○畑
委員 私は、
日本社会党を代表いたしまして、議題の案件に対し、
承認を与えることに賛成の意を表するものであります。
この
日本放送協会の昭和三十七年度収支予算、事業計画及び資金計画は、かねてからの懸案であった
放送受信料制度の全面的改革を実現するとともに、この改革を契機として、新長期計画の発足をはかることを主軸として策定されており、
NHKの事業史の上に画期的な意義を残すものと思われます。
この収支予算等の要目の
一つである
放送受信料制度の
改定は、現行
制度が、
テレビ高度普及下の
放送事情に対する適応性を失い、その正常な施行の確保が困難になってきたことから、これを全面的に改めようとするものでありますが、今回の新
制度は、ほぼこれと同様の
制度を採用しているヨーロッパ諸国の先例等から見て、きわめて常識的な
制度といえるばかりでなく、
改定の趣旨にも適するものと見られ、また、その
受信料額も、受信
契約者の
負担軽減と
協会財政基盤の安定とのかね合いとして、おおむね適当な算定であろうと思われます。
第二の要目である第二次六カ年計画は、
受信料制度の
改定によって
協会財政基盤の安定が得られるのを機に、新たな展望に立って
協会の将来設計を立てようとするものでありまして、当年度計画は、その長期構想のもとに、
放送網の整備、拡充、FM実験局の増設、
放送番組の充実、刷新、通信高等学校の設立、その他の
放送利用の促進、国際
放送の拡充、
調査研究の強化、経営管理の合理化等の諸施策を積極的に推進しようとしておりますが、これらの重点的諸施策は、いずれも
協会の使命に照らして適当なものと思われ、その成果に期待をかけるものであります。
以上申し述べましたように、わが党は、この収支予算等に対しては、おおむねこれを適当と判断するものでありますが、その実施等につき、この際若干の希望を表明しておきたいと存じます。
まずその第一は、
放送受信料制度についてであります。今回
改定される新しい
受信料制度は、前述のようにおおむね妥当な
制度と考えられますが、この
制度には、
テレビ単設者に対しても、
ラジオを含めた
契約を強制することになるという
制度上の難点があるほか、この改革に伴う
受信者の利害の変化にも微妙なものがある等、その実施にあたっては注意を要する点が少なくないと思われます。
制度上の問題については、今度施行の過程において、
テレビ、
ラジオの併置を勧奨する等の努力によって発展的に解決をはかるとともに、
改定趣旨の徹底についても、格別の工夫と努力とが望まれるものであります。
第二は、
放送網の整備についてであります。第二次六カ年計画に入って、
テレビ放送網の整備はいよいよ急ピッチになって参りますが、中波
放送の場合と異なり、
テレビ放送網においては可聴地域の空白が著しく目立つばかりでなく、
テレビが文化の尺度に見られるところから、難視聴地域の救済が特に切実な問題となってくるものと見られます。かかる点からして、政府並びに
NHK当局は、難視聴地域に対する周波数の手当、置局等について、一そうの促進をはかられるよう希望するものであります。
第三は、
放送番組の刷新、充実に関してであります。近時、民間
放送を含めて、
放送番組については、かなりきびしい世論の批判があり、はなはだしきは
放送の功罪にまで及ぶものがあり、すべての
放送事業者を通じて改善の努力が望まれますが、特に
NHKにおいては、
放送界におけるその役割と地位とに顧みて、真に豊かですぐれた
番組の編集に努めることが必要であり、特に近く本
放送の開始の運びとなると見られるFM
放送については、実験局の段階においても、そのあり方を工夫することが期待されるのであります。
第四には、国際
放送の拡充に関し、政府に希望しておきたいと存じます。国際
放送の拡充に関しては、数年来、予算審議のたびごとに政府交付金の増額を要望して参りましたが、この三十七年度予算においても、国際
放送費四億五千九百万円余のうち、政府交付金はわずかに一億八百万円余にすぎず、わが党の要望はほとんどいれられておらず、近時、国際
事情の変転が活発、微妙なおりから、政府の積極的な
態度が望まれるのであります。
第五は、
調査、研究についてであります。これも数年来強調してきたところでありますが、最近における
放送に関する科学、技術の研究は、いよいよ高度化し、しかも、その分野はますます拡大しており、これらのすべてを
NHKの自主研究にまかすことは適当でなく、基礎研究のごときは、国の責任において行なうことが必要であり、これ
がためには、
放送法の研究命令条項の河川をはかるべきであると考えられるのでありまして、この点について政府の再考を望むものであります。
第六に望むことは、従業員の待遇改善について、なお一そう留意願いたいということであります。この点については、あらためて
説明の要もないところであろうと存じます。
最後に、特に希望しておきたいことは、予算の執行にあたっては、厳に経理支出の放漫化を戒められたいということであります。受信
契約者の伸長に伴って、年々
NHKの予算は膨張し、事業費、建設費を通じて多額の経理支出を行なうことになりますが、かかる
事情のもとにおいては、とかく支出の放漫化を来たしやすく、特に戒心を要するところであります。
NHK当局は、かかる勧告を心外とされるかもしれませんが、
法律によって保障された
受信料収入によって経営をまかなう
NHKとしては、その使途につき細心の注意を払うことは当然の責務であり、また、このことは
国民の寄託に沿うゆえんでもあることに思いをいたし、経理運用の適正につき不断の関心を寄せられたいのであります。
以上、数項にわたって希望を申し上げて参りましたが、わが党は、本収支予算が適実に実施され、
NHKの
放送が、六カ年計画の標榜するごとく
国民生活の充実向上に資することを切望し、私の討論を終わります。(拍手)