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1962-04-10 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月十日(火曜日)     午前十一時五十六分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 藤本 捨助君 理事 柳谷清三郎君    理事 小林  進君 理事 五島 虎雄君    理事 八木 一男君       浦野 幸男君    佐伯 宗義君       中山 マサ君    永山 忠則君       楢橋  渡君    淺沼 享子君       河野  正君    島本 虎三君       田邊  誠君    滝井 義高君       中村 英男君    吉村 吉雄君       井堀 繁男君    本島百合子君  出席政府委員         労働政務次官  加藤 武徳君         労働事務官         (大臣官房長) 松永 正男君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      大島  靖君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    青木勇之助君         労働基準監督官         (労働基準局監         督課長)    小鴨 光男君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金課長)    東村金之助君         労働事務官         (職業安定局調         整課長)    北川 俊夫君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  和田 勝美君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部企画課         長)      藤繩 正勝君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 四月十日  理事井村重雄君同日理事辞任につき、その補欠  として澁谷直藏君が理事に当選した。     ――――――――――――― 四月九日  全国一律八千円の最低賃金制確立に関する請願  (緒方孝男紹介)(第三六八四号)  同(勝間田清一紹介)(第三六八五号)  同(佐々木更三君紹介)(第三六八六号)  同(肥田次郎紹介)(第三六八七号)  同(松井政吉紹介)(第三六八八号)  同(横山利秋紹介)(第三六八九号)  同(武藤山治紹介)(第三六九〇号)  同外百六十件(有馬輝武紹介)(第三七四八号)  同(加藤勘十君紹介)(第三七四九号)  同外一件(河野正紹介)(第三七五〇号)  同(山中日露史紹介)(第三七九九号)  同外五件(山花秀雄紹介)(第三八〇〇号)  同(和田博雄紹介)(第三八〇一号)  同外二十五件(猪俣浩三紹介)(第三八四九  号)  同(足鹿覺紹介)(第三九四九号)  同外三件(岡田春夫紹介)(第三九五〇号)  同外一件(栗林三郎紹介)(第三九五一号)  同外二件(原茂紹介)(第三九五二号)  同(森本靖紹介)(第三九五三号)  同外一件(山中吾郎紹介)(第三九五四号)  同(小林進紹介)(第四〇二〇号)  同外一件(佐野憲治紹介)(第四〇二一号)  未帰還者対策に関する請願首藤新八紹介)  (第三六九一号)  離島及び無医村の医療対策に関する請願松野  頼三君紹介)(第三六九二号)  引揚医師特例受験資格に関する請願松野頼三  君紹介)(第三六九三号)  同(柳谷清三郎紹介)(第三七六四号)  同(西村力弥紹介)(第三七九八号)  同(松浦周太郎紹介)(第三八九六号)  同(小澤佐重喜紹介)(第四〇六七号)  結核予防法による命令入所予算増額に関する請  願(田中角榮紹介)(第三六九四号)  医療費予算増額等に関する請願島本虎三君紹  介)(第三六九五号)  同(武藤山治紹介)(第三六九六号)  同(久保三郎紹介)(第三七五二号)  同(島本虎三紹介)(第三七五三号)  同(島本虎三紹介)(第三七九七号)  同外一件(島本虎三紹介)(第三八五四号)  同外二件(中嶋英夫紹介)(第三八五五号)  同外三件(島本虎三紹介)(第三九五五号)  同外八件(肥田次郎紹介)(第三九五六号)  同外四件(藤原豊次郎紹介)(第三九五七  号)  同(森本靖紹介)(第三九五八号)  同外三件(島本虎三紹介)(第四〇二二号)  同外二件(加藤清二紹介)(第四〇六八号)  引揚者給付金等支給法改正に関する請願(宇  野宗佑紹介)(第三七五一号)  同外二件(小川平二紹介)(第三八八四号)  同(佐伯宗義紹介)(第三八八五号)  同(正力松太郎紹介)(第三八八六号)  同(關谷勝利紹介)(第三八八七号)  同(内藤隆紹介)(第三八八八号)  同(中曽根康弘紹介)(第三八八九号)  同(西村関一紹介)(第三八九〇号)  同(福田赳夫紹介)(第三八九一号)  同(福永一臣紹介)(第三八九二号)  同(藤枝泉介紹介)(第三八九三号)  同(松村謙三紹介)(第三八九四号)  同(纐纈彌三君紹介)(第三九五九号)  営利職業紹介事業の求職、紹介手数料改正に関  する請願鈴木仙八君紹介)(第三七五四号)  同(中野四郎紹介)(第三七五五号)  未帰還者留守家族等援護法による療養給付期間  延長等に関する請願外一件(中曽根康弘君紹  介)(第三七五六号)  国民健康保険改善に関する請願外一件(中曽  根康弘紹介)(第三七五七号)  国立医療機関の医師、看護婦増員等に関する請  願(中曽根康弘紹介)(第三七五八号)  生活保護法基準額引上げ等に関する請願外一  件(中曽根康弘紹介)(第三七五九号)  結核予防法改正及び予算増額に関する請願(  中曽根康弘紹介)(第三七六〇号)  結核回復者対策確立に関する請願中曽根康弘  君紹介)(第三七六一号)  健康保険改善に関する請願中曽根康弘君紹  介)(第三七六二号)  労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正  に関する請願外二件(藤原節夫紹介)(第三  七六三号)  同(大村清一紹介)(第三八五〇号)  同外一件(小枝一雄介紹)(第三八五一号)  同(橋本龍伍紹介)(第三八五二号)  同(広瀬秀吉紹介)(第三八五三号)  同(逢澤寛君紹介)(第三八八一号)  同(山崎始男紹介)(第三九六四号)  同(藤井勝志紹介)(第四〇二五号)  同(黒田壽男紹介)(第四〇六九号)  求人難打開に関する請願栗原俊夫紹介)(  第三八五六号)  労働者災害補償保険法及びじん肺法の一部改正  に関する請願(稻葉修君紹介)(第三八八二  号)  生活保護者盆見舞金支給等に関する請願(有  田喜一紹介)(第三八八三号)  療術の制度化に関する請願外一件(野田卯一君  紹介)(第三八九五号)  老人福祉法制定に関する請願島村一郎君紹  介)(第三九六〇号)  同(内藤隆紹介)(第三九六一号)  同(田中正已紹介)(第四〇二三号)  同(中島茂喜紹介)(第四〇二四号)  結核予防法による命令入所予算増額に関する請  願(渡海元三郎紹介)(第三九六二号)  労働者災害補償保険法の一部改正に関する請願  (三宅正一紹介)(第三九六三号)  環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律  の一部改正に関する請願井村重雄紹介)(  第四〇一九号)  戦争犯罪関係者補償に関する請願江崎真澄  君紹介)(第四〇六六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月六日  生活保護基準引上げ等に関する陳情書  (第六一五号)  結核予防法による命令入所予算増額等に関する  陳情書  (第六一六号)  同  (第六一七  号)  同  (第六一八号)  同  (第六九一号)  児童扶養手当事務費全額国庫負担に関する陳情  書  (第六四一号)  浜松市に労災病院設立反対に関する陳情書  (第六四二号)  国民健康保険制度充実等に関する陳情書  (第六四三号)  臨時医療報酬調査会設置法案反対に関する陳情  書  (第六六四号)  国民健康保険国庫補助増額等に関する陳情書  (第六六五号)  結核回復職業訓練生給食費国庫補助に関する  陳情書  (第六六  六号)  老人福祉法早期制定に関する陳情書  (第六八七号)  同  (第六八八  号)  同  (第六八九号)  同(第六九  〇号)  全国一律八千円の最低賃金制確立等に関する陳  情書  (第六九二号)  同  (第六九三号)  同  (第六九四号)  結核予防法による命令入所予算増額に関する陳  情書  (第七二五号)  国民健康保険財政健全化に関する陳情書  (第七二  六号)  同  (第七二七号)  社会保障制度整備充実に関する陳情書  (第七二八号)  社会福祉対策確立に関する陳情書  (第七二九号)  失業対策事業の改革に関する陳情書  (第七三〇号)  生活保護法による被保護者盆見舞金支給に関  する陳情書  (第七三一号)  し尿処理施設に対する国庫補助増額に関する陳  情書  (第七三二号)  町村の環境衛生施設整備に関する陳情書  (第七四五  号)  国民健康保険制度改善に関する陳情書  (第七五九  号)  流行性感冒対策確立に関する陳情書  (第七六〇号)  じん肺法改正に関する陳情書  (第七六一号)  外傷性せき髄障害者単独法制定に関する陳情  書  (第七六二号)  ごみ処理に対する全額国庫負担陳情書  (第  七六三号)  全国一律八千円の最低賃金制確立に関する陳情  書(第七六四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  港湾労働者の雇用安定に関する法律案五島虎  雄君外十二名提出、衆法第二二号)  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りをいたします。  理事井村重雄君より理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、同君の理事辞任を許可することに決しました。  つきましては、理事に一名欠員を生じましたので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、補欠選任につきましては委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、渋谷直藏君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 中野四郎

    中野委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  6. 吉村吉雄

    吉村委員 私は、きょう、労使関係正常化ということをどのようにして実施をして実現していくか、こういう立場に立っての質問をしていきたいと思うのですが、これから私が質問をする内容は、現象的には一地方に限られた問題ではございますけれども、その背景なりその底流というものを見て参りますと、今労働大臣を初め政府が強調いたしておりますところの労使の正常な関係維持、こういうものに非常に大きな関連を有するというふうに考えまするし、同時に、日本の特徴とも考えられますところの中小企業の問題、これに関連する中小企業労使の問題、こういうことに関係をいたしますので、このような点についてどういうように考えておるのかということを背景としながら、具体的な問題について当局の見解をお聞きしていきたいというふうに考えます。  なお、本日は大臣あるいは局長等々も他の要件があって当委員会出席ができないそうでございますけれども、本日の状況は、私が申し上げるまでもなく、大きな闘争が行なわれておるという状態でもございますから、出席でき得ない事情については、私は了としておかなければなるまい、こう考えます。  それからいま一つは、きょうの私のこれからの質問の過程とその結果におきまして、場合によっては、現地実態というものを調べなければ当委員会として適正な判断ができ得ないというようなことにも相なるのではないか、このようにも考えておりますので、そういう際には委員長の方で十分善処をしていただけるように、前もってお願いを申し上げたいというふうに考えています。  実は労働省の方にも、以前から私はこういう問題があるということを連絡して、善処方を要望しておいたのでありますけれども、その真意は、委員会で問題を取り上げるということよりも、問題を解決していくということの方が私どもにとって大切だというふうに考えましたから、前もって連絡をしておいた問題ですが、青森県の八戸市にありますところの八戸鋼業、ここでは、約三百日くらいになりますか、相当長期争議が行なわれておるわけです。この八戸鋼業争議経過というものを振り返ってみますと、四、五年前までは中小企業の中の労使問題としてこういう形態があったわけでございますけれども、このごろは労使関係も、当局指導等もありましてやや正常になりつつあるのでありますが、八戸鋼業争議に関しては、非常に陰性化しておるということが特徴的ではないか、同時に非常に長期にわたっておる、こういうことも特徴的であろうと思うのです。  まず初めにお尋ねを申し上げておきたいと思うのは、この八戸鋼業争議実態について、労働省出先機関の方から本省の方にどういうような報告があり、そして出先機関としてはどのような対処をなさっておるのかということについてお尋ねをしておきたいというふうに考えます。
  7. 青木勇之助

