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1962-02-21 第40回国会 衆議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十一日(水曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 中村 幸八君 理事 長谷川四郎君    理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    神田  博君       佐々木秀世君    齋藤 憲三君       始関 伊平君    首藤 新八君       田中 榮一君    中垣 國男君       中川 俊思君    原田  憲君       南  好雄君    村上  勇君       岡田 利春君    久保田 豊君       小林 ちづ君    多賀谷真稔君       中村 重光君    西村 力弥君       内海  清君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第三部長)  吉國 一郎君         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    中野 正一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         中小企業庁長官 大堀  弘君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会経済部長)  小沼  亨君         中小企業信用保         険公庫理事長  山本  茂君         参  考  人         (商工組合中央         金庫理事長)  北野 重雄君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月二十一日  委員伊藤卯四郎辞任につき、その補欠として  内海清君が議長指名委員に選任された。 同日  委員内海清辞任につき、その補欠として伊藤  卯四郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十日  電話加入権質による零細企業者育成資金として  商工組合中央金庫等に特別融資わく設定の請願  (横山利秋紹介)(第一四一九号)  同(坊秀男紹介)(第一七〇五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  商工組合中央金庫法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第三六号)  中小企業信用保険法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四七号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 これより会議を開きます。  商工組合中央金庫法等の一部を改正する法律案及び中小企業信用保険法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  前会に引き続き質疑を続行いたします。  なお、本日は通商産業大臣中小企業庁長官のほかに山本中小企業信用保険公庫理事長及び参考人として商工組合中央金庫理事長北野重雄君が出席されております。  それでは、順次質疑を許可いたします。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま議題となっております商工組合中央金庫法等の一部を改正する法律案中小企業信用保険法の一部を改正する法律案、この件につきましては、法の体裁の面からいっても、あるいはまた異質のものであるのを同一の一本の法律によって提案することは適当でないということを先日の委員会におきまして指摘をいたしたのであります。官房長官が出席されて、今後十分注意をするという意思表明があったようでありますが、十分今後は注意をされて、今回のようなずさんなことをおやりになると審議の上に非常に混乱を来たしますし、むだな時間ともなりますので、注意をしておきます。  私は先日商工組合中央金印法等の一部を改正する法律案に対していろいろと質疑をいたしましたが、改正点が適当でないという論拠の上に立って申し上げるのではないのでありまして、中小企業金融対策が非常に重要である、特に信用補完制度ということは欠くことのできない問題であると同時に、できるだけ低利融資していかなければならぬということになるわけであります。その点からいたしますと、商工中金融資商工債というものを主たる原資としておるというところに、建前としてはやむを得ませんでしょうが、この点はやはり高金利になってくるわけです。中小企業金融緩和という面からいたしまして、十分政府の方といたしましては出資をする、あるいは先日も申し上げましたが、指定預金をやるとかいろいろな工夫をし、努力をして、できるだけ商工中金融資というものが円滑にしかも低利で貸し付けられるという留意が私は必要である、こういう考え方の上に立ちますと、今度の改正案商工債を消化するという面に相当な法改正のねらいがあるというように考えられるわけであります。従いまして、そういった今後の改正点はそれらに必要でありましょうけれども商工債を消化するということにそのねらいの中心が向けられてはならない、私はそういったような考え方の上に立つわけであります。今後は十分一つ中小企業庁といたしましてもそういった商工中金金融あるいはその他中小企業金融公庫等々の融資の円滑をはかる、その上には、やはりなるたけ低利でしかも資金量をふやしていくということの格段一つ留意をしていただきたい、大蔵当局との折衝というような点も十分一つ緊密にやってもらうのでなければ困るわけです。まずその点に対しての中小企業庁長官の決意のほどを伺いたいと思います。
  4. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいま中村先生から御指摘のございました点は、私ども全く同感でございまして、私どもとしましては、やはり資金量をできるだけ拡大するという意味商工債券による市中の金を集めて、そして、それを商工中金パイプを通して中小企業に流していくということも非常に重要な問題だと思いますが、同時にやはり政府としましても財政投融資資金最大限度に増加をし、あるいは出資を増加いたしまして、できるだけ将来に向かって金利を下げていくという方向については、その線に沿って努力をいたしたいと考えておる次第であります。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 個人の資金パイプを通して吸収していくのだ、こういうことであります。私がただいま申し上げましたのは、今度商工債担保にして、——そしてあなたは先日余裕金融資していくのだ、こういうことであった。結局融資をする。従って、今度はその前に商工債を買わせる。そしてそれを担保にする、そうして融資をする、こういう形になっていくわけです。そういうことは、一つパイプを通してそれを吸収するという道を開いたが、できるだけ原資としてやはりそうした商工債の消化にねらいを持っておるということは間違いないわけです。私は、今申し上げたように、重点はあくまで政府出資それから財政投融資等々に向けないといけない、こういう方向に今後は努力をしていただきたい。今商工債ワクが大きくなる。政府のそうした努力による融資の率が下がっていくということであってはなりません。ですから、現在は幾らかそうした政府出資もふえたのだ、財政投融資もふえたのだ、こういうことで過去の比率からだけいろいろ議論されるようでありますけれども、今日の社会情勢がどういう方向に向かっているかということを考えてみますときに、当然財政投融資がふえていく、政府出資がふえていくということでなければならないわけです。従いまして、よく政府といたしましても買いオペをこれだけやる、政府出資もこれだけふえておる、去年と比較したら、あるいは一昨年と比較したらこうなったじゃないかというので、そのことだけをいろいろと強調なさる。現実の社会情勢はどういう方向に向かっておるかということに対しての留意が、そういうことに私は欠けておるのではないか、単なる弁解にすぎないというような感を強くいたします。その点は、通産大臣がお見えになりましたが、どうぞ一つ十分の御注意をお願いいたしたいと思います。  次に、中小企業信用保険公庫法改正案についてお尋ねをしたいと思うのであります。今度二十五億円の融資基金増額をやっているようでありますが、先日の委員会におきましても、私は信用補完制度というものが非常に大切である、このためには信用保険公庫に大幅の融資をしなくちゃならないのだということを実は申し上げたのであります。ところが、次の通常国会においては、いわゆる来年度においては大幅に増額する用意があるということをお答えになっている。ところが今度はわずか三十五億というようなことでは、私は非常に少な過ぎると思うのであります。大蔵省に対しましては相当大幅の予算要求をやったということも仄聞はいたすのでありますけれども、二十五億円程度融資で、やむを得ない、これでやっていけるのだ、肝心の信用補完制度というものがどうにかこれで保てるのだという確信を持っていらっしゃるのかどうか、その点を伺っておきたいと思います。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御指摘のようにもう少し資金がふえることができれば、これは大へんしあわせだと思いまして、いろいろ努力をいたしましたが、結局この程度になったのでございます。この資金で私ども実は十分だとは考えておりません。機会をとらえてはもちろん増額をいたしたい、かように考えます。過去の予算折衝等から見ますと、時節柄、中小企業については比較的理解してくれたとは思いますけれども、御指摘のようにまだまだ十分ではないように思います。できるだけこの範囲内で運用の効をおさめたい、かように思っております。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 従来と比較するとふえた、このことは先ほど申し上げましたから重ねて触れません。額がふえた事実は認めます。しかし、これは当然ではないか。おそらく大臣もこれだけふえたのだということで、過去と比較してこれを強調なさるといった気持ではないのであって、内心ではこれでは足りないのだというような気持を私はお持ちだろうと思うのであります。その点は今後の努力に期待をいたします。  ところで、二十五億円というのは、融資基金になっておりますが、やはり保険準備基金と申しますか、これがどうしても必要だと思うのであります。この点が補完制度の上におきましては一番大切ではないか。ところが、これが今度は増額されていない。これはどういうことであったのか。予算要求をなさったのかどうか。八十億くらい予算要求をやったところがこれが全額削られたというようにも私は聞くのでありますが、この点に対してお答えを願いたい。
  8. 大堀弘

    大堀政府委員 御指摘のように、私ども融資基金増額、同時に準備基金増額につきましても予算要求をして参ったのでございますが、来年度相当保証契約をふやして参りますけれども、本年度は二千二百億くらいの契約承諾ベースになろうと思います。来年は二千八百億くらいに承諾ベースを引き上げるということで、承諾額保証契約がふえれば、それに従って準備基金もそれだけふやしていかなければならぬわけでございますが、当面の問題といたしましては、融資基金分をふやす方が重点といいますか、保証協会に対する融資基金をふやして、弱い保証協会を強化して、同時に保険についても、今回は小口保証等について料率の引き下げをはかるといった面から考えまして、融資基金をふやすことが当面実効がございますので、財源等関係で、今回は準備基金の方は何とか現状でやれるという見通しがつきましたので、融資基金の方の増額をはかったということになったわけでございます。御趣旨の点は私どももごもっともと考えまして、今後もやはり準備基金についても増額をはかるように努力いたしたいと考えている次第であります。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係がありますので、かけ足で質問をいたしますが、なるほど融資基金をふやすということは、保証協会に対する融資、それだけ一般信用補完制度信用補完というものが強化されていくということは否定いたしません。しかし、準備基金というものは、保険公庫保険を付するという意味におきましては、この資金があまり窮屈であると、どうしても保険そのものが辛くなって参ります。その辛くなることが、非常に大切な、零細企業等に対するいわゆる信用力の弱い、担保もない、保証人もどうも信用程度が低いというような条件の悪い面に対しては、ともすると保険に付さない、保証協会保証しないという形が現われて参ります。極端に申し上げると、準備基金が少なければ、赤字が出るとどうにもならなくなるのだというので、こげつきの警戒をやる。そのために肝心かなめ信用補完というような制度が殺されていく、生かされていかないという面が多分にあると私は思う。そういう点に対しては大蔵省は渋いでしょうけれども、通産省としては、積極的にこういう面に対する予算要求をなさる必要があると私は思うのであります。  なお、この二十五億円の保証協会に対する融資は、どういう方法でおやりになりますか。
  10. 大堀弘

