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1962-03-14 第40回国会 衆議院 社会労働委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月十四日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 中野 四郎君    理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 藤本 捨助君    理事 柳谷清三郎君 理事 小林  進君    理事 滝井 義高君 理事 八木 一男君       井村 重雄君    伊藤宗一郎君       浦野 幸男君    加藤鐐五郎君       藏内 修治君    倉石 忠雄君       中山 マサ君    永山 忠則君       八田 貞義君    早川  崇君       松浦周太郎君    松山千惠子君       渡邊 良夫君    赤松  勇君       淺沼 享子君    大原  亨君       河野  正君    島本 虎三君       田邊  誠君    中村 英男君       吉村 吉雄君    井堀 繁男君       本島百合子君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         厚生政務次官  森田重次郎君         厚生事務官         (大臣官房長) 山本 正淑君         厚生事務官         (保険局長)  高田 浩運君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   岩尾  一君         厚生事務官         (医務局次長) 鈴村 信吾君         厚生事務官         (保険局次長) 熊崎 正夫君         運輸事務官         (船員局労働基         準課長)    住田 正二君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  大野雄二郎君         自治事務官         (財政局財政課         長)      松島 五郎君         自治事務官         (税務局市町村         税課長)   佐々木喜久治君         専  門  員 川井 章知君     ————————————— 本日の会議に付した案件  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第六四号)  国民健康保険法の一部を改正する法律案内閣  提出第二五号)  児童扶養手当法の一部を改正する法律案内閣  提出第九号)  国民年令法の一部を改正する法律案内閣提出  第三二号)  生活保護法の一部を改正する法律案八木一男  君外十一名提出衆法第九号)      ————◇—————
  2. 中野四郎

    中野委員長 これより会議を開きます。  船員保険法の一部を改正する法律案国民健康保険法の一部を改正する法律案児童扶養手当法の一部を改正する法律案国民年金法の一部を改正する法律案、及び八木一男君外十一名提出生活保護法の一部を改正する法律案、以上五葉を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 船員保険法の一部を改正する法律案について、少し質問をさしていただきますが、この船員保険法の今までの法律の運営上において、一番問題になっている重要な問題は何かというと、標準報酬適正化をどういう工合にやるかということが一番問題であったわけです。今回、この法律改正におきましては、最低低五千円、最高三万六千円の十八等級に区分されておったのを、最低七千円、最高五万二千円に引き上げて、そして同時に、標準報酬等級を、十八等級を二十一等級に区分するという改正を行なっておるわけであります。その場合に、一体この改正というものが、いずれ三十八年には——船員保険は、御存じの通り総合保険ですから、疾病それから災害、厚生年金失業保険と、こういうものが含まれておるわけです。三十八年になりますと、厚生省厚生年金改正を意図しているわけです。そうすると、ここでまた標準報酬の改定というのが問題になる必然性を持っておるわけですが、今回のこういう改正というものは、一体どういう意図で改正になったのか。これをもって恒久的なものとするのか、それとも健康保険その他に最高を合わせるためにやったことなのか。この改正は何か暫定的なもののようにもお書きになっているのだが、その改正理由、これをもう少し明確にしていただきたいと思うのです。
  4. 高田浩運

    高田政府委員 滝井さんよく御承知のように、最高額昭和二十七年に三万六千円にいたしまして、いわばほとんど十年間据置のような格好になっておるわけでございます。そこで、これを何とか引き上げなければならない。引き上げるにつきましては、御推測のように、労災補償部門とも関連していろいろな考え方があるわけであります。それらの問題が完全に熟するまで待つ、あるいは暫定的にでも上げるということになるわけでございますが、私どもといたしましては、ここ十年近くも据え置かれたものを、現在において可能な限りにおいて少しでも上げるという考え方のもとに、そういう意味においては現在各種保険最高限になっております。五万二千円というものを一応の最高限にいたしまして、今後における問題は、十分今後検討してさらに改善をはかっていきたい、そういうような趣旨で御提案申し上げた次第でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今回の改正というのは、昭和二十七年に三万六千円を設定して以来十年そのまま放置されておったから、とりあえず暫定的にやるという暫定改正ですね。
  6. 高田浩運

    高田政府委員 今後の標準報酬の引き上げについてはさらに検討を進めていくということで、いわば当面の措置として五万二千円にしたわけでございます。
  7. 滝井義高

    滝井委員 当面の措置として、五万二千円にざれるとおっしゃいますが、実はこの保険は、さいぜん申しましたように総合保険で、他の長期、短期の保険とは異なった内容を内包しておるわけですね。そうしますと、来年になりましたら、三十九年に厚生年令等改正しなければならぬが、それを繰り上げてやらなければならぬという客観情勢一つある。それから、これはあと労災にも触れますが、労災等についても相当内部的な変化が起こりつつある。こういう客観情勢がはっきり出てきておるわけですから、船員保険船員保険として他の社会保険に先がけて——これは数にしたら、被扶養者、被保険者も加えて六十万そこそこですから、従って、こういう小じんまりとした保険一つモデルを作るということは非常に重要なことです。これが総合保険であればあるほどに。そうしますと、何かちゃちなと言っては語弊がありますけれども、このワクの改正でお茶を濁すよりか、そういう長期展望に立って、他の保険をむしろこれが引っぱっていくというような形の改正をおやりになることが、私は必要ではないかと思うのです。実はどうして私がこういうことを申すかというと、一昨年の三月から六月のときにも、この船員法改正というものをお出しになった。当時は労災改正が出ておったわけです。すなわち、労災打ち切り補償長期補償に切りかえるというけい肺、じん肺の法律関連して出てきておったわけです。そのときも、一方においては船員保険改正出しておる。そして同時に、それに労災改正をやらなければならぬことがきまっているにもかかわらず、お出しにならぬで、やかましく言われて、あとから同じ国会で二度にわたって船員保険法改正をやったわけです。船員保険法改正というものは、いつでも何か他の保険改正あとを追っていく、こういう形で出てきているのです。従って、その改正というものが不徹底だ。何か陸上労働者と非常に違った感じのものに見られて、これは船員にとってはきわめて迷惑な話だと思うのです。全運輸委員会船員法の一部改正が同時に審議されておるのだけれども、これは二十七日には、船員関連する港湾労働法ですか、そういう法律が悪いというので、アメリカやカナダの港湾労働者日本船ボイコットのストライキでもやる、こういう形になってきておる。もう少しあなた方は船員保険法をきちっと検討されて、小じんまりした保険ですから、一つモデル・ケースを示す必要があると思うのです。健康保険厚生年金あとばかりを追うのじゃなくて、この保険総合保険ですから、むしろ他の保険を引っぱっていくという形をどうして作れないのかと不思議に思うのですが、これは船員課長の方で勉強不足なのかどうなのかよく知りませんけれども、どうも少し消極的だという感じがするのですが、どういうわけですか。
  8. 高田浩運

    高田政府委員 今お話しのありましたように、船員保険は、労災であるとか失業であるとか、それらを含めた総合保険の形になっておりますので、ある意味においては社会保険一つモデル的な行き方だし、同時にまた、それだけに内容が非常に複雑で、いろいろな関連が出てきてむずかしい問題のあることも、反面においては言えるわけであります。そこで実はお話のありましたように、もろちん年金部門についても厚生年金との関連において問題がありますが、労災部門についても、たとえばメリット・システムの問題でありますとか、それらを含めたいろいろな問題があるわけです。これらを、率直に申し上げて十分検討して結論を出すには、私、就任をいたしましてから少し日が足らないわけであります。しからば、これを一年なり何年なり延ばすかということになると、それも十年近く据え置いておるわけでございますから、とりあえずやはり少しでも前進した方が、より賢明な措置じゃないかというふうに私は判断をして、一応これで提案をして、そして宿題としていろいろ問題のあります点はここ一年間のうちに十分検討してここに御審議をわずらわしたい、かような考え方で、すでにいろいろな問題については検討に着手しているわけでございます。そういう事情であることを一つ御了承いただきたいと思います。
  9. 滝井義高

    滝井委員 就任したので、とりあえず船員保険にも何かやっておかなければいかぬというのでおやりになったそうですが、それならそういうことで一つ受け取ります。就任早々あまり口がたたぬではなんでしょうから……。  冒頭に指摘しましたように、船員保険の一番重要な問題は、標準報酬適正化の対策です。厚生省は、多分標準報酬適正化月間というようなものを設けさして、実態調査をおやりになったと思うのですが、その標準報酬実態調査の結果はどういう結果が出ておりますか。
  10. 高田浩運

    高田政府委員 三十五年の九月に、主として漁船の被保険者約八万人について、三万六千円をこえる者について調査をいたしました。これは九月一日現在で過去一年間を平均した数字でございますが、それによりますと、三万四千五百円から五万円までの者が四・四二%、それから五万円から十万二千円までの者が〇・七%、それ以外の者が三万四千五百円以下ということになります。こまかい数字は一々読み上げるとあれですから、一応それだけ申し上げます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三万五千円以下の者が九五%くらいおるわけですね。特にこの法律によりますと、漁船は三十トン以上しか保険に加入せしめない。普通の機帆船だったら五トン以上は保険に加入できるわけですね。私が推定するに、漁船三十トン以上としたのは、おそらくなかなか保険料徴収がむずかしい、ということは標準報酬の把握が困難だということにもなってくると思うのです。そういう関係があって、おそらく三十トン以上にしたのだろうという推定はできるのですが、現在の船員保険というものは家族を入れて六十万そこそこですから、もう少しやはりここらの漁船社会保険、特にこの総合保険を及ぼそうとするならば、やはりこの漁船の三十トンを下げる必要が出てくるわけですね。その実態調査というものは、やはりそういう政策的な前進もあわせた実態調査でなければならぬと思うのだが、そこら考え方が、三十トン以上にずっとくぎづけをしていくつもりなのか。最近は漁業の形態も沿岸から沖合い沖合いから遠洋へと変わってきつつありますけれども、しかし三十トン以下の船というものは、漁船としては相当たくさんあるわけでしょう。そこらのあなた方の基本的な考え方はどうですか。
  12. 高田浩運

    高田政府委員 これはよく御承知のように、船員保険の被保険者は、船員法第一条の船員をそのまま引っぱってそれを被保険者とする、そういうふうな仕組みにしておるわけでございます。従って、船員法第一条の船員よりも広くもなければ狭くもない、これが現在の仕組みでございます。そこでこの辺の、どの範囲船員法船員にするかということについては運輸省の方からお答えがあるかと思いますが、お話の三十トン未満の漁船の問題については別に船員法改正が提案されておりまして、二十トン以上のものについて政令で定める者等船員法第一条の船員にするというような改正案が審議されておりますので、それが成立をいたしました暁においては、当然これは船員保険法の対象になる、かように考えております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、私が言いたいのは、船員法改正では「政令の定める総トン数二十トン以上の漁船」というふうに改正されているが、省は同じ国会船員保険法改正出しているけれども、そこに触れていないのはなぜか、こういうことになる。私は実はそこに持っていきたかった。この前、郵政省と厚生省の不統一をついたけれども、やはりまた不統一が出てきている。あなたの趣旨は、船員法の一条の精神をそのままこっちに持ってきております。こうおっしゃるならば、運輸省さんの方が二十トンと下げるならば、あなたの方も今度の改正には二十トンと出てこなければうそなんです。同じ国会に出てくるのだから。ところが、それが今言ったようにちっとも連絡がない。片方は改正出しているのですよ。
  14. 高田浩運

    高田政府委員 今の点は、般員法の改正に伴ってこっちの方を改正する必要はないわけなんで、船員保険法の十七条をごらんいただきますと、「船員法第一条ニ規定スル船員トシテ船舶所有者ニ使用セラルルハ船員保険ノ被保険者トス」、こうなっておるわけでございますから、こちらの方を手直しする必要はないわけでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 手直しする必要はないが、それならば、予算その他をあなたの方は二十トンでやっておるかどうかということです。それじゃお尋ねしますが、今度三十トンを二十トンに引き下げた場合に、予算関係でどの程度収入増、それに見合う支出の増になるのですか。
  16. 高田浩運

    高田政府委員 この船員法第一条の改正に伴って、どの程度賃金の者がどの程度ふえるかということについてばくたる数字はございますけれども、精細な調査はまだ行なわれていないわけでございます。それで、船員法改正が実施されるまでにその辺のところを十分検討して、船員保険に対する影響を考えたい、こういう考え方でございますが、概括的に申し上げますと、現在船員法改正によって船員保険の被保険者となると考えられる者が約一万人ございます。これらについて賃金実態等を十分調査した上で、その辺の必要な措置をとる必要があればそういうようにいたしたい、かような考え方で、現在関係省十分連結をとりながら進んでおるわけであります。
  17. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今年の船員保険特別会計の被保険者の二十三万六千六百人いう中には、今の二十トンに下げることによってふえる一万人程度の被保険者を入れて、予算を組んでいらっしゃるのですか。
  18. 高田浩運

    高田政府委員 現在は入れておりません。
  19. 滝井義高

    滝井委員 入れていないんでしょう。僕は入れていないのだろうと思うて質問しているのです。だから、やっぱりこういうところの法律改正——非常にこまかいようであるけれども、家族をひっくるめて六十万そこそこしかない、しかも、被保険者は二十三万六千六直人だ、その一万人がこれに加わるか加わらぬかの問題で、その一万人にとってはこれは大へんなことです。今まで三十トン以上で、加えられていないのですから、加えてもらいたいという要望が強かった。ところが、保険料徴収その他で非常に問題があるので、なかなか加えてもらえなかった。これは、われわれはすべての漁船について適用すべきではないかという主張をしてきておったのです。しかしそれが、なかなか実態をつかむのが困難だったわけでしょう。しかし、今度は二十トンの漁船ということになりまして、一万人がこれに加わるということになれば、これは今御説明をいただいたように自動的に加わることになるので、それを今から調査してということになると、なかなか問題だと思うのです。これはいつごろからこの保険に加入せしめてくれるのです。
  20. 住田正二

    住田説明員 船員法改正を現在国会にお出しいたしているのでありますが、そのうち、今話が出ました適用範囲の拡張は、私の方の予定では三十八年四月一日から行ないたいというふうに考えております。従って、保険等措置は、来年度の三十八年度予算で間に合うのじゃないかというふうに考えております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この船員法法律の動き出すのは、私は三十七年四月一日かと思ったら、三十八年四月一日になるのですか。
  22. 住田正二

    住田説明員 船員法施行は、一般的には三十七年十月一日から施行したいというふうに考えておりますが、ただ適用範囲につきましては、船員法の百十九条の二に、「政令への委任」という規定がございまして、今回適用範囲を拡張いたしますと、これまで労働基準法あるいは健康保険法厚生年金法失業保険法、そういうような陸上労働者としてのいろいろな法律適用を受けているわけでありまして、そういうものを船員保険法の方の適用に移すということになりますと、いろいろ複雑な経過規定が必要となりますので、そういう経過規定を作ります準備を見込みますと、三十七年十月一日から適用することが非常に困難になるのじゃないかという見通しで、三十八年四月一日から適用したいというふうに考えております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それは今年の予算にはあまり関係がないということになってしまうのですな。それで、厚生省も、船員法施行がそうなれば、結局この方も三十八年四月一日からになる。そうすると、これは今年の問題ではなく、来年の問題だということになりそうですね。これは私の方が少し不勉強で、私は四月一日から船員法も動き出すという考え方だったのですけれども、まあそれはよろしゅうございます。  そうすると、次は保険料徴収ですが、その前に運輸省の方に尋ねておきます。機帆船は五トンだが、漁船だけを三十トンを二十トンに下げた理由というのは、どういうところにあるのですか。
  24. 住田正二

