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1962-03-24 第40回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月二十四日(土曜日)    午前十時四十七分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 穗積 七郎君       安藤  覺君    井村 重雄君       池田 清志君    宇都宮徳馬君       宇野 宗佑君    齋藤 邦吉君       正示啓次郎君    竹山祐太郎君       床次 徳二君    木原津與志君       黒田 壽男君    島本 虎三君       戸叶 里子君    楢崎弥之助君       細迫 兼光君    森島 守人君       田中幾三郎君    門司  亮君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         法制局参事官         (第一部長)  山内 一夫君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (大臣官房長) 湯川 盛夫君         外務事務官         (アジア局長) 伊関佑二郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (理財局長)  宮川新一郎君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      宇山  厚君         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         通商産業事務官         (企業局賠償特         需室長)    池田 久直君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 三月二十四日  委員稻村隆一君、横路節雄君及び田中幾三郎君  辞任につき、その補欠として楢崎弥之助君、木  原津與志君及び円司亮君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員門司亮辞任につき、その補欠として田中  幾三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する  日本国アメリカ合衆国との間の協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一号)  特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間  の協定のある規定に代わる協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)  国際民間航空条約の改正に関する議定書締結  について承認を求めるの件(条約第三号)  日本国アルゼンティン共和国との間の友好通  商航海条約締結について承認を求めるの件(  条約第四号)  海外技術協力事業団法案内閣提出第九二号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので、順次これを許します。木原津與志君
  3. 木原津與志

    木原委員 私は、池田総理並びに外務大臣に、日韓問題を中心として若干の質疑をいたしたいと思うのでございますが、それに先だって、最初に沖繩の問題についてただしたいと思うのでございます。  それは、新聞報道によりますと、三月の十三日に中華民国沈昌煥外交部長中華民国議会沖繩についてこういう発言をしたということが新聞に報ぜられております。国民政府は、「琉球列島に対する日本潜在主権の要求を認めない」、こういう趣旨で、さらに引き続いて、「自由世界琉球人民独立の希望を果たすよう援助すべきである。」という趣旨新聞報道がなされておる。すなわち、われわれは米国との間に沖繩に対して潜在主権を持っておるという確信を持っておるのでございますが、それが連合国一員である台湾政府からこれを否認をされる、あまつさえ、沖繩独立をすべきだというようなことが、私的ではなくて、台湾政府国会において外務大臣から演説をされておるということでありますので、この点について、一体外務省は詳細について確認をしておられるか、確認をしておられるとすれば、新聞報道と違ったものはないかどうか、一応この沈発言について外務大臣の所信をお伺いしたい。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国会の御決議がございまして、その直後の国際的な反応として現われたものは二つあったわけであります。一つは、今お述べになりましたそれでございます。もう一つは、ソビエト側において言っておることでありまして、ソビエト側では、この決議は北方領土とからませられたことによって非常に弱められたというのがコメントでございます。もう一つ沈外交部長発言については、事実を問い合わせましたが、その通りでございます。これは、国際法上あるいは条約上、沖繩日本施政下にあるべきものであるということを言うことは根拠がない、こういう発言でございますようですが、直ちに抗議をいたしました。しかし、それはそれといたしまして、その後において出ましたケネディ大統領声明におきまして、はっきり、沖繩の住民は日本国民であるし、日本施政権下に返すべきものである、その返す日に備えて、その施政権の移行を円滑ならしめるために、日米協力して、アメリカ側も大いに奮発するが、日本側協力も歓迎する、こういう趣旨のものが出ましたので、この点はもう解消したものとわれわれは考えております。
  5. 木原津與志

    木原委員 沖繩米国施政権下にあるということは、その根拠は、御承知のように、講和条約の第三条にあると思うのです。この講和条約の第三条の米国施政権のもとにあって、なお日本潜在主権があるという解釈をわれわれは今日までとってきたわけです。ところが、それが条約上あるいは国際法上も根拠のないことだというようなことを、条約調印国一つであったところからそういう異議が出てくるということについては、私どもどうも納得がいかない。  そうすると、講和条約調印国はすべて、日本沖繩に対する潜在主権があるということは認めておったのですか、それとも、アメリカだけが潜在主権があるということを認めておったのか、その点どうですか。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 沖繩のわが方の潜在主権の問題については、講和条約の際に、アメリカダレス代表、それからイギリスのヤンガー代表、これらは潜在主権があるということを言っておるわけでございます。他の国もそれに対して異議を唱えなかったのでございますから、これはそのことが認められておる、こういうことだと思います。ただ、中華民国調印国でございませんわけです。従って、よく知らなかったのだろう、こう思うよりしようがありません。第三条の方は、御承知のように、信託統治にする、その信託統治に至るまでの間は、アメリカ唯一施政権者とする統治下に働く、こういうことを言っておるのでございまして、その講和会議事情を知らないために、そういう発言になったのだろうと思うよりほかにしようがありません。
  7. 木原津與志

    木原委員 この中華民国外交部長沈発言に対しては、すでに日本の方からは抗議されておるかどうか、その点いかがです。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は、この沈発言趣旨は、初めてじゃなくて、ときどき言っておるわけです。そのつど抗議をいたしております。今度も井口大使を通じて抗議をいたしました。
  9. 木原津與志

    木原委員 そこで、沖繩施政権返還について総理にお伺いいたしますが、施政権アメリカ返還をするということだけで、そういった日米間のいわゆる取引だけによって沖繩日本領に完全に復帰するものかどうか、あるいは、復帰するためには、講和条約の第三条を改正しなければ日本主権が完全に復帰しないかどうか、その点の形式はどういうふうになりますか、この点総理にお尋ねいたしたい。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 講和条約のあれから申しまして、アメリカだけでよいか、他の同意を要するか、問題でございますが、奄美群島日本に返りますときは、アメリカ自発的意思によりました。そうして、他の国もこれについて異議を唱えなかった。この例から申しますと、私は、アメリカだけでよいのではないか、こう考えております。
  11. 木原津與志

    木原委員 アメリカ施政権日本に返すということを言うて、それに対して条約調印国がこれはけしからぬということで異議を差しはさむということになれば、沖繩返還はどういうことになるのですか。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 こういう問題は、あまり取り越し苦労をしない方が国のためによいのじゃございますまいか。今までの例があるのですから。で、例がありますから、他の国が異議を申し立てたらどうするかというようなことは、私はそういうことはないと思います。先ほど申し上げた通りでございます。
  13. 木原津與志

    木原委員 取り越し苦労総理は言われますが、私は取り越し苦労じゃないと思うのですよ。現に、中華民国政府は、沖繩日米だけで主権を回復したり譲渡したりすべき問題じゃないのだ、自由陣営の全部の利益のために、これは、沖繩日本に返すのではなくて、むしろ独立させるべきだという意見をしておるのです。そうすれば、現在のような国際情勢下においては、ひとり中華民国だけでなく、あるいは極東の問題あるいは世界情勢の中からそういうような議論が出てこないとも限らない。これは単なる取り越し苦労じゃないと思うのです。将来の国際情勢の変化の中でそういうような場合もあり得ると思う。そういう場合に、日米間でこの沖繩の問題についてはっきりした合意を取りつけ、さらにまた、この条約当事者国の間に了解を取りつけておかないと、施政権返還のそのどたんばに至ってこれがごたごたする、条約を改正しなければならぬというようなところまでいったら、これは日本利益のためにも非常に大きな問題になろうかと思う。だから、私はその点をこの機会にお尋ねしたのであって、決してこれは取り越し苦労ではないと思うのです。一国の総理として、当然その点については思いをいたしておくべきだと思うのですが、いかがですか。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 中華民国は、サンフランシスコ講和条約調印国ではございません。しこうして、過去の例を見ましても、調印国奄美群島返還の際にも何ら異議を申し込んでおりません。われわれは、自由国家群、おおむね平和条約に調印した国々は、やはりよくこの間の事情を知っておると思います。今ここで調印国一つが反対したときにはどうするかとかいうふうなことは、私は国会議論することは差し控えたいと思います。
  15. 木原津與志

    木原委員 総理沖繩問題について非常に強気であるようですが、御承知のように、沖繩に対するわれわれの潜在主権というようなものは、これは文字で書いてこそ潜在主権と書かれるかもしれませんが、実体というものは何にもない。立法、司法、行政について一切の権限を持っておらない。しかも、領土は、沖繩アメリカに占有をされておる。残っておる残存主権というようなものは、単に名義上の沖繩処分権だけじゃありませんか。こういうような、非常に希薄な、主権という名に値しないものを持っておって、そうしてそれに対して何らの措置も講じる力のないものが、ただ単にアメリカ施政権返還するからということだけで自動的に沖繩が返ってくる、日本主権に戻ってくるというようなことを安易に私は考えるべきじゃないと思うんです。むしろ、この点については、十分な決意を持って、最も早い機会施政権を一われわれは回復する、回復するための具体的な措置について、責任者であるあなたは当然重大な決意を持たれるべきだと私は思う。いかがです。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の重点がわかりかねますが、前の御質問はあれでよろしゅうございますか。今調印国一つが反対したときどうするかというようなことは、今ここで議論することは国のためにならぬ、こういうことです。これでよろしゅうございますか。  第二の点は、沖繩に対して日本は何にもしていないじゃないか、これはお考え違いです。私が内閣を組織いたしましてから、今回のアメリカ大統領声明が出るということは、私は格段進歩だと思います。そうして、沖繩同胞もこれを喜んでおるようであります。私は徐々に施政権返還の下準備ができつつあると思う。また、これは私の考えばかりじゃありません。ケネディ大統領も、施政権返還のときに支障なくいくようにという前提のもとにやっておるじゃございませんか。戸籍事務もやっておりますし、教育につきましても全部日本と大体同じようにやっておる。今後も、沖繩教育につきましては、従来以上にわれわれは関心を深めて実効のあがるようにいたしたい、そうして、経済復興福祉増進につきましても、日米、また沖繩島民、これは相談していこう、私は格段進歩が見られつつあることを喜んでおるのであります。
  17. 木原津與志

    木原委員 私は沖繩に対して何にもしていないということをあなたに言うているんじゃないんです。潜在主権という形の中では、沖繩に対しては何らの力がないじゃないかということを言うておる。特にまた考えてみなければならないのは、沖繩というのは、これはいつまでもアメリカ軍事基地として保有をすることが許されるような建前にはなっておらない。信託統治になる場合に日本同意をせよ、同意をする、その間暫定的に沖繩施政権アメリカが持つのだということが条約の第三条ではっきりうたっておる。そうなれば、この沖繩というものは、もう戦後十数年を経ておる今日、いつまでもアメリカ施政権下に置くべき筋合いのものじゃないのであります。極東の緊張がどうだとか、あるいは極東情勢共産主義の侵略の脅威があるからとか、そういうようなことで沖繩アメリカが占有して施政権をいつまでも持っておるということは、これは条約上許されない。やがてすみやかに日本返還をしなければならないという建前になっておる。その建前になっておるのが、今日その施政権返還が問題になっておるときに、隣の中華民国から、日本潜在主権がない、ここは独立さすべきだ、自由陣営のために独立さすべきだということを言うておるような議論が出るから、一体、この施政権返還という問題について、日本がただアメリカとの合意だけではたして円満に主権が戻ってくるかどうかということを私ども心配するがゆえに、これをあなたにただしておる。こういうような問題を議会の中で論ずべき筋合いじゃないというようなあなたのお言葉は、これは少し言い過ぎじゃなかろうかと思うのです。いかがです。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この沈外交部長の話を非常に重要にお取り上げになっておるようでございますが、私どもは、そんなにこの問題にこだわらぬ方がいいのじゃないかという気持でおるわけであります。従いまして、現実にその調印国の中からこの問題に異議があるものがないのに、あったらどうするかというようなことを考える必要もない、こういうのが政府態度でございまして、総理はそういう意味をおっしゃっておるのでございます。
  19. 木原津與志

    木原委員 時間がございませんので、沖繩問題はそれくらいにして、日韓問題に入りたいのでございますが、今、日韓問題は、この間崔外務大臣が参りまして小坂外相との間に種々折衝があったことを私ども新聞によって承知しておりますけれども、その後、韓国の事態の中で、新聞紙の報ずるところによると、韓国ユン・ポソン大統領が突如として辞意を表明して辞任をしたということが報道されておる。従来、われわれは、この朴政権クーデター政権であるから合法性はないのだということを主張して参ったのですが、張勉政権のときにこの尹大統領国家元首としておった。このユン・ポソン大統領朴政権クーデター政権のもとにおいてもなお国家首席として国家最高機関的地位にとどまっておるということは、そこに多少の法的な継続性というものが認められてきたのであったが、今日この尹大統領国家最高元首たる地位を去るということになれば、この朴政権は完全な非合法政権で、これは文句なしの非合法政権、あなた方が何とここに口をかそうとも、これは非合法政権に間違いないと思うのですが、この政権を今後も合法政権と認めて日韓会談を継続されるのかどうか、また、尹大統領がやめてもなお朴政権の性格は合法政権であるかどうか、その点についての御見解を伺いたい。
  20. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、特定外国を敵視する必要はないと思うのであります。韓国に対しても、ありのままの状態を一般の国際的に通用する通念をもって見ていけばいいのじゃないか、こう思っております。ただ、その韓国との間の会談を妥結するのがいいかどうかということは、これは、その間に条件が合意すれば妥結すればよろしいのであって、合意しなければ妥結はないという態度でよろしいのではないかと思っております。(「よろしくない」と呼ぶ者あり)よろしいのであります。  そこで、今合法性の問題について御意見がございましたが、クーデターでできた政権外国から非合法であるとみなされておるということはございません。クーデターがいいものであるか悪いものであるかということをわが国内において適用すれば、これは主観的にはいろいろな考え方があります。私どもは悪いという考え方を持っておるわけですね。そこで、この韓国の場合、朴政権が昨年の五月に革命を起こしてできた。そこで、この革命政府合法性と申しますか、前の内閣との継続性があるかどうかという問題になりますと、張勉内閣時代大統領であった氏がそのまま留任しておる。これは継続性を示すものだ。ところが、その間一年たちまして、そうして国家再建非常措置法という法律ができまして、これはユン・ポソン大統領の治下でできた。これの第十一条に、ユン・ポソン大統領事故のある場合を規定しておる。事故のある場合はこれこれの人がかわるという規定がございますので、もうユン・ポソン大統領そのものではなくて、機構の問題としてこの場合にはどうなるという法律がある。たまたま大統領がかりに頓死したという場合にはどうなるかという規定はもちろん要るわけなのでありますから、その規定に従って、事故があって大統領がやめられて、そのあとだれがなるか、私はまだ詳報を得ておりませんが、だれかがなる。そうなった場合、それは前政権との間には継続性がある。これは明らかだと思います。
  21. 木原津與志

    木原委員 私は、外務大臣、別に特定の国を非合法政権だからというて敵視しろということを言うているのじゃないのです。私どもが、この朴政権国連憲章でいう合法政権じゃないじゃないかということを前国会から話をしている。話をしているのに対して、あなた方の方では、いや韓国政権はこれは国連決議によって認められた政権だと言って、しかも、あなたはそのときに、私の前回の質問のときに、わざわざこの決議を読まれたのです。読まれた文句は、この政府は、朝鮮のこの部分における選挙民の自由な意思の有効な表現でありかつ臨時委員会により監視された選挙基礎を有すること、及びこれが朝鮮におけるこの種の唯一政府であるという決議国連の第三回の決議の中にあるんだ、だから韓国朝鮮における唯一政府である、合法政権である、しこうして、この合法政権である建前朴政権になっても変わりはないんだ、こう言ってこられた。ところが、今ユン・ポソン大統領辞任してしまうということになれば、朴政権はそもそもでき上がりがクーデターであり、しかも、国家元首が一応自由意思の有効な表現でしかも選挙基礎を有する政府という、その一員であったこのユン・ポソンさんがおればこそ、そこに多少のあなたの言われる合法性が私は認められると思う。しかし、もうこの人がおらなくなる、辞任する、しかも、辞任の理由は、何か知らぬが、この朴政権政治活動浄化法不満であるということが原因だと伝えられておるが、こういう不満によって朴政権から離れてしまって辞任をするということになれば、あなた方が国連決議を引用される、選挙基礎を有する、しかも朝鮮におけるこの種の唯一合法政府であるという今まであなた方の答弁してこられたこの基礎は、もう根本的になくなってしまう。その点をあなたはどう答弁されるか、どう解釈されるか。その点についてお尋ねしておきます。
  22. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は、十六回国連総会で、この韓国における朴政権というものは、これはクーデターによってできた軍事ファッショ政権であるという議論が出まして、それは外蒙とソ連から出た。ほかの国は何も申しません。この考え方は否決されまして、結局、これは、前の政権とそれから来年できると約束されておる民主政権との間の橋渡し的な暫定政権、こういうことで認められて、今まで通り国連にオブザーバーとして出席したわけなんです。  そこで、問題は、その状態が根本的に変わっておるかどうかということなんです。今言ったように、韓国における大統領時代にできた国家再建非常措置法規定によって、大統領にかわるものがそこにできるならば、その間には韓国のこの法律によるところの継続性がある、こう見るのが当然じゃございませんか。私はさように思っております。
  23. 木原津與志

    木原委員 そのお考えは、韓国の今の朴政権下法律によって国家元首交代をする、だからそこに合法性があるのだというあなたの御主張でございますが、朴政権下法律そのものが、やがて正規の民主的な政府ができれば、この法律というものは変革されてしまう運命のものなんでしょう、朴政権というのは軍事政権であり暫定政権であるのでございますから。だから、この朴政権下法律によって任命された国家元首代行者ができるのだから合法だということは、これは言えないと思う。あくまでも、この朴政権というのは、だれが何と言おうと、軍事革命によって成立した政府であることは、これはもう議論のないところです。それを一応合法政権だと認める根拠は、張勉内閣当時からの国家首席である、国家元首であるユン・ポソン大統領が一応依然として国家最高元首としての地位にある、その地位のもとにおける政権交代であるから、そこに前政権との法的なつながりが認められるということになるわけなんです。ところが、もうすでにこの張勉当時の国家元首辞任をするということになれば、残るところ、この朴政権というのは、完全なクーデター政権以外の何ものでもない。そういう政権日韓会談を今後とも継続されるということになれば、これは、あなたが引用される国連総会決議からも逸脱してしまって、勝手な野合的な取引になると私ども考えるのですが、どうですか。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このクーデターによってできました政権は、韓国だけじゃございませんで、アラブ連合あるいはトルコ、パキスタン、ビルマ、いろいろあるわけでございます。それらの国に対して、その後国内のそういう政権成立過程を否認するという議論は私どもはやっておらないのでございます。韓国も同様に考えておるわけであります。  そこで、韓国内における国家再建非常措置法というのは、かつての憲法規定を上回る規定を持っております。これは現在韓国における憲法にかわるもの、憲法と並立して、憲法を上回る部分憲法にかわるものであるわけでございます。それが民主政権になったらなくなってしまうじゃないか、だから今やっていることは全部無効だという御議論は、私は御議論として承服できません。これは、たとえばわが国の例、——わが国の例はやめておきましょう。とにかく、ある国の政体が変わる、変わったら、そうしてその次のときに憲法ができるのだから、今やっている憲法は全部無効だ、こういう議論は、せっかくのお話でございますが、私はとても承服できません。
  25. 森下國雄

    森下委員長 関連質疑通告がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  26. 穗積七郎

    穗積委員 これは関連ですから簡単にいたしますが、池田総理が昨年の六月ケネディとの会談の中で、今の朴政権を相手にして日韓交渉をやるということで、その相手の問題ですから総理にお尋ねをいたしたいと思う。  実は、朴政権合法性の問題についてわれわれは非常に疑点を持っておるわけですが、政府の論理によりますと、四八年十二月の国連決議、これが李承晩政権合法性基礎になって、それが法律的な継続性を持って張勉政府並びに朴政権、こういうふうに論理を展開してきておられるわけです。その論理に私どもは根本的に疑点を持っていますけれども、きょうは一応政府の論理の中で非常な矛盾を生じておるのではないかという点を私は申し上げて、総理の御意見を伺いたいのです。と申しますのは、あなた方が大義名分として引用されておる一九四八年十二月の国連決議というものの趣旨は、自由なる人民の意思による合法性、すなわち自由なる人民の意思によって支持された政府であるという点が、民主的にできた政府であるという合法性根拠になっているわけです。それが問題なんですね。あなた方の論理の根拠はそこじゃありませんか。今小坂さんは法律のフィクションだけで継続性合法性があるという説明をしておられますけれども、われわれが問題にするのは、その自由なる人民の意思基礎の上に立った政府であるかどうかという点が問題なんです。それがないということなんですね。それをわれわれが今までに追及いたしましたら、尹大統領がそのまま継続して就任していることが民意を象徴しておるのだ、こういうことで強弁をしておられたわけです。それが今度なくなったわけですから、従って、朴政権そのものの人民の意思とのつながりがこれで完全に立ち切れてしまっておる。しかも、この朴政権というのは、政府の論理でも、民政に移管する間の暫定的なる政権であるということは認めておられるおけですね。正しい民意を代表するものではないという点は認めておられる。にもかかわらず、暫定的ではあるが民意を代表する、民意によって支持されている、継続性があるのだというのは、尹大統領が就任している、留任しているという点を唯一の形の上での民意と今の朴政権とのつながりにしておった。そのパイプが切れたわけですから、民意とは完全に切れてしまっておる。しかも、今小坂外務大臣が言われるように、もし朴政権がその後民主的な政治をとっておられるならいいけれども、そうではありません。これは関連ですが、ちょっと長くなりますが申し上げておきますと、朴政権というのは二年の後ということを大体予約はいたしておりますけれども、これはいまだに異常な戒厳令措置をとっておるわけです。戒厳令措置をとって継続していなければ政権が維持できないということは、民意が支持していないという証拠ではありませんか。そのときにその戒厳令を異常に二年も三年も継続しておるという例はわが国にも外国にもほとんど例が少ない。単なる革命政権であるかという発生の初期があるのではなくて、戒厳令が解けないのですから。ということは、民意によって支持されていないということなんです。それをついたら、これは外務省の属僚のお考えでしょう、尹大統領が継続留任しているという点を民意の継続性、民意によって支持されておる継続性と言っておった。それが、今度の朴政権のやり方は、民政移管の方向へ進んでおるというのではなくて、政治的な追放令を出して、そうして、これは法律といいますけれども、実際は国会で審議されたのじゃないから、いわば戒厳令です。こんなものは内容は戒厳命令ですよ。それが、しかも、民主主義の方向に向かっていくのではなくて、逆に民意を押えつけるための政治的追放令というものを出した。それに尹大統領がいささか恥を知って、これ以上われわれはロボットとして留任するわけにいかぬというので今度やめたわけですから、いわば、尹大統領自身が、朴政権の政策というものは非民主的である、ますます独裁政治の方向に向かっていく、国連決議とは反しているものであるということを表明をして辞任したわけですね。辞任の原因もそこにあるわけです。従って、あなた方の大義名分とする四八年の国連決議、すなわち、民意によって支持された政府である、これが正当政府の論拠になっておったわけですが、その一切が形の上でも内容的にもこれでくつがえったと言わざるを得ないと思うのです。そんなものを相手にして交渉すべきでない。われわれがかねて声明を出しましたように、即時にこれは一ぺん打ち切るべきである、朴政権相手の交渉は打ち切るべきである、こういうわれわれは考えを持っている。従って、私は、その理由が、何も一方的な理由でなくて、正しいあなた方の論理で展開してみても、そこに壁にぶつかったではないかということを言っているわけですから、どうぞ虚心たんかいに一つ合法性の問題について総理の所信を伺っておきたいと思うのです。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の問題点は二つあると思います。第一は、今の朴政権が合法的なものであるかどうか、こういう問題。これは、お話のように、一九四八年の国連決議によって認められたものでございます。しこうして、これがクーデターが起こって、(「朴は違うよ」と呼ぶ者あり)——いや、韓国というものは認められておる。しこうして、昨年のクーデターによってこれが受け継いでおるかどうかという問題。そのときに、外務大臣が申しましたように、これはクーデターが起こったけれども、将来民政に移管する、そうして、ユン・ポソン大統領がやはりおられる、そこで、もうその瞬間において韓国というものは国連から認められている。クーデターはあったけれども、合法的なものと認められている。その証拠は、第十六回、昨年の国連総会にオブザーバーで出ているじゃありませんか。だから、もうそこでクーデター後の韓国というものは国際的に認められたことになる。(「認められた理由がなくなっている」と呼び、その他発言する者あり)いや、認められている。そこで認められておるということ、これは事実なんです。
  28. 森下國雄

    森下委員長 御静粛に。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 その事実が発生した後において、国家再建非常措置法によって、大統領事故あるときは他の者がかわるという規定を置いている。だから、そのときに大統領がかわったときに、国連で認められたこの事実を否定するわけにはいかない。だから、見てごらんなさい、私は、思うに、韓国というものは今後今の状態国連でも認められると確信いたしております。  それから、次の問題点は、戒厳令をしいているから民主的じゃないじゃないかとおっしゃる。皆さん御承知通り、戒厳令を今しいている国はたくさんあります。アジアの国に相当あります。それが半年であるからいいとか、一年であるからいかぬ、こういう問題じゃない。戒厳令をしいたときは民主的でない、この断定もできないと思う。だから、彼らは来年には民主的の方に移行すると言っておるし、われわれも将来民主的に移行するという前提のもとにこれをやっておるのであります。私は、戒厳令有無はこの合法性の問題を左右する問題ではないと思います。
  30. 穗積七郎

