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1962-03-20 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十日(火曜日)    午前十一時二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 五島 虎雄君 理事 滝井 義高君    理事 八木 一男君       大石 武一君    佐伯 宗義君       中山 マサ君    永山 忠則君       楢橋  渡君    松浦周太郎君       赤松  勇君    大原  亨君       河野  正君    島本 虎三君       田邊  誠君    中村 英男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         郵 政 大 臣 迫水 久常君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君  出席政府委員         調達庁長官   林  一夫君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君         郵政事務官         (郵務局長)  西村 尚治君         労働政務次官  加藤 武徳君         労働事務官         (労政局長)  堀  秀夫君         労働事務官         (職業安定局         長)      三治 重信君  委員外出席者         総理府事務官         (調達庁労務部         労務企画課長) 上村友三郎君         総理府事務官         (調達庁労務部         労務給与課長) 元山 清人君         総理府事務官         (調達庁労務部         労務厚生課長) 滝沢 七郎君         郵政事務官         (大臣官房人事         部長)     長田 裕二君         郵政事務官         (大臣官房審議         官)      土生 滋久君         郵政事務官         (監察局審議         官)      渡辺  正君         労働基準監督         官         (労働基準局監         督課長)    小鴨 光男君         専  門  員 川井 章知君     ――――――――――――― 三月二十日  理事滝井義高君同日理事辞任につき、その補欠  として五島虎雄君が理事に当選した。     ――――――――――――― 三月十七日  港湾労働者の雇用安定に関する法律案五島虎  雄君外十二名提出、衆法第二二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  労働関係基本施策に関する件      ――――◇―――――
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  この際、お諮りをいたします。  理事滝井義高君より理事辞任申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、同君の理事辞任を許可することに決しました。  つきましては、理事に一名欠員を生じましたので、その補欠選任を行ないたいと存じますが、補欠選任につきましては、委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、五島虎雄君を理事に指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 中野四郎

    中野委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。五島虎雄君。
  6. 五島虎雄

    五島委員 今日まで、駐留軍ウエートレス首切り問題等々で、この国会において二、三日、河野正君からいろいろ疑義が解明されました。ところが、ウエートレス首切りの問題のみならず、全駐留軍労働者に対するところの問題は、いろいろの問題が山積をいたしておるわけであります。そこで特にわれわれは、きょう一日、駐留軍問題に関するところの問題を取り上げまして、そうして関係行政官庁見解を明らかにしてもらいたいと思っておるのです。そこできょうは、駐留軍労働者労務管理の問題と、それから基本権に関する問題、あるいはアメリカ駐留軍駐留軍労働者に対するところ権利侵害の問題があります。あるいはさいぜん申しました石炭労働者の雇用切りかえの問題がございます。あるいはこの駐留軍労働者諸君が首になったあとの離職者対策の問題等々がございます。以上問題をあげたことで、大体駐留軍労働問題の性格が明らかになってくるだろうと思うわけです。それでまずきょうは、島本虎三君、小林進君、河野正君、それらの同僚諸君と分担をいたしまして、私は労務管理の問題について、重点的に質問を短時間のうちにしていきたいと思うわけであります。  駐留軍労働者は、現在ずいぶん首切られて参りましたし、現在でははや少数になって参りました。われわれは、国際的な平和の問題から、軍事基地は絶対に反対して戦って参りました。しかし現実現実として、現実を無視するわけではございません。そこで当時駐留軍労働者諸君が二十八万人もおり、そうしていろいろの仕事に従事していたわけですけれども、当時は平和の問題、あるいは再軍備反対、あるいは軍事基地化反対の中においても、彼ら駐留軍労働者諸君は、外貨を獲得するのに、二面から言うならば大きな貢献をもたらしてきました。ところがその後、平和条約あるいは安保共同管理の問題や、岸・アイク共同声明から次第にわが国基地は縮小されてきました。縮小されるとともに、駐留軍労務者は強力に、力をもって、あるいはその状況に応じてどんどん首切られて参りました。そうして当時二十八万人の駐留軍労務者から、今日では六万人内外駐留軍労務者に縮小されてきました。ところがこの過程において、まことに気の毒な面が現われております。また、アメリカ駐留軍の非常に大きな力は、駐留軍労務者の、さいぜん申し上げました管理の問題や、基本権の問題や、権利侵害となって現われておるわけであります。これは防衛庁も、あるいは調達庁もよく御承知であると思います。そこで私がさいぜん申しましたように、労務管理の問題について重点的に聞きたいと思う第一の質問は、まず昭和二十七年の法律第百七十四号、日本国との平和条約の効力の発生及び日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定実施等に伴い国家公務員法等の一部を改正する等の法律ができました。これによって、駐留軍労働者労働条件調達庁長官が定めることになっておるはずです。ところが、現実雇用主として、その労働条件決定する権限現実調達庁長官にございますか。この点を第一の質問といたします。
  7. 林一夫

    ○林(一)政府委員 労働条件決定は、米軍協議しまして、基本労務契約においてこれをきめております。
  8. 五島虎雄

    五島委員 基本労務契約によって行なわれるわけですけれども、それじゃ今質問いたしましたように、この法律の第九条、「駐留軍等労務者勤務条件」という項目の中に、「駐留軍等労務者給与は、その職務の内容と責任に応ずるものでなければならない。」それから「駐留軍等労務者給与その他の勤務条件は、生計費並びに国家公務員及び民間事業従事員における給与その他の勤務条件を考慮して、調達庁長官が定める。」ということになっているはずですが、間違いはございませんか。
  9. 林一夫

    ○林(一)政府委員 米軍との間におきまして基本労務契約をきめておるのでありますが、これはもちろん労働組合協議してきめております。その契約中には、御承知のように採用とか解雇とか勤務時間、賃金支払い等労働条件を規定しておるわけであります。これらの規定を雇用契約内容とする旨を明示して、個々従業員雇用契約を締結しておるのであります。従いまして、この基本労務契約のうち労働条件に関する部分につきましては、当然この従業員との間の雇用関係を規律するということになる。従いまして、この労働条件については、基本労務契約においてこれをきめておるということでございます。
  10. 五島虎雄

    五島委員 基本労務契約は、もちろん昭和三十二年十月一日から実施されまして、駐留軍労働者労働条件については、日米双方協議して決定するということに、林さんが説明された通りになっておる。その労働条件決定にあたっては、日米双方対等立場決定することになっているでしょう。すなわち、共同管理方式がとられてきたわけですが、新安保条約が発効されて以来、ことにアメリカ軍は強圧的な態度に出てきているではありませんか。それに反比例してわが国政府は、特に林長官等々の交渉態度は、軟化してきてはおらないのですか。堂々と双務対等立場でこれらの問題が決定されておりますか。その自信のほどをここで発表して下さい。
  11. 林一夫

    ○林(一)政府委員 調達庁といたしましては、もちろん堂々と対等立場において米軍折衝をしまして、この基本労務契約なりあるいは諸機関労務契約決定して参っておるわけであります。その他個々折衝につきましても、対等立場において堂々と折衝しておるつもりでございます。強い立場で、強い気持折衝はいたしておるのであります。
  12. 五島虎雄

    五島委員 ただいま林長官が答弁せられました言葉は、われわれは非常に意を強うするわけです。その説明の中には、堂々たる態度を保持して、それから対等立場でやってきた。しかし最後が悪い。つもりという。つもりでは、われわれから見たら、さいぜん言いましたように、対等立場でやってきてはいないじゃないか。アメリカ軍側が非常に強圧な態度であればあるほど、反比例してあなたたちは消極的な態度をとられてきてはいないか。あなたたちが消極的な態度に出れば出るほど、駐留軍労働者労務条件というのは、低下ないしは進まないということを意味するわけであります。  たとえば、ここに例を一、二あげましょう。こういうことについて、どういうような態度を持ってこられたか。これは労働省にも関係がありますから、特に労働省の方が来ておられたら――局長が来ておられますが、昭和三十六年、昨年十月、福岡地区警備隊職場で時間制切り下げが行なわれております。この時間制切り下げという、一面から言うならば、労働時間の短縮ですからいいことですけれども、ところが一週四十八時間から四十時間に切り下げられたわけです。それとともに、週四十時間の労働というのは、これはILO総会場裏労働時間短縮にマッチすることであろうと思う。ところが、労働時間の短縮そのものが、今度は労働条件切り下げを意味するものではないと私は思います。去年のILO総会の一週四十時間の労働時間短縮の議案に対しましては、政府反対立場に立たれました。労働大臣談話を見ますと、それはいいことであるけれども、現在、日本経済状態の中では漸進的に進んでいかなければならない。従って、労働時間の短縮には努力するという談話を発表されました。これは労働条件切り下げを伴わないところの時間の短縮ではなかったかと思うのです。労働省のこれに対する見解を聞きたいと思います。  それとともに、ただいま例にあげましたところの一週四十八時間制から四十時間に切り下げることによって、本給が二〇%切り下げとなって、退職金もまた二〇%の切り下げとなっております。こういうようなことについて、あなたたちは、どういうような立場日本労働者労働条件切り下げに賛成されたのかどうか。賛成されるのならば、あなたたちは、対等に、そうして堂々と交渉をすると覆うけれども、一つも堂々たる態度ではないじゃないか、あるいは対等立場交渉していないじゃないか。従って、私が冒頭に言うことは、あなたたち駐留軍労務者労働条件決定する権限を持って交渉されているのかどうか。アメリカの言いなりになって、御無理ごもっともという態度でないかということです。これをもって堂々たる、かつ対等立場と言い得るかどうか、これは林長官の確信のほどをお願いしたい。
  13. 堀秀夫

    堀政府委員 四十時間協約案に対するところ日本政府態度は、労働時間が漸進的に短縮方向に向かう、その方向についてはもとより異議はありません。望ましいところであると考えておるところでありますが、これを今、各国の実情にかかわらず、画一的に協約案にするということについては反対である、こういう態度でございます。労働時間短縮が国内の実情に即して進められていくということは、もとより望ましいことであると考えるわけであります。
  14. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま五島先生指摘福岡県の警備員人員整理の問題でありますが、これはおっしゃる一ように、四十八時間制を四十時間に短縮したということであります。この時間制限、これは現在の基本労務協約によりますと、賃金というものは時間制賃金ということになっておるのであります。従いまして、この四十八時間を四十時間に切り下げるということは、やはり時間制賃金の建前上、これは基本労務契約に基づいてとった措置でありまして、基本労務契約に反するということはないのでありますが、何分にも従来の四十八時間制を四十時間に短縮するということは、すべての収入影響がある。総体的に見ますと二割内外の減収になるということでございますので、このような人員整理の通告があった際には強く米軍折衝しまして、このような時間の短縮により急激な賃金引き下げを来たすようなことは、従業員に対して大きな影響を与えるから、このような急激なる時間短縮一つやめてもらいたいということで強く折衝しておったのであります。ところが、その点は米軍との折衝において結果的には話し合いがつかず、結局四十八時間を四十時間に短縮したということになったのであります。この間において、もちろん現地労管事務所現地司令官折衝し、中央におきましても府中の統合司令部十分協議交渉をいたしまして、このような急激なる時間短縮による急激なる収入減を来たすような時間制の短縮は、今後ぜひやめてもらいたいということで強く申し入れをいたしておる次第でございます。
  15. 五島虎雄

    五島委員 林長官の苦衷はわかりますが、現実は、協議をしたが、協議がととのわなかったまま切り下げられてしまったことに結論としてなると思います。それで労働者労働時間を切り下げることによって、労働条件がそれに比例して切り下げられるというようなことは、労働者生活の面から重大な影響があると私たちは思います。特に社会労働常任委員としてそれを重大視します。そしてこういう双務協定の問題で対等立場で話し合われるのが、アメリカ軍の力で押し切られておってどうなりますか。今後はないようにという強力な申し入れを、口頭か一片の文書によって申し合わしたからといって、アメリカがそれを尊重するでしょうか。  また一つの例を引っぱり出しましょう。もう一つの例は、同じく昨年の十月、ベースアップが行なわれました。そのとき、仕上げ大工配管工等ワク外基本給労務者については、前に七百円から九百円に賃金アップされたということですが、昨年の十月のベースアップの際には一円の値上げもされなかった。一般に賃金が上がるということは、物価や生活実情に照らして上げる場合は上げる、こういうようなことだろうと思うのです。労働力に対する対等の対価として払われるのが賃金であります。そういうような場合に、あなたたち調達庁側は、組合には当初引き上げるというようなことを回答されておったと聞いております。そこで仕上げ大工配管工なども賃上げをしてやらなければならないという理解を、あなたたちはお持ち合わせであったように想像できます。この点に限っては、何ら私は申し上げることはない。ところが、アメリカ軍交渉の結果、一円も引き上げられなかったということは、そのままアメリカ軍意向が通って、調達庁意向が通らなかったということを如実に物語るものではなかろうか、こういうことで、堂々と対等たる立場において交渉をしているものと確信してわれわれに説明ができるかどうかという問題を取り上げたい、この点については一体どういうお考えでございましょうか。
  16. 林一夫

    ○林(一)政府委員 駐留軍従業者ベースアップにつきましては、日本国家公務員ベースアップの際に、同時同率原則で上げるということで折衝してきておるのであります。従いまして、昨年の暮れ、日本国家公務員ベースアップしたときには、同時に同率原則ベースアップ交渉いたし、同時同率原則に従って同率ベースアップをしたわけでございます。ただそのベースアップをする場合に、賃金体系が非常に複雑でありますので、中にはべース・アップの及ばない点があったかと思います。その点のこまかい点は労務部長から説明いたします。
  17. 小里玲

    小里政府委員 ただいま長官から御説明いたしましたように、一般的には国家公務員ベースアップと同じ率で、同じ時期にやるという方針で実施して参っておりまするが、ただいま御指摘配管工仕上げ大工等につきましては、実際にもらっております賃金が、賃金ワクを飛び出ている関係上それを凍結をしておく、こういう関係人たちでありまして、私どもは凍結者と呼んでおりますが、その凍結者につきましては、契約上はっきりと、ベースアップの場合においては賃上げはしないという明文がございます。従いまして、その明文上、昨年十月のベースアップの際には、賃金上昇をやらなかったという事情にあるわけでございます。  ただ、そこで問題になりまするのが、去年の十月以前のベースアップの際に、そういう賃金凍結者について毛ベースアップをした場合がございます。従いまして、日本政府としては、米軍に対して従来通りやるべしという主張もし、米側としては、契約をたてにとって、今回は厳格に契約に従ってやるべきであるという意見の相違があったことは事実でございます。そういうことで、十月のベースアップの際には、米側意見に基づいて今回はベースアップをしないということにきめた結果、仕上げ大工配管工ベースアップが行なわれなかった、こういう事情でございます。
  18. 五島虎雄

    五島委員 説明は一応わかります。しかし、説明がわかるからといって、その意思を了承するものではありません。そうすると、当初こういうようなものについても賃金アップしたいというような組合との話し合いが、それぞれ調達庁側にはできておって、それがいよいよアメリカ軍との共同交渉の場において、アメリカ軍意向の軍門に下ったといわなければならない。  それからもう一つの例をあげたい。これは賃金問題ではございませんが、日米双方で合意に達しないものは、日米合同委員会のもとの紛争処理委員会で解決することになっているだろうと思うのです。そこで紛争処理委員会に今日までかかっている係争事件というものは、一体何件くらいございますか。
  19. 小里玲

    小里政府委員 十二、三件あります。
  20. 五島虎雄

    五島委員 私の知っておるのは、十八件くらいあるらしいです。その件数の食い違いは別といたしまして、しからば係争事件で解決したものがございます。
  21. 小里玲

    小里政府委員 残念ながら、ただいまのところございません。
  22. 五島虎雄

    五島委員 解決したものはないということが明らかになったわけですが、そうしたら、これらの問題はどういうように解決していかれますか。たとえば強権を持つアメリカ軍、弱者であるところの被使用者労働者、その中で現われたところ紛争処理委員会は、労働者立場を守るところ委員会でなければならぬと思うのです。ところが、合同委員会のもとのこういう機関にかかっている紛争処理事件が、あなたの言われるのでも十二、三件、組合から聞いたところによると十八件もあるのに、いまだ一件も紛争処理ができない、ただアメリカが第一次に決定した意向がそのまま実施されているということは、労務管理上の問題であまりアメリカ軍意向が強過ぎやしないかということです。私が言うのはその問題です。そうすると、強ければ強いほど、まだ解決しませんとか、あるいは賃金を上げたくないと言ったら、それではそうですか――あるいは首切りをしましょうと言ったら、ただ一片申し入れ書によって、今後はないようにとか――時間短縮の問題もそうです。こういうようになってくることが、アメリカ態度米軍態度が強くなればなるほど、日本政府は消極的な態度、弱い態度になってくる。弱い態度はすなわち労働者の福利を確保できないということ、労働条件を確保することができないということ、そうすれば労働者に不幸をもたらす。この一つをとって見ても、駐留軍労務者は、さいぜん申しましたように外貨の保有にずいぶん努力されて参りました。そうして国民の感情と対比しながら、非常に悩みながら今日に進んできたと思うのです。平和を守りたい、しかしアメリカ軍仕事についている、こういうような相矛盾した観念で仕事をし、生活を守ってこられた。これを対等立場交渉できるようになった今日においても、日本政府は非常に弱い力をもって交渉しているということは、労働者の利益を守り得ない。従って、林長官は今日まで非常に強く交渉してこられたつもりであるけれども、なお弱いといわざるを得ない、この点について防衛庁長官は、調達庁外庁ですから、防衛庁長官気持をここにはっきりお伺いしておきたいと思いますが、どうでしょうか。
  23. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 駐留軍労務者の方々が、非常にいろいろ困難な立場に立ちながら、しかも言語、風習その他が違う米軍に使用されているという非常に困難な立場にありますことは、われわれも十分察知いたし、そうしてこれが保護には万全を尽くさなければならぬと考えております。今後ももちろんそのつもりでやって参ります。御指摘になりました幾多の例につきましては、私も承知をいたしておりますし、そのこと自体は、基本契約その他に違反した米軍の行為ではないことは、これは御理解いただけると思う。ただその結果、駐留軍労務者諸君をいろいろ困難な立場に押しやったということは、これは事実としては認めなければならぬと思います。そういう意味で、たとえば先ほどの頭打ちの凍結者の問題につきましても、現在の基本契約におきましてはそういうことになっておりますから、これを上げないからといって協約違反とか、あるいは日米間のいろいろな取りきめ違反というわけには参りません。しかし、それ自体というものは、必ずしも好ましい事態ではございませんので、たとえば勤務条件等につきましても、給与体系等につきましても、できるだけ国家公務員体系に近づけるようにというようなことで、今、日米間において交渉しておりますことは御承知と存じます。そういう形で、現在の協約協約といたしましても、その基本契約基本契約といたしましても、その中で改善すべきものは、機構的にもあるいは契約の面においても改善をいたし、また現実に起こる諸問題につきましても、日本における労働慣行その他を十分米軍説明をいたし、そうしてその間において調整をはかっていくということを中心にいたしまして、努力をして参りたいと考えております。
  24. 五島虎雄

    五島委員 防衛庁長官の今の決意――決意と言ったら語弊がありますが、ただいまの答弁は非常に将来に向かって力強いものを感ずるわけです。そういうような気持で事を処理されてきたならば、こういうような質問なんかも必要でなかったと思うのです。しかし、やってしまった現実、そうして力の弱かった現実、将来に向かってそれを反省しながら努力する、その言われる言葉だけは私は了承しておきたい。中身のことについては、これを伴ってもらわなければならないと思います。  それから次に、調達庁長官以下労務部長もそうですが、この給与アメリカ軍から償還金でまかなわれておるのでしょうか。
  25. 林一夫

    ○林(一)政府委員 労務関係管理費は、米軍償還金によってまかなわれております。
  26. 五島虎雄

    五島委員 そうすると、たとえばこういう事態が起きはしませんか。米軍償還金によって調達庁長官以下の職員の方々が給与をまかなわれている。それから労務費ももちろんまかなわれます。そういうようなことで、林長官を中心とされて、調達庁の上級職員の方々が対等立場で堂々と交渉をされるにあたって、交渉の場で、米軍側が五時過ぎになると、もう五時過ぎになった、これ以上交渉をすれば居残り超過勤務手当を支給しなければならないから、もうこれでお帰りなさい、そういうことをアメリカ軍から言われたとか言われないとか、こういうような事態などが発生したことがありますか。
  27. 小里玲

    小里政府委員 御指摘調達庁の職員あるいは府県の労務管理職員の経費は、労務管理費という形で米軍から償還を受けております。長官その他調達庁の幹部の給与等一切を、米軍から償還を受けておるということではございません。主として労務の関係の職員だけでございます。そこでアメリカの方から駐留軍従業員給与、旅費その他手当一切、それからそれを管理する労務管理の経費、こういうことで償還をしてきておりますが、労務管理費をアメリカから償還を受けておることによって、アメリカとの折衝等に支障がありはしないか、こういうお尋ねだと思いまするが、その点は、アメリカの方としても、あるいは私どもとしても、割り切った考え方であります。アメリカ交渉いたしまする場合に、アメリカの考えと日本政府あるいは府県と現地機関との考え方が相違をしておる、それが合同委員会まで上がっていくというような形でいつまでも解決しないというような問題もございまするが、日米間の意見の相違、こういう場合に、アメリカから管理費をもらっておるということから、言うことも言えない、あるいは今御指摘のように、長く日本政府と、あるいは府県と折衝しておれば、その居残りの費用をアメリカが払う関係上、払いたくないから早く帰ってもらいたい、そういうことは今まで言われたこともございませんし、私どもとしては、管理費アメリカからもらっておるから折衝において手心を加えるというような気持はございません。私どもがアメリカ折衝する場合に、意見の相違は相違としてアメリカにはっきりとものを言うということは、何も日本のためということでなしに、ひいては大きな見地から在日米軍の利益にもなる、こういう見地からものを言っているわけでございますから、何も管理費を向こうが負担しておるから云々というような関係は、現在までのところないと承知しております。
  28. 五島虎雄

