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1962-03-07 第40回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月七日(水曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 有田 喜一君    理事 岡本  茂君 理事 齋藤 憲三君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君    理事 岡田 利春君 理事 多賀谷真稔君    理事 中村 重光君       藏内 修治君    中村 幸八君       濱田 正信君    滝井 義高君       松井 政吉君    伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (石炭局長)  今井  博君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      八谷 芳裕君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    佐竹  浩君         通商産業事務官         (石炭局炭政課         長)      井上  亮君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    小鴨 光男君         労働事務官         (職業安定局調         整課長)    北川 俊夫君         参  考  人         (古河鉱業株式         会社常務取締         役)      大滝士夫君         参  考  人         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員保安部長)  東海林秋男君         参  考  人         (大正鉱業株式         会社社長)   田中 直正君         参  考  人         (大正鉱業労働         組合組合長)  福島 武雄君     ――――――――――――― 三月二日  石炭政策変更に関する陳情書  (第四七七号)  同(  第六〇一号)  産炭地域振興臨時措置法第六条による地区指定  に関する陳情書  (第五二七号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭対策に関する件      ――――◇―――――
  2. 有田喜一

    有田委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  本日は、特に石炭産業合理化を進める上においての第二会社の問題、あるいは租鉱権の問題、あるいは組夫問題等がありますが、これらの問題並びに大正鉱業合理化問題などについて、次の参考人の御出席をいただいております。すなわち、古河鉱業株式会社常務取締役大滝四十夫君日本炭鉱労働組合中央執行委員保安部長東海林秋男君、大正鉱業株式会社社長田中直正君、大正鉱業労働組合組合長福島武雄君、以上の方々であります。なお、参考人として御出席をいただく予定になっておりました日本石炭協会専務理事佐久洋君から、病気のため出席できないとの御連絡がありましたので、この点御了承願います。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。本日は御多用中にもかかわらず、遠路わざわざ本委員会に御出席をいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  御承知のごとく、本委員会におきましては目下、石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興事業団法審査をいたしておるのでありますが、両法案と関連いたしまして、以上の諸問題は本委員会といたしましてもきわめて強い関心を持っておるところでございます。従いまして、第二会社の問題、租鉱権の問題、組夫の問題並びに大正炭鉱合理化に関する諸問題について、この際参考人各位には忌憚のない御意見をお述べいただき、もって石炭対策の諸問題あるいは両法案審査参考に資したい考えでございます。  参考人各位にはお一人約十五分ないし二十分程度の御意見をお述べいただき、あと委員の質疑に応じていただきたいと存じます。  それでは、まず大滝参考人よりお願い申します。
  3. 大滝四士夫

    大滝参考人 私、古河鉱業大滝でございます。  私の方の大峰鉱業所をこの一月の十二日にどうしても第二会社移管経営しなければならぬという提案を、炭労並び古河炭鉱労働組合にいたしました。それではなぜ大峰鉱業所をそうしなければならなかったかということについて、簡単に申し上げたいと思います。  まず大峰現状につきまして申し上げますと、大峰炭鉱はもともと大峰炭鉱とそれから峰地炭鉱の二つの坑から成り立っておったのでございまするが、そのうちの峰地炭鉱は昨年の十一月に閉鎖いたしました。そこで残るのは大峰炭鉱ということになるのでございますが、峰地炭鉱を除いて大峰炭鉱昭和三十二年下期からつい最近の三十六年の十二月まので累計赤字は、十四億九千九百万円でございます。トン当たりで示しますと、三十六年の上期、つまり九月決算でございまするが、これはトン当たりで二千三百九十六円の赤字が出ております。今期に入りまして出炭がやや好調になったのでございまするが、三十六年の下期、つまり今期の十月から十二月までの平均トン当たり赤字は二千百二十二円の相当大きなものでございまして、このような大きな赤字を出している炭鉱は、大手炭鉱でもあまり類例がないのでございます。それではこの赤字はどうすれば解消できるかと申しますと、物品費経費は現在でも節約の限界点に達しておりますので、どうしても労務費に手を触れなければならぬのでございます。労務費を思い切って圧縮して、あるいは能率を今の倍以上に上げてコストダウンをはかる、それ以外には炭鉱の生きる道はないのでございます。しかし、労務費を切り下げるにいたしましても、能率の倍増にいたしましても、そこにはおのずから限界点がございまして、簡単にできるものではございません。まして、大峰炭鉱といたしましては原料炭がなくなって、手取りの低い一般炭だけで経営しなければならないとすれば、今後千二百円の炭価引き下げの公約に従って、さらに五百円見当炭価を下げなければならない宿命を持っておるのでございますが、それに物価高とか、あるいは賃金の増を考慮に入れますと、さらに赤字はふえても、減る見込みは立たないのでございます。  今かりに直轄経営の姿のままで、適正規模限界で、人間を七百二名、一カ月の出炭を二万三千百トンとして、一人当たり能率を三十三トンに引き上げても、収支償うようにするためには、最近の労務費実績トン当たり約三千円に対しまして、これを五分の一程度に圧縮しなければ収支は償いません。今かりに労務費トン当たり実績の三千円の五分の一、つまり六百円に圧縮するということは、賃金以外の労働条件を第二会社会社提案通りの構想として、鉱員賃金を試算してみますと、基準一方当たりの所得を、坑内夫は五百六十円、月収で約一万二千円、坑外夫は四百十円、月収で約一万円、今の三分の一近いものに引き下げなければならないのでございますが、賃金を現在の三分の一に引き下げるということは、これは従業員生活の実態を見ましても、口では簡単に言えても、なかなか実行のできるような数字じゃございません。コスト引き下げのための増産にも、おのずから限度があるのですが、今かりに一カ月の出炭二万三千百トンというものを四万トン近くまで引き上げれば、これは計算上からいうと収支は償います。しかし、それは一人当たり能率を五十七、八トンから六十トン近くまで引き上げるということであって、現在の大峰鉱業所在籍一人当たり能率が十八トンから十九トン程度でございますので、これを五十七トンから六十トンぐらいまで引き上げるなんというようなことは、現在持っておる設備能力、あるいは自然条件の点からいっても、とうてい望み得ないと思うのでございます。  以上申し述べましたように、規模を縮小しても、大幅な賃下げにしろ、画期的な出炭増にしろ、いずれも机上の空論でございまして、全く実現性のないことがおわかりと存じます。ましてや、原料炭がなくなって一般炭のみで経営していかなければならない現実においては、よしんば、去年の八月三十一日に会社側で、当社の労働組合に対して合理化案を出したのでございますが、まだその問題は未解決になってはおりますが、その合理化案を全部まるのみにしてもらっても、これだけで山再建のきめ手になるものではございません。依然として大赤字が残ることになります。どんな規模でも直轄経営は大赤字を出すことになるので、閉山に通ずるわけでございます。七百人から八百人見当規模で、月に二万三千トン程度出炭直轄経営のままで維持するとすれば、先ほど申し上げたように、現在の赤字トン当たり二千百二十二円、これが合理化案を全部のんでもらって、会社提案通りにしてもらっても、トン当たり千五、六百円の赤字が残り、その赤字の半期の額は、約二億円以上になるのでございます。従って、直轄経営をやっていけば、これはどうあっても閉山につながるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。  それでは、どうすれば山の生きる道があるのかと申しますと、会社といたしましては、そういう山でございますから、一挙に閉山に踏み切った方が、一番安易で、一番すっきりしたやり方かもしれませんが、それでは、現在の千二百名の従業員の身の振り方が直ちに問題となるのでございます。今後会社は、できるだけ就職あっせん努力するといたしましても、多数の従業員諸君を路頭に迷わすような結果になるし、まことに申しわけないので、千二百名従業員の大部分の人間をできるだけ吸収しなければならぬ、こういうふうに考えているわけでございます。そこで会社は、新規巻き直しで七百名程度規模の新会社を設立すれば、今まで直轄経営するがゆえに課されていた本社費とか資金利子とか、そうしたもろもろの負担から免れることができるので、月出炭二万三千百トン、能率を三十三トンとして、賃金月収で、先ほど申し上げました額の大体倍くらいの、坑内で約二万円、坑外で一万七千円程度とすれば、大体収支が償うことが判明いたしましたので、会社は第二会社移管経営に踏み切った次第でございます。こうすることによって、曲がりなにりも千二百名のうち、七百名程度従業員を吸収もできますし、またその従業員諸君生活の安定が得られるものとすれば、これは会社としても望外の喜びでもございますので、さらに山性に応じた合理的な経営機構簡素化をはかって、労使が相携えて努力するならば、能率向上と相待って、従業員諸君実収面は、今申し上げました坑内二万円、坑外一万七千円というものが、さらにふえることとなると存じます。以上で大体おわかりと存じますが、直轄経営ではどうしても赤字の克服は不可能で、だれが考えても第二会社に切りかえた方がよいことは自明の理でありして、会社はあくまでも第二会社への移管経営提案を貫く決心でございます。  以上、大体の要旨を申し上げました。
  4. 有田喜一

    有田委員長 次に、東海林参考人にお願いします。
  5. 東海林秋男

    東海林参考人 私は炭労中央執行委員東海林であります。委員長から求められました意見を述べるに先立ちまして、本委員会石炭危機打開のために努力を傾けておられることに対しまして、心から感謝と敬意を表したいと思います。  本日、私は、最近目立って多くなっております租鉱権炭鉱や第二会社化問問と、在籍鉱員大量首切りに伴う請負組夫臨時夫増大化傾向について、それが炭鉱合理化にどのような関係を持っておるか、あるいは炭鉱近代化にいかに逆行しているか、こういう観点から話を進め、その対策はどうあらねばならないかという問題点について述べてみたいと思います。  現在の炭鉱合理化スクラップ・アンド・ビルド政策と呼ばれておりますが、実際に行なわれておる合理化内容というのは、生産規模を一定のワクに押え、大量の人員整理を強行することによりまして、能率を一挙に引き上げ、急速に生産コストの低減をはかるということに合理化重点が指向されております。従いまして、ビルド・アップを通じまして行なわるべき真の近代化政策の推進が停滞しているという事実を指摘したいのであります。つまりビルド・アップ方策として、限界に来ておる斜坑方式から縦坑方式への転換を行なうこと、炭鉱零細性を改めまして大型炭鉱の造成を行なうこと、あるいは産炭構造近代化に並行する近代的な流通機構確立等に関する努力が消極的であるという事実を指摘したいのであります。もちろん、このよう方向への合理化が全然行なわれていないとは申しません。しかし石炭産業全体として見るならば、それは依然として自然条件のみに依存する採掘、すなわち質の悪い炭層スクラップ化優良炭鉱への切羽集約、こういうことだけに重点が置かれていると思います。  私はビルド・アップが促進されない要因について考えの一端を述べてみたいと思いますが、言うまでもなく、炭鉱経営の基礎であり、投資とその償却期間を決定するものは、その炭鉱における埋蔵炭量賦存状態に求められると思います。ところがわが国では、かつてフランスから参りましたソフレミン調査団が指摘をいたしておりますように、炭量とその賦存状態を正確に把握しないまま稼行している事実があります。要するに、手っとり早く収益を上げるために、斜坑方式によって採掘重点を置いた質のいい炭層から順次掘っていく、こういうことをやっておりますので、自然当面の採掘炭層以外の炭層は放棄される。並行稼行すると経済性を長い目で見ることができるにもかかわらず、いい質の炭層だけを掘るという方式でいきますから、あとでそれより以下の炭層を掘ろうとする場合に、非常に非経済的な現象を生んで参ります。通産省の調査によっても明らかに示されておりますように、深度三百メートル以内の理論可採埋蔵炭量実収炭量の比率は、全国平均で二五・五%、筑豊において三七%、九州の平均は二五・二%、北海道は二五・一%というきわめて低い率を示しております。ちなみに西独ルール炭田では七二・八%を示しておりますが、これは深度千二百メートルまでの確定炭量調査対象になっているのでありますから、日本と比べましてその精度はまるきり違うのでありまして、比較しようもないくらい西独の精度は高く、日本精度は低いと言わざるを得ません。  以上のように、深度三百メートル以内でさえもルールの三分の一以下しか開発されていない現状にありながら、すでに優良炭層というのはなくなっておる。そして質の悪い炭層の方はどんどんスクラップされて、先ほど述べられましたような、第二会社でなければ経営ができぬのだ、こういうような資源の枯渇状態というものを生んでおる、こういうことを申し上げたいのであります。これは経営としても、炭量が掘れない、こういうことを言われているのでありますが、実際の炭量というのは、それでは日本の中からなくなっておるのだろうか。これはそうではなくて、決して炭量は枯渇していない、深度三百メートルないし四百メートルが技術的に限界へ来ておる、いわゆる斜坑方式による採掘技術の停滞が資源開発というものを阻害している、あるいは炭坑の真の近代化をはばんでおる、こういうことを申し上げたいのであります。このよう産炭構造上の矛盾に加えて、スクラップ重点を置いた現在の合理化方式、そしてまた日本における低賃金労働存在が第二会社化租鉱権炭鉱の発生を許し、他方では労働力の荒廃を招いているのであります。  労働力の点について見ますと、炭鉱労働者石炭産業に見切りをつけて、次々と山を去っております。残った労働者平均年令というのは、現在すでに四十才に達しようとしている事実があります。それにもかかわらず、現在炭鉱において労働者を補充しているその対象というのは請負組夫臨時夫をもって行なっているわけであります。一回首切りをしたあとにおいて企業がその補充を考える場合、再び在籍鉱員としての雇用を考えるのではなくて、それは請負組夫臨時夫というものをもって補充しようとする方向を、現在の日本石炭産業に従事している企業家考えている事実があります。この傾向は、大手中小炭鉱あるいは租鉱権炭鉱、第二会社炭鉱の別なく、共通的にそういう徴候が現われていることも事実であります。またこれらの請負組夫臨時夫労働条件というのは、在籍鉱員のそれに格差が設けられてありますように、大手中小の順に従って、これらの方々労働条件についても格差が設けられております。以下具体的な事実について説明したいと思います。  会社が第二会社提案するに至るまでは、いろいろな方法を講じて、その山の赤字宣伝なり、あるいは上がり山宣伝ということを計画的に行ないます。労働者はそういう宣伝の中で、うちの山はもう寿命が来たんだ、もうだめなんだ、こういうことを知らず知らずのうちに認識し、それが先入観念として植え付けられ、できれば早い機会に山を去りたいという意欲を持って参ります。そういう機の熟した際に、会社の方からは、炭量が少ないという事実、自然条件が悪化しているという事実、あるいは赤字がふえているという事実、こういうことを理由として、先ほど大滝さんの方からも述べておられましたが、会社としては完全に閉山をした方がいいのだけれども、失業者をできるだけ出したくないという親心から第二会社によって経営するのだ、だから組合方々も一つ協力してほしい、こういういわば巧妙な提案がなされるのであります。他産業へ就職する見通しがきわめて少ない、高い年令の労働者、あるいは長いこと炭鉱に勤めまして、その仕事の熟練度というものが他産業への適応性を非常に欠いておると自分から判断しておる労働者というものは、どこへも行くことができませんし、そのことに対して自信がありませんから、やむを得ず会社提案に合意して、労働条件を下げながら働く結果を招くのであります。昭和三十五年以降、第二会社化あるいは租鉱権炭鉱に落とされた私ども炭労関係炭鉱は、北炭の万字、美流渡、それに赤間炭鉱、住友では潜竜、忠隈炭鉱三菱では飯塚炭鉱古河では昨年峰地炭鉱が第二会社にされております。これらの炭鉱はいずれも、先ほど述べましたように、たくさんの炭量を埋蔵いたしております。たとえば北炭三山の炭量合計は、理論可採炭量で八千万トンあります。この可採率を四〇%と見ても、三千二百万トンの実収炭量があるわけであります。これが必ず現時点の技術で掘れると私は申しているのではなくて、実収炭量の算定として一応考えることができるということで申し上げているのであります。三菱飯塚炭鉱においては、理論可採炭量確定炭量は四千万トン、実収炭量については二千万トン近くを予定することができるのではないかと思います。こういう経営対象になる炭量というものが存在をしながら、会社の直営でやると赤字になり、第二会社租鉱権炭鉱にすれば採算が合う、こういう理由というものはどういうところから発生してくるのだろうか、この点について述べたいと思います。  北炭三山の場合、分離しても労働条件は他の十山と差をつけない、こういうことをこの提案の当時言っておりましたけれども、事実はただいま皆様のお手元に差し上げております資料に示しておるよう内容で、基準賃金から基準外賃金に至るまで、それぞれの格差がつけられておるのであります。三菱飯塚炭鉱あるいは古河峰地炭鉱も、この資料に示しておりますように、坑内夫では一万円、坑外夫では七千円の賃金ダウンとなっておるのであります。さらに、第二会社にされると同時にその雇用比率のふえて参ります臨時夫請負組夫賃金は、もっと低く押さえられております。こういうような状況の中で、会社の看板がかわることだけで三分の一の賃金切り下げ、あるいはそれに相対的についてくる労働強化会社の意のごとく実現される、そしてこういう方向でやることが第二会社としての利点なんだ、こういうことで定義づけられて、これが一般化して参りますと、今の日本炭鉱で、赤字が出ていない炭鉱を数えた方が早いくらいでありますから、しかもまた、もうけの少ない炭鉱というものの数が非常に多いわけでありますから、こういう方式がどんどん許容されて参りますと、日本石炭産業というのは、できればどんどん第二会社化をしてしまって、いわゆる現在の本社というのはもうかる炭鉱だけを手に握って、比較的もうけの少ない炭鉱は全部第二会社にして、労働者に対してそれをしわ寄せしていく、こういうことになって、これは非常にゆゆしい問題を発生してくると思います。たとえば、それが労働者に対するしわ寄せだけで終わるのなら、われわれだけの苦痛になりますけれども、だんだん資本を零細化し、規模を零細化していくことが、はたして国民の期待をしている、日本におけるエネルギーの供給源としての石炭の地位なり、石炭産業なりを安定化する方向に通ずるものであろうかどうか。ある期間において現在の企業収益を確保する手段としての第二会社化ということはあり得ても、長い目における石炭産業安定的発展自立的発展という前提の前に、資本をだんだん零細化していく方向、これが近代化に並行して行なわれている姿と言うことができるかどうか、この点を私は訴えたいのであります。  次に、本年一月古河鉱業労働組合に対して提案をして参りました第二会社化の問題について説明したいと思います。会社提案理由は、第一に年産約三十万トンで五年分の炭量はあるけれども、赤字が十五億円に達し、将来も好転をする見込みがないので、経営を続けることができない。第二に、本心は閉山をしたいところだが、多数の失業者を出すことは忍びないので、千二百五十名中、約七百名をもって第二会社として発足をしたい。第二会社というのは中小企業方式に変更することであるから、これによって全員心がまえを切りかえ、峰地炭鉱ように、賃金を下げて、能率向上をはかっていきたい、こういう三点に要約されると思います。しかしこの炭鉱生産対象である炭量についてみますと、お手元資料に示しますように、昭和三十年の四月には稼行しようとする予定炭量は、会社発表で千四百十八万六千トンに達しております。そうしてまた、計画実収炭量は七百三万七千トンであったのであります。以来今日まで採掘を続けまして、昭和三十六年十二月には確定稼行炭量が三百九万四千トン、計画実収炭量が百五十五万五千トンになったというのであります。この間に実際採掘をされました百二十四万五千トンを差し引いてみましても、五百七十九万二千トンの計画実収予定炭量がなければならないのでありますけれども、実際には百五十五万五千トンで、あと五年しかない、こういわれるのであります。従ってこの差である四百二十三万七千トンは、会社提案によれば、自然条件が悪くて掘れないのであります。これだけであります。そうしてその質も悪くなっておるし、値段も思うようにならないし、経費はよけいかかるので、赤字がどんどんふえていくから第二会社にするのだ、こういうことであります。ところが私は会社だけでなくて、政府当局にもその問題の追及をしていただきたいと思いますのは、大峰炭鉱政府計画の中ではいわゆる増強炭鉱にランクされていた時代もあるのであります。そうしてめくら縦坑を開さくするなど生産拡大政策をとって、いわゆる合理化資金の投入もつい最近まで行なわれておったという事実を指摘したいのであります。たまたま昭和三十二年ソフレミン大峰炭鉱調査いたしております。その報告書によれば、炭量調査を十分に行ない、めくら縦坑でなく地表から開さくし、縦坑卸坑道との併用ではなく、縦坑を中心とした立体的構造にすべきであると勧告を行なっておるのであります。ところがこういう勧告に基づいて施策が進められたという事実もありませんし、当時増強群にランクされておりました大峰炭鉱計画がいつ増強炭鉱からスクラップ炭鉱の中に落とされたのか。せっかく開さくされましためくら縦坑でさえ全然使用されないままで放置されておるのであります。従いまして、ここにかけられた経費というものは逐次圧縮をされてきます。出炭規模の中では減価償却を必然的に過大にし、コストを高騰させる結果を生んでおります。これは決して労働者の責めに帰せられるべきものではなくて、その責任は経営者にあるのでありますが、経営者はこれらの不良資産についてみずからの責任で会社の経理措置の中でたな上げ措置等を私はとるべきだと思うのであります。もはや生産に対して貢献をする道がなくなったものに対して、いつまでもその炭鉱コスト負担をかけるということは、幾らその炭鉱努力をしても、黒字に好転をする機会というものを与えない結果を生むものだと思います。固定資産の不良化あるいはスクラップ化の負担を一切労働者にかぶせ、その手段として直線的に賃金引き下げをはかり、そして一人当たり能率の大幅な引き上げによって今出ておる赤字の回収を考えておる、これが第二会社考えておる資本のほんとうの腹だと思います。  私は大峰炭鉱の実情を調査して参りましたが、適正規模への再編成や生産技術の対策と相待ちまして、コスト中の労務費の割高を改善する必要が存在するということを認めております。確かに大峰の労務コストは高い、従ってこの改善の策としては、大峰炭鉱坑内外構造の集約や現在の職種別人員構成あるいは賃金支払い制度の内容検討あるいは能率向上に関する具体的な施策の実施によりまして、十分その目的を達することができると思います。そしてまたわれわれも、これらの具体的な対策について話し合いに入る用意を会社側にも明らかにいたしております。しかし会社は、先ほど大滝さんが言われましたように、何といってももはや余地はありません、今から第二会社にしなければ古河鉱業自体の経営にも重大な影響を及ぼすのだという主張を変えず、昨年暮れに行ないましたような峰地の方式によって第二会社大峰炭鉱にしこうと主張して譲らないのであります。また三井鉱山におきましても、田川炭鉱で約一千名の退職を募集しております。そして、夏吉坑というのがありますけれども、これを閉山ようという提案を現在行なっております。このねらいというのもやはり大峰炭鉱の場合と何ら違いないと私は思います。会社は、もし夏吉坑の閉山組合が認め、大幅な人員整理を認めました暁には、夏吉坑は決して開発を中止して眠るのではないと思います。第二会社という名目に変えて、あるいは租鉱権炭鉱という名目で、必ずやその坑はまた中小炭鉱として発足をすることは予測するにかたくないのであります。  次に組夫臨時夫について見ますと、お手元資料に述べておりますように、在籍鉱員の絶対的減小傾向に対して、組夫は絶対的にも相対的にも増加をいたしております。これは在籍鉱員大量首切りの補充を、低賃金労働と一方的労務管理のより可能な請負組夫をもってしている事実であります。しかも、それは初めに指摘をいたしましたように、第二会社炭鉱租鉱権炭鉱組夫の使用を逐次増大をし、炭鉱の主体作業である採炭や掘進作業の分野まで、これらが進出をしてきているという事実を特に指摘しておきたいのであります。さらにこのような雇用の二重構造は、ますます労働力の荒廃を激化いたしまして、在籍鉱員の雇用並びに労働条件の維持にも不安を与えるとともに、採炭、保安技術の停滞と相待ちまして、資料に示すように、炭鉱災害の増大の源を作っております。以上のような形から、炭鉱近代化の確立にとってはまことに憂慮すべき問題点を現在の雇用の二重構造というものは内包しているのだ、こういうことを指摘しておきたいのであります。  以上の説明を総括いたしますと、第二会社というのは、一般の製造工業や化学産業であれば、主要製品の部品の製造や副産物の処理、こういうことを対象にして大体設立をされております。そのため、第二会社の方が親会社よりも収益が多い場合もあります。労働条件がよくなっている場合もあります。ところが炭鉱では、全く同じ石炭採掘するにもかかわらず、第二会社によって経営をすることが収益が上がるというのは、親会社でやるよりも第二会社でやった方が、無条件に賃金を下げるにいい、その金額は、表に示しておりますように、すでに一万円という相場が出ております。看板を変えればとにかく今払っている賃金より一人当たり一万円の賃下げができるのだ、そして労働強化ということも、組合の組織も弱くなるし、やりやすくなるのだということが基礎になっておりますから、非常に問題点が多くあると思うのであります。このようなことは炭鉱の早老化、炭鉱が早くだめになっていく方向というものをさらに促進をしているし、それらによって生ずる犠牲というものを労働者だけに肩がわりさせておる。租鉱権炭鉱等についても全く同じ趣旨で、いわゆる零細性のある炭鉱がどんどんふえていくという傾向を示しているのであります。  これに加えて組夫臨時夫使用の増加は、雇用の二重構造を一そう深化させ、労働力の荒廃に拍車をかけるだけであります。従って炭鉱には若い労働者というものは、魅力を持って集まろうといたしておりません。炭鉱に働く労働者自身も、自分の子供や孫を再び炭鉱につけようとしていないのであります。それは炭鉱にどれくらい努力をしておっても、いわゆる労働者としての地位の向上も、収益向上も、老後の安定も求められないからであります。何年努力をしても、あげくの果てにぶつけられるのは第二会社であり、あるいは賃下げであります。そういうような見地から、若い労働者炭鉱を去り、炭鉱の雇用労働力というものはどんどん高い年令になって、合理化を求めるかたわらでは、むしろいわゆる年令の上昇による低能率の、早老化の現象というものを生んでおります。  さらに、皆さんが炭鉱を見る場合に能率ということを問題にいたしますけれども、第二会社にすれば能率が上がる、組夫臨時夫を多く使えば能率が上がるというのは——大体この能率の計算というのは、その炭鉱の出炭量在籍鉱員の数で割って出します。従いまして、在籍鉱員になっていないこれらの労働者、ワク外労働者がふえて出炭に協力をする場合には、在籍鉱員の数が相対的に減っておりますから、その結果として出てくる能率というのは上昇をたどるのであります。そういう関係がありますので、能率が上がったから合理化が進んでおるというふうに端的に考えることは誤りだとは申しませんけれども、きわめてその事実をえぐっていないというふうに申し上げておきたいと思います。能率が急激に上がりましても、これに比例をしてコストの低減というものがはかられていない事実は、こういうところに存在をすると思います。  このよう石炭合理化が進められている中での多くの矛盾の現実は、わが国の石炭鉱業の歴史的性格を抜きに考えることはできないのであります。日本石炭産業は、鉱区の独占、低賃金労働中小炭鉱大手による支配の上に利潤生産が行なわれてきているところに、石炭資本なり、あるいは石炭の地位が非常に浮動しておる、いわゆる安定性を欠いておる原因があると思います。すなわち大手炭鉱の独占鉱区の周辺を中小炭鉱の鉱区が取り囲んでおる、こういう構造的欠陥は、鉱区図をごらんになれば一目瞭然にわかるところであります。従いまして、私どもは石炭産業を自立的に発展をさせ、労働者労働条件の維持向上をはかり、魅力ある産業と職場を造成するためには、前国会において決議をされました石炭危機打開に関する決議に基づきまして、抜本的なエネルギー対策炭鉱近代化施策を確立するため、徹底的な地質調査を実施して炭量とその賦存状態を精密に把握をし、それに即した鉱区の整理統合というものを行ないまして、縦坑開発による大型炭鉱いわゆる深部の開発を可能とする炭鉱を造成をいたしまして、もちろんスクラップの進行はさせなければならぬと思いますが、それ以上に大型炭鉱を作るという方向での努力というものを行ないまして、需要の開拓と生産性の向上に並行して、逐次拡大生産の方向というものを行なうべきだと思うのであります。生産を一定の限度に押え、生産性の向上によって上がってくるその結果を労働者首切りにしわ寄せさせていくということは、誤りだと思うわけであります。  産業発展のためには若い労働力の確保が、先ほど申し上げた通り、絶対に必要であります。魅力ある職場には、雇用と生活の安定はこれまた欠くことができない事実であります。現在の炭鉱ほどこのことを必要としている産業は他にないと思います。進歩的な雇用安定対策の確立、炭鉱最低賃金の制度を通して、真の炭鉱近代化に逆行する第二会社化租鉱権炭鉱化等の企業零細化と、請負組夫臨時夫等の二重雇用の拡大を規制し、もしくは調整のための措置を、本委員会は御討議の上講じていただきたいということをお願いするのであります。これは特に労働者の立場からお願いをしておりますけれども、日本石炭産業の発展のためにもぜひ欠くことのできないことだと、私どもは自信を持って申し述べているのであります。  最後に、本委員会の真剣な御討議をお願いをし、長い時間御清聴いただきましたことに対して感謝をいたしまして、意見を終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  6. 有田喜一

    有田委員長 それでは、次に田中参考人にお願いいたします。
  7. 田中直正

    田中参考人 私は大正鉱業の社長の田中直正でございます。  昭和三十五年の八月に、前社長の伊藤八郎さんから再三の懇請があって、ぜひ当社の副社長になってくれないかという要望がありましたので、再三断わりましたが、周囲の情勢、また皆さんの、ぜひ何とか大正鉱業の再建に骨を折ってくれぬかという要請がありましたから、私は一昨年の三十五年の八月九日に大正鉱業の副社長として就任をいたしまして、そして八月に過去半年間の赤字、それをすべての帳簿の検査をやってみたところ、毎月五千万円以上の赤字を出しております。これではとても炭鉱は立っていかないということで、九月に基準外をできるだけ押えよう、それから経費その他をできるだけ節約しようじゃないか、それまで交際費は月に五百万円から使っていたのでありますが、それを五十万円に切ってしまった、それから重役の給料も半分以下、六万五千円均一、それから汽車賃は、当時は三等でございますが、当分は三等にする、出張旅費の日当も相当制限をしまして、そして九月にやってみたわけであります。ところが、九月にもやはり四千三百万円ぐらいの赤字を出しております。それで、これではいけないということで、賃下げを組合にお願いしたわけであります。それで、十月に賃下げ並びに人員整理提案をしまして、十一月末に合理化、賃下げの協約ができたわけであります。そのときに一人当たり平均二千八百円の賃下げの協約ができました。しかしながら、二千八百円の賃下げではとてもやれないという、私には不安な気持がありましたから、十二月一日に私は副社長としてとてもこれでは大正の再建をになっていき切らないということで、自信を失いまして、十二月一日に当時の伊藤社長に辞表を提出しました。そうしてずっと私は社に出ておりませんでした。ところが十二月二十日に労働組合、職員組合、市議会、債権者団、鉱害組合代表、商工会議所が留任運動の要望書を伊藤会長に出しまして、何とか一つ建て直してくれぬかという話がありましたから、十二月二十九日に、それでは縦坑完成までは労組がストライキをしないという条件をつける、それで一つ何とか再建してくれぬか、こういう意見でございました。この炭鉱は過去において相当ストライキをしまして、赤字を出しております。それで、それならばということで私留任をして、三十六年三月よりようよう再建の見通しがつくと同時に、軌道に乗りつつあったのであります。それで、一昨年の十一月末に賃下げ合理化協定をして、賃金縦坑が完成するまではこの協定でいく、賃上げしない、そういう協定があります。それにもかかわらず、五月に賃上げのストライキ、並びに福岡銀行にデモをかけました。これはとても自分としては責任を持てない、銀行筋にデモをかけてこういう申しわけないことをしたら……。それで自分としても責任を感じまして、副社長を辞任して、当時私は取締役も全部やめさせてもらいたいと思ったのですが、伊藤会長がたって取締役だけは残ってくれぬかということで、非常勤の取締役になったわけであります。それで私ずっと今日に至るまで——一月二十日に伊藤社長から、もう一ぺん出て再建をしてくれないか、こういう要請がありましたから、一応帳簿を見せてくれぬかということで、これも再三断わりましたが、たっての願いで何とか建て直してくれぬかというわけであります。あの当時、副社長時代には人事権もない、株も一株も持たないでやりました。ですから過去に私の発言力が弱い点があったので、それを指摘して、人事権は一つ私にまかしてもらいたい、それから株を過半数三年間私の名前にしてもらいたい、そして一切私の権限にまかしてくれぬかという話を伊藤会長にしたわけであります。伊藤会長は全面的にまかす、とにかくあなたのいいようにしてくれぬか、そして再建をしてくれぬかという意向でございました。それではということで一月二十五日に正式に社長に就任すると同時に、私の方の調査団を編成しまして再建計画をやったわけです。そしてその間私かぜを引きまして、こじらせまして約一週間ばかり寝込みまして、そうしてようよう多少よくなりまして、二月の一日にお医者さんがもう床を上げてもよかろうということでございましたから、二月二日の日に、会社側から私と現在の労働部長の吉田と青木重役が出席して、労組側の上部団体の丸岡九炭労委員長、炭労の石塚中央執行委員と九炭労の山本中小対策部長の三者が私の方との会談をやりまして、次いで大正鉱業組合福島組合長、杉原副組合長と団交をやりまして、とにかく私が会社の再建をするにはどうしても労組の協力が要る、協力なしには再建ができないからどうか一つ協力してくれぬかという話をしたわけです。そのときに労組側からは、人員整理、ベース・ダウンは絶対に反対する、それから未払い賃金は即時に払えという意向でございまして、一歩もそれを譲歩しないので今日まできたわけであります。  賃金の問題は、実際会社内容を調べましたが、一月分の炭代が前受けを取っておりまして、調べてみたらどうしても会社に金がないというような状態でございまして、二月の六日に最終団交を開きまして、六日に現金千五百万円払う、それから七日に十二月分の残金を千五百万払う、こういう回答をしまして、保安設備は逐次改善する、一月分の賃金は二十日に三〇%、月末に七〇%を支払うことで再建に協力してくれぬかという話を私したわけです。それの労組の方の回答は、十二月の賃金は即日払ってくれ、それから一月分の賃金は定期通り払ってくれ、保安問題は即時改善してくれ、賃下げ、人員整理はしないで現行通りのことで一つ再建計画をやってくれという三点を同時に認めなければ労務を供給しないということで、全員緊急避難と称して休業状態に現在入っているわけです。  以上で私の話を終わります。
  8. 有田喜一