    青木説明員 お答え申し上げます。  まず第一点でございますが、八戸鋼業争議経過につきましては、逐次現地より報告が参っております。その概要を御説明申し上げますと、当事者は八戸鋼業株式会社従業員が二百三名で、鋼塊丸棒鋼を製作いたしております。組合二つでございまして、八戸鋼業労働組合、これが組合員九十三名、鉄鋼労連加盟でございます。別に八戸鋼業従業員組合がございまして、組合員六十七名で中立、こういう構成に相なっております。  争議経過でございますが、組合側から昨年の九月十五日に家族手当危険手当退職金新設等要求いたしまして、さらに十二月二十八日に登りまして、越年資金として一時金五万円の要求をいたしました。この要求に対しまして会社がほとんど全面的に拒否いたしましたので、その後数次の団交を持ったのでありますが、事態が進展を見ませなかったため、組合側といたしましては十一月十一日に十五分ストを行なったのを皮切りに、十一月十三日、十六日にそれぞれ各班二時間のストライキ、さらに十八日から連日指名スト等を実施した模様でございます。この組合側ストライキに対抗いたしまして、会社側は十一月二十八日にロックアウトを通告いたしております。これに対しまして組合側は、会社側ロックアウトを認めず就労態勢をとりまして、工場内の泊り込み等を行なったようであります。しかしこの泊まり込みについては、数日後に中止をしたという報告が参っております。こういう事態に対処するために、会社といたしましては、昨年十二月五日に地方裁判所に、工場内の立ち入り禁止泊まり込みの退去並びに妨害排除仮処分申請をいたしました。この申請を受けました地裁は、十二月九日にまず地労委あっせん申請をしてはどうかという勧告を行ないました。この地裁の励告を受けまして、労使双方は十二月十二日に地方労働委員会あっせん申請をいたしております。しかしながら、このあっせんは十二月十三日以降三回にわたって行なわれたのでございますが、会社側がいわゆる平和協定争議責任の問題を持ち出しましたことから、地労委あっせんの継続を困難と見まして、一時あっせんを中断いたしました。地労委あっせんがこのような結果に終わりましたので、地裁におきましては、十二月十九日に、会社が八百万円を供託したときに効力を生ずる、ただし組合側が逆に三百万円を供託すれば執行は取り消されるという、あまり従来例を見ない判決でございますが、そういう趣旨の仮処分決定を行なっております。この決定に基づきまして組合側は三百万円を供託いしましたので、結局この地裁仮処分決定執行は取り消しと相なりました。この点については後ほども一応御説明申し上げますが、会社高等裁判所異議申し立てを行なっております。十二月十三日以降あっせんを行ないました地労委は、一時中断して事態を見ておったのでありますが、これ以上あっせんを行なっても妥結の道がないということで、十二月二十七日にあっせんを打ち切りました。労使双方が直ちに争議態勢を解き、即時団交を開いて問題の解決に努力するようにという勧告を行なっております。その後十二月中旬、下旬にかけまして労使双方において団交が行なわれておりますけれども、先ほど申し上げました平和協定の問題及び争議責任追及、この二つがネックになりまして、団交妥結を見るに至っておりません。そして一方、地裁決定に対しまして会社から異議申し立てを受けました仙台高裁は、二月二日及び二月十二日の二回にわたりまして和解勧告を行なっております。しかしながら、この和解勧告も、平和協定の問題と争議責任の問題で労使対立いたしまして、結局不調に終わりました。こういう事態推移にかんがみまして、仙台高裁は、二月二十八日に仮処分決定をいたしております。すなわち、地裁がいたしました三百万円を供託すれば執行を停止するというのを取り消しまして、会社側の主張を認めた決定をいたしております。この決定に基づきまして、三月七日に仮処分執行が行なわれております。なおその間、三月三日四日におきまして労使双方団交が持たれておりますが、同じく責任追及の問題でこの団交は不調に終わっております。  こういう争議推移にかんがみまして、労働省といたしましても現地労政課の方へ連絡をとりまして、事態の平和的円満な解決を促進するようにということを指示いたしておりました。県の労政課におきましても事態推移を見守っておりまして、その間、労使双方は県の労政課に参りまして、労政課長よりの争議早期解決の勧奨を受けて、団交しようというような事態もあったのでありますが、しかしながら、団交でもってはどうしても解決できない、こういう事態でございましたので、三月の七日に地労委職権あっせんを開始いたしております。そうして三月の十五日に、労使は一時現在の争議状態を改めて――端的に申しますと一時休戦をして、平和的な団交でもって事態解決をはかるようにというあっせん案労使双方に提示したわけです。これに対しまして、三月の十九日に労使双方から回答が出まして、会社側は拒否、組合側は受諾という回答を出しております。その後、労使対立がなお続いておったのでございますが、三月三十一日に組合から、安定法違反ないし労働基準法違反で告発が行なわれておりまして、労使関係がますます対立を深めている、こういう関係にございました。四月四日に至りまて、県の経営者協会県労が話し合いを持ちまして、事態収拾策を検討いたしまして、平和協定を一年間のものを結ぶということで、県協県労の間で妥協案ができました。この案に基づいて、会社側の説得に当たったわけでございます。しかしながら、会社側としては、当該平和協定の保証はだれがするのかというような問題に関連いたしまして、結局この県経営者協会及び県労事態収拾策というものも失敗に終わって、現在まで事態が引き続いてきておる、こういう状況に相なっております。
  8. 吉村吉雄

    吉村委員 大体今説明があったような経過をたどっておるわけでありますけれども、この争議特徴と見られるのは、これを経営しておる社長さんは他に幾つかの企業経営をしておるそうです。しかし、この企業の仕方が非常に上手というのですか、大へんうまくいきまして、わずか十年足らずだそうでありますけれども、青森県一の多額納税者になっておる、こういうふうにいわれている方が経営をしておるそうでありますが、そこで働いておる労働者実情というものを見ると、非常に前近代的な労務管理が行なわれている、こういうふうにいわれて、地方においても大へん問題になっておった会社のように私としては聞いておるわけです。何百人という人を雇用しているのにもかかわらず、いまだに全部日給制、こういう制度を採用しておりますし、それからまた、その賃金等につきましても、鉄鋼労連傘下でありますから重労働でございますけれども、この賃金というのは平均して大体四百円前後、従って一カ月の収入というのは一万円以内ということになる。これをまかなうためには、どうしても超過勤務をしなければならないということになりますから、実情を調べてみますと、平均して各人が毎月五十時間から百時間くらいの超過勤務をしいられておる。   〔委員長退席藤本委員長代理着席〕 しかも、本省の方でもおわかりになっておると思いますけれども、ここは災害の発生が非常に多い事業所でありまして、県の監督署の方から特別事業所指定をされておるという、そういう特徴的な事業所であるというように聞いておるわけです。この争議の最も大きな原因となっているものは、今私が申し上げましたような前近代的な経営者の感覚、そうして労働者についてはしぼれるだけしぼっていこうという、そういうような考え方というものがその裏にひそんでおる。そのために、監督官庁であるところの基準監督署の方でも見かねて、災害多発事業所として特別の管理を行なっておる、こういう状態であるところに今回の争議の最も大きな原因がひそんでおるというふうに考えておるわけです。  さらに、先ほど説明がありましたけれども今二つ組合があるというふうに言われましたが、いわゆる第二組合というものは六十何名かで組織をされておるそうでありますけれども、この第二組合構成員というものは労働者側に立ち得るような人ではなくて、いわば会社代理になり得るような人、極端な例でありますけれども、これは間違いがあれば私は取り消しますけれども、この第二組合組合長という人は、工場長代理を勤める人が第二組合組合長をやっておる、こういう話ですらあるわけです。こういうようなことでは、私は、単なる争議というよりも、これはもう人権問題的な様相がそこにひそんでおる。それを改めていかない限り、この争議はいつまでたっても解決しないんじゃないかというふうに考えておるわけです。そこで、このことは経営者の頭の問題でありますから、監督官庁にとやかく言うてみても始まらないと思うのでありますが、しかし出先機関としては、私の今申し上げましたような実情というものがもし今回の争議背景になっておるとし、あるいはこれを長期化するところの原因となっているというように理解をするとするならば、これは相当積極的な指導というものを行ない、あるいは場合によっては現地臨検措置等も十分行なって、基準法違反事項のないような措置がとられてきたというふうに考えざるを得ないのでありますけれども、この基準法上の安全衛生規則、こういう点については一体どういうような現地監督を行なってきたのか、この辺、特別事業所指定をされておるはずでありますから、その指定をしてからの結果、どういうふうになっておるかということをお聞きしておきたいと思うのです。
  9. 小鴨光男

