運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1962-03-06 第40回国会 衆議院 外務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年三月六日(火曜日)    午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 野田 武夫君    理事 福田 篤泰君 理事 古川 丈吉君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 森島 守人君       安藤  覺君    愛知 揆一君       池田 清志君    宇都宮徳馬君       宇野 宗佑君    大久保武雄君       椎熊 三郎君    正示啓次郎君       竹山祐太郎君    床次 徳二君       飛鳥田一雄君    黒田 壽男君       帆足  計君    穗積 七郎君       細迫 兼光君    松本 七郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     小田部謙一君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (欧亜局長)  法眼 晋作君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (関税局長)  稻益  繁君  委員外出席者         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      桜井 芳雄君         通商産業事務官         (企業局次長) 伊藤 三郎君         運輸事務官         (航空局監理部         長)      栃内 一彦君         専  門  員 佐藤 敏人君     ――――――――――――― 三月一日  委員示啓次郎君、穗積七郎君及び受田新吉君  辞任につき、その補欠として石田博英君、辻原  弘市君及び西尾末廣君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員石田博英君及び辻原弘市君辞任につき、そ  の補欠として正示啓次郎君及び穗積七郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日六日  委員田澤吉郎君及び勝間田清一辞任につき、  その補欠として宇野宗佑君及び飛鳥田一雄君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員飛鳥田一雄辞任につき、その補欠として  勝間田清一君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 同日六日  ドミニカ国ネイバ地区引揚者の更生に関する請  願(池田清志君紹介)(第一八六七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月二日  原水爆禁止に関する陳情書  (第四三二号)  沖繩日本復帰に関する陳情書  (第四八一号)  日韓会談早期妥結に関する陳情書  (第五〇四号)  日韓会談早期妥結等に関する陳情書  (第五〇五号)  日韓会談反対に関する陳情書  (第五四二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国に対する戦後の経済援助処理に関する  日本国アメリカ合衆国との間の協定締結に  ついて承認を求めるの件(条約第一号)  特別円問題の解決に関する日本国タイとの間  の協定のある規定に代わる協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)  国際民間航空条約改正に関する議定書締結  について承認を求めるの件(条約第三号)  日本国アルゼンティン共和国との間の友好通  商航海条約締結について承認を求めるの件(  条約第四号)  海外技術協力事業団法案内閣提出第九二号)      ――――◇―――――
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。  日本国に対する戦後の経済援助処理に関する日本国アメリカ合衆国との間の協定締結について承認を求めるの件、特別円問題の解決に関する日本国タイとの間の協定のある規定に代わる協定締結について承認を求めるの件、国際民間航空条約改正に関する議定書締結について承認を求めるの件、日本国アルゼンティン共和国との間の友好通商航海条約締結について承認を求めるの件、海外技術協力事業団法案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを順次許します。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 国際民間航空条約についていささか伺いたいと思います。  この条約を拝見いたしますと、三十五条に貨物制限というものがあります。この貨物制限を見ますと、「軍需品又は軍用器材は、締約国許可を受けた場合を除く外、国際航空に従事する航空機でその国の領域内又は領域の上空を運送してはならない。」、こう書いてあります。軍需品及び軍用器材民間航空において制限を受けるのはあたりまえでありまして、そのことは前文その他から推しても当然な規定だと言えるはずでありますが、この場合、「軍需品又は軍用器材」とありますが、それは、軍人、軍属あるいは軍事要員というものをそれ以上に重きものとして考慮していかなければならないことは当然だろうと思うのでありますが、この点についていかがでしょうか。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 軍用器材はいけない、これは当然でございますが、しからば何がその軍用器材であるかということは、各国がその解釈によってきめるということと了解いたしております。なお、軍人はその中に含まれておらないというのが解釈でございます。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうした場合に、それでは民間航空軍隊あるいは軍隊可能性を持つそうしたものを運搬することを認めてよろしいわけですか。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 要するに、民間航空機というものは軍の使用に供してはならない、こういうふうに私ども解釈いたしております。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 二月九日か十日であったと思いますが、外務省は、オランダ大使館に対して、今回のKLMのDC7型の国際航空の問題について口上書をお出しになった、こういうことが新聞にも見えておりますが、この口上書内容をそれでは一つ伺わせていただきたい。
  8. 中川融

    中川政府委員 その口上書オランダに対する口上書であろうと思いますが、これは、御承知のように、ニューギニアに対しましてオランダ兵員KLMによって輸送するという問題に関して出したのでございまして、その内容につきましては、結局、たとえば不定期便を出すということであればこれは好ましくない、困るということ、それから、定期便につきましても、それをあまりに軍人だけをたくさん乗せるような形、そのころオランダがやろうとしておりましたような形でやることは、法律問題を離れて政治問題としておもしろくないから自制してもらいたい、こういう内容口上書オランダに提出したのでございます。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その口上書の文章を一つ正確にお読みをいただきたいと思います。
  10. 中川融

