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1962-03-16 第40回国会 衆議院 商工委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十六日(金曜日)     午後二時五十五分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 白浜 仁吉君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       小沢 辰男君    神田  博君       齋藤 憲三君    始関 伊平君       首藤 新八君    田中 榮一君       中垣 國男君    原田  憲君       北山 愛郎君    久保田 豊君       小林 ちづ君    多賀谷真稔君       中村 重光君    西村 力弥君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  小沼  亨君  委員外出席者         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 三月十五日  委員中川俊思君辞任につき、その補欠として大  沢雄一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大沢雄一辞任につき、その補欠として中  川俊思君議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員林博辞任につき、その補欠として藏内修  治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員藏内修治辞任につき、その補欠として林  博君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十四日  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一三〇号) 同日  中小企業基本法制定促進に関する請願高田富  與君紹介)(第二三二八号)  同(高橋清一郎紹介)(第二三二九号)  同(岡崎英城紹介)(第二四七四号)  同(大村清一紹介)(第二四九三号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第二六七一号)  同(金子一平紹介)(第二七〇七号)  同(澁谷直藏紹介)(第二七〇八号)  同(柳谷清三郎紹介)(第二七〇九号)  低開発地域工業開発促進法に基づく都城地区の  開発地区指定に関する請願瀬戸山三男君紹  介)(第二三三四号)  商店街振興法制定に関する請願伊藤幟君紹  介)(第二四七三号)  同(二階堂進紹介)(第二五〇九号)  同(福田篤泰紹介)(第二六四四号)  同(岸本義廣紹介)(第二六七二号)  水道事業用電力料金の軽減に関する請願(二階  堂進紹介)(第二五〇八号)  公共料金及び諸物価引下げに関する請願外百七  件(片島港君紹介)(第二六七三号)  電話加入権質による零細企業者育成資金として  商工組合中央金庫等に特別融資わく設定の請願  (丹羽兵助紹介)(第二六七四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法  律案内閣提出第一三〇号)  通商産業基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  去る三月十四日本委員会に付託になりました内閣提出下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 まず趣旨説明を聴取することといたします。小平総理府総務長官
  4. 小平久雄

    小平政府委員 ただいま議題となりました下請代金支払遅延等防止法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明いたします。  下請代金支払遅延等防止法が制定されましてからすでに五年余を経過することになりましたが、この問政府関係機関におきましては、この法律の積極的な運用に鋭意努力いたしまして、下請代金支払遅延防止等かなりの効果をおさめて参りました。しかしながら、この法律運用に当たって参りました経験によりますと、下請取引を公正ならしめるとともに下請事業者利益を保護するというこの法律目的達成をはかる上におきまして、現行法規定には不備な点があることが感ぜられます。すでに去る昭和三十三年におきまして、たまたま景気後退期に際会しまして、親事業者景気後退による困難を下請事業者に転嫁しようとして種々不公正な行為を行ない、その中に現行法規定では規制できないようなものも見受けられましたので、この法律改正を準備した経緯があるのであります。その後、景気が好転し下請事業者立場かなりの改善を見ていたのでありますが、最近に至りまして景気もようやく頭打ちとなり、さらに国際収支の悪化に対処する金融引き締め等措置の浸透や自由化に対する対策もありまして、再び親事業者がその困難を下請事業者に転嫁しようとして不公正な行為を行なうおそれが増大して参っております。このような親事業者の不公正な行為を防止し、下請事業者利益を一そう保護するためには、下請代金支払遅延等防止法をさらに強化する必要があると考えられますので、ここに本改正法案を提出いたした次第であります。  次に、本改正法案概要でございますが、親事業者順守事項に不当な買いたたき、自社製品手持ち原料等の購入の強制、報復措置の三つの事項を追加し、これに伴いまして関係規定につきまして所要の改正を行ないたいということであります。  何とぞ、慎重審議の上、御賛同あらんことをお願いいたします。
  5. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に、通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保田豊君。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は、貿易問題について、今まで佐藤通産大臣に二回わたりまして、こま切れではありましたけれども基本の問題についてお伺いをいたして参ったわけであります。大へん時間が長くなりまして御迷惑をかけております。また時間が短いために言いたいことも言えず、ほとんど自分だけしゃべるというようなことになりまして、大へん申しわけなく考えております。この点は一つお許しをいただきたいと思います。  日本国内重工業中心とする高度成長政策政府が考えておるように進めていくためには、私の計算によりますと、非常に天井の低くなった外貨収支という条件の中で、大体重工業製品中心として、少なくとも年に十五億ドル程度輸出を今後ふやしていかなければならない。そして、その見返りといたしまして、原材料並びにエネルギー等中心として、同じ程度輸入確保していくということがどうしても必要である。しかし、それに対しまして、日本の現在の貿易地域構造アメリカ一辺倒、あるいは欧州を重視し、東南アジアを中心とする未開発地域をその次に重視して、共産圏というものをほとんど無視したような貿易地域構造であって、これを維持しようという政策では必ず大きな矛盾を来たす。しかも、最近のように、好むと好まざるとにかかわらず、社会主義経済が大きく発展をし、そういう条件と結びついて、欧州EECあるいはその他資本主資経済社会がいわゆる新しい性格のブロック化をしてくる。こういう条件の中では、日本貿易構造の持っている欠陥というものはますますひどくなって、いわゆる貿易上の国際孤立というものがひどくなる。これを加えて考えますと、これは日本貿易面での基本的なものの考え方を変えなければならぬ。もちろんEECアメリカ、あるいはその他の未開発地域のそれぞれについて、貿易をふやすためのいろいろな国内施策国際施策は当然とっていかなければならぬのは明らかでありますけれども、それだけでは不十分だ。   〔委員長退席白浜委員長代理着席〕 どうしても重工業中心とするいわゆる新しい貿易地域構造といいますか、そういうものを考え直してやっていかなければならぬ。そういう観点から見ますと、政治的な要因を抜きにして考えた場合におきましては、日本に隣接するソ連のシベリアなり、あるいは中国なり、あるいは北鮮なり、あるいは北越なり、こういういわゆる共産圏諸国との貿易を全面的に考慮することがぜひ必要である。これを欠いてはどうにもならぬ。今いろいろな障害があります。特にその障害の大部分は私は政治的なものだと思います。その障害を全面的に排除してやるならば、その関係業者から検討してもらいました資料に基づきますと、おそらく一九六五年程度には、少なくとも片道十二億ドル程度重工業製品輸出がこの地帯において可能である。同時に、日本で最も必要とするところの原材料が安く、しかも安定的に確保ができる。さらにそれを引き伸ばしていけば、ちょうど現在の所得倍増計画最終年である一九七〇年ごろには、この地帯におきまして約二十五億ドルないし三十億ドルの日本からの重工業中心とした輸出が安定的に確保ができる。その見返りとしまして、日本で最も必要とするいわゆる原材料並びにエネルギーが最も格安に安定的に確保できるという条件がとれるのじゃないか。こういう点を根本的に考えて、やや長期に考えて、その基礎の上に立って当面の内外のいろいろな貿易施策あるいは産業施策をする必要があるのじゃないかということを、実は今まで強調してきたわけであります。そこで、きょうはそれに連関しまして、個々の国について当面しております具体的な問題について、重点について一つ一つはっきりしたお答えをいただきたいと思うわけであります。その前に、二つばかり質問が残りましたので、全般に関する問題でお尋ねをしておきます。  今、世界的に見ますと、新しいいわゆる貿易原則といいますか、これが今世界内外において大きく発展をしておる。これを正しくつかみ、これを積極的に利用する、活用するということが、日本にとっては特に必要ではないかというふうに考えるのであります。と申しますのは、今まで世界貿易を支配しておったのは、いわば、何というか、資本主義貿易原則であった。これは簡単にいえばどういうことになるかといいますれば、いわゆる各国の無政府的な生産ということが基本であります。そうしてもう一つは、排他的な競争、この二つの上に立った、いわゆる価値原理によって貿易が運営される。すなわち過剰生産物処分過剰生産力の稼働によって利潤を高めるということを目的とする。これによって物資国際的な交流、流動というものを律していこう、これが資本主義のいわゆる貿易原則であります。しかし、今日では御承知通り世界の三分の一がいわゆる、好むと好まざるとにかかわらず、社会主義体制になっておる。社会主義貿易原則というのはこれとは全く違います。これはどういうことかといいますと、国際分業計画に基づいて、長期計画生産の上に立った国際協力原則とでもいったらいいかと思いますが、その生産物の、すなわち長期的な資源の開発設備投資とを相互に援助するとともに、その生産物処分を保障し合い、それによって相手方経済的発展を促進し合うということを根本目標として物資国際交流をはかっていく、運営していくというのがいわゆる社会主義原則であります。簡単にいえば、片方競争と制覇の、もうけのためのいわゆる原則に基づいている。片方はそうではなくて、いわゆる平等互助とでもいいますか、そういう原則に基づく。この二つ貿易原則が、社会主義世界の三分の一を占め、さらにそれが大きく発展をして、資本主義社会においていろいろな形で出ていくという形で、これが今国際的に交流をしておるというのが今日の実情ではないかと思うのであります。これを私は日本立場からいいまして、はっきりつかまえて、そしてこれを積極的に活用するということがぜひ必要ではないかと思います。よく、そう申してはあれですが、保守系政治家の皆さんやあるいは保守的な実業人の間には、社会主義貿易関係を深めるということは、何か社会主義に負けるような、あるいはそれに侵略されるような、あるいは資本主義の領域が非常に狭くなるような、こういう間違った認識を持たれる方が非常に多いと私は思うのであります。しかし、問題は資本主義社会主義という体制相違そのものではない。これが二つ、好むと好まざるにかかわらず今歴史の今日の段階においてこの二つ体制が厳存する。これがしかも国際貿易原則として交流し合って、片方が逐次、社会主義原則の方が逐次力を持ちつつある。やはりこの現実というものをつかんで、これを積極的に活用することが必要だ。