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1962-04-09 第40回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月九日(月曜日)    午前十時二十三分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 岡本  茂君 理事 始関 伊平君    理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君       池田 清志君    小沢 辰男君       亀岡 高夫君    倉成  正君       藏内 修治君    白浜 仁吉君       瀬戸山三男君    徳安 實藏君       中村 幸八君    藤田 義光君       井手 以誠君    田中 武夫君       滝井 義高君    渡辺 惣蔵君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君         労 働 大 臣 福永 健司君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重治君  委員外出席者         通商産業技官         (大臣官房審議         官)      久良知章悟君         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    小林 健夫君         運輸事務官         (鉄道監督局国         有鉄道部長)  高橋 末吉君         日本国有鉄道参         事         (営業局貨物課         長)      白崎 正義君         参  考  人         (石炭鉱業合理         化事業団理事         長)      田口 良明君     ――――――――――――― 四月九日  委員小泉純也君澁谷直藏君、周東英雄君、舘  林三喜男君、濱田正信君及び南好雄辞任につ  き、その補欠として藤田義光君、池田清志君、  徳安實藏君、小沢辰男君、亀岡高夫君  及び瀬戸山三男君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員池田清志君、小沢辰男君、亀岡高夫君、瀬  戸山三男君、徳安實藏君及び藤田義光辞任に  つき、その補欠として澁谷直藏君、舘林三喜男  君、濱田正信君、南好雄君、周東英雄君及び小  泉純也君議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月六日  産炭地域振興事業団法早期制定に関する陳情  書  (第六五二号)  石炭政策変更等に関する陳情書  (第六七六号)  石炭産業安定対策確立に関する陳情書  (第七四三号)  産炭地域振興対策確立に関する陳情書  (第七四四号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二四号)  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第七六号)  石炭鉱業安定法案勝間田清一君外二名提出、  衆法第一九号)  炭鉱労働者の雇用安定に関する臨時措置法案(  勝間田清一君外二名提出衆法第二〇号)      ――――◇―――――
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま本委員会において審査中の、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について、本日、石炭鉱業合理化事業団理事長田口良明君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ————◇—————
  4. 有田喜一

    有田委員長 内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案勝間田清一君外二名提出石炭鉱業安定法案及び炭鉱労働者の雇用安定に関する臨時措置法案を議題として質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。井手以誠君
  5. 井手以誠

    井手委員 今まで何回も石炭対策審議が行なわれておりますが、重複を避けたいと思いますので、委員会会議録を一応読んで参りましたが、もし重複した場合はお許しいただきたいと思っております。  質問の前にまずお聞きしたいのは、先般岡田委員から資料提出が要求されておりますが、第二会社と租鉱権に対する資料提出はどうなっておるか、出されましたか。——それでは、あと回しにいたしましょう。  大臣御存じかもしれませんが、例の昨年の年末融資石炭に対する緊急融資、あれはどういう実績であったか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 昨年の年末融資、特に中小炭鉱向け特別ワクを設けまして融資をいたしたのでございますが、実は私その実績がどういうことになっておるかよく存じておりません。まことに申しわけございません。
  7. 井手以誠

    井手委員 私は、大臣都合がありますから、主として大臣に効果的に質問いたしたいと思いますが、補佐する事務当局が来ないではさっぱりでありますが、どうなっておりますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今すぐ参ります。
  9. 井手以誠

    井手委員 それでは労働省に先にお伺いをいたしますが、例の炭鉱に対する最低賃金制の問題は、あらためてその必要を認めて委員会を設けることになっておると承っております。しかし、じんぜん日を送っては、この緊急な石炭対策、雇用安定には間に合いません。一体いつごろその結論をお出しになるよう労働省ではお考えになっておりますか。
  10. 大島靖

    大島政府委員 ただいま先生指摘通り、去る三月三十一日に中央最低賃金審議会におきまして、石炭鉱業における最低賃金制は望ましいと認められる、並びに、これが具体的な問題の検討にあたって専門部会を設置すること、こういった趣旨答申労働大臣あてに出されたのであります。これに基づきまして、政府といたしましては、早急にこの専門部会の設置の手続を進めておるところであります。具体的にこの専門部会におきまして、各般の石炭最賃の問題を検討されるわけであります。現在事務当局におきまして石炭鉱業における賃金の詳細な実情を、先般来調査いたしております。その調査の結果が全国から集まって参りまして、大体四月の半ばころから逐次集計の結果が判明して参るだろうと思います。その結果を参考にしながら、専門部会で具体的に検討を進めて参るわけであります。いつごろまでに結論が出るかという時期の点につきましては、ちょっと申し上げかねるわけでございますが、専門部会としても、おそらくなるべくすみやかに結論を得られるように検討されることと私どもは期待しておる次第でございます。
  11. 井手以誠

    井手委員 すでに詳細な調査はでき上がって、四月半ばころから集計にかかり、それを専門部会にかけるというのですから、専門部会にかけて一カ月もすれば、私は常識的に考え結論は得られるだろうと思う。また少くとも今回の石炭対策答申される六月ごろには、同時にやはり最低賃金についても政府方針がきめられなくてはならぬと私は考えるのです。大事な雇用安定に関する石炭対策が六月ごろに出る、最賃の方はもっと延びるということでは、ずっと以前から審議をしておった最低賃金要望に沿わないことになるのですが、基本方針としてはどうですか。端的にお伺いしますが、おそくとも政府のいわゆる石炭対策がきまる六月ごろには、同時に決定される見込みだという御方針ですか。
  12. 大島靖

    大島政府委員 この問題は、専門部会あるいは中央最低賃金審議会において具体的に御検討を願うわけです。従って政府といたしまして、いつごろまでにということはちょっと申し上げかねるわけでありますが、先般、三月三十一日の答申の出ました際の中賃の総会におきましても、総評の岩井委員から、やはりなるべく早急にやってもらいたいという御要望があり、これに対して中山会長からも、問題が非常に困難複雑であるからいつまでと言うことはできないけれども、なるべく早く急ぎたい、こういう趣旨お答えがあったわけであります。政府としていつごろまでにというようなことはちょっと申し上げかねる次第であります。井出先生の御心配になっていらっしゃる点、趣旨等は私どももよくわかりますが、事務当局といたしましてもできるだけ急いで問題の処理に当たる、こういう方針で参りたいと思います。
  13. 井手以誠

    井手委員 幸い労働大臣がお見えでありますからお伺いいたしたいと思いますが、例の専門部会にかけられました炭鉱に対する最低賃金制問題——政府の今回の石炭対策は、六月には大体きまるといわれておるのであります。最低賃金の問題は大臣も御承知のように昨年からの問題でありまして、先般の三月三十一日の答申においても、その必要を認められておるのであります。私は今事務当局にいつごろ答申を得られる方針であるかと聞いたのでありますが、なるべくすみやかということであります。しかし、私この際ぜひとも端的にお伺いしておかなければならぬことは、労働省方針は、私は少なくとも六月の石炭対策と同時に、おそくともそれまでにお出しにならなければならぬと考えるのでありますが、大臣のお考えはどうでございますか。おそくとも政府石炭対策が出されるときまでには、最賃の問題も決定したいというお考えですか。
  14. 福永健司

    福永国務大臣 申すまでもなく、あの中間答申におきましては、石炭産業における最低賃金が望ましい、そして、望ましいのであるから具体的に前進するために専門部会を設置すべきである、こういったような内容のものでございます。従って労働大臣といたしましてはこれを受けまして、この答申に盛られておりますようなことについて前進をさせるべく、急遽これについての対処を行なわなければならないわけでございます。ただいま井出さんがおっしゃいますように、この専門部会結論がいつごろまでに出さるべきであるか、こういう点につきましては、私が申し上げるまでもなく、この専門部会を構成する人々は、それぞれ権威者がそれぞれの立場を代表して参加されることになるように、私の方でその専門部会を構成する人を任命することになると思うのであります。そこで、この専門部会で鋭意御検討を願うわけでございますので、私といたしましては、明確にいつまでにということを申すのは少し行き過ぎであると思うのでございますが、できるだけすみやかであることは私も望ましい、こう思います。今具体的に井出さんが御指摘の他の施策、先般政府がきめました石炭対策の中に示唆されております権威ある調査団が、検討の結果答申をする、この時期とややタイミングが合うことが望ましいのではないか、こういうように仰せられるわけでありますが、先ほども申し上げましたように、別のものでございまするから、このときに必ず一緒でなければならぬとまでは申すわけには参りませんが、そういうようなものがいろいろ同じころに出そろうということになれば、全体としてやりいいということには確かになると思います。ただし私といたしましては、問題が問題でございまするし、構成する人人も違いまするし、また鋭意御検討を願うという意味から申しますと、はたしていずれの方が先であるかあとであるかということは、今直ちに労働大臣がどうあるべきである、こうは申しがたいのであります。この点についてはどうぞ御了承いただきたいと思います。
  15. 井手以誠

    井手委員 稲永さん、きょうはえらい歯切れの悪い答弁をなさるですな。大体答申の時期というものは、政府考えによって早くもおそくもなるはずですよ。緊急なものは、せいぜい勉強をして早く答申をしてもらう。慎重を要するものは、ゆっくりやってもらう。これは事によって明らかだと思うのですよ。最賃問題は、あなたの方と党としてもいろいろ折衝したことはございますが、あなたもよく御存じのはずです。いつもなるべくすみやかでは、承知できません。端的にお伺いいたします。緊急なこの炭鉱最低賃金制について、労働大臣は緊急を要するこの最低賃金制答申を、いつごろまでにお求めになる御予定でございますか。タイミングをはずしてはいけません。石炭対策は六月ごろに出るといわれておりますので、おそくともその必要があると思いますので、端的にお答えを願いたいと思います。
  16. 福永健司

    福永国務大臣 ただいま申し上げましたように、考もできるだけすみやかということは考えておるのでございますが、明確に期限を切りましていつまでにということは、先ほども申し上げるように、権威者ぞろい専門部会になるだけに、そこまで申すことはいかがかと思います。ただし、現に井出さんもそういう論議国会でなさっておられるのでありますが、国会を初め各方面でこのことについてはすみやかに結論が出ることが望ましいという議論等も非常に多くあるというようなことは、やはり何らかの意味で影響を及ぼすであろうと思うわけでございます。政府がそう思いさえすれば思うようになるではないかとおっしゃいますが、井出さんの方からそう言われるのは、井出さんの方の御希望のものについてそうおっしゃるので、都合の悪いことには、政府の思うようにそう早くいったのでは、またおしかりを受けるのであります。この辺はまたなかなかむずかしいのであります。私はこの専門部会権威を尊重いたしますがゆえに、かく申し上げるのでございます。井出さんから歯切れが悪いとおっしゃられるのでありますが、あんまり歯切れをよくいたしますると、この専門部会の方が、政府の思うままに、早くもおそくも、言われる通りにしろとまで言われるんじゃという、向こうの立場もあろうと思います。いろいろ考えまして、こういうようなことを申し上げておる次第であります。
  17. 井手以誠

    井手委員 政府石炭対策として、いつごろまでに答申があることが必要であるとお考えになっておりますか。突き詰めてお伺いをいたします。詳細な調査は、すでにでき上がっておるそうであります。ここ何日かうちにそれを集計して専門部会にかけるという局長お話がございましたから、もう資料はそろっておる、あと権威者ぞろい検討するだけ、明日は、政府の必要とする時期に出てくることも私は可能であると考えます。そこで政府のお考えとしては、六月ごろまでには答申を得ることが必要であるとお考えになっておりますか。
  18. 福永健司

    福永国務大臣 権威者ぞろいでございまするが、その権威者それぞれがみんな同じことを考えているとは、必ずしも言いがたいと思うのであります。従って、権威者がそろいましていろいろ御検討願い、御論議を願いますということになりますと、これはさっといくか——そういう場合もあろうかと思いまするが、なかなかそう参らぬ場合もあろう、こういうことも考えられる。そこで私といたしましては、今井出さんはいつごろまでであるべきであると思うかというような意味で御質問でございますが、いつまでであるべきであるというところまでは、ちょっと答えにくいのでございます。なるべく早いことが望ましいという、少し言葉は違うのであります、若干弱い表現になろうかと思いますが、権威者がそろうところの専門部会に敬意を表してのことで、ただし、今も井出さんのおっしゃいますような点等がございますので、この専門部会に対しましては、私はいつまでであるべきであるという言葉は使いませんが、国会でこの種の論議があるということは、適当な方法において伝えたい、そして促進をはかりたい、こういうように考えます。
  19. 井手以誠

    井手委員 石炭対策の重要な三本の柱の一つでございますから、何としても私はその方針を承っておきたいと思います。ただ初めから呼んでおりました通産大臣に緊急の質問がございますので、一つ福永さんの腹が固まるまで、しばらく時間をかしたいと思います。  通産大臣にお伺いいたします。今回の石炭対策一つとして、原料炭開発大臣は非常にお考えになっておるようであります。原料炭昭和四十年ごろには、今の五千五百万トンの一般炭出炭とは別に、年間五百万トンぐらい開発出炭したいという計画もあるように承っておるのでありますが、通産省の原料炭開発に対する計画をこの際承っておきたいと思います。これは今後の石炭対策、積極的な前向きの対策として非常に必要でございます。あとでなお、有明海開発について特にお伺いをいたすつもりでございます。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今回閣議決定をいたしましたその中の一つ、積極的な方向として、原料炭開発ということを取り上げております。これがただいま言われます五千五百万トンのワクの外だとか内だとかいう議論があるようでございますが、その議論は過日も申し上げましたように、問題は合理的経済性のある炭であるならば、これはぜひともほしいのだ、こういうことを実は申し上げておりますので、その合理的経済性のある炭が出てくれば、五千五百万トンにとらわれない、かように御了承をいただきたいのであります。ただいまお尋ねになりました原料炭は、すでに御承知のように、外炭を一千万トン以上買っておると思います。これを国内でまかない得るといたしましてどの程度可能か、いわゆる強粘結炭はないにても、強粘結炭と弱粘結炭との混用によって目的を達する場合等もございますので、いろいろそういうものも検討いたすわけでございます。まだ数字がまとまっておるわけではありませんで、これから原料炭開発計画一つ進めてみよう、こういうことでございます。大体統計上の数字から申せば、五百万トン程度外炭国内炭に振りかえ得るのじゃないか、こういう感じがしております。そういう量は一応数字の上から出てきます。これがはたして合理的経済性のある炭になるかどうか、ここを一つ十分考えたいと思います。従いまして、労使双方にそういう意味開発計画に御協力を願います。政府側といたしましても、今後の出炭計画等については特別な融資方法ども考えなければならぬじゃないか、かように思いますが、いずれにいたしましても具体的計画を進めて、そしてそれを国内炭に置きかえ得るように一つ努力して参りたい、かように考えておる次第であります。
  21. 井手以誠

    井手委員 石炭局長にお伺いをいたします。  その原料炭開発は、どこどこを予定されておるのか。私の調べたところでは、有明海海底炭、この開発が一番有望であると承知をいたしております。可採炭量四十億トンとも言われておるようであります。この有明海海底炭開発四十億トンのうち、七割以上が原料炭であると私は承っております。従ってその開発は、老朽化した筑豊炭田唐津炭田にかわるきわめて有望なものである。労務対策からいっても、経験のある今の炭鉱労働者をそこに振り向けるということ、外貨を節約して、今大臣お話のように五百万トンを開発するというようなこと、それらを考えますと、一石三鳥のいい案であると私は思うのですが、全国的な原料炭賦存状況あるいは開発内容、特に有明海海底炭開発についての調査はもうすでに終わっておると思いますから、この機会にお伺いをしておきたいと思います。
  22. 今井博

    今井(博)政府委員 原料炭開発につきまして、現在新鉱開発計画として一応われわれが検討いたしておりまする炭鉱名は八件、八カ所でありまして、有明有明、松島、古河、柳川三井山門南大夕張、清水沢、磐の沢、以上八カ所につきまして新鉱開発計画を今検討いたしております。御指摘になりました有明海は、そのうちの三カ所でありまして、有明と申しますほかに、先ほど申しました中で柳川三井山門、この三カ所がいわゆる有明炭田原料炭開発計画でございます。このいわゆる有明と申しますのは、現在日鉄鉱業がすでに縦坑を二カ所開さくしておる個所であります。これは三十九年度には着炭をいたしまして、およそ二百万トン程度出炭規模炭鉱になろうかと思います。それからそのほかに、今申しました柳川三井山門、この件は現在まだ、ことに三井山門につきましては、これは戦争中に一応着手しまして、水が出た経緯等もございますが、最近の開発技術をもってすれば、十分開発ができるのじゃないか、こういうふうに考えておりまして、これは年間やはり百五十万程度出炭規模の山には十分できるのじゃないか、こう考えております。それから柳川につきましては、これは非常に有望な炭田ではございますが、御承知のように、上の方は相当美田でございますので、やはり鉱害等関係考えて、はたしてどの程度の経済的な出炭ができるかという点を現在検討いたしております。これも有望な炭田一つであると思います。従って有明炭田につきましては、現在日鉄鉱業が着手いたしておりまするいわゆる有明の問題と、それから三井山門柳川、この三カ所に重点を置いて開発計画検討したいというつもりでございます。
  23. 井手以誠

    井手委員 その三カ所のほかに山口もありましょうし、なお開発すれば相当の広範囲にわたって私は開発ができると思うのですが、もしそうなりますと、どのくらいの可採炭量になるのか。三十四年度から調査を始められてもう調査は進んでおると思いますが、私の聞いたところでは、四十億トンの七割以上は原料炭であると承っておりますが、いかがですか。
  24. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいまの調査では、賦存炭量としては約四十億トン程度という調査の結果が出ております。そのうちの約三分の一ないし四分の一、可採炭量としてはその程度じゃないかと思っております。
  25. 井手以誠

    井手委員 その大部分は粘結炭ではございませんか。
  26. 今井博

    今井(博)政府委員 そうでございます。
  27. 井手以誠

    井手委員 大臣お聞きの通り、きわめて有望な原料炭開発であると考えるのであります。ところが、あいにくこの未開発炭田が、今の日鉄の関係はすでに開発に着手されておりますが、そのほかのものは未着手のものがかなりあるようです。そういったものをほんとうに開発しよう、国の立場でやろうとするならば、この開発の機構というものを、民間会社にまかせずに、公団その他の構想によってやる方法はないのか。ただ自分が先に発見したからといって、先願主義でその民間会社にまかせるということだけではいかないと思うのですが、そういった開発計画に対する構想はございませんか。
  28. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いろいろ御意見がおありだと思いますが、私どもは、ただいま民間企業によって開発する、これを本筋と実は考えておるのでございます。従いまして、民間企業開発するについて、支障ありやいなや、またその支障はどういうように排除していくか、こういうことを第一段に考えるということでございますので、今お話しになりましたような突き進んだ開発計画、これはただいま持っておりません。ただ、御指摘になりますように、鉱区の問題がしばしば論議されますので、こういう点について行政指導がどの程度可能でございますか、わかりませんが、積極的に指導をいたしまして、開発を伸ばしていくように、政府も十分協力するつもりでおります。
  29. 井手以誠

    井手委員 公団のごとき構想のものは先の問題にいたしまして、それでは、今回の石炭対策一つとして取り上げられましたこの原料炭開発については、積極的にこの三十七年度から計画をお立てになるおつもりでございますか。その点の熱意を承っておきたい。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりますように、これはぜひとも積極的に取り上げたい、かように考えております。  先ほど労働省所管最低賃金についてのお話が出ておりますが、私は閣議決定を二年、昨年もほぼ同様のもの、今回はさらにその内容を充実したものを閣議決定をいたしております。これは時期的その他からおくれておる感が非常に深い。こういうことでは相なるまいと思いますので、さらに積極的にいたすべく、すでに閣議においてもその発言をいたしておりますが、私ども実際の問題としてその衝に当たる者が積極的に問題の解決と取り組む、この気持でおります。
  31. 井手以誠

    井手委員 時間がありませんから、十一時までの間にいたしたいと思いますが、三十七年度からの出炭計画あるいは千二百円のコストの問題、石炭価格引き下げの問題、これはずいぶん論議されたことでございますが、これを決定なさる石炭鉱業審議会でございますが、これがややおくれておるようでございますが、いつお開きになる御予定でございますか。その時期というのは非常に重要でございますので、一つ大臣の腹案をお示し願いたいと思います。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ややおくれておるという意見がございますが、私どもといたしましては、もう三十七年度に入っておる次第でございますから、千二百円下げの問題もすでにきまっていなければならない、ただ今回は、やや時期的におくれておる感じも実はいたしておるのでございます。それはむしろ好意的な考え方だと御了承いただきたいと思いますが、そういうことがございますが、最近閣議決定もし、いろいろ問題が重なりつつございますから、できるだけ早目にいたしたいものだと思います。ただいま、御承知のように春闘なども提起されて、ちょうど賃金の交渉中でございますので、こういう点もございますので、この開催の時期等はそれとも十分にらみ合わせていかなければならぬだろうと思います。ただいまいついつということは、なかなか言いにくいことだと思いますが、月が変われば、もちろん開かないと需要者側に対しましても不安定の状況でございますので、できるだけ早く開きたい、こういう気持でおります。
  33. 井手以誠

    井手委員 四月一ぱいではございませんか。五月になってからですか。四月中にお開きになるつもりですか。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの関係では四月中はやや無理じゃないかな、こういう感じがいたしております。
  35. 井手以誠

    井手委員 重ねて伺いますが、千二百円の引き下げは、これは目標として堅持したいと再三あなたからお話がありますが、しかし物価の値上がりは考えなければならぬ、無理はしたくないというお話も承っておるのでありますが、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。結論的にお伺いしたいのは、千二百円の炭価引き下げは堅持していくけれども、物価の値上げの分については別途考えなくてはならぬ、これは別だ、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。たとえば今まで物価は三百円上がった、坑木代その他が上がった、その分だけは先に延ばす、こう理解してよろしゅうございますか。そうでなければ炭鉱側に無理がいきますから……。
  36. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ちょっとニュアンスが違うかと思います。私どもが申し上げております千二百円下げ、これはもう物価の問題は総合的に考えてみなければならぬと思います。どうも安くなったものはないじゃないかと言われるかもしれませんが、鉄材はやや下がり目だろうと思います。いろいろ勘案してきめていかなければならぬ。そこで上がったものだけを抽出して、それでこれはもうどうしようもないのだ、こういうふうなわけにいかぬと思います。ただ私が申し上げておりますのは、千二百円下げというものは三十八年までに実現する金額でございます。今問題の石炭鉱業審議会でやりますものは、三十七、三十八年、その割り振りの問題が一つあるわけでございます。そういうことを考えて、あまりきついことにならないようにという気持はございますけれども、そういうような考え方で、時期的な問題でもある程度調整の方法はあるのではないだろうか。いろいろなものを意味しているというのが、私の気持でございます。だから今井出さんが言われるように、坑木ははっきり上がったじゃないか、この上がったところのものは、千二百円下げの際には予定しなかったものだから別にしてくれ、あるいは電力料金しかり、あるいは賃金の引き上げしかり、こう言われると困るのでございまして、そこらはもう少し——同情はいたしておりますけれども、これは別だと画然と区別されますと、議論が分かれて参ります。ただ時期的な問題で、三十八年度までに合理化の目標を達する。そこに幾分か時期的なゆとりがある、かように御了承いただいてもよろしいかと思いますが、そういうような考え方でございます。
  37. 井手以誠

    井手委員 石炭局長にお伺いしますが、三十七年度も予定通り二百五十円下げるということになると、相当の赤字が出るといわれておるのであります。トン当たり三百円前後の赤字が出るといわれておるのであります。それはどの無理ができるかどうか。物価の値上がりは、予想しなかったものだ。三十七年度は赤字が出るでしょう。
  38. 今井博

    今井(博)政府委員 これは、一番問題になりますのは、スクラップをいたしました場合のスクラップの費用を一体原価に全部織り込むかどうかというところが、非常に赤字が大きくなるかならぬかのポイントでございまして、これはやはり特別にたな上げして、ある程度長期に繰り延べて償却する、そういう考え方に立ちますと、赤字が減ってくるわけでございます。それがどの辺のところで繰り延べ償却することが妥当か、こういう点を今金融関係者とも打ち合わせておりまして、そういうことを詰めませんと、今言われました三百円というのは、最大限何もかも入れた赤字でございますので、現在常識的に見た場合のそういう償却の仕方を考えて、どの程度赤字になるかという点で詰めていかなければならぬと思います。その辺がまた論議の分かれるところでございまして、どの程度赤字かということについてはちょっとまだ数字を申し上げる段階に至っておりません。
  39. 井手以誠

    井手委員 大臣にいろいろお聞きしたいのですが、事務当局がおくれたために十分な質問ができませんでした。午後に保留をしておきたいと思います。大臣、どうぞけっこうです。  労働大臣前の方に出て下さい。二十分ばかり時間がございましたから、腹もそろそろ固まったと思いますのでお伺いをいたしたいと思います。  審議会の意見を聞くというのは、専門家の知識が必要である、政府だけできめることはおもしろくないので民主的に専門家の意見を聞こう。しかし、それがいつごろまでにほしいというのは、他の審議会でも委員会でもあるのであります。慎重々々で、いつ答申してもいい、権威者だからその意見を尊重して、半年も一年も延びていいというものではないはずです。これはいつ必要であるから、いつごろまでに答申を願いたいというのが普通です。大臣は議運の委員長も長くなさっておったし、その点は万々承知のはずだと思う。今大事なこの石炭対策に、それじゃ急いで六月ごろまでに答申を得て決定しようというこの段階に、これは別だから慎重にやりたい、権威者意見も聞きたいということでは話にならぬのです。それでは、かねて炭鉱労働者に熱意があると言われておる福永労働大臣の気持が、変わったのではないかと疑いたくなる、いま少し熱意のあるところを示してもらいたい。もう出ておらなければならぬはずです。それがまた、今度は専門部会にかけるという。それじゃ専門部会はいつ答申をやるか。もう条件はそろっているじゃありませんか。調査もでき上がった、権威者ぞろいである。そこにかければ、無理すれば、一週間十日あれば、ある程度結論が得られるはずですよ。それを最大期間考えて、五月一ぱい、あるいは六月半ばかいつか知りませんけれども、そのころには政府出してくれと言うなら、出せぬはずはないのです。どうですか。
  40. 福永健司

