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1962-02-07 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月七日(水曜日)     午前十時十分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 黒金 泰美君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 有馬 輝武君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       足立 篤郎君    伊藤 五郎君       宇都宮徳馬君    大久保武雄君       金子 一平君    久保田藤麿君       田澤 吉郎君    濱田 幸雄君       藤井 勝志君    坊  秀男君       吉田 重延君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       芳賀  貢君    広瀬 秀吉君       堀  昌雄君    武藤 山治君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         運輸政務次官  有馬 英治君  委員外出席者         参  考  人         (税制調査会会         長)      中山伊知郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 二月七日  理事横山利秋君同日理事辞任につき、その補欠  として堀昌雄君が理事に当選した。  ───────────── 二月六日  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  産業投資特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五七号)  財政法の一部を改正する法律案内閣提出第六  三号)  しよう脳専売法を廃止する法律案内閣提出第  六五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五一号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五二号)  しよう脳専売法を廃止する法律案内閣提出第  六五号)  外国為替銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第六一号)(予)  公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する  法律案内閣提出第六二号)(予)  税制に関する件について参考人より意見聴取       ————◇—————
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  本日は、税制調査会会長中山伊知郎君が参考人として出席しておられます。  参考人には御多用中のところ御出席をいただきありがとうございます。  まず、中山参考人より今回の調査会答申等について御意見を述べていただき、その後に質疑を行なうことにいたします。  では、中山参考人にお願いいたします。
  3. 中山伊知郎

    中山参考人 中山伊知郎でございます。税制調査会会長という資格で、この間答申いたしました案の内容並びにその後の経過、たとえば政府案との相違点その他についてお話を申し上げたいと思います。  この税制調査会は、御承知のように三年計画の審議会でございまして、第一回の答申昭和三十五年の十二月にいたしました。これが三十六年度税制改正となって現われております。昨年三十六年中には、七月に租税通則法に関する答申をいたしました。それから引き続きまして、十二月に入りまして第二回の税制調査会答申及びその審議内容経過説明というのを発表いたしました。この全体の内容につきましては十分御承知のことと存じますので、ここでは説明を繰り返しません。本日お話し申し上げますのは、特に昭和三十七年度税制改正がどこに重点を置かれ、事実上それがどのように措置されたかということを中心にしてお話を申し上げます。  今度の三十七年度答申案の主たる内容は、まず第一に間接税重点を置いたという点でございます。直接税、間接税比率がどうあるべきかということは、これは税制全体といたしまして大へん重大な問題でございますが、さしあたりこの審議会で取り上げましたことは、過去五年にわたりまして間接税改正がほとんど行なわれませんで、ほとんど全部直接税、特に所得税軽減重点が置かれて参りました。ところが最近の情勢になりますと、間接税の御承知逆進性というのと所得税累進性というのが特に低い所得階層において相殺せられまして、減税の効果が、たとえば所得の低い段階におきましてはほとんど現われないというような結果が出て参りました。これは明らかに減税方針の中での直接税、間接税扱い方が十分でなかった証明である、このように考えまして、その意味で、三十七年度税制改正におきましては間接税重点を置くということにいたしたわけでございます。  間接税の点について現在どうなっているかということを簡単に申し上げますと、納税世帯におきまして、納税世帯とそれから非納税世帯の数を最近の数字でとってみますと、三十六年度でございますが、九百六十七万に対する千二百八十八万、大体五七・八%というのが非納税世帯数になります。ところがその所得額の比で参りますと、納税世帯所得額が六三%に対して、非納税世帯所得額は三七%になっております。ところでそのうちの間接税比率を見ますと、納税世帯の方が五一%の負担に対して、非納税世帯負担が四九%になっております。と申しますことは、所得額において二対一というような比率になっておるにかかわらず、間接税負担においてはまさに一対一ということになっているということなんでございまして、そのような意味間接税が非常に非納税世帯、すなわち簡単に申しますれば低所得者層に重いということが明瞭になっております。従いまして、今度の是正をいたしまして、直接税と間接税との比率が大体五四%と四六%というような比率になりますが、この比率でもなお問題がございましょうけれども、一応今度の改正においてはその点に重点を置いたということが第一の点でございます。  しかしながら他面におきまして、日本所得税、直接税はなお外国の例に比べまして必ずしも低いとは申せません、むしろ個々の得所層を考えて参りますと、なお相当に重いと考えざるを得ない。これは単に所得対直接税の比率だけでは問題をつかまえることができませんので、その所得の中でどれだけが実際の生活費にかかっているか、こういう計算をして参りませんと、実際の負担の重さというものを測定することができないのでございますが、この測定は現在のところどこの国の統計をとりましても、十分につかむことができるというところまではいっておりません。しかしながら、現在の日本所得税をかりにアメリカイギリス西ドイツその他に比較してみますと、これは比較前提といたしまして、どのくらい所得税を払っている世帯あるいは人間がいるかということを前提として考えなければなりませんので、この比率だけでは明瞭でないのでございますが、たとえば日本の場合には所得税を納めている人間の有業者に対する比率はおよそ三七%、それ以外の人は所得税を納めておりません。ところがアメリカの場合におきますとそれが七七%、イギリスはさらにこえてもう少し高くて七八%ぐらいが所得税を納めている人数になります。西ドイツはその中間で三二、三%だと思いますが、いずれにいたしましても日本の場合には所得税を納めている人数が少ない。戦前に比べますと、もちろん非常に増加しておりますけれども、なお少ない。このことは日本所得水準の低いということを証明しているのでございますが、その低い所得水準の中で所得税を払っている人の負担している直接所得税比率というのが、なおいろいろな推計からいたしまして高いと考えられますので、この点についてもなお是正の必要がある。今度の税制改革は最初の答申から通しまして全体として負担の公平という点に重点を置いて進行するということなんでございますが、その負担の公平という点から申しますと、たとえば勤労所得者の支払っております直接税、これは非常にはっきり目立って取られる税でございますので、そういう点を考慮しなければならない。あるいはその他の点につきましても、小さい点になりますけれども利子所得あるいは配当所得その他の所得とのバランスにおきましても、あるいはもっと広い意味中小企業者税負担という点をさらに考慮して、できるだけその点に軽減重点を置くような改正をすることが依然として必要である。従いまして、大ざっぱに申しますと、今度の予定されました平年度千三百億強、それから初年度におきまして一千四十一億といわれております税軽減の半分が大体間接税軽減、半分が所得税軽減ということに当たっております。  なぜ法人税に手を触れなかったかという点がおそらく御疑問になられると思いますけれども、これも相当問題になりましたが、この点は特に諸外国の実情と比べまして日本法人税必ずしも重いとは言えないということから、今回の改正においては見送りになったものでございます。  さらにそのような公平という点から申しますと、必ず問題になりますことは、しかもわれわれの審議会におきましても終始問題になりましたことは、これは租税特別措置の問題でございますが、この点は三十六年度相当の手を加えておりますので、もしあの三十六年度の手をつけないで今年度まできたといたしましたら、租税特別措置のこの全体を通じての改正によって改められました金額は、およそ千五百億に上る推定でございまして、その意味におきましては金額的にも相当是正をしてございますので、昭和三十七年度についてはあまり大きな改正が行なわれなかったということになっております。  いずれにいたしましても、そのような意味所得税の重さを軽減する意味において、特に租税負担公平化という点を重点に置いて、慎重な考慮が行なわれたということが第二点でございます。  第三点は、これも第一回の答申にございまして、しかも十分に手をつけ得なかったことでございますが、国税地方税との関係でございます。この問題は非常に広い深い問題を含んでおります。すなわちほんとうに地方自治ということが行なわれますために、それにふさわしい独立の財源を持つということになりますと、一体地方自治のもとで行なわれております現在の地方仕事量はどのくらいであるか、その適正な国との配分率はどうであるか、簡単に申しますと、収入とか支出という税制の問題の前に、地方制度の根本問題を考えなければなりません。従いまして、税源配分のこの第三の問題は非常にむずかしい問題で、二年越しにやっと暫定的な結論を得たにすぎませんが、その暫定的な結論と申しますのは、とにかく現在のところでは地方財政というのは税源的に見て非常に弱過ぎるのではないか。もう少し安定的な、成長的な財源を与えることによって税源を確保する措置を講じていく必要がある、こういう結論に到達いたしました。  そこでその具体的な措置といたしましては、所得税の一部を地方に譲与する、ただしそのかわりに入場税というような今まで地方税でありましたものを国税に取り上げる。差引いたしますと、現実に初年度において地方税に具体的に収入増加となるものはおそらく百十億程度だと思いますが、そのような措置をとりあえずいたしました。このことによって将来はもっと地方税財源が少なくとも今日の初年度に現われた状態よりもよくなるであろうという想定でございます。  なぜそういう想定ができるかと申しますと、入場税と今度あらためて付与されました所得税の一部譲与というものとは、およそ現在の金額ではとんとんに近いと思いますけれども、しかし御承知のように入場税伸び率というのは最近非常に少ない。これは三年間でございますか、資料がございますけれども年度がちょっとはっきりしないのでございますが、五%しか伸びていない。ところが所得税の方の全体の伸び率は、御承知のように年間二〇%の伸びを示しておりますので、この率でもし参ることができましたら、これは今日少しリセッションに入っておりますので、そういくかどうかわかりませんが、しかしもしそのような率で参りますれば、将来の地方財政にはいささか明るい面が出てくるのではなかろうか、このようなことで、入場税国税として取り上げるかわりに、所得税の一部を地方税に譲与するというような大きな措置をここで考えたわけでございます。  ただこの措置の実現につきましては、さしあたってのところでは、府県段階におきまして非常に地方税が重くなるというような印象が出て参ります。このことは地方行政にとって相当な問題でございますので、自治省と大蔵省との間ではその問題の調整について相当の論戦ないし調整のための議論が重ねられたようでございますが、税制調査会はそのような点についてははなはだ敏感で必ずしもないのでございますので、その点についてはいろいろな問題があとに残るかと存じます。  しかし税制調査会といたしましては、税制という立場からそのような措置が必要だと考え、それに対する第一歩を踏み出したということを御了解願いたいと思います。  まだほかにたくさんございますが、このようにいたしまして、答申といたしましては先ほど申しましたように平年度で一千三百八十二億、初年度で千二百四十四億という減税答申をいたしました。  ところがその後、政府の側でこの答申に基づいて実際の減税案を組まれます場合に若干の修正が行なわれました。その修正のおもなるものにつきましては、たとえばビールの税率の改定とか生命保険料控除額の拡大とか、物品税手直しとか、入場税税率の一本化、これは一〇%に一本化されたのですが、一本化とか、あるいは通行税軽減その他を合わせまして、これは金額といたしましては二十五億程度のものでございましたが、その他のいろいろな措置を実際に勘案してみますと、ついに百三十八億という減税をいわば打ち消す金額が出て参りました。つまり答申いたしました一千二百四十四億から百三十八億を引いた金額が今年度減税の案として、政府案が出されているわけでございます。この数字は、これから百三十八億を引きますと、なお千億をちょっとこえる——今の金額は平年度でありますが、初年度におきましては一千四十一億、これが政府案でございますが、この中から関税の増収分というのを約四十億ばかり引きますと、九百億オーダーの減税案が実際としては出されているわけであります。しかしこの政府案による修正は、先ほども申しましたように若干の手直しではございますけれども、基本的な点にはほとんど触れておりませんので、まず大体において答申案がそのままに実行に移されているのじゃないか、このように考えていいかと存じます。これが案自体についての説明でございます。  なお、中小企業に対する措置その他については、御質問がございますればお答えをいたしたいと存じます。  最後に特に税制調査会三年の実績を振り返って申し上げたい一つの点は、税制調査会といたしまして何回やりましたか、ずいぶんたくさんの会議を重ね、今日まで三回の答申をいたして参りました。しかしたくさん問題がまだ残るのでございます。たとえばただいま申し上げましたごくわずかのことに関連して申しましても、直接税と間接税との比率をどうしたらいいかという問題。それから法人税には全然手をつけていないのでございますけれども、一体法人税というのはそのままにしていいかどうか。あるいは所得税との比率においてなお考えるべき問題があるのかどうか、そのような問題。あるいはこれはいささか政策的な問題になると思いますけれども皆さんの御承知のように最近の各国の税制景気調整という問題と結びつけて考えられるようになっておりますが、そのような考え方をどの程度までこの税制の中に盛り込むことができるかというような点。まあ税制自体一つのビルト・イン・スタビライザーではございますけれども、それを越えてなお直接に景気調整というような役割をどの程度まで税制に持たしたらいいか、このような問題。その他日本税制といたしましてこれから先考えるべき問題が現に暫定的という措置で押えられている問題について、たとえば利子所得に対する特別措置、そういうものを日本経済に必要な貯蓄増強というような問題とからめてどのように解決したらいいか、そういう問題がたくさん残っておりますので、私どもといたしましては、現在の税制調査会はむろん期限つきでございますので、この三月をもって終了することになりますが、何かの機関をもってこのような研究を続けられることが願わしいのではないか。これは一面においてわれわれの勉強の至らなかったことを次の審議会にお願いするようなことになるので、はなはだ恐縮なんでございますけれども、しかし力及ばなかった点は正直に申し上げて、そして善後の措置政府その他において十分にお考えを願いたい、こう思うのでございます。  これだけで、はなはだ簡単でございますが、一応の説明を終わらせていただきたいと存じます。(拍手)
  4. 小川平二