    中川政府委員 ただいま欧亜局長が来ておりませんが、その口上書はただいま私が申しましたような内容でございます。しかし、口上書外交文書でございますので、発表はいたしておらないのでございまして、内容につきましては、私がただいま申しましたようなことで御了承願いたいと思います。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 非常に国際的な問題としても、重要な問題になっており、一方においてはインドネシア学生諸君が抗議を申し込むというような形があり、種々の問題を起こしておりますだけに、ここで明確にその文書を御発表になることがかえって好ましいのではないか。現に今までも口上書発表することはしばしばあったはずであります。一体発表できないような特殊な内容がその中に含まれているのかどうか、口上書一つ正確に読んでいただきたいと思います。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように、エドメモアールでございますので、先方許可を得ないと発表できない外交慣習になっておるわけであります。しかし、その要旨については今申し上げたようなことでございます。  なお、御承知通り、このKLM機を利用いたしましてビアク島に輸送が行なわれるという問題につきましては、その後非常に事態が平静化いたしまして、現在のところではこれ以上の問題はもうないというふうな段階に立ち至りましたので、ことさらにこの問題についていろいろかえって刺激的になりますことは、私どもとしてはできるだけごかんべんを願いたいというふうに考えておる次第でございます。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう問題が平静化してきて、今後なさそうだからこの程度でというお話でありますが、しかし、西イリアンに関する問題は終わったわけではありません。むしろインドネシアの側からの攻勢も強まってきましょうし、また、西イリアン島内におけるいろいろの問題も起こってくるでありましょうし、そうした事態に備えてオランダは再び兵力を増強するという決定をすることも当然考えられることでありましてこの際、今終わったからよろしい、こういうこそくな方法でなしに、将来にわたってのきちっとした態度をおきめになっておくことが必要です。そうして、また同時に国民に対しても外務省のきちっとした態度をお示しになっておくことが大事です。政治はその場その場のばんそうこう張りのような形でおやりになるから間違えます。ことに外交においてしかりです。外交というものは、その国の国民態度が全世界に向かってきちっと示されるということにあるはずでありますから、この際、口上書について、あなたの方で別に秘密にすべき筋合いさえなければ、明確にお示しになる必要があるだろう。むしろ新聞にも一部それが漏れている。漏れているという言い方はおかしゅうございますが、あなた方の方から積極的に御発表になったのだろうと思いますけれども新聞にも一部載せている。だとするならば、この国会において正確にお示しになっておくことが将来の禍根を断つ。そういう点においても重要なはずでありますから、この際思い切って口上書をここで全文御発表をいただきたい、こういうことです。
  14. 法眼晋作