これなくしては時代の正しい認識というものはできないし、一国の経済成長を円滑にしていくということはできないのじゃないかというふうに私は思うのですが、この点について大臣はどう思われますか。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えをいたします。何だか、久保田さんの御所論、私には実体が把握しにくいのでございます。ただいま社会主義経済あり方、また資本主義経済あり方二つを比較して、社会主義相互協調経済資本主義競争併呑経済だ、こういうように非常にわかりやすく表現されたと思いますが、過去における状況がいかようにあろうとも、現在の姿は大へん違っておるのじゃないか。私はあえて政治的に申し上げたいとは思いませんが、社会主義諸国経済は画一的であり過ぎて、民族の好むと好まざるとにかかわらず、力によってそれが押しつけられてはいないか。今言われる相互協調ということが自由な立場において実現しておるかどうか、私は疑問を持たざるを得ないように思います。資本主義経済の、いわゆる自由主義諸国経済状況を見ますと、一面、御指摘の通り競争の面も強く出ております。しかし、同時に協調の面も、これまた最近の形として非常に強く出ております。その協調の面は、社会主義諸国の間における協調より以上に強いものが出ておるように思います。たとえば、EEC諸国内の関係ごらんになればそのことが指摘できるのじゃないか。しかもこのEEC諸国間の行き方が、過去においては、いわゆる第二次大戦前の形、ブロック経済、域外の諸国に対しては非常に排他的であった、しかし、今日はEEC諸国EEC一つの根幹にして、そしてこれが発展するという形、だからこそアメリカもこれと同調するというし、わが国などもEECと接近しよう、そこに必ず協調の面が見つかる、かように私は思うのであります。かつてのいわゆる排他的なブロック経済を脱却しておる、かように思います。ところが、その自由主義資本主義諸国間においても、やはり遠い将来においては必ず国際間の分業の形も出てくるに違いないと思います。しかし、これは、各自由諸国家がみずから選んだ方向においての分業というか、適地適産というか、あるいはその国の最も得意とする産業を伸ばす、こういう方向に向くんじゃないかと思う。私は共産主義諸国間においてもそういう形があるように思いますが、たとえば石油の例をとってみると、私どもソ連から現に石油を買っておりますが、共産主義ソ連衛星国諸国ソ連が売っておる油よりも安く日本などは原油を買っておる。これは言いかえると、ソ連衛星国になるとソ連原油を高く買わされておるということにもなるわけであります。これは一面協調というか、非常にうまくいっておるといえばうまくいっておることと思いますが、もし自由の立場ならばもっと安く買えるはずだということにもなります。このいわゆる社会主義諸国間における紐帯というか、結びつき、これはよほど強いと思います。そういう意味でただいまのようなことが出てくるのではないか。だからこれを、社会主義諸国群と自由諸国家群二つに分けて世界経済を見るとこれは双方の行き方で至るところでぶつかってくる、競争しておる、こういう事態になっておると思います。しかし私は、先ほど冒頭に久保田さんがおっしゃったような、政治形態はどうあろうと、貿易拡大経済の面においては相互に提携し合う、有無相通ずる、こういう形が望ましいと思います。だから私などはずいぶん、共産主義の国からは、あいつは共産主義ぎらいだ、そういう意味で非常に差別的な待遇をする、いわゆる政治で障壁を設ける、こういうふうな見方をされるかもわかりませんけれども、私みずからはどこまでも互恵平等の原則に立って通商拡大をはかっていく、こういう態度を実は堅持しておるつもりであります。日ソ間の通商取りきめをきめましたのも、そういう立場に立って取りきめたつもりであります。また中共貿易についてもそういう態度で、貿易拡大は望みたい、かように心から願っております。そのそれぞれの政治あり方ということと経済は分離して考えられるのではないか。非常に極端な例を申せば、中共政府自身を承認しないカナダに対しても、中共自身が食糧である小麦がほしいとならば、やはりカナダ小麦を買いつける、カナダ自身北京政府を承認しておらなくとも、日本に対するよりももっといい条件、相当長期延べ払いで現に小麦を売っておるわけであります。いわゆる経済面の提携は両陣営の間でも行なわれる、政治上の問題をかけ離れて、経済上の原則である有無相通ずる、有無交換する、そういう形のものが遠慮会釈なくできることが望ましいと思うのです。努力をそういう方向に持っていくべきじゃないか、そして、ともすれば社会主義陣営資本主義陣営とが経済の面でも競争する、その競争の形が政治的なにおいを発散しているととられますので、そういう政治色をなくして、純経済の面でそれぞれのよさを発揮していくことは可能なんじゃないか、またそういう努力をすべきじゃないか、かように私は思います。現に欧州において西独はあれだけ共産主義の国をきらっておりましても、欧州共産主義諸国との貿易状態はずいぶん伸びております。現実の問題として、いわゆる政治上の範疇に入らない経済活動はそれぞれやられておる、こういうに私は思います。  あるいはお話の筋はやや私がお答えするところとは違うかもしれません。ちょっと久保田さんのお話を捕捉というか、私がつかまえたところではただいまのような感じがします。私忌憚のない率直な意見を表してお答えにするわけです。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の点につきましては、少し大臣と私は認識が違うわけです。違いますが、これを論じておりますと非常に長くなりますし、こまかい議論もやらなければなりません。しかし結論としては、大臣共産圏といえども区別はしないんだ、あくまで大いに協調して積極的に前向きにやっていくんだ、こういうお話でありますから、それを信じて、その前提に立って今度は一つ一つの問題について私は御質問をしていきたいと思います。  まず、ソ連の問題についてであります。第一にお聞きしたいのは、大臣日ソ貿易は今後十年ぐらいの間にどのくらい伸びると見ておられますか。私は最近その方の関係の商社ないしメーカー等にいろいろ調べてもらいました。その人たちは、輸出輸入について品目をあげ、数量をあげ、金額をあげて現在やっていきますると、全面的に日本が本格的になってやるならば、大体において本年度におきましても共産圏全体で約六億程度貿易が可能だ、つまり輸出が三億、輸入が三億というわけであります。   〔白浜委員長代理退席委員長着席〕 多少の違いはありますけれども、さらに六五年度においては、往復で大体二十四億程度、つまり輸出が十二億、輸入が十二億というふうなことです。さらに七〇年くらいには大体において輸出入とも二十五億ないしは三十億は、日本が本気を入れて積極的にこれと取り組むならばできるということを、数字的に、一応の推算ですが、出しております。私はそれをいろいろ検討してみました。先方の各共産圏諸国経済開発実情や、そしてさらにこの前も申しましたが、いわゆる経済開発費のうちの何%ぐらいが資本主義の国に——大体今までの平均で見て約一〇%が資本主義の国からの生産財を主としたものの輸入に充てられております。それから経済建設費の一〇%程度がほぼ資本主義国への原材料エネルギー等を主としたもの、向こうから見れば輸出であります。こっちから見れば輸入でありますが、こういうものに充てられておる。こういう実績から見て、利は今のような見当はほぼ間違いないのじゃないかというふうに思うのですが、大臣はどんなふうにごらんになっておりますか。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の数字は私相当膨大な数字だと思います。三十七年の日ソ通商取りきめをいたしました場合に、双方一億ドルというような形が普通望まれる。ところで過去の実績等を考えてみると、非常に入超になっておる。国際収支のバランスをとるという意味で、三十七年は日本側のものを輸入するより以上に輸出するということで、一応取りきめをいたしたわけであります。この数字が適正であるかどうかは議論がございますか、もちろん貿易ですから全体のグローバルの形において数字を見ることが望ましいことだ、こう思います。特に国際決済等関係があるので、共産圏とは個々に話を実はいたしておるものですから、ただいまのようなことになっておる。ところで、今後この貿易がどういうふうに拡大していくか。ソ連からは、私が申すまでもなく、石油がある、木材がある、あるいは石炭がある、さらに鉄鉱石も場合によったら買い得る。こういう日本のほしい原材料がうんとあるわけです。ところが日本側からソ連に送るものというのは、非常に限定されておる。しばしば私ソ連通商代表の方々にもお話しているのですが、日本ソ連から買いたい原料はうんとあるが、ソ連はもう少し日本から品物を買ってくれないか、そうしないとどうしても国際収支の面から困るという話をすると、日本商品は高いということを言います。私は、日本商品が高いとは思わない、あるいは支払い方法等について欧州か提供するより日本の方がきついものがあるかもしれない、これは私が指摘するまでもなく御承知と思いますが、大国ソ連日本から品物を買う場合にやはり延べ払いなど要求をいたしております。私はしばしばソ連のような大国日本のような小国に対して延べ払いを要求するというのは筋が違いはしないか、だから現金払いでどうかと言うのですが、やはり船舶などは現に延べ払いをやっております。そのほかの機械類等についても、欧州並み延べ払いを要求しておる、そして価格が高い、そういう理由日本商品を買わないのです。だから、今の貿易額そのものはいろいろの必要量だけを計上しますと非常に膨大な数字に上る、リストはできる、しかし、現実の問題としては国際支払いの問題がございますし、なかなかそう容易に実態はつかみかねると思います。ついせんだってエカフェに来ておるソ連代表がわざわざ通産省をたずねて参りまして、私にいろいろ話をしました。そのときも、日ソ貿易拡大を当方で要求したについて、向こうでどうもこの日ソ間の貿易拡大ができないのは、何か政治的な力でも働いているんじゃないか、こういうことを相手の人が申しておりましたから、私も笑いながら答えたのですが、私自身が、日ソ間の貿易拡大しているのだから、この一事をもってしても、これをチェックするような政治的な働きのないことはおわかりでしょうと率直に披露したわけです。相手方も笑っておりましたが、いわゆる政治形態を好む好まないというような事柄が、この貿易慣例に非常にじゃまになっておるのじゃないかという誤解が今なおある。けれども、これは最近私自身ソ連通商部の諸君と会ったり、ただいま申し上げたように、エカフェに来た代表と会ったりして、真意をよく話をしておりますから、誤解はないと思います。むしろ日本国内に、ともするとどうも貿易を好まないんじゃないかというような気持が働いておるようでありますが、これは私どもも機会あるごとにそういう誤解を解きたいと思います。ただ、もし非難を受けるとすれば、貿易だから、どうして世界全体の関係において収支を考えないのか、一国同士でそういうバランスをとるというのは不都合じゃないか、この非難は当たると思います。当たると思いますが、しかし、それにいたしましても、一国ずつの貿易を作り、そうしてその輸入超過分をどこへ今度は輸出超過で補うかというような計画はなかなか立ちにくいことでございますから、ことに金額が膨大になればなるほど、やはりバランスがとれるようにしなければならない、これはひとりソ連に対して私は申すばかりではございません。最も大きな貿易額の対米貿易におきましても、収支が今のように開いておることは、日本としては大へんなことなんです。日本経済発展上非常な支障であります。だから、あらゆる機会に日本アメリカから必要な原材料を買い取るが、どうかアメリカ日本からの商品を相当買ってくれ、国際収支のバランスを近づけるようにしろ、こういうことを要求しておりますのも、ただいま申し上げるような点でございます。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その今の、私は佐藤さん自体が主観的にソ連貿易に対して非常に反感を持っておるというふうには、あるいは反対しておるというふうには考えておりません。しかし、制度として、いろいろこれに反対するような制度が現に行なわれておるのであります。そういう点については、一つ一つこれからお伺いをいたしますけれども、たとえばことしの、つまり今度できた六十二年度の貿易にしましても、これは今度おきめになりましたのは、御承知通り輸出入合わして二億二千五百万ドルですね。ところが私はことしの現に成約ができておるもの、もしくは商談控え中のものを中心にしてどのくらいいくのかと言って業界の専門家に当たって調べてもらいますと、そこからできた数字は三億三千万ドルです。