    小川委員長 続いて質疑に入ります。山中貞則君。
  5. 山中貞則

    山中(貞)委員 三点だけ御説明、御意見を承りたいと思います。  会長には長い間非常にむずかしい問題に取り組んでいただきまして、法制上は一応任務を満了するわけでございますが、ただいま最終的にお話になりました通り、なお引き続き日本税制の根本的な問題、あるいはただいま一々あげられましたこまかな事例等についてさらに検討を、国会ばかりでなく、皆様のような方にお願いをしなければならない情勢になるかとも考え、その準備も進められてはおりますが、せっかくの機会でございますので、三年間責任者としていろいろの御労苦を賜わりました体験から、さらにただいまお話になりましたことを含めまして、今後設置されるとしたならば、そのような調査会なり審議会等に対して、自分としてはこういう希望を持つというような点をお示し願えれば幸いかと存じます。と申し上げますことは、三年間いろいろと根本問題とも取り組んでいただいて成果もあがったのでございますが、具体的にはどうも一番の情熱はやはりその年その年の減税情熱が集中されざるを得なかった。従って、この三年の間は例年行なわれました減税というものに対する皆様方の御労苦が一番表面に出たかと思います。しかしながら、それもその年に来年度予算減税をどうするかという規模内容についての論議が主でございまするので、その論議の際にいろいろな矛盾が解決されないままに実はなっておるのであります。たとえば先ほどむずかしい問題の一つとして地方財政に触れられたのでございますが、地方税の中でも、たとえば電気ガス税等免税点の引き上げなり、あるいはそれをもっと前進させて電気ガスは、家庭生活の第一線の最前線の必需品であるということから考えて、もう税はかけるべきじゃないではないかという、政治的にある程度肯綮に値する議論等も激しく議論されました結果、結局は税率のわずかな引き下げにとどまったのでございますが、こういう場合にも、やはり先ほど地方税というものがどうあるべきかという御議論がまだ済まないというお話でありましたが、私どもとしては酒消費税というようなものも、ことしのような酒類の大幅減税の年にできれば電気ガス税免税と振りかえて研究したらどうかというようなことも考えてみたのでありますけれども、何せ予算編成最終段階に近いような場合での議論でございますので、このまま見送られてしまうわけでありますが、やはり一例でございますけれども、もう少し掘り下げた議論等がなされていかなければならない。従って、今後もし設置されるとするならば、三年間の責任者としての御苦労から、体験から割り出されましたいろいろの御忠告なりあるいは今後どなたがおやりになるについても、先ほど二、三点御指摘がございましたが、基本的な考え方というものについてどういうことを要望されるであろうかということを承れれば幸いだと思います。  次にこれも言及されたのでございますが、いま少しく承っておいて参考にしたいと思いますのは、わが国の税体系は直接税、間接税ウエートをいかなるところを目標に進むべき国であろうかということであります。アメリカのように直接税に非常なウエートを置いて税制を定めましても、先ほどこまかに納税者実態なりあるいは収入金額なりいろいろと御説明がございました。富める国あるいは富める国民実態と私どもとの間に非常な懸隔もあるのでございますが、一方においてはヨーロッパ・スタイルと申しますか、大体五〇、五〇の、若干それも間接税の方がウエートが少し重いというような税制で、さしたる支障なく経済の発展あるいは国民経済所得向上等がそう遅滞なく進められておる国も、一応先進国の中にもあるわけでございまして、日本の場合にはもちろんアメリカ式税制というものは無理であろうと思いますが、今後私どもが引き続いて基本的な税制の方向を議論いたしまする際に、第一に念頭に置いて参りまするについて、直接税、間接税の比重はいかにあるべきかということについて、いま少しく御見解を承りたいと思います。  なお、この二つで尽きるのでありますが、いま一つどもとしてもまだ議論のきまっておりません問題でございます。私ども減税をことし幾らやるという金額の表示を、私どもは党としては政策の発表、公約と申しますか、そういうものを事前もしくは事後に数字として国民に示しまする場合に、実際に推定される収入金額からその税制改正によって当然生ずる減税の額というもの、そのものを表示してしかるべきものなのか、あるいは減税したことによって、ことし大蔵省が試みましたように、減税をすればそれだけたとえば間接税においては顕著なる増収もあり得るというようなことから、差引計算をして、実際上減税は幾らになるんだという差引計算減税を表示すべきか、いずれにしても私ども政党の良心の問題でもあり、実際は、それは差引すればそんなになっていなかったのだと批判を受けるおそれも一方にありましょうし、一方においては減税規模を表示するのに、実際上一千億なら一千億と表示してよろしいところの減税額があるのに、それを差引計算をしたために、実際上は、自然増収に対応して、減税額というものが、国民から見て非常な不足感を年中与えなければならないという両面の矛盾を、政党といたしましては持つわけでございます。そこらの点について、会長としての意見を聞かしていただければ、私どもさらに今後議論をいたします際に参考になるかと存じますので、以上の三点についてお聞かせ願いたいと思います。
  6. 中山伊知郎

    中山参考人 お答えを申し上げます。第一の点はたくさんの問題が含まれますので、今まで審議会を預かって参りましたわれわれとして、ことに委員皆さんを差しおいて私の立場から希望だけを申し上げることはいささかはばかられると思うのでございますが、私個人の意見を率直に申し上げますと、どうも審議全体の経過を見まして、もう少しやはり根本的な問題を討議できるような委員構成が必要なのではないだろうか。と申しますことは、率直に申しまして、経験者という点に重点を置かないで、もう少し学識という方に重点を置いていただきたい。経験者の御意見、もちろんけっこうなのでございますし、ある段階には非常に重要なのでございますけれども、基本的な問題を攻めて参りますときには、そういうことを言っても間に合わぬとか、あるいは役に立たぬというような空気が出て参りまして、どうも少し根本的な議論が行なわれない傾向がございます。もし今後の調査会審議会が、今残されておりますような、たとえば地方税の問題、それから先ほども御質問のありました直接税、間接税比率の問題、そのような基本的な問題、さらに私がつけ加えました景気調整策としての税制体制、こういう問題になりますと、やはり問題になりますのは、海外のいろいろな税制との比較でありますとか、原理的な問題というふうなことになりますと、もう少し学識という点に重点を置いた人選が望ましいのじゃないか。それが第一点ですが、そういうようなことが問題になりますのは、あるいは問題にするためには、今度でき上がる審議会は、先ほど御指摘のありましたように、当年の減税あるいはその他の改正重点に置かないで、やはり基本問題の検討ということに一つはっきり——もしそのような審議会の設置法というようなものがありますれば、規定をしていただきたい。その二つの点を申し上げておきます。例にあげられました電気ガス税につきましては、委員の少なくとも三分の一以上の人は全廃説であったのでございますが、これは正直に申し上げますが、それに対する一番強い抵抗は、地方財源がなくなる、それでは見返り財源をよこすならオーケーしてもいいけれども、そうでないならばそれは困るということで、今のような暫定的な措置に終わったということを正直にここで申し上げておきます。  第二の点をお答えします。第二の点は直接税、間接税比率の問題でございますが、これは先ほど少し申し上げましたように、日本の場合と、たとえばアメリカの場合と比べますと、アメリカの場合の所得税納税者比率日本の倍なのであります。つまり所得税を納めておる有業者がすでに七割以上を占めているというような国における税制と、それがアメリカの半分すなわち有業者に対して三七%しか占めていないという日本の現状では当然違って参ります。私は、今までのいろいろな日本の経験からいたしまして、ヨーロッパ並みにと申しますか五〇、五〇というようなところに一つの目安を置いて考えることが適当であろうと個人的には存じますけれども、しかしこれを戦前戦後のいろいろの変化というものを考えますと、場合によっては間接税がもう少し比率を増しても差しつかえないのではないかと思います。この点はしかし間接税逆進性、その逆進性の及ぼします一番強い理由というのは低所得者層が多いということですから、その点を考えに入れますとある是正が必要であると思いますけれども日本国民所得がこれから上がっていく状態を考えますと、必ずしも五〇、五〇というものをフィックスされた——固定された比率と考える必要はないのではないか、このように考えます。  第三の点でございますが、これは今の御質問に対してはなはだ恐縮なのでございますが、やはり根本的には差引計算が正しいのだと私は考えます。なぜかと申しますと、税制の点からこの税をある率において軽減するとこれだけの金額が浮くのだということをどのように言われましても、最後に出てくるものは、国民に対して、国民世帯あるいは個人々々の納税者に対してどのくらいの負担であるかという問題なのですから、これはあらゆる差引計算と、そしてその税改正の場合に起こるレパカッション、いろいろな副作用、反作用というものを考慮に入れた中のネットの数字でなければ私は意味がないのではないかと思います。従いまして、その段階において、あるいは税率改正によってこれだけのものは浮くのだ、しかしそのレパカッションを考えるとこうなるのだということを考えます場合に、政党として看板を掲げられる場合にどちらをとるかといわれましたら、やはり正直にネットの数字をおあげになる方が、私はよろしいのではなかろうかと思います。  はなはだ愚見でありますが……。
  7. 小川平二

