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1962-04-20 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十日(金曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       伊藤 五郎君    宇都宮徳馬君       大久保武雄君    岡田 修一君       金子 一平君    久保田藤麿君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       津雲 國利君    永田 亮一君       濱田 幸雄君    藤井 勝志君       古川 丈吉君    坊  秀男君       吉田 重延君    田原 春次君       戸叶 里子君    広瀬 秀吉君       横山 利秋君    春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         総理府事務官         (恩給局長)  八卷淳之輔君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (主計局次長) 谷村  裕君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      平井 廸郎君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      鈴木 喜治君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    橋口  收君         日本開発銀行副         総裁      平田敬一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月二十日  委員井手以誠君辞任につき、その補欠として戸  叶里子君が議長指名委員に選任された。 同日  委員戸叶里子辞任につき、その補欠として久  保田鶴松君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五七号)  昭和三十七年度における旧令による共済組合等  からの年金受給者のための特別措置法等規定  による年金の額の改定に関する法律案内閣提  出第七〇号)  外国為替銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第六一号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議開きます。  昭和三十七年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案、及び外国為替銀行法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。広瀬秀吉君。
  3. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 旧令による共済組合等からの年金受給者のための云々という大へんフル・ネームの、長い法律案でございますが、要するに今回の法律等の趣旨は年金受給者年金算定基礎となる仮定俸給を、たしか昭和三十四年と思いましたが、それ以降上げていなかったものを今回二万五千円ベースから二万円ベースにする、また障害関係年金では二万四千円ベースにしよう、こういうことでありますが、まず第一に、大体において公務員なりあるいは公共企業体なりの現在の給与ベース、それから仮定俸給表における給与ベースは、私の比較、対照したところでは少なくとも六年以上のおくれがあると見ておるわけでありますが、その点について当局としてはどのようにお考えになっておられるのか。今度引き上げましても、なおかつ相当なおくれというものはさして縮まっていない、こういう工合に考えるのですが、それらの点について一つ見解をお聞かせいただきたいと思います。
  4. 谷村裕

    谷村政府委員 ただいま広瀬委員指摘通り、今回の本件の改正恩給法改正と相待って行なうものでございますので、主体は恩給の方について考えられたわけでございます。そうしまして、またただいまおっしゃいました通り現在の公務員給与水準ベース恩給あるいは年金等算定基礎になっております仮定俸給との間にはズレがございます。それが、ただいまかりに木提案のごとくいたしましても、昭和三十四年程度ベースになるわけでございまして、従ってそういう点では三年、さらに改正前で言えばもう少し高い——六年と言われましたが、正確に六年であるかどうかちょっと記憶いたしませんが、確かにズレがございます。しかしながら恩給というものの考え方あるいは年金というものの考え方は必ずしも公務員給与ベースが現にある水準まで恩給受給者なり年金受給者なりの方々のベースを常にパラレルに持っていくというふうに考えておるわけではございませんので、現実公務員給与ベースというのは公務員職務並びにその職務内容等に応じて適切な社会生活を営むために支給するといういわば報酬的な建前でございます。恩給あるいは年金と申しますものは、いわば広義における社会保障的な考えから一定の生活に事欠かないようにしようということでありまして、給与ベース恩給ベースとの間に必ずしも常にパラレルであるということではないと思います。しかしそこにある程度の社会的な、経済的な考え方から見た関連性と申しますか、そういうものはあろうかと存じます。
  5. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今、後段にお答えになった面については、いろいろむずかしく論議をすれば果てしない議論ができるところだろうと思うのですが、しかしながら旧令共済組合あるいは恩給法時代、こういうようなものが一体どういう性格を持っておったのか、当時まだ社会保障という明確な概念に基づいてこういうものが設定をせられたというものでなかったと思うのです。しかもいろいろ給与あと払いであるとか、あるいはいわゆる恩給の場合には、陛下に対する不定量の忠誠の義務というようなものに対してあとからその者について何らかの形で生活のめんどうを見てやるという恩恵的な、特恵的な要素というものもあったろうと思いますが、そういうような本質というものは旧令共済あるいは恩給の場合どのようにこれは若干差はあろうと思いますけれども、当時の身分の差に基づいてそういう制度がいやおうなしに二つに分けられて利用されておったわけでありますが、そのようなことについてどのように理解をされておるのかということを伺っておきたい。
  6. 谷村裕

    谷村政府委員 確かにただいま広瀬委員の仰せの通り、かつて恩給というものの中心をなしておりました考え方は、官吏の特殊な職務体系に基づきまして、その在職中の労苦を退職後において報償しておくと同時に、また官吏生活中におけるいわば、言葉は悪うございますが、しっかりした生活をちゃんとやれという意味があったかと思います。その関係恩給であろうと共済組合であろうと、まあ共済組合の方には若干それよりいわゆる共済的な色彩があったかと存じますが、少なくとも年金に関する限りは大体似たような考え方であったかと思います。一番この性格がはっきりと変わって参りましたのは、戦後にいわゆる軍人恩給の形において恩給の大部分軍人恩給が占めるような形になり、しかもその軍人恩給についての考え方と申しますものが、いわゆるかつての軍部官吏に対する恩給というよりも、軍人遺家族に対する処遇、経済的に何かしてやらなければならないという問題として実質的には理解されておりながら、形式的には恩給という形になっているところに非常に大きな問題があったろうかと思います。そこでただいまのいわば恩給についての見方と申しますのも、軍官あるいは旧雇用人というようなものと軍人遺家族というようなものの考え方本質的にはいろいろ問題があろうかと思います。これは確かに先生おっしゃる通り議論し出すと非常にむずかしい問題だと思います。しかし現実に今の時点で考えますと、われわれ一般公務員は新しく共済年金制度に切りかわっており、いわば恩給というものあるいは旧令共済というものは、過去の経過的な問題の整理と申しては悪うございますが、過去の問題からのつながりとして実は考えておるわけでございます。そういった意味で、先ほど私が申し上げましたように、必ずしもいわば昔の天皇の官吏としての恩給的な考え方ではない、しかしながらまた今の共済年金的な考え方でもない、いわばその中間をいくようなところで妥協的に処理されている問題ではないか、かように考えているわけでございます。
  7. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 その本質論についてここでやるのは主眼ではありませんから、その程度にしておきますけれども、公務員給与ベースそのもの仮定俸給ベースとを比較しようという考えは私は毛頭ないのです。もちろんそれは労働に対する現時点における対価だという観点からすれば、それはもう比較すべきものではない。しかしながらそれは同時に、今日その給料をもらっておって定年に達してやめるということになりますれば、その給料がそのままやはり共済年金算定基礎になるという関係は厳然としてあるわけであります。そういうような点から比較いたしまして、現在やめる、それから旧令の最後のころでやめたというような人との間のバランスというものを見てみますと、たとえば、これは実際にある例を幾つかあげますけれども、三十五年勤続をいたしました国鉄の操車掛という、これはヤード、駅で旗を振っている人です。これが旧令の年金時代にやめた、三十五年勤続、それで八万六千二百円の年金を今もらっておるわけであります。ここ二、三年のところでやめた新法適用者は十七万一千八十三円。それから整備掛、これは客貨車などの清掃などをしている人たちですが、これが二十年勤続で、旧令によるものが四万三千二百円、新法の場合に十万一千九百四十三円、それから線路工手、世間では線路工夫といっておりますが、二十五年勤続で四万一千六百円、新法では八万一千七百五十一円。工場で機関車客貨車を直したりしている人、これが六万二千四百円、新法では十三万九千八百九十二円、これは現実にある数字であります。しかも、できるだけ新法に移向する直前あたりのところをとって見ておるわけですが、こういう開きがあるわけです。大体半分以下だという現実が出ているわけです。今日恩給法が逐次改善をされてくる、あるいは戦傷病没者等援護法というようなものが逐次改善をされてくるというようなことで、やはり生活保障しても、その間に年金受給者が何ら責任がなくて物価がどんどん上がる、賃金が上がるというようなことで、当時としては、これは旧令年金法適用を受けておるような人たちが、たとえば八万六千円というようなのは、これはかなり当時といたしましてはどうにかやっていけた。老人夫婦二人生きていくにはどうやらやっていけるというようなところだった。ところが現在はもう十七万一千円という倍になっても、ちょっとむずかしいというような状況もあるというようなことから、この間の差を縮めていこうというような、新しい考え方なり要素なりというものが入って、逐次こういうようなベース改訂というようなものも行なわれてきていると思うのですね。そうだとすれば、やはりできる限りこれを近づけていこうという努力は当然なされてしかるべきだと思うのです。そういう意味で、今度引き上げられたのはけっこうなんですが、まだその引き上げ幅——私は完全に一致しろ、同一水準に持っていけというところまで言おうとは思いませんけれども、もう少し引き上げの幅を大きくしてもよかったんじゃないか、このような気がいたすわけであります。従って、この際数字をちょっと伺っておきたいのですが、今までの旧令共済年金の総平均というようなものがおわかりになっておりましたら、それを一つお示しをいただきたいわけなんですが、その点おわかりでしょうか。
  8. 平井廸郎

    平井政府委員 旧令共済年金受給者平均額は、現行で平均いたしまして六万三千円程度であろうと思います。
  9. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 大体六万三千五百円ぐらいだろう、これは参議院においても、たしか恩給局長が六万三千五百円という答弁をされておるのですが、大体そんなところです。それで新法移行後のやつが大体どのくらいになるか、これの平均をとってみられたことがありますか、公企体なりあるいは新法適用者平均給与額——それじゃそれはあとでけっこうです。それでこれは谷村次長にお伺いしたいのですが、生活保護基準というようなものも逐次引き上げられて参っておりますが、ただいまあげられた大体六万三千円ぐらいだろうという、これを十二分いたしますと、月額五千二百九十円、こういうことになるわけでございますね。それで生活保護基準の場合には、これは男女で若干の差はございますけれども、生活保護を受ける老人が二人おったといたしますと、二人で四千四百五円、第二類のものとして千三百八十五円がプラスをされまして五千七百九十円になる。これは今度の引き上げ以前の数字であります。そのほかに季節加算などもあります。季節加算があれば千六十五円さらにつけ加わる。そういたしますと、生活保護法基準生活保護を受ける老人夫婦がおったといたしますと、これは六千八百五十五円になる。季節加算を抜いても五千七百九十円ぐらいになる。これは上がる前であります。今度上がればもっとなるわけでございます。さらにこれが七十才以上になれば、二人分で千玉百円というものがつけ加わりまして、八千三百五十五円ということになるわけであります。ところが、二万四千円以上の公的年金を受ける者は、今までの法律ですと、これは今度若干変わっておるかと思いますが、それ以上の年金をもらっておる場合には福祉年金は併給されない。生活保護法の場合には福祉年金がその上にもらえる、こういうことになりますと、共済年金平均額以下のものが相当おるわけですね。平均で六万三千五百円、月額で五千二百九十円。そうなりますと一般的な比較においても六千八百五十五円、五千二百九十円。さらに七十才以上になって福祉年金を併給されるということになりますと、八千三百五十五円ですから、約三千円以上の開きが出る、こういうようなことも現にあるわけでございます。今度生活保護法基準額引き上げられた。そしてこの年金の方も若干引き上げられることになる。この間においてこういう生活保護法適用者よりも低い年金を受ける者がなお相当あるのだろう、こういうように私は数字的に推定をするわけですが、そういう関係についてどのように考慮されて、どういう数字比較になるだろうか、この点についておわかりでしたら答えていただきたい。
  10. 谷村裕

    谷村政府委員 正確に数字をあげるわけにもいかないのです。記憶もあまりはっきりいたしておりませんし、書いたものもございませんのでお許しいただきたいと思うのでございますが、考え方といたしましては、旧令共済であれ、あるいは恩給であれ、また、ただいまわれわれがもらうことになっております新法による共済年金であれ、あるいはまた一般勤労者に対して支給されることになっております厚生年金であれ、一般的な意味において広い意味での公的年金水準がどういうふうにあったらよろしいかという問題であろうかと思います。そして、そういった一般的な意味における公的年金の中にも、すでにしばしば御指摘をいただいておるがごとく、国民年金においてはどうであるか、あるいは厚生年金はまだ低きに過ぎないか、逆に一般公務員年金はそれに比べたら厚遇され過ぎているのではないか等々いろいろな御意見があるわけでございます。そしてまた、かような公的年金全体と社会保障における最低の線を画するような意味における生活保護基準、これとの関係もしばしば議論される通りでございます。私どもの考え方といたしましては、年金等二つ内容を持っておりまして、一つは、確かに国民全体を通ずる老齢になってからの生活保障を与える老後保障的な意味のもの。そしてそれは生活保護体系における生活保護費等よりはもう少し高い程度のものであるだろう。しかしながら、第二に、一般年金の中には、、長い間勤労生活をやってきた間のいわば社会的な蓄積として、一般的な蓄積の見返りとして与えられる部分もあるだろう、そういうふうに二つの色合いがあるかと思うのでございます。一般年金的な考え方と申しますものは、それが生活最後のささえにならなければならぬかどうかということになって参りますと、私は、御説の通り、確かに最低の線を見なければならぬ点が一つあるかと思います。それが今の生活保護に対して低いではないかというふうなお話がございますけれども、これは現実に個々の問題について見なければならぬと思うのでございます。かりにそういう程度の、年金だけでしか暮らしができないのだ、ほかに何らの収入源がないという方があるとしましたら、それは年金でもってカバーすべきか、生活保護でもってカバーすべきかという現実の問題がございます。しかしながら、一般的に、御指摘になったような意味において、少なくとも公的な年金がカバーすべき水準と申しますものは、生活保護費水準よりは若干高いところであってしかるべきだ、さような考え方でおります。さような意味合いにおきまして、現実俸給水準にはとても直ちに追いつくというわけではございませんが、逐次そういった面の改訂というものは行なわれることになるものだろうと考えます。
  11. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いろいろお答えいただいたわけですけれども、いずれにいたしましても、旧令共済の中でやめられた人たちは、敗戦、物価高騰消費物価水準でも大体三百五、六十倍になっておるわけであります。そういうことになりますと、戦前年金裁定を受けた当時は老人夫婦がどうにか肩身の狭い思いをしなくても生きていける程度水準であったはすです。それがその後の状況の変化によりまして、もう老人二人が生きていく半分にも足りないような現実が出ている。当時の貨幣価値がそういう状態であるが、旧令時代にやめた人は、世の中が変わっても、どうにか昔と同じような水準で老後の生活ができるという期待権を持って、共済組合の掛金も喜んでかけて長期間お国のために働いてきたわけです。そういう観点から考えるならば、今次長答えの中にも、最低保障の面を何らかの形で考える必要があるではなかろうかというような御意見があったわけでありますが、そういう点をより一そう比較検討いたしまして——とにかく旧令年金受給者が今どうも納得いかない、割り切れないという気持の最大のものはこういう比較にあると思います。生活保護世帯よりもわれわれはもっとひどいと嘆いておるわけです。従って、そういうのを解決するために今後一そうの努力をしていただきたいと思うわけです。  次に質問を移します。今度の改定では、全額引き上げを三十九年の七月に延ばしている。今年の十月からはその半分しかやらない、こういうのですけれども、先ほど次長が認められたような状況にあるとするならば、そしてまた、私があげたように新法適用者との間に非常に大きなアンバランスがあるのですから、せっかくこういう法律改定をされる親心があるならば、その半額を三年ばかり先に延ばしていくというようなことをなさらずに、全額今年の十月からやっていくというようなことにどうしてできなかったのか。これはどういうところに原因があったのか。形式的な答えとして、恩給法援護法との関係がありますと言われればそれまでですけれども、大蔵省は金を握っている総元締めですから、それらの点についてどういう事情があったかを伺っておきたい。
  12. 谷村裕

    谷村政府委員 広瀬委員が御自分の方で先に言っておしまいになったのでちょっと答えにくくなったのでありますが、確かに恩給の方の処理の仕方と平仄を合わせたわけでございます。もし旧令共済のみであれば、金額もさほどなものでもございませんし、またそれだけ取り出してこの際特にそれだけのことをする必要があったかと言われれば、それは考えようかと思います。しかしながら、今回旧令共済等を通じて全体として過去における既裁定者仮定俸給ベースというものが少し低くなってきてしまったから、この際引き上げようというときに、一時に巨額の財政負担になるということと、それからやはりこの際お気の毒な方をとにかく早くして、その場合に少し待っていただける方には、逐次それを及ぼしていくことで段階的にやらしていただいた方が、財政負担としてもなだらかにいくし、社会均衡と申しますか、そういう点からいっても、その程度の調整ならば御了承いただけるという考え方をもちまして、一番お気の毒な方からとりあえず手をつけていって、三年がかりでやる、こういうような考え方をとったわけでございます。別の面から考えますならば、確かにおっしゃる通り、直すならすぐ直したらいいじゃないかということもございますけれども、しょせんかような問題はすべて程度で、段階的に処理していかなければならぬようなものも持っておりますので、その点はさように扱ったわけでございます。
  13. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 恩給法改正、それから本法律案両方を通じまして、もし全額年度からやったとしたならば、今年度はどのくらいふえて、さらに平年度ではどのくらいになるか、その総額についてお聞きをいたしたいと思うのです。この旧令共済の分だけですと、ことしは五千万くらいだろう、平年度でいけば二億程度になるのじゃないかというようなことをいわれておるわけですが、恩給法両方全部ひっくるめましてどのくらいの追加資金が必要なのか、平年度と今年度について数字をお伺いいたしたいと思います。
  14. 谷村裕

    谷村政府委員 ちょっと今正確な数字を私記憶いたしておりませんが、大体、いわゆる平年度化した場合のことを考えればよろしいわけでございますから、記憶いたしておりますところで申し上げますと、恩給は、今回の措置の平年度化した場合の金額は、約三戸億を若干上回る程度金額であったかと思います。それから旧令共済関係追加になります分が、旧令特別措置法による年金分が約一億九千百万、八幡の方の金が千七百万、旧法による年金が一億三千四百万、計をいたしますと三億四千万くらいであろうかと思います。恩給の方が非常に大きな金額であったように記憶いたしております。恩給の方だけはもう少し正確に調べさしていただきたいと思います。
  15. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 恩給期間分追加費用を含めて約二十億程度だということですか。大体そんなところじゃないのですか。三十七年度分については、平年度はもうちょっとよけいになるはずですが、三百億というふうな大きな数字には私はならぬと思うのですが、そのあたりの点、概算でもいいですから、もう少し近い数字を示していただきたい。
  16. 谷村裕

    谷村政府委員 今おっしゃいましたのは、一般軍人恩給までも含めての、今回の恩給改定の平年度化した場合の金額は幾らかと言われている意味でございますか。
  17. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 そうです。
  18. 谷村裕

    谷村政府委員 それであったら、かなり大きな金額、少なくとも私が申したような金額になるものだったと記憶いたしております。
  19. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 いずれにしましても、ベースが非常に低いということで今度やってやろうということでやった。しかしながら、引き上げ額の二分のしかとりあえずことしの十月からはやらないのだ。そして引き上げ分が満額支給されるのは三十九年の七月。三十九年の七月になりますと——一万五千円ベースというものを公務員給与ベース比較いたしますと、大体六年ぐらいおくれておるのじゃないか。三十三年当時だと思うんですが、そういう状態になる。それで今度は三年ぐらい期間を縮めて、三年ぐらいの差に追いついた。そしてそれが三年先になって完全に実施されるそのころには、また大体六年ぐらいの開きになる。大体六年くらいの開きを追っかけているという状態から一歩も前進しないのではないか。これは財政需要というものは非常に増大することになるわけですけれども、そういう新法よりも非常に不利な取り扱いを受けておる者に対して、今度若干の改正をしてやろうというわけですから、この程度は何とかもっと——今すぐにこれをとうしろということを言っても無理な相談でございますけれども、これをもっと期間を早めて、引き上げ額全額が受給者に入っていくような措置というものを幾分でも——三十九年の七月をもっと前に持ってくる、こういうような努力というものは私はなされてしかるべきじゃないかと思うのですが、そういう若干の考え方、そのあたりは弾力的にやがて法改正というようなことも考えてやろうとなさる気持があるかどうか。この点だけ一つ聞いておきたい。
  20. 谷村裕

    谷村政府委員 その点は恩給の方と実は関連いたしまして、主として恩給の方につきましてさような措置考えるかどうかという問題になるかと思うのでございますが、ただいまのところ私どもといたしましては、今般提案いたしておりますような考え方で処理していくので、御了承いただける、ものと思い、今先生のおっしゃったような意味での手直しをすることは考えておらないのでございます。
  21. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 次長がそういう答えをされることは非常に私どもとしては遺憾なんですが、いずれこれは法律改正を待たなければできないことでございますから、今後とも一つそうかたくなにならずに——とりあえず今出しているものをやがて直しますということは言いにくい立場かと思いますけれども、気持の上では私どもが言うことはわかるだろうと思うのです。そういう方面で一そう一つ繰り上げて、できるだけ早い機会に、一年でもいいから早い機会にやれるように措置をされること、このことを強く要望だけきょうの段階ではいたしておきたいと思います。  それからもう一つは、公務による障害年金、一級から六級までの等級の最低保障額が今度もまた引き上がったわけでございますが、昨年の十一月に出た国民生活白書ですかによれば、大体都市勤労世帯の平均収入は四万八百九十五円、こういうように出ております。毎月勤労統計によれば、もうこの数字は約四万五千円に上がっているわけです。そして消費支出も、三万一千二百七十六円、白書によりまして大体そういうことになっている。これも今ではもう三万五千円くらいになっているのではないかというように思うわけですが、今度の障害年金最低保障額におきましても、十七万一千円から二十三万三千円ですか、こういうように引き上げられることは大へんけっこうでございますが、これもやはり、一級で二十三万三千円ということになるわけでありますが、これに三万一千円プラスされまして、二十六万四千円。これは障害の程度からいって全然働けない、全く働けない、しかも介護を要する、こういう者であります。家族じゅうのいわばやっかい者的なものにならざるを得ない障害を受けた等級であります。こういう人たちが二十六万四千円、これを十二で割りましても二万円ちょっとにしかならないわけです。しかも一家の主人であって、本来ならば家族を養って子供たちを学校にも出さなければならぬ、そういう世帯主としての一切の責任を負わされておる、そういう状態にある者が、今申し上げたような今日の勤労者の収入の実態、あるいは家計支出の状態から見ましても、引き上げ額が著しく低いじゃないか、やはりこの点についてもまだ非常に不足しているのじゃないか、こう思われるのですが、特にこういう一級、二級というような介護を要する。しかも労働能力が全くないという人たちに対する引き上げ率というものも、もう少し何らかの配慮があってしかるべきではなかったか、こういうふうに思うのですが、その点についてもお答えいただきたい。
  22. 平井廸郎

    平井政府委員 御承知の通り障害年金基準につきましても、大体恩給考え方と同じ考え方に立ちまして、これとバランスをとってきめておるわけでございます。沿革的に申しますと、昭和二十八年の法律第百六十号による改正の際に共済の四級障害者、今回でございますと十万七千円という年額になりますが、この四級障害者で恩給の三項症に該当する者について、共済の四級と三級との中間の金額をもってその年金額ときめたのであります。これは当時の国会修正でそういうふうになっております。従いまして、こういう考え方基礎として恩給とバランスをとりまして、それぞれ恩給の何項症は何級に当たるというような考え方金額を決定いたします。前回の昭和三十三年法律第百二十六号による改正の際にも同様の措置をとって参ったわけでありまして、今回また同じような考え方をとりまして、十五万一千円と十万七千円、これのバランスを考えてきめたというようなことになっております。十五万一千円がこちらの三級でございまして、その四級が十万七千円、それを足して平均いたしましたのが十二万九千円、つまり恩給法の方の三項症と同じになる、こういうような考え方であります。従いまして、この一級、二級の問題も含めまして、全体として恩給考え方が妥当であるかどうかという問題に帰着するのではないかと考えております。
  23. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 時間があまりないので、この程度にとどめておきますけれども、この点もやはり先ほどの問題と同じ問題でございまして、より一そう深刻な問題だと思います。国鉄等におきましての事故は大がい両足を奪われるとか、相当な重傷などという者も非常に多いわけでありまして、そういう人たちが大へんな苦労をしておるという現実を私ども直接見たり聞いたりして、非常にそういう人たちの苦しい生活の実態というものを知らされておるだけに、この問題についてももう少し前進した配慮というもの、この点も強く要望をいたしておきたいと思います。  次に問題を移します。今度の法律案の第三条の二項に「その者又はその遺族の請求により、」云々ということがありまして、今度のベース改定による年金額の改定というものの手続が本人の請求または遺族の請求ということになっておるわけでありますが、この点について、こういう法律が通ったということを片いなかに住んでおってなかなか知らされなかったという場合もあろうかと思うのです。それでこの請求を待ってということは、法律の条文としての常識的な書き方かもしれません。しかしながら、そうではなくて、こういう改正があったということは、それぞれの扱っておる共済組合等においてむしろ進んで、そういう受給権者がわかっておりますから、全部把握されておるわけでありますから、今度こういう手続をとって下さいということを積極的に周知徹底させる手段というものをお考えになっておるかどうか、そういう内面指導等をなさろうとするか、またはなさっておるか。この点をはっきりしないと、請求しなかったのだから、権利の上に眠っておったのだからこれは仕方がないのだ、お前の自業自得だという気持はなかろうと思いますが、それについて手抜かりがあってはならぬと私は思いますので、その点適用漏れのないようなどういう配慮と措置をなされるつもりがあるか、この点を一つただしておきたいと思います。
  24. 谷村裕

    谷村政府委員 まことに適切な御指摘でございまして、ここに書いてございます本人の請求または遺族の請求によりというのは、支給の手続の形式的な問題として法律上書いたものでございまして、実質的にはもちろんそれぞれの組合は現在の受給者もわかっておることでもございますし、ただいま仰せになりましたような意味において十分その間の周知徹底に遺漏のないようにして、せっかくの法律改正意味があるようにいたすのは当然かと存じます。お言葉のように十分努力いたします。
  25. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 それでけっこうでございます。  次に、今度の法律案で一番大きな問題は、旧令共済適用者が二万円ベースになり、あるいは障害等の場合には二万四千円ベースになるということなんですが、新法施行後において二万円以下の裁定を受けておる受給権者というものは相当あるわけであります。そういう者に対してこの準用が排除されておる、この点に非常に問題点があるわけでございまして、これは均衡の問題といたしまして当然考えられてしかるべき問題だと思うのですが、今度の法律でできないとするならば、共済組合新法改正なり何なりというものを同時にお出しになってやるべきだろうし、これができなかったという理由についてまず一つお伺いしておきたいと思います。
  26. 谷村裕

    谷村政府委員 ただいまおっしゃいました点は、いわゆる新法になりましてからの共済組合年金既裁定者、またあるいは今後において裁定を受けるであろうと思われる者と、本件を旧令だけ恩給との関係において改正しております点でアンバランスが起こっており、あるいはまた将来において起こるのではないかという問題であろうかと存じます。御承知のように新法、いわゆる新しい共済組合というものの考え方は一種の保険主義に基づきまして、相互に退職年金も積み立てていこう、それから使用者である国あるいは公企体もそれに対して出そう、公権力の主体であるところの国あるいは公企業体もそれに対して何がしかを出そう、そういう形でやっておりまして、恩給並びに恩給的色彩を多分に有しておりました旧令共済とはその本質と申しますか、性格が違うというふうに実は考えておったわけでございます。このことは、この新共済組合法以降、あるいは立法のときにも十分御議論があったことと私ども承っております。そこで、先ほどからだんだん御指摘通り、われわれ給与ベースというものが上がって参ります。上がっていくと一般官吏なり公務員なり、あるいは公企体職員の現実生活水準が上がっていくのに、既裁定者年金というものは、一たんきめられてしまったら、それでおしまいなのかという問題になるわけでありますが、これは他の一般公的年金と同様、やはり経済情勢を見て、常に必ずしも給与ベースにスライドするというわけではございませんが、やはり適当なときにこれを改定していくという筋合いのものであろうかと思います。  少し余談になりますけれども、最近はここ一年、二年非常に大きな給与ベース改定がございましたためにそれが非常に目立つわけでございますけれども、この前に改定いたしました昭和二十九年の水準から今回の三十四年までの間を見てみますと、あまり大きな給与ベース改定が実はその当時なくて、これはわれわれの全体としての国民所得が伸び、給与水準というものが上がって参りましたときに、年金という形におけるいわば給付をどの程度に是正していったらいいかという問題でございまして、非常に極端なことを申しますと、またこの十月ごろ給与改定がありそうな気がするということになりますと、十月の前になってきますと、みんなやめないで給与改定ができちゃってからやめた方が得だということで、みんな給与改定待ちでもっていつまでたっても退職しないでいるという格好になったりすることもございますし、給与ベースと退職年金との関係ということは非常によく考えなければならぬ問題だと思います。そんな意味におきまして、今先生の御指摘になりましたような意味で、新法になりましてからの年金の額というものをどう見るかということは、本件とは切り離しまして、新しい基礎の上に立った問題として、そのときそのときの経済の情勢を見ながら、一般生活水準給与水準の上昇とも見合わせまして別途に処理するのがよろしかろう、かように考えたわけでございます。
  27. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 お答えはその限りにおいて私は正しいと思います。しかしながら、新法になってからはもうすでに公共企業体の場合には六年以上の歳月がたつわけでありますが、その間において非常に低い裁定を受けておった者がずっとそのままだ。しかも旧法の方は恩給法援護法との見合いにおいてベース・アップが行なわれている。たとえば新法になって間もなく、相当若いしかも非常に低い給与のときに障害になってやめざるを得なかったということで、障害年金をもらうことになった、こういうような人たちは非常に低い給料でそのままで、片方の二万四千円ベースになってきたというような者との間に著しく均衡を失する、こういうような事例はもうぼつぼつ現に深刻な問題として出てきつつあるわけであります。その他の一般の退職年金の場合においてもそういう事例は出ておりますけれども、特に廃疾年金のような場合にそういう目立った不合理性というものが発生していきつつあるわけであります。そういうような問題について、当然そういう事態の発生が見受けられるということはお認めになるだろうと思います。この点の一つ伺いたいのですが、そういう事態を認められて、しかし、これと一緒にはいろんな意味でやれなかったけれども、将来それはやはり必ずやらなければならないのだ、そういうお考えかどうか、その二点だけ伺っておきたいと思います。
  28. 谷村裕

    谷村政府委員 確かに広瀬委員の御指摘通り、そう多い数ではございませんが、公企体につきましては、今回法律改正の結果、旧令の方の方が新法適用後において裁定を受けられた方を上回っているというバランスの失われたような姿が若干生じている面もあろうかと思います。また今後において、かりに旧法時代の方のベース改定ということばかりをやって参りますと、そういう事例が当然広がってくるということも御指摘通りでございます。従って建前上旧令と新法とは別に考えてしかるべきものだということではございますけれども、新法におきましても今後是正の措置というものはやはり一般的な意味においてとられなければならない。それは経済情勢によって給与水準等が上がり生活水準が上がって参れば当然考えなければならない問題であるというふうに考えてはおります。
  29. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 考えてはおりますということで、これはあとで全会一致の附帯決議もその点についてつけていただくように大蔵委員全員の意思として出して参りたいと思いますが、真剣にその点の配慮を早急に具体化していただくように、この際強く要望申し上げておきたいと思います。  次に、これは本案と直接関係のある問題とはいえないわけでありますが、国家公務員共済組合あるいは公共企業体共済組合いずれにも関係のある問題といたしまして、南満州鉄道株式会社等の在勤者の処遇の問題について若干質問をいたしたいと思うわけであります。  すでに満州国政府あるいは日本医療団等に在勤した職員の共済組合法上の通算の問題が解決を見たわけでありますが、満鉄等の職員の場合に、これとの関係において私はこれは不当に取り残されたのじゃないかという印象をまず受けるわけであります。満鉄の性格というものが、いろいろな面において満州国政府と同じような、またそういう性格を持っておったし、日本の政府の代行機関というようなことが、設立の趣意なりあるいは設立をめぐるいろいろな手続等からも言えることだし、さらに満鉄が行なっていた事業の面、組織の面、資産の面それから監督の面あるいは会社の義務、会計検査院の検査を受ける機関であったというようなあらゆる角度から見まして、満州国政府の職員が通算を認められるという段階になりますと、これはむしろそれ以上の必要性と合理性をもって満鉄職員の通算というようなものを認めなければならない段階にきているのじゃないか、こういうことを考えるのですが、この点についての大蔵省の考え一つ聞かしていただきたい。
  30. 谷村裕

    谷村政府委員 昨年恩給法等の改正をいたしました際に満州国のものの通算を考えたわけであって、実態は今おっしゃいますところによれば、満鉄も満州国官吏の相当部分を供給したはずであり、その満鉄におった者と満州国に行った者との間で国に帰ってからの扱いが違うというのはおかしいじゃないかというような権衡論、また実質的な理由として満鉄といえどもいわば行政権を持った国策会社であって、そういう意味においてはむしろ満州国の実態であったというふうに言っていいのじゃないか。いろいろ満州国あるいは満鉄との関係、特に満鉄というものの戦後における扱い等についての御意見があることは承知しておるわけでございます。ただこの点につきまして満鉄というものの性格をいかに考えるべきか、また満鉄といわば似たような性格のものとしてその他のものがあった場合に、それらも同じように考えるのであるかどうか、その点については私どもはもう少ししさいに検討しなければならないものがあるかと存じます。実は去年満州国というものを入れましたときに、すでに大きくそういう点についてのかきを破ったと申しますか、という点もあったかと思うのでありますが、それなりにまたそれから先への波及の問題をどう処理していくかということは慎重に考えなければならぬと思うわけでございます。この点につきましては一昨日でありましたか、総理が重ねて参議院におきまして地方行政でありましたか、質問に対しまして、検討するように十分事務当局に命じておくというお答えをしておられますので、私どもとしてはいろいろ問題があると存じますが、お言葉通り検討をするつもりでおります。
  31. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 最近における参議院、衆議院を通じまして、満鉄職員の通算の問題についていろいろ政府の答弁等を全部調べましても、やはり満州国政府職員の通算を認めたということになりますと、これはどうしても説明がつかない、もうわれわれを合理的に納得させる説明のつかない段階にきておるということが政府の答弁からも見えておると思うのです。これはいろいろこちらから理屈を言って参りまして、その取り扱い上の不均衡というものが出なければならぬという理由を問いただしていく、そうするとこう答える、それに対して、それじゃこうだということになりますと、答弁がもう詰まってしまうというような形が至るところに出ているわけです。その一つ一つを全部ここへ調べてきておるわけですけれども、きょうは毛利先生もこの点で質問をされるということになっておりますので、私は政府答弁の食い違い、それから退職金において認めておって年金の方に認めないというような矛盾等、いろいろな問題点についてこまかく申しませんけれども、これはもうあなた方の方でよく御存じのはずです。これはこの委員会における速記録を調べていただいただけでも、恩給局長なりの答弁等を通じましていろいろな矛盾が出てきておる、そうしてもうやらなければならないんじゃないかというところまで私はきていると思うのです。今、総理大臣も検討いたしますということを答弁しておるということでございますので、その点をぜひ一つ前進をさしていただかなければならないということだけを申しまして、関連で毛利先生がやられるそうですから一応譲りまして、またこの点について答弁のいかんによって質問を保留いたしまして、一応私の質問はこの程度にいたしたいと思います。
  32. 毛利松平