    法眼政府委員 ただいま外務大臣から御説明がありましたように、先方に対しては明確に兵員増強輸送は困るということを申し上げているわけでありますので、これは日本趣旨は十分に先方に徹底しております。でありますから、今回ルンス外務大臣外務大臣に対して、日本を通って兵力増強輸送はやらぬと、こう申しているわけであります。でありますから、そういうことを御了解願いまして、従来の慣例によりまして、これは一つ口上書はわれわれの説明によって十分お知りを願いたいと思います。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 兵員輸送をしない、こう向こうで言明をした、こうおっしゃるのでありますが、しからば、兵員とはいかなるものをさすのでしょうか。純粋なる軍人というわけにはいかないはずです。兵員とは、一つ定義を聞かしていただきたい。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は、飛鳥田さんの御意見、まことに私もその通りだと存じまするが、私どもとしましては、この問題について政府がきちんとした見解を出す、これはもうおっしゃる通りだと思うのでありますが、それをそのままに理解されない場合もございますわけで、ことに、この西イリアンの問題をめぐりまして、非常にこう感情が立っている際でもございますので、私どもとしては、あらゆる手だてを尽くしてこの問題を平和の話し合いのうちに解決するという方向でできるだけ道を講じまして、非常にその点が明るい見通しに今立ち得る段階になっているのでございます。そこで、KLM輸送問題につきましても、これも次第に、先ほど申し上げたように、事態がカーム・ダウンして、理解が進んでおりますので、どうもこの点についてまたいろいろこの国会論議を通じましての論議があるいはかえって何か感情的なものを呼ぶ場合もございまするので、私としましては、できればこの問題についての掘り下げた御論議はこの程度にしていただきまして、今後問題が起きないと存じますので、どうぞその点御了解を願いたいと思います。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 外交には秘密というものがある部分あることは、私たちも否定はいたしません。だが、しかし、外交というものは、世界に向かって日本国民態度を明白にするという一面と、同時に、国民十分国の行く末、行動について納得を得しめるという二つの面があるはずです。その片方をなおざりにして事を行なわれるならば、それは秘密外交であり、非民主的な外交ということになるはずです。しかも、今問題は起こらないとおっしゃいましたが、問題が起こらないという保証を一体それではどうおとりになったのか。西イリアンの問題は、これも解決したわけではありません。むしろ今後激化をするおそれさえ私たちは感ぜざるを得ないわけです。そういう今後激化していく可能性のある西イリアンの問題について、今こそ日本の国がしっかりとした申立の立場を示すべきで、外交外務省がおやりになるのですから、そのしっかりとした中立の立場外務省としてきちっと定めておかれるということこそ、後顧の憂いを断つことじゃないだろうか。そして、同時に、国民に対してもこれを理解せしめていくことでなければならぬわけです。そういう意味で、国会論議ははなはだ迷惑だというおっしゃり方は、あなたのおつむが何となしに昔の秘密外交に傾いている証拠だと私は思わざるを得ない。現にあなた方は口上書の中で軍事的要員という言葉をお使いになったはずです。軍事的要員というものは一体どういうものか、明確にしておきませんと、また問題が起きますよ。現にいろいろなうわさがあるのです。ですから、あなた方が、軍事的要員兵力を羽田を通して輸送しない、こういう約束をとったというならば、兵力とは何か、こういうことをきちっと国会に御説明になっておきませんと、問題がまた起きます。  もう一度伺います。兵力とは何か、同時にまた、軍事的要員とはいかなる意味か。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このいわゆる西イリアン問題には巻き込まれたくない、この方針が私どもの堅持しておる方針でございます。従いまして、その方針のもとにいろいろ努力いたしまして、大体そういう方向になっておるし、しかも西イリアン問題そのものが平和的な解決の方途に向かいつつある今日でございますので、私は決して秘密をよしとするなんということは毛頭考えておりません。私どもがこの立場においてこの権威ある場所で申しますことが、かえって誤解を呼ぶ場合もあるわけでございます。理屈づくめで全部ものを考えてくれれば、これは何も心配することはないのでございますけれども、あるいは言辞章句の端が感情的にとられて、せっかく今まで私どものやってきたことがどうもかえって工合の悪いことに万一なっては困るという憂慮から申し上げておるのでございまして、私、秘密外交などがいいということは全然考えておりませんわけで、事柄を最もよく運びたい、飛鳥田さんもお考えになって、われわれも考えておるこの共通の目的に向かってよく進ませたい、こういう考え方から申し上げておることであるということをどうぞ一つ了解を願っておきたいと思います。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 盛んに誤解が生ずるということをおっしゃるわけですが、しかし、国会における説明なり発言というものが誤解を生ずるとするならば、それは、あなた方の発言が不徹底であり、そして不明瞭であるからこそ誤解を生ずるのです。と同時に、関係の国あるいは関係者誤解の発生することをおそれて、国民の中に誤解の発生することをおそれないという態度こそ、最も忌むべきものじゃないだろうか。少なくとも国民誤解が生じていることは事実です。たとえば、東京新聞などを拝見いたしますと、東京新聞の記者の方がオランダ大使にインタビューをなすった。その文言を見ますと、「この問題については日本外務省とも相談の結果、いろいろなうわさを防ぐ意味で、何も言わない約束になっている。だから微に入り細をうがって答えるわけにはいかない。」、こういうような、いかにもいわくありげなお答えが出てくるわけです。すると、国民としては何かあるのではないかという疑惑を持って参りますことは当然であります。そういう疑惑を解かない限り、あなた方の外交方針というものは国民の中に入って参りません。一方の誤解をおそれるあまり、国民の中に誤解を生ぜしめてしまうがごとき外交のやり方というものは、少なくともたたえられるべきものではないことは明らかでしょう。  現にあなた方は前科があるのです。同じオランダの問題でありますが、一九六〇年の九月、オランダ航空母艦カレル・ドールマン日本にやって来よう、こういうことを試みましたときに、あなた方は、カレル・ドールマン入港は拒否いたしました。しかし、現実にはオランダ艦隊に対して軍用品たる燃料を供給しているではありませんか。神戸の港において、暮夜ひそかにと言いたいのですが、深夜人目のつかないときに燃料オランダ艦隊に対して供給している。もしそうだとすれば、うわべで断わって陰で取引をしているという前科があるわけです。このような事実を国民は知っている以上、あなた方のおやりになっていることをすなおに受け取れないのは当然ではないでしょうか。一九六〇年九月、オランダ艦隊に対して神戸軍需品たる燃料を供給する。こういうことを一体あなた方はおやりになったのかならないのか、これから伺いましょう。
  20. 法眼晋作

