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1962-02-21 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十一日(水曜日)    午前十時十七分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 鴨田 宗一君 理事 黒金 泰美君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 平岡忠次郎君 理事 堀  昌雄君       伊藤 五郎君    宇野 宗佑君       岡田 修一君    金子 一平君       田澤 吉郎君    竹下  登君       津雲 國利君    永田 亮一君       濱田 幸雄君    藤井 勝志君       坊  秀男君    吉田 重延君       岡  良一君    久保田鶴松君       田原 春次君    芳賀  貢君       広瀬 秀吉君    武藤 山治君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (関税局長)  稲益  繁君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君         国税庁長官   原  純夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    澄田  智君         通商産業事務官         (通商局通商調         査課長)    濃野  滋君         参  考  人         (日本銀行調査         局長)     高木 良一君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月二十一日  委員田澤吉郎君、藏内修治君、宇都宮徳馬君及  び田原春次辞任につき、その補欠として賀屋  興宣君、宇野宗佑君、濱地文平君及び勝間田清  一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員宇野宗佑君、濱地文平君及び勝間田清一君  辞任につき、その補欠として藏内修治君、宇都  宮徳馬君及び田原春次君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 二月二十日  在外財産補償に関する請願坂田道太紹介)  (第一二九六号)  同(筒橋清一郎紹介)(第一二九七号)  同(始関伊平紹介)(第一四一二号)  同(竹下登紹介)(第一四九三号)  政府関係金融機関資金増額に関する請願(下  平正一紹介)(第一三〇九号)  同(井出一太郎紹介)(第一三七二号)  葉たばこの収納価格引上げ等に関する請願(下  平正一紹介)(第一三一五号)  同(井出一太郎紹介)(第一三七一号)  退職年金増額に関する請願岡良一紹介)(  第一四一一号)  旧令による共済組合等からの年金制度に関する  請願平岡忠次郎紹介)(第一四一三号)  同(松山千惠子紹介)(第一四一四号)  嗜好飲料清涼飲料物品税撤廃に関する請願  外五件(八木徹雄紹介)(第一五六八号)  旧法による共済組合年金増額に関する請願(  足鹿覺紹介)(第一六一三号)  合成清酒名称変更等反対に関する請願井手  以誠君紹介)(第一六三四号)  同(石田宥全君紹介)(第一六三五号)  同(石村英雄紹介)(第一六三六号)  同(稻村隆一君紹介)(第一六三七号)  同(加藤清二紹介)(第一六三八号)  同(栗林三郎紹介)(第一六三九号)  同(古賀了紹介)(第一六四〇号)  同(佐野憲治紹介)(第一六四一号)  同(楯兼次郎紹介)(第一六四二号)  同(野口忠夫紹介)(第一六四三号)  同(細迫兼光紹介)(第一六四四号)  同(堀昌雄紹介)(第一六四五号)  同(松井政吉紹介)(第一六四六号)  同(松井誠紹介)(第一六四七号)  同(三木喜夫紹介)(第一六四八号)  同(山本幸一紹介)(第一六四九号)  同(井手以誠君紹介)(第一六八二号)  同(石田宥全君紹介)(第一六八三号)  同(石村英雄紹介)(第一六八四号)  同(稻村隆一君紹介)(第一六八五号)  同(加藤清二紹介)(第一六八六号)  同(栗林三郎紹介)(第一六八七号)  同(佐野憲治紹介)(第一六八八号)  同(楯兼次郎紹介)(第一六八九号)  同(細迫兼光紹介)(第一六九〇号)  同(堀昌雄紹介)(第一六九一号)  同(松井政吉紹介)(第一六九二号)  同(松井誠紹介)(第一六九三号)  同(三木喜夫紹介)(第一六九四号)  同(山本幸一紹介)(第一六九五号)  清涼飲料嗜好飲料物品税改廃に関する請願  (赤松勇紹介)(第一六八一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一三号)  国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案内閣  提出第七五号)  酒税法等の一部を改正する法律案内閣提出第  八二号)  関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正す  る法律案内閣提出第七九号)  金融に関する件      ————◇—————
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、高本日本銀行調査局長参考人として出席しておられます。  参考人には御多用中のところ御出席をいただきありがとうございます。  それでは、質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  3. 堀昌雄

    堀委員 本日は、日銀からもおいでをいただきまして、実は過般総裁においでいただいたとき以来、御承知のように現在の経済状況についていろいろと問題点がたくさんあることが明らかにされたわけでありますが、その中の在庫投資設備投資及びこれに関連する金融のいろいろな諸条件の問題について、本日は、企画庁、それから大蔵省日銀及び通産省の御意見を少し承りたいと思っているのです。  まず第一に、これは企画庁にお伺いするのがいいと思いますが、二月中旬の輸出入信用状の開設の状況をちょっと伺いたいのです。
  4. 中野正一

    中野(正)政府委員 実はまだ二月の信用状状況は、一カ月ごとに御承知のように発表することになっておりまして、日銀筋新聞あたりにちらちら出る程度でございまして、われわれとして正確に数字を受けておりませんので、ここで私からちょっと正確なお答えを申し上げかねるのであります。
  5. 堀昌雄

    堀委員 ちょっと日銀に伺いたいのですが、きょう政策委員会——きのうでございますか。
  6. 高木良一

    高木参考人 昨日でございます。
  7. 堀昌雄

    堀委員 昨日の政策委員会で、中旬の信用状収支の差はおよそ一千万ドル程度だというふうに、ちょっと新聞で拝見をしたのですが、日銀でおわかりの範囲で一つお答えをいただきたいと思います。
  8. 高木良一

    高木参考人 実は私も、きのう政策委員会で私の方の前川外国為替局長説明をしたということを新聞で知りました程度で、中旬までの信用状数字をよく承知しておりませんが、これは私の方でも月末現在で発表いたしますだけで、途中担当の局長政策委員会などに発表することはございましょうけれども、われわれ関係部局にもその収支数字を通報して来ておりませんので、ここで今数字を持っておりません。従ってその数字をここで御報告するだけの材料を持ち合わせておりませんので、申しわけございませんが、ちょっとこの席で私自身お答えいたしかねます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 実は私、新聞にかなり出ておることでありますし、これはある時点ある時点で現在の動きつつある経済情勢の論議をいたしますときに、私必要な問題点だと思ったものですから——では大蔵省の方で一つ
  10. 澄田智

    澄田説明員 ただいままでの信用状収支でありますが、これは先ほどからお話のありましたように公表しているものではもちろんありません。一応事務的に何日現在ということで、そこまで入っております数字を事務的に取りまとめたという意味でお聞き願いたいのですが、今私が持っておりますのは二月二十日現在でございます。現在の信用状収支輸出が一億九千八百万ドル、輸入が一億八千五百万ドル、従いまして、この差は千三百万ドルになりますか、二十日現在の数字でございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 新聞では約一千万ドルと出ておりますが、一月の状態に比較しますとだいぶ輸入がふえて参っておるのではないかという感じがいたします。  そこで、次に企画庁の方にお伺いをいたしたいのは、皆さんの方がことしの三十六年度実績見込みをお出しになって、鉱工業生産年率伸びを一八・五%増というふうに出しおいでになるわけですが、大体これは私どもが拝見したところでは十二月の十二日かなんかに出ましたものと、一月十六日の閣議決定とはこの部分については差がなかったように感じておるわけです。そこで、一体一月十二日現在で実績見込み立てられたときは、皆さんのお手元にあった鉱工業生産指数は一体何月までのがあったのか、それをちょっと伺います。
  12. 中野正一

    中野(正)政府委員 今御指摘がありましたように、三十六年度鉱工業生産見通しは、昨年の十二月に予算の編成のもとになる見通しを作りましたときと、ことし年が明けてから正式に閣議決定したものと数字が違っております。一八・五%というのは昨年の十二月に立て実績見込みでございます。その後十一月の数字が実はわかりまして、十一月が二九九・八というふうにわれわれが想像しておりましたものよりもやや高かったものでございますから、この実績を取り入れまして、三十六年度中には一月くらいからもちろん生産は下がるというふうに見ておったのですが、十一月がちょっとわれわれの予想よりも高い実績が出たものですから、それによって修正をいたしまして一九%という見通しを作っております。十二月は御承知のように二九三・六、これは速報でございます。近く通産省の方で確報出します。それはいつも速報より確報の方が幾分高くなりますから、もうちょっと高くなると思いますが、十二月にはわれわれの予想しておったよりもちょっと下がり過ぎるという形になっております。
  13. 堀昌雄

    堀委員 ただいまの二九三・六というのは季節調整済みでしょうか。
  14. 中野正一

    中野(正)政府委員 十一月は季節修正済みで二九九・三、十二月が二九三・六、季節修正済みでございます。
  15. 堀昌雄

    堀委員 そこで、ちょっと私の資料見方が間違ったのですが、その一九%をお出しになった一月、二月、三月の見通しは大体どういう形で見ておられましょうか。
  16. 中野正一

    中野(正)政府委員 一応今度の見通しのときに、われわれの方も今申し上げました昨年の十一月の二九九・三をピークにいたしまして、大体年率九%くらいの線で下がっていくんじゃないかというふうに見ております。年率九%というのは、結局下がる線を一年間とりまして、一年前と一年後の数字を比較しますと九%下がる。これは下降線でございます。大体そういう線で五、六月ぐらいまで下がっていく。それからゆるやかにまた上がっていくというような線を描いていきますと、三十六年度が三十五年度と比べて一九%アップくらいの数字でとどまれば、年度間として五・五%三十六年度中に上がる、こういうふうな五・五%に合わせますカーブを描いてみると、大体そういうことになるんじゃないかというふうに考えております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、今のお話を聞いておると、三十七年度伸び率五・五%に合わせるためにカーブを作って、そのカーブに乗せて三十六年度実績見通し出してきた、こういうことになるのですか、終わりの第四・四半期については。
  18. 中野正一

    中野(正)政府委員 そういうことでなくて、現在の引き締め政策がだんだん浸透しまして、これは先般も御説明いたしましたように、投資財等生産出荷等に相当現われておりますし、それから消費需要については影響が十分に出ていないようでございますが、そういう引き締め基調の浸透というものを見まして、需要動向等を見て、鉱工業生産が一−三月には大体この程度に下がっていくんじゃないだろうか。ただ、それがはたして五、六月ぐらいに底をつくものなのか、このくらいゆるやかな——八%か九%の年率下降率は比較的なだらかな下降率なのです。これを三十二、三年のときに見ますと、下降率が大体八・四%で三十二年の五月から頭を打ちまして、あと十一カ月間下がったのです。それで三十三年の四月に底をついて、それから年率一五・三%くらいの上昇で上がっていったというようなところから、学者とか評論家によっては、なだらかに下がるともう少し下がって底をつくときが先になるんじゃないかということを言われる人もいるわけです。たとえば二十八年−三十年の数字を見ますと、二十九年の鉱工業生産は一番高くて、それから非常に急カーブで一七・七%というような線で下がって、そのかわり五、六月で底をついておるわけであります。そういうことは議論はあると思いますが、われわれの方は一応第一・四半期から第二・四半期にかけての辺で底を打って一二%くらいの今度は上昇で上がっていけば五・五くらいになる、こういうことで、一−三月については大体現在の情勢からそういうような線をたどっていくんじゃないか。これはまだよくわかりませんが、一月の生産も、昨日ちょっと調べてみたのですが、電力の需要なんかはだいぶ落ちております。それから二月あたりになると鉄鋼生産が減産するとか、だんだん影響が現われて二、三月にはある程度下がってくる。またこれは下がってこないと国際収支の方がわれわれの見通しの通りになってこないものですから、その点は非常に心配しておるわけです。
  19. 堀昌雄

    堀委員 そこで、ちょっと話を具体的にするために、年率九%で下がった場合、一月、二月、三月は大体どのくらいの数字になるのでしょうか。
  20. 中野正一

    中野(正)政府委員 ちょっとその点は、数字は一応われわれの方は作っておるのでございますが、すぐ実績が出ますから、申し上げても、当たらないじゃないかというのでまたおしかりをこうむることになると思いますが、一応われわれの方は数字的な計算はしておるわけです。今申し上げましたように、十一月は二九九・三で、その前の年の十一月に比べると二二%上回っておるわけです。大体今まで、昨年の四月からずっと二〇%以上の前年を上回る鉱工業生産水準にあるわけですが、これをピークとして、十二月が二九三・六というふうに、これは一・九%の下落でございます。一月以降も引き締め基調の堅持に伴って漸落を予想されるのでありますが、御承知のように消費が非常に堅調でございますので、生産活動はまだなかなか活発じゃないかというので、一応一−三月の水準は十−十二月の線からいって約二・三%程度下がるというふうにわれわれは見ておりまして、これは数字で申し上げますと、当たるか当たらぬかわかりませんが、二八九という数字を一応事務的には一−三月の水準として出しておるわけであります。その結果、結局見逸しにありますように三十六年度は一九%アップ、こういう数字になっております。
  21. 堀昌雄

    堀委員 実は私も、だいぶん前からこういう問題に取り組んでおりますが、日本統計資料が非常におくれて出る。一月の鉱工業生産指数は、通産省では二十四日にならないとどうしても出ない、こういうことなんですね。実はこの間二月の十五日にすでにアメリカでは一月の鉱工業生産指数発表になって、おまけにその間における個人消費等はもう年率でちゃんと出ておるわけなんですね。約十日間のズレがあるということで、最近はこういう経済の計算的な見方が非常に重要だということになっておるにかかわらず、あとから触れます在庫についてもそうでありますが、日本経済統計はきわめてずさんである上におそいというのでは、私はかえってこういうものをたよると逆に間違いが大きくなるんじゃないかという感じすらするほどに、どうも各種経済統計がきわめて不十分だ。ですから、企画庁では今度在庫関係はしっかりやれという池田さんのお声がかりだそうですか、私は在庫だけにとどまらないんじゃないかと思うんです。こういう非常に中心になる計数については、より早く把握できることが適正な運営になるんじゃないかと思うので、その点は一つ皆さん方で何とか——通産省は、きょうは通商局が来ているだけですからあれですが、考えていただきたいと思います。  そこで、今伺った中で、私の持っておる資料とちょっと違うのですが、今おっしゃったのは付加価値ウエートでおっしゃっておるわけですね。
  22. 中野正一

    中野(正)政府委員 そうでございます。
  23. 堀昌雄

    堀委員 私が手元に持っております十二月分の確報によりますと、これはいずれもちょっと違いまして、少し低く出ておるわけですが、これはどういうふうな関係か、今時間がありませんからあとで個別に伺うことにいたしまして、次にもう一つ伺っておきたいのは、輸出入見通しを、やはり企画庁で年間についてお立てになっておると思うんです。そこで一つ通関為替とのベースで、皆さん最終見通しをお立てになったときまでのわかっておった実績と、それからやはりさっき申し上げた三月までのこの資料をお出しになった基礎になる各月別の通関為替見通しを、まず輸入について伺いたい。
  24. 中野正一

    中野(正)政府委員 これは第三・四半期くらいからですが、まず為替ベースで申し上げますと、十月の輸入が三億九千五百万ドル、十一月が三億九千九百万ドル、十二月が四億五千三百万ドル、これは相当高くなっております。それで十−十二月で締めまして十二億四千七百万ドル、こういうことになっております。それから輸出の方は、十月が三億三千百万ドル、十一月が三億五千百万ドル、十二月が四億二千四百万ドル、これはわれわれの想像以上に輸出も高かったわけです。十−十二月で締めまして十一億六百万ドルということになっております。  それから通関の方で申し上げますと、十月の輸出が三億五千五百万ドル、十一月が三億五千八百万ドル、十二月が四億八千三百万ドル。それから輸入の方は十月が五億三百万ドル、十一月も同じく五億三百万ドル、十二月が五億三千九百万ドルということで、輸出の方が十−十二月で通関は十一億九千六百万ドル、輸入の方が十五億四千六百万ドルということになりまして、企画庁でこの間出しました見通しのように、為替ベース輸出が四十一億ドル、輸入が四十八億八千万ドルでおさまると仮定しますと、一−三月でどのくらいの輸出があり、輸入があればいいかという数字は、当然これから出るわけです。それを申し上げますと、一−三月で輸出為替ベースで十億二千九百万ドル、これは対前年同期比でいたしますと一一・六%アップ、これは前にはわれわれが昨年の十二月に見通し立てたときは、十二月の輸出がこれほど高いと見ておらなかったものですから、大体一五%弱ぐらい対前年同期比で輸出伸びないと四十一億ドルにならないというようにだいぶ心配しておったのですが、十二月はだいぶ高かったものですから一一・六%ぐらいにいく。輸入の方は一−三で十億七千万ドルにおさまれば四十八億八千万ドルの年度間の輸入ということになりまして、これは前年同期比でいいますと九六%昨年の一−三月に比べて四%ダウンくらいのところで輸入がおさまれば四十八億八千万ドルに——これは通関ベースで申し上げますと、輸出の方が十億五千八百万ドル一−三に輸出があり、輸入が十二億七千七百万ドル、これは大体為替と同じくらいの率になりまして、輸出が昨年の一−三に比べて一一・七%アップ輸入が九八・三%程度でおさまれば、大体見通しのようにいくのではないかと見ております。
  25. 堀昌雄

    堀委員 輸出入の問題を三カ月分でセットしてお話しになっておりますから、先へいかないと三カ月分セットの問題はわからないと思うのですが、まず第一にこれでちょっと目につきますことは、最近の為替ベース輸入通関ベース輸入かなり差がある。おおむねそれが一般にいわれております沖待ち在庫関係してくると思うのですが、今企画庁の方ではこのズレからくる沖待ち在庫を三十六年十二月ごろで大体どのくらいあるというふうに見ておられますか。
  26. 中野正一

    中野(正)政府委員 沖在庫は幾らくらいあるかということはなかなか推定がむずかしいのでございますが、いろいろわれわれの方で推定しまして、大体あれは九、十、十一までくらいが最も待船が多かったのですが、あのころで大体七、八千万ドルくらいあったのじゃないか。それがその後どんどん通関されまして、また十二月になったらちょっと船が込んだようでございます。今現在のところで大体二千万ドルぐらいはまだある。これは大体為替支払いベース通関ベースなんかの数字を見まして、最近ずっと為替支払いの方が支払率が高いというふうな数字になっております。ただ、これは年度間を通じて考えれば大体いいところにおさまるのではないか。大体そういう数字であります。
  27. 堀昌雄

    堀委員 それからさっきちょっとお触れになりましたが、一月、二月と輸出が好調のようですね。輸出はおもに対米貿易が非常に伸びている。品目別で見ると鉄鋼繊維品伸びている。もっとも鉄鋼繊維品伸びるについてはアメリカにおける鉄鋼スト予想といいますか、そういうことと綿製品伸びるのは例の賦課金問題の前途という問題で、これは向こうの思惑輸入が少しあるのではないかというふうに判断しておるわけですが、もし思惑輸入がありとすれば、それは一体どのくらいに今の輸出伸びの中に考えておられますか。
  28. 中野正一

    中野(正)政府委員 御質問が非常にむずかしいのですが、これは企画庁としては、そこまでいろいろ十分分析しておりませんので、詳細なことは通産省の方へまたお聞きいただきたいと思いますが、やはり輸出については、先ほどちょっと申し上げましたように、十二月のベースが非常に高かったわけでございます。その反動で、一月の為替ベースも、これはまだ正式に発表されておりませんが、新聞等で伝えられるところを見ましても、われわれの数字よりも、為替ベースで見るとちょっと低いんじゃないか。そういう点が今、先生が御指摘になったように出ておるかと思いますが、これは想像で、私どもはそこまで調査しておりません。
  29. 堀昌雄

    堀委員 では通産省調査課長一つその点を……。
  30. 濃野滋

    ○濃野説明員 ただいまの御質問の点でございますが、私どもの方といたしましても、繊維及び鉄鋼が、対米貿易の中で相当伸びがあると言われておりますが、むしろ最近の傾向から申しますと、今までの対米貿易は、過去の景気回復のときに伸びておりましたときには、何かチャンピオン商品というものがございました。今度はそういう傾向はあまりはっきり出ていないんじゃないか、こういう感じがむしろいたしております。  先ほど先生がおっしゃったことと関係いたしますが、一月に入りまして、アメリカ小売売り上げを十二月から比べますと、一%くらい落ちておるとは申しますが、最近の現地のいろいろな情報によりますと、むしろ一月は落ちたと申しましても、これはことし非常に天候が悪かった、寒かったという点が非常に大きいんじゃないか。しかし過去を見ますと、百八十七億ドルという小売売上高が商務省から発表になっておりますが、これは一月としては最高であると思います。そういう小売売り上げ中心としましたアメリカ消費需要というものがやはり伸びまして、それにつれて日本輸出商品が全般的に伸びている、むしろこういう感じが強いんじゃないかと私は思っております。
  31. 堀昌雄

    堀委員 次に、今一番問題になっております在庫の問題をちょっとここで伺っておきたいと思うのですが、これは企画庁の方では今一番問題になるのは、やはり原綿、くず鉄、その次が鉄鉱石という格好じゃないかと思いますが、原綿メーカー在庫は大体どのくらいか、何カ月分という格好でもけっこうです。それからくず鉄のメーカー在庫を、何カ月分というような格好で、企画庁でも通産省でもどこでもいいですが、政府側の見解を先に伺いたい。
  32. 中野正一