    穗積委員 関連ですからもう一問だけにいたしますけれども、今国連の問題が出ましたが、国連決議合法性趣旨というものは、先ほど私が言ったように、民主的な方法がとられておるかどうかということなんです。民主的な基礎を持っておるかどうかということは、尹大領が継続留任しておるということを原因にしたわけですね。だから、去年の国連決議から尹大統領辞任するまでの間の事実は、われわれはあった事実としてこれは認めます。ところが、国連決議においても、その合法性の理由として認められた条件というものがなくなっている以上は、当然その決議は継続すべきものではない。これは新しい事態に立ってあらためて討議すべき問題である。その立場に立てば、明らかに、尹大統領辞任というもので、朴政権合法性を認めた決議の前提条件というものがくつがえったのであるから、これは変更すべきものである。しかも、朴政権が今後向かおうとしておる方向、そして同時にそのことが尹大統領辞任の理由になったわけですが、それは民政に移管するのではなくて、民政とはほど遠い、民主的な政策とはほど遠い独裁的な断圧政治の方向へ向かおうとしておるから尹大統領はやめたということですから、尹大統領辞任の事実と理由はもう国連決議の前提条件というものを完全に消却してしまっておる。このことを事実の中で証明しておるじゃありませんか。それを私は言うのです。国連決議から尹大統領辞任までの間におけるの事実は認めますよ、事実はあったのですから認めるが、そのことを言っているのじゃない。辞任してからのことです。しかも、辞任の理由が明白じゃありませんか。これは明らかにその線に沿わざるものである、国連決議の精神に沿わざるものである、すなわち、民意によって支持された政府ではない、そういう政策の方向ではないということを理由にして尹大統領がやめておるのですから、これは明白だと思うのです。韓国自身、韓国国内においてそのことを証明しておるじゃありませんか。いかがですか、あなたの所論は全然違いますよ。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどのお答えで私ははっきりしておると思います。われわれの考え方は、民政に移すという前提で、クーデターはあったけれども、昨年の第十六回総会で今まで通り韓国というものを認めておるのです。その後におきまして尹大統領辞任されたからといって、厳然たる事実を否定するわけにはいかない。ただ、あなたは、民主的にこれから行なわれるか行なわれないか、行なわれないと言われておりますが、われわれは、民主的な国家にするための過渡期としてこれを見ておる。彼らはそういうことをすることは将来民主的な国家に引き継ぐ過程としてやっておるのでございますから、われわれとしては、そういうことは向こうにまかすよりほかない。そして、われわれは民主的国家になる暫定的なものだということを考えておるのでございます。これは向こうのやっておることが民主的であるとか民主的でないとかいうことはここで議論することは差し控えます。われわれは、民主的国家になることを前提としてやっておる、こういう考え方でございます。
  32. 穗積七郎

    穗積委員 関連ですから、あとでまた……。
  33. 木原津與志

    木原委員 それでは、時間がありませんので、請求権の問題についてただしたいと思います。  この請求権の基礎になっておる問題ですが、一九五七年の十二月三十一日付米覚書により日本韓国に対する財産請求権を放棄した。しこうして、その放棄にあたっては、アメリカの覚書にのっとって、対韓請求権を日本が放棄したという事実は考慮される、すなわち、その考慮されるということを、外務大臣は、これは請求権相互に相殺をされるのだ、対等額において相殺をされるその相殺を意味するのだということをしばしばこの国会で言われてきた。そこで、私は、前国会当時から、相殺にするというのであれば、相殺の基礎になる日本の対韓請求権の金額あるいはその明細というものを明らかにしなければ請求権の問題の解決にならぬじゃないか、こう主張いたしまして、その当時から、軍令三十三号によって接収された日本財産の明細、及び一九四八年米韓協定によってアメリカから韓国に移譲された日本の財産のリストを国会に提出してもらいたい、さらにまた、その没収された日本の財産の総額は幾らかということを明らかにしてもらいたいということを要求しておったのでありますが、もはや相当高度まで日韓会談が煮詰まってきておる段階においてすら、まだ没収された日本の私有財産のリストが国会に出ない、また、金額が幾らだということを政府から明らかにされないのでございますが、この軍令によって没収され、それを韓国に移譲された日本の財産の総額について、ここであらためて政府から明らかにしていただきたいと思う。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アメリカ解釈については、何べんもここで申し上げましたが、そういう請求権の問題をきめるにあたって関連がある、考慮する、こういうことでありますから、これは、韓国側が考えるだけでなくて、日本側もこれを考える、こういうことであろうというのがわれわれの主張であります。そこで、いろいろ日韓会談もやっておりますけれども、どうもここで資料を提出しなければならないというような段階まで日韓会談はそこまでいっていない、こういうことでございます。
  35. 森下國雄

    森下委員長 木原君にちょっと申し上げますが、約束の時間が過ぎております。——よろしゅうございます。それでは継続願います。
  36. 木原津與志

    木原委員 いずれにしましても、日本の対韓請求権の基礎が、たとい放棄はしたといえども、それが対日請求権のとりきめの際に考慮されるということでございますから、一体幾ばくの日本財産が没収されてそして韓国に移譲されたか、これが明らかにならなければ請求権の問題の交渉には私はならぬと思う。特に、また、アメリカから当時一九四八年に韓国に譲渡された日本の財産については、米韓移譲協定の付属文にそのリストがついておるはずであります。不明だとは言えぬと思う。そこで、これはいつ国会に出されるか、また、日本の放棄した財産が明らかにならなくとも、あなた方の方で今日の日韓会談においてどんぶり勘定的に請求権の金額を確定されるつもりであるかどうか、その点を明らかにしていただきたい。
  37. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 ただいまの御質問で、アメリカ韓国日本の財産を移譲しましたときの米韓協定の付属リストでございますが、これは、移譲しましたときに、アメリカが一時借りましたものと、それから買い取りましたもののリストでございますから、ごく例外的な一部のもののリストでありまして、全体のリストにつきましては今アメカリに要求しておりますが、これは非常に膨大なものでありまして、まだ全部そろっておりません。ごく一部しか参っておりませんが、もう少し時間がたちますとあるいは全部そろいますか、古いことでございますので、完全なものができるかどうかと思っておりますが、渡しました総額につきましてはわが方もよくわかっておりますし、アメリカ側の方でもその総額についてはわが方の数字と同じ数字を言っておりますから、総額については間違いございません。
  38. 木原津與志

    木原委員 それでは、この没収された日本財産の総額は幾らか、明らかにしていただきたい。
  39. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これは、交渉の過程でございまして、今のところ発表しないことにいたしておりますが、先方に対しては十分主張いたしております。
  40. 木原津與志

    木原委員 それでは、いつかの機会に、アメリカが没収した財産の総額及びアメリカがこれを韓国に譲渡した財産のリストを国会に提出される時期がやってくると思いますが、その際はっきり提出するということをお約束できますか。
  41. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 交渉の過程におきまして、交渉ともにらみ合わさなければならぬと思います。それと、リストがまだごく一部しか参っておりませんので、十分そろいました上で、交渉の過程とにらみ合わせながら、発表できるときになりましたら発表いたしたいと思っております。
  42. 木原津與志

    木原委員 それじゃ、これで終わります。
  43. 森下國雄

  44. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がございませんから、問題をしぼって質問をいたします。  先ほど来、木原委員からも、あるいは関連して穗積委員からも質問がございました尹大統領辞任に伴う朴政権合法性の問題でございますが、二十二日の新聞を見ますと、外務省が、これは公式か非公式か知りませんけれども尹大統領辞任によって朴軍事政権合法性がなくなるわけではないと公式見解を発表した。これは新聞に載っておりますが、これをいま一度、この外務省の見解を、新聞に載っておるのは合っておるのかどうか、外務大臣からお答えをいただきたい。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど申し上げました通りで、尹大統領個人の問題ではなくて、大統領治下においてこの一年間にできた国家再建非常措置法規定によって後任者が選ばれるということになりますれば、そこに合法性の継続が認められる、こういうことであります。
  46. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 昨年の十月二十七日の本会議で、わが党の松本委員質問に対して、その合法性の点で池田総理が答弁をなされております。その中で池田総理は第一番にやはり一九四八年十二月の国連総会における決議のことをおっしゃっております。それからまた、外国を見てみなさい、三十四カ国の国家がやはりこれを承認しておる、そして、地理的に経済的に歴史的に非常に緊密な関係にある韓国だから、早く日韓会談を成立させることが日本韓国両国人民の利益になるのだ、こういう御答弁をなさっておりますが、そのお考えは、今の事態においてもそのようなお考えでしょうか。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 変わりはございません。
  48. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、まず一九四八年の国連決議が、すでに現在の事態についてはその合法性についての根拠を失っておるという点は、再三これはわが党委員から出されておる通りです。そしてまた、三十四カ国の承認というのは、これは、国連決議関連をして、たった一つの短い細い糸であった尹大統領に対して、これが合法だから、継承性があるからということで、三十四カ国は信任状を尹大統領に出されておるのですね。その点と関連をして、現在この事態に対する外国の反響は一体どうですか。三十四カ国承認をしておるというのですが、信任状を出しておるというのですが、どうですか。
  49. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この韓国承認の問題は一九四八年の決議からでございまして、その後も変わりはない、こういうことであります。今度もおそらくあらためて承認の問題というのも出ないと思いますから、変わりないことだと思います。
  50. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 二、三例をあげますけれども、昨年の五月十九日に尹大統領がやはり辞任をしたいといって発表した。ところが、二十日の日に、軍の方から強要されまして辞意を撤回したわけですね。この点に関して、当時の金弘一外務部長官は談話を発表しております。その中で、憲法機関としての大統領は存続しており、各国に対し承認を求める必要はない、承認を求める必要がない根拠は、尹大統領がずっと継続して在任しておるからということを、金外務部長は談話として発表しておるわけですね。それからまた、韓国に、国連韓国復興委員団というのがあるわけですね。これは選挙に基づく民主的発展を監視、援助する任務を持つ、こういう国連韓国復興委員団というのがある。これが昨年二月に東京に会合して、国連総会に提出する年次報舌を作成することになったわけですが、そのオランダの代表がやはり同じようなことを言っておるんですね。昨春の民主革命によって政府が転覆されたが、その秋の国連総会はフルシチョフは出席していたにかかわらず何も問題は起きなかった、今度は合法的な尹大統領が留任しているならなおさら問題ではない、こういうことを言っておるわけですね。外国がこれを承認しておるというその根拠は、やはり、総理が昨年本会議で答弁されておったように、四八年の決議に基づく韓国、——これは韓国承認でございますが、これが合法政権であると言っている、このことにやはり基礎を置いているわけですね。それが今や全部くずれた。あなた方は、非常措置法ですか、これが後にできて、そうしてこれを尹大統領は認めておって、その中の十一条によって、大統領がやめたら自然に最高会議議長大統領を代行するのだ、こういうことを言っておらっしゃるですけれども、これは三十二人の若い軍人が勝手にきめためちゃくちゃな法律で、……   〔発言する者あり〕
  51. 森下國雄

    森下委員長 御静粛に。
  52. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 憲法も何もかも御破算になる。これが、きめた法律があって、これに準拠してなんということは、これは全く詭弁きわまりないです。これは問題にならないですよ。むしろ、外務省がこれまで合法性について言っておる中に、これは数カ所言っておりますが、これを発表にならないから仕方がないですけれども、二十二日に公式見解を出された。これならこれで私は質問をしたいと思うのですけれども、こういうことを言っていらっしゃるのですね。戒厳令は大統領によって承認された、それから、朴最高会議議長は、国連尊重、民政移管などの方針を宣明し、声明した、憲法は停止されたが一部は残っておる、これはどうですか、こういうことですか。
  53. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今お話しになりました金外務部長ですか、それからアンカークの委員会の決定、これなどはみな、前の張勉内閣と今度の朴政権との間の継続性合法性、その問題を言っているわけです。ところが、今度はユン・ポソン大統領がやめたあとどうなるかということを議論しておるわけです。ところが、六月十九日に大統領がやめたいと言って、また残ると言って、そのあとの十九日に国家再建非常措置法というのを大統領がきめたわけです。大統領がそういうことを決定した。そこで、大統領の決定したこの非常措置法、これは憲法を上回る部分もございますが、とにかく韓国における最高法規であるわけです。そこの最高法規の規定によって、尹がやめたあとはだれになるかということがきまっていて、それを受け継いだ人がなるということになれば、これはもう合法性は当然継続しておる、こういうことであります。
  54. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大体、憲法を勝手にくつがえすような、そういう特別措置法を作るような政権、これがもう大体話にならぬわけです。問題にならぬですよ、幾らそういうことを言われても。形式的な、どこかつるをたどって言われておるようですけれども、それは納得をされませんですよ。問題にならない。私は、きょう質問するから、去年の委員会の議事録を読んでみたのです。ところが、——中川条約局長というのはどなたですか、あなたに聞きます。あなたは外務大臣のかわりに答弁をしておるから、これは責任ある答弁だと思う。「従来の憲法というものも相当部分これが実質上停止されたような形になっておるというような意味におきまして、はたして今の政府それ自体、今の内閣それ自体が自由選挙に基づいてできたものであるかどうか、あるいは自由選挙に基づきました国会というものから選出されてそれを大統領が任命した、こういう意味ではたしてあの決議にぴたりと当てはまっているかどうかという意味で仰せられるなら、これは実質はあの決議とは違ってきておる」とあなたおっしゃっておるのですね。これはまだ尹大統領がやめる前の去年の話です。まずそれを聞きましょう。
  55. 中川融

    ○中川政府委員 私もその当時の答弁を正確には覚えておりませんが、速記録でお読みになったことはその通りであると考えます。
  56. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、二十二日の外務省が発表しておる、憲法は停止されたが一部は残っておるなんという理由は、これはあなた自身が否定しているのだから、二十二日の発表は、これは問題になりませんですね。  それから、あなたはさらに、これは私ほんとうかどうか見ましたが、活字は間違っておらぬと思うのです。「やはりほんとうの意味での自由な民主主義というものが韓国において行なわれておらないということに非常に怒りを感じまして、」——それはあなたがそんたくして言っておるのですよ。朴政権が「その方法としてああいういわば非常的な手段をとった」わけでございまして、それによってできました政権も、要するにほんとうの意味の民主主義を実現するための非常的な手段であり、非常的な事態である、」しかしこれは民主的な政府を作るためのやむを得ない非常的な手段である、こうあなたは言っておるのです。そこで、私はちょっと聞きたいのですが、民主義を確立するためには非民主的な手段でやってもよかとですか。外務大臣も同じことを言っておるのですよ。民主的なものを作るためには非民主的な手段を弄してもこれはやむを得ない……。   〔発言する者あり〕
  57. 森下國雄

    森下委員長 御静粛に。
  58. 中川融

    ○中川政府委員 私のその当時の答弁でございますが、それは、今御指摘になりました通りクーデターを行ないました朴政権考え方をそんたくして実は御答弁したのでございます。従って、その新しい朴政権の意図は、真の意味での民主主義を実現するためにいわば非常的な手段を使ったのだ、こういうことであろうということを申し上げたのであります。
  59. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで、これは余談になりますけれども、だから、池田先生の率いられる自民党は、多数決という民主主義のルールを使って民主主義を抹殺する全く逆の考え、しかし表裏一体考えです。こういうことをしばしば今までもなされたじゃありませんか。そうですよ。民主主義の手段である多数決という手段を使って民主主義を抹殺した。これは全く同じ考えですよ。非民主的な方法で民主主義を確立するというような考え方があるから、そういうことになるのです。  それで、先ほども穗積委員から話があっておりましたが、これは尹大統領唯一の合法機関である。しかも韓国における最高の機関である。この方がやめた理由が二つありますけれども、そのうち特に重要なのは、政治活動浄化法に反対をしてやめておるのです。ここが問題です。単に自然と病気だからやめた話じゃないのですよ。ここが問題です。そこで、この尹大統領考え韓国民もこれを支持しておる。このやめたことについて、なるほどそうであろうということを言っております。問題は、やはり、韓国国民がどう朴政権を見ておるか、朴政権の今とっておる政策をどう見ておるか。それを代表する唯一最高の方であった尹大統領が、この政治活動浄化法関連をして現在の軍政の行き方に反対をしておる。ここに私は問題があると思うのです。(発言する者あり)今干渉だと言われましたが、だから、この朴政権の性格について判断を下すのは、これは韓国民です。韓国人民がきめる。それを、日本外務大臣が、これは合法とか継続性があるというのは、むしろそっちの方が韓国に対して内政干渉です。韓国人民がまだきめてない。どう思われます。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は、御質問があるから、御質問にお答えを申し上げました。
  61. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務大臣のそういう発言が向こうの内政干渉にならないかと言っているのですよ。
  62. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御質問がありますから、法律的に見てどうかというから、私は、法律的に見ればこういうふうになりますというお答えを申し上げているわけであります。私はもとより民主主義者でありまして、国民多数の意思が議員を選出し、そして議会において多数決によって事がきまっていくという形を心から信奉しているものであります。しかしながら、外国においていろいろなことが出ておるわけであります。それを一々この日本のわれわれの考え方通りに当てはめて、これでなければいかぬという論評をしていくことは、実は外務大臣としてはそういうことを今までやっておらぬのでございまして、私もさような方針で、いろいろな国で日本の政体と違う政体をとっている国はたくさんございます。共産主義の脚もあるし、クーデター政権ができて、そして戒厳令をしいている国もあるし、いろいろございます。それについて法律的にどう解釈するかという御質問があれば、私はこの立場でこういうふうに思いますということを申し上げているだけでございます。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 来年民政に移管する、それも一つ合法性根拠にされておるわけですね。(発言する者あり)——ちょっと、気が散っていけませんですがね。隣が騒がしいから。そこで、来年民政に移管するというその保証について、外務委員会でも松本委員その他から過去質問をされております。たとえば、わずか五カ月か六カ月くらいの間に三百から四百くらいの法令、政令を出しておるのです。一日に直すと二つくらい政令、法令を出しておる。現在、もう韓国人民はいつどういう法令が出るのかてんでわからない状態ですね。民主的な政権ができるという保証の点については一体どのような見通しを持っておられるか。
  64. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国国内事情をそんたくいたしましていろいろここで申し上げることは差し控えたいと思います。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうですか。一つ合法性の重要な柱として、来年民主的な政権ができ上がる、民政に移管されるということをあなた方が合法性の大きな根拠にされておりますね。従って、現在は暫定政権でもこれをやっていくのだということを言われておるから、私は、あなた方が言う合法政権になるというその保証、見通しというものは一体どういうところに置いておられるか、伺ってみたい。過去の、今までの朴政権の行き方から見ると、われわれが願うような民主的政権に移行される、民政に移行される確証がない。今までの事実から、過去の事実から見ましてどうですか。
  66. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府としまして、外国政府の言っていることを、——大体外国政府が責任を持って言っておれば、一応そのことによって事を判断していく、これはもう国際間の常識でございます。それ以上そんたくしていろいろ申し上げることは差し控えたいと思います。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その点は、過去にも追及されておるように、たとえば昨年伊関局長が行かれ、あるいは野田先生たちも行かれて大丈夫だと言った後、すぐああいう政変が起こっておるわけですね、事実。それからまた、昨年の五月十六日の革命で最高会議議長になって実権を一つに握った張陸軍中将というのですか、この方がわずか半年くらいの間に今度はその革命政権から死刑の宣告を受けておるのですね。これは事実ですよ。否定されないでしょう。そういう一連の事実。あるいは、過去半年くらいの間に四百くらいの政令、法令を作って、それは全部どういう目的で作られておるかというと、反共ですね。それから軍事体制の強化。そうして、こういう行き方に反対する者を取り締まるというそういう法令が次から次出ておるのです。そしてあらゆる弾圧が行なわれている。こういう過去の事実から見て、来年民主的な政権に移行する、民政に移行するという保証はないでしょう。過去の事実から見てどうでしょう。
  68. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 来年民政に移管するということを公約しておりまして、国連でもそういうことを認めて決議をしておるわけであります。従って、われわれも、そういうことを韓国政府が行っておるから、これはそうするだろうというふうに見るのが常識だと思うのであります。しかし、問題は、今韓国で急に政変があったからどうこうといろいろおっしゃいますが、結局、そういうことをこちらでいろいろ言ってみても、どうこう言うことは実益はないのじゃございませんか。問題は、日韓会談を反対する、こういうために言っていらっしゃるのだと思います。私は、問題はそういうところにあるのじゃなくて、一度きめたことがあとに継続されるかどうかということ、今までの韓国政権がきめたことが、かりに会談ができて妥結があって、そのきまったことが次にできる政権との間に継続されるかどうか、このことがむしろ重要なのであって、そういうことであるならば私はいろいろ御議論があるのは当然だと思いますが、今韓国のやっておること自身を日本国会でいろいろ非難してみても、これは国として何ら実益はないことであろう、私はそういうふうに思います。
  69. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 尹大統領がやめられて、新聞報道によると、きょう最高会議を開いてあとどうするかということをきめるということを読んだのですが、尹大統領がやめた後、その非常措置法の十一条で自然にこれはおのずから朴議長が代行することになるのですか、それとも旧憲法にある手続でそういうことになるのか、この見通しはどういうようにお持ちでしょうか。
  70. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは、どうも、韓国できめることでありますが、一応代行という形になるんじゃないかと想像されます。
  71. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、私は、先ほどの、来年の民政移行への保証、この点については、過去の委員会におけるやり取りを見ても、外務大臣は、最後にはきまって、あなた方は反対しておるからそう言うのだ、われわれはこれを推し進めたいからこう言うのだ、(「そんなことは言わないじゃないか」と呼ぶ者あり)——いや、あなた、それは見てごらんなさい、読んでいただくとわかります。最後にはそういうことになっておるのが多いです。全部とは言いませんが、多いです。そういうことでは、私はこれは外務委員会の慎重な討議にはならないと思うのですね。そこで、去年の八月十二日ですか、朴議長声明したところによると、スケジュールとしては明三十八年の三月に憲法を制定する、そして五月に総選挙をするというようなスケジュールになっておるようですが、そうでしょうか。
  72. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 御質問通り、そういう予定になっております。
  73. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、三月には議会はないわけですね。だから、憲法はその革命政権によって起草されるということになりますか。
  74. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 すでに、本年の一月から、そういう準備のために、何と申しましたか、法制調査委員会というふうなものも作りまして、広く政府並びに在野の意見を聞きつつ憲法草案を作っておる、研究しておるという段階でございます。
  75. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうしますと、結局、政治活動浄化法とも関連をして、新しくでき上がるであろう今度の政府には、軍の発言力なりあるいはその統制力が大きく残るとわれわれ思わざるを得ぬのですが、その点はどうでしょうか。
  76. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 そういう点ははっきりいたしませんが、ただ、今問題になっておりますのは、国会の一院、——今二院制であるところを一院制にするか、二院制のままで置くか、国会議員の数をどうするか、あるいは大統領選挙を直接選挙にするか間接選挙にするかというふうな、普通各国で問題になるような点が問題になっているように聞いております。
  77. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんから、もう結論に入りますが、(「時間があってもやらぬ方がいいよ、そういう意見は」と呼ぶ者あり) 私も議員の一員でありますから、まずいかもしれませんけれども、権利がありますですね。委員長、ああいうやじは不謹慎だと思いますね。(「悪いやじなもんか」と呼ぶ者あり)——いや、悪いとは言っておらぬ。不謹慎じゃないですか。(「委員長、注意しなくちゃだめですよ」と呼ぶ者あり)まじめな審議が続けられぬではないですか。
  78. 森下國雄

    森下委員長 静粛に願います。
  79. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほどから申しておりますように、インスタントの法令、政令がどんどんでき、そして、あなた方は単なる形式的なわずかな点をつかんで合法性を言っておられますけれども、今の独裁政権クーデター政権がわずかの期間にそう民主的な政権に変わるというようなことは、これはあり得ぬじゃないですか。あなた方の考えでいきますと、軍人が家に帰って軍服を脱いで背広を着る、あるいは着物を着る、それくらいのことなんです。来年民間政府ができましても、これは単なる今の軍人どもが軍服を脱いで入っていくだけの話じゃないですか、今の見通しからいくと。こういうことが見込まれる政権日韓会談を進められるというその政府態度に非常に問題がある。そういうことを私は申し上げたいわけです。  時間がありませんから、最後に一点だけ聞かしていただきます。李ラインの問題でございますが、これは、韓国の方は率直に、請求権を大幅に日本が認めてくれればその代償として李ラインのことも考えるということをはっきりおっしゃっていらっしゃるわけですね。そしてまた、日本政府としても、この日韓会談が成功しなくちゃ李ラインは片づかないのだというような印象を国民に与えておられる。その辺の見通しをまずお伺いしたい。
  80. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 李ラインというものは国際法上認められないラインであります。従って、私どもはこれを認めないという気持でおります。ところが、韓国側はこれを認めておるのですね。何といいますか、あそこで船をつかまえたりいろいろしている。しかし、それは客観的な根拠がない。結局、日本韓国との間の国交が正常化すれば、双方が合意してこういう問題については向こうは撤回する、こういうことになるであろうということであります。
  81. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、これは時間がないからまたこの次に機会があったらお伺いを続けたいと思うのですが、これは本来国交正常化の問題とは関連なしに解決されるべき問題ではないんでしょうか。過去の経過から見てもそれは言えると思うのです。法的にもそういうことが言えると思うのですが、その点はどうでしょうか。実際問題は伺ってないのです。
  82. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実際上これを撤回させる道は、やはり話し合いによるということがよろしいのだと思います。
  83. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そういうことを伺ってないのです。国交正常化の話とは本来関係なく、これは政府として責任を持って解決すべき問題ではないんでしょうか、それをお伺いしておるのです。(「実際問題としてできない」と呼ぶ者あり)実際問題としてできないのならできない、本来はそうであるけれども、実際問題としてはできないということであれば、それでいいのですよ。
  84. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実際問題としてこれを解決するには、やはり、国交を正常化して、そして解決するということ以外にないじゃないかということであります。
  85. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、最後に、現在どの程度まで進んでおるか、もしそれが言えましたら、言えるところまででよろしゅうございますから、それをお伺いしたい。
  86. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 韓国側の外務部長官と先般来話し合いましたが、相当に考え方が大きく開いておるということであります。
  87. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、李ラインの問題は、時間がございませんから、この次機会があったときにさせていただきます。
  88. 森下國雄

