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1962-03-22 第40回国会 衆議院 商工委員会社会労働委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十二日(木曜日)    午後一時十四分開議  出席委員  商工委員会    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 中村 幸八君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       神田  博君    齋藤 憲三君       始関 伊平君    首藤 新八君       田中 榮一君    田中 龍夫君       中垣 國男君    久保田 豊君       小林 ちづ君    中村 重光君       山口シヅエ君  社会労働委員会    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 澁谷 直藏君       井村 重雄君    浦野 幸男君       滝井 義高君    吉村 吉雄君  出席国務大臣         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         労働政務次官  加藤 武徳君         労働事務官         (大臣官房長) 松永 正男君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君         建設事務官         (計画局長)  關盛 吉雄君  委員外出席者         議     員 阪上安太郎君         通商産業事務官         (企業局立地政         策課長)    馬場 一也君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  新産業都市建設促進法案内閣提出第五五号)  産業雇用適正配置に関する法律案井手以  誠君外十八名提出衆法第一五号)      ————◇—————   〔早稻田商工委員長委員長席に着く〕
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより商工委員会社会労働委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出、新産業都市建設促進法案、及び、井手以誠君外十八名提出産業雇用適正配置に関する法律案を議題として審査を行ないます。     —————————————  新産業都市建設促進法案  産業雇用適正配置に関する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  4. 吉村吉雄

    吉村委員 私は政府から提案をされておりまするところのこの新産業都市建設促進法の問題につきまして、特に地方開発と非常に関係のある問題でございますから、地方開発にあたっては当然に工業分散、こういうものが計画をされなければならぬわけですから、この工業分散にあたって、うらはらの関係を有すると考えられますところの労働力雇用配置問題等について重点を指向しながら、政府の考えている点をお聞きしておきたいと思うのです。  この法案が目的といたしておりまするのは、その提案説明の中で見ますると、わが国経済というものが非常に急激に発展をした、これに伴って京浜あるいは阪神、こういう工業地帯への資本あるいは労働、そういったものの過度集中が行なわれて、このために用地の問題、用水の問題、あるいは宅地、交通等の問題がいわば社会問題的に提起をされておる。このような、いわゆる過大人口の問題、いわゆる弊害に対して、これを緩和をしていかなければならぬということが一つ述べられております。さらにいま一つは、この過大都市とでもいいますか、こういうところができるのと全く逆に、それ以外の地域においては非常に生産も低い、こういうことのために、所得格差というものがだんだんと大きくなってきておるので、こういうものを緩和をしていく。そうして、日本経済全体を均衡のとれたものとして発展を期するものであるということが提案説明の中に述べられておるのでありますけれども、この問題は政府が今日提案をするということはむしろ当然であって、どちらかといえば、おそきに失したかというふうに考えられるわけでございます。私は、今日このような事態というものが起こって、何とかしなければならない、こういう機運が出てきて、対策を講じられようとするそのことは、非常にけっこうなことだと思うのでありますけれども、このいわゆる地域格差なり、そうして均衡のとれたところの産業発展ということを今後計画的にやっていこうとするためには、今日このような事態というものがどうして生まれたのか、ここに焦点を合わせて検討をしていかなければ、同じような愚を繰り返すことになるのではないか、こういうふうに考えられるわけでございます。その点について、いわゆる社会発展というものは、何といいましても、生産力生産というものがその基本である。