    住田説明員 現行船員法は、機帆船につきましては五トン以下、漁船につきましては三十トン以下を労働基準法適用にゆだねているわけでございます。これは昭和二十二年に作りましたときにそういうことになっているわけでありますが、いかなる労働者について労働基準法適用させ、いかなる労働者について船員法適用させるか、その基準といいますか、区別が非常に問題があるわけでありますが、一応海上労働特異性を有する者を船員法適用範囲にし、海上労働している者であっても、海上労働特異性を有しない者については労働基準法適用を受けさせた方がいいということで、一応の区別を設けているわけでありますが、三十トン以下の漁船——昭和二十二年当時のことでありますけれども、大体三十トン以上の漁船といいますのは、根拠地を持ちまして二、三日の漁業をやる、二、三日漁業をやりましてまた根拠地へ帰ってくる、そういうことで、海上労働特異性が非常に薄いんじゃないか、そういうように考えまして、昭和三十二年におきましては、三十トン以下の漁船につきましては陸上労働者並み労働基準法適用を受ける。三十トン以上の漁船は大体海上遠く漁業に出ていきますので、そういう労働君には船員法適用を受けさせるということにいたしたわけでありますが、その後沿岸漁業が衰微いたしましたのと、戦後十数年の間に造船技術が非常に発達いたしまして、二十トン程度漁船でもかなり遠洋の方に出ていくという傾向が非常に強くなってきたわけであります。そういう関係から今回二十トンまで下げまして、漁船につきましては原則として二十トンまで、二十トン以上の漁船乗組員については船員法適用させるということにいたしたわけであります。しかし、二十トンから三十トンまでの漁船でありましても、たとえばイカ釣などのように、一晩行ってすぐ帰ってくるというのがございますので、大体一種漁業といわれるものにつきましては、二十トン以上でも適用を除外するということにいたすつもりでおります。五トン以上の機帆船の場合は、機帆船漁業と違いまして、一つ基地から出ていって二、三日たってその基地に帰るということでなくて、荷物を持って遠くへ出ていくという場合が非常に多いのであります。そういう点をとらえまして、機帆船につきましては、五トン以上の機帆船乗組員については、海上労働特異性があるということで船員法適用するということにいたしているわけです。従って、海上労働特異性という面から区分しているというふうに言えるんじゃないかと思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、二十トンまでの船は今までは遠洋には出なかったのだが、最近の造船技術の進歩で二十トンくらいの船も出るようになった。従って、三十トンを二十トンに切り下げて船員法適用をするようにする、こういう御説明でございます。  そうしますと、今度はちょっと触れておきました保険料徴収ですね。船員保険は、他の保険に比して、保険料徴収率が今までよくなかったというのが定説なんです。従って、目標を定めて船員保険課はその徴収に努力しておったのですが、最近の保険料徴収実態はどうなっておりますか。
  26. 高田浩運

    高田政府委員 関係者の御協力を得まして、だんだん収納率はよくなっております。三十六年度は九三%の見込みでございます。三十五年度も九三%。これは実績でございます。三十四年度が九〇%、三十三年度が八七%、三十二年度が八七%、三十一年度が八七%、三十年度八六%。三十七年度は九四%の予定をいたしております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、ずっと徴収成績がよくなってきておるという実態がわかりました。そこで、保険のことはあとにして、船員法との関連で少し尋ねたいのです。  今川の船員法改正で、改正案の八十二条と今までの八十二条、船に船医を乗船せしめる問題ですが、これは本質的にどこが違うことになったのですか。今までの八十二条と今回の改正の八十二条とは、その実態において今までとどこが違うことになっているのか、御説明願いたい。
  28. 住田正二

    住田説明員 現行船員法によりますと、医師の配乗の義務は、搭載人員百人以上の船舶、それから遠洋区域航行区域といたします船舶、その二つになっているわけであります。昭和二十二年に船員法ができましたときにこのような医師の配乗義務をきめたわけでありますが、どういうわけでこういう医師の配乗義務をきめたかという点を申し上げますと、戦争中船舶が全部国原管理されまして、海外に輸送船その他で出ていく、その場合には、船に乗っております人間も非常に多いということで、運営会船舶につきましては、すべて医師の配乗義務を設けた。終戦後船を船舶運営会が引き継ぎまして、その場合にもやはり医師の、配乗を行なっておったわけでありますが、その点に着目いたしまして、昭和二十二年船員法ができたときに、人員百人以上の船、遠洋区域航行区域とする船舶、そういうものについてすべて医師の配乗を法律化して、船員法に盛り込んだわけであります。当時は、遠洋区域航行区域とする船舶は非常に少なくて、わずか一隻、十隻ということであったので大して影響はなかったのでありますが、その後日本海運が復興いたしまして、現在外航船舶というのは六百万トン近い数字を示しているわけであります。そういたしますと、医師を乗り組ませる船について再検討する必要があるではないかという問題が出てきたわけであります。それと同時に、終戦難時におきましては、船が非常に少なかった関係もありますが、船舶に医者を乗り組ませるということはそうむずかしいことではなかったのでありますが、この五、六年といいますのは、船に乗り組ませるような医者を探すことが非常にむずかしい。船会社におきまして医者の養成その他をやっているのでありますが、なかなか適当な医者が得られない。そういうような関係で、大学の医務局に、船に医者を乗せてもらいたいとお願いをいたしているわけでありますが、それでもなかなか適正な医者が得られない。それと並行いたしまして、船に乗っている連中の乗組員の声といたしまして、船会社の方で非常に無理をして医者を探してきて船に乗せてもらう。しかし、乗った医者が、船医として必ずしも適当な人ではない。インターンを終わったばかりで、実際の手術をしたこともない医者もおり、船に乗りましても衛生管理についてあまり重点を置いて仕事をされない、そういうような非難も出まして、この際船医制度について根本的に検討する必要があるではないかという立場から、船員中央労働委員会の中に船員法改正委員会というものが設けられたのでありますが、その船員法改正委員会の中で、公労使がシップ・ドクターの問題を検討いたしまして、今後医者を乗り組ませる船というのは、ほんとうに医者がなければ困るという船に限定して、その他の船については衛生管理者制度というものを設けて、船内の衛生管理の向上に当たらせる力がいいのじゃないかというような結論を得まして、その結論を受けまして今回船員法改正をいたしたわけであります。従って、改正前といいますか、現行船員法規定と、今度の改正法律案とを文言の上で比較いたしますと、必ずしも医者が減っているということにはならないのでありますが、改正法案の医師の配乗義務を定めるにあたりましては、どのような航路に就航している船に医者を乗せたらいいかということを、十分検討いたしましてきめていきたいというふうに考えております。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今回の八十二条の改正というものは、日本の船舶が六百万トン程度遠洋航路に就航するようになって、非常に多くなった、それから、船医になる医者が不足している、たまたま来た医者は船医に不適であった、従って船員の中央労働委員会でいろいろ検討した結果、それを補うために衛生管理者制度というものを置くようになった、どういう航路にその医者を乗ぜるようにするかということは、なお今後検討をするというのが答弁の要旨のようでございます。そうすると、概括的に見て、今までの八十二条でいったらば一体どの程度——現在六百万トンなら六百万トンに固定をして、今までの八十二条だったらどの程度の医者が要るか、今度の新しい八十二条になったらどの程度でよろしい、どの程度医者は減らしていいんだ、この数字があると思うのですが、それを一つお示し願いたい。
  30. 住田正二

    住田説明員 現在、現行法の規定によりまして医者を乗り組ませなければならない船舶が五百七隻でございます。まだ最終的にきめているわけではございませんが、一応私の方で、法律改正されましたあと予定いたしております船舶は二百七隻でございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、五百七隻に医者が乗らなければならなかったのが、三百隻減って二百七隻になった。そうすると、今までの法律の八十二条は、「船舶所有者は、遠洋区域航行区域とする総トン数、五千トン以上の船舶又は遠洋底域若しくは近海区域を航行区域とする最大とう載人員百人以上の船舶に、医師を乗り組ませなければならない。」やむを得ないときは官庁の許可でそうでなくてもいいことになっておりますが、一応乗り組ませなければならぬ、これが原則ですね。そうすると、今までこの規定適用しておった三百の船というものには衛生管理者を乗り組ませることになるわけですね。結論的に言うとそうなるわけでしょう。
  32. 住田正二

    住田説明員 今回の改正によりまして、衛生管理者を乗せなければならない船の数は四百三十三隻でございます。従って、三百隻減るわけでありますが、三百隻以外に百二十三隻が新たに衛生管理者を乗り組ませなければならない、こういうことになるわけであります。といいますのは、これまでの医者を乗り組ませる船というのは五千トン以上ということになっておりましたけれども、今度は、衛生管理者は三千トン以上の船ということで、適用対象をふやしていく。従って、従来五百七隻医者が乗っておったわけでございますが、今後は六百四十隻の船に衛生管理者及び医者が乗り組むことになるわけであります。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕
  33. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、問題は衛生管理者です。こういうものは厚生省の所管になるのだと思うのですが、この衛生管理者というのは一体どういう仕事をするのか。それから主務大臣は衛生管理者適任証書というものをやることになるわけですね。衛生管理者というものは試験にも合格することになるわけですが、その実力というか、一体どういう学校を卒業した、どういう経歴の人が衛生管理者になって、医者にかわって衛生管理の仕事をすることになるのか。それから、その人数は、一体どの程度の人数を運輸省としては確保しなければならぬことになるのか。そういう、この船に乗る衛生管理者の全貌を一つ明らかにしてもらいたいと思います。
  34. 住田正二

    住田説明員 衛生管理者の数でございますが、衛生管理者の数は、先ほど申し上げましたように四百三十三名を予定いたしております。  それから衛生管理者の業務でございますが、衛生管理者がどのような業務をやったらいいかということにつきましても、先ほど申し上げました船員法改正委員会におきまして、専門家も集まりましていろいろ検討いたしたわけでありますが、その結論といたしまして、船内の換気、照明等、船内の作業環境及び居住環境を衛生上良好な状態に保つために必要な措置、それから食品及び飲料水の積み込み、貯蔵及び供給に必要な衛生上の措置その他衛生上必要ないろいろな業務をやるということをきめております。大体そういう答申の内容によりまして、衛生管理者の職務を省令できめていきたいと考えております。  それから衛生管理者の資格でございます。これにつきましても中央労働委員会の結論が出ておりまして、新制高等学校を卒業した者が、理論百十五時間、実習四十五時間の講習を受ければ大体通り得るという程度の試験をしようということになっております。衛生管理者の試験は、現在陸上の方にも、労働基準法に基づきまして衛生管理者制度というのがきめられておりますが、それよりはむずかしくしたいと考えております。  衛生管理者制度というのは、外国にはあまり例がないのでありますが、ただオーストラリアだけ、ファースト・エイドということで衛生管理者制度に近いものを設けている例がございます。それ以外には、外国では大体一等航海士がファースト・エイドの職務をやっております。  それから、申し落としましたけれども、法律で船に医者を乗せろということをきめております外国の制度というのは、まずないと言っていいわけでございます。ただ、移民船も客船のうちに入りますが、客船及び移民船につきましては、国際条約によりまして医者を乗せろということがきめられておりますが、それ以外に、外国の法律で船に医者を乗せろということを言っている例はございません。昭和三十四年の二月に横浜港に入港いたしました十七カ国の外国船三百二十七隻について調査いたしました結果、シップ・ドクターが乗っておりました船が、三百二十七隻のうち二十一隻ございました。このうち客船が十五隻ございまして、客船については法律上強制されているわけでございますが、法律上強制されていない貨物船について乗せている例が六隻だけあるわけであります。わが剛の制度といいますか、現行船員法のもとでは、三百二十七隻全部についてシップ・ドクターを乗せなければならないわけでありますが、外国では客船十五隻と貨物船六隻だけに乗せておるというような状態であります。  それから今回シップ・ドクターを乗せなければならない船が二百七隻ございますが、私の方で調査いたしましたところによると、現在船会社が雇っておりますシップ・ドクターのうち、定着性を持っておるといいますか、船会社に長期間にわたって雇われておる者が約百名ございます。その他の医者というものは、大体一年以内にみな変わっておるというのが現状でございます。従って、現在のシップ・ドクターというものは定着性が少ない。今回二百七名にいたしますと、そのうち百名は定着性がございますので、あと百名を得るということは、そうむずかしくないのじゃないかというふうに考えております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 これで衛生管理者の四百三十三人と、資格が新制高等学校程度で、ある程度の講習をやって、それから試験、業務は換気とか照明とか飲料水、食品その他いろいろ衛生の必要な業務をおやりになるようですが、これから厚生大臣にお尋ねすることになるのです。  今まで外国の船は乗っておらぬから、日本の船もこれから乗らぬようにするのだという結論のようにも聞こえますし、また前の説明では不足して、いない、船に外科の医者が必要だと思ったら、そこには精神科の医者が来たというようなことでも困るのだという話のようなこともあるのです。これは結局型の変わった無医地区対策ですよ。こういう点について、無医地区の対策と同じように、今まで八十二条で、五千トン以上の船あるいは最大搭載人員百人以上の船には乗せなければならないとなっておったものが二百七名で、三百くらいは交代をして、あと衛生管理者ということになるのですが、こういう現状というものを、厚生省はやむを得ないといって黙って見過ごすわけにもいかぬのじゃないかと思うのです。これは運輸省としてはやはり窮余の策だと思うのです。おそらく三百隻に医者がいなくなる、その乗組員にとっては、私は一大恐慌だと思いますが、厚生省としては、法律改正しなければならぬということに運輸省が追い込まれなければならぬこの事態に至るまでには、相当の紆余曲折もあったろうと思うのですが、こういう船に対する医師の確保の問題については、どう運輸省から相談を受け、あるいは対策を講じておるかですね。
  36. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 これは私が前に保険局の船員保険課長をやっておりましたときに、運輸省から、シップ・ドクターの確保について非常に困っておるから何とかしてくれという話がありまして、たとえば船員保険病院で責任を持って出してくれというような話もありました。ところが、二つの船員保険病院から数百名の医師を確保して出すことはとてもできない相談でありましたので、そういうことをお断わりしたこともあったのです。そのころからシップ・ドクターの確保について非常に困難を感ぜられておったようです。それから現実に、先ほどもお話がありましたように、たまたま乗ったお医者さんが七十過ぎのお医者さんであって、船が出ると同時に酔っぱらって寝てしまってどうにもならなかったとか、いろいろな苦情がありました。それと現実にありました苦情は、内科のお医者さんが乗って、盲腸の患者が出ても手術ができないというような苦情もときどき船員の方から聞いておって、われわれとしては、シップ・ドクターの確保につきましていろいろ頭を痛めたこともありました。それからその後に、何か貸費制度をやってくれ、国から貸費をいたしまして何とか確保するようにという話もありましたけれども、これもなかなか実際問題として困難で、実現しなかったわけであります。そういう紆余曲折がありまして、厚生省としても、現実に一方において無医地区の医師を確保するとか、その他の面で苦労いたしておりまして、船のドクター確保までは手が回らなかったという実情であります。そういうことで再三にわたって運輸省からの御相談なり依頼はありましたけれども、特に厚生省として、現実に手が打てなかったという事実はございます。ただいまの御質問に対してはその程度にしておきます。
  37. 滝井義高

    滝井委員 過去を語ったのみで、たよりないことおびただしいのですが、そうしますと、この衛生管理者というのは四百三十三人で、船の中でいろいろなことが起こったときには、治療その他をやることができるのですか。
  38. 住田正二

    住田説明員 衛生管理者は医者ではございませんから、船内で医療をすることはできないわけでございます。ただ、国際労働条約で、船内の医療を無線でやる場合に助言をやる、その助言をやる場合にはただでやるというような内容の条約がございまして、日本の場合には、日本海員液済会がその業務を担当しておるわけであります。掖済会と運輸省が一緒になって作りました医療便覧という本がありまして、それを船に備え付けておきまして、症状を無線で日本海員液済会の方に打ってやる。そうしますと、掖済会の方から無線で医療便覧の何ページに書いてある措置をとれというような電報を受けまして、それに従った措置をとるというようなことは、衛生管理者はできるわけであります。これは日本の場合には掖済会がやっておりますが、外国に行きますと、ローマその他にそういう医療センターを置いておりまして、外国船がヨーロッパに行った場合にはローマの医療センターを利用するというような仕組みになっております。これは条約ではなくて勧告でございますが、各国がその勧告を利用いたしまして、いろいろな措置をとっております。
  39. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今のあなたの御説明のところは、八十二条の二の四項「衛生管理者は、命令の定めるところにより、船内の衛生管理に必要な業務に従事しなければならない。その業務については、衛生管理者は、必要に応じ、医師の指導を受けるように努めなければならない。」これはいわゆる無線で、掖済会の病院から、今腹痛の患者があって非常に苦しんでいる、一体こういう場合はどういう処置をしたらいいのだ、それは衛生の赤本の何ページをごらんなさい、そこには、そういう症状のときにはそれは急性胃炎だ、その胃炎にはまずモルヒネを注射したらなおる、その量は〇・八なら〇・八だ、こういう指令があったら、その医師の指導によって衛生管理者はモルヒネ注射をしてもよろしい、こういう形になるのですか。
  40. 住田正二

