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1962-04-12 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十二日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君    理事 草野一郎平君 理事 堀内 一雄君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君    理事 山内  広君       内海 安吉君    小笠 公韶君       大森 玉木君    金子 一平君       倉成  正君    島村 一郎君       高橋  等君    藤原 節夫君       保科善四郎君    猪俣 浩三君       緒方 孝男君    田口 誠治君       受田 新吉君  出席国務大臣         労 働 大 臣 福永 健司君         国 務 大 臣 川島正次郎君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  山口  酉君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  實君         労働事務官         (大臣官房長) 松永 正男君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         検     事         (大臣官房司法         法制調査部司法         法制課長)   安原 美穂君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金課長)    東村金之助君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      桑原 正憲君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 四月十一日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として佐  々木良作君が長長の指名委員に選任された。 同月十二日  委員猪俣浩三君及び佐々木良作辞任につき、  その補欠として柳田秀一君及び受田新吉君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一八号)  臨時司法制度調査会設置法案内閣提出第八六  号)  行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等  に関する法律案内閣提出第一五一号)      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案議題とし、政府より提案理由説明を求めます。川島行政管理庁長官。     —————————————   行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案   (本号(その二)に掲載)     —————————————
  3. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案についてその提案理由説明申し上げます。  この法律案は、行政不服審査法案不服申し立てに関する統一法規として現行訴願制度を全面的に整備するのに伴いまして、関係法律二百六十八件につき、必要な整理等を行なおうとするものであります。  すなわち、第は、行政不服審査法案一般概括主義を取り入れたため、関係法律において、不服申し立てをできる旨の規定が重複することとなりますので、これらを削除したことであります。  第二は、行政不服審査法案において、不服申し立てに関すを名称を統して審査請求異議申し立て及び再審査請求といたしましたので、これに伴い、関係法律につき、名称を整理したことであります。  第三は、審査請求に関しまして、直近上級行政庁以外の行政庁審査庁とする必要のあるものにつき、特例規定したことであります。  第四は、不服申し立て期間につき、個々の制度特殊性にかんがみ、必要なものにつき、例外的に特例を定めたことであります。  第五は、ものの検査、検定等の結果にかかる処分、特に緊急を要する処分等当該処分の性質上、行政不服審査法案による不服申し立てを認めるのが適当でない処分等につきましては、これを除外し、また、行政審判その他不服申し立て制度として現に整備された制度があり、これらによらしめるのが適当と認められるものにつきましては、行政不服審査法案による不服申し立てから除外することにしたことであります。  以上が、行政不服審査法施行に伴う関係法律整理等に関する法律案の主な内容でありまして、いずれも行政不服審査法案趣旨並びに現行制度の運用の実態に照らし必要とされる関係法律改正であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第であります。
  4. 中島茂喜

    中島委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  5. 中島茂喜

    中島委員長 次に、臨時司法制度調査会設置法案及び労働省設置法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、前会に式き続き質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。猪俣浩三君。
  6. 猪俣浩三

    猪俣委員 この臨時司法制度調査会につきまして、官房長官に質問いたしたいのですが、これは内閣直属委員会なんでありますか。
  7. 大平正芳

    大平政府委員 さようでございます。
  8. 猪俣浩三

    猪俣委員 こういう委員会は、内閣直属のものと、それから総理府に属するものとあるようです。私は売春対策審議会委員というのをやっておりますが、これは総理府に属しているように思うのですがこの内閣直属委員会というものと、内閣であるが総理府に属している委員会というのとは、性格上どういうふうに違うのでありますか、それをお尋ねしたい。そうして、内閣直属委員会というものは現在どういうものがあるのか、それから総理府直属のものはどういうものであるか、また、この二つ委員会がどういうふうな性格上の差異があるか、そういうことをちょっと承りたいのです。
  9. 大平正芳

    大平政府委員 内閣は、原則として直属機関を持たないようにただいままで運営されてきたわけでございまして、御案内のように、憲法調査会国防会議だけが内閣の所管の機関になっておるのでございます。そこで、政府として、この司法制度調査会の議が起こりましたときに、最初は、今御指摘のように、総理府にお願いしようということで参ったのでございますが、事司法制度根本に触れる問題でございまするし、何とか内閣の方で心配をしてはどうか、こういうお話がございまして、方針を変更いたしまして、内閣に置くことにいたしたわけでございます。総理府に置く審議会内閣に置く審議会というのは、どういう性格上の限界があるのかということでございますが、これは確たる性格上の限界を置いて考えているわけじゃございませんで、冒頭に申しましたように、内閣にはなるべくこういう機関を置かない主義できておるわけでございまして、今後もそういう方針でいきたいと思うのでございますが、事司法に関する重要な問題であるから、例外として内閣心配するようにと、こういうことに相なったわけでございまして、問題は、事柄が重大であるからと申し上げる以外に理由はないわけでございます。
  10. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、内閣直属委員会あるいは総理府に属する委員会というものに、別に法律上の性格の違いがない、ただ、事が重大だから内閣直属にする——ちょっと、何だか矛盾して、すっきりしない説明でありますね。しかし、趣旨は私、賛成なんです。やはり司法根幹に関する問題でありますがゆえに、慎重にする意味において内閣直属せられるという趣旨は、私も理解できますが、ただ、何かその間に区別があるかどうか、お伺いしたい、こう思ったわけです。内閣直属にして内閣が世話をする。そうすると、それは最高責任者総理大臣でありますけれども、事務上の責任者官房長官ということになるのですか。それと、総理府直属ということになれば、総理府長官となるかと思うのですが、その辺はどうなんですか。
  11. 大平正芳

    大平政府委員 仰せ通りでございます。
  12. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、内閣直属とした方が、総理府直属よりは何か多少きき目があるわけなんですか。どうもその辺がよくわからぬのですか……。なるべく内閣に設けたくないということを原則とするのにかかわらず、これだけは例外として設けたということになると、何か少しきき目が違うということがないとおかしい話だと思うのですが、何かないのですか。
  13. 大平正芳

    大平政府委員 私もよくわかりませんが、原則として内閣直属機関を置かない方が、私どもいいと思うのです。身軽な立場でいないと全体の調整ができませんので、みずからの機関は持たない方がいいという方針は今後も貫いていくべきだと考えておるのです。それにもかかわらず、この委員会をお世話しようという趣旨から御判断いただきたいと思うのです。それはど重要に考えておるというように御了解いただければと思っております。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 趣旨はよくわかりました。実はその御決心を聞きたいために御質問したのですが、この臨時司法制度調査会の目標に法曹一元というような問題が出ている。これは実は弁護士会でも十数年来の懸案でありますが、なかなかもってむずかしい。それは結局待遇の問題に帰着し、恩給制度の問題に帰着してくるわけであります。こういうことを解決して法曹一元を実現しようとすれば、なみなみならぬ一つの障害が横たわっておると思いますので、これはやはり総理大臣直属として、大平さんのような有能な方が全身全霊で当たっていただかぬと、なかなか解決しない。これは実に長い間の懸案であります。弁護士会のみならず、バー・アソシエーションに似通った日本法律協会におきましても、再三上申しているわけでございますが、今日さっぱり日の目を見ないという問題であります。そうしてその制度の樹立の必要に迫られておることは、ほとんど万人に理解されておる。そういうところへこういう法案が出たのですから、その趣旨は大へんけっこうと思いますが、今あなたが申し述べられたように、これは重大な問題であるから内閣直属にしたんだというならば、その精神を貫いて、この実現を見るよう最善の努力をしていただきたいと思いますが、官房長官の御決意を承りたいと思います。
  15. 大平正芳

    大平政府委員 仰せのような決意で終始努力いたしたいと思います。
  16. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおまた、技術的なことは各部門お尋ねいたしますが、今司法研修所というものがあって、いわゆる判、検事、弁護士養成機関として存在しておることは、長官も御存じだと思うのであります。ところが、この修習を終えた者が在野弁護士になる者が多い。そこで、大蔵省あたりから、役人にならぬで弁護士になる者に対して、修習費、一種の生活費を給付して修習さしておることは矛盾じゃないかというような議論があるやに聞いておるのでありますが、さようなことが大蔵省あたりから出たことがあるかないか、承りたい。
  17. 大平正芳

    大平政府委員 寡聞にして、私自身はそういう議論大蔵省から承ったことはございません。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういう議論は非常に目先の議論で、根本的に間違った議論だと思いますが、そういう議論もあるやに聞きました。その点につきましても、さような誤解のないように内閣においても御努力願いたい。これは要望として申し上げておきます。  それから法制審議会制度でありますが、私が聞きたかったことは、法制審議会の規約がここに来ておるのでありますが、これだけでよくわかりませんので、法制審議会は、法務大臣諮問に応じて、民事法刑事法その他法務に関する基本的な事項について調査審議する、こうなっておる。そうして各部門に分かれて審議することになっておるわけですが、この中に司法制度に対する部門があるのかないのか、これは法制審議会関係のどなたか……。
  19. 津田實

    津田政府委員 法制審議会におきましては、法制審議会そのもの部会とがございますが、その法制審議会部会の中に司法制度部会というのがございまして、もっぱら司法制度に関する事項調査審議いたしておる次第でございます。なお、お手元に差し上げました参考資料にその部会等の名簿は出ております。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 ここには部会が幾つあるのですか、どういう部会があるのですか、さっぱりわからぬのですがね。
  21. 津田實

  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、司法制度部会というのがあるようでありますが、そこではこういう法曹一元とか、あるいは裁判所機構、あるいは裁判官の人数とかそういうことの調査はなさっておるのかおらぬのか。
  23. 津田實