    有田委員長 次に、福島参考人にお願いします。
  9. 福島武雄

    福島参考人 大正鉱業労働組合組合福島武雄でございます。お手元にお配りしております陳述書に若干の説明を加えまして陳述にかえたいと思います。  一民間企業の再建をめぐる紛争を国会の委員会が取り上げられるということは異例のことであることを承りまして、深い感謝の気持を持ってお伺いしたものであります。  昨年秋、通産、大蔵、労働、自治、四大臣が親しく現地視察をされたおり、絶対つぶさないからしっかりやるようにとの激励を受け、河上社会党委員長からも深い御同情の言葉をいただき、私どもも歯を食いしばって再建のための努力を続けてきましたが、生きるなま身の悲しさ、食わないでは働けないところから、また保安、生産資材の欠乏から、ついにやむを得ず緊急避難の措置をとるに至り、社会的にも重大な関心を呼ぶに至りましたことを遺憾に存じておりますが、事ここに至りました経過を述べ、また私どもの再建の方針をも述べまして、問題解決のため、再建のための御協力をお願いする次第であります。  三十五年十一月の賃下げ合理化。先ほど田中社長の方からも説明があったように、石炭鉱合理化の波で大正鉱業も、一、三十五年の二月に新中鶴鉱への起業要員百二十六名の配転による本坑の人員削限。二、同年四月、鉱員三百四十名の希望退職募集の完遂。三、同年七月、福利厚生諸条件の切り下げ。四、同年八月、上期期末手当の四〇%支払いたな上げ。五、同年九月基準外労働の三割削限強行と、相次いできびしい合理化を強行いたしましたが、同年十月会社は、大幅な賃金切り下げを含む広範な合理化提案を行なってきました。  これについては、結局十一月二十二日、一、予算出炭確保のため出稼率の向上、切羽別出炭体制の確立、二、電気料、燃料代の負担分の引き上げ。三、一人当たり二千八百円の賃金切り下げ。四、配給所、病院の分離、その他をもって解決に至りました。  この争議解決にあたり会社は、当然長期にわたった賃金の遅欠配分を精算解消し、もって従業員生活を整え、安んじて生産に取り組む態勢を作るべきであるにかかわらず、この精算立ち上がり資金の調達ができ得ませんでした。よって組合は、みずからの手で四千五百万円の遅払い解消精算原資を確保し、会社にかわって代払いを行ない、もって既往の賃金遅欠配分を精算し、合理化争議後の急速な生産立ち上がり体制を作りました。しかしながら、この会社側債務は、今日ただいまにおいても、いまだ八百万円が未払いのまま放置されております。  合理化以降の経営状態。こうしてこのごろ石炭鉱業各社のほとんどが赤字経営を続けている中で、大正鉱業昭和三十五年下期で出炭トン当たり五百三円という各社の倍額以上の金利負担を負いつつ、なおかつ十二月以降三十六年四月までの間、月九百万円から三千八百万円の利益を計上し得たのであります。このことは、賃金切り下げその他労働者への過酷な犠牲の転嫁と、物品費その他所要経費の大幅削減により、再生産をさえあぶなくする無謀な出費の圧縮によってこの結果を得たものでありますが、とにかくこうして労働者の犠牲と協力の上に進められた企業努力により、黒字経営を続け得たにもかかわらず、次の通り主力融資銀行である福岡銀行への急速な借入金返済が強行され、利益の内部保留による生産体制の整備が放棄されたばかりでなく、逆に資金的に急速な行き詰まりを迎える結果をもたらしました。  福銀借入金残額の推移は、三十六年四月末十一億五千八百八十五万、三十六年七月末九億四千七百万、差引返済額二億一千百八十五万で、月産四万トン規模、月間販売額一億六千万円の大正鉱業経営において、月平均七千六百万円、売上高の半分に近い銀行債務の弁済が強行されたのでありますから、経営の行き詰まりをもたらしたのは当然のことであったというべきでありましょう。  ここで問題になりますのは、田中社長が経営を担当されまして、まず第一番に、賃金切り下げを含む、先ほど報告いたしました合理化、それから資材費が、各山で若干の差異はありますが、地方大手では約五百円というふうにいわれておりますが、それを二百円から二百五十円に削減をされて、そのことは最終的に後ほど触れますが、一切の機材が老朽化をし、あるいは資材が確保されない、貯木場には一本の坑木も蓄積をされておらぬ、こういう結果をもたらしております。なおまた人員の削減、これがいわゆる出炭と人員とのバランスを欠いて、予定出炭が確保されないという結果を作り上げております。あるいはまた、新中鶴の起業資金あるいは退職をした人に払った退職資金、こういうものを一切短期で借り入れてあります。従いまして、毎月四千万から五千万という赤字報告が今なされましたが、その中でなお七千六百万という金額が、毎月金利とも福岡銀行に返済をされておる。このことは当然だれがやっても経営が成り立たないということは明らかであります。その中でこういう金額が返納されておる。なおかつ、開銀から出ました一億五千万円という金が、そのままそっくり福岡銀行に返済をされた事実もあります。こういう結果ではだれがやってもやれないということは明らかであります。  それから先ほど若干触れられましたが、労働組合が今後ストライキをやらない、従って再建に協力をするという文書を入れながら、三十六年の五月にストライキを行なった、こういうふうに指摘をされております。事実十一日間のストライキを行ないました。このことは、ずっと以前から田中社長の方からそのことを主張されました道義的な問題がありますので、わが方としてもそのことの公表は差し控えておりましたが、本日はその書類をも持参いたしております。一応読み上げてみます。     覚  新中鶴炭鉱営業出炭開始までの間、組合は上部組織の指令に基く所謂「配給スト」に当っては、これが特別免除、公休振替等の措置を講じ予算出炭の確保を約す。  尚期間を通じての予算出炭が確保された場合、会社は爾後の期末手当について大手妥結額に一、〇〇〇円を加算支給する。   昭和三十五年十二月二十九日     大正鉱業株式会社      取締役社長 伊藤 八郎     大正鉱業労働組合        組合長 林  秋男 こういう協定を結びました。三十五年の十二月のいわゆる期末手当の原資が出ない。どうしても原資が出ない。従って、金を借りるためにこういう協定をしてもらえまいか、こういうことで、この裏に裏協定というものを結んでおります。     議事確認  組合は、会社経営実態が正常でない現情を認識し、予算出炭確保のため、配給スト等が企業の存続に影響するところ重大である点を銘肝し右覚を取交したものである。  元来ストを実施するかどうかについては、時間をかけ、組合員独自が判断するものであるが、十二月三十日午前八時現在の時点において、緊急やむを得ず調印するに及んだものである。以上の実態に鑑み組合は本覚の公開については特に慎重を期し、公開されることの無き様、広渡労働部長を通じ重ねて念を押したところ、今泉常務が責任をもって諒承し、同場所に居合せた近藤常務、伊藤監査役もこれを確認したものである。   昭和三十五年十二月三十日 福岡銀行からいわゆる年末手当を借り出すためにこういう覚書をかわしてもらいたいという、このことは一切公開をされないという裏協定であります。大正鉱業株式会社労働部長広渡浩美、大正鉱業労働組合組合長林秋男とあって、それぞれ印鑑が押してあります。  経営者の交代。こうした実績を残して、代表取締役田中直正副社長は、三十六年五月末賃金争議の終結とともに、代表取締役を辞して平取締役に下がり、かわって六月一日から、専務取締役今泉耕吉氏が代表取締役に就任、経営を担当いたしました。このことは、まず第一点に、社内の中堅幹部の中で、非常に田中社長の経営方針についての批判がなされております。一例を申し上げますと、先ほど申しましたいわゆる経営内容なり——それから、いわゆる学歴を持っておる非常に優秀な技術職員が、当社にはたくさんおられます。大学を卒業し、あるいは専門学校を卒業して、恒久的な経営の方針なり、技術を担当されておる技術の優秀な社員の方がたくさんおられます。ところが、炭鉱では学歴は要らないんだ、実力主義でいくか、そういう人は要らぬということで、約四、五名のいわゆる学力者を残して、あと一切淘汰してしまった。あるいは五カ月間行なわれました田中社長の経営方針にいわゆる中堅幹部から異論が出、重役連中からの反撥を買って、五カ月で退陣をされたというのが実態であります。学歴者の首を切ったというそのことは、今でも明らかにその意思が公表されております。このことは文書にして持ってきております。     通達  職員の昇給昇格は従来学歴、年功、序列等に基き行われたものの如くであるが、今後は実力主義を採用し、本人の技能勤務成績に重点おき之を実施する  尚現時点が当社にとり重要なる段階にあるに鑑み、今次争議に際し特に功績ありたる者には解決後論功行賞を行う 右社長命により通達する   昭和三十七年二月二十七日             総務部長  こういうのが、最近職員に、通達命令として田中社長から配付されております。  そういう計画は、明らかに恒久的な、いわゆるこまかい計画を立てる審議室なり、あるいは技術担当部の中におらなくては、とうてい成り立たない。従って、ただ単なるその時点の技術だけを求めても、炭鉱経営というものは恒久的に経営されないというのが実態であります。そういうものを無視して、そういう学歴等は要らない。いわゆる実力主義を採用するんだ。そうして、争議に功績のあった者については、解決後に論功行賞を行なう。これはもう労働史上まれに見ることかと思考いたします。  この夏、すなわち昭和三十六年上期の期末手当について、炭労大手会社は、一人当たり二万四千五百円の、かつてない高額をもって妥結しましたが、大正鉱業では、社業の現実直視の上に、スト行為に訴えることなく、他社の半額に当たる、一人当たり一万三千円、ただし盆前支給一万円をもって解決いたしました。会社は、この期末手当の支払い原資その他の越盆資金調達のため、福銀と折衝しましたが、期末手当一万円の支払い期日である八月十四日、福岡銀行は、逆に、融資の大幅引き締めつまりつなぎ融資月間約八千万円の中止の意思表示をしましたため、資金調達ができなくなり、期末手当その他の諸支払いも、またこれを繰り延ばすことになりました。さなきだに無謀な福銀返済を強行した上、つなぎ融資まで中止されては、経営に責任の持てるはずもなく、翌十五日、代表取締役今泉耕吉氏らは辞任をいたしました。  伊藤体制での再建努力。こうした事態を迎えて、八月十五日、取締役会は、伊藤八郎会長を代表取締役に立て、残留重役をもって経営を担当すること、及び経営中枢すなわち社長の補充人選工作、対福銀の融資工作を積極的に進めることなどの方針を決定いたしました。何分にも福銀の態度変化に伴う金融閉塞を自力で切り抜ける力のない会社は、資金面では大口債権者を中心に、その援助、あっせんによる資金調達、首脳人事面では、経営陣の補強策として、九州石炭鉱業連盟顧問田中丑之助氏の社長就任懇請の作業を進めました。  一方、私どもは、何日おきかに千円、二千円という全くめちゃめちゃの賃金支払いで遅欠配額は累増し、将来に対する不安も増大して、生活は全く疲弊し、暗たんたる状況に陥りました。食いつないでいくためには、やむなく社外で就労して、その日のかてをかせぎ出すほかに方法がなくなったのであります。このため組合は、九月十一日以降、臨時休業措置をとらざるを得ない段階にまで至りましたが、このとき会社は、従来の遅払い分は別とし、当面、当日就労分の賃金は翌日に概算払いする、いわゆる日払い方式を行なうこととしましたので、最低生活は確保できるという見地から、休業は中止をいたしました。なお、会社が進めていた田中丑之助氏社長招聘工作は成功せず、一応中絶の形となりました。  再建協定の締結。このような経過の中で、会社は九月十日、現況下会社再建のため必要な措置として、再建に関する提案を行なってきましたが、組合もまた、学識経験者を含めた企業実態調査の結論などを参考として、組合としての再建構想を提示して討議し、結局、十月五日、次のことを骨子とする再建協定を締結いたしました。1、組合側は計画出炭の達成をはかる。労使間の諸問題については極力紛議を避け、平和的解決をはかる。2、会社側賃金の定日全額完全支払いを行なう、出炭達成のための必要機材、資材を調達、確保する。なお、会社は、銀行その他債権者の協力並びに経営体制の確立が再建達成の不可欠の要素であることを確認し、そのための努力を払う。この協定の成立で明るい空気を取り戻した私どもは、再建達成への希望に燃えて出炭努力し、次の通り着々その実効を上げ、出炭原価面においても千五百万ないし二千万円の黒字を計上するに至りました。九月出炭実績二万七千二百トン——九月というのは、そういう問題をかかえて内部が混乱をし、あるいは就業不可能だということも関連をいたしまして、非常に就業率が落ちております。この実績が二万七千二百トン、個人能率が十三・七トン、出勤率が七三・六%であります。十月は、五日に締結をいたしまして、若干の立ち上がり期日を要しましたので、月産四万百二十トン、個人能率二十一トン、出勤率七七・九%であります。十一月は、四万二千三百五十トン、個人能率二十一・三トン、出勤率八〇・三%であります。一方、会社は、この協定にかかわらず、賃金の定日・全額払いができず、さらに坑内機器の補充整備、保安の確保には全く手が回らないため、負傷者は激増し、一日当たり出炭関係機器故障時間は、七百六十分という驚くべき実情にありましたが、私どもはなお前述のごとく超人的努力を行ないました。この間、佐藤通産大臣の支援声明もあって、通産局及び業界団体である石炭協会あげての支援工作が進められました。このため、一時は断念していました田中丑之助氏の社長就任の内諾もあり、再建資金融資工作に当たられましたが、十二月下旬に至り一切が徒労に終わりました。これは十一月には、先ほども説明がありましたように、大体トン当たり五百円程度の資材コストを持っておりましたけれども、当社では二百円から二百五十円に下がっております。このことから、一切新しい機材が入ってこない。従って、ここに書いてありますように、交代時間を除いて、十一月は一日当たり九百六十分、約十三時間という故障時間を数えております。その中でわれわれは四万二千三百五十トンの出炭をしてきた。このことは、そういう非常に環境の悪い坑内状況の中で、われわれの手で何とか再建をしなければならぬ、こういうことが全山を包みまして、労働者の手で必ず再建をしてみせる、こういう気がまえに燃えてわれわれは出炭に協力をいたしたからであります。その間、いわゆる福岡銀行の融資なり、あるいは社長人事の補強なり、こういうものが決定をされると、そのことが裏づけにされて本格的な再建が進められる、こういう希望に燃えて協力いたしましたが、十二月に入りましてからは、ほとんどいわゆる採炭場の機材の故障が多く、一日ほとんど故障時間にとられてしまって、全く炭が出ないようになった。このことは、非常に機材が老朽化し、あるいは坑木が入ってこない、あるいは火薬が制限をされる、こういう環境の中で、十二月はまた生産が非常に落ちた、こういうのが実態でございます。  六番目は、田中新社長の就任であります。しかしながら、私どもは、最後まで大正再建の希望を捨てず、年明けて本年一月政府当局経営安定対策委員会の設置を求めました結果、通産大臣のあっせんにより、一月二十日、取締役田中直正氏が代表取締役社長に就任しました。これに先だち、福銀は手形の割引も中止いたしました。組合は、累積された遅払いと生産、保安に必要な資材の欠乏がその極に達している現状の早急な改善を求めて、新社長に団体交渉の申し入れを行ない、当面緊急の手当を求めましたが、交渉は全く拒否されました。私どもの米びつはからになっていました。まさにその日の生活にも事欠き、正常な就労は全くおぼつかない現状を述べて、一月三十日、会社に対して次の五項目の確認を求めましたが、会社の回答は、私どもの苦衷を無視し、その協力態度に報いようとする誠意を欠くものでありました。  「一、賃金を含む労働条件は、現行基準を最低として確認し、賃金その他未払い分債権の即時支払い精算を求める。」賃金を含む労働条件、現行基準と申しますのは、十月五日にわれわれは平和条項を認めて会社側と再建協定を結んでおります。先ほど骨子を説明いたしました。このことは、われわれは譲るべきぎりぎりの線まで譲って、われわれはいわゆる平和条項も入れて会社と協定書を取りかわしております。従いまして、賃金を含む労働条件は、十月五日に結んだいわゆる再建協定を最低にしてもらいたい、こういうことを要求として出しております。会社回答、「第一項は再建計画と不可分の関係にあるので、再建計画の中でその方針を決定する。」「二、自己の都合により退職を希望する者には、退職届提出後七日以内に退職手当等の全額支払いを行なうことの確認を求める。」「三、賃金の定日・全額支払いの実行確約を求める。」会社回答、「第二及び第三項は、再建計画が実施に移され経営が正常な状態に復した暁、早急に要望に沿って善処したい。」これは、全額賃金の支払いは、将来再建ができなくては約束できないという意味のものが盛られております。「四、対外旧債務の返済は、企業運営正常化の時点まで責任を持って留保するよう措置することを求める。」会社回答、「第四項は、会社再建のためには、外部の援助協力に待つ以外道がないので、この際回答の限りでない。」「五、その他必要な諸事項の履行、善処を求める。」会社の回答なし。  たとえば、私どもが当面最も問題にしていた賃金支払いについていえば、一月末日に支払われた一律わずか千二百円の十二月分賃金内払いによって、再建案提示時期——二月十五日ごろの予想——までの半月間を食いつなげということであり、今後の賃金支払いについても、経営正常化までは定日・全額払いなどの確約はできないというものでありました。この千二百円の支払いは、通産大臣の口きき、今まで手形の割引を停止していた福岡銀行から割引いてもらったものですが、田中社長は、この手形千二百万円の中から、その半額を旧債の金利として福銀に納めました。六百万円の金利は、労働者一人当たり三千円をこえるものであります。食うや食わずの鉱員には千二百円を支払っただけです。私どもは血の涙を飲む思いをしました。  ここで、新社長が就任をされる若干のいきさつを報告しておきたいと思います。  田中丑之助氏が福岡銀行に二億円の融資を頼むとともに、政府から六千三百万円の近代化資金の融資をしてもらい、債権者間で約七千万円の融資をしてやろう、こういう形で融資を求めて、再建を田中丑之助氏によってやろうということで作業が進められましたが、政府近代化資金は、非常な努力をして出していただきました。まず債権者の方には二千万円という金を出してもらっております。従って、福岡銀行がその二億円の融資一切を最後まで拒否した。ただ、福岡銀行に言わせれば、コマーシャル・ベースに合わなければ金は一切貸しません、従って、返ってくるあてがある金であれば貸しますけれども、おたくに貸したら返ってこない、そういうことで一切貸すわけにはいかぬ、従って、福岡銀行は大正鉱業企業その他に関与する意思は全くありません、そういうことで最後まで突っぱねられまして、田中丑之助氏は、福岡銀行の二億円の融資がつかないということから、十二月下旬に一切の話は挫折をしたわけであります。従いまして、通産大臣その他が現地に来られましたときにそういう激励を受けましたので、われわれは再度上京いたしまして通産大臣に呼ばれまして、大正鉱業の問題について話し合いを進めております。そのときにわれわれは、大正再建委員会というものを一つ政府の責任において作ってもらえぬだろうか、こういう要請をいたしましたところ、福岡銀行は一月十日をもってその時点で商業手形一切の割引の拒否をしてきております。こういう関係で、一月十九日に通産大臣から呼ばれまして、今のいわゆる政府機構の中で一企業に金を貸してやるということになっておらぬ、あるいは膨大な負債をかかえておる大正鉱業に他の銀行が金を貸すというところも出てこぬ。しかしながら、大正を何とかして再建をしなければいかぬ。あるいは通産省も折紙をつけておるように、非常に優秀な炭鉱で、埋蔵炭の炭質においても非常に優秀だ、これをつぶすとなると、その影響は非常に大きい。あるいは会社がそういう七千六百万円という金を毎月銀行に払い込むために、そのしわがどこに寄るかと申しますと、いわゆる労働者賃金が払えぬ、マイト代が払えぬ、資材代が払えぬ、あるいは電気代が払えぬ、貨車金がとまる、こういう結果をもたらしております。そういうことだから、どうしても大正は金が要る、資金を投入しなければ再建ができぬ。そうなると、いやでも取引銀行である福岡銀行の言うことをきかなければいかぬじゃないか。それで田中直正社長という話が出た。いろいろ問題はあろう、あろうけれども、資金を導入しなければならぬというこの実態の上に立って求め得るものは、どうしても福岡銀行以外に融資をするところはないぞ、従って、問題はあろうけれども、一つ田中直正社長を受け入れて再建に協力をしてもらいたい、なお今後いろいろ問題があろうが、第二会社に移行せずに、労働条件引き下げずに、今の形のままで再建をするとするならば、福岡銀行の言い分を通さなければならぬぞ、従って、田中新社長になって問題が出てくる、そのことが当然予想される、そのときには、労働省に行かずに、通産大臣、私のところに相談に来なさい、このことは、一月十九日、参議院の院内で通産大臣からわれわれが受けた内容であります。従いまして、われわれとしましては、一昨年の田中社長の経営その他については骨身にこたえておりますが、そのことをわれわれがここで拒否をしても、どうにもならぬ。田中社長そのものをいやとか何とかいう権限もわれわれにはない。従って、機関といたしましては、田中社長よろしゅうございます、従って、一月二十三日に前の伊藤八郎さんから、団体交渉の席上で、田中直正社長に引き継ぎました。こういうことから、田中新社長にその後三回にわたって文書で団体交渉を申し入れましたが、一切拒否されております。先ほど団体交渉の席上と言われましたが、団体交渉にはまだ一回も田中社長は出てきておりません。山元にもまだ一回も姿を見せたことはありません。労働組合は、まず当初賃金を払って下さい、そうして坑内の資材を入れて下さい、そのことが可能になってわれわれが働ける状態の中で話をしようではありませんか、こういうことで、まず飯を食わせろという要求から始まって、三回にわたる文書の団体交渉の申し入れをいたしております。一通のごときは、自宅に行って、奥さんから、玄関にも入れてもらえなかった、あの通用門の上の郵便箱の横のくぐり戸、戸を手前に引っぱって五寸角ぐらいの口がありますが、そこで書類をとられたという実績もあります。こういうことで、田中新社長は本社に来られまして、一回の団体交渉にも出られませんし、一回も山に来られぬ。そういう中で、まず労働組合の無条件協力ということが前提にならない限り、金が出ないぞ、賃金は払えないぞ、資材は買えないぞ、これが終始一貫、田中新社長の意向であったわけでございます。そういう形で、福岡銀行がそういう要請の中で求めて田中新社長を大正に送ってきた。そのことは当然何がしかの再建資金がついておらなければならぬ。田中新社長に再建資金がついておらない限り、これはだれがきても同じだというふうにわれわれは考えております。従って、賃金も若干は払ってもらえるぞ、あるいは退職した人がもうすでに三千四、五百万円の退職金が未了になっておりますが、田中新社長が来ると何がしかの退職金ももらえるだろう、この人たちは、会社は退職をした、退職金は一銭ももらえない、あるいは失業保険も四十日間はもらえない、こういう中で、ほとんど売り食いをして生活をつないでおる、こういうのが実態であります。従いまして、そういう中から私たちは十二月分の賃金を一月二十日に二千円、それから一月二十五日に二千円、それから先ほども若干述べましたように、一月三十一日に千二百万円の商業手形を福岡銀行に持っていって、これで何とか若干の資材代と労働者に飯を食わせる金を作ってもらいたいということで商業手形を持ち込んで、通産大臣のいわゆる口ききもあって千二百万円の商業手形を割った。その中で、会社と銀行の話し合いの中で六百万円は金利で差し引かれております。こういう実態であります。  緊急避難の一斉休業。労働者に餓死させても銀行を大事にする社長のもとでは、山を守ろうにも命が続かないので、座して死を待つよりはと、全員が総辞職をきめました。まともに金を払うところで働いて食いつなぐか、失業保険にたよろうとしたわけです。ここまで山を守ってきたのに、その山を去らねばならぬ私どもの感慨は無量でありました。しかし、上部組織の炭労はこの決議の実行をとめ、当面の人道的な問題である未払い賃金の解消と、生産持続の絶対要件である保安生産資材の充足だけに問題をしぼってもっと交渉することを命じ、その間における生活資金を用意すると申し入れてきました。私どもはこの炭労の指令に従って総辞職をやめ、炭労とともに、経営者として最低限の義務である両問題だけに限って交渉しました。しかし、会社側は、諸君がこれから掘り出す石炭を売って金を作るほかに金はできないし、まず田中体制に無条件に協力してもらわねばならぬと答えただけでした。ロボットではない私どもは、食わぬで働くことはできませんでした。就任以来、賃金を下げねばならぬ、人員整理をやらねばならぬと盛んに新聞に発表している社長に対して、再建案も見ないうちに無条件協力を求められても、返事のしようはありません。一方、一月二十九日以来坑内調査をされた保安監督部では、二月六日、八十数項目に上る保安法違反をあげられました。そこで私どもは、二月七日以降、もう就労することができなくなったと通告しました。食うためには、金を払ってくれるところで働かねばならぬし、坑内は危険だし、いわば急迫の危難を避ける緊急避難で、争議行為ではないと私どもは考えています。この通告をしましてから通産局長の仲介もあり、二月六日夕方十二月分賃金残額の五〇%が払われ、二月七日の朝にも、緊急避難を避けることを条件に、十二月分賃金の残額を二月八日に払う、一月分を二月二十日と月末に払うという提案がありましたが、しかし、もうみんなの腹はきまっていましたし、この日の朝では手おくれでした。長い遅配ととんびとんびの少額支払いで借金もできていましたし、そんな支払い方では焼石に水でした。今になって何を言うかという気持も組合員を支配しました。保安状態も危険だったのであります。この一斉休業に入った時点でわれわれが非常に苦労しましたのは、もうどうしても食うことができぬ、炭鉱に働いてもいつ賃金がもらえるかわからない、従って、全部外部に働きに行こうではないかということが出てきまして、この時点ではすでに従業員の三〇%程度しか就業ができぬ、こういう実情でございました。従って、労働組合といたしましては、ここで各人ばらばらに就業すると、一番悲惨な目にあうのは労働者であります。従いまして、これを統一をしてどうこの問題に対処していくか、処理をしていくか、こういうことをいろいろ機関で決議をいたしまして、われわれは総辞職をいたしまして、失業保険によって飯を食おう、そうしてその中からわれわれの手でこの大正の再建をやろうじゃないか、こういうことをきめまして、七日から一斉就業に入っております。その時点ではすでに米びつには米もありません。坑内に下ってけがをしても、労災の補償はありません。会社が労災金を納めておらぬために、給付制限になっております。病院に行っても、油紙がないために新聞紙で患部を巻いております。六十四ベッドがありますが、今でも十二月分の賃金を払ってもらえないということから、お医者さんが六名中三名までやめるという意思表示をされております。医は仁術といえども、お医者さんでもやはり食えなければどうにもならぬのだというのが実態であります。あるいは、いわゆる豆炭工場を下請でやっておりますが、あの小さい企業に、田中新社長が来られたときに約一千万、それから以降にわれわれが買った代金も、会社の補助金も一切出さぬということで、再度一千万、約二千万という負債をかかえております。そういう中で企業が回っていかない、あそこに働いている労働者に金を払うこともできぬ、こういう中で私どもはにっちもさっちもいかぬ、あるいは金も払ってもらえぬ、新社長は来たけれども、一回も顔も見せぬ、こういう中ではどうにもわれわれの生活はできませんし、あるいは坑内で働くという裏づけがない、こういうことから、やむなくわれわれは緊急避難として一斉休業に入ったわけであります。  緊急避難の保安要員引き揚げ。このとき、飢えている組合員の中から、不確定な後払い賃金の約束で保安要員を選ぶことはできませんでした。そこで労使の間で、保安要員の賃金をその翌日払いとする協約が成立いたしました。この協約で、二月七日から二月十五日まで保安が確保されました。ところが、二月十五日になって、会社は、もう資金調達ができないから、翌日払いの制度を中止すると通告してきました。保安要員の費用は一日約六万円です。どんなに行き詰まってつぶれかかった山でも、大事な資産であり、また抵当権の設定してある資産を守るための費用は、経営者はどんな無理をしてでも調達するものであります。保坑費用も作れない経営者では困るのであります。ところが、これをめぐって交渉をやっているさなかに、夜ひそかに職員の家庭を回って、十二月分賃金の残額と見られる総額約二百万円の金が配られました。時を同じくして、炭鉱ではただ一つの炊事と暖房の燃料である豆炭の供給も中止されました。二百万円というと一人頭約七千円の賃金が、夜の夜中に経理課の職員によって職員の各家庭に配られております。たまたま十六日の日に、会社の方から、保安要員の後払いは一切できません、あるいは豆炭購入の金を渡すことができませんので、燃料の豆炭供給は中止します、あるいは、病院の薬がないので、がまんをしてもらいたい、こういう申し入れについてやっているさなかに、九時、ころ、夜の夜中に、会社側は、経理職員によって、職員だけに一人頭約六千円から七千円の給料をひそかに配付しておる、こういう事実を突きとめております。組合員の購入していた豆炭券約四十万円は不渡りになりました。これでもか、これでもかという、いわゆるいやがらせが続きました。それでも組合は、確実にあとで支払うことが確認されるなら、炭労から金を借りて立てかえ払いをしてでも保安要員を出そうとして、二月十六日には最低限の保安要員を出してもみましたが、確約は得られませんでした。そこで、ついに二月十七日以降、保安要員も緊急避難の措置をとりました。しかし、職員は賃金の支払いをしてもらったばかりですから、職員組合に頼んで、職員の手で最低限の保安を確保してもらっています。二月十六日に、八時五分前ごろに、会社の青木重役が帰って見えましたので、十六日に出しておる保安要員の賃金なり、十七日以降の保安要員の賃金についてはどうするのか、こういうことで尋ねましたところ、そういう賃金は一切できぬという話をされておりましたが、最後には、一日から十五日まで働いた分はその月の二十日、十六日から月末まで働いた分については三月五日、いわゆる翌日の五日、こういうことで支払いたいという申し入れがありました。そのことは何回となく文書で賃金を払う払うというふうに約束されたのでありますが、一こうに実行されておらぬ、従って、口約束だけではわれわれはどうにもできぬ、従って、何か裏づけがあるかどうか、こういう話をしているさなかに、職員が金を配ったという情報が入りましたので、一時休憩をして組合にわれわれは引き揚げたわけであります。約二十分くらいして、わが方の態度をきめるのに若干の時間が要るから、しばらく待ってもらいたいという電話連絡をいたしましたところ、青木重役、日高調査次長は、すでに自動車でどこに行ったかわからぬということで、いわゆる姿をくらましたのが十六日の夜であります。従いまして、そういう責任のない行動でわれわれに対処するとするならば、われわれも保安要員を引き揚げざるを得ない。十九日の日に団体交渉を開くというふうに会社の方から一応申し入れがあっておりますので、十九日の団体交渉でその点が明らかになるまでは、保安要員については、職員三百名によって保安確保をして下さい、こういうことを当時の責任者である伊藤卓郎課長に口頭で申し入れて、二月十七日以降保安要員の引き揚げを行なっております。  地労委の事情聴取と勧告。二月十七日福岡県知事の要請で地労委が事情聴取をされ、二十八日に、組合は保安要員を出すこと、会社は確実に賃金を払うことという趣旨の勧告を出されました。田中社長の約束は当てにならぬのですが、地労委の勧告をもし会社が受諾すれば、地労委を介して社会的に賃金支払いを確約することになるわけですから、私どもは一時組合が立てかえ払いをしても、保安要員を出すことを喜んで受諾しました。もともと保安要員の引き揚げは争議戦術ではなく、保安要員の賃金が払われなかったことから起こったものですから、当然でもあります。しかし、会社側は事実上拒否にひとしい条件をつけて、組合員による保安の確保を拒もうとしています。この条件というのは、まず第一点に、保安要員を出して金を払うということであれば、労働組合田中体制に協力をするという体制を作りなさい、それから保安業務については、一切会社の指示に従うこと、あるいは会社の保安要員を入れる人員に制限をいたします、特定の者については、そういう者は坑内に下げてはいかぬ、保安要員に使っちゃいかぬ、あるいは福岡銀行なり、そういうところの抗議行動をやめなさい、こういう条件をつけて地労委に回答がなされております。従いまして、地労委としては、事実上会社の方は拒否をしたというふうに見ております。これまでの、そしてまたこの態度を見ると、田中社長は組合を激高させて、組合の手で、組合の責任で山をつぶさせようとしているのではないかと思われます。組合の手で山をつぶさせて、休山の中で銀行以外の債務を切り捨てようとしているのではないかと考えられます。大正鉱業は、労働者や鉱害農民、中小資材業者、商社、農業協、社会保険等に十億をこえる債務を持っているからです。  憶測までつけ加えて失礼しましたが、経過は以上の通りであります。組合側の再建方針の大要。最後に、私どもの考えている再建の基本方針の大要を簡単に申し上げます。  一、現段階では、新中鶴縦坑の本格的出炭よりは、その前に、まず中鶴本坑の恒久的な出炭体制を確保するために重点投資を行なうこと。このための長期資金の確保と確固たる開発計画を策定すること。二、新中鶴縦坑開発計画は、資産処理による借入金の償還、開発資金、近代化資金の導入と見合わせながら実施するものとし、従来のよう経費処理や短期借り入れで運転資金まで行き詰まらせることのないようにすること。三、今大正鉱業は物心両面にわたって荒れ果て、生産面、技術面ともに萎縮してしまっているので、当面の資金処理の重点をまず未払金と緊念な保安、生産資材の投下に置き、この萎縮生産からの脱却をはかることであります。  大正鉱業今日の危機は、十二億に上る新中鶴縦坑の開発費の半額を経常費でまかない、あるいは短期借入金でやりくりするという無理算段のため、新縦坑の完成前に肝心の中鶴本坑の設備や機材が参ってしまい、労働者も飢えるに至ったところに原因があります。従って、再建築は、この危機の本質をつかんで、従来のやり方の批判検討の上に出発しなければならないと私どもは考えます。私どもはいまだに田中社長の再建構想を聞かされていませんが、中小B級並みに下げた労働条件をさらに引き下げたり、優秀な鉱員を逃がしてしまうよう人員整理で立ち直れるとは思わないのであります。  公正な委員会の各位が十分御審議の上、社会的にも人道的にも納得のできる形で問題が解決され、再建ができますようお力添えをお願いいたします。また、私どものやむを得なかった緊急避難の措置に御理解を賜わりますようお願いいたします。御清聴を感謝いたします。  以上をもって意見にかえさせていただきます。(拍手)
  10. 有田喜一

    有田委員長 以上で四人の参考人の御意見を拝聴いたしました。  大へん時間がおそくなりましたが、質疑の通告がありますので、これを続けたいと思います。第二会社の問題、租鉱権の問題、組夫問題等についての一般的な質疑をまず最初にやりまして、そのあと大正鉱業の問題に移りたいと思います。  それでは、一般問題から質疑に入りたいと思いますが、質疑の通告順によってこれを許します。まず中川俊思君
  11. 中川俊思