    五島委員 今管理費の問題が出ました。管理費はほとんど米軍の経費の中から出ておる。ですから、ある人は言います。銀座のマダムに雇われマダムがおるけれども、調達庁はちょうど雇われマダムみたいなものじゃなかろうか。こういうことはうそでしょう。今言われたのがほんとうの気持でしょう。しかし、この管理費は現在幾らになっておりますか。
  29. 小里玲

    小里政府委員 昭和三十四年の七月一日から三十五年の六月三十日までの管理費は、労務者一人当たりについて一カ月八百九十五円という金を日本政府に償還をしてきておる。従って、五万人であればこれの五万倍が日本政府に償還されている、こういう格好でございます。
  30. 五島虎雄

    五島委員 労務者一人当たりについて月に八百九十五円であれば、労務者が減れば減るほど、管理者というものの支弁は少なくなっていく。そうすると、それに基づいて調達庁管理者は減っていくということになるわけです。そうして、この八百九十五円は、労務基本協約関係する労働者の一人当たりの管理費だと了承いたすわけです。ところがもう一つは、昨年の十二月一日付で軍直用から政府直用に切りかえをされた、それは労務協約関係労働者と了承いたしますが、これに対する管理費は一人当たり幾らになっておりますか。
  31. 小里玲

    小里政府委員 労務者一人当たりの給与の三分の一%という計算になっております。従いまして、概括的に言いますと、大体基本協約によるMLCの労務者管理費の約十分の一程度でございます。
  32. 五島虎雄

    五島委員 そうですね。十分の一から十二分の一程度、とにかく七十円内外管理費だということですね。そうすると、政府直用に切りかえられてそれを管理していくのには、片一方は八百九十五円であり、片方は十分の一程度ということは、七十円から八十円程度ということになりますが、それでその管理者、職員の給与その他を管理するのに十分ですか。
  33. 小里玲

    小里政府委員 管理費の多くかかりますのは主として府県の職員の経費でございますが、中央にいたしましても府県にいたしましても、現在MLC関係でやっております管理機構をそのまま使い、あるいは人も使う、こういうことで、その上に直用の諸機関関係の労務の経費が加わってくる、こういう格好でございますから、従来の機構と組織を使う、上積みになります関係上比例的には少なくて済む、これが一つと、もう一つ機関関係の経費が少なくてよいという理由は、賃金、諸手当等の計算、支払い等の事務が、MLCにおきましては日本政府機関において行なわれる。それが諸機関関係におきましては米側において行なう。あるいは人事措置を行なう場合に、MLC関係では日本政府が行ないますが、諸機関関係では米側が行なうということで、できるだけ管理費を少なくしようという日米政府間の交渉によりまして、意識的に管理費を少なくし、従って、仕事内容につきましても、できるだけ日本政府の負担にならないような建前をとってやりました関係上非常に少なくて済む、こういうことになったのであります。
  34. 五島虎雄

    五島委員 その労務協約関係労務者管理費の問題等々は、冒頭に私が申しましたように、他の項目でまた他の委員から質問が行なわれるだろうと思いますから、私はこれにはたくさん触れません。しかし、このように管理費米軍側から毎月直接支弁されて、そうしてその給与その他に充てられておる。おまけに労務費も直接支弁によって――間接支弁でしょうけれども、毎月八〇%の概算払い等々を受けてそうして労務費となり、あるいは今言われたように、一人当たり八百九十五円ないし七十円から九十円、こういうような費用を支弁されることによって駐留軍関係がまかなわれつつある。そうして、さいぜんから申しますように、その交渉権限においては対等であり、同等でなければならないと思う。その言葉は了解できますけれども、現実において、米軍側から金をもらっているからいたし方がないというような気持はないまでも、そういうような結論になることはわれわれに疑惑を持たせます。そこで、このようなことは、平和条約その他新安保条約によって日米対等関係を結んだと政府は宣伝をされるわけですから、こういうようなことについても、政府直用の労務者に対しては、日本の一般予算の中から労務費をこれに盛り上げて、そうして直接雇用の責任を果たしながら、アメリカとは対等立場で、筋の通ることは筋の通るように――米軍が筋を通してきたならば、その筋にはわが国政府といえども打ちかつことはできません。わが国も筋を通してアメリカ対等立場交渉し、一歩も退かないぞという態度をもってやる必要がなかろうかと私は考えるわけであります。そうすればこの問題について、今後政府の予算の中に労務費あるいは管理費の一切を計上しながら、他の方法でアメリカ政府から獲得したらいいじゃないか、その方法をとったらどうかとわれわれは考えるのです。この点について、防衛庁長官の考え方を聞きたいと思います。
  35. 藤枝泉介

    ○藤技国務大臣 私の記憶に誤りがありましたらあとで訂正させてもらいますけれども、管理費は予算で御審議をいただき、そしてそれに対して、一方、見合いの米軍負担が国の収入として入ってきておる形だと考えております。先ほど労務部長もお答え申し上げましたように、たといその管理費等の負担をさせておろうがおるまいが、そういうことで何ら日米間の交渉について拘束されるような気持を持たずにやっておりますことは事実でございます。やはりこれは米軍がこういう労務者を必要とし、それを使う、そのために必要な管理費なんでありますから、私は当然取るべきものは取っていいのだと思う。負担さすべきものは米軍に負担をさす。しかし米軍が負担しているからといって、何かコンプレックスを感ずるようなことは全然ないわけでございますので、もちろん改善すべきものがありますれば、なお研究はいたしますけれども、取るべきものはやはり取り、負担さすべきものは負担させるということは、これは制度としてはよろしいのではないかというふうに考えております。
  36. 五島虎雄

    五島委員 防衛庁長官は、さっきからなかなか力こもった答弁をされて、私がともすれば喜びにたえないようなことを言われる。しかし、ほんとうにそういう気持であるならば、ここには駐留軍労働者諸君も傍聴に来ておられるはずですから、喜ばれるだろうと思うのです。政府の当事者がそういう態度米軍交渉してくれ、労働者の利益を守ってくれ、そしてアメリカに対して対等立場で常々と主張してくれるならば、たぶん喜んで帰られるだろうと思われます。今の言葉を忘れないように私は要望します。もちろん防衛庁長官は私の非常に信頼する人ですから……。  そこで私は、きょう労働大臣あるいは大平官房長官に来ていただきたいと思っておったけれども、出席がありません。ですから、ここでは、防衛庁長官だけおられますから、特にあなたに聞きたいと思います。もちろん、今までの答弁の中に、ある点の決意を持っておられることを察知することはできるわけであります。しかしながら、これを第三者から見たり、あるいは労働組合自身から見た場合は、ともすればあなたたち態度が非常に弱い。そしてさいぜん質問いたしましたように、たとえば紛争処理機関にかかっている係争事件が十三件ないしは十八件あっても、残念ながら一件も解決を見ていない。こういうようなことでは、ほんとうに悲劇といわざるを得ないのじゃなかろうかと私は思う。そこで、駐留軍問題を一般に解決していく、そして対等立場米軍に太刀打ちをしていくというその締めくくりのために、政府駐留軍問題の閣僚懇談会等々の組織を作られたらどうだろうか。こう言えば、防衛庁長官調達庁長官は、おれがおるのにかかわらず、五島のやつはあんなことを言っておれを無視するわい、こういうように内心気持悪い思いをされるかもしれませんが、しかし私は、これらの問題を取り上げ、すみやかに解決する、賃金問題、管理問題あるいは基本権の問題、首切りの問題等々は、並み大ていの力では太刀打ちはできなかろうと思う。それはなぜか。強大を誇るアメリカ優先の考え方をもって、わが国に臨んでおるからです。そういうものに対して、政府は結束して、こればかりに努力するわけにはいきませんでしょうけれども、締めくくりの方法として、政府にこういう閣僚懇談会等々を持って交渉するような考え方はございませんか。
  37. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 先般河野さんからもそういう御提案もあったのでございますが、現在直ちに機構的に、閣僚懇談会等の機構を設けるということについては、なお研究させていただきたいと思います。思いますが、とにかく一方において、離職者対策協議会は中央、地方にも置いて、各省が力を合わせてやっておるような次第でございます。また、こうした問題につきましては、労働省初め関係各省にいろいろお手伝いと申しますか、お力をかりなければならぬ、御協力をいただかなければならぬ問題もございますので、十分関係各省、ことに関係各省の閣僚とも私連絡をいたしまして、問題の処理には当たって参りたいと思います。なお必要があれば、そうした制度的なものも、将来の問題としては研究をいたしたいと考えております。
  38. 五島虎雄

    五島委員 研究するということは、あなたの言葉に偽りがないことで、積極的に努力をしていただくことと了承していいですか。――それじゃそういうように了承いたしましょう。  それでは、時間もございませんから、あと一つ質問をいたします。今度この国会に防衛庁設置法等の一部を改正する法律案が提案されて、現在内閣委員会で審議中だと思います。そこでその中に、五十七条として「防衛庁長官は、防衛施設局の事務の一部を自衛隊の部隊又は機関の長に行なわせることができる。」それから自衛隊法第二条を改正し、「防衛施設庁(総務部に置かれる調停官、労務部及び附属機関を除く。)」を特別職とする、こういうような規定があるようであります。そこで、調達庁が、防衛庁の中に防衛施設庁として今度吸収されるわけですが、そのことによって駐留軍労働者にどのような影響を与えるでしょうか。防衛庁の中に調達庁が入ることによって、米軍との交渉はさらに軟化するのじゃなかろうかという一つの見方もございます。どういうような影響があるか、軟化しやしないかという、この点について質問をいたします。  それからもう一つは、さいぜん申しました五十七条の「防衛庁長官は、防衛施設局の事務の一部を自衛隊の部隊又は機関の長に行なわせることができる。」ということは、今まで調達庁が独自でやっていたことを、防衛庁がかわって行なうことができるということに変更されれば、たとえば基地の問題について、かつて大きな問題として派生したところの砂川基地の測量の問題等々について、従来は調達庁関係が測量をいたしておったわけですけれども、今後は防衛庁が測量ができるというようなことになることは、基地問題のやかましいおりから、まことに対国民感情としてこれをそのまま受け入れられないような気がいたします。以上の三点について解明をしていただきたいと思うのです。
  39. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 最後におあげになりました自衛隊の部隊等に委任の問題でございますが、これは今後この法案を御承認いただければできますところの防衛施設庁の地力支局あるいは支所、出張所、そういうもののない辺地の離島とかその他につきまして、あるいは漁業権の補償でありますとか、あるいはそうした施設庁としてやるべき仕事で、わざわざ遠くまでおいでをいただくことなどが非常に不便な、そういうものについて委任をいたすということでございまして、ただいまおあげになりましたような重要な問題については、当然これは施設庁の本庁なり、あるいは支局なりが行なうのでございまして、そういう御心配はないわけでございます。  それから労務関係が防衛施設庁の中に入って、変化があるかということでございます。これは現在の調達庁の行なっておりまする労務関係をそのまま持って参ります。特別職の問題については、またいろいろ御議論はあろうかと思いますが、少なくともこの労務関係については、この法案にもありますように、直接自衛隊の運営に密接不可分のものではございません、自衛隊の労務関係については、自衛隊の事務を行なうものでございませんので、一般職として残しておくというような処置もとったわけでございます。従いまして、この労務関係において、ただいま御懸念のような、自衛隊の防衛施設庁の中に入ったからということでさらに米軍との折衝が弱くなるとか、そういうようなことは全然ない、制度的にもございませんし、またその点については、十分われわれは努めて参るつもりでございます。
  40. 五島虎雄

    五島委員 ただいまの防衛庁設置法の一部改正問題については、また別途に内閣委員の中で審議されるでしょうから、私は深く質問はいたしません。それからこれがもしも法律化されて、ただいまのように調達庁防衛庁の施設庁になった場合、組織としては変更しないというあなたの気持は十分銘記しておきます。  そこで項目が変わって基本権の確立の問題に入りますが、いつまでもこれをやっていると時間がございませんから、島木委員にバトンを渡して、私は質問を終わりたいと思います。
  41. 中野四郎

    中野委員長 鳥木虎三君。
  42. 島本虎三

    島本委員 皆さんそろっていますから、私が今質問する前に、防衛庁長官とそれから特にただいま申されました林長官から、先ほどの五島委員質問に対しての答弁に関連して、一つだけ決意を伺っておきたいことがあるのです。それは防衛庁長官の答弁を聞いておりますと、ほんとうに日本労働慣行を十分先方に説明して今後これを調整していくのだ、これはまことに労働省に聞かしてやってもいい言葉だと思います。それと同時に、林長官は、今後唯々たる態度交渉に臨み、対等立場でこれを行なう、ただしつもりである、こういうようなことのようでした。私はそういうような言葉の中から一つ心配な点があるのですが、最近、日本政府調達庁態度が、米軍側に屈従して自主性がないじゃないかという声が聞こえてきているわけです。しかしながら、ほんとうにここに今のような決意態度で臨んでいるならば、こういう声が出る余地が全然ないのではないかと思うのです。今の五島委員に対する答弁と、私が耳にした言葉とは、これは月とスッポンほどの違いがあるのでございますけれども、日本政府並びに調達庁態度は、米軍に屈従し、自主性を持っていないという、この心配を除去するような決意をはっきりここで表明してもらいたい。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 こういうような事実があるのかないのか、あわせてこの点を伺っておきたいと思う。
  43. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 従来起こりました幾多の駐留軍労務者に関連する問題につきまして、結果的に御指摘のような結論になったのではないかということは、私も事実として存じているわけであります。先ほど五島さんにお答えいたしましたように、そのこと自体が、基本契約であるとか、あるいは日米間の各種の取りきめに違反した米軍の行為とは言えないと思いますことは、御理解をいただきたいと思うわけでございます。ただしかし、その結果として、駐留軍労務者諸君にいろいろな困難な事態を引き起こしたということも、これは考えなければなりません。そういうことで、話によっては制度として問題を提起して解決していく、あるいは私自身といたしましては、トップ・レベルにおきまして、よく日本労働慣習というようなものも十分理解を深めるように努力いたし、そしてその間の調整をはかって参りたい、こういう考えに変わりはございません。
  44. 林一夫

    ○林(一)政府委員 調達庁長官としての立場も、ただいま大臣が御説明になったような、対等立場で強く折衝していく態度には変わりはないのでございます。今までの折衝の過程において、結果的には、先ほども御指摘があったように、いろいろ駐留軍従業員に対して不利な点もあったかと思いますが、私どもとしましては、別に遠慮して折衝しているのではない、あくまでも堂々として対等立場において折衝してきており、努力しているわけであります。今後ももちろん対等立場に立って、堂々と折衝を続けて参りたいと考えております。
  45. 島本虎三

    島本委員 よくわかりました。これは双方対等立場で臨むという、その決意はわかりました。そういたしますと、これは念のために聞いておきたいのですけれども、長官が今申しましたようにこの基本契約にあえて違反していない、するものではない、日米間の取りきめに反した行為でもない、こういうようなことで将来とも日本労働慣行を向こうに十分知らして、これを訂正させるようにしたい、こういうことならば、現在もうすでにそういうような事態が起きたらこれを訂正させて、一つ十分実を結ばせるような行為をすべきではないかと思う。問題は将来じゃなくて、働いているのは現在です。将来のことばかり言っても、これは仏作って魂を入れないような結果にしかならないのではないか。日米間のこれは一つの私契約でしょう、訂正できない理由があるのですか。ある場合には、将来それを何とかしなければならないということだけれども、これを現に訂正して実施した結果、おそらくは効果的であったということが過去にございませんでしたか。また、そういうものがあったならば、これによって労使間を完全に規制するものでないということははっきりしているのですから。自主性というものはその辺から始まるのじゃないかと思うのです。そういうふうな考え方の上に立って、昨年末の賃金改定にあたっての、全駐労との協議が不十分なままで一方的に調印されたような事実があったのかなかったのか、これは今の言葉に対してどういうようなことになるのか、これに対してはっきりした長官の言明を承りたいと思う。
  46. 林一夫

    ○林(一)政府委員 調達庁といたしましては、対等立場に立って堂々と折衝をしておるのでございます。そのような立場に立って、できるだけ現状を、さらに改善の方向に向かってすべての点を持っていこうということで努力しておるのであります。昨年直用を間接雇用に切りかえたのも、また近く賃金体系国家公務員と同等な体系にするというようなことについても、人事管理の面について改善を加えようという努力の一つのレールであろうと私どもは信じておるのであります。従いましてこの基本労務契約についても、あるいは諸機関労務協約についても、これが万全なものであるとは私どもは考えておりません、この中には改善すべき点がたくさんあるのでございます。そういう点につきましては、今後大いに検討しまして改善を加えていきたい、こういうふうに考えているわけであります。昨年のベースアップの場合の協議の問題を御指摘になったのでございますが、このベースアップは、御承知のように日本国家公務員ベースアップ同時同率原則に従って行なうという方針のもとに同率ベースアップを強く要求し、また同時に、これを履行するという方針のもとに強く米軍折衝してきたのであります。その間において駐留軍労働組合協議を続けてきたのであります。やはり労組の立場から言うと、協議が十分でなかったというような御批判もあろうと思うのでありますが、私どもとしては、できるだけ協議をやってきたというふうに考えておるわけであります。もちろんこういうような場合においては、今後十分協議いたしまして問題の解決に当たって参りたいという立場は、はっきり申し上げて差しつかえないと思います。
  47. 島本虎三

    島本委員 これは私が初め言ったように、日本政府並びに調達庁態度は、全く米軍に屈従しておるのだというような印象を受けるということは、そういうところから始まると思う。今のような態度で常々と押しなさい。そうでないと、永久にこういうような汚名を払拭することはできないと思う。現在よりよくするのが改善だと思う。現在より悪くすることは、改善だとだれも言わない。それは改悪というのです。  一つだけ長官に具体的に聞きますが、駐留軍労働者賃金は、かつて公務員より一割ぐらいよけいだった。ところが現在は、基準内賃金でも、基本給で公務員より下回っている。これをもって、あなたが今言ったような改善しているのだということにどうしてなるのですか、ここをはっきり教えて下さい。
  48. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この賃金の問題につきましても、調達庁としましては、改善に改善を加える努力をいたしておるのであります。ただこの駐留軍従業員賃金体系というものは、非常に複雑でございまして、これは職種別賃金と申しましょうか、職種によっては、あるところまでいくと賃金がストップになっておるわけであります。そういうような関係もございまして、べース・アップする面としない面とあります。総体的にはあまりふえていないということも出てきましょう。従いまして、まず賃金体系を変える必要がある、こういうふうに私どもは考えておるわけであります。今回、この賃金体系日本国家公務員賃金体系方式に変えるべく、近く米軍折衝を開始したい、こういうふうに考えているわけであります。
  49. 島本虎三

    島本委員 どうもあなたの言うことと私が聞いていることと逆なので、念のために聞くのですが、現在よりもよくすることが改善なんですよ。悪くすることは改悪なんです。今までの防衛庁長官の答弁も今のあなたの答弁も、意思のこもった意気揚々たる改善に向かっての明るい答弁だったのです。ところが具体的に指摘することは、決してそのことの裏づけになっておらないのではないか。そうなった場合に、なぜ一体上の賃金凍結しちまうのです。どうして今まで一割上がっていたやつを、今度は、現在下がっているような状態にして、そのままのんべんだらりとしているのです。これが改善であるということの一つの証左になりますか。そこが心配なんです。だからアメリカ軍の言う通りになっているのではないか、従って、この駐留軍関係の閣僚懇談会を開いて、賃金の問題を解決せよという五島委員からの切なる、要望も出てくるわけです。藤枝防衛長官もいるし、林長官もいるからそういうものは要りませんというきぜんたる態度で臨んだら、あえて私はこれ以上質問する必要はなくなってしまうのですが、そこを考えてもらわなければならぬ。現在のような職種別の基本給の賃上げ方式、こういうような行き方に対して、凍結してしまったり、これをちょっと上がっているからといって、国家公務員方式によって下げちまったり、こういうようなやり方は決して改善とは言えないと思う。あなたはあくまでこれを改善だと言えるのですか、言えないのですか。もし改善だと言えるなら、今までよりこれだけいいのだということをはっきり言わなければいけないと思うのです。私はこれだけにとどまっていたいとは思いませんし、先に進みたいと思いますが、今私の言ったことは間違いでございますか、間違っておったら御指摘願いたい。
  50. 小里玲

