運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-01-27 第40回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年一月二十七日(土曜日)     午前十時十九分開議  出席委員    委員長 小川 平二君    理事 黒金 泰美君 理事 細田 義安君    理事 毛利 松平君 理事 山中 貞則君    理事 有馬 輝武君 理事 平岡忠次郎君       伊藤 五郎君    岡田 修一君       金子 一平君    篠田 弘作君       正示啓次郎君    高見 三郎君       津雲 國利君    永田 亮一君       濱田 幸雄君    坊  秀男君       吉田 重延君    佐藤觀次郎君       芳賀  貢君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君  出席政府委員         大蔵政務次官  天野 公義君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (関税局長)  稻益  繁君         大蔵事務官         (銀行局長)  大月  高君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    有吉  正君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    松井 直行君         大蔵事務官         (主計官)   相沢 英之君         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         大蔵事務官         (理財局次長) 吉岡 英一君         大蔵事務官         (為替局資金課         長)      今泉 一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 一月二十七日  理事辻原弘市君昭和三十六年十二月十六日委員  辞任につき、その補欠として有馬輝武君が理事  に当選した。     ――――――――――――― 一月十七日  昭和三十六年産米穀についての所得税臨時特例に関する法律案内閣提出第一号)  関税法の一部を改正する法律案内閣提出第二号)(予) 同月二十二日  保険業法の一部を改正する法律案内閣提出第一一号)(予) 同月二十三日  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第一二号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第一三号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第一四号) 同月二十五日  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内閣提出第二四号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、税関支署及び財務部出張所の設置に関し承認を求めるの件(内閣提出承認第一号) 同月十八日  清涼飲料嗜好飲料物品税改廃に関する請願外四件(荒木萬壽夫紹介)(第三一号)  同外六件(植木庚子郎君紹介)(第三二号)  同(小澤佐重喜紹介)(第三三号)  同外三件(田村元紹介)(第三四号)  同(高橋等紹介)(第三五号)  同外三件(大久保武雄紹介)(第八四号)  同外七件(園田直紹介)(第八五号)  同外三件(林博紹介)(第八六号)  同外二十件(小林ちづ君紹介)(第一九三号)  同外一件(佐藤洋之助紹介)(第一九四号)  同(田中榮一紹介)(第一九五号)  同(細田吉藏紹介)(第一九六号)  同外二件(秋田大助紹介)(第二八一号)  同外十一件(小笠公韶君紹介)(第二八二号)  同(小沢辰男紹介)(第二八三号)  同(田中榮一紹介)(第二八四号)  同外一件(辻寛一紹介)(第二八五号)  同外二件(生田宏一紹介)(第三四六号)  同(大野市郎紹介)(第三四七号)  同(本島百合子紹介)(第三四八号)  嗜好飲料清涼飲料物品税撤廃に関する請願外九件(植木庚子郎君紹介)(第三六号)  同(櫻内義雄紹介)(第三七号)  同外三件(田村元紹介)(第三八号)  同外二件(寺島隆太郎紹介)(第三九号)  同外二十三件(大久保武雄紹介)(第八七号)  同外九件(園田直紹介)(第八八号)  同外一件(愛知揆一君紹介)(第一九七号)  同(細田吉藏紹介)(第一九八号)  同外一件(佐藤洋之助紹介)(第一九九号)  同(田中榮一紹介)(第二〇〇号)  同(秋田大助紹介)(第二八六号)  同外三十二件(小笠公韶君紹介)(第二八七号)  同(野田武夫紹介)(第二八八号)  同外二十一件(山手滿男紹介)(第二八九号)  同外二件(生田宏一紹介)(第三四九号)  同外二十五件(菅野和太郎紹介)(第三五〇号)  同(保科善四郎紹介)(第三五一号)  同(本島百合子紹介)(第三五二号)   国民金融公庫職員の増員に関する請願鈴木正吾紹介)(第四〇号)  同(秋山利恭紹介)(第八九号)  退職金課税免除に関する請願植木庚子郎君紹介)(第八二号)  所得税より教育費控除に関する請願(肥田次郎紹介)(第八三号)  租税特別措置法の一部改正に関する請願前田義雄紹介)(第一二一号)  国税通則法制定反対に関する請願外四件(加藤勘十君紹介)(第一九一号)  袋物類物品税撤廃に関する請願外三件(愛知揆一君紹介)(第一九二号)  陶磁器の物品税撤廃に関する請願山手滿男紹介)(第二九〇号)  写真機フィルム等物品税軽減に関する請願三池信紹介)(第三四五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 一月十九日  中小企業金融難打開に関する陳情書(第九三号)  風水害保険制度改善に関する陳情書(第一〇〇号)  葉たばこ収納価額引上げに関する陳情書(第一二一号)  昭和三十七年産松川葉たばこ収納価格引上げに関する陳情書(第一二二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事互選税制に関する件金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件       ――――◇―――――
  2. 小川平二

    小川委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事でありました辻原弘市君が去る十二月十六日委員を辞任されましたので、理事が一名欠員となっておりますが、その補欠選任につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小川平二

    小川委員長 御異議なしと認めます。  それでは委員長において有馬輝武君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 小川平二

    小川委員長 税制金融証券取引及び外国為替に関する件について調査を進めます。  まず、大蔵大臣より当面の基本施策について説明を聴取いたします。水田大蔵大臣
  5. 水田三喜男

    水田国務大臣 本国会において御審議を願うべく予定しております大蔵省関係法律案は、昭和三十七年度予算に関連するもの十九件を含め、三十一件でありまして、このうち三十件及び承認案一件につき当委員会において御審議を願うことになるものと存じております。何とぞよろしく御審議のほどお願い申し上げます。  国際収支均衡回復昭和三十七年度下期中に達成するという当面の課題にこたえるためには、私は、本年度におきましても引き続き、引き締め政策を堅持することがきわめて緊要であると考えております。また、同時に、経済成長に伴い顕在化するに至った各面における不均衡是正をはかり、長期にわたる国力発展基礎を充実することもまた必要であると考えるものであります。  従いまして、予算の編成に当たりましても、昭和三十六年度につきましては、多額に上ると見込まれる租税自然増収等剰余金として極力後年度に繰り越すことといたし、昭和三十七年度予算につきましても厳に健全財政方針を堅持して編成いたしたのでありますが、その執行に当たりましても、経済情勢の推移に応じ弾力的に対処して参りたいと存じております。  他面、わが国の現状におきましては、国土の保全、産業基盤強化生活環境整備というような社会資本の立ちおくれを是正して、そうして経済社会均衡ある発展推進する必要が生じております。このため三十七年度予算におきましては、従来から政府が重点を置いて参りました重要施策を着実に推進することを主眼として、公共投資の充実、社会保障の拡充、雇用対策強化、文教の刷新、科学技術振興産業間、地域間の格差の是正、こういう一連の施策を進め、さらに租税負担軽減合理化をはかって、これらの要請にこたえることといたした次第であります。  租税負担軽減合理化につきましては、主として当委員会において関係法案の御審議を願うこととなりますので、この際多少申し上げさせていただきますと、昭和三十七年度におきましては、三十六年度に引き続き税制の体系的な整備改善をはかると同時に、中小所得者負担軽減主眼として、間接税及び所得税を中心に、国税において平年度約千二百億円の減税を行なう所存であります。間接税につきましては、戦後、減税が見送られがちであったため、その負担が全面的になお相当重く、また課税対象相互間にも不均衡が目立っていることを考慮し、この際、負担適正化をはかりながら、相当大幅な減税を実施することとして、酒税、物品税を初め、入場税通行税印紙税トランプ類税について税率の引き下げ等をはかって参りたいと考えております。直接税におきましては、所得税につき中小所得者負担軽減をはかるため、基礎控除引き上げ等を行なって、相続税につきましても遺産にかかる基礎控除引き上げを行なう方針であります。さらに税制の体系的な整備基礎をなすものとして、国税通則法を制定するほか、法人税法等につき所要整備を行なって参る所存であります。  金融面におきましても、引き続き引き締め方針を堅持し、その運営につきましてはできるだけ摩擦や困難を避け、円滑を期するよう日本銀行と緊密な連携を保ち、情勢に応じ、機動的、弾力的に臨んで参る所存であります。ことに本年一月−三月の財政の大幅な揚超期におきましては、日本銀行による買いオペレーションを通ずる財政資金の活用というようなことにより、これに対処すべく二月に七百億円の買いオペレーションを行なうことをすでに決定いたしております。また金融引き締め経済的に弱い面にしわ寄せされないよう、中小企業金融対策として昨年に引き続き所要財政資金を追加し政府関係金融機関資金星の増加をはかるほか、中小企業向け貸し出し促進のため、市中における金融債等の買い入れを行ないたいと考えております。  なお、昨年後半以降株式市場及び公社債市場におきましては、経済情勢の変化の影響が見られるのでありますが、政府としましては、長期の安定した産業資金調達の場としての株式市場、あるいは公社債市場育成強化のため、今後とも一そうの工夫と配慮を重ねて参りたいと考えております。  さらに、国際収支改善のためには、内需抑制の見地から、この際貯蓄の増強を一段と推進する必要があり、その一環として国民貯蓄組合を通ずる預貯金の非課税限度及び郵便貯金預入限度を五十万円に引き上げますとともに、税制面において優遇措置を講ずるなど格段の努力をして参りたいと思います。  国際収支につきましては、最近、輸出入信用状収支が多少好転した等のこともあって一部に楽観的な気分台頭が見られるのでありますが、しかしわが国経済の規模が著しく大きくなり、生産が堅調を続けていることを考えますと、輸入が再び増勢に転ずるおそれも十分ありますし、またわが国をめぐる国際環境を顧みますと、国際収支の先行きはまだ予断を許さないのでありまして、楽観的な気分台頭は厳に戒めなければならぬと考えております。もとより、国際収支均衡を回復しますには、内需抑制のみならず、進んで輸出の伸長をはかることが必要であり、政府としましては輸出振興策を一そう推進して参る所存であります。  なお当面の外貨の資金繰りにつきましては、先般米国市中銀行から二億ドルの借款を受け、続いて国際通貨基金との間に三億五百万ドルのスタンド・バイ取りきめを行ない、さらに目下米国輸出入銀行の保証による一億二千五百万ドルの借款を交渉中でありまして、いささかの不安もないものと考えます。  貿易為替自由化につきましては、今後も国際収支改善と相待って自由化促進計画に基づきその推進をはかり、本年九月末までには自由化率を九0%程度引き上げ方針でありますが、そのわが国産業に及ぼす影響にかんがみまして、関税率につきましても、所要調整を行ないたいと存じます。  以上、財政金融政策為替政策等に関して所信の一端を述べましたが、これらの施策の着実な推進によりまして、私はぜひとも本年度下期中にはこの国際収支均衡を回復して金融正常化状態に立ち戻らせ、そうしてわれわれの長期成長計画を停滞させることなく健全に成長させるようにしたいと存じておりますので、どうぞよろしくお願いしたいと存じます。  予算委員会中いろいろ当委員会に出られない場合が多いかもしれませんが、時間のある限り私も出たい、そうして御意見も拝聴したいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。     —————————————
  6. 小川平二

    小川委員長 続いて質疑を行ないます。佐藤觀次郎君。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 水田大蔵大臣の話を聞きましたのですが、いわゆる三月危機説、それから最近の不況に対しましていろいろ国民が不安を持っております。むしろ私は池田首相に直接お尋ねをしたいわけでありますが、所用があって来られませんので、大蔵大臣証券界のことにつきまして五、六カ所お伺いしたいと思うのであります。  その第一は、昨年大暴落によりまして、ダウ平均大体五百円ぐらい下がったのでありますが、その後そういう問題についてどういう処置をされておるのか。昨年は池田さんの楽観論で、おれにまかせておけ、おれにまかせておけばうまくいくというようなことで非常に楽観論を唱えられました関係上、その辺でいろいろと国民が迷惑したと思うのであります。これはひとり証券界だけでなく、私ども繊維業界にもたくさん倒れたものがありますが、今なお不安な状態を続けております。そういう状態について政府はどういう処置をとられたのか、まず一点お伺いしたいと思います。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 株式は去年の一月ごろから少しずつ相場が上がっておって、去年の八月ごろああいう相場になったわけですが、これは非常に問題がございまして、私どもは実勢に沿わない相場の上がり方をできるだけ抑えたいという考えから、去年四月ごろいろいろな制限を取引の面にやってきたことは御承知通りだと思います。ところがああいうことになりましてから、抑えるためにとった措置は全部これを取りはずして、緩和するというような方向に持っていって、株式市場が安定することを望んでいろいろの措置をとったことは、もうこれは御承知通りだと思います。問題は、政府が値段に関与する、これを上げるとか下げないとかいうような問題のための特定措置というようなものはやはりとるべきものじゃないので、安定させるための経済環境というものをどう整えるかということに政府が努力するのは当然ですが、そうでない特別の政策というようなものはできるだけ避くべきであるというので、いろいろ御議論がございますし、皆様方の要望もずいぶん承っておりましたが、特にそういう措置をとらないで、去年は一応あそこまでの安定を得たということになっております。今後も今金融引き締め政策をやっておるときでございますから、どういう問題が起こらないとも限りませんが、私ども株式を安定させる環境というものを整えるということに全力を注ぎたいと思っております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いいときは政府自分がやったことにするし、悪くなると国民責任を転嫁するというのが池田内閣やり方であります。大体高度成長政策、それから所得倍増論というのは現実的に失敗をいたしまして、このごろやや池田さんも良心的になられたと思いますけれども、昨年の五月以来ずっとわれわれは、今日本の経済あり方楽観を許さない、国際収支赤字が出ると同時に、今の景気のあり方は非常に無理があるというようなことを絶えず警告しておりました。私ども大蔵委員会でも、実は二、三質問をしたことがありますが、政府は何を言っても楽観論で、そういう空気をずっと助成してきたわけであります。ところが国際収支赤字、それから設備投資倍増によりまして、ますますそういう赤字赤字を重ねるようになって、昨年の九月か十月ごろあたりから非常に大きな変動がきました。そういうことになると、急に金融引き締めをやって、そのしわ寄せがいわゆる中小企業やそれから証券界にも響いてきたという現実になったのであります。これはあなた方の側の財界の方々でも、やはり政府に半分の責任がある、国民のついていったのは悪いけれども、少なくとも政府楽観論を唱えておるから国民がついていった、そういう点で政府責任があるというような声が経済界財界の方からあるわけでございますが、そういう点について大蔵大臣はどのようにお考えになっておられますか、まずお尋ねしたいと思います。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 よく政府の手の打ち方が遅れたとか、もうちょっと早くやればというような批評を聞くのですが、私は責任者として実際はそう思ってないのです。こういう問題は実験するわけに参りませんので、実験がきかないから水かけ論になってしまうと思うのですが、去年の六月、私ども民間設備投資調査をやったとき、これは民間が非常に強気で、設備投資を少し抑制してもらわなければならぬといっても、ほとんど受け付けないというのが実情だったと思います。ですから、私どもは少なくとも四兆をこそうとするような設備投資を、一割前後は繰り延べその他の措置をとらせる必要があり、この行政指導は強くやらなければならぬと考えて、その指導に入ったのが六月からでございます。もしあのときに強い抑え方を突然やったとしたら、民間の大きい企業計画自体を自主的に抑制する気持のないときに金融引き締め政策をやったら、資金はほとんど大企業に全部使われてしまって、中小企業はほんとうのそのしわ寄せを受けて被害者になるだろう。三十二年のときの経験からもそういうことが言えますので、私どもは、大企業設備投資計画行政指導で押えて引き締め政策をやっても、その部門に大きい金が優先的に食われないようにという根回しをよほどうまくやらなければ、強い引き締め政策はとれないと考えまして、その準備を一、二カ月しておったのが実際でございまして、大体日銀とのいろいろのやり方についても話が済んで、引き締めをやっても中小企業への貸出比率をある程度落とさなくてやっていけるだろうというような指導を回しておいてから、あの措置をとったのが、去年の実情でございます。おそいようですが、それをやったことが今でもよかったのじゃないか、突然やったらもっと大きい混乱が金融界にきたのじゃないか。去年いろいろ言われておりましても、中小企業対策にしましても、株式市場状況を見ましても、金融状況を見ましても、去年の暮れはあの程度で切り抜けて越年した。そうして、中小企業への貸出比率が、あれだけのきつい金融引き締めのときにおいても少しも落ちないで、三一%前後を保ったということは、相当その前の事前対策が成功しておったんだ、自分自身はそう思っております。しかし、もっと早く政府がやったらどういう姿になったか、これははっきりしませんで、実験のきかない問題ですからどうとも言えませんが、私は、そういう意味で、摩擦をなくするためのやり方としてはそんなに失敗じゃなかったというふうに今考えております。そうしますと、では政府が悪かったか、民間が悪かったかという今御質問の問題が出て参りましょうが、六月に行政指導に乗り出したときは、自由主義経済において、人の会社がやった計画政府が押える権限が一体あるのか、自分たちはきめたことをやりますと言って、少しも聞かないで強気を示した民間にも責任はある。自主調整態勢というものが出ていなかった。これでは仕方がないといってわれわれが金融引き締めの強い決意をしたところがはたして自主調整の形が現われてきた。これはもう十月過ぎてからこういう現象が出てきたということは事実だと思います。また増資調整においてもそうでございまして、株式市場の安定ということをさせるのには、やはり大企業増資が一番悪い時期に集中する、これを避けなければ市場への圧迫が多くて不安が出てきますから、政府行政指導じゃなくて、この増資繰り延べの問題にまで、私どもが立ち入りましたら、これについてすら経団連からえらい問題があって、政府にやられて調整されるとは何だ、こういうものは受けるべきではないとか、一体政府がこういうところに出てくること自身が困るのだというので議論が起こったことも御承知だと思いますが、そういうところから見たら、この自主的な調整という態勢も十分整っていたとは言えません。私はやはり政府にも落度はあるでしょうが、民間にも事態の認識に十分でなかったということもあると思いますので、これを今論議しても始まりませんから、問題はこれから民間政府が、どううまく協調してこの事態を切り抜けるかということに骨折ればいいのであって、過去のことを言っても仕方がないと思いますが、政府だけの責任とは、私思っておりません。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(観)委員 水田大蔵大臣ばかり責める意思はありませんが、大体池田さん自身経済のことはおれにまかせておけというような強気一点で、先ほども大蔵大臣から強気で受け付けなかったと言われますけれども、強気で受け付けない原因を作ったのは政府だと思います。政府がそういうことをやるからこれは受け付けないので、昨年の夏、七、八月ごろに山際総裁がここへ参考人として来られたときにも、われわれは質問いたしました。やはり日銀はさすがに良心的で、政府よりは自信を持っておられたのか、その当時からすでに警戒警報を出しておられました。ところが池田さん自身があの強気でやられて、ついにこういうような結果を招いたと思いますが、しかしこれは少なくとも国民にばかり責任を転嫁して、そうして政府は何にも責任をとらぬというようなことは非常に片手落ちだと私は思います。しかも、昨年の大暴落をずっと平均しますと、三割一分くらい、大体金にすると二兆億くらいの損害になったと思いますが、少なくともそれがために自殺した人もあります。それからそのためにこれから証券界に入っちゃいけないということで、非常に警戒警報が出ておりまして、ついつい証券界は沈静を来たしております。今度の相場の性格はこれまでの暴落とは違っておる、少なくとも急激に政府がこういうことをやったので、非常に暴落したというようなことを、日興証券の社長の吉野議長が言っておられますけれども、私はこういうところに非常に原因があるのだ、早くから政府は警戒した警戒したと言うけれども、去年の七月ごろにも大蔵委員会で問題になりました。ところが知らぬ顔の半兵衛で、何言っている、われわれについてこいというようなことになっておりまして、九月になってから急に国際収支赤字がどんどん出てきたので、どうにもこうにも仕方がないので、急激にああいう金融措置をとられたと思うのです。しかし、政府がとろうと思えば、ここに買いオペの問題もありますし、もう少し早く手を打てば、私はこういうような醜態はなかったと考えます。私は株を持っておりませんけれども、いわゆる投資家が一千万人にも及ぶといわれております。そういう点でこのごろ萎縮してしまって、証券界は水を打ったような静けさであります。そういう点で政府はどういう方法で現在の証券界を明るい面に持っていかれるのか、その対策があるかどうか、これをまず伺いたいと思います。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 対策といいましても、問題は政府の今とっている政策がどういうふうに響いて浸透してきて、経済がどういうふうになりそうだという見込みが得られることが、私は一番重大だと考えております。そうして長期的に見て日本の経済が安定的な成長を遂げられるという経済の見通しをはっきり政府が与えることが必要でございまして、これが国民によってそういう見通しがされるという事態になれば証券界にそう心配はない。問題は短期の投機をやってどうこうしようという人の責任はこれは持てません。元来、長期的な採算の線に沿って大衆が投資されるという態度で投資をされる場合には、自分で将来の見通しはいいんだという確信のもとに投資されるという人にとっては、そう動揺があるわけではないでしょうし、この間のようなときでも、そういう長期的な採算に立って投資している一般投資大衆は現に株を売っていなかったということは、まだ日本経済の先についての信用を持っておったからだと私は思いますが、この信用がさらに投資者に持たれるような政策政府がとっていく、現にそういう状態が出てくるというようなことをすることがやはり根本問題であって、個々のいろいろな問題はこれは自主的な問題ですが、大きい目で、政府経済政策の効果を着実に早く出して、またこれがそうなってきそうだという確信と自信を国民に与えるということにここ専念すべき時期だろうと考えております。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(観)委員 われわれは、池田内閣高度成長政策と、それから所得倍増計画は、これは非常に無理な理論であるということは現実にわかってきたと思うのです。だから政府は今年度予算の見積もりでも初めの所定の予想をだいぶ下回ったような傾向を持ってきました。こういう点は、私はわれわれ野党が弱いからといって許されない。むろんそのくらいの失敗をすれば内閣が辞職して野党が政府にかわってやるべきですけれども、残念ながら社会党は百四十五名くらいの党でありますから、そういう態勢はできません。これは日本国民にとって非常に不幸なことだと思いますけれども、現実はやむを得ないと思うのです。そこで、こういうものはみんな関連がありますが、この所得倍増をやるということを言いながら、それじゃ物価はどうなるかということの見通しかなかった。所得が倍増になれば、これは物価にはね返るというくらいのことはわかっていそうなものだけれども、大体下村治君の机上のプランでは現実はなかなかそうはいかない。池田さんが今まで御承知のように大蔵大臣をやり、通産大臣をやり、今度首相になられて、三度もこれは失敗している。今まで一回や二回ではわからなかったけれども、今度は総理大臣だから三度目の正直ということで、国民はこれはある点まで信用したのではないかと思われる節もあるわけであります。私はその点で水田大蔵大臣がどうお考えになっておったか知りませんけれども、少なくともこういう点で一番ヴィヴィッドに、一番ナーヴァスに感ずるような証券界が、こういうような暴落を来たしたということは、やはりこれは池田さんの高度成長計画、所得倍増計画失敗の半面であって、金融引き締めがこういうことになったと思います。そこで、これはきょうの新聞に出ておりましたけれども大蔵大臣は八幡、富士、日立、それから東芝なんかのいわゆる増資の払い込みに対して、これはいかぬということでいろいろ問題になっておりますが、増資を延ばせというような政策をとっておられると聞いております。こういうようなことによって株式市場の操作がうまくいくかどうか、あるいは増資計画に対してどういうお考えを持っておられるか、その点について政府の所懐を伺いたいと思います。
  14. 水田三喜男