    大堀政府委員 これは、従来もやっておりますが、一定の基準によりまして、各保証協会融資額配分しております。結局保証協会は受けました融資基金銀行に預託をいたしまして、それを見返りに当該銀行中小企業に対する保証契約の適用を広げ、同時に貸付をふやしていくという措置をとっておりまして、大体融資基金の五、六倍は保証契約拡大によって中小企業に対する金融面融資増額をはかるということができるわけでございまして、そういう方向運用して参りたいと思っております。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 私がお尋ねしたのは、保証協会に対するいわゆる融資配分基準がはっきりしていない。この点は十分一つ実情に即するように配分に関して留意していただきたい、こう思います。  さらにまた、保証協会に対する地方自治体等出指金ということに対しては、もっと一そう十分の指導をなさらなければだめだと私は思う。非常にアンバランスが出てきております。少なくとも保証協会というのは私は制度が弱いと思う。もっと統制力のあるようにやらなければならない。今はこの保証協会貸付の際に保証する場合、審議会というのがあるのですが、この審議委員には、地方の場合は地方銀行支店長であるとかそういった関係者が出るわけですが、そこで審査をする審査の場合に、自分のところの銀行にこの人は借りがあり、どうも成績が悪いとか、いろいろなことで保証の生殺与奪の権というものを地方銀行が持っておる、こういうことは適当ではない。しかもこの保証協会の役員の選任というのは、定款事項になっている。これをもっと強化していく必要があるのではないか、こう思います。少なくとも私は今の保険公庫のような形までに保証協会制度改正をやって強化をしていく、それでなければ、保証協会の行なう業務、いわゆる信用補完制度というものの全きを期し得ない、こういったような感じを強く持つわけです。保証料率も違う。ただいま申し上げたように各県ばらばら、そういう点がございます。この点に対しては考えなくちゃならないのじゃないか、そういった感じを持ちますが、専門的なことになるわけですけれども大臣いかがでございましょうか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御趣旨はしごくもっともでございます。ことに昨年来中小企業対策をいろいろ進めてみますと、当然地方保証協会があってしかるべきところができていなかったり、またできておりましても不十分であったり、今言われるような銀行金融機関そのものが積極的にこれに関与する、こういったことで本来の趣旨が十分生きておらない、こういうことを間々見受けるのでございます。いろいろ基本的な問題に、あるいは危険負担率等の問題もございますが、それらの点についても一そう一つ検討して、本来の趣旨、目的を達するに遺憾のないようにどうしてもしたいものだ、かように考えます。ありがとうございました。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 それから銀行買オペをしておられるわけですね。これは中小企業に対する金融緩和をはかるためにおやりになるわけですが、ところがこれに対してはどういう方法買オペ資金ほんとう中小企業に回るのか、どういう方法を講ずるのかという点に対しては、保証協会保証をつけてもらう、こういうことでございますね。それはいいわけです。ところがここで私はお尋ねしたいのですが、保証協会保証をするということになって参りますと、保証協会能力というものに限界がありますと、実際は買オペ保証をするというからには、それ以上の保証能力拡大というととを考えられないのではないか。この点に対してどういった取り扱いをしておられるか、対策をしておられるか。
  14. 大堀弘

    大堀政府委員 実は、先生指摘のように、三十二年のときに買オペをやりました際は、貸付実績に応じて買オペの実施をするという実績主義で、事後に買オペをやりましたために、資金の流れか非常におくれまして、せっかく買オペをしながら、時間がなくて、末端まで行かないという結果が生じましたので、今回は大蔵省と相談いたしまして、買オペは先に実施する、そして銀行に金を渡して、実績によって調整をする、こういう方式に改めまして、できるだけ買オペ効果を早く浸透するようにということを期したわけでございます。その際に、御指摘のように、一体中小企業にはたしてこれが流れるかどうかという点では心配がございましたけれども保証協会保証付のものということを引き当てにやるという建前をとったわけでございます。保証協会が入っておりますから、先生指摘のように、多少能力の点で不十分な点があろうと思いますけれども、私どもとしましては、何分せっかくの買オペ趣旨を生かします上において関係機関を督励しまして、できるだけせっかくの買オペ効果が減殺されませんように、促進するように努力したわけであります。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 この点は非常に大切なんです。買オペをやって、この前私が指摘しましたように、ほんとう中小企業に流れるのかということ、これに対しては、大蔵省銀行局長も、それは保証協会保証でやらせるという、私はそれは形式になっていると思うのです。そういう制度方法をおとりになるならば、ほんとうにそれが中小企業に流れていくようにしなければならない。ただ、そういう取り扱いをするということだけではどうにもなりません。これは関連してくるものは保険公庫であり、保証協会というものも関連が出て参るので、それを強めていくということでなければ、ほんとう中小企業緩和買オペは役立ってこないと思います。単なる御答弁ではなくて、実情を十分調査されて、そしてほんとうにそういう方法が生かされていく、こういうことをこの場合特に御留意願いたい。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の中村さんの御指摘の点、実は私も非常に気になっておりまして、たとえば地方銀行等中小企業向け金融ワクを幾らに設定したとか、あるいは買オペを幾らするとか、それの資金がふえる、こういうことを実は計画をいたしましても、総体の計画ができても具体的な問題が解決しないと困る、こういうことで事務当局もその点を指摘し鞭撻をさしております。おりますが、なかなか十分の実情がつかみにくい。ただいま特にその点についての御指摘がございました。今後も一そう努力して参るつもりでございます。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 次に、中小企業信用保険法の一部改正について御質問いたしますが、今度小企業者という新たな制度お作りになるわけですね。これは説明には書いておりますが、この小企業者はいわゆる小口保険ということになって参りまして、これを適用するということになって参りますと、例の包括保険の第一種でありますが、これと併合はできない、その額は五十万円で押えるということになっておりますね。ところが第一種と第二種は、これは制限はありません。一方は七百万と一方は五十万ということになりますね。これはどちらもいずれも適用できる。ところがこの小口保険だけは七十万になるわけですね。二十万と五十万でございますから七十万になるか、これは五十万で押える。これはどういうわけですか。
  18. 大堀弘

    大堀政府委員 これは、御指摘のように、現在の第一包括保険が五十万、第二種保険が七百万、これは御指摘のように並列になっている。今回の小口保険を別に三本建にするということも考え方としてはあり得るわけでございまして、私どももそういう保険についてはいろいろ内部において大蔵省その他と折衝をいたして参ったわけでございますが、結論といたしましては、大体小口保証、この第一種包括保険に入っている平均が二十一万円ぐらいになっている現状でございます。大体二十万という限度でいきますと、少なくとも平均でございますから半分以上の方はこれに恩典できる。一つ保証としてはこの程度の、小規模事業者の方には大体二十万程度を利用されるのが一般ではないか。七百万の第二種保険を利用されることはほとんどケースとしては少ないのではないか。二十万こえた場合は五十万までは第一種保険を利用できるということで、これは理論的にこれでなければならないということはないのでございますけれども、話し合いの結果、今回はそろいう措置で実際上大体適当にいくのではないかという判断をいたしまして、内ワクをいたしたわけであります。特に理論的にこうだということはございません。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 どうも今の御答弁では私は実情に沿わないと思います。特に小口保険と第一種包括保険ですね。第一種を一緒に保険をつける場合にこれを押えるのだという。これは生業から企業にしていかなければなりません。それを第一種と第二種は制限がなくて、特に小口保険の場合にのみ五十万程度で押えるなんというととは、何のためにそういうことをおやりにならなければなりませんか。特に理論的にどうだこうだと言う。そんなことでは私はだめだと思う。チェックする必要はないじゃありませんか。
  20. 大堀弘

    大堀政府委員 これは実は私どもそういう考えでおったのでありますけれども予算折衝の段階で一応内ワクでスタートしようということで、今回はやむを得ない。ただし二十万円以下につきましては、運用の面でむろん保証率は二割ほど低くしてございますし、実際の面では物的担保は全然とらないで、これについては簡便な方法保証をするという扱いをしている点でも、格段の配慮をするようにということで、今回それで一つ御了承いただきたいと思っております。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 今お尋ねしようとした点はその点もあったのですが、この小口保険制度お作りになるについては、無担保、無保証零細企業にとって最も大切なことですね。私はこの点をいつも強調いたしておりますが、この点はっきり、この場合はそういう政策的な方法をおやりになりますか。この小口保険制度を作ったということは、そういうところにほんとうのねらいがあるのだ、こういうことですね。
  22. 大堀弘

    大堀政府委員 物的担保はとらない、それから貸付方法につきましてもできるだけ窓口で迅速、簡便にやる、方法保証協会によって多少異っておりますが、その趣旨におきまして、たとえば銀行窓口貸付と同時に保証契約するというふうな扱いでいくように、簡便な方法をとるということで、ただ保証の点につきましては、人的保証一般保証人という制度がございますが、運用の面では十分考えていきたいと思います。これは一種金融機関でございますので、その点はやむを得ないと思っております。物的担保は一切とらない、こういう考え方でおります。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 大臣のこの法律案説明の中にも、迅速にやるのだ、こういうことが書かれておりますが、私はこの前にも指摘いたしましたが、今日零細企業者というのは、保険料あるいは借り入れの場合の——将来の額じゃないのですよ、もう今すぐ金がほしいのですね。これには格段留意をなさらぬと、とれに時間がかかってきたということではどうにもなりません。ですから、特にこの小口保険制度というものをお作りになり、零細企業金融対策というものに政策的に取り組んでいこうとするのだとおっしゃるならば、今おっしゃったように、ただ物的担保を取らぬ、こういうことだけでは私はどうにもならぬと思う。特に迅速ということは、今までは手続の面においてこういうことであったのだ、期間もどのくらいかかっておったが、手続はこういうふうに簡易にやるのだ、それから期間はまずこの程度で縮めていくのだ、そうして零細企業者要求しておる金融の万全を期していくのだ、こういうもっと積極的な、この制度の上に立ってもっと政策的な説明がなければならぬと私は思う。ただいまのような答弁ではなしに、もっと何かあるべきだと私は思うのでありますが、この点に対する大臣の見解を。
  24. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま中村さんの御指摘の通りの趣旨で今回新しい制度を設けたわけでございます。これは与野党とも非常に力の入ったものでございますし、前回の中小企業対策等を考えました際に、この種の迫を開かないと真の金融は生きないのじゃないか。先ほどは二十万という金額について御不満がおありのようでございましたが、これは私ども二十万じゃなしに、あるいは三十万、その程度でどうだろうと、いろいろ実は折衝いたしたのであります。どうも内輪の事情などをお話一してまことに恐縮でございますが、今回とにかく新しい制度で発足いたしますものですから、その金額の決定等も、一応二十万でスタートし、またその手続も簡便にする、人的保証は必要だが窓口ででも貸せるように一つやろうじゃないか、こういうところで、金額の少額というのもそういう点で折り合いが実はついたわけでございます。これは中小企業、ことに小企業者に対する特例として今回試みたものでございます。これがもし成績がいいようでございますれば、さらに範囲を拡大していくといいますか、金額を引き上げるということも当然将来考えなければならぬと思います。との種の金融は、いわゆるコマーシャル・ベース基準融資としてはちょっと画期的なものじゃないか、こういう意味で、ただいま御指摘の通りに、私どもこの運用に非常に期待をかけておる次第でございます。そういう意味でこの上とも御鞭撻をお願いしたいと思います。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 今大臣がこれを拡大をしていく、こういうことでございましたので、この点は了といたしますが、こういった制度お作りになると、制度一つワクの中にはめられてしまうのですね。一から四まで、小企業者というものはこういうものだ、このワク内に入る小企業者というものは、あなたは小企業者であるからというので、この二十万、最大限の五十万、そういう規制の中に閉じ込められてしまう、こういう形がえてして起こりがちなんです。ただいま大臣はそういうことがあってはならぬ、こうおっしゃるのです。ところがやはり資金ワク保証ワクということでずっと押えられて参りますと、勢い窓口の方ではそういうことをやらざるを得なくなって参ります。私どもはその点を警戒するわけです。この制度お作りになったということは、ただいま大臣の積極的な答弁を聞きまして、私は了といたします。その積極的な答弁は、今私が申し上げましたように、これに閉じ込めるのではない、これを拡大をしていく、こういったような考え方の上に立ってこれを運用してもらうのでなければならない、こういうように思います。  それから、最近設備近代化と中小企業の団地計画というようなことで非常に資金量が大きくなってきておるわけであります。これに対して今の第一種、第二種の包括保険制度というものでは間に合わないのじゃないか。何か新しい制度一つ考えなければならないのじゃないかということを私はこの前申し上げたのであります。それに対しては、次の通常国会では新たなそういう金融制度を考えるのだ、こういったような御答弁があったのであります。今度は小さい小口保険という制度は作っておりますが、私に答弁なさったのはそういうことではありません。新たな構想で、設備近代化、設備が非常に大きくなっていく、団地計画というものは積極的に行なわれていく、これに間に合うようなものでなければならない、今なくなっております融資保険というようなことではないけれども、何かそういったものに見合うようなそういう制度が考えられておるということでありましたが、その点はどうなっておりますか。
  26. 大堀弘