ことしだけでもですね。これはあえて今まで、つまり政府の積極策を講じなくても、それだけは大体いけるじゃないか、今までの実績も、協定と実績との間には相当大きく実績の方が上回っておる、そういうのから見ても、私は、政府が、これから御質問するような積極的なことをやっていけば、十分今申しましたような程度数字は、もちろんこれは楽じゃありません、いろいろ問題はたくありますが、しかしありますが、しかし両方が誠意を持ってお互いに信じ合って、お互いに援助し合っていくという、そういう基本原則に立ってやっていけば、これは解決つかない問題ではない。いろいろ問題はたくさんあります。しかし、それが今のところできておらない。今お話のありましたように、ソ連のものは、ソ連は非常に日本品物をたたくとか、あるいはどうも日本のものをちっとも買わないで貿易じりが少ししかないじゃないかというようなことは確かにある程度あります。しかし、これも大きく見れば、私はやはり政府が積極的な施策を見れば、大局から見れば大した問題じゃない。たとえばアメリカとの間には、貿易じりがひどいときには十億ドル以上の赤字が出ても、まあ日本としてはさして、文句を言ったことはない。わずかに五千万ドルか六千万ドルの赤字が出て、しかもそれは三年くらいの集積です。その集積でこいつを取り上げて、ソ連は支払いが悪いじゃないかと、日本のものは買わないじゃないかというふうな態度のうちに私は少し変なものがあるんじゃないかというふうに思うわけです。しかし、まあこの点はこれ以上突っ込んでみてもしようがありませんからやめておきます。  そこで具体的な、どうも私ども見ておりますと、こういうふうに思うのです。佐藤さん御自身は非常に積極的にやろうというお気持かもしれませんが、日本全体の政府もあるいは業界も、ソ連というと何かおずおずして積極性がありません。ソ連貿易共産圏貿易についてはそうですが、これは国によって多少違いますが、特にソ連についてもそういう傾向が見られる。この消極的態度というのは一体どこから出てくるのかということがあれなんです。つまりさっき申しましたように、ソ連日本とつき合い過ぎて、そういう点で深入りするとあとでにっちもさっちもいかなくなる、こういうふうな変な心配の場合もあるでしょうし、あるいはどうもアメリカの方がぶうぶう文句を言う。これに遠慮してやるというような面がありましょうし、いろいろあると思いますが、今もお話のあった通り、西欧諸国、特に西ドイツとか、イギリスとかあるいは一部、フランスとかいうのは、ずいぶんこれは積極的な施策を前からとっております。私もちょうど今から八年ばかり前に欧州を通って、ソ連を通って中国へ入りましたが、その時代でももう西ドイツの電気メーカーがソ連や中国へどんどん品物を売りに来ています。それと飛行機で私は一緒に二日間行動をともにしまして、つくづくこれは実際にどうなんだ、西ドイツの製品を売っておるのかと言ったら、いやそうじゃないのだ、これは東ドイツの名前で入れているのだ、しかし、実際はおれの方からやっておるのだ、だからおれが行かなければ据付ができないのだと言って、帰るときにはまた新しい注文をとって帰るのだということを言って実情を話しておりました。どうもこういう点で日本政府なりあれというものは、何か消極的のように思うのですが、どこに原因があるのか私はわかりませんが、佐藤さんはこの点についてどういうふうにお考えになりますか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 日本も非常に積極的でございます。たとえばモスクワにおける商品見本市がしばしば、しばしばでもないが、開かれたとか、あるいはまた経済調査団がそれぞれ出かけるとか、なかなか活発にやっております。また、ことしなどもそういう意味で調査団が行くようでございます。かつての状態とは、これはもう見違えるようになっておると思います。ただ、今までいわゆる社会主義の国というか、これは一つは、一部に久保田さんが御指摘になっておるように、過去においてこの共産主義諸国との交際をひんぱんにするところと自由主義国家との貿易は、左をうんとやると右の方がなかなかうまくやってくれないとか、こういうふうなことはございました。そういうふうなことが影響はしたろうと思います。ことに中国大陸との貿易関係においては、しばしばそういうことが言われたものでございます。また、日ソ貿易にしても、初期においては第二会社あるいは別会社を作ってソ連貿易を別にするとかいうような、こういうような処置をとったようであります。こういう事柄が誤解を招いたり、また拡大しなかったゆえんだろうと思います。しかし、最近はそういう事柄はないし、またそういうことがあってはならないと思います。だから、これらの点もよほど誤解があるだろうと思います。今まとめて日ソ間の貿易についてのお尋ねでありますからそういうことを申しておりますが、あるいは北鮮なりあるいは北ベトナム、こういうことになりますと、なかなか人の交通自身が非常に困難でありますために、貿易も本格的な交渉にはなっておらない。だから、この日ソ間の貿易同様はにまだ北鮮なり、北越なりはなかなかならないだろうと思います。もう少し人間の交流がひんぱんに行なわれるということになれば、貿易自身は自然に拡大していくのじゃないか。中国大陸との関係は、人的交流については、これは主義の人であろうがなかろうが、政府の人だろうがなかろうが、文句なしに、過去においても来ていたのでありますし、また今後必要があればそういうことはいわゆる民間ベースという形において進めていくつもりでございますから、共産主義と一口に申しますけれども日ソ間はよほど欧州、欧米並みの形、その次が日中間、またその次のやや窮屈なものが北鮮あるいは北越、こういうふうに御理解ができると実態がつかみやすいかと思います。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それでは具体的にお伺いしますが、ソ連の場合でも、中国の場合でも、北鮮北越の場合はもちろんでありまするが、こういう事実があるのですね。日本の会社とアメリカの会社と技術提携をしておる、その条件一つに、ソ連側にそのものを出さないというふうな条件つきの技術提携条項が相当あるようであります。またアメリカでは、場合によりますと、ソ連にはほとんど適用したことがないようですが、中国等にはたまたまバトル法を適用してやるというふうな措置をとっておるようであります。また、聞くところによりますと、日本にありまするアメリカの大使館はこういう問題について相当大量の監視員を置いて、そういう事実がやられると、外務省を通じて、あるいはあなたの方を通ずるかもしれません、あるいは——直接業者にやるということは少ないようでありますけれども、これはいわゆる技術提携の違反ではないか、やめないとどうこうというふうな、これは内政干渉とまでは申しませんけれども、まあおどかしといいますか、注意をする場合が非常に多いようです。しかし、反面で、御承知通り特にソ連の場合は、向こうでこっちへ注文してくるものは非常に技術的に高い水準のものであって、やっぱりどうしても相当に技術を要するものが多いわけですね。そういうのは、日本の場合には、多くはアメリカからの技術導入をしたものが多いという実情なんです。これらについて、たとえば欧米諸国ではどうやっておるかというと、欧米にも御承知通りアメリカ資本が特にEEC等にはずいぶんたくさん入っておる。あれによりますと、大体七百四十何件というものが提携会社を作っておる。従って、その基礎になっておる技術提携も相当多い。これにそういうソ連なり共産圏には入れていけないという条件がついているのか、ついていないのかわかりませんけれども、欧米の場合は、こういう技術の条件というものをほとんど問題にされておらない。中国の場合でもそうであります。ところが、日本だけこういういわゆる技術導入についての制約があり、それをつまりアメリカの大使館の監視員が、あれこれとやるという。これは契約面からいえば当然そうでしょう。しかしながら、そういう点について政府としては今までどういう指導をされてきたのか。またそういう措置アメリカ大使館がとられる場合、これに対してどういう緩和の交渉なり何なりをされておるのか、また今後こういう事態の解決についてどういうふうな方針をもって臨まれるつもりか、この点を具体的にお聞きしたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 技術導入をしたものを、ソ連から日本輸出してくれろというものは幾つもございます。私が就任してからもそういったものがございます。しかし、これは原契約の形で他の地域へ出すことは断わられておる、かように申しますと、ソ連側もさようなことか、困ったなあということでその話は済んでおります。またそういう事柄を出したと言って、アメリカ大使館から文句を申し込まれたということは聞きませんが、おそらく、もしも出せば、原契約者相互の間に紛争の起こるのは当然でございます。契約の実情その他について今井君からもう少し詳細に説明させていただくことにいたしますが、ともかくも日本が買った技術、これは公開できるものと公開できないものがある。また一定の期間経過すれば、そういうことの条件はなくなるものがある。その間はどうもやむを得ない、こういうふうに私は考えますが、一応実情について局長から説明いたさせます。
  15. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 日本アメリカと技術提携をして、そのためにソ連輸出を企業としてしたがらないというケースもございます。今度ソ連との貿易協定にあたりまして問題になりました商品として、電子機器を作る機械類の商談がございまして、ソ連の方は日本に対しましてそれを非常に要望したのでございますが、日本側としまして、そういう技術導入契約の関係もございまして、向こうの要望の三分の一程度きり充足できなかったという事例がございます。しかし、この問題は、聞いてみますと、欧州の方からソ連としては買いたかったのだけれども欧州からやはり断わられて、そのために日本に強く要望したというのが実態のようでございまして、それからアメリカ大使館等からいろいろ話があるということは全然ございません。
  16. 久保田豊

    久保田(豊)委員 こういう技術提携をする場合は、契約する場合は、これはいずれ全部通産省の認可を受けておるはずです。もちろんこの提携の条約の中には、日本以外に売ってはいかぬとかあるいはどこどこ以外に売ってはいかぬとかいう条件がつくのは、これはあり得ることです。しかし、ソ連ないしは共産圏なるがゆえにこっちに売ってはいかぬという条件がついているのは、相当あるのじゃないですか。どうなんですか、その点は。
  17. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 契約の内容として、さような条件が付せられておるのはあると思います。これは私契約の問題でございますので、もしそういう条件日本側で拒絶いたしますれば、その技術導入契約はできないということで、受ける方としてどうしても弱みになるというのが実情のようでございます。
  18. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まあアメリカ側としては、技術の内容にもよりますが、これはソ連側に知られたくないとか何とかいう特殊なものは別ですが、少なくとも日本なりあるいは欧州に技術輸出をする程度のものを特にソ連にやっていかぬというふうなことは、ちょっとおかしいじゃないか。こういう点については、政府個々の技術提携の契約の審査をして許可するのですから、そういう場合に指導するなり、そうして特にひどいものについてはアメリカ側と政治的な折衝を通じて、契約面ではどうであれ、実質面でそういうものを埋めていく、薄めていくという行政措置なりあるいは外交交渉なりが当然あってよいのじゃないか。それがないというのはおかしいじゃないか。今のお話で、アメリカ大使館がそんな干渉をするなんということは絶対ないというお話でしたが、私どもの耳にはずいぶんそういうことが入る。あなた方にはなかなか入らぬでしょう、業者は話を持っていかぬから。しかしながら、われわれにはずいぶんそういうあれが入るのです。これはおかしいじゃないかというふうに思うのでありますが、どうですか。
