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1962-02-08 第40回国会 衆議院 内閣委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月八日(木曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 中島 茂喜君    理事 伊能繁次郎君 理事 内田 常雄君    理事 草野一郎平君 理事 堀内 一雄君    理事 宮澤 胤勇君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君 理事 山内  広君       内海 安吉君    大森 玉木君       金子 一平君    辻  寛一君       藤原 節夫君    保科善四郎君       緒方 孝男君    田口 誠治君       西村 関一君    受田 新吉君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         防衛政務次官  笹本 一雄君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     佐藤 正二君         外務事務官         (移住局長)  高木 廣一君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房総務         参事官)    安川  壮君         外務事務官         (大臣官房人事         課長)     魚本藤吉郎君         外務事務官         (大臣官房文書         課長)     高瀬 直智君         外務事務官         (移住局企画課         長)      中尾 賢次君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      平井 迪郎君     ————————————— 二月七日  文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第六九号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  在外公館名称及び位置を定める法律の一部を  改正する法律案内閣提出第二〇号)  在外公館に勤務する外務公務員給与に関する  法律の一部を改正する法律案内閣提出第四五  号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五〇号)  行政不服審査法案内閣提出第五八号)  文部省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第六九号)  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第七一号)  国の防衛に関する件      ————◇—————
  2. 中島茂喜

    中島委員長 これより会議を開きます。  まず、行政不服審査法案議題とし、政府より提案理由説明を求めます。行政管理庁長官川島正次郎君。
  3. 川島正次郎

    川島国務大臣 ただいま議題となりました行政不服審査法案について、その提案理由説明申し上げます。  訴願制度は、行政庁の違法なまたは不当な処分に関しまして行政庁不服申し立てをさせ、よって行政庁による簡易迅速な手続により国民権利利益救済をはかりますとともに、行政の適正な運営を確保する意義を有するものであります。  このような趣旨のもとに、現行制度は、一般法たる訴願法とその他の法令とによって運用されておりますが、明治二十二年に制定施行せられましてから一回の改正も行なわれることなく今日に至っております訴願法と、他の法令において個々に定められております不服申立制度との間には、種々不備、不統一の点が少なくない現状であります。  すなわち、まず訴願法につきましては、一、その第一条で、訴願事項として「租税及手数料賦課ニ関スル件」外五件を列挙しておりますが、その内容が不明確でありますため、訴願が認められるかどうか必ずしも明らかでない場合が多いこと、二、同条第七号の他の法律または政令で定める訴願事項が少ないこと、三、裁決庁に関する直接上級庁という規定の仕方が、行政組織の複雑化いたしました今日におきましては必ずしも明瞭であるとは言えないこと、四、執行停止審理等手続規定が不十分であること等の欠陥を有しているのであります。  また、他の法令個々に認められております異議申し立てその他の不服申立制度につきましても、一、申立事項が不統一であること、二、申立期間が極端に短いものが相当にあること、三、申立手続に関する規定がほとんどないこと等の欠陥があるのでありまして、いずれも、国民権利救済のために十分であるとは言いがたいのであります。  このような実情にかんがみまして、政府におきましては、さきに訴願制度調査会を設置し、制度改善について諮問し、審議を求めておりましたところ、一昨年十二月答申を得ましたので、自来その結果に基づきまして、現行訴願制度の全面的な改正につき慎重に検討を加え、新たに行政不服審査法案として不服申立制度整備をはかることとしたのであります。  次に、行政不服審査法案のおもな内容について申し上げます。  第一は、行政庁の違法なまたは不当な処分その他公権力の行使に当たる行為に関しましては、従来の概括的列記主義を改めて一般概括主義をとり入れ、原則として広くこの法律案による不服申し立てを認めることとしたことであります。ただし、国会、議会の議決による処分、裁判による処分のごとく、事柄の性質上、この法律案による不服申し立てを認める必要のないもの、学校、刑務所のような施設における処分のごとく、この法律案による不服申し立てを認めることが適当でないもの、刑事事件に関する処分当事者訴訟として争うべきものとされている処分のごとく、他の救済制度によらしめることが適当であるもの等につきましては、必要な限度において、これを除外することといたしております。  第二は、行政庁の不作為につきましても、新たに不服申し立ての道を開くこととしたことであります。現在、法令に基づく申請に対しまして行政庁の行なう許可、認可等処分は、遺憾ながらすべて必ずしも適正迅速に行なわれているとは言いがたく、特別な理由もないままに当該案件相当期間放置されている事例が間々見受けられるのでありまして、このことは、国民の受ける不利益並びに行政運営の適正という見地から看過することのできない問題となっております。かかる現状にかんがみ、この法律案におきましては、行政庁が、法令に基づく申請に対しまして、相当期間内に何らかの行為をすべきにもかかわらず、これをしない場合に、不服申し立てができることとし、この場合に、行政庁に対し、二十日以内に何らかの処分をすること、不作為の理由を開示すること等を義務づけることとしたのであります。なお、この法律案において、行政庁処分につき一律に一定期間の制限を付しますことは、処分個別性から見て適当ではないと考えられますので、それぞれの法規の適切な運用によって処分促進がはかられるよう配慮して参りたいと存ずるのであります。  第三は、訴願異議の申し立て、不服の申し立て、審査請求等種々の異なる名称が用いられている現状を是正して、審査請求異議申立て及び再審査請求の三種類に統一したことであります。  第四は、このような新しい制度によって国民権利利益救済をはかろうといたしましても、まず、制度があることを知り、また、これを活用できるようにしなければ目的を達することはできませんので、新たに教示制度を採用し、行政庁不服申し立てのできる処分書面でする際には、不服申し立てができる旨並びに不服申し立てをすべき行政庁及び不服申立期間教示すべきものとし、教示をしなかった場合、誤った教示をした場合の手当をも規定したことであります。  第五は、不服申立期間についてでありまして、現行制度は、訴願法においては六十日を原則としておりますが、その他の不服申し立てにおいては三十日とか二週間とかその他極端に短いものがある等区々にわたっておりますので、これらを改め、原則を六十日とし、特殊なものについてのみ例外を認めようとしたことであります。  第六は、審理につきまして書面審理原則といたしますとともに、他面不服申立人処分庁の弁明に対する反論書提出を認め、口頭で意見を述べる機会を与える等審理手続についての現行規定不備を改めることとしたことであります。  なお、これらのほか、執行停止裁決等制度全般にわたりまして、規定整備をはかることといたしました。  以上か、行政不服審査法案提出する理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望する次第でございます。      ————◇—————
  4. 中島茂喜

    中島委員長 次に、厚生省設置法の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を求めます。厚生大臣灘尾弘吉君。
  5. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいま議題となりました厚生省設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  この法律案は、厚生省社会保険及び国民年金関係機構につき改革を行なうことをその主たる内容とするものであります。  現在、厚生省においては、社会保険及び国民年金に関する事務は、その内部部局である保険局及び年金局において所掌されているのでありますが、この二局においては、医療保険及び年金制度に関する企画立案事務、各般の行政監督事務に加えて社会保険及び国民年金現業業務に至るまですべてが処理されているのでありまして、しかもその事務屋相当に膨大であり、なお、逐年増加の傾向にあるのであります。  また、医療保険及び年金制度整備されるに伴い、近年これら各制度給付内容改善及び関係制度総合調整に関する企画事務を推進することがきわめて重要な課題となり、さらには社会保険現業業務につきその能率的かつ適正な処理を確保するよう関係方面の要望が強いのでありまして、現在の機構につき、これに応じ得るようその整備をはかることが必要となって参ったのであります。  このような現状にかんがみ、この法律案では、社会保険事業及び国民年金事業運営、すなわち、現業事務を担当する社会保険庁を厚生省の外局として設置することとし、また、厚生省内部部局たる保険局及び年金局所掌事務に変更を加え、両局には医療保険及び年金制度に関する企画立案並びに健康保険組合等に対する行政監督事務をもっぱら所掌させようとするものでありまして、これにより現業事務をいわゆる企画ないし監督事務から分離して今後、さらに適切な事務の実施を期し、ひいては、わが国医療保険及び年金制度整備と推進をはかりたいと考えるものであります。  以上、社会保険等関係機構改革に関し、その趣旨及び内容を御説明申し上げたのでありますが、このほか、この法律案におきましては、未帰還調査部の廃止及び医療制度調査会設置期間の延長を行なうこと等をその内容としております。  未帰還調査部につきましては、未帰還者調査業務が逐年減少して参りましたことに伴い、援護局機構について合理化をはかろうとするものであり、医療制度調査会につきましては、この調査会調査審議に当たっております問題の複雑性から、その設置期限である本年三月末までには十分な結論を得るに至らない状況にありますので、昭和三十八年三月末までさらに一年間その設置期間を延長することといたしたものであります。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今回政府から提出いたしました文部省設置法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  この法律案は、国立科学博物館及び国立近代美術館所掌事務及び組織整備し、本省に置かれております著作権審議会にかえて新たに著作権制度審議会を設けることとするとともに、文部省職員定員を改めようとするものであります。  第一に、国立科学博物館は、従来、自然科学に関する諸資料公衆の観覧に供する博物館として運営して参りましたが、このたび、自然史関係研究部門を拡充整備することとし、自然史科学研究センターとしての機能をも営ませようとするものであります。なお、これに伴い、従来文部本省で管理し、運営して参りました国立自然教育園国立科学博物館付属機関とすることといたしました。  第二に、国立近代美術館につきましては、従来、同館においては、絵画、彫刻を中心とした近代美術の作品、その他の資料の収集、保管、調査研究並びに一般公衆への供覧事業を行なって参りましたが、さらに一般公衆への供覧事業を推進するため、同館に分館を設け得ることといたしました、  第三に、本省に置かれております著作権審議会の改組について申し述べます。同審議会は、著作権法に基づく著作物使用料審査等特定事項審議する機関でありますが、一方著作権に関しては現在の著作権制度全般にわたり再検討を行なうべき必要に迫られており、関係者の間にもその促進を望む声が高まって参りました。よって著作権審議会にかえて、新たに著作権制度重要事項について調査審議し、あわせて現行著作権法に基づく著作物使用料審査特定事項審議する著作権制度審議会を設けることといたしました。  第四に、文部省職員定員改正につきましては、国立高等専門学校の新設、理工系学生増員等に伴う教職員増員のほか、定員外職員定員化等に伴うものであります。  以上がこの法律案提出いたしました理由及びその内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願いいたします。
  7. 中島茂喜

    中島委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  三案に対する質疑は後日に譲ります。      ————◇—————
  8. 中島茂喜

    中島委員長 次に、国の防衛に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。緒方孝男君。
  9. 緒方孝男

    緒方委員 私は、昨日の新聞で知ったわけですが、二月六日、一昨日の四時十五分または二十五分、時間はそれぞれ違いますが、青森県八戸海上自衛隊航空隊において事故があり、同日また鹿屋航空隊練習機が宮崎県に落下した。同じ日に二つの海上自衛隊所属航空事故が起こった。たどってみれば、昨年の十二月九日にも、鹿屋海上自衛隊所属航空機が、これも落下事故を起こしている。ここ一、二カ月の間に、海上自衛隊所属航空機の中に非常に事故が多いわけです。いろいろな事故原因や条件があろうとは思いますが、同一部隊の中における事故件数がこのように多いということに対して、このまま等閑視しておくわけにはいかない重大な問題であろうと考えられますので、その面についての防衛庁のお考えなり、現在の状態についてお伺いをいたしたいと思いますが、何はおきましても、八戸事故は、一体何が原因になっておるのか、昨年の航空自衛隊事故は、にわかに変化した天候が一番大きな原因となっているといわれますが、今度の場合は天候のかげんなのか、エンジン故障に基づくものなのか、操作をあやまったものなのか、または飛行機そのものから起こった故障の結果なのか。ただいま調査中とも言われておりまするが、現在調査した過程と、その事故の起こった経過について、まず最初に御説明をお願いしたいと思います。
  10. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 一昨六日に、相次いで海上自衛隊所属航空機の大事故が起こりまして、国民皆様方に非常に御心配をおかけいたしますことは、大へん遺憾に存じます。なお、殉職した隊員諸君並びにその遺族の方々に対しましては、心から御同情と弔意を表するものであります。  ただいま御質問の、入戸の海上自衛隊第二航空群に属するP2V−7の事故でございますが、二月六日の午後に、左プロペラの取りかえ操作をやりまして、それの十分な試験飛行をやって、そのあと、大体四時ごろと目されますが、そのころから、今度は本格的ないわゆる慣熟訓練と申しまして、実戦に役立つような飛行訓練をやるわけでございます。それに飛び立ったわけでございます。そうして、大体四時二十五分ごろと目されるのでありますが、八戸東方約八海里くらいのところに墜落をいたしたわけでございます。これは海上自衛隊巡視船乗組員がそれを目撃をいたしております。大体、高度五十メートルくらいのところを飛行中、ゆるく右に傾きつつ、海上墜落したということを目撃をいたしております。直ちに捜査その他に入りましたわけでございますが、現在のところは、負傷者一名、それから三人の遺体を収容いたしまして、あと乗員七名は目下行方不明でありますが、現在の状態におきましては絶望と観ぜられるわけでございます。  事故原因につきましては、そういうことで目下調査中でございまして、的確なことはわかりません。また、目撃をいたしておりました方も、航空機の問題につきましてはしろうとの方でございますし、それから助かりました一名は、整備員でございますが、乗っておりましたところが中央部におりまして、機関関係のことについては全然見ておりませんものでございますので、まだその生存者からも原因の的確なところはつかめておりません。御承知のように、P2V 7というのは、わが国の保有いたしております航空機の中でも、最も安定度の高いものでございまして、三十年に米軍から供与を受けて以来まだ無事故でございます。飛行時間は約四万二千時間を延べ飛んでおるわけでございますが、無事故であったということでございます。従いまして、現在のところは、まだまだ想像の域を出ておりません。目下機体の沈んだ所の確認、さらにそれの引き揚げ等に専念をいたしておりまして、機体が引き揚げられまして、十分の点検をいたしませんと、何が原因かはわかりませんけれども、とにかくその目撃者の談によりますと、右に傾きつつ墜落をいたしたというのでございますので、右の発動機に何らかの故障があったんじゃないかというようなことは想像されます。一方、その機長を勤めておりました余田君というのは、飛行時間一万四千時間も乗っておるベテラン中のベテランでございまして、少なくとも操縦の不完熟から起こした原因とは想像できないのでございます。急遽係官を派遣いたしまして、事故原因の探査に努めておるような次第でございます。
  11. 緒方孝男