    住田説明員 衛生管理者は、医者の指導のもとに、医者の指示通りにやれば差しつかえないというふうに考えております。
  41. 滝井義高

    滝井委員 無電でそうやってよろしいかということを言っておる。私はどうしてそういうことを言うかというと、あと船員保険との関連が出てくるから言うのですよ。今言ったように、無電で医療センターからいろいろ指導を受けてやるのだ、その無電でやる指導というものも、ここの八十三条の二の四項というものに当たるのかどうかということを私は知りたいわけです。これは非常に重要なところなんです。今後これは船だけではなくて、無医地区にもテレビその他ができますと、テレビでやって見せたらいいのです。遠隔操作というやつができるのですから。だからこれは非常に画期的な新しい思想がこの船員法の中に出てきておるわけです。だからこういう点を少しはっきりしておいてもらわぬと、今の通りでよろしいということになると、これから遠洋区域航行区域とする三千トンとかなんとかいう、医君が乗り込まなければならぬ船にもそれはできることになるのです。
  42. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 ただいまの無電の指示によりまして注射等ができるかというお話でありますが、その注射をしない場合には人命に緊急の損害が生ずるというような場合には、一種の緊急避難的な行為としてやって差しつかえないと思います。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、船の中には——今僕はわざとモルヒネの例をとったけれども、麻薬というのは、麻薬施用者の免許が要るわけです。そうなると、衛生管理者には麻薬施用の資格を与えなければならぬことになるわけです。それは胃けいれんなんか、たとえば胆石による胃けいれんなんというものが起こったときには、麻薬以外には大体なおらぬのです。そうすると、衛生管理者というものを、卑近な言葉で言えば、船といういわば無医地区に医者のかわりに乗せるわけです。そうすると、緊急避難の条件があるわけですから、衛生管理者を麻薬の施用者にしてもいいのです。何日も航海していくわけですから。これはそういうことを認めるのですか。
  44. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 今まででも実はシップ・ドクターのいない船が相難ありまして、そういう船において緊急の必要が起こった場合には、無電連絡によりまして、そういうことをやっている場合があり得るわけでございますので、今度の新しい事態に対して特別どうこうということでなくて、一般論として必要な場合には、緊急避難的な意味で、通常の場合にはできないような業務でもできるというふうに考えております。
  45. 滝井義高

    滝井委員 私は特に一番むずかしい問題を出したのですよ。麻薬というのは普通持つことができないのです。かぎをかけて、しまっておかなければいかぬわけでしょう。そのしまっておる人はだれかというと、麻薬の管理者あるいは施用者でなければだめなんです。これは麻薬を施用する免許を持っていなければいかぬ。私が言うのは、そういう緊急の場合には、衛生管理者ができるというならば、シップ・ドクターのかわりになる衛生管理者には、麻薬施用者としての免許を与えておかなければならぬことになるわけです。それを与えますかというのです。与えるということは、すなわち指導を受ければ施用してもいいことになる。それはちょっと、なかなか問題があるところなんです。
  46. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 今の麻薬に関しましては、与えないのが正しいと思います。
  47. 滝井義高

    滝井委員 与えられないですよ。だからわざと一番典型的な麻薬を出したのです。それは船の中で医者が必要だということが集中的に現われてくるのは、盲腸みたいな手術をしけなればならぬときですよ。盲腸でも、今はペニシリンその他の抗生物質がありますから手術をしなくてもいいのですが、早く見つけて注射をすれば、ある程度は、冷やしておけば一日、二日は持てるかもしれない。手術をしなくても、限局性の腹膜炎でとどめておけるかもしれない。しかし、七転八倒の苦しみ、のある腎臓結石だとか、胆石だとか、激しい骨けいれんになると、麻薬を用いなければなおらぬという場合が出てくる。これは時間がたてばおさまるでしょう。しかし、一日も二日も周期的にやってきてどうにもならぬというのは、やはり麻薬で押えなければならぬという場合が出てくるわけです。だからそういう場合は、どうも衛生管理者ではどうにもならぬという問題が出てくるのです。  それからもう一つは、そういう治療を——四百三十三人もの人が四百三十三隻の船に乗ることになるのですから、その船で起こった疾病の治療というものは、これは乗っておるときには、業務上の傷病ですから全部それは事業主の負担になるのですね。そうでしょう。
  48. 住田正二

    住田説明員 船の中の災害は、職務上、職務外を問わず、船舶所有者の負担ということになっております。ただ、職務外は制限がございますけれども、一応船の中の疾病、傷害は船舶所有者の負担ということになっております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その場合の船員保険との関係ですよ。これから医者の乗る船は少なくなるのですからね。そうすると、四百三十三人の人たちが乗って、そうして衛生管理者が応急的な処置の治療を終わったら、何もやれぬということは意味しない。というのは、航海で何日も行くのですから、必然的に衛生管理者が治療を続けなければならぬ。ほっておくわけにはいかぬ。そのときの船員保険との関係というのは、どういうことになるのですか。
  50. 高田浩運

    高田政府委員 船員保険で疾病の給付をするのは、保険医療機関でなければできないわけでございますから、船内の診療所が保険医療機関になっておる場合には、これは船員保険法の給付の対象になるのですから、船員保険の経済から支払う、こういうことになるわけであります。しかし、診療所というものは、医師が治療を行なう場所でございますから、医師以外の者が仕事をするのは、診療所ではないわけでございます。従って、当然これは保険医療機関にはなり得ない性格のものでございますから、衛生管理者が仕事をしておるところは、衛生管理者が仕事をしたことによって、これを保険医療として保険経済から金を出すということは、現在の仕組みでは不可能だと思います。
  51. 滝井義高

    滝井委員 私は、だからそうなると思うのですよ。そうしますと、衛生管理者を乗せるけれども、この長い航海の間で、その衛生管理者の治療のすべてというものは保険経済で支払わないのだが、医師の乗っておる船の診療所については、保険医療機関になって支払いを受けられる。しかし、衛生管理者の乗っておる分は、これは全部事業主がその治療費の一切を持つ、こういう確認をもらっておかぬと、その分はあと船員保険で請求しておけというわけにいかぬと思うのですが、これは大丈夫でしょうか。四百三十三人の衛生管理者の乗った船の一切の応急的な処置、そしてそれに引き続いた治療というようなものは、全部船主の負担である、こういう確認をして差しつかえないですか。これは新しい制度ができてくるわけですからね。差しつかえないですか。
  52. 住田正二

    住田説明員 そういうことになると思います。
  53. 滝井義高

    滝井委員 その確認をいただいておけばいいのです。  それからもう一点念入りに聞いておきますが、さいぜんの、緊急やむを得ざる場合においては遠隔操作で衛生管理者が治療をやる、こうなっておるわけですね。ところが、その治療が反復して続けられていくと、これは医師でない者が医療をやるということになるのですよ。そういう場合も、遠隔操作で、昨日は非常に痛んでモヒをやった、しかし、きょうは痛みもやんでおる、それならば一つそれは胃散をやっておきなさい、こういうのがあれば、それにつれてこういうふうにやってもいい、こういうことになるわけですか。
  54. 鈴村信吾

    ○鈴村説明員 衛生管理者が、そういうふうな陸地の医師の指示によってやります治療的な行為はきわめて緊急避難的なものでありますので、症状が続くような場合は、できるだけもよりの港に入って、そこで医師の診察なり治療を受ける、こういうふうに指導していただくように運輸省にはお願いしております。
  55. 滝井義高

    滝井委員 それは特急が博多から東京に来る十七時間くらいのことじゃないんですよ。そうでしょう。遠洋航海に出て行ったら、もよりのところというのは、貨物の都合その他で、なかなか二日も三日もかからなければ寄れぬ場合も出てくるわけです。だから、どうして私がこういうへんちくりんな質問をするかというと、この衛生管理者のために命をなくして損害賠償を訴えられると、これは処置ないですよ。そうでしょう。これは医師法違反ということになるんですよ。だから、この衛生管理者というものを作ったけれども、あちこちで船の上で人が死んで、そしてこの衛生管理者なり船会社が訴えられるということは、私はあり得ると思う。処置を誤った、手おくれになった、あるいは注射を間違えたというようなことがあり得ると思う。高等学校を卒業して、百時間かそこらしか講習をやらないんですからね。だから、これ以上やりませんけれども、やはりこういう点は、もう少しこの実施にあたっては、これは今までの船員法の中の新しい転換点ですから、厚生省運輸省との間に十分打ち合わせをして、衛生管理者なり船会社が訴えられないような処置というものは、やはりきちっと法律的にも整えておく必要がると思う。これは医師法違反というこにもなり得るんですよ。同時に、こういう制度というものは暫定的なものにして、医師の充足等をもう少し厚生省が積極的にお考えになってやることが必要だと思うのです。最後に大臣からこの点に関する見解を何って、次に移りたいと思います。
  56. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 だんだんとお話をお伺いしたわけでございますけれども、今回の船医の問題についての措置は、実情から申しまして、厚生省といたしましてもやむを得ないものがあると存じまして、御同意を申し上げたようなわけであります。理想を申し上げますれば、どの船にもお医者さんが乗ってほしいということでありますけれども、実際問題としてはなかなかそうもいかぬであろう、また、現在の状況から申しましてやむを得ないであろうということで、実は御賛同を申し上げているわけでございます。それだけに、衛生管理者という制度につきましても、厚生省としても非常な関心を持たざるを得ない、どういうふうな資格を備えた人を衛生管理者として認めるかという問題についても、とくと運輸省とも打ち合わせをしたいと思いますし、また、その人たちが船内においてどの程度のことができるかという問題につきましても、もっとこさいに厚生省といたしましても研究いたしまして、できるだけ災いが起こらないようにという配慮はいたして参らなければならぬと思うのでございます。  なおまた、船医の問題でありますが、遠洋航海その他につきましても、命令でもって定めるもの、あるいは航路を指定するというふうな条項もあるようであります。そういうものにつきましては船医を乗せるというふうな規定もあるようでございます。その命令とかあるいは航路の指定等につきましては、やはり厚生省ともよく御相談を願う。両者とも打ち合わせをしまして、船医を乗せるべき必要なるものに対しましては、ぜひ船医を乗せてもらうようにいたしたい、これに対しましては厚生省としてもできるだけの御協力はしたいと存じております。要するに、やむを得ざる措置でございますので、それによって弊害がなるべく起こらないようにしたいという意味合いにおきまして、私の方でもなおよく検討もいたしますし、また運輸省ともよく御相談をいたしたい、かように考えておる次第であります。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
  57. 滝井義高

    滝井委員 昨年一年だけでもけっこうですが、船の上で緊急に処置をしなければならぬ、医師の手でやらなければならぬというような件数、それは一体どの程度ありましたか。
  58. 住田正二

    住田説明員 詳しい資料がございませんが、一年間に切断というような事故、足か手を切ったというふうなことだと思いますが、汽船関係で十三件、機帆船で十二件、漁船で六十八件、その他の特殊船で二件、計九十五件起きております。漁船関係が非常に多いのでありますが、これは綱に巻き込まれて手をとられるとか、そういうような事故ではないかと思います。  それから骨折、脱臼、捻挫というような事故は、汽船関係で七百件、機帆船で百二十八件、漁船関係で八百八十件、その他で七十二件というような事故であります。
  59. 滝井義高

    滝井委員 やはり相当にたくさんあることがわかりました。  次は、行方不明手当です。今度行方不明手当というのができたわけですが、船員法の九十二条の二に「船舶所有者は、船員が職務上行方不明となったときは、三箇月の範囲内において、行方不明期間中毎月一回、命令の定める被扶養者標準報酬の月額に相当する額の行方不明手当を支払わなければならない。」とあります。これは船員保険の災害補償の対象になるのですか。
  60. 高田浩運

    高田政府委員 これは現在のところ船員保険の対象には仕組んでおりません。この点は、もっと検討した上で船員保険での保険化の問題を考えたい、かように考えております。
  61. 滝井義高

    滝井委員 これは運輸省に尋ねますが、この行方不明手当というのは災害補償の一種なんでしょう、どういう性格のものですか。
  62. 住田正二

    住田説明員 災害補償であります。
  63. 滝井義高

    滝井委員 災害補償ならば船員保険法の対象にならなければならぬ。これは労災を含んでいますからね。私がどうして伺うかというと、一ぱい親方と申しますか、一隻しか船を持たない。そうすると、船が転覆をして親方も何もみんな死んでしまったというときには、この一ぱい親方の宗族というものは、非常に悲嘆にくれるだけで、財産もない、とても行方不明手当なんか出せませんという問題が出てくるわけです。そうしますと、これは当然保険の対象にしておいてもらわぬと、行方不明手当というものが出たってしようがないと思う。だから、これは選択しておいてもらわぬといかぬ思うのです。第一次の責任というものがその船舶所有者にある、しかし、この船舶所有者が、その資力がない、その他何かどうしても払えないという理由がもしあるならば、それは船員保険の災害補償なんだから、船員保険で見ましょうということにしておいてもらわぬと、この九十二条の二というものは画龍点睛を欠くことになるわけです。大臣そうでしょう。ひっくり返って行方不明になるというのは、大きな船よりか零細な漁船その他が多いわけですよ。そうすると、一ぱい親方だったら、船も親方も死んじゃったというときに、今度その家族のところに行って、三十人なら三十人の死んだ船員全部の行方不明手当を三カ月分も出せと言ったって、これはとても不可能ですよ。そうでしょう。出せるときには出してもらう、しかし、出せないときには船員保険法の方で見る、これが私は建前でなければならぬと思います。これはどうですか。今あなたは災害補償だとおっしゃったのだけれども、災害補償ならば災害補償らしく保険の裏づけが必要だと思うのですが、運輸省の方は厚生省と十分連絡の上でこういう処置をおとりになったのですか。
  64. 高田浩運

    高田政府委員 この点は、運輸省とも十分話し合っている問題でございますが、保険の対象にするかしないかという点については、今お話しのような原因で行方不明になった場合もございますし、行方不明になるに至る原因というものもいろいろあると思うのでございます。そういたしますと、これを保険事故として的確に把握するということからもいろいろ問題がございますし、それらのところは、保険事故としてやっていくことがはたして適当であるかどうかということをもう少し検討した上で結論を出したい、かようなことで、現在のところは保険事故に取り上げていないわけであります。
  65. 滝井義高

    滝井委員 殺されて海の中にはうり込まれてしまった、そして行方不明になったというようなときまで保険事故にしようというのじゃない。しかし、海難にあって、そしてこれは明らかに海難なんだということがわかれば、この三カ月の間は一応船舶の所有者の責任にするけれども、それがどうしてもできない場合にはやはり保険で見るという建前にしておかないと、行方不明手当というものができても、実際は払えなければ空文に終わる可能性が十分あるわけです。今中小炭鉱で労災の給付の制限というのがある。死にますと、その炭鉱の鉱業権者が保険料を払っておらぬ、そうすると五割の給付停止になってしまう。百万円遺族補償をもらえるのにもかかわらず、五十万しかもらえぬわけです。今中小炭鉱は貸金が安いですから、百万などというのは少ない。従って、入った初めは三十万くらいなんですよ。そうすると、その半分の十五万だけもらってあとは払わない。鉱業権者が金ができるまで待てと、こうなる。そうすると、いつまでたっても泣き寝人りです。その者が破産の宣告を受けると、残りの十五万を国が払う。ところが、破産をするというのは裁判をしてやらなければならぬからなかなかです。これは海難の審判所か何かあるでしょうが、ああいうところで総合的に見て認定をしてもらったらいい。しかも本人が払えないというときになれば、保険で見るというくらいの制度は、やはり作ってもらう必要があると思うのです。検討することは合理的に検討してもらってもいいけれども、むずかしい点はやはり保険で見るという方向で、一つ御言明を願いたいと思うのですが、これは大臣、どうですか。
  66. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府委員のお答えしましたことも、決して否定的な意味でお答えしているとは私は思わないのであります。いろいろ検討を要する部分がありますので検討をしたいということを申し上げているわけであります。お話の御趣意につきましては、われわれとしましても積極的に考えなければならぬものもあるように存じますので、さような意味合いにおきまして、十分検討さしていただきたいと思います。
  67. 滝井義高

    滝井委員 できればこれは、あとで附帯決議でもしてもらいたい問題であります。  次に、今の災害補償に関連をして、労災の問題に入ります。現在労災保険改正について労働省は検討をし、厚生年金改正についても御検討になっておるわけですね。そうしますと、この船員保険の中における労災なり厚生年金の占める地位というものは、それに関連する問題の占める地位というものは、やはり他の保険と同じだと思うのです。そういう意味で、船員保険法改正を、労災なり厚生年金改正があれば、これは当然あなた方おやりになるわけですね。
  68. 高田浩運

    高田政府委員 関連する事項については当然改正すべきですが、今お話しのようなことも含めて、特に船員保険制度の上において、労災部門の点が社会保険審議会等においてもいろいろ議論がございまして、問題も残っておるわけでございますが、これらを含めて早急に検討して、できれば次の通常国会に何らかの措置をとりたい、かような考え方検討に着手しております。
  69. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、職務上の傷病に対する療養の給付期間というものは、もとは期限があったわけですね。ところが、一昨年のあの改正でその傷病がなおるまで見る、こういうことに船員保険法もなったし、一般の労災においても、けい肺とか脊髄損傷というようなものについては年金に切りかえたわけですね。それに関連して少し尋ねることになるのですが、これから主として労働省になるわけです。船員保険における労災部門だけの収支の状態はどういう傾向ですか。
  70. 高田浩運

    高田政府委員 保険料率で申しますと、疾病給付については、一般給付が五一、災害補償の分が四〇、合わせて九一、それから長期給付につきましては、一般の分が四二、災害の分が一四、合わせまして五六、こういう状況になっております。
  71. 滝井義高

