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1962-03-07 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月七日(水曜日)    午後零時八分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       足立 篤郎君    伊藤 五郎君       大久保武雄君    岡田 修一君       久保田藤麿君    正示啓次郎君       津雲 國利君    藤井 勝志君       坊  秀男君    吉田 重延君       岡  良一君    久保田鶴松君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       武藤 山治君    横山 利秋君       春日 一幸君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (関税局長)  稻益  繁君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    澄田  智君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    橋口  收君         日本輸出入銀行         理事      山本菊一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本輸出入銀行法の一部を改正する  法律案内閣提出第二四号)  法人税法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五二号)  租税特別措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七八号)  通行税法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一二号)  入場税法の一部を改正する法律案  (内閣提出第八三号)  物品税法案内閣提出第八八号)  関税定率法及び関税暫定措置法の一  部を改正する法律案内閣提出第七  九号)      ————◇—————
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑の通告があります。これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 輸出入銀行の今回の法律改正の二点は、一つ出資金増額の問題であり、一つ借り入れ制度に関する引き上げの問題でありますけれども、出資金増額については、現在の輸出振興建前からいって、今回の増額はある程度やむを得ないかと思うのでありますが、一体借入金限度額を引き上げなければならない現在における積極的な理由は何か、承りたいと思います。
  4. 大月高

    大月政府委員 御存じのように、この借り入れ限度は、最初出資金と同領ということになっておりましたのを、一回改正いたしまして、現在のように二倍ということになったわけであります。それを今度の改正案におきましては三倍に改正したいわけでございますが、この出資金借入金割合につきましては、一つは、出資について産投会計から出ておるわけでございますが、何分にも産投会計原資は制約がございまして、あの程度窮屈なことでございまするから、輸銀のほんとうに満足のいく程度まで出せるかどうかということは、将来のことまで考えまして相当問題があるわけでございます。それであと資金運用部資金借り入れでもって原資を調達いたしておるわけでございます。  それでその割合をどの程度にしたらいいかということが基本的な問題でございますが、これは輸出入銀行貸出金利水準との関係がありまして、相当低い金利水準で貸しておる。そういたしますと相当額出資をもって充てなければ、コストの面でコスト割れになるという問題がございます、そういう意味で今の金利水準前提として考えますと、大体において出資一、借り入れ二ぐらいのところでやりますればコストがまかなえるという計算になっておるわけでございまして、積極的に三倍にする必要は今ないわけでございます。それで今回御提案申し上げております計算つまり三十七年度千二百五十億にふやすという計算基礎におきましても、借り入れ金は二倍以内におさまり得る計算になっております。しかし何分輸銀業務輸出契約延べ払い契約ができますと、これを追っかけまして融資をするという機関でございまして、非常に輸出が伸びます場合には、やはり年度の途中には資金の供給を考えなくちゃいかぬ。そのときには必ずしも出資をする余裕がない場合もあると思います。産投原資の問題もございましょうし、時間的な問題もある。そういたしますと、資金運用部からの借り入れでございますと、資金運用審議会にかけて、行政的手続を要するわけでございます。そういう場合に、万一借り入れ金額がふえまして出資の二倍をこえるというような事態が生じないとも限らない。そういう意味で今回若干の留保をとるという意味で三倍にすることをお願いいたしているわけでございます。そういう意味で、三倍ぎりぎり借り入れをいたす方針でもございません。二倍を若干こえることが臨時にあるであろう、こういうことでございます。ただ二・幾らというような端数をつけるわけにも参りませんので、これを三倍にいたした、これが実際上の理由でございます。
  5. 堀昌雄

    堀委員 そこでちょっと輸銀の方にお伺いをしたいのですが、最近当初計画実績資金計画相違というものが原資計としてどのくらいの相違があるのかお聞かせ願いたい。
  6. 山本菊一郎

    山本説明員 本年度融資計画は一応千百八十億でございましたが、実際問題といたしましては、輸出承諾、貸してやるぞという返事をいたしますのを承諾と申しておりますが、それがずっと下半期にずれ込みまして、上半期よりも下半期にかたまって参りましたので、本年度はまだ大きな案件が残っておりますのでわかりませんが、多少実際の金を出す貸付額といたしましては来年度にずれ込むかと思っております。
  7. 堀昌雄

    堀委員 三十六年度はまだわからないということでありますが、三十五年度実績として現在八百四十五億というのがこの資料には出ておりますが、この当初の計画実績の間の差は三十五年度ならわかると思うのですが、どういう差がありましたか。
  8. 橋口收

    橋口説明員 三十五年度の当初計画は七百二十億円でございました。実績ただいまお示しがありましたように八百四十五億円となっております。
  9. 堀昌雄

    堀委員 そこで当初計画で三十五年度は七百二十億、実績が八百四十五億といたしますと、この間に動きました額は百二十五億円動いたわけですね。三十六年についてはまだわからないというお話でございますが、やはり私は、計画実績が非常に違うということでは責任のある計画出したことにならないと思う。その原資についてはどこからでも取ってくるというわけにはいかない、原資の性格でありますから、私は計画自体は緻密にされなければならないと思います。一応緻密に計画をされるということならば、私は昭和三十六年はどういう結果が出るかわかりませんが、過去の例から見て、少なくとも三十七年の計画についても二百億以上も計画実績がかけ離れるようなことになってはならない。もし二百億以上も動くというのであれば、それは計画がおかしいということになりますからね。そこであなた方の方は、一体この千二百五十億の計画について、実績が動くことは私も了承いたしますが、その動きの幅をどの程度に押え得るというか、逆に言いますとそれに見合った計画をしておるのか、その点を一つ伺いたい。
  10. 橋口收

    橋口説明員 ただいまの御質問は、輸出入銀行年度間の計画を立てます場合に、どういう計算根拠計算しているかという御質問だと思います。私ども予算を作成いたします過程におきまして、輸出入銀行資金見通しを立てるわけでありますが、その場合に、大きく分けて輸出金融とそれから輸入金融投資金融の三種類に分けて計算をするわけであります。それで、輸入金融投資金融につきましては、ある程度個別的な案件輸出入銀行窓口に参っておりますので、それをもとにいたしまして、いわば積み上げ作業をいたすわけでございます。一番むずかしいのは輸出金融でございますが、輸出金融につきましても、およそ品目別船舶にその他の一般ブラント輸出に分けまして、船舶につきましてはある程度輸出目標というような数字もございます。それも参酌いたしまして、たとえば三十七年度におきましては百二十五万デッドウエート輸出が見込まれるだろうという一応の輸出のトン数を基礎にいたしまして、それから融資承諾その他の一定の指数によりまして計算をするわけであります。それからプラント輸出でありますが、これは三十七年度における輸出目標輸出計画、これは全体の輸出計画でございますが、それが大体一四%ぐらいの増になっております。それを参酌いたしまして、同時に輸銀窓口引き合い状況等も入れまして計算をするわけであります。従いまして、一番計画実績が狂いますのは輸出関係でございまして、船舶等につきましては急激に輸出がふえるというような事態もございます。また一般プラントにつきましてもある程度見通し計算をいたしております。たとえば十数パーセント計算いたしましたのが大幅にふえるというようなことが現実問題としてあるわけでございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 もちろん計画とその実施につきまして狂うことはあり得ると思いますが、今のお話によりますと、輸出金融として三十七年の計画は一千百五十億円が予定されていた。その中で船舶が大体これまでの構成割合でいきますと四〇%を占めておりますから、もし船舶の中で動くとすれば、これは相当動きが出てくると予想できますけれども、しかし過去のいろいろな経緯から、皆さんもそういう過去のトレンドをずっと延ばした中で、あるいは日本の製造能力なり受注残高なり、いろいろなものをお考えになれば、私はやはりある程度計画というものについては、皆さんも自信のある計画をお出しになっておると思うわけです。そこで私が伺いたいのは、今年度計画において、計画の線でやりたいけれども、やはり不測の事態でふえることはあり得るが、ふえ方は一体最大限度どのくらいのところに見ておられるのかということを伺っておきたいと思います。
  12. 橋口收

    橋口説明員 ただいま御説明申し上げましたのは、輸出に対する需要と申しますか、引き合い状況から計算をいたしておるわけであります。あくまでも計算基礎は、ただいま申し上げましたようなことで計算をやっておるわけでございますが、同時にまた輸銀の審査能力なり、あるいは事務処理能力という点も考えまして、千二百五十億円ということに相なりますと、毎月相当金額融資決定をすることに相なるわけでございます。従いまして、ただいまの見通しでは、千二百五十億円をそう大幅に上回るととはないのじゃないか。  なお補足して申し上げますと、ただいま御指摘もございましたように、輸出向けの千百五十億円は、船舶向けを四割と見ておるわけであります。一般プラント向けを六割として計算をいたしておりますので、船舶向け融資が四百六十五億円ということに相なるわけでございます。それから一般プラント向け融資を六百八十五億円と見ておるわけでございます。先ほどもちょっと申し上げましたように、船舶につきましては百二十五万デッドウエート輸出が達成可能であるという前提で、四百六十五億円という計算をいたしておるわけであります。それから一般プラント六百八十五億円でございますが、これは本年度実績見込み一般プラントが、五一八十八億円と計算をいたしておりますので、それに対します増加率は一七彩を上回ることに相なるわけであります。従いましてただいまの見通しでは、おそらく千二百五十億円で今年度はまかなえるのではないかというふうに考えております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 それだけ承ると私も安心なんですが、そうすると大体本年の原資計画千二百五十億円は、最大動いても二百億円をこえることはあり得ない、こういうふうに私は判断をしますが、どうでしょうか。
  14. 大月高

    大月政府委員 何割以内になるだろうということは、これは単なる予測でございまして、確実にわれわれの立場としてお受け合いするわけにはいかないと思います。むしろどちらかと申しますと、今輸出振興が非常に大事な時期でございますので、かりに三割なり四割なり上回るということになりますと、われわれとして非常に慶賀すべきことだと思いますので、そうなればあらゆる努力をいたしまして、財政上のやりくりをして、できるだけそれに間に合うようにいたしたい。むしろわれわれの心配は、せっかく千二百五十億つけましても非常に金が残って、どうも輸出が伸びぬじゃないかと言われる方が、むしろ心配なわけでございまして、かりに二割なり三割上がりましても、資金繰りに支障がないように、二倍を三倍に上げておるという面では、むしろオーバーすることについて非常に心配だというよりも、できるだけ伸びてほしい、こう考えておるわけでございます。ただ千二百五十億自体につきましては、これは非常に根拠のない数字かと申しますと、今特別金融課長から御説明申し上げましたように、ただいま想定し得る限りのいろいろなデータをもちまして、比較的正確にはじいたつもりでございますので、普通の状態で経済が動きますれば、そう狂うこともないのじゃないかと考えております。
  15. 堀昌雄

    堀委員 過去の実績をちょっと伺っておきたいのですが、さっき伺った三十五年の場合は百二十五億と相当大きいのですが、過去において計画実績の差が一番大きく出たのはいつですか。
  16. 橋口收

    橋口説明員 ただいま手元に三十一年からの資料がございます。それについて申し上げたいと思いますが、三十一年度の当初計画は五百四十八億円でございます。それに対しまして実績は五百八十六億円でございます。三十二年度の当初計画は六百九十二億円、実績五百八十七億円でございます。三十三年度の当初計画七百三十億円、実績四百七十一億円でございます。三十四年度計画八百億円、実績は六百四十八億円でございます。三十五年度は先ほど申し上げましたように、七百二十億円が八百四十五億円ということでございます。
  17. 堀昌雄

    堀委員 今過去の経過を詳しく伺いましたが、大体輸銀計画は決して過小ではないということは、これで明らかになったと思います。その点で二百億以上ふえることはないということについて、もしこれ以上ふえるならば、輸銀計画がおかしい、これは大蔵省を含めて責任があることになると私は思います。  そこでお伺いしたいのは、ちょっとこれで計算をしてみますと、今度出資の二百億をふやすことはわれわれ了承いたします。出資の二百億をふやしますと、政府資本金は九百八十三億円になります。それの二倍の借り入れ現行法で認められるわけです。そうすると一千九百六十六億円という借り入れ現行法で可能なわけです。二百億円を出資したことによって千九百六十六億円の借り入れが可能である。ところが本年の計画では六百十億をお出しになるわけですから、それを加えますと千六百四十億円というのが現状の借り入れ限度であります。そうすると、千九百六十六億まで現行法で借りられとするならば、本年度六百十億円を借りても、なお三百二十六億円というものが現行法資金運用部から借りられるということが明らかになってくるわけです。そうすると、あなた方は、ここの時点で二倍を三倍にふやしたいということは、三百二十六億円をこえて借り入れをする可能性があるという前提がない限り、軽々に法律案を提案すべきではないと私は思います。だから私が今まで確かめて参りましたのは、計画が正しいのならば、本年度においては全然ワクの中であって、それが多少動いても三百二十六億円以上も動かない限りは、現行の二倍の借り入れ限度を三倍に伸ばす積極的理由はないと思います。大体これをこういう格好で、ただふやしておけば行政上の処理がやりやすいなどというものではなくて、もしあなた方の方で、これはどうしても三百二十六億円をこえる可能性があると判断すれば計画が間違いです。計画の方が正しいとするならば、この法律改正は必要がない、こういうように私は考えますが、一体いずれですか。
  18. 橋口收