    小里政府委員 給与の問題でございますので、私からお答え申し上げたいと思います。  駐留軍従業員給与体系は、非常に複雑な体系をとっており、しかも、駐留軍が最初に日本に進駐いたして参りました当時に採用いたしましたのは、いわば日雇い労務者を雇うというようなことを考えた上での制度ということで、今日のような長期にわたって駐留をしており、そこに勤務している労務者諸君に対する給与体系としては不備な点が多々ある、こういうことで、調達庁といたしましても、あるいは労働組合といたしましても、この改善につきましては従来から検討を加えておったところでございます。公務員と駐留軍従業員との給与の比較でございますが、アメリカ軍という特別な機関に働いている従業員に対しまして、語学手当でございますとか、あるいは危険手当でございますとか、特別な手当等がございまして、基本給あるいは基準内賃金としては公務員とほぼ同等程度と言われますが、そういう手当を加えました総手取りの平均としては、現在七%程度駐留軍がいい、こういう結果になっておると思います。御指摘のように、最初のうちは、駐留軍の方が相当給与が高かったということはその通りでございます。これがこの制度の欠陥といいまするか、職種別賃金方式をとっておりまする関係上、一定のところ賃金が定期昇給で上がって参りまするとそこでストップになる。そしてそこからは上がらない、こういうような、いわゆる頭打ちになる者が相当多数――長年の駐留によりまして従業員勤務年数も長くなって参りました関係上、頭打ち者がたくさん出てきた。ほとんど六、七割の頭打ちの人たちが存在をするというような事態になって参りまして、ここで調達庁あるいは米軍といたしましても、あるいは全駐労としましても、何らか抜本的な制度の改正ということに踏み切らざるを得ない。もちろん日本政府あるいは軍、駐留軍労働組合との考え方の間には相当の相違がございますけれども、考え方としてその頭打ちを解消し、もっと長く勤務するような賃金体系に変える、こういう点については、基本的には一致した考えであろうと私は存じております。そういう見地から、ただいま米軍とそれこそ最後の詰めに入っておりまして、駐留軍従業員組合とこれを具体的に協議に移して実施をして参りたい、そのためには組合との協議も十分尽くして、従業員個々人の直接の労働条件の問題でございますので非常に重要な関係がございますので、私どもとしては慎重な態度でこれを実施に移していきたいということで、ただいま努力中でございます。そういう方法によりまして駐留軍従業員給与の改善をはかっていかなければ、ほかに道はない、こういう立場に私どもは立っているというふうに考えておるわけでございます。
  51. 島本虎三

    島本委員 頭打ちを排除して、長く勤務する賛金体系に変えるということは、一割上がっている人またはその待遇の人を、今度永久に下げるという改悪を意味することじゃないのでしょう。ない以上、これは先ほど両長官も改善するという態度をはっきりおっしゃっているわけですから、いいものはそれよりよくしてやる、悪いものをよくしてやるというのが改善なんです。現在はよかったものを悪くして、長期の体系を低い状態に償いて、低賃金体系を作ることは、これは決して改善じゃございません。今あなたが言うのは、私が申しましたように、有利な条件を全部その中から抹殺してしまおうというようなおそれのない体系ならいいんです。一割上がっていたものを、そのままちゃんと改善するという以上、残さなければならない。こういうようなものをそのままにして、悪くして改善なんと言うことは、これは侮辱することであり、そういうことがあったならば、これはとんでもないことだと思うのです。そういうような点は、はっきりした今の言葉の意図を聞いておきたいと思うのです。これは、頭打ちを排除して長く勤務するに必要な賃金体系に変えるということは、今までのいい条件を全部悪くしてしまうということではなく、いいものはもっとよくするんだ、こういうような意味を含むんだと私は思っておるのです。その点、明確にしてもらいたい。
  52. 小里玲

    小里政府委員 軍並びに調達庁としての考え方は、制度全体の改善でございまするから、その基準として、よるところ国家公務員給与体系というふうに考えております。従いまして、全体としては、もちろんこれは改善されるということはもうその通りでございまするが、一つ一つについて今の条件を絶対に下げないということではないわけで、たとえば国家公務員につきましては、現在オーバー・タイムの場合に二割五分増しということになっておりますが、駐留軍の場合には、これが五割増しという制度になっております。制度全体として国家公務員的なものに変えるということを考えておりまする関係上、オーバー・タイムの問題につきましては、国家公務員的な制度にするという考え方でおります。ただ国家公務員的な給与表を採用し、あるいは格づけをするということによって、現在頭打ちが多数ある人たちの頭が全部ほとんど開く、こういうことで参りたい。従いまして、全体として相当な改善にはなりまするが、個々一つ一つについて現在のやつを絶対に下げない、こういうことでは――全体としての一つのシステムとして考えて参る場合には、中にはそういうふうに現在のやつよりも下がる、こういうことはやむを得ない、こう考えております。
  53. 島本虎三

    島本委員 この賃金の問題は、今の答弁だけではまだ不満ですので、もう一回この問題は蒸し返してやりますから、それまでちょっと保留しておきます。  これは労働大臣の方に聞きたかったのですが、来ておられないようですので、一応ここに優秀な皆さん来ておりますから聞いておきたいと思います。駐留軍労務者労働に関する日本国労働法規、これとの関係は、現在のところはどういうふうになっているのですか、これを一つ説明願いたいと思います。
  54. 堀秀夫

    堀政府委員 駐留軍労務者の地位につきましては、地位協定の十二条五項におきまして、「相互間で別段の合意をする場合を除くほか、賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者権利は、日本国の法令で定めるところによらなければならない。」と規定されております。従いまして、日本国労働法令の適用があるというふうに考えております。
  55. 島本虎三

    島本委員 それでは、ここではっきり伺っておかなければならないのですけれども、そうすると、労働組合が――駐留軍の場合には全駐労があるわけです。この全駐労が、いろいろと労働条件の改善について、これは対等立場でいろいろと折衝し、交渉しなければならないと思うのです。そういうような場合に、これは基準法第二条によって、これをいろいろ実施していくことは全然違法行為でもなし、当然日本の国内においては、あたりまえ過ぎるほどあたりまえじゃないかと思っているのです。こういうような点において、この団体交渉がどのような格好で行なわれているのか、これは一つ調達庁長官に御説明願いたいと思います。全駐労との団体交渉です。
  56. 林一夫

    ○林(一)政府委員 労働組合との団体交渉は、もちろん労働法規によって、基本労務契約に従って団体交渉をいたしております。
  57. 島本虎三

    島本委員 またこれは少しおかしくなってきて、困ると思う。そうしたならば、去年のベースアップのおりに、全駐労と調達庁と軍の三者会議を要求したが、これに応じなかった、こういうような事実はございませんか。
  58. 林一夫

    ○林(一)政府委員 団体交渉の場合においては、従来、雇用主である政府労働組合と団体交渉をいたしてきておるのであります。この基本労務契約によりますと、米軍側もこの団体交渉に参加する場合を予想した規定があるわけです。調達庁といたしましては、今後できるだけ、団体交渉の場合には米軍側も参加するように、ただいま折衝いたしておるのでございます。
  59. 島本虎三

    島本委員 当然これはもう労働基準法の適用を受けることにもなり、その他の日本国内の労働諸法規の適用をはっきり受けることにも相なるわけです。そうした場合に、法令の一つ一つの名前はここでは申し上げませんが、こういうような場合に、この要求に対して応じなかったということは、団体交渉を拒否するような一つの行為に当てはまるものであり、これはまさに不当労働行為ということになるのじゃないかと思うのですが、労政局長、これはいかがですか。
  60. 堀秀夫

    堀政府委員 不当に団体交渉を拒否するような場合は、もとより仰せの通りでございます。ただ申し上げておきたいことは、この駐留軍労務者につきましては、使用者日本政府ということになっております関係で、法律使用者たる地位は、これは日本政府でございます。日本政府においてそのような行為があれば、ただいま御指摘のような問題が生ずるということになるわけであります。ただ事実上の問題といたしまして、ただいま調達庁長官説明されましたように、なるべく米軍側も立ち会わせるというようなことがあると思います。そのような場合に、そのような線で今後団体交渉が行なわれることが、団体交渉を円滑に行なわしめるゆえんであろうと考えますので、その点は調達庁においても、今後とも努力をされることを期待するものでございます。
  61. 島本虎三

    島本委員 それにはちゃんと参加の条件というのがあって、米軍側がこの会議に出席しない旨、文書によってこれは労働組合の方に予告した場合には、この限りではないわけです。ただ調達庁だけでは、これはどうすることもできないから、出てくれと言ったときに、これをたてにとって拡大解釈をして、全面的に権限のないあなたの方にこれをやって、全部しり切れトンボのような交渉にしてしまうから、組合側から当然こういうような要望が出されるわけです。もしこれがだめだというなら、あなたが責任を持って前に言ったようにして、米軍が入らなくても調達庁だけで完全に責任を果たします、従って必要ないのです、こうはっきり言ったらこのような質問はしないのです。それだけの熱意がないままに、一方参加を拒否した場合は、これは完全に不当労働行為です。これはあなたが、それをやるというならやるでいいんですよ。こういうようなことに対してはもっと厳然たる態度で臨まないと、これはやはり初めに言ったように、あなた自身おかしいじゃないか、少しおかしな暗雲が低迷しているのじゃないか、こういうように思われてもしようがない。言ったこととやったことが、結果的に違うじゃないかと言われてもやむを得ないでしょう。これはどういうことなんです。
  62. 林一夫

    ○林(一)政府委員 団体交渉には、米側が出席することがきわめて好ましいのであります。従いまして、調達庁としましては、現在米軍に、今後団体交渉にはぜひ出席するように強く折衝いたしております。
  63. 島本虎三

    島本委員 では念を押します。今後は必要によって団体交渉を行なう場合は、今のように三者でやる必要がある場合には三者でこれを行なうものである、決して不当労働行為の疑いはあり得ない、こういうように私は了解してこの質問は打ち切りたいと思いますが、それでよろしゅうございますか。
  64. 林一夫

    ○林(一)政府委員 団体交渉は、もちろん調達庁が責任を持っていたしておるのでございますが、必要に応じては米側の団体交渉参加が望ましい場合があるわけであります。そういう場合は、できるだけ出席するように現在交渉いたしております。
  65. 島本虎三

    島本委員 できるだけというのは、さっきのつもりと同じなんですよ。それはそういうのを聞いているんじゃない。もし出ない場合には、責任を持ってあなたが出ないだけの責任を行使することができる、これでもっていいとさつきから言っておるでしょう。でなければ三者でもってやりなさい、そうでなければ不当労働行為に類するんですよ、出ない場合にはあなたは全責任を持ってやるんだ、こういうような決意がありますかと言っているのです。つもりだとか何だとか、もうこの段階で言う言葉ではありませんぞ。
  66. 林一夫

    ○林(一)政府委員 米軍が出席しなくても、調達庁が全責任を持って団体交渉をいたします。
  67. 島本虎三

    島本委員 それでは次に参ります。  労働協約を締結する義務というようなものは、これはどういうふうになっておりましたか。これは一つ労働省の方にお伺いいたしたいと思います。
  68. 堀秀夫

    堀政府委員 一般的に申しまして、労使間で団体交渉に応じ、団体交渉を行なうことは、双方申し入れがありますれば必要な義務になるわけでございます。それによって労働協約を結ぶか結ばないかということは、当事者間の話し合いに基づくものでございます。    〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
  69. 島本虎三

    島本委員 そうすると、昭和三十二年の九月三十日で期間が満了になりまして、その後新しい労働協約が締結されて、それによって行なわれているのが最も望ましい状態であろうと思うのですが、それ以後はどうなっておりますか、長官
  70. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この労働協約を成立せしむべく、従来労働組合意見を徴し、米軍意見も徴して、その成立に努力をいたしておるのでありますが、いまだ三者の意見の調整の段階に至っていないので、まだこの労働協約が成立していないのが現状でございます。今後すみやかに三者の意見の調整をいたしまして、この労働協約の成立をさせたいと考えております。
  71. 島本虎三

    島本委員 そうすると、今までこれができなかったという理由は何ですか。
  72. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この労働協約内容の問題等につきまして、米側意見また労働組合意見等について一致しない点がございますので、そのような意見の一致を待ってこの労働協約を締結したいと思います。
  73. 島本虎三

    島本委員 これは、そうすると一致しない点があるということはまことに悲しむべき事態なんですが、一致しない点について、長官はどちらの方が無理だと思いますか。
  74. 小里玲

    小里政府委員 昭和三十二年までは労働協約が存在しておりまして、それが効力がなくなりましてから、ただいま長官から説明を申し上げましたように無協約状態でございますが、調達庁並びに全駐労との間では、旧協約が失効はいたしておりますけれども、一応旧協約がそのままの状態で続いているものとしていろいろな問題を処理していこうということで、たとえばストライキの際の事前通告の問題でありますとか、あるいは組合費の給与からの月々の差引を管理者側でやる問題でありますとか、そういうようなのは、現在無協約状態でありますけれども、旧協約のときのままの形で現在続かしておるというのが実情でございます。  そこで、新しい協約ができないのは、どちら側が無理を言っておるのかどうかというような御質問でございますけれども、内容全体につきまして、私ども管理者側として、組合の無理な面もありますし、組合側から見れば、管理者側が無理だというような面もございまして、一がいには言えないと思います。
  75. 島本虎三

    島本委員 まことにあなたは、わかったようなわからぬようなことを言っておる。もしそうだとするならば、あらためてもう一回聞きますよ。協約がなくとも前の協約があると同じようにこれはやっているから、おそらくは心配ないというような意味だと思う。そうでしょう。そうでないとすると、はっきりどっちが悪くてできないのだということまでいかないといけないのです。私があえて聞くと、そういうふうにして協約昭和三十二年の九月三十日ですかに切れて以後、旧協約のその内容によって現在まで実施しているのだということでございます。もしそうだとすれば、まことに慣行としてはいいわけです。しかしこれは、早く結ぶに越したことはないのです。労働省もうしろの方に厳然として控えておりますが、これはもう早くやっておかないと、責任はあなたたちだけではなしに、今度は労働省にもいくのです。労働省も、やらない場合には、これは好むと好まざるとにかかわらず、重大なことになってしまうわけです。これははっきり言っておかないといけない。ただそれはそれとして、今までのこの協約がなくとも、あるがごとくに実施されているといたしますと、これは第五十八条に規定されておったと思うのですが、組合専従者が事業場において休憩時間中及び作業終了後に組合活動をしてもいいという、この部分はやっていますかやっていませんか。
  76. 小里玲

    小里政府委員 三十二年まで効力がございました協約の中には、労働組合活動の自由という項目と、米軍の持っております基地管理権という事柄が記載してあったと思います。労働組合としては、労働法に認められておる組合活動の自由がある、軍としては、基地管理権に基づいてその自由に対する制限といいますか、もちろん法令の範囲内でございますが、これを制限、規制するという、二つの要請を調和する規定があったと思います。そういたしまして、従来各基地によって取扱いは区々であったと思います。それは非常に重要な施設があり、あるいは危険物があるというところと、そうでないところと、いろいろ基地によってさまざまな事情がございますから、それぞれ事情が異なっておったとは思いますが、この協約の規定に従って休憩時間中の組合活動等も許されておった部門もあったわけでございます。そういたしまして、これは三十二年に失効いたしました。それ以来特に問題になりましたのは、空軍関係でいろいろなブラッドレー書簡でありますとかパッカード書簡というような書簡等が出まして、前の旧協約時代と多少異なったような軍指令というものが出されたことによってこれが問題化し、具体的な問題としては、立川の基地において、労働組合基地内における集団的な行為が行なわれた、それが無許可で行なわれたということで、軍命令違反だという名目によって出勤停止処分をしたという事例がございます。そういたしましてこれが裁判になる、あるいは労働委員会にも持ち出されるということで、その問題はまだ最終的な結論が出ておりませんが、米軍としては、普通の民間会社と違った軍の特別な施設の中でございますから、基地内における集団行動等について民間会社よりもきびしい規制をするということは当然である。従って、一般の民間会社等と同じような取り扱いというのはする必要がない、私どもそういう考え方に立っておるわけでございます。さればといって、日本労働法規に従う、こういう観点で考えておりますから、いかなることでも全面的にこれを禁止するということではない。ただ書簡の表面上の文面からいきますと疑問の点等もございますので、その書簡等をめぐって日米間でいろいろ折衝もし、あるいは合同委員会において話し合いをするというようなこともあったわけでございますが、何分にも基地内の休憩時間中の問題につきましては、軍という特別な機関の中における休憩時間の集団活動あるいはその他の組合活動というものを、どの程度に規制するかということが非常にむずかしい問題なわけでございます。法律に従って米軍がやるという線は米軍もはっきり認識しておりますので、その線に沿って、それに違反しないような線で、日本労働法規を守らせるという線で進んでいきたい、私どもとしてはこういうように考えておるわけであります。
  77. 島本虎三

    島本委員 もう少し言葉を簡単明瞭に言ってみて下さい。時間があまり長くかかるのは、私は好ましくないと思っております。  先ほどの林長官の答弁と今あなたが言ったのと食い違っていますね。協約がなくても、その精神を生かして実施しているといったのですよ。それだったら、今あなたの言うのはだいぶずれて、こういうことになっているから、これは実施できないというような意味がだいぶ聞こえてきている。もしそうだとすると、全然それと関係のないような事項でさえも、そういうような考えのために労働協約を結ばないということは、これはまことに困ったことだ。働いておる人の基本的権利であっても、駐留軍の作戦やそのほかに何ら影響がないということがたくさんあるでしょう。たとえば、賃金、昇給、手当その他給与に関する事項、労働時間、休憩、休日及び休暇に関する事項、就業規則に関する事項、直用相互切りかえに伴う労働者の取り扱いに関する事項、雇い入れ及び解雇、退職に関する事項、安全、保健、衛生、文化並びに福利厚生施設に関する事項、災害補償及び災害扶助に関する事項、健康保険、厚生年金保険及び失業保険に関する事項、労務配給物資に関する事項、それから失業対策に関する事項、苦情処理に関する事項、労働協約の改廃に関する事項、こういうようなことがどこの作戦や何かと直接関係いたしますか。こういうようなことは純然たる労働問題でしょう。これをなぜ中央の協議会で結ぶ、協議するということを拒否するのです。拒否したような事実はありませんか、これは長官に承ります。
  78. 林一夫

    ○林(一)政府委員 御指摘の点につきましては、部分的に労働協約を結ぼうという考えもあるのでございます。そのようなことにつきましては、内容についてまだ意見の調整に至っていないので、遺憾ながらこの協約が締結されない状態にあるわけであります。今後このような点についても、意見の調整を進めまして早く締結いたしたい、こういうように考えております。
  79. 島本虎三

    島本委員 昭和三十二年から現在まで、何年かかったと思うのです。四年も五年もかかっても、まだ将来のことばかり言っておって、もうそのころ生まれた子供でも五つになるのです。来年、再来年になったら小学校一年生になるくらいです。実際こういうふうに失効しておって、これも労働省の方では、当然労働協約を結ぶのが正しいとあなたのうしろで証言しているのに、将来これを改善するということですが、今まで眠っていたのですか、何もしないで給料をもらっていたのですか。こういうことではだめです。これは防衛庁長官、あなたは監督指揮権があるのです。こういうようなことをしておいていいのですが悪いのですか、どうなんですか。
  80. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 昭和三十二年に労働協約が失効以後、今日まで新しい労働協約もできませんことは、はなはだ遺憾でございます。調達庁としても決して眠っていたわけではないと思うのでございまして、いろいろ労働組合側あるいは米軍側との意見の調整に努力をしておりましたが、それが今まで至っていないことは非常に残念に思います。なお十分調達庁を督励いたしまして、労側協約が早く結ばれるような意見の調整に努めさせたいと思います。
  81. 島本虎三

    島本委員 労働省、今のようなはっきりした答弁があったわけです。あなたの方も知らなかったというならまだしも、今私が言ったのは純労働条件ですよ。こういうのが昭和三十二年に失効したまま、現在までほっちゃらかされておったということは、知っておったのですか知らなかったのですか。知っておって黙っておったとすれば、労働基準法第二条にはっきりこれは違反していることになるのです。将来はもうすぐ直すということを今長官から答弁があったから、将来のことは、私はもうここでほんとうに自信を持って見詰めておりましょう。しかし、今まで四年間も五年間も労働省はこれを知らなかったのですか。知らぬということでしたらあなたは怠慢になりますよ、これは労政局長、あなたです。
  82. 堀秀夫

    堀政府委員 労働省としては、調達庁駐留軍組合との間でいろいろ話し合い交渉をされておる事実は詳細承知しております。この内容につきましては、先ほども御説明がありましたが、労働条件、それから労働者基本権の範囲とそれから軍隊という特殊な地位を持った基地内の問題、この調整の問題が主であったと思うのでございます。もとより軍隊であります以上、その基地内において、ただいま御指摘のありましたような事項につきましても、その見地からいろいろ調整を要する点があると思うのでありますが、これらは必要な最小限度にとどめられるものであることは申すまでもないのでありまして、私どもといたしましては、両当事者の間において話し合いが進みまして、はっきりしたしきたりが確立されるということは、何よりも望ましいことだと思っているわけであります。ただいま長官からもお話がありましたが、労働省といたしましては、調達庁が今のような措置をなるべくすみやかにとられることを期待しておるのでございます。
  83. 島本虎三

    島本委員 三者がはっきり意思表明しましたから、これ以上追及しません。この実現を、私はちゃんと議事録を見ながらいつできるのかここで監視し、希望しておきますから、一つこの点だけははっきりしておいて下さい。大体防衛庁長官はやると言った以上、あなたは在任中にこれをやるのでなければ――そばで腹を切れということですけれども、これは幾ら何でもあえてあなたに実際上死ねとは申しませんが、やはりそれには相当の決意もあると思うのです。これは少なくとも在任中にやっておかぬとだめです。在任中というのは、いつどうなるかわかりませんから、これは早くあすにでもやっておくようにしないといけないと思う。これは三者言ったことで、ここで皆さんが腹を切を決意で、この労働協約は、おそらく実現に努めるのだ、こういうような意味に解しまして、この問題を打ち切りたいと思いますが、そういうふうに解釈してもいいですか、長官
  84. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私がいつまで在任いたすか、これはわからないことでございまして、そういうことでなく、ことに外国軍隊内に働くという特殊な環境もございますので、そういう点の調整に最善の努力をいたして、できるだけ早くこの協約が結ばれるように今後とも督促を続けたい、こういうことで御了承をいただきたいと思います。
  85. 島本虎三