    ○毛利委員 現在質疑になっている改正案について、今広瀬委員からも質問がありまして、谷村次長の答弁でおおむね理解はしておるのでありますが、重ねて要望が強いので関連して四点ばかり御質問をし、要望をして参りたいと思います。  今回の改正案の理由について、政府は昨年第三十八国会において国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行法の一部を改正し、退職年金の支給に関し日本医療団職員及び満州国等外国政府職員であった期間の通算を行なったが、その理由とするところは第三十八国会提出恩給法の一部改正及び昭和三十五年第三十四国会における恩給法改正の政府提案理由の説明から人事管理上の必要並びに社会事情の変化に即応して、従来の対象外の者をも含めて処遇の公平を期することにあると理解するのでありますが、政府の所見を承りたいと思います。
  33. 谷村裕

    谷村政府委員 ただいまのお話でございますが、私どもは御指摘のような点についていろいろ問題があると思っておりますけれども、今それについてどちらというふうに申し上げる段階でないので、もう少し検討さしていただきたいと思います。
  34. 毛利松平

    ○毛利委員 次に、満州国職員と満鉄職員の処遇の不公平についてであります。本件については今広瀬委員から述べられましたが、さらに認識を深めてもらうという意味で、そういう点を私は申し上げたいと思います。  満州国政府と満鉄会社とを比較するときに、形式的には満州国は日本政府と何ら関係のない外国政府でありまして、満鉄は日本の勅令をもって満蒙経営のために政府代行機関として設立された日本特殊法人であります。また実質的には、両者ともに満州にあって日本政府の満蒙経営を分担した日本政府の延長とみなすべき特殊機関であります。同一勤務地に同一条件のもとに同一内容、同一性格の業務に従事しておった職員であります。一方は退職年金の通算を認め、他方はこれを認めぬというのはいかなる理由であるか、いささか疑問を持つものであります。通算の理由が高齢者に対する人事管理上の必要にあるとすれば、両者全く同一条件であり、また従来の恩給法共済組合法の対象を若干拡大して処遇の公平を期する立場から見るも両者全く同一条件であります。  先般、八卷恩給局長は今年二月十三日の参議院内閣委員会において、伊藤顕道委員の質問に答え、「前国会におきまして、先生の御発言では、非常に満州国というものと満鉄というものは全く実質的な内容は同じであるということを強調された、この点は全く私も同感でございます」と答えておる。満州国職員については日本政府と人事交流の際通算措置昭和十八年からできております、この制度を若干拡大して適用したものにすぎないものであると、さらに答えております。満鉄については国策機関ではありましたが、戦前からかかる退職制度のつながりはなかったわけでありますと、さらに説明を加えております。  しかしながら昭和十八年から円満人事交流の際の通算は、昭和十八年法律第七十八号、恩給法附則第六条の所定のものは満州国職員の一割にすぎないのであります。九割の現地採用者は日本政府と直接の雇用関係がなく、従来恩給法の対象外であったにもかかわらず、昨年の取り扱いは若干拡大したものではなくて、破天荒に大幅に拡大をしたというこの事実をわれわれは知るものであります。満鉄の職員について戦前通算措置がなかったのは、その国家的性格を否認したものではなく、日本政府との人事交流の必要がなかったから、従ってまたその事実がなかったために通算措置制度がなかったものであると言われております。いわゆる昨年の改正は、戦前戦後の社会事情の一大変革に即応して、従来恩給法及び共済組合法のワク外にあった者にもワクを広げ、共済制度の運用に新分野を開拓したものと解すべく、政府の態度として一歩前進であると解します。  右の見解に立てば、満州国と満鉄とは実質的には同一性格の機関であり、しかも形式的には満州国は日本政府と無関係の外国政府であるが、満鉄は日本政府と特別の関係にあったいわゆる国策機関であります。従って満鉄職員期間の通算を優先すべきであると思うのでありますが、これが反対の処遇になっておるのは一体いかなる理由によるのか、八卷恩給局長の所見を重ねて承りたいと思います。
  35. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 恩給公務員期間に本来の官吏でない期間をどういうふうに加えるかということにつきましては、例外的な措置としていろいろなケースがございます。外国政府職員につきましては、日満人事交流あるいは蒙疆政府に日本から優秀な官吏を派遣してそうしてまた帰った場合には、その期間を通算するというふうな措置をいたしまして、優能な官吏を向こうに派遣したという事実もございます。そういうふうな事実の上で終戦後の事態というものを考えましてその拡大適用をやったわけでございまして、それ以上の幅でもっていろいろ考えていくということになりますと、恩給法というものはすでに昭和三十四年の十月に人事行政上の役割というものが一応済んでおるわけでありまして、今後の問題として人事行政上の役割として一体どういう観点からものを考えていくかというふうな問題につきましては、新しい考えでもってそれぞれのしかるべき年金、広範な公務員年金体系の中で考えるという問題が出てくるだろうと思うのです。そういう意味恩給法の立場から申しますと、非常に限定的にお答えをいたしておるわけでございます。
  36. 毛利松平

    ○毛利委員 国内から採用された者が一割に過ぎないで、現地採用の者が九割に及んでおる。この及んでいるということは非常に願わしい姿であります。こういう事実の上に立って満鉄の特殊使命に対してどう解釈しておりますか。
  37. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 日・満・日の通算の事例が引かれておりましたけれども、日満で終戦になってしまって、そして内地に帰ってこられない。内地に帰ってきたが復職ができない。こういうような方々につきまして、それを拡大し、また向こうで採用になったがその身柄を各省でまた引き取った、こういうような方々につきましては、人事行政の観点から、各省としても向こうで十年お勤めになり、そしてまたこちらの行政官としても十年お勤めになった、こういうことで十年だけでは恩給がつかない。あるいは新しい退職年金がつかない、こういうような人々に対しましても恩給なり退職年金がつくように措置したわけでございます。これはやはり新しい人事行政という観点、人事政策という観点からいたしたわけでございますが、その限界はあくまでも、やはり日・満・日人事交流という政策の上での考えた限定がございまして、これ以上に株式会社であるところの南満州鉄道株式会社にまで及ぼすということになりますと、問題が波及関連いたしまして、どういうふうに限界を引いていいのかという技術的な問題もございますので、この点につきましては一挙に解決するということができなかった、問題が後に残されたということも一声えると思うのでございます。
  38. 毛利松平

    ○毛利委員 次に退職手当法と共済組合法との取り扱いの不統一について御質問したいと思います。  国家公務員の退職手当施行令においては、公務員が満州国等外国政府または満鉄外八つの日本政府と特殊関係に−あった特殊法人の職員となり、再び公務員に復帰した者については、その在外期間の三分の二を公務員在職年に通算しております。これはその機関が公共的、国家的業務の実施機関であること及び満州国等の外国政府と満鉄等の特殊法人との均衡をはかる目的に出ておるものであります。満州国と満鉄とは全く同一取り扱いである。しかるに共済組合法においてははなはだしく不均衡の取り扱いがあるのは不合理であり、すみやかにこれを是正すべきだと思うのでありますが、これについての御所見を伺いたい。
  39. 平井廸郎

    平井政府委員 先生御指摘の点はその通りでございまして、ただ二十八年当時退職手当法が改正されました際に、そういう措置をとったわけでございますが、その当時の考え方としては、現在の公務員の退職手当制度自体がある程度臨時的なものでございまして、ほかの恒久的制度とやや異なっている、そういった点も若干考慮に入ったのではないかというふうに考えております。ただ現在の段階におきましては、いかに暫定措置法であるとはいえ、ある程度恒久的な制度として運用されるわけでございますから、そういった点も勘案すれば、その矛盾点は何らかの形で解決していく必要があるということは御指摘通りでございます。
  40. 毛利松平

    ○毛利委員 大体了承しますが、不合理であるということを一つ再確認してもらいたい。
  41. 谷村裕

    谷村政府委員 先ほど来おっしゃっておられますことをすべてを通じまして、あらゆる制度につきましてすべてなだらかに、でこぼこなく、そこに不合理性のないようにすることは、これは当然考えるべきことであろうかと思います。しかしながら現実の問題といたしましては、常にどっかで線を引かなければならない、だれかが、どういう時期かで、チャンスがあってこっちに入っておるとか、向こうに入っておるとか、いろいろ具体的な問題として矛盾なり、不均衡なりがあるという実態もある意味ではやむを得ないかと思います。従いまして御指摘の点の問題を具体的な個々の不合理の問題として考えるか、あるいは一つ制度的な問題として不合理、矛盾があると考えるかという点の問題であろうかと思いますが、われわれといたしましてはそこに制度的な意味における不合理な点、矛盾の点があるかどうかということにつきましては、さらに検討の時間をお与えいただくようにお願いしたいと思います。
  42. 毛利松平

    ○毛利委員 不合理を再確認した以上、現時点においてすみやかに本件に対する改正を御努力願いたいと思います。  次に最後に他の事例との処遇の不均衡について質問したいと思います。  国家公務員共済組合法の長期給付に関する施行法第九条によれば、外国政府のほか、日本医療団、国に買収された地方鉄道、国際電気通信株式会社、日本電話設備株式会社職員期間の通算が認められている。その理由は、今年二月十三日参議院内閣委員会における八卷恩給局長の答弁によれば、「政府の改革によって自分の考えの及ばなかった身分の切りかえがあったわけで、それらの人々の退職給付に関する期待権を尊重する意味で通算措置を行なったものである」としております。しからば満鉄はこれら地方鉄道、電信電話会社に比し、よく広範囲に公企業を行ない、さらに行政の一部を実施してきた国家機関であり、また職員は未曾有の敗戦のため、国家機関たる満鉄会社から受けるべき退職手当、共済年功金に対する期待権を一挙に失ったものゆえ、満鉄職員期間についても第九条の諸機関と同一の取り扱いをなすのが公平の原則上当然と思うのでありますが、本件についてもさらに御所見を承りたい。
  43. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 ただいま私の参議院内閣委員会における発言を引用されての御質問でございますが、恩給法の中で株式会社の職員期間を通算いたしました例といたしましては、あれは昭和二十三年でございましたか、国際電気通信株式会社及び日本電信電話工事株式会社の職員期間というものを恩給法の期間に通算いたしました。これは御承知の通りそういった会社が組織ともに政府に接収されまして引き継がれまして、その職員の方々が退職金を受けなかった場合に限って公務員期間に通算して年限を見ておる、こういう措置でございます。従いまして組織ともに会社で申しますならば吸収、合併、こういうふうな形の場合に行なわれた異例の措置でございます。一般的に申しまして、戦争終結によって解体した諸機関の未払い給与というものを全部恩給にしわ寄せる、あるいはそうした退職金制度の上でと申しますか、この方法でこれを肩がわりする、こういうふうなことは考えられないわけでございますし、今までもそういう形はやっておらないわけでございます。
  44. 毛利松平

    ○毛利委員 以上申し上げました四点について政府の立場、この点の根拠、事情というものはおおむねよくわかっており、さらに私もよくわかりましたが、さりとて現実においてこれだけ特殊の使命を持った満鉄が、しかも勅令によって定められた満鉄が、不合理のまま、矛盾のまま残されたというこの現実に対して、一そうの好意と情熱とを持って一つこの解決に対処を願いたいという最後の要望に加えて、参考のために、すでに皆様も御存じの通り昭和三十六年六月六日の参議院内閣委員会において附帯決議がつけられております。さらに昭和三十七年、今年の二月二十二日の参議院内閣委員会において附帯決議がつけられております。さらに当委員会においても、三月十六日に本件に対する諸問題についての附帯決議をつけております。この附帯決議の趣旨を見のがすことなく、事態の真理をすみやかに把握されることを要望して、私の質問を終わります。
  45. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 今満鉄の問題について毛利委員から詳細な質問があったわけでありますが、先ほども申し上げましたように、満鉄の設立の経過というようなことも、当時外国の領土であったということから、しかも日本と特殊事情があった、本来ならば、これはおそらく朝鮮鉄道やあるいは樺太鉄道と同じように政府で直営でやりたいというような思想のもとに、ただ形式的に外国領土の中に日本の鉄道を敷くということでこれが直営の形をとれなかったということであるけれども、この設立の経過において、後藤総裁の就職情由書という大へん格調の高い名文章がつづられておるわけでありますが、そういうようなことから申しましても、また勅令によって政府の全額出資ということで設立をされたというような経緯、それから事業の内容において完全に日本の政府の代行機関であった。行政権を預かっておった。従って、賦課金の徴収、土木、教育、衛生、こういうようなことも全部やっておったし、戦時中には全く軍人と同じ仕事をやった。軍の輸送というものは全部満鉄職員が、一片の軍属の発令すらなしに、あるいは軍人という身分への変更すらなしに、満鉄職員のままで軍の直接の命令で鉄道も動かし、そして最も危険な第一線までやるというようなことも行なわれてきておるし、従って、組織の面等におきましても、非常に国家機関としての性格というものが濃いわけであります。さらに会計検査院の検査を受ける。今日の法体系の中でも、公団、公社等と国家公務員との人事交流というものが予想される、それについては前後の期間を通算する制度ということになっておると思います。また公社というものは会計検査院の検査も受けるというようなことから見ましても、大体性格において今日の公社、公団というようなものと似たものを持っていると思う。そういうものは共済組合の通算関係においても、出向する、向こうからまた戻るというようなときに、前後の期間を通算するというような措置もとられておるわけだし、いろいろな監督の面において、岡松博士なんかが、下級官庁に対する訓令と同一性質のものを持っておった、満鉄に対する国家機関の命令というものは、上級官庁が下級官庁に対して命令するのと全く同じ性格のものとされておった。従って、命令の客体たる満鉄というものは、国家機関と同一性質のものと理解せざるを得ないのだというような岡松博士の論文などもあるわけであります。こういう実態というものをもう一ぺんすっかりすべての問題について洗っていただいて、今日における処遇は、満州国政府職員というものが入った以上、これとことさらに別な取り扱いで不利益な扱いをさしておく理由というものはおそらく解消するだろう。そういうような努力をされまして、この点の実現を強く要望いたしておきたいと思うわけであります。  それから、先ほどの問題に戻りますが、三十七年度における旧令共済の問題の中で、増加恩給受給者の取り扱いの問題で不利になっていないかということをきのう委員会外で質問をいたしたわけでありますが、それについて検討してお答えを下さるということでありましたが、この点について一点だけ聞いて私の質問を終わりたいと思います。
  46. 平井廸郎

    平井政府委員 増加恩給の取り扱いについて、生涯保障の精神から見て、この点が無視されているのではないかという御質問がございましたので、昨日事務的に検討いたしたのでございます。ただ制度といたしましては、御承知の通り昭和三十一年の公共企業体共済組合法の改正あたりましては、一応新制度に移るにあたって、増加恩給についてはそのまま維持して、一般の併給恩給の方だけは放棄して打ち切るというような建前としてあるわけでございます。これによりまして、政府としては、増加恩給の権利はそのまま基本的には維持される、かつ生涯保障の精神は確保されているというふうに考えました。ところが先生御承知の通り昭和三十三年に同法の一部改正がありまして、今のような考え方をとりました場合に、基礎となる俸給が増加恩給基礎となる、あるいは併給恩給基礎となっておるということよりも、むしろ新法移行当時、あるいは新法移行後の数年間を考えた場合に高くなっておる。むしろその段階で恩給をもらうよりも、この権利を放棄して、いわば現職期間においてはなるほど全額的には増加恩給の方が減るわけでございますから、少なくなるにしても、退職時においてより多くの退職年金がもらえるようなシステムにかわった方がいい、こういうものもあり得るということで三十三年に法律改正をやったわけであります。従いまして、もしそういう前提で考えますならば、増加恩給を併給されている体系の方がいいというお考えであれば当然前者の体系で進まるべきであり、かつまた、それによって金額的には一生を通じての手取りがかえって減額する、こういう場合にはむしろ改正された三十三年の改正法でいけばいい、こういう考え方でできておるわけでございます。ただ先生御質問の点をさらにそんたくして考えますならば、三十三年の改正法の場合においてもさらに増加恩給の併給措置を講ずべきではないか、こういった点になるであろうと思いますが、そういったことになりますと、従来考えられておる基本的な考え方、つまり共済組合に移ります場合は、全員が旧制度による給付権を放棄して新制度に移るのだという考え方をやや変えていくというような問題も出て参りますし、それとてまたこの増加恩給の問題ということでもございますので、恩給局との関係もございますから、なお今後慎重に検討いたしまして、その間のバランスがとれているかどうかということを考えてみたいというふうに思っております。
  47. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 以上、質問を通じていろいろと前進的に検討される答弁をいただいた問題が数多くあるわけでありますが、そういう点についてぜひ一つ誠意を持って実現するように今後真剣な努力をなさるように強く要請をいたしまして、私の質問を終わります。
  48. 平井廸郎

    平井政府委員 先ほど資料の数字の御要求がございまして、調査いたしたところを申し上げます。  新制度に移りましてからどの程度の給付水準になっておるかという問題でございますが、共済組合連合会所属の場合でございますと、年額約十二万円でございます。それから三公社の場合でございますと十万一千円程度でございます。地方職員共済その他いわゆる三共済と称しているものでございますが、地方職員共済と公立学校共済並びに警察共済、これらの現在の体系共済組合の中に入っておりますのは主として雇用人でございますが、これらについては十万円ちょうどでございます。大体現在の水準はそのようになっております。
  49. 小川平二

    小川委員長 横山利秋君。
  50. 横山利秋

    ○横山委員 今ちょっと広瀬君の最後のところを聞き漏らしたというか、給与課長の最後の答弁がはっきりしなかったのですが、私どもが附帯決議案として出しましたものをもう一ぺん言いますから、簡単にお答え下さい。「増加恩給の受給者で、新共済組合法施行当時任官期間が十七年未満の者は、増加恩給を辞退しなければ共済組合年金について前の任官期間を通算されないこととなっている」というところまではいいですね。これからが要望ですが、「しかしこれは傷害に対する保障を無視する結果となるから、政府は増加恩給に併給される普通恩給を辞退をすることにより、前記期間を通算するような選択制度を講じてもらいたい」、こういう要望なんですよ。それが何かあなたのお話ではいいような悪いような話ですが、もう一ぺんはっきり言うて下さい。
  51. 平井廸郎

    平井政府委員 実は私ども昨日広瀬先生から伺った話が少し広範に過ぎましたので、その問題だけに焦点を限ってということになりますと、ちょっと答弁を用意して参りませんでしたが、確かにそういった点は、十七年未満の場合においてどうなるかというととは問題になるところでございますが、これはむしろわれわれの感じからいいますと、増加恩給を選択いたしまして、その後の期間は、別に退職年金を計算した場合の方が有利になる場合もございます。と申しますのは、たとえば併給恩給は、期間のいかんにかかわらず十七年で計算されるわけでございます。従いましてかりに今十年という段階で考えました場合、新法に移行した、こうした場合におきましては必ずしも不利になるとも言い切れない、そういった点もございますので、どの辺の限界でものを考えたらいいかということで……
  52. 横山利秋

    ○横山委員 選択制度にしてくれということです。
  53. 平井廸郎

    平井政府委員 その御趣旨はわかりますが、さらに選択制度を作れということでございますか。——基本的には現在のところ、増加恩給とそれから一方を選択するか、あるいは増加恩給を放棄して新制度に移るかということを選択制度にいたしているわけでございます。その上にさらに選択制度を作れということでございましょうか。
  54. 横山利秋

    ○横山委員 そうです。増加恩給に併給される普通恩給を辞退した方が、十七年も通算してもらって有利である場合、そういう場合には選択制度を採用してもらいたい、こういうことです。
  55. 平井廸郎

    平井政府委員 この点は先ほどもちょっと申し上げましたように、増加恩給の問題は恩給局との関連事項もご言いますので、今直ちにどうこうということは申し上げかねますが、恩給局長とも相談いたしまして検討してみたいと思います。
  56. 横山利秋

    ○横山委員 恩給局はどうですか。
  57. 八卷淳之輔

    ○八卷政府委員 ただいま問題点になっているところを私どもは十分承知しておりませんので、大蔵省ともまたよく相談いたしまして御返事をいたしたいと思います。
  58. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっとほかの問題ですが、私の常識的な感想から御相談申したいと思うのであります。それは一時金制度共済組合でも退職金でもそうですが、一時金をもらう。三月三十一日に役所なり三公社なりたくさんの人がやめるわけです。それにみな銀行がついて回るわけです。そうしてそのたくさんの金をどうするか。家族がやれ家を建てなければならぬ、それ銀行がついて回るということで、もらうことはうれしいけれども、一時金について非常に問題があるわけです。場合によっては株を買ってなくしてしまうという人も間々ある。私は一時金制度について、これもまた選択制度でありますが、少し検討する必要があるのではないかということをかねがね痛感しておるわけであります。一時金をもらってやめて、それで商売するということならそれはそれでよろしい。けれども私の体験をもってすれば、役所を三十年、四十年勤めた人が、さあ新しい仕事をやれるような、そういう人間ではないわけです、実際は。それでこの一時金を活用する方法を考えたらどうであろうか。活用ということは、安全なところへ活用する。安全なといえば自分が勤めておった役所が一番安全である。役所というのは、たとえば年金制度である。私の一案であるけれども、たとえば共済年金を受けられない一時金の人、その人はその金をそのまま共済組合に預けて、何かの形で年金制度にしてもらう、こういう方法ができないものか。いわばもらうところへそのまま預けておいて、利殖をはかって、正式な年金ではないけれども、一つ年金の形としてもらうということが、この人たちのたどってきた人生からいうと一番いい方法ではないかということを私は考えるのであります。これはきわめて常識的な考えではあるけれども、最近やめる人がたくさんあって、その金をめぐっていろいろな問題がある。その人自身も人生をそこで誤る場合がある、こういう点を考えますが、いかがでございましょう。
  59. 谷村裕

    谷村政府委員 もしおっしゃるような意味におきまして、退職一時金、あるいは長年勤められた方であるならば、退職手当になるかと思いますが、さような一時金を持っても、なかなかいろいろ問題がある。むしろそれを企業先、あるいはわれわれで申すならば共済組合において、一般的な年金体系の中に取り入れて考えてみたらどうかということでございますが、民間の企業におきまして、たとえば銀行等において一時金をもらうか、それとも一種の年金にする方がよろしいかというのを、選択にしているような例も聞いておりますが、これについては、確たるいわば保険数理的な計算の根拠に立っているという性質のものではないように伺っております。もし今おっしゃるような御提案が、共済組合制度の中に、一時金的な制度というものを選択的にか、あるいは選択的でないかにせよ、設けてみて、そしてすべて、短期間でやめられた方もあるいは長期間でやめられた方も、あるいは退職手当という、これは給付の主体が違うわけでございますが、そういうものも含めて一つのものを考えてみろというお話になりますと、これはある意味におけるお考えとしては、私どもも気持としてはわかるわけでございますが、なかなか大きな問題であろうと思います。むしろ給付の体系としては現在のようなものを考えながら、それを誤らせないような現実のやり方として、いわば私的年金的な考え方か、何らか保険会社なりあるいは信託会社等を通じて考える方がよろしいのか、こういう問題もさらにあろうかと存じます。いわば一石を投ぜられたという意味において、非常におもしろい検討事項として今後勉強させていただきたいと思います。
  60. 横山利秋

    ○横山委員 私も共済組合の担当者であったことがあるわけであります。私はその意味においては、まるっきり共済組合の現状の法律の中にこれを挿入するということが、困難であることはよくわかるわけです。けれども実際問題として、たくさんのお金をもらって、長年勤めた退職者が、さてその金をどういうふうに使おうかという点には、さまざまな家庭的な問題が続発をするし、それから銀行や株屋さんに追いかけられて、それをすってしまうということもあるし、事業をやってみて失敗することもあるのですから、別な角度で共済組合の付帯事業として、何か利殖をはかって、本人の希望に応じて年金制度にするとか、何かこういうことが考えられて付帯事業として行なうならば、これは可能な道ではないかと思います。まるきり法律の中に取り入れるについては、なるほどいろいろな支障がございますけれども、付帯事業として行なうならば、これはそうむずかしいことではないのではないか、こう思うわけでございますが、どうですか、御賛成願えますか。
  61. 谷村裕

    谷村政府委員 共済組合というものの性格として、付帯事業としてそこまでやるのが適切であるか、それともさようなことはいわば別の体系の問題として考えた方がよいかという問題があろうかと存じます。私のただいまの職務上の立場といたしましては、そのあとの方の問題についてまであわせていろいろ議論の結果を申し上げる立場におりませんので、その点は御了承いただきたいと思います。
  62. 横山利秋

    ○横山委員 では政務次官、これは真剣に一つ……。(「もっとわからないよ」と呼ぶ者あり)いや、常識的に考えればいいのです、法律的に考えるとごちゃごちゃしていかぬから。実際永年退職者のたどろうとする道を考えるならば、私はこれはまじめに考えるべきことだと思うのですが、いかがですか。
  63. 天野公義

    ○天野政府委員 まことに適切なお考えでございますが、現在民間のいろいろな会社におきましても、最近におきましてはそういう問題についていろいろと研究もし、またいろいろと実行しているものもあるわけでございまして、例をあげれば、先ほど谷村次長が申しましたように、保険会社でも考えておりますし、また信託銀行等でもいろいろとやっているわけでございます。考え方によりましては安全確実な方法をとるという建前からして、法的にやるというよりも、いただいた方が自由選択でやっていく方がいいのじゃないか。ですからそういうような機関とよく相談されて、自主的にそういう話し合いできめていく方が、あるいはいいのではないかというふうな感じを私は持つわけでございます。
  64. 横山利秋

    ○横山委員 信託会社があり、銀行がある、それはわかっていると言うのです。そういうことを言うておるのじゃないので、あなたは私の言っておる真意を捕捉していない。長年そこに勤めておって、自分が信頼して長年掛金をかけておった、その共済組合というものが一番信頼ができる。そこで預かる制度考えたらどうか。それならば自分も長年勤めておったところだから、問答無用で一番信頼ができるところじゃないか。これは銀行がいいか、あそこの信託銀行がいいか、株を買った方がいいか、家族がほしいというがどうかということになると問題があるから、そこで共済組合を活用する方途を考えたらどうか。もちろんこれは選択制度である、本人の自由にまかせることであるけれども、共済組合としてもまじめに考えたらどうか、こう雷っているのです。
  65. 谷村裕

    谷村政府委員 横山委員のおっしゃるような意味において共済組合というものを活用することが、はたして国全体の経済の体系の中において、あるいはそういう機構の問題として適切であるかどうかという問題になると思います。たとえば貯金等につきましては、現在ある場合には、勤務先預け金と同様な意味において、一つの変形として勤務先の共済組合に貯金をしておる場合もございます。そうでない場合もございます。一般企業につきましてもはたしてそういう問題をその企業の問題として考えるのがよろしいか、別の制度として考えるのがよろしいか、そういう問題があろうかと思います。一つの石を投げられましたけれども、この石はなかなかむずかしい石でございまして、そう簡単にすぐ拾い上げられる石ではないというふうに私どもは実は考えておるわけでございまして、必ずしもおっしゃっていることが合理的であるとも実は思えない面があるわけでございます。
  66. 横山利秋

    ○横山委員 みな賛成しているじゃないですか。これはあなたも経済再建にどういう関係があるとか、そんなことを言わずに、もらった人の立場を一ぺん調べてみるといいのです。どういうふうにやっているか。……そういうことを考えて、最も信頼できる共済組合及び政府の機関というところで考えてみたらよろしい。  第二番目の問題は、最近社会労働委員会へ医療法の一部改正が与党の方からも出ておるし、私の方からも実は出ているのです。それについて一ぺん共済組合としての御意見をお伺いしたいのだけれども、要するにあの両党の法案の趣旨は、医療施設を計画的に配置するという趣旨ですね。計画的配置についていろいろ議論がある。民間の医療施設がどんどんでき、国のができる。だから無医村ができて医療施設が集中するところができる。だからせめて国、直接国ではないけれども三公社五現業、それから共済組合の医療施設についてはチェックをするという意見のようなんです。これは医療関係担当の人たちから非常に熱心に言われておるのですが、政府は一体どういうふうにお考えでございますか、御意見を伺っておきたいと思います。
  67. 岩尾一

    ○岩尾説明員 便宜私からお答え申し上げます。医療機関の配分につきまして、先生の御指摘のように現在非常に医療不足機関が一方においてあるわけでございます。他方東京、大阪あるいは大都市におきましては非常に医療機関が集中している。こういう状況でございまして、累年政府といたしましては、そういった医療機関の調整をはかりたいということで、一方において不足機関に対しまして種々な予算措置を講じて、医療不足地区を解消していく。他方稠密しているところにつきましては、これを調整したいということで、医療法におきましては三公社五現業等の開設する機関については厚生大臣と協議ということになっているが、協議ということでは非常に弱いので、もう少し強い規制をしないとどんどんふえるのではないか。現に今各地において、こちらは作りたい、向こうは作ってもらっては困るというような問題もあります。これはそういった意味で、実際に実効のある措置ができて、そうして規制ができるということであれば非常にけっこうだと思うのでございますけれども、たとえば都道府県知事でございますとか、あるいはそういった地方機関だけの考え方で調整をされる。そういたしますと、地方の開業医の方あるいはそういったいろいろの関係の方の御意見が強く反映をされまして、国全体としての面から見た医療の再配分ということに対する判断というものが多少ゆがめられはしないか、そういう点をよく検討して、実際上先生のおっしゃるように医療機関としてその再配分ができれば、それは一番いい方法である。それの実行上の問題としてどういう措置がいいかということが検討の問題である、こう考えます。なお実際上は共済につきましても、予算上はもちろんでございますが、実際作ります場合に、各地の状況を見まして厚生省とよく相談をいたしまして、本来不足地区であるかどうかということを見て、稠密なところには建てない、実際に足りないところに建てていく、こういう方針で処理をいたしております。
  68. 横山利秋

    ○横山委員 私も医療施設の再配分ということは望ましい理想の姿であると思う。思うが、その再配分というのは、既存のものはどうしようもないから、これからの新増設について制肘を加えて再配分に向かうということですね。問題の中心は、全般的にしわ寄せをさせるのか、それとも一部のものにしわ寄せをさせるのかということなんです。きのう実は非現業共済組合連合会から、おれの方だけしわ寄せをされるのはかなわぬという陳情が出てきているわけです。それはどういうわけかといいますと、要するに三公社五現業のものはまあまあという意見がある。非現業共済組合のものは一つの私営とみなされるからという意見がある。だからそれは制肘もしやすいからということなんでしょうか。私はいろいろな意見があるけれども、今共済組合法の審議という意味において、所管は主計局ですが、その面から一体どういうふうにお考えになりますか、それを伺っておきたい。
  69. 岩尾一

    ○岩尾説明員 ただいま三公社五現業並びに非現業の共済の話が出ましたわけでございますが、本来から申しますと、今申しましたような医療機関というものは三公社五現業あるいは非現業の共済組合員のための病院であって、本来利用する人もそういった非現業の人が利用する、こういう建前で作らるべきであり、また実際上実行上もそういうふうに運営がさるべきものだと思うわけであります。しかしながら現状におきましては、こういった病院はほとんどその職員の利用というのは大体半分以下で、むしろ一般の人の利用の対象になっておる、こういう状況でございます。そこで先ほど申されましたように、こういった病院を非現業共済組合の立場でどういうところにどう作っていったらいいかという判断、これは非現業職員の病院だから、まずその利用を一番優先的にやっていったらいいじゃないかという思想が一つあると思います。ところが実際上は、そういう一般病院に利用されておる。一般の人が利用しておる。普通の病院と同じだ、こういうことにもなっておるわけなんで、その点から先ほど申したような全体的な規制をすべきであろう。そこで現在三公社五現業については協議ということになっておりますが、それを今度はさらに広げて、非現業等についてもやるという場合には、今申した病院というのはそういった職員だけの利用というよりは、むしろ一般の利用のためにも存在しておるのだから、そういう意味で全体の医療行政の立場から、その再配分について検討すべきだという見地で見ることになるわけであります。その意味から申しますと、これは何ら区別する必要はないので、そういう意味で政府としての調整を行なうべきではないか、こういうふうに私としては考えております。
  70. 横山利秋

    ○横山委員 たとえば非現業共済組合の病院を例にとってみますと、一体これは一般大衆のために設立された病院なのか、あるいは国家公務員等のために設立された病院なのかといえば、文句なしにそれは国家公務員諸君のために設立された病院なんです。それは間違ってはならぬと思う。ただ病院があるのに急患がそこへ飛び込んだら、これはあなた方は利用できませんよと言って断わるわけにいかぬ、そういうものじゃない。だから利用したい人がどうしてもあれば、門戸を開放するのが当然である。ところが当然であるからそれは一般病院とみなすというのは、いささか本末転倒のきらいがありはしないか。そんなことなら国家公務員諸君がどこの病院に行こうと、全く非現業共済組合の病院と同じような恩恵を受けられるようにしてやらぬと、話が合わぬではないか。そこのところが問題のある点でございまして、私は非現業共済組合の病院が設立された本旨に従って判断すべきであると思うのでありますが、いかがでしょう。
  71. 岩尾一

    ○岩尾説明員 全くその通りでございまして、先生のおっしゃるような趣旨で作るわけでございますが、実際上はそういうふうに運営をされていないし、またされにくいわけでございます。たとえば東京あたりでございますれば、こういうふうに非常に各機関がたくさん密集しておりますから、一番手近な利用しやすいところに行くということで、公務員必ずしも虎の門共済病院には行かない。近所の病院へ行く。しかも同じ保険でございますから、本人はただということでありますと同じであります。ところがたとえば水戸とかあるいはそういったいなかに参りますと、そこの職員の数というものを考えまして、公務員はこれくらいであるからこれくらいのベッドのものならいいのではないかというようなことで、作り得る可能性はあると思います。従って実際上病院を作る場合に、本来今申しましたような非現業の立場としては、非現業の職員のためにのみと言うとちょっと恐縮でございますけれども、先ほど言ったようなものにはもちろん一般の人の利用も許すべきでございますが、建前としては非現業の職員のための病院として作るわけでございますが、従来の大きな病院につきましては、今申し上げたような実態でございます。そこで今後の考え方としては、もしそういう一般利用というものが行なわれ得るならば、逆の見方から言いますと、せっかく病院を作るのなら、そういった公務員だけでなしに、その近所におる人たちにもプラスになるように、五十ベッドを作るなら百ベッド作って、近所の人も入れるようにしたらいいのではないか、こういうような思想も出てくるわけであります。従ってそういう点を考慮して、医療行政の全体の立場からも検討を加えていくことが必要ではないか。その意味で三公社五現業というのは同じ政府機関であるから、まず協議の対象にする。しかしそれ以外の大病院についても、一般で利用することがあるならば、それは同じ医療行政の立場で検討の対象にすべきである、こういうことを申しております。
  72. 横山利秋