    水田国務大臣 昨年暮れの増資調整が一つの機会になりまして、急速に民間の協調態勢というものが出て参りました。そしてあの三社の増資繰り延べを中心にして自主的な調整が進んでおりまして、その三社以外の全般の調整も今行なわれておりますので、今のところでは増資調整がうまくいっている。今予定される程度増資なら、これはこの一−三月の期間に混乱なく消化できる額であるし、その点からの問題はないと思っています。問題は、これはずらせてありますので、四月−六月に問題が延びておりますが、政府指導を待たなくても民間金融界、事業界で十分自主的に調整をとって、無理を起こさないようなことを自分自身でやるという態勢になって、すでに関係者が集まってそういう申し合わせもして、そういう自主調整に入っておりますから、私は今後去年におけるような事態は見られないで、非常にこういう点では自主的な調整強化してうまくいくだろうというふうに予想しております。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(観)委員 それから、問題になっておりました投信組み入れの公社債の資金化についての問題でありますが、業界は一月から三月の第四・四半期に、業者手持ちの生命保険の社債などを買いオペに希望して、債券の流通市場発展を望んでいるようでございますが、こういう点について政府はどういうことをお考えになっておるのか、これは宮川理財局長に伺っておきたいと思います。
  16. 有吉正

    ○有吉説明員 投資信託に組み入れられておりますところの公社債は相当な額に達しておりまして、十二月の末で約三千億円に達しているところなんでございます。ところが現在のところ、遺憾ながら公社債の流通市場というものが確立しておりませんために、資金化に困難を来たしているということは御指摘の通りでございます。特に公社債投資信託の場合におきましては、最近の金融情勢を反映いたしまして、解約率がある程度高くなっておりまして、その資金化が問題となっておるのでございます。この投信組み入れの公社債の流動化という問題につきましては、その実施の必要性なりあるいは方法ということにつきまして、目下関係当局と慎重に協議、検討中でございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから、これは今度いろいろ問題が起きたことでありますが、現在株式に投資している人は大体一千万人だと言われております。自分の生命に次いで財産が大事でありますから、こういうような重要な問題について——これは銀行は御承知のように許可制、免許制になっておりますが、証券業者はそういうふうになっておりません。従って現在のような野放図なことをやっていけば、非常にいろいろな弊害が起きると思うのです。まだ最近は証券業者が倒れるようなところは少ないけれども、私は少なくともこのままで行けば、二月、三月の間に相当そういうような大きな問題が起きるのではないかと思います。そういう点で政府は、この証券業者の免許制なんかの問題を銀行と同じような取り扱いをする意思があるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 これはいつも問題がございまして、われわれも十分この問題は検討しておりますが、なかなかむずかしいことで、ああいう形で発足したものをここで急に免許制に切りかえるということについてのいい点悪い点というものはたくさんございますので、将来これを許可制にすべきだという結論は今のところまだついておりません。しかし現実には届出制によって業務ができる証券業者でございましても、たとえば有価証券の運用頂かりというような兼営の業務、累積投資業務というようなそういうようなものについては、投資者保護の立場から大蔵大臣の許可がなければやれないというふうに、内容の問題について、許可によってでなければやらせないという部面も非常にたくさんございますので、実質的にはもう許可制度のよさ、必要性というものは取り入れられているという実情もございますから、当面今のような方法でやっていってもいいのじゃないかと今のところは考えております。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 投資家保護ということは非常に重要なことでありまして、私ども金融界に直接関係はありませんけれども、今度の暴落によっていろいろな方面に波及したことは事実であります。昨年の九月の暴落の時期からその後の状況はどういうふうになっておるのか、これは事務当局から、大まかでけっこうでありますから承りたいと思います。
  20. 有吉正

    ○有吉説明員 先ほど大臣からもお答えいたしましたように、昨年の年初から逐次株価は上騰して参りました。七月の十八日をピークといたしまして、その後下落の基調をたどった次第でございます。十月に至りまして一時持ち直った時期もございましたが、十二月十九日を底にいたしまして、ダウで申しますと千二百五十円台になったわけでございます。その後二十日過ぎから漸次漸騰いたしまして、一時千五百円台をつけ、昨日千四百九十八円という状態になったわけでございます。これは東京証券取引所の第一部のダウでございます。なお第二部は十月二日から発足いたしまして、ここにおきましてもやはり相当下げたのでございますが、その後におきまして反騰に転じて、現在に至っております。それから取引高につきましては、昨年の四月におきまして一億五千万株を算するという状況になったのでございますが、その後一億株台が続きまして、七−八月以降漸次取引高は減少を来たしまして、六、七千万株というような状況が続いたのであります。本年の一月に至りまして日々取引高は一億株をこえます。ときには一億五、六千万株に達しているという状況であります。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後に大蔵大臣に二、三点伺っておきたいと思います。  今度の金融引き締めで一番大きな弊害を受けたものは中小企業、次いで証券界しわ寄せが非常に強くなってきたと思います。こういう点で今後どういう処置をとられるのか、このままにしておかれるのかどうかということが第一点。  それから証券界のような非常に経済の変動を早く受けるようなところは、これを大蔵省の理財局の一部に置いておられますけれども、私はこれは証券局のようなものを置いて、そしてこういう非常に重要な、株の変動によって一千万の人が影響を受けるような問題については、政府みずからが率先して、そういうような調査あるいは証券が暴騰したり暴落するような弊害がないような施策をとられる意思があるのかどうかということが第二点でございます。  第三点は、少なくともこの三月ころは日本の経済の危機と言われております。おそらくそういう点で、いろいろの問題の中で、私たちはこの三月危機がのがれられるかどうかということは、政府楽観しておられますけれども、もちろん民間は必ずしもそう楽観はしておりません。そういう点でこのままの処置をして進められるのかどうか、この三点を伺いたいと思います。
  22. 水田三喜男

    水田国務大臣 さっき申しましたように、しわ寄せ中小企業に非常に多く及んだということについての見方、私の方は中小企業への及び方を最小限に食いとめたというふうに考えております。中小企業の実態は、態様は非常にまちまちでありますので、一がいに申せませんが、去年とったような措置によって、一部の中小企業はとにかく何とか切り抜けることができたという状態でございますが、あの中で一番やはりしわ寄せをこうむったものは、同じ中小企業のうちでもむしろ大企業の系列下にある中小企業が実質的には私は一番苦しかったのじゃないかという気がしております。従って、大きい企業に非常に去年金が窮屈だった、今でもそうですが、窮屈だったということは、下請けに支払いが悪い、長期の手形を出すというようなことが行なわれたので、その部門の中小企業が案外一番つらい思いをしているというふうにも考えられますので、私はこの一−三月においては、いわゆる中小企業金融対策は従来通りやって、必要なら資金運用部資金からのめんどうを適当に見るということと、去年やったようなオペレーションもさらにやるというようなことで対処するし、大企業の系列化にある中小企業に対しては、やはり貸し出しという方法一本じゃなくて、日銀オペレーションということをやることによって、ああいう方式を通ずる資金を出すということによって、これを見るよりほか仕方がないと思っております。同じ中小企業対策でも対策やり方がそれぞれあると思いますので、昨年の経験をもとにしてこの一月から三月までの期間においては、特に今度はそういう点に注意した金融対策が必要だろうと思っております。  証券行政につきましては、おっしゃられるようにいろいろの問題がございますので御承知のように今度は大蔵省の中にも証券部というものを新設することにいたしました。これによっていろいろな指導強化をはかって参りたいと考えております。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ質問したいことがありますが、きょうは大蔵大臣の時間もありますし、同僚委員からもいろいろ質問が出ると思いますが、少なくとも今度の予算の問題にからまって、いろいろの問題が起きますので、いずれあらためてこの間の問題は事務当局から絶えず伺うことにして、私の質問はこれで終わります。
  24. 小川平二

  25. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私は最初に賃金の問題についてお尋ねしたいと思います。  これは先ほどの総理の施政方針演説並びに大蔵大臣財政演説を聞いておりまして、高度成長政策はその基調として続けていく。そのテンポはこの前の発表によりますと、成長率を名目的にも実質的にも五・四%に押えていくということはありますけれども、やはり昨年と同じように極端な設備投資を押えるというようなことは勢いできなかろうと思います。ある程度抑制策はできましても、やはり設備投資によりまして需要を作って、それに見合う市場を拡大していくという形をことしも発展させていかざるを得ないのじゃないかと思います。その中で、国民の所得から出てくる需要と輸出による需要を作っていくという面で、国民の需要を作るためには、勢い賃金についても政府としてはある程度の考慮を払わなければならぬと思うのでありますが、本会議におきますわが党の質問に答えられて、総理もまた大蔵大臣も大体適正な賃金あるいは生産に見合う賃金というようなことで、日経連の賃金ストップ、これを裏返しにしたような答弁をされておるのでありますけれども、この賃金に対する考え方についてお聞かせを願いたいと思うのであります。
  26. 水田三喜男

    水田国務大臣 賃金はどうも専門家じゃありませんけれども、要するに、生産性というものはさらにこれは伸びていくと思うし、この生産性を吸収し得る賃金というものは当然上がっていいものでございますし、今日本経済が全然賃金を上げられないような状態で進んでいるわけじゃございません。まだ生産性の向上という過程を今どんどん踏んでおる最中でございますから、それに伴った賃金の適当な上がり方というものはあってしかるべきであるし、私どももまたこれ程度の賃金上昇はあるであろうということを基礎に、いろいろな計算をやり、施策もやっているような現状でございますので、賃金についてはストップさせるというようなことは考えませんが、いわゆるコスト・インフレの原因が賃金が上がり過ぎたためであるという状態にはならないような適正な賃金の値上がりというものを望んでいるということでございます。
  27. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次に国際収支の問題についてお伺いしたいと思います。  十九日の財政演説におきまして、とにかく本年度の下期までに国際収支改善する、均衡を保たせるための政策をとっていくけれども、その基調となるものは、内需抑制輸出振興にあるということで、輸出振興策について相当詳しく触れておられます。それをずっと見て参りますと、まず貿易振興について海外市場調査、それから国際見本市などの事業を一そう拡大するということと、日本輸出入銀行に対する財政資金を増類して、貸付規模を千二百五十億円として輸出の増強をはかる。また対外経済協力の面でも、対外経済協力基金に対して六十五億円を追加支出するというような政策を講じられるとともに、昨年来続けてこられたいわゆる公定歩合の引き上げを初めとする一連の景気調整策はあくまで続けていく。それから国民貯蓄意欲を増進するために預貯金の非課税限度、あるいは郵便貯金の預け入れ限度を五十万円などに引き上げ措置をはかる、それから国際通貨基金に関して、主要な工業国十カ国の要請であります国際通貨制度の安定のための六十億ドルの通貨借り入れについて日本も協力していく、こういうような措置国際収支のバランスをとるために具体的に打っていきたい、こういうことをその財政演説の中で述べておられるのでありますけれども、私はやはり日本側としてこういう措置をとると同時に、問題はその国際環境の変化に即応する十分な態勢をとっていかなければ、なかなか成果は期し得られないのじゃないか、こう思うのであります。その点でけさの新聞にも、通産省が当初の輸出入目標四十八億ドルについては、なかなか困難な見通しである、達成できないんじゃないか、こういう発表をいたしておるのであります。私たちがここで特にお尋ねしておきたいと思いますことは、昨年の当初におきましても、所得倍増計画を基本としてとにかく国際収支についても一応バランスをとっていくんだという大蔵大臣の説明がありました。その結果はどうなってきたかというような点で、私は、先ほど大蔵大臣の施政演説の中であげられた諸対策、こういったものではなかなかこのきびしい条件には適応できないんじゃないか、こう思うのであります。そういう意味で、その国際環境をシビアに見詰めていく、こういう点について、私は三つほど大蔵大臣にお尋ねしたいと思うのであります。  その第一は、EECの動向についてであります。第二段階に入りましたEEC、これに対して日本としてはどのような対処の仕方をしようとしておるのか、こういうことであります。一つの超国家的な経済機構というものができ上がって、その中で日本は取り残されないのか、特別な手を打たなくてもこれでいいのかという問題であります。まずこの点について、大蔵大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  28. 水田三喜男