    小鴨説明員 ただいま先生御指摘の事業所につきましては、これは災害多発事業所指定いたしまして従来から指導いたしておるところでございますが、なお急速に、この基準法の特に安全衛生規則関係の順守が行なわれておらないということで、ことしの一月二十三日に、実は組合長から私どもの現地監督署に申告がございました。その内容は、揚重機、起重機の無資格者がこれを運転しておるという点でございます。これにつきまして一月二十六日に監督を実施いたしまして、その結果は、技術者が、有資格者が昼食時間の三十分間に起重機の運転をやっておったという点が一つございます。従来からもいろいろの違反がございましたので、司法事件の前段階としての請書をとってございます。それから三月十四日に起重機の玉掛けの仕事――この玉掛けの仕事はやはり資格を有する者でなければつかせてはいけないこととなっておりますが、これについての違反が発見されました。これにつきまして直ちに是正の措置をとらせてございます。こういうふうに安全関係の違反が相当ございますので、三月の二十二日と二十三日の二日にわたりまして、安全関係の部分監督を精密に実施しております。三月三十一日に至りまして相当数の違反につきまして勧告いたしましたところ、当時は、それらの違反について全部是正したというふうに報告を受けております。こういうような状況で、ただ違反を指摘するというだけではなかなか効果がございませんので、先ほど先生御指摘の通り、監督署の方で災害多発事業所指定いたしまして、目下指導中でございます。
  10. 吉村吉雄

    吉村委員 この特別安全管理指定事業所指定したのはいつですか。
  11. 小鴨光男

    小鴨説明員 報告書が近く参ることになっておりますが、その正確な日時はちょっとわかりません。
  12. 吉村吉雄

    吉村委員 今のお話によりますと、本年の一月二十七日に組合側の要請に基づいてという話でありますが、特別事業所指定されたのはずっと以前のはずだと思うのです。それは先ほど私が申し上げましたように災害の多発事業所であるために、県の監督署の方で、特別に措置をしていかなければならぬという考え方からこういう措置をとってきたと思うのです。問題は、私は、そういうような形式的に特別安全管理事業所指定するだけで今日まで放任をしておくというところに問題があると思うのですよ。今回組合の方からいろいろ問題が提起されて、出先機関としては臨検等を行なったということでありますが、それまでの間は何ら、全然といってもいいくらい特別の措置も行なわれていない。ですから、あなた方の方にも来ておると思いますけれども、青森県におけるところの総死傷者件数二百二十九件のうち、この八戸鋼業だけで五十二件を占めておるという実情にある。問題は、現地監督署監督作業の問題でありますが、私も現地実情をある程度知っておりますけれども、やろうと思っても人手がなくてなかなかでき得ない、こういう実情にあることはわかります。従って、こういうようなことをそのまま放任しておくところに非常に大きな問題がある。これは単に青森県の八戸鋼業だけの問題ではなくて、炭鉱におけるところの多くの災害というものについても、労働省監督官が人手が不足のために十分の監督ができ得ないというようなことが再三指摘をされておりますし、各地方においてそういうことがいわれておるわけです。そういうことが原因のすべてであるかどうかはわかりませんが、非常に災害が多い、しかも災害が多いということは、いわば労働法準法違反ということがそこに内在をしておるということを逆に意味するわけでありますから、こういう点については、一つ八戸鋼業だけの問題ではなしに、十分注意をしてもらわなければならないと思うのですが、この点、次官としてはどうでしょうか。この八戸鋼業は一つの例として出てきた問題であり、これが争議の一つの大きな原因になっておる、こういうふうに考えられますので、全体としてもう少し基準法を完全実施するという機能を拡充していくために、労働省としては具体的な措置をとっていかなければならぬではないかというふうに考えておるのでありますけれども、こういう点についてはどのような対策をこれからお立てになる予定ですか。
  13. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 労働省の基準監督行政の重点は、もとより災害防止等がその中心であるわけでありまして、特に中小企業におきまする災害の多発状況等にかんがみまして、中小企業の安全衛生関係管理監督にはうんと重点を置いて参っておるつもりでございます。そこで監督の強化ということのみではもとより足らないのでありまして、経営者等に対しまして、安全施設等を十全に行なうような資金的な援助等も必要であることは当然でございます。そこで、たしか去年の九月一日からだと思いますが、安全施設につきまして、労働省が融資のあっせんを行なう等の措置もとって参っておるのでございます。また、三十七年度の重点の施策といたしましても、特に中小企業の安全衛生関係管理監督という点にできるだけの配慮をいたしていく、かような基本の方針で参っておるような次第であります。
  14. 吉村吉雄

    吉村委員 そこで十分基準法の完全実施をされていくように、この点は現地の方を指導すると同時に、現地が活動し得るような、そういう人的なあるいは機構的な体制を強化してもらいたい、このようにこの問題と関連をして強く要望しておきたいと思うのです。  それからこの八戸鋼業地方労働委員会あっせんあるいは裁判所等のあっせん、こういうものが数回にわたって行なわれたわけでありますけれども、いずれの場合といえどもこれが成立をしなかったということの原因は、会社側の方で平和協定を結ばなければだめだということが一つ。いま一つは、従来のこの争議の責任者の解雇処分あるいは懲戒処分ということを組合が認めなければだめだという主張をしておるところに、第三者機関あっせんというものが成立をしない大きな原因がある。このように考えられますし、ただいまの報告によりましても、そのように言われておるのでありますけれども、そこで私はお伺いしたいのですけれども、昨年の九月ですか、組合要求を提出してから今日までの間にいろいろな紆余曲折がありましたが、第三者機関あっせんに入ってから組合はどういう態度をとったかといいますと、賃金の引き上げあるいは年末手当の問題等のいわゆる経済要求の問題については、この際全部撤回をする、そうしてとりあえず、そのような紛争事項については団体交渉によって将来やっていくことにして、就労を先にしようではないか、こういうことで組合側の経済要求というものを撤回しておるのにもかかわらず、会社側の方としては、先ほど申し上げましたように、平和協定三カ年の締結、それから組合の責任者の責任追及、こういうことを骨子として、それがのまれなければロックアウトを続けていくという態度をとっておるやに承っております。そうなって参りますと、このロックアウト組合側ストライキに対する対抗手段という性格ではなくて、会社側要求会社側の言い分を組合側に認めさせる、そのためのロックアウトというふうに、その性格は変わってきたというふうに考えざるを得ないのでありますけれども、もしそうだとするならば、そのような会社措置は法的に見て許されるのかどうか、ここを一つお聞かせ願いたいと思うのです。
  15. 青木勇之助

    青木説明員 使用者側の争議手段としてのロックアウトの正当性の問題につきましては、現在のところ裁判所の判例も一貫しておりません。しかしながら、学説及び通常の多数の裁判例におきましては、組合側争議行為を行なっておるか、あるいは行なうおそれがきわめて強いという場合におけるロックアウトは正当である、しかしながら、いわゆる一般にいわれております攻撃的ロックアウトは正当でない、こういう考え方を持っております。ただし、最高裁判所でもってまだ確定的な判例は出ておりません。今回の事案がはたして攻撃的ロックアウトに該当するや、あるいは防御的と申しますか、消極的ロックアウトに該当するかということは、今後の組合側なり周囲のあらゆる客観情勢を判断して決定されるべき筋合いのものでありまして、今ここで一がいに、直ちに私から当該ロックアウトが違法であるとかなんとか言うことは、ちょっと言いかねると思います。しかし、一般論といたしましては、先ほど申し上げましたように防御的な、いわゆる組合ストライキを行なっておるか、あるいはストライキを行なうおそれがある態勢のもとにおけるロックアウトは正当である、こういうふうに裁判所は判示いたしております。
  16. 吉村吉雄

    吉村委員 このロックアウトの解釈については、いろいろな説があるということは私も承知をしておるのでありますけれども、今の八戸鋼業の問題につきましては、第三者機関、すなわち地労委の方で職権あっせんを出して、労使双方が、従来の経済要求なりあるいは会社側の言い分というものは一応お互いに撤回をして、そうしてロックアウトを解き、組合側争議態勢を解いて、自後の問題については団体交渉にというあっせん案が出されておる。組合は、これは不満ではあるけれども、事態の円満解決のために受諾をしておる。ところが会社の方は、先ほどのような理由を付してこれを受諾をしない、こういう状態になっておるわけです。これではいつまでたっても問題が解決していかないということになりますから、そこで法的な解釈については最終的に裁判所が行なうでありましょうけれども、非常に陰性化して長期化して参ったところのこの八戸鋼業の今日の段階において、第三者機関あっせん案が出た、こういう時期において労働者の利益と地位の向上を守っていこうとするところの組合法の精神、こういうものから考えた場合に、労働省としてはこれに対して何らかの行政的な指導、行政的な監督、こういうものをしていかなければ、法的にはこうだと言うだけでは問題の解決にならないし、あるいはまた、労働省労働者の利益のためにということにも相ならないのではないか、このように考えるのでございますけれども、この具体的な問題について労働省としては一体どのように考えるのか、ここを一つお聞きしておきたいと思うのです。
  17. 青木勇之助

    青木説明員 確かに、ただいま先生おっしゃいましたように労使関係が紛糾いたしまして事態がどうにもならないような状態に立ち至っておるという場合に、当該労使間におきまして、平和的に話し合いが進みまして事態解決されることは、きわめて必要なことと思います。行政機関といたしましては、労働争議に対しては中立の立場を堅持するということは、常々この席において私らも一応申し上げておるところでございます。労働争議が発生いたしました際は、政府機関として、あるいは地方公共団体の機関として設けられておりますところの労働委員会によって、所定の手続に従って紛争議を平和的に解決していくということが、まず第一義的に考えられるべきものと思います。そういう観点から、労働省といたしましても、青森労政課の方へ連絡をとりまして、労働委員会の入る前にも労使双方と話し合いをいたしまして、事態の円満解決方について勧奨をいたしております。しかしながら、そういう行政機関の勧奨ではどうしても解決しないというようなことから、労働委員会職権あっせんという一つの法的なルールに乗ったわけでございます。もちろんあっせん案は、先生御存じのように、労調法上当事者双方を拘束するものではございません。しかしながら、労働委員会という機関が提示されました当該あっせん案というものは、できるだけ尊重いたしまして、それによって事態解決することが必要と考えております。しかし、不幸にしてあっせん案による解決がつかなかった、そうして事態が今日まで及んでおるわけでありますが、われわれといたしましては、さらに青森県の方とも連絡をとりまして、一日も早く解決するよう努力いたしたい、こういうふうに考えております。
  18. 吉村吉雄