    津田政府委員 司法制度部会は、昭和二十八年の二月に設置されまして、自来約三十回にわたって調査審議をいたしております。その間の成果といたしましては、御承知上告制度改正要綱案、すなわち、最高裁判所制度改革案、これを議了いたしまして、これは審議未了になっておりますが、かつて国会に提出されたわけであります。そういう法案、それからさらに裁判所法の一部改正法律案といたしまして、判事補職権特例に関するものを審議いたしております。これも法律案として提出され、これは法律として公布されております。大体現在まで具体的結果として出ましたものは、その二つでございますが、さしあたって当面問題になるのは、御指摘裁判官任用制度あるいは検察官任用制度、それから法曹一元ということになるわけであります。しかしながら、この問題につきましては、いろいろ政府部内の各種の施策に関連するところが非常に多いわけでございまして、先ほど御指摘がありましたように、たとえば給与制度であるとか、恩給制度といったようなものにも深い関連があるわけでございまして、法務大臣管下法制審議会のみでは単独に審議しがたいというような状況もございます。また、一般の情勢から申しましても、先ほど御指摘になりました法曹の一元問題というのもかなり議論が進んで参っておりますので、その推移を見て、ここにこれを付議するのも相当であろうというようなことが考えられておるわけでございますが、現在具体的にその問題は審議はいたしておらないのでございます。
  24. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、この臨時司法制度調査会ができますと、この法務省法制審議会のその部門は休業ということになるわけですか。
  25. 津田實

    津田政府委員 この臨時司法制度調査会は、その所掌事務にございますように、裁判官任用制度及び給与制度、あわせて法曹一元の制度の問題につきまして、緊急必要な基本的かつ総合的な施策調査審議するということになっておりますので、いわゆる内閣機関といたしまして、基本的、総合的な施策を緊急に調査審議するということになっておるわけでございます。法制審議会におきましては、同じくやはり裁判官任用制度あるいは検察官任用制度審議し得るわけでございますが、その審議の態度が制度的かつ法律技術的と申しますか、そういう面で具体的な法律案を策定する直前の段階事柄審議するというわけでございますので、審議の仕方と申しますか、やや制度的に直結した問題の審議というふうな相違があるわけでございます。そこにおきまして、今回のこの任用制度機構の問題は、非常に国家的な重要な問題として、しかも、将来の司法制度のあり方や方向をきめるという問題がありますから、この調査会におきまして審議していただく、こういうことがよろしいのではないかと思うのでございます。やはり、ここの調査会におきまして審議します結果は、要するに総合的施策でありますから、あとそれを具体的に制度化し法律にする場合の審議としては、あらためてやはり法制審議会にかけるべき問題が出てくるというふうに考えておる次第でございます。そういう意味の役割が違っておるということでございます。理論的には、なるほど両者部分的に一致するものがあり得ると思います。その点につきましては、この法律案の附則におきまして、「第二条第一項に規定する施策については、臨時司法制度調査会が置かれている間は、法制審議会諮問しないものとする。」という規定を設けて、その間の調整をといってるわけでございます。   (委員長退席草野委員長代理着席
  26. 猪俣浩三

    猪俣委員 内閣直属委員会として総合的な対策を立てるものである、それを現実に立法問題化する際に、そういうことについて法制審議会はお手伝いする、そうすると、内閣直属法制局とはどういう関係になるのですか。
  27. 津田實

    津田政府委員 御承知のように、法制審議会法務大臣諮問機関でございます。法務大臣が一応の案を考えまして、その案の当否等調査審議してもらうというのが法制審議会建前でございます。従いまして、そこで、政府提案すべき法案の前提となる原案調査審議してもらうという建前になるわけであります。従いまして、内閣にございます法制局につきましては、具体的に政府の案として提案をいたします場合の法制内容法制局で検討する。こういうことになるわけでございますから、むしろ、法制審議会の方はそれよりさらに前の段階になるわけでございます。
  28. 猪俣浩三

    猪俣委員 たとえば根本方針は一致しておっても、立法化の問題において法務省法制審議会、それから内閣法制局との間に——内閣法制局条文そのもの立案になると思うのですけれども、この法制審議会要綱ですね、何々のこと、何々のことという要綱が出ると思う。それが実際に内閣法制局の作る条文との間に必ずしもそごがないわけではない。そういう場合にはどういうふうに調節するのですか。
  29. 津田實

    津田政府委員 これは法務省立案いたします基本法律案につきます一般問題でありますが、法務省におきまして基本法立案いたします場合には、もちろん法制審議会諮問いたします。その場合は、ただいま御指摘通り、大体要綱案によって諮問いたしているわけでありますが、要綱案に、もちろん参考案として具体的法律案を添付いたしております。その具体的法律案は、もちろん法務省当局が作成した法律案でございますけれども、それによって一応法制審議会審議されるわけであります。さらに、審議して答申がありました後の法律案につきまして、これを法務省原案とするかどうかはもう一度法務省が検討するわけでありますけれども、大体の場合は、法制審議会答申を尊重いたしまして、ほとんどその通り立案いたしているわけであります。その通り立案いたしましたものを法制局に持ち込んで、法制局でさらに審議をするわけでありますけれども、その実態につきましては、提案当局であります法務省意見が最大に尊重されるわけであります。ただ、具体的の表現の問題として、法制局立案当局である法務当局とやや意見が違うという場合は間々ございますけれども、これはいろいろ調整いたしまして、法案趣旨に沿う表現をするということになっているわけでございますので、御指摘のような場合は今までは起こっておりません。
  30. 猪俣浩三

    猪俣委員 そういうお尋ねをいたしますのは、当委員会に出ておりますこの行政不服審査法、これは訴願制度調査会か何かで立案された。ところが、法務委員会にかかっております行政事件訴訟法、これは法制審議会立案、そうして国会へ出てくると、最も連関した一つ法体系であるにかかわらず、内閣委員会法務委員会で別々に審議している。なかなか連合審査だって容易じゃない。結局そうなったのは、訴願制度調査会立案と、法務省法制審議会立案のために、今度国会にきても、委員会審議が別な委員会にかかる。僕はこれはほんとうに妙だと思うのです。これは行政不服審査法行政事件訴訟法も一連のものであって、大体こういう問題を二つ委員会審議すること自体がおかしいと思う。そして緻密に点検いたしますと、相当これは性格の違いが出ているのではないか、これは不離一体法案としてやれるのかどうか、多少疑問があるわけであります。こういう別々の委員会に同じような法体系のものを立案せしめて、そしてまた国会にきても別々の委員会にかかる。何かここに不統一の点があると思う、立法作業として。その意味で、法制審議会及び内閣法制局、今度内閣に設置せられる臨時司法制度調査会、これではやはりばらばらになるのではないかというふな心配があったから、今質問をしたのですが、法制審議会空気訴願制度調査会空気とは非常に違う。訴願制度調査会は行政権的な色彩が濃厚に出るし、法制審議会は純然たる法務行政的の色彩が出てくる。従って、案そのもののニュアンスが違っておるわけです。私はそう思う。そういうことが今後も起こるようでは困ると思うのでありますが、なるべくこれは一元的にやらぬと、いたずらに立案が長引くのみならず、立案そのものが首尾一貫せざる色彩が出てくるおそれがある。行政不服審査法行政事件訴訟法行連関から見て、その心配があるからお尋ねしたのですが、その心配はないと言う以上は、皆さんのやり方を見るより仕方がない。  そこで、この調査会は、最高裁判所その他の下級裁判所機構制度まで調査を進めるのであるかどうか、これは官房長官お尋ねいたします。
  31. 大平正芳

    大平政府委員 そうではございませんで、今津田政府委員から申されましたように、司法制度根幹になりまする基本的かつ総合的な問題で、緊急に処置を要するという事項に限られるわけでございます。
  32. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、たとえば最高裁判所その他下級裁判所制度そのもの機構そのもの改正ということになると、これは先ほどお尋ねいたしますと、法制審議会の第何部門かでおやりになる。そうすると、この調査会では最高裁判所機構改革というものは全然取り扱わぬ。これは私はどうかと思うのでありまして、最高裁判所機構改革問題は数年来の懸案になっておりますけれども、なかなかもって法務省もお手上げの形になっておる。法務省弁護士会最高裁判所——法務省も一定の原案を持っているけれども、どうも動きがつかぬような現状になっておる。こういうことを打開しなければならぬと思うが、こういう司法制度調査会を作る際に、なぜこれを議案にできるようにしなかったか、その理由を承りたい。
  33. 津田實

    津田政府委員 お尋ねの点は、まことにごもっともな点と存じますが、御承知のように、最高裁機構改革問題は、すでに国会にその案が提案されまして、解散のために審議未了になったといういきさつがございます。その後、この問題をいかに取り扱うべきかということは、法務省におきましても十分検討いたしたわけでございますが、やはり当時、国会審議におきましては、猪俣委員も御承知のように、必ずしも各界の納得が得られなかったといういきさつもあったわけであります。そこでこの問題につきまして、日本弁護士連合会法務省最高裁判所を通じていろいろな会合を持っておるわけであります。すでに、御承知のように昨年におきまして、つまり、先通常国会前におきまして、日本弁護士連合会一つの案を持ちまして、その案につきまして法務省意見を求め、最高裁判所意見を求めてきたわけであります。法務省といたしましては、その案によりまして——その案と申しますのは、前回国会提案されました案と非常に近い案でございますが、その案によりまして最高裁判所意見を求めた次第であります。しかしながら、最高裁判所におきましては、いまだこれにつきまして正式の回答がないわけです。そこで、法務省といたしましては、最高裁判所回答があり次第、この問題の提案に踏み切るかどうかということを決したいということを考えておるわけであります。御説のように、この問題は、法制審議会で多年もみまして結論が出ておるわけでありまして、今さら法制審議会の結論をくずすということになれば、それ相当の理由が必要だと思う。しかしながら、それ相当の理由は、今のところ発見されていないわけでございます。もっぱら問題は、最高裁判所当局がいかにそれを取り扱うかということに帰着しておると私どもは考えております。従いまして、そういう際の問題を今さら内閣における調査会にもしかけたといたしますと、これは法制審議会で出ました結論との関係において、非常に解決困難な問題が出て参ると思うのであります。のみならず、今回のこの調査会は、裁判官任用制度を中心にして法曹一元の制度を考えるということでございまして、しかも、二年間という短期間にこの結論を出そうというわけであります。それに対しまして、最高裁の機構改革問題を最初から議論するということになれば、とうていこの期間にこれを行なうことはできませんので、その意味から申しましても、この問題をこの調査会にかけることはふさわしくないというふうな判断をいたしたわけであります。それによりまして、この調査会所掌事務は、裁判官及び検察官の任用制度給与制度、それに伴って当然議論しなければならぬ法曹一元の制度に限るということにいたした次第であります。
  34. 猪俣浩三