    中野(正)政府委員 今御指摘の点は、今の経済情勢を判断するのに、確かに非常に重要なポイントになるわけですが、企画庁としてはちょっとそこまで分析がなかなかできませんので、実は昨年の四月から九月末までに幾ら在庫の積み増しがあったか、これは現在高でございますけれども、計算はやったわけです。これはマクロ的にもやりましたし、積み上げ的にもやったのですが、これは御承知と思いますが、上期中に一億八千万ドル程度鉄鋼原料、繊維原料等を中心として積み増しがあった。それからこれは十−十二月に、これもよくわかりませんが、繊維原料等には一部食いつぶしがあったのではないかと思いますが、総体としては二千万ドル程度の積み増しがあった。そこで、四月から十二月末までで約二億ドル前後の輸入原材料の積み増しがあった、こういうように推定をいたしておるわけでありますが、その内訳等は、しかも何カ月分かということになりますと、なかなか数字をつかんでおりません。ただ、これは今通産省の方で、三十七年度の外貨予算を今から組むわけでございますから、その際には、少なくとも鉄鋼原料、繊維原料等、大体主要十品目程度については、現在在庫が幾らあって、消費が幾らで、適正在庫が幾らか、物によっては一カ月半とか二カ月とか、それぞれ想定して数字を出す、それまでは通産省の方でも原局の方で作業をしている最中ではないかと思います。
  33. 堀昌雄

    堀委員 作業の過程でございましたら、今伺うのも私は無理かと思いますけれども、結局この前から日銀の方の見ておる点と政府側の食い違いがあるところは、どうもそこらが一番大きい部分になるのではないかと思います。中野さんは十一時でお帰りのようですから、中野さんの分だけ先にやって、あとでその他にも触れていきたいと思うのですが、新聞にも発表されておりますけれども、最近の状態で在庫総量といいますか、それを企画庁では大体どのくらいに——前期の二億ドルに関連して聞きますが、どれくらいに見ておりますか。
  34. 中野正一

    中野(正)政府委員 これは輸入原材料の総量の意味でございます。これがまた非常に推定がむずかしいわけなんですが、一応先ほど申し上げましたように、十二月末で輸入原材料、これは木材、石油製品等を含めました、いわゆる普通統計で発表しておりますが、輸入総原材料プラス木材、それから石油製品というふうに御了解を願いたいと思います。これを数字的に申し上げますと、輸入総原材料の工場在庫指数でございますね。これを通産省発表しておりますが、季節修正前で原系列で申しまして、工場在庫指数、これは輸入総原材料だけでございます。従って木材、石油製品が入っておりませんが、昭和三十年を一〇〇にして、工場在庫指数が二六一・八ということになっております。しからばこのときの輸入原材料の絶対額は一体幾らあるのだということになるわけでありますが、これはもう非常につかみにくい数字であるし、また通産省でも、これは全部三十年を一〇〇にしまして、数量的に指数をとっておるものですから、金額ではなかなかむずかしいのですが、——これはほんとうのことを言いますと、私がもう仕方なしに私流の計算をしたわけでございますので、そういうふうに御了承を願いたいと思いますが、要するに三十年が一〇〇でありますから、三十年の在庫額というものを幾らと見るかということを一つ計算させてみたのですが、これによりますと、三十年の工場在庫は一億五千三百万ドルという数字が、これは通産省の統計で円で出ております。これをドルに直しますと、一億五千三百万ドルということになりますから、これが二六一・八になっているのですから、二・六倍をかければ約四億ドルの在庫ということになるわけです。ところが、そのとき報告されたもののカバレージが何パーセントくらいになるかということが非常に問題でありまして、八割ないし八割五分のカバレージというふうにしまして、かりに八割とすれば輸入原材料の在庫総量は約五億ドルになる。これが工場在庫でございます。それから流通在庫でございますが、これは御承知のように、なまゴムとか、繊維原料とか、綿花等でございます。大体流通在庫のうちの九〇%は繊維原料でございますが、こういうものだけしか通産省は報告をとっておりません。従って、これが基準年次の三十年の一〇〇のときの数字が三千四百万ドル、流通在庫については指数は十一月末しか出ておりませんが、二六八・九ということになっておりますから、それをぶっかけますと、約九千万ドルになるわけです。それのカバレージが、在庫率が今度幾らかということは非常に問題がありますが、われわれ専門家の意見では四割程度じゃないか。これはスクラップであるとか、そういうようなものは全部入っておりませんので、そういう計算からすると、流通在庫として約二億ドル前後あるものと見ていいのじゃないか。工場在庫が五億ドル、流通在庫が二億ドルと見ますと、三十六年末の輸入原材料の在庫総額は七億ドル前後というふうに一応計算をしております。
  35. 堀昌雄

    堀委員 そこで、大体今の状態でいくと、この前政府で発表されたところでは、結局ゆるい形で在庫調整が行なわれて、そうして九月ごろくらいに一応底へつく、しかし在庫補充は行なわれないだろうから、輸入は大体今の見通しのようにいくのじゃないかという発表になっておるようですが、ちょっとそこのところを簡単でけっこうですから……。
  36. 中野正一

    中野(正)政府委員 今御指摘の点は、要するにわれわれの方は、この間日銀総裁もちょっと当委員会お話しになったようでございますが、少なくとも本年一ぱいくらいは現在の引き締め基調を、金融を初めとしていろいろな政策は堅持していく、続けていくのだという前提で数字もはじかないといかぬのじゃないか。またそれが大前提になっておりますので、そういうことを前提として考えれば、今御指摘ありましたように、十二月末までに二億ドル前後の輸入原材料の在庫食いつぶしがあって、一−三月で先ほど申し上げました年率九%程度生産が落ちて、しかも輸入の方は先ほど言ったように為替ベースで四%、通関ベースで二%程度前年同期に比べて落ちるということになると、これは一億ドルくらいは食いつぶさないと勘定が合わないことになるし、現在の輸入のLCの状況等から見ると、ある程度食いつぶしが行なわれていくのじゃないかということで、一億ドル前後食いつぶしがあるのじゃないか。もちろんこれは生産が一−三月期においてなお最終需要が強いので、なかなか落ちないのじゃないかというわれわれは心配をしておりまして、こうなると、大体輸入がわれわれの予定通りいくとすれば、食いつぶしはまだ一億ドル以上ということになるわけです。その結果、一億ドル前後が三十七年度へ繰り越されるということになるわけでありますが、これは主として四−六月期を中心にして食いつぶしが行なわれるだろう。しかし幾分かはまだ七−九に残っていくのではないか。それはそのときの経済情勢にもよると思いますが、生産が一たん落ちて、やや上がりぎみになるという程度情勢、それからそのときにおいてなおまだ輸出基調が十分続けられるということになりますれば、そのときに、たとえば国際的に物価が非常に先高である、あるいは先行き金融がうんとゆるんで情勢が変わってくるというような見通しがなければ、企業家が積極的に輸入原材料について在庫積み増しを余分にやるというようなことを今想像することも、ちょっといかがかというふうに考えまして、そういう生産金融、物価の動向等を見ながら措置していかなければいかぬが、大体今の引き締めを続けていけばそういうようなことになるのじゃないかということを申しておるわけであります。
  37. 堀昌雄

    堀委員 要するに、結論は一−三月の鉱工業生産の動きがやはり決定的なポイントになるのじゃないかと思いますし、これは一月、二月と少しずつたつにつれて、見通しもはっきりしてくると思うのです。  もう一つだけ伺っておきたいのですが、三十六年の十二月の非農業在庫率指数、それから原材料在庫率指数、生産者製品在庫率指数は、十二月はわかっておりますね。
  38. 濃野滋

    ○濃野説明員 私からお答え申し上げますが、十二月末の素原材料の輸入消費指数は二六九・〇でございます。これはなまの数字でございます。それから在庫指数が二六一・八でございますので、これから出しました在庫率が九七・三になっております。同じく製品の原材料輸入分でございますが、これの消費指数は三五四・七でございます。在庫の指数が一六七・一となっております。在庫率指数はここに計算しておりませんが、もし御必要ならば計算いたします。
  39. 堀昌雄

    堀委員 あとでけっこうですが、お願いします。  大体三十二年の場合と三十六年の場合を見まして、三十二年の場合は、いろいろな指数を見ると、一つぱっと底が入って上がっているという非常にはっきりした姿が出ておりますが、今回は上がったり下がったり、きわめて不安定な指数の動きがあって、一体この形でどこへ行ったら底が入るのかという点は、今の指数の動きだけから見ると、私は今のそういうふうにありたいという願望と過去の分析の上から見たボトムはどこかということとはちょっと差があると思うのですが、今の十二月のそういう在庫指数から見て、一体これで見たボトムはどこになるのか、一つ企画庁お答えができればお答え願いたい。
  40. 中野正一

    中野(正)政府委員 これはいろいろな統計を作りまして、われわれの方は計算はしておるわけでございますが、いつごろ輸入原材料の底をつくかというあれは、今委員会でちょっと私から申し上げる自信もありませんし、もう少し研究さしていただきたいと思います。
  41. 堀昌雄

    堀委員 まあ公開の席だから、ちょっと経済に及ぼす影響が多過ぎるということかもしれませんから、あえて追及はいたしませんけれども、ちょっとこれについて日銀の方に一ぺん伺ってみたいのですが、この前の状態は、大体五月、六月に引き締めが行なわれますと、それから原材料在庫率の指数などは急激に変わってきておるわけですね。それは直接的にこういう格好で動いておると思いますが、の場合は今申し上げたようにふらつきが多くて一向にわかりにくい、こういう感じがするのですが、日銀の方では、今のこの指数をもとにした分析——今、企画庁の方は来年度見通しという中での希望をいろいろ申しておられると思いますので、そうではなくて、現状からきた分析はどうなるのか、ちょっと伺いたい。
  42. 高木良一

    高木参考人 私からお答えいたしますが、今の在庫中心といたしまして、ことに輸入原材料在庫の動きから見ておりますと、昨年の秋金融引き締めを始めまして以後、やはり在庫率の点からいきますと一貫して今下がりつつある、こう申していいのじゃないかと思います。ちょっと今こまかい計算をいたしておまりせんけれども、たとえば期末の在庫率指数で申しますと、昨年の四−九月の期末在庫率では大体一〇〇を少し上回っておったのじゃないかと思います。それが年末には一〇〇を割って九七くらいのところにきている。この一−三月の末には九〇近いところまで落ちていくのじゃないか、大体そういうふうに見ておりますが、在庫に対するこの引き締めの影響は逐次加わりつつある、私どもこういうふうに判断いたしております。
  43. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、その調子でいくとすれば、ボトムは一体どこになりますか。
  44. 高木良一

    高木参考人 これは先行きの判断になりますけれども、やはり今の状況から参りまして、ことにそういう輸入原材料にしぼって見ました場合には、やはり四−六月の末あたり、この辺に一つのボトムがあるのじゃなかろうか、私はそう見ておるわけでございます。これまた今後の経済の推移、生産の動向、その他から見ていきませんと、あまり断定的なことは申し上げかねますけれども、今の現状判断からいって、感触という言葉は適当でないかもしれませんが、その程度の意味で申し上げると、私どもはその辺が一つのボトムではなかろうか、こう思っております。
  45. 堀昌雄

    堀委員 さっき企画庁お答えになりました在庫総量、これは企画庁の方では大体七億ドルくらいということでありますが、日銀の方では大体どのように見ておられますか。
  46. 高木良一

    高木参考人 実は在庫その他に関する統計は直接日本銀行で集めておりませんので、これは官庁統計に依存いたしております。それに従って私どもの方で大ざっぱな推計をしておるにすぎませんけれども、たとえば通産省でお集めになっておる在庫統計からいきまして、この統計の対象になっておる企業の在庫という点から参りますと、私ども大ざっぱにいって大体五億ドルくらいじゃなかろうか。ごくラフなところを申し上げてなんでありますけれども、たとえば平均して大体二ヵ月くらいの在庫を時っておるといたしますと、現在輸入が三億五千万ドルくらいとすれば倍の五億ドルくらいという計算も出て参ります。でありますから、在庫指数からいって大体指数の一ポイントをどのくらいに見るかという計算が一応できるわけであります。そういう面からいいましても大体その前後ではなかろうか。しかし今の統計の対象にならない中小メーカーの手元にあるもの、それから流通段階にあるものはある程度統計になっておるようでございますけれども、伺うところによるとカバレージが非常に低いというところで、それ以外に何がしかのものがあるわけでございます。それを加えた場合にこれが六億ドルか七億ドルか、私の方でしかとつかめない面がございます。大よそそういうものを入れましてもせいぜい六、七億ドルぐらいじゃなかろうか。十億ドルなんという説もあるようでございますが、とてもそれだけはかき集めましてもないのじゃないか、こういうふうに見ております。
  47. 堀昌雄

    堀委員 この前の山際さんのお話を聞いておりますと、ちょっとさっきの政府の側のお考えよりは少しどうもボトムが前へくるのじゃないかという感じで、あまりこまかくおっしゃっておりませんが、承った感じでは、もう少しボトムが前へくる、そこで輸入が今の政府側の希望よりも少し早く上がってくるのじゃないかという感じのように受け取れるようなお話がございましたが、事務当局の側としてはそこらはどういうふうに判断しておられますか。
  48. 高木良一

    高木参考人 お答えいたします。まず昨年中の積み増し在庫から申し上げて、順序に今の御質問お答えいたしたいと思います。これは大体において計算の非常にむずかしいものでございますが、先ほど中野調整局長から約二億ドルくらいと見ておるというお話でありましたが、私ども大づかみにいたしましてこのくらいの在庫の積み増しがあったのじゃなかろうか、そういうふうに考えております。ただそれが年明け後にどんなテンポで食いつぶされていくだろうかという点から参りますと、あるいは先ほど局長お話を伺っておりましたが、少し私どもと感触が違うかとも思います。と申し上げますのは、それはこまかい計算方法がどうとかいう話は抜きにいたしまして、どうも今後の生産がどういうような形で推移していくであろうか。こうなりますと、現に最近の景気の動きを見ておりましても、御承知のようにやや中だるみ感、勢分楽観ブームというものが出てきておるというようなことで、やや景気も足踏み状態になっております。こういうような最近の雰囲気から参りましても、どうも生産は政府の見通しの通りには落ちていかないのではなかろうか。もう少し落ち方が鈍いのではなかろうか。一月の状況はよくわかりませんけれども、どうも私どもの感触では一月の生産はあるいは案外伸びたのではなかろうか。これはいずれ二両日中に統計が発表になると思いますが、もし間違いでしたら訂正いたしますけれども、案外一月は十二月に比べてもそう生産は落ちなかったのではなかろうか。二月三月は今の状況からいって何がしかの生産は落ちていくと思いますけれども、落ちるテンポがどうも先ほどのお話より少しゆるいのではなかろうか、ということは、逆に今の輸入原材料の点にしぼって申し上げますと、原材料の消費水準予想より高い、原材料の消費量は予想より高い、そうなりますと、一−三月の原材料の在庫の食いつぶしはあるいは予想される一億ドルよりかなり上回るのではなかろうか、そうすると、四−六月にも何がしかの積み増し在庫の若干のものが残ると私ども見ておりますが、その金額は先ほどお話がありました、なお一億ドル残るとおっしゃる金額よりはかなり少ないのではなかろうか。そうすると、これは四−六月の間には食いつぶされてしまう。そのときの生産水準、従って、原材料の消費水準がそれほど落ちなければ当用買いにしろ、そのしりとしてはやはり輸入はふえてくるのではなかろうか。しかしその景気調整策をなお堅持していくという一これは政府もそういうお考えのようでございますが、私どももそれが心要だと思っております。その前提で参りますと、まだ四−六月の間に在庫率の回復とか、在庫の補充とかというものはそう大きく起きるとは思われません。なぜなら四−六月における生産状況もあるいは政府の見通しよりはテンポが鈍いかもしれませんが、なお四−五月あたりは私は生産が落ちるのではなかろうか、こう思っておりますので、若干のランニング・ストックの食いつぶしもその間に行なわれるかもしれません。それにいたしましても一−三月に相当の在庫を食いつぶしておりますから、四−六月に食いつぶせる在庫の余裕はもう幾らもないということから、やはり輸入はふえてくるのではなかろうか、こういうふうに見ております。
  49. 堀昌雄

    堀委員 いろいろな問題で、結局そこへくるときに問題になりますのは、やはり一つ金融の関連する状態で起きてくるのではないかと思うのですが、実は当切予想された一−三月の財政揚超の状態は、案外資本収支の状態が少しいいようでありますから、外為における揚超部分が予想よりは少し小さくなっておるのではないかと私感じるわけです。そこで買いオペレーションはこの間予想通りおやりになりましたが、当初予想された財政揚超との関連で見ると、この一−三月の金融は少し当初よりはゆるんできておるのではないか。このゆるんできておることと、やはりいろいろな株価の諸条件、そのほかにこの間ちょっと新聞で見たのですが、山一とどこかが三月期決算の予想立てておりますが、いずれもかなり好調な見通し発表しておるというような諸般の状況から見ますと、私はどうも一−三月の鉱工業生産が政府の期待のように下がらないのではないかという感じが強くしておるわけです。一月の状態は、特に二十四日の発表が待たれるわけであります。特に全体の総合指数で見ますと、今の形では確かに十二月に下がっておりますが、個々に内容別に見ますと、比較的大手の企業に属しておるものの生産は、内容の付加価値ウエートで見ても、まだかなりどんどん伸びつつあるというように、こまかい内容の鉱工業生産指数で見ても感ぜられるわけであります。これは後段で触れます設備投資に、私はやはり大きな関連を持っておる、こう思うわけでありますけれども、一体政府は、鉱工業生産が当分の間九%で下がるのを期待しておるということでありますが、この一−三月に、今、日銀の方で少し違うのじゃないかという感触でお話になりましたけれども、何%くらいの下降率というふうにお感じになっているか。詳しくはわからないでしょうが……。
  50. 高木良一

    高木参考人 お答えいたします。これは大事な面であると同時に、われわれは銀行でございますので、最も不得手な面でもございますから、結局感触という程度より申し上げられませんが、一−三月の生産は、一月は十二月よりもあるいは若干上回るのじゃないだろうか、そのあと二月、三月と、〇・六とか七とかいうことで落ちていくと思います。年度末の数字が、政府の予想されるよりも結果としては幾分高いところでおさまる、一九%というお話でありましたが、おそらく一九%と二〇%の間、一九%よりもやや高いところで落ちつくのじゃなかろうかという感触を持っておるわけでありますが、これも、今後の政策その他で、この辺で生産が下がらないと、あとにいろいろなはね返りがございますから、全体の景気調整を進めていかなくてはいかぬと思っておりますが、今の状況からいきまして、どうもすなおに生産が下がるようにも思えないということだけを申し上げておきます。
  51. 堀昌雄

    堀委員 これは、これから予算委員会でも触れたいと思っておりますが、過去の経済見通しの分析を少しこまかくいたしてみますと、経済見通しが比較的それに近い数字で、見通し実績に差がなかったのは、昭和三十三年が一番誤差が少なくて、その他は著しくその見通し実績の間には差がある。その中でやはり代表的なものは、設備投資見通しが非常に差がある。もちろん在庫につきましては、これは非常に困難なことでありますから、これを見通せというのは、少し私も無理があるかと思うのでありますが、設備投資見通しというものは、私はもう少し的確な見通しが立ってもいいのではないかという感じがしております。なぜかというと、最近の設備投資の動向というものは、だんだんと原価資本係数が上がってきて、相当に経過が長くなっておるわけでありますから、少なくとも来年度にずれ込んでおる予定計画等を土台にして見るならば、かなりの部分というものは、私はすでに土台としてあるのじゃないか。その上に足される部分があるわけですから、もう少し的確であってもいいと思うのでありますが、個々に見て参りますと、設備投資については、当初見通しと著しい差がありまして、一番大きいのは、三十四年が当初に対して六〇%増、その次は三十五年で五三%増、こうなると、見通しなどというものじゃ私はなくなると思うのです。この過去のいろいろなトレンドをこういうふうにして見てきますと、私はやはりことしのこの経済見通しは、この部分で少し変わってくるのじゃないかと思う。第一、設備投資の問題につきましては、実績見込みでは、三十六年が三兆七千五百億円、こういうことになっております。どうもこれは将来のことですが、少なくとも三兆八千億を少し上回るのじゃないかという感じが私はいたします。企画庁はそれですが、日銀の方は昭和三十六年の実績見込み——これは政府が出しているからということはありますが、日銀の立場では、これをどのくらいにごらんになっているでしょうか、
  52. 高木良一

    高木参考人 お答えいたします。私ども銀行の設備貸し出しの面から設備投資の動きを見ておりますと、設備貸し出しの抑制を始めておりますので、確かに次第に新規貸し出しは減って参っておりますが、現実の公示ベースで見ました本年度設備投資の動きというものを見ておりますと、それほど落ちてきていないという点から見ますと、年度を締め切った場合の設備投資というものは、やはり三兆七千億円をこえるものになるのじゃなかろうかというふうに見ております。正確の数字を今承知しておりませんので、ただ銀行の設備貸し出しがら見た感触から言えば、支払いベースでは落ちてきている、しかし現実の公示ベースはまだそれほど落ちてきていない。こういう面から見まして、そう大きな変化は三十六年度中には期待できないのじゃなかろうか、こう見ております。
  53. 堀昌雄

    堀委員 結局、今生産をささえておりますものの大きな部分が設備投資でございますから、そういう需要面からするところの設備投資というものは、私はやはり相当今後の鉱工業生産関係があり、在庫関係が出てくるのじゃないかと思う。この点では実績見込み三兆七千五百億円はやや過小に過ぎる、少なくとも三兆八千億円を上回って、高いところで九千億円との間くらいのところに三十六年の実績見込みが落ちつくのじゃないか。ということは、やはりこの見通し立てられたもとが、さっきの鉱工業生産一−三月の関係でこれを見ておられると思うから、これが三兆九千億になるならば、当然一−三月の鉱工業生産はかなり高くなるのじゃないか、私はこういうふうな感じがいたすわけです。ですから、結局この経済見通し全体の問題については、これはまた来年の今ごろもう一ぺんやりますけれども、私はこれは相当狂いがあると思う。そうすると、狂いのあるものの見通しの効用という点が、逆説的ではありますが、相当問題があるのじゃないか。こういう格好になりますと、何とか全体を締めたい締めたいというので、なるたけ内輪に指数を出す。もしこれを高い指数を出せば、安心感でまたみな走る。内輪に内輪に出して、いろいろな係数のバランスをとる。これが国の予算に関係をしてきて、悪循環のスタートは、私はここから始まっているという感じがしてなりません。しかし、ここは予算委員会ではありませんから、その問題はそこまでにします。  三十七年度設備投資見通しについて、政府は三兆六千九百億円、こういうふうに現在出しおいでになります。大体九八・四%と下がるわけですが、こういう格好で前年度より下がっておりますのは、過去においてはないのです。一番近い三十三年で見ましても、ほぼ横ばいというところで、少し上がっているというふうに思うわけです。
  54. 中野正一

