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飛鳥田委員 これも来年の国会で私ゆっくり伺わしていただきたいと思っているのですが、
クーデターの問題が出ましたからとりあえず伺っておかなければならぬ、こう思ったわけです。と申しますのは、この協定によりますと、なるほど逃げ道はたくさんできています。
自衛隊の警務隊と
警察との犯罪捜査に関する分野は、協議の上決定するとか、あるいは社会的影響の大きい犯罪等についてはどうするかというようなことが書いてありますが、しかしよく読んでみますと、結局は
警察が
自衛隊員を警視庁に呼んで直接調べていくということがなかなか困難にできておる。あるいはまた
自衛隊の施設の中に入ってガサをやる、捜索をやるというような場合には、必ずその
自衛隊の施設の長に連絡をし、通告をして、その承認を得た上でなければできないというような形で、実は
自衛隊の隊内は治外法権になっていく
可能性があるという危険を発見しないわけにはいかないわけです。これはゆっくり伺わしていただきたいと思いますが、そこで思い浮かべますのは、かつての二・二六の場合に、軍側の被告を一般民間側の被告とは明らかな取り扱い上の差があったというような事実を、僕ら学生時代でよく覚えているわけです。これはやはり憲兵と一般
警察との
関係、こういう点から出てきているのではないか。憲兵は自分の部内の兵隊さんはかばう、そうして都合の悪いような事実は外に出さないように調べる、こういう形で二・二六は処理せられた。今度の場合、
自衛隊に、いや、
働きかけはなかった、ともに飲食をするというようなことはあったけれ
ども、具体的な参加の要請を受けたという事実はない、こうあなた方はおっしゃるわけです。しかしそれは、はなはだ疑った形で申しわけないのですが、
自衛隊が
自衛隊の隊員を調べた結果ではないでしょうか。これは
国民のだれもが、一応そういうものを調べる機関として考えている
警察、こういうものの手によってきちっと調べられて、そうだったというのならまだ話がわかる。今にきっとこういうことが出てきますよ。特定の人を警視庁で調べていくと、いや、おれは何々一佐に向かって、あるいは何々三佐に対してこれこれこれこれまでの話はした、こう被疑者は言うでしょう。ところが
自衛隊に
警察の方が連絡して、警務隊で調べてちょうだい、あるいはあなた方のいわゆる
調査隊で調べて下さい、こう言いますと、いや、私は一緒に酒を飲んだだけで、具体的な話は聞かぬ、こういう答弁が出てくるでしょう、調書を作って
警察に送りつけてやりますと。
警察はこの違った二つの両当事者の言い分をそのままどう処理できるでしょうか。やはり
警察というものは、自分で調べてみて初めて心証を得るわけです。これはどうもうそを言っているらしい、これはほんとうのことを言っているらしい、だからこのうそを言っているやつのまわりをもう少し掘ってみよう、調べてみよう、こういう形で捜査は伸びていくわけです。ところがほんと
自衛隊の警務隊から送られた調書が届けられて、それ以上自分で掘れないでは、それ以上捜査を展開しようとすれば、所属長の承認を得なければならぬなんというかきねにばさっとぶつかってしまうわけです。そうだとすれば、
自衛隊の中に何が行なわれてどういう工合になっておったかということについて、
国民はその
疑惑を解く余地はないわけです。こうして
警察と
自衛隊との犯罪捜査に関する協定などというものは、実は
自衛隊の内部を治外法権にしてしまい、かつての憲兵をもう一度復活させていく足がかりになるだろう、こう私は感じないわけにいかないのです。今度の
クーデターできっとその矛盾が出てきますよ。いつか一ぺん
警察のほんとうに第一線に働いている人
たちにも、よくその話を聞いてみたいと思うのですが、われわれの知っている限りにおいて必ず出るはずです。そうした場合に、
自衛隊は快く自己の隊員を参考人として警視庁に出頭させ、参考人調書を取らせるということをなさるのか、
国民なら当然すべきだと思います。それを妙に協定なんというものを振り回して、いや、おれの方でやるとおっしゃるつもりなのか。これはこれから先進展した場合で、今の問題ではありませんが……。しかしそういう点についてはっきり伺っておきたいのです。それからまた
警察がガサをやりたい、こういうような場合に
——そんなことのないことを祈りますし、ないと思いますが、やりたいという場合に、あらかじめそこの所属長に断わって承認を求めてガサなんかやったら、あなた、正直言ってもう証拠がないのがあたりまえです、だれだって自分の部下はかわいいから。そういう
意味で、この協定にかかわらず、今度の
クーデターに関しては
警察は自由にガサをやれるか、やらせるか、こういう点についても
一つ伺いたいと思うのです。かつて、くどいようですが、私の知っている軍人でしたが、自分の部下が何らかの刑事事件で
警察から呼び
出しを受けた。やはり所属長たるその軍人に許可を求めてきました、戦前ですから。そこで憲兵隊とも相談したら、どうもこいつはほんとうにやったらしい、こういう話であったので、なんじ生きて何とかのはずかしめを受けるよりは自殺せよと言って、その隊長は勧めたそうです。現実に自殺しました。こうして犯罪は完全に隠匿されてしまうわけです。そのいさぎよさというものは認めてもいいかもしれないけれ
ども、そういうことが今度の
クーデターの中で出てきたら大へんでしょう。ないことを祈りますが……。と同時に、この協定というものがそういう
自衛隊の警務隊の憲兵化、
自衛隊の治外法権化を作ってしまう、そういう危険がうんとある。だから、その点について今言ったように、呼び
出しがあった場合にはいさぎよく応じさせるか、所属長の許可などを受けないでも、いきなりガサをやれるようにするか、こういうような
クーデターの
調査について生じてくるかもしれないことについて、あらかじめ明確に
自衛隊はあけっぱなしですよ、十分にお調べになってけっこうですよ、
国民の
疑惑がなくなるように努力いたしましょうということを、
一つ聞かしておいていただきたいと思います。