    猪俣委員 御説明はわかりますが、しかし、今あなたの御説明の中にあったように、これは法曹の多年の懸案であり、なお、衆議院におきましても、法務委員会で、夏休みまで返上いたしましてこれと取り組みまして、あの結論は出ておるわけです。なお弁護士会あるいは裁判官、検察官、法務省の人たちが集まった法制審査会においても、ある程度の結論が出ておる。ところが、最高裁判所は、われわれから考えると、奇妙な論理を用いて、これに反対しておる。判事は九人でなければならぬというようなことも、ワン・ベンチ論として固執しておる。アメリカはそうだという。私どもは衆議院から派遣されて、アメリカの最高裁判所その他欧米の最高裁判所を視察してきましたが、アメリカだって九人じゃないのです。連邦最高裁判所だけ九人であって、日本の最高裁判所に当たるところの最高裁判所は四十何カ所もある。それがみな九人ですから、三百何十人の最高裁判所の判事がおる。連邦最高裁判所だけが九人です。ところが、日本の最高裁判所は向こうの州の最高裁判所と大体同じことをやっておるわけです。そういうふうな説明で反対されておる点があるが、ドイツにしろフランスにいたしましても、みんな八十名、百名の最高裁判所の判事がおるというようなことで、どうも最高裁判所説明にもわからぬところがあるのであります。しかし、このまま放置しておくということは、私はよくないことだと思います。どこかで打開しなければならぬ。ところが、法制審議会もお手上げ、国会でもお手上げといって、そのままずるずるべったりになっておるのでは醜態だと思う。どこかで打開しなければならぬ。だから、私は大平長官にお聞きした。内閣直属委員会にする、それは最も重大であるから、適切なことだと思う。それなら、こういう長年の懸案であるこの問題をこの調査会である程度調査せしめることがなぜできなかったか。今あなたのおっしゃるように、急ぐものであるなら、早く議題にして早く調査を終了すればよろしい。そうしてその結論を得たものだけどんどん立法化していけばいい。何もみなここに書いた案を一緒にやる必要はない。急ぐものだけ先にやって、次々上げていけばいい。私は、この最高裁判所機構改革なんかは、こういう調査会でなければ打開でないと思う。あなたの今言うた通りです。弁護士会もお手上げ、法制審議会もお手上げ、みなお手上げだ。国会でもやっておるが、これもお手上げです。どこで打開するか。裁判の実情を見れば、何とかして打開しなければならぬことは明らかである。わざわざこういう制度を作りながら、何かはれものにさわるようにして、さあっとお茶を濁したような感じが私どもはする。ですから、今の御説明では納得いかぬと思うのです。せっかくこういう内閣直属調査会ができたから、それも調査目標の中に入れてもらいたいと実は思うわけでありますすが、これ以上は議論になりますので、やめておきます。  そこで、どうも行政府は無理もないけれども、裁判制度なんというものに対しては、大平さんはどうか知らぬが、あまり興味もないので、何か厄介なものはそっとしておくような傾向があるのでありますが、しかし、大平さん、この問題は考えていただかぬといけないのだ。実に長い間の懸案なんです。これは希望として申し上げておきます。  それからなお、これは制度といいますか、お尋ねしたいことは、先般委員会で受田委員からも質問がありました、判事、検事が非常に少ないという際に、裁判所あるいは法務省におきましても、判事、検事の資格のある人を一般の行政事務に相当使っておる。それは必要があるという場合もありましょうが、しかし、そう全部そういう資格者でなければならぬわけはないと私は思うのです。その一端として、法務省の訟務局の問題、これをこの前私は資料を出してもらうようにお願いしておったのですが、これには一体何人あって、検事の資格のある者、判事の資格のある者が何人いるのですか、それをちょっと御説明願いたい。
  35. 津田實

    津田政府委員 前回に御要求のありました資料といたしまして、お手元に差し出してあります「訟務関係の職務に従事する職員の数」という表がございます。この表によって御承知をいただきたいと思うのでございますが、終わりから二つ目のところにあります。これによりますと、訟務局の本局と、それから各法務局管内におりますが、合計、検事は二十八名、それから事務官等百五十二名、こういう数字になっております。
  36. 猪俣浩三

    猪俣委員 今検事は非常に不足であることは、皆さんよく御存じなわけです。そこで、私は、これは大平さんからもお聞きいたしたいのですが、法務省の訟務局というのは、弁護士の仕事をやるんですよ。国を相手にして訴訟を起こした場合に、この検事の資格のある人が、被告あるいは原告の代理人として出てくる。私は、先年アメリカの裁判制度を視察に行きましたときに、刑事事件で、つまり、起訴をした原告側の代理として弁護人が出ている。被告人の代理人も弁護人です。法廷で弁護人同士が、検事になり弁護士になってやっておる。だから、検事の法廷闘争まで弁護人に請け負わせておるわけです。私は、そういう制度を少し研究してみる必要があるのじゃないかと思う。それこそ法曹一元の一つの別な形が現われてきます。そんな国を相手の訴訟なんというのは、原告あるいは被告——ことに民事事件ですよ。アメリカのは刑事事件までやる。それは今の日本の刑事訴訟法の構成ではむずかしいでしょうけれども、国を相手に純然たる民事事件あるいは行政事件なんだ、こんなものは、官選弁護みたいな、国選弁護みたいな形で弁護士に請け負わせたらいいと思う、弁護士は幾らもおるのですから。どういう契約をするか。今の国選弁護士なんて、ごく安い報酬でもって弁護士がみんな公務についております。ですから、そうなれば、そう経費もかからずに、その事件のたびに弁護士を頼めばいい。検事の資格のある者がこれだけ多数訟務局なるものにいて、そうして弁護士のような仕事、民事事件の相手になって出ておる。これは検事が不足しておる今日、考え直さなければならぬことじゃなかろうか。最高裁判所におきましても、あるいは家庭局、行政局、いろいうの局がある。局長、課長くらいまでは、場合によっては判事の資格のある者もやむを得ざることもあるかもしれませんが、課長、局長のほかにそういう資格のある者がなおあるでしょう。課長付とか局長付の参事官とか事務官が、みんな判事、検事の資格のある者を充当しておる。こういうのはむだだと思うのです。書記官の非常に練達堪能の者があれば、課長の補佐くらいできますよ。他の行政庁はみんなそうなんです。必ずしも高等文官試験に及第した者ばかりじゃないわけです。それは司法行政で、行政の部面が強いのであって、裁判活動と達うのですから、必ずしも判事の資格がなければならぬというわけのものではないと思う。ですから、そういう判事は第一線の裁判の方に出てもらって、そうして練達堪能の書記官にやらせるということも、私は制度として考えるべきじゃないかと思う。判事が足りない、検事が足りないと言いながら、何かどうも少し裁判所なり検察庁、みんな有資格者で占めてしまおうという、そういう意欲に基づいてやっておるのではなかろうか。それは判事の方が必要なことはありましょうが、それは局長、課長クラスでいいじゃないですか。その課長の補佐まで、その下の者までも判事の資格がなければならぬという理由は私はないと思う。ですから、この司法修習生の動向を見ましても、ほとんど判事、検事を寄せた人数よりも、弁護士の人数の方がふえてきておる。そういう傾向になっておる。そこで、いろいろ今判事、検事の問題が数の上からも問題になってきて、これはいろいろな点がありましょうが、まず自分たちのひざ元から整理できるものは整理していくということが、数を解決する最も近い道じゃなかろうか。こういうことは、この司法制度調査会調査なさるのかなさらぬのか。こういう訟務局なんというものは、事務局はあってもいいが、具体的な事件が起こった際に弁護士を頼むという制度はどうか。大平さんの御意見、それから津田さんにもそれに対する、そういう私の考えはいけないのかどうか、それを一つ御答弁下さい。
  37. 津田實

