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八木(一)委員 二つの問題がありますが、一般的な
健康保険も含めた一部負担の問題、これは後日徹底的にまた厚生大臣の深めた御意見を伺いたいと思いますが、今言い
出しましたから、一応経過を二、三分申し上げます。
健康保険の改悪という問題で非常に騒がれた一部負担、また初診料の一部負担を五十円から百円限度まで引き上げた、あるいは入院料の一部負掛を新設したというときの
厚生省の最初の態度は何かと言いますと、
健康保険が非常に赤字があって、どうにもこうにもやり切れぬというわけですが、前の年に
保険料率を、
最高限度を千分の六十五上げました。それでも赤字が出るからということで、一部負担制を五十円から百円限度まで上げるという
意味の一部負担をしたわけです。しかし、非常にこれは被
保険者にとって工合が悪い、また、
徴収義務を持つ診療担当者にとって非常に工合が悪い、受診率が減る、早期診断、早期治療に工合いが悪いという大問題が起こって、それに対して、どうにも赤字でやり切れないから勘弁してくれ、それから政府の方も三十億を
健康保険へ出す、三泣きだというようなことをいわれたことがある。ところが、それからその問題が一回つぶれて、その翌年の
国会になったときはすでに黒字になっておった。それを全然出さないのです。前の年の赤字のことで進めて、ことに社会保障制度審議会には、前の年の赤字のときの状況で、そういう状態ならやむを得ない、積極的に進めるんじゃない、ごく少額の引き上げはやむを得ないという答申を、陳弁これ努めて赤字で出させておいて、翌年になって黒字に転換しておるのにそれを諮らない、委員の構成も変わっているのに諮らない。社会保障制度審議会の設置法第二条に違反している。翌年になって黒字に転換しておるのに、極度にこれをわからないように赤字だ赤字だといって、それで無理やりに、われわれの反対にもかかわらず、多数で押し切ったわけです。与党の方でも、全員の方は、赤字だからと役所が言われるから、しようがないと思っているのだろうと思うのです。与党の方は、社会保障に熱心な方ばかりで、早期診断、早期治療、あれになるようなことばかりに賛成されるような方ばかりではない。それを与党の方はごまかして、赤字だ赤字だで通しておる。そのときはすでに黒字だった、翌年何をしたか、
保険料を引き下げた、順序を逆転されたわけです。前に
保険料を高めて赤字が解消できないから、その次に一部負担制を作り、園庭負担を作った。今度は逆に、
保険料を下げる方を先にして得をするのはだれか、
労働者が得だとおっしゃると、これは間違いであります。符をするのは使用主であります。そういうことに便乗して実業家、資本家の力によくするような方向を先にとられ、黒字になった。赤字のためにやむを得ないということなら、なぜ一部負担をもとに戻さない。国庫負担三十億はどんどん勝手に減らしておるし、公約の大違反です。国庫負担を勝手にどんどん減らしておいて、一部負担は据え置きして、資本家の騒がれる方だけやった、そういうでたらめなことをやっておる。それを幾ら追及しても、一部負担が、初めは赤字だからというので、途中ですりかえた。こういうものをやっておかないと、医者にかかりに来てしようがない、それを整理する
意味だというふうに途中ですりかえた理屈をつけておる。その理研が大体けしからぬ。金をとって整理をするというような
考え方は、医療保障じゃありません。
健康保険はやめればいい、国民
健康保険はやめればいい。それから政府は、国民皆
保険ということを推進しておるわけです。医療保障というものは、病気になったときに、金の心配なしに完全な医療をすぐに受けられるということをするためにやっておる。それを逆に、一部負担をとってブレーキをかける。何のためにやっておるのかわからぬ。ほかの役人が言うのならまだわかります。わからず屋の言うことだから……。一番よく知っておる
保険局がそういうことを言う。国民がそれは困る、
国会がそれはいけないという。政府の
最高首脳者の人がそう言えば、そういうことはいけないことですね。
保険局だけががんばっておる。小むずかしい理屈を掲げるので、歴代の厚生大臣もあるいは総理大臣も、役人の言うことならしようがない、これを無理に押しつけても、役人に抵抗されたらその間に厚生大臣は工合が悪くなる、そういうような憶病な厚生大臣ばかりで、間違った考えを直せない、そういうことです。そういうことが一部負担の背景なんです。一部負担制自体が絶対にいけないわけです。しかし、これは理解があるそうですから、国民
健康保険のときに、あるいはほかの厚生行政一般の質問のときに譲ります。それまでに厚生大臣は、そういう間違ったことは今度は断じて改めますという答弁を今から用意していただきたい。
今度は、一応全般的な問題として、その中で特にひどい
船員保険法の一部負担の問題であります。この前も申し上げましたが、
船員の場合には、横浜でかぜを引いて診療を受けたら百円とられる。焼津でそれがひどくなって気管支炎になった、また金をとられる。四日市、神戸、宇品、下関でもとられる。ですから、
船員の
実態からいったら最も悪い。しかも、
船員法で、厚生大臣は業務上ですとさっきおっしゃいましたが、業務上じゃない。もちろん業務上もある。業務外でも、
船員法の八十九条の第二項で、疾病あるいはまたけがに対して、船主が、業務外でも全部責任を負うことになっておる。それにもかかわらず、そういうむちゃくちゃな