    滝井委員 それは保険料徴収率でしょう。保険料はそういう徴収率になっておるでしょうが、その収支の実態——特に災害部門だけに限って、今言ったように四〇と一四をおとりになるが、一体その収支の実態はどうなっておるか。赤字ですか黒字ですか。
  72. 高田浩運

    高田政府委員 これは私の方の事務のやり方の問題でございますが、補償についてだけの災害補償とそのほかのものを区分けした収支の計算をいたしておりませんで、疾病給付分、年金給付分、そういうふうな区分けでずっと計算をいたしておりますので、災害関係だけの収支がどうなっているかということは、ちょっと今わかりかねますが、大体保険料率は収支のバランスを見ながら計算をしているわけでありますから、これで均衡がとれている、かようにお考えいただいてけっこうであります。
  73. 滝井義高

    滝井委員 今度あなたの方が標準報酬をお引き上げになるわけですね。標準報酬を引き上げるということは、率を一定にしておったって、これは収入がふえることを意味するわけです。だから標準報酬を引き上げなければならないという客観情勢があることは、もちろん年金その他、標準報酬によって額がきまるわけですから、これは見合ってくるわけです。ところが、部門というものは、メリット・システムをおとりになったって、収入が多くて支出が少なかったら、黒字になってたまることになる。そうすると、その分だけ標準報酬をお上げになるならば、保険料率は下げてもいいことになる。収支がとんとんならば、その分については現在標準報酬をお上げになる必要はない。そこの実態を私は知りたいわけです。
  74. 中野四郎

    中野委員長 速記をやめて。   〔速記中止〕
  75. 中野四郎

    中野委員長 速記を始めて。
  76. 高田浩運

    高田政府委員 船員保険の収支の計算につきましては、先ほどちょっと申し上げましたように、疾病給付、年金給付という格好で各部門ごとの計算をいたしまして、それを積み上げていくということでございまして、その内訳で、災害補償分とその他の分と区分けをしていく分につきましては、多少計算に時間を要しますので……。
  77. 滝井義高

    滝井委員 区分けをしておかないと、ちょっとそれは問題があるのじゃないかと思う。というのは、その船員保険における保険料の千分の幾らという比率を見てみますと、疾病保険分は船舶所有者の負担が六五・五、それから被保険者が二五・五で千分の九十一、それから年金給付分が、船舶所有者三五・〇、被保険者二一・〇で五六・〇になる。それから失業保険分が、船舶所有者五・五、被保険者五・五で十一、それから福祉施設分、これもちょっとあとで尋ねたいのですが、船舶所有者が七で、被保険者はゼロ、計七、事務費の分が、船舶所有者二、被保険者ゼロ、従って計二、赤字償還財源、これは船舶所有者一・五被保険者〇・五、計二、それから失業保険適用するものと適用しないものと分けて、適用するものが、船舶所有者二六・五、被保険者五二・五で一六九、それから適用のないものが、船舶所有者二一、被保険者四七で一五八、こういう形で保険料というものがきめられてきておるわけであります。もし、がらがら計算だけで集まっただけだということになれば、相互保険ですから、疾病とか年金とか分けることはなくなるわけです。しかし、これはやはり分けなければならぬというのは、事業主の負担その他の問題もある。しかし、災害負担分については全額事業主が持つわけです。被保険者は持たないのです。船舶所有者の保険料の負担というものは、これらの全社会保険の総合的なものがかかってくるわけですから、零細な漁船その他の負担能力を考えると、やはりできるだけ、災害なら災害が黒字であるならば、その分の保険料というものを切り下げなければバランスが合わないことになる。従って、そこらあたりが、今わからなければけっこうですが、わかることがほんとうだと思う。   〔委員長退席、藤本委員長代理着席〕 私はどうしてきょうあなたにそれを尋ねるかというと、最近労災保険というのが黒字になりつつある。それできょう大野さんに来てもらっておるのです。船員保険実態はどうなんだということを私は知りたいわけなんです。標準報酬をお上げになるのならば、現状のままで船員保険の災害部門が黒字であるならば、この標準報酬額を上げた分だけ料率は下げてもいいことになる。そこら関係、片方は全般的に適用するから上げなければならぬ。しかし、この料率を下げておけば、とんとんならば収入はもとのままでいいわけです。大野さん、あなたの方の労災全般の経理、歳入、歳出のバランスというものはどういう状態であるか。船員労災全部は、あなたの方の労働省がお握りになっておらなければならぬ。運輸省がお握りになっているはずだが、船員の方に焦点を当てた場合にはどうなるか、全体と船員一つあなたの方でわかっておれば御説明願いたい。
  78. 大野雄二郎

    ○大野説明員 船員関係は、私どもの所管外のことで、詳しいことはわかりません。労災全体の収支につきましては、三十五年度の年間の収支は五十五億の黒であります。しかしながら、これは年間の収支で、支払い備金を勘案いたしますと、百二十五億の赤であります。
  79. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、三十六年度の見通しはどういうことになりますか。
  80. 大野雄二郎

    ○大野説明員 三十六年度は、大よその見通しでございますが、年間の収支は約七一億の黒に相なりまして、従いまして、支払い備金勘定を勘案いたしますと、赤字は約百億程度に圧縮するのではないかと存じます。
  81. 滝井義高

    滝井委員 労働者災害補償保険法の二十六条で、「保険料率は、この法律適用を受けるすべての事業の過去五年間の災害率を基礎として、数等級区別して、賃金一円当りについて主務大臣が、これを定める。」こうなっておるわけです。この二十六条の保険料率の定め方は、船員保険も大体こういうやり方をおやりになっておるわけでしょう。
  82. 高田浩運

    高田政府委員 船員保険ではそれと違いまして、一本で計算をいたしております。メリットを考えていないわけでございます。
  83. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、船員の方はちょっと他の保険と違って、船の上のやつ、全部事業主が、初めに保険料関係なく見る分があるから幾分違ってくると思いますけれども、一定の料率を事業主から取って、そうしてそれでその船員保険の中に入れて他の金とプールして支払っていく、こういう形態をおとりになっているわけですね。そうしますと、これは大野さんにお尋ねするわけですが、こういうように五十五億の黒字、予備金勘定とかいうものを入れて百二十五億の赤字になる。三十六年の見通しで七十億の黒字、それから支払い予備金を入れると百億の赤字だと言うが、この黒字の累積額というのは、どの程度労災保険でたまっておるのですか。
  84. 大野雄二郎

    ○大野説明員 三十五年で大体百四十億でございます。これは支払い備金——積立金とは違いますが、支払い備金に引き当てる勘定が……。
  85. 滝井義高

    滝井委員 三十五年末で……。
  86. 大野雄二郎

    ○大野説明員 百四十億になるわけです。
  87. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十六年の七十億を足すと、二百十億程度支払い備金とやらに累積することになるわけですか。
  88. 大野雄二郎

    ○大野説明員 さようでございます。
  89. 滝井義高

    滝井委員 わかりました。これで大体労災実態が出てきたわけです。そうしますと、この二百十億の金が累積しておるわけですが、問題は、この労災保険が前進をしていくと船員保険の方も前進せざるを得ないわけです。これは僕は船員保険がイニシアチブをおとりなさいと言うけれども、とらぬので、結局大野さんの方が前進をすると高田さんの方があとへついていく、こういう形になっておるのです。私はむしろ、高田さんの方が前進したら大野さんの方がくっついていくようにしたらどうだ、これは六十万そこそこじゃないか、こう言ったけれども、なかなか過去の実績はそうはなっておらぬ。だから大野さんが前進すると高田さんがくっつく、こういう過去の実績からいって、そういう形にならざるを得ないわけですね。そうすると、二百十億の黒字の累積があることになりますが、現在、御存じの通り三十五年の四月に労災保険法の一部改正をして、それにならって船員保険法の一部改正もあったわけです。この場合に、長期給付については特に第一種、第二種——労災とかけい肺とか脊髄損傷ですね、脊損については第一種、第二種をお作りになって、そうしてこの第一種の自宅療養のものについては平均賃金の六五%、二百四十日分ですね、それから第二種の入院療養については平均賃金の五五%、すなわち二百日分を支給することになった。ところが、現在これでは食えないと言っている。働いてないわけですね。たとえば箱根の療養所等では、脊損の人たちがずいぶん入院しておりますが、この程度では食えない。それで国家公務員その他の賃金は上がっていくけれども、この方は、全国労働者の平均賃金の二〇%の変動があった場合に初めてスライドすることになっているが、とても二〇%の変動はないわけです。そうすると、この平均賃金の五割五分ないし六割五分というのは据え置きのままになっておる。一方、労災会計は二百十億の黒字の山がある。宝の山がある。この宝の山の持ちぐされをするわけにいかぬと思うのです。これを私は、どうして政府は出さないのかと言うのです。大野さんの方はどうして出さないのかということです。
  90. 大野雄二郎

    ○大野説明員 この二百十億の性格でございますが、失業保険などにおける積立金と性格が違いまして、二百十億は将来の支払いの元になる性格を持っております。つまり余ったということではなくて、労災の方は、その年度に起きた傷病で、将来の給付というものは、その年度に払った保険料の中から出していくのが建前になっております。従いまして、この二百十億は、その年度別に生じた災害、疾病の将来に継続する給付の元になる性格を持っております。従いまして、私、先ほど積立金ではないと申し上げたのですが、その性格の相違に御着目願いたいと存じます。
  91. 滝井義高

    滝井委員 その年度までに起こった災害に対する支払いに充てるのだから、労災その他はその年度までに起こっている災害だからこれは累積しておるのですから、なおらずに箱根の療養所に呻吟しているわけです。当然それは二百日とか二百四十日では食えません。全国労働者の平均賃金の二〇%以上の上昇がなければこれは動かさないのですから、そこに二百十億という金があれば、当然前のものによけいに払ってやってもいいわけです。法律さえ改正するあなたの方の意思があれば。そうなるのです。これは法律通りにことし起こったものはことしで勝負をつけていくならば、前のものが、入院の二百日のものが二百五十日になったとすれば、これはきょう起こったやつもこれから先三年後に長期給付に切りかえられるときにつながる。ですから、まずその先のカラスを飛び立たしておかなければ、あとのカラスが先になるというわけにいかぬわけです。だから、これをどうして労働省はやらないのかということです。こんなに金が労災は余っているのに。あなたの方がおやになれば、船員保険の力もそれに続いてやることになる。そうすると、今度は船員保険の方は、あなたの方でさえもこう余っておるのだから、おそらく余っていると思う。それに今度標準報酬を上げるというのですから、ますます黒字が多なってくる。そうすると、船員の方も長期給付ができる。できなければ一般会計から入れてもいい。それだから、それをどうして大野さんの方がおやりにならないのかわからないのです。これが赤字ならば、もうちょっと待ちなさいということになるのです。ところが、黒字です。労災は黒字で、しかも大蔵省から事務費その他もあまりもらっていない。僕らがいつも指摘するように、これは労災自身のあれでまかなっていらっしゃる。これは私、どうしてやらないのかな、大野さん、そこらあたりちょっと明白な御答弁をいただきたいのですが……。
  92. 大野雄二郎

    ○大野説明員 保険の給付を賃金にリンクさせていくという方法を現在とっておりますから、それと離れるということは、もちろんこれは保険制度の根本的な改革ということに相なるだろうと存じます。さような御意見も伺っておりますので、私どもの方では、目下そういう問題を含めて検討はいたしております。しかしながら、ただいま言われましたように、支払い備金がたまっているからそれを支払いに出せばいいじゃないかという御議論に対しましては、現在のベースで将来給付を続けていくためには、さような金額を持っていなければならない性格なんでございまして、その問題とこの問題とは別個だと考えております。
  93. 滝井義高

    滝井委員 現実に生活保護も引き上げたのです。生活保護も、昨年一八%当初予算で引き上げ、補正予算で五%引き上げ、今年度当初予算で十二%、三六%引き上げているのです。それからあなたの方の別な所管の日雇い労働者賃金も、三百八十六円から四百二十五円に引き上げているわけでしょう。それと比べて、二百日分しかくれないというのは、ほとんど働けぬのです。脊髄が折れてしまってじっと寝たままですから、そういう人に二百日分だけ与えて、しかも二百日というものも、まるまる一〇〇%くるのじゃなくて、平均賃金の五割五分あるいは六割五分ですから、これでは一家養えぬわけです。そうすると、生活保護は引き上げておる、日雇い黄金も引き上げておって、この労災の方を上げぬという理論もない。たまたまそれが二〇%のスライドの制度があるためにそれがとめられておる。しかしこれは、二〇%そのままにして、あなたの方で、もしこういう悲惨な状態に対して積極的な意欲があるならば、その分だけお返しになってもいいわけです。スライドは二〇%そのままにしておって、それもその後おやりにならぬ。そうすると、ここだけ置いてけぼりになるのです。それで私は、一応個人的に、労働省の当初予算を審議するときに、これはおやりになっておりますかと言ったら、実はやっておりません、けしからぬじゃないかと言っておいた、注意はしておいたのです。しかし、これはあなたの方が先行しないと、船員保険は今までの実績ではやはりついていけない。だから、これは支払い予備金だからと、こう大野さんはおっしゃるけれども、これは支払ってもいいものだから、何も二百十億をためる必要はない。足りなくなったら、メリット・システムですから、事業主からとったらいい、うんともうけておるんだから。事業主のあの過大な設備投資を見てごらんなさい。どんどん物にはつぎ込んでおるけれども、こういう人間にも、あの設備投資をする意欲を持ってつぎ込んでもらいたい。自分の企業で、労災で脊髄を折り、けい肺になっておる患者に、その千万の一ぐらいはつぎ込んでもらいたい。こういう気持ですよ。だから、ここらあたり、何かあなたの方で頑強に旨われますけれども、それなら次に移ります。  労働省は、何か最近告示をお出しになったんじゃないですか。労災保険保険料の改定か何かの告示をお出しになったんじゃないですか。
  94. 大野雄二郎

    ○大野説明員 保険料率の告示を出しております。
  95. 滝井義高

    滝井委員 それは引き上げる告示ですか、引き下げる告示ですか。
  96. 大野雄二郎

    ○大野説明員 御承知のように、労災保険は、業種によりまして非常にたくさんに分かれておりまして、引き上げるものもあり、引き下げるものもあり、そのままのものもございます。
  97. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、引き上げるものもあり、引き下げるものもあるそうですが、引き上げるものがどのくらいで、引き下げるものがどのくらい、何業種くらいですか。
  98. 大野雄二郎

    ○大野説明員 今年度までの業種の数が六十二業種ございます。そのうちで引き上げるものは三つでございます。二十一が据え置きで、その他が引き下げる方に入っております。
  99. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、引き下げる方が多くなった。二百十億の金がたまっておる。ところが、業種によって引き上げるものと引き下げるものがある、あるいは据え置くものがある。しかし、引き下げるものの方が多い。約四十近く引き下げることになるわけです。これは結局だれが一番得するかというと、引き下げてもらったその事業主が一番得するということになるわけですね。もちろんこれはメリット・システムですから、そこらは災害が少なかろうと思うのですけれども、少ないといったって、そう大した変わりはないと思うのです。まあ一〇%か二〇%の差ぐらいなものであろうと思うのですが、どうも僕はここが納得いかないのです。一方には脊髄損傷の患者が泣き、労災厚生年金との併給をしてくれという要望が強い。炭労その他も、一人の人間が死んでわずかに千日分ではいかぬじゃないか、少なくとも第一級障害の千三百四十日分ぐらいにはしてくれぬか、制限給付をなくしてくれぬかという要望が強いわけです。ところが、そういう強い国民的な要望というものはそっちに置いておって、そうして事業主のために切り下げをやるというのは、僕は納得いかぬと思うのです。これはどういう理論的な根拠からやるのです。今あなたは、二百十億というものは、これは過去の起こった支払いに充てるために積んでいるのだ、こうおっしゃった。ところが、積んでおるはずのものが、いつの間にか雇い主の保険料の切り下げで返っていくということになると、さいぜんの答弁と矛盾するのです。
  100. 大野雄二郎

    ○大野説明員 保険料率の引き下げによって、今まで積んだ金が戻るというものではございません。  それから先ほど、平均賃金の五五%か六〇%というお話でございましたが、二百四十日分あるいは二百日分というのは、平均賃金にまるまるの二百日分あるいは二百四十日分であります。  それからスライドの問題については、いろいろの御議論も伺っておりますし、私どもも検討いたしておりますが、この前の改正法の附則第十七条のところにおきまして、この問題は、社会保障に関する制度全般の調整の機会において検討せよということが書いてございます。従いまして、私どもは、その線に従って検討をいたしているところでございます。  保険料率の上げ下げの問題は、現行法に従ってこれを行なったものでございまして、保険収支の良好なところはこれを引き下げ、保険収支の悪いところは引き上げた、こういうことになっております。
  101. 滝井義高

