運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-04-25 第40回国会 衆議院 商工委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十五日(水曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員   委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       海部 俊樹君    神田  博君       齋藤 憲三君    田中 榮一君       田中 龍夫君    中垣 國男君       中川 俊思君    南  好雄君       村上  勇君    北山 愛郎君       久保田 豊君    小林 ちづ君       中村 重光君    西村 力弥君       山口シヅエ君    内海  清君       玉置 一徳君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (企業局長)  佐橋  滋君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁調         整局経済協力課         長)      黒部  穣君         大蔵事務官         (主計官)   田代 一正君         通商産業事務官         (通商局輸出振         興部輸出保険課         長)      井原  清君         通商産業事務官         (企業局企業第         一課長)    両角 良彦君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 四月二十五日  委員渡辺惣蔵君及び伊藤卯四郎辞任につき、  その補欠として中嶋英夫君及び内海清君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員内海清辞任につき、その補欠として玉置  一徳君が議長指名委員に選任された。 同日  委員玉置一徳辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会  議に付した案件海外経済協力基金法の一部を改  正する法律案内閣提出第一四七号)(参議院  送付輸出保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一一八号)(参議院送付)  家庭用品品質表示法案内閣提出第一一九号)  (参議院送付)      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出海外経済協力基金法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 海外経済協力基金法改正案について長官お尋ねいたします。  この基金に対しては、当初五十四億で、五十億追加して、あと六十五億、こういったような形で百六十九億かと思うのですが、これに対しては、まだいろいろ調査が十分でない、こういったようなことで、協力の実がまだ上がっていないというように聞くわけでございますが、まずこの概要について伺ってみたいと思います。
  4. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り経済基金が出発いたしたのが昨年の三月でございまして、その後ごく少数の人でやっております。申し込み等を受けて、それが調査等をいたしました結果として、現実に出しましたものは、まだ三つでございます。従って、現実に処置したもの自身が数が少ないわけでございますから、成績が上がっていないようでございますが、続々申し込みはたくさんございますので、さらにこれを十分審査をいたしました上で、今後の活躍を期して参りたい、こう考えておるのでございます。何といたしましても、理事二人ではこの職責を全うし得ない点もございますし、そういう意味において、今回理事をふやしていただくことにお願いをいたしました。また「達成が確実である」ということはむろん必要でございますけれども、確実というだけにとらわれますると、その点が十分機能を発揮し得ない点もございますので、「達成見込みがある」ものであれば、適当じゃないかというふうに考えますので、それは運用面の改善もはかりながら、今たくさんございます申し込み等について、これを処理して参りたい、こう考えております。ただどういう申し込みが来ているか、そういう点については、事務当局からお答えをいたさせます。
  5. 中野正一

    中野(正)政府委員 資料といたして、「海外経済協力基金業務概況」というのをお手元にお配りしてあると思いますので、これをごらんいただくとわかりますが、昨年の三月に発足をいたして、大体半年間は基金開設準備に追われまして、昨年のあとの半年間で大体申し込みを受けまして、いろいろその仕事を進めて参ったわけでございます。ここにございますように、三十六年度の投融資の実績といたしましては、三件ございまして、出資につきましては、これは四ページのところにございますが、北スマトラ石油開発協力株式会社に対しまして、これはインドネシア北スマトラ油田開発に対する経済協力でございますが、これに対しまして、十五億円の出資を約束しております。それからその前にございますスエズ運河浚渫工事に対しまして、二億三千万円の融資、それから三菱金属のボリビアのカランガス銅鉱山探鉱調査費に対しまして、四億二千万円、合計融資が七億五千万円でございまして、全体で十五億でございまして、御承知のように本年度の予算で六十五億出資が認められましたので、出資金としては百六十九億ございますので、まだ約一割しか仕事をしておらない、こういう状況でございます。  現在どういうものが来ておるかと申しますと、一番最後のページにございますが、最近における内談状況といたしましては、十六件ばかり案件がございまして、東南アジアに対して十件、中近東アフリカに対して三件、中南米その他で三件、計十六件、基金に対する期待額といたしましては約二百八十億円ぐらいのものが参っております。  業種別に見ますと、鉱業が五件、農林水産関係が五件、土木関係三件、工業関係三件というようなことで、このうちどの程度のものが実際に貸付なり出資として法定するかということはまだ内談中でございます。御承知のように、経済協力という案件は、向こうの事情等もよく調べなければいけませんし、いろいろ調査にも非常に時間がかかるということで、基金としては当事者と十分話し合いを進めましてやっておりますので、相当時間はかかる。しかし、このうちの相当部分は三十七年度について融資なり出資が決定されるということになるんじゃないかというふうに考えております。
  6. 中村重光

    中村(重)委員 そうすると、当初五十四億だったわけですね。次に五十億追加して、三十七年六十五億、計百六十九億になるわけですが、今この予算が消化されたのは融資出資という形であると思いますが、十五億、ただいまのお答えのように約一割弱という形になるわけであります。しかし、これは基金であるから、いろいろ出資をしておるという面、ただいまのお話によりますと二百八十億、そういったような計画があるのだから、これをそうした見込みから予算を追加してきた、こういうことなんですか。
  7. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り最初にこの基金ができましたときには、若干凍結的な形でもって出発いたし、それが解除になりまして基金として動き出すことになったわけでございます。従って、最初の五十四億というのはそういうことであります。昨年五十億さらに追加されまして、本年六十五億追加されたわけでございますが、今後活発にやって参りますためには、私どもはもう少し海外経済協力というもの、これは単に金を貸すというばかりでなく、現地におきます産業開発に寄与いたしまして、そうして日本経済外交の上にも大きく寄与することでございます。現地における生活程度向上その他にも寄与するわけでありますから、できるだけ十分な金額を用意して、十分に活用していくことが、この基金の本来の使命だと思います。そういう意味において、私どもは今回六十五億の追加出資を大蔵省に願ったわけでございます。
  8. 中村重光

    中村(重)委員 この経済協力は、低開発地域ということになりますか、そうなって参りますと、必ずしも東南アジアに限ることではありませんけれども、大体企画庁でおやりになっている方針は、東南アジア中心として進めておられるかどうか、あるいはその他中南米中近東、そういった地域に対しても経済協力をするというような考え方で進められておられるのか、その点をお伺いしてみたいと思います。
  9. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 東南アジアを大体は中心にして考えますけれども、しかし、海外経済協力基金でありまして、いわゆる東南アジア開発協力基金ではないわけです。しかも中近東アフリカ方面というものも、将来日本貿易上においても外交上においても密接な関係を持っておるところでございますから、これらの国の経済開発協力して参りますことは必要であろうかと思います。また南米におきましても、今日のような南米状況から申しますと、当然海外経済協力基金の範囲内に入れて差しつかえないものであろうか、こういうふうに思っておるわけでございます。偶然にも最初の三件は南米東南アジア中近東というふうに一つずつ分かれたことになりますが、必ずしも将来そういう比率でいくわけではございません。
  10. 中村重光

    中村(重)委員 台湾だとかあるいは韓国、こういった地域に対しても海外経済協力基金をもって協力をしていくというような考え方準備を進めておられるのではないかと思うのですが、この点伺います。
  11. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろん台湾韓国を排除する考えは毛頭ございません。ただ、現地におきます状況等考えます必要があることは当然でございますし、ことに韓国につきましては、国交が正常化いたされておりませんので、現在の段階においては直接の対象にまだいたしておりません。
  12. 中村重光

    中村(重)委員 台湾は低開発地域という考え方を持っておられるのですか、いかがですか。
  13. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 いわゆる後開発地域とまでは思っていませんけれども、そう言ってはあれですが、過去に日本相当な施設もし、企業も残してきております。従って、あの島全体の開発というものは相当進んでおることは東南アジア等とは比較にならぬくらいであるのでありまして、そういう意味から申せば、台湾状況から見て、かりに台湾をこの地域の中に入れましても、そう多くのものが期待されるとは思わないのであります。
  14. 中村重光

    中村(重)委員 経済協力順序というものを厳密に定めておるわけではないとは私も考えます。しかし、この低開発地域に対する経済協力をするということ、まず私たちはこの点に対しては東南アジアを第一に考えたのでありますが、当然政府としてはそうであったのではないか、その他中近東アフリカ地域であるとか、あるいは南米、こういうことが一応の順序として、この基金活動を開始していく、こういうことではないかと思うのですが、そのウエートといいますか、その点に対する考え方があろうかと思いますが、その点を伺ってみたいと思います。
  15. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体、日本の地理的な状況から申しましても、あるいはまた経済的な関係から申しましても、東南アジア開発というものが進みますことが、日本のためにもあるいは東南アジアのためにも必要なことは申すまでもないことでございまして、またある程度、従来の地理的な状況から見た民族的関係から申しましても、東南アジア相当の大きなウエートでもって考えていくということは当然のことでございまして、特に未開発あるいは新資源開発あるいは既設資源向上促進というものを考えて参らなければなりませんから、そういう面が主になっていくだろうと思いますし、おそらく申し込みの中にも、そういうものが大体多数になって参っておると思います。
  16. 中村重光

    中村(重)委員 仄聞するところによりますと、台湾ウルシ開発といいますか、これに日台民間企業合弁会社を作り、これに対してこの協力基金から協力をする、こういう計画が進められておるように聞くわけであります。私どもはこの点に対してはむしろ奇異な感じがするわけであります。まず中共貿易というものの促進をはかっていかなければならぬということは、これは当然な態度でなければならないわけであります。池田内閣中国貿易に対しては前向きの姿勢をとっていく、こういうことを言っておりますが、藤山長官とされては特にその点に対しては積極的な考え方があるべきだ、私はこう考えるのであります。そこで中国とのウルシ民間貿易というのは今日も行なわれておるわけでありますし、これは積極的に取り組んでおるわけであります。ところが特に台湾との間にウルシ開発に対しての合弁会社協力基金からまず協力をしていくという考え方がここへ出てきているということに対しましては、先ほど私が申し上げました東南アジアあるいは中近東アフリカ地域あるいは南米、こういうものがまず取り上げられて、この協力基金というものの積極的な活動を行なわなければならぬという点から考えまして、台湾ウルシに対する協力ということに対しては、私といたしまして、いささか納得できない面があるわけでありますが、この点に対する考え方はいかがですか。
  17. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中共との貿易促進いたしますことは、私ども非常に望ましいことだと思っておりますので、政治的問題は別といたしまして、経済的問題としては、ぜひいま少し中共貿易を拡大、発展さしていかなければならぬと思っております。  それで、今お話しのように、われわれこの経済協力基金を活用していく場合に、決して政治的な中立国だから、あるいはどうだからということは考えておりません。従って、今まできまりましたものも、インドネシアのあれも中立国と言えましょうし、あるいはエジプトのスエズ運河協力というものも中立国と言えましょうし、南米とか、たまたま地域一つずつになりましたからなんですが、東南アジア方面に対するそういう意味での政治的な考えは別として、協力をしていくということについては、われわれできるだけこの基金の活用をはかっていきたいというふうに考えております。  ウルシの問題は、実はこういう基金に借り入れを申し込むということはたくさんございますし、いろいろ要求がございますし、私は今ウルシについての話がどうなっておるか存じておりませんので、事務当局からお答えいたさせます。
  18. 中野正一

    中野(正)政府委員 台港ウルシ栽培計画は前々から話がございまして、日華合弁によりまして台湾ウルシ栽培をやりまして、これは従来、御承知のように、台湾の農民が作っておるものもある程度あるわけでございますが、ある程度農場経営式日華合弁会社栽培をする。それを日本に輸入したらどうかというふうな話が業界の方から持ち上がっております。ただ、この場合にいろいろ問題がございまして、たとえば、そこで栽培したものがはたして値段が引き合うか、それができたときの需給関係がどういうふうになるかということは、御指摘がありましたが、中共からの輸入の問題もございますので、特にまた日本側受け入れ態勢という点にも問題があるというようなことで、今慎重に検討いたしている段階でございます。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 特にその問題を取り上げて、私はこれを追及していくといったようなことではございません。しかし、考え方として、一体この海外経済協力基金というものは、まず政府の私たち国会に対する説明というのは、東南アジア地域であるとかあるいはその他中近東アフリカ地域であるとか、こういった開発途上にある地域、これに対して協力をするということが、結局、これらの低開発地域経済活動が活発になっていく、ここに貿易促進していくということは、これらの国の繁栄と相待って、わが国の繁栄に通じていく、こういったような考え方から、この協力基金意義というものを私どもは認めてきたわけです。そういうことから考えてみますと、まず、そうした地域にこそ積極的に協力をやっていかなければならぬ、こういう考え方からいたしますと、いささか台湾ウルシに対するところ融資、こういうことは、まず第二義あるいは第三義に取り上げていかなければならないのじゃないか、こういったような考え方からお尋ねをしたわけであります。そこで、またお尋ねをいたしますが、今この四十回国会で、海外技術協力事業団法案というものが外務委員会で目下審議されております。これに対しまして、この海外技術協力事業団、これは資金的な協力ではなくて、いわゆる技術協力である、こう言われておる。ところが、この技術と資金というものは、これは切り離すことのできない、経済協力という目的については同じであって、ただその手段が違うというだけである、私どもはそのように考えております。そこで、資金的な関係は、経済企画庁関係企画庁が推し進めていく、あるいは通産省関係通産省において推し進めていく、ところが、技術関係に対しては、これは外務省所管である、こういうことになって参りますと、各個ばらばらというような形になるのではないか。ここにほんとうのこの協力意義、成果というものが上がらないという結果が生じてくるのではないか、こういったような考え方を実は持つわけです。企画庁としましては、この技術協力事業団というものとの関連というものをどのように考えておられるのか、その運用をどううまくやっていこうとお考えになっていらっしゃるのか、その点を一つ伺ってみたいと思います。
  20. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 ただいま外務省で出しております海外技術協力事業団法案は、御承知通り、主として技術現地におきます開発協力、従って、現地から日本に人を出して協力をするというような問題もございますし、また、現地技術協力関係モデル工場その他を作りまして、そうして現地におきまして農業技術者を養成する、あるいは工業技術者を養成するというようなこと、主として技術方面の水準を高めていく、こういうことをやるのが、外務省事業団根本的趣旨だと思います。従いまして、私どもの方との関連は、直接抵触いたすことはございませんが、しかし、われわれの方でこの経済協力をいたしていく場合に、そういう養成されました技術者、あるいはレベルが上がりました現地におきます技術というものが活用されて、そして融資対象になっていくというような問題も起こって参ろうと思いますので、相互関連性は十分に運営の際にあたって考えて参らなければなりませんけれども目的から言いますと、ある程度ねらっておりますところが若干違っておるのでありまして、直接に抵触することはないと考えております。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 ところが、この協力基金ですね、これに対する出資あるいは融資を行なうにあたっては、土木技術者であるかあるいはまたその他いろいろな関係においての技術者の派遣ということが当然考えられる、あるいは調査ということが起こって参ります。これらの技術協力というものは、今度の事業団が担当することになりますか、その点いかがですか。
  22. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 御承知通り外務省でやっておりますものは、従来コロンボ・プラン等技術協力関係もございます。今度は、あれはアジア協会が大体主体となってあの事業団の結成になるわけだ、包含されていく、こう考えておりますが、従来、政府ベースのそうしたいろいろな技術交流あるいは技術協力の基本的な政策というものが、外務省を通じて経済外交の一環としてやられておるのであります。この経済協力基金の直接の対象民間ベースのものでございまして、従って、その工事を直接接進していく、あるいはその技術プランを立てるというような場合には、当該国主体者から別個に日本技術者を——これは既成技術者でございますが、既成技術者を要求してくるなり、あるいは日本協力いたして参る協力会社等既成技術者をもってその事業の発展に貢献していく、こういうふうになって参りますので、民間ベースにおきますものと政府ベースにおきますものとは、同じ技術者交流でも、若干角度が違っておるのでございます。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 長官の御答弁ですけれども現実はなかなかそうすっきりは割り切れるものではありません。これは外務省が今度やります事業団にいたしましても、政府ベースといいますけれども政府責任において民間企業から、いわゆる政府を通じて協力を求めてくるものであります。その点は、これは政府責任という形になりますけれども、これは形式なんです。やはり民間企業に対するところ協力、こういうことになって参ります。企画庁が今度推し進めておりますこの協力基金にいたしましても、これは純粋に民間ベースである、政府がこれを行なうもの、あるいは政府責任において行なう事業に対しては協力しないのだ、こういう厳格なものではないと思う。やはりその点に対しては、競合という言葉が当たらないにいたしましても、いろいろと問題が出てくるのではないか。この点に対しては、大臣が直接お話しになっておられなければ、事務当局は、この事業団ができることにおいてどのような運用をするかということに対しての話し合いというものは私はあったであろう、これはまた当然なければならぬと思う。通産省においても、通産省設置法の中に、この経済協力というものあるいは技術協力というものがある。これに対してどうするのだということに対しては、いや、事業団政府ベースである、通産省がやるのは民間ベースだ、こういうことに割り切っておられる。ところが、この所管をめぐってずいぶん長い問通産省外務省はもみ抜いてきた。そうして両者の間に覚書の交換すら行なわれている。しかし、それでもすっきりしていない。いろいろと問題点が実はあるわけであります。そういうことからいたしますと、企画庁所管でありますところのこの協力基金の問題は、これとは全然無縁のものである、これはもう完全に一線が画されておるのであるから問題はないのだ、このようには私はならないのじゃないか。やはりここには問題がありますし、いろいろと今までの過程において事務当局の間でも話し合いを進めてこられたのではないか、こういうふうに考えますので、これらに対するところの内容を一つ伺ってみたいと思います。
  24. 中野正一