生産基本であるとするならば、生産に最も関係の深いものは労働力であり、そしてまたこれと対等の立場に立つところの資本というものがある。こういう関係にあると私は思うのでありますけれども、今日までの日本産業発展への政策というものが、どちらかといいますと、労働力を軽視をして、資本というものを優遇してきた、こういうところに最大の原因があるのではないか、このように考えられるわけでございます。言うまでもないと思いますけれども、つまり資本はもうからないところには動かない、いつの場合でも、あるいはそのところにおいてももうかるということが前提になっている、こういう資本というものを政府政策の中で優遇した形においてすべての政策がとられて参っておりましたから、従って、もうかる場所に資本集中する、言いかえますと、そこに工業発展をする、これに追随をしたような形で労働力があとを追ってくる、従って、今日過大都市というふうにいわれるところの、多くの住宅難だとかあるいは土地の問題とか交通難の問題とか、こういうようなきわめて憂慮すべき事態というものが生まれてきたところの原因というものは、今申し上げましたような資本優遇、いわゆるそれに基づいての自由に資本が流動することを放任をしておった、こういうところに根本的な問題があるのではないかというふうに考えるわけでございますけれども、こういう点について政府はこれから新しく対策を立てようとしておるわけでありますから、この根本的な原因の問題について、まず政府見解を承っておかなければならぬ、このように考えますので、長官の方からその点についての見解を明らかにしていただきたいと思うわけです。
  5. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日まで過大都市ができた経過を顧みてみますと、いろいろな原因があるように思います。ある場合には日本産業というものが相当政府に依存しておる、従って、官庁関係のあるようなところ、あるいはそういう便利なと申しますか、地方の通産局その他もあるような便利なところというようなこともございましたでしょうう。しかし、大きく考えてみますと、やはり地域開発というものが総合的に行なわれておらなかったのではないか。今、御指摘のように、資本というものは利潤を追求してどこへでも行くんだ、こういうことで、かりに過去のずっと十五年も二十年も——今日になりますと、労働力地域差というものについて、賃金差というものはそう大きく大企業などにはございませんが、しかし、過去にはあった、しかし、そういうところにあったけれども、行かないというのは、やはりその方面交通でありますとか輸送でありますとか、そういうものが不便であった、従って、日炭、原材料の一輸送でありますとか、港湾の設備だとか、そういうような関係相当に大きく作用しておったのではないか、また同時に、今日まで日本産業発達状況を見て参りますと、いわゆる紡績を中心にした軽工業発達というような関係もございます。従って、消費地輸出——海外輸出の問題もございますが、消費地中心にしたという関係もあろうと思います。いろいろな理由があるわけでございまして、今日過大都市が形成されたわけであり、あるいは過大都市中心にした一つ産業立地条件が集まったのではないかと思います。でありますから、今後はやはり国土総合開発計画を策定しまして、そして地方におきますそれらのいろいろな不便と申しますか、産業立地上の条件を改善していくということによって、やはり十分な地方分散ができもし、またできるように持っていかなければならぬ。そして労働力と申しましても、やはり日本人から申しますと、自分の郷里の周囲にそういうところが異れば、何もわざわざ東京に出てくるよりも、そういうところで就職する方がよろしいわけでございますし、またその地方の繁栄もそれで期し得られるのでありますから、そういう点についても十分考えて参らなければならぬ、そういう意味において、今後の対策を考えていくということが必要だろう、こう考えております。
  6. 吉村吉雄

    吉村委員 私が先ほど申し上げましたのは、いろいろ日本経済産業発展というものがきわめて不均衡になってきたということには、いろいろ原因があるとは思うのです。しかし、その根本的な問題は、実は私の考えでは、利潤を追求していくところの資本、こういうものについて社会的な規制、国家的な規制、こういうものが加えられることがきわめて少ない、そうして自由にこれが放任をされておったというところに、資本過度集中あるいは労働の集積、そういうことが起こってきたのではないか。もちろんそういうものを抑制するために、国としては当然に長期展望に立ったところの計画を立てて、国土全体が平衡のうちに発展をする、こういうことでなくてはならないはずでございますけれども、そうなってこなかったというところに問題がある。その根本的な問題について、私の考えておる点を申し上げたわけでございますけれども、その点については、いろいろ事情があるという答弁は得たわけでありますが、根本的な問題についての大臣考え方ということは、まだはっきりしないようでございますから、その私の考えている点、質問の要点、こういうことについての見解を率直に一つ聞かしてもらいたいと思います。