    滝井委員 まあ反論として、積んだ金には関係ないとおっしゃるけれども、これから積もる金が少なくなることは事実です。積もる金が少なくなるということは、前の支払いに対して厚く支払いができないということになるわけです。それから二百日か二百四十日といろいろ申しましたけれども、ともかく二百日や二百四十日じゃ食えないという現実です。私は実態調査をしてみた。試みに大野さんが箱根の脊損の療養所に行ってみると、みんなから泣きつかれる。あなたの方から二人ぐらい人が調査に行っているはずだ。これをもうみなから言われている。それから実績のあるところは引き上げるけれども、実績の少ないところは引き下げる、これもいいと思うんです。これもいいと思いますけれども、たとえばことしの保険料収入が四百二十二億だ、三十七年度が。去年が三百七十九億。四百二十二億の保険料から余りが出てくることになるわけですが、これをその前から引き下げるということは、私はそうする必要はないと思う。それは、少ないところは、実績主義ですから何もそれまで下げてやらなくたって、すぐ金を出せばいいのですから、その率まで下げてやる必要はないと思うのです。何かこういうととろが、私、労働省の政策が今度はわからなくなったのです。これは一応やはり労働大臣に来てもらって、尋ねなければならぬことになるんですがね。一体引き下げでどの程度の金が事業主に返ってくるのです。三十六年度、七年度。
  102. 大野雄二郎

    ○大野説明員 大体二十六年度のベースで計算して、三十億程度と考えております。
  103. 滝井義高

    滝井委員 三十七年度のベースでいくと、どのくらいになります。
  104. 大野雄二郎

    ○大野説明員 それより一割ぐらいふえると考えております。
  105. 滝井義高

    滝井委員 これは三十億の金があったら、今まで二千人ばかりの脊髄損傷なりけい肺の諸君が言っておった問題は、立ちどころに解決してしまうんですよ。これは私は、労働者保護をおやりになる労働省としてはどうも納得がいかないんですがね、こういう政策をおとりになるのは。三十六年度に三十億保険料を切り下げてやることになるわけですがね。そうしますと、これは三十六年度の歳入の黒字見通し七十億、ですから、その中から三十億切り下げるのですから、結局四十億が累積というか、支払い予備金の中にためられるということになるわけです。約四割程度を事業主に返すということになるわけです。これはどうも、ちょっと私納得がいかぬですな。これは黒字だからといって、給付の内容の改善に盛り込まずにそれを事業主に返してしまう。なるほど保険料は事業主だけしか納めていないから、そういうこともできるかもしれないけれども、これはどうもちょっと……。労働省の政策が非常によければいいですけれども、さいぜん指摘したように、労災厚生年金との併給もおやりになっていない。今言ったように、二百日とか二百四十日ということでは食えないという実態がある、死んでも千日分である、こういうことをもう少し改善しなければならぬという要望は、すでに炭労の政策転換闘争の中にも出てきておるし、今全鉱等も目の色を変えて改正を要求しておる。ところが、その中で、いつの間にかわれわれの知らぬところで、集まった七十億の保険料のうち三十億というものは、事業主に残ったものは返してしまうのだ、来年は、三十七年度はさらにそれよりか一割よけいに返すのだということでは、ちょっとこれは納得がいきかねるのです。これは私は大野さんにお願いしたいのですが、やめてもらいたいと思うのです。それを私はこの委員会の決議として、委員長一つあと理事会ででも諮ってやってもらわなければ困ると思うのです。一方においては、重傷を受けた炭災の患者が泣いているのに、取り立てた保険料を今度は切り下げて返す、当然取れる保険料を切り下げて返す措置を今の段階でやる必要があるかどうかということです。そんなことをやれば、もう船員保険法なんかの前進というものも、同じようにとまってしまうのです。きょうは労働大臣が来ておりませんから、これは最後に厚生大臣に締めくくるというわけにもいかぬです。しかし、厚生大臣御存じの通り、これは医療にも関係があるのです。労災医療というやつは、慣行料金ということでやってもらっていることになっておるわけです。これは医療にも関係がある。従って、そういう点では納得がいきませんが、これは僕も今の答弁で大体全貌がわかりましたから、最後にもう一つだけ尋ねておきます。  あなたの方の改定の方向を、具体的にどういう基準のものは切り下げて、どういう基準のものは引き上げるのですか。それから主として引き上げられた業種というものはどういう業種か、たとえば石炭業とか採石業とか、いろいろあると思うのですが、その切り下げられた業種というものは、一体どういう業種が切り下げられていますか。
  106. 大野雄二郎

    ○大野説明員 保険収支で赤になっているものは引き上げ、黒になっているものは引き下げるということが趣旨でございます。大体黒のところは土建関係が多いのでございます。つまり引き下げる部分は、土建関係を中心といたしておるのでございます。これは土建関係労災保険料率が非常に高い。一番高かったときは千分の百二十三、つまり一二・三%を保険料に取っておりました。今度のは、千分の九十九を千分の八十に引き下げたのが一番上のランクでございます。  なお、労災は六十三業種に分かれていたために、保険としての性格を非常に希薄にする傾向があったのでございますが、なるべくこれを大きな保険の集団にまとめていかなければならないということで、事業の種目の統合をやりまして、今回の切り下げによって六十三から四十八に事業の種類を少なくする。つまり保険の集団を大きくして、保険保険たる意味を強めるということが可能であったわけでございます。従いまして、保険料率が全体とすれば下がっておりますが、合理化という方向に歩き出した点も御認識いただきたいと存じます。   〔藤本委員長代理退席、委員長着席〕
  107. 滝井義高

    滝井委員 今種類はわかったのですが、たとえば簡単に、どの程度の赤を上げる、黒は下げる、それもいいのですが、その基準は一体どういうところに引くのかということです。たとえば実績よりか何%こえるものとか、以下とかというものがあるはずだと思うのです。  それから今私が聞いてますます不可解に思い始めたのは、土建関係中心に引き下げたということです。脊髄骨折が一番多い、いわゆるかたわになるのが一番多いのは土建関係ですね。そうすると、そういうところから出た労働者の処遇というものはそのままほうっておいて、先におやじの方の保険料が余ったからといって、処遇をやらずに、それをおやじの方に返すという労働省の行き方というものは、どうもわからぬのです。
  108. 大野雄二郎

    ○大野説明員 給付の改善は給付の改善として、私どもは真剣に検討していきたいと存じます。  それから現在の保険料率は、現行法のもとにおいて施行せらるべき問題でございます。従いまして、保険料率を切り下げたから改善しないとか、あるいは下げないから当然改善するのだとか、そういう問題は別個でございまして、私どもが検討してみて、給付の改善をするということが必要になれば、それに相応した保険料の引き上げということは当然生じてくるのであります。これとそれとは別個に考えていくべき性質のものと考えております。
  109. 滝井義高

    滝井委員 私はそうは思わない。これは保険料というものでまかなわれる限りにおいては、保険料と無関係に給付があるはずはないのです。これは理の当然です。だからその論は、私は賛成できないですね。
  110. 大野雄二郎

    ○大野説明員 もちろんその通りでございますが、保険給付を将来改善するということになれば、当然保険料を引き上げるということが出て参ります。将来改善するかもしれないからといって、現行法上書いてないものまで予定して保険料を考えていくということは、私は法律趣旨に合致しないと考えております。
  111. 滝井義高

    滝井委員 将来給付を改善する、その改善したときはまた保険料を上げたらいい、それもその通りだと思います。しかし、現実に給付が悪くて困っておる人がおるのに、それをそのままにしておいて、先にやるときにはとにかくまた上げるのだ。しかし、とりあえず今悪いのは泣くままがまんしておけ、おれの方は余ったものは返していくのだというような考えならば、今度給付をよくしようとするときには日経連その他強硬な反対があることは、けい肺その他でわれわれが身をもって体験しておるところです。だから余った金で、すでに自分の身から離れた金で給付をやるなら文句は言わぬ。ところが、これをあらためて取り立ててというと、どっこいそうはいかぬというのが今までの実例です。だから、たまっておる金でやるのならその範囲でおやりなさいと、反対は少ないのですよ。これは常識です。これはこれ以上議論してもしようがないが、私は非常に重要な問題だと思うので、労働省は、齋藤大先生もおりますから、一つ十分相談してやっていただきたい。こういうことは問題だと思うが、私はこれ以上言いません。  そこで、私ばかりやっておってもなんですから、船員保険法の一部を改正する法律案は一応これで終わりますが、さいぜんの行方不明の者に対する手当というものを、保険料の裏づけがどうしても必要だ。この点については、一つ最後に委員長の方から、委員会を代表してでも大臣に御質問になっておいていただきたいと思うのです。  これで一応私の質問を終わります。
  112. 中野四郎

    中野委員長 先ほどの滝井委員の発言の中で、今回船員保険法改正で行方不明手当が新設されることとなったが、その性質は災害補償と認められるものである。海難等の場合にはこれを船員保険で見てやるべきものと思うがどうか。これは委員会全体の空気もそれについて同調のように思えるし、委員長としても、厚生省で慎重に検討の上すみやかに結論を出すべきものと思うが、大臣の所見をこの機会に伺っておきたい。
  113. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 お尋ねの御趣旨は十分了承いたしました。御趣旨を尊重いたしまして検討いたしたいと思います。
  114. 中野四郎

  115. 八木一男

    八木(一)委員 船員保険法の一部を改正する法律案につきまして、同僚委員が御質問になった点にあまり重ならない点で、御質問申し上げたいと思います。  厚生大臣は、昭和三十二年の三月、第二十六国会健康保険法船員保険法改正がなされました際に、次のような附帯決議がなされていることを御存じであるかどうか伺いたいと思います。それを申し述べますと、「健康保険の被保険者標準報酬額を引き上げた反面、船員保険の被保険者標準報酬最高三万六千円に据え置き、しかも被保険者の一部負担制度をなすことは、船員保険の療養給付の趣旨から見て、矛盾を感ぜられるから、船員保険法については、早急に根本的な改正について検討の必要がある。」こういう決議について御存じでございましょうか。
  116. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 決議の趣旨承知いたしております。
  117. 八木一男

    八木(一)委員 この一部負担制の問題について、昭和三十二年に、これについて早急に根本的な改正について検討の必要があるとされておりますが、それからすでに数年を経ているわけでございますが、それについて何も根本的な改正がされていない。検討すらされていないという状況であります。そのことについての厚生省の責任についてどう考えておられるか、伺いたいと思います。
  118. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の承知いたしておりますところでは、決してなおざりにいたしておったわけではないと存じます。いろいろ検討をいたしておりますが、この一部負担制度を直ちに廃止するということは適当であるかどうかということについて、まだ結論が出ていないように承知いたしております。
  119. 八木一男

    八木(一)委員 昭和三十二年にこのような決議をされた。さらに昭和三十五年にもされております。三十四年にも、この問題は社会労働委員会において、決議ではなしに、質疑、追及という形で非常に大きく問題にされているわけであります。数年間もこれが放置されておるようだったら、このままほっておいたらまた数年間放置される。問題があるからこういう決議がされ、国会の意思が表示せられているわけであります。それでは行政官庁の怠慢をそしられても仕方がないと思う。灘尾さんは厚生大臣に今度御就任になってから、それほど時間が長くない。大臣自体の責任についての追及は幾分御遠慮申し上げますけれども、その間における厚生省、特にこの問題を扱っておる保険局、この責任はそのままでは済まない。大臣のその点についてのお考えをもう一回伺いたいと思います。
  120. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 もとよりこの問題について検討すべき責任は、厚生省にあるわけでございます。その意味におきましては、もちろん責任があると申さなければならぬわけでありますが、いろいろ検討をいたしまして、その結果として、今直ちにこれを廃止することはいかがであろうかというようなことで、積極的に御期待に沿うところまで至っていないというのが今日の状況でございます。いろいろ検討した結果が、さような結論になっている。いましばらくは、この制度はやはり廃止することが適当ではないのじゃなかろうか、こういうふうな考えになっておるように私は承知いたしております。決してなおざりにしておる、放任しておるというようなことで時日を経過したものでないということは、一つ御了承を得ておきたいと思います。
  121. 八木一男

    八木(一)委員 その問題について、大臣のお考えを根本的に改めていただきたいと思います。というのは、厚生省の中の保険局に巣食う、長年の一部負担というガンみたいなものをとらえられた。それに対して、その非常に間違った考え方について各方面から追及されたことに対して、率直に自分の非を悟ることをしようとせず、意地になってこの問題を貫いている。そういうことから発している。代々の厚生大臣が保険局各位にごまかされている。検討している、これでいいんだからということでごまかされて、そのままストップになっている。保険局の一握りの官僚が、国会の意思を踏みにじって、国民の要望をじゅうりんして、内閣の、国民のために政治をやりたいという考え方を横にひん曲げているわけです。これが代々の保険局。この問題について、昭和三十二、三年に、時の岸内閣総理大臣に対して、時の保険局長を、そういうような悪い考えを推進したのはこの人だというような非常に強い直言をして、総理大臣の前で私は保険局長を面罵したことがあるが、そのくらいにしてもまだそうだ。ですから、今厚生大臣は、厚生省の代表者だからそれは検討しているとお答えになりましたけれども、それは普通の場合の形式的な、自分が責任を持っている各局は最善の努力をしているだろうという、大臣の普通の立場の御答弁です。これは歴史的にそういうことでは済まない。ほかのことでは非常に熱心な保険局であり、また一人々々の保険局の担当者としてはりっぱな人格者であり、非常に有能な公務員である人であっても、一たん一部負担の問題になると鬼のようになって、とにかく極端なわからず屋になって、国論がどうあっても、政府がどういう方針であっても、委員会でどうされても、これを曲げたらおれたちの面子にかかわる、そういうような考え方を貫いているとしか判断ができない状態です。このような一部の人たちの、保険局の最も悪い伝統の意地で、国民の意思がじゅうりんされたり、国権の最高機関である国会の意思がじゅうりんされえり、政府の善意の方針がひん曲げられたり、そういうことではならないと思う。一部負担制の問題について、厚生大臣、十分御承知だと思いますが、どのようなお考えをお持ちでございますか。これは船員関係じゃなしに、一般的な一部負担制について……。
  122. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 一部負担の制度は、健康保険創設当時なかったものでございますが、その後の状況の推移によりまして、先に健康保険で一部負担制度が作られたように私は承知しております。それに関連いたしまして、船員保険においても一部負担制度をとったものと、かように理解いたしておるのでありますが、あるいは誤りがあるかもしれません。そういうふうなことに沿革的にはなっているものと思うのであります。その一部負担の制度は、いろいろ見方もあるだろうと思うのでございますが、現在の健康保険の制度の上から申しまして、直ちにこれをもとに戻すというような考え方は、ただいまのところいたしておりません。やはりこれにはこれの効用もあるかと実は思うのでございます。船員保険の問題につきましては、職務上の傷病についても事業主負担の問題が入っております。そういうふうな関係から見ますと、一部負担という制度はいかにもおかしいじゃないか、こういうふうな考え方も私はあり得ると思うのであります。また事実、一応一部負担をいたしましても、事業主が負担すべきものはやはり事業主が払わなければならぬ、こういうことにもなっておる。ただ実際問題といたしまして、従来、被保険者が一部負担をやったけれども、事業主から取れない、あるいは取ることを遠慮しておる。いろいろそういうふうなこともあって、法律が完全に実施されておらないようなうらみもある、あるいはあったのじゃなかろうか、かように思うわけでありますが、いずれにしましても、職務上の傷病につきましては、一部負担をいたしましても、終局的には被保険者の損にならないようにという法令があるわけでございます。この趣旨の徹底に努めて参らなければなりませんが、この方から考えてみますと、一部負担の制度も、保険事故の多い業種、保険事故の少ない業種というふうなものの間に存する不均衡というものも、あるいはこういうことによって多少是正される面もある、あるいは船員、被保険者に対する保険衛生上の管理について一そうの注意を促す、こういうふうな効果もありはしないか。かれこれ勘案いたしまして、一部負担の廃止ということに踏み切るというところまで、まだ至っておらないというのが、私は今日の状況じゃないかと思うのです。これはもうおそらく八木さんもよく御承知だろうと思いますが、そういうふうなことでございまして、保険局の一部の者が、一部負担にしゃにむに固執しておるということであってはいかぬと思います。政策上とるべからざるものであるというようなことでありますれば、もちろんこれは改正するにやぶさかじゃございません。ただ、私としましては、今まで承知しておりますところでは、いろいろ検討してもなかなかそこまでの結論が出ていない、こう考えるものですから、先ほど申し上げましたようなお答えをいたしておるわけでございます。官僚の独善と申しますか、あるいは意地と申しますか、そういうふうなことでかような社会保障に関する政策が二、三にせられているようなことはあり得べからざることであり、またやってはいけないことは明らかでありますので、そういうことは厚生省保険局にはないと私は確信をいたしておるわけでございます。もしこれを早急に改正すべき結論が出ますならば、決して私は改善にやぶさかではないということを申し上げておきます。
  123. 八木一男