    ○横山委員 あなたは自分の金で、国家の金で作るようなお考えを持っておってはいかぬですよ。三公社五現業の病院は自分の病院ですね。国鉄の病院、電通の病院です。非現業共済組合の病院は非現業共済組合の病院ですから、国の資金が全部じゃない。掛金の中に入っておる。そうでしょう。そうだとすれば自分の手で作ったものと国が直接作ったものと——国が直接作るものなら制肘を加えてもやむを得ないけれども、組合員が自分たちの銭をある程度出して作ったものを、国が全くお前の金であったところでおれらの自由にする、よその人間も見てやれというのは、それは少し穏当を欠く意見だと思う。しかしこの点はいろいろ議論があるところでありまして、社会労働では何か与党からも案が出ているそうでありますが、ただ私はこの法案審議に際して、非現業共済組合の諸君の立場というものは考えてやっていかなければいかぬじゃないか、こういうふうに考えますから、これは申し上げておきます。  それからもう一つありますのは、これはきわめて常識的で現状を無視した意見でありますから、一つ考えてほしいと思うのでありますが、共済組合年金制度は最近確立してきたものですが、しかし一方において退職金というものがあるわけです。退職金は明らかに報労的な性格を持ち、賃金の支払い部分というような性格も持ち、そして退職金制度が確立することによって二本建になりました。共済組合年金制度と退職金と二本建になりました。二本建の性格になったあとにおいては、この共済組合年金について少し形を変えていくべきではないかと私は日ごろ思っているわけであります。といいますのは、とにかく勤続年数と最終年俸というものが共済組合年金基礎になっている。しかしこの共済組合制度社会保障の一種なんでありますから、要するにその人個人がやめたあと生活に重点を持つべきであって、退職金というものはある程度報労的なもの、賃金の支払い部分に匹敵するもの、そういうものに性格を少しずつ変えていったらどうであろうか。やめたときにその人が大へんえらい人で、年間百万円そこらももらう人はあるかどうか知らぬが、しかし便所掃除を何十年もやっていた人には、その人の最終本俸でやってしまうという点については、もう少し最低保障を切り上げて、生活保障的な性格共済組合制度にも強く導入をすることが必要なのではないか、こういうふうに私は日ごろ考えておるわけであります。少し革新的な意見ではありますけれども、共済組合制度本質論に触れる問題でありますが、一つ自由な御意見でけっこうでございますが、御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  73. 岩尾一

    ○岩尾説明員 社会保障の問題といたしまして、年金の問題は今先生のおっしゃいましたように退職金と退職年金というものがあるわけでございます。現在各民間におきましても、従来は退職金ということで出ておりましたものを、逐次退職年金に切りかえたい。そこで現在の厚生年金制度というものを活用しながら、その上に一つ付加年金的な形で退職年金を給付していこう、こういうような動きがあるわけでございます。恩給につきましては先ほどからもお話がございましたけれども、恩給法の建前は、在職中の官吏が経済獲得能力を喪失して、在職しておったものの補てんという意味で、恩給が従来から出ておるわけでございます。従って退職金というものは、今申されましたように在職期間の報償という意味で出ておるわけでございますけれども、それと別途に恩給というものは出ておる。ところで一般の民間につきましては、今申したような意味がなかったわけでございますから、退職金だけが出ておる。それがだんだんこういうような時代になりまして、いわゆる社会保障としての年金というものを拡大していこうということになりまして、一部ではその退職金を切りかえていくとか、あるいは退職金は退職金としておいて、さらに年金をつけていこう、こういった思想が出てくるわけでございます。共済組合自体につきましては、先ほど申されましたように一方において恩給の思想を受け継ぎながら、いわゆる掛金的な思想を持ち込み、さらに退職金自体の制度も従来通りということで存置しておるわけでございますから、そこに若干今後の体制に対する調整の面からいえば、まだなお検討すべき点があるのではないか、こういうことを考えております。  厚生年金につきましては、三十九年にちょうど再改正の時期になりますので、われわれといたしましても三十八年ごろから検討を加えて、今申されましたような方向で実際の社会保障制度として国全体から見た場合、共済も入れ、各厚生年金も入れて、どういった制度が一番ふさわしいものであるかということをよく検討したいと思っております。その際に、今申されましたような退職金についても十分な検討を加えたいと思っております。
  74. 横山利秋

    ○横山委員 共済年金制度というものが、長期勤続者優遇の線に立っておる。これは最近の退職年金事業団の発足及びその後の経過によっても考えられるのであるけれども、そのために、割合に短期の勤続者に対しては非常な不遇というか、そういう措置をとっておる。ところが最近公的年金の通算をすることによって、またもろもろの問題が出てきているわけでありまするけれども、これからの産業の発展段階におきましては、必ずしも途中でやめる人が、自己の意思ないしはそのまずいことによってやめた人ばかりではなくして、必要に応じて産業の中を転換をしていくというととが容易に想像されると思うのです。ですから同じ場所における長期勤続者優遇、優先論というものは、少し考えるべきことではなかろうかということと、先ほど申しましたように退職金は退職金、それから年金制度年金制度として、片一方は在職期間の報労的なもの、片一方は社会保障的なもの、そういう性格に伸ばすためには、この計算の仕方その他について徐々にではあろうけれども、目標を定めて前進をすべきである、こう考えておるのでありますが、御回惑いただけますか。
  75. 岩尾一

    ○岩尾説明員 御趣旨は全く同感でございます。通算につきましては、まあ本来国民年金等ができまして、全国民というものが何らかの年金の恩恵を受けるということになりませんと、なかなか通算できないわけでございます。幸いに国民年金も発足いたしましたので、通算制度も実施いたしまして、そういった短期の退職した人についても年金としての措置ができるように、通算をしていこうというわけでございます。全体といたしましては退職金と年金の問題は、社会保障の重要な問題として検討いたしたいと思います。先ほど申しましたように、恩給と退職金という場合には多少違うわけでございますけれども、現在の公務員につきましては、共済制度をとっておりますから、そこに一般厚生年金等による社会保障と立場を同じくする面もあるわけでございますので、そういった点もよく検討して調整をいたしたいと思います。
  76. 横山利秋

    ○横山委員 この法律の中で、刑に処せられたこと、または懲戒処分等によって年金を受ける権利または資格を失った者のらち、旧治安維持法等の廃止に伴う法令または恩赦に関する法令等により刑の免除または懲戒等の処分の免除を受けた者については、本年十月から年金受給権利または資格を得させることにする——非常にけっこうなことだと思うのですけれども、私はよく知りませんけれども、こういう治安維持法によって処分を受けた人が刑の免除または懲戒等の処分の免除を受けたという点は、一体どのくらいあるのでしょうか。逆に聞けば、刑の免除または懲戒の処分の免除を受けない人、この点は旧治安維持法が廃止されたのだから、もうそれに伴って自動的に年金の受給権利または資格を受けさせるようにしたらどうだ、こう常識的に考えるのでありますが、この点はどうでしょう。
  77. 平井廸郎

    平井政府委員 ただいま御指摘の点は、率直に申し上げまして共済組合法自体の問題としてではなくて、恩給法考え方をそのまま取り入れて考えておるわけでございまして、治安維持法関係の処理がどうであるかという問題は、共済組合プロパーの立場で考えるというのではなかったものでございますから、人員その他の点も検討しておりません。
  78. 横山利秋

    ○横山委員 よその法律がこうだから、うちもついでに同じように並べるというのでは、答弁になりませんよ。私の言うことがおわかりならば、これはそういうふうにしてもらわなければいかぬ。旧治安維持法は悪法として廃止されたのだから、それによって権利を失格した者は全部回復すると言うてなぜ悪いのでしょうか。それと同じように、私自身の体験ですが、私は汽車をとめて首を切られたのですけれども、たしか掛金はもらったような話らしいのです、私はあずかりませんけれども。その当時まだ、懲戒処分は掛金もやらぬ、こういう話があったのですが、今はどうなっているのですか。今懲戒処分を受けると、掛金も、それに関する利息ももらえぬのですか。
  79. 平井廸郎

    平井政府委員 懲戒処分による免職等の場合においては、二割の給付制限を受けることになっておりまして……。
  80. 横山利秋

    ○横山委員 そうすると八割はもらえる。その八割というのは、本人が今まで共済組合にかけた掛金と、それによる利息等の水準保障されておると考えられますか。
  81. 平井廸郎

    平井政府委員 全部が新法期間であるか、つまり旧官吏であった者につきましては、かつて恩給法に基づいて国庫納金等をやっておったわけでございます。新法になりましてからは、掛金計算によりまして本人が百分の四十五、国または公企体が百分の五十五を支出いたしておるわけでございます。従いまして純粋に新法期間としての計算でございますならば、本人の掛金並びに利息部分はカバーされることは当然であろうと思います。また旧公務員期間につきましては、そういった計算がございませんけれども、一般に、恩給法による、いわば恩給水準と国庫納金の水準を比べます場合においては、かなり高いものになっておりますから、その限りにおきましても本人の不利益にはなっておらぬというふうに理解いたしております。
  82. 横山利秋

    ○横山委員 これは共済組合ばかりではないのですけれども、社会保障のあらゆる制度の中で、短期であろうと、また長期であろうとにかかわらず、本人がかけたものがかけ捨てになったり、少ししかもらえなかったり、また利息は全然度外視されておるというようなことは、私は不当であると思う。中小企業の退職金の掛金率につきましては、三年以内ですと、これはまるきり没収だということになって、そんなばかなことがあるかということになった。あるいは国民年金でも六十才までにならぬと、これはかけ捨てであった。こういうようなことはまことに不届きな内容だと思う。ですから、少なくとも本人がかけたもの、それに対する利息というものは、あらゆる法律規定を通じて、どんな事由があろうともこれは返還をするか、あるいは年金なり一時金として差し戻さなければならぬ義務が、その預かった者についてはある、こう思うのでありますが、いかがでしょう。
  83. 谷村裕

    谷村政府委員 それは一つ考え方であろうかと思います。要するに年金制度というものを一つの相互掛金あるいは保険的な考え方でとった場合に、さような給付の仕方、少なくともかけたものは必ず返すという給付の仕方というものを前提として保険計算をするか、それともそういうものはチャンスがなかったということの考え方をするかによるかと思いますが、たとえば国民年金の場合に昨年その話が出まして、たしか死亡一時金というふうな形のものを出すことにいたした例があるかと思います。かような制度については、すべておよそかけたものは必ず返すべきであるという考え方をとって、そもそも制度というものを考えるべきであるかどうか、これについては必ずしもそうすべきかどうかという点について、私どもは直ちにそうだとは思いませんけれども、一つ考え方ではあろうと思います。ただしそのことがほんとうにいいことか、適切であるかという点については、まだまだ議論があるかと思います。
  84. 横山利秋

    ○横山委員 あなたはさっきから学者みたいな意見を言うて、あろうかあるまいかはわかりませんけれども、あるまいかあろうかこれから検討もしませんというような話で、まことに無責任きわまる。あなたは一体どう思っているのかを私は聞いているので、何も学者の判断を聞いているのじゃない。政府に対して私どもから、不評判だからこうした方がいい、どんなにその人が早期に、自己の都合で退職しようが、あるいは懲戒処分になろうが——自分のかけたものも返してやらぬ、取り上げてしまう、それだけの権利があるか。自分で毎月かけたものも、お前はけしからぬから取り上げるという権利はどこにあるか。それは本人の既得権じゃないか。期待権じゃないか。そこを侵害する権利が一体どこにあるか。だからあなたは、あろうかあるまいか、それは議論のあるところでありまして、今後検討もいたしませんというような無責任なことでなく、あなたはどう考えているか、それを一ぺん聞かして下さい。
  85. 岩尾一

    ○岩尾説明員 社会保障全体の問題でございますから、私からお答えいたします。今申されましたような、いわゆるかけ捨ての問題でございますが、社会保障制度として年金というものを考えます場合に、これは全部国の方で税金から給付するのだ、その上に立っての掛金をかけるのだということであれば、これはまた別の問題かと思いますけれども、先ほど次長が御説明されましたように、現在の年金というものは保険の建前をとっております。すべての人が掛金をかけて、それによってある年令に達した人に対して給付を見ていく、こういうことになっておるわけでございます。その場合に、かけた掛金は全部返すのだというとこであれば、ある一定年令からの人の給付の金額というものは、それに応じて少なくならざるを得ない。これをある年令からの人の給付というものを上げようとすれば、掛金を上げるか、あるいは別途国家から金を出すか、あるいは今申されましたようなかけ捨ての問題を保険計算の上で入れていくか、そういうことにしませんと、いわゆるプレゼント・バリューとしての全体の原価計算ができないわけであります。そういう意味次長は申されたわけでありまして、先生のおっしゃるように、非常に気の毒じゃないか、実際自分のかけているものまで全部取り上げるのか、こういう言い方をされますと実際あれでありますが、それは限度がありまして、もちろんある一定の年数をかけた方については給付していくという道は開くべきであろう。しかしながら社会保障の現在の骨幹をなしておる社会保険の建前としては、やはりかけ捨てというものを前提として給付というものを考えないと、給付額自体を引き上げ、あるいは給付額自体を確保することが困難だ、こういうことでございます。
  86. 横山利秋

    ○横山委員 私はそうは思わない。かけ捨てを前提としなければ給付額の改善ができないとは思っていない。切り捨てがどのくらいあるかについては、計数の問題になりますから省略いたします。ところが、意見は違う。また今後の事態としては、かけ捨てが前提にならなければこういうものがうまくできぬのだという所説については、私は反対です。またこれからの事態としてはそういうことにならない、必ず私の言うようになる、こういうふうに私は考えておる。  時間がなくなりましたし、広瀬君が関連があるそうですから……。
  87. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 先ほどの平井給与課長の答弁の中で、懲戒処分を受けたというふうな場合に八割の給付にしている、こういうわけでありますが、その中で私どもふに落ちないのは、公共企業体職員等共済組合法あるいは国家公務員共済組合法、そのいずれにおきましても、首を切られるのは大体専従者が多いわけです。その専従者は費用負担において、長期給付のものは、国なりあるいは公共企業体そのものが負担をいたしておりません。それは労働組合が負担をしておる。そうしてその労働組合のためにやった行為によって処分をされる、首になる、その者まで八割だ。非常に長い期間専従者をやっておって、新法施行後国あるいは公共企業体が負担する分を、全部労働組合がかわって負担をしておるわけですね。そういうものに対して八割というのは一体どういうところから出るのか、こういうものについては全くそれは理論の矛盾じゃないか、そういうものについてどう考えておられますか。
  88. 平井廸郎

    平井政府委員 確かに、ただいま先生御指摘のようなケースの場合でございますと、国が百分の五十五を出していないということはございます。ただ専従期間は、確かに公庫なり公団等の出向職員の場合と同様でございまして、公庫なり公団なりあるいは組合なりが、国の負担金なりあるいは国の負担金に相当する部分共済組合へ払い込んで、その結果本人が共済組合に関する権利を継続していくという形になっておるわけでございます。従いましてそうしたケースにおきましては、確かに先生御指摘のように、その期間につきましては国が持つということはございません。しかしかりに専従職員でございましても、就職した後の全期間が専従職員期間でもございませんし、またそういう意味におきましては国が持っている部分も若干は出て参るわけでございます。従いまして厳密に申しますならば、確かに私が申し上げたことは正確ではございませんので、その点は訂正をいたします。  ただもう一つ、今のような場合になぜ制限するのかという御議論もございましょうが、これは共済組合制度恩給制度から切りかえました経緯から考えまして、一方におきましては社会保障体系の中に公務員の退職保障の観念を入れていくということがあったわけでございますが、同時にまた非常に高い給付水準を確保する理由づけといたしまして、一つには公務員制度であるという特色をなお残しておるというような関係もございまして、給付制限規定を設けているというふうに理解いたしております。
  89. 広瀬秀吉

    広瀬(秀)委員 これはもちろん、二年なり三年なりの専従期間でない期間がある。しかし十八年、二十年近くもずっとやっているというような事態が、これから出てくるわけです。二十年をこえたが、そのうち専従期間がほとんど十八年にもなっているというような場合で、国の負担を受けたのはわずかに二年——入った当初の、給料も安い時代の二、三年分だ、あと十七年以上は組合の専従期間である。そうして賃上げ闘争か何かで解雇をされた、こういうような場合に、一律に八割というようなことをやるということは、わざわざ——専従者というものは、私は本来ならば国が全額負担すべきだ、こういう主張を持論として持っておるわけだし、何回かこの委員会でも言ったわけです。ところが、いや、そうじゃない、これは専従なんだから、その期間は、今課長が説明されたような経過で、組合に持たせるのだ、こういう理論だけで通してきている。そうだとするならば、やはりそこに矛盾というものが出てくるだろうと思うのです。かけ損やかけ捨てをなくしようというような基本的な精神からいっても、組合も損害を受ける、本人も損害を受ける、こういう二重の制裁的なものが、本来保険システムに移行しつつある共済制度というものにおいて、そういう矛盾というものは避けられないだろう。そういった場合にはこれからそういう例が非常に多くなってくると思います。新法が三十一年ですから、今までそう目立った極端な例は出てきませんけれども、今のその制度というものがそのまま横すべりしてあと十年近くもたつと、そういう事例が、理論的にもたえがたき矛盾というものが出てくるだろうと思うのです。そういうようなものを総合勘案されて、やはり特別な、そういう場合の扱いというものが当然考慮されてしかるべきだろう。労働組合が長期給付の分まで負担しておって、しかも労働組合のために処分を受ける——これは遺憾ながらそういうべらぼうなことが今日の公労法体系の中で、あるいは公務員法の中で行なわれるわけです。そういうところを、共済組合だけは労働組合の負担にしているということは、そういう損害を受けさせないのだということがそこにあったろうと思うのです。そうだとすれば、やはりそういう特別な取り扱いをするということは問題だ、こういうように思うわけです。検討をお願いしたいと思います。
  90. 平井廸郎

    平井政府委員 ただいま御指摘の点の中で、御本人の損害に帰するかどうかという点については、必ずしもそうでないということはさっきちょっと申し上げたところであります。ただ労働組合が負担している場合であるから、その分については考えろというようなことになろうと思いますが、これは私ども公庫の場合であろうと公団の場合であろうと、労働組合の場合であろうと、一応保険システムとしてこういう形で運営いたしている以上は、負担していただくという問題はやむを得ないものと考えます。しかもその場合、組合が負担しているという行為と、本人に対する給付制限という行為を、直ちに結びつけて考えなければならぬかどうかということは、やや議論のあるところだ考えますので、必ずしも今直ちにそういうものを考えるということは妥当ではないのではないかと考えております。
  91. 横山利秋

    ○横山委員 そんな木で鼻をくくったような答弁をすると、いま一ぺん言いたい。一体本人の損にはならぬということは、本人が出しているわけではない、組合が掛金を出しているのだから、本人は損はないじゃないか——それは顧みて他を言うもので、国はどれだけ出しておるか、何も出してないじゃないか。出してないのに取り上げるやつがいるか。本人と組合が出しているものまで取り上げてしまう。こんなばかな話があるか。さっきあなたは国が出しているのだという話があったが、国が出していなかったらどうなるのですか。あなたみずから論理の矛盾を冒しているじゃありませんか。ともかく、僕も該当者の一人でありましたけれども、これは破廉恥罪を犯したのじゃありませんよ。それは公労法では、あおり、そそのかすというのがありますけれども、あおり、そそのかすというのも、個人的利益があったとみなしますか。かりにそういうことがあったとしても、個人的利益で争議行為が起こったと思いますか。全然これは皆無でしょう。どんなに悪賢く解釈したところで、そういう意見は出てこないのです。組合員大衆のためにやったのだ。ある程度やり過ぎだったことがあっても、解雇処分なりの処分を受けた人は、個人的利益は皆無なんです。だから、行政処分の問題と共済組合の問題とは、そこで区切る必要がある。従って、破廉恥罪を犯したならばまだしも、本人と組合が全額出しておる。これがもう今では一年や二年じゃありませんよ。僕の経験を言っても十年。今はずっとやる人が多いから、十五年、二十年と組合専従をやる人がある。その掛金は全部組合と本人が出しておる。それを取り上げるという理屈がどこにあるか。この点を広瀬君は言っておるのだから、これは検討の余地がないなんという、そういう破廉恥罪と間違えたような非人情、荒唐無稽、認識不足もはなはだしいことを言われると、これはやめるにやめられない。
  92. 谷村裕

    谷村政府委員 どうも横山委員が非常に誇張しておっしゃるものですから、つい私もまたちょっと申し上げなければならぬような気になってしまうのでございますが、今問題が二つあると思います。一つは給付制限をする重要な原因として、破廉恥罪ならやむを得ないが、そうではないような、自己の利益とならないような、しかし法律に抵触した結果受けた行政処分の場合にはこれはいいのじゃないか、これは何も組合専従者であろうと組合専従者でなかろうと、すべてそういう問題があり、かつその掛金の財源がどこから出ておったかという問題とは別に、給付制限をする場合の考え方としてどうであるかという問題に触れられたと思います。これは先ほど給与課長が申しましたように、少なくとも今の共済組合法の考え方には、国家公務員法におけるいわゆる職員に対してはそういう制度考えよという、やはり国家公務員としての、あるいは公共企業体の職員としての一つの身分的な建前というものが残っておって、一般的な意味における社会保険的なものではない国家公務員的な立場に立った一つ考え方があるという点において、ただ破廉恥罪だけが問題になるのか、それ以外の行政処分も問題になるのかという点があろうかと思います。  第二に、その間の掛金について本人負担のほかに、国あるいは公企体の負担する部分があった、あるいはなかったということによって、給付制限を区別すべきかどうかということでありますが、この点につきましては先ほど、平井あとで若干訂正をいたしておりましたように、必ずしも国のものがあるからなかったからということではなくて、むしろそれはいかなる体系のもとにその方が勤められ、あるいは通算を受けられており、その間の給与はいかなる形においてされておったかという問題でありまして、むしろその期間たまたま公企体職員としての身分を持っておらなかった場合でも、あるいはたまたま持っておっても、本来の職務についていないような場合であっても、通算をしておるというところに意味があるわけでありまして、その際の負担をだれがしておったかという点は、むしろ問題になる筋のものではないというふうに私は考えるわけでございます。もし組合専従者であった場合でも、だから逆に負担は組合がやっていた、公企体がやっておったのではないから返したらどうだというお話であるとすれば、一体それは公企体の職員であったということか、あるいは国家公務員であったという実体があったかなかったという面の検討にまで及ぶことになると思いますので、決して荒唐無稽、非人情ということでなしに、やはりこの問題は非常に基本的な、共済組合制度なり国家公務員におけるそういう年金制度の扱い方の問題として、十分考えなければならぬ問題だと私どもは思っておるわけでございます。
  93. 横山利秋

    ○横山委員 言うだけ言っておきますが、あなたは労働運動に対する理解がない。これがまず大前提になるわけだ。これは職掌柄しようがないと思うとが、労働運動というものは、私から申すまでもないことであるけれども、組合役員の個人的利益は皆無である。それから憲法に認められた活動である。その活動の過程においてたまたま生じた問題で、共済組合の問題にまさに自動的に処分を受けるというのは、共済組合の問題と労働運動、行政処分の問題とをごっちゃにしているのじゃないか。一般の処分の問題は別の角度で論ぜらるべきであって、憲法に保障された労働運動の原則の過程における問題については、これは違った角度で論じられてもいいのじゃないか。従って職員たる身分を離れたということについてはこれはやむを得ないけれども、それまでの扱い及びそのときに得べかりし既得権、期待権については、共済組合としては保障しても何ら問題がないのではないか。何か労働運動で処分された人に対して、共済組合として自動的に破廉恥罪と同じような処置をしなければならぬという基本的な理由は、共済組合の立法の精神にないではないか、こう言っているのです。そこの区別がわからぬと、もう非人情きわまる話になってしまうのでありますから、これはまあきょうあなたが答弁するとむきになるから、今晩暮夜ひそかによく考えていただいて、一つまたいずれかの機会に御答弁を願うことにいたします。
  94. 小川平二

  95. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ただいま上程の外国為替銀行法の一部改正案というものは、為替専門銀行である東京銀行に対しまして、自己資本の五倍を限度として金融債の発行を許す、そして所要の資金を安定的に確保させまして、同行の外国為替取引及び貿易金融の円滑化に資せしめんとするものだとされておりますが、発行総額の積算基礎となる自己資本の額をまずお聞きしたいと思います。
  96. 大月高

    ○大月政府委員 新しい法案によりますと、債券の発行の限度は自己資本の五倍ということになるわけでございますが、昭和三十七年三月末におきますそれらの計数について申し上げますと、資本金が百億でございます。それから準備金の中には、利益準備金、任意積立金、貸倒準備金、価格変動準備金、その他いろいろの準備金がございまして、それらの準備金を合計いたしますと百三十九億一千四百万という数字になります。そういたしますと、今の資本金と諸準備金、合計いたしまして二百三十九億一千四百万、おおむね二百四十億が自己資本になるわけでございます。
  97. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと発行の総額というものは、二百四十億ですから、五倍ですから千二百億ということになりますね。
  98. 大月高

    ○大月政府委員 三月末の自己資本が、今申し上げましたような数字でございますが、その中で差し引いてございます配当と賞与と納税準備金、そういうものは予定の概数でございまして、まだ確定いたしておりません。
  99. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そういたしますと、千百五十億程度となるはずでありますが、まず三十七年度分の予定発行高、それから発行のプログラム、それから債券の予定引受先につきまして、お答えをお願いいたします。
  100. 大月高

    ○大月政府委員 この債券発行につきましては、前提といたしまして、主として為替銀行間の協調ということをバックにいたしておるわけでございますので、日本銀行及びそれらの為替銀行その他金融機関の代表者をもって構成いたします協議会を作りまして、そこでどのくらいの金額及びどういうような条件で発行したらいいかというようなことを、御相談願う建前になっておるわけでございます。これは法案が通過いたしまして正式に制度ができてからのことでございますので、まだ単なる一つの見通しとしてお聞き願いたいと思いますが、この法案を提出いたすにつきましては、金融制度調査会に諮りましてその御答申を得たわけでございます。そのときの議論といたしましては、おおむね月に十億程度のものを発行するのでいいのではなかろうか、こういうことでございます。そういたしますと、大体年度間におきまして百二十億でございますが、事実上四月は発行できないという関係、あるいは金融情勢によりまして、それを若干下回るというようなことになるかもしれないと思います。そういうことは具体的な毎月の金融情勢によることでございますけれども、いろいろそういうことを勘案いたしますと、とりあえず百億前後くらいになろうかというふうに考えております。  それから消化先でございますが、最初に申し上げましたような考えから出ておりますので、主として為替銀行を中心としてその相当部分を引き受けてもらう、そのほかにその他の金融機関にお願いして引き受けてもらうということになろうと思います。金額は月十億程度のことでございますので、そう大きな負担にはならないであろうと思われます。
  101. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次に債券の種類と予定される利率等につきましてお聞かせを願います。
  102. 大月高

    ○大月政府委員 ただいま法案によりますれば、利付及び割引、両方の発行ができるわけでございまして、これは現在の長期信用銀行で発行いたしております債券と、法律的な基礎を同じくするわけでございます。ただ現実の問題といたしましては、この為替専門銀行が主として為替及び貿易金融をやるということになりますと、性格的に短期の金融になるわけでございます。そういう意味で発行いたします債券も、現在長期信用銀行が発行いたしております債券の期限よりも短い方がいいのではあるまいかというのが考え方基礎でございまして、そういう意味で、現在長期信用銀行の債券は、利付債におきまして五年でございます。その他割引債の一年ものが出ておりますが、この新しい債券におきましては、やはり安定的な資金を得るという意味においては、一年の割引債でなくて、利付債の方がいいのではないか。しかしこれが正式の長期金融機関としての債券でないという意味におきまして、それより短い方がいいというのが大体の考え方でございます。そういう意味で具体的な条件は、先ほど申しましたような協議会の御相談に待ちたいと思っております。これは発行する側のいろいろな立場もございますが、引き受ける側の引き受ける利便、金利、その他コストの問題等がございますので、最終的にはそれらの御相談に待ちたいと思います。しかし今のところは大体現在の金融債の金利体系及び期限の体系というものがございますので、今申し上げましたような考えからいきますと、おおむね二、三年ぐらいの期限で、金利が六分七、八厘ぐらいというようなところに落ちつくのではあるまいかと考えておりますが、これはまだ最終的にはきまっておる問題ではございません。
  103. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 長期信用銀行とか、南中、それから機中とか、それから現在五カ年ものの利付債券、一年ものの割引債を発行して、そして多分金利としましては長期の方は七分三厘くらい、それから一年ものが六分二、三厘ですか、その辺であろうと思います。それでその中間的なもの、中期的な債券を発行させるということでございますか。
  104. 大月高

    ○大月政府委員 仰せの通りでございます。
  105. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次にお伺いしますけれども、東京銀行の現在の円資金の貸し出しに運用している金額はどのくらいありますか。
  106. 大月高

    ○大月政府委員 昭和三十七年三月現在におきまする貸し出しは、二千十億でございます。
  107. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それに見合う資金調達の構成といいましょうか、それはどういうことになりますか。
  108. 大月高

    ○大月政府委員 現在の東京銀行の円資金繰りについて申し上げますと、今申し上げました二千十億は貸し出しの数字でございますので、そのほかに有価証券を持ち、外貨を保有いたしており、そういうものが円資金でまかなわれておりまして、それを合計いたしますと二千四百三十一億という数字でございます。おおむね二千五百億程度でございます。その二千四百三十一億をどういう格好でまかなうかということでございますので、内訳を申し上げますと、一般の預金におきまして八百十四億、それから自由円預金、外貨が東京銀行に入りまして、それを外為に売り上げまして円にして預金してある分が三百三十一億、それから先ほど申し上げました自己資本その他合わせまして百六十九億、外部負債といたしまして日本銀行借り入れが一千二億、コールその他が百十五億、合計いたしまして二千匹百三十一億、こういうような資金調達源になっております。
  109. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうしますと初年度債券発行によって得られる資金が百億ということになっていますけれども、今の調達資金の構成の中に新しくそれが入っていくわけですね。ここにコール資金が百十五億あるようですけれども、大体今コール市場は証券関係の問題とかいろいろなことで、安定した  コール市場がないと思うのです。金利も相当高いのじゃないかと思うのですけれども、こうしたコールに依存しているということはかなり不安定だ、そうした意味で今度の金融債の発行も、これと逐次とってかわっていくというような意図なのかどうか。その辺のことをお聞きしたい。
  110. 大月高

    ○大月政府委員 現在の為替専門銀行の基本的な建前は、一部の資金を預金依存いたしまして残りを主としてコールに依存するというような感覚で出ておるわけでございます。しかしまず最近の都市銀行は大きなオーバー・ローンの状態であることは御存じの通りでございますので、東京銀行もそういう一般の例に漏れず、今申し上げましたように日本銀行借り入れが相当額に達しておりますが、これはある意味では希望する姿ではございません。しかし今の状態においてはやむを得ない。  次にコールにつきましては、正常化した姿においては当然コール資金に依存するものと考えておりますけれども、今のような状況ではなかなかむずかしい状態でございます。そういう意味で、今のコール資金につきまして安定的な資金源によって置きかえたいというのが、今度の考え方基礎になっております。そういう意味で、今度金融債を発行いたすということになりますと、このコール資金の振りかえということが主たる目的になると思います。それによって東京銀行が運用いたしております金のうちの底だまりの部分が安定的な資金に切りかわる、こういうように考えております。
  111. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 当面がちょうど百十五億と百億ですから見合うような格好になりますが、しかしあなたのお話しになったように日銀借入金というものも正常な形でないのだという建前に立つならば、やはり逐次増加すべき債券発行による資金というものが日銀の借入金にとってかわるということも考えられる、さように理解してよろしゅうございますね。
  112. 大月高

    ○大月政府委員 現在の日本銀行借り入れの中には、一つは輸出振興、貿易振興という感覚から、特別の優遇制度に乗っておるものがあるわけでありまして、これは為替専門銀行だけではなしに、一般の為替銀行に適用されているものでございます。たとえば輸出貿手でございますとか輸入貿手というような特別の低い金利になっている。こういうものは最後まで残ると思いますけれども、その他の部分につきましてはできるだけこれは減らしていくというのがわれわれの考え方でもございますので、当然単なるコールだけの振りかえということではなしに、日本銀行借り入れも逐次できるだけ圧縮して参りたい、これが目的の一つであります。
  113. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 東京銀行は主として外国市場において短期資金を取引として国際場裏に立つわけです。そういうことで国際的な低金利ということに競合できるためには、やはり土台から外資自身に見合う、あるいはその一連にある円資金自身のコストも安くしなければならぬという配意が当然加えられると思うのです。そういう意味において、今のコールの異常高の高金利とか、あるいは日銀の貸し出しのうちでも高い部分、そういうものを安定的なものにしようという意図であるから、そういうことであれば私はけっこうだと思うのです。  それから次にお伺いしたいのは、日本の全外国為替取り扱いのうちに占める東銀のシェアはどのくらいになっておりますか。
  114. 大月高

    ○大月政府委員 昭和三十六年の下期におきまして、輸出が二二・二%、輸入が一九・一%、大体二割程度でございます。
  115. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 大体輸出輸入の二〇%前後というものは、ずっと今まで均衡していっているのですか。大体固定的に進んでいますか、最近。
  116. 大月高

    ○大月政府委員 輸出につきましては従来もう少し高い場合がございまして、最高が三十四年度下期の二五%でございますが、その他の期におきましては、大体二二%、三%、四%くらいのところでございますので、大体同じ水準で推移いたしております。それから輸入につきましては、最高の時期がやはり三十四年度の下期でございまして、二四・一%という時期がございますが、その他大体二〇、二一、二二くらいのところでございまして、今の一九・一は若干低うございますけれども、大体二〇%前後のところでございます。
  117. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 輸入の方のパーセンテージは低くなる方がけっこうだと思うのですが、輸出でも下がっておるという点が多少気になると思うのです。そういう点がやはり円資金の調達の不足とか、そういうことに基因しているとするならば、今回の法律通りましてその効果が出てくることに期待したいと思うのですが、そういう点がやはりネックになっておりますか、どうですか。
  118. 大月高

    ○大月政府委員 やはり東京銀行の円資金繰りというものは苦しい状態でございますので、シェアの問題についても若干苦しいであろうと考えておりますが、この制度ができますれば若干はその点が緩和されるだろうと考えております。
  119. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 その次に東京銀行の重役の構成をお聞きしたいのです。それからもう一つついでに甲種為替銀行による東銀株式の、それぞれでなくてもいいのですけれども、大体のおもな銀行による保有高をお聞きしたいのです。
  120. 大月高

