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1962-04-11 第40回国会 衆議院 逓信委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十一日(水曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 佐藤虎次郎君    理事 秋田 大助君 理事 上林山榮吉君    理事 佐藤洋之助君 理事 廣瀬 正雄君    理事 大柴 滋夫君 理事 栗原 俊夫君    理事 森本  靖君       椎熊 三郎君    竹内 俊吉君       羽田武嗣郎君   橋本登美三郎君       保利  茂君    畑   和君       受田 新吉君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 迫水 久常君  出席政府委員         郵政政務次官  大高  康君         郵政事務官         (大臣官房長) 金澤 平藏君         郵政事務官         (電波監理局         長)      西崎 太郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本放送協会         副会長)    溝上 けい君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   前田 義徳君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   田辺 義敏君         参  考  人         (日本放送協会         専務理事)   小野 吉郎君         参  考  人         (日本放送協会         理事)     赤城 正武君         参  考  人         (日本放送協会         計理局長)   秋元 為次君         専  門  員 吉田 弘苗君     ――――――――――――― 四月九日  簡易生命保険及び郵便年金積立金運用範囲拡  大等に関する請願外一件(小笠公韶君紹介)(  第三七〇九号)  同(生田宏一紹介)(第三七六九号)  同外一件(秋田大助紹介)(第三八六〇号)  電波法及び船舶職員法改悪反対等に関する請  願外六件(久保三郎紹介)(第三七七〇号)  同(久保三郎紹介)(第四〇二九号)  農村部落郵便事業改善に関する請願(逢澤寛  君紹介)(第三八〇二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月六日  FM放送に関する陳情書  (第六二六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  日本放送協会昭和三十四年度財産目録貸借対  照表及び損益計算書      ――――◇―――――
  2. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 これより会議を開きます。  本日は委員長が所用のため出席されておりませんので、私がかわって委員長の職務を行ないます。  日本放送協会昭和三十四年度財産目録貸借対照表及び損益計算書を議題とし、審議を進めます。  質疑の通告があります。順次これを許します。栗原俊夫君。
  3. 栗原俊夫

    栗原委員 NHK昭和三十四年度の財産目録貸借対照表及び損益計算書に関する審議にあたりまして、私はまことにどうも初歩のお尋ねでありますが、民放では広告収入でそのすべての経費をまかなっておるが、NHK聴視料を徴収する、そしてこの聴視料によってすべての経費をまかなう、こういう立場にあるわけですが、一体NHKは単に法律でそういうことを保証されておるからということでなくて、NHK聴視料を徴収してやる、そうした特権を持つ、その特権を持つ一番大きなというよりも、大事な理由はどこにあるとお考えになっておるのか、まず所見NHK当局からお伺いいたしたい、このように考えます。
  4. 小野吉郎

    小野参考人 お答え申し上げます。  御指摘通りNHKは、聴視者方々からいだたきます受信料唯一財源といたしまして、運営をすることを規定せられております。営利はもちろんのこと、広告に類する放送も扱ってはならないということになっております。このことは、放送法の第一条並びにその他の条項によって、放送の基本的な問題として規定せられております不偏不党で厳正公正な放送任務といたしております関係上、そういった任務を最も万全を果たし得る方途として、そのようなことが規定せられておるものと考えております。そういう見地から、どこまでも厳正、片寄らず公正に、しかも公共福祉に役立つ放送をすることを任務といたしまして、運営をして参るというふうに考えております。
  5. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいまの御説明によると、公正な不偏不党放送をする、それがNHK聴取料を徴する特権の根源であるような御説明なんですが、そうすると、言葉の裏をとらえるようですが、NHK不偏不党で公正なんだからそういう特権を持っておるのだ、民放はそうでなくていいのだというように聞こえますけれども放送法の第一条は、単にNHKだけのことをきめておるのではなくて、およそ放送というものはそういうようにきまっておると思いますが、その点はいかがなんですか。
  6. 小野吉郎

    小野参考人 経営の形態はどうありましょうとも、放送自体公共性の高いものでありまして、放送法の第一条に掲げております不偏不党公正中立放送をいたさなければなりませんことは、NHKもしかり、民放もその通りであろうと思います。ただ、これに広告をつけまして、その広告による収入財源として運営いたします限りにおきましては、基本的には今の厳正公正であり不偏不党立場を貫くべきでありましょうけれども、そういった財源の面から何らかの制肘を受けるということも考えられます。そういう面で、公共放送民間放送との並立の状況におきましては、放送法基本原則を最も完全に貫き得る企業形態としてはNHKのような形態を必要とし、そのためには広告によるスポンサーからの制肘を受けない、非常に高度の番組を自由に、しかも放送法基準原則に沿った線において運営するということを、NHKに対して期待しておられるものと考えるわけであります。
  7. 栗原俊夫

    栗原委員 政府当局の方の考え方はいかがでしょうか。
  8. 西崎太郎

    西崎政府委員 NHK任務といいますか、目的というのは、放送法の第七条に示しておりますように、「公共福祉のために、あまねく日本全国において受信できるように放送を行うことを目的とする。」従って、全国あまねく同じ番組を聴取できるようにする任務を与えられておる。それと同時に、放送内容につきましても、放送法の四十四条の一項に、日本文化水準向上させるとか、いろいろ規定されておりますが、こういった任務というものを考えてみますと、これはなかなか商業ベースでやれるような目的ではありませんので、やはり先ほど御指摘放送受信料というような特権を与えなければ、こういう任務は発揮できない、こういうふうに考えております。それから、もう一つは、これも先ほどちょっと問題になりました不偏不党の問題ですが、これはNHKであろうと民放であろうと、およそ放送事業全体を貫いておるものであります。
  9. 栗原俊夫

    栗原委員 やや明確にはなってきたわけですが、ただいま監理局長の方からの話によると、放送内容についても、放送法できめてあることを貫いていくには、商業ベースではなかなかできないのだ、こういうことなんですが、そういうことは、勢い、いま少し掘り下げて考えるというと、放送の、たとえば編集業務費、こういうようなものが、民放編集業務費と比べて、表現は悪いかもしれぬけれども、時間当たりに高くつく。従って、そうした高い内容を持つ放送番組、そういうものを編集したりする、こういうことが一応今の説明の中から看取できるのですが、そのように受け取ってようございますか。
  10. 西崎太郎

    西崎政府委員 必ずしも番組編集費NHKの方が民放より高くつく、こういうことにもならないと思います。民放の場合には、番組編集費がかりに高くても、それ相応にスポンサーがつけばいいわけなので、言いかえれば非常に聴視率の高い番組ができれば、それ相応の編集費というものは償って余りある、こういうふうに思いますので、一がいにそういうふうには言えないのではないかと思います。
  11. 栗原俊夫

    栗原委員 わかりました。  放送内容ですが、NHKが特にそういう公共立場に立って、全国あまねく放送する、そういう機関であるから、一方には法で聴視料を徴収する権限も裏づけられておる、こういうことでございますが、そういう立場NHK放送内容について、民放とは格別違った特別な何か任務、こういうようなもの、民放ではやり切れないというようなものを特にやらねばならない、こういう場面を特に期待しておるわけですか。この点はいかがですか。
  12. 西崎太郎

    西崎政府委員 特にNHKでは、御承知のように教育教養といったような番組を非常に重視して、編集されておられると思います。たとえばラジオにつきましては、第二放送であるとか、あるいはテレビにつきましては、教育専門テレビジョン局を持っておるわけであります。そのほか一般番組につきましても、どっちかというと、非常に格調の高いような番組といったようなものを相当やっておられるように思いますので、この放送法の先ほど引用しました第四十四条の第一項というのは、これはNHKだけに適用される規定でございます。この線に沿ってやっておられるというふうに確信いたしております。
  13. 栗原俊夫

    栗原委員 NHKにお尋ねしますが、ただいまのようなことを法も期待し、実際監督に当たる政府当局も期待しておるわけですが、具体的にはこうなんだと胸を張って一つ説明をしていただきたい、こう思います。
  14. 前田義徳