    橋口説明員 ただいまの御質問の点でございますが、三一七年度末の資本金は、御指摘がございましたように九百八十三億円と相なるわけであります。法律規定によりますと、借入金限度自己資本の二倍ということになっておるわけであります。従いまして、自己資本といたしましては九百八十三億円の資本金と、法定準備金が十九億円ございますから、両方合計いたしまして千二億円が自己資本になるわけであります。借り入れ限度といたしまして、現在の法律規定でその二倍ということになっておりますので、限度額は二千三億円ということになるわけでございます。それに対しまして、法律規定は、借入金残高自己資本の二倍をこえてはならないということになっておりますので、三十七年度末の借入金残高は、千二百五十億円の融資を実行いたしました場合は、千八百四十四億円の借入金になるわけであります。従って借入金余力といたしましては、二千三億円と千八百四十四億円の差額の百五十九億円が借り入れ余力ということに相なるわけであります。ただいま御質問がございましたように、これを三倍にいたしました場合には、ただいまと同じような計算をいたしますと、三十七年度末の借り入れ余力は千百六十一億円ということになるわけであります。同時に法律規定がもう一つありまして、貸し出し保証限度自己資本の三倍といたしておるわけでございます。それでただいまと同じような計算をいたして自己資本が千二億円でございますので、貸し出し保証限度は三千五億円になるわけでございます。三十七年度末の貸し出し保証残高見込みが、ただいまの計算で推計をいたしますと、三十七年度末におきまして二千九百五十六億円となるわけでございます。従いまして、貸し出し余力といたしましては、三十七年度末におきましては三千五億円と二千九百五十六億円の差額の四十九億円になるわけでございます。従いまして、かりに計画に多少の変更がございますと、ただいまの規定のままではわずか四十九億円しか新たに貸し出し保証余力がないということになるわけでございます。その点もあわせ考えまして、借り入れ限度を二倍にし、同時に、それに伴って貸し出し保証限度自己資本の三倍ということになるわけでございます。従いまして、この御審議をお願いしております改正で実行いたしました場合に、貸し出し余力は三十七年度末には千五十億円になるわけでございます。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そういうほかの条件が関連してくると頭打ちということでありますが、しかし法律の今の建前からするならば、あなたがさつきお触れになった百五十九億円は貸せるわけですね。あと輸銀内部関係になる、そこは一体どういうことですか。われわれの方でさわる部分というもの以外に、輸銀内部の、きつきおっしゃった新たな貸し出し残高との関係というものまで、それは法律規定されておるのですか。それは輸銀内部における何か規則か、そこのところをちょっと伺いたい。
  20. 橋口收

    橋口説明員 ただいま御説明申し上げましたが、若干敷衍して申し上げますと、借入金限度額自己資本の二倍ということに法定されておるわけであります。それから同時に貸し出し保証限度自己資本借入金の両者の合計額をこえてはいけないというのが法律規定でございます。従いまして、平たく申し上げますと、貸し出し保証限度自己資本の三倍ということになるわけでございます。これは法律明定をされておるわけでございます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、結局一番低いワクというのは四十九億ということで、もう一つの百五十九億というのは、一つの面であって、結果は四十九億が動くと、もう今の二倍の限度では借りられない、こういうことになるという理解をしていいわけですね。  そこでその次の段階になりますのは、これは私の方は事情がこまかくわかってなかったので、それでわかりましたが、三倍にして、今度はだんだん政府出資が思うようにいかなければ今の四分という貸し出し金利は変わってくるということにならざるを得ないと思うのですが、もしこれがかりに三倍の限度をフルに三倍まで借りたとするならば、一体輸銀として輸出金融貸し出し得る金利は、今資金運用部から六分五厘で借りるという前提でいって、どういう格好になりますか。
  22. 橋口收

    橋口説明員 現在の規定によりまして、出資金に対して借入金二ということで計算した場合には、借入金金利が六・五%でございますから、資金コストとしては四・三三%になるわけでございます。法律改正によりまして、出資金に対して借入金三ということでフルに借り入れをいたしました場合には、資金コストは四・八七五%に上がっていくことに相なるわけでございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、今四・三三%と言われたのが、現実に四%で出しておるわけですね。そのあとの〇・三三%というのは、これは全体なんでしょうから、その他の輸入金融投資金融でカバーをして四分になっておる、こういうことに理解してよろしいですか。
  24. 橋口收

    橋口説明員 輸出入銀行資金コストに関する御質問だと思いますが、三十五年度資金コストは四・三九%になっております。それから貸し出し金利息率でございますが、三十五年度は四・一四%でございます。ただ、その他の運用益がございますので、収入率としては四・三九%となっているわけでございます。従いまして、三十五年度収入率は四・三九%、資金コストは四・三九%ということになっておるわけであります。それから三十六年の見込みとしては、収入率は四・二八%、資金コストも四・二八%ということになっております。  ただいま御質問のございましたのは、輸出金融貸し出し金利四%でありますが、輸入金融は六・五%、投資金融は七%、それから輸出の中でも十年をこえるものについては〇・二五%のスケールアップをしております。さらに十五年をこえるものについてはさらに〇・二五%、つまり四・五%までのスケールアップをしているわけであります。
  25. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、今後は三倍にするということは、政府出資ももちろんふえましょうが、それに伴って借入金もふえるわけですから、比率として見るならば、最大限のところで四・八七五%になり得る道が今度は出てきたわけですね。しかし片面において現在の輸銀は、少なくとも政府出資とのバランスで四分の金利をやっているわけですが、バランスがくずれてきたときには、それでは今の四分は変わり得るのかどうか。これはもちろん出資との割合の変化が三倍というふうに法律はしたけれども、常に一対二ということであれば、これは別問題ですよ。しかし法律は一対三というふうに改正をした以上は、そういうことはあり得るという前提でものが考えられているわけですから、その時点で一体今後の輸出金融金利というものはどういう形にしょうと考えておられるか、もう一つは、なると考えておられるか、その二つをお答え願いたい。
  26. 大月高

    大月政府委員 現在の輸出入銀行金利四%は、業務方法書建前から申しますと、四%ないし七%ということになっておりまして、輸出振興の特別な立場から最低金利を事実上適用している、こういうことでございます。それで輸銀現実金利としては、まず第一に国際競争力の問題がございますので、常に国際金利と比較して特に不利にならないようにということをまた考えているわけでございますが、逆に国際金利に比較して極端にまた低い金利を出す必要もない、しかもまた市中一般金利国際金利に比較して相当高いわけでございますから、輸出においても実質上大体五〇%くらいになるわけでございます。例の利潤部分を差し引くとか協調融資割合とか、いろいろやって参りますと、大体所要資金全体の半分程度を貸すことになりますので、市中の金利と込みにして国際競争ができるというような建前で考えております。  それで最近ここ一年ばかり公定歩合を引き上げたりしまして、若干金利は上がっておりますが、大勢としましては、日本の金利は少しずつは下がっている、国際金利の方はその下がり方がむしろ少ない、若手上がっているというのが過去数年間の大体の趨勢でございます。そういう意味で、われわれとしましては、輸出入銀行金利四分というのは、若干低いのではないかと大蔵省の立場で見ているわけでございまして、通産省あるいは運輸省あたりともう少し上げたらどうかというようなことで実は御相談しているのでございます。しかし、こういうように国際収支改善という問題が非常にやかましい時期に、少なくともこの輸銀金利を上げるということは適当でないということで、今大蔵省の方でも四分ということでやろうじゃないかという話をいたしておるのでございますが、率直に申しまして、底流としては大蔵省としてはもうちょっとこれは上げたらどうか、こういうように考えております。そういたしますと、さっきのコストの問題に関連いたしますが、若干のコストアップがありましても、金利水準としてはカバーできる、こういうことになるわけでございます。ただ、これは計算主ないし考え方の話を申し上げただけでございまして、現実の問題としては金利を上げるつもりはありません。それから借り入れにつきましても、余力があるからといいまして、その三倍ぎりぎりまで輸銀借り入れを押しつけるというつもりもございません。先ほどお話し申し上げましたように、大体三倍ぐらいのところをめどにしておりまして、急に輸出が伸びて金が足らない、そういうときには出資はなかなかむずかしい。そうすると当面融資で若干追加するというようなときに、今申し上げました五十億ぐらいの限度ではやはり心もとない、こういう意味で端数をつけるわけにも参りませんので三倍とした、こういうように、御了承願いたいと存じます。
  27. 堀昌雄

    堀委員 大蔵省はかつて輸銀の利子は上げたいということでお話があったと思うのですけれども、今の大月さんのお話で、日本の金利が今下がってきている、こうあなたはおっしゃいましたが、日本の金利は下がってきていないんですよ。皆さんが恣意的に下げたんです。日本は恣意的に下げた、諸外国は自然に上がりつつある。これは諸般の情勢の中で上がりつつある、こういうことだと思うのです。そうするとその下げたものがはたしてそのままでいけるかどうかというところに実は今来ておるのであって、全体としていうならば、やはり本来の欧米の姿をとるならば、日本の金利は客観情勢の中で上がる条件があると私は思うのです。上がる条件にあるのだから、それじゃこっちも上げてもいいじゃないかという議論も一つ成り立つかと思いますが、市中との協調融資の方が上がってくるとするならば、今度は相対的にはこちらの方でも下げなければ国際競争のバランスがとれないではないかということになってくるのではないか、私はこういうふうに思うわけです。そこで今諸外国のこういうふうな輸出金融に類似した金利動きというのはどういうことか、ちょっとお聞きいたしたいと思います。
  28. 大月高

    大月政府委員 金利は下げておるのか下がっておるのか、まあ御議論でございますが、実は金利を構成する要素といたしまして、コストは毎年下がってきております、これは市中金利といたしまして。これは御存じのように、コストを構成いたします人件費、物件費は、資金の量を分母にいたしまして、コストがきまって参ります。毎年最近では二兆以上の資金がふえておるわけでございますので、分母がふえておる。もちろん人件費がベース・アップによってふえる、あるいは物件費も若干の増加でありますとか、いろいろ卒業が拡大いたして参りますと、その辺もふえますけれども、われわれは行政指導をもって人件費、物件費が非常に高くならないように、いわゆる合理化を要請いたしておるわけでございまして、そういう意味で、どちらかと申しますと、資金の量の増加の方がピッチが早うございまして、コストの面の増加率を上回っておる。そういう意味で連年金融機関のコストというものは下がっておるわけであります。そういう意味で貸出金利につきましても、銀行の経理から申しまして、下げる余地ができておるというのがここ数年来の傾向でございます。先ほどわが国の金利はまた下がっておるというお話がございましたが、これはいわば去年の秋以降の短期の問題でございまして、長いトレンドで見ますと、確実に下がってきておるということでございます。具体的に申し上げますと、昭和三十年三月決算期における全国銀行の貸出金利、約定金利でございますが、二銭四厘九毛四糸、約二銭五厘、年利で申しまして九分一厘程度であったわけでございますが、三十六年十一月の計数によりますと、日歩で申しまして二銭二厘三毛八糸、年利で申しまして八分一厘六毛九糸ということで、年利一分下がっておるわけでございます。これはもちろん金利調整法によるいろいろな指導もやっておりますが、そう無理なことはもちろんできません。今申し上げました事情で、実勢もやはり下がっておる、こういうふうに御了承願いたいと思います。そういう意味で、日本の金利は、水準として、全体として下がっておる。輸銀コストは、これは二十九年ごろだと思いますが、四分できまったきり動いておらないということでございますので、相対的には、国際比較といたしまして、逐次有利になっておる。国際開発銀行の金利も多分今五分七厘五毛程度でございまして、そういうようなベースから申しまして、今のわが国の輸出金利というものはそう高いものではない。それから、御存じのように、短期の輸出貿手の金利につきましても、最低一銭二厘というような日本銀行の公定歩合ができて、市中が一銭三厘というようなことでございまして、輸出金利というものは、わが国としては相当優遇しておるというように御了解願っていいのではないかと思っております。
  29. 堀昌雄