    法眼政府委員 お話しいたします。  このお話はおそらくミッドレヒトという油送船のことに言及しておられるのだと思います。この船はむろんカレル・ドールマン一行の船だということになっておりました、しかしながら、日本政府は、諸般の状況から、当時このカレル・ドールマン並びにこれを護衛しておった軍艦入港を拒否したのであります。その後においてこのミッドレヒト神戸入港いたしました。これはたしか私の記憶によりますと九月七日のことでございます。当時、この油送船は、神戸の税関には、単に、ヴァン・オンメルンという、これはオランダの私の会社でございますが、その所有船ということでございます。それでありますから、日本関税法その他によりましてこれは当然入れてよろしいということでございます。もとより日本政府入港を拒否することはできました。できましたけれども、すでにカレル・ドールマンがもう去ったあとでありますから、私の船として届けられているものに対して、実はこれは入港することが行なわれたわけでございます。この船は、御承知のごとく、一万六千何がしの油を積んで出たということはあとでわかっております。出たのはたしか九月十一日だと記憶しておりますけれども、ただいまのような状況でありますので、日本政府は故意にオランダ艦隊神戸入港を許してそれに油を供給したということは、少しこれは事実に反するのではなかろうか。この船はあくまでも私の船でございます。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 外務省欧亜局長からの通牒によって、カレル・ドールマン、グロニンゲン、リンブルグ、ミッドレヒト、この四隻からなるオランダ艦隊横浜を訪問するからよろしく取り扱われたいということで、この艦隊横浜入港の際にはカレル・ドールマン号より礼砲を発射するとかしないとかいう通牒まであなた方は出しておられる。しかも、御丁寧に、このミッドレヒト号には、オランダ海軍士官一、下士官一、兵三というふうに、私人にあらざるいわゆる軍人が搭乗しておることさえあなた方は通達をなすっていらっしゃるわけです。これが八月二十七日です。八月二十七日にそういう通達をなすっておいて、それがたちまち反転して一週間か十日たつかたたないうちにこれを商業船とおみなしになる、こういう根拠一体どこにある。これは明らかにオランダ艦隊給油船としての役割を持っているわけです。かりにあなたのお説のように、個人会社所有という形で届け出てこられようと、この問題についてはそれこそ誤解を招くおそれがあるのです。当然、一度艦隊としてお扱いになった以上、これを拒否するのはあたりまえじゃありませんか。そして、その船が油を積んで、しかも、自船の需用油ならばいざ知らず、一万六千トンもの油を積んでいくということについて、その油がどう使われるかということを考えないほどまぬけなことはおそらくないはずです。御存じだったはずです。一体、いわゆる外務省欧亜局長通達オランダ艦隊認定なすったものが、たった一週間か十日たたないうちに、——しかもその船は洋上にあるのです。海のしに航行中の船です。これをたちまち個人の船だと認定をなさる根拠はどこにありますか。
  22. 法眼晋作

    法眼政府委員 ただいま御説明いたしましたように、日本政府はすでにカレル・ドールマン並びにその付属の軍艦に対して入港を拒否いたしました。でありますから、これは、当時のインドネシア世論も考えてやったわけでございますけれども、元来が私の船であり、むろん艦隊の一部を構成しておりましたけれども、これが分かれてばらばら神戸に入るということについては、当時の届出もこれは私の船になっている関係もありまして、港湾当局も許したわけであります。私は、その程度のことは、これは許されてしかるべきものじゃなかろうかと思います。なぜならば、カレル・ドールマンその他の入港を拒否したのは、当時の状況から言って、インドネシア世論が非常に高揚しましたので、一度許可したものを日本がさらに撤回して拒否した。それがばらばらに分かれまして、しかも油送船が分かれておるという条件のもとにおいては、これは許してもインドネシアにおいてさして大きい世論の反撃を受けるわけはない。事実、その後インドネシアの参事官が来て話したのでありますけれども、この問題については了解したということであります。でありますから、私は、この艦隊が分かれて、しかもそれに付属しておる商船であるものが入ったことについて、これを許したことは、これはそうひどくおしかりをこうむるべき筋合いでもない、こう思うのであります。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 あなたがそうおっしゃったって、現に、神戸市の港湾総局港務課、ここの書類にはこう書いてありますよ。「オランダ海軍チャーター船につき、ラスト・ポート不明」、——ちゃんと、日本の官庁が、これは軍のチャーターした船であり、軍用船だということを言っているのです。あなたがそうでないと考えたって、現実に入った神戸市の港湾総局港務課の人がそう認定をして、きちっと書き込んである。だとするならば、これは軍用船でしょう。新地位協定の五条をごらんになってごらんなさい。何を公用船と言い、何を軍用船と言い、何を私の船と言うかは明らかです。これはあなた方がお作りになったのだから、覚えていらっしゃるはずです。これが軍用船でないという理由一体どこにあるのです。しかも、その油は、その船が自分で帰っていくに必要な範囲の油ならばいざ知らず、一万六千トンという大きな油です。これが一体何に使われるか。西イリアン作戦軍需品であることは明らかじゃありませんか。  それでは、一体、このミッドレヒト号神戸を出てどこへ行ったか、御存じですか。
  24. 法眼晋作