    前田参考人 お答え申し上げます。  NHKは、ただいまの先生の御質問精神に基づきまして、御承知のように、中波放送におきましても、NHK二つの波を与えられており、テレビジョン放送におきましても、二つの波を与えられております。従って、まず第一に私どもが考えておりますのは、この二つの波を与えられていることに対して、責任を完全に果たそうという考え方でございます。  従って、第一の波におきましては、中波におきましても、テレビにおきましても、第一に、国民全体の福祉の増進のために社会的に寄与し得る番組を組みたいという考え方で、それを前進させております。具体的に申しますならば、第一に娯楽面でありますが、最近よく巷間一部では、NHK娯楽をやらなくてもいいじゃないかというような説もたまたま伺っておりますけれどもNHK任務は、放送法から申しましても、調和のとれた番組編成すべきであるという法律的根拠がございます。そこで、それではその娯楽番組をどういうふうに編成し企画するかと申しますと、少なくとも第一には家庭全体が年齢の差、教養の差を問わず、一般的に良識をもって歓迎してもらえる娯楽番組ということをまず考えております。従いまして、娯楽番組につきましても、番組内容向上演出効果の研究ということを中心にいたしまして、大多数の方々が共感を寄せていただけるような番組を作るべきであるという考え方に立って、娯楽番組放送いたしております。しかし、娯楽番組のパーセンテージは、大体ラジオにおきましても、テレビにおきましても、総合番組では二五%内外となっております。それから第二には、その他の番組につきましては、やはり一般的な水準に立った教養あるいは公衆の社会生活土台となる公共精神とか、あるいは社会道徳とか、そういうものを直接または間接に一般に普及させていくという方向の番組を組んでおります。それから第三には、御承知のようにニュースの構成ということが国民生活常識向上のためにも絶対に必要であって、同時に非常に理想的ではありますが、しかし、この点は放送法ではっきり規定しておりますので、民主主義発展と政治の公明化に寄与する番組中心に考えておりまして、ニュースの面でもその点については全力をあげてこれを放送するという建前をとっております。  それから、第二の波につきましては、私どもは、過去二十八年にわたって、第一に学校教育に寄与し得るもの、従って、これは幼稚園から高等学校最終年度に至るまで、学年別放送二つの波を通じて行なっております。第二には、社会文化向上に役立つものという目標で、芸術的なものであっても、あるいは自然科学的なものであっても、これを理解し得る演出を研究しながら、これを一般的教養の基礎にするという方針放送いたしております。同時に、NHKの、これは四十四条の中にもございますが、与えられた使命の一つは、日本全体の文化向上に寄与して、しかもその文化が普遍化できるような番組を考えろということになっておりまして、この点につきましても、日本の固有の文化維持保存と、その発展に寄与できる番組編成すると同時に、世界全体の文化水準を考えながら、まだ日本にないもの、あるいは日本では幼稚なものに対しては、海外から第一流の芸術家、学者を招聘して、これを日本文化向上に役立てるという番組編成いたしておるわけでございます。さらに、日本国内事情経済的変化社会的変化に応じて、新しい分野の教育教養的な番組をその一部として編成いたしているわけであります。
  15. 栗原俊夫

    栗原委員 そういう立場に立って放送に当たっておられる。そういう立場に立って放送するときに、今中波でも二つの波を持っており、テレビでも二つの波を持っております。これでいろいろ問題もありましょうが、波が制約されるとかそういうことを度外視して、放送法にのっとってNHK放送事業をやるのに、今の中波二つの波、テレビ二つの波、これで満足でございますか、また、物足らぬ、こういうお感じを持ちますか、これについての御所見一つ……。
  16. 前田義徳

    前田参考人 放送法精神、それからそれに基づく私ども社会的責任感から申しますと、現在の波でもまだ私どもの企図する番組編成は必ずしも十分でないという考え方を持っております。
  17. 栗原俊夫

    栗原委員 いろいろ資料を提出してもらってあるわけでありますが、先般同僚森本君からの要請によって提出されたこの資料は、ある程度部分けをしてもらってあるわけですけれども、どうもこれではあまりに大まとめ過ぎてわからないのです。−実は、私たちは、でき得れば、そうした立場に立って聴視料を徴収しておる、しかもこれを唯一財源として運営するNHK運営内容を、いま少しくこまかく知りたい、こう思っておるわけでございます。たとえばテレビ人気番組といいますか、三十四年時代にどういうものをやっておったか、実は今のところ記憶にございませんが、放送番組を作るにあたっての一つの具体的な、明細な内容、こういうような資料を、まあ今回のこの審議にあたってではございませんけれども、これに関連して、これの結論を出すのに必要ということではなくて、御提出願えましょうか。
  18. 前田義徳

    前田参考人 それはいつでも準備はできていると思います。
  19. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 森本靖君。
  20. 森本靖

    森本委員 今同僚栗原委員から質問がありましたように、三十四年度のこの物件費内訳でありますが、もう今国会もだんだん終わりに近づいて参りましたので、今度の国会におきます三十四年度の決算については、私はこれ以上申し上げませんけれども、こういうふうな内訳では、だれが見たって、くろうとでもしろうとでも、どこで、体どういうふうに金を使っているかということについては、これじゃわかりっこないわけです。もっともこれは、出す方については非常に都合がいいかもしれぬけれども、これとそれからあなたの方から出ているところのこれの説明を何べん繰り返して上から下まで沈んでみても、一体金がどういうふうに使われて、ほんとうに正当に使われておるかどうかということについての評価は、とてもこれじゃできない。ただ概略を頭の中へたたき込むだけであるというふうに考えるわけであります。この決算の当面の責任者は計理局長だと思いますが、かりにあなたが質問をする立場になった場合に、この資料で明確にわかるとお思いですか。これは、わが党の委員がみな非常にこれを不満に思っているのは、この間私が資料要求いたしましたのは、こういうふうな内容ではわからぬから、具体的にこまかく一応の——予算書でいえば款項目の中にあるわけですが、項目に至るまで、まあ一応のデータを出してくれ、こういうことで、これはわが党の委員総意によって、私が資料要求をしたわけです。出て参りました資料というのは、このあなたの方からくれております三十四年度の説明書によるところの数字をただこれにまとめただけの数字であって、この資料を見れば、あとから出てきた資料一つも変わらぬ資料なんです。こういうことは、少なくとも国会議員として要求をした趣旨をはき違えておるのか、それとも故意にはき違えたのか。非常にこれは——栗原さんは、おとなしい人でありますから、あれ以上の追及をしなかったわけでありますけれども、特に私はこの点は言うておきたい、こう思うわけでありますので、このことに関する御回答一つ願っておきたい。それで、専務理事の方から回答を願った方が間違いがない、こう思うわけであります。
  21. 小野吉郎

    小野参考人 御指摘通り、これだけをもっては会計運用の実態を詳細に御承知におなりになれないということは、その通りだろうと思います。決算様式といたしましては、予算款項に分かれておりますので、それに合わせまして、その予算の款、項の項目でどのようになっておるかということを明細にいたしますための区分けをいたしまして、出しておるわけでございますが、実際の運用款項の中に目、目をさらに節に分けてやっておりますので、目、節まで出しますと、およそ経費がどのように流れておるかということが御了解いただけると思います。在来決算様式といたしましては、款項に分けて出すというような建前になっておりますので、その建前に従いまして出しております。従いまして、説明書もそれの説明として出しておりますが、いろいろ詳細なる項のそれにつきましては、御質問に応じましてお答えを申し上げたい、このように考えておるわけでございまして、将来の説明書書き方等につきましては、いろいろと工夫を考えてみたいと思います。
  22. 森本靖

    森本委員 それで、一応その答弁で了承いたしますが、もともと私が資料要求いたしましたのは、三十四年度の物件費内訳要求したのは、このあなたの方の正式に提出されております九ぺ−ジの七十五億何ぼというものについての内訳要求したわけでありますが、今度新しく要求してあなたの方から出てきたこの資料は、−実は、この資料の中に全部あるものをただ数字を並べただけであって、その内訳はさっぱりわからぬわけであります。ところが、そういう内訳を聞きたいというのは、ここに「すなわち、これら事業費は、全国放送ローカル放送を通ずる教育教養報道番組の強化、芸能」云々といろいろ書いてあるわけであります。これについてのこまかいものをもらいたいというのが、わが党の委員の意見であったわけであります。それで、私が、皆さん総意を代表して、それなら一つ資料要求してみよう、その資料が出てくるから、その資料に応じて皆さんから一つ質問しよう、こういうことになったところが、出てきた資料は、今栗原さんも言ったように、さっぱりこれで質問しようにもできるような内容資料ではない、こういうことでありますから、一つこれは——別に不正があるからどうとかこうとかいうことを言っておるわけじゃありません。もう少しこの内容がどういう工合になっておるだろう、そこでもしそういうふうな内容がわかれば、それに対していろいろ聞きたい人々がたくさんおる、こういうことでありますので、今専務が言われましたように、今後の——形式的な資料というものは、私は、この資料でよろしいと思います。しかし、特に議員から、これに関してこういう資料要求するという要求があった場合は、それはそれなりに目的があって要求しておるわけでありますから、正式に要求があった場合には、さらにこれを細部に分けた説明書を交付するという形を、今後は一つぜひとってもらいたいということを要望しておきたいと思います。  それから、この際、この三十四年度の決算には直接関係はございませんけれどもNHKについてちょっと聞いておきたいと思いますのは、三十七年度の予算のときにこれは審議をすべきでございましたが、時間がなくて聞かなかったので、この際あらためて聞いておきたいと思いますけれども、の三十七年度の予算で、学校放送教育について特に意を用いる、そうして通信教育学校設立を考えておる、こういうふうなことが説明をせられておったわけでありますが、この詳細な内容一つ担当の方から御説明を願いたい、こう思うわけであります。
  23. 前田義徳