    中野(正)政府委員 今御指摘がありましたように、海外技術協力事業団を作ります際には、通産省外務省方面でいろいろ事務的に折衝してああいう形のものができたわけであります。ただ、その間において、企画庁が中に入ってそれを調整したかどうかという点でございますが、その点につきましては、企画庁の方は、関係庁でそういうことのやり方について両者の話がうまくいかないという場合に初めて企画庁が乗り出すという建前になっておりまして、われわれも外から見ておりまして、大体われわれの考えておるような線でいっておるということを承知しておりましたので、直接乗り出してはおりません。ただ、今御指摘がありましたように、経済協力基金を運営していきます上で、技術協力、特に今度外務省でいたしております従来政府ベースでやっておった技術協力、あるいは通産省の方でやっておりまする民間ベース技術協力、あるいはコンサルタント条項、こういうような仕事が非常にうまくいきませんと、この協力基金の方のねらっておりまする経済協力ということもなかなかうまく進んで参りません。特に今問題になっております東南アジア方面中小企業を少し起こしていくべきじゃないか、こういう場合には、特にそういう技術者の養成というものが経済協力の前提になっていくわけでございます。この意味におきましては、外務省でやろうとしておりまする今度の事業団仕事、それから通産省でやっておりまするプラント協会を通ずる現地中小企業者に対する技術協力、こういうようなものがうまくいくことをわれわれ望んでおるわけでございます。その意味におきましては、仕事の面では非常に密接な関係がございますので、実はその意味協力基金法に、十七条に運営協議会というものを置きまして、基金の業務の運営に関する重要事項であって関係行政機関の所掌事務と密接な関係があるものについて運営協議会で審議をすることになっております。ここには通産省外務省、大蔵省の関係の次官がみな委員になっていただきまして、今毎月一回必ず開いておりますが、ここでそういう横の連絡は基金としても十分とれるような形になっておるわけでありますので、そういう機構を十分活用いたしまして、技術協力基金のねらっておりまする経済協力というようなものがぴったりうまくいくように、われわれとしては運営を考えていきたいと思います。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 時間がございませんので、また経済協力という面においてもう少し突っ込んでお尋ねしたいと思いますが、適当な機会に一つその点は質問してみたいと思います。  ただいま中野局長の御答弁によりまして、大体了解できるわけでありますが、外務省が今度事業団所管しておやりになる、これは技術協力だ、しかも政府ベースで、経済企画庁あるいは通産省がおやりになるものは民間ベースだ、画然として何も問題はないかのごとく割り切っておられる。そのことがうまくいくのであれば、問題はありません。しかし、現実問題としましては、中野局長からお答えがございましたように、やはりこの間の運用をうまくやっていかなければならない。その調整を企画庁の方では特に配慮してもらう、こういうことでなければ、せっかくの経済協力あるいは技術協力は、むしろそうした低開発地域開発途上にあるそれらの諸国から、一つの不信感をもって見られるというおそれなきにしもあらず、このように考えますので、その点に対しては一つ十分配慮をお願いしたいと思います。
  26. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 今の御質問はまことにごもっともでございます。実は、経済協力基金ができます当時は、私は外務大臣をいたしておりまして、通産省所管争いをいたした結果、岸総理の裁断で経済企画庁に来たようなわけでございます。そういうような関係で、この成り立ちからやはり日本の行政機構の若干の不備と申しますか、そういう点は十分心得ておりますので、今後これらのものにつきましては、今のお話しのように各省と十分協力をいたしまして、そして、経済企画庁としてこの運営が全体として満足にいきますように心がけて参りたい、こういうふうに存じております。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 それでは法案の内容に対して簡単にお尋ねしてみますが、現行法には「その達成が確実である」とありますのを、「その達成見込みがある」と改めて参りましたが、この点は簡単なようでなかなか意味がある。確実ということになって参りますと、これは融資をした、あるいは出資をしたことが無になることはあり得ない、こういうことになって参りますが、見込みということになって参りますと、見込み違いというものが起こって参ります。特に「確実である」ものを「見込みがある」ものということに改正しようとされるその意義と申しますか、趣旨を一つお答え願いたいと思います。
  28. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 確実と書きますと非常に強く限定されてしまうのでありまして、まず確実の見込みは十分あって、そうしてその運用よろしきを得れば当然確実に目的達成されるといいましても、現在の時点に立って諸情勢が確実であるかどうかということになりますと、非常に厳格になります。協力いたして参ります場合に、達成見込みがないものに貸すわけには、国家資金を使うことでございますから、税金を使うことで、ございますから、われわれ、いかないのでございます。しかし、将来にわたって達成見込みがあるということが十分考えられますれば、当然その程度までは貸して、経済協力の実をあげて参ることが必要である、非常に厳格な現状の分析そのままでというのは、東南アジア各国はそれぞれただいま発達途上にございまして、現在の段だけ考えますればそれは確実でないかもしれませんが、だんだん発展して参りますれば、それが全体として総合的に運営されて参りまして、達成見込みがある、若干のそういう将来における現地の発展状況経済の発展状況等考えていく必要があろうと思います。従って、その程度まではある程度考えていくことが必要であろうと思うのでございます。しかし、それではこれを何でも達成見込みがあるのだといって非常にルーズに考えることは、これは厳密主義で参らなければならぬのでありまして、そういう意味においては、企画庁としても、協力基金の監督にあたりまして、十分な監督をいたして参らなければならぬと思いますが、ただいま申し上げましたようなそういう見地に立ちまして、私どもとしてはこの改正を考えたのでございます。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 この確実なるもの、見込みあるものということをいろいろと論議して参りますと、本質論にまで入って参りますと相当時間もとるわけで、その点に対してはただいまの長官の御答弁を信頼いたしまして、これ以上質問をいたしません。  そこで、理事を二名増員することになっておるわけですが、業務の内容と申しますか、その点に対する必要性を一つ伺っておきたい。
  30. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 事務的には調整局長から御答弁申し上げますが、理事二名のうち一名は輸銀の理事が再兼務をいたしておることになっております。そういうようなことで、御承知通り、ただいま申し込みも十六件、二百八十くらいなものができておるのでございまして、それぞれこれからのものに対しては現地経済事情その他その仕事の適否を判断して参らなければならぬのでございますから、最初出発いたしますときには、できるだけ簡素な形で出発するということが趣旨でございましたけれども、これでは今のところとうてい十分な成果をあげ得ないのじゃないか、また審査その他も十分に行なわれないのではないか、従って、いろいろ必要がありましても、だんだん延びてくるというような場合も考えられますので、そういう意味において今回の改正をお願いすることにいたしたわけであります。  なお、こまかい分担等につきましては、局長から御答弁いたさせます。
  31. 中野正一

    中野(正)政府委員 今、長官から御説明がありましたように、二名ふやしますが、従来の二名のうちの一人は輸銀の理事が参っておりまして、輸銀との連絡事務をやっていただいておるので、輸銀の方が本務でございます。月給も輸銀の方から出ておるようなわけであります。実質的には今度は二名ふやしまして、三名が固有の基金関係の事務を担当していただくということで、担当につきましてはこれはもちろん総裁がやることでございますが、一応基金と相談をしておる段階では、総務担当が一名、営業担当が一名、渉外及び調査担当一名、もう一名は輸銀との連絡担当、こういうような割り振りになるかと思います。
  32. 中村重光

    中村(重)委員 必要な場合は役員あるいは職員を増員していくことは当然でなければなりません。しかし、私どもは、役員をふやす場合にいつも申し上げることでありますが、何か古い役人を送り込む場所という形で、えてして役員増員等が考えられておる。この点は厳に戒めていただきたい、このように考えております。  そこで要望として申し上げるのでありますが、私は必ずしも拙速主義が最善であると考えておりません。しかし、予算的には五十四億を出発点として百六十九億に達している。しかし、現実に消化されているものは十五億である、こういうことになっておる。ただいまの御答弁の中にもございましたが、十三カ所くらいは、私の調査したところによりましても、いろいろと準備を進めてはおられるようであります。しかし、その中には必ずしも私どもの期待しているような方向でないものも、先ほど申し上げましたように実はあるわけであります。この協力基金を十分活用されまして、さらにこの点に対しては、単に思想的な関係、イデオロギーにとらわれず、そして自由主義圏だけでなければならぬという考え方の上に立たないで、共産圏であろうとも、経済的にこれを発展させていく、そうした地域の発展がわが国の発展に通じていくというこの鉄則の上に立って、この協力基金の成果を十分上げていくということに配慮をお願いしたい、このように要望いたしまして、質問を終わります。
  33. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 松平忠久君。
  34. 松平忠久

    ○松平委員 海外経済協力基金の今回の改正案関連いたしまして藤山大臣にお伺いしたいのですが、最近の傾向は、いわゆる政府の贈与というものが少しよけいになってきている。民間投資というのは横ばいか、むしろ逆に世界各国における低開発国に対する経済協力を見ると、減ってきております。この傾向は、贈与がいいにきまっているけれども、アメリカその他の国が少し贈与をやり過ぎた、そういう傾向が若干あるのではないか。従って、去年のケネディ大統領の教書によりましても三点ばかり反省すべき点をサゼストしております。私がお伺いしたいのは、東南アジア等中心とするこれらの低開発国における政治家の方々の気持というのは一体どういうところにあるのか。民間投資の率が減ってきて、そして贈与もしくはそれと同じような性質のもがだんだんふえてきているというのは、どういうところに原因があるのか。藤山さんはどうお考えですか。
  35. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私は東南アジアの低開発国の開発ということの現在一番重要な問題は、現地におきます中小企業を振興さして、そうして民族資本をおのずからふやしていく、また労働力を確実に活用していくというところ経済開発意義があり、またそれが現地経済の将来の発展の基礎をなすものではないか、こう思っております。また日本がその立場においては一番適当な立場であるとも思っております。ところが、若干現地のそれぞれの国の政治家の方々におきましても、むろんそうした中小企業を起こして参ります場合に、エネルギー問題を解決するために水力電気を開発するというような大きな仕事もあることはあるのでございますけれども、しかし、どうもヨーロッパなりアメリカの大きな資本家があまりにも大きな近代産業というようなものを現地に起こそうというようなきらいが少しあるのじゃないか。そこで各国とも、政府がそういう大きな事業に金を貸す、あるいは贈与をしていくというような傾向があるのでございまして、いわゆるオートメーション化した工場、百億に近いような工場をかりに作ってみましても、それをすぐ運用するだけに技術的水準がまだ上がっておりませんし、経験も持っておらぬ。私は六、七年前に会議所の会頭として実業団を連れてセイロンに参ったことがありますが、そのときに、スイスが政府のバックのもとに非常に大きな近代的な瀬戸物工場を作っておるが、それがほとんど動いておりません。ちょうど名古屋の会議所から選んでいただきまして瀬戸の技術の方も一緒に同行したのですが、その方はセイロンの現地の土人の焼いておりますかまどの中にもぐり込んで、これはもう少しかまどを改善していけば、現地の必要とするような食器類は十分に生産できるのだということの結論を出されたことがあるのでありますが、私どもはやはりそういう意味において、何か現地政府の方々が、非常に目に見えたような大きなものを作り上げるということが一つの施政のモニュメントにもなるわけでございますし、そういうりっぱなものを作ろうという意欲に燃えておられるのも、その気持はわかりますけれども、しかし、実際申しますと、たとえばオートメーション化した工場をいきなり現地に持っていってごく少数の人間しか雇用されないというよりも、たとえば現地のかまどを改良して、そこに働く人も多くなり、また現地の人の使うものが現在よりも若干上質のものになって、しかもそれが低廉に生産されるというようなところに持っていくのが、私は一つ協力方針でなければならぬと思います。そういう意味におきましては、どうもむしろある意味からいうと、ヨーロッパもしくはアメリカ等の経済協力方針、またそれを受け入れる形というものが、若干私は、特に東南アジアにおきましては、適当でないのじゃないかというような感じを持っております。
  36. 松平忠久