    福永国務大臣 なるべくすみやかにということにつきましては、私も強くそう考えておる次第でございます。ただなるべくすみやかということが、現実にうまくいかせるということになるかどうかは、なかなかそこいらの点がむずかしいのじゃないかと思うわけでございます。この例がそのまま当てはまるとも考えませんけれども、別の事情でございますが、先般の国鉄関係の年度末手当の場合におきましても、なるべく早くということで動力車と早いところ妥結したところが、国労の方にうんと怒られてしまって、ああいうような問題にもなったというような、これは問題は違いますけれども、急ぐからといっても、なかなかそこいらのところの呼吸というものは、むずかしいのじゃないかと思うわけでございます。  井出さんも御承知かと思いますが、三月三十一日に中賃の総会をやりましたときにも、総評から出ております岩井委員から中山会長に対しまして、早急に専門部会での結論を出さなければならないが、いつごろに出るのであるかという意味の発言があったときに、たしか中山さんは、問題の複雑困難性にかんがみていつごろまでとは言えないけれども、なるべく急ぐようにいたしたいというようなことを答えておるようなわけでございます。先ほど来たびたび、はっきりしたことを申し上げないというのでおしかりを受けるのでございますが、労使公益三者のそれぞれの権威者にお願いを申し上げて、この専門部会を持っていただくにつきましては、私といたしましても、いつまでにというようなことでごきげんを損じたりいたしますと、かえって結論の出るのが思うようにいかないというようなこともないとも言えない、あるとは申しませんが、その辺等も考えまして、権威者であるだけに、この問題が非常に急を要するということもよく知った人々でございます。そしてまた部内でも、今申し上げましたような質疑応答等も行なわれておる。ことに国会では、本日の井出さんの御質問を初めといたしまして、多くの皆さんからそういう御意見の御開陳があるわけでございます。これらにつきましては、国会においても論議はかような次第であるということが向こうに伝わるように私はいたしたいと思うのでございます。先刻来申し上げておりますように、いろいろそういうことを考慮いたしますために、明確に何月の何日ごろまでにということは私申しがたいのであります。しかし、今のような質疑応答がしばしば繰り返されておるということによって、専門部会も大いに考慮をされ、こういった点にも意を用いて、すみやかなる作業をしていただけるものというふうに期待をいたしておる次第であります。
  41. 井手以誠

    井手委員 何事もやはりめどというものがあるはずです。秋でいい、来春でいいというようなことではないはずです。だから政府はこういうふうにしてほしいという一応の時期というものは表明されたって、別に権威者のごきげんを損ずるようなことにはならぬと思う。そんなつむじ曲がりの人は、権威者にはおられぬと思うのです。政府はいつまでに答申がほしいということは、言えるはずです。そのめどによって審議がゆっくりされるか急いでされるか、いろいろあるでしょう。何も徹夜してやれとは私は申しておりません。しかし、それほど条件がそろっておる。調査が進んでおるのですから、いかに、複雑な事情があるとは言え、めどまで言えないはずはないですよ。大体政府福永さんはいつごろまでにほしいと思っていらっしゃいますか、それだけでいいです。
  42. 福永健司

    福永国務大臣 いつごろまでというのは、先ほどから申し上げておるような次第で申し上げにくいのでありますが、しかし切実な事態にあります石炭産業全体についてのいろいろの安定施策の推進全体を考えましても、やはりあまりにちぐはぐになるのはいかがかと思う。従ってできるだけ足並みをそろえたい、そういうようなタイミング関係等から申しますと、ある程度常識的にこんな見当であろうというのが出てくるわけであります。それを何月何日というようなことを言わずに、専門部会も感じてすみやかな作業をしていただけるようなことに進めたい、こういうように考えておる次第でございます。  しからばそのタイミング関係からいっていつだ、こういうふうに井出さん多分井出さんすぐお聞きになるだろうと思うのでございますが、そこら辺は一つまあお聞きにならずに、いろいろ井出さんがおっしゃっておられることで私もそうわからぬのじゃございませんので、先ほどから申し上げておりまする通り井出さん、言えとおっしゃいますけれども、私自身は何月何日までということは、この専門部会の発足にあたってそういうことを言うてしまいますと、かえってまずいんじゃないかと思います。従って専門部会が始まりまするし、また作業も進捗していきますので、その進捗の度合い等を見て、今申し上げたようなことが効果的に現われてくるようなことは、私は私なりにやっていきたい、こういうように存じております。
  43. 井手以誠

    井手委員 わかっておるつもりだということでございますから、もう一点だけにとどめておきたいと思いますが、それでは、石炭対策の重要な柱であるから、政府石炭対策がきまるころには最賃の方も答申を得たいという希望を持っておる、そういう腹であると理解してよろしゅうございますか。
  44. 福永健司

    福永国務大臣 そのままでございますと申し上げると、そのほかにも付随してだいぶ井出さんがおっしゃったので、全面的にいろいろ肯定したかのようなことで、あとでまたおしかりを受けるといけませんので、念のために少し注意してものを申し上げておきますが、まあ、今おっしゃいましたこととそう遠くないようなことに私は考えておるわけでございます。なるべく早くといっても、来春というようなばかなことはないだろうと先ほどもおっしゃいました。まさにその通りに私は考えておるのでございます。そう大差はないつもりでございまするから、御了承をいただきたいと思います。
  45. 井手以誠

    井手委員 労働大臣石炭対策の決定と前後して答申を得ることが望ましいという腹のように承りました。まあ、しようがございません、それでけっこうでございます。  石炭局長にお伺いをいたしますが、昨年の中小鉱に対する年末の緊急融資実績はどうなっておりますか。
  46. 今井博

    今井(博)政府委員 中小金融公庫と商工中金の関係を分けて御答弁申し上げますが、中小金融公庫の関係は、件数は全体で百十八件で金額は九億九千六百万円、これは昨年の十二月末の数字でございます。それから商工中金関係は七十五件で五億四千九百万円、合わせて件数としましては百九十三件、金額は十五億四千五百万円、これは昨年の十二月末の数字でございまして、その後中小金融公庫の関係では約二億程度の追加がございまして、これは件数と金額の確定した数字についてまだ詳細ななにが入っておりませんが、約二億円の追加があった、こういうようにお考えいただいてよろしいと思います。
  47. 井手以誠

    井手委員 融資ワクは幾らでございましたか。
  48. 今井博

    今井(博)政府委員 全体で十五億でございます。
  49. 井手以誠

    井手委員 三十七年度の需給計画については、今後石炭鉱業審議会で検討されるであろうと考えておりますが、聞くところによりますと、大手筋は増産によるコスト引き下げを行なうために、非常に増産体制が進んでおると承っておるのであります。けっこうなことでございますが、そのために中小鉱にしわ寄せになるということはまた好ましくないことでございます。新聞の報道なんかによりますと、一応五千五百万トンといわれておるのが、六千百万トンあるいはそれ以上になる可能性もあるといわれております。そこでお伺いしたいのは、五千五百万トンにおける大手と中小鉱の出炭計画はどうであったのか、あるいは増産計画はどんなふうに進んでおるのか、またそういうふうに予定以上に出した場合には、どんなふうな行政指導をなさるつもりなのか、それらの点をお伺いいたします。
  50. 今井博

    今井(博)政府委員 五千五百万トンの出炭計画の中で、大手、中小の比率は、大手が約三千八百万トン、中小が千七百万トン、合計五千五百万トン、こういう計画でございますが、三十七年度の出炭計画がどうなるかという点につきましては、新聞等で六千万トン以上になるというふうなことがだいぶ出ておりますが、われわれはそういうふうに考えておりません。現在の会社のいろいろな希望計画というものは別にしまして、現実に掘れるだけ掘ってみろということをやってみましても、まあ五千七百万トンから八百万トン程度、これがせいぜいじゃないかというふうに大ざっぱに考えておるわけであります。しかしこの中には、ストライキの問題もございましょうし、災害等の問題もございましょうから、実際の出炭数字はそれよりも下回るというふうにわれわれは考えておるわけであります。この点は、過去の出炭計画をとりまして、いろいろな実績を積み上げました場合におきましても、常にそういう問題が起こっておるわけでございまして、過去におきまして、会社提出計画が非常に多かった。たとえば三十六年度におきましても、会社から提出を求めました数字を全部合計いたしましたときは、六千百十一万トンという数字が出たわけでございますが、これが、実績としましては五千四百八十万トンというふうに実はことしはなりそうでございます。そういった問題がございますので、新聞等に出ております数字がそのまま出炭計画になるというふうには考えておらないわけであります。この場合に、大手と中小をどういうふうに見るかという点は一つの問題でございまして、特に大手炭鉱から、このたびいろいろ第二会社その他で中小炭鉱に移った山もございますので、そういう意味からしますと、この千七百万トンという中小のワクは、あるいは若干ふくれるのじゃないかというふうに見ておりますが、いずれにいたしましても、新聞等に出ておりますような非常に膨大な数字になるといろことは、現在のところはわれわれとしては想定いたしておりません。
  51. 井手以誠

    井手委員 過去の実績はそうであったかもしれませんが、私は今後はそう甘いものではないと考えるのであります。増産によって炭価を引き下げていこうという気配が非常に強いし、またそれだけの体制を持っておる。三池などの場合を考えますと、私はかなり増産ということも考えねばならぬと思うのです。その場合に、大手は資本を擁してどんどん増産ができる。そうすると、中小にしわ寄せがくる。その場合にはどうするかということをやはり考えておかねばならぬと思う。いま一点は、ただいま御答弁の中にもありました第二会社というものを、大手に入れるのか中小に入れるのか、これはやはり大手の中に入れるべきではないか。もし中小に入れるとするならば、そのワクを変えるべきではないか。この点の行政指導方針というものを、やはりはっきり確立しておく必要があると私は考えるのであります。ストによる減産というのは、今までは年間百五十万トンとか二百万トンというような予想があったでしょう。しかし、今日の労使の現状から申しますと、ストによる減産ということはあまり予想はできないのじゃないか。それをあわせ考えますと、私はそう甘いものではないと思う。増産も予想しなくてはならぬと思うのです。その点はどういうふうに指導なさるつもりであるか。大手は三千八百万トンだ、その中で操作すべきである、各会社間で操作を行なうべきである、中小は千七百万トンで操作をすべきである、第二会社はどうすべきであるという、確固たる基本方針がなくてはならぬと思いますが、その点はどうですか。
  52. 今井博

    今井(博)政府委員 もちろんこの中小関係、これは一応のワクでございまして、実際には大手の系列会社は、大手が自分の生産と同時に、それと関連してその生産計画をどうするかということを考えるべきだと思いますので、これは一応形としては中小のワクという計画になりますが、実際には大手が自分の系列会社についてはやはり大手のワクの一環として考えるという御指摘については、同感でございます。  それから今までの経過を見ましても、今まで出炭調整をやりました過去の経験から見ますと、大手が出炭調整をやりました場合には、大手だけがかぶって、中小の方はそれとはほとんど無関係にやっておったということで、出炭調整をしましても大手だけがかぶる。むしろ中小にしわ寄せるよりは、逆に大手にしわ寄せられるという結果になっておりますので、この点は過去の何からいたしますと、中小にしわを寄せて考えるということにはならないんじゃないかと私は思います。  それから、ことしは六百二十万トンの買い上げ、買い上げといいますか、今度の新しい方式の炭鉱整理のワクを設定いたしまして、この関係については相当中小炭鉱関係から希望がございまして、この面からする中小炭鉱の出鉱減というものはやはり相当あると思いますので、従来のような数字で推移するとは考えません。やはり大手系列会社を除いた中小炭鉱出炭というものが、従来よりは相当程度減るというふうに考えておりますので、それは自然にそういう数字になるというふうに考えます。どちらにいたしましても、大手の方の計画のしわを中小炭鉱に寄せるということは考えておりませんし、またそういうふうに計画しましても、実際問題としてはしわ寄せにならないというのが過去の実績でございます。
  53. 井手以誠

    井手委員 それでは、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。大手の租鉱炭鉱あるいは第二会社というものは大手に入るべきものである、また出炭調整については、過去の実績あるいは買い上げその他を考えると、さほど心配するほどのことはない、五千五百万トン程度でつじつまを合わせられるであろう、中小炭鉱にしわ寄せされるようなことはないと思う、かように考えてよろしゅうございますか。
  54. 今井博

    今井(博)政府委員 おおむねけっこうでございますが、ただワクの分け方としましては、やはり大手と中小との形式的な分け方については、系列会社の方は中小炭鉱の方に入れて考えるということにならざるを得ないと思います。ただ実質的には、そういうものも含めて大手が生産調整をする場合にはすべきものである、こういうふうに実は考えておるわけであります。
  55. 井手以誠

    井手委員 そこで最初に私がお伺いしました、先般岡田委員からの要求による第二会社、租鉱炭鉱資料はいつお出しになりますか。きょうでこの合理化法関係質問を終わるようでありますが、ぜひその資料がほしいのです。
  56. 今井博

    今井(博)政府委員 岡田委員の御要求の資料につきましては、一応取りまとめまして岡田委員のところへ御相談に上がったのでありますが、第二会社関係資料、それから大手の系列事業といいますか、大手がどういう炭鉱以外の仕事をやっておるかという点の資料につきましては、これは非常に、詳細に出せば出すほどいろいろ差しさわりがございまして、会社の方もそれをそのまま出せということについては非常に——そういたしますと、ほんとうの詳細な数字が出てこない点もございますので、一応その点は資料要求の中からとっていただくように御相談いたしまして、実は岡田委員の御了解を得ておる次第であります。非常にばく然たる資料だと、これはまた役に立ちませんし、あまり詳細にわたりますと非常に誤解を生む点もございますので、この点はもしも必要でございましたら、持って上がっていろいろ御説明する、こういうことにしていただきたいと思います。
  57. 井手以誠

    井手委員 事情はわかりました。ただ、第二会社なり租鉱炭鉱なりというものの最近の性格は、非常に変わっておるのであります。この点は、先般滝井委員からもいろいろと質問がございました。私の郷里の周辺でも、非常に著しい例が住友系の炭鉱にございます。ここでは公にすることは遠慮いたしますけれども、第二会社なり租鉱炭鉱については、今般の石炭対策にももちろんその一環として載せられておりますが、これはきわめて悪意に満ちたとは申しませんが、石炭合理化切り抜けの脱法行為で、今まで相当の待遇を与えておった炭鉱が、実際は賃金は坑内夫で一万一千円弱、それからいろいろ差し引きますと手取り一万円、それでは生活ができませんので、哀訴嘆願して二時間の時間増し、時間外労働を最近やって、やっと一万三千円程度の収入になっているということ、福利施設というものがほとんどなくなったということ、こう考えて参りますと、その後炭鉱はもとの労務費の、あるいは福利費の半分程度で上がっておるということも言い得られるのであります。そういうのが意識的にあちらこちら起こっておる。その点、第二会社、租鉱炭鉱については十分御検討願いたいと思います。  もう一つお聞きしたいのは、これはもう何回も論議されておりますが、三十六年度も終わりましたから、この機会にお聞きしたいのは、炭価は三十四年度から三十六年度まで、三十三年度に比べて幾ら下がりましたか。先般、臨時国会では八百十五円ということを承っておりましたが、幾ら合理化によって下がったか、物価の値上がりなどによってどれだけの負担がかかったのか、その点を数字だけでけっこうでございますが、お答えをいただきたいと思います。
  58. 今井博

    今井(博)政府委員 非常に大ざっぱに申し上げますと、毎年二百五十円ずつ下げてきた、こういう数字になっておるのでございますが、これは実は鉄鋼向けとか電力向けとかいうものによって非常に違って参っておりますので、平均してどうなるかという数字が実は出ておりませんが、今までのところは計画通り二百五十円ずつ下げて参りました。あと三十七年度、三十八年度で二百五十円ずつ下げれば、千二百円引き下げの目的が達し得る、こういうことになっております。電力向けと鉄鋼向け、その他が違いますのは……。
  59. 井手以誠

    井手委員 それはいいです。それでは予定通り下がった。あと二カ年で、千二百円が引き下げになるわけですね。  それじゃ三十三年度に比べて、三十四年から今日まで三カ年間に、幾ら物価が値上がりになったか、トン当たりでお示し願いたいと思う。何回もお聞きした数字ですけれども、もう三十六年度も年度をこえましたから、この機会に正確な数字を承っておきたいと思う。
  60. 今井博

    今井(博)政府委員 トン当たりの今までの炭価における物価の値上がりは、四百十五円という数字が実は出ておるわけでございまして、この点今ちょっと資料で精細な内訳のところを探しておるわけでございますが、四百十五円、あるいは若干違っておりましたらあとで訂正させていただきます。
  61. 井手以誠

    井手委員 そうしますと、今までのところ、三十六年度までに合理化計画によって七百五十円引き下がりになった。そしてさらに物価の点について四百円——四百十五円でありますが、端数はともかくといたしまして、四百円以上のものが、労働者にしわ寄せにもなりますけれども炭鉱の経営者の負担になった、こういうことになるわけですね。七百五十円と四百円、千百円以上の実質上の引き下げになった、かように考えてよろしゅうございますか。
  62. 今井博

    今井(博)政府委員 ちょっと先ほど数字を訂正いたしますが、物価の上昇にその他賃金の値上がりとか、償却引当金の増加とか、そういうものを一切込めた数字でございまして、物価の値上がりだけということになりますと、この四百十五円から、たとえば労務費の上昇とか償却引当金額、こういうものを引かなければいけませんので、そういうものを引いて考えますと、四百十五円の中で主要資材の単価の上昇は百四十円、こういう数字が出ております。これに、電力料金の改定によりまして十六円の値上がりが出ておりますので、その他のものを合計いたしますと、ちょっと今正確ではございませんが、四百十五円からは約百五十円程度は引かなければならぬかと思いますが、正確に計算いたしましてお答えいたしたいと思います。  それからちょっとつけ加えさせていただきたいのは、たとえば坑木が最近二〇%程度上がっておりますが、同時に原単位が非常に上昇いたしております。あるいは電力料金につきましても、電力使用の原単位というものが非常に合理化されておりますので、たとえば料金が上がっても、実はそれだけ負担増にならない、あるいは坑木の値段が上がっただけそのまま負担増にならないということになりますので、物価の上昇の数字が出ましても、それをそのまま企業が負担することにはなりません。その辺のところも少し芸をこまかくやらないと、実は正確な数字が出ません。そういう事情があることを御理解いただきたい。
  63. 井手以誠

    井手委員 芸をこまかくやりますと、労務費は合理化計画では三・八%であった、それをこえるものはやはり物価政策の結果ではないでしょうか。物価が上がるから賃金を上げなければならぬという悪循環が起こってくる。物価が横ばいだということでそういった合理化計画が立てられた。それがいろいろな面にはね返っているのですから、あなたのおっしゃるように、芸をこまかくやれば、逆に政府の責任だということになってくるではありませんか。その点はまたあとの機会に譲るといたしまして、ちょうどお約束の時間が参りました。なお時間が足りませんので、午後に譲りたいと思います。
  64. 有田喜一

    有田委員長 滝井義高君。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 石炭鉱業合理化臨時措置法に関連をして、少し技術的なこともひっくるめて、将来この法律を運営する上にぜひ一つ聞かしておいてもらいたいと思って、特に合理化事業団田口理事長に来ていただいたわけですが、まず政府の方からお尋ねしたいのです。  三十七年度から三カ年計画で六百二十万トンの新方式による合理化を進めるわけです。その場合に、三十七、三十八、三十九の三カ年間六百二十万トンをお進めになるわけですが、石炭鉱山保安臨時措置法では二カ年間で、保安の悪い炭鉱を措置されるわけですね。われわれは両方とも一貫した合理化計画だと思っておったわけですが、年限が一方は三カ年、一方は二カ年というちぐはぐな形をおとりになったのはどうしてでしょうか。もう二年すれば保安の悪い炭鉱はなくなるというふうにお考えになっているのかどうかということなんです。
  66. 今井博

    今井(博)政府委員 保安の関係は、普通の合理化と違いまして、保安不良の炭鉱は一日も早くこれをやめさすなり、あるいは改善させる、そういう措置が必要だ、こういうふうに考えまして、三十六年、三十七年というふうに、実は二カ年で検討をしたわけであります。むしろそれでもまだおそいではないかというふうな議論もあるくらいでありますが、実際問題としてはやはり二年くらいかかるであろうということでやったわけであります。しかし、どうしても二年で終わらない保安不良の炭鉱については、さらに続けてやる必要があるのだというふうな情勢になれば、さらにこの措置をどうするか、また考えなければいけない、こういうふうに考えております。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 私はやはり政府が合理的計画的におやりになろうとすれば、こういうものはむしろ足並みをそろえておいた方がいいのじゃないかという感じがするのです。保安の悪い炭鉱というものは、掘っていくにつれてだんだん採掘条件が悪くなっていくというのが、日本の山の通則なんです。そうしますと、あなたの方で三十九年まで六百二十万トンの合理化をおやりになろうとするならば、相当上がり山なんですから、最後はピッチを上げてくるわけです。無理してでも一人当たりの出炭量をふやしてくるということになると、保安の問題が出てくる。そのときになって、二年で保安の法律が切れて、あと一年はどうもその法律はなくなっておる、またその法律を一年延長するというのならば、ほんとうは初めから三年にしておいた方がよかった。しかし、これは法律が通ったのですから、私の質問する時期がちょっとおそかったのでやむを得ませんけれども、足並みをそろえておいた方がよかったのじゃないかという感じがするので、その点まず指摘しておきます。  次は、今後合理化の計画というのは、山をつぶすのに三つの方式が進行していくわけです。今までの旧買い上げの合理化方式と、今われわれが審議をしている新しい交付金を交付する合理化方式と、それから八谷さんの方の鉱山保安臨時措置の三つが進行するわけです。そこでこういう三つのものは全部、事務が田口さんの方で行なわれることになるわけです。今まで田口さん方の事務が、たった一つの今までの買上方式ではどうも進まない、なかなか事務がうまく進捗をしないということで、おそらく新しい保安関係の合理化と新方式が出たと思うのです。しかし、依然として今までの買上方式というものは進行しつつあるわけです。そうしますと、今までのものはやらなければならぬ、新しい方式が出てくる、鉱山の保安の方が出てくる、こうなりますと、一体今の合理化事業団の事務能力、機構等で応接いとまなきこの合理化の進行が——あなた方は事務の簡素化と能率化のためにこういう改正をやったのだと思うのですが、それがうまくいく体制にあるのかどうかということを、石炭局長にも答弁願わなければなりませんし、実際に事務をやる田口さんの方のお答えも、この際あわせてお聞きしてみたいと思います。
  68. 今井博

    今井(博)政府委員 この点は確かにわれわれ本当初非常に心配いたしたことでございますが、保安の方は、あらかじめ保安の悪い山というものは一応予定はいたしておりまして、これについては特に調査ないし勧告を進めておりますので、この点について事務量が非常に増加するというふうには実は考えておりません。従って、問題はやはり新しい方式の整理と従来の整理方式というものが重なった場合に、事業団の事務量が一体どうなるか、こういう点が一番問題かと思います。この点は、従来の買い上げの関係は、当初の計画では六十七万トンというものが三十七年度に持ち越された、しかもこれは従来からも申請が出ておりまして、昨年の秋から緊急的に調査を始めるようにたびたびお願いいたしておりますので、この点については相当調査事務が進んでおるのじゃないか、こう思っております。従って、新しい方式がつけ加わりましても、新しい方式については相当簡素なやり方をやることを前提にいたしておりますので、従来のような買収にあたっての非常に複雑な調査事務というものが、事業団の仕事からある程度解放されるということになるので、その余力でもってこの新しい方式に取っ組んでいただけば、これは相当こなせるんじゃないか、こういうふうに政府としては実は考えております。
  69. 田口良明

    田口参考人 ただいまの石炭局長の御答弁になお付随いたしまして、私から関連事項について御答弁申し上げます。ただいま滝井委員からお話のございましたように、この三十七年度は、三つの買収方式がございますので、事業団といたしましても、この事務の錯綜を防ぐために、あらかじめいろいろな手を打っておるわけであります。  第一は、旧方式の残でございますが、ただいま石炭局長からお話のありましたように、旧方式の残高につきましては、ただいままでに調査済みの炭鉱が約七割でございます。五十五万トンをすでに調査済みでございますので、旧方式の未調査の分はきわめて少ない数字になっております。  それから第二の、鉱山保安臨時措置法に上る廃止勧告に基づく炭鉱の評価につきましては、すでに始まっておりますので、これがいわゆる第三のニュー・スクラップ方式のいわば先鞭をつけるという意味におきまして、これがスピード・アップに、また事務になれる意味におきまして、私どもはこの問題について真剣に今取り組んでおるわけでありまして、この第二の評価方式が第三の新方式の調査のスピード・アップにかなり寄与するんじゃないかという考えを持っております。  最後に新方式の調査でございますが、従来の方式とほとんど変わりがございません。御承知のように、連帯責任がございませんので、できる限りこれが評価の能率を増進するということに、私どももようやく最近になって自信が持てるような状況になって参ったのでありますが、百二十万トンの新評価方式は、ほとんど事務の関係からは差しつかえないであろうという見通しをただいま持っておるわけでございます。
  70. 滝井義高