    森下委員長 関連質問通告がありますので、これを許します。穗積七郎君。
  89. 穗積七郎

    穗積委員 今日、日韓会談の交渉の相手としての今の韓国政権が、内部的矛盾をだんだん深め、これを露呈して、一つ合法性基礎がなくなったこと、それから、もう一つは、今の朴政権の安定性が非常に危うくなってきていること、そういう点が現われてきていると思うのです。そういうものを相手にして交渉をやり、または経済的な資本投下をやることがはたして正しいことであるかどうか、私ははなはだ疑問に思っておるわけです。そういう意味で先ほどお尋ねしておるわけです。そのことは、何もけちをつけるのじゃなくて、韓国朴政権の内部的矛盾の現われなんですね、向こうから出ておる原因なんです。そこで、合法性の問題について、先ほどからの総理の論理に従って私はよく整理いたしますと、一九四八年の国連決議韓国というものを独立国家として認めて、そしてそこにおける李承晩政権というものを合法政権として承認する、こういうことになってきた。ところが、一昨年に革命が起きまして、それで次に出て参りましたのが張勉政権であるわけです。張勉政権合法性なり法律的な継続性の問題については、これは自由なる意思による選挙が行なわれておるという点を張勉政権合法性基礎としてこれを主張されたわけですね。ところが、今度朴政権が軍事クーデターをやって生じてきた。そのときに、この合法性なり法律継続性根拠を、張勉政権時代の民主的な自由なる選挙民意思を代表するものとしてでき上がった尹大統領の継続留任という点に朴政権合法性を認められてきたわけです。ところが、それがなくなって、それをわれわれが追及すると、これはあなたの方の論理ですよ、あなたの方の論理に自己矛盾を生じておりはしませんかと言いますというと、今度は国家再建非常措置法というものができておって、これは憲法に上回るものであるから、これによって合法性並びに継続性があるのだ、こういうことを言っておられるわけです。そうなると、実はその国家再建非常措置法なるものは一体いかなるものであるか。すなわち、合法性基礎というものは選挙民の自由なる意思に結合した政府であるという点にあったわけですけれども、それがくずれて参りまして、そして、残った国家再建非常措置法というものは、今言いましたように、国会を否定され、憲法を否定されておりますから、従って、もうすでに民意によって作られた法律でも何でもない。すなわち、私が先ほど申しましたように、今の朴政権の軍部の命令にすぎないわけですね。いわゆる国際的に承認をさるべき、または民主的な方法によって作られた法律とは全然違います。一体、これは、あなた方の言う選挙民の自由なる意思、有効なる管理のもとに行なわれたと観察される選挙基礎を置くこの唯一基礎というものは、尹大統領辞任でなくなってしまう。そして、残った国家再建非常措置法というものは一体いかなるものでしょうか。自由なる選挙民意思も何も結集したものではなしに、単なる一片の軍人の命令にすぎないわけですね。そういうことで、合法性は全くその基礎を失っておる。今までの経過はあなた方の論理に従って私は言っておるのですよ。それで、なおかつあなた方の論理の自己矛盾がここに現われておるのではないかということを言っておるわけです。総理のお考えをお伺いしたい。
  90. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御質問を伺っておりますと、国際的に見た政権合法性の問題と、それから、韓国自身の政権が民主的であるかどうかという問題とが混浴しているように私には存ぜられるのであります。私どもは、問題とすべきものは、国際的に見て、国際法継続性があるかどうかという点と、国連決議に従いまして、これがその通り認められるものであるかという点と、この二つであろうと思うのであります。  国際法的に見て、この継続性ありやいなやということは、これは韓国自身の法律が民主的な手続によってできたものかどうかということを判断するよりは、そこに、先ほど申し上げたような解釈でいくのが、これが普通の解釈であります。  それから、国連決議の解釈については、これが前との継続性については、先ほどからユン・ポソン大統領の問題も出ておりましたけれども、しかし、それはそれでもうできておるわけです。それで、国際法的に見た継続性の問題に従いまして、今度のできる政権との継続性はある。それから、さらに、今後、明年に考えられておる民主政権との間の暫定政権である、こういう考え方に基づいての国連決議から見れば、これは当然その性格が変わったものではない、こういうことだと思います。
  91. 穗積七郎

    穗積委員 大臣の御答弁ですが、あなたの方が実は混淆を来たしているわけですね。一九四八年の決議というのは、三十八度線南の韓国というものは認めている、これは継続しております。これは継続しておると言っていいでしょう。ところがその内部における政権がはたして合法政権としてこれを認めるか認めないかということについては、変化が生じているわけですね。国連における韓国というものの決議は、その内容は二つあるのです。三十八度線南の国家を認めるということ、韓国を認めるということ、これは国家の問題です。ところが、もう一つは、その国家の内部における主権の問題です。その政権の問題です。それについては、実は国際決議というもので韓国内部におけるその政権の民主性によって合法性が認められているわけです。その基礎がなくなったのですから、従って、韓国そのものの存在を否定するということとは別に、現在ある朴政権合法性というものは、その政権の内部的な民主性によって、国際決議はそれを条件としてその政権承認しておるわけです。その国際決議の条件というものがなくなったではないかということを言っておるわけです。国家承認の問題とは別なんです。
  92. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それは違うのであります。十六回国連総会における韓国についての扱い方は、朴政権というものは、暫定政権である、民主政権への移行を約束している政権である、しかも、国連決議を、国連憲章を尊重するという考え方に立っている政権である、こういうことにおいて認められているわけであります。その点は、明年民主政権に移行するという約束が変わっているわけではございませんし、この実質は変わっていない、いわゆる民主政権への暫定政権としての実質は変わっていない、だから、その問題も変わらない、こう申し上げたのであります。
  93. 穗積七郎

    穗積委員 総理、ちょっとこっちを向いて下さい。きょう実は初めの与野党間の約束では三時間以上やろうということであったわけですが、あなたの御都合で実は時間が圧縮されてきているものですから、この重要な問題について十分な審議ができないわけです。残った分を私は留保いたしておきますが、大事な点ですから、総理自身が責任を持って交渉されることですから、最後に締めくくって総理にお尋ねしたいと思います。  今の問題は、お聞きの通り政権合法性の問題というのは、その政権が民主的な基礎を持つ可能性があるかどうか、持っておるかどうかという点で、国連でそれを条件としてやっておった。ところが、その条件が二つともくずれた。すなわち、尹大統領辞任と、あとに残った国家再建非常措置法なるものは、これは民意によって結集された法律ではなくして、軍人の一方的ないわば軍令にすぎない、こういうものなんですね。そこでわれわれは言っておるわけです。そうして、それを追及すると、今度は外務大臣はまたするりと逃げて、そうして、民政に移管されることが予約されているからと、こう言われるわけなんです。民政移管の問題については、先ほど言ったように、今度の尹大統領辞任の理由は、その民政に移管することを約束している朴政権が、その正しい民政ではない、それに断圧を加えるための政治活動浄化法というものを出して、その方向が民政の方向ではなくて独裁の方向を朴政権は進みつつあるということで辞任をした。だから、それはわれわれがけちをつけているのではなしに、朴政権内部におけるこれは自己矛盾なんです。尹大統領辞任の原因並びに辞任の事実というものはそうです。それを私は言っている。  さらに、時間がありませんから、続いて関連をしてお尋ねして、一括してお答えをいただきたいのは、合法性の問題と関連する点は、これは安定性の問題です。安定性の問題は、今後朴政権と交渉していろいろな取りきめをし、続いて経済的な交流を始めるということになりますと、安定性という問題は、非常に重要です。私は、時間があれば、この合法性だけでなしに、安定性を実に欠いているという点を具体的事実の中で御説明を申して、そうして総理のお考えを伺おうと思っておりましたが、この安定性はくずれつつあるのです。すなわち、くずれつつあるからこそ、無理やりにこういう政治浄化法を作った。さらに重要なことは、去る一月二十二日に朴氏は談話で、もし来年になって民政移管をしたときに、われわれの意に満たないような政権なり政府ができるならば、そのときには再び軍事クーデターをやるのだという意思表示をしているわけです。これは、一体、民政移管への保証というものは、この二つの事実をもってしても、浄化法と、それから今の声明とをあわせて考えましても、さらに国内における経済の行き詰まり、国民生活の窮迫、弾圧の事実、これらをあわせてみまして、不安定性が出てくる。これは、前に細迫委員から質問しておりましたように、朴政権が発表いたしましたところによっても、四つのクーデター陰謀というものがもうすでに露呈されているわけですね。こういうように総括をして合法性も安定性も全く根拠のない朴政権を相手にして、予定通りというよりは、アメリカ朴政権が要求するスケジュールによって日韓会談一体お進めになるおつもりであるかどうか。われわれとしては、この際これを一度打ち切るべきであるということを主張しておるわけです。ところが、総理は、それでもなおかつ、この国民不満と疑惑を残しながら、無理やりあそこに突っ込んで、アメリカ並びに朴政権の要求するスケジュールに従って早期妥結を無理やりに作り上げる、そういうことをおやりになるかどうか。もしそういうことをおやりになるとするならば、合法性も安定性も基礎を危うくしてきた朴政権を相手にしてやるということは、それはかいらいにすぎない。そうして、日本アメリカがむしろ南朝鮮に進出、侵略を試みる、この日本帝国主義の再進出ということが、実は、韓国の民衆のみならず、アジア諸地域の民衆に不安を与えている。そのことをあなたの政治行動の中で証明することになるわけです。そういう点で、われわれは、今後のあなたの交渉に対する態度、判断、これは国民のひとしく関心を持ってながめているところですから、今後のスケジュールについては、もう少し合法性なり安定性の問題、特に安定性の問題については、今後の韓国における政情、民意の動向、これらを観察して、しかる後に態度を検討さるべきだ、少なくともそうあるべきだと思うのですが、今後の交渉に対するあなたの方針、これを総括してこの際伺っておきたいと思うのです。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、日韓交渉におきまして他国のスケジュールなんか全然知りません。また、そういうことはあり得べきことじゃございません。われわれはわれわれの考え通りにやっておるのであります。しこうして、今の朴政権の安定性継続性等につきましても、及ばずながら十分検討はいたしております。これは交渉についてはそういうことは当然のことでございます。あなたの御意見意見として聞いておきます。私は、日韓会談を早くまとめて正常化するということは国民の世論だと思う。しかし、それが取り急いで変なことになってはいけません。あらゆることを考えながら慎重にやっていくつもりでございます。
  95. 穗積七郎

    穗積委員 関連して今のことについて外務大臣から答弁をいただきたい。それは、今度の尹大統領辞任後、報ずるところによると、あなたは閣議で情勢を少し再検討すべきであるという慎重論の意見を発表されたと伝えられておりますが、その真意はどういうことでございますか。
  96. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私は情勢を再検討するなどとは申しておりません。ただ、交渉の相手国でございますから、十分相手国の考え方というものも私どもはよく研究していく。これは従来からやっております。
  97. 森下國雄

    森下委員長 川上貫一君。
  98. 川上貫一

    ○川上委員 きょうは、総理もおいでになっておるのでありまして、日韓会談の問題だけについて御質問をいたしたいのでありますが、質問に入ります前に一つだけ言うておきたいと思います。  政府は、今まで、朴政権韓国政権を、国連が一九四八年十二月十二日にきめた決議、これを非常にたてにして、合法的な民主的な政権である、これと交渉するんだ、こう言うてこられたのですが、これは全部くずれた。この一九四八年の決議は、今までの各委員諸君が質問されたように、この決議の焦点というのは、第一が、国際連合臨時朝鮮委員会の監察ということ、第二は、朝鮮選挙民自由意思の有効な表明ということ、第三は、選挙に基づくものであるということ。これが全部なくなった。国連をたてにとることはもう全然できなくなったということ、これだけはもう明瞭でありますから、御答弁は要りませんけれども、このことだけはお考えになっておく必要がある。今後の御答弁には慎重にうまく考えて御答弁なさらぬと工合が悪い。  第二の問題は、安定性の問題を穗積委員が言われましたが、これは安定性がないということです。それから、民政になる、民主主義の政府になる見込みはもうありません。万人が認めておるということです。これが民主的な政府になるかならぬかということは、政府の答弁でなるのじゃありません。事実でなるかならぬかの問題なんです。なりっこない。これだけははっきり私はここで断言しておきたい。   〔委員長退席、野田(武)委員長代   理着席〕  第三点ですが、政府国連々々ということを非常に強く今まで言うてこられましたが、国連憲章二条七項、これは国内問題には干渉できないことになっている。朝鮮の問題は国内問題。いま一つは、朝鮮問題は戦後処理の問題でありますが、国連は戦後処理に介入してはならぬのだ。これは憲章第百七条できまっている。この条件によって、国連憲章自体から、国連韓国政府唯一合法政府だとかなんとかと言うことが憲章違反である。この問題についてはおそらく論争が起きると思いますけれども、この論争については相当な時間がかかる。われわれの見解は、国連がこんなことをやるから朝鮮問題が今日のようになった。あの当時は、国連というものはアメリカの投票機械だった。アメリカがこれをやらした。このために今日の朝鮮のこのような問題を起こしている。ここの根本の問題がある。このことを考えずして末のことだけ言うたのでは、朝鮮問題のほんとうの解決に対する国際法的の解釈も事実上の処理もできないということを私は申し述べて、御答弁は要りません。これは後ほど他の機会にこの問題を特に取り上げて御答弁を願いますから、きょうは御答弁は要りません。われわれの朝鮮問題に対する基本的な見解を述べておきます。  質問に入ります。朝鮮人民共和国を承認しておる国の数と、その人口を一つお知らせ願いたい。  時間がないからまとめて聞きます。朝鮮民主主義人民共和国を承認しておる国で、社会主義の国でない、社会主義圏以外の国で承認しておる国の名前、これをお知らせ願いたい。  第三には、朝鮮の休戦協定で三十八度線から北の軍の代表として署名した人の名前とその資格、どういう資格で署名をしてあるか。  この三点、これだけをお聞きします。
  99. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 北朝鮮承認しておりますのは十五カ国で、ソ連、中国、ハンガリー、ブルガリア、ルーマニア、アルバニア、チェコ、モンゴル、北ベトナム、ポーランド、東独、キューバ、コンゴ、マリ、ギニア。人口につきましては、これを総計いたしますから、ちょっとはっきり覚えておりません。  今の休戦協定に署名した人の名前は、ちょっとこの場ではっきり覚えておりません。
  100. 川上貫一

    ○川上委員 政府委員の方、総理大臣までおいでになっておるのですから、だれか覚えておられると思うのですが、どういう署名で、だれでしたか。
  101. 中川融

    ○中川政府委員 一九五三年の朝鮮休戦協定、これに署名いたしましたのは、米国の軍司令官のマーク・クラーク、それから、共産側では朝鮮人民共和国の元帥であります金日成という人、それから、中共の義勇軍の司令官であります彭徳懐、この三人が署名しております。
  102. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、三十八度線以北の軍の代表は、朝鮮民主主義人民共和国最高指揮官の朝鮮民主主義人民共和国の元帥金日成ということになっておる、こう承知してよろしゅうございますか。
  103. 中川融

    ○中川政府委員 軍事停戦協定でありますから、軍事停戦協定にサインいたしましたのは、ただいま申し上げました通り、金日成将軍でございます。
  104. 川上貫一

    ○川上委員 資格は。
  105. 中川融

    ○中川政府委員 これも、ただいま申し上げました通り朝鮮人民共和国の元帥ということになっております。
  106. 川上貫一

    ○川上委員 最高指揮官……。
  107. 中川融

    ○中川政府委員 朝鮮人民軍の最高指揮官で、元帥と書いております。
  108. 川上貫一

    ○川上委員 どこの元帥ですか。
  109. 中川融

    ○中川政府委員 朝鮮人民共和国の元帥。
  110. 川上貫一

    ○川上委員 それでけっこうです。朝鮮民主主義人民共和国の元帥で最高指揮官。そうすると、この朝鮮民主主義人民共和国というのは、自立の軍隊を持っておるということをお認めになるかどうか。立法、司法、行政及び外交上の全一的権限を掌握しておるということをお認めになるかどうか。第三には、もしお認めになるとすれば、日本政府がこれを承認する承認ぬせということは別ですが、事実上の政府として欠くところがどこかあるのかないのか、欠くところがないのか、この点をお聞きしましょう。
  111. 中川融

    ○中川政府委員 国連のいろいろな決議におきましても、朝鮮の北の部分にオーソリティがあるということは認めておるのでありまして、北朝鮮のオーソリティはこういうことをしてはいかぬというような決議が何回もあるのであります。従って、その意味での事実上の政権があるということは認めておるわけでございます。
  112. 川上貫一

    ○川上委員 北に事実上の政権がある、この事実上の政権朝鮮民主主義人民共和国であることは、休戦協定の調印によっても明らかです。このことは明らかになりました。これでけっこうです。  その次に、韓国というのは一体どこですか。大韓国というのはどこなんですか。
  113. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 韓国憲法によりますと、朝鮮半島、韓半島全域と、こういうことになっております。
  114. 川上貫一

    ○川上委員 そうすれば、韓国というのは全朝鮮ですな。そうすると、朴政権というのはどこの政権ですか。
  115. 伊関佑二郎

    ○伊関政府委員 これは、韓国の方も、憲法によって、全朝鮮半島を代表する、この領土とする唯一政府だ、こう言い、北鮮の方もおそらくそう言っている。北鮮の憲法は全朝鮮政府だと言っておると思いますが、現実に施策が及んでおりますのは、今の休戦ラインの南と北、両方分かれておるわけであります。
  116. 川上貫一

    ○川上委員 日本も、沖繩日本の領土で、日本とは沖繩を含む。なるほど施政権沖繩に及んでおりません。これは別問題です。私の聞いておるのは、韓国政府です。日本政府は、沖繩も全部自分の領土、主権のもとにある、——たといそれが潜在主権と言われようとも、日本の領土です。施政権を渡しておるだけです。大韓民国というのは全朝鮮であるというならば、施政権云々をよく言われますが、それは三十八度線以南しか及んでおらぬかもわかりませんが、大韓民国政府朴政権というのは韓半島の政権であると、こう理解せざるを得ないですが、それでけっこうですか。
  117. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま伊関アジア局長が御答弁いたしました通り、大韓民国憲法によれば、全朝鮮半島を自分の領土であるということは明らかに言っておるのであります。しかし、同時に、国連決議によりますと、これは国連委員会が観察することができた朝鮮の大多数の人民が居住しておる地域に有効な支配と管轄を及ぼしておる政府ができた、その政府が自由な選挙によって要するにできた、合法的な政府ができた、これがこの種の朝鮮における唯一政府である、こういうことを言っておるのであります。その趣旨は、要するに、有効な管轄と支配を及ぼしておる地域にこういう政府、つまり大韓民国政府ができたと言っておるのでありまして、大体各国はその国連決議趣旨にのっとって韓国と国交を結んでおるというふうに考えております。
  118. 川上貫一

    ○川上委員 わからぬのです。そこがわからぬ。韓国というのは、全朝鮮だという。朴政権韓国政府だという。ところが、答弁によると、何だか三十八度線以南の政府のような答弁になる。これはどっちなんです。韓国というものと韓国政府との関係。施政権なんというのは問題でない。韓国政府韓国というものとの関係はどうなるのですか。
  119. 中川融

    ○中川政府委員 大体、大多数の国家の場合は、その国家自身が領域と思っておるところと、これと国交のある各国がやはりその国の領域と思ってこれと交際しておる地域とは、大体同じであります。しかし、例外的な場合には、その国がそう思っておる地域と、それから、これと交際を結んでおるほかの国がその国の要するに支配下にある地域あるいは領域と思っておる地域と食い違っておる場合も若干例があるのでありまして、今の韓国のような場合はちょうどそれに当たるのではないかと思います。たとえば、ロシヤは西独と東独と両方と国交を結んでおるのであります。しかも、東独、西独双方ともこれは全ドイツの合法的な政府であると考えておるのでありまして、この間の矛盾をどう解釈するか、これは解釈のしようがないのでありまして、両方の当事者の考えが食い違っておるのでありまして、それをまた二つ統一いたしましてどれがほんとうかと言われても、これはどれがほんとうであると言いようがないとお答えするほかないと思います。
  120. 川上貫一

    ○川上委員 そんなうまい答弁をしてはいかぬ。それは答弁にならぬ。私の聞いておるのは韓国政府だ。朴政権は三十八度線以南の政府なのか、韓国政府なのかということを聞いておる。簡単なことなんです。そうよそがどうのこうの言わぬでよろしい。   〔発言する者あり〕
  121. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 お静かに願います。
  122. 川上貫一

    ○川上委員 たったこれだけのことなんです。韓国政府なのか、韓国は全朝鮮ですから、三十八度線以南の政府なのか、これだけを聞いている。外国の例なんか聞きたくない。日本政府の見解を聞けばいい。
  123. 中川融

    ○中川政府委員 日本政府考え方と申しますのは、何回も政府当局が御答弁しております通りでありまして、韓国韓国憲法に基づいて全朝鮮半島が領土であるという事実は、これは事実として認めますけれども日本政府といたしましては、国連決議趣旨にのっとって、韓国と何とか国交の回復といいますか正常化をはかりたいと考えておるわけでございます。
  124. 川上貫一

    ○川上委員 正常化というものは、国と国との親善、友好です。その国の憲法をどうするのです。その国の憲法を眼中に置かないで国交を調整しようとするのですか、会談を進めるのですか。その国の憲法は厳然として全朝鮮韓国であると言うておるのです。あなた方は三十八度線以南だと言うのですか。こんなことで一体国交というものがやれますか。韓国憲法日本が否認する、この権能はありますまい。これは外交です。国交の正常化です。この憲法をどうするのですか。
  125. 中川融

    ○中川政府委員 日本は何も外国政府あるいは外国憲法を変更しようとかどうしようかという考えはないのでございますが、しかしながら、その国の憲法規定しておりますことを全部そのまま日本が認めますと、ある種の領域については重複して二つの国が領有するということも出てくるのでございまして、こういう問題はこういう問題としてそのままにして、国交の親善をはかる、これがやはり政府としてとるべき立場だと思うのでございまして、外国の例をあげますとまたおしかりを受けるかもしれませんが、インドネシアとオランダは、同じ西イリアンにつきまして両方とも領土であると主張しておるのでございます。これの憲法をどう調整するかということを日本がやりますことは国内干渉になるのでありまして、これは自然に両国間の友好的な話し合いによって事態が解決するのを待つ以外にはないわけでございます。
  126. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、これはどうなんです。韓国は、韓国というのは全朝鮮だとこう言う。憲法規定しておるからそうだと言う。朴政権は三十八度線以南しか施政権を持っておらぬ。この施政権を持っておらぬ朴政権は滅共統一というのを最高スローガンにしておる。滅共統一なんです。韓国政府なんだから、全朝鮮政府なんだから、そこで滅共統一をするのだ、これが朴政権の最高のスローガンです。これと仲よくしようと言うておる。あなた方が韓国とは三十八度線以南であると言うんなら私は合点します。韓国とは全朝鮮半島だと言うておる。ところが、朴政権は、だからして滅共統一だとこう言うている。この朴政権と仲ようするというのだ。どういうつもりなんです、これは。朴政権が三十八度線をかりに越えて、——必ず越えると私は言いません。かりに越えてそこへ行ったとしても、これは韓国内のことなんで、あなた方の見解によればあたりまえのことなんだ。このあたりまえのことだから朴はやろうと言うておるのです。これと仲よくすると言う。それはどうもうことになるのか。(「仲よくだけじゃない、正常化だ」と呼ぶ者あり)——正常化というのは仲悪うするのですか。理事がヤジるというのは、自民党よほどあわてとる証拠なんだ。大自民党はもう少し泰然とおやりなさい。
  127. 野田武夫

    ○野田(武)委員長代理 時間の関係がありますから、なるべくヤジは慎んで下さい。
  128. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、時間がないから私はあまり詳しくは言いませんけれども、この日韓会談というのは、朴政権の滅共統一を支持する会談なんだ、これを認める会談なんだと認めざるを得ないじゃないですか。
  129. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 何回もここで申し上げておるように、われわれは、韓国政権の支配する範囲が今の停戦協定から南にしか及んでいない、こういう事実を頭に入れているわけです。しこうして、国連決議は、この南北の朝鮮が自由な選挙によって統一されることを望む、こういう趣旨決議されていることは御承知通りでございます。従って、われわれはその考え方は支持いたしますが、武力をもって北に伸びるということには私どもは支持を与えるわけにはいきません。従いまして、現に支配を及ぼしておる範囲の、施政権を及ぼしておる範囲の韓国政権と国交を正常化する、こういう考え方で進んでおるわけです。
  130. 川上貫一

    ○川上委員 外務大臣、それがだめなんだ。朴政権韓国政府なんだ、向こうはこう言うておるんだ。韓国とは全半島だと言うておる。だからして滅共統一をするんだと言うておる。それが朴政権なんだ。施政権が今どこへ及んでおる及んでおらぬということは問題じゃないのです。これと国交を正常化するということは、朴政権と国交を正常化すると同時に韓国と国交を正常化するのだ。そうすると、あなた方は、韓国朝鮮全部だと認めておる、それを主張しておる朴政権と国交を回復するということになるので、これは滅共統一じゃないですか。   〔野田(武)委員長代理退席、委員   長寿席〕 しかも、一方では、北には朝鮮民主主義人民共和国があるのだと言うておるのです。これ外務大臣ちっとも矛盾を感じませんか。これでいいですか。この結果一体どうなると思いますか。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 別に矛盾を感じておりません。すなわち、停戦協定があるのでございますから、この停戦協定に反して北へ武力進出をするということは必ずしも滅共統一ということの本質ではないと思います。要するに、共産主義よりも自由民主主義の方がいいという気持にみながなる、こういうことを言っているんじゃないかとそんたくいたします。南の方に施政を及ぼしているそのことは現実の問題でございますから、その範囲内で国交を正常化するというのが私ども考えであります。
  132. 川上貫一