  7. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話の点は、何か資本の移動を規制したならば、こういうような都市過度集中が起こらなかったのではないかというような点で御質問ではないかと思いますが、その点は、私ども資本というものが今日の段階、また過去におきましても流動的なものであることは、これは自由主義経済の中においては当然でございますし、またそれによって特別な弊害が起ころうとも思っておりません。ことに地方開発の上においては、それよりもむしろ公共的な投資というもの、港湾あるいは道路、そういうような先行投資によりまする整備ということの関係、そういう方が産業地方分散する方法としては非常に重大だ、そういう面においてむしろ欠けておったのではないか、こういうふうに考えております。
  8. 吉村吉雄

    吉村委員 その次にお尋ね申し上げたいと思うのは、戦前日本地方開発というものについての傾向を見ておりますと、これまた政府に確固としたところの方針というものが欠けておったのではないかというふうに考えられます。戦前日本がそういうふうな狭隘な国土資源、こういうものを総合的に開発していくという熱意なくして、そうして単に海外進出をする、そういうことによって国全体の国民の生活というものをよくしていこう、こういう誤った考え方があの悲惨な戦争に発展していったというふうに思うのでございます。戦後は、その海外の領土、こういうものが一挙にして失なわれたこの段階において、政府としては、限られたところの国土とその資源しか有しないところのわが国の将来の発展のために、総合的な国土開発、こういうものを計画して、長期展望に立ってこれを実施していくということが戦後最も必要だったというふうに思うのでございますけれども、遺憾ながら、そういうものについて口にはされておるのでありますが、まだまだ具体的にこれが実施されていなかったというところに、今日このような問題が起こって、そして地域間の格差産業間の格差、こういうことが大きな政治問題になってきていると思うのです。御承知のように、政府の方においても、国として国土総合開発というものを当然に考えて、昭和二十五年でしたか、国土総合開発法というものを制定をきれて、今日に至っておるのでございますけれども、この国土総合開発法に基づいての具体的な施策、こういうものがなされていなかったのじゃないか、このように考えられるわけでございますけれども、戦後の十七年という長い間政権を担当されて参りましたのは、言うまでもなく自由民主党を中心とするところの保守党の政策、こういうものが政権を担当されておったわけでございますから、この意味では、私は、今日このような大きな問題が起こっているということは、政権を担当してきた側に大きな責任が存在するのではないか、このように考えられるわけでございます。そういう責任感の上に立って、今まで放置されたような地域開発というものを将来やっていくというその反省の上に立たなければ、新しい政・策というものは国民から信頼されない、このように考えられてならないわけです。従って、十年以上前に制定をされましたところの国土総合開発法に基づいてどういうような施策が行なわれてきたのか、この法の施行にあたっての政府としての考え方、これの大綱的なものについては一つ大臣の方から、それから具体的なものがあったとするならば事務当局の方から、一つお知らせを願いたいというふうに考えます。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 戦後、御指摘のように、この狭い国土を最大限に利用して、そして国土総合開発をして参ることは必要であったわけでございますが、何と申しても、やはりあの廃墟の中から立ち上がりますために、その方の異常な努力ということに集中されたうらみがございますので、その点は若干総合的な立場に立っての計画がおくれておったと思います。ことに国土総合開発計画法案が二十五年に出まして、その後相当の期間十分な成案を得なかったということは、まことに申しわけないことでございます。実は昨年七月に草案ができまして、そしてその以後世論を聞くことにいたしまして、各方面からのいろいろの御意見もただいま伺っておりますが、三月三十一日までにそれらの御意見をすべて取りまとめまして、四月に入りましたならば国土総合開発審議会にかけまして、最終的に示された草案についていろいろ御意見がありました点も取りまぜまして、そうして最終的な国土総合開発計画というものの審議会の御決定を得るという手続をただいま進めておるわけでございまして、そういうことによって進行さしておる次第でございます。
  10. 曾田忠