    島本委員 今後々々と言っても、今まで五年間もほっちゃらかされてあったわけでありますが、いつまで続くかぬかるみ、こういうような将来性のあまりにあり過ぎるような今後であっては困る。少なくとも社会的健全な良識によれば、私が約束した以上、私が現に勤めておる間にやりますというような、はっきりした今後に対する見通しがあるでしょう。私はやる意思があるけれども、やめてしまったら次のだれかがやるでしょうでは、はっきりした自分の決意の表明にはならないと思う。これについては、私の方としては、今後々々で済まされるんじゃとんでもないことになるのですが、あなたの在任中にやるというようなはっきりした意思があるならば、ここで表明してもらいたい。
  86. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 私が在任中とかどうとかいうことではございませんので、こういった問題はできるだけすみやかに解決がつくのが好ましい状態であるので、その線に向かって努力をいたすということで御了承いただきたいと思います。
  87. 中野四郎

    中野委員長 関連を許します。小林進君。
  88. 小林進

    小林(進)委員 短い関連ですから結論を言いますけれども、駐留協定がありまして、労働条件については日本の法規によるというふうな規定がありましょう。労働協約の問題は労働条件の問題です。それはちゃんと米軍日本政府との約束で、日本の法規によるとやっておるじゃないですか。一体何の遠慮があって五年間もそういうことが守られないのですか。失効のままにしておいて、しかも失効のままにしておいて労働省は――さらに有利に待遇してくれているのならいいですよ、今まで占領中にもあった労働条件労働協約を廃棄して、結ばないということによって弾圧しているじゃないですか。休憩時間も労働者が自由に得られないような、封建的な弾圧をしておるじゃないですか。これを五年間も放任しておいて、いつやめるかわからぬといって約束できませんというような、そんなふまじめなことで長官が勤まりますか、大臣が勤まりますか。命がけでやりなさいよ。その意味において、私はいま少し明確に期日を示してやってもらいたい。期日を示し得なければ、何月からこの問題に対してどういうような交渉をしているかという交渉の経過を、この労働委員会に逐次報告することを約束してもらうか、さもなければ大体の目標、何月までには問題を成立させたいという、いずれか二つのうちの一つを明確に言明していただきたいと思う。さもなければ、三十二年から五年間も今まですっぽかされて、われわれも国民の代表だ、そんなうっちゃらかしたような答弁で、さようでございますかといって引っ込むわけにはいきません。
  89. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 この種の問題は、労働組合調達庁との間の合意に達しなければならぬことは申すまでもないわけでございます。従いまして、合意に達するように最善の努力を払うということでございます。私は、別に私がいつやめるかわからぬからほうって置くというような意味で申したのでなく、私が明日やめましても、この問題は最善の努力をして、政府として早急な解決に努めるということを申し上げたのでございます。なお、今後の交渉の経過等につきましては、随時適当な機会に申し上げることにいたしたいと思います。
  90. 島本虎三

    島本委員 今就業規則がございますか、林長官
  91. 林一夫

    ○林(一)政府委員 就業規則につきましても、まだ得るに至っておりません。これもなるべくすみやかに作成いたしたいと考えております。
  92. 島本虎三

    島本委員 労働基準法八十九条、常博十人以上の労働者がいる場合にはこれがなければならないことになっておるのですが、労働省、これに対して今までどういうような指導をとって参りましたか。
  93. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 基準局といたしまして、各事業場に対して監督をやっておるわけでございますけれども、就業規則自体がまだ監督署に出ておらないということは事実でございます。しかし、この就業規則にかわりまして、いわゆる基準法の実質的な労働条件を規定しております労務基本契約並びに今度の諸機関契約、こういうものが実質的に労働者労働条件を規定し、かつこれを調達庁が実施に移して、労使間の労働条件を規定しておるものでございます。これらについては、実質的な就業規則として各監督署に届け出ております。
  94. 島本虎三

    島本委員 どういう指導をしてきたか聞いておるのです。
  95. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 これにつきましては、労働省といたしましても、基準法上の義務は遂行しておりませんので、再三にわたりまして口頭で調達庁に、これらの八十九条に基づきます就業規則を提出するように申しております。
  96. 島本虎三

    島本委員 林長官、あなたはそれを受けて、今まで何のためにこれを放置しておったのですか。
  97. 林一夫

    ○林(一)政府委員 就業規則も早く成立させたいということで、調達庁としては努力しておるのでございます。現状は、この就業規則の準則というものを中央において一応きめておるのでございます。調達庁といたしましては、労働基準法の精神にのっとりまして、今後よく関係組合協議を重ねまして、各企業別の就業規則を作りたいということで、準則をきめて参ったのであります。軍の方といたしましては、初めは単一の、全国画一的な就業規則の制定を主張して参ったのであります。そういうようなことで意見が分かれております。いまだその点の一致を見ないわけでございます。最近に至りまして、軍の方としましても、この就業規則の準則を示して参っておるのであります。さらにこの準則につきまして軍と折衝しまして、意見の一致を見て就業規則を作りたい、こういうふうに考えております。
  98. 島本虎三

    島本委員 あくまでもこれは、あなたの申しましたように、また防衛庁長官が言ったように、双方対等立場交渉しているのだ、こういう問題に対しては積極的にあなたは唯々たる立場交渉しているのだ、こういうふうなことを言ったばかりなんです。おそらくは就業規則を作らなければならないことは、日本じゅうの労働法規に照らして、今は民間でもだれでも常識なんです。ところが、あなたの場合は、いろいろなことを考えてまだやっていない、おそらくこれは何年かほったらかしているものなんです、こういうことはもう許されることではない。労働省の方も労働省の方で、形式的に、ただ言ってやりました、これでいいものだと思われない、やっていなければやっていないように、なぜこういうことに対して堂々と責任をとらせないのか、基準局長、どうです。
  99. 小鴨光男

    ○小鴨説明員 先ほど申し上げましたように、実質的な労働条件につきましては、労務基本契約あるいは諸機関契約というようなものが監督署の方に届け出ておりますので、監督署としては、実際上監督のよりどころになるような労働条件については承知しておりません。実質的には就業規則が出ておりませんので、この点につきましては、ただいまのお話にもありましたように、準則も向こうから出てきまして、その内容につきまして基準法違反がないように十分検討して、すみやかな制定を調達庁申し出ておるところでございます。
  100. 島本虎三

    島本委員 協約がないままにこれを実施しているということは、怠慢なんです。監督の権限を持っておる防衛庁長官、この怠慢に対してどういう決意を持っておられますか。
  101. 藤枝泉介

    藤枝国務大臣 基本契約あるいは諸機関契約によりまして、実質的には就業規則にかわるべきものということでやっておりますが、ただいま御指摘のありましたように、形式的にもこの就業規則がすみやかにできなければならないわけでございます。何か対等立場を捨てておるような御意見でございますが、それならばはっきり米軍から提示されたのをうのみにすればいいということになってしまうのであります。そういう意味でなくて、そういうものではあるけれども、日本労働基準法その他に照らして改むべきものは改めさせなければならぬので、交渉をいたしておるような次第でございます。しかし、ここまでおくれておることははなはだ遺憾でありまして、さらに督促をいたしまして、すみやかな制定をいたしたいと存じます。
  102. 中野四郎

    中野委員長 この際、委員長からも注意をしておきますが、法規に従ってすみやかにこの就業規則を作るように、労働省並びに防衛庁に、委員会を代表して注意をしておきます。
  103. 島本虎三

    島本委員 最後に、一つ林長官のはっきりした考えを承って、次にすぐにバトン・タッチをいたします。  先ほどの賃金、待遇の問題で、頭打ちを解決するために、長く勤務できるような賃金体系にしてもらいたい、こういうふうに言った。しかしながら、実際現在のような状況では、一番不安定なのは駐留軍労務者である。こういう場合には、おそらく現在在籍中の労務者でも、その配置転換を、現在の炭鉱の労務者のように十分考えてやって、他産業への職場移動というようなことも積極的に指導し、職業訓練を施したりしてやる。優秀な技術を持っておる人も多かろうと思う。そういうふうにして生活の安定をはかってやることは、現在の置かれておる立場としてまことに重要じゃないかと思っておる。これに対して所信を承りたいと思うのです。
  104. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいまお説の中にありました賃金体系にも、やはり現在の駐留軍労務者賃金体系の中においても改善すべき点がたくさんあるのであります。そういうような点は、今度国家公務員賃金体系にならった賃金体系にして改善をはかって参りたい、こういうふうに考えております。今配置転換等のことについて御意見があったのでありますが、現在人員整理のあったような場合においては……。
  105. 島本虎三

    島本委員 他の産業への職場転換ですよ。
  106. 林一夫

    ○林(一)政府委員 他の産業への配置転換でありますが、これは今後できるだけそういう点も一つ検討して、可能な限りそのようなことを考えて参りたい、こう思っております。
  107. 島本虎三

    島本委員 それでは委員長、これで終わります。なお最後に、労働協約並びに今委員長指摘されたような就業規則の点は、くれぐれもこの委員会で発言されたそれらの皆さんの決意に逆らわないように、こういうふうなことをほごにしないように私も強くこれを要望して、なおこれをやった場合には、われわれは重大なる決意のあることを表明して、私の質問を終わります。
  108. 中野四郎

    中野委員長 この際、午後二時十分まで休憩をいたします。    午後一時十分休憩      ――――◇―――――    午後二時三十五分開議
  109. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。河野正君。
  110. 河野正

    河野(正)委員 さきにそれぞれ関係委員から、駐留軍労務者の基本的な面についての質疑が行なわれたわけでございます。私は主として諸機関労働者の点にしぼって所見を申し述べて、政府の御見解をお伺い申し上げたいと考えます。特に昨年の十二月一日付で、今までの直接雇用が政府雇用に切りかえられた、こういう一つの制度の改変があったことは御案内の通りであります。そういう制度の改変があったわけでございますから、それぞれ雇用主立場にございまする調達庁あるいは府県渉外管理事務所、こういうような雇用主としての立場というものも、制度の改変に伴って当然体制というものが確立されなければならぬということは、これは否定することのできない事実だというように思います。  そこでまず第一に、そのような制度の改変が行なわれた、今までの直接雇用というものが政府雇用に切りかえられた。そういたしますと雇用主であるべき調達庁、府県の渉外管理事務所にとりましては、直接雇用から政府雇用というふうに切りかえられたことに伴います業務が新たにつけ加えられるということは、もう当然のことだと思います。しからばそういう制度が切りかえられて、しかもそれに対します雇用主の方の体制というものが、実際に改善をされたのかどうか。もしそういう新しい体制に基づく当局側の体制が確立されなければ、それに基づく諸機関労務者に対するしわ寄せが行われることは当然の理であります。それでは今申し上げますように、制度の改変に伴います当局側の体制の確立の状況は一体どういう状態であるのか、まずこの辺に対します御所見を承りたいと思います。
  111. 小里玲

    小里政府委員 昨年の十二月一日に従来の直用から政府雇用に切りかえを実施いたしまして、それに伴いましておもに各府県の渉外労務管理機関の機構の整備を行なったわけでございます。労務管理事務所によりまして、その仕事の量、労務者の数等によって差異がございますから一律ではございませんけれども、諸機関労務者仕事を直接に専管する係等も設けましたり、それぞれその他の事情に即した制度の改正を行なっております。
  112. 河野正

    河野(正)委員 制度の改変に伴って体制の方も改変を行なったということでございますけれども、しからば具体的にどのように体制というものが確立されたか、一つ具体的に御説明を願いたい。
  113. 小里玲

    小里政府委員 従来の政府雇用労務者、いわゆるMLC関係政府労務管理機関の上に加えまして、今回の諸機関労務者仕事をやるわけでございますから、増加をいたしました人数等にしましても、諸機関労務者が一万三千人、従来のMLCの労務者が五万四千人、比例的に人数を増加するというようなことは必要もございませんし、また管理費等の関係、あるいは従来のMLC労務者と今回の諸機関労務者との実際にやる仕事の態様の差異というようなことからいたしまして、今回諸機関労務君のために全国で五十七名の人員を配置いたしまして、これに諸機関労務者仕事をやらせておるわけでございますが、ただ所長さんでありますとか、あるいは課長さんでありますとかというような方々は、これは従来のMLCと今度の諸機関関係を一緒に見る、こういうことになるかと思います。従いましてそういうダブった面もございますから、今度の上積みの面は数としてはわずかでありますけれども、調達庁といたしましてはできるだけ整備、充実をして仕事を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  114. 河野正

    河野(正)委員 なるほど体制の充実を考えて参りたいというようなことでございますけれども、現状を見て参りますと、今小里さんのおっしゃるような格好ではなかろう、まことに残念でございますけれども否定せざるを得ない。すでに御案内のようにこの諸機関労務者は大体一万二千数百名、それからMLCは大体五万四千名、ところがその体制の強化が行なわれなければ、実際に五万四千名に対しまする人員で二万二千数百名の労務管理の業務が追加されるということで、かなり仕事に過重の面も出てこようし、そのことがひいてはさらに職務の遂行上いろいろ不十分な点が出てくる。それのために、午前中もいろいろ御指摘になりましたようないろいろな基本的な問題の解決をはばんでいくというふうなことが、現実に出てくる可能性があろうかと私は考えます。そこで、なるほど部長の御発言のごとく、比例的な増加は必要ないといたしましても、しかしやはりそれだけの業務が付加されたわけでございますから、それ相応の体制というものは改善されなければならぬ。ところがたとえば岩国労監のごときは、約五百ぐらいの諸機関労務者に対して一名の職員の補充をしたにとどまっておる。全国的にはMLCの労働者が五十名に対して一名の職員の割でございますけれども、諸機関労働者の場合には三百五十名に対して一名の割合で具体的に配置されておる。こういうことできょうの午前中も各関係委員からいろいろと追及が行なわれて参りましたが、当局側では善処するとか改善するとかおっしゃっておるけれども、そういう体制ではたして当局がおっしゃっておるような改善ができ、あるいはまたそれぞれ関係委員から御指摘願っておりますようなことが実際に遂行できるかどうか、私どもはまことに疑問を持たざるを得ないと思います。そこで一体そういう実態というものを調達庁長官は十分把握されておるのかどうか、単に抽象的に去年の十二月一日協約が変わって、今までの直接雇用というものが間接雇用になりました。政府雇用になりました。それに応ずる体制をだんだんとやっておりますという報告のみ聞いて、実際私が今御指摘申し上げましたような具体的な点については十分御理解がない。私ども今までだんだん長官交渉でやって参りましたけれども、その中ではそういう傾向が非常に強く現実に出てきておるのですね。そこで、私わざわざ具体的な実情も申し上げたわけでございますけれども、そういう実情で事足れりというふうにお考えになっておるのかどうか、一つこれは長官の方から御発言を願いたい。
  115. 林一夫

    ○林(一)政府委員 労務管理の体制につきましては、ただいま小里部長から詳しく説明申し上げた通りであります。諸機関労務協約が発効になりまして、この方面に対する労務管理につきましては、人員についても約六十名近く増員いたしております。また管理費についてもその額は少ないのでありますが、従来の管理費プラス一人当たり八十円近くの増加を来たしておる。従いましてこのような体制で努力すれば、十分労務管理はできると私どもは考えております。もちろん各事務所事務所の人員のあんばいにつきましては、改善すべき点があると思うのであります。その人員配置数につきましては、今後検討して参りたいと考えております。
  116. 河野正

    河野(正)委員 実態を十分御理解いただいて今のような御発言をいただいたかどうかわかりませんけれども、私どもは必ずしも今長官が御説明になったようなことでは納得できないというのが実情でございます。現状認識でございます。今長官の方で管理費についても八十円近くプラスされたというような話でございます。しかし実際には管理費が少ないということで、MLCとIHAの間の処遇にいろいろ格差が出ている事実もございます。そこでそういう管理費は今幾ら出ておるのか。プラス八十円ということは承りましたけれども、実際幾ら出ておるのか、そういう点について具体的に一つ明らかにお答えを願いたい。
  117. 小里玲

    小里政府委員 三十七年度の予算といたしまして、諸機関関係の地方の委託費が二千九百六十七万円でございます。
  118. 河野正

    河野(正)委員 この政府雇用、MLCの場合とIHAの場合の管理費には、非常に大きな相違がございます。そういう相違というものがいろいろ、先ほど私が申し上げますような体制の欠陥その他にも影響を及ぼしておると思うのです。そういう政府雇用の中でも、MLCの場合の管理費とIHAの場合の管理費との間には、非常に大きな格差があるわけですが、そういう点についてどういうふうにお考えになっておるのか。また格差に対して、政府は今後どのように処置をすべきだというふうにお考えになっておるのか。そういう二点についてお答えを願いたい。
  119. 小里玲

    小里政府委員 従来の政府雇用と今回の諸機関労務者との管理費の差は、相当大きなものがございます。これはいわゆるMLCと諸機関従業員との仕事のやり方が違っておる、これが差をもたらしておりまする一番大きな理由でございます。と申しますのは、MLCにおきましては、たとえば給与の計算でございまするとか、あるいは給与の支払いあるいは人事措置の本人への手交といったようなことが、全部日本側の機関において行なわれまするのに反しまして、諸機関関係ではこれを米軍が実施をする、もちろん労働条件、あるいは人事措置の決定につきましては、米側協議をいたしまして、日本側が最終的なものとして正式化した上で実施をするわけでございますが、これを実際に手続を進める、賃金を支払ったり、あるいは人事措置を本人に手交するというような、具体的に割合金のかかる仕事米側でやる、こういう仕組みになっております関係上、MLCとIHAとの間に大きな差違が出てきておるということでございます。それと、もちろん先ほど申しました二千九百万円というのは、今までありまする機構の上に上積みをされた関係でございますから、労務管理機関として、一体として動かしていくわけでございますので、ネットとしては二千九百万円でございますけれども、両者渾然一体として仕事を運営していく、こういう関係も出て参りますので、上積みとして二千九百万円、こういう関係になるわけであります。
  120. 河野正

    河野(正)委員 渾然一体として運営されるから、少々格差があってもよろしいというようなお話でございますけれども、実はその格差があるために、いろいろ不都合な面が出てきておるわけですね。その格差を政府が改善していくというふうな姿勢を示さぬ限りは、たとえば前々回の委員会においても、板付のウエートレスの馘首の問題が出て参りましたけれども、こういう問題というものがいつまでたっても跡を断たない。そういう板付の解雇問題を解決するためにも、やはり制度の改変に伴って、資金運用というものについては一向改められておらない。今私が御指摘申し上げましたのは、現実に起こってきているいろいろな解雇問題等についても、今申し上げるような管理費の不合理、欠陥というものが、具体的な問題を呼び起こしているわけです。それにもかかわらず、政府側が渾然一体で運用するので、多少の格差があってもやむを得ぬ。そういう姿勢でございますならば、今現実に起こってきておる解雇問題その他については、当然だ、やむを得ぬのだというふうなお考えのように私どもは理解をするわけでございまするが、そういう管理費の格差についての姿勢についてもう一度明確に、この点は長官からお答えをいただきたい。
  121. 林一夫

    ○林(一)政府委員 この労務管理体制は、ただいま労務部長から説明申し上げましたように、労務管理職員が一体となってその労務管理の運営に当たっているわけでございます。なるほど増員の数は六十名足らず、あるいは従業員一人当たりの増加の金額というものは、比率的には少ないのでございますが、やはり全体一体としてこの労務管理の運営に当たっておるのでございます。努力を加えれば、別に従来と変わるというようなことはないと私どもは信じておるのであります。ただ運営の問題については、今後十分改善すべき点があろうと思うのでありますが、そういう点につきましては、今後とも十分改善すべき点があれば改善したい、こういうふうに考えております。
  122. 河野正

    河野(正)委員 改善すべき点があれば改善したいということではなくて、改善すべき点があるから私は要求しておるのです。ですから、その趣旨がわかったので一つそのために努力するというならけっこうですけれども、改善すべき点があるならということになると、今から検討するということになる。そういう姿勢は私はけしからぬ、こういうふうに申し上げるわけです。  さきの数字でございますけれども、私が承知しておる数字を申し上げますると、今までの管理費というものは、MLCの場合が八百九十五円、それからIHAの場合には大体七十円前後というふうに承知をいたしております。その後ベースアップ等があって、若干この数字が上回っておるというふうには理解いたしておりまするけれども、大体基本的な数字というものはそういう数字であると思う。そういたしますると、いろいろ聞いておられまする政府委員あるいは関係委員の方々は、格差があるらしいというようなことは御承知でも、今申し上げまするように非常に格差があるわけですね。ですから、実は私が先ほど再三申し上げるように、もうそういう格差というものは積極的に政府が改善のために努力しなければ、今日の問題というものはなかなか解決しないぞというようなことで申し上げておるわけでございます。  そこで、この諸機関労務者の場合は歳出外の資金でございますから、たとえば年々歳々職員は定期昇給、べース・アップ等で賃金は上がって参ります。ところが歳出外資金ということで、兵食堂の拠出資金というものはなかなか得ることができないということになりますと、現状のままでは結局赤字予算になってきて、首切り、賃下げあるいはまた勤務時間の切り下げ、こういう具体的問題というものが、次々に起こってくる可能性というものは非常に強いわけです。そこで、この管理費の格差の是正ということが困難であるならば、これは日本政府として、そういう格差の是正についてどういう努力をされるのか、この点を一つ明らかにしていただきたい。
  123. 小里玲