    ○滝井委員 今井さんの御答弁では、新方式でやるといろいろ複雑なことがなくなって、非常に簡単になったからというようなお話もございましたが、どうも私は同じことじゃないかと思う。ただ事業団の鉱業権者に対する連帯の責任というものはなくなったけれども、やはりお金その他はみんな業事団が握ることになるわけですね。被害者が押しかけていくことについてはやはり同じだと思うのです。事業団は、これだけしか金がありませんから、これでもう私の責任はない、あとは鉱業権者のところに行きなさい、こういうことになる。鉱業権者のところに行きなさいということになれば、田口さんのところには行かぬかもしれないが、今井さんのところにくることには変わらないと思う。なぜならぱ、国が買い上げたじゃないか、国がつぶしたじゃないか、だから国が責任を持て、こういう形になってくる感じがするのです。そこでそういう感じがするところを少し詰めていきたいと思うのですが、まず今までの買上方式、これは六百三十万トンでしたか。
  71. 田口良明

    田口参考人 そうです。
  72. 滝井義高

    ○滝井委員 全部の申し込みが一体幾らあるかということですね。これは今の六百三十万トンのワク外だといって、われもわれもと、もうなくなるんだというので、相当の申し込みがあったはずです。この申し込み総額は一体どの程度なんですか。
  73. 田口良明

    田口参考人 ただいままでの申し込みは、別にまだ新方式の募集をしておりませんので、旧方式で申し上げますると、約二百万トンのワク外がございます。ただ最近の情勢から見ますると、このうちの少なくとも半分は新方式を希望しておるようでございまするので、今後旧方式といわず、あるいは新方式といわず、申込人の自由にまかせるのが適当じゃないかというように考えております。
  74. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、六百三十万トン、プラス二百万トン、こういうことですか。新方式はちょっと別にして、八百三十万トンの申し込みがある。私の山を買い上げて下さいという申し込みは六百三十万トン、プラス二百万トン、こうなるのですか。総申し込みの総ワクはどのくらいなんですか。
  75. 田口良明

    田口参考人 旧方式で申し込んだのが、ワク外に百八十万トンです。二百万トンと申しましたが、百八十万トンでございます。それで、この中で約百万トンくらいは新方式にかわりたいという希望があるやに聞いております。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、六百三十万トンのワクの中で、六十七万トン残っている。そのほかに百八十万トン、なお申し込んでいる。そしてその百八十万トンのうち、百万トンは新方式でよろしいと言っている。こう理解して差しつかえありませんか。——そうしますと、政府の方では、ことし六十七万トンしか買わないわけでしょう、旧方式では。当初の予算の説明のとき、六十七万トン、こうおっしゃったですね。そうすると、六十七万トンというものは、旧方式でやって下さいという一応希望があるわけです。これは法律が死んでない、残っているわけです。これは旧方式でお買い上げになって差しつかえないわけでしょう。
  77. 今井博

    今井(博)政府委員 六十七万トンというのは、三十七年度の計画でございますが、実際には三十六年度のずれ込みがございますので、実際に三十七年度買い上げるのは若干それよりもふえておるのであります。それから、予算的措置としましては、一応六十七万トンで措置は終わっておりますので、それ以上の分を、ずれ込みは別としまして、この方式で買い上げるということは、制度としてはできますが、予算措置としては裏づけがございません。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 これは森さんに尋ねることになるわけですが、法律があって、そしてそれを希望した場合に、政府はやらぬというわけにいかぬと思うのですよ。ことしはやらなくても、来年はやらなければならぬことになると思うのです。私は合点がいかないのは、新方式でもいいと思うのです。しかし、新方式というのは底抜けなんですよ。しりが抜けているのです。被害者というのは、私はいろいろあとで全部詰めていきますが、もう泣かなければならぬ。行くところがないのです。筑豊炭田から石炭政策などの撤退作戦をとり始める。そして、たとえば一億なら一億の交付金をもらったら、その中で賃金から退職金から鉱害から、全部片づけなさい、こうなると、もし一億五千万円の未払い賃金、鉱害、退職金があるとすれば、五千万円は鉱業権者が出さなければならぬ。ところが一山一社というようなことで、もうこれから筑豊炭田を引き揚げていく。大手ならともかくとして——大手でも同じですが、この前私は言ったんですが、たとえば大手の炭鉱で、筑豊炭田全部引き揚げてしまう。そうすると、その一億の金を投げ出し田口さんのところに預けて、あとはしり食らえ観音で逃げてしまったということになれば、被害者は東京まで来なければならぬことになる。これでは、あとでいろいろ質問しますが、困ることになるわけです。そこで当然、これは旧方式というのが法律に残っておるのですから、旧方式のものが新方式に移るということは自由だが、同時に新方式から旧方式に移ることも自由でなければならぬと思うのです。その両者が自由自在に、法律が残っておるのにやれない、それだったら旧方式は全部削除されてしまったらいい。法律が残っておるのに、政府として予算措置をしないということはないと思うのです。だから、そのあとの方はまたやりますが、そこを一つはっきりしておいていただきたい。
  79. 今井博

    今井(博)政府委員 先ほど田口さんからお答えになりました百八十万トンですか、申し込みがあるというお話でございますが、これは別に受け付けたわけではございませんで、その六百三十万トンというのは、石炭合理化審議会に諮りまして、この方式で買い上げるのは六百三十万トン、こういうふうにきまってございますので、それをさらにふやすという措置でも講じない限りは、これに対しては受け付けるというわけにいかぬわけです。従って、申し込みはあったけれども田口さんの方では別にそれを受け付けられたわけではないのです。  それから六十七万トン残っておりますが、この六十七万トンにプラスずれ込み、これを合わせまして、これは新方式でいくか、あるいは従来の方式でいくかは、申請者の一応自由意思によってどちらへでもいける、こういうことになると思います。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 新方式でいくか、旧方式でいくかは自由だ、こうなるわけですから、そうなりますと、われわれ被害者はどういうことになるか。鉱業権者に向かって、あなたは新方式ではだめだ、旧方式でおいでなさい、こう言う権利があるわけです、国民としては。そうして旧方式にいった場合に、国が予算を組まぬという法はないというのです。国は毎年一定の、たとえば今六十七万トンと三十六年度からずれ込んできたプラス・アルファ、それと田口さんの言う旧方式で申し込んでいる百八十万トンの中の八十万トンは、まだ意思表明をしていないわけです。八十万トンあるのでしょう。そうすると、百四十七万トンというものにプラス・アルファを加えたものがあるわけですよ。従って、このものに対する予算措置は、最小限度政府は講じておかなければならぬ。少なくともことし三十七年度に組めなければ、三十八年度はそのワクを組まなければならぬ。石炭鉱業合理審議会が言ったって、国会がそういう要求をすれば、国会は最高の機関ですから、当然やらなければならぬのですよ。立法府がそういう要求をすれば、政府としては当然——法治国ですからね。法律が死んでしまえば別ですよ。これはやっておいてもらわぬと、これはあとでいろいろ質問しますが、あとでめんどうなことが起こってくるわけですよ。だから、この点政府一つここで——政府の諮問機関なんかは、われわれは一応ここでは問題外ですから、国会における議員と政府との関係で、政府がそうやるかどうかということさえ言明しておいてもらえばいいわけです。それでなければ、この法律の中で旧方式全部削除されればいい。もう三十八年度からは条項は死にます、旧方式のところは死にますという改正をおやりになれば、またそれはそれで話がわかりますよ。しかしそれを残しておいでになるから、残しておいでになるならば、その予算はつけなければならぬのですよ。これはあと大臣が来てから大臣に答弁いただいていいですが、森さん、当然そうなるでしょう。法律が残っておるのに、その条文だけを勝手に死なせるというわけにはいかぬですよ。
  81. 今井博

    今井(博)政府委員 来年度もその従来の方式を残しましたのは、従来から受け付けておるその六十七万トンを三十七年度で買い上げるということになっておりますので、その関係におきまして、従来の規定を実は残したのであります。従って従来の買い上げによる方式は、この六十七万トン、プラス三十六年度のずれ込み分だけ、その後のものは新方式で全部処置する、こういう考え方でございますが、ただその六十七万トンの分につきましても、新方式でやりたいという場合には、その方式によってもいいということでございまして、従来の買い上げの分を六十七万トン以上にふやすという考え方は、政府としては持っておりません。
  82. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、ことしは六十七万トン残ったから仕方がない、しかし来年からはもうやらないのだ、こういうことなんですね。三十八年度からやらないのだということでしょう。それじゃ鉱業権者、被害者にどれが一番得かということを一つ御説明願いたいと思います。今までの旧方式におけるトン当たりの買い上げの基準と、保安措置法のトン当たりの買い上げの基準と、新方式によるトン当たりの買い上げの基準、この算出の仕方をここで一つ説明してみて下さい。そうすると、どれが一番いいかによって、鉱業権者なり被害者は私は選択の自由を持たせてもらわなければならぬと思う。保安のときはこれは命令ですから……。
  83. 今井博

    今井(博)政府委員 第一の保安関係は、これはむしろ保安不良の炭鉱に対しまして一日も早く処置しなければいかぬという観点で、買い上げとかそういうふうな考え方ではなくて、これはもう価値がない、しかし未払い賃金とか、鉱害についていろいろ社会的な摩擦が起きちゃいかぬということで、むしろその部分を考えまして六百円という数字を実ははじいたわけでございまして、これはむしろ特殊な問題だ、こういうふうにお考え願いたいと思います。  それから新しい方式と従来の方式との差は、従来の方式は鉱業権にプラスいろいろな鉱業施設を買い上げるということで、平均いたしますとトン当たり千三百円という実績に大体なっております。これに対しまして、新方式では鉱業権の買い上げは、これはやや専門的になりますが、ホスコルド方式というものを用いまして、鉱業権はトン当たり八百円という数字をはじきました。それに坑道の評価といたしまして、坑道を三百円、合計いたしましてトン当たり千百円、こういう数字をはじいたわけであります。従って、これは買い上げではございませんので、鉱業権を抹殺する、抹消することに対する整理交付金という形において事業団から交付する。従って、従来買い上げておりましたような鉱業施設、これは機械とか住宅とかそういうものがございますが、それは鉱業権者が自由に処分していい、こういうことに相なるわけでございまして、従来の方式が買い上げであるということと、今回のやり方は整理交付金である、こういう性質から当然そういう差が出てくると思います。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 それならば、旧方式で鉱業権だけを出したら幾らです。
  85. 今井博

    今井(博)政府委員 同じく八百円という数字をはじいております。
  86. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、鉱業権者としては旧方式ならば千三百円、新方式の方は千百円、二百円違うわけですね。トン当たりで二百円ですからこれは相当な違いになってくるわけです。そうすると、鉱業権者としては一体どっちを望むかというと、多い方がいいと思うわけです。これは一年生でもわかると思う。千三百円と千百円どっちがいいかといえば、千三百円の方がいいことはこれはもうきまっている。しかも千三百円の場合は、金が多い上に、今度は合理化事業団というものがあってその裏づけをしてくれるんですから、これはもうますますいいわけです。ところが今までそれが買い上げの隘路になっておったから、これをはずそうというわけでしょう。それならば一体被害者はどうなるんだ、こういうことになるわけです。  そこで、大臣、今質問し初めなんですけれども、伊藤さんが大臣が見えたらやるという約束で、ちょっと中断しますが、ちょうど大事なところに来ておりますから、大臣の御見解をお伺いしておかなければならぬのは、今度この合理化法が通りますと、三つの方式で山をつぶしていくわけです。一つは八谷さんの方の所管の鉱山保安の臨時措置法でトン当たり六百円で山をつぶすわけです。それからもう一つは、今まで田口さんの方でおやりになっておった買い上げの方式だと、トン当たり千三百円で山をつぶすわけです。今度新しく出る今井方式では——今三人おるから……。今井方式では千百円、こうなる。そうすると、被害者なり鉱業権者はどちらを選ぶかというと、千三百円を選ぶわけです。旧方式を選ぶわけです。そこでことしは六十七万トン、プラス三十六年度からずれてくる分を予算措置しておるわけです。しかし、合理化法で依然として旧買い上げの方式の法律は残っておるんだから、三十八年度においても鉱業権者なり被害者が一致して、あるいは労働者も一致して旧方式をやってくれ、こういうことになってくる。旧方式はやりますかと言うと、いやもう旧方式はやりませんとおっしゃる法治国家で法律が残っておるのにやらぬのはおかしいじゃないかと言うと、いやいや、石炭合理化審議会の方でそういうことになっておりますから、こうおっしゃる。しかし、合理化審議会は諮問機関なんだから、国会がそれをやってくれということになれば、当然法治国家であり、国権の最高機関がその要求をすれば、政府としては予算措置をすべきであると思うが、今井さんの方はやらないとおっしゃる。それはけしからぬと言っておる。なぜならば、千三百円の方が得なんです。被害者にとっても、鉱業権者にとっても、労働者にとっても得なんです。未払い賃金その他ワクを広げればよけいにくるのですから……。だから、政府が千百円と千三百円とどちらでも自由にお選び下さいというなら、それはやむを得ぬわけです。しかし、旧方式は抹殺してしまうというのは、これは筋が通りませんよ。こう言っているのです。
  87. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 問題は鉱業の施設を買うか買わぬか、買収の相手にするかしないかということのようでございますね。ただいま御説明になりましたが、鉱業権並びに坑道、これについては旧方式も新方式も同じ値段だ。問題は残っている鉱業施設を当方が買い取るか、自由に処分するかという問題じゃないか、かように思いますが、今まで申し上げましたように、新方式でも鉱業権は八百円、坑道は三百円、これは旧方式の買い上げ方式でも鉱業権は八百円、坑道は三百円ということでございます。その対象になりますものが鉱業施設そのものですから、これはやはりそこに選択の自由があってしかるべきじゃないか、かように思います。
  88. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に、なるほど鉱業の施設を買う買わぬの問題もありますが、そのほかにもう一つ、連帯責任の問題があるわけです。新方式では、国が連帯責任は負わないのですよ。しかし、国というか合理化事業団ですか、旧方式では連帯責任を負うのです。だから千三百円と金が多い上に、連帯責任がついているわけです。片一方は金が少ない上に連帯責任はない、だから、これは逆にしなければならぬ。もし連帯責任を負わないとするならば、この金をふやさなければならぬ、千百円を千五百円くらいにしなければ、話は通らぬわけです。ところが金を少なくして、連帯責任はない。そうすると、一切の責任は田口さんの方に行くのですから、田口さんの方の仕事は表面的には簡単になっておるけれども、これは今度は越すに越されぬ田原坂が出てくるのですよ。だから政策としておやりになるならば、千百円を千五百円にしなければいかぬ。そうすると、田口さんの責任を解除しておっても金目が多くなりますから何とかやりくりがつく。ところが金は少なくして責任は解除するというなら、しり抜けで、これは僕ら納得できないことになるわけです。特にこういう鉱害を専門にやった僕として、こんなばかなことはない。通産大臣、今のあの筑豊炭田の引き揚げのあとの現地の鉱害の処理の問題をやってごらんなさい。こんなものは、弁護士ももうけにならぬからだれもやらぬ。全部われわれ議員に請願がくるのですから、これは大へんなことですよ。金を多くして、そうして責任を解除するというなら、これは話がわかる。金を少なくして連帯責任がなかったら、これくらいいいことはない。だから、このごろ私が麻生太賀吉さんに、こういう方式ですよと言ったら、私は知りませんでしたが、そんないいことでありますか、教えてもらいましてありがとうございましたと、鉱業権者がお礼を言うくらいなんだから……。
  89. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今までやっておるものにしましても、あとのものにしても、鉱業権あるいは坑道をどういうふうに評価するかというのは、同じだろうと思います。ただ問題は鉱害の跡始末あるいは給与の未払い分をどういうふうにするかということが、実は問題なんだと思います。今までは連帯保証その他の形でこの鉱害復旧等をやらしていたわけですが、なかなか思うようにいかない。そこで今度の方式では一部を保留して、ただいま申し上げるような特殊債権を確立さす、内容としてはよほど徹底して進んだと思います。ただ問題は、今言われるように、もう少し金をやらぬから鉱害の復旧ができぬのじゃないか、金をよけいやらぬから給与の未払いが出るのじゃないか、こういう問題もあろうかと思います。しかし、鉱業権や坑道の補償価格を算定するというものは、これは別にあるべきものじゃない、今までやらなかったのが悪かったのだ、実はこういうことが言える。そうすると、非常に気の毒な給与の未払いであるとか、あるいは鉱害の復旧だとか、そういうものはむしろ先取りさすべきじゃないか、こういう議論が今回の新方式には思想として入っておるわけでございます。だから、この行き方がいいとか悪いとかいうことでなしに、今言われるように、現実問題としてこの鉱業権八百円は安いじゃないか、あるいは坑道の三百円という評価はむちゃじゃないかという御議論でございますれば、この八百円、三百円を出した基礎の、権威のある調査の結果を申し上げます。問題は、こういうことをいたしましても、当然なすべき鉱害の復旧をやらない、あるいは賃金の未払いが残る、これを一体どうして処理するかというところに、私どもの工夫があったのでございます。だから、ただいまのお話の筋から見ましても、買収価格をつり上げればそれができるのだと言われることは、ちょっと私、実際問題はそうかもわかりませんが、理由が十分つかないと金額を上げるわけにはいかないのじゃないか、こう思います。
  90. 滝井義高

    ○滝井委員 実は今から二年くらい前に、各家屋を評価したわけです。そして、この家屋の評価は百万円だとします。復旧費に、百万円かかる。これを打ち切りにするか、あるいは臨鉱でやるかという話し合いを、鉱業権者としてはだんだん延ばしていけばいいわけです。今の方式でいくと、これを長く延ばすことはできない。どうしてできないかというと、田口さんの方で早くやらなければだめだと言うわけです。そうしないで長くやっておけば、責任が田口さんの方にくるわけですから、田口さんの方にしりをたたかれるわけですよ。そうすると、鉱業権者はやむを得ず話をきめなくてはならないことになる。なぜならば、田口さんの方に利子もつかないお金を預けなければならない。この金詰まりのときにそんな金を早くとってやることはない。今度の方式はどうかというと、これは田口さんの方がしりをたたかないわけです。延ばしておいてもいい。田口さんの方は責任がなくなったから、金を預かっておきさえすればいい。そうすると、鉱業権者はのらりくらりと延ばせばいい。被害者はどうなるかというと、二年も三年も、軒が傾いたり雨漏りがしておるから、もう百万円でなくても、七十万円でも五十万円でもいいわけです。これが今度の手なんです。佐藤さんは現実をよくお知りにならぬが、そういうことなんです。泣く子と地頭には勝てぬということから、延ばせば安く売ってしまう、そういう形なんです。だから見ていてごらんなさい、六十七万トンありますけれども、全部移りますよ。もう田口さんの方に迷惑をかけるようなことをやるよりも、こっちへいった方がいい、そして早く投げ出してしまった方がいい、このワクの中で一つ処理をしましょう、そうしてずっと引っぱればそれでいいわけなんです。もう少しこれは具体的に入りますけれども、伊藤さんがおりますから……。とにかく大臣、こういうことがあるということです。従ってこうなってくると、ボスをはびこらせる。だれも鉱業権者のしりをたたくやつがいないのですから、鉱業権者はどんどん引っぱっていけるのですから、今まで以上にボスが出てくる。
  91. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりますような危険が一部にある、こういうことですが、結局必要な資金をそこで握っておるということが大事なことなんでございます。今までの問題でありますと、本来の責任者である鉱業権者が行方をくらましてしまうと、あとの追っかけようがない、こういろ場合もあるわけです。いずれにいたしましても、非常に欠点があちらこちらにあるようでございます。問題は被害者自身にも十分救いの手を出す、それが私どものねらいでございますから、この実施の状況等もまたよく見まして、さらに今言われるような非常な弊害を生ずれば、対策を立てなければならぬと思います。今まで生じた弊害はこの方式で一応除けるのじゃないか、こういう感じで今回改正を企図いたしておるわけでございます。ただ私ども考えよりも、相手方の方が知恵が回ってくるといろいろなことを考えるでしょうから、本来の目的を見失わないように、私は一そう運用の面で注意して参りたいと思います。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣一つ言っておきますが、真岡鉱業所というものが典型的なものです。私の田川地区ですが、個人のことを言っては工合が悪いから言いませんが、今田口さんの方で裁判しておりますよ。金だけはもう持っていっちゃったわけです。あと事業団に金を納めぬですから、事業団が被害者にその金を立てかえた。おそらく九千万円くらい事業団が立てかえておる。その立てかえたものを事業団が取るために、今鉱業権者と裁判をやっておる。裁判をやらなければ取れぬ。これが個人だったら、もうそこらあたりにいない。岡山のあたりに行ってしまっておる。筑豊炭田にいない。本人は福岡県の教育長もやりました。こういうことです。こういう実態ですから、いわんや田口さんの方に連帯責任がなくなったら、もう個人はあとを追って日本じゅう探して回るというわけにはいかぬ。選挙違反を捕えるよりむずかしくなる。あとは留保しておきます。
  93. 有田喜一