    ○曾田政府委員 お答えいたします。お尋ねの国土総合開発法といいますものは、お示しのように、昭和二十五年に制定されたわけでございまして、その内容といたしましては、国土総合開発をはかるために、ただいま大臣がお話しになりました全国総合開発計画・それから特定地域開発計画、それから数府県を合わせました地方計画、それから都道府県計画、そういう計画基本法となっておる法律でございます。全国総合開発計画につきましては、いろいろな事情でおくれてまことに申しわけない次第でございますけれども、われわれといたしましては、四月中に正式な決定をいただきたいと考えております。  これ以外の特に大きな問題といたしまして、先ほど申し上げました特定地域開発計画、これは終戦後の特に食糧事情とか電力事情あるいは国土の荒廃という点にかんがみまして、おおむね大きな河川を中心といたしまして、今申し上げましたような開発をはかるために計画を作っておりまして、大体全国二十一ございますが、全体の事業費は約九千九百五十億程度になっております。これも古いのは二十八年度からの十カ年計画、新しいものは三十三年からの計画でございますが、一応現在までの進捗率は八六・五%という状況になっております。これは金額だけの進捗率でございまして、いろいろ物価の変動等もございまして、具体的なことは数字だけでははっきりいたしませんけれども、まあ、しかし、これはこれなりにある程度の効果がおさまっておるというふうにわれわれは考えております。  なお、御承知のように、国土総合開発法以外に、東北、九州あるいは四国、中国、北陸という地域につきましてもそれぞれ特別な開発促進法ができておりまして、その法律に基づきまして開発計画を策定いたしまして、事業進捗をはかっておるわけでございます。
  11. 吉村吉雄

    吉村委員 二十五年にこの総合開発法ができて以来十年余になるわけでありますけれども、大臣先ほどお答えになったように、これが完全に実施をされていないうらみがある、こういうところに非常に問題があると思うのです。しかも、特殊の地域についていろいろ発展策を講じてきたということでございますけれども、これまた部分的なものであり、消極的なものにしかすぎなかった。こういうところに、先ほど来申し上げているような現実の事態というものが生まれた大きな原因があるというふうに思うのです。このことは、政策実施をしていこうとするところの政府にとっては、私は大きな怠慢であるといわざるを得ないと思うのです。言うまでもなく、所得格差が非常に問題になっておりますけれども、同じ国民の中で、一方においては四万何がしの平均収入歩あるかと思うと、一方においてはその半額程度所得しかない、こういうような事態というものが生まれているということは、これは何といいましても私は政府にとっては重大な責任ではないか、このように考えられてならないわけです。そこで、そういうものを是正をしていくというねらいをもって今回の法案提案をされておるのでありますけれども、特に私は問題の重点となろうと考えられますのは、何と申し上げましても、この地方開発にあたっては、地方工業化というものが中心にならざるを得ない。この法案の中にもそういうことが盛られておるわけでございますが、この工業化という場合に、私企業というものが地方に出ていきやすいような態勢というものを国家的な見地から進めざるを得ない、こういうふうになっていくと思うのです。一方においては公共的な投資というものを進めていく、このようになるだろうと思うのでありますが、しかし、今日までの形態あるいはまた資本主義社会におけるところの体制そのものから考えてみまして、どうしてもこの工業化というものが進んでいく地域というものは、資本が入りやすい状態、そういう条件というものがなくてはならないというふうに考えるわけです。そのために、これをある程度規制をしなければ、今の過度発展をした都市のように、その二の舞のようなものが生まれてくる危険性というものを持っているのではないか、このように考えられますから、当然に、工業分散というものを政府地方開発の一端として考えていく場合には、ある程度国家的な意思に基づいて、この工業分散というものをやりやすくすると同時に、一方において規制をする、こういうことがなくては、先ほど申し上げたように、この同じような愚を繰り返すことになるというふうに危惧されるわけです。  そこで、政府所得倍増計画の中の「産業適正配置推進」とい5項の中に、次のように書いてあるわけであります。「産業立地政策を考えるに当たってはつぎの諸要因が問題となろう。すなわち(1)企業における経済的合理性の尊重(2)所得格差地域格差是正(3)過大都市発生防止などである。本来立地企業決定するものであり、この計画でも企業経済的合理性にもとづく選択は原則として尊重するが、野放しの自由放任は、過大都市地域間所得格差の問題をいっそう深刻化し、国民経済そのものを非能率化してゆくであろう。したがって、産業配置に当たっては、地域格差是正過大都市防止も十分考慮しなければならない。」こういうふうに書いてあるのでありますけれども、この所得倍増計画池田内閣の将来の方向に向けての政策中心をなすものだと思うのです。この産業適正配置の項の中で、今申し上げたようなことが書いてあるわけでございますので、内容はおわかりだろうと思うのです。自由放任のままでおいたのでは、工業集中、そのための人口過度集中、こういうことが再び起こるということをここで警告をしておると思うのです。従って、これから地域開発、それに基づいての産業立地、こういうものを考えていく場合には、資本の流動というものに対してある程度国家的な規制というものを加えなければならぬということをここでは言うておると思うのでありますけれども、今後の政策推進にあたって、そういうような考え方地域開発あるいは工業分散というものをやっていく意思があるのかどらか、こういう点についてお伺いをしておきたいと思うのです。