    水田国務大臣 EECとは今後今以上の緊密な連絡をとって、必要であると見たら必要な手段をとらなければならないし、従って関税の問題においても、日本がEECとほんとうの緊密な関係を保つというためには、調整策もこれから考えなければならぬという必要性も出てくるでしょうし、アメリカもそういう方向に行っていますが、われわれもEEC以外の各国と十分連絡をとって、EECとの関係を緊密にするという方向はどうしても今年とらざるを得ない政策だろうと考えております。
  29. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私がお尋ねいたしておりますのは、去る二十三日、たとえばフランスとの間に、今までの話し合いの結果、ある程度の前進した貿易取りきめができたことは御承知通りであります。しかし少なくともEEC内の傾向といたしまして、域内の問題については関税障壁をなくしていく、その他農業の問題にいたしましても、あるいは生産品の輸送問題にいたしましても、あらゆる障害を取り除いていって、一つの超国家的な機構にしていこうという努力はなされておりますけれども、しかし事、域外の問題に対しては、これはまた非常に現実に即応したといいますか、なかなか厳格な態度をもって臨んでおるようであります。たとえば、ついせんだっても、西ドイツ、フランス、イタリア三国の間で、西独から出されましたグレムゼ報告について検討されて、日本製のミシンの締め出しをねらって、そのための混合関税を検討するというような事態で、むしろEEC内の状況とはまるっきり逆な方向で問題が検討されておる。こういう状況の中で、EECとの接近をどのようにしてはかっていくかという点については、その事態に応じていろいろ善処していきたいというようなイージーな考えではなかなか問題は解決しないのじゃないかと思うのであります。フランスは、今申し上げましたように、今度の貿易協定である程度改善を見せましたけれども、その他のイタリアなり、あるいはイギリスなり、ほとんどのEEC加盟国が三十五条の援用をやっておる。とにかく日本製品についてはこれを徹底的に締め出していこうという空気というものは、なかなか改まっていないのであります。ことし政府が立てられました輸出の目標を達成する、それについてはただ単に四十八億ドルだ、四十七億ドルだというめくら勘定じゃなくして、やはり一つ一つの国々について、これは何%伸ばしていくのだ、そのためにはこういう基礎によるのだということがあって、初めて目標というものは定まると思うのであります。ところが、今申し上げましたEECにおいてさえそういうきびしい状況にあるのに、これに対して具体的にどのような手を打たれようとしておるか。経済閣僚の一人として、当然これは明らかにしておいていただかなければ、私たちは単に国際収支均衡を今度の下期にははからせるようにめどを立てておるのだとおっしゃっても、それはから念仏にすぎないとしか私たちには受け取れませんので、その点を明瞭にしていただきたいと思うのであります。
  30. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府としては、共同体と直接の接触を強化する——具体的に交渉に入る事項も持って、今交渉に入ろうとしている問題もございますが、まず直接的な接触の強化ということと、もう一つは、域外の国が十分緊密な連絡をしてこれに当たるということが必要でございますので、特に今日本としては、この問題についてはアメリカがいろいろ欧州のEEC諸国とやっておられるようだが、これは単独にやられては困る、日本と十分相談の上でやってもらいたい、こういう点は日本はこういう考えだからその点はというようなことで、このEEC対策を日米両国で、さらにカナダそのほか域外の国を加えたところの相談というようなものも始めておる状況でございまして、直接の接触を強くするということと、そうじゃなくて域外諸国との共同対策をやるというような形で、今いろいろのことを考慮しておりますので、この程度で、そういう方向をわれわれはさらに今年中は強化して対策を立てるという方向でいきたいと思います。
  31. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 そのアメリカとの問題についてはあとでまたお尋ねを申し上げたいと思います。今度の互恵通商協定の改定がありますので、それに関連して日本がEECとの問題でどういう立場に置かれるかという点についてはあとでお尋ねをいたしますが、第二にお尋ねをしたいのは、東南アジアとの関連についてであります。政府もこの点については、さきに池田総理が東南アジアの諸国を訪問され、また今度は対外経済協力基金の出資を増額するとか、いろいろな点を考慮しておられるようでありまするけれども、はたして今まで打たれたような手でこれら東南アジア諸国に対する輸出が伸びるかという問題であります。政府は当然、EEC諸国あるいは東南アジアあるいはアメリカ、これらの一つ一つの国に対して、先ほども申し上げましたように、輸出の伸びを期待しない限り当初の目標は達成されないのでありますから、私は一つ一つ具体的にお伺いしていくのでありますが、東南アジアの国国に対しましては、大体輸出が一九六0年で八十五億九千六百万ドルという工合になっております。そこで問題は、この東南アジアの国々に対して、この前池田総理の答弁によりますと、一つの共同市場的な方向へ、これは困難であるけれども持っていきたい、こういうことも答弁しておられました。はたして、私は先ほど申し上げましたことし巨億くらいの基金を準備することによって、これらの国々が日本に期待するような輸出が可能になるかどうか。この点について、少なくとも東南アジアの国々は資金が不足しておる。しかもその産業形態というのは、工業化は進めておりましてもなかなかまだまだ第一次産業的なもので、ほんとの意味での工業国とみなされるようなところはほとんどない。こういう状況の中で、しかも第一次産業の農産物等についても、輸出については頭打ちの状況にあるのに、日本との貿易だけが特に伸びていく要素というようなものについては考えられない。しかも今申し上げますように、日本とこれらの国々とはその経済状態というものが非常に大きな性格の相違を持っておる。これが一つの共同市場としてまとまるというようなことになると、私はEECの各国との場合とは非常に違うと思うのであります。そういう中で、この東南アジアの諸国について輸出が伸びていく可能性というようなものを政府はどのような面から見ておられるのか、この点についてもお聞かせを願いたいと思うのであります。
  32. 水田三喜男

    水田国務大臣 東南アジアへの伸びが非常に鈍化した、そうしてその反面欧州諸国への伸びが割合によかったというのが去年の傾向であろうと思います。ところがこの二、三カ月の信用状の状態を見ますと、ここで北米と東南アジアへの貿易が非常に伸びてきているというのが一つの特徴になっておりますので、今の様子でいくんでしたら、ことしは東南アジア貿易は私はある程度伸びる方向へいくんじゃないかというような予想を今持っております。そこで、輸出の面で、東南アジアが全体の市場として非常によくなってきたかどうかということについては、いろいろ問題があろうと思います。またこれを援助してよくするために、日本がそれぞれの国と二国間協定のような形の援助をやるだけでは、とても目的を達することはできません。やはり国際機構というものを通じての共同の援助というような方向が、アジアに対してはもっと強化されなければ、東南アジアの貿易というものの速度は進まないというふうに思っておりますので、そういう方向への援助、国際機構の中へ入って、日本も力に応じて分担し得る最高の分担をやって、この開発に協力しようという方向で今私どもはやっておりますが、これはいずれにしろ、ことしは相当各国のそういう方向も強化されて進むと思いますので、それによって東南アジアの開発は、昨年に見られたよりはことしはもっといい方向へ進むのではないかと思います。従って従来通りの貿易努力を一応やっておる程度においても、ことしはある程度期待される年ではないかと私は思っております。
  33. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 大蔵大臣の答弁をお伺いいたしておりますと、非常に楽観的なんですけれども、私たちはそういった楽観的なことでは、先ほど申し上げたような意味で、輸出あるいは輸入の目標が達成できるとはとても考えられないのです。たとえば韓国に対しれ戦後の援助が一人当たり九十ドルくらいあるのに対して、東南アジアに対しては一人当たりにすると大体五、六ドルしかなされていない。しかも九十ドルなされたその韓国でさえああいった状況にある。確かに経済援助は必要でしょう。やらなければならないことです。がしかし、ここで問題にしておるのは、日本との貿易が飛躍的に伸びていく条件というもの、要因というものがあるかどうかという視点からであります。そういう点で、今の大蔵大臣の御答弁では、東南アジアに対しましてもEECの諸国と同じように、どうしても大きな期待は持てないのじゃないか、これは水かけ論といえばそれまでのことでありますけれども、私はそう簡単に、二、三年から四、五年で東南アジア諸国の経済機構がずっと変わってきて、われわれの期待するような貿易の条件を整えてくるという工合には考えられないわけです。その意味でも、東南アジアに対しましても私どもは非常に悲観的にならざるを得ないわけであります。先ほどの御答弁の中で、北米その他についてある程度の伸びが期待されるからというお話でありましたけれども、はたしてたとえば北米のアメリカに対しまして相当の伸びが期待できるかという問題についても、これまた私たちはどうも大蔵大臣のおっしゃるように、すなおに、ああそうですかというわけには参らない。アメリカの景気が退潮期に入っておることは御承知通りでありまして一昨年にしても昨年にしても、御承知のような結果を招来しております。大蔵大臣は今度の財政演説の中で、アメリカの景気上昇という点について触れられておりますけれども、まずアメリカは景気上昇の形を整えてきたという根拠についてお聞かせを願いたいと思います。
  34. 水田三喜男

    水田国務大臣 東南アジアがEEC程度に期待できるかというお話でしたが、EECの貿易というものは、日本の貿易の中で非常に比重の小さい、軽いものに今なっておりまして、売り先の大きい地域は東南アジアでございます。その東南アジアへの伸び方が去年非常に鈍化したが、ことし後年期になってきまして、今信用状ベースに現われてくる状態から見ますと、東南アジアへ今輸出の伸びが見えてきたということをさっき申しただけでございまして、そういう傾向にあることは確かでございます。同時に北米に対してもそういう傾向が今見られる。欧州市場に対しては今度は鈍化が見られるというのが実際でございますが、北米に対する輸出は私はある程度伸びると思います。箱根会談のときもいろいろ話が出ました。日本に対する輸入制限がけしからぬということを私どもは申しましたが、輸入制限というものが一部にあっても、全体として伸びたらいいじゃないかということをアメリカは非常に強調したのです。と申しますのは、今年度のアメリカの輸入計画は、昨年より相当大きい数量の輸入を計画しておる。そうすると、一般にアメリカがそれだけ輸入増をやるとしますと、そのうちの大体何割かが当然日本からの輸入ということになってくると思いますが、そういう大まかな率から見ても、個々の日本品の制限運動があったにしても、全体として日本からの輸入が大きくなればそれでいいではないかというようなことを非常に向こうは主張しました。それは多くなればそれでいいが、しかし特定のものを、こういう制限運動をされては困るんだということで、私どもは非常に抗議して、この問題でずいぶん折衝いたしましたが、全体としての輸入増ということだけは保証できるというようなことまであの当時向こうは言いました。今見ると、そういう傾向は確かにこの信用状から判断しても見られるという傾向になってきまして、たとえばこの十二月の日本の輸出四億四千万というようなのは、戦後初めての信用状における最高の輸出高でございますが、これが今後どういうふうにいくか、これはまだ三月ごろまでの様子を見ないと、私どもははっきりしたことを申せませんが、その中に占める北米への輸出というものが相当多く伸びているということははっきりしていますし、この傾向が二、三カ月続くというようなことでしたら、全体としてアメリカへの輸出はことし相当伸びるということは、大体言えるのじゃないかと思っています。
  35. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 非常にスムーズに伸びていくかのような御答弁なんですが、先ほどお伺いいたしましたEECの問題と関連いたしまして、アメリカは互恵通商協定法の改正をいたしまして、危険点などの保護条項を残す、あるいは国内産業の助成措置を講ずるというようなことも、これに関連して言っておりまするから、今までもよくあったことでありまするけれども、その結果は、対日輸入制限というような措置に出てくることも当然の結果として予想される。これは私が申し上げるだけじゃなくして、産業界の人たちも、この点について非常な危機感を抱いております。またそれを裏づけるかのように、一月二十五日には、トレジスという次官補代理が、日本からの輸入の国内産業に及ぼす影響を考慮して、それに対する何らかの措置を講じなきゃならぬというような言明をしたことが新聞に報じられております。こういった条件の中で、今大蔵大臣がおっしゃるような楽観論がどこから出てくるのか、これをいま一度くどいようですけれども、お聞かせを願いたいと思います。
  36. 水田三喜男

    水田国務大臣 決して楽観論を言っておるわけではございませんで、一四・六%の伸びということは容易なことではございません。世界貿易の伸びでさえが六、七%というときに、日本が一四%以上の輸出増を期待しようということは容易なことではございません。決して楽観しているわけではございませんが、しかし私どもはどうしてもことしこれだけはやりたいと思っておりますが、ではどこで可能かというようなことを考えますと、過去こういう事態があったときのその後の伸び方を見ましても、一四%が今不可能であるということは言えないのでございますし、努力すればやれるということは言えるでしょうし、じゃどうして伸ばしたらいいかという問題になりますと、やはりアメリカの動向というものを十分判断してかからなければなりません。この間アメリカ大使が大阪へ行ったときくどいように力説していましたが、ある程度私はああいうことも言えるんじゃないか。個々の制限が非常に大きく響いてどうこうというのですが、全体として日米貿易がふえるということは可能であって、またそうしようと向こうも思っているのだ、問題になったそれは別としても、そのほかで相当数量伸びるというようなことは十分考えているので、ただ一つ二つの制限運動をあまり神経質に大きく騒いでもらいたくないというようなことを言っていましたが、今私どもが向こうの当局といろいろやっておる過程から見ましても、私はこれは制限運動はできるだけやめてもらうことは努力しますし、これはやりますが、そうでない、全体としての日米貿易の伸びる可能性というものは、私はある程度あると今思っておりますので、この方向でむろん努力するつもりでいますが、これが楽観論で全然ないんだなんという、そういう今様子ではございません。
  37. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 やはり昨年の初期において、池田総理も大蔵大臣もそういうことをおっしゃったわけなんです。ただ問題は、確かにそれは努力目標だからかっきり四十八億ドルあるいは四十七億ドルに輸出がならなければならないということを私は申し上げているのではなくして、その努力目標に近づく、今大蔵大臣が言明されたように、努力すればそこまでいくんだというめどについては、ある程度確かな根拠がなければいかぬと思うのであります。それについて私は先ほどEECの問題、東南アジアの問題あるいは北米の問題についてお伺いいたしましたけれども、確たる要因はなくして、ただ努力したいというようなことをおっしゃっておるのだけれども、先ほど私が申し上げましたように条件というもの、国際環境というものはもっともっときびしくなりつつあるのが現状で、楽観的な要因というのはどこにも出てきていない。こういう状況の中で、努力目標だということで、ただ——この前、和田さんが風船売りと言っていましたけれども、糸が切れた風船を上げておったって、これは国民のそれについての努力意欲というものは全然わいてきませんし、何ら目標というような筋合いのもんじゃなかろうかと思うのであります。  それではいま少し具体的にお伺いいたしますけれども、今度のこの互恵通商協定の改正に際して、日本政府としては、世界の孤児になろうとしておるときに、どのような手だてをアメリカに要請されておるのか、それをお聞かせ願いたいと思います。
  38. 水田三喜男

    水田国務大臣 民間の業界を集めた輸出会議が開かれましたが、そのとき通産省がどうしても日本は今年度の目標として五十億ドルの輸出をしたいということでございましたが、これは一応業界の専門家の間でも十分吟味いたしまして、いろいろやって五十億ドルはとにかくむずかしい、これは実際にはある程度もう不可能といってもいいだろうというのが全体の意見でございました。ところが今度は反対に、ここまではどうやっても一応努力していけるのだという線は四十五億ドル、これは問題なく今年度持っていける自信があるということでございまして、もしこの国をあげての努力というようなことで、本腰になって民間政府がやったら、じゃ五十億ドルは無理であっても、どこまでかといういろいろな吟味をした結果が、四十七億ドル、これだけは絶対に確保したいということで落ちついたのが四十七億ドルの目標ですが、この過程を通じまして、われわれが、これは全く不可能だとか楽観だとかいろいろ言われますが、楽観とか不可能と言われる幅というものはわずか一億幾ら、一、二億ドルの問題でございますので、これはほんとうに私どもがやるつもりで、これからいろいろな措置をとるということをしましたら、私はそう不可能という数字ではなくて、それくらいの努力ができないというのが、またおかしいようなもので、私は、特にこの目標を楽観的なものだとは思っておりません。むしろ私は、四十八億ドルの輸入ということ、この方が自信がございません。四十八億ドルでとまってくれれば、これは非常にいい状態でございますが、四十八億ドルにとめるというためには、生産があれだけの調整をやっておっても、まだ落ちついていないということが気になることでございまして、十二月から生産が横ばいになっていくという状態が出てきましたら、私は、ことしの経済の全体の伸び率が、五、六%程度に最後におさまるということになる、そうなれば、四十八億ドルの輸入でもりっぱにことしはしのげるという見通しがつきますが、生産が依然としてまだ上がっているという状態では、この四十八億ドルの輸入でまかなえるかどうかというのがむずかしい問題でございますので、これを非常に心配しておりましたが、近く集計される十二月の生産が、ようやく十一月をピークに鈍化してきた、まだ私数字を見ておりませんが、そういう傾向が出てきたということを聞いております。もし十二月が生産が鈍化してきておるという状態で、これが一、二、三といくようでしたら、われわれの最初からの目標、一応見通しの線を今たどっているということが言えますので、そうなると、四十八億ドルの輸入で何とかやっていけるのじゃないかというようなことも考えられますが、今までのところ楽観していないのは、四十八億ドルの輸入の方がむしろ自信がなく、四十七億ドルがきつい、きついというのですが、この方は、われわれの努力によってある程度達成されるのじゃないかというふうに思っておりますので、私どもが・・(「甘い甘い」と呼ぶ者あり)甘い甘いと言われるのですが、甘いと言われるのでしたら、四十八億ドルで、ここまで伸びた日本の経済をそうダウンさせないでささえるために、そこらで済むかどうかという方に、むしろ甘さがあるといえばあると非難されてもいいと思うのですが、輸出は、私ども何とかやり遂げたいと思っております。
  39. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の大蔵大臣の御答弁とそれから私が申し上げたことを、ことしの末までしっかりお互いに記憶しておきたいと思います。  次にお伺いいたしたいと思いますことは、先ほども大蔵大臣の所信の表明の中で、アメリカの市中銀行あるいは輸出入銀行からの借款の問題について触れられたのですけれども、下期における国際収支均衡をなし遂げるのだとおっしゃる中での、この借款の占める性格についてお伺いをしたいと思うのであります。借り入れについては、これは短期のものでございますが、それについて将来どのようにしようとしておられるのか、この点についてお聞かせ願いたいと思います。
  40. 水田三喜男