    堀委員 全体の中でやはり今当面問題になるのは、先ほどもちょっと資料を報告していただいてわかりましたけれども、やはり経済の引き締めが起こったときは、いずれも予定額を下回っておるわけですね。三十二年から三十三年にかけてのときは、やはり三十二年で約百十億ぐらいですか、三十三年に至っては三百億近くも予定計画が充足されなかったというのが事実のようであります。ですから私どもは、こういう点から見てくるならば、これはやはり国際的な競争力の関係もあるでしょうし、最近はインドネシアその他においても、わが方のいろいろな契約がキャンセルをされたりするような状態もあるように聞いておるわけですが、今後のそういう点の問題の見通しについて、その輸出金融をやる当事者である側から、今後のEEC、コモン・マーケットの進出のあり方等に関連して、金利はこれから上がる傾向でいいのか、その点をちょっと一つ……。
  30. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 国際情報から見た輸出見通しについてでございますが、御承知のように、日本の来年度輸出は一四・六%の伸びを見ておるわけであります。それを時期別に大体考えてみまして、やはりアメリカの景気回復という点が一つの大きな要因と考えておるわけであります。たとえば、昨年の今ごろとことしの今ごろと比べてみますと、アメリカに対する輸出は、為替ベースから見まして昨年の今ごろは月に八千万ドルぐらいであったと思いますが、最近は一億ドルをこえる状況でございます。信用状面におきましても、そういう推移をたどっております。去年が低かったという事情もございますが、かなり伸びております。欧州関係におきましては、昨年の実績よりかなり大幅に伸びておりまして、最近はおそらく二割ぐらいはふえておるのじゃなかろうかというふうに思います。これは今まで欧州関係は非常に低かったという事情もございますが、同時に日本の商品に対する向こう側の輸入について、門戸をなかなか開いてくれなかった、つまり日本の商品に対する差別待遇がかなりきつかったというのが、漸次門戸を幾らかずつゆるめて、幾らかずつ門戸を開くようになってきたという事情と、基本的にはEECの経済活動が非常に高まって、域外における貿易も上がってきたという事情もあると思いますが、こういう状況で、EEC諸国、ヨーロッパ諸国に対する日本からの輸出相当程度期待できるのではなかろうか。問題は、後進国に対するそれらのEEC諸国なりと日本との輸出競争という点がかなり激しくなるんじゃなかろうかという点に問題の焦点がかかってきます。従って、東南アジアなりあるいは中南米なりに対する、あるいはアフリカに対する日本の輸出力と、それからそれら工業国の輸出力というものがどういうふうに——そこで競争上日本がどういう地位を占め得るかということにかかって参りますので、それらの点につきましては、特に輸出入銀行のこういったプラント輸出というような点について、日本としてもできるだけのことを考え、またそういう輸出がふえるような配慮をしなければならない立場にあるのじゃないか。東南アジアにいたしましても、あるいは中南米にいたしましても、従来の傾向を見ますと、やはりアメリカの景気がだんだんよくなるに従いまして、多少の時間のずれをもちまして、それらの地域におけるいろいろな形の購買力というものがついて参るわけでございます。それに従って日本からの輸出も伸びておるというのが過去の趨勢でもございますので、それを総合勘案いたしまして、今年度も四十一億ドルの輸出目標がおおむね達成できるのではないかと思います。来年度につきましても、為替ベースで四十七億ドルの輸出というものを目途として、いろいろな努力を進めていかなければならないだろうというふうに思っております。
  31. 堀昌雄

    堀委員 輸出入問題はこの間予算委員会でもやりましたが、時間が不十分なので——本日は輸銀の問題ですから、あまり多くを触れたくないのですが、今昭和三十七年度輸出見通しの中で一番問題になるのは、やはり私は東南アジアの部分が一番不安定な要素ではなかろうかと思います。北米については現在の信用状なりいろいろな動きを見れば一七・幾らという伸びは、これは案外期待できるかもしれないし、対欧州については一回昨年落ち込みましたから、それが前年度程度に回復することは可能ではないかと思うのです。問題はやはり東南アジア、中南米というようなところは、これはやはり今アメリカの景気のタイム・ラグとの問題をどう見るかという問題もありますが、同時にここはコモン・マーケットが強い力で進出をしてくる段階に当面しておりますし、アメリカといえども、やはりこれはアメリカの市場として考えてくるということになってくるならば、この部分における競争力のいかんということが、私はやはり来年度輸出見通しの中の大きな変更を起こさしめる要素になるのではないかと思う。そうなってくると、やはり輸銀金利等の問題は、どうしてもこの際に期間の問題を含めてやはり相当再検討を迫られておる段階である。もちろん今より下げることはガットとの関係もありますから適当であるとは思いませんけれども、やはりそういう面から考えるならば、輸銀というものが当面輸出ドライブをやっていくために果たす役割としては、やはりできるだけ一対二という比率の上で問題が処理されていかないと、これは全体の問題の中で非常に困難な問題になるのではないか、そういう感じがいたします。  そこで今の質疑を通じて、実際には三倍を変えるということではなくて、短期的にそういう部分をこえることもあり得るという処置だということでありますから了承をいたしますが、二倍から三倍にということは印象としてはやはりややゆるきに過ぎる、もちろんそれを二・五倍にしたがいいかとか、そういうことを言うわけではありませんが、現実にはその限度のところが微妙なところになっておりますからやむを得ませんが、やはり問題の処理の仕方としては、今の輸銀に対する問題というのは長期的なものの考え方でやはり一つ十分考えていただかなければならないのではないか、さように思います。  ただもう一つ私はここで付言をしておきたいと思うのですけれども、やはりいろいろな日本の企業のあり方が輸出等の場合においてやや過当競争等が行なわれておる事実があるのではないか、その過当競争のあおりというものが、たとい輸銀がいろいろ融資をしてみても、いま一つ、そういうことのために必ずしも有利に動いていない部分もあるのではないか。私はこういう感じがしてなりません。ですから、そういう点を含めて、これは大蔵省の問題ではなくて通産省の問題になるかと思いますが、輸出というものがノーマルなベースで問題が処理をされ、それが長期的な展望の中で行なわれるということになるべきではないか、そういう感じがいたします。今後のあれの中で本年度のものについては、今の質疑の経過の中ではおおむね事情がわかりましたから、そういう点を体して一つ今後とも輸出金融に対して積極的な努力を払ってもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。
  32. 小川平二

    小川委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  33. 小川平二

    小川委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  34. 小川平二

    小川委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  ただいま可決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  この際暫時休憩いたします。    午後零時五十七分休憩      ————◇—————    午後二時十一分開議
  36. 小川平二

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案入場税法の一部を改正する法律案通行税法の一部を改正する法律案物品税法案及び関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。有馬輝武君。
  37. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 最初に大臣にお伺いをいたしますが、それは、税制というものは時の政府の施策の最もティピカルな表現として出てくるのでありますが、その意味で現在の内閣の文化政策というものの基本がどこに置かれておるか、こういう点で私は確かに今度の入場税の減税について一歩前進であることはある程度認めるわけでありますけれども、しかし他の先進国に比べまして、やはり文化に対する池田内閣のものの考え方というものがどこにあるのかという点で、若干の疑問なきを得ないわけであります。  それは、たとえばアメリカにおきましては演劇においては非課税になっておりますし、イギリスも撤廃しておる。またフランス等におきましてもバレーその他については特段の配慮がなされております。それどころかソビエト等におきましては、国家資金の援助というものが大幅に行なわれておりますのに、日本の現状はどうかというと、国立劇場の問題にいたしましても非常に足踏みをしておる。総理は今度の通常会における施政方針演説で、それこそ新聞の評によりますといまだかってなかったほどこういった情操面について配慮をしたという点で取り上げておられましたけれども、ただ、それが言葉の上だけで終わっているきらいがあるんじゃないか。こういう意味で、今申し上げましたように今度の入場税についても、そのバック・ボーンというものをきちっと通して、そして大まかな数字をそれに合わせていくという形で進められておるようにはとても考えられないわけです。やはり均衡論なり何なりというものが先に立って、そしてある程度数字をいじくるというような気がしてならないのでありますけれども、そういう面で演劇——これは私がお話し申し上げますよりも、大臣もう十分御承知のところでありますけれども、日本の文化の向上に大きな役割を果たしております新劇その他の、バレーにしても同様でありますが、こういうものに対する助成措置として、基本的なお考ええをこの際お聞かせをいただきたいと思うわけであります。
  38. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国民生活の水準を上げるということは、結局国民に文化生活を享受させるということとも通ずる問題でございますので、この入場税というようなものもやはり国民生活の推移と申しますか、実情によってだんだんに考え方を変えるべきもので、私はこの種の演劇その他の入場税というものは、実際は税としては悪税で、これは将来撤廃すべきものだというふうに考えています。  しかしこれにはいきさつ的な問題がございまして、国民所得が少ない時代には、国にしろ地方団体にしろどうしても、税源を必要としたためにこういうものにもとから課税してあった。課税する当初は、国民が当然日常において享楽すべき娯楽だということよりは、むしろこれは入場する人としない人と比べてみて、入場することの方がまだやはりぜいたく的な要素を持っておるというふうなことで、当時は課税が合理化されたと思いますが、こうなってみますとこれは問題であって、まず大衆娯楽と言われる面からはずしていくことが適当だという考えで一部は残しましたが、全体の考えとしては、私どもは漸を追うてこれをとってしまうことが望ましいと今思っております。  税についての考え方ですが、まず今度御承知のようにビールの問題が出ました。私どもはビールはやはり下げるべきものだとして減税をやったのですが、世間はまだそうじゃなくて、これだけ売れておった割合に安いのだからビールの税金をさわる必要はないじゃないかという議論をしている人は、そういう感情を持っている人は多いのですが、これはやはり国民生活が変わってきまして、今の若い人たちの家庭消費として相当部分が使われているという現状を見ましたら、ビールはこれをぜいたく品扱いすべきじゃないと思いますが、なぜ日本のビールが今まで高かったかと申しますと、これは舶来酒という頭で一番初めに高い課税が合理化されて、これが惰性として今日まで続いているというようないきさつもございますので、国民の生活水準が上がってきたときには、これがぜいたく的なものであったが、当然その生活水準に見合った日用上の必需品的なものに、徐々に税金に対する頭もわれわれは変えていかなければならぬと思っています。化粧品もそうであって、化粧するということは、もとの日本の国民生活から見たら一つのぜいたくであったかもしれませんが、今はポマードのごときもこれはもう日常の必需品だ。この値段をこの物品税にこだわっているのは僕がポマードを使わないからだという批判まで出てきているわけですが、これはやはりぜいたく品とはここへきたら認められないというふうに、国民生活の向上と相対比して税の整理はやるべきものだ、そういう観点からいきますと、私は演劇その他の入場税というものは将来なくしていくという方向へいくべきものだと思っております。
  39. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 大臣の将来の方向としてのお考え方、全く私どももぜひその方向で実現していただきたい、このように考えておりまするし、ただ減税にとどまらないでむしろ国家的にそういったものについては援助していく態勢というものは、予算編成の過程でもぜひ積極的に考えていただきたい、これを強く希望するわけであります。外国の高官の連中が来ると、歌舞伎に案内し、京都に案内しというようなことで、苔寺を見せたり歌舞伎を見せたりするのが一つの既定のコースみたいになっておりますけれども、私は古典が現在の生活の中に、むしろ息吹いておるというような点についてもよくわかりまするし、日本の代表的なものとして、それに案内するという点についても、決して悪いことではないと思いますけれども、やはりそういった点について、たとえば新劇なら新劇というものが、むしろ国民の血液になっておるという事実も私は見のがしてはいかぬと思うのであります。そういう点で、やはり広い視野から文化をながめていく、そしてそのながめた結果というものが、たとえば税制においても、具体的に現われてくる、そういう形が積み上げられていかないと、ただ口先だけの文化国家に終わるきらいがあるのじゃないか、このように考えますので、ぜひ来年度の予算編所の際には、将来ということでなくて、さっそく取り上げていただきたいと思うわけであります。特に池田内閣が安定して、水田さんが二回も三回もやられるというときでなければ、税体系全体について再検討する余裕がないと思うのです。そういう意味で、大蔵大臣は非常に恵まれた立場にあるわけでありますから、ただ既存の税体系というものについて、ちょびちょびいじっていくという形でなくて、やはり僕らが賛成する反対するは別として、池田内閣の施策というものを具体的にぴちっと出していただく、そういう形ですべての税制について荷検討していただきたい、このように特に希望をいたす次第であります。  次に村山さんにお尋ねをしたと思います。たとえば映画館等に入る人数は減っておるのに、入場税の額は上がっておる、収入は上がっておる。この事実をどういう工合に把握しておられるか。少なくとも映画等は、庶民にとりまして一番プロパーな娯楽なんですね。もちろんテレビの影響ということも考えられまするでしょうけれども、やはりここには問題が大きく伏在しておるのではないか。物価の上昇との関連の中で、相当考慮すべき余地があるのじゃないかと思うのでありますが、この点についての村山さんのお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  40. 村山達雄