  19. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは通産省にはアメリカ大使館がどうこうということはないと思います。私は現にそういう経験は一つもありません。あるいは今言われるような事柄が業者にはあるかわからない。これは自国産業の保護の立場においてのアメリカ大使館の人たちの当然のやる責務であろうと思います。せっかくこういうように条件をつけて売ったにかかわらず、その通りやられていないといえば、君のところはどうも契約違反だからというようなことを言われることは、これはあり得るかと思います。けれども、これはいわゆる行政の問題ではない、どこまでも経済の私契約といいますか、そういうものだと思います。ところで、もとのそういう契約は一体どうなのか、大体もとはそういうことがあったと思います。せっかくパテントを売ったら、その結果、売った本家と買った方と競争することは困るとか、また買う方から申せば、せっかく始めているのに、本家の方が出てきて競争を吹っかけられては困るとか、おそらくこういうような分野の協定というのがまず第一にあるものだと思います。いわゆるロイアリティを払っている以上、当然そういうことを考える。そういうところからこの私契約がだんだん発展してきて、いわゆる主義の国だからというような表現はしないでございましょうが、なるべく地域を限るとかいうようなことも順次契約の面に出てくるのじゃないか、こういうことを思います。そういう事柄がパテント料が高くなったり安くなったりするゆえんでもありますし、私契約としては、これはやむを得ないことじゃないか、かように私は思います。
  20. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そういうことも含めて、ソ連との間に、ことしは日本の方からも技術使節団というようなものが向こうに行って最近帰ってきたようですし、それから向こうからも今年は来るという話です。これはもちろん政府側とも、こういう技術提携の問題といいますか、技術上の障害をとる交渉なり何なりに来るものだと思うのです。で、向こうから帰ってきた人たちの報告がこれにあります、この今月号に。これで見ると、日本でぜひソ連から入れたい、そうして入れれば日本の非常に有利になるという技術が八十一種類ある、こういって報告を出しております。こういうものとアメリカその他を含めまして、日本のこういうものの技術的なこういう障害をとる何らかの積極的な用意を政府は今される段階ではないか、これは私契約の問題だから、おれの方は知らぬのだ、こう言うべき段階ではないように思いますが、これらについて何か御用意なりお考えがあれば、お聞かせいただきたいものと思います。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この日ソ間の問題で、各業者自身ソ連の技術を勉強してこれを導入したいとか、あるいはソ連日本の特殊技術を導入したい、こういうことは、業者間の問題として今いろいろあるだろうと思います。具体的な問題が起これば、そういうものを取り上げればいいことだと思います。ただ今まで日ソ間の問題で特許権の問題が両国間の外交の懸案になっておりまして、どうもソ連はいわゆる特許権なるものを保護しない国じゃないのかというようなことで、ソ連側から日本へ特許の申請をしてきたものについて特許審査をしない、こういうような話があったわけでございます。よく調べてみますと、条約を守る義務もやはりソ連法律にあるということでございます。そこで最近ソ連の特許関係の、これは役人だと思いますが、日本に来ることになっています。あるいはもうすぐ近いうちに来るのか、あるいはもう来ているかぐらいですか、数名参りまして、日本の特許庁といろいろ事務の打ち合わせをする、同時におそらくそういう際に特許の実情も調べて帰るだろうと思います。オフィシャルの方としてそういうような道が開けたことを御報告し、これは今後ただいま御指摘になったことに直接役立つかどうかは別としまして、必ず好影響をもたらすものであろう、かように思います。
  22. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私もそれは聞いておるわけであります。ぜひ一つアメリカから入れたそういうものも、これは私契約だからしようがないんだというだけでなく、これはものによりましょうけれども、何らか打開の道をはかる必要があるのではないかと思いますので、これはなかなかむずかしい問題だろうと思いますから、一つ積極的に、前向きに御研究なり方策を進められていただきたいと思うのであります。  その次に、さっきもお話しになりましたが、前向きに対ソ貿易を進めていくという点で大きな障害になるのは、やはり何といっても向こう輸出するものが、御承知通り大部分がもうこのごろは大型のプラントものになってきているわけですね。どうしても延べ払いをつけてやらぬと、これはなかなかうまくいかない。さっきもお話しのように、ソ連大国なんだから、日本のような小国をいじめることはないじゃないか、即金で払え、現金で払えそう言っても、これはルーブルなり何なりをこっちで認めるというなら話は別ですが、ルーブルの国際的な交流性というものが確立すればともあれ、今のそれがないという段階では、私は困難だろうと思う。従って、そういうようなドルなりポンドなり、特にドルで延べ払いのワクをつけてやるということが必要だろうと思う。それでなければ、今のように大型のプラントものがたくさんになってきた段階では、これはなかなか困難ではないか。これはもうすでに行われておることも承知しております。そしてソ連の分が国別に見ると一番大きな延べ払いをつけてもらっておることも承知しております。しかし、これは単にソ連共産圏だけでなく、輸銀の延べ払いの融資ワクが千二百億でありましたのが、ことし千三百四十億かにふやされたようであります。しかし、これでは私どもは足りないのではないかというふうに思うのです。ですから、こういったものをもっと融資ワクそのものを多くする。そういう中でソ連にももっと大きなシェアというかワクを作ってやるということをやる必要があるのではないか。少なくとも前向きにやる以上は私はこの程度のことは政府としていいじゃないかというふうに思うのです。ことしから来年にかけて、少なくとも輸銀の延べ払いの資金ワクというものは、今の千三百四十億から二千億程度にやらなければいかぬじゃないか。その中でソ連側についてのものは四百億程度のワクというものを作るのが適当じゃないかというふうに思いますが、こういう点についてはどんなふうにお考えになりますか。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 久保田さんも御承知のように、もう私が幾らいやみを言っても、ソ連延べ払いはどんどんやっておる。残高が一億三千万ドルありまして、これはなかなか大きいのでございます。この前私は直接交渉を通商産業大臣としてはいたしておりません。大蔵大臣時分に直接いろいろと交渉を持ちました。ソ連側の公団の責任者が来て延べ払い等の話を持ち込んだ際にいろいろその話に乗りまして、現実に処理したものであります。また最近もそういう意味では次々に公団の責任者が来て買付をしておるわけであります。これなどもとにかく日本とすれば買ってくれればけっこうなんだし、この品物は売らないという先ほどのような特許のついておるものは別でありますが、そうでなければ許す範囲で延べ払い等にも応じておるというのが実情であります。  ところで、輸銀の資金ワクの問題でありますが、これは何でもかんでもこの金額で押えるのだというわけのものでもございません。三十七年度など輸出増強の年といいますか、そういう意味でございますから、輸銀の資金ワクは使えるだけは早く使ったらどうか、そしてあとでさらに補充をしたらいいだろう、こういうことを実は申し出て、積極的な意図を持って、使うというと語弊がありますが、貿易拡大実績をあげたい、かように実は思っておるわけであります。  ただ、久保田さんの言われるように、ソ連のワクが幾らか、あるいはベトナムのワクは幾らかということになりますと、これは非常に窮屈になります。そういうことでなしに出てきた商談、それに特別な色をつけるということでなしに、あるがままの姿で貿易拡大方向一つ一つを勘案していく、こういう態度で実は臨みたいと思います。ことに支払い能力の面においてソ連を東南アジアの諸国に比べるような、そんな失礼なことをするつもりではございませんから、そういう意味では十分話がつく、かように考えております。
  24. 久保田豊

    久保田(豊)委員 業者の全部の声を聞いたわけではありませんけれども、数人の声を聞くと、なるほどソ連延べ払いのワクは数量的には各国で一番多いのだ、しかし実際にはなかなかもらえないのだ、何とかこれをせめて他国並みに楽にもらうようにできないかという要求が非常に強いのであります。これは政府側としてもいろいろ都合もあると思いますが、とにかく何といっても今のところはソ連関係のものが一番大きなプラントものの出る可能性が非常に強いわけであります。ですから、そういうものについては思い切った積極的なワクをつける。今のように何もワクをきめなくたって、必要なものをどんどんつけてやるということなら、その趣旨が業界に徹底して、業界の連中が、商社なり何なりが積極的に取っ組んでどしどしやれるというふうな行政指導をされることが必要じゃないかと思いますが、そんなふうにぜひやっていただきたいと思うのです。  その次に私がお伺いしたいのは、さっきもお話のありました通りことしの六−八月ごろだと思いますが、日本の一流銀行その他のトップ・クラスのスーパー・ミッションと言っておりますが、この諸君が、山本さんや北村さん等の話し合いがございまして、一団になって行くということであります。これに対して大臣はどんなふうな態度をおとりになるか、業界で行くなら行きなさいという態度か、これの団長ということにもなりますまいが、私はできれば佐藤さんみずからが行ってきたらどうかと思うのですが、あるいは佐藤さんのかわりが行くなり、あるいはミッションの団長なり何なりに特別の政府の代理みたよな資格でも与えてシベリアも十分見てくる、そして同時に向こうとも十分の腹をきめていってやるようにしたらどうか。ただ見て帰ってきまして、あとで考えましょうというのでは——特にシベリア関係の方は、日本人であそこの実態を知っている人が実際少ないんですね。ですから、向こうで言われても、なかなか信用ができないというふうなことでしょうからね。しかも今向こう開発の重点がシベリアに置かれておるわけです。今後もますますシベリアに重点が置かれるという状況の中ですから、これは私は日本にとって非常に大事なことではないかと思う。特に、これはあとで触れますけれども承知通り、来年が日ソ貿易協定の改定の時期です。ことしは日本側としてそれに対する十分の準備なり腹がまえなりをすべきときではないか。それだけに、民間にまかせておいて、勝手にやりなさい、政府の方はそれとは違うというふうな、何か私はそこらにも、佐藤さんは盛んに前向きにやると言われるけれどもアメリカから来いと言われればすぐ行く、欧州から来いと言われればすぐ行く、東南アジアから来いと言われればひょいひょいと飛んでいく。しかし、ソ連とか共産圏とかいうことになると、政府の諸公はきわめてどうも——行ってもほとんどつんぼさじきというか、自分の方でもってつんぼさじきに入ったよう格好で帰ってくる。こういう態度では、私はいわゆる前向きの姿勢とは思えないのですが、どうです、この点は。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の調査団、視察団のシベリア並びにモスクワ行き、これ・は私も相談を受けた一人でございます。で、当初は、ただいまお話しのように高碕、北村両君のシベリア調査団というものが一つ、また山本熊一君のモスクワ視察団という別なものと二つあるようでございます。それで二つあるんだがということで、まあ二つあったってそれもけっこうだろうが、やはり時期が同じであったりすると、ソ連側の気持もあるだろう、よく相談なすったらどうですということを申したのです。その後今度は両者がお見えになりまして、一緒にまとめていくことになりました、大へんけっこうですというようなことを申し上げて実は力づけておるわけでございます。  ところで、昨年ミコヤン副首相が日本に来られたときいろいろシベリア開発の話をいたし、日本経済力をもってすれば、ソ連側に協力する範囲も非常にあるように思う、遠い欧州よりも近い日本からそういうことを考えるがいいだろう、ついてはシベリアをよく知らしてくれないか、どうも日本側のシベリア開発に対しての協力というものが一方的で、ソ連側から、とにかくシベリア開発をするのだ、ついてはお前の方でこれだけ出してくれとこう言われると、あと引き継いでの注文があるものやらないものやら、またその後開発計画が済んだ後に当方へどういう影響があるやらもわからない、だからやはりシベリア開発の大綱くらい話してくれることが両国間の貿易拡大にしても望ましいことだということを実は私自身提言したのでございます。当時は今よりもまだ国際間の緊張のきびしいとき、とも言えるのかもしれませんが、シベリアについては絶対に見せないのだ、シベリアはさきの戦争の際に米軍自身にも一指も触れさせなかったところなんだ、そういう関係があるんでシベリアの内情は話すわけにいかぬ、こういうことであります。しかし、その後ハバロフスク程度までは墓参にも行けるようになり、一部は解除しているというか、みずから指導し、見せてくれるようだということでございます。今回もその一つ方向が示されたものだ、いわゆる閉ざされた門戸が開かれたというか、こういうんで非常に喜んでおります。しかし、おそらくシベリアと申しましても広い地域ですから、どの程度案内するか、それはわかりませんが、少なくとも一つの新しい転機だ、かように考えるんで、非常に私は期待をかけておる次第でございます。  また非常に小さな団体ではありますが、モスクワで商品見本市を開きたいというようなことで相談を持ちかけられた例もございます。これはどうも計画がよろしくないからだめですよと言ってとめましたが、これは婦人の団体で、編みものか何か持っていきたいというような話でしたが、結局これは失敗に終わったようです。ですから、今後順次模様は変わってくるだろうと思う。それから今言われますように、別にソ連側からの案内を強要する意味ではございませんけれども、できるだけ機会を作り、機会をつかんでお互いに出かけること、これは必要なことだ、かように思います。