    前田参考人 これは通信高等学校を具体的に取り上げておるわけでございまして、その根拠は前回の国会教育法の一部が改訂されまして、通信教育の中に広域教育というものが、取り入れられました。従来の通信高等学校は主として府県単位でございまして、従って全国的な通信教育というものは、教育法に関する限りはございませんでした。それでこの教育法の改訂に基づきまして、NHKといたしましては、過去二十七年余にわたりまして学校放送をしている経験から申しましても、それからまた現在の教育の実情から考えましても、少なくとも義務教育はほとんど完全に行なわれておりますが、高等学校教育につきましては、定時制にも行けない方々が、私どもの想像では、全国で今日すでに三十万以上おられるということを考えまして、この新しい教育法に基づいて、NHKが新たに学校法人を作ることを援助し、この学校法人土台として、実質的に今までの高等学校講座を拡大強化いたしまして、全国的に機会に恵まれない約三十万の方々を対象として、それが教育法に基づく新しい高校卒業の資格を得られるようにすることが、放送法精神から申しましても、NHK業務として当然考えるべきことであるという結論に達しまして、御審議いただきました今年度予算の中で、その方針を明らかにしたわけでございます。  この通信高等学校は、第一に学校法人でございますから、これはNHKそのものとは別のものになります。ただ通信高等学校設立に関しまして、財政的に出損し、それから放送を通じて、その高等学校業務に寄与していくというのが建前でございます。その計画といたしましては、今年度においては、御審議、御承認をいただきました予算に従いまして、まず学校設立準備をいたすということと、放送の面では、将来それが通信教育としての正常な放送になるまで、それの試験的放送を行なうために、番組編成の時間をはっきりととったことでございます。予定といたしましては、この通信高等学校目標は、最初当分の間は普通課程を考えております。通信高等学校の正課を勘案しながら、さらにこれに対して将来は職業課程を加えたいという考え方を持っております。予定といたしましては、今年度中に学校法人設立を見、さらにそれに基づいて学校の建設その他を完了いたしまして、明年一月正式に三十八年四月から入学する方々を募集する予定でございます。見通しといたしましては、第一学年にはおよそ約一万の生徒目標といたしておりまして、普通課程単位の獲得を、これまでの府県単位通信高等学校性格等から考えまして、修業課程を全部生徒方々がとるためには約五年かかるのではないかという考え方に立ちまして、五年目の通信高等学校学校の総数は、大よそ二十万になるだろうという想定をいたしております。この通信高等学校講座は、そういう意味で、まず普通課程単位中心として放送いたしまして、通信高等学校は、御承知のように、ただ放送もしくは通信の教科書だけでは単位をとることができない制度になっておりまして、スクーリングが必要になっております。従来NHK学校放送は、ラジオにおきましてはスクーリングは三〇%免除されることになっており、教育テレビジョンの発足と同時に、テレビによる通信講座を受けた方々は五〇%だけスクーリングを免除されることになっておりますが、今回の予算の御承認によりまして、私どもがもし全国的ないわゆる広域通信教育目標とする通信高等学校設立いたしますと、ラジオにおいては残りの七〇%、テレビジョンにおきましては残りの五〇%のスクーリングを、この学校を通じて行なうことになります。同時に、私どもは、各地域に散在するこれらの恵まれない方々の便宜を考えまして、従来すでに古い制度で設立されております。各都道府県に約五十二余りの通信高等学校が現存いたしておりますが、この高等学校全体を協力校にお願いいたしまして、地域的なスクーリングにおいても、これに入学される方々の便宜のために協力していただくという基本方針を考えております。さらに、将来もし必要があるならば、少なくとも第二段階といたしましては、現在NHKが中央局を置いておる地域には、等学校の分校を徐々に設立して参りたい、このように考えております。
  24. 森本靖

    森本委員 この通信高等学校は、今回設立をするというのは学校法人として設立をするということでありますが、NHKが援助するといいましても、これはほとんどNHK設立をするという形になると思いますが、具体的にそれに関するいわゆる予算項目としてはどの程度組んでおるわけですか。
  25. 前田義徳

    前田参考人 御承認をいただきました今年度予算におきましては、一応当初一億二千万円を考えております。それから、将来の計画といたしましては、今年度の運営費はおよそ二千万円程度と考えておりますが、昭和三十八年度には約八千万円になると思います。しかし、昭和三十八年度におきましては、すでに建設費の支出が不要になりますので、昭和三十八年度に関する限り、年間のこのためのNHKからの支出は、大体一億二千万円を標準として十分ではないかという想定を実は立てております。
  26. 森本靖

    森本委員 これは予算項目についてはどの項目に入りますか。
  27. 小野吉郎

    小野参考人 これは建設関係に属しますものと、運営関係に属しますものがございます。建設関係のものはその方面に入っておりますが、運営関係のものは国内放送費の中に入っております。
  28. 森本靖

    森本委員 その建設関係費に入って学校建築をした場合に、それはどうなるのですか。NHKの建設関係に入るはずはないと思いますが、これは少なくとも交付金とか、あるいはまた支出金とか、こういう形にならないと、一度建設勘定に入ってNHKのものとして建設をして、今度学校に譲り渡すという格好になると思うのですが、その辺の予算整理はどうなりますか。
  29. 小野吉郎

    小野参考人 一億二千万円は国内放送費としてNHKでは計上いたしまして、学校法人に対して交付するものは交付する。学校法人がそういった建物、土地を取得する……。
  30. 森本靖

    森本委員 建設勘定じゃないでしょう。
  31. 小野吉郎

    小野参考人 ございません。
  32. 森本靖

    森本委員 そうすると、一億二千万円というものは交付するという形になる。これは放送法を改正したときに出資することができるという項目に当てはめてやるわけですね。
  33. 小野吉郎

    小野参考人 その通りでございます。
  34. 森本靖

    森本委員 これは交付金になるのですか、それとも出資金になるのですか。
  35. 前田義徳

    前田参考人 今年度におきましては、一部建設関係については、私どもは出損と呼んでおります。原則的には放送法の第九条第二項第十号の規定に基づきまして、助成という考え方を持つわけであります。
  36. 森本靖

    森本委員 助成ということになると、たとえば交響楽団とか何かとかいうものと同じ意味で取り扱いする、こういうことですか。
  37. 前田義徳

    前田参考人 その通りでございます。
  38. 森本靖

    森本委員 そうすると、これは完全に、助成というけれども、いわば交付金という形になるわけですね。出しっぱなしになるわけですね。
  39. 前田義徳

    前田参考人 実質的にはそのようになると思います。
  40. 森本靖

    森本委員 このやり方について、きれいさっぱりにしておりますが、私は学校設立についてはしろうとでありますから、どういうふうになるかわかりませんけれども、一応出資をするという形にした方が、こういう学校法人等についてはよくはないですか。いきなり全部交付金というと、NHKは金持だから、これはやるということでやればいいようなものの、一応NHKの財産から出るわけでありますので、出資という形においてやった方がよくはないかというような気がするわけでありますが、その辺はどうですか。
  41. 前田義徳

    前田参考人 前回放送法の改正の際に、NHKとしてはその限度の出資の可能性を与えていただきたいと思いましたが、改正後の今日の放送法におきましては、NHKは出資することができないことになっております。
  42. 森本靖

    森本委員 確かに、今専務が言ったように、この問題はもめたわけでありますけれども、これは交響楽団とかああいうふうなものに助成をするという形よりも、何らかの形において残すというような方法は現在においてないものですか。というのは、あとで質問をいたしますが、学校法人設立した場合と、NHK交響楽団、ああいうふうな芸能関係のものとは、将来非常に意味が違ってくるのじゃないか。たとえばこちらの方はほとんど独立をした形においてやれるような格好になってきはしないかというふうな気がするわけでありますので、その辺のことについて、何らかの形において残す方法はないものか、こう私は思うわけであります。もっともそれはあなたの方で、おれの方は希望したけれども、できなかったじゃないかというふうに言われれば、私の方の責任ではなしに、政府がああいう法案の形を出したわけであるから、別に国会でどうこうということはないけれども、こういうことになってくると、一つ問題が残りはしないかというふうに考えるわけでありますが、その辺どうですか。
  43. 前田義徳