    ○村山政府委員 お話しのごとく、映画の入場人員は年々少しずつ減少しております。約七、八%くらいだんだん減少しております。このことは日本だけに限らず、各国の入場人員を見ておりますと、やはり同じような傾向が見られます。テレビの普及台数と入場人員の関係にはかなり因果関係があるわけであります。ただわれわれが過去に調べたところによりますと、テレビがある程度普及しますと、入場人員が横ばいになってくる。アメリカはすでにその態勢に入っているやに統計上見受けられるのであります。日本はまだその過程にございまして、だんだん少しずつ減ってきている。にもかかわらず全体の料金収入は上がっておりますのは、もう御案内のように、入場料金、これが単価として、だんだん少しずつやはり上がっておる、人数の減少割合以上に上がっておるというところにあるかと思うのございます。なぜそうなるかという問題は、もちろんいろいろございましょうが、一つは、人件費がだんだん上がるという問題が一つ、それからもう一つはやはり映画の内容がだんだんいいものになってきた。製作費も——大型化、カラー化に伴っていいものをだんだん作っていく。また映画館の施設も、まあ目立たないことではありましょうが、順を追うてよくなっていく、こういうサービスの向上、この両面から単価が上がってきているというふうに考えているわけでございます。しかしこの傾向は——どうも今までの統計を見ておりますと、日本はこの傾向はもうちょっと続くのではなかろうか。アメリカあたりにいきますと、その点は人数は大体横ばいを続けているような形になっおります。
  41. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 資料によりますと、入場料金は、一昨年の平均が八十五円だったものが昨年には百二円くらいになっておるというような形でありますが、確かに今村山さんおっしゃるように、入場料金は上がってはおりますけれども、問題は、先ほど私が指摘いたしましたように、映画館のクラスによって浮沈が非常に激しいんじゃないか。確かに一流館におきましては興業収入本大きくふえておるようでありまするけれども、問題は、今村山さんがおっしゃった、たとえば「釈迦」とか何とか、ああいった映画がかからないと、映画館というものは現在ほとんどお手あげか、もうすでに投げ出しつつある館が非常に多い。これが一般庶民大衆に及ぼす影響というものを当然考えていかなければならぬと思うのです。そこら辺について、大きくランクを三つくらいに分けまして、一流、二流、三流くらいに分けまして、入場税から見た伸びというものについてはどのようだ把握しておられるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  42. 村山達雄

    ○村山政府委員 今手元にランク別の平均入場料金の動きあるいは入場人員の動き、その辺はもうちょっと資料を整備しませんとございません。すぐお答えするわけに参りませんが、いずれまた調べましてお答え申し上げたいと思います。
  43. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 それから大臣にいま一つお伺いをいたしたいと考えておりますことは、これは最終結論は出てないようでありまするけれども、経済企画庁におきまして物価抑制策の具体案というものをずっと検討していただいておるようであります。そして企画庁案というものが出まして、十二項目ですか、根本的な基本的な対策要綱というものが出されておりましたが、やはりその中でも入場料金の及ぼす影響というものは非常に大きいと思うのです。藤山さんは私鉄運賃についてはやむを得ざる措置として上げるというようなことで、みずから物価抑制の基本策を破っておられるようなきらいがあるわけでありますけれども、やはりこの入場料金の値上がりというものが物価に及ぼした影響というものは、昨年度特に大きかったと思うのでありまするが、この点について当然大蔵省の基本方針として、また大蔵大臣の基本方針として、今度の減税分については値下げをさせるという態度で臨んでおられるようでありまするけれども、問題は、映画会社におきまして大型化なりあるいはカラー化あるいは設備の更新というような意味で、減税分についてすべてを値下げに回すということについては、ある程度抵抗を示しておるような空気があるやに聞いております。ここらについて、大臣としての指導の見通し、物価抑制との関連の中でどのように見通しを持っておられるか、この点についてお聞かせいただきたいと思うわけであります。
  44. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今度のは税制の措置でございますので、国が減税をした、その減税分が末端の消費者、利用者に還元されないということは問題でございますので、私どもは今御審議願っております間接税の減税についてはとにかくその分だけ末端価格を下げさせる、こういう方針で今業界別の指導を大蔵省自身も直接にやっておりますし、また御承知の通り、入場税の問題は演劇そのほかは厚生省の管轄、相撲そのほかのスポーツの入場料の問題は文部省の管轄、物品税は通産省というふうにそれぞれ主管官庁が分かれておりますので、各官庁の協力を得てそれぞれ強力な値下げの指導を今お願いしておりますが、私どもの勧奨は今ある程度うまくいっておりまして、たとえば酒のごときは戻税もあります関係でこれはその通りにいきますし、そのほかの物品税にもずい分困難な問題もございますが、大体関係業界は協力をするという表明をしてくれまして、四月一日を待たずに実施してくれたという業界もあるというふうになっております。一番の問題は入場税でございましたが、これはおっしゃる通りサービスの改善に一部向けたいというような強い希望がございましたが、私どもは今度は減税措置による値下げなのだからその通りにいかないことは因るということで、再三業界にも要望しました結果、昨日興行界から大蔵省への返事が参りました。業界は、全面的に物価を上げないという政府の政策に協力して、この問題は政府の言う通りにやることを約束するという回答が業界から参りましたので、この問題も大体私どもの希望通りにいくのではないかと思っております。
  45. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 それからまた村山さんにお伺いをいたしますが、正月料金というのがありますね。暮れから正月にかけまして、大体、映画館にいたしましてもその他の劇場にいたしましても、正月を目当てに値上げをしている。今度の減税分を見込んだか見込まないか知らないけれども、三月になってもそのままの料金で打ち続けるという状態が相当あるわけですけれども、この点に関連して、今大臣がおっしゃられた値下げという点について、どのような指導をしておられるのか。それから現在の実態からいたしまして、少なくとも三十六年度の平均入場料金は大体百円くらいになっておると思うのでありますが、政府が考えられた免税点とその根拠をこの際お聞かせをいただきたいわけであります。
  46. 村山達雄

    ○村山政府委員 おっしゃる通り、例年でございますと正月興行で相当いろいろのものを封切りまして、割合料金も高くなる。その次の三月か三月になると落ちるのが通例でありますが、ことしはその落ち方が例年よりも落ちていない点は御指摘の通りでございます。これはどういう原因に基づくのか、一つは今言った人件費が高くなるとかいうようなことも若干あるかと思います。ただ御案内のように映画の出し物によって違うものですから、一体製作費が幾らかかるのか、ロード・ショーのようなものでございますと、一本々々値段が違ってくるわけでございます。そういう意味で定額制をしいておるのに下げない場合もありましょう、これはまたそれだけの原因として考えなければいかぬ。それから出し物によって毎月々々料金を変えていくという考え方もあると思うのでございます。しかし全体の統計で見ますと、おっしゃる通り例年に比べては、正月に対して二、三月の下がり方が少ないというふうに見受けられるわけでございます。その辺の原因が那辺にあるか、物価一般の問題でございますし、われわれは別の税という観点から注目しておるわけでございます。  それから第二番目の免税点でございますが、これは御案内のように、現行では臨時開催の場合は二十円、それから学校の先生が児童を連れていく場合には三十円、そういうことになっておりまして、今度は税率を一率に一〇%引き下げると同時に、免税点も一率に三十円にしたらどうかという提案を申し上げておるわけでまございす。従来の最低のところが三十円という問題と、それからかう一つは、昭和十五年、それから二十二年あたりの免税点がございます。それを物価換算いたしますと三十円ちょっとオーバーするくらいだというところがございまして、その辺を出しております。これは全然別の場合でございますが、先般横山委員から御指摘がございまして、例の児童演劇、この実態を見てみたわけでございますが、大体三十円くらいでやっておるのが多いようでございます。これはもちろん提案後見たわけでございますけれども、その辺をにらみ合わせてやっておるわけでございます。大体その辺をねらって考えておるということであります。
  47. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 村山さんは映画製作者の立場に立ってものを言ったり、それから村山式算数でもって三十円なんというものを出されるけれども、これは実態に即しないことおびただしいですよ。そういった料金でやっておるところはすでにつぶれちゃった。私の親戚にも映画館をやっておったのがあったが、つぶれちゃったのです。つぶれるべきものはとっくにつぶれちゃっておるのですよ。ですから、さっき大臣にお伺いしたことと関連するけれども、こういったものを見つめる際には、実態に即応し、しかも国民の娯楽だという視野から見てもらわなければ、税制それ自体として非常に不具ないびつなものになるのじゃないかと思うわけです。この点について答弁を求めてもやっぱり同じことを繰り返されるだろうと思うので求めませんが、問題は来年度はやはりそういった視野からぜひ取り上げていただきたいと思うわけです。  次にお伺いをしいたしますが、提案されております国税通則法の中の第五節の第十三条の人格のない社団等の地位に関する規定と、それから入場税法改正案初め各法に盛り込まれました、たとえば入場税法におきましては第二十八条の「法人の代表者(法人でない社団又は財団で管理人の定めがあるものの管理人を含む。)」云々の規定、これは通則法が通過しなければこのカッコの中の規定は効力を持たない、このように理解してよろしいかどうか、この点についてお伺いをいたしたいと思います。
  48. 村山達雄

    ○村山政府委員 結論から言いますとその通りでございます。と申しますのは、国税通則法、いずれこちらで御審議ただくわけでございますが、そこでは、代表者または管理人の定めのある人格のない社団または財団は、特別の規定があれば別だが、そうでない限り法人とみなす、こういう規定があるわけでございます。それを受けまして今のこの二十八条になるわけです。そこで、法人の代表者、こう言っているときには、すでに法人とみなされた人格のない社団の代表者を含んでおる。代表者までは、これはここで表で読んでいるわけです。ただ管理人という定めは、普通の法人にはありませんので、特に管理人だけを出す意味でカッコで書いているわけでございます。従って、人格なき社団の管理人とありますが、そこは人格なき社団にアクセントがあるのではなくて、カッコ内の管理者にあるわけであります。人格なき社団についてはすでに国税通則法で法人とみなされ、その代表者はその代表者だということで外で読んでおります。従いまして、もし国税通則法がないもの、あるいは通らないといった方がいいのですが、あの規定がないといたしますれば、この規定は代表者については少なくとも意味がなくなるということでございます。管理人だけ意味があるのかといったら、これは全くないと言わざるを得ない。規定の趣旨解釈からいって当然意味をなくするということでございますので、もしあの規定がなければこの二十八条の第一項は動かない。二項の方は、これは今の訴訟を代表する者はだれかと書いたわけでございますが、ここに書いてございますように「法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものについて前項の規定の適用がある場合においては」こう書いてございますので、従って、向こうの規定がなければ前項の第一項の規定はなくなり、これは動かないことになる。従って、第二項では前項の規定の適用がないということでございますので、全体として動かない。結論からいいますと、先ほど冒頭に申しましたように、もし国税通則法で予定している規定がなければこの規定は自動的に動かなくなってしまう、こういう結論でございます。  先ほどちょっと免税点のことで申し忘れましたが、こういうことがございます。あまり免税点を高くいたしますと、地方の常設館と臨時開催の関係がございまして、臨時開催の方はどうしても費用その他の関係で製作費が安くつく、それにみんな押されて、常設館はこれ以上に苦しくなるというようなことはかねて言われたわけでございまして、われわれはその点を三つばかり考えておるわけであります。過去において最南は三十円でございます。今度一率にしております。それから物価倍数で見ますと三十円くらいになります。それからあまり安くすると、今の臨時興行等の、こういう関係の常設館が相当困るという点、これらの点を考えてやったわけでございます。全体といたしまして、戦前は大体映画館の数が全国で千五百ぐらいでありまして、現在統計で見ますと八千八百ぐらいになっております。それから、映画の本数は、先般われわれが専門家に聞いたわけでございますが、アメリカよりも一週間の製作本数が多い。この辺に非常に経常の問題が実際はあるのじゃなかろうか。税はもちろんそれとは別といえば別でございますが、それらの実態を見ながら考えていかなければならぬが、経営がだんだん苦しくなるという問題は、その辺にも一つの原因があるのじゃないかと思います。よけいなことでございますが、ちょっと気がつきましたので……。
  49. 有馬輝武