    ○松平委員 私も藤山長官の意見に同感です。やはり雇用問題の解決ということを考えていかなければならぬと思う。従って、バランスのあるやり方をしなければならぬ。この間あなたの部下の大来君がビルマに行ってきた、その報告を聞いてみると、バルーチャンで水力発電所を今日完成してやっております。幾らで売っておるかというと、一キロワット・アワー二十八円で売っておる。一体そんな高い電気をだれが買って工業を起こすことができますか。それは電気を起こしたけれども、電気の使い道をまだ知らぬ、また電気を使うような産業もない、こういう状態なんですね。ですから私は日本の賠償のやり方につきましても、賠償のイニシアチブは相手国にあります。しかしながら、それをどういうふうに経済の発展に役立たせるかということを考えてみるならば、やはり五カ年計画あるいは七カ年計画というものに対して日本がグッド・アドヴァイスを与えるというぐらいなことをしていく必要があるんじゃないか、賠償は日本で払うんですから。——結局こじきが馬をもらったようなもので、困るんです。ですからその辺はよほど考えなくちゃならぬと思います。  そこで、今あなたが言われた中小のものを起こしていくということは現地の実情に合う、雇用問題の解決にもなる、こういうことですが、中小の企業日本経済協力として起こしていくということについての欠陥があると私は思う。それは大きな企業でありましたならば、リスクは自分で負います。しかし、中小が困っておるのは、リスクはどうやって負うかということなんです。今日たとえばインドのパイロット万年筆も自分でやりましたけれども、今はやや行き詰まりの状態にある。そこでリスクをどうしてやるかということについて、たとえば国際商業会議所でいわゆる中小企業の投資の保証制度、これを国際的に作れということを提案しております。あるいは二国間のそういうものもある国では今日ございます。そこであなたの方の海外経済協力基金というものの使途が今日百五、六十億になりますが、それがたった十五億しか出ていないということを見ても、海外経済協力基金において回収というようなことを考えてやっておるからそういうことになったんだろうと思うけれども、しかし、一方においてばリスクをカバーするような制度というものができていなければ、インドその他の国に対して、中小企業経済協力を強力に推進していくことはできないと思う。その点に対してどういうふうにお考えですか。
  37. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 中小企業現地進出ということは、私申し上げましたように非常に希望をいたしておるのですが、お話しのように、非常な困難な点が、ございます。一つはまるまる日本から資本を持っていって向こうで仕事をする、現地の雇用の問題においては貢献いたしますけれども、やはりできるならば現地の中小民族資本と協力いたしていく体制ができるならば、これは一番望ましいことなんでございますが、必ずしも現地の民族資本というものが今日まだ十分に育成されておりませんし、あるいは現地のそういう産業界あるいは金融界の基礎ができておりませんので、その点は相当困難な点がございます。従いまして、ある場合には日本の資金がほとんど主体になっていかなければならないような場面ができて参りますので、そういうこともやって参らなければならぬことは当然でございます。その場合に、今お話しのように、将来はたしてどの程度の資本が必要かという問題については、十分な検討をいたして参らなければ、今にわかにこういうことでやることが必要だと申すわけにも参らないのでございますが、しかし、そうした協力をやって参りまして、達成見込みがあるものをできるだけ選んでやっていく。なお、現地状況等について、日本中小企業者が技術的な協力をする上において、さらに非常な不安心を感じるというような点がございますれば、それらの問題について、今後十分検討をいたした上で、今お話しの国際商業会議所のあれも私は聞いておりますが、そういうような問題は将来の問題として考える必要もあろうかと存じております。
  38. 松平忠久

    ○松平委員 その点についてはあとでまたちょっと触れてみたいのですが、もう一つの問題は、東南アジアにしろ、アフリカにしろ、あるいはアラビアにしろ、いずれの国もいろいろな意味経済協力を希望しております。ことに日本技術なり資本なりというものに対して私はかなり期待をしておると思うのです。それは一つは欧米では何かまた植民地の再現というふうなニュアンスも出てきはせぬか、共産圏では何となく不安だというようなことで、かなり日本に対しては期待していると思う。従って、また国民感情も非常によく、受け入れば非常にあると思う。  ところが遺憾なことは、これは日本の国連外交がだめなんです。つまり、いつも東南アジアなりAA諸国にそっぽを向いたようなことをやっておる。このことは、岡崎勝男君が行くときに、私は、君どうするのだと言ったら、自分は実はアラビア石油におったので、それで東南アジアなりありいはAA諸国とこれから非常に一生懸命やっていかなければならぬと思う。だから自分は極力それらの人とつき合って、そうして協調を保っていくということに努めていきたいということを言っておりました。その後国連でいろいろ問題が起こりますと、請訓をしてきております。その請訓の内容を見ると、ほぼ岡崎君が私に言ったのと同じようなラインで彼はやっていると思うのです。ところが、日本政府からの回答は、いつも大体逆であります。すなわち、これはやはり日本政府自体が、閣内がいかぬということ、それは外務省が悪いかあるいは総理が悪いか、いずれにしても、国務大臣責任だろうと思う。私は海外経済協力東南アジア中心にしてやっていくというならば、やはり日本の現在の国連外交考え方というものは一ぺん修正を要すると思うのですが、これについてはどう思いますか。
  39. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 東南アジア方面あるいは中近東さらにおそらく最近はアフリカを加えていいんだと私は思いますが、この方面と緊密な協力を国連において持って参りますことは、これはもう当然なことでございまして、私もそういう方針を持ってやって参りましたし、ただいまでもそういう岡崎さんの請訓があったようにその方針が特に変わっておるとは私ども考えておらぬのでございますが、政府としても、当然東南アジア方面に対する国連外交は、推進をいたしておるという考え方を持っております。
  40. 松平忠久

    ○松平委員 大へん苦しい答弁です。これはここであなたにそのことを言っても、私は答弁なさらないと思う。だけれども、これは今までの去年の国連外交を見てくると、AA諸国は日本というものに対して、何と申しますか、考えを改めていかなければならぬじゃないかというようなきざしが少しあるのじゃないか、私はこういうふうに思うのであります。そこで、これは藤山さん一人を責めてみたところでどうにもならぬことだけれども、しかし、あなたは将来政治家として大をなすという気持もあるようだから、その点はよほど新たなる感覚に基づいて私はやってもらいたい、こういうことを特に要望しておきます。  もう一つ、お伺いしたいのは、この間エカフェでもありましたけれども、いわゆる世界の、ことに低開発諸国間におけるブロック化の傾向がございます。このブロック化の傾向というものに対して、日本はどうしたらいいか。この間エカフェはあなたが議長をやっておって、そのとき日本側は、このブロック化は時期尚早だといって、水をかけるような態度であった。ところ東南アジアにいたしましても、これはマラヤ、シンガポール、フィリピン、ああいうところは着々とやっていこうという考えを持っております。またガーナを中心とする新たなる動きというものがアフリカにあることは御承知通りなんです。ことに昨年の十二月に独立しましたタンガニーカのニエレレという大統領がございます。この大統領は、エンクルマと双壁なんです。アフリカの将来の指導者として、必ず大アフリカ主義というものをこのニエレレとケニアッタ、それからもう一人は今のエンクルマ、これがやっていくと思うのです。そういうのに対して日本が今までのような工合に、ちょうどアメリカとそれらの国の問の中間的な存在になっておる、そっちへもどうも首を突っ込んでいけない、片足を突っ込んでおるような格好をしておるというのでは、これは困るのじゃないか、世の中はどんどん進んでいってしまう。そのことに対してあなたはどう考えておりますか。どうしたらいいか。
  41. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 この問エカフェの総会で私は議長をいたしましたが、非常に何かアジアの各国が一つの方向に向かって進むことに消極的であったようにお考えをいただいておりますけれども政府の態度は必ずしも消極的ではございません。ただ、御承知通り、アフリカ大陸という一つの地理的な固まった地帯、あるいは南米大陸というものは一つの地理的に固まった地帯であります。あるいはヨーロッパ、EECの問題もそうでございますが、こういう地域的に固まっておりますところと海を隔ててかなり点在せざるを得ない関係にございます地理的状況というものは、同じような一つのブロックを形成いたしますにつきましても相当準備も要りますし、そういう面についての、将来にわたります地ならしも必要だと思います。また同時に今日の経済発展段階というものがある程度違っておるのでありまして、それらのものがいきなりすぐにいわゆる共同体的な形にまとまりますことは、私は不可能じゃないか、こう思います。しかし、それではそのままでいいかといえば、これはやはり地ならしをしていかなければならぬ。でありますから、先般のエカフェの総会におきましても、まずこういうような地域関係を固めて参りますためには、地域間の結合をする一つの方法として、たとえば道路であるとか、交通輸送の関係であるとか、通信の関係であるとか、これをプロックを中心にした考え方でまとめていく。従来はすべてが植民本国、たとえばインドネシアのように、航路を見ますれば、すべてヨーロッパに直通する航路、あるいは電信電話の回線にいたしましても、ヨーロッパに直通のものであって、アジアの中の各国をつなぐような関係にはございません。従って、そういうような面を、同じような立場に立って、アジア自身の便宜のために、まず基礎的に固めていくというようなことから参ることが必要であって、いきなり関税の問題をどうするとかというようなところまで、現在の段階で踏み込みますことは、かえって非常な誤解と磨擦を起こすのではないかと思います。おそらく先般エカフェの総会におまきしても、いわゆる昔のシルク・ロードの復活のようなアジアを結ぶ大幹線道路を作ろう、あるいは地域協力として今申し上げたような点についての研究をある程度しておりますけれども、そういう意味の基礎的な問題を固めて参ることが今急務ではないか。そういう意味においてむろん前進をして参らなければならないのでございます。たとえば農業の問題にいたしましても、各国それぞれいろいろの立場がございます。従って、日本がタイから米を輸入できないとなれば、できるだけタイから輸入するものをふやして参らなければならない。アメリカから輸入しているトウモロコシ等をタイに持っていく、そうしてタイから——近ごろは相当輸出が日本にふえてきておりますので、エカフェの席上でもタイが喜んでおりましたが、そういうふうにお互いがわずかずつでも協力関係を打ち立てながら進んでいくということは、これは必要なことでございます。地域内の農業の調整というような、第一産品を作っておるのがほとんどの国でございますから、いきなりこういう非常なかたいことをやりますことは無理だと思いますが、基本的なことは、今申し上げたようなことで緊密な連絡をとり、通信連絡、交通等のアジア地域内相互の関係を十分確立しながら、今申し上げたような調整をして、そうしてある段階に行きますれば、経済的な一つの大きな連絡のかたまりになるのではないか。そういうふうな意味において前向きであって、必ずしも消極的にそういうことを考えておるというのではない、こう私は考えるのでございます。
  42. 松平忠久

    ○松平委員 その点は私も同感です。東南アジア考えてみますと、島国が多いんです。島と大陸が二つ合わさっているところです。そこで政治上の不安定ということは何に関係しているかというと、その地理的条件、すなわち島国であるということなんです。そこで東南アジアについては島国をどうやって結びつけていくかというところに、私はポイントを置かなければならぬと思う。大陸に近いところはむろんであるし、こういうところに重きを置くということにお考えが行ったということに非常に進歩であって、これはまさにそれを重点にやっていくべきだと私は思います。  そこでもう一つお伺いしたいのは、それらの国の産業がなかなかうまくいかぬ理由が、そういう島国ということのほかに、民族、教育の程度が低い、言語も非常に複雑だ、これで意思の疎通を欠くわけです。それから環境衛生その他についてもゼロに近いというところが共通の点になっておるわけです。従って、経済協力という場合に、一番困難になるのはその点であるから、そこに相当力を入れさしていかなければならぬ、また入れているようであります。教育に力を入れるということをどこの国でも非常に強調しております。そういう場合におきまして、この海外経済協力基金というものは、経済ということをうたっております。従って、一体病院とか学校とかというものは入らないように一応とれます。しかしながら、これはペイするものであるというのであれば、これはむしろそういう基本的なところのものも入れていくべきだ、こういうふうに考えますが、その点はどうですか。
  43. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 海外経済協力基金は、今お話しのように、ペイするものであればいいという考え方で、最近たとえば日本の映画の輸出の一つの方法として、また現地日本との文化の交流意味で、現地に映画館を作ったらどうだ、そうして大いにというような話も出ております。従って、病院等を作りまして、それがペイしていくものでありますれば、経済協力というのは社会協力と違うんだという意味でなしに、経済的に引き合うものに対する協力、こういう意味だと私ども解釈して差しつかえないと思います。
  44. 松平忠久

    ○松平委員 もう一つ海外経済協力基金の構想について所感をお伺いしたいと思うのですが、それはいわゆる多国間による条約によりますところの援助の方式、あるいは二国間による方式、いろいろあります。それがダブったり何かしては困るというので、DAGというものをこしらえ、さらにDACをこしらえるということになった。いわゆる国際的な援助、国際的な協力というものと、この日本が独特でやるところ経済協力というものの調整なり結びつきなりというものを、事実具体的には一体どういうふうにお考えになっておりますか。
  45. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 経済協力の面で、国際協力の必要なことは、これは当然でございまして、国際協力のもとにやっていくことが必要であることは、これはもう否定できません。しかし二国間の協力もまた必要であることも、これもまた否定できないわけであります。どちらばかしがいいというわけには参りません。そしてDAC等の今日までの考え方は、実は私が前段、先ほど申し上げましたような考え方と違って、もう少し大きく基礎的なもので、たとえば今国連で取り上げておりますメコン川の開発計画であるとかいうような、国境を越えた大きな計画というものに各国が協力していくということで、これはメコン川を中心にした四つの国が、政治的な関係を抜きにして協力いたしておりますし、世界の国もこれに協力しております。たとえば今度の東西を貫く道路を一つ作ろうというような問題も、まあこういう大きな問題は、やはり国際協力でやるべきではないか、こう考えておりますが、日本の立場に立ちまして、二国間でやりまするものは、先ほど申し上げたような方針でいくことが、相互補完の関係において完璧を期するものではないか、こういうふうに考えております。
  46. 松平忠久

    ○松平委員 そこで、国際的ないろいろな援助機関というものは世銀もあれば第二世銀もある。そのほかの国際復興基金ですか、そういうものもある。それらの貸付条件というものと、この基金でやっておられる諸条件というものは、比較してどうですか、大体似たり寄ったりですか。
  47. 中野正一

    中野(正)政府委員 経済協力基金の貸付の条件は、御承知のように、輸銀ベースに乗らないもので必要なものをやるということになっております。業務方法書にも書いてございますが、利率は大体三分五厘程度以上ということで、必要があればそれ以下でもできる。期間は、大体二十年ということを原則としております。いずれにしましても、輸銀よりは相当緩和されておりますが、国際的に見ますると、今指摘のありました、最近できました第二世銀につきましては、これは相当緩和した条件で考えておりまして、もちろんこれは日本もこれに出資をいたしまして、協力をいたしておりますが、それに比べると、ちょっとまだ日本の条件はシビアということが言えると思いますが、しかし、従来日本でやっておりました程度協力基金経済協力のペースから言いますと、相当国際的なレベルに近づいておるのじゃないかというふうに考えております。
  48. 松平忠久

    ○松平委員 もう一つお伺いしたいのは、この海外経済協力基金の存在なりその価値判断、これは在外の日本商社その他はあまり知りません。これはできて早々だから無理もないと思いますけれども、そのPRと言うか何と言うか、どういうふうにしてこれはやっておるのですか、知らない人が多いのです。それから、知っておっても、一体どういう条件でどうだなんということは、ほとんど知りません。この点についてはどういうことをやっておられますか。
  49. 中野正一

    中野(正)政府委員 経済協力基金日本でできました当時から、これは日本外交機関を通じましていろいろと説明をしておりますし、まあわれわれが聞いておる範囲では、国際会議等におきましては、日本経済協力基金というものに対する期待というものは、少なくとも低開発国——日本のいろいろ技術的にあるいは資本的に援助を欲しておるような国は、政府ペースの方々は、非常にこれに期待をしておられるように、私たちが会議に出たりしておりますと感じております。それから、これはそれぞれエカフェなりあるいはガットなりいろいろな会合におきましても、そういう点につきましては、責任大臣なり何なりからそういうこと言っておられますし、これは相当徹底をしておる。ただ、今御指摘がありましたように、どの程度仕事をやってくれるのかということになりますと、まだあまり実績も出ておりませんので、認識はまだ十分徹底していないのじゃないか。むしろわれわれが感じておるのは、過大な期待を持たれ過ぎているんじゃないかということをおそれているくらいであります。また、今申されました商社なりあるいは向こうの民間ベースに対するPR等につきましても、協力基金の方としても、それぞれの在外公館あるいはそのほかのいろいろな方法を通じまして、それぞれ努力をさしておるつもりでございます。
  50. 松平忠久