    八木(一)委員 二つの問題がありますが、一般的な健康保険も含めた一部負担の問題、これは後日徹底的にまた厚生大臣の深めた御意見を伺いたいと思いますが、今言い出しましたから、一応経過を二、三分申し上げます。  健康保険の改悪という問題で非常に騒がれた一部負担、また初診料の一部負担を五十円から百円限度まで引き上げた、あるいは入院料の一部負掛を新設したというときの厚生省の最初の態度は何かと言いますと、健康保険が非常に赤字があって、どうにもこうにもやり切れぬというわけですが、前の年に保険料率を、最高限度を千分の六十五上げました。それでも赤字が出るからということで、一部負担制を五十円から百円限度まで上げるという意味の一部負担をしたわけです。しかし、非常にこれは被保険者にとって工合が悪い、また、徴収義務を持つ診療担当者にとって非常に工合が悪い、受診率が減る、早期診断、早期治療に工合いが悪いという大問題が起こって、それに対して、どうにも赤字でやり切れないから勘弁してくれ、それから政府の方も三十億を健康保険へ出す、三泣きだというようなことをいわれたことがある。ところが、それからその問題が一回つぶれて、その翌年の国会になったときはすでに黒字になっておった。それを全然出さないのです。前の年の赤字のことで進めて、ことに社会保障制度審議会には、前の年の赤字のときの状況で、そういう状態ならやむを得ない、積極的に進めるんじゃない、ごく少額の引き上げはやむを得ないという答申を、陳弁これ努めて赤字で出させておいて、翌年になって黒字に転換しておるのにそれを諮らない、委員の構成も変わっているのに諮らない。社会保障制度審議会の設置法第二条に違反している。翌年になって黒字に転換しておるのに、極度にこれをわからないように赤字だ赤字だといって、それで無理やりに、われわれの反対にもかかわらず、多数で押し切ったわけです。与党の方でも、全員の方は、赤字だからと役所が言われるから、しようがないと思っているのだろうと思うのです。与党の方は、社会保障に熱心な方ばかりで、早期診断、早期治療、あれになるようなことばかりに賛成されるような方ばかりではない。それを与党の方はごまかして、赤字だ赤字だで通しておる。そのときはすでに黒字だった、翌年何をしたか、保険料を引き下げた、順序を逆転されたわけです。前に保険料を高めて赤字が解消できないから、その次に一部負担制を作り、園庭負担を作った。今度は逆に、保険料を下げる方を先にして得をするのはだれか、労働者が得だとおっしゃると、これは間違いであります。符をするのは使用主であります。そういうことに便乗して実業家、資本家の力によくするような方向を先にとられ、黒字になった。赤字のためにやむを得ないということなら、なぜ一部負担をもとに戻さない。国庫負担三十億はどんどん勝手に減らしておるし、公約の大違反です。国庫負担を勝手にどんどん減らしておいて、一部負担は据え置きして、資本家の騒がれる方だけやった、そういうでたらめなことをやっておる。それを幾ら追及しても、一部負担が、初めは赤字だからというので、途中ですりかえた。こういうものをやっておかないと、医者にかかりに来てしようがない、それを整理する意味だというふうに途中ですりかえた理屈をつけておる。その理研が大体けしからぬ。金をとって整理をするというような考え方は、医療保障じゃありません。健康保険はやめればいい、国民健康保険はやめればいい。それから政府は、国民皆保険ということを推進しておるわけです。医療保障というものは、病気になったときに、金の心配なしに完全な医療をすぐに受けられるということをするためにやっておる。それを逆に、一部負担をとってブレーキをかける。何のためにやっておるのかわからぬ。ほかの役人が言うのならまだわかります。わからず屋の言うことだから……。一番よく知っておる保険局がそういうことを言う。国民がそれは困る、国会がそれはいけないという。政府の最高首脳者の人がそう言えば、そういうことはいけないことですね。保険局だけががんばっておる。小むずかしい理屈を掲げるので、歴代の厚生大臣もあるいは総理大臣も、役人の言うことならしようがない、これを無理に押しつけても、役人に抵抗されたらその間に厚生大臣は工合が悪くなる、そういうような憶病な厚生大臣ばかりで、間違った考えを直せない、そういうことです。そういうことが一部負担の背景なんです。一部負担制自体が絶対にいけないわけです。しかし、これは理解があるそうですから、国民健康保険のときに、あるいはほかの厚生行政一般の質問のときに譲ります。それまでに厚生大臣は、そういう間違ったことは今度は断じて改めますという答弁を今から用意していただきたい。  今度は、一応全般的な問題として、その中で特にひどい船員保険法の一部負担の問題であります。この前も申し上げましたが、船員の場合には、横浜でかぜを引いて診療を受けたら百円とられる。焼津でそれがひどくなって気管支炎になった、また金をとられる。四日市、神戸、宇品、下関でもとられる。ですから、船員実態からいったら最も悪い。しかも、船員法で、厚生大臣は業務上ですとさっきおっしゃいましたが、業務上じゃない。もちろん業務上もある。業務外でも、船員法の八十九条の第二項で、疾病あるいはまたけがに対して、船主が、業務外でも全部責任を負うことになっておる。それにもかかわらず、そういうむちゃくちゃな法律を、今言った一部負担制を創設するときに作っちゃった。国民のために使わなければならない大事な頭を、国民と逆な意味において、一部の一握りの資本家のために、それから厚生省の面子のためにその大事な頭を使い切って、こういうことをやった。どうなるか、小さな金額の問題ですが、船主の負担がそれだけ助かるわけです。それに対しては、厚生省は、あとから船員の方に請求権があると言われる。請求権があることになっておる。なっておるが、そういうことをなぜしなければならないか。百円、百円、百円というもの——船員は自分の小づかいがないこともある。人に借りなければならないこともある。なかったら、かぜ引きでもない、格好が悪いからやめておこうということになって、次に気管支炎になって、肺炎になるということが悪いわけです。船主はたくさん金を持っておる。金持のために貧乏人が先に金を立てかえなければならないのだ、こういうようなことをする必要は毛頭ないわけです。それを厚生省が無理やりにやらしたのだ。前には船主が出しているのです。なぜそういう逆なことをやらせたのですか。あとで請求権があるというけれども、漁船や何かでは、今は働く人が足りないから、本心はそうでなくても、働き手を大事にする傾向があります。だからそうだけれども、景気の悪いときには、また使用主がふんぞり返る時代がくるわけです。ふんぞり返る時代には、私は見てもらいます。百円下さと言ったら、何をなまいき言うな、そんなことを言うやつは首にするというようなことが、漁船関係では起こっているわけです。それがおそろしいから、百円自分で払ってしまって言い出せない、そういうことが起こっているわけです。百円が何回も重なれば五百円になる、千円になる、そういうことが起こっている。そういう極端な矛盾がある。しかも、船員労働基準法である船員法の違反であります。一つ法律に違反することになるのです。ほんとうの基本的な法律のそういうことに違反しているし、実情に合わないから直せということを、五年前に国会の意思として決定されているのです。それから五年間もなまけている。さらに、三十五年にまた附帯決議がされているのに、なまけている。徹底的な追及がされているのに、なまけている。こんなものは法律ではできない。船員法改正が出るたびに、これは直っているかと思えば一つも直っていない。やる気がない証拠です。ほんとうにやる気があったのなら、提案のときに、この問題は検討しましたけれども、これこれのところにまだ難点があって、ほんとうは自分たちはほかの問題では頭がいいけれども、この問題では頭が悪いからまだ結論がつきませんということを言うならまだしも、検討している事実が、説明も何もない。たとえば、そうなったら船員と普通の健康保険の間に、お医者さんの方で、これは船員か、これは何かということで、取り扱いに困るだろうというようなことが理由になっている。そんなものは船員に証明番をやって、船員は水の上を走るから水色でもいいし、赤でもいいですが、そういうものを作ればお医者さんの方は気がつく。これは船員だから一部負担はとっていないというふうに、会計事務がわかるでしょう。そうでなければ、政府管掌の方のお役人の方が、自分がその事務がいやだから船員に犠牲を押しつけるということになるわけです。そうでなければ船主がそれだけ実際に助かるから、金持ちを助けるためにそう考えた、どっちかとしか思えません。怠慢か一部の非常に恵まれた人に対するしり押しをすることか、どっちかの意味でこれをしたわけですか。  もう一つ標準報酬の問題もそうです。標準報酬をなぜ早く上げなかったか、今度の上げ方が少ない、それはなぜか、標準報酬をしげたら困るのはだれか、いやがるのはだれか、船主だ。保険料を半分負担しなければならない。そういうような金持ちの抵抗にあって、すべきことができない。健康保険法で、すでに五年前五万五千円の標準報酬を上げた。しかるにかかわらず、三万五千円で、総合保険だからというのでこれをとめて、健康保険と合わせなければならない、厚生年金保険と合わせなければならないということを言うでしょう。けれども、厚生年金船員保険標準報酬は、昔は逆だったのです。二倍から四倍くらい船員保険の方が標準報酬が高かったのが、今度は合ってしまったわけです。その前の率の半分でも上げれば七、八万になり、十万になるわけです。それをやらないのはなぜか。これは船主の方の抵抗、資本家が自分のところで働いている労働者のために金を出すのをいやがる、このような連中に対して厚生省が正しいことを言えないということから、こういうようにとまっておるわけです。ですから、非常に頭のいい人がそろって苦労しておられることは、私たちもわかっています。今の局長ばかりが悪いわけではない。しかし、この部分に関する限りは最も悪いし、一部負担に関する限りも最も悪い。この点に関しては、保険関係の人は全部悪い。これを徹底的に直すには大臣の力しかないわけです。ですから、この問題に関する限りは、保険局がこうだから勘弁して下さい、こうだからまだ出ていませんというようなことは理屈が通らぬとして、なまけたことは断じて許さぬ、筋の通らぬことは筋の通るようにせいということを大臣が言明しなければ、こういうことは直りません。長年の悪伝統があるわけですから、それを言明していただけるかどうか、それについて御答弁をお願いしたいと思います。
  124. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 八木さんのお話にもごもっともな点が多々あると私ども思うわけであります。ただこの一部負担の制度は、なるほどこの一部負担の制度の御審議をお願いした当時は、保険経済から出発した議論が主たるものであったかと私も思うのでありますが、ただこの一部負担の制度には、まだ問題点は、悪い意味の問題点も確かにありましょう。同時にまた、一部負担の制度には、またそれなりの効用もあるかと私思うのであります。それをどういうふうに結論をつけるかという問題が、今われわれに課せられておる問題であろうと思うわけであります。船員保険には船員保険の特殊な事情があると思いますけれども、同時にまた、一部負担制度ということになりますと、健康保険も何もかも含めた意味において考えなければならぬ問題であろうかと考える次第であります。悪い点ばかりが一部負担にあるというものでもない。多少の効用があればこそ、今日まで続いておるのではないかとも思うのです。ただこの問題は、八木さんあたりは最初から御反対であったのだろうと私は思います。終始一貫してのお考えであろうと考えるわけでございますが、しかし、当時から今日まで、一応この制度が続いておるわけであります。その制度についての舟検討という問題になってくるわけでございますが、その意味において私どもは慎重に検討しなければならぬ、かように思う次第であります。従って、事業主あるいは船主の利益のために被保険者の不利益をはかるとか、そういうふうな心持は、少なくとも厚生省にはさらさらないものと私は確信をしております。しかし、保険経済の問題あるいは費用の負担の問題ということになりますれば、被保険者も負担には困るという考え方もありましょうが、船主あるいは事業主にとりましても、負担は決してそう楽なものであるとは思いません。そういうことでありますので、やはり負担の問題等について、何かやろうとしますと必ず厄介な問題がいろいろ起こってくる、そういうところを一番妥当なところで結論をつけて、前進をはかっていかなければならぬのが私どもの任務であろう、かように考える次第であります。この問題につきましては、今おっしゃるような保険局の悪い伝統であるとか、あるいは何か一部のためにするような悪い考え方というようなことは、あってはならぬことであります。十分私も留意いたしますが、一部負担の問題として私どもにも検討させていただきたいと存じます。
  125. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣が厚生省の責任者として、保険局の立場をかばわれる親心は十分わかります。十分わかりますけれども、親心というものは、ほかの点でいいことをされておるならそのことはほめて、十のうち一つ悪いことをされたら、聞違ったことをやったらたしなめる。みそもくそも一緒にしてかばってもらっては困る。  それから一部負担の問題、総体的な問題についてはお答えがありましたけれども、これは理由はありません。というのは、今黒になっています。赤という理由がないわけですから、これはもとへ戻さなければならないのです。そこで費用の分担の問題ですけれども、そのときは前に保険料を上げたんです。それから一部負担を下げた。そうしたら逆にしなければならないわけです。保険関係者全体で費用を負担して、被保険者が病気になったときに、そのうちのだれかが病気になったときに、費用の心配がなくて受けられるというのが医療保障の本則です。ですから、保険料を今全然いじらなくても黒字だからやめられます。しかし、そういう事態がきても、保険料を一回上げてからまた下げたんですから、一部負担をやめるために、それと同じ金額だけ上げるということになってもできるわけです。ですから、一部負担をやめるということを前向きで——財政上の理由はないのですから、前向きで考えていただけばいいわけです。  それから国庫負担を三十億約束したのを減らしたというようなことを、もとへ戻していただかなければなりませんけれども、この財政の問題は、大蔵省なんかに気がねをしなくても、一部負担をやめることは十分できると思います。これは一般的な問題ですから、後ほど十分御検討いただいて、前向きの御答弁をしていただく準備をしていただきたいと思います。今国会中に徹底的に追及いたしますが、その船員保険法の方と関連があると言われるけれども、この前一部負担を——前は一部負担はなかった。普通の健康保険に五十円あったときになかった。なかったのですから、一つも、やりようで工合の悪い点はないのです。ありません。やればなしでできるのです。事務的もへったくれもないのです。なかったものを、そのときに無理やりに作ってしまった。これは船員という労働者基準法である船員法違反である。政府の方は、法治国家で二つの法律に違反する。二つの法律があって、そういうような間違ったことはまずいです。それから実態は、おっしゃる通り、さっき御承知になった通りです。ですから、一部負担についても全体についても、絶対に理由がある。その中の特別な理由がある点、実情と法律的に、この問題については即刻前向きに変えていただかなければならない。今度の法律で変えていただくべきであると思います。しかし、事務的な手続がありますから、たとえば最近の船員法改正のときには必ずそれを変える、またそういう船員法改正がおくれたならば、その部分だけ変えて出す、そういうことをお約束を願いたいと思います。
  126. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 一部負担の問題について、だんだんお話を伺ったわけでございます。格別違法なことはやっているとは思っておりませんけれども、少なくとも八木さんのお考えと違っておるということだけは明らかだと思います。法律に違反しておるとかなんとかいうことは、私はやっていないだろうと思うのであります。いずれにいたしましても、非常に御造詣の深い八木さんの御意見でございますから、今後この問題につきましてはなお十分検討いたしまして、またすみやかに改善すべしという結論が私は出ました場合に、これは保険局が何と言おうとやってもらわなければならぬ、これは私いつ出るかが問題であります。十分検討いたします。
  127. 小林進

    ○小林(進)委員 ちょっと関連して。私は今の一部負担金の問題でわからないから大臣にお尋ねするのですけれども、船員法の第十章の八十九条の中に、「船員が、雇人契約存続中職務外で負傷し、又は疾病にかかったときは、船舶所有者は、二箇月の範囲内において、その費用で療養を施し、又は療養に必要な費用を負担しなければならない。」と言っているのです。だから、職務外で、こういうふうにはっきり、船舶の所有者が療養費を持つか費用を負担しなければならないと書いてある。その法律があるのに、船員保険法の二十八条ノ三では、今八木さんが言われておるように、「策二十八条第三項ノ規定二依リ保険医療機関ニ就キ給付ヲ受クル者ハ初診(命令ヲ以テ定ムル初診ヲ除ク)ヲ受クル際一部負担金トシテ百円ヲ当該保険医療機関ニ支払フベシ」こうなっておる。船員法では、船舶所有者が三カ月以内の費用を全部負担しなさいといって、保険法では、一部負担金の初診料を百円払えといっておるから、これは法律法律がぶつかっておるじゃないか。こういうような一つの矛盾ができたときに、その接触する部分は無効じゃないか、どっちか一つ法律が無効にならなければならぬから、今まで百円の負担金を取っていたのは、私は当然間違いじゃないかと思います。船員法違反じゃないかと思う、今まで取っていたものは。法制局に法の解釈はまかすべきだと私は思いますけれども、これは非常に大きな矛盾だ。これを一体大臣はどうお考えになるか。これは赤字、黒字の論争の前の、法律それ自体の解釈の重大問題です。どうです。一つ今までお取りになったものをお返しになりますかどうか、これは大事なことです。これは当然返すべきです。
  128. 高田浩運

