陸上の不足分を申し上げましたが、欠員二万九千、八三%と申し上げております。
  237. 緒方孝男

    ○緒方委員 二万九千であっても、この自衛隊で書いている数字は三万人を突破していますね。去年の予算の審議のときに、今ですら足らぬものを、千五百名ふやして一体どうするのだと言ったけれども、ふえればふえただけ全部補充することはできぬが、やはり定数だけは認めてもらいたいと、藤枝長官ではなかったからよかったようなものの、西村さんは言っておった。定数がふえて充足率が減ったというのは、何をしておったか。定数をふやすのは全くわれわれを欺瞞したことではないか。これを一体どう考えるか。
  238. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 陸上自衛隊の定員に満たない点、ことに三月末二万九千に達したという点は、はなはだ遺憾でございます。しかしながら、昨年の後半期からの状態を見ておりますと、退職者等の数もやや減っておりまして、全体として横ばいの状態を続けております。昨日お答え申し上げましたように、一発できまるような特効薬はございませんけれども、いろいろの工夫をこらしまして、あるいは職業補導でありますとか、あるいは待遇の問題、すなわち上への昇進の問題、あるいはまた除隊後雇ってもらえる経営者との十分な連絡、こうした各般の施策をいたすと同時に、また根本的には、自衛隊のあり方等を国民の皆さんに十分理解していただく、そういう各般のきめのこまかい施策をとって参りますならば、現在の募集難を、急速にというお約束はできませんけれども、徐々に回復していくことができると考えておるのでありまして、昨年定員の増加をお願いいたしました趣旨等も、だんだんに達成できるものと私どもは考えておる次第でございます。
  239. 緒方孝男

    ○緒方委員 私も、今の状態の中で充足していくことは容易なことじゃないだろうと思うのですが、そう思えば思うだけ、あなた方がわれわれのところに提案する幾多の諸問題について、もっと責任のある状態で一つ出してもらいたいということです。去年も繰り返し言った。まず欠員から補充しなさい、その上で一〇%切れたとか、これだけの努力が積もって欠員がだいぶ少なくなりましたという実績があれば、それは増員ということも真剣に考えてもいいが、現状も確保できないような条件のもとでふやせふやせというのは、あまりにも人をばかにした提案じゃないかということです。そうでしょうが。去年の現状維持ができてないでしょう。去年の現状維持もできないような実態の中に置きながら、定数だけはふやしてくれというのは、あまりにも審議する者を小ばかにしている問題じゃないかと私は思う。この点はどう考えますか。
  240. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この欠員の状況も、御承知のように、大体四期に分けてとっておりますので、その時期によって増減がございまして、直ちに去年の状態を割っているじゃないかと仰せられても、少し困るのでございますが、いずれにいたしましても、仰せのように、現在の定員を充実すること、すなわち、欠員を少なくする二とが先決問題でございまして、これらについては、先ほど申しましたような各種の手段を講じております。それと同時に、そういう御意思等も拝しまして、実は第二次防衛計画におきましても、陸上については、初めの四年間は定員をふやさずに、むしろ欠員の充実をはかっていくという方針を立てたような次第でございます。
  241. 緒方孝男

    ○緒方委員 それ以上それを責めようとは思いませんが、あなたたちもそういう事態の中で非常に苦慮したことを一つ認めて上げたい。その苦慮した結果、この定員充足の困難な実情に基づいて、防衛庁内でもって防衛白書を作って再検討をしておるという話を聞いております。その白書ができておるなら一つ見せてもらいたい。
  242. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 緒方さんの御指摘になっておることは、防衛全体についての白書のことかと存じます。それにつきましては、防衛の問題あるいは自衛隊の現状等を十分国民に御理解いただくために、白書のようなものを作ったらということで、寄り寄り研究はいたしておりますが、まだ最終段階に至っていないわけでございます。
  243. 緒方孝男

    ○緒方委員 できてないものは見るわけにもいきませんが、これは新聞の報道ですから、どれほどの信憑性があるかわかりませんが、現状から見て、自衛隊の数をふやすということは非常に困難な状態であるから、むしろ少数精鋭主義、人員も十四万人程度にして維持したならばどうかという議論も、この防衛庁の中でいろいろ御検討なさっておるというお話ですが、非常にけっこうなことだと思います。そういうことがあるかどうか、一つお伺いしておきたい。
  244. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 ただいまお話しのような、現在の定員を減らしてというようなことは、研究しておりません。現在がすでに少数精鋭なので、実はもう少しほしいのですが、むしろ現状からいたしまして、この程度におきまして内容の充実をはかりたいと考えておるわけでございます。くどいようでありますが、現在の定員の充実に最大の目標を置いて参りたいと考えております。
  245. 緒方孝男