  26. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今度のは民間ミッションということですが、これは何かやはり政府も委託をするなり何か使命を与えてやるという考えはありませんか。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 もちろん出発の前とかあるいは出発の準備等にかかりますと、いろいろな問題が出てくるだろうと思います。もちろん相談にも応ずるし、当方にも必要なものがあるように思います。ただ、非常に警戒をしておりますのは、政治問題には一切関与しない、純経済立場でだということを私どもも団に強く要望するつもりでございますが、どうも相手において、そうでなしに、これがいろいろ政治的に使われる、その結果せっかくの目的を達しないようになる、注意すべきはその点のように思います。  それから、経済の問題については、近い将来には原油がシベリア経由で日本へくるようになりましょう。あるいは石炭は現に入っておる、あるいは木材も入ってきておる、こういうことでございますから、それらの範囲において日本的な便宜もはかり得るんだと思うのです。木材などは、今回の日ソ通商取りきめでは相当の数量を日本側は要求し、相手国のソ連もよほど好意のある処置で、日本に送り出し得る数量とすればマキシマム程度のものを大体予定したようでございます。これなども鉄道線路から相当離れておる場所でございますから、伐採なりあるいは運搬等特別なものが必要でございます。また木の切り方なども日本の切り方とソ連の切り方とはだいぶん違うようでありますから、日本的な切り方をすることが望ましいのではないかという意味の技術の指導なども今まではやっておるのです。だから向こうへ出かける、それぞれ一流の方々が現地を視察されれば、政府の要望もさることながら、おそらく得るところは非常に多いだろう、そういう結果で、ある程度現地で話のつき得るものは、一流の方々ですから、自分たちの責任で処理し得ることは処理ができるのではないか、かように私は思います。
  28. 久保田豊

    久保田(豊)委員 このミッションが行くについては、いろいろ問題があるでしょうが、その一番大きな現実の問題は私二つあると思う。一つは一九五九年ですか、ペリーキー視察団が来たときに、日本の高炉八社に提案をしたままでそのまま未解決になっておる例のガリンスコェとキミカンスコェとかいうプレーヤー渓谷にある鉱山、私もこの近くまで行ったことがありまして、これの続きを徹夜で何したことがありますが、この辺は相当なものです。これの開発の問題が提案をされたままで未解決になっておる。当時は日本側としていろいろわからない点があったり、その他いろいろの点があったりして、だめだった。特に政府側はこれに対して何らの態度を示さなかった。いろいろ問題はありましょうが、ここでも向こう側は、日本が本格にやって、そしてここで出る鉄鉱石は当分ソ連の方としては国内用には使わぬから、長期で引き取ってくれるというならば、これを開発する資材というものは一切日本から買いつけてもいいというふうな条件のようです。この問題をどうするかということは、今鉄鉱石のソースが非常になくなっておるとき、この視察団の一つの問題になることは明らかだと思う。  もう一つは、御承知通り例の石油のパイプ・ラインです。イルクーツクからナホトカまでの石油パイプの問題、それと引っかえに、日本石油を一千万トンないし一千二百万トン買え、この問題ですが、これは非常に大きな問題で、これも相当問題になると思います。これに対しては政府としてはどういう態度をおとりになるんですか。あるいは態度決定は相当むずかしい問題だろうと思いますが、これらに対してどういう態度をとるかということが、前向きかうしろ向きかの判断の私は基礎になると思うのですが、どうなんでしょう。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ことしの通商取りきめでは、ソ連から銑鉄を買い、当方は鉄鋼を売るということで、この大体の数量は御承知通りまとまったわけです。そこで今の所得倍増計画では、今までの二千四百万トンの製鉄能力を倍にしてして四千八百万トンにする、これは大へんな数量であります。そうなった暁、もう現在でもそうですが、米ソに次ぐ製鉄王国になる。ドイツ、イギリスを凌駕するというりっぱな製鉄王国になるわけであります。ただいままでのところ、二千四百万トン増量するものの原石、鉄鉱ですね、あるいは石炭あるいは重油というようなものも一応の数字の基礎は、計画は一応できておるわけでございます。これがあるいは遠くはブラジルの開発になったり、あるいはインドの鉄山開発になったりしておるわけでございます。問題は近くが一体幾らになるかという問題シベリアで一番困るのは、現地で銑鉄を作って、そこで銑鉄として作るならば比較的むだなものを送らぬで済みますけれども、六五%の含有量にいたしましても、これは相当むだなものをあの遠いところを鉄路で港まで送らなければならぬ、ここに一つの問題があるわけでございます。だから非常に望みの嘱される製鉄の山でございますし、そうして鉄鉱石を売りたいという気持はあるようでございますが、そういう意味でなかなか長期の引き取り契約をするというところにまだもう少し調査を必要とするんじゃないか、こう思います。中国大陸における鉱石の問題ももちろんあわせて考えなければならないのですが、ただいま中共政府自身もなかなか製鉄業に力を入れておりますから、あまり日本は期待はできないかと思います。しかし、これは過去の経験もあるし、鉄鉱石にしてもあるいは開らん炭、石炭にしても過去の実績がありますから、比較的取り組みやすい、こう思います。思いますが、シベリアの鉄鉱石の問題になりますと、もう少し調査をしないと困るんじゃないかと思う。これが一つの難問題であります。  それから第二のいわゆるパイプ・ラインの問題、パイプ・ラインはソ連側も非常に強く要望しておる。こちら側も採算に乗るものなら——ただ、ただいまのところ一千万トンないし千二百万トンということに実は非常な難色を示しておるわけです。パイプ・ラインはできてしまえば、毎年同量売るわけでもないのですが、売った後に末長く一千万トンも千二百万トンも引き続いて買わされちゃ、ちょっと因るじゃないかというのが、最後の決心ができておらないゆえんでございます。それで、いろいろソ連側がパイプ・ラインをほしいと言うから交渉してみると、君の方はシベリア開発、またシベリアでも相当使うんだから、パイプ・ラインを使えば、シベリアでうんと石油を使うだろうと言ったら、それはほとんど使わないんだ、日本へ持ってくるためのパイプ・ラインだから、日本で買い取る数量を明確にしてくれないとなかなか引けぬ。こういうことで、ただいまその商談も宙ぶらりんになっているというのが実情でございます。パイプ・ラインについては、すでに御承知のことだと思いますが、イタリアなどはパイプ・ラインを売り込み、イタリア自身ソ連原油を買っておる。しかし、その数量にいたしましても、今度日本が契約いたしました三百四十万トン、せいぜい三百五十万トン程度じゃないかと思いますので、これは将来は伸びるにいたしましても、ただいまのところではそう大きな数量ではございません。そういうことを考えますと、日本ソ連原油のいいお得意にもなっておるわけです。将来日本の重油の使用量が非常にふえるとかいうことになれば、国産原油で補うにいたしましても、英、米、ソ連等からの油を買わなければならないのですから、それらのことを考えると、一千万トンに別に驚く必要はないようですけれども、まだここ当分一千万トンは重荷のような気がするわけであります。
  30. 久保田豊

    久保田(豊)委員 よく御存じですから、これ以上申し上げませんけれども、今の一千万トンといえども、今すぐ来たのでは多過ぎるということでしょうが、パイプ・ラインが完成してくると、おそらく一九六五年程度、あるいはもう少しおそくなるのじゃないか、こう思うのです。そうなってくると、その時分の日本石油の消費量を考えてみれば、これと、それから例のアラビア石油が一千万トン程度入ってきても、私は、アメリカやイギリスの石油屋さんから文句をつけられて日本として動揺する必要はごうもない、こう思うのですが、ここらはこれはやはり何といっても——実はせんだって出光さんにも聞いてみた。そうしたら出光さんは、これは私たち来てくれればありがたいが、私の方では政府が腹をきめてくれなければ、私どもの方でどうこうというだけにはあまりに大きな問題であり、政府が腹をきめてくれれば、政府の腹のきめた通りやります、こう言っております。鉄鉱石の問題についても、今お話しのようないろいろの技術的な困難その他もあります。しかし、いずれにいたしましても、南米やアフリカや、あっちから持ってくるのに比べれば、はるかにこれは安いものにつくし、しかも安定してやれる。向こうは当分−当分というのはどのくらいの当分か、長期にわたって日本が受け取ってくれるなら資材を買おう、こう言っているのですから、私はここらが日本としては非常に経験の少ない、実情もわからぬところですから、よほど実情を明らかにしなければ、そう簡単に取っ組めないと思います。何らかこれらについても積極的な手を打つべきじゃないか。少なくともこの二件は、ほかのいろいろな問題もありましょうけれども、今度のミッション等が行く場合には、あらかじめこういう点については、政府の意向をある程度はにおわして持たしてやるくらいのことでなければ、向こうに行って何のために行ったか、それは効果はありましょうけれども、一番基本の問題の解決には役立たぬと思いますから、この点もぜひ積極的にやっていただきたいと思う。  時間がありませんから、ソ連問題の最後は、御承知通り、来年は日ソ貿易協定の改定の年です。現在の貿易協定というのは非常に簡単なもので、しかも不完全なもので、全くの支払い保証協定ともいうべきものだと思います。やはりこれからの日ソ貿易を積極的に拡大するという以上は、単なる支払い保証協定というようなものでなく、もっと全般的な、短期のじゃなくて、少なくとも十年くらいの期間を持った総合的な通商航海条約といいますか、そういう総合的なものをぜひこれから結ぶことが必要じゃないか。特にその中で必要な事項としては取引品目や数量を、これはもう問題なく大きくふやすという問題とか、それから特に最恵国待遇の問題とか、課税とか関税に関する問題とか、あるいはさっきお話のありましたような工業所有権の取得なり財産の取得に関する問題とか、あるいは役務、資本、技術等の交流に関する問題とか、あるいは特にソ連側も今の鉄山等について可能性があると思うのですが、形は違いますけれども、いわゆる合弁事業の問題とか、こういう問題、支払い協定にしましても一年ぽっきりのものじゃ、とうていこれからは間に合いっこありません。従って、少なくとも長期のものは三年ないし五年の、いわゆる支払い協定なり、あるいはそれを一期、二期に分けてやるような措置という、そういう基本の問題も盛り込んだ通商航海条約といいますか、何といいますか、私はよくわかりませんけれども、そういう基本貿易条約といいますか、協定といいますか、わかりませんけれども、そういうものをする必要があると思いますが、これらについてどうお考えになるか。