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猪俣委員 これは大体御了承いただきましたから、あまりくどく
お尋ねいたしませんが、私ども、判事、検事の資格がある者が
法務省なりあるいは
最高裁判所の
事務局にたくさんおることは、けっこうなことだと思うのです。ただ問題は、検察官なり
裁判官なりが非常に数が少ない、そのために事件が遅延していることは、天下の世論です。そこで、一体こういうものをどうするかといういろいうの方法があるわけです。だから、そういう裁判行政、
司法行政に属するものは、判事や検事の多年の経験のある者がよりいいんだけれども、ひとまずそれは前線に出すというふうな考えを持たなければならぬのじゃなかろうか。この裁判の遅延なんということは、私どもが言えば、必ず
裁判官の数が足りないと、
——そしてまた、
裁判官は実際忙しいですよ。私どもはそれはもっともだと思うのです。大へんな事件をかかえてやっていらっしゃる。だから、もっとふやさなければ無理だと思うが、これは定員の問題になりますが、内部操作でできるものは、いち早く内部操作で前線へ送り出すということをやって、しかる後に定員問題に移らぬと、お前の足元は何だということになる。そういう有資格者を置くということはいいことに違いないが、ただそれのみならず、これは日本の長い間の役所のセクショナリズム、繩張り根性というものがあって、やはり
最高裁判所のいろいろな行政
部門も判事閥で固める、あるいは
法務省の行政
部門も検事閥で固める、こういう繩張りが相当あるわけです。
津田さんはそんなこと絶対にないとおっしゃるに違いないから、答弁は要らぬ。答弁は要らぬが、それは事実ある。そう
意味において、判事や検事をいろいろな部署につかせて、有能な書記官、練達堪能な書記官もたくさんいるのですが、これらが異端者になるわけです。なるべくそういう者を責任ある地位につけまいとやるというような点が、批判としてあるのです。ないとおっしゃっても、現実にあるのです。そういうセクショナリズムはある。日本の役所の長い間の伝統なんです。これは牧野元
法務大臣じゃないけれども、まず官僚の最も力の強いのは
法務省と外務省だと、あの牧野良三元
法務大臣が言いましたが、僕もやはりそういうものを打破しなければいかぬと思う。一体
司法制度調査会なんかも、ほんとうはそういう見地からも考えてみなければならぬと思うのです。
そこで、とにかく人権擁護のために、この訴訟が非常に遅延しておることは、あらゆることを考えてこれを促進しなければならぬ。これは
大平さんもお考えおきいただきたいのですが、
一般的の遅延の
調査というものは
裁判所にあると思うのです。それはいずれまた聞く機会があると思いますが、私自身が
関係いたして参りましたものでも、驚くべきものがある。たとえばこれは、
最高裁判所、来ておりますか
——あなたに頭に置いてもらいたいが、
昭和三十一年の(ワ)の二一八号、土地所有権取得登記抹消手続等請求事件、これは訴えを起こしたのは三十一年八月二十九日ですが、現在もう六カ年、まだ準備手続をやっているのです。そうしていよいよこの四月に準備手続の結審をしたいと思っておったら、判事がどこかへかわったと称して、いつまたこれが開かれるかわからない。準備手続ですよ、六年も七年も。一回だって公判を開いていない。そこで非常に困ってしまった。私は自分のことを言うて恐縮ですが、私の子供が自動車にはね飛ばされて即死をいたしました。その会社の態度がけしからぬから、損害賠償の請求訴訟を起こしておりますが、これは三十年に起こしたのがいまだに一審が済まぬのです。ひいた人間は最高裁まで行って判決確定して、服役して出てきているのに、一審の民事訴訟をまだやっている。果てしがない。判事のかわることは、この前の新潟地方
裁判所の事件では、判事が五、六人もかわって、そのたびに半年ぐらい延びてしまう。私の子供の事件も、何人かわったかわけがわからぬ。私は三人の
弁護士を頼んでやっている。
昭和三十年からまだかかっている。刑事事件としては終結しているのにかかわらず、まだこれがいつ果てるかわからない。これでは
裁判所を利用して損害の賠償を取ろうなんということはできません。私の立場においてかような姿です。こんなことで裁判というものが国民の利用するところとなるかならぬのか。それだから暴力団が発生しますよ。おどしてふんだくってくる、その方が近道だということになる。暴力団発生の大半の責任は裁判
制度にありますよ。私の子供の事件は七、八年たっている。(ワ)の三八三〇号の事件として、三十年の五月二十六日に訴訟を起こしているが、まだ一審が片づかぬ。こういうことは、私は自分の身に関することではなはだ恐縮なんですけれでも、それだけ実感が強いから言うのです。単なる統計じゃない。実際体験している。そこで、じゃそのことは判事さんがなまけているからかというと、そうじゃない。気の毒なくらい、
最高裁判所の判事でも、その他の
下級裁判所の判事でもやっていらっしゃる。結局人数が足りない。それから訴訟の方法についてやはり改める必要があると思うのです。だけれども、まず第一に、人間を充足するということが先決なんです。そこで、この
司法制度調査会ができましたことは、私どもはけっこうなことだと思いますが、今申しましたように、判事や検事の資格のある者は、まず部内からなるべく前線へ送り出すということを真剣に考えていただきたい。
それからこの
司法修習生の動向ですが、これはお示しの統計を見ましても、年々
弁護士がふえて、判検事の方が減ってきている。去年のごときは、
判事補が八十四人、検事が四十八人、
弁護士が二百十六人となっている。判事と検事を寄せたより多い。本年もまた
判事補は七十六人、検事が四十一人で、
弁護士が二百二人。
大蔵省あたりから異議が出ることにも多少原因があると思う。そこで、この原因はどこにあるのであるか、もしお気づきの点があったら御
説明いただきたい。