○久保田(豊)
委員 今の
お答えで相当お考えのようですが、たとえばEECの問題にしましても、これは四年前から始まっていることです。ところが今までは、日本でも、経済界でも、まして政界では今までこの問題がほとんどネグレクトされてきた。ほとんど視野のうちに入っていない。今度EECがいよいよ第二段階になるというときになって、今ずっと見ますと、
政府の方もそうだし、財界の方もあわを食っていろいろやっている。しかし、あの中に出てくるのは常識的な結論だけであって、EECを中心にして、国際的に西欧資本なりアメリカ資本がますます
企業合同してくる、
企業の規模が大きくなる、あるいは設備の大型化がどんどん行なわれてくる。従って、それに対してこっちとしても大いに
企業合同をやらなければいかぬとか、あるいは設備投資をやらなければならぬという国内的な対応策というふうなものも、ようやく今ごろあわを食って議論になっておるというところではないですか。こういうのが今の
実情だ。
政府の方としましてはどうかというと、アメリカの方の状況がEECとの
関係はこうなるからというので、これに対して、どっちかというと小手先のあれがいろいろ行なわれておる。また同時に、EECに対しても、こういうふうに対処しなければならぬということで、いろいろ出ております。しかし、今後の大勢を制するような、あるいは態勢に乗れるような日本の政策があの中に盛られておるかというと、私は何もないように思うのであります。もちろん、そういうきめのこまかい小さな政策を
一つ一つ積み上げていくことが必要であります。が、それだけで今日世界の構造的に変化してきているものに対して日本が立ち向かっていけるかということになると、私は乗れないように思うのであります。しかも、国内ではいわゆる所得倍増
計画が行き過ぎまして、三年間十兆円のともあれ設備投資が行なわれた。その内容は大体重化学工業を中心にして、それに非常にウエートが置かれている。これはやはり設備投資といいますか、工業発展の基本原則だと思うのです。その
方向がだんだん強くなってきている。商品的に見ますれば、日本の輸出の構造というものは、重化学工業中心に変わっていかなければならぬ。しかも、日本のように国内において鉱業資源なり、原料なりあるいはエネルギーがほとんどないという国においては、国内におきましてこういう設備なり工業なりを、断層を持たずにすらすらとずっと伸ばしていく、つまり安定成長といいますか、こういうものを確保していくには、どうしてもこれに要する原材料なりエネルギーの確保ということが必要である。そういうふうなことから見てみますと、今
政府は十カ年
計画を立てておるが、いわゆる十カ年
計画というものは非常に矛盾したものを持っていると思う。きのうも
佐藤さんにお聞きしたのでありますが、これから日本の貿易政策をどうするのだと言って聞いたところが、これは何といってもアメリカを一番中心にして、これに対する輸出の増進をはかるのだ、その次はEEC下におさめられていく欧州に
重点を置き、あとは東南アジア、ソ連の方も一生懸命にやります、こういうあれです。ところが、
政府の例の長期
計画の七十年度の
計画を見ますと、貿易商はやはりアメリカ
重点です。それからヨーロッパ。アジアないし低開発地帯というものは、むしろ量的には減っておる。共産圏については、なるほど伸び率は一番大きい。しかし、その際日本の輸出貿易の中でのシェアというものはわずかに五%台である。総額にして九十三億ないし九十四億で、輸出貿易の規模の中で共産圏貿易はわずかに四億ちょっと、こういう
計画になっております。言うことと
計画が違う。しかも池田さんは何と言っているかといえば、目先のあれではいろいろ思い違いがあった、だから、そういう間違いは直します、しかし、基本
計画は変えないという。いわゆる高度成長政策、つまり所得倍増
計画の基本はあくまで正しいから続けていくという。そうして、さすがにこのごろは経済はおれにまかせろとは言わなくなった。今までの調子は、経済のことはおれに全部まかせろ、おれは経済の神様である
——半年先のことがわからぬような神様では困るわけです。半年先もお先まっ暗というようなたよりない神様はないと思う。そういうことは別にしまして、もっとまじめな
意味で、政治的な要因を離れて、国内で三カ年間に十兆円の設備投資が行なわれている。これは明らかに行き過ぎです。できたものはつぶすわけには参りません。これをやはり出発点にして、新しい構造改革に善処しながら、発展の
方向をにらみながら、もう一度こういった点を根本から建て直す。その一番
重点は何かといえば、やはり貿易構造というものが日本の立場から見て商品別にどう変わってくるか、あるいは地域的にどう変わってくるか、それを世界の大きな貿易圏こいいますか
——今お話しのように、世界に大きくは共産圏というものが
一つ。それから北米、つまりアメリカを中心とした経済ブロック、それから欧州を中心とした経済ブロック、その三つのものが総合的にいろいろ相争っている地域が低開発地帯、こういうことになろうと思います。そういう中で、日本は地理上の
関係その他から、欧州やアメリカやソビエトみたいな、みずからここでいわゆるブロック圏を持つ条件というものは日本の周辺にはない、これは私が言わなくてもおわかりだろうと思います。低開発地域、東南アジアといえ