    水田国務大臣 この見通しも、またなかなかむずかしい問題で、これはまだ自信のある見通しではございませんが、私どもは三月末の外貨保有を、この前の国会では、十四億四千万ドルくらい保有してこの年度を越えるというくらいになるだろうという見通しを持っておりました。まだはっきりわかりませんが、今のところで、ただ保有外貨という点から見ますと、十五億ドル以上はむろん持てる状態になると思いますが、かりに十五億四、五千万ドルという線になりはせぬかと見ますと、この中には米国の市中銀行から借りたものが二億ドル入っておりますから、それを引きますと、あのときの見通しが、やはり一億ドル前後狂っておったことになるのじゃないかと考えております。三十七年度の見通しは、御承知のように上半期は赤字であって、下半期均衡、そして年度を通じて一億ドルくらいの総合の赤ということを予定しておりますので、もう一億ドルくらい改善されないと、去年の見通しの通りの線にはならないという計算になろうと思います。いずれにしましても、去年の見通しから比べて一億ドルやそこら程度の見通しの狂いが出れば、その辺というような状態になるとするのでしたら、この外貨の問題は、そう心配しなくても切り抜ける状態になるというふうに思います。従って、今市中銀行から借りておりますが、この十一月から、短期資金ですから返さなければなりませんが、何もせずにおったら、今の見通しからいって、この二億ドルを返すといろことは、非常にむずかしいというふうに考えますので、私どもは用心のためにそういう事態を予想して、今すぐ、当面必要ではございませんが、IMFから借り入れの予約をしてある、こういう状態でございますので、この金を引き出すときは、こういうものの返済の必要が出てきたとき、なおそのときに、われわれの見込みよりも国際収支状態がよくいっておれば借りなくても済んで、この二億ドルを返す力があるという事態になるかもしれませんし、もしかりにそうでなくて、せいぜい見込み通り国際収支の回復状態だったとするのでしたら、これを引き出して支払いに充てれば済むというふうなことになります。いずれにしましても、今の見込みからいいますれば、外資の資金繰りの心配というものは、もう大体なくなっておると思います。問題は資金繰りじゃなくて、実際的に国際収支の回復がどういうふうになるかというのが問題でございますので、おそくともことしの下半期までには回復させる、そこで回復しても、上半期に大きい赤字を出して下半期から回復したのでは、やはり一年の総合赤字は大きいことでございますから、上半期の赤字を極度に少なくするような方向でいくことが望ましいと考えておりますが、今の見通しでいきますと、赤字幅がだんだんに狭まってきていることは確かでございますので、案外上半期の赤字は私どもが見込んだよりも小さいものになりはしないかとすら考えられますので、そこに小さくなるというと、また下半期の回復があるいはおくれるという事態にならぬとも限らないということを心配しておりますが、着実に今の政策をやっていくのでしたら、上半期の赤字を非常に小さくして、そうして下半期にほんとうの回復になるというところに持っていけるのじゃないか、またどうしてもそうさせなければいろいろな問題からなかなか大へんな問題になりますので、私どもはそういう意味でもうIMFの借り入れの取りきめをやったということは、これ以上の手が私どもありませんので、従って国際収支の問題については背水の陣を敷いて臨んでおるということでございますから、これも万全を期してもことしはそういう方向で政府は努力したいと思います。
  41. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 私の持ち時間が経過しましたので、最後に一点だけお伺いいたしたいと思います。少なくとも池田内閣が設定された所得倍増計画の大前提になるべきものは、物価が上昇しない、これが一つの大きな柱だっただろうと思います。ところが昨年度はその大前提がくずれたわけですけれども、本年度の物価抑制に対する政策というもの、これは昨年度にも増して非常に重要な課題だと思うのでありますが、藤山経済企画庁長官の財政経済演説の中では、ある程度の公共料金については考慮しなければならぬだろうというようなことが言われておる反面、大蔵省ではこの物価抑制について非常に熱意を示しておると伝えられておるのでありますけれども、具体的にはどのような方途を考えられておるのか、いわれておる物品税減税分をあるいは酒税の減税分をというようなことが伝えられておりますけれども、具体的にどのようなことを考慮しておられるのか、そして物価を抑制し得る自信を持っておられるのかどうか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  42. 水田三喜男

    水田国務大臣 この物価問題は、根本的にはやはりまず設備投資がどれだけ抑制できるか、行き過ぎというようなものがあって経済が伸び過ぎるという状態になってきたときには、この物価を下げるということはむずかしいのでございますから、まずこの経済の伸び過ぎがないようにということ、押えるということと、それからやはり何といっても通貨の安定ということが物価政策の基本でございますので、この点において健全財政というものをわれわれが守っていくということも大きい前提でございますので、今度の予算編成もそういう点を考えてやった、そういう物価の大もとに、前提になる基礎をしっかり固めておきながら、あとは個々のいろいろな対策に入るよりほかないと思いますが、保護対策としましては、企画庁からしばしばいわれておりますように、いろいろな季節的な問題は、流通過程のいろいろな改善とかいうようなものによって小さくするよりほかないでしょうし、便乗的なものは一切押えるということ、特にこういうときにきましたら、やはり生産性が非常に多く上がっておるものが少しも値が下がっていないという状況は、これは不合理でございますので、いろいろそこには原因があると思いますが、明らかに生産性の向上顕著だという部門の物資についての値下げ指導ということは政府としてやらなければならぬことだと思いますので、企画庁長官も今年は特にそういう面に骨を折ると言っておりますので、私どもも、政府としてはそういう点の努力を今年は十分したい、すべきであると思っております。まあ税制面から間接税減税をやるということによって国民のいろいろの物資が値段が下がることも、これは非常にいいことであると考えて、こういうときでありますから特に私どもは今度の減税において間接税に比重を置いた減税をやったわけでございますが、これが減税分だけ値段が下がらぬということになると、私どものねらいも効果がなくなったことになりますので、この点の指導を十分やって、少なくとも税金で下がった分だけは小売値段がはっきりそれだけ下がるという状態に必ずなるような指導をわれわれがするというような、いろいろな一連の対策——物価というものはどうせ一つの経済の集中的な表現でございますから、保護対策だけではいきませんで、総合的な対策で不当に上がることを抑えるということよりほかにないと思います。幸いに卸売物価というものははっきり下落の方向を示してきておりますので、これも一つの強味であって、それに伴って価格を上げないということもある程度われわれの努力によって効果は見られるものだろうと思っております。
  43. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今お話がありました、たとえば公共投資の問題等の関連、特に内需また輸出の伸び、そういったものとの関連と物価の問題等についても詳しくお伺いしたいと思うのでありますが、時間が参りましたので、ここでぜひ大蔵大臣にお願いしておきたいと存じますことは、委員長初め与党の理事の各位にもお願いしてありますけれども、少なくとも一週間に一回ぐらいは、予算委員会があります際におきましてもぜひ大蔵委員会にお越しをいただきまして、この基本的な諸問題について政府の所信を明らかにする機会をぜひ作っていただきますように、先ほども所信の表明で、ありましたけれども、このことを強く要望いたしまして、私の本日の質問は終わらしていただきます。
  44. 小川平二

  45. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 同僚の有馬君が触れられた諸問題と多少重複するかもしれませんが、この際大蔵大臣に二、三の点につきましてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  まずお伺いしたいのは、これは当委員会が歳入委員会ですから減税のことをお伺いしたいのであります。結論的には、国民の期待に反する程度減税しか予算案に盛り込め得なかったわけであります。このことは率直に遺憾千万であります。昨年の年初におきまして、直接税だけごくわずか減税した三十六年度減税を不当といたしまして、私は来たるべき三十七年度におきましては、減税は特に間接税において徹底的に取り上げるべきだということを申し上げまして、この私の要望に対しまして大蔵大臣も応諾せられたのであります。という理由は、直接税減税で救済し得ざる国民の階層は、六三・八%に上っておるわけでありまして、直接税に無縁の大衆を逆進性の強いところの大衆課税である酒、たばこあるいは砂糖等の収奪課税から解放すべきであるという主張であったわけであります。私は、この収奪課税からの解放は、誠実に行なわるべき大蔵大臣責任課題であると考えておったわけであります。ところで今回の減税は、そうした意向を盛りまして当初はスタートしたかのごとくでありますが、結果としては、わずかに酒税において減税の前進を見ただけでありまして、特にたばこ等の問題に対しまして一指も触れておらなかったことは、これは遺憾千万のことと申し上げざるを得ないのであります。結局大蔵大臣減税の基本的構えをどこに置かれたかという点に、私は今疑いを持っておるのであります。昨年の末蔵相にお会いして、このたばこ問題について減税がなされないのはどういうことなのかという話が出た際に、大蔵大臣は、実は減税ベースからでなく、減収ベースでものを考えたのだということでありまして、その意味がよくわからなかったのでありますが、具体的にたばこの減税というものは予算規模の上からできなかったという意味であったと私は判断したわけであります。従いまして、大蔵大臣減税は、減税の必要認識から発するものではなしに、経費との見合いで予算規模上これをやるかどうかをきめるという、減税を渇望し、税の不平等の是正を要望する大衆に対して、誠実な態度であったとは思われない節があるわけであります。その結果、あまり減税もやらず、しかも背伸びした、世間から疑惑視されるような大型予算を組み、しかも五・四%という成長率それ自体をかなり圧縮しながらも、なおかつその基底をなす輸出の伸展、輸入の抑制に自信のないところの大型予算ができたわけでありまして、まことに大蔵大臣減税に対する指導原理、それからもっと大きくは予算編成の指導原理というものに対して疑念なきを得ませんので、この際大蔵大臣の基本的構えにつきまして御所見をお漏らしいただきたいと思います。
  46. 水田三喜男

    水田国務大臣 政府は、過去ずいぶん減税をやってきましたが、これがそのときそのときの減税をやってきますと、どうしても税制の体系というものがくずれて、均衡のとれないものになってくるのはやむを得ないことでしょうし、現にそうなって来ましたので、今後国民負担を軽くする必要がある、大きい減税はやらなければならぬが、このやり方において体系的な減税をやって、そうして税制を体系的に整えるということをどうしてもやらなければならぬ。そういう目的から税制調査会ができ、三年間という期間を切ってこの仕事をやる調査会ができたのでございますから、できるだけこの調査会に研究してもらって、そこの答申を尊重して減税をやって、まず一応体系の整った税制を曲がりなりにも作り上げたいという考えで臨んでおりますので、そういう見地から検討された税制調査会の減税案は、大体その通りに今まで実施してきたつもりであります。  そこで、過去二年の減税もそういう観点から行なわれたものでございますが、本年は最後の年であって、そのときに残されたのが地方税との税源配分の問題、それから間接税と直接税との調整というような問題でございましたが、それを解決するのが今度の税制改革だと思って、そこを中心の減税案を今度の国会で御審議を願うというところまでこぎつけたわけでございますが、まだ検討し残しておる問題もたくさんございますので、これは今後の課題でございますが、突然一年だけ大きい減税をやるというようなことをしますと、また今までやったものとのバランスを失して、体系がこわれますので、そういう意味から見たら、私はことしの減税はちっとも小さくない、最後の仕上げとして相当大幅な減税だと思っております。もちろん税制それ自体として整ったものにしなければなりませんが、しかし体系を整えるからといって、国の財政需要を無視した減税というものがやれないことは当然でございます。それとの均衡調整というようなものは当然考えなければなりません。それで、今年度ももちろんそういう考慮はいたしましたが、しかし、財政需要が多いからそれを調整しようという意味で減税の幅を切ったというような事情は、今年度の問題にはございませんでした。たばことかそのほか、これは確かに減税すればするに越したことはないと思いますが、しかし外国のいろいろな税と比べてみまして、専売になっているたばこの税金の工合などは、日本はまだ決して高くないというのが実情でございますので、特に諸外国に比較して高くないというようなものであったら、この際の税制改革にこれをとらなくてもいいじゃないかというような考慮から——あるいは砂糖のようなものは、これは諸外国に比べて高いでしょう。日本より高い国はまだございますが、いずれにしても日本は高い方ですが、これは国内産業との関係で、そういういろいろな政治的な考慮、それからまた、かたがた各家庭で使う砂糖の量というようなもの等から見まして、その大きい負担ということもいえないという事情を考えて、今度の税制から省いた次第でございます。これは特に財政的な見地からやったわけではございませんで、今の現状から見てここまで手を触れなくても差しつかえないじゃないかということからこれは省きましたが、一応ここで今まで私ども考えた体系的な整備というようなものは、曲がりなりにも終わったような気がいたします。今後は、このバランスをくずさないで、この次の減税はどういうふうにやるのかというのが問題であろうと思いますが、三年前に私ども考えた方向の税制は、これで大かた目的通りにやったような気がしますので、その幅がそういう点から見た税制の幅であるといいますと、これは地方税と国税を合わせて千九百億以上と、二千億近い減税でございますので、今までかつてない減税の幅になっておりますし、私は今度の減税が非常に過小であるというふうには考えておりません。
  47. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 税調三年目の答申で完結する、そういう予定でおりましたことは私もよく了承しております。そのためにこそ大衆収奪の頂点をなすたばこの減税が今回ちょんにされたということに対しまして、不服であります。これは国民とともに不服であると申し上げていいと思います。  そこで、大蔵大臣はえこじにならずに、財政規模の上からこれは取り上げられなかったけれども、来年は跡始末としてたばこの減税あるいは砂糖の減税ということを真剣に考えていく、そういうお気持があるかどうか、その点をここで御表明願いたいのであります。  たばこは、たとえばいこいが五十円のうち三十二円十銭、ピースが四十円のうち二十六円八十七銭、光が三十円のうち十九円十銭、それから新生が四十円のうち二十七円六銭、このように、いずれも六五%ないし六七%です。総平均にいたしまして六六・四%が税金なんです。これはまさに大衆収奪の頂点をなすティピカルなものでありまして、こういうものはもうこれで済んでほうっておいていいということにはならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  48. 水田三喜男

    水田国務大臣 たばこの一番最高なのは七五%とか聞いておりますが、そこから見たら、まだ日本の六0%前後はそう高いともいえないかもしれませんが、しかしいずれにしろ、戦前五十何%になっておりますので、たばこの税金は戦前に比べても高いということは事実でございますので、これは適当な調整をしたいという考えを持っております。ことしもこの大衆たばこについて若干手を触れたいという考えも当初は持っておったことは確かでございますが、しかしたばこをここで一、二を不徹底にするよりも、これはやはり次の全体のたばこをどうするかの検討を一緒にすべきときがくるだろうからというので、個々にいじらなかったのでございますが、将来この調整考えたいと思っております。
  49. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ぜひそうしていただきたいのです。それで大体の目標を総平均で五0%くらいにするということで、年次計画でもいいと思います。ですからそういうことで、ぜひこの間接税というのは、直接税と間接税との見合いということよりは、日本の減税の恩恵に浴し得るか浴し得ないかという観点から見ますと、間接税減税によって恩典に浴し得る層の方が非常に多いのですから、そういう点で、これは三年度の税調の勧告もここで実現したというふうにお考えにならずに、ぜひ将来に向かって砂糖とかたばこのごとき大衆収奪のものは軽減するということで一つ邁進していただきたいことを希望いたしておきます。この間もいろいろ話をしたら、戦前エアーシップというたばこがありました。これはピースなんて名前をつけておって、六七%も収奪しておって、ピースではない、こればバトルシップと名前をかえた方がいい。五十円のいこいで三十二円十銭も収奪しておいて何のいこいぞ、これは火の車とでも改名した方がいい、そういう議論が出たほどでありますので、どうぞ一つ心して、たばこの減税は徹底的に今後進めていただきたい、かように重ねて要望しておきます。  それから次に、大蔵大臣は、予算の編成を終えて、顧みましてどういうふうにお感じになっておられるか。昨年暮れからとにかく引き締め政策に移ったわけです。そこで今回の予算は、相当圧縮したものになるであろうことを国民も期待しておったと思うのです。ところが出てきたものは相当大型予算であったわけでありますので、しかもこの大型予算のよってもって立つ基礎として国際収支改善、そういうことが前提になっているはずであります。従いまして、この大型予算を編成した大蔵大臣は、国際収支改善につきまして、決意と、それから具体的な施策があろうと思うのであります。同僚の有馬君からこの点につきまして大蔵大臣の意向を具体的な問題として聞かれましたけれども、あらためてその辺の所信をちょうだいしたいと思うのであります。
  50. 水田三喜男