  94. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 石炭問題については、同僚各位から具体的に相当突っ込んで質問が続けられておりますし、佐藤大臣のおられる時間もきわめて制限されておるようでありますから、私はきわめて重要であろうと思う四、五点の問題につきまして、大臣からぜひはっきりしておいていただきたい、こういう点を一つお尋ねしたいと思います。  それは去る四月五日の朝、炭労と社会党、それから全炭鉱と全国炭鉱職員労組協議会、また私ども民社党に政府側から、当面する石炭問題の重要性と今後の対策について回答をされております。その回答された内容を見まして、これは佐藤通産大臣も相当苦心をされて策定されたものであろう、この点に対しては労を多といたしております。つきましては、あの回答されたものについて、それを政府側が実行されるということについては、相当の決意が要るだろうと私は考えております。たとえば合理化の問題あるいは整理の問題、あるいは離職者の救済の問題、雇用の問題、あるいは金融処置の問題、あげてみれば、私どもが相当長い間政府側に強く要請をしていたきわめて重要な問題ばかりをあげて、これらを解決する、こういう回答でございます。   〔委員長退席、始関委員長代理着席〕 そこでこれらを解決する一つの手がかりとして、権威ある調査団を作って、その調査団答申を待って解決に臨みたい、こういうことを含んでおるように思います。そこでこれらの問題を私どもの期待に沿い得るように政府が行なわれるということになれば、立法措置の問題もありましょう、あるいは強力な行政措置をとられなければならない。そういう点に対して、責任大臣である佐藤通産大臣は、あの回答されたもろもろの重要な内容について、どういう決意を持って、今後この炭鉱労働者の期待に沿い得るようにこれを実行するということについて、どういうお考えを持っておられるか、このことは非常に重要だと思いますから、この点を一つできるだけ大臣が責任を持って、それこそ権威あるお答えを願いたいと思います。
  95. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政府石炭対策、当面する問題並びに今後の石炭対策閣議決定をいたしました。閣議決定をいたします前に、ただいま御指摘になりますように、炭労あるいは社会党あるいは全労、民社党の幹部の方々にお示しいたしまして、そうして閣議決定をいたしたのでございます。これが、いかにも回答したというようにただいま表現しておられる。また、閣議決定をすることを事前に民社党や社会党の方にお諮りするというようなことは、異例に属することでございまして、従いまして、ただいま言われるように、回答という言葉を使われることでもあろうかと思いますが、私どもこの問題を取り上げました、閣議決定を見ましたゆえんのものは、当面する社会不安とでも申しますか、そういうものを避けたいという政治的考慮から、かような処置をとったわけでございます。すでに御承知のように、石炭問題につきましては、昨年衆参両院の決議等もございますし、政府もこれに対応する所信も披瀝し、予算編成に際しましてもそういう点を不十分ながらも取り入れ、それぞれ軌道に乗りつつある際でございます。そういう際に重ねて、昨年閣議決定いたしましたものを、さらに内容を付加して、そしてもっと実のある方向で閣議決定をした、こういうことでございます。特に、この閣議決定をいたしますまでの四囲の状況なり環境は、ただいま簡単に御説明したようなもとにおいて閣議決定がなされたのでございます。今回の閣議決定の請議大臣は大蔵大臣通産大臣労働大臣、三大臣がこの閣議申請をして、そして閣議決定を見たわけであります。私、特に発言をいたしまして、こういう政策決定というもの、これについてはぜひともこれを具現する責任があるのだ。今回は幸いにして三大臣が請議大臣だから各省の意見の間に食い違いがあるはずはないと思う。しかし考えてみると、今まで閣議決定をし、政治の方向を示したにかかわらず、それが実現しないものがしばしばある。そういう事柄が今回も重ねてこの種の閣議決定をせざるを得ざるに至ったゆえんなんだから、そこに十分思いをいたしまして、この閣議決定の線の実現について万全を期してもらいたいのだ、こういうことを実は特に発言をいたしたのでございます。その点をあるいは新聞などが、通産、労働が大蔵省に対して団体交渉しているというような表現を、どこかで箱書きをいたしておりますが、そういう浮いた気持では毛頭ございません。それはもう真剣に取り組まなければならぬものだ、そういう意味で特に念を押したつもりでございます。御承知のように、基本的な路線というものは変わりがなく、また関係の各方面におきましても、石炭産業の合理化、これは絶対に必要だといわれ、安定産業たらしめるのだ、そういう意気込みが強く出ております。おりますが、また、私どもが数次にわたってかような表明をいたしましたにかかわらず、今なお一部に不安がある、その不安を一掃することが必要だというので、今回の閣議をしたわけでございますが、その不安はその声明だけでは事足らない。これはやはり現実の問題として処理されなければならない、こういう意味においての私ども政府の責任というものを、実は痛感しておるという次第でございます。そういう意味で重ねて御指摘を受けまして、政府の決意のほどをお尋ねいただいて、私大へん恐縮に存じますが、ただいま申し上げるような意味で、今回の閣議決定はそういう観点に立ちまして、責任を持ってこれの具現を期す、こういう考え方でございますので、御了承いただきたいと思います。
  96. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今お尋ねしましたように、権威ある調査団調査答申が出て参りますと、おそらくは行政措置の問題というものも相当強くとられなければならぬ点が私は出てくるだろうと思うが、関係各省との間に統一してこの強力な行政措置をとる、あるいはまた立法措置というようなものもとられなければ、閣議決定されたあの重要な内容を含むものはなかなか実行できないのじゃないか。それでないと単に閣議決定として、従来のごとく、いつ消えたかわからないという形になって、また失望さすというようなことになるのじゃないか。この点を私は心配しておる。そういう点についての決意のほどはいかがです。
  97. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になります通り閣議決定を具現化するためには、ときに行政措置も必要だ、あるいは立法措置も必要だ、あるいは予算措置も必要だと思います。こういう点を含めて、それぞれの機会をつかまえて必要な措置を講ずるつもりであります。一部におきましては、この国会中においても立法措置をしろという御意見もあるやに伺いますが、もうすでにこの国会においては予算も成立しておることでございますので、行政措置で指導してみたい。また次の機会等におきまして、行政措置だけでは不十分だというものに対しましては、立法措置を講ずる。また今日成立を見ました予算も、実施をいたしまして、そして不足を生じた場合にさらに次の手を打っていく、かような機会をとらまえてそういう措置をとっていきたい、こういうことを考えておるわけでございます。先ほど閣議発言等におきましても、かような点に触れておるわけでありますので、この点も御了承願いたいと思います。
  98. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大臣のかなり責任を持った答弁をされている点を、私は了解をいたします。そこでやはり、必ず予算的措置というものが当然伴ってこなければ実行できないことのみが多いというように思いますので、三十七年度予算は通っておりますから、あるいはその予算の繰り上げ使用というか、あるいは予備金支出というか、そういうような形等も必要によってはとって、これらを実現していくということについての決意も相当持っておられるように思いますけれども、念のためにこの点をもう一度伺いたい。
  99. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま予算で計上されておりますものは、まず予算を実行することが第一であります。そういう意味において、計上された予算を実行に移すということをいたすつもりであります。そしてなお事業等の必要から、予算の補正あるいは拡大ということが必要でございますれば、あるいは臨時国会等におきましてそういう措置をとることもやぶさかでございません。また予算的措置をとる前に、あるいは予算には計上できないもの等については、資金的なあっせんをする。これまた政府計画に上すように、関係省と十分相談をして参るつもりでございます。これなども、ただいままだ具体的計画のない際でありますから、幾ら幾ら要るということは、まだ大蔵省と折衝はいたしておりません。今後この閣議決定の推進にあたりましては、そういう事態も起こるだろう。だから、事前に想定されますことを申し上げ、ぜひともこれは行政の面でこういう問題が不満な方向へいかないように、閣議決定の線で具現しよう、こういう申し合わせをいたしたわけでございます。
  100. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 さらにお伺いしたいのは、御存じのように、その後炭鉱は合理化が相当思い切ってやられ、非能率炭鉱を買いつぶすという点等で、相当失業者が出てきてしまっておるわけです。それで、さらに今後三年間に六百二十万トンの非能率炭鉱を買いつぶされる、あるいはまた合理化も行なわれてくる、あるいはまた、保安設備を十分なし得ない炭鉱は中止を命ずる、こういうこと等で相当炭量も減ってくる、あるいは離職者もそれに伴って相当出てくるということは当然であります。そういうことのみに力を入れてきておるわけでありますが、新鉱の開発、そういう点はあまり積極的じゃありません。鉱区の整理統合ということは、もうずいぶん長く論じられて、一向に具体的に行なわれてこない。鉱区の整理統合こそは、せっかくの国家の地下資源を有効に掘り出していくというためにはやらなければならない、また能率を上げるためにもやらなければならない、あるいは経済価値の点から見てもやらなければならぬことは、もう論議の余地がない。そこでそういう点から、鉱区の整理統合。それから休眠鉱区の開発であります。中にはみずからやり得ない、またやろという意思のないもので、有望鉱区を持っておるものもおります。それからさらに一つ会社が三十年、十五年先になにしようというようなものを持って、休眠鉱区にしておるところもあります。でありますから、やはりこの鉱区の整理統合と、そういう休眠鉱区の開発、こういう点等を積極的にやっていくということが、あわせて石炭の在籍一人当たりの能率を上げていく、あるいは炭価を政府考えておる価格に沿って値下げをしていく、そういう国民経済の全体的見地から見ても、これはぜひやらなければならぬことです。それからまた、天然自然に国の財産としてあるものを、ただ一足先に出願をしたというだけで、そういう休眠鉱区をそのままにしておくということは、国家的見地からもまことに許せないことだと思うので、こういう点に対して政府としては、石炭対策一つとして積極的にこれらをやろうということをお考えになっておるかどうか、あるいは、これは鉱業法との関係を持つものでありますが、鉱業法の改正案のごときは、もう四年も五年もたっている。来年出します、来年出しますと言って一向これが出てこない。そういう点から、この整理統合の問題も休眠鉱区の開発の問題も、国家的見地から解決をしなければならぬのに、一向これが解決されないでおる。こういう点等については、佐藤通産大臣池田内閣の最大の実力者だから、あなたが一つおやりになるということは、主管大臣一つの大事な仕事だと思うが、こういう点に関してのあなたの考え方をお聞かせ下さい。
  101. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお尋ねの問題に入ります前に、私ども石炭対策というものと取り組んでおる基本的な考え方、これは過日来当委員会でもたびたび申し上げたのでございますが、いかにも消極的な政策をとっておるんじゃないか、具体的に申しますならば、離職者に対する対策、あるいは廃止炭鉱の買い上げ方式等に非常に苦心をしておる、そういう点が非常に強く取り上げられて、どうも石炭産業に対する積極性がないのじゃないか、こういう点をただいままで御指摘になっておると思います。私どもが五千五百万トンという数字を申し上げ、この出炭目標に全力を注いでいきたい、かように申しますのも、五千五百万トンにくぎづけにするという考え方は毛頭あるわけではございません。合理的経済性のある炭価ならば、どんどん国産資源を開発すべきだ、こういうことを含んでおって、現状においては五千五百万トン以上出しても、その炭は消化されないという感じがあって、五千五百万トンというような数字を持ったのでありますが、私どもの見方からすれば、五千五百万トン自身も相当積極性のある数字だ、かように実は考えたのでございます。しかし、なおそれでは不足だ、こういうことでございますので、今回の閣議決定の線におきましては、特に外国炭と内国炭を置きかえ得ると考えられる原料炭開発などを積極的にすべきだ、こういうことで閣議決定もいたしております。もちろん今回の原料炭を中心にしての新鉱開発というものは、十分な経済性のあるものでなければならぬことは当然でございますが、そういう意味考え方で、労使双方の協力を得て、いわゆる安定産業たらしめるという積極的な意図を持っておることを御了承いただきたいと思うのでございます。  ところで、その具体的方法として、政府のこの意気込みに対応して、また政府のとっております、民営による石炭産業の安定産業化というこの観点に立ち、しかも国家権力にあまり依存せずしてそれを遂行して参りたい、こういう政府の意図も十分御理解いただきたいと思うのでございますが、そうなりますと、ただいま御指摘になりました鉱区の整理あるいは休眠鉱区の活用とか、いろいろな問題が実は起きてくると思います。ところで、これは理論の面から申しますならば大へん容易なことでありまして、鉱業権の整理をする、あるいはこれを単一化する、これは当然のことのように考えられますが、いざ実施する具体的な問題に突入いたしてみますると、しかく理論的に簡単であるように簡単な問題ではないのであります。経営者自身もそれぞれの立場において自分のところの経営権を主張するでございましょうし、また、ときに対立するとは申しましても、組合自身もやはりこの整理統合については十分な発言権を持っておって、なかなか一致はしがたいのであります。これは過去の例を申しますと、あるいは耳ざわりでけしからぬとおしかりを受けるかわかりませんが、たとえば鉄道の経営しておる志免鉱業所のあの一つの問題を取り上げてみましても、しかく容易でない。経営者自身は他に譲りたいという、しかしながら組合側からいうと、それは困る。また経営者の好まないことではございますが、鉄道として全体の経営になぜ乗り出さないのかというような話で、なかなか容易なことではございません。私は石炭の合理化を進めます上から申しますと、今錯綜しておる鉱区、あるいは活動していない鉱区、そういうものに対しての開発計画が単一化されることが最も望ましい姿だ、これは通産大臣としても言い得ることでございますが、この関係が複雑多岐にわたっておる、それをいかに処理していくかということにもなろうかと思うのでございまして、そういう意味では、私どもの意図のあるところを十分御理解いただいて、労使双方それぞれの立場においての協力態勢がぜひとも望ましい、かように思います。そういう観点にまず立ち、私どもの基礎的な経済問題と取り組んでおるその姿においてまず解決をはかることが第一段だ、かように考えてせっかく今後努力して参りたい、かように思います。
  102. 始関伊平

    始関委員長代理 伊藤さん、大臣は零時四十分に帰してもらいたいということですから……。
  103. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私もそのつもりでだいぶ縮めておるわけだが、もう二点だけ簡単に……。  だんだん石炭問題を政府の間でも重要視して、積極的にこの対策を立てていこうとしておられることは、私もよくわかります。しかしながら、さきの閣議決定の点から見、また今大臣からいろいろ意見を伺っておりましても、さて法律的に石炭の安定化を防衛してやる何ものもないわけです。従って、石油の問題あるいは天然ガスの問題さらにはまた、秋になれば貿易の自由化の問題、そういうもろもろの問題によって、石炭はさらに脅かされてくることは、これは必至です。そこでやはり総合エネルギー対策を立てて、そこにおいて国内エネルギーあるいは輸入エネルギー、そういうものに対するところの数量を位置づけるというか、それぞれの数量をやはり総合対策に立ってきめていくということにならなければ、私は石炭の安定化というものはなかなかできないのではないかと思う。そういう点から、総合エネルギー対策を立てるためにエネルギー基本法のようなものを作って、それによってそれぞれのエネルギーの安定化というか、あるいは価格を下げていくというか、そして消費者への奉仕というか、そういう点が日本においても必要であることはもう議論の余地がないと思う。諸外国においてもこれらの対策を十分立ててやっておるわけでありますから、従って政府としても、本国会にそういうものが出せるか、出せなければ来たるべき臨時国会の場合にでもそれを出すか、そういうことについての大臣のお考えはいかがです。この点を一つ伺いしておきたい。
  104. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 石炭問題をめぐりまして、エネルギーの基本法を出せということで二、三の方から御意見を伺っております。ただいま総合エネルギーの審議会を設けることも現実にはできていない状況でございますが、そこからさらに飛躍して基本法ということになりますと、相当の準備を必要とする、かように実は考えております。ただいま基本法ばやりだから、というような表現は不適当だと思いますが、よほど真剣に取り組んでいくというその気がまえから、基本法を作れという御要望だろうと思いますが、私は基本法もさることだが、実質的に内容を充実していくことがまず第一だろう、かように思いますので、十分検討に値する問題だ、かように私どもは受け取っておりますが、この国会で出せ、あるいは次の国会で出せ、かように申されましても、まだそこまでの決意には到達いたしておりません。重ねて申しますが、十分検討に値する問題だろう、かように思う次第でございます。
  105. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 さしあたりの問題として、通産省の中において、一石炭局でこの問題の安定化を維持しようということは、今井局長がどんな腕があったって、これは不可能だろうと思うのです。石炭局以外はみんな石炭を消費する方だから、何でも安ければいいじゃないかということだろうと思うわけですから、やはり権威ある、それこそ力ある、総合エネルギーの対策機関をぜひ作って、それから石炭局を通産省の外局の燃料庁というか——そういうことは内閣として、その決意があればやれることであります。まず、総合エネルギーの基本法を作る前に、その一つの準備として、大臣の手元でやれるような、石炭局を燃料庁というか、通産省の外局として、あるいは権威ある総合エネルギー対策審議会というか、委員会というか、そういうものを作って、それぞれのエネルギーの組み合わせをして安定をはかっていこうということについてのお考えはどうです。
  106. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これまた、検討はいたしてみますが、ただいまその結論は持っておりません。
  107. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 もう一点だけにします。  これは問題がこまかいのですけれども、しかし全体に影響しておるし、また今後も起こってくる問題でありますからお伺いをするのですが、これは大臣でなくてもいいような問題でありますが、大臣にやはり考え、処置を願わなければ対策も立たぬのじゃないかと思うのです。これは私のところに金丸大隈炭鉱というのがありますが、これは保安設備の関係で中止を命ぜられ、廃鉱になった。そのために、二百三十世帯の人々がいたわけですが、このうちで百二世帯がどうもこうも生活ができないというので、生活保護を市でやってやらざるを得なくなった。ところが、生活保護を市でやるということもなかなかつらいけれども、さらに二百三十世帯が家をあけろということで追い出された。そこで、ふろもとめる、電気もとめる、水もとめる、それで家をあけろということで追い出されて、行くところがなくて困っておるという問題が、一つ起こっておるわけです。  それからいま一つは、これはみずから廃鉱にしたのでありますが、九州採炭の新手三鉱というのが、二百四十九戸のうち二百二十六戸がこれまた追い立てられておる。同じように、家をあけろと言われる。それから電気も水道も、みんなとめてしまう。それで生活はできないというので、さしあたり二十八世帯を生活保護世帯にしたようでありますが、生活保護世帯にしたところで、家をあけろといって追い出されるわけで、こういうものは、特に金丸大隈の場合などは、政府の命令で廃鉱にした。それで追い立てられて、行くところがない。しかも、この二百三十世帯の約半分近くの百二世帯は、生活保護を受けておる。それでとにかく二、三日のうちにあけろといっておるようであります。この二つの炭鉱にこういう事件が起こっておる。   〔始関委員長代理退席、委員長着席〕  こういう問題というものは、ほかにも起こってくるわけでありますが、こういう問題について、政府の命令で廃鉱にする、あるいはまたみずから廃鉱にする場合において、そこに働いておった従業員の処置の問題については、やはり私は責任官庁というものが、それらの処置問題についてはもっと親切に、どうするのかということについて、こういうように路頭に迷わせないように何らかの処置を、事前に経営者との間に対策を立ててやる必要があると思うのです。これは一昨日か市長がやってきて、これじゃどうすることもできないが、何とかしてもらわなければならぬという訴えをしてきておるのであります。おそらく今井局長御存じだと思うが、こういう問題に対して、たとえば今度調査団を派遣される、その調査団の中においてそういう実情を調査をしてもらう、あるいはそれと伴って、これらの問題の処置、解決を何とか政府としても対策考える、そういう点について、大臣、現場のことはわかられぬわけですけれども、実情はそういう実情ですから、一つ大臣のそれらに対する扱い方の問題を承っておきたい。
  108. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 私のわずかな体験と申しますか、この前筑豊地域を視察いたしました際に、いわゆる問題になっておる炭住なども見たわけでございますが、廃止の場合にその炭住に残っておる、それの引き揚げ方等も、いろいろお話をしておるようでございますが、なかなか早急に実現しない。一定期間その場所におられることはやむを得ないといたしましても、やはり炭住をできるだけ早く閉鎖することが双方のためになると思いますが、なかなかそういうことが実現しておらない。ことにそういう廃止炭鉱の炭住などは、修理その他も不十分でございます。もうやめていくというような立場から、修理もできておらない。まことに惨たんたるものがある。また炭住が残っておると、そこに、雨露をしのぐという意味で、いつの間にか人が入ってくるというようなこともあるようでございます。炭住処理の問題が、一つの地方の大問題となっておると思います。簡単に居住の本拠を追っ払うわけにも参らないと思いますが、しかし、これはやはり期間にそれ相応の猶予期間というものがあるだろうが、それを越しての後の問題ということになれば、双方でやはり理解のある処置をとっていただくことが望ましいのではないか。これはいわゆる社会保障制度なり、あるいは再就職のあっせんなりと並行して、そういうものが実現すべきだろうと思います。ただ居住しているのが不合理だとか不都合だとかいう議論でなしに、現実の問題としての処理をして参らなければならぬ。また、そういう場所だと、市町村の財政も大へん窮迫しておる地方でございますので、これまた市の財政にも非常な負担になるという意味から、なかなか炭住の跡始末ができて参らないのです。私ども簡単に考えて、あるいは市町村が引き取って下すって、そういうものをお世話願うような方法はないかということを申しましたけれども、これもまた市町村としてはお手上げだ。また居住者から申しますと、行き先もきまらないうちに追い立てを食うことは非常に困る。人道的にも御同情は申し上げる。こういうことでございますが、一定の期間を過ぎれば炭住の処理ができる、そういうような慣行がここに打ち立てられると、ただいまの、御指摘のような問題も片づくのではないか。これは住居の問題だけでなしに、総合的の施策の一環として、そういう方向に進めるべきではないか、かように実は思う次第でございます。
  109. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私はもう大臣の時間がございませんからやめますが、今の問題は非常に深刻な問題として、市でもお手上げの形ですし、それからそこに働いておって離職しているその人たち、経営者であった人も山をやり得なくなったというほどの破産状態、それからまた今申し上げた金丸大隈のごときは保安も十分やれないというので、法律によって中止命令を食っておるというようなことでありますから、従って労使の間の古い関係では解決ができない。市も全部背負い込むことはできないということでありますから、通産局の係官にでも実情を一つ十分調査をさせられて、何らかそれに対する解決の処置はないか、一つ十分お考えを願いたい、こういうように思うわけです。
  110. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 承知しました。
  111. 有田喜一

    有田委員長 それでは午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十五分休憩      ————◇—————    午後一時五十三分開議
  112. 有田喜一

    有田委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案勝間田清一君外二名提出石炭鉱業安定法案及び炭鉱労働者の雇用安定に関する臨時措置法案に対する質疑を続行いたします。滝井義高君。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 午前中に、炭鉱の合理化を推進する三つの方式について、特に根本的に違う点を御質問申し上げたのですが、なお引き続いて御質問申し上げます。その場合に、新しい方式と、それから石炭鉱山保安臨時措置で交付金をもらう場合と、一方は勧告を受けてつぶし、一方はみずから鉱区を消滅さして登録をして交付金を受けるという違いがあるわけですが、そのほかに両方の方式で何か違うところがございますか。もちろんトン当たりの価格も違いますが、実際に鉱害や未払い賃金その他を田口さんの方で処理していく上に、何か非常に違うところがあれば、その違うところを一つ御説明を願いたいと思う。処理上の違うところを一つわかりやすく御説明願いたいと思うのです。
  114. 今井博

    今井(博)政府委員 具体的に処理する場合の差異については、田口理事長からお答え願うことにします。  保安の方は、整理交付金を渡すことは同じでございますが、あくまで保安不良の山であって、価値としては無価値のものである、そういう考え方に立っております。従って国が鉱害とか未払い賃金等を考えまして、そういう問題の処理に社会的なフリクションをできるだけ避けるという見地から、トン当たり六百円という数字を算定し、無価値ではあるけれどもそういったお見舞料を出す、こういった観点が中心でございますが、このたび提案いたしております新方式の場合では、鉱業権や坑道というふうなものについての価値計算を一応考えまして、買収ではございませんが、鉱業権を抹殺して実際に事業を廃止する場合に、それに相当するものを交付金として差し上げる、こういう考え方に立っておりますので、その点は形は似ておりますが、性質的には一つの大きな差があるわけであります。実際の処理上の措置については、田口理事長からお答えがあろうと思います。
  115. 田口良明

    田口参考人 大体ただいま石炭局長から御説明申し上げた通りでありまするが、ただ保安臨時措置法の方で廃止勧告を受けた炭鉱の処理と、今度の新方式とは、大体において同じでございます。評価方式も全く同様でございます。ただ違いまするのは、保安臨時措置法の方で廃止勧告を受けた炭鉱の交付金は、全額未払い賃金並びに鉱害処理に引き充てるということになっておりますが、新方式の方では、このほかに一部を留保しまして、それを一般債務に引き充てるということが考えられておるように聞き及んでおります。もとよりトン当たりの鉱業権あるいは坑道についての若干の価格の差はございますけれども、以上の通りであります。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 今大体両方式の違うところを御説明いただいたのですが、まず前段の石炭局長の御答弁で、保安の方のお金、石炭鉱山整理交付金ですか、この交付金をもらう方は、これは無価値だと言うけれども無価値ではないわけでしょう。石炭鉱山保安臨時措置法を見ますと、四条で、とにかく調査をするわけです。「石炭の鉱量及び品位、鉱床の状態その他の自然条件に関する事項、経理的基礎及び技術的能力に関する事項並びに保安に関する設備、保安教育その他の保安に関する事項に関し総合的調査を行うものとする。」今度は改善の勧告を出して、やらないときに廃止勧告をやるわけですから。だから、これは無価値なものではないわけです。だから、普通の見舞金というわけにはいかぬと思うのです。そうすると一体この廃止の勧告をするときには、通産省令で定める基準に該当するものに対して廃止の勧告をするわけです。従って、この基準とは一体具体的にどういうことになるのか。これはおそらくここで聞いたと思うのですけれども、もう一回その基準をお示し願い。同時に今度は、この保安の臨時措置の基準とそれから今度は合理化で、新方式でやる基準ですね、新方式に持っていくのはやはり基準が要るわけです。廃止の補償として一定の基準で交付金を交付するわけですから、これもやはり交付するについては基準が要るわけです。だからそこに、通産省令で基準が二つ出てくるわけです。保安の場合の基準とそれから新方式、合理化による基準と、こう二つが出てこなければならぬ。そうすると、今井さんの言うように、前は無価値とは言えないわけです。無価値なものなら、六百円払う必要はないんだが、それを見舞金だ、こうおっしゃるものだから、見舞金だとすると、とても、未払い賃金は終わっても、もう一度復旧するだけの金はない、こういう形が出てくるわけです。まず両者の基準を御説明願うといいのですがね。それから私の反論としては、これは無価値なものではない。金はあるいは見舞金かもしれないけれども、そこに価値があるから見舞金が出るのだと思う。
  117. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 ただいまの御質問は、臨時措置法の六条の「通商産業省令で定める基準に該当するもの」この基準ということだと思いますが、この基準は省令の第二条で「法第六条の通商産業省令で定める基準は、次のとおりとする。」こういうふうにうたっておりまして、基準が三つございます。  一つは「当該採掘権者または租鉱権者の鉱区または租鉱区の石炭の鉱量が当該採掘権者または租鉱権者がその事業を一年以上継続するために必要と認められる数量を下らない」、結局炭量といたしましては、一年以上あるというものであるということが一つでございます。それから第二番目は、「当該租鉱権者の租鉱権の存続期間が一年以内に満了するものであって、かつ、その期間を延長することができないものでないこと。」と、これはちょっとややこしい表現をいたしておりますが、かいつまんで申し上げますと、一年以内に存続期間が切れるものについては勧告をしないということでございます。これは一年以内に切れるかどうかというところが、先ほど読み上げました文章の、その期間を延長することができないという問題にもかかってきまして、現在はまだ延長していないというた場合には、延長ができるものについては問題でないわけでございます。すでに一回延長している、こうなりますと、一年以内に満了するということになりますと、これはひっかかってくるわけでございます。これは一、二というのは、ほとんど同じようなものを二つの面から書いているようにもなりますけれども、明確にするために、全体的に炭量が一年以内のものは勧告をしないということと、それから租鉱権の場合の一年以内に期間満了するもの。  それから第三点でございますが、「当該採掘権者の採掘権または当該租鉱権者の租鉱権が設定されている採掘権が石炭鉱業合理化事業団に買収されることが確実であると認められるものでないこと。」この確実に買収される、現在ワク内に入っておりまして買収されることが確実だ、これはそちらの方でやってもらうということで、保安臨時措置法の方では勧告をしない、こういう三つの点を定めておるわけでございます。この一年以内とかというのは、これはほとんどすぐに済むようなもの、これは自然につぶれてくるわけでございますが、勧告というようなやり方をとる場合には、さらに存続をして、保安がずっと悪いままで続く、こういう点を見ているわけでございます。省令で定める基準は以上三点でございます。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 それは勧告をしない方でしょう。
  119. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 そうでございます。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、一年以上継続可能ということになると、八カ月でも九カ月でもまだ山がやれるというものは、無価値ではないわけですよ。これは勧告の対象にはなっても、無価値ではないわけです。そうすると、それが無価値だという概念に立つことは、ここに一つやはり問題が出てくると思うのです。
  121. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 これは、ほとんど無価値だ、一年以内でやめるというのは、実際上はほとんど無価値だということになるわけでございまして、この保安の方では、そういう山の価値判断からいっているというよりも、保安の状態が悪い、こういうことからいっているわけでございます。しかし租鉱権もすでに延長ができないようになっている、あとごくわずかしかないというものならば、予算内でやる場合に——予算内といっては語弊がございますが、さらに続いていって、継続して保安が悪くなる、こういうものに勧告をするという趣旨でございます。
  122. 滝井義高

