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佐藤国務大臣 ことしの
通商取りきめでは、
ソ連から銑鉄を買い、当方は鉄鋼を売るということで、この大体の数量は御
承知の
通りまとまったわけです。そこで今の
所得倍増計画では、今までの二千四百万トンの製鉄能力を倍にしてして四千八百万トンにする、これは大へんな数量であります。そうなった暁、もう現在でもそうですが、米ソに次ぐ製鉄王国になる。ドイツ、イギリスを凌駕するというりっぱな製鉄王国になるわけであります。ただいままでのところ、二千四百万トン増量するものの原石、鉄鉱ですね、あるいは石炭あるいは重油というようなものも一応の
数字の基礎は、計画は一応できておるわけでございます。これがあるいは遠くはブラジルの
開発になったり、あるいはインドの鉄山
開発になったりしておるわけでございます。問題は近くが一体幾らになるかという問題シベリアで一番困るのは、現地で銑鉄を作って、そこで銑鉄として作るならば比較的むだなものを送らぬで済みますけれ
ども、六五%の含有量にいたしましても、これは相当むだなものをあの遠いところを鉄路で港まで送らなければならぬ、ここに
一つの問題があるわけでございます。だから非常に望みの嘱される製鉄の山でございますし、そうして
鉄鉱石を売りたいという気持はあるようでございますが、そういう
意味でなかなか
長期の引き取り契約をするというところにまだもう少し調査を必要とするんじゃないか、こう思います。中国大陸における鉱石の問題ももちろんあわせて考えなければならないのですが、ただいま
中共政府自身もなかなか製鉄業に力を入れておりますから、あまり
日本は期待はできないかと思います。しかし、これは過去の経験もあるし、
鉄鉱石にしてもあるいは開らん炭、石炭にしても過去の
実績がありますから、比較的取り組みやすい、こう思います。思いますが、シベリアの
鉄鉱石の問題になりますと、もう少し調査をしないと困るんじゃないかと思う。これが
一つの難問題であります。
それから第二のいわゆるパイプ・ラインの問題、パイプ・ラインは
ソ連側も非常に強く要望しておる。こちら側も採算に乗るものなら——ただ、ただいまのところ一千万トンないし千二百万トンということに実は非常な難色を示しておるわけです。パイプ・ラインはできてしまえば、毎年同量売るわけでもないのですが、売った後に末長く一千万トンも千二百万トンも引き続いて買わされちゃ、ちょっと因るじゃないかというのが、最後の決心ができておらないゆえんでございます。それで、いろいろ
ソ連側がパイプ・ラインをほしいと言うから交渉してみると、君の方はシベリア
開発、またシベリアでも相当使うんだから、パイプ・ラインを使えば、シベリアでうんと
石油を使うだろうと言ったら、それはほとんど使わないんだ、
日本へ持ってくるためのパイプ・ラインだから、
日本で買い取る数量を明確にしてくれないとなかなか引けぬ。こういうことで、ただいまその商談も宙ぶらりんになっているというのが
実情でございます。パイプ・ラインについては、すでに御
承知のことだと思いますが、イタリアなどはパイプ・ラインを売り込み、イタリア
自身が
ソ連の
原油を買っておる。しかし、その数量にいたしましても、今度
日本が契約いたしました三百四十万トン、せいぜい三百五十万トン
程度じゃないかと思いますので、これは将来は伸びるにいたしましても、ただいまのところではそう大きな数量ではございません。そういうことを考えますと、
日本は
ソ連原油のいいお得意にもなっておるわけです。将来
日本の重油の使用量が非常にふえるとかいうことになれば、国産
原油で補うにいたしましても、英、米、
ソ連等からの油を買わなければならないのですから、それらのことを考えると、一千万トンに別に驚く必要はないようですけれ
ども、まだここ当分一千万トンは重荷のような気がするわけであります。