  12. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 過大都市防止の上におきまして、現在以上に過大都市に工場が集中するということは望ましいことでないし、また避けて参らなければならぬ。従って、通産省の方面におきましても、あるいは首都圏等におきましても、それぞれ今後の過大都市におきます工業集中というような問題について、それぞれ規制をされていくことになろうと思います。地方分散する面において一番必要なことは、やはり地方におきますそれぞれの立地条件を改善していく、つまり、道路港湾交通輸送というような問題を解決していくということが必要でございます。これはやはり政府としてある程度先行投資をして、そうしてそれらのものを整備していくことによってそれが確保できますし、また、それに伴います住宅施設その他ともあわせて考えていくということによって、新産業都市と申しますか、あるいは地方のそういう中心都市を形成することになろうと思うのでございます。
  13. 吉村吉雄

    吉村委員 私の質問をしている点は、先ほどの所得倍増計画の中の産業適正配置という項で、工業分散にあたって、企業はそれぞれ立地というものを選択をすべきものである。しかしながら、それを自由に放任をしておいたりでは、過大都市ができる原因になるからということを言うておりますから、当然の過大都市というものを防止をして、そうして地方均衡のとれたところの発展というものをねらいとしているのがこの法案だとするならば、ある程度工業分散にあたっても、国家的な規制を加えることなくしては、同じような愚を繰り返すのではないかというふうに考えるわけです。と申し上げますのは、地理的な条件、風土的な条件あるいは人間的な素質の問題、こういうものを考えてみましても、企業がそこに行くという場合には、同じようなことをねらいながらそこに進出をしていこうとする、こういうふうになりますから、当然一定の地域集中をしやすいということが言い得ると思うのです。また同種企業というものが集まりやすいということが言い得ると思うのです。そういうような点について、それを放任しておいたのでは、過度の競争も起こるでありましょうし、そういうことが原因になって、思わぬ社会問題の惹起も予測しなければならない、こういうようなことになろうかと思いますので、そういう点については、行政官庁として適切な指導あるいは規制、こういうものを加えていかなければならぬではないか、そのことを所得倍増計画の中でも立案者が示しておるというふうに考えますので、そういうような考え方でやっていく意思はあるのかという質問をしておるわけです。
  14. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 現状におきます、あるいは近き将来、過大都市になりかねないような都市に対する規制ということは、ある程度考えて参らなければならぬと思います。しかし、あまり産業が起こっておりませんようなところに産業を持っていかなければならぬ、そうして地方開発の拠点にするというような場合には、やはり道路でありますとか、港湾でありますとか、社会的な施設を十分にいたしまして、そうしてそこに行きやすいようにする。そうして一つの仕事が参りましても、やはり関連産業がある程度参らなければなら  ぬのでございますから、そういう意味  におきましては、一つの流れをなすと思います。しかし、それについて当面  の問題としては、そういう新産業都市分散させること自体が必要でございますから、そういう面から何かあそこにお前の仕事が行くのはよくないのだというような規制をしますと、行きにくくなるというようなことになるので、過大都市あるいは過大都市になりそうな状態のところは規制して参らなければならないが、新しく作って参りますところについては、あまりそう大きな規制をいたしますことは、かえって新産業都市発達させるゆえんじゃない、こう考えます。
  15. 吉村吉雄

    吉村委員 そういう最初の出発にあたっての安易な考え方というものは、私は非常に危険だと思うのです。この法案の中にも、たとえば工場誘致をしようとするところの地方公共団体に対してはこうするとかいうような、いろいろ便宜をはからっていく国の施策が述べられておるわけでありますけれども、今日どういう問題が起きているかということは、大臣もすでに御承知だろうと思うのです。いろいろな問題が起きておる。たとえば工場誘致をするというかけ声一つかかっただけで土地がむやみに暴騰するとか、あるいは住宅が非常に高くなるとか、こういう問題も起こっておる。そうして地方公共団体の方では、工場誘致をしたいばかりに、地方税を減免するとか、あるいは敷地を提供するとか、こういうようなことをやっておるわけです。従って、そういうような進出しようとするところの産業に対して、国やあるいは地方の公共団体が多くの便宜供与をするということでございますから、これは今大臣が答弁したのと違った条件に今度置かれてくる。今度は地方にできるだけ出ていこうという企業が当然にして起こってくる。またそれをねらいとしているとも思うのです。ですから、私が申し上げましたように、今日の状態で考えるものと、そういう法案が実際に実施をされるという段階になって考えた条件というのと、だいぶ異なってくるのじゃないか。