    中野(正)政府委員 ただいま御指摘がありましたように、三十七年度設備投資は一体どの辺でおさまるのか、またどの辺でおさめるべきかという政策的なことも加味して数字を作るわけでございますが、当初われわれが昨年の十一月くらいに見通したときは、ことしは相当金融で締めていっても三兆七千五百億というものは、相当押えつけた数字で、御承知のようにこれは大蔵省日銀中心になって金融ベースで相当削減をされる、それから通産省が当初一兆八千億くらいの通産省所管のものであったものを、一兆六千億にし、さらにこれを削減するという昨年の十一月、十二月くらいの情勢を見れば、だんだん十−十二月くらいをピークにして、設備投資もおさまってくるのじゃないかということで、三兆七千五百億やって、これはわれわれも押えぎみな数字として出しております。それで実は三十七年度についても、われわれが事務的にいろいろと通産省あたりの話を聞いてやってみますと、自由化を控えて相当各企業というものは投資意欲が旺盛なわけでありまして、それからまた電力等の基幹部分については、当然経済の発展につれてふやしていかなければならぬ。もちろん鉄鋼その他いろいろな分野では相当計画を繰り延ばしております。しかし、いろいろ積み上げてみますと、なかなか三兆七千五百億を下回るということはむずかしいのじゃないかという計算が出て参るわけでございます。しかし、かりに設備投資を押えないということになると、国際収支が下期均衡といういわゆる至上命令といいますか、そういう目的が達せられないという壁にぶつかった結果、これは、まだ通産省の方では現在各社からそういう三十七年度経済情勢を十分説いた上で、設備投資については最も慎重に、できるだけ削減できるものは削減し、ほんとうに自由化等に備えて、今後国際競争力をつけるという意味で、最小限度にとどめるように指導をしておられまして、まだ現数字は出ておりません。従って、三兆六千九百億の内訳を示せと言われますと、今内訳を作るとそれより大きなものになってくるわけで、どうしても通産省を初め関係省で、そういう意味合いで全般の経済政策とにらみ合わせて削減なり、繰り延べを指導していただく。また同時に金融機関でもその各行政機関とも連絡をとっていただいて、そういうふうに協力していただくという前提で、この三兆九千五百億という数字ができ上がっておるわけです。
  55. 堀昌雄

    堀委員 すると、この際、この見通しは客観的な見通しというよりも、政策的配慮に非常にウエートがかかっておるというふうに理解した方がよろしいですね。
  56. 中野正一

    中野(正)政府委員 今度の見通しのときは、私の方の藤山長官が再々言われたのですが、今度の見通しというものは、いわゆる努力目標だということをはっきり何度も国会で言われておりますし、世間でも言われて、その意味では、今までの見通しは、見通し立てたらどうもそれよりも生産も上がるし、所得も上がるし、そういった例が多いものですから、それでまた壁にぶつかったということもございますが、そういうふうな見通しでなくて、政策を前提とした努力目標の結果として出てきた数字だというふうに御了解願いたいと思います。
  57. 堀昌雄

    堀委員 日銀の方にお伺いしますが、これは何も来年ということではなくて、今後の設備投資という問題についての基本的な問題について伺いたいと思います。経済白書では限界資本係数の上昇が当面設備投資の増勢に拍車をかけている。さらに資本財関連部門における資本蓄積が低いというようなことが背景となって、投資が投資を呼ぶという格好になったのだと述べております。私も過般の委員会で、いろいろな企画庁の中の指数を拝見しますと、なるほど投資が投資を呼んでいるという部分は確かに理解をされる部分がございます。投資が投資を呼んでおるということは、逆に今度は設備投資が急激に下がってくるときには、異常な状態が起こるということを裏に内蔵しておる、そういうふうに判断をするわけですが、それ以外に日銀として現在の設備投資がこのように盛んに行なわれておる原因を何かお考えになっておると思いますが、ちょっとお答えをいただきたい。
  58. 高木良一

    高木参考人 所見を申し上げますと、現在企業の設備投資意欲がこれだけ強い背景は、もちろんいろいろあると思いますが、第一には、業界内のシェア確保の競争というものが非常に激しいようでございます。従って、設備投資の中には、その面での重複的な投資もけっこうあるのではないか。反面自由化を控えておりますから、これに応ずるところの自由化対策としての合理化投資、近代化投資、これも相当多い。いろいろなファクターがその間に入っておると思うわけです。よく言われるのですが、どうも自由化を控えて合理化しなければならぬときに、金融を引き締めるのは何だという非難を受けますけれども、しかし今の何兆円という設備投資が全部合理化投資ではなくて、その中には先ほど指摘したものもございます。今の程度の引き締めが、自由化に備えるところの合理化をおくらせるかどうかという問題については、私はむしろ疑問を持っておりまして、それは企業の判断でございます。このワク内においても十分近代化投資は進められておるものだ、こういうふうに判断しております。要するに幾つもの要素があげられるのじゃないか、こういうふうに思っております。
  59. 堀昌雄

    堀委員 その幾つもの要素を個別におっしゃっていただきたい。
  60. 高木良一

    高木参考人 何といいましても第一には業界の中の競争が激しくて、シェア確保のための投資競争というもの、これは無視できないと思います。それから自由化対策としての近代化、合理化投資というものが第二の項目にあげられるのじゃないかと思います。第三には、技術一新の時代でございますから、自由化対策という面を離れましても、そういう面での技術革新に伴うと  ころの設備投資、そういうようなものが基本ではないかと思いますが……。
  61. 堀昌雄

    堀委員 業界の側について見るとそういうことだと思います。いわゆる政府の所得倍増計画というもので長期的な需要は保証されておる。本来的には企業自体が設備投資をやるについては、企業自体としてリスクを覚悟しなければならないわけですが、そのリスクに対する不安感というものは、少なくとも所得倍増計画の中ではまあまあ安心だという一つの安心感がある。一つはドラスティックな低金利政策というものが一本の柱として立っておるわけですから、日本金融構造上から見るならば、これはもう設備投資を推進しておる非常に大きな力になっておるのじゃないか。  もう一つ、その中で最近の建築単価の値上がりといいますか、物価高の方向が、やはり少しでも早く設備投資を増進しておるのじゃないか。これはシェアの拡大にも関連をしますけれども……。今の建築の単価及び人件費等の問題は、これは結果として出てきておるものであったにしても、今の池田さんの政策の一つの面がやはり設備投資を急増さしておる大きな原因だ、こういうふうに考えますが、日銀はそのについてはどういうふうな考え方をしておりますか。
  62. 高木良一

    高木参考人 池田さんの政策かどうかということはちょっと私の申し上げる限りではないのでございますが、現在の雰囲気の中で今の御指摘のように昨年あたり設備投資の盛り上がり方というものにつきましては、私はやはり業界の中にも所得の倍増というものがマーケットの倍増なんだ、こういうふうな受け取り方があったのじゃないか。それは一体受け取りの側が悪かったのか、打ち出し方が悪かったのか、この辺は別といたしまして、そういう感覚が経済界になかったとはいえないと思います。その面がやはり一昨年から昨年へかけて設備投資はもう少し鎮静をするかと思っていたのです。おそらく一昨年あたりは昨年の設備投資を前年比一割増しくらい政府として見ておられたのではないかと思います。それが今お話のように三割以上というふうになっていますには、そういう影響は確かにあったと思います。それから最近の土地の値上がり、人件費の値上がりで実は設備費がそれだけやはり高くなった、資本費負担がかさんできているということは、これは会社の担当者などからそういう話を聞くことがございます。ただそれが政府の政策云々かどうかということになりますと、ちょっと私ども判断もいたしかねますし、お答えできる問題じゃないと思います。低金利の問題は確かに昨年の一−三月あたりのああいうボンド・オープンなどが非常に急激に伸びたというようなことも関連して、それがやはり昨年の上期の設備投資を促進した影響というものはこれはやはり皆無とはいえなかったと思っております。
  63. 堀昌雄

    堀委員 そこで、今の低金利の問題なんですが、私どもは諸般の情勢から判断をして、この間も総裁がお見えになって公社債、のオペレーション問題をだいぶここでやりました。結局こういう問題のずっと詰まっていきますところは、やはり公社債流通ができるかできないか、できなければ市場などできるはずがない。そうすると長期債の金利というものは動いてもいいのではないか、こういう議論に発展をしていくと私は思います。ところが政府は依然として長期金利を含めて金利は上げないという一つのはっきりした見通しが立っておるとするならば、そのことはイコール設備投資をやってもよろしいというふうに——どもはやってもよろしいというような、やりやすい条件に置いておきますよ、ということのように、私どもは理解をせざるを得ない一つのポイントがあると思います。そこで今度は設備投資の問題で感じるわけですけれども、たとえば自動車のようなものを例にとって、自動車は非常に今自由化対策として投資をしておりますが、日銀としては、こういう設備投資の合理化に対する国際競争単位に到達する形の問題ですね、今の日本の現状の企業で、私はどうも今のところはまだいいが、いよいよ自由化という前で、競争をするために非常に大きな設備投資をして生産を上げてきたときに、国民の消費水準との関連で国内需要がそこまで追いつけるとは私は思いません。そうするとそこヘギャップができて、そのギャップができてくるならば、稼働率をそのままにするわけにいかないから、稼働率が下がると資本コストが下がってくるということで、これは重大な混乱が自動車工業等についても起こるのではないか、こういう非常に不安がしてなりません。そこで、大体現在の日本の石油精製あるいは化学繊維あるいは自動車工業というような、外国からの技術導入によってやっておるものが考えておる国際競争単位というものと、実際の諸外国における国際単位というものとの間の差をどのように考えておられるかちょっと伺いたい。
  64. 高木良一

    高木参考人 個々の産業の事情につきましては、私ども精通しておるわけでございませんので、自動車工業は今のような状況でいいかどうかということもはなはだお答えしにくいのでありますけれども、率直に私の感じを申し上げますと、どうも現状のような企業の分散した状態で、それが個々に自分の設備をだんだんふくらましていくというようなもので、似たり寄ったりのものが幾つもふえていくという形が、欧米の自動車工業と比べて一体これで国際競争上いいかどうかというような感じを確かに受けるわけでございます。ただ、具体的に自動車工業をどうするかというような問題になりますと、産業行政の問題でございますので、通産省からでもお答え願う以外にないと思いますが、そうした意味でも現状のような設備投資の進み方で、一体由化後の国際競争力強化にほんとうにプラスになっていくかどうかというと、その点は確かに私どもとしても何となく割り切れないものを持っておるわけでございます。さて、それではどうするかということは、これはどうも中央銀行が直接そういう産業にタッチすべき問題でもございませんので何でございますけれども、所見としては、現状でいいのだという感じではなくて、このままではどうもほんとうの国際競争力の強化になるかどうか、むしろ疑問を持っております。こういう考え方でございます。
  65. 堀昌雄

    堀委員 調整局長に伺うのではなくて、これは大来さんのところになるのかもしれませんが、今の問題で大体合繊、石油化学、自動車と今の典型的な花形産業ですね。これはもう各国の現在の単位というものが非常に高くて、これから少々やってみても私は必ずしもそこまで追いつけない。第一追いつけないのは、さっき申し上げたような国内の消費水準が低いために追いつけない、こういう問題になっておるわけで、その点からやはり合理化ということに名をかりて、実はシェアの拡大ということが行なわれつつあるような気がしてなりません。政府では、今度は少し独禁法をゆるくしてこれを集中しょうというようなことを言われておるようでありますが、私はやはりそういう問題の前に、日本なりに何かの方法がほかにあるのではないかという感じがしますけれども、そこで供給力過剰の問題が私はこの次に出てくると思う。そこで、今のところは限界資本係数がだんだん上がっていきましたから、今のところは私はまあまあ投資が投資を呼ぶ格好で何とか自転車操業は成り立っておると思いますが、一体限界資本係数が上がりつつあるものがピークになって今度下がる。ここは一体どこらにあるか。これは企画庁が無理ならば大蔵省でもいいし、これだけ経済関係の専門家がおそろいですから、政府側は一体どういうふうに考えられておるか。
  66. 中野正一

    中野(正)政府委員 今先生の御指摘の問題に的確にちょっと答えるだけの勉強もいたしておりませんが、御承知のように、所得倍増計画におきましては、設備投資の割合と、それから国民個人消費の割合というものは、やはりある程度のバランスをとるべきであるということで、大体個人消費の割合は五七、八%というふうな、設備投資については二割以下であるというふうな、これは基準年次をもとにしていろいろバランスを考えておったわけでありますが、どうも最近の情勢から言うと、個人消費の割合は五二、三%ということで低いわけでございますね。それで設備投資が今の需要を生むというような形で今経済を拡大しておるわけでありますが、こういう形をいつまでも続けていけば、確かに御指摘のように供給と需要との間にアンバランスが出てくる。従って、この前の三十二、三年のときにありましたように、やはり設備投資が足踏みをして、その間に消費の方が伸びるということを一回繰り返した上でまた正常な形に返っていく。その間に相当な混乱があるかどうかということは、そのときの政府の政策なりあるいはこれに対応する経済界の努力なり、態度によってきまっていくのではないか。われわれの見通しだと、三十七年度につきましては、かりに数字的に簡単に申しましても、五・四%程度の国民総生産伸びということになりますと、総支出で約九千億しかふえない。これは参院の木村先生がおっしゃるように、かりに三十五年度の三兆円の設備投資があって、産出係数が〇・六として一兆八千億から二兆円近くの生産力の増大、それだけの需要をまかなってもいいじゃないかということになりまして、非常に需要が足りないのじゃないか、こういうこともあるわけであります。しかし現在の一番大事な問題は、やはり下期に国際収支を均衡させるということでございますので、企画庁としても総生産伸びはできるだけ押える。それにはやはり設備投資をスロー・ダウンさして、その間に消費は順調に伸ばしていく。この消費も、最近のようにあまり旺盛過ぎますと、いろいろの面でまた問題が起こってきて、特に消費者物価、これはこの問題ばかりではございませんが、消費者物価が高騰を続けるということで、今物価問題にわれわれ真剣に取り組んでおるところでございますが、そういうことからいいますれば、来年度はこれを鉱工業生産に引き直してみますと、やはりどうしても操業率は落ちて、企業としては相当苦しい。しかしそれだけに輸出圧力はここにかかってきて、国際的な環境をよくするような努力をして、輸出方面にそれをはかしていきたい。それ以外に手はないのじゃないかということを皆さんにわかっていただけるように、われわれとしては努力をしているつもりであります。
  67. 堀昌雄

    堀委員 まあお気持はわかりますが、それと離れて、客観的に経済はやはり動いておると思います。そうすると、今の動きのままでいけば、二十六年−二十八年の間の限界資本係数は一・二二、二十九年−三十一年が一・六八、三十二年−三十四年が一・九三、だんだん今のところ限界資本係数は上がりつつあります。これは石油とか鉄鋼のような大きな装置産業が土地を買い、新設備をやるということの中で当然起きておる現象だと思うのですが、無限にそういうふうな土地造成をやり、新規設備をやるわけにいかないですから、期間がだんだん長くなっておりますが、時間がたてばその部分は過ぎてしまう。過ぎてしまうと、結果としては、大きな装置産業で内容をちょっとこまかく点検をしてみても、鉄鋼について千トン以上の高炉と千トン以下の高炉の比率も圧倒的に千トン以上がふえつつある。あるいは石油についても今同様な現象が起きつつあって、さあ、これがフルに稼動しなければならぬところにきて、その高炉の操短をやって、火を消すわけにはいかないということは、私は、裏側に問題として出てくるのじゃないか、そう思いますから、そこで限界資本係数が相当急激に下がってくるところが、将来の予測としてなければならない。その限界資本係数が下がってくる予測のところをポイントにして、逆に設備投資をコントロールしていかなければ、今のこっちからだけものを見ていけば、一体先へいったらどういうことが起こるのか。企画庁でお出しになっておる資料でも、投資が投資を呼んでおる状態で、もしダウンがきたら、ここで著しくアンバランスが起こるということをあなた方ちゃんと出しておるわけです。これについては相当いろいろな危険が起こる、ことに企業採算の面を含めていろいろな形の無理が集約的に出てくる時期があるということを、日銀の方でもおっしゃっておるわけです。では大体ここらで限界資本係数が下がり始めるという見通しもなしに、日銀としては設備投資のコントロールをされるのか、企画庁はそういう見通し立てられるのか。なければ、私はきわめて無責任なコントロールの仕方になると思うのですが、この点について日銀の方はいかがでしょうか。
  68. 高木良一

    高木参考人 私どもの方としましても、そういう見通しを全然持ってないわけではございません。ただ過去におきましては、御承知のように、今の投資が投資を呼ぶ形で過剰生産が起きやせぬかということは、実はこの二、三年前から繰り返し言われてきたわけです。それが今日まで至りましたのは、いわば投資が投資を呼ぶというようなことで、新しい需要を生んでその間のバランスがとれてきた、御指摘のように、この辺で需要の方が足踏みしてくる、それから、今のところ限界資本係数は非常に上がってきておりますけれども、これがどっかで設備が完成して稼働すれば非常な供給力がそこでプラスされていく、こういう懸念は私どもも持っております。それがいつごろかということでございますけれども、どうも今の状況からいけば、これが一挙に出てくるというよりは、来年あたりからじわじわとそういう生産能力の増加が加わってくるのじゃないか、こう見ておるわけでございます。そのときにどうするかという問題があるわけでございますが、ただ私の感触としましては、とかく日本経済については供給超過に対する懸念が従来強かったようでございます。実際の経済は、逆にどちらかというと需要超過になりがちの状況で今日まできたわけでございます。今後経済基調がここで大きく転換するかどうかという問題もございますが、何分日本の現状としては、たとえば社会資本の蓄積が非常に不足している。いろいろな面で、たとえば公共投資面ではもっとやっていただかなければならぬ面がたくさんあるというようなギャップがございますので、やはり今後そういう公共投資の面とか、消費もおそらく長い目で見ていけば、としてはだんだん上がってくる、そういう形で需要構造が少しずつ変わりながらその間のバランスがとられていって、一挙に大きな過剰生産経済がくるというようなことは、政策がはなはだまずければ別でございますが、何とかそういうものを回避しながら経済を伸ばしていくという道は、やはりあるのじゃなかろうか。これは企画庁の方の仕事かもしれませんが、一がいに過剰生産不安というものにおびえているわけでもないわけでございますが、ただ、今のお話のように、こういう高い限界資本係数がいつまでも続くことはない、下がってきたときに、やはり一つの問題が出てくるという問題意識は私どもは持っております。
  69. 堀昌雄

    堀委員 次に問題を金融の方に戻して参りたいと思いますが、今の問題は非常に重要で、局長が今おっしゃったよりは、そういう現象が現われてきたときには、加速度的に各種の要件が集中をしてくるのじゃないか、これは皆さんの方でも、かなりそれについては、集中をした場合のいろいろな角度での問題の検討をしておられることも私は拝見をしておるわけですが、私は全くもっともだと思う。企業採算の面からも、いろいろな面からそれは集中的に出てくるということは、今おっしゃるようになだらかに出てくるのならば、これは政策的に対応の仕方もあろうかと思いますが、大体投資が投資を呼んでおるということは、主として投資財、生産財のあれであって、消費財がふえておるわけではないのですから、それをいきなり吸収しようと申しましても、それは公共投資で吸収のできる性格のものではないわけであります。ですから、そういう点ではわれわれは供給過剰という重大な危機の前に実は立たされておるという危機に対する認識、所得倍増計画などというたんたんたるハイウエーがあるわけではないのだという認識がないと、日本経済は重大な曲がりかどを曲がらなければならぬときが早晩くるだろう。その点については木村さんも触れておられますが、こまかい分析をした中でも、私たちはもっと政府はこの点についての見通しを明らかにして、企業に対して設備投資への関心をもう少し喚起してコントロールすべきではないか。そこを触れずにおいて、ともかく所得倍増という広いたんたんたる道ばかり申しておったのでは、これは大きな問題が生ずるだろう、私はこういうふうに感ずるわけです。そこで、最終的に金融関係でちょっと伺っておきたいと思うのですけれども、大体日本銀行というものが今やっておられるやり方は窓口で資金量を締めて、そこで引き締め政策の堅持ということが先ほどからも盛んに言われておるわけです。最終的に、今日本の中で鉱工業生産指数をコントロールし得るものは、切り札としては何かといえば、これは金融を締める以外にないのだ、こういうことになっているわけですね。この金融の締め方も、金利操作ではもう締められない。窓口で量的に締めるのが精一ぱいだ、こういうのが事実だと私は思います。しかし、日本金融構造全体を見ますと、そういうことがきわめて困難な現状になっておる。諸外国の金融の構造と違って、日本の特殊的な金融構造というものは、そういうことをきわめて困難ならしめる構造になっておるのにかかわらず、一番困難な方法でやれということが今要求されておるのじゃないか。そこで一体日銀としては、まあやっておいでになるでしょうけれども、もう少し何かほかの方法も考慮があっていいんじゃないかと思いますが、今の金融構造に関連しての金利政策についての効果について、お考えがあればちょっと聞いておきたいと思います。
  70. 高木良一