    大堀政府委員 ただいま中村先生指摘のように、現在の保証協会限度は、個人で第二種の七百万円が限度になっておりまして、それ以上のものについては、団体の場合は一千万円が限度になっておりますから、現実の問題としては、やはり設備近代化が進められますと、それ以上の一千万、二千万といったような設備について保証制度を適用する必要がある、私どもさように考えまして、昨年来、設備近代化保険制度というものをこの小口保険制度と同時に本年度から実施したいということで、各保証協会との調整と同時に、大蔵省と財源面、制度面の問題について協議は進めて参ったわけであります。実は、御承知のように、以前に金融制度調査会の議によって融資保険制度が廃止になったいきさつがございますので、その融資保険制度と設備近代化保険制度は違ったものである。前は運転資金もやっておりますし、また銀行が一方的に審査してやるという形になったために、選別的な保証保険が行なわれて、これが相当赤字を出したというふうな問題もありましたので、今回の設備近代化保険は、そういったものでなく、公庫において事前審査を十分やって、しかも設備資金だけでございますから、運転資金と違って危険率も少ない、そういったことで設備近代化保険を実現したいということで、私としましては努力をしたのでありますけれども、はなはだ申しわけないのでございますが、金融制度調査会との関係もいろいろございまして、大蔵省の方がなかなか最終的に同意を与えないものですから、今回はこれを見送りました次第でございます。私としましては、やはりそういう必要性があると考えまして、今国会に提案できませんととは申しわけなく思っておりますが、引き続いて検討して実現したいと思っております。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 あるいは今の大堀君のお答えで、中村さん御了承かと思いますが、私どもが今一番悩みにといいますか、対策をいろいろ練っておりますものは、やはり中小企業基本法につながるものでございます。十分実態を把握いたさないと金融の問題いたしましても十分の効果を上げ得ないのじゃないか。今回の小業者に対して金融の道を開いたというのも、ほんとうに暫定的といいますか、当座の処置としてのものであります。先ほど来議論になっておりますように、金額が不十分であるとか、あるいはもっと手続も緩和方法はないかとか、いろいろお話がございますし、またさらに、その他保証協会限度にしても、それを限度にすれば近代産業に合おないのじゃないか、こういうような御意見もおありだろうと思います。ことに生産部門と事業部門等ではいろいろ事情が変わっております。そういう実態も十分把握することが必要だ、そういう意味で、これは絶えず検討を続けて参るつもりでございますから、そういう意味におきまして、いましばらく時日をかしていただきたいと思います。
  28. 中村重光

    中村(重)委員 大臣の時間の都合があるようでありますから、この程度で質問をとどめたいと思いますが、いろいろ質問をいたしましたように、中小企業の問題は非常に議論される。ところが、実際の施策面になって参りますと圧縮されてきて、積極的な振興の方向に一向向かっていかないという点があるかと思います。議論は非常に強調される。もう前向きの姿勢でもって積極的に中小企業対策を抜本的に考えられるという期待を中小企業段階にも与え、国民にも与えている。なるほど佐藤大臣が就任されてから中小企業対策関係が、予算にいたしましても相当増額されつつあるということは認めます。今年度も二倍程度になっております。しかし、総額は九十一億です。予算全体の中で占める割合は〇・三%です。この点から言うと、中小企業対策というものがコンマ以下に扱われていることは、大臣といえども否定できないだろうと思う。しかも、普及員なんかにいたしましても、農業関係の普及員は旅費が出るのです。ところが、普及員というのは、手当の中からみずから旅費を出している。ある商工会におきましては、普及員の手当がほんとうに普及員の手当になっていないで、一般の事務費に使われているといったような傾向もある。こういう制度お作りになるけれども、それをほんとうに生かしていこう、これをより強化していこう、こういった意欲というものが見られない。中小企業庁として毛、一つ法律を作り、一つ制度を設けたら、これがどう生かされて運営されておるかということに対してもっと責任を持ってこれを監督し、指導していくということでなければならぬと私は思います。今の二つの法律改正に伴いましても、いろいろ不満の面はあります。もっと積極的に中小企業金融対策中小企業金融緩和をはかっていくということ、振興対策を講ずるということが最も必要である。大企業中小企業との格差を縮めることである。零細企業対策は、生業からほんとうに名実ともに企業という形に前進をさしていく、こういうことになろうかと思います。このことが今後議論されているように、施策面に直ちに生かされていくよう格段の御配慮を強く要望いたしまして、私の質問を打ち切ります。
  29. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 田中武夫君。
  30. 田中武夫

    田中(武)委員 もう時間もありませんので、最後に簡単に二、三お伺いいたしたいと思います。  そのまず第一点は、商工組合中央金庫法の第六条と八条との関係の問題でございます。これは先日当委員会で内田委員も若干問題にせられたそうでございますが、法律を見ても、商工中金の資本金が幾らあって、そのうち政府出資が幾らで、民間出資が幾らか一目見ただけではわからないようにできているのです。そろばんを持ってこなければ計算ができないという法律があるのでしょうか。改正ごとに六条の一、六条の二と入れていくのですが、これは毎年資本金をふやせば三、四とふえていって、しまいには六条の二三八というようなものをこしらえるつもりですか、お伺いいたします。
  31. 大堀弘

    大堀政府委員 先生指摘のように、実はこれは古い法律で、毎回一項ずつ加えて資本金の総額がはなはだ不体裁な形になっておりまして、この点につきましては、農林中金の方も同じような形をとっており、最近の新しいものは違った形をとっておるようでございますが、今後法制局と十分御相談して検討さしていただきたいと思います。
  32. 田中武夫

    田中(武)委員 これは気がついたら直したらどうです。あなたの方で直すことをはっきり約束ができなければ、ここでわれわれ修正を出します。議員修正として一条ではっきりわかるように書き直しをやりたいと思いますが、その点どうですか。
  33. 吉國一郎

    吉國政府委員 ただいま立法の形式の問題についての御質問でございますので、法制局の考え方を申し上げたいと思います。  第六条で資本金の基本的な規定を定めまして、昭和十八年に第六条の二の規定を設けて資本金の増額について一条を起こして規定するという形を設けましたのに従いまして、戦後も、昭和三十年以降、第六条の三から始まりまして、今回に至ります第六条の七まで、同じようにして改正をして参りました。ただいま田中委員の御指摘のように、形式としてはなはだ望ましくないというようなお話でございますが、従来そういう形式をとっておりますので、今回特にその形式を改めるということの格段の理由もございませんでしたので、今回も第六条の七として、同じような形式を踏襲したわけでございます。先ほど御指摘のように、これを計算しなければ資本金の額がわからないではないかというお話でございますが、これは、計算をしていただきましても、政府出資の額のみでございまして、民間出資の額の分は、それを含めまして商工組合中央金庫の定款で規定しておるようなわけでございます。その定款の規定は、商工中金法の第五条に、定款の記載事項をあげて規定してございますが、その中で、第七号に、「資本金額」という文字を掲げております。これで、定款で、現在の資本金の額がはっきり示されておるわけでございますが、確かに立法形式として望ましいものとは私ども決して考えておりませんが、にわかにこれを改めるほどの必要も感じませんでしたので、今回も第六条の七で同様な改正の形をとったわけでございます。
  34. 田中武夫

    田中(武)委員 きょうは採決に応じるつもりでおるのですが、その答弁では、きょう採決できませんですね。直すのか直さぬのか聞いておるのですよ。直す気がなかったら、私はここで修正案を出します。一条でできるのです。第六条は資本金、第八条はそのうちの政府の出資金なんですよ。だから、一条で、二、三行で現わすことができるのですよ。そして出資のたびには、前のやつを消して次のやつを入れるようにすれば、「ノ一」、「ノ二」、「ノ三」なんて書かなくていいのです。特に積極的な理由がないからと言うが、こんな不細工な法律を作って、よくあなた、法制局の部長なんて言っておられるね。そんな大へんなことを言うなら、もう一度修正するかしないか、どういうふうに、いつ書き改めるかはっきりしない限り採決はできない、こういうことになりますが、どうでしょうか。
  35. 大堀弘

    大堀政府委員 先生の御指摘、まことにごもっともでございますので、一つ次回にはこれを直しますように、法制局と相談いたします。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 今の長官の答弁のように、これは次に出資増額になるかならぬかにかかわらず、はっきりとした法律体制、スマートな条文にしてもらいたい、そういうことを申し上げておきます。  それから、この出資金でありますが、最初設立のときには一千万円で、民間五百万円、政府五百万円、こういうことで出発して参りました。ところが今日では、民間出資の割合に比べて政府出資がどんどんふえてきておる。従って、最初の設立当時の商工中金のあり方、ことに資本金は半々でいくのだというのがだいぶ修正せられてきておると思うのです。こういう点について、きのうも他の委員から若干質問があったと思いますが、商工中金の性格として、いかにあるべきが理想なのか、いわゆる最初の出発点のように五〇・五〇で、民間半分、政府半分、こういうのが理想の姿であるとするならば、むしろそこへ持っていくべきじゃないか、民間出資の寄らないのにはいろいろ原因があると思う。民間出資が少ないということが商工中金の利子に関係してくる。そういうような点をにらみ合わせて、今後どう持っていこうとするのか、その点商工中金のあり方としてはどうあるべきなのか、これはむしろ大臣答弁要求いたします。
  37. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 商工中金は農林中金とはだいぶ事情が違っておるようでございます。昨日もお答えいたしましたように、これは半官半民で進めたい、かように考えております。半官半民だと申すと、大体資本金は半々、これが適当なところでございましょう。しかしながら、そういう率に必ずしもとらわれるというわけにも参りません。そのときの金融情勢等で政府資金の方が多くなる場合の方が多いだろう、民間資金政府資金より多くなるということは、金利の関係から望ましいことではございません。そういう意味の不均衡は生じましても、一応半々という原則で進めていくのがいいのじゃないか、かように考えております。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 最初から半々でやるのだ、こういうことで出発したら、そういう性格は守るように努力すべきじゃないかと私は思うのです。ここに北野理事長が見えておりますが、民間出資をふやすという点についてどういう努力をしてこられたか、またしようとしておられるかということ、それから出資に対して、政府出資に対しては幾ら、民間出資に対しては幾ら——政府出資の方がたしか多いと思うが、配当はどうしておるか、そういう点について……。
  39. 北野重雄