    ○緒方委員 時間を急ぎますが、それは後日また白書でもできましたならば、十分に検討させていただきたいと思います。  もう一つ、私、本会議で総理に質問したいと思って、総理がおらなかったから質問してないのですが、飛行機事故について、今のF86を104に切りかえていく過程の中において、何も別段事故が起ころうとは思わないというあなたの本会議の御答弁がありましたが、その御答弁だけではどうもわれわれ納得ができないのだが、実際にプロペラからジッェト機に変わり、ジェット機からまた音速を越える104に変わっていくという過程の中においては、今までの通念をもう少し再検討して、もう半年なり一年もっと基礎的な訓練をというくらいな慎重さを持ってしかるべきではなかろうか。それをしもなお余分なことだということは、私は出てこないのではないかと思うのです。今の訓練教育の現状だけで十分なのかどうか。しろうとが文句を言うなということではなくて、もっとわれわれが安心できるような説明をして下さい。
  246. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 本会議でお答えを申しましたのは、86から10に変えるためにジェット・パイロットの養成を非常に急いでおるのではないかというような御趣旨でございましたので、104のパイロットは、86のパイロットの中の五百時間以上の飛行経験のある者の中からさらに選ぶのでありまして、その給源と申しますものは十分ございますので、そういう切りかえのためのものではないということを申し上げただけでございます。もちろんジェット機になりますために、従来のプロペラ機よりもいろいろな訓練が必要でございまして、現在の教育課程というものは、いろいろ他国の例その他を考えましても、これで相当なものと考えております。しかしながら、若いパイロット事故等にかんがみまして、さらにこれらの点についてもなお研究はさせております。また、何分にもああいうジェット機の操縦ということでございますので、教育課程をきめ、教育時間をきめまして、段階的にやっておりますが、ただ何時間飛んだからいいというようなものでもございませんし、個人差もあるわけでございますから、そうした学生等の能力等の把握について、教官なり部隊長に十分注意をさせ、そしてそのパイロットに適した航法その他をとらせるようなことについても、今後気をつけて参りたいと思っております。
  247. 緒方孝男

    ○緒方委員 どこまで教えたら覚えるのかということについて、われわれもあまりよくわかりませんから、その点はそれ以上深くなにしませんが、104の製造計画は、三十七年度は四十八機、それから明年度は百三十機、そういうふうな計画がありますね。それと今度のパイロットの養成というのは、非常にちぐはぐな形になってきておるわけです。そのことについて、国防会議の中できめたことだから、私は国防会議議長から説明してもらうのがよかろうと思って、総理に言うたわけですが、この四十年までの二百機の整備計画というものが、二百機に四十年までにしてしまわなければならぬという何か特別な事情があるならばともかく、これを半減するとか、年限をもう少し二、三年延ばしていくとかいう、整備と訓練とのバランスをとっていく必要がありはしないか。運転する者もないのに、飛行機ばかり作って格納庫に入れておいても、何も得なことはないだろうと私は思う。その面の再検討をするお気持はないのですか。
  248. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 何分にも実物教育をいたさなければなりませんので、飛行機が参りませんと養成ができないわけであります。従って、そういう点からいたしまして、初めの間、本年、来年等につきましては、飛行機の製造の方が、パイロットの養成を上回るということでありますけれども、その後に至りましては、このパイロットの養成の方が追いついて参りまして、二百機が整備される時期におきましては、十分なパイロットが養成できる、こういう計画でございます。
  249. 緒方孝男

    ○緒方委員 私は今のお説を聞いて、なるほどそうかというふうな理解がいかないわけです。この数字とパイロットの養成計画が合っておるかどうかは存じませんが、来年度においては、飛行機はできても操縦士はおらないという現実がある。何も、国防会議で何年度になんぼというふうにきめたから、それを完遂しなければならぬということは、私はないだろうと思う。こういうことについては、パイロットの養成計画の見通しと整備計画とが大かた歩調をそろえるような姿でなにしてもらいたい。もちろん、これは乗せなければ訓練になりませんから、乗ってもらわなければなるまいが、乗ったたびに落ちていってこわされたんじゃたまりませんからね。もう少し大事をとってもらいたいということです。もちろん、私は、そういう事故の中で犠牲になる人の生命の問題も重要な問題だろうと思います。パイロットの生命はわれわれが死んだのとはだいぶ違います。お金がかかっていますからね。われわれは三文の値打もないようなからだかもしれませんけれどもパイロットには少なくとも一億円の金がかかっていますよ。その一億円の金をぽんぽん捨てられてもらったんじゃ困りますから、どういうことに対しては計画に固執することなく、方針に拘泥することなく、実情をもう少し再検討してもらって、しっくりした計画のもとに進めてもらいたいということを私は一つ要望しておきます。  いま一つ、最後ですが、この前落ちた飯塚の飛行機事故ですが、飯塚あたりまでいつも訓練に行っておるのですか。教育局長報告がありますか。どうして飯塚の方まで行ったのか、その間の事情をちょっとお伺いしておきたい。
  250. 小幡久男