    高木参考人 お答えいたします。  御指摘の問題は非常に大きな問題でございまして、あるいは総裁が伺いましたときに総裁から御答弁申し上げた方がよかったかと思いますが、従って一事務家としての所見を申し上げますと、確かに日本金融構造の現状というものはいろいろ問題を含んでおると思います。少々言えば、戦後これだけ急速なテンポで復興し、そのあと引き続いてこれだけの経済の成長をしてきている、それに応ずるところの通貨の供給をするにいたしましては、あるいは今の形が割合に迅速に通貨を供給するには役立ったかと思いますが、その反面、いわゆるオーバー・ローンとか、企業の立場からいえばオーバー・ボローイングというような形が出てくる。それから金融機関の段階でいえば、これが欧米の例でいえばおのずからその支払い準備観念というものがあって、銀行経営、金融機関の経営も預金準備に対してどのくらいの信用膨張をすれば、この辺で経営上あぶないからチェックすべきだとか、おのずから金融機関自身の中に自律的な経営原則があるわけであります。今のようなオーバー・ローンの状態では、支払い準備というような観念も制度的にはできておりますけれども、そこでどうしても締めなければというほど強い観念を、金融機関の経営者が今欧米流の準備観念を持っておるわけでもないという点からいいますと、通貨としては出しいい態勢かもしれませんけれども、ある程度の節度を保たしめるという点からいいますと、確かに御指摘のように今の金融構造については問題をはらんでおると思います。ただ、今までこういう問題につきまして、いわゆる金融正常化という言葉で繰り返して私どもも言い、世間でも問題にしてきたにかかわらず、それがまだあまり進んでいないということは、いかにも日本経済の成長が今まで早くて、この成長過程において金融構造の改革というようなものに手をつける適当なチャンスをつかみ得なかったということではないかと思います。当面こういう景気の調整政策が進められ、経済も次第に落ちついていくと思いますが、そろそろ今後の落ちついた経済の段階においてこの金融の構造をどうするか、あるいはその金利機能の活用ということをもっと真剣に考えるとか、いろいろな問題があるんじゃないか、これは私ども自体の問題でもございますので、こういう問題をこの次の機会には真剣に取り上げるべきだ、こういう考え方を深く持っておるわけであります。現状におきましては、何分オーバー・ボローイングの状態でございますので、金利がそのまま欧米流に働かないというのは御指摘の通りだと思います。従って公定歩合を上げましても、それだけで今度は自律的に資金の需要が押えられるというわけには参りませんので、反面窓口規制をどうしても併用していかなければならない。こういうような正常な金融状態からいえば、変則な金融政策がとられておるわけでありますが、長い目で見ればこういう形が常態としていいとは考えておりません。機会を見て正常化はぜひ進めていかなければいかぬのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  71. 堀昌雄

    堀委員 経済の成長が非常に早いので、実際に手をつけることができないとおっしゃるところは、私ども全くその通りだと思うのですが、そうすると所得倍増計画があのままの形であると、今後十年間は金融正常化は手がつけられないのじゃないか。裏返して言いますと、成長はなかなかスロー・ダウンしないのだ、現実にはするでしょう、しかし政府の考えはしないのだということになりますと、今の通貨供給の状態を大幅に変更することはとてもできないということになれば、このオーバー・ローン、オーバー・ボローイングはますますひどくなっていかざるを得ない客観的な情勢に置かれているんじゃないかということになると思いますが、一体この形でいくと行き着く先はどうなるかという点ですね。これはこの間から非常に問題になっておりますけれども、公社債流通市場の問題ということも、やはり金融正常化を離れてはあり得ないのであって、大蔵省の方では、政策的にいろいろと、率直に言うと少しあせっておられる感じがしますが、私は本体を離れて末梢でいろいろのことが行なわれても、率直に言ってこれはだめだ、そういう感じがいたします。この前もだいぶこの問題を論議いたしましたが、金融正常化というのはやはり大体金利が自由に動くということにならない限りだめじゃないかと思いますが、その点はどうですか。
  72. 高木良一

    高木参考人 私は、今のお説に全く同感でございます。本来の金融の正常化した姿というものは、金利の本来持っておる調節機能が十分に働いて、これがおのずから経済活動全般をあるいは刺激し、あるいはこれを調節する、こういう形でこそ、それから金融政策というものは何も万能なものでも何でもございませんので、そういう金利の自動調節機能においてこれを改造していくのが、金融政策の本来の役割であります。そうすれば政策も非常にスムーズにいく、経済の行き過ぎあるいは停滞というものも、そういう面からチェックできていくというふうで、望ましい形、あるべき形はやはり金利の自動調節機能復活を中心にして、金融のもろもろの面が正常化していく、こういうことが一番望ましいんじゃないか、私どもいつもそれを考えておるわけでございますが、現実との間のギャップをどういう形で具体的に埋めていくかということに非常に悩んでおるわけでございます。御指摘の、たとえば社債市場の問題その他につきましても、これが実際に流通という以上は自由に売買されるようなことを前提として考えませんと、一方的にただ買えばいいんだということではこれは流通じゃございません。正常化の姿としては、自然にある値段で右から左へも、左から右へもそれが引き取られていくんだ、こういう形を前提にしてものを運んでいくということが当然だと考えております。
  73. 堀昌雄

    堀委員 きょう、理財局長来ておりませんし、きょうは証券取引審議会をやってこの問題をやっておるようですから、次の機会に譲りまして、そこで私ちょっとその問題に関連して、今の金利が自由化されておる唯一のものは、一本の場合にはコールが自由化されておる唯一のものだと思いますが、これに自粛レートというものがつけられているわけですね。これは大月さんの方に伺いますが、自粛レートというのはどこがつけるのですか、大蔵省の方にイニシアチブがあるのか日銀の方にイニシアチブがあるのか、大月さんどうですか。
  74. 大月高

    ○大月政府委員 これは民間の金融機関の申し合わせでございます。
  75. 堀昌雄

    堀委員 日銀に伺いますが、民間の金融機関が、現実にはレートを上回る処理をしなければならない。ここはまさに自由市場でありますから、それをしなければならない。そこで、自粛申し合わせということを自分たちが守らないでおりながら、なぜそれをするのかということをちょっと伺いたい。
  76. 高木良一

    高木参考人 お答えいたします。その点私直接そういう問題にタッチしておりませんので、全くの私見で申し上げる以外ないと思いますが、自由レートなんだからどんなレートが出ても、そのときの需給関係などで当然じゃないかというふうなお話も、私当然だと思います。思いますが、結局コールというものは、ある金融機関のくろうと同士の相場なんで、あんまりとっぴなものが出て、いかにも金融機関は不当なことをやっているというような非難を受けるのもなんだし、要するに限界レートでございますので、出ますのは、これはお互い金融機関のくろうと同士だから自粛していこう、こういう程度に解釈すべきものじゃないか。私個人としてはそう思っておりますが、あるいはそういうことでないかもしれません。
  77. 堀昌雄

    堀委員 この間からコール問題で次官はお答えになっておるのですが、片一方に自粛レートがあるから、何とかコールは自粛レートの中でやらせなければいかぬのだということを理財局長の方で答弁をして、次官も、そういうことなのだからというお話なんですが、私はどうもこの自粛レートというものは、まさに羊頭を掲げて狗肉を売るというのですか、ともかく看板だけ上げてあるけれども、現実には自分たちに都合のいいときだけ自粛レートを使う。都合のいい、悪いという表現がいいかどうかわかりませんが、実際はあってなきがごときであります。私は、金融正常化というなら金利の自由化ということなんだ、金利の自由化ということなら、一番自由に動いておるところを一ぺん自由化してみたらどうなのか、こんな自粛レートはやめたらどうか、こう思いますが、大月さんどうですか。
  78. 大月高

    ○大月政府委員 若干今の自粛レートの問題について、御説明申し上げる必要があるかと思うのでございますけれども、現在の金利につきます法律上の制度は、臨時金利調整法に基づきまして、一切の金利を規制しております。これは最局限度を規制するという方式でございます。コールの問題につきましても、昭和三十二年までは、同じく臨時金利調整法に基づきまして告示がございまして、翌日もののレートを一銭というようにきめておったわけでございます。ところが、御存じのようにコール・レートは、翌日ものもあり、無条件ものもあり、月越しもあるというように、いろいろの種類がございまして、当時も、翌日ものの一銭というものは守られておったわけでございますが、金融情勢からいたしまして、無条件ものその他はそれを相当上回る。そうしますと、翌日ものとその他の条件のものとに非常にアンバランスができまして、こういう不自然な現象ができたというのが一つでございます。  それから第二の問題といたしましては、昭和三十二年、その前三十一年、三十年、そのころまではインフレなき拡大というようなことで、金融も比較的平静でございまして、コールのレートも落ちついておったような時代でございます。先ほどの調整局長お話のように、次第に自由化でもできるということならば、まず手をつけるのならば、金利のうちで最も自由であるべきコールで一ぺん自由にしてみようじゃないかという、実験的な気持もございまして、やや前向きの姿勢ということで、その告示を廃止いたしまして自由にいたしたわけでございます。ところがその後三十二年に、御存じのように再び金融が逼迫するというようなことで、自由な金利が当時で最高六銭八厘というような金利が出たわけでございます。これがやはり当時の金融界の問題にもなりましたし、国会でもおかしいじゃないか、幾ら金利が自由であるといっても、六銭八厘というようなべらぼうな金利はない、実害から申しましても、やはり社債市場その他にも影響があるというような実害もございましたので、政府の方でも、やはり完全自由というのはおかしい、これは早過ぎたんだ、こういうことで行政指導をやりますし、日本銀行の方でも、これはあまり極端だというようなお話がございまして、それじゃ一つ自粛してもらおうじゃないかということで、六銭八厘から、多分三十二年の九月ごろだったと思いますが、三銭五厘という自粛レートを民間の方でもきめていただいたといういきさつがあるわけでございますが、金融情勢もまた逐次おさまって参りましたので、それを下げて参りました。全体の金利水準も、御存じのようにずっと下がって参りましたので、それに応じて自粛レートは下がってきて、それで現在の二銭四厘というような姿になっておるのでありまして、われわれとしても前向きの政策を、いろいろ実験的にやってみてなかなかうまくいかない、そうかといってコールを統制するというのも行き過ぎであろうというようなことで、実は率直に言いまして、お話のような中間的な段階にございますので、割り切れないというお感じをお持ちになるのはもっともだと思いますが、金融界においても、コールの金利が高ければ、それじゃコール市場にどんどん金が集まってくるという情勢かというとそうでもありません。そういう意味で、べらぼうな金利が必ずしもいいわけじゃないのだということで、極力自粛に努めていただいておるというのが実態でございます。
  79. 堀昌雄

    堀委員 私は過去の経緯が少しくつまびらかでなかったので、よくわかりましたが、これから一年も、今の諸般の情勢から金融の引き締めをやるというようなことがわかっている。そうすると、一体この金融引き締めというものは、何のために起きているかというと、政策のしりぬぐいで金融の引き締めをやらなければならぬ。そのときに金融としては、何とか金利が自由化して動いていく方が、その政策のしりぬぐいをするにしても楽ではないかと私は思いますけれども、依然として金利は硬直をしている。その金利の硬直の仕方が、あまりに現状の諸般の客観情勢と乖離をしているという点に、私は今の日本経済の中の、自律作用などというものが全然動かないで、それじゃ計画経済かというと、計画経済でもないのだ。計画経済ならば計画経済でもよろしい。われわれ社会党としてはそうでありますけれども、まさに前面は経済計画のごとく、裏側は底が抜けている。そしてその抜けた底を金融でふさげというのが現状の日本経済情勢ではないか。これが大きなシュバンクングを起こす、日本経済一つ問題点だ。西独やイタリアの最近の状態を見ましても、向こうの方はきわめてなだらかな上昇を依然として続けているにもかかわらず、日本だけが上がったり下がったりという点は、私はやはり政策担当に関連している大蔵省企画庁の事務当局が、もっと客観的な情勢に対してのいろいろな資料をそろえ、判断を添えて、政策の決定をする人たちに、もっと勇気を持って当たるべきではないかと思う。その点については私どもは、この間日銀総裁に対しても言ったのですが、あなた方はともかく政府に責任を負うのじゃなくて、国民に責任を負うべきだと思うから、この点については、日本経済についての客観的な情勢見通し、諸外国とのいろいろな比較の中で、正しいコールはかくあるべしという姿を、もっと勇気を持って出していただかないと、政府はいいでしょうが、これによって困るのは私は国民だと思います。国民は上がったり下がったり、その中でそのしわが寄るのは低所得の諸君だということになるならば、事務関係皆さんは、客観的な分析をよりつまびらかにして、見通しに対してもっと確信を持って、そして政策担当者に対して言うべきことは言っていただかなければ、私は困ると思う。  本日は日銀に来ていただきまして、以上在庫投資設備投資及び金融について、当面いろいろと疑問に思っております点を承りまして、私は非常に勉強になりましたが、今後とも一つそういう角度で、皆さんの御精進をお願いしたいと思います。
  80. 小川平二

    小川委員長 この際委員長より一言ごあいさつ申し上げます。  参考人には御多用中のところ、長時間にわたって御出席をいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ————◇—————    午後一時三十八分開議
  81. 小川平二

    小川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案国民貯蓄組合法の一部を改正する法律案酒税法等の一部を改正する法律案及び関税定率法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。質疑の通告があります。これを許します。広瀬秀吉君。
  82. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 きょうはせっかく大臣がおいでになりましたので、この間実は主税局長中心に国民貯蓄組合の問題について質問をいたしたわけでありますが、その中で去年から——これは三十八通常国会においても大きく取り上げられ、問題にされたわけでありますが、国民貯蓄組合のあっせんにかかる貯蓄の非課税の措置の問題でありますが、三十六年三月現在で調べたところによりまして、組合数が九万四千、組合員数が六千七百七十七万六千人、金額にいたしまして四兆六千六百十五億九千三百万円という膨大な数に上っておるわけであります。これを有業人口と対比いたしまして貯蓄組合の加入者の割合は一五三・数%、有業人口が全部入ったほかになお五割もよけいに入っておるというような勘定になっておるわけであります。一世帯当たりでも三・一人、こういうような状況になっておるわけでありますが、ここでこのようなことが行なわれるということは国民貯蓄組合法の乱用が現に行なわれているのではないかということで、私ども追及をしてきたわけでありますが、この点について大臣はいかようにお考えになるでしょうか。
  83. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 乱用が行なわれていることは事実でございますので、この乱用防止についてはいろいろ私ども前から金融機関の指導もやりましたが、なかなか実績がそう上がりませんでしたので、御承知のように昨年一部の金融機関について調査を行なって、乱用の事実が相当出て参りましたので、他の金融機関に対しても厳重にこの是正の措置をとるように、今指導しているところでございます。
  84. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国税庁長官にお伺いしたいのですが、ただいま大臣がその乱用の実態を調査されたと言われるのでありますが、これは国税庁が調査をされたのでありますか。その調査の概況について、どんな工合に乱用が行なわれておるかという実態について調べた範囲内でお答えをいただきたいと思います。
  85. 原純夫

    ○原政府委員 国民貯蓄組合預金の監査につきましては、たしか一昨年の終わりぐらいから、第一線の税務署でいろいろな契機でぼつぼつ監査が行なわれまして、そういうのが各地に数件出たのでありますが、昨年のたしか八月、九月のころであったと記憶しますが、一度庁が中心になって、全国のバランスと申しますか、非常に人口が多いですからとても全部やるわけにいかぬ、結局一つないし二つというようなことで調べたことがございます。ただいま申し上げます実績は、今申しました前段の散発的にやったというのは別にして、そのときいたしましたのが全国で十七店舖、都市銀行、地方銀行、信証銀行を入れまして十七店舖を当たったのでありますが、これについての結果の概要を申し上げますと、これらの銀行店舗における支払利子総額二十一億七千万、これは期間は一年というのでなくて若干さかのぼりまして、一昨年の四月以後くらいを大体調べております。一部にはその前のものも、ごくわずかですが入っておりますが、その支払い利子総額のうち銀行が源泉徴収をして納めておりました分が六億八千万ばかりございます。監査しました結果、そのほかにやはり課税をしなければいけないのじゃないかということが大体確認できましたものが二億七千万余りということに相なっております。従いまして、合わせますと、課税の対象になると認められるものが九億五千万ぐらいになる。総体の支払い利子総額に対しまして、四割五分くらい  になると思います。課税漏れ二億七千万程度ということは、源泉徴収一割の税率でございますから、税額にしますと二千七百万円は納めていただかねばならぬという数字になります。この二千七百万円は、銀行が納めてくれておりました六億八千万の一割、つまり六千八百万に比べますと約四割ということになりますので、四割だけ増加になるというようなことになっております。もちろんこのふえ方は銀行、店舗によって違います。土地の状況によっても違うと思いますし、当然違う理由もあるのですが、また銀行のやり方によってもいろいろ違うだろうと思われますが、概して申しますと、ただいまの二千七百万、ほかにこういうふうに怠られますと、源泉徴収加算税というのを徴収することにいたしております。この分が五百八十万ばかり、総合計、税額として三千三百二十万を私どもの方であとから徴収決定をして収めさせておるという状況でございます。
  86. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 十七店舗から三千三百二十万ばかり徴収をされたということですが、そのほか調査をされなかったところも同じようなことが行なわれているであろうということは容易に推定されるわけでありますが、その点はあとからそういう措置はなされなかったわけですか。
  87. 原純夫

    ○原政府委員 いたしました。これは何方という店舗を全部私どもでやるわけにも参りませんので、銀行側にお話をして、正しい報告、正しい徴税をやっていただきたいということを十月の末に、銀行関係の団体に文書をもつて、またおいでいただいて趣旨も説明してお願いいたして、そうして何分かなりの期間にまたがったことでありますので、至急それを精査して、あらためて納めてほしいということと、そのときつけました期限が十二月の十日だったと記憶いたします。その時期までにやっていただきたいということをお願いいたしました。その結果、各銀行相当御勉強願って、相当額の追加納税というものがございました。その額が合計で二十五億六千二百万というのが私ただいま手元に持っている数字で、これはその後整理いたしまして若干動いておるかと思いますが、大体その程度でございます。
  88. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それは三十五年の四月ごろからの分ということですか。
  89. 原純夫

    ○原政府委員 さようでございます。厳密に違反を追及いたします場合はその前の分もまだあるわけでありますけれども、いろいろな事情を考えまして、当時出しました文書では三十五年四月以降の分は必ず間違いなくやってほしいと言ってございます。そういたしました趣旨は、まあいろいろ考え方のあることで、ある意味では、そういうと非常に恥ずかしい次第ですが、世間周知だというような事情もあったと思います。そこで、とことんまでさかのぼるというのもいかがかということを私考えまして、それではどこまでさかのぼるかということを考えましたときに、貯蓄組合制度の問題は、利子所得の課税問題と非常な相関関係を持って事柄が動いております。といいますのは、昭和三十二年の四月と三十四年の四月に利子所得の課税問題についての相当大きな変更がございました。三十二年の四月の前までは利子所得は全然非課税であるということにして、源泉徴収も何もなかったのであります。ところが三十二年の四月からは長期の分は別として、短期の分については一割の源泉徴収をやるということに相なりました。次に三十四年の四月には、期の分も一割源泉徴収させるというふうに改めました。私、当時見ておりますと、大へん遺憾なことだと思うのでありますが、その税が短期にはかかる、あるいは長期にもかかるという時期に、国民貯蓄組合預金というものが非常に急激な増加を示したのでございます。これは預金者が今までの預金を国民貯蓄組合に正当に振りかえたというだけかどうかがかなり疑問だというふうに私は思いました。何分三十二年というのはだいぶ古い、そこで三十四年という年をとって、そのときから課税になりましたのは、長期というのは一年以上の預金でありますから、その分が課税になるようになったということでありますので、そうしますと、それ以後の分で一年以上の分、利払い期が来ます分は三十五年の四月以降に利払い期が来るという勘定になるわけです。そのときを境にするというのが、これはまあこじつけかもしれませんが、そういうこともあって、そのときをもってただしていただくという気持で、そういうふうに扱って、お願いしておるということでございます。
  90. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国民貯蓄組合法の第三条ノ二に「一ノ国民貯蓄組合ノ組合員ハ他ノ国民貯蓄組合ノ組合員トナルコトヲ得ズ」という規定があるのでありますが、これはあとから追加されたと思うのでありますが、いつの追加でございますか。
  91. 大月高

    ○大月政府委員 昭和三十二年四月一日から改正されて施行になっております。
  92. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 二重加入の禁止という趣旨で三条ノ二が三十二年に追加されておるわけであります。その後国民貯蓄組合の組合員数も、三十二年の四千六百万から、三十三年五千二百万、三十四年六千二百万、三十五年六千七百万というふうに増加の傾向をたどっておるわけでありますが、一体この二重加入という概念はどういうことでありますか、これを明らかにしていただきたい。
  93. 大月高

    ○大月政府委員 二重加入と申しますのは、ある特定の預金者が、たとえば窓口の組合に加入いたします。具体的にはAという銀行の甲という店の預金者貯蓄組合に加入いたしますと、それ以外の店において貯蓄組合に加入してはいけない。それからかりに地域組合に加入いたしておるといたしますと、窓口組合はもちろん、その他の組合にも加入してはいけない。同一人に対して一組合、こういう原則を表明したものであります。
  94. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 先ほど私があげた数字から容易に推論できることは、三十二年にこの条項が国民貯蓄組合法において追加修正され、以降においても、なお一そう二重加入、三重加入の事実があったということを物語っておると思いますが、その点間違いございませんか。
  95. 大月高