    北野参考人 私から申し上げるまでもなく、田中先生もよく御承知なんでございますが、元来この商工中金は共同組織でございまして、平たくいいますと、政府中小企業団体とが一緒になって作った銀行でございます。こういう性格を当初から持っておるわけでございます。そこで、出資につきましても、不文律といいますか、法律に規定はございませんけれども政府出資一に対して民間出資も一、 いわゆる半々という線をいつも目標としながら進んでいく、こういうことで今まできたわけであります。  ところで、いろいろ政府の財政の都合もございますし、また経済界、特に中小企業の団体の状況もございます。そこで最近では、特に私が理事長になりましてからも、すでに数回にわたって利下げをいたしましたが、そのつど政府出資をいただきまして、これを財源の一部にいたしまして、それに加えて、いわゆる商工中金の自己努力によりまして利下げをやってきたわけであります。そして、その関係からいたしまして、どういたしましても、最近では政府出資の方がふえてきまして、民間出資がなかなか追いつかない、こういうきらいがあるのでございますが、それを一挙に回復はできませんから、やはり二年あるいは三年かけてだんだん追いつく、こういうことで組合の協力を求めてきたわけです。  それで、御承知のように、現在政府出資が五十七億強、組合出資が三十三億弱、現在すでに二十四億の違いがあります。これが三月初めには組合出資がまた十億ありますので、これが一応十四億の開きになるわけなんです。ところが、今度の法律案が御決定いただきますと、さらに政府の方は二十億ふえる。そこでまた三十四億の違いが出てくる。こういうことになりますので、組合出資の方は追っかけられながら、しかも所属団体のいろいろな情勢からいたしまして、許す最高限の範囲内において増資をやっていただくように呼びかけて参りました。平たくいいますと、幸い政府もどうして出資をして下さったのだ、それについては組合の方もやはり一つ努力をしていただいて、なるべく早く追いつくようにしようじゃないかということで協力を求めて参りまして、今までのところ順調に来ているわけであります。そういうことで、近ごろの中小企業界の一般情勢からいたしまして、先ほど中村委員から御質問もございましたが、やはり政府出資にかなり依存しなければならない、こういうことがございますので、組合出資が追いつくということもだんだんそのテンポがにぶってくるおそれがございます。そういう点は今後の問題といたしまして、十分主務当局とも御相談しながらやっていきたい、こう考えております。  なお配当の問題でございますが、組合出資に対しましては、現在年五分の配当をいたしております。これはまだ配当が少ないというふうな意見が組合から出ることもございますけれども、しかしこれは共同組織の本質からいたしまして、それだけ配当をよけいとれば、また回り回って利下げがむずかしいということにもなるわけでございますから、これもよく申し上げまして御理解を得まして、五分の配当を大体持続していく、こういう方針でございます。なお、法律の規定によりまして、政府に対しては今のところ無配当でございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がございませんので、しぼって申し上げますから、それぞれ適当な人から御答弁を願いたいと思います。  まず第一点ですが、北野理事長も申しましたが、商工中金政府機関一〇〇%ではないけれども、他の政府機関の中小企業関係の金利に比べてまだ高い。これをどうやって引き下げようとする努力を当事者並びに政府は考えておられるかというのが一点。  もう一つは、いわゆる経済の調整政策といいますか、金融引き締めのために——前にこれは当委員会で、大臣もそういう政策ではあるが、中小企業のためには特に年末融資もふやしたのだ、だから基本線からいうならば、中小企業には基本線をはずしてまでワクの増大を考えてやったのだという話があったと思うのですが、伺ったところでは、親企業金融引き締めのために、支払いが現金から手形になり、手形がだんだんと長期のものになってきておる。こういうことも事実なんです。そういう長期手形ということによって、結局は大企業でなく、金融引き締めの結果は、手形の長期化という形で中小企業に来ておるわけです。そういう長期手形について、これを現金化するために一体どのような措置を今講じておるのか。  それから、公取の委員会には、今日の長期化した約手の問題について、下請代金支払遅延等防止法から見て、どういう状況にあるのか、どういう調査をしたのかという点をお伺いいたします。  それから、先ほど中村君もちょっと触れていたようですが、保証協会保証限度があるということで、今日中小企業の設備近代化ということをよく言われておるが、この保証制度によって設備近代化のための金を借りるというのには限度があるから、設備近代化ということについては、政府機関である金融機関の役割はそう大きくないと思う。従って、保証協会で設備近代化のために保証をしてもらうというのは、現在全体の二割足らずだと思う。これについて、設備近代化とあわせて保険制度保証制度をどのように考えていくかということを伺いたい。  最後には、山本さんに変なことを伺うようですが、今までの理事長を総裁にするということなんです。総裁と理事長とどっちがえらいのか知りませんが、給料も上がらない。一緒だ。ただ公庫というのは大体総裁だがら総裁にするのだ、こういうことでありますが、どうですか。理事長から総裁になったらやはりうれしいですか。これは総裁ということで全部そろえるのだということで改正が出ている。あまり総裁を作ると池田さんも気を悪くすると思うのですが、こういう点についてまとめてお答えを願います。
  41. 大堀弘

    大堀政府委員 私から私の関係事項だけお答え申し上げます。  最初に商工中金の金利の引き下げの問題につきましては、私どもとしましては、やはり政府出資をふやして、そうして商中債等の関係資金コストの平準化をはかって金利を下げるべきである、こういうこと以外にないと考えまして、できるだけ商工中金に対する出資増額していく、そうしてこの金利を下げるという方向に持っていきたい。今回は二十億程度出資でございまして、その点については十分の効果を上げ得ないことについては申しわけないが、長期の金利一厘だけは引き下げたい、さように考えている次第であります。  それから大企業の支払いの問題につきましては、先生指摘のように、やはり私どもとしましては、関係団体等を通じまして注意を喚起し、また通産局等を通じて行政的にもかなり調査もし、指導もしているつもりでございますが、しかしながら現実には手形の期限が延びており、現金が減って手形がふえておりますので、この点につきましては、私どもとしましては、やはり大企業の反省を求めて、そういったことのないように、現実にはそうする以外にないと考えておりますが、現実には商中等におきましてはやはり手形の割引等に応じて、そういった割引によって危険な状態が生じました場合に、割引に応じて貸付をやっていくという方法をとっている次第でございます。  それから、設備近代化の問題につきましては、先ほど中村先生の御質問で申し上げたのでございますが、実は保証協会の現在の能力から見ましても、個人七百万円、団体一千万円以下ということになっておりますので、それ以外の、最近の中小企業の設備近代化によりまして一千万、二千万というものがございますが、そういった面についての制度について、新しく設備近代化保険制度というものを実は作りたいと思いまして努力して参ったのでございますけれども、はなはだ申しわけないことでございますが、今国会に御審議願えるまでの段階に案を固めることができませんでしたので、今後引き続いて検討いたしまして、ぜひ実現したいと考えております。
  42. 小沼亨

    ○小沼説明員 ただいまの下請代金支払遅延等防止法の問題でございますが、公正取引委員会といたしましては、大体年二回親企業の支払い状況を調査しております。昨年もその上半期として五月末現在で約八百社、いろいろな業種を調べました。その結果がまとまったわけでございますが、支払いの遅延状況は大体一カ月見当、手形と現金の関係は、六割が手形、現金が四割というような格好でございます。それから、手形の長さにつきましては、九十日から百二十日というのが四六%ぐらい、かなり多い状況でございます。これは五月末現在で押えましたもので、その後八月一日に例の金融引き締めが始まったわけですから、下期としまして十月末現在でさらにいろいろな業種七百社を調査するということで、その調査表を親業者の方に出しております。その結果が参りますのはなかなかおくれますので、中小企業庁ではおやりになっておるのですが、下請企業者に直接アンケートの形で、非常に簡単な方法で十日ほど期限を切りまして、最近の支払い状況はどうなりましたかということをついこの間照会しておりますが、これは二月二十日の締め切りで回答を集めております。それで締め切りましたところで、最近の新しい状況はどうかということを押えたいと考えております。一方十一月末で親の方へ照会しましたもの、それから最近下請の方にアンケートをとりましたもの、合わせますと最近の新しいものがわかってくるのではないかと思います。  中小企業庁では、昨年の十月−十二月の間でアンケートでお調べになったものがございまして、これでも傾向としてはだんだん悪いような傾向に向いているのではないかということがございましたので、大堀長官も御答弁申し上げましたように、中小企業庁と公取の連名で、いろいろな業界、団体にこの下請代金の支払いをおくらせないように、金融引き締めのしわを寄せないようにという警告を出しました。それで、この警告につきまして、またいろいろその親企業に対して市中銀行が金を支払った場合に、下請の方に払わないのではないか、親企業がせっかく銀行から設備資金その他を借りても、それを親だけで使って、下請の方に回さないのではないかという心配もございましたので、大蔵省銀行局の方へこういう警告を出しました。これにつきましては、行政指導と申しますか、何か銀行筋に金を貸すときに少し下請の方にも回してやれというような注意をしていただけないだろうかというようなお願いをして、これは大蔵省はどう措置されるか知りませんが、そういうこともやりました。そういうことでできるだけのことをやっておりますが、公取の任務というものは、結局下請代金支払遅延等防止法で、実際に調べて支払いが悪いというところによくしろという勧告権がございますので、これを活用していく。昨年の一月から十二月の間にはあの法律で正式に勧告したものはまだございませんでしたが、今後はそういうことも十分運用して気をつけていきたいと思っております。
  43. 北野重雄