    法眼政府委員 当時の事情は御記憶通りでございまして、日本政府カレル・ドールマンその他の入港を最初許しておいて拒否した理由は、インドネシア世論が非常に高揚したからであります。でありますから、その事情を考えてみまして、艦隊ばらばらになって日本を出る、日本に入らないというときに、当時の状況から考えて、それは徴用されておったから公用船であるといたしましても、しかしながら、元来私の船であり、艦隊ばらばら行動するというものに対して油を供給するというくらいを日本政府がやるということについては、しかく強くおしかりをこうむるほどのことじゃなかろう。問題の趣旨は、カレル・ドールマンその他の軍艦に対して日本入港を拒否しておる、しかも、軍艦としては日本においてはもう行動をとっておらぬわけでありますし、しかも、その届出は、私は届出申請書をここに持っておりますけれども、これには単にヴァン・オンメルン所有のタンカーと言っているわけでありますから、これは港湾当局も許す理由があった、こう思っておるのであります。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 軍需品を積み込んで参りますのに、ばらばらになっているかなっていないかなどということは、そう重要ではないはずです。艦隊として行動していなければ艦隊でないとか、分散してしまえば違うものになってしまうなどという論理はありません。少なくとも、このミッドレヒト号艦隊の一部として行動をし、そしてその艦隊に供給すると思われるような燃料を積み込んでいく以上、それは軍需品と考えなければならないはずです。私よりもあなたの方がお詳しいはずですが、一体、国際法の中で、いかなるものが軍用船であり、いかなるものが公用船であり、そしてどういう場合が軍需品とみなされるか、そういうようなことはもうおわかりのはずです。それを、ばらばらになっているからなどという説明では、だれも了承をしないのではないでしょうか。少なくとも、カレル・ドールマンをうわべで断わり、しかし実質的にはその目的を達成してあげたという形にならざるを得ないではありませんか。  それでは伺いますが、この油を積み込むときに、どのような届出を出し、どのような許可の仕方を神戸税関がなすったか、御存じでしょう。これは外務省と打ち合わせの上おやりになったということのはずですから。
  26. 法眼晋作

    法眼政府委員 いろいる誤解を避けますためにもう一度繰り返します。当時カレル・ドールマン号日本へ来たのは、日蘭関係三百五十年というものを記念するために入ってきたわけでございます。これを日本政府は一応許可しておりました。許可しておりましたにかかわらず、あまりにインドネシア世論が強いものですから、これを許可を取り消したという事情でございます。でありますから、艦隊日本に入らなかった。しかし、これに付属しておる船が入るということ、しかもその船の経歴にかんがみて許したということについては、私は、当時の事情から考えて、一度許可したものを取り消したということは、オランダに対しても日本政府としてははなはだある種の圧迫を感ずるわけであります。でありますから、この船、しかもその船は私の船である、徴用されておりましたからこれは公船ということになるのでありますけれども、元来船の性質はそういう船でございますから、許したということは、これは私は御了解が願えるものだと考えております。  この船が入った届出は、申し上げましたように、一つの形式でございまして、その形式の様式の中には、これは私船であるということを明確にしておるわけでございます。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 あなたの方は、徴用されているから公船であるけれども、持ち主は個人だから私の船だなんという言い方で問題をそらそうとなすっておられるが、そういう論理は一体国際的に通用しますか。少なくとも、その国の管理によってその国のために行動をしておる船は、もとの所有権が個人のものであろうと会社のものであろうと、どこのものであろうと、それは公用船であり、しかもその公用船をあなたは艦隊の一部と認定をなすって指示をなすっているのでありますから、これが私船だなどとおっしゃってみたところで、通用しないのではないでしょうか。  それでは、伺いますが、今後、新地位協定の第五条に基づいて、チャーターせられておる船に対しては、着港料、入港料、こういうものを全部おとりになりますか。
  28. 法眼晋作

    法眼政府委員 私は今のお説のようなこまかい法律論をいたしておるのじゃございません。私は当時の外交事情に山隈を置いて御説明をしておるわけでございます。当時の外交的主眼は、日本としては、インドネシア世論もこれは重視するけれどもオランダ世論もまた考えなければならない。でありますから、外交的観点から日本政府艦隊入港を拒否した、しかしながら、艦隊に付属しておるその船については許したという外交事情説明しておるわけでございます。厳格なる法律論から言いますと、これはむろん徴用されたものは公の船でございます。しかしながら、われわれは、当時の日本政府の決定は、外交的観点に重点を置いて、インドネシア世論を考慮し、また、一たん許可を与えたオランダ世論を考慮し、そういう観点から行動したということの御了解を求めるわけでございます。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 少なくとも。私たちは、問題をきちっと限定をし、説明をし、定義をしながら、しかもその上に政治論なりあなたのおっしゃる情勢論なりを展開いたしませんと、問題は食い違ってしまうおけです。そういう努力を私の方でいたしますのに、あなたの方では、何かそらせて、国際情勢だけを答えて何かごまかしていこう、こうおっしゃるのですが、しかし、基本をきちっとせずして論議をするからこそ、行き違いが多くなっていくのではないか。外務大臣のさっきおっしゃった誤解と称するものもまたそういうところから出てくるのではないか、こう私は考えざるを得ないわけです。公用船だ、そして艦隊の一部だということをあなたはお認めになるのですか、ならないのですか。そこから伺っていきましょう。そうして、できるだけ私の申し上げたことに当てはまるように、きちっと当てはまるようにお答えいただきたい。
  30. 法眼晋作