    ○松平委員 PRが徹底していれば、これはたった十五億円しか借りないということはありません。それから、これは政府の人が知っておったのではだめですよ、政府が借りるのじゃないので、民間の人が借りるのだから。だから、いろいろやっておられるようだけれども、実際はやっていないのだと思う。もう少し民間の人、ことに在外で事業をやっておるとかあるいはそのイントリストを持っているとかという国内の商社とか、そういうものに私はPRをする必要があるのであって、政府の機関に流してやって、知っておるというような程度では、これはだめですよ。それはやはり中野君が今答弁したけれども、これは長官がお考えを願って、そうして注意しておいたらどうか、こういうふうに思います。
  51. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 何と申しましても、実は先ほども御説明申し上げましたように、一人は輸銀の理事が兼務をいたしております。柳田総裁以外はたった一人の理事でございます。当然こういう仕事が始まります場合には、総裁なり理事現地を回りまして、こういう仕事も始まった、それすらまだ、設立準備をいたしておりますと、その十分な時間もない。柳田総裁がたまたまIMFの会議に行きます中途で寄られるという程度でございます。従って、今回の理事の増員をお願いしたのもそういう意味でもございますし、今後御指摘の点につきましては一つ十分な努力をいたさせるようにわれわれ監督をいたして参りたいと思います。
  52. 松平忠久

    ○松平委員 その点は了解はしますが、それとうらはらをなす調査ですね、この調査はどうやっておられるか、私はお聞きしたいのです。たとえていえば今三件ばかりここにあります。北スマトラあるいは水野組のエジプトのスエズ運河の浚渫その他ですね。これをやる場合には一体どういう調査をやられて、そうしてこれがよかろうということになったのか。その調査の実施のやり方、やったことはどういうことをやられたか、ちょっとお伺いしたい。
  53. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 大体開発基金ができますときに、組織は非常に簡素化して輸銀の理事を一人入れて、あとはもう専門的には理事一人でいいのだ、そうして調査そのものも輸銀の機関をある程度活用すればいいのではないかというような点から出発いたしたのでございますから、ある場合には、輸銀のベースに乗らないものだけがこっちに回ってくる、輸銀のベースに乗るものは輸銀の方でやってしまうというような形のものもございます。従って、調査等もいよいよこっちがやるとなりますれば、輸銀だけの調査というわけには参りませんので、それぞれ足りない人手をもって調査をいたし、各方面調査の資料、材料も取ってやるというような状況なのでございまして、率直に申し上げますと、今言ったような状況でございますから、必ずしも運営が十分に基金目的に沿うようにいってない点もございます。従って、今回こういう改正をいたしまして、御希望に沿うようにいたしていきたい、こういう考えでございます。
  54. 中川俊思

    ○中川委員 ちょっと関連して。——お尋ねというほどじゃなく、私の感じたことを申し上げます。先ほど来、松平君の御質問の中にPRということが出ております。これは長官はそのこまかいところまで一々御存じないと思うんですけれども、実際日本海外におけるそういうPRというのは徹底していないと思う。ちょうど今ロンドンのミスター・セールとそれから南アフリカから、製鉄会社ですが、日本鋼管と契約を結ぶためにミスター・ディクソンという人が来ております。私ゆうべも一緒に飯を食ったのですが、そのときミスター・セールとミスター・ディクソンが言うことは、PRが足りない、ヨーロッパは実にPRが徹底している、だから各国がアフリカに一つの商品を出すにしても、経済協力をするにしても、日本は全然PRをしていない。日本はPRは下手だということでありました。そのとき一つ出ました話は、せっかく日本がいろいろ経済進出をしよう、経済協力をしようというので、現地といろいろタイアップしてやってあるが、アフターケアが全然だめなんだ、だから部分品をあとから補給しようと思っても、それがないということで、経済協力のしようがない。これは民間出身の藤山さんは一番よく御存じですが、日本の役所というのは、国会答弁はなかなかうまいことを言いますが、実際やらないんです。ですから、やらないと言うと中野君には悪いですけれども、実際責任のがれのようなことでやれないということもあるのじゃないかと思うんですが、どうもここで答弁をするときには、PRもやる、アフターケアもやると言い、先ほど来松平君の質問に対して御答弁になったようなことも、大臣としてそういう答弁をされるのはごもっともですが、それを下がその通りにやっておるかということなんです。これは民間御出身の藤山さんはそういう点よく御存じでございますから、せっかくこういう法律があり、金も有効に使わなければ意義のないことでございます、これは質問というのでないけれども、その点一つ十分注意してやってもらいたいということを要望しておくわけです。
  55. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 まことにごもっともでございまして、今後十分注意をいたします。
  56. 松平忠久

    ○松平委員 その調査のことですが、手足もない、輸銀に頼んだり何かするというんですが、輸銀だって手足はないんですよ。そこで国内でうまくやるよりしようがない、こういうことになるのです。調査費というのは一体幾らあるんですか、この海外経済協力基金は……。
  57. 中野正一

    中野(正)政府委員 法律によりましても、御承知のように、輸銀と違いまして、固有の調査協力基金はやることができるようになっております。もちろん貸付をやるにあたっての調査というものは、輸銀でもできるわけでございますが、それ以外にいろいろ海外経済協力をする場合の基礎的な調査もできるように二十条の第四号に書いてあるわけであります。ただ、今御指摘がありましたように、まだ発足当初でございまして、この調査についてはまだスタッフも不十分でございますし、でき上がっておりません。今ビルマについて一部委託でやろうとしております。それから金の方でございますが、御存じのように、基金は今百億以上預けておりまして、相当運用益はございますので、今調査費幾らということは、これは三十七年度の予算はこれからきめるわけでありますが、外国旅費あるいは調査費等を含めまして現在約五百万円程度のものは見ておるわけであります。しかし、必要に応じまして、また三十七年度につきましては相当余裕も出て参りますので、基礎的な調査相当やりたいということで今検討中でございます。
  58. 松平忠久

    ○松平委員 それは実に少ないと思うのです。たとえば興業銀行が金を貸すにしたって、あそこは審査部が一番権限を持っておる。要するに海外にこれだけのものをやるという相当調査機能をお宅は持たなければならぬ。内部部局においては、基金の中に調査課とか何とかいうものがあるでしょう。今度調査担当の理事が一人できる、こういうことだが、これはやはり相当調査をする。しかも、アジア経済研究所とかその他の調査機関がありますけれども、それとこれとは私違うと思うのです。これはペイするかどうかということの経済調査をしなければならないわけであります。そういう他人まかせということはできないのじゃないか。自分自身が調査するか、あるいは特に委託して、委託費をたくさん作って、現地に人をやって調査する。それでなければ消化ができないのです。今度百五十億になりましたね、今のテンポでいきましたら、これはもう金が余って困るのだね。銀行に積んでおいて、そうしてその利息でもって重役以下は食べていく、こういうことになってしまうので、この点は私一つ考えてもらいたいと思うが、いかがでしょう。
  59. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 お話のように、出発点のときには大体輸銀の調査機関を利用する、そうして簡素にやろうということでございましたけれども、今度は調査を担当する理事も置くことができることになりますので、本年度の予算等につきましては十分御趣旨に沿いますように、基金調査その他の予算の計上等を十分いたすことにいたしたいと思います。
  60. 松平忠久

    ○松平委員 この基金というものは、輸銀との関係で非常に私はややこしいと思うのです。また、密接な関係がなければなりませんけれども、輸銀とは性質の違ったものなんです。そこで私は、その輸銀との関係についてどうも不可解な点が多いように思うのですが、この海外経済協力基金というものは輸銀の出店機関ですか。そうじゃないでしょう。出店機関ではないのだ、しかし、輸銀のベースに乗らないものはここでやる、こういうわけでしょう。しかし、ここに政府からもらった経済協力基金に対する解説がありますが、この解説の十六ページにこういうことが書いてある。「内談処理」というのがございまして、そこに(イ)、(ロ)、(ハ)とあるわけです。ところが、その(ハ)ですが、「基金および輸銀において相互に連絡の結果、いずれの対象となるか不明の案件については、」どっちから金を借りていいか不明なものについては、「輸銀が基金の意見を徴しながら内談指導を行なう」。こととあります。一体基金は自主性がないのですか。輸銀の言いなりほうだいでもって、輸銀がこの金を貸してやれと言ったら貸す、貸すなと言ったら貸さない、そういうことをやっているのですか。そういう指導を輸銀との間では相談をしてやっているとしたら、これはまさにおかしいですよ。
  61. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども基金が輸銀から独立した存在でなければならぬと思います。ただ出発点で、どういう関係でございましたか、非常に簡素な組織をもって、経費を使わないですべてやるべきであるというようなことから、先ほど来申し上げておりますように、輸銀の兼務理事が一人来て、基金専門の理事は一人であり、かつ調査機関その他も輸銀の人を使ってやるというようなことでございまして、輸銀との間の関係は必ずしも今まですっきり割り切れておりません。今後はやはりそういう点について人員も増加させていただきますれば逐次はっきりしていくことが必要だと思いますので、われわれとしてはそういう点については決して御意見と特に違っていることがございませんので、今後の指導をそういうふうにやって参りないと存じております。
  62. 松平忠久

    ○松平委員 何か輸銀との間に事務に関して覚書の交換というのはありますか。
  63. 中野正一

    中野(正)政府委員 御承知のように、今、事実審査につきましては輸銀に委託をしてやらせております。それから輸銀との業務の調整もやらなければならぬということは法律に書いてございますけれども、その意味で両方で仕事のやり方についてはきめております。それからまた実際事務的にも小委員会のようなものを作りまして、しょっちゅう連絡調整はやっておる。上の方は兼任の理事が来てやっておる。ただ御指摘がありましたように、だんだん基金の資本金も大きくなりますし、理事も増員されまして、今長官からも申されましたように、基金の独立性というものをだんだん強めて参るような方向に来ておりますので、特に今御指摘があったように、一体どっちがやるのか、基金に行ったり輸銀に行ったりして、業者の方は非常に右往左往するというようなケースが従来相当あったように聞いております。その意味合いにおきまして、輸銀と基金との仕事関係をもう少し外にもわかりやすいように実際問題としてさせるということで、今両者話し合いをさせておりますから、これは場合によりましては、役所の方、大蔵省、企画庁あたりも中に入りまして、もう少しそこの関係が外に対して明確になって、事案の処理が円滑に行くように、最近だいぶよくなったように聞いておりますが、さらに努力をしたいというふうに考えております。
  64. 松平忠久

    ○松平委員 この海外経済協力基金の金を借りたいというものが基金の窓口に行ってお話をする。そうすると、それは輸銀へ行っても話してくれということで、最後は輸銀が海外経済協力基金の金を借りろとか借りるなとかいうことを言うと、こう言うのです。そういうべらぼうな法律を作った覚えはない。それでは柳田総裁なんてあってなきがごときです。従って今までのようなやり方は即刻直してもらいたい。そしてこういう単独法があるのだから、単独法に基づいて輸銀といろいろ連絡を密にすることはいいですよ。しかしながら筋は通して、やはり柳田総裁なら柳田総裁というものが、金を貸せるのだとか貸せないのだとかいう判断をすべきである。輸銀がそれを判断するのなら、こんな経済協力基金なんていうものは必要ありませんよ。それこそ輸銀の支店みたいなものですよ。その点はぜひ早急に改めてもらいたいが、いかがですか。
  65. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 建前から申しましても、そういう建前に必ずしもなっておるわけではございません。しかし、従来の関係からいいまして、調査機能も人手も足りませんし、従って輸銀との調整という関係もございますので、そういう運営の面において遺憾の点があったことは、ただいま中野局長も申しました通り、いろいろあったと思います。しかし、今後基金の資金も、さらに私から申せば毎年予算の時期に若干ずつふやしていくことが必要でございますし、それについては機能を強化して、基金自身の自主性を保つという方向に持って参りませんければ、御指摘通り、この基金の総裁が輸銀の方から指揮を受けるということでは独立性がないのでございますから、むろん御指摘と同意見で私どももこれを運営して参りたいと思います。
  66. 松平忠久

    ○松平委員 それはぜひ早急に善処していただきたい。  それから少しこまかいことをたくさん聞きたいのですが、時間がないから端折ってお聞きします。  この海外経済協力基金の法律の中に書いてあること等についていろいろの熟語がございますが、そういうものをどういうふうに解釈しているかということを私はお聞きしたい。それはこの法律の中に「低開発地域産業開発に寄与し、かつ、本邦との経済交流促進するため緊要と認められる事業」とございます。これを俗に開発事業と呼んでおる。そこで開発事業というものは何であるかということが、かなり詳しく解説には書いてございます。いかなるものが開発事業であるかという点についてはお聞きしませんが、緊要な事業というものはどういうものであるか、その解釈を経済企画庁はどういうふうに解釈しておりますか。
  67. 中野正一

    中野(正)政府委員 これは法の二十条に書いてありますように、低開発国の産業開発に寄与して、同時に本邦との経済交流促進するためというのでありますから、輸銀が言っておるように貿易に直結したものでなく、長い目で見て日本との経済交流促進する。しかし、それは緊要でないような仕事基金の金を貸すというわけにいきませんで、その中で特に必要である大事な仕事であるというふうに考えられるものに貸すということに、一般的に常識的に解釈されておるわけであります。
  68. 松平忠久

    ○松平委員 それは輸銀が見て、あるいは海外経済協力基金が見て緊要であるというのですか。それとも相手国の事業を起こす場所の政府が見て緊要であるというのですか。
  69. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 相手国が緊急にそういう事業を起こしたいということは、むろんこれを尊重して参らなければならぬと思います。同時に、日本国としても、それに協力することが両国の国交親善と経済開発のために必要だという見地に立って考えらるべきことだと思います。緊要という意味からいえばそういう意味に解していただきたいと思います。
  70. 松平忠久

    ○松平委員 これは常識的に解釈していきましょう。  この基金運用が一番根本的な問題であろうと思うのです。基金運用はどういうようにしておられるのかということについて、海外経済協力基金においては次のように言っておるわけです。「基金の業務の運用は、政府海外経済協力に関する基本政策に順応する」とありますが、その基本政策というものは、紙に書いたものがございますか。
  71. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 特に私の承知しております範囲では、紙に書いた基本方針というものはございませんし、かつまた海外経済協力というものの政府の方針といたしましても、現地経済事情等諸般の経済上の情勢も見て参らなければならぬ点もございます。従って、どういうことを原則とするかということは、そのときどきの事情によって変わって参ることはむろんでございますが、申すまでもなく基本的な精神といえば現地の各国におきます経済の伸展、発達というものに寄与し得るような、そうして日本がそれに協力し得るような立場に立って問題を考えていくということでございまして、日本政府としての政策全体の上から判断すべきものだ、こう考えております。
  72. 松平忠久