  8. 横山利秋

    横山委員 御苦労さまでした。まだ会長でおありになるのですけれども、お仕事は一応お済みになった自由な立場でぜひ御意見を聞かせていただきたいと思います。  一番最初に、今度の答申及び政府案に対する国民の反響を私なりに感じたことを申し上げますと、減税度合いが少ないということが第一であるように思います。その根拠の第一は、本委員会においても論争いたしましたけれども税負担の割合を二〇%程度が妥当であろうといわれた答申が、一体どのくらいの権威とどのくらいの熱意を持っておられるかという点について、みな不安を持ってきたわけであります。第二番目の原因は、明年度自然増収が四千八百七億に達する、この数字が、政府数字でありますけれども、私の推算をもっていたしますならば、三十六年度においてすら政府は三千二百九十七億の自然増収があるといっている。これは月をふえるに従ってますますふえる。ある人は三千五百億、場合によっては四千億以上という人もある。そうであるとするならば、さらに明年度の四千八百七億は増加する可能性がある。これほどの増加をする自然増収であるにかかわらず、明年度減税度合いが約一千億というのは、あまりにも過小ではないか。この二点が納税者が考えておるところなんです。この点について、まず二〇%に対する調査会及び中山さんの見解、今後のこの基本線に対する御見解を承りたい。
  9. 中山伊知郎

    中山参考人 ただいまの御質問は、われわれ審議会の内部におきましても非常に問題になりました、おそらく今度の答申案をめぐる最大の問題点であろうと存じます。実際の数字を、私の手元にあるだけで申し上げますと、今度の減税を実行いたしました後におきまして、昭和三十七年度の当初予算に組まれました収入の幅で参りますと、昭和三十七年度は大体二二%になります。それから三十六年度の補正予算を組まれました後の負担率は、国民所得に対して二三%になっております。なお少しこまかい数字がついておるかと存じますが、それは省略いたします。要するに二〇%という基本線は明らかに昭和三十六年度において破られており、昭和三十七年度減税をもっていたしましても、なおかつ二二%になっておるのでございます。その点から申しますと、二〇%という原則はどこへいったのだ、こういう御質問を受けますことは、まことに当然なことでございますが、これに対するわれわれの考え方はこうでございます。  第一に、今までの過去昭和二十三年から十年以上の税負担率を見ますと、非常に高い。ある時期、二六、七%に及びました時期を除いて、大体一九%を最低として二〇%のところに平均的に落ちついている。そこで、現在の日本経済状態をその当時と比べて、もっと上がっているか、上がっていないかと見る、これが一つの分かれ道でございます。と申しますのは、もう御承知のように、国民所得の水準が向上いたしますときには、御承知のように必ずしも低い率で負担率を押えなければならぬという理由はない。現に、イギリスアメリカ税負担率は、国民所得の大きさに比例してとは申しませんが、それを土台にして二八%から三二%というような比率になっております。第二に、そのことは単に国民所得水準の向上ということだけではなくて、特に社会保障を中心とするそのような社会的あるいは公共的施設に対する出費に対して国民全体がどのくらいの承認を与えるかという、その態度並びに程度に依存しております。たとえばイギリスの三〇%に近い税負担率は、非常に大幅なイギリスの社会保障制度というものを前提として考えますと、まあ簡単に申しますと、軍備の点をしばらく除きまして、国民の明らかにオーケーした負担率なのでございます。従いまして、もしも日本の場合におきましても、これからさらに国民所得は向上する、その向上した国民所得の一部を、社会保障を中心とした国民生活安定に使うということを国民が決意しますならば、必ずしも二〇%という水準に押える必要はない。これはもう自明の理だと存じます。ところで、それにもかかわらず、それじゃなぜわれわれはそのような過去の経験と現在の状態、あるいは将来の方向を考えた上で、なおかつ二〇%という水準をおおむね妥当なものと規定したかと申しますと、これにはいろいろな理由があるのでありますけれども、現在の日本の状態というのは、まだ十分に安定した状態とは言えない、そのような状態の場合に、もし他のものに先だって税負担率だけが増加していくような状態をもたらすことは、いささか危険ではないか、従いまして、これは特に政府予算を組まれる場合に、ある一つのそういう限界を持っておられた方が、はなはだ僣越な言い分でございますけれども、それは全然そういう歯どめを持たない予算のきめ方よりももっと堅実で、そして節約的で国民の期待に沿えるような予算になるのではないか、もしその上に必要があって、これだけの社会保障費を今度は出すのだから、税負担はこれだけ重くなるぞというような非常にはっきりしためどでもってあのワクを破られますならば、われわれは決してそのワクを破られることに不賛成ではない、こういう意図を含めておるのでございます。もっとはっきり申しますと、政府をどのくらい信用するかというところが問題なのでございます。これははなはだ悪いのでございますけれども日本のことだけではないのでございまして、一般に財政問題ということになりますと、政府はアダム・スミス以来いささか乱費する傾向があるということに経済学ではなっておるのでございます。従いまして、そのような意味におきまして、できるだけ国民の金を有効に使っていただくためにはある目安が必要ではないか。その目安はいろいろ立てられましょうけれども、理論的に立てるのでなしに、経験的なものの方が重みがあるのじゃないか。そこで、二〇%という一種の平均値あるいはノーマルな値をそこにとりまして、これで一つやっていただきたいということを示したのでございます。ところが、そのときもうすでに二〇%の率をきめますときに一番強い反対のございましたのは、あるいは抗議のございましたのは、地方財政を担当される側でございまして、そんなことで縛られて地方財政をくぎづけされてはわれわれは困る、これは弾力的に解釈することにしたいという提案がございまして、実は了解事項としては、あれは弾力的な条項であるということがついておるのでございます。私は、しかし、そのような条項のついたままであれを認めましたことは、あるいは手落ちであったかもしれません。と申しますのは、それがあるからこそ一体どのくらい今の状態であれを守る気組みがあるかという御質問を受けることになりますので、その淵源はかかってこのような決定の仕方にあったということを今明らかにわれわれは考えております。しかしそのような事情を御了解下さいますならば、私の申し上げること、つまり二〇%というのはそのような意味において、一つの財政に対する納税者からの希望です。非常な太い線で現わしておる。これをはずれることはあるいはやむを得ないかもしれません。たとえばことしの予算を見ますれば、公共事業費と社会保障費が相当ふえているということで、これも二二%の理由になる一つでありましょう。もしそういうことでありますならば、これを国民に十分納得できるような政治的な解明をしていただきたい。そうすれば私は、単に二〇%の数字問題以上にこの理解が徹底して、日本の全体の財政も、また国政もよくなるのではないか、このように考えるわけでございます。  それから第二の点は、これも今の問題に関連するのでございますが、われわれも最後の段階で、もうこの四千何億という自然増収金額はわかっておる段階でございましたので、さてこの金額についてどれだけの減税皆さんは——これは委員各位、委員の各自がそれぞれ独自の判断を持ってどのくらいのものを望まれますかということを実は公開の会議で、これは記録をとっておりますが、全部個人的に発言していただいた、私は会長という資格において発言を求めたのでございますが、結論を申しますと、一千億と言われたのが一番少なくて、三千億というのが一番多かった。その中間に落ちたということでございますので、私ども審議会の空気といたしましては、私は総意を表わしているのではないかと思います。  今度は審議会を離れて国民の側から見ますと、おそらく四千何百億もあるようなそういう自然増収の中で、わずか初年度には一千億くらい、平年度にいたしましても千三百ないし四百億というようなところを減税するのは、それは少し小さ過ぎるではないかという批判が起こることは、これは十分あり得ることだと思います。しかしこの減税金額を平年度について今までの減税に比べますと、おそらく昭和二十八年度減税に比べて最大のものの一つではないかと思いますので、ほかの事情を勘案いたしますと、これが少ないか多いかという点については議論の余地はあるかと存じますけれども、おおむね妥当なところではないか、こう思います。問題は、もしそのような国民的な世論というようなものがございましたら、これを今後の税制改正の場合に、たとえば自然増収に対してどのくらいの割合はいきなり国民に還元という意味減税に持っていくべきだというような理論的の措置を考えていくことを、将来の問題としては私は持ちたいと思いますけれども、現在の問題といたしましては、これ以上申し上げますことは、全部自己弁護的になりますのでやめたいと思います。失礼いたしました。
  10. 横山利秋