    前田参考人 先ほどの先生の御質問に対して、実質的にはN響その他と同じ形の助成金になると申し上げましたが、本質的には多少意味合いが違って参ります。N響の助成その他につきましては、特別の条項がございまして、これは九条の二項の一にございます。ところが、通信高等学校と関連する問題につきましては、九条二項の十になるわけでありますが、この十は「放送及びその受信の進歩発達に関し特に必要と認められる業務」ということでございまして、先ほど来もちょっと御説明申し上げましたが、NHK学校放送を主たる任務一つと考えておりまして、この学校放送の普及と発達のためには、このような法律上可能な通信高等学校設立は、当然本来業務との関連で必要であるという考え方を持ったわけでございます。従って、N響の助成は、放送を維持するための芸術番組との関連でこれを助成するという考え方でございますが、この十号による考え方は、番組を普及発達させるということと関連いたしておりますので、従って、N響の助成そのものとは本質的に多少異なってくると考えております。
  44. 森本靖

    森本委員 そういうことになりますと、私の方としてもちょっと意見が違うわけでありますが、かりに十の項に当てはめてやるということになれば、「前各号に掲げるもののほか、放送及びその受信の進歩発達に関し特に必要と認められる業務」というのは、NHKの行なう業務であるというふうに私は解釈するわけです。ところが、この場合は、学校法人として別個の一つの人格を持ったものが独立をして行なうことになるわけであります。そこで、先ほどの出資の件について私が言いましたのは、この十の項については、かなり広範囲に適用ができるのではないかというふうなことを、われわれは当時考えておったわけであります。そこで、N響の方の関係であなたが言いましたように、二号の「血催し、又は後援すること。」ということになりますと、はっきりしておるわけでありますけれども、十の条文を読んだならば、少なくともNHKそのものがこれを行なうことができ得るというふうにわれわれは解釈をしておるわけでありまして、そこで、NHK予算説明雷にも、明確に通信高等学校設立をするということが書いてあったわけであります。これは通信高等学校設立を援助する云々という形に説明書はなっていなかったと思うわけであります。ところが、内容を聞いてみますと、今言ったように、学校法人として全然別個のものである、NHKのものではない、こういうことになって、そこに交付金を出資するという形になると、この辺があなたの方ではどういうふうに御解釈になったのか。十号で当てはめるということになると、私は私なりに解釈をして、この前の放送法改正のときには、そういうことで出資の項は除いたわけであります。除いたというよりも、出資はこの号がかなり適用されるということになればいいのではないかというふうなことであったと、私は記憶しておるわけです。その辺どうですか。
  45. 前田義徳

    前田参考人 今申し上げましたように、私の説明が非常に不十分であったかもしれませんので、あらためてお答え申し上げたいと思います。  学校法人設立そのものは放送法第九条二の第十に基づくものでございます。従って、設立に関する限りは——今こういう用語が今日も通用しておるかどうか私n身も多少気にかかるのですが、この項に関する限りはこれを出損と考えているわけでございまして、そしてその運営につきましては、団体あるいはN響などと同じように、第九条二項の一によってこれを維持していくという考え方でございます。
  46. 森本靖

    森本委員 そうすると、設立は十の号であって、その運営は一の号である、こういうことですか。
  47. 前田義徳

    前田参考人 その通りでございます。
  48. 森本靖

    森本委員 これは法律上どうも私はすっきりしないようなものが残るのですが、電監局長、これはNHKから相談を受けたときにどういう解釈をしておるわけですか。
  49. 西崎太郎

    西崎政府委員 先ほど前田専務説明されたと同じように考えておるわけでございます。
  50. 森本靖

    森本委員 これはまあ同じように考えておらなければうそですけれども、この十の「前各号に掲げるもののほか、放送及びその受信の進歩発達に関し特に必要と認められる業務で郵政大臣の認可を受けたものを行うこと。」ということは、NHK学校そのものを設立して行なうということはいかぬのですか。これは出資じゃないのです。NHK通信高等学校というものをこしらえるということがどこが悪いか、こういうことです。
  51. 西崎太郎

    西崎政府委員 御承知のように、学校学校法人でなければ行なえないわけで、NHK自体が学校法人になるということにつきましては、いろいろ疑義もあるのじゃないかというふうに考えております。
  52. 森本靖

    森本委員 だから、NHK通信高等学校というものをこしらえて、そのNHK通信高等学校学校法人としての認可を受けたらどうなるんですか。
  53. 西崎太郎

    西崎政府委員 いろいろ考えました末、先ほどの設立関係はこの十号でいく、それから運営に対する助成は第一号です。
  54. 森本靖

    森本委員 それはわかるけれども、僕が言う通りやったらどうか、できぬかということなんです。
  55. 西崎太郎

    西崎政府委員 法律上も、場合によりますと放送法の解釈問題も起こり得ますし、またNHKが直接学校法人になるということは、いろいろ対外的な、要するによその通信高校とのいろいろな関連も起こってくるのじゃないか、そういう点も配慮しまして、必ずしもすっきりしませんかもしれませんが、こういった方法が一番妥当じゃないか、こういうふうに考えております。
  56. 森本靖

    森本委員 だから、私が聞いておるのは、そのあとの一般通信高等学校との問題が起こってくるから、それも聞こうと思ったわけです。たとえば通信高等学校というのはたくさんできてくるわけですね。そうした場合に、NHKが、NHK放送網を通じて、その新しくできる学校法人の独占的な放送を与えることが、これが一体放送法のどこに合致するものであるか。その他の通信高等学校が、それではおれのところの通信高等学校放送について、一つおれのところにもやらしてくれ、おれのところのをなぜ放送してくれぬかという異議が出た場合に、一体どうなるか。それがNHK通信高等学校というものがやるとするならば、これはおれのところの学校だから問題はない。ところが、別の人格を有する学校法人ができて、しかもその学校法人放送については、NHKテレビラジオを通じて放送を行なう。ほとんど独占的な格好になる。ところが、一般学校法人としての通信高等学校が、おれのところの放送をなぜNHKはやってくれぬのか、こういうことが出てきた場合に、一体法律上どうなるか、こういう疑問です。これに対してどうお考えになるか。これは郵政省の問題です。法律を扱うところの問題として非常に私は疑問に思っておったわけですから、疑問が氷解しさえすればそれでけっこうです。
  57. 西崎太郎

    西崎政府委員 実はこの問題は、この法人設立の認可申請が現在出ておるのでございまして、郵政省の方で今審査いたしております。ただ、われわれの方としましては、結局その新しい学校法人、これだけを独占的に使うんだという考え方でなくして、ほかの通信高校の方にも役立ち得るといったような運営の仕方をされるんじゃないか、こういうふうに考えております。
  58. 森本靖

    森本委員 それは確かにある程度そういうことになるでしょう。ある程度なるけれども、先ほどの前…専務説明を聞いておっても、確かにこれは現在でも学校放送教育というものはやっておりますから、それは当然全般的な学校放送教育というものが放送されるでしょう。さらにこの通信高等学校放送されるものを利用して、別に通信高等学校設立をしても、これはできるでしょう。しかし、おそらくこのNHK設立をしようとするところの通信高等学校というものの放送内容が、このNHKテレビなりあるいは教育テレビなり第二放送放送するものが、ほとんど集中的に放送されるということは、これはもう想像に余りがあるわけであります。これが私はいかぬというわけじゃない。まことにけっこうなことです。けっこうなことだけれども法律上の建前からいって、こういうことを明らかにしておかなければならぬ。ということは、もしそういうことになった場合は、別の森本なら森本通信筒等学校設立をして、おれのところの放送についてもお前のところでやってくれにゃだめじゃないか、こういう意見が出てきた場合にどうなるか、こういうことですよ。電監局長、よく聞いてもらいたい。今までは、学校放送教育として、特定の一つのなにじゃないわけですね。全国的に一つ学校放送教育というものをやっておるわけですね。ところが、今度の通信高等学校というものができれば、この通信高等学校の考えておる教材と教科書とによって放送されることが相当あると思うのです。そういった場合に、その他の通信高等学校から、おれのところのやつもやってくれにゃだめじゃないか、こういう要求があった場合に一体どうなるか、こういうことなんです。だから、今あなたが言ったように、いやそうじゃございません、全国的な放送というものはやりますからということになったとするならば、通信高等学校をこしらえる意味がない。NHKが特に助成をして、通信高等学校を別に交付金までやってやらなければならぬ必要はない。ある程度まで集中的な独占的な放送をやらぬ限りは、そういう必要はないわけです。現在の通信高等学校全国的に育成すればいい。そうして、全国的に、全国民向けの通信高等学校なり、それぞれの通信教育放送というものをやればいい。それではなかなかいかぬから、学校というものを設立をして、それから今前田事務が言ったように、各中央局の所在地にはできれば分校をこしらえていきたい、こういう遠大な構想を言っておるわけでしょう。ここに一つの疑問が残るわけですよ。これはNHKの方からでもけっこうです。
  59. 前田義徳