    小里政府委員 先ほど申し上げました管理費、二千九百六十七万円でございますが、これは全部アメリカから償還を受けるという金額ではございません。労務者一人当たりの一月の給与の平均の三分の一%ということで計算をいたしますると、約千二百五十万円くらいが米側から償還を受ける金額である。従ってその残りは大蔵省から予算をもらいまして、米側の償還の見合いのない金を管理費として流しておる、こういう関係になるわけでございます。従いまして私どもとしても、単に米側の償還だけを目当にしてこの管理費を組んでおる、こういうわけではございません。従いまして一方においては、契約できまっておりまする償還見合いの金、それと今後充実を期して管理費の増額というようなことも検討し、努力して参りたい、かように考えております。
  124. 河野正

    河野(正)委員 私が申し上げておるのも、米側の償還の予算だけでは問題のあることは十分承知しておる。そこで、そういう償還が不十分である、そういうために労務者にしわ寄せがいくということになるならば、具体的に日本政府が償還見合いについての格段の努力をしなければならぬということは当然のことです。ところ現実にそういう首切りが行なわれているわけですから、しからば今までどういう努力をしたか。努力が足らなかったからそういう犠牲ができておる。それですから、さらに努力しなければならぬということは、これは当然なことだと思う。これは大蔵省、自治省で、十分な努力の成果が実る実らぬは別問題としても、そういう努力が足らぬことによって、今日の解雇、首切りが出てきておるということは、これはもう否定することのできない事実だ、そういう認識に立って、今後一つさらに格段の努力をやっていただかなくちゃならぬということを、強く私は要望を申し上げておきたい。  そこで、実はそういう管理費が非常に少ない、あるいはまた政府のそれに対しまする努力というものが若干まだ欠けておる。そこでせんじ詰めて申し上げますると、実際に政府雇用という形に制度は切りかえられたけれども、資金の通用という点については進歩がないわけですね。改善の跡の見るべきものがないというところで、実はさきの首切り、解雇という問題が出てきておるわけなんです。ところがそういう問題が出てくると、そういう問題を抑えようというのか、あるいは労働組合を弾圧するというのか、そういう傾向が並行的に出てくるわけなんです。自分で予算の出し方が少なくて、あるいは努力が少なくて、そういうことによって労働者に犠牲が出てくる。その責任を回避する意味において、今度は逆に労働組合というものを押えようというふうな動きが並行的に出てくるというのが、今日までの一つの特色ある傾向です。  そこで私はその一つの例として、一例を申し上げます。これは時間がございませんから一例を申し上げます。それは三月七日に出されましたアメリカ側の指令がございます。この指令を従業員に徹底的に周知せしめるように指示があったようでございます。その主題といたしましては次のようなことがいわれておるわけですが、「米軍施設及び地域内に勤務せる現地従業員と在日米駐留軍との関係を規制する基本的指示」、これが表題です。その中にいろいろな項目がございます。しかし私は本日はこの各項についてはいろいろ申し上げませんが、ただその中できわめて重要な点がございますので、一点だけお示しをして、そうして当局の御所信を承って参りたい。  それは今私が指摘申し上げました指示の第七項目の中に、次のような文章がございます。それを一応読み上げて、あとで問題点を指摘したいと思いますが、それによりますと、「労働組合又は他の従業員団体活動は在日米駐留軍の施設或は地域内では禁じられて居る。このような活動は、公式或は非公式を問わず招集又は集合された労働者大会、示威運動、祭儀、政治的集会又は総会或は集会を含むが、これらのみに限定されない。」以下が問題です。「米合衆国或は日本国政府の個人、団体又は活動の事項、象徴、写真等を記載し、或は労働又は政治的団体又は活動を象徴するながし、旗、プラカード、標示、表象又は其の他の装飾品を掲げ、且又はバッジ、リボン、腕章、はちまき又は其の他の用品の着用は在日米駐留軍施設或は地域内に於ては禁じられて居る。」このことを周知徹底せしめようということです。  この中で問題となりますところは、たとえばこういうふうなバッジ、それから女ではアクセサリー、そういうものもつけて施設あるいは地域内に入ってはならぬ、こういうことが実は示されておるわけでございます。しかもこれは私の仄聞するところによりますと、板付基地のみのようでございますが、こういう事情を御承知あるのか。そこで私ども先ほどの委員会におきましても、さきに板付の兵食堂の三十名の解雇というものは、八百名の諸機関労務者がおるが、たまたま八百名のうちその三十名が組合員として組合に加盟しておる。その組合員三十名を全員解雇するということは、不当労働行為ではないかということを指摘申し上げたわけでございますが、そういう点と関連いたしますので、一つこの際長官の御所信を承っておきたい。
  125. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいまお話がありましたように、従業員が政治的なスローガンを掲げて、アクセサリーをつけて入ったときに、そのアクセサリーをとるようにとめられたという事例は伺っております。ただそのような行為を禁止するというような指令が出たということはまだ伺っておりません。  なお、これに関連しまして三十名のウエートレス人員整理のことについて、不当労働行為ではないかというようなお話もございましたが、私どもの方は、さきにこの委員会において説明申し上げましたように、この兵隊の食堂は従来の経営成績から見ますと、逐年赤字の累積という状態でございまして、現状のまま経営すると、経営困難というような状態に立ち至っておったのであります。何しろ食堂――諸機関でございますから、この経営経費の負担というものは、兵隊各自の負担で経営しておるというようなことでございます。そこでセルフ・サービスでいきたいというような希望もございまして、現地司令官がこの経営をセルフ・サービスに切りかえまして、三十名のウエートレス人員整理を行なったということでございます。私どもは不当労働行為とは考えておりません。
  126. 河野正

    河野(正)委員 どうも私は、単に今申し上げた三十名の馘首のみならず、日本労働者の基本的権利を抑圧する行為じゃないか、この点は非常に大きな問題として取り上げておるわけです。ところがその取り上げました問題というものが非常に重大でございますものですから、長官はそういう労働君の基本的権利よりも、むしろ三十名の首切りの方に話をしぼって御説明があったようでございますけれども、もちろんその三十名の馘首についても非常に重大でございます。ですけれども、基本的には、今申し上げますような労働者権利というものを、憲法で保障された権利というものを制限していこう、そのことが私はさらに重大だと思う。特にそういう問題が起こらないようにということで、あるいはまたこの憲法違反というような問題が起こってこないようにということで、新安保条約締結後この安保の六条に基づいて、そうして日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定というものが実は結ばれておるわけです。それによりますと、「賃金及び諸手当に関する条件その他の雇用及び労働の条件、労働者の保護のための条件並びに労働関係に関する労働者権利は、日本国の法令で定める。」地位協定第十二条の五項には、今申し上げますように労働者権利というものは、日本国の法で定めるというふうに明示をされておるわけです。ところがさっき長官は、政治的な意味で云々とございましたけれども、今度の指示によりますと、明らかに政治的な意味のみならず、その他装飾品を掲げたり、あるいはバッジ、リボン、腕章その他の用品の兼用というものは施設基地内ではいかぬ。このことは私は明らかにこの安保条約にも違反する行為だ、地位協定にももとる行為であるというふうに考えるわけですが、いかがお考えでございますか、一つ明確にお答えをいただきたい。
  127. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいまお尋ねの基地内におけるところの各種の制限の問題につきまして、私どもは、この米軍基地は軍の基地でございます。軍の基地内はやはり軍の特殊性に基づくところの職場規律というものが、管理権に基づいてあるべきであると思うのであります。そのような職場規律に基づいてそのような制限が行なわれておれば、これもやむを得ないことと思うのでありますが、ただその制限の内容につきましてはいろいろ調査しまして、法令に違背するというような点がありますならば、今後とも厳重に米軍申し入れをしたい、こういうように考えております。
  128. 河野正

    河野(正)委員 そういうような法令に違反する行為があればというようなことではなくて、たとえば基地労務者は、特に諸機関の中には女性もかなり多い。その女性がつけておりますアクセサリー、あるいはまた男性がつけておりますバッジ、こういう着用がどうして職場規律を乱しますか。これは常識的にお考えになっても御理解いただけると思うのです。たとえば私どもが国会議員のバッジをつけておる、これが考えによっては職場の規律を乱すというような印象はどこから出て参りますか。(「それは違う」と呼ぶ者あり)バッジをつけることが職場規律を乱すと言うたら、そういうことになるじゃないか。全駐労組合だって……。
  129. 中野四郎

    中野委員長 河野君、質問を続けて下さい。
  130. 河野正

    河野(正)委員 どうですか。
  131. 林一夫

    ○林(一)政府委員 私が聞いております事実は、アクセサリーをつけて入った場合の状態は、そのアクセサリーに政治的なスローガンを掲げて入っていたというようなことを聞いております。そのような場合は、職場規律によってこれを律したというようなことではないかと私どもは考えておりますが、そのような指令について詳細な点は伺っておりませんので、指令の内容をさらに検討しまして、もし法令に反するというようなことがありますれば、厳重に申し入れをいたすつもりでございます。
  132. 河野正

    河野(正)委員 私どもがこういう資料を承知しているのに、駐留軍関係の最高の責任者である、しかも長官政府機関を代表するのです。そういう政府機関代表する人が、この内容について今日なお御承知ない。全く職務怠慢じゃないですか。しかもこういう指令については、六万にわたる駐留軍労働者というものは非常に大きな関心を示しておる。しかも今駐留軍労務者というものは、諸機関労務者も含んでおりますけれども、政府雇用です。あなたが雇用した六万の組合員というものが、労働基本権を侵されるということで非常に重大な関心を持っておる、そのことすらまだあなたが十分御承知ない。全く職務怠慢じゃないですか。小里さん、どうですか、補佐の責任が勤まらぬじゃないですか。
  133. 小里玲

    小里政府委員 そういう軍の内部指令が出されたということは私も聞いておりますが、それの詳細については私も承知しておりません。従いましてこれをただちに認否をいたしまして、その内容日本の法令に違反するところがあれば、至急にそれの改正方について厳重に申し入れたいと思います。
  134. 河野正

    河野(正)委員 日本国憲法でも、すべての国民は個人として尊重されるわけですね。生命の自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他国政の上で最大の尊重を必要とする。それですから、公共の福祉に反しない限りは、今私が申し上げたような個人の権利というものは、最大に尊重されなければならない。しかも安保、地位協定によっては、労働権については日本の国内法で臨めるということです。ですから当然これは新安保条約あるいは地位協定に違反する行為であるということは、これは大体私がいろいろ申し上げた事実から御承知がいったろうと思うのです。労働大臣がおられませんけれども、これは駐留軍労務者に限らず、これは日本労働者です。この労働者の基本的権利というものが、今申し上げるように侵されようとしておる。国会議員のバッジをつけたら云々という話が出ましたけれども、駐留軍労務者であれば組合のバッジをつけていい。国会議員と同じです。女性だったらアクセサリーを普通つけますね。それがいかぬ。それは今申し上げるようにただ常識的に言っておるのではなくて、そういう労働者権利については――警備とか施設については、さっき長官がちょっと触れられましたように、これはアメリカ側の権限でしょう。しかし労働者権利については、今申し上げたような安保、地位協定によって日本の国内法によるといっているのだから、それが侵されようとしておる。これは常識的にそういうように理解することは当然だと思う。こういうきわめて重要な労働者権利が侵されようという事情について、労働者としてどういうふうな御見解をお持ちでございますか、一つこの際明らかにしていただきたい。
  135. 堀秀夫

    堀政府委員 お話のように、駐留軍労務者労働条件その他の権利は、日本国の法令の定めるところによるわけでございます。それが軍の基地内において行動をいたします際に、軍の職場規律あるいは管理権という問題からして、どのような制限を受けるかという問題に帰着するわけでございますが、ただいまお話のような点につきまして、私どもも事実承知しておりませんでしたので、調達庁とよく連絡いたしまして、よく事実を調査いたしたいと考えます。
  136. 河野正

    河野(正)委員 先ほどもちょっと触れましたように、この施設あるいはまた警備、そういう点については、いわゆる俗に基地管理権というふうに言われておるわけです。私どもは今申し上げるように、この帯地管理権の中には正当な労働組合運動というのは含まれない。あるいはアメリカ側の方は含んでおるというようなことで、そういう指令を出したのかもしれませんけれども、私どもはいわゆる警備だとか、施設の管理、そういうものを総称して普通管理権というわけですが、そういう管理権の中には、健全々組合運動というものは含まれないというふうに考えるわけですが、これは調達庁の方ではどういうふうにお考えになっておるのか、一つこの際明らかにしていただきたいと思います。
  137. 小里玲

    小里政府委員 基地内における組合活動が、軍という特殊な機構の中でどの程度許されるかという問題になると思いますが、それは普通の民間会社等と違いまして、特別に規律と統制を重んじ、特に軍の安全ということについては非常な重大な関心を持っております軍といたしまして、普通の民間会社のような組合活動の自由というものは、許さるべきでないという軍の考え方でございます。そこで問題はやはりそういう特殊な軍という機構の中において、労働法上どの程度まで許すべきであるかということ、私どもといたしましては、たとえば休憩時間とかあるいは就業後に、全然軍の規律なりあるいは安全なりに関係のないところで、支障がないところでの組合活動というものは許すべきである。しかしそれが軍の運営なり規律なりに支障があるということならば、やはり一般よりも強い規制があってもしようがないという見解でございます。
  138. 河野正

    河野(正)委員 そこで私は特に健全な組合運動ということを言っておる。逸脱した組合運動と言っておりませんよ。あなたがそういうことをおっしゃろうと思うから、あらかじめあなたの境地を読んでおるわけです。そこで正常な労働組合運動というものは、そういう通常いう管理権の中には含まれない。そこであなたがいみじくもおっしゃったように、そういう逸脱した云云でございますから、言葉をかえますと、正常な組合運動というものは含まれない、こういうことにもなろうかと思います。そういたしますとこの安保条約には、公共の安全に妥当な考慮を払うよう定められておるわけでございますから、従ってこの正常な組合運動の一環である先ほど申し上げましたような具体的な事実については、当然私は許さるべきであるというふうに考えます。そこでこれはさっき労政局長からも御回答がございましたけれども、大臣が欠席でございますから、一つ政務次官から、大体事情はあらあら御理解いただけたと思いますから、ここで政治的な御見解一つ承っておきたいと思います。
  139. 加藤武徳

    ○加藤(武)政府委員 労政局長が答弁をいたしましたように、米軍の施設内におきましては、どの程度の制約を受けるかについては、大いに議論があるところであろうと思うのであります。そこで河野委員のおっしゃっていらっしゃることを伺いますと、その範囲におきましてはさほど問題はないという工合に理解をいたすのでありますが、労働省としましても十分実情を把握しておらないのでございます。そこで調達庁長官が答弁をいたしましたような、かりに政治的なスローガン等を付したバッジあるいはブローチ等でございますと、これは大いに議論があるわけでありまして、さようなことにつきましては、労働省としては十分に資料を整えて勉強いたしたい、こう考えるわけであります。
  140. 河野正

    河野(正)委員 勉強をしてもらっただけでは何もならない。一つぜひそういう事実が明らかになったら、労働省としても何分の措置をしてもらわないと、ただ勉強して知識ばかり蓄積してもらってもこれは意味はない。ぜひ一つそういう事実が明らかになりましたら、当局として厳重に善処を要望する、こういうように一つここではっきり御回答をいただいておきたいと思います。
  141. 加藤武徳

    ○加藤(武)政府委員 労働省といたしましては、不当に正当な権利の行使を押えようなんということはみじんも考えていないわけでありまして、さような意味におきまして河野委員の発言をよく了解いたしました。
  142. 河野正

    河野(正)委員 いろいろ問題が紛糾して参りますと、今のような問題がまた派生的にも出てくるわけであります。今度出されました規制の基本的な趣旨ですね。これは板付に限って出されたのか、あるいはまた全国に出されたのか。特に板付に出されたということであれば、今ちょうど板付で諸機関労務者の解雇問題をめぐって、いろいろ紛糾しておる渦中にある。そうなりますと、そういうところにねらいを置いてやるということになると、また不当労働行為ではないかという見解がまたぞろ出てくるわけです。一体これはどういう形でこういう規制が出されたのですか。
  143. 小里玲

    小里政府委員 私が承知しておりますのは、板付のことは承知しておりません。神奈川県の陸軍関係基地かで、そういう規制が出されたということを聞いた次第であります。板付は承知しておりません。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕
  144. 河野正

    河野(正)委員 第六一四三空軍基地司令部板付空軍基地となっております。ですから板付から出されたことは事実だと思います。ですから板付帯地に限ってこういう指令を出されたとすれば、これはまた非常に重大な問題だと思うのです。しかし十分御承知ない点もありますから、それは無責任だと思いますが。しかしそういう御答弁でありますから、さっそく御調査を願いたい。事と次第によっては不当労働行為というので、また取り上げなければならない問題だと思います。いずれにしてもそういうふうに諸機関労務者の基本的権利というものが、だんだんに抑圧されるというふうな一つの傾向にございます一例を申し上げたわけでございますが、いずれにいたしましても、制度は変わったけれども、実際には資金運用その他のものに対して変わりばえがしない。そのために馘首、賃下げ、あるいはまた勤務時間の切り下げ、こういう問題が次々に起こってくる一つの傾向がある。それでは当然歳出外資金、諸機関の資金運営というものを抜本的に改善をしなければ、今日また私どもが指摘いたしておりますような諸問題というものも、これまた抜本的解決というものは困難ではないかというふうに私は考えるわけです。そういう資金運営の抜本的改善ということをお考え願っておりまするかどうか、これは当然お考え願わなければならぬのです。
  145. 林一夫

    ○林(一)政府委員 御承知のように諸機関というのは歳出外語機関でございまして、その諸機関を構成すると申しましょうか、諸機関を利用しておりますところの利用者の各自の負担によって、これを経営しておるというのが実情でございます。従いましてその経営が赤字である、あるいはその負担にたえないという場合においては、どうしても人員整理というような結果になるのでございます。そこで当方といたしましては、給与改定に伴うところの諸機関従業員人員整理というものは、できるだけ避けていくべきものであるということで、米側と強く折衝をしてきておる。その一つの方法は、この赤字補てんの財源を他に求めるように、たとえて申しますると、いろいろ機関の種類がございまして、経営がうまくいっておる機関もあるし、またこの板付の兵士食堂のように赤字の経営のところもあるのでございますので、まず黒字経営の機関と有無相通ずというか、資金的に調整をするという方法はどうかというようなことで、軍とも折衝を続けておるわけでございます。いずれにしましても、赤字が出たから人員整理をやるということでは非常に困ることでございますので、まず赤字補てんの財源を他に求めるように、強く折衝を続けてきておる次第でございます。
  146. 河野正

    河野(正)委員 抜本的な解決というものは、そういうこそく的な方法だけでは解決しないというように私は考えます。どうしてもこれはアメリカ政府資金労働者、MLC労働者とIHA労働者、この二つとも、MLC、IHAの相違はあっても、政府雇用でございますから、従ってその両方とも同じ労働条件として考えていく。そのためには、今申し上げますように、アメリカの将兵の拠出資金でございますと、これはベースアップ、定期昇給等でだんだん赤字がふえてくる。赤字が出てくることは、これはもう当然起こってくる現象です。そこで今長官が言われたように、プール資金の運用という面もございましょう。しかしそれは私は消極的な解決法だと思うのです。そこで抜本的にはやはりこのMLCとIHAというものの労働条件というものを同等にするためには、日本政府自体の資金というものを設置する必要があるのじゃないか。そうしてこれは今まで申し上げたように、兵隊の拠出資金をだんだんに増加をさせることが可能であるならば、赤字というものは克服できると思うのですけれども、これはアメリカの方でいやがっておる点なんです。そうしますとどうしてもMLCとIHAとの間に、労働条件その他に格差が出てくる。しかしながら形式的には一応政府雇用だという関係を持っておるわけでございまするから、そこでやはりどうしても労働条件というものは同一にしてしまって、同じ労働条件のもとに置くということは私は望ましいと思う。これは形式的には政府雇用ですからね。政府雇用で格差があるというのはおかしいのです。ところが資金繰りというものが、一方では拠出資金によるということでございます。しかもそれは定期昇給、ベースアップ等で、だんだん赤字が出てくる可能性というものが強いということになると、やはり抜本的解決としては、今長官がおっしゃったように、プール資金の運用ということもあるけれども、日本政府自体の資金を設置する必要というものは当然に出てくるのじゃないかというふうに思いまするが、そういう点について具体的にどういうふうにお考え願っておるのか、一つこの際明らかに願いたい。
  147. 林一夫

    ○林(一)政府委員 諸機関従業員給与の問題でございまするが、先ほども申しましたように、諸機関というのが米軍の歳出予算を離れた、その経営はどこまでも利用者の拠出金によって経営するという建前になっておるのであります。従いましてこのような諸機関の赤字を補てんするという方法は、結局他の諸機関とのプール経営というようなことが、最も適当な方法であろうと考えておるのであります。そのようなことで、赤字補てんの方法として、そのような方法をとるように強く折衝を続けておるような次第であります。
  148. 小林進