    ○大月政府委員 必ずしも二重加入がふえたということではないと思います。いろいろ貯蓄組合に入っておる人あるいは預金口座、そういうものも総体的にふえておりますので、それのふえ方に比較しまして、特に貯蓄組合員の数がふえておるということでもないと思います。
  96. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 これは具体的に私どもなかなか調べるわけにはいきませんけれども、これだけの数字があがっておって、銀行局長が、この法律の意味における二値加入はほとんどないのだという、そういうような答弁で一体よろしいのですか。実際にこれはあると見るのが適当であり、またこの数字というものは、当然そういうものを物語っておると思います。もちろん単一の銀行の窓口で幾つもかに分割するというような行為は現にあるということは認められておるわけでありますが、そういう場合は、一体この二重加入には該当しないのですか。
  97. 大月高

    ○大月政府委員 私、先ほど申し上げましたのは、二重加入ではないという意味ではございませんので、先ほど非常に多い貯蓄組合の数である、その後ふえておるのではないかというお話でございましたので、特にその後ふえたということではないと思うのでございますが、二重加入という事実、あるいは仮装名義の預金あるいは分割、こういう事例は相当にございます。これは先ほど長官からもお話がございましたように、調べた結果におきましても、それから一般のわれわれの感触からいたしましても、相田あるわけでございますので、今度の事件については、この法律改正を機会に運用の適用化も一段と推進したいという趣旨でございますので、相当乱用があるというようには考えております。
  98. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣にお尋ねしたいのですが、今、銀行局長も、このような二重加入というようなものは現にあるということをお認めになったわけでありますが、これに対しては、同法の第十一条の罰則において「本法若ハ本法二基キテ発スル命令文ハ之二基キテ為ス処分二違反シタル国民貯蓄組合ノ代表者又ハ国民貯蓄組合ノ斡旋二依ル預金ノ受入ヲ為ス者其ノ他国民貯蓄組合ノ関係者ニシテ命令ヲ以テ定ムルモノ」こういう者に対して、「左ノ各号ノ一一該当スル者ハ三百円以下ノ過料二処ス」ということで、そういう場合に過料の罰則がついておるわけであります。ところが、これについておそらく罰則の適用——二重加入の事実を発見しても、罰則の適用などをやった事例はないものと私ども了承しておるわけでありますが、こういうことで、はたしていいのでしょうか。法律は、厳粛に二重加入を禁止し、そうして二重加入があった場合に、それをほったらかしにしておって、そうして税金を徴収せずにおった、こういうことは、源泉徴収に当たる者がこの法律に違反をしておる。そういう場合には過科に処せられるという罰則があるわけであります。そういうものが、現に、この法規通りに、国民貯蓄組合法の精神に基づいて何らの手が打たれてこなかった。今回はようやく乱用防止の法律改正ということになりましたけれども、今までそういうものをほうりっぱなしにして乱用の事実をそのまま見のがしてきたということであります。政府は、口を開けば、法治国家であり、法秩序を守らなければならぬということをいつでも言われるわけであります。またそうなければならぬことでありますけれども、そういうような場合においてそういうことをやらぬでおいてきたということは、これはもちろん貯蓄増強という政策目的というものはおありでありましょう。そのことを認めるに私どももやぶさかではないわけであります。しかしながら、貯蓄増強という政策目標は、法律違反をやってもいいということにはならぬと思うのですが、この点、大臣はどのように考えられるのですか。これはやはり政府の大きな責任だと私は思います。こういう乱用が多年にわたって行なわれてきたという事実に対して、これは一体だれが責任をとるべきものですか。監督官庁である大蔵大臣ですか、それとも第一線の銀行なりあるいはその他の金融機関なりが負うべきものか、あるいは地域、職域の組合長が負うべきものか、そういう点について一体どのようにお考えになりますか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  99. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今おっしゃられたように、貯蓄を奨励する、貯蓄してほしいという必要性から出た一つのこれは政策立法でございますので、やはりその目的を達するためには、これはできるだけ行政指導でいくべきものであろうと私どもは考えています。ですから責任がどうということになりますと、われわれにも責任がございますし、これを公正にやっていくべき金融機関にも責任があるでしょうし、特にこの組合の指導幹部にも責任があるということになろうかと思いますが、これは貯蓄を増強したいというために法規に罰則の規定があったにしろ、すぐに個々の違反について罰則をもって臨むべきことか、そうじゃなくて関係者の自覚を促し、行政指導を十分にして、そういうことがないように持っていく方がいいかと申しますと、この種の問題はやはり私どもが個々に違反があったからすぐに処罰するというような態度じゃなくて、こういうことをなからしめるという方向へ努力すれば事実これはできる問題でございますので、その方へ力を入れるべきだという考え方から、私どもは今までこういう事実があってもすぐに罰則をもって臨まなかったということでございます。この罰金自身も古いときにきめたので非常に少ない金額にもなっておりますし、これはこういう事態をなくすようにするという方向へ努力すれば、それでこれはまた是正される問題だと思っておりますので、そういう運用をした次第でございます。
  100. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 苦しい答弁をなさっているわけでありますが、無制限に——この国民貯蓄組合法は今まで第三条の二がなかった。それを三十二年度にわざわざ追加をしたということは、国民貯蓄組合あっせんにかかる貯蓄では、無制限にこれは非課税にしていこうというような気持じゃないんだ、やはり法の範囲内において、二重加入でない範囲内においてのみ特典を与えることによって貯蓄増強をはかってやるんだという趣旨以外にはないと思うのです。そうでなければ、こういう第三条の二をわざわざ二重加入の禁止というタイトルをもってこれを三十二年に追加するということはなさるべきじゃなかったわけなんです。その範囲内において二重加入じゃない一口だけはいいんだ、一口元本三十万まではいいんだ、その範囲内において貯蓄増強をはかるということがこの貯蓄組合法の趣旨であるわけです。そして罰則はなるほど過料三百円ですから、これは痛くもかゆくもない問題であるけれども、しかしながら法で禁止したことに対する違反をやった場合は過料にするんだということをやはり建前としてやっている。こういうような場合には、これは政策目的で当初から貯蓄増強ということを目的としてこの立法がなされているんだからということは、これはまさに野放し論であります。野放し論では非常に税制における不公平というものがあるからというので、わざわざ二重加入の禁止ということをやって罰則までつけた。そういうようなことだとするならば、大臣の答弁はわれわれは絶対に納得できないわけです。その議論はこれは返上せざるを得ないわけであります。しかも利子所得の課税については、これは大衆に、一番不合理だということがわかりやすい問題点である。しかもそれをちゃんとこの法律に書いておきながら、そういうような罰則の発動なんというものはほとんどなされない。そして乱用はそういう中でぐんぐん進んできたということは、これはどうしても大臣の今の答弁では私ども満足できないわけです。この点についてはもう少し大臣の誠意あるといいますか、もっと率直な一つ責任論を聞かしていただきたいと思うのです。
  101. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 罰則があるのだから必ずそういうのがあったら全部それを適用しろというお話かもしれませんが、これは言ったように政策的な立法でございますし、その政策の効果を発揮させるための指導が十分に行なわれれば目的は達成されるという性質のものでございますので、私どもとしてはどちらへ力を入れるかと申しましたら、違反者はことごとく法律通りに罰するという方向じゃなくて、この是正を考えることが本筋だというふうに考えて、今度の改正案の御審議をお願いするということになったわけでございます。また全く野放しかと申しますと、特に脱税の目的で組合を乱用するというようなことになりますと、所得税法に規定する制裁というようなものもまた別の法律でございますので、極端な乱用というものはまた押えられる別側の措置もとられておりますので、この種の貯蓄組合の行き過ぎというようなものについては、あくまでこれは根絶を期するという別の措置でいくのが本筋ではないかと私は思っております。
  102. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣は、その政策目的が優先する、というような言い方をなさるわけでありますが、その政策目的について私ども否定をするわけではないのです。しかしながら、これはあくまで二重加入の禁止ということを言っているわけなんですね。三十二年以来そういう条項は入っているんですよ。それに対して今日までずっとこの乱用があまりにも目立って、乱用がだれ人からもけしからぬと言われるところまで起こってきた。そうして国会から追及を受けて、初めて三十五年四月以降の分についてだけ、これは銀行で協力して何とか納めてくれ、こういうやり方、これは国税庁にも私は車天な責任があると思うのです。ここまでこういう条文を入れておきながらほっといたというところに、今日の徴税の姿というものに非常に問題点がある。小さな事業家の過小申告などについては、いろいろ更正決定やなんかでもまるっきり信用しない態度をとって、徴税をかなりきびしい姿でやる、あるいは小さな同族会社の行為計算の否認をやってみたり、あるいは租税回避行為の禁止だというようなことでやってみたり、いろいろなことをやっている反面においてこういうことが行なわれる、そういう対比の中で、私どもはこの問題は許せない、こういうわけなのです。こういうような均衡論といいますか、そういう問題についても、私は、この責任というものは決して軽くない、こういうように思うのです。その点いかがですか。
  103. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国税庁の意向はあなたのような考えで、やはり法律がある以上適正、公正な税務の運営をしたいというので、そういうことをなおざりにするというような方向でいたわけではございませんが、この問題については特に私どもは、なぜみんなそういう違反が起こるかと申しますと、われわれの方にもやはり親切でない点があると思います。納税者の方でそう多い店舗をたくさん遠隔の地に求めて幾つか二重加入をやっているというのではなくて、事犯の大体を見ますと、一店舗の中で名前を変えたりいろいろしてやる二重加入というものが実際に多いのですから、これを直させる工夫があればそれで違反者は減ってきますので、今度のように店舗が本人にあるかということを確かめ、そうして銀行自身も同一人を名前を変えて加入させるというようなことは一切やらないというようなことによって、相当の違反はこれで是正されることになろうと思いますので、私はこれを処罰する前に、まずそういう方面の改正をやろうじゃないかといって、処罰したがっているのを押えたことはございますが、これは私は今の法治国といってもいろいろな問題がございまして、国民感情というものを無視して法の運営をやることは不適当だと思われる事例はたくさんあると思います。食管法にしましても、一升持ち出してすぐぴしぴし取り締まられるということになりましたら、これもなかなか問題でございますし、特に国民に貯蓄を奨励して、貯蓄した人には罰金を取られるというようなこともいろいろ考うべき問題だろうと思いましたので、私は、処罰よりもこういう事態が起こらないような配慮がまず先である、そういう考えから、処罰論もございましたが、私の時代にはむしろ押えてきておるというのが実情でございます。
  104. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 私は、処罰をなぜしなかったかということ以上に、これだけの乱用があるということが前もってわかりながら、これは国税庁でもっと早くから、去年やったような手をどうして打たなかったかということにむしろ重点があるわけであります。そしてまた、法を運用する立場というものが、あまりにもこういう面だからということでずさんにされている。この点についての責任というものは免れぬだろうということを言っているわけであります。それで、今大臣は食管法の問題を引かれましたけれども、私は食管法の問題でも、相当現実の問題としてやみ米が流通するというような事態に対して、一々罰則はやれぬ、そういうような現実の法律の行き方と現実の姿、必要性というものに非常にギャップが出て、しゃくし定木にやり得ない場合があるということは認めるわけですけれども、このことはほんとうに法の趣旨通りにやればやれないことではないのです。それで、それをやることが当然公平のことであり、しかも何らほかに支障がないことなんです。この通りにやって差しつかえないことなんです。一升持ち出して、それがどんなに気の毒な事情があっても罰則を適用するんだという場合とはケースが違うのです。それを同じようにたとえで言ったのでは、全くその答えにならないわけです。この点について、国税庁長官の考えを、今日までのこれに対してとった考えというものについて、もう二度お聞きしたいと思うのです。
  105. 原純夫

    ○原政府委員 この問題につきましては、私の記憶いたします限りの一番古い時点での努力の始まりは昭和三十一年であります。私、その年に主税局長を仰せつかって、その夏から秋にかけて税制調査会でこの問題が取り上げられまして、非常に乱用が問題だというようなことから、これをチェックしようという話が出ました。そのとき結論が出ましたのは、やはり税務署が出るよりも、待ってくれ、銀行系統で自粛する、そして銀行検査においてこれを検査して、そして間違いがないようにするということで、そのときの結論はそういう形の結論に相なりました。銀行局から通達が出ましたが、遺憾ながらその実績はどうもあまり上がらなかったというのが率直な私の判断であります。その後昭和三十三年、これは会の名前は税制特別調査会といったかと思いますが、そのときにもただいま長期の預金の利子課税等と並びまして、貯蓄組合の問題が出まして、たしかそのときにも議論になってしっかりやっていただくということになったと思うのであります。これらを通して、私としては当時は執行面でない、立法の事務屋としての主税局長でありましたが、やはりお話のような、これほど世間が公知のように脱税があると思っていることを税務がやらないということについては非常に悩みを持っておりましたし、疑問も持っておりました。ただ、ただいまのようなことでありますので、まず銀行行政の側でやっていただくという態勢を続けてきたのであります。これがあるいは長過ぎたかもしれないと思いますが、私一昨年庁の方に参って、ただいま申しましたように昭和三十四年の春にも、非常に大きな貯蓄組合と申しますか、こつ然と非常に大きくそっちに振りかわるということがありましたので、どうもやはりこれは税務の方でも放置し得ないというような感じがいたしておりました。ただ何分この貯蓄組合預金に関しましては、非常に大きな貯蓄組合と申しますか、こつ然と非常に大きくそっちに振りかわるということがありましたので、どうもやはりこれは税務の方でも放置し得ないというような感じがいたしておりました。ただ何分この貯蓄組合預金に関しましては、貯蓄増強だというので、世間の見方あたりの思惑もあり、慎重にしなければならぬなと思っておりました。これは広瀬さんのごらんのように、おそ過ぎたと言われれば、まことにおそ過ぎたと思いますが、私としましてはもろもろ考えましてハンドルはとってきたつもりですが、昨年の八月やはり庁が乗り出してやろうということになったというわけで、ただいまのような事情、責められれば私はすなおにお責めになるのをお受けしたいと思いますが、事情はそういうことでございます。
  106. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大臣は、どうもさっきから貯蓄増強の政策——もともとがこの貯蓄組合法も貯蓄を増強しよう、国家財政の充実のために、そういう趣旨で設けられたものだからというだけしか言わない、こういうような事態が起こって現に乱用されておる、しかも法印にも明確に二重加入禁止の条項があるにもかかわらず、これが明白に違反されておる、そういう現実があった、しかも相当長期間にわたって、これがほとんどほったらかしにされてきたということに対して、これは大蔵大臣、あなたが大蔵大臣になってからむしろこの問題について真剣に取り組んできたということでは、あなた自身にはそれは直接的な責任なり遺憾の意を表するというようなことを求めているわけではない。この問題についてしっかり取り組んだという点では、敬意を表するのですが、こういうような現実に対して、政府を代表してあなたは遺憾の意を表されるような気はないのですか、その点いかがです。
  107. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 法の違反事実というものが非常に普遍的になってきた、それが今日までなかなか解決されずにおったという事態を招いていることは遺憾の意を表します。
  108. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 銀行局にお尋ねしますが、今度の改正でもこの前大月さんにお伺いしたときにも、今までのようにいわゆる窓口組合、二店舗に対して一千万円を三十数口に分けるというようなことを銀行が協力してやっていたというようなことは、今度の法改正で大体防げるんじゃないか。しかしながら、店舗を変えて二口ずつやれますから、百万円ずつ十でも二十でも、あるいは理論上は百でも二百でもこれは分割して百万円ずつやれる、こういうことになるわけですね、そうしますと、やはり今大臣が遺憾の意を表され、そうして今度の法改正というのもこれは全部ざるだとは言いませんけれども、ざるに近い改正じゃないか。そうしますと、やはり貯蓄の問題については、税制面で税の公平という原則から相当許しがたい不公平というものがそういう面に出るんじゃないか、そういうものをもう少し有効にチェックする方法というものをお考えになる余地はないのか、銀行に対する監督の同等でそういうことが現実に防ぎ得るという自信がおありでしょうか。
  109. 大月高

    ○大月政府委員 ただいまの問題は、この貯蓄組合制度のうちで一番むずかしい問題だと存じております。今度のような結論を出すにつきましても、省内におきましても税の当局、あるいは大蔵省全体といたしまして、いろいろ御相談をいたして参ったわけでございます。つまり、預金者の貯蓄心理というものをどうして害さないようにするかということと、法律の適正な執行ということをどこでかみ合わせていくかということは、非常に現実問題としてむずかしい問題だと思います。それで、たとえば税収を確保するという面から申しますれば、あらゆる貯蓄組合の預金につきまして、たとえば非課税の貯蓄の申請というようなものを税務署長にでも出して、税務署において全部それを一覧できるようにする、それを住所地の税務署にでも全部集めますれば、それは完璧を期することはできると思います。もちろん税務署の職員の数とかあるいはその事務の関係者は、その場合何百何千という預金者を扱うわけでございまして、必ずしもそういう人員、施設の現在の組織からいって完璧は期せないと思いますけれども、比較的厳重に取り締まれるということだと思うのであります。しかし、預金者の心理といたしまして、一々預金をするのに税務署長の許可が要るというようなことが、一体預金というものの本質にそぐうものかどうかという国民感情もございます。そういう意味で、税当局以外の、たとえば財務部であるとか財務局であるとか、そういうようなところにでも名簿を備えつけるというようなことでもやったらどうかということも検討いたしたわけでございますが、これも財務局の機構等からいたしまして、いわゆるゼスチュアとしてはやれるかもしれない。しかし、単にそういう形を整えるのが趣旨ではないわけでございまして、やはり預金者及び金融機関、それからわれわれの行政、そういうものがそれぞれ相待ちまして、できるだけ適正な運用をやっていくというのが、この制度として最善の道であろうか、こういうような結論になったわけでございます。そういう意味で、たとえば、ほかの制度を例に出してはなはだ恐縮でありますけれども、郵便貯金におきましても、今回限度は五十万ということになっております。これも今の貯蓄組合の制度と同じでありまして、五十万をこえる預金をしてはいけない。しかし現実はやはり郵便貯金で五十万をこえた預金をしておる人がないとは言えないわけでございまして、こういう問題からいたしますと、貯蓄機構としての横の公平性というような問題もまたあるわけでございます。しかし、そういうことになっておるので、貯蓄組合はある程度ルーズに運用してもいい、こういうことではないわけでございます。できるだけ国民の御協力並びに金融機関の協力、それからわれわれの行政面、税の執行という面ではなしに、貯蓄組合の運用を適正にするという面で、極力努力いたして参りたいと思います。  それでは店舗の異なるところに預金をして、いずれも貯蓄組合に入っているというようなことを、どうしてつかまえるかという現実の問題になるわけでございます。これはわれわれといたしましても、金融行政、証券行政、そういうような面で抽出検査というようなことも手段としてはできます。この関係調査はピック・アップをしてやれるわけです。いかなる調査でも一〇〇%というわけには、はっきり申して私はいかないと思いますけれども、こういう問題になっておる制度でございますので、適正をはかるために極力努力して参りたい、こういう考えでございます。
  110. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 国民の貯蓄マインドというようなものを振起させていくといいますか、増強させていくということで、なかなかむずかしい面が確かにあろうと思いますけれども、この貯蓄増強という問題が、利子の非課税というようなことを刺激剤としてやっていくという方向それ自体が、やはり今問われなければならない問題点だと思うのです。中山税調会長もここではっきり、税制面において貯蓄増強というものの刺激をはかっていく、あるいは貯蓄マインドを増強させるために税制を利用するのだという考え方は、もうそろそろ清算すべき段階じゃないかということを言われているわけであります。税の公平の立場というものを、この面で最も端的に害しているという事態が出ているわけであります。貯蓄増強のためには、税制以外にもっとやるべきことは幾らでも考えられるはずだと思います。それが一つの理由でありますし、もう一つは、そういうような特典を税制面において与えなければ、それではたんす預金になるだろうかということであります。今日の文明の社会、非常に資本主義的な発展の段階において、たんす預金でしまっておこうというような者は、利子の特典をはずしてしまうということになれば、おそらくみなそうなるだろうというようなおそれは、やはり今日では通用しないじゃないかと思います。これは何らかの形で貯蓄に出てくる、もちろん一部消費に回るだろうというようなおそれはあるだろうと思います。しかしながら、これが隠退蔵される、たんす預金になるというようなことは、私は今日考えるべきじゃないと思う。それは考える方がむしろ間違いだろうと思います。あるいは直接投資という形で証券というようなところにいくかもしれません。あるいはまた、利子に対して課税されるのはいやだからというようなことを考えずに、銀行にちゃんとくることも当然考えていいわけであります。そういう点であまりにも課税における公平を害して、貯蓄−増強の刺激剤にしようという考えそのものが、間違いだということが言えるのじゃないか。何らかの形でやはり貯蓄の中に金がつぎ込まれてくる。これは黙って持っておったのじゃふえも何もしない。何らかの形で必ず有効に活用し、財産をふやしていこうという考えは、今日の文明社会においてはだれだって持っていることであります。それに対して適正な課税がなされることについては、もうおそれるべき段階じゃないというように私は思うのですが、そういう見解について、大蔵大臣としてはどういうようなお見通しを持っておられますか。
  111. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはおっしゃられる通りだと思います。貯蓄の増強というものを、税制における優遇ということで進めるべきかどうかには、非常に疑問がございます。現に、もしこれが今のような形できつく取り締まられるというようなことだったら、これはもうやめたいという意向も金融機関からは出ております。奨励が奨励でなくて、あまりむずかしい問題になるなら、これはやめたらどうかという意見まで出ておりましたが、しかし私の方から見ますと、今どうしても貯蓄を奨励しなければいかぬ時期でありまして、現にこの制度があることによって、みんながこの制度を利用しないという状況でしたらともかく、これが二重加入、三重加入の違反を起こしてまで、この組合は活用されているという現状から見ましたら、現在貯蓄奨励策としてある制度であって、それだけの利用者がある以上は、違反が起こらないように是正する措置を講じて、この際これを撤廃しなくてもいい、やはり貯蓄増強策としてこの限度を上げて、そういう違反を防ぎ得るいろいろな措置をとることによって、この段階としては続けることが妥当であろう。こういう判断で、私どもはこれを続けることにしましたが、将来の問題としましては、こういう形で貯蓄の増強をはかろうとする方法がいいか悪いかということにつきましては、あなたがおっしゃられるような、そういうような問題があろうと思います。
  112. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 時間がありませんので、あと一つだけにしたいと思います。一昨日ですかの新聞に出たことでありますが、税制面からの景気調整という問題、これは中山先生もここでそういう問題点がこれからの税制調査会の主たる問題点になるのではないかというようなことを言われたわけでありますが、大蔵省でも大体そういう腹を固めたというようなことが報道されておるわけであります。その中で特に特別償却制度の一時停止というようなことが考えられているというようなことで、景気調整の見地からそういうことをやると言われているわけであります。私どもは、今日の高度経済成長に税制面からあおりをかけたのは、特別措置法の問題が非常に大きな要素を占めているのではないか、ごく大ざっぱに試算したところによりましても、大体六千四、五百億ぐらいは大資本に、今日まで租税特別措置法ができてから手元に内部留保として残された、本来とらるべき税金が残った、いわば隠れた補助金のような姿で残された、こういうようなことも言えるわけでありまして、こういうようなことが、あの民間設備投資の行き過ぎという事態を生んだ一つの大きな原因じゃないか。従って、そういうような場合に、これを調節には、こういうものに手をつけることが、非常に安定した姿でしっかりした日本資本主義の体質改善といいますか、そういう面に結びつく措置をしたかというようなことを言っておったわけであります。そういうような面から一時停止というような形で出されてきたわけでありますが、私どもの立場としては、単に景気調整というようなことではなしに、租税公平の立場からむしろそういうことを推進するということが、やはり日本経済の安定した発展という立場からも必要じゃないか。そういうような意味と租税公平と、この二つの趣旨からこういうことに手を触れられてくるのが当然だと思うのですが、あくまでやはり景気調整という意味だけで、こういうような方向をとられるのでありましょうか。私どもが常日ごろ主張しておりますような、租税の公平を害する、こういうような立場も十分含んだ上でこういう措置を考えられていくのか。大蔵大臣のその辺の考えをこの際一つ聞かしてもらって私の質問を終わりたいと思うのです。
  113. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 租税特別措置法は、御承知のように政策的な目的から特に特別な措置をしておるので、税法、税理論からいったらこれは例外的な考え方ということになるわけで、できるだけ、この政策が目的とする目的が達成されれば、これはやめるべきものでございます。ですから、私どももそういう観点から、この特別措置法はしじゅう税制調査会においても検討の対象となっており、この三十六年度においては全面的な検討も行なって整理をいたしてきましたが、日本経済から見まして、現在どうしてもやはり合理化を急がなければならぬものがある、それを育成しなければならないという事情もございますので、そういう意味からいろいろの特別措置法ができております。最近は特に低開発地域の開発とか、あるいは中小企業の団地移転とか、産業都市の建設とか、あるいはいろいろな特別立法ができておりますが、地方格差の是正とか、あるいは中小企業の育成というものを中心にして、最近特別措置はだんだんに政策の必要によって多くなっていくという趨勢にございますが、そのうちでも、必要ではあるがここで景気調整的な意味から行き過ぎた設備投資を押えたいという考えを今持っておるときでございますので、その観点からある程度この運用で考えるべき問題はあるというふうに私どもは考えておりますので、御承知のように去年の六月から、この指定期限の来たものの延長を見合わせるとか、あるいは機械の指定追加を見合わせるとか、大体見合わせという方向で今参っておりますが、これは景気調整的な考えという面からも考えなければならぬと思いますし、また一方、税の公平というような問題からも当然考えなければならぬ。両面からこの特別措置法の運営はすべきものであろうと考えております。
  114. 小川平二