    緒方委員 大体の御説明は、まだ新聞の報ずる範囲でしかないようでございますが、この飛行機は、当日の午後二時ごろ基地を出発されたように報道されております。もしそうであるとするならば、その事故の起こった時間までの連絡その他について遺憾はなかったのかどうか、その点を一つ伺いたい。
  12. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど申しましたように、実はこの飛行機は左のプロペラをそのときに取りかえたわけでございます。そして、左のプロペラの取りかえたものを取りつけまして、その取りかえたプロペラが完全かどうかという試験飛行をまずやったわけでございます。それが二時ごろから飛び立って、所定の時間飛んで、そして完全なものだということで、一たん着陸をいたしまして、四時ごろ、今度は実際の訓練に入りまして、また飛び立ったわけでございます。しかも、飛び立ちまして、離着陸訓練もあわせてやっておりましたので、二度ほど基地へ戻りまして、三度目にまた基地から飛び立って、八戸東方約八海里くらいのところへ参りましたときに墜落をしたわけでございます。
  13. 緒方孝男

    緒方委員 これは新聞の報道ですから、私たちはそれ以上にまだなにしたわけではありませんが、これは当日の朝日新聞記事の中に出ておるわけです。「同機はこの日午後二時過ぎ訓練のため八戸飛行場を飛び立ったまま消息を断っていたもので、」こういうふうな記事が載っておるのです。これはどこまでが正確か、それは私はわかりませんが、あなたの今の御説明では、消息不明どころか、三回も基地に帰って、上がったりおりたりしておるということなんですが、それに間違いはないわけですか。
  14. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 事実は、今申し上げましたように、左のプロペラをかえまして、そのプロペラ試験飛行を一度やりまして、帰って参りました。そして、今度あらためて実際の訓練に飛び立ち、しかも、それは飛び立ってまた着陸をし、もちろん洋上訓練もいたしますが、そうしてまた戻り、また飛び立ったということでございまして、二時ごろ飛び立ってそのまま消息を断ったというのではございません。ただ、洋上八海里辺に行ったときの状況八戸基地からは確認をしていないわけでございますが、その間の連絡は十分ついておったわけでございます。
  15. 緒方孝男

    緒方委員 そうすると、最後に全部の委員を乗せて飛び立ってから何分くらい後だったという、大体の状態はわかりますか。
  16. 小幡久男

    小幡政府委員 お答えいたします。  先ほど長官が申し上げましたように、プロペラ換装試験飛行を終わりまして、着陸いたしましたのが十五時三十分でございます。そこで一部乗員を入れかえまして、そうして再び飛び上がりまして、二、三回発着訓練をやりまして、事故が起こりましたのが目撃されたのが十六時二十五分でございます。この間には、数回発着訓練をその周辺でやっておったということであります。
  17. 緒方孝男

    緒方委員 大体、それは私も、どの程度のなにかよくわかりませんが、事故が起きたときの目撃者の話によりますと、水面上五十メートルのところを飛行中であったのが、右へ回ろうとして墜落した。海上五十メートルの上空ということは、常にそういうふうな訓練を行なわれておるのかどうか。
  18. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御承知のように、これは対潜哨戒機でございますので、相当低高度を飛びまして潜水艦を探すわけでございます。従いまして、五十メートル、六十メートルの高度で飛ぶことは常にあるわけでございます。
  19. 緒方孝男

    緒方委員 これは操縦誤りであったか、私は、操縦誤りは万なかろうと思います。というのは、このパイロットは、長官も言われたように、非常に優秀な方であるということですから、操縦誤りでないとするならば、突発的な事故が、こういうふうな解釈しか成り立たない。むしろ、エンジン故障があったにしても、これは双発の飛行機であります。ましてジェットエンジンまで備えつけておるものでありますから、いざというときに、一肺、二肺なくとも基地に帰れないことはないだろうぐらいに、しろうと考えでは考えるものが、こういう事故を起こしたとは、まことにどうも理解に苦しむものがある。そうしてみますと、すでにもう低空になったときから故障であったのであろうかどうであろうかということが、非常に疑問になるわけです。その間の事情はおわかりでないかどうか。
  20. 小幡久男

    小幡政府委員 原因は、ただいま申しましたように、まだはっきりとはつかめませんが、おっしゃるように、P2V17はレシプロ・エンジン二基とジェットエンジンを補助的に二基持っております。事故勃発当時は、五十メートル程度でございますが、この程度になりますと、片肺がとまりますと、もう少し高度がありますれば機首を立て直して十分着陸できたと思いますが、何せ五十メートルと申しますと、機体相当大きうございますし、重いものでございますから、傾斜をしてまた立て直すいとまもないままに、海中に突っ込んだのではないかというふうに専門家は推定しております。
  21. 緒方孝男

    緒方委員 プロペラの取りかえを行なったということですが、これはエンジンの取りかえでなく、単なるプロペラの取りかえだけだったのですか。
  22. 小幡久男

    小幡政府委員 エンジンは、少し前にオーバーホールいたしまして、左側のプロペラの取りかえをやったわけでございます。
  23. 緒方孝男

    緒方委員 それからP2V−7は三十九機ですか、その中に供与品国産品がありますが、この事故を起こしたのはどちらですか。
  24. 小幡久男

    小幡政府委員 国産品でございまして、日本製のノック・ダウンでございます。
  25. 緒方孝男

    緒方委員 これはいつ就航しておりますか。
  26. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 国産の五号機でございまして、三十五年の六月に領収をいたしております。なお、つけ加えて申し上げますが、国産と申しましても、P2Vにつきましては、こちらで組み立てをやるわけでございまして、現在におきましては、向こうから供与をされましたものも、こちらで組み立てをやったいわゆる国産機も、性能においてはいずれも同等でございます。
  27. 緒方孝男

    緒方委員 私は、まだ事故原因がはっきりしないから、この機械がどうだこうだというようなことも言われませんし、技術の点が未熟であったかどうであったか、それも言及することはできませんが、ただ一つ、私たちが防衛庁の方に御検討を願わなければならないことは、日本の飛行機は、事故を起こせば、今まで乗組員全部が死亡しておるわけですね。アメリカの飛行機は、この前鹿屋に落ちましたけれども、着陸寸前に事故を起こして、山にぶつかるという瞬間に、飛び出して逃げておる。無責任な逃げ方だなあとは思いながらも、人命をとうとぶ上から見れば、私は当然の処置ではなかっただろうかと思うのです。昨年の十二月九日に起こった事故も、二人の乗組員が全部死亡した。同じ日に宮崎に落ちたこの乗組員も全部死亡した。また今度も、一人は海上だったから、まあ重体とはいえども、まだ存命しておられるそうでございますが、他はほとんど絶望だと見なければなりません。飛行訓練と申しまして、技術訓練だけに重点が置かれておって、避難訓練というものは全く等閑視されておるという、これは証拠じゃないだろうか、こう私は思うわけです。もちろん、昔の軍隊のように、身を鴻毛の軽きに置いて軍務に精出すということからすれば、これはそういうことも言えるかも存じません。今日の自衛隊において、そういうふうなことはあまり重要視されておらないだろうと思う。してみますならば、この鹿屋飛行場はまだ技術訓練だけの学校の生徒さんですから、飛行機操縦をする前に、故障の場合にはすぐいつでも飛び出せるような訓練を先にしておいて、飛行機のかじに当たらせるという訓練の方から私はやるべき性質のものだと考えますが、防衛庁のお考えのほどを一つお伺いしておきたい。
  28. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 パイロットの人命尊重の問題について、非常に御同情のある御質問をいただきまして恐縮なんでございますが、私どもも、人命を尊重しなければならぬことはもちろんでございまして、そういう意味では、脱出の訓練その他はいろいろとやっております。最近起こりました十二月の姶良町の事故、あるいは今回の両事故等が、とうとい人命を失っているのは非常に遺憾でございます。御承知のように、戦闘機でございますと、ボタン一つで飛び出せるようになっているわけでございますが、それにして毛、相当の高度がございませんと、たとえば五十メートルというようなところでは、ああいうベイル・アウトもできないわけでございます。このP2V17につきましても、考えられる緊急脱出の装置は十分についておるわけでございます。従いまして、たとえば今回の事故が、水平に着水したというようなことでございますならば、ある程度の脱出の時間がございますので、相当数が助かったのではないと思うのでございますが、先ほどから申し上げましたように、急に右に傾斜して落ちたというようなことで、おそらく海面に当たったときには、胴体のどの部分かは割れているのではないかという感じもいたすくらいでございまして、そういうショック等でこういう遺憾なことになったわけでございます。従いまして、たとえば自衛隊の戦闘機につきましても、そういう脱出の装置は十分にいたしておりますので、ある種の高度なり時間というものがあるときには脱出できるようになっておりますし、また、脱出した例もございますので、今回こういうことになりましたことは、非常に残念でございますが、今後もそういう人命尊重の意味からいたしまして、緊急脱出の訓練あるいはその装置については、十分に留意をして参りたいと考えております。
  29. 緒方孝男

    緒方委員 機械に直接当たっていたパイロットが、すでに物言わざる状態でありますから、ここで瞬間的な突発事故であったといえばそれで済まされるかも存じませんが、私たちのしろうとの考えですけれども、五十メートルの水上を飛んでおるときには、すでに調子が悪いなあと思う予感がなかったのかどうかということが、われわれには感じられる。また、これがどのくらい本人に感じられたかどうかわかりませんけれども、往々にして、日本の軍隊は、これくらいのことは何とか切り抜け得るという、最後の最後まで踏みとどまるというふうな気持が、平素の訓練において、脱出とか避難とかいうことをちゅうちょさせたり、またはしてはならないものだというふうに慣習づけられたものがありはしないかということを、私は懸念しておるわけなんです。今度の場合、五十メートル上空だから、飛び出すにも飛び出せなかったと言えばそれまでですが、そのほかの練習機にいたしましても、練習機に優秀機はないはずですから、常に故障のありがちなものだと見なければならない。そういうものは、調子の悪いときにはいつでも飛び出せというくらいな心がけを、やはり持たせておくべき必要があるのではなかろうかと考えるわけですが、その間の教育に、私はふに落ちない問題がありはしないかと思うのであります。その点について遺憾はないのかどうか、お伺いいたしておきたいと思う。
  30. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 自衛隊の、特に航空関係の者に対しましての訓練でございますが、どこまでも人命尊重と申しますか、自分らの技術というものは非常に高く、尊いものであるから、自分の技術を生かしてということは、自分の安全を十分に考えるということでございます。そういう教育はいたしておりますので、ただいま御指摘のように、何とか最後の瞬間までがんばるのだというようなことではなくて、十分その辺のところを、航空機故障その他を考えながら、自分の安全もはかるような訓練はいたしておるわけでございます。何分にも、とっさの判断にまかされるわけでございます。たまたまこういうことになりましたことは、ほんとうに、殉職隊員はもちろん、家族の方々に対しましても、申しわけないのでございますが、今後も十分その辺の御指摘の点は留意をして、訓練に努めて参りたいと考えております。
  31. 緒方孝男

    緒方委員 まだ調査中ということですから、これはなにしませんが、実は、藤枝長官より前の西村長官のときも、千歳——三沢のあの事故のときも、早急に真相を調査して御報告をいたしますと言ったまま、いまだに何の御報告にも接しておらない。われわれに聞かしてみたからといって、何も機械の故障を直し切れるわけじゃございませんけれども、事故国民全体の憂いなら、それを少しでも防止する方向にお互いに努力していかなければならぬ。調査をしたらなば、調査の結果こうでありましたとかというくらいな御報告なり御説明があっても私はしかるべきじゃなかろうかと思います。今度の場合でも、御調査をしていただいたならば、後刻、こういう点に不備があったとか、こういうところにまだ改良の余地があるんだとか、何らかの御献策を一つ付随してお教え願って、われわれにも多少の安心を与えるようにしてもらいたい。  重ねて申しますけれども、私は、殉職された方々に対しては心からの哀悼の意を表しますが、これらの遺族に対しましても十分なる御配慮をしていただき、今後こういう事故の絶滅をはかるように——昔のようにお一人のために国民全部の生命をささげる軍隊ではございません。みんなが平和で生きられるために持つ軍隊です。そういう意味からしましても、一人の生命といえども尊重されるように、こういう方向にやはり進めていただきたいと思います。
  32. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 事故原因がわかり、また、それに対する対策等が立ちました場合には、この委員会を通じましてはっきりと申し上げたいと存じます。また、殉職されました隊員諸君並びに遺家族に対しましては、許される範囲において十分な弔慰の方法を講じたいと考えております。重ねて申し上げますが、私どもも、隊員一人々々の生命が非常に貴重であるという観念に立ちまして、今後の訓練その他についても十分な留意をいたして参りたいと考えております。
  33. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 田口誠治君。
  34. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 緒方委員の質問に関連をして、若干お聞きをいたしたいと思いますが、何分にもしろうとでございますので、愚問的な面もあろうと思いますが、その点は御容赦をいただいて、御回答願いたいと思います。  今の質疑応答を聞いておりまして、今後に処する問題として頭に浮かびましたことは、地上五十メートルの飛行の場合には、脱出作業というものがまず困難だというような工合に受け取ったのですが、そういうものですか。
  35. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 地上五十メートルでありましても、そのときの状況によりましては、水平に着水して、ある種の時間の間に脱出も可能であろうかと思います。ただ、今回の事故につきましては、目撃者の談によりますると、右にゆるく傾きつつそのまま落ちてしまったということでございまして、その着水と申しますか、墜落した場合に相当な衝撃を受けますので、あるいはもうそのときに衝撃による失神状態等も起こっているんじゃないかということが想像されるわけであります。その辺は、そのときの飛行機の位置、姿勢その他、状況によるのではないかと存じます。
  36. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 左のプロペラを取りかえたということ、そして事故寸前に右旋回をしたということでありますと、それは、取りかえた方のエンジンは別状なくして、右の方の、プロペラを取りかえない方のエンジン故障があった、技術的に専門的な面から言って、そういうようになるのですか。
  37. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私もしろうとでよくわかりませんが、ただ、右に傾きつつ落ちたというその状況から判断いたしますと、取りかえた方の左のプロペラあるいは左のエンジン故障ではなくて、右のエンジンに何かあったのじゃないかということが想像されるという程度でございます。はたしてその右のエンジン故障であるかどうかということも、なお調査をいたさないとわからないというところでございます。
  38. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 左のプロペラを片方だけ取りかえたという理由、そういうような点についてはまだ調査してありませんか。
  39. 小幡久男