    ○中川委員 参考人の方にちょっとお尋ねいたします。今委員長からお話がございましたように、具体的の問題につきましては後刻他の委員の方からお話があると思います。私は、一般的なごく概念について一、二お聞きしてみたい。  石炭の問題は、申し上げるまでもなく、今日非常な危機にある重大な問題でございますので、国会におきましても石炭対策特別委員会が設置され、さらに、自民党においても、社会党においても、この問題が今大きく取り上げられておることは、皆様十分御承知の通りであります。先般もこの委員会石炭協会の会長並びに炭労の委員長その他にもおいでをいただきまして、それぞれお話を伺ったのです。そのときにも私は質問をしておいたのでございますが、非常に遺憾に感じましたことは、先ほど来の皆様方の御意見を拝聴しておっても私は同様な感じを持つのでございますけれども、率直に申し上げますと、建設的な御意見があまりないように思う。   〔委員長退席、岡本(茂)委員長代理着席〕 言葉は少し悪いかもしれませんが、経営者の方も組合の方も、いたずらに泣き言ばかりを並べておられる、こういうふうに私は解釈したのです。泣き言を並べておってこの問題が解決するのならばけっこうでございますが、それでは解決しない。そこで、この問題は、単に皆様方ばかりでなく、ただいま申し上げました通り、国会においても、政府においても、大きな問題として取り上げておるのですから、衆知を結集して、どうしたらこの石炭問題が解決できるか、今日のように石油が非常に出回りまして、これに追い回されておる日本石炭事業というものをどういうふうに持っていったならば、石炭経営者も、それから従事しておられる労働者の方も生きていかれるか、こういう問題について建設的な意見が実は聞きたかった。先般も私は申し上げたのでございますが、石炭事業というものはなかなか採算がとれないらしいのです。従って、大滝さん、田中さんもよく御存じだろうと思いますが、石炭に従事しておられる経営者が、今日では天職の石炭事業をすみの方に追いやって、観光事業であるとか、土地会社であるとかいう他の仕事にうつつを抜かしておる連中もあるやに私は聞いておる。石炭だけに専念してもできないのに、その大事な石炭事業をほったらかしておいて、そしてうわ気をしておったのでは、石炭事業が成り立つわけがない、私はこう考える。そういった意味から、一体どうしたらこの石炭事業というものがやっていけるか。政府はもっと積極的に、採算がとれなければ石炭事業に対してうんと金を出して、これを採算がとれるように持っていってくれという要求が、次から次へ出されなければならないはずなんです。そういうことはむろんある程度やっていらっしゃるが、これは皆様方が先ほど来おっしゃっておるように、現在の政府の保護政策だけではいかない、だから、さらに保護政策を強化してもらいたいとか、ないしは、かつてどなたか炭油従政策というものをやられたことがあるように私は聞いておりますけれども、御承知の通り、日本国内では石油がない、石炭は豊富にある、なぜ、ドイツやイギリスのように、自国産のエネルギー資源であるところの石炭をもっと重用しないか、もっと使うような運動をなさらないか。これがやがて経営者を救い、労働組合を救うゆえんだと思う。ここでいたずらに泣き言ばかり並べてみたところで、それで石炭事業が好転するのならばけっこうでございますが、私はそれでは好転しないと思う。それでは私どもは同情しません。ですから、こういう建設的な意見をおれらは持っておる、これをお前らは政府のけつをたたいてやってくれないかという、そういう建設的な意見を私は聞きたかったのでございまます。先般も石炭協会の会長並びに炭労の委員長に私は申し上げたのですが、そういった意見があまりないように思う。また、先ほど来ここで伺っておりましても、同じことを聞いて、私は非常に残念に思ったのでございますが、そういう点について、いたずらに石炭を斜陽産業として、みずから自分の従事しておる仕事を卑下するような態度はやめていただきたい。石炭こそ日本の唯一のエネルギー資源である、このエネルギー資源をどういうふうに育成していくか、これに対しては、政府はこういうふうにしてもらいたい、国会はこういう方向努力をしてもらいたいという意見を一つ出していただきたいのです。経営者の方にいたしましても、労働組合の方にいたしましても、今日までおとりになっておる態度、さらにそれでいいとお考えになっておるのかどうか。それをまず大滝さん、田中さんから伺いたいのですが、経営者の方といたしまして、十分政府の機関は御利用になっておるのかどうか。また、利用しようにも、政府の今のようなやり方では利用できないじゃないか、もっと政府がこういうふうにしてくれなければ、われわれは利用できないじゃないか、これではわれわれの炭鉱はやっていけないのだ、だから、もっとこういうふうにしてもらいたいという御意見がありましたならば、その御意見と、今までやってこられたことに対する反省と申しますか、今まであなた方がやってこられたことが正しかったかどうか、足りなかったかどうか、私が先ほど来申し上げるような点を一つ御勘案いただいて、今までとってこられた方法と、あるいは今後政府に対してどういうことを希望するか、あるいは現状のままでいいのかどうかということについて、まず大滝さんと田中さんにお伺いをしてみたいと思うのであります。
  12. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ちょっとその前に議事進行について——実は今中川委員から質問がありましたけれども、石炭政策全体のことについては、理事会で、次にその関係者を呼んで公述を受けるということになっておるわけです。本日は特定な問題に限って実情を聞こうということになっておるのですから、今のような公述があったと思います。しかし、いい機会ですから、それは意見を述べてもらうことはけっこうですが、そういう経緯であったということを考えていただかないと、参考人に非常に失礼に当たると思うわけです。そのことを一つお含みおきを願いたい。
  13. 岡本茂

    ○岡本(茂)委員長代理 中川委員に申し上げておきます。今の発言の通りの経緯でございますが、それを御了承の上お進めをいただきたいと思います。
  14. 中川俊思

    ○中川委員 ごもっともですが、やはり根本はこれなんだから、根本問題を究明せずして、いたずらに枝葉末節ばかりやっておっても、ちょうど、今政府が総合エネルギー対策を確立しないで、石炭政策だ、石油政策だとやっておるのと同じことなんです。(「ここで論ずる問題じゃない」と呼ぶ者あり)だから、この問題は、ここで論ずる問題じゃないけれども、一応私はごく簡単に聞いておきたいと思うのです。
  15. 岡本茂

    ○岡本(茂)委員長代理 だから、一応そういう経緯を御了承の上でお進めを願いたいと思います。
  16. 大滝四士夫

    大滝参考人 私は冒頭に私の方の大峰鉱業所の問題について公述をしたのでございますが、今もお話があったように、それだけの問題を申し上げるために参ったので、石炭政策の根本的な問題についてきょう申し上げようと思ってきたのじゃないのでございます。ただ、今先生から、大体石炭鉱業の経営者はだらしがないじゃないか、こういうことを言われますと、われわれも平素考えておりますことがありますので、ただで引っ込むわけにもいかないので、一言申し上げたいと思います。(笑声)  大体、日本石炭産業に対する政府の援助なり政策というものは、西欧なりフランスなり、英国はむろん国営ですけれども、そういう諸外国に比べて、非常に足りないと思います。私は、石炭産業がこういうような没落過程をたどっていることにつきまして、非常に心配しておるのです。経済的に重油と競争して石炭は太刀打ちできないので、きょうは一山、あしたは一山と、山はつぶれて、滅びていくわけでありますが、石油資源にもおのずから限界がある。一説によると五十年とか何とか、そういうことも言われておりますけれども、もし戦争でもありまして、石油が日本の国に来なくなったというようなことがあった場合、日本産業は壊滅すると思います。そういうようなことを池田総理大臣初め政府の為政者各位が考えられておるかどうかということを、私からこの際お伺いしたいと思います。  それからもう一つは、現在の石炭産業は、重油との競争上、最初は、三十八年にはC重油八千四百円というものを目安にして千二百円下げということが策定されたわけですが、現状におきましては重油の方がどんどん下がっているので、石炭も勢い非常な苦しい事情にあるわけです。そういう関係から、金融的にも非常に困っておるわけです。また、もう一つは、何分にも炭労さんは、皆さん御承知のように、世界一強い組合でございます。そういう組合を相手にしてわれわれがやっておるのでございますが、やはり現場におきましては、職場闘争でいろいろなものをかちとられています。なかなか強いのでございます。これを聞かなければストライキをやるぞということで、昭和二十七年から今日まで、私の方のストライキによる石炭部門の損害だけでも、おそらく四十億になっておると思います。そのうちの半分は従業員諸君賃金を失っておるので、大体六十億くらいの金を二十七年からこの方どぶに捨てておると思います。そういうようなことで、言うことを聞かなければストライキだということでおどかされてきておるので、それでいろいろな関係にもなっておると思うのでありますが、先ほど来大正鉱業さんのお話を伺い、労働組合組合長さんのお話を伺いまして、私は全く人ごとでないような、非常にせっぱ詰まった気持で拝聴いたしました。  そこで、石炭産業というものは、日本産業の将来の発展のためにどうしても存続しなければならぬということであれば、トン当たり少なくとも五百円、ということは、大体石炭の年間産出量五千万トンに対して五百円ということであれば二百五十億、そういうようなものをここ五、六年出して、やはり合理化する山は合理化するとか、あるいは設備投資をする必要のある山は設備投資をするとか、そういうことによって、石油に対抗できるような、やはり石炭産業政府の力によって確立していただきたいということをこの機会にお願いします。
  17. 田中直正

    田中参考人 ただいま先生がおっしゃった言葉、私も同感いたしますが、この問題は、一炭鉱業者だけでなくて、政府労働者も、先ほど言うように、強い炭労さんも一緒になって、お互いが腹を打ち明けて、どうするかということで話し合いの場を持っていかなければならぬ。  もう一つは、私の方の大正炭鉱の実情を見ますと、昭和二十六年からここまで地方銀行に一銭も払っていないわけです。今組合長が、払った、払ったと言いますけれども、それはみんな開銀のつなぎとか、そういうものを借りて、そしてつなぎがきたときに返済しておるわけです。実質的には昭和二十六年から一銭も借金を払っていないような状態であります。しかし、やはり地方銀行は、一銭も金を払わぬというところには金を貸してくれぬ。これは大正炭鉱だけの問題でない。各炭鉱ともそういう実情ではないか。これをどうするか。これは経営者と労組とお互いが一緒になって、そして政府と根本的に話し合っていけば道が開けるのではないか。これは政府ばかりわれわれは当てにもしませんし、また、労働者ばかりをどうというのではなくて、お互いが話し合って、そうしてお互いがこの危機を突破するというのと、同時に、石炭は現在のところ重油には太刀打ちできません。これはどういうわけかというと、汽車賃は上がるは、電力代は上がるは、坑木代は上がるは、そうしてひとり炭価だけはどんどん下がっていく、これははさみ打ちになっていますから、どうしてもそういうことを政府考えてもらって物価政策考えてやってもらわなくちゃいかぬ。それと同時に、大正鉱業の場合も、首も切りたくないし、賃金ダウンしたくないのですよ。けれども、いろいろ合理化しなくちゃ炭鉱がやっていけない、もろ倒れになる、こういう実態の中で、これはお互いが組合経営者も裸になって話し合っていくのがほんとうじゃないか。言いたいことを言って、そうしていがみ合っていたのでは話がつかない、こう思っております。私は今委員の言われるのは同感と思っておりますが、何とかこの石炭政策政府の方もお考えになりまして、この危機を切り抜けてもらいたい、こう思っております。
  18. 中川俊思

    ○中川委員 私もかつて北九州の方の炭鉱を拝見したいことがあるのであります。私だったら、あんな中小のあぶなっかしい炭坑の中によう入らないです。私は見たときにそういう感じを持ちました。ほんとうにこのくらいな丸太ん棒でささえてある。あの中によく入っていかれるものだという感じを持ったのでありますが、しかし、いろいろ聞いてみますと、非常な金がかかる。鉄わくで組んでするのにはどれだけかの金がかかって、とても現在のところではできないというような話も聞いておったわけでありますが、炭鉱の、特に中小炭鉱の苦しい実情はよく知っております。そして今大滝さん、田中さんのおっしゃった中から言葉じりをつかまえるわけはありませんが、御両氏が異口同音におっしゃったことは、石炭は重油に太刀打ちできないというお言葉であります。そのお言葉が私は間違っていはしないかと思うのであります。なぜできない。できるようにしたらいいじゃないか。あなた方の力でできなければ、政府を鞭撻し、国会を鞭撻してできるような方策をなぜお考えにならないか。私が今あなた方に一分間ほどお聞きしたいというのは、そこなんです。一例を申し上げますと、政府は、三十八年度までですか、石炭の値段を千二百円コストダウンして、そうして重油とうまく採算がとれるように持っていこうという、何年か前にそういう計画を立てた。政府は今日でもそれをばかの一つ覚えに考えて、そうして同じようなことをやっておるけれども、御承知の通り、毎年々々どんどん上がっていくですよ。このエネルギーの需要というものは上がっておる。重油はぐんぐん上がっていっておるのに、石炭はあまり上がっていない。それじゃ日本石炭はないのかというと、あるでしょう。あるのに、なぜ掘るようにしないか。むろんこれは政府にも責任があると思うが、直接の石炭を掘っていらっしゃるあなた方は、もっとこれを国会に訴え、政府に訴えて、ただストライキばかりやらないで、そういう方向をなぜ労働組合の方もお考えにならないか。もっと石炭を使えという政策をおとりにならないか。たとえば西ドイツにしても、イギリスにしても、七〇%も八〇%も、全エネルギーのうちで石炭を使っておるじゃありませんか。先ほど来あなた方もおっしゃるように、石炭日本に豊富にある、石油はない、海外から持ってこなければならない。もしスエズ運河のような問題が起こったときには、直ちに石油はとまってしまう。安全保障の問題から考えても、国内の資源を保護育成していかなければいかぬというのが私の持論なんです。ただ、重油の方が取り扱いに非常に簡便だというので、すぐそれに頭を向けたがる。頭を向けておるのはいいが、私がいつか石炭局長に、一体海外に問題が起こって石油がぴたりととまったら、石炭でどのくらい日本の全エネルギーをまかなうことができるかと言ったら、石炭局長は、ここにおるけれども、まあ電灯ぐらいですなと言っておった。そうすると、汽車もとまり、電車もとまり、新聞も来ない、ラジオも聞けない、テレビも見られない、世の中がまっ暗になるのですよ。そういうことを政府は平気で言っているのです。だから、政府を鞭撻して、イギリスやドイツのように七〇%も八〇%も自国産のエネルギー資源を使って、そういう不測の事態が起こってもたちまち困らないだけの態勢を整えておかなければならぬ。これはむろん政府の責任でもございますが、それによってあなた方も救えると私は思うのです。そうして炭鉱が立ち行くよう政府にもっと金を出せ、もっと開銀から出せ、どこから出せ、これだけではやれないじゃないか、石油に太刀打ちできなければ、ドイツのように石油に対して関税、消費税をうんとかけて、石油と石炭が太刀打ちできるような態勢に持っていけという建設的な、前向きの運動をなぜおやりにならないかということを私は実はお聞きしたかったのでございます。そういうことについて私どもみんなが力を合わせて日本石炭産業は決して斜陽産業でない。あなた方経営者自体が、もう石炭は重油に太刀打ちできないという先入観でやっておられるから、それはだめだと私は言うのです。それを改めていただきたい。決して太刀打ちできないことはない。現にドイツやイギリスは太刀打ちしているじゃありませんか。だから日本でもできないことはないのです。まずその観念を改めていただいて、石炭こそ日本の唯一のエネルギー資源である、これを一つ育成しなければならない、それには政府はこうやれ、国会はこうやれという建設的な意見を出していただきたい。労働組合の方も、いたずらに労働争議をおやりになる、ストライキをおやりになる、これは決して本心で、やりたくてやっておられるのじゃないと思うのです。だから、そういうふうにして石炭がどんどん使えるようになれば、経営者の方も何もすき好んで給料の遅配をなさるわけではないと思うのです。やむを得ずそういうことをなさる。多少技術上において——先ほど福島さんは、職員に給料を払って、一般の労務者には払わなかったというようなことをおっしゃっておった。そういう点があったかどうか知りませんが、そういうようなことで、先ほど来ここに経営者の方々組合方々が並んでいただくということ自体でも、私は日本石炭産業の悲劇だと実は考える。だから、そういう意味で一つ建設的な意見を聞きたいと思うのです。経営者の方には大体今伺ったのでわかりましたけれども、そういう意味で、どうか自分の天職を斜陽産業考えられないように願いたい。重油に太刀打ちできないというような、みずからを卑下するような態度はやめていただいて、むしろ重油を駆逐して、そうして石炭産業を育成するのだという気持を持っていただきたいと思うのです。(拍手)  そこで、東海林さんと福島さんにお尋ねしたいのです。これは同様のことなのですが、今までのあり方——むろん、今おっしゃっておるよう政府のやり方が悪いとかいうことがあるのですが、政府のやり方が悪いと言うだけで黙っておったのではだめなんです。なるべく仕事をすまいというのが日本の役人ですから、これを引きずって、けつをたたいて仕事をさすように持っていっていただきたい。それには、われわれが国会におるのですから——私は自民党ですよ。与党にも私のような者がおるのです。与党は、政府の言うことに対して、お前らのやっておることは満点だということは決して私は言わない。与党にも私のような者がおりますから、決して役所に行ってぺこぺこ頭を下げぬでもいいから、政府のやっておることに対しては十分に監視していただくと同時に、これこそ日本石炭産業の生きる道だという建設的な意見を出していただきたいと思うのです。あなた方だってすき好んで赤旗を立てて争議をやりたくないでしょう。奥さんが見たら、何だ、うちのお父さん、みっともないな、赤旗を立ててと言って笑っていますよ。(笑声)実際、私の弟は中国電力におりますが、それが赤旗を立てて先頭に立つのです。ばかなまねはよせと私は言うのです。女房なんか、兄さん、あれはほんとうに御近所に恥ずかしくてしようがないと言う。(笑声)ほんとうですよ。あなた方だってほんとうにすき好んでそういうことをおやりになるとは思いません。やむにやまれずそういうことをおやりになることも私はよくわかっておるのです。それよりか、さらに一歩進んで、建設的に、石炭産業を育成して、争議なんかやらなくてもいいような態勢に持っていく努力をしていただきたい。それにはどういうようにしたらいいか、これは非常にむずかしい問題ですから、一朝一夕には言えない問題ですが、東海林さんと福島さんの所見を聞かしていただきたい。私はそれ以上ここで聞こうとは思いません。   〔岡本(茂)委員長代理退席、委員長着席〕
  19. 東海林秋男

    東海林参考人 ただいま中川先生から非常に私どもの考えと共通した御指摘をいただきまして、私は非常に喜ぶものであります。せっかくの機会にそういう意見を求められましたので、私は喜んで私どもが考えておる今後の考え方を述べさしていただきたいと思うわけであります。  まず最初に、ストライキの問題が常に経営者の皆さんからもあるいは世論からも指摘をされております。先生の御指摘されましたように、炭鉱労働者だれ一人ストライキをしたくてやっておる者はないのであります。しかし、われわれに今与えられている情勢というのは、先ほどからお話をしておるように、常に非常に危険な職場で働かされて災害の多いということであります。にもかかわらず、賃金は他産業に比して安いというこであります。その安い賃金労働者が、先ほどからお話をしているように、会社の名目を変えることによって、三分の一にわたる賃金が下げられるという事実、何らの抵抗なく下げられねばならぬ、あるいは雇用問題から見ますと、スクラップ・アンド・ビルドという非常にりっぱな方式のもとで、労働者首切りがいとも簡単に行なわれておるという事実であります。千二百円の炭価を下げる必要がある、そのためには十三万四千人に上る首切りが必要だ、これは政府が立案をし国会がきめたことだと思いますけれども、これらに対する離職者の吸収対策というのは、現実の問題ときわめて遊離しているような条件に置かれていると思う。首は切るけれども、それを受け入れる態勢というのは全然ない。六十億の予算をつけましたけれども、この予算によって救済される何倍もの量が資本家によって首切りをされておる。しかも、それが計画的に行なわれてこないということです。先ほども指摘をしましたように、増強群とか維持群とかの産炭構造に入っておる炭鉱が、突発的に、いわゆる第二会社だ、首切りだということをやっておるのです。これでは政府としても受けようがないと思うのです。この辺の調整というものをなさらないで、労働者にだけ攻撃がかかる、ここにやはりストライキをせざるを得ない労働者の環境というのがあるのだと思います。決して私どもはすきでやっておるのではないのでありまして、そういう問題を解決するいろいろな共通の広場というものを私は持たしてもらいたいと思っております。政府の皆さんも、あるいは資本家の皆さんも労働者の皆さんも、先生方の意見を聞きながら、今後の石炭産業はどうあるべきか、あるいはこれらの労使の態度はどうあるべきか、問題点が具体的に出ているところの対策はどうすべきかということについて、皆さんと公開の場でお話をする機会を与えてもらいたいと思うのです。そうでなければ、いわゆる資本主義の社会では、雇っている者が強いわけです。雇っている人がおやりになっている経営方針についていろいろ申し上げますと、やれ経営権の侵害だ、あるいは労働権の行き過ぎだ、こう言って、労働者のほんとうに守ってもらいたい最後の線までも経営権の偉大さによって押し殺してしまう、ここに労働者は最後の抵抗として、人間であればだれだって同じだと思います、あるいは立場を変えてお考えになっていただければよくわかると思いますけれども、どたんばに追い詰められた者がやる方法というのは、法律的に今許されておるストライキ権の行使以外にはないと思う。やりたくないことであっても、人間はやらねばならない段階というものはあると思います。そういうのが今の炭鉱労働者が与えられている現実ではないだろうか。泣きごとばかり言うなという御意見は、私全く賛成であります。泣きごとばかり言っておって進歩的な発展がないのは、私どもがよく苦しめられているだけに知っております。従って、私は端的に申し上げますと、現在の石炭鉱合理化計画というものを変更してもらいたいというふうに考えておるわけです。それはなぜかといいますと、先ほどから先生が指摘されておりますように、石油の値段並みに対照的に石炭の値段をきめようとして、そこにいわゆる経済合理性を求めようとして、千二百円コストダウンという方向をきめました。ところが、石油の方はどんどん下がって参りますから、石炭の下がったときにはさらにまた石油を下げるという方策はできるわけです。どこまでいっても、その値段だけを合わせようという短期の施策の上に、合理化の追求とか、石炭産業の安定ということはできないわけです。日本における唯一の石炭資源、いわゆる国の財産を利用して国の経済性というものを確立していこうという方向は、そういうやり方によってはできてこないのであります。ですから、安値攻勢というものに対して、やはりそれを押しとどめる政策的なものがなければいかぬのではないか。もちろん、石炭というものも時勢に合った値段の下げ方について努力することは当然であります。しかし、われわれは、そのことが見通されるまでの期間、それに対して適切な政策が打たれるところに政治というものがあるのだろうと思うのです。そのこともできないで何の石炭政策か、あるいは国民のための政治かということを、私どもとしては言いたいと思います。  ちなみに、現在五千五百万トンということに三十八年度の生産を押えておりますけれども、すでに石炭の情勢というものは、昭和三十六年度で五千五百万トンを生産する見通しにあります。昭和三十七年度の実績はおそらく六千万トンを数えることができると思います。そういうよう生産規模の実態を日本炭鉱は持っておるにもかかわらず、五千五百万トンというところにこれを押える。これは先ほど言ったように、経済ベースからの逆算によって押えられているわけです。たとえば五千五百万トンで、十八人で炭を出していくとする場合、生産は逐次上がっていきます。善意の努力によって生産性は向上するものであります。そうすると、生産の方は押えておいて、生産性は上がるのですから、この上がった分はどこにしわ寄せされるかというと、労働者を減らしていくという方向に持っていかれる。五千五百万トンの炭の量は維持され、労働者はどんどん減っていく。これでは私はいかぬと思う。五千五百万トンというものは、経済ベースである程度考えなければならぬことはよくわかりますが、それが安定した暁には、あるいは安定するという計画のラインのつながりの中では、生産性の上がった分だけ、五千五百万トンというものは生産規模が上がっていいのじゃないか。それに見合う利用開拓というものは、当然国の責任において、業者の責任においてなさるべきじゃないか。このことによって、努力した労働者にもかいがある。このことをなぜおやりになろうとしないかということが、私どもが最も不満を持っている一つの原因であります。  それか、五千五百万トンという炭は、どんな規模炭鉱からでも出てくればいいんだということ自体に大体誤りがある。よその国の炭鉱を見た場合、同じ生産量を目的としておっても、それを出そうとする炭鉱は若返りを続けているわけです。ところが、日本炭鉱は、先ほど私が指摘した通り、その若返りがあるのか。片方では炭鉱を買っておりますけれども、それと同じよう炭鉱をまた作っておるじゃありませんか。まずこれを私はやめてもらいたいと思う。将来スクラップ対象としなければならないよう炭鉱をどんどん日本政府は作らして、国会も黙ってそれを見ておる。今人間をある程度吸収して、あたかも失業対策を与えたかのごとく見えますけれども、それは期間の問題であって、それには賃下げも加わっておる。あるいは半年後、一年後にまた首切りがくる。この状況を明らかにこの資料は指摘しておるのであります。たとえば昭和三十六年度において炭鉱労働者は二万五千人減ったといいますけれども、ストレートで二万五千人減っておるのではありません。二枚目の資料を見ていただきたいのでありますが、三十六年度の見込みで、解雇の数が七万二千二百二名に達します。二枚目の一番右端にありますけれども、四万一千四百九十八名の人を雇っておるではありませんか。この差がいわゆる炭鉱労働者の減殺数になって現われておるわけです。あるいは三十五年度において、七万五百三十名の解雇者と、四万五千二百二十八名の採用者があるわけです。三十四年で見ても、七万一千五百八十三人に対して四万二百の採用がある。これは労働省あるいは通産省の調査によって私ども作成した表でありますけれども、二十何万、三十万しかおらぬ労働者の三分の一から四分の一に当たる労働者が行なったり来たりしているわけですね。それはなぜかというと、その雇用母体である企業が非常に脆弱なものであるから、倒れたり、できたり、つぶれたり、できたり、これをやっておるわけですね。こういうような状況における生産規模で五千五百万トンというものを達成しておる。これがあたかも日本石炭産業産炭構造の姿として普通のものだと解釈されておるところに、私は非常な問題があるのだと思う。悪い炭鉱は私どももつぶしていくことについて賛成をしております。しかし、一体そのかわりにいい炭鉱ができておるのか、新規開鉱ということがされておりますか、あるいは増強群に対して金が入っておるのか、このことは、私どもは政府に声を大にして求めたいのであります。そのことによって、つぶした炭鉱で失なわれた生産量が、増強群の炭鉱によって拡大をされていく、そこで五千五百万トンの数字が出ていくことは、私は、皆さんが求めておられる石炭の生産費のダウンという方向で出てくると思う。いい炭鉱からたくさんの量を生産性を上げて出すのですから、悪い炭鉱企業分散して出すよりは、コストが低減していくということは、これは一年生でもわかることと思います。こういう方向にされていないところに、私は日本石炭産業の悲劇があるんだと思う。  それから、千二百円炭価を下げるという方向について、私は石炭の値段が下がることに対して反対はしません。その努力の過程で物価がどんどん上がっているのですが、このことに対する対策がありません。従って、物価が上がってコストに反映する分だけ労働者にしわ寄せがきます。ですから、当時十一万人首切りでやったものが、今度はさらに一万四千人ですか、追加をして首を切らなければ、逆に能率を上げなければ、コストは合わないことになっているのです。そういうような物価高に対する対策を十分にやっていただく、このことが私はどうしても必要だと思います。  それから、スクラップ炭鉱が逐次整理されていく過程というものは認めたいと思いますが、このことによって生じてくる人員整理に対しては、これは明らかに予測できるものでありますから、これらの離職者対策というものを完全にパイプをつないでほしいと思う。筑豊にことし二万人なら二万人のいわゆる失業者が出るんだという予測ができない政府ではないのですから、実績と会社計画とによって明らかに把握できるのですから、このうち何人の人が農業に帰るのか、自立営業をするのかという比率も明らかに出ております。そうすると、他産業に転職をしなければならない労働者に対して、その道というものを講ずべきではないか。出てくる数だけでなくして、二万人出るのに対して五千人の対策しか立てていないところに、筑豊の労働者が停滞をしている状態がある。これは数字上わかっておることですから、この点を明らかにしてもらいたい。これから切ろうとする人に対しては、その行き先を示して、やめて下さいということを言ってほしい、あるいは新しい炭鉱への転換ということを考えてほしいわけです。そうしてそれらを計画的に進めるために、調整機関といいますか、審議会といいますか、計画的実施という方向を一つとってもらいたいと思う、私どもにも生活の都合がありますから。資本家だけの勝手な時期に、思いついたときにぽっとやって、第二会社にするぞ、全員解雇だという方式をやられたのでは、労働者は安んじて話をすることができないと思うのです。共通の広場がないと思います。ですから、そのことをぜひお願いしたいと思います。  それから、若い層を炭鉱に持ってくるためには、魅力を持たせなければいけません。看板を変えることによってどんどん奈落の底に賃金を落していくよう方式では、集まってこないわけであります。ですから、最低賃金制というものは、ぜひ一つお互いが話し合って無理のないところにしいていただいて、炭鉱労働者賃金というものの底を作ってもらいたい、こう考えます。  それから、合理化を進めていく上に立って、もはや石炭というものは私企業の能力だけではできない状態にあると思います。従って、国の行政指導といいますか、国の監督指導というものが、従来に増してきわめて強化をされなければならない事態にあると思います。その事実を率直に御認識いただきまして、これらの行政指導機関というものを作るべきではないだろうか。たとえば合理化資金を、先生方が御協議になって、石炭産業に年間何十億かをつけられます。ところが、そのつけられた投資というものが効果を生んでおるかどうかということに関して、討議したことがおありですか。その金は全部生きてこないのです。縦坑に三億だ五億だといわれますが、縦坑は、大峰、峰地に見られるように、炭を出し切らぬままスクラップされております。その縦坑は、第二会社になれば使われないのですが、せっかく三億、五億もかかった縦坑が、何ら生産価値を生まないでつぶれていくような投資の仕方について、国会としては問題の指摘をしないところにむだがあるのではなかろうか。政府としてもそういうことを考えるべきではないか。いろいろな政策をやっていただくことはけっこうですから、ぜひお願いしなければなりませんが、それらの金は国民のお金であります。国家の投資でありますから、国家投資が企業になされる前の調査と、してからの監察的な態度というものはぜひ必要である。労働組合企業に対する態度も、企業労働組合に対する態度も、ともにこれらについてやはり公正な機関の指導というものを私どもは期待をしているのでございます。いずれこの委員会には私どもの代表者も呼ばれておりますから、私は、今申し上げたより以上の根本的な問題について触れられる機会があると思いますけれども、私ども保安あるいは生産という職責を担当して炭鉱というものを見ます場合に、ぜひ私が今申し上げたようなことを実現するという方向で、共通の話し合いの広場が持たれなければ、これは労使が建設への努力を熱心に、むだを排除してやる機会が出ないのじゃないか。あるいは皆さんの期待される方向で実現される機会が与えられないのではないかという観点から率直に意見を述べさせていただきました。ありがとうございました。
  20. 福島武雄

    福島参考人 中央執行委員東海林さんの方から大体の意見が述べられましたので、私どもの方は別に意見はありません。実はお願いしたいのは、炭鉱業界なり、それから炭鉱労働者の立場に立って御理解ある御意見を承りまして非常に心強く思っております。従いまして、われわれ炭鉱労働者のこうして下さいああして下さいということについては、政府にそれぞれ今要求として出しております。なお、今東海林中央執行委員から申されましたように、そういう問題も含めて出しておりますが、そのことが国会で取り上げられてもなかなか結論が出ません。従いまして、いろいろわれわれの仲間がわざわざ東京まで参りまして、それぞれ陳情活動を行なっておりますけれども、そのことがなかなか結論が出てこないというのが実情でございますが、先生方の御理解ある判断のもとに、そういうことを労せずして皆さんのお力でそのことを政府に求めていただく、こういうふうに一つ私たちの方からも極力お願いをしたいと思います。
  21. 中川俊思

    ○中川委員 時間がないようでありますから、私これで御無礼します。非常にいい意見を聞かしていただいてありがとうございました。今の意見は私どもも聞いておりますが、政府はよく聞いておると思います。私の方へ言っておられたが、むしろ政府の方に向かって言われたと政府は一つ考えていただいて、十分に対策を練っていただくことを衷心より希望しておきます。ありがとうございました。
  22. 有田喜一

    有田委員長 滝井義高君。
  23. 滝井義高

    ○滝井委員 私が聞きたいと思っておる点について、炭労の東海林さんから組合側の意見として述べていただきました。実は私今の点は、労使双方に聞きたいと思っていたのですが、そこで大滝さんに少し問題を具体的にしぼってお尋ねしたいと思います。  経営者協会も政府も、日本炭鉱を新鉱群と増強群と維持群とそれから非能率の群とか分けておるわけであります。大滝さん御存じだと思いますが、ことしの通産省の予算に炭鉱スクラップ化をするものとして出ておるトン数というのは、保安のために大体四十五万トンくらいことしじゅうに処置していく。それから今までの合理化事業団の買上方式で残っているものが六十七万トン程度あるから、これはそのまま推し進めていきたい。それからまた今当委員会で審議をしている石炭鉱業の合理化臨時措置法の中に新しい方式の買いつぶしをとる。これが全体で六百二十万トンだが、本年はとりあえず百二十万トンだ、二百三十万トン程度をつぶしていく、こういう形になっておるわけであります。そうしますと、事前にやめてくるものもあると思いますが、そういうものを一応頭に置きながら、失業対策事業あるいは広域職業紹介というようなものが政府では予算として、受け入れ態勢として組まれてきておるわけであります。  そうしますと、今度焦点を田川炭田だけに当ててみますと、今、田川炭田では、古河さんが第二会社、三井さんの方は希望退職じゃないかと思うが、千十二名が出てきておる。この三井さんの方とあなたの方の大峰炭鉱は一体政府のいう非能率炭鉱に当たるのかどうかということになりますと、これは当たっていないわけであります。維持群に入っておる。従って維持群に入っておるので、政府の本年度の予算措置として広域職業紹介その他になるものの中には入っていないということになるわけです。そうすると、あの狭い田川炭田の三井から千人、大峰から七百人、千七百人の失業者がどっと出てきますと、職業訓練所の受け入れ態勢もなければ、広域職業紹介についても、もう前に順番がきまっておりますから、その千七百人の皆さん方は並んでおる人のあとにいくわけです。そうすると大滝さん御存じの通り、われわれはこの前の国会で石炭産業危機打開に関する決議というものをやったわけです。そうして「政府は、当面の緊急な諸問題につき、次の措置を講ずべきである」。ということの三項に、「炭鉱労働者雇用の確保に努めるとともに、労働者雇用安定については、最大限の努力を払い、転換職場と生活保障のない合理化とならないように指導を行なうこと。」こういうことをきめて議決をして、政府もこの通りやって参りたいという、池田総理並びに通産大臣の答弁があったわけです。ところが、いわばこういう決議、予算措置とは別ワクのものが突如としてこう出てくることになると、政府の方の受け入れ態勢もないしするから、労働者は路頭に迷わなければならぬという形が出てくるわけです。この措置を一体経営者としてはどうお考えになって当面を打開しようとするのか、これを一つお聞かせ願いたい。
  24. 大滝四士夫