    ○川上委員 これはよほど困って小理屈を外務大臣言うておられますが、日本の大外務大臣、ほんとうにお考えになった方がいいと思います。朴政権韓国政権ですよ。こう答弁しているのですよ。施政権がどこまで及んでおるということは問題になりませんね、現在。そうすれば、朴政権韓国政権だというのですから、全韓国施政権が及ぶことのために奮闘するのです。それはあたりまえです。それが八度線を武力でやろうが、これは問題ではない。そうすると、日本政府考え方は、北には厳然たる事実上の政権があると認めながら、韓国と仲よくして国交の正常化をやって、全朝鮮韓国によって一緒にするのに加担しておるのです。せざるを得ないのです、これは。これはもう理の当然ですよ。私はこの問題については時間がないのですからあまり繰り返して質問しませんが、あなたにはわかっておると思うのだ。この問題についてはどう答弁しようかというて考えておるに違いないのだ。ここに重大問題があるのです。国民が心配しておるのはこの点なんです。韓国というのは全朝鮮だという問題です。韓国憲法は全朝鮮が領土だと書いているという問題なんです。これを代表しておる朴政権なんです。これと国交の正常化をやるというのです。今施政権が及んでおる及んでおらぬということは問題じゃないのです。今後全部に施政権が及ぶべき政府なんです、向こうから言わせるならば。それをあなた方は認めておるのです。それと国交正常化をするというのです。その結果、どうですか、これはあなた方は驚くべきことをやっていらっしゃる。これが一体ポツダム宣言やサンフランシスコ条約、カイロ宣言、朝鮮独立を認めるということに合うと思うておられるのでしょうか。それならば、理屈は何と言っても、滅共統一に加担する日韓会談だと言わざるを得ない。時間がありませんからまことに残念ですけれども、この問題については私は留保しておいて、今度十分に意見を聞きますが、こういうことをおやりになるのですから、暗いでしょうが。この会談をごらんなさい、まるで困っておるのでしょうが。暗いから実際のことをあなた方は国民におっしゃらぬ。総理以前に湯川康平君に金情報部長が会っている。湯川康平氏が何をやっているかということを聞いたら、知らぬとおっしゃる。暗いじゃないですか。一体どう言っていますか。湯川は、韓国に進出するのは軍需産業に向かっての進出である、これをどんどんやることによって、日本アメリカの対韓政策の肩がわりをやるのだ、こう言うておるのです。私はここで時間がないからついでに言います。湯川はどう言うておるか。あなた方は知らぬと言っている。遊休工場を視察しておって、機械は日本が無為替で輸出する、原料は向こう調達で、労働者は朝鮮人を使う仕組みである、保税加工貿易の大筋はこうなんです。これについては、石井光次郎氏を長とする日韓問題懇談会に日韓貿易小委員会というのがある。これを昨年の十一月十五日に設けたのであるが、この小委員会は、通産、外務、大蔵その他各省の担当官を集めて審議をしておる。この保税加工問題では、湯川の依頼で一月の二十六日に日韓貿易小委員会を開いて、二十七日の閣議で説明して、日本政府は無為替輸出あるいは延べ払い等に協力する回答を湯川に与えた。石井氏を通じて与えた。そこで、石井氏の手紙を持って二月の六日に、湯川氏は、韓国へ行きました、二月の二十五日には池田首相と会いましたと、こう言っている。これを、何も知らぬ、これは政府に関係がないと言っている。こういう暗いことをなぜやるのです。しかも、この湯川は、軍事産業の進出をやって、これはアメリカの対韓政策の肩がわりだということをはっきり言うておるのです。これが、総理に会うと言うて来たあの韓国の金情報部長が、あなたに会わぬうちに湯川氏に会っておる。これは暗くないですか。日韓会談というものが、政府の答弁のようにまことに公正なものであるならば、なぜこういう問題を明らかにしないのです。私はこの種の問題については非常に膨大な資料を持っている。何ぼでも質問ができる。遺憾ながら時間がないからきょうは言えぬが、この湯川氏の問題だけについて、これは総理大臣から御答弁を願いたい。
  133. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、湯川は知らぬとは言っておりません。ただ、湯川が私の親書を持ってどうこうということの事実はない、こう言っておるのであります。これは何日だったか、わが党の私の友人の代議士が、同県人だと言って連れて参りました。話が朝鮮に及びましてから一、二分しか会いません。そして、何にも私は返事をしておりません。
  134. 川上貫一

    ○川上委員 もはや時間がありませんから、私は終わりますが、総理の答弁では私は納得しませんから、委員長に要求します。湯川康平さんを参考人として外務委員会に呼んでもらいたい。
  135. 森下國雄

    森下委員長 理事会に諮ります。
  136. 川上貫一

    ○川上委員 理事会に完全に諮って下さい。
  137. 森下國雄

    森下委員長 諮ります。
  138. 川上貫一

    ○川上委員 最後に……   〔「もう時間だから」と呼び、その他発言する者あり〕
  139. 森下國雄

    森下委員長 もう時間でございます。二時間……
  140. 川上貫一

    ○川上委員 多くをもう私は言わぬのです。質問じゃない。この会談の陰には、私は総理がおられるから率直に言いますが、ファシズムに対するしゃにむにの援助、戦争への影がつきまとうておる。外務大臣、……
  141. 森下國雄

    森下委員長 二時再開することとして、この際暫時休憩いたします。    午後一時三分休憩      ————◇—————    午後二時三分開議
  142. 森下國雄

    森下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  日本国に対する戦後の経済援助の処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国とタイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、国際民間航空条約の改正に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国アルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件、海外技術協力事業団法案、右を議題とし、質疑を行ないます。  質疑通告がありますので、これを許します。——それでは、今議事進行について発言の申し出がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  143. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 議事進行で伺っておきますが、きのう安藤局長からお答えがあったのですけれども、スキャッピンの枚数についての資料を提出する、こういうお話があったわけですが、これは戸叶さんの質問を進行する関係から言っても非常に急ぐわけです。枚数なんか勘定するのはそう何日間もかかることではないと思うので、その資料はいつお出しになれるのか、あるいはただいま、資料でなくて枚数ですから、ここで御答弁いただいてもけっこうでございますが、その点はどうなっておりますか。その点、議事進行上伺っておきたいわけです。
  144. 安藤吉光

    安藤政府委員 昨日御要求になりました資料、ガリオアに関係するスキャッピン及び覚書ですが、これは今通産の担当局長が参ると思います。
  145. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 というのは、安藤さん、どういうのですか。通産の方でただいま答弁して、資料を提出しないで答弁にかえる、こういうお話ですか。どうなんですか。
  146. 安藤吉光

    安藤政府委員 間もなく通産の方がお見えになると思います。私たちと打ち合わせまして、通産の方から……。
  147. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 資料ではなくて答弁なのか、はっきりしないようですから、通産の政府委員の方がだれか来ましたらお答えをいただいて、その上で処理をしたいと思います。
  148. 森下國雄

    森下委員長 戸叶里子君。
  149. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、本日、昨日に続きましてガリオア・エロアと阿波丸協定との関係、さらに講和条約との関係、もう一つは、特定教育計画費と住宅建設費というものを今回引いておりますが、それについての問題、そうして、見返資金は贈与で、返すべき性質があるかどうか、この問題について主として総理大臣に質問をしたいと思います。  そこで、まずその前に申し上げたいことは、時間を省く意味で、きのう私が資料を要求しておきましたところのビーコフ、イギリスの連邦軍と日本国との間に取りかわした、メモランダムかスキャッピンか知りませんが、そういう資料を早く出していただきたい。さらに、通産省にも私はきのう要求してあるはずでございますので、今ここで申しませんが、それも出していただきたい。これをまずお願いしたいと思います。  さらに、私は、質問に入る前にちょっと確かめておきたいことは、きのうわが党の加藤さんの質問に対しまして、水田蔵相は非常に重大な発言をしております。それはどういうことかといいますと、昨年アメリカへ行ったときにというふうなことをおっしゃって、そのあとでこういうことを言っていらっしゃる。日本国民も自分と同じように相当もらったもののような気を持っている人がいるということをまず一点おっしゃいました。その次には、この解決がどうなろうと、確定債務がどうなろうと、いずれにしても二十四年以前のものを債務として払う金額になったらこれは相当問題なんで、と言っています。相当問題なんで、私は二十四年以前のものは触れないで切り捨ててもらう、こういうことが中心であった、こういう発言をされております。第三番目には、最後の解決のときにその前の分にまで、すなわち二十四年以前のことまで食い込むというような解決はできないのだということを言いましたら、アメリカは、それはもうある程度当然考えることだと思っていると、こういうふうな答弁をしたということを言われたのでございます。  そこで、私はお伺いいたしますが、二十四年以前のわからなかった分を、しかも水田大蔵大臣が相当問題なんだと言っていられる分を、なぜ大蔵大臣のいわれるように交渉によってお引きにならなかったか、これをまず第一にお伺いしたいと思います。
  150. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 二十四年の四月に見返資金を積み立てまして、それ以前の分が、米側のJES統計によりまして十一億ドル強ございます。通産の試算によりますと八億四千万ドル程度でございます。従って、今度返還するというのは四億九千万ドルでございますから、それに上回らないわけでございます。水田大蔵大臣の言われましたのは八億とか十一億とか、それを上回るようなことでは困る、こういう意味で言われたのだと私は了解しております。
  151. 戸叶里子

    戸叶委員 それは外務大臣の想像であって、水田大蔵大臣のおっしゃっているのは、二十四年前のを決定するのは相当に問題があるから、これは対象にしないでくれということを言っていらっしゃるのです。速記を読んでごらんになるとおわかりになるのです。ですから、アメリカ側の統計で幾らであったとか、日本側がこうなったのだからはるかに日本側の方が有利だというようなことは、その根拠にはなりません。水田さんのおっしゃるのは、二十四年前の分は、それを債務の対象にするとこれはとんでもないことになるから、これはしないでほしいと言ったら、アメリカがそういうことは考えようと言ったと、はっきりおっしゃっているじゃありませんか。どうですか。  ちょっとお願いしますけれども質問いたしましたら、そのことに対する答弁だけで、ほかのことはあまりおっしゃらないでいただきたいのです。——時間があまりないようですから、そうすると質問が全部できないと思いますから。
  152. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 答弁をできるだけ簡潔にいたします。アメリカ側が言っておりますのは、二十四年以前に十一億ドルあるというのでございます。それを上回るほどの金額を払いましたらまさに問題でございますが、戸叶さんに申し上げたいのは、今度のは、先方の言っておる金額の四分の三はただにしてもらって、四分の一払うのでございます。その四分の一が今の二十四年以前のものを上回るような、あるいはそれと非常に近いようなものをやるということになるならば、これは非常に問題になる、こういうことでございます。
  153. 戸叶里子

    戸叶委員 四分の一といいますと幾らになるのですか。
  154. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 十九億五千四百万ドルの四分の一です。
  155. 戸叶里子

    戸叶委員 今おっしゃったのはアメリカの数字ですね。それでは、きのうの水田大蔵大臣の発言から割り出しまして、二十四年の前のをこの債務の中から全部引いて、それを三分の一にしたら幾らになるのでしょうか。
  156. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは全然政府として考えたことはございません。全部の受領額がなんぼであるかということを問題にいたしまして計算したわけです。
  157. 戸叶里子

    戸叶委員 水田大蔵大臣のきのうの御答弁を外務大臣もお聞きになったと思うんです。二十四年前のは全然問題にならないと、言っているのです。だから、私どもとしては、二十四年前のは全然対象にしないで、二十四年以後のを対象にして、そして政府のおっしゃるように、三分の一なり四分の一なりにしてもらったらいいと思うのですけれども、そういうことはできなかったのですか。お話し合いになったのですか。水田大蔵大臣がアメリカへ行って話されたことには全然お触れにならなかったのですか。この点を伺いたい。
  158. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 アメリカ側からは、あれを何とかしてくれということを昭和二十九年以来ずっと言われておったわけでございます。従いまして、われわれの方もいろいろ調べてみますと、先般来からいろいろ申し上げているように、昭和二十一年の七月二十九日のスキャッピンを初めとして、幾つかのスキャッピンが来ておって、われわれの方は、その値段あるいはその支払いの方法等については後日決定する、こういうことを言っておりまするので、当然全部を対象にする、こういうことでございます。ただ、二十四年の四月以前のものについては、いわゆる見返資金後のような明確な積み立ての勘定がないということは十分アメリカ側も頭に入れて計算してもらいたいということを、交渉の過程では言っております。
  159. 戸叶里子

    戸叶委員 幾ら伺っても、私の伺っていることそのものに対する御答弁をいただけません。私は、水田大蔵大臣とお話し合いになって、そして水田さんが二十四年以前のは対象にしないでくれと言ったら、アメリカがそれを考えるとおっしゃったというその辺の答弁をどうか統一しておいていただきたいと思います。  次の問題に入りたいと思いますが、阿波丸の請求権放棄の協定に入って参りたいと思います。  阿波丸事件の犠牲者は二千三名であるということは皆さん御承知通りです。事件のすぐあとで遺族の人たちは、アメリカ人は人道主義的な人であるから一人二万ドルくらいは必ず下さいますよといって言い聞かされていたそうです。しかし、遺族にとってみれば、お金よりその犠牲になった人の命を返してほしかったのは、私は当然だと思います。しかし、ともかく、当然の賠償請求権を放棄しなさいと説得される理由として、もちろん国内法で幾らかの見舞金は出してあげるということ、アメリカからたくさんの品物を放出されたんだから、そのお礼の意味で、アメリカへの賠償請求はあきらめるようにということを言い聞かされたと聞いております。そこで、遺族の人たちは、自分たちが請求権を放棄することによって、日本国民にかわってアメリカに感謝ができたということを非常に誇っていたわけです。ところが、今日になって債務であるというのならば、なぜあのときに筋を通して当然大いばりでとれる賠償をもらってくれなかったかというのが遺族の偽らざる気持であるということを、私が先ごろ本会議質問をいたしましたときに、さっそく遺族の人が現われて参りまして、その点を筋を通してくれということを私は言われたわけでございますけれども政府はこのことに対してどうお考えになりますか。総理大臣に伺いたいと思います。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 阿波丸の請求権を日本が放棄したことは、国会、衆参両院の決議によってやったと私は記憶しております。従いまして、ガリオア・エロア援助と相殺とかなんとかいう考え方はあのときなかったと思います。
  161. 戸叶里子

    戸叶委員 ガリオア・エロアの援助の相殺ではなかった、そういうふうにおっしゃいますけれども、それでは、あとからそのことを問題にしたいと思いますが、この阿波丸請求権の問題に対して、アメリカ日本の外務省が賠償の交渉を行なったということは、外務省の記録にもあると思いますが、いかがでございましょうか。なお、日本側として幾らの請求をアメリカにお出しになりましたか。
  162. 中川融

    ○中川政府委員 これにつきましては、終戦後すぐにアメリカと交渉いたしたわけでございます。そのとき幾らの請求をいたしましたか、私ちょっと今ここに持っておりませんが、実際の損害額を算定いたしまして、これには、あの阿波丸の犠牲となりました人の、要するにおなくなりになったことに対する遺族に対する慰謝金と、それから、沈みました阿波丸自体に対する船価の補償と、この二つを合わせたものを先方に請求いたしたのでございます。
  163. 戸叶里子

    戸叶委員 今、中川さんは幾ら請求したか資料を持っていないとおっしゃいましたが、それじゃ私の方から申し上げましょう。二千三名に対する人命の損害賠償といたしまして一億九千六百十一万五千円、家族の手当、対価への賠償その他で総計二億二千七百二十八万六千六百円をアメリカ側に請求しているはずでございます。これを出します前に、もちろん、アメリカからは、これはアメリカが悪かったんだから賠償を払いますよということの話があったためにこの賠償請求を出したはずなんです。ところが、急にこれを引っ込めてしまったのは一体どういうわけですか。
  164. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま資料が見つかりまして、戸叶先生の御指摘になった通りの金額をたしか先方に請求したと思います。  なお、この事件が起きました際に、当時まだ戦争中でございましたが、アメリカ政府は、利益代表国であるスイスを通じまして、戦後この問題については公正な解決をする用意があるということを言って来たことは事実でございます。従って、そのアメリカの約束に基づきまして日本は補償の請求をしたわけではございますが、しかし、その際、終戦後アメリカから非常に多くのいろいろな援助を受けております。単にガリオアばかりではなくて、それ以外にも、たとえば日本軍の物資、これを相当たくさんアメリカは戦時国際法に基づきまして戦利品として取ったわけでございますが こういうものも日本に無償で貸与したということもあるわけでございます。なお、アメリカのスキャジャップと申しますか、アメリカの船を日本に貸与いたしまして、この船で日本の何百万という軍人あるいはその他民間人の海外からの引き揚げを実施するのに、アメリカ日本に援助したのでございます。そのほか非常に多くの援助ということを考えまして、日本から自発的に、この際、日本の権利ではあるけれども、阿波丸事件に関する請求権は放棄することがしかるべきではないかという議が、これはむしろ国会で起こったのでございまして、両院で同文の決議がされて、そうして、この請求権を放棄せよ、放棄してその結果を国会に報告せよという決議があったわけでございます。そういうのが当時の事情でございます。
  165. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど総理大臣は、ガリオア・エロアとは別に関係なしに請求権を放棄したということをおっしゃいましたのですけれども、この阿波丸協定をごらんになりますと、「米国政府から受けた物資及び役務による直接及び間接の援助を多として、阿波丸の撃沈から生じた米国政府又は米国民に対するいかなる種類の請求権をも、日本国政府自身及び一切の関係日本国民のために、すべて放棄する。」と、こう書いてある。全然アメリカのガリオア・エロアの援助と関係ないということはおっしゃれないんじゃないですか。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカ日本との関係は、ガリオア・エロアの援助物資、その他いろいろな関係がございます。ただ、今申しましたように、相殺関係にあるというのではない、こう申しておるのでございます。
  167. 戸叶里子

    戸叶委員 相殺関係にないということは認めますけれども、それではなぜ放棄されたのでしょうか。中川さんのでなくて総理大臣の考えを伺いたいのです。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 私は昭和二十四年に閣僚になりましたので、二十年四月でございましたか、二十年四月ごろからのことはずっと外交関係は承知しておりませんから、中川条約局長の専門家の言うことがほんとうだと思います。
  169. 戸叶里子

    戸叶委員 やはり国のお金に関係のある大蔵省にいらっしゃった池田さんですから、当然知らないはずはないと私は思うのですけれども、それでは、そのあとを続けていきたいと思います。  私どもがちょうど国会におりますときに、この阿波丸事件の請求権を放棄しなさいという声がどこからともなく来たわけなんです。そして、国会では、廊下をあっちこっち非常に激しくみんなが飛び歩いたのを私は今でも覚えております。そのときに納得させられたことは、あれだけアメリカから多くの物資をもらっているのだから、このくらいの請求権は放棄してもいいんじゃないか、これに対して決議案を出そうじゃないか、こういうことで決議案が出されたわけなんです。ところが、それに対して反対がありました。社会党も労農党も共産党も反対しました。けれども、そのときの政府・与党だけがその決議案に賛成をしたわけなんです。そして、その決議に基づいて今度の協定というものを結ぶということになったわけです。  それでは伺いますけれども決議案できめられたことは、すぐにほかの国との協定を結んでもいいのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  170. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は、今の点でございますが、国会決議されて政府に授権されたわけであります。どういうことを授権されたかといいますと、「一、わが国は昭和二十年四月一日発生した米国海軍艦艇による阿波丸撃沈事件に基くすべての請求権を自発的にかつ無条件に放棄すること。二、政府は速かに、連合国最高司令官のあっせんの下に、米国政府と商議を開始し、前記請求権の放棄を基礎として、本事件を友好的に解決すること。三、政府国内措置として、本事件の犠牲者を慰藉するため適当な手段を講ずること。四、政府は本決議に基いて執った措置の結果を本院に報告すること。」、この決議ができているわけであります。そこで、この決議の第三項によりまして、一億五千七百万円払っております。これは日本政府が払っている。それから、円で千八百万円船の方に払っております。何もしないわけではございません。  それから、これと相殺されたということでございますが、御承知のように、了解事項がございまして、その了解事項によって、これは別のものであるという解釈ができるのであります。しかも、そのときに吉田総理大臣兼外務大臣が参議院の本会議において、綿花借款その他ガリオア・エロアというものはこの中に含んでおらぬことを了解するということを言っておられるのでありまして……
  171. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと待って下さい。含まれていないとおっしゃった。
  172. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 決議に言っているのではなくて、了解事項として入っておるわけですということをはっきり言っているわけです。なお、この趣旨説明をいたしましたのは、衆議院で岡崎代議士、佐藤さんが参議院でやったのでありますが、この中に、これはいずれも有効な債務であるという趣旨説明をして、その結果この決議ができておるわけであります。
  173. 戸叶里子

    戸叶委員 私そういう事情をよく知っておりますから、あまり詳しくおっしゃっていただかなくてけっこうであります。時間がなくなりますから、もっと重大な点だけを聞いていきたいと思います。  そこで、この際伺っておきますけれども、たとえば、こういうことをアメリカとの間にはっきりさせるべきであるというような決議をした場合には、アメリカとの間にいかなる協定を結んでもそれを国会にかけなくてもよいというように、今の御答弁を聞いておりますとなるわけであります。今後におきましても大きな問題となると思いますけれども決議に基づいてした協定国会にかけなくてもよいというのかどうか、この点を総理大臣に伺いたいと思います。
  174. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、政府がどうこうではなしに、国会決議をなさって、そうして、それを報告しろ、しかもそれは片一方だけでなくて、同じ趣旨のことを両院で決議せられて、そうして報告しろ、こういう場合に、政府が処理することは私は憲法違反ではないと思います。ただ、それを外交案件の処理としてやるのに条約となるかならぬかという問題につきましては、いろいろ問題があると思います。しかし、両院が同趣旨決議をして政府にその措置を要求した場合に、政府がそれによってやることは差しつかえない、これは阿波丸事件がそれを証明していると思うのであります。条約かどうかという問題につきましては、これは専門的なことでありますから、法制局長官からお答えいたします。
  175. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、ちょっと例として伺いたいのですが、衆議院と参議院と両方で決議が通れば、協定を結んで国会にかけなくても別に憲法違反ではない、こういうふうに総理大臣はおっしゃったわけですが、その決議というものは全会一致でなくてもよいわけなんですね。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう仮定の問題について答えるのはいかがかと思うのでありますが、阿波丸のように、今までの事実の分につきましては、外交案件の処理といたしまして国会決議に沿うてやりました。そうして、日米間で協定を結び、これを国会に報告したのであります。それがどうかという問題は国会自身できめらるべき問題であって、将来の問題については申しませんが、阿波丸におきましては、これは適正になされたと私は考えております。
  177. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、非常に重大な問題だと思います。なぜならば、衆議院と参議院と両方で、たとえばだんだん情勢が変わってきて、核兵器を持ち込むというような決議をしたとします。そうすると、アメリカから核兵器を持ち込むというようなことについてもしもアメリカ協定を結んだ場合には、そういうふうなことでもいいということになるのでしょうか。これも伺いたい。  さらに、もう一つ伺いたいのは、国の財政に影響のあることであっても、決議が通れば、他の国と協定を結んでもいいのかどうか。この点を伺いたいと思います。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 核兵器とか、それから債務負担のような問題につきまして、仮定の御質問に対しましてはお答えできません。
  179. 戸叶里子

    戸叶委員 仮定の問題といいますけれども、これは私は重大な問題だと思うのです。今後におきましてもいろいろな問題を残すんじゃないかと思うのですが、阿波丸協定の場合には仕方がなかったけれども、今後はこういうことはないのだというふうなことを言い切れますか。それとも、やはり今後にもこういうことがあるかもしれないというようなお気持でしょうか。念のため伺っておきたい。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 政府といたしましては、国会決議なすったときの様子によるべきことでございまして、国会がどうするこうするということを、しかも仮定の問題について政府が言うことは差し控えます。
  181. 戸叶里子

    戸叶委員 国会がきめることだとおっしゃいますけれども協定を結んだのは、国会アメリカじゃないのです。政府アメリカ政府との間なんです。従って、政府に関係がないということは言えないと思うのです。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 両院が決議されまして、政府が適当だと思って、その両院の決議通りにいたしたのであります。
  183. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、ここに非常に大きな問題が残ると思います。なぜならば、野党が反対をしても、そのときの絶対多数の政党がこういうような協定を結びたいというときに、野党の反対をおそれる場合には両院で決議をしてしまって、そうして協定を結ぶというようなことが、今後においてこれを例にして出てくるのではないかと私は心配するものです。  しかし、この問題だけにこだわっておられませんから、その先に参りますけれども、この協定のあとに、先ほど総理大臣がおっしゃいましたように了解事項があるわけです。その了解事項に対して、三十四年の十月十九日の参議院の大蔵委員会で佐藤大蔵大臣がこういうことを言っていらっしゃいます。この了解事項に対しては明快な債権債務の関係が生じるものではない、しかし、日本政府国民として贈与と心得るものでない、文字通り債務と心得るという言葉が当てはまる、債権債務であるならば冒頭において返済方法・処理方法がきまっているはずである、贈与という形で行なわれてもいないし、債務ともはっきり言い切れるものではない、そこに交渉の余地があるのではないか、こういうふうに言える、と答弁しておられます。ここで二つの問題があるわけですが、一つは、借金なら返済方法・処理方法をまっ先に考えるべきであったということを答弁されたときは、戦争後十四年もたっておりましたけれども、まだ債務とも言い切れず、交渉の余地があると言われたのを見ても、この段階においても債務性が非常に薄いということを認めていられたのではないかと私は思いますが、この佐藤さん、しかも大蔵大臣の言われたことは、どういうことになるのでしょうか。
  184. 池田勇人

    池田国務大臣 債務性が薄いとか濃いとかいうことがちょっとわかりにくいのですが、債務と心得ておるという私の考え方と、前の佐藤元大蔵大臣の考え方は似ていると思います。
  185. 戸叶里子

    戸叶委員 佐藤さんは、債権債務の関係があるならば、当然にここに返済方法とか処理方法がきまらなければならないのだということを言っていられるわけです。そういうものがきまっていないのですよ。
  186. 池田勇人

    池田国務大臣 そのときにはきまっていないのでございます。だから、了解事項にもありますように、日本に与えられた援助に対して有効な債務として負担するという意味のことを言っております。有効な債務ということは、われわれは、いわゆる債務性のあるもので、債務と心得べきものだ。しかし、確定債務ではございません。
  187. 戸叶里子