    小幡政府委員 大体、エンジンとかそういったものは、オーバーホールとか点検を要する時間がきまっておりまして、何千時間とか、そういうことによってオーバーホールされるわけでございますが、プロペラにつきましては、目に見えた故障があって取りかえるというふうに了解しております。これらにつきましては、特に何千時間でプロペラを取りかえなければいかぬというような規則になっておりませんが、エンジンについてはそういう規定がございます。
  40. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 大体、こういう飛行機のオーバーホールの場合、どの程度の指導がなされており、そして実務がなされておるか、こういう点について御説明してもらいたいと思います。
  41. 小幡久男

    小幡政府委員 オーバーホールの規則は、エンジンの種別ごとに時間がきまっておりまして、そのきめ方は、相当安全度を見てきつくきめてあります。実例を申しますと、P2V−7は、レシプロ・エンジンにつきまして一千二百時間、これは実際の減耗よりは相当安全度を見て渋く見積もっております。このようにしまして、各エンジンごとにきわめて厳重にレギュレーションがきまっておりまして、それ以前に絶えず整備関係でチェックしてオーバーホールをするというようにしております。
  42. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 P2V−7という対潜哨戒機は、三十年以来無事故になっておるので、好評を博しておったわけなんです。今度初めて事故が起きたわけです。そこで、考えられますことは、国産であるためになったのかどうかということをしろうとは考えるわけなんです。ところが、今の御説明からいいますと、国産ではあるけれども、これは組み立てだけをするのであって、エンジンその他の部品については全部舶来品である、こういうような御回答なんですが、一体、日本で組み立てる場合に、私が聞いておりますのは、相当の金額のように聞いておりまして、それは日本で組み立てるだけの金額ではちょっと多いように聞いておるのですが、部品というのは全部舶来品なんですか。
  43. 海原治

    ○海原政府委員 P2V−7につきましては、一応国産計画ということになっておりますが、これは価格換算で申しますと、約四〇%程度のものが日本で生産されるということでやったわけでございます。その一々の細部につきましては、現在手元に資料がございませんので、詳細は私申し上げられませんが、約四割程度のものは日本の会社で作って、これによって装備しておるということでございます。
  44. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 一応そういうように僕らも聞いておるわけなんですが、先ほどの答弁とちょっと食い違いがありましたので、確認をしたわけなのです。  そこで、エンジンは向こうさんのものだということなんです。それで、おそらく今度の事故エンジン事故だと思うのですが、エンジンをこちらで受け取ったときには完全なものとしてそれは取りつけられるものか、もう一回これは十分な調べをいたしまして、オーバーホールまでしなくても、完全なものであるということを確認してつけられるのか、その点、どういうような作業の仕方をしておられるのですか。
  45. 海原治

    ○海原政府委員 エンジン飛行機から取りはずしましてオーバーホールいたしましたあとにおきましては、それぞれの会社におきまして再組み立てが終わりましたあと、これは規定がございますが、五十時間とか六十時間とかテストを数回繰り返しまして、絶対にこれで大丈夫だという確信がつきましてから換装いたしております。これにつきましては詳細な基準がございますので、まず間違いないと関係者が確信を持つ段階までオーバーホールいたしましたものを、従来とも装備しておるというのが現状でございます。
  46. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それで、この四〇%は日本で作ったもので組み立てをするということなんですが、大体あの飛行機は川崎航空で組み立てたものだ。それで、私近くでございまするので、若干そういう面について知識を得てきておるわけなんですが、今の事故内容からいきまして、国産ででかしたものを組み立てた、そのために事故が起こったのではないように考えられるわけなんです。これは舶来品の方の部分に事故が起きたように考えられるわけなんですが、大まかに考えられて、そういうような考えられ方がするのじゃないですか。
  47. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど来教育局長から御説明しております通り、事故原因というものは、なかなか究明が困難でございますので、現在専門の関係者が現地に参っております。飛行機が海中に墜落いたしました場合には、実際問題としまして、目撃者の方の証言だけでは、どこに事故原因があるかということは、きわめて究明が困難でございます。先生もよく御存じと思いますが、かつてイギリスのBOACのコメットが相次いで墜落しました事故がございます。これも、海中から飛行機の一切の部分を全部引っぱり出しまして、これをイギリスの工場において全くもとの形に復元いたしまして、いろいろと調べた結果、当時においては考えられなかった機体の疲労による事故であったということが、たしか三年後に判明いたしております。このように、墜落当時におきましては、コメットが機体の疲労によって墜落することはまず考えられなかった。あるいはそれはサボタージュじゃないかというようなことが一部で言われておったわけでありますが、ああいう優秀な飛行機でも、何千時間か飛びますと、機体に自然に疲労が出て参ります。その一部の疲労から墜落したということが、今申しましたように、全部の部品を再復元いたしまして徹底的に調査した結果わかったというのが、一般に知られておるところでございます。そのように、事故原因の究明というものは非常に困難で、かつ、長時間を要するものでございますので、この際、どこに原因があったというようなことを予断いたしますことは、差し控えさせていただきたい、このように存じます。
  48. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そういうような答弁で一応今日のところは了解いたしますが、聞くところによりますと、この対艦哨戒機の場合は、低空の場合に脱出作業の訓練というものが非常におろそかにされておるということを聞いておるのですが、これは教育局長さんどういうものですか。
  49. 小幡久男

    小幡政府委員 先ほども原則的に長官から申し上げました通り、人命につきましては、新しい自衛隊になりましてから非常に注意いたしまして、特に人命につきましては、脱出訓練等もやっております。また、そのために、脱出訓練をやるかたわら、応急の救難ヘリコプター隊等も設けまして、先ほど来非常に御心配のありました、事故が起こって飛行機を捨てた場合には、すぐに助けるという体制は十分に整えましてやっておりますが、この低空飛行の場合につきましても、先ほど長官が申しました通り、条件によって、非常に悪い条件で突っ込んだ場合はいたし方ないと思いますが、それ以外の多くの場合は、大体、まず着水をする、そうして沈むまでに若干の時間があるという前提におきます訓練というものは、それに増して着水訓練等を平時やっております。従いまして、今度の場合は、いろいろ悪い原因が重なりまして、非常に急に突っ込んで、爆発を起こして二つに割れたのではないかというふうに考えておりまして、おそらく、そういった平生の訓練ではしておりましても、間に合わないような状況下において海没したのではないかというふうに、遺憾に思っておる次第であります。
  50. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 防衛局長から答弁の補足をしたいそうです。海原防衛局長
  51. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど、国産化率に関連いたしまして、長官がお答えになりましたことと私のお答えしたところと違っているような印象をお持ちになったと感じたわけでありますが、私は、実は第二次計画全般のことを申し上げておりましたので、その具体的な墜落のP2V−7は、これは先ほど長官がお答えいたしましたようにノック。ダウン機でございますから、全部アメリカで作ったものを、もう一ぺんばらしまして持ってきて、再組み立てしたものでございます。従いまして、その部品が国産品か米国製かということになりますと、全部米国製ということは、これは正しいことでございまして、私が先生の御質問の趣旨を間違えまして、間違った答弁をいたしましたので、つつしんで訂正いたします。
  52. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そうなりますと、一機に対する組み立て料ですか、そういう面から考えてみますると、ちょっと高過ぎるような気がするのですが、やはり国産品がどれだけか入っていると思っているのですが、今の防衛局長の御答弁のように、全然国産品は組み立ての中には入っておらないということなんですか。これは確認しておいてよろしいですか。
  53. 海原治

    ○海原政府委員 直接私の所掌でございませんので、細部の点までは、まことに申しわけございませんけれども、存じておりませんが、国産ノック・ダウン機につきましても、アメリカ政府から材料が支給されますものと、会社が購入するものとがございます。その経費計算から言って、先ほど申しました率が出てくるものと私は承知いたしておりますので、完全に日本で作ったものがその飛行機に取りつけられるかどうかということにつきましては、実は詳細存じておりません。四〇%という国産率は、最終段階に至りましたときの一応の平均を従来私ども計画上の数字としては考えておりました。このノック・ダウン第五号機でございますか、それの中にどの程度の国産部品が入っておったかということにつきましては、後刻調査の上お答えさしていただきたい、このように存じております。
  54. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 現在、ものにもよりますけれども、国産品相当優秀なものができておりますので、国産品であるがために事故が起きる、どうこうということは、私も考えておりません。ただ、考えられることは、舶来品であるために完全なものであるというので、それに対するオーバーホールなりその他警戒が不十分というようなことが、やはり人間の考え方の上に立ってあり得ると思いまするけれども、そういう点につきましては、今度の事故を十分に調査をしていただいた上で、十分遺憾なき善処をお願いしたいと思います。  そこで、先ほど教育局長さんの方から、脱出作業の点について、今度の場合は事故原因関係から脱出作業ができなかったのだというようにお話しになり、ふだんにおいてはこういう教育が十分なされておるという御回答であるわけですが、そうであればけっこうだと思うけれども、私の聞いておりまする範囲内では、低空の場合、特にこの対潜哨戒機なんかの場合は、脱出作業の訓練が不十分であるというように聞いておるのですが、念のため、もう一度御答弁願いたいと思います。これは、私の方からも調査を出しておりますので、答弁の内容と食い違いがありますれば、また別の機会にお聞きすることがあるかと思いますが、もう一度確認しておきたい。
  55. 小幡久男

    小幡政府委員 先ほど申しましたように、低空の場合起きる事故の警戒といたしましては、大体、低空の場合は飛行機の速度も弱まっておりますので、通常の場合ですと何らかの衝撃はありましても着水をして沈むまでには若干の時間があるという前提の訓練はやっております。今度のような、とっさに片方から海中に突っ込んで二つに折れるというような場合に対処する訓練というものは、ちょっと想定して平時にはやりにくい性質のものと思っております。私が申しましたのは、そういった一番あり得るケースとしまして、低空で、ショックはあるにしても、着水して何秒かのエスケープの時間がある、その時間をつかまえて脱出する訓練は平生やっておるということを申し上げだのであります。
  56. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 いずれにしましても、今調査中でございますので、とことんまで私どもが納得のいく御回答を得ることはむずかしいと思いますから、終わらしていただきまするが、ただ、ここで要望申し上げたいことは、人命に関する作業訓練の面については万遺憾ないようにしていただきたいということ、それから、今のオーバーホールの時間はもう十分とってあるが、時間的に限定されておるというこのことは、これは、十分にとってあるということになればいいようにも考えられまするけれども、その機その機、またその個所その個所において時間に制限があるということは、考え方によっては非常に危険な要素を持っておると思いますので、こういう点についても今後御考慮をお願いしたいと思います。  これをもって質問を終わらしていただきます。
  57. 緒方孝男

    緒方委員 関連して……。  今の説明で、海上自衛隊飛行機の避難は、波の上に飛行機が着くから、着いて沈むまでに多少の時間があろうという規定で、避難の訓練が行なわれておる、今度の場合は浮いておるひまがなかったから沈んでしまったのだ、こういう説明ですね。そういうことも考えられますが、落下傘で落下するという訓練は全くしてないわけですか。
  58. 小幡久男

    小幡政府委員 これはもう全部落下傘をつけておりまして、上空ですと、もちろん落下傘で飛び下りるということになります。ただいまの御質問は、低空ではどうかということでございましたが、低空ですと、着水、海没の中間を縫ってエスケープするという訓練になろうと思います。
  59. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 石山権作君。
  60. 石山權作