    ○有馬(輝)委員 そのよけいな方については、いろいろまだ議論がありますけれども、大臣も御出席の聴聞が限られておるようでありますし、あと佐藤委員、広瀬委員の質問がありますので、一応大臣に対する質問はこれで終わります。
  50. 小川平二

  51. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 大蔵大臣の時間がありませんので、若干今の関連質問をしたいと思うのであります。  いろいろの問題がありました減税の問題でありますが、自然増収というのが五千数百億といわれておりますが、一体こういう例が外国にあるだろうか。毎年々々自然増収を作って、そして取り過ぎたのであとでちびりちびり返すような、こういう予算の政策、財政政策はどうもおかしいのじゃないかというような考えを持っておるわけであります。先日も中山会長が来られて、減税の問題についていろいろ内容の説明がございましたが、大蔵大臣は、こういうような自然増収が五千数百億もあるというような事態が正しいのか正しくないのか、これが日本的な財政の裏打ちであるかどうかという点の御意見をまず伺いたい。
  52. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 歳入の見積もり方は前からも申し上げましたように、徴税の実績を土台として、品目別の積み上げ計算で出すわけでございますが、その際私どもは、たとえば今の三十七年度の歳入予算で申しますれば、三十七年度の経済見通しというものを一応政府は立てる、この見通しに基づいたいろいろな経済指標を織り込んでこの推定をするわけでございますので、税の見積もりが違うということは、結局基本的には経済見通しが狂ってきたということになろうと思います。現に、当時参考にした指標の狂い方と自然増収の見方の狂い方が、大体一応対応しておることでもおわかりだと思いますが、どうしても見込みよりも多く経済が伸びて、国民所得がふえるというときになりますと、税の構造が累進構造であります以上は、狂い方がやはり相当多くなってくるということでございますので、問題はやはり経済の見通しの問題、見通し通りに経済が動いていないということから税の見積もりが現実的には狂ってくるのだというふうに考えております。毎年多い方に最近は狂っておりますから問題があろうかと思いますが、四、五年前を見ましたら、見込みの方が多くて税収が実際にそれだけなかったという年も、つい近い年にはあったような状態でございまして、これはよくなる方へ狂ってきますと自然増は大きくなるかわりに、悪くなる方へ狂ってきますと、これがまたその率以上に大きい狂いをするという性質のものでございますから、相当この点は慎重に見通しを立ててやっておるつもりでございますが、この三、四年来は成長が大狂いをしておる状態でございますので、自然増の方が多く出過ぎた年が二、三年続いておるという状態でございます。
  53. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 これは今参議院でも予算委員会で審議中ですから問題になると思うのですが、水田さんはすでにニカ年近く大蔵大臣をやっておられる。昔は高橋是清の高橋財政というのがあり、それから同時に昔の大蔵大臣は相当権限もあってやっておられましたけれども、どうも水田財政というのは何か無性格じゃないか。私は池田さんの悪口を言いたくないけれども、池田さんは通産大臣、大蔵大臣をやるごとに失敗する、どうも経済がうまくない。その亜流を水田さんは引き受けて、無性格な財政政策、無性格な経済政策をやっておられるのではないか。結局そういうものの犠牲になるのはむしろ中小企業や国民がそういう犠牲になるのであって、このごろやや落ちつきましたけれども、相当そういう点で一般に批判があるわけです。こういう点について一体水田さんは水田財政というものの性格をどのように考えておられるのか。これは大問題でありますから、そう簡単には一口に言えないかもしれませんが、あなたがどういうようにウエートを持ってやっておられるのか。どうもなしくずしにずるずるそうやっておられるような感じがするのでありますが、そういうあなた自体の財政政策、経済政策というものを、一つここで簡単でけっこうでございますから、こういうようにやっておるというようなことをお示しを願いたいと思います。
  54. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは非常に大きい問題でございますが、要するに今の政府は、国民総生産倍増計画というものを立てて、十年以内に総生産の倍増をしようという計画を立てておりますが、これを立てました以上は、やはりそこにものさしができなければなりませんので、これを順調にそういうようにやるのには、まずいろんな経済誌条件の基礎固め、その上に立って順々に伸ばしていくのでなければいけませんので、その高度成長政策の基礎条件の整備ということがやはり至要である。それは特にどこが重要であるかと申しますと、あの計画の中の要綱ではっきり重要施策として示されておるものが幾つかございます。それにはやはり公共投資の問題、これが経済の発展と不均衡であったら、この順調な長期計画というものは遂行できないということが一つと、それから成長政策に伴って、当然そのままにしておけば社会格差が増大するという部面もあります。経済が成長すれば格差が自然に解消するという性質のものと、そうじゃなくてそのままにしておくなら社会格差がますます拡大するという性質のものもございますので、そのためにはこの格差を常に埋める政策を伴っていかなかったら、この均衡ある経済成長はできないという点から、社会保障の強化というような点も、成長政策に伴った基本的な施策としてあそこに示してあります。  それからさらに経済が波をやたらに打つ、波動を大きくするということでは、順調な長期計画の遂行はできないということから、金融政策についてもこの波動をできるだけ狭める政策をとるというようなことも示されております。ですから、私どもの財政政策は、結局高度成長政策をとっている以上、ともすればおくれてしまう、不均衡になる社会資本の強化と申しますか、拡充と申しますか、常に民間との均衡をとった支出をやっていかなければならぬという点、社会保障の点、それからもう一つは、四つあそこに示されておりますが、やはり人的な要素の問題でございまして、技術を進める技術者を伴わせていくということが必要ですから、当然文教政策ということが必要となってきますので、結局予算の編成方針もそういう点を重点にして編成するというのが私どもの考え方でございます。ただその場合に、問題はそういう一連の政策も、日本の経済はともするとこれは国際収支というものの制約を受けることが多いのでございますから、国際収支の均衡というものは始終見てこの政策を実施しなければいけませんので、これは結局そのときどきの経済の推移によってこの予算の増減の問題、内容の問題は準備しなければなりませんし、また一たんきめた予算も情勢が変わってきた場合の執行の弾力性というような問題は、これは当然やらなければならぬことと思いますが、問題はやはり国際収支の均衡の上に貨幣価値の安定というものを維持しながら、今寄ったような施策を重点的にやるというのが、しょせんわれわれがやるべき財政政策であって、その方向で私どもはやっているつもりですが、無性格ではなくて、案外高度成長というものを目的としたりっぱな性格を持った財政政策をわれわれはやっているのじゃないかと私は思っています。
  55. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 水田大蔵大臣は今まで池田さんの言いそうなことを言っておりますが、笠信太郎の「花見酒の経済」を見ると、政府は所得倍増計画とか高度成長政策といっておるけれども、一体具体的にはどんなことをしておるのだ、何もしていないじゃないかとはっきり書いております。今までの政府の政策というものは、ちょうど東京都の交通のようなもので、にっちもさっちもならなくなってから、それダンプカーをやめ、それトラック来るな、昼間は観光バスをやっちゃいかぬというような、そういう無計画な考え方でやっておられるのではないか。なるほど現実の東京都の交通は麻痺状態でありますが、やはりそれには品川湾をある程度埋めるとか、あるいは今ごろになって官庁の公有地を開放するなどというような、もう十年前にやらなければならなかったようなことを今やっておるが、そういうようなことをやっておるのではないか。高度成長政策けっこうでありますし、所得倍増けっこうでありますけれども、それに伴うような政策を政府がやっておられるかどうか。これはおそらく水田大蔵大臣は良心的な人でありますから、まずかったなと思ってはおっても、どうも池田さんにたてつくと工合が悪いので、いろいろこういうところではうまく答弁を合わせていこうということではあるまいかと考えますが、そういうことであってはならない。少なくとも現在の日本の——あなた方減税政策をいろいろやっておられますけれども、みんな大蔵省の村山主税局長が考えそうな事務的なことばかりやっておる。それだから行き詰まってくるのではないか。きょうは大蔵大臣の時間がありませんから、あとで事務当局に聞くつもりでありますけれども、そういう点で政府が盛んに高度成長政策とか倍増計画をやっても国民はおどらない。私は日本の財政の中で、いいにしろ悪いにしろ、高橋財政とか、井上財政とか、そういうものには一つの流れがあって、日本の経済をゆり動かすような改革をやっていたと思うのですが、どうもそういう点については、何もそういう新しさがない。ただ行き当たりばったりでやっておるような気がいたしますことが一つであります。それから今度物品税の減税が出ております。私たちはこの物品税のような税金は、これは戦争中にできた税金でありまして、少なくとも五千五百億からの自然増収があるときには、こういうものは五十数品目に限ってとっておるわけですが、こんな不公平な物品税というのはおそらく一千億足らずであるから、この際思い切ってやめてしまったらどうか。そうすればなるほど水田大蔵大臣は物品税をやめた偉い大蔵大臣だということになると思うのですが、ちょびっとだけ下げてつじつまを合わせるようなこういう減税政策では国民にはアピールしない。そういう点で、一体減税なさる場合には、答申案がこう言ったとかああ言ったとかそんなつめのあかをほじくってどうこうするというようなけちなことをしないで、思い切って物品税をなくするような英断はできないものかどうか。今、物品税の法案が出ておりますから、いずれ村山さんあたりからそれを聞くつもりですけれども、そういうような抜本的な改革をやる御意思があるのかどうか。
  56. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その前に、行き当たりばったりというお話でありましたが、そうじゃなくて、やはり長期計画を立てれば、施策のものさしというものを作らなければなりませんで、今ものさしは御承知の通りたくさんできております。十年間にこういうふうにしようとするのなら、たとえば道路投資はこの十年間にどれだけやったらいいか、どういうふうに年次的な計画でやればとの計画にマッチするかとか、港湾はどういう計画でやるとか、治山治水はどういうふうな計画で投資を充実すればいいとか、社会保障の問題についてもしかりでございまして、今、政府施策の中には、それに伴った長期計画がたくさんできておりますので、やはりこのものさしに従った予算を組むということをやらなければ、これはもう計画それ自身が遂行できないということははっきりいたしますので、私どもは予算編成で、今むしろこの計画に縛られていろいろ予算計上をやっているというのが実情でございます。またそれがいいことで、いわば政治の計画化と申しますか、これはいいことだと思っております。そう見ますというと、今後十年間とはいわず、年次を通ってどれくらいの国の経費が必要であるかということも出てきます。そうしますと、それとやはり減税との関係が出まして、できるだけ国民負担を軽くしなければなりませんから、毎年減税はやっておりますが、ただ二度に全部国の所有財源というものを無視した減税というものはやれませんから、どの点から手をつけて、しかも均衡を破らない、税体系を守りながらどういうふうな手直しをやって減税をやっていくかということが、減税についての今当面の一番むずかしい問題でございまして、私どもはそのための専門家を集めた調査会を作って、そこで三年もとにかくやっているのですから、そういう意見を尊重しながら逐次減税をやっておるというのが実情でございますので、これをやったらいいとわかっていることはたくさんまだございますが、今言った長期計画に縛られている国の財政の果たすべき役割との関係で、おのずから減税のワクもその年々に調整していく必要があろうと思いますので、やりたいことはまだ減税でたくさんございますが、そういう制約のもとに体系的な減税をやろうというのが私どものねらいでございます。ちょっとことしは御承知のように少ないといわれるのですが、シャウプ改正以来一番大きい大幅か減税でございますので、今後この経済がうまくいって、国民所得のふえ方いかんによっては、これはもっと思い切ったことも私はやれるだろうと思っています。
  57. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 幾ら言ってもどうせ聞いてくれぬことでありますから、あまり言いませんけれども、先ほど有馬委員からいろいろ質問がありましたが、入場税の引き下げとかあるいは酒の税金が下がってくるというようなことは、これはお互いに感じのいいことでございます。ただ、一面そういう物価を下げるような形をとりながら、四月からは電車賃が上がる。まことに閣内でも物価を押えよという意見と、やむを得ず上げようじゃないかという意見とあるように私は聞いておりますが、一方においてはそういう減税をした関係の方は下がってくるけれども、やはり電車賃、汽車賃が上がる、私鉄が上がるということになるのですが、そういうことはどうも矛盾じゃないか。これはせっかく政府は物価の値下げをやるような運動をやりながら、一方においてはその反対の私鉄運賃値上げなんかやる、こういう非常に矛盾したような感じがするのであって、私たちは、物価問題というのは、現在いろいろな問題があって、春闘が盛んになったりあるいはまたいろいろ労働者の要求がふえるというのは、政府の所得倍増計画からとにかく物価が上がっておることは事実でございますが、そういう点の一貫した政府の方策がどうもないのじゃないかというようなことを心配されるわけです。こういう点で国民が不安のないように、大蔵大臣のこういうような政策、こういう計画で、減税をやると同時に物価は下げるんだ、だから上げる面はこういうようにやむを得ず上がるというような、そういう納得のいくような説明がどうも一般に理解されないのであります。こういう点は一体どういうような内容になっておるのか、この際、物価問題にからめてお伺いしたいと思うのです。
  58. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今の私鉄運賃の値上げはきめたわけではございませんが、今企画庁でこの問題を検討していることは事実でございます。物価を上げない、やむを得ないものはこれはやむを得ないというのが、今までの政府の方針でございまして、その点にずいぶん沿ってきておるつもりでございますが、料金の問題、サービス料の問題というものは、これまでやむを得ない部類に入っておりまして、そのつど一応の説明はしてきておりますが、やはり物価というものは、特に人為を加えたそういうひずみを作っておくということは、いろいろの点に影響があって、均衡発展を害する一つの要因でもございますので、理屈がついてやむを得ないというものを不当に押えるという措置は、私は適当じゃないと思っております。  さらにもう一つは、物価を下げるというために、国民の税金を犠牲にしたり、財政資金を不当に犠牲にして下げるというようなやり方も、本来の物価対策にはならぬ。結局、物価問題は、経済政策全般の問題として解決する以外にはないということを考えますと、政府は当面押えられるだけは押えるということについてできるだけの手を尽くしますが、やはり根本的には、今後の経済政策そのものによってこの物価問題を解決していくよりほかに仕方がない、私はそういうふうに考えております。
  59. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 物価問題は国民の生活に非常に密接な関係がありますので、当局に立つ大蔵省の見解というものはいろいろ大きな問題になると思うのでありますが、それと関連して、実は私病気で二週間ばかり休んだので、問題を堀委員に譲っておりましたが、山際総裁がここへ来られたときに、在庫見通しについて、日銀と経済企画庁との間にいろいろ矛盾があった。その当時山際さんは、三、四月ころに在庫は大体なくなるだろう、ところが政府の見解では、八、九月ころまでは大丈夫だろう、こういう二つの矛盾した結果が出ておりました。そういう点で、これは景気の問題と関連いたしまして非常に大きな問題になると思うのですが、一体大蔵省はどういう見解を持っておられるのか。これは現実的になかなかむずかしいことで、ソ連とか中共とかというような、国で経済をやっているところでは、そういうことがはっきりと出ると思いますが、自由主義経済をとる国ではなかなか出ないと思いますけれども、これは景気の問題とからんで、一体日本の在庫見通しがどのくらいになるか、そういう場合の国際収支はどうなるかという問題と関連して非常に重要な問題だと考えております。大蔵大臣は、こういう点について一体どういうお考えを持っておられるのか、一体政府は、どういう見解を持っておられるのか。これは日本銀行の山際さんはその当時、自分たちの考え方は控え目にしているんだというふうなことを言っておられまして、それ以上詳しいことを言われなかったけれども、日銀の調査と経済企画庁の調査が非常に違っておる。ただ一月、二月ならいいが、半年も開きがあるということは、国際収支上大きな問題になるというふうに私たちは考えておりますが、大蔵大臣はどういう見解を持っておられるのか、その点も承っておきたいと思います。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 在庫の見方についてはいろいろ問題がございまして、政府部内においても、これは当初各省別に見方が違っておりまして、そこで、やはり一応政府の見方を統一する必要があるということになりまして、企画庁を中心に大蔵省、通産省、政府部内の各関係者が集まって、いろいろの資料から検討した結果、見方の統一を一応はいたしましたが、それによりますと、正常生産を維持するに必要な正常在庫以外に、余剰在庫が一億ドル分ぐらいは原材料において余裕を持っておる、そこらの見方が妥当じゃないかということに今落ちついております。その在庫がどう食いつぶされるかという仮定の予想としましては、一−三月の間に半分ぐらいこの材料の食いつぶしがあるだろう。四月以降にあとの半分が食いつぶされる、こういう状況になるだろうというのが今までの私どもの考え方でございました。ところがこの一−三月の輸入の現状、生産の現状を見ますと、生産が頭打ちにはなって横ばい状態になっておりますが、当初予想したように生産が落ちていないということと、それからもし材料の食いつぶしが始まるとするなら、輸入はこの辺まで減るだろうという予想も少し狂って、輸入がその割に減っていないということになりますと、異常在庫が一−三月の間にどれだけ食いつぶされているかということが少し不明確になって参りましたので、一−三月の間にそう材料の大きい食いつぶしが始まっていないのではないかという私個人は気がしております。そうしますと、この食いつぶしは、まだ三月はわかりませんが、三月以後にこの食いつぶしがずれていくという形になるのじゃないかと今のところは考えております。
  61. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 それと関連して、国際収支は日銀では非常に軽視しておりますが、これも黒字を続けておりますが、いつごろになったら国際収支の安定ができるかということの見通しを大蔵大臣は持っておられるか、この点を聞いておきたいと思います。
  62. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国際収支の見通しは、以前、予算の編成期において立てた三十六年度見通しでは、御承知の通り経常収支において九億二千万ドルの赤字、資本収支において二億ドルの黒字、差し引き総合収支において七億二千万ドルぐらいの赤字になるんじゃないかというのが、この暮れの予算編成期のときに立てた見通しでございますが、これはそう大きい狂いはございませんが、そのときの見通しよりは国際収支はこの三十六年度相当改善されておりまして、一億ドル前後政府見通しよりは赤字が減るんじゃないかというふうに私どもは見ております。それに続いて今度は三十七年度ということになりますが、輸出入の見方は、今のところ、輸出の方は私は政府見通し通りにいくのじゃないかと思います。対米輸出が非常にふえて参りましたし、LCベースでは昨年に比べて四〇%も対米だけはふえている。全般の輸出についてもLCベースで見ますと、一割五分、一割九分というふうにふえておりますので、この調子でいくんでしたら、輸出はわれわれも力を入れておりますが、いくんじゃないか。輸入の方はこの生産の落ち方、伸びのとまり方、こういうものと関係しますので、今の程度の生産状態ということになりますと、輸入を四十八億ドル程度に押えるということが非常にむずかしくなりはせぬか。これはまだ二月までの生産の状態ですからわかりませんが、今の機械受注の減り方とかいろいろのものを見ましたら、三月以降ある程度やはり生産が落ちると思いますので、これを見ないとはっきりわかりませんが、輸出入の見通しは何とかいくということでございましたら、私はやはりことしの下半期にいって国際収支を均衡させるということは一応可能じゃないか、今のところはまだこの前に立てた見通しを変更するところまでは事態は全然いっていない、一応そういうふうに思われます。  それで、この一月前後の私どもの考えでしたら、材料の食いつぶしが急速に行なわれて、そうして生産がある程度落ちるということでしたら、国際収支の経常収支における回復も、四月、五月ごろ上半期に国際収支の均衡するという事態が一ぺんくるんじゃないかという見通しを一時立てたこともございます。これは早くくることは非常に好ましいのですが、私はやはり姿としては、これがあまりに早くき過ぎるということは、ほんとうの基礎の上に乗った国際収支の改善でございませんので、また七月、八月というところへいって生産がふえてくる、輸入がふえてくるという状態になってくると、政府の最初予想した回復期というものが時期的にむずかしい問題になりはせぬかと思って、むしろあまりに早くき過ぎることの方を好まない姿としておりましたが、今の様子で見ますと、そう急速にくるということでなくて、徐々に国際収支の改善の傾向が出てきましたので、安定した基礎の上に立ってのほんとうの意味の国際収支の均衡というものはやはり下半期にきてくれる方が私どもは気が楽だと思っております。
  63. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 見通しのことでございますから、いろいろ一切を解明するわけにはいきませんけれども、私は昨年の十月フランスへ行っておりましたときに、現場で——御承知のようにフランスはアルジェリアの問題で非常に不安定でありますけれども、経済のベースの方はなかなかくずれない。御承知のように、EECを中心として非常に経済的な発展を遂げておることに驚いてきたのでありますが、同時に、八月ごろから、私の知人がEECのことを非常に心配しておりまして、日本の経済の立ちおくれは、日本のEECに対する見解が非常に甘い、こういうようなことを聞いておりました。これは通産大臣の所管の点もありますが、少なくともその当時は、まだイギリスが入っておりませんでしたけれども、最近はイギリスもアメリカもこのEECに対して積極的な働きをしております。こういう点について、一体日本の政府はどういうような対策を講じておられるのか、これは国際収支と深い関係がありますので、これも一つ大蔵大臣から御意見を承っておきたいと思います。
  64. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 EECの動き、これに接近するアメリカの今の動きというものが、日本にとっていい材料であるか、悪い材料であるかということについては両面があろうと思います。日本も結局接近政策をとらざるを得ませんので、このEEC及びこのアメリカの連携に対しては今後積極的に接近するという方法を私どもはとるつもりでおりますが、今御承知のような状態で日本が自由化を進める、自由化を進めるためには関税を上げるという形で一時の期間対処しなければ、やはり国内産業との関係で工合が悪い面がございますので、今は関税を一時上げるという形で自由化の遂行を考えております。まあこれはやはり私は長続きすることじゃございませんので、長期的に、EECとの接近をはかるという方向を立てる以上は、これはお互いに関税を引き下げ合うという方向でこの問題を解決するよりほかございませんので、当面の政策と政府の長期的な政策というものを一応分けて、そのつなぎをどういうふうに解決していくかということが、これからの私どもの産業政策になるわけでございまして、今それらの点について、私ども真剣な検討をしておるときでございます。
  65. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 最後に、時間がありませんので大まかなことを二、三お伺いしておきますが、今自由化の問題については、非常に日本経済が重要な段階に来ておるということは大蔵大臣の言われた通りであります。それと関連して、一体政府は東南アジアの貿易の問題、それから中南米の貿易の問題をどのように考えておられるのか。もう一つは、いろいろ自民党の諸君は非難をしますけれども、中共との関係、一体この貿易の再開に対してはどういうような考えでやっていくのか。ただ行き当たりばったりにまかせて人を非難するだけしておられるのか。こういう点で私たちは中共貿易という問題についても、いつまでも捨てておけないように感じますが、一体どういうように大蔵大臣は考えておられるのか、大きな問題でありますけれども簡単にこの点御説明願いたいと思います。
  66. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は私は予算委員会でも申しましたが、前のことを言っては恐縮ですが、私が通産省におりましたときは、やはり政経分離という線に立って貿易はお互いに伸ばし合うという方針のもとにいろいろ施策をしました。チンコムの問題につきましても相当の踏み切り方を私どもは実際にして、日中貿易というものはある程度軌道に乗って伸びてきたことは御承知のことと思います。あの調子で続いておったなら、今ごろ相当の貿易にお互いがなっているはずでございますが、ああいう形で中止されたということは、今から考えても残念でございますが、この原因がどちらにあるかは別といたしましても、私はやはり日中貿易は必要であり、これを進めるためには、中国と欧州諸国とのあり方は政経分離という、政経可分という方向で現に解決しているのに、日本ひとり政経不可分という原則に縛られてこの問題が停滞していることがおかしいのであって、これは貿易とそのほかの問題は別だということで、やはり両国が一応この問題についての話し合いをして解決するんなら問題は急角度に進むだろうと思いますが、この問題がある限り、これは中共貿易をしたくてもこちらではできないというのが現状でございます。このできない原因が日本にあるのか中国にあるのかということは、私は問題だと思います。日本も中国との貿易を欲しているし、中国もその建設について日本との交流を必要としているという必要性が現実に中国にあることははっきりしておるのでございますから、お互いに経済提携ということについて踏み切る道をここで両方が開くべきだ、私はそういう考えを持っております。
  67. 小川平二