    戸叶委員 今、債務性のあるもの、しかし確定債務ではない、債務と心得る、こうおっしゃったわけですね。そうすると、この前池田さんは、贈与もあり債務もある、だから債務と心得るのだ、こういうふうにおっしゃったのですが、ちょっとそれは違いますね。
  188. 池田勇人

    池田国務大臣 違わぬと思います。二十億近いガリオア・エロア等につきましては、昭和二十四年の四月に言っております通り、贈与もあり返済すべきものもある、貸与もある、こう言って、今はっきり申し上げられませんと、昭和二十四年に言っておるのであります。その後、そういうことから債務性を認めまして債務と心得る、こういうことであります。そうして、債務と心得ておったのを向こうと話し合いをつけまして、国会承認ということを条件にいたしまして、一応四億九千万ドルを十五カ年間で払おう、利子はこれだけ、こういうことにいたしたわけでございます。それが国会を通過いたしましたら、条件は成就いたしますから、両国間の文書の交換によりましてここに債務は完全に確定する、こういう段取りになると思います。
  189. 戸叶里子

    戸叶委員 佐藤さんは、この交渉の余地があるということを言われたわけなんですが、私は、これを考えてみますのに、この協定の了解事項の最後の方に、「米国政府の決定によってのみ、これを減額し得るものであると了解される。」とある。これは、結局、交渉によってどうにでもなるんだ、極端に言えば、ほとんど取る意思のないことまでアメリカとの間に話し合っていたのではないかと思いますけれども、ここの点はいかがですか。
  190. 池田勇人

    池田国務大臣 そこまで想像されるのはいかがかと思います。私の記憶によりますと、私は処理に当たった直接の責任者としてではございませんが聞いたところでは、岡崎君は、これは六億ドル前後に話がいったのではないか。六億五千万ドルといい、五億五千万ドルということも新聞その他にも出ておったし、私も内々聞いておりました。前から、一つも払わないとか、ごく少しだというようなことは政府の要路者は考えていなかったと思います。
  191. 戸叶里子

    戸叶委員 この減額するというふうなことを、時によってはそれがほとんどゼロになる場合もあり得ると読まないと、非常におかしな問題になります。なぜならば、これまではっきりとアメリカに対して食糧の放出に感謝をして、その次に阿波丸の請求権を放棄して、そして、さらにいろいろなものが債務であるということを認めている。私は、幾ら占領中といえども、吉田さんがそれほど卑屈ではなかろうというふうに考えるのですが、この辺はいかがでしょう。
  192. 池田勇人

    池田国務大臣 私がずっと考えてみて、五億ドルを割ったということは非常に成功だったと思います。交渉の経過におきましても、十年ということもありましたし、八年ということもありました。最後まで私は十五年でがんばったのであります。四億九千万ドルということは、今までこういう問題を頭に置いた人の中では、五億ドルを割ったということは非常によかったと私は考えております。
  193. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、今総理大臣がおっしゃったように解釈をいたしまして、この了解事項がその文字通りに読まれたとして、借款及び信用は日本の債務であり、アメリカ考えによって全額が幾らか引かれるということであるとするならば、債務であって幾らか引かれる、こういうふうに文字通り読んだといたしますね、そうすれば、この協定自身がガリオア・エロアの債務性を持つ一つの資料になるのじゃないのですか。それを、ほかのアメリカのスキャッピンが何だとか、マッカーサーがどこへ行って何を言ったからどうだとかいうことだけをガリオア・エロアの債務性のある根拠としておるが、これをそのまま読んでいたら、これは条約集の中にもあるところの重要な債務性のある資料というものになるのじゃないかと思います。それを、この間民社党の田中さんがこのことを質問されても、これが債務性の根拠になるということは一言もおっしゃっておりません。これはならないのですか。
  194. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれはガリオア・エロアその他の問題の債務性の根本を話しておるのであります。阿波丸協定の付属の了解事項というのは、それから来るのでございまして、この根本の問題は、覚書によるプレガリオアの問題、われわれは、根本的には、一般のガリオア・エロアの総括的の昭和二十一年七月のこれが根本になるのだ、これを言っておるわけであります。マッカーサーの証言その他も言っているように、これが債務性を表わすものである。阿波丸協定もそれから来ることなので、われわれも十分知っておりますが、あえてそれは出さなくて、根本を言っておる。阿波丸協定もそれから来ておるわけなんですから、その根本を言っておるわけであります。
  195. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、この阿波丸の了解事項で、日本国米国政府に対して負っている有効な債務であり、そして米国政府の決定によってのみこれを減額し得るものであると了解されるというのは、先ほどおっしゃったように、綿花借款とかガリオア・エロアとか、そういうものは債務と心得て、政府のおっしゃる通り言おうとするのですよ。債務と心得て、それは米国政府考え方だけで少なくできるのだ、たとえば十億ドルなら五億ドルなり何億ドルにできるのだ、こういうふうに読むだけ以外の意味はないとおっしゃるわけですか。念のために、イエスかノーかだけでけっこうです。
  196. 池田勇人

    池田国務大臣 綿花借款のことがございまして、綿花借款の今の……。
  197. 戸叶里子

    戸叶委員 ガリオア・エロアだけでいいです。
  198. 池田勇人

    池田国務大臣 私は綿花借款のところで考えておりましたが、ガリオア・エロアは債務と……。
  199. 戸叶里子

    戸叶委員 心得るとおっしゃったでしょう。心得て減額することがある。この協定にある借款という中には、先ほど外務大臣が、綿花借款とか、ガリオア・エロアとか、その他いろいろな借款とおっしゃったのですけれども、今総理大臣のおっしゃるのには、この借款はガリオア・エロアとおっしゃりたいわけでしょう。それを債務と心得る。そして、アメリカ考え方一つで、たとえばもし十億ドルならばそれを五億ドルにでも四億ドルにでもできるのだ、こういうふうに了解するわけですね。
  200. 池田勇人

    池田国務大臣 そうでしょう。債権者が引いてやろうと言えば引いてくれるのが普通の考え方じゃございませんか。
  201. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、私はここで問題があると思います。なぜならば、西村さんというのはその当時の条約局長だったと思います。西村さんは、阿波丸の悲憤に対して次のように書いております。よく聞いておっていただきたい。アメリカが終結の形式いかんにかかわらず必ず補償するとの約束を与えていたにかかわらず、終戦後日本に対し請求権の放棄を求め、日本側が自発的措置の形でこれに同意したものである、いいですか、アメリカから日本に対して請求権の放棄を求めてきたのですよ。それに対して日本側が自発的措置の形でこれに同意したものである、と書いてある。そして、日本に請求権を放棄さすと同時に、自己の請求権、占領費と借款とクレジットの放棄はアメリカの決定のみでできることを明らかにしたものである、——自己の、すなわちアメリカの請求権の放棄はアメリカの決定のみでできるという意味をこの中に含んでいるということをはっきりおっしゃっているのですよ。これはどうなんですか。この減額ということは、金銭を減らすということじゃないのだ、アメリカの請求権をもなくす、要らないというふうに言うことなんだということをはっきり言っているのです。
  202. 池田勇人

    池田国務大臣 どなたがおっしゃったか、私はそのときによく聞いておりませんので……。その問題は、やはり前後の質疑応答から判断しなければいかぬと思います。外務省の方の専門家でその当時のことを知っている人がおったら、それから答えさせましょう。
  203. 戸叶里子

    戸叶委員 今の総理大臣の言葉は、ちょっと私は納得できません。どなたがおっしゃったか知りませんがとおっしゃいましたけれども、評論家ならいざ知らず、時の条約局長西村さんですよ。西村さんがそういうふうに書いているわけなんです。ところが、今池田さんのおっしゃるのは、この減額というのは金額を引くのだとおっしゃるでしょう。ところが、西村さんははっきりここで何と言っているのですか。アメリカの決定のみでできることを明らかにしている、——この自己の請求権の放棄はアメリカの決定のみでできることを明らかにしたのである、こう言っているのですよ。つまり、今までの言葉をもう一度言いますと、終戦後日本に対して請求権の放棄を求め、日本側が自発的措置の形でこれに同意したものである、——自発的措置の形でこれに同意したというのですね。ところが、日本に阿波丸の請求権を放棄さすと同時に、自己の請求権はアメリカの決定のみで減額できるという、そのことはどういうことかというと、アメリカの請求権のことだ、そのアメリカの請求権の放棄はアメリカ自身が決定してできるのだ、こういうことをはっきり言っているのですよ。(「ガリオア・エロアに関係ないよ」と呼ぶ者あり)ガリオア・エロアに関係ないのですか。
  204. 中川融

    ○中川政府委員 阿波丸協定付属了解事項の解釈についてのかつての条約局長の答弁でございますが、その最後のところで、アメリカ意思のみによって減額し得るものであると言っておるわけでございますが、それはその通りであると思います。この了解事項にはっきりそう書いてあるのでありまして、「米国政府の決定によってのみ、これを減額し得るものであると了解される。」と言っておるのでありまして、これはアメリカの請求権であれば、アメリカが一方的にこれを減額するということは当然できるわけでございます。なお、この了解事項は、ここにもはっきりしておりますように、必ずしもガリオア・エロアばかりじゃございません。アメリカの占領費等にも触れておるのでありまして、現に平和条約十四条(b)では、アメリカの直接の軍事費は完全に放棄しておる、それに対する請求権は放棄しておるのでありまして、従って、その答弁は、その部分を私聞いたところでは、別に不思議な答弁ではないように思います。
  205. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじゃないんですよ。アメリカが減額できるというのは、金額を減額するのじゃないというのです。アメリカが持っているところの請求権、つまり日本に対しての借款及び信用、これはどういうのかといいますと、さっきおっしゃったがガリオア・エロアでしょう。ガリオア・エロアの請求権ですね。そういうようなものはアメリカが放棄するんだということを言っているのです。いいですか、日本がこれを捨てるかわりに、アメリカはこれを放棄するのだということを言っているのです。(「放棄とは書いてないじゃないか」と呼ぶ者あり)自己の請求権を放棄すると書いています。(「どこに」と呼ぶ者あり)請求権の放棄である。(「そんなこと書いてないじゃないか」と呼ぶ者あり)あります、ちゃんと。
  206. 中川融

    ○中川政府委員 それはそういう解釈でないと私は信じます。というのは、この了解事項そのものが減額するのだということを一つも書いてないのでございまして、減額し得るのだということを書いてあるだけでありますから、減額し得るのと減額するのとでは非常に違うわけでございまして、西村局長は、決して、減額すべきだ、することがきまっておるのだ、こういうふうに言われたのではないだろうと思います。
  207. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじゃないでしょう。よく聞いていただきたいと思う。まず第一に聞いていただきたいのは、西村さんはその当時条約局長でしたね。そうして、この阿波丸協定ができるときの裏話は全部知っているわけです。私どもが知っている以上のことを知っていらっしゃるわけです。私どもは、あとから聞かされたのであって、その当時はつんぼさじきで、何も聞かされなかった。そこで、この阿波丸の請求権というものを日本に放棄させたわけでしょう。放棄させたのだけれども日本は自主的な形でこれを放棄したわけですね。さっきおっしゃったように、国会決議というところに持っていかされて、そうして放棄して、これは放棄しますよといって協定を結んだわけです。そのあとに、アメリカ日本との間でこの了解事項というものができたわけです。そうして、この了解事項の中で、もうすでにこの中で政府が「占領費並びに日本国の降伏のときから米国政府によって日本国に供与された借款及び信用は、日本国米国政府に対して負っている有効な債務」であるということを了解したとありますから、私は、ここでもう債務ということを認めたというふうに解釈するわけですけれども政府の方は、これは単なる心得だということをおっしゃっている。そこまではいいです。そして、そのあとは、ここで減額するのはアメリカ政府の決定だけだ、こういうことを言っているわけです。それに対して、西村さんがどういうことを言っているかということをもう一度読んでみますから、よく聞いていただきたいのです。アメリカが終結の形式いかんにかかわらず必ず補償するとの約束を与えていたにかかわらず、終戦後日本に対し請求権の放棄を求め、日本側が自発的措置の形でこれに同意したものである、——これはさっき私が言ったところまでですね。日本に請求権を阿波丸の協定で放棄さすと同時に、自己の請求権、——それは何かというと占領費と借款とクレジット。自己の請求権の放棄はアメリカの決定のみでできることを明らかにしたのである、——すなわち、自己のというのはアメリカアメリカの請求権の放棄、それはアメリカが決定する、こう言っているわけです。だから、つまり、アメリカが減額するということは、請求権を放棄するということにも通ずるのではないか。はっきりその言葉を使っているのですよ。アメリカの請求権の放棄ということを言っているわけですよ。
  208. 中川融

    ○中川政府委員 ただいまのこと、よく聞いておりましたが、結局、減額するということはアメリカが決定する、アメリカが自分で決定するのだということを西村局長は答えておられるわけでありまして、要するに、決定する義務があるとか、決定がきまっておるということでなくて、減らす場合にはアメリカが決定するのだということを言っておるわけでございまして、これはその通りであると思います。
  209. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカが決定することである、それはここに書いてありますよ。減額はアメリカが決定することである。しかし、その減額という意味をはっきり西村局長が言っているのですよ。アメリカの請求権を放棄することである、放棄すると言っているじゃありませんか。それでやっと筋が通ってくるのですよ。
  210. 中川融

    ○中川政府委員 請求権を放棄することができる、アメリカが放棄することができるわけです。その放棄に、全部放棄する場合もあり、一部放棄することもあり、いろいろその態様があると思います。いずれにせよ、放棄するのは要するにアメリカがきめなければできないことだということを言っているわけであります。
  211. 戸叶里子

    戸叶委員 減額ということと請求権の放棄と同じですか。お金を全然とらないということと少し減らすということとは違うでしょう。一年生でもわかりますよ。
  212. 中川融

    ○中川政府委員 請求権を放棄する場合に、やはり、理論的には、全部の放棄もありますし、一部の放棄もありますし、それはいろいろの態様があると思うわけでございます。
  213. 戸叶里子

    戸叶委員 前のことを聞いて下さい。日本に請求権を放棄さすと同時にアメリカも自己の請求権を放棄することだと言っているのですよ。なぜそれが、一部だけアメリカは請求権を放棄して、日本だけが全部放棄するのですか。理屈に合わないじゃないですか。総理大臣、いかがですか。それは合わないですよ。
  214. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、西村君の法律解釈が、全部の放棄であるか、減額は一部の放棄であるという解釈をしているかどうかというのが問題であると思います。われわれは、何によるかといったら、了解事項による。その了解事項は、「これらの債務は、米国政府の決定によってのみ、これを減額し得るものであると了解される。」、減額し得るものであるという場合に、西村さんが、もしここで言われておるように、債権の一部放棄、すなわち結果は減額でも、これは放棄のうちに入るのだという西村さんの解釈なら、これと合います。しかし、西村君の言うことが、放棄というのは請求権を全部放棄するということを言うならば、西村君の解釈は、この了解事項と合わないのです。だから、それは西村君が間違いである。それは西村君の放棄という意味の解釈です。われわれは、これからは、全部放棄ということを向こうが約束したとは思いません。減額となっている。
  215. 戸叶里子

    戸叶委員 阿波丸協定でこちらは請求権を放棄していませんか。全部放棄しているでしょう。これと関係しておっしゃっているのですよ。
  216. 池田勇人

    池田国務大臣 阿波丸事件に対しましては、われわれは全部放棄いたしました。しかし、向こうは、今度は占領費並びにこれこれのことはアメリカ意思によって減額し得るものであると書いてあって、全部放棄と書いていないのです。
  217. 戸叶里子

    戸叶委員 総理大臣も政府も勝手に都合のいいように解釈していらっしゃるのです。というのは……   〔発言する者あり〕
  218. 森下國雄

    森下委員長 静粛に願います。
  219. 戸叶里子

    戸叶委員 この西村さんの言っているのは、阿波丸協定日本に請求権を放棄させたのだというのでしょう、それと同時に、アメリカが減額するという意味は、アメリカの持っている権利、請求権を放棄するのだと言っているのですよ。それがどうして、アメリカだけは一部を放棄して、日本は全部放棄させるということになりますか。
  220. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私もよく承っておりましたが、どうもこちらが申し上げているようなことが常識にかなうのではないかと思います。たとえば、戸叶さんは全部と言われますから、かりに全部をとってみますと、平和条約の第十四条におきましては、直接軍事費は全部向こうは放棄しているわけですね。その他ガリオア・エロアの問題等も、これは全部日本に対する有効な債務を含んでおる。そこで、今のガリオア・エロアをとってみましても、四分の三は向こうは放棄した、こういうことになりますれば、四分の三については全部放棄しておる、こういうことじゃございませんか。
  221. 森下國雄

    森下委員長 関連質疑通告がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  222. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、小坂さんに伺いますが、あなたの方の解釈で言うと、この条約によって、日本の国は阿波丸というものの請求権を放棄して、債権を放棄した、それと同時に債務を設定した、こういうことですか。権利は捨てるが借りるものは認めました、こんな条約をもし結んでいるのだとするならば、これこそ屈辱条約ですよ。一方的じゃないか。条約というのは相互主義ですよ。権利を日本は放棄します、それと同時にアメリカの権利も放棄します、これで条約は相互主義の建前をとってあるのじゃないか。これはさっきから言っているでしょう。権利は放棄しますが、向こうの権利も放棄します、——小坂さん、あなたはドイツの例をいつも言うでしょう。ドイツは債務の確定をした、それと同時に、第一次戦争中のアメリカの債権あるいはその他の債権、これを減額してもらっているのですよ。だから、条約の相互性がある。日本の国の場合は、阿波丸の権利は捨てました、ガリオアは払いますという約束をしました、もしこれも条約だというならば、これこそ吉田さんが屈辱条約を結んだということになる。これこそその立証になるじゃないか。明らかじゃないか。それをあなた方は認めるわけなんでしょう。自民党はそうだと言うんだから、認めるわけでしょう。池田さんもそれを認めるわけでしょう。そういうことになるじゃありませんか。どうですか。
  223. 池田勇人

    池田国務大臣 あなた方は、阿波丸の請求権放棄をした、だから片一方も放棄を認めろ、これじゃ屈辱だと言われるが、この了解事項は、新たにここで債務を設定したわけではないのです。昭和二十四年四月二十七日に吉田さんがお答えになったことをここで引用いたします。よく聞いて下さい。「なお、以上本文に附帯せしめまして、日米両国政府間の了解事項として、占領費並びに米国政府から日本に供与された借款及び信用は日本にとって有効な債務であり、これらの債務は米国政府の決定によってのみこれを減額し得るものである旨規定されております。これはあたりまえのことでありますが、しかしながら、日本占領費あるいは日本に供与された借款、信用等が、あたかも日本の債務ではないかのごとく、日本に対する贈与のごとく感じらるる節があるものでありますから、このあたりまえのことを、ここに了解事項として書き加えたのであります。」、こういうことなんで、ここに新たに債務を設定したのではない。前からの覚書によっても債務ということはわかっておる。債務と心得る。それを贈与と思う人もあるようだから、ここにはっきりしておくというのであって、新たに債務を設定したわけではない。あたりまえのことを言っているわけです。
  224. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 総理の読んだ通りですよ。私は、だから言っている。債務を設定したのでなくとも、あなたは、吉田総理が言ったようにわかり切ったあたりまえのことでございますがと今言ったでしょう。あたりまえのことを再度確認したということは、債務性を持っているということを確認したのです。債務性を持っているということを一つ条約の中で確認して、片っ方では、この条約の中で日本の持っている債権を放棄したのですよ。そうでしょう。片っ方の債権を放棄して、日本の債務を再度確認した。あなたの言う通りなら、こういうことでしょう。それじゃ屈辱条約じゃないか、こう言っているのです。そうでしょう。条約というものは、日本の債権を放棄したならば、相手の国も債権を放棄する、あるいはその他の債権の放棄に見合うべきものがなければならない。どうですか。あなたはよく世間の例で言うじゃないですか。相手の人から貸金を取らないということにした、そのときに、相手の人に対して、こっちの方で借りのあることをもう一度確認した、こんなことが国内の常識でありますか。条約というものはそういうものじゃないですよ。条約というものは相互主義であって、小坂さんの得意の言葉の、ドイツではこうでございます。小坂さん、その例を出したらいいんだ。ドイツでは、ドイツの債務というものを設定すると同時に、ドイツの米国に対する債務というものの減額を確立している。それで条約というものが初めて相互主義の建前に立つのです。いいですか。そういう建前に立つから、西村条約局長の言葉というのは筋が通っている。日本の債権を放棄をしますから、アメリカ側日本に対する債権に対しても放棄することがあるのだ、これは直ちには言ってない。なぜ言ってないかというと、これは講和条約前だから言ってないのですよ。これは講和条約によって確定すると言っている。だから、あなたが例に出した占領費は、講和条約によって確定したでしょう。あなた、その見合いの関係を見ないで、それをあたりまえだとおっしゃる。あたりまえだとおっしゃるのなら、屈辱条約池田さんの先輩の吉田さんが結んだ、こういうことになるじゃありませんか。これがあたりまえじゃありませんか。どうなんですか。小坂さんでもどっちでも答弁して下さい。
  225. 池田勇人

    池田国務大臣 一つ静かにお聞き願いたい。  ガリオア・エロアの援助は、ずっと前から来ておる問題でございます。債務性と心得ておる問題であります。たまたま阿波丸事件の請求権が始まって、——先でもあとでもよろしゅうございます。先でございます。先でもあとでも問題は同じだ。そこで、阿波丸事件の請求権をどうするかという問題は、ガリオア・エロアの問題の債権とは別個の問題でございますよ。阿波丸事件の債権放棄とガリオアとかねさすということは、どこから出てくるのですか。了解事項は減額するということだけだ。そこで、ガリオア・エロアの問題につきましては、支払いの条件、計算は追ってきめるということになっております。阿波丸の請求権問題はその後に出てきた。大体二億二千万円でしょう。五十万ドルじゃないですか。五十万ドルを放棄したから二十億ドルを放棄しろと言えるかというと、経済的に言えない。そこで、私は考えるのに、——五十万ドルでございますよ。片一方は二十億ドルですよ。これは西村君が何と言われたか、経済のことを、まあおわかりになっておられるかもしれませんが、これを放棄するから、二十億ドルを放棄さすんだ、これが条約の双務性だ、こんなことは理屈に出てきません。と同時に、あのときの了解事項で、アメリカ政府の決定によって減額し得るものだということは、債務性を認めるけれどもアメリカは減額し得るという、こっちから要求する道を開いたということなんです。五十万ドルとの見合いだったら、私は大へんな得じゃないかと思います。大体、五十万ドルの阿波丸のあれで二十億ドルのあれをどうとか、双務契約だってこんな因果関係はないのです。それは、いろいろ世話になっておりますということはまくら言葉に言っておりますが、阿波丸事件があるからといって、二十億ドルのこれを放棄さすんだということは、いかにわれわれが心臓が強くても言えない。西村君だってそんなことを言っているのじゃない。減額し得るということにとどまる。だから、あの西村君の放棄ということは、一部減額も放棄のうちに入るという解釈で言っているのではないかと思います。もし全額放棄ということを彼が主張するならば、この了解事項を読み足らないか、読み間違っておると私は断定します。
  226. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 池田さんのお話は、そう聞いている限りはもっともらしく聞こえますね。  それでは、もう一つ伺いますが、占領費というのは四十八億ドルでしょう。四十八億ドル全額放棄したのは、あなたの解釈から言うと、この了解事項の中に占領費及び日本の降伏のときから云々となっている、あなたのおっしゃっている五十万ドルですか、阿波丸の五十万ドルの放棄のためにその相対で占領費の四十八億ドルを捨てたということになったら、こんな条約を結ぶのはアメリカは間違っているということになるじゃないですか。あなたの解釈はそういう解釈になるじゃないですか。どうですか。それはガリオアの問題ではありませんよ。占領費は四十八億ドルで、ガリオアよりまだ多いじゃないですか。それは見合いにならぬですよ。  まだお聞きなさい。池田さん、あんまりあわてちゃいかぬ。それはなぜこう書いてあるかというと、ガリオアはそのころにおいてほとんどただになるということがあったからこういうように言っているのです。なぜならば、小坂さん、あなた方だって認めているじゃないですか。四分の一、それ以外はほとんど証拠にならないようなものしかないから、四分の三はそういうものばかりだから、これはいずれゼロになるという前提に立っておるからこれを言っておるのでしょう。池田さんの論理をもってするならば、占領費の四十八億ドルを減らしたことだって、これはアメリカとして不平等だ、池田さんと同じ言葉で言えば。そういう話は通りませんよ。
  227. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたの占領費四十八億ドル、それはどの占領費ですか。
  228. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 終戦処理費その他あるでしょう。
  229. 池田勇人

    池田国務大臣 これは終戦処理費じゃありません。そんなことをおっしゃるから変になってくる。これは、アメリカ日本を占領したときに、アメリカの負担した占領費でございます。終戦処理費は日本が負担したのですよ。事柄が違いますよ。
  230. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は、池田さんがそういう言葉じりをとるのなら言いますよ。私の言っている占領費というのは、十四条の(b)項ですよ。十四条の(b)項は四十三億ドル、四十三億ドルが四十八億ドルに間違ったって、あなた、そこら辺の言葉じりをとらえて言わなくてもいいじゃないですか。数字が五億ドル違ったくらいのことで、一国の総理大臣ともあろう者が、そんなことをあまりがあがあ言う必要はない。私は十四条の(b)項の話を言っている。あなたどうですか、総理、お答え下さい。
  231. 池田勇人

    池田国務大臣 十四条(b)項という、それは日本の負担した終戦処理費ですか。
  232. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 十四条(b)項はアメリカの占領費です。
  233. 池田勇人

    池田国務大臣 それは放棄したのですよ。それは平和条約で、これとは関係ございません。
  234. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ここに占領費と書いてあるのは——私の論理は、いいですか、確定するのは平和条約で確定する。十四条(b)項です。ガリオアの問題だって、減額することがあるというのは、これはいずれ講和条約によってきめる。池田さん、おっしゃったじゃないですか。それと同じように講和条約によって確定する。そして、ガリオアというものは入っていると吉田さんが言ったじゃないですか。占領費も入っていると言うのでしょう。それなら、占領費については十四条の(b)項によって落とされる。ガリオアだって、ここで出ているということは同じことじゃありませんか。池田さんの論理から言うと、私の言うのが正しいことになる。そうでしょう。違いますか。違うなら違うとおっしゃい。
  235. 池田勇人