    ○石山委員 国会が開かれると奇妙に航空事故が起きるというのは、何か変な感じがいたします。私ども、ときどき視察に参るときに、防衛庁に御便宜をはかっていただいて飛行機に乗せてもらうわけですが、その際、長官機よりも、今度事故を起こしたP2Vの方がずっと安全だ、こういうふうに言われていたわけです。何か落下傘のひもを引っぱれば簡単に開くとか、これをやれば酸素が出るとか、このひもを引っぱれば海に色が着いてということで、まあまあ死ななくても済むようである。しかも、陸軍の場合はそうでもないが、海軍の場合は、割合に複雑なものを着せるわけですね。なかなか厳重でいいことだと思っておりましたが、今度こういうふうな事故を見ると、航空機の安全性ということを今さら考えさせられるわけです。私は、訓練あるいは飛行回数あるいは航続時間、こういうものによって起きる事故というものは防げない場合があると思います。これは比較論になるだろうと思うのですが、私の手元に、昭和三十年から三十六年までの航空自衛隊海上自衛隊、陸上自衛隊の事故数と死亡数の表を持っているわけです。これは皆さんの方から提出されたものだと思いますが、大事故というのは、どこで区分して大事故というか、おそらく墜落等を指しているだろうと思いますが、これが航空自衛隊の場合は百四十四件、死亡者が七十四名、海上自衛隊の場合は十五件で死亡者が二十名、陸上自衛隊の場合は二十八件で死亡者が十三名、これの合計が、百八十七件で、死亡された方が百七人というふうに出ております。これは皆さんの方ではやむを得ない事故だったというふうに判定しているだろうと思います。しかし、これを、たとえばアメリカの軍事基地等で訓練されている飛行時間あるいはその機数、こういうものと対応して、こういうのはやむを得ないという比較論が出るわけですか。
  61. 小幡久男

    小幡政府委員 ただいま石山委員の御質問は、外国と比較してやむを得ない程度の率であろうかという御質問であろうかと思いますが、これは機種別にいろいろ検討して参って国際比較をしております。大体、国際比較をします場合には、十万時間に何件落ちたかというふうな比較で、同じベースでやるわけであります。今までのたとえばF86Fを例にとりますと、米軍が初期にたどった事故の率の多い時代というのは、やはり日本にもございました。だんだん平生の状態に近づきつつあるという状況でありまして、著しく国際比較とかけ離れておるという数字は出ておりません。
  62. 石山權作

    ○石山委員 これは機密事項になっているとすれば、比較をするわけにはいかぬのですが、今アメリカの日本内地における航空勢力と日本の航空勢力、こういうものの比較はどんなあんばいになっておりますか。大ざっぱでいいですよ。機数が何千機とまで言わぬでもいいから……。
  63. 小幡久男

    小幡政府委員 ちょっと詳しい数字は控えさしていただきますが、大体日本の方が二、三割方多いと思います。まだ日本が初期でございますので、米軍の経過した年次をたどっていきますれば、おそらくそれより早くセットルすると思います。
  64. 石山權作

    ○石山委員 私は、また、あまりアメリカ軍や基地でいろいろ問題を起こしているので、三カ所ばかり天ケ森、水戸、芦屋、こういうふうな練習基地の表をもらって見ているわけです。水戸の場合は二十七年からの表がありますが、天ケ森あるいは芦屋の場合には三十年ぐらいからしか資料が出ておりませんけれども、墜落事故件数は七十二です。そうしますと、この比較対照数をちょっと見ると、日本の場合は多いという印象を受けざるを得ない。それから、この多いということと、私先ごろ岩国を視察さしていただいて、アメリカの訓練を見ておりますが、いかにもものすごい訓練をしております。これは、もちろん、戦場の感じ、第一線に立っているというような考え方で猛訓練をやっていると思うのですが、この猛訓練をやっていながらも、この三つの地区だけを見ても七十二件の墜落件数であって、日本の航空勢力の場合の比較を見ると、日本の事故数がどうも多い。訓練の仕方は非常に激烈をきわめているのではないか。その存在価値を主張するあまりに、国会開会中墜落事故があったのではないか。私は、無理な訓練がこの中に行なわれているというふうな印象を受けざるを得ないのですが、その点はどうなんですか。
  65. 小幡久男

    小幡政府委員 事故率が若干多い目でございますのは、先ほど申しましたように、飛行機が手のうちに入ります間に若干時間がかかるわけであります。米軍の方は、86Fにしましても、相当の経験を積みましてやっているわけでありますが、日本の方は、白紙から出発いたしましたので、手のうちに入りますまでの間は若干多い期間があったかと思いますが、最近では、セットルいたしまして、ほぼ同等になっていると思います。ことに、P2につきましては、この間一機ございましたが、国際比較ではむしろ少ない事故率でございます。
  66. 石山權作

    ○石山委員 表では、主十四年二十二件、あるいは三十五年十九件、三十六年の十一件というふうに減っている傾向は認められます。しかし、初春早々、こういうふうに国会開会中に二件も北と南で相応じて事故を起こすようでは、先が思いやられるわけです。  それから、極東の情勢とかいろいろ言われているのですが、今年中にはベルリン問題がおおむね片をつけられて、問題はアジアに移行するだろうというような軍事評論家、外交評論家等がおるために、極東の防衛、日本の平和を守らなきゃならぬ、今度はおれたちの番だ、こういうようなことで、おそらく皆さんの中では、何となくもやもやした雰囲気の中で訓練が続行されるという懸念が多分にあると思います。私の言いたいことは、件数は世界の国と比べて少ないというふうな論拠は、まだ私は承認できないような気がします。この減ってきた傾向をばこの際持続していきたい。そして、われわれの受けた印象からすれば、アメリカの岩国の猛烈な訓練でさえも、日本の事故と比べると、これは比較が詳細にできないから仮定だけれども、少ないとすれば、日本の訓練というものは、準戦時体制というよりも、準という言葉を除いたくらいの、あまりにも張り詰めた格好で訓練が行なわれているような不安感があります。墜落した場合のことは、イギリスのコメット等を見ても、なかなか問題の所在というものがはっきりしないように思われます。しかし、過去の、たとえば昭和三十一年は、これは非常に多い。五十三件、二十九名の死亡者を出しております。こういうふうなところを執拗に調べれば、いわゆる欠点、そういうものの所在がかなり明確化されるだろうと思うので、せっかく事故件数あるいは死亡率が下がった場合に、いろいろ極東の問題が錯綜する、日韓問題等がいろいろあるようでございますけれども、この際、十分気をつけていただいて、そうして、一番安全感のある対潜航空機がああいう状態になるとすれば、もう一ぺん過去の事故をば再検討していただいて、機種なりあるいは操作訓練の日程なりをこの際慎重にやり直してみる、——計画されたことをすくやめろなんていうことは申しませんけれども、もう一ぺん白紙に返して、事故を防ぐ意味において再検討してみる必要が、この際あるのではないかと考えております。国会開会中、それらの件について、事故原因とあわせて報告を受けるような態勢になっていただきたい、こういうふうに長官に要望します。
  67. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 御指摘のように、三十一年、三十二年と、非常に事故が多うございまして、これに対する対策を根本的に立てまして、その後、御承知のように、漸次減少の一途をたどっておるわけでございます。しかしながら、もちろん、ただいま御指摘のように、さらにわれわれとしても検討しなければならぬこともございます。従いまして、そういう面も含めまして、十分事故原因等の究明並びにそれに対する対策を立てて参りたいと思っております。ただ、石山さんの御比較、これは航空時間と比べなければいけないのでございますが、在日米軍のパイロットたちは、相当ベテランがこちらへ来ておるわけでございます。日本の方はまだ学生時代からのほんとうの初歩から乗っていくのですから、在日米軍事故率と日本全体の事故率を御比較になって多いじゃないかとおっしゃるのは、少しあれなのでございまして、米国全体の事故率と日本の全体の事故率というものを比較いたしますと、そう日本が多くない。むしろ同じくらい。ことに、P2Vなんかにつきましては、アメリカでは十万時間に四機ないし五機というようなことでございます。それが四万二千時間飛びまして初めてということでございます。しかし、それはそれといたしまして、ただいま申しましたように、事故原因の究明並びにそれに対する対策につきましては、さらに検討をいたし、また、御報告いたすべきものは御報告いたしたいと考えております。
  68. 石山權作

    ○石山委員 長官のお答えで一つ気にかかるのは、ベテランと練習生を比較してはいかぬということを言っておりますけれども、ベテランだから無事故で、練習生だから事故を起こしてもいいということは言えないと思う。そういう結果が招来される可能性はあるけれども、それを最初から是認したような形で、うちの方は上成績だ、七十何名くらい死んだってやむを得ないというふうな印象づけを私に与えるとすれば、私が一生懸命に言っておることはむだになりますよ。そういうことではいかぬと思います。可能性はあるけれども、そういうことのないように、練習生を大事にしなければならぬ。しかも、パイロットになる人は、みなどこから見ても日本国民の若人としてはピカ一の人たちでしょう。そういう人たちが、練習生だから事故の可能性があってもやむを得ないというのでは、ちょっと私はうなずけない。そういうふうにおっしゃらないで、もう一ぺん……。
  69. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先ほど、在日米軍事故についてのお話で、それを御比較になったので、必ずしもそれだけではいけないので、米軍全体の事故率との御比較をいただきたいということを申し上げただけのことでございまして、練習生だから事故があってもいいなどとは毛頭思っておりません。人命の尊重については、石山さんにも負けないだけの熱意を持っておりますることを申し上げておきたいと思います。      ————◇—————
  70. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 外務省設置法の一部を改正する法律案在外公館名称及び位置を定める法律の一部を改正する法律案及び在外公館に勤務する外務公務員給与に関する法律の一部を改正する法律案の三案を一括議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。西村関一君。
  71. 西村関一

    ○西村(関)委員 前の本委員会におきまして質問をいたしましたが、時間がありませんでしたので、若干質問が残っておりますから、続いて外務大臣にお尋ねをいたしたいと存じます。  第一は、この前からの継続の質問でありまして、ドミニカ国への移民の問題であります。移住局長がお見えになっておられますようですが、この前の外務当局の御答弁では十分に満足をすることができなかったのであります。ドミニカ移民が非常に悲惨な状態となりまして、逐次国援法の適用を受けまして、第一次から第四次まで日本に引き揚げて参った。この原因の究明につきましては、本委員会のただいま問題になっておりまする議案とは少し問題が離れて参るようでありますけれども、いずれ外務委員会等におきまして、移住政策の根本問題について掘り下げてお伺いをいたしたいと思いますが、私の前回から伺っておりますのは、在外公館に勤務する外務公務員の心がまえに関連をいたしましてお尋ねをいたしたのであります。特に移住民に対する取り扱いにつきましては、今までの日本における生活を切りかえて、一切の資産を処理して、多大の犠牲を払って、日本の国策のために、また、大きくは世界平和のために捨て石になろう、こういう考えのもとに、勇躍新天地に移住して参りました移住民の諸君に対しましては、どこまでも懇切丁寧に指導をしなければならないことは申すまでもないと思う。また、さらに、移住をいたしまするまでの事前の調査等につきましても、十全を期さなければならないことは申すまでもないのであります。  ドミニカの場合におきましては、ドミニカ国の政変、また、中南米諸国の国際情勢の変化等、予期しない事態が起こりましたので、大量の引き揚げという不幸な事態を引き起こした、それがおもな原因であるというふうに考えられておるようでありますが、もちろん、それは否定することができません。しかし、もう一つの見のがすことのできない大きな原因は、何と申しましても、調査の不十分にあったと思うのであります。いわゆる公募されまするときの条件と、実際入植をしたときの実態とが一致していない。これは一致しているという移住局長の答弁でありましたけれども、今事実を一々あげてお尋ねすることはいたしませんが、これは公平に考えて、どうもそこに問題があった、調査の不十分からくる失望感を移住民の諸君に与えたということは、これは何と言われてもおおうことができない事実であると思うのであります。それらの点につきまして、外務当局としては、現地の大使を初め各関係公務員が、これらに対して十分な措置をとった、まず調査等について十全を期したいというふうにお考えになるかどうか。特に調査の問題につきましては、農林省との関係がございまして、農業移民の適地か不適地かということについては、農林省が調査をし、また同時に、外務省の方で世話をしておるところの海協連の支部が調査をする、これらのものが一致いたしまして、いよいよ入植可能であるという結論を出して公募に出る、こういうことでありますが、どうもドミニカの場合は、農林省の調査も、また海協連の支部の調査も、十全でなかったというふうに私は考えるのであります。そういう点に対しまして、いずれにいたしましても、移住の責任者であるところの外務省として、まず、この調査の点に対してどのように外務大臣は考えておられるか、その点を伺いたいと思います。
  72. 中尾賢次

    ○中尾説明員 私、移住局企画課長でございます。移住局長がほかの委員会に出ましたので、かわりましてお答え申し上げます。  この前の委員会で、先生の御質問に対しまして移住局長から答弁があったかと思いますが、当時の情勢といたしましては、今調査の報告書を見ましても、やはり相当に詳しく調査をしておると思うのでございます。今後、一般的な問題といたしまして、事前の調査を十分にやらなければならないということは、全く御説の通りでございますが、その移住地の状況というものが、土地条件だけでなくて、水利の問題であるとか、その他の経済条件とからみまして、だいぶ変化をしてきたわけでございます。その変化の原因が、客観情勢の変化に連なるものでございまして、十分な調査を欠いたのではないかという印象をお持ちになるかもしれませんが、実情は、よく調べましたところ、非常に複雑な要素がからみ合っているわけでございます。  それから、現地の在外公館の者が移住者に対して十分に世話をすべきであるという点も、全くその通りでございまして、人員、予算の関係はございまするけれども、移住者の声を何回か、そのつど相当に詳しくドミニカ国の政府には伝えておりまして、これに対してドミニカ国の政府も、そのつど措置をとってくれておるわけでございます。これまたドミニカの財政状態、経済状態によりまして、必ずしも十分でなかったかもしれませんが、そういう措置は全くとらなかったということではなくて、相当にとっておることは、そのつどの本省に対しまする報告書に出ております。
  73. 西村関一

    ○西村(関)委員 それならば、調査内容につきましては、膨大なものでしょうから今ここで伺うことはできないので、別の機会にお伺いしたいと思いますが、何年何月にだれがどういう調査をやったか、どういう報告がきているかということをお聞かせ願います。
  74. 中尾賢次