    小川委員長 広瀬秀吉君。
  68. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 最初に大臣はめったにお出にならないから一つ聞いておきたい問題があるわけです。本委員会におきましても原材料を中心にした在庫論争は非常に活発に行なわれ、またただいまも行なわれたわけでありますが、最近、私どもの危惧は、やはりそれと同時に製品在庫の問題がそろそろ問題になってきているんじゃないか。しかも過剰生産、圧迫がそういう形で出てきつつあるんじゃないかという危惧を抱いておるわけです。新聞等においてももうすでに製品在庫を問題にすべき時期が来ているということで、こまかい数字をあげて論評しておるところもあるようであります。この点はやはり輸出の問題とからんで非常に大きな問題になりますし、また過剰生産、圧迫というようなことがこういうことから出てくるし、また金融の問題としても新たなる製品在庫に対する金融というようなものも出てくるんじゃないか、こういうようなことも、これは先走った議論かもしれません。きょうはこまかい数字をあげての質問を省略しますが、この問題に対して大蔵省としてどういう工合に現状を押え、そうして生産との関係輸出との関係、こういうような貿易との関係において、先行きどういう見通しを持っておられるか、現状と見通しについて一点伺いたいと思うのであります。
  69. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 引き締め政策をやるという目的は、御承知のように内需の抑制にございましたので、伸び過ぎた経済をある程度ここで押えて、もう少しなだらかな成長率にする必要があるということからやったわけでございます。この引き締め政策がいろいろの面に効果を現わしてきましたが、直接生産の面にこれがはっきり響いてこなかったということが過去の実情だろうと思います。私どもは、十二月から生産が少し落ちて、そして製品在庫も多くなっていく、それに続いて生産が落ちるという過程を想像していましたが、一月の生産が落ちなかったかわりに、今あなたのおっしゃられる傾向が統計の上でずっと出てきた、こういうことでございますので、それに伴って在庫調整というものが初めてここ何カ月の間に行なわれる過程に入ってきたのだという見方をしています。ですからこの製品在庫という現象が出てきたのに続いて、私は三月ごろから生産が少し下がっていくという過程が、いつまで続くかわかりませんが、少なくとも二、三カ月そういう過程で在庫調整という段階に入ってきて、それからだんだんによくなっていく、いつかは一ぺんこの過程を通らなければ——引き締めの目的ではなかったわけでございますが、ようやくここへ入ってきたのだということですから、これはやはり見通しの上で織り込まれておる問題でございまして、悲観すべきことではなくて、これで初めて今までのブレーキをかける政策が効果を現わしてきたのだ、こういうふうに見ております。
  70. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 きょうはその問題だけやるわけにいきませんので、この問題は後日に譲ることにいたしますけれども、この問題で、政府が今日までやって参りました施策というものは、あらゆる問題について、金融の問題でもあるいは在庫論争を通じての問題を通しても、楽観しながら常に後手々々というようなことを私は懸念するわけでありまして、この問題については非常に先走った議論であったかもしれないけれども、この問題をやはり十分検討して対処することに遺憾なきを期せられたいという要望だけ申し上げて、次の質問に移りたいと思います。  一点は、この間大臣がおらないときに、租税特別措置法の問題について約一時間、主税局長及び天野政務次官に質問をいたしたわけでありますが、そこで、最終的に、今日行なわれている租税特別措置法というものによる減免ということが、少なくとも今日の税体系を相当ゆがめ、また複雑なものにし、そして何よりも税の基本である公平の原則というものを害している面があるだろうということを、私ども主張いたしたわけであります。この前もちょっと大臣がおいでになったときも触れたわけでありますが、政府としても、景気調整的な意味というものによって、これを一部を法律の実効の停止をするというような構想などもあるやに今日承っておりますが、諸役の情勢を考えて、とにもかくにもその他の条件ということを抜きにして、税という立場から考えて、租税特別措置というものが、公平の原則から見てこれを多かれ少なかれ害している。その目的というものによって、それは今日ある程度の妥当性というものも確かにあることはある。しかしながら、税の原則からすれば、公平の原則というものを害しているということを、大臣は率直に認むべきだと思うのですが、この間の質問では、その点明らかにならなかったのでありますが、一つその点についての大臣の率直な御見解を承っておきたいと思います。
  71. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 税の公平の原則ということから見ましたら、租税特別措置というようなものは、これは好ましいものではないと思います。それで、結局、政策的な理由で特別措置をとらざるを得ないというところに問題があるのでございまして、これを外国で見ますと、税制は税制で、公平の原則を貫いた基本税制というものがある。それで、必要に応じて、この税制について例外的ないろいろな措置を臨時にとれるという権限を政府が持っておる国もございます。そういう国は、一つの産業政策があるということになっておりますが、日本はそうじゃなくて、税制というものははっきりきまって、国会以外には動かせないというものになっておりますので、たとえば経済がどうなるというようなときにも、それに対処して、日本で言いましたら産業の管理省は通産省でございますが、通産省が臨機に税のやり方を通じて経済の調整とかあるいは助成というようなものをやる権限というものがない。だから、通産省には実際の生きた産業政策というものを行なう力がないんだと、まあ日本では言われていますが、そういう面が多分にあろうと思います。結局、そうなると、いろいろな帝業政策そのほかの格差解消とかというようないろいろな総合的な政府の施策を、やはり税で行なわなければならぬという部門がある以上は、これはやむを得ないので、この国会の御審議を願って一つ一つやっているのですが、本来ならもう短期のこういう例外措置というようなものは、私は、ある幅で政府に権限を与えられておって、そこで常時やる、やってすぐに、それが目的が済んだらやめるというふうに、短期的に運用する制度にして、その幅ぐらいの権限が政府にあるということがほんとうは、産業政策を弾力的に行なえることになるのじゃないかと私自身は考えておりますが、そうではございませんで、今のようなやり方をしております。従って、これは公平理論からいったら全部感心できるものではございませんが、この内容を見ると、一番大きいのは、貯蓄奨励のために特にとっている措置の金額が一番大きいし、それから、内部留保の充実というようなことで、いろいろな価格変動準備金とか、退職給与の引当金とか、異常渇水準備金とか、違約損失補償準備金というようなものが、その次に大きい金額になっておるものでございますし、あとは科学技術をここで伸ばすというためのいろいろな償却費についての問題、もっぱら技術振興、設備の近代化というものを通じたもので、これは大資本だけの問題じゃございませんが、こういう技術の復興のための措置、それから産業の助成措置、重要物産所得の免税とかいろいろあって、これが相当大きいように私どもは考えていましたが、総領が三百八十二億円の問題で、そのうちの半分以上は、輸出を伸ばすための輸出所得の特別控除というものが半分以上の金額になっているというようなことで、そのほか農村問題、農業問題の特別措置とか、 いろいろ見ますと、確かに税制理論からいったら公平を害するということは言えましても、一つ一つ見ますと、政策として今の時期にこれは必要か不必要かといいますと、事実上でほとんど国会の論議で、こういうことをやるべきじゃないか、こういう問題に対してはこう対処しろ、石炭についてはこうせいとかなんとか言われたものの集積みたいなものでございまして、これは去年大幅な整理をしましたが、この実情を見ますと、これはみんな政策的な理由を持っておりますので、これは効果が終わり次第もうどんどん改廃すべきものだと思いますが、今累積されているものを見ますと、そう私は理屈のない、悪いものが今残っているとは考えていません。去年悪いと思うものは相当やって整備をしたのですが、ことしはさらにまたつけ加えられているということでございまして、もう済んだものをどんどんやめると同時に、これは政策的な理由から出てくるものでありますから、ほんとうに緊急必要だと思われる新しいものとの置きかえというようなことを政府が十分気をつけてこの改廃をやればいいので、どうも内容を一つ一つ見ますと、国会の要望が特に強かったものの累積みたいな気がするのです。
  72. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まあ前段の、税の原則からいえば公平を害しているということを認められたわけでありまして、その点だけきょうは確認をいたしておきます。それで、あと、どれもこれもということと、それから大臣のくり言みたいな形で、どれもこれもこう見てみれば必要だというようなことを言われましたし、また、外国等では行政権限が、ある程度弾力的に産業政策として税制を利用することができる建前になっていると、いかにもうらやましそうに言っているわけですけれども、その問題は憲法の問題にも触れるわけでありまして、租税法定主義ということからいえば、大臣が今幾らそういうことを考えてもできる建前ではないわけであります。しかしそうやっていれば、むしろ政府に権限を与えて弾力的に、政策目的というもの、それから時限というものをきちっとして、そういう効果のはっきりしたもの、そしてそれを何年くらいやればいいんだというようなめどをつけてやることが、むしろ行政権限にまかせられればできるというお考えだろうと思うのだけれども、しかしそういう考えがあるならば、もっと当初つけられた期限というようなものも、やはりこれは相当な検討の上につけられたものがどんどんどんどん延ばされる、そういう必要性というものは経済を成長さしていこうということから見れば、これはほとんど無期限に続く。これはここで終わりだ、日本の経済の発展はここで終わりだというようなことはあり得ないのです。何らかの新しい理由、新しい発展の要素というものはどんどん出てくる。これもやはりそのために必要だ、必要だこういうことでとめどもなくのべつまくなしにずっと半永久的な既得権化していくというようなことが税制調査会からも強く指摘されておるわけであります。去年整理されたといいましても、金額的にはごく微小なものです。せいぜい二百億ぐらいのものだ。それでむろん去年よりも減収額においては二百億も増額をされておる、こういうようなことであります。そういうようなことがどうしても私どもとしては納得できないのであって、これはやはりほんとうに必要だというものならば、基本税制の中に、そういう方向で取り入れるというようなことで整理をするということも、これはわれわれとしても、ほんとうに必要性のあるものについては、全部が全部何もかも反対しているわけではない。非常に損金性の強い、たとえば退職引当金のごときものを私どもも否定しようとはいたしておりませんし、あまりにも特定の企業に対して、あるいは特定の大法人にというような形のものがどうしても現在の制度で出ているというところに、私ども強く問題点を指摘するわけであって、そういう点については、もう少し前向きのかまえでこれを整理する方針、そしてまたほんとうに必要なものは基本税制に組み込んでいくというような、ほんとうにこれをそういうような形でやっていく、また弾力的に運用するという必要があるならば、そういうような法律をそのつど出してくればいいと私は思う。これはやめる、これはやるというような形で、これは国会を信用しない立場、それと同時に行政権を信用しない立場、そういうような両者すくんだような形でなしに、そこらのところは観念的にも整理をして国会へ、やはり、弾力的に形式上ぶち切った方がいいと思ったら堂々と出してこられたらいい。それを法律でやればいいわけでありますから、そういうようなことでこれをのべつまくなしに今の形のままで、これもやはり今の経済情勢に照らして必要だ、必要だ、こういうことではやはり今日の国民の納得を得られない。非常に税制全体に対して、国民が喜んで納得して税金を納めるという気持にはなれないものになっている。こういう姿が出ているわけであるから、その点についての大蔵大臣の整理方針、改廃方針というようなものについて、もう少し明確な御見解を聞かしていただきたいと思うわけです。
  73. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御趣旨の点については同感でございまして、昨年そういう整理をいたしましたが、さらにまた部内においても十分検討しまして、明年度においてもできるだけの整理、改廃をしたいと思っております。
  74. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 まあ大いに同感だということでございますので、その点確認をしておきまして、次の問題に移りたいと思います。  通行税の問題で前に一度質問をして、まだ若干質問が残っているわけなんですが、大臣に一言だけお伺いしておきたいと思います。今日、通行税で、国鉄の場合に一等料金あるいは特急料金だとか、寝台券だとか、航空機の場合は全部、汽船の特等というようなものが課税されているわけでありますが、今日あれが制定された経緯から考えまして、この当時は戦時課税でありますから、とにかく汽車に乗って旅行するなんていうことはある程度奢侈的なものだ、ぜいたくだというような、食って働くことだけが当時国家から要請される国民の立場であって、そういうような点もあったし、もちろん戦時課税としての財源を調達していくという要請もあったろうと思いますが、こういうような時代になれば、旅行目的なんていうものも、非常に時間をかけないで行くという必要性というものが、時代の発展、経済の発展とともに要請されてきているのじゃないか、こう思うのです。そういう中で、依然として通行税をとる。諸外国でも課税をしている方がむしろ少ないわけでありますが、そういうような点から、この問題について、今日鉄道関係とかあるいは航空機関係とで租税負担の不均衡の問題もあるわけでありますが、その問題と、もうそろそろ通行税というものを廃止してもいいような段階に来ているのじゃないか、こういうようなことについて、一つ大臣の御見解をお伺いしたい。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 確かにそういう気もいたしますが、今この通行税は一等客に限っておりまして、船舶も汽車も一般の乗客に対しては通行税をかけていない。で、一等客がどれくらいあるかと申しますと、結局乗客の〇・八%という少数だそうでございますので、まあ特に等級を区別してあって、利用者が大衆じゃなくて特殊だということになっている現状なら、まあそこらへ通行税をかけるというくらいはやむを得ないのじゃないか、こう思っております。
  76. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この問題は深くお伺いはしないのですが、当時奢侈税的な気持というものが相当強かったということでありますが、今日やはり大臣は通行税は一種の奢侈税と考えられますか。
  77. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっきも申しましたように、国民生活の内容が向上するに従って、これが日常必要的なものであるか、奢侈的なものであるかという観念はどんどん変わってきております。昔はそういう考えからやったことでも、もう今の実態から見ましてそうすべきじゃないというので逐次整理してきたわけでございますが、まだやはりそういう感情というものが一部は残っているのが今の世間の一般ではないかと思っております。この汽車も飛行機も船も一等へ乗るのが当然だというような国民生活の向上ができたというときになったら、これはもうあたりまえで、こういうものに通行税をかけるということは不当だということになろうと思いますが、今の日本の国民生活の実態からいったら、まだ特殊な一等客には少しの通行税がかかって一般の人と区別されてもやむを得ないじゃないかという感情はまだ少し残っているのじゃないかと思います。
  78. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そこで、今の大臣のお答えをそっくり私の方でいただいて、今度は別な方向と関連をするのですが、航空機の場合に、今度は特別措置で五%に軽減をされたわけでありますが、これとの関連において、まあ政策目的として航空機会社の競争力をつける、あるいは経理状況をよくするというようなことで、そういう目的は確かにあることはわかります。私どももこれはわかるのですけれども、しかし担税力の点、あるいは乗った人が受けるサービスの質といいますか、こういうものを比較してみますと、これはもう格段の差があるわけです。国鉄の特急の一等に乗って福岡まで行くと一昼夜もかかる。航空機に乗れば、今日の国内線の料金ではほとんど差がない。乗客にまでいろいろな形のサービスを航空会社でやっている。それで乗車人員、それから飛行機に乗る人のふえ方なんかを見ますと、国鉄の一等に乗る方はどんどん相対的には減っておる。これは数字としては若干ずつふえていますが、そのふえ方というのは非常に鈍化しておるわけです。そして国鉄の一等というのは乗車効率は大体五%くらいで、一等車だけで原価計算をしたら、これはおそらく赤字に近い、あるいは赤字になっているのじゃないかと思うのです。航空会社の方は、数年前に比較して、飛行機に乗る人たちが人数として三倍、四倍というようにふえてきています。ここで一々数字をあげませんが、そういう数字が出ておるわけです。そして航空会社は、国鉄で行けば何十時間、それが航空機で夜間割引あるいはアベック割引、新婚割引を利用すればこうでございます、家族割引を利用すればこうでございます、福岡まで行ってもほとんど千円差もないくらいのサービスが行なわれておる。こういうような状況になれば、今大臣がお答えになられたことをそっくりそのままいただけば、これは一等と二等の乗客を差別をするということと、もう一つ今度は横に手を押ばして、航空機とのバランスということを考えれば、これは差別をしておく理由はないのじゃないかということだけは少なくとも言えるのじゃないかと思うのです。二等と一等との対比において、その人たちに担税力ありと認定をされ得る若干の理由はあると思います。それを肯定いたしましても、航空機との対比においては、差別をするほどの積極的な理由はないのじゃないか。航空機会社では近く運輸大臣に、料金を一部引き下げて、それでお客をふやしていこうというようなことまで今日巷間伝わっておるわけです。そういうようなところまでくれば、相当航空機会社の経理の状況も改善されつつある。国際競争という面では若干まだ保護の必要があると思われるが、そういうようなものは、そのものとしてまたいろいろ政策はあり得ると思うのです。そういうようなことは別途やるといたしまして、租税相互間における公平の原則ということを考えるならば、大臣の今のお答えからしても、私は当然そういうバランスの問題を解決していこうというような気持になられるお答えが得られると思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  79. 村山達雄