また今そのための準備はどの程度進んでおるのかということをお伺いしたい。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 現在の通商取りきめは三年ということで、第二年目を迎えるわけでございます。そこで、これらの実績を十分見まして、今度は長期通商取りきめにしよう、こういうことでございます。大体どのくらいになるか、三年でやってきて、今度五年ぐらいにしろ、五年にできるか、十年というのはちょっと長過ぎるように思いますが、五年になれば、これは大へんな踏み切り方だと思います。そういう方向で昨年並びに今年の実績を十分検討して参るというつもりでございます。先ほどのお話誤解はないだろうと思いますが、私は鉄鉱石や何かの問題になれば、久保田さんは専門家だからよく御承知ですし、またお若い時分にあの辺はよく踏査していらっしゃるし、満洲における事業経験もおありだからけっこうですが、やはりいろいろ機械の設備、労務あるいは輸送の距離、あるいは港の施設、その他、日本側はそれじゃどこへ揚げるか、またどういうような輸送をとるか、こまかく計算しないとなかなかできないように思うのです。ただ、今までのインド方面のものは、八幡にしても、あるいは東海製鉄にしても、あるいは大阪にしても、あるいは東京港にしても非常に着地がはっきりしているし、工合がいいのです。それからまた相手の方もそう港までが輸送に困るような状況でない。インドなどはそういう意味で新しい鉄道を作るという問題もございますけれども、比較的わかりやすいのです。ところがソ連の場合は、今まで全然データを持っていないだけに、その困難があると思います。これは長期のものと取り組むというためにも、よほど調査を必要とするだろう。そういう意味では十分現地を視察してもらいたい、かように思います。また日本側から輸出する事柄について、もし通産省側に対して話がしにくいというようなことがあれば、御遠慮なしに大臣のところへも差し向けられてけっこうですから、私自身それはお話を聞いて、いかようにでもいたします。ただ、今までは比較的ソ連から買う話は非常に多いのです。そうしてソ連側もなかなか商売が上手でございますから、木材などは本来は非常に安かったのが、国際価格はこんなに高いじゃないか、ソ連のももう少し高く買えと、どんどんつり上げているというように、なかなか相手も商売上手なんですから、こちらも負けないで商売をやらないと負けるように思います。だから、もし不都合な点があれば、御遠遠慮なしに一つおっしゃっていただきたいと思います。
  32. 久保田豊

    久保田(豊)委員 次は、時間がなくなりましたから飛ばし飛ばしいきますが、中国についてお伺いしたいと思うのです。これはまた佐膝さんに言うと、それは課題だと言われると思いますが、大体中国の貿易が、御承知通り、例の国旗事件で中断をされて一年ちょっとしかたたない。その間でも最初の一年で約八千万ドルの貿易ができたわけです。ことしは業界のいろいろの見通しによりますと、大体において一億六、七千万ドルはいくのじゃないかというふうに言っております。そんなにいくかどうかわかりませんけれどもかなりこれはいろいろ内容を突っ込んで聞いてみましたら、私にはしろうとなりにかなりいけるのじゃないかというふうな気もいたします。さらにそれを、もし政府間協定がはっきりできて、ほんとうの前向きの姿勢でもって取り組むということになると、ほぼソ連の場合と同じくらいの貿易量が、今後五年後、十年後にはできるという見通しのようであります。これについてはいろいろ課題だという御意見があろうかと思いますが、この点は別としまして、それに近づいていくために何といっても今必要なことは、いわゆる政府間協定をやるということがぜひ必要だと思う。なぜ日本側がこれに踏み切れないのか、私はどうしてもはっきりわからないのですが、なぜ踏み切れないか。これは日本自体が中国自体に対して非常に変な考えを持っているのか、あるいはまたアメリカとの関係で押えられておるのか。これが向こう国家承認になるというふうな御意見が中心のようですが、この程度国家承認を、今の日中の関係を考えて、なぜできないのでしょうか。これがわからない。政治的にどうであれ、あるいは軍事的にどうであれ、向こうでは決して、日本に対しましても、すぐに安保条約の解消をしろとか何とかということを必ずしも言っておるわけじゃないのです。御承知通り政治原則なり経済貿易原則というものがはっきりしております。少なくとも向こう態度というものは明確になっておるのですから、あの程度のことを日本が受けて、貿易協定ができない、政府間協定ができないという理由がどうしてもわからぬのですが、その間の消息に通じておる佐藤さんのことですから、要点だけ簡単に御説明いただきたいと思います。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 中共問題については、中国大陸の問題は日本にとっては大へんな問題でございます。ひとり日本だけじゃない、ただいま国際的な大問題で、だからこそ国連で中国の扱い方をきめるということになっておるのであります。いわゆる政治問題はそこで解決するということが今の日本基本的な態度と申すか、あるいは池田内閣の、私ども基本態度でございます。そういたしますと、この態度誤解やあるいは疑惑を持たれるような処置はやれないというのが、一言に申して言えることであります。今、政府間協定ということもよく要望されますが、ただいま非常に微妙な段階になっておるだけに、もちろん政府としては政府間協定に踏み切るというわけにいかない、かように思います。ただ私は、政府間協定なしでも、現実には今御指摘になりますように一億数千万ドルになるか、とにかくこの三十七年度は一億ドル以上のものを貿易では私ども期待しておりますが、そういうような数量になり、実質的に積み重ねができてくると、今言われておる事柄はあまりにも政治観念論的な議論だというようなことにもなるじゃないかと思いますから、むしろ私どもは実際の面で問題を処理していくことが望ましいのじゃないか、かように思っておるわけであります。
  34. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも今のお答えは納得できませんが、時間がないから、これ以上突っ込むのはやめます。  そこで、具体的にお伺いしますが、内地の問題は、ココムの制限、これを実質上、形の上ではともあれ、アメリカに対する理解というものはそう簡単にとれないということでありますが、少なくとも欧洲諸国の、イギリスや何かの程度くらい、ここはがめつく出て、ずうずうしく出て、実質上なくなすという措置はできないでしょうか。これが第一点。これは佐藤さんもよく御承知通り、イギリスなんかは、昨年はジェット飛行機まで六機入れておる。そして現在その飛行場の施設やそれに付随する通信施設の成約を進めております。これはココムの中で明らかに最も禁止する製品を堂々とやっておる。しかもそれのあとしまつの金の支払いとかその他は政府の役人が飛んできてやっているのです。その程度までイギリスあたりは踏み切っておるわけですから、私は少なくともその程度日本政府としても何もアメリカに義理がたく、ココムでござるなんて言っておる必要はないではないかということと、それからその一つの裏返しになりますけれども、中国からの輸入品に対する事前許可制が現在行なわれておるわけです。これを取ってしまうということ、少なくともソ連なみ程度の扱いにするという程度のことは、前向きにやる以上は、当然私はやらなければならることだと思いますが、この二点についてのお答えをいただきたい。
  35. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 現在ココムの制度がございまして、戦略物資と申しますか、武器、弾薬あるいはそれに類するような品物につきましては、一々ココムの会議の場に出しまして、そこで相談して、よろしいというものを輸出する建前になっております。日本ももちろん、そういう品物を受けました場合には、さような手続をとりまして中共に輸出しておるわけでございまして、現在その制度が非常に輸出阻害になっておるというふうにはわれわれ考えていないわけでございます。イギリス等におきましてももちろんココムの一員でございまして、さような手続をとりまして出しておるわけでございますが、向こうからむしろ注文があまり来てないというのが実情と思います。注文が来ますれば、さような手続をとってやるわけでございます。  それから、もう一つは、事前許可制の問題でございますが、現在中共あるいは北朝鮮、ベトナム、かような国交のない国につきましては、輸入承認をする前に、あらかじめ事前許可をとって、そして輸入を認めるという形になっております。私どもとしてさような制度を残しておりますのは、まだ国交が全然回復していないということと、貿易のバランスがさような場合には非常にものを言うわけでございまして、今まで事前許可によりまして拒否したということは、米の輸入以外ないのでございます。非常な片貿易になるという場合には、伝家の宝刀として残しておこうという程度でございまして、現実問題としてそれが貿易の支障になっているというふうには考えておりません。
  36. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ココムについては該当の申請がないから発動しないのだが、それはすれば通るというのですが、どうも業者から聞いたところとだいぶ違うんです。私は実態に触れてないからわからぬが……。それから、今の輸入の事前承認制限の問題でも、これは一品々々やることにしているわけでしょう。しかもあなたの方は帳じりがどうだというが、帳じりは御承知通り、今日日本に対しては向こうから見て入超といいますか、そういうことになっておるはずです。それで、特に中国の場合は、非常に厳格に年間を通じてみれば貿易収支バランスはぴしっとつける国です。ですから、そういうところを心配してやるのではなくて、実際にはこれが輸入なり貿易をチェックする、妨害をする一つの制度になってくる。ですから、むしろこういうものはこの際とつ払った方がいいじゃないかというふうに思いますが、大臣はどう思いますか。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 久保田さん御承知通り、中国大陸と日本との貿易は、日本が非常な入超でございます。だから今言うような事前承認制という処置をとっておる。年間ではバランスがとれるとおっしゃいますが、日本から向こうに行く品物が少なくて、向こうから来るものが実情なんでございます。だから事前承認はある程度やむを得ないかと思います。  それから、もう一つのココムの問題は、いわゆるココムという観念は、日本の場合武器、弾薬といえば、だれも最初から日本に注文もしないでしょうし、日本もそんなものを持ち込むことはないと思います。しかし、私ども中国の実情等はよくわかりませんけれども、もちろん自動車等が出るなら、輸入の引き合いがあればこれは出していいことだと思いますし、そういうものならばココムの会議にかけてしかるべきものだと思います。あるいは鉄道車両だって、そういう意味でこれが戦略物資だというなら、ココムにかけて出していいことです。あるいは肥料などはそういうことは言わぬでしょうが、肥料などはもう少し大陸に送り出せば、国民も喜ぶんじゃないかというような感じが強くしております。いろいろ両国間の物資についてはそれぞれあるわけでございまして、日本側から繊維を持ってきたいという話も聞きますけれども、繊維なども向こう自身で作っているものがありますから、これなどはある程度競争もございましょう。向こうであまり好まないかもわからない。しかし、配給の数量などは依然として少ないように聞きますから、これは、向こう国家貿易のワク内のいずれを先にするかは別として、必要なものだろうと思います。だから、個々品物等について考えると、必ず日本から出ていくものが相当あるわけです。何といったってあれだけ多数の国民を持っているのですから、日本のいいお得意になり得るだろう。だから今まで問題になっておるものを一つ一つ具体的に克服していくことが必要なんでしょう。その場合においては、相手国は政府機関、これが貿易を扱う、日本側は純民間だ、しかも相手国政府が指定した特定の友好商社、こういうところにも一つの問題があるのではなかろうかと思います。あるいは政府間で貿易協定ができれば、友好取引というような言葉はやめるといわれるかもしれませんが、とにかく友好取引だとか友好商社だとかいって条件をつけられると、商売はなかなか思うようにいかないのじゃないか、かように私は思う。私の方も前向きだから、中国大陸側も一そう一つの前向きになって、特定のものに限るというようなことはなるべく言わないで一つやってもらいたい。これは、貿易拡大双方の責任だというようにならないと、真にうまくはいかないだろう、こういうように私は思います。また順次それがとれてきつつあるのだと思いますから、こういう際に声を大にして非難する筋もない。そういうおおらかな気持で双方が、前向きで取り組んでいくことが望ましいのではないか、かように思います。