    ○中尾説明員 調査は、現地の大使以下の公館の職員、海協連の支部の職員、並びに東京から参りました外務省及び農林省の係官、これが数回にわたって行っております。そして、その報告書が出ておりますので、個々の地区につきまして幾つかございますので、後刻資料として差し上げたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  75. 西村関一

    ○西村(関)委員 あとで資料として出すことはけっこうですが、私が今聞いているのは、あなたが担当の課長ですから、今言われたように、出先の大使館の職員が行ったとか、外務省や農林省の者が行ったとかいうのではなくて、具体的に何々技官が何年何月にどこへ行ったということを私は伺っているのです。
  76. 中尾賢次

    ○中尾説明員 移住開始に先立ちまして、昭和三十年の八月から約一カ月間、外務、農林両省の関係官が行っております。移住局の吉岡第二課長と近藤技官であります。そのときにはダハボン、コンスタンサ、ラス・ラグナス、ハドレ・ラス・カーサ等の予定地を見たわけでございまして、その後、ダハボンとコンスタンサは入植地とされたわけでございます。その他の地区は不適格地という結論であったわけでございます。それから昭和三十二年九月に、農林省の中田技官が海協連の横田現地支部長とともに、ハラバコア、ネイバ、ドベルヘーの各地区を調査いたしております。これも約一カ月間でございます。
  77. 西村関一

    ○西村(関)委員 ハラバコア、ネイバ地区の調査の結果はどうでしょうか。
  78. 中尾賢次

    ○中尾説明員 その調査の結果は、いろいろ条件は技術的に述べておりますが、結論としては、入植を可とする、農耕には支障がないという結論を出しております。
  79. 西村関一

    ○西村(関)委員 農耕に支障がないという結論を出したハラバコア、ネイバ地区が、問題になっておるわけであります。中田技官というのは、農林省からわざわざ派遣されたのじゃなくて、ブラジルに出かける途中ちょっと立ち寄ったというのじゃないのでしょうか。どのような調査がされたか、これが農耕可能であるという結論を出しているというのでありますが、ネイバ、ハラバコアの両地区が御承知の通り問題になっておりますが、その調査内容がはたして——いろいろ条件があるが、問題があるが、しかし、その問題を克服すれば農耕可能だという意味か、その内容について、問題のあるところですから、もう少しお述べいただきたい。
  80. 中尾賢次

    ○中尾説明員 ネイバにつきまして申し上げますと、ネイバは、地質はきわめて良好とは必ずしも言えないのでございますが、適当な水利の便さえあれば、ブドウであるとか、バナナであるとか、そういうものは作ることができるという判断であったようでございます。それで、昭和三十二年に実際には入植いたしたわけでございますが、その翌年の三十三年にはブドウとかバナナができまして、相当によくできた時期もあったわけでございます。それが一昨年の夏ごろから水利が悪くなりまして、これが相当決定的なものになってきたように思われます。要するに、水の絶対量が少なくなったということと、これを利用する人がふえてきたために、水の給水時間が少なくなったわけでございます。
  81. 西村関一

    ○西村(関)委員 どうも今課長の話を聞いていると、現地から引き揚げてこられた人たちの陳情しておりまする点と、非常に食い違っておる。私は、必ずしも現地から引き揚げてきた人たちの見解が全部正しいとは考えておりませんし、その点は、打ちのめされて帰ってきた人たちでありますから、外務省から述べておられるような客観情勢の変化によって、引き揚げざるを得ない状態になったといたしましても、非常に精神的な打撃を受けておりますし、また、物質的にも大きな打撃を受けておりますから、言っている点についても、相当留意をして聞かなければならない点があると思いますが、しかし、非常に大きな食い違いがあるのであります。たとえば、行ったとき、最初に、このような石ころの多い、このような川原のようなところではとうていできない、つるはしで頭をがんとぶんなぐられたような感じがした。それから三十二年の十二月に、現地大使館の竹内書記官及び古関横浜移住あっ旋所長がこられたときにも、とてもこれでは営農が不可能だから、何とかしてくれ、他の耕地へ転住させてもらいたいということを陳情しているという事実もあるのであります。そしてまた、現地の人たちの言うところによりますと、入植後の四年間は、関係者のだれ一人として親しく耕地を視察して下さらなかった。悪い耕地だということはお前たちは承知して入ったはずだ、また、石などは三年すれば風化して非常によくなるというようなことを言ったり、相当、現地の移住した人たちに対して、不親切な言動があったように考えられる節があるのであります。一々私は、こういうことを突き合わして、これはこうだ、あれはああだというふうに、外務当局の弁明を今ここで伺おうとは思いませんけれども、とにもかくにも調査が十分でなかった。同時に、その取り扱いについては親切を欠いたという点だけは、おおうことができない事実である。今後の日本の移住政策の上に、失敗は失敗として認め、不行き届きは不行き届きとして認める。そうして、私は、あえて責任を追及するとか、そういうことでこういう質問をしているのではないのでありまして、今後、日本の移住政策を前向きにしていく、また、このために、非常な大きな責任を持って外国に派遣されていく外務公務員の心がまえ等について格段の留意を願いたいという意味から、私は質問を申し上げておるのでありまして、どこまでもそれは移住者が間違っておるのだ、外務省には手落ちがないのだというふうに言われるならば、私はさらにこの質問を保留いたしまして、また別の機会に具体的に詳細に質問をしなければならぬ。私の言わんとしているところは、今度の改正案につきまして、外務公務員の心がまえということについて、私は、皆様方外務省当局の格段の留意を願いたいということを念頭に置いて、このドミニカ移民の問題を取り上げておるのです。この点外務大臣はどうお考えになりますか。
  82. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 仰せられる通りでございまして、外交官といたしましては、現地におりまする邦人の身体、生命、財産の保護について重大な責任を持っておるわけでございます。従って、そのために自分の能力のある限り働くことは当然であると思うわけでございます。ただ、これはいわゆる外交保護権でございまして、行政権を行なうわけではございませんので、任国との移住協定の範囲内において行ない得る限度はおのずからあるわけでございますが、自分としては極力そういう点についてあやまちなからんことを期して、日夜自省して、大いに努力すべきものと心得ます。ただ、この移住の問題は、御承知のように、いろいろ従来からむずかしい問題がございましたけれども、最近に至りまして、非常に関係各省庁の連絡がよくなりまして、従来は、移住というものは、外務省だけではこれはわからぬとか、いろいろな話がございましたけれども、やはり移住地における受け入れ国の態勢の問題が一番大切であるということで、移住は外務省におまかせ願いまして、今度地方海外協会も含めて、明年度からは予算的にも外務省につけられるような格好になりました。今後はこのような問題はないように、外務省の全責任においてできるだけの努力をする考えでおる次第でございます。
  83. 西村関一

    ○西村(関)委員 移住の政策については、私は基本的な考え方を若干持っておるのでありまして、この点につきましては、外務委員会であらためて質問をいたしたいと思います。  最後に、ドミニカ移民について、一点だけお伺いしたいと思います。それは、不幸にして国援法の適用を受けて帰ってきた引揚者に対して、どのような配慮をしておられますか、また、今後しょうとなすっておられますか、その点お伺いしたい。
  84. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国援法をあえて適用いたしまして、従来のような、出たらもう、その地でいかにでもしろというような考え方ではなくて、郷里にそれぞれ帰られて、十分立ち上がり得るようにするということのために、国援法の適用をあえてしたわけであります。引き揚げてこられた方に対しましては、その生活が再起できますように、関係各省庁に連絡をとりまして、厚生省とも、あるいは農林省とも、労働省とも、それぞれ連絡をとりまして、職業のあっせん、住居の提供あるいは耕地を持ち得るようにというようなことで、いろいろ骨を折っておるわけでございます。さしあたり、引き揚げてこられた方に対しては国の方から大体五万円ぐらい、さらに地方へ帰られますと地方の方で十万円ぐらい、それだけの現金が手に入るような措置がございまして、その間に、今申し上げたような職業あっせんをできるだけ熱意を込めていたす、かような手はずに関係各省庁と打ち合わせをいたしておるような次第であります。
  85. 西村関一

    ○西村(関)委員 現在大人は一万円、子供は五千円しか支給されていない、その五万円というものはいつ渡すのですか。
  86. 中尾賢次

    ○中尾説明員 お答えいたします。  現金で渡します場合は、大人一万円、子供五千円でございまして、そのほかに、上陸地に上がりまして宿泊をします宿泊料、それからそれの食費、それから郷里までの汽車賃、急行料、その間の小づかい、食費、それから荷物の郷里までの送料、そういうものを計算いたしますと、一家族約五万円ぐらいになるわけでございます。
  87. 西村関一

    ○西村(関)委員 今の大臣の御答弁だと、一人五万円というふうに私は聞いたのですが、今の課長の御答弁だと、一家族五万円ということですね。しかも実際は一万円しか現金が渡っていない。あとは諸出費のために使われてしまう。大人一万円、子供五千円という金をもらっても、家も財産も全部売り払って出かけていった人たち、帰る家もないというような状態にある人たち、こんなはした金をもらってどうして更生ができるか。もちろん、職業あっせんとか生活保護とか、いろいろな法の適用を受けさせるために万全の努力をするということでありますけれども、こういうようなことで、はたしてこれでこの犠牲者に対する措置が十分であるとお考えになりますか、これだけしか国援法ではできないのですか。
  88. 中尾賢次

    ○中尾説明員 この措置は、移民者が国援法で帰ってこられて、あるいは自費で帰ってこられる方もあるわけでありますが、昨年の八月以来帰ってこられた方々に対しまして、引揚者に対しまする当座の措置ということで、これを考えておるわけでありまして、そのほかに、いろいろな現在ございます国民金融公庫であるとか、その他の生業資金の低利の貸付とか、こういう別途の方法をもちまして、できる限りの立ち直りに便宜を供与するように、行政的な措置を関係各省と協議いたしましてとりつつございます。西村(関)委員 行政的な措置でいろいろ配慮するということは当然なことでありますが、私の聞いておるのは、国援法ではこれだけしかできないのかということなんです。
  89. 中尾賢次

    ○中尾説明員 お答えいたします。  この措置は、国援法によりますものでなくて、国援法以上の措置でございます。国援法によりますと、帰国の旅費、それから郷里までの旅費でございますが、そのほかに、先ほど申しましたようないろいろな項目を、特に特例といたしまして実施いたしておるわけでございます。
  90. 西村関一

    ○西村(関)委員 あなた、ごまかしてはいかぬですよ。国援法では旅費は貸のでしょう。やるのじゃないでしょう。
  91. 中尾賢次

    ○中尾説明員 さようでございます。
  92. 西村関一

    ○西村(関)委員 あなたは渡すような言い方をしているけれども、渡すのじゃない、貸すのですよ。それは本人の借金になって、返さなければならぬ。そういうような状態で、私は、これではこの犠牲者に対する措置が十分であるとはどうしても考えられない。(「詳細は外務委員会で一つ」と呼ぶ者あり)詳細は外務委員会でやりますけれども、しかし、私がさっきから言おうとしている点は、外務公務員の服務に対する心がまえがなっておらぬということです。その点に対して、もう少し責任を持ってもらいたいと思う。それでいいとお考えになりますか、どうですか。
  93. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 実は、初めて国援法を移住者に適用するということは、すでにいろいろな意見があったのですが、これをあえていたしたのであります。それから今申し上げたように、引き揚げてきた方々に対して、当座をしのげるようにできるだけの措置はした、これも新しい措置をやっておるわけでございます。そこで、今あなたがおっしゃるように、貸付ということは、まさに法の建前でございます。しかし、そこの建前は建前でございますが、われわれとしましては、実情を十分見ながら、この法の運用を考えていくべきだ、こういうふうに思っておるわけであります。
  94. 西村関一

    ○西村(関)委員 外務大臣、もう少し親切な配慮をしてもらいたいと思うのです。私の伺っておるのは、それはいろいろお立場があるし、大蔵省もあることですから、あなたのお考え通りにいかないということもわかりますけれども、今までの御答弁を聞いておりますと、ドミニカ移民に対しては、責任は客観情勢にあるのだし、また、成功し得なかったのは、努力が足りなかった移住民そのものにあるのだ、外務省としては責任はないのだとは言われないけれども、まあそれほど責任を感じてないというような印象を受ける。それではいかぬと思うのです。やはりこの問題に対しては、もう少し責任を感じていただきたい。そして親心を持って大蔵省当局にもぶつかってもらいたいし、もう少し実のある配慮をしてもらいたい。今の外務大臣の答弁は通り一ぺんの答弁であって、これでは、泣きの涙で帰ってきた移住民の諸君に対して満足を与えないと思う。重ねて外務大臣の所信を伺いたい。
  95. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、そういう御質問を受けるのは、実は心外であるわけなんです。私としてはできるだけやっておるつもりですし、なお、私も、言外にいろいろ親心を持って再起ができるようにということを言っておるのは、今後のいろいろな施策について十分な配慮をしようという気持があって言っておることです。もちろん、生業につかれるに際しては、金も要ります。しかし、それだからといって、何か国が全部を責任を負って補償でもするようなことは、私どもとしては考えられぬことでございますから、そういうことまでは申し上げるわけにいきません。しかし、やはり貸付金であるとか、そういうものについて、また、これから新しく耕地を得たいと考えられる方々についても、関係官庁と十分連絡をして、行政的にできるだけ再起ができるようにという気持で——これは、過去においてもいろいろなことはあったと思いますけれども、それを言っておったのでは、引き揚げてきた方々そのものが直ちにそのことで報われるわけではございませんから、いわば前向きにこの方々が再起できるように、こういうことを言っておるわけでございますので、どうぞ一つ御了承を願いたいと思います。
  96. 西村関一