    ○大月政府委員 まず重役の構成でございますが、基本的には主として旧正金系統において育たれた方が主力を占めておりますが、そのほかにこういう特別の銀行でございますので、大蔵省系統の役員、それから日本銀行系統の役員がこれに加わっております。さらに各為替銀行との協調という面がございまして、最近におきましては為替銀行の代表者一名を社外重役に加え、かつ貿易界との関連を深めるという意味におきまして、貿易商社の代表の方に入っていただいておる。これが全体としての重役の構成でございます。  それから株式でございますが、ほとんど全部の甲種為替銀行が東京銀行の株を持っておりまして、その合計が千三百五十万株でございます。
  121. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 重役構成においても、それから持ち株を各為替銀行が持っておるということも、日本貿易の先頭に立てる一つのチャンピオンとして東銀を育てていこうという意向の表明として大へんいいと思うのです。終戦直後といいましょうか、昭和二十七、八年ごろにおきましては、銀行ばかりでなしに、民主化の胎動が日本におきまして各方面に起こりました。そこでもとの正金のような特殊の形態というものの必要はないのではないか、各銀行も外国為替をやっていく権利を与えよということで、外国為替業務とか、そういうものに対するシェアを要求してくるような立場にあったわけです。もう一つには、しかし日本の敗戦後の経済復興をさせるために、国際金融市場においてものを言い得るような、そういうチャンピオン銀行を作ることの方が先決ではないかという、二者択一的な議論が行なわれたと思います。私、ちょうど昭和二十八年に別の用でヨーロッパに行きました際に、そうした関係も調べたいと思いましてずっと見て参ったときに、国内の議論とはおよそかけ離れた現象に突き当たりました。というのは、昭和二十八年の七月でしたか、八月でしたか、ロンドンのシティの一角にある東京銀行を訪れました。そうしてドアを排して入ってみますと、それはもう理屈ではなしに、日本人のリーダーのもとに、英国人が七、八十名仕事をしておるのです。まさに普通の銀行を開設して、じゃんじゃんやっておるわけです。ところで日本において議論しておる相手方の銀行、一流銀行ですが、そういう方々の出張先を見ますと、コルレスの銀行の一部を借りたりして、しょんぼりやっておるわけです。国内における議論とだいぶ様子が違うなということを感じました。  次いでニューヨークの方に行きますと、その格差というのですか、程度がうんと開いておるわけです。そういうことで、議論の外だなという感じを持って帰りました。大蔵省当局としましてもそういうことはつとにわかっておったと見えまして、やがて翌年ですか、二十九年四月に、やはりそういうことを考慮されて、外国為替銀行法の制定を見たわけであります。そのときにやはり当委員会としても、なかなか良識がありまして、そうした形のものはうんと成長させなくてはいかぬということで、附帯決議を付しておったはずであります。今それを思い起こしますと、「外国為替専門銀行に課せられた国民経済的使命の重要性にかんがみ、同行機能の完全なる発揮を図るため、政府は外国為替専門銀行に対し低利円資金の供給、政府保有外貨の預託、輸入ユーザンス制を認める等為替貿易金融制度の正常化の強力なる諸施策を検討の上急速に実施に移されたい。」というような附帯決議を付しております。この中には、アップ・ツー・デートでない項目がありますが、当時としては最も必要欠くべからざることを羅列しまして、その推進方を決議しております。そのうちで、低利の円資金の供給ということがありますが、この点は、日銀の弾力的な貸し出しの扱いという点で多少考慮されておるかもしれないけれども、必ずしもこの低利円資金の供給という点では充足といいますか、実現はしていないように思います。しかし低利円資金でなしに、円資金の絶対量の増額ということが当面の急務になってきたので、これは趣旨は多少違いますけれども、本日のこの法律の一部改正で、こういう点を補う、そういう形が出て参りましたので、私どもとしてはやるならば徹底的にやってもらいたいと思っておるくらいであります。そういうことで、この法律は、日本社会党としては全面的に賛成ということで、態度をきめておるわけであります。こいねがわくば、せっかくこういうものができましたのですから、いやしくも消化不足になるようなことのないように、当局におきまして特段の御努力をお願いしたいと思います。  以上、希望を申し述べまして、私の質問を終わることにいたします。
  122. 小川平二

    小川委員長 これにて、両案に対する質疑は終了いたしました。
  123. 小川平二

    小川委員長 これより討論に入るのでありますが、両案については、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  お諮りいたします。両案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、同案はいずれも原案の通り可決されました。
  125. 小川平二

    小川委員長 ただいま可決いたしました両案中、昭和三十七年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改正に関する法律案に対しまして、細田義安君より三派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者の趣旨説明を求めます。細田義安君。
  126. 細田義安

    ○細田(義)委員 ただいま議題となりました附帯決議について、提案の趣旨及びその内容を御説明申し上げます。  附帯決議の案文はお手元にお配りしてありまするから、朗読は省略させていただきます。 ————————————— [参照] 昭和三十七年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案に対する附帯決議 将来において、本法適用者と新法施行後の退職者との間に、支給原因発生時期により共済年金間の均衡が失われるおそれがあるので、今後検討の上是正の措置を構ずべきである。 なお、今後恩給法改正が行われる場合には、これと相まつて同程度の是正の措置を構ずべきである。 —————————————  すなわちまず第一点は、御承知の通り今回の改正案は、旧令による共済組合、旧国家公務員共済組合等から現に年金の支給を受けている者、つまり旧法当時に退職した者の年金を、現行の一万五千円ベースから二万円ベース改定すること等を目的としておるのであります。言いかえますると、旧法が新法に切りかえられてから後の年金改定については、一応触れないこととしております。従いまして、もし今後さらに旧法当時の退職者に対する年金額の改定が行なわれまするような場合が起こって参りますると、新法に移行してからの退職者の年金額との間に不均衡を生ずることとなるおそれがありまするので、政府は今後この間の関係につきまして十分検討の上、是正の措置を講ずべきであるというものであります。  第二点は、本法律案は申し上げるまでもなく恩給受給者との権衡をはかる意味でとられた措置でありますから、今後恩給の額その他支給の条件等について何らかの改正が行なわれた場合におきましては、これに即応して本法の適用者についても同様の改正を行なうべきであるというものであります。  以上申し述べました理由によりまして、本附帯決議を提出する次第であります。皆さんの御賛同を願います。(拍手)
  127. 小川平二

    小川委員長 これにて提出者の趣旨説明は終わりました。  お諮りいたします。細田義安提出の動機のごとく決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  128. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって細田義安提出の動議のごとく附帯決議を付するに決しました。  本附帯決議に対し政府より発言を求められております。これを許します。天野大蔵政務次官
  129. 天野公義

    ○天野政府委員 ただいま御決議をいただきました附帯決議の御趣旨に沿いましてよく検証し、考えて参りたいと存じております。     —————————————
  130. 小川平二

    小川委員長 ただいま議決いたしました両法案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に第一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  131. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  本会議散会後に委員会を再開することといたし、暫時休憩いたします。    午後一時三十三分休憩      ————◇—————    午後三時五十四分開議
  132. 小川平二

    小川委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告があります。これを許します。戸叶里子君。
  133. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、この産業投資特別会計に関係のあるガリオア・エロアの問題つにきまして外務委員会で質問をいたしましたが、はっきりいたしませんでした多くの点の中で一点にしぼってきょうはお尋ねをしたいと思います。  それは、日本が英連邦物資を購入してアメリカに引き渡した分の金額が今回の総額から差し引かれておりますが、この内容についてでございます。資料によりますと、英連邦軍物資対米引き渡し分として二十万ドルを引いているわけでございますが、外務委員会の説明では、一九四七年の三月十四日、スキャッピンが日本政府に来て、在日英連邦軍がこれに基づいて日本政府に生活必需品その他のものを売り渡す、あるいは無償で渡し得るということになって、英連邦軍と日本の貿易庁との欄で売買契約をした、そして貿易資金特別会計に基づいて、その資金の運用として物資を購入したと説明されまして、その後八十五万八千九十九ポンドを支払ったというふうなことが説明されたわけでございます。それで、念のために、この八十五万八千九十九ポンドというのは、日本の円貨にすると幾らでございますか。
  134. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 便宜私から申し述べます。日本の円貨にいたしまして、八億六千四百七十六万二千九百七十三円支払ったわけでございます。
  135. 戸叶里子

    戸叶委員 これだけの物資を買ったわけですが、それに対して、日本は支払ったわけですね。それで大蔵省の宮川政府委員が外務委員会におきまして説明されたのですけれども、非常に早口でぺらぺらっとおっしゃってしまいまして、その数字がキャッチできませんでした。私はどこの会計からどれだけのお金が出たかということをあとから資料で出していただきたいと申し上げましたけれども、質疑の打ち切り等でそのままになっておりますので、何年に幾ら、予算のどこの部分から出たかということをゆっくり説明して下さい。
  136. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 大へん失礼いたしました。ただいまはっきり申し上げます。  昭和二十六年六月二十八日に一億五千万円、これは一般会計の貿易特別会計残務処理費から出ております。同じく二十六年十二月十五日に一億五千万円、これは同じく一般会計の貿易特別会計残務処理費から出ております。さらに、二十九年三月三十一日に一億五千万円、これは一般会計の平和回復善後処理費から出ております。引き続きまして、三十年四月二十八日に一億五千万円、これも同じ一般会計の平和回復善後処理費から出ております。引き続きまして三十一年四月三十日に一億五千万円、さらに三十三年三月三十一日に一億一千四百七十六万二千九百七十三円、この二つは賠償等特殊債務処理特別会計から出ております。合計八億六千四百七十六万二千九百七十三円に相なります。
  137. 戸叶里子

    戸叶委員 その出どころと総額はわかりましたが、性質上、賠償等特別債務処理費ですか、そこから出るというのはどういうわけでございますか。これはイギリスのBCOF物資を日本が買ったのに、賠償の会計から出すのはどういうような根拠があるわけですか。
  138. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 御承知のように、BCOF物資は、貿易資金特別会計及び片貿易特別会計法に基づきまして、通常の商業物資として購入したわけであります。従いまして、当該会計において支払うのが本則なのでございますけれども、米国当局の意向によりまして、後年度に繰り延べられたわけであります。支払いは、二十六年六月に始まったわけでありますが、その当時すでに貿易特別会計が廃止されておりまして、資産、負債は一般会計に全部承継されたわけであります。従いまして、昭和二十六年度の初めは、一般会計の貿易特別会計残務処理費というもので支払ったわけであります。ところが、昭和二十七年四月に御承知のように平和条約が公布されまして、平和風後に関連する債務の支払いに充てるために  一般会計に平和回復善後処理費が設けられましたので、BCOF物資も占領軍であります英連邦軍から購入したものであるという経緯から見まして、平和回復善後処理費から二十八年度及び三十年度に支払われたわけであります。ところが三十一年度になりまして賠償等特殊債務処理特別会計が設置されましたので、賠償等特殊債務処理特別会計法第一条の規定によりまして三十一年度及び三十二年度年度にわたりまして同会計から行なった次第でございます。
  139. 戸叶里子

    戸叶委員 私は賠償等特殊債務処理特別会計からBCOFから買った品物に対して支払いをするのはおかしいじゃないかということを伺ったわけです。なお詳しく申し上げますと、賠償という性質とは違うのではないかと私は考えるのですが、この点はいかがでございますか。
  140. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 賠償等特殊債務処理特別会計の第一条の規定によりまして支払ったわけであります。
  141. 戸叶里子

    戸叶委員 今、宮川局長からの御答弁の中で、初め貿易資金特別会計から払おうとしたのですが、イギリスの望みで延べ払い——何とおっしゃったのですか。
  142. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 繰り延べられまして、貿易特別会計の存続している間に支払わなかった。支払うというときに貿易特別会計がなくて、一般会計の貿易特別会計残務処理費からまず支払った。だんだん月日がたつにつれてそれもなくなったので、平和回復善後処理費、それから賠償等特殊債務処理費、こういうふうに支払ったわけであります。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 その点で、あとから伺うのですけれども、念のために伺っておきたいのは、イギリスが貿易特別会計のあるときに支払うのを望まなかったというのはどういうわけなんですか。
  144. 中川融

    ○中川政府委員 これは最初の指令、一九四七年の三月十四日の指令に、売却または処分のために提供するという申し入れが要するにあったわけでありまして、それに基づきまして個々の品物の受け取りをしたわけでございますが、結局受け取りを、これをどう処理するかという際に、すぐに払うのでなくて将来払うことにしようじゃないかという了解であったわけでございまして、従って、イギリスの希望と申しますか、要するに最初からの申し入れが、すぐに支払うということよりも売却または処分ということで、はっきりした条件はそのときにきめていないわけであります。売却ではございますが、その支払い条件等は結局あとできめるという了解のもとに受け取ったわけでございます。従って、その了解に基づきまして、ただいま宮川理財局長の申されたように繰り延べ払いであとで支払ったということになるわけでございます。
  145. 戸叶里子

    戸叶委員 今の条約局長の御答弁に対して、私あとから質問をいたしますが、その前に、今条約局長がお述べになりましたことは、今の八億六千四百七十六万二千九百七十三円のうち、朝鮮事変に際して、日本政府が持っていたBCOFから買った物資を、アメリカに自分の方に渡してくれと言われたので、米価に換算して十九万九千五百二ドル七十二セント分の物資をアメリカに引き渡した。そして倉庫料とかその他の諸掛りを加えて今度のガリオア・エロア返済金の中から引いた総額二十万九千四百七十七ドル八十六セントということになったと私は了解するわけです。さらに、今中川条約局長がおっしゃいましたように、一九五一年の八月十三日のスキャッピンで、それだけのお金は、二十万九千四百七十七ドル八十六セントというものは、日本政府のクレジットとしてアメリカに待機するということになっておると思いますが、それで今回は差し引いたというふうに了解していいわけでございますか。
  146. 中川融

    ○中川政府委員 その通りでございまして、イギリスから受け取りました八十五万ポンド分につきましては、結局円価に換算いたしまして八億六千万円余のものを払ったわけでございます。しかしそのうちで実はアメリカに転用したものがございましたので、その分はただいま御指摘になりました一九五一年八月十三日付の覚書によりまして、クレジットとして将来アメリカが日本に対して決済するという約束になっております。従ってその分を今回のガリオア協定で決済した、こういうことになるわけでございます。
  147. 戸叶里子

    戸叶委員 今までのことが結局ガリオア・エロアの総領の中から英連邦軍引き渡し分として今回差し引いた全貌だと思うのです。  そこで私がお伺いしたいと思いますのは、まず最初のスキャッピンというのが、先ほど条約局長がおっしゃいましたように二十二年、一九四七年に来たわけですね。そうしてその中に書いてあるのは、つまりBCOFの司令官と貸本の貿易庁との間で話し合いをして、品物を買うとかあるいは無償で受けるとかいうふうにするのだ、その場合に三通の受け取りをよこしなさい、一つは英語で書いた分をよこせというのは、これはどういう意味かわからないのですが、そのうちの一つは英語で書けという意味ですか。それともこの三通のほかに英語で書いたものを一通残しておけ、その英語で書いたものはどれだけの価格であるか価格を表示しておくのだということが書いてあるのですけれども、この英語で書いた分というのはその三通の日本が受け取った中に入っていたのかあるいは別個のものであったのか、これも伺いたい。
  148. 中川融

    ○中川政府委員 一九四七年三月十四日の覚書によりますと、その受け取りは三通英語で出すようにということでございます。従って英語というのは三通とも英語でございます。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 その中には、はっきりした金額ではないでしょうけれども、あとの記録として必要なために輸入された物資に見合う価格を表示しておけということが書いてあるわけでございますね。念のために伺っておきます。
  150. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 このスキャッピンの中にはカッコをしてレコード価格、記録のためにドル評価を書くというふうになっております。その後種々向こうとの話し合いの結果、やはりこの価格をもってこの物資の価格と認定しまして、それに基づいて払うことになったと承知いたしております。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 そのときの品物を受け取った場合に、日本はこれだけの量のものを受け取りました、その価格は大体見積もりはこうでございます。そういうふうな受取書だけを先方に渡して、日本とBCOFとの間にはいつ払うとかどういうふうにして払うとかいうことは、このスキャッピンに関する限りは何らないわけでございますね。
  152. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 スキャッピンの第一項に、セール・オア・ディスポーザルと書いてありまして、御存じの通りセールは売却でござまいすし、ディスポーザルはただであるということがはっきりしております。従いましてレシートを出すということは一種の売買行為だったとみなされるべき性質のものかと思います。そこで、この価格を表記いたしますときにディスポーザルに当たるものはいわゆる無償でございまして、これは価格がゼロになったはずでございます。問題は、記録のために評価する、価格を記載すると書いてあることが、その物の実際の価格であったかどうかというようなことがあるいは問題になる筋合いのものかと考えますけれども、当時いろいろ向こうと話し合った結果、それは一応妥当なものであると認められるべきドル表示を書いたのであるから、それに基づいて決済をしましょうということになったやに聞いております。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカ局長は私が聞こうとしないことまでも想像して、大体そういうことを問題になさるだろうと思いましてなんておっしゃったのですが、そういうことを私問題にしようなどと思っておりません。受け取りをお出しになった場合に、ディスポーザルの分、つまりゼロになった分があるわけですね。その場合の受け取りは向こうから、これはゼロだ、ただだということで来たわけなんですか。その受け取りというものはどういうわけで向こうへ渡したわけなんですか。
  154. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 これは貿易庁でやっておられまして、私実際は承知しておりませんが、私の承知しております限りにおきましては、いわゆるウエーストに当たるもので、価値のないと認定されるものについては評価が書いてなかったというふうに承知いたしております。それでこの支払いのときにはもちろんそれらのものは金額にも加算されない次第であります。
  155. 戸叶里子

    戸叶委員 その価値のないというのはすなわち無償だと思うのです。その場合にこれだけのものは価値がないけれども、受け取りとしてお出しになったのか、それとも有償のものだけに対して三通英文のこれだけの量を受け取ったという受け取りをお出しになったのか、両方出されたのか、あるいは片方だけ出されたのか、その点を伺いたいと思います。
  156. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 私実際実務をやっておりませんでしたし、貿易庁でやっておられましたので、具体的事実は承知いたしません。しかし私が当時聞いたところとしてばくと覚えておるところでは、とにかく価格はゼロとしても一応は受け取りを出されたというふうに私は記憶しておりますけれども、正確のところは貿易庁、今の通産省の方で御存じかと思いますが、私は一応物を受け取ったという証拠に価格はゼロとしてレシートを出されたやに聞いております。
  157. 戸叶里子

    戸叶委員 あとではっきりしておいていただきたいことは、これだけの量を受け取った、これだけの金額に大体相当するけれどもこれは無償であるとか、あるいはこれだけの金額に相当するものである、有償である、そういうことがはっきり区別されていたかということをあとでお調べになっていただきたいと思うのです。それが一点。  次に私がお伺いしたいのは、このスキャッピンというのは一九四七年、すなわち二十二年の三月十四日に来て、そうして貿易庁とBCOFの司令官との間で授権をされて売買契約をしたということを、今までの説明によりますとおっしゃるわけですね。そうして輸入された物資は、これだけの量を輸入されました、そうしてこれだけのものを、大体金額としてはこれだけです、これが受取帯ですといって受け取りを出したわけです。今の御答弁では、これだけのものは受け取ったけれども、ただであるとか、あるいはただでないとかいうことはどっちかわからないわけですが、両方、かりにアメリカ局長がおっしゃるように、これはただのものとしてこれだけの量はもらいました、これだけの金額に相当するものですというレシートを出した。そういうふうにお出しになって——それは一九四七年ですから、昭和二十二年からずっとやっていたわけですね。そうしてBCOFの品物が入ってきたわけですね。そうして今度は在日英連邦軍の希望によって、さっき御説明がありましたように、すぐ払わないでいいから、あとから払うというふうな了解を取りつけてある、こういうことをおっしゃったわけですね。そうして二十六年からお払いになったわけですね。そうすると、結局二十二年からイギリスの品物が入ってきていて、そうして日本でそれを適当に使って、朝鮮事変が始まったので、そのうちでアメリカが二十万ドル相当分をよこしてほしいというのでそれだけを渡した、こういうことになると思うのですね。ですから結局日本の政府として払ったのは、イギリスの願い等もあって、そうして二十六年から三十二年まで、会計年度としては払ったわけですね。そうしますと、二十二年から品物が入ってきていて、二十六年から払う、それはイギリスの希望として払うことになったのですが、その間に、今すぐ払ってもらわなくてもいいから、どうかあとで延べ払いをしてほしいという、そういう話し合いをした、了解がついたとおっしゃるのですが、その了解事項というものはどういうふうな内容のものであったかを伺いたい。
  158. 中川融

    ○中川政府委員 これはBCOF物資八億六千万円余のものを五年ほどの間に受け取ったわけでございますが、これを受け取る際には、先ほどのように、大体原則として売却あるいは無償のものも若干はあったわけでございますが、売却ということで受け取ったわけでございます。価格につきましては記録用のためという断わりではございましたが、一々受け取る際に価格を書いて受け取りを出しておるわけでございます。しかし現実の支払いは、向こうの請求がございませんので、昭和二十六年ごろまでずっとそのままになっていたわけでございますが、昭和二十六年に日本と——講和条約もだんだん近づきましたので、日本とイギリスとの間で、価格が全体で幾らになるかということをお互いにつき合わせまして検討いたしたのでございます。昭和二十六年の六月に検討しいたまして、お互いの証拠書類を持ち寄りました結果、これが八十五万八千ポンド余であるということを確かめたわけでございます。従って、この数字については、ここで日英間に一致いたしたのでございますので、その数字に基づきまして、具体的な支払いは日本の予算の許す限度において今後支払おうということになりまして、そうして具体的な支払いは、先ほど大蔵省からお答えになりましたような割合いで、予算の限度内で五年か六年の間で支払いを完了した、こういうことでございまして、商業勘定でございますので、別段ここに協定というふうなことも特に必要はなく、こういう格好で支払いが完了いたしたわけでございます。
  159. 戸叶里子

    戸叶委員 今の条約局長の御答弁でございますが、第一点は、品物をずっと受け取っていた、しかし在日英連邦軍からは何も金額についての申し入れがなかった、そうするとこの一九四七年の三月十四日の覚書で、あくまでも貿易庁と英連邦軍司令官との間で、品物が来ました、はい、これは受け取りです、来ました、受け取りですということで、五年間いつ払うともなく繰り返していた、こういうふうに了承していい、こういうことでございますね。念のために一つずつ区切ってお聞きいたします。返事だけでけっこうです。
  160. 安藤吉光

    ○安藤政府委員 そのように承知しております。
  161. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしまして今度は二十六年の近くになって、いよいよ金額が向こうから示されてきたので、こっちの金額も示して、お互いに見せ合って、それじゃ今度はお払いしましょうというふうなことで取りきめが行なわれたということなんですね。取りきめも何もしないのですか。
  162. 中川融

    ○中川政府委員 双方で金領をつき合わせまして、金額について意見の合致を見ましたので、今後五年ないし六年の間で支払いをしようという話し合いになりまして、予算の限度内でその支払いを実行いたしたわけでございます。
  163. 戸叶里子

    戸叶委員 金額の総額については意見が合致したので、昭和二十六年から何年間にわたって幾らずつ支払おうということで話し合いがついたのですか。
  164. 中川融

    ○中川政府委員 大体数年の間に支払おうということで支払いを完了したわけでございます。
  165. 戸叶里子

    戸叶委員 その場合に、大体数年の間で支払いをしましょうという了解事項か何かをとりかわしているはずだと思いますが、何もそういうことはなさらなかったのですか。
  166. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 昭和二十六年の六月二十三日と二十九日付をもちまして、総司令部の経済科学局長と大蔵大臣との交換書簡がございます。それによりまして、先ほど条約局長から御答弁いたしました合意が確認されたわけでございます。その合意の内容は四つござ  いまして、第一は、日本政府は総司令部書簡受領後一週間以内に第一回分として一億五千万円の支払いをする。第二は、第二回分一億五千万円は昭和二十六年秋の補正予算に計上して支払う。第三に、昭和二十七年度以降は、毎年一億五千万円を下らざる金額を支払う。第四に、占領終了後においては、平和取りきめの一部として取りきめられる条件に従って支払う。こういうような合意があったわけであります。
  167. 戸叶里子

    戸叶委員 それに対して、日本の政府がよろしいというふうに同意をしたわけでございますか。
  168. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 その通りでございます。
  169. 戸叶里子

    戸叶委員 そこに問題があるとお思いになりませんか。予算で継続して何年間にわたってよそにお金を払うという場合には、当然それは憲法の八十五条で国会の承認を得ないでいいのですか。そういうふうな了解事項というものを取りかわした場合には、国会の了解を得ないで勝手にそういうことを了解しておいて、毎年幾ら幾らこうやって払っていくということは、憲法違反にならないのですか。
  170. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 それは先ほどもお答え申し上げておりますように、商業物資の輸入でございまして、商業勘定として処理すべきものでございますので、本来ならば貿易特別会計で経理しておったわけであります。ところが貿易特別会計がなくなりましたので、その後一般会計の貿易特別会計残務処理費あるいは平和回復善後処理費あるいは賠償等特殊債務処理特別会計から支払い、そのつど国会に提出いたしまして、御承認をいただいておるわけであります。
  171. 戸叶里子

    戸叶委員 そのことはわかっております。先ほどからの説明でわかっているわけです。ただ、幾ら商業物資にしても、日本の国が一応何年間にわたってこれだけのお金を払うのですということは、結局それは債務の形で支出するわけです。お金が出ていくわけです、国の予算というものの中から。そうすれば、何年間にわたって継続的にこれだけのものを支払うというような了解事項とか、あるいはまたこの取りきめというものは当然国会の承認を得なければならないと思うのですけれども、それはよろしいのですか。
  172. 上林英男

    ○上林政府委員 法律的な問題でございますからお答えを申し上げますが、憲法の規定によりまして、国が債務を負担します場合には、国会の議決が要ることはその通りでございます。ただ、このBCOF物資につきましては、貿易資金特別会計法によりまして、その規定によります貿易物資として購入をされたものでございます。この貿易資金は、この法律にございますように「貿易資金は、これを貿易物資及びその取引に基く請求権に運用する」「ことができる」、こう書いてございまして、貿易資金の運用といたしまして貿易物資を購入することができ、従って、それに伴いまする債務を負担することができる、こういうことになっておるわけでございます。貿易資金の運用といたしまして、貿易物資を購入いたします債務負担の権限は、この法律によりまして与えられておるということになるわけでございます。現実にその債務を負担いたしましたその債務につきまして、これを後年度にわたりまして——本来ならばその場で支払うということももちろん貿易資金の建前上可能でございますけれども、これをあとに延ばしますことは、これは一たん債務を負担しましたものの支払い債務をどうするかという問題でございます。国会の問題ではないわけでございます。現実に支払います場合には、もちろん憲法の規定によりまして、歳出予算を必要とするわけでございます。それにつきましては、先ほどから理財局長から御説明申し上げておりますように、予算におきましてそれぞれ歳出権を御承認いただきまして支払いをなしておる次第でございます。
  173. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは伺いますけれども、今のような場合、どういう場合に憲法違反ということがあり得るわけですか。そういうふうな解釈をされますと、もう憲法に違反することはないのですね。よその国との約束をしておいて、そうしてある一定の時期になって、何年後に幾ら払います、こういうふうに言った場合には、もう全然問題ないわけですか、国会の承認を得なくても。しかもこの年だけに支払うということだったら、私は問題ないと思うのですね。この年に余った予算の中から払うとか、この年に余った予算の中から繰り延べて払っていくというならばよろしいのですけれども、それを払う前に五年間なら五年間にわたって、幾ら幾らのものを何年には払う、何年には払うということを前もって約束しておいて、国会の承認も得ないで払ってやっていくということが憲法違反にならないというと、これはいろいろなところに問題が起きてくるんじゃないかと思いますが、それじゃどういう場合に憲法違反になるというのか、その例を一つ示していただきたいと思います。
  174. 上林英男

    ○上林政府委員 まっすぐのお答えにならないかもしれませんが、憲法で国会の議決を要するとされておりますのは、一つは国が債務を負担する場合でございます。もう一つは国が支出をいたす場合でございます。まず債務負担の権限について御説明申し上げますと、先ほどお答え申し上げておりますように、貿易資金特別会計には貿易資金というものがございまして、この貿易資金というものは貿易物資の売買に運用するということを法律によって授権をされたわけでございます。従いまして、この貿易資金の運用といたしまして、貿易物資を買うという権限が国に与えられておるわけでございますので、買いました債務はこの貿易特別会計法によって負担をすることができるわけでございます。その負担をしました債務をいつ払うか、次はこういう問題になるわけでございます。それにつきましては、一たん負担しました債務を直ちに支払うということももちろん可能でございますけれども、これをあとに延ばして払うということは、憲法上政府に認められた権限の範囲内であるかと思います。さて、これを払うという段取りになりますと、先ほどから申し上げておりますように、歳出権を予算によりまして国会の議決を経て払う、こういう格好になるわけでございます。
  175. 戸叶里子

    戸叶委員 条約局長に伺いますけれども、今のような場合、今後もあると思うのです。ちょっと今その例がよくわからないのですけれども、たとえばよその国と一つの了解事項を持って、そうしてこれだけのお金を何年かに分けて将来ずっと払うというような約束といいますか、そういうときには条約という形になってきますね、この間のタイのような。だから、これは当然国会に諮らなければならない問題になってくると思うのですけれども、今のような場合BCOFとの間では、なぜこの一九四七年の三月十四日にこういうふうな条件でこういうふうに払うというようなことを約束しないで、受け取りだけでもってやっておいたかというところにも私は疑問があると思うのですけれども、この場合になぜ支払うということを言わないで、これだけのものを受け取りました、大体これだけの金額ですということだけで日本が了承したかというところにも、私はちょっと了解に苦しむのですが、どういうわけだったのでしょう。
  176. 中川融

    ○中川政府委員 まず、終わりの方の御質問の点からお答え申しますが、一九四七年三月十四日にBCOF物資の売却の申し入れがあったわけであります。これが通常の場合でありましたら、単純な商売の契約の申し入れであるわけでありますが、占領中でありましたし、また占領直後のことでございましたので、やはり司令部を通じてそのオファーがあった、スキャッピンという形でオファーがあったということが、普通の場合と違った格好になったそもそもの発端でございますが、従って、その売却の申し入れに対する個々の受諾は結局受け取りという形で日本政府はしておる。従って、売買契約はあったわけでございますが、通常の場合のように一つ一つ単独の契約でなくて、申し入れは一括してあって、それに対する受諾の方は各個の分割されておのおのの場合に受諾の意思を表示しておる、そういういわば異例の格好の契約があったわけであります。それからその契約によって、すでに国家ないしは政府としては債務を負担しておるわけであります。一九五一年、昭和二十六年になりまして、あらためて池田蔵相とマーケット少将との間で約束をいたしました際には、別に新しい債務を負担したのではなくて、先ほどか法規課長が説明されておられますように、すでに日本政府が負担しておる債務をどう支払うか、その支払いの態様を実はイギリスとの間に取りきめたということになるわけでございます。従って、これは新たなる債務の負担ではございませんので、憲法八十五条にいう、要するに債務の負担ではない、従って、あらためて国会で御承認を得る必要はないということで、これは、いわば政府間だけの話し合いできめたわけでございます。  それじゃ、こういう例が今後あるかということでございますが、これはやはり占領中に起きた事態でございますので、こういう例が将来もあるとはちょっと想像はできませんけれども、しかし普通であれば、たとえばタイ特別円の場合のように、将来五年なり八年で支払うという場合には、やはりその際に債務の負担をするわけでありますから、同時に支払いにつきましても、数年にわたって次年度以降の予算を拘束するわけです。従って、国会の御承認を得る条約の形でするのが通例でございます。このBCOF物資につきましては、要するに、債務の負担はすでにその前に行なわれており、それから支払いの態様をきめただけである、しかもその支払いは当該年度の予算できめられる範囲内でする、これは行政府間だけでやる取りきめでございますから、当然国会を御拘束するというととは出てこないのでありまして、従ってその支払いにつきましても、予算の範囲内でするということになるのは当然でございます。そういう性質のものでございましたので、これは国会の御承認を得る条約の形でする必要はないということで、行政府間の取りきめになったわけでございます。なお、次年度以降の予算を拘束しない性質のものであったということは、現実の支払いの年度をごらんになりましても、先ほど理財局長から御説明しました通り、約五年にわたって支払われておりますが、その間一年飛んでおるのが一、二カ所あるのでございまして、要するに、そのときの約束はできるだけ毎年度継続して一定額支払うという約束でございましたが、その予算の範囲内で、ということが当然の前提としてついておりますために、予算の都合で都合のつかないときは実は支払いがおくれておるような格好になっております。そういう実績から見ましても、これがそういう性格のものであったということは明らかであるのであります。こういういわばちょっと特殊の事態の例でございますので、一般論としては必ずしもこれは先例にはなり得ないのじゃないかと思います。
  177. 戸叶里子

    戸叶委員 今条約局長がおっしゃいましたように、こういうことが一般論として成立したら今後非常にいろいろな問題が起きると思いますけれども、今、条約局長もはっきり一九四七年三月十四日の売買契約というものの形は普通の売買契約の形とは非常に違っておるものだ、これは占領中だったからというように、ごまかされたみたいな答弁をされたわけでございますけれども、私どもから考えますと、このときに一応受け取ったというその受け取りを渡して、長い間そうしておいて、あとになって今度は新しく条件をきめてきたわけです。こういうふうな形でもって、支払いは何年からするというふうな、そういう条件をきめて、長期にわたって支払ということになれば、当然これは国の予算から出るわけでございますし、国民の税金から出るわけですから、国会の承認というものを得なければならないというふうに私どもは考えるわけでございますけれども、今、条約局長のおっしゃったような特殊な占領時代にあったというようなことやらを考え合わせまして、これは仕方がなかったかと思いますが、しかし、私どもとしてどうしても納得のいかないのは、そういった了解の事項でいろいろな問題が解決されていくというようなことは今後絶対にないようにしていただかなければならないと思うのです。  さらに、私きょう要望しておきたいことは、先ほど宮川政府委員がお出しになりました池田さんとマーケットですかの間の了解事項、あれをなるべく早く参考のために出していただきたいと思います。これを要望いたしまして、ほかの問題ではありますけれども、これはよその委員会でございますから、私の質問はこれで打ち切りたいと思います。
  178. 小川平二

    小川委員長 横山利秋君。
  179. 横山利秋

    ○横山委員 私は主としてこの産業投資特別会計法それ自身について、政府の意向をただしていきたいと思うのです。  財政投融資が戦前戦後を通じてずっと日本の産業に大きな影響をもたらしてきたのでありますけれども、その歴史をたどってみますと、非常な変化がある。戦前における不況対策、短期融資対策あるいは資本の過剰、不況に対する対策として行なわれたものと違って、敗戦後における財政投融資というものは、今度は過小資本対策、戦後の復興処理対策あるいは直接間接に貯蓄を増強するというような手段にも持たれてきたのです。それはそれとして功罪和半ばするものとして認めますけれども、その惰性というものが今日まで続いておる。第三の段階としては、昭和三十年前後を境として、成長経済対策といいますか、経済発展対策としての財政投融資が行なわれてきたように思います。しかしながら、それとても、最近国会において論争されておる焦点というものは、ただそれが国の税金を通じ、あるいは国民の零細な簡易保険や郵便貯金をかき集めたもの、そういうものを私企業に大量に——配当のないところに大量に置いたり、あるいは低金利で長期に投じたり、これによって健康保険や国民年金の十分な活用ができないようにするというような結果を生じたりしておる。そういう点についていかがなものであろうか、従って、財政投融資というものはこの際曲がりかどに来ておる。特に資金運用部資金とこの産業投資特別会計の資金の運用というものについては、これは区別をして物事を考えるべきであって、国民年金厚生年金の金の運用の仕方は、法律で明示いたしておりますように、確実にこれを運用してその収益というものは年金やその他に改善ができるように持っていくという、法律の主とするところに使われなければならぬ、こういうふうに私は再認識をする必要があると思うのであります。同時に、産業投資特別会計の運用につきましても、昔日のいろいろな経緯から考えまして、一つの運用方法の改善というものが行なわるべき時期に来ておると思うのでありますが、この点は大臣のお考えはいかがでございましょうか。まず、それからお伺いいたしたいと思います。
  180. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 政府の財政資金の運用の仕方は、お説のように、これは変わっておりまして、当初は、御承知のように、基幹産業を建て直すことがやはり日本経済の復興の根幹であるときには、もっぱらそういう方向に重点が置かれて運用されたのでございますが、最近の動向は、御承知の通り、そうじゃなくて、一般国民の拠出金が資金源として大きい部門を占めるようになっておる現状でございますから、やはりこの拠出者の意思を尊重し、一般国民生活に直結する部門にこの資金が運用さるべきである、こういう方針のもとにこの運用をやっておりますので、御承知の通り、国の財政資金の五割以上は、そういう方向に運用されるし、あるいは道路そのほかの産業基盤の整備という方面に三割、そのほか、開銀を通ずる基幹産業への投融資というようなものは、もう全体のごくわずかな量にしか現在なっていない、こういう運用の仕方をしておる次第でございますが、それはつまり運用の方針が現在変わってきたということでございまして、こういう点については、横山さんがおっしゃられておる通りの変化を示しております。
  181. 横山利秋