    横山委員 ありがとうございました。今の二〇%についての経緯はよくわかりましたが、願わくは、私は、この二〇%を出された比率というものが、国民に非常な好反響をもたらしておることをぜひお忘れないようにお願いをしたいと思うのであります。この二〇%がはみ出たならばはみ出るべき理由があるべきだという歯どめ理論は、肝に銘じて私どもも今後の審議の中に生かしたいと思います。  私が考えますもう一つの歯どめは、自然増収の問題であります。自然増収とは一体何ぞや、俗にいえば税金の取り過ぎである、これが一番庶民の理解しておることなんです。財政法、会計法を引くまでもなく、単年度予算で今日過ぎておるのでありますけれども、年々歳々自然増収が莫大に上っておる。明年度四千八百七億と称される自然増収も、いろいろものの見方はありますけれども、私はまだあると見ておるわけです。自然増収について、最近学者の一部にこういう意見があります。自然増収それ自身も最終的には政治的だ、政治的に判断されるのだ。それが証拠に、政府部内及び与党と政府の折衝過程で自然増収がふえていくではないか。これは十月の自然増収と十二月の自然増収とでは見方が違うのだという言い方もありますけれども、わずか短時日の中に自然増収がふえていく事実を考えましても、自然増収は政策的に策定されることが十分ある。そうだとしますならば、自然増収というものはあくまで客観的に行なわなければならず、また一部にありますように徴税行政の面でこれが多くなったり少なくなったりするということもあってはならないとすれば、あくまでこれは税金の取り過ぎではないか。取り過ぎだとしたならば、自然増収はあげて減税に回す、こういう原則、歯どめがもう一つ必要ではないか。もしも明年度予算の増加が必要不可欠なものであるならば、増税によってこれを行なう、これが国民の最もわかりやすい歯どめの原則の二つ目ではないか、こう考えられるのでありますが、もちろんこれは原則論でございます。いかがでございましょう。
  11. 中山伊知郎

    中山参考人 ただいまの御意見は、自然増収というのが完全にそのような意味での税金の取り過ぎであるということを前提といたします限り、当然出てくる結論だと存じます。ただその点について、私は自然増収があった場合に、その使途について必ず減税一本に回さなければならないかどうかについては疑問があると思っております。その意味は、ある一年の予定された収入に対して、経済成長がたとえばあるパーセント予定よりもよけいいった。そのことは皆さん承知のように、税収につきましてはあるマルティプライアがかかりますので、大体平均いたしますと一・三から一・五という乗数によって増収効果が表われますから、だから、もしも二%経済成長が予定以上にあったといたしますと、その二%に一・五%をかけただけの税収の増加があることは当然でございます。このことを、直ちにこれは全部還元すべきだというふうにすることは、逆に申しまして、もしもその場合に二%の国民所得の減少があった場合にどうするかという問題を考えますと、これは一体増税でまかなうべきものでありましょうか、それとも公債にいくべきものでありましょうか、その他の措置をとるべきものでありましょうか、そのような問題を考えますと、そう単純に増収の場合だけ全部を還元せよという議論は、すなおには成り立たないのではないかと存じます。  ただ、一番ポイントはこうなんですが、もしもそういういろいろな事情を考慮した上で、なおかつ取り過ぎという観念がはっきり当てはまるようなものであったらどうするか。これはもう明らかに返すのがあたりまえだということになります。その場合の取り過ぎという概念は、たとえばここに大蔵省の人がおられますけれども、非常にじみな内輪の計算をして、実際の税金はいつもそれ以上上がるようにする、これは大蔵省の徴税当局としては一番楽な方法だと思うのです。そういう楽な方法をある程度以上にやることによって、自然増収があるといいましたならば、これはもう明らかに初めから自然増収ならざるものを予定した自然増収ですから、われわれ国民の側からいいまして明らかに取り過ぎでありますから、初めからそれは調整すべきである。不幸にして今までの日本経済の成長の仕方が非常にちぐはぐであったために、このような計算がいささか狂い過ぎているのではなかろうか。少な過ぎるのももちろん悪いのですが、多過ぎても決してよくはない。少なくとも経理上の問題からいきますと、過不足同罪だということが言えるのであります。そういう点から申しますと、自然増収であるから何か措置がしやすいように考える、従ってみんなが何かそれを歓迎するような——もしかりに今後五・四%の成長率でいきます場合に、自然増収がマイナスになる場合にはみんながさびしく感ずるような状況というものは、私は本来改むべきものだと思っています。その意味におきましては、もっと計算を正確にし、自然増収の中身を国民にもわかるように説明しろ、こういう御意見といたしましては、私は十分にお説に従いたいと思いますけれども、しかしそのようないろいろな内容を含んでおります自然増収を、自然増収という名のもとに、全部が国民の側から見て取り過ぎである、従って、これは必ず返すべきものであるというふうに単純に推論することはいささかちゅうちょされるというのが、ただいまの私のお答えでございます。
  12. 横山利秋

    横山委員 この点は私ももう少し意見があるところでありますが、時間の関係上三つ目の質問に移りたいと思います。  答申政府の決定の違いの中で一つお忘れになりましたが、国税通則法の問題があります。国税通則法が、答申が出ました際と今日政府案が準備されておりますのと比較いたしますと、相当重要な点でたな上げになりました。この重要な点だけを議論いたします前に、なぜいわゆる学識経験者がお作りになったものがたな上げになるような状態になったかといいますと、これは先ほどのあなたの御説明と違って、いわゆる経験者意見が十分に盛り込まれなかったおそれがある、こう考えるわけであります。もっと端的にいえば私どもが常に主張しております徴税行政の民主化という大方針が貫かれていかずに、逆な方向におる。極端な言い方はいたしませんけれども、つまり取りやすいという方向においてなされたということに私は問題があろうと思う。私は今結論を言うつもりはございませんけれども、税法学会のあの意見を徴してみましても、少なくとも五項目たな上げするといなとにかかわらず、この法案全体に持っておりますムード、このムードが賛成できないというのであります。いわんやたな上げされた五項目は税法理論の根本を含む大きな重要問題であるとすれば、もし政府の言うようなことをかりに肯定をいたしましても、五項目をたな上げするのだったら一ぺん出直したらどうだ、こう私は考えるわけであります。この点はいかがでございましょうか。
  13. 中山伊知郎

    中山参考人 この点私の盲点でございまして、私、もちろんこの国税通則法の答申責任者でもございますし、その委員長からの報告は一々承っているのでございますが、いささか私の専門外になるものですから、どうもよく私にわからないのであります。まことに恐縮でございますが、ここにその予定された答案というのがあるのでございますけれども、これをごく二、三点申し上げさせていただきます。  ただいま仰せになりましたように、この答申内容の中で五つの点だけはたな上げとおっしゃいましたが、今後の審議に譲るということになっております。その五つの点と申しますのは、実質課税の原則に関する規定、一般的な記帳義務に関する規定、質問検査に関する統合的規定、それから資料提出義務違反についての過怠税の規定無申告脱税犯に関する改正規定、この五つの問題については非常に問題がむずかしいというのでたな上げになっておるのでございますが、今度の改正は利子税及び各種加算税の軽減合理化という項目が一つございまして、延滞税はとにかく一本にして軽減した、そういう実績は出ておると思います。  それから第二は、不服申し立て制度についての教示について税務署の納税者に対する強い権限が一部修正されております。それから不服申し立て期間中における滞納処分の執行はこれを停止するという規定が一つ設けられております。その他協議団制度の運用の改善、青色申告者についての審査請求権の選択の適用、審理の併合、その他小さい点でございますけれども、所轄税務署を明確にするとか、到達主義を緩和するとかあるいは租税債権の成立について時期その他をいささか納税者のために有利にするというような改正が行なわれたのが内容であると存じます。実はこの全体の改正を通じてわれわれ審議会の目ざしたところはまさに今御指摘になりましたように一つは簡素化ということ、一つは簡素化に関連するのでございますけれども、いろいろな税の規定の中にございます不統一を改めるということ、要するに形式的な点の改正で、しかも目的は常に納税者の利益という点を考慮した上での改正であったと考えるのでございますが、またそのような意味において調査会においても逐次報告が行なわれ、またその中間の答申案が採択せられておるのでございますが、その内容一つ一つについては最初に申し上げましたように私よく知りませんので、まことに恐縮でございますが、なお御質問がございますれば、後刻研究をしてお答えいたしたいと思います。
  14. 横山利秋

    横山委員 けっこうでございます。これ以上お伺いしようとは思いません。  ただ、お耳に入れておきたいと思いますのは、今お読み上げになりました加算税の軽減とか、あるいは不服申立事項の範囲の拡大とかいううたい文句は、国税通則法を制定する積極的な理由にはならぬということです。現行法の改正をもって足るということで私は尽きると思います。国税通則法を制定するならば、たな上げされた五項目及びその背後におります徴税行政の民主化という大方針で新法は立法さるべきであって、このような税金を少し負けるとか、あるいは不服申立事項の範囲を少し拡大するとかいうことは、そこで落ちつくなら現行法を改正するのが最も適当な方法である。これは私の意見でございます。  第四番目の御質問先ほどお話になりました公平論の問題であります。いろいろと御説明は承りましたが、私がこの答申を拝見をいたします分におきましては、公平論について、背後にはあるかもしれませんが、説得力のある文字となって実は現われていないのです。全体を貫く議論かもしれませんが、公平論がいかに展開されるべきかについてはここにはあまり書いてないのです。そこで従来から私どもが主張しております点を少し申し上げますと、一つには法律の公平だけでなくして、執行面を通じて、全体を通ずる公平論がもう少し充実されなければならぬのではないかということであります。たとえばその一例を引きますならば、税法では勤労者もほかの人たちも公平になっておる。しかし執行面においては決して公平にはならぬ。あるいはまた租税特別措置にお触れになりましたけれども、まだまだこれはきわめて不十分だと私は思っておる。たとえばこまかい例を引きますならば、今度通行税が出てくるのでありますけれども、飛行機と列車という問題について、なぜ飛行機と列車が税率が別々でなくてはならぬのか。この間も交通公社に行ってみましたら、東京から博多に行きますのに、汽車では十七時間、飛行機では四時間だ。金額では、汽車では一等寝台九千五百円ぐらい、飛行機では八千五百円、千円の相違で十三時間くらい短縮できます、こういうキャッチ・フレーズが出ておるわけでありますけれども、この一事をもって見まして、どうしてそういうようなことをしなければならぬのかということが考えられるわけであります。公平論を徹底いたしますためにはオーソドックスにそれをかまえてやらなければいかのではないか。今度の、次に来たるべき税制改正には、最も具体的に町へ入り、村へ入っての実際の公平論が展開されるであろうか。大企業と中小企業との間に、あるいは法人と個人の間に、ほんとうに説得力のある公平論が展開されるであろうか。これ一事をもってして税制改正をなすべき最も重要な点があると思うのでありますが、いかがでございましょう。
  15. 中山伊知郎