    小川委員長 芳賀貢君。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最初に、税法はいろいろ種類がありますけれども、今回の税制改正に伴う各税の主要なる点に対して、具体的な事例をこちらから提起しながら質問をしたいと思います。時間が足りませんから主要な点だけ大臣にお尋ねして、残余の点は後刻また各法案を具体的に審議する場合に、担当の政府委員から詳しくお尋ねしたいと思います。  第一にお尋ねしたい点は酒税の改正についてです。もちろん酒税の税率が引き下がるということは国民的に好ましいことでありますが、この際たとえば自家生産の酒類に対して政府はどういうような、時代に適合した取り扱いをしようとするか、それらの点に対して具体的な作業がなされておるとすれば、それについてお尋ねしたい。たとえば最近の農業の成長部門の中で、畜産農業、果樹農業等の成長が期待されておるわけでありますが、果実の生産が非常に高まった場合、これは需給関係にいろいろ影響を受けて、生産が過剰傾向になるような場合もあるわけです。ですから、そういうときの一つの処理方針として、果実の消流の方法をいろいろに考える心要があると思うわけです。そのままの姿で市場に出すという場合、あるいはこれを加工してジュースとか果実酒を製造して販売するということも当然心要なことになるわけです。そういう生産者がみずからの生産した果実を原料として、たとえば酒税に規定されているような果実酒の生産を行なうというような場合の製造の許可あるいはそれに対する免税の措置等は、当然考究さるべき点であると思いますが、まずその点に対していかがでしょうか。
  116. 原純夫

    ○原政府委員 酒類の製造の免許の問題は若干技術的な点等がありますので、恐縮でありますが私から申し上げます。  今お話しの果実酒の製造の問題でありますが、果実類全般にわたりまして需給が非常にデリケートであるといいますか、需給を厳密に見ていかなければならぬというものについては、免許をただいま押えているということでございます。しかしそうでなくて、どんどん需要伸びていく、供給も伸びなければならぬというような場合には、新しい企業がこれをやるというのに十分機会を与えるべきだ。もちろん税法にあります資産、信用、その他の条件は心要でありますけれども、そういう考え方でいっておりまして、果実酒はむしろ後者の部類に属するものと思っておりますので、ただいまお話しのような角度での、農村での自分の生産したものを加工したいというようなお話も十分検討に値すると思います。
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 たとえばヨーロッパ等においては、自家生産の果実酒等については、一定の生産数量の規制とかあるいはそれに対する免税措置とか、そういうものが古くから考究されておる事例もあるが、わが国の場合にはまだそこまで進展していないわけですね。ですからこれらの問題は、やはり政策的にも、今原さんが言われたわけですが、すみやかに考究して解決すべき時期でないかと考えるわけですが、大蔵大臣いかがですか。
  118. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もこれは考究さるべき問題だと思っております。
  119. 芳賀貢

    ○芳賀委員 さらに農業政策との関連でありますが、昨年農業基本法の審議を行なった場合、当時農林委員会に総理大臣が出席されて、今後の農村工業の発展の一つの姿として、たとえば農民の資本で工場の建設を行なって、そこで農民が生産した原料の加工を高度に行なうという、いわゆる近代的な農村工業の発展の姿というもの、これは政府としても大いに助長したい。具体的な例としては、たとえばてん菜糖のような場合ですね。これはもうすでに実行されておりますが、あるいは数年前から国内においても麦対策の中で、ビール麦の問題が非常に議論されておるわけです。特に最近のビール企業は、ビール四社が大体独占的な企業支配を行なっておるようなことになるわけですが、その場合、たとえば生産者がビール麦を生産する、麦芽の生産も行なうということになるわけですからして、生産者団体がみずからの資本をもってビール工場の建設を行なって、ここで税法に基づいてそういう生産販売を行なうということも当然やるべきことだと思いますが、こういう点についても法律ではやれることにはなっておるが、それじゃやりたい、やろうという場合には、なかなかいろいろな障害があってその実現ができないのが今日の状態ですが、具体的に農業団体が自己の資本によってビール工場等を建設したいという場合においては、この酒税法の、たとえば第七条の酒類の製造免許及び第九条の酒類の販売業免許等の条文がありますが、ビールの場合には、毎酒造年度中に二千キロリットルの生産を上げれば一定の資格があるということにもなるわけですが、こういう問題が具体的に進められた場合には、条件が具備しておれば許可するということで進むのかどうか、その点はいかがですか。
  120. 原純夫

    ○原政府委員 これも先ほどと同じ理由で私から申し上げます。  ビールも御案内の通り非常に需要伸びている酒でありますから、新しい企業がやりたいという場合には、やはり積極的な態勢をもって臨むべきだというふうに私どもは思っております。農村系統からそういう要望があれば、これも十分検討したいと思います。ただビールは御案内の通り、従来までのところ、やはり一工場十万石なり十五万石なりというような単位にならないと、コスト的に競争できないといいますか、そういうことが実は通説になっておるように私は感じます。ただいまお話しの二千キロリットルといいますのは、ちょうど一万石ちょっとのところですから、そのくらいのところで必ず出すかどうかという点は、私、ここでは留保したいと思います。少ない生産量ではたしてやっていけるかどうかというあたりは、やはり考えなければならないと思いますので、そういう技術的な採算というものも十分考え、免許いたします場合には、やはり採算がとてもとれぬというのでは困ると思いますので、それらを検討した上で、かまえとしては冒頭申しましたようなかまえで事を処理したいというふうに思います。
  121. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もちろん最近の企業は大企業と対抗するだけの条件を具備しなければ太刀打ちできないということになりますので、そういうことは、今原さんが言われた通り、そういう企業上の諸条件というものが、十分これはやれるだろうという形態が整った場合には、政府としても、現在の国内における麦の生産事情とか、麦作転換であるとか、いろいろ政策的に要請される農業面の事情の変化もありますから、そういう場合に条件がそろえば、大いにやれということで、今回ビールに対しては十円の減税が行なわれるようですが、そういうことで、生産者団体が公益性を発揮した企業を起こして、これが成功するということになれば、ビールそのものの値段をまだまだ引き下げて、国民にお茶がわりにどんどん飲んでもらうということになれば、非常に利点が各所に生ずるというふうに考えられますので、これは具体的な問題が生じて、政府の了承を得たいという場合には、今言われた通り積極的な措置を講じていただきたい。大蔵大臣、この点はいいですか。
  122. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大蔵省では全然そういうことはいかぬときめておるわけではございませんで、ビールというのはなるたけ、今は独占企業的な形をとっておりますので、いい競争者がたくさん出てきてくれることは歓迎するところであります。
  123. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、租税特別措置法の問題に触れますが、これは昨年の国会だと思いましたが、特別措置法の改正のときに、硫安輸出会社に対する特別措置を条文に加えられたわけですが、特別措置法の中にこれを加えて、今日までこの法の適用によって、赤字会社といわれたいわゆる硫安輸出会社の現在の実情はどうなっておるかという点と、それから最近政府においては、現行の肥料二法を廃止して、新しい肥料法案の提案を三月六日ごろ閣議決定をするということも伝えられておりますが、これも非常な関連を持った問題でありますので、措置法については、この硫安会社の赤字処理の問題に限定して御説明を願いたいと思います。
  124. 村山達雄

    ○村山政府委員 計数にわたる問題でございますので申し上げます。  昨年は、硫安会社の輸出会社に対する売掛金の税法上の処理につきまして、大よそ五つばかりの特例を作りましたことは御案内の通りでございます。その一つは、その売掛金の性質に顧みまして、昭和三十六年三月末現在の売掛金につきましては、会社決算にかかわらず、税法上進んでその性質に顧みて損金にした、これが一つでございます。その二は、同じく三十六年四月以降発生するであろう売掛金につきましては、会社がかりにそれを資産に計上しておきましても、税務計算上は今後はそういう架空なものは収入に計算いたさない、こういう措置をいたしました。  それから、これはこの肥料二法ができました当時からのいわば焦げつき債権でございますので、三十五肥料年度、すなわち三十六年の七月末現在の売掛金から生ずる欠損金につきましては、通常五年の欠損繰り越し控除でございますが、これは十年といたします。こういうことでございます。その場合、貸し倒れ金として貸し倒れ損を立てますと、通常のものにつきましては、貸し倒れ準備金がある限りはそれをまず繰り戻してその損失にてん補しなければならぬという規定になっておるのでありますが、これは全売掛金に対する当該売掛金の割合でくずせばよろしいとやったこと、それからその他いろいろな特別措置について所得制限がございます。この売り上げ制限あるいは所得制限がございますが、その所得制限をいたす場合には、今回の措置によって損金といたしたもの、それは損金としないで計算したところによって特別措置による所得制限を働かしてやる、こういう五つの措置を講じたわけでございます。これによる減収額、そうでない場合もいろいろございますが、通常地方税まで含めまして二十数億と言われておったわけでございます。その後の決算の状況でございますが、今われわれの手元にあるのを見ますと、いずれもこれは専業関係、兼業関係でございますが、専業が八つばかりございます。最近年次ではいずれも大小にかかわらず利益が出ておるようでございます。八社の合計で八億五千六百万程度の利益になっておるようでございます。それから兼業が同じくらいございますが、これはその兼業比率が非常に高いわけでございますので、これは六十六億程度の利益が出ておるということでございまして、最近事業年度ではこの表では欠損を計上しておるものはございません。
  125. 芳賀貢

    ○芳賀委員 硫安輸出会社のたな上げの場合は、一つ方式があって、これは主税局長も御承知だと思うのですが、まずたな上げすべき額は毎年肥料年度にきめられた国内における硫安の最高販売価格、これは政府が公示するわけですが、その価格と輸出価格との差額分をたな上げするということにして処理してきたわけです。従って、国内販売価格の決定をする場合は、その肥料年度中の、年間の、たとえば硫安の総生産量の中で国内でまた消費する分、最近は大体総生産量の六〇%くらいが国内消費になりますが、この国内消費の数量というものを一応需給計画で把握して、そして各肥料工場ごとに、一番生産費の低い、コストの低い工場から加重平均で積み上げて、国内消費量に一割加算した、そこにバルク・ラインをひいて、その中の加重平均価格ということになっておるわけですから、コスト高の会社の場合には当然そういうような経理上の赤字というものが出ることは当然予測できるわけですが、工場別のコストを、私もあの法案が出た当初肥料審議委員をやったことがあるが、輸出価格程度生産費でおさまる工場も実はあるわけです。そういう場合には、企業別にこれを見た場合、硫安会社には各工場、会社別のたな上げ分はあるが、実際のその会社においては決して輸出した分についても赤字が出ておらないという個々の内容があるわけですから、これをただ単に措置法だけで考えて決算した場合も、しない場合もこれでやるのだということになると、これは会社の収支決算上非常に不利になるところはないとしても、非常に有利になる会社も出てくるのではないか、そういう危惧も実は持たれるわけです。ですから、そういう点に対しては当局としてどういうような具体的な措置をされておったか。
  126. 村山達雄

    ○村山政府委員 今のことはないと存じます。というのは、もとより原価を計算する場合は各会社のそれぞれの実際の原価でやっているわけであります。そこで、今の問題は、輸出になっている硫安の売り値を幾らに見るかという問題でございます。実際やりますのは、当初は硫安会社に対して国内ベースの価格でもってやっております。ところが輸出される値段というものは、国際市場によりますと、それよりだいぶ下の値段で、その差額が売掛金になっております。従って、損益をはじき出します場合には、輸出でもって売れた価格対その社の実際のコストでございます。われわれが問題にしましたのは、そこまでは、コストは初めから実際のコストを計算してございます。ただ、売上高輸出会社に対する売掛金だというから、だから、まだ売掛になっておるものまで見込んで所得を一算して保税してあるというわけです。ところがよく考えてみますと、その売掛になっているものは返ることのない売り上げでございます。そういう意味で、その分を全部について引いたわけでございますから、各コストの差というものはすでに税務計算においては織り込まれておる。各会社にとっておる。各会社にとって架空である売掛金だけがこの際落とされたということでございますので、税の方ではそのことはないと思います。
  127. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その次に、関税定率法関税暫定措置法の改正が行なわれるわけですが、先日の提案理由の説明によっても、今回の改正は二、三理由はあるが、その主たる理由としては貿易自由化に対処してこの改正を行なうということが言われておるわけです。この自由化との関連点、今回の関税定率法と暫定措置法の改正の主要な関係点、その点に限定して大臣から御説明願いたいと思います。
  128. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 貿易自由化が進んでくるに伴いまして、昨年関税率の改正を行ない、ことしもまた情勢の変化に応じて関税率の改正案を提出いたしましたが、そこで、こういう関税改正を行なうにあたって、自由化に肩がわりして高い保護関税を設けるということは適当でございません。何のための自由化であるかという問題がございますので、自由化をやるために必要以上の保護税率を設けるというようなことはしないということと、自由化によって競争力の弱い産業、また幼稚産業というようなものも相当打撃をこうむりますので、自由化後に急速な変化とかあるいは混乱を与えないような最小限の税率調整をする必要があるというような点から整理した今度の改正案でございますが、一般消費者の立場も考えなければなりませんので、関税を引き上げることによって今までよりも物価が高くなるというようなことのないように、これは最小限に押えるということと、問題は自由化をしたあとのいわば一時的な保護でございますので、自由化前にはこの関税はいじらぬ。実施の時期と、自由化を行なう時期をあわせて、ある暫定的な措置をとる。それからもう一つは、一たん関税は変更しましたが、すでに合理化計画は進んでおりまして、これは一、二年たてばりっぱに競争力を持てるとわかっているものにつきましては、暫定的にその合理化が終わればすぐにその関税は元へ戻すというふうに、これも暫定的な扱いをするというような方針で大体今度の関税改正は整理したつもりであります。
  129. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その中で、たとえば乳製品等については、暫定措置の方では三十七年の三月で終わるべきものを、さらに一年間延長するというような改正点も実はあるわけですね。ですから、乳製品あるいは砂糖の自由化等については、農民あるいは関係者も非常な危惧と反対を表明しておるわけです。そういうような不安な実情もある中において、最近政府は、乳製品については生産が不足だというようなことを理由にして輸入計画を発表したわけですが、どういうわけで乳製品について暫定措置でさらにこれを低率に押えておかなければならぬかということは、われわれとしてはちょっと理解に苦しむわけです。学童給食用のものは別ですが、一般の乳製品等については、そういう必要はないと考えるわけですが、この点はいかがですか。
  130. 稲益繁

    稲益政府委員 乳製品、酪農製品につきましては、前回の改正の際に、自由化した場合には競争力がどうであろうかという点をいろいろ算定いたしまして、御承知のように現行三五%でありますが、これではとうてい競争ができないということで、将来考えられております合理化計画、コスト引き下げの計画を織り込みまして四五%という税率を基本税率として設定したわけであります。ところで、先ほど大臣からお話がございましたように、関税率の引き上げはできるだけ消費者なり需要者の立場を考慮しなければいかぬという立場をとりましたので、自由化が実際に行なわれますまではこれの発動は控えた方がいいだろうということでありまして、乳製品につきましては、まだ実は自由化という段階は現在のところはとうてい考えられないような次第であります。従いまして、今年の三月までとりあえず一年間は旧税率を据え置きまして、消費者、需要者の要請にこたえ、さらにまた自由化が延びる形勢にございますので、今回出されました暫定措置法におきまして、一年ずつ区切って出しておりますので、さらに一年間暫定措置を延長したいということでございまして、要するに、高い税率は自由化後にこれを実施する、自由化前においてはむしろ消費者なり需要者の立場を考慮して低い税率に据え置けばいいだろう、かような配慮でございます。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 説明されたところはわかるのですが、実情はそうでないのです。たとえば昭和三十四年、三十五年の両年度については当然旧税率を適用しておるのですが、その関税率をもってしても国内生産の乳製品とは非常なアンバランスであって、圧迫要因になるということで、これは農林省が指導して、バター、脱粉等については一定の超過利益、差益金を積み立てて保留させておいたわけですね。これが両年度にわたって大体四億六千万程度積み立てされておるわけです。先般、これを大体処理する方針を農林省が取り扱い業者に示したようでありますが、実情はそういうふうになっておるのです。三五%であってもなお国産との競争上非常に圧迫になるということを留意して、さらに調整の意味で、そういう差益金の積み立てをやらしておるわけです。こういうことが国の制度上筋道の立った措置であるかどうかということは大蔵当局で判断すれば、おのずから結論は出るわけです。そういうことが随所に行なわれておるわけです。ですから、そういうことを継続的にやるのであれば、この際やはり一年間の期限が切れたのであるからして、三十七年度当初からこの定率法に基づく四五%なら四五%の適用とした方がむしろ国民が見ても納得ができるのではないかというふうにわれわれは理解しておるのですが、今回の改正では、そのまま通ればさらに一年間三五%、そうして差益はまた何らかの形で積み立てる。今度は畜産物価格安定法に基づいて畜産物振興事業団が出て、輸入乳製品に対しては事業団が買い入れするということになるので、それらの差益については、事業団の益金として処理することになると思いますが、事実そういうことになっておるわけです。それで特に事例を乳製品にとってお尋ねしたわけですが、こういう事情から見ると、乳製品の場合には、今回のさらに一年延期の必要はないと思いますが、これは大蔵大臣いかがです。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今、局長から申しましたように、消費者の立場を考えなければなりません。今、日本で供給が足らぬという事態に対処するために、輸入をするという必要が出ているときでございますので、これが自由化されない前に関税の引き上げとかいうようなものをやるということは、そのまま国内価格をもっと大きく上げるという政策になることでございまして、これは明らかに自由化への逆行だろうと思います。もし自由化せば、当然そういう今言ったような差益はなくなるのですが、割当制からくるそういう現象でございますので、これはこれとして適当に処理する方法を考えなければなりませんが、要するに、そういう現象まであるというときに、関税を引き上げるということは逆行の政策だろうと思います。これを自由化すということがきまったときに、初めて国内の産業の保護としてどの程度の保護を加えなければ混乱が起こるかということを見て関税を上げればいいので、自由化をしない前に関税を上げるという方向は私は適当でなかろうと思います。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは関税を定率法に基づいて当然上げきれぬので、暫定措置法で規制しておるわけです。押えておるわけです。本来のものは定率法にある。ですからそれさえもやらないで、関税措置以外の内容の不明なものを包蔵しておる、そういうような差益金吸収というような措置をあわせて用いた方が妥当だというふうに考えておるのですか、こういった方がいいと考えておるのですか。
  134. 稲益繁