    津田政府委員 事務上のことを私の方からまず御説明申し上げますが、御承知のように、国を当事者とする訴訟につきましては、国を代表いたしまして法務大臣が、その所部の職員を指定して訴訟を行なわせることができるということは、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律できめられている通りであります。それらの職務を行ないます職員につきましては、やはりただいま御指摘通り弁護士の資格のある者、すなわち、検事が行なうというのが相当であるということになっておりまして、そのためにこの検事を訟務局に配置いたしておるわけであります。しかしながら、これは全部検事がやっておるわけでございませんで、事務官でやっておるものもございますし、またたとえば昭和三十五年度におきましては、約六十九名の方々の弁護士を選任いたしまして、訴訟業務を委任しておるわけであります。でございますから、この検事が全部の訴訟事務をやっておるわけではございませんで、弁護士に委任しておる事件も多数あるわけでございます。しかしながら、この制度を全面的にやめるかどうかという問題に結局なり、ここに配置しておる検事を全部裁判官なり検察官にすればいいではないかという御議論は、確かにあると思うのでございますが、御承知のように、アメリカにおきましても、連邦あるいは州のアトーニーは、検察事務と同時に訟務事務もやっておるわけでございまして、むしろ訟務事務に重点を置いているアトーニーすらあるわけであります。まただだいまお話しのような制度があるやにも考えますけれども、しかし、私どもが見ましたところにおきましては、むしろ連邦及び州におきましては、アトーニーが民事事件をやっておるというのが普通の状態であるというふうに考えておるわけです。日本におきましても、こういうアトーニー制度、つまり、民事、刑事ともにやる国の代理人と申しますか、それを設ける方がよろしいという説も日本にあることは、御承知通りであります。現在の訟務局の制度は、終戦後できました新しい制度でございまして、いわばアメリカのアトーニー制度に非常に似通った制度であると思うのであります。従いまして、この制度はこの制度なりに一つ意味があると思うのでございまして、これと、今の弁護士を訴訟事務に選任するという、両者をあわせていくという現在の制度は、現在なりに一つ意味があるというふうに考えておる次第でございます。  なお、法務省の行政事務につきまして検事をある程度配置いたしておりますが、これらにつきましても、やはりその職務の必要性からくる最小限度に行なっておるわけでございまして、これは法曹経験者でなければできない職務であると判断されるからであります。従って、もしもそれをかりに検事の身分をはずしてみても、やはり法曹経験者をもってそういう職務に充てなければならないということになれば、法曹の絶対数がふえない限り同じことだということにならざるを得ませんので、現在といたしましては、どうもやむを得ない措置であるというふうに私どもは考えております。決していいことであるとは思いませんけれども、やむを得ないものであるというふうに考えておるわけであります。
  38. 大平正芳

    大平政府委員 今政府委員から御答弁がありましたような趣旨で、法務省設置法の第十七条も設けられたのだと思うのでございますが、しかし、今猪俣委員のおっしゃったことは、私は一応よくわかるわけでございます。そもそも、今度の司法制度調査会内閣に置こうというような議が起こりましたゆえんのものも、現象的には訴訟の遅延がこのまま放置しておけないということ、これを打開しようと思えば、結局任用制度給与制度にさかのぼってその岩盤を割っていかないと、どうにもならぬというようなところから起こってきたわけでございまして、日本の現実から申しますと——他国の制度がどうなっておるかももちろん参照する必要はございましょうけれども、日本自体として、当面のこういう遅延状況を打開していくためには、あらゆる手段を講じなければならぬ。その一環として、今御提示されたような御意見は十分御審議願うのに値する問題だと思います。ただ、設置法にもありますように、判事とか検事とかの資格のある者を行政事務に充てなければならない必要性というものを、どういう限界において見るかという問題でございまして、現在政府としては、必要があってやっているんだという建前に立っておるのでございますけれども、こういう調査会ができますと、そういう問題もなお進んで御検討いただいてしかるべきものだと思います。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは大体御了承いただきましたから、あまりくどくお尋ねいたしませんが、私ども、判事、検事の資格がある者が法務省なりあるいは最高裁判所事務局にたくさんおることは、けっこうなことだと思うのです。ただ問題は、検察官なり裁判官なりが非常に数が少ない、そのために事件が遅延していることは、天下の世論です。そこで、一体こういうものをどうするかといういろいうの方法があるわけです。だから、そういう裁判行政、司法行政に属するものは、判事や検事の多年の経験のある者がよりいいんだけれども、ひとまずそれは前線に出すというふうな考えを持たなければならぬのじゃなかろうか。この裁判の遅延なんということは、私どもが言えば、必ず裁判官の数が足りないと、——そしてまた、裁判官は実際忙しいですよ。私どもはそれはもっともだと思うのです。大へんな事件をかかえてやっていらっしゃる。だから、もっとふやさなければ無理だと思うが、これは定員の問題になりますが、内部操作でできるものは、いち早く内部操作で前線へ送り出すということをやって、しかる後に定員問題に移らぬと、お前の足元は何だということになる。そういう有資格者を置くということはいいことに違いないが、ただそれのみならず、これは日本の長い間の役所のセクショナリズム、繩張り根性というものがあって、やはり最高裁判所のいろいろな行政部門も判事閥で固める、あるいは法務省の行政部門も検事閥で固める、こういう繩張りが相当あるわけです。津田さんはそんなこと絶対にないとおっしゃるに違いないから、答弁は要らぬ。答弁は要らぬが、それは事実ある。そう意味において、判事や検事をいろいろな部署につかせて、有能な書記官、練達堪能な書記官もたくさんいるのですが、これらが異端者になるわけです。なるべくそういう者を責任ある地位につけまいとやるというような点が、批判としてあるのです。ないとおっしゃっても、現実にあるのです。そういうセクショナリズムはある。日本の役所の長い間の伝統なんです。これは牧野元法務大臣じゃないけれども、まず官僚の最も力の強いのは法務省と外務省だと、あの牧野良三元法務大臣が言いましたが、僕もやはりそういうものを打破しなければいかぬと思う。一体司法制度調査会なんかも、ほんとうはそういう見地からも考えてみなければならぬと思うのです。  そこで、とにかく人権擁護のために、この訴訟が非常に遅延しておることは、あらゆることを考えてこれを促進しなければならぬ。これは大平さんもお考えおきいただきたいのですが、一般的の遅延の調査というものは裁判所にあると思うのです。それはいずれまた聞く機会があると思いますが、私自身が関係いたして参りましたものでも、驚くべきものがある。たとえばこれは、最高裁判所、来ておりますか——あなたに頭に置いてもらいたいが、昭和三十一年の(ワ)の二一八号、土地所有権取得登記抹消手続等請求事件、これは訴えを起こしたのは三十一年八月二十九日ですが、現在もう六カ年、まだ準備手続をやっているのです。そうしていよいよこの四月に準備手続の結審をしたいと思っておったら、判事がどこかへかわったと称して、いつまたこれが開かれるかわからない。準備手続ですよ、六年も七年も。一回だって公判を開いていない。そこで非常に困ってしまった。私は自分のことを言うて恐縮ですが、私の子供が自動車にはね飛ばされて即死をいたしました。その会社の態度がけしからぬから、損害賠償の請求訴訟を起こしておりますが、これは三十年に起こしたのがいまだに一審が済まぬのです。ひいた人間は最高裁まで行って判決確定して、服役して出てきているのに、一審の民事訴訟をまだやっている。果てしがない。判事のかわることは、この前の新潟地方裁判所の事件では、判事が五、六人もかわって、そのたびに半年ぐらい延びてしまう。私の子供の事件も、何人かわったかわけがわからぬ。私は三人の弁護士を頼んでやっている。昭和三十年からまだかかっている。刑事事件としては終結しているのにかかわらず、まだこれがいつ果てるかわからない。これでは裁判所を利用して損害の賠償を取ろうなんということはできません。私の立場においてかような姿です。こんなことで裁判というものが国民の利用するところとなるかならぬのか。それだから暴力団が発生しますよ。おどしてふんだくってくる、その方が近道だということになる。暴力団発生の大半の責任は裁判制度にありますよ。私の子供の事件は七、八年たっている。(ワ)の三八三〇号の事件として、三十年の五月二十六日に訴訟を起こしているが、まだ一審が片づかぬ。こういうことは、私は自分の身に関することではなはだ恐縮なんですけれでも、それだけ実感が強いから言うのです。単なる統計じゃない。実際体験している。そこで、じゃそのことは判事さんがなまけているからかというと、そうじゃない。気の毒なくらい、最高裁判所の判事でも、その他の下級裁判所の判事でもやっていらっしゃる。結局人数が足りない。それから訴訟の方法についてやはり改める必要があると思うのです。だけれども、まず第一に、人間を充足するということが先決なんです。そこで、この司法制度調査会ができましたことは、私どもはけっこうなことだと思いますが、今申しましたように、判事や検事の資格のある者は、まず部内からなるべく前線へ送り出すということを真剣に考えていただきたい。  それからこの司法修習生の動向ですが、これはお示しの統計を見ましても、年々弁護士がふえて、判検事の方が減ってきている。去年のごときは、判事補が八十四人、検事が四十八人、弁護士が二百十六人となっている。判事と検事を寄せたより多い。本年もまた判事補は七十六人、検事が四十一人で、弁護士が二百二人。大蔵省あたりから異議が出ることにも多少原因があると思う。そこで、この原因はどこにあるのであるか、もしお気づきの点があったら御説明いただきたい。
  40. 津田實