    ○村山政府委員 非常に技術的な問題がからんでおりますので、ちょっと申し上げますと、実は航空会社に対する軽減税率は、国鉄との関係で安くしておるというふうには考えていないわけであります。戦後発達した日本の航空会社は、外国に比べましても非常に立ちおくれており、その施設状況を見ましても、税法上許されておる減価償却を十分にやっておりません。ややもすれば赤字になっておるので、そこに着目しておるわけであります。おっしゃるように、航空料金と一等の料金を比較いたしますと、航空機の方が高うございます。これは特別の割引は別でありますが、通常の場合において高い。この意味で乗客自体の担税力を料金で見るという点から見ますと、今先生のおっしゃったような点が確かに一つあると思います。しかし、そこのところを考えるのでなくて、しばらくの問企業を助成する必要があるという意味で、租税特別措置で三年間やっておるわけであります。一方国鉄にどれだけの打撃を与えるかという問題の評価でありますが、御案内のように一等には限ってございますが、大体千万をこえておると思います。一方航空機の方は年間で百万足らずだろうと思いますが、全体の乗客は一兆七千億くらいになっておるわけであります。国鉄の採算という点から考えますと、御案内のように一等客からは採算をとっていないで、全体の旅客輸送と貨物輸送で見ておるということでございますので、その面からどうもおかしい、片方の乗客のあれが高いのじゃないか、だから一等との比較において税率を下げるのはおかしいということは、それはそれなりの議論でありますが、特別措置を講じておりますのは、実際はそういうような先ほど申し上げような理由からやっておりますので、もうしばらくの間この措置を続ける必要があるのじゃないか。だんだん航空会社の経理状況もよくなっておりますので、漸次解消して参ると思いますが、もうしばらくの間この措置を続ける必要があるのではないかと考えております。
  80. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私たちは五%の軽減税率というものを、今日ただいまの段階で全く反対だと言っておるわけでもない。国鉄に一〇%をとるということとの関連でちょっとおかしいじゃないかということなのです。大臣、この点だけ一つお答えを願いたい。
  81. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もそういう感じがしましたので、役所の中で主税局長に説明を求めましたら、今のような説明をされて、何だかわかったようなわからないようなことで、そうかということになっておるわけでございますが、さっき申しましたような均衡ということから見ましたら、やはりこちらの方が少し高くてよいような気がします。
  82. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣がその気ならば、この辺できょうはやめておきます。  次は、たばこの税金の問題ですが、これは税法の中に別に入っておる国庫納付金という形になっておりますが、今日六六・四%の平均負担率になっておる。これは税金と全く同種のものだとわれわれは理解しております。大臣はどういうたばこを吸っておるかわかりませんが、ピースを一日に一個ずつ吸っても一年には約一万円になるはずです。新生もやはり三百六十五倍しますと九千八百五十五円になる、こういうような状況です。この問題で去年大臣は私どもの質問に答えて、物品税を中心として間接税に手をつけますということを大胆に言われて、今年実現をして、その点は水田大蔵大臣の大へんな大手柄であろうと私どもは理解しておるわけであります。そこで、政府の物価の総合対策の中にも、たばこの引き下げということがあり、特に低所得階層が高額を負担するという形になりますから、物価対策の面からもそういう問題が取り上げられてきております。中山税制調査会長も、これは当然来年あたりはやるべきであろうということをおっしゃっておりますが、この点について、大臣は来年これをやられる気持があるかどうか、この際一つその御決意を御披露いただきたいと思います。
  83. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 実は今年ある程度たばこに手をつけたいと思いまして、特に低所得者層と言っては失礼かもしれませんが、嗜好の問題ですから必ずしも所得にこだわらないと思いますが、大衆たばこについては一応考えたいということで臨みましたが、税制調査会の審議の過程におきまして、専売の益金率というものが戦前と比べて特に現在多くなっているという事情がないこと、それから外国との比較において、日本のたばこが特別に高いと言えないいろいろな問題があること、それから最近葉たばこの値上げ、その他経費が非常に多くなっているときにかかわらず、たばこの値段はここ何年か据え置かれて、最近値上げしておる問題ではないということから、今回はほかの物品税その他の減税を中心にやって、たばこの値下げの問題についてはこの次の問題として検討しようということになって、今度取りやめたという次第でございますので、これは引き続き私どもはこの次の課題として研究したいと思います。
  84. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 来年やりますか。
  85. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 少しはやりたいと思いますが……。
  86. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 少しはやりたいということは一応ここで言質としていただいておくつもりであります。  その次は過当広告の問題です。去年の、証券会社今日は、という過当広告といいますか、最近では何とかを飲んでハワイへ行こうというようなことから、何かキャラメル一つ買っても自動車がもらえるというように、最近広告宣伝費というものが国民経済の中でも非常に大きなウエートを占めつつあるのじゃないか。マスコミ、マスセール、マスプロというような三マス時代だと言われることを反映して、特にマスプロ、マスセール——このマスセールの段階においてやはりマスコミが完全に利用されて、今一、二の例を引いたわけでありますが、そういう過当広告というか、経済現象として広告が非常にオーバーな形で出てきている。しかもそれがばかにならない金額になっているのじゃないかと思うんです。こういうようなものに対して、アメリカ型の経済ということで非常に宣伝が行なわれるということはある程度やむを得ないことだし、またそういうものが損金にされるということも私どももまるきり反対するわけではない。しかしながら、まさにオーバーだと思われるようなものにまで、これを経費に落としていくというようなことは許されない段階じゃないか。おそらく広告費だけで二千億をこえているだろうということは、今日大体見方として通説になっているようであります。こういうようなものを税源として捕捉して、この面で過当広告を抑制しながら、新しい税源を発見するというようなことは、国民感情にも非常にぴったりくるし、それで宣伝の中から特別に新しい生産力というものが生まれるわけでもない。経済発展というものは、そういうオーバーな形まで野放しにして、それでいいのだというものでもないと思うんです。こういうような問題はこれは新しい問題でありますけれども、私はこういう過当広告に対する税を課するという問題を、この際取り上げることが非常に必要な段階にきているのじゃないかという気がするわけであれまして、この点について検討したことがあるかどうか。そしてまたそういうことに対する決意をされるというような気持が幾らかでもあるかどうかというような点について、お伺いしたいと思います。
  87. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 検討したことはございます。特に広告に関して、広告税の問題も私どもは検討しておりますが、これぐらい抵抗の強いものはございませんで、われわれも理論としてはある程度の考え方を持っておりますが、これが実際問題としてなかなか抵抗の多い問題でございますので、依然として検討の段階ということになっておりますが、詳しい今までの問題については、主税局長から……。
  88. 村山達雄