  38. 久保田豊

    久保田(豊)委員 友好商社の問題が出ましたが、私は佐藤さんとはどうも少し意見が違う。これは、今までの日中貿易の経過を考えてみれば、中国側としてはああいう態度をとらざるを得ないと思う。それは日本の反省が足りないと私は思う。それはああいう態度をとらざるを得ませんよ。日本が、もっとはっきり政府として前向きの態度——少なくとも向こう日本に対して政治的に最低限の要求も出しておるわけです。その要求程度のものをいれてやるということでなければ、今までの経過と結びつければ、向こうがこっちを信用しないのは明らかです。日本人というのは悪いんだ。私も中国におりましたが、中国で何をやってきたか、そんなことは敗戦後一つも言ったことはない。さんざっぱら悪いことをしてきて、一回も間違いましたと言って頭を下げたことはない。それと同じようなものです。そういう態度では、しかも今日御承知通り政治関係ないしは軍事関係になっておれば、向こうとしてはその点に対してああいう態度をとること、それから、日中の貿易はどんな政治条件の中でも再び中断をしないという立場から、ああいう態度をとるのは当然であって、しかもそれが実態としてはだんだんふえてきて、日本でも、三井、三菱は別ですけれども、あとは、大きい商社で入ってないのはごくわずかで、しかもそれらもみんなダミーを使っておるというのが実情です。ですから、私は、それにとらわれてどうということは、佐藤さんの意見に賛成できない。この点は政府の方が考えていただきたい。それから、私ども、今の政府政府間協定に踏み切れるとは、正直の話申しましてちょっと期待をいたしておりません。しかし、何らかもっと前向きの方法はないか、そういうふうな前向きの方法を具体的に示すことがあれだと思います。  そこで、私はこういう点もお聞きしたいのです。今中国向けのものについては、例の延べ払いが大体ついておりませんね。しかし、今までの経過では、最初は、再開以来は、要するに向こうでも試験的にスポット買いをする、こっちでも試験的に出す、それが最近はやや制約貿易みたいな格好になってきて、プラントもの等もだんだん出てくるようになって、一口のものがやはり二十億、三十億というふうなものになってきておる、こういうふうな状況です。そうなってくると、どうしてもやはり中国ものについても私は延べ払いをつけていくことが必要だ、こう思うのです。この点についてはどういうふうにお考えになっているかという点をお聞きかせいただきたいし、それから、政府間の協定ができないならば、特に大口の、しかも長期にわたる契約が民間でできたような場合については、個々のケースについて、政府にやれと言っても無理でしょうから、準政府機関——まあどういうものにしますか、そういったものがこれの支払いの保証をするとか、あるいはクレジットをつけるとかいうふうなことはできないものでしょうか。あるいは時期を、年に三期なり四期なりに分けて、あるいは二期に分けて、その間でもって準政府機関みたいなものが支払いのはっきりした保証をつけるというふうな形はとれないものでしょうか。ここらが、私は、政府として前向きの姿勢をとるかとらないかということの分かれ目になると思うのです。こういう実践を通じなければ、実際の行動を通じてやらなければ、口で池田さんが何と言おうと、どなたが何と言おうと、私は、中国側としてはなかなか日本側を、少なくとも政府を信用するということにはいかないのじゃないかと思いますが、以上の二点についてどんなふうにお考えになりますか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、日中間の貿易は、最初はバーターだった。バーターはすでにやめまして、そうして現金決済の方式によっている。これはまあ一つの進歩だと思っております。しかし、まだ延べ払いという式にはならない、ここに一つの問題があります。最初はまた保険なども輸出保険をかける場合も、非常に地域としては除外例のあった地域だと心得ておりますが、最近は、輸出保険はかけることにして、日中間の扱い方も順次正常化すると言いますか、信用を高めると言いますか、保護の方向もそうとっておるわけでございます。で、問題は、今後幾つもいろいろな問題が起こると思います。ことに、延べ払いあるいはクレジット設定というようなことができれば、一そう変わってくるでございましょう。しかしこれも明らかに政治問題に突入するわけでございますので、今ちょうど微妙な段階にある国連の処置というもの、それを見きわめることがまず第一の必要な処置ではないか、かように私は思います。また、この日中の関係をいつまでも現在のような状態で置くこと、これはまことに不自然な結論を見出さなければならぬ。ただ、それを日本が、日中の関係だけにおいて造成するのか、あるいは今日までとっておるように、国連をその場にして、そうしてこの問題と取り組んでいくかという、ただその行き方の相違だけだろうと思います。まあ私ども並びに池田内閣としては、はっきりこの国連の場において各国とともにこの問題と取り組んで、そして結論を出そう、こういう態度をとっておりますので、それを結論を見出した後において、ただいま御指摘になりますような延べ払いだとかあるいはクレジット設定というような問題を考えるべきであろう、かように思います。
  40. 久保田豊

    久保田(豊)委員 まあいつも大体同じようなあれですが、同じ国連の場でアメリカと歩調を合わせておるイギリスやEEC諸国は、今度のたとえば硫安百万トンにつきましても、もう大体において延べ払いをつけているのですよ。ですから、その程度のことが日本政府としてできぬというのはどういうわけかと私は思うのです。それだけアメリカに遠慮しなければならぬ、国連に遠慮しなければならぬ——国連のアメリカを除いてほかのところは、ほとんどやっているじゃないですか。それをやっているのに、一番関係の深い日本がやれぬというばかなことはないでしょう。この点はどうですか。
  41. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これは別にアメリカに対してということではございません。肥料そのものについては、どこの国へ出しても、いわゆる延べ払い方式という処置は今日までとっておらない。将来、その肥料自身についても延べ払いの方式をとるべきじゃないか、そう考えておるわけでございますが、肥料もその一つの例でございます。
  42. 久保田豊

    久保田(豊)委員 欧州はやっているというのです。
  43. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 それはまだ当方としてはそこまでなかなか進みかねておるということをただいま申し上げたわけでありますそれはいろいろの理由がございまして、これはまあカナダなどにもそういう注文を、この前カナダの総理が来たときに日本側から言ったのですが、カナダは中国に対しては小麦延べ払いで売っているが、日本に対してはどうして現金払いにしておるか、これなどもおかしいじゃないかということ、これは今の久保田さんの御指摘とは違う処置がとられている。だから、いわゆる自由主義諸国間でもいろいろなことがあるわけです。それは一がいにどうこうだと言わないで、順次解決すべき問題として検討していくよりほかに方法はございませんが、ただいますぐそこまで踏み切るという考え方がないということを実は申し上げたわけであります。
  44. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも何でどこへ遠慮して言っているのか、もうその程度のことは踏み切らなければ、いわゆる前向き、前向きだと言ったって、それは相手は信用しませんよ。ほかの国がみんな反ソ反中で国連で大っぴらで活動している国がどんどん延べ払いをつけているのに、こっちはあっちを見たりこっちを見たりしてなるべく反ソ反中にならぬように、へんちくりんなことを言って、陰じゃでかいことばかり言っている。しかもそれは一番最初にやるべきですよ。そうして言ってやったらいいじゃないですか。ぶうぶう文句言うなら、お前の方がやっているじゃないかと言ってやったらいいじゃないですか。それでもって押し切れる論理だと思います。これについてはなお一段と一つ一これは結局判断の問題より腹の置き方です。それでずるさの問題です。このくらいずるく回っていいと思います。これはがめつさの問題だと思いますから、ぜひ一つ……。  それから、もう一点だけ。まだたくさんほかにありますけれども、あとはみんな端折りまして、一点だけお聞きしますが、さっき佐藤さんは、向こうの使節団や代表団の入国は非常に歓迎をするということを言われておる。しかし、実際にはどうかというと、特に長期のプラントもの等になってきますと、大型のものになってくると、向こう貿易関係の事務屋なりあるいは技術屋がこっちへ自由に来なければ実際に成約はできないわけです。ところが、そういう連中が向こうから来るのに対しては、実際上非常にいろいろの制約を加えている。そしてこっちへ来て動く場合でも、滞在期間を制約してみたり、動く範囲を制約してみたり、こういうことは愚かなことじゃないかくわけのものでもないと思う。ここらが私は、この機会に、こういう貿易拡大する上にぜひ技術上絶対に必要な、事務上絶対に必要な人間の、こっちへ入って自由に活動する、その活動を政府で保証してやるというくらいのことは、ぜひやらなければならぬと思いますが、この点はどうですか。
  45. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 久保田さんの御主張のお立場からならごくごもっともに聞けましたが、私ども一国同士だけでなしに、いろいろ複雑な国際社会の一員として行動する、そういう場合に、しばしばむずかしいところへ当面するわけでございます。片一方によければ片一方によくないというようなことがあって、なかなかうまくいかない。それが大体問題なのでございまして、ただいまの片一方というのがアメリカではございません。これはもう今のたとえばベトナムあるいは韓国等についてお考えになれば、南北に分かれておる、そういうような実情から、いろいろむずかしい国際問題があるので、この点を御了承願って、あえてこれは共産国なるがゆえに差別するというわけではございませんが、そういう意味国際的慣例なりしきたりというものが制限の形として出てきている、かように御了承いただきたい。
  46. 久保田豊

    久保田(豊)委員 これ以上追及してもしようがないと思いますが、ほかの国はやっておるのですから、日本もそのくらいのことはやらなければ困ると思うのです。ほかの国がやっておるくらいのことをやれないで、自主も前向きもあったものじゃないと思いますが、この点はさらに一歩進めるように……。  それでは北鮮の問題について、これも実はたくさん聞きたい点を用意してきましたが、こんなめちゃくちゃなやり方は実際にはないと思うのです。そこでまず第一にお伺いしたいのは、三十年十月二十四日の次官会議の決定というのがあります。これは半分黙殺された格好ですが、まだ生きております。これをこの際政府としては廃止をして、その旨の声明をするということはできませんか。そのくらいのことは、今やるべき段階に来ておると思います。それでなければ、貿易はしろ、金は払っちゃいかぬ、人間は絶対行ったり来たりしていかぬ、こんなばかなことが常識上通りまますか。商売だけはしろ、しかし、金は直接払っちゃいけない、そうして商売に必要な人間の行き来は両方とも絶対にいけない、こんなべらぼうなことをやっておると笑われますよ。少なくともこの次官会議の決定というものは、この段階で廃止して、もしそういう必要があるとしても、別な形でやったらどうですか。特に次官会議あたりでこういう重要な問題を決定して、それをもってすべての基準にしておるなんて、もってのほかだと私は思うのですが、どうですか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この次官会議の決定は、むしろ積極的な拡大方向にお読みをいただきたい。今までは貿易も不自由だったが、貿易だけはやろうというのですから、むしろその意味では前向きだと思います。ただ人の交流ができない、非常に窮屈だ、それで一体貿易がうまくできるか、現に昨年来問題になっておる事件もございます。私どもこの程度のことは入ってよろしいのじゃないかとずいぶん折衝いたしたわけでございますが、ただいま日韓交渉をやっておる最中でございまして、大へん微妙な段階なのであります。これは社会党さんの立場から見れば、それはお前の方がよけいなことをするからむずかしくしているのだと言われればそれまでですが、私どもは国連が承認した唯一の韓国政権としての南鮮とも交渉いたしておりますので、その関係への影響等を勘案し、なかなか思うようにいかないものがある。一日も早くただいまの交渉を妥結して、そうしてあまり極端な制限を加えるというような事態にならないようにしたいものだ、かように思っております。