    小幡政府委員 教育訓練計画は、大体の年次計画は幕僚監部が作りまして、それに基づきまして、航空集団司令部とか、教育集団司令部が現地に指令いたします。それに基づきまして、現地航空団司令が日々の訓練計画を作りまして、それに従って飛ぶわけでありますが、築城の方面では、やはり築城の基地隊司令が、付近の地形、気象あるいは地勢等によりまして日々の訓練を組まれるわけであります。当日飯塚上空まで飛んだ飛行機が、その航路に当たっておったかどうか、その点は、飛行許可書で航路筋を見てから正確にあれしたいと思いますが、報告によりますと、事故機は相当低空におりて旋回をしておったというふうな報告を聞いております。われわれの常識では、ジェット機でございますので、そういう低空をゆるやかに旋回するのは、やはり何かエンジンとか機械系統に故障があって、やむを得ずその辺を旋回したのではないかというふうに考えております。なお、当日その辺が航路筋であったか、あるいはエンジンの故障等によって心ならずもその方面に行ったかどうかということについては、調査したいと思っております。
  251. 緒方孝男

    ○緒方委員 午前中に飛鳥田さんから、管制や何かの問題でずいぶん質問がありましたが、これはだれに聞いたらいいのですか。飛び立っていったならば適当な時間に帰ってこいというような訓練をさせているのですか。
  252. 小幡久男

    小幡政府委員 先ほども申しましたように、日々段階を経まして、前日に、飛行隊の隊長が学生に対しまして訓練内容を明示しております。たとえば何時間どの航空路でいかなる訓練をやるか、どの航路を飛んで高度幾らということも全部指定しております。従いまして、故障さえなければ、その飛行許可通りに飛んで、時間通りに帰るというふうに、規律は厳正になっております。
  253. 緒方孝男

    ○緒方委員 私たちは、飛行しておる飛行機と、自衛隊なら自衛隊が持っています航空管制所、それとの間に不断の連絡があるもの、平時のときでも、今はどこを飛んでおります、どういう方向から帰りますとか、一々の連絡があるものと思うが、そんなことはないのですか。
  254. 小幡久男

    小幡政府委員 訓練の内容にもよります。たとえばそういうことを主にする訓練の場合には、それを主にしてやりますし、あるいは一定の時間内は、たとえば相当特殊飛行をやるというような場合には、その間しょっちゅう連絡することはありません。ただし、エンジンの事故等が起こりまして、やや飛行が困難であるというふうな状況になりますと、エマージェンシーとしまして、即時に管制塔へ報告するというようになっております。
  255. 緒方孝男

    ○緒方委員 もし飯塚の事故が、エンジンの故障に基づく事故であった、かりにそうするならば、何ゆえに事故が起こったか、故障ですとか、現地に連絡がなかったかという疑問が残る。そういう常日ごろの、十分置きとか二十分置きとかの連絡がなければならないはずだとわれわれは思う。もしそうでなかったとしたならば、訓練に出かけていって、競輪場の上で遊んでおって、電線にひっかかったと言わなければならぬ一体どっちなんですか。はっきりとその原因を言ってもらいたい。
  256. 小幡久男

    小幡政府委員 先ほど申しましたように、ただいま調査中でありまして、何せ落ちた飛行機は、パイロットも死んでおりますので、簡単に判断はできませんが、私の今まで聞いたととろでは、ジェット機でありますので、あの地区で、あの低空で、競輪を見るというふうなゆっくりした気持で飛んでおることは不可能でありまして、おそらく何か操縦系統か、エンジンの系統に故障があったのではないかと推定はしておりますが、なお、現地事故調査委員会が活動しておりますので、しばらく時間をいただきたいと思います。
  257. 緒方孝男