    ○西村(関)委員 私の申し上げておることが、外務大臣の意に必ずしも一致してないというのであるならば、了としたいと思う。あなたが親心を持って配慮しておるのだ、こう一言おっしゃるならば、それ以上のことは追及しないつもりですけれども、とにかく一万円や五千円そこらの金では、泣きの涙で帰ってきた人がどうにもならないということです。旅費は借りておるけれども、これは返さなければなりません。非常に大きな犠牲を払っておるのですから、この点については、今親心を持ってやっておるのだ、そういうことを言われるのは心外だ、こう言われた外務大臣のそのお言葉を信用して、私はこれで一応質問を終わります。
  97. 緒方孝男

    緒方委員 関連して、ちょっと外務大臣にお伺いしますが、条件の違った中の一つの問題として、政変が言われておるわけです。トルヒーヨ大統領が暗殺されて、バラゲール大統領になったら、移住者に対する現地住民からの非常な圧力がかかったり何かした事実があげられておるが、なぜそうなったのか、その間の実情の御説明をしてもらいたいと思います。
  98. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの御質問は、国際情勢、なぜそういうふうになったかということでございますか。——三十一年、移住者が入りましてから、ずっと書類を調べておりますが、この問題が起こり出しましたのは、昭和三十五年六月の終わりごろから苦情が出てきたのです。その苦情の一番多いのは、土地配分をふやしてほしいということであります。それは、実は昭和三十四年六月に、キューバのカストロ部隊がハイチを経由して陸から侵入して来、海岸からも侵入しようとした。これが第一のショックでございまして、それから昭和三十四年十一月には、ドミニカヘの船が、キューバ、ベネズエラの圧迫で寄らなくなった……。
  99. 緒方孝男

    緒方委員 質問の内容が違う。ドミニカの国情が変わった経過を話せというのではない。トルヒーヨ政権のときには非常に保護されて、バラゲールになってから排斥されるという条件の変化は、どこにあったかと聞いておる。
  100. 高木廣一

    ○高木政府委員 排斥されるという事情はございませんでした。トルヒーヨ時代にも、在留邦人の待遇と現地ドミニカ人の待遇に非常に差があった。日本人の方にむしろよかったために、水の配給その他についても、現地人にももっとやれということで、水争いがあったりいたしました。これは主としてハラバコア、ネイバであります。その他の地域ではそのようなことはございません。
  101. 緒方孝男

    緒方委員 あなたのお言葉がほんとうであるならば、帰ってきた人たちの報告はうそである。また、新聞やその他の週刊誌などの報ずるところは誤りである。現実にトルヒーヨ政権のときに保護されて、バラゲールの新政権になった時代には、外部から非常に圧力がかかってきたということは事実であります。なぜこうなったか。あなた方が、このことに対して何ら検討をしようともせず、かつまた、このことを問題にしようともしないところに、この問題の大きなガンが存在しておる。なぜならば、本来、この新聞にも出ておるように、農耕に使われる土地でもなかった。トルヒーヨが独裁政権を長年強行して、身辺が危険になったから、自分の護衛隊を一人でもふやそうという形の中で、日本の人間の移住をはかってきた。そういう取引も外務省はやっておる。それがために、場合によったら、現地に行った者は軍事訓練までさせられておるではありませんか。軍事訓練は何の目的のためにやったか。トルヒーヨに一たん危険な状態があったならば、銃を持ってあなた方を守りましょうというような条件のもとに、軍事訓練までさせられてきた。それが新しい政権になったがために、トルヒーヨ派への一つの感情から、日本の移住者が排斥されなければならないような状態を作ったと思う。正式な移民ではない、人間の売買にひとしいようなことを外務省はやってきたのです。そういうところにあなた方が目をふさぐならふさいでもいいが、事実ははっきりと証明しております。
  102. 高木廣一

    ○高木政府委員 ただいまの御発言は、非常に事実と反します。今義勇軍のことも言っておられ、あるいは外人部隊と言っておられますが、これは戦前の日本の隣組のようなもので、外人だけではなくて、ドミニカ人全部にもそういうような組織、いわゆる義勇軍を編成させている。日本人だけがそういう義勇軍の対象に考えられたことはないのであります。それからパラゲール政権になりましても、今日におきましても、ドミニカ政府は、日本人の安全のために特別の考慮を払っております。特に大使館からドミニカ政府への申し入れによって、ハラバコアは、その一部が日本に帰ってくるというどさくさのこともありました、去年の暮れからことしの一月の半ばまでの政変を特に心配して、軍隊まで出して、軍隊、警察の力によって治安を完全に守っておるという事情でございます。特に最近は非常に安定したということで、帰国の希望の人も、また残ることに意思を変えたという情報まできております。ですから、トルヒーヨ政権だけが日本人を特別扱いし、ほかはこれに反対するという事実は反対でございます。また、日本人の移住者送出にあたって、そういうようなトルヒーヨの親衛隊を作るために移住者を送ったということは、事実に反します。それから今の新聞のその写真を言っておられるのですが、これも、実は前の書類をずっと見てみますと、昭和三十四年一ぱいくらいまでは、その問題のネイバでも野菜がよくできて、その写真まで送ってきておるのです。そうして三十五年になるまでは、ネイバの移住者自身からのたよりでも、こんないいところはないということを書いておるのであります。今度帰られた方々自身がそういう手紙を出しておられるのも、われわれ神奈川県の移住協会で集めました手紙とか、その他のものによりましてわかる次第でございます。
  103. 緒方孝男