    大滝参考人 ただいまのお尋ねの件について申し上げますが、私の方の大峰鉱業所は、現在先ほども申し上げましたように千二百名の従業員がおります。それで山を閉山するということであれば、千二百名の従業員生活の問題がたちどころに起きてくるわけでございますが、今もお話がございましたように、千二百名の従業員生活の安定をはかるということは非常に困難でございます。従って、会社は山を閉山するんじゃなくて、第二会社提案をして、第二会社移管経営をすることによって七百名の従業員をそこに吸収して、残る約五百名の人間を何とかしなければいかぬということになるわけなのであります。現在内々でいろいろ調査をしてみますと、自分で商売をやりたい者、あるいは郷里に帰って仕事をしたい者、すでに就職のきまっておる者もございまするが、大体五百名のうち三百名見当は、第二会社に残らなければ就職をあっせんしなければならぬというふうにわれわれは見当をつけておるわけでございます。私の方は、昨年の十一月に峰地炭鉱を閉鎖いたしまして、当時峰地炭鉱は八百二十名の従業員を持っておったのでございまするが、当時経済界の好調にささえられて、古河関係会社の横浜護謨、それから日本ゼオン、古河化学、富士通信機、そういうよう関係会社に——横浜護謨のごときへは二百数十名を送り込んでいるのでございますが、今年もその程度人間であれば、本社には中央就職あっせん機構というものがございまして、山には現地にその支部を設けまして、何とか関係会社を通して、あるいはその他の会社を通して就職のあっせんに努力したい。一応千二百名はそういう形で何とか私の方に関する限りは安定をさせたいというような意図を現在持っているわけでございます。ちょうどこの三月は小学校の学期のかわり目でもありますので、なるべく早くこの問題を解決して、さっそく実践に移したいという気持を持っております。なお去年、先ほど申し上げました富士通信機、それから横浜護謨その他の会社に送り込んだ者は、非常に作業成績もよくて、いわゆるエネルギー革命が始まりましてから相当数の人間関係会社にあっせんしておりますけれども、今のところ非常に各会社に喜ばれておりまして、古河化学のごときは、古河化学の基幹工員として会社の方は非常に大事にしてやっておられます。大体そういうことで千二百名は、経済界も悪くなったので始末はできないが、第二会社に七百名吸収して、残りの者を大体三百名見当、あるいはそれより出るかもしれませんけれども、その程度の数なら何とか会社の力であっせんに努力するという考えでございますから、三井さんのことはちょっとわかりかねますが、古河に関する限りは、以上お答申し上げた通りであります。
  25. 滝井義高

    ○滝井委員 私、田川の商工会議所で調べた統計が毎月くるのですが、今、大峰の問題ですから、田川だけに区切ってもう少し質問したいと思うのです。三十五年の出炭平均が三十一万五千四百二十三トン、三十六年の平均は三十二万二千三十五トンです。従って三十五年より三十六年の方が出炭がずっとふえておるわけです。その場合の労務者は一体どうなったかというと、三十五年の平均は二万百三人なんです。ところが三十六年の平均は一万六千八百五十五人です。そこで三十六年の十二月現在をとってみますと、一万五千三十三人と、五千人減ったわけです。そうして職員は三十五年平均が二千四百七十五人で、三十六年平均が二千百四十七人。三十六年十二月になると二千八十人になって、約四百人職員が減っております。その場合に、一人当たり出炭は、三十五年平均十五・六九トンが三十六年平均は十八・六四トン、三十六年十二月になると二十一・二七トンと、約五トン程度三十五年に比べて増加してきているわけです。ところが世にも不思議なことには、五千人も減ったので炭坑の数は減るかと思ったら、三十五年の四十四の炭坑数が三十六年では四十六で、二つふえたのです。そして今度は、労務者の賃金の実態、それから市民税の支払いの状況を調べてみますと、がったり落ちてきているわけです。そうして大峰のある川崎町も、それから三井のある田川市も破産宣言をした。なぜ破産宣言をするかというと、生活保護者と失対労務者がウナギ登りに上がってきたわけです。全国平均生活保護の対象者は千人について十七人ぐらい。ところがこの大峰のある田川郡あるいは三井のある田川市というのは、千人について八十人から多いところは百十人になってきたわけです。従って、市はその二割の金を生活保護者には持たなければならぬ。八割は国です。郡の方は県が二割持って国が八割持ちますから、町村は持たないわけですが、こういう形になってきて、その町なり市なりは破産宣言をしなければならぬ、全く他の事業ができない、こういう重大な影響を自治体に及ぼしてきた。これは第二会社という問題がこれに関連してくるわけです。第二会社となると、今まで古河さんのお持ちになっていたよりか資力もずっと弱くなる、しかも固定資産税その他においてもぐっと弱化してくることはもちろんですが、労務者の賃金も下がってくる。なるほど峰地の例で八百二十人の鉱員というものは確実にうまくそれぞれ就職その他はあっせんした、今度は五百人を首にしても、三百人だけ何とかしたらあと片づくのだ、こうおっしゃるけれども、その行った人が一体そのまま定着しているかどうかというと、また田川に相当帰ってきている。それはさいぜん東海林君から陳述があったように、七万人首を切ったけれども四万人はまたもとの炭鉱に帰ってきているのだということがそれを示しているわけです。そこで古河さんとしては、あそこの炭鉱をやるんだ、それは第二会社だ、こういう御意思があるのですが、なぜ一体第二会社にしなければならぬのか。あそこで炭鉱をやれるという可能性があるならば、今まで通りの古河の形でやってもいいじゃないか。古河ならば、賃金引き下げができない、あるいは病院その他の厚生施設もそう体裁の悪いものは置かれぬ、昔ののれんにかかわるというような気持があってそういうことをされるのか、第二会社になぜ一体しなければならぬのか、ここが私たちわからぬのです。それともう一つは、その第二会社から出た石炭というものは、第二会社に自由に販売さして古河鉱業が関知しないものであるかどうかというと、古河鉱業は第二会社の得た石炭の販売権だけおとりになるわけでしょう。だからこういうことは何か資本主義のからくりという感じを労務者にも与え、われわれも受けるのです。だから、一体なぜ第二会社にやらなければならぬのか、第二会社になったときにその石炭の販売権は依然として古河鉱業が握るのじゃないか、握られないのか、こういう点を一つ御説明願いたい。
  26. 大滝四士夫

    大滝参考人 今のお尋ねの件は、ちょうど私の隣におられる東海林さんと同じようなお話でございますが、先ほども申し上げましたように、現在の大峰炭鉱経営状態は、三十六年の九月決算でトン当たりで約二千四百円の赤字です。それから十月以降十二月までの三カ月のわかっているだけの平均で二千百二十二円の赤字です。こういう赤字ではどうしてもやっていけないので、能率倍増とか何かやったらどうか。そういうことも、現状のままでは設備能力にも限界があり、自然条件にも制約があるのでなかなかできないのだ。それなら一体成り立つようにするには、人員も八百程度に落としてやった場合にどういう姿になるかということも先ほど触れましたが、これはやはりわれわれいろいろ試算しても千五百円見当赤字になるわけです。総額では半期で二億円ちょっとという赤字が出るのでございますが、前期は大峰炭鉱だけで三億円の赤字で、若干は改善されるにしても、今までの累積赤字もあって、私企業としてはもうどうしてもやっていけない、限界に達しているのだ。そこで第二会社に切りかえるということは、古河鉱業の直轄でなくなるので、先ほども申し上げましたように、本社費の負担もなくなれば、資金利子の負担もないということで、また職員数も減らし、機構簡素化して気分を一新してやれば、大体二万三千トンの石炭を毎月掘って、人間は七百名ですから二万三千百トンというと三十三トンになるわけです。現在十八、九トンのものが三十三トンになると、大体ペイ・ラインは三十三トンの能率坑内夫に約二万円の賃金を払える。私の方で峰地がなくなったあとに西部炭鉱というのができているわけなんですが、それが当初は在籍一人当たり能率二十八トンで目論見書を作ってやったのですが、現在は四十トン見当能率を上げて、収支とんとんの業績を上げております。もちろん第二会社につきましては、先ほど来いろいろお話もありましたが、第二会社によって利益を上げるということは、これは毛頭考えておりません。収支とんとんで七百名見当従業員を保持してやってもらえばいい。そうして西部炭鉱ように四十トンくらいの能率を上げることができれば、今の坑内夫の二万円という月収能率に応じて増額もできる。大体大手八社の賃金は二万七、八千円の月収でございます。そういうような状態でありますが、能率を上げることによって、その線にもぐんと近づくこともできるということで、結局今までのくされ縁というものを断ち切って、古河鉱業のもろもろの負担というものから解放して、労使が相携えてやれば、第二会社は成り立って、当面失業問題も最小限度にとめ得るというような観点に立って、第二会社提案をしたわけなんで、先ほど来東海林さんからいろいろ申されておりますけれども、悪らつな気持を持って第二会社に切りかえてもうけてやるんだというようなことで提案したのじゃない。生きるためにはこれしかないという考えに立ってやっておることでありますので、以上、御了承をいただきたいと思います。
  27. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、その第二会社は今まで大峰のお使いになっておった坑口をお使いになるわけでございますね。これは御承知の通り、そう簡単に政府が、こんなに政治問題になるなら許可しないのです。われわれも政府が簡単にこれを許可することは了承できかねる。先日石炭局長なり保安局長なりとの質疑応答を通じて、これを許可するかどうかということは、合理化の新しい立法措置で保安の関係で、許可制になっておるわけです。そうしますと、まずその会社の経理能力、技術能力、それから出炭能力というものを参考にしていくわけです。その場合には賃金がもとの賃金より不当に下がってくる。今の御説明では大手が二万七、八千円程度だ、三十三トン出したら二万円程度だということになると、これは不当な賃金の切り下げになる。そういうものを、こういう決議が国会で出て、そうして今や合理化なり近代化の資金を政府が無利子のものを貸すという段階で、相当の犠牲を政府が国民の税金で払おうとするときに、企業だけの一方的な意向で、しかも、その石炭はお宅の方に持っていかなければともかくとして、自分のところに持っていくということは御答弁いただいておりませんが、おそらく第二会社はそうだろうと思うのです。そうなりますと、そう問屋がおろさなくなる。こういう問題が私はあると思うのです。それに対する技術能力、経理能力、あるいは不当に労働者賃金を切り下げないということが、私は能率を上げるということの裏にはあると思うのですが、こういうものに対する古河鉱業としての考え方——簡単に第二会社を作って、坑口の許可がおりるという見通しを持っておやりになったのかどうか。これは政府は簡単には許可するとはわれわれに答弁しておらぬのです。
  28. 大滝四士夫

    大滝参考人 今、賃金の不当な切り下げというようなお話がございましたが、賃金を不当に下げると申しましても、これは現在大峰炭鉱におきまして、正常なノルマを提供しているものとは、なかなか労資関係の力のバランスにおいて正しいものであるということは、一がいには言えないと思うのでございます。当社の場合は、昭和三十四年の十二月二十七日に合理化提案をして、三十五年五月八日に相当の賃金を自主的に引き下げる案を提案して、妥結を見たのでありますが、やはり大峰組合は、これは今でも強い組合でございまするが、なかなか話し合いがうまくつかないわけなのです。一つは、そういうことからして今日のような悲境をもたらしたとも言えるのでございます。そこでわれわれとしては、先ほども申し上げましたように、経理的には閉山するのが一番いいんだ、しかし、今御指摘があったような失業問題というもの、千二百名をどうするかという問題がからんでくるので、七百名の規模で第二会社で新規まき直しでやりたい。まあその場合の賃金は先ほども申し上げたように、これは利益を大きく生むというためにやるのじゃなくて、経済合理主義の観念に立って、労使共存してやればいいということからして、先ほど申し上げたように三十三トンの能率であれば、これこれの賃金は支払ってペイできるということを申し上げておるので、これは従業員諸君がよく働いて、協力し合って能率を上げれば、賃金は下げなくてもよいし、古河鉱業より上げてもわれわれは差しつかえないと考えている。ところが目論見では今そういうふうな計算しかできませんので、こうだということを申し上げるだけの話であります。  それから坑口問題の話ですが、これはわれわれはこの七百名の従業員を何とかしなければならぬという考え方で認可される前提に立ってこれを進めております。実際そういうふうにならなければ、失業問題はたちまち起きてくるのでございますから、これは、われわれも大いに為政者各位にも何とかしてもらうようにお願いしなければならぬと思います。
  29. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、古河鉱業としては、坑口の許可がおりなければ第二会社はできないわけですね。もう新しく坑口を掘る以外にないわけですから、新しく坑口を掘るということになると、ますます施業案その他の問題が出てきて、合理化法で簡単にはいかないわけです。能率が上がるとか、その他きちんとした計画ができなければいかぬから、今の坑口を使用するよりか新しく坑口をやるということは相当むずかしくなる。そうするとやはり第二会社は、あの坑口を使う以外に炭を掘る方法はない。しかし、第二会社が坑口を使うことが許されないということになれば、もう一つののがれる道は、結局古河でやっていく以外にはない。ところが第二会社の設立、坑口の使用が許可されないとすれば、もう古河鉱業としては閉山だ、こういう方針になると思うのですが、その場合はもう古河では全然やらぬという、そういう割り切り方をされておるのですか。
  30. 大滝四士夫

    大滝参考人 坑口は認可されるという前提に立ってわれわれはものを考えておるということを申し上げたのですが、それもできないし、また方々で反対されてできないのだということになれば、これは直轄のままで経営した場合、三十三トンに能率を上げても、半期に二億の赤字が出るということであれば、会社全体の経理の観点に立っても、これは古河でしょっていくわけにいきませんから、好むと好まないにかかわらず、閉山の運命にあるということを御承知いただきたいと思います。
  31. 有田喜一

    有田委員長 藏内修治君。
  32. 藏内修治

    ○藏内委員 大滝常務さんに一点だけ伺いますが、ただいま滝井委員が数字をあげてお話しになりました通り、三十六年に入りましてからの需給の実勢は非常に伸びておるわけです。これはもう御承知の通りなんです。そこでこの実勢の伸びというものが、はたして合理化の効果が現われてきているものであるか、あるいは増産によって資金コストを下げようとする、その増産の結果であるか、そういう点に基本的な大きな議論が分かれてくるところがあろうと思います。しかし、いずれにいたしましても、そういうような情勢にある際に、古河さんの方は、あの数十年の伝統を持つ山を第二会社に移される。そこで、会社の立ち入った経営ないし経理の内容についてはもちろん私も承知はいたしません。いたしませんが、承るところによりますと、三十四年度以降古河さんにおいては、近代化資金及び開発銀行を通ずる財政融資あたりは、一切これを借りていらっしゃらない、こういうことを聞いております。もしこれが事実であるということでありますと、どうしてお借りにならぬのか、あるいはそれは前の復金以来、また当初の合理化資金というものが資金効果を上げていないのではないか。むしろ古河さんの場合には、これは非常に大きな負担になっておるんじゃないか。もしそれが事実であるとすれば、私は、政府合理化政策自体に再検討を要す問題がひそんでおるんではないかという気がいたします。またもし相当な可採炭量があり、しかも、古河さんとすれば資金手当さえつけば、古河をさらに合理化近代化することによって、開発を今後とも続けることができるということであるのにこれをお使いにならぬということであれば、これはむしろ政府合理化政策に対する不信というか、そういうものが出てきはしないだろうか。そういう点において、私自体もこういう問題について、合理化政策自体万能であり、全く十全の方策であるとは考えられないのでありますが、そういう点について、今後合理化政策を推進する上において、経営者の立場に立って合理化政策ないし近代化政策の何か致命的な欠陥というようなものをお感じになっていらっしゃるかどうか、今私が概括的に申し上げた点について御見解を承りたい。
  33. 大滝四士夫

    大滝参考人 ただいまの点でございますが、私の方の炭鉱は、大峰以外に目尾、下山田、それから常磐に好間、北海道に雨亀とございますが、設備投資をする必要のある山は大体において今までやっております。それからもう一つは、今の山はいずれも非常に古い山でございまして、今の設備を更新するために莫大な企業費を投入しても、それだけの効果が生まれてこないというような観点に立って、そういう金をお借りするとか、そういうことを会社は自粛しているわけなんでございます。そういう見通しでなくて、どこそこにこういういい有利な炭層があって、縦坑をおろすとか、いろいろなことをすればこうなるというような見通しがつけば、ぜひ利用さしていただきたいと考えております。そういうことであります。
  34. 有田喜一

    有田委員長 岡田利春君。
  35. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 大滝さんに二、三点お聞きしますが、先ほど説明を受けた中で、若干資料的な点を承りたいと思います。  それは、現在の大峰の売り上げ手取りの平均は大体どの程度になっているんだろうかという問題が第一点です。  さらに第二点の問題は、先ほど下期の二月までの決算では、大体トン当たり二千百二十二円の赤字である、こう言われておるのですが、トン当たりコストはどういう状態になっておるか、この点についてまずお知らせを願いたい。  つけ加えて鉱害についてはどの程度発生をしておるのか。それがコストにはどういう影響があるのか、あるいはまた未処理の鉱害についてはどういう実情にあるのか。  それから会社の言う第二会社の構想で進めた場合、大体この炭量の推定の仕方は非常に問題があるし、百五十万トンとかいろいろいわれておりますけれども、私は、これは非常にむずかしい問題だと思うのです。ですから、第二会社にした場合のライフというのは当然違ってくるのではないだろうか、こういう感じが実はするのですが、まずこの点についてお伺いしたいと思うわけです。
  36. 大滝四士夫

    大滝参考人 大峰の現在の手取りは三千二百四十円でございます。それからコストは五千百円見当でございます。鉱害はトン当たりで二百八十円見当の負担をしております。鉱命は、会社提案では百五十五万トンという提案をしたのでございますが、それが炭労の調査団が、東海林さんが団長で参りまして、さらにそれよりも五十万トン見当はある。五十万トンというのは二年分あるということで、会社提案は百五十五万トンで五年とすれば、七年はある、こういうようにいわれておりますけれども、今の炭量の問題につきましては、第二会社でやるということであれば、これはさらに精査しなければいかぬ、ないものもあらせて鉱命を延ばすというのが建前であろうと信じます。
  37. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 今までよく炭がなくて閉山に近いとか、そういうことで経営形態を変更する場合に、当然石炭というのは経済的に採炭できればいいわけなんですし、炭はあるわけですね。だから私はそういう意味で、鉱命については、どうも一般にそれぞれ経営者の言われておることは了解できないのです。五年でなくなるという山で十五年もやっておるという実例が枚挙にいとまがないほどあるわけです。今お話を聞きますと、特に問題なのは、賃金については坑内坑外大体一万円程度ダウンする、しかも能率は逆に三十三トンまで引き上げる。賃金基準賃金で三分の一下がって、能率は逆に三三%上昇する。そうすると、それぞれの基準賃金を定める場合に能率基準が変わってくるわけですね。だから私は坑内二万円の賃金というのは三十三トンを基底にして一応予定されておると考えるわけです。そういたしますと、生産と見合って考えていくと、賃金は実質的に三分の一切り下がる。今まで二十一トンですか二十トン程度のものが三十三トンになると、賃金は逆に三分の一下がるということになる。これは生産量に見合う面から考えると、三分の一程度賃金が下がるという結果になると思うのです。ですから、三分の一賃金が下がる、こう簡単にいわれておるけれども、能率を三三%以上も上昇させるということでありますから、これは実質的に約三分の二の賃金が切り下がる。ただ機械的な算術計算ではいかぬ面があるでしょうけれども、まあ見込み見当としてそういう理屈になるのではなかろうか。しかも、これ以上に能率が上がった場合には、当然賃金が上がっていくだろうという見解を述べられておるわけですが、三十三トン以上の能率を上げるということは、一体どういう手段、方法によって上げられるものか、私はやはり八時間拘束を九時間にする、慢性的に十時間労働をする、こういうことが当然とられてくるのではないかと思う。また現在の第二会社、租鉱、中小炭鉱の労働時間の実態は、今私が申し上げた実態にあるわけです。基準外労働によってある程度賃金をカバーしておるというのが、日本全国一般の第二会社あるいは中小あるいは租鉱炭鉱の実情であろうと思うのです。ですから、このよう考えて参りますと、労働条件というのはものすごく低下する。しかも、設備については別に変える考えがないとするならば、どうして二十一トンが三十三トンになるのか、さらに三十三トンに上げる見込みがあるとするならば、それは何によって三十三トン以上の能率が上がるのだろうか、この点についてお聞かせ願いたいと思うわけです。
  38. 大滝四士夫

    大滝参考人 ただいまの点でございますが、先ほども大峰組合というのが——これは強くてもけっこうなわけですけれども、とにかく非常に強い組合であるわけです。東海林さんもここにおられるけれども、炭労でも最右翼くらいの組合でございまして、われわれの見るところでは、労働密度が、現状では、坑内を見ましてもやはり非常に薄い。どこからどこまで行けば歩行手当とか、そういうものがついておったり、当然なくていいものがあったり、そういうものが無数にあるわけです。峰地炭鉱というのもそれと五十歩百歩であったわけですけれども、それが現在は生まれ変わって、最初は二十八トンの目論見書で組んだものが、現在は四十トンに能率が上がっておるということなんで、やはり新規まき直しで気分を一新してやれば、今おっしゃるように労働時間を極端に延ばしたり、そんなことでなくて、四十トン程度の——三十三トンはむろん上がる、また現場の係員も上げられると申しておるので、それをわれわれは信頼して申し上げただけの話であります。
  39. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 第二会社の形態に切りかえた場合、先ほど利子については、古河本社が引き受けるのだから利子がつかなくなる、それから本社費がかからなくなるということで、コストの低減がはかられると言われておるのですが、それでは今までの負債は古河でしょうのか、第二会社がしょっていくのか、しようとするならば、当然利子の問題も出るし、設備の問題も出て参るわけです。第一点としてこの点についての考え方はどうなのか。  第二点の問題は、大体北炭でも租鉱炭鉱あるいは第二会社を作る、その租鉱権の許可の条件として、現在、石炭北炭に納めるというような、たとえば北炭の銘柄で六千円も上がる石炭を、三千円程度で買い上げて北炭銘柄で販売をするという実例があるわけです。これは私の出身のところでもそういう実例がある。そのさやが非常に大きいところと低いところがあるわけです。こういう販売関係については、普通一般のような形態をとられる考え方なのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
  40. 大滝四士夫

    大滝参考人 借入金は古河鉱業の責任において過去に借りたものも返すし、古河鉱業の責任においてこれを始末するわけでございます。従って、先ほど申し上げましたように、資金利子もないわけでございます。  それからもう一つの、出る石炭の販売関係の問題でございますが、これは今のところ古河の販売ルートに乗せて売るということになっておりますが、何しろ膨大な赤字を出す山を、もうけるためでなく、何とか収支とんとんの山に持っていこうということでございまして、古河鉱業がその炭を第二会社から買って不当に利益を得るとか、そういう利益も今のところ出そうもありませし、当社としてはそういうことは毛頭考えておりません。ただ今までの関係もありますので、炭を販売ルートに乗せて売るというだけの話であります。
  41. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういたしますと、販売のルートに乗せることはけっこうだと思うのです。しかも大手の銘柄でいえば、従来の売り上げ手取りは維持できるわけです。ただ問題は、会社が別ですから、古河で売ってやって、手取りの金を第二会社に全部入れるわけには参らぬ。一応古河鉱業が買い上げをする。これは大峰もそうであると思います。おそらくそういう方法をとると思います。その場合、引き取り価格と売り上げ手取りの差は一体どの程度あるのかという問題になってくると思うのです。それが問題になるとすれば、その点を承りたいと思います。  それから大峰は、現在稼行しておるわけですから資産があるわけです。おそらく何億という資産だと思います。十億をこえるかもしれない。見当はつかないけれども、相当の資産だと思います。そうすると、この資産は、そっくり出資という形でいくのか、それとも鉱業権から建物等の一切の物権を、たとえばトン当たり六百円なら六百円で古河で回収する。一応これは貸すから、会社は別に三百万か五百万出資してこれを回収するのか。回収するとすれば一その資本の引き揚げということで、当然トン当りに相当のウエートを持つと思うわけです。この点の関係は、資産はそっくり出資であるという形になるのか、それともそれは古河鉱業として、第二会社から償却としてトン当たり幾らかとるのか、この点はいかがでしょう。
  42. 大滝四士夫

    大滝参考人 必要な固定資産は第二会社に帳簿価格で譲渡する。必要でないものは第二会社の経理内容を悪くするようなことはしない方針です。  それから石炭販売の問題ですが、これは先ほども私率直に、現在の販売手取りは三千二百四十円ということを申し上げたのですが、古河鉱業は第二会社から搾取するような、そういう形は一切とらないでとにかく七百名の従業員をそこに送り込むからには、何とか収支が成り立ってやれればいいという考え方でございますから、その点は誤解のないように御理解いただきたいと思います。
  43. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 実は第二会社の問題で古河さんに来てもらって、古河大峰の問題を取り上げることは非常に気の毒だと思います。これは古河のみならず、全般的にある問題ですから、そういう意味であまり気分を悪くなさらないようにお聞きを願いたいと思います。  そこで局長もおりますから、やりとりで大体第二会社の実態がどういうものであるかおわかりだと思います。すでに作られておる第二会社はどういう状態であるかということも推して知ることができるわけです。さらに租鉱炭鉱はどういう形態に置かれておるかということも、租鉱契約という契約をめぐってどういう状態に置かれおるかということも明らかだと思います。そうすると、われわれが石炭鉱業を長期にわたって安定させて、石炭産業合理化近代化を進めていくという方向と、第二会社を作るという問題、あるいは租鉱炭鉱をふやす問題とは相反するものであるということは明らかだと思います。今、日本の経済構造は二重構造であるから、労働者が安く使えるのだから、人が余っておるからいいということにはならぬと思います。地下産業に働く炭鉱労働者賃金は、全産業でもトップとはいわなくても上位であることは、何人が考えても常識なんです。しかし、失業者が発生するから第二会社を作ってやる、年をとって、やれない人は、そこに滞留しておるから、それで飯が食えるのではないか、こういう恩恵的な面もそれぞれ各社で考えて、第二会社を作ったり租鉱に回すというよう政策がとられておるわけです。ですから、そういう立場に立つと、今日の第二会社政策、租鉱の実態というものは、近代化方向と逆行して安い労働賃金の上に立って生産を維持する。そこにはやはり今まで投資した一このままで行ったらつぶれるというのですから一銭も回収できないのです。第二会社にして一銭も回収しないという会社が第二会社をやるはずがない。やはり今まで投資した資産、やっておれば資産があるはずですからそれを回収する、こういう方向に第二会社というものは設立をされておるわけです。極端に鉱害が多いところは危険分散という意味もあるでしょう。そういう工合に考えてみますと、第二会社租鉱権問題というのは、今日の炭鉱近代化合理化方向から逆行している。安い賃金労働強化によって考えている。労働組合が強い弱いの問題は別です。そういう問題がもしあるとするならば、それは労使で話し合って考えればいい。賃金の水準が不当に高いというのであれば、全国の賃金調査して、水準というのはわかるのですから、そういう中で話し合いをして再建方策を立てるべきだと思うのです。ですからここで一番大事だと思うのは政府の決断です。こういうものをやはり許していくのか。北炭がやる。三井がやる。太平洋がやる。雄別がやる。古河がやる。どこまで行ってもとまらない。そして大峰がやる。そうすると今度また三菱三菱芦別を租鉱に移す。三菱ができれば三井美唄を租鉱に移す。あるいは住友は住友でやる。ところが、住友の場合は九州に炭鉱はないけれども、依然として住友の販売機構というものは相当量の石炭を販売して、しかも従来の住友の銘柄で販売している。こういう流通関係の問題でむしろより一そう非近代化方向をたどっているわけなんです。ですから私はここで最後に大滝さんにもお話を申し上げておきたいのですが、どこかでこれはとめなければならぬ問題なんですね。各社が競争しているものだから、合理化におくれてはならない、みな自分の会社がかわいいのですから、果てしない競争をしている。そうして何とか企業競争の中で自分が生き残るよう努力しておるわけです。ですから、政府から言わせると、石炭会社は苦しい苦しいと言っているけれども何とかやっているではないか、涙をためても歩いているではないか、こう政府は言うのです。だからここであまり極端な石炭政策をとらなくてもそれは企業家の力で合理化をやっている、こういう認識しか政府はないのですね。それを全部詰めて実態をはっきりさしたら、やはり日本石炭産業はこのままでは捨てておけないということになると思うのです。各社が競争して石炭協会は弱い。そういうものについてはっきりした政策が立てられない。労働者を首切っても賃金を下げてもやっていくから何とかやっていけるではないかという安易感を政府も持っている。ですから政策として具体的に立案されてこない。こういう悪循環を繰り返している。そうして行くところまで行ってどうにもならぬときに初めてどうするか、こうなったときにはもう石炭はおそいのですよ。今日やらなければならぬ時期にきておると思うのです。ですからここでだれが一体初めにやるか。石炭経営者は少なくとも大手経営者が集まって石炭協会でやはり代表的な見地で割り切っていく。どうしてもだめな場合はつぶれるかもしれぬ、そういう割り切り方をするのか、それは政府政策としてやるのか、この租鉱の問題や第二会社の問題の解決はこれ以外にない。こういう問題について、大滝さんは特に労働関係のベテランであるし、大手各社の方ともつき合いをしておるわけなのですが、石炭経営者の、単に古河の問題だけでなく、こういう問題についての意向はどうなのか。一方においては政府にいろいろ施策を要求しているのだが、そういう点についてはどうなのです。検討されたことがあるのかどうか。そういう点について局長は一体どういうふうに考えられるか伺いたいと思うのです。
  44. 大滝四士夫

    大滝参考人 当社の場合から申しますと、われわれ今度大峰鉱業所第二会社移管経営提案をいたしましたけれども、われわれとしては情においても、会社規模を縮少して、しかも従業員をそっちの方に移管するあるいは失業者が出るというようなことは好みません。今日まで何とかこういう事態の起こらないようにということで、過去においても合理化提案もしたり、いろいろ話し合って最悪の事態を避けてきたのでございますが、やはり私企業収支とんとん、あるいは少しばかりの赤字であればともかく、半期に三億も赤字が出るということではどうしてもこれはやっていけない。これは好む好まないにかかわらず破滅の運命をしょっているわけなのです。大峰の場合も何度も何度も、去年の夏ごろから考えてこういう形に踏み切ったわけなので、決して好んでこういうことをやっているのじゃないということを岡田先生に御理解をいただきたい、御了承を得たいということが一つ。  それからわれわれ同業各社の人ともしょっちゅう会っているわけですが、どこの会社でもやはりわれわれと同じような気持を持っておるので、たとえば山を締めることあるいは第二会社に移すこと、そういうことを相競っているというようなことは毛頭ございません。冒頭に申し上げました気持で自分の組織は何とかして維持したいという考えが先に立っているのですけれども、やむにやまれずこういうふうになったのだと御理解いただきたいと思います。
  45. 今井博

    ○今井(博)政府委員 第二会社の問題あるいは租鉱権の問題、特に第二会社へ移行の問題は、政府としてはもちろん好ましい形のものだとは考えておりません。現実の会社全体の運営上やむを得ざる措置として、そういうことを御提案になっているものと考えております。従って、政府としましては、原則としてこういうものは好ましくない、従って、そういうことがないようにできるだけ会社の中でかかえていってこれを立て直していくという方向をとるように要請したいと思っております。しかし問題は、そのことによって会社全体が非常なピンチになるとか、会社の命取りになるとかいう場合に、その山を具体的に一体どう処理するかという具体的な処理の問題として、あるいはまたそのかかえておられる労務者の具体的な職場の問題ということから、現実の事態としてそういうものが出てくることは、好ましい現象ではございませんが、またやむを得ない場合場合があるのじゃないか。従って、これを一がいに第二会社はいかぬという形において一切制限するという考え方は、現実の事態に沿わないと思います。ただその現実の事態というものが、たとえばドイツのルール炭田を見ても、大体三割の山が赤字、七割が黒字であるという数字が出ております。この七割で三割の山をかかえておるという現実でございます。日本の場合は、残念ながらその比率がもっと悪い。そこに一つ大きな問題があるのじゃないか。従ってやはりビルド・アップ政策を極力進め、それによって赤字の山ができるだけかかえていかれるような、そういう政策を樹立しなければ、この処理というものは一会社としてはなかなかむずかしいのじゃないか、そういうふうに考えております。ただし現状ではわれわれは、日本スクラップ化がまだ非常におくれておるということを強く指摘されておりまして、非能率炭鉱スクラップ化というものを具体的に処理する場合の処理の仕方の問題として、やはりいろいろなケースがございましょうから、ケース・バイ・ケースによってあまりフリクションの起こらないように、犠牲が多くないように処置していきたいと考えております。
  46. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 時間がありませんから一応私は政府に要請しておきますが、ケース・バイ・ケースというけれども、これは私は問題があると思うのです。少なくとも坑口の開設認可基準は、審議会などでもいろいろ指摘をされて基準を改定したわけですね。しかも坑口を開設するのは十年間、鉱業法では五年間しか租鉱できないのですが、租鉱の場合も十年間の炭量がなければならぬ、こういうことで坑口の開設認可基準が改正されているのです。従って第二会社の場合も、ある程度の条件をきちっと満たさなければ、坑口開設を認めるべきではないと思う。だから坑口があるとしても、これは新会社がやるのですから、坑口開設許可基準で押えることができるわけです。私は、それを全部押えてしまうということになれば、租鉱の関係があって今の場合問題かもしれぬけれども、柱を立て条件を立てて、そういう基準に満たない場合には許可しないという態度がなければ、そういう合理化政策を進めていく政府としては無責任だと思うのです。ですから第二会社の場合も租鉱権の場合も坑口開設許可基準の中で、特に第二会社の場合には単なるケース・バイ・ケースで政治的に考えていくのではなくて、ある程度基準、柱というものをやはり立てるべきだと思うのです。この点御検討願いたいということです。  それから第二会社がすでに発生しておるわけですから、この実態は一体どうなっておるのか。労働時間当たりの生産数はどうなのか、福利厚生はどうなっておるのか、一体どういう変化を遂げておるのか、その災害率はどうなっておるか、こういう実態把握をはっきりしておく必要があると私は思うのです。その点について、特に第二会社関係についてのそういう資料を出してもらって、その上にそういう基準というか、ある程度の目安というものを明確に政府の方針としてやはり打ち立てられるということが今日最も大事だと思う。これからますますふえてくるという傾向にあるのですから、この点は強く要望しておきます。なお、一般論についてはいずれまた委員会でやれますから、その点強く要望して終わります。
  47. 有田喜一