    中山参考人 ただいまの問題は、私最初に申し上げましたように、税制改正の三年間を通じての目標が公平という原則を実現することにありましたので、必ずしも言葉で明瞭に出ていないかと存じますけれども一つその精神は二回の答申の全体を通じておくみ取りをお願いいたしたいと存じます。  そこで公平論が非常に重要な問題であることは、そのような意味でわれわれは肝に銘じて存じておるつもりでございますけれども、その場合に、最初に問題になるのは何かと申しますと、これは御承知のように脱税という問題でございます。この脱税という問題を外にして公平を論ずることは実はできないのでございます。ところが、その問題についてすぐ起こってきますことは、一体現在の税制で、特に勤労者以外の所得を確実につかまえることができるかと申しますと、これはもう皆さん承知のように非常にむずかしい。そこで公平論の最初の問題に返りまして、脱税が非常に少ないような税制を作り上げるということになりますと、それは実は税体系の問題になって参りまして、その税体系の中で、所得計算とかあるいは捕捉というのが、できるだけ簡単で、そして明瞭な、だれがつかまえてもつかまえられるようなものに重点を置いていこうじゃないかということになりますと、この問題は所得税のみならず、間接税をも含めて、あるいは直接税と間接税比率の問題にも及びますし、日本の場合には地方税国税との関係に及ぶ非常に広範な問題になります。私どもはそのような意味において、税制全体の体制の改正をできるだけ、いわば悪意にせよ、あるいは故意でないにせよ、脱税というような不公平中の最も不公平が最小限度にとどめ得るような税制を作るのが目的だというので努力したのでございますが、結果はこのようなことでございますので、なお御趣旨を体して、十分に勉強する機会があればしていきたいと存じます。  公平の問題につきまして、今御指摘になりました通行税の飛行機の点は、私は改正の点をちょっと存じておりませんので、お答えができませんが、特別措置についていろいろ問題があること、これもただいまのお答えの中に含まれておるつもりでございます。逆に申しますと、現在の税制体制の中でそのような公平論からいって一番目立ちますことは、勤労者に対する源泉課税という問題でございます。その点はごくわずかではございますけれども、一万円という控除額の引き上げその他の考慮を払って、いささかその趣旨を表わすというだけの前進は、今度の三十七年度改正においてもいたしておるつもりでございます。
  16. 横山利秋

    横山委員 これは調査会の所管外であるかもしれませんが、引用いたされます数字の中に、各国との税負担比較という言葉が常に引用されてくるわけであります。日本国民税負担はもちろん国税及び地方税でありますけれども、しかし庶民の中における税外の負担というものを庶民は感じておるわけであります。PTAから、町内会から、道路負担から、あるいは義務教育費に類するものに至るまで、国民の税外負担というものはきわめて莫大なものがあります。この税外負担税負担と合計いたしますと、お話のような単なる税負担の各国比較では比較にならぬ重税になってくることは言うまでもございません。これは調査会としてはそういうものは関係なしといたされますか。それとも国民負担という意味においては実質同じでございますが、そのような点について今度またお骨折りを願うということになるならば、私はぜひ取り上げて、実質負担という点について検討をいただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  17. 中山伊知郎

    中山参考人 ただいまの御質疑は、実は最初の私の短かい叙述の中で若干触れたのでございますが、つまり単純な国民所得と実際に払っております税金額の平均的な比率だけを税負担とするわけには参らないということ、その意味は、その所得の中でどのくらいが生活費に実際要るかということを見なければほんとうの税負担にはなりませんということを申し上げたのでございますが、その実際の生活費の中に、今おっしゃいました税外の公課的負担、あるいは社会的に、いわば強制されておると申しますか、社会的に義務づけられております負担を加えることが当然含まれて参ります。しかし正直なところ、ただいまその数字日本の場合においても全然ございませんものですから、その点は考慮にはあがりましたけれども、計数的にそれがどのくらいになるかというようなことを、ある所得階層あるいはある地域について調査し、これを討議に上せたことはありません。これは将来そのような機会がございますれば、確かに重要なる問題でございますので、ぜひそのような考慮を加えたいと存じます。
  18. 横山利秋

    横山委員 ありがとうございました。終わります。
  19. 小川平二

    小川委員長 広瀬秀吉君。
  20. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 今まで総論的な問題について質問がありましたので、私は、いわば各論的なこまかい問題について御質問申し上げますので、先生の御意見を聞かせていただきたいと思うわけであります。  最初に、租税特別措置法の問題で、利子課税の問題、国民貯蓄組合の預金の免税の問題、この問題をからめまして、利子課税は、御承知のように一〇%の分離課税になっておるわけでありますが、こういう問題で今度一年延長を認められたわけです。これはやはり現在の経済情勢の中で、金詰まりというようなことや、そういう中から 、どうしても貯蓄増強という政策目的があるということから一年延長されたということが先ほどの御説明でもあったわけでございますが、この点について、税制調査会の討議の内容をいろいろ拝見いたしましたが、先生といたしましては、先ほどもちょっと気にかかる、新しい角度でこれをさらに見直すべきではないかというような意見もあったのでありますが、こういう問題について、私どもとしては、もう年限もきたことだし、この政策効果というものも、あえてこういう税制の一面でそういうことをしなくても、貯蓄増強というものはできるときはできるのだし、貯蓄性向とこの減税の問題とは必ずしも結びついていない、こんなふうに私は考えるのですけれども、この点についての先生の見解を一つお示しいただきたいと思います。
  21. 中山伊知郎

    中山参考人 この問題は、昨年の第一回の答申のときにも問題になりまして、どちらかの大蔵委員会で、私、お答えしたことを記憶しておるのでございまして——衆議院でございましたか、申し上げたのでございますが、あのときの説明は、私、今記憶しておるところを申し上げますと、税制の面から申しますと、利子に関する分離課税を存続する理由はなくなった、しかしあのときは、ちょうど政府の低金利政策というのがとられまして、その低金利政策の上に、それが実行される上に、さらに追いかけて分離課税廃止ということになりますと、それは非常に大きな貯蓄意欲の阻害になるのではないかというので、少なくとも一年間この実施を延期せよということが三十六年度答申であったと存じます。その事情が今日までそのまま続いておるというのが、この三十七年度税制改正に対する答申案でございまして、その点については、審議会自体みずから割り切れないものを持っておるということを自覚しております。それで、もしも突っ込んで私個人の意見を言わせていただくことができますれば、私は、今おっしゃいましたように、貯蓄増強に関する措置は今度はただいまの御意見と少し違うのでございますが、もし税制上でそれを残すとしましても、利子分離課税というような措置以外の方法で、しかも臨時措置でないような形で考慮すべきではないか。すなわち、もしも日本貯蓄増強のために預金を優遇する、貯金を優遇しなければならぬというようなことがございますれば、それは税制全体の中でいつも特別措置というような形で問題になるような形でなしに措置さるべきである、その点については私はただいまの御意見と全く同感でございます。そのような形がとれるかとれないか、おそらくそういうような新しい案が十分に熟しないためにしばらく見送ろうというような結論になったのだと私は考えておりますけれども、この点はまさに先ほど申し上げましたように、次に来たるべき税制調査会において十分に取り上げるべき問題だと思います。税制調査会立場といたしましては、これはもはや存続すべきでないということだけは、これはもうたびたび審議会において確認されておることでございますので、その点をあわせて申し上げておきます。
  22. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 利子課税の問題についてはそれでわかったのですが、国民貯蓄組合の場合も今まで非常に乱用をされてきたという事実が強く指摘されました。大体三十万円一口ということで五千万口というようなものが現実にこの国民貯蓄組合の名において免税の特典を受けている、こういうようなことがあるわけであります。この点も追及をいたして参ったところでありまするけれども、今度はさらに金額を五十万円限度まで引き上げて、ただしその乱用は防止する適正な施策を講ずる、こういうのでありますが、この点についてもやはり先生の御見解としては、利子課税全般の問題として、ただいまの御意見と同じように措置されるべきが当然だ、こうお考えでありましょうか。さらにまたこの乱用を防止する方法というものが具体的に完全に行なわれ得るというような御見解に立つでありましょうか。
  23. 中山伊知郎

    中山参考人 これも基本的にはただいま利子課税について申し上げました通りの線で私は考えております。ただ暫定的には、郵便貯金の預金の金額が限度を五十万円に引き上げましたのに応じまして、国民貯蓄組合の預金の限度も五十万円になりました。もしそのような状態のもとで従来の乱用がそのままでありますれば、弊害はさらに大きくなるということが予想されますので、その点については、少なくとも審議会の席上ではたびたび大蔵省当局の監督行政の報告を求め、それに対するいろいろな意見を申し上げております。これは行政的な問題になりますので、答申案としてそのままにしておいて、その上に監督行政のことをたびたびつけ加えますことは、これは税制答申案としては不適当であると思いましたので、ここには全然省いてあるわけでございます。
  24. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それではその問題はこのくらいにいたしまして、時間もございませんので、次の問題に移りたいと思います。  所得税、特に給与所得税の課税最低限の問題でございますが、これも給与所得の場合には、先生も先ほどからおっしゃっておりまするように、これはほとんど一〇〇%脱税というものは今日あり得ない。九九%まではもう完全に税源が捕捉されているわけでありますが、そういった見地に立って、私ども、これは先生も同意見だと思いまするけれども、生計費に課税しないというような原則を立てるといたしますならば、今日給与所得者の場合に、標準家族で四十万八千九百十六円ということでありますが、これについて、平年度にいきますと四十一万四千六百九十三円ということになるわけでありますが、私どもいろいろ統計の数字などを、最近における都市勤労世帯の生計費調査等を見てみましても、これは低きに失しているのではないか、課税最低限をもっと、少なくとも五十万円程度まで引き上げられる段階にきているのではないか、かように思いますが、その問題に対して先生の御意見をお聞かせいただきたい。
  25. 中山伊知郎