    法眼政府委員 これは、今繰り返し申し上げましたごとく、厳格な意味においては艦隊の一部である。しかしながら、日本政府行動は、繰り返し申し上げますように、インドネシア世論も考慮し、またオランダ世論も考慮し、すべての問題を考慮した上に艦隊入港は拒否したけれども、それに付属しておる、厳格な意味では艦隊の一部をなすところの、このヴァン・オンメルン所有の船に対して油を供給した、こういうことでございまして、これは、法律論と外交論というものの中間と申しますか、情勢を考慮した上での決定でございます。さように御了解願いたいと思います。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よくわかりました。とにかく、艦隊の一部であるということをはっきりお認めにたり、そしてその上に政治論としてあなた方は油を供給することを許した、こうおっしゃるわけですね。間違いありませんね。
  32. 法眼晋作

    法眼政府委員 その通りでありまして、そのことは、繰り返し申し上げますが、インドネシア世論を考慮し、オランダ世論も考慮し、当時の日本外交行動を修正したわけでありますから、全部の首尾一貫を求めてやった行動でございます。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もしそうだとするならば、国民に対しては、カレル・ドールマン入港を拒否した、こうおっしゃっておきながら、この部分をなぜ秘匿せられたのか。そして、これを秘匿することによって実はあなた方のお考えになっておることを実行した。インドネシア政府が正式にこのことを了承したとあなたはおっしゃっているが、いつ、いかなる場所で、ミッドレヒト母に一万六千トン油を積み込ませることを了承したのですか。それから伺いたい。また、国民に、カレル・ドールマンは拒否したと言いながら、どうしてこの問題を発表しなかったのか。二つ伺いたい。
  34. 法眼晋作

    法眼政府委員 この油送船に油を供給することについては、もとより事前にインドネシア政府許可を得るわけではございません。事実は、九月十一日にインドネシアの参事官がわが外務省の宇山参事官のところに参ってこの問題を聞かれたわけでございます。これに対して外務省の方から説明いたしました。そのときはすでに船が出ておりました。でありますから、これはそのまま了解した。日本側から、それは政府の訓令で来たのかと聞きましたところが、いや、訓令ではございませんということで、了解したわけでございます。でありますから、繰り返し申し上げますけれども、双方の世論を考え、油船の入港については当時インドネシア世論も憤激してなかったということを認めて行動したことでありますから、これは私は間違ったことでなかったと考えるのであります。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう一つお答えが残っているわけです。国民に対してなぜこの事実を明らかにしなかったのか、こういう点が残っていますが、しかし、今インドネシアの方が来て了解をなすったということを伺いまして、私はもっとひどいことをあなた方はなすっていらっしゃる、こう考えないわけにいかないわけです。二十一日、もう船は出て行ってしまい、残っているのは煙くらいでしょう。それでは納得をせざるを得ないではありませんか。しようがないのです。しようがない状態に相手を追い込んでおいて、納得をしたした、こうおっしゃっていらっしゃるのですが、なぜもっと事実を明確に教えてあげないのですか。  それじゃ伺いますけれども、このミッドレヒト号一体油をどのくらい積んで出ましたか。
  36. 法眼晋作

    法眼政府委員 お答えします。私が今申し上げた通り、このオランダの船が入って油を積み込むことについては、日本として何もインドネシアに通報する義務はないのでございまして、日本は主権国家でございますから、一々そういうものをあれする必要はないと思っております。でありますから、この船の入港を許した。そのあとオランダインドネシア側もこれを了解した、こういうわけでございますから、私は、そのカレル・ドールマン号入港を拒否したということに端を発して起こった事件でございますから、その事情をよく考えてみますると、今言ったことで問題は円満解決している、こう信ずるものであります。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 円満解決しているとおっしゃるのでありますが、事実を明らかにしないで隠しておいて、円満解決もないもんですよ。やはり、あなた方がほんとうにインドネシアの人に了解をしてもらいたいとお思いになるのならば、——なるほど一々通報する必要はないでしょう、日本は主権国家ですから、あなた方の責任においておやりになるのですから。しかし、了解を求めたいと願う以上、少なくとも事実は明確にお伝えをして了解をしてもらうということでなければ、一部分だけのお話をして了解を求めたということならば、それはだましたということに結果としてならざるを得ませんよ。ですから、そこで率直に申し上げるのですが、この船は一体油をどのくらい積んで出ましたか。この船は油を一体どのくらい神戸から積んでいきましたか。
  38. 法眼晋作