    小林(進)委員 関連質問をいたします。今の活を聞いていると、どうもわからぬ。政府が雇い主じゃないですか。その従業員賃金は、将校が二ドル出すか、下士官や兵が一ドル何ぼ出すかわからぬけれども、雇い主が政府であれば、首切りの問題に対して、使用人、やられる方の従業員なり組合員に重大な過失がないならば、あなた方は雇い主として当然責任を負うべきじゃないか。あなた方はプールだのブールでないの、独立採算だとか、何をふざけた答弁をしているのだ。それで一体労働行政ができるのですか。  なお先ほどから、私は時間がないから、聞いていると、やれ何です、さっき読み上げた板付の司令官から何とかという指令を出して、施設、地域の中でバッジをつけたらいけないとか、ごまかしの指令を出した。その指令を出したことについて、あなたたちは知らないのですか。その話を聞いてみると、林長官は何も知らない。これから調べてみますと言う。一体雇い主たるあなた方が知らないで、米軍がそういう勝手な労働管理というか何かの立場で、勝手にそういう指令をぼんぼん出して、あなた方に一体連絡も通達も来ないのか、使用者たるあなた方にあるのかないのか、その点明確にしてもらいたい。これから調べてみますだの、バッジとかアクセサリーを何とかするとか、悪いとかいいとか、調べてみますだのというのは、どこの長官だ。中小企業の三、四人使っている使用者でも、労働組合のイロハも知らぬ人でも、そういうばかな回答はしませんよ。われわれが聞いていると、ちょうどアメリカの軍事政権のエージェントだ。あなた方はアメリカの使用人か代理者という感じをわれわれは受ける。日本政府に直属する調達庁長官あるいは労政局長の答弁であるなどとは、終始一貫して考えられない。よくも日本政府の高官だなんていって高給をはんで、われわれの税金をみな食って、そういう地位にいられるものと思う。(「言語を慎重に」「大声を出すな」と呼ぶ者あり)私は控え目に言っているのだ。私の言うところはどうなっている。指摘したまえ。そういう不謹慎なことで国民の負託を受けることができますか。しかも労働関係はあなた方が雇い主で、一体地位協定の日米対等で事を処理していくなんという関係がどこにあるか。今まで労働者がこれくらいやっつけられていることに対して、一体あなた方は日本政府立場に立って、日本労働者立場に立って問題を処理したことがありますか。きょうは時間がないから、この次に来てもらってゆっくり私の言い分を言わしてもらいますが、さしあたり今私が言った二点だけ答えて下さい。こういう指令は雇い主たる調達庁長官に全部連絡なしに米軍側が規制するような、そういう指令をじゃかじゃか出すのかどうかということ、しかも人を首切るときも、あなたは雇い主だが、その雇い主の労働者が首切られたら、独立採算制というような言葉で、雇い主としての責任を持つのか持たぬのか、二つの点を、明確に言ってもらいたい。
  149. 林一夫

    ○林(一)政府委員 ただいま御質問の  一つの点であります基地内に入る場合に、いろいろの制限を加えるというような指令が出たかということでございまするが、そのような指令が出たということは、先ほども言いましたように遺憾ながら私は承知いたしておりません。ただ先ほども申し上げましたように、政治スローガンを掲げたアクセサリーをつけた者が中に入る場合にとめられた、取り去られたというようなことは承っております。そのような指令が出たかということにつきましてはまだ承知いたしておりません。そのようなことにつきましては今後十分調査いたしまして、法令に違反するというような点がございましたら、厳重に抗議を申し入れつもりであります。   いま一つMLC従業員給与の問題でありまするが、なるほど雇用主政府でありまするが、実際にサラリーのもとは、MLCの従業員アメリカですけれども、諸機関従業員のサラリーのもとはこれは歳出外機関でございまして、その機関を利用する利用者の拠出金に基づいておるという建前になっております。その点は一つ御了解をいただきたいと思うのであります。
  150. 小林進

    小林(進)委員 答弁になっていないじゃないですか。私は第一番目には、そういうような司令官の出す指令、労働組合労働者の出入りの関係からいろいろの行動を規制するような、さっき河野さんが言ったようなそういう規制をするような指令を出すときに、事前なり出した当時なり、日本政府の雇い主であるあなた方のところに、一体米軍から連絡があったのかなかったのか、このことを聞いている。こういうものを出しますよというその書類の写し、命令の写しがちゃんとあなた方のところにあって、事前に連絡があったかなかったかを第一番目に聞いている。  第二番目には、何も給料をだれが払うか聞いているのじゃない。雇い主たるあなた方に対して、首を切られた労働者に対して責任がないかと言うのです。雇い主が賃金を払っていない。独立採算制で下士官や兵隊の酒保を利用する者が出したその金でまかなって賃、金を払っているのだから、首を切られようと切られまいと雇い主たる私に責任がないというなら、あなたは事実上ロボットじゃないですか。みずからロボットを表明している。雇い主なら給料を払おうと払うまいと、雇い主としての責任があるはずだ。その責任をあなたは一体感じていないかどうかということを聞いておるのですよ。
  151. 林一夫

    ○林(一)政府委員 第一点の基地内におきます従業員の規制の問題でございますが、そのような指令が出たということは遺憾ながら存じておりません。先ほど申しましたような一部の制限についての事実を承知しておるということでございます。  次に雇用主の問題でございますが、先ほども申しましたようにMLCに基づく従業員給与の問題でございます。これは従来米軍としましても、基地の閉鎖とかあるいは業務の減少等によって人員整理をやってきたのでありますが、そのつどこの整理の縮減等については強く交渉いたしておりますし、またベースアップも公務員のベースアップをやるときには、同時同率原則によりまして、従業員ベースアップについて強く要求をいたしております。だんだんと給与内容についても改善が加えられてきておるわけでございます。  次に諸機関従業員給与のことでございますが、この給与の財源が先ほども申しましたように各利用者の拠出金によっておるという建前上、これはその拠出金をふやすか、また赤字の場合にその赤字の補てんを各自が分担する以外に求めるかという二つの方法があるのであります。そのような方法については常に米軍折衝しまして、そのような赤字経営のために人員整理をすることのないように、強く折衝いたしておる次第でございます。
  152. 河野正

    河野(正)委員 時間がごいませんから、だんだん結論を申し上げますので、当局側も一つごまかさずに、ずばりと御答弁を願いたいことを前もって申し上げておきます。  今までいろいろ指摘されましたように、同じ政府雇用でありながら、MLCとIHAの間にはいろいろ労働条件その他に格差がある、これが非常に問題なのだ。最も重要なのは今問題になりましたように、共同管理原則というものが全く除外されておるということなのですね。この点が非常に重大な問題だと思うのです。たとえば政府雇用でありながら赤字だから首だ、共同管理原則というものがIHA、諸機関の場合には全く除外されておる。この点が私は非常に問題だし、こういう差別措置がとられていいものかどうか、これが非常に重大なる問題だと思うのです。こういう不公平な措置がとられていいかどうかということについては、非常に重大だと思う。そこで時間もございませんからずばり申し上げますが、基本労務契約と労務協約の今申し上げましたような格差、こういう格差をどのようにして埋めていこうと政府は考えておられるのか、具体的な構想を一つこの際明確にしてほしい。
  153. 林一夫

    ○林(一)政府委員 基本労務契約と諸機関労務協約とは、この共同管理方式につきましては本質的には異なるところはないのであります。格差はないのでございます。けれども、人事措置の手続等におきまして、諸機関労務協約の方はこれを簡素化しておるという点はございます。これはやはり諸機関業務の特殊性によりまして、手続等を簡素化しておるという違いはございますのでありますが、本質的には変わりはございません。たとえば不利益人事措置等につきましても、両契約とも協議期間を設けて協議するという体制をとっておるのでございます。ただしその協議期間については、その特殊性によりまして、諸機関労務協約の方は少し期間が短いという点はございます。本質的にはこの労務管理方式というか、共同管理方式には変わりはないのでございます。
  154. 河野正

    河野(正)委員 実際に制度が改変されて得たものは何かというと、本質的には相違ないとおっしゃるけれども、ただ形式的に相違ないだけですよ。形式的になるほど政府雇用にはなったけれども、実質的には何か得たかというと、それは裁判権だけですよ。そのほか何にも進歩はありませんよ。だから、あなたが本質的に同一であるというふうなことは、これは一つお取り消し願いたい。形式的にはどっちも政府雇用になったのだから同一ですよ。本質的には何も同一じゃありませんよ。もしもあなたがそういう形でこの改変に臨まれるということでは、私は納得することはできない。少なくともあなたは、形式的にはどっちも政府雇用になったけれども、実質が伴わない。その伴わぬ実質については、今後積極的に改変の実を上げていきたいというふうに御答弁なさればけっこうです。いかがですか。
  155. 林一夫

    ○林(一)政府委員 実質的とか形式的とかいうような論議は別にいたしまして、基本労務協約と諸機関労務協約というものは、その共同管理方式については同じ方式をとっておるのでございます。これは本質的には同じでございます。これを具体的に申しますと、たとえば不利益人事措置等につきましては、両方とも協議期間を設けて、諸機関労務協約においても協議期間を設けて協議をするというようなこともやっております。先ほど御意見のあった裁判権の問題についても同じというように、この共同管理方式については同等の扱いをいたしておるわけであります。もちろん先ほど御意見のありましたように、両方を体して、改善すべき点がありましたら、将来は大いに検討して改善をしていきたいという態度はとっております。
  156. 河野正

    河野(正)委員 もう時間がございませんから、一つ結論を結びたいと思いますが、正直に言って、今長官が言われた答弁では納得できません。これはどこから見ても、どこから検討してみても、形式的にはなるほど政府雇用になったということは、これは否定できません。ところが中身を検討すれば、裁判権が確保されただけですよ。共同管理原則が確立されたとおっしゃるけれども、IHAの場合は、赤字が出てくれば首でしょう。共同管理じゃないですよ。一方的でしょう。しかしそれは、いずれ時間がございませんから譲ります。ただ納得できぬということだけはここで明らかにしておきます。  それと同時にもう一つ、それと関連いたしまするけれども、最後に申し上げておきたいと思いまする点は、保安解雇ですね。これは福岡にもございます。こういった場合に、この裁判を起こして、そうして原職復帰が確定いたしましても、復職就労をアメリカ側が拒否するわけですね。そういうことがありますると、日本政府が実際に雇用主である。ところが今申し上げるように、日本の裁判でこの現場復帰を確定しても、アメリカ側が復職を拒否する、こういうことではわれわれは納得できない。このことは、たとえば昭和三十六年三月三十一日付で神奈川地方労働委員会から、大船のPXに勤務していた七名の救済命令が出された。ところが軍側の拒否によって、この地方労働委員会の命令というものが不履行になっておる。これは福岡にもそういう実例があるのです。こういうように労働委員会の救済命令が出ても履行されない。この日本法規による労働者の保護というものが行なわれない。こういうことになりますると、これは実際安保地位協定によって、労働者権利については日本の国内法に従うということであるけれども、今申し上げるように、神奈川の大船のPXの七名の救済命令については履行されない。あるいは福岡についても保安解雇の問題があります。こういうことが許されるならば、安保協定の精神といったようなものは、どうなったのかと私どもは指摘せざるを得ない。こういう点について、もう時間がございませんから、いずれまた機会をあらためていろいろ御質問申し上げたいと思うけれども、そういう点について一つ最後に当局側から明確なお答えをいただきたい。これは事重大ですから、長官、それから労働省からもそれぞれお答えをいただきたい。
  157. 小里玲

    小里政府委員 今指摘の点でございまするが、従来、現在の地位協定の十二条5によりまして、労働者の保護の条件でございますとか、労働関係に関する労働者権利日本国の法令で定むるところによらなければならない、これによりまして、米軍といえども日本の法令を守ってやるのだ、こういうことがはっきりしておるのでございますが、それがはたして裁判の判決でありますとか、あるいは労働委員会決定というようなものを含むかどうかということについて、従来疑問の点がございましたがゆえに、今回の地位協定の改正によりまして、この点がはっきりいたしたわけでございます。すなわち、この地位協定の合意議事録に、「地位協定の第十二条5にいう「日本国の法令」とは、第十二条6の規定に従うことを条件として、日本国の裁判所及び労働委員会決定を含むことが了解される。」こういうはっきりした合意議事録ができました関係上、今後はその裁判所の判決なり労働委員会決定を、日本の法令を守るという意味においてアメリカも順守するのだ。ただ十二条6によって、安全上の理由による解雇の場合の復職の拒否という問題は例外的に規定をした、こういうことだと思います。
  158. 河野正

    河野(正)委員 これは安全上の理由ということは、実はいろいろと日本側とアメリカ側との間に見解の食い違いがあって裁判ざたになる、それが多いわけですね。そこで裁判の方で今申し上げるように、原職復帰ということが確定する。今までのものは、保安解雇の場合は、大半そうですよ。ところアメリカ側は、もともとこれは保安上適当でないということでやっておるのだからということで守らない。そこで結局、なるほど日本労働委員会あるいはまた裁判における判決を尊重するということであるけれども、その場合に、保安上の問題が続いてきますると、私はまた問題を起こす可能性があると思う。それですから、そういういざこざのほとんどが、保安上の問題で、そういう地労委あるいはまた法廷上の問題になるケースが非常に多いわけですから、その問題が続いておる間は、なかなか今小里さんのおっしゃったようなことでは、私どもはここで引き下がるわけにはいかぬ。時間がございませんから、これはいずれ別の機会に申し上げたいと思いますけれども、そういう点についても今後一つ万全の対策を立てていただかなければならぬ。これは単に駐留軍労務者の問題であるけれども、これは日本労働者権利からいうと非常に重大な問題です。ですから一つこれは労働省の方からも最後に御見解を願って、きょうの質疑は一応終わって、あとの問題については留保したい、こういうように考えます。
  159. 堀秀夫

    堀政府委員 これらの件につきましても、お話の通りでございまするので、今後調進庁と連絡を密にして、十分に努力いたしたいと考えます。
  160. 柳谷清三郎

    ○柳谷委員長代理 田邊誠君。
  161. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 私は郵政省の労務管理の問題について機会あるごとに、労使の正常な運行をはかるべきことを主張して、特に郵政大臣以下の今までとって参った労務政策というものが、現状の日本の他の官庁なり他の企業に比較をいたしましても、きわめて不穏当のものがあり、あるいは行き過ぎが多いことを指摘して参りました。それに対して郵政当局は、あくまでも法にのっとって守るべきものは守り、そして非違行為に対しては、正すべきものは正していくという態度であるということを言明をして参ったのであります。特に私は質問を簡明にしていきたいと思いまするので、この前の質問等に対する重複は避けまして、一応御承知をいただいておるものと認識をいたしまして、具体的な内容を一、二点お伺いしたいのであります。  特に組合のいろいろな活動や運動に対して、公労法なり国家公務員法なりの違反によって処罰をするということが、しばしば行なわれて参りましたが、その中には正常な労働運動からいって、当然それに価しないという、該当しないという、こういったものがあることをわれわれは指摘をしてきました。昨年の三月十八日の職場大会等におけるところの大量の処分に対しても、このことを申してきたのであります。それに対してわずか二十数名ですかの処分取り消しをいたしたことを報告をいただきましたけれども、われわれはこれに類するものは数多くあるであろうというように考えておったのであります。特に昨年の五月十八日の木社会労働委員会において、郵政省の長田人事部長から私の質問に対してお答えをいただいておる中に、「時間内職場大会を行ないますこと、あるいはそれを指令したりいたしますことは、私どもは国家公務員法八十二条に毛違反するものだというふうに考えておりますので、その指令あるいは実行について実質上責任があると考えられる者については、その責任を追及したわけでございます。」、その次に「公労法あるいは公務員法に違反する行為を組合として実施した、あるいは職員がそれを実行したという点につきましては、私どもはその何条であるからということでなしに、現在の組合の組織、その実態からしまして指令を受け、自分の区域内で実施させた地区本部あるいは支部等の重要な役員は当然責任を負うべきものというふうに考えているわけでございます。」こういう答弁をいたしておるのであります。これはすなわち組合機関の役員であれば、下部の組合員を指導する責任があるのであるから、従って具体的な行為云々は別にしても、その組合の役員であるというゆえをもって当然処分を免れることはできないという、こういう見解に立っておったと思うのであります。これは明らかに私どもは公労法に示すところ労働運動に対する制約であると同時に、公労法十七条違反は十八条によって首を切られるという、こういうこと以外には、にわかに労働組合運動に対しては制肘を加えることはできないという、いわゆるオール・オア・ナッシングという、こういう法の規定が明確であるにもかかわらず、何らその前提的な法律の規定がない国家公務員法八十二条を転用いたしまして、各種の段階に応じた処分をいたしてきたのであります。その処分の規定というものが郵政省職員懲戒処分規程、懲戒処分標準についてというものであるということを、この前御指摘をいただいたのであります。人事部長、今私が申し上げたことはあなたの御答弁をそのまま引用し、省の差し示す方針を私が重複をして申し上げたのでありますから、間違いはないと思いまするけれども、念のためにこの御方針はいまだに変わりないものである、こういうように考えてよろしいかどうか、まずお伺いをしたいと思います。
  162. 長田裕二

    ○長田説明員 大体ただいまおっしゃった通りかと思います。
  163. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 そういう方針でやられてきたそうでありまして、労働省はおいでですな。労政局長、今私が読んだ部面は、前後の連関なくしても実は明確な点でございまして、一つの方針を明らかにした郵政当局の速記録からの、これは抜粋でございませんで、長田人事部長がしゃべった内容をそのまま申し上げたのでありますけれども、こういう方針が一般的にいって、公労法の適用を受けておる組合の運動から起こった処分として、概括的に適切であるというふうに労政当局はお考えでしょうか。
  164. 堀秀夫

    堀政府委員 ただいまのお話、速記録等をなおよく拝見させていただきませんと、はっきりしたことは申し上げられませんが、公労法十七条の違反、あるいは公務員法八十二条の条項に該当するような場合に、処分の対象になるという点につきましては、その通りであると考えております。
  165. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 それでは答弁にならぬのでして、私の質問労政局長、聞いておらぬようでありました。それでは事実を私が説明する中で、さらにお答えをいただきますから、一つよくお開きをいただきたいと思います。  いわゆる組合の上部機関、中間機関、いろいろな機関がありますけれども、その機関の役員であれば当然下部を指導する役目がある。こういう点からいって、その役員は、いろいろな組合の戦術履行についての責任を負う、こういう形の中で処分の対象になるということを、郵政当局はしばしば明らかにして参ったのであります。ところが去る三月十五日、公共企業体等労働委員会におきまして、一つのいわゆる救済命令が出されました。この救済命令は、三十四年十二月二十一日の高松鉄道郵便局の全逓支部における職場大会において、その休暇闘争並びに勤務時間内職場大会を実践指導したかどをもって減給二カ月、俸給月額の十分の一の処分を受けた溝淵栄君という全逓香川地区の執行委員に対してなされたものであります。この救済命令は郵政省も、当然文書でもって発せられるものでありますから、すでに内容を熟知されておると存じますが、そういうことでよく御存じでございますか。
  166. 長田裕二

    ○長田説明員 命令書の内容は読んでおります。
  167. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 この救済命令によりますと、郵政当局が処分した内容は、労働組合法第七条第一項に該当する不当労働行為である、こういう申立人の主張をいれて、この処分は誤りであり、取り消すべきであるという救済命令であることは御存じの通りであります。  そこでまずお伺いしたいのは、この溝淵栄君を処分いたしました理由というのは、香川地区の執行委員であって、高松鉄道郵便局における職場大会を実践、指導し、多数の職員をこれに参加せしめ、業務の正常な運行を阻害する等、公衆に多大な迷惑を及ぼしたという理由でありますけれども、さらにそれの無体的な内容を、公労委の救済命令によってわれわれが見ますと、一つには、職場大会の会場の道路でもって立哨して、当該時間内職場大会を完全に実施するために監視に当たっておった、こういうことが一つであります。もう一つは、全逓香川地区の執行委員として、違法な行為を企画し、実施せしめたものである。こういうかどでもって減給処分にしたということでありますけれども、そういう処分の理由でありますか、その点をお伺いしたいと思います。
  168. 長田裕二

    ○長田説明員 昭和三十五年一月の処分の際の理由は、ただいまおっしゃった通りだと思います。
  169. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 ところが公労委がこれに対して判断したところによりますと、溝淵という執行委員は、当日旅館の前の道路でもって、高松鉄道郵便局の庶務会計課長の山田さんという人と、もう一名の方に一回お会いをしてあいさつをかわした、こういう事実があがっておるのであります。従って、あなた方が処分をしたところの二つの理由のある中で、前段の当日におけるところの行動というものを立証するものは、山田さんという課長さんが当人に対して一回すれ違ってあいさつをかわしたという、こういう事実認定であることを公労委は判断をいたしたのでありますが、この点は間違いございませんか。
  170. 長田裕二

    ○長田説明員 公労委は、そのような推認といいますか、判断を下したようでございます。
  171. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 あなた方は、この救済命令を出すまでの間において、被申立人としていろいろと事実の点を明らかにしていったろうと思うのでありますが、証人として山田課長の言われる点は、六時ごろですか、旅館の前に差しかかった際に、旅館の玄関口前の道路上に、申立人である溝淵君が立っておるのを見た、申立人とすれ違ったときにあいさつ程度の言葉をかわしたような気もする、申立人と会ったのはこの一回である、こういうふうに証言をしておるのでありまして、それ以外の事実認定というものはない、こういうふうに判断をされておると思うのでありますが、それ以外に何かさらに具体的な当日におけるところの事実がございますか。
  172. 長田裕二