    中山参考人 この問題につきましても、基礎控除を一万円引き上げるという問題に関連いたしまして、いろいろな御意見審議会には提出されました。五十万円まで持っていけと言われること、それはおそらく基礎控除の金額をさらに数万円引き上げることになると思いますけれども、そこまでの議論は私ども審議会においては出なかったのでございますが、しかし一万円では低過ぎるじゃないかということは、確かに審議会ではずいぶん熱心に議論されました。この点は正直に申しますと、税収入減税金額との見合い、それから特に農民所得中小企業所得との見同いにおいて、まず今日のところその辺が適当なんじゃないか、と申しますことは、そのようなバランスが、今度の税制のでき上がりましたバランスが、シャウプ以来ある経済状態に対応したバランスで考えられております。そこでだんだんやって参りますと、目に立つものは勤労者の源泉徴収だということになって参りますので、いろいろそちらだけに注意をしていきますと、全体のバランスが狂ってくるということで、その間をとってある是正をしておるのでございますが、たとえば非常に小さいことでございますけれども、実は勤労所得についても若干脱税的な部分があるのでございます。これは御承知と思いますけれども、たとえば会社、工場等において、非常に安い食券を配付するというようなこと、あるいは住宅関係について非常に安い住宅を与えて、市価とは全然話にならないような徴収をしているというようなこと、これをもし税制的に見ますと、それは食券の給付でありましても、実は給与と同じものであるとしますれば、遡及してその金額にもいわば税率を適用しなければならぬということになるのでございますけれども、しかしその点はもうだいぶんいろいろな会社でそういう実例があるのでありまして、そうして税制的には手をつけなければならぬということは、特に主税局あたりではもう十分にわかっておるのでございますけれども、その議論に対して、われわれはこれはきつい税、少なくともきつく感ぜられる税なんだから、そのくらいの息抜きはしなければいけないのじゃないかというので押えている。これは脱税とは正確に申し上げることはできないかもしれませんが、ある余裕を持ってそういう問題も考えているということを一つ承知願いたいと思います。
  26. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 一つ一つの問題について深めることはできませんが、次の問題に移ります。  同族会社に対する課税原則の問題ですが、大体三十四年の統計によりましても、法人数五十万三千のうち、四十七万三千、九三・九%という数字を同族会社が占めておるわけでありますが、この同族会社に対しては、非常に税務当局としてはまさにその敵視政策をとっているじゃないか。行為計算の否認の問題、さらにまた留保所得に対する課税特例というような問題を通じてみましても、非常に頭からこれを押えつけて、とれるだけとるというような、非常にシビアな態度というものが貫かれておるわけでありますが、行為計算否認なんかについて、判例を見ましても、これは決して行為計算を当然否認することができるのだというようなものの言い方は言ってないわけです。非同族会社よりも不利益に取り扱うためのものじゃないのだ、非同族会社よりも不利益に取り扱うためのものではなくて、両者の間の課税の公平を期するために非同族会社が通常なし得ないような同族会社の行為計算だけを否認することができるのだという、非常に限定的なものの言い方を判例も示しているわけでありますが、この問題について、この行為計算否認の問題あるいは留保所得に対する特例課税の問題、これが大企業の場合と著しく税務当局の態度が異なっている問題について、中山先生いかにこの問題をお考えでありましょうか。
  27. 中山伊知郎

    中山参考人 同族会社の問題については、税制的には今おっしゃいました二点のほかにも、なお関連する問題が出てくるのでございますが、全体の考え方だけを申し上げますと、特に同族会社をいじめると申しますか、それについてきつくするというような考え方は、少なくとも審議会答申にも、結果としてそうお読みになられるところがございますかもしれませんけれども考え方としてはございません。もしそのようなことが出たといたしますれば、御承知の最近数年間にわたりますある納税上の利益を得るための法人成り、不当なる法人成りに対するある適正な措置というのが非常に強く感ぜられておるのではないかと存じます。もし実際の税制上の措置について、今おっしゃいましたような、逆にそこには非常に不当な税法上の措置が行なわれておるということでございますれば、これは十分に再検討に値すると存じますが、方針といたしまして、もし申し上げることが許されますならば、そのようなことが出てきました結果は、いわば不当なる、しかも異常なる法人成りに対する警告であったというふうに御承知おき願いたいと存じます。
  28. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 大蔵当局もうしろに聞いておられたから、その点はそれでいいと思います。  次に、法人税の場合に、今回手をつけられなかったわけでありますが、ある一定限度の利益に対して、たとえば五百万円以下くらいのところは、三段階くらいの軽減税率というものを設けることが私どもとしては必要ではないか、またこのことが今日における二重構造の打破あるいは中小企業の躍進の度合いを税制の面から作ってやるという政策目的が非常に熾烈に要求されているところではないかと思うのです。去年の中山先生のお話によりましても、主として八割以上は租税特別措置法の恩恵が大企業に集中しているのではないかという御意見でございましたが、このことが今日の設備投資等における非常な過熱というようなことにも、税制面からの一つのドライブがあったのではないかと思うわけでありますが、今、政策の重点というものが、高度経済成長をささえるためにも格差の解消ということが強くいわれておりますし、日本の法人の構成は、先ほどもちょっと例をあげましたように、非常に大きく中小法人によって占められている。しかもそこが発展のテンポが非常にのろいし、設備投資等に至ってはきわめておくれている。こういうような点から申しましても、こういう税制措置というものを考える余地はないものかどうかという点について、先生の御意見一つ伺いたいと思います。
  29. 中山伊知郎

    中山参考人 先ほどお話し申し上げましたように、法人税税率あるいはその改正については、ほとんどこの二回の答申を通じて出ておりません。考慮はいたしましたけれども、総括的に見まして、現在の状態が必ずしも高くないと、特に所得税、その他の間接税比較しまして考えられましたので、手をつけなかったということを申し上げましたが、しかし中小企業については、所得税の面についても、法人税の面についても、若干の考慮をしてありますことは御承知の通りだと思います。たとえば地方の事業税の場合その他の場合におきまして、税率軽減所得税の方面におきましていろいろな、たとえば百八十万円までのところで税率を緩和したこと、これが結局において、全体としては中小企業に対する一つ重点的な、低所得階層の保護というと言い過ぎでありましょうが、優遇と申しましょうか、そういう手段の現われでございますが、今おっしゃいました五百万円以下のところについては段階を設けろ、こういう御意見につきましては、まだ正面から取り上げておりませんので、そういう余地は私は十分に存在するものと考えます。
  30. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 あと一問だけ簡単に。今回の消費税関係といいますか間接税の関係で、たばこ消費税が見送られたわけでありますが、今日たばこの問題は酒と同じようにやはり非常な逆進性を持っていると思いますし、しかも六六・四%というような平均税率になっているということから見ましても、たとえば新生一個ずつふかしましても、一年には約一万円の税金を非常に低所得の者であっても納めておるわけであります。そういう形になっておる。この問題を見送られた真意というもの、そしてまた将来に対してどういうお考えを持っておられるか、この点ちょっとお答えをいただいて私の質問を終わりたいと思います。
  31. 中山伊知郎

    中山参考人 お答えをいたします。この問題は、お答えいたしますと非常に長くなりますけれども、要点だけを申し上げます。  これは酒と並んで、御承知のように間接税収入の最も大きなものでございますので、初めから問題になりました。しかし見送られました理由は、第一、外国税制を考えますと、日本のたばこは税の負担率六六%とおっしゃいましたが、その点におきましても、それから価格の点におきましても、それとの比較におきましても、必ずしも高くない。これは皆さん外国を御旅行になっておりますので、いかに外国のたばこが税金が高いかということは御承知であると思いますので、数字は申し上げませんが、日本は必ずしもその中で、安いとは言えませんけれども、高い方ではないということが第一。それから第二は、物価が騰貴している間にたばこはずっと据え置かれてきた。その物価の騰貴の中で一番大きいのは、御承知のように専売局における人件費と、そして原料タバコの値上がりであります。この値上がりに対してたばこの価格が据え置かれたというのは、これは事実上減税しておったのと同じじゃないか。これはちょっと専売局総裁のような言い方で、はなはだ相済みませんが、そういう説明がございました。これは事実でございます。そういう説明がございました。それからもう一つ第三の点は、実はそれにもかかわらず、今おっしゃいましたように、せめて少し下の段階のたばこを下げようじゃないかという議論相当ございました。そうしますと中間があくのだそうでございます。つまり十円というような値段の飛んだたばこの値段の格差ができまして、その格差を埋めるためには新種を作らなければならぬ。その新種を作るには準備が要るし、それが売れるか売れないかなかなか見込みがつけにくいというような技術的な点がある、これが第三の理由でございました。以上三つの理由を総合して、それでは今度は見送ろうということになったのでございますが、もし意見を言わしていただきますれば、この次にはぜひこれを下げるべきだ、私はそう思っております。
  32. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 以上で終わります。
  33. 小川平二