  48. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は当委員会において第二会社問題あるいは租鉱権問題を取り上げることになっております。石炭協会の佐久さんを呼んで一般的な話を聞こうと思っておったわけですが、大滝常務が見えたわけで、古河の特定の問題について一般的な話を聞くのはわれわれの本旨に反しますけれども、経営者の一人としてお答え願いたいと思う。  各国の合理化の姿を見ると、ドイツにおける第一次大戦後の合理化は、切羽の集中、機械化の合理化ですね。第二次大戦後のイギリス並びにフランスの合理化方式というのは、鉱区統合の合理化適正規模炭鉱の造成の合理化であった。ところが今日の日本合理化の姿は、むしろ需細化の合理化、分断の合理化である。世界の石炭合理化の例からいうと、全く異質なものですね。ここに問題の所在が回避をされる形になってきておるのじゃないか、かよう考えるわけです。この状態にいきますと、幾ら経営者が石炭の危機を叫んでも問題が表に出てこない。それはかなり出てきておりますけれども、問題は回避から回避という状態にいくし、ほんとうの炭鉱の再建ということはできないんじゃないか、かよう考える。今お話を聞きますと、本社費は今度第二会社では要らなくなる。金利も古河鉱業全体で見るから第二会社は要らなくなる、こういうことになりますと、結局古河鉱業がそれだけ肩がわりできるのならば、現在でも古河鉱業が経理の状態を見られて、何も大峰に負担金を出さなくてもいいわけですし、そういう計算をされなくてもいいわけですから、私は現在でもできると思うのです。ですから問題は、どうも今までの組合の行き方に不満があるから、その考え方を変更してもらいたいというのが一つ、賃金がどうも高いから今までよりも安く使おうというこの二つしかないのですよ。ですからこの考え方は、どうも私は納得できないのですが、経営者全般としてどういうふうにお考えですか。これをお聞かせ願いたい。
  49. 大滝四士夫

    大滝参考人 古河直轄経営をやっておる限りにおきましては、古河にはいろいろな事業所があるのでございますから、大峰だけに特に免除を与えるということは、今の形ではできかねる。それで今多賀谷先生が労働組合が云々というような話もされましたけれども、そういう問題も合理化交渉を去年の八月三十一日からやって、なかなか円満な妥結も見ない。こっちの方でこう言えば、向こうはこう言うというので、なかなか決着もつかない。また、先ほども冒頭に申し上げましたが、またそれをやったからといって、それだけの問題では山再建のきめ手にもならぬということも申し上げ、そうしてよしんば八月三十一日に提案したものを全部組合に聞いてもらっても、毎日トン当たり赤字が千五百円程度のものが出る、こういうことも申し上げておるので、やはりここは新規まき直しで、そういうもののいろいろな負担からも解放されてやれば、必ず能率も上がって立ち直れる、こういうことなんで、先ほどから岡田先生からも第二会社がこれからどんどんできる趨勢にあるというようなこともおっしゃられましたけれども、私どもはそうは考えておりません。山が新規まき直しで、心機一転でいろいろなことを新しく企画し、実践することによって生まれ変わることがきる。また、そういうことによって、当初予定された労働条件がさらによくなるのだということであれば、それは新しい山の誕生でございます。これはむしろ祝福されてしかるべしだ、私はそういうふうに思っておるのであります。
  50. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、この第二会社あるいは租鉱権設定の行き方というものは、これは日本資本主義の一番恥ずかしいところを利用しておる行き方だと思うのです。これは資本主義の合理性の追求の行き方にはまさに逆行しておるわけです。どう考えてもそう考えざるを得ない。そこで、先ほどからお話を聞いてみると、古河さんの方ではつぶしたいのだ、しかし、そこにおる労働者の将来の再就職の問題を考えてやらざるを得なくなった、こういうお話ですから、それを是とするならば、これは一企業でやるべきでなくて、これはまさに失対事業だ。失対事業なら失対事業の方で、あなたの方でほおり出されるのならば、これは今の一般の失対事業というようなものの観念を全然改めて、政府がその雇用が十分でないならば、これは何らかの方法で——あるいは政府は失対事業で炭鉱をやるかもしれない。この際そういうふうにはっきりさせた方がいいのじゃないか。そうすると日本炭鉱というものは、このままでいくと解決しませんよ。そうして実際には、炭鉱数は減っていない、人間だけ減っておる、出炭も減っていない、こういう状態でしょう。そうすると、これはこのままで推移するならば、結局責任の転嫁々々と行なわれて、そうしてあなたの方は鉱害は見られるかもしれないけれども、あなたのよう会社だけではないので、鉱害を鉱業権の譲渡と一緒にずっと転嫁をしていく、そういう状態になって、荒廃な国土を現出させるということになる。ですから、これはやはり抜本的なものの考え方をしていただかないと、問題は企業の一時的なしのぎでは解決できないのじゃないか。そこで一つ石炭協会としてこういう問題について十分検討をしてもらいたいと思う。本日は、政府から答弁をいただかなくてもけっこうですが、政府の方もやはり石炭白書でも出して、今の日本炭鉱の実態というものを明らかにして、そうして問題の所在、どういうよう合理化の推移が行なわれておるかということをはっきりしなければ、幾ら局長がさか立ちをして、大蔵省に行ったって、これでは予算はとれませんよ。ですから、やはり経営者並びに政府、さらに組合もそういう質料を出して問題をはっきり見詰める必要がある。そうして、雇用問題で行き詰まったというならば、これは国の政策として何らか考える方法があるのではないか。とにかく低賃金政策というのは池田内閣の政策に違反しているのですからね。そういう意味で、やっぱり検討する必要があると思う。答弁はけっこうですから、私の意見を開陳して終わりたいと思います。
  51. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 関連して。さっきから大峰経営の問題について第二会社が相当議論されていたのですが、だんだん伺っておりまして、結局、経営のまずさか、あるいは炭価の問題か、それと労働組合との協力態勢の問題、この三つが大体言えるんじゃなかろうかと思うのです。そこで経営者の方では、この三つの問題について、どういうようにしたら古河自身が経営してやっていけるのか、しかしてこの三つの問題の解決は今までの経営者の力ではできないのだ、だからやむを得ないのだというお考えか、あるいは三つの問題について、たとえば国会なり政府なりあるいは金融機関なりからこういう協力を得られれば、古河経営自体としてやっていけるのだ、そういう新たな解決の構想というか、その反省というか、そういう点について、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  52. 大滝四士夫

    大滝参考人 今の伊藤先生のお尋ねの件でございますが、確かに大峰の問題はわれわれ経営者の経営のまずさもあったと思います。先ほど炭労の東海林さんからも指摘されましたが、相当の企業費を使って縦坑も掘ったりしましたが、事、志と違ってうまくいかないというようなこともあり、また組合との話し合いの面においても欠くるところがあったと、われわれも反省しております。それが一つ。  それから炭価の値下がり——先ほども手取りのことを率直に申し述べましたが、大峰は元来が原料炭山でございまして、かつては筑豊では一、二を争うくらいの優秀な炭鉱であったわけであります。ところが、田川三尺層がなくなりまして原料炭は今後望み薄だというようなことからして、やはり何から何まで非常に大きな組織でやっておったものが、原料炭がなくなって手取り炭価ががた落ちした。そういうようなことで会社の経理状態が急激に悪化した。またかたがた炭価の千二百円下げの公約に従って年々下げておるわけなんであります。そういうようなことも大いに影響しているのですが、原料炭がなくなった今日においては、これは労務費だけでも十月から十二月までの三カ月平均で二千八百九十一円の労務費支弁になっているのですが、とてもやっていけない。それから組合も、原料炭が出ているころに安易な気持になれておったことは確かなんで、やはり殿様暮らしから一ぺんに切り詰めた生活もできにくいというようなこともあって、この三つともすべてがうまくいかない。炭量も炭労の御調査によれば七年間見当あるということでございますので、生まれ変わった気持で、経営者も残る七百名の従業員諸君も心機一転してやれば、大峰は必ずいい炭鉱になって、第二会社イコール労働条件引き下げということにはならないでいけるのじゃないか、こういうような期待感もわれわれは持っておるので、その点御了解願います。
  53. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 炭価問題あるいはまた金融問題については、国会側の私らもしくは政府側で考えなければならぬ点であります。炭価問題の点については、私どもも政府側と相当論議をしている点でありますが、そこで、他の今申し上げた二点について、先ほどあなたから伺っておりますと、古河がやれば在籍一人当たり十八トン、第二会社にやらせれば三十三トンというよう能率が上がるが、しかし労働組合としては、第二会社にやらせることについては労働諸条件の低下という問題がある、不安がある。能率が上がって条件の低下は納得できないという問題がある。そういう点から、本鉱でやればこの十八トンを三十三トンにするということについてこういう計画が立てられるが、これに応じられぬということになると、やはりあなたがおっしゃった第二会社かしからずんば閉山かというそこまで深刻にお考えになるなら、第二会社でやれば三十三トンになるものなら、本鉱でもそれがやれないことはなかろうという気もするのですが、そういう点、新たな再建方針というものについて、労働組合側と十分話し合いをざっくばらんにされたことがあるかどうか。また、労働組合として会社側で示したことについてどういうよう考えであったかどうか。そういう点についてちょっとお聞かせを願いたい。
  54. 大滝四士夫

    大滝参考人 今の問題につきましては、去年の秋の合理化交渉の過程におきまして、このままでは破滅だ、従って、大峰炭鉱を存続させるためにも、何とか対策を講じなければいかぬというようなことでいろいろ話し合いましたが、結局、そういう話し合いが実を結ぶような期待は持てなかったということをこの際率直に申し上げておきます。  それから、炭鉱において百円の賃上げをするといろいろな法定福利費、退職手当の引当金、そういうものも全部含めまして、これは職員もそれに順応した賃上げもするわけですが、これは能率によっても違いますけれども、大体トン当たり二十五円の負担になります。従って、千円引き上げればトン当たり二百五十円。去年は炭労との交渉で千三百五十円の賃上げをしたのですが、これは非常に大きく会社経営に響いております。それだけ能率が上がって、それを生み出せるような原資が出てくればいいのですけれども、出てこないと、これはえらいことになるわけです。炭労さんも、言うことを聞かなければストライキだと言われますが、当社の場合は、一日一斉ストをやれば、全社全山でやれば、約一千万のストライキの損失になるわけであります。そういうようなことと見合って、いつも妥協をするのですけれども、要は、やはりここではどうしても大炭労に相当自己反省をしてもらって、いろいろ考えてもらわないといかぬということが一つ、それからもう一つ、石炭鉱業におきましては、標準作業量が私どもの考えでは適正ではない。これもやはり遂行率が一七〇とか一八〇とか二〇〇とかあるのですけれども、こういうものもやはり適正化して、そうして労使が仲よく共存できるように炭労さんも考えていただき、われわれもさらに一歩踏み込んで、そういうことも考えて、これから炭鉱の再建をはかっていきたい、こういうふうに考えております。これもつけ加えさせていただきます。
  55. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 第二会社になったとしても、結局現在従事されておる従業員の人たち、それからその組織は同じくやはり炭労であろう、こう思うのですが、そうなりますと、今あなたがおっしゃったように、なかなか解決のできなかった問題が、第二会社になったら、十八トンが三十三トンになれるというような生産増加と、それから今後の第二会社とその労働組合の組織が円満にいき得るかどうか、現在うまくいかないのが第二会社になったらうまくいき得るかどうか。すでに十八トンが三十三トンになるのですから、それであらゆる条件を低下しない、それは能率が上がるから低下しないということになりましょうが、しかし一面、非常に労働強化の問題とか、いろいろな問題が出てくると思いますが、古河と今の労働組合となかなかおり合いがつかないから、会社は一方的に第二会社経営を回され、その第二会社が現在の労働組合との間において、今あなたの方で考えておられるようにうまく妥結ができるかどうかということについて、大体自信をお持ちですか。その点もう一ぺん最後に一つ。
  56. 大滝四士夫

    大滝参考人 私のところの石炭労働組合古河炭鉱労働組合としてあるわけでございますが、大体労使の話し合いは、ここに東海林さんもおられますけれども、割合円満でいい方でございます。けんか腰じゃないのでございます。ただ炭労の敷いた路線だけは非常に忠実に守らなければというような非常に義理がたい組合でございます。それで伊藤先生が、あなたはうまくいくのか、三十三トンなんてできるのか、こういうようなお話でございますけれども、大峰鉱業所に、冒頭に申し上げましたが、大峰炭鉱峰地炭鉱と二つありまして、片方の峰地炭鉱の方は去年の十一月十二日に閉山式をやって、そうして現在は西部炭鉱ということで新しく生まれ変わっております。そこの従業員は、率直に申し上げて、いまだに組合は作っておりません。これは炭労の東海林さんの方に入りたいのか、伊藤先生の方へ行きたいのか、どうだろうかよくわからないのでございますけれども、これは組合の内部干渉になりますので、私どもは何とも申し上げかねるのでございまして、これは東海林さんが引っぱりたければ新しい大峰は引っぱっていってもけっこうですし、いずれでもいいのですが、何も組合をどうのこうの申し上げるのじゃなくて、ただ、経済合理主義の観念に徹して労使共存したいというのがわれわれの信条ですから、これを理解してもらえばいいわけでございます。現在峰地炭鉱の後身である西部炭鉱は四十トンの能率を上げて、今収支つぐなうようになって、労使の仲は非常によくて、労働強化労働強化とさっきから言われますけれども、今までが働かなかったので、正常な労働をやることによって安定してきたということをこの際申し上げて回答にいたします。
  57. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 僕は質問は簡単にやったわけですけれども、大滝さんのよう日本炭鉱界のベテランが、労働組合に対する認識がそういうことでは私は非常に困ると思うので一言質問したい。それは、各国の炭鉱労働組合の歴史を見ますると、国有になる前のイギリスの姿、フランスの公社になる前の姿、こういう状態を見ると、炭鉱の争議というのは非常にひんぱんにやられておるわけです。これは私は経済的な必然性があると思うのです。単に意識が強いとか、組合の行き方がそうだという以外に経済的な必然性があると思う。なぜかというと、それはフランスは六六%くらいのコストに占める労務費の割合がある。それからアメリカのような高能率のところでもやはり六〇%くらいです。日本労務費コストに占める割合は高い高いというけれども、西ドイツと同じでやはり六〇%くらいでしょう。ですから経営者の方から言うと、少し労務費コストを下げるとかなり大きな利潤が上がるわけです。だから今あなたの方も、賃金を千円上げればコストトン当たり二百五十円違うのだ、こうおっしゃったが、そういうものの考え方がある。そこで労働政策というものについてはきわめて関心が高いし、最も優秀な職員をそこにつけておる。ですからそういう考え方からいくと、また組合の方は相当の力で抵抗しなければ、現在のいわゆる物価上昇に伴う賃金の維持ができない、こういうところに労働争議の多い原因があるのですよ。ですから結局英国もついに国有にした、フランスも公社にしたというところにはやはりそういう必然性があるわけです。ですからこの問題は、単に労働組合の意識の問題であるとか、そうして炭労がどうだとかいう問題以前の問題がある。これは各国の炭鉱の争議を見ればわかる。最も激しい。それはそういう必然性があるからですよ。ですからその点をどういうふうにお考えになるのか。どうも理解が少なくて、ただ炭労が争議をするから、炭労が争議をするからというような話ですが、やはりそういう必然性を持っている。これは悲しいできごとですが、そういう必然性がある。それがためにはやはりそれに対処する方法が制度的にも必要ではないか、私たちはこう考えるわけですが、これを一言お聞かせ願いたい。
  58. 大滝四士夫

    大滝参考人 私は先ほどから炭労がどうだろうとかこうだろうとかいう悪口を言っている覚えは毛頭ございません。むしろ非常に強大な組合で、敬意を払っているのでございまして、ここに東海林さんもおられますし、決してそういうことはないのです。ただ、日本の石炭鉱業は、山をつぶさないようにするには、やはり炭労さんも経済合理主義の観念でもって賃金問題を争う。土俵からはみ出して争ってしまったのでは、やはりいろいな悲劇が起こるので、そういうことのないように、また、先ほども当社の石炭部門が、昭和二十七年以来今日まで労使合わせて六十億くらいストライキの損失を受けておるというようなことからしても、私どもとしては、とにかく自分でものわかりの悪いことを言って、自分ののどにあいくちを突きつけて自滅するようなことはしたくないつもりであります。そういうことをまずわれわれ自身が反省しておるの余り耳ざわりの言葉もあったと思うのでございますが、あしからず御了承願いたいと思います。
  59. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 関連して。先ほど答弁を聞いておりまして、どうも若干考え方の問題があると私は思うのです。ここには労働省も来ておるのですが、炭鉱労働者というものは、坑内で飯を食べるときには休まなければいかぬわけです。しかも坑内労働は二時間以上時間外をやってはならぬわけです。それが慢性的に、十時間以上も働くことがあたりまえだ。飯を食うときには五分か十分で坑内で飯を食って、休まずに働くのがあたりまえであって、それをやらぬ者は働かぬ、ここに問題があるのですね。中小炭鉱は苦しいから、これはやむを得ず、結局正当な自分の権利を行使できないという実態に置かれておるのです。決して正常な状態ではないのですね。こういうことは政府の方でも十分わかっておることだと思うのですよ。ですから、働く、働かぬという問題になると、私は非常に大きな問題が出てくると思うのです。それと、経営規模賃金形態を見ても、大手中小は違うわけです。出来高払いで、もう一トン出したら幾らとわかるようなそういう採掘規模の場合と、ロング・ウォールのような場合の規模とは違ってくるわけですね。それは賃金の形態にも私は、問題があると思うのです。また、規模が大きくなればそれだけ維持の構造も非常に多くなるわけですから、間接人員も非常に多く必要とする。排水維持には人員を必要とする。小さくやると維持構造全体縮小するわけなんですから、間接人員が減って自動的に能率が上がる。ですから、そういう規模とか条件を全然比較しないでやるところに問題があるし、そのことを放置しておるから中小炭鉱が生き残っていくのですよ。今の政府政策では、この労働者の権利を完全に行使さしたら、ほとんどの中小炭鉱は実際はつぶれてしまいますよ。ですから、石炭産業の安定を考えた場合は、そういうことを残しておいては、これはやはり不安定なんです。アブノーマルな状態で進んでおるわけなんです。ドイツだって、やはり労働時間は漸次短くなってきていますし、坑内温度二十七度以上は、労働時間も土曜日は半分でいいわけです。拘束時間は七時間半で規制されている。地下労働者なるがゆえに、そういう特定の、国際的に見てもそういうものが保障されているのですから、むしろこの権利が正しく行使をされていく上に石炭産業経営が安定をするというのか私はほんとうだと思うのですね。客観的な条件がそろわないから自分の企業でやらなければならぬ。そうすると、基準法も何もかもそう考えていられない。だから飯をかみかみ働くのがよく働く。僕はこの感覚はやはり納得できないのですね。そういう点の認識の違いが、私どもと、それから現実に企業経営をしておる人の立場の相違があると思うのですよ。労働省なんか最近どうなんですか、適確にやっておりますか。炭鉱での基準法違反について調べたことがありますか。あったらちょっとお知らせ願いたいと思います。
  60. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 基準法に基づきます監督実施につきましては、千数百の事業場に対しまして、大体年一同程度の監督を実施いたしておりまして、先ほどおっしゃいました労働時間あるいは賃金の不遅払い、それから健康診断、こういう面について相当多く違反をいたしております。
  61. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 どうですか、労働基準法からいって中小炭鉱労働者の時間外は。そういうことについてあなた方の方はどう処置されておりますか。そういう統計的なことはぴちっとやっておりますか。大手でもずいぶん問題があるでしょう。違反を指摘されているでしょう。こういう統計の実績というものはありますか。
  62. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 最近の情勢からいたしまして、昨年の暮れから現在まで、特にこの面についての監督を重点的に実施しているところでございますけれども、中小企業炭鉱については、特に賃金の不遅払い、それから労働時間について、大企業よりも違反の件数が多くなっているという実情でございます。
  63. 有田喜一

    有田委員長 これにて、第二会社などの一般問題についての質疑は終了いたしました。  大滝東海林参考人には、御多用中にもかかわりませず、しかもお食事の休憩時間も与えずに、大へん長時間にわたりまして、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次に、大正炭鉱合理化関係の質疑に移ります。質疑の通告がありますので、これを許します。始関伊平君。
  64. 始関伊平

    始関委員 私は、田中さんに、二、三お尋ねをいたします。先ほど、あなたと組合長の福島さんのお二人から、今世間の注目を引いております大正炭鉱問題の今日までの経緯とそれから現状ようなものについて、だいぶ詳しいお話を伺ったのですが、私、お話を伺った限りにおきましては、どうもよくわからぬ、納得できない点がございます。それは、昨年あなたが副社長をおやめになるという意思表示をされましたときに、きょういただきました資料によりますと、職員組合労働組合の双方、それから建設会社とか資材供給会社、それから地元の商工会、いろいろの方面からぜひ留任してくれということを懇請する意思表示があった。ことしの一月何日かに社長におなりになったわけですが、これはもちろん、会社の再建の選手として各方面の期待をになって就任されているのだと思うのです。そうでなく大正炭鉱のお葬式をやるというのならば、また話は別ですが、そうでなく、再建をやろう、こういう立場でおなりになったものと推察いたします。のみならず、福岡銀行とずいぶん御連絡があったというふうに承知をいたしておるのでありますが、そこで、会社の再建でございますが、ずいぶんいろいろの経緯があって、問題がこんがらかって、非常にむずかしい問題だと思います。こういう際には、会社経営者側とそれから組合側と、さらにその背後に銀行がございますから銀行と、そういうもので相談して再建案というものができなければならぬと思うのです。その再建案を出すのは、そういうイニシアチブをとるのが、今では社長さんである田中さんのお立場であり、責任でなければならぬというように一応常識的に考えます。ところが、先ほどから伺っておりますと、そういう再建案というものはお出しにならない。のみならず、組合側の申し入れをきっかけにして——組合側としてはきわめて不満である。そこで、そういったようなことと、再建のために社長におなりになって火中のクリを拾おうということとは、どうもうまく結びつかぬように思うのですが、再建計画を作って交渉に入るといいますか、そういったようなことをやるお考えはないのか、あるとすればいつごろおやりになるのか、その点をちょっとお尋ねしたいと思います。
  65. 田中直正

    田中参考人 ただいまのお話ですけれども、私が正式に就任したのが一月の二十五日です。そうしてスタッフをそろえて再建計画を作るのに、全部会社の中の実態調査をしたわけです。それにやはり一週間や十日くらいかかるわけです。その期間組合は、田中社長反対、合理化反対、首切り反対、賃下げ反対と、再建案を出しもせぬ前から反対々々という線を打ち出したわけです。それから賃金を払えという問題ですが、私、かぜを引いて一週間ほど寝込んでおりましたが、かぜがなおって二日目に、一応組合側幹部と、それから炭労の丸岡委員長と話し合いに入ったわけです。そのときに、炭労としては十月協定を守って絶対に一歩も引かぬという話でございました。その間、会社側の幹部がつるし上げにあう、労働部長はいすを投げられて逆に相当長時間カン詰にあう、そういう中で団交を申し込んで、その団交がはたして円満にいくかいかぬかと私は考えたわけです。団交は一つも拒否しておりません。福岡で団交はやりましょう、それを組合側は現地でやってくれ、こういう意見の違いがあったわけです。それで次から次へつるし上げにあうし、相当長時間幹部はカン詰にあって仕事ができない。闘争の渦中に入ってどうにもこうにもしようがないわけです。それと同時に、会社側は再建案を作るにも、現場に行って調査をすることもできないというような実態が起こったわけです。それで私としては、決して団交の拒否もしていないし、また、再建案は至急に作れとスタッフに命令して作らしておりましたが、反対のための反対をして、絶対にそれ以上は一歩も引かぬということで、やはり再建案を出すにはお互いが話し合いの上でいくということでなければ、ただ再建案を出して、それがまた火に油を注ぐようなことじゃいけない、私はこう思っております。
  66. 始関伊平

    始関委員 先ほど古河大峰の再建の問題についていろいろお話がございましたが、炭労の方は反対しておる。労働組合といたしましては、建前上というか、主義上いろいろな反対をしておる。先ほどお話を伺っておりますと、背に腹はかえられぬといいますか、現場の事態からいえば、現場組合の方がはるかに柔軟性のある態度だというふうに私はお聞きいたしたのですが、そういたしますと、ただいまのお話は、組合の方が再建案について話し合いをしよう、そう言い、またそれにふさわしい雰囲気になれば、社長としては当然再建問題を取り上げて、いろいろ団交をやられる、こういうお考えでございますか。
  67. 田中直正

    田中参考人 先ほどのお話のように、私は大正鉱業の葬式屋として入り込んだのではありません。どこまでも再建をしよう、また最悪の場合、破産をすれば一番の被害者は働いておる組合員とその家族でございます。これは、退職金を含めて十億からの債権が会社に対してあるわけです。これが一番の被害者です。それからそれに並んで、三百社の関係があるわけです。一大正鉱業の問題だけじゃないと私は思っております。これは一つの大きな社会問題だと思う。私はつぶすつもりはございませんし、また、つぶすつもりなら初めから入ってきません。しかしながら、ここに写真があるように、こういう第三者の金融機関に激しいデモをかけて金融ができましょうかということが一つ。これは一応参考委員長に提出しますが、そういう実態の中で再建案を出して、はたして話し合いに入れるか。それからまた現場で相当長時間、十時間も二十時間も重役並びに幹部がつるし上げにあって、ぎゅうぎゅうやられて、もうしまいには、私は、もうこれで会うな、話し合いの余地がないじゃないかという事態、先ほどお尋ねのように紳士的に、第三者の自宅に電話をかけたり、銀行にデモをかけぬで——ストライキは憲法で許されたことですから、堂々とやってかまわぬと思います。また、やるべきだと思います。正常なストライキをやって話し合いに入るなら何をか言わんや、話し合いに入ります。また、再建案を作ってお互いに話し合うつもりです。しかしながら、現在の状態で、銀行にデモをかけ、片っ端から破壊工作をして、反面再建案を作れ、話し合いに入れと言っても、これはできないことだと私は思っております。
  68. 始関伊平

    始関委員 先ほど組合福島さんは、だいぶ詳細に会社批判をおやりになりましたので、私も田中さんの組合批判をお聞きしたいと思ったのですが、ただいま伺った次第でございます。  そこでこの問題につきまして、非常な利害関係者であり、それからまたある意味で再建のかぎを握っておるのが福岡銀行だと思うのでございますが、どうもさっきから経過の御報告を聞いておりますと、非常に徹底したコマーシャル・ベースといいますか、金融資本といいますかの銀行であって、シビアな考え方をしておると思うのでございます。あなたは福岡銀行と御関係が深いと思うのでありますが、ある種の、といいますか、あるところまで妥協した、いろいろな方面にうまい再建案というものができれば、福岡銀行は話し合いに乗ってくる、こういうお見通しですか、その点いかがですか。
  69. 田中直正

    田中参考人 ただいま福岡銀行の話が出ましたが、福岡銀行には昭和二十六年以来大正鉱業の借入金は減っておりません。私が出馬するときには、単名が約七億でございました。それから商手の割引が六億でございました。こういうのが私が副社長に入り込むときの借入金の現状でございました。この商手の半分は融通手形でございまして、全然からの手形を福岡銀行に渡してしまっておる。それで私は、当時遅配、欠配もありました、それから退職金の未払いもありました、それを福岡銀行から二億借りて——、その二億借りるときに、実は開発銀行から三億の融資がきまるようになっておったわけです。済まぬがつなぎを貸してくれぬか、開銀から出たら返済するからということで、前の経営者が金を出してもらっております。開銀から出るまでのつなぎということで二億金を借りたわけです。その金を一億七千万円返済した。これはつなぎ融資ですから返済するのは当然の話でございまして、しからば現在では幾ら借りておるかということになると、単名が八億八千万円、商手が三億あります。商手は減ったじゃないかということになりますが、実は石炭が出ておりませんから、炭が出てないものは割れませんものですから。それから私が行くときに、融通手形は一切たな上げをしました。そういう関係で、現在は私が出るときより一億八千万逆に借金がふえております。そういう状態であります。しからば、福岡銀行が現在の状態で、今後労使一体になれば金を貸してくれるかということになれば、私は出馬するときに、福岡銀行にこれ以上借りないということを言っております。また企業というものは、返済の自信がないで借りるものではございません。返済の自信があって初めて金を借りるものです。私はそういう経営理念を持っておりますから、大正鉱業が実際立て直っていく、実際りっぱなものになるという見通しがあれば、福岡銀行以外でも貸すところはあると思います。私の信用において借りられるところもあるのじゃないかと考えております。しかしながら、福岡銀行には最高限度借りております。これは二番抵当でありまして、一番抵当は開銀であります。そういう関係で、大正が立て直っていくという自信が私につき、またそういう計画ができれば、私は何とか金融の道を開くという自信を持っております。
  70. 始関伊平

    始関委員 きょうは相争っておる社長と組合長を参考人にお呼びして、どうも目の前でお互いにやり合うようなふうに持っていったのでは恐縮でございますが、しかしせっかくの機会でもございますし、また私どもも資源の活用その他いろいろな意味から、できるものなら大正鉱業の再建を軌道に乗せたい、力がありませんからモーラル・サポートでありますが、そういう気持を非常に強く持っております。今お話を伺いますと、限度にきておるから、銀行ののみ得る再建案ができれば、今あなたのおっしゃるようなコマーシャル・ベースに乗る、従って借金を返済できるそういう再建案ができれば、福銀の方は今借りておる額が非常に大きいから、ほかからでもお借りすることができるというお見通しで、大へんけっこうだと思います。そこで、今私が申し上げましたような立場からお尋ねをするのでございますが、福島さんいかがでございますか、何かもう少し穏やかに——穏やかにというのは、社長の御発言にまた異論があるかもしれませんが、それをちょっとうまく世間の同情を引きながらおやりになるようなことはできませんですか。
  71. 福島武雄