そこにはやはり過度集中をするという危険性もある。しかもまた長い展望に立って産業発展というものを考える場合には、最初の出発からどの地域にはどういう産業、風土なりあるいはその資源なり、こういうものを考慮の上でやっていくというのが国の責任ではないか、このように考えられるわけです。そのことを最初の出発にあたって放漫にし、自由にしておくと、いつの間にやら規制がきかなくなってしまう、こういうふうにも考えられますから、私は政府が十分この点については監視をしていく必要があるだろう、このように考えて申し上げたわけでございます。  そこで、少し問題は異なるのでありますけれども、この法案の第何条ですかによりますと、工場を誘致しようとするところの地方公共団体で地方税の減免なんというようなものをやった場合には、国の方でこの分についてめんどうを見るという趣旨のことが書かれてあるわけです。これはいわば形を変えたところの企業に対する国の補助というふうになってくると思うのです。そうしなければ、地方開発というものはなかなかでき得ない、こういう事情についてはわかるわけでありますけれども、形を変えたところの企業に対する補助であることもまた変わりがないと思うのです。そのようになって参りますと、当然にして国民の納めた税金の中から一つ企業に対して補助というものが行く、こういうことになるわけです。もちろんその工場が地方分散されることによって、その地方の住民が受ける利益というものもあるでありましょう。ですから、国としては、この分散をされたところの工場なり工業なりの経営にあたっては、国ばかりではなしに、地方公共団体等でも、ある程度地方住民の利益に合ったような経営の仕方をしてもらうための発言権、こういうものが相当なくてはならぬではないかというふうに考えられるわけです。こういう点については、この法案実施された場合に、一体どういうような考え方でやっていこうとするのか、この辺を一つお聞かせ願いたいと思うのです。
  16. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今日一番急務なのは、やはり全国の総合的な開発の拠点を新産業都市としてはねらいとしております。そういう都市発達することが第一に必要だと思います。従って、それに対する助成というように関係がおのずから起こってくるわけでございます。むろんそういう点について、行かれました企業がそれだけの、ある程度恩典を受けるということにはなろうかと思います。しかし、そのこと自体はやがてその地方に還元されてくるわけでございまして、その地方のおのずからの発展に寄与してくるということになろうと思います。でありますから、そういう意味において、長期にわたって地方開発のための利益になり得るというふうに私どもは考えております。
  17. 吉村吉雄

    吉村委員 今私が申し上げたことは、すでに新しく工業都市として発展をしつつある地域等にとって、非常に多くの問題を提起しているというふうに考えられるのです。一つの事例を申し上げますと、千葉県の川崎製鉄ですか、ここには従業員が約一万人おる。しかもここで働いておる臨時日雇い、こういう労働者はそのほかに約一万四、五千人もおる。しかしながら、川鉄が将来どういうような企業方針でいくのかということについては、県なりあるいは市なりでは全然タッチすることはでき得ない。従って、関連するところの下請企業、こういうものを地方で総合的にどう発展をしていこうか、中小企業をどういうふうに振興して、いくかということについても、地方自治体では何ら知り得ない、こういう状態にあるということが報道されておるわけです。これでは大へん問題ではないかというふうにいわれておるのでありますけれども、こういった事例はひとり千葉県における川鉄だけの問題ではないと私は思うのです。一たんある地域にその企業が安定をすれば、企業考え方によって経営が行なわれていく。そこには地方自治体等との連絡あるいはその将来の方向についての協議、こういうようなものをやる必要は、正直のところ企業自身には義務はないわけですから、地方自治体としてはどのように関連産業発展させ、将来の雇用問題をどういうようにするかという計画を立てるにあたっては、きわめて不安定な状態に置かれておる。これは全国共通した状態であるというように考えるのです。このような状態を考えますと、私が先ほど申し上げたのは、いずれにしても、地方開発という目的を持って、間接的な意味ではあるかもしれぬけれども、国がその企業に対して補助を出すというからには、地方発展地方住民の利益につながらなければならない。ところが今日は、あとから指摘しますけれども、その利益も部分的にはありますが、同時に地方住民が受けておる弊害というものも大きい、こういうことでございますから、当然に、この地方公共団体がその誘致したところの企業と、その将来の計画等について協議をしていくというような、いわば発言権とでもいいますか、あるいは経営についての協議とでもいいますか、そういうような道が残されていないと、とんでもないことになるのではないか。現にそういう事例がすでに問題になっている。こういう点から考えて、新しくこの法案実施をしていこうという場合に、そういうような事例の問題からして、どのようにこれを措置していくかということが非常に重要だと考えますので、再度その点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  18. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 企業を経営しておりますものが地方企業を起こしていく、工場を作るというような場合に、地方の実情と、地方当局者との間の十分な話し合いと、またその方面に対する繁栄の寄与ということについて関心を持って参らなければ、企業とその地方との関係は円満にいかないことは申すまでもないことでございまして、それが円満に参りませんければ、企業自体も十分な伸長を見ることができませんでしょうし、また地方自治体あるいは地方住民の方々の利益にもならぬと思います。従って、今日までの事例としまして、企業自体が、必ずしも何かそういう法的規制をしなくとも、十分地方のそういう利害と相携えていくという考え方で経営者はあると思いますし、またそうあらなければ、全体としての企業自身の、経営者の立場から申しまして、十分な発展をし得ないのでございますから、そういう点については、もしありとすれば、十分今後とも企業経営者自体の反省を促さざるを得ないのでございます。しかし、それを何か法的に規制するということ自体は、これはなかなか困難なことでございまして、不可能ではないかと思います。
  19. 吉村吉雄

    吉村委員 私は今の問題で特に大臣見解を再度求めましたのは、そういう事例が全国において行なわれておる。そういうことの結果、地方公共団体としての地方振興についての対策が樹立し得ないでおる、こういう例が多いので、法的に規制するということはなかなか困難でしょうから、この法案がかりに実施をされる場合においては、十分行政面からの指導を強化をしていかなければ、単に地方公共団体というものが企業に来て下さいというための運動をやって、来てしまえば終わり、あとのしまつは地方公共団体がしなさい、せざるを得ない、こういうことになってしまうとすると、せっかく地方開発のためにということで、血税を若干でも補助していくという趣旨に沿わないというふうなことになると思いますので、十分この点は配慮をしながらやっていく必要があるのではないか、こら考えて指摘を申し上げておるところです。  その次にお尋ね申し上げておきたいのは、これも今日までの工業分散によって起こっている現象の中から質問をしていきたいと思うのでありますが、工業地方分散にあたって多くの影響をその地域で受けている。この中で最も悪い面の影響を受けていると考えられるのは、既存の中小企業、この中小企業相当企業進出によって労働者の問題あるいはその他の問題で悪い影響を受けているという事例が随所にあるわけであります。この中で特に問題と考えられますのは、このごろの傾向も手伝ってではありましょうけれども、企業が一生懸命養成をしたところの労働者、これが地方進出をしたところの企業にどんどんと引き抜かれていく、こういう事態が起こっておる。とするならば、これを何らかの形で防止をしていかないと、地方開発あるいはその工業分散、こういうことになっているけれども、既存の産業というものは壊滅的な打撃を受けるというのでは、これは本来転倒した結果になるのじゃないか、このように考えられるわけです。  私が調べた中で一つの例を申し上げますと、四日市市の機械器具協同組合、ここで調べたものを例として申し上げます。この組合は五十二の企業をもって作られている組合でありますけれども、この中で働いておったところの労働者のうちで、ここには大企業が二、三進出をしたのでありますが、移動した労働者数というものは三百五十人にも達しておる。五十二企業のうちで三十三企業というのは、労働者が移動をしておる。しかも、さらに重要なことは、移動した労働者の質というものはどうかというと、若くしてしかも非常に腕のよい、そういう技能労働者、こういう人たちが移動をしておる、こういうことが明らかになっておるわけです。これは大へん既存の中小企業にとっては重大な問題でございますから、こういう点についていわゆる工業というものを分散するという場合には、当然にしてこれとうらはらの関係をなすところの労働者をどら配置をかするかという問題を計画的にやっていなければならぬではないか、このように考えざるを得ないのです。  今申し上げましたような事例というものは、ほかにもあります。これは一つ申し上げておきますと、機織りで有名なところの桐生ですか、ここでは既存産業というものが、新しい産業が誘致されたことによって、やはり労働者の引き抜きが行なわれてきた。そしてこの傾向はどういう形になって現われているかというと、中企業よりも小企業、小企業よりも零細企業、こういうものが非常に深刻な打撃を受けておる。最も根本的なものは労働者の引き抜きだ、こういうことになっておるわけです。これは労働者の側から言いますと、労働条件がいい、福祉施設がいい、そういうところに移動するのは人情の理であります。しかし、それをそのままにして放任をしておけば、地方産業というもの、既存の産業というものを壊滅的にしてしまう、こういう結果になる。こういう点については、国なり何なりが適切な措置をとっていくということは、当然の一役割だというふうに考えるのです。