どもこれはない。これはまた同時にそういったものをかりにかかえてみたところが、日本の現在の経済の実力では、かりにかかえ得るとしても、これをまかなっていくだけの実力はまだないと私は思います。こういう点から見れば、こういう全体の世界の構造的な変化の中で、日本の国内における貿易政策の
方向をどうするのか。さらにそれを保障していくいわゆる貿易政策、こういったものを総合的ににらんだ再検討、その上に立って本年度の政策はどうあるのか、来年度はどうあるのかということでなければならぬと私は思うのであります。非常に意見が多くなりましたけれ
ども、それができていないと思います。非常に不安を感ずるのは、たとえばというと非常に問題を軽く扱うようですが、たとえば
政府の三十七年度の経済見通しと運営の基本態度というものが、
政府の予想通りにいったとして、三十八年度はどうするのかという問題がもっとシリアスな形で出てくると思います。と申しますのは、私がここでもって具体的にお聞きしたいのは、三十八年度の国際収支の見通しはどうなりますか、私は少なくともこういう問題があると思う。これは輸出が予定通り四十七億ですか、輸入が四十八億に押えられるとしても、この見通しによりますと、三十八年度当初の
政府の外貨手持ちは大体十一億四千五百万ドル、こういうふうに予想されております。これは御承知の通りアメリカの市銀から借りた一億ドルですか、それから輸出入
銀行から借りた一億二千五百万ドル、それからまだ借りたか借りないのかわかりませんけれ
ども、IMFから借りられる三億五百万ドル、こういったものを除いた計算です。私はこれらの
資金はいずれも短期借り入れ
資金だと思います。従って、普通の場合ならば、ことしのうちからこれは返済をしていかなければならぬ。しかし、その返済の大部分は次年度以降に持ち込されるとしますれば、この返済分を織り込んで来年度の日本の国際収支の手持ちはどのくらいになるのか、その場合に、その手持ち額の中から大体において
ほんとうに貿易面で使えるいわゆる高い流通性を持った金がどのくらいあるのか、これはそうよけいはないと思います。企画庁流の表現をしてみれば、国際収支の天井は今よりもっと低くなると思うのであります。そういう低い中で、片方においてはことしも三兆六千九百億の設備投資をする。去年までのものに比べてさらに大きくなる。これが大体企画庁の計算によりますと、白書を見ますと、百億ドルの設備投資があれば、これが二、三年後には百五十八億ドルの生産増になる。さらにそれをまかなうためにはどうしても十八億ドル
程度の輸入原材料、エネルギーの輸入増になってくるということを三十九ページか何かに書いてあります。これは
計画が少しラフで大きいと思います。その通りにはいかないまでにしても、相当大きな輸入増というものをしなければ、これをやっていくということはできない。その輸入を確保するためには、どうしても重化学工業製品を中心とした輸出市場というものをはっきりつかんでいかなければならぬ、開拓していかなければならぬ、それで、今のようにアメリカ中心あるいはヨーロッパ中心、あるいはソ連、さらに低開発地帯も重視する、こういうところがそういう重化学工業を中心としたいわゆる輸出の大幅な増進というものができるのかできないのか。さらにそれが伸ばされた場合に、再来年度、少なくとも今日の段階では、五年なり七年の先まで一応見通した、そのときそのときの見通しでそれを十分織り込んだ、一気には変更できませんから、まして保守党の立場からいえば、保守的の立場からいえば、それはできないと思います。できないと思いますが、少なくとも、そういう五、六年の長期の見通しなり
計画なりというものをはっきり立てた上で、いろいろな変化の条件というものを
一つ織り込んで、そうして輸出増の政策というものを進めていく態勢があって初めて安心ができると思うのであります。ところが、残念ながら、私の見たところでは、それがない。
そこで、私は第一にお聞きしますが、ことしはこの通りいくとかりにいたします。いくかいかないか相当疑問です。相当疑問ですけれ
ども、いくと仮定して、来年度の国際収支はどういう内容になりますか。借りたものの返済を織り込んで、しかもその中で、特に使える金ですね、その使える金というものはどのくらいになるのか、これを第一にお聞かせを願いたい。それからそれに見合って、貿易の規模も、来年はどのくらい輸入をふやして、輸出はどうするか、それではたしてまかなえるかどうか、経済成長をことしのように見てやれるのかどうか、こういう点について、
一つお見通しといいますか、御見当があれば、ぜひ聞かしていただきたい。目先のことも大事であります。しかしながらもう少し、少なくとも三年や四年、できればとにかく各
企業ともそれぞれ十年
計画の長期
計画を大きなところは立てておりますから、それを保障する
意味においても、どうか
政府が紙の上で一応ああいうものをこしらえたからいいじゃないかということでなくて、状況が急変をしていますだけに、その状況の急変に即応する
政府の生きた長期の見通しなり
計画なりというものは、どうしてもなくちゃならぬ段階にきていると思う。それが見えないのであります。この点はどうですか。