    前田参考人 私どもも当初そういう疑問を持ちましたが、この疑問は、私どもに関する限り、電監当局も御同様の御意見じゃないかと思うのでありますが、事実上も解消されており、今後もそれほどの心配がないのじゃないかと思っております。その理由は幾つかでございますが、第一に、現存しております通信高等学校は地域的なものでございまして、各府県に目標として一校、ただし東京のように非常に人口の多い、あるいは地域的に広い場所には二校の場合もございますが、建前は一校でございます。その実績を調べてみますと、大体入学者の一〇%以下が卒業生になっております。と申しますのは、実際上は働いておりますので、労働者その他が多いわけでございますから、地域的な住居の変化も相当あるようでございます。従いまして、現存の通信高等学校は、NHKがそういうことを始めてくれれば、NHKの教科も利用したいという考え方を持っております。従って、NHK高等学校と地域的既存の通信高等学校は転校の可能性がございませんでしたが、今度NHKが今申し上げたようなものを作りますと、既存の高等学校間にも転校の可能性が出てくるわけでございます。また教科は教育法によってきまっておりますカリキュラムを土台とする普通課程でございますから、その意味ではNHK放送を利用することによって既存の高等学校も、今申し上げたような実質的な効果を上げ得るということがはっきりいたしまして、私ども事務的折衝の段階では今日まで全国の各高等学校NHK方針に協力していただけるという結果になっております。
  60. 森本靖

    森本委員 それは現実的な問題の解決方法であって、法律上の解決じゃないと思う。かりにNHK通信高等学校ができ上がる。そうすると、NHK通信高等学校に似かよった通信高等学校ができて、しかもNHK通信高等学校の教材の内容の組み方が若干気に食わぬから、おれの方の通信高等学校はこういうふうにやるのだ、こういう一つ全国的なものを相手にする高等学校を、かりに私なら私が設立をする。この通信高等学校NHKじゃなくて、全然別の通信高等学校ですから、そこで私があなたの方の放送が気に食わぬ、教材の組み方が気に食わぬ。ただ文部省の指定どうりにはやるけれども、その範囲内における組み方が気に食わぬ。私の方は全国的な通信高等学校設立をして、NHKはなぜ片一方のやつだけやるのだ、おれのところはなぜやらぬか、こうきた場合にどうするか、この場合に断わり切る理由が法律上ないじゃないか。それがたまたまNHK通信高等学校NHKがやっておるものなら、これはおれのところがやっておるのだから、おれのところの放送をやるのに何ら差しつかえない、こういう断わり方ができるけれども、この今度できる通信高等学校というものはNHKのものでなく、独立をした学校法人でありますから、それと同じような学校法人ができて、そういう文句が出てきた場合に一体どうするか。今の各地にあります通信筒等学校については、あなたのおっしゃった通りでございまして、また現−実の問題としては必ずしも私の言ったようなことが起こるとも限りません。しかし、学校というものはやってみると、経営のやり方によっては私学校でも案外もうかるところもあります。今日学校というものは、必ずしも商業採算が成り立たないとは限らぬわけです。その場合、ほとんどこれに似かよった形のものが出てきた場合にどうするかという疑問が、前から残っておるわけです。これに対する回答を明らかにしてもらいたい、こういう点です。だから現実の場面を処理するということについては、よくわかります。ただし、そういう危惧を私が抱いておりますので、もしそういう危惧と杞憂を現実の問題として表面化してきた場合どうするかということです。
  61. 前田義徳

    前田参考人 私ども立場から今の御質問にお答え申し上げたいと思います。  広域通信高等学校の制度は、必ずしも電波を使うものではないと考えます。従いまして、NHKに関する限りは電波を通じて、放送法第九条第二項の第十によりまして、学校法人設立し、その主たる目標放送自体に関する限りは、NHK番組の普及並びに受信の発達に寄与するという考え方にあることは、先ほど御説明申し上げた通りでございますが、その他の方法による広域通信高等学校ができることは、これと直接に関係のない問題ではないかと思います。  もう一つ先生が御心配なさっておる点は、電波を持たない単なる広域通信高等学校がまた別にできて、その場合に、たとえばNHKに対して自分の方のカリキュラムも放送すべきではないかという要請があった場合にどうなるかという御懸念もあるかと考えます。しかし、この点につきましては、NHK番組の編集権を与えられておるわけでございまして、その御要望の中に妥当なものがあればこれを取り入れることにやぶさかではないのは当然でございますが、少なくともこの目標に向かっては、NHKは第三者から番組内容の修正であるとかあるいはそれに対して増加すること、それらについてはNHKとしてはNHKの本質に基づいてある程度これを調整できる、こう考えております。
  62. 森本靖

    森本委員 そういたしますと、今回できる通信高等学校というものは、その放送についてはすべてこれは聞くだけということになって、通信高等学校の自主性というものは、この放送教育については全然一言半句もないわけですね。
  63. 前田義徳

    前田参考人 基本的な制度及び運営の基本方針につきましては、文部省の学校教育法に基づき、特に私立学校法に基づくものになりますが、この学校NHKとの関係は、これは特にN響を助成するように、やはりNHK放送を普及させ並びに受信の発達を促すということと表裏一体の関係になると考えております。
  64. 森本靖

    森本委員 だから、これはN響の場合とはだいぶ違うと思うのです。学校というものは、ほかの者がやろうと思えばできるわけです。だからあくまでもN響と同じような考え方に立ってこのものをやろうとするならば、どんなに言われても私はやっぱり法律上の疑問が残ると思う。この点のしさいは検討がNHKとしてはやったか知らぬけれども、本来この法律を提案し、修正権を持っておるところの郵政省は、事こまかに検討したかどうかということについて、私ははなはだ疑問を持っておるわけであります。今私が言ったように、また前田専務も認められておるように、この通信高等学校というものが、NHKが編集するものを単に流すだけである、こういうことになるとするならば、これはあなたの言う意見はある程度わかります。しかし、少なくとも学校のことであるから、学校当局の言うことも聞いて、ある程度その番組についてもただすべきはたださなければならぬと思う。もしそういうことになるとすれば、番組の編集権があなたの方にあるといっても、教育放送に関する部分については学校当局の意見も聞かなければならぬということになったとするならば、別途に広域学校法人設立をして、そしてNHKにおれのところのものもやってくれ、こうきた場合には、これは断われるものではない。その場合には、それに対してもこれと同じように助成金を出さなければならぬ。NHK公共性という立場からするならばこういう理屈になると思う。これは民放なら別ですよ。その辺の疑問がどうしても除かれぬわけです。この学校NHK通信高等学校なら話は別ですよ。ところが、あなたの方はこの学校に対しては助成金、交付金として金を出すだけで、この運営には建前上タッチできないわけですから、この学校NHKから独立をした学校であります。それなら別個の法人の広域学校ができて、おれのところの学校放送もなぜやらぬかときたときに、その方はN響と同じようなことでございますということでは答弁にならぬのじゃないか。きょうは決算の問題でありますから、私はここですぐ解決をつけようとは思いませんけれども、私の想像するところでは、NHK当局は、これはしごく簡単に考えてやったのではないかと思うが、郵政当局としては、そういう法律上その他の問題については、あまり私は検討しておらぬのじゃないかという気がして仕方がないわけでありますので、一つこの問題については、三十八年におそらく本格的になる、こういうことでありまして、本年はほとんど準備段階になる、こういうわけでありますので、これが設立をされて運営をせられるということになりますと、はっきりした法律的な解釈と、今後そういうものがもめないように、一つ確立をした政策をもって出してもらいたい。何かこれはこの放送法の第九条第二項の一号と十号だけでは押し切れぬ一つの性格があるのではないか、こういう気がして仕方がないわけでありまして、その辺のことについて一つもう一ぺん私のきょうの質問に対して、これは速記録でも読んでいただいて、郵政当局でも、NHKでももう一回明確な答弁ができるように−専務専務なりに明確な答弁をしたと思っているけれども、しかしあなたの言った口でも、別に広域学校法人が出てくれば、これはある程度やむを得ないということになると思うのです。その点を私は非常に心配をしておるわけでありますから、これはくどいようでありますけれども、大事な問題でありますし、放送法に関連をする問題でありますから、一つ十分に検討して、後日その検討した結果に基づいて、私はまた質疑を続けたい、こう思うわけであります。上林山さんから質問があるようでありますので、ちょっとこの辺で譲ります。
  65. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 上林山榮吉君。
  66. 上林山榮吉