    北野参考人 大体長官からお答えいただいたと思うのでありますが、結局利下げのためには政府出資増額をお願いするほかない、こういうふうに考えております。しかし、さっきもちょっと申し上げましたが、政府出資増額のある場合に、必ず自己努力を要請されるわけであります。大体利下げによる収入減が三億といたしますと、その一億に当たる部分を政府出資で見て下さる、あとの二億分は商工中金自体が何とかその経費の節減なりあるいは生産性の向上といいますか、おかげさまで事業の分量もふえてきておりますので、それによる原資のコストの引き下げという面からやっているわけなんです。  それから下請代金の支払い遅延の関係が一番大きく私の方の窓口に出て参ります。そのために幾ら金があっても足りないということになりますので、最近では特に親企業とも絶えず連絡いたしまして、親企業の方でもできるだけその支払い条件の悪化をされないようにわれわれの立場から話しかける、そうして遠慮会釈なく支払い条件を悪化されても、下請の業者に対して私の方で金融は見られません、この程度しか見られませんから、その程度になるように一つ企業の方も考えて下さいというようなことを申し上げるように努めておりますが、幾分効果があるようでございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 時間がありませんが、今のようなことで結局中小企業金融が大企業の方へ金が回るのと同じような結果になることが多い。それと同時に、また中小企業も系列に入るものは借りやすくて、そうでないものは借りにくい、こういう状態もあります。  いろいろ御質問したい点もありますが、時間の関係がございますので、これで終わりまして、後日に譲ります。
  45. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 松平君。
  46. 松平忠久

    ○松平委員 最後に一点だけ聞いておきたいと思います。これは自民党の諸君にも聞いておいてもらいたいのだけれども、これは四、五年前からの懸案になっている事項です。それは中小企業信用保険公庫、保証協会商工中金関係がございますが、中小企業者が金を借りる場合の担保に対する抵当権の設定の登録税の問題なんです。これは、国民金融公庫、中小企業金融公庫は登録税は全部免除されております。ところが信用保証協会商工中金は免除をされておりません。その理由は、片方は全額国庫出資である、こういうのが今までの大蔵省事務当局答弁なのであります。ところが、保証協会はほとんど九〇%が地方公共団体の出資であることは御承知の通りであります。従って、そういうことは私は理屈にならぬと思う。しかも今日は自然増収がかなりある、こういう状態でありますので、この登録税の減免について再三再四にわたって当委員会においてこれが取り上げられた。しかし、今日までほとんど実績は上がっておりません。また中小企業庁がこの問題に対して大蔵省と一体どの程度真剣に取っ組んでいるかどうかということもわかりませんし、自民党の中小企業関係の諸君が、党から政府に対してハッパをかけておるかどうかもわかりません。これは一つ大臣の決意によって、少なくともこれを真剣に大蔵省と交渉するというくらいの決意を示してもらいたい、こう思うのです。
  47. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 大へん実情にうといということで、ただいま御指摘がございまして、大へんけっこうな御指摘だと思います。私ども最善を尽くしていきたいと思います。
  48. 松平忠久