    ○滝井委員 これは私は無価値でないと思うのです。実はこういう山でも、もし保安なりあるいは新方式ができなければ、買い上げの対象にはなり得るわけです。もし新方式ができず、保安の法律がなければ、今までの方式で買い上げの対象になり得るわけです。はなはだしいのは、もうこの山は終掘しましたという山が買い上げの対象になるんですからね。終掘しましたといって宣言をして、労働組合とやって、そうして申請をしたのが、今までは買い上げの対象になったのです。終掘をしたということは、経営者にとってはほんとうは無価値なものなんですよ。もうとても自分の力ではだめですといって終掘をしておったくせに、申請をして買い上げになっている山があるんですよ。こういうものはほんとうは無価値なものなのだけれども、やっていた。ところがこの方は明らかにまだ、一年以上はないかもしれぬけれども、一年はあるかもしれないんですよ。そうすると無価値でないわけですよ。そうなりますとその評価が、今までの買い上げ価格の千三百円の半分でいいかどうかということが問題になってくると思うのですよ。僕はこういうものを高くお買い上げなさいと言うのではないけれども、何かそこらあたりに弾力を持たしておかないと、政府の強力な権力によって山をつぶされた、そうするとその鉱業権者は、政府によってつぶされたのだから、私としては鉱害なり労働者の跡始末はできませんと言われた場合にはもう手の打ちようがないですよ。この場合に、政府がつぶしたのだからあとの一切の責任は政府が持ちますよという、何かしりをぴしっとくびっておってくれれば、それは問題ないと思うのです。しかし田口さんが御説明になったように、これは新方式と大して変わりがないということでしょう。なるほどトン当たり六百円のものについては全部鉱害と未払い資金に充てますということはあるけれども、半額なんですからね。今までの千三百円の半額以下なのですから、あるいは千百円に比べたって半額ちょっとぐらいですね。これは全部充てたって不足だという場合に、鉱業権者に、あなたがあと未払い賃金なり鉱害なり全部持って下さいと言っても、それは政府がつぶしたのだからわしは知らぬと言われた場合に、一体政府はこの対策をどうするのかという問題が出てくるわけです。そこで政府は人命上から見ても保安上から見ても、これは非常に重大だからつぶすんですといって、権力でつぶしたからには、跡始末はやはり権力でやってもらうという方向がないと、この政策というものは、大衆の支持を受けた前進ができないと思うのですよ。だから、ここらあたりのものの考え方を——これは田口さんの方が全部跡始末をすることに結論的にはなっていくのですが、そういうことで一体田口さんの方で仕事ができるだろうかという心配が僕はあるのです。その点については、新しいものも五十歩百歩です。新方式も大体五十歩百歩。しかしそれは幾分金が多いという点において、まあ保安よりか新方式の方が幾分金が多いだけ処理はしやすいかもしれないけれども、なお、今田口さんが言ったように、この方には、今度一般債権に対する留保部分が出てくるということになると、なお問題が出てくることになるわけです。それはあとで少し質問します。だから、ここらを政府は、一体最終責任を持てるかどうかということです。もう保安で措置をされた炭鉱は、一億円なら一億円金を出して、未払い賃金あるいは鉱害を払ったならば——どうも終わった法案をもう一ぺんむし返して質問するのは何ですけれども、しかし密接な関連が新方式とあるものですから、両方対比して質問をしておけば、非常に今後の処理がわかりいいから両方質問するわけですが、十一条をごらんになると、未払い賃金や鉱害を弁済して、その残余があるときには、遅滞なく、通商産業大臣の承認を受けて、廃止事業者に返すことになっているわけです。これはわかるわけです。それでは残余がなかったときはどうするかということは書いてないのです。残余のあったときには返す、これはいいです。残余がなかったときには一体どうしますか。それはその鉱業権者が全部責任を持つ、こうなるのだろうと思うのです。書いてないけれども、当然それはそうなるのだろうと思うのです。しかし政府から勧告を受けてやめさせられた炭鉱の鉱業権者が、残余がなかったときに、今度は、自分の家屋敷を売って全部やってくれるだろうかということを考えたら、これは常識論としてとてもそうはいかぬことになるわけです。今でさえもが、今の田口さんの方が連帯責任を持っておるという、事業団が連帯責任を持っておってさえも、家屋敷を売ってやるということが行なわれないで、筑豊炭田では困っておる。いわんや、こういう場合にやれるかどうか。ここらあたりの政府の確信のほどを——余った金は返すというならば、金が余らなかったときは一体どうしてくれますかという、ここのしりをしっかり押えてもらわなければいかぬと思うのですがね。
  123. 今井博

    今井(博)政府委員 保安の勧告によって山を閉鎖する場合の問題でございますが、本来われわれの考え方は、保安が非常に不良であって、鉱業の継続に非常に不適当であるというふうな山は、本来は鉱山保安法の二十四条によって、むしろ鉱業権の取り消し処分を受けるべき炭鉱である。こういう考え方を基本に持っているわけです。これを発動するということは、やはり現状では、相当社会的なフリクションを起こすだろうということを考えまして、一応これは二十四条に至らざる前に、保安臨時措置法によって保安の勧告をして、そしてそれによって起こるであろう社会的なフリクションについては、先ほど無価値であるとかなんとかいうことで、多少私も言い過ぎたと思いますが、トン当たり六百円程度の金額というものを、そういう鉱業権の対象ということでなくて、そういう社会的なフリクションを円滑に処理するという目的で、実はそういうような見舞金というふうな性質のものを考えていく、こういうわけでございます。それでは六百円というものは一体どういうことかと申しますと、われわれは鉱山のそういう保安の不良な山は大体わかっておりますので、そういうものを相当シラミつぶしに調べました結果、鉱害の量、それから未払い賃金の量、そういうものを全国的にいろいろ調べて計算しました結果、おおむねトン当たり六百円程度という実は数字が出ましたので、そういうものをむしろ保安勧告対象の方には差し上げて、そういう社会的フリクションをできるだけ避けて、保安の不良な山の閉山を促進する、こういう考え方でございますので、この場合に、残余があれば鉱業権者に差し上げるということは当然かと思いますが、それ以上の措置についてはむしろわれわれとしては、いきなり鉱業権の取り消し処分にいく前に実はクッションとしてこういう制度を考えたわけでございまして、それ以上の分は、これは本来の鉱害というものがやはり当事者間の契約、当事者間の関係ですべて処理するという現在の鉱害処理の大原則に、そうなると立ち返らざるを得ない。それ以上のことを考えるということは、鉱害問題についての抜本的な考え方の大修正になりますので、やはりそこの原則というものはくずすわけにはいかないという実は考え方で、保安の臨時措置法というものを考えたわけであります。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 鉱害というのは、筑豊炭田のように、炭層が幾つもあって、しかもそれが幾つもの鉱業権者なり租鉱権者に掘られておると、どこまでがどの鉱業権者のもので、どこまでがどの鉱業権者のものかということはさっぱりわからぬのが多いわけですね。たとえば脱水陥落というようなものが出てきて、どこまでが滝井義高の鉱害で、どこまでが今井鉱業権者の責任かということは、その移行形態があってさっぱりわからぬのです。従って、保安の調査をしてこれは悪いと思ったら、あなたの方は一つおやめなさい、もうここで一つ鉱業権を全部抹消して新方式にいきなさい、これを私はやってもらう方がいいと思う。法律を改正されるのだから、やらなければ保安でいきますよ、それはあなたは損ですよ、これで私はやってもらう方がいいんじゃないかと思うのです。その鉱害やら未払い賃金のことを考えてですよ。そうしますと、これはゆとりができてくるわけです。今までの山ですと、もう終掘をしましたよという山を買い上げておったのですから、これはやはり筑豊炭田石炭産業が撤退作戦をやるためには、あとの処理ということをきちっとやって撤退してもらわなければ困るのです。池田さんじゃないけれども、工業倶楽部の屋上に行ったら、女工と炭鉱夫の胸像が立っておった、日本の資本主義は、この二つの労働力の血とあぶらと涙の上にでき上がっておるわけですよ。しかも、今炭鉱労働者を引き上げようとするときに、あとのことについても考えなければいかぬと思うのです。あとが六百円くらいのはした金で全部片づくとは私は考えられないと思う。いろいろ問題が出てくると思うのです。そうしますと、これはやはり撤退作戦ですから、労働者にしても、被害者にしても、もう山が終わるというときは、最後の段階なんです。最後できちっとされないくらいしゃくにさわることはない。掘るだけ掘って、いいときにはうんと金をもうけて栄耀栄華をやって、そうして終わるときには、保安でやられました、これだけしか金がありませんからこれでやって下さいと投げ出す。その限界ですべてが終わるということは、やはり問題があると思う。投げ出して終わらせようとするならば、最高のところで終わらせる方がいい。だから、どうせこれは保安にかかるというならば、何月何日保安にかけますけれども、あなたがみずからこの鉱区を抹消してくるならば、一つ新方式でやってあげよう、これくらいの温情があってもいいと思う。そうすると倍になるわけですから、やりいいわけです。しかもそれを未払い賃金なり鉱害に全部、田口さんが言われるように充てられるわけです。こうなると、残りはその場合になくていい。どうせ保安にかかって六百円でやられるのを、千百円でやるということになれば、それだけゆとりができてくるわけですから、鉱業権者はちっとも腹は痛まぬわけです。こういう行政指導をやり得るかどうかということです。今の段階ならば法案を修正するわけにいかぬですから、どうせ伝家の宝刀を抜きますぞ、何月何日じゃ、しかしあなた方がそれまでに山をおつぶしになる、抹消してくるというなら新方式でしてあげましょう、こういうことができるかどうかということです。これができなければ、これはどうせつぶすということが目的ですから、保安というのは保安が悪いからつぶすのですから、そういうことができるかどうか。これは政務次官一つ、政治的な答弁ですから……。
  125. 森清

    ○森(清)政府委員 先ほど来御質問を聞いておりまして、御心配の個所も十分よくわかるのでありますが、ただ先ほど局長からお答え申し上げましたように、法的にはなかなか困難ではございますけれども、十分御趣旨を参酌して、また私ども考えて善処していきたいと考えております。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 これはどうせつぶせばいいということが目的なんですから、その場合には、当然鉱害量や未払い賃金等を、廃止勧告をやるときには調査をされるわけですから、そういう点で一つ十分行政上の運営で御考慮をしていただきたいと思うんです。そうしますと、保安の場合は石炭鉱山整理交付金になっておる。それから新方式の場合は石炭鉱山整理促進交付金と、促進が中に二字入っておる。この違いだけですよ。実質上は同じような感じがしますが、ともかく、促進ということが、合理化法の中には入っておるわけです。そうすると、新方式で未払い賃金と鉱害に交付金を充てる場合と、それから保安で充てる場合との違いを、一つ御説明願いたいと思うのです。割合の違いはどういうところにあるのか。さいぜん田口さんの御説明では、保安のときには交付金を全部鉱害と未払い賃金に充ててもよろしい、もし千万円鉱害と未払い賃金があるなら、千万円みな充ててよろしい。ところが新方式では、その一部を一般債権のために留保するということが言われたわけです。そこで未払い賃金、退職金も含めた未払い賃金と、それから鉱害、両方式の配分の仕方を一つ御説明願いたい。
  127. 今井博

    今井(博)政府委員 先ほど申しましたように、六百円というものをはじきました根拠は、鉱害と未払い賃金というものの実情調査から出て参った数字でございますので、新方式で行なう場合にあたりましても、やはりそういった実情調査に基づく数字が基礎になりまして、そういうものを中心に、何も六百円とは申しません、ほぼ同様の方法で今回新方式でやりまする対象の山は、保安の山よりも若干規模が大きいというふうにも平均して考えられますので、そういったこと等を考えまして、交付金額の中から鉱害、未払い賃金というものについてのおよその金額というものを算定いたしまして、そういうものを交付金から留保いたしまして、保安と同じような目的で、社会的なフリクションを極力避ける、こういう考え方でございます。ただ現在のところ、この交付金の中でどの程度の割合を留保いたすかということについては、まだその調査が済んでおりませんので、どの程度の割合にするかということについては、今ちょっと御返答できかねますが、やはり同様の考え方で妥当な金額をはじいて、一定の割合を留保したいと考えております。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっと保安の方を先に——まず第一に、その廃止した業者、勧告を受けた業者が、たとえば一億円なら一億円の交付金の中から、未払い賃金出しますね。それから鉱害を出すわけでしょう。その場合に一億円も金があればいいのだけれども、たとえば一千万円しかなかった。未払い賃金は八百万円あったというのに、未払い賃金に全部持っていくわけにはいかないわけでしょう。そのまず保安の場合の交付金の未払い賃金に持っていく場合、鉱害にどの程度持っていくのかという、あるいは一般債権にはどういうことになるのかという、この関係を保安の場合とそれから新方式の場合とで一つ御説明願いたい、こういうことなんです。
  129. 今井博

    今井(博)政府委員 かりに交付金が一千万円だといたしますと、その中で未払い賃金がまず優先するわけでございますが、その場合の頭打ちを三割と、こういうふうに押えてございますので、一千万円の三割、三百万円というものがまず未払い賃金に充当される。残りの七百万円が未払い賃金と鉱害の量とに見合いまして、まあ按分される、こういう結果になると思います。新方式の場合におきましても、三割の頭打ちは全く同じに考えておりますので、今の未払い賃金、鉱害との関係は全く同様と考えられてけっこうだと思います。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、一千万円の交付金に対して三百万円、三割に当たる未払い賃金を先取りをする。七百万円については未払い賃金額と鉱害の額とで按分をしていく、こうなるわけですね。その未払い賃金の三割については退職金は含まれておるわけですか。
  131. 今井博

    今井(博)政府委員 退職金は含まれております。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 実は私は閉山した炭鉱の未払い賃金の確認を基準局にしてもらったことが何回もあるわけですが、さあこれを確認をするとなると、なかなかその確認がむずかしいのですね。特に退職金に至ってはなおむずかしくなるのです。それをあなた方は一体どういう方法で今後おやりになろうとするのかということです。これから筑豊炭田調査団が出て、そうしてその今後の具体的な方針が決定をされることになるわけですが、その閣議決定されるまでは一応首切りはないわけですよ。ないのですが、しかし合理化で、あるいは保安でやられる分については、これはその閣議決定が行なわれる以前においてもやはり進行していくわけです。保安が悪かったといって、炭労がストをしてそれをやめさせるわけにはいかない、阻止するわけにはいかないのですから、当然なわけです。そうすると、未払い賃金なり退職金というものは、よほど正確に把握をしておいてもらわぬと、これはあとに問題が残ってくることになるわけです。そこでここらあたりの末端に対する行政指導と申しますか、出先の通産局と基準局とがよほど意思の疎通をはかっておかぬと、うまくいかぬ点が出てくるわけです。こういう点どう処理される方針なのか。
  133. 大島靖

    大島政府委員 未払い賃金の問題については、かねがね滝井先生にしばしば私ども指摘もされ、恐縮に存じておりますが、ことに石炭鉱業における賃金の不払い、未払いという問題は、非常に大きなウエートを占めておるわけでございます。昨年来、保安に関連しての交付金の交付、あるいは今回の合理化に伴っての交付金の交付、こういった点で鉱害賠償債務と不払い賃金債務について特別の立法措置を講じておるわけであります。この実施の細目につきましては、先般来も寄り寄り通産省の当局と私どもの方とで打ち合わせをいたしております。さらに、ただいま石炭局長から申し上げましたように、最終的決定に至るまで今後さらに引き続き打ち合わせたいと考えております。  なお、ただいま先生指摘の退職金の問題、一般的に申して賃金の中へ退職金が含まれるわけでありますが、ただ賃金の場合は非常にはっきりといたしておるのでありますが、退職金等につきましては、一般的に定まっておりますものもありますし、ことに小さいところになりますと、そのときどきに定めるというような事態もありますので、先生おっしゃったように、非常に複雑な問題が生じます。そういった点につきましては、混清の生じませんように、今後とも通産当局と打ち合わせて参りたいと思います。そういたしませんと、急に大きな退職金がきまるというようなことになっても困りますし、全般的にすでにきまっておりますような形のもので、賃金として含めて、こういった不払い賃金の優先的な弁済に充てしめるのが妥当でありますものについては、もちろんけっこうなんでありますが、その他についてはちょっといかがかと思いますので、そういった具体的な問題につきましては、今後さらに通産当局とも詳細に打ち合わせて参りたい、かように考えております。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 実は退職金にしても未払い賃金にしても、大手なり、五千五百万トンの出炭ワクの中に名前の載るような炭鉱は、そう私は問題ないと思うのです。しかし何せ、三百万トンなり四百万トンというものは、名もなき炭鉱から出てくるのですからね。従ってそういう炭鉱は、保安の措置を受けるのは、名もなき炭鉱といってはおかしいけれども、通産当局も知らぬような炭鉱も相当あるわけですから、そういうところが保安の勧告を受けて、行ってみると、それは未払い賃金も相当ある、それから退職金もこれだけあるのです、こう言われると、これは全く証拠がないのですよ。証拠というか、そうでないと否定する証拠がないという場合が出てくると思うのです。だから合理化の計画でも、保安の臨時措置法でも、実は人間の問題についてはあまり書いていないのです。われわれが特に指摘したいのは、合理化に出炭計画とか炭価のトン当たりの値段とか等は書くけれども、このくらいの出炭をするときには、大体こういう人間が要るんだ、これから上の人間は過剰だから、こういうように配置転換するという人間の計画は、ちっとも合理化計画の中に出ていないのです。これは何と申しますか、資本主義的な合理化のやり方ですよ。それと同じように、これについても書いてない。そして賃金と退職金だけは何とか確保しなければならぬという形になっておるのです。そこで、こういう人間の問題をきちっと片づけるためには、今まで労働省はあまりにもこういう方面について私は関心が薄かったと思うのです。そこで今度は大島さんの方も、いよいよ調査団が出て具体的な計画が出れば、相当合理的な合理化計画が進められることになる、そこで人間が犠牲になってくる、労働者が犠牲になってくるという問題が出てくるのですけれども、そのときにやはり退職金なり未払い賃金というものは、きちっと支払いができる体制というものを作ってもらわなければならぬと思うのです。今から一つそういう準備をしておいてもらわぬと、何せ優先的にこの金をとっていくのですから、三割はとるのですから、それだけの権限をこの法律で与えられたからには、その三割の金、あるいは残りのものを按分して、そのうち未払い賃金なり退職金に充てるものが、ほんとうに確実に、間違いなく労働者の手に渡るような姿をとっておいてもわぬと、その金がいつの間にか鉱業権者のふところに入ってしまって、そしてあとの鉱害はなかなか直らないというようなことでは困ると思うのです。こういう抜け道が幾らでもあるのです。あなたも御存じだと思います。こういう形で未払い賃金なり退職金を支払うということになると、抜け道がたくさん出てくると私は思います。というのは、名もなき小さな炭鉱というのは、順当に賃金を支払わずに見合い見合いできておるんですよ。そうしてその未払いになった労働者は、いつの間にかそこらあたりにはいなくなっている。一カ月か二カ月働いては、もう次の炭鉱に行っておる。だからはなはだしい人は、Aという炭鉱にもBという炭鉱にも、Cという炭鉱にも未払い賃金を持っておるという状態があるわけです。従って、未払い賃金を取りにこいと言っても、取りにこない人がおるかもしれないというようなこともあり得るわけです。だからこういう点について、何か合理的に未払い賃金と退職金が証明できる実態を把握することに、一つ速急に努力していただきたいと思います。
  135. 大島靖

    大島政府委員 ただいま滝井先生の御指摘の点は、非常に重要な点だと思います。ことに中小の零細な炭鉱の現状は、まさに御指摘通りであろうと思います。そういう点この制度の趣旨が十分生きて運用できますように、私ども通産当局と十分連絡をとりますし、また地方におきましても、通産の出先と私どもの出先と十分連絡をとりまして、ただいま先生指摘の御趣旨のような運用をして参るように努力いたしたいと思います。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 それから、この保安の方で一千万円の交付金がきて、三割を未払い賃金に充てる、そうすると残りの七百万円を未払い賃金と鉱害に按分することになるわけです。大体その未払い賃金がこれで相当程度救われることになるわけです。これは新方式についても大体同じだということです。そうすると、今までの旧方式では、未払い賃金や何かは、一般債権の中で一番あと回しになっておった。もしその炭鉱で莫大な鉱害を持っておる場合には、ほとんど未払い賃金というものはもらえなかったのですが、今度はこれが最優先になってきた。その限度において、今度は鉱害の方がへこんできたことになる。岸さんの、沖繩主権の、出るのとへこむのとあるという論理からいえば、それだけ鉱害の復旧がへこむことになるわけです。ここのところが、この新方式なり保安で山をつぶす方式は、今までの旧方式と違うことになるわけですね。そうしますと、保安の場合には、一般債権——一般債権といってもいろいろありますが、たとえばこういう場合があるわけです。その炭鉱がやるためには、坑口をあけ、鉱業施設を作らなければならないので、炭鉱に全部、鉱業施設を作るために、たんぼ、畑あるいは山林でもいいですが、そういうものを貸しておるわけです。そうしてその契約は、必ずこれは、炭鉱が終わったときにはもとのたんぼなり、もとの畑に復旧をしてお返ししますという一項を入れて、契約を結んでおるわけです。そうしてその賃貸料については、反当たり一年五千円なら五千円ずつ払います、こうなっておるわけです。ところが保安にかかるような炭鉱ですから、あるいは新方式で買い上げられるような炭鉱ですから、そんなものは何も払わないという場合が多いわけです。特に保安にかかった炭鉱のごときは、何も払っていない。こういうものの金というものは一体どうなるかというと、これはもらえないですね。一般債権になるわけです。民事上の契約ですから、これはもらえないわけです。鉱害の復旧もやってもらえぬ、金はこない、こういう形になるわけです。こういう処理を、あなた方はこの立法をおやりになるときにお考えになったのかどうかということです。保安の方が極端に出てきて、それから新方式の方が比較的それよりか軽い形で出てくるという違いだけでしょう。この場合の処理方式というものを、政府は一体どう考えておるのかということです。どうしてこういう質問をするかというと、田口さんの方が全部金を預かっておるわけですけれども、被害者にしても、労働者にしても、幾らの金を預かっておるかわからぬわけです。この山は交付金を五千万円出しましたということを天下に公表するわけにいかぬでしょうから、黙っておるわけです。黙っておるとすれば、田口さんの手のうちにまだ金が相当あるぞという気持があるから、どんどん押しかけていくわけです。そうすると田口さんの方は、まさか、これだけしかありませんから、さあ投げ出すから、あなたたちでいいようにしなさいというわけにはいかぬと思うのです。そこで、こういうときの具体的な処理方式というものをどうするのか、ここで一応聞かしておいてもらいたいと思うのです。
  137. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいま御指摘になりました例は、実際ある例だと思います。これは非常に極端な悪質な経営者の場合、そういうことがあり得ると思うのです。問題は、それではそういった悪質な経営者がやっておる山が、現在のままで鉱害を合理的に払うかというと、これは全然払わぬわけでございまして、非常に極端な言い方をすれば、山が終掘して閉山になっちゃった、こういう場合にはおそらく何もしないでどこかへ行っちゃう、こういうことに実はなると思います。この場合に現状の制度では、これを救済する方法はございません。無資力認定か何かでそういうものを処理するという制度は過渡的に残っておりますが、最終的にはそういった悪質な経営者の場合には、どうにもしようがないという状態でございます。今回こういう制度を考えました際にも、もちろんそういった場合にうまい方法がないということで、実はいろいろ研究をしてみたのでございますが、どうもそういった悪質な経営者に対しては、実はやりようがない。しかし現状でほうっておくよりは、たとえば一千万円なら一千万円という交付金が出た場合には、賃金の問題を差っ引いた残りについては、それだけ鉱害の金がリザーブされるわけでありますから、少なくとも現状よりは一歩前進する、こういう考え方に立っておりまして、根本的解決にはなりませんけれども、現状よりはやはりそれだけ鉱害の金がリザーブされるならば、少なくとも現状よりは前進する、こういう考え方に立っておりますが、なお根本的な問題については、実はこの保安措置法なり合理化促進法では解決できない、もっと根本的に考え直さなければいかぬということになろうかと考えております。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 話を具体的にしていきますと、もう少し疑問が出てくると思うのです。なるほど保安にかかるような山は、もうすでにそのこと自体が悪質なんですよ。そうでしょう。悪質だから保安にかかるんですよ。労働者のことを考えずにやっておるような山ですから、人の命よりか、自分の金もうけの方が優先しておるわけです。それがわかっておってやらせるわけですから、跡始末ができぬということは常識ですよ。そこを僕は政府に言うわけですよ。それならばさいぜんのように、勧告して、新方式で行きなさい、こういうことを言ってもらう方がいいんじゃないか。一応、ケース・バイ・ケースでそういうこともあり得るだろうというような意味の御答弁がありましたからそれでいいとして、それじゃその場合に今度は一千万円の交付金が来ますね。そうすると、鉱害には三つの形が出てくるわけです。まず第一に、打ち切りが出てきますね。もう私は打ち切ってもらいたい、こう鉱業権者で言う人が出てきます。これは話が早くつくわけですね。それから二番目は、安定をしておるから臨鉱だ、こういうのが出てくるわけですね。それから、私のところは今廃止勧告でやめたばかりで、まだきのうまでは下を掘っておったのだから、二年、三年たたなければやれません、この三つの形が出てきます。ワクはきまったのですよ、千万円。そうすると話し合いがずっと進んで、打ち切りのものが先行していくわけです。そうしますと一体次元の違う三つの——次元が違います、打ち切りが一番早い、その次は安定鉱害、その次は不安定鉱害、こういう三つのものの配分をどうするかという問題が出てくるわけですね。いいですか、未払い賃金に三割、三百万円引いて、あとの七百万円を未払い賃金と鉱害に分ける、そうすると、あとは、二百万円をさらに未払い賃金に回したとすると、五百万円残る、五百万円を三つに分けるわけですね。そうすると、安定鉱害が五百万円みんなとったらどうなりますか。あとは鉱業権者が出せということになるでしょうけれども——そこで、田口さんの方としては、その五百万円を三つに按分をしておいてもらわないと、あとになってから鉱業権者に、私は無一文ですと言われても、どうにもならぬということになるわけです。五百万円で打ち切りも安定鉱害も不安定鉱害も泣き寝入りなさいということに、先に引導を渡すのかどうか。次元が違うのですよ、こういう問題が出てくるわけです。ですから、この処理を一体どういうやり方で田口さんの方はやっておいでになるかということなんです。これは保安の措置であろうと新方式であろうと、同じです。今までは待てば海路の何とやらで、金がなくても、最後には田口さんのそでを引っぱると、打ち出の小づちではないけれども、金が出る。今度は金が出ないのですから、鉱業権者がどこか北海道あたりに行って観光事業をやっておったという場合には、そこまで追っていくわけにはいかないから、これは根本的に違ってきたわけです。そこで、この次元の違う三つの鉱害についての対策というものを、政府はきちっと今から方針を打ち出してもらわぬと、ワクがきまっているのですからね。同じワクの中で分けよというなら、話はまたわかってくる。賃金と鉱害と按分比例をしたけれども、それじゃ次元の違う鉱害の場合は一体どうするのか。
  139. 今井博