    ○上林山委員 私はNHK決算の問題に直接関連して、二回にわたって、一方遠慮しながら、質疑を試みたのでございますけれどもNHKの答弁が不十分であるので、きょうは場合によっては、会計検査院を呼んで真相を明らかにした方が将来に禍根を残さないであろう、こういうような気持でおりましたけれども、スケジュールが変更になって、きょうの午前中にこの決算を上げたい、こういうような理事会の申し合わせもあるとかいうことを聞きましたので、簡潔に結論をお尋ねして、NHKとしても誠意ある最後の答弁をお願いをしておきたい、こう思うのであります。  それは、第一にNHKが、解釈の相違もあったでありましょうけれども、共済組合法による共済組合でない共済会あるいは厚生文化事業団、こういうものに対して家賃を無料で貸し付けておる。これはそれぞれ言い分はあるかもしれませんが、放送法の九条に照らしても、三十九条に照らしても、これは不自然な解釈の仕方が残っておる、こういうように考えての質問であったわけであります。それで決して深追いをしようとかいう考えではなしに、建設的な気持を十分に持って、私は質疑をしてきたわけでありますから、NHK当局もあとう限り率直に答弁をお願いをしておきたい、こう思います。それによってはまた一、二問質問するかもしれませんが、答弁のいかんによっては、一ぺんで済むと思いますので、あらかじめお含みの上で御答弁を要望しておきたいと思います。
  67. 小野吉郎

    小野参考人 前二回にわたりまして、この問題については、上林山先生から非常に貴重な御嵩見を賜わりまして、これに対して私ども御答弁を申し上げました。いろいろ両事業団の性格その他に対します説明も十分に尽くしておらないようにも思います。また説明の過程におきまして、いろいろ十分でなかった点はございます。特に当初この団体に対しましては有料で借料を徴収しておる、こう申し上げた。それを次会において無償であります。際は無償が事実であります。そのように訂正せざるを得ないような不始末もございまして、まことに遺憾と思いましておわび申し上げます。いろいろ賜わりました貴重な御意見はこれを十分に参考といたしまして、われわれといたしましては、ただ形式的に法律に合致しておるとか、あるいは妥当を欠いておらないといったような通常の線をもって、会計経理の事務は満足すべきではないと思います。常に万全な処理を期すべきでございますので、いろいろ賜わりました貴重なご意見を参考にさせていただきまして、前向きの姿勢で検討をいたしまして、改むべきは改めるという所存でございますので、どうぞ御了承を願いたいと思います。
  68. 上林山榮吉

    ○上林山委員 ただいまの説明も、たとえば形式的に法律には合っていてもその運営には不十分な点があるという言葉は、私はそうは解しないのでありますけれども、先ほど申し上げましたように、これをこの辺で一応ピリオドを打とう、こういう意味で了承したのではなくて、そういう考え方はもう少し率直に改められることを希望いたしまして、この辺でおきますが、郵政大臣、あなたは最初から最後までこの問題をお聞きにならなかったので、途中からお聞きになったので全貌はおわかりにならないと思いますが、ただいまのNHK責任者からの答弁をお聞きになってどういうお考えを持っておられますか。監督官庁として、法の許す範囲内において、ただいまの答弁をお聞きになって、このままでいいと思いますか、あるいはそういうことがないように何らかの示唆なり、話し合いなりという行政指導といいましょうか、そうしたようなことをやられる御意思があるのか、これはNHKに全部まかしてあるから、あの答弁があるけれども郵政省としてはやむを得ないでしょうとごらんになるのか、その辺を一言でけっこうだから率直にお答えを願っておきたいのです。
  69. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 今のNHKからの答弁がありました通りNHKで慎重に前向きの姿勢で研究するという話でございますので、NHKとしてはおそらく研究するだろうと思います。そういうふうな場合に私の方に法律的に郵政省と打ち合わせをしなければならない、郵政省がその間に介入をすることが法律的に必要であるか、あるいは可能であるか、妥当であるかというようなことについては、ちょっと私は法律を心得ないものですから何ですけれども、おそらくNHKと郵政省とは非常に連絡がよろしゅうございますから、こういうふうな考え方はどうだろうかというような相談くらいは、少なくとも私はNHKからあるだろうと思います。ありましたら、私の方も常識をもって十分検討して、私の方の意見を言い得るものは言って、おのずからそこに調整をとっていきたい、こう考えております。
  70. 上林山榮吉

    ○上林山委員 NHK当局の意見もわかります。郵政大臣の意見もわかります。一皮むいて、前向きの姿勢でこの問題を解決するばかりでなく、NHKとして建設的に前向きの姿勢でいろいろと放送法に対する希望もあるだろうと思います。仕事がやりやすいようにするための希望もあるだろうと思いますし、また郵政省としても大局からこれを見て、その必要がある場合には、場合によっては放送法の一部改正というようなことも考えていい問題だと思います。この点を要望して私の質問を終わります。
  71. 森本靖

    森本委員 この三十四年度の決算についてでありますが、あなたの方から出て参りました資料の中で、機器納入遅滞金がラジオの項で三百十五万円、テレビの項で二百三十七万円あるわけでありますが、これは電電公社でも同じでありますが、電電公社の金額でもかなり大きな金額に上っておるわけであります。ところがNHKの方は機器が少ない関係でこのくらいの遅滞金であろう、こう考えておるわけでありますが、きょうでなくてもけっこうであります、この決算が上がったあとでもけっこうでありますが、この内訳を知らしてもらいたい。  それからもう一つ申し上げておきたいと思いますことは、本来遅滞金を納入しなければならぬようなメーカーに対しては、再度の発注を差し控えるのがほんとうでありますけれども、ところがNHKとか電電公社関係の機器というものは特殊な機材、機器でありまするので、ややもすると遅滞金を幾らとってもその次またその会社に注文しなければならぬということで、ちっとも遅滞金の問題がなくならぬ。たとえば真空管にすれば、その真空管はその会社以外には作れぬものでありますから、結局遅滞金をとってもまたその会社に注文しなければならぬという形を繰り返しておるようなことがありはしないか。これは公社あたりは相当あるわけでありますが、そういう点についていま少し遅滞金の問題については何らかのうまい方法がないものだろうかということを前から考えておるわけであります。この点についてはどうですか。
  72. 秋元為次

    ○秋元参考人 ただいま先生お話しの通りでありまして、遅滞金をとればいいというわけのものじゃございませんので、十分その点を注意いたしましてやっていきたいと思っております。
  73. 森本靖

    森本委員 これは今言いましたように、非常に独占的な会社が多いわけでありますので、なかなかNHKの方でも直そうにも直しにくい点があるのじゃないかと思いますけれども、そういう点の上にあぐらをかいて、こういうことをいつまでも繰り返すということでは、まずいと思います。特に遅滞金を徴収したようなところは厳重な注意を与えて、次からこういうことが起こらないように、特に私はこの問題について要望しておきたいと思います。三十五年度の決算ではどうなっておるかわかりませんが、あまり遅滞金は減っておらぬのじゃないかという気がするわけであります。いずれにしてももう少しこの点については注意をしてもらいたいというふうに考えておるわけであります。  それから、もう一つこの決算に関連して聞いておきたいと思いますることは、四ぺ−ジにあります固定資産の中の宿舎の増改築ということであります。この点に関して、現在NHKの宿舎については管理職部門の宿舎と一般職の宿舎というふうに分けて、どの程度ありますか。と申しますのは、一般の官公庁に比してNHKのような事業性格を帯びておるものについては、電電公社とか郵政省もそうでありますけれども、それよりもさらに上回って、この宿舎というものが必要でないか。というのは、異動交代というものが郵政省あるいは公社と比べてもっと多いのじゃないか。たとえば郵政省なんかにすべれば、ほとんど課長以上の異動になりますけれども、このNHKのような事業性格でありますと、アナウンサーからプロデューサーから、そういうものに至るまで異動交代というものがあるわけであります。そういう観点からいくとするならば、少なくとも宿舎の数というものは、一般の逓信委員会の中におきまするその他の公社、郵政省に比べて、数がかなり多くてもいいものではないかというふうに考えるわけでありますが、そういう観点からいきますと、現在の管理職、それから一般職に分けて、宿舎というものがどの程度になっておるか、こういうことであります。
  74. 秋元為次