言いかえますと、工業分散と同時に、労働力配置というものをどういうふうにするか、これを計画的にやっていくということが非常に重要である。今日までの日本産業開発というものを見てみますと、ほとんど資本が自由に移動する、そのあとを労働力が移動しておるという格好になっているために、今日このような問題が起こっていると思うので、私はこの産業都市の建設にあたって最も重要な役割を果たす工業分散化、従って、この工業分散化とうらはらの関係を持つところの労働力配置雇用問題、これをどういうふうにするかということが非常に重要な問題だというふうに考えるので、この点については一つ労働省の方と企画庁の方からあわせて、どういう考え方でやっていこうとするのか、御所見を承っておきたいと思うのです。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 新産業都市を作ります上におきまして、労働力の充足と申しますか、配置ということは非常にこれは重要な問題であることは申すまでもございません。従って、この新産業都市法案そのものにおきましては、住宅地あるいは宿舎というようなものについての計画を立てまして、そうしてそういう計画基本計画として根本的に立てて、それを計画的に遂行して参るわけであります。ただいま御指摘のような中小あるいは零細の企業労働者が移動するというような問題については、これは賃金の問題もございます。従って、その問題自身は中小企業をどうして安定的な地位に置くかという一つの通産行政上の問題だと思うのでございまして、そういう面から中小企業というものをしっかりした立場に置いて、そうして新しく来た大企業の関連産業として打ち立てていくというような通産行政上の指導が私は必要であり、あるいはまた労働方面のいわゆる技能者供給でございますとか、あるいはそういうふうなものによって補足していくことが必要だと思っております。先ほどのお話の点に戻って同じことが言えると思うのですが、たとえば工場ができた場合に汚濁、汚水が出る、そのために地方が困るということもあり得るわけです。その地方的な利害の問題もございましょう。こういうことについては、また別個の問題についてそういう問題をやっていくわけでありまして、との新産業都市自身は、産業都市ができる基礎的な条件を完備していくというところにこの法律そのもののねらいがあるわけでありまして、これらの法律ができましたときに、ただいまお話しのような地方におきます中小企業の強化問題というようなことは別個の法体系もしくは通産省その他の指導によってやっていかなければならない問題で、それまであわせて全部この中に法律的に規定するわけには参らないのでありますが、精神としてわれわれが基本計画を策定するときには、十分その点を各省が話し合いの上でやっていきたいと思っております。
  21. 松永正男

    ○松永政府委員 労働力配置の問題でございますが、労働省といたしましては、労働力に対しまするところの需要と供給が適正に吻合いたしまして、量的に見ましても、質的に見ましても、必要な労働力が適正に配置され、そうして労働者の面から見ますと、希望するところの職場に就職できるという状態を作り上げるということが政策基本の目標になっておるわけでございます。現在、御指摘のごとく、労働力の需給の面におきまして、地域間におきましていろいろなアンバランスが発生しておる。また、技能の程度によりまして、熟練労働力に対する需要は非常に大きいけれども、未熟練労働力に対しましては必ずしもそうでないというような面がございます。また、企業の規模によりまして、大企業におきましては比較的労務充足が容易であるけれども、中小企業においては非常な求人難であるというような状態がございます。これらの質的、量的の面におけるアンバランスを是正するという目的のために、労働省といたしましては、労働力の流動化促進計画を立てまして、この目的のために労働省の機関並びに雇用促進事業団等の外郭団体を通じまして、これらのアンバランスを是正していくということで努力をいたしておるわけでございます。  と同時に、ただいま問題になっております地域開発の面におきましても、できるだけ労働力の供給過剰地域産業を興しまして、個々において労働力の移動をせずに、そこで労働力の就職希望の人たちがその場で就職できるようにというような面も同時に考えまして、労働力を移動させ、そうして就職させる面と、それから機能的に労働力の需要に対してマッチするような職業訓練を行なうというような面とあわせまして、地域開発につきましても、労働力の需給の要素を十分に取り入れていただきまして、開発計画を立てるというような両面から、この問題に対処して参るという基本方針でやっておるわけでございます。
  22. 吉村吉雄

    吉村委員 本会議が開会されたようでありますから、実はこれからが私の質問の本論に入るところでございましたけれども、そういう事情でございますので、一応質問は保留にして、次の機会にまた質問を続行していきたい、このように考えます。以上できょうは終わります。
  23. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 本会議が始まりましたので、本日は、これにて商工委員会社会労働委員会連合審査会は散会いたします。    午後二時十二分散