    緒方委員 事がそこまでいかなかったし、移民の人たちがそういうものに巻き込まれもせずに、非常に良心的な、良識的な態度をとってきたからこそ、新しい政権も見直したという。他の住民の人たちは、当時においては、やはり一つのマークをつけられておったことは事実だ。ネイバという地区が非常によかったとあなたはおっしゃるけれども、現に当時おった外務省の福島さん——福島さんは当時現地におられたはずです。外務省の大使館に勤めておったはずです。この人からの報告では、あまりここはいいところではないから、外務省としてはできるだけこれは差し控えてもらいたいということを、再三、再四にわたって本国に対して、外務省の自重方を要請してきておったはずです。あなた方がどういう御報告を受けられたか知りませんが、私の選挙区からきょうも決算委員会に証人が呼ばれてきております。その人たちの報告を聞きましても、決してつるはしの立つところでなかったということを本人がはっきりと言われております。それは一部に、多少の猫額大の土地の中に、野菜も実れば、気候はいいところですから、水と土地さえあれば木は繁ったかもしれませんが、全体がそういうふうなところでなかったということは事実だと思う。その点、あなた方は何を証拠に仰せられるか知りませんが、現地から帰った人たちの言葉を私は信用したいと思う。
  104. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 実は先般から申し上げておりますように、トルヒーヨの政権時代に、汎米機構からボイコットを食ったわけです。そのために、経済状況が非常に変わってしまった。作る野菜も売れなくなる、くだものも買い手がなくなる、こういう状況か非常に大きく響いたということは、これはもう争われないところだと思うのです。そういう事情もあるということをやはり頭に入れながら、この問題はお考えを願いたいと思います。
  105. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 受田新吉君。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 時間が切迫しておりますので、私はなるべく早く片づけますが、最初に私からごく簡単にお尋ねしておきたいことは、外務省の職務権限に関する問題の中で、非常に緊急を要する問題として、おととい外務大臣にお尋ねしてみた事柄があります。それは過ぐる四日の夕刻、オランダのKLM航空会社の民間航空機が、私服の将校を乗せて羽田へ寄港して、西イリアンに向かった。そのとき一時間ばかり羽田へとまっただけでありますが、現に四十二人のうちで三人だけはまだ東京に残っておる。三十九人が向こうに向かった。このことについて大臣は、定期便の飛行機で、チャーターされた飛行機であるから、これはパスポートさえ持っておれば、だれが乗ろうと一向差しつかえないのだ、かれこれ論議を差しはさむことはできないのだという御答弁を願ったように思うのでございます。ところが、きのうまた新しい事態が発生して、アムステルダムを六日の晩に立って、現にアラスカのアンカレッジにとまっている型の大きな飛行機が、私服の将校を七十名ぐらい乗せて待機しているようです。この東京のリレーについて、外務省は、初めてきのう午後三時半に、欧亜局長の方から駐日オランダ大使を招かれて、西イリアンの情勢が非常に緊迫しているときで、日本へ寄ることは好ましいことでないという要請をされた、こういうことを伺ったわけです。大臣、これは外務省の御所管と運輸省の御所管の共管事項になると思うのでございますが、国際民間航空条約の規定とか、あるいはその他の航空規定に基づいて、パスポートを持ってきた人であるならば、私服でも差しつかえないというこの方の理由は、おとといの御答弁とちっとも違わない、ただ、機種が変更されておるということだけが問題だという理由でお断わりになったのかどうかを御答弁願いたい。
  107. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の申し上げたことを正確に御理解願うために、もう一度申し上げますと、実は飛行機をチャーターする場合は、国際民間航空条約によって受入国の承認を得る必要があるわけです。従って、一機チャーターして、オランダから日本を通過してビアク島に向かうという場合は、われわれとして、ああいう見解の相違から国際的な紛争まで懸念される地区へ、チャーターされた飛行機が行くということについて、紛争に巻き込まれるというようなことも懸念されるから、これはお断わりする、一方、国連においても、ウ・タント事務総長が仲介に立っておるのですから、そういう際にことさらそういう問題を起こしたくない、こういうことで断わったわけです。ところが、KLMという便が、これはオランダとの航空協定によって、日本を通過してビアク島に行っておるわけです。これは定期便ですから、一般の旅客が乗ってくるわけです。そこへ私服の軍人が乗ってきても、パスポートを持った正規の旅行者である以上、これを断わることは条約に反するわけですね。そこで、これはできない。そこで日本としては、そういうことをやられると困るのだ——条約上は、ちょっとこっちは抗議の権利はないわけですけれども、どうもはなはだ日本としては困る立場になる、そんなことはわかっておるはずなんだからやめてもらいたい、こういうことを言っておるわけなんです。ところが、きのうになって、急にまたDC−8の機種がもうオランダを出発して、今アラスカにおる、こういう話を聞きましたものですから、これはわれわれの条約によりますと、DC−7を飛ばすことになっておるわけです。機種が違う。機種が違う以上、われわれの了解を求めなければならぬ。そこで、違う機種を飛ばすならわれわれの了解を求めてこい、われわれはそれは困ります。こういうことを言ったわけです。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 問題は、機種がDC18になったので断わる、機種が変更されたので断わったのであって、定期便に私服が要領よく乗ってくるのを断わるのは、国際民間航空条約の規定に基づいてもむずかしいので、これはあまり手きびしく言うことはできない、つまり、断わる方は機種の変更ということに置かれてあって、私服が乗っているという意味ではないということですか。
  109. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 機種が変更される場合には、わが国の許可を求めなければいかぬわけです。その許可はできませんと言う権利がこっちにある。こちらのオプションで許可するかしないかの権利があるわけです。ところが、定期便の場合には、そういう権能がこちらにないということです。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、今後とも、私服として要領よく西イリアンの戦乱の地に乗り込むオランダの正規将校に対しては、何らわが国としても手の打ちようがない、残念なことであるということになるわけですね。そして、もう一つは、西イリアンの紛争が緊迫化しているというそういう国際情勢などは、たとい考慮しようとしても、現状ではやむを得ぬという立場でございますか。
  111. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ですから、政治的には、そういうことは日本としてはなはだ困る、こういうことは言ってあるわけです。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 紛争の渦中に巻き込まれる将校たちを乗せては困るということは言うてあるわけですか。そういう者を私服で乗せたものがここへ寄港しては困る、こういうことは言うておるのですか。
  113. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そういうように問い詰められますと、非常に私ども今後交渉がやりにくくなるのです。けれども、とにかく、今申し上げているように、条約上は、これは定期航空便が飛んでいるのですから、私服で乗っけたか何か知りませんけれども、とにかく、私服といいますか、一般人が旅客として通る、これは、われわれ、航空協定を結んでおります以上、それにとやかく言うことはできない条約上の立場になっておるわけです。しかし、日本の真意というものはこういうことなのだということは、先方には十分伝えてある、こういうことです。だから、どうするかと言われますと、これはまた今後の話でございまして、まだ向こうからどうすると言っていないものを、今ここで私が力んでも、またへこんでも、どっちにしても工合悪いと思うので、どうぞかんべんして下さい。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 お立場はよくわかります。ただ、インドネシアの学生暴動の目的が、アメリカの大使館を襲う意味だけでなくして、日本がすでに四日に私服を羽田に寄港させたというようなことの意味もあると新聞報道に出ておるのです。
  115. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それは違います。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 違いますか。そういうことを私は拝見しておるわけです。それは私の見た記事とあなたの見た記事と違うのであります。
  117. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 記事について言っているのじゃないのです。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 そういう今後における現地インドネシアの空気も、日本に対して悪感情を持たせることのないような外交上の努力というものは、大臣としても十分注意されてなされなければならぬと思いますが、これからの問題として、困る発言にならないような立場で今あなたの御答弁をいただいたわけですから、これ以上私は追及しません。
  119. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今のお話の中に、日本の大使館に対して何かそういうあれがあったようなことがありましたが、それは事実と違うのでございます。これは、ちょうど皇太子殿下も行っておられる際なので、何かそういう暴動的な動きがあるというので、もしその一派が日本の大使館にでも来ると、これは非常に申しわけないことだからというので、日本大使館も警戒したということはあるのでございます。しかし、そのことと、日本大使館に対して何か悪感情を持っているということとは全然別でございまして、インドネシアの各新聞紙は、これはインドネシアの新聞紙でございます。それは、日本がオランダのチャーター機を断わったということに対して、非常に好感を示した記事を掲げておる、こういうことが事実でございます。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 私は、大使館を襲う計画だということを申し上げたわけではないのです。アメリカの大使館を襲った事例を引いたわけです。それで、現地の空気がそう悪化していないということであれば、私はそれでけっこうです。今後の問題として、日本を経由するオランダ機に、そうした私服が要領よく乗り込んで、これが継続されるという、定期便を利用していくということが、外務省のそうした好意的な注意で効果を現わすことであるならば、私は非常にけっこうなことだと思います。そういう努力を続けられることを希望しておきます。  私は、大臣がおられる間にもう一つ伺っておきたい。事務的なことで官房長にお尋ねすることは、次回に譲らなければなりませんが、それは、この前の国会において、外務省の特別職の公務員である特命全権大使、特命全権公使には認証官が充てられることになっており、その数があまり多過ぎるというので、何らかの方法でこの認証官の整理をされる、遠慮をされるような措置をおとりになってはどうかという意味の附帯決議を、満場一致でつけてあるわけですね。この附帯決議に対して、今回改正案をそれぞれの法案でお出しになった機会に、どういう含みを持って対処されようとしておるか、これをまずお答えを願いたいと思います。
  121. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 当委員会でいただきました御決議は、十分尊重いたしまして、その後鋭意検討を続けておるのであります。今認証官制度とおっしゃいましたけれども、実はこれはちょっと違うのでございまして、認証官というもので特別の地位ができる、あるいは給与ができるということでないことは、受田さんも御承知の通りでありまして、大公使を先方の国へ出します場合に認証という行為が行なわれる、こういうことでございます。そこで、これについては、おもな国の特命全権大公使の任命制度について調査いたしまして、積極的に検討を行なっておるわけでございますが、その調査によりますと、大部分の国では、大公使の任命は、一般の官吏と違って、国王または大統領がその任命に関与しておるというのが実情でございます。すなわち、特命全権大公使は、国家を代表して、外国にあって重要かつ広範な職務に従事するというその使命にかんがみまして、各国とも、大公使には、栄誉と威信を保持させる必要を認めて、この任命について一般官吏よりも重い形をとっておるというのが実情でございます。で、先ほど申し上げましたように、国王または大統領が任命に関与して、派遣国の国王または大統領から接受国の国王または大統領へ派遣される、こういう形をとっているのが、一般的な国際的な慣例になっておるわけでございます。この認証する数を減らしたらどうかということも、十分考えてみたのでございまするが、これは、相手がたくさんふえている、世界各国に、国連加盟国だけでも百四になった、こういう事実から来ておるのでございまして、あなたの国へ送る大公使は認証するけれども、あなたの方は認証しない、こういうことに差別をつけることが実はできないのでございます。つけられた方では、おれの国にはへっぽこを送ったのかということになりまして、先方ははなはだ気受けが悪いことは、当然想像されるのであります。かてて加えて、新興国というものは、それなりにまたいよいよプライドは高いわけでございますから、十分それにマッチするようなことにしなければならぬ。わが国だけでやっている制度ですとどうにもなりますが、相手がやっている制度ですから、相手が多くなればその数が多くなる。これはどうにもいたし方ないところでございます。ただ、冒頭にも申し上げたように、認証官というものによって特別の地位ができる、認証官になったら大へんえらくてどうという、給与も高いということじゃなくて、これはそういう形なんでございますね。だから、ここに今官房長がおりますけれども、フィリピン大使で認証官であったのですが、帰ってくればもう官房長で、今、卒業年度から見れば、他省の官房長の方がはるかに若いわけですね。そこへまた戻ってくる。こういうことでございますから、実情を御説明さしていただくと、さようなことになっておるのであります。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、お説の通り、いわゆる認証官であって、天皇が内閣の助言と承認で認証される、これを認証官と俗に言うのであって、特別な地位が法律的に規定されておるわけじゃないわけですね、それはよくわかるのでありますが、天皇の認証事項の中に書いている大使、公使、こういうものの数が多過ぎると、外務省のお役人の中には、そうした外形的に見て、国民に与える印象から見て、そういう数が多過ぎる、こういうことにもなるわけです。そこで、これをどうしたらいいかという問題です。今認証されない大公使のところと認証せられたところと区別されると、向こうがつむじを曲げる、こういうことでございますが、戦前、全部大使は親任官であり、公使は勅任官であった時代があるわけですね。この時代の公使は、みずから天皇から親任されたという大使と違った処遇を受けていたと思うのです。これはどういうことになっておりましたか。
  123. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 官房長から詳しく答えてもらいますが、その前に、今、公使というものはほとんどなくなってきているわけです。現在の公使は、イスラエルとハンガリーの二つだけで、あと全部大使になっております。みんな、どこでも、この間独立したと思う国はみんな大使を送ってくるのです。向こうが大使を送ってくるのに、こっちは公使だということになると、向こうのプライドを傷つけますから、こっちはレシプロケートしなければならぬ。どうしても相互主義でいかなければならぬ。外交官の中で大使、公使が並んでいますと、序列みたいなものがございまして、同じ大使なら先任順に並ぶわけですが、公使はその下に並ぶわけです。そうすると、日本の代表者は一番けつへつかなければならぬ、こういうことになるので、公使という制度は、今。実情から見て、非常におかしくなって参りまして、公使という制度を持っている国は、非常に古い国が持っている。日本もその中の古い国に入るかもしれませんが、そういうのが実情でございますので、その点だけ申し上げておきます。
  124. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 戦前、大使は親任官、公使は勅任官。高等官というのは、御承知のように三つございまして、親任官、勅任官、奏任官。勅任官の場合は、官記に天皇の御璽が押される。それから、親任官の場合には、親署をなすって、それに御璽が押される、そういう差がありました。高等官一等、二等というのが昔の勅任官。三等以下は奏任官。それから、その高等官の下に判任官というのがあるわけです。従って、昔の親任官は高等官の上にあったのですが、一等、二等というごく上の方が勅任官で、公使はそこに位しておったわけでございます。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 私は、官等別をお尋ねしておるわけではないのです。つまり、親任官である大使は、これは天皇から認証されて、信任状を持って行かれる。みずから天皇の任命を受けて行かれるのですね。勅任官という場合は、天皇から任命された形になっていないのですね。その場合に、現在の認証官と同じ立場ですか。特命全権公使の認証はどういう形で行なわれておったのでありますか。
  126. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 戦前の制度では、みんな天皇に——結局は天皇の官吏ということだったのですが、天皇が任命大権を持っておられたわけです。その形式に、親署をされて御璽を押される場合と、御璽だけ押される、それか勅任官ということで、いずれも天皇に任命されるという点は同じであります。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 今お尋ねしておることは、特命全権公使の場合に、天皇からの信任状を持って行かれたことは、大使と全く同格であったかどうか。
  128. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 信任状はもちろんいただいて参りました。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 そして、認証の方式は多少の相違があっても、大使も公使も同じような信任状をもらっていく方式であったわけですか。
  130. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 同じような信任状をちょうだいいたしておりました。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、現在の大公使と大体形は同じことだ、こう了解していいのですね。認証の形式も、信任状を持っていくことも同じだ。そういたしますと、ここで整理するということになると、認証をしないで行くような大使や公使が作られるかどうかという技術的な問題が起こってくる、そういうことは今のところむずかしいのだ、こういうことになるわけですか。
  132. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そうでございます。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、国会の当委員会の決議は尊重しない、こういうことになるわけですか。
  134. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 ただしかし、大公使の任命形式というのは、やはり国際的ないろいろな関係がございますので、いろいろな国の制度調査いたしまして、その結果、国王なり大統領なりが任命に関与しておるというのが大部分でございます。しかし、一方、決議もございますので、何とかできるならば数を減らすことができないかということで、せっかく検討中でございます。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 減らすことを今検討しておられるという御答弁でございます。  そこで、もう一つこれに関連するのですが、特命全権大使、特命全権公使は認証官ということが言われるのでしょうが、ところが、認証官でない公使などがおるということになるわけですか。
  136. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 現在のところは、特命全権大使、特命全権公使、全部そうでございます。ただ場合によって、大使とか公使とかいう名称を一時的に付与するということはございます。しかし、これは、参事官とか、そういうのが、交渉のときに何か名前がそうなっていた方が都合がいいといったような場合に、大使あるいは公使という名称を臨時につけるということはございます。しかし、それは、外国に行って館長になって、そこへ駐在してやるような大使、公使とは別でございます。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 臨時につける名称は、外務公務員法のどこに根拠が置いてあるわけですか。特命全権大使、特命全権公使、特派大使とか幾つかありますが、その中に、大使、公使を勝手につけられるような法的根拠があればお示しを願いたい。外務公務員法の第二条の規定によるかよらぬかということです。
  138. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 外務公務員法の第六条にございます。「外務大臣は、公の便宜のために国際慣行に従い特に必要と認める場合には、外務職員に対し、前項に掲げる公の名称以外の公の名称を用いさせることができる。」
  139. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは実際を申し上げないとおわかりにならぬと思うのですが、たとえば、こちらに来ておりますフィリピンの賠償使節団長のラヌーサ公使、こういう人たちは、やはり、フィリピンの賠償団の全権を持っているという形で、ミスター・ミニスターと言われるようなことが格がいいということでつけるわけでございます。こちらがたとえば向こうと貿易協定をやるというような場合に、その経済の専門家が行く、こういうようなときには、やはり公使の称号をもって、ミスター・ミニスターでもってやり合う方が、向こうの局長も何となく自分の相手が非常に高いランクにある者であるというような感じがして、これは理屈外の理屈みたいなものでございますが、交渉が有利にスムーズにいく場合もございまして、そんなような場合によく用いるわけでございます。
  140. 受田新吉

    ○受田委員 「公の名称以外の公の名称を用いさせることができる。」こういう、まことに一般国民を非常に理解に苦しませるような表現になっているのですが……。
  141. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 ただいまのように、その根拠は外務公務員法の第六条でございますが、その六条の三項に、「公の名称に関し必要な事項は、外務省令で定める。」とありまして、外務省令の第三条に、「職員外務公務員法第六条第二項の規定に基いて用いる公の名称の区分は、左のとおりとする。一、主として外国政府と交渉し、又は国際会議若しくは国際機関に参加する場合、その他特別の必要がある場合において、当該交渉又は参加の期間若しくは特別の必要の期間を限り用いる公の名称 大使及び公使」、こうなっておりまして、これに基づいております。
  142. 受田新吉

    ○受田委員 よくわかりました。第三項の省令にそれをあげておられるということですね。それは第二条の規定とは全然別の意味の大公使である、儀礼的大公使ということですね。  そうしますと、大体認証官の性格がはっきりしたわけですが、今度増員される国家を含めて、この法律案が通過した場合に、認証官たる大使、公使が何人になるか、一つ説明していただきたい。
  143. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 今度大使が三人ふえます。それは、国連に一人、それから、シリアがアラブ連合から別れましたので、シリア、それからクエート、その三つ。それから、公使から大使に昇格する、これはどちらも特別職でございますが、公使から大使になるのは四名でございます。合計七名であります。
  144. 受田新吉

    ○受田委員 総計は幾らですか。
  145. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 大使が七十二名、それから公使が六名でございます。
  146. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、合計七十八名という認証官で、従来よりも大幅に増員されることになるわけですが、これを国会の御趣旨に沿うて善処したいといろことになると、大へんな作業だと思うのですが、その作業の結果はいつごろきき目が現われるか。御研究の過程でけっこうでございますから、適宜当委員会に報告を願いたいと思います。  次に、法案の中身に入ってお尋ねをしたいのですが、今度の法案の中で、私、特に在勤俸の問題を取り上げてみたいと思うのですけれども、大幅に在勤俸を引き上げられることになる。大幅と言えば何ですけれども、十年ぶりに引き上げられることになるのですが、在勤俸の計算の基礎、各国の物価とか経済事情その他の生計費等を総合的に判定された基礎資料というものを、何を根拠にしてこの計算が出たかを資料として、部外に秘密にしなければいけない場合は個人的にでもけっこうですが、基礎的な数字をお示しいただけるならば、次の委員会までにこの算定根拠を、大まかなところでけっこうですが、お出しいただけるかどうか、まずお答えを願いたいと思います。
  147. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは、先般西村さんに申し上げたように、われわれの希望するところと比べて大幅に低いのでございまして、その点は大いに残念な点もあるわけですが、とにもかくにも、十年間動かなかったものが、ようやく在勤俸の昇給を認められた、こういうことでございます。資料ということになりますと、われわれの希望しているものとは違うので、その算定の根拠といいますか、結局このくらいでがまんぜいということでございますから、できたものをほかの国のものと比較する、こういう資料なら出せますと思いますが、そうでないとちょっといかがかと思うわけであります。
  148. 受田新吉

    ○受田委員 大まかなことでやられたわけですね。理論的な計数を……。
  149. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 理論的にはもっと高くてもいいということでありますが、この辺で、いろいろな事情もあるからがまんせい、こういうことになっております。
  150. 受田新吉

    ○受田委員 私、この在勤俸の問題は、この前の委員会でも、もう十年も据え置いているような国はないのだから、特別な措置をすべきであるという要求をしてあるわけです。だから、この下に厚く上に薄い計数をとられているということに、私は賛成です。そうしてまた、上の方で大使、公使、参事官というようなところにおいて、参事官あたりを優遇する措置をとられていることにも、私は共鳴します。これは具体的に今から掘り下げた質問をしようと思って用意しておりますが、委員長から時間が迫っているからということで、私、また次の機会に譲りますが、そういうところの基本的なものに私は賛意を表しているのです。問題は、各国の物価、生計費、経済事情等を勘案してという、この提案内容について、いいかげんに勘案したのか、ある程度の計数的な理論的なものも含まれて、それにあんばいをしたのか。そういうところを全部大まかにやられたということであるならば、これは大臣裁量みたいなことで、こんなこまかい数字はあまり骨が折れなくて作れたわけです。ところが、ある程度の基礎的な資料があるということならば、またわれわれとしても理論的に納得するわけです。大臣の言われるような、理論的なものは一つもなくて、大ざっぱにやったのか、もう一ぺん答弁を願いたい。
  151. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 これは相当いろいろなことを研究して作りました。在外公館の報告、それから、諸外国の外交官の給与、国連職員給与、各任地の勤務条件の難易、そういうものをいろいろ勘案して作りました。
  152. 受田新吉