    法眼政府委員 われわれはこの船が油を一万六千トン積んだと了解しておりますけれども、しかし、これは、外務省としましては、事後においてすべてを検査するわけでございませんから、事実上どれだけ積まれておるかということはチェックいたしておりません。しかし、われわれは、一万六千トン積んだ、こう考えております。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 一万六千トン積んだとお考えになっていらっしゃる。そうして、確かに神戸税関に一万六千トンのマリーン・フュエル・オイルを積み込みたいという申請が出ている。これは事実です。ですが、現実にこの船が神戸の港を出て参りますときに出した届け出をみますと、当港積載貨物の数量及び種類、こういうところに、フュエル・オイル三万二千トンと書いてあるのです。一体この食い違いはどういうことでしょうか。当港積載とちゃんと書いてあります。当港です。
  40. 法眼晋作

    法眼政府委員 この油の分量の相違については、私は詳細承知いたしません。
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 油の積載の分量については詳細承知いたしませんとおっしゃるのですが、しかし、現実に、一万六千トンの届け出しかせずに三万二千トン積んで行っている。すると、日本政府の何ら関与せざる油が一万六千トン積まれたということにならざるを得ないのでありますが、この点についてどうお考えでしょうか。
  42. 法眼晋作

    法眼政府委員 私はこの積み荷の差異については詳細存じませんけれども、しかし、今日いろいろな意味で自由に商行為が行なわれるわけでございまするから、私は、このわれわれが知らなかったことについても、これはあまりそうおとがめをこうむる筋はないと思います。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ずいぶん乱暴なお話で、これは軍用船で、しかもオランダ艦隊の一部であるということをあなたはお認めになって、しかもそれが日本の国の神戸という港において油を積み込んで行った。しかも、その周辺を取り巻く国際情勢は、先ほど外務大臣がおっしゃったように、非常に日本としては微妙な苦心を要するどころだとおっしゃっている。だとするならば、その艦隊が積んでいっていることについて、私は知らない、商行為は至るところで行なわれる、そういうことならば、武器の密輸とかその他のものはみんな商行為になってしまいますよ。この点についてもう少し責任を持っていただきませんと、問題は複雑になっていく一方です。日本で積んだのが三万二千トンですよ。
  44. 稻益繁

    ○稻益政府委員 当時神戸税関でやりましたことを簡単に御説明申し上げますと、入って参りましたミッドレヒト号でありますか、貿易船ということでありまして、いわゆる関税法上の外国貿易船であります。従いまして、入港届を受け付けております。それから、問題の重油でありますが、これは、神戸税関といたしましては、一万六千トンの積み戻しの許可をいたしております。ただいま三万二千トンというようなお話がございましたが、おそらく、私どもが現地の税関当局から報告を受けておりますところによりますと、私どもとしましては、どこまでも積み戻しの許可をいたしましたのは一万六千トンであります。その一万六千トンを積んで出たということだけははっきり確認をいたしております。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 出港届というものについては税関は全然関係ありませんか。
  46. 稻益繁

    ○稻益政府委員 出港届自体につきましては、私ども許可しましたものがその許可通りに積まれて出ておるということを見るだけでありまして、今三万二千トンとおっしゃいました意味は、たとえば、神戸税関で積み戻しの許可申請の出ました場合に許可をいたしましても、その船が出港いたしますときには、一万六千トンきっかりということはないはずなのでありまして、入港しますときにすでに幾らか積んでおるということがございます。従いまして、出港のときにはたして幾ら積んでおったかということの確認はいたしておりません。一万六千トンの許可に関する限り、その許可したことがその通り行なわれておるかどうかということの確認をいたすだけでございます。
  47. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 出港届を見ますと、当港、この神戸の港、当港積載貨物の種類及び数量と書いてあるわけです。よその港で積んだということは書いてありません。当時積載貨物の種類及び数量となって、三万二千トン、こう書いてあるわけです。だとするならば、あなた方が一万六千トンしか積み戻しの許可を与えていないとすれば、一万六千トンは日本政府と無関係にここの港で積み込まれたと言わないわけにはいかないではありませんか。
  48. 稻益繁

    ○稻益政府委員 ただいまのお説のように、出港届には三万二千トンというのがあるようでございます。ただ、神戸税関当局としてこの点を調べましたところによりますと、問題のミッドレヒト号の総トン数は、御承知だと思いますが、総トン数が一万三千百十五トンという船でございます。純トン数としましては七千五百五十三トン。この船の通常積載します重油ということを常識的に判断いたしまして、三万二千トンというのは何かの間違いであろう、かように税関当局は判断をいたしております。許可をいたしましたのは、どこまでも積み戻し許可は二万六千トンであります。その一万六千トンが積み出されたというふうに判断をいたしておるわけであります。
  49. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは、その一が六千トンとあなたがおっしゃるものはどこで積み込んだか、御存じですか。
  50. 稻益繁

    ○稻益政府委員 許可をいたしましたのが神戸税関の浪松派出所でありまして、その浪松にありますシェルのオイル・タンクから積み戻しをいたしております。
  51. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 何かの間違いだとおっしゃるのですが、きちっと船長なり船の責任者なりが出していった書類、それをそう簡単に何かの間違いだろうとおっしゃれるのかどうか。しかも、その間違いというのは三万二千八十六・〇六八メトリックトンと書いてあるのです。まさか三万二千百八十六・〇六八メトリックトンというところまで間違えて書くとは私には思えないわけです。ですから、これだけ積んでいったと考えないわけには参りません。いかがでしょうか。
  52. 稻益繁