    池田国務大臣 阿波丸協定に基づく了解事項のあの占領費というのは、アメリカの負担した日本の占領費、それを言っておるわけです。
  236. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 十四条の(b)項のことですよ。
  237. 池田勇人

    池田国務大臣 だから、その占領費というのは、四十八億ドルとか五十何億ドル——数字の問題じゃないですが、あそこで言っておる占領費というのは、アメリカの終戦処理費じゃないのですよ。それを私は言っておるのですよ。
  238. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、違うんですよ。
  239. 池田勇人

    池田国務大臣 だから、あなたと話が違うから……。
  240. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、私は関連だからこれでやめますが、あなたがおっしゃるのを私が言っておるのです。あなたは、アメリカの占領費を言っているのでしょう。それは十四条の(b)項なのです。だから、十四条の(b)項の占領費というのはそれなんですよ。ここに了解事項で書いてある占領費というのは、平和条約十四条(b)項によって確定をされるのですよ。あなたはさっきからこういう例でお話しになったでしょう。国民にそういう言葉で言う限りはわかりやすい。五十万ドルの阿波丸請求権を捨てて、二十億ドルを同じように捨てろなんというそんな常識があるか、こうおっしゃるから、あなたの論理で言うならば、五十万ドル捨てて占領費という約四十何億ドルですか、この占領費を捨てるというのはおかしいじゃないかということになる。ところが、現実に十四条の(b)項で捨てているじゃないか。これは十四条の(b)項で捨てると同時に ガリオアの分も、いずれこれはゼロになる、そのゼロになるという前提で西村条約局長が言い、あなたも、講和条約でこれを確定します、こう言っているから、あなたの論理と筋として合っている。そうでしょう。そうすれば、あなた、これは相殺されるという西村条約局長考えは、意見としては筋が通っているので、もしそれが通っておらないとあなたがおっしゃるのならば、日本の国は、阿波丸という協定によって、債権は放棄した、債務は再確認した、そういうことになるのだが、そういう不平等な協定を当時の吉田総理が結んだのですかと、こう聞いておるのです。関連だから、私はもうやりません。
  241. 池田勇人

    池田国務大臣 あなたは平和条約で放棄したものだと言うが、これは性質が別個の問題でございますよ。事柄は占領費でございますけれども平和条約によって、われわれは終戦処理費のあれもありますし、向こうも占領費というのは放棄する、こういうことになっております。この問題とは違う問題でございます。今あなた方は、阿波丸事件によって五十万ドル放棄したから、片一方でガリオア・エロアを放棄しないものと見るということは常識に合わない、こういうことを言っておる。そこで、この放棄ということに一部放棄もあるし全額放棄もあるということならば、放棄という言葉を使ってもよろしゅうございますが、債権の放棄というものは全額のみに限るというのだったら、西村条約局長は、この了解事項を十分読んでいないか、誤解している、こう政府としては断定いたします。
  242. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は留保いたします。了解いたしません。
  243. 戸叶里子

    戸叶委員 今の総理大臣の御答弁を聞いておりましても、そこに非常にごまかしがあるように思うのです。ただ、聞き捨てにならないのは、西村条約局長の言われたことに対して、そういうことを言ったとするならば読み足らないか読み間違いだということをおっしゃった。ところが、条約局長なんです。かりそめにも条約局長、その当時の条約局長の言ったことを、読み足りないとか読み間違いだと言う。そうすると、私どもは今後条約を読むときに何を信じていいかわからないということになるのじゃないかと思うのです。  それで、こういうふうな問題をもう少しはっきりさせるために、西村元条約局長に来ていただくように、委員長、諮っていただきたいと思います。
  244. 池田勇人

    池田国務大臣 だから、私が初めから、一部だけをおとりになって速記をお読みになっても、なかなか判断を誤まる、これはなかなか私は申し上げられませんと、こう言っておる。だから、私は時間があれば取り寄せましてその西村条約局長のあれをずっと読んでみないと、一部だけおとりになっても、これは誤解がありますから。西村君は、察するに、一部放棄も減額というふうな頭で答えたと思います。そうしなければこれが読めぬじゃございませんか。日本語で読んで、減額し得るものであるとしたときに、これは全部放棄だと解釈することは、われわれの日本語ではできない、こういうことです。
  245. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、今の喚問の問題はどうしていただけますか。
  246. 森下國雄

    森下委員長 理事会に諮ります。
  247. 戸叶里子

    戸叶委員 今の西村元条約局長に来ていただくことに対しては、理事会で諮ってきめていただくということでございますから、そういうふうにしていただきたいと思いますが、先ほど岡田委員も触れられましたように、二十四年のころまではほんとうにどさくさしていたわけですね。いろいろなものが入ってきましても、それがほとんどただだということしか考えられなかったわけです。まあ池田さんなんかの当時の発言を速記録で読んでみますと、講和条約において債権債務がきまるのだというようなことさえも言っていられるわけで、これまではアメリカからの援助物資というものは大体無償であるということが考えられていた。だから無償であることに感謝をして、そうして阿波丸の請求権を捨てて、それに対してアメリカが、こういうものは権利として持っているのだけれども、自分たちの考え方でそれをも減額する、すなわち、そういうものをなくすことができるのだということを言っているわけなんですよ。ここまでの段階においては、私は私の読み方が正しいと考えるわけです。しかし、池田さんが、そういうことに対しては違うとおっしゃいますから、これ以上ここでは議論しませんが、それじゃ逆に伺いますけれども、このアメリカだけの考え方で債権を減額し得るものであるということは、債権がなければ減額できないわけですね、債務がなければ、金額がなければ。そうすると、日本ははっきりとここで債務というものを認めたから、アメリカがそれを減額することができると言ったわけですね。ここで債務と心得るということは、もう債務でないということではなくて、債務であるのだということの債務と心得るという意味ですね。
  248. 池田勇人

    池田国務大臣 向こうはそう思っていますし、われわれも、債務性があるものとして、債務と心得ている。債務ではございません。そうして、昭和二十四年の見返資金ができるまでにも、——これはもらったもんだもらったもんだとおっしゃるけれども、たびたび申し上げているように、覚書が出ているじゃありませんか。これを知らずにおいて、もらったもらったということは、これは相手方に通らぬことなんで、政府が責任の地位において受けておるのでありますから、これを知らないで、もらったもんだというので論拠にされては困ります。これは国際的に言って笑われるかもしれません。ああいうものが出て、受けているのですから。だから、私は、もう見返資金ができる前から、もらったものもありますが、返済すべきものもありますと、はっきり言っております。
  249. 戸叶里子

    戸叶委員 言っていませんよ。
  250. 池田勇人

    池田国務大臣 言っております。昭和二十四年の四月十四日に言っております。
  251. 戸叶里子

    戸叶委員 それは阿波丸のときですよ。見返資金ができるときなんですよ。
  252. 池田勇人

    池田国務大臣 見返資金は昭和二十四年の四月からできております。そうして、せんだって横路君の質問に、池田当時大蔵大臣は、このガリオア・エロアは贈与の分もあるし、返済すべきものもある、今のところはっきり言えませんと言ったというのは、阿波丸のこの決議の日の前日だったと思います。私、記憶を、横路君の質問からずっと引っぱってみましたら、そうです。だから、その当時もう言っているわけです。
  253. 戸叶里子

    戸叶委員 それはいずれにいたしましても、それでは、ここで債務と心得るという意味は、債務性が非常に強くて、債務でない場合はないという意味で、つまり、贈与の場合ということはない、——ちょっと待って下さい。間違いました。ゆっくり聞きますから、ちょっと待って下さい。この間池田総理大臣は今までの考え方をちょっと変えてきました、黒田さんに対して。それはどういうことかといいますと、今までは、ガリオア・エロアは債務であるか贈与であるかわからないから債務と心得ると、こうおっしゃった。ところが、今度は、黒田さんに対して、贈与もあるし債務もある、両方あるから債務と心得るとおっしゃった。スタンド・ポイントが全然違っちゃうのですね。そこで、この場合においては、債務と心得るという意味の中には、債務もあり贈与もある、両方あるからここで債務と心得るという字を使ったのですか、この阿波丸協定の場合にも。
  254. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、ガリオア・エロアのうちには、贈与の分もありますし、返済すべきものもあります、従って、これは今はっきり申し上げられません、講和条約のときにきまるでしょう、こう言ったんです。占領費の方はきまりましたが、これはきまらなかったわけです。二年前の話でございます。返済すべきものもあるし、贈与の分もあります、こう常に言っております。従って、われわれ、何ぼ払うかというととはきまっておりません。きまっておりませんから、完全な確定債務じゃない。将来払わなければならぬだろう、どれだけかはわからぬという気持を持っておった。それが債務と心得えるという私の気持なんです。それでずっと来ているわけです。そして、その当時、今の阿波丸のあれで、これはアメリカ政府の決定によってのみ減額し得るということで、やはり債務性を確認したわけでございます。
  255. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、やはり、アメリカ政府考え方で減額できるというので、ここで債務性を確認したわけですね。そうですね。
  256. 池田勇人

    池田国務大臣 前からあるのを再確認したわけです。
  257. 戸叶里子

    戸叶委員 前からあるのを、債務性を確認した、こういうことをおっしゃったんですが、そういうふうに債務性を確認するということは、日本憲法の違反じゃないんですか。総理大臣の答弁はわかっています。いやそうじゃないんです、これは了解をしたんだから心得たんです、こういうふうにおっしゃるわけです。そうすると、この了解事項の中で債務と心得るというのは、非常に債務であるということを言いたいんだけれども、言えないほど債務に近いものだというふうにわかるわけです。そういう意味ですね。そういうふうに言っちゃうと憲法の違反になるから脅えないんだ、しかし債務と心得る、こういうことですね。はっきりおっしゃって下さい。
  258. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、吉田さんがおっしゃっておるように、債務性があることは当然なんだけれども、もらったものだと思う人もあるかもわからぬから、ここでこういうことを了解事項に入れた、これがほんとうのことなんです。
  259. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ債務だということを言ったのと同じじゃないですか。同じですよ。それは詭弁だけですね。  この問題だけにこだわっておられませんから、先に進みますけれども、それじゃ、政府アメリカに対して支払いましょうという意思表示をされたのは一体いつごろからですか。債務と心得る心得るで来て、まあ大体お払いいたしましょうというふうな意思表示をされたのは一体いつごろからですか。
  260. 池田勇人

    池田国務大臣 交渉に入ったのは、前からいろいろありましたが、私の記憶では、文献に残るのは昭和二十八年の十月三十日の池田・ロバートソン会談と思います。これは、ロバートソンから、ガリオア・エロアの問題を早く片づけよう、早く払ってくれ、こう言われた。で、直ちに東京で会議を開こうというあれでございましたから、直ちにはいかぬ、近き将来、こういうので、近き将来東京で会議を開こうというのが、昭和二十八年の十月三十日だと思います。二十九年になりましてぼつぼつ話が始まりかけた。債務と心得ますが、どれだけの債務だというのははっきりいたしません。そのどれだけの債務と心得て、心得たのを確定債務にする準備をしたのは、今度の協定のイニシアルのときでございます。
  261. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、二十八年の十月三十日のロバートソンとの交渉に入ったときに初めて払おうじゃないかという決意をされたということを今おっしゃったんですけれども、その前にどなたかアメリカに対して払うということをはっきり言っていらっしゃいませんか。
  262. 池田勇人

    池田国務大臣 払うということははっきりだれも言ってないでしょう。私は知りません。それから、ロバートソンとの会談のときに、払いますというのではない、交渉をしよう、こういうんです。交渉も直ちにはいかぬ、近い将来、こういうことにしたのが最初だと思います。
  263. 戸叶里子

    戸叶委員 ところが、国民の知らない間にはっきりと払うということを言っているわけなんです。今その例をあげますと、平和条約のときの様子を、当時のやはり条約局長だった西村さんは次のように書いていらっしゃいます。(「一属僚じゃないか」と呼び、その他発言する者あり)——しかし、西村さんは条約局長ですよ。政府の重要なポストにあった人ですから、それを引いたことに対して笑われたりけなされたりするのでは審議できないと思うんです。いいですか、こういうことを言っていらっしゃいます。平和条約の各項から離れて、ガリオア・エロア債務については平和条約の交渉当時日米の間で話題になったことがある、——これは話題になったと思います。一九五一年の一月、——一九五一年の一月というと昭和二十六年ですね。二十六年の一月最初に講和条約の話し合いが行なわれたとき、先方から議題を受け取った、——いろいろな議題がこう来たのだと思うんです。その一項に、戦後債務と題し、ガリオア債務のごとき戦後債務はどうするかとあった、議題表に示された各項目に対する日本の根本方針は書面で先方に提示されたが、戦後債務の項には、明瞭に日本は支払うと書いてある、——いいですか、こう書いてあるのだそうです。第一回会談の際、ダレス代表は各項目にしたためた日本の見解に対しコメントしていった、——各項目に対して、これはどうだこれはどうだといってコメントしていったが、戦後債務のところにくると、ダレスさんがにっこり笑って、日本の精神は大いによろしいが、どうやって払う気かと尋ねた、と、総理は、将来の話し合いでと言われた、総理は口ぐせのように借金は払うと言われた、そうして、この吉田・ダレス会談の内容を聞かれた池田さん、——そのときの大蔵大臣は、大へんに心配されて、さっそく官邸に行って総理の真意を聞かれたそうです、そうすると、総理は、おれは払うと言った、いつ幾ら払うとは言ってないけれども、払うと言ったと言われた、そうして、前の方は、——前の方はというのは、つまり吉田さんが払うといって書いて、そしてダレスさんにやった、その方ははっきり記録してあるけれども、あとの方はまた聞きだから、——池田さんが吉田さんのところに行って確かめたそのことはまた聞きだから、自分は確かではない、こういうふうに書いてあるのですね。そうすると、はっきりここにアメリカとの平和条約について取りかわした議題の中で吉田さんが払うと書いたそうですけれども、この事実に対してどういうふうにお考えになりますか。また、あとの方も、池田そのときの大蔵大臣は覚えがおありになりますか。
  264. 池田勇人

    池田国務大臣 だいぶ昔のことでございますから。また、私はダレス氏と吉田さんとの会談に立ち会っておりません。従いまして、記憶がございませんが、二人の間では、吉田さんはああいう気っぷのいい人ですから、債務と心得ておるという意味を言われたのじゃないかと思います。それは当然と思います。旧債務は払う、それから、新債務を債務と心得ておるという意味を言われたのじゃないかと思います。
  265. 戸叶里子

    戸叶委員 吉田さんが払うと言われた。もしもそれが事実であるならば、これはこのときにもうすでに憲法違反をしているわけですね。
  266. 池田勇人

    池田国務大臣 払うとか、債務と心得る、——払うと言われたか言われぬかわかりませんが、債務と心得ておるという表現をされたと思います。吉田さんは常にそう思っておられるのですから。しかも、昭和二十四年のときもそうでございます。今のは昭和二十六年の一月でございましょう。だから、やはりもう前から債務と心得ておるのですから、債務と心得ておるということは言われたでしょう。払うと言ったことは私は承認いたしませんよ、それは聞いていないのですから。
  267. 戸叶里子

    戸叶委員 ここにははっきりと記録に払うと書いたと書いてあるんですよ。しかし、書いたということになると、憲法違反ですね。
  268. 池田勇人

    池田国務大臣 両当事者が一つ払いましょうというときに、すぐこれが債務負担と言うのは、ちょっとどうかと思います。憲法というものは、あるいは国会というものは、そんな軽々しいものじゃないと思います。
  269. 戸叶里子

    戸叶委員 この辺の問題がいろいろあいまいな点がありますから、この間黒田委員が要求しましたように、やはり古田さんも一度呼んでいただきたいと思います。そして、はっきりさしていただきたいと思うのです。   〔発言する者あり〕
  270. 森下國雄

    森下委員長 理事会を開いて決定します。理事会を開いて決定します。
  271. 戸叶里子

    戸叶委員 今のような実例、それからまた、アメリカの下院の歳出委員会でヴォルヒーズ次官のガリオア資金についての説明等の言葉を見ましても、その中ではっきりと、講和条約に際し日本の負債とされるべきものであってというふうに書いてあるのを見ましても、講和条約までは、おそらくこれが債務であるということはだれも考えなかったのではないかというのが私は事実であろうと思います。たとえば、池田さんのはっきりした発言として速記録にあるところを見ましても、講和条約でそのことはきまると言い、そして、私は時間がないから読みませんけれども、   〔委員長退席、北洋委員長代理荒席〕 見返資金が国会にかかったときも、その当時参議院の大蔵委員会で、当時の理財局長の伊原氏が言っていることも、おそらくは債務性は講和条約のときの問題であるということを言っているのを見ましても、このガリオア・エロアが債務であるかどうかということは、講和条約において初めて、債務じゃないかなあというふうなこと、あるいは債務でないかもしれないということが出てきたのじゃないかと私は思いますけれども、この点は、前から心得ているということに池田さんがおっしゃっているわけですが、もう一つそれではここで例を引きますと、自民党の小川委員講和条約の特別委員会でこういう重大な発言をしております。国民が最近まで無償で援助されていたと信じ切っておったところの対日援助費二十二億ドル、これはまあ数字はいいかげんですね、あとからいろいろと計算されたらしいんですが、二十二億ドルさえも講和の結果国民の債務となることが明らかになったのでありますと、こう言っています。これはどうかわかりませんけれども、ともかく小川さんでさえも、この委員会で、今まではただだと思っていたんだと、こういうふうなことを驚いて言っているのであって、私は、こういう点から見ても、ガリオア・エロアというものが債務である、心得ていたというような理屈は筋が通らないのじゃないかと思うのですが、この点をもっとよく伺いたいと思います。
  272. 池田勇人

    池田国務大臣 もう一時間半の議論にわたって、二十四年の阿波丸のときにも債務性をはっきり確認しておるじゃございませんか。その当時、私も大蔵大臣として、これはもらったものと払うものがあると、こう言って債務性を認めておるのであります。そして、きのうのあれでも、向こうからの覚書がたびたび出ているのでございます。これはまあ知らなかったといえば別でございますが、私は、責任の地位につきましてから、債務性と心得ると心得ております。
  273. 戸叶里子

    戸叶委員 講和条約の十四条との関係を私聞きたいのですけれども、今ちょっと気分転換してほかの問題に入ります。  ちょっと数字の問題に入った方がいいかと思うので伺いますけれども、この出された資料の中で、見返資金からの特定教育計画費というものが引かれているわけですけれども、それに対しての安藤さんの説明でしたか、これは何に使ったかといえば、CIEの図書館の運営教育費等でございます。これに要する経費といたしまして、昭和二十五年、二十六年両年度に見返資金からお手元の資料にございます金額を支出しておりますと言われたわけですけれども、二十五年に幾ら、二十六年に幾らということを私は念のために伺いたいと思います。
  274. 安藤吉光

    安藤政府委員 大蔵省の御所管かと思いますけれども、便宜私からお答えいたします。  特定教育計画費というものは、総司令部の、先ほども御指摘のありましたCIEの行なう特定教育事業に要する経費としまして、総司令部の指示に基づきまして見返資金から支出されたわけでございます。その実際の支出額を申しますれば、昭和二十五年度が一億四千九百四十一万三千七十七円、二十六年度が四億百九万二千八百四十一円、二十七年度が一億四千六百八十一万千百六十六円五十銭、二十八年が八百二万千二百二十九円、合計いたしまして七億五百二十四万八千三百十三円五十銭でございます。
  275. 戸叶里子

    戸叶委員 二十五年、二十六年、二十七年、今二十八年まで説明されたわけですね。そこで、昭和二十四年はどうなっていたのですか。
  276. 安藤吉光

    安藤政府委員 ただいま申し上げました通り、この特定教育計画費を見返資金から支出いたしましたのは、昭和二十五年四月一日に総司令部から出ました指示に基づいて出しておるわけでございます。従いまして、二十五年からでございます。
  277. 戸叶里子

    戸叶委員 二十五年には全然使っていらっしゃらないのですか。念のために伺いたい。
  278. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答えいたします。先ほど御説明いたしました通り、二十五年度は一億四千九百四十……
  279. 戸叶里子

    戸叶委員 二十四年には使っていませんか。
  280. 安藤吉光

    安藤政府委員 二十四年には見返資金からは出ておりません。
  281. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、どっかから出ておりますか。
  282. 安藤吉光

    安藤政府委員 この問題につきましては、性質を簡単に御説明すれば一番よくわかると思いますが、おそらく、私詳細なことは今存じておりませんけれども、二十四年度以前は、出ておるとすれば終戦処理費だと思います。元来この見返資金から出ましたことが少し変則なんでございます。と申しますのは、見返資金は援助物資のかわり代金を積み立てまして、そしてそれが貿易の振興、経済の復興に役立てられたわけでございます。ところが、この米側諸計画と申します、今御指摘のこの教育の関係とか、あるいは住宅建設費とか、あるいはまた学童給食といったものがこういった見返資金から出されたわけでございます。これは見返資金の本来の使命とちょっと違いますので、従いまして、米側と交渉いたしまして、これは米側も直ちに応じたわけでございまするが、そこで、いわゆる援助物資の項目から控除いたしたわけでございます。
  283. 戸叶里子

    戸叶委員 二十四年には終戦処理費から出ていることをお認めになりますね。
  284. 安藤吉光

    安藤政府委員 私、先ほど申しました通り、こまかい資料をただいま持ち合わせませんので、出ておるとすれば終戦処理費であろう、そう申し上げた次第であります。
  285. 戸叶里子

    戸叶委員 二十四年に総司令部費として教育文化関係に一億四千二百五十五万円使っているわけです。今度この見返資金関係からの分だけ引いて、この終戦処理費から出たのをお引きにならなかったのはどういうわけですか。こういうふうに、ある一部分は終戦処理費から出して引かない、そして、ある一部分は見返資金から出してそれを引くというのはおかしいじゃないですか。どうせ引くんだったら、こちらの分も引くべきじゃないですか。
  286. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほどもちょっと御説明いたしましたように、これを見返資金から出したこと自体が実は変則であったと思うのです。本来ならば終戦処理費から出すべきもの、従いまして、この見返資金から出たということに関しまして、米側に、これは直接見返資金の目的である経済復興とか貿易の振興目的にはずれておるから、これを引いてくれないか、援助物資の総額から引いてくれということを言いまして、向こうも直ちに応じたのがこれでございます。
  287. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、もしもこの見返資金から出したのを引くのだったら、当然終戦処理費から出ているのも引くべきだったと思うのです。それを、一部分は引いて一部分引かないというのは、少しおかしいじゃないかと思うのです。なぜ私がそう言うかと言いますと、たとえば、終戦処理費というものは、その当時アメリカがどういうふうにでも、使おうと思えば追加予算でも補正予算でも組んで使えたわけですね。ところが、二十五年、二十六年、二十七年、二十八年は、見返会計ができたからそれから出した。もちろんこれは引いたわけですけれども、それを二十四年は、こちらの終戦処理費から出しているわけです。だとすれば、当然二十四年の分も引いたらいいと思うのです、同じ性質のものであるならば。それとも、その教育計画費というのは性質が違うのですか。
  288. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほど申し上げました通り、本来の性質から申しますると、これらの経費というものは終戦処理費から出されるのが当然の性質であったと思います。そしてまた、終戦処理費から出ておるといたしますならば、平和条約十九条によりまして、日本はその対米請求権を落とされていたはずです。たまさか、おそらくは終戦処理費が膨大になることを防ぐために見返資金を流用したのだろうと思います。そういうことがあるので、言うなれば、向こうに話しました結果、これは終戦処理費じゃなくて見返資金から出ておる、だから、それは援助物資のかわり代金のそういった資金から出ておるから引いてくれないかということを申しましたので、引いたわけでございます。もしこれが終戦処理費から出ておりましたらば、この分も結局は十九条によりまして日本は全額この反対要求はできなかったはずだと思います。
  289. 戸叶里子

    戸叶委員 そういたしますと、米軍の住宅の場合にもそういうことが言えるわけですか。二十五年、二十六年に作っているわけですが、その前にも、二十一年、二十二年、二十三年、二十四年と、終戦処理費から相当莫大な金額が出ているわけですけれども、ここで引かれているのは、見返関係から出た分だけですね。
  290. 安藤吉光

    安藤政府委員 その通りでございます。一番最初に申し上げましたと思いますが、この住宅建設費、それから、1今までお話のありました教育関係費、それから、さらには学童給食費、こういったものは見返資金から出ておるという理由をもちまして米側に控除を要求しまして、米側もこれを応諾したわけであります。
  291. 戸叶里子

    戸叶委員 ただ、私が了解に苦しむのは、この連合軍の住宅の場合に、スキャッピンで二千戸の住宅を作るようにということが命令されてきているわけですね。そして、それは見返会計から出すようにということが言われてきているわけなんですけれども、その場合に、追加の連合軍の住宅という言葉を使っているわけです。ですから、今まで住宅を作っていた、それに対して追加のアメリカの個人の住宅を作るんだ、こういうふうなことを言ってきているわけですが、そうなってみると、前の住宅費というものも今度の住宅というものも同じものであるから、当然終戦処理費の分も引くべきではないかというふうに考えるわけなんです。
  292. 安藤吉光