    吉村委員 もちろん中立の立場をとっているということについてはわかります。しかし、労働行政を行なっていく立場から見まして、あるいは労働大臣の政策の基本をなしていくものは、労使の正常な関係の樹立ということが強調されておりますから、私は今回の具体的な問題については、どちらがいいとか悪いとかという態度をあなた方に求めることは無理だとは思うのです。しかし、第三者機関がこういうような職権あっせん案を出しておる。そのあっせん案については、常識的に考えてみましても、組合側が、要求を提出しておったけれどもその要求を全部取り下げて、そうしてお互いに就労をし、今後の問題については団体交渉によってやっていこうじゃないか、そういう態度を示しておるにもかかわらず、会社側の方としては、早く平和協約をのまなければだめだとか、あるいは組合の責任者の解雇をのまなければだめだというような態度をとっておる、そういうものを中立機関であるからといって放置しておいたのでは、私は、正常な労使関係の樹立という政策には反することになるだろうと思うのです。やはり限度というものはあると思いますけれども、この点については、だいぶ長いことでありますから、ここで問題になる以前に、もっと積極的に、私は十分現地の方の指導をしてしかるべきではなかったかというふうに考えますし、これからそういうような措置をとってもらわなければならない。というのは、先ほども指摘を申し上げましたように、たとえば傷害件数の多発の問題等についても、組合側の方から臨検要請があって初めて臨検措置をとられる、そうして調べてみたところ、基準法違反が二十何カ所もある、こういうようなことでは、幾らここで正常な労使慣行ということを口にされても、あるいは現地指導を十分にすると言われてみても、これは言葉だけにすぎないということになってしまうと思うのです。私は既往の問題はやむを得ないというふうに考えますけれども、そういう点を十分反省されて、大臣が常々強調しておりますところの正しい労使関係の樹立というためには、会社側の今とっておる措置というものは、常識的に考えて、是か非かということについては判断ができると思うのです。こういうことについて、中立だからといってものも言わないというのは、私は正しい意味での中立じゃないと思うのです。正しい労使慣行樹立という観点に立って、どうあるべきかという、そういう立場での中立的な発言、これが非常に必要な措置じゃないか、このように考えますから、この点は一つ十分現地の方の監督強化をして、一日も早く正常な関係に戻るように努力をしていただきたい、このように考えるのでございますけれども、その点は、その要望にこたえられると思いますが、どうですか。
  19. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 労使関係正常化は、政府といたしましても、もとよりそうなくてはならぬ、かような基本の方針で参っておるわけでありますし、率直に申しまして、中小企業労使関係におきましては、いまだ必ずしも正常化されておらない、近代化されておらない、かように考えられる節がないでもないのでありまして、今後とも労使関係の近代化、正常化、なかんずく中小企業正常化につきましては、ずいぶんと努力をして参りたい、かように考えるわけであります。
  20. 吉村吉雄

    吉村委員 次にお伺いしたいのは、組合側争議行為中に、この会社の経常しておる他の会社工場従業員を相当数、雇い入れといいますか、労働者を流入いたしまして操業を開始しておる、こういう状況にありますけれども、これは職安法の四十四条の精神からして、私は少し問題ではないか、極端に養えば、これは職安法四十四条の違反ではないかというふうに考えるのでございますけれども、そういう事実を知っておるかどうか。知っておるとするならば、それは一体職安法の四十四条に違反をすると考えるか考えないか、その点どうでございますか。
  21. 北川俊夫

    ○北川説明員 御指摘の通り、職業安定法の四十四条で、供給契約に基づきまして労務者を他の業者に供給することは、労供事項としまして禁止いたしております。ただ先生の今あげられました例のごとく、たまたまそこと下請関係その他商行為関係がございまして、臨時応急的に自分のところの社員を応援に出す、そういうことはこの労供の条項には違反しない、こういうふうに考えます。
  22. 吉村吉雄

    吉村委員 その場合の自分の方の会社というのは、一つの企業の中で争議が行なわれておって、その企業の中の社員とかあるいはその従業員とかいう場合ならば、今の説は私は成り立つと思うのですよ。別個の企業の場合、企業にいるところの従業員を、同一の経営者だからといって流入するということは、これは労働者を保証する労働組合法の精神、こういうものから見ても、スト破りでありますからこれは禁止条項だと思うのです。そうじゃございませんか。
  23. 北川俊夫

    ○北川説明員 今の問題は、同一経営者が、他に別個の法人格を有する会社を持っておるその従業員を、争議の場合に操業を継続するためにこちらの作業をさせる、そういうことでございますね。その点につきましては、職業安定法で禁止すべき問題ではないと思います。
  24. 五島虎雄

    五島委員 ちょっと関連をして。そうすると、ストを破るという組合ができる。ある点、組合の主張が非常に強いというような場合には、別個に会社を作って、そうして一つの当該事業場における組合ストライキを正当に敢行した場合は、同列の別個の会社従業員はおれの従業員である、従って第一組合ストライキで事業がストップするから、隣なら隣の従業員をこっちに持ってきて作業を継続するというようなことが、これは法の違反事項ではないわけですね。ところが職業安定法によれば、争議中の職業紹介はしないという条項があるはずです。そうすると、このストライキは法によって保護されるのにかかわらず、そういうことが認められているということならば、争議行為を法律が保護することではなくて、どんどん破れるということになるのだが、その点はどうなりますか。
  25. 北川俊夫

    ○北川説明員 御指摘のように、安定法の二十条では、争議行為に安定機関が積極的に介入しないように、争議期間中には職業紹介を行なわない、こういう条項がございます。これはやはり御指摘のように、紛争の中に、中立的立場にある安定機関が介入すべきではない、こういう大原則でございます。しかしながら、今の御指摘のように、経営者が自分の系列会社従業員を連れてくる、あるいはみずからの力でほかから人を募集して連れてくる、そういうことは、今の争議権を尊重すべきであるという思想がありますが、片や経営者の方で、争議行為中といえども操業を継続するということについてはそれだけの権利を持っておりますので、この点については、法律でどうこうという問題ではなかろうかと思います。
  26. 五島虎雄

    五島委員 調整課長の解釈は解釈なりに一つの理屈があるかもしれません。しかし人を募集するのにあたっては、文書募集、門前募集、それでも職業安定所ではそれを事後においても承認しなければならないでしょう。全くそれを放置するということは労働行政の中にはないはずですね、職業安定法の中には。この問題について、労働争議ということ自体を――労働争議の正当、不正当は判断の余地があるわけですけれども、正当にして行なわれる争議行為を、この争議行為は職場をストップさせるということにおいて対等の地位を労働者に付与しているわけです。今の御解釈ならば、ストライキストライキで正当だから、正当なる行為をすればいいのだ。しかし、片や経営者の権利であるから、自分の従業員だったら連れてきても差しつかえない。これが同一職場でなくて、同一系統の従業興だったらいいということの判断ならば、鉄鋼会社のコンビナートなんかが行なわれる場合、ストライキを一つの部分がするというような場合に、労働者ストライキをしたって絶対に何にも打撃を与えることはできない。この労働争議というのは、打撃を与えることによって、労働者経営者と対等の地位を確保せしめんとするところの労働法の趣旨なんです。それを労働省自身がそういうようなことを言うのならば、そういう解釈ならば、たとえば私鉄が争議をした、しかし、東京急行なんてずいぶん同一系統のあれがありますから、そうすると、運転士でも車掌でも連れてきて電車を動かしたっていいということになります。そうすると問題は、同一従業員であるかどうかというような問題はあるでしょう。しかし、下請であろうとも、その労働者は何々株式会社の何々に採用されているのであって、その他の系列の会社では何々会社の何々に雇用条件が明確化されて雇用関係が結ばれているので、当該ストライキ八戸鋼業ですか、従業員ではないのだったら、そういうように自由自在に労働者を使ってスト破りができるというようなことの解釈は、ちょっと当たらないのじゃないかと私は解釈するのです。これは労働法の、労働者を守る法律の中に、全体的に、労働行政全体としてそういう解釈で労働争議に対する臨み方をされるのならばちょっと間違いじゃなかろうか、こういうように思うのです。しかし平常状態のとき人が足りない一般に募集することができない、だからよその会社の社長と当該会社の社長、経営者が相談して、しばらく応援をしてくれないかというようなことは、下請関係になるかどうか、応援になるか、そういうような関係は別としまして、問題が争議中の問題で、他の労働者を使うことがどうかというような問題になると、これは非常に重要な問題であります。そういうようなことについて、政務次官のお考えはどうでしょうか。
  27. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 職業安定法二十条の解釈につきましては、ただいま北川課長が申し上げた通りであると思うのであります。ただ私は、八戸鋼業の具体的な内容を全く知らないのでありまして、かような問題につきましては、個々のケースにつきまして、はたして違反であるかどうか、かような解釈をせざるを得ないと思うのであります。一般的な解釈といたしましては、先ほど北川課長が申しましたことでさような解釈は正しいのだ、こう私は理解をいたすわけであります。
  28. 吉村吉雄

    吉村委員 労働行政の問題は、特に私は強調しておきたいと思うのですけれども、生きもの的な問題なんです。ですから、それを平面的な法律の解釈だけで解決していこうとするところに問題がある、こういうふうに思うのです。そのために組合法なりあるいは基準法なり、労働者をどうして保証し、経営者と対等の立場を与えていくかというために作られているのが労働諸立法だというふうに考えるわけです。従って、そういうような立法精神という立場から法解釈に当たらないと、これは今言ったような機械的な解釈になってしまったのでは、問題の本質的な解決にはならない。これでは労働者経営者と対等の力を与えようとしても、今のような考え方では、私は立法精神というものはじゅうりんをされてしまうと思うのです。その点については、特に今度の問題のようにきわめて非近代的な経営者のとっている措置、そして慢性化したところの争議、こういうものに対して経営者があくまでも法の抜け穴とも考えられるようなものを悪用して、労働者の団結をくずしていうこというような状態については労働省としては、もっと労働者保護の見地から、法解釈にあたって対処をしていくということが特に大切ではないかというふうに考えるのです。そうでなければ、労働者労働者の保護のためにというようなことを口にすることはまっかなうそになってしまいまするし、正常な労使慣行ということも樹立できない、このようになるのではないかというように考えますから、この点については次官も実情は十分わかっていないと思いますけれども、こういう措置が現にとられておるために、現地経営者の間にもいろいろ多くの問題をかもし出しておるというふうに私は聞いています。従って、現地実態というものを十分調べられて、しかもその解決の方向というものは、この争議をできる限り早く円満に解決をする、そういう立場に立ち、第三者機関が提示をしているところのあっせん案というものの実らせる、そういう見地に立っての調査とその後の措置というものをしていただくように特に要望しておきたいと思うのです。  いま一つお聞きしておきたいと思いますのは、ここでは組合は現に二つある、こういう状態になったわけでございますけれども、時間外労働は現に行なわれておるのであります。この時間外労働については、基準法の三十六条で明確になっておるのでありますが、一体時間外労働が行なわれておるとすれば、大多数の組合員を占めるところの第一組合、ここが承認をしない限りは行なわれないというのが普通の状態じゃないか、こういうふうに考えるのですけれども、現実の実態を知っておるとすればそれを知らせてもらいたいし、もしそのまま第一組合が承認をしないでいるのにもかかわらず、時間外労働が第二組合員の人たちを通じて行なわれているとするならば、基準法違反といわなければならないと思いますが、この実情はどうですか。
  29. 小鴨光男