    ○緒方委員 私も何もそういう——非常に音響の違った姿で低空を旋回しておったということだったから、何かこれは機械の異常な状態の中で、少なくともこの競輪場にでも着陸しようと思うたんじゃなかろうかというくらいな推定は立つと思います。しかし、故障が起こったというならば、旋回する時間があれば、なぜ原隊に報告ができないかという疑問が残るが、今までそういうことをしてないのかどうか、今後もせぬでいいのかどうか、それが私は聞きたい。
  258. 小幡久男

    小幡政府委員 おっしゃるように、エンジン等の故障があり、エマージェンシーが起こりまして、相当余裕がある場合には、常に原隊に通信連絡をすることになっております。通信機に故障等があれば別でありますが、そういったエマージェンシーの場合には、直ちに原隊に報告するというふうにきまっております。その点連絡がないのも、一つ調査事項としまして、現在通信機の故障がありやなしや、あるいはエンジンの故障で、通信機は故障でなかったにもかかわらず、そういうことがなかったのかどうかという点もあわせて調査しております。
  259. 緒方孝男

    ○緒方委員 最後に、もう一つ念を押しておきますが、これが通信機の故障であったらば、連絡しようにもできなかったという問題なんですが、訓練飛行中、故障があるなしにかかわらず、常に五分後、十分後、二十分後の時々刻々の状態が原隊でわかるような状態にあるのかどうか、これを明確にしておいてもらいたい。
  260. 小幡久男

    小幡政府委員 その飛行機が飛んでおるかどうかということは、レーダーで絶えずわかりますが、その高度とかいうものは、飛行機でないとわかりません。ただ、事故なく飛んでおるという大体の姿はレーダーでわかりますが、相当故障があって、旋回をしておるというふうな場合には、それがある程度の高さを保っております場合には、事故であるかどうかはわかりません。従って、その場合には、直ちに原隊に通信で知らせるというふうになっておるわけであります。今回は急速に低下しまして旋回しておりまして、その間通信をする余裕があったにもかかわらずしなかったのか、あるいは通信機も同時に故障したのか、その辺のところは疑問でありまして、現在せっかくそういったことにつきまして調査しております。
  261. 緒方孝男

    ○緒方委員 私この質問をしておるのは、事故のことだけにこだわっておるわけではない。今町でタクシーを拾って乗っても、今どこを走っております、何町の何番地のところを走ってどこまで行きますと、タクシーですら連絡しています。飛行機も飛び立っていって、故障でない限り、重大な変更のない限りは、連絡をするようになってないのかどうかということを私は聞いておるのです。
  262. 小幡久男

    小幡政府委員 特に異常がない限りは、通常の場合は、一定の短時間に区切って連絡することはしておりません。ただし、単機等がたくさん飛び上がる場合には、教官機も同時に上へ上がりましてパトロールしておるというふうなことで、いろいろ学生の庇護はやっております。刻々に五分置きとか三分置きに、通常の良好な状態で訓練しておるときには、原隊へ一々報告することはやっておりません。また、あまりしょっちゅう通信しておりますと、エマージェンシーのときに、ほかの飛行機からの通信が阻害されるという点もありまして、できる範囲は統制しながら、通信を断つということも、一つの安全措置方法だろうというふうに考えております。
  263. 緒方孝男

    ○緒方委員 長官一つ検討を要請しておきたいのですが、そのことが事故をなくする要素になるかどうかはわかりません、私たち乗ったこともなければ、操縦したこともないのですから。ただ、不安になることは、事故が起こってから連絡するとか何するよりも、もっと時々刻々の機体の動きを報告させるように義務づけておく方がいいのじゃなかろうか。その場合、今日はいわゆる英語連絡になっておりますが、訓練などのときの自衛隊と練習機との連絡は、日本語でやらしてけっこうだと私は思う。それができないのかどうか。国際的な管制の範疇に入る場合これはやむを得ない。しかし、今の状態で英語ばかりを主体として連絡している習慣の中におきましては、時々刻々の連絡もそうスムーズにいかない面もありはしないかと私は考えるわけです。何とかそういう面の再検討をしていただきたい。もちろん、そのことで事故がなくなるとは思いません。せめてどこが悪かったからこうなったという点を、落ちたあとよりも落ちる前に連絡があってしかるべきものがないということは、私はまことに残念に考えるわけです。もし事故というものをのけたならば、町のまん中に出てきて低空で何をしておったかと言いたくなる問題だと私は思う。そういう面に今後一つ留意して御検討をお願いしておきたいと思います。  もう五時も過ぎましたから、一応これで打ち切りたいと思います。
  264. 中島茂喜

    中島委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明二十六日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時七分散会