    ○受田委員 それじゃ、ここに大蔵省の給与課長が来ておられますので、ちょっとあなたにお尋ねいたします。  従来、外務省は、こういう在勤俸などもそうですけれども、とかく予算ぶんどりについては、はなはだ成績のあがらない役所とわれわれは一応認識しておるわけです。それは、外務公務員というものが、固まって団体交渉するとか、実力行使に出るという形のものもないのです。一般の官庁の公務員とまた変わった外交官という立場の皆さんには、またそういうことについて外交儀礼などもあるので、あまりはでなこともようやらぬというようなことで、いわゆる外交官という外務職員の皆さんは、やや待遇の上においてそういう陥没地帯を埋めるのには戦いの仕方がまずかったということで、大蔵省もその虚に乗じて、比較的在勤俸などもいつまでも据え置かれたのではないかと思うのです。私も世界一回りを何回かやってみて、そのつど感じたのでございますが、諸外国の経済事情などを勘案したとき、日本の外交官が著しく低位に置かれている。日本の出先の各商社の職員と比較しても著しく低位に置かれている。これは、商社のサラリーなど、どこが大体幾らぐらいもらっているか、私聞いておりますが、これを発表すると、外務省の在勤俸などとだいぶ相違があるので、問題を起こすので差し控えますけれども、二百五十ドル程度で外交官が海外で勤務するのは容易でないという実態も、われわれよく承知しておったのです。このたびやっと下に厚く上に薄いという形式がとられたということを一応肯定するのです。肯定するのですが、大蔵省としては、この数字を文句なしにのまれたのか、あるいはこの数字にも文句があったのか、あるいはこれでは少な過ぎるという文句があったのか、給与課長として御答弁願います。
  153. 平井迪郎

    ○平井説明員 在勤俸につきまして約十年間放置されておった経緯、ただいま御質問もございましたが、その間の経緯は、私もずっとおったわけではございませんので、つまびらかにはいたしませんが、少なくとも、現在までのところ、正式の要求として在勤俸の改定問題が論議されたのは、昨年の夏の要求からでございまして、それまでには、外務省自体としても、大蔵省と正式に話し合いをするということまで至った経緯はございません。従いまして、御指摘のように、現在までの段階では、確かに、諸外国の外交官と比べ、あるいは在外商社の職員と比べましても低くあったということは、御承知の通りでございまして、そういった観点から、私どもも、外務省に御協力を申し上げまして、在勤俸の一般的改定をいたすことにいたしたわけでございます。ただ、また逆の面で申しますと、最低生活費というようなものは、ある程度各国におきましても調査可能でございますけれども、外交官としての特殊的経費を含みました、いわばある程度レベルの高い生活費の内容はどの程度でよいのかということは、なかなか判定困難でございまして、そういった意味におきましては、決定的に先生の言われたような理論的な根拠というものを的確に示すということは、むずかしいということも事実でございます。ただ・その検討過程においては、外務省からもでき得る限りの資料の御提出をいただきましたし、私どもとしてもでき得る限り研究もいたしてみたわけでございます。その結果として、乏しい外貨を使う問題でもあり、現在の段階では一応二の程度をもって妥当であろうというふうに、両者の間で意見の一致を見たものというふうに了解いたしております。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 この新しくできた小さな国々、アフリカ、東南アジア等の小さな国々における具体的な例をあげれば、大へんたくさんなものが列記されますので控えますが、そういう国々で、物価の事情とかあるいは経済事情とかいうもの、生活程度というような、はっきりしないことがあるわけですね。計算の基礎をどこへ置いたらいいか、類似の国と比較してやるか、だれか経済団体の現地駐在員から聞くとか、いろいろな困難があると思うのです。そうしたアフリカから東南アジアにかけてのあの小さな国々——小さなと申し上げると問題があるかもしれません。国が小さいのですね。弱小という意味じゃない。新しく興った小さい国々のそういう実態を、どういう基準でおつかみになったか。ここに一々数字が出ておりますから、これはえらいものだと思うのですが、たとえば、セネガルとか、あるいは象牙海岸とか、マダガスカルとか、こういう国々にいたしましても、なかなか実態はむずかしかった。ナイジェリアなどという、ある水準を持たれた国もありますけれども、そういったところは、これを調べてみまして、よほど調査がむずかしかったのを、一体どういうところでお出しになったか、御答弁を願います。
  155. 湯川盛夫

    ○湯川政府委員 今、中近東、アフリカ等も、だいぶ在外公館もできましたので、そういったところにできるだけ調べさせる。それから、そういうところで大体同じような条件と考えられるようなところは、それによる。それから国連職員がいろいろと派遣される場合にどういう地域差でそういうところにやっているかというようなことも参考にし、それから、そういった点で、割合にアメリカの外交官あたりの地域差というのもたびたび改変されて、相当研究されておりますので、そういったものも参考にしました。
  156. 受田新吉

    ○受田委員 これは、お互い資料をいただいておりますので、この数字に基づいてもうちょっとだけお尋ねをしておきたいのですが、日本、それから日本とよく似た、もともと経済的に困難を感じておったイタリア、ドイツ、こういうようなところを比較してみましても、今度の改正案及び改正案に伴う従来の給与の額を比較してみましても、日本が改正されたとしてもよくはないのですね。それは数字の上でもよくわかるのです。ただ、ここで一つ御注意申し上げておきたいことは、外交官の中には、給与課長が言われたような、お役人、スタイルマンとしての外交官らしい面子の問題を考えて御勤務される方もあるが、その部分を貯蓄の方に回して、大いに海外におる間にかせごうという、こういう心得違いの外交官がおられるということになると、また問題が起こるのです。われわれは、日本の国の権威を保つために、外交官は、在勤俸がふえることによって、十分そういう日本の外交官らしい、質素であるけれども、同時に、風格を持った勤務態度をとってもらう。貯蓄を第一義に心得て、外交官の勤務を第二義に心得るような不心得者は、十分、大臣においてあるいは本省の幹部の中において御注意をされて、海外派遣外交陣の刷新というものを、この給与改善と同時に十分お心得になっておかれなければならぬと思うのです。このことは、大臣、おわかりいただけますね。
  157. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 全く同感でございまして、さような考えでもって、信賞必罰を厳にする考えでございます。
  158. 受田新吉

    ○受田委員 大臣は、外交官のグループの中にも、一つのそうした貯蓄型とまじめ型と、いろいろあることをお心得になっておられると思うし、それぞれの信賞必罰を厳にされるということは、これは外務省の場合は特に私は必要だと思うのです。  それから、もう一つ、おしまいに、小坂大臣がちょうどヨーロッパの方を旅行された時分に起こった事件ですが、これはやはり在外公館のやり方にも批判が出ておるんじゃないかと思うのですが、あなたの党の上林山榮吉君が、昨年夏カイロへ行かれたわけです。そうして、エジプトへ入られて、さらにカイロへ出て出国しようとしましたところが、外務省からもらってある黄熱病の予防接種した証がないというので、八日間カイロの飛行場の収容所に不安に襲われながら暮らしたという事件が起こって、非常に上林山さん苦労されておる事実を私も確かめております。そうして外務省から電報が現地に行って、黄熱病の予防注射はしてあるという証明が行ったにかかわらず、認めてくれなかったということは、これは、現地外交当局のまずさか、あるいは当時のアラブ連合政府のまずさか、どういうところにあるのですか。公用旅券で出ている者が、外務省から形式的にも証明が出されているのに、それを見せつけてもこれが承認されないというような形のものは、どこに欠陥があるのかを最後に伺っておきたいと思います。
  159. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今お話しの、上林山議員がカイロの検疫所に抑留されましたのは、黄熱病の予防注射の証明書を所持しなかったことが原因でございますが、上林山議員が昭和三十四年七月に予防注射を受けている事実を私からの電報によって証明し、これによって、現地大使館当局は、同議員が早急に検疫所から出所できるよう先方に対しあらゆる努力を行ないましたが、結局約四日間同議員が検疫所にとめられることになりましたのは、まことに遺憾千万に思っております。  外務省といたしましては、渡航先の予防注射の必要の有無については、でき得る限り旅行者に周知せしめるように努力しておりまして、黄熱病の予防注射についても、昨年五日、エチオピアの大使館からの報告に基づきまして、この方面の旅行者に黄熱病の予防注射が必要である旨を各旅行エージェントを通じて周知せしめていたのでございますが、上林山議員の場合は、同議員が外務省構内の診療所で予防注射を受けた際、若干の行き違いが生じた模様でございます。黄熱病の予防注射は、外務省にある診療所では取り扱わないで、羽田の検疫所でなければ行なえないことになっております。上林山議員が外務省の方で注射を受けた後、注射は全部終わったかと聞かれた際に、診療所側が全部終わったと答えましたために、同議員は黄熱病の注射も終わったものと了解されました模様でございます。もちろん、診療所側に悪意があったわけではございませんが、黄熱病の予防注射は羽田でなければできない旨を特に上林山議員に注意するだけの心づかいがなかった点は、はなはだ恐縮に思っておる次第でございます。  外務省としては、今後このような手違いが起こらないように、旅券課においても、診療所においても、予防注射その他渡航上の注意事項については、渡航者に迷惑がかからないように、その周知徹底につき、できる限りの努力をしたいと考えております。
  160. 受田新吉

    ○受田委員 大体当時の状況がよくわかりました。確かに上林山君自身は大へんな苦痛をしておられるのです。公用旅券で出かけて、外務省の証明もあるのにこういう事態になったというので、ずいぶん嘆いていたわけです。また、私たちとしましても、外交的な努力の欠陥に基づいて、日本国民が海外に旅行するときに、非常な不安な旅をするということになっても問題があると思いますので、今後こういう事態が再び発生しないような御努力をしてほしい。  それから、一番おしまいに、——これがおしまいです。大臣がおられる機会に、一つあなたの御意見、決意を表明していただきたいのですが、あなたは海外を何回も御旅行されて、外務大臣としては、世界を旅された回数においては、在任期間に比例して従来の大臣のトップになっておると思うのです。それで十分御研究されたと思うのですけれども、経済的な海外の日本の在住者、そういう経済的な貢献をずる人々と、外務省の出先との連絡が十分でないということがあるのです。これは、商社は商社で勝手なことをしよる、外務省の役人は、外交駐在の在外公館職員は、自分の事務的な仕事から来る仕事しかやらないという意味で、もっともっと経済発展に協力するという意味から、商社の出先などとももっとがっちりと結んで、日本の商品のはけ口なども、外交的な努力をうんとされるということで、諸外国の商務官などがやっているように、在外商社の職員と一体となるあの馬力でもって、事務的な外交事務しかやってない日本の現状から一歩でも二歩でもはみ出られるならば、私は、日本の経済発展という毛のが国際的にもっと大きな貢献ができると思うのです。その意味で、単なる事務屋外交というような形のものでなくて、そうした経済人あるいは文化人その他の民間外交官——外務省からまっすぐ伸びた外交官だけでなくて、民間の有力な実力者を適当に配置するという努力もさるべきではないか。しかるに、あなたは、昨年の異動で、那須インド大使や、ブラジルの安東大使、カンボジアの大橋大使のような、老齢ではありましても練達の士と言われた人々をそれぞれ罷免せられまして、若い人を人事刷新の意味でなされたように伺っておるのです。これは勇退されたということになっておりますけれども、それにかわるのならば、民間人あるいは経済界の有力な人々の外交上の努力に待つということで、事務屋外交官が出るよりも、新しい開発国などにはむしろ効果をもたらすような人事をされる必要がなかったか。今後もこういうことを念頭に置かれて、せっかく、あなたは純粋な外交官育ちの大臣じゃないのですから、一つそういうところに英断をふるわれて、大使や公使を十分有能な人を民間から見出すという努力をしてほしい。その大事な腕前を発揮されるのにいい条件にあられる小坂さんであると私は思うのですが、大臣、今私が申し上げた順序を迫って、ごく簡単に御答弁を願いたいと思います。
  161. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お話は私も賛成でございます。そこで、大公使が参ります際の訓達にも、経済関係の商社等にも逐次これを招いて、常に定期的に会合して、その知識も受け、自分らの持っておる情報も提供して、十分一体となって経済活動を活発にするようにということを、特に留意をしておるわけでございます。ただ、特定の商社とあまり深くなるということは、これは職務の性質上好ましくありませんから、そういうことがないように一方において押えておるわけでございます。  それから、人事異動でございますが、若い人にできるだけ、しかも、いい人がありましたらそれを伸ばすということで、やはり新陳代謝も時おりは考えなければならぬと思いますが、那須さんは、引き続いて経済協力関係のいろいろな仕事を本省において顧問的立場で御助力をいただいております。それから、一般の民間人の登用ということも十分考えられる次第でございますが、先ほど例におあげになりました安東さんにしても、大橋さんにしても、これは外務省出身者でございます。そうでない純粋の民間人をと思うのですが、実は、なかなかいい人がないのでございまして、いい人と思うと会社の方でなかなか放されない。会社が放してもいいと思うようなのはどうもこっちがいただけないというようなのが多くて、なかなかむずかしいのでございますが、お気持は十分にくみましてやって参りたいと思います。
  162. 受田新吉

    ○受田委員 一応終わります。
  163. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次回は、来たる十三日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十八分散会