    小鴨説明員 先生ただいま御指摘の時間外労働の内容につきましては、ただいまつまびらかにしておりませんけれども、御指摘の通り、三十六条は、当該事業場に過半数の労働組合があれば、それとの協定によって時間外労働ができるわけであります。そちらの方との協定がなければ、時間外労働はいかぬというふうになっております。なお詳細につきましては、近くまた総合監督を実施することになっておりますので、その結果を待って措置したいと思います。
  30. 吉村吉雄

    吉村委員 先ほど申し上げましたように、私はこの委員会で発言をする前に、八戸鋼業の問題については、非常に慢性的な争議になっておるから、一つ本省の方でも本腰を入れてということを申し上げておいたつもりです。特にこの時間外労働が無制限に行なわれている、こういうような実情にあることは明らかに基準法違反なんですから、そういう実態を知らないと言われたのでは、ここで議論をしてみても始まらないことですけれども、現実にはそういうふうにして時間外労働が行なわれておる。もっとも、行なわれていなければこの会社の操業の成績というものは上がらないという実情にあるわけです。と申し上げますのは、前に申し上げましたように、平常な状態においてすら全従業員が五十時間から百時間くらいの時間外労働というものを行なって、初めて操業の成績を上げておったというのが実態でございますし、しかも現在は六十名かしか操業をしていない。そしてその中で、熟練をされたところの労働者というものはきわめて少ない。先ほど言ったように、系列会社の方から、まあ職安法違反というふうに私どもは考えますけれども、そういうようなことを通じて未熟練の労働者を入れながら操業をしておるということでございますから、企業の計画通りに操業成績を上げるとするならば、当然これは時間外労働が行なわれているというふうに見なければなりませんし、現に行なわれているというふうに私どもは調べて聞いておるわけです。従って、この実情を十分調査されまして、もしそういうことがたとい一時間でも二時間でもあったという場合には、法に照らして適切な措置をとってもらわなければならない、直ちにこれはやめさしてもらわなければならない、このように考えますので、これは直ちに一つその調査と対策をとってもらいたい、このように思います。よろしいですね、これは。
  31. 小鴨光男

    小鴨説明員 さっそく実情調査いたしまして、法に照らして厳正に処断をいたしたいと思います。
  32. 吉村吉雄

    吉村委員 これは一つ早急にやっていただくように要望をしておきます。  それから今申し上げたような変則状態の中で労働者が操業をしていますから、大へん災害が起きておる。これは調べられておると思いますけれども、ここ一カ月くらいの間に、重要な災害と見られるものは四件ほど起きているというふうに聞いておるのです。私は、先ほど調整課長から話がありましたけれども、法律の解釈というものは、平面的に解釈すればいろいろな解釈ができる。できるけれども、問題は、労働者を保護するという立場に立たなければならない。ですから、系列会社から未熟練の労働者を入れて操業を開始している、なれない者がやるのですから、ああいう危険作業、しかも特別に安全管理をしなければならないというような事業所において、そういうような系列会社から労働者の流用をして、そして無理に操業を行なっているという実態でありますから、このような災害が起こってくるというふうに思うのです。私は、こういう点から考えてみますと、これらを本質的に、抜本的に解決をしていくためには、この平面的な解釈であってはいけない、もっと労働者保護という見地から対策を立ててもらわないと、解決というものは生まれてこないのじゃないかというふうに思うのですけれども、先ほどの職安法の解釈等の問題にしましても、十分そこらは考慮の上で対策を立ててもらいたい。現にこれは、私が言うまでもないと思うのですけれども、大きな災害が、新しく流用をされた労働者の間で五、六件起きておる、こういう報告本省の方でも受けておるでしょう。
  33. 小鴨光男

    小鴨説明員 新しい流用者の方から災害が出たかどうかということは聞いておりませんけれども、先ほど申しましたように、災害が他の業種に比べて比較的多いという事実がございますので、先ほど申し上げましたような安全管理の面を特に重点として、今後も監督を実施していきたいというふうに考えます。
  34. 吉村吉雄

    吉村委員 大体私が申し上げようと思った幾つかのことについては、抽象論を避けて、具体的に問題を提示して労働省の善処を要望したわけでございますけれども、私も現地を今から三カ月くらい前に見て参りました。それは皆さん方が想像もできないような非常に劣悪な労働条件下にある。労働者要求それ自身は、私はむしろ当然なものだというふうに考えざるを得ないものだったのです。ですから、あの八戸市の市民全体がこの争議については支持をしておる。そうして現状はどうかと申し上げますと、そういうようなきわめて非近代的な経営者の考え方のために争議が長引いてしまって、生活保護を受けている人たちがもう十幾人かに上っておる。それでもこの争議をやめられないという気持でこれらの労働者ががんばっておるのは一体何かといいますと、それは、ここの争議でもし経営者の出張通りに労働者が屈服をした場合には、全体にそれが影響する。これは低賃金とか経済上の問題とかだけではなくして、正しい意味での労使の慣行、労働者の権利というものは全く抹殺をされてしまう。だからおれたちは犠牲になってもここで争っていかなければならないという考え方が基調をなしておりますから、生活保護を受け、あるいはそれ以外に非常に苦労をしながら、がんばってやっているわけです。従って、私は、これは労働者経営者、こういうような観点からではなしに、日本の産業というものを発展さしていくためには、労使が協調し合わなければならない、労使関係というものは正常化されなければならない、そういう観点でこの問題の処理に当たっていかないと、あの地方にとっては思わぬ大きな問題になっていくに違いない。言うまでもなく、八戸市は東北では有数の工業地帯でございますから、工場も相当数あるわけであります。しかも、百万都市というようなものを目ざして、工場誘致に熱心に努力をしておるのでありまするし、またこの工場分散という問題については、政府の政策の一つでもあるわけでございますから、八戸の町がそうなるかどうかは別としましても、そういう工業分散なり、あるいはそれによって地域格差というものを少なくしていこうとするところの政策というものをスムーズに実現していくためには、そのような労使関係というものを、いわば正常な状態にしておかなければならないという点は言うまでもないと思うのです。従って、労使対立という観点からだけでなしに、それ以前の人道的な問題として一つ真剣にこれを取り上げ地方の方に対して監督を強化するとか、あるいは必要によっては現地に出向いて、そうして行政的な指導を行なって、一刻も早く本問題の円満な解決、特にその労働者の主張する点というものはほんとうに最低限度のものであり、自分たちの経済要求全体を引き下げてそうして就働をしていこう、こういうことに対して、会社側では、むちゃとも思われるところの平和協約をのめとか、あるいは責任者何名かを首にすることを承諾しなければとか、全くむちゃなことを言ってロックアウトをそのまま継続しておる。このこと自体が組合法にも違反する考え方であるというふうにも私は考えますので、本省の方でも真剣にこれを取り上げて、取り組んでいただきたい、このように強く要望をしておきたいと思うのです。  なお、委員長の方にもお願いを申し上げておきたいのですけれども、青森県出身の淡谷議員も大へん関心を持ってこのことについて私よりもっと詳しい資料に基づいての質問を行なう予定になっておりましたが、何かの都合で来られないようでありますが、委員会としても関心を持って、一つ善処していただくように特に要望をして、私の質問を終わります。      ――――◇―――――
  35. 藤本捨助

    藤本委員長代理 この際、五島虎雄君外十二名提出の港湾労働者の雇用安定に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。齋藤邦吉君。
  36. 齋藤邦吉