    ○松平委員 それは主としてこの監督に当たっておる経済企画庁長官というものが、国務大臣たる資格において、海外経済協力に対する基本的な政策というものをある程度お持ちのはずであると思う、政府自体が。従って、その監督下にあるところ海外経済協力基金は、一体企画庁においてはどういう政策を考えておるのかということを絶えずキャッチしながら運営に当たっていくのだというふうに私は了解しているのですが、そういうことですか。それならそれでいいのですが……。
  73. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 むろんそうした問題については、基金の総裁が企画庁長官の方針に従って運営して参りますことは当然でございます。
  74. 松平忠久

    ○松平委員 もう一つお伺いしたいのは、今まで百五億のものが十五億しか貸していない。今度は百六十億、これを大体どういう地域といいますか、それはさっきも出まして主として東南アジア中心とするということですが、東南アジアにも非常にいろいろな国がある。そういう中で、基金もしくは経済企画庁としては主として経済性とかあるいは緊要の程度とかいうことを標準にしてお貸しになることと思うけれども、その場合に、ある国には貸したいが、ある国には貸さないという考えはございますか、そういうふうな政治的判断、考慮というものはこの中へ加えますか。
  75. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 経済性を考慮いたしますことがこの基金運用にあたっての主たる点でございまして、先ほども申し上げましたように、国交未回復の国は別でございますけれども、国交の回復しております国については、その国柄なんかも問わず、低開発国については貸すことに方針はきめております。むろん当時何か非常な国内の騒乱が起こっているとかなんとかいうような非常に危険な状態にあるということでありますれば、経済的にもどうあるかという、それはそのときの判断としてするわけでありまして、いわゆる政治性のいかんということについて特に留意はいたしておりません。
  76. 松平忠久

    ○松平委員 その地域について、海外領土——属領ですね。属領は近い将来に独立をする可能性のあるようなところについては貸せる、しかし、それ以外のところには貸せないというような方針があるやに、これを見ますと読めるのです。それはおかしいと思う。東南アジアにも独立をした国と、まだ属領というか、そういうところもございます。しかも属領は、とうてい独立することができないような状態にあるからこれは属領になっているところが多いのだ。たとえば香港だとかその他の地域、しかもその地域においてはかなり経済が発展しておるとか、そういう関係経済協力の足場になり得るところがあると思うのですがね。将来独立をしない地域であるからこれを貸せない、こういう基本方針というものは私は改めてもらわなくちゃならぬと思うが、この点いかがです。
  77. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 基本方針としてそういう方針はないと存じております。
  78. 松平忠久

    ○松平委員 これに書いてあります。「対象地域」という中に、「独立的色彩の強い地域」と書いてある。
  79. 藤山愛一郎

    藤山国務大臣 私ども常識的に今日まで考えておりまして、必ずしも香港に貸せないとかあるいは北ボルネオに貸せないとかいうようには実は考えておらなかったのでございますが、そういうような限定がありますれば、将来そういう点については一つ十分考慮いたします。
  80. 松平忠久

    ○松平委員 たくさんありますが、あとこまかくなりますから、この程度にしておきます。あとは局長を呼んで聞いてみるという程度にしておきましょう。
  81. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 以上で本案についての質疑は終局いたしました。     —————————————
  82. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  83. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたされました。  お諮りいたします。本案に関する委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  84. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  午後一時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時二十七分休憩      ————◇—————    午後二時七分開議
  85. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出輸出保険法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。板川正吾君。
  86. 板川正吾

    ○板川委員 昨日に引き続いて、輸出保険法の一部を改正する法律案について、残っておる一、二点を質問いたしたいと思います。  まず私は、輸出保険審議会会長佐藤榮作という人格において、佐藤榮作氏に質問いたしたいのであります。昨年九月二十二日に、輸出保険審議会として、通産大臣佐藤榮作氏に輸出保険審議会会長佐藤榮作氏から答申が出されております。輸出保険法の改正に対する要望を答申いたしておりますが、この答申の第三項で資本金の増額の必要を強調されております。輸出保険の制度というのが、輸出振興の一環として非常に重要だということを強調されており、そして、その輸出保険の特別会計の資本金は、昭和二十七年度以降三十億円に据え置かれておる。こういう状況で、これは政府がある意味では輸出振興に対する熱意がないということの一端を現わす意味にもとられるわけであります。そこで、この輸出保険審議会会長佐藤榮作氏が、少なくともこの資本金は八十億円程度の増額が必要であるということを通産大臣に答申をされておるのですが、審議会会長として、この八十億円程度の増額が必要だと認められた理由をお答え願いたいと思います。
  87. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 審議会の会長といたしまして、各委員の方々の御意見を聞いて、とにかく民主的にただいま申しように増額を決議いたしたわけでございます。ところで、これは、輸出保険そのものができるだけ保険の目的を十分達するように、資金的にも困らないように、また保険料率等についても希望者の要望にこたえるようにするためには、どうしても資本金をふやすことだ、こういうので、金額をふやせ、こういう点に意見が一致いたしたわけでございます。従いまして、通産省といたしましては、予算編成に際してさような点を大蔵省と交渉を持ったのでございますが、今回は目的を達することができなかった。今後機会をとらえてなお一そう努力して参るつもりでございます。
  88. 板川正吾

    ○板川委員 私は、審議会会長の佐藤榮作氏が答申されて、それを受け取った通産大臣がその後どうやったかという質問をしようと思ったのですが、ただいまお答えになりました。大蔵省の大蔵大臣も一緒に来てもらうように要求したのでありますが、大臣は来られなくて、田代主計官が出席されております。通産省で八十億円の資金の増額を要求されて、実際二十七年以降据え置きされているというのは、これはどうもあまりにひどいのじゃないかと思うのです。これが八十億円が六十億円になったとかいうなら、それはそれである意味ではやむを得ないとしても、ことしゼロだったというのは、大蔵省が輸出振興に対する認識を欠いておる、こういうふうに思わざるを得ないのですが、主計官で答弁できるかどうか知りませんが、一体今後このままで、三十億円で据え置いていくつもりでありますか。それとも考慮をされるような機運が大蔵省の中でありますか。
  89. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。  御案内の通り、現在、輸出保険制度と申しますものは、日本の輸出振興策の大きな柱でございます。たとえて申しますと、税制の所得控除と申しますか、あるいは輸出入銀行、それと並ぶ大きな機能を果たしておるという工合に、私どもとしてはかねがね考えております。そういう意味で、保険につきましても非常に慎重に考えておりますし、また昨年の輸出振興策ということの一翼といたしまして、いろいろ検討しておることは事実でございます。ただ、通産省から御要求があったのを大蔵省がどうして断わったかという御質問だったと思いますが、これは委員も御承知と思いますが、三十六年度末の保険収支総合を考えますと、資本金の三十億、それから過去の利益とか備金とか、あるいは未経過保険料とかということで、保険のバッファーになる、いわゆる保険基金と称しますか、それが九十二億円くらいございます。九十二億円もありますと、かなり保険の責任を持たなければいかぬという残高になりまして、約二%弱だと思いますが、そういう姿になっております。二%と申しますと、輸出保険が、開業以来いろいろ事故も起こしておりますし、いろいろな運用をしてきているというときに、過去の一番高い事故率が一、九九%、最高のバッファーに現に今の金でさえもなっておるという判断が一つある。もう一つは、資本金を入れるという効果は、今言ったバッファーという問題のほかに、保険収支という問題だと思います。これにつきましては、御案内の通り、三十七年度予算におきましては、保険の事務取扱費、これも飛躍的に増加しまして、たしか昨年が六千九百万の扱い費を、今度船積み前信用保険を加えるということでございまして、特に信用調査事項ということにつきまして相当な金を入れております。大体四千万円ぐらい入れておりまして、一億二千二百万だったと思います。そういうことをいたしましても、なおかつ三十七年度の保険収支は大体一億台の黒ということになるであろうということも考えられますので、特別に出資する必要はないという工合に勘案したわけでございます。
  90. 板川正吾

    ○板川委員 それは輸出保険の制度を現状のままでおいてそういう計算であろうと思います。保険制度が、これは諸外国から見れば、英、独等から見れば、まだまだ信用保険の担保の範囲なんかは狭いんです。ですから、もうちょっと輸出保険という制度を拡充していかなければならない。そういうためには、私はやはり資本金を増額することが必要だと思うのです。それと、もう一つは、料率を、この答申のときには半分ぐらい下げろ、こういうことを目途にしなさいと答申されている。とりあえず三〇%ほど下げたそうでありますが、料率もいま少し下げて、範囲も拡大しなければいけない、そういう意味からいうと、これは資本金をもっと大幅に増額する必要があると思うのです。とにかく昭和二十七年から見れば、輸出の金額等は二倍以上になっておると思うのですが、そういうふうにふえておるのに、資本金が三十億で据え置かれておる。資産が相当ふえておるにしても、やはり私はせめて八十億円程度くらいは増額すべきではなかったかどうか、一つ帰って大臣によく話してもらいたい。次の機会には大幅な増額をしてほしい。きょうの本案を可決した後、付帯条件等にも盛り込んでありますから、一つ輸出振興に熱意を示して、輸出保険制度の拡大のために大蔵省も協力してほしいということを、大臣によく話しておいてもらいたいということを要望いたします。
  91. 田代一正

    ○田代説明員 ただいまの御説、大臣に確かに申し伝えたいと思いますが、ただ何と申しますか、危険の範囲の問題と拡張の問題、それから料率の引き下げという問題と、二つにからんで増額が必要じゃないかという御質問だと思いますが、今の段階考えますと、後者の問題、これは板川委員も御存じと思いますが、国際的に見て、現在の日本の保険料は高くないと思うのです。低いと思うのですね。そういうこともやっぱり頭に置いて考えなければならぬと思う。やみくもに下げたらいいということじゃないと思うのです。そういう意味でおのずからめどがあると思います。それから、第二の問題は、保険の範囲の拡大の問題ですが、これはとりあえずことしは、今お願いしております法案の中で破産の問題とか相手国政府の問題の諸点について事故範囲を拡大することになっております。これも将来は様子を見て、さらに検討するという時期は必ず近いうちにくると思いますが、そういった時期に、さらに保険改支の状況というものをその時点においてまた考えていくということじゃないかと思います。  私の答弁はそういうことになりますが、いずれにいたしましても、大臣にはこの旨を申し伝えておきます。
  92. 板川正吾

    ○板川委員 通産大臣にお伺いしますが、この輸出保険審議会の答申ですが、輸出保険審議会の会長が佐藤榮作、諮問し答申を受けるのが通産大臣佐藤榮作、同一人が答申をし、同一人が答申を受ける。どうも形としてあまりいい形じゃないじゃないですか。これはこの審議会の委員が十一名で構成されておって、うち六名が民間人だそうでありますが、やはりこういう審議会の会長は民間人にさせて、自由な意見を出させ、責任を持たせ、答申を受ける方が通産大臣、こういう形の方が形として常識的じゃないですか。佐藤榮作が答申し、佐藤榮作が受けるというのは、答申の形として好ましい形じゃないですが、どうお考えですか。
  93. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは御記憶があるだろうと思うのですが、輸出保険審議会の規定の第十七条に、「審議会は、通商産業大臣及び委員十一人以内で組織する。」「通商産業大臣は、会長として会務を総理する。」こういう規定がございまして、私通産大臣になりまして、この規定通り実は行なっておるわけでございます。別に二重人格者じゃございません。その点間違いのないように願いたいと思います。
  94. 板川正吾

    ○板川委員 最近このような形の審議会、たとえば大臣なりが審議会の会長として同じ人に答申を出すというような例がたくさんあります。その十七条の規定が実は今の時代に沿わないのじゃないですか。その規定を改正する必要があるのじゃないかと思うのですが、改正する御意思がありますか。
  95. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この種の規定は、他の審議会等にもしばしばございます。科学技術審議会の会長が総理大臣であって、その池田勇人会長が総理大臣池田勇人に答申している。また各省にもそういう例があると思います。会長自身でございますから、この点は不思議だといえば不思議ですが、そのまま規定そのものを忠実にしていって差しつかえないものだ、あえて法律改正というところまでいかなくてもいいのじゃないか、実際私はこういう感じがいたしております。特に二重人格者でないことだけは間違いないことでございますから、御了承を願いたいと思います。
  96. 板川正吾

    ○板川委員 これは要望にしておいてもいいのですが、保険をかける方の民間人の気持というものを保険審議会はやはりくみ上げてやらなくてはいけないと思うのです。通産大臣が保険審議会の会長でにらみをきかせておったら、それは、民間人の代表からいえば、言いたいことも言えないことがあると思うのです。従って、民主的な保険行政の運営というのに、意見が発表できないきらいもないでもないと思うのです。やはり私はその十七条の規定が実情に即さないと思うのです。ですから、一つ御検討を加えられて、適当な機会に結論を出されて、われわれの要望としては、民間人に会長を渡された方がいいのじゃないかと考えるから、要望として申し上げます。
  97. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今まで大へんふまじめな答弁をしていたようで恐縮でございますが、ただいまのお話、私真意がわからないわけではございません。十分検討して、そうして結論を出すということにいたします。
  98. 板川正吾

    ○板川委員 以上で本法に対する私の質疑は終わりたいと思います。
  99. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 本案に対して他に質疑はありませんか。——以上で本案についての質疑は終局いたしました。     —————————————
  100. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 引き続き本案の討論に入るのでありますが、お申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  101. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたされました。     —————————————
  102. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 次に、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党を代表して、岡本茂君、板川正吾君及び玉置一徳君より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず提出者より趣旨の説明を聴取することといたします。板川正吾君。
  103. 板川正吾