    安藤政府委員 終戦処理費において住宅をたくさん作ったことは事実でございます。先ほどから申し上げております通り、この米側の諸計画、今おっしゃった進駐軍の住宅も入るわけですが、これは本来なら終戦処理費から出してしかるべきものだったわけであります。たまさか見返資金を流用しましたので、向こうに、言うなれば要求いたしまして引かしたわけでございます。もしこれを終戦処理費から出しておるとすれば、また出すのが当然であったはずなんですが、もしそうであったとすれば、これは平和条約十九条によって当然日本は反対請求権を失っておるわけでございます。ですから、たまさか見返資金から出たものを米側に談判しまして引かしたということをもちまして、今度は逆に、終戦処理費で出したもの、しかも十九条で殺されているものまでも、この際全然無関係なものを控除さしたらどうだということにはならないと思います。
  293. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもの理論からいきますと、あるものは終戦処理費で同じ内容のものを出して、そしてまた、同じ内容の、たとえば教育計画費というのは、日本の国の人たちを教育するために使ったわけですね。CIEの図書館だとか映画だとか、そういうもののために使ったのです。そうだとするならば、これは当然アメリカが出してしかるべきではなかったか、日本が何もこれを負担する必要はなかったのではないかというふうに考えるわけでございますけれども、今安藤さんのおっしゃるのは、見返資金から出した分は仕方がない、これも当然日本の終戦処理費で出すべきであったんだけれども、見返資金から出したんだ、こういうことをおっしゃったわけです。日本教育アメリカがするのに、何も日本が終戦処理費から出す必要はないんじゃないですか。思うようにアメリカ教育するのですから、当然これは見返資金から出して、それは引かれる、これが筋が通るのであって、終戦処理費から出して日本が負担して、アメリカ日本教育してもらうなんていう必要はなかったのではないかと思うのです。そこら辺のところがちょっと筋が通らないのではないかと思います。
  294. 中川融

    ○中川政府委員 見返資金から出したものと終戦処理費から出したものと、両方とも同じ目的であれば、同じに取り扱ったらいいじゃないかという御趣旨の御質問でございます。また、日本教育なら、どうして終戦処理費から出したのかという御質問もあったようでありますが、この終戦処理費から出しました、あるいは見返資金から出しましたいわゆる教育というものは、日本人に対する教育ではございますけれどもアメリカの占領軍の、いわば占領目的に基づく教育計画費の経費を出したのでございまして、従って、当然占領のために必要な経費ということで、これは終戦処理費から出すことを日本に命じ得る性格のものであるわけでございます。従って、大部分はそういうことでやったわけでありますが、今アメリカ局長が言いました通り、先方としても、日本の財政をできるだけ縮減してやろうという気持がだんだん強くなりまして、従って、終戦処理費というものがあまり膨大になるのはできるだけ避けようということで、見返資金というものがちょうどある、こっちのを使えということで、見返資金を使えという指令が出たわけでございます。住宅の場合も同様でございます。しかしながら、見返資金というものは、御承知のように、その作りました根本の趣旨は、日本の産業復興、財政の健全化ということのためにこの金を使おう、援助物資の売り上げ代金を日本政府の一応金として、——これは日本政府の金であります。日本政府の金として、しかし、これを日本の復興のために使わせよう、その意味で、司令部から、いわばひもがつくといいますか、どういうことに使うかと一々指令が来たわけで、司令部と相談しなければ使えなかったわけでございます。しかし、そういう趣旨に使われるものでありますから、それを司令部のいわば占領目的のために使わしたのは気の毒であったということから、これは当初からこのガリオア返済の際は引いてやろうというのがアメリカ側考え方であったわけであります。同じようなことは、戸叶先生御承知のように、ドイツからの返済でも、この見返資金から出た分は全部控除しております。  そういうことで、同じ目的でありましたが、終戦処理費から出たものは、これは当然占領目的に合致するものとして日本が負担させられたわけでございます。見返資金の分は返してもらった、こういう差が出てきたわけでございます。
  295. 戸叶里子

    戸叶委員 私はよくわかりません。なぜならば、この見返資金から出したものは引いてやるんだけれども、同じ目的に使ったお金を、終戦処理費から出すのだったらこれは引かないのだ、それでは筋が通らないと思います。しかし、筋が通らないのですけれども、ここで時間をとりたくないですから、先へ進みます。  見返資金会計について御質問してみたいと思いますが、この見返資金会計ができたころ、当時の財政顧問のドッジさんがこういうことを発表しております。見返資金の使用は総司令部の監督下に置かれる、これは今後の経済部門に対処するための有力な財政上の助けとなるであろう、その使用は厳密な監督を受け、また他の国に対する同種援助と同様な一般的原則に従うと書いてありますね。ほかの国が受けている見返資金と同じような一般的な原則に従う、こういうふうに書いてあるわけでございまして、ほかの国の見返資金と同じ性質で、日本だけが見返資金の性質は違うのだということは言ってないのです。これは、総理大臣、お認めになりますね。
  296. 池田勇人

    池田国務大臣 私はもう十何年前のことで一々の声明を覚えておりませんが、見返資金の運用につきましては、当時占領下でございましたから、予算その他特別会計のものも全部向こうと相談してやっております。
  297. 戸叶里子

    戸叶委員 運用じゃないのです。その性質です。運用はもちろん司令部の監督下にあったことは私も知っております。ただ、その性質について、この中でドッジ氏が、ほかの国と同じ一般的な原則に従うのだということを言っておるわけですね。
  298. 池田勇人

    池田国務大臣 見返資金設定の趣旨は、今までのように援助物資やあるいは日本の価格補給金がどこへいったかわからなくなる、こういうことはよくない、従って、見返資金会計を設けて、わが国の産業の復興と財政の健全化をはかる、こういうことで設けたことは記憶がございます。ただ、外国の例は十分知りませんから何でございますが、趣旨はそういう趣旨で、それによってやっております。
  299. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカの援助を受けて見返資金を積んだ国は、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ギリシャ、ノルウェー、デンマーク、スエーデン、ポルトガル、 トルコ、トリエステ自由地域、ベルギー、ルクセンブルグ経済連合、アイスランド、アイルランド、インドネシア、——インドネシアというのは、独立前オランダに提供された分から振りかえられたもの、ユーゴスラビア、スイスなどで、このうち、スイス、ポルトガル、スエーデン、アイスランド等は借款のみで、贈与による援助を受けていないので、見返資金を積み立てていないが、他の国々はいずれも見返資金を積み立てている、こういうことがアメリカの本に書いてあるわけです。そうすると、贈与を受けた国々のみが見返資金を積んでいる、そうでない国は見返資金を積んでないということになるのじゃないのですか。
  300. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申し上げます。ただいまおっしゃったのは、一九四八年のいわゆるECA法に基づく援助だと思います。その中でも、大半の国は、たとえば英国とかフランスとか、これは要するに与国でありまして、御承知通り、贈与としてやって、それを積み立てていろいろやっております。ドイツの場合はECA協定国でございます。しかし、ドイツの場合は、見返資金を積み立てましたけれども、これは後日ガリオア処理とともにその三分の一を返済しております。それから、日本にはECA法の適用はございませんでした。日本が見返資金を積み立てておるのは独自の目的で積み立てたわけでございまして、ECA法の適用は日本になかったということは、再三これまでも御答弁申し上げた通りでございます。
  301. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、ドッジ氏が言っているでしょう。ほかのECAの関係の援助を受けて見返資金を積んだ、それとほとんど同じものであるということをここではっきり発表しているのですよ。だから、それと違うというのはどこに書いてあるのですか。ガリオアによる見返資金は違うのだということはどこに書いてあるのですか。
  302. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほどの御説明で御了解いただいておるのじゃないかと思いますけれども、ドイツのECA、これは積み立てました。日本は、ECA協定もなければ、また、ECA法の適用もございません。日本米国の軍事予算法から出ました金でガリオア援助を得たわけでございます。日本が見返資金を積み立てましたのは、この前から総理初めいろいろな方から御説明がありましたように、独自の目的をもちまして積み立てたわけでございます。その運用が非常に似ておるという点はあるかと思います。   〔北澤委員長代理退席、委員長着席〕
  303. 戸叶里子

    戸叶委員 運用も似ておるし、ほとんどそれと同じ性格を持つものであるということを、ちゃんとドッジ氏が言っておるじゃありませんか。それを日本だけこれと違う性格を持っておるものだということが一体書いてあるのですか。ドイツのことをおっしゃいますけれども、ドイツは見返資金に二種類あるのですね。ERPというのと、それからマーシャル・プランによって受けた見返資金会計と、両方組んでおるわけです。ドイツはなるほど借金を返しておりますけれども、見返資金から返したということは書いてないですよ。
  304. 安藤吉光

    安藤政府委員 再三申し上げます通り、経済協力法は日本には適用がございませんでした。ドイツのはガリオアとECA援助と一緒にして三十億、それを十億に減額して決済したわけであります。
  305. 戸叶里子

    戸叶委員 ドイツのことを例にお引きになって、ドイツよりも有利だ有利だということをおっしゃる。さっきそのことを申し上げようと思ったのですけれども、今そんなにおっしゃるんだったら、ちょっと例を引きましょう。ドイツのことをおっしゃいますけれども、ドイツの場合には戦前からの債務があったわけですね。戦前の債務については、ドイツが二十六億ドルあったのを、アメリカが十六億三千八両刀ドルに、九億六千二百万ドルも減額したわけです。そういうことから見ても、ずっと日本の方が不利です。なぜならば、アメリカ日本への戦前の債権を全然失っていないのですね。ところが、ドイツの場合は、戦前の債務をちゃんと削られてしまっておる。そうして、これと戦後の債務とを合わせて、さらにそれをまた減額しておるのです。戦前、戦後両方を合わせますと、六十三億九千六百万ドルになるわけです。それが三十二億七千三百万ドルの確定になってきておるわけです。初めに戦前の債務をうんと減額されて、そうして、戦後の債務と合わされてさらにそれが減らされて、三十年間の長い期間でこれを返すということになっておる。そういうところから見ましても、はるかに、ドイツの方が日本のよりも有利なんです。ただ政府のおっしゃるのは、戦前の債務に触れないで、戦後の債務だけを取り上げて、これをこれだけ減らしたのだからずっと有利ではないかと言っていらっしゃいますけれども、それはそうじゃないということを、私はここで一本言っておきたいと思います。  さらに、その当時のドイツの払った状態を見ますと、ドイツの経済というものは非常に黒字になっておるわけです。黒字になっておりますし、それからまた、今数字を言えといえば申し上げますけれども、ともかく、ドイツの方は、一九五二年の支払うころは五億ドルの黒字になり、五三年には八億ドルの黒字になっていたのです。今日本が払おうとするときに、一体ドイツと同じように黒字ですか。そういうことはないでしょう。それからまた、さらに、(「そんなことは関係ない」と呼ぶ者あり) ただ、日本の方がドイツよりもいかに有利かということを盛んに言うから言っておるのですから、少し黙っていて下さい。それからさらに、一人のドイツ人の援助を受けた額と日本人一人がアメリカから受けた援助の額というものを比べてみても、ずっとドイツの方が多いのです。そういうふうなところから見ても、日本はドイツよりも今度の支払いが有利であるということは決して言えないわけですから、そういう例はお引きにならない方がいいと思います。
  306. 安藤吉光

    安藤政府委員 ドイツとの関係において、私の承知しておりますことを述べさせていただきたいと思います。  ドイツの外債は、要するにヤング債とかドーズ債という第一次大戦の賠償的なにおいが非常に強いものがあったということでございます。それから、これに対しては三十カ国くらいが持っておったわけですが、この処理にあたりましては、第一次大戦のヤング債、ドーズ債というものがあったこと、それからまた、ドイツが東西に分かれて昔の状態と非常に違っておるということも考慮されたやに聞いております。そして、ガリオアは少しも減額していなくて、利子を軽くしたり、あるいは延べ期間を長くしたり、そういったいろいろなことをやっているようでございます。  それから、今お触れになりました日独の国力、経済力がどうかというお話でございます。これもわれわれ調べてみました。それで、ちょうどドイツのガリオア協定ができましたときのドイツの国民所得は二百六十三億ドル余でございました。これは私の持っております資料がちょっと古いのでございますけれども、一九六〇年の日本は、国民所得が、二百九十・五億ドルぐらいでございまして、日本の方が多うございます。それから、金ドルの保有量というものが、一九五三年のドイツは十二億ドルくらいでございます。日本の方は、私最近の数字を持っておりませんが、一九六〇年ごろは十七・六億ドルと承知しております。従いまして、日独の経済力そのものを比較いたしますと、むしろ日本の方が有利であるとすら言えると思います。
  307. 戸叶里子

    戸叶委員 それじゃ、ドイツ一人当たり受けた援助額というのは幾らですか。
  308. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは人口で割ってみれば出るわけでありますが、これは結局ドイツの受けました戦災というものが非常にひどかったということだと思います。
  309. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことでごまかされては、私は大へんに残念だと思います。そうして、何でもドイツより日本の方が有利だということに結びつけようとすることは大きな間違いであって、たとえば、ドイツの人口というのは、当時四千二百万人ですよ。それで割ってみれば、日本のあれよりもずっと多いということが出てくるわけです。これは今考えてみただけでもわかると思うのですが、これはそれ以上申しません。だから、いろいろ計算してみますと、決してドイツより有利だということが言えないということなんです。  さらに、ほかの国が見返資金を積んでいるが、見返資金を債務として返している国がありますか。見返資金から返している国がありますか。
  310. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 要するに、立場が違うのでありまして、日独は連合国に対する旧敵国であったわけです。この立場は同じでありまして、同じアメリカの軍事予算から出ておりますガリオア・エロアについては同一の条件で返しているわけでございます。他の国は与国という立場で、異なるわけでございます。(「イタリアはどうだ」と呼ぶ者あり)イタリアは、終戦の当時バドリオが寝返りまして、これは終戦のときには与国であった。イタリアの寝返りが終戦を早めたということは、非常に高く評価されたというふうに聞いております。  それから、先ほど援助額の問題がありましたけれども、終戦処理費でも、日本は五十三億ドルないし四億ドルを支払っておりますが、ドイツの場合は百二十七億ドル、これもやはり倍かかっておる。これも戦災の激しさというものを物語るものだと思います。
  311. 戸叶里子

    戸叶委員 同じ法律で、ほかの国とほとんど性質は同じであるということを言っている、その見返資金、しかもほかの国は無償のものだけしか見返資金に積まなかった。見返資金というものは無償のものを積むものであるということがちゃんと規定されているわけなんですよ。そういうふうな点から見て、しかも見返資金というものは厳重に連合国の管理を必要とするというものなんですね。日本だって、厳重にアメリカからの管理を受け監督を受けて見返資金を出したわけです。そういうふうなものであって、日本だけが見返資金からお金を返さなければならない、見返資金を積んだのだけれども、これから出さなければならないという法律はどこにあるのでしょうか。
  312. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどからいろいろお答えしているように、日本の場合は日本だけで、ECAの援助はないわけでございます。  それから、旧与国の間で、やはりマーシャル・プランの援助は返しております。(戸叶委員「どこが返しておりますか」と呼ぶ)どこでも返しております。御承知のように、一九六一年対外援助法というものをアメリカで作っておりますが、その中には、三億ドルがガリオアその他の返金ということで、年々それだけの金が返ってきている、こういうことになっているわけであります。
  313. 戸叶里子

    戸叶委員 マーシャル・プランの援助は返しております。しかし、マーシャル・プランを受けて、そうしてそのドルに見合うだけの自国の通貨を積んだところの見返資金、こういうものから返している国がありますか。そういう国はないと思います。
  314. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それは、ドイツがそうしているわけです。ドイツはガリオアで十五億三千万ドル、ECAの積み立てで十五億二千万ドルそれぞれ積んで、それを三分の一にして十億ドル返している、こういうことであります。
  315. 戸叶里子

    戸叶委員 ドイツはほかの協定で返しているのではありませんか。ドイツは見返資金会計から返しておりますか。見返資金会計の何条から返しておりますか。
  316. 池田勇人

    池田国務大臣 私は、ドッジ氏がこ言ったああ言ったと、多分こう来るだろうということで、外国事情は知らぬと申しましたが、日本は今のECAの適用はないのでございますから、これは日本独自の格好でございます。ドイツの方は、この前私の聞いたところでは、ドイツ銀行総裁が、一昨年の暮れか昨年、十億ドル払う、どこから払うのだと言ったら、借入金で払う、中央銀行からの借入金で払って、そうして、これは毎年の税でやるのだ、こういうことを私は中央銀行の総裁から聞きました。これは見返資金から払うという法律を何も日本は設けたりなんかしようというのではございませんよ。ただ、実質的に考えると、見返資金でこういうふうになっている。それが産投の方にも行っている。産投会計の方から払えば、国民から税金を出してもらうこともないし、今まで積んでおった金の利子とか、あるいは貸付金の一部回収で払う、これは見返資金から払えという法律的のあれじゃない。法律的には産投会計の収入から払う、こうなっている。何も見返資金から払えというアメリカ日本との協定でもなんでもございません。これは日本の独自の考え方でいくのであります。
  317. 戸叶里子

    戸叶委員 私はそういう答弁を伺っているのではないのです。見返資金の性質というものを伺っているのです。見返資金というものは、贈与あるいは条件つき借款という以外には積むものじゃないということがアメリカ法律に書いてあるのですよ。だから、私は、その見返資金というものは贈与を積んだものであろうということを伺っているのです。見返資金から返すのだから、利子から返すのだからいいじゃないかという、そういうことを伺っているわけではないのです。見返資金というものは贈与を積んだものだ、借款は積んでいないのだというそのアメリカ側根拠に従って、日本の見返資金だって当然贈与を積んだものだろうということを伺っているわけであります。  しかし私は、その先に進んでいきたいと思います。  先ごろ外務大臣はこういうことをおっしゃいました。ヨーロッパの見返資金を積み立てた国では、五%を合衆国の使用のために留保された、五%合衆国の費用として使うために見返資金の中からとっておかれた、そして特別勘定として合衆国の支出官の管理下に置かれる、見返資金の中の五%だけは別にとっておいて、それを合衆国の人たちの行政費なり何なりに使ったのだ、しかし、日本では、この五%が留保されていないから、だから性格が違います、こういうことをおっしゃったのですが、それはお認めになりますか。
  318. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いつ言ったか、あまり記憶はございませんが、その通りで差しつかえございません。日本のは、繰り返して言うように、ECA法の適用によって見返資金を積み立てておるわけじゃないのです。なお、申し上げまするが、ドイツの場合はイギリスにも返しているのです。フランスにも返している。それは全体のどのくらい返しているかというと、それぞれ七五%は返しております。
  319. 戸叶里子

    戸叶委員 私がなぜそういうことを伺うかといいますと、外務大臣がそのときはっきりこういうことをおっしゃったのです。五%の負担をしていないから日本は贈与でないということを言ったのです。贈与でないということをはっきりおっしゃった。だから、私はそれは理屈に合わないということを言おうと思っているわけです。それでは、日本は、これと見合うような経費はお出しになっていませんか。全然使ってませんか。外務大臣にお伺いしたいのです。
  320. 中川融

    ○中川政府委員 見返資金をアメリカの行政費に使えるかどうかという点でございますが、日本の場合は、見返資金に、たとえば何%を行政費に留保するという規定がないのは、外務大臣の言われた通りでございます。しかしながら、要するに、返還項目としてあげられましたアメリカ側のいろいろな計画に使ったものは、今度のガリオア決済でアメリカが控除しておる。これが結局アメリカの行政費に当たるわけでございます。パーセンテージはきめておりませんが、要するに、アメリカも欧州における見返資金と同じように運営するという先ほどのドッジさんの原則、あれから、アメリカ側の行政費に相当するものも便宜上見返資金から出さしたことがあるということでございまして、使った例はあると考えております。
  321. 戸叶里子

    戸叶委員 それは見返資金から出しているのですか。
  322. 中川融

    ○中川政府委員 先ほどから御質問のありました、たとえば連合軍の住宅建設費、こういうのはむしろ行政費に当たるわけでございまして、こういうものは使わした例はあるわけでございます。
  323. 戸叶里子

    戸叶委員 そのほかに幾らか出していますか。
  324. 中川融

    ○中川政府委員 見返資金から出したものでアメリカの行政費に当たるものは全部今回控除しておるわけでございます。
  325. 戸叶里子

    戸叶委員 控除しているわけですね。今中川さんが控除しているという重大な発言をされたのですが、これからそのことを伺って参りたいと思いますけれども、その前に、今中川さんがおっしゃいましたように、このECA関係では、見返資金の五%まではアメリカの行政事務費に使用することができると書いてあるのですけれども、ガリオア予算にはそういう規定がないのです。そういうふうに、はっきりアメリカの方では、下院の歳出委員会で、昭和二十五年に、ガリオア予算の審議にあたってヴオルヒーズ次官が言っているのです。ECA関係は五%は引くけれども、ガリオア予算では引かないということを言っているのです。そのことはお認めになりますね。
  326. 中川融

    ○中川政府委員 ガリオア予算は、それはアメリカの援助物資で日本に来ましたいわゆるガリオアの資金であったわけでございます。これは、いろいろアメリカの予算の法律の条文の問答がありましたが、要するに、十一項目ありましたそのうちの十項目ですかは、全部アメリカの行政費に使えることになっておるわけであります。
  327. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、だんだんに伺っていきたいと思いますけれども、さっき中川条約局長は、行政関係の費用は見返資金から使って、それは引いたということをはっきりおっしゃったわけです。そうであるかどうかをこれから私は順を追って伺っていきたいと思うのですが、その前に引用したいことは、昨年ガリオア予算の支出要求を提出した際に、アメリカでヴオルヒーズ次官は、見返資金の若干の部分アメリカの目的のために使用し、その額だけは講和会議に際し日独両国の負債となる負債額から差し引かれたらどうかと述べ、反対の指令のない限りそうするつもりだと言っているわけです。そして、実際には比較的少額の部分がこういう目的に向けられた、たとえばドイツの場合はベルリンのRIAS放送局の設置や、日本における補導計画のための少額の支出のごときである、——これはおそらくさっきの教育費の問題だろうと思うのです。それ以外は、見返資金は日本経済の安定及び経済復興の促進に使用された、こう言っているわけです。これはお認めになりますね。当然お認めになるわけですね。  そこで、この五%はガリオアの場合には別に積まなくてもいいということがはっきりわかったわけですけれども日本で使った分は講和会議で負債額から引くということが言われているわけでございますけれども、これは一体今回引いておられるのでしょうか。
  328. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ですから、先ほど申し上げておるように、連合軍人住宅建設費とか、特定教育計画費あるいは学童給食費、こういう見返資金から出されたものは引いておるわけです。それから、十項目に当たる分、これは先方の言っておる十九億五千四百万ドルの中には入ってないわけです。十九億五千四百万ドルの外ワクになるわけです。ですから、二十億ドルとか二十一億ドルというのが十九億何がしになった、こういうことでございます。
  329. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、それに関してやはり西村条約局長の言葉を引いてみますと、米軍が使った占領行政費、日本の対米債権など、合計一億五千四百万ドル差し引くということが書いてあるわけなんです。それをもう少し詳しく言いますと、二十九年の交渉で、アメリカは対日援助総額を二十億四千百万ドル、この数字はさっきも申し上げましたように確定してないと思いますが、そのうちから米軍が使った占領行政費、日本の対米債権など、合計一億五千四百万ドルを差し引いて、十八億八千九百万ドルを日本の債務としたことを付記しておきたい、こう言われておるわけですけれども、この金額が私は違うと思うのですが、これはどのくらい今度の場合に引いたのですか。ここに引いてある連合軍の住宅と、それから教育と、それから給食と、それだけしかお引きにならなかったわけですね。
  330. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申し上げます。ガリオア交渉がありました二十九年のころ、このころも、要するに現実に日本に送られた物資に関する費用といろものが決算ベースで出てきているわけです。昨日も私数回御説明申し上げましたが、米国の軍事予算法の中に、ガリオア項目の中がさらに細分されていまして、四七年法で申しますならば、十一項目あるうちの十は行政諸費でございます。最後の十一番目が、いわゆるガリオア物資を持ってくるということになっておる。これによって日本やドイツに対する援助がされたわけでございます。日本に関する限り、今問題にされておりまする米国が出した行政費は八千九百万ドルございました。しかし、これは初めから米国日本に要求する意思がない。ただ数字は八千九百万ドルであったということを申しておるわけでございます。これが実際の決算ベースに基づいた数字でございます。従いまして、十九億五千万ドルというものは、この行政費八千九百万ドルを除外いたしましたものでございます。
  331. 戸叶里子

    戸叶委員 今、アメリカ局長は、アメリカが八千九百万ドルの行政費を出して、それは日本に要求する意思がないと言われた。それと、この資料に基づいて引いた分、これがガリオア関係に要した費用、こう見ていいわけですか。そうだろうなんておっしゃらないで、もっと自信を持って答えて下さい。
  332. 安藤吉光

    安藤政府委員 私、御質問の点がはっきりしないのでございますが、アメリカの軍事予算法の中で、ガリオア項目という費用、その中で、アメリカが出したもので日本に要求しなかった八千九百万ドル、それから四七年度法に基づきますれば十一番目の細分に入っておるいわゆる援助物資額、それと、さっき言いました米側諸計画の金額を引いております。こういうことでございまして、西村さんの引用された数字というものは私よく存じません。
  333. 戸叶里子

    戸叶委員 西村さんのはいいです。今私がわかりましたことは、ガリオア関係の費用として使った分は見返資金から出た分は引いた、それから、行政費としてアメリカは八千九百万ドルは日本に要求する意思はないということで、それだけであったということをおっしゃるわけです。ところが、日本が別に負担している費用があるわけなんです。それはどこから費用を負担しているかといいますと、昭和二十五年に終戦処理費というものは大蔵省から総理府の所管になったわけですね。そうしてその統括下にあった特別調達庁が事実上それを扱ったわけなんですが、二十四年に見返会計ができたものですから、二十五年からは終戦処理費の組み方が変わってきたわけなんです。変わって参りまして、総司令部費とか、副官部費とか、兵器部費とかいうふうにその部が分かれてきたわけです。そうして十三部に分かれてきたわけです。その総司令部費からガリオアの費用が出ているわけです。その説明には何が書いてあるかといえば、これはガリオアに必要な経費であるということがちゃんと書いてあるのです。ガリオアに必要な費用が、総司令部費として日本の終戦処理費から出ているわけなんです。これはどういうことなんですか。今までほかには出さなかったとおっしゃりながら、ここだけは終戦処理費から出しておきながら、それを引いていないというのは一体どういうことなんですか。
  334. 中川融

    ○中川政府委員 今のお尋ねを伺っておりますと、要するに、終戦処理費からガリオア経費を出したと言われますが、ちょっとわかりませんが、終戦処理費は、日本に要求されて、占領軍の必要のために円で出すものでございます。ガリオア経費が終戦処理費から出たというのはちょっと理解できませんが、何か少しこんがらがっておるのではないかと思います。
  335. 戸叶里子