    ○齋藤(邦)委員 政務次官に港湾労働の問題について少しお尋ねをしたいと思います。  今回、社会党の五島虎雄君その他の方々が提出者になりまして、港湾労働者の雇用安定に関する法律案を出されたわけでございますが、この案の内容を見ますと、どうも私どもまだ納得のいかない不完全な点も多々ある法律のような感じはいたしますけれども、こういうふうに研究されたということにつきましては、私は社会党の皆様方に敬意は表しておきたいと思います。  ところで、港湾労働がこういうふうに非常に大きく出て参ったということは、非常にこれは意義のある事柄でありまして、わが党におきましても、従来から海湾労働の特殊性からいたしまして、何らかの雇用の安定に関する法律案を準備しなければならぬであろうというふうなことで、目下検討はいたしておるわけでございますが、この際、政府に少しくお尋ねを申し上げてみたいと思うのであります。と申しますのは、港湾労働は、私が申し上げるまでもなく、非常に複雑なむずかしい問題でございます。行政的な面から申しますと、海湾労働の雇用安定をさせるためには、職業安定局の所管のみならず、労働基準局の所管にもまたがっておる労働の本質を持っておるものでございます。戦争前は、私が申し上げるまでもなく、港湾労働は現在職業安定法によって禁止されております労務供給事業の形態において労務の確保をはかられてきておったというのが、過去の実態であります。そういうようなことからいたしまして、港湾に働く労働者の諸君はレーバー・ボスに酷使せられ、その労働条件は劣悪なるもとに置かれ、従ってそこには何ら雇用の面において安定した姿というものを私どもは見ることができなかった。しかるに、終戦後に至りまして、職業安定法という実にりっぱな法律ができまして、労務供給事業を全面的に禁止するということになりました。しかしながら世間では、やはり労務供給事業に類似したものがあるのではないだろうかという誤解を持っておる者もあります。さらにまた手配師等が動いておるというふうなことを間々新聞その他で見ることもある。こういうことでございまして、しかもまたその労働条件は、他産業の労働者に比べまして、非常にむずかしい労働に従事しておる労働者であるにもかかわらず、その労働条件が必ずしも他産業に比べていいとも言えない、こういうことが今日の姿であろうと思います。  しこうして、さらにまた将来、わが国の経済成長政策が非常に順調に進んでおるわけでありますが、順調に進むに従って港湾労働の問題というものは非常に重要性を増してくる。港湾の施設整備等にのみ力を入れたのではとてもこの問題の解決は完全ではない。そこで何としてでもこの際私どもは、経済成長政策に伴うそういう港湾の作業を能率的に行なうということと、そこに働く労働者の生活安定のためにこの際何らかの方法を考えなければならぬ、こういう段階にきておるだろうと思います。  そこで、この港湾労働の雇用恒常化に関する問題につきましては、一九四九年、ILO内国運輸委員会において非常にいい決議が出ておるのであります。この決議を見ますというと、私どもは、さすがやはり世界各国のいろいろな経験を生かして作っただけのことはあるという感じがしみじみいたします。すなわち、雇用の恒常性促進のための登録制度の問題、しかも登録制で最も大事なことは、ここの一行にありまするが、十分であって十分をこえない労働力の供給の確保、そこが非常にむずかしい問題であります。あまり多く登録しようといたしますれば、その雇用の恒常性を保つことはできません。しかしまた不十分であっては、これは何の効果もない。すなわち、十分であって十分をこえない労働力の供給の確保、これが非常に大事なことであります。しかしこれは非常にむずかしい問題であります。これはおそらく職業安定局で所掌される職業紹介業務の中では非常な高度の技術性を持ったところの問題であると思います。もちろん総合的な各業界その他の港湾輸送全般にわたることでありますけれども、職業紹介そのことを考えただけでも、これは非常な高度の技術性の問題であります。私が申し上げるまでもなく、港にはいろいろな船が入ってくる。その船の荷役をするわけでありますから、そこにはいろいろな技術者、種々さまざまな技術者を必要とするでしょう。そういう中にあって、十分であって十分をこえない労働力を確保する、これは非常にむずかしい問題です。むずかしい問題だが、これができない限り雇用の安定というものはできない、こういうことが言えると思います。それが結局この勧告にありまする第二の問題と関連して、収入の安定化に関連する問題であります。この収入の安定化、すなわち十分で十分をこえない労働力を確保し、同時にそれを確保することが表裏一体となって収入の安定ということでなければならない。この勧告には、その国その国の経験を生かしたそれぞれの制度を考慮されなければならないと書いてあります。社会党案によるところのものは、いわゆる不就労手当金なるものを提案をいたしております。現在の制度におきましてはこの点については特に新しい制度はない。すなわち日雇い労働者については日雇い失業保険の失業保険金きりない、こういうことであります。しかし、この失業保険金制度だけで、この十分であって十分をこえない港湾労働者が収入の安定を得られるかといえば安定は得られない、こういうことであります。労働の質が実に複雑であり、非常に重労働であり、しかも港湾労働だけで問題を解決することはできない。すなわち運輸、通産、その他各方面にわたってやっていかなければならない。しかもレーバー・ボスも一面禁止していかなければならない。そして近代的な輸送業者の育成もはかっていかなければならない。種々さまざまに関連した非常にむずかしい問題であります。しかし問題であるけれども何とかしなければならぬ。これは安定局だけではできない。基準局も入らなければならぬ、運輸省も入らなければならぬ、あるいは通産省も入らなければならぬ。しかしいつかは解決しなければならぬ問題だと思います。そういう意味においてわが党も社会党案よりもっといい案を提案する予定になっておりますが、こういう不十分な案では私どもは納得ができない。できるだけ研究はいたします。  そこで政府お尋ねをいたしたい。政府は幸いに今回総理府設置法等の一部改正法律を提案せられまして、港湾労働等対策審議会というものを内閣に作られることになった。私は非常に賢明だと思います。労働省所管だけじゃなしに、通産あるいは運輸各省にまたがる総合的な立場で、この問題と取り組んでいこうという熱意のある点は、この法律を出されただけで十分理解できますが、しかしほんとうにやる気があるかないかということは問題だ。審議会ばかり作って、審議会で答申をし、答申が出ればその通りやるかやらぬか、政府のことでありますから、わが党内閣でありますから、答申が出れば必ずおやりになるとは思いますけれども、この審議会に、真剣に港湾労働の雇用安定に関する措置について――社会党さんの言うような法律を作れとかいうような意味ではありませんが、雇用安定に関する何らかの措置が必要であるということを認めたから、これはお出しになっているに違いない。そこで雇用安定に関する何らかの措置について諮問をされる御意思があるかないか。それから答申が出たら、必ずこれを次の国会を目当てにお出しになるほどの勇気があるかないか。非常に疑問だ。この問題について政務次官並びに事務当局の責任者である職業安定局長さんの御所信を承っておきたいと思う次第でございます。
  37. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 港湾労働者実情につきましては、ただいま齋藤委員の御指摘の通りでございまして、この問題を拔本的に解決いたしますためには、単に一労働省では及び得ない問題等の多いことも御指摘の通りでございます。そこで今回総理府に新たに港湾労働等対策審議会が設置される予定でありますことも御指摘の通りでございますが、政府といたしましては、港湾労働者の雇用の安定と確保の問題につきまして、この審議会に諮問をいたす予定で準備を進めておる次第でございます。なお諮問を行ないまして、それに対しまする答申につきましては、従来政府といたしましては答申を尊重して参っておりますことも御承知の通りでございまして、この審議会の答申に対しましても政府の従来の方針には変わりがない、かように考えておる次第でございます。
  38. 三治重信

    ○三治政府委員 新しく総理府に審議会ができました暁には、港湾労働者の雇用の安定と確保に関する具体的な方法につきまして、われわれに至急諮問を発しまして、できれば来年度の予算折衝に間に合うような何らかの結論を得ていただくような方向で審議をしていただくようにお願いしたいと思っております。      ――――◇―――――
  39. 藤本捨助

    藤本委員長代理 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。島本君。
  40. 島本虎三

    島本委員 ほんとうは大臣に意向を伺ってから事務当局の方へ質疑を展開して参りたいと思っておったのですが、きょうは大臣は見えません。しかし優秀な政務次官がおりますので、この際政務次官の御意見等も伺いながら安定局長、労政局長、基準局長、この三局長を中心にして質問したい、こういうふうに思うわけであります。  まず、これは大臣質問したいところなのですが、本年に入って五島委員の方から日雇いの賃金に関連してPWの廃止の問題についていろいろ質問が展開されたことは御承知の通りであります。その結果によりますと、これは三月一ぱいかかる、従ってそのころに集計が完了する、こういうようなこと。もうすでに四月に入っております。このPWの集計が完了し、それ以前のいろいろなデータはすべて積算の基礎とするに足りないので、見積もり予算を今まで組んでおる、こういうようなこと。三月ももう過ぎましたが集計が完了しておりますかどうか。五島委員の質問に関連しておりますが、このお答えをいただいてから次の質問に入りたいと思います。
  41. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 ただいま御質問のPWの集計でございますが、事務的な作業がほとんど完了いたしまして、ごく近い機会に発表できる、かような段階にまで到達をいたしております。
  42. 島本虎三

    島本委員 本来ならばPWの集計を基礎にしていわゆる失対労務者の賃金が策定されていたはずですが、今回そういうようにおくれておって、おくれた原因はいろいろな状態でわかることはわかる。わからない点も若干ありますけれども、それを言っていては、死んだ子の年を数えるようなものですから、この際それを省略して、今までは見積もりによって予算を立てたという御答弁でしたが、そうすると、集計が完了してしまったあとに、その集計と見積もりとの差が当然できて参りますが、これは補正予算として新たに組む決意でございますか、それを伺いたいと思います。
  43. 三治重信

    ○三治政府委員 毎年PWの算定については時日を要しておりますが、失対賃金の算定につきましては、単純な作業で職種が非常に少ないわけであります。従ってわれわれの方では、予算の折衡で最終段階をやる場合には、その三、三の職種だけについて大体の見当をつけて、そのPWについてはそごを来たさないように注意をしております。従ってPWが発表にならないから失対の賃金が暫定的、PWがきまったら失対賃金も直すかということにつきましては、その手数をわれわれの方としては従来とも省くように処置しております。従って、PWが発表になっても、われわれの方としては、失対賃金につきましてはPWとそごを来たさない線でやっておりますから、直す必要はないというふうは考えておるのであります。
  44. 島本虎三

    島本委員 そうすると今まで見積もによって予算を組んでいたということですが、見積もりは必ず正しいということになってしまうのではないか、ほんとうに正いのはやはり客観的なデータの集積によって組み立てられる、その策定方法が正しいと思うのですが、今のお言葉によると、いわば一年前のものを基礎にした見積もりなのです。見積もりは間違いないように作ってある、こういうふうに言うわけですが、これは低過ぎる高過ぎるは別にして、ただ間違いないように策定したというから、そうするとあなたの考え方が絶対正しいということにこれからならなければならないというような結果になるのですが、はたしてそれでいいのかどうかということは、ちょっと今の答弁――では将来のためにももう一回はっきり言っておいた方がいいのではないかと思うのですが……。
  45. 三治重信

    ○三治政府委員 確かにそうおっしゃいますと、私の今の御説明がちょっと不十分でしたが、見積もりということは、概算要求をする場合にはPWの調査をしてみないとわからないという意味において、予算要求の場合は一つの見積もりでやります。しかし年の終わりあるいは年の初めというふうになりますと、八月の調査の中で失対に関係ある軽作業、重作業というような三、三の職種につきまして特別集計をやっていただきまして、そうしてその見当をつけて、それが予算の折衝段階で最終的にきまるときに、労働省はこれでよしというふうに大蔵省なり大臣が手を打って納得されるときには、大体そのPWに基づく軽作業、重作業を計算をした上でということでございますので、当てずっぽうでとどめを刺して、それであとで修正しないというふうになろうということではないわけであります。
  46. 島本虎三