    ○松平委員 それからもう一点、これは検討を要望いたしたいと思います。それは保険公庫に関する法律は、保険公庫法と保険法という二本で成り立っております。今までの政府の提案の公庫というものは、公庫法は実体法と組織法というものが一本になっておる、国民金融公庫にいたしましても何にいたしましてもそうですが、そこでその他の手続に関しては、業務方法書によって行なわれておるというのが法律建前になっておる。ところが、保険公庫だけは二本の法律からできているということで、これは非常に複雑なんです。従って、これは適当なときに検討してもらって、公庫法というものがあれば、それに右へならえをするような、そういう法律体制ができるのかできないのか、これを検討をお願いしたいと思います。
  49. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまの点は検討させます。
  50. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 他に質疑はありませんか。——ほかに質疑の通告もありませんので、ただいま議題となっております両法案に対する質疑は、これにて終了いたしました。     —————————————
  51. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 引き続き両案の討論に入るのでありますが、討論の通告がありませんので、直ちに採決いたします。  両案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  52. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 起立総員。よって、両案はいずれも原案の通り可決いたされました。  お諮りいたします。ただいま議決いたされました両案に関する委員会報告書の作成等に関しましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  54. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 この際、田中武夫君から発言を求められておりますので、これを許します。田中武夫君。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 今の法案について、今大臣の時間の関係で先に採決したのだけれども、一言申し上げておきたいと思うのであります。   〔私語する者あり〕
  56. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 お静かに願います。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 保証協会保証する場合に調査をする。その場合に調査費というものを取っているようですが、これは去年の当委員会で相互銀行の問題を爼上に上げたときに、利息制限法等の関係で、調査費とか手数料とかいうことも、利子として利息制限法できめておる。そんなことを問題にしたことがあるのです。政府ないし公共自治体の資本によってやっておる保証協会がそういう調査料をとるのはどうかと思うのですが、そういうことを聞いておりますので、一応よく調査して実態を知らせてもらいたい、こう思うのです。      ————◇—————
  58. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 次に、通商産業基本施策に関する件及び経済総合計画に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。久保田豊君。
  59. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 私は、国の貿易政策といいますか、通商政策の長期にわたった根幹について少し御質問をいたしたいと思うのであります。と申しますのは、御承知の通り、国内では昨年までのいわゆる設備投資の行き過ぎから御承知のような状況になって、現在のところはもっぱら国際収支のバランスを回復する、こういうことに政策の総合的な総重点を置いて、設備投資の抑制とか輸出の増進とか輸入の抑制というようなことを一生懸命やられておるわけです。しかし、最近また日本を取り巻く国際情勢というものは相当に大きく変わってきている。その変わってきておることも、これは単なる一時的な、いわゆる景気変動的な変化ではない。ある程度世界の経済の仕組みそのものが相当に変わりつつある、こういう時期であります。ところが、私ども外から見ておりますと、政府の施策は当面の景気調整策、つまり国際収支の改善策というものだけに重点を置いて、その次の見通しがはっきりしないようなうらみがあるわけです。もちろん、政治というものは日々出てくる現象をうまく処理していくということが一番根本でありましょうから、それはもっともだと思う。しかし、同時に、今日のように国際情勢が急変をし、しかもそれが単なる表面上の変化ではなくて、構造的な変化を遂げておるというときには、これに即応する国のいわゆる基本政策、長期の基本政策というものがあらゆる面で検討されねばならぬ。特にその面で日本としてこれから経済的に見て一番大事な問題は、貿易構造を地域的に、商品的に、国内の変化、国際の変化とにらみ合わせてどう長期的に立ててくるかということが一番基本の問題だ。こういう点の検討がされておらなかったために、ざっくばらんに言いますと、池田内閣のいわゆる十カ年の所得倍増計画の初年度の、しかもその半分くらいのところで早くもその十カ年計画がつぶれてしまった、あるいはつぶれるとまで言わないまでも、くずれざるを得ないというふうなことになったというふうに私は考えておるわけです。そういう点で、これは政府としてはどういうふうに反省をされておるのか。特にこういう問題の長期の見通しを立てる、あるいは政策を立てていくのは、私はやはり今日の政府の機構の中では経済企画庁だと思う。経済企画庁としては、そういう点についてどういう反省をされ、あるいは今後の長期の見通し等をどういうふうに検討を始められておるのか。あるいは作業を始められておるのか。私は、具体的にだんだんお尋ねをしたいと思いますが、一つそういう点についての経済企画庁あるいは長官としての反省なり心がまえなり、どんなふうにお持ちになっておるのか。まず第一に、非常に抽象的な質問ですが、お伺いするわけです。
  60. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 お話しのように、現在世界の経済的な状況というものは非常な大きな変動と申しますか、変化の時期でございます。従って、これに対応して参らなければならぬことは、日本の長期計画を立てます上に当然のことであります。従って、政府が十年のいわゆる成長計画を立てますときにも、むろんそういう問題について十分の配慮をしつつあること当然でございます。しかし、当面、昨年来の非常な行き過ぎを調整するということのために、特に輸出貿易の振興というのに現在重点が嵐かれておりますので、お話しのように、何かそれについて若干施策がおくれている、あるいは考えが足りないようなふうにも見られる点があろうかと思いますが、しかし、当然、日本の経済をどこに持っていくか、またどういうふうにこの十年間の——あるいは二十年と申してもよろしいかと思いますが、考えて参らなければいかぬと思いますが、問題は、要約して言いますと、私は二つあるのじゃないかと思います。一つはヨーロッパにおきますEECが、むろん政治的な背景を持って出発したものではございますけれども、経済的な面におきます団結の速度というものが、普通に考えましたより非常に早かった。あそこまで早くいくとは、おそらく多くの人は考えておらなかった。それがあれだけ固い形になって参りますと、これはもう当面すぐに今後の経済の上に現われてくる。しかもそういう現われが強化されてきますると、それに対応して他の国々におきましても、そういうことを考えざるを得ないことになってきた。    〔委員長退席、内田委員長代理着席〕 でありますから、たとえばソ連が鉄のカーテンの中の国の経済を一つにまとめる。アメリカが中南米を中心にして一つのブロック的な考え方をまとめていく。こういうようなヨーロッパ以外の国においても、やはりそういう傾向が一つ出てきております。おそらくこれは具体的な現われとしてまだ経済発展の段階は非常に進んでおりませんけれども、アフリカあたりはやはり一つのアフリカ経済というような形が現われてくるのではないか。一概にAAグループと申して、東南アジアなりあるいは中近東なり、アフリカを含めてAAグループという形で一応政治的にもあるいは経済的にも現状においては言われておりますけれども、アフリカあたりは、私はあれだけの独立国ができてアフリカという一つのまとまった形になって参りますと、これの共通の経済問題というものは、将来この経済が発展する段階においてむしろ出てくるのではないかというふうに見ております。こういうものにどうして日本が対処していくかということが、一つ大きな問題だと思います。  それからもう一つ考えて参らなければならぬことは、非常な長期にわたります経済の問題は別としまして、少なくも過渡的におきましては、第一次産品を主生産物としております国々と、それから工業製品を作っております国国との間の経済関係の調整というものが、私は一つの大きな問題であると思います。そういう面はすでに先般私がガットに参りましたときにも出ておるのでありまして、いわゆる低開発国の第一次産品というものを、先進国が関税の障壁を撤廃して受け入れるべきじゃないかというような議論も出ておるわけであります。これは大きな経済という意味から言えば、当然農業も入るわけでございまして、先進国における農業との関連をどういうふうに解決していくかということは一つの大きな問題でありまして、日本の経済の将来の運営においても、そういう面から国内経済全体の体制というものを整備し、あるいは改善していく、それに対応するという方向に持って参らなければならぬことが出てくると思います。ことに、御承知のように、国連におきましても、あるいはガットというような国際会議におきましても、新しく出てきております国の数は非常に多いのでございまして、もし票数で争うといたしますと、それらの国の力は相当に強い影響を持つわけであります。ですから、そういう点の調整のことを考えて参りますと、日本の経済自体の問題についても、そういう状況に対処して参らなければならぬということはむろん考えられることであります。こうした問題については、少なくも将来の計画を立てます上において念頭に置きまして、日本のそういう情勢に対する産業の構造改革と申しますか、あるいは対応性と申しますか、そういうものをどうしてスムーズに考えていくか。これが急激に変化をいたしますことは、日本のような二重構造がすでにありますところにおいては困難な問題を起こす、またこれを放置しておきますれば、その移り変わりに適当なことではない。そういう点については、問題を拾い上げますことは私ども比較的簡単だと思いますが、それに対する対応策となりますと、各般の影響が出て参りますので、よほど慎重に十分な検討をしながら、しかもある程度時間的な過程を経て、それらのものに対応するような処置を長期にわたってとっていかなければならぬ。久保田委員のお話のように、重大な問題がそこに横たわっておると考えておるわけであります。
  61. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 今のお答えで相当お考えのようですが、たとえばEECの問題にしましても、これは四年前から始まっていることです。ところが今までは、日本でも、経済界でも、まして政界では今までこの問題がほとんどネグレクトされてきた。ほとんど視野のうちに入っていない。今度EECがいよいよ第二段階になるというときになって、今ずっと見ますと、政府の方もそうだし、財界の方もあわを食っていろいろやっている。しかし、あの中に出てくるのは常識的な結論だけであって、EECを中心にして、国際的に西欧資本なりアメリカ資本がますます企業合同してくる、企業の規模が大きくなる、あるいは設備の大型化がどんどん行なわれてくる。従って、それに対してこっちとしても大いに企業合同をやらなければいかぬとか、あるいは設備投資をやらなければならぬという国内的な対応策というふうなものも、ようやく今ごろあわを食って議論になっておるというところではないですか。こういうのが今の実情だ。政府の方としましてはどうかというと、アメリカの方の状況がEECとの関係はこうなるからというので、これに対して、どっちかというと小手先のあれがいろいろ行なわれておる。また同時に、EECに対しても、こういうふうに対処しなければならぬということで、いろいろ出ております。しかし、今後の大勢を制するような、あるいは態勢に乗れるような日本の政策があの中に盛られておるかというと、私は何もないように思うのであります。もちろん、そういうきめのこまかい小さな政策を一つ一つ積み上げていくことが必要であります。が、それだけで今日世界の構造的に変化してきているものに対して日本が立ち向かっていけるかということになると、私は乗れないように思うのであります。しかも、国内ではいわゆる所得倍増計画が行き過ぎまして、三年間十兆円のともあれ設備投資が行なわれた。その内容は大体重化学工業を中心にして、それに非常にウエートが置かれている。これはやはり設備投資といいますか、工業発展の基本原則だと思うのです。その方向がだんだん強くなってきている。商品的に見ますれば、日本の輸出の構造というものは、重化学工業中心に変わっていかなければならぬ。しかも、日本のように国内において鉱業資源なり、原料なりあるいはエネルギーがほとんどないという国においては、国内におきましてこういう設備なり工業なりを、断層を持たずにすらすらとずっと伸ばしていく、つまり安定成長といいますか、こういうものを確保していくには、どうしてもこれに要する原材料なりエネルギーの確保ということが必要である。そういうふうなことから見てみますと、今政府は十カ年計画を立てておるが、いわゆる十カ年計画というものは非常に矛盾したものを持っていると思う。きのうも佐藤さんにお聞きしたのでありますが、これから日本の貿易政策をどうするのだと言って聞いたところが、これは何といってもアメリカを一番中心にして、これに対する輸出の増進をはかるのだ、その次はEEC下におさめられていく欧州に重点を置き、あとは東南アジア、ソ連の方も一生懸命にやります、こういうあれです。ところが、政府の例の長期計画の七十年度の計画を見ますと、貿易商はやはりアメリカ重点です。それからヨーロッパ。アジアないし低開発地帯というものは、むしろ量的には減っておる。共産圏については、なるほど伸び率は一番大きい。しかし、その際日本の輸出貿易の中でのシェアというものはわずかに五%台である。総額にして九十三億ないし九十四億で、輸出貿易の規模の中で共産圏貿易はわずかに四億ちょっと、こういう計画になっております。言うことと計画が違う。しかも池田さんは何と言っているかといえば、目先のあれではいろいろ思い違いがあった、だから、そういう間違いは直します、しかし、基本計画は変えないという。