    今井(博)政府委員 実は確かに次元は違いますが、やはりその三つの場合のケースの当事者の同意を得て配分計画を公平にきめるということをやらざるを得ない。従ってそういう計画がきまり、同意が得られるまでは金の配分はいたさない、こういうことになろうと思います。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 だからそこなんですよ、それが問題なんです。三者の合意ができるまでというと、結局、不安定鉱害が安定するまで引っぱられていくわけです。そうすると、もう家は傾いてどうにもならぬのが、泣き寝入りせざるを得ないわけですよ。復旧すれば百万円かかる。しかし、君の配分は十万円だぞ、十万円でももらえぬよりはいいじゃないか、鉱業権者も北海道に逃げて、いないのだ、こう田口さんの方から言われると、なるほどそうですが、もう十万円でもしょうがないです。それじゃこの法律を作ったかいがないですよ。それではあまりかわいそうですよ。もう石炭の撤退作戦をやるというときに、百万円の鉱害がある、それを十万円しかないから十万円で泣き寝入りしなさい。これは、もらわないよりかいいですよ。いいけれども、それでは私は片手落ちだと言わざるを得ない。それだったら、この法案は僕らちょっと納得することができないですよ。それはやはりもう一行つけ加えて修正をして、新方式でも田口さんの方が連帯責任を最後には持つのだ、大手以外には何か政府が措置をするというような一項でも入れてもらわないことには、とても僕はのめませんよ。僕はこの合理化はのめない。こんなことをしていたら、筑豊炭田はみんな政府に押しかけてきますよ。
  141. 今井博

    今井(博)政府委員 これは保安臨時措置法の場合と合理化の場合とは、若干差異があるのじゃないかと思いますが、保安の場合は非常に小さな山ですし、不安定鉱害についてはそう長く時間がかからぬのじゃないか。従って保安の関係については、やはり今私が答弁しましたような考え方でやっています。合理化の臨時措置法による新方式は、少しスケールが大きいので、不安定鉱害というものに若干時間がかかるというふうなこともございますので、やり方としてはむずかしいかもしれませんが、現在の安定鉱害あるいは打ち切りの関係、そういうものについてやはり一定の時期には金の配分を考えまして、不安定の関係は一応予測し得る資料に基づいてその分だけは将来に保留していく、そういった措置を実際問題としてはとらざるを得ないのではないか。その点保安の場合と合理化の場合とは、実際のやり方としては多少変えなければならぬというふうに考えます。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 やはり小さいところでも、浅いところを掘っているわけです。保安にかかるようなところですから。だからその分は地盤沈下が早くて、従って安定も早いと思うのです。しかし、それにしてもやはり二年はかかるのです。それはどうしてかというと、あなた方首を振っていらっしゃるけれども筑豊炭田の実態を見ると、そんなに小さな炭鉱の横には、中小がやっているのです。だから小さい炭鉱が保安でやめても、脱水陥落がけっこう出てくるのですよ。だから、あなたの方がこれは安定しましたといっても——たとえば私自身のうちなんかでも、安定しましたと言われたんだ。ところが安定しましたと言われても、うちのへいが倒れるし、裏に大きい穴があいてくるのです。それをだれがしたんだといっても、だれかわからんことになるわけですよ。そうしますと、あなた方はこの法律によって田口さんの方の事務の進捗をはかるということでお作りになったけれども、実際は今言ったように、三者の話し合いがきちっとまとまるまではその金の配分をしないということになれば、不安定鉱害が一体どの程度に安定をしてくるかということの見さかいをつけなければ、金の配分ができぬことになる。なぜならば、があっと、うんと沈下してくるかもしれぬですから。そして、安定するまでは待たなければならぬ。それまでは金の配分はできぬということになれば、事務が進捗しないことを意味するわけです。かえってこれの方が事務は長引いて、田口さんを神経衰弱に陥れる要因になるわけですよ。だから、これはどうも、今井さんたちのここらの考えになると、僕とずいぶん意見が違うのですね。あなたは簡単にいくとお思いになっているけれども、そうはいかぬのじゃないでしょうか。ここらあたりで、田口さんの方の考え方を一つ。一体これで事務が進捗をして、うまく事務的にいって、今までよりもずっと能率的に処理ができるか。私、どうもできないような感じがするのです。
  143. 田口良明

    田口参考人 この法案が通りました暁には政令、省令あるいは業務方法書がおのずからきめられると思うのですが、それに従って合理化事業団の方としては事務の円滑な推進をはからなければならないだろうというふうに考えておりますが、ただいままで私どもがいろいろと研究、準備しておりますことは、今度の保安不良の炭鉱にいたしましても、新方式にいたしましても、また旧方式にいたしましても、根本は鉱業権者が鉱害の処理をするのであるという建前を捨てていないわけです。従いまして、今度大臣の勧告によって廃止するという、保安臨時措置法に基づく閉山炭鉱、あるいは新方式による閉山炭鉱も結局のところは、当該鉱業権者に鉱害の責任はあるということでございます。ただ、ただいま御指摘がございましたように、中には悪質の鉱業権者もございますし、また資力においても十分でないというような炭鉱もあるかと思いますが、ただ、今御指摘になりました打ち切り賠償あるいは安定鉱害の復旧の問題、あるいはさらに不安定の問題につきましては、今度のこの法律によっていずれきまるであろう業務方法書を考えてみますときに、やはり弁済計画というものを一応立てなければならぬ。その弁済計画は鉱業権者あるいは被害者の意見を十分尊重しまして、弁済計画を一応立てる。この弁済計画を通産省の方に出しまして承認を得るということになると思うのです。その場合に、次元的にいろいろ違いますから、十分その間の事情を勘案しなければならぬことはもちろんでありますが、その前にやはりこの鉱害については特に公示方式をとる。公示して、いつ何どきにこうなっておるから、そういう人たちには十分申し出させる機会を与える、そういうことによって、公示期間を十分とって遺憾のないことを期する。そして今度はそれによっての弁済計画が一応承認になりますと、その弁済計画に従って事業団はその交付金の支払いを始めるということになる。ただ、今御指摘にありましたように事務がかなり煩雑であり、その間に今の不安定鉱害というようなものもございますので、若干の時間がかかるのじゃないかということを非常に懸念しておりますが、これは鉱害の性質上いたし方ないというように考えております。いずれこの問題については政令、省令あるいは業務方法書その他がはっきりきまって参ると思いますが、その辺において、御当局におかれましても十分配慮していただけるものと私どもは期待しておるわけであります。
  144. 井手以誠

    井手委員 関連してお伺いをいたします。今滝井委員質問は、私も同様の不安を持つものでありまして、田口さんはいずれということでありますが、いずれということでは、本日私ども承知するわけには参りません。やはり基本方針だけは承っておかぬと、この法案を通すわけには参らないと考えております。重複するかもしれませんが、一つ端的にお伺いをいたします。石炭局長にお伺いしますが、一定割合を留保するという一定割合とは、どのくらいをお考えでございますか。賃金債務及び鉱害賠償債務を留保するための一定割合とはどのくらいでございますか。
  145. 今井博

    今井(博)政府委員 まだ結論には到達いたしておりませんが、五割ないし七割程度を留保したいというところで検討いたしております。
  146. 井手以誠

    井手委員 五割ないし七割の範囲であると了解しておきます。  次に、賃金債務及び鉱害賠償債務というのは、優先順位があるのか同列であるのか、その点をお伺いいたします。
  147. 今井博

    今井(博)政府委員 賃金債務につきましては、賃金債務が優先する、しかしそれは全体の交付金額の三割まで頭打ちである、その限度で賃金債務は優先する、あとは同列である、そういうことです。
  148. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、五割ないし七割のうちに、全体の三割までが賃金債務が最優先をする、そうしますと、あと、五割ないし七割のうちの賃金の三割を引いた分は、鉱害賠償債務に全部充てられますか、あるいはその場合に、賃金との関係が生ずるのでございますか、はっきりしておいてもらいたい。
  149. 今井博

    今井(博)政府委員 この合理化法の場合は、一定割合をリザーブいたしまして、その一定割合の三割が……。
  150. 井手以誠

    井手委員 いや、違う。全体の三割。一定割合というのは、五割ないし七割のうちの三割では少なくなりますよ。はっきりして下さい。
  151. 今井博

    今井(博)政府委員 五割ないし七割のうちの三割、保安の場合はリザーブがございませんから、全体が一千万円といたしますと、そのうちの三割が賃金債務として優先する。今度の合理化法の場合におきましては、全体の金額の中で、まず五割ないし七割というものを留保いたします。これはいかなるほかの債権よりも優先するということで、リザーブするわけです。その中の三割というものを、賃金債務としてまず確保して、残りにつきまして賃金と鉱害を同列に考える、こういうことでございます。
  152. 井手以誠

    井手委員 そうしますと最低の場合、五割の三割ですから一割五分が賃金債務に最優先して留保される。それからその残りの、最低の場合五割の七割、これは賃金債務と鉱害賠償債務と按分してやりますか、それはどうですか。
  153. 今井博

    今井(博)政府委員 按分してやります。
  154. 井手以誠

    井手委員 その按分する場合に、鉱害のものは、安定鉱害と不安定鉱害は通産局が認定をして、先刻田口さんがお話になりましたように、鉱害復旧を建前とした、工事を建前とした鉱害復旧の費用と、残り賃金の金額の割合、たとえば鉱害の場合は安定鉱害、不安定鉱害、これは鉱害復旧をするという建前で五百万円だった、賃金は三割を差し引いた七割は三百万円だったという場合には、その五百万円と三百万円の按分になりますか、そういう経過でございますか。
  155. 今井博

    今井(博)政府委員 おおむね御指摘通りですが、鉱害の方は、鉱害全体の量ではなくて、鉱害の金額の中で鉱業権者の本来受け持つべき納付金部分というものと、先ほど申されました三割の賃金債務を引いた残りとの按分、こういうことになっております。
  156. 井手以誠

    井手委員 そこで、滝井委員のような疑問が出て参るわけです。鉱害というものが、場合によっては五割賠償できるでしょう、しかし、場合によっては一、二割しか賠償ができないという結果になるのですが、それも予想されておるのですか。また、ついでにお伺いいたしますが、この場合は、例の公租公課なんかはどうなりますか。
  157. 今井博

    今井(博)政府委員 この一定割合をリザーブいたしましたのは、公租公課等よりも、この一定割合の方が優先留保される、こういう考え方でございます。それから、一般的には私は今の割合で十分目的を達し得ると考えております。
  158. 井手以誠

    井手委員 きょうは法制局は見えておりませんが、公租公課の点は、この程度の条文で大丈夫ですか。
  159. 今井博

    今井(博)政府委員 大丈夫でございます。
  160. 井手以誠

    井手委員 そうしますと、先刻お話があったように、私ども依然として不安を感じておりますのは、鉱害があるいは半分、あるいは二割しか賠償ができなかったあとの部分、これは依然として鉱業権者にあるというお話ですが、それはもちろんそうでしょう。そうでしょうけれども、それで大体いいのですか。やむを得ないのですか。
  161. 今井博

    今井(博)政府委員 これは、鉱害債務というものがやはり当事者間の関係というものからきておりますので、現状ではやむを得ないと思います。
  162. 井手以誠

    井手委員 無過失賠償責任の最近の立法の進歩からいきますと、この考え方は若干後退しているのじゃないですか。場合によっては一定割合を留保するということでございますから、相当考えてありますけれども、実際から考えますと、二割か三割しか賠償ができなかった場合を考えますと、いわゆる無過失賠償責任という最近の立法の動きから見ますと、後退することになりませんか。実際それは、業者は払い切ることは困難でしょう。実際問題として一たん買い上げたものは、これは買いつぶすまでは、とても困難です、鉱業権者との話を進めることは、理屈はそうですけれども、実際は絶対というほど困難ですよ。
  163. 今井博

    今井(博)政府委員 無過失賠償責任というのは、これは鉱業権者が無過失賠償責任を負う、こういう意味ですから、その原則からはずれることには私はならぬと思います。しかし実際問題として買収された、あるいは整理されたあとの賠償を鉱業権者がはたして払うか払わぬかという点は、一般の場合はこれは払うと思いますが、極端な、滝井先生が御指摘になりましたような悪質な経営者においては、そういう懸念は一応あると思います。
  164. 井手以誠

    井手委員 悪質でない場合も、先刻お話があったように、ないそでは振れないのです。そこでもう一つ、保安の場合は、鉱業権者は六百円でしたね、それから租鉱権者は四百円だったと思いますが、それで大体どれくらい賃金と鉱害が補償される見込みでございますか。  もう一点お伺いしたいのは、先刻あなたは余ったものは鉱業権者に返すとおっしゃいましたが、これは鉱業権を買うというふうなことじゃなくて、やはり債務に充てるのが建前ですから、余ったものを返さずにそれを残しておいて、過不足の場合にそれをプールして払うという考え方も必要ではないですか。たとえば金銭債務が少なかった、鉱害が少なかったという炭鉱に対して余ったものは返す、それは筋かもしれませんけれども、片一方では買い上げたために鉱害の賠償が非常に少なかった、賃金債務も十分ではなかったというような場合があるわけですから、そういうもののために保留しておいてプールするということを考える必要はないのか、その点をお伺いいたしたい。
  165. 今井博

    今井(博)政府委員 先ほどの返す場合は、この十一条でもって鉱害とか未払い賃金関係については十分それで解決されておるという見通しが確かな場合に、その残額を返すという意味でございまして、その場合には、その残額については返すのが当然じゃないかと思います。
  166. 井手以誠

    井手委員 田口さん、一つ聞いておいてもらいたいのですが、先刻の石炭局長の答弁です。五割ないし七割のうちの半分は金銭債務に最優先で留保される。その残りはその鉱害賠償の債務と賃金債務の金額に按分してきめる、その鉱害賠償については、それは安定鉱害、不安定鉱害を鉱害復旧することを建前とした鉱害賠償の金額と賃金債務の残額を按分してやるという御答弁でございましたから、その点はしかとあなたの方でも記憶しておいてもらいたい。その点は一つはっきり返事をしておいてもらいたい。
  167. 田口良明

    田口参考人 承知いたしました。
  168. 井手以誠

    井手委員 そこでもう一つ実は例を申し上げますが、これは長い間、七年も八年も問題になっております杵島炭鉱の問題です。私はこの問題は今急に追及しようとは考えておりませんが、行政区画で賠償の区域を定められておるのですね。隣接の武雄にも鉱害があるにもかかわらず、それは全然触れられていないのです。触れられずに、通産局が裁定して買い上げを行なったのです。今日に至ってなおもめておりますが、いよいよ最終段階にはなっておりますけれども、現実に国鉄では特別鉱害復旧工事として数千万円を投じて復旧工事をやったその地域に、いや、それは鉱害でないと杵島炭鉱は突っぱねておる。あなたの方の福岡の支部のある課長が、最近になって、いや鉱害じゃございません、こんなもの鉱害かと、暴言を吐いておる。その点は別の機会に追及したいと思っておるが、けしからぬ。しかしそういったふうに一たん買い上げて、さらに当然鉱害を予想しなくちゃならぬところを除外しておった。その鉱害の請求が今度やってくる。しかしそれは予想していなかったから、あらためて事業団が金を出すとか、炭鉱側が追加して金を出すということは、実際問題としてなかなか困難なんですよ。それでもめておるのです。そういうことがこういう場合にどんどん起こってくるのですから、聞いておるわけなんです。そういう場合に、炭鉱からは、ある調査の、きまった区域の鉱害の分だけしかあなたの方は預っていない、炭鉱はそれだけだと思って全部きれいに清算してしまった、新たに起こったというが、前からあった鉱害をあらためて相談した場合、なかなか金を出してもらえぬです。通産局では鉱害だとはっきり言っておる。現にもう何年も前、特別鉱害で工事をやっている地域なんです。そういうところがほかにもあるのです。そういう場合に、事業団も別に金を出さなければならぬ、炭鉱もまた出さなければならぬはずであるけれども、今になって金を出すのは惜しいような気がして、なかなか出すと言わない。そういう場合はどう救済するかということです。自分の方も悪うございました、一つ政府の方も考えていただけぬか、住民が困るからといって、政府に何かの相談をなさる考えがあるのか。事業団だけでまかなおうとすれば、これはなかなか話がうまくいかないのです。局長、そういうことが方々にあるのですよ。杵島ばかりではございません。そういう場合はどういうお考えでございますか、一つこの機会にお伺いしておきたいと思う。
  169. 今井博

    今井(博)政府委員 それは一般的にもよくある例かと思いますが、やはりそれは鉱害の認定の問題だと思います。従って、鉱害の認定について当事者の方でなかなか話し合いがつかぬという場合には、通産局が中へ入って、鉱害の認定についていろいろあっせんとか調査をいたしまして断を下すという以外に方法はないと思います。
  170. 井手以誠

    井手委員 そういたしますと、その断を下した場合、金をどこから出してもらえますか。何か先般の石炭業者の大会では、そんなものは払わぬという決議をしたそうですが、そんなことでいいのですか。
  171. 今井博

    今井(博)政府委員 鉱害のケースによると思いますが、明らかに鉱業権者の方に鉱害の責任があるというふうな判定が下りました場合には、これは当然鉱業権者が出すべきものだと思っております。事業団が買収した場合には、これは事業団が連帯責任を持っておりますから、鉱業権者並びに事業団の連帯責任だと思います。問題はケースによりまして、はたして鉱害であるのかないのか、そういう認定につきまして、相当これはあいまいなといいますか、はっきり断が下せない、そういうむずかしいケースが多いようでございまして、この点はやはり現在科学認定という制度を採用いたしておりますが、できるだけそういう科学的な認定制度というものによって結論を下すよりほかに方法がないのじゃないかと思います。
  172. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、さいぜんのところにもう一ぺん帰るわけですが、新方式で五割ないし七割を未払い賃金と鉱害に留保するわけですね。そうすると、残りの三割ないし五割というのは、これは何に充てることになるわけですか。それも、鉱害と未払い賃金に、不足するときには按分して回すことになるのですか。今までは公租公課だってなんだって、足らぬときには税務署に交渉して、ちょっぴり納めたことにして、税金を鉱害に回しておったんですよ。そうすると今度は、五割ないし七割留保した残りの三割ないし五割分は、そういう公租公課とか、坑木代とかいうものに優先的に確実に回すということになるのですか。
  173. 今井博

    今井(博)政府委員 その一定割合の限度までは賃金と鉱害に最優先的に支払う、こういう関係になるわけですから、たとえば公租公課あるいは抵当権を持っていても、そういう一定割合については差し押えができない。先ほどの御質問のように確実にそういうものが解決されたということになりますと、その残余は鉱業権者に返して、それは一般債権の対象になる、こういうことになるわけであります。
  174. 滝井義高

    ○滝井委員 そのときに一般債権が優先しますか。また、その三割ないし五割の残った一般債権の配分分について、鉱害の補害者が、百万円あったのに十万円しかもらわぬのだから、あと九十万円をわれわれももらいたいと言ってきても、それはもらえませんか、こう言っているわけです。
  175. 今井博

    今井(博)政府委員 返済した分については、これは一般債権の対象でございますから、その場合にはやはり公租公課あるいはそういう抵当権が事実上優先する、こういうことになります。
  176. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、この制度はますます悪くなってきたわけです。今までの買い上げ方式というのは、とにかくあり金を全部鉱害に充てることが最優先だったわけです。未払い賃金だってあと回しになったわけです。ところが今度は未払い賃金、これはいいですよ。われわれも、これは優先的にもらわなければならぬ。ところが今度は、次の鉱害というものは非常に虐待されることになって、鉱害よりも今度は一般債権の方が先になったんですよ。一般債権の方がむしろ、今度は確実なものを三割ないし五割とることになった。そうすると、筑豊炭田——筑豊炭田が一番鉱害が多いのですから、今度撤退作戦をやることになってから、その跡始末もせずに、やる限度というものを買い上げた限度というものに限って、そして終息してやろうというのですから、こんな不合理なものはありませんよ。これには私賛成できませんよ。きょう通すわけにいきませんよ。それでは被害者は踏んだり、けったりですよ。これを帰って被害者に説明したら、今度は被害者が押しかけてきますよ。炭労が押しかけてくるだけではなしに、今度は被害者が押しかけてくる。あとは被害者と相談しておやりなさい。悪質な山やその他は、政府としては、私的契約だからだめですよと言いますが、そもそも下の穴を掘ることを許したのは、政府が許したんですからね。だから、無過失賠償責任というへんちくりんなことを各社が勝手にきめている。まるきり知らずに家を建てている、その下を掘って、陥没させて、百万円も被害を与えておって、政府からくる金というものは、百万円のうち十万円しかないから、十万円であとは終わりだ、こんなばかなことはないですよ。これをわれわれがきょう通したら、われわれは筑豊に帰れぬですよ。だから鉱業権者に対して、どんなことがあっても政府が責任を持って、鉱業権者の財産を差し押えても、これは全部しりぬぐいをやりますというのなら、この法案は通りますよ。ところが、そうではない。これは今までよりもあまりにも鉱業権者を優遇し過ぎている。鉱業権者が坑木屋とやったのは私的な勝手な契約です。ところが家をこわされた被害者は、全く知らぬうちに自分の下を掘られたのです。私なんかも自分の家の下を掘られて掘り終わってしまって、初めて自分の家の下を掘っておったということを知ったのです。深いところを掘るときには全然わからない。そして二年か三年してから初めて鉱害が来始めるから、これはおかしいなと思って調べてみたら、あにはからんや盗掘があったなんということなんですから、全額を鉱害と未払い賃金に充てるというならばいいけれども、今言ったように五割とか七割を充てて、あとは坑木その他が優先するということなら、この法案は通すわけには参らぬ、私一人でもがんばって絶対通すわけにはいかぬですよ。
  177. 今井博

    今井(博)政府委員 ただいま議論がそこまで実はいっておりませんで、一般的な話を私は申し上げておったわけなんです。ただいま御指摘になりましたような、そういう留保金額といいますか、交付金額よりも鉱害の方が非常にオーバーする、こういった事例につきましては、これは一種の例外的な事例である、こう考えまして、一般的には一定割合、こういうことでやりますが、そういう場合にはやはり例外的な措置として金額を補償する、こういうことも十分われわれは考えておるわけでございますから、今までは一般的な制度として、そういう割合で一応できるんじゃないかということを御説明申し上げたわけであります。
  178. 滝井義高

    ○滝井委員 私は、それだったらこの一定割合のところを削除してもらいたいと思うんです。少なくとも最優先的に未払い賃金と鉱害に全部充てる。今までもそうなんですからね。炭鉱にあった坑木やその他というものは、火薬業者というようなものはもらえないのです。これは炭鉱と信用ずくでやったのですからね。ところが普通の家屋の被害者は、約束ずくでやったわけじゃない。なるほど坑口を開くそばの人たちは約束ずくでやったかもしれぬけれども、二千メートルも三千メートルも先の方に家を建てておる人は、まさか下を掘るとは思わぬで家を建てておるわけです。だから、これは無過失賠償責任とおっしゃるわけです。従って、これは一定割合じゃなくて、交付金の全額をまず鉱害や未払い賃金に充てる、そして残余があった場合に初めてやる、こういう方式にしておいてもらわなければ、これはとても納得できないです。政府は誤植の訂正でおやりになるのは得意ですから、正誤表を出してもらって、そうじゃなかったように変えてもらわなければ、とても私は納得できない。今でさえも、保安の方でも、よく国会はあんなものを通したと言われておるのに、こんなものを通して、われわれこれを持って帰って説明したら、炭鉱労働者と同じように、被害者が上がってきてすわり込みますよ。これは、撤退作戦をやらずに、炭鉱が隆々と日の出の勢いのときならこういうのでもいいです。われわれは鉱業権者から取り得ます。しかし今、われわれがどんなにしたって取り得ないです。鉱業権者から取るだけの力がない。これは改悪の最たるものです。あまりにも鉱業権者に温情を持ち過ぎるんですよ。これは炭鉱のための離職金も出すわ、無利子の出世払いのような交付金も出すわ、合理化資金、近代化資金も出すわという状態で、無過失のものなら見舞金をやるんだといっておいて、被害者の方にはきわめて冷酷な、こういう片手落ちの政策じゃ因る。鉱害の被害者には農家や何か多いんだから、自由民主党の支持者が多いんだ。炭鉱労働者は私の方だけれども。それにこんなものを持って帰ってごらんなさい。押しかけてくることになる。私は一定割合のところは、どうも条文を読んでおかしいなと思っておったんだけれども、だんだん聞いてみるとますますはっきりしてきたので、そこは納得できません。  次は、鉱業権者に保安の命令が出たときには、租鉱権者は一体どうなるのか、あるいは鉱業権者が自分の鉱区を抹消したときに、その鉱業権者と租鉱権者はどうなるのか。逆に租鉱権者に命令が出たときに、あるいは合理化方式で買い上げてもらったときに、鉱業権者との関係はどうなるのか、これを一つわかりやすく説明して下さい。
  179. 今井博