    島本委員 そうすると、予算を大蔵省に要求する場合は、賃金を策定するための一つのデータに基づいてやっておるから、それはぎりぎりの線であって、それを削られる理由はあるべきではないと私は思う。それはデータに基づかないでやる場合には政治的な折衝によってやられてもいいがデータに基づいてこれが最低なんだ、こういうふうにきめられた、これがぎりぎりなんだという場合には大蔵省へ持っていって削られるようなおそれがあってもいけないと思うのです。もしそうだとすると、これは予算の要求をした通りに認められておるならば、これはデータが正しいということになるのですが、予算の要求と比べてこれは削られませんでしたか、削られましたか、その辺これはやはり局長さんいかがですか。
  47. 三治重信

    ○三治政府委員 やはり今のところ、残念ながら毎年概算要求賃金単価の値上げの要求から見て、結果的にはその通り通るということはまずない、よけい削られるときと少なく削られるときとある。それは大体年末になると結局いわゆる春闘相場を予想して、大蔵省の方も態度をとりますし、われわれの方も大体資料が出てくるということであります。それは大体われわれの方も七月に概算要求を作るわけです。そうすると過去の経験を将来に延ばす一応の説明になり、それに若干のプラス・アルファ、最低限よりか若干の予備を持って概算要求せざるを得ない、良心的にやるべきなのですけれども、景気の変動並びにその賃金の上昇率というものについて、やはり若干の余裕をとってわれわれの方としても概算要求をせざるを得ない。もちろん労働者側、労働組合側から見れば、毎年われわれの概算要求が少な過ぎるという要望は非常に多いわけなんですけれども、しかしわれわれの方としては行政技術として賃金統計がたくさん出ているわけであります。そういう部面を見て、ことしから来年となってどういうふうな変化、どれくらいの賃金上昇かということは、それぞれ過去の資料を見てそれを将来に延ばして、それに若干の弾力性を、悪く言えばいわゆる水増しの線でやって、そうしてこれは概算要求の場合でも大蔵省に――予算を最終的に決定する場合にはあるいはこれよりも多い場合もあるかもしれない、そのときには概算要求の修正権をこちらが持つという条件で大体やっております。従ってこの点につきましては、もっといい方法があるかもわかりませんけれども、現在のところはやはりやむを得ないじゃないかというふうに考えておりまして、その点は現在のところやむを得ない処置というふうなことで、毎年繰り返しているわけでございます。
  48. 島本虎三

    島本委員 これは委員長に申し上げますが、今そっちの方から参りまして、この問題は所管が違いますからあまり深入りしないで、所管の局長が来てからやってくれということですが、今伺いますと、安定局長もこの問題に詳しいようでありますが、しかし御本人がおられる職安の関係に入った方が一番いいのではないかと思いますので、この問題については基準局長が来てからもう少しやることにしたらいいんじゃないかと思いますが……。
  49. 藤本捨助

    藤本委員長代理 それでは別の問題で質疑を続けて下さい。
  50. 島本虎三

    島本委員 いや別の問題ではないが、この問題はちょっと質疑をはずしておきます。  この前、井村重雄さんが質問されましたときに、失対の賃金に関連して、一つの試案を出しておられたことは御存じですか。――それでは申し上げましょう。それは現在のように生活保護の関係と失対の関係で、それぞれ同じようなレベルの人の格づけが変わってくる、金額の額が変わってきている、こういうような状態になると、これははなはだ工合が悪いので、生活保護法の適用を全面的に受けさせて、失対労務者に対しては作業手当を支給するようにして、基準をまず一つにしたらどうだ、こういうような方法については考えないのかという質問をしたのです。あなたもおられたと思うのですが、おられませんでしたか。――そうですが、それではほかの方だったのでしょう。しかし政務次官、こういうような質問があったことは間違いございません。それに対して、今後この問題に対しては十分研究いたします、こういうような御答弁がありました。確かに今のこの考え方は、これは自民党の持っている考え方としては、私は失礼ですけれども、これは悪かったら取り消してもらいますが、一つの進歩的な考え方をここに出されたんじゃないかというような気もするのです。これに対していろいろ弊害もありますけれども、いい場合も数多くあると思う。これに対して研究されるということだったんですが、あれから約二カ月ほどたっていますが、研究されておりますか、おられましたらその中間報告を願いたいと思います。
  51. 三治重信

    ○三治政府委員 今来ました部長に聞きましたら、井村先生の御質問にそういうことがあったそうであります。まあ正直に申しまして職業安定局自身、私自身毎日国会その他炭労関係をやっていますし、それから失対部自身は、今年度実施の賃金全国の配分、それについて今最終段階を迎えてとにかく四月一日実施ということで、実施を終えて、各地のいろいろな事情やなんかについて取りまとめておる最中でありまして、この点はそういう問題につきましては、やはりわれわれの方としては、国会での質疑応答を全部まとめまして、その上で来年度の政策、また来年度の概算要求をやる場合にまで保留といいますか、そのときになって審議するということに実際はなろうかと思います。従って、現在までのところ二カ月たっておりますけれども、その点は一つ御了承願いたいと思います。われわれの方としてそういう賃金のやり方その他の問題で国会でいろいろ御指示を得たことにつきまして、来年度の概算要求の政策とからめましてこういう問題のあり方について種々検討するということはお約束しますが、現在までのところ二カ月くらいたっておりますけれども、今申し上げましたように失対部は今年度実施の賃金全国配分の問題、私自身は炭労、石炭の新政策その他の問題でほとんどそれに忙殺されておりましたので、現在までのところその問題についてはまだ態度をきめるとか、考え方についてはまだ研究はしておりません。
  52. 島本虎三

    島本委員 そうすると、失対労務関係の局長を初めとしていろいろと努力されておる実情はわれわれもわかるけれども、失業対策事業というものに対してはっきりした考え方をまず打ち立てて、それからでないといろいろな方法が混迷するのです。だから方法は何ぼでも出てきます。現在のままで上げろというのも方法でしょう。今の井村重雄さんの案のようにまた別の案を考えてやるというのも一つの方法でしょう。そのほかにPWの集計を早めてこれによって間違いなくやるというのも方法でしょう。ところがPWの方はこの次にしますから今やりませんが、この失業対策事業というようなものに対しては本年度は割合に雇用奨励制度の創設だとか、または就職支度金なんかを設けたりして、積極的に当たられるような気配が感じれるわけです。この失業対策事業というものを今後どういうふうにして伸ばしていくという考えを労働省は持っておるのか。これは局長の考えではないと思うのですが、おそらくは大臣または政務次官、この方面で明確な考えを指示するのでなければ事務当局は混迷すると思う。この失対事業に対してどのように考えて推進しようとするのか、政務次官、あなたから伺いたいと思います。
  53. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 ただいま井村委員の前回の御質問に関連をしての島本委員の御質問の点でございますが、労働省といたしましては、失業対策事業が今のままで推移するということでは決してよくないんで、新しい失業対策事業の方向といいますか、それをぜひ進めていきたい、かような基本の考え方を持っておるのでございます。そこで、ただいま御指摘のように本年度におきましては一般雇用へ転化していただきます雇用奨励制度、就職支度金等の方法もとって参りましたし、また職業訓練を活発に展開いたす、かような考え方も織り込んで参っておるのでありますが、かような程度の措置ではもちろん十分ではなく、もっと根本的な措置が要る、かように考えるわけであります。御承知のように失対適格者としての登録者は三十六万人をこえておるというような数字なのでありますが、適格者の内容を分析してみますと、年令的には五十歳をこえておるというような年令構成である。婦人が四割以上であるというようなこと、あるいは相当の第三国人等もおるようなわけでありまして、失対事業なるものはいわば老齢者対策であり、あるいは母子対策事業であり、第三国人対策であり、また同和対策事業でもある、あるいは刑余者対策事業でもある、かような意味の総合的なものの事業だ、かように見ることもできるのでありまして、そこでただいまの失業対策事業を根本的に掘り下げまして、新しい方向への方向づけがどうしても必要なのであります。ただいま安定局長が答弁をいたしましたように、労働省としましては鋭意この問題と取り組みまして、できるだけ早い機会に根本の施策を講じて参る、でき得べくんば夏くらいまでにはコンクリートにいたしまして、三十八年度の予算要求等へはこの考え方を盛り込んだ要求にしていく、かような方針で検討して参りたいと考えているわけであります。
  54. 島本虎三

    島本委員 決意のほどはよくわかります。おそらくは政務次官もILOのヒノキ舞台で男を上げかけたんですから、今度は国内へ帰って参りましたらこの問題でりっぱに男を上げてもらいたいということを私は心から要請しておきたいと思うのです。  そうすると、今のこの考え方を根本的に掘り下げていくということは、失業対策事業という現在行なっている機構をなくする方向ですか、これを強化する方向ですか、どちらですか。
  55. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 ただいまの失対事業は、御承知のような一般失業対策事業、それに臨時就労あるいは特別失対というような何種類かに分かれた複雑な失業対策事業なのでありまして、かようなものを総合的にいかようにするかということの検討をいたしたい、かように思うわけであります。そこで、ただいま三十数万という人の数をあげましたが、はたしてこの程度の範囲のもののみでいいのか、もっと広げる必要があるかないか、あるいはもっと縮小して、たとえば生活保護法等の社会保障制度のワク内に入っていることが適当であるかどうか、かようなことなどにつきましてももっと根本的に掘り下げて検討して、早急に結論を出したい、かように考えておるわけであります。
  56. 島本虎三

    島本委員 だいぶ大臣の答弁のようにうまくなったんですが、そうすると、失業対策というようなものはどういうふうになるか、わからぬということになる。現在の機構にある失業対策事業というものを強化していくのか、これをなくして別なものにするのか、これは総合的に考えるのだ、まだ結論は出ていない、こういうようなことのようですが、ちょっと私の受け取り方いかがですか。
  57. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 特別失対や臨時就労等におきましては、今年度におきましては雇用率などにつきまして若干違った考え方が実施に移されると思うのでありますし、あるいは単価の問題につきましても若干は前進しておると思うのであります。また一般失対についても同様でございまして、ただいまのようなごく僅少な事務費なり資材費ではとうてい十分な仕事はやっていけない、かようなことも考えられるのであります。かように一般失対あるいは特別失対、臨時就労等のものを総合的に検討をして新しい方向を生み出していきたい、かように考えているわけであります。
  58. 島本虎三