    ○横山委員 私は、今政府側がそうはいっておっても、実際問題としては、還元融資の比率は、去年はたしか二割五分でありましたか、使途別明細表を出しただけで、その十全を達成しておらぬと思うのであります。資金運用部資金法は、「その資金を確実且つ有利な方法で運用することにより、公共の利益の増進に寄与せしめることを目的とする。」なぜ確実かつ有利な方法で運用するか。それは明らかに郵便貯金やあるいは簡易保険その他零細な、働く人人の金を集めたものであるから、確実有利な方法で運用することによって、それらの人々のところへ還元をする、利子を高くする、給付内容をよくするというために、確実かつ有利にやるのだ、従って、それオンリーで考えたならば、確実有利なんだから、貸すときには、金利の高い方に貸す、そういうところに重点が置かれるべきであって、それを他の目的に低利長期に貸すということは、資金運用部資金の立法の目的からいって違いはしないか。私ははっきり言うために、わざと積極的なものの言い方をしておるのでありますが、その考え方がどうも、法律にはそう書いてあっても、貸す目的のために運用されておる。資金を出した人々のために運用されていなくて、産業の発展だとか、あるいは公共事業だとかいうその目的自身を私は否定はしていないのでありますが、本来の趣旨からはずれて、貸す目的のために運用されて、出した人々の目的のためには実は運用されていない、こういうことを大臣はお考えになりませんか。
  182. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 貸す目的のためにということも、もちろんございますが、しかしこれがもっぱら拠出者の利益になるようにということを中心の運営をしますためには、貸す目的のためというものとの若干の抵触が出てくるのは当然でございまして、目的のためには低利にしなければならぬ。しかしこれには限度がございまして、これ以上低利にするという場合は、これは拠出者の利益にならないということになりますので、その辺の調整をするために、あるいは利子補給の問題が出てさましたり、いろいろな問題が出てきますが、この両者が抵触しない範囲内において、拠出者の利益のために運用するというところに力を入れて私どもは運用をしておるつもりでございます。
  183. 横山利秋

    ○横山委員 私は、今資金運用部資金の問題を取り上げるのが本旨ではございません。産業投資特別会計と並べて、一応議論をしていかなければならぬと思っているのでありますが、資金運用部資金の金利にいたしましたところで、各方面に融通されておるその金利にしたところで、使途別にもっと区別をつけてもいいのではないか。これが、出した人々のために運用される場合においては、金利はもっと安くしてもよろしい。けれども、そうでなくして、貸す目的オンリーのために出される場合においては、もっと金利は高くあってもいいのではないか。高くしたらそれが運用が困難になるかといいますと、現状においては決してそうではない。従って、この資金運用部資金の金利の問題についてはもっと格差をつけて、法の目的に合うような操作をしたらどうか、こう言っているのであります。
  184. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はあなたの、貸す目的のためにという意味をとり違えておりましたが、貸す目的のためにということは、たとえば下水道等、環境整備、国民生活に直結した問題のためにこれを貸そう、そういう目的のために貸そうという場合は低利でなければならぬということになりますので、拠出者の利益と衝突しない範囲において、目的別に低利にするし、そうでないものは運用上有利に運用するということで、そこを総合して今運用しておるということを言ったわけでございまして、むろん目的別によって、金利については、現在においてもいろいろ差をつけて運用しておるのが現状でございます。
  185. 横山利秋

    ○横山委員 趣旨には、あなたも私も、意見が一致するのでありますが、私は具体的な例は今時間がありませんから避けたいと思うのでありますが、私の言うのは、もっとその格差をつけてしかるべきだ、直接その社会福祉の部面に渡る場合、それから今大臣のお話しのような公共的なところへ回る場合、あるいはいかにカムフラージュいたしましょうとも、大企業、大産業の方へ回る場合、おおむね私はこの三つに分かれると思うのであります。たとえば、同じ住宅金融公庫にいたしましても、住宅公団にいたしましても、やはりその一つの公共機関的なカムフラージュをいたしましても、そこから通じて流れる金は、中小企業に行く場合と大企業に行く場合とは、おのずから区別があってしかるべきだ、こう言っておるのでありますから、今後にかけて、その違いというものを、出した人の立場、それから貸す相手によって、その操作はもっときめのこまかい検討をされるように、私は望んでおきたいと思うのであります。  産業投資特別会計法は、その第一条に、「経済の再建、産業の開発及び貿易の振興のために国の財政資金をもつて投資を行うため、」こういうことになっております。この産業投資特別会計というものができましたのは、それ相当の理由があると私は思うのであります。しかしながら、大臣、どうでしょうか。今の日本の産業で、国民の税金をもって、私企業的なものにその税金を貸して、そうしてその産業を発展する、こういうふうに端的に私が申し上げたら、いや、そうではない、まだその間にいろいろな関門があるとおっしゃるかもしれませんが、しかし、端的に言うのでありますが、私の言っておるのは間違いないと思う。国民の税金で、税金を貸して、それによって私企業的なその産業の発展をはかるということは、私は常識的に見ておかしいと思うのであります。大臣はそうお考えになりませんか。
  186. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私企業に国民の税金の金を貸すということは好ましくないであろうと思います。
  187. 横山利秋

    ○横山委員 ところがその産業投資特別会計によって貸されておるところは、なるほど住宅金融公庫、農林漁業金融公庫等々においてはそうでもありませんが、産業投資特別会計から入っていきますお金は十七、八ありますね。十七、八ありますけれども、その中において石油資源開発株式会社、北海道地下資源開発株式会社、東北開発株式会社、日本航空株式会社あるいは合成ゴム株式会社等々、これはそれぞれの性格をいろいろ議論する必要はあろうけれども、しかしながら本来税金というものが国民から出されましたときには、税金で政府に金貸しをやってくれという意味で出した人は一人もないと私は思うのです。少なくとも政府が道路を作るあるいは学校を建てる、あるいは国家公務員給料を払うということに中心があるのであって、その税金の中から産業投資特別会計へ金をほうり込んで、それが金融的性格を持った税金を払うということは国民は予期していないと思うのであります。あなたは先ほどそういうことは好ましくないとおっしゃったが、実態を十分に精査されていないのではないか、こう考えるがいかがですか。
  188. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 純私企業にこれを出資したり貸し付けたりしてはおりません。法律によって設立された各機関でございまして、もともと特殊な国策的な企業に対しましては、一般会計から補助金を出すということも従来からやって、いろいろの助成を行なってきましたが、そうじゃなくて、ここから無利子の出資をするということによって、補助金という形ではなくて、これが資産として残る形で運用されていくことの方が望ましいという場合もございますので、そういう場合において最小限の出資をこの会計からしているということでございまして、純私企業に国民の税金を勝手に出しているというような運営は現在しておりません。
  189. 横山利秋

    ○横山委員 問題を二つに分けて、あらためてこういう議論を一ぺんして、国民の税金のあり方について惰性的になっておる点を政府にただしたいと思うのでありますが、今私が言っているのは二つ意味があるのであります。国民が納税をする、納税をした金は政府に金貸しをやってくれという期待というものは少しもないはずです。政府が直接必要不可欠な仕事をやる場合においては納税はするけれども、政府が他に金融をする、財政投融資をするために税金を出してくれということについては、国民はそういう気持を持っておらぬ、こういうことはここで考え直すべきことであろう、これがまず私の言いたい一つであります。  それからもう一つは、あなたが言うように、これは純私企業には貸してはおらぬ、それは認めましょう。認めましょうけれども、今私があげましたそれぞれの会社は、なるほど法律に基づいておるかもしれぬ。それ自身一つの公共的な性格があるといえども、営業行為をし、独算制により経営をやり、企業利益を追求をしておるということになるのです。それからもう一つは、表通りのものは別として、そのトンネルをくぐって純私企業にその金が流れておることは事実です。今私があげました会社の名前は、これはあなたの言うような会社だけれども、ほかのものは全部トンネルとして、そのトンネルからくぐって純私企業に金が流れておるのです。これはあなたもお認めになるはずであります。  いろいろな問題があるけれども、私はあらためて言います。国民は、租税によって財政投融資の原資の調達をはかるということは好ましくない、ここのところを大臣にはっきりしてもらいたい。原則的に租税を調達して、租税によって財政投融資の原資の調達をはかるということは、これは適当か方法ではない。もしもそれが今後とも許されていくならば、国民が期待する納税の使用について、税金に対する根本的原則が変わってくると私は思う。いかがですか。
  190. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はこれは一がいには言えないのじゃないかと思います。今私が例を申しましたように国策的な事業を遂行する、これを目的通り遂行するために国の補助が必要だという場合に、一般会計から年々補助金を出すというやり方もございますが、補助金は年々出せばそのまま消えてしまうという性質のものでございます。そうじゃなくて、一定の資金を国が出すことによって年々の補助を必要としない、この運用によって国策遂行がより円滑にできるというような場合に、年々消費してしまう金を出すことが国民に対していいことか、そうじゃなくしてその運用によって後年度のそういう負担をたくしていくという措置をとる方が国民のために適当な措置であるかという問題は、これは個々の問題について考えるべきことであって、一がいにどちらが悪いということは言えないと思います。問題は国策的なこういう事業の遂行のために、国がどういう形でこれを助成したらいいかという問題であろうと思います。
  191. 横山利秋

    ○横山委員 少し議論になりますけれども、補助金には補助金の歴史があり、補助金は常に一定の制約に基づき行なわれておるのです。しかも補助金については国民はそれが必要なものとして、まず国民の常識の中で理解しておると私は思うのであります。しかしながら自分の出す税金というもの、それを政府が人に貸す、他に貸す、その目的で税金を取る、そういうことは私は国民は期待しておらぬし、原則として——私も絶対というわけではない——原則としてそれはなさるべきことではないのではないだろうか、こう言っておるのです。もしもこの状況のまま政府の財政投融資の原資を税金でまかなうという現状が、全部じゃありませんけれども容易に容認されていくならば、今後とも納税の、要素の中に、政府が他に金融をするために税金を取るということが拡大するおそれがある。容易に流れるおそれがある。国民はそれを期待をしておらぬ。従って財政投融資の本質というものは、租税によって原資の調達をするということは原則として戒むべきことだ、私はそう言っておるのであります。国民はそういうようなことをまだ十分に気がついておらぬけれども、これは国民の常識からいっても、政府としては租税によって財政投融資の原資を得るという安易に拡大していく方向については、これは戒めなければならぬ、こう言っておるのであります。いかがですか。
  192. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 全般としてそういうことが言えるかもしれませんが、さっき申しましたようにたとえば商工中金、これは中小企業者のための金融を行なっている機関でございます。この商工中金の金利をできるだけ下げて中小企業のために役立てようという場合に、現状においてはこれを下げる方法はない、しかし国の目的としてもう少し下げたいという場合には、これは一般会計から補助を出してやるというようなことをやれば、現実に下げられると思います。しかしそうじゃなくて、国が一定の無利子の出資を行なってやることによって、中小企業者の金利が下げられるというようなときには、国が一定の出資をやってその目的に沿うような運営をさせるということの方が、年々の補助をするという形よりは私はいいんじゃないか、こう考えられる場合もございますので、一がいに言うわけにはいきませんで、これは個々の問題で検討すべきじゃなかろうかと思います。全体としましては、これは相当厳格に考えていく必要があろうと思います。
  193. 横山利秋

    ○横山委員 私も原則と言っておりまして、原則としてはあなたも私に御賛成をなさると思うのですが、それでは個々の問題で、今あげられました商工中金だとか、あるいはいろいろ具体的な問題に入って参りますが、産業投資特別会計は、この点は少し確かめたいのでありますが、最近においては出資ばかりで融資はなさっておらないのですね。
  194. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 産投会計ができました二十八年から二十九年、三十年までは、開銀、輸銀等に貸付をやっておりました。その後は原則として貸付はございませんが、ただ一つ例外としまして、外貨債によりまして電発に貸し付けた例がございます。
  195. 横山利秋

    ○横山委員 貸付はない、出資がまずほとんどであるということであります。その理由は一体どういうわけでございますか。
  196. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 先ほども大臣が申し上げましたように、国民生活に低利な金を出す要請と同時に、国民から拠出されました金になるべく有利な利回りを還元する、こういう調整を各機関において行なっておるわけでございまして、従って資金量の確保の方は、主として資金運用部資金並びに簡保資金によっております。それの資金コストを下げる意味におきまして、産投会計が活用される方向に最近なっております。従いまして、産投会計からの資金は、いずれも最近は出資という格好で運用されておるわけであります。
  197. 横山利秋

    ○横山委員 そうしますと、国民の税金だから、ただだから、まあ出資で配当もしてもらわぬでもいい、こういう格好になるわけですね。私は、ここに並んでおります各会社というものが非公共的なものだと言うわけではない。しかしながら、僕もよく知りませんけれども、石油資源開発株式会社とか、いろいろ半公共的ではあるかもしれぬけれども、各個の会社に対して、無利子の、しかも返すのがいつになってもいいというような出資をやって、そして援助するということはいかがなものであろうか。私はもっぱら納税者の立場から考えるのですよ。納税者の立場から考えるのですが、この点はいかがなものであろうか、こう思うのであります。なぜ一体、今まで融資という形でとってきたものを、そこまで全部出資に切りかえる必要があるのか、こう思うのでありますが、いかがでしょう。
  198. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 たまたま今横山先生の方で、石油資源会社の例によってお話がございましたけれども、たとえば石油資源会社に例をとって御説明いたしますと、ここに対する出資は、国内の石油資源をある程度確保しよう、こういう公共の目的から、探鉱部門につきまして出資を行なっておるのでございまして、これにつきましても、石油資源開発に対する出資の額の推移をごらんになっていただきますとわかりますように、探鉱オンリーでやっておりました当時は、二十億程度の出資を毎年やっておったのでありますが、幸いにいたしまして、若干それの開発が進みましたので、最近は開発部門——株式会社としての営業の部門からの収入を中心にしまして、若干の探鉱部門に対する出資をやっていく、こういう格好の推移をとるように、すべての会社について考えておるわけでございます。
  199. 横山利秋

    ○横山委員 今この産投特別会計から貸しておらるるそれぞれの公庫、会社、公団、金庫等で、年々還元をされておりますもの、ないしは配当金、納付金、そういうもののあるところ、利潤の上がっておるところと目されるのは、どことどこですか。
  200. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 出資のうち納付金がございますのは、開発銀行と北海道東北開発公庫でございます。
  201. 横山利秋

    ○横山委員 あとのところはどういう状況になっておりますか。そういう出資をし、ないしは融資をして——ここの会社でもそうでございますが、全部そういうものは入ってこない仕組みになっておるのですか、それとも経営上の問題ですか。
  202. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 政府機関につきましてはそれぞれの政府機関の法律によりまして、利益が出れば納付金を出すというふうな法律規定がございます。株式会社につきましては、利益が上がれば配当が受けられるのは当然でございます。そういう構成になっております。
  203. 横山利秋

    ○横山委員 それぞれの出資ないしは融資しております——大臣のお言葉によれば、これらは必要があってやったんだという話でありますが、それぞれに対する政府の監督的な行政の仕組みはどうなっていますか。公庫とか公団、銀行はわかっておりますが、それ以外のところは、政府の監督権はどういうことになっておりますか。
  204. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 先生のただいまあげられましたいわゆる政府機関以外のものといいますと株式会社になりますが、この株式会社につきましては、それぞれ特別法によりまして主管大臣が監督することになっております。
  205. 横山利秋

    ○横山委員 今度は、今出資をいたしております各所の残をずっと見てみたんですが、総計が出ておりませんが、今どのくらいになっておりますか。
  206. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 産投会計の三十六年度末の資産は六千億でございます。それ大部分が出資金になっております。
  207. 横山利秋

    ○横山委員 その六千億の残が、年々歳々、それぞれ納付金の形あるいは返還の形で入ってくるのでありますけれども、それが順当に入っていないのはどことどこですか。
  208. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 貸付金につきましては、約定通り全部入っております。それから出資金につきましては、先ほど理財局長が申し上げましたように、開発銀行と北海道東北開発公庫、これだけが納付金を返している実績が上がっております。
  209. 横山利秋

    ○横山委員 その返ってこない残額、約定通りでない残額はどのくらいですか。
  210. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 貸付金につきましては、先ほど申し上げました通り、全部約定通り入っております。出資金につきましては、先ほど申し上げました二つの機関以外につきましてはまだ納付に至らない、言いかえますと、納付するまでの利益が上がってない、こういうことでございます。
  211. 横山利秋

    ○横山委員 この間どなたかがお聞きになったそうでありますが、開発銀行から船舶関係へ貸しておりますお金がなかなか上がってこないそうでありますが、一体船舶関係の残はどのくらいになっておりますか。
  212. 平田敬一郎

    ○平田説明員 先般資料として御提出申し上げておりますが、昨年の九月末現在で千七百十一億でございます。先般申しましたように、そのうち約三百億円程度が内入猶予と称しまして、海運界の状況に応じて事前の契約によりまして支払いを猶予している額でございます。
  213. 横山利秋

    ○横山委員 実はこの間私欠席をしておって恐縮なんですが、簡潔でよろしいから、船舶関係の事情についてちょっと御説明いただきたい。
  214. 平田敬一郎

    ○平田説明員 船舶につきましては、御承知の通り、日本の船舶が戦争によってほとんど壊滅いたしましたので、その後昭和二十五、六年あたりから再建にかかるということで、毎年計画造船という形で開発銀行から、そのときどきによって違いますが、建造費の半分、ときによると四割、場合によると七割というふうに、そのときの船主の事情並びに金融界の状況等によりまして融資率をきめまして毎年船を作っております。最近では約六百万トン程度に達しまして、船を作るということにおきましては相当顕著な効果を上げておるものと私ども考えておるのでございますが、海運界の状況は、御承知の通り、スエズ・ブームによりまして一時相当よくなりまして、その前に一時利子の支払い猶予をいたしましたのも、その後利子の支払い猶予は停止いたしまして今日に至りまして、猶予しました利子もほとんど全部完済に近い状態になっている。ところが、スエズ・ブームが過ぎまして、三年ぐらい前から海運界は世界的に運賃が非常に下がりまして、その結果、海運界の市況は現在もあまりさえておりません。一昨年から昨年にかけまして若干市況の好転を見ておりますが、現在のところも依然世界的になかなかそろばんがとりにくいという状態になっておるのでございます。そういう点を考えまして、先ほど申しましたように、これは最近やったわけではございませんが、船舶の金融につきましては特に担保を厳重にとっております。その反面、元本の返済につきましては、そのときの市況に応じまして若干手かげんと申しますか、要するに償却前の利益の状況等を調べまして、著しく無理のない範囲内でできるだけ回収をはかる、こういう方針でいたしておるのでございます。その結果といたしまして、この三、四年来の状況によりまして、昨年の九月末現在で残高約手七百億、そのうち三百億円程度が内入猶予ということで支払いの猶予を認めておる、こういう状況でございます。一方金利の方は、先般申し上げましたように、年間に約百十億くらいの金利を海運界が払うべきことになっておりますが、この方はほとんど全額支払っておりまして、昨年一年の実績も約百十億ぐらいの金利を支払い済みになっているのに対しまして、たしか金利の延滞は七千万程度にとどまっておる。従いまして、海運界は今のところちょっと状況がよくございませんが、政府がいろいろな施策をさらに将来講じられるでございましょうし、長い目で見ますれば元利とも確実に徴収できる、私どもとしてもそのような方向に持っていきたいと考えておる次第でございます。
  215. 横山利秋

    ○横山委員 先般もあるところで海運関係についてのお話を伺ったのでありますが、あなたのおっしゃるほどこれは容易なものではないと私は思います。将来元利が確実に回収できる何らの保証が現在ないと思うのであります。もっとも今あなたは、政府の相当のてこ入れがあればということを遠慮しいしいおっしゃっておったようでありますが、先般の審議会のお話とも相待って、開銀として元利の回収が困難であるというような現状において、この間もお話があったそうでありますが、海運界に対するてこ入れについてはどういうような根本的対策をお持ちなんでありますか。
  216. 平田敬一郎

    ○平田説明員 御承知の通り、海運界は非常に国際競争力と申しますか、国際競争に直接さらされておりまして、他の企業に比べまして、自国だけで適当な政策なり適当な方策をとりまして対処することがむずかしいという、ほかの企業よりも一そうそういう場面にさらされておるわけでございます。しかも、この運賃が、先ほど申しましたように、スエズ・ブームが済んだあとどかっと落ちまして、ずっと横ばい、若干よくなっているという程度でございますので、現状は、率直に申しましてあまりよくありません。それに対しまして、底に比べますと徐々に償却前利益が増加いたしておりまして、未償却を相当残しておりますが、決して下り坂ではない、上がり坂の方向にあることは間違いない。ただ、その上がり坂が非常にゆるやかであるというのが現状であろうと思います。そういう状態でございますので、今後新しく船を作る必要が相当ございますことは御承知の通り。しかもこれが、専用船と申しますか、タンカーとか鉱石船等の大きな船を作り、それによりましてある程度有利といっては何ですが、ベースに合う船を作ることによって一方において相当海運界の再建に役立つと思っております。しかし、それだけではやはり不十分だというので、いろいろ案なり意見が出ておりますことは、おそらく横山さん御承知の通りだと思います。この点につきましては、現在すでに政府の段階に移っておりまして、今大蔵省と運輸省といろいろ検討中らしゅうございますので、委員会ができまして、その委員会でさらに厳密な審査、調査を得て個々の企業ごとの再建計画ができますれば、それに応じまして、開発銀行としても、政府の出資によりまして適切な措置をとって参りたい。具体的なことはまだこれからの段階だと思いますので、その程度申し上げてあとは差し控えさしていただきます。
  217. 横山利秋

    ○横山委員 私は今ここで個々の造船会社の問題に触れるのは適当とは思わないので申し上げませんけれども、ある造船会社では、特にあるという言葉を使いますけれども、膨大な負債をかかえて——あなたも一般的なことをおっしゃっていると思うのでありますが、特定のある造船会社にいたしますれば、莫大な負債をかかえて、赤字をかかえて一体どうして再建するだろうか、本委員会で私がその問題を取り上げただけでも重大な影響を与えるがごときところがある。それらを含めて、あなたの方も、政府がおぼしめしの通りにやるならば開発銀行としても何らかなさねばならぬことがやはりあるだろうと思います。そういうことをもあなたの方としては覚悟の上でやるということでございますか。私の言うのは非常に抽象的ではございますけれども、多分あなたはおわかりのことだと思います。開発銀行としても、造船会社の再建のためには一はだ脱ぐ——一はだ脱ぐというのは寒くなることでありますが、そういうことも覚悟の上で言っていらっしゃるのでありますか。
  218. 平田敬一郎

    ○平田説明員 造船所に対しましては、かつて復金の時代並びに開銀の初期の時代に直接再建のために貸し出したこともございますが、現在のところ、造船所に対しましては実は直接融資をいたしておりません。従いまして、造船所の問題に直接タッチするわけには参らないのでございますが、ただやはり造船所は御承知の通り船舶会社と非常に重大な関係がございます。親子関係であったりあるいは保証関係が相互にあったりしておりまして、その関係からいたしまして、私どもも、造船会社も造船会社なりにそれぞれ難局に陥った場合には適切な処理方策ができまして、そちらがいいような方向に持っていくということは私どもも望むところでございます。従いまして、私どもといたしましても、間接的ではございますが、そういう場合におきましては、適切な協力をいたすことにつきまして惜しまないつもりでございます。そういうような例がありますことは今お話しの通りでございます。しかしこれはやはり経営上いろいろな問題もございまして、そういう例になった一つの例でございまして、そういう例が多数あるとは私ども思っておりません。非常な例外の中の一つの例ではないか、かように考えております。いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、造船界あるいは海運界を通じまして、ほかの産業と比べまして、現在なお立ち直りが非常におくれている、それをどうすればいいかという場合におきましては、政府におきまして適切な施策がきまりますれば、それに応じまして私どもも適切なる施策を講じて参りたい、かように考えておる次第であります。
  219. 横山利秋

    ○横山委員 大臣にお伺いしますが、その造船界の改善策について二つ意見がある。一つは、今そういうような状況にあることは認めるけれども、しかしふとってもうけて借金を返すようにしてもらうという意見と、もう一つは、そういうことだから経営もいかぬのだ、従って、手術をして基盤をしっかり直すなら貸すという前向きのこれを前向きと言っていいかどうかわかりませんが、前向きの意見とうしろ向きの意見とがある。今政府の態度が非常に注視をされておるわけでありますが、政府側としてはもうぼつぼつ結論をつけなければならぬときになっておると思うのでありますが、どういうふうになさるおつもりですか。
  220. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 何らかの海運対策をここでするのでなかったら、海運の振興がなかなかむずかしいという事態は政府も十分考えております。このやり方でございますが、これは企業が単純ではございませんで、個々の企業においてみんな内容が違うものでございますから、海運界全体の立て直しのためには、各企業の内容に立ち入って、どういう助成を国がしてやったらその企業は立ち直るかというふうに、個々の実際の問題と結びついた問題でございますので、従って私どもは、対策の方針を一方きめますと同時に、これを適用するにあたっては、個々の企業の具体的な再建策というものが十分立てられなければならないと考えますので、一方政府はどういう態度で海運振興をはかるかという研究と同時に、もう一つはこの合理化審議会を作って、そこでこれだけの措置をすればこの企業は立ち直るという具体的な合理化案を審議するという機関を作って、この審議の結果と相応じた措置をとろうというのが大体政府の考え方でございます。
  221. 横山利秋

    ○横山委員 ちょっと大臣のお話は抽象的なのでありますけれども、どういうふうになされるのですか。もちろん私も個々の問題で検討しなければならぬということはわかるけれども、原則的に私の言った二つの立場ですね。とにかくきちんと改善策を持って手術をしてこなければ措置をしてやらぬというのか。それとも、現状を認めて、とにかく一ぺんつぎ込んでからもうけさして返させるという、どっちの立場で議論をなすっていらっしゃるのですか。
  222. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは今申しましたように、両方の立場だと思います。政府はこうすると言っても、しかし実態の合理化については十分な審査をするということでございますので、個々に合理化の余地が十分あるのを、それを捨てておいて国が一方的な助成をするというわけにも参りません。国が助成策をとるという以上は、企業自身においても合理化の案があってしかるべきでございますので、要するに再建案を立ててそれに適合する助成をしたいと私どもは考えておるのでございますから、これは両方だと思います。
  223. 横山利秋

    ○横山委員 一説に、国が造船して公社制度によって船会社が使うというような方式があるわけでありますが、その点について大臣はどうお考えになりますか。
  224. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一時そういう構想も言われておったことはございますが、ただいまのところは、そうじゃなくて、今ある企業の現状に即した個々の助成がやはり一番妥当だろうというふうに考えております。
  225. 横山利秋

    ○横山委員 受ける方は、もちろん合理化をしないということではなくして、それそのようにそれぞれ考えておるわけでありますが、それじゃ政府としてやる方策はどういうことをお考えになっておりますか。
  226. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 運輸省で設けた審議会の答申というようなものが一応出ておりますし、それに基づいた運輸省の案というようなものも現在出ておりますが、それを中心に今資料に基づいた検討をやっておる段階でございまして、まだ最後案が今のところはきまっていないところであります。
  227. 横山利秋

    ○横山委員 そういう方式によって海運界が立ち直って、そうしてこの産業投融資から出たお金が順調に回復されていくという見通しについて、開銀ではどういう計画をお立てでございますか。
  228. 平田敬一郎

    ○平田説明員 さっき申しましたように、一つは海運界の特殊状況と申しますか、運賃が非常に世界的なマーケットできまる。現状は相当低いところで横ばいですが、若干上がって、世界的にも海運会社でそうもうけているものは少ないという現状でございます。しかしこれは永久にそういう状態が続くとも考えません。さればと言って非常に早く回復するとも考えません。従いまして、長期で考えます場合には、その辺の事情も考えまして、先ほどお話がございましたように、各社ごとにしっかりした健全化する計画を立てて、それに応じましてある程度の援助をいたしますれば、私ども長い目で見てみますと、開発銀行から出している融資は確実に元利とも償還できるものと実は考えております。今後ともそういう方向に即するようにできるだけ努力していきたいと思っておる次第でございます。
  229. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの希望通りにいけばいいと思うのでありますが、私はなかなかそうは参らないと思います。参らないとすれば、この十五年間にわたる定業投資特別会計からのエロア資金、ガリオア資金の返済計画に支障があるのではないかというのが私どもの懸念です。そうすると、かりに返済分は年度計画があってきちんと返していくのだけれども、返ってくる方はそううまくいかないということになる。しかしながら出すものは出さなければならぬから、それに伴って他の産業投融資の方に影響があるという疑念が晴れないのでありますが、その点はいかがですか。
  230. 平田敬一郎

    ○平田説明員 海運の投融資の関係で、その他の部面に影響するということは、ちょっと私まず考えられないことではないかと思うのでございます。
  231. 横山利秋

    ○横山委員 しかしながら、私が申し上げているのは、この返済をきちんとアメリカに支払っていく支払い財源というものが、あなたの方から産投に対する返済というものによってなされていく、それが確実に入ってこないおそれがあるのではないか、それを無理に確実に出そうとするならば、他の投融資計画に影響があるのではないか、こういうことを言うておるのです。
  232. 平田敬一郎

    ○平田説明員 海運界も一時二回ほど非常にひどい状況がございました。朝鮮動乱後ひどい状況になりまして、このときは利子の一時支払い猶予を認めたことは御承知の通りでございます。先ほど言いましたように、その後スエズ・ブームで一年から一年半ぐらい、相当よくなったのですが、その後がたっと下がりまして、横ばいだというのが現状でございますけれども、しかし今の状況は最悪の事態に比べますと、実ははるかにいいのです。償却前でいきますと、三百億くらいの金利を払いまして利益をあげておるタンカー会社は、幾分例外はございますが、中には低率配当ですが、配当している会社もあるのであります。各会社の中にも、近いうちに若干の改善方策を講じますれば配当までこぎつけ得るという会社も出てくる可能性がある、なかなかそういかぬ会社もあるというので、実情はだいぶ会社によって違っておりますが、一部に言われておりますように、あまりに深刻に考える時期はもう脱していると私は思う。問題は今後どうして新造船を——タンカーや専用船が中心ですが、この四、五年の間に日本の貿易の拡大に伴いまして、三、四百万トン程度船会社が建造をしなければならぬ、それに耐え得るような強い船会社を作っていこうというのが、実は今の海運政策の中心でございまして、そのために一時的に若干の猶予措置をとるか、あるいは一般会計で適当な措置をとってもらうか、その辺のところはおそらく今後具体的に案が出てきたあとできまる問題だと思いますが、そういう若干の補充対策を講じますれば、長期的に見ますと、元利の回収は私ども確実だと考えておるわけでございます。
  233. 横山利秋

    ○横山委員 私の見方の違いかもしれませんが、あなたの説明を聞きましても、海運界というものは合理化に一つの限界があるのではないか、国際情勢や経済情勢、自分の合理化以外の他の客観的要因によって浮き沈みが非常に強いのではないか、こういう感じを私は持つのであります。その点はあなたは、合理化それ自身に強い期待を持っておられるようでありますが、私の言うのと意見が違うのですか。
  234. 平田敬一郎

    ○平田説明員 その点は先ほど申し上げましたように、一つは運賃レートが世界のマーケットできまる、御承知の通り、ちょっとよくなると、各国がわっと船を作るのでございます。そうして船舶が過剰になって、運賃が低迷する、荷物が若干ふえても、なかなか運賃が採算ベースに戻ってこない、こういうのが海運界の実情であります。ただ定期船につきましては、御承知の通り欧州航路のごときは、非常に強いカルテルと申しますか、一種の協定がございまして、これは今でも完全にそろばんに乗っておる。それから日本のメーン航路でありますアメリカ航路につきましては、ある程度の弱い同盟がございます。これは弱いだけにアウトサイダーからの脅威を受けまして、なかなかこれも思う通りにはいかない。しかしこれもおおむね定期船の方は不定期船と違いまして採算に近いラインで今競争している、こういったようなところは確かにほかの国内産業よりもだいぶ違うと思います。ただ石炭のごときは御承知の通りエネルギー革命によって非常に大きな影響を受けておりますが、船の場合は、日本を中心にして考えますと、とにかく新しい需要が今後四、五年の間に三、四百万トンの新しい需要ができてくる。これはタンカーとか専用船が中心でございますが、これは現況を考えますと、そろばんの十分合う長期契約を結びまして船を作るということができますので、またほかの今不況にあえいでおる産業に比べまして、海運界はまた有利な点もございまして、まんざら悪い面だけでもない。そういう点を総合して考えまして、各船会社もしっかりした計画を作り、それに対しまして政府も何がしかの援助を与えますれば、私は必ず再建できるあるいは海運界も健全に発展し得ると実は思っております。これは非常にむずかしい問題がございますので、私の今の感じを御参考までに率直に申し上げた次第でございます。
  235. 横山利秋

    ○横山委員 あなたの言う御参考までにという言葉は、むしろ大蔵大臣に聞いていただくようなお話と承りましたが、そうしますと少なくとも海運界においては、自己の合理化努力よりは、客観的要因によって浮き沈みが強いと私は思っておるのだけれども、あなたのおっしゃるところによれば、むしろ今強気で踏み切って造船をして、いわゆる太らして、もうけさして利潤を返済させるということの方が適当だというふうにあなたはおっしゃるわけなんですね。そういうことでございますか。
  236. 平田敬一郎

    ○平田説明員 私申しましたのは、そこまで強くおとりになるとちょっとどうかと思うのですが、どうにもならぬ状態だというふうに考えますのは、これまた行き過ぎだというふうに、私そういう意味で申し上げたのであります。企業自体といたしましても、みずからやるべきことは、私率直に言ってまだ相当残されていると思います。そういう点もしっかりやり、いろいろなことを加えますと、船会社といたしましても造船をいたしまして国際的に競争力のある日本の海運界を作り上げるということは非常に困難なことではない。私はみんなが努力してやりますれば、できるというふうに見ておるということを申し上げた次第で、いずれもあまりはっきり両方にとっていただかない程度のところが海運界の現状ではなかろうかと、私こう見ておる次第でございます。
  237. 横山利秋