    今井(博)政府委員 租鉱権者に保安の関係で命令が出た場合には、鉱業権者には直接関係はございません。従って租鉱権が抹消される、鉱業権者にそういう勧告が出ました場合には、鉱業権を抹消いたします関係上、租鉱権も当然抹消になる、こういう関係になると思います。それから合理化法の場合も、これは勧告はございませんが、鉱業権を抹消するという点におきましては保安と同様の関係になる、こうお考え願ってけっこうであります。
  180. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、保安の場合でも合理化の場合でも、鉱業権者が抹消されると租鉱権も死ぬ。しかし租鉱権が死んだ場合には、鉱業権が死ぬことはない。この場合に、両者お互いに同意をとることが必要ですか。たとえば合理化の方を見ますと、「租鉱権の放棄の場合にあっては、その租鉱権の放棄について採掘権者の同意があること。」こうなるわけですね、この逆の場合……。
  181. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 だいぶ事務的な問題でもあるようでございますが、本来の鉱害復旧なり、いわゆる被害者に対する援護の方法政府考え方を明確にして御了承を得たいと思います。  申すまでもなく、在来の例等から見まして、被害者に対する十分な救済ができていない、あるいは賃金の未払い等もそのままになり、そして事業経営者が政府からの買収金そのもので跡始末しない、自分の収入だけで、跡始末しない、こういうような事例が幾多あったわけでございます。そういう意味からこれに対する対策としては、法制も万全を期すように考慮しなければならないことは御指摘通りだと思います。  そこで私ども考えますのに、まず第一は、買収する、事業を廃止するその山の実情についての正確な調査をとること、いわゆる採掘の範囲なり、また被害の状況なり、過去の賃金の支払い状況なり、あらゆる正確なデータをつかんで、しかる上でこの廃止についての実施をやることは当然のことだと思いますが、これが十分できておると、幾分か被害者に対する救済が、御指摘になったような事態を起こさぬでまず済みはしないか。そういう意味において事前の準備が非常に大事だということは、私ども行政指導の面で可能なことのように思います。また今の法律に書いてあります一定割合を留保するという意味も、そういう意味で、わずかでもいいかもしれませんが、場合によりましては全額、あるいは九割、そういうものをちゃんと確保するということが、買収あるいは鉱害復旧等を容易ならしめるゆえんだ、かように考えますので、この一定割合は必ずしも厳格なものとは私は思いません。さような処置を事前にとりまして万遺漏なきを期して参りたいと思います。この意味においての被買収者に対する行政指導、これを強化することは当然であります。しかして、なおかつその被買収者に能力がない、こういう場合もあるだろうと思います。そういう場合がただいまのような問題になるわけでございますが、いわゆる無資力認定制度、これを活用することによりまして、被害者に対する救済なども十分な援護ができると私は確信をいたしますが、少なくとも非常な不都合は生じないような方法、その処置をとれるものじゃないか、かように考える次第でございます。ただいま実際問題の処理について事務当局からるる御説明を申し上げましたが、非常に具体的な例についてのお尋ねでございますので、この原則自身がいかにもぐらついているかのような印象を与えたことはまことに残念に思いますが、ただいまのような処置をとりまして万全を期したい、この点を一つ御了承いただきたいと思います。
  182. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 議事進行について。今滝井さんからいろいろ質疑がなされておるわけであります。これは現在の制度よりも、鉱害賠償については後退をすることは事実なんです。それで、今まで事業団がやっておりました困難な仕事を回避するという形で出てきておるのですから、これは今答弁がありましたけれども質問者は納得しておりませんので、その取り扱いについて理事会を開いていただきたい、このことを要望いたします。
  183. 有田喜一

    有田委員長 それでは、暫時休憩することにして、直ちに緊急理事会を開きます。    午後三時三十二分休憩      ————◇—————    午後三時四十一分開議
  184. 有田喜一

    有田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  三法案に対する質疑を続行いたします。滝井義高君。
  185. 滝井義高

    ○滝井委員 新方式の場合に、交付金の五割ないし七割を留保する。それでその五割ないし七割の中から、三割を未払い賃金並びに退職金に最優先的に充当をする。そうするとその残りについては、鉱害とそれから未払い賃金に按分をして処理をしていく。その場合に、鉱害に充当するものは鉱業権者の納付金分に当たることになるわけです。そうすると、五割ないし七割を充当するわけですから、あとに三割ないし五割が残る。このものが公租公課その他坑木代、火薬代とか社会保険料あるいは労災の保険料とかいろいろなものにいくことになるわけですが、それでは、さいぜんから言うように納得がいかない。その場合でも、田口さんの方で金を預かっておるんだから、最終的な鉱害の責任は私の方で持ちますということを言ってくれればいいのだが、それもなくなっている。ということになれば、今度の新方式は鉱害の被害者にとっては踏んだりけられたりで、全く納得がいかぬということなんです。そこでわれわれとしては、当然今までと同じように——未払い賃金が保安の方では鉱害に優先をする限度を定めておるわけですよ。これも一体どの程度優先するのか、おそらく三割がこの優先額になるだろうと思うのです。そうしますと、さいぜん交付金の一千万円で例をあげましたが、一千万円なら一千万円というものは鉱害と未払い賃金が最優先をする、そしてそれに充ててなお残りがあれば、これは一般債権に参りますといろ話ならば、まあ百歩譲って泣き泣き譲ろうかという気持にもなるのです。ほんとはそういう気持は私実はないのですけれども、しかしどうも、一定割合を先にするけれども、残りはもう未払い賃金も鉱害もその方へはもらいにいくことはできない、こういうことになると、ちょっと納得がいかないのです。そこで、この鉱害と未払い賃金に交付金の全額というものをまず充当をして十分処理する、そしてなお残りがあれば他のものに回すという理解ならばよろしい、一定割合というものは、一〇〇%の場合もあり得る、こういう考え方でよろしいかどうかということです。
  186. 今井博

    今井(博)政府委員 一般的な例として五割ないし七割の留保でわれわれとしてはやり得ると考えておりますけれども、筑豊地区等につきましては、確かに鉱害のものがそれよりもはるかに上回るという事例があるようでございまして、もちろんそういう場合には全額を保留するということも当然の措置として考えております。
  187. 滝井義高

    ○滝井委員 これは大臣も間違いなくそう理解していただけますか。
  188. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま事務当局からお答えいたしましたことは、これはもう先ほどお答えいたしました趣旨と同じ趣旨でございますので、もちろんそういうような処置をとりまして問題を起こさないようにしたい、かように考えております。
  189. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、急いで質問を続けますが、さいぜんは、鉱業権者が保安にかかると、租鉱権は当然今度はだめになる、それから租鉱権が保安あるいは新方式でいつた場合には、鉱業権は生きておるんだという答弁があったわけですね。その場合に両者はお互いに同意をとらなければならないかどうかということです。それはこの合理化法では、租鉱権の放棄にあたっては、その租鉱権の放棄について採掘権者の同意が必要になっておるが、逆に今度は鉱業権者の場合は租鉱権者の同意をとらなくてもよろしいかということです。
  190. 今井博

    今井(博)政府委員 むしろその逆でございまして、採掘権者が採掘権を抹消するというときに租鉱権が当然に抹消になりますから、それは租鉱権者の同意が必要です。しかし逆の場合で、租鉱権を抹消するというだけの場合は、鉱業権者の同意は必ずしも必要ではございません。むしろ滝井さんの場合と逆になると思います。
  191. 滝井義高

    ○滝井委員 そうじゃなくて、ここに出ておるのには、租鉱権の場合は鉱業権者の同意を必要とすると書いて、鉱業権の場合は法案その他に書いてないのですよ。だから尋ねておる。「租鉱権の放棄の場合にあっては、その租鉱権の放棄について採掘権者の同意があること。」と書いておるけれども、鉱業権の場合は書いていないのですよ。租鉱権者の同意を得るということが書いてない。だからおかしいから尋ねておるのです。
  192. 今井博

    今井(博)政府委員 それは鉱業法の八十条で当然に必要だということになっております。
  193. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、鉱業権が抹消された場合の租鉱権者の鉱害なり未払い賃金はどうなりますか。
  194. 今井博

    今井(博)政府委員 鉱業権が抹消されますと租鉱権も当然に抹消されますので、従って租鉱権者が同意をいたします場合に、採掘権者とその鉱害の問題なりあるいは賃金の未払いなりというものの処理について、内部関係において、その同意の際にその処理についての契約が当然出てくるのが普通であろうと思いますが、ただやはり実際の内部処理が円滑にいかないということも実際問題として予想されますので、そういう場合には、やはり租鉱権も一緒にその整理の対象にして、これを円滑に処理するということが実際上妥当かと考えます。
  195. 滝井義高

    ○滝井委員 これは大事なことだから、念を押しておきます。その場合に鉱業権が保安にかかった、あるいは新方式で抹消をされるというときには、その子供に当たる租鉱権についても、保安の措置なり、あるいは鉱業権の抹消を政府方針としておやりになる、殺すときには一緒に殺す、こういう方針行政指導をやっていくと理解して差しつかえありませんか。
  196. 今井博

    今井(博)政府委員 極力そういう方針でやります。
  197. 滝井義高

    ○滝井委員 当然そういう場合にはその租鉱権についての交付金、それから労働者に対する離職金等は、やはりこの法律に基づいてきちっとやってもらえる、こう理解して差しつかえないですね。
  198. 今井博

    今井(博)政府委員 そうでございます。
  199. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合の、先ほど井出さんは四百円とかおっしゃいましたが、この租鉱権の抹消のトン当たりの代金は、保安の場合と、それから新方式の場合で、幾らですか。
  200. 今井博

    今井(博)政府委員 保安の場合はトン当たり四百円、合理化による整理の場合はトン当たり六百円であります。
  201. 滝井義高

    ○滝井委員 租鉱権ですよ。違うでしょう。
  202. 今井博

    今井(博)政府委員 保安の場合が四百円、それから合理化法の場合は六百円、これはともに租鉱権の場合でございます。
  203. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、租鉱権の場合は、新方式は半分になるわけですね。保安にかかった場合と同じ形になっているわけです。ここでもますます、経済力の弱い租鉱権はどうにもならぬことになるわけです、鉱害の復旧その他について。だから、六百円くらいではとてもだめだ。こういう形になってくれば、政府は租鉱権を絶対許してはならぬことになってくるわけですよ。この前も言ったように、今大手がだんだんと筑豊炭田から撤退作戦をやるにあたって、租鉱権が第二会社へ行く。第二会社は、今度は労使の同意がお互いに成立しない限りだめだということになりましたからいいようなものだけれども、租鉱権はそうはいかぬです、鉱業法上きちっとできるわけですから。そうしますと今度は、租鉱権をお認めになれば、これは合理化に逆行することになるわけです。こういう新方式でも租鉱権は半分だということになれば、租鉱権でやられたところの鉱害なり、未払い賃金というものは払えぬことになるわけです。ここにまた一つ問題が出てくるわけです。だから、そのようなものならば、鉱業権であろうと租鉱権であろうと、どうせつぶすというなら同じにしてもらって、撤退作戦ですから、今も石炭の鉱業権者には政府がうんと金を貸しているのですから、炭鉱労働者を救い、鉱業権者を救うならば、やはり一緒に鉱害被害面も救うという政策が積極的に出てこなければならぬですよ。これは片手落ちです。これは力で文句を言う人がいないから、井手以誠や滝井義高、多賀真稔が少し言うだけだから、ということでは困ると思うのです。こういう点は、とても四百円や六百円じゃできやしないですよ。これは未払い賃金と両方やるのですよ。だから、こういう点についてもどうも納得ができない。今までは租鉱権だって、田口さんの方で買い上げたから、みんな見てくれたんですからね。どうもこれは、もう少し早く質問をしなければいかぬだったのですが、これは納得できない。
  204. 今井博

    今井(博)政府委員 従来の方式では、租鉱権をそのまま買い上げるということはやっておりませんので、今回は、こういう方式なら租鉱権も対象にし得るということでそういう道を開いたわけであります。租鉱権の場合は一般的に、鉱業権と、直接やっておる場合と違いまして、規模が非常に小さく、浅いところをやっておるわけでございますので、施設その他についてもやはりそれだけの、小回りのきく施設が大半でございます。やはりその程度の金額が妥当かと思います。
  205. 滝井義高

    ○滝井委員 浅くて、業者が小さいだけに、実をいうと被害は大きいのです。それは総体の金額は小さいけれども、被害は大きいのです。従って租鉱権者にとっては大へんな負担になる。租鉱権者の方は鉱業権者より、もっとやれないのです。結局これは無資力とかなんとかいうことになるだろうと思いますけれども、無資力や何かになったときは、これは大へんなんです。今井さんのところへお百度を踏まなければなかなかできないことになるわけです。だから、撤退作戦をおやりになるとするならば、もう少し親心のある政策を打し出してもらわないと納得ができない。  それから、合理化法の三十三条では、金銭の支払いを受ける資格というのは、「買収の日以前三月以上引き続き従事していた鉱山労働者であって、その買収の日後二月以内に解雇されたもの」で、三十日分の離職資金を出すわけですね。この買収の日というのが非常に問題になって、はなはだしいのは、買収の日というものがずっと二年も三年もきまらないのですから、従って、この離職金の恩典を受ける労働者が非常に少なかった。指摘したように、大手のごときでも、閉山をして全部の労働者を解雇しておいて、次に田口さんの方に買ってくれと出すのですから、そこには労働者はいないわけです。労働者は、山は炭がなくなったから閉山するといっても、まさか合理化にかけようとは思っていなかったのに、労働者の首を切ったあとに、閉山だ、買い上げてくれ、こういうのが出てきた。そこでわれわれは、けしからぬ、前にさかのぼって離職金を支払いなさいと言ったが、法律が買収の日となっているからどうにもならない。それを今度は三十五条の七で、「売渡しの申込みの日又はその交付金の交付の申請の日前三月以上引き続き従事していた鉱山労働者であって、その売渡しの申込みの日又はその交付金の交付の申請の日以後当該買収の日又は当該交付金の交付の決定の日後二月を経過した日までに解雇されたものに対し」離職金をやる、こういうことになっております。そうしますと、これは前よりか幾分弾力が出たような感じがするのですけれども、大して変わらないですね。これは今までの方式では困るということでないわけです。さいぜん言ったように、閉山をして、炭はありませんといって労働者を首切ってしまって、そのあとでいつの間にか売ってしまう。そうすると、お見舞金よりか少ない金をやればいいはずなのに、あにはからんや、トン当たり千三百円で買うのですから、こういうふうに鉱業権者のためには至れり尽くせりの手を打ってやるが、被害者のためには何の救済の手も打ってやらないのが、政府の政策ですよ。だから私は、これではいけませんというのです。今度、保安のことになるとますますむずかしくなる。保安の調査に行くと、これは大へんだというので、労働者が右往左往するわけでしょう。こちらの方は、あまりきちっとしたあれがないわけですね。保安の十六条の方は、「鉱業を廃止したことにより解雇されたものに対し、」こういうことになるわけです。だから、この線の引き方を一体どうするかということです。できるだけ労働者に有利にしてもらわぬと困る、こういうことになる。この合理化にかかるためには、山がとにかく歩いておかなければだめなんです。現在田口さんの方に申し込んで、ポンプ・アップをしておる山は、二百万トンくらいでしょう。これは歩いておかなければ、ポンプ・アップしておかなければ、もう閉山をしてしまったようなことになって、買い上げてくれないことになるわけでしょう。ポンプ・アップしておるわけです。そうすると、去年かおととし申し込んで、ポンプで水だけ揚げているというところには、もう労働者はいないわけです。ところが、申請は一年も二年も前にしているのです。ところがこれは三カ月と二カ月だから、そんなものは空文になってしまったわけです。そして、一体これはだれがもらえるかというと、組夫です。組を作っておる何々組というのがきて、ポンプで水を揚げていますよ。A鉱業株式会社労働者じゃないのです。A鉱業株式会社がやめるときに、今度はB直営組というようなのを作って、その労働者にポンプ・アップその他、保安というのですか、撤退作戦をやる仕事をやらせるわけです。そうすると、もともとその山の労働者ではなくて、全く違ったものが、その閉山をする時点においては、前三カ月、あと二カ月のときにはおるわけです。その株式会社の本来の炭鉱労働者でない人が、今度はこの離職金を受けることになるのです。こういう矛盾が出てきているのです。だから私は、こういう抜け道を防ぐためには、何か手を講じなければいかぬと思うのです。少なくとも、この山は終掘いたしましたと言って、閉山をしたときにおった労働者、その前三カ月あるいはあと二カ月におった労働者とか、何とかこうして閉山をしたときの山の労働者に恩典を浴させなければ、とてもこれではいかぬのです。これは何回も指摘をしたのですが、まだ変えてないわけですね。これは問題がありますよと指摘をしたのです。私は福岡のあれに行って、一ぺん大げんかしたことがあるのです。労働者はみんなもらえない。もらえるのは、あとから入った組夫だけだ。こんなばかなことはない。それは大手ですよ。だから、田口さんの方に旧方式で申し込んでおった炭鉱が、今度の新しい方式にみんな変わり始めたんです。今、新しい方式に変わるという意向を示しておるものが、百万トンくらいありますよ。旧方式で百八十万トンくらい申し込んでいたもののうち百万トンくらい、もう新方式に入りたいということなんです。そうすると、何ということはない、そこに働いておった労働者というものは、この恩典に浴さないのです。こういう盲点がこれにはあるのです。これは労働基準法だから、当然福永さんの方に関係があるわけですよ。こういう状態ですよ。だからもう少し福永さんの方も、合理化による閉山の未払い賃金、退職金、離職金の問題については、目を光らせてもらわぬと困るわけです。通産省が石炭業者となれ合いとは言いませんけれども、あなたの方が目を光らせておると、通産省もここらあたりをもう少しうまくやることになるのです。離職金だけはもらえると思って、みんな待ちに待ち望んでいた。ところが、いよいよ山を買い上げられてみると、君らだめだ、この法律によってもらえないというので、みんな泣いておるのですよ。こういう買い上げられるような炭鉱で、未払い賃金その他があるのですから、一カ月分というと、一人について二万、三万の賃金なんです。大きいわけですよ。だから五百人も六百人もおりますと、何百万という金が出るわけです。だから、労働者は待望しておるのです。ところがいよいよ買い上げられてみたらもらえないというので、われわれが食ってかかられる。何を先生たちぼやぼやしておった、こうなるのです。だから、われわれは苦い経験をあまりにも持ち過ぎておるので、あつものにこりてなますを吹くような辛らつな質問をせざるを得ないようなことになるのです。ここらあたりだって、もう少し弾力的にやってもらわぬことには困るわけです。
  206. 今井博

    今井(博)政府委員 この三十五条の七の金銭の支払いの条項は、従来の制度をちょっと変えたとおっしゃいましたけれども、これはわれわれとしてはもう思い切った大改正を実は加えたつもりでございます。これによって、今までいろいろ陳情など受けましたケースはほとんど救えると思いますが、ただ滝井さんのおっしゃいましたように、先に閉山してしまって、それであとから事業団に申し込んできた、こういう事例については、実はちょっと規定のしようがないわけでございまして、そういうものは今後はいかぬぞというふうな行政指導をして、これに合わせるほかに方法がないのじゃないかというのが、実際問題としてのわれわれの考え方でございます。ただ、先ほどちょっとおっしゃいましたように、事業団に申し込んであるもので新方式を希望しておるのが百万トン以上あるというお話でございますが、そういう場合には、この申し込んだ日というものを、新方式の場合においても尊重するという運用を行ないたいと思います。
  207. 滝井義高

    ○滝井委員 これは三カ月と二カ月としたのは、ほんとうは大体三カ月ないし二カ月あったならば事務が終わるという考え方だったわけですよ。ところが実際に事務をやってみたら、鉱害を調べて、そうして買い上げの金額を内示するのに、早くて半年ですよ。お前の山は価格どのくらいと内示するのが半年です。おそかったら一年以上かかるのです。鉱害があったり、紛争があったら、二年以上かかる。そうすると、労働者はほとんどこの恩典に浴さない。だから、この申し込みをしたらそのときとか、閉山をしたら、その時点における労働者をとってもらわぬと、恩典に浴する者が少なくなる。今後百万トンもこれに変わっていくということになれば、今の時点になるわけでしょう。この法律の通った時点になっちまうのです。だから、ますます恩典がなくなるわけです。そうすると、この場合には、申し込みの日または交付の申請をしたというのを、前の旧方式のときにまで解釈をしてもらわぬことには、旧方式で申し込んでおってもこっちがいいというのでこっちに申し込んだら、そのときになっちまうのですから、労働者は全然だめになっちまうのです。
  208. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今滝井さんもお話しになっていらっしゃるように、これの決定の時をさかのぼらせて、申し込みのとき、こういうことにいたしましても、非常に悪意な経営者なら、一応首を切っておいて、そうしてポンプだけで揚げている、それも申し込みと同じことになるのです。やっぱり実際問題の処理として、そういう悪意あるものについて、鉱業権を消す一つのいい方法考えるとか、あるいはまた、そういう罰的な考え方をする前に、やはり真の労働者等に対して不都合をかもし出さないような行政指導をするということの方が、本筋じゃないでしょうか。今、その規定の仕方がないのじゃないかと思います。おそらくその申請をしたということにいたしましても、その前にただいまのような悪意な経営者ならやるだろうと思います。それよりも、実際にその金が、未払い賃金その他が十分払えるような、そういう行政指導をすること、実態をつかむことが必要じゃないかと思います。またきめた以上、やはり行政事務を迅速に処理する、これはもう御指摘通りだと思います。しかし運用の面におきましては、私ども勉強しなければならない点があるようでございますし、先ほどお話しになりました点を十分一つ注意して参りたい、かように考えております。
  209. 有田喜一

    有田委員長 藏内修治君。
  210. 藏内修治

    ○藏内委員 大臣に一点だけ、合理化業務の促進についてお伺いしたいと思いますが、御承知通り、ただいま六百二十万トンの合理化が進行しておるわけでございます。それに対して、ワク外に二百万トン近い申し込みがある。今度のこの改正案によりまして、新しい六百二十万トンの合理化方式が発足をしようとしております。そうしますと、現在六百二十万トンのワク外にあるものが、大部分これに移行するだろうと思いますが、それについても、三十七年度のワクが百二十万トンであり、百二十万トンしか予算措置が講じられていないということになりますると、この合理化はやはりそういう面で渋滞してくるんじゃないかと思うのです。しかも合理化の促進という点については、あとの離職者対策との関連がございますが、合理化を促進するという点において、このワクをもっとふやしていただいて、さらにこれに必要な予算措置、予算が通った関係がございますから、必要に応じては補正予算を組むというお考えがあるかどうか、この点について大臣の所信を一点だけお伺いしたいと思います。
  211. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 閣議決定をいたしましたのは、ただいま言われるようなあるいは立法事項、あるいは予算事項、あるいは金融措置、あるいは行政指導等いろいろあると思いますが、幸いにして労使双方の協力を得、また一般の支持を得て合理化が促進されて、今日の予算では不足だ、こういうような事態が起これば、もちろん政府は進んで補正の措置をとる考えでおります。
  212. 有田喜一

    有田委員長 岡田君、だいぶ時間が迫っております。初め四時に討論、採決に入る予定のところを、特に三十分延ばして四時半に討論、採決に入りますので、簡潔にお願いします。岡田利春君。
  213. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府が先般石炭対策について閣議決定をしたわけでありますが、その閣議決定に関連して、現在若干労使間に未解決の面がございますので、その点についてまず質問したいと思います。  閣議決定内容は、政府が強力な調査団を編成して実態を把握し、答申をし、その答申に基づいて政府閣議決定するまで、経営者は解雇は行なわない、従って労働者は紛争を起こさない、こういう閣議決定がなされておるわけです。ところが、調査の結果が答申されて、政府閣議答申に基づいて必要な措置を決定する、その決定をした場合には、それ以降では労使の紛争の問題——経営者はもちろん閣議決定は解雇ができるという解釈が成り立ちます。しかし労働者の場合には、当然その内容によって、これは紛争が起きるかどうかということに必然的になると思うのです。しかし、こういう調査団答申をし、閣議で決定をするわけですから、これは客観的に相当影響を持つということは当然のことだと思うのですが、その後の労使の問題まで政府が規制をするという意図ではないと私は解釈をいたしておるわけであります。それはあくまでも政府の決定に基づいて労使が話し合って、いろいろそれらの問題についてどう処理するかということをきめるべきであって、それ以降ずっと将来にわたって労使休戦せいということをいっておるのではないと思うのです。この点についての大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  214. 福永健司