    ○板川委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、三派を代表いたしまして、輸出保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議を提案申し上げたいと思います。  まず案文を読み上げます。    輸出保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   輸出振興策の一環としての輸出保険制度の重要性にかんがみ、政府は、この制度の運用に当って、特に次の事項の早急な実現を図るべきである。  一、制度を一層充実するため、輸出保険特別会計の資本金の増額に努めること。  二、輸出信用調査機能を拡充するとともに、担保危険の範囲を拡大すること。  以上であります。  御承知のように、本輸出保険の特別会計の資本金は、昭和二十七年以降据え置かれております。審議の過程で明らかになりましたように、通産省としても大幅な資本金の増額を要求しておったのであります。不幸にして実現をされませんでしたが、来たるべき機会にはぜひともこの資本金の増額を実現してほしい、こういうことであります。  第二としては、今次の改正でも、船積み前の保険も一つの条件の中にあります。相手方が破産した場合とか、あるいは相手方の政府、公的機関のキャンセルにあったというような場合しかないのであります。将来は、信用調査機能を拡充して、そうした担保危険の範囲を拡大する必要があります。輸出保険制度の一そうの充実をはかるために、そういう必要があるということを、この附帯決議として要望した次第であります。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  104. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  105. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 起立総員。よって、本動議の通り、附帯決議を付することに決しました。  この際、通商産業大臣より発言を求められておりますので、これを許可いたします。佐藤通商産業大臣
  106. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま総員の御賛成によりまして決せられました附帯決議、いずれも制度そのものの機能を充実する上から申しまして、しごくもっともなことだと思います。政府は、決議の趣旨を尊重いたしまして、制度を充実し、輸出振興に一そうの効力を払いたいと考えております。     —————————————
  107. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 お諮りいたします。  本案に関する委員会の報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  109. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 次に、内閣提出家庭用品品質表示法案を議題とし、質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。小林ちづ君。
  110. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 私は、家庭用品品質表示法案についてお尋ねいたします。  通産大臣の任務としては、物資の大量生産、販売、消費の改善をはかることにあると考えるのですが、通産省の行政態度を見ると、生産行政には熱心でありますが、一般消費者の利益を守る消費者行政に関しては、とかく二義的であるように思われるのですが、消費者行政についてはいかなる基本的な態度をもって臨んでおられますか。また、消費者の利益を保護するため、具体的などのような施策を講じておられますか。
  111. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 通産省仕事が生産行政にどうも集中されて、消費者行政がおろそかになっておる、あるいはまた公害対策等がおろそかになっておる、こういうような批判をしばしばしば聞くのでございます。しかし、私が申し上げるまでもなく、経済を拡大し、そうして経済の発展を期するということは、目的は国民生活の向上にあるわけだし、社会秩序の確保にあるわけでございます。こういうことを申せば、当然消費者行政と申しますか、消費者の利益になるよう、また一般の社会秩序を乱すことのないようにする。公害に対しましても積極的意図を持つ。これは当然なことでございます。今日までそういう目的がはっきりしておるにかかわらず、なおかつ隔靴掻痒の感があったということは一体どうか。一つには、消費者行政という言葉を使わなくとも、消費者生活、消費者に対しては相当の恩恵がいっていた、あるいは一般の公害というようなものにいたしましてもその程度が軽かった、こういうことはあるだろうと思います。しかし、最近どんどん事業が活発に活動するようになって参りますし、あるいは貿易が拡大され、国内よりも国外へというようなことになってくると、大事な国内消費の面がおろそかになりはしないかとか、あるいはまた国内においても競争が非常に熾烈になる、そういう意味において消費者獲得競争がひどくなる、真実も消費者がなかなか把握しにくい、こういう問題にも当面するわけです。一方公害の問題も非常にはっきりして参りましたので、今回地下水、工業用水確保と同時に、地盤沈下の対策を立てることは主要な目的一つだ、こういうようなことで、ただいま態度を明確にいたしております。消費者行政そのものについても、ただいま申し上げるようなことが過去においてはあり、今後はそういう意味でどんどん変わっていく、かように思います。従いまして、たとえば消費者行政の面で一番大事なのがまず価格だといわれます。そうすると、低廉な価格で供給するように業界を指導し、その協力を求めておる。今回の物品税減税を価格面に直ちに反映させるような処置をとったのも、その一つの現われであります。あるいはその意味において、幾つもの流通過程の整理等もいたしておるわけであります。あるいはまた、生産の面等においても、しばしば申し上げておるように、生産コストが安くなった、そうしてその利益が上がっておる場合のその利潤の分配、そういう場合には、労使のみならず、最終需要者にもその利潤の分配が、幾らのパーセンテージとは申しませんが、いくように心がけるべきだということを実は申しておる。もう一つ大事なのは品質の問題です。この品質を、やはり良質のものを提供する、そういう意味で消費者を保護する、その立場でなければならない。今回提案いたしております法律も、そういう意味では一役買うことじゃないかと思いますし、あるいは公正取引委員会で提案いたしております、この懸賞広告などについての制限をつけようというのも、そういう意味でございまして、また消費者協会等の協力を得、そして徹底を期していく、これは大へん新しい政治のあり方であり、また大事なことである、かように実は思っておりますので、今やっていることで十分とは申しません。この上ともあらゆる工夫をして、十分消費者保護の目的を達するようにしたい、かように考えております。
  112. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 消費者行政として、品質表示の適正化をはかることはもちろん必要なんですが、品質そのものの向上をはかることも重要であります。これに対していかなる処置をとっておりますか。また、商品の品質の改善について、日本工業規格に適合する証紙、JISマークをつけることになっておりますが、まだ十分浸透しているとは言えないのであります。だから、でききるだけ多くの品質について工業規格を制定して、品質向上をはかる考えはございませんか。
  113. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、JISマークその他で品質の改善をはかり、そしてそれを消費者に推薦していく、こういう考え方を持っております。その詳細は局長から説明いたします。
  114. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 ただいま御指摘のJISは任意表示でありまして、商品の品質をよくするために非常にあずかって力があると思いますが、これだけでは十分ではありませんので、業界に対して常々製品をよくするような指導をいたしておるわけであります。この点については今後も格段の努力を払っていきたいと考えます。
  115. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 品質表示のほかに、価格や取引条件の表示についても種々の問題があります。二重価格表示や安定価格の割引等をめぐって、問題の生ずる場合が非常に多いのであります。以前、私は、雑貨商の割引広告を見ますと、初日は一割引、二日目は二割引というように、一週間にかけて売り出しがあったのでございます。私は、ちょうど五日目の五割引のときに行きまして、頭にとめる大きなピンを買ったのであります。ちょうどその日は五百円の半額ですから、二百五十円で買ったのです。そして数日後、近くの店でそれと同じものを二百円で売っておりまして、結局五十円高いものを買ったということになるのです。このような価格や取引条件の表示、特に安定販売を励行する必要があると思うのですが、これについてはどのような処置をとっておりますか。
  116. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 取引条件の問題になりますと、大体は割賦販売等について多くの問題があると思いますが、これは先般の国会で通していただきました割賦販売法によって、いわゆる取引条件の適正化といいますか、指導ができることになっておるわけであります。今先生御指摘の二重価格の問題あるいは割引の問題につきましては、これは業者のいわゆる商業道徳の問題かと思いますが、これが度を越しますれば、いわゆる詐欺罪になったり、あるいは独禁法の関係で、今度の提案あたりで取り締まることができると思いますが、根本的にはどうしても製造業者あるいは商人の商業道徳自身の向上ということが肝要だと思いますので、その点については十分意を用いて指導して参りたいと考えております。
  117. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 本案は広告については規制していないのですが、商品の表示と同様に広告をめぐってもいろいろな行き過ぎかあって、一般消費者を惑わすような過度的な広告が最近特に著しく目立ってきております。広告の明確さ、親切さをはかる必要があると思うのですが、広告に関しては何らかの処置を講ずる考えはございませんか。
  118. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 広告につきましては、いわゆる広告主あるいは広告側の媒体等が寄りまして、先般広告協議会ですか、それができまして、業界自身が広告の倫理綱領を作って、ただいま先生御指摘のような事態の起きないように、業界自体といたしまして自粛して参ろうという機運で現在動いておるわけでありますが、そのほかの法律的な問題として、ただいまも申しましたように、不正取引委員会が、不当景品あるいは不当表示といったような広告面での消費者を惑わすような、あるいは消費者を欺罔するような広告を取り締まる法律ができたわけでありますので、従来よりも消費者に対してはより親切な行政ができるのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  119. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 本案による規制は輸入商品に対しても適用されますか。また、消費者保護という観点からすれば、当然輸入商品についても適用すべきものであると考えるのですが、しかし、輸入品の品質表示は外国語で行なわれているために、一般消費者は迷惑をこうむる場合が多く、また本法の標準に従った表示がしてあるとは限らないと思うのでありますが、これについてはどんな処置を考えておられますか。
  120. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 国内の消費者に向かって販売される商品で、政令で指定するものは全部かかるわけでありまして、いわゆる輸入品も当然この法律の対象になるわけであります。ただいま先生御指摘のように、外国語だけで表示がしてあるというようなものも、この法律で日本語でしかるべき表示事項を順守させるということにいたしたいと考えております。
  121. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 表示の適正化をはかる必要性のあることはどの商品にも通じるわけでありますが、第六条において表示を強制する場合の対象を、生活必需品またはその原料もしくは材料たる家庭用品と限ったのはなぜですか。また、生活必需品たる家庭用品とは、具体的にはいかなる商品をさすのでしょうか。
  122. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 第六条に強制表示をするものを非常に限定いたしましたのは、この表示によって、業者、特に中小企業の製品等には業者の負担がかかることが考えられますので、国が強制して表示を行なわしめるというものにつきましては、その商品が表示をされずに流通することが消費者に非常に大きな支障を来たすとか、利益を阻害するというような場合に限定をして、強制表示を行なうというふうに考えたわけであります。それで、現在われわれが考えておりますのは、繊維製品であるとかあるいは台所用品であるとかいったようなものについて、こういった五条までの規定によりまして、一般的な訓示ないしは一般的な指示で行なわれない場合に限って、この強制表示を行なおう、こういうふうに考えておるわけであります。
  123. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 第六条の強制表示を命ずる商品及び第七条の通商産業大臣の表示を命ずべき商品としては、いかなる商品があるか、また具体的事例があれば、お示し願います。
  124. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 六条で強制表示をする場合と、七条におきまして通産大臣が表示したものでなければ売ってはならないという商品につきましては、大体同じような商品が考えられると思いますが、この商品を実際にきめるにあたりましては、家庭用品の品質審議会で慎重な審議を経た上で決定をいたしたいと考えておるわけであります。現実にわれわれが考えておりますのは、繊維製品等につきましては、メーカーがいわゆる検査機関に依頼をいたしまして表示をするというような事態が多いと思いますので、大体繊維製品等について、六条と七条は同じような商品が指定されるのではなかろうかと考えております。
  125. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 第八条の「通商産業大臣の認可を受けた者」というのは、認可要件に適合しているものであれば、業者自身また業者団体であっても差しつかえないのですか。
  126. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 この要件にありますように、かなえておればけっこうなわけでありますが、現実の問題としては、繊維の検査協会、これは紡績だとかあるいは綿スフ織物、化学繊維等につきまして、それぞれ検査協会がありますので、われわれとしましては、現実の問題としてはそういったものを考えておるわけであります。
  127. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 第十条二項の「その他適当な措置」とは、具体的にはどんな措置をいうのですか。
  128. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 これはいろいろな場合が考えられると思いますが、通産大臣に、消費者直接から、あるいは消費者協会とか主婦連等からいろいろの申し立てがあると考えておりますが、その申し立てを受けました場合には、まずその事実の有無、あるいは実際にその苦情がはたして正当なものであるかどうか、十分な調査をいたしまして、場合によっては業者に対して指示をするなり、第八条による認可機関が表示をしたような場合につきましては、認可機関の取り消しをするなり、いずれにいたしましてもそういった事態が今後行なわれないような指導をして参りたい、こういうふうに考えております。
  129. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 第二十条において、通産大臣の権限に属する事項は、政令で定めるところにより、通商産業局長または都道府県知事に委任することができることになっておりますが、いかなる事項を委任するのか、その内容をお聞かせ願います。
  130. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 この法律で対象にいたします品種は、家庭品が相当多くなることが期待されますが、これは本質限りではなかなか適正な運用をはかることが困難だと思われますので、通産局長あるいは都道府県知事に事務を委任しようと考えております。この委任をいたします事務の内容は、十九条の報告徴取権だとかあるいは立ち入り検査権だとかいうものが主たる内容になる、こういうふうに考えております。
  131. 小林ちづ

    ○小林(ち)委員 特に私ども家庭を守る主婦にとりましては、日常生活に欠かすことのできない重大な問題であります。どうか政府におきましても、消費者の立場に立って、消費者の利益を保護する意味におきましても十分お考えをいただきまして、私の質問を終わります。
  132. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 中村重光君。
  133. 中村重光

    中村(重)委員 時間がございませんから、条文について簡単にお尋ねをいたします。  その前に、この法律は、ただいま小林委員の質問の中で大体明らかになりましたけれども、大企業中小企業関係、特に局長の答弁で中小企業が生産するものに対する配慮があったようであります。ところが、この種の物品に対する表示ということになって参りますと、どうしても大企業が生産する商品が表示の対象になりがちなのです。そういうことで中小企業を圧迫するというようなことになりますと、これは大へんなことになるわけです。そこらに対しての配慮というか、やはりこの法律を作る上に対しての考え方というものがあろうかと思います。その点に関して一応伺います。
  134. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 本法律案は大企業あるいは中小企業というものを一応区別しておらないわけでありまして、いわゆる商品自身の品質に応じて、そのありのままの正しい表示を親切にしなさいという趣旨でできておる法律でありまして、私は必ずしも中小企業に不利になるとは考えておりませんが、表示自身が業者の負担になることは争えない事実でありますので、そういう点につきましては、家庭用品品質表示審議会におきまして、いわゆる業者の負担にならないような方法において表示をさせるように指導いたして参りたい、こういうふうに考えております。
  135. 中村重光

    中村(重)委員 表示の負担という問題よりも、やはり通産省が表示を指示した、あるいは表示を命じた、そこで表示をするということになって参りますと、信頼度というものが高まって参ります。そのことは、表示のための経費ということは問題じゃない。そこで、もしこれが大企業の生産する商品というものに表示の中心が向けられるということになって参りますと、その類似の商品がたまたま中小企業の製品である、こういう場合、それが表示の対象にならないということになって参りますと、やはり中小企業に対する圧迫というものがその面から出てくるということを心配するわけであります。そこで、私は、表示のための経費というものより、表示のために信頼度が増すという点、そこに重点を置いて実はただいまの質問をしておるわけであります。そこいらを十分配慮していただかなければならない。局長は、この法律案を制定するにあたって、私がただいま指摘しておるようなことはあるいは念頭になかったと思います。ところが、現実にこの法を運用していく場合に、予想しなかったような形が出てこないということは言えないのじゃないか、こう私は思いますので、そこいらの配慮というものが当然なければならないのじゃないか、こういうことで実は申し上げておるわけであります。  それから、この種の表示をいたしますと、ここに性能であるとか規格であるとか用途とかいろいろあるわけですが、これがいわゆるカルテル行為を推し進めていくというような形になる危険性もなきにしもあらずじゃないか。そこいらの配慮というものが当然なければならない。この点に対してはどのようにお考えになっておられますか。
  136. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 初めの点につきましては、そういった配慮を十分にして参りたいと考えております。ただ、こういった商品に対する品質を正確に表示させるということの結果は、従来大企業の商品が、たとえば東芝なら東芝とか、日立とか、トレード・マークで売れておったのに対しまして、その品質の内容を表示させることによりまして、必ずしも中小企業の製品が劣るものでない、あるいは中小企業のものの方が場合によってはいいというようなことも期待できるのではないか、というふうにわれわれは考えておりますが、ただいま先生の御指摘の点については、十分配慮して参りたいと考えております。  この表示自身は、原則として任意の表示でありまして、これが業界のカルテル行為というようなことを来たす心配はないと思いますが、これを強制的にするような場合には、役所の方で指示をしますので、それに従って行なわれるということになりますので、これはあまりどうも問題にならぬのじゃないかというような気がしますが、いずれにいたしましても、かりにいわゆる申し合わせというようなことが行なわれましても、これは全く消費者の利便のために行なうものでありますので、その程度話し合いだと、いわゆる表示をどうきめるといったような点についての話し合いは、必ずしも独禁法に違反しないのじゃないかというようにも考えておるわけであります。
  137. 中村重光