    ○横山委員 もう一つ最後に伺いますが、私は産業投資特別会計のみならず、私が今推計いたしましても、たしか特例会計が四十くらいあると思います。この特別会計制度について、私は産業投資特別会計を今なくせよというわけではないのだが、この法案を機会にして、特別会計制度について再検討をなさるべきではないか。これは本委員会で前にも一ぺん言ったことがあるのでありますが、これがおのおのそれなりの理由があるにしろ、どんどん特別会計制度を次から次へと作っていくということは適当なことではない。こういう説を従来からしておるわけでありますが、その点について主計局はどういうふうな立場で、今日まで特別会計制度について当たってこられたか伺いたい。
  238. 上林英男

    ○上林政府委員 国の予算制度といたしましては、御指摘のようにできる限り単一な予算を作成することが望ましいことは御趣旨の通りでございまして、従いまして、明治憲法下の会計法におきましても、総予算主義というのがはっきりうたわれております。総予算というのは一般会計を意味しておるわけでございます。しかしながら国の機能といたしましては、いろいろあるわけでございまするし、ことに国の経済活動の分野が広まって参りますと、おのずからこの予算単一主義も例外ができて参った次第でございまして、ただいまでは御指摘のように約四十ばかりの特別会計がございます。しかしながら財政法の精神といたしましては、今御指摘通りでございまするので、財政法にも十三条に特別会計を作りまする場合といたしましては、特別に資金を持ちましてそれを運用する場合とか、あるいは国が特定の事業を行ないます場合とか、その他一般会計と区分経理する場合と限定をいたしておるわけでございます。ただ御指摘のようにだんだんふえて参りましたので、ある意味では経済情勢の伸展とともに国の経済活動の分野も広まって参るという面もあるわけでございますので、そういうような意味におきましても、できるだけ特別会計は少ない方がよろしいわけでございますが、今申し上げましたような情勢とにらみ合わせましてこれを作成していく、もっともそれを作成していきます場合には、財政法の規定によりまして必ず国会の御審議を経、法律をもってこれを設置するということになっておるわけでございます。
  239. 横山利秋

    ○横山委員 理屈はあなたのおっしゃる通りではありますけれども、今では一般会計で国の財政を議論する、また国民一般会計を見て、それで国の財政及び経済の動向を議論するということは、もはや不可能になってきている。一般会計それ自身は何か看板のようなものになってしまいつつある。しかも特別会計それ自身はなるほどあなたのおっしゃるように、何か事あれば一応議論会の議決を経られることにはなっておるけれども、それがない場合においては全く、国民はもちろんであるが、政治全体の目から見ると、隠れみのになってしまって、何かそこで国民の目の、あるいは政府部内であってもそうでありますけれども、目の届かないところへ置かれてしまっておる、こういう状況を見のがすことができないと私は思います。でありますから、必要やむを得ざる特別会計制度を創設することについては必ずしも拘泥はしないけれども、厳に特別会計の圧縮をはかり、できる限り少なくするという努力を継続しなければ、年々歳々特別会計がふえるばかりで、これが五十になり、六十になるということを防止する方法が今ではない。そういうような牽制制度が何もないということはいかがなものかと私は思うのであります。従いまして、この特別会計がかくも膨大になっていくような現状について何か制肘を加えるべきである、ここに全面的に再検討をして、そして特別会計を一諸にするなり、あるいはなくして一般会計の中へ入れるなり、何かかんかの検討をすべきであると思います。この点は大臣の御意見をもう一ぺんお伺いをいたしておきたい。
  240. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ひとり特別会計だけではなく公庫、公団そのほかの機関も私は同様だと思いまして、予算編成のときには常に政府でも、方針の決定の際にできるだけこれを作らぬということを閣議できめて、そうして各省からの要望を抑えておるのが現実でございますが、そういう方針で今後もやるつもりでおります。
  241. 横山利秋

    ○横山委員 まあ大臣のやっておられることはわかるのですが、それにもかかわらず実際は公団、公庫や特別会計設置の要求が出て、それを決裁して結局一つ二つを認める。それでいてなお制限したいと言い続けていることが常のようであります。あなたの時代のみならず、歴代の大蔵大臣が抵抗して、抵抗し切れなくなって、結局は常に毎年々々特別会計なり公庫、公団が増設されておる。それがもうとどまるところを知らないということであります。やむを得ないものは認めなければならぬけれども、既存のものについての整理、統合、廃止というものをこり際考えるべきだ。これは今どうしようもないことでありますが、私の強い意見として表明いたしまして私の質問を終わります。
  242. 小川平二

    小川委員長 存日一幸君。
  243. 春日一幸

    ○春日委員 私は民社党を代表いたしまして、産投会計法改正案につきまして、主たる基本的な問題について質問をいたしたいと思います。しかしながら党代表としてのただ一人の質問でありますだけに、あるいはすでに質疑がなされた点に重複いたす面があるかもしれないのでありますが、この点は一つ御容赦を願ってお答えを願いたいと思うのであります。  そこでお伺いいたしたい第一点は、この産投会計は、その法律の第一条の設置目的に見ますると、これは経済の再建、産業の開発及び貿易の振興のために、国の財政資金をもって出資及び貸付を行なうためのもの、こうされておるのであります。ところが今回の改正によりますると、この会計に対米債務返済の機能を持たせようといたしておるのであります。これは資本額そのものを今ここに積極的に減額を来たさないとかりにいたしましても、しかし従来は資本に繰り入れられて参りましたところの利子でありまするとか、またその回収金、返済金、こういうものを今後債務の返済に充当される部分を生じて参りまするので、これが本会計の当初の設置目的に著しく背反するだけではなく、現実にこの会計が持つその機能を阻害するところ甚大なるものがあろうと思うのであります。これに対しまする政府の見解はいかがでありまするか。大臣からお答えを願いたい。
  244. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ガリオア・エロア債務の返済は、筋としては、これは援助物資を積み立てた資金から払うのが筋だろうと思います。この援助物資を積み立てた見返資金勘定の資金は、御承知のように産投会計に引き継がれておりますので、従って、産投会計から払うのが一番適当であるということが言えると思います。その場合に産投会計がそれを引き継いで各十八機関への出資、そのほかを行なっていますが、こういうものの引き揚げを行なって支払うということは、おっしゃられる通りいろいろな支障を来たすことになりますので、一番支障を来たさないで合理的に支払いをしようとするためには、開銀の納付金を中心に支払い計画を立てることが適当だという結論に私どもは達したわけでございます。もしも各機関に対する出資から納付金があるようでございましたら、これは簡単でございますが、今納付金を納めるところは先ほどのお話のように開発銀行と北海道開発公庫の二つしかございませんが、そのうち開発銀行からの納付金が一番多うございますので、これを中心に計算しますと、十五年間にすでにお示ししてありますような支払い方でりっぱに支払えるというのでございますから、一番これが影響のない方法だと私どもは今考えております。きのうも開発銀行から答弁がありましたように、これによって開発銀行自体には何ら影響がない。影響は産投会計にあるだけでございまして、この納付金は他の機関へのこれは年々出資原資になっておりましたが、それができなくなるというだけのものでございまして、ガリオア・エロアとは無関係に、産投会計から将来出資をしなければならぬというような必要が生じた場合には、これは産投会計の、さっきおっしゃられましたような機能を発揮するために、その資金の調達はいろいろ別個な考え方もあろうと思われますので、それとは無関係な問題として、要するにガリオアの返済には見返資金関係の資金の運用によって充てるというそのためには、今申しましたような方法が最も適当だと考えているわけでございまして、これによって影響が起こるということは、ガリオアによって影響が起こるのではなくて、新たに産投から出資を必要とするといういろいろな政策的な必要が起こるということでございまして、そういう問題が起こった場合は、起こった事態に処して適当な資金措置をとればいいのではないか、そういうふうに考えております。
  245. 春日一幸

    ○春日委員 御説明を受ければそういうことになると思うのでありますが、ただここで重視しなければならないことは、今大臣も述べられておりましたが、それぞれの回収金あるいは利子、こういうものは当然にして産投の原資に繰り入れられることになっております。ところがこれが二千数百億というものは、将来十五カ年間にまたがって繰り入れられることができない。結局これはガリオアの返済原資として転用を見るわけでございます。それだけ力をそぐことに相なるのでございます。従いまして、今やわが国の産業の開発とか、あるいは欧米におきまする貿易政策の動向にかんがみまして、貿易振興のための経済基盤を強化いたしますることのために、わが国における財政上の投資としてただ一つのルートでありますこの産投会計の資金力がそれだけ減ってくる、これは事実関係として認めざるを得ないと思うのでありますが、この点は大臣の御見解はいかがでありますか。
  246. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 産投会計の必要があって、そうして従来のような機能を果たすことが適当であったというのでございましたら、この資金は従って国として必要な資金でございますので、これは一般会計からこの資金を繰り入れるか、あるいは特別の公債を出すというようなことによって、この資金が調達されたでありましょうが、そういう機能を果たすために、たまたまこの米国の援助物資の積立金というものがあって、それを使って今日までこの機能を果たしてきておるということでございまして、そういう積立金、これは債務の返済とかいうような話が未定でございました間、そういう運用をしておったわけでございまして、いよいよ債務が確定して返済がきまったという場合には、この資金をもって支払いに充てるというのが、これは妥当といいますか、当然でございますので、それによっていろいろ支障がきている、だからこれは云々という問題は少し問題が違うのではないかと思います。もともと必要なら、本来ならほかの資金で今日までまかなってきべきものでございますが、この資金の積立金を今日まで使ってやってきたのでございますから、今度はいよいよ債務が確定して返済するというときに、この資金から返済する。しかもこれが支障を来たさないようにするためには、今申しましたような出資の元金に手をつけるということではなくて、運用の納付金からこれを支払っていくということでございますから、影響を最小限度に切り詰めた支払い方ではないかと考えております。
  247. 春日一幸

    ○春日委員 その影響の分も特に重要な問題でありますが、本質論といたしまして、この産投会計法が設置されたそのことは、第一条にうたっております通り、これこれの目的を達成することのためにはこれだけの財政規模が必要である、国としてこれだけの資金を準備する必要があり、こういうことでその資金計画がなされて参ったのでございます。しこうして経済の拡大に伴いまして、それらの需要はいよいよ増大の傾向にあるのでございます。すなわち一般会計から繰り入れば、多々ますますこれを行なわなければ相ならぬでございましょうし、回収金の取り立て利子を繰り入れて、そしてこの三つの使命を果たすことのために、この法律の資金の機能というものは、さらにさらに大きく活用されなければならぬ性格のものであり、その動向に置かれていると思うのでございます。しかるところ向こう十五カ年間に、二千数百億円の原資がはからざる用途のために転用を見るということの事態につきましては、この法律が当初設定されたその当時の目的、意図、こういうものと著しく反した方向にこれが転じられていく、方向が変えられていく、その力が他の目的のために減殺されていく、このようなことは不当なことだとはお考えになりませんか。この点にのみ限って一つお判断の上、お答え願いたいと思います。
  248. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう議論が起こりますのでしたら、この見返資金の積立金というものは、これはこのままにして将来の債務返済のときの準備資金として、別個に積み立てておけばよかったという議論になるのではないかと思います。産投の会計の必要があって、本来なら、これは一般会計の繰り入れ資金として出発すべきものかどうか、一部減税国債の資金は入っておりますが、そこは一般会計の資金繰り入れで対処すべきもの、最初からこれで出発したのでしたら、この会計からそういう措置をとるのは、これはおっしゃられるように不当な措置だろうと思いますが、この会計主力が今申しました見返資金勘定からの継承分で成り立っている会計でございますので、その中において出資に影響させないように、運用の益金、納付金をもってこれをまかなうという程度は、当然の、一番影響の少ない措置であって、そのためにこの機能が阻害されるというようなときには、これはまた別個の問題として、さっき申しましたように対処すればいいので、ここから支払いをするということが本質的にもうこれは悪いものだというふうには全然考えません。
  249. 春日一幸

    ○春日委員 その点の理解が明確でないと思うのでございます。あなた方はその当時野党におられた。時の政府の方針や理解は十分御理解がいかなかったかと思うのでありますが、その当時わが党内閣がアメリカからこれらの援助物資を受けた。これは本来ならば難民救済のためにただで配分すべき性質のものである。にもかかわらず、その対価を徴収した意図が那辺にあったかということを、あなたは御存じであるはずはない。これは片山内閣並びに芦田内閣を通じて、当初前例を打ち開いた行政当局のみがよく理解しておることであると思うのでございます。私は片山さんにもそれは十分有権的な応答として聞いたわけではございませんけれども、われわれの見解はこれはいただいたものであると論じて参りました。これが予算委員会、外務委員会その他において、また本委員会においてもしばしば論じて参ったことで、その論点は御承知を願っておると思うのでございます。われわれはこれをただでもらった。だから感謝もしておる。ところが、ただでもらったものだから、国民に対してこれはただでやるべきである。にもかかわらずわれわれが国民から何のために、いかなる意図のもとにその対価の徴収を行なったか。このことは当時の行政当局でなければよくわからぬと思うが、私どもが理解をいたしておりますところでは、われわれは今できるならばあるものはただでやろう、しかし支弁能力のある者からは相当の対価を最低の価格によってこれを集めよう、すなわちこれは民族的な拠金である。このように国民的に拠金をして、さてこの金はいかに使うか。それは国家と民族の必要に基づいて、すなわちここに書いてありまするような経済再建のために、あるいは産業の開発のためにわれわれが国際経済の分野にまたがって、さらにわが国の経済規模を拡大していくことのための貿易振興の原資としてこれを活用することのために、民族的な拠金としてここに対価を徴収したものであって、これは返済に充当することのための原資たるを予定して、その対価を徴収したものでは断じてない、あなた方が今そういうふうに、すなわち対日援助見返資金を継承した産投の金を充てるというその理論のもとを、対日援助見返資金であるからとこう断定をして、そこにその方法を選んでおられることは、当時の内閣の方針とあなた方の方針とが全く相反するものである。すべからく内閣の意思というものは、特別の有権的意思表示がなされるのでなければ、みだりに変更してはならぬものである。前の内閣の意思というものは、当然これは次の内閣が相継いでこれを継承しなければならぬ筋合いのものであると思うが、一方的に独断的に、いずれは払うものだから金をもらっておくのだというようなことは、当時わが党内閣が行なったことに著しく相反するの判断であると思うが、この点に対するあなたの反省はいかがでありますか。
  250. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この債務性の問題に逆戻りされますと、これはすでに今まで外務委員会でやってきた問題でございまして、確定債務をどういう形で支払うかというのが私の担当する任務でございますが、この債務性の問題に今戻っていく御論議になりますと、これはいろいろむずかしい問題で、産投会計から払うことが妥当であるかどうかということもわからないということになろうかと思います。  もう債務性の問題は話の大体ついた問題だと思いますが、私はなくなった水谷長三郎氏と非常に懇意でよくお話ししましたが、この債務性の問題は、他日これは解決すべき問題だ、あとから支払いはきめる、ただではないのだという判を押したものを一番多く受け取ったのは、おっしゃる通り確かにあなた方の内閣のときでございまして、自民党政府はその後それを引き継いでずっとやってきたということでございまして、これは芦田、片山内閣当時に、全くこれはただだと思っておったということは当時われわれもあなたも同じで、野にあった連中はよく事情を知らなかったということはございますが、政府当局者はもうりっぱに知っておることでございまして、これは私は水谷さんからも聞きましたが、おれの時代に一番多く判こを押したのをもらったということを言っておりましたので、これはあとで解決を要する債務性のあるものだということは、十分承知しておったと思います。
  251. 春日一幸

    ○春日委員 それはそういう事実関係はございましたが、わが党内閣が相手方からそういうような文書を受けたということは、受けただけのことである。恋文なんかでも、横恋慕して勝手に恋文をもらったからといって、もらった本人が責任を感ずるという筋合いのものではない。相手がそういう文書を送達してきただけのことでございまして、われわれはそれを認めざるがゆえに一言隻句の返事を出してはいないわけであります。わずかに返事を出された最初の文書というものは、阿波丸に対する決議が行なわれたときの付属文書の中に、あなたの方が勝手にこれは債務性があるものであるということをにおわせる、その付属協定みたいな文書を取りかわしたことにあるのであって、その点については予算委員会その他において、これは行政当局の越権行為の最もはなはだしきものであるとしてわれわれはこれを糾弾し、そのことを認めてはいないのでございます。そういうわけでわが党内閣は、当時アメリカからそういう文書があってもこれを黙殺しておった。その真の意図は何であったか、これは債務性なきものと確信をし、かく断定した行政措置であったのでございます。  私は基本論に入りまするけれども、そういう意味で当時の片山内閣、それから芦田内閣は、その対価を国民の側から徴収するにあたりまして、それは生活の困難なる者に対してはこれを無料で、しこうして支弁能力ありとおぼしき者からはそれを政策価格で徴収したのでございましたが、そのことはもとより債務性を認めていない内閣の行なうその行政行為は、当然その原資の用途、目的に対しては、これはおのずからその第一条に掲げてありまするような、わが国の経済再建並びに産業の開発あるいは貿易の振興、これらの国民経済の用に供することのために活用せんとしてその金を集めたものであって、後日返済の原資にこれを転用するというようなことは考えてはいなかった。でありまするから、今あなたのおっしゃったような、そういう金なんだからその金で返すのだということは、内閣が前内閣の方針を踏襲しなければならないところの政治道義、政治慣習に照らして、これは大いに錯乱状態であると言わなければならない。論理というものが間違っております。この点を一つ指摘しつつ御反省を求めておきたいと思います。  そこでお伺いをいたしたいことは、このガリオア・エロアの債務性、非債務性についてはもはや論じません。けれどもこの関係は明らかにアメリカと日本との間の経済関係あるいは政治関係、こういうことであって、その関係を処理することのための特別の支払い義務を免じてきたことなのでありまするから、従ってこれを支払いしようと思うのであるならば、当然事項としてそのことのための特別会計を設置して、そうして収入と支出を独立会計として明確に国民の前に示すべきである。こんなところにこれを便乗せしめるということは不当のことである、私はかくのごとくに考えますが、いかがでありますか。
  252. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今申しましたように、一ぺん援助物資を国民に渡して、その対価を得て政府が積み立ててあるということですから、国民は援助物資については一ぺん支払いをしたという関係になりますので、ここへこの返済のために国民の税金である一般会計資金から支払いをするということも、これは厳密な意味で悪いことではないと私は思っておりますが、この問題についてはすでに御承知のように、国民の中に二重払い論というようなものも出ておりまして、一ペんわれわれは代金を払っておるのだ、今度政府が米国へ返済するときに、また自分たちの税金をもう一ぺん使われることは困るというような意見というものがあるのでございますから、これを避けるのがやはり当然のことでございまして、一ぺん国民から払っていただいた資金、この資金のうちで払うということが最も適当だと私どもは考えます。そうしますと、その資金は現在どうなっておるかと申しますと、各機関への出資金に大部分はなっておるという状態でございますので、従って、これを返済するための特別の勘定を設けるというようなことは、一番すっきりして事態が明瞭になることでございますから、私どももできるならこの返済のための特別の勘定を置きたいと考えていろいろ研究いたしましたが、各機関への出資というものでございますから、ここに特別会計を設けますということは非常に繁雑なことになりまして、前に預金部資金の区分の問題もございましたが、あれと同様な問題が出て、そして一朝余裕金が出たというような場合にも、今度はこれの運用というようなことについてもさらに繁雑さを増す、いろいろな問題がございましたので、私どもは結局今の形で計算がはっきりするのだから、特別の勘定を設けないでやってもいいという結論になって、この会計から支払いをすればいいというふうにきめたわけでございますが、本来ならおっしゃられるように、これは明確にするために特別な返済会計を設けることが私もいいと思います。しかしこれは実際問題として繁雑であり、しかも効果は同じでしかないということでございますから、私どもは特別の会計を設けないという方針にきめたわけであります。
  253. 春日一幸

    ○春日委員 私はこれは国民の二重払いになるという非難をことさらに避けることのために、かかる措置をとられんとしたことが、現在にこういうようなややこしい法律改正を必要としてきた、あるいは将来の産投会計の機能に対してえらい障害を与えることになりはしないか、二つの点でこのことは重視して検討しなければならぬと思うのでございますが、まず第一番に最初の問題でありますが、これはものにたとえて言うならば、人間のからだですね。イモも食った、魚も食った、肉も食った、飯も食って、こういうからだができておるわけなんです。もう消化されてしまって、肉も魚もイモも全部異質のものになってしまっておるのです。この中には見返資金の分もあるし、減税国債のものもあるし、復金債、いろいろなものがあるのです。そういうようなものがもはや国民経済というものに消化され、栄養になって、国民経済の血肉になってしまっている。もう質が変わってしまって、もはやガリオア・エロアというようなものと全然似ても似つかぬものになって、変わったものになってしまっておる。人間のからだの中から、そのうち肉だけ返せというようなもので、魚を食ってその肉にしておる分だけ、魚にして返せというようなものじゃないですか。だからそれはへ理屈を言っておるのだ。少なくとも天下のまつりごとを——二重払いの非難を避けることのためにここへくっつけてきておる。これは一つ産投会計法の一条を読んでもらえばわかりますように、経済の再建、それから産業の開発、貿易の振興、これは波長が合っております。みんな同じようなテーマのものです。ところがここへ対米債務の返済というものは、これは全然突拍子もなく異質のものです。ものにたとえて言うならば、鶏小屋にイタチを飼っているようなものだ。いや、全くそうなんです。それは変です、実際問題として。鶏小屋にイタチを飼って、そこでもって産投会計の機能を、すなわち鶏小屋の平和を保とうと思っても、保てるはずがない。お互いに相剋しますよ、実際の話が。しかもこのアメリカに対する返済は、国際条約に基づく返済でありますだけに、すべての支出に優先して支出を行なわければならないというだけに、かりに予算が限られてあるとするならば、結果的にイタチが先に食ってしまって、鶏が食えないのです。そういう工合でこの法律は、こういう支払いをこの会計に負担せしめるというこの行為は、産投会計の本来の機能を阻害し、しかもその理由が何であるか、そのことはただ国民の二重払いという非難を避けるための口実です。無理をされておる。無理をされておることによって、長期にわたって将来に混乱を与えんとしておる。これは重大なことだとお考えにならなければなりませんし、もう一つのその前提的な理論としては、最終的には自民党の横暴でガリ・タイ問題は押し切られはいたしましたが、これは債務性ありと考えつつも、これについては国民の中にただでもらったような感じがしておる人もあるのだし、国際法的にはヘーグの陸戦条約その他から判断すれば、なお疑義がある。そういう疑義のある問題なんです。また片山内閣、芦田内閣のその意思、判断というものは、実際問題として明確ではないのです。ただ相手がそういうことを言ってきただけで、当時の内閣がそれをそのように承認しておるならば、何らかの反証があってしかるべきだ。あなたが内閣を継承されて、今さまざまな文書を点検されただろうけれども、われらが片山内閣においてそのようなとぼけた返事を出している痕跡が一つでもありますか。ないでございましょう。そういうような意味合いからいたしましても、これは産投会計の本来の使命をはなはだしく阻害するおそれがあるということ。  それからもう一つ重大な点は、後者に属しますが、後者の問題は、将来一般会計からするところの繰り入れを何となくためらわせる形になりはしないか、このことを私はさらに深くおそれるのであります。ということは、これは将来——なつかしい平田さんが参られておるけれども、実際問題として造船、海運関係の回収金が滞って参ります。しょせんは何らかの措置をとらなければならぬ。滞ってきたときには、結局これの返済原資を欠くことになります。返済原資を欠くことになりますならば、一般会計から繰り入れ、これを補てんするにあらざれば、産投本来の使命、その機能を果たすことができない。だから一般会計からここへ繰り入れようと思うと、野党、国民は、それ見たことか、これが二重払いじゃないか、こう非難をする。だから、その非難を避けることのためには、一般会計からするところの産投会計に対する繰り入れ、これを政治的にためらわせる結果になりはしないか。このことを私どもはおそれるのであります。単なる二重払いの非難を避ける——二重払いであろうと三重払いであろうと、国が意思決定を行なって払うときまった以上は払わなければならない。払うべきである。ところがそのことは別に、ここに払うが、しかし払うためには産投の方から発生するところの利子その他のもので払う。ところが利子あるいは回収金が入ってこない。払えない。国際条約に基づいての支弁であるがゆえに優先的に払わなければならぬ。払うためには一般会計から新しい繰り入れ、投資を必要とするが、そんなことを再々やれば国民が怒る。ガリオア問題は、二重払いになるといってまた怒りやがるから、怒られたらたまらぬから繰り入れをやめようということになると、産投会計本来の機能を阻害する、私はこの二つの問題で、この産投会計にこの使命をになわせるということは、私は二重に政府が過失を犯すことになると思うのです。一つの不正を行なえば、さらに不正を犯す、悪い犯罪を犯すとさらに重罪を犯さなければならぬ、おそろしい罪悪であると思われないか。御判断はいかが。
  254. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は大体においてあなたの御意見に賛成です。国民がみなそういうふうに理解してくれれば——これはすでに積立金もこういうふうに国民のために、国策のためにもう使われているのだから、それはそれで、こういう計算ははっきりわかったのだから、もう支払いはきれいに、こういうところへ影響させないで、一本で一般会計から払ったらどうだということでございましたら、これは一番すっきりする方法だと思います。しかし御承知のようにまだ昨日あたりまで、これでも三重払い、四重払いという非難が当委員会でも出ているような事態でございますので、やはり国民全体から見まして、この声があるし、その疑問があるということも懸念しますので、私は本来の一般会計から払っても、そう悪い性質のものだとは考えておりませんが、しかし国民の前に、この金の出所はこうで、こういう経路をたどって、こうなっているから、この会計からこういうふうに払えば、計算上こうなるということをはっきり示して、区切りをつけて、誤解のないような支払いをするのが、政治としては一番いいことではないかと考えて、少し回りくどい方法をとったことは確かでございますが、これは国民に対して誤解を起こさせないで、説明を十分にできる親切な支払い方法だと考えて、あえてこういう方法をとったわけでありますが、これがほんとうに理解していただけるのなら、私はあなたの意見にちっとも反対ではございません。
  255. 春日一幸

    ○春日委員 私どもはこれは払うべき筋合いのものではないという所論の上に立ちました。けれども国会で国の意思として払うということがきまった以上は、もはやそれは払うべきである。ところがあなた方は、その払わなければならないこの説明が、良心に基づかず、勇気がなかった。今あなたはおっしゃったのですよ。ほんとうに論理として二重払いであろうと、三重払いであろうと、これは払わなければならぬものはそういうふうに払ってもらわなければならぬとおっしゃったけれども、私はそうだと思うのですよ。あなた方には二重払いになるかもしれないけれども、との間あなた方がお支払いになったところの対価なるものは、すでに産投に繰り入れてあなたのお役に立っております。国の経済の再建、産業の復興、貿易の振興のために国民のお役に立って、別途の使命を果たしておるのです。あのときにお払いになった対価は、そういうふうにあなたのためにお役に立っております。国家と国民のために、すでに使命を果たしつつあります。その金を向こうへ払えば、そちらの方の機能を阻害いたしますので、従ってこの分については、二重払いになりますけれども、わが政府が払うべからざるものを払うと言った私どもがばかでございました。そのしりをあなたにぬぐわせるのはまことに気の毒だが、御容赦願いたい、こういう工合に言って、大胆率直に事実の関係をつまびらかにして、そういうふうに説得すれば、この産投会計の混迷を未前に防ぐことができるではありませんか。そうでしょう。文句ありますか。
  256. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 前段の所論は賛成でございますが、後段はこれは賛成できません。払うべからざるものを払ったというのではなくて、やはり払うべきものを払うのだというのでありますから、その支払い方は、国民に十分納得してもらえる支払い方が一番ベターではないかというふうに思っております。
  257. 春日一幸

    ○春日委員 そういたしますれば、言い直しましょう。私は、あなた方がこの間ガリオア・エロアの関係で配給いたしました対価、すでにお支払いになっておりますが、その金は産投会計に繰り入れて、国家と国民のためにすでにかくのごとき使命を果たしております。ところが今回このガリオアについてアメリカが返済を求めて参りました。これは払わねばならないと思います。だから、わが政府は払う方針を決定いたしました。ついては、この金は国民からもう一ぺん集めなければならぬ。年々八十億なり何がしか集めなければならぬ。この分はかくかくの事情を十分御理解の上、一つお払いを願いたい。税金の中から、一般会計からこれを支払っていこうと思うから、御承認願いたい、こう言えば、ああそうか、この間払った分は、ああいうふうに役立っているのか、よくわかった。もう一ぺんアメリカに払わなければならぬのか。それは仕方がない——国際信義は、もう一ぺん払えばはっきりするじゃないですか。今度は混迷を来たさないでしょう。御答弁はいかに。
  258. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう御説明のあとをつけ加えて、だから、それでいいものを、政府が国民の皆さんに金の経路や何かをはっきりさせるために、少し回りくどい措置をとったが、この方が事態がはっきりして、政府のやり方で見ますと、一切二重払いというようなことはないようでございますという説明までつけ加えて下さるならば、それで済むのではないかと思います。
  259. 春日一幸

    ○春日委員 あなたは、この間ガリ・タイ問題が通っているから、いとも楽しげに理論をエンジョイしておられますけれども、それはけしからんですよ。実際は国民に対して不実の説明を加えていられるのです。これはあなた方の大いなる欺瞞行為です。国民を、ああだこうだというような催眠術にかけるような詐術によって、こういうことがさもしさいありげに、新たに国民に負担を何ら加えざるような説明をすることによって、一方において産投会計の機能を阻害し、その性格を混迷に陥し入れる、このことをあえてなさんとしている。このことは、参議院選挙にさんざっぱらばらしてあげますから……。  そういうふうにしまして、ここで私は平田さんにお伺いをいたします。あなたとは長い間国税庁長官時代、この委員会でしばしば応酬したのでありまして、ここ数年ぶりに御答弁を得ることは、非常に楽しく、なつかしく思いますが、この間予算委員会で、石炭関係の四十八億分の貸付金が回収不能になっている事実関係が明らかになりました。これは政府答弁をもってすれば、産投の問題ではなく、開銀の問題だ、こういうふうに逃げを打たれておるのでございますが、いずれにしても産投全体から見るならば、これは責任をことごとく開銀に負わしめる性質のものではないでしょうから、これはこれとして産投全体の問題として注意を払わなければならぬ問題でございましょう。  そこで問題は、ただいま横山君からも質問をなされましたが、海運関係の回収金、これはただいまの御説明によりますと三百億円、すでにこれは一時留保せざるを得ない。貸付総額は一千七百十一億の巨額に達しておるといわれておる。それでこれは二十二日から海運組合は一週間にまたがってゼネストをやります。解決せずんば、さらに、長期にわたってゼネストをやります。そのことはいろいろと待遇改善の要求がなされておりますが、経営者側は、自分の経営が苦しくて、彼らの要求を満たすことができないので、結局は両者の話し合いがまとまらずして、ついに非常の手段に訴えざるを得ない。いわば海運企業というものは、非常に困窮な事態にある。ストライキにまで打って出なければ、海運労働者の要求を満たすことができない。ストライキをされても、それだけの要求を満たすことができないほど、ことほどさように海運企業の経営状態というものは困窮をきわめておる。だから一千七百億円というものの回収並びにその利子、これが予定通り、計算通り回収されてくるとあなたはお考えになりますか。もしこれが回収されてこないとするならば、あるいはさらに大同的立場において何らかの利子打ち切り、補給をせねばならぬとするならば、この資金計画の根源に大きな変動を来たさざるを得ないものと思うが、あなたのお見通し、また実情はいかがでありますか。
  260. 平田敬一郎