    福永国務大臣 ただいまの点はおおむねおっしゃる通りだと私も考えております。ただしかし、せっかく権威ある調査団答申があって、これは尊重して政府がこれに対する措置を決定する、この措置を効果あらしめるという意味から、労使双方が話し合って、なおこの上とも仲よくして、けんかをしないでおこうじゃないかというような話し合いを両方がして、意見が一致すれば、これまたよろしいのでございまして、私どもは、それからあとは紛争は大いにやるべし、首は大いに切るべし、そういうことを考えておるのではないので、話し合いがつけばそれでけっこう。ただ私どもとしては、あの閣議決定にも「期待する」というような言葉を使っておりますゆえんのものは、労使間でしかるべく協定をするように、こういうことでございますので、それからあとは労使間でしかるべくお話し合いができればよい、できないことについて、われわれが、どうでなければならぬ、こういうことを申す筋合いのものではないと思います。
  215. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、調査団答申に基づく政府方針決定後、実効ある措置がとられるまでの間、いわゆる閣議決定されて、いろいろこういうことを裏づけとしてしてやるということが行なわれるまでの間の問題でありますが、政府はこの場合、調査団答申を尊重し、閣議方針を決定する、閣議方針が決定されたあとで、一応解雇停止の措置が解除されるわけです。閣議決定に基づいて直ちに実施するものはそれを実施する、あるいはまた答申に基づいて法的措置が必要であれば、当然そういう議決も必要になってくるでありましょうし、補正予算が必要であれば補正予算を組まなければならないでしょう。しかし、いずれにしても、これらが実施されるまでの間は、政府はその点の実情に合わして善処していくんだ、行政的に善処していく、こういう意味に私どもは理解しておるのですが、そういう理解でよろしいのですか。
  216. 福永健司

    福永国務大臣 政府が措置を決定いたしましても、直ちにこれを行政的に処理し得るものもありましょうし、中には新たなる立法を必要とするものも生じて参りましょう。さらにはまた、一年限りでなくて、年次計画等で数年にわたって処置しなければならぬこと等もあるわけでございます。そういうようなことがいろいろございますが、いずれにしてもそれら全体を、今度きめました方針といたしましては、できるだけすみやかに推進していきたい、こういう考えでおります。
  217. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、今度の、新規の人員整理が行なわれないよう政府が期待するということは、四月の五日以降の問題だと思うわけです。それ以前に交渉中のものとか、すでに実施中のものについては、これはそのまま話し合いが続けられて、この問題は解決されるわけです。新規の人員整理については、四月五日以降の話である、こういう理解でよろしゅうございますか。
  218. 福永健司

    福永国務大臣 四月五日というように考えております。
  219. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、経営者に対しては閣議決定されるまで人員整理を行なわないように期待すると同時に、労働者側についてはそのための紛争行為が行なわれないように同様期待をしておるわけです。このことは、いわゆる人員整理に関連する問題に限っておる、こう私は理解するわけですが、それでよろしゅうございますか。
  220. 福永健司

    福永国務大臣 直接的にはそこに書いてある文字だけで関連していくわけでございますが、そういうようにして労使全体が政府にも強く要望し、政府もその気になって石炭対策を講ずるのでございますから、御質問趣旨は、それに限るとはおっしゃいますものの、そのほかの方では大いにけんかをしようではないかということでは、政府もなかなかこの石炭対策に力が入らないのです。でございますから、そういう趣旨ではございますが、どうぞ相なるべくはほかのこともなるべく仲よくやってもらいたいものだ、こういうように私は考えております。
  221. 岡田利春

    岡田(利)委員 労使に対して政府は期待をしておるわけです。従ってこの裏づけとしては、当然労使の協定がなされなければならぬと思いますし、そのことがまた前提であると思うわけです。そうすると、労使の努力と誠意が必要でありますけれども、当然政府としてもその点についてここに協定が確立されるように努力をする、もちろんもう話し合いが進められておりますし、これは協定が結ばれるものと私は見ておるわけでありますが、そういう協定が結ばれるまで政府は責任を持って協定が結ばれるように指導する、こういう考え方であるかどうか、承っておきたいと思う。
  222. 福永健司

    福永国務大臣 せっかくこういうことをきめましたので、その趣旨通りのことが行なわれるように私ども深い関心を持って見守っておるわけでございます。そういうことが円滑に行なわれることを衷心期待しておるわけでございます。でございますから、うまくいかないようなことでありますならば、政府考えなければなりませんが、これだけのことを政府がするということをよく認識されるならば、労使ともに政府考え通りの協定をすみやかにやってくれるものと、私はこれは確信をいたしております。
  223. 岡田利春

    岡田(利)委員 最後に一つお聞きしておきますが、炭鉱における組夫の問題が、今の滝井委員質問でも、ずいぶん問題になってきておるわけです。従ってこの閣議決定では、組夫の問題についてはそれぞれ「法の禁止する労働者供給事業に該当する場合の基準を明確にし、その基準に該当する場合の取締りを強化する。」こういう閣議決定が実はなされておるわけです。従って、この意味というものは、坑内作業については職業安定法及び鉱山保安法上の見地から——本日鉱山保安法が上がるわけでありますが、この場合にも組夫の問題は、新たに法の改正として出されておるわけです。従って、そういう職業安定法及び鉱山保安法上の見地から考えて、縦坑掘さく、起業工事等いわゆる採炭準備の間の一時的作業にこれは限られていくべきものだ、こういう理解を私は持つわけです。従って、そういうような趣旨を尊重して、労働省としてはこれらの具体化の基準を定めるのだ、こういう理解を私はいたしておるわけでありますが、そういう理解でよろしゅうございますか。
  224. 福永健司

    福永国務大臣 私率直に申しまして、今御指摘のようなことについては、非常に詳しくは存じないのでございますが、今申されたことが中心であると考えておるわけでございます。その他のことはあまりなかろうかと思うのでございますが、今おっしゃいましたような考え方で労働省の行政当局に十分検討させ、善処せしめたいと思います。
  225. 岡田利春

    岡田(利)委員 これで終わりますが、労働大臣、今の問題ですが、これはもちろんすでに組夫は使われておるわけですから、基準を作ることは簡単ですけれども、しかし、それを改め、基準に合わせるということは拙速主義ではいけないと私は思うのです。すでに人が入っておるわけですから、人の問題ですから、基準を作ることは簡単であるが、基準に合わして指導するまでには相当時間がかかると思うのです。そのことを私どもも実は理解いたしておるわけです。しかしながら、現実の問題として組夫が半分、直轄が半分というような炭鉱もありますし、あるいは、坑内で公然と採炭あるいは掘進等の作業に、臨時夫という名目で使われているところも、実は大手炭鉱の中にあるわけです。そういう実情は当然明らかにされてくるわけです。従って、臨時夫と組夫でありますから、直轄に切りかえれば一番問題はないわけです。しかし、そのこともできるかどうかといういろいろな面もあろうかと思いますが、できるだけすみやかに基準を設定して、その基準に基づいてその方向に一つ早急に強い指導をしてもらいたいということを、特に要望いたしておきます。何かあれば、大臣から見解を聞きたいと思います。
  226. 福永健司

    福永国務大臣 ただいまの御要望に沿いまするように、できるだけの行政指導を行ないたいと考えております。
  227. 有田喜一

  228. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 閣議決定の第四の七号の「炭鉱離職者に対する失業保険給付の改善を考慮する。」これはどういう考慮をお考えになっておるかというのが一点。それから、現実の問題として、今、第二会社あるいは租鉱権に炭鉱が移行した場合、その炭鉱労働者は長い間勤めておった会社と一応縁が切れて、そうして次の新会社に移るわけです。そういたしますと、現在失業保険の給付の資格として、同一事業所に十年以上勤務した場合あるいは五年から十年未満の場合、あるいは一年以上の場合、おのおの違うわけであります。これは何らか処置をしていただきたい。すなわちそういう場合に、一度も失業保険を受給したことのない、そうして会社が移行する場合においては、同一事業所と考えていただきたい。これをどういうようにお考えであるか、お聞かせ願いたい。
  229. 福永健司

    福永国務大臣 前段の点は、当面行政行為でできる最大限のところまでやりたいと考えております。従来とも炭鉱離職者に対しましては、御承知通りの特別の措置もしておるのでございます。最大限のところまでやるということになりますと、もう少しまだ残っておるところがあるようであります。これは行政措置として、法律の許す最大限のところまでは当面やりたいと存じます。それより先のことにつきましては、一つまた考えさしていただきたいと思います。  それから第二段の点は、確かに法律を読みますと、同一事業主に引き続き雇用された云々というような表現がしてある。これをそのままに読んでしまいますと——読むのは読むのでございますが、その通りにかたく解釈いたしますと、今多賀谷さんの言われるように、労使双方が話し合って第二会社を作ったというような場合、これはよくよく深刻な事態の場合なんですが、そういうことになってから後に失業者になれば、非常な不利をこうむるというようなことになるわけでございます。しかし法律というものは、こんな深刻な事態まで考えて、条文が全部が全部きめられてあるとも私は言い切れぬような気がする。これは少し私はあまり弾力を持ち過ぎた解釈かもしれませんけれども、しかしわれわれが保険給付について改善を考えるという項目をわざわざ一項加えましたゆえんのものは、この深刻な事態のもとにあって炭鉱労務者が離職するという場合に、なるたけいいようにしてあげたい、こういう気持であるのでございますから、文字はこうでございますが、何とかあたたかい心づかいが行なわれるようなことを、私はぜひ検討したいと考えておるわけでございます。第二会社とはいうものの、逆に発展していくときに合併するとか、あるいはよりいい内容会社になるというときには、おおむね同一の事業という形において参りますが、今は御指摘になったように、確かに法人格としては別の会社ということでございましょうが、しかし多分に同一事業的な、何というか、そういう面もあるわけで、この点につきましてはこれからなお研究も必要であろうと思いますけれども、私は気の毒な労働者のためにということでぜひいい結論が出て、従って今お話のございましたような措置がとれるようなことに努力をしてみたい。今直ちに、その条文が条文でございますので、そういたしますとまでは言い切れませんけれども、私といたしましてはできるだけのことをいたしたい、こう考えます。
  230. 有田喜一

    有田委員長 滝井さん、さっき社会党の理事の方とも相談したのですが、約束の時間が切れたのですけれども特に許すのですから、きわめて簡潔にお願いいたします。
  231. 滝井義高

    ○滝井委員 簡潔にやります。  それじゃ先に条文のことを尋ねますが、この新旧対照表の条文の七ページをごらんになると、二十五条の「業務の範囲」の中に「炭鉱離職者援護会に対する交付金の交付」というのがあるのですが、炭鉱離職者援護会というのは今なくなっているわけなので、これはどうして雇用促進事業団に対する交付金の交付としないのですか。
  232. 今井博

    今井(博)政府委員 それは新旧対照表が間違っておりますので……。
  233. 福永健司

    福永国務大臣 念のために申し上げておきますが、その事業は当然に雇用促進事業団が引き継いでおりますから、疑義は生じないかと思います。
  234. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。  次は、もう一ぺんさいぜんのところをちょっと念を押しておかなければならぬ。重要なところがあるから念を押しておくわけですが、一千万円の交付金をもらいます。そうしますと、その三割というものは優先的に未払い賃金、退職金にいきます。そうすると、あとの残りについては、鉱害と未払い賃金が按分することになる、その場合に、安定鉱害、不安定鉱害、打ち切り等は十分見きわめなければ金が払えない、こうおっしゃったんです。その場合に、未払い賃金というものは、交付金をもらったならば即刻、右から左にもらえるかどうかということです。
  235. 今井博

    今井(博)政府委員 これは労働基準監督署の確認を得てやりたいと思います。従って、その確認がないと払えないということになります。
  236. 滝井義高

    ○滝井委員 それじゃ、確認があったとして、三割というものはもう頭から天引きですから、これはきちっときまるわけですね。一千万円のうち三百万円はきちっときまるわけです。ところがさいぜんの御答弁で、もし鉱害も多いということになると、残りの七百万円は未払い賃金と鉱害に全部按分することになる。その場合に、按分をする七百万円については、安定鉱害、不安定鉱害、打ち切りがきまらなければ、未払い賃金の額がきまってこないわけです。そこでその場合に、二段階になるわけですね。三百万円はきまっておるんですから、それは即刻右から左に払ってくれますか、こういうことなんです。
  237. 今井博

    今井(博)政府委員 あとの分につきましては、やはり鉱害の額がきまらないと払えない、こういうことになります。
  238. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、前の分の三割についてはすぐ払えますね。
  239. 今井博

    今井(博)政府委員 すぐ払えます。
  240. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。  次は、そうしますと今度は、この交付金を受けた炭鉱は、この法律によって、債務保証の弁済金の裏づけを受けておるわけですね。銀行に対し事業団から裏づけを受ける、あるいは整備資金の貸付をしてもらっている、それから運賃の延納の債務の保証も受けている、こういうことですね。これは全部田口さんの方でやっておるわけです。そうすると田口さんの方としては、これは何か担保をおとりになるのですか。担保をとっておいてもらわぬと、さいぜんの問題にまた帰ってくるんです。一千万円の交付金をやる。ところが田口さんの方は、金だけは払って、自分の保証しておるものをとらぬというわけにはいかぬと思うんですね。そうすると田口さんの方は、自分が金を握っておるから、おれの方が一番の優先権があるんだといっておとりになるんですよ。これはもうわれわれ経験がある。納付金を納めていない炭鉱が買い上げてもらうためには、とにかく何よりも先に、公租公課よりも先に、納付金を納めなければ買い上げぬといって、それをとってしまうと同じように、今度の一千万円の交付金の中から、運賃の延納に関する債務保証をしておるから、これの担保をとっておく、それをとらなければいかぬだろうし、それから整備資金の貸付をやっておるわけです。退職金やなんかの貸付、あるいは鉱害の補償の貸付をやっておるんですから、それもとらなければならぬ。こうなりますと、田口さんの方に金をとられてしって、あといかぬというおそれが出てくる。そこで運賃の延納についても、整備資金の貸付についても、債務保証の弁済金についても、田口さんの方は担保かなんかとっておいてもらわぬと、交付金に重大な影響を及ぼしてくるわけです。この関係を一体どうするのかということです。
  241. 田口良明

    田口参考人 事業団では物的並びに人的担保をとっております。従いまして、今度は賃金未払い並びに鉱害補償の問題については優先しますから、その次の順位になります。
  242. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その場合に、たとえば整備資金の貸付なり、運賃の延納に対する債務の保証をやる場合には、炭鉱開発銀行その他から相当金を借りておりますから、担保力がほとんどないのです。だから五割くらいの保証では銀行は金を貸さない。八割でも貸さない。ここに八割となっておるが、八割でもよう貸さないのです。そうすると、担保力はないわけです。担保力がなくても、あなたの方は運賃の延納に対する債務の保証は、大手はともかくも、中小はみなおやりになるわけですから、担保力がなくてもおやりになるわけでしょう。
  243. 田口良明

    田口参考人 鉄道の運賃延納につきましては、中小炭鉱については全部事業団が保証をやります。ただ銀行の保証の問題につきましては、これから五〇%の保証率あるいは八〇%の保証率が今度実施されることになると思いますが、そういうような炭鉱に対しては極力貸付保証を回避する、そういうふうな考えを持っております。また近代化資金についても同様です。
  244. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、これは整備資金の貸付その他が行なわれないことになるわけですから、合理化は進まないわけですね。今大手でも退職金が払えぬために、三井でも合理化を延べておるのです。延べざるを得ないのです。労働者一人について六十万、八十万、百万ですから、何十億という金が要るわけです。そうすると、担保力がなければ整備資金の貸付が行なわれないということになりますと、これはそのまま合理化は進行しないということになるわけでしょう。今の炭鉱で担保力のある炭鉱は、中小にはほとんどないんじゃないですか。
  245. 田口良明

    田口参考人 これはものによってでございますが、たとえば債務保証の問題につきましては、極力人的担保、なおできれば物的担保、こういうことになっております。それで一体担保力があるかないかという問題につきましては、一応担保順位がございますので、これは厳密にいって、実際問題としては困難な場合も起きてくると思いますが、今の炭鉱の大体のところは人的あるいは物的担保において、順位こそあと回しになっても、一応はとれる見込みじゃないかという考えです。
  246. 滝井義高

    ○滝井委員 だから私がさいぜん問題にしたのは、そこです。おそらく田口さんの方としても、今度のこういう合理化法で整備資金の貸付とか、債務保証の弁済金等の問題が出てきたので、五割ないし七割を優先的に未払い賃金とか鉱害に払っても、あとの五割ないし三割を確保しておかぬとこういう問題があるという、伏線があったと私は思うんですよ。田口さんは現にやっておるのだから、今井さんと違うところがあったと思う。いわんや運賃の延納払いについては、結局担保をとらぬとすれば、田口さんの方がおそらく全部かろうことになるのです。そうすると、山は閉山しても、田口さんの方は借金の山しか残らぬということになる。そうなれば、私が今言ったように、鉱業権者のために借金の山を田口さんがかろうならば、からいついでに、被害者についてもやはりする必要があるという意見なんですよ。良民に被害を与えた鉱業権者のために借金をかろうならば、良民のためにかろってやるというのが政治ですよ。あなたはそこは非常にシビアに考えておるのでしょう。だから、そこが問題だと私は思うのです。これ以上申しませんけれども、なかなか問題です。だから一応この実施したあとの状態を見て、そうして非常に異常な問題が出れば、佐藤さん、一つ責任を持って、そのときあなたが総理大臣になっておられるかもしれぬけれども、そのときはなおけっこうですから、ぜひ一つこれは責任を持って、あなたの時代にお作りになった法律だから、あなたが政党人としておられる限りは、やはりわれわれに御協力を願って、最後のきちっとした、筑豊炭田の撤退作戦に後顧の憂いなきように、立つ鳥跡を濁さずという形を作ることを、ここにお約束だけを願っておきたいと思うのです。
  247. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん今回、新しい制度でいろいろ実施にかかろうというのでございます。実施いたして参りますと、案外予想しないような事態も起こるかもわかりません。もちろん、運用その他によりまして本来の目的を達するように、万遺憾なきを期して参りたいと思いますけれども、ただいま御指摘になりますようなそういう十全の処置をとりましても、なおかつ事態が解決されない、こういうようなことがございましたら、もちろん政府といたしましては、その後の実施の後におきましても十分対策を立てて参りたい、かように考えております。
  248. 滝井義高

    ○滝井委員 それから一社一山の場合、あるいは租鉱権者なり、一社一山という部類に入るかどうか知らぬが、中小という場合に、交付金ではどうしてもまかなえないというときには、今までは無資力認定でやるということがなかなか困難なんですよ。今まで多分無資力認定でやったのは、二億円そこそこくらいじゃないかと思うのです。よほどの場合以外はやっていない。あとは本人が破産の宣告をしなければだめだ、こういうことなんです。ところが破産の宣告に追い込むためには、莫大な裁判費用が要るわけです。莫大な時日がかかるわけです。これでは、良民はみんな泣き寝入りになってしまう。従ってそういうような場合については、客観的に見てこれはなるほど妥当だというときには、破産の宣告をしなくても、通産大臣の認定でやればできることの条文があるわけです。従ってそこは大胆率直に通産大臣の認定で、支払いの著しく困難なものとして、国がやはり臨鉱法でやるという建前を今後はとっていただきたいと思うのですが、そういう点に対する御見解もあわせてお伺いしておきたいと思います。
  249. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 無資力認定の問題につきましても、十分責任を持って実情に合うような処置をとって参りたいと思います。
  250. 有田喜一

    有田委員長 ただいま議題となっております三法案中、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に対する質疑は、これにて終了いたしました。     —————————————
  251. 有田喜一

    有田委員長 これより石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案について、討論に入ります。多賀谷真稔君。
  252. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっております石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に反対の理由を表明するものであります。  石炭政策の根本については、すでに本法案ができました昭和三十年においてわれわれは態度を明らかにし、石炭鉱業安定法、すなわち根本的な開発あるいは販売の輻湊化の一元化その他について提案をしてきたわけでありますけれども、この基本的な問題については一応本日は論議いたしません。ここに改正案として提案をされておりますいわゆる新方式なるもの、すなわち従来の炭鉱買収方式に加え、石炭鉱山整理促進交付金の交付方式による、いわゆる事業廃止を勧奨するもの、この方式について私は次の点において反対をいたしたいと思います。  先ほどから御議論がありましたように、本来買収方式をこの整理促進交付金制度に変えたというのは、これは私は政府並びに政府機関が責任を回避した、こういう一語に尽きると思うのです。それは従来石炭合理化事業団が鉱害の賠償にあたって、なかなかその鉱害の処理が困難であったから、できればそれにかわるべきものとして、ここに新しい方式を新設したわけでありますけれども、しかし、決して問題の根本を解決したものではない。ただ事業団は楽になったでしょうけれども、その鉱害被害者というものは同じ状態に置かれる、いな、それ以上の状態に置かれるということは、今まで説明のあった通りです。すなわち、従来の方式でいきますと、合理化事業団と旧鉱業権音は連帯債務の形になる。今度は、新方式でいきますと、依然として廃止をいたしました鉱業権者が賠償の責任を負うということになる。そういたしますと、被害者からいうならば、廃止をするような炭鉱の鉱業権者に対する請求権というものは、権利はあっても、薄弱なるものになるわけです。この点が十分解明をされていない。一応先ほど質疑の中で、法第三十五条の三の「政令で定める割合を」というのが、一〇〇%まで考えるということでありますから、私たちは政府が今後どういうふうに実施されるか、さらにまた、これによっても未賠償分の賠償が十分でない場合においては、無資力等による賠償として十分考慮するということでありますから、一応われわれはこれを今後とも監視をしていきたいと思います。しかし制度としては、われわれは納得できないものを感ずるわけです。  さらにまた、私たちは、鉱害の処理、なかんずく従来のように継続中の炭鉱の鉱害の処理でなくて、終廃山をいたします鉱害の処理につきましては、これは従来の方式よりさらに飛躍をして別の制度を考える必要があるのではないか、こういうような状態にきておるのではないか、このことを今後とも検討すべきことを政府要望いたしたいと思います。  以上をもって討論を終わります。
  253. 有田喜一

  254. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は、ただいま議題になっております石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に反対をするのでありますが、この法律自体、一部改正されようとされまいと、この法の建前に私は根本的に反対です。というのは、政府はこの法律を中心にいたしまして、合理化目的を達成するために、炭鉱労働者の在籍一人当たりの能率あるいは単価を引き下げる、そのために経営者なり労働者考え方を全然考えることなくして、これを強引に今日まで強行してきておるということであります。そのために多くの炭鉱から出た失業者は、依然として深刻な不安な状態のもとに、炭田地帯にとどまっておる。生活保護者はとめどもなくふえてくる。これらの問題に対する解決は全く弥縫策にすぎない。それから先ほど多賀谷委員から一部改正の鉱害の問題について議論をされていましたが、この鉱害の問題とてしかりであります。鉱害の問題も遅々として進みません。さらにまた、たとえば鉱区が入り乱れておるところの、その地上の鉱害というものは、だれの鉱害であるかということをなかなか判定をしないで、何十年とたってもこれが解決されないで、鉱害被害者は泣いておるという点があります。こういう問題というものを、政府は責任を持って解決をしようとしておりません。たとえば何人の鉱害であるかということは、これを測量すれば直ちに判定のできるものも、甲の鉱業権者、乙の鉱業権者、そういうところに気がねをして、これを判定を下して鉱害復旧をやらないという状態がたくさんあります。そういうことでありまして、本法を中心にして、政府はみずからの目的を達成するためには、そういう地元にもろもろの多くの問題があることを解決せずに、強引にやっておる。これ自体に私どもは反対であります。そういう点から、やはりこの合理化によって出てくる、買いつぶしによって出てくる失業者の問題を、完全にこれを再就職をさすという完全雇用の、この労働アンバランスを解決するということをともに裏づけするところのものを出されない限りには、われわれこの法案に根本的に反対である。  それからまた、鉱害復旧においても、今私が申し上げたようなことをすみやかに裏づけされるということを保障されない限りには、われわれ反対である。さらにまた、不良炭鉱を買いつぶし、あるいは合理化を強行してやらすとかいって、鉱区の整理統合をするか、あるいは休眠鉱区の開発等をするか、それらについても全然、何年たってもやろうとしません。そうすれば、結局炭鉱を、今の政府の行き方でするなら、炭鉱はなくしてしまう以外にないというのである。でありますから、私はこの政府の目的を達成するために出てくる失業者の問題を完全に解決をするという裏づけのない限り、それから鉱区の整理統合と休眠鉱区の開発をもって、新たにそういう職場に再就職をやらすという裏づけのない限りには、またそういうことを保障されない限りには、私はこの法案の根本的な建前において反対であるということを明らかにいたします。
  255. 有田喜一

    有田委員長 これにて討論は終わりました。  これより採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  256. 有田喜一

    有田委員長 起立多数。よって本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)      ————◇—————
  257. 有田喜一

    有田委員長 次に、去る三月二十九日、質疑を終了いたしました内閣提出鉱山保安法の一部を改正する法律案を議題といたします。  この際、念のため申し上げますが、本法律案の第二十三条の二の条文中「坑道の掘さく、坑内における鉱物」の部分が、お手元に配付いたしました通りの正誤により「坑道の掘さく、鉱物」となっておりますので、お知らせいたしておきます。  これより本案について討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  258. 有田喜一

    有田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  259. 有田喜一

    有田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十四分散会      ————◇—————