    稲益政府委員 昨年この新しい税率を設定いたします際には、そういった問題が実はあったわけであります。農林省といたしましても当面は自由化はおろか相半大幅な輸入というものも、外貨割当のもとにおきましてもそれほど見込んでおらない。要するに、国内の乳製品の保護というところに重点があったわけです。ただ、今回行なわれますのも、言ってみますれば、国内の需要が非常に不円滑になったそういう時期にいわゆる緊急輸入といった形で臨時に行なわれるというそういう際に、若干差益が上ずるであろうということは予想されたわけです。従いまして、関税の考え方といたしまして、そういった場合に出るであろう差益というものを関税という姿で吸収した方がはたしていいのかどうか、これはいろいろ非常に議論があるわけです。御承知のように関税は、ある程度内外の価格差というものは調べはいたしますが、これはぴったりその差額を埋める、国内で超過利潤を一切起こさないようにするというほどまで厳密な計算のもとに設定をいたしておるわけではないわけでありまして、一応の目安と申しては語弊があるかもしれませんが、ある程度こういう産業については合理化要素も織り込んで、この程度の関税でしかるべきではないかといった観点から税率を設定するわけであります。そういたしますと、ただいまお話のございましたような、原則としては輸入を制限しておる、ほとんど輸入を認めないわけです。ただ国内の需給の関係から、臨機に緊急の輸入を行なうといったようなものにつきましては、関税でその差益を吸収するという形をとりますよりも、もしその差益が放置できないものであるならば、別途の形で吸収するということを考えてしかるべきではなかろうか、関税へこれを織り込むということは不適当ではないかという議論になりまして、一応先ほど申し上げましたように、暫定措置としては、むしろ需要者の立場を考えまして、低い税率をそのまま置いておく。正式に輸入が自由化されるというような事態になりました場合には、当然これは高い税率を発動させるように仕組むべきではないか、実はかような考えでやっておるような次第でございます。
  135. 芳賀貢

    ○芳賀委員 関税の中にそれを織り込むことができない場合であっても、その種の差益金の吸収された超過利潤の処理とか処分等については、これは大蔵省として全く無関心であってはいけないと思うのです。今まではそういうものはどうなってもかまわぬということで放置されておったのですか。
  136. 稲益繁

    稲益政府委員 直接私の所管ではないわけでございますが、御承知のように、砂糖につきましても内外の価格差が非常に変動いたします結果、言われますような超過利潤といったようなものが起こっておるわけであります。こういうものを、一般的な国の歳入として建てられた一般財源として見込むべきであるかどうか、これは全然別個の問題だと思います。
  137. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の言うのは、二重関税とまでは言えなくても、そういうような関税に類するような措置を、こうやりなさいというふうに国が是認しておるわけですね。ですから、その趣旨に基づいて積み立てられた超過利潤の処分等については、やはり国としても関心を持って、それが適正に処分されたかどうかということは見きわめる必要があると思う。そういうものが吸収されなければ、先ほど言われた通り、際に国民の生活の上にプラスとなって均霑するわけですが、それは国民の方へおりてこない。途中で利潤が吸収されておる。それが全く不適正な方向に処理されたりするということについては、これは国としても責任を持って監視し、あるいはその処理についても適当な指導を与えるということは当然でないですか。自分のなわ張りでないからどうなってもかまわぬというものではないと思うのです。そういうところからえてして不正とか汚職とか、そういうものが起きると思うわけです。今回の乳製品の超過利潤の処理方針についても、内容を見ると四億六千万のうち、二億数千万というものは理由の立たないような形で処理されようとしているわけですね。こういう点は、大蔵省はさいふが大きいから、何億円台のものは、これはどうなってもかまわぬというほどおおらかな気持でやっておるわけではないと思います。これはいろいろあるのです。雑豆とか輸入自動車の場合には、先般も私が質問した通り、これはジェトロに何かそういう役割を与えておる。あるいは乳製品の場合には今言ったような状態です。それから砂糖については、今度は農林大臣が指導して、甘味資源振興資金管理会というものを作らして、その中に十八億円を受け入れさして、これを適正に使うとか、いろいろな受け入れ態勢を政府が指導してやっておるわけですが、内容が適正に処理されるか、されないかということは、十分今後内容を見きわめていくべきだと思いますが、大蔵大臣はどうお考えですか。
  138. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 内容が適正に処理されていくかどうか。これを厳重に国が監督するのは当然でございますが、それ以前にいろいろ問題がありまして、そういう形で一定のものに使われることがいいか悪いかは、これはこの種の措置が出てきたときに、常に財政当局と主管官庁でこれは問題になる事項でございまして、まあそのつど関係者の相談によって最後に適当な解決になるということになっておりますが、本来ならこれはひもつきになるべきものではなくて、国の収入になるものは収入として立てて、それにからんだ必要な施策は施策として別個に国が予算を計上してやるというように整理するのがほんとうだろうと思います。しかしこれはたとえばそういう超過金でなくても、関税の問題でも石油関税を上げるといいますと、上げた分だけこれをエネルギーの総合対策に使うべきだ、これにひもをつけろという問題が主管官庁から出てきますが、これはひもをつける問題ではない。ただし政策的にそういうことを加味して、関税を上げるのだから、上げた金額に見合った施策費としてこれは国が支出するようにしよう。金額のめどとして、それを考えるというようなことはやるというようなことで、これがひもつきになることをやめるというようなことで、そういう問題は、今たくさんございますので、私どもとしては、施策費として出すべきものは出す。国の歳入として受け入れるべきものは受け入れるというふうな整理をすることが私は財政としてはほんとうじゃないかと思って、こういう問題の起こるつど、いろいろわれわれの考えを述べて、常に政府部内での折衝をやっておるのが実情でございます。もちろんそういう形で特定のものに使用されるときまった以上は、この内容についてはほんとうに効果があるように私どもとしては、十分これを精査するつもりでおります。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 財政当局は出すものは出すという態度でいけばいいのですけれども、出すものをしみったれに控えて、入るものであれば正月の棺おけでもいいというような格好でいくから、政府部内の実力者はそれぞれ知恵をしぼって、そういうひもつき財源を作る、そういう弊害も生まれると思うのです。  そこで関税定率法の改正に関連して、附則の方で、特定物資輸入臨時措置法に基づく特別輸入利益を納付しておる品目については、これは別途に扱うということになっておりますが、現在特定物資輸入臨時措置法に基づく輸入指定品目というのは、大体どの程度の種類になっておりますか。
  140. 稲益繁

    稲益政府委員 現在この関係で残っております品目は、バナナ、パイナップルのカン詰、スジコだけであります。
  141. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、いろいろありますけれども、相続税の関係の中の贈与税の点について大蔵大臣にお尋ねをしておきたいと思うのでありますが、この中で特に農業関係の問題です。今の農村の実情、これは家族経営の形態でおるわけですが、そうなると、家族従事者の中で長男はその家に残ることが建前としても、たとえば次男が農業に従事しておる。十年間とか十五年間同一経営の中に所属し働いて、一定の年令になって配偶者を得て、今度はやはり同じ農業者として独立する、こういうことになる場合、その分家する次男に対して、従来の所有農地の一部を分け与えるということになる。これは相続税法から見ると贈与ということになるわけですね。そういう場合の取り扱いというものは何らこれは勘案はされていないのです。財産取得者が当該財産を取得した、そのときの時価によって財産評価を行なうということになるのであって、その分家として配分を受けた農地についても時価による評価ということになると、これは非常に高額なものになるわけです。ですから、農地自体の評価方式についても、国税の場合と地方税の場合、これはいろいろ違うわけですね。地方税の場合には、これは収益還元方式で農地等については評価をやる。国税の場合には取得時の時価ということになると、その評価の方法が全く違うわけです。ですから、こういうような日本の家族農業の形態の中から、永年同一経営体の中で努力して、賃金とか報酬に見合う、そのかわりに土地の配分というものを受けることなのですから、純粋の意味の財産の贈与とはこれは異なると思うのです。こういう点が贈与税の賦課の場合においては従来何ら勘案されてきていないわけです。ですから、今後も政府としては農業基本法に基づいて家族経営による自立農家を育成するということになれば、この種の問題はやはりいつまでも問題として残るわけです。ですから農業上の分家による農地の贈与等の場合には、農地の評価方式あるいは基礎控除の問題とか税率の問題等に対しても、やはり政策的な考慮を加える必要があると思うわけでありますが、この点に対してはどういうようなお考えを持っておりますか。
  142. 村山達雄

    ○村山政府委員 ちょっと私から技術的なお答えを申し上げておきますが、御案内のように、現在は農家でありましても商家でありましても、相続財産になるべきものの一部を途中で贈与があると、ある免税点がございますが、それ以上のものについては贈与税がかかっていることは御承知の通りであります。と申しますのは、そういたしませんと、それだけ相続財産が減殺いたされます。相続財産については、遺産に対する額によりまして一定の累進税率を盛りまして、それを相続人の相続分でもって一応按分する、こういう形をとっております。もし生前に全部贈与してその分はほっておく、課税いたしませんと、相続財産に対する相続税を全部ゼロにすることが可能であるわけです。そういう意味で現在贈与税が設けられておる。相続税とバランスをとりながら贈与税の制度がございます。ですから、そういう意味では農家に対して特に不利だということはございません。ただその評価の問題でどうだという点でございます。これは御指摘のように遺憾ながら現在の相続税の評価は国の立場でやっております。地方は国定資産税の立場ですべてのものについて、また固定資産の対象になるものについてやっているわけでございます。制度として違いますのは、相続税の場合あるいは贈与税の場合にはそのときの時価によることになっております。今の固定資産税の方はやはり時価には違いございません。法律上は時価になっておりますが、これは現在の法律では三年に一回改訂することになっておりまして、前回では三十六年でございます。その年の一月一日の現況による時価だ、ですから、法律の面ではそういう違いはありますけれども、時価という面では違いがございません。ただ実際問題としての評価の水準はどうだという問題でございますが、これは御指摘のように、かなり違うというのが実情でございます。そこでこの統一という問題が起きて、先般固定資産税、相続税通じまして、固定資産に関する評価を統一的にしようというので三年間御検討願って、調査会を設けまして、その答申が昨年出ているわけでございます。自治省を中心として大蔵省も協力して、三十九年から統一評価を実施したい、こういうことでやっておるわけでございます。ただちなみに申し上げておきますと、いわゆる農家の実際の売買価格というものと、それから相続税の評価というものを見てみますと、売買価格は実際の時価を反映しているかどうかには疑問がありますが、その売買価格から見まする相続税の評価額は相当下回っておる。農地、それから宅地の中心部が下回っておるということは言えるわけでございます。固定資産税になりますとそれよりさらに下回っておる。そこで評価の統一という問題と、これは別に税負担を上げるというわけではございません。税負担は税負担で、税率で調整すべきであれば調整すべきである。ただ評価が不統一だということになりますと、課税上の負担のアンバランスを来たすということで、この評価という問題が現在論ぜられて、三十九年から実施する予定になっておるのでございます。
  143. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私の言う点は、単純なる生前における財産の贈与ということでなくて、たとえば分家するまでの間、十年間同一家族として農業に従事しておった。その間は特別の当然の報酬とか利益の配分というのは今の農家の場合には生存はしておるが、受けていないわけですね。ですからそれは、たとえば十年間たてば年収十五万にしても百五十万になるわけです。それを金額で支給するということでなくて、土地の一部を配分するとかあるいはそれに家屋の建設とか農具とか、必要な家畜を購入して与えるということになるわけですからして、この土地の贈与といっても、単純なる財産の配分ということとは違うわけですね。今まではその実情というものは財産税の中には全然配慮される余地がなかったわけです。ですからこれらはできないということはないでしょう。税法なんというものは何も法則とか原則というものがあって絶対これから動いてはならぬという原理原則でやっているわけじゃないからないですね。これはやはり技術的な問題として、国がそういう実情を十分配慮してやるべきであるということになれば、これは技術的にできる点だと思うのです。  それからなお相続の場合と関連を持たせる心要があるというのでありますが、相続税の場合には、今度の改正で基礎控除を二百万に、相続人一人当たり五十万加算した額ということに是正されるわけでございますが、贈与税の場合には何らの改正が行なわれていないわけですね。現行法によると、贈与税の基礎控除は、課税価額から二十万を控除するということにしかこれはなっていないわけですね。ですから相続税と贈与税との均衡上から見ても、こういう点はやはり調整すべきであったと思うわけですが、それが行なわれていないわけです。特に日本のこれからの農業は、今の政府や自民党の考え方は、あくまでも家族の運用でやらせる自立農業でなければならぬということであれば、農業保護の立場からも、こういうような土地を中心とした農地価額の評価の問題であるとか、あるいは農地の財産上の、形式上はそうですが、贈与の場合のそのやり方等については速急に考究する必要があると思うのです。どうも大蔵省というところは事務的にだけそろばんを一生懸命ではじいておるが、高度の政策の遂行ということに対してはいささか欠けておると思いますが、大蔵大臣はそうお思いになりませんか。
  144. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題はむずかしい問題でございまして、私はこの贈与税の課税に一定の限度を置くという場合に、これを農家と非農家を区別した立法ということは私は事実上むずかしいのじゃないかと思います。その場合に、財産の評価というようなものについて考えるということでしたら考えようもあろうと思いますが、これは農家と非農家を税制上区別するという理由を見つけるのは私はなかなかむずかしいのではないかと思います。政策的と申しましても、これはなかなか簡単な問題ではないと思います。
  145. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは農家と非農家の問題を論じておるのではないのです。特に農地という問題を、これを基礎にして、この場合の贈与について実情がこうなっておるのだからして、これは重大な問題として検討すべきでないかということを問題提起の形で私は申しておるのですが、これは時間の関係でここで結論をすぐ出すわけにいかぬわけですが、資料を要求しますが、地価による評価方式ですね。これは全国地域によっていろいろ違いますが、全国を主要な地域に分けて、たとえば畑地とか、これを田とかそういうふうに地目を区分して、大体現在までの行なった評価の基準はどういうことになっておるかという点に対する資料をお出し願いたいと思います。  それから最後に時間がありませんから所得税関係について申し上げますが、これも全般について論ずれば数日かかる問題です。やはり農業に一つの事例を持つわけですが、あわせて個人事業税の問題ですが、一体専従者控除の場合も青色申告の場合には控除額には変更はないが、年令的に青色の十二万円を今度は二十才以上というふうに是正されたわけです。そういうことをすることは、しないよりはいいわけですが、ここに問題になるのは青色申告と白色申告の取り扱い上の差がある。青色申告ができることになっておるにもかかわらずしないから、お前はどうなんだということできめつければこれは別ですけれども、これは法人税の場合にも所得税の場合にも、青色申告ができるということになっており、行なえば、利点があることは、これは国民が理解しておるが、なおやらない人々がおるわけですね。ですから個人事業所得の納税対象者の中で、大体青色申告を行なっている者と行なっていない者の実数は大体どのくらいになっておるかという点ですね。これを御説明願いたいのと、今回の改正の場合にも、青色申告だけに重点を置いて白色申告の場合には現行通りということになっておるのであるか、これはやはり専従者控除に限ってこれを見た場合はやはり青色と同様に白色申告の場合にも専従者控除については当然引き上げ措置を行なうべきであったと思いますが、これをどうしてやらなかったかという点ですね。青色申告の場合には専従者控除だけが利点ではないわけですね。その他いろいろあるわけです。たとえば損金に対する繰り越し制度等もあるし、あるいは固定資産等の償却を認めるという点もあるので、これは非常に利点が多いわけですからして、現地へ行けば非常に所得の低い白色申告を行なっている人が税額が高く、そして青色申告の人がむしろ税から除外されておるという矛盾がたくさんあるわけです。ですからせめて専従者控除くらいは白色であっても青色であっても同様にするくらいの措置というものは、これは当然必要だと思うのです。白色の場合であっても、一つの判断の方法によって専従者であるかどうかという判断の根拠というものを明らかにして、これが白色の場合にも専従者である。青色になっても専従者であるというような同一条件のもとにおいて個人企業の専従者であるということが政府の側において認定される場合においては、これはやはり同様に所得税の場合においても、道府県税の専従者控除の場合においても、同列に扱うのが当然だと私どもは考えるわけでありますが、これに対する大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  146. 村山達雄

    ○村山政府委員 非常にむずかしい問題でございまして、昨年も青色申告制度の専従者控除の拡充、あるいは白色申告についての一律の専従者控除を創設しました際に、当委員会でも非常に論議されたのであります。その当時もそうでございましたが、個人は法人と違いまして、人格の主体、事業の経営主体が個人でございます。従いまして個人にはどうしてもその企業に属する会計と、それから生計に属する会計というものが概念上考えられるわけであります。そこで所得税法上経費になる性質のものは言うまでもなく事業に属する経費であるわけであります。そこでたとえば、家族が従事しております。こういう場合に、青色申告制度は事業会計を分離して下さい、それでその専従者に幾ら事業負担として現に給与をお払いになっておりますか、その事跡を明確にすれば、それは家計と事業会計が分離されたのだから、当然税法でもその点は損金と言えましょう。ただここは法人と違いますのは、法人は法的にも経営主体は法人であるわけでありますから、その個人の場合はかりに分離をしたとしても、経営主体があくまでも個人でありまして、実際問題としてはかなりその限界があいまいだというところから、最高限については法人と違いまして、規定をしておるわけでございます。もっとも同族法人につきましては、一方不当だと思えば、あまりにも多額だと思えばこれは否認し得る規定はあります。白色申告につきましてはそのことを要求していないわけであります。だれでも青色申告になりますが、青色申告にどうしても会計上できないという場合、これは一体その金を出したというときに、その金は事業負担として給与に属すべきものなりや、あるいは家計会計の中において、生計の中において、扶養親族に対する扶養義務の遂行として観念されるべきであるか、こういう非常にむずかしい問題があるわけであります。それが今日まで非常に論議されたわけであります。しかし全体といたしまして今後企業と会計は分離していく方向になるであろうという将来の方向を見きわめまして、この前一律七万円としたわけであります。ただその場合はっきり書いてありますのは、給与として出すと出さぬとにかかわらず、七万円引く。こういうところでございまして、従いまして、根本思想において青色申告の専従者控除というものと、それから白色の専従者控除というものは、基本思想において違っておるわけであります。一方は現に出したという事実がなければならぬ。一方は出さなくてもよろしゅうございます。どうせ生計と事業の分離ができないのだから、できないとおっしゃるのですから、だから一律に引きましょうといって七万円やっておるわけであります。  それから今の白色と青色の率がどのくらいになっておるかということでありますが、全体で言いますと、大体の記憶でございますが、現在青色の比率がだんだん高まって参りまして、五〇%をこえるに至りました。ただ農業につきましては非常に少なくて、おそらく二、三%程度になおとどまっておるであろうというふうに考えておるわけであります。  それから先ほど私ちょっと誤解して別の角度からお答えしたわけでありますが、農家の分家の問題であります。ここが非常にむずかしいわけでございまして、もとよりその人の固有財産、次男である人の固有財産については、これは相続税の対象になるべき筋合いのものではないと思います。ただそれは被相続人あるいは長男あるいはお父さんの名義になっておる財産ではあるが、その財産の形成について、家族従事者として貢献した、こういうお話かと思うわけでございます。これは現在まさにそのことは所得についても同じことが言えるわけでございまして、所得はだれに帰属するかというところの問題でございます。この問題につきましては、非常にむずかしい問題でございまして、通常、資産所得につきましては、その名義者、私法上の権利の所有者がその利益も享受する。ところで事業所得になりますと、だれが経営者かという問題でございます。手伝っておる人はそれについて報酬をもらうということもございましょう。その報酬の中から固有財産を形成する問題もあるかと思うのです。おっしゃる点は、その被相続人あるいはお父さんの財産にはなっておるが、その財産の貢献の度合いというものを考えて引いたらどうかという問題だろうと思うのでございます。そこが非常にむずかしい問題でございまして、私法につながる問題なものですから、現在のところ、先ほど申し上げましたような二十万という控除になっております。今度相続税について最低控除を引き上げたら贈与税につきましても検討すべきではなかったか。この点も検討したわけでございます。ただ贈与税につきましては、現行三百万でございます。今度改正いたしますと、標準世帯で約四百五十万ぐらいになると思います。そのつり合いから申しますと、決して少ない金額ではない。これはただ贈与する側と受ける側のそれぞれの同一人の相互間の年間の贈与額の最低限が二十万でございます。ですから、二十万ずつやっていきますれば、まあそんなことを勧めるわけではありませんが、その金額は決して少なくないということだろうと思うわけでございます。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 主税局長は、何でも問題にぶつかると、それはむずかしい、むずかしいということで逃げるようですが、そう回避しないで、やはり受けて立つという気がまえでなければ、せっかく質問しても、いやそれは大事な点ですけれども非常にむずかしくてということになると、解決できないですよ。法律等については、何も政府に頼まなければ修正ができないということもないんだからして、そうしつこく繰り返す考えはないが、ただ専従者控除の場合は主体が根本的に違うということでありますが、そうじゃないでしょう。ただ私の場合、ことしは青色申告をやれば、これは青色申告ということになるわけですね。来年青色申告をやめてしまえば、今度は白色申告ということになって、経営体はことしも来年も全然変わりはないが、申告手続を青色申告でしたかしないかということによって、そこに税法上の取り扱いの相違が出るだけでしょう。そうじゃないですか。だから、専従者である、年間農業あるいは商工業の個人企業に従事者として専念しておるということが一つの条件として認定されれば、白であっても青であっても、その専従者についてはせめて控除分だけでも同様にしてやるというぐらいのことでなければいけないと思うのです。ぜひこれはそうあるべきだと思うのです。それがなかなかむずかしいということになれば、これはいつまでたっても解決ができない。去年やったということは一歩前進だが、これが究極ではないでしょう。去年の改正が終着駅じゃないと思う。やっと出発したぐらいのものですから、だんだんとそれを高度のものによくしていくということでなければ、制度の改正というものはできないわけです。そういう点について、これはどうしても私たちとしては同様に扱う必要があるというふうに考えておるのです。この次の段階は個人事業の経営主の控除の問題とか家族労賃の問題に発展するわけなんだが、今の時点ではせめて専従者控除については、白色と青色の差別を撤廃すべきであるという点を指摘しておきます。  最後に。今回の所得税制度の改正の一環として道府県税の県民税については所得税の一部を移譲したということを宣伝しておるが、これは何も移譲していないじゃないですか。所得税は所得税で税法の改正が行なわれておるのであって、所得税の改正は現実に行なわれておるが、道府県民税の場合にはむしろ増税になっていると言う方が適切だと思うのです。それを何か道府県税の県民税の負担が、所得税の中で非常に軽くされたというような誤った宣伝はおやめになった方がいいと思いますが、いかがですか。どういう点が移譲になったか、これは大蔵大臣から……。
  148. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 府県民税に移譲すれば、府県の収入はこれによってふえ、府県に財源を与えたことになりますが、半面もし国の所得税をそのままにしておいたら税の負担者はそれだけ負担が上がることになりますので、道府県民税の税率が上がっただけ所得税において引かなければ負担増になります。従ってそこらを計算して納税者が負担増にならないような所得税の改正をやったということでございますので、負担はこれによって軽くなっておる場合がありこそすれ、負担増になるということは絶対ありません。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうインチキでなくて、どこで一体所得税の中から道府県民税に移譲したかという点なんです。それは、減税をやるのをやらぬでおいて、それと県民税の増加分を差し引いても、まだ今回の所得税をやったことによって総合的には軽減された、そんな詰まらないことを言わないで——一体、所得税の中から地方税に対して移譲したということを宣伝しているわけですね。今度の改正においてもそういう事実はないのですよ。だからどの点を一体所得税の中から地方税に移譲されたか、その点だけははっきりしてもらわぬと……。
  150. 村山達雄