    ○平田説明員 春日先生からだいぶきついお尋ねのようでございますが、私、石炭関係につきまして、予算委員会でどういう御質疑あるいは政府の御答弁があったか存じませんが、ことしの三月末では先般申し上げましたように十六億の延滞になっております。中間では、御推察かもしれませんが某大会社が非常に難局に陥りまして、それが大きく響いて、これは一時延滞になって様子を見ていたわけでございます。ところがその後幸いに解決いたしましたので、それぞれ徴収すべきものは徴収し、あと返済のめどがついたものにつきましては、若干の条件の変更等をいたしまして、三十七年の三月では大体十六億円程度の延滞に減少いたしております。しかも石炭界は御承知の状況のようでございますから、大部分は一時延滞でございまして、石炭産業の近代化、合理化等が進むに従いまして、何とか支払いしていただける金額が大部分ではないかと存じておる次第でございます。従いまして、石炭につきましても絶無とは申し上げかねますが、今御指摘のような論旨に響くような徴収不能に陥るということは、まずなかろうと思っておる次第でございます。  次に海運でございますが、海運については問題があることは御承知の通りでありますが、さっきも横山先生に申し上げましたように、石炭と比べまして海運界というのは、深刻の度合いがだいぶ違うと私は見ております。現に利息は、先般たびたび申し上げましたように、これは相当私どもやかましく言って支払いを願っているからでもございますが、百十億くらいの利息を昨年度一年で現実に支払っていただいておりまして、延滞はわずか七千万円、一%未満という状況でございます。それから先ほど申し上げましたように、この前朝鮮動乱後非常に海運界が危機に陥りましたときに、一時利子の徴収猶予をいたしたのでございますが、あれはその後スエズ・ブーム以来再び徴収を開始いたしまして、一時五十数億に達しておりました利子の徴収猶予額は、三月末では四億にまで減少をいたしておりまして、大体において利息に関する限りは海運界はほとんど完全に支払っていただいている。ごく一部の例外はございますし、若干の金額は延滞になっておりますが、そういう状況でございます。  今後どうなるかということは、先ほども議論がありましたようにいろいろ問題はございますが、三年くらい前が底で、その後幸いにいたしまして償却前利益は年々増加いたしております。三十六年度におきましては、先ほど申し上げましたように三百億に達しておりまして、当期分だけの償却をできる会社の数が非常にふえております。しかし何しろ過去の償却不足がございますので、まだ海運会社の資産内容はよくない。従いまして、今後海運界におきましては、会社自体の努力が一番大事であると思いますが、それと並行いたしまして、先ほど申し上げましたように、何がしかの方策は政府においてとられることが必要かと存じますが、そういうことをいたしますればそう悲観したものではない。ただそう申しますと、またこれが海運界はいいからというので、給与の問題等に影響しましてはどうかと思うのでありますが、石炭と比べますとだいぶ違う。率直に申し上げまして会社によって相当いいところもございまして、私、給与の問題はあまり触れたくありませんが、そういう状況でございますので、長い目で見ますと重ねて申し上げますが、海運界に対する融資につきましても元利ともに確実に回収できる、またそのように一生懸命努力いたしたい、私はこういうことを申し上げることができると思います。
  261. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま平田さんに、はからずも関連して海運企業の現状並びに将来の見通しを聞くような形になって参りましたけれども、このような席でそういう答弁がなされますと、今海運界並びに関係労働者が政府に向かって迫っておることについて重大な影響がありますので、これは後ほど明確にしなければならぬと思うのであります。  ただ、私が今ここであなたにお伺いをいたしておりますのは、政府計画によりますとガリオア・エロア返済額は二千八十五億円、政府の計算によれば利子返済分の累積分がこの期間内に大体二千二百二億円で、この差額として百十七億の余裕がある。だから返済計画は大体において果たし得るものである、こう論じられておる。けれども海運界の実績並びに石炭産業の将来、そういうようなものを判断すると、なかなかそんな計画通りいきはしないのではないか。このことを指摘しておるのです。政府の計画というものは、われわれが今ここで論じておりますが、そういう結果になるかならないかは、三年、二年を待たず結果に現われてくると思います。あなたがおっしゃった通りであるのか。それかといってあなたがむちゃくちゃに高利貸しみたいな形になって、この間大蔵委員会でああいう答弁をしたから、何でもかんでも取り上げなければならぬということでいたさられると、これはまた困ることになると思いますが、ただ海運政策につきましては、各党ともに一つの基本政策を持って、それぞれ政府に迫っておると思うのです。これは社会党の案もわが党の案も自民党の案も、そんなに距離がないと思っておる。  われわれが政府に対して要求しておる政策の骨子は何であるかというと、こういうことを言っておるのです。すなわち今海運産業が斜陽産業であり、その根底基盤というものがはなはだしくゆらいでおる、危殆に瀕しておる。その理由は何であるかといえば、すなわち戦時災害二十五億円、現在の時価にインフレートするならば七千億円、この補償打ち切りに起因して、戦後の船舶建造が過去の他人資本に依存せざるを得ず、しかも外国に比べてきわめて高率な金利負担のために、船腹の増加に反比例して借入金と金利の負担増から赤字を累増させた。現在の海運会社の資本構成を見ると、他人資本が七八・六%、自己資本が二一・四%、要するに借金で経営されておるのだ、これが実情である。しこうして一方において海運の基本的な政策はいかに計画されておるか。政府の計画によれば、これは国民所得の倍増計画に基づく経済政策の目的を達成するためには、向こう九年後、今では八年後でありますか、四十五年度における国際収支のバランスは、邦船による輸出入物資の積み取り比率を輸出六三・六%、輸入を一般貨物六〇%、石油類を六五%に高めなければ、あの政府の所得倍増計画、高度成長計画というものは満たされないということになっておる。これに要する船腹量を千三百三十五万トンと想定すれば、三十六年度から向こう九カ年間に実に九百七十万トンの新造船を必要とする。今の海運業界、造船界にこの重き国家的、民族的使命を果たさせるためにはどうしたらいいか。この具体的な政策として自民党も社会党も民社党もきびすを接して政府に迫っておる具体的政策の内容は何か。それは海運企業の基盤強化の措置として、現在まで開銀融資昭和三十六年三月末現在五十三社の借入残高は千五百九十九億九千百万円とすれば、この金利を向こう五カ年間というものは免除しなければならぬかもしれぬ、こういうことをしなければならぬ、そうしなければ国家経済の重き使命を果たすことができないかもしれぬ、それから現在までの市銀融資、これに対しては金利を三分五厘になるように利子補給をしなければならぬかもしれぬぞ、その他ずっとわが国の海運企業の基盤を強化をせなければならぬというこの具体的な政策について、今政府に迫っておる。今あなたがおっしゃったような、やれ朝鮮ブームがどうだった、あるいはスエズ・ブームがどうだったというような、そのようないわば国際紛争に端を発した一時的好況というものが海運業にもたらしたところの一時的なプラス・アルファ要因を、将来海運業界が立ち直るところの基本的な要因としてこれを判断に取り入れられることは、これは明らかに間違いだ。このようなことを軽々しくかくのごとき委員会において論ぜられるべき筋合いのものではない。あなたが開銀融資を通じてわが国造船界に果たしておられる役割の重きにかんがみて、まことに軽率のそしりを免れない答弁と、これは非難せざるを得ない。よくこれは御注意を願いたいと思う。  そういうわけで、水田さん、あなたはゆったりしておって困りますな。この間私は予算委員会で、海運企業の基盤強化の基本的な法律案、これをあなたが抵抗されてなかなか国会に出てこないので、こういうことは因る——困るというても、わが国の産業の基礎を危うくするので、すみやかに運輸省と話をされて、所要の政策を出してもらいたいと私は質問をいたしまして、あなたはそのために努力すると答えられておるのですよ。一体わが国のこの海運界の現状に照らして、今開銀融資のそれぞれのものが政府の計画通り返済されると思われますか。あるいは返済し得るとするならば、それにかわるところの反対給付の施策をすみやかに講じなければならぬと思うが、その段取りはいかに進められておりますか。これは先回予算委員会における大蔵大臣の答弁、これを想起されて、ここにあらためて御答弁を願いたいと思います。
  262. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この具体案を作るためには、十分に実態把握ができなければなりません。同時に、将来の海運の経理の見通しというようなものも十分に検討いたしませんと、かりにここで利子のたな上げという政策をとるにしましても、利子補給という政策をとるにしましても、それをどのくらいの幅で何年間やってやれば立て直るかというようなものは、相当将来の見通しとからんだ十分な資料に基づいて私どもは検討したいという考えから、今この資料の検討に大蔵省と運輸省が入っておるときでございまして、いろいろ相談中に、必要な資料が、またどうしてもほしいという資料が次々に出て参りましたので、そういうものの調整にひまはとれておりますが、前に申しましたように、これは政府は当然、できたら今国会に法案を出すという方針でおりましたので、できるだけ間に合うようにと、今作業を急いでいる段階でございます。
  263. 春日一幸

    ○春日委員 このことはガリオア・エロアの返済協定、これを実施することのためにも、重大な要因になって参ると思います。のみならず、この二十二日にゼネラル・ストライキを控えまして、国があらためて海運政策について根本的な政策の推進を迫られておる政治背景にあると思います。ただいまの御答弁によりますると、運輸当局とさらに話し合いを進めておられるとのことでありますが、私が質問をいたしましてから、すでに三、四カ月経過いたしておると思いますが、すみやかに提出すると言われてすでにじんぜん三、四カ月を経て一おるということは、私はこの事態の推移にかんがみて、政府怠慢のそしりを免れないと思います。すみやかに一つ結論を得られて、所要の政策を実現されたいことをあわせて望みます。  結論として私は申し上げたいことは、今回この産投会計にガリオア返済の使命をになわされたことは、一口に言うならば、ただ国民が二重払いになるのだと、こういう非難の声がたまたまあったので、それを何らかの形でへ理屈をつけて、しさいありげにこれをカムフラージュすることのための措置として、こんなにも回りくどいところの政策の迷路をみずからとられた。このことは産投の将来に対して大きな混迷を来たし、その機能を阻害すると私は思う。しかし自民党が多数の横暴をもって万事取り計られた後でありまして、本法が通った後において今こんなことを申し上げておりましても、けんか過ぎての棒ちぎれのようなことで、死んだ子の年を数えるというか、何となくかいないことのように思いますので、万斛の涙をのんで私の質問を終わります。
  264. 小川平二

    小川委員長 堀昌雄君。
  265. 堀昌雄

    ○堀委員 だいぶ長いこといろいろとむずかしい話が出たわけでありますけれども、わからないところの論議は、これは相互に、何といいますか、むずかしいところを探し出すだけであって、あまりこの論議に益はないと私は思います。そこで、よくわかっておる範囲の中だけで、少しこの問題の中で問題のある点を指摘をいたしたいと思います。  まず、私も実は先ほどの春日さんのお話に非常に同感の点があるわけです。その同感の点の一番多いところは何かというと、やはり政府が二重払いでないということを強く主張するために、いろいろなメカニズムを考えておられる。実はその問題は、なぜそれではそういうことにこだわらなければならなかったかというと、これはやはりもっと根本にさかのぼって、これがほんとうに債務であったのかなかったのか、払うべきであるのかないのかというところがはっきりしないために、政府は自信が持てなかった。債務と心得るとか、昨日も私はちょっと論議をいたしましたけれども、常識として判断をしてみるならば、どうも納得のいたしかねるところがたくさんあります。たとえばアメリカの商務省のいろいろな資料を見て調べてみると、対外援助については、グラントとはこういうものだ、クレジットとはこういうものだというようなことを書いておるわけでありますから、そういう意味で文書の中を調べてみると、これは国民すべてがなるほどと納得できる条件でない。そこで皆さんは、そういう少しうしろめたい気持があるものだから、その上に二重払いなどと言われてはたまらないというので、おそらくこういう支払いの仕方をお考えになったと思うのです。さっきはうその上塗りという話がありましたが、私はやはりそこにあやまちの第一歩があると思う。ということは、やはりこれはこじつけをしたということが問題になりますから、皆さんが考えられておるようにそのこじつけた細工がうまくいくかどうかというこの仕組みを、私はしばらく時間をいただいて少し詰めてみたいと思います。  そこで最初にお伺いをいたしますけれども、私昨日資料をちょうだいいたしましたが、皆さんの方では今後開銀の納付金は微増をして、固く見積っても大体年間五千万円程度は増加すると見込んで、そうして年度別に五千万円ずつ納付金がふえる、昭和三十七年度を百三十億円とすると五十一年度には二億五千万円になる、こういう資料をちょうだいいたしました。そこでお伺いをいたしますが、一体開発銀行の過失における納付金は、皆さんがここへお書きになったような理想的な状態にあるのかどうか、まず第一点としてそれからお伺いをいたしたいと思います。昭和二十六年以来でお答えを願います。
  266. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 二十六年度、二十七年度はちょっとございませんので、今調べましてお答えすることにして、二十八年度から申し上げますと、二十八年度開銀納付金は百八億四千五百万円、二十九年度九十七億四千七百万円、三十年度九十九億四千五百万円、三十一年度百二十七億五千五百万円、三十二年度百四十三億三百万円、三十三年度百二十四億五千九百万円、三十四年度百二十五億四千五百万円、三十五年度百三十億九千七百万円でございます。
  267. 堀昌雄

    ○堀委員 三十六年度は予算ベースでは幾らですか。
  268. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 百十億一千九百万円でございます。
  269. 堀昌雄

    ○堀委員 今お聞きをいただいたように過去における足取りは決して一本の線にはなっておりません。特に三十六年度については——これはもう大体三十六年度が過ぎて五月には清算納付金が出ると思うのでありますが、開銀の方で、三十六年度の納付金が概算幾らになるかお答えいただけますか。
  270. 平田敬一郎

    ○平田説明員 今三十六年度分については清算中でございましてまだはっきりした数字が出ておりませんが、まあ三十五年度の納付金を大体大差はない、あるいは二、三%ぐらいは年によって動くかもしれぬというのが実情ではないかと存じます。
  271. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、三十六年度も百二十億円程度の納付金が出る、こういうことでございますか。
  272. 平田敬一郎

    ○平田説明員 昨年度は外債を発行しました関係で外債の手数料等を一時に損金にしたといったような事情がございますので、今正確なことは申し上げられませんが、大体百三十億前後、前後しまして差がありましてもごくわずかの差であると存じております。
  273. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、それはわかりませんが、予算ベースでは三十六年は百十億ですか、私がいただいた資料では百六億七千万円、こういう格好になっております。それはいいですが、そうすると百三十億、百三十億と、三十五年と三十七年の予算はそうなっておりますが、三十六年は百六億で非常に少ないところが一回あるのです。その前年に参りますと、大体百二十四、五億というところが二年続いておるわけです。そこで私は、実はこの納付金の中に非常にでこぼこがございまして、これをいろいろ考えてみてわからない点が少しありますので、まずちょっとお伺いいたしたいのは、開銀は今貸し倒れ準備金の積み立てをしておられますが、この貸し倒れ準備金は現状ではどういう形で積み立てておられるのかお聞きしたい。
  274. 平田敬一郎

    ○平田説明員 貸し倒れ準備金は、大体毎年期末現在高のたしか百分の二でございましたか、それに相当する金額を一応計算しまして、それからその期中に現実に償却しました金額を差し引きまして、そのネットのところを貸し倒れ準備金として毎期積んでおるということでございます。
  275. 堀昌雄

    ○堀委員 これもやはり準備金のように過去の例を調べてみますと実は非常に変動があるようであります。ある時期では全体の三%に押えられておったという時期があるようでありますが、最近はもう準備金と同じような一定の率によって貸し倒れ準備金は積み立てられる、かように理解をしてよろしゅうございますか。
  276. 平田敬一郎

    ○平田説明員 過去におきまして私どもの貸し倒れ準備金は、一般の市中銀行と同じ基準で実は積んでおるわけでございますが、積みます基準につきましてたしか制度改正があったことがあるかと思います。そういう関係があって一時減っているかと思いますが、貸し倒れ準備金は現実に現在百数十億、相当大きなものになっておりますが、毎期償却しておりますのは、昨年は大体八千万円ぐらいであったかと思います。大部分が実は積み増しという形で残っておるということでございます。
  277. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで皆さんの方の損益計算書を拝見いたしておりますと、未払い利息その他の戻し入れという項目がございますね。損益計算書の利益金の方に未払い利息その他の戻し入れという項目がございます。これは大体何に基づいてこういうものが出てくるのかをちょっと伺いたい。
  278. 平田敬一郎

    ○平田説明員 これはたしかこういうことを一時やったことがあるのでございますが、その関係かと思いますが、炭住貸付金につきまして一時超過利息をよけいとっていたことがございます。ところが、それがあとになりまして減額するということにきまりまして、その関係で勘定が少し動いてきておると思いますが、なお詳細なことはちょっと調べまして後ほどお答えを差し上げます。
  279. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 副総裁若干勘違いをされているようでございますから私から御説明いたしますが、未払い利息その他戻し入れ、利益金の方に計上されているものは、損失の方の借り入れ金利息、これの計上の仕方によって両建になる分でございまして、発生ベースで計算して借り入れ金利息を組んでおるわけであります。従って現実の支払いとしては、その年度内にそこまでいかない。その分を翌年度未払いその他で戻入という格好で両建で組んでおるわけであります。従いまして実質的な利払いとしましては、それを相殺したところが損失の方の利払いになる、こういうことでございます。
  280. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでいただいた資料でちょっとわかりませんのは、三十六年の予算ベースで見ますと、この未払い利息その他戻し入れがゼロになっております。大体三十七年二十七億、三十五年二十六億、三十四年二十二億、こういう格好であったのが、たまたま三十六年は未払い利息の戻し入れがゼロになっておるから、どうもこの納付金が計算の結果百十六億くらいになっているのじゃないか、こういう感じがするのですが、一体この三十六年はなぜこれがゼロなんでしょうか。
  281. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 三十六、七年は予算ベースでございます。従いまして、現実に確定した利息ではございませんので、利益金の方に戻入の分が上がってこない、こういうことでございまして、措入金利息の方は先ほど申し上げましたように発生ベースでございますから、当然に未払い分も入っておる、こういうことでございます。
  282. 堀昌雄

    ○堀委員 三十七年は未払い利息その他戻し入れ二十七億四千五百万あったとここに出ているのです。三十六年も予算ベース、三十七年も予算ベースで、三十七年は二十七億四千五百万円、これが大体私おかしいと思うのです。予算のときに今のようなお話で、未払い利息その他の戻し入れなどがあるなどというのはおかしいと思いますが、三十七年あなたの方が出した計算が、ここに出ている。三十六年についてはこれは出してない。理由はどういうことですか。これは同じ予算ベースです。
  283. 橋口收

    ○橋口説明員 昭和三十七年度政府関係機関予算という予算書がございますが、その二百二十九ページに日本開発銀行損益計算書が載っております。それによりますと、昭和三十六年度の予定額といたしまして、未払い利息その他戻入費として二十七億九千百万円を計上いたしてございます。三十七年度の予定額はただいま御指摘がございましたが、二十七億四千五百万円を計上されております。
  284. 堀昌雄

    ○堀委員 三十六年に二十七億九千百万円と計上されておるのですか。私がいただいた資料ではそういうふうになっていないのです。三十六年度予算としてそうなっていなくて、計算としては合計は四百二十九億七千八百万円、そうして損失金の方はこれでぴしっと合っているのです。一体そうしたらこれはどうなるのです。
  285. 橋口收

    ○橋口説明員 お手元に配付いたしました資料は、これは申しわけないのでございますが、差引計算を抜かしまして計上してあるわけでございます。従いましてお手元の資料では借入金利息が二百三十八億二千五百万円になっております。それに対しまして、ただいま私が御説明申し上げました昭和三十六年度の予算の予定額といたしましての借入金利息は二百五十四億五千八百万円となっております。従いまして、ただいま申し上げました二十七億九千万円が差引計算で落ちておるわけでございます。
  286. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとこれは合計もみな違うわけですね。今私が申し上げたのは合計四百二十九億七千八百万円ですから、今それだけはまた合計もふくらむ、こういうことになるわけですね。
  287. 橋口收

    ○橋口説明員 その通りでございます。
  288. 堀昌雄

    ○堀委員 私こまかく資料を見ておりましたら、その他のは全部戻し入れが入って、三十六年のだけが実はいただいた資料では入ってない、それはいいです。そういうことならば何らかの手違いでございましょうからけっこうです。  そこでもう一つお伺いをいたしたいのは、政府の借入金が貸借対照表に政府借入金の項目として貸方に出してございます。この貸方に出ている政府借入金の年度の差額を調べてみて、そうしてその次に日本開発銀行の年度別借り入れ状況という資料をいただいております。ところがこれが合いません。これは一体なぜ合わないのか。借り入れ先別として見返資金及び産投会計、資金運用部その他として計が出ております。この計が出ておるものが、実は政府借入金の貸借対照表貸方の政府借入金残高の年度ずつの差額と合わないというのは、これはどういう理由によるものでしょうか。
  289. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 これは外貨借入金が除いてあるのは御承知だと思いますが、それ以外は、この資料の注に書いてございますように各年度における新規借入金を示す、こういうことになっておりまして、法定の振替によります貸付金は、振替でございますので、新規増加借入でございませんので除いてございます。その点の違いではないかと思います。
  290. 堀昌雄

    ○堀委員 うしろの表に載っておりますのは新規借り入れですね。新規借り入れの方が小さくて、要するに残高計算の方が多いというのなら、今のお話はわかります。その他のものが返ってきたのをどうかしたというならわかる。しかし事実は、これは貸方勘定だからそういうことになるはずはありません。計算をしてみますと、三十六年と五年の政府借入金の差は三百四十九億六千万円になっております。ところが三十五年は四百三十億、三十六年は五百十一億ですね。これは借入金になっておる。どうしてこうなるのですか。
  291. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 貸借対照表の方は、これは残高が上がってございます。先ほどの借り入れ状況の方は新たな借入額を計上してございますので、従いましてその年度における政府への償還額を引かれた数字が貸借対照表に上がっております。
  292. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとこれはその年度に返したものと借りたものとが別建てになるわけですか。要するに借り入れ先別としておそらく資金運用部から、ここでは三十五年に四百三十億なら四百三十億新規に借りました。あとそれでは一体幾ら返しているのですか。ちょっとその返したのを年度別に、資金運用部だけでいいですから、おっしゃって下さい。
  293. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 資金運用部について申し上げますと、初めて開銀が資金運用部から借り入れましたのが二十八年度でございますが、据置期間等の関係もございまして、三十一年度までは償還はございません。三十二年度から償還が始まりまして、ずっと年度別に数字を申し上げますと、三十二年度は八億百万円が償還額でございます。この年度だけちょっと先ほどの貸借対照表との違いで御説明いたしますと、前年度の残高が五百四十億、これに対して三十二年度の新規借り入れが三百八十億、これに対しましてただいま申し上げましたように八億百万円の償還がございますので、その年度の資金運用部からの借り入れ残高は九百十一億九千九百万円、同様にいたしまして償還額だけ申し上げますと、三十三年度は二十二億五千六百万円が償還額でございます。三十四年度は三十二億九千百万円、三十五年度は三十九億八百万円、三十六年度は七十一億八千百万円、こういうふうになっております。
  294. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると今の償還額を新規借入金から引いた分が政府借入金残高の差にならなければなりませんね。ちょっと一ぺん計算してみて下さい。私はこれをざっと見たけれども、三十六年から七年への増加額は四百十億です。そうしてこちらは三十六年のところは五百十一億借りてあなたは今七十一億返したとおっしゃいましたが、合わないですね。
  295. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいま三十六年度数字を申し上げましたが、三十六年度の資金運用部の借入金の数字……。
  296. 堀昌雄

    ○堀委員 そのほかもあるのですか。
  297. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 産投会計の返済がございます。
  298. 堀昌雄

    ○堀委員 産投会計は幾らです。
  299. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 産投会計の返済が四十八億三千万円でございます。
  300. 堀昌雄

    ○堀委員 ほかにありますか。
  301. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 それからほかに経済援助資金分返済が十億六千二百万円ございます。従いまして償還合計が百三十一億七千三百万円でございます。
  302. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、三十六年の分につきましては、それはやはり計算が合わないように思いますが、合いますか。
  303. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 合うと思いますが、前年度の三十五年度末の借り入れ残高が二千六百十三億八千百万円、これに対しまして新規借入額が五百十一億三千万円、それから償還額が百三十一億七千三百万円、従いまして年度末残高は二千九百九十三億三千八百万円、こうなります。
  304. 堀昌雄

    ○堀委員 私の方は二千九百六十三億。
  305. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 貸借対照表の方の二千九百六十三億四千万円——ちょっと今調べます。
  306. 堀昌雄

    ○堀委員 いろいろとこまかい技術的な問題はあると思いますけれども、それはあとにいたしまして、私がずっとこう見ておりまして、実は五千万円年にふえるという根拠ですね。これをちょっとここでお答えをいただきたいと思います。納付金が五千万円ふえるということ。
  307. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 回収金がふえて参りますのと、御承知のように開銀の貸付金の金利は六分五厘、七分五厘、八分七厘、いろいろございますが、最近だんだん八分七厘ものの貸付がふえて参りますので、こまかい計算をいたしまして年間五千万円ずつふえると見たのでございます。積算の根拠は資金課長からお答え申し上げます。
  308. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 これは三十八年度の貸出規模のいかんにもよるわけでありまして、一応貸出純増を前年同額と想定して計算したわけでございます。非常に大ざっぱに——非常にこまかい計算になりますので大体の筋道を申し上げますと、貸出純増が前年程度といたしますと、三十七年度程度と申しますと約六百億程度でございます。それに平均の収入利息、利率、これが七分弱でございますが、かりに七分といたしますと四十二億が収入になるわけでございます。これに対しまして支払い利息は、内部留保が約八十億程度ふえますので、五百億余が資金運用部に六分五厘で払わなければならぬ。そうしますとそれの支払い利息が三十四億程度になります。その差額が約八億になるわけでございますが、その中から事務費の増、外貨債の差金、償却、貨し倒れ準備金の積み立て等約三億を引きますと、利益の増加はこまかい数字で申し上げますと大体四億八千万円程度になります。約五億でございますが、これに対しまして残高のふえた分の千分の七を法定準備金として積み立てることになっておりますので、それが四億三千万円程度になります。その差額が国庫納付としまして五千万円、これは多少かた目に計算いたしましたので、五千万円とまるめて今後の推定資料にしたわけでございます。
  309. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで今のはあれですが、事務費の過去における経費の増加状態を調べてみました。そうするとだんだん増加のスピードが高まっております。これはよくわかりませんが、原因はわかりませんけれども、三十二年は——もっと前からいえば非常に逆向けに事務費が減ったときもあるわけですが、三十二年から三十三年に対して二千七百万円、その次が六千七百万円、一億一千七百万円、それから一億五千四百万円、一億七千四百万円、だんだんと事務費は加速度をもってふえつつあるわけです。今三億というふうにざっとお出しになりましたけれども、事務費の傾向も大体がふえつつある。私が今そういうふうに申して貨し倒れ準備金等について伺ったのも、この中で不特定なふえ方をする可能性があるのは、主として私は事務費の問題ではないかと思います。そこで今利率の問題にちょっとお触れになりましたけれども、大体貸付金の利息と借入金の利息のこの差額を調べてみますと、これは実はあなた方は、今貸付金がふえればふえるというふうにおっしゃいましたが、その差額はあまりふえておりません。大体百八十億前後のところ、三十六、三十七年はこの差額は百八十八億五千三百万円、百八十八億九千七百万円、こういうことで、実はあなた方の方は貸付が六百億ふえたと言われますけれども、その内容における貸付金の利息と借入金の利息との差額を見ると、事実上はこれはふえていない。今あなたの方では大体そういう差額で四十二億ふえるとおっしゃいましたね。四十二億もふえているんならここへ当然出てこなければならないわけです。貸付金の利息として収入のあるのと、借入金の利息として支払うのと出てないのです。これは過去の例をずっと見ますと、貸付金の増加率は三十三年ごろから見ると三百八十億、四百五十三億、三百八十三億、五百五十五億、六百四億、こういうふうにずっとふえているわけですね。同じときもあります。しかし三百八十三億から五百六十億とふえておりますけれども、この間の三百八十三億から五百六十億にふえたときにこれの利息の差額は十億しかない、どうでしょう。そんなにふえますか、あなたの計算のように。
  310. 平田敬一郎

    ○平田説明員 非常に精密な計算はなおよくチェックする必要があると思いますが、大体の傾向といたしましては、現在新しく資金運用部から借り入れておりますのが六分五厘であります。従って、今後大部分は六分五厘で貸して参りますが、一般の八分七厘の金利で貸すウエートが多くなるかどうかということが、今後における今お話のような要素になるファクターじゃないかと思います。概して申し上げますと、例の地方開発を一昨年から始めまして、これは漸増の傾向にございますし、その他特定機械もかつては六分五厘で貸しておりましたが、最近は七分五、六厘くらいの金利で貸すということに実は昨年度から若干変えております。従いまして、六分五厘で貸す部分のウエートと八分七厘または七分五壇くらいで貸す部分のウエートがどちらが多くなるかということによってきまってくると思うのですが、現在遠き将来のことは率直に言ってなかなかわかりにくいのですけれども、現在の傾向から言いますと、若干八分七厘の方がふえる傾向にございます。前回たしか資料として配付しましたが、たとえば三十六年九月末現在で八分七厘の分が全体の九・一%にあたります。お手元に差し上げた資料ですが、これが半年前の三十六年三月では八・五%というので若干ながら上昇しておりまして、半年分の実績でもこの傾向はやはりある程度続くと見ておりまして、その分からふえる要素がある。ただ一方こまかく言いますと、産投から借りておりまする部分が金利の低いのがございまして、この運用が若干利回りの幅が少なくなるという要素もございます。しかし全体を通じて見ますと、まず理財局で見ております程度のことは私どももあまり抗議を申し込むほどのことはない、大体そういうことにいく可能性があるのではないかと見ております。なお事務費でございますが、事務費は私どもの計算によりますと、大体三十三年度が八億二千万、三十四年度が八億六千百万、それから三十五年度は実はベース・アップの関係がありまして約九億七千八百万円、最近は十億ちょっとこえているかと思いますが、事務費はそう動いていない、ほとんど十億前後の事務費で、いつか申し上げましたように、八十億前後の利益を見ております。そういうことになっていると思うのでございます。先ほどお話の事務費の点、ちょっと私聞きかねるのでございます。
  311. 堀昌雄

    ○堀委員 これは理財局の出した資料から私引き算をしただけですから間違いないと思います。三十七年の予算額は十三億六百万円、間違えておりますか。三十六年は十一億三千二百万円、三十五年は九億七千八百万円、事務費はこういうふうに私のいただいた資料には出ております。だからこの資料はもし間違っていたら政府はきわめて責任を感じてもらわなければいかぬと思いますが、どうですか、間違っているか間違っていないか。これは私は自分で作った資料で言っているのではない。政府から提出された資料で言っているのです。
  312. 平田敬一郎

    ○平田説明員 今のお話は何年でございますか。
  313. 堀昌雄

    ○堀委員 三十七年です。
  314. 平田敬一郎

    ○平田説明員 三十七年度の予算で見ている事務費でございますか。
  315. 堀昌雄

    ○堀委員 そうです。
  316. 平田敬一郎

    ○平田説明員 それはお話の通り間違いないと思います。先ほど少し古い時代の数字をちょっとお聞きしまして、あるいは聞き違えでございますれば訂正いたしておきます。
  317. 堀昌雄

    ○堀委員 私が今申し上げましたのは事務費の伸び方を言ったわけです。私がいただいた資料では、三十二年が七億六千七百万円、三十三年が七億九千四百万円、三十四年が八億六千百万円、三十五年が九億七千八百万円、ここまでは実績だと思うのでありますが、その間を引き算をしてみますと、最初は二千七百万円ふえているのが、次は六千七百万円ふえ、次は一億一千七百万円、次は一億五千四百万円、次は一億七千四百万円、年々ふえ方は増加をしているということを申し上げたわけであります。この点は単なる引き算ですから、もし間違っているなら、引き算は間違っておりませんから、私が間違っているのではなくて、政府が提出した資料が間違っているわけです。
  318. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 どちらも間違っていないのだと思いますが、この三十六年度と七年度は予算の数字でございまして、事務費につきましては実績は毎年一億余が出る状況でございます。三十五年度までは実績の数字でございますのでかたいといいますか、実績通り数字ですが、予算でございますので多少大きな数字になっていると思います。  それから先ほど政府借入金の数字で私の申しげましたものと資料の違いでございますが、先生に差し上げました資料は三十六年度予算とカッコで書いてございますが、予算に基づく数字でございまして、実はその後、ここにあがっております外貨債券百八億というのは、三千万ドルございますが、そのうち実際に出ます見込みが二千万、ドルになりまして、一千万ドル分は別途国内の短期貸付で補てんすることにいたしました。それが三十五億、私の申し上げましたのは最終的な実績の数字でございます。そのほかに経済援助資金で一億七千万ほど実績が減った、これを合わせた数字が二千九百幾らになる数字でございます。
  319. 堀昌雄

    ○堀委員 そういうこまかいことは私の方ではわかりません。いただいた資料の範囲だけですからわからないのですが、それはよろしいとしまして、結局今問題になりました一つは、さっき開銀の副総裁がお答えになりましたように、納付金はともかく百三十億、次は百三十億、五千万にする、次は百三十一億にする、こういうように五千万円ずつふやさなければならないということを政府はきめたわけですね。そうするとこれをきめたことによって納付金に赤字が出ては困るということになると、そこでどういうことが起こるかというと、資金運用部から借りてきて、さっきおっしゃったように現在の皆さんの方のあれはこの間資料でいただきましたけれども、三十六年九月でいただいたのですが、貸出残高は五千五百三十七億で、八・七%が、五百二億で、七・五%が百二十二億、六・五%がほぼ全体ですが約五千億、六%ものが二百二十四億、こういうことになっておりますが、これをどうしても原資を出そう、納付金を一定額にしようということになりますならば、八・七%を一定の限度でふやしていかなければ出てこない。第一、資金運用部資金を六・五%で貸している限りにおいては今後納付金はふえっこないわけです。そうするとさつきのように新規増の六百億というものを一つ固定をして、この六百億をふやす中で八・七%ものをある一定の角度でふやしていかないことには、これは皆さんの計算で出てこないわけです。過去の例を私はこまかく調べてみた結果は、さっき申し上げましたように貸し出し純増が大体百七十億ぐらいふえなければ、貸付金利息と借入金利息の差額は十億にならない。こういうことは過去の実績なんです。だからこういうことをしておまけに、これは次に問題になると思うのですが、場合によっては事務費もここは動かせるところなら切り詰めなければいかぬとか、納付金を出すために開銀の運営がゆがめられた運営になる可能性がある。今、私もこまかい分析をしてみると、きわめて危険な状態に置かれておる。開銀副総裁、どうですか。あなたは、今後のそういう——開銀というのは何のために置かれておるのかといったら、対米資金の見返りの金を返すために置かれておるわけではないのです。さっきからお話しのあるように、本来の目的となるならば、できるだけ安い利子で貸すのが、さっき大蔵大臣も言われた通り、これは開銀の本来の目的なんです。八・七%なんかでどんどん貸す必要は私はないと思う。八・七%といったら日歩幾らですか。二銭四厘くらいですか、どうですか。日歩何厘になりますか。
  320. 平田敬一郎

    ○平田説明員 私ども、このガリオア・エロアの返済財源に開銀の納付金等が引き当てられているという理由で、開銀の貸付方針その他を変えるということは毛頭実は考えておりません。今後やはり開発銀行といたしましては、それぞれそのときの政府の財政投融資の御方針に即しまして——全般としましては、政府の経済政策の一環になると思いますが、方針に即しまして、それぞれ必要な貸付をしていく。ただ最近の傾向から申しまして、やや地方開発等の方に資金がよけいいくという関係もございまして、若干八・五%の利率の適用を受けるものが多くなりつつある。これは決して利益をひねり出すためではございませんことを御了承願いたいと思います。なお同時に、大へん御心配下さいましたが、私どもはあくまでも業務は適正にいたすつもりでございまして、たとえば海運界なんかにつきましても、一時猶予等の措置もとっておりまして、そういうことをガリオア・エロアと結びつけて不当にゆがめるということはするつもりはございません。それぞれあくまでもその業態に応じまして、公正な運用をはかって参りたい。ただそういうことの結果の見通しといたしまして、私どもも大体現在上がっている納付金、その前後を、あるいは若干増加するというくらいの結果になることは、そう無理なことではあるまいと見ておる次第でございまして、方針自体はゆがめるつもりはございませんことを重ねて申し上げておく次第でございます。
  321. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、なるほど開銀の立場としては、そのお答えになるのは当然だと思うのですが、結局さっき海運利子のたな上げのような、これは別途の問題として出てくるならば、私は、この前大蔵大臣がお答えになったように、一時一般会計から入れます、そうしてあとでそれは返してもらいます、ということが起こるだろうと思う。しかしこれが今後あまりふえないという場合になってきたときにおいては、私はこれは問題があるのではないかという感じがいたすわけです。これは今後のことですから、計算をやってみていく過程の中のことでありますけれども、やや私は、これは限度一ぱいに問題が処理をされておるという感じがいたします。  次に、それでは今後ふえてくる原資というものは、一体どこから出てくるか、こういうことに私は問題があると思います。これは私こだわるわけではありませんが、皆さんの方は、ともかくも現在の納付金というものは見返資金の果実だ、こういうことで、二重払いではないというお話なんで、その範囲の中での論議を進めておるわけですけれども、今後にふえてくるのは、資金運用部資金が、私は貸付残高の増加の主たるものになると思いますが、貸付残高が純増する、六百億の原資は一体これはどこに求めるのか。毎年純増六百億を予定したその原資はどこからきますか。
  322. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいまのところ、先生のお話しの通り、資金運用部資金及び一部ではございますが、外貨債等を新たな原資として考えておるわけでございます。
  323. 堀昌雄

    ○堀委員 外貨債の問題については、との収入のふえます部分は、一種のさやとりといいますか、その部分になると思うのでございますけれども、やはりこれはコンスタントに予定できるものではありませんから、やはり主たる財源のもとは、これは資金運用部資金になると思います。  そうするとここに、私はこの前ちょっと皆さん方とも論議をしたことがあるのですが、ものの考え方の点で、一つ私としても疑問が出てくるわけです。開発銀行というものは、なるほどこれは一つの会社のような格好でできておりますから、そこに出資をしたものの権利という問題が、納付金というのを一種の利益金の配当のように見るならば、その出資の額に応じて分配をされるというのは、会社としてのワクの中ならば私は了承ができるわけであります。そこで一つ疑問がございますのは、この資本金の推移の経過でございますけれども、現在の資本金は二千三百二十九億七千百万円でございますね。
  324. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 その通りでございます。
  325. 堀昌雄

    ○堀委員 この中で、皆さんの方では見返り資金充当分が二千五十三億円ある、こういうふうなことでございますね。
  326. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 お説の通りであります。
  327. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、昭和三十年十月一日に、百四十億五千三百万円の減資をいたしておりますね。
  328. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 その通りでございます。
  329. 堀昌雄