    津田政府委員 昭和三十六年度以降におきまして、修習生を修了して弁護士となる者は非常に多いわけでございます。これは司法修習生採用数、すなわち、司法試験合格者数がふえたためでありますが、しかし、そのふえた割に判事補、検事を志望する者がふえないということは、当然言えることで、結局弁護士になることを志望する者が多いということは、御指摘通りであります。この原因についてでありますが、それはいろいろ考えられるわけでございますけれども、一言にして申せば、やはり弁護士の方が魅力があるということに尽きるということになるわけであります。しかしながら、それを分析いたしてみますと、どういうことかと申しますと、何と申しましても、やはり裁判官、検察官の給与その他の待遇問題が第であります。それから職務内容が非常に複雑困難であって、自分の時間というものをとることができないというようなことが一つ。それから相当な理由があれば転勤しなければならぬ。一定の個所に定着することができない。従って、子弟の教育に困る場合が出てくるということ。それから一般の勤務環境、宿舎等の問題が非常によくない。宿舎につきましても、これは判事、検事、完全に支給されているわけではございません。こういうような問題を全部総合してみると、結局、弁護士になる方が有利であるというようなことが、大きな原因であろうかというふうに考えておる次第でございます。この問題を解決するためには、これらの諸点を解決しなければならぬわけでありますが、この問題は、何と申しましても、法務省あるいは裁判所だけで解決できる問題ではないわけでありますので、この調査会によりまして根本施策をきめていただくということが望ましいことになるだろうと思います。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 結局は、やはりイギリスのように、弁護士を十年勤めた者から判事になるというような、いわゆる法曹一元を実現しなければ、世の中が民主化すればするほど弁護士の希望者がふえてくると思う。昔のように検事がいばってオイコラでやっておられれば、月給の安いところをいばることで埋め合わせて、なり手があった。だから、いばらせるのは安く官吏を使う手だというふうになっておったのだが、近ごろそういうことがなくなってきた。だから、やはり待遇を考えてやらなければいかぬ。(「今でもいばっているよ」と呼ぶ者あり)まあ、昔の判事や検事よりはよくなってきたと思う。そこで、やはり法曹一元で、弁護士十年なら十年やった者がなるということにならなければいけないと思うのですが、それには非常に障害がある。その一つは恩給法です。弁護士から判事になって、またやめて弁護士になった人が、ほとんどみなこぼしている。五年なり十年なり福島あたりの家庭裁判所長をやっておった人がやめてきてえらい目にあってしまった、弁護士を開業している間のお得意さんはいなくなってしまったし、子供の教育もよくできなかった、少しためた金はみんな裁判所長をやっているうちに使ってしまった、恩給はない、そういうことを弁護士会でこぼすから、なり手がだんだんなくなるのですね。そこで、恩給などというものはどう処置したらいいかという問題がある。これは聞くところによると、最も大きい問題です。弁護士十年勤めて、それから判事を十年やっても、恩給がつかない。判事を二十年もやらなければ恩給がつかない。二十年なんてやらないうちにおだぶつになるかもわからぬ。そこで、一体恩給制度なんていうものはどうするか、それはもちろんこの臨時司法制度調査会で御研究になると思いますが、そういう大きな問題がある。そういうものを解決しませんと、これは口で言っても、なかなか実際は行なえない。日本弁護士会法曹一元に関する委員会があって、私もその委員になっておるのですが、ここでは昭和三十二年にもうすでにりっぱな決議をして、しかも法文化して上申してあるはずなんです。ここにも詳しく書いてある。なおまた、日本法律家協会の委員会でも、やはり法曹一元を実現する具体的要綱というものを昨年の五月に決議して出しております。ただ、これを具体的に考えてみますと、これはみんなりっぱであるが、今の待遇問題になると、どうもはっきり書いてない。これはやはり大きな力のある委員会でないと実現しないためだろうと思うのですが、待遇問題が解決しなければできない。待遇問題解決には、判事の待遇を確立することもありましょうし、弁護士から判事になる者の恩給制度なんかを特別に考慮するということもありましょうが、こういうふうに法曹の間にはほとんど世論化しているのでありますが、これが現在実現しない。今回それをやるための委員会だと思いますが、これはしっかり腰を据えて、徹底的に一つ御考慮願いたい。公職選挙法の委員会みたいではしようがない。りっぱな案を出したって、自民党や内閣がだめだといって、それっきりつぶれてしまうようでは意味がないのです。これは調査会ですから、初めから調査会性格を聞いているのですが、官房長官、いかがですか、この調査会の案が出たら、相当政府なりが忠実に守るのだろうか、公職選挙法みたいになったら困るのですが、あなたの御決意を承りたい。
  42. 大平正芳

    大平政府委員 もとより、仰せ通り答申はできる限り尊重する考えでございます。各界の英知を集めて、異例の措置として内閣調査会を置きました以上は、私どもは、今の日本の現実に即して有効な答申がなされると思いまするし、また、その実現につきまして何ら危惧を持っていないわけでございます。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 それからなお、この委員会の任務としてお尋ねしたいと思いますのは、先ほど申しました、日本法律家協会がアメリカのバー・アソシエーションのような組織を作ることを決議されておるのでありますが、このことは、司法制度調査会で御検討になるのか、関係なさらぬのか。
  44. 津田實

    津田政府委員 アメリカのようなバー・アソシエーション設立の問題は、ただいま仰せの日本法律家協会の案には出ておるわけであります。これは法曹一元制度の不可欠な問題であると私どもは考えておるけでありますが、この不可欠な問題であるかどうかということは、やはり調査会で御議論をいただくことになると思うのでありますけれども、これは自然の勢いとして、もし法曹一元制度を採用するとすれば、不可欠な問題であるということになりますから、従って、調査審議の対象には当然なると思っております。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の質問はこれで終わります。
  46. 内田常雄

    ○内田委員 私は採決態勢が整えばいつでもやめることにして、その間ちょっと発言をしておきます。  官房長官がちょうどおいでになりますから、まず意見を述べて、また御意向を承りたいのでありますけれども、この内閣委員会には、今度の国会で二十をこえる各省設置法が出ておりまして、御承知のように、この委員会の消化の範囲を越えるような状態でございます。そこで、私が考えますのに、行政機関の組織に関する法制の仕組みというのは、一体どうなっておるのか。私の理解するところでは、憲法の六十五条に「行政権は、内閣に属する。」ということが書いてあります。その意味は、行政の作用が内閣の権限に専属することはもちろん、行政の組織権というものも内閣に属するものだと私は解釈しております。ただし、例外がありまして、同じ憲法の九十条あるいは六十六条あたりは、たとえば会計検査院の組織は法律できめるとか、あるいは内閣総理大臣と各省大臣をもって構成する内閣そのものの組織は法律できめるということが書いてある。従って、それに関する限りは、当然これは法律事項として国会審議に待たなければならないけれども、それ以外の行政機関の組織、ことにあたかも分課規程あるいは行政規則にも類するようなものが、たくさん国会に設置法の改正として出されていることは、何か間違いじゃないかという気が私はいたすわけであります。その設置法が国会に出されるたびごとに、いろいうの複雑な委員会における審査の波紋も出て参りまして、これは行政にとっても、また立法活動にとっても、現状においては非常にマイナスの作用を来たしておるので、この際、憲法に基づく三権分立なり、あるいは議院内閣の仕組みなり、そういう制度根本にさかのぼって、行政機関の組織に関する法制体制というものを再検討した方がよろしいのではないかと思います。ことに行政機関の定員については、先年まで行政機関職員定員法というものがあって、それによって各省庁の定員はきめられておりましたが、さきにどういう理由かで行政機関職員定員法が廃止されまして、定員に関する事項は、それをばらして各省庁の設置法の中に規定することになりましたために、今度の設置法の改正の場合に見るように、わずかの定員の改正、あるいは定員外の職員の定員組み入れというようなことについても、各省設置法がみな出されてござるを得ない。そうなると、これはまた行政機関の従来の惰性からすると、どうせ定員の改正が行なわれるのだから、ついでに局、部あるいは次長制度とか、その他何か職能の変更について、設置法の改正をやろうじゃないかということになって、そうして各省競って設置法の改正をしておる、国会に出してくるというようなことになって、この定員法の問題が、また非常に複雑な事象を起こす原因になっておるのではなかろうか。そこで私が思うのには、こういうことはできまいか。内閣法はもちろん必要である。憲法の要求するところです。それから行政組織の体系に関することをきめるために、今日の国家行政組織法のようなものは必要であるが、しかし、その行政機関の末梢、分掌規程、行政規則に類するようなことを国家行政組織法できめることについては、再検討を加えると同時に、各省に通ずる規定は、あたかも昔の各省官制通則のように国家行政組織法の中できめてしまって、今日のような各省庁の設置法は各省設置令というようなことにして、政令なり、あるいは閣令というものがあるか知りませんが、それにまかせてしまった方がいいのじゃなかろうか、こういう気がいたします。また、定員についても、これは予算で審議することであるから、定員法というものははたして要るのだろうか。これは定員令でよくはないかと思うが、しかし、それが法律でやった方がいいとする場合においても、各省設置法の中に一つ一つきめるよりも、国家行政組織法の別表か何かでまとめにきめておく。これは行政機関職員定員法をやめてしまったのだから、昔に戻る必要はない。国家行政組織法の別表か何かできめて、一括審査するとかなんとかいう方法でいかないと、行政機関みずからが、自分の職能、責任を放棄して、立法機関の下に入る、すべて国会にみずからの責任と機能を譲り渡してしまう、売り渡してしまったような格好になっておることは、私はどうかと思うのでありますが、これはお考えになったらどうかということでありますが、何かお考えがありましたら伺いたい。ちょうど行政管理庁の局長もおられるようですから、何か御研究があればお答えをいただきたい。  また、臨時行政調査会というようなものができまして、行政機関のあり方について根本的な検討を調査会でおやりになるようでありますから、単に実態的のことばかりではなしに、私が今言う法制的な問題についても、この際考え直すような方向にいかないと、この委員会というものを毎週三日も四日も開いても、それでもなおやり切れない。のみならず、内閣政府機関の行政運営に非常な支障を与える。私どもも、立法活動に非常にある面に足を取られて困っておるという実情をあなたに申し上げて、官房長官おられるから、申し上げておく次第であります。
  47. 大平正芳

    大平政府委員 内田委員の、憲法解釈から出た、行政の組織は、内閣や会計検査院等以外は内閣におまかせいただいていいのじゃないかという見解に基づきまして、政府の方は、第二回の国会に行政組織法を御審議いただいた場合に、そういう態度で臨んだわけでございますが、参議院の方で政府原案が修正を受けまして、今日御指摘のような状況になっておるわけでございます。そこで、実は去年国会の正常化が叫ばれるし、私ども国会に去年は何でも二百五十一件出したのですが、こんなにたくさんの法律の御審議をいただくのも恐縮だし、何とか法案を整理いたしたいと思いまして、いろいろ夏以来法制局中心に検討させたわけでございます。ところが、たとえば今御指摘の設置法というのが二十件内外毎年出ておるということで、これはせめて今の建前でも一件にまとめることができないだろうか、件数をできるだけ整理することが正常化の前提ではないかということで、いろいろやってみたのでございますが、ぎりぎり詰めてこういう状況になっておるわけでございます。しかし、仰せのような事情がございますので、今後真剣に検討して善処すべきものであると私は考えています。
  48. 山口酉