    福島参考人 私の方から申し上げますが、今田中社長の方で、幹部をつるし上げたり、重役をつるし上げたり、そういう中では一切再建案も出さなければ、話し合いもつかぬ、こういうふうに否定されておりますので、日程を追って若干御報告いたします。  一月十九日に通産大臣から先ほど報告いたしました内容のお話を受けまして、私はすぐ二十日に福岡に下山をいたしております。そこで、二十三日に前伊藤会長出席のもとに山元で団体交渉を開催いたしております。従いまして、その席上で、一月二十日に十二月分の既往の賃金が二千円支払われただけで、あとは一切支払われておらぬ、そういう中で組合員も生活の限度がある、従って、伊藤会長の責任において賃金の遅払い分は解消すべきではないか、こう言って同会長に迫っております。伊藤会長といたしましては、田中新社長に引き継ぎをいたしましたので、今の私の能力ではそういうものは一切できません、こういう回答でありました。従いまして、それでは田中社長と一緒に団体交渉を開いてもらえないかということで、団体交渉の席上で、口頭で二十三日前会長に要請をいたしております。二十五日には田中新社長も含めて団体交渉を開けるよう努力をしよう、こういう約束を受けまして、二十五日に日にちを延ばしております。二十五日に伊藤会長は山元に見えられる、こういうことでありましたので、私たちは福岡の伊藤八郎さんの自宅に執行委員九名が行きまして、団体交渉の開催についての要請をなしております。田中新社長が同席をされないということで、どうしても賃金の手当をしなければならぬ、しかしながら、当然前会長はそういう金ができぬということであって、どうせ話にならぬ、こういうことで逃げられております。従いまして、山元ではすでに二千円を食いつぶしまして、何とかしてもらいたい、こういう中で、その日の夕方になって、再度二千円の金額が山元に送付されて支払いがなされております。あとの問題もありますので、一晩伊藤会長の家に待機いたしましたけれども、帰ってこられぬ。従って、どうするかということで、いろいろ討議をいたしました。青木重役がたまたま同席におりまして、皆さん方が待っておったのでは伊藤会長はとても帰ってこれぬだろう、帰ってこれる状態を作るのがいいのじゃないか、こういう相談を受けましたので、われわれは伊藤会長をこの家に帰ってこさせないように見張りをしておるのでも何でもないので、それでは引き揚げましょう、帰ってこられたら連絡していただきたいということで、一応引き揚げております。その晩の八時ごろになって伊藤会長が帰ってこられたということで、二十五日のまた夜から行っていろいろ話をしましたが、どうしても金ができぬという話に終始一貫をしております。従いまして、それではどうにもならぬということで、田中新社長の家に青木重役から連終をしていただきまして、そして、二十六日に会ってもらえないか、そして賃金その他の問題について話し合いをしたい、こういう申し入れをやっております。その申し入れをやっておることも、田中新社長の家に炭労の幹部の方がおられましたので、このことは十分確認がなされると思います。しかし、二十六日にはどうしても病気の都合上会えない、二十七日の午前中に会おう、こういう話がありましたので、われわれは一度山に引き揚げております。  そして二十七日の九時に行って午後三時まで炭労の事務所で待ちましたが、田中新社長からはついに、会うことができぬという通達を受けたのみで、二十七日もそのまま会えなかったというのが実態であります。その後中間市長のあっせんによって、二月の二日に、田中新社長が組合長と副組合長二名程度に会いたいということでいろいろ話がなされましたので、われわれもとにかく会って何か話のできることはないだろうか、こういうことでいろいろ話し合いを要請しておりましたので、添田中間市長が仲介に入りまして、先ほど新社長から団体交渉と言われましたが、団体交渉ではありません。そういう形で二名会っております。そこでいろいろ話をしたわけです。まず賃金と保安確保、いわゆる資材確保ができない限り、われわれは就業できないではないか、非常にあぶない坑内状況を含んでいるので、一つその方の手当をしてもらいたい、そして、われわれは十月五日に協定を結び、その協定は平和条項も含んでおる、従って、そのことのわが方の責任は一応達したけれども、会社の言う、賃金を払うとか、あるいは器材を貫いますとか、あるいは資材を入れますとか、こういう約束が、会社の拘束を受ける部分が一切履行されておらぬ、そういう中で、会社の方としてもまずそのことを手当して十月の協定でいけるのかどうか、こういうものがまず話し合いの主要なるものにならなければいかぬ、従って、社長がかわったからといって、われわれはそういうものが変わってくるというふうには考えられぬ、従って、社長がかわろうとも、われわれが結んだ十月協定というのは当然生きているので、そのことでやれるのかどうかということがまず問題にならなければいかぬ、こういう話し合いをして、意見の一致を見ずに二日に別れております。  そして七日から一斉休業に入ったわけでありますが、七日以前に一度、吉田労働部長が山元に見えられたときに、賃金をよこせという集団交渉を行なった事実はあります。そのほかは一切二月八日まではありません。二月八日以降に、福岡銀行にデモをかけた事実はあります。それからなお、その後賃金が支払われなかった、こういうことでたびたび要請をいたしましたけれども、そのことは一切受け付けられなかった。従って、団体交渉拒否をした覚えはないというふうに言われますが、三回にわたって証明付の郵便まで会社側に発送をいたしておりまして、このことは受け取ったという事実が認定されておりますので、そのことは否定をされないというふうに考えます。そういうふうに、二十三日から七日までにわたってずいぶんそのことで苦労しましたが、田中社長は団体交渉の席上に一回も姿も見せませんし、山元に一回も来られなかったというのが事実であります。従って、七日以降に一斉休業に入りまして、われわれは青木重役と国広総務部長、それから日高調査次長と、約三百名くらいで集団交渉を行なっております。まず第一点は、豆炭の配給停止でありまます。その問題につきましては、われわれはすでにその当時約一万三千枚にわたる券を会社に金をやって買っております。従って、豆炭が事実上配給停止ということになると、そのことは明らかに横領ではないか、われわれが出した代金を取っておきながら、豆炭を配給しない、——ここの席へ見えられております吉田労働部長と団体交渉を重ねたときに、保安要員の賃金については日払いができないという回答と、豆炭についても製造を禁止し、配給を停止いたします、こういうことが述べられましたので、われわれは一万数千枚にわたって買っておる豆炭の券は、あなた方が金を取り上げて現物を交付しないということになると、明らかにそのことは横領ではないか、こういうことを問い詰めましたところ、吉田労働部長はそういうことは知らなかった、従ってこの問題に限って善処をいたしますということで、当日の、二十日の二時にその回答をいたしますという回答が、二時にできなくて、明日にいたします、それが二十三日もその回答がなくて、二十四日に、豆炭の配給はできませんという回答に変わってきた。こういう実態。従いましてその豆炭がわれわれとしては——若干電気がまを持った家もあります。あるいは、こんろを持った家も若干はあります。しかしながらこの寒空にいわゆる暖をとったり、病人にお湯をわかしたり、あるいは煮たきをしたり、赤ちゃんにお乳をやる燃料というようなものが、一切がその豆炭に依存をいたしております。そういうものを一切配給しない。われわれが買った代金その他は全部会社が横領をして、配給しようとしない。こういう事実が起きましたし、ふろが二日間にわたってとめられております。そういうことから激高いたしました組合員で、集団交渉をやりました。まず第一点に、病院の薬については何とかして入れます。それから、豆炭についても配給をいたします。それから次に、ふろについても平常通りわかします。こういう誓約書を書いたわけであります。従いまして、そのことが履行されるというふうに考えておりましたところ、会社の方から組合の方に参りました回答では、そういうものは集団圧力によって書かせられたので、そのことは一切履行するわけにはいかぬ、こういうことで豆炭の製造も配給も停止をされたわけであります。そういうことが一回、現実として起こっております。それからその後、先ほども新社長が言われましたように、福岡の方にそういう交渉権限を持っておる人を一切呼び集めまして、これから先一切労働組合との交渉に応じてはならない、あるいは山におる課長クラスでも交渉に一切応じてはならない、こういう示達が参りまして、現在山元ではだれを相手にしても話す相手も全然おりません。従いまして二日から三日にかけて——私のところでは組合員だけで約千九百七十名くらいおります。家族を合わせて大体八千名ほどおると思いますが、二日から三日にかけて四名の方がなくなっております。これは殉職ではなくて、普通の病気でなくなられております。子供さんが一人とおばあちゃんが二人と男の方が一人の四名がなくなられました。会社の方は、そういう非常に長い遅払いの中で、いわゆる賃金の前渡し、前進払いというようなものは法律でも認められております。そういうことで、葬式を出す金でも何とかしてもらえまいかと言ったけれども、会社の方では一切そういう交渉をする権限は与えられておらぬ、こういうことで、大体一つの棺おけが四千円ばかり、付属品一切をつけてかかりますが、この四名の葬式を出すのに、各組合員は今のあの疲弊をした生活実態の中からそれぞれカンパをして四軒の葬式を出したというのが事実であります。そういうことからいって、われわれはこれは労働組合より以前の話だ、人道問題豆炭も配給しなければふろもわかさぬ、あるいは病院に薬も入れぬ、従って、先ほどもちょっと触れましたけれども、六名おるお医者さんで、食わずに患者を見るわけにはいかぬということで、内科、産婦人科、小児科の三名のお医者さんが、もうすでにやめるという意思表示をされております。あとに残っておる六十幾つかのベッドはそのまま、放置されたままであります。そういうふうなことが今の社会機構の中で通るとするならば、このことはおそらく炭鉱労働者なり、あるいは大正の労働者なり従業員が受けておるその待遇というのは、これは人道問題であって、われわれはただ賃金を上げて下さいとか、あるいは期末手当を上げて下さいとか、あるいはそういう経済的な要求の闘争でなくして、とにかく十二月分の賃金をまだ六千円程度一人頭残っております。そういう中で、はたして今の炭鉱労働者生活実態の中で食えるかどうか。私は食えないと思います。今炭労から融資を受けておりますが、親子三名で一週間に炭労から受ける融資の金は千六百二十円です。一万円生活ということで、炭労から融資を受けておりますが、千六百二十円。まだ十二月分の賃金ももらっておらぬという実態の中で、ほとんど炭鉱従業員の者が持っていく品物は質屋も取りません。将来これは金を持って取りにくるという裏づけがない。大正の労働者はこれは投げっぱなしで、とにかく取りにこぬということで、中間周辺の質屋では大正の労働者の質ぐさも取ってくれないというのが実態であります。そういう中に立たされた私たちの、こういう最低の生きる条件を確保してくれ、とにかく賃金を払って下さい、こういう要求をも新社長は何ら考慮することなく、二月の七日までそのまま団体交渉も開かずに放置されておるという事実の上に立って、われわれは一斉休業に入ったということをあらためて報告をしておきます。  なお、ただいまの質問であります労働組合としてどう考えるのか、こういう質問に対しては、二月の二十七日から二十八日に開催されました地労委の、いわゆる保安要員のみに限っての地労委の仲裁、地労委の意向といたし策しては、とりあえず保安要員の問題については労使双方で話し合いがつくのではなかろうか、従ってそのことがまず労使双方の歩み寄りとなって、全体的な解決に踏み切れるような情勢を作れるのではなかろうか、こういう意図から、二十八日の日に保安要員の問題に限って勧告がなされております。従いまして、労働組合といたしましてはその勧告を十分受けまして、保安要員についてはいつでも差し出します、しかしながら、そういう賃金が明確にならない、そういうことから発展をいたしましたので、そのことが第三者の公的な立場に立って確認をされるならば、わが方は喜んで保安要員を差し出します、こういう回答をいたしております。それに対して会社の回答は、それを事実上拒否をしておる。ほんとうに、前の公述のときに先生方から当初御質問がされましたように、田中新社長は裸になって労働組合と話し合わなければならぬということを主張されながら、そのことが何ら実行に移されておらぬ。われわれはいつでも話し合いに応じますし、また、われわれはそういう勧告についてもすなおにお受けをいたしております。そのことと、現在会社がそういう地労委の勧告を事実上拒否をした、こういう事実認定のもとに立って、はたしてこういうことについて会社の方で再建案を示し、いわゆる裸になって話し合おうという態度が見られるのかどうか、この点についてはわが方も非常に疑わしいというふうに考えております。しかしながら、こういう争議は非常に山元でも悲惨な争議でもありますし、またわれわれも、こういうふうに社会に不安を与えてはいかぬということも十分考慮いたしております。やはり最後まで——われわれは昨年の八月から二月七日まで、この間、今おられます今井石炭局長さんのところにも、数回にわたって大正の問題についての要請なり懇請をいたしております。そういうことで、われわれの再建のかまえなり再建の作業なり、こういうものについては、非常にわれわれの労働組合の域を越えた作業分野まで立ち入ってわれわれは努力をしてきた。このことは今井局長さんの方でも十分認識をしてもらえるのではなかろうか、こういうふうに考えます。以上です。
  72. 始関伊平

    始関委員 ただいまのお二人のお話は、会社の再建を期するという根本の点は共通でございますが、ものの見方、感じ方はかなり違っておるように思います。大体感情の疎隔があり、相互不信が根底になっておると思いますが、再建という根本の点は御一緒のようでございますから、貧すれば何とかということがあって、けんかの種は非常に多いと思いますが、ぜひ一つ両方のお話し合いを進めるように希望いたします。山がつぶれてもしようがないという観点に立てば別ですけれども、そうでないとすれば、非常に急がなければならない。労働者の皆さんが非常に窮境にある。お話しの通り、非常に困っておる。またさらに保安の問題があるようですが、もし山がこわれてしまえば、とうてい再建はできないというような点から考えまして、非常に差し迫っていると思いますので、ぜひ一つ、きょうここへいらっしゃったのを機縁に、両方で忍びがたきを忍んでお話し合いを進めるように希望いたしまして、私の質問を終わります。
  73. 有田喜一

  74. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大正鉱業の問題は非常に深刻な問題でありますから、何点かお伺いをいたしたいと思います。従いまして、いささか参考人の方に礼を失するというような問い方もあるかもしれませんが、それは問題を深刻に考えておるという点等で、一つお許しを得たいと思います。  先ほどからだんだん伺っておりますと、田中社長は労働組合の非常に行き過ぎた戦いに対して、けしからぬということのみに集中されておるようですが、これは労働組合があろうとなかろうと、問題が深刻になって対立になってきますと、私の四十年来労働運動をやってきておる経験から見て、これは労働組合の問題じゃなくて、労使の間に不信行為が起こって激突化していくと、目的達成のためにいろいろな行き過ぎた問題が起こってくるのです。確かにわれわれも労働組合が福銀にデモをかけたり何かする点は行き過ぎのように思っていますが、これもやはり窮鼠ネコをかむというような、そういういろいろな行き方から起こってきておる行き過ぎだろうと私は了解しておるのですが、問題はさきの社長であった伊藤八郎さん、そういう人々の経営がまずかったのです。大体見てみまして、二代様の経営とか同族会社経営というものは、世の中が平穏に軌道に乗っているときにはうまくいくが、さて激しい競争をやらなければならぬということになってきた場合には、そういう会社というのはほとんどうまくいっていないのです。だから、賃金の未払い、諸条件の切り下げ、それから労働組合側から不信を受けるというようなことは、これは経営者であった伊藤八郎さんその他の人々が、深刻に自己反省しなければならぬ問題である。ところがあまり反省をしておられぬように私は思って、はなはだ遺憾に思っておる一人です。そこでさっきから組合側の方に伺っておりますと、たとえば、十三トンぐらいしか出なかったときもあるが、しかし、やはり自分らが再建し、生活を守るぞというようなことでやられた場合には、二十何トンも出たということがいわれています。   〔委員長退席、齋藤(憲)委員長代理着席〕 いろいろわれわれも調べてみますと、大体一カ月五万トンぐらい出して二十五年間ぐらい可採炭量があるといわれておるようであります。そうしますと、筑豊炭田においては大体最後近くまで残る優秀な山だと見てもいいのです。そういう山で、組合側の方でやるぞという気魄を示せば二十トン以上も出た日もあるということを、さっき報告されていました。おそらく、今後再建されて生活の安定が得られて、労使がほんとうに理解し合って取り組んでやろうということになれば、二十五トンにも三十トンにも出炭率を上げていくことができるんじゃないか、それに対して政府が金融的処置などを与えてやれば優秀な炭鉱に再建されるんじゃないかと、私はそう信じております。ところが田中社長の方でがむしゃらに、自分の意見の通りにならなければ団交にも応じない、一方的にやはりそういう独裁者的態度でおられるところに、労働組合側でも非常に不信を持ってきてしまっておるのではないか。だから一つの経営体としてこういう重大な問題に直面した場合には、やはり経営者として裸になって、そうして自分みずから捨て身で誠意を示すというだけのものがなければ、この再建方策を軌道に乗せることはできないのじゃないか。結局労働組合の方が協力態勢をとるようにならぬ限りにおいては、その再建案というものは作ることができないのじゃないか。世間に伝わるところを聞きますと、福銀の頭取も非常にがんこで、一方的なことを言っておる、それから、はなはだ言葉は悪いけれども、田中現社長も非常にがんこなことを言っておる。この福銀の頭取と田中新社長と二人だけでがんこなことを言って、一方的なことを押しつけようとしておる。こういうところに労働組合がますます不信行為を持ってくるので、これでは再建の方策どころじゃない、話し合いの機会も出てこないのじゃないか。だから今のままで行けば、結局もうずるずるべったりにつぶれてしまう、これ以外にないのじゃないか、こういうことが言われておる。だからわれわれとしては、これは福銀の頭取も問題にせなければならぬ、同時にまた田中新社長も、今までとられておった態度では、私はこの問題の妥結の道は絶対出てこないと信じておる。  そこで田中新社長は、従来の自分がしゃべっておること、あるいはとっておる態度、それに応じなければもう労働組合と話し合いする余地はないのだ、山はつぶれてもやむを得ないのだ、そういう極端な一方的な考えであるか、いや、これではいかぬからやはり労働組合側と、あるいはまた第三者たとえば通産局長というか、そういうところも加えながらほんとうの話し合いの機会を作って、そうして田中社長としても組合に要求すべき点があったら具体的な案を出して、これこれしてくれなければ自分も困る、あるいは労働組合側からもいろいろな意見が、先ほどから伺っておるようにあるので、そういうことで再建のために今までの行き方を反省して、お互いに一応不信行為を取り除く誠意のある態度を示して、そうして再建を軌道に乗せるというよう考え方を持とうとしておられるかどうか、いや、そんなことはもう考えていないのだ、おれの言うことを聞かぬ限りはだめだ、こういう極端なお考えかどうか、その辺のところをすなおにお聞かせ願いたい。
  75. 田中直正

    田中参考人 今の伊藤委員のお話ですが、私が労働組合意見を聞かぬとか、自分の意思が通らないとこの山をつぶすとか、そういう考えは持っておりません。先ほど福銀の頭取もがんこだ、私もがんこだという御指摘がありましたが、銀行がベースに乗らなければ貸さぬというならば、私はなぜ貸さぬかというやぼなことは言うつもりはございません。事業というものはあくまでもケース・バイ・ケースでやっていかなければならぬ、こう思っております。しからば労働組合の言うことばかり百パーセント聞いて企業が成り立つかというと、成り立つものじゃないと私は思っております。しかし私が言うことばかり言って、自分の意見が通らなければいかぬということも考えておりません。これは、わが子でさえ金をやらなければ動かぬ世の中でありますから、まして他人の寄り集まりですから、そういう考えは持っておりません。ただ私がここで言いたいことは、七月の六日に現地の通産局長のあっせん案が出たわけです。そのときに千五百万円払って、あと千五百万円はあした払う、そして一月の決済は二十日と三十日に払うから何とか話し合いに入ってくれ——当時私は病気をしておりまして、四十度の熱をおして通産局長の部屋に行きまして懇談した。団交は、私が現地に行くとまた熱が出るからということで、労働部長にやってもらったわけです。そういう中で組合側は、田中の言うことは信用できぬ、会社側組合の言うことに信用できぬ、こういがみ合って本日まで来た、これは私は不幸なことだと思っております。しかしながら経営の理念は、損を毎月五千万もして続けていくということでは経営が成り立たない、どうして経営を続けていくかといえば、やはり債権者に幾らでも、少なくても払っていく、そしてぼつぼつ立ち上がっていくというのが一番いいのかもしれませんが、今の大正鉱業の実態は、再建とかなんとかではなくて破産の状態でございます。この破産の中から更生して立ち上がっていくということは、並み大ていの努力ではないと私は思っております。しかしながら組合側も福銀に対するデモをやめる、あるいは幹部に対するつるし上げをしない、こういうことでいけば、私も話し合いに入るという考えを持っております。また同時に私が団交に出られないで——私が出ぬでも労働部長その他重役がおりまして全権を委任してあるから、何も社長が出なければならぬがということはございません。私は金融とかその方のことにもかからなければならぬから一々団交に出るわけにいきませんが、全権は団交に出る相手に渡しておりますから、そういうことでいきさつに非常に食い違いがあったのではないかと思っております。どこまでも私はこの問題は社会問題としてではなくて、自分の信念として、葬式屋として出てきたのではございませんから、再建するという考えでもってきたんですから、どこまでも再建する意思はあります。しかしながら、事態はここで言う以上に深刻でございます。お互いがこれを理解し合っていけば、まだ話し合いの余地が残っておるのではないか、また話し合いの道に入れるのではないか、こう私は思っております。しかしながらこれは、うちの組合経営者で話し合っても、今のところでは感情問題になって一歩も進まないのではないか、そう思っております。御存じの通り地労委があっせんをして、組合長が言っておるようにあっせんに入っております。地労委はその条件をわれわれに一方的に押しつけて、われわれの条件は退けて現在調停に入っておりますが、そういうことではなくて、先ほど言うように、お互いが裸で話し合いに入れば解決のつく問題ではないか、こう私は思っております。  それから先ほど福島組合長が二月十六日に二百万円払った——これは十二月の賃金じゃありません、二月の七日から十五日までの日払いの保安要員の賃金を払ったのです。それを夜中にこっそりやったというのは、組合が非常に先鋭化しておるということで、私は知りませんでしたが、刺激してはいけないというので、経理の係員が職員の各自の自宅に持っていって払った、こういう事情でありまして、先ほど福島組合長は陳情に憶測を加えて申しわけないと言ったが、憶測や邪推をこういう席上で申し上げるべき筋合いのものじゃない、こう私は思っております。
  76. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 今田中社長から、組合側との団交に自分は応じてもよろしいということを聞いたのでありますが、しかし自分は出なくてもそれぞれの係の部長というか、重役というか、そういう者に全権を一任しておるから、そういうところでもいいのじゃないかと言われておるようでしたが、世間伝うるところによれば、田中社長は非常な独裁者で、部下にまかしてそれでそれを聞く人じゃない、こういうことは世間の定評です。それからさらにまた、これほど深刻になっておる問題は、部長や平重役が全権を持って労働組合と解決すべき問題ではありません。また、労働組合側でもその程度の者では信用ができないから、責任を持って労働組合代表がざっくばらんに話し合いをすることもできないだろう。だから問題は、やはり田中さんが社長として乗り込んでこられた以上は、この問題を解決して大正鉱業をりっぱな炭鉱にしようという大きな希望と目的を持ってきておられると思うのです。それを達成しようとすれば、やはりこの職員、従業員、職組、労組、こういう機関、組織をあげての理解と協力がなければこの解決ができない。かりに田中社長と労働組合最高幹部との間に話がまとまったとして、さてその裏づけをする膨大な金融が要る、そういう金融に対する裏づけ、そういうものの必要もある。だから社長と労働組合の最高幹部とだけでやられるほかに、他の力によって金融的な裏づけをしてやるという、社会的信用、そういう協力がなければ、私はこの問題の解決はできないと思う。それからまた、福銀だけでも私はできないと信じております、福銀の今の金融状態から見て。当面あの上にさらに膨大な借金を負わなければならぬ。たとえば手形の不渡りの問題とか、あるいは坑内外の設備がいたんで困っているという問題、そういうものに相当の金が要ると思う。だから福銀の頭取と田中社長だけでも、私は解決できないと思う。そういう非常に重大な問題を含んでおるわけでありますから、まず第一段階として、田中社長と労働組合との間で、金融機関も協力者も理解協力をしてくれるような案を作られることが、先決問題だと思う。労働組合の言うことをかりに田中社長の方がそれをのんだとしても、それだけで私は解決できないと思う。やはり労働組合の案を田中社長ものむが、さらに金融機関なりその他も、これならほんとうに労使が再建のためにあらゆる苦難を乗り越えてやってくれるな、信用できるなということが保証されなければ、私はこの金融問題の解決はできないと信じております。   〔齋藤(憲)委員長代理退席、委員長着席〕 同時にまた、田中さんの方から自分の考えておることを労働組合の上に押しつけてみたところで、労働組合がほんとうに今後もかなり長い期間しんぼうしなければならぬ問題だと私は思う。やはりその上に立って労働組合もそれを覚悟して、よろしい、それならこれで一つ再建するまでお互いに取り組んでやりましょうという、あふれるようなものが出てこない限りは、この問題の解決はできないと私は思う。そういう金融機関なり、背後の協力も必要なんです。さらに、政府の力も相当借りなければならぬ問題もあると私は思っておる。そういうことでありますから、従って田中社長みずからが、今組合側から不信を持たれておる、その不信を取り除くためにはどうしたらいいのかという田中社長自身の誠意あふれる態度をもって、そうしてみずからも、組合に要請すべき問題があったら具体的に要請し、お互いに再建しようじゃないかということで、ほんとうに涙ぐましい誠意が現われてこない限りにおいては、私はこれはできないと思う。だから田中社長は、団交に応じますとかなんとか言われておりますけれども、今のように私がお伺いしている問題について、ほんとうにあの炭鉱を再建するために、二千五百の人たちのあの窮状に希望を与えるために、そうしてよくやったと世間からも言われるような責任感の上に立って、労働組合と団交でもなんでも現地に乗り込んで行ってやるということをここでわれわれに確約をしていただけますか、どうですか、これを一つお尋ねします。
  77. 田中直正

    田中参考人 それには第一、銀行デモをやめてもらいたい、個人の住宅デモをやめてもらいたい。それから幹部のつるし上げもやめてもらいたい。そうして正常な団交をやるなら、私は出てやらしていただく。それから先ほど申しましたように、大正鉱業は現在個人の力では立ち上がれないわけです。債権者皆さんの力、皆さんの同情によって立ち上がらなければならぬ。こういう事態の中で、私は決して、独裁をしてどうこうということは通るものではございません。やはり世間の同情というものが要る。この世間の同情によって立ち上がらなければ立ち上がれない、こういう考えを持っておるわけであります。私はやはり団交らしい団交、紳士的に和気あいあいとして話をする団交をやっていただきたい、こう思っております。そういうムードができれば、いつでも私は団交に出席いたします。
  78. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 福島組合長にお伺いするのですが、今お聞きのようなことを田中社長が条件として出しておる。たとえば福銀に対するデモ、個人に対するデモ、あるいは幹部のつるし上げ、そういうことをやらないで話し合いをしてもらうなら、自分はそれに応じてやる気があります、こういうことを言っておられるが、今、田中社長がわれわれのところに出されたような条件、それは私は労働組合側でもおそらく反対はなかろう、こう思うのですが、それを田中社長が守ってくれということであるなら、組合側もそれを守って、お互いに再建のために真心をこめて話し合いをするということについての御意見を一つお聞かせ願いたいと思います。
  79. 福島武雄

    福島参考人 ただいま社長の方からそういう要請がありましたが、私ども別にそういうことを好んでやっておることではありません。会社の幹部をつるし上げた、これは顔を見ると、飯を食わせろと言うのは事実なんです。顔を見ると、賃金をよく払ってくれ、こう言うのはやはりわれわれの切実な要求で、全然顔も見せないで、どこにおるやらわからぬ、こういうことでは話し合おうにも話し相手がおらぬ。こういう中では幾らがまんをしても、そのことは生活を維持することに足らぬわけです。従って、いわゆる自然発生的な行動として、顔を見ると、とにかく賃金をくれろ、飯を食わせろ、こういう行動が今までなされてきました。それから福岡銀行のいわゆるデモ行動については、これはずいぶん長い間福岡銀行からのいわゆる収奪ですか、このことを深刻にわれわれは体験をしております。先ほど、二十六年から一切福岡銀行に金を戻しておらぬという話でありましたが、そういうことは一切われわれは今まで対外発表としてしてきましたし、事実陳述書の中にもありますように、短期間で約二億数千万円の金が返納されておる。そのことがいろいろな形になってしわ寄せをされておる。従ってそのことは、会社の方から出た資料でありますし、ここにそういう対立をした内容が出るとは夢にも思いませんでしたので、書類は持ってきておりませんが、いわゆる銀行の貸借対照表の中の返金部分の書類については、会社の責任者の印鑑の押してある書類を労働組合が持っておりますので、これは私の責任で、あとから委員長さんの方にお送りをしたいと思います。そういうことで非常に長い間、われわれがもう飯を食えなくなった時点でも、いわゆる直需つなぎを停止する、運転資金のつなぎ融質を停止する、あるいは商業手形の割引も一切とめてしまう、こういう方法と、それから今度田中新社長が推されました内輪の話としては、先ほども申しましたように、大正のいわゆる企業再建というのは金がなければどうしてもできぬ、今の労働者賃金もありますも、あるいは坑内の保安確保に要する資金なり、あるいは資材を購入する資金なり、こういうものがある程度投入されないと再建はできないというのが、いわゆる常識であります。従って田中新社長も、十月二十三日の新聞だったと記憶いたしますが、いわゆる新社長になられるという話があった時点で、新聞発表の中で、これは切り抜きも持っておりますが、いわゆる政府機関から、及びその他の金融面から約五億円の金を借りて再建するのだ、こういう構想が述べられております。なお福銀については、これ以上の金が借りられないので、その他の面からいわゆる融資を受ける、こういうことで、当初金を入れなければどうにもならぬ、こういうことを十分承知で新社長として就任をされております。また福岡銀行も、最終的に一切大正の企業にはわれわれは顔を突っ込む気持はありません、こういうふうに意思表示を終始一貫された中で、最終的には、通産大臣の言をかりますと、蟻川頭取を呼んで話をしたところ、わが方に持ち駒があるので、その人を新社長に迎えるならばめんどうを見ましょうということが、通産大臣の口からわれわれに発表されております。そういういきさつから申しますと、当然何がしかの資金は田中新社長につけてやらなければ大正は再建できぬ、こういうのが常識であります。今までのところそういうものが一切出されておりません。それからわれわれは一月の二十九日に、これではどうしても飯を食うことができぬ、従って全員退職して失業保険を求めようではないかという機関決定をいたしております。そのことは陳情書の中にありましたように、炭労は、それではいかぬ、みずから職場を放棄するという形になるではないか、そういうことではいかぬぞという忠告を受けまして、そのことは一応指標としては、飯を食わせろ、あるいは保安機材を入れなさい、こういう目標に変えております。そういうことから、あの七日の時点で、その時点まで一切田中新社長の中で考慮されておらぬので、そういう態度をきめ、なおそういう指標に変わって、そうしてわれわれも交渉を求めたけれども、応じない。その中でいよいよ二月四日にわが方の機関を招集しまして、七日から一斉休業に入らざるを得ないという決定をいたした時点で、十二月分の賃金を若干払いたいという申し入れが労働組合になされております。こういうことで一貫をしてまず兵糧攻めにしよう、——今でも十二月分賃金が渡っておりませんので、まず兵糧攻めにしよう、そういう中で労働組合がどうにもならなくなる、そういうところからいわゆる再建案を出して、自分の構想に従って再建をしようという意図と、その時点では判断をされたわけです。従いまして、われわれといたしましてもその当時、一人頭約六千円ぽっちの金ですが、そのことは、いわゆる事態を回避して直ちに作業につけるという状態でない。このことは構内の保安とも関係がありますので、そういうものでは解決されない。そういう時点ではどうしても一斉休業を回避できぬという形で入っております。そういう中で、やはり大正の労務者というものは、福岡銀行から終始一貫いじめられた。それで昨年の十二月一日に、これも通産大臣の方から要請されましてとめたわけですが、十二月一日にわれわれは臨時休業措置を行なうという機関決定をいたしまして、その時点で、一切賃金が払われぬと食うことができぬということで、十二月一日から一斉休業に入りますということを申しましたところ、通産大臣から、そのことは取りやめてくれぬか、非常に有望な山でもあるし、何とか再建しなければならぬ、従って、一斉休業は何とか回避してもらいたい。しかしながら、回避するについては、飯が食えなければどうしますか、ということについて、それでは今手持ちの商業手形を福岡銀行に割ってもらうように何とか一つ話をしてやろう、こういうことで大蔵省の銀行局なり、ここにおられます今井局長さんたちが中に入っていただきまして、何がしかの商業手形を現金にかえて幾らか払った。そういうことから、十二月一日の臨時休業についてはわれわれは回避をした、こういう経過も持っております。そういうことで、一切が福岡銀行の意図によって生かしもし、殺しもする、いわゆる生殺の権を福岡銀行に握られたよう企業の実態である。大正の労働者の福岡銀行に対する怨嗟の声というものは、全山を包んでおります。一月三十一日に千二百万の手形を持ち込んだときにも、六百万という金利が天引きをされておる。従いまして二月八日に私たちは福岡銀行の中山常務に会いまして、あなた方の蟻川さんが出してきた田中新社長じゃないか、われわれも率直にそれを認めた、伊藤八郎さんなら話がわかります、しかしながら福岡銀行の蟻川さんが推した田中新社長が持ち込んだ手形を、六百万円天引きするとは何事ですか、たとえここで二十日なり一カ月待っても取りそこなうことはないでしょう、そういうことをされるとわれわれはどうしても生きていくことができぬ、従って六百万円も金利を天引きされるということはあんまりではないか、こういう抗議を行なったことがありますが、その時点では、それは会社と話し合いの上でいただきました、こういうふうな回答であります。そういうことから、福岡銀行に対するそういう怨嗟の声というものは、やはり全組合員なり家族は持っております。そういうことからわれわれは福岡銀行にそういう抗議行動を起こしたというのが、実態であります。従いまして、ここで問題になりますのは、賃金の支払いというものがどうしても優先してこなければならぬ。そういうことが一切放置された中で、何もかもお前たちやめて、無条件で話をしろといわれても、話し合いはしますけれども、やはり飯を食わしてもらわなければならぬ。あるいは、上部団体も無限に金を持っているわけではございません。すでにそういう融資金も、炭労として限界にきております。そういう時点の中で、やはりわれわれは既往の賃金はどうしても払ってもらいたい、払ってもらわなければ生活ができないというのが、今の大正労働者に課せられている一番大きな課題であります。従いましてわれわれは、そういう措置がとられて話し合うことについては何らやぶさかでもございませんし、また再建についての内容がわかれば、率直に話し合いをする用意をわれわれは持っておりますし、福岡銀行にそういう抗議行動を起こさなくて済むと思います。そういう関係からやはり飯の食える状態——これは将来の賃金ではない、既往の賃金であります。そういうものはやはり早く清算をして、そして皆がほんとうに協力態勢を早く作り上げるべきではないか。このことが、いつも会社側から言われますときに、賃金を払ってもらいたいということを言いますと、いつも条件がついております。労働組合が無条件に協力をするという態勢がなければ金は払えません、どこからも出ません、こういうことなんです。賃金というものは、法律の中で明確にしてありますように、そういう既往の賃金に条件がつくいわれはないと確信しております。条件を付せられてもらうべき筋合いの賃金ではありません。われわれは労働を提供しておりますので、それに対して当然通貨をもって支払うように憲法で保障されておるのであります。条件をつけなければ金を払わないという意向では、ほんとうに労使双方が裸になって話し合えるのかどうかということになると、やはりその点の解明が、あるいは会社の態度がもう少し理解ある態度に立たない限り、私は不可能であろうと考えます。今田中新社長の話も聞きましたが、ほんとうに誠意を持って、いわゆる普通の経営者という理解ある立場に立ってこの問題に取り組まれるならば、必ずしも困難なことではない。従って欲を申しますと、田中新社長が来られたときに、賃金の未払いが幾らくらいある、従ってこれについては必ず半分払うぞ、そしてこういう再建案ではどうかという話があれば、こんな悲惨な争議にはならなかったというふうに判断をいたします。
  80. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 だんだん伺っておりまして内容はほぼわかったつもりでありますから、要点だけお伺いしたいと思うのです。  さっきから私が田中さんに伺っておりますいわゆる組合側に対する誠意——誠意とは何ぞやという場合に、今組合長が言っておりますように、働いた過去の賃金を払ってもらいたい、そうしなければ生活ができない、これは切実な問題ですね。それからまた労使の間の問題を解決するとき、とかくこういう未払いとかなんとかいうものが起こってきた場合に、たとえば再建と取り組むという場合には、いずれの場合でも労働賃金の未払いという問題は、やはり払って解決するのが常識なんです。だからその点は、田中社長が真剣に考えなければならぬ。それから、社長を引き受けてあすこに入ってこられた場合に、まず何から解決しなければならぬのかというときに、いの一番の問題ではなかったろうかと思う。それで、これは憶測というかあまり入り過ぎたことを聞くかもしれませんが、われわれの耳に伝わっておるところによると、田中社長は引き受けられてから、福銀の信用を得るために、二億円以上の金を何回かにわたって福銀に納入しておられる。そのために労働賃金も払えなくなった、あるいは質材も買えなくなった。当然こういう金は労働賃金を払い、資材を買い、山の仕事ができるようにして、そしてさらに労使協力体制を作って銀行との間に再建方策というものを打ち出していくべきではなかったか。それをやらないで、労働賃金や資材代金を福銀に二億以上も払って、そして自分の信用を得て、それで一方的にやっておるから問題が解決しないのだということを、われわれはちまたで聞いておるわけです。いろいろ聞いて、そういうこともほんとうかなというような気もする。もしそれがほんとうとするなら、そういうやり方では、田中社長がお引き受けになってあそこを再建しようといっても、労使の協力体制というものは、とうてい私はできないと思う。だから問題を具体的に解決するためには、やはりまず、今の労働賃金の未払いが総額幾らあるか存じませんが、その未払い労働賃金は少なくとも払う。これはあなた自身も、社長を引き受けられてから二億円以上も福銀に入れておられる。とにかく労働賃金を払わなければ、今の労使の協力体制もできないと思う。協力体制を作るためには一つ労働賃金を払う。これだけの金が要るから——これは一つあなたと福銀との間に話をつける。そのかわりに話がつけば、労使の協力体制というものができて、お互いに誠意をもってやればほんとうに再建方針が立つからということでやられれば、当然その次に要る再建資金というものも、それは相当要りましょうが、そういう問題というものは、山の将来の見込みもあるのですから、労使のほんとうの協力体制ができて、これなら在籍一人当たり二十五トンも三十トンも出る山になるということで信用を与えることができれば、私は融資の問題というものはそんなめんどうな問題じゃないと思う。だから問題は、そういう信用を与えるという問題——信用を与えるという問題は、今繰り返して言っていますように、未払いの労働賃金をまず払って、そして労使の再建の協力体制を、お互いに反省の上に立って作り上げる。それによって次の再建段階をなにするためには、金融機関問題のなにをしていく、そういう順序に私はなるのじゃないかと思うのです。だから、そういうことについてまずあなたが責任を持って解決されなければならぬのは、今私が言っておるような未払い賃金の問題、それからその上に立って労使が協力体制を作り上げるという問題ができてくれば、その次の段階の再建金融処置の問題というものは割合私はやりやすくなってくるのじゃないか、こう思うが、そういう点についての順序を追うての、あなたが新社長としてこの問題を解決するためには、これから始めなければならないのだという問題について、あなたにそれをやろうという誠意がほんとうにあるかどうか、解決に自信があるかどうか、そういう点について一つお聞かせ願いたいと思いまます。
  81. 田中直正