    水田国務大臣 私はここの答弁じゃなくて、正直に言って、ことしの予算はあまり大型だと思っていない。財政経済にどういう刺激を与えるかというような問題は、結局予算の規模で判断するということは妥当でない、やはり予算の内容、運用方法、金融政策との関連、財源をどこに求めて、どういところに使うかというような問題、そういうものによつて判断さるべきものだと考えていますが、そういう点から見ますと、かりに今度減税ということがなかったとしますと、予算規模ははっきり二兆五千幾らになるでしょうし、二兆五千億になつて不健全かどうかということになりますと、とにかく見込み得る普通歳入によって、そうして必要な財政の役割を果たしていくということにおいては、これがそう不健全だということは言えないでしょうし、かりに二兆五千ということになっても、この三十六年度から比べたら多い増加ではございません。当初予算は三十六年度は御承知通りでございますが、それから自然増が三千億円以上見込まれるという状態になって一次、二次の補正をやっても、なおかつ相当の自然増収が剰余金として見込まれるという状態で、かりにこの見込まれる金額を入れて計算しますというと、三十六年度の決算から見ましたら、三十七年度予算規模は千何百億というわずかしかふえていないということになる規模でございますし、さっき申しましたような初年度一千億という大きい減税をやっただけ予算ワクは事実上縮小しておりますし、そういう点を考慮しますと、ことしの予算のワクがそう膨大だとは考えません。問題は、経済の伸び率の見通しとの食い違いがそこにございますが、これは必ずしも収入と経済の伸び率とは並行しているわけではございませんで、前年度経済情勢に基づいた税収というものは次の年にずれ込んでくる、いろいろそういう問題もございまして、必ずしもこれは一致しておりませんから、この伸び率だけで比較はできませんが、しかし心がまえとしては、そういう次年度において経済の伸び率がそう多くないということでしたら、予算の規模についても考慮が払われてしかるべきものでございます。そこで私どもは、今言ったような減税という考慮もいたしておりますし、予算の内容の中でも、すぐに消費になって出ていく経費じゃなくて、資金的なものも今度の予算の中には相当多く入っていますし、国債費その他を加えますと、一千億円以上のものはそういう資金的なものに予定されておりますので、そういう点を考えますと、これはやはりある程度景気調整的な考えを入れた予算であるということも言えると思います。  それから、当初繰り延べ予約とかいうことを新聞紙上伝えられましたが、あれは私どもにおいて熟しておった考え方ではございませんで、これは今の財政法から見ましたら非常に疑義のある問題で、そう簡単にできる方式ではないと私ども思っていますが、しかし、ああいう考え方は持ってもいい。どうしたらいいかと言いますれば、予算の執行においていろいろ使う時期のズレというようなこと、ずらすというような考えを持ってもいいのじゃないかと思います。そうだとしましたら、実際問題としては、上期にあまり金を使わないで、少しずつ下期にずらすのがいいということになるのですが、上期においてあまり金を使わぬ方がいいということでしたら、これは三十六年度予算補正とのからみ合いで、そういう考慮をここで払うことの方が一番効果的だろうというようなことを考え、いろいろなところから、今年度の補正予算はもう必要最小限度にとどめて、相当見込まれる自然増を後年度に繰り越す、こういう措置をとることが最も効果的だというふうに考えましてそういう措置をとったのでありますから、これを単に三十七年度だけの予算編成と見ないで、われわれの調整策は今現に進行しておるのですから、この今進行している三十六年度と三十七年度の二年度を合わせた財政政策というふうに考えてみましたら、おそらく景気調整的な考え——私どもはこの両年度で三千億円以上の考慮を予算編成の中で払っているということが言えましょうし、そういう点から見ますと、私は、今度の三十七年度のこの予算が非常に景気刺激的であって、国際収支が云々されているときに、方向を違えた予算の編成だというふうには今のところは考えておりません。もう相当の考慮が払われているというふうに思っております。
  51. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それでは、次の課題に移りたいと思います。  国際収支が十二月、一月の実績で多少輸出好転のきざしが見えているといわれております。けさほどの新聞にも通産省の発表がございます。しかし、この点は軌道に乗ったわけではないと思いますし、依然不安定であります。国際収支の見通しは、総じて暗いというのが一般の見方でございます。そこで、保有外貨の危機ということがみな心配されているわけであります。外貨そのものの保有危機突破のためには、アメリカの商業銀行からの借り入れや、先ほど言及されましたIMFからの借り入れ、こういうことでつじつまを合わせることはできると思いますが、実態は深刻であると私どもは見ているわけであります。こういう背景のもとに、日本の自由化政策は、つまり既定の計画のままこの十月以降九0%自由化するというこの計画は、そのまま推し進めていくつもりでおるのでありまするかどうか、お伺いいたします。
  52. 水田三喜男

    水田国務大臣 今のところは、別に政府は従来の方針を変更しようとは思っておりません。予定に従って、この十月までには九0%の自由化は達成したいという方向で今やっているわけであります。
  53. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 先ほど大蔵大臣は、四十七億ドルの輸出は大体達成できるだろう、それにはかなり困難なことはあっても、まだその点は大体見通しも立ち得る、ただし、輸入を四十八億ドルにとどめ得るかに対しては危惧を持っておるとおっしゃられたわけであります。そのことは、予見される十月以降自由化九0%になった場合、これは抑制がきかないではないかということを言外におっしゃられたことと思うのであります。その辺はどうでしょう。
  54. 水田三喜男

    水田国務大臣 それはそうではございません。自由化をやることによって輸入が非常に多くふえるという心配はそんなにないんじゃないか。これは自由化をやった直後は一時そういうことが出ても、長い間にはそういうことはなくなってしまうのが普通で、これは過去の例もそうです。この点の心配はしませんが、問題は、こういう引き締め政策をとっていながら、とにかく生産が落ちてこない。そのほかにはいろいろ改善の兆はみな各部門に見えてきているのですが、ただ生産が落ちていないということだけが心配で、そうであるとするなら、これは輸入が減るということは、結局生産がある程度鈍化するということを前提とした見込みでございますので、これが伸びていくということでございましたら、なかなか輸入を減らすということはむずかしいんじゃないか。この点からの心配で、最近までは、むしろ四十八億ドルの輸入でほんとうに済むかどうかという点に私ども疑念を持っていました。しかし、さっき話しましたように、十二月の生産が、統計の最後の集計で見ると鈍化してきているというお話ですから、そうだとすると、この状態が一、二、三というふうに続くとしましたら、あるいは見込み通りの線に落ちつけることも可能ではないかというふうにも考えるのですが、今までのところはこの生産鈍化の数字が一つもなかったから、私ども、その点から四十八億ドルについて危惧を持っておるということはございます。自由化をやったために非常に伸びるという心配よりも、そちらの方を心配して言ったわけでございます。
  55. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 議論でありますからその辺にしますが、ただ自由化に対して、野放しに世界の大勢が自由化だからということで政府が踏み出してきて、その惰性のままに今もおると私は考えておるのであります。だけど、ブレトン・ウッズの会議ですか、そこで自由諸国の将来の展望ということに立って、経済のブロック化が第二次世界大戦を誘発した、だから戦後の世界経済は自由貿易にして交流さしていくんだ、そういう方針が自由国家群の間にきめられて、そのプログラムは、戦後の各国の経済混乱とか、そういうために一応停止状態にあったけれども、しかし、そうしたブレトン・ウッズの基本方針自身は、そうした一時の停滞はあったとしても、基本的にはやはり戦後の世界経済の大方針である、そういうことから各国の自由化政策が進められた、こういうことがいわれておるわけであります。しかし、そのブレトン・ウッズの決定のときの古典的な自由貿易が回復するんだということであるのか、その点のところはつまびらかにされてはおらなかったと思うのです。ところで、日本の受け取り方はすなおに受け取っておるんじゃないかと思うのです。しかし、実際の歴史の経過を見ますと、自由化とブロック化というものが織りなされまして、同じくらいの比重できているというのが事実であります。ですから、世界経済の動向には自由化とブロック化の二つの底流がからみ合って、アメリカとか、西欧が一直線に自由貿易に進む態勢ではないわけであります。従って、日本の自由化政策は、輸入の自由化にはなっても輸出自由化にはならぬということ、この点をやはり腹に置かないと施策を誤ることになろうと思います。先ほども、EECが非常に強大になった、この影響を無視し得ずに英国がその参加を求めてきた、アメリカも時がおくれてはならぬということで大いに働きかけをしております。そういうことで、日本はEECにどう対処するかという質問有馬さんから出ましたが、これは、アメリカ等を通じて、間接的であるけれども働きかけようという程度であります。その程度は、しかもEECを日本商品の輸出の相手国にするというところだけにしぼられての御意見であったわけであります。しかし、私どもが憂慮するのは、EECが態勢を固めれば、次に東南アジアの市場で日本と争ってくるということ、このことを念頭に置かなければいかぬと思うのです。当面今年度財政政策経済政策関係がないようですが、しかし、いつでも後手になりますので、そうしたEECの完成後における——もう完成は近いのですけれども、そのときに、東南アジア等をめぐって日本がどう対処していくかという方針が、この際ぜひ示されなければならぬと思うのですが、政府はどういうことをお考えになっておりますか。
  56. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、EECの態勢が固まってきて、域内における関税問題が片づいてくると、域外に対する競争力というものは非常に強いものになってきますので、東南アジアの市場においても、日本はこれとどう競争をしていくかという問題が当然に起こってくると思います。それを対立者として、そういう競争の中へ出ていろいろな問題を解決していくのか、そうじゃなくて、日本もむしろEEC——アメリカもそういう方向をおそらくとるでしょうし、日本もやはり域外のそういう国と一緒になって、EECが対立物じゃなくて、これに溶け込むというわけには参らないと思いますが、これとどう緊密な連係体になっていくかという方向で、そうして未開発のいろいろな開発問題についても、みんな一緒になった国際機構が一体となっていろいろのことをするというような方向でやっていかなければ、結局日本の貿易を伸ばしたり、日本の他の地域への将来の進出というようなものも非常に困難になるだろうというふうに考えております。ここで必要なことは、もうEECとの連係というものを、ほんとうに完全なものにしていくという方向への努力をどうしてもしなければいけないだろうと思っておりますので、そういう方向への努力をことし政府としてはすべきだということで、今閣僚間においてもそういう問題について話し合っている最中でございます。
  57. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 日本の国一国だけの対処の方法としては、現実の問題として、やはり具体的にEECと提携をしていく。たとえば、アメリカが今度条約の改定をしていくというような方向にやっていくことが必要だと思うのです。ただ、それはそれとしまして、やはり先ほどのような東南アジアにおける主導権とかいうような問題が出てくると、次の段階では非常にむずかしくなると思うのです。それを、昔植民地を争ったような形で、EECがブロックを作るならばわれわれも東南アジア・ブロックを作るのだというふうな、そうした行き方には、確かにあなたのおっしゃるように賛成できないわけであります。大体、第二次世界大戦後において植民地は全部解放されている。ですから、搾取の対象としての植民地を考えるような、そうした方式は今通用するわけがないのであります。しかし、後進国の開発それ自体というものは、やはり世界の平和にとって、世界経済の進展にとって不可欠だという点で、植民地政策でない一つの方式が大きな線として出ているわけであります。それは国連機構を通じこの開発というような、一つの国際機構を通じて開発していくという線です。そこで、国際連合それ自体の機能がどういうことになっているかというと、一番大切な安保理事会とか安全保障の点に関しては、むしろ合従連衡といいましょうか、そうしたソ連とアメリカの勢力争いの場になっておりますが、連の二次機関それ自体は非常によい仕事をしていると思うのです。たとえば、ILOにしても、これは荒木さんあたりはちょっと認識不足らしいですけれども、あるいはユネスコにしてもエカフェにしても、二次機構自身の仕事は非常にりっぱだと思うのです。そういう点で、われわれが当面EECという問題を考えながら思い当たることは、私は、やはりエカフェというような機構から日本は入り込んだ方が一番いいと思うのですね。日本は戦時中連合国の敵国であったから、ひょんな調子から、実力のないタイ国のバンコックにエカフェの木部がありますけれども、私は、やはり政府としてはエカフェの本部を日本に持ってくる、そういうことから始めなければならぬように思うのです。そういう点から、いわゆるアメリカのコンプラドールとしての東南アジアヘの進出とかいう非難を避け、そういうことから別な行き方が出てくると思うのですが、エカフェに対して大蔵大臣はどういうお考えを持っておりますか。私の今言ったような議論は、これは取り上げるに値しないと思われるかどうか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  58. 水田三喜男

    水田国務大臣 エカフェにつきましては、そういう方向でいかれることが正しいと思います。先般エカフェの会議で、企画庁からも参加していろいろ相談してきたことがございますので、これをどう扱うかというのは、先般一ぺん閣議にこの問題が出てきましたが、時間のないときでございましたので、追って、その出席していろいろ相談してきたことをもとにして、関係閣僚で相談をしようということになっておって、まだそのままでございますので、いろいろこれから特にエカフェに対してどういうふうなことをするかという方針ははっきりきまっていませんが、方向は、私どももそういう方向で今後努力したいと思います。
  59. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 非常に大切なことと思うのですよ。NEATOでいくとかSEATOでいくとか、EECの発足の動機は、確かにNATOとうらはらのことで発展してきました。しかし、NATOの軍事同盟それ自身が、例のミサイル兵器の出現とか、そういうことで大して意味がなくなってきたと思いますが、やはりヨーロッパは、懸命に経済連合的な点にアクセントを置いてやってきたわけです。そういう点で、EECの発足当時はNATOの軍事同盟があったというようなことにあまりとらわれることはいかぬと思うのです。いわんや、その前例に徴して、SEATOとかNEATOを作って、そうして経済へ持っていくというふうに、副次的にものを考えていくことはいかぬと思うのです。ですから、国連の良識ある二次機構の一つ、特に極東に最も大切なエカフェ自身を、本部を東京に持ってくるという具体的な施策を一つ外交交渉で、ぜひ経済外交として進めてもらいたい、こういうふうに考えます。そういうところから、誤たざる、第二次世界大戦後の後進国開発の一つの、日本のおおらかな、りっぱな目標というものが出てくると思うのです。そういう点は今年度国際収支にすぐ寄与するという問題ではございませんけれども、やはりそういうことは布石としてやっておかなければならぬと思うのです。先ほど同僚から貿易改善に対しましていろいろ質問が出ても、米国の方もどうもあまり思わしくない、EECも必ずしもそう進展しない、いわんや政府は中共との貿易はあまり考えておらぬ、東南アジアもふん詰まりだということになれば、四十七億ドルなんてものは架空な数字でありまして、国民は納得しません。政府と与党との論争の興味とか、そういうこともさることながら、やはり実体的に、そういうあなた方の大型予算のよってもって立つ基盤の一つである国際収支の甘い見方というようなことは、甘い見方のままにしておいてはならぬはずでありまして、これは政府も与党もさることながら、野党といえどもそうした問題に対しては真剣に取り組んでいかなければならぬと思うのです。私は四年前に、ちょうどこの国会でEECの将来というものが非常に影響力を持ってくるということを指摘したはずであります。そのときにはイギリス自身は今回のような踏み込んでくるような気配を示しておりませんでしたけれども、結局欧州というものは、ソ連とアメリカに対して一国々々では太刀打ちできない、伝統あるイギリスをもってしてもできないし、それから新進気鋭のドイツをもってしても対抗はできない、ですからヨーロッパの全資源と全人口をひっさげてヨーロッパ圏経済を作って世界経済に参加していくというところから進展してきておるわけであります。そういう機運に際して、EECを単なる日本商品の売り込みの対象先として考えるとか、そういうことでなしに、やはり戦後の自由化方式それ自体といえども、古典的なリベラルな自由化方式ではないのだ、やはりブロックという一つのクッションがあるという点に思いをいたして、今からその布石を積み上げていかなければならぬと思う。どうも少し説教調で申しわけありませんけれども、そういう点は一つ台閣にある、しかも中心閣僚である水田大蔵大臣はぜひとも肝に銘じて善処していただきたい、さように考えるわけであります。  いろいろお聞きしたいところがありますが、次の機会まで保留させていただきます。
  60. 小川平二

    小川委員長 芳賀貢君。
  61. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、第一点は三十七年度予算編成の点についてですが、具体的な点としては、昨年の国会において農業基本法が成立したわけでありますが、あの基本法に基づいて政府予算編成上、どのような具体的な財政資金措置を講ずるかということは、これは注目された点ですが、政府が示された予算案の内容については、せっかくの基本法が何ら政府予算措置財政金融指貫について効果をもたらさなかったということが、ひとしく判断されるわけでありますが、大蔵大臣は編成にあたって、このような点についてどのような配慮をされたか、まず御説明をお聞きします。
  62. 水田三喜男