    小川委員長 関連質問を許します。芳賀貢君。
  34. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間がないようですから、簡単に会長にお尋ねします。  三点でございますが、第一点は、今回の税制改正重点間接税の引き下げに置かれたことはわれわれも承知しておるわけでございます。その場合、税の対象になっておるたとえば砂糖等については、これは関税と消費税が重複しているわけでございますが、この点について関税の制度というものは、一般の国内の租税とはその目的や性格が違うことは言うまでもないわけでありますが、具体的の事例としては、現在の輸入糖の精製糖の上白糖は、標準糖価がキロ当たり百二十二円ということになっておるわけであります。これに対しましては関税率は一キロに対して四十一円五十銭、消費税が二十一円ですから、これを合わせるとキロ当たり六十二円五十銭がいわゆる税の部分ということになって、砂糖の卸売価格の五〇%以上を占めておるわけです。しかも最近は国民一人当たりの砂糖の消費量は大体十五キロ程度でありまして、そのうち百二十万程度が輸入糖であり、三十万程度が国内のてん菜糖あるいは精製ブドウ糖、あるいはカンシャ糖ということになっておるわけでありますが、これらの国内の甘味資源の自給度の向上対策と、それから国民に対する間接税、いわゆる消費税の引き下げを考慮した場合、これは会長のやっておられる税制調査会では、間税制度を扱っておらぬわけですが、やはり税制全般の検討をする場合には、これらの間税制度との関連において、たとえば砂糖消費税等についてはどうすべきであるかというような、具体的な検討が行なわれたかどうか、あわせて、国内の甘味資源の今後の自給度向上の政策的な見地から、消費税の問題等についてはどのような御検討をなすったかということを、第一点としてお尋ねしたいわけです。  第二点は、租税特別措置法の関係でございますが、答申の中では、たとえば米の予約減税は、これは廃止すべきであるということがうたわれておりますが、これを公平の原則から判断した場合には、たとえば農業者に対する課税の中で、特に米作農家だけに、政府に売り渡した米一石に対して千四百円分を所得計算から除外するというようなことは、これは純理的に見れば問題があるとしましても、沿革的に見れば、たとえば昭和二十六年から二十九年までの間は、米の供出奨励金の部分については免税措置を行なう、昭和三十年以降今日までは、いわゆる事前売り渡し制度の一つの奨励措置として、その売り渡した代金のうち、平均千四百円分については課税対象にしない、こういうことで現在の食管制度を高度に運用して、国が一定の米の集荷を確保して、国民生活の安定に寄与されるという政策的な見地から、この制度が続けられておりまして、農民の側から見れば、これは既得権として主張さるべきものであると思うわけであります。ですから、これを検討した場合、単純にこの制度は廃止すべきであるという結論だけでなくて、しからば、十年近く存続されたこの一つの特権的な、既得権的な制度というものを、これを税制の面で是正する場合には、それにかわって、たとえばこの減税分を廃止した場合に、今後これを米価の基本価格に吸収すべきであるかどうか、そういうかわるべき措置を、かくかく講ずべきであるという対案を用意されて廃止の答申をされるのであれば、これは農民としても納得する点があると思いますが、租税特別措置法全体の体系の中で、これは悪法である、悪い制度であるというので廃止するというようなことは、これはあまりにも考え方が単純に過ぎて、特に大蔵官僚の何らかの影響を受けたような答申でないかとわれわれは考えたわけですが、率直なる御説明を願いたいわけであります。  第三点は所得税の関係でありまして、ただいま広瀬委員も触れられたわけでありますが、答申を拝見いたしますと、特に個人事業所得の面について、たとえば法人事業所得と個人経営の所得との場合の、いわゆる事業主の給与の問題とか、家族労賃の控除の問題等については、従来問題にされた点でありますが、答申内容によると、法人事業と個人事業の税を通じてのバランスをとる必要があるが、なかなか内容が複雑であって、これは容易に答えが出ないということで、今回も放置することにしたというようなことでありますが、これらの点についても、もう少しあたたかい細心の配慮というものを、税行政を通じて講ぜられるということになれば、解決できない難問題ではないと私たちは考えるわけであります。特に国民間の所得差の是正をするというような場合、非常に所得水準の低い階層については、これはもうすでに所得税の対象外に置かれているのだから、そういう者に十分なる配慮をする必要はないと切り捨ててしまえば、これは何をか言わんやでありますが、こういうような点についても、やはり税の公平の原則に立って、税制の体系を根本的に是正するということであれば、多年問題になったところの、いわゆる個人事業における事業主の控除、あるいは家族の労賃控除等の点については、やはり他の法人事業と同列に控除率というものを計算して、そして適切に行なうようにすべきであったと思うわけであります。今回の場合には、単に専従者控除の面で青色だけが、従来の二十五才以上十二万円を二十才までに引き下げるということで、これは終わっておるわけでありますが、この点に対する会長の御見解を伺っておきたい。  あわせてお尋ねしたい点は、現在事業所得については、青色と白色の申告の制度が採用されております。これらも数年間続いた制度でございますが、適当な機会にこれを青色申告の制度に統一するのであればするという強い行政的な指導と、その申告の内容についても、適切な、申告でき得る形式というものを考慮して、そしてこれを一本のものにするということになれば、これらの税対象の人たちに対しても、相当の恩恵が均霑するのじゃないかと思いますが、この点に対する見解。  もう一点につきましては、たとえば政府国民所得倍増計画の中においても、地域格差の是正の問題が取り上げられておりますが、やはり国民立場から見た場合に、地域格差の是正というものを政策的に実行する場合には、税の制度の中においても、ある程度是正できる可能性というものがあるのじゃないかと考えるわけです。たとえば国家公務員等につきましては、国の方針によってそれぞれ任地が異なってくるわけでありますが、そういう場合、たとえば北海道のような積雪寒冷の地域におきましては、石炭手当の支給であるとか、あるいは勤務地手当の支給等が、給与体系の中で地域差の是正というものが行なわれておるわけであります。こういうことを一例にとって考えた場合に、たとえば憲法においては、国民の居住の自由というものが保障されるといたしましても、特に積雪寒冷地域においては、半年間その積雪のもとにおいて生活するという場合には、それ以外の温暖の地域に比べた場合には、生活上の諸経費というものは、相当増高しておるということは事実であります。ですから、自分の意思でどこへ住んでも勝手であるということになればこれは別ですが、ほんとうに国民所得格差を地域的に是正するという配慮を徹底させようとする場合には、やはりこの所得税の控除の制度の中においても、これらの問題を具体的に検討して、——これは単に、すべきではないとか、できないとかいうことではなくて、こういう問題についても税制調査会等において取り上げて、ある程度の検討はされたものと私は期待しておるわけでありますが、この問題に対してはどういうような御研究をされたか、以上の点に対して御説明を願いたいわけであります。
  35. 中山伊知郎

    中山参考人 ただいまの三つの問題、いずれも非常に重要な大きな問題でございますが、時間もございませんし、できるだけ簡単にお答え申し上げたいと思います。あるいは十分に意を尽くさないかもしれませんが、一つ御了承を願いたいと思います。  第一の問題、間接税の問題の中の特に砂糖の消費税の問題でございますが、今あげられました数字で明瞭でございますように、砂糖の税のうちで間接税の占めております割合は、比較的に小さいのでございます。つまり関税の方が大きいのでございます。その意味で関税の方の部会ともし税制調査会とが共同してこの仕事をすることができますれば、あるいはもう少し答申に盛り込み得るような結果を生んだかと思いますけれども、不幸にしてそうではございませんでした。それにもかかわらず、日本で砂糖の生産の奨励をやるためには、たとえば北海道においてビート・シュガーのある特別の奨励措置が行なわれております。実はそのような奨励措置もあわせて、関税の問題、奨励の措置、それとの関連において消費税体系を考えなければならないのでございますが、その点には十分な調査研究また総合が行なわれておりません。これは将来の問題として私どもは考えたいと存じます。これが、第一点。  次の米の予約減税を廃すべしという答申は、あまり簡単過ぎるじゃないか、もう少しほかのことを考えたらよかろうということでございますが、実はこの点は昨年の答申案にも同じことを答申しております。そしてそれは実際には行なわれておりません、ことしはどうなりますか知りませんけれども。そこでそのような答申意味は、ちょうど今御説明になりましたように、これを廃止するならば、それの廃止に対応するような対策は何かということをお考え願いたいということを含めておりますので、その点に触れますことは越権でございますから、差し控えさせていただきます。これがお答えです。  第三点、所得税の中で、特に個人の業主に対する配慮が足らぬのじゃないかとおっしゃいました。この点は、お答えといたしましては、中小企業全体に対して、所得税から事業税、地方税国税を通じて、この答申案に示されておりますような全体の措置をお考え願いたいのでございますが、さしあたりただいまおっしゃいました点についてだけお答え申し上げますと、われわれがいろいろな議論をしました結果、取り上げ得たことは、専従者に対する考慮だけであった。それは専従者を認めること、並びにその専従者の年令を二十五才から二十才に引き下げたということ、この二つにすぎませんけれども、これはその方向を示したのでございますから、なおそれについての名案がございますならば、これを取り上げていただいて少しも差しつかえございません。そのような意味でこの問題を取り上げました。  さらにその次の問題、地域格差をほんとうに是正するつもりならば、それを税制の上にも盛るべきではないか、この問題は、たとえば貿易振興をほんとうに考えるならば、もっと税制の中にその措置を盛るべきじゃないかという問題と同じなのでございますが、どこまで盛ったらいいか、そういう点について非常にむずかしいものですから、そういう点こそ、もし今後続けて設けられるといたしますれば、新しい審議会の大きな仕事になるのじゃないかと存じます。  それから申し忘れましたが、青色申告と白色申告との統一の問題につきましては、ただいまのところでは、その統一の時期がきているとは存じませんけれども審議会といたしましては、近い将来に、何も二つなければならぬことはないのでございますから、統一の時期が早からんことを希望いたします。  以上でお答えを終わります。
  36. 小川平二

    小川委員長 これにて中山参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人には御多用中のところ、長時間にわたり御出席を賜わり、ありがとう存じました。厚く御礼申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  37. 小川平二

    小川委員長 所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案しよう脳専売法を廃止する法律案及び外国為替銀行法の一部を改正する法律案の四案を一括して議題といたします。     ————————————— 所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案しよう脳専売法を廃止する法律案外国為替銀行法の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  38. 小川平二