    ○山口政府委員 国家行政組織法につきましては、従来御指摘のような考え方を持っておったのでございますが、法律成立のときの国会における審議の状況もございますので、そういうものをできるだけ合理的な線に持っていきたいというふうに考えております。特に御指摘の定員の問題につきましては、実は定員法というものが従来ございまして、全体を一表にまとめておったわけでございます。これを再検討する必要が起こりまして、御承知のように、定員法の規定しております内容について非常に疑義がございましたために、いろいろ各省の実際の取り扱いが不適切になりまして、いわゆる定員外職員問題というのを、政治問題までになるように大きな問題にしたわけでございます、そこで、そういうことで、それを再検討するために、実は三十五年度に政府部内で協議会を作りまして、政令にするということにつきましても同時に検討いたしました。その結論といたしましては、さしあたり五現業につきましては政令にいたしました。その他のものにつきましては、なお非常に議論がございましたために、一応まとめるために法律で残すことにいたしました。しかし、だんだん検討いたすべき点がございますので、慎重に検討いたしたいと思います。ただ、組織法全体といたしましては、やはり実態の組織がいかにあるべきかということにつきまして、ただいま臨時行政調査会も検討を始めておりますので、この改正の時期は、そういう実態意見の状況と照応しつついたすべきものであろうかと思います。
  49. 中島茂喜

    中島委員長 受田君。
  50. 受田新吉

    ○受田委員 官房長官に一言だけ聞いておきたいのですが、この調査会設置法案は、調査会の目的の中に、法曹一元の制度とその他の任用制度給与制度に関する事項が書いてあるのですけれども、司法修習生の取り扱い及び司法行政と裁判官、検察官の関係、こういうものは含まないかどうか。司法行政というのは、きのう私司法当局に聞いたのですが、検事が一般行政官になっておる。判事が最高裁判所事務当局の責任者になっておる。こういうふうに判事や検事の身分で一般司法行政の方の担当者になっている場合があるのです。そういうものが法務省の場合特例として残されておるのですが、官房長官としては、内閣にこうした調査会を置くということになりますと、そういう問題もあわせて総合的な立場から検討をすることになるのかどうか。調査会の目的から考えて、どういう御意思で法案をお出しになられたかをお尋ねいたしたいのであります。
  51. 大平正芳

    大平政府委員 調査会法案司法制度の基本的な、かつ総合的な問題、しかも、緊急を要する問題というように、審議の眼目をうたってあるわけでございます。今のような現実差し迫った問題として、訴訟遅延をどう打開していくかということになるわけでございまして、そういう基本的な審議との関連におきまして、今御指摘のような問題も、必要があれば御審議をわずらわすことになると思います。
  52. 受田新吉

    ○受田委員 必要があればということで、審議の対象になり得る場合があるという御答弁でございました。大体内閣にこうした付属機関の置かれておる例は、憲法調査会一つありますね。それと新しくこれが加わっておる。二つしかないわけですか。
  53. 大平正芳

    大平政府委員 憲法調査会国防会議とこれとになります。
  54. 受田新吉

    ○受田委員 これは非常にウエートを高く置いておられる機関であるということが言えるわけです。総理府の付属機関でなく、内閣の付属機関である。こういう意味では、総理府の付属機関よりも重視した調査会であるということに考えていいかどうか。
  55. 大平正芳

    大平政府委員 さようでございます。
  56. 受田新吉

    ○受田委員 内閣に置かれる付属機関としてこうした制度をお作りになるについて、今御御指摘のように、これを含めて三つの制度ができておるわけですけれども、内閣に置こうというような重要な問題を調査する機関として、目下なお重要な別に考えられる事項をお持ちではないか。全然ほかにこうした調査会を考えてはおらないか、問題としてはまだこういう問題が考えられるという点があれば、御答弁願いたいのです。
  57. 大平正芳

    大平政府委員 そういう問題は今のところございませんし、今後できるだけそういうことは避けたいと思います。
  58. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、この制度そのものには私一つ問題があると思うのです。臨時的な措置としてこういうものを内閣にお置きになるというのには、これはいささか事務的に過ぎる問題ではないか。憲法をどうするかという問題、国防をどうするかという問題と比較して、臨時的な措置としてこの制度をお置きになるほど重大な問題であるかどうかをお答え願いたい。
  59. 大平正芳

    大平政府委員 異例の措置として内閣に置く決意をするほど重要だと考えておるわけです。
  60. 受田新吉

    ○受田委員 その臨時的な措置は、一時的な措置として、ある時間を経たならば解決ができるということでお置きになるようでございますが、私は、この内閣に置かれる機関としては、法曹一元化の問題というものが、もっと幅広く、立法、司法、行政の三つの面からの根本的問題というようなものに触れて、司法部の権威を高めるために、非常に基本的な、行政にも関係し、また立法にも関係して、そこで単なる法曹一元化の問題でなくて、もっと広い司法制度のあり方、こういうものを検討するということであるならば、三権分立の立場からの司法の権威というものがどこにあるかということを、こうした機関であわせて御討議されるということになれば、非常に意味が深いと思っております。そういう問題は全然考え得ないわけですか。
  61. 大平正芳

    大平政府委員 先刻申しましたように、当面緊急な基本的かつ総合的な問題というようにいたしてあるわけでございまして、司法制度根本的な検討ということになりますと——これは時限立法でございまして、二年間御審議を願うということで、今申しましたような問題に限定してお願いするつもりでございまして、司法制度全体ということになりますと、あらためて検討を要することになろうと思います。
  62. 受田新吉

    ○受田委員 司法官が行政官に兼用されている、併用されているといいますか、そういう併任されているという立場の者が、きのうの委員会で私が指摘した通りに、幾つか例があるわけです。そうした司法機関と行政機関とが混同されておる。行政官という立場であるならば、りっぱな行政官でおやりいただけばいいのであって、司法官の身分を持ったままで行政官をおやりになるのは筋が通らない。これを私がきのう司法当局、法務当局お尋ねしたわけです。あなたはその点では非常に研究しておられる一人だと思いますので、これは人事院の関係もあるわけでございますが、こういう法案をお出しになった当面の責任者として、人事行政に造詣の深い官房長官として御答弁を願いたい。
  63. 大平正芳

    大平政府委員 要すれば、そういう問題も御審議願いたいと思っております。
  64. 受田新吉

    ○受田委員 これは、当局のそういう御答弁でありますから、採決の前でありますし、一応質問を終わらしていただきますが、司法当局に一言だけお聞きしたいと思います。司法修習生の取り扱いは、今官房長官は、これの中に入らない、必要があればやるがということで、非常にあいまいであったのですが、当局はどういうお考えでございますか。
  65. 津田實

    津田政府委員 司法修習制度の問題につきましては、これは裁判官及び検察官の任用制度の前提になるわけであります。また、法曹一元化の問題にも深い関連を持っておるわけです。従いまして、これは当然調査審議内容に入ってくるのではないかというふうに考えております。
  66. 受田新吉

    ○受田委員 ないかという、まだばく然とした程度でございますか。
  67. 津田實

    津田政府委員 その問題につきましては、任用制度に関連があるというふうにこの調査会で御判断になれば、当然御審議になることと思いますし、また、関連はない、あるいは当面緊急を要するから、その問題はこの際除外すべきだというお考えならば、それは除外されるということになる。もっぱらこの調査会の運用の問題になるというふうに考えておりますが、制度的には、そこの問題にも及び得るというふうに考えております。
  68. 受田新吉

    ○受田委員 この機関ができる以上は、もっと幅を広げて、臨時的な措置であろうとも、司法行政と裁判官との関係などについて深い難点のある問題点は、同時にここで解決しておくという、そういう態度を私は持ってほしいと思う。ただ単にこうした臨時的な立場から、法曹一元化の問題をどう解決するかというような立場でなくして、もっともっと根本的なガンというものをここでえぐり出していくという態度も、同時にこの調査会においてお取り扱いをしてほしい。法務省が官房長という制度を持っていないただ一つの役所でありますけれども、そうした意味におきましても、行政府の中においてはやや独立の役所、他の省との関係などにおいてもはなはだ連絡を欠く機関というおそれもありまするので、そうした意味で、根本的な難点の解決を同時に調査解決するという努力をさるべきであると思うのですがね、官房長官
  69. 大平正芳

    大平政府委員 仰せ通りと心得えて善処します。
  70. 中島茂喜

    中島委員長 これにて臨時司法制度調査会設置法案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  71. 中島茂喜

    中島委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  臨時司法制度調査会設置法案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   (賛成者起立)
  72. 中島茂喜

    中島委員長 起立総員。よって、本案は可決いたしました。      ————◇—————
  73. 中島茂喜

    中島委員長 引き続き労働省設置法の一部を改正する法律案について質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山内広君。
  74. 山内広

    ○山内委員 今回の設置法につきまして、賃金部の問題については、前会石山委員からかなり詳細に御質問がありましたので、この点は私触れることを避けたいと思います。  まず最初に、最後の定員の増加でありますが、これはごく事務的なことですから、どなたが御答弁下すってもけっこうです。今度の二百十七名の増員ですが、定員外の職員の定員繰り入れが六十六名、こうありますけれども、なお定員外職員でこれによって救われない者がどのくらい残っておるのか。
  75. 松永正男

    ○松永政府委員 このたびの設置法改正案におきまして、六十六人の定員外職員を定員化いたしますと、労働行政事務に従事をいたしております定員外職員は、これによって全員定員化されるわけでございます。
  76. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、純増百五十二名の配置の問題ですが、かりに新設されます賃金部ができれば、これへ何名か回るのか、そのほか、御提案の中には、災害補償保険の事業とか、あるいは失業保険事業、広域職業紹介関係業務等に回すというわけでありますけれども、この配分はどういうふうにお考えになっておりますか。
  77. 松永正男