    水田国務大臣 実は農業予算の編成のときにはいろいろな問題が出てきまして、まず河野農林大臣からは、今まで農業の各項旨いろいろあって、それにそれぞれ予算は盛られておるにしても、今度できた農業基本法というものを中心に従来の予算整備したら、この基本法に沿った予算の姿がどうなっておるかということを、自分は一ぺん洗ってみたいという話がありまして、それは非常にけっこうなことだ、大蔵省も協力しますが、まず農林省自体において一ぺんそういう面から、従来の予算の洗い直しをやってみるのも非常にいいことだと思うと言いましたところが、農林省でそれをやりました。やってみますというと、農林予算というものはあの線にそれた形の予算がたくさんあって、ほんとうに去年国会で作られたあの基本法の上に乗った予算というものが非常に変な姿で、あの線に沿ったような予算措置になってない面が多いというようなことで、そういう実態を示されて、今年度から農業予算についてはあの線に沿ったような予算の盛り方をやりたい、項目は変わってもかまわないし、あの線に沿ったような予算に直したいというようなことで、もっともだと考えて、われわれもそういう方面へ非常に骨を折ったわけでありますが、まだ急に従来の項目を整理して、あれ中心の予算項目を立て直して率の整備をするということも、一年では間に合いませんでしたので、やはり従来の予算の立て方の項目によって、それぞれ予算強化をやるというようなことで、不徹底には終わっていますが、しかし今度の予算編成で、三十七年度予算の説明にも書いてございましたが、大体基本法の政策に基づいて、生産の選択的拡大、経営の近代化というようなものを中心に、この予算を重点的に編成しようという方針に沿って、項目の整理はいたしませんでしたが、従来のような立て方の項目の中で、やはりこの線に沿った予算強化は、私どもやったつもりであります。ですから、まず生産基盤の強化というような、いわゆる土地改良というようなものにつきましては、御承知のように五百何十億、昨年よりも八十何億も多い予算をつけましたし、そのほか農業の構造改善事業というようなものも本格的にあの基本線に沿った方向のものとして、これに新しく予算強化をするというようなことで予算の編成をやりましたし、また系統資金の活用問題も資金量をふやすということ以外に、個人に対する分の金利を、昨年行なったよりもさらにことしは下げるという方向の措置もいたしましたし、それから農林金融公庫というようなものの貸出ワクもことしは大きくするというようなことで、基本法のできた初年度でございますからいろいろ問題がございましたが、大体あの基本法の線に沿った予算強化を相当ことしはやっているつもりでおります。
  63. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私は農林予算の内容を聞く気はないのです。ただ問題は、昨年農業基本法ができまして、これが一つの導火になって、今後予想される問題としては、たとえば中小企業基本法とか、あるいは漁業基本法とか、国民経済的に見ると非常に経済力の弱い産業部面について、特に重点的に制度の体系を統合して、そして強力な施策を進めるというところに、これらの基本法の目的があるわけです。これを国の施策発展の過程で強力に実現するためには、どうしても国の責任財政的あるいは資金的な措置が裏づけされなければ、成果が上がらぬということは言うまでもないわけでありますから、はたしてどの程度政府が、これらの基本法を出した場合においても、その財政面における責任ある裏づけというものを予算編成上とられるかということを、われわれは注目しておったわけでありますが、大蔵大臣の説明にもかかわらず、われわれの判断としては、非常にこれは貧弱なものであって、何も基本法がなくてもこれでは同じでないかというようなことに実はなっておるわけです。  そこで特にお尋ねしたい点は、農林関係予算の中で、食管特別会計に対する一般会計よりの繰入金額が、毎年累増しておるわけです。これは食管制度の中における、特に米麦については生産者米麦価の価格支持、あるいは消費者価格の数年間の据え置きというようなことから生ずる一般会計からの繰り入れでありますが、大蔵大臣は、この食管会計から繰り入れられる明年度予定される額が約七百十億円ですが、これらの金額というものははたして農業政策的に分類してこれを処理する性格のものであるか、どういうふうに考えておられるのですか。この七百十億円が入って初めて農林関係予算総額が二千四百五十億円ということになるわけです。この七百十億円を引くと、わずかに千七百億円程度しか農林関係予算はないということになるわけです。ですからこの判断というものは非常に重大な点になるわけでありますから、特にこの点について大臣のお考えを明らかにしてもらいたいと思います。
  64. 水田三喜男

    水田国務大臣 食管制度には御承知のようにいろいろ問題がございまして、今この食管制度が維持されておるという理由は、この食管制度の機能というものが、最初食管制度ができたころのものとは違いまして、何といっても米というものが農家所得の中心になっている現状において、農家に対して米の所得をある程度補償するという機能が一番大きいものになっておるために、この食管制度がなかなかそう簡単に動かせないという事情になっていることは御承知通りだと思います。従ってこの食管制度の赤字埋めをすぐに農業政策だということは、これはむろん間違いで、消費者のための政策であるということも言えるのですから、これがそっくり農業政策の経費というふうには見ておりませんが、しかし今の制度を通じてこの赤字を七百億も国が分担するということは、結局何と言っても農家の米所得を補償しているということは事実でございまして、これは今の食管制度のあり方から見たら、やはり一つの農業政策であると見ても間違いではないと私は思っております。
  65. 芳賀貢

    ○芳賀委員 食管制度が農業政策上の一つの施策であるということは間違いがないが、しかし予算的に一般会計から七百十億円繰り入れるのだ、それが農業政策上有効な予算的な措置であるというふうにはわれわれ考えられぬ。この点が非常に大事なんですね。農業基本法ができて予算編成上努力した結果、これは国の総予算も昨年よりは二四%程度伸びておるのだから、農林予算が三十六年度に比して明年度が一0%くらいふえるということは不思議なことではないわけです。ところがこの七百十億円という繰り入れ分は、農林予算総領の約三0%を占めているわけです。そうなると農林予算の性格というものは、この食管への赤字補てんが中心となって政策が組まれておるという判断も出てくるわけですね。それは間違いではない。もちろん食管制度というものがあるから、生産者米価というものが現在の政府のもとにおいても曲がりなりにも保護されておるということは事実である。しかし消費者米価というものはここ数年間政策的に毎年据え置きということになっておるわけです。ですからこの赤字分というものを分析した場合に、生産者保護の立場からこの繰入金というものは用いらるべき性格であるか。あるいは一般国民生活の安定をはかるという点から、消費者米価を上げた場合にはあるいは賃金であるとか他の諸物価に悪い影響を及ぼすというような政策的な配慮から、消費者米価の据え置きを行なうということに重点があるのか。これはやはり国の政策上、国の予算編成上重要な問題だと思うわけです。たとえば消費者米価を据え置くということが日本の国民経済上重要なものであるとするならば、これはやはり社会政策的にこの繰り入れというものは行なわれるということに当然なると思うわけです。農林予算から移せというわけではないが、この農林予算全体の中で占める三0%の繰入金額の性格というものを明らかにしておかないと、農業基本法との関連の中で国が責任を持って行なう農業の施策万般というものが強力に進められて、それに対する財政的、金融上の措置というものは講ぜられておるかどうかという判断が狂つてくる場合が生じますので、この点を政府責任において明らかにしておいてもらいたいと思うわけです。
  66. 水田三喜男

    水田国務大臣 今後の農業の行き方は、あの基本法によりましていわゆる選択的拡大で、需要が多く成長が見込まれる部門をもっと育成するということが正しい方向だと思います。しかしそれはそうなると米第一主義という政策ともだいぶ変わってきますので、いろいろ問題はあろうと思いますが、将来そういう方向に行ったとしても、とにかく米が農家所得の中心になっているという事実は、将来にわたってもそう簡単に動くことではないと思います。ですから、米の価格補償というような制度は、農業政策として私は今後もずっと必要だろうと思いますが、しかし今の食管という制度を通じて、米の価格補償というのをやることが合理的かどうかということについては、これは検討すべき問題が多いだろうと思います。もし消費者に対する社会制度的な配慮だというのでしたら、低所得者に対して特に米を安くしてやるという方法も考えられますし、高所得者も低所得者も一律に税金をもって米の消費価格を安くしてやるという政策がいいか悪いかといいましたら、私はあまりいい政策ではないと思います。ですから私は、ほんとうなら低所得者に対する社会保障というものは別に考え、米が自由にみんな流通していいというようなことになった場合——国費を惜しむわけではございませんが、そうなった場合に、こんなところへ米の補償というような意味の金を七百億円も使うのなら、新しく農業基本法の線に沿った金を七百億も使ったら、その方が日本の農業を推進させる上に有効な金になりはせぬかということも考えて、農業団体に対してそういう問題を出したこともあります。もう食管制度というものはやめないか、やめてきれいに日本の農業推進の金を一千億円も、国がもっと多く出してやるということにしたら、日本の農業はどっちの方がいいのだ、どっちの方が金の効率を発揮するかという問題を出しましたところが、農民自身は、米の支持価格がきめられて、それより米の相場が下がったときに政府が補償してくれるというのだったら、食管というものは要らないというのがあれです。食管制度がなくては困るというのは、農協とかそのほかの団体がむしろ困るというのですから、団体に対して、それではあなた方は団体を維持するだけの財政的なものを国が補償したらどうか、今までやっている倉敷料とか手数料に値する分を国が別に金を出してやっていく、それで一つ新農業建設の基本法に沿ったいろいろな対策というものを中心として、活動できるだけの財政基礎を別に与えたら、食管というものにこだわらぬかと言ったら、財政基礎が与えられるのだったら食管はなくてもいいというものもずいぶんあるから、これはとにかくわけのわからないことでございまして、当然これは検討して、もう少し合理的な解決をすべきものだと思っていますが、これがなかなか関係者によって、自由販売の一部分を作るのだという農林省の案すら騒がれて通らないということは、何といってももとはこの制度が農業の価格補償というものを果たしている、その機能が今では中心になっておるからだと私の方は考えていますので、それを補償する方法というものが別にできるなら、この不合理な食管制度というものを通じて農業政策をいろいろやるという方法は、私は農業基本法ができた今日においては、そっちの方が邪道だという気がしますので、これは一つわれわれも考えますが、野党においてこの食管問題については、今後真剣に一つ御検討をお願いしたいと思います。
  67. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今大臣はこんなものに七百億円も使うのは、これは不当だということを言っておりますが、予算編成したのはあなたでしょう。政府責任で、中心になったのはあなたじゃないですか。こんなものが不当だったら、何も不当な編成をしないで、政府責任で筋の通った予算を作ればいいじゃないですか。自分がこのような形の予算案を作って国会へ提案しながら、こんなものに七百億円も出すのはけしからぬというようなことでは、あなたの主体性というものはないでしょう。食管問題に対する批判というものは、河野さんの構想にあなたがかぶれておるだけなんです。それも理論を持たない、農林政策に対して、大蔵省として何とか予算を削減したいという、そろばん勘定の判断だけでそういうことを言っておるからして、理論的な予算編成とか財政の仕組みというものは出ないのですよ。ところがあなたの親玉の池田総理大臣は、去年の農業基本法の審議の中において明らかに、米の食管制度というものは、私が内閣総理大臣をやっておる限りは現行を守ります、存続しますということを言っておるわけですから、総理の意思を体してあなたは忠実に今まで動いてきたのにもかかわらず、この委員会において、そんなものに対してと言うのは、これは明らかに失言だと思う。これは早く取り消された方がいい。
  68. 水田三喜男

    水田国務大臣 こんなものと言うのが悪ければ取り消しますが、こんなものではなくて、こういう制度を通じて農政を推進させようという方向は邪道だ、私はそう思います。総理大臣が確かに、自分の在職中はこの制度を維持するのだと言っておりますから、仕方がないので私もその線に沿って、一応同調して、その線に沿った予算を盛ったのですが、私自身はこの制度は、池田さんがいる間はいけないとしましても、これはどうしても何か考えるべき制度だとそう思っております。
  69. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それにこだわるわけではないのですが、しかし政治家として政治的所信を貫く場合には、自分の政治所信に沿わない場合に、便々とその地位にとどまるということは、ちょっといかがかと思いますので、この点だけは御注意を申し上げておきたいと思います。  次に税制の問題について若干触れますが、政府は昨年の税制調査会の答申に基づきまして、各税の改正案を国会に出されるようであります。この中で問題になる点は、たとえば従来国会で議論されておる租税特別措置法の改正等についても、その内容を見ると非常にささやかなものであって、抜本的な改正という意図は全然見ることができないのであります。そこでたとえば、政府は今回の予算案の中において、税収入の面で租税特別措置法によるところのこの税の減免額というものを、大体どのくらいに見積もっておるか。その点ともう一つは、政府が提案を用意されておる租税特別措置法の改正を通じ、どの程度の税額、税収の復活、復元が行なわれる見積もりであるか、その点を数字をあげて明らかにしてもらいたいと思います。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 租税特別措置は大体今日までで、半分くらいは改廃整理をしたことになっております。三十六年度においても御承知通り相当の改廃をやって、百六十五億円くらい整理をしておるわけでございますが、今年になりますと、いわゆる国際収支を中心とする設備投資の問題や何かが出て参りましたので、私どもはさらに機械の適用の期間が到来したものについての延長措置——従来はみなやっておったのですが、この六月以後延長はしない。それから新たに追加指定、追加を要求されておる機械類が非常に多かったのでございますが、そういうものを見合わせるというようなことをやって、従来なら、やはり一応期限を延長してやる必要があるという必要性のはっきり認められるもの、趣旨から見て当然追加されていいものというようなものまで、今犠牲にして、この措置強化しない方針でやっておりますし、また二年、三年という期限のあるものも、今後これをできるだけ短く、一年くらいにして、毎年その必要があるかどうか、一応そのつど洗い直して考えるというような運営の仕方もことしはしたいと考えております。今年分、この整理の金額はどのくらいになるかは、ちょっと事務当局から返事してもらいます。
  71. 松井直行

    ○松井説明員 三十六年度の整理合理化で千四百九十五億、それから本年度の特別措置法の整理合理化で平年度十七億、初年度十二億、これだけを見込んでおります。
  72. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう少し具体的に、たとえば昭和三十六年度、当年度においての減免額が総額幾らになっておるか、それから三十七年度は、たとえば措置法の改正をやって、それによって、従来に対してどの程度税収が復活するかというその金額と、それからあとは復活せざる、措置法のいわゆる恩恵を受けるといいますか、その分の三十七年度における見通しがどれだけか、その点まで明確にしていただきたい。
  73. 松井直行

    ○松井説明員 今申し上げましたのは、三十六年度までに大部分整理を終わりまして、本年度新たに手をつけましたのが、今大臣からおっしゃった二件であります。その分が平年度で十七億、従来からやっております分につきまして、私ただいま三十七年度の例を持っておりませんので、三十六年度で総領千四百九十五億になっておりますということを申し上げました。
  74. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは今後委員会審議議論する点ですから、掘り下げはしませんが、ただこれに関連して、昭和三十六年度産の米穀に対する所得税の特例法というものがあるわけですが、たとえば税制調査会の答申によると、米の予約減税についても、この措置は廃止すべきであるという答申が実はなされておりますね。社会党は昨年の十月十七日石田宥全君外十四名が、これは議員提案として、三十六年産米の所得税臨時特例法を議会に提案して、現在これは当委員会に継続審議になっておる。ところが一月の十七日と思いますが、今度は内閣提案で、社会党の議員提案と全く同種、同内容の法案が提案されておるわけでありますが、これに対する大蔵大臣の所見はいかがですか。
  75. 水田三喜男

    水田国務大臣 三十六年度産米について予約減税の特例を延長するという措置はとりました。三十七年度は別でございます。
  76. 芳賀貢

    ○芳賀委員 三十七年度はまだ米のまきつけもやってないですから、今まで、昭和三十一年度以降、毎年々々一年限りの特例措置ですからして、当然これは昨年農家が米を生産して政府に売り渡した分に対する免税の特例法ということになっておるが、ここで問題にするのは、従来でありますと、その年度の米価審議会等を通じて、政府は、生産者米価あるいは消費者米価、これに伴う制度上の一環として、たとえば従来継続されてきておるこの予約減税等の措置についても、どのようにするという見解が明らかにされておるわけですが、昨年の米価決定の機会には——これは農林委員会等においては大蔵大臣あるいは農林大臣にただした点ですが、全く態度不明のまま今日に至っておるわけです。一方、税制調査会からは、この米の免税特例法は廃止すべきであるという答申がされておる。にもかかわらず政府が社会党案と同内容の法案をことしになってから出された、その御意図はどこにあるのかということをこの際明らかにしてもらいたい。これはけしからぬというのじゃないのです。わが党がもうすでに出しておるのですから・・。そうするのは当然なことであるとしても、なぜ今まで態度不明であって、あるいは政府の御用機関的な税制調査会は廃止の答申を出しておる。にもかかわらず政府が、議員立法と内閣提案との形式的な形の上の差異はあるが、全く同一の法案をあとからのこのこ提案されるというその御意図、これを国民の前に明らかにしておいてもらいたいと思います。法案の内容については、いずれ社会党案、政府案を審議する機会があるが、その意図の那辺にあるかを明らかにしてもらいたい。
  77. 水田三喜男