    小川委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。大蔵政務次官天野公義君。
  39. 天野公義

    ○天野政府委員 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外三法律案につきまして、提案の理由を御説明申し上げます。  まず所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  政府は、明年度における税制改正の一環として、さきに提案いたしました通行税法の一部を改正する法律案外二法律案に引き続き、この二法律案提出いたす次第であります。  以下、順次これら二法律案について、改正内容を申し上げます。  まず、所得税法の一部を改正する法律案について、その大要を申し上げます。  第一は、中小所得者を中心とする税負担軽減合理化をはかることとしたことであります。すなわち、基礎控除及び配偶者控除を現在の九万円から十万円に引き上げるとともに、青色申告者の事業専従者について十二万円の控除限度が認められる年令区分を現在の二十五才から二十才に引き下げております。  また、税率につきましても、課税所得百八十万円以下の階層に適用される税率の緩和をはかるとともに、国と地方団体との間の税源配分の適正化をはかるため所得税収入の一部を道府県民税の収入として移譲することとし、この場合所得税及び道府県民税を総合した負担軽減されるよう所得税税率に所要の調整を行なっております。  すなわち、道府県民税の所得割につきましては、現在〇・八%から五・六%までの十三段階区分の超過累進税率によっているのでありますが、住民税の税率のあり方及び税源帰属の適正化の見地から課税所得のうち百五十万円以下の金額については二%、百五十万円をこえる金額については四%の二段階の標準税率に改めることといたしております。  なお、その際、所得税との総合負担軽減するため、一般的な所得税減税のほか、所得税税率において現行十万円以下の金額について一〇%であるのを八%に改める等税率に所要の調整を行なうとともに、昭和三十六年分の所得税昭和三十七年度分の個人の道府県民税との間における所得控除等の額の相違分については、特別の税額控除を行なうこととするほか、昭和三十七年度分の道府県民税の所得割の納税義務者のうち昭和三十七年分の所得の課税所得金額がなくなったものについては、昭和三十七年度分の道府県民税の所得割額から改正による増額分を減額する等の措置によって負担調整をはかることとしております。  以上申し述べました控除及び税率改正により、夫婦及び子供三人、計五人の家族の場合を例にとりますと、所得税を課されない限度は、給与所得者につきましては、現在の約三十九万円から四十一万円に、青色申告者である事業所得者につきましては、現在の約三十七万円が三十九万円に引き上げられるとともに、中小所得者の負担は、所得税、道府県民税を通じて相当程度軽減されることになります。  第二に、中小所得者の生活の安定と貯蓄の増強をはかる見地から、生命保険料控除の対象となる生命保険料の限度額を現在の三万円から五万円に引き上げるほか、退職年金については、あとで申し上げる法人税法の整備と相待って、所得税においては、企業が従業員のために拠出した掛金に対する課税の繰り延べを行ない、年金受給時に給与所得として課税する等所要の整備を行なうとともに、最近における生活水準の向上、消費支出金額の増加等を考慮して、寡婦、老年者等に対する税額控除を現在の五千円から六千円に引き上げることとしております。  さらに、寄付金控除制度を創設し、教育または科学の振興等のための寄付金について一定の金額を税額から控除すること、昭和二十八年一月一日前から引き続き所有していた資産の譲渡所得及び山林所得計算上控除する取得価額を、原則として同日現在の相続税評価額によるものとするとともに、資産再評価法による再評価の制度及び再評価税の課税は廃止し、また、個人間の資産の贈与等の場合で譲渡等に関する明細書等の提出があったときは、その贈与等の際には譲渡所得課税を行なわず、受贈者が贈与者の取得価額を引き継ぐものとすること、事業用の固定資産等について生じた損失は、原則として事業所得等の計算上の必要経費とするとともに、その損失が災害による場合は被災事業用資産の損失として三年間の繰り越し控除を行なうこと、生活に通常必要でない資産について生じた災害損失は、雑損控除の対象から除外して、災害を受けた年及びその翌年の譲渡所得計算上の損失とすること、予定納税基準額の最低額を現在の三千円から六千円に引き上げること、文化功労者年金を非課税とする等税制の整備合理化をはかることとしております。  第三に、非居住者等の課税につきまして、わが国の締結した租税条約との調整等をはかりつつ、非居住者がわが国で事業を行なう場合における事業所得の課税の要件を明らかにすること、わが国に事業を有しない非居住者の資産の譲渡による所得の課税について不動産、企業支配的な株式の譲渡その他重要な資産の譲渡について課税するよう、その対象を列挙する等の措置を講ずる等所要の規定の整備を行なっております。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について、その大要を申し上げます。  所得税法改正のところで申し上げましたように、所得税及び法人税を通ずる退職年金に関する税制整備の一環といたしまして、法人税におきましても、所要の規定の整備を行なっているのであります。すなわち、企業が、その従業員の退職年金の原資に充てるため、一定の要件に該当する退職年金に関する信託または保険の契約に基づいて一定の掛金を拠出したときは、その拠出の際にこれを企業の損金に算入いたしますが、この場合、その従業員に対する所得税の課税が年金を実際に支給されるときまで繰り延べられることは、所得税のところで申し上げた通りであります。そこで、この繰り延べ措置に関連いたしまして、法人税においては、その課税延期に見合う一種の遅延利息に相当するものとして、この信託または保険の業務を行なう法人に対し、その退職年金積立金について千分の十二の税率による法人税を課税することといたしております。  この退職年金積立金は、企業が退職年金の掛金として支払った金額とその掛金について運用益として計算される金額の累積額との合計額から、退職金として支給した金額に見合う金額を控除した金額によることとなっております。  以上のほか、所得税法における非居住者に対する税制の整備と並行して、外国法人がわが国において事業を行なう場合にその事業所得に対して課税する要件を明確にし、また、わが国に事業を有しない外国法人の資産の譲渡による所得の課税については、所得税法改正と同様な措置を講ずるとともに、外国で設立した一定の子会社が納付した外国法人税額をその親会社である内国法人が納めた外国法人税額とみなして、その税額控除を行なうこととする等所要の規定の整備をはかっております。  以上が所得税法の一部を改正する法律案及び法人税法の一部を改正する法律案についての提案の理由及びその内容の大要でございます。  次に、しよう脳専売法を廃止する法律案につきまして御説明いたします。  しよう脳専売制度は、明治三十六年、旧台湾におけるしよう脳専売事業による財政収入を確保するため、内地におけるしよう脳生産高を適当に統制しその価格の維持をはかるとともに、わが国の特産物としての天然しよう脳の生産を維持することを目的として制定されたものでありますが、終戦によって台湾を喪失した後は、国内の生産額は少額となり、また、合成しよう脳、プラスチック等各種代替新製品の出現を見た今日では、特にしよう脳を専売制度のもとに置く必要も失われましたので、先般の専売制度調査会でもその専売制度を廃止すべきである旨の答申がありまして、政府としましても最近の実情にかんがみ、昭和三十六年度限りでこれを廃止するとともに、廃止に伴う所要の経過措置を講ずることといたし、ここにこの法律案提出した次第であります。  次に、この法律案の概要を御説明申し上げます。  本法の本則におきましては、しよう脳専売法を廃止することといたしておりますが、これに伴う経過措置として次のことを定めております。  まず、今後のしよう脳生産の維持発展の必要性、現在の粗製しよう脳またはしよう脳原油の製造業者の零細かつ前近代的な業態等を考慮し、専売制度廃止に伴い必要となる事業合理化資金等を補うため、昭和三十六年度において粗製しよう脳等の製造予定数量の割当を受けてこれを生産した者、及びこれらの者の組織する製脳協同組合に対し、日本専売公社が昭和三十七年度において交付金を交付することができることとしております。  次に、しよう脳の専売制度廃止後、民間において粗製しよう脳等の自主的な流通秩序が確立するまでの間の措置として、日本専売公社は、専売制度廃止後も一年以内は粗製しよう脳等の買い入れ、販売等の業務を行なうことができることとしております。  また、専売制度廃止後のしよう脳産業の行政所管庁を通商産業省といたすこと等所要の措置を講じております。  なお、この法律施行後六カ月間、大蔵大臣の諮問機関として臨時しよう脳事業審議会を設置し、しよう脳専売事業の廃止に伴う所要の経過措置について調査審議させることとしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び内容の概要であります。  最後に、外国為替銀行法の一部を改正する法律案につきまして御説明いたします。  外国為替銀行法は、昭和二十九年四月、外国為替取引及び貿易金融の円滑化をはかるため、これらの業務に専念し、国際市場においても一本立ちのできるいわゆる為替専門銀行の制度を確立するため制定されたものであります。この法律に基づき免許を受けた外国為替銀行は、以上の目的を達成するため、その組織及び業務の面におきまして、法律上、外国為替業務を営む他の市中銀行とは異なった取り扱いを受けておるのであります。すなわち、貸出業務につきましては、貿易その他対外取引に直接または間接に関連する貸し出しのみを行なうこととなっており、店舗につきましては、外国為替取引及び貿易金融上重要な地に限り設置できることとなっております。  近年、わが国貿易の進展に伴い、貿易関係の資金需要は急速に拡大して参りましたが、外国為替銀行は、その機能から見まして、当然これらの資金需要を円滑に充足するよう努力して参る必要があるのであります。他面、外国為替銀行は、これらの所要資金の調達につきましては、預金の受け入れによりますほか、日本銀行からの借り入れ、コール・マネーの取り入れ等によりまかなっておりますが、さきに申し述べた業務の特殊性や店舗配置の制約等の事情から、預金の伸びは、一般の市中銀行と比較してきわめて低い実情にあります。このため、外国為替銀行の資金調達としては、日本銀行借入金やコール・マネー等に大きく依存せざるを得ないのでありますが、これらの外部資金、特にコール資金等は、今日の金融の環境におきましては、安定した資金源として期待し得ない実情であります。従いまして、このような金融の環境のもとで外国為替銀行が今後その業務を円滑に遂行して参りますためには、何らかの方法により安定した資金源を持つことが必要であります。  以上の理由によりまして、外国為替銀行に債券発行の道を開き、その所要資金の一部をこれによって調達することを適当と考えるのであります。この点につきましては、さきに金融制度調査会審議におきましても、同様の結論を得ているのであります。そこで、今回外国為替銀行法の一部を改正し、外国為替銀行がその資本及び準備金の合計金額の五倍を限度として債券を発行できることとし、これに伴う手続等について所要の規定を設けることといたしたのであります。  これがこの法律案提出する理由であります。  以上所得税法の一部を改正する法律案外三法律案につきまして、提案の理由と内容の大要を申し上げました。何とぞ御審議の上すみやかに御賛成下さいますようお願い申し上げます。      ————◇—————
  40. 小川平二

    小川委員長 次に、公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  41. 小川平二

    小川委員長 政府より提案理由の説明を聴取いたします。運輸政務次官有馬英治君。
  42. 有馬英治

    有馬政府委員 ただいま議題となりました公共企業体職員等共済組合法の一部を改正する法律案の提案理由につきまして御説明申し上げます。  公共企業体職員等共済組合法は、昭和三十一年に旧国家公務員共済組合法及び恩給法から独立して、三公社職員に固有の制度として公共企業体職員等共済組合を設けるため制定せられ、現在に及んでいるのでありますが、第三十八回国会において健康保険法、恩給法、国家公務員共済組合法等の一部改正が行なわれましたので、これらに関連する規定の改正を必要とするにいたりました。また、同国会における本法の一部改正に際し、本委員会において旧令共済組合員期間の完全な通算及び再就職者の前後の在職期間の通算について附帯決議が付せられましたので、その具体化について鋭意検討を加えて参りましたが、ここにその成案を得るに至った次第であります。  次に、本法律案内容について御説明申し上げます。  まず、出産費については六千円、配遇者出産費については三千円の最低保障額を新たに設けることとし、育児手当金について従来一カ月四百円を最高六カ月間支給しておりましたのを、育児の期間を問わず二千四百円の定額を支給することといたしました。これは健康保険法及び国家公務員共済組合法の改正にならったものであり、その額は国家公務員共済組合法と同じであります。  第二に、更新組合員等に関し、旧日本医療団及び外国政府の職員期間を組合員期間に通算することといたしました。旧日本医療団と申しますのは、戦時中に国民医療法によって設立されました特殊法人であります。これらの職員期間は、恩給法の一部改正により、恩給公務員期間に算入されましたので、本法におきましてもこれらの期間を通算することといたしました。  第三に、退職者がもとの公社に再就職した場合に前後の組合員期間を合算して退職年金の受給資格期間を満たす場合には、これらの組合員期間を通算することといたしました。  第四に、更新組合員等の旧令共済組合の組合員であった期間は、従来本法施行時まで引き続いているものを除いて、すべて資格期間として扱ってきたのでありますが、これを実期間として組合員期間に算入することといたしました。  第三及び第四の点、すなわち、前後期間の通算と旧令共済組合員期間の実期間化は、先ほど申し上げましたように、いずれも第三十八回国会における本委員会の附帯決議を立法化したものであります。  その他法律施行後約五年半の運営の状況にかんがみ、所要の規定の整備を行なうことといたしております。  以上がこの法律案を提案する理由であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成いただきますようお願いいたします。
  43. 小川平二

    小川委員長 これにて提案理由の説明は終わりました。      ————◇—————
  44. 小川平二

    小川委員長 理事辞任の件についてお諮りいたします。  理事であります横山利秋君より理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。よって、許可するに決しました。  続いて理事補欠選任を行なうのでありますが、これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。それでは委員長において堀昌雄君を理事に指名いたします。  次会は来たる九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会      ————◇—————