    戸叶委員 当然ガリオア関係のものはガリオアから出しているのだ、見返資金から出したのだということをおっしゃったでしょう。ところが、二十五年にはガリオア関係の費用を終戦処理費から出しているのです。それはどういうことであるかといいますと、今お認めになったように、予算の組み方が変わってきたわけです。二十四年には見返資金会計ができたから、そこで二十五年から終戦処理費というものの部が変わってきたわけです。そうして総司令部費というものがある。総司令部費というものの中にガリオアと書いてあった。私はそのガリオアとは一体何だと思って調べてみました。そうすると、その説明に、ガリオアに必要な経費と書いてある。ガリオアに必要な経費として出ているわけなんです。それが幾ら出ているかといいますと、予算額として初め二十七億一千七再七十二万五千円、予算現額が八億三千二百四十一万五千円で、支出済みの額が一億八千八百八十二万八千円、これだけ出ているのです。ガリオアや見返会計から出てないじゃないですか。これは終戦処理費から出ているじゃないですか。こういうふうに、大事なお金をこういうところからごまかして出して、しかも引いてないというのがこの性質じゃないですか。
  336. 中川融

    ○中川政府委員 少しずつわかって参りましたが、お尋ねの点は、要するに終戦処理費から何かガリオア関係の経費を日本が調達を命ぜられた、終戦処理費から出すように命ぜられたということでございます。お尋ねの御趣旨は、おそらく、ガリオアの行政費であれば、アメリカの予算で出すべきで、しかもアメリカの予算で出したものは、アメリカ日本に返済を要求しないということだから、そっちから出すべきであろうというお話のようであります。アメリカの予算で出す行政費は、米ドルで出すものであります。米ドルで出るものでありますから、必要なアメリカ人を雇う経費でありますとか、あるいは物を輸送する経費でありますとか、あるいはアメリカ国内においていろいろな経費が要るわけでありますが、こういうもの、それから、アメリカのもとのガリオア予算、あの予算書にありますような出張旅費でありますとか、いろいろなものがあるわけであります。あるいは物品を買う金であるとか、こういうものはみなドルで出るものであります。この日本の終戦処理費で調達要求せられますものは、日本円でやるものでありまして、日本人の役務でありますとか、日本の品物の調達を命ぜられるものであります。従って、これは、おっしゃる通り、ガリオアを日本に渡すに関連して日本人の役務が必要である、あるいは日本の物が特に必要であるという場合には、当然終戦処理費から日本に調達を命じ得るのでありまして、いずれも占領目的のための経費でありますが、これは終戦処理費から出すことは当然でございまして、日本の予算書にそういうことが書いてありましても、これは当然のことでありまして、別にこれで何かいけないということにはならないと思います。
  337. 戸叶里子

    戸叶委員 今の御説明ですけれども、さっきから私は念を押したわけですね。ガリオア関係のアメリカが使う費用はどこから出るのかと言いましたら、アメリカの行政費として使うものは、アメリカが出すか、あるいはまた見返会計から出すんだ、見返会計のものは引くんだ、しかし、アメリカが自分で使ったものは要求しなかったんだ、こう言われたわけです。ところが、終戦処理費のいろいろ書いてあります占領臓調達費というものを私は見ていきましてびっくりしたのは、司令部費として、ガリオア関係に必要な経費がここから出ておるわけです。これをどうしてお引きにならなかったかと言ったらば、今は引かなくとも仕方がなかったのだという答弁です。これじゃちょっと理解に苦しむのです。
  338. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申し上げます。私もその点については十分調べております。ここに写しも持っております。従いまして、事実関係をもあわせて御説明申し上げれば、非常によくおわかり下さるかと思います。御指摘の通り、この終戦処理費というのは、占領軍の諸調達要求を処理するための直接の占領費でございます。それが、昭和二十五年度から、御承知通り、総司令部からの命令によりまして、これを占領軍の機構別に整備することを要求されました。終戦処理費予算提要というのをもってそれの指示がありました。そうして、これらものは、総司令部費、副官部費、兵器部費等の項目に区分されて、それぞれの科目解疎が示されたわけであります。それで、御指摘の、いわゆる総司令部費というのは、正確に英語で申しますと、ゼネラル・エクスヘンセス・スキャップ・エージェンシー、カッコしてガリオアとなっておるわけであります。もっと正確に訳しますれば、総司令部一般経費、ガリオアを含むという意味でございます。それで、概括的に抽象的に申しますならば、ガリオア関係の行政的な事務費がこの費目の中に含まれているということが言えるわけでございますが、この費目の実際の中をまたさらに調べてみますと、七項目に分類されておるのでございます。その七項目のうちの一つの項目である現地人行政職員の給与費というのがございまして、あるいは、この人たちが、先ほど条約局長が申したように、日本側のいわゆる配給その他の手伝い、あるいは日本に渡すときの手伝いを何かやったかもしれません。日本人職員の給与というふうになっておるわけであります。さらに、金額的に申しますと、昭和二十五年度の歳出決算額は一億八千八百万円でございます。これはすべて総司令部費の諸作業費、役務費というものの支出でございます。その内容をもっと洗いますと、これは一億三千二百九十万というものが日本人職員労務者の身体検査並びに健康管理のための医療機関に対する支出になっております。残余が幾らになりますか、巣鴨ブリズンの関係の日本人職員の諸給与になっております。従いまして、性質から申しましてこれは終戦処理費でございます。十九条でこれは日本の反対請求権を放棄させられておるものでありますし、かりにこの七項目のうちの一つがあるいはガリオアのそういった間接経費的なものになっておるとしても、これは、先ほど条約局長が申したような、いわゆる国内的な諸掛りの費用というふうに解釈すべきものじゃないかと思います。
  339. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと私はわからないのです。ほかの国におきましては、そういうものをみなガリオアの行政費、連合国がその国で使う行政費として差し引いているわけです。日本だけがこの終戦処理費の中から出しているということは、私はどうしても納得がいきません。この問題はちょっとあとに保留します。なぜならば、総理が大へんお急ぎのようで、お帰りになるようですから、二点だけちょっと伺っておきたいと思うのです。  その一点は、新聞によりますと、アメリカ政府が十四日議会に提案して、対外援助法の改正の中で、日本とのガリオア・エロア資金に基づいて日本が返済するドルのお金を経済援助に使用する権限を大統領に与えるというようなことを提案したと新聞に出ておりましたけれども、これはその後外務省にどういうふうな情報が入ってきたか、また、これに対して総理大臣はどういうふうにお考えになるかを伺いたいと思うのです。  それと、もう一つ、時間がないですから、総理お急ぎのようですから、総理に伺います。これは、ちょうど日本でこのガリオア・エロアを審議している最中にこういうものを国会に出したわけなのです。そこにも何か意味があるのじゃないかと思いますけれども、いずれにしても、これがいつごろ通るという見通しを立てているかということと、もしそれが通ったならば、ここにはっきりと東アジアの援助に使うということが書いてあるのですが、どういう国にどんなふうに使うという構想を持ってアメリカと話し合ったか。この点をちょっと伺っておきたいと思います。
  340. 池田勇人

    池田国務大臣 日本のガリオア・エロアの返済金は東アジアの経済復興に使う、そしてアメリカ国会の予算を通す、こういうことに私了解ついております。  向こうの審議の状況はこちらの審議と関係があるかという御質問に対して、私は存じません。向こうもなるべく早く通したい、こういう気持でおると思います。  その他の電報関係は外務大臣からお答えいたします。
  341. 戸叶里子

    戸叶委員 総理大臣、アメリカとの話し合いの場合には、東アジアの経済開発に使うというならば、大体どこの国を目当てにしていらっしゃるか、これもちょっと伺っておきたい。
  342. 池田勇人

    池田国務大臣 これは、ただいまのところ、どの国に幾らという話はしていないと思います。東アジアの経済復興にここから使ってくれ、向こうも、その希望に沿う、しかし、やはり国会のあれがあるものでございますから、その点は、根本趣旨だけ意見の一致を見ておるのであります。
  343. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、総理大臣、これは大体アメリカ国会を通るというお見通しですかということが一つと、もう一つは、東アジアといいますと、韓国、タイ、ビルマ、そういうふうな国々を含むのですか。どういうところを大体目安にしていらっしゃるか、この点を伺います。
  344. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカ国会のことはよく存じませんが、私は通ることを期待しております。  それから、東アジアと申しますのは、パキスタン、インドは入らない。これは世界銀行その他もそういうふうにやっております。それから東をさしておるのであります。
  345. 戸叶里子

    戸叶委員 きょう午前中に国際情勢韓国の問題がだいぶ出ましたけれども、今の大統領がやめた朴政権のもとにあっても、もしも話がまとまれば、これを韓国に向けてお使いになる御意思があるのでしょうか、ないのでしょうか。この辺を伺いたい。
  346. 池田勇人

    池田国務大臣 それはアメリカの発案でございます。われわれはまだ正常化いたしておりませんから、アメリカがどう出るか、出たときにわれわれは考えたい。ただ、正常化していないという事実は、われわれは頭に置いておかなければなりません。
  347. 戸叶里子

    戸叶委員 それでちょっと問題があるのです。と申しますのは、いつの速記録ということを私はちょっと覚えておりませんけれども外務大臣がはっきり私に、もしもガリオア・エロアというものが債務として国会を通るならば、その返済金をもって韓国に使うこともあり得る、あるということをはっきりおっしゃったわけなのです。ですから、今のお話は、それはアメリカのきめることだというのではちょっと答弁が違うと思うのです。
  348. 池田勇人

    池田国務大臣 私が答えた通りでございまして、アメリカがどこへ使いたい、こう出るかどうか、これは向こうから言ってくるまではわかりません。アメリカとしてどういう考えを持っているかわかりません。使い得るということはあり得ます。
  349. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、この金は合意しないでいいわけですね。アメリカにこういうところに使ってくれと申し入れて使われなくても、アメリカがどう使ってもかまわない、こういうことなのですか。それならばなぜこういうものをお出しになったのですか。
  350. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、これはアメリカに払うものですから、日本の承諾がないとその金を使えないという筋合いのものじゃございません。アメリカは東アジアの経済振興に使う、われわれは、望ましいことだ、こう言っておるのであります。
  351. 戸叶里子

    戸叶委員 たしか同意した場合ということがあったように思うのですけれども同意しなくてもよろしいのですか。
  352. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 申し上げますが、この交換公文は二つございまして、まだ開発されていない国の援助にこの金を使い得るということが一つと、それから、東アジアの問題について日本アメリカが相談を今後いろいろとやっていく、その二つでございます。分けてお考え願いたいと思います。
  353. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、きょうはこの程度に終わりますが、総理大臣に一つ聞いておいていただきたいことがあるのです。それは、ある人が、このガリオア・エロアというものは債務でないと思っていたところが、債務だと言われた、非常に不満だ、不満だけれども政府がどうしても返さなければならないというのだったら、その立場も考えて、返すこともいいだろうと、この人は私と意見が違いまして、大へんに自民党に好意を持っていらっしゃるらしいのですが、返してもいいだろう、しかし、どうしてもふに落ちないのは、物をもらってお金を返す、売買契約もないじゃないか、品物をもらったんだから品物で返すというような交渉を、あれほどアメリカと仲のいい池田さんなりあるいはまた外務大臣はされなかったのだろうか、たとえば、バイ・アメリカンという思想で日本の肥料が韓国に行かないで、高い肥料を韓国へ売りつけるというようなことを、日本がかわりにそれを上げるというような形にでもしていったらどうなんだろうか。これは一例としてですよ。一例として言っておられました。品物をもらったんだから品物を返すということにして、何もドルをここで返さなくてもいいじゃないかということを言っている人もいるわけでございますが、こういうことは一体交渉の対象にされたかどうかを念のために伺っておきたいと思います。
  354. 池田勇人

    池田国務大臣 われわれは、東アジアに使ってもらいたいということは、日本の品物をその方へ持っていくことを腹に持っているわけであります。そういうところで言っておるわけであります。四分の一近くにまけてもらったのですから、払うものなら国民全部がきれいに払いましょう、そして、あとは、われわれの言うこともできるだけ聞いてもらいたいというのが、私は外交だと思います。
  355. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、私はあとの質問を保留いたしまして、きょうはここで終わりたいと思います。
  356. 森下國雄

    森下委員長 総理大臣、退席してけっこうです。  それでは、ただいま関連質問通告がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  357. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これは簡単な問題ですから、ちょっとはっきりしない点があるので伺っておきたい。これは安藤さんに伺った方がいいと思うのですけれども、見返資金の中から駐留軍の住宅の建設に予算を使っておりますが、これは差し引いておりますね。これは何年でございますか、ちょっとそこの点がはっきりしないのです。
  358. 安藤吉光

    安藤政府委員 大蔵省の御所管でございますが、便宜私から御説明申し上げます。  先ほど戸叶先生の御質問のときに御説明いたしたかと記憶いたしますが、これは、昭和二十五年一月二十七日付の覚書によりまして、日本政府は公社を設置して、米軍の軍人及びその家族等に有料で、具体的に申しますと、一戸七十四ドル程度で貸与する宿舎として、全国の主要な場所に二千三戸家屋を建設することとして、その建設資金は見返資金から公社へ貸し付けられることになったのであります。その貸付は、昭和二十五年度には六十九億四千九百六十七万七千円、それから、昭和三十六年度には四億五千九百三十五万一千円、合計七十四億九百二万八千円でございます。これをドルに換算いたしますと、二千五十八万六百三十三ドルということになりまして、今度総額から引いたわけでございます。
  359. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 安藤さんの御答弁では二十五年、六年になっているのですが、アメリカの上院の歳出委員会における証言では、昭和二十四年にも別にもう一口使ったことになっております。それは見返資金の中で使っているということは、その証言の内容を読んでみますが、上院の歳出委員会において、ヴォルヒーズというその当時陸軍次官補をやっていた人がこういうように言っております。過去数カ月の間にマッカーサー元帥と私が共同で取りきめを行ない、それによって日本は二千戸の住宅を建設している、これらの住宅は見返資金によって建設されるもので、それにはアメリカの支出は一ドルも含まれておらない、その解説として、建設資金は五十二億六千五百万円だということで、これは昭和二十四年の春アメリカの上院の歳出委員会で証言をしているのです。そうすると、今御説明の六十何億とあと十億以下の数字と二つが二十五年と六年に出ましたが、それ以前に五十二億のものがもう一つあるということになるわけでございますので、もしこういう事実があるとするならば、これはちょっと重要な問題であるし、もう一つこれで考えられますことは、事実上二十四年のうちに建ててしまって、二十五年の見返資金から落とした、こういうことも考えられる。そういうことをもしやっているとするならば、これは見返資金の操作上きわめて重要な問題だし、そういうことを繰り越し・繰り入れその他の形でやっているならば、見返資金の算定数字の信憑性についても問題がある、こういうように私ら考えざるを得ないわけです。ですから、この点をはっきりしていただきたいのです。
  360. 安藤吉光

    安藤政府委員 先ほども御説明申し上げました通り、見返資金からこの金が出ました根拠としては、昭和二十五年一月二十七日付の覚書でございます。また、日本の方といたしましては、二十五年四月一日に法律第八十二号というのをもちまして、連合国軍人等住宅公社法というのができておるわけでございます。それから、現実に、これはまた大蔵省の領分になりますが、貸付額をずっと書いた資料をチェックいたしましても、最初の貸付は昭和二十五年四月二十八日から始まっております。その後六月、七月、八月、九月、十一月、十二月とずっとございますので、間違いないのじゃないかと思います。二十四年にはないのでございまして、見返資金から出ておらない。出ておるとすれば、やはり同じく終戦処理費ではないかと思います。
  361. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これはもう一つお調べを願いたいのですが、見返資金として、しかも出したと言っておるのです。過去数カ月にわたって出した。(北澤委員「思い違いじゃないか」と呼ぶ)——思い違いではない。証言というのは、北澤さんもよく御存じのように、やはりあそこで一応の記録を作って、ヴォルヒーズが報告しておるわけですから、そう思い違いがあるわけはないので、この部分はお調べを願いたい。
  362. 安藤吉光

    安藤政府委員 見返資金は二十四年四月でなくちゃできておりませんから、おかしいのじゃないですか。
  363. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その点は、私はきょうやるつもりでなくて、資料を持ってきておりませんので、あとで……。  その点はいいとして、先ほどの戸叶さんの御質問にも関連するのですが、住宅建設の経費は見返資金から落としておるわけでしょう。二十五年、二十六年は落としていますね。それはそうでございましょう。
  364. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申します。さようだと了承しております。
  365. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そこで、もう一度、さっきの問題を蒸し返すわけですが、住宅の建設ということは、二十五年、二十六年の分は見返資金から落とした、二十三年、二十四年の分は終戦処理費から落とした、こういうことになると、同じ住宅建設をやりながら、見返資金で作った分は算定の中から落としているが、終戦処理費で使った分は、前の交渉で算定をする場合に、これは先ほどから戸叶さんが言って中川さんも大体それに答えているように、本来は見返資金で落とすべきものを終戦処理費で落としているものであるから、たとえば昭和二十三年の場合には見返資金がなかったからやむを得なかったとしても、昭和二十四年の場合においては、四月の一日から見返資金特別会計ができたのであるから、そのときに終戦処理費で落とした分は見返資金の方で清算して、差し引かなければならない、そうしなければ筋道が通らないのだと思うのだが、その点はどうなんですか。
  366. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ヴォルヒーズ陸軍次官補の証言がいつだったか、お知らせを願いたいと思います。二十四年の四月一日に見返資金ができたのでございますから、それ以前にやっておるということはおかしいと思います。  それから、ただいまの問題ですが、これは終戦処理費で落とすべきものを見返資金から落としてある、そこで、見返資金から落としたということは、これはアメリカの好意でありましょうけれども、好意があるなら、全体の額の中からそれだけ差し引いてくれ、こういうことにしたわけでございまして、筋は逆でございます。
  367. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、小坂さんに伺いますが、終戦処理費から落とすべきものであるというのは、どういう論拠ですか。
  368. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 本来終戦処理費でまかなわれるべき性質のものなんでございます。そういうものを講和条約第十九条で認めて、日本側で負担しているわけでございます 見返資金というのは、そういうものじゃなくて、日本自身の民生安定、経済の復興のために使われるようにということでできておるわけなんです。その中からそうした性質のものを出すことは、これは本来不当なものであるから、これは見返資金の性質にかんがみて全体の額から差し引いてもらいたい、こういうことで米側は了承した、こういうことでございます。
  369. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうするとヴォルヒーズが見返資金から落としたのだということは本来間違いなんですか。小坂さんの言うことは、終戦処理費の方から落とすべきものを見返資金から落としたのだということですね、そういうことですね。
  370. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そうではございませんで、できるだけこの終戦処理費の日本側の負担というものを少なくしよう、こういう好意から見返資金から出させたわけなんですね。そういうスキャッピンを出しました。そこで、そういう好意があるのならば、全体の援助額の中からそれを差し引いてくれ、なるほどそれはそうだということで引いた、こういうことでございます。本来終戦処理費から出すべき性質のものなんですね。
  371. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それはちょっと水かけ論になりますけれども、あなたはそこまでおっしゃるなら、二十五年から引いて、二十四年は引かなかったというのはどういうわけですか。二十四年毛引くのがあたりまえじゃないですか。そうでしょう。
  372. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは、二十四年に見返資金ができてから以後使われたものは引いているということでありますが、(「二十四年は引いていないじゃないですか。」と呼ぶ者あり)——それは終戦処理費から出しているから引いていない。二十四年の見返資金から出してあるものについては、かりにありましたら引いてあるべきでありますが、調べた結果、二十五年から出しているということでありますから、それを引いている、こういうことであります。
  373. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたのおっしゃることは、わかり切ったことを言っているのです。十から五を引いらた五になる、そんなことは私は聞かなくてもわかっている。二十五年から引いてありますから引いてあるのでございます。二十四年は引いてないから引いてないのでございます。それはだれだってわかる。なぜ二十四年の分を見返資金から引かなかったのかと言っているのです。その場合に、あなたは、本来は終戦処理費の分をこちらへ回したのだ、それは向こうの好意で、終戦処理費の経費を軽減するためだと言われる。そういうことでやっているのならば、二十四年の分も、あなたがこの前に交渉に当たったときに、二十四年の分は終戦処理費の方にあります、それを引いて下さいといってそちらに回さなければならない。(「復興に使ったかどうかですよ」と呼び、その他発言する者あり)大蔵省の元理財局長が大きな声で言っているけれども……。
  374. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 昭和二十四年に見返資金から住宅のものが出ていないのです。見返資金から住宅建設に回されているものがあったものは、これは全部引いてもらったわけです。ですから、これは、あたりまえのこととおっしゃるけれども、あたりまえのことをやらせるのは、向こうも、あたりまえのことだから、それはこちらの議論に承服したわけで、非合理なことはどこへ行っても通らぬわけです。
  375. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この点は、まだちょっと私問題がありますけれども、時間がありませんから申し上げません。  ただ、もう一点だけ伺っておきますが、ガリオア予算というアメリカの予算は、先ほどから安藤さんが再三、十一項あって、それであれしていますと言っていますね。それで、あなたは今までは援助費と行政費であると言っていますが、それだけですか。それだけじゃないでしょう。
  376. 安藤吉光

    安藤政府委員 たしか、私、今手元の資料を正確に調べるひまがございませんが、一九四七年軍事予算法のことをきのう申し上げたはずでございます。それは、ガリオアという項目がございまして、それが十一に細分されている。そうして、最後の十一がいわゆる対日援助、これはドイツに対しても同じカテゴリーから出たわけでございます。そうして、その残りの他の十というものはいわゆる行政的な経費であるということを申し上げたわけであります。その内容もきのう御説明申し上げましたが、これは、一言で言えば行政的な経費であるということを申し上げたわけでございます。
  377. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その辺の金額が八千九百万ドルだ、こういうのですか。
  378. 安藤吉光

    安藤政府委員 そうではございません。アメリカがガリオア援助に伴って日本に対してガリオアという項目から出した行政費が総計八千九百万ドルだという意味を申し上げたのであります。
  379. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私の言っているのは、それを言っている。だから、その行政費というのは八千九百万ドルだというのでしょう。ただ、問題は、行政費八千九百万ドルだけではないはずなんです。それ以外の差し引かなければならない費目があるはずだというので、ちょっと私伺っておるのです。だから、行政費以外にないのだというならないので仕方がない。あなたの見解を伺いたい。
  380. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 要するに、アメリカは十九億五千四百万ドルというものを持ってきたわけですね。ところが、これは行政費は別だと言っているのです。外ワクになっている。日本側はそれではないので、われわれが受け取ったと思われるものを積算いたしまして、それから控除さるべきものだと日本側考えるものを当てて、そうして折衝してこの金額を出した、こういうことなんです。
  381. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私、そんなことを聞いていないのですよ。(小坂国務大臣基礎が違っている」と呼ぶ)いや、あなたはとんちんかんなことを考え基礎が違っていると誓う。それは違いますよ。私の聞いていることに答えて下さいよ。さっきから安藤さんが言っていることは——あなたは大体出なくてもいいのですよ。私は安藤さんに聞いているのですから。(「よくわかるように聞けよ」と呼び、その他発言する者あり)——、いや、わかるでしょう。
  382. 森下國雄

    森下委員長 御静粛に。
  383. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 アメリカ局長は、さっきから、八千九百万ドルという行政費を引いております。こう言っているのでしょう。それだけですか、こう聞いているのですよ。そうしたら、小坂さんは、十九億ドルのあれで、こっちの方で日本はこういう計算をしたと言う。計算をしたのはしたでしょう。私はアメリカ局長に話を聞いているのですよ。行政費だけですかと聞ているのです。
  384. 安藤吉光

    安藤政府委員 私昨日以来たびたび申しておりますことは、先ほど外務大臣からも別な言葉ではっきり言っていただいたのでございまするが、アメリカがガリオアの援助総額十九億万千万ドルというのを持ってきたときに、実はほかに八千九百万ドルの行政費があるが、これは別ワクにして、日本には請求いたしませんと言っておる。その事実を申し上げておるわけでございます。
  385. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 これも私留保しておきますが、安藤さん、先に申し上げましょう。アメリカの予算では、ガリオアの予算は三本立になっているのですよ。それが、一つは援助資金であり、もう一つは行政費であり、もう一つは再教育予算というのがあるのですよ。その予算というものをあなたは今まで言っておられないではないかということを言っているのですよ。(小坂外務大臣「そういうふうに言ってくれればすぐわかる」と呼ぶ)——いや、あなたに聞いているのじゃないのです。外務大臣、いつヤジウマになったのですか。いいですか、再教育の予算は、CIAの予算とか、そういう経費が相当膨大な額になっているようにわれわれは見ているのです。その予算があるのではないのか。もっとはっきり言うと、CIAによってずいぶん日本で被害を受けている人がたくさんいるわけだ。鹿地亘その他に非常に迷惑をかけているわけだ。この日本人に迷惑をかけたのはガリオアの金でかけられたわけなんだ。だから私聞いているのです。
  386. 安藤吉光

    安藤政府委員 再教育費と申しましょうか、だいぶ行った方も多い。いわゆるガリオア留学と申しますか、そういった金も実はこの八千九百万ドルの中には入っておるわけでございます。
  387. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっとしたことなんですけれども安藤局長の名誉のために直しておいた方がいいと思いますことを申し上げておきます。それは、この間横路さんの質問に答えられまして、この住宅の問題で、その建築資金は見返資金から公社へ貸し付けられることになりました、その貸付は昭和二十五年度限りでございます。——二十五年度限りでございますと力を入れられましたから、これは二十五年、二十六年というふうに速記録をお直しになった方がいいと思いますので、あなたの名誉のために申し上げます。
  388. 安藤吉光

    安藤政府委員 ありがとうございました。実質はその通りでございまして、歯がちょっと抜けておりまして、あるいは「から」と、言うべきをそのように申したかと思いますが、申しわけございませんでした。
  389. 森下國雄

    森下委員長 この際暫時休憩いたします。    午後五時休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