    田中参考人 ただいま伊藤委員から話がありましたが、実はこれは伊藤委員も少し聞き違いじゃないかと思うのです。私が社長時代に二億も福銀に返済した事実はありません。一昨年開銀に三億借りました。それのつなぎ融資を、一昨年、昨年、開銀が貸したら払うという条件で福銀で借りた。それは副社長時代です。開銀の融資がきたら必ず戻しますということで借りたわけです。それで開銀の融資がきたら、それは当然ひもつきですから返済しなければならぬ義務があります。それが一つです。二億の金は実際払っておりますが、それは一昨年開銀のつなぎ融資で借りたわけです。それと、私の時代は遅配欠配はなかったわけです。私が退陣してからあったわけです。そういうことでございまして、しからば賃金を払うのが先決じゃないか、ごもっともな話でございます。賃金を払わぬ経営者というものは一番悪いことでありますので、もっともな話ですが、しかし現在の段階で賃金を作ろうとしても作れないわけです。ああいうふうに金融機関から全部シャット・アウトを食ってしまっている。それから不渡りも出ておりますし、金は作ろうと思っても作れない。そこで、労使と協力ができて、こういふうになったから今度は何とかしてくれ、とにかくこれを片づけてくれといって懇願をして、同情によって立ち上がらなければならない、こう私は思っています。まず第一に賃金をやれ——鶏が先か卵が先かということになりますけれども、実際そういう状態でございますので、われわれ経営者として資格がありません。賃金を払える能力のない経営者でございます。その点、こういうふうにどん詰まりになっておりますものですから、御了解を願って一つ……。
  82. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 話がちっとも前進しないですね。少なくともこの問題を解決しようという前進にはならない。ここでならないくらいならば、おそらく山元では一そう困難だろう、こう思うのです。そこで、さっきから組合側も言っておりますように、一ぺんに労働賃金をみな払えと言っているのではない。その未払いの分を、半分でもいいから先に誠意をもって払ってくれ、そしてその上に立ってあとはこうするということであれば、自分らの方もその誠意は了解できるということを私さっき聞いたような気がするのです。そうすれば、今あなたが言われておる鶏が先か卵が先かという問題は、水かけ論をしておっても解決できないわけだから、労働組合の方でも、もうあそこじゃ未払い賃金ももらえないし、しようがないからみんな一応退職した形にして、失業になった形にして、失業保険をもらって食いつなごうかというほど深刻になっておるのだから、せめて未払いの半分でも、福岡銀行との間に話をつけられて、その誠意の上に立って次の半分が借りられるような状態を作るということについて、社長として責任をもってこの問題を解決するという考え方がなければ、私はあなたが何のために伊藤八郎さんの委任を受けて新社長になって入ってきたのか、意味がないと思う。だからそういう点について、社長として入ってきた以上は、この問題を解決しなければならない、解決する段階としては、これだけはやらなければならぬということは、だれでもわかっておることだ。だから、あなたの今まで言っておられるようなことだけを押しつけておられると、解決しっこない。解決しよとするなら、今私があなたに水を向けておるような問題を、あなた自身が責任をもって、一はだも二はだも脱いでやろうということになられない限りにおいては、だめなんです。それでなければ、あなたは何のために社長になってきたか。ただ混乱さして、紛糾さして、ああいう深刻な状態を作ることのみを引き受けて社長になってきたといわれても、私は弁解の余地はないと思う。だから、問題を解決するということ、あなたが社長の使命としてあそこを再建していこうというならば、私はやはり段階的に解決をしなければならぬと思うのだが、それらについて、あなたは新社長として、どういうことで一体問題を解決してやろうという信念を持って入ってこられたのですか。それを一つ聞かせていただきたい。
  83. 田中直正

    田中参考人 先ほどおっしゃったように、福銀にデモをかけてはたして金を借りられるか。私は借り切れません。また、借りもしません。こういう事態で金を払えと言っても——金を払うのは義務があります。しかし、実際金がありません。その中で、せめてデモでも解いて、おれたちもデモを解いたじゃないか、お前も金を作ってこい、そしておれたちの誠意にこたえろという話ならば別ですけれども。私はそう思っています。私の信念です。
  84. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなたも福銀のデモのことを盛んに言われておるが、私も、組合として福銀にデモをかけるようなことは、確かに行き過ぎだと思っておる。しかし組合としては、福銀が生殺与奪の権、経営権を握っておるから、そこで作戦上やったのだ。作戦がよかったかまずかったか、これは別な問題です。しかし今組合長が言っておるように、そういうことが責任を持って解決してもらえるということであれば、福銀とかそういうところへデモをかける必要はない、デモをかけないというようなことも言っておるのですから、そこであなたが、自分がここまで引き受けた、福銀などにはデモをかけない、またそういうつるし上げをするようなこともないのだ、ついてはやはり未払い賃金の半分くらい少なくとも払ってやらなければならぬ、その上に立って労使協力再建体制を作るから、まずその未払い賃金の半分を融資してくれということでやれば、あなたを社長に命令したのは福銀の頭取ですから、そこは私は話のつかぬことはないと思う。命令したのにおれの言うことは聞いてくれないなら、おれは依頼された社長をやめる、おれに社長をやめさせるか、しからずんばこの問題を聞いてくれるか、どっちだということで、あなた自身が頭取のところにすわり込みでもするくらいな措置をとられるなら、この問題の目鼻はつくと思う。それなら何も組合側も福銀にデモをかける必要はない。その辺のところは、私は常識判断でわかると思う。その点どうです。
  85. 田中直正

    田中参考人 私は福銀の頭取に頼まれたのではありません。大正鉱業社長に任命されたのは、伊藤さんに頼まれて再建をやったのです。それから先ほど言うように、私の信念、借ったものは戻さなければならぬという信念がありますから、一応先ほど申した通りでございます。
  86. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それじゃこれは幾ら話をしてみたところで、とにかく私の微温的な話、意見を伺っても一向それに乗ってこない。新社長をお引き受けしようという責任を、私は見ることはできない。はなはだ遺憾です。しかしこれ以上いろいろ聞いてみたいところで、私は意味がないと思う。せっかく参考人として来ていただいたのですが、あまりどうもかどを立てて言うのも非礼になると思いますから、一応この程度でとどめておきます。
  87. 有田喜一

    有田委員長 田中参考人、デモを解いたら、個人のああいうものをどいてくれれば、誠意を持って福銀に話をして……。
  88. 田中直正

    田中参考人 福銀では借られません。実を言えば、それでほかの金融機関からでも——実はこの前の千五百万も、ほかの金融機関から借ったんです。福銀ではございません。田中個人で借ったわけです。
  89. 有田喜一

    有田委員長 福銀に限らず、誠意を持ってせめて半分くらいでもやろうという……。  多賀谷真稔君。
  90. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 福岡銀行にデモをかけるという話がありますが、実は私たちも、労働大臣あるいはまた通産大臣、大蔵大臣、自治大臣が筑豊に行かれたときに、おのおの将来の問題について、かなり労使双方に政府としての最大の協力を約束されたわけです。そこで、いろいろその間に問題がありましたけれども、政府としても六千数百万円の合理化資金も、非常に問題はあったけれどもあえて出した。そうして実はあなたが社長になられてから、われわれはいつ団交をされるだろうかということで、一日千秋の思いで待っておった。局長も自分のところにある掲示板を毎日見て、この日になったら話はつくだろうということを期待されておった。それはまず、通産大臣から労働組合に一月の十九日にお話しになったことは、これは真意は通産大臣に聞かなければわかりませんけれども、われわれが聞いたことは、これは少なくとも福岡銀行の頭取は田中直正、あなたを推すということになっている、そこで田中直正さんを出していただく以外に方法はないようだ、だから一つその協力を願いたい、こういうことであったのです。ですからあなたの出現によって、すぐ金が払える、少なくとも未払い賃金は払える、保安の資材は当然確保される、こういう期待を当然持ったわけですね。そこで一体、福岡銀行との間にあなたが出馬されるについて、どういう金融的な協力の確約があったか、これをお聞かせ願いたい。今、デモをしておると申しますけれども、今なるほどデモをしておりますけれども、あなたが社長になられてから二月の七日くらいまでは、平穏であったのですね。その間に一体社長としてどういう努力をされたか。また福岡銀行との話し合いはどういうようになっておるのか。場合によっては、われわれは福岡銀行に来てもらわなければならぬ、あるいは通産大臣にここに来てもらって、福岡銀行と対決しなければならぬ、こういう問題です。ともかくあなたの出現によって融資がつくのだという話を、われわれは直接聞いておる。ですから、一体福岡銀行との間はどういうようになっておるのかお聞かせ願いたい。
  91. 田中直正

    田中参考人 私は、先ほど申し上げたように、大正鉱業の社長伊藤八郎さんから頼まれたので、福岡銀行、通産大臣からも頼まれておりません。それからもう一つは、福岡銀行から私が出るときの条件、金を何ぼ貸してくれ、そういう話は全然しておりません。また大正と福岡銀行の貸借関係は、だれよりも私が一番よく知っております。借っても払えないのです、実を言うと。しかし、これはよその銀行からどうせ借りなければいかぬ、また政府の機関からも応援してもらって借る、こういうことで福岡銀行に、私が出るから何ぼ貸してくれということは話しておりません。また、そういう密約もありません。やはり企業というものは実際再建ができて——福岡銀行でなくても、どこの銀行でもそうですが、返済のめどができるという自信がなければ、私どもは借れないわけです。その計画を立てて一つ再建に走ろう、こういう考えでございます。それではなぜ社長に出てきたかと伊藤議員は言うのですけれども、その場合、私はやはり大正鉱業はやっていく、絶対にやっていく、伊藤さんからも頼まれたし、やらなければならぬ一つの宿命がある、私はこういうかたい決意で乗り出した。それなら、お前金も持たぬで何を言うか、こういうことになるかもしれませんが、わずか六、七カ月間私が遠ざかっておりました間に、ここまで悪化しておるとは思いませんでした。また帳簿も調べていないし、そのまま遠ざかっておりました。私どもの予想以上に悪化しております。私の退陣後はそういう状態で、何とか一つこれを切り抜けなければいかぬ、こう思っておるわけです。どうか一つこの点は御賢察願いたいと思います。
  92. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そこで私は石炭局長にお尋ねするのですが、実は通産大臣の方から労働組合に対しては、これは田中直正社長が実現を見るならば、福岡銀行も融資をつけるだろう、これ以外には方法がない、こういうことだ。ところが社長就任以来団交も持たれない、賃金も十分支払われない、こういう中で福岡銀行のデモという形になったわけですね。そこでデモになった後を云々しても問題は解決しないので、その以前に福岡銀行としては、田中直正氏を推すについては融資をするのだろう、こうわれわれは期待し、またその約束があったはずだとわれわれは見ておる。というのは前に、社長候補者になりました田中丑之助が出る場合においては、融資を絶対にしないということで御破算になった。福岡銀行がその金を出さないというなら、だれだって同じなんです。ですから、通産大臣が労働組合に公式にお話しになったことの中には、私は当然福岡銀行としては融資体制を整えてくるのだ、こういうように承っておったわけですが、あなたはどういうように御承知なさっておるのかお尋ねいたしたい。
  93. 今井博

    ○今井(博)政府委員 私が大臣から承っておりますのは、田中直正氏が出れば、会社経営については相当改善を行なうと思う、そうすれば融資もしやすくなるであろう、こういうふうな意味で頭取が大臣に、御期待に沿うように極力努力いたします、こういうふうに言われたのだと私どもは了解しております。福銀としては、田中新社長であれば必ず融資をするのだ、今までの融資態勢を改めるのだ、ある意味においては緩和するのだ、そういうふうな表現はなされなかったように聞いております。大臣からは直接さらに詳細は聞いておりませんが、私は以上のように承知しておるだけであります。
  94. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 事の起こりは、全く手形が割れない、融資がつかないということから問題が起こっているわけですね。先ほどお話がありましたが、十二月一日ですか、商業手形も割れないという状態の中で、福岡銀行に対して非公式ですが、いろいろな顔を通じて要請をして、商業手形を割ってもらう。そうして福岡銀行が一切手形も割らないのだと言ったのは、たしか労働組合の方で再建委員会というのを一つ政府機関と一緒に作ってもらいたい、こういうことを持ち出したその直後ですね。一切手形の割引はいたしません、こういうことになっておる。ですから問題はずっと融資の話からきておる。田中丑之助さんが出る場合も、保証人まであったわけですけれども、再建に必要な融資の協力を願ってそれが断わられた。こういったところで流れざるを得ないということになったわけですから、話は全部金の話からきておるわけです。ですからこれは労使問題じゃない。これを社労で扱わないで石炭委員会で両方の関係者を呼んだというのは、労使問題としてわれわれは考えていないのです。これは、普通の労使問題なら社労の委員会へ呼びますよ。そして争議状態は一体どういう形になっておるのですか、こういうこと聞いてみるわけですが、本日お呼びしたのは、労使問題としてわれわれは把握してない。これは金融問題、それから石炭政策の問題としてわれわれは把握しておるわけであります。ですからその際財源が福岡銀行にないならば、日本銀行から特別融資をしたらどうかという話も出ておる。ですから私は、どうもそのときに福岡銀行との再建構想についての融資の協力態勢の話がなかったとは考えられない。しかし大臣に対しては期待に沿うよう努力いたしますということでありますから、少なくとも今までの融資の大正鉱業に対する関係は緩和される、こう考えていいんじゃないか。少なくとも福岡銀行頭取は大臣に対してそう言ったに違いない。ところがその緩和の状態が全然見られぬということです。これは一体どういうことなんですか。これは政府並びに関係者、三者から一つお聞かせ願いたい。
  95. 今井博

    ○今井(博)政府委員 大臣からはその詳細を承っておりませんが、私が了知いたしておりますのは、先ほど申しましたように、福銀としては従来の融資方針を急に改めるとか、そういうことは考えておらない。しかし、田中新社長が入って経営を改善するならば、融資はしやすくなるのじゃないか、こういうふうな程度に聞いておるわけでありまして、さらに融資を緩和するとかなんとか、そういうふうな言葉は、大臣からは私は直接聞いておりません。
  96. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 組合長、大臣から聞いたことを直接話して下さい。
  97. 福島武雄

    福島参考人 私の方は、一月の十九日、参議院の院内で、私だけでなく、多賀谷先生なり、それから当時四十名の上京団を編成して、それぞれ要請を行なっておりましたので、その人たちも同席しております。そこで、今までほかの方法でいろいろ話を進めてみたけれども、どうしても話がうまいこといかぬ。従って、皆さん方が東京に来るという話も聞いた。それで大正の問題については、私も現地で約束した責任がありますので、何とかこの問題を解決しなければならぬということで、二、三日前に蟻川頭取を呼んで話をしました。今の政府機構では、一企業に金が出せるという機構になっておらぬし、それからまた、膨大な債務をかかえた大正鉱業に他の銀行が融資をするという銀行も見当たらぬ。従って、福岡銀行が、いわゆる意中の人として、とって置きの人を社長に迎えて、そして第二会社に移行せず、労働条件を下げずに、このままの形で再建をするとするならば、その人を受け入れざるを得ぬではないか、田中新社長という名前は出ておりません。しかしながら、皆さん方のところで一回経営を担当されて追い出された方です。従って、問題は今後起こると思います。正直に申しますと、十人のうちに八人まではよく言わぬ人です。こういうふうに言われております。従いまして、必ず問題は起きると思うが、そのときは労働省に行かずに、直接私のところに相談に来ていただきたい。こういう発言がなされております。私たちもいろいろ御迷惑をかけました。はっきり申しまして、田中直正社長のことですかと言ったら、名前は申しませんが、皆さん方が十分承知をする人です。こういうふうに答弁をされております。私たちもいろいろ田中新社長につきましては、問題はあります。しかしながら、それぞれ御迷惑をかけた中で、私たちも当然機関に諮って態度をきめます。こういうことでお別れをしております。従いまして、山元の機関で討議をいたしました。会社の社長に、われわれがだれがいい、いかぬということは言えぬ。私たちは率直に新社長を迎えて、社長になられたことを確認をし、いわゆる団体交渉を申し込み——それからこれは石炭局の話でありますが、今まではそういう形で運営がなされたというふうに聞いておりますが、今度はいわゆる衆人環視の中で経営が行なわれますので、まず、この前のようなことはありますまい。このことは石炭局で言われた言葉であります。名前は特に伏せておきます。  そういうところから発足をいたしまして、田中新社長が来られると、当然何がしかの資金はいわゆる用意をされて入ってこられる、これは常識としてわれわれは受け取ったわけであります。従いまして、もし金がないとするならば、田中丑之助さんであろうが、伊藤八郎さんであろうが、田中直正さんであろうが、だれが来ても、いわゆる裸ではやれないというのが現実であります。今多賀谷さんの言われましたように、金から起こった問題でありますから、当然何がしかの再建資金は導入しなければならぬ。そのことが約束されない限り可能にならぬということが常識でありますので、私たちは当然、額についてはわかりませんけれども、とりあえず作業をされる、いわゆる手当については、当然田中新社長の方で用意はされるであろう、こういうふうにわれわれはその時点では判断をいたしております。以上です。
  98. 田中直正

    田中参考人 私、先ほども申しましたように、福岡銀行の頭取から金融の約束をとっておりません。それから通産大臣ともその当時会っておりません。それで大臣からそういう話もないし、その後頭取と手形の再割をしてくれないかということで会ったわけです。しかし再建が成れば何とかお願いしますということは頼んでおります。
  99. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その間の経緯は、私は大臣並びに福岡銀行頭取に本委員会に来てもらって明らかにしたい。また福岡銀行としてはこの再建についてどういうよう考えておったのかということも明らかにいたしたいと思う。というのは、この再建をめぐって福岡銀行の手形というものが非常に問題になっておるのですから。これはあとから理事会で相談をしていただいて、ぜひここへ呼んでいただくよう委員長にお願いをしておきたい。  そこで続いて、社長になられてから福岡銀行に、賃金の問題とかあるいは保安資材の問題について、融資をあなたの方からお願いをされたかどうか、あるいは福岡銀行へお願いをしたけれども拒否されたかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  100. 田中直正

    田中参考人 融資の問題と賃金の問題、その他の問題、手形割引の相談には行きました。それから再建案を持ってきます、しかし今すぐにはできませんが、持ってきたときには一つ何分よろしくお考え願いたいということは言っております。
  101. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 金はできたのですか。
  102. 田中直正

    田中参考人 いや金がなくて。手形の割引はしてもらっております。それから再建案ができたら何分一つよろしく頼むということはお願いしております。それから賃金の問題は、西日本相互銀行に私が個人でお願いして千五百万円借りてきた。それを二月六日に支払ったわけです。そういう状態でございます。
  103. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、再建案ができたら、あなたの方はそれを福岡銀行に持っていって融資の協力を願うわけでしょう。
  104. 田中直正

    田中参考人 これは額はきまっておりません。再建案ができて、経営者だけが行ってもだめですから、やはり労組と話し合って、こういうことでしますから一つ何分長期融資をお願いしたい——これは福岡銀行一本ではございません。私の腹案は各銀行のを集めましてここで一つお願いしますということで、西日本相互、福岡相互、それから三菱銀行、こういうところにも私は福岡銀行と同時に当たって回ってきたわけです。それが現在の状態でございます。
  105. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、再建案の話をどうしても労組とやらなければ、この問題は解決しないわけですね。
  106. 田中直正

    田中参考人 再建案をやらなければどうしてもこれは解決できません。
  107. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それはあなたの方はいつやられるのですか。このままでじっとしておいても問題の解決はしませんよ。経営者としてはあなたはいつおやりになるのか。ことに一月十九日から——あなたに話があったのはいつか知りませんけれども、社長に就任されてから、とにかくあなたは初めての大正鉱業じゃない、再び大正鉱業に見えるわけですね。一つ裸になって最初組合とお話しになる態度がほしかった。私は、これがやはり不信感を増大したものだと思うのです。われわれは東京において聞いたわけですが、社長姿を見せぬ、一体どうしたんだ。伊藤さんに会ったところが伊藤さんはもう責任はないとおっしゃる。一体組合としてはどう対処していったらいいかわからぬというのが、最初の一週間あるいは十日ぐらいの状態でした。これはやはり毎日々々待っている炭鉱労働者、きょう米がない、あした米がないという状態ですから、当然姿を現わしてしかるべきではなかったかと思うのです。その気持と、さらにとにかく再建案をあなたの方でお示しになって話し合いをされるべきだ、このままで放置しておったって問題は解決しないわけです。経営者としてこれをどういうように乗り切ろうとされておるのか、これをお聞かせ願いたい。
  108. 田中直正

    田中参考人 すでに昨日不渡りが出まして銀行取引が中止になっています。これは急速この委員会が済んで東京の方で在京の有力者と打ち合わせまして、債権者と打ち合わせまして意見を聞きまして再建案を至急に作ろうと思っています。
  109. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、あなたの方の側の再建案はまだできていないのですか。
  110. 田中直正

    田中参考人 できております。ですけれども今度事態が変わりまして、不渡り処分が出て銀行取引が中止になりましたものですからこれは変えなければならぬ。大口債権者に相談しなくてはならぬ、こう私は思っております。事態が急変しましたものですから、そういう事態の中でございますから、これはまた長くかかるものじゃなしに、かけてはあとまた困りますから速急にやろうと思っています。
  111. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと田中新社長は、今不渡りが出ている分を早急に対処して、倒産のような状態にならないよう努力したい、こういう気持ですか。
  112. 田中直正

    田中参考人 もちろん倒産を座して待つわけにはいきませんし、またきょうのある情報ですが、情報ですからそういうことは言えませんが、破産をしやせぬかといううわさも立っておりますから、至急に債権者と打ち合わせてみたい、そしてすぐに再建案を作ろうというよう考えております。
  113. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 賃金の未払いだけは至急対処をしなければ問題は解決しない。やはり団交の前提条件は賃金の未払い解決ですよ。賃金の未払いさえ解決すれば、今起こっている派生的な問題はすぐ解決するのじゃないか。そうしたら組合としても当然了承をすると思うのです。ですからとりあえず賃金の未払いと今起こっている問題の対処、これは必要でありましょう。一日おくれれば一日再建が遠ざかるのですから、感情的にならないで早急に手当をしてもらいたいと思っているわけです。まずあなたの方は、団交の条件としては未払い賃金の原資だけは持って乗り込む、こういうことが必要ではないかと思うのですが、その約束ができまかす。
  114. 田中直正

    田中参考人 先ほど伊藤委員に言ったように、今のところ不渡りにもなっているし、銀行取引も中止しておりますし、まず第一に銀行どめを解いてもらって、お前たちは金を作ってこい、経営者も金を作る、そして努力もしましょう、そうして何とかしようというムードを作らなければ、今このままで、毎日福岡銀行に電話をかけている、幹部はつるし上げにあっているという状態で金を作れといっても金の作りようがないわけです。これはみっともない話でございます、私の責任でございますけれども、そういう状態です。
  115. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 どうも福岡銀行との関係が僕はよくわからぬのです。さっきは福岡銀行に協力を願うとおっしゃる。それから福岡銀行にはこれ以上借金はできないから、福岡銀行との関係は私はもう最高限度だと思います、自分で作りたい、こうおっしゃっているところがよくわからないのですよ。
  116. 田中直正

    田中参考人 福岡は御存じのように東京のように広くない、狭い町でございますし、各銀行に話しに行っても、あれじゃということで銀行がみんなそっぽを向くのです、実際言えばですね。この前千五百万円借りるのも、田中さん大正鉱業じゃうちはちょっと取引はしたくないからというような状態でございます。よその銀行もそっぽを向いておるような形です。だから私が言っているわけです。
  117. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 あなたの目がどうも労働組合だけに向いておるような気がするのです。われわれ心配しておるのは、対労働組合、対経営者という問題じゃないのです。ですから労働組合のことに重点を置いて問題の対処をされておるところに間違いがあるのじゃないか。たとえば飛行機からビラをまかれた。われわれも内容を大体知っておりますけれども、組合を非難するようなビラをまかれた。時期はそんな時期じゃないわけです。飛行機からビラをまいたりするような時期ではない。そんな飛行機代があれば、保安要員の賃金を払ってやったらいいと思う。問題解決のポイントが違うのじゃないかと思う。これは労使問題ではないとわれわれは考えておる。あなたも労使問題ではないと考えておられるのじゃないかと思う。しかるにやっておられることは、対労働組合対策ばかりですね。賃金も払わぬで対労働組合対策をやったってむだですよ。そこの認識が私はどうも違うのです。飛行機でビラをまくくらいの費用があったら、そんなものはお出しになったらいい。保安要員に払う賃金がないという状態の中で、どうしてそういうことをされるのか。
  118. 田中直正

    田中参考人 飛行機でビラをまいたということは初耳です。会社はそういうことはいたしません。まいたことはございません。それは何かの間違いじゃないでしょうか。飛行機でビラをまくというのは、相当金が要るのじゃないでしょうか。それは実際いえば、ちょっと私は考えられません。それは何ぼ要るか知りませんけれども、まいたことがないから知りません。これは何か間違いじゃないでしょうか。
  119. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 組合の方からお聞かせ願いたい。私は手元資料としてそのビラの内容まで持ってきておる。これは社長が知られぬとするならば、一体だれがまいたのか。これを組合の知っておる範囲内でお聞かせ願いたい。
  120. 福島武雄

    福島参考人 これは今聞いたところは、全然初めてでございますが、午前中まだ始まる前に、私のここの席の前で今井石炭局長田中新社長があの飛行機のビラの内容について国会で取り上げてもらう、こういう話をされたばかりなんです。それでそのことは順序を立てて申し上げます、午前中に私がこの目の前で聞いたばかりですから。  このビラの件については、名前は中間市の民主再建同志会という名称が掲載されております。二十七日に福岡県の地方労働委員会が事情聴取のために労使双方を地方労働委員会へ呼んだときに、まずビラの話が出ております。ビラの内容につきましては、福岡市の川端支店長が大正デモ隊につるし上げられて心臓麻痺で死んだ、いわゆる殺人デモだとういふうに書いてあります。従いまして、その記事を持って新聞社に会社側から見えたそうです。これは新聞社の記者の方ですから、明確に名前も言えるし、証人に立ってもらえると思いますが、丸岡委員長も同席におられたわけです。新聞社の方から言われた。新聞社の方では、そういうデモ隊によって心臓麻痺で死んだという事実があれば、その場で当然問題になるはずである、あるいはそれがもとでもし心臓麻痺で死んだということになりますれば、当然そのことはいわゆる司直の手で捜査されなければならぬ、こういうことでありながら全くその根拠がないので、新聞の報道については断わりました。それは一社ではありません。新聞社の方がなおつけ加えて申されましたことは、われわれが聞く範囲において、われわれが把握しておる範囲では、大正のデモ隊が個人を外に出してつるし上げた事実は福岡ではありません。それから二月七日に総決起大会を持ちまして中間市の支店長に抗議文を手交するときに、あの狭い中間市の事務所の中では当然営業もされておるし、外に出てもらって抗議文を読み上げて手交した事実はあります、こういうことを新聞社の方が言われました。全くその通りです。それから三、四日して、これはだれかわかりません、姓名もわかりません、中間の新聞販売店にそのビラを持って全部これを新聞折り込みにしてくれということで回ってきたそうです。従って新聞販売店が全部断っております。それから一両日して飛行機からビラがまかれたというのが事実でございます。以上です。
  121. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ビラがまかれたことは事実ですね。
  122. 福島武雄

    福島参考人 そうです。
  123. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、社長自身は御存じないわけですね。
  124. 田中直正

    田中参考人 私、飛行機からまいたということは、東京におりまして、あとから電話で聞きました。しかし会社がまいたということじゃないのですよ。何か飛行機でまいたようだ、だれがまいたかは知らぬというのです。会社自身はまいておりません。また実際問題としてそういう金はありません。
  125. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 よくわからぬですけれども、もの好きな人がおるものですね。会社がまいていないというならばまいていないでもけっこうです。  先ほどの保安要員の賃金を払うということについて、炭労が立てかえ払いをしましょうということですから、それについてもいろいろな条件をつけるというのは、私はおかしいと思うのです。保安要員に賃金を払うということは当然でしょう。あっさり払われたらどうですか。金がない場合は炭労が立てかえると言っておる。こんなものに条件をつけるから労使関係はますます紛糾しますよ。こんなことをやっておったら労使とも倒れてしまう。ですから、問題はそこにあるのじゃないのです。あなたの方は労働対策ばかり狂奔されて、どうも問題のポイントをはっきり推進しておらぬように思うのです。地労委がせっかくあっせんをしておるから、条件なんかつけぬで、保安委員賃金を払うのは当然のことでしょう。その賃金は、金がないなら炭労が立てかえるというのですから。こんな条件をつけなければのめないのですか。
  126. 田中直正

    田中参考人 保安要員には大正行動隊という過激な人間がおりますし、ダイナマイトで坑内をつぶすぞとか、家をぶっつぶすとかいう危険ななにがおりますから、会社としては人選させてくれ、会社の指揮命令でやってくれ、こういうことを言うたわけです。  それから賃金の問題はやはりさっき言ったように、炭労から今借るとか借らぬとかいう問題でなくて、問題は、やはり借っておけば返済しなければならぬ。ですから返済できぬ金を借ってもどうするか。やはり根本的に再建というものを作ってやるのがほんとうじゃないか、こう思うのです。
  127. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 保安要員の賃金はどうしても払わなければいかぬでしょう。借金のうちに入らぬですよ。保安要員は坑道の維持をやっておるわけです。それでないと崩落するわけです。ですから、保安要員に対して出す、これが債務になるならぬという考え方がおかしいので、だれが入ったって賃金を払わなければいかぬでしょう。保安放棄をすれば別ですよ。会社の方でこれは当分やらない。だれでも入ったら賃金を払わなければいかぬでしょう、何も労働組合だけでなくても。賃金は要らないけれども、私が入ってやりましょうという人がいるのですか。ものの考え方がちょっと違いはしませんか。これは債務じゃありませんよ。当然払うべき問題です。だれか入らなければまずいですよ。
  128. 田中直正

    田中参考人 現在職員で保安は確保しております。
  129. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 しかし職員だって払わなければいかぬでしょう。
  130. 田中直正

    田中参考人 職員は全然払っておりません。実際を言えば金がないのですからね。金があればそういう事態もないのです。金がないのです。そのない中をどうするかということで頭を痛めておるわけです。
  131. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 ですから、今はお金がないからこれを炭労が立てかえましょうという話をしておるのですから、今金がないというのはわかりますけれども、しかし今職員が入っておるからあれは賃金をやらぬのだ、そういうことが通りますか。
  132. 田中直正

    田中参考人 これは待ってもらうのです。
  133. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 炭労も金がないであろうから立てかえると言っておる。これは待つということですよ。ですから、どうもあなたの方はいやがらせをしておるのじやないか。どこの世界に保安要員に賃金を払わぬで、そうしてその保安の確保を私の方でやります、こういう人がありますか。これは経営者みずから保安を放棄していることになりはしませんか。
  134. 田中直正

    田中参考人 私の方は保安を放棄しているのじゃありません。そういう過激の人も入れてもらっちゃ困る、人数、人選は会社の方でさせてくれ、こう言っているわけです。人選と保安の個所を会社でやらせてくれ、こういうことでございます。
  135. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうするとさっきの話とちょっと違いますね。さっきはどうせ炭労から借りても返さなければならぬから、それで金がないから払わぬ、こういう話と、それからさっき出ておりましたけれども、過激な人間と、この二つのですね。一体そんな過激な人がおるのですか。坑内で事故が起きれば、自分も含めてみんな死ぬんですよ。ちょっとわれわれじゃ考えられませんね。組合長どうなんです。
  136. 福島武雄

    福島参考人 過激な人と言われますが、これは御存じのように大正行動隊というグループがあります。これが四十名上京しましたおりに、東京へ二名残って神戸銀行にデモをかけたとかなんとかいうことがありました。これは山元に帰ってきてから、山元で厳重に処分をしております。それから以前にも福岡銀行の前でビラをまいたという実績がありましたので、そのことも厳重に処分をしております。そういう独自活動を一切規制するという大会決定もきめておりまして、どこからそういうものが聴取されたかわかりませんが、今は一切組合の一つの行動指令によって行動がなされております。その他に独自でそういう危険な行動をしたり、あるいはビラをまいてダイナマイトを持ち込むとかなんとかいうことは、私の方では一切把握をしておりません。もしそういう事実がありましたらお願いしたいと思うのです。
  137. 田中直正

    田中参考人 ダイナマイトをぶち込むという写真がここにありますから提出しよう。それで多賀谷委員がおっしゃるように、保安要員の金も払わぬとか、そんなばかなことはない、もっともな話だけど、五日と二十日に私に払うと私前に言うたのですよ。それをけられたのですよ、実を言えば。マイトをぶち込むというのは、私の家、鉱業所、事務所、全部やられているのです。坑内にまでやっております。
  138. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 坑内をマイトでぶち込むというような非常識なことをあなたはほんとうだと考えられますか。あの三池のような熾烈な争議でも、人まで死んだけれども、そういう事態は起こっておりませんよ。一番坑内を愛するのは坑員ですよ。坑員は自分の職場ですもの。自分の生命ですもの。社長の生命じゃないのです。そうしてマイトをぶち込めば自分も含めて死ぬんですよ。それは会社坑内を愛するという以上に働いている坑員の方が愛しますよ。そういう非常識なことをあなたは信じてほんとうに社長として再建されるおつもりですか。
  139. 田中直正