    中村(重)委員 そうしますと、この法律案は独禁法との関係というものは全然ない、こういう考え方の上にお立ちになって、そうして公取との話し合いは行なわれていない、こういうことに了解してよろしゅうございますか。
  138. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 ただいま申し上げましたように、独禁法とは関係がないという判断の上に一応立っておるわけでありますが、本案を策定します過程においては、公正取引委員会とは十分内容その他において連絡をいたした上で提案をいたしております。
  139. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま、局長は、これは任意の表示であって、カルテルの心配はないのだ、強制の場合は役所がするのだから、こう言うのですが、役所が強制をして指示をする場合、その行為がカルテル行為に抵触するということになって参りますれば、これの排除規定というものが当然出てこなければならない。そこでここに、性能であるとか成分、用途、貯法その他いろいろありますが、このことがともするとカルテル行為という形になる危険性というものは、私はないとは言えないと思います。ですから、そういう点の配慮ということは当然なければならないし、これらのことについての独禁法との関係から、公取との話し合いというものは当然なされなければならぬ、こういうことで実は質問をいしておるわけであります。
  140. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 御承知のように、公正取引委員会所管しております独禁法自体は、いわゆる不公正競争の制限に主眼を置いておるわけでありまして、ただいま私が申しましたように、消費者の利便のために、たとえば三条によりまして表示の標準を示したような場合に、これは任意表示でありますが、その場合に業界が、この表示の標準の告示にのっとりまして、いわゆるどのような表示にするかを話し合うというようなことは、これは独禁法にはひっかからないと思うわけでありますが、もしもそれが変な方に発展をするというような場合には、これは十分に監督をして参りたい、こういうように考えております。
  141. 中村重光

    中村(重)委員 考え方としてはわかるんですよ。しかし、この運用という面から、やはりいろいろなことを表示をするという場合に、性能、用途その他いろいろなことが書いてありますね。こういうことが、ともすると同じような形態になって参ります。それがやはりカルテル行為という形に発展しないと言えないのだ、こういうことで申し上げたのであります。しかし、これは考え方が、局長から御答弁がありましたように明らかであります。消費者の利便ということを念頭に置いて考えておるということでありますので、運用の点において御注意を願い、配慮していただければ、こう思いますが、このことに対しましてはこれ以上申し上げません。  そこで、いつも法律の用語として出て参りますのに、「著しく困難である」ということがある。この種の用語がいつも出てくるわけであります。ところが、実際の運用の場合に、どの程度が著しいのかということで困るのじゃないか。これは主観の相違ということでいろいろな問題が出てくると思いますが、一応著しいということに対する一つ考え方というものがあるだろうと思います。この点はいかがですか。
  142. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 確かにいろいろなところに、著しく品質を識別することが困難であるとか、品質を識別する必要が特にあるとか、そういう言葉が御指摘のようにあるわけでありますが、これは御承知のように、この法律で扱います商品が非常に複雑多岐でありますので、この著しく、特にということがどの程度のものであるかということをちょっと抽象的にお話し申し上げるのは、これこそ著しく困難なわけでありますが、個々の商品につきまして品質審議会にかけまして、一体これはこの政令で指定する必要があるかどうか、あるいは強制表示する必要があるかどうかは、それぞれの識者によって実情に即して判断をしていただく、こういうことになろうかと考えております。
  143. 中村重光

    中村(重)委員 強制の方になって参りますと、罰則が伴ってくるというようなことで、このことに対しては十分一つ御検討を願いたいと思います。  なお、第三条の表示の標準で、先ほど来何回も繰り返しました成分、性能、用途、貯法、こういうことに対して指示をしてくるということになって参りますが、これに対しては通産省が検査をするということになって参りますが、この取り扱いはどういうことになりますか。
  144. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 三条によって用途あるいは性能等が告示されることになっておりますが、これは個々の商品につきまして、表示の基準となるべき事項を示すわけでありまして、これについて一つ一つ通産省が検査をするということは考えておりません。ただ、後段の方に規定がありますように、苦情の申し立て等がありました場合には、いわゆる表示しておる内容と実質のものとの比較というような場合において、これは国の検査機関で検査をして、実際なっておるかどうかということを確かめることはいたしますが、この三条自体については、国が検査をするということは考えておらないわけであります。
  145. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 この表示の方法、行政面になりますけれども関連してちょっと伺っておきたいと思います。  これを拝見しておりますと、繊維製品、合成樹脂関係の特に食卓用品、台所用具あるいは電気器具、また合成樹脂塗料、こういうようなものに対しての表示を必要とするのだと思います。その表示の方法ですけれども、具体的にどういうふうに皆様方お考えになっていらっしゃるか。たとえてみますと、食卓用具だとか台所用具のようなものは、カードのようなものにいわゆる成分なり、物理的、化学的の性質なりを書いてつけておくということもできましょうし、また塗料などは入れものに印刷するということもできましょうけれども、これは皆様方の方ではお考えがあると思いますが、巻いて生産者が出します繊維関係は、必ず一着ずつあるいは二着ずつ、あるいは一メートルなり、ものによっては五十センチメートルなりを切って買う場合が多いのです。その巻いた繊維に明らかに表示がしてあったとしても、これを販売する場合に消費者にそれが徹底しなければ、非常に重大な問題が起きると思います。なぜと申しますと、私最近でしたけれども相当の価格のものでした、一着分のシルクをいわゆる絹ものを売る売り場で求めたものですから、それはシルクだと思って私は求めて参りました。これを仕立てましたところが、仕立屋さんが絹のつもりで仕立ててアイロンをかけたらでこぼこになってしまって、絹のような姿がなくなってしまいました。何かまるで特殊に化学的な加工をした繊維のような変化を見せたわけです。そこで私デパートに持っていっていろいろ問い合わせてみましたけれども、確かにこの商品にはペーパーがついていたと言うのです。そのペーパーに糸がついていて、布の端に結びつけてあって、それにはシルクとナイロンともう一つ何か異なった化学繊維が使われていると書いてあった。そういうことをはっきり見ていればこういうような仕立て方をしないはずで、これは売る方のわれわれの責任ではなくて、仕立てる方がそういうことに注意しないで仕立てたからこういう結果になったのだと言うのです。それは糸はついていたでしょうけれども、しかし、私が求めてきたときには、そのペーパーはついていなかった。そういうことで繊維関係などは非常に複雑だと思います。製造する方でいわゆる製品に対して責任を持った表示方法をとったとしても、いろいろな過程を経て消費者の手に入ってきますので、そういう点についてはどういうお考えをお持ちになっていらっしゃるか、またそういう具体的な面までお考えになっていらっしゃるか、質問申し上げたいと思います。
  146. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 今御指摘の点でありますが、その先生がお買物されたものは、この法律はまだここで審議をしていただいておるわけで、現在は繊維製品品質表示法がありますが、繊維製品品質表示法には任意規定と強制規定があるわけであります。強制規定は現在全然発動されておらないものですから、そういった消費者に対しての御不便があるわけだと思います。今後この法律が施行されまして、繊維等につきましては、消費者に対してただいま御指摘のような非常に不測の損害を与えることが考えられますので、非常に複雑なものについてはできるだけ強制表示というような方向へ考えるべきではないかと考えておりますが、表示の仕方につきましては、いわゆるメーカーから出るときには、一反物五十メートルなら五十メートルについてどういう品質の成分があるものだとか、あるいは扱い方というものが書いてありましても、切り売りする場合にはそれがわからなくなってしまう場合が多いわけでありますので、こういうものにつきましてはいわゆるその売場の店頭に、その商品のあるところに必要な表示をするというようなことを考えるべきではないかと考えておりますが、具体的には品質表示審議会におきまして個々の商品につきましてどういう表示をすることが一番消費者に対して親切であり、正しい表示の仕方なのかということを十分検討の上、消費者に不便のないようにいたして参りたいと考えております。
  147. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 私それ以外の質問は特にないのですが、その点は非常に大切な点だと思います。消費者の立場として常に味わされることでもございますし、また苦情の持っていきようがありません。ひもが切れた、紙が切れたということではいけませんので、その点に政府側も特別の配慮をいただきたいと考えております。
  148. 中村重光

    中村(重)委員 第三条に対して通産省は検査をする考え方はないということですが、このことは第八条等で通産大臣自身が表示をするということ等になって参りまして、非常に重要な内容を持つものだと考えております。これは先に出て参りますからその際にお尋ねすることにいたしまして進めて参ります。  第四条の第二項で「公表することができる。」ということがあるわけですが、これは指示に従わない製造業者あるいは販売業者、あるいは表示業者ということになっておるようですが、この公表をするということは、その経営者にとって、いわゆる製造業者あるいは販売業者等にとりましては、実に重大な問題になって参ります。全く公表されたことにおいて信用を落としてしまって、経営自体ができなくなるという結果が実は生じてくるおそれが多分にある。このように非常に大切な公表という事項が、審議会の議に付する必要がないということになっているという点は、どういうことだろうかと、実はこれを読みまして感じたのであります。私の読み違いであればよろしいのですが、表示の命令をするという場合は、審議会にかけるのですね。公表するという場合は、審議会の議には付することにはなっていないようであります。このことはどういうことなんですか。特に必要はないとお考えになった理由を伺ってみたと思います。
  149. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 御指摘のように、四条の二項は審議会の付議事項ではないわけであります。ただこの公表するというのは、いわゆる社会的批判にゆだねようということで、確かにこれを公表された業者は信用の失墜等非常に重大な事態になると考えておりますが、この公表は政府の指示に従えという個別勧告をいたしまして、なおそれに従わないという場合でありまして、このいわゆる公表するというような事態は、そう簡単には起きないと思うわけであります。政府が勧告して、なおそれに従わないという場合には、この項目の公表という、いわゆる社会的批判という非常に重大な制裁を食わせようということになっておる。現実の法律にも、繊維工業設備臨時措置法だとか、あるいは石炭鉱業合理化臨時措置法、これらにつきましては、いわゆる販売価格の引き下げ勧告をした場合についての公表規定があるわけであります。それから繊維工業設備臨時措置法につきましては、無登録設備の使用者の場合に公表ができることになっておりまして、前例はありますし、ただいま申しましたように、この項目の公表を発動するというのは、勧告に従わないという異常な場合だ、こういうふうにわれわれは考えておるわけであります。
  150. 中村重光

    中村(重)委員 どうもこのことに対しては、明敏な佐橋局長の担当の法案としましては、私は意外に感じます。今あなたは、めったにこういうことはないんだとおっしゃる。ということは、いかにこれが重要な内容であるかということを裏書きすると思います。ほかにいろいろな例をお出しになりましたが、それはこれと相似たところもありましょう。しかし、非常にこのことは重大なんです。表示をしろという命令を審議会の諮問に付するのですよ。にもかかわらず、この項の公表ということは、よりその販売業者、製造業者にとっては、経営の面に対しては非常に重大な影響を及ぼすことなんです。こういうことは、当然この審議会の諮問に付するということ、これは当然取り扱いとしてなさるべきではないか、このように実は考えるわけであります。もう一度このことに対しては、これはあなたが原案をお出しになりましたが、これがまずいというようにお考えになるならば、率直にそのことは表明されて差しつかえないんじゃないか。しかし、あくまでこれは公表すべきでないとするならば、この法案をお作りになったそのことに対して、もっと積極的に納得のいくような形の御説明というものが私はなければならぬと思います。今の御答弁の程度では、どうも私は納得参りません。もう一度お答えを願いたい。あわせてこのことに対して、公取委員長に、御意見がございますれば、お答えいただきたい。
  151. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 確かにこの公表すること自体は、審議会の付議事項でありませんが、公表をされるんだ、政府が勧告をいたしまして、それに対して従わないという場合には公表するんだという、いわゆる脅迫と言うと語弊がありますが、私が、この公表自体はめったに行なわれぬだろうと言うのは、お前たち従わなければ公表されるぞということで、公表の方法はめったに行なわれないと私は申し上げたつもりでありまして、決して自信がないわけではありません。たとえば、公表をする場合につきましては、この四条によりまして指示を政府がし、勧告をした場合に、相手方が聞かないという場合にはどういうふうにしたらいいかというようなルールについては、これを審議会に十分検討していただくつもでおりますが、たとえば一回勧告しても聞かない、二回やっても聞かない、三回やったら、四回目には公表するぞというような、いわゆるルールを審議会できめていただいておきまして、こういった背景に公表というのを置いて一つやったらいいんじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  152. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 公表につきまして、ただいま御質問がありましたが、家庭用品質表示法は通産省所管でありますから、ただいまお答えになった通りだと思いますが、私の方にも公表という制度があります。御承知の先般御審議になりました下請代金支払遅延等防止法、あれにも勧告という制度があり、しかしてその勧告に従わぬ場合に公表するという制度があります。もちろんあの法律には審議会というものがありませんので、ちょっとこの家庭用品と比較するわけにはいきませんが、私の方では、公表するということは、商売としては非常に重要なことでありますので、慎重にやるつもりでありますが、そういうふうな審議会という制度はありませんから、われわれの方でやってしかるべきだと思えば公表いたします。
  153. 中村重光

    中村(重)委員 公表はめったにないんだ、それは指示をし、注意をして、なお応じなかった場合に公表する。そのことは、あなたの御答弁ではっきりしておるように、非常に重要である、軽々公表というものはできないものであるということを立証することになります。だから私申し上げておる。めったに公表しないのであるから、これを審議会の議に付すべきでないという考え方は、私は当を得ないと思う。一年に一回あるいは三年に一回のかりに公表があるといたしましても、そのこと自体が重要であるならば、私は審議会の議に付すべきである、こういう考え方を持ちます。  なお、あなたは、取り扱いとしていろいろと指示をするんだ、注意をするんだ、そういう運用の、いわゆる取り扱いの面に対しては審議会の議を経るんだということでございましたが、そのことはこの法律の中からは出て参りません。それはあなたが頭の中で、こういう取り扱いをしようというふうにお考えになって、言葉としてそのようにおっしゃったんではないか、このように私は考えるのであります。しかし、このことはこれ以上議論をいたしましても先へ伸びませんから、あとでこのことに対する意思は委員会で一つ検討してみたい、このように考えます。  この第六条その他にも出て参りますが、「販売のために陳列」云々というのがあるわけですね。これはウインドーの中に商品の見本を陳列をいたしますが、それを売るためにたまたまその品物を陳列しておった、このような意味に解してよろしいわけですか。その陳列した品物自体を売るのではない。しかし、その陳列した品物を見せることにおいて、店内の品物を販売をする、こういったような形、そういうことを予想してこういうことをお書きになったのかどうか、その点を伺っておきたい。
  154. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 原則としましては、売るために陳列したということでありますが、ただいま先生の御指摘のように、ショーウインドーの中の見本そのものは売らない、ところが店内で同一品種を売るという場合は、これは当然この規定で読めるわけであります。
  155. 中村重光

    中村(重)委員 第八条の認可制度というのがあるわけです。「通商産業大臣の認可を受けた者の」云々、こういうことがありますが、認可ということになって参りますと、登録制度をお作りになるお考えを持っていらっしゃるかどうか。ヨーロッパ諸国においては、手工業等は登録制度になっておるようでありますが、その他の条文等から考えてみまして、これはどうも認可制度ということになって、認可するということになって参りますと、何かその販売業者あるいは製造業者等もこれに関係してくると思うのです。その人の技術、能力といったようなものが当然ここに出てこなければならないのではないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  156. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 八条の規定は、いわゆる製造業者、販売業者が表示をし得ないような場合に、いわゆる通産大臣の認可機関が表示をして、それが表示業者として全部この法律のあれにひっかかってくるわけであります。その認可を受ける機関というのは、いわゆる人員なり生産設備なり、そういうものが十分に備わっておるというような条件になるわけでありまして、ただいま先生の御質問の御趣旨をちょっと私誤解しておるかもしれませんが、認可を与える行為はいたしますけれども、それは登録という言葉に該当いたしますかどうかは、別に登録制度をしいておるわけではありませんので、表示機関に対して認可を与えるわけであります。
  157. 中村重光