法律を、今言った一部負担制を創設するときに作っちゃった。国民のために使わなければならない大事な頭を、国民と逆な
意味において、一部の一握りの資本家のために、それから
厚生省の面子のためにその大事な頭を使い切って、こういうことをやった。どうなるか、小さな金額の問題ですが、船主の負担がそれだけ助かるわけです。それに対しては、
厚生省は、
あとから
船員の方に請求権があると言われる。請求権があることになっておる。なっておるが、そういうことをなぜしなければならないか。百円、百円、百円というもの
——船員は自分の小づかいがないこともある。人に借りなければならないこともある。なかったら、かぜ引きでもない、格好が悪いからやめておこうということになって、次に気管支炎になって、肺炎になるということが悪いわけです。船主はたくさん金を持っておる。金持のために貧乏人が先に金を立てかえなければならないのだ、こういうようなことをする必要は毛頭ないわけです。それを
厚生省が無理やりにやらしたのだ。前には船主が
出しているのです。なぜそういう逆なことをやらせたのですか。
あとで請求権があるというけれども、
漁船や何かでは、今は働く人が足りないから、本心はそうでなくても、働き手を大事にする傾向があります。だからそうだけれども、景気の悪いときには、また使用主がふんぞり返る時代がくるわけです。ふんぞり返る時代には、私は見てもらいます。百円下さと言ったら、何をなまいき言うな、そんなことを言うやつは首にするというようなことが、
漁船関係では起こっているわけです。それがおそろしいから、百円自分で払ってしまって言い出せない、そういうことが起こっているわけです。百円が何回も重なれば五百円になる、千円になる、そういうことが起こっている。そういう極端な矛盾がある。しかも、
船員の
労働基準法である
船員法の違反であります。
一つの
法律に違反することになるのです。ほんとうの基本的な
法律のそういうことに違反しているし、実情に合わないから直せということを、五年前に
国会の意思として決定されているのです。それから五年間もなまけている。さらに、三十五年にまた附帯決議がされているのに、なまけている。徹底的な追及がされているのに、なまけている。こんなものは
法律ではできない。
船員法の
改正が出るたびに、これは直っているかと思えば
一つも直っていない。やる気がない証拠です。ほんとうにやる気があったのなら、提案のときに、この問題は
検討しましたけれども、これこれのところにまだ難点があって、ほんとうは自分たちはほかの問題では頭がいいけれども、この問題では頭が悪いからまだ結論がつきませんということを言うならまだしも、
検討している事実が、
説明も何もない。たとえば、そうなったら
船員と普通の
健康保険の間に、お医者さんの方で、これは
船員か、これは何かということで、取り扱いに困るだろうというようなことが
理由になっている。そんなものは
船員に証明番をやって、
船員は水の上を走るから水色でもいいし、赤でもいいですが、そういうものを作ればお医者さんの方は気がつく。これは
船員だから一部負担はとっていないというふうに、会計事務がわかるでしょう。そうでなければ、政府管掌の方のお役人の方が、自分がその事務がいやだから
船員に犠牲を押しつけるということになるわけです。そうでなければ船主がそれだけ実際に助かるから、金持ちを助けるためにそう考えた、どっちかとしか思えません。怠慢か一部の非常に恵まれた人に対するしり押しをすることか、どっちかの
意味でこれをしたわけですか。
もう
一つの
標準報酬の問題もそうです。
標準報酬をなぜ早く上げなかったか、今度の上げ方が少ない、それはなぜか、
標準報酬をしげたら困るのはだれか、いやがるのはだれか、船主だ。
保険料を半分負担しなければならない。そういうような金持ちの抵抗にあって、すべきことができない。
健康保険法で、すでに五年前五万五千円の
標準報酬を上げた。しかるにかかわらず、三万五千円で、
総合保険だからというのでこれをとめて、
健康保険と合わせなければならない、
厚生年金の
保険と合わせなければならないということを言うでしょう。けれども、
厚生年金と
船員保険の
標準報酬は、昔は逆だったのです。二倍から四倍くらい
船員保険の方が
標準報酬が高かったのが、今度は合ってしまったわけです。その前の率の半分でも上げれば七、八万になり、十万になるわけです。それをやらないのはなぜか。これは船主の方の抵抗、資本家が自分のところで働いている
労働者のために金を出すのをいやがる、このような連中に対して
厚生省が正しいことを言えないということから、こういうようにとまっておるわけです。ですから、非常に頭のいい人がそろって苦労しておられることは、私たちもわかっています。今の局長ばかりが悪いわけではない。しかし、この部分に関する限りは最も悪いし、一部負担に関する限りも最も悪い。この点に関しては、
保険局
関係の人は全部悪い。これを徹底的に直すには大臣の力しかないわけです。ですから、この問題に関する限りは、
保険局がこうだから勘弁して下さい、こうだからまだ出ていませんというようなことは理屈が通らぬとして、なまけたことは断じて許さぬ、筋の通らぬことは筋の通るようにせいということを大臣が言明しなければ、こういうことは直りません。長年の悪伝統があるわけですから、それを言明していただけるかどうか、それについて御答弁をお願いしたいと思います。