    高田政府委員 法律問題でございますが、船員保険法の二十九条ノ三によりまして、本人が負担をしました場合にはあとで船主が払い戻す、そういうことになっております。
  129. 小林進

    ○小林(進)委員 今おっしゃるように、本人、船員が負担した分を、経営者、すなわち所有者が負担してくれないという問題も、これは大いにあります。その問題は八木さんが追及されましたが、これは百円の初診料を払わなくても、最初から法律で所有者が払うように、どうしても法改正をしてもらわなければならぬ。次の二十八条ノ三と今の二十九条ノ三とのかかり合いはどうなっておりますか。
  130. 高田浩運

    高田政府委員 二十八条ノ三によりまして被保険者保険医療機関に対して一部負担金を支払う、二十九条ノ三によりましてそれを払い戻す、そういう趣旨であります。
  131. 八木一男

    八木(一)委員 今申し上げたようなことで、厚生大臣としては国会の決議を重んじられまして、そして国民の要望に従って、間違いは間違いとして早急に改められるように御努力をなさっていただきたいと思います。その点について簡明な前向きの御返事をいただきましたならば、私の質問を終わりたいと思います。
  132. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 十分に一つ検討いたします。
  133. 中野四郎

    中野委員長 ただいま議題となっております五案のうち、船員保険法の一部を改正する法律案について質疑を終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  134. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。     —————————————
  135. 中野四郎

    中野委員長 次に、本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もございませんので、直ちに採決いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  136. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  船員保険法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  137. 中野四郎

    中野委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  138. 中野四郎

    中野委員長 この際、小沢辰男君、八木一男君及び井堀繁男君より、本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨説明を求めます。小沢辰男君。
  139. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員 私は、三党を代表いたしまして、船員保険法の一部を改正する法律案に対しまして、次のごとき附帯決議をつけたいという動議を提出するものでございます。  まず、附帯決議の内容を朗読いたします。     船員保険法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、船員保険について左の事項に努力すべきである。  一、療養給付における一部負担制度は、船員法との関係、船賃労働の特殊性にかんがみ、早急にその改善をはかること。  二、今次改正にかかる標準報酬最高額五万二千円は、いまだ不十分と認められるので、可及的すみやかに大幅引き上げをはかること。  三、年金部門の改善については、厚生年金制度の改善と併せ早急に検討を行なうこと。  以上三点の附帯決議を付したいと思うのでございますが、この趣旨につきましては、すでに質疑の過程においていろいろ各委員から議論もございましたので、省略をさせていただきますが、特に一部負担制度につきましては廃止を要望する声がございますので、この点にかんがみましても、三党でこの早期改善はかることを決議いたした次第でございます。  以上、趣旨を申し上げました。
  140. 中野四郎

    中野委員長 本動議について採決いたします。  本動議の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  141. 中野四郎

    中野委員長 起立総員。よって、本案には、小沢辰男君外二名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。  この際、灘尾厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します灘尾厚生大臣。
  142. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ただいまの附帯決議につきましては、御趣旨を尊重いたしまして十分検討を遂げ、できるだけ善処いたしたいと考えます。     —————————————
  143. 中野四郎

    中野委員長 本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 中野四郎

    中野委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  この際、午後三時三十分まで休憩をいたします。    午後一時三十一分休憩      ————◇—————    午後四時九分開議
  145. 中野四郎

    中野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国民健康保険法の一部を改正する法律案児童扶養手当法一部を改正する法律案国民年金法の一部を改正する法律案、及び八木一男君外十一名提出生活保護法の一部を改正する法律案、以上四案を一括議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。永山忠則君。
  146. 永山忠則

    ○永山委員 私は、議題となっております国民健康保険法の一部を改正する法律案関係について質疑をいたします。  この提案理由説明の中で、「国民健康保険は、その被保険者の相当部分が保険料の負担能力の乏しい低所所得階層であるため、」こう書いてあります。この相当部分はどのくらいであるか、保険料の負担能力の乏しい低所得階層とはどういう範囲をさしておるのか、この点を伺いたいと思います。
  147. 高田浩運

    高田政府委員 全国の国民健康保険の被保険者のうちで、所得税を納めております者の比率を見ますと、大都市で大体二八%、それからその他の市で一六%、それから町村で一二%ということになっております。これは特に農村等におきます所得税のかけ方の違い等も勘案して考えなければならないと思いますが、これによって、所得税を納めないクラスが非常に多いということは、大体考えられると思います。  それからさらに、最も豊かだと一応世間的には考えられます東京都の国民健康保険の被保険者で見ますと、住民税が賦課されていない世帯が大体四六%、それから住民税の均等割だけが賦課されている世帯が大体二八%、両方合わせまして約七四%で、そのほかの約二六%が所得税を納めている、そういう状況になっております。これによって、国民健康保険の被保険者の状況というものは、御賢察をいただきたいと思います。
  148. 永山忠則

    ○永山委員 自治省関係と、それから大蔵省をできるだけ早く呼んでいただきたいのです。
  149. 中野四郎

    中野委員長 呼んでおります。
  150. 永山忠則

    ○永山委員 それから、今の統計は何年度の統計になっておるのでございますか
  151. 高田浩運

    高田政府委員 三十五年の八月に調べたものでございます。お断わり申し上げておきますが、前段に申しました都市あるいは町村、それについては、全部の調査でございませんで、抽出調査でございます。御承知願います。
  152. 永山忠則

    ○永山委員 それでは、富裕町村と富裕都市と、国民健康保険団体との関連性はどういうことになるわけですか。要するに、富裕町村であればこの国保の経済力は平衡しているのか、貧弱町村ならばますます貧弱であるか。御説の率で言うならば、どの国保団体もみな経済か悪いということに見えるのですけれども、この富裕町村と国保団体の経済関係関連性はどうですか。
  153. 高田浩運

    高田政府委員 一般的に富裕な市町村、いわば経済の豊かなところ、こういうところは、国民健康保険の経済もいいじゃないかというふうに誤解されがちでございますけれども、今申し上げましたように、世間的にいえば、最も豊かだと考えられる東京都における実情が、今申し上げた通りでございます。これは要するに、国保の被保険者は、健康保険、共済組合、そういった保険の対象者が除かれて、そのほかの者が結局国保の対象になるわけでございますから、必ずしもその市町村自体の富裕度と、それから国民健康保険の財政力の健全率、不健全率というものとは平衡しないというふうに考えております。
  154. 永山忠則

    ○永山委員 要するに、大都市であっても国保外の他の保険に吸収されているから、国保の経済は必ずしも裕福でないということででございますね。  それからもら一つ聞きたいのですが、国民健康保険税と市町村民税との比率は、どういうようになっておりますか。
  155. 高田浩運

    高田政府委員 今の点は、調べましてあとでお答えいたします。
  156. 永山忠則

    ○永山委員 大体普通三倍から五倍ということをいわれているのですが、市町村民税と国民健康保険税の比率が、大体各町村別にわかればお願いしたいと思います。
  157. 高田浩運

    高田政府委員 三十五年度の税について、一世帯当たりの国民健康保険税と市町村民税をとって見ますと、国民健康保険税が三千六百五十九円、それから市町村民税が二千四百十三円、市町村民税に対する国民健康保険税の割合は約一・五倍ということでございます。
  158. 永山忠則

    ○永山委員 これは全国平均ですね。そこでその平均を見るのに、市町村民税と国民健康保険税を納めている対象が違うわけですね、市町村民税は国保の被保険者以外の分が入っていますから。国保の被保険者だけの市町村民税はどれだけになっている。ただいまの御説明は、市町村民全部を対象とした税でございますね。裕福な層で国保以外の人もみな入っているわけです。いわゆる国保税の方は国保の被保険者層だけの負担ですから、国民健康保険の層だけの市町村民税と国保税との比はどうなっておるか、調査してございますか。
  159. 高田浩運

    高田政府委員 今お話しの点は調査がございませんが、非常に大事なことでございますので、実は三十七年度において国民健康保険関係実態調査をするという予定をいたしておりますので、その場合に十分しんしゅくをいたしまして調査してみたいと思います。
  160. 永山忠則

    ○永山委員 そういう重要なことの調査ができていないというのは、大体調査をしていないのですか、する計画もなかったというわけですか。今計画でやりつつあるのだがというわけなんですが、どういうわけでそういうことが調査してないのですか。
  161. 高田浩運

    高田政府委員 今までの調査では、そういうふうな区分けでの調査はいたしていないのであります。
  162. 永山忠則

    ○永山委員 それから国民健康保険の被保険者であったのが他の保険の方へ移動しつつあるのですが、その率は、皆保険になってから今日まで、どういうような率で移動していますか。
  163. 高田浩運

    高田政府委員 それでは三十七年から申し上げます。三十七年、被用者保険は、被保険者、被扶養者を合わせまして約四千九百三十万、それに対しまして国民健康保険は約四千四百三十五万。三十六年、被用者保険四千六百四十三万、国民健康保険四千六百三十三万。三十五年、被用者保険四千三百五十万、国民健康保険四千八百三十二万。三十四年、被用者保険四千六十九万、国民健康保険四千三百四十三万。三十三年、被用者保険三千八百十六万、国民健康保険三千七百二十四万。三十二年、被用者保険三千六百三十三万、国民健康保険三千三百五十七万。三十一年、被用者保険三千四百五十四万、国民健康保険三千五十八万。こういう数字が出ております。   〔委員長退席、柳谷委員長代理着席〕
  164. 永山忠則

    ○永山委員 そこで私が問いたいことは、国民健康保険から他の保険へどういうように移動しているかという、その率を知りたい。それを見るには、やはり皆保険になってからが一番公正な見方だと思います。皆保険にならぬときは、国民健康保険でないところがございますから比率が比較的とりにくいのですが、皆保険になってから漸次に国保の被保険者が減っているという事実があるのですが、それは大体どのくらい減って、どのくらいな率になっておるかということですね。
  165. 高田浩運

    高田政府委員 皆保険になりましたのは去年の四月でございますから、そういたしますと、まだ一年足らずの実績になるわけでございます。まだ実績は十分出ておりませんが、予算上の見込みとして私どもが考えておりますのは、約二百万が国保から被用者保険の方に移動しておる、かように計算しております。
  166. 永山忠則

    ○永山委員 皆保険になったときの予算といえば、皆保険でみな入ったという想定でできているわけですね。そうすると、二百万の減はいつごろまでの減ですか。
  167. 高田浩運

    高田政府委員 今申し上げましたのは、三十六年の予算の基礎として使いました数字と、三十七年の予算数字として使いましたものとの差を申し上げたわけでございますので、ほぼ一年ということになります。
  168. 永山忠則

    ○永山委員 この数字以上にさらに減ってきている。大体一割ぐらいは、現在までにおいて減っておるというように地方では見られるわけです。ただいまの政府説明の減少率は非常に少ないのですが、漸次大幅に減りつつある。しかも、こは負担能力のある者が減ってきているわけです。そこでこれらの調査も、また一年後にやって見るということでなしに、やはり中間的に調査をできるだけ正確に進めてみてもらいたいと思うのです。  それから、その次に提案理由説明に「受診率の上昇」、こう書いてあるのですが、その受診率はどういうように上昇しておるわけですか。
  169. 高田浩運

    高田政府委員 三十四年度から申し上げますと、三十四年度の実績でございますが、二二四、それから三十五年度が二四五、三十六年度はまだ推定でございますが、これが二六五、三十七年度の推定が二八三でございます。
  170. 永山忠則

    ○永山委員 それから健保の方の受診率はどうですか。
  171. 高田浩運

    高田政府委員 政府管掌と組合管掌と分けて申し上げます。三十四年は、政府管掌は被保険者本人四四九、被扶養者三二三、組合管掌は被保険者本人五一八、被扶養者三八八、三十五年は、政府管掌の被保険者本人四五八、被扶養者三二五、それから組合管掌については、被保険者本人五二二、被扶養者四〇七、三十六年、七年についてはあとで申し上げます。
  172. 永山忠則

    ○永山委員 そこで、将来この率でいけば、さらに受診率は一割ずつ大体伸びるという見通しですか。また、伸びることに対する考え方といってはおかしいですが、伸びることがいいということを考えていいのか、その点を一つ伺いたい。
  173. 高田浩運

    高田政府委員 今お聞き及びのように、国民健康保険の受診率は、健康保険のそれに比べまして低くなっておるのが実情でございます。かりに両者の均衡を考えるとすれは、国民健康保険の受診率ももっと伸びるであろうし、またその方が正しい姿であろう、私どもはかように存じております。
  174. 永山忠則

    ○永山委員 そうすると、結局受診率は、健保の本人の程度まで伸びていくということが好ましい姿であるというように考えていいんですか。
  175. 高田浩運

    高田政府委員 健康保険の被保険者本人まで伸びることが妥当であると断定するということは、的確な材料がないわけでございますから確言はできませんけれども、少なくとも術者の関係を考えれば、国民健康保険の受診率はもっと伸びるであろうし、また伸びてしかるべきだと考えるという意味で申し上げたのであります。
  176. 永山忠則

    ○永山委員 それでは、国保と健保の受診率は違いますが、その違うという原因はどこにあるか。
  177. 高田浩運

    高田政府委員 これはいろいろな原因があるだろうと思いますけれども、一つは、やはり一部負担の問題もあろうかと思います。もう一つは、受診率は医療機関の普及の状況、分布の状況等とも関連をいたしますので、その辺、再保険の一致する地域的な環境、これもあろうかと思います。それから従来の習慣等もあろうかと思います。
  178. 永山忠則

    ○永山委員 だたいまのようなお言葉を聞けば、結論的には、受診率は伸びていくということが、結局医療内容が向上して健康保持のためにもいいという概念的なものになっていくと思われるのですが、その次にお聞きしたいのは、提案理由説明にある「医療費の改訂等の最近の現状にかんがみ、」こう書いてあるのですが、それは改訂だけの関係ですか。医療費が増高しつつあるということとこの改訂との関係は、どういうような形になっていますか。改訂関係と増高との比率ですね。
  179. 高田浩運

    高田政府委員 三十四年度から三十五年度への医療費の伸びの実績は、大体一五%でございます。それから三十六年度の伸びが、医療費の改訂を除きました自然の伸びが約九%でございます。自然の伸びと医療費の改訂を含めまして二〇%の伸びでございます。そういう状況でございます。なお、先般医療費の引き上げをいたしましたことに伴う実績については、まだこれは詳細出ておりませんので、今の点は見込みでございます。
  180. 永山忠則

    ○永山委員 給付制限は大体どういうようになっておるわけでありますか。
  181. 高田浩運

    高田政府委員 給付制限をいたしております保険者の数を申し上げますと、往診料については二百四十、全体の保険者の七%でございます。給食につきましては六百五十一、全体に対して一八%、それから寝具につきましては六百九十、全体に対して一九%、歯科補綴につきましては六百七十八、全体に対して一九%、こういう状況でございます。
  182. 永山忠則

    ○永山委員 それから転帰の関係はどうなっておりますか。
  183. 高田浩運

    高田政府委員 三年までといたしております保険者の数が千八百二十、五、三年ないし五年が六、それから特殊疾患について三年で、ほかの疾病は転帰までといたしておりますのが百二十六、転帰までといたしておりますのが千五百四十二、こういう数字になっております。
  184. 永山忠則

    ○永山委員 転帰まで無制限にするというような考え方は、政府はどう考えておるわけですか。現在大部分は三年になっておりますが、それでは三年になって、もうこれから見てもらわれないという者は、生活保護に転落するか医療費に悩んで私財を捨てるか、非常に困っておるわけなんですが、将来一つ三年の期限を撤廃して国保でめんどうを見てやらなければならぬのではないですか。健保の者は国保へ流れてくる、国保で見てやらぬ限りは、どうも救うことができないということになるわけです。この三年の制限撤廃をやる考え方があるかないか、また、そういう不幸の者に対してどういうようにして救おうとしておるのであるか。
  185. 高田浩運

    高田政府委員 これは理想としては、御質問の趣旨のように転帰までとすることが理想だと思います。ただ、そこまでいくについては、やはり保険財政とか、そういうものも考え合わせなければなりませんので、具体的な実情等も勘案をしながら、その辺の指導をしていかなければならぬ、かように考えてやっております。一挙にこれを理想まで、ことし来年いってしまう、そこまでは現在は考えていないわけでございます。できるだけ将来理想に近づけるようには努力しなければならぬと考えております。
  186. 永山忠則

    ○永山委員 そういう気の毒な人をやはり保険で救済していくということが社会保障の趣旨なんですが、今の考え方では、いつ見通しがあるかわからぬような状態ですが、たとえば再保険の制度を設けるとか、何らかの方法で全快するまで見てやるというような配慮が必要じゃないかと思うのです。これに対しては何かお考えがありますか。
  187. 高田浩運