いわゆる高度成長政策、つまり所得倍増計画の基本はあくまで正しいから続けていくという。そうして、さすがにこのごろは経済はおれにまかせろとは言わなくなった。今までの調子は、経済のことはおれに全部まかせろ、おれは経済の神様である——半年先のことがわからぬような神様では困るわけです。半年先もお先まっ暗というようなたよりない神様はないと思う。そういうことは別にしまして、もっとまじめな意味で、政治的な要因を離れて、国内で三カ年間に十兆円の設備投資が行なわれている。これは明らかに行き過ぎです。できたものはつぶすわけには参りません。これをやはり出発点にして、新しい構造改革に善処しながら、発展の方向をにらみながら、もう一度こういった点を根本から建て直す。その一番重点は何かといえば、やはり貿易構造というものが日本の立場から見て商品別にどう変わってくるか、あるいは地域的にどう変わってくるか、それを世界の大きな貿易圏こいいますか——今お話しのように、世界に大きくは共産圏というものが一つ。それから北米、つまりアメリカを中心とした経済ブロック、それから欧州を中心とした経済ブロック、その三つのものが総合的にいろいろ相争っている地域が低開発地帯、こういうことになろうと思います。そういう中で、日本は地理上の関係その他から、欧州やアメリカやソビエトみたいな、みずからここでいわゆるブロック圏を持つ条件というものは日本の周辺にはない、これは私が言わなくてもおわかりだろうと思います。低開発地域、東南アジアといえどもこれはない。これはまた同時にそういったものをかりにかかえてみたところが、日本の現在の経済の実力では、かりにかかえ得るとしても、これをまかなっていくだけの実力はまだないと私は思います。こういう点から見れば、こういう全体の世界の構造的な変化の中で、日本の国内における貿易政策の方向をどうするのか。さらにそれを保障していくいわゆる貿易政策、こういったものを総合的ににらんだ再検討、その上に立って本年度の政策はどうあるのか、来年度はどうあるのかということでなければならぬと私は思うのであります。非常に意見が多くなりましたけれども、それができていないと思います。非常に不安を感ずるのは、たとえばというと非常に問題を軽く扱うようですが、たとえば政府の三十七年度の経済見通しと運営の基本態度というものが、政府の予想通りにいったとして、三十八年度はどうするのかという問題がもっとシリアスな形で出てくると思います。と申しますのは、私がここでもって具体的にお聞きしたいのは、三十八年度の国際収支の見通しはどうなりますか、私は少なくともこういう問題があると思う。これは輸出が予定通り四十七億ですか、輸入が四十八億に押えられるとしても、この見通しによりますと、三十八年度当初の政府の外貨手持ちは大体十一億四千五百万ドル、こういうふうに予想されております。これは御承知の通りアメリカの市銀から借りた一億ドルですか、それから輸出入銀行から借りた一億二千五百万ドル、それからまだ借りたか借りないのかわかりませんけれども、IMFから借りられる三億五百万ドル、こういったものを除いた計算です。私はこれらの資金はいずれも短期借り入れ資金だと思います。従って、普通の場合ならば、ことしのうちからこれは返済をしていかなければならぬ。しかし、その返済の大部分は次年度以降に持ち込されるとしますれば、この返済分を織り込んで来年度の日本の国際収支の手持ちはどのくらいになるのか、その場合に、その手持ち額の中から大体においてほんとうに貿易面で使えるいわゆる高い流通性を持った金がどのくらいあるのか、これはそうよけいはないと思います。企画庁流の表現をしてみれば、国際収支の天井は今よりもっと低くなると思うのであります。そういう低い中で、片方においてはことしも三兆六千九百億の設備投資をする。去年までのものに比べてさらに大きくなる。これが大体企画庁の計算によりますと、白書を見ますと、百億ドルの設備投資があれば、これが二、三年後には百五十八億ドルの生産増になる。さらにそれをまかなうためにはどうしても十八億ドル程度の輸入原材料、エネルギーの輸入増になってくるということを三十九ページか何かに書いてあります。これは計画が少しラフで大きいと思います。その通りにはいかないまでにしても、相当大きな輸入増というものをしなければ、これをやっていくということはできない。その輸入を確保するためには、どうしても重化学工業製品を中心とした輸出市場というものをはっきりつかんでいかなければならぬ、開拓していかなければならぬ、それで、今のようにアメリカ中心あるいはヨーロッパ中心、あるいはソ連、さらに低開発地帯も重視する、こういうところがそういう重化学工業を中心としたいわゆる輸出の大幅な増進というものができるのかできないのか。さらにそれが伸ばされた場合に、再来年度、少なくとも今日の段階では、五年なり七年の先まで一応見通した、そのときそのときの見通しでそれを十分織り込んだ、一気には変更できませんから、まして保守党の立場からいえば、保守的の立場からいえば、それはできないと思います。できないと思いますが、少なくとも、そういう五、六年の長期の見通しなり計画なりというものをはっきり立てた上で、いろいろな変化の条件というものを一つ織り込んで、そうして輸出増の政策というものを進めていく態勢があって初めて安心ができると思うのであります。ところが、残念ながら、私の見たところでは、それがない。  そこで、私は第一にお聞きしますが、ことしはこの通りいくとかりにいたします。いくかいかないか相当疑問です。相当疑問ですけれども、いくと仮定して、来年度の国際収支はどういう内容になりますか。借りたものの返済を織り込んで、しかもその中で、特に使える金ですね、その使える金というものはどのくらいになるのか、これを第一にお聞かせを願いたい。それからそれに見合って、貿易の規模も、来年はどのくらい輸入をふやして、輸出はどうするか、それではたしてまかなえるかどうか、経済成長をことしのように見てやれるのかどうか、こういう点について、一つお見通しといいますか、御見当があれば、ぜひ聞かしていただきたい。目先のことも大事であります。しかしながらもう少し、少なくとも三年や四年、できればとにかく各企業ともそれぞれ十年計画の長期計画を大きなところは立てておりますから、それを保障する意味においても、どうか政府が紙の上で一応ああいうものをこしらえたからいいじゃないかということでなくて、状況が急変をしていますだけに、その状況の急変に即応する政府の生きた長期の見通しなり計画なりというものは、どうしてもなくちゃならぬ段階にきていると思う。それが見えないのであります。この点はどうですか。
  62. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 久保田さんのお考えと私大して違ったところはないのでありますが、御承知の通り、所得倍増計画という十年計画を立てまして、その立てたのはある程度業界の知識も加えまして、そしてあるべき将来の姿というものを一応十年計画で立てたわけであります。しかし、そのこと自体は一応の案はできましたけれども、どういうふうにそれが運営されて、どういう裏づけでいくかというところまで、私は必ずしも完璧なものであったとは思いません。またそういうものが急速にあの時期にできるということも、あるいは無理であったと思います。ですから、一応そういうふうに立てさるを得なかったという当時の状況は当然なことだと思います。しかし、さてその計画が今度初年度スタートをします。スタートしてきますと、もう少しきめのこまかい方向がその内容として考えられてこなければならぬ。しかもそれは十年という計画を、当面とすれば、少なくも五年ぐらいの間どういうふうにこれが推移していくかということを、もう少し具体的な盛り込み方をして見なければならぬのじゃないか。それによって現実の動きとともに調整をしていくということが必要であろうと思います。お話のように、世界の経済が非常に急角度に動いておりますから、そういう条件も考えて参りますと、日本の経済構造の変化というものは、どの部面において急速に変化をさせていかなければならぬか、またそれが貿易の上にどう響いていくかということも考えて参らなければなりませんし、またお話のように、アメリカとか、EECとか、いわゆる先進国だけでなしに、他の低開発国に対する貿易を促進する意味においては、日本の現状の産業の構造をまず急速にどの面に力を入れて改善していかなければならぬかということも起こってくると思います。でありますから、そういう意味においてでき上がりました十年計画の中で、さらにこまかい五年計画というようなものをもう少し具体的に考えていくことが必要である。特に、お話のように、初年度において残念ながらある程度行き詰まった状況が起こったわけであります。でありますから、それを教訓にして、その出発点をそのゆがめられた上に立てて、それをどう是正していくかということを考えて参らなければならぬと思います。そこで、三十七年は一応これでやる、しかし、来年はどうであるかといいますと、これは簡単になかなか推測もいたしかねるところがございます。しかし、当然これはやって参らなければならぬ仕事だと私は思うのであります。ことに経済でございますから、本年われわれが目標にいたしておりますのは、輸出を四十七億、輸入をかりに四十八億に押えてみましても、大体本年の秋には貿易の基調を回復し得る基盤ができるということを私申しておるのですが、基盤ができるという状況に置かれる。一番希望しているのはそこだと思うのです。私は必ずしも完全にできるとは思いませんが、しかし、明年度回復する基盤がそこでできてくるだろう。そこで明年度は、その上に立ってどういうふうに輸出を伸ばしていかなければならぬか。本年度かりに四十七億に伸びたとする、輸入も四十八億でまずおさまったと見る、そうすれば来年は一体輸出をどのくらいの目標に持っていくのか。五十億ドルに持っていくのか、五十一億ドルに持っていくのか。またそれに対応して四十八億ドルと押えた輸入をどの程度に押えていくかというようなことは、経済のことから見まして、御指摘の通り、当然本年度の施策の上にも影響してくる問題だと思います。ですから、そういうことは当然考えて参らなければいけませんし、さらにいえばその次の年、三十九年度あるいは四十年度というような面をあらかじめ考えながら、そういう作業を続けることが必要だと私は思っております。従って、そういう点は非常にむずかしいところでございますけれども、やって参らなければなりませんし、またそのこと自体が、本年度の経済運営の上に緩急よろしきを得るような政策を期の半ばにおいてとるかとらないかという問題になってくると思うのであります。でありますから、どうしても企画庁としてはそういう面について十分やっていかなければならぬ。ただ、それがどういうふうな数字で、いい結果を招来させるためにはどういうことを貿易振興の上において、あるいは国内産業構造の上においてとらなければならぬかということになると、なかなかむずかしい問題でございまして、今ここでにわかに申し上げかねるのでありますけれども、御趣旨のような点は私も同感でありまして、そういうような、少なくも本年度の景気を調節し、輸出振興あるいは輸入抑制をやっていきます上において、翌年度の問題をあわせ考えながら、本年度の運営をゆるめるなり、あるいは抑制を強めるなりという問題を扱って参らなければならぬ、こう考えております。
  63. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 それを企画庁はやっておるのですか。どうも企画庁からいただくいろいろの資料では、私どもはあまりよくいただけないのかもしれませんけれども、企画庁が公表したり、いただいた資料では、今年のことだけで頭が一ぱいで、来年のことは全くやっていないというふうに私どもには見えるわけです。国会における各大臣の御答弁を聞いてもそうなんです。これではあぶないということを特にいうのです。もしやっておるなら、どういうふうなところでどの程度今作業が進んでおるか、御説明をいただきたいと思うのです。
  64. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 その点はむろんやらなければならぬことでございますし、やらしておりますけれども、まだわれわれがそれを国会で申し上げるというような段階に行ってないことは、これまた正直に申して事実でありまして、そういう点は十分気をつけてやっていかなければなりませんし、また事実年度の推移を見ながら予算の運営その他についても非常にその必要がある場合がある、こう考えております。
  65. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 きょうは時間がありませんから、総論的な入口だけしかお聞きできないのですが、政府の長期計画を見ますと、七〇年におきましても大体アメリカ市場を日本の貿易市場としては一番重要視しておるということがはっきりわかります。その次はヨーロッパ市場、こういう点ははっきり数字の上に出ておる。しかし、私は最近のアメリカ市場というものを、日本の国内の産業構造が変わってきたことと関連をいたしまして、もう一度再検討する必要があるのではないか、こう思うのです。つまり、政府の今までの長期の計画から見れば、やはりアメリカ一辺倒の貿易構造というものの上にすべてを運んでいこうという考えと見て大体差しつかえない。しかし、私はきのうも佐藤さんに申し上げたのですが、大体日本は重工業化しておる。そうして日本は国内資源がないということになれば、重工業の輸出を伸ばして、そういった産業の原材料なり、あるいはエネルギーをその見返りに取れるという可能性を持ったところを一番重点に、しかも開発の進んでおるところを重点にしなければならぬ。ところが、日本とアメリカとの関係を見てみると、基本的にそうじゃないのです。現在のドル防衛がどうだとかいうことは第二の問題として、基本的な性格の問題を取り上げてみますと、今までは、日本は、御承知の通り、アメリカに軽工業品ないしは軽機械を出して、その見返りに、要するに工業原料なりエネルギーを入れてきた、それに一部の機械を入れてきた、こういうことです。そうして、しかもそれは片貿易であって、要するに、今日、日本の外貨の危機をもたらした直接の原因は、この片貿易にある。ただ、今まではこの片貿易の穴埋めを、御承知の通り、アメリカからのAIDなり、あるいは特需なり、あるいは資金の導入なり、こういうことでやってきた。ですから、これが表面に出なかった。あるいは短期の資金等もそれに加わって穴埋めしてきた。ところが、御承知のようなドル危機の問題からこれができなくなった。そうしてこれが急速に後退するという段階になってきた。そこで穴埋めができない。ところが、貿易構造は依然としてアメリカ一辺倒である、こういうことなんであります。そこに、私は直接の原因の大きなものがあると思う。国内的な要因は別にしまして、対外的な要因を中心に考えれば、そこに根本の原因がある。しかも今後見通し得る将来において、アメリカの反共世界政策といいますか、これが変わらない限り、ドル防衛が解消される望みはありません。おそらくこれに根本があるのですから、これは私が言うまでもなく御承知のことだと思う。ですから、これは少なくとも望ましいことではないが、まだ相当長期に続くと見なければならない。穴埋めの材料というものは細い一点だ。今は貿易の帳じりをいわゆるほかの要素でもって穴埋めするという限度に来ているのではないかというふうに私は見て差しつかえないのではないかと思うのです。