    ○長田説明員 当日、高松鉄道郵便局が職場大会をやっておりました。旅館から溝淵君が出て参りまして、途中で行き会ってそれからほかに出かけたということ、それからその後、溝淵君自身が言っておりますところによりますと、高松鉄道郵便局の職場大会で、局員が出勤するといけないから、それを阻止するために行ったのだということのようでございますが、こちらの方では、鉄道郵便局の職場大会をやっておりますところから、本人が出てきてどこかに出かけていった、そういうことを見ておるということでございます。
  173. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 溝淵君がどう証言しておるかは別として、あなた方が当日の溝淵君の行動に対して、事実証拠となるべく認定をすべき材料として公労委に提示をいたしたものは、これ以外にあるかというのであります。どこへ行ったかわからぬけれども、高松郵便局の方へ行ったらしいというようなあなた方の判断なり推定ということを、私は聞いておるのではないのであります。証人が言われ、それに基づいてなされた処分の具体的な事実認定について、それ以外に公労委に対しても何かいろいろな事実をあげられて弁明されてきたのかどうか、その点お伺いしたい。
  174. 長田裕二

    ○長田説明員 現地の高松での公労委の調査の際に、溝淵君、これは高松郵便局の職員ですが、当日三割休暇を実施するという指令が出ていたわけですが、本人が休暇の申請をした、それに対して休暇は承認されないということでありましたのが、当日不承認のまま出勤しなかったということ、それからただいまおっしゃったようなことは、使用者側――処分いたしましたのは松山郵政局長でございますけれども、そういうことは、調査の際に省側の方で主張しておったようでございます。
  175. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 当日における被申立人であるあなた方の省側の、立哨行為というのがさつき処分の理由の一つにあげられているから、その立吟行為というものはどの程度かということをお聞きしましたところが、道路上でもって一回すれ違ったというのが事実だ、こう言うのでありまして、処分の具体的な内容としてあなた方が指摘をし、陳述をしているものは、そういった内容は含まれておらないわけであります。もちろん最後に、違法な職場大会が行なわれることを十分承知していながら、これを容認して実施をさせたという責任も免れないと主張していることはありまするけれども、明確な当日におけるところの事実認定は、先ほど私が質問をし、お答えをいただいたのですが、山田課長さんと溝淵君と道路上で一回すれ違った、これが残っている唯一の事実である、こういうことは間違いないでしょうね。
  176. 長田裕二

    ○長田説明員 高松鉄道郵便局の職場大会が実施されておりました桃の井旅館ですか、そこから出てきたということも認めておったようでございます。それから出てきたその溝淵君と道路上で出会ったということ、それから休暇に関連して先ほど申し上げましたようなこと、そういうことは松山郵政局側として、判断といいますか、事実問題として把握しておったところでございます。
  177. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 それでは、その事実認定の公労委のいわゆる判断となるべき前提として、あなた方が申し立てた事実というものが、この公労委の救済命令の中では非常に抜けておる部面があるというようにあなた方は判断しておるわけですか。
  178. 長田裕二

    ○長田説明員 桃の井旅館から出てきたということは、私は否定はされておらないと思います。当時松山の郵政局あるいは省側としてそのように承知しております。
  179. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 従って、時間があまりありませんからこまかく聞きませんが、あなた方は被申立人として公労委に対して事実を明らかにする立場にあって、この処分は正当なものであるという主張をしたのでしょう。従って最大限あなた方が持っているところの材料を公労委に対して、もちろん提供していると思うのであります。しかし明確な事実認定というのは、旅館の前の道路でもって立哨して職場大会を完全に実施させるために監視に当たっておった、こういうのが二つの理由のうちの一つの理由である、これは間違いないですね。そういたしますると、それ以外にいろいろと今言われましたことは、これはいわゆる付加的に一つの推察も含まれて、あるいは申立人の陳述に基づいて、その次はどこに行ったろう、こういうようなことをあなた方が推定をしたという格好でございまして、あくまでも省の立場に立って認定をしたところの事実は、この道路で一回会ったことによって、立哨し、職場大会を監視しておった、こういうことがその理由の一つである、これは間違いないですね。
  180. 長田裕二

    ○長田説明員 鉄道郵便局の職場大会が行なわれているところの旅館から、出てきているところも確認しておるようであります。それから道路上で一回会った、そういうことでございます。
  181. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 そうしますると、旅館から出てきて道路上で会った、鉄道郵便局へ行く途中で会った、こういうことがすなわちその職場大会を完全に実施させるための監視、立哨の役目をなしておったという、こういう判断との間には大きな飛躍があるということを、公労委は指摘しているのじゃないかと思いますが、どうでしょう。人事部長、あなたは今公労委の放済命令が出た現状の中でもって、今の事実に基づいたあなた方の判断の中に、一つの推測とあるいはもろもろの判断、こういったものがいろいろとつけ加わって、職場大会完全実施のための監視の役目をなしたという、こういう認定をしたと私は思うのですが、その点は確かにそういうことがあったとお認めになりますね。
  182. 長田裕二

    ○長田説明員 当時の状況は、官側としまして、相手の方からもちろん情報を得ることはできませんで、与えられた資料からいたしまして、溝淵君が鉄道郵便局の職場大会で、指導的役割を演じたのだという判断を下したわけでございますけれども、公労委の方はそういう判断は誤りであったというような決定といいますか、判断を下したことは、おっしゃる通りでございます。
  183. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 従って事実認定という、こういう上に立って処分が一応なされたといたしますならば、あなた方の立場は――もう一つ理由があることを私は承知していますよ。役員であるということも後段に主張しているようですから、そうして企画立案をしたと言っておるわけですから、この点はもちろんありますけれども、その前段の省側の主張であるところの事実認定といった点は、公労委のいろいろな調査、判断によって、明らかにこれは認定の材料としてはきわめて薄弱なものであるし、きわめてすべてを判断するに足るところの材料ではなかったと、今お考えでしょうか。
  184. 長田裕二

    ○長田説明員 当時、本人が前日十二月二十一日付で休暇を申請した。三割休暇実施の当日付の休暇を申請した。それに対して伴暇を与えなかったけれども、やはり本人は当日出勤はしなかったということ、それから鉄道郵便局の職場大会が実施されている宿から、現に実施されているところから出てきたというようなことなどから、当時松山郵政局が、あるいは郵政省側が、本人は鉄道郵便局の職場大会に臨んで指導的役割を演じたというように判断を下したわけでありますが、これは公労委の調査の過程におきまして、ほかのいろいろなデータ、当時では省側として手に入れることのできなかったいろいろな事実、知ることのできなかったいろいろな事実などが出て参りまして、そうではなかったという判断を公労委が下しましたことは、おっしゃる通りでございます。私どもの方の判断があるいは間違っておったのかもわかりません。
  185. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 何か新しき発言を人事部長はされて、前日の問題まで含めていろいろとやられておりますけれども、これに対しては、事の事実であるかどうかということに対して、いろいろ反論をしていくということも必要でありますけれども、一応それはあとに譲って、労政局長、公労委はこういう救済命令を出したのですが、そのうちの事実認定は今言ったことであるし、郵政省も、大まかにいって、一回道路でもって管理者が申立人にすれ違った、こういうことが大体重点であることを言っておられるわけです。前後のいろいろないきさつやその者の役職や日常活動等の問題は、これはあとに譲って、事実認定としては、やはり公労委が言われるように、ちょっとこれは薄弱である、こういうふうに一般的な常識としてはわれわれも判断するのでありますけれども、今お聞きになっていてよくおわかりでありましょうけれども、どうでございましょうか。旅館から、いわゆる職場大会の会場から出てきて道路ですれ違った。申立人による陳述によりますと、そのあと高松郵便局というところへ行った、こういうことで、全部職場大会の完全実施のために、役員として監視の任に当たっておったという推定は当たっておるでしょうか、どうでしょうか。
  186. 堀秀夫

    堀政府委員 公労委は、本件に関しまして双方の言い方を十分調査いたしました。その結果、このような判断を下されたものだと思います。公労委がこのように判断いたしました問題でありますから、私もこの公労委の見解が正しいのであろうというふうに考えております。
  187. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 これは明らかになりました。一般的な常識からいいまして、当日職場大会の近くでもってちょっとすれ違って会ったなんということがありますと、これは当日職場大会を実際に指導したというふうな判断をする役所がいまだ日本にあるということを、私は実は非常に驚いたのでありますけれども幸いにして、そういったことだけでもって処分の対象にすることは、あまりにも事実を千分に把握したものでないということが、公労委並びに今の労働省見解で明らかになって、いささかほっとしたのであります。しかし実際にはそういった処分をしておるところの役所があるわけでありまして、われわれとしては大へん遺憾に思っておるわけであります。大臣、どうですか。今聞いておりまして、この処分の事実認定の部分については、どうも郵政省のとったやり方というものは、一を知って十を知らざるといいますか、大臣は先の先まで読まれるというような明敏な大臣ででありますが、こういう問題はやはり一を知って十を認定しなければならぬというふうに思うわけでありますけれども、事実認定としては、いささか不十分な点があったというふうに今お気づきになっただろうと思うのですが、所見を伺いたいと思います。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  188. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 郵政局がどういう状態下認定したかということについて、私は郵政局の説明を聞いておりませんし、人事部長もそこにおったわけではないので、ほんとうの判断をするのには、郵政局からよく聞いた方が正しい判断ができると思うのですけれども、しかしとにかく公労委が一応権威を持って認定した以上、公労委の事実認定というものについては、一応敬意を表さなければならぬ、こう思います。
  189. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 敬意を表していただくことも非常にけっこうでありますが、今人事部長は、当時省として知ることのできなかった事実が、公労委の調査の段階でもって明らかになってきた、こういうお話です。そのことだけをとってみても、当時の事実認定というものがあまりにも軽率であり、不十分であったということは、これは今人事部長が明らかにした通りであります。ですから、敬意を表されるとか表しないということだけでなしに、やはり当時のあなた方が下したところの事実認定というものは、あまりにも不十分のそしりを免れないものであった、このことはやはり大臣も率直に認められていいと思いますが、いかがですか。
  190. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、郵政局長がこういう事態を認定するについては、当時においてはそれ相当の理由があったと思うのです。ただ出まかせにやったものとは思いません。それ相当の理由があったと思うのですけれども、今日において公労委のこういうふうに事実を認定するという権威を持ってのお話でありますから、それに対しては、公労委の認定に対して敬意を表するということを申したわけであります。
  191. 大原亨

    ○大原委員 郵政大臣に、労働省のこの前の答弁と関係しておりますから、関連して御質問いたします。これは地方の公共企業体等労働委員会は事実認定をし、中央の兼子一さんが会長をやっている公共企業体等労働委員会は、その事実認定に基づいて、法律の解釈を中心としてやっている。だから郵政当局からあげました三つの理由は、全部ひっくり返って、不当労働行為であるということになって、取り消し命令が出たわけです。そのことについてははっきりどこが不当労働行為の理由として取り消されたか、どういう理由で事実と法律の面において取り消しを受けたか、こういうことについてやはりはっきり認識しなければいけませんよ。ちっとも認識していない。  だから関連してその次に申し上げたい点は、今までの処分も、この公労委の不当労働行為の命令が出たために、法律の解釈の面においても、事実認定の面においても、これに類したものがたくさんあるわけですが、そういうものについては再検討すべきですよ。だから再検討の問題があるから、この問題が重大な問題であるというふうに、田邉委員の方から指摘している。だから事実認定において、法律解釈の面において、郵政省の態度というものは誤りである、こういうことが明白になったわけです。この点は郵政省としては、大臣以下がこの態度を確定していないと、この部分だけをいいかげんにしておいて、あとをそのままにするということになりますと、労使の関係は正常化しませんよ。これは郵政省の労使関係に対する常識というものが、非常に狂っているということになる。だからそういう点において、もう少し突っ込んだ答弁をして下さい。もう少し具体的な郵政省の見解を示していただきたい。
  192. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 私は、本件について、事実の認定に郵政局側がやや誤りがあったということについては、先ほども申し上げました通り、公労委の決定に対して敬意を表するということを申しましたけれども、これがあるから、すべての郵政省のやっている処分がこれと類似のもので、みんな間違えているんだ、そういうことにはならないと思います。
  193. 大原亨

    ○大原委員 それでは、私がこれに関連して質問いたしますよ。  郵政省が溝淵君に対しまして、これを処分いたしました理由には三つある。簡単に言うと、一つは、立ち番をしておったということがある。もう一つは、地区の執行委員であった、機関の役員であったということが一つある。それから溝淵君は、平生の行ないが、組合活動が活発であってけしからぬということがある。そういう三つの理由が、簡単に言うとあるのです。法律解釈の面においても、第二の事項において、今まで郵政省との間において不当労働行為の質疑応答をしているときに一番問題になったのは、機関の責任者であるということにおいて作為や不作為の責任を追及しておる。不作為の場合の責任を追及しておる。当然そういう行為をとめるべきであったのに、お前はとめてないということまで処分している。これはあとで私が質疑応答をやるわけだけれども、たとえばあなたの方の文書中には、組合の三役であったならば、不作為の責任も追及するということになっている。そのことは、組合活動を知っている者だったら、そんなばかげた処分はしないのですよ。国鉄や全電通等はしてないのですよ。そういうことで不作為の責任を追及するということはないんだ。つまり機関の役員であるならば、その責任を追及するというのだ。機関というのは、民主的に運営されて、多数決できめるのですよ。そのときに反対しようが、棄権しようが、共同責任を追及するということになっている。三役を追及するのもおかしいけれども、機関の一執行委員であるという場合においても、機関の責任者であるという理由でもって、処分の対象にするということなんかないんだ。そういうばかげた処分をしている。そういうことをしているから、平生組合活動が活発であったという理由でねらい撃ちをしたという理由において、不当労働行為になった。はっきりしているんだ。だから郵政省が考えておる考え方というものは、処分の仕方というものは根本的に再検討しなければならぬのだ。大臣は比較的頭のいい人なんだけれども、私がそれだけ言えばわかるでしょう。一つ一つ積み上げて時間をかけてやっていけば、全部あなたの方は答弁できないと思うけれども、こういう公労委の事実認定に基づく法律解釈では、そういう郵政省がとった見解をひっくり返して、むしろ平生の組合活動において非常に活動家であったためにねらい撃ちしたということが、逆に不当労働行為の理由になっている。どうですか。機関の責任を追及するという問題だけであって、あなたの方は根本的に是正しなければならぬ点がある。こういうことになれば、これは今までの議事録やその他処分を調べてみて、ずいぶんありますよ。そういう考え方というものは団結権を侵害するのですよ。これはILOの舞台なんかに持っていったら大問題になる。郵政省はこういうことをしておるということになる。いかがでしょう。
  194. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 大原さんのお話はよく承りました。  今後における処分について、私もよく考えてみますけれども、しかし、この溝淵君に対する処分の事実の認定が違ったからといって、ほかのものがみんな違うのだというようなことはないと思いますし、この事実も、処分したということは、先ほどおっしゃいました組合の幹部で、ふだん組合活動をひどくやっておるからねらい撃ちをしたという格好ではなくて……「そういうふうに判決は言っておる」と呼ぶ者あり)それは私の方の郵政局の処分の理由というのは、立哨したということと、企画、指導したという二つの事実であって、最後のところのことは、郵政局としては問題にしていなかった。それを事実の認定を変えて、公労委の方でねらい撃ちしたんだろう、こういうことで不当労働行為と向こうが言っておるのでありまして、私の方の処分としては主観的にはそうでなかった、私はそう思います。
  195. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 前段の事実認定が不十分であったという点は、大臣認められました。  そこで、もう一つの理由である、いわゆる職場大会を企画し、実施せしめた事実、これの事実認定ですよ。公労委は、あとでお聞きをしますけれども、事実認定です。ところが、これもいわゆる指導し、企画をしたという事実認定すらも、あなた方、十分に手当を講じてその内容をつまびらかにしたのではなくて、地区の執行委員であるから当然これに対して参画をするという立場にあったであろう、こういう推測を下して、後段の事実の材料にしたことは明らかなんです。ところが、公労委がいろいろと調査をされますと、この職場大会については、全逓という組合は、全国の戦術会議で細部にわたって検討されて、具体的な細目を定めた戦術要綱なるものが作成されておって、中間機関の役員がこれに容喙する余地はほとんどなかったのだ。しかも、具体的な実施をきめる闘争委員会の委員でもないし、同委員会にも出席していない、こういうことが明らかになった。従って、企画、指導したといった事実も認めることができない、こういうふうに公労委は言っておるのであります。この二つの公労委の事実認定から推しますと、ものを常識的に、法律的に忠実に解釈をしますと、大臣はさっきそうおっしゃたけれども、出て参る推認というものは、どうもほかに他意があったのではないかという推認ができるというように公労委は言っておる。これはもちろん公労委の推認でしょう。しかし、常識的に、当日の行動に対する事実も薄弱である、企画、指導といった面に対しても、事実認定がきわめてあいまいになってくる、こういうことになってくれば、あなた方の処分はどうしても日常の活動に対するためになされた、こういうように推認ができることは当然な話です。従って、違法な職場大会が行なわれることを十分承知しながらこれを容認し云々という追加的な主張がありましたけれども、この二つの事実認定が薄弱であり、また事実なかった問題もあった。こういった面から推しますならば、公労委の仲裁命令の最終的な決定である不当労働行為であるという認定が成り立つことも、またわれわれは法律を守る立場から、常識的にも、今の日本労働運動の現状からいって、公共企業体等労働関係法に適用されておる精神からいっても、そういうことが成り立つということは明らかであります。大臣は、日常の活動に対して、何か江戸のかたきを長崎で討つというような形でやったのではないという言い分をされておるけれども、しかし、事実が薄弱であれば、その処分というものは、あくまでもいろいろな推移というものが証拠に出されて、その中で、組合の役員であるという、こういう日常の活動の行為に対してまでもいろいろと推論をされたという、こういうことが推しはかられることは当然の話であります。この点、私は指摘をされておるのだろうと思うのです。従って、前段の前提条件であるべき事実というものが薄弱であれば、そういう公労委が判断をすることも、これはやはり一つの有力な客観的な見方ではないか、私はこういうように思うのでありますが、そういうふうな面において私の質問はなされておるわけです。この点はお認めになれますね。
  196. 長田裕二

    ○長田説明員 先ほどの大臣のお答えを補足して申し上げますが、第二の事実、冒頭におっしゃいました点につきましては、先ほど申し上げた通りでございます。  それから第一の問題につきましては、本部から指令四号が出、それが高松鉄道郵便局にも指令が参りましたが、地区にも参っておりまして、地区のやるべき任務というものも幾つか書かれているわけでございます。調査の過程で、申立人の方では、地区はほとんどそれを鉄道郵便局の支部の方にまかせた、実情をよく知らないからまかせたのだということを言っているわけであります。地区もある程度この問題には関与していることは、私どもはまあ明らかだと思うわけでございますが、それの評価の問題については、公労委の方がどこまで評価しているのか、私どもには現在十分はっきりはわかっておりませんけれども、この問題、不当労働行為事件として取り上げられております関係で、その問題をどこまで評価し、どこまで中心問題として扱ったかということについて、私ども十分あれはございません。  第三の問題につきましては、全く身に覚えのないことでございまして、その意味で、この不当労働行為の取り消しの命令というものにつきましては、省側としては、ほんとうにこれは身に覚えのないことだ、日ごろの活発な労働組合運動、いわば正常な労働組合運動を活発にやったから省側が処分したということは、全く身に覚えがなく、むしろ高松鉄道郵便局の職場大会が行なわれている場所から出てきた――ある程度誤認であったかもわかりませんけれども、そういうことで処分いたしましたので、日ごろの本人の組合活動とこの処分とは全く無縁でありますことは、私ども郵政省のいろいろな処分の伝統といいますか、今までのやり方から申しましても、また現地の当時の人たちのあれからしましても、そういうことをやったはずはないと、この命令をもらった現在でも確信いたしておる次第でございます。
  197. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 この救済命令は、あなた方は労組法に基づいてもちろん訴訟を起こす権利はありますけれども、今省のこれに対するところの考え方はどうなんですか。救済命令は権威があるというふうに先ほど大臣はおっしゃいました。しかし、例外的に訴訟を起こすことはできますけれども、今、郵政省としては、この救済命令に従うという気持なのか、あくまでも争うという気持なのか、一体どちらですか。
  198. 長田裕二

    ○長田説明員 命令が出ましたことについては、これは十分尊重いたしますが、この決定に従うかどうかという面については、ただいま検討中でございます。
  199. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 まあ三十日の猶予がございまするから、十分検討されることはけっこうでありますけれども、しかし二つの事実認定に大きな狂いがあった。しかし、さっきもあなたも認められましたが、その当時郵政局が知ることのできなかった事実も、その後の公労委の調査で出てきた、こういうことが言われたのでありまするから、きわめて不十分であったことはお認めのはずであります。従って、われわれとしては、大臣が言われたように、権威あるところの公労委の救済命令が出た今日において、やはり不十分な点、間違った点、省のやり過ぎた点、こういった点は十分認められて事に当たるべきである、こういうようにわれわれは考えるのでありまして、ましていわんや、今何か聞くところによりますと、新聞等で拝見をいたしますと、賃金問題でもって省は団交を打ち切って、公労委に対して調停の申請をしておる。これも権威ある機関であるから、それに対するところの判断を求めるという格好なんでしょうが、まあ賃、金とこれとは違うといえばそうでしょうけれども、しかし私は、公労委の機関の権威というものはちゃんと認められているから、あなた方の方から申請を出されている。一方では申請を出されているけれども、一方の救済命令は、あれは従わないかもしれないなんというようなことは、まあまあないだろうと私は思うのでありますけれども、大体これは、もちろんぎりぎりのところでもって認定を下せばいいことになりますが、そう長く引っぱるべき問題じゃないのですから、早急に結論を出しますか。そのお気持ですか。
  200. 長田裕二