  48. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の御説明も実に歯切れが悪いし、前向きじゃないのです。人間の交流をとめたのですが、物資の方だけは一度上海回りで来たものを、御承知のように直接やりとりしてもいいという形で緩和している。それも黙認という形です。人間の方は依然としてだめ、金の方は両銀行間でコルレスを作るようなことは認めない、第三国の銀行を通じなければだめだ、こんなべらぼうなことなら、むしろはっきり貿易を禁止したらどうですか、私はその方がよほど筋が立つと思います。しかし、それはいかに韓国との国交の正常化が今緊急でデリケートだといったって、筋の通ったものの判断のできる政府のやることではないというふうに思いますから、もう一度これは再考願いたいと思います。  その次は、今行なっております強制バーターですが、一件々々の強制バーターというのもずいぶんおかしい話です。  これも早急に緩和する措置をとる必要があると思います。  それから、今の決済の問題ですが、これも両国銀行間で、少なくとも貿易をやらせる以上は、金の支払いができるように、コルレス設定のできるような処置をとるのは当然だろうと思うのです。そこまで日韓会談に遠慮して、どうして日韓会談そのものに日本の自主性が持てるかというふうに思うのです。ですから、この点も一つお願いをしたい。  それから輸出入の事前承認、こういうものについて一つお考えをいただきたいというふうに思うわけですが、どうでしょう。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 北鮮と日本との間の問題は、両国間の貿易拡大をはばむ状況になっておることは、ただいま久保田さんの御指摘の通りでございます。これがよいとは私は申しません。もちろん工夫をしてそれぞれ改善ができるように努力していかなければならないと思います。ただ、今具体的にこれはどうか、これはどうかといって個々にお尋ねがございますが、ただいまやっておりますことが総括的になし得る状況のものでございます。もちろん個々の商取引等について、私どもも、はかれる便宜等ははかるという意味でいろいろ相談にも乗っておりますが、なかなか思うようにいかない点が多くて、希望にも沿い得てない、かように思います。将来できるだけ早い機会に順次円滑化の方向に私ども努力いたすことにいたしたいと思います。
  50. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大へんおそくなって申しわけありませんが、もう一点ですから、がまん願いたいと思います。  次に、北越の問題ですが、これについてはいろいろなことをお聞きいたしたいのですが、当面最も必要なことは、向こうから人が来るのを、もっと自由に積極的に呼んだらどうですか。この二、三年間に日本から百人くらい向こうに行っておるが、向こうからは、調べてみますと、わずかに十一人しか来ておりません。しかも関係者がほとんど来ていない。ですから、日本実情もわからなければ、日本人も向こうの事情がよくわからないということで、非常に工合が悪い。ですから、この点については、これは南ベトナムとも関係がありましょうが、もっと人をどんどん自白に呼ぶとかあるいは向こうとこっちの使節団の交換をやるとか、あるいは見本市を政府が援助してやらせるとか、お互いが認識をするような措置、その中でも特に向こうから入ってくる人がもっと楽に入れるような措置をとることが切に必要だと思いますが、この点どう考えるかというのが一点。  それから、ホンゲー炭の輸入というものは、もっと積極的に入れるべきじゃないかと思います。というのは、御承知のように、いろいろな関係もありましょうが、向こう日本のものをどんどん買うわけですし、日本向こうから特に買いたいものはホンゲー炭です。このホンゲー炭をもう少しどんどん入れませんと、非常に足りないのです。そうして非常に質の悪い、しかも寿命の来てしまった日本の無煙炭を、無理に使わせておるような感じがいたします。もちろん日本国内の無煙炭も続けていかなければなりません。なりませんけれども、どうしても今の輸入量では、ホンゲー炭の輸入量というものは少ないのじゃないかというふうに私は思うのです。ですから、この点についてどういうようなお考えを持つかという点が一つ。  もう一つは、このホンゲー炭の割当についておかしなことが行なわれておる。これは今でもいわゆる輸入業者割りが行なわれておるのです。おかしな話ですよ。こんなものは今ほかにはないですよ。ですからこれは需要者割りということにするのが当然じゃないかというふうに思うのです。しかもその内容は、二、三の既設のいわゆる大手の輸入業者がほとんど独占して、ほんとうに必要とするいわゆる実需団体なり実需家にはうんと高くなってくるという実情になっておりますから、この今の輸入業者割りというものをやめて、そうして実需団体割りなり実需者割りに改めることがぜひ必要である。こんな古い制度が今ごろ残っておること自体が不思議です。  この三点、人の問題と、それからホンゲー炭の輸入増大の問題と、その輸入割当を今の輸入業者割から実需者割ないしは実需団体割に改める、時間がありませんから、この三点だけをお聞きいたしておきます。
  51. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 人の問題は、御指摘の通り、もう少し楽に行き来ができるようにぜひありたいものだと思います。今まで北鮮についてお答えし、あるいは中共についてお答えした通りでございます。  ところで、最近北ベトナムから日本へ来るという人の問題が起きたのがございます。これはおそらく日本に結局は来ておるのじゃないかと思いますが、その団の一部が政府の人であるということで、お断わりしたのがございます。けれども、もっと進めるということが必要のように思います。  第二の貿易の問題でございますが、どうも日本と北ベトナムの貿易は、入超になっているのか出超になっているのか、非常に議論があります。と申しますのは、日本側の統計数量だとやはり入超であります。北ベトナムは日本の方がたくさん入っている、かように実は申しております。これはおそらく香港その他から入っておるものも入れて日本商品ということで処理しているのじゃないかと思いますが、これは日本側とすれば、日本政府の統計を信頼せざるを得ない、こういうように思います。これはいずれの社会主義国も同様でございますが、国際貿易相手方の方が非常に上手なようでございまして、どうも日本の方がよけい買わされておるのです。だから、これもできるだけこちらの品物を買っていただくということにしたいと思います。今のホンゲー炭自身は、国内資源の維持という観点に立っての保護はもちろん必要なことでございますが、ホンゲー炭はずいぶん使いなれた炭でございますから、そういう意味では必要なものを私どもとめる考えはございません。やはり当方からもう少し買っていただくことが望ましいように思います。  第三点は、今井君から説明させます。
  52. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 外貨割当のやり方としまして、商社に対する割当と需要者に対する割当と二通りございまして、ホンゲー炭だけが商社割当ということではございませんで、商社割当の品物はたくさんございます。需要者の数が非常にたくさんあって、なかなか実態がつかみにくいという場合には、事実上商社割当ということにいたしております。ホンゲー炭もかようなな実情じゃないかと思います。
  53. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今の点、もう少し突っ込んでやりたいと思いますが、時間がないものですから、これでやめます。  最後に一言だけ希望を申し上げます。  最初佐藤さんは、共産圏貿易といえどもわれわれは前向きに大いにやるのだ、政治的な観点にはとらわれぬでやるというお話でした。ところが今質問をして具体的な一つ一つの問題に当たりますと、そういう制度自体が、もういわゆる共産圏貿易日本側がみずからシャットして、消極的な態度をこういう制度の中にはっきり現わしておる。しかもこれをどうですか、とりますかと言うと、いろいろ微妙な関係があって、今まだとるのは困難だという。これでは前向きといっても、私はうまくいかないと思うのです。やはり日本の長いこれから先のことを考えますと、なるほど体制の違いはあります、そこに政治的ないろいろの立場の違いはあります。決して私どもと同じような立場佐藤さんや池田内閣にとれといって、それを要求するわけではございません。またその立場から非難をするわけではありません。しかし私は少なくとも今後見通し得るある段階までは、この共産圏貿易を、一度に全面的にできないとすれば、逐次順を追うて——今のようなあっちの顔色を見たり、こっちの顔色を見たりして狐疑逡巡をして、現実問題を片づけたらどうかと言うと、微妙だからこれもだめ、あれもだめと言っておったのでは一、アジアの情勢が変わるときはありません。おそらく今後においてそう簡単な変わり方はしないと思います。そういう中では、ますます日本は消極的な態度をとらざるを得ない。そのことが必ず貿易面から日本に大きな蹉跌を来たす、池田内閣の一枚看板ともいうべき高度成長政策というものに大きな蹉跌がくる、いわゆる大きな断層を来たす危険が刻々として迫っておると思う。池田内閣がつぶれるなんということは、私はあまり心配しておりません。おそらく国民もそんなことを心配しておる人はなかろうと思う。また今の情勢から見て、社会党がすぐ政権を取るなんということは考えておりませんが、少なくとも日本の国民経済の健全な安定的成長をはかるには、その基礎条件としては、ソ連圏を主とする貿易の構造改善、地理的な構造改善ということに本格的に取り組まない限り、私は資本主義そのものの、日本のこれから先の安定した発展ということが阻害される危険が刻々と迫っておると思う。私はこの点を十分に御認識いただいて——いろいろ政治的なむずかしい関係国内においても、国際においてもありましょう。しかし、日本でも、私、つい最近日本の財界の相当偉い人に会って、いろいろ意見をたたいてみました。そうすると、そういう人たちが言うのは、それは今の日韓会談をやって、あそこへやれ保税加工貿易だ、やれ何山の開発だといっても、あんなものをやったって、日本経済的な大きなプラスには何にもならぬ、むしろそれでもって非常に工合が悪くなった、それよりなぜソ連圏その他との貿易をやらないかという意見が相当強い。しかし、それでは国会へ来て私にかわってそういう意見を言ってくれと言うと、それは困る、おれはまだそういうことを言うのは困るからということでしたが、これは財界の相当偉い人たちまで言っております。日本基本的な方向としては、かつて日本がやったような帝国主義的な方向か、あるいは平和共存の方向か、二つしかないと思う。これは資本主義の存続とか発展ということを前提にして考えてそうだと思います。佐藤さんは、おだてるわけではありませんが、機会がくれば、次の一国を背負って立たれる人だと思いますので、どうかこういう点については、あっちの顔色を見たり、こっちの顔色を見たりということではなく、この基本問題だけは真剣に取り組んで、言葉でなしに、ほんとうに前向きに——全部一気にとは言わないが、少なくとも一つ一つの当面した問題についてはほんとうに前向きに積極的に内閣を引っぱって解決していただきたいということを心から痛切に思うわけであります。私は、決して社会党の立場からだけ申し上げているわけではありませんので、この点を御了承願いたい。  長い間大へん御迷惑をかけて済みません。ありがとうございました。
  54. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 長時間御審議いただきましたが、これにて本日は散会いたします。次会は公報をもって御通知申し上げます。    午後五時九分散会