    中村(重)委員 これは私がさっき第三条でお尋ねをいたしましたいわゆる成分、性能、用途、貯法、こういったようなものと関連をして参りますので、特にこの点をお尋ねしておるわけなんです。第八条は「前条の規定の適用については、家庭用品。ことに、通商産業大臣の認可を受けた者のした当該表示事項の表示は、同条の規定により通商産業大臣がしたものとみなす。」こういうことでありますので、通商産業大臣がみずからやったとみなすのだということになって参りますと、やはりそのものの持つ能力であるとかあるいは信用であるとか、それらのいろいろな問題がこれは十分通産大臣が認めてこなければならない、信頼するものでなければならぬ、こういうことになって参ると私は思います。第三条の成分等々から考えてみまして、このことに対しては相当重視しなければならない点じゃなかろうか、このように考えますので、ここまで通産大臣自身がしたんだとみなす程度のものであれば、当然これは登録制度か何かそういう形を持って、その信頼感というものをここで保証するのでなければならないのじゃなかろうか、このように考えますので、実はお尋ねいたしておるわけであります。
  158. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 この通産大臣がやったと同じ効果を招来するわけでありますので、この機関を認定するについては、十分慎重にこの機関の能力自体を調査し、審査する必要があるわけでありまして、こういった審査の結果、当該機関を認定いたしました場合には、これは当然一般に公表する措置が必要だろう、こう考えております。
  159. 中村重光

    中村(重)委員 もう少し具体的にお答え願いたいと思うのですが、第八条第二項に参りますと「通商産業大臣は、前項の認可の申請をした者が、当該申請に係る家庭用品の品質を識別する能があり、かつ、同項に規定する表示を公正に行なう者であると認めるときは、」云々、こういうことになっておりますので、このことは、ただいまの御答弁の程度でなくして、通産大臣がそれを認めるということに対してのもっとはっきりした一つの基準というものがなければならないのじゃないかと私は考える。  なお、あわせてお答え願いたいことは、この通産大臣にかわるものということには、販売業者であるとか製造業者というものも含まれるものであるかどうか、この点に対しても一つお答えを願います。
  160. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 通産大臣にかわる認定機関でありますので、その認定については慎重を要すると思います。それにつきましては、検査設備あるいは検査技術、検査の業務者、従事者といいますか、そういうものが完備しているということがどうしても条件になるわけでありまして、そういう点について十分慎重な審議をして参りたいと考えております。このいわゆる表示認定をやる機関でありますので、製造業者、販売業者ではなくして、いわゆる表示業者だけをわれわれは考えているわけでございます。
  161. 中村重光

    中村(重)委員 この「認可を受けた者」ということは、結局は認可を与えるという形になってくると思いますが、この認可を与えるという場合は、審議会の諮問に付する必要はありませんか。
  162. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 これは行政機関がそういった実態に応じて判定をすれば足りると考えておりますので、審議会の付議事項には考えておらないわけであります。
  163. 中村重光

    中村(重)委員 どうもただいまの答弁の程度では、この第八条の重要な内容からいいまして、少しくあいまいというか、正確ではないように考えるわけです。やはり登録制度ということも一応考えなければならないのではなかろうか。いま一つは、審議会の議を経るといったようなことも必要があるのではなかろうか、このように実は考えますが、これはあとに譲りたいと思います。  なお、あわせて御答弁を求めておりました販売業者あるいは製造業者、こういうものもこの第八条のいわゆる通産大臣にかわって表示をするというものに該当するのかどうか、このことを一つお答え願います。
  164. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 この八条の規定は、結局表示が、メーカー、販売業者では非常に困難な場合に、通産大臣がかわって表示をしてやる、あるいは通産大臣が認定した機関がかわって表示をすることになりますので、メーカー、販売業者というものは考えていないわけであります。この規定によりまして、現在われわれが考えておりますのは、繊維関係の検査機関を主として考えておりますが、その点については現在でも公正に実務を行なっておりまして、今後そういう認定をするものにつきましても、公正さを強く要求される建前から、これは公益法人ということになるかと考えております。メーカー、販売業者を認定するということは、私はないと考えております。
  165. 中村重光

    中村(重)委員 私実は非常に不勉強でありまして、この法律案をけさから見まして御質問申し上げておりますので、どうも私のお尋ねが要領を得ない面もあるのではないかと思うのですが、今の御答弁の、通産大臣にかわってするいわゆる表示機関、それは条文のどこに出て参りますか。
  166. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 七条で通産大臣が表示したものでなければ販売し、又は販売のために陳列してはならないというふうに規定をいたしまして、次に八条でそれを受けまして、通産大臣のいわゆる表示能力というものには限界がありますので、業界、製造業者あるいは販売業者の便利に供するために、通産大臣が認可をしたのと同様な認可をし得る能力のある機関を認定しまして、その認定を受けた者のした行為は、通産大臣がやったのと同じだ、こういうふうに規定をいたしているわけでございます。
  167. 中村重光

    中村(重)委員 どうもただいまの局長の御答弁は、非常に重要な点なんですが、私の読みます範囲では、そういう表示機関というものの規定が明瞭でないというように考えます。なるほど御答弁のように、第七条においては、表示しなければならぬということを明らかにいたして、第八条で受けて、認定云々というのがございます。このことが直ちに、通産大臣にかわって表示をする一つの機関というものはここで出て参りません。それほど非常に大切な行為を行なうものを、この条文の中に明瞭に出す必要がないのかどうか。私はあるように思うのですが、この点いかがでございますか。
  168. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 この通産大臣がメーカーあるいは販売業者にかわって表示をするというのは非常に例外ケースで、われわれが考えますのは、繊維製品くらいしかないのじゃないかと考えておるのでありますが、それで、通産大臣が認定機関をする場合の条件は、八条の二項にうたって、相当な能力がなければ認定機関にはならないわけです。そこで、認定機関ができますと、この認定機関は、この全法律を受けて、いわゆる表示業者として扱われるわけであります。表示業者と申しますのは、いわゆるメーカーあるいは販売業者に言うなりにラベルを張るといったような者は、それは表示業者ではありませんので、表示業者というのは、自分の判断と自分の責任において表示をするという業者でありまして、これはまあ事実問題としましては、こういった認定機関のみがその表示業者のグループの中に入ってくるのじゃないか、こういうふうにわれわれは考えておるわけであります。
  169. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま局長の御答弁で、めったに通産大臣にかわって表示をさせることはないのだ、こうおっしゃいます。なるほどその通りであるかもしれません。しかし、めったになかったにいたしましても、先ほどの公表の通り、非常にその行為が重要な行為であるとするならば、当然この条文の中にこのことを明らかにうたうべきではないか、私このように考えます。なお、ただいま表示業者という言葉が出て参りましたが、この第八条の中には、通産大臣にかわって表示を行なう者は、その種の表示業者であるということが明瞭に規定されておりません。そのようなことからいたしまして、非常に疑問に感じられますし、この法の運用にあたっては、ただいまのあなたと私の質疑応答の速記録というもの以外にたよるものはないのじゃないか、このように実は私は考えられるのであります。しかし、このことに対しましては、これ以上は質疑応答を重ねましても発展をいたしません。いずれこのことに対しては、なお一つ検討をしたい、このように考えます。  なお、私自身の勝手で時間がございませんので、残念でございますが、あと一問で打ち切りたいと思います。  この罰則の項でございます。第二十一条に罰則規定がございまして、二十万円以下の罰金、こういうことになっております。ところが、先日本委員会におきまして議決をいたしました不当景品類及び不当表示防止法案におきましても、これに違反したる者は二年以下の懲役または三十万円以下の罰金、こういうことがございます。この内容を見て参りますと、その不当表示防止法におけるものと大体類似な行為というものが、この罰則規定になるようでございます。そうなって参りますと、本法によっていわゆる処罰されるのであるか、あるいは不当景品類及び不当表示防止法の罰則規定を適用されるものであるかどうか、この点に対しましては、局長並びに公取委員長お答え一つ願いたいと思います。
  170. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 確かに罰則の内容、いわゆる程度というのが違うわけでありますが、この法律と公取の法律との間にはいろいろ関係があるわけでありまして、両方で引っかかるというような場合には、これはいわゆる重きに従って処断をされることになると考えております。この家庭用品品質表示法だけの違反の場合には、大体この程度の罰則でしかるべきではないか、こういうように考えておるわけであります。
  171. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 先般御審議願いました不当景品類及び不当表示防止法、あの法律は、冒頭にも説明いたしました通り、独占禁止法の例外規定であります。従って、罰則の問題につきましては、独占禁止法の原則によってやるのであって、そのやり方は、あの法律によりまして、不当表示があるというと、その表示を排除するところの命令を出します。排除命令について異議がない場合には、三十日の期間ですが、三十日たつというと、独禁法の審決と同じ効力を生ずる。それからまた、その排除命令に対して異議ある場合には、審決を求めますから、審決を開きます。そこで、いずれにいたしましても、審決自身あるいは審決と同一の効力を有する処分ということが前提となりまして、その審決に違反した場合に、独禁法の罰則がかかるということになっております。それで、この日用品の方の法律は、表示違反に対する罰則、公取の方は審決違反に対する罰則であります。だから、法律的には別別のものと考えております。
  172. 中村重光

    中村(重)委員 その独禁法違反、こういう形から出てきたその根元はお答え通りであります。しかし、やはり不当景品類及び不当表示防止法、これに違反したる者に対しては懲役刑または罰金刑という、そういう重い罰を受ける。同じ不当表示でも、この不当表示におきましては、二十万円、私はこれが軽いとは申しません。同じような行為が、その原因がどうであったにいたしましても、片や三十万円であり、片や二十万円の罰金、あるいは一方は体刑までついてくるという形になって参りますと、これは基本的な人権という問題等から参りまして、いささか問題があるのではないか、このように考えますが、このことに対しては十分お話し合いがなされてこの条文になったのではなかろうかと思うのでありますが、もう少し深くお答えを願いたい。
  173. 佐藤基

    佐藤(基)政府委員 私の方の法律は、先ほど申します通り、審決に違反する行為の処罰でございまして、審決に違反する行為の処罰はたくさん例がありまして、それと同じように扱ったわけであります。こういうふうに御説明できると思います。
  174. 中村重光

    中村(重)委員 私、三時半から実はほかの会議がありまして、もう少しこの点も突っ込んでみなければならぬと思いますし、いろいろと御答弁のようなこともございましょうが、このことに対しては、議論のあるところでございましょうし、罰則ということになって参りますと、非常に重大な内容がございますので、いずれ適当な機会を見まして、御質問申し上げたい。本日はこれをもって打ち切りたいと思います。
  175. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 山口シヅエ君。
  176. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 大へん時間もおそくなって恐縮ですけれども、ごく簡単に質問をいたします。  特にお聞きをしたい点は、やはり繊維関係になってしまうのですけれども、その前に一つ、指定の商品とそれから表示すべき事項、これを具体的に説明していただきたいと思います。
  177. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 指定する商品でございますが、法の二条にありますように、通常の生活の用に供します繊維製品、合成樹脂加工品、電気機械器具及び雑貨工業品とこう名前をあげておるわけでありまして、これでわれわれは現在消費者が一般的に家庭で使用せられるほとんどの範疇を網羅しておると考えておりますが、それらの商品の中では、簡単に消費者が見ただけで内容がわかるというものは、いわゆる表示をするほどの必要はないわけでありまして、こういった商品の中で品質を識別することが非常に困難で、しかもその品質をどうしても識別することが必要だという場合に、それを政令で指定しよう、この政令で指定したものがこの法律の対象になるわけであります。  この品質は、一体どんなようなことを言っておるかと申しますと、たとえば組成でありますが、繊維でいえば、それがポリエチレンなのかアクリル繊維なのか人絹なのかというような区別を書かせ、次には物理的、化学的な性質、たとえば耐久性がどうだとか、あるいは火その他に対する耐熱性だとかあるいは安全度とか耐湿性、いわゆる湿気に対する性質だとか、あるいは伝熱、熱の伝導性の問題だとかいうような物理的、化学的な性質あるいは形状、繊維でいいますれば、糸の太さ等を表示の内容として考えておるわけであります。そのほか化学的な加工の種類、たとえば染色の堅牢度だとかいったようなこと、それから性能、そういうようなことが品質の内容になるのではないか、こういうふうに考えております。
  178. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 そうしますと、もうちょっと詳しく私は指定商品について伺いたかったのですけれども、大ざっぱにお考えになって、私はいろいろと商品を想像してみて、割合表示しいいものが比較的この範囲内では多いと思います。どう考えても繊維関係が一番めんどうじゃないか、こう思うんですけれども、今のお話ですと、おそらくその品質の成分とか、物理的、化学的性質とか、あるいは物理的、化学的加工度であるとか、使用上の注意とか、取り扱い上の注意とか、整理してみると、そういう問題にしぼられていくと思います。これだけのことがはっきり消費者にわかれば大へん買いものもしいいと思いますが、また話が戻って恐縮ですけれども、どうしても繊維の場合は徹底しにくいのじゃなかと私存じます。それは外国製品などですと、よくメーカーの名前が耳に織り込んであったり、あるいはウール一〇〇%などと正確な成分、いわゆる使ってある糸の内容が耳などに一緒に織り込まれ、どこを切って売ってもそのものの質がわかるようになっている場合がございますが、日本の化学繊維になりますと、特に大衆的なものが多くて、メーカー側がそういう繊維として手間のかかることもできないでしょうし、そういうことになりますと、従来の習慣では一巻巻いたもののせいぜい上側に一枚説明のパンフレットのようなものが張りつけてあって、ビニールなどの包むものに包まって問屋におろされて、それが小売り屋さんに回って、もうその説明書なんかどこかに飛んでしまって、ただ柄でわれわれが買う、買っていってみたところで、少々強いアイロンで仕上げをしたらば縮んでしまった、これは非常に多い例でございます。そこで、今私同志委員の質問している間にちょっと考えたのですが、五十センチずつ耳にいわゆる品質内容をペーパーにしてつけたところで、どこの部分を買うようになるかわかりません、おのおの切って買うものですから、これは一つの種類の製品に対しましてパンフレット風の簡単なものをたくさんメーカーに印刷させて、切り売りのときに包み紙の中にその説明書のようなものを一枚ずつ入れる、これは販売業者の一つ仕事になりますけれども、そういうような指示を行政面でおやりになったらば、比較的徹底するのじゃないか、これは私の考えですけれども、その点どういうふうにお考えになるでしょうか。
  179. 佐橋滋

    ○佐橋政府委員 いわゆる巻物みたいなものが先生の御指摘のように一番問題になると思いますが、われわれは、耳に織り込むとかあるいは反末に書くとか、あるいはしんに下げ札をするとかいうようなことを考えておったわけでありまして、それが切り売りされる場合には、先ほどもちょっと申しましたように、その反物を売るところで、初めにメーカーが必要な事項を全部書いたものを店頭にかけさせる、そういうようなことを考えておったわわけでありますが、ただいま先生の御指摘のように、切り売りする場合に、一つのラベルに全部書き込んだものをメーカーから、大体一反は三メートルなり何なりで切るということになれば、それに応じた枚数だけやって、それをつけて売るといったようなことも非常に有効な方法と考えられますので、そういう点は品質表示審議会で十分検討した上、消費者に親切なやり方でこの法律の目的が達し得るように指導して参りたい、こういうふうに考えております。
  180. 山口シヅエ

    ○山口(シ)委員 お願いいたします。
  181. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明二十六日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十八分散会