    水田国務大臣 意図が那辺にあるかというのですが、私どもはあれは廃止したいと考えておりました。税制調査会の考え方も、これは毎年のことですが、あの特例を廃止すべきであるという考え方は一貫しております。私どもも、全農家のわずか二%くらいしかあの恩恵を受ける農家がないという実情から見ましたら、この特例は廃止すべきだというふうに考えておりましたので、ことしの米価審議会のときも私どもの意向はそういうことを述べ、与党側も大体同調の空気でございまして、そうなると思っておりましたが、これは御承知通りのいきさつがありまして、毎年政府がやりたいとしてもやれなくきましたので、三十六年度だけは私はやりたい、廃止したいと考えておりましたが、諸般の情勢でもう一年これは延長しようということをきめたので、別に意図はございませんで、まあもう一年これを延長するのはやむを得ないだろう、こういう見解から、これを継続することにした次第でございます。
  78. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは当然この特例措置を必要として大蔵大臣が出したのではなくて、大蔵大臣としては何とかこの機会に廃止したいという考え方であったが、力関係に押されて不本意ながらこれを出した、そういう熱意のない政府の税に対する態度ですか。おれはいやなんだけれども、諸般の情勢でしぶしぶ出した、そういう態度で行くから、たとえば三十六年度においても膨大な一千呪符億に上る、特に大企業、大資本を中心にしたこういう特別措置法というものが厳然として残っているのじゃないか。こういうのは減らしたくない。ささやかな農民に対する税の特例に対しては、これを目のかたきにしてつぶしたいというような、そういう間違った税制に対する政府考え方というものは、これは全く遺憾な点です。一体どこに主体性があるのか。たとえば所得倍増計画の中における原始産業に従事する国民、あるいは中小企業等に従事する非常に低所得の国民、そういう人々にこそ、税制を通じ特別の配慮をしなければならぬにもかかわらず、そういう温情味というものは税制施策の中においては何ら講じられておらない。そうしてこの経済危機に当面しても何ら影響を受けない大企業、大産業の面にだけは、こういう一千五百億にも上る特別減税を行なっておる。これは資本主義の制度の本質であると言えばそれまでだが、この際もう少しこれは反省する必要がある。せっかく政府が内閣提案と銘打って法律を出すのであれば、当然これは必要であるという信念の上に立って、自信の上に立って、法案を提案するというのが、内閣提案の場合の政府の態度だと思うのです。その点はどうですか。
  79. 水田三喜男

    水田国務大臣 ほかのことは自信を持っておりますが、あの法律だけは私はほんとうに自信がございません。特例措置はやはり政策的な考慮からとられる措置でございまして、最近を見ましても、地方開発にからんだ問題、それから地方に工場が行く場合の特例措置というような新しい措置が次々にできておりますが、多くはみな中小企業に適用される措置になっておるというようなことから見ましても、政策的にどうしてもこれが必要だと認められるものは特例措置を新たに作っても一向差しつかえないと思っておるのですが、この予約米の減税だけは、最初作るときには御承知のような意味がございました。しかし今ではその当時の政策的な理由はなくなってしまいまして、しかもあの措置をとることによってだれが恩恵を受けるかと申しましたら、農家のわずか二%の特に供出の多い一部の大農に恩恵が及んでいるというようなことを考えますと、もうこれは特別措置をとるに値しない、政策的にももうその目的は達せられていると思う今、あれが代表的な措置になって常に論議されている問題でございますので、私はやはりこの特例措置はどうしても必要だ、温情だとかなんとかいう問題ではなくて、税制上の問題から見ましても、実際に適用されている層から見ましても、もうこれがどうしても延期しなければならぬという自信はあまり持ちませんで、できたらそろそろこれは廃止してもいいのではないかと思うのですが、ことしの米価審議会のときにもっと私どもは明確にその線を出して、あの場合了解を得ておけばよかったと今思っておるのですが、これを少し不明確にしておきましたために、やはりここで無理にやるよりも、もう一年延期して、この次話し合いによってそういうことをやりたいということを考えたので、自信ないままこれを継続するというようなことでございますので、御了承願いたいと思います。
  80. 芳賀貢

    ○芳賀委員 まあ水田さんは正直ですから、政府の内幕を公開されるわけですから、そう追及する意思はないが、ただ政策的に大資本擁護の政策として、このような措置が講ぜられておるのである。農業基本法を通じて自立経営農家育成ということになれば、当然この米の免税対象になる農家というものは、政府が育成しようとする自立農家の階層の中にこれが多いということは言うまでもないわけです。ですから内部矛盾というものをあなたはここでみずから告白しておるわけですから、これは全国の農民の批判とか、国民の批判を受けるにいい機会だと私は思っておるわけですが、目のかたきのようにしているこの農業所得税に対して、一体政府当局としては、たとえば三十六年度における農業所得の税収益の総額を幾らに見積もっておるか、あるいはまたこの特例措置が講ぜられた場合には、これによって減額される免税分というものはどれだけの数字になるのか、その点を、これは具体的に御説明願います。
  81. 村山達雄

    ○村山政府委員 まだ三十六年度予算の数字しかわかりませんが、三十六年度予算では、この措置の対象となる見込み人員は十九万九千人、先般米価の改定がありまして、当初予算では十五万人程度と言っておりましたが、米価の改定がありましたので、実績見込みで十九万九千人程度であります。そのうちこの措置で課税されないこととなる見込みのものが約六万人でございまして、これによる減収約六億程度でございます。これが非常に少なくなりましたのは、御案内のように所得税は相次いで減税をやって参っておりますので、農家はほとんどかからなくなっておるというのが事実でございます。かつて一番農家にかかりましたのは、昭和二十四年でございまして、三百五十万戸が所得税の納税義務者であった。それが相次ぐ減税によりまして、今日米価が上がりましてもなお十九万人程度であるという点を御注目願いたいと思います。
  82. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは政治の貧困の結果、農民が所得税を納める力を失なってこういうことになっておるのであって、それは喜ばしい現象ではない。その点を御注目しておいていただかないと、とんでもないことになりますよ。政府施策よろしきを得て税金を納めないで済むのではない、納める力を喪失しているのですから、ここに問題があるのです。  それから次に、税制の問題であわせてお尋ねしておきたい点は、たとえば所得税の改正についても、これは従来から問題のある点でありますが、たとえば個人の事業所得に対する所得の算定の場合においても、個人事業主の給与あるいは家族労賃の控除、こういう点については、たびたび指摘した点でありますけれども、従来実現しないで、わずかに青色申告における十二万円の専従者控除、あるいは白色申告における七万円の専従者控除、こういうことで現在は行なわれておるのですが、これらの問題は、たとえば農業の部面において、あるいは中小企業の面における、法人会社以外の個人の零細な企業体において問題になっておるわけです。ですからこれらの点は優先的に、重点的に配慮をして、この所得税の改正に当たられる必要があると思いますが、われわれの判断した点によると、今回の改正点についても、この点の根本的な解決というものは意図されておらない。これはやはり問題だと思う。この際やはり減税を打ち出す場合においては、これらの実情を十分勘案して、低所得者層に対する基礎控除引き上げはもちろんでありますが、それ以外の諸控除の引き上げというような点、あるいは所得の損金算入に対する算定方式等については、やはりこの機会に一挙に解決すべきであるというふうに考えられるわけでありますが、この点に対しては大蔵大臣はどう考えておりますか。
  83. 村山達雄

    ○村山政府委員 ちょっと……
  84. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大蔵大臣に聞いておるのです。大蔵大臣に対する質問じゃないですか、何ですか。
  85. 村山達雄

    ○村山政府委員 ちょっとその前に技術的な問題でございますので、お答え申し上げておきますが、諸控除の引き上げはやらないとおっしゃいますが、去年実はやってございます。去年と今年の改正は一体的の改正として考えておりまして、昨年御案内のように扶養親族第一人目七万円とありましたのを、配偶者については本人と同じ九万円に上げました。それから扶養親族の控除につきましては、十五才以上三万円とありましたのを五万円にいたしました。そこで二万円上げました。そのほかにおっしゃるように青色の専従者の控除八万円とありますのを、一般は九万円、二十五才以上十二万円、そこで四万円上がったわけです。さらにかねて懸案になっておりました白色の専従者控除を認めろというお話がございまして、これは国につきましては七万円、地方税におきましては五万円の控除を認めたわけでございます。それぞれ、青色申告についての九万円の控除と申しますのは、これは大体同族法人が家族に支給している金額の実績、これとバランスをとっているわけでございます。また七万円と申しますのは、その当時におきます農村方面における他人労働の実績、この辺を勘案いたしまして七万円ときまっておるわけです。今般これと相並行いたしまして、やはり控除の引き上げを提案してございます。ただ昨年は見送られまして、実は三十二年以来据え置きになっております基礎控除を上げる。この基礎控除は全般に響くわけでございますが、特に独身者に最も強く響く制度でございます。それと同時に昨年配遇者は本人と同じ控除を与えるべきであるということになっておりますので、配遇者控除もこれに合わせまして昨年の九万円を十万円にして提案いたしているわけでございます。この改正によりまして、全体として所得税におきましても相当の、四百三十億ばかりの減収が出るわけでございますし、今度提案いたします改正がもし実現されれば、納税者におきまして九十万二千人程度失格する見込みでございますので、先生のおっしゃったような御趣旨の点は、今度の提案に盛られておるというふうに考えておるわけでございます。
  86. 芳賀貢

    ○芳賀委員 委員長に申し上げますが、本日は大蔵大臣基本施策に対する委員会における質問を行なっておるわけです。ですから、もし大蔵大臣が私たちの質問に直ちに答えられない場合には、後刻勉強して答えてもらっていいのでありますが、大臣以外の政府委員が勝手に発言を求めてとやかく言うのは、この委員会の慣例がどうなっておるか知らぬが、われわれとしてはこれは納得できないと思うのです。大臣が、自分が十分答えられないから、政府委員に答えさせますというのなら話はわかるが、大蔵大臣が何も言わないうちに、政府委員か説明員かわからぬ人物が、勝手に発言するというのは、これはおかしいじゃないですか。そう思わぬですか。
  87. 水田三喜男

    水田国務大臣 勝手に答えたわけではございませんで、技術的な問題がございますから、主税局長にそれを答えてくれと私が頼んだわけでございますので、御了承願います。  今主税局長から言われましたように、去年の税制改革で私どもは今おっしゃられたようなことを一応やってございます。そうして個人所得と法人所得との均衡の問題、個人の方が税金が多いので、小企業者がみんな法人に直していくというような傾向も一時見られましたが、こういうことを防ぐために、個人所得と法人所得の均衡をとるというようなことで、所得税中心にする一連の減税は去年やりました。従って、ことしは本来ならその問題に手をつけないで、国、地方の税源調整の問題、それから直接税と間接税との問題というようなことで、間接税中心の減税を最後の仕上げとしてやるつもりでございましたが、御承知のように、所得税を府県民税に一部委譲するというような措置を今度とっておりますので、それとの関連において、やはり所得税はもう一ぺんいじらざるを得ない。そうでないと財政的に問題が起こりますので、そこでこの範囲においての手直しをまたことしやる。そのためには基礎控除も本年度は手をつけるというようなことで、おっしゃられたような方向の配慮はことしの減税案で、私どもは十分考慮しておるつもりでございます。後刻大蔵委員会審議していただく議案でございますので、そのときにまた詳しいことは申し上げたいと思います。
  88. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それではこの問題は保留して、もう一つこれにあわせて基礎控除以外の控除の制度の問題ですが、たとえば日本の国情からいって、国民の生活条件というものがその地域によって非常に差があるわけです。そういう場合、これも従来から指摘された点ですが、たとえば積雪寒冷地帯における国民に対する寒冷地控除の問題であるとか、あるいは公務員等には国が支給しておる石炭手当等に対する免税措置の問題等も、これはやはり基礎控除引き上げ以外の、地域における控除の一つの制度上の問題になるわけですが、こういうきめのこまかい税制上の配慮を行なうという考え方を、今回の改正の場合にはきめられておるかどうか、この点はいかがですか。
  89. 水田三喜男

    水田国務大臣 今度の税制改革の問題では、この問題は取り上げておりません。私よりも正確らしいですから、正確を期するために主税局長から答弁させます。
  90. 村山達雄

    ○村山政府委員 従来からその問題がございまして、たとえば都市は非常に物価が高い。同じ最低生活費の控除といっても、生活費が違う。あるいは北海道とか雪の多い地方では暖房費がかかる、こういうような意味で、全く生活費が違うのです。九州あたりになると、災害がいつもあるものだから、そういう意味の災害控除的なものをやるべきである、こういう地域的な問題があるわけでございますが、遺憾ながらどうも国税としてはそういう点をとてもまかない切れない。どこの国でもその議論はあるわけでございますが、控除を変えておるということは国税ではございません。地方はそれぞれ自治が原則でございますので、もし地方税として考慮できる事項でございますれば、それらは地方税として控除さるべきであろうというわけで、遺憾ながら、この問題は長年論議されておりますが、国税の中では地方差を見ておりません。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは問題として一応指摘だけして、次に財政投融資関係に触れておきますが、三十七年度の投融資の資金計画は、約八千六百億ということになっておるが、この原資のコストがそれぞれどうなっておるかという点は、やはり投融資計画を進める場合にも政策的な問題だと思うのですが、それをきょうは時間がないですから、大まかでいいですから、原資のコストの内容が一体どうなっておるかという点について大臣からお答えを願いたい。
  92. 水田三喜男

    水田国務大臣 財政投融資計画は、御承知のように総領八千五百九十六億円でございますが、原資の見込み内訳を申しますと、産業投資特別会計から五百三十二億……
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それはいいのです。それはわかっている。それぞれの原資のコストがどうなっておるのか、資金コストがどうなっておるのか。
  94. 水田三喜男

    水田国務大臣 その各原資のコストというお話でございますが、これは今ちょっとここに資料を持ち合わせておりませんので、あとからお答えいたします。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは後刻資料として出していただいてけっこうであります。ただこの場合に、財政投融資計画の対象になっておる、特に事例をあげますと、農林漁業金融公庫あるいは国民金融公庫、中小企業公庫、開発銀行あるいは輸出入銀行等が政府機関としてあるわけですが、これらの各機関の資金構成あるいはコストの内容等についても、それぞれこれは別々になっておるわけです。これは融資機関の性格や目的によっても、資金構成の内容によっても違いはあると思うが、特に農林漁業あるいは中小企業国民金融公庫等については、やはり財政投融資計画の中で相当重点的に今後行なっていくべき点であると思いますが、なかなかこれらの公庫融資の場合の、特に金利の低減というものは実行に移されていないわけなんですが、これは一体どこに理由と原因があるか、この点だけは数字ではないですからおわかりと思いますから御答弁願います。
  96. 大月高

    ○大月政府委員 財政投融資の各機関の資金構成は、それぞれの機関の貸し出しの性格によりまして、それぞれ貸し出しの金利がきめられております。非常に収益力の低い、つまり農林公庫のように金利全体の水準が低いところにおきましては、出資の割合が相当高うございまして、資金運用部、簡易保険その他から借ります数量、借入金の金額は比較的少ない、こういうことになっております。それからたとえば開発銀行のように金利が相当政府機関としては高いというところにつきましては、借り入れの金額の割合が高い、こういうことでございます。従いまして金利の相当低い、たとえば農林関係とかあるいは輸出関係、こういうものにつきましては出資の比重を高める必要があるわけでございますけれども、御存じのようにこの出資は一般会計あるいは産業投資特別会計、そういう限られた原資から調達するわけでございまして、一般に資金運用部その他の原資から調達するのに比べて非常に制約がある。そういう意味におきまして出資の制約がある、財政上の制約があるという点から、やはり金利を下げる面におきましても制約がある、こういうことが一点でございます。それから政府機関でできるだけ政策的に必要な部面に低い金利を出しておりますけれども、何分全体としての金利体系の問題がございまして、特定の部面だけを非常にけたはずれに下げるというわけにもいかない。われわれが見ておりますところでは、現在の農林公庫の金利体系につきましても、政府としては極力努力して、均衡のとれる限り金利として低くしてあるというように考えておるわけでございます。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 具体的な内容についての質疑は次の機会に譲りますが、ただこれに関連して、これは予算編成のときにも問題になったと思いますが、昨年から制度化されました、たとえば農業近代化資金の場合も、系統資金を原資にして、それに対して国と地方団体が一分ずつの利子負担を行なうということで、年七分五厘の金利で末端農家に貸し付けるという制度であります。これは国の責任が全く回避されるような状態でできた制度でありますので、昨年も国会でこれが議論になりまして、特に前回の臨時国会でこの法律が成立した場合においても、河野農林大臣はみずから発言して、昭和三十七年度以降は近代化資金の末端金利を五分にします。そして金利の低減された分については国が負担する措置を講じたい。しかも資金構成についても、原資の獲得についても、三十七年度は一千億を下らない資金の確保を行なう。そういう言明とあわせて、当時農林委員会における附帯決議がなされたことは御存じの通りであります。ですから、これは河野農林大臣も三十七年度予算編成の場合に、重点事項として相当実現に努力したようでありますが、結果的には一部だけ金利の低減が行なわれるような形になったが、こういう点については、これは大蔵省が抵抗した結果、所期の目的が達せられぬことになったと思うわけです。これに対する責任と、もう一点は、やはり前国会におきまして、自創法の一部改正が行なわれましたときに、この場合にも自民党、社会党全会一致で自創資金に対する根本改正を行なう、特に農業基本法を基にした、たとえば自立農家育成のための農用地の拡大等にこの資金を充当するために条件を整えて、現在の五分の金利を三分五厘にする、三年の据え置きを五年の据え置きにして、償還年限二十年を三十年に改めるべきであるという決議が行なわれて、これに対しても当時河野農林大臣はこの実現を確約したわけです。ところが今回のこの国会に提案される予定法律案を見ても、自創法の改正等には何ら触れていない、思いをいたしていない。近代化資金についても、先ほど言ったわずかな、ささやかな改正しか行なっておらぬというようなことになれば、今後収益性の低い農業というものを近代的に発展させる一つのてこになる、財政と並んでてこになる政府の制度、金融の面においても、何ら措置が講ぜられないことに現在なっておるわけですが、こういう点についてはどう考えておるか。
  98. 水田三喜男