    ○秋元参考人 お答え申し上げます。  三十四年末で申し上げますと、協会で持っておりますのが千五百九十七戸であります。寮の数が千百四十七、全体を合わせますと二千七百四十四ということであります。なお先ほど先生が御指摘になりましたように、転勤の場合につきましては必ず宿舎を確保するというような条件になっておりますので、その点につきましては十分準備をいたしているわけであります。
  75. 森本靖

    森本委員 これは赤城理事に聞いた方が早いと思うのですが、現行の宿舎はどうなっておるのですか、宿舎関係の担当の専務はだれですか。三人おる中で担当を分けておるでしょう。三十四年度の決算でなくて、現在の宿舎はどうなっておるか、こういうことです。
  76. 溝上けい

    ○溝上参考人 非常に共通的なものは私が直接担当しておりますが、ただいまの宿舎の問題につきましては秋元君から答弁させます。
  77. 秋元為次

    ○秋元参考人 ただいま先生から御指摘がございましたところの三十六年度末の−宿舎の数につきましては、ちょっと資料を持っておりません。考え方といたしましては、転勤その他につきましては、条件といたしまして宿舎を確保するということを建前といたしております。後ほど、その資料につきましては先生の方にお届けいたしたいと思います。
  78. 森本靖

    森本委員 これは赤城さんの担当だろうと思うけれども、今経理局長が言ったように、宿舎を確保していなければ転勤その他についてはやらないということでありますので、その方針は私はけっこうであると思います。しかし、現行の宿舎の数ではそういうことが不可能ではないか、だから転勤をさせようにもさせられない、今のような原則を立てていくとするならば、こういう形になってくるのではないか。私はよその放送局は知りません。地元のところを見ておるとその点が浮き彫りにされてよくわかってくるわけであります。そういう点で宿舎の数が−総数がわからぬので残念ですが、今のような原則でいこうとするならば、少なくとも宿舎の数というものはかなり少ないのではないかという気がするわけでありますが、その辺はどうですか。
  79. 赤城正武

    ○赤城参考人 現状から申し上げますと、やはりこれは社会的ないろいろな原因もございますが、絶対数から申しますと、そういう転勤の場合その他の場合を考えますと非常に少ないわけでございます。そういう場合は、やはりそういう家の制約によって転勤を制約することができませんので、借り上げ社宅−借り上げをいたしまして一応そこに入ってもらう、そういうことで全国的にまあ異動をやりますけれども、やはり転出する者もございますし、結局入れかわりというような格好もございますので、大体支障なくいっていると考えております。
  80. 森本靖

    森本委員 それでは試みにちょっと聞きますが、本年度末に借り上げ宿舎をやっておる人は、なんぼありますか。
  81. 赤城正武

    ○赤城参考人 今ちょっと資料を持っておりませんので……。
  82. 森本靖

    森本委員 資料がなければあとでもけっこうでありますけれども、それで特に私が聞きたかったのは、この借り上げ宿舎の制限があると思うのです。たとえば一度借り上げておいて、それから今度あなたの方で宿舎料をとる、こういう形になっておるでしょう。だから借り上げ宿舎の最高額の制限がおるでしょう。どうですか。
  83. 赤城正武

    ○赤城参考人 それはやはり年間予算でやっておりますので、そうたくさん赤字を出すわけにはいかないと思いますけれども、その辺は運営上いろいろ工夫いたしまして、転勤には差しつかえない借り上げをやっておるわけです。ただし転勤しないでそのまま全部を入れるという趣旨ではございませんから、転勤の場合を考えておるわけですから、その点御了承願いたいと思います。
  84. 森本靖

    森本委員 私が聞いておるのは、借り上げ−宿舎の場合は、たとえば地方局の所在地については、最高額が幾らまでというふうな制限があるんじゃないか、こう聞いておるわけです。
  85. 赤城正武

    ○赤城参考人 大体の標準はきめておりますけれども、やはり具体的に当たってみないとわかりませんですから、標準といいますか、それで制約して、非常に窮屈に考えておるというようなことはやっておりません。
  86. 森本靖

    森本委員 私が最後に聞きたいのは、借り上げをする場合、今の現行の、いわゆる家賃とあなた方が考えておる借り上げの基準というものと合うかどうか。具体的に言えば、この今の借家の場合になかなか合わぬような基準じゃないかということを私はいろいろ聞いておるわけでありますが、そういう場合に、あなたが言っておるように臨機応変の措置をとれるならばいい。あなたの方ではとったつもりでおるけれども、なかなか下の方では、依命通牒で上から一つ通牒が出ると、その遮り本社から中央放送局、末端の放送局まで行くわけでありますから、あなたが頭の中で考えておるようにそうしごく簡単に実情に合うような運営をしておるとは、私は思えぬのであります。だから、こういう際に一つこういう点については、われわれの方から言っておけば下部末端の方でもやりよいのじゃないか、こう考えて、あなたが今おっしゃったように、臨機応変の措置を適当にとれるということであるとするならば、それはまことにけっこうでありますけれども、なかなかその臨機応変の措置が下部末端ではとられないというのが実情ではないか、こういうことであります。あなたがおっしゃるように、臨機応変の措置をとってやるということであるとするならば、これはまことにけっこうでありますが、その辺を一つちょっと念を押して聞いておきたい、こう思うわけです。
  87. 赤城正武

    ○赤城参考人 森本先生のおっしゃるように、末端においてそういうことがあったとすればはなはだ遺憾でございまして、やはり、これは職員のそういう厚生関係に非常に関係することでございますので、十分今後検討して善処したいと考えます。
  88. 森本靖

    森本委員 これ以外にも三十四年度の決算についてはいろいろありますけれども、大体われわれがながめたところ、それぞれ細部にわたりましては相当突っ込んで聞かなければならぬところもありますし、またちょっとおかしいなというところも若干はありますけれども、大綱的に見て、われわれとしても承認をするにはやぶさかでないというのが、この三十四年度の決算内容でありますが、ただ私が最後に申し上げておきたいと思いますることは、先ほども私が言いましたように、何分事なかれ主義で、全部とにかく承認を受けたらいいということでなしに、私はNHK当局というものは決算を受ける際にも、その決算内容については事こまかく報告をして、そうしていけないところはいけない、いいところはいいというふうに、この委員会において率直な批判が受けられるようにあなたの方の準備もしてもらいたい。先ほども言いましたように、わが党の委員がみな言うものですから、資料を出せ、こう言えば資料はほとんど何十万件一括で資料を出す、こういうことでなしに、われわれ委員会の方も別にあげ足をとってどうこうしようという気は毛頭ないのでありますから、全体的に予算が正しかったかどうか、こういうことをわれわれとしては審議をして、次年度の予算編成にこれを参考にしていきたい、こういうことでありまするから、そういう点については、今後もわれわれはこの決算審議ということについては、予算審議に比べると若干おろそかになっておるという観点があるわけでありまするが、そういう点はわれわれ委員会の方も今後はあらためて決算についても予算同様相当詳細に検討していきたいというふうに考えておりますので、NHK当局におかれましても一つそういう心がまえで今後の決算審議には臨んでもらいたいということを私の方は要望しておきまして、応私の質問を終わります。
  89. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 受田新吉君。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 私は一言だけ受信料の未収金についてお尋ねしておきたいと思います。三十四年度の決算におきまして二億六千六百二十一万円の未収入金があるわけでございますが、この翌年度における徴収不能見込額三億一千七百万円を欠損引当金として計上したと、こう書いてあるわけです。これは具体的にどういうことになるのか、不能額の予測ができるというのはどういうところを根拠にされておるのかお尋ねしておきたい。
  91. 小野吉郎

    小野参考人 受信料の徴収にあたりましては、できるだけこれは完全に納付されますように努力いたしておるわけでございますが、いろいろな事情もございまして、未収になって処理しなければならないものができるわけでございます。これにつきましては、やはりNHKの権利といたしましてこれを保有しまして、できるだけそういった米収金を早く回収できるような努力をいたしておりますが、どのように努力いたしましても回収困難という段階に来るものがございます。それが欠損金としてここに計上されておるわけでございますが、そこまで至ります具体的な措置といたしましては、二年間は米収金として処理をいたしまして、これを回収する努力を二年間継続していたしております。二年たちましても回収できないものは、これは将来どのように努力しましても大体回収困難、こう見受けられるのが在来の例でございますので、一年間後におきましては、その額を欠損金で処理をいたしておるような次第でございます。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 受信料収入が百三十七億出ているわけですが、大体二億六千万、そうしますと、これは約二%ですね。二%も受信料徴収ができないのがあるわけですか。こんなに多いわけですか。
  93. 小野吉郎