    ○村山政府委員 御案内のように、広告税は戦前は地方税という形でございます。たしか昭和十五年だったと思いますがこれを国税に移しまして一時やりました。戦後になりまして、もうそういう時代は相済んだということにいたしまして、地方の法定外独立税という形で現在残っております。従いまして、財政の貧弱なところ、あるいは非常に広告の目につくところは、地方で任意に法定外独立税を自治省大臣の許可を受けて起こし得るわけでございます。現在起こしておりますのは八市町村でありまして、三十六年度収入見込み額で約一億四千万になっております。国税の面で広告費について何らかの規制をする必要があるかどうか、あるいはそれを特別の財源として課税する必要があるかどうか、いろいろ検討したわけでございます。しかし、この経費を抑制するという問題になりますと、これはまさに産業上の経費といわざるを得ない。その点が交際費とはかなり損金性において違うわけでございます。そこで、これはやるとしても将来の問題として、たとえば景気調整の問題の一翼としてその問題を考えるかどうか、もう少し将来の問題として考える。今景気調整的な方向でやっているのはあまりございません。従って、そういう断面の一つの側面として今後検討すべきではなかろうかと考えております。今度はそれを税源として課税することがどうかという問題でございますが、これもやはり今の営業というものと、こういう経済態勢のもとにおける広報活動というものをどう評価するかという非常にむずかしい問題とからんでおりますので、これもあわせて検討して参りたい。  ただ、今度の所得税法の提案でやっておりますのは、最近、おっしゃいましたように、広告の一形態であります懸賞金が非常に目立っておりますが、こういうものがとかく課税漏れになるおそれもございますので、今度は支払う段階で一割の源泉徴収をいたします。そういうことを入れまして、あとで支払い調書をちょうだいいたしたいということにしてございます。今度の改正ではとりあえずそこまで手を打っておりまして、それらむずかしい問題については将来の問題として検討していきたいと思います。
  89. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 この問題は非常に検討する余地のある問題だと私どもは強く思っているわけです。大臣は非常に抵抗が強いということを言われたわけですが、抵抗いかんで税制がきまるという、裏を返せばそういうことになりますので、これはやはり税制当局として一つの方向をきめたら、これが正しいという結論が検討の結果出れば、抵抗に対しても説得をするだけの政治的な手腕力量またそういうかまえ、そういうものがこれは当然必要でありまして、その点は一つ抵抗があっても、われわれの方もこれからこの問題を大いに細部にわたって、これを新設すべきだという立場で議論を展開したいと思っておりまするので、政府の方でも十分一つ検討を進めていただいて、抵抗という点については、これはやはり当然理屈として成り立つならば、私どもとしては政府の側に立って、そういう方向に協力することにやぶさかではありませんので、これはぜひ積極的に検討を進めて実現の方向に持っていっていただくように要望を最後に申し上げて、一応私の質問は終わります。
  90. 小川平二

    小川委員長 次会は来たる九日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会      ————◇—————