しかも、どうかというと、アメリカと日本との関係をもっと突っ込んでみれば、日本は国内の断層を作らないためには、どうしたって重工業中心の工業化を相当程度、三兆ないしは四兆近くのものを今後続けていかなければならぬ。すでに始めちゃったのですから、十億のやつが土台ができちゃったのですから、これを持っていくには、どうしてもそのくらいのものを持っていかなければならぬ。その内容は重工業中心で、従って、原料なりエネルギーというものはどんどん入れていかなければならぬ。それは今のところでは主としてアメリカ、こういうことですね。ですから、日本から見れば、アメリカに対する輸入要因というものは強まるばかりです。ところが輸出要因はどうかといいますと、これは軽工業品も向こうにいわゆる競合産業があります。向こうとしては、国の経済全体としてはそう大して重要視するものじゃない。言葉をつづめていえば、なくても済むものだ。日本から入れているものは、少し高いものをやれば、なくても済むものだ。なぜこれが出ておったかというと、従来日本のそういう軽工業品のいわゆるFOB価格が非常に低くて、向こうの扱い商人の手数料がべらぼうに多い。ものによってはこっちのものが八分の一で、向こうのものはその八倍だ、あるいは四分の一で、向こうは四倍。従って向こうの中間マージンが非常に多い。こういう連中が、ざっくばらんにいえばささえでしょう。そういうものに辛うじてささえられている。そうしてもう一つは、次々に輸入制限なり何なり圧迫を食っている。それをチャンピオン商品を何かこしらえては、それでだっと出るというだけであります。それで今まで伸びてきたのです。もちろん景気の動向によって、これは相当にふえたり減ったりしますが、しかしこれは短期のあれだ。重工業品はどうかといえば、私はこれは限界輸出品だと思う。きのう佐藤さんは、鉄鋼業やその製品はまだどんどん出ると言いましたが、向こうの方がこっちよりはるかに進んでいる。しかも向こうの鉄鋼業なり機械産業は五〇%程度の大幅な操短を今やっている。   〔内田委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、鉄鋼ストライキが起こるとかなんとかいう、そういう機会以外には、私はこれは伸びる可能性はないと思う。幾ら日本で輸入したって、輸出は手軽に出ない、こういう関係が私はアメリカと日本との基本的な貿易関係だと思う。日本の国内が重工業化しているにもかかわらず、そういうものをたよりにして、この十カ年計画でもこれに一番重点を置いて、大体において三倍半ですか、二十七億幾らというふうな輸出が七〇年度にはできる、こういう前提に立ったすべての政策、こういう基本的な関係というものは私は検討しなければだめだという点を考えるわけです。  さらに、今申しましたドル防衛なりあるいはEECとアメリカとの接近というものが、これは相当長期な影響を持ってくるものと思います。今のように関税政策やその他でもって一つ一つを小さくやることも、これは必要です。必要ですけれども、私はこれは政治的な意味で言っているわけじゃありませんが、日本が少なくとも池田内閣が言っているような高度成長政策を安定的に伸ばしていこうというのには、いわゆるアメリカ一辺倒の貿易構造というものをどうしても変える必要がある。欧州にしてもそうだと思います。欧州にしても今後EECがだんだん大きくなって、英国がいつ入るかわかりませんけれども、これも案外早く入るのじゃないか。人によっては三年先だと言う人もあります。あるいは、人によっては、本年度末までには話がまとまって、来年早々にはEECに英国の参加が決定するだろう、ということになれば、少なくとも来年度中には欧州全体がEECに包括されるということになりましょう。ここについても、きのうもお話がありましたけれども、これは大いに貿易を伸ばすんだ。向こうへ日本から売っているのは何かと言えば、やはり軽工業品なり、あるいは軽機械です。ところが、これは向こうにもれっきとした競合産業があるわけです。そして日本の一番必要とする重化学工業の原材料を欧州からはとれません。向こうにはないのですから、これはとれないという関係になる。日本の今日の技術水準なり経済力で、EECというものに守られた非常な力を持ってきた欧州と軽工業品の輸出入合戦をやって、日本が勝てますか。私は勝てないと思う。もちろんこれは態勢としては、アメリカも同様ですし、欧州も貿易は相当程度伸びてきておるのです。しかし、その伸びというものは、日本の必要とする国内の高度成長をささえていく原材料を完全に入れるだけの伸びはとれないと思う。こういう構造的な問題を考えてみなければならぬ。さらにEECを中心として、御承知の通り、欧州は非常に経済力を増してくる。アメリカの方は、EECへの接近がこれからの一番の中心になる。この結果、アメリカから出てくるのは何かといえば、ほかの地域に対するドル防衛が強化されるということで、輸出競争が盛んになる、国内においては立ちおくれ産業の保護政策が強くなるという結果しか、経済の原則から見て、ないのです。欧州の方はどうかというと、非常に国内で力を増した重工業製品が、世界のほかの地域に、国際的な大きな経済力を背景にして、どんどん出てくる。これが競合する場所はどこかといえば、私は低開発地帯だと思う。日本が低開発地帯に出るのは、これは何といっても重化学工業品が中心です。いわゆる軽工業品は、もうすでにそういうところで国産化が始まっておりますから、この国産化の方からの抵抗がだんだん強くなって、入れないことは当然だ。しかし、さっき話がありました農産物の第一次産品の問題もありますけれども、これとても日本は、入れてくる余裕はそうないわけです。こういうところから重化学工業品の原料をとりたい。しかしそれには開発をしなければならない。その金が日本にあるか。またその開発のしようによっては、帝国主義の再現だということで、今日民族主義の激しい際には、総反撃を食うのは当然だ。しかもこれには、ソビエトないし共産圏の経済力が進むにつれて、共産圏からさらに資本主義的に見ると、経済競合要素として非常に優秀な貿易なり経済援助の大量進出というものが今後予想される。こういう中で日本がどうやっていくかということを考えなければならない。そういう場合に出てくるのは、何としても今日の世界の形勢から見て、政治的な要因を離れて考えれば、やはりこれは日本の一番近くで、しかも非常に日本の重工業製品に対する希要が盛んで——まず盛んだと思わなければならないが、しかもなお日本へ工業原料なりエネルギーを十分に提供する力を持っておるいわゆる共産圏貿易というものをもう一度、私は根本の立場から、経済的な要因から見直さなければならぬ情勢にきておるというふうに思うのです。こういう点について長官はどうお考えになっておるのか。私はそういう線によって、日本の国内産業の今後の発展方向なり、企業の形態とかその他いろいろ問題がありますが、そういうことはまた別の機会に論議するとしまして、貿易構造と国内のいわゆる経済構造の両方が変化してくる、こういう中で日本が高度成長政策を少なくとも重工業を中心としてやっていくには、どう市場問題というものを解決するかということを、この際真剣に、長期的な展望に立ってもう一度検討する必要がある。さっきのお話では、計画は今の高度成長政策というものは一応立てた。これの実施はそのとき、そのときの情勢に応じて相当きめのこまかいことをやるという、それはその通りです。しかし、私の申し上げたいのは、そういう基本のこの高度成長政策の基本的要素に今大きく変化が来ている。ですから、高度成長政策そのものの基本というものを、これからの世界の、共産圏も含めた全体の世界的情勢の変化の中でもう一度据え直して、日本としてどこへ生きていくかということを真剣に考えなければ、また計画をしなければならぬ段階に来ておる。それがない限り、私は日本の経済の成長というものは非常に不安定で、いつ大きな断層にぶつかるかわからないということが言えると思うのであります。現在政府が行なっているような小手先の、そう言っては失礼ですが、いわゆる継ぎはぎこうやくではだめじゃないか。いつかこれは大きな断層にぶつかって、経済的な混乱を来たす時期が来るのではないかというふうに思うのであります。これは政治的ないろいろな要因から、アメリカは日本をそんなにそでにしまいとか、あるいは欧州といえども、同じ自由主義陣営だから、日本をそうそでにしゃしまいとかいうそら頼みは、もうそろそろやめられたらいい。競合していくのは、これは経済の原則であります。この経済の客観的な原則に動かされてそれぞれの人が動くわけでありますから、そういうあれは藤山さんも箱根会談でいやというほど御承知のはずです。それをまだどうだこうだといってそら頼みをして、何とかこっちが泣き言を言っていったら向こうもこっちを救ってくれるだろう、こう言っていったら何とか救ってくれるだろうという段階でないと私は思うのでありますが、この点はどうでありますか。
  66. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 対米貿易のウエートというものは、私は十年たちましても、日本の貿易の中においてそんなに低いものだとは思いません。ですから、その意味において、対米貿易というものを十分に推進し改善していくことが必要である。むろん日本の重工業製品、たとえば電気冷蔵庫を作るあるいは自動車を作る、それがアメリカに大量輸出されるというようなことは、これは想像できないと思います。おそらくヨーロッパの小型車が入ってくる、日本もそれでは小型車を入れよう、これは日本として望ましいことでございますけれども、しかしヨーロッパの小型車が入ってくれば、ヨーロッパの小型車と日本との相当な差が現実に現われておりますし、また非常にそういうものが入ってくるとなれば、アメリカ自身も大型車でなくて小型車を作る。御主人は大型車に乗るけれども、奥さん方は小型車に乗るというのがこのごろの流行のようですが、そういうようなことで小型車を作るということにもなる。そういう点で競争していきますれば、現在の段階あるいは近き将来必ずしもそれに競争していけるとは思いません。ただ日本の持っております特性というものは、ある程度発揮していけないことはないと思う。たとえばイタリアが、戦後にイタリアの絹織物のデザインその他でアメリカのネクタイはほとんどイタリアに席巻されてしまった、あるいは戦後においてアメリカの時計工業はつぶれてしまって、スイスに押されてしまった、ウォルサムなどはなくなってしまった、こういうようないろいろな現実の事態から見まして、日本が対米輸出に全然向かないようなことのないということも私どもは信じております。ですから、その点において対米貿易に対してはどういう態度をとって、どういうことで対処していくか、そしてそれはやはりアメリカというものが相当な購買力を持ちあるいは相当な資金的なバックを持っておりますから、これが延べ払いであるとか、長期にこげつくとかいうようなことがない場合には、その点について相当重点を置くべきは当然だと思う。しかし、お話しのように、日本の産業構造をどうしても高度に変えていかなければならぬ。つまり低度の綿製品というようなものは、すでにパキスタンにしてもインドにしてもできております。それに対処するためには、われわれは化学工業の合成繊維、化学繊維を持っていかなければならない。また今言ったように、国内である程度生活程度が上がって、電気洗たく機なり冷蔵庫なりが需要があって、そしてそれが改善されていくということになれば、それはアメリカには売れないけれども、東南アジアの方面には売れていくということでございますから、その面において日本の産業構造の改造というものをそこに置いて、しかもその分野を開拓していく。ただ今日の現状からいいますと、まだ残念ながら、政治的独立はしたけれども、経済的な力というものはそれぞれの国が非常に弱い、それが世界の平和にも影響を及ぼしております。従って、今低開発国の援助計画というものが世界の大きな問題になっておるわけであります。これの振興を考えてみますと、そう急激に低開発国の新独立国が植民地経済から脱却して十分な経済力を持ち、そして購買力を持つというわけにも、十年くらいの限度ではなかなかそう予想できない。しかし二十年、三十年を考えますれば、当然そこにいかなければなりませんし、そこにいくことが世界の平和のためにもあるいは世界貿易の拡大のためにも必要なんですから、当然各国がそこに援助していくと思います。でありますから、長期にわたって考えて参りますと、東南アジアあるいはアフリカでありますとかあるいは中近東でありますとかあるいは共産圏を含めて、そういう方面の貿易に対して日本の産業構造の変化とともに、日本の貿易内におけるウエートが上がってこなければならぬことは、これは当然のことでございまして、その上がることがないなら、何も産業構造を変える必要はないのであります。産業構造を変えて、そこへ到達をするということを考えていく。十年計画の中では対米貿易のウエートが重過ぎるではないかと言われますが、少なくも十年くらいの前途では、対米貿易のウエートというものは割合から見てまだ相当大きいのではないか、あるいはEECを含めてそういう先進国への貿易、それが支払いの上から見ましても多いのではないか。ですから一応そういうことをわれわれの計画としては——十年計画には対米貿易のウエートが大きい、それは一辺倒じゃないかと言われますが、しかしそれは必ずしもそれだけでは日本の産業経済が満足すべきものではなくて、拡大していって国民生活を向上さしていく、そして経済を拡大するとなれば、どうしたって今言ったように各地域に対してもっと積極的に手を打って参らなければならない。その意味から言いますと、日本の経済力が充実してくるに従ってあるいは援助計画も進まっていきましょうし、あるいは延べ払い等の方式によってもっと後進国の開発に援助もし、あわせて日本の輸出貿易も振興できると思います。ただ現在の十年計画くらいの間では対米貿易が多くならざるを得ないと言わざるを得ない、こう思います。
  67. 久保田豊

    ○久保田(豊)委員 きょうは時間がありませんから、この程度にとめますが、今の長官のお答えの中で、最後の面について私ははっきり見通しが違うのであります。もちろんしろうとの見通しですから十分なことはできませんが、いろいろそういう点についてこれから具体的に問題を出して、一つ一つその市場なり日本の産業構造について少し突っ込んで御意見も承るし、私どもの意見もということで、まあ討論みたいになるかもしれませんが、あげ足とりでなく、もう少しお互いにかまえた立場でじっくり話し合う、討論をする機会を持ちたいと思います。私も決してあげ足とりなんかするつもりもありませんから、一つ長官は長官で明確な見通しなりあるいは御意見をはっきり出して言っていただきたい、こう思いますので、一つその点次の質問を保留いたしまして、きょうは時間がありませんから、これで一応終わっておきます。
  68. 早稻田柳右エ門

    ○早稻田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後一時一分散会      ————◇—————   〔参照〕  商工組合中央金庫法等の一部を改正  する法律案内閣提出第三六号)に  関する報告書  中小企業信用保険法の一部を改正す  る法律案内閣提出第四七号)に関  する報告書   〔別冊附録に掲載〕