    高田政府委員 御承知のように、法律では一応三年ということにして、それで市町村の具体的な事情に応じて三年をこえて云々ということでございますので、これを三年という数字を取っ払って、一挙に持っていくということについては、これは理想までなるべくいきたい気持はみんな同じだと思いますけれども、やはり保険という仕組みの中で進めていかなければなりませんので、現在制度でそういったような制約も考慮しながら進めていくということじゃないかと思います。そういうことで一つ御了承をいただきたいと思います。
  188. 永山忠則

    ○永山委員 保険財政という考え方でなしに、要するに、社会保障という見地で、こういうお気の毒の病人はどうしても転帰で見るんだ、一つそういうときにこそ政府がこれに対して必要な諸費用を出す、再保険制度を設けるとかいうような工合に、考えをめぐらしてもらうべきではないかと思うのです。そこでこの給付制限を撤廃するように政府の方は御指導なさっていると思うのですが、これはどういうような指導方針でやっておりますか。
  189. 高田浩運

    高田政府委員 給付制限を撤廃するという方向で指導をいたしておりますが、特に今回、国庫負担率が引き上げになりました機会をとらえまして、さらに強力に一つ指導して参りたいと考えております。
  190. 永山忠則

    ○永山委員 それで給付制限を撤廃していけば、転帰までということは第二としまして、そうすると、どのくらいに医療費が増高することになるのですか。
  191. 高田浩運

    高田政府委員 三十六年度の現状におきまして、給付制限を撤廃するに要します療養給付費の額は、約三十四億でございます。
  192. 永山忠則

    ○永山委員 私が問うのは、その給付制限を撤廃したら、医療費が何%くらい上がるようになるのか。全部撤廃した場合ですね、医療費の増高は何%くらいですか。
  193. 高田浩運

    高田政府委員 国民健康保険の総医療費は、三十六年度千四百六十六億でございますから、約二%強になると思います。
  194. 永山忠則

    ○永山委員 そうすると、医療費の増高と、それから今度給付制限の撤廃によって、本年度撤廃したとすれば、医療費は何%上がるかというのです。すなわち、医療費の増高がこれでは二〇%、こういっていますね。そうして今度給付制限を撤廃した場合は二%、そうすると、給付制限を撤廃した場合は、医療費の増高を加えたものは二二%ということになるのですか。そんな少ないパーセントではないと思いますが、しかし一応それとして、医療費の増高が、この給付制限を撤廃した場合には総額でどのくらい上がるかということです。
  195. 高田浩運

    高田政府委員 先ほど申し上げましたように、三十六年度における医療費の伸びの推計が、医療費改訂を含めて二〇%と申し上げましたから、それに今の二%が加わるわけでございますが、ただ、正確に申し上げますと、私が先ほど申し上げましたように、三十七年度の予算の実行の機会にさらに強力な指導をいたしたい、こういうことでございますから、むしろ三十七年度の伸びにプラスになる、そういうふうにお考えいただくことが適当かと考えます。
  196. 永山忠則

    ○永山委員 三十七年度は大体の見通しはどうです。医療費の増高は改訂分を加えてこれはどのくらいになりますか。
  197. 高田浩運

    高田政府委員 三十六年度に比べまして、約一五%の伸びと考えております。
  198. 永山忠則

    ○永山委員 そうすると、改訂分は、今回緊急是正と合わせて大体どのくらいの伸びになるわけですか。改訂分だけ、いわゆる医療費の改訂値上がりの緊急是正等を加えて、総医療費の何%になるのですか。
  199. 高田浩運

    高田政府委員 三十七年度、一五・七%と見込んでおります。
  200. 永山忠則

    ○永山委員 そうすると、三十七年度は一五・七%が改訂分、それから今度自然に増加する分が何%ですか。——時間を食いますから、あとで知らせてもらいたいのです。改訂分の増高は何%か、それから今度自然に医療費が増高するのが何%、それから給付制限の撤廃によって増島する分が何%、結局、われわれの見通しは、それを合わせればどうしても三〇%以上だと思うのです。去年の答弁で、やはり医療費の増高と、給付制限を撤廃することによっての上昇見込みは、三三%か三五%という答弁を政府はしているわけです。それに加えて、まあ改訂分の緊急是正が入るわけですけれども、給付制限は去年もやっていますから、そういうことを勘案しましても、少なくとも三五%以下ということはないと思うのですね。そうして今度総医療費に対してそれは何%になるかという問題ですね。それも一つあとで願いたい。総医療費に対して医療費改訂による分が何%になるか、それから今度医療費の増筒が何%になるか、それから今度給付制限が総医療費に対して何%になるか。給付制限は政府は二%と言いますが、総医療費に対して、まあ、五%以上絶対ですわね。  そこで、私が質問しようとするところは、政府の方では、保険財政の健全化のために五分の引き上げをした、こう言われるわけですが、その五分の引き上げでは、保険財政の健全化も何にもできないということなんです。それで、この二割五分の補助率でよろしいかということになるわけです。まあ語を変えて言えば、保険料の負担能力が乏しい低所得者層、それがますます低所得者層に転落しておるわけですね。少なくとも一割以上健保その他へ被保険者は逃げていっているわけです。従って、負担能力のある者はどんどん他の保険へ吸収されて、国保は負担能力のない者の層へどんどん落ちているということが一つ。この国保被保険者減少の本年度の見通しを出してもらわなければならぬ。大体一割は減っているのですよ。さらにどんどん減っている。それから、今度受診率は、これは上がることが好ましいので、少なくとも健保くらいまで上がるということが、これは医療の内容が向上し、普及するということなのですから、これはますます上昇している。そうして医療費の改訂等を含めて医療費はどんどん上がってくる。こういう状態で、五分の負担引き上げでとても国保財政の健全化はできないと、こうわれわれは見ているのですが、政府の考え方はどうですか。——時間の関係がありますから、数字あとから正確に知らせてもらえればいいわけです。ただ、これは大臣の答弁を求めねばならぬところですが、まあ一つ大臣にかわって、保険局長は、これで国保財政はとにかく健全だ、大丈夫だという観点に立っておるかどうかですね。
  201. 高田浩運

    高田政府委員 今回充分の引き上げに伴っての予算増は、御承知のように約七十九億でございます。それに対しまして、医療費の改訂による保険料にはね返ってくる額として考えておりますのが大体六十億、従って、医療費の改訂との関連を考えれば、まあ五分引き上げでもなお予算の方が大きいと思う、こういうことになるわけであります。  それから、被保険者一人頭について見ました場合に、三十六年度における被保険者一人当たり保険料が九百七十円、それに対しまして国庫負担率の引き上げ等に関連をして三十七年度の保険料が九百六十五円、三十七年度は推定ですが、大体そういうふうになっております。  それから先ほどお尋ねの数字でございますが、医療費の改訂に伴います医療費の伸びが一五・七%、自然増が一〇%、給付制限の撤廃に伴うものが三彩、そういうふうになっております。
  202. 永山忠則

    ○永山委員 一世帯当たりの保険料は、主十六年度と三十七年度はどのくらいになるわけですか。
  203. 高田浩運

    高田政府委員 一世帯当たりの保険料の調定額は、三十六年度が四千五十五円、それから三十七年度が四千三十一円、両方ともこれは推定でございます。
  204. 永山忠則

    ○永山委員 完全にその推定は間違っておるのですからね。これが減るというようなことはもちろん実質的にはないし、三十七年度の予算はみんな組んでいるのです。それを一つ至急に取り寄せてごらんになってもいいし、要所要所抽出してとりあえずとってごらんなさい。これはもう、少なくとも国保保険税は一世帯当たり平均五千円くらいになっています。それで三十七年度は保険料が減るというようなことも考えられないことですし、全然実態から離れているのですよ。
  205. 滝井義高

    滝井委員 関連して。今の一世帯当たりの保険料を、もう少し前の三十二年ごろからずっと言ってみてくれませんか。実は昨年、森本さんが局長のときに、私の質問に対して答えたのは、三十五年で三千七百円くらいで、そして三十六年の推定は四千百二十八円ということになっております。ところが、これが六十円ちょっとばかり下がっておるのですよ。保険料というのはずっと上がってきています。ところがこれは、三十七年になって五%の国庫負担の引き上げがあったといっても、今の御説明で、六十億の医療費の改訂がはね返ってなくなると、実質十九億しかないわけです。ところが、今度十五億の特別措置というものは入っていないわけです。去年は特別措置が入っておったわけですから、それほど伸びの停滞があるということはどうも考えられないのですが、何かそこら、もう少し納得のいくように説明をしてもらいたい。今までずっと伸びておった、ところが三十七年度は五分を上げた、五分を上げたために今度はダウンするのだ、こういう理論以外にないのですよ。それから被保険者が実質減っておる、その減った被保険者というものは金があったのだから、二百万人減ったのは今まで医療の受診率が面かった部分が減ったのだ、理論的根拠を求めるとするならば、あるいはそういうことが言えるかもしれない。貧乏なほど売薬その他にたよって医者にかからないのだから、そういうことがあるいは言えるかもしれない。二百万人というものが国保から健康保険その他に移動したのだ、従ってその分、非常に受診率が高かった分がなくなったから、保険料が全国平均的に減るのだというととは、あるいはこじつけになるかもしれないが、推定としてはそういうことが言える感じがしますが、もう少し納得のいく説明をして下さい。
  206. 高田浩運

    高田政府委員 一世帯当たりの保険料の調定額は、三十一年が二千八百五十六円、三十二年が三千四十六円、三十三年が三千三百十円、三十四年が三千五百六十七円、三十五年が三千八百六十円でございます。なお、御参考に申し上げますと、一人当たりの三十七年の保険料調定額は、先ほど申し上げましたように九百六十五円でございますが、これは国庫負担率二割五分の場合でありまして、かりにこれを二割だったとして考えますと、一人当たり一千百五十五円、従いまして、二割の場合と二割五分の場合の差額百九十円が、結局五分の引き上げに伴って保険料を上げずに済んだ、そういうような考え方が成立すると思います。
  207. 永山忠則

    ○永山委員 私が前に申し上げましたように、いろいろな資料をもう少しそろえて全部見せてもらいたい。ということは、五分引き上げましても、医療費の改訂増の分は少なくとも四分くらいになると思います。その他の医療費の増高等を見れば、どうしても五分を上回る状態になりますので、従って、保険料が下がるというようなことはほとんど机上の計画で、五分引き上げたために保険料が下がってくるのだという作為的な計算でしかない。われわれは各県の実態を調べておるのですが、非常な増高です。これが増高する原因は、被保険者の負担能力のある者は他の保険へ逃げていくのですから、そこで負担能力のない者がかつぐのですから、それで非常に実質的に高くなる。その点は政府は計算に入れてないと思います。いわゆる負担能力のない者の層が増大しているわけですね。負担能力のある人が出ていくのですから、従って、この保険料の負担率は上がるというわけですね。この基礎的計算ができていない。ただ被保険者の数が減るということだけで計算をしていってはいけない。負担力のある者が出ていくということから、負担能力がない者が残っているのだから、そこで保険料が非常にはね返ってきているという基礎的計算が足らないのです。この計算では。その点を一つよく計算をしてもらわなければいかぬと思います。  それから、今度一般会計から特別会計への繰り入れがどうなっているか、本年度は大体どういうように繰り入れられたか、この金額並びに率、これも一つ自治省の方で出していただきたいのです。
  208. 松島五郎

    ○松島説明員 明年度において一般会計から国民健康保険会計へどの程度繰り入れるかというお尋ねでございますが、私どもの方といたしましては、一応総体の医療費を、国庫負担金を除きました額は一応保険税でもってまかなうものという前提で、それぞれ各団体は予算を組んでおるわけでございますので、今の段階において、来年度どれだけ繰り入れるかということを、数字をもって申し上げることは困難でございます。ただ、建前はそうでございますけれども、従来の例では、一般会計から特別会計へ相当繰り入れを続けてきております。その傾向は、昭和三十三年度には一般会計から三十五億繰り入れておりますし、昭和三十四年度は三十四億、それから昭和三十五年度は四十九億でございますが、このうち東京都が国民健康保険をやるようになりました関係で、特別区に都から繰り入れました分が十三億ばかりございますので、それをかりに除外して考えますと、大体三十六億程度でございます。従いまして、大体三十三年度から三十五年まで、東京都の特別区の問題を除きますならば、大体三十五億前後繰り入れておるということになっておるのでございます。従って、この額はあまり動いておりませんので、来年度も、現在の状態ではおそらくこういう状態が起きるのじゃないかということも予想されますけれども、ただ一方、今回国庫負担率が引き上げられました関係等もございますので、ちょっと今の段階で予測することは困難でございます。
  209. 永山忠則

    ○永山委員 東京都以外新しくできた京都その他各都市が、漸次に一般会計の繰り入れをやらざるを得ぬ情勢になっておりまして、まあ大都市であるからこれを除くということであってはならぬのですが、大都市になればなるだけ一般会計からの繰り入れ分が大きくなるので、大都市はやはり給付率が七割あるいは六割というような関係等もあわせて、一般会計の繰り入れば非常に増高をしておるというように、実質的に、実際にあるんです。今年度の見通し等もわからぬのでしょうが、これに対して自治省の方はどういう見解を持っておられるわけですか。なお、保険税の軽減をすべきであるということを、方針を打ち出しておられるわけですが、その軽減をする方法は、どういうふうにしようというお考えでありますか。
  210. 松島五郎

    ○松島説明員 一般会計と国民健康保険会計との負担の問題でございますが、現在、健康保険にいたしましてもその他の医療保険にいたしましても、国と被保険者と申しますか、受益者と申しますか、それぞれ費用を負担をして保険をやっていくというのが普通になっておるわけであります。その間に、地方公共団体がその負担をもって事業をやるというのは、現在ほかの保険にはないわけでございます。従いまして、社会保険の一環として国民健康保険だけが市町村の負掛のもとにやらなければならないのかどうかという問題も、当然問題として考えられるわけですが、私どもは、現在の建前と申しますか仕組みは、やはり国の財政援助と受益者の負担とによってまかなわれていくのが建前じゃなかろうかと考えておるわけであります。従いまして、従来の町村の一般会計からの負担において国民健康保険が運営されるような事態がないように、国の援助と申しますか、補助と申しますか、そういうものを引き上げていただくようにお願いをして参っておるのでございます。もちろん、いろいろな医療保険の制度をどういうふうに今後持っていくかということもありましょうが、今の段階では、従来の考え方をとって参るつもりでおります。   〔柳谷委員長代理退席、委員長着席〕
  211. 永山忠則

    ○永山委員 自治省としては、一般会計の繰り入れば好ましからざるものであるから繰り入れないようにしたい、そうして受益者と国との負担でやっていくようにしたい、こういう希望なんですが、そうすると、国の補助を増さなければ、どうしても一般会計からの繰り入ればとめることができぬということになるわけです。その点から見ても、今の五分の引き上げでは保険財政の健全化ということにはならぬ。一般会計からの繰り入れをとめれば大体一割上がる。そうすると、それだけでも、もう五分上げなければ、一般会計からの繰り入ればとめられないというように考えられるわけであります。従って、五分の引き上げで保険財政の健全化ということはどうしても考えられないと思うのですが、厚生省の方は、一般会計から特別会計へ繰り入れるということに対してはどうしよう、将来なくしようという考えですか、これはまあ仕方がないから見ておこうという考えですか、その分だけは保険料徴収すべきだというのですか、国の負担に待つべきであるというのですか、どっちの考えですか。
  212. 高田浩運

    高田政府委員 保険の本質というものからすれば、保険料でまかなうし、それで不十分な点は国庫負担でまかなうという仕組みが、これはやはり一つ考え方だと思いますが、しかし現在も阿比健康保険法の七十五条に、御承知のように都道府県及び市町村は補助金を交付したり、あるいは貸付金を貸し付けたりすることができるということになっておりますので、あえてこれを制度的にいけない制度だということで、否定をするという趣旨ではないのだろうと思います。積極的に都道府県及び市町村の財政の許す範囲においてとの規定を活用することについては、これはいなやを申すべき筋はないと思います。しかし、やはりその本来の保険料、あるいは国庫負担を含めた意味での保険料、これで十分健全にやっていけるようにすることが理想だと考えております。
  213. 永山忠則

    ○永山委員 要するに、最後の言葉でもわかるように、結局理想からいえば国の負担と受益者負担でいくということが望ましい、しかし、現段階では町村補助も現実にやっているから、やむを得ぬ措置として法に認められておるからという考え方ですが、そこで結局二割五分ではどうすることもできぬ情勢だ、そこで国保に対する国庫負担は引き上げなければ国保財政の健全ということは成り立たぬというふうに感じているわけでありますが、きょうは一応この程度で質問を打ち切りたいと思います。
  214. 中野四郎

    中野委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十五日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後五時三十一分散会      ————◇—————