    ○村山政府委員 技術的な問題がからみますので申し上げておきます。先般この委員会におきましても、予算委員会におきましても申し上げたと思いますが、政府の歳入予算におきましても、税源配分による、つまり移譲した分が幾らであるかということは列記して書いてございますが、所得税で初年度二百十八億を地方へ渡しました。国のプロパーの減税は四百八十二億でございます。これを合わせますと四百五十億くらいになりますということで特別書いてあるわけでございます。それでやり方といたしましては、実は税率軽減のところでございます。本来予定しておった税率軽減は所得税としてはこれだ、しかし片方で百五十万を境にして増収になります。そこでその分をさらに追加して減税しているわけです。その思想が一番よく現われておりますのは、初年度減税はどうやっているか、この中身がわかるとすぐおわかりになると思いますが、初年度は四分の三という減税でございます。従いまして、今の基礎控除、配当控除、こういう控除につきましては、それぞれ一万円ずつ上げているのを初年度は七千五百円にとどめてございます。それから税率につきましても、固有の減税分については四分の三にとどめてございます。ただ税源配分は国民の負担とは関係がございません。一方で減税するかわりにその分を向こうは受け取るという収入のやりとりの技術でございます。従って、税源配分に見合う税率改正については国民はフルに下げてもらわなければいかぬ。それで税源配分でございますから、税源配分はどちらでもいいわけでございますが、一年間フルに動かしましょうというのでやっておるわけでございます。従いまして、その分の調整が新たに必要になるわけでございます。源泉徴収のところになりますと、一−三月すでに取っておるわけでございます。ですからその分の調整が必要になってきて、その必要の措置が出てくる。これは税法でもってずっと出て参ります。  なお附則をよくごらんいただきますと、所得税法の附則で、地方税法の一部を改正する法律というのがございます。このときにそういう意味で税源配分をやったのですが、あるケースをとりますと、逆に地方税が増税になる場合がございます。通じて増税になる場合というのが、今の国税と地方税のからくりで出てくる場合がございます。その場合は調整いたしますというので、調整の金額がそれぞれ出ております。これもはっきりこの分は税源配分であって国民の負担と関係ないのだ。だから今の控除の額、課税所得の計算で、大体二万円ずつくらい違うところがございます。それは税率では調整しきれません。すべて課税所得に対する税率でございますので、その分については地方税は逆に増税になりまして、これは所得税で調整しきれないということでございますので、その分はそれぞれ地方住民税の旧税率と新税率の差額でお返しいたしますということが書いてあるわけでございまして、これらの法律を見ていただきますと、これが国民の負担には関係のない問題であります。通じての税源を向こうに移すそのテクニックとしてやっておるのだということがあるいはおわかりいただけるかと思いますが、いずれこれはまた所得税法のこまかいところで申し上げたいと実は存じておったのでございますが、早く質問がございましたのでお答え申し上げます。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これで質問を終わりますが、今言ったように、何も所得税の税収の中から、何%かを地方税に移譲したというような筋合いのものではなくて所得税法の改正によって減税も一部行なわれる、地方税については、増税が行なわれた。しかしその地方税の増税分と所得税の減税分を差引すれば、これは総体においては増税になりませんという程度であればこれは理解ができますが、いかにも所得税の中から一部を地方税に移譲しましたというような、そういう間違った宣伝をされると非常に影響するところ甚大ですから、こういう誤まりのあるから宣伝だけは政府としても厳重に慎むべきであるということを、良心的な大蔵大別に一応警告しておきたいと思います。今後はこういうことは慎しんでもらいたいと思いますがいかがでしょう。
  152. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御趣旨は了承いたしました。
  153. 小川平二

    小川委員長 藤井勝志君。
  154. 藤井勝志

    ○藤井委員 私は酒税法の一部改正法律に関連いたしまして質問をいたしたいと思います。時間が非常に制約されておるようでございますので、ごく簡単に要点のみ指摘いたしまして、特に大部分がすでに当委員会で問題になった事柄ばかりでございますので、しかもまたその問題は、大蔵大臣の政治判断と申しましょうか、そういったことに深く関係があると思いますので、できるだけ大臣の御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。  同時にまた、後刻お話によっては私はもう少し時間をかけて質問させていただきたいと思っている次第でございます。  私からくどくど申し上げるまでもないと思うのでありますが、酒類の産業界というものは、いわば少数の近代的大企業と、きわめて多数の前近代的産業が併存いたしていると思うのであります。そしてその経済界の中において、市場獲得のために激しいつばぜり合いをいたしておるわけでございます。そこでまたもう一つ特殊な事情があると申しますのは、いわゆる酒団法と申しまして、基準価格制度のもとにおいて末端の価格というものは、非常にコストの低い大企業から生産される商品も、まことに前近代的な、コストの高い中小メーカーから生産される商品も大体同じような価格で販売されなければならない、こういう状態にあるわけでありまして、その帰結するところは言わずもがな、常に大企業が優位いたしておりまして、中小企業メーカーというものは非常に高いコストをがまんしながら、しかも値引きもしなければならず、リベートも与えなければならぬというので、非常に苦労いたしていることは、これまた御案内の通りであります。なるほど現在の経済組織のもとにおきましては、個人の創意、工夫、自由、こういったものを傷つけない範囲において、やはりそれぞれの企業間における格差を縮小していくというのが、近代政治の大前提でなければならないと思うのであります。ここに最近農業基本法と相関連して、中小企業基本法の制定が急がれている原因があろうと思うのでありますが、また特に酒類製造関係におきましては、約三千億になんなんとする税金を納めているというこの事・実もまたわれわれは忘れてはならない。従って、そのような状況におきまして、特殊な状況における中小企業問題として、以下大臣に質問を酒税関係の事業について試みたいと思うのであります。  まず私は第一点は、酒類製造業者に対する金融の対策でございます。先ほども申しましたように、大多数、すなわち約八八%になんなんとするものが千石以下の中小メーカーでございますが、最近御承知のように製造石数が急激に増加いたしている反面、いわゆる産業の地方分散、こういったこともだんだん施策が浸透いたしまして、酒造業者、特に清酒業者あたりが雇用いたします季節労務者の救人難ということで非常にコストが高くなっている、これではいけないというので、いわゆる設備の近代化、能率化のために、金融の措置をしなければならぬということは、すでに先年の当委員会におきまして、与野党あげて強い要求があった、その要求にこたえて、すでに国税庁では国税庁長官の名のもとに、昭和三十六年二月六日と思いますが、中小企業庁の長官あてに事こまかくいろいろ実情をよく把握されまして、中小企業金融に対しては、特に、酒類製造業を中小企業振興資金助成法による設備近代化資金の貸付対象に指定することについてという、中小企業庁長官あてに国税庁長官から書類が出されているわけでございます。ところが聞くところによりますと、同じ大蔵省の主計局におきまして、三十七年度の予算の査定においてこれがオミットされている、こういった状況であるわけでございますが、私は、同じ大臣のもとでこのような施策のちぐはぐ、しかも国会を代表し、大蔵常任委員会は満場一致の意思表示がされているこの酒類製造業者に対する金融措置というものが依然として前進を見ないということは、まことに遺憾であると思うのでございます。これについて大蔵大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  155. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、まだこの問題は今のところ解決しておりません。これはいろいろ理由がございまして、確かに中小業者の金融について考えなければならぬところはございますが、しかし酒業者につきましては、他の産業と比べて割合に金融の問題は今までうまくいっている業界でございます。ただ昨年のような事情で、灘地方について起こったああいう問題については、そのつど特別に対処する方法を私どもはとっておりますが、全般的にこれを指定の中へ加えるかということについては、いろいろ部内にも議論がありまして今日まで解決してはおりませんが、方向としては、私どもはやはりある程度の考慮をすべきものじゃないかというふうに今考えております。
  156. 藤井勝志

    ○藤井委員 大体方向としては、大臣もこの問題に対しては善処しなければならぬというお答えでございますので、あまりくどくど申し上げたくはございませんけれども、大臣の今のお言葉の端に、この酒造業者には金融問題についてまだあまり問題が起こらなかったというような御認識であるようでございますけれども、これは私は大へんな認識の違いではないかと思うのでありまして、私は、決して家業が酒屋でもございませず、単に酒屋の代弁をしようとも今日思っておりません。しかしながら、先ほども申し上げましたような事情を考える場合に——国税局の長官は中小企業金融公庫の総裁に事こまかに必要であるということを強調されておる。ところが同じ大蔵省の中で、主計局はこれはいけない、こういうふうなことになっておる。この行政のちぐはぐに対しては、大蔵大臣が英断を持って一つ決断を下してもらいたい。このように特にお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  同時に、この助成近代化資金の問題のみならず、日本開発銀行の地方ワクが開設されたことは、去年からわれわれも承知いたしておりますが、このような開発銀行からの融資の道を酒造業者に開くこと、あるいはまた中小企業金融公庫、これは私はまさに打ってつけな金融機関ではないかと思うのでありますが、こういったことについても積極的な対策を一つお考えをいただきたい。きょうあらためて大臣に善処方をお願い申し上げ、次回にまたしかるべく御回答を賜りたいと思うのであります。  次に、最近私が入手した資料によりますと、ドイツのビール税法を見ますと、大企業から作り出されたビールに対する課税と、中小メーカーから作り出されたビールに対する課税とでは、非常に累進的になっておる。いわゆる企業課税的な性格を消費課税の中に織り込んでおります。従って、そういう配慮によって大企業が作り出す商品というものと、中小メーカーが作り出す商品というものが、商品市場において同じ立場で競争のできるように配慮がなされておるようでございますが、私は、特に先ほど申しましたように、零細な中小企業の占める清酒業者であるとか、あるいはまた鹿児島あたりにはよくございますが、しょうちゅうといった方面の規模の小さい企業に対して、企業課税的な意味を織り込んだ消費課税に酒税法を改める、こういった方向に一つ研究願いたいと思うのでございますが、これに対しての大蔵大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  157. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、銘柄によって値段が違うということによって、実際的には、ある程度そういう面の調整がとれているのではないかと思っておりますが、これはまだ今まで全然こういう方向の研究はあまりしておりませんので、今後は研究しようと思っております。
  158. 藤井勝志

    ○藤井委員 次に、特に酒造業界における大企業と中小企業との問題として注意を払わなければならぬ問題は、合成酒とのせり合いの問題であろうかと思うのであります。この点については、御承知のごとく、去年合成酒業界から一応名称の変更と、それから合成酒に使用する米の限度引き上げについて陳情がございまして、業界が大へんな騒ぎになったことは、われわれの記憶に新たなものがあろうと思うのであります。こういった問題については一応のピリオドと申しましょうか、線が引かれたように思うわけでございますけれども、事は零細中小企業者である清酒業者に重大な関係を及ぼす問題だけに、一応大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  159. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ピリオドが打たれたわけではございません。問題は御承知のようなことで、これはいろいろ消費者の立場もからみ合っての問題もございますので、そう簡単に結論をつけられる問題ではないということで、去年、早急な結論をつけることを見合わせて、もう少しじっくりこれは検討したいということになっている問題でございまして、今後とも引き続いてこの問題の検討はするつもりでございます。
  160. 藤井勝志

    ○藤井委員 この問題は、やや技術的な問題も含まれておるのであろうと思いますから、これは後刻に譲りまして、今大臣は非常にこの問題は消費者にも大きな影響があるという御答弁でありましたので、ここに私は酒税法の規定について質問をいたしたいと思うのであります。  酒税法の第三条三号のただし書きにおきましては、酒類の区別の上で清酒に使用するアルコール、ブドウ糖等は米の重量をこえてはならない旨が法律という形においてきめられていることは御承知の通りであります。これに反しまして、合成酒の米使用限度の規定は、酒税法の第三条第四号で政令に譲られておることも、これまたわれわれが忘れてはならない事実であります。この両者を、大蔵大臣はどのようにお考えになりますか。私は、酒類の定義規定であり、しかも制限規定であって、この制限をこえて酒を作れば罰金がかかる。同時にまた清酒と合成酒では一キロリットル当たりの税金が、今度の税制改正においては、二級酒を例にとりますと、清酒の場合には八万五千七百円、合成酒の場合には六万二千五百円と、このように税率も差等がつけられているわけでございます。しかも今申されましたように、こういった問題は消費者にも重大な影響があるということを大臣が御認識であるならば、これは当然国民の権利義務を規定する法律の姿において、今申しましたように、清酒の方は立法事項、合成酒の方は政令にゆだねておるというふうなちぐはぐは、きわめて不適当であろうかと思うのでありまして、これに対しては冒頭で述べましたごとく、大蔵大臣の政治判断を下していただきたい。このように思うわけでございまして、これに対する大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  161. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 消費者の立場から見ましたら、若干米の使用割合が増加して、味のいい酒を望むという問題はあろうかと思います。しかし、御承知のように問題は、大企業と中小企業との問題でございまして、簡単に処理できないむずかしい問題を持っておりますので、そこで私どもは、当分この問題に結論を与えないで検討しようという態度をとっているわけでございます。大体その辺で御了解を願いたいと思います。
  162. 藤井勝志

    ○藤井委員 その方向は今ちょっと話が出ておりましたが、どのように了解をしてくれと言われるのか、その方向をある程度お示しを願わなければ了解しようがないと思うのでございます。先ほどからるる申し上げましたようなことで、合成酒と清酒とは先年来争いのもとになっておる。この問題についてはやはりきちんとこの法律できめるというふうに、片手落ちにならないような線が至当ではないかと私は感ずるわけでございまして、それに対してはやはり大臣ももうすでにしろうとではございませず、私はまだ一年足らずの国会議員生活でありますけれども、すでにこの判断はついております。しかるに大蔵大臣が、この判断が今この段階においてつかないということは、これは逃げ口上にすぎないというふうに私は思わざるを得ない。従ってもう一度はっきりした御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
  163. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 逃げ口上ではございませんで、大体方向はもう御了解できるだろうと申したわけでございます。
  164. 藤井勝志

    ○藤井委員 だから私が解釈したような、すなわち国民の権利義務に重大な影響がある、すなわちこの酒類製造業者関係の税金にもいろいろ大きく影響をする問題、あるいはまたまかり間違えば罰則も受ける、こういったことにも関連をする、あわせて消費者大衆にも大きな影響がある、こういった問題は同じように法律事項に持っていくべきだという考えを私は持っておりますが、私の考え方に大臣は——大体と私はあえて前提を申しましょう。大体御了承であるか、方向が一致しておるかということについて一つ御答弁をお願い申し上げたいと思うのであります。
  165. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 合理的に解決される場合にはこれは立場をそろえるべきものでございまして、あなたのおっしゃられるような方向になるべきものだと思います。
  166. 藤井勝志

    ○藤井委員 合理的にきめられるということはこれからきめられるのであって、私の申し上げるのは法律事項にすべきである、内容についてはこれから合理的に検討すべきでありましょうけれども、法律事項として清酒と合成酒は同じ扱いをすべきであるという私の考え方に対して、再度の御答弁をお願いいたしたいと思うのであります。
  167. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき私が言いましたように、合理的にいろいろ解決するというときにはこれを直すにやぶさかではございませんが、今回の場合は別にこれをそろえるということにはしておりません。清酒の方は法律をさわっておりませんし、合成酒の方は政令で規定するということで、立場は区別されておりますが、これは同じ立場にすることは一向差しつかえございません。
  168. 藤井勝志

    ○藤井委員 最後に大臣が申されましたことは、私は千金の言葉だと思うのでありまして、すなわち同じ扱いにするというこのことであります。私もそのことを申し上げておるわけでございまして、片一方が法律事項になっている。しかも国民の権利義務に大きな影響のある問題ですから、同じことにする場合に、政令に同じことにするということは常識の外でありまして、当然法律に肩を並べる、こういう同じ線に持っていくということに大臣はお考えであるというふうに確認いたしてよろしゅうございますか。御答弁を願います。
  169. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それはかまいません。
  170. 藤井勝志

    ○藤井委員 それでは今の問題は一応結論が出たようでございます。すなわち、合成酒の場合にも法律でこれをきめるということに変えるように、大臣は当委員会において言明になった。  次に、私は合成酒の問題に関連をしてもう一つお尋ねいたしたいのですが、私は酒の専門でございませんからその点は一歩前提を置きますが、元来合成酒ができたのは、聞くところによりますと大正十年、あの米騒動の直後、米の不足ということから鈴木梅太郎博士がひねり出したというのが合成酒の起こりであることは大体間違いないと思うのであります。従いまして、本来の姿は、合成酒は米を使わない、こういったこと。同時にまた清酒はブドー糖やアルコールを入れない、これが私は本来の姿ではないかと思うのでございます。従ってそういう方向に向かって、すなわち現在清酒に対してブドー糖やあるいはアルコールを使っておる量を漸次低めるという方向、反面合成酒に対しては米を使う量を漸減する、こういった方向が好ましい姿であるということが、酒の沿革から考えてまず第一に考えたい。第二番目は、えらい話が飛躍いたしますけれども、将来日本の農業技術の進歩改良によりまして、米の自給ということはおそらく時間の問題でございましょう。同時にまた日本は東南アジアとの経済協力といった面から考えますと、東南アジア方面で作られる米の輸入ということも、場合によってある程度考えなければならない。こういう事態を想定いたしますと、古来から伝わった技術を生かし、大いに日本酒を作るという方向にどんどく行く場合に、できるだけ米を使うということが、今のような東南アジア経済協力というような将来の面から考えても一つ必要ではないか。特に大蔵大臣の政治判断を求めたいわけでございますが、これに対して御答弁を承りたい。
  171. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、あながちそうばかりはきめつけられないと思っています。酒に対しては確かに沿革的な問題はございますが、酒はこういうものだ、それ以上のものが作れないというものじゃなくて、いい、新しい、研究された酒が次々にこれからどういうふうに出てくるかわかりませんし、出てくることは少しも差しつかえないのであって、今の問題は中小企業家の現在のあり方から見まして、これの売れ行きを悪くしてこれを苦しめるという事態が起こることは避けなければならぬ、大企業と中小企業とのいろいろな問題から、どういう保護的な措置をとらなければならぬかというところにむしろ問題があるのでございまして、将来米の酒以外はどうこうという問題は理論的には考えられない問題で、これははっきり区別してかかるべき問題だと私は思っております。
  172. 藤井勝志

    ○藤井委員 今の御答弁ははっきりした大臣の御答弁であります。私が多少言葉が足らなかったわけでありますが、その本来の姿はこういうものであるという前提のもとに、やはり持ち味を生かすという考え方と同時に、この合成酒が作られたいきさつなりあるいはまた酒に戦時中食糧の不足、戦後のいろいろな状態これにアルコールやブドー糖を使ったという、こういった沿革を考えれば、これは一緒の姿に近づけていくような考え方よりも、せいぜいそういうものは差し控えた上で、しかも米はどんどんとれてくる、しかもよそからもあるいは入ってくるかもわからない、こういう情勢を判断すれば、やはり漸減ということを理想の姿にした方がいいんではないか、なるほどそれはいろいろ特殊な領域において酒を作るということも必要であり、何も米だけの酒じゃない。すでにそんなことは大臣から聞かなくても、ウイスキーもあればいろいろありますから、いろいろな方法があるのでございましょうけれども、私は、瑞穂の国に生まれた日本人としては、やはり酒というものは、神代の時代から作られ、おみきを上がらない何とかはないということになっておりますので、やはり日本酒については、米を原料にし、せいぜいその米を使う量を少なくするような方向に向かっては、それこそ慎重な態度で対処してもらいたい、こういった意味で申し上げたわけでございますので、その点一つお含みを願いたいと思うのであります。  以上をもちまして私の質問を終わります。ありがとうございました。
  173. 小川平二

    小川委員長 次会は来たる二十三日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十二分散会