    ○堀委員 一体この減資をした分は、これは金に色がついているのかいないのか、ちょっとお伺いいたします。
  330. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 金に色はついてございません。ただし、現在の資本金二千三百三十九億のうち二千五十三億が見返り分である、こういうような色分けはできるかと思います。
  331. 堀昌雄

    ○堀委員 そうしますと、昭和三一年十月一日に、資本金二千四百八十億二千四百万円ございましたね。——それから九十億五千三百万円と五十億円とを減資をいたしておりますね。この一体減資をした分は、前の二千四百八十億二千四百万円のときにおける見返り資金充当分は幾らか、ちょっと御説明願いたい。
  332. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 産投会計ができましたときの開銀の資本金は二千四百六十二億でございまして、そのときの見返り承継分は、資本金は千四百十億でございます。そのほかに、たびたび御説明しておりますように、一般会計分としまして千五十二億があるわけでございますが、そのうち六百二十五億が見返り関係の資産、それから別に当時開銀の貸付金になっておりました三十億五千七百万円のうち、農林、中小等に振りかえました残り十八億が資本金に振りかえられまして、同時に今お話のあります百四十億が減資されたわけでありますが、その百四十億の中身を当たって参りますと、一つは電源開発会社に対する開銀からの出資金を産投会計の直接の出資に振りかえたわけでございます。これは経緯がございまして、二十七年に電発会社ができたわけでございますが、そのときに、予算編成時にはまだ電源開発会社法案ができておりませんで、これを当然予定しまして、開銀に一般会計から百三十億の出資をいたしました。この際に電発に開銀から五十億出資することを予定しまして、百三十億を出資したわけでございます。この結果、法律によりましても、この五十億は開銀からの出資でございますが、政府出資とみなすというふうになっておるわけでございます。従いまして減資にあたりましても、この五十億は一般会計分であろう、こういうふうに推定したわけでございます。それから九十億の方は二口に分かれておりまして、これは一つは、六十九億は中小公庫の出資でございます。二十一億が農林公庫の出資でございます。これは今ちょっと前に申し上げましたように、同時に出資金の振りかえ整理をいろいろ行なっておるわけでございますが、見返りから承継しました分は別に農林公庫に約五億、中小公庫に十二億程度の振りかえをやっております。従いまして、これは見返りの貸付には全然関係ないわけでございますが、同時に産投会計からの出資は、出資の実績をごらんいただきますとわかりますように、二十八年から三十年度まではもっぱら開銀、輸銀、電発会社に対する投融資によっておるわけでございまして、農林とか中小公庫は三十年度まではいずれも一般会計からの出資によっておるわけでございます。従いまして、この六十九億及び二十一億合わせまして九十億何がしかの減資は、当然に農林、中小公庫への出資の振りかえでございますから、一般会計分と推定したわけでございます。
  333. 堀昌雄

    ○堀委員 その次には、今度は見返り資金特別会計の中には、これは売り渡し代金だけではなくて、一般会計から価格調整補給金が五百八十七億円入っておりますね。
  334. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 見返資金特別会計に貿特会計より受け入れましたのは、御承知のように三千六十五億でございますが、これはアメリカより援助を受けました物資の売り払い代金そのものではございませんで、援助物資のドル価格を三百三十円、並びに三百六十円で換算いたしました円価格を振りかえたものでございます。従いまして、直接入って参りました金は、援助物資の代金に見合う金額でございまして、直接はお話のような一般会計からの繰入金はございません。ただし資金繰りといたしまして、貿特会計から見返り資金特別会計に入れるにあたりまして、売り払い代金のみならず一般会計からの五百八十六億並びに食糧管理特別会計を通じまして入りました三十六億でございますか、これは資金的には入っておることは御承知の通りでありますが、直接見返り資金特別会計に一般会計から必ずしも入れたわけではございません。
  335. 堀昌雄

    ○堀委員 入れ方はいいですけれども、一般会計から入っておりますね。
  336. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 資金繰りといたしましてはそういうふうに相なっております。
  337. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、その三千六十五億七百万円の中に五百八十七億という、これは一般会計からの、言うなれば国民の税金が入っておるわけですね。だからそれは入っておるとすると、今度はこれを継承して、これはまたさつきの春日さんの話じゃないですけれども、こういうものは中で消化されておるから分けられないです。分けられないから、分けるとなれば比率で分けるより仕方がない。これをさっきあなたのおっしゃった二千五十三億ですね、これはこっちへ来ているわけだから、この比率で分けると大体これは三百六十五億円、こういうことになるのですがね。だから二千五十三億というものの中には、あなた方は、これは見返資金だ、こう言われるけれども、なるほど見返資金であることには間違いがない。しかし、そのもとをただせば国民の税金で払ったものが三百六十五億入っておる、そういうことですね。
  338. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 計算をいたしますると御説のようになるのでありますけれども、そもそもその見返資金特別会計に績み立てました金は、援助物資の代金に相当する金額でございます。きのうも井手委員の御質問にお答えいたしましたように、援助物資の代金を積み立てるわけでありまして、援助物資の代金の支払い代金といたしまして、八十ドルで売った売り払い代金と二十ドル相当分の価格差補給金、こうなっておるわけでありまして、援助物資の横え立てた金が見返り資金といたしますれば、これは一般会計から繰り入れたものではなくて、援助物資代金そのものを積み立てたものだ、そのように私どもは解釈しております。
  339. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、それは経緯がありますね。ものには経緯があって、五百八十七億が入っていないというなら、私はこれは論議しないのです。なぜかというと、こういう論議は私は実はしたくないのです、したくないけれども、裏側であなた方がこういうものの考え方を逆に使っているというところがあるから、これにこだわるのです。だから見返り資金の中にはあなたがどうおっしゃろうとも一般会計から——入り方がどうあろうともこの中に入っておることには間違いない。五百八十七億入っておることは間違いないでしょう。どうですか。
  340. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 その点はお話の通りであります。
  341. 堀昌雄

    ○堀委員 入っているとするならば、これはあなた方も出資金は割合でものを見る、こういうものの見方をするわけだから、私は色がついていないから割合でいくのですが、割合でいかないと仕方がない。そうすると、二千五十三億というものの中に一般会計から、国民の税金を払った金が一体幾ら入っているか、こういう計算をしてみると三百六十五億入っている、こういう計算になる。そうすると、二千五十三億から三百六十五億引きますと千六百八十八億というものが国民が税金で払ったのでない売り渡し代金の引当分があるわけです。これを今の出資金の全額二千三百四十億、ちょっと端数がありますが、これで比率を見ると、あなた方は三百六十五億入れてないから八七%という計算になります。私はこれを計算していったら七二%しかない。あなた方も割合だから私も割合で勝負しているのですが、どうですか。この割合はあなたあると言ったのですからいいですが、ともかく三千六十五億の中には五百八十七億一般会計出資金、国民が税金で負担した分があると言った。それを今度は同じ比率で、私に言わせるならば、その五百八十七億の一番たくさん入っている濃い部分が、一般会計の一番濃い部分が二千五十三億見返資金として開銀の出資金できたとするならば、二千五十三億円から五百八十七億円引いたっていい。この中には最大の極致で見るならば、中にまじり込んだ——均等にまじり込んだ場合もあるだろうし、こっちからこっちへまじり込むかもしれないが、二千五十三億から五百八十七億引いた残りが、これがぎりぎりで最大限だれが見ても間違いのないところのいわゆる売り渡し代金、われわれが国民の税金による二重払いでないというものになるのですけれども、それでは極端だから、皆さんのルールを使って割合でかけ算をして比率を出してみたら七二・一%になるのですね。そうすると、今の開銀の納付金の百三十億、これから十何%違ってきますね、一七%くらい違いますね。これは一ぺんかけてみて下さい。皆さん八七%で計算しておられるが、私時間がなくて計算してないけれども、七二%にして十五年積み上げたら一体幾らになりますか。
  342. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 堀先生の計算によりますればそういうことに相なりましょう、七二%になりましょうが、それをかけますれば百三十億から減ることは確かであります。しかし、これはそういう計算方法をするべきじゃなくして、見返資金特別会計に積み立てられる金は売払代金そのものじゃなくして、法律にもはっきり書いてございますように、アメリカ合衆国通貨によって受け入れました援助物資を、ドル価格を円に換算した金額を積み立てた、これが見返資金でありますので、先ほど御説明いたしましたように、開銀出資金千四百十億円並びに復金債償還関係六百二十五億円、見返資金の貸付金出資に振りかえました十八億、これを合わせました二千玉上二億円、開銀出資金というのは見返り資金関係と計算して間違いない、こういう観点から八七%をかけたわけであります。
  343. 堀昌雄

    ○堀委員 私は断わっておきますけれども、なぜこういうことをやっているかというと、さっきも話が出ましたけれども、それは全体としてみると三千六十五億の中で五百八十七億を引いた残りのものだけはともかく、これは売払代金としてあるわけです。約二千四、五百億あるでしょう。私は何も今ここで見返資金全体の中で二重払いになるという議論をしているのじゃない。これは理解しておいていただきたい。その点水田さんは率直だから、私はあなたのそういう言い方は非常に気に入っているのだ。ともかく全体としてあるのです。それは私もあることは認めるのですよ。認めるが、私が前段に触れたように、あなた方は少しうしろめたいものだからこういう計算方法を出してきた。その計算方法は少しおかしいですよ。私は、あなた方が計算方法を出した以上は、あなた方のルールに従って分析するのが当然ですから、あなた方のルールに従って分析してみたらこういうふうにならぬじゃないですか、これを言っているのですよ。二重払いになるということを言っているのじゃないのですから誤解しないで下さい。金はどこかにあるのですから、それは振りかえたっていいのですよ。そのことは、この時点においては春日さんと同じです。先のことはわからぬ。そこに論議が残りますが、この見返資金として積み立てた以後のものについては金はないとは言いませんよ。言いませんけれども、しかし、あなた方がこういうルールを出してきたのだから、そうすると、この中には売り渡し代金だけでものが考えられるということにならないと、あなた方が言うことはおかしい。この形だけでいけば、私は前段で開銀の納付金の変化に触れましたが、もう一つもとのこの出資の割合のところにいくと、その割合にまだ問題があるわけですよ。しかし、あなた方の土俵に上がっても、まだこの割合はおかしい。これではあなた方が言う二重払いではございませんというような論理は出てきませんよということをはっきりしておきたいわけです。  その次にもう一つ。さっき前段で触れたように、大体出資金がこうなっているから、その割合で上がってきた利益金の分配をきめるというこのものの考え方は、これは私ちょっと納得ができないのです。それはなぜかといいますと、なるほど出資金は会社のようなところではこれは出資した者がその権利をとることはわかります。しかし、開銀に対して出資をしておる問題は区別して出資しておる問題じゃないのです。これは全体として政府が出資をしているのであって、政府が出資したものだから、その全額を政府が取る仕組になっておるもので、この中を分けてものを考えるという考え方は率直に言って間違いですよ。だから私が言うのは、ここでこういう分け方をするといってあなた方がこういう説明を出しておるから、それなら私の言う分け方の方が筋が通っている、こういうことになる、どうですか。
  344. 鈴木喜治

    ○鈴木説明員 ただいまの先生のお話は、政府が出資しているものだけで開銀が運営されているのじゃなくて、政府からの借入金と一緒になって運営されているから、出資だけに利益の配当をやるのはおかしいじゃないか、こういう意味じゃございませんか。
  345. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、そんなことを言っていない。この間私はその議論をした。しかし、いろいろ考えてみて、この議論よりももっといい議論があることがわかった。それはなぜかというと、開銀に対して出資をしておるのは、なるほどあなた方ここでいろいろなことを、金に色をつけてものを言うことにしたわけですよ。二重払いという問題が出てきたものだから色をつけようとするので、開銀の出資金はこれだけでこの出資の中の割合はこうです、こんなことを言い出したわけです。私はこれはへ理屈だと思う。これはさっき春日さんの言っていることと同じで、へ理屈なんですよ。へ理屈だからへ理屈なりの理屈を通すと七二%になるじゃないか、こういうことになる。そうではなくて、私は開銀から上がる納付金は色分けすべきじゃないということを言いたいわけです。色分けするということになるのなら、そこでこの前の話に戻るわけです。要するに、よそからきて、これから資金運用部資金を毎年五百億、六百億ずつ開銀は運転をする。それから出てくる利益のもとは一体だれが負担をするかということになると、そのもとを負担するのは今度国民になる、決して見返資金がもとを負担しているわけじゃない。だから、今後ふえる開銀の納付金というものの果実の源をたどれば、出資金の割合で分配するなんということを言うからそこに問題が起きるけれども、しかし、これは一般国民が簡易保険や郵便貯金で納めた金が動かされて利益を生んでおるのであって、そのもの自体は本来国民が受け取るべき果実なんです。それを開銀でピンをはねるなら、言うならばピンはねして取ったものの色分けをして、これを色分けでこうだということはへ理屈なんです。大蔵大臣、どうですか。
  346. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これはもうおかしい議論でございまして、一億の会社が事業するときに、実際の事業資金は富士銀行からこれだけ借り、三井銀行からこれだけ借りてやっておるんだ、だからこの利益は三井銀行、富士銀行に帰属するんだという議論ではございませんで、一定の資本でどういう仕事をしようとも、そこから上がった収益によってその資本金への配当をしておるのが実情でございますので、開銀の出資金も一般会計から継承した分と見返資金の継承分とこの二つでしか成り立っていないから、その二つの出資で事業を営んで、上がってくる収益を一応一般会計分の収益と見返り資金分と分けて、この収益の何%は見返資金分の収益と見ることは一向差しつかえないことだろうと思います。ほかから金を借りて運営しておるから、その利益の比率はそっちの方にもっと見なければならぬなんということは成り立たぬと思います。
  347. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私は何もそれは預金者の利益だということを言っておるのではないのですよ。あなたの言う通りだということは一番最初に言ったのです。株式会社ならそうなんですよ。これは株式会社じゃないのです。これは国が出資をしておるのです。国が出資しておるものだから、そこで資金運用部資金というものを開銀が使える。国の会社だから全体が国のものなんですよ。株式会社で、私とあなたで会社を作ってやるのだったら、お互いの出し分で利益を分けますよ。これはあたりまえのことです。これは違うのです。国が出しておるから、そういう形の中で色をつけて、出資金によって納付金を分配するなどというのは、私に言わしたらへ理屈だ。だから、金に色をつけたということになるのなら、私の理屈からいえば、五百八十七億円というのは税金という金です。売払代金によって出てきたものは赤で、税金できたものは青とすれば、さっきの割合についていえば、七二%にしかならない。だから、私の言いたいことは、これはへ理屈なんだということ、この点は春日さんと全く同一なんです。政府はあれこれとやり繰り算段をしてつじつまを合わせようとしたけれども、中をこうやって調べてみると、いろいろなところにひっかかる。この点はやはり一つのあやまちが多くのあやまちを引き起こす危険がある。そのあやまちのもとの開銀の運営について、平田さんにどうしても注文しておかなければならぬと思う。ともかく開銀は政府の機関だから、理財局にこうしろと言われたら、いやですとはなかなか言えないだろうと思う。いやだと思うときは、どうぞ国会に来て言って下さい。われわれは参考人として呼びます。そしてこういうことのために開銀の運営が曲がって、日本の産業開発の目的がすりかえられることのないようにしなければならぬ。私の言ったことが、大蔵大臣、わかりましたか。
  348. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 言っておることはわかりますよ。(笑声)
  349. 堀昌雄

    ○堀委員 こういうことになっては気合いもかからぬで困りますが、しかし、やっぱり今度のこの取り扱いの仕方はきわめて適当でない。適当でない取り扱い方をあなた方が選んで、ただ二重払いでないということを言いたいばかりに、いろいろその点に無理がある。私は、無理があるという点は、これはあなたも御了解いただけると思うが、どうですか。多少無理がある。全部無理があるといってはあなたの立場上……。少し無理がある、この取り扱いはどうですか。
  350. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきから申しましたように、ただ私どもとしましては、いろいろ問題のあることの支払いでございますから、国民に納得してもらえるように筋道を立てた払い方をしたいということから出た考慮でございますから、これは多少の無理とかそういうものは伴っておると思いますが、しかしやはりこの資金源をはっきりし、支払いの方法をはっきりするということが、この際は本質的に政治としては必要なことだろうと考えまして、こういう処置をとったわけでございます。
  351. 堀昌雄

    ○堀委員 後段がなければ立つまいと思ったのですが、しかし、というのがついて、結局無理があると言ったことは全然だめなんで、これは私、率直に言ってどうしても納得できないんですよ。なぜかというと、やはり政府が価格差補給金を出したかどうか、そんなことはわれわれ国民にとって知ったことじゃないんですよ、率直に言うと。そんなことしないで、そのときにまるまる売ったっていいんですよ。それをあなた方、どういう配慮か知りませんけれども、少し安く売ったのでしょう。いいですか。そうして政府は、そのときにはわれわれ国民に何も相談なしに、買った人たちには相談なしに、ともかく税金でこう入れてあるわけです。入れていることが悪いと私は言うんじゃない。事実はそうなんです。ですから全部が売り渡し代金になっておるのなら、私は今こういう論議をしませんというんですよ。そうじゃなくて、税金で入ったものがあるという事実がある。これは宮川さん認めているので、税金で払った一般会計から五百七十八億入っております。入り方のいかんにかかわらず、入っておりますという以上は、この中にそういうものがあるということはこれは明らかなんです。その明らかなものをあなた方は比率でやるというなら、私も比率でいくということになる。ここも道理として私は通っていると思う。比率でやる、比率でやるということになったら、七二%ということになったら、あなた方の計算は合いませんよというのは、これはあたりまえのことであって、これは水田さん、あなたがどう抗弁しようとも、ちょっと無理があったというなら私は引き下がりましょう。しかし、あなたがさっき、しかしこの点がどうとかこうとか——こうなると私は引き下がれない。何時間でもいい、やらなければならない。どうですか。
  352. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今あなたが言いましたが、値下げをしないで売ったらよかったと言うんですが、そう売るのがほんとうだったんです。そう売ればこの三千六十五億というものがあるんですが、これはそう売らないで、民生安定として、それだけ安く売って、それをやはり同じ国民の負担で埋めた、それはそのときの措置をどうとるかの問題でございますが、本質的には法律によってきめられております通り、援助資金のドル価格に見合った円を積み立てておくというのが趣旨でございますから、それで積み立てられた三千六十五億円を土台にしてやはりものを考えるのが筋でございまして、その中で一般会計のものが入ったか入らないかをこの段階の議論で、その比率をこの下に持ち込むというような考え方は、私はやはり間違いじゃないかと思います。
  353. 堀昌雄

    ○堀委員 私はそのときに安く売ったことがいいとか悪いとか言っているのじゃなくて、もしそれが全部そのままで処理をされておったとしたならば、私はこういう議論をしないというだけですよ。ただこういうものがあって、これが税金として入ってきたということだけは事実なんだから、それがいいか悪いか、そういうことじゃないんですよ。私は、事実関係の中だけです。事実があるから、その事実については、あなた方の方は、これはともかく見返資金だけのものです、こう言われるけれども、私は見返資金だけでものを言っていないんですよ。売払代金でものを言っているのだから……。だから売払代金として見るならば、そういう意味ではこの中にはそれは入っていません。これはその通りでしょう。これは売払代金のことを言っているのだから、売払代金ならこの二千五十三億の中に三百六十五億、この差額の千六百八十八億円であるということは認めますね、どうですか。局長。
  354. 宮川新一郎

    ○宮川政府委員 堀先生にお願いしたいのでありますけれども、見返り資金として見ていただきたいのでございます。売払代金として見ていただくと、先ほど私が申しましたように三千六十五億のうちに価格差補給金が入って参りますので、減額しなければなりませんけれども、見返資金の積み立ての金で三千六十五億と申しましたのは、ドル価格に相当する点がある。見返資金の側から見ますと、減額する必要は私はないと思います。
  355. 堀昌雄

    ○堀委員 それは見ようはいいのです。売り渡し代金としてだけ見ればそういうことになりますでしょうと聞いておるのです。お願いしようとしまいとそんなことはいいのです。
  356. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私どもが見ておるのは、売払代金として見ればそういうことになります。しかしこの件は売払代金として見るべきでなく、見返資金として見るべきだということを私どもは言っておる。その違いであります。
  357. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、売払代金として見るならば七二%しかない。だから今度はその残りは見返資金として見るときには、残りがあるのだというふうになりますね。そこには見返資金として見るときと、売払代金として見るときとは、ここに八七・何%と七二%の差額の一六%ぐらいの差額が出る。これはよろしいですね。
  358. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは当然であります。でありますが、今度はそういう議論になりますと、今は十五年間の原資を見ているわけでございますが、この納付金というものは今後まだ永久に続くものでございますので、今度はそういう点から見ましたら、今のそのパーセントの狂いが出るからということが、私どもの考えている性質上の狂いには一向影響しないということにもなりますし、あなたのように見ればそれだけの納付金の見方が違ってくるということは言えますが、しかし、それではこの支払いが不合理かという問題になりますと、そうではなくて、この納付金はまだ永久に続くものを私どもはただ十五年に切って、それで支払いができるというのですから、原資はまだあとにたくさん残っておるということでございます。
  359. 堀昌雄

    ○堀委員 私はさっき申し上げたように、足らないからとか何とか言っているのじゃないのですよ。いいですか。原資はあるということを認めているわけです。ただこの取り扱いでは、あなた方はこの取り扱いをしたら、国民は二重払いになるというような意識がないだろうと思って、これは苦心をした結果だと私は思うのです、率直に言うと。それはあなたが言うように、あとに納付金がずっとありますから、私は決して二重払いだということを言っているのじゃないのですよ、全体として見れば。ただこの取り扱いでいくと、そういう誤解を受ける要素がありますよ。だからその点はあなた方はずいぶん頭を使ってやったけれども、頭を使って結局しかししりは出たということになるのではないかということを言ってやるだけなんです。そのワクの中だけの論議なんです。どうですか。
  360. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは何度も言いましたように、支払い代金として見べきじゃなくて、これはやはり援助物資のドル価格につり合ったものの積立金という立場で見べきだというふうに考えますので、そうするとこれは別にしりを出したことにはとうていならない。これがほんとうの姿じゃないかと私は考えます。
  361. 堀昌雄

    ○堀委員 時間もありませんし、非常に大蔵大臣こだわるから、大体これを国民が聞けばわかると思いますから、一応以上で私の質疑を終わります。
  362. 小川平二

    小川委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  363. 小川平二

    小川委員長 これより討論に入ります。  通告があります。順次これを許します。有馬輝武君。
  364. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案に対しまして、簡単に反対の討論をいたさんとするものであります。  わが国がアメリカ政府から最初の援助を与えられたのは、昭和二十一年の春、占領地救済資金によって食糧、肥料、石油、医薬品等の諸救援物資が輸入されたのに始まるのであります。続いて二十三年からは、このガリオアに加えて占領地経済復興資金並びに軍関係物資放出という二つのルートによって物資が供給されたのであります。私たちがここで最も重視しなければならないのは、そして本法律案に反対する私たちの反対理由の第一でもありますが、ガリオア・エロアによる援助がアメリカ側から見れば、日本資本主義市場の確保及びそこからの超過利得の収集という一石二鳥的効果を持ったものであったのであります。すなわち、対日援助が結果的に日本国民生活安定をもたらしたとはいえ、アメリカの援助衝動そのものが、日本国民大衆の左翼化傾向によって喚起された事実が示すように、日本をアメリカ陣営の一翼として確保することに主目的があったこと、第二には、援助物資は、アメリカにおいて生産過剰ぎみの物資の敗戦国への放出であり、従って放出によって、アメリカにおける需給のアンバランスを回避する意義を持ったということであります。しかも昭和二十四年四月、単一為替レートが設定されるまでの輸出入商品価格の決定権は、事実上米軍側にあり、一般的に輸入価格高、輸出価格安という状況にあった事実を絶対に看過することはできないのであります。このことは昭和三十五年五月の一次並びに十二月の二次にわたって成立した余剰農産物協定が、日本国内の大豊作にもかかわらず、国内生産の農産物価格を不当に低く押えつけたこととも同断であります。政府はドイツにならって、債務総額を四億九千万ドルと低く押えたと称して、わがことなれりと得々としているのでありまするが、国民はこれらの援助を全くその言葉通りに受け取ってきたし、見返資金も日本の自主的判断というより、アメリカ側の主導性のもとに使用されてきたことを考えると、ガリオア・エロア資金は最初から明確に債務として取り扱うべきものでなかったことはきわめて明瞭であります。  さらにここで私たちが問題にしなければならないのは、二十四年三月以前の援助分で、見返資金特別会計から産投へ継承した分の金額についてであります。政府はその額を八億四千五百五十三万二千八百六ドルと言うが、この額についての円換算はできないというのであります。これで国民の理解を求めるといっても、もともと無理な話であります。しかもその指令書には、数量もさだかでなく、金額も書いてないのであります。政府の答弁によりますると、司令部の残していった膨大な資料によって、援助物資と商業物資とを仕分けしたというのでありまするが、それはあくまで推定の域を出ていないのであります。この中には、米国政府の対日援助勘定としてガリオア及びエロアの両勘定が含まれていたのであるが、その裏づけになる総司令部の中にあった外貨勘定については全然あずかり知らぬことであるなどとは、言語道断とも言うべきであります。  さらに注目しなければならない事実は、二十四年三月までのわが国と米国との間の輸出入についてであります。輸出六億五千四百万ドル、輸入十七億六千万ドルでありますが、たとえば輸出については、当時の国際価格の二分の一から三分の一に買いたたかれているのであります。このことを考慮して、当時の正常な国際価格に引き直すと、輸出入はほとんどとんとんになるのであります。ところがこの輸出輸入の差額をもって、二十四年三月以降の八億ドルにプラスして十九億ドル幾らだというアメリカ政府の要求に対しまして、ただひたすら従順で、主張すべきことを主張しなかった政府の卑屈な態度は、私たちの絶対に容認できないところであります。  反対理由の第二は、ガリオア・エロアを債務とする根拠がきわめて薄弱だということであります。政府がその根拠とする一九四六年七月二十九日、スキャッピン一八四四−A(食糧輸入について一般指令に関する総司令部覚書)についてでありますが、その最後に、支払い及び経理の条件は後に決定するものとするとなっていて、決して債務として確定はしていないのであります。と同時に、この覚書は講和会議のときまでが少なくとも常識的には有効であって、講和会議の際に処理さるべきであり、事後はその効力を失うとするのがきわめて自然な考え方であります。また昭和三十四年四月十四日の阿波丸協定の付属了解事項にいう、借款及び信用三億八十一万ドルについては、すでに五十一年六月に利子を含めて返済している事実も忘れてはならないのであります。  反対理由の第三は、政府は債務については非常に忠実でありながら、債権については消極的な態度を持ち続けてきたことについてであります。たとえば昭和二十四年のいわゆるスキャッピンによる占領軍家族住宅の二千戸建設の緊急指令に基づく建設費二千万ドル、七十四億九百万円について、それを三分の一に減額されながらもそれをうのみにして、しかもその後無償で貸与している事実についても、私たちは見のがすわけには参りません。  最後に明らかにしなければならないことは、この会計にすでに一般会計から五百八十六億を繰り入れており、今後も毎年他の条件が出てこない限り、百六十億円前後を繰り入れていかなければならないことが予想されるのであります。このことは、明らかに国民にとって二重払いになることであり、同時に、産投会計本来の使命をはなはだしくゆがめ、いびつにし、窮屈にするものであることはきわめて明瞭であります。  以上、二、三の点を明らかにいたしまして、本法律案に対するわが党の反対の態度を明らかにしたいと存じます。(拍手)
  365. 小川平二

    小川委員長 田澤吉郎君。
  366. 田澤吉郎

    ○田澤委員 私は自由民主党を代表して、産業投資特別会計法の一部を改正する法律案に対して、賛成の意見を表明するものであります。  終戦直後のわが国の経済は崩壊に瀕し、あまつさえインフレのために経済は混乱を来たし、そのために民需生産は極度に低下し、ことに食糧生産は戦前の半分以下に下がって、国民は非常な食糧難にあえいでいたのであります。しかもわが国には食糧や生活必需物資を輸入する外貨はもちろんのこと、外貨を獲得する輸出力もなかったのであります。その上、海外から数百万に上る復員軍人や引揚者を迎えていたのでありますから、国民の窮乏は全く言語に絶していたのでありまして、この現実は与野党ともよく認識しているところであります。  このときにあたり、米国から多量の食糧や原材料の援助を受け、幸いにして国民が飢餓の寸前に救われ、戦後の虚脱感から立ち直って、経済の復興と再建のために働く意欲を取り戻し、今日の目ざましい経済の発展をもたらすことができたのであります。これら米国のいわゆるガリオア・エロア援助の総額は、二十億ドル近くの巨額に達したのでありまして、日本政府は従来からこれを債務と心得て参ったのでありますが、今日これを最終的に処理するために、米国政府との間に交渉を重ね、これを四億九千万ドルと大幅に切り下げ、これを確定債務として年二分五厘の利子をつけて十五年間に支払うということとしたのであります。これに関する日米間の協定が、さきに本院において承認されるに至ったことは、各位御承知の通りでございます。本改正案は、この協定に基づいて、政府がこの債務を履行するために必要な経理手続を定めたものでありまして、特に国民にとっていわゆる二重払いとならないよう、十分な配慮が加えられていることは、すでに本委員会での質疑の過程において明らかにされたところであり、全く適切妥当なる措置というべきでありまして、もろ手をあげて賛成するにやぶさかではないのであります。  すなわち、昭和二十四年四月、米国対日援助見返資金特別会計が設置されまして以来、ガリオア・エロア援助物資の代金はすべてこの会計に積み立てられることとなり、昭和二十八年八月、産業投資特別会計が設置されるに及んで、これに引き継がれたのであります。当時その引き継ぎ資産は二千九百十九億円となっているのでありまして、対米債務の返済財源はこれの運用収入によってまかなおうとするものでありますから、返済のために新たに国民の税金を使う必要はごうもないのでありますので、社会党諸君の言うような、いわゆる二重払いにならないことはきわめて明確なことであります。すなわち、返済財源としては、見返資金分から開銀に出資された出資金一千五十三億円に対する配当収入ともいうべき開銀からの納付金千七百五十七億円と、見返資金分から開発銀行に貸し付けられた貸付金の回収金三百五十四億円及びその貸付金に対する利子九十一億円、合計二千二百三億円を充てることにしているものであります。これに対し、対米債務返済金額は、元金四億九千万ドル、利子八千九百万ドル、元利合計五億七千九百万ドル、円換算で二千八十五億円でありますから、数字の上から見て、対米債務を支払ってなおかつ百十八億円からの余剰を生ずるほどの余裕があるわけでありまして、決して二重払いではないのであります。  野党諸君は、見返資金の積立金のうちには、一部国民の税金分が含まれていることを理由として、二重払いになるというごとき議論をされるのでありますが、これはとんでもない見当違いであります。この法案に限らず、しばしば社会党諸君の法案審議にあたっての態度は、最初から一つの前提を頭に置いて審議するきらいがあるようであります。この改正案に対しても同様に、たとえば二重払いだ二重払いだと主張していることによって、すなおにこの法律案を見詰める認識を失っているのではないか、こういうところにこの法案に賛成できない大きな原因がありはしないかということであります。  なるほど、一部は国民の税金分が含まれていることは事実でありますが、当時ガリオア・エロア援助物資代金は、たとえば百ドルのものを国民に対しては八十ドルという工合に安く払い下げたため、その不足分の二十ドルについては価格差補給金として国民の税金でこれを埋めたのでありまして、従って国民としては結局百ドルの代金を支払った勘定となるのであります。しこうして今回の返済は、この百ドルという元金には手をつけないで、その運用収入によって支払おうというものでありますから、絶対に二重払いにはならないのであります。  これを要するに私は、二十億ドルに近いガリオア・エロア援助が、見返資金の積立金を基礎とし、しかも積立金の元金に手をつけないで、その運用収入だけで最終的に処理することができることに対し、わが国外交の大成功として、国民のため大いに喜びとするものであります。  次に本改正案においては、産業投資特別会計の三十七年度における投資財源の一部に充てるため、一般会計から二百二十億円を繰り入れることとし、なお別途この会計の資金から百五十億円を受け入れることとしておりますが、これは対米債務の返済とは何ら関係のないものであり、輸出入銀行、農林漁業金融公庫、住宅金融公庫、住宅公団、商工組合中央金庫等に対する国の必要な投資財源を補足しようとするものでありまして、きわめて時宜に適するものと認め、これまた賛成する次第であります。  以上申し上げました理由により、自由民主党としては本改正案に対し全面的に賛意を表明するものであります。これをもって私の賛成討論を終わります。(拍手)
  367. 小川平二

    小川委員長 春日一幸君。
  368. 春日一幸

    ○春日委員 私は民主社会党を代表して、政府提出産業投資特別会計法改正案に反対をいたします。以降、その論点を明らかにいたしたいと存じます。  本改正は、ガリオア・エロア等の戦後の米国対日援助を、この会計の債務として支払うという点、並びに一般会計より新たに二百三十億円をこの会計に繰り入れるという、二つの点にあります。  第一の改正点であるガリオア・エロア等の債務を、本会計を通じて支払うこととする改正につきましては、私ども民社党は、ガリオア・エロアを債務とみなさない見地に立っておりますので、このような本会計法の改正の必要を認めません。従ってこの改正に反対をいたします。なぜガリオア・エロアを債務と認めないか、この点につきましては、すでに私どもの主張は予算委員会、外務委員会並びに本会議等において明らかにしておりますので、ここでその重複を避けます。  私がここで申し述べたいのは、本会計は元来、読んで字の通り産業投資のための特別会計であります。本会計の資金は、見返資金の継承資産、緊要物資輸入基金特別会計からの継承資産、一般会計からの繰入金等によって構成されて、これらの原資とその貸付による元利回収金の運用によりまして行なわれてきたのでありますが、昭和三十一年度以降は、産投会計の機能は出資中心に切りかえられておりますので、おのずから貸付金残高は漸減の方向にあります。また開発銀行よりの返済分も、海運不況、炭鉱関係の焦げつき等で頭打ちの現状にあります。このときにあたって、本会計に二千八十五億円の対米債務の支払いを義務づけるということは、本会計に全く構造的な大変革を与えて、本会計本来の産業投資の機能を明らかに阻害するものでありまして、私は会計制度論としても、なぜに本会計にこのような負担を負わしめるのか全く理解に苦しむものであります。  政府は見返資金分に対応する開銀の納付金、同行に対する見返資金の貸付金及びその利子、これらのものによって対米債務の支払いは可能であり、本会計の他の部分に食い込むことはない、従って二重払いになるおそれはないと言われておりますが、現在の産投会計のあり方を見ますならば、これは将来はなはだしい危惧を抱かざるを得ないものでありまして、このような説明はむしろ論弁をもてあそぶの最もはなはだしいものと断ぜざるを得ません。かりに今回の改正が成立した場合、本会計の資金を減少せしめるおそれがありますので、このことが本会計の基本でありまする出資機能を著しく阻害することになるといたしまするならば、これはきわめて重大なることと申さなければなりません。私は制度論としても、産投会計にこのような改正を行なうことは、断じて反対をせざるを得ないのであります。  以上、実態、制度両方から見て、反対の論点を明らかにいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)
  369. 小川平二

    小川委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  370. 小川平二

    小川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  なお本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  371. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、来たる二十四日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時三十二分散会      ————◇—————