    ○松永政府委員 百五十二人の増員の内訳でございますが、労働者災害補償保険関係の定員が七十九人、失業保険関係が二十五人、それから労働力の流動化を促進いたします広域職業紹介関係が二十八人、それから今年度労働本省の新庁舎ができまして、これのボイラー等機械関係の職員が八人、それから産業安全研究所関係が四人、それから基準局の関係でボイラー等の安全検定検査、これが三人、それから職業訓練におきます技能検定関係が三人、それから婦人局関係が二人、これを合計いたしますと百五十二人になります。
  78. 山内広

    ○山内委員 そうしますと、今度新設されます賃金部には一人も増員なしに、賃金課が部に名前を変えたというだけで、実質は変わらぬということですか。
  79. 福永健司

    ○福永国務大臣 今次機構改革にあたりまして、内閣全体といたしましては、その定員を増加するということは極力避けようということ等もございまして、われわれもこの際といたしましては、できるだけそういう方針でございますが、省内でやりくりをいたしまして、実質的には若干の人間をこの賃金部の方に向ける、こういう措置にいたしておるわけでございます。数字等につきましては官房長から申し上げます。
  80. 山内広

    ○山内委員 今大臣から部内で操作してふやすような御答弁なんですが、そうしますと、前の話とちょっと食い違って参りますが、実際にはどういうことをお考えになっていますか。
  81. 松永正男

    ○松永政府委員 たとえば賃金部の設置に要します増員につきまして、官房の定員を賃金部に振りかえをいたしまして、実質上やりくりで増員ができるようにいたしたいということでございます。
  82. 山内広

    ○山内委員 これはこの程度にとどめたいと思います。  きょうわざわざ労働大臣にお尋ねしたいと思いましたのは、御承知通り、今度船員法がほとんど全面的に改正をみることになりまして、今運輸委員会の方において審議されておる。そこで、私は、あしたこの改正について、運輸委員会でいろいろ運輸大臣に質問する予定になっておりますけれども、労働大臣の方にも非常な関係を持つ法案でありますので、御出席願いたいと思いましたが、春闘のさなかで非常に多忙のように考えまして、私どもの配慮から、若干この機会に、法案とは直接関係ありませんけれども、お尋ねしておきたいと思います。  大臣も御承知通り、今度の船員法の改正は、海の労働者の労働基準法の改正であります。ところが、あの改正に日の当たらない階層のあることを御存じかと思います。と申しますのは、運輸省所管である国鉄の内部にもたくさんの船員をかかえております。機構から申しますと、これは国鉄でありますから、運輸省所管であります。従って、いろいろな身分上のことは運輸省に属するわけであります。ところが、船員でありますから、船員法の適用を受ける。ところが、労働条件は、あなたの方で労働者としてお答えにならなきゃならない。内容については御存じであるかどうかは知りませんけれども、すでに労働者の基本的な考え方である八時間労働、一週間は一日休むという週休が、あの船員法では、こういう短期間のひんぱんな運航をやっておる船員には適用されておらぬのであります。これがあしたの私の運輸大臣に対する中心的な考え方になって、いろいろお尋ねしてみたいと思うのでありますが、労働大臣の方には、公共企業体等労働委員会が所属しております。そうしますと、船員法によって労働条件を獲得した船員が、それに不満を持って争議を起こした場合、紛争が起きた場合、公共企業体等労働委員会であとの処理がされるわけであります。そうしますと、このつながりにおいてはあなた方との関係が生じて参ります。今度の船員法の改正について、この週休制がうたわれない。——この改正はあなたの方にもたしか連絡があったと思いますけれども、何ら合議がなければならないで仕方ありませんけれども、十分相談の上になされたとすれば、それはどういうお考えでありますか、承りたい。
  83. 福永健司

    ○福永国務大臣 労働者の労働時間の短縮につきましては、産業の種類によりましていろいろ事情を異にする場合もあるのでございますが、全体といたしまして、労働省は極力労働者の立場を考えて対処していかなければならない、こういうように考えておる次第でございますが、ただいま御指摘のようなものを初めといたしまして、若干特殊の事情にあるものもございます。船員法の改正で、船員の労働時間についての規定改正が含まれておるはずでございますが、これは一応私どもの所管いたしまする基準法の所管関係ということになっております。しかし、私どもといたしましては、常に関心を持って、日本の労働行政ないし労働立法全体の中であまりに食い違いがないようにということには常に意を用いていかなければならぬ、こう考えております。  なお、詳細につきましては、局長の方からお答えをさせます。
  84. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま先生御指摘の問題は、船員法の改正による命令をもって変形労働時間を定めることができるという規定の問題でございますが、ただいま大臣から申し上げましたように、基準法の所管外の問題であります。今後定めらるべき命令の内容等につきましては、私どもまだ詳細には承っておりませんが、今後ともなお十分連絡をとってやっていきたい、かように考えております。
  85. 山内広

    ○山内委員 局長さんにちょっと伺いたいのですが、労働基準法上の休息の定義があったらちょっとお聞かせいただきたい。
  86. 大島靖

    ○大島政府委員 基準法上、休憩とか休息という言葉に特別に定義を下しておりません。ごく常識的な意味で休息、休憩ということを使っておると存じております。
  87. 山内広

    ○山内委員 そこで、これは労働大臣にも意見を聞いておきたいのですが、今はこういう政府施策からも物価がどんどん上がっておりますので、賃金値上げの問題が非常に大きく春闘の柱になっている。また、あなたの方でも賃金課を賃金部というように組織を変え、それに強力な力を持たして賃金問題と取り組む、こういう時代になっております。しかし、これは労働者側でもいろいろ資料もとっております。また、経営者側でも賃金の実態はかなり詳細に握っておると思います。この間からの大臣の非常に誠意のある答弁で、私としては中身は理解できるわけですけれども、こういう物価がどんどん上がるという変態な時代ですから、そういう意欲が出てきますが、これが平常に復すれば、賃金問題というのはそう私は問題になってこないと思う。しかし、その次に起こるものが何か。非常に大事な問題は労働時間だと思う。特に最近合理化の問題が出まして、各産業ともに労働時間の問題が非常にやかましくなっておる。私は、労働基準局では労働時間の問題を取り上げておやりになっているかわかりませんが、これは労働衛生課が担当されておるのではないかと思うのですが、今局長に聞きますと、法規上の休息というそのものにも定義がないし、ただ常識上の判断で休息時間というものを考えている。こういうことは、これから賃金問題でなく、労働時間の問題が社会問題になりますと、これが非常な大きな問題になる。休息時間と言いますと、医学的にも研究しなければならぬ。平均八時間が片寄ってしまって、二十四時間もかせがせる。ところが、平均八時間労働ならば五十六時間連続労働もいいんだという考え方が、はたして医学的にどういうふうにからだに影響を及ぼすのか、こういう点の研究などもぜひやっていただかなければならぬ。こういうことの基本的なものがないと、この労働時間の解決ができないと思う。そこで、もうよほど前の、何十年も昔のことですが、私がそういうことに興味を持って若干手を染めた当時、大阪の鉄道病院で学位をとられたお医者さんは、たしか、トンネルの中を機関車の機関士が走るのがどれほど人体に影響を及ぼすかということの疲労の問題を研究して、学位をとられた。そういう篤学の人もある。それから何十年も過ぎた今日、休息というものがどれだけ必要であり、医学的にどういう影響を及ぼすかという疲労研究をされないということは、私はどうも不可思議にたえない。賃金部を設けるよりも、こういう労働衛生課を労働衛生部にして、そういう研究を今からやっておかないと、今度は合理化はどんどん進む、一方的に首切りがくる、労働時間が延びてくる、そういう問題が出てくると思います。この医学的な研究などをおやりになったことがあるのかどうか。データがあったら、今御説明は要りませんけれども、出していただきたいと思います。
  88. 福永健司

    ○福永国務大臣 データ等につきましては、所管の局長からお答えさしていただきますが、方針的にただいまの御発言につきまして申し上げたいと思います。  前置きとして、物価がどんどん上がるようなことを政府がしているというようなことがございましたが、そういう点は、私どもはさように考えていない。極力物価は安定させなければならぬというので、諸方策を講じておりますので、御理解をいただきたいと存ずるのでございますが、まあ、労働時間につきましては、全体の方向といたしまして、だんだんこれが短縮されていくようなことになることが私は望ましい、こういうように考えておるわけでございます。従って、その中にあって、ただいま御指摘のように、特に長時間継続して労働に従事する、ないしはしなければならぬような事情にあるというような人々の問題については、特別の関心を持って、これにいろいうの考慮を加えていかなければならぬ、こう思うわけでございます。今度の賃金部も、労働時間その他の問題と関連しつつ仕事を行なっていかなければならぬ。そういう意味におきまして、私どもは、そういう労働時間を所管いたしまする基準局に、同じところにこの賃金部というものを置いて、問題の関連を保ちつつ、円滑なる事務の推進をはかる、こういうように考えてきておるわけでございます。従って、ただいま御指摘のような休息等について、ないしは労働者の健康と労働時間の関係等につきましては、科学的な研究ももとより必要なところでございます。できるだけそういう方面にも力点を置いていかなければならぬ、こういうように考えております。
  89. 大島靖

    ○大島政府委員 ただいま先生から、労働時間の問題を、疲労との関係、労働衛生の面から見て御指摘をいただきまして、私ども非常に啓発もされますし、また、基準行政として、その点感謝を申し上げたいと思うのであります。私どもの方では、監督課でこの労働時間の問題を扱っております。同時に、今先生の御指摘のような労働衛生の面から見た疲労の問題、この点が非常に重要な問題だと思います。そこで、私どもの方の労働衛生研究所におきまして、疲労の問題を特に取り上げて、ただいま研究をいたしております。民間の労働科学研究所、いわゆる労研におきましてもやっておりますが、私の方もいたしております。今後ますますこの方面の研究を進めて参りたいと考えております。
  90. 山内広