    島本委員 そうすると、私なりにそれを受け取ってみますが、これはもういろいろな複雑な複数の機構をなるべく一本化するようにして、そして総合化して、それによって今度運営をうまくしていきたいというのは、失業者をなくするようにしたい、こういうようなことにつながると思いますが、そうなりませんか。ちょっと一言でいいのですが。
  59. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 失対労働者の方々が失対という仕事に固定化されてしまっておるわけでありまして、かような姿は失対事業本来の姿からいたしますと好む姿ではないわけでありまして、今後こういう問題をいかに解決するかが新しい方向だ、かように考えるのでありますが、一がいに失業対策の対象をなくしてしまうということのみが正しいのでもありませず、最終の目的といたしましては、完全就労によりまして失対事業等は消えてなくなるということが理想ではありましょうが、そこにいきますまでにはまだ幾つもの段階があると思うのでありまして、一挙に飛躍するのではなく、現状を基礎にいたしましてどういう工合に新しい方向に向かうか、かようなことを検討して参りたい、こう思っておるわけであります。
  60. 島本虎三

    島本委員 どうもあなたの答弁はうまいんです。必ずしりが結んであるように見えていて、つかみどころがないんです。だから文句言うところ一つもないです。言葉をかえて、局長、今の言葉をもう一回あなたから説明してみて下さい。
  61. 三治重信

    ○三治政府委員 今政務次官の言われた通りでありまして、それ以外つけ加えることはありませんが、いろいろ失対事業の改善をいわれておりますが、やはり現実にその口々の賃金で生活をしておられる実態をどういうふうに変えるかという問題になりますと、何を考えるにしても、生きた人々、生きた人間ということを考えると、そう手荒なことはできないわけです。その点でいろいろの問題を考え、またそれをいい方向にいろいろの積極施策をやるということになりますと、たといそれが消滅の方向にいくにしても、われわれの従来考えたことをやりますと、当面相当膨大な予算ということになりますので、予算折衝の場合になかなかその保証が得られないという関係になっておりまして、どうもその点、われわれとしても、こうします、こういうふうな方向できちんと改善し、縮小していきますということをなかなか言えない立場であります。しかし、政務次官が今御答弁なすったような方向で、われわれの方としても事務的に検討を進めていきたいというふうに考えております。
  62. 島本虎三

    島本委員 それで、私の方では、今の議事録なんかもう一回読ましていただいて、来週になって、水曜日になるか、木曜日になるか、今度変わりますからわかりませんが、そのときもう一回続いてやることにいたしましてごかんべん願って、今なかなかうんちくの深い答弁のようですから、一つそれを研究さしていただきます。私が心配するのは、まず第一番に、現在のような経済情勢がぐんぐん伸びていっても、失業者が消えてなくなるということは、まずあり得ないのではなかろうか。例をアメリカにとっても、現在向こうの失業者の多いことについては、来日されました長官さえもこれを言っておったほどですから、やはりアメリカのように高度に発展した国でも、失業者の問題で悩みが多いんじゃないか。これを完全になくするには、社会主義社会でなければだめなんじゃないかということにおのずからなる。しかしながらそれも考えていないとすると、失業対策事業というものは、好むと好まざるとにかかわらず、これを起こしておかないと、最低限度の働きながら救済してやるという方向にはまだならないんじゃないか、こういうふうに思われる。ともすれば最近全部これをほかの方にやってしまってこれをなくしたいという議論もあるようですが、ほんとうにそれならば、確実な論拠によって立てられた方策というものが整っていない以上、軽々にこれを口にしてはちょっと不安を感ずるようなことになりますので、それをあえて聞いてみたわけです。しかし、今のようにしてもう少し皆さんの方で検討を願いたいし、おそらくは、あまり失業対策事業そのものをして労働者を一方的に甘やかすとか、働かないようにさすとかいうことは、低賃金を強制するような結果になる。そうでなくても、政務次官はILOへ行っていろいろと御苦労されて参ったようでございますが、低賃金を強制するような方向をとるということは、とりもなおさず日本が経済的な問題でも諸外国に太刀打ちをするためのマイナスをかせぐことになる。私はそれが一番おそろしい。ILOの八十七号の批准も間近ではなかろうか、従ってそれに関係する諸条約の批准も追ってくることじゃなかろうか、こういうふうに思うんですが、一方国内的には、失業対策事業でもそれと逆行するような方向を少しでも切り開いていったら困る問題ですので、この問題は十分考えてもらいたい、私はそういうふうに思っているわけです。従って失業者をなくするということについては、社会主義的な行き方を取り入れてもいいから、何かの制度を残しておいて、これを強化していかなければだめだ、それから低賃金ということを今後どこかにしわ寄せして、そこだけ残しておけるような制度はなるべくなくした方がよろしい。これを取り入れていくためには、港湾関係で日雇いを使って、それによっていろいろな不祥事件さえも起こしたりしておった行き方を是正するためにも、港湾労働法の制定というのが必要になってくるわけです。それから日雇いのいろいろな関係法律案なんかも、現状をよくするためのものはいいのですけれども、悪くするための改正案はこの際必要ないような結果になりますので、その点も十分考えておかないといけない、こういうふうに私は思うわけです。それだけは一つ念を押して私申し上げておきたいと思います。この考え方はいかがでしょうか。
  63. 加藤武徳

    加藤(武)政府委員 先ほど申し上げましたように、この問題と真剣に取っ組んで、できるだけ早い機会に結論を出したい、かように考えておるわけでありまして、ただいまの島本委員の御意見もよく理解できるのでありまして、さようなこと等も織り込みながら検討して参ろう、かように思うわけであります。
  64. 島本虎三

    島本委員 政務次官が先ほど申しました答えに関連することなんですが、なるべく失対労務者を定職につけていきたい、そういうふうに今後指導していきたい、それで今度の予算を出された。それからまたこの中にはいろいろと進歩的と思われるような方策も盛られておるようでございます。その意味におきましては、私も賛成できる点もあるようです。ことにこのうち、就職仕度金、それから雇用奨励金、こういうようなものを設けるようになったわけです。しかし、私が今これを申し上げますことは、少し私自身の考え過ぎかもしれませんから、その点が杞憂だというならばそれではっきりしてもらいたいのですが、せっかく今言ったような次官の優秀な見解によって、他の企業に完全就労させるようにして、雇用奨励金も就職仕度金もつけてやる、こういうようにして、一年間を対象にして、四百二十五円の半分を今度業者の方へ補助するようになったということになります。そういたしますと、一年だけ補助をもらいますから、その場合では雇用しておいた方が有利だ。一年済んだならば、お前は要りませんからといって、次の人をまた雇い入れてやって一年をつけてもらったならば、また有利だ。順繰り順繰りやったならば、雇う人は、たとえば最小限度一人をたらい回しにすればいいのです。ところが雇われる人になってみれば、一年きりの限定雇用ということになる。この限定雇用即就職の安定ということには、私はならないのではないかと思う。この就職仕度金の問題にからんで、今のようなおそれはないのですか、いかがですか。
  65. 三治重信

    ○三治政府委員 この点は、今度の石炭離職者の対策のための法律改正のときにも、それと同じような質問が出ました。しかしわれわれの方としては常用雇用化するために何らかの対策が必要だということで、いろいろ石炭離職者の再就職の問題について調べたとき、初め雇用するのに、その人の能力あるいはその企業になじんでくれるかどうかという不安が相当事業主にはあります。だからよほど善意な人でないとなかなかやれない。しかしその間に経済的な問題もあろうということで、四分の一の雇用奨励金、最低五千円を出す。それと思想としては同じ思想で、日雇い労務者について雇用奨励金を出す、この考え方はわれわれの方としては共通しております。従ってその理屈を申し上げますと、大体一年たつと、われわれが補給する金額ぐらいは、昇給なりその他働きの価値評価によって、賃金が事業主から出されておる事実がある。その本人がまじめに働くならば、その雇用は当然長期に維持されるという見通しのもとにやっておる。もちろんわれわれの方として事業主に若干の条件はつけておりますが、しかしあれこれいってあまりこまかいワクをはめますと、事業主の方であるいはそれを雇ったためにあとから役所へ呼び出されたり小言を言われたり、あるいは処罰されるというようなことになっては大へんだということで、突っ込まれてもかなわぬ、従ってその点はやはり紳士協定と申しますか、安定所が事業主をよく見定めて、善意ある事業主に紹介して本人を生業につかす。本人も、特別なことでなくて、普通にやればその事業場において従来雇われている従業員と同じ待遇でスムーズにいくというふうな環境を作っていくということでありますので、理屈なり心配ごとを申し上げますと、これは確かに議論の非常にたくさんあるところであります。私が触れましたのも――実はきょう全日労の労働組合が、そういうことについてもっとワクをはめてくれとか賃金の最低基準を作ってくれとか、いろいろな用件で種々折衝しておりまして、きゃう出席がおくれたわけですが、心配したらきりがない。しかしわれわれの方としてあまり事業主にワクをはめてしまうと、事業主の方が、そんなにしちめんどうくさいのならいやだという空気にもなり、せっかく雇おうかというところでも、そういうことになってくる。従って、これはやはりやってみて経験律を生かして、やはり相互の信頼関係でどの点が妥当かという線でやっていくよりしゃうがないのではないか。従ってこの点は、われわれの方としては実施上の問題として考えていく。理論としてまたこうでもない、ああでもないといって理屈でやっていくと、幾らでも議論はできるという立場であります。従って新制度労働者側、使用者側双方にわれわれの職安機関としては納得してもらうという態勢を進めていってそれでやってみて実施上どこか非常に不都合な点または誤解のある点が出れば、それを直すにはやぶさかでない、そういう立場で現在おります。
  66. 島本虎三

    島本委員 予鈴が鳴ったようですね。それでは残念ですが、まだこれと不可分の身分安定制度の樹立についての考え方と、それからいわゆる賃金の問題、それから職業訓練所の問題、これは大事なんですが、そのしり抜けになっている点なんかも知っていなさると思うので、少しここで御高見を拝聴したかったのですが、しかし今予鈴が鳴ったのでその時間がございませんので、来週引き続いてこの問題をやりますし、そのほかPWの問題と合わせて、あるいは基準監督行政について一つ完膚なきまでにやる決意ですから、一つ準備を願っておいて、きょうはこれで来週に保留しておきます。
  67. 藤本捨助

    藤本委員長代理 本日はこれにて散会いたします。  午後一時五十三分散会