○
吉村委員 私は今の問題で特に
大臣の
見解を再度求めましたのは、そういう事例が
全国において行なわれておる。そういうことの結果、
地方公共団体としての
地方振興についての
対策が樹立し得ないでおる、こういう例が多いので、法的に
規制するということはなかなか困難でしょうから、この
法案がかりに
実施をされる場合においては、十分行政面からの指導を強化をしていかなければ、単に
地方公共団体というものが
企業に来て下さいというための運動をやって、来てしまえば終わり、あとのしまつは
地方公共団体がしなさい、せざるを得ない、こういうことになってしまうとすると、せっかく
地方開発のためにということで、血税を若干でも補助していくという趣旨に沿わないというふうなことになると思いますので、十分この点は配慮をしながらやっていく必要があるのではないか、こら考えて
指摘を申し上げておるところです。
その次にお尋ね申し上げておきたいのは、これも今日までの
工業の
分散によって起こっている現象の中から
質問をしていきたいと思うのでありますが、
工業の
地方分散にあたって多くの影響をその
地域で受けている。この中で最も悪い面の影響を受けていると考えられるのは、既存の中小
企業、この中小
企業が
相当大
企業の
進出によって
労働者の問題あるいはその他の問題で悪い影響を受けているという事例が随所にあるわけであります。この中で特に問題と考えられますのは、このごろの傾向も手伝ってではありましょうけれども、
企業が一生懸命養成をしたところの
労働者、これが
地方進出をしたところの
企業にどんどんと引き抜かれていく、こういう
事態が起こっておる。とするならば、これを何らかの形で
防止をしていかないと、
地方の
開発あるいはその
工業の
分散、こういうことになっているけれども、既存の
産業というものは壊滅的な打撃を受けるというのでは、これは本来転倒した結果になるのじゃないか、このように考えられるわけです。
私が調べた中で
一つの例を申し上げますと、四日市市の機械器具協同組合、ここで調べたものを例として申し上げます。この組合は五十二の
企業をもって作られている組合でありますけれども、この中で働いておったところの
労働者のうちで、ここには大
企業が二、三
進出をしたのでありますが、移動した
労働者数というものは三百五十人にも達しておる。五十二
企業のうちで三十三
企業というのは、
労働者が移動をしておる。しかも、さらに重要なことは、移動した
労働者の質というものはどうかというと、若くしてしかも非常に腕のよい、そういう技能
労働者、こういう人たちが移動をしておる、こういうことが明らかになっておるわけです。これは大へん既存の中小
企業にとっては重大な問題でございますから、こういう点についていわゆる
工業というものを
分散するという場合には、当然にしてこれとうらはらの
関係をなすところの
労働者をどら
配置をかするかという問題を
計画的にやっていなければならぬではないか、このように考えざるを得ないのです。
今申し上げましたような事例というものは、ほかにもあります。これは
一つ申し上げておきますと、機織りで有名なところの桐生ですか、ここでは既存
産業というものが、新しい
産業が誘致されたことによって、やはり
労働者の引き抜きが行なわれてきた。そしてこの傾向はどういう形になって現われているかというと、中
企業よりも小
企業、小
企業よりも零細
企業、こういうものが非常に深刻な打撃を受けておる。最も根本的なものは
労働者の引き抜きだ、こういうことになっておるわけです。これは
労働者の側から言いますと、
労働条件がいい、福祉施設がいい、そういうところに移動するのは人情の理であります。しかし、それをそのままにして
放任をしておけば、
地方の
産業というもの、既存の
産業というものを壊滅的にしてしまう、こういう結果になる。こういう点については、国なり何なりが適切な措置をとっていくということは、当然の一役割だというふうに考えるのです。言いかえますと、
工業力
分散と同時に、
労働力の
配置というものをどういうふうにするか、これを
計画的にやっていくということが非常に重要である。今日までの
日本の
産業開発というものを見てみますと、ほとんど
資本が自由に移動する、そのあとを
労働力が移動しておるという格好になっているために、今日このような問題が起こっていると思うので、私はこの
産業都市の建設にあたって最も重要な役割を果たす
工業の
分散化、従って、この
工業の
分散化とうらはらの
関係を持つところの
労働力の
配置、
雇用問題、これをどういうふうにするかということが非常に重要な問題だというふうに考えるので、この点については
一つ労働省の方と企画庁の方からあわせて、どういう
考え方でやっていこうとするのか、御所見を承っておきたいと思うのです。