    ○山内委員 基準局長の方でも将来研究を大いにしたいと言われておりますので、了解したいと思います。ただ、先ほどちょっと私触れましたが、労働行政機構の問題なのですが、運輸省の持っておる船員の労働条件の問題とか、こういう問題は、私は思いつきで、まだ研究も足りませんので、あるいはこれから結論を変えなければならぬかもしれませんけれども、やはりこれは労働省に一括されていいのじゃないか。運輸省の持っていろいろいろな船員のこういう労働条件に関係した船員局、そういう問題はむしろ労働省の中に入れて、なるべく統された一貫した行政をおやりになった方が、——労働行政にしろうとの運輸省の方に置いて、これは自分のところより知りませんから、国際的にも国内的にもいろいろ改善を要するこういう労働条件の問題が、かえって未解決になって、紛争もいたずらに起きている。あなた方専門家の方で監督され、見ておられれば防止できるような無益な争議も、最近は起こっていると私は観測しているわけです。ですから、名前を賃金課を賃金部に変える、今の話では増員もほとんどないようであります。そういうことを無理に、大臣何日もここに出てきて検討されるよりも、機構の問題とか今言った労働時間に関係したいろいうの問題を、もっと予防的な立場から御研究になった方がいいと思いますが、この機構の問題、労働省に関係した労働条件の問題、この機構を一元化して労働省が持つ、労働大臣のもとに置くというこの考え方は、いかにお考えになっておりますか。
  91. 福永健司

    ○福永国務大臣 事実今国会でも、ただいま山内さんが御指摘のような問題のほかにも、防衛庁内でのある種の問題等について、労働省がよくこれを監視してみなければまずいことが起こるではないかというような意味で、防衛庁ももちろんそうでありますし、私どももそういう意味で御注意をいただいたようなこと等もございます。そういうようなことにかんがみまして、ただいまの御意見につきましては、私も今後大いに参考にいたしまして考慮して参りたいと存じまするし、間々こういう問題は、ある省からある省に対して、そっちの所管をこっちの方にといったようなことは、これは率直に、私役人の出身じゃありませんから、気持を赤裸々に言うことになりますが、日本の場合、割合セクショナリズムでうまくいかなかったというようなことが、過去にかなりあるようでございます。現在そうだとは私申しませんけれども、そういうようなこと等も考慮いたしまして、今度内閣にできまする、そうしたこと全体について検討してもらう機関でも、こういうことについての考慮を払ってもらう必要があろう。こう存ずる次第でございます。私は私なりに善処いたしたいと存じます。
  92. 山内広

    ○山内委員 次に、お尋ねいたしますのは、これは直接この法案とは関係がないのでありますけれども、実は前々から私のところに陳情もあり、この陳情はたしかあなたの方ですでに御承知のことだと思うのですが、北海道は御承知のように非常に地域の広いところで、失業保険を給付する場合、受ける側にしては非常な苦労をしておるわけです。三十キロも四十キロも乗りものに乗って支給所に行かなければならぬ。交通が不便でありますから、泊まらなければならぬ。そうすると、せっかく失業保険をもらっても、宿賃と乗りもの賃でなくなってしまう、こういう事態を、実は前々から何とか解決してほしいという訴えがあるわけであります。しかし、労働省の方のこれに対する予算もない、人もふやせない、こういうことで、巡回相談所の機能も十分に発揮できない。しかし、実情は非常に見るに忍びない状態にあるわけです。そこで、函館の行政監察官はこの問題を取り上げまして、町村の窓口を利用したらいいではないか、こういう結論を出しておるわけです。しかし、これも一利一害がありまして、失業保険をくれるばかりが能ではないので、やはり就職のあっせんという問題を考えますと、これはただ町村の窓口を拝借というわけにはいかないと思うのです。しかし、実情はそうわけで、何十キロも、二日も三日もかかって、宿賃を払って失業保険の二千円、三千円をもらいに行くというこの実情は解決してやらなければならぬ。実はこれは古い話ですけれども、冬に乗りもの代がなくって、失業保険をもらいに行くのに汽車の線路の中を歩いて行って、そうして汽車にはねられた、こういう悲惨な事件もあるわけです。そういうことで、この失業保険の支払いについて、こういう広い地域の不便なところに対してどういうお考えを持っておるか、この点を伺いたい。
  93. 福永健司

    ○福永国務大臣 ただいま函館市の安定所の例を引いてお話があったのでございますが、北海道全体としても、また、さらに、東北、北陸、信越等の一部におきましても、冬季に失業保険金受給者が激増いたしますことは事実でございます。そこで、三十五年度から人員や予算につきましてもある程度の配慮をいたしたのでございますが、これが十分とまでいっているかどうかということにつきましては、私どももなお考慮をそう必要とする次第でございまして、受給者の便宜等も考えまして、通常でございますと、毎週一回行なっております失業の認定回数を二週間に一回にするというようなことで、事務をとる方の者の事務量の半減もはかる一方、特に受給者の立場を考えまして、三十五年度に三十三カ所ばかりこうした特別の措置をとる安定所を作ったのでありますが、昨年度は六十九カ所にこれをふやしまして、今申し上げましたような対処をしているわけでございます。こういうような安定所から非常に遠いところにおります受給者の立場を、今後ともよりそう考えていかなければならないわけでございますので、受給者が公共職業安定所に出頭するために要する時間であるとか、あるいは経費であるとか、こういう事情を考えまして、認定回数を毎週一回から四週間に一回までの間に変更をいたしておりますほか、ただいまお話もございましたように、巡回職業相談所を設けております場合でも、これがやむを得ず遠隔の地に設けられております場合においては、一定の基準によりまして、その巡回職業相談所において失業の認定、保険金の支給事務を取り扱うことにいたしまして、極力受給者の便宜をはかっているわけでございます。ただし、今お話がございましたように、この点につきましては、なおそうの徹底を考慮しなければならないのではないか、こういうように存じております。
  94. 山内広

    ○山内委員 大臣の誠意のある御答弁でありますので、了承いたします。そう一つこの行政の強化に努めていただきたいと思います。  最後に、一つだけお願いをしたいと思いますが、失業者の多発地域というものを閣議で指定をいたしております。これは失業地帯が非常にアンバランスである、そのために、現行の法規以上の救いの手を差し伸べなければ、何らかの緊急対策を講じなければ、そのバランスを破れないということで、いろいろ政府においても苦慮されているので、その点はいいと思うのですが、現在失業多発地域として考えられている点はどういうのか、そしてこの閣議決定を受けた指定地に対しては、どういう特別な措置をしているのか、その現状並びに対策について伺いたいと思います。
  95. 三治重信

    ○三治政府委員 先生のおっしゃる多発地域の閣議決定のことについてより先に、一つ法律に基づく方の状況を御説明申し上げます。  現在、一般に求職者の多い地域につきましては、職業安定法の十九条の二におきまして、安定所単位で広域職業紹介地域の指定という制度をとっております。なお、石炭離職者の急速な発生を見まして炭鉱離職者臨時措置法ができましたおりに、この三条によりまして、石炭労務者を対象とした広域職業紹介の地域指定、その二つ制度が現在ございまして、両方含めまして合計十六県、九十四職業安定所をやっております。これの広域職業紹介の目標といたしましては、石炭離職者につきましては、三十六年度で六千三百人、この三十七年度につきましては一万四千人を目標にして、現在大体各地域にその目標数を割り当てております。安定法による方で、臨時措置法の方を除いた広域職業紹介の対象といたしまして、三十六年度では六千七百名、三十七年度では一万二千名を目標にして、これも各需要地、送出県に対して割当をして、目標数を現在示しておりますが、そのほか、なお従来は、先生のおっしゃいましたいわゆる失業多発地域として、ことに失業対策事業の見地から、特別な地域を指定してやっておりますが、その部面は、われわれの方として、これは企画庁が中心になりまして例年やっておりましたが、現在こういう炭鉱離職者臨時措置法ができ、安定法の十九条の二の改正によりまして、御説明したようなこういう制度ができて、しかも三十七年度では、予算措置といたしましても、失業対策事業従事者に対しても雇用奨励金、支度金制度ができましたので、なお、従来の慣行を本年度以降やるかやらぬかということにつきましては、目下検討中でございまして、われわれの方とすれば、とにかくこういう制度に基づく措置ができて参りましたので、あるいは今年度以降はその措置をやらぬでもいいのではないかという感じを持っておりますが、関係各省ともいま一度相談をして決定していきたいというふうに考えております。
  96. 中島茂喜

    中島委員長 これにて労働省設置法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  97. 中島茂喜

    中島委員長 本案に対し、草野一郎平君外四名より修正案が提出されております。     —————————————
  98. 中島茂喜

    中島委員長 本修正案について、提出者より趣旨説明を求めます。草野一郎平君。
  99. 草野一郎平

    ○草野委員 ただいま議題となっております労働省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、提案者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、施行期日につきまして、原案では「四月一日」となっておりますが、すでにその日は過ぎておりますので、これを「公布の日」に改めることとし、定員に関する改正規定につきましては、四月一日適用とすることを適当と認め、本修正案を提出いたした次第であります。何とぞ御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  100. 中島茂喜

    中島委員長 本修正案について御質疑はありませんか。——質疑もないようでありますので、原案及び修正案を一括して討論に入ります。  別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  労働省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、本案に対する修正案について採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   (賛成者起立)
  101. 中島茂喜

    中島委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除いて、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   (賛成者起立)
  102. 中島茂喜

    中島委員長 起立多数。よって、修正部分を除いて、原案通り可決いたしました。  これにて労働省設置法の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。(拍手)     —————————————
  103. 中島茂喜

    中島委員長 なお、以上の両法案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   (「異議なし」と呼ぶ者あり)
  104. 中島茂喜

    中島委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次会は、明十三日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十六分散会