    小野参考人 現在の状況を申しますと、徴収の関係につきましては、いろいろ万全の措置をとっておりますが、大体正規に入っておりますいわゆる収納の成績から申しますと、九七・五%くらいになっております。そういたしますと、二・五%は所定の通りに支払い月に支払われなくて、未収金になるということでございますが、その中からさらに未収金の回収の努力をいろいろいたしまして、ある程度のものは入って参ります。それを二年間ずっと続けましても、どうしても回収できないというものが、そこに計上してあります額に相当するものでございまして、これはどのように努力をいたしましても回収不能と見られるもので、欠損金に処理しておるわけでございます。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 私はこの受信料が払えないという貧困家庭の場合がその中にあることと、故意に払っていないのと、二通りあると思いますが、新婚早々でラジオテレビを、取りつけておったのであるが、手続がおくれたというのを、本人が故意に受信料納入を拒否したためにそういう結果が生まれたというようなかどで、特にNHKの担当の職員、あれは外務員というそうですか、出かけて無理やりにこれを摘発して検事局まで送って、その新婚早々の家庭が非常に苦痛を感じたという具体的事例にも私触れておるわけです。この取り扱い方にも、家庭の事情などというものを十分考えて、きびしくやるものは手きびしくやり、しからざるものは適当に温情をもってやるとか、こういうことは実際にされていると思うのです。ところが担当職員の中には、何か摘発の功績に対する奨励金があるのでしょうが、そういうことで非常に強力な摘発措置に出るような人もあって、その取り扱い方が不公平になっているのじゃないかと思うのですが、これにNHKとしては、大局から見てどういう取り扱いをされておりますか。
  95. 小野吉郎

    小野参考人 徴収の実態につきましては、できるだけ徴収の支払いの能力のある方に対しましては、いろいろな事情で一時未収金になりましても、回収の努力を続けて参っております。先ほど御指摘の検事局送りの例は初めて聞くわけでございますけれども、一面におきましては、非常に貧困であり、あるいはその他の事情においてこれは受信料を徴収することが無理であるという面につきましては、政策的に料金を免除する措置をとっております。にもかかわらず、残余のものにつきましても、いろいろ回収の実態に当たってみますと、そういった免除の中には該当いたしませんが、いろいろ経済上の事由等でこれをどう努力しても徴収するのは無理だというものは、未収金の面で相当な数に上るわけでございますが、先ほど申し上げましたように、そういう面については、二カ年後においては、大体将来努力を継続しても徴収不可能と見て欠損金で処理しておるわけでございますが、その間の処理につきましては、できるだけ実情に沿いますように公正に扱うような努力をいたしておるわけでございます。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 私が申し上げた検事局送りは、ラジオテレビの無料聴視をやっているというので二階に上がり込んで部屋へ入ろうとしたときに、これを押し出してけがをさせたということが原因の事件でございます。そういうふうに抑制的に家の中へ入ってきて、ラジオがあるじゃないか、テレビがあるじゃないかというので乗り込むというような形、それから派生した事件、それが今検事局送りになっておるのですが、そういうふうに無理やりに家の中に乗り込んでやるということになっておるのですか。
  97. 小野吉郎

    小野参考人 そのようなことは厳にいたさないようにしております。受信者の方々の協力によりまして、円満に契約をしていただく、また円滑に料金を支払ってもらうことを理想といたしておりますので、未収金の関係につきましても、何回となく回りまして、その家庭の経済事情などによって決してそのような無理じいはいたしておらないのが現状でございます。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 その現状であればいいのですが、中には、何か摘発すると奨励金のようなものが出る制度がありますか。
  99. 小野吉郎

    小野参考人 契約をとりますと、それに対しまして契約獲得の手当は出しております。しかし、それゆえに今のような法律上できない家宅侵入のような事柄は事実上もできませんし、またわれわれとしてもそういったことはやるべきではないということで、そういった面は、集金に当たる向きに対しましては十分に訓練いたしておるつもりでございますので、私ただいまそういう事例を初めて承るわけでございますけれども、協会といたしましては、法の許された限度におきまして、しかも受信者の方々の事情とも関連をして、常識の線、妥当な線で徴収に当たるように訓練をいたしておるつもりでございます。
  100. 受田新吉

    ○受田委員 これは私が直接関係した事件ですから、御相談に行こうかと思ったのですが、応遠慮しておったわけです。本人たちは、そのために非常に精神的な苦痛も感じ、また経済的な負担もしました。けがした人の治療費なども負担した、こういう事件があったわけです。受信料を徴収されるにあたって、非常に親切に、できるだけ本人の意思で納入できるように指導されているはずだという今のお話ですが、この点は末端の担当者に十分徹底されて、このNHKという良識を持った機関が権力機関であるような印象を与えないような努力をしてほしいと思います。  もう一つ、二%以上も未納金があるということは、やはり重大な問題だと思います。これをどうして徴収するか、いろいろ工夫しておられると思いますが、その工夫を最後に承って、今後これをどういうふうにして減らしていくか、本年度あたりは相当減っているかどうか、具体的な実情も承っておきたいと思います。
  101. 小野吉郎

    小野参考人 先ほど申し上げましたような徴収の率は、所定の払うべき時期における持点で考えますと、九七・五%くらいは満足に払うべき時期に払っております。残余のものは未収になりますが、一カ月おくれ、二カ月おくれでだんだ回収をされますが、二年間どうしても回収できないものは、ほとんど回収不能でありまして、協会の損夫として欠損に計上しているわけでございますから、その辺から申しますと、今の具体的な回収の工夫、努力の関係については、いろいろ聴視者方々に都合のいいような時期に何回も参上しまして、支払いをしていただくようにお願いし、努力しております。今回受信料の体系がこの四月から変わりまして、在来の受信料の体系そのものに対していろいろな受信者から投げかけられていた不平不満は、一応解消することが予想されますので、徴収の成績の上にも現状よりも改善された形において結果が出てくるのではないか、このように予想しております。
  102. 受田新吉

    ○受田委員 もっと数字的にお答え願いたいのですが、今の未収金というのは、契約されたものに対する未収金ですが、契約しないで事実盗聴しておった、こういうものは入っていないわけですね。  それともう一つは、二年間たってもまだ納まらないものがどのくらいあるのか、数字一つお示し願いたいと思います。
  103. 小野吉郎

    小野参考人 まず最初に御質問の点でございますが、契約していないものに対しましては、金額的には収納の成績の上にも出て参りません。従いまして、未収の率の関係の中にも全然出て参りません。これがどの程度あるかはいろいろ正確な把握は困難でございますので、全然皆無であろうとは考えられませんけれども、その辺の面も漏れなく契約をいたしていただけるような努力はいたしております。現在未収になり、あるいは未収をさらに欠損にいたしますものは、契約をいただきまして、支払ってもらわなければならない原因ができておりますものの中で、まだ支払いが未済になっておる、こういうものがあるわけでございます。これは大体年間で申しますと、六億くらいはございます。それは漸次二年間にいろいろ回収の努力をいたして参るわけでございますが、二年たちましても徴収ができなかったというものが、そこにあります三億何がしの欠損金ということになって、もう回収をあきらめることになるわけでございます。
  104. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 他に質疑がありませんので、本件に対する質疑はこれにて終了いたしました。
  105. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 これより討論に入るわけでありますが、討論の通告もありませんので、直ちに採決に入ります。  本件について異議なきものと決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  106. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 起立総員。よって、本件は異議なきものと決しました。  なお、本件に関する委員会報告書の作成につきましては、先例により、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 異議なしと認め、さよう決します。  この際、日本放送協会副会長、溝上君より発言を求められておりますので、これを許します。溝上副会長。
  108. 溝上けい

    ○溝上参考人 昭和三十四年度の当協会の決算につきまして詳細に御審議をいただき、本日御承認下さいましたことを厚くお礼を申し上げます。今後とも業務の改善に十分に気をつけてまいりたいと思いますので、どうぞよろしく御指導をお願いいたします。ありがとうございました。      ————◇—————
  109. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 この際、参考人招致に関する件についてお諮りいたします。  明十二口の当委員会におきまして、宇宙通信に関する問題について、国際電信電話株式会社より参考人を招致し、意見を聴取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決します。  なお、参考人の人選につきましては、委員長に御一任を願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  111. 佐藤洋之助

    佐藤(洋)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決します。  次回は明十二日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開くことといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十二分散会   〔参照〕 日本放送協会昭和三十四年度財産目録貸借対照表及び損益計算書に関する報告書   〔別冊附録に掲載〕