    田中参考人 何も関係のない日本銀行にデモをかけるような過激な人ですから、強姦した人でもおれは強姦したのじゃないというような人ですから、私はそれは信用します、こういうふうな事実がありますから。
  140. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その不信感というものが、私は、この再建に非常に支障を来たしていると思うのですよ。しかし常識では考えられないでしょう。自分の命もなくなるのですからね。まあこの問題はいいですけれども、そういうものの感じで労働組合に対処しておられると、これはできないと私は思うのですよ。そうして実際それはこれにダイナマイトをぶち込むぞと書いてある。しかし、坑内にダイナマイトをぶち込んだら——何のために炭鉱労働者はこんな苦労をしておりますか。坑内がなくなるなら何も苦労していませんよ。それから一番坑内を愛するのは社長じゃないのですよ。自分たちの職場のなくなる者ですよ。ですから私は、このことは十分留意して、そういう流言のようなものを信じて労働行政をおやりになるということはやめてもらいたいと思う。  それから私は最後に、こんな状態ではなかなか解決しないと思うのですが、そこでまず第一に、あなたの方は今手形の不渡りが出ておるなら、その手当をして、まず賃金だけは用意して、そうして再建に臨む、再建案の交渉をやる、これが必要じゃないでしょうか。とにかく大正問題はこのところ、この石炭委員会はもちろんですが、通産省、労働省、大蔵省の銀行局が、この数カ月みんなこの問題でてんてこ舞いされているのですよ。それはほんとうに迷惑をかけている。あなたは新社長で、おれの知ったことじゃないと言われるかもしれませんけれども、一つ十分あなたの方で腹をきめてもらって、それは政府で協力できる政府で協力できることは政府にお頼みになり、われわれもまた協力いたしますよ。あるいはまた銀行でできることは、大蔵省を通じてあるいは日本銀行を通じて協力もいたしましょう。ですから一体政府は何と何と何をやってくれ、銀行は何をやってもらいたい、こういう要望を出されて、今の大正鉱業のベースの中では解決がむずかしくとも、みんなが知恵を出してやれば、私は再建もそう不可能ではないと思うのです。でありますから、あなたは社長になって出られたのでありますから、政府に対してはこの点、合理化事業団についてはこの点、開発銀行についてはこの点だということをはっきりあなたの方から出してもらって、一緒に再建案を検討するということが必要じゃないだろうか、こういうように思うわけです。一つ最後に社長からその所信を承りたい。
  141. 田中直正

    田中参考人 多賀谷委員から話を承りましたが、多賀谷委員は大正の地区の出身代議士でございますし、特に会社の問題には日ごろからお世話になっていると私ども聞いております。そこでわれわれ経営者側の至らぬところも聞かしてもらうし、また組合側の行き過ぎも是正してもらう、そうしてお互いが、あなたがおっしゃる通り、けんかばかりして、いがみの権太みたいになってしまってはどうもこうもならぬのです。これを一日も早く労使関係を正常に戻して、そうして話し合いをして、一日も早く今の不渡りの問題を何とかしなくちゃいかぬ、こう私は考えております。そうして賃金も——われわれも金を作るぞ、そのかわり銀行デモをやめてくれ、金を借りていくから、こういうムードを一つ皆さんの力で作ってもらいたい。われわれはそれに対して報いるものは報いなければならぬと思っております。
  142. 有田喜一

    有田委員長 だいぶ時間もたちましたので、質問者も、それから参考人の方もできるだけ簡潔にお願いいたします。  岡田利春君。
  143. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 先ほど田中社長さんが言われたことは、福岡銀行に対するデモをよしてほしい、さらに、つるし上げ、大衆行動の点について組合に要望されておるわけなんで、そういう状態で話し合いをしたいのだ、こう言われておるわけなんですが、田中さんが社長を引き受けられてあの困難な大正に入ってきたわけですから、当然ある程度の再建の柱になるものはお持ちでなかったら、私は社長を引き受けることはできないと思うんですね。ですから、たとえばそういうことで話し合いを組合とするという場合には、基本的な構想というものはあろうと思うのです。賃金はどうするのか、あるいは、その後再建をしていくためには、十分でなくても大体柱になるものがなくてあなたが社長を引き受けられたはずはないと思うんですが、その点はいかがでしょう。
  144. 田中直正

    田中参考人 未払い賃金は、二月の六日の日に通産局長のあっせんがありまして、あれで解決してくれるということで、実を言えば、あれで解決する予定でございました。あした金をあとの半分は払うということでした。それで私は金をこしらえに回ったんです。そうしたら、組合がそれをけったんです。そうしたら、その明けの日から銀行もこういう事態になったんです。決して私はその金をこしらえるのにのほほんとしておったのではない。また、実際私も、二代目じゃございません、たたき上げの人間でございまして、貧乏で育ってきた人間ですから、金を払わなかったらどうということはよく知っております。今お互いにこうなっていますから、これを早くほぐして話し合いに入らなくちゃいかぬ、こう思っております。
  145. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 ですから、話し合いに今入っても、それからこういう態勢ができて、再建の計画会社が立てて、それから話し合いをするということになると、まだ一カ月もかかると思うのです。炭鉱の再建計画なんというものは、そう簡単にできるものじゃないです。私も二十年間炭鉱におるのですから、炭鉱坑内にも詳しいわけです。ですから、私が聞きたいのは、そういう要望を組合に一方なさいますけれども、未払い賃金は、前のよう方向、あるいはそれより一歩前進させて解決するよう努力をするという考え方が具体的にあるかどうか、あるいはまた、田中さんとして、その話し合いに応じた場合には、どういう柱を立てて再建をしようとするのか。これはやはり僕はあると思うのです。態勢についてはこういうことにしたい、人が多いのか少ないのか、賃金はどうなのか——あなたの方は下げてほしいという要望を組合にしておるわけですね。そういうものが全然なくてあなたが社長を引き受けるということは、あなたも相当小さい山をやられて苦労されておる方ですから、そういうばかなことはないと思うんですね。だから、そういう柱になる点でいいんですが、それがあるのかないのか。ないとすれば、話し合いをしても一カ月もかかる。一カ月をどうするかということをやらなくちゃならぬ。この点はいかがでしょう。
  146. 田中直正

    田中参考人 もっともな話でございます。その点は、私、再建案が大体骨子はできておりましたけれども、これは不渡りの問題があって、債権者と今まで相談しなかったのです。というのは、実を言えば債権が三十八億からあります。これを毎月々々何ぼずつ払ってもやれませんから、債権を返す前にそういうことをしておったら、債権者が言うことを聞かぬ。とにかく、うちはうちでこうするから、外部もこうしてくれということでいこうと思ったわけです。ところが、不渡りで銀行取引が中止になったものですから、ふっ飛んでしまったんです。これは今度は逆に債権者に話をしていかなければならぬ、こう思っております。しかし、賃金問題は何とかして片づけなければならぬという考えも持っております。決して私はそういうほったらかしという気持は全然ございません。
  147. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 あなたの気持は今私聞いたわけです。そうすると、当初のある程度のアウトラインの再建計画というものは自分の構想としてはあったんだ、それが事態の推移に伴って事情も変わって、再建計画というものは根本的にやり直さなくなゃならぬし、あるいは多くの債権者に対しても相談しなければならぬ、こうなりますと、たとえば今話し合いに入っても、私は具体的に話し合いにならぬと思うのです。いろいろ手ずるがあるわけでしょう。それをやってから組合と話をしなければ、再建計画というものは私は実際問題として立たぬと思うのです。そうすると、一体これからどのくらい期間があればそういうものができるのか、それまで一体どうするのか、この点どうお考えになっておるのでしょうか。
  148. 田中直正

    田中参考人 一日も早く——事態を一時間でもほっておくわけにいきません。私は不渡りの問題だけは何とかしなければならぬという考えを持っております。まずあせっているわけです。しかしながら、実際問題として再建計画をここで作って、作るといっても、もう速急に作らなければいけない。今骨子はありますから、これに肉づけをして作らなければならぬと思っております。あなたがおっしゃるように一カ月もかかると、こっちの方が参ります。参るどころの騒ぎじゃございません、普通の会社と違いますから。
  149. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そういたしますと、情勢は非常に切迫しているということになるわけですね。ですから、そういう情勢に対してどう対処するのかということが、当面考えらなければならぬ問題だと私は思う。それには、会社会社としての対策もあるでしょう。しかし、一方労働者も、働きたくても現状では食うに食えない、賃金は払わぬ、坑内条件は悪い、一ぺんに就労できる態勢ではないということになりますと、この事態に一体どう対処することがいいのか。労働者の方はもう今かまっておられぬのだ、会社の方が火がついておるのだから、こうなってきますと、これはたとえば話し合いがついても、労働者が入れる態勢というものがますます悪化すると思うのです。そうなってくると、大正の再建というものはできるのかどうか。田中さんは、こういう情勢の中でほんとうにまともに再建できるんだ、スタートできるのだと考えられておるのかどうか。これは考えたけれども、やはり事情も変わってだめだ、わしは社長として自信がないとすれば、これはまた根本的に考えなければならぬ問題でしょう。自信はおありですか。
  150. 田中直正

    田中参考人 自信があるかといってお問いになれば、正直に申しますが、これは、はい、絶対に自信があるということは言い切れない事情にあります。これは傷が深過ぎますから。それかといって、自信がないと言って投げ出してしまうわけにも参りません。私が社長をやめて済む問題でありません。私が社長をしていれば、責任は私にあるんですから、全責任を私はかぶろうと思っております。それで、これに対して私は今、自信があるからやるということも言い切れない。しかし、石にかじりついてもこれは何とかしなければならぬという気持は一ぱいなんです。
  151. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 その点、私も経過を知っておるものです。たとえば福岡銀行に対して、ある過程においては、個人保証をしても一億なり二億の融資を何とかしてやってくれ、そうして再建を軌道に乗せてくれ、そのためには技術屋も貸しましょう、あるいは資材の面で応援できるのはしましょう、こう言ったけれども、福岡銀行はこれを認めなかったわけです。それではだめです、私の方で候補もおるし、田中さんを推薦します、こう福岡銀行は、通産省に対しても、いろいろなところに対してもはっきり断わられたわけです。ですから、私は、デモをかけていることは、福岡銀行が金を出さなかったということなら、これは話はわかるのですよ、それはデモを解けばいいんですから。しかし、そこまで福岡銀行が対外的に言い切っておるわけです。大蔵省に対しても、銀行局に対しても、通産省に対しても、石炭協会に対しても、民間、官公を問わず、明確に福岡銀行頭取ははっきりした態度を表明しておる。そういたしますと、やはりその平常な状態で再建計画を進めるということになれば、とりあえず賃金くらい払って、あるいは保安、資材を確保できるくらいの融資をするということが、田中さんを推薦するときにないとすれば、福岡銀行は何も田中さんを推薦する必要はないんです。それがないとすれば、田中さんと福岡銀行のつながりというものがないということになると思うのです。対外的にそういう大蔵省や通産省や、民間の石炭のいわゆる指導省である石炭協会に対しても、田中さんを推薦したということは、ある一時的な融資もします、ある点ではたな上げして将来解消するような点で協議するんだ、こういううしろだてがあって初めて福岡銀行が通産省や大蔵省に対してはっきりした態度がとれた理由でなければ、何で田中さんと福岡銀行はつながっているんですか。その点いかがでしょう。
  152. 田中直正

    田中参考人 私は福岡銀行の株主でございます。しかしながら、はっきり言えば、福銀がお前を推薦するから出てくれということは言われておりません。はっきり言うと、この前は推薦されました。その前の副社長のときに伊藤さんから話があったわけです。そうして頭取の意見を聞いたら、出てやってくれという話があった。今度はその話がありませんでした。  それから、福岡銀行にデモをかけてマイナスになるかプラスになるか。プラスになれば何ぼでもかけなさい。福岡銀行だけではないのですよ、ほかの銀行にもマイナスになるから、私はそれを心配しているのです。
  153. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 そうなりますと、奇奇怪々、不可解だということになるのです。福岡銀行の頭取さんは政府の要人にも会っておるし、佐藤通産大臣ともそういう面については意思が通じているわけです。田中さんが出るについても、佐藤通産大臣とお会いになったことがあるのじゃないかと思うのです。それで、福岡銀行が推薦するのだから、田中さんを社長にして、組合の人も協力しなければなりませんと、佐藤通産大臣が言っているのです。あなたの言われたことを聞いていると、大臣がうそを言ったということになるのです。福岡銀行は何も推薦しないということなんですから……。通産大臣は、田中さんでなければならない、ほかの人ではだめだというものだから、万やむを得ず、大蔵省も銀行局の方も手がない。通産大臣もそうであるならば、福岡銀行もそこまで言うならば、田中さんを推薦する、田中さんにやってもらえば、徐々にでも何とか再建の方途がつくのではなかろうか、こういうことで通産大臣は割り切り、私どもに対しても、あるいは陳情団に対しても、そういうように通産大臣が話をされているわけです。通産大臣はうそを言っているのですか。
  154. 田中直正

    田中参考人 私は社長になるときも、通産大臣に会っていないのです。福岡銀行の頭取にも会っていないのです。そうして伊藤さんと会って、ぜひ出てくれ、こういうことですよ。これは事実です。これは通産大臣の炭鉱じゃございません。また福岡銀行の炭鉱でもないのです。これはやはり伊藤さんの炭鉱ですから、伊藤さんに頼まれて、今度は頭取のところへは行けませんぞということを伊藤さんにはっきり言うております。
  155. 岡田利春

    ○岡田(利)委員 この問題は水かけ論になって、福岡銀行の頭取さんにでも来てもらって話をしなければなりませんし、これは銀行法の面からいってもどうなってくるのか、その内容が解剖されてくれば問題点が出てくるのではないかと思うのですが、頭取にも会っていない、通産大臣にも会っていない、全然伊藤さんとの話し合いだけだ、そういうことを聞くことは、今までこの問題を取り上げてきたわれわれとしては非常に不本意なんです。しかも、それだけであるならば、われわれの今までやってきたことと全然違うわけなんです。ですから、ここでこれ以上あなたと討論しても、これ以上何も出ないと私は思うのです。  最後に、私は一点要請をしておきたいのですが、今日石炭産業は普通であってもゆるくないわけです。まして、四月一日になれば二百五十円も炭価を再度引き下げなければならぬ、こういうことで、山を休んでいても炭価の方は下がっていく、こういう事情ですから、日にちが過ぎれば過ぎるほど、再建はより苦しい条件に置かれることは事実です。そういう点で、初めから困難であるということを覚悟されて田中さんは社長を引き受けられたのだから、私はおい立ちも聞いておるのですが、あなたも非常に苦労されておるのですから、相当度胸もおありのようですし、すっ裸になって組合を説得してでも自分はこれでやっていくという姿勢があってしかるべきだし、そのことが、いろいろ世上いわれていることを払拭することではないか。あなたもからだを張ってこの問題については再建をしたいという熱情を持っておられるようですが、その点で問題があるとすれば大へんですし、これは地元の多賀谷さんもおりますし、また関係者もおるわけなんですから、そういう問題について私はそうあなたが憶測されて心配するようなことは起きないと思うのです。そういう姿勢を積極的に示して、向こうがいやだと言っても、むしろ首になわをつけてでも引っぱってくるくらいのことがなければ、賃金も払っていないのですから、難局をなかなか突破できないと思うのです。そういう気持と姿勢を持たれることを私は希望したいと思うのです。  労働省その他の関係も来てもらっているので、ここで労働省に伺っておきたいのですが、今お聞きの通りで、大正の実情はおわかりになったと思うわけです。これが再建するとしても、坑内関係は、私の坑内経験から考えて、一斉就労できる態勢ではないと思うのです。将来分割的に再建する場合でもやはり問題が残ると思うのです。それは保安局長もおりますし、地元からもいろいろあるでしょうが、そういう面から考えていきますと、やはり労働省としても、再建の方向がある程度打ち立てられてくる、そういう方向で労使が話し合いをするという場合には、今日でき得る、たとえば一時帰休制をとるとか、そういう態勢をしいて、今日の事態がスムーズにいくようにするとか、そういう点、労働行政の配慮があってしかるべきだと思うのですが、その点いかがでしょうか。
  156. 三治重信

    ○三治政府委員 今お話のありました点につきましては、今日の状態では非常に無理だと思いますが、そういうように再建計画ができて、労使の話し合いがついて、そして就労の場になってそういう具体的な問題が出てくれば、十分考慮したいと思います。
  157. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今の話によると、再建計画はなかなかできないですよ。その前に一つ帰休制をやられ、そして話し合いはその中で進める。今保安要員を出しても、賃金を出さぬと言っておるでしょう。働いても賃金はもらえないし、生活保護の申請をしても、もらえる人もあるでしょうが、財産のある人がある。まして、ほんとうは退職金その他の債権があるのですから、なおむずかしいのですよ。ですから、むしろ、話し合いは一方で進める、その間は保安要員を残して全部帰休制にして失業給付をやる、これはどうなんですか。
  158. 三治重信

    ○三治政府委員 今たしかストライキ中なんですから、ストライキ中にそういうことはできないと思います。それから一時帰休のことも、われわれの方の従来とってきた線は、やはり労使協定をして再雇用が確実になった場合においてやるということですから、やはり労使の話し合いが軌道に乗らぬと無理じゃないかと思います。
  159. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 争議といっても、賃金を払わぬことが初めからわかっておるのに、労働省は働けと言えますか。これは基準法違反ですよ。少なくとも基準局が指導しなければならぬ問題でしょう。ですから、これは普通の状態とは違うのですよ。働いてもいつ賃金がもらえるかわからぬ、まして、保安要員でさえももらえるかどうかわからぬし、地労委のあっせんすら拒否の態度をとられておるのですから、これは超非常事態ですよ。その意味においては、労働組合の方は緊急避難といっておりますが、まさにそういう状態にある。働いても賃金をくれるかどうかわからぬのに、私は休みますと言ったら、それが争議といえるかどうか。経営者の方が、じゃそうして下さい、ちょっと賃金見込みが立たぬ、じゃ山の再建の話ができるまで失業保険をもらって食いつなごうか、こう言ったら、労働省としてはOKになりますか。
  160. 三治重信

    ○三治政府委員 従来の考えていた線と、今の御質問と、条件が非常に変わってくるわけですから、その点は、もう少し会社労使の関係を見て検討させていただきたいと思います。
  161. 中村重光

    中村(重)委員 保安局長に伺います。お聞きの通り、保安問題というのが非常に軽視されておるという感じがするのであります。保安要員に対しては賃金を払わぬ、保安協定もできておらぬ、こういったことは、保安上ゆゆしき問題じゃないかと感ずるわけです。保安局長としてはおそらく今初めてお聞きになったのじゃなしに、そうした状況は前もって御存じになっておられたのじゃないか。これに対して保安局長としては注意を与える、あるいは警告するとか、あっせんするとかいうようないろいろな方法があったのじゃないか、こう思いますが、それに対してはどのような措置を今までおとりになったのか、その点を伺ってみたいと思います。
  162. 八谷芳裕

    ○八谷政府委員 現地の福岡の鉱山保安監督部で、一斉休業に入ります前に、二十九日から三日まで六日間、従来監督官は一人ないし二名行って調査をいたしておりましたが、六日間にわたりまして四名の監督官で精密調査をやり、そしてただいまもちょっとお話が出ておりましたが、八十六項目に及ぶ指摘をいたしまして、そのうち特に重要な十二項目につきまして監督部長の通達を行なったわけでございます。この通達が生きてきまして会社側が改善を行なえば、急迫の危険はない、そして作業はやっていける、こういうふうに判断をしたわけでございます。しかし、そのうち改善されたのもございますが、その会社側に通達いたしましたのは六日でございますので、その直後に一斉休業に入りまして、現在は保安要員を入れている状態でございます。ところが、それでは保安要員が入っている現在の坑内の状況はどうかということでございますが、本坑と新中鶴と二つに分かれておりまして、本坑の方は比較的まだ保安状態についてはそう憂慮すべき状態にない、ただし、新中鶴の方はある程度憂慮すべき状態にある、こういうふうにも聞きましたので、きのう朝の五時福岡を出発いたしまして三班の調査員を派遣いたしまして、本坑に二班、新中鶴に一班派遣をしたわけでございます。その結果の詳細はまだ聞いておりませんが、概要は、私どもが想定いたしますと同じように、本坑関係はまだいい、しかし、新中鶴関係におきましては、払が二つあるうちの一つは大丈夫だが、一つの払の方は半分程度痛みかけておる、こういう状況、その他数カ所、仕繰等を実施していかなければ、いざ操業といったときには混乱を来たす、しかし、今現在の保安要員に急迫の危険があるという状態ではないと推定される、大体こういうふうな状況でございます。これはここへ来ます前に、十時ちょっと前に得た情報でございまして、その後も検討を続けておると思いますが、必要な保安要員を入れていく上に必要な改善措置があるとすれば、これは監督部長の方から通達をやる、こういう考えを持っております。しかし、保坑という問題は、相当に、保坑状態が長期にわたりますと、だんだん坑内が荒れてくるのは当然でございます。一日も早く労使双方の話し合いができまして、完全な保坑がまず行なわれるということを非常に期待しておるわけでございます。現在の状況で急迫の危険がないとはいえ、このまま推移いたしますとどういう状態になるかわからない、こういうことなるわけでございます。保安局の保安を担当いたしますものといたしましては、何をさておきましても、人に対する危害の防止ということが先決であると思うわけでございます。保安要員を入れている現状におきましても、これは一番心配しておるわけであります。保安要員自体が現状ような状況でけがをされる、あるいはたっとい命を失うということになると、これはとんでもないことだと思うわけでございます。こういう点には十分な注意をいたし、厳重な監督も行ないたいと思って、きのうも六班を派遣したわけであります。大体そういう状況になっております。
  163. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま保安局長としては、現在の時点に適するいろいろな対策をお立てになっておられる、そのことで了解をいたします。保安の問題というのは、いろいろなトラブルがありますと、うまくいかぬのでありますが、そういうことから事故が起こる。保安問題がいかに重要であるかということに対しましては、私は申し上げる必要はありません。保安法の改正等、いろいろな保安の強化をやらんとしておるのであります。この面については一つ厳重な監督をおやりになって、遺憾なきを期してもらいたいということを強く要望しておきます。  なお、田中参考人にお尋ねいたします。保安要員の問題は地労委のあっせんになっていると思うのでありますが、この保安要員の問題に対しては、地労委のあっせんに応ずる意思があるかどうか、この点を伺いたい。
  164. 田中直正

    田中参考人 現在応じておりまして、条件を出しておるわけであります。私の方はその条件が満たされれば受け入れる、こういう状況であります。今あっせんをしつつあるところであります。この委員会がありましたので、この八日からまた現地の地労委の方でやることになっております。
  165. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実は実質上の再あっせんをやっておるわけですが、再あっせんをやったら、応じられますかということを聞いているのです。
  166. 田中直正

    田中参考人 再あっせんには応じますけれども、条件があるので、条件を基礎に私は申し込んでおります。
  167. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 それは応じないということじゃないですか。条件が引っかかって実際上はうまくいかなかったのですね。
  168. 田中直正

    田中参考人 地労委でも、やはり経営者の意見がありますから、その意見を入れられてあっせんに入るということにならなければ、これは地労委さんがこう言ったからそうしますというわけには実際いきません。やはり会社会社意見がありますので、その意見によって地労委さんにあっせんを願いたいと、こう考えております。
  169. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 今あなたの方で地労委のあっせんについて条件を出された、これが実質上の拒否の形になっているものですから、また再あっせんをしておるという状態でしょう。ですから、再あっせんするについては、若干いろいろな点を考慮するでしょう、しかし、これには応じられますかと言っているわけです。新しいものについて……。
  170. 田中直正

    田中参考人 あの条件外にはもう——私の方はあの条件によって入れてもらいたいという意思がある。それでなければこれは仕方がないと思います。
  171. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 応じないのですね。
  172. 田中直正

    田中参考人 ええ。仕方がない。
  173. 中村重光

    中村(重)委員 今の保安要員の問題、あっせんに対して応じないということは、それはあなたの自由ということになりますが、しかし、それは個人の立場からはそういうことが言えるかもしれませんけれども、しかし、少なくとも保安というものの重要性、それが経営者に与えられた社会的な重大な責任ということを考える場合に、この地労委のあっせんに対しては、あなたは応ずる義務があるということをお考えにならなければならない、私は強くそのことをあなたの反省を促したいと思います。  なお、時間もございませんので、質疑応答の中で感じたことを一つ申し上げて、この問題に対してあなたが解決に積極的に乗り出すことを希望したいと思うのでありますが、先ほどあなたの陳述を伺っておりますと、前に副社長のときあなたは辞任された、その後就任の要請を受けたために、一切の権限を自分にまかせろ、株券すら自分に一切まかせるならばやろう、こういうことであなたはお引き受けになったんだということであったわけです。そのことは、あなたはこの現在の労使関係を根本的に解決しなければならない義務をお感じになったのではないか、こう私は思うのであります。それでなければ、一切の権限を自分にまかせろということにはならないじゃないか。あなたはその一切の権限をまかせろということを言われて、そしてそれをまかせられた、引き受けた、これは、現在問題になっている未解決の問題を自分が解決しなければならぬという責任を感じてそういう要求をなさったのではないか、そのことに対してのあなたの当時の考え方を一つ聞かしてもらいたい。なおまた、そうであったとするならば、現在のような状態のまま推移していいのかどうか、そのこともあわせてお答えを願いたいと思います。
  174. 田中直正

    田中参考人 私は経営の全責任を持っております。また、持つのが当然でございます。株主としても過半数以上持っておりますから、当然のことであります。私は誠意を持って今後組合並びに債務者の方と話し合いに入ろうと思います。しかしながら、今の地労委の問題は、拒否というのじゃなくて、地労委も会社が言う意見を多少でも聞いてそして関与してもらいたい。実は会社側の言うことは現在の実情では一向聞いていない。はっきり言いますと、それはあまりにも片手落ちではないかと私は思うのです。
  175. 中村重光

    中村(重)委員 地労委が会社側の立場は全然考えない、これはもう議論するということも何かばかばかしいような感がいたします。おそらく地労委はそういった片寄った考え方の上に立ってあっせんをしておるのではない、こう思います。しかし、このことをいろいろ議論いたしましても尽きませんから、その点はあなたの今の考え方を改められる必要がある。少なくとも権威ある地労委というものは、そうした片寄ったあっせんをするものではない、こう私は考えるのであります。  なお、先ほどあなたは、通産大臣とも会っていない、あるいは福岡銀行の頭取とも会っていない、それは通産大臣の担当ではなく、福岡銀行の頭取の担当ではないのだ、あげてそれは自分がやることであるから、こうおっしゃった。そのことはどうもあなたのお気持がわからないのです。通産大臣に会うことも、福岡銀行の頭取にお会いになることも、金融の問題を解決し、経営の問題を解決するそのことにおいて当然あなたがなさらなければならない義務ではなかろうか、私はそう判断をいたします。そういうことが、あなたが一切の経営権を自分にまかせろ、こうおっしゃったことを実行する形になるのだ。それをおやりにならないということは、あなたの重大な責任回避であり、無責任な態度だ、こう言わなければならぬと私は思います。いろいろと労働組合に対する不信感を表明なさったわけです。私はあえてここで労働組合の肩を持って申し上げるわけではありません。先ほど来労働組合長の陳述等を聞いてみますと、未払い賃金の肩がわり、支払いの肩がわりもやった、その他いろいろと今日まで努力をされたことを、あなたの前で福島参考人は陳述されたわけです。そうしてみますと、一般の争議の場合に普通の労働組合がやること以上に、福島参考人のお話を聞いてみますと、より一そうの努力、ほかでもやれないよう努力をしておる。私は、少なくともこの会社の再建に対して誠意を持って組合は対処してきておったのでなかろうか、こういうことに判断が下るわけなんです。ところが、あなたは自分の意に応じなければいけない、自分に協力しろということは、私は率直にあなたの陳述なり、あるいは質疑応答の中でお答えになったことを聞いてみても、絶対自分に服従しろ、自分についてこい、こういったような態度ですね。でなければ話し合いはしないのだ、こういうことから、団交に対しても今日まで一回も応じておられないということは、私はあなたの無責任もその極に達しておるといったような感じを受けます。あえて私はここであなたを誹謗しようとは思いません。しかし、石炭産業の重要性を考えるとき、しかもあなたの山は有望な山であるということを伺いまして、全く国家の貴重な資源を、そういった感情的な考え方、あなた自身の気持によって左右していくということは、これは許されないことではなかろうか、こういう感じがいたします。一つあなたはもっと反省するところは率直に反省をし、さらに労働組合のあなたに抱いておる不信感を一掃する、こういう形でなければならぬ。力をもって、労働組合は飯も食わずにおる、これは参ってしまうだろう、あとでは必ず自分の言うことに従ってくるだろう、こういったよう考え方をもしあなたが持っておるとするならば、全く前近代的な経営方針である、こういうふうに申し上げなければならぬ。私は率直にそういうような感じを受けたのであります。それらの点に対して、あなたはここでいろいろと各委員から質疑を受けたわけですが、その中に、問題の解決に対して自分のとってきた態度というものを反省しなければならない点があった、こういった気持をお抱きにならなかったかどうか、その点に対して伺ってみたいと思います。
  176. 田中直正

    田中参考人 私は、労働組合を干ぼしにするとか、また見殺しにするとか、自分の言うことを全面的に受け入れろ、全面的に言うことを聞け、そういう気持は持っておりません。やはりお互い話し合って、再建の道を——大正鉱業は、どんなに私がさか立ちしても、一人ではできません。やはりスタッフ並びに一人々々の大正鉱業従業員方々の理解と協力が必要なわけです。これをやはりやるということは、私も、今あなたがおっしゃるように、反省をするところは反省しなければいかぬと思う。また、組合も反省しなければならぬところは反省してもらいたい、こう思っております。私自身がやはり反省しなければならぬところもありましょう。また反省しなければならぬことは、確かに行き違いもあった、というのは、なぜかと言うと、どうも先ほど聞くと、私が金を持って入ったような感じが組合の方に受け取られているのではないかと思いまして、これはなるほどと思いました。私、さっき聞きまして、そういう感じの行き違いもあったかと思いますが、しかし、実際はそういうふうに行き違いがあったのではないかと思います。なるほど、社長になれば金を持ってきたと思われたか知らないが、実質は金を用意していなかったものですから、そういういきさつがあったのではないかと存じます。そこで非常に感情の上に行き違いがあったのではないかと思います。そこで、そういう点は私も腹を打ち割って労働組合の幹部に打ちあければよかったという点は非常に反省しております。
  177. 中村重光

    中村(重)委員 炭鉱牢獄といわれた時代ならば、先ほど来あなたがいろいろとおっしゃったことも通るかもしれませんが、少なくとも今日の時代には私は通用しないと思う。また、あなたは、金がないから払えないのだ、かような無責任な態度は、今日の経営者には許されないと私は思う。また、銀行の問題等に対しても、あなたは福岡銀行から金は借りないのだ、ほかの銀行から借りるのだとおっしゃった。私はそのあなたの答弁を伺って、福岡銀行が貸さないものを、どうしてほかの銀行が貸すのか。死んだ子はかわいいというので福岡銀行はついてくるかもしれません、また、実際は生殺与奪の権は福岡銀行が握っておる、こう思う。それをあなたは質問に対して適当にお答えになったのではなかろうか。その次の質問に対しては、いや、ほかの銀行も実は貸してくれないのだ、こう御答弁になった。あなたの答弁が何か二転、三転しておる。そういうところから、誠意というものは感じられないわけなんです。そういったあなたの態度というものが、労働組合との関係を円満に処理し、労働組合があなたに抱いておる不信感を払拭することができないであるというのが、今日の現状ではなかろうか、私はそのように感じます。さらにまた、銀行は不渡りになったのだと言われた。どこかの銀行に対してあなたが振り出した手形によっておそらく取引停止になったのだろうと思うのですが、少なくとも福岡銀行も貸し付けた金の回収はしなければならない。それらの点については、取引停止になるという場合には、少なくとも銀行との話し合いというものはあなたはなされたであろうし、また、取引停止をさすべきかどうかということについても、福岡銀行は十分考えられたところではなかろうか。そのようなことから、少なくともそういう点に経験を持った私どもといたしましては納得のいかない点でございます。しかし、それらのことをいろいろここで詮議立ていたすことも今日の委員会内容ではないと私は考えますので、そのことはこれ以上触れません。  最後に、あなたにもっと誠意を持って、もっと責任を感じて問題の解決に当たってもらいたいということであります。石炭産業という重要なこの産業をどう伸ばしていくか。山で働いておる労働者生活をあなたは守る義務があるということをお考えにならなければならない。しかし、あなたは、おれは経営者だ、おれは権利があるのだというよう考え方で、全く昔の経営者が労働者に臨んでおったような態度というものを一歩も出ていない、こういうように感ずるわけなんです。どうぞ一つ、せっかくのこの大切な委員会の中の審議でありましたので、その点にも誠意を持って努力していただく、また私どもといたしましても、政府に対し要求するところはどこまでも要求をいたします。率直に委員会に対しましても相談するところは相談をしていただく、こういうことで、きょうのこの委員会参考人として御出席されたこの質疑応答の中にいろいろと問題を深めていった、このことを十分一つあなたも生かしていくよう努力をしていただきたい、私どももまたそのつもりで対処していくということを一つ申し上げたいと思うのであります。  以上をもちまして私の質問を終わります。
  178. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 せっかくの機会ですから——私は、ほぐれる第一歩は、保安要員のあっせんの問題からだと思う。ですから、まず本委員会に来ていただいた。私たちは努力ようと思ってせっかく呼んだわけですから、少しでも委員会に来ていただいた価値のあるようにお願いしたいと思うのです。そこで、この保安要員の勧告の問題だけはぜひ再あっせんについてはのんでもらいたい。これは実に簡単なことです。あなたが条件をつけられたあっせんというのは、「1、組合は直ちに保安要員を差出し、保安要員引揚げ前の状況に復すること。2、会社組合の差出した保安要員に対しては、従来の日払いの協定にかかわらず、毎月十六日より月末までの賃金を翌月五日に、一日より十五日までの賃金を同月二十日に確実に支払うこと。」これに対して炭労から、さらに立てかえもやりましょう、こう言っているのですから、これは一つぜひこの席で、今までのこじれたいろいろなものを解消する意味において、再あっせん案が出たら、それを履行いたします、こういうところから一歩入られたらどうですかね。私は親切に言うわけです。これは常識的なことですよ。あなたの方では今までの事情があってなかなかむずかしいかもしれませんが、こんな常識的なことが行なわれぬということでは、再建というものはなかなか困難だと思いますがね。どうですか。
  179. 田中直正

    田中参考人 その点は先ほど伊藤委員のおっしゃった通りでございます。あっせんは、やはり当社として、銀行のデモを片づけてもらう、それから保安要員の人数の選定をしてもらうということでなければ——先ほどマイトの問題が出てきましたが、信ずるか信じないかという問題が出てきましたが、それは話し合いでできるんじゃないですか。ここで言うことを聞けというよりも、話し合いに入って、できると思います。——私はできると思います。
  180. 有田喜一

    有田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言あいさつ申し上げます。  本日は、御多忙中にもかかわらず、ほんとうに長時間にわたりまして本委員会調査に御協力を賜わり、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。本委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  次会は、明八日午前十一時より理事会、十時半より委員会を開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会