    水田国務大臣 農林関係金融につきましては、今銀行局長が説明されましたように、農林公庫についてはコストを下げるために、三十七年度で見ますと、資金運用部資金と簡保資金の投入が三百二十三億円、これに対して産投からの出資は、百二十億円、三百億円に対して百二十億円の出資をするというようなことによって、このコストを下げる努力はしておりますが、これと違った農林のいわゆる系統資金の方は、今のところなかなかコストを下げる方法がございませんで、国がああいう去年とったような措置をとっておりますが、これをさらに五分に下げろというお話は、確かに要望としてはございましたが、ここには問題がございまして、農協の預かる金が一番末端で六分というコストになっておる。だから末端で集めた金を末端で融資するというようなことでございましたら、二分の補給金というものができたらこれは農村へは四分の金も回っていくということになろうと思いますが、系統資金は組合が六分で預かって、それから県信連にいく段階の間に、各郡に、郡の支所というものがあって、支所を通ってそれから県信連にいく、県信連にいって農林中金にその金が直接いくのならいいのですが、今度は農林中金の支部というのが各府県にあって、五段階を通じて、その問いろいろな手数料が取られて最後へ行く。ですから、農林資金、系統資金というものは下から上がりっぱなしで、今度は上から還元される道というものが全然ないので、コールで運用したりいろいろなことにして、農業資金になっていないんじゃないか、これが農業資金になるような工夫を当然こらして、そうしてその上に国が何らかの補給措置をとるのならとるということをあわせて考えるべきじゃないか。その努力が何もされなくて、五段階を通って一番高いコストになって、農業に貸せない金を中央にためておいて、そして農林金融は系統資金を五分で動員するのだということは無理だ。政府も踏み切るところまでは踏み切るから、この合理化は農林行政として十分考えてもらいたいという申し出を私どもは毎年やっておりますが、ことしこの五分の折衝のときも、私たちは、そういうことも今後十分考えるという前提のもとに、とりあえずことしは一部のものについて六分五厘という措置をとったのでございますが、これは全然無理なことで、そういう無理をおいて、ただ金利を下げるために全部を補給したらいいということでしたら、中小企業問題にも起こるでしょうし、輸出問題にも起こるし、何でもいいから資金コストはみんな高いだけ高くしておいて、一切国がこの利子の補給をやっていかなければならぬという方向でいったら、これは金融政策として大きい邪道であり、混乱であり、とうていできるととではございませんので、農業の系統資金活用という問題については、やはりそういう根本問題を解決して、この解決と政府がどれだけの措置をとるかということを、合わせた方向でいくべきだろうと思います。われわれとしては、この点もぜひ研究していただきたい課題であろうと思っております。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 時間の関係で、これもあとの議論の楽しみにしておきますが、ただ日本の金利水準が、特に原始産業の部面、あるいは中小企業等の部面に対する制度金融等が国際的に高金利であるという現実だけは、これは大臣も認めておられると思うので、この点だけを指摘しておきます。  もう一点。この国民金融公庫を通じて、政府は旧地主に対する特別融資を行なう意図のようでありますが、これは重大な問題だと思うわけです。はたしてそういう構想、内容でこの国民金融公庫の融資計画を立ててあるのかどうか、その点だけを率直にお答え願いたいと思います。
  100. 水田三喜男

    水田国務大臣 旧地主で、生業資金が銀行その他の金融機関から借りられないという者について、何か金融の道を開きたいという配慮から、国民金融公庫の中で、そういう金融の道を開くための予定を一応今立てております。金額とすれば大体二十億円くらいの範囲内で、そういう希望者に対して貸付の道を開こうと考えております。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは、一昨年の国会において、農地被買収者の実態調査の法律が内閣提案で通って、この調査機関というものは、内閣に直属して、まだ法律の示すところに従って調査作業を継続中ですね。ですから、被買収者の問題を政策的に取り上げる場合は、政府が制度化して調査を進めておるその調査会の調査の結論あるいは答申を待って、それに対する最善の配慮を講ずるのであるとすれば、これは筋が通りますが、それはそれでやっておる、それと全く無縁の状態の中でこういう融資の特例の道を開くとか、あるいは地主補償の道を別途法案として出そうというような与党内の動き、これは断じてわれわれとしては了承することのできない点であります。何のために調査会というものを国会の激論の中で無理やりに通して、今作業を進めておるのか、無意味になっちゃうじゃありませんか。どうしてこういうことをやるわけですか。これは相当時間を費やす必要のある問題ですが、ただ金融制度を通じて、国民金融公庫の中でこういうことを突如として行なおうとする政府の意図については、われわれは最初から了承することができない点でありますので、この点を指摘して、大蔵大臣の率直な見解を示しておいてもらいたいと思います。
  102. 水田三喜男

    水田国務大臣 今調査会が開かれて、いろいろ調査しているようでございますが、これと全く無関係でございます。無関係措置でありまして、ただ、近来旧地主に対して何らかの措置をとるべきだという声が非常に高くなっておりますので、われわれは政治的な考慮としまして、せめてこういう生業資金の零細金融の道くらいは開いてやりたいという考えから、国民金融公庫の中で、生業資金貸付の道としてそういう融資の道を開こうと考えているだけでございまして、これが調査会の結論と結びついたり何かしている問題ではございません。純然たる金融の問題として今考えております。
  103. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 関連して、ちょっと大蔵大臣にお尋ねしておきます。国民金融公庫の中にそういう融資の道を作るということは、本来の使命とちょっと違うのではないかと思いますが、そういう点はどうですか。
  104. 水田三喜男

    水田国務大臣 国民金融公庫は、広く一般国民各層に対しての生業資金その他零細な資金貸付の機関でございますし、その中で、特に一般金融機関からも金を借りられないという状態になっておって、希望する者なら、今申しましたように、いろいろ政治的な問題があるときでございますから、そういう点も考えて、旧地主に対して——従来農村一般に対する金融措置はいろいろございますが、旧地主で借りられない者について、希望があったら、一定のワクで生業資金の貸付の道くらい開いて対処してやるのが妥当ではないかという考慮からやったことでございまして、特に国民金触公庫のあり方とこれが衝突するという性質のものではなかろうと思います。
  105. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 そうすると、そのほかに戦争犠牲になったいろいろなほかの団体、たとえば海外から引き揚げた引揚者とか、そういう人からやはりそういう注文があったときには受け入れられますか。
  106. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは、あの当時そういう要望に対処するために、更生資金の貸付というような道を開いて現にやっておりますので、もうそれ以後十何年もたっておりますから、これからそういう制度を特に作る必要はないと思いますが、当初においてはそういう制度を作りました。
  107. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 ちょっと。遺家族の年金証書引き当てに、国民金融公庫から十億か特ワクでやったことがあると思うのです。たしかそうですね。その先例に徴すると、年金証書引き当てに突破口を作ったという事例から今度予測されることは、二十億の特ワクを旧地主関係の借り入れの引き当てとして作ったということは、将来そこに何らか国の方でやはり交付公債を地主に与えるという疑惑が出てくると思うのですよ。その辺はどうなんですか。
  108. 水田三喜男

    水田国務大臣 今のところは、全くそういうことを私ども考えていません。今回の措置は、そういうものとは無関係、純然たる金融問題ということで考えております。
  109. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 国民金融公庫の金融を増強させるために、二十億を増強したというだけなら話はわかるけれども、特ワクにしたという点で疑問を持たれておるわけなんで、重ねて、将来交付さるべき公債の引き当てでそれを相殺することはないということだけを言明してほしいですね。
  110. 水田三喜男

    水田国務大臣 私ども、今全然そういうことは考えておりません。
  111. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この問題は、大蔵大臣が言われた点によると、現在進行中の調査会とはこれは全然関係がない——関係がないと言われるところに問題があるわけです。関係があるというなら、これは将来、農地改革に協力された旧地主の諸君が、今日社会的にどういう経済的あるいは生活上の地位に置かれたかという実態調査をするというところには、これは大きな目的があるわけです。その実態の判明に基づいて、やはりこれは社会政策的に何らかの措置を必要とするというところからこれらの措置が採用されたとするならば、これはまだ理解できるが何も関係がないということになると、その意図がどこにあるか、たとえば、これは参議院目当ての単なる政治工作であるとか、あるいはまだ表面に具体的には出ておらないけれども、自民党内部における綱島君が会長をやっておるところの旧地主に対する補償の問題、これを制度化して国会に出そうとするこの一連の動きは、この国民金融公庫を通じて貸し出そうとするこれとは関係があるわけなんですね。その点はどうですか。
  112. 水田三喜男

    水田国務大臣 調査会がどういう実態調査をされてどういう結論を出すか、これはまだ私どもよく存じていませんし、あるいは日がかかる仕事じゃないかと思っておりますが、いずれにしましても、農地被買収者の問題が出ておりますことは、もうすでに久しい問題でございますし、毎年々々この問題を中心とした動きが強くなってきておるときでございますので、私は、被買収者で特に生業資金の借り入れもできないというような者があって、困っておるというような現状でございましたら、やはり金融の道くらい開いておくことが、政治的配慮として必要だろうという政治的判断から取り上げた問題でございまして、今回これを取り上げた問題は、調査会の結論とか、そういうものとは実際は無関係でございます。しかし、政治的に見ても、長い間この問題が根を断たぬで、年とともに大きく取り上げられていく現状から見ましたならば、この純金融面から考えられる措置くらいは、国民金融公庫の中で考えるのが妥当じゃないかという判断で金融の道を開こうと考えているわけでございます。
  113. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この点は、いずれ国民金融公庫法の改正案が出た機会にまた審議したいと思いますが、ただ問題は、特別ワクを二十億設定したという点と、それから貸出条件は、われわれの知るところによると、旧地主であるというその資格がいわゆる貸出条件になるという点なんです。生活が苦しいとか、生業資金の獲得ができないという気の毒な特殊事情に置かれた旧地主に対して、これを貸し出すという意図ではないのですよ。旧地主であるというその資格だけで、この二十億というものは自由に生業資金として貸し出しができるというところにやはり問題があるわけです。この点だけを私は指摘をしておきます。  もう予定時間が過ぎましたが、委員長の御了解を願って、いま一点、自由化の問題です。  先ほど同僚委員からも質問がありましたが、十月までには自由化率を九0%にするという点なんですが、特に問題をしぼって、たとえば農業関係にしぼった場合、砂糖の自由化をそれまでにやるのか、あるいは乳製品の自由化をやるのか、あるいは大豆等は自由化が行なわれておりますが、それ以外の雑豆等に対して自由化を実施するのか、この三点だけに問題をしぼりまして、これに対する政府自由化方針というものはどうなっておりますか。
  114. 今泉一郎

    ○今泉説明員 それでは御説明申し上げます。  乳製品でございますが、私、為替局の資金課長でございまして、自由化の個々の物資面についてはあまり詳しい知識を持ちませんので、農林省の方からお答えいたすのが一番いいと思うのですが、私の聞いておりますところでは、農林関係物資一般につきましては、やはり国際競争力が比較的弱い、そのために一般的に自由化は工業生産品に対しておくれる、そういうふうに了解しております。乳製品につきましても、一部自由化しておるものがあるとかないとかいうことを聞いておりますが、大体においては酪農製品等の競争力が弱いので、十月までに自由化するというのは、私は困難ではないかというふうに農林省の方から聞いております。  それから、お砂糖は、十月まではこれもなかなかむずかしいように聞いております。  それから、雑豆に至りますと、私は、はなはだ恐縮ですが、そこまでの詳しい知識を持っておりません。
  115. 芳賀貢

    ○芳賀委員 十月まではしないという答弁ですが、この点は、政府は無理に自由化を進めておるわけですから、これは大臣から答えていただきたいのです。今年の四月以降、予想される池田内閣経済政策失敗からくる経済危機をいや応なしに迎えるわけですが、これと自由化を無理やりに進めるということは、非常に逆の関係があるわけです。当然これは自由化対策というものを再検討する時期であるにもかかわらず、あるいは大蔵大臣、総理大臣、通産大臣等、自由化を必ず計画通りやるということを強硬に主張しておるようですが、これは非常に重大な点だと思う。なぜ無理やりにしなければならぬかという点については、これはいわゆる箱根会談等においても出た問題だと思いますが、その基本的な問題についてと、それから十月まで私の指摘した三品目をやらないとしても、これはやるということが既定の方針であるが、その時期にはできない、その後すみやかな機会にこれを行なうという考え方だと思いますが、その点は、十月から先どのくらいの時期にこれを実行しようという考えの上に立っておりますか。これはやはり水田さんから述べてもらいたいと思う。
  116. 水田三喜男

    水田国務大臣 大体自由化というものは、これは自分のためにやるべきものでございまして、今の国際情勢を見ましても、今後日本がますます高度成長を遂げていくというためには、その土台が、輸出があの計画通り伸びるということを前提とした成長計画でございますので、私どもは、日本の経済を伸ばすためには輸出を伸ばすということが前提になっておりますが、輸出を伸ばす方法として、日本が自由化を怠っておって、将来輸出が伸ばせるかという問題になってきますと、そうじゃございません。できるだけ早く自由化を行なうということによって、初めて将来輸出を伸ばすことが可能だということでございますので、私どもは、自分の問題として、自由化をどう推進するかということを取り上げなければならぬだろうと思っています。  そこで、問題は二つございまして、IMFのいう自由化の問題は、国際収支を理由として日本が為替の制限をしないということでございまして、国際収支を理由としない、収支の上からいかぬという理由があるかどうかということを審議して、勧告したりしなかったりするのがIMFでございますが、そうじゃなくて、それと、自由化をしたら国内産業とどういう関係を持ってくるから国内産業対策をどうするかというような問題とは別でございまして、この問題は、国際機構の中ではガットという機関を通じてやるべきでありまして、ここは性質が違うのでございます。私どもは、少なくとも国際収支を理由にして日本が制限をすることをしないという方向でいくのだ、九0%までは自由化をするのだというのを目標にしているわけでございます。従って、国際収支が実際に悪くてこれができないというような事態になることは、日本自身としても好ましい姿ではございませんし、それだけ日本が将来国際競争力におくれ、輸出を伸ばす基礎をはばんでいくことでございますから、そうなっていきますと、私どもは、やはり国際収支改善ということが自由化に対処する前提問題だ、こういうふうに考えておりますので、この国際収支改善はどこまでもする、そうして国際収支上の理由で自由化を日本がしり込みするような事態になりたくないという考えで今やっております。従って、今自由化方針を変える必要もございませんし、前提として、この九月までに国際収支改善という問題にわれわれは努力すべきで、この方が本筋の仕事だと考えて、今それをやっているときでございますので、これをあらかじめ予想して、国際収支上困るのだからといって、これを延ばすというようなことを前提に施策をやるべきではない。ですから、ことしの十月までには、やはり政府方針通り九0%の自由化ができるような状態にわれわれは持っていこうと今努めているところでございまして、国内産業に対する対策は、また私は当然別の問題として考えたいと思っております。
  117. 芳賀貢

    ○芳賀委員 政府自由化の方向をきめられた場合も、その前提というものは、日本経済の健康状態というものを判断しながら、自由化で裸になるかならぬかという配慮が伴わなければ、計画を立てたときには、この分でいけば、だんだん日本経済が健康を増して、その時期には自由化をしても健康上支障がないというスケジュールだったと思います。ところが、その政策が最初からつまずいて、そうして特にことしは、春から秋にかけて経済的な危機が到来する、いわゆる気候でいえば寒波が到来するわけです。そういう寒波の中へいきなりまる裸になって国民経済を投げ出すということは、これではもうすぐ病気になるのですよ。そういうことを考えた場合には、この際、自由化政策というものはこの時点で再検討をすべきであるというふうにわれわれは判断しているわけです。この点は、当然予算委員会等において相当積極的に政府が追及される点ですから、ここで長時間議論する考えはないが、この点を私は指摘するわけです。これにあわせて、昨年の予算委員会等においても大蔵大臣が述べられた、たとえば三十四年、三十五年における輸入原糖によって精製された輸入砂糖の超過利潤の吸収等についても、その後非常にひまがかかったわけであります。最近の情勢では、とにかく糖業界から十八億円を吸収するという方針がきまって、この受け入れ態勢としての甘味資源振興資金管理会なるものが、これは社団法人として近く発足するというふうにわれわれは聞いているわけですが、一体あの利潤吸収の吸い上げの政府の意図は、こういう形で行なうという方針で去年から出発されて、この受け入れ機関としての管理会を作らせるということになったのであるかどうか、その点について明快に御答弁を願いたいと思うわけです。  もう一つ、この自由化とも関連がありますが、とにかく国際収支の逆調の中において、やはり努力の方向は、輸出振興に相当強い重点施策を向けていくことは当然でありますが、それに関連して、たとえば、この日本海外貿易振興会、いわゆるジェトロの運営は現在どういうことになっているか。たとえば昭和三十二年、三年の場合、農林関係のこの輸入調整金は、すでに大蔵省に一億八百万円も吸収されている。それから三十四年、五年、六年の三カ年においても、農林関係だけでも相当の金額の調整金の積み立てというものが行なわれているわけです。一体このジェトロの運用をどういう方向に向けようとするのであるか。何カ年か積み立てた分を大蔵省が吸収する考えでこれを運営するのが、これを輸出振興やあるいは国内産業保護のために活用するという考えでやっているのか、これは非常に重要な点です。ですから、関係はないようでありますが、とにかく砂糖の超過利潤の吸収の問題、それからこのジェトロの運用の問題についての大蔵当局としての考え方を明らかにしておいていただきたい。
  118. 水田三喜男

    水田国務大臣 砂糖の超過利得の問題は、一時大蔵、農林関係省の間でいろいろやっておりまして、この数字の詰めに入っておりましたが、その後どういう結論を出したか、実はこの問題はよく聞いておりませんが、超過利得が計算によって大体十八億円という程度に詰まってきておるというところまではきていますが、その超過利得をどういうふうにするかという方針については、まだ大蔵省でも別にこれはきめていないそうです。  ジェトロ問題については、後刻お答えします。
  119. 小川平二

    小川委員長 次会は、来たる三十日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二十一分散会