    ○長田説明員 できるだけ早く結論を出していきたいと思います。
  201. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 私どもは、一つ今の御答弁の中にあったような不十分な点は認められて、当然この公正な救済命令に対して正しく謙虚に、これに対して事を処せられることを希望してやまないのであります。  その他いろいろありますけれども、もう一つだけお聞きをします。私は別の機会に、地方の郵政局でもって、組合の役員であれば企画、立案に当たらなくても処分の対象になる、こういうことを通達として出したということをいつか言ったのですが、この問題を取り上げたいのですけれども、これはきょうはおいておきますが、今の公労委の救済命令に対するあなた方の結論が出た場合は、当然やはりその処分をした、懲戒にしたところの当事者というものは、何らかの責任を負わざるを得ない、こういうように私は考えるのでありますけれども、救済命令に従うという前提に立って――まあ二者択一ですからどちらともわかりませんが、従うという立場に立って見た場合には、当然その懲戒権者に対して何らかの責任を追及するという形にならざるを得ないと考えますけれども、この点はいかがでしょう。
  202. 長田裕二

    ○長田説明員 三十四年暮れの闘争は、相当激烈な闘争でございました。いつの闘争でもなかなか大へんですが、業務の確保とか、その他少数の管理者側は非常に多忙の中にいろいろのことをしなければならないわけでございます。そういう中でそれぞれ全力を尽くしまして、たとえばこの場合でも、ともかく鉄道郵便局の職場大会が行なわれているところから、ちょうどその時間に地区の執行委員、相当の役割を持った、組合の中での地位の相当高い者が出てきた。で、地区もある程度関与していたことは、普通の常識からも、あとのいろいろなデータからも出て参るわけでございますが、そういう地区の執行委員がそういう場所から出てきたということも、そういうデータをもとにいたしまして……。
  203. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 懲戒権者に対して責任を負わせるかどうかを聞いているのだ。
  204. 長田裕二

    ○長田説明員 それにお答えしているわけでございますが、そういう事実と、それから高松郵便局の職員でありますこの本人が、休暇申請を当日した。それは承認しなかったけれども……(発言する者あり)そういう事実に基づきまして、当時繁忙の中にもいろいろなことをしなければならなかった管理者が、大体鉄道郵便局の職場大会に臨んで、その本人の役柄からしまして指導的役割を演じたのだ、そういう判断をしたわけでございます。その責任をどう追及するかということでございますが、私どもそれぞれやっぱり自分の能力の限界というものもございまして、全力を尽くしまして相当の努力をして自分の職責を果たした者に、結果が必ずしも一〇〇%うまくいかなかった。あるいはこれは業務運行の場合でもそうでございますが、本人の能力の範囲で一生懸命にやって必ずしも結果がうまくいかなかったという場合に、どの程度の処分をすべきかということにつきましては、十分慎重に考えていかなければならないのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  205. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 大体ものを処し、特に人を処分する行政処分、あるいは刑事上の処分を裁判所がする場合において、疑わしきは罰せずですか、疑わしき者を罰して、あとでもって誤りがあれば取り消すということでいいのですか。
  206. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 要するにこの問題は、管理者の責任を追及するかしないかというのは、その管理者に故意があったかあるいは過失があったかという問題に帰着すると思うのです。管理者に過失があった場合には、その過失の程度に応じて責任を追及するのはあたりまえですし、もし過失がなかったということになれば――過失というのは、刑法のいわゆる故意過失ですから、処分が間違えていたということの過失ではございません。故意か過失かということの程度に応じてする処置というものは当然だと思います。しかし、それはこれから先ですね。今長田部長の言いましたのは、私聞いていますと、相当やって、過失がおそらくなかったんじゃないかというような趣旨に聞こえましたけれども、その点については、過失があるのかないのかということについてあらためてよく調べて、こういう判断をしたことについての故意か過失かというような問題を調べて、それは処置するのが当然だと思います。過失がないとなれば処分しませんし、過失があると判断されればそれ相当の処分をする、こういうことだと存じます。
  207. 吉村吉雄

    ○吉村委員 関連して大臣に質問いたしますが、郵政省の処分の問題について、僕が過般来の委員会でいろいろ質疑が行なわれておるのをずっと聞いてみまして、特徴的に一貫していると考えられることは、昨年の春闘ですか、この時期から郵政省当局が全逓との労使関係について、処分をもってやっていきさえすれば、自分たちの考えているような、そういういろいろな政策が行なわれ得るのではないかという考え方が、非常に根強く働いているのではないかというふうにどうも私には感じられてならない。今の人事部長の答弁等を聞いてみましても、きわめて挑戦的だというふうに私は受け取るのです。たとえば当時の組合の闘争の状況がどうであったとかこうであった、あるいはこの前の「新しい管理者」の中に見られるような問題、こういうところを見ますと、組合との間について、協調的に現在の事態というものを解決していこうという熱意よりは、組合を弾圧することによって、自分たちの考えている政策を押し通すことができるのではないかという考えを持っているのではないかというふうに私は思うわけです。過般この委員会で、田邉委員だと思いますけれども、やはり処分の問題について、下部機関組合役員であった者が闘争の現場に参画をしなかった、そういう者が処分の対象になっているんだけれどもという質問をした際に、あなた方の方では、組合役員が、そういった不法な行為が行なわれるような状態の場合には、それを阻止する役割を持っているというふうに考える、そういう阻止をしなかったから処分をしたのだというような答弁を行なっておるわけです。今回の場合には、特に重要だと思いますのは、いろいろ具体的な公労委の判断の二つの問題よりも、あなた方がいわゆる被申請人として公労委で述べたところの証言、こういうものは全然取り上げられなくて、そうして申請人が日常活動というものを活発にやったということからこの処分が行なわれたんだという判断を公労委がしているということは、私は今までのあなた方の答弁を聞き、ここ一、二年来のあなた方の対労働政策というものを考えると、この判断は当たっておるというふうに思います。しかも、この判断が出たのに対して、今大臣あるいは人事部長等は、これに従うとかなんとかいうことは言うていない、これについては十分検討して態度を表明するというふうに言われておるのでありますが、そういう態度をとること自体によって、今後の郵政省の労使関係を正常なルートに乗せ得るかどうかということについては、私は非常に疑問なしとしないのです。ですから、第三者機関が正当な判断をしたという場合には、多少問題があなた方にあったとしても、それに従っていくという態度を省みずからが示すことによって初めて第三者機関が尊重される、あるいは組合もそういうような慣行になれてくることになるのではないかと思うのでありますけれども、そういう態度すらとられないところに、実は非常に問題があるのではないかと思うのです。郵政省の労使関係の中にはいろいろ多くの問題があるのでありますけれども、昨年の年末に用員問題が、一応ああいう紆余曲折を経ましたけれども、大臣の英断によって解決をした。それ以来は、前と違っていわばよい労使関係になっておるという答弁が、この前の委員会においては人事部長からなされておるわけです。そういう矢先に、しかもこういう問題が残っておって、第三者機関からこのような判断が出た場合に、あなた方がむしろ非は非なりとして認める態度で、率先して従っていくという態度を示していくことがなくては、この前の委員会におけるあなた方の答弁の趣旨とは大へん食い違ってくるんじゃないかと思うのです。そういう意味で私が今までのこの労使関係をずっと見てみますと、ややもすると権力をもってすべての問題を解決しようとかかってくる。これは無意識であるかもしれませんが、自分たちが困ってくるとその権力を利用しがちになるという傾向が、現在の郵政省の中に出ているんじゃないかというふうに危惧されるわけでございます。そういう点について、もしそうでないとするならば、この種の問題については、先ほど申し上げたように率先してこれに従っていくという態度をとるべきではないかと考えるのです。われわれも田邉委員と同じように、労使関係についてはできるだけ話し合いでやっていきたいということで、この委員会に大臣に御足労をわずらわしていろいろ見解を聞いているわけですから、そういう場合にはあまり好戦的と見られるような言辞を捨てて、ほんとうに話し合いの中で現在の労使関係をよくしていくという立場に立っての真剣な態度で臨んでいただくことが必要じゃないかと考えるわけです。二、三の例をあげながら、今までのあなた方の答弁の中から私が感じたもの、そうして将来の郵政省の労使関係についての、あなた方にとって今非常に大切だと考えたものを私は申し上げたわけでありますけれども、こういうことについて大臣はどのように考えられておるか、承っておきたいと思います。
  208. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 私は、郵政の事業というものは、労使間の正常化が確立されることが何よりも大事なことであるというふうな考えのもとに、極力労使間の関係を正常化することに努力するつもりでおります。組合を圧迫する手段として処分ということを用いることは、私は決していたしません。しかし、公務員法ないし公労法には、一定の行為のあった場合には処分すべきことが規定されてありますから、この法律の本旨とするところに従って処分はなすべきである――処分をすることをもって一つの手段としないと同時に、処分をしないということをもって一つの手段とすることも私はいけないことではないかと思っておりまして、今お話しのように権力をもって圧迫するという、そういう手段のために処分ということを使う気持一つもありません。本件について命令書をそのまま受諾した方がいいのじゃないかという御意見については、私は一応承っておきますけれども、このところ、さっきちょっと長田君が言いましたが、最後に不当労働行為である、つまりふだんの組合活動がひどいから、理由を設けてこういう処分をするんだというような、そういう推測を公労委が下したということについては、さっき長田人事部長は、身に覚えのないことだと、こう申しましたが、そういうような心持もありますので、なお法律に許された期間がございますから、その期間十分これを慎重に検討して態度をきめたいと思います。
  209. 吉村吉雄

    ○吉村委員 処分をもってやる気はないという、権力乱用をする気はないというお話でございますが、昨年の春闘にあたって、郵政省ではまさに前代未聞といわれるほどの大量の処分が行なわれている。私は現在の日本の状態の中で、あなた方がいろいろな考え方によって処分なり何なりという方向をとることは、あなた方の考え方によってやるのですから、やむを得ない面があろうかと思うのでありますけれども、しかし、それによって職員がどういう気持になるかということが非常に重要だと思います。特にこの処分のあり方等につきましても、本来郵政省の現業関係は、その労働問題等については、公共企業体等労働関係法によって扱われるということが明文化されておるにもかかわらず、過般来行なわれておりますところの処分というのは、公務員法によっての懲戒処分が大部分である。とするならば、法の適用にあたっても多くの問題があるはずです。それは公共企業体等労働関係法についてのいわゆる組合運動の責任追及ということについては、解雇以外に定めがない。従って、あなた方としては、それを適用することが困るということで、いわゆる公務員法の適用になってくると思うわけでありますけれども、こういうようなことが実は職権乱用になっているのではないか。そういう気持現実労働者に与えるというところに問題があるわけであります。もちろん今日の状態の中で、この種の問題についてはこうする、たとえば労働問題については公労法だという定めがある場合には、たといあなた方にとって不備だと考えられるような法律であっても、公労法に従って労働問題については処理をしていく、こういう一貫したところの方針がないと、これは職権乱用というふうにわれわれは考えざるを得ない、こういう問題が起こってくるわけです。この点は大へん長い間議論をされている問題でありますから、このことできょう長く議論をしようとは思いませんけれども、一方にそういった労働問題についての規制をする法律がありながら、他の法律によって大量の処分をする、いわゆる公務員法以外ではあのような大量処分はでき得ないとあなた方は考えておられる。現実にまたできるはずもない。それで公務員法を適用してくるという、そういう考え方が実は私は職権乱用に通じているのではないか、このように考えておるので、こういう点についてきょう議論をしようとは思いませんけれども、この際郵政大臣から、今私が申し上げた点についての見解も承っておきたいと思うのです。
  210. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 私は、郵政職員が国家公務員法の適用を受ける公務員であるということは厳然たる事実ですから、これを適用するということは、決して職権の乱用だとは思いません。現に各公社の従業者というのは、それぞれの公社法に、たとえば国家公務員法と類似の規定がありますので、しかも公労法の適用もある、こういうので、その間ひどく差はないんじゃないかと思いますが……。
  211. 中野四郎

    中野委員長 関連を許しますが、大原君、きわめて短くして下さい。
  212. 大原亨

    ○大原委員 まだ問題はたくさんあるのだが、公労法でなしに国家公務員法、身分法で労働関係を規定している。だからその考え方は誤りだとここに書いてあるのですよ。郵政大臣、不当労働行為の事由の中にあるのですよ。その中で一番ひどいのは、機関責任の問題。機関責任の問題について、事実の認定の問題、法律適用の問題、ここに書いてある。だからあなた方は、今までの処分の仕方からいえば納得できない、こう思うだろう。しかしながら、そのことを否定しているのですよ。そのことがいけない、こう言っている。だから機関責任の問題になってくるとたくさん問題があって、今まで、昭和三十六年の三月二十三日に出した人事局の文書によっても、機関責任の追及について、たとえば三役とか現場の責任者とかというものを指定しているのですよ。そういう指定の仕方でやった処分というものがいけないということになっている。不当労働行為で、いわゆるあなたらがあげた事由というものをひっくり返したわけである。労使関係というものは団結権を保障しているのだ、公労法というものは、そういう団結権の上に立った団体交渉権を認めておる。だからそれに関連したいろいろな行動について、どういうふうにあなた方が業務との関連で処分するかという問題については、身分法を適用するというのは誤りだということは、はっきりは書いてないけれども、そういう前提がある。その論争は徹底的にしなければいけないわけですよ。だから不当労働行為のこの結論というものは、郵政省が労使関係に対しておる態度について、根本的に検討しなければならない問題だということなんです。その問題を含めて、私きょうは二時間やるということだったのだけれども、大臣の出席がおそかったから十分できませんが、これは公労法の精神や憲法の精神、そういう問題に関連した重要な問題がある。機関の責任者、機関の構成員を処罰するという考え方は間違いですよ。労政局長は、この公労委の結論というものは正しい、こう言っている。そうすると、郵政省と郵政大臣と全逓は、労使関係の当事者だ。政府の一員であるとともに、労使関係の当事者だ。それでその解釈について、労働省労政局長が、この公労委の結論は正しい、こう結論を出しておるそれについて、あなたの方で、これを承認するかしないかということはない。承認するという前提の上に立って、皆さんの郵政省の労使関係に対する態度について、基本的な問題について再検討すべきである。そのことをしないでおいて、労使関係の正常化はできない。理屈が伴わなければできないですよ。切り捨てごめんということだ。だからそういう再検討をすることを強く要求しておきますよ。そのことを強く要求いたします。今の労働省とあなた方の答弁というものは、この一つの処分に対して、公労委が判定を下しておることについて、この見解その他を全然研究してない。その答弁は支離滅裂である。労働省と郵政省は、立場は違うけれども、それぞれの立場において言うのだろうけれども、しかし、労働省という政府機関がこの妥当性を認めておって、しかもこの問題に関してはっきりしたことを言わない。はっきりしておれば、そういうことについて再検討すべきである。こういう点について、私は皆さん方の主張が誤っている点を指摘しておきまして、私の関連質問に対する答弁は、要求しない。
  213. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 最後に、三点ばかりお伺いします。簡単に明快にお答えいただきたいと思うのです。  その前に労政局長に、公労委の救済命令にあったごとく、「慎重公正を期すべき懲戒処分をなすにあたり、処分該当行為の存否について精査せず、上述のようにわずか一回出会ったという事実のみをもって、これを時間内職大監視のための立哨行為とみなして、申立人を懲戒処分に付したことは、軽卒のそしりを免れ難く、責任ある管理者の良識ある態度とは到底認め難いのみならず、かえって他意あることを推認させるものである。」こういうように書いてある。従って、あくまでも処分というものは精査をして、現場を確認することがきわめて市大である。これに基づいて、事実認定によって処分はするかしないかということを判定すべきである、こういうことがこの中心であろうと思いますけれども、労働省もおそらくこれは統一的な見解だろうと私は判断いたしまするが、その点を労政局長にお伺いします。  それから、その点と関連をして三つ郵政省にお伺いしたいのは、今までいろいろな御答弁がありましたけれども、いずれにしても、長田人事部長の言われたごとく、当時当該の郵政局が知り得なかったところの事実が、その後公労委の調査によって出てきた。そういったことを、あなたが答弁されたように、これはきわめて不十分な調査、事実認定によってなされた、こういうことがあるわけでありますから、一をもって百を推しはかることは私はしませんけれども、しかし、こういった事実があったことは間違いないのでありますから、従って、これから先のあなた方の対処すべき第一番目としては、現場確認をあくまでも正確に、精密にするということでなければならぬ。今までのようなそういう軽率なことではいけない、こういうことに対して慎重な態度をもって臨む、こういうふうに方針を改められるという考え方があるかどうか、第一番目。  第二番目には、何といっても中間機関の役員の責任追及等の、単純なあなた方の労使間の考え方でもってやることは危険きわまりないということが、この事実の中に示されておるのです。あなたは、一番最後の方は私のあずかり知らなかったことだ、こういうように言っておるけれども、客観的に判断をすれば、事実が不十分である、事実の認定がきわめてあいまいもこである、こういうことであるとすれば、それから推認されるものは、何といっても日常活動に対する、特に機関責任の追及というか、こういったことに重点を置かれたんじゃないかという判断をされるのは当然な話でありまして、そういったことに対しては、今後郵政省としては、中間機関の役員の責任を追及するという昨年来の人事部長の答弁にあるような、こういった考え方は、これはもう少し改めてやり直さなければならぬ段階にきた、こういうようにわれわれは判断をいたしまするけれども、それに対するところのお考え方を承りたいのが第二点。  第三点は、大臣は先ほど、これはこれで、こういう救済命令があったからといって他のものも万々そうではないんだ、こういうようにおっしゃいました。しかし、やはりこれと類似のものがあります。私が持っておる材料を一々きょうは申し上げませんけれども、実は同じような形でもってなされたところの処分というものは、かなり数多くあるのです。大臣はいわゆる謙虚に考えられておると思いまするから、あなた方のやっていること全部が間違ったというふうに、私はそういう前提で申し上げておるのではありませんよ。しかし、あくまでも、こういった命令が出たこの機会にこそ、今まで処分された内容についても再検討され、そうして十分な事実認定の誤りがなかったかどうか、こういったことに対してさらに顧みて検討されるという機会であろうと私は思うのであります。そういった点から、そういう指示を、そういった大臣なり諸公の考え方というものを十分下部に流されて、この際にこそ、私はやはり不十分な点、行き過ぎな点、こういったものがありとすれば、これも改めて労使間の正常な運行をはかる、吉村委員が言われたような、そういう姿に立ち戻らせる絶好の機会だろうと思うのでありまして、頂門の一針として出された救済命令に対して、省がとるべき、いろいろな今までの行為に対するところの再検討をする、こういう決意とお気持があるかどうか、一番最後は大臣に一つ御答弁をいただきたいと思いますけれども、以上三点、労働省と郵政省のお考え方を承りたいと思う。
  214. 堀秀夫

    堀政府委員 本件は、労働省と独立の第三者機関である公労委が下した判定でありますが、処分にあたって、十分調査をしてこれを行なうということは当然であると考えます。
  215. 長田裕二

    ○長田説明員 処分をする場合に現場をよく確認してやれというお説につきましては、処分はいつも相当慎重にやらなければならないことは、もうお説の通り当然でございます。だから職場大会というような場合に、それが事業に非常に大きな影響を及ぼすというようなこと、しかも、職場大会の会場などは通常管理者は入れませんし、その事情をいろいろ聞いても、その際は答えてくれないのが普通の例でございます。そういう場合に、一方で事業に影響を受けるということ等も考えながら、なお今のお説のようなことは十分念頭に置きながら、前後いろいろな事情を考えまして行動をすべきと考える次第でございます。  なお、中間機関の責任の問題でございますが、具体的には、昨年の三月の処分で支部内で職場大会が行なわれましたが、支部の三役がたとえば病気で終始関与していなかったとか、あるいはその前後からずっと旅行していたとか、そういう者については私どもも処分を取り消したりしているわけでありますが、それ以外の問題につきましては、私どもは、通常組合活動というものが支部の三役を中心に動いているということも、十分考えなければならないと存じている次第でございます。
  216. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 処分が間違えていたらこれを取り消すということは、前にも何んべんも申し上げました。従いまして、今後処分が、事実認定等について誤りがあったかなかったかということについて、もし誤りを発見した場合は、これを取り消すということについてやぶさかではございません。
  217. 田邊誠

    ○田邊(誠)委員 私どもは今の郵政省のやり方に対して重大な関心を払い、いろいろな誤りがあることを指摘して、現在の私どもの考え方というものは、いわば公労委が客観的に見てもそういうことだというふうに認定をしたということが、事実現われたのでありますから、この際にこそ、一つ郵政省の謙虚な態度を私どもは望みたいと思う。そうして私どもは、その状態というものを十分監視したいと思う。救済命令に対して従うか従わないかということは、今あなた方の発言を私は求めませんけれども、当然従うであろうというふうに常識的に私は、郵政省が判断をし、処置をするであろう、こういうふうに考えますけれども、今後の成り行きを十分見守りたいと思いますので、私どもの気持意見に十分沿えるような状態というものを作り上げてもらうことを特に切望いたしまして、私の質問を終わります。
  218. 中野四郎

    中野委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十二日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会をいたします。    午後五時二十八分散会