    ○稻益政府委員 私も実は専門的にこれだけのトン数の船が的確には幾らの重油が積めるということは責任を持ってお答えいたしかねますが、税関当局として見ております常識で申し上げますると、この程度の船が少なくも二万トン以上の油を積むということは言えないだろう、かように判断しておるわけであります。
  53. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 すなわち、そこに問題があるのです。この船は積める限りの油を一ぱい積んで出ていった。すなわち、それは西イリアンの問題を考えるからこそ積んでいったんだということがそこに明らかになっているわけです。浪松のオイル・スダンド、ここにはシェルのオイル・スタンド以外に何か併設されているスタンドがありはしませんか。御存じでしょうか。
  54. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申し上げます。かつて、今おっしゃるような米軍施設がございました。しかし、それは昭和三十一年六月十四日に日本に返還されまして、現在御存じ通りシェルの給油所になっております。
  55. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 しかし、それはその後も米軍用のジェット・オイルを一ぱい入れているはずですが、その返還になったかならぬかは別として、そういう施設として使われているはずですが、どうでしょう。
  56. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答え申し上げます。先ほども申し上げました通り、返還になっておりまして、現在シェルのいわゆるコマーシャルなスタンドになっているわけでございます。従いまして、米軍施設とは関係ございません。
  57. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局、一万六千トンの差額というものはここから積み込まれたと考える以外に方法がないのではないか。だとするならば、一万六千トンは日本政府許可をした、一万六千トンは全然許可のないもの、そういうものがこの船に積み込まれていったと考える以外に方法がないわけです。この浪松のオイル・スタンドは、今アメリカ局長がおっしゃったように、三十一年に返還にはなっております。だが、しかし、横浜から伊丹の飛行場における米軍機用のジェット・オイルを常に回送しておって、ここには満配されておるはずです。すると、その二万六千トンというものはそうした油ではないか。それ以外に考える余地がない。だからこそ、記録はかなり正直なものでして、ミッドレヒト号の船長から出しました積み戻しの申告書には、品種というところにマリン・フュエル・オイルと書いてあります。マリンと書いてある。これは一万六千トンのものです。ところが、出港届の方を見ますと、ここには、マリンという言葉は抜けてしまい、フュエル・オイルとなっております。こう考えて参りますと、今私の推定をいたしましたこととそのまま記録も合致をしていくわけです。すなわち、あなた方はカレル・ドールマンを一応断わり、そうしてオランダ艦隊の一部たるミッドレヒト号に対してマリン・フュエル・オイルを一万六千トン積み戻す許可を与えた。問題はそれで終わっておるのかと思えば、実はもう一つ底があって、もう一つの底では、不明な日本国の関与しないオイルがここで積み込まれていった、こういう事実を容認していらっしゃる、こう言わざるを得ない。問題は二重底になっている。そうして、この西イリアンに向かってこの船は戻っていきました。カレル・ドールマンが積んで参りました艦載機二百機、兵員千五百ですか、こういう軍隊がこうした日本からとりました油によって養われていっている、動かされていっている、こう考えないわけにいかないじゃありませんか。もしそうだとすれば、オランダインドネシアにも少なくとも感情を害したくない、こうおっしゃり、中立ということをはっきりおっしゃりながら、陰でこんなことをやっている。これでほんとうのアジアの一員としての日本などということは言えないはずです。と同じに、そういう事実までおっしゃらないから、参事官の方ですか、インドネシアの船が出ていっちゃったのだから仕方がない、こういう形になってしまうのです。事実を知ったらその参事官の方は驚きますよ。同時にまた憤激しますよ。僕だって、そういうふうに部分的な事実だけ聞かされて全体を納得させられるようなことになれば憤慨します。あなた方はもう少しこの事実を調べてごらんになる意思はありませんか。よく知っておって、私たちに対して知らぬ、こうおっしゃるのならば別です。しかし、いずれにもせよ、そういう意味であなた方は前科がある、という言葉は少し悪うございますが、ともかく国民に疑われるような事実があるのです。  だとするならば、冒頭に戻りますが、一応今問題が平静になりつつあるからといって、継ぎはぎのばんそうこう張り解決で満足してしまうわけにはいかないでしょう。国民もまたきっぱりとした政府態度を求めているのです。幸いにしてオランダ外務大臣も今エカフェでこちらにお見えになっているはずですから、この点についての明確なお話し合いを小坂さんはなさる意思があるのかないのか。今後西イリアンの問題はまた紛糾を続けるでしょう。それは望ましいことではありませんが、そういう形になりそうであります。そのときに処して、また日本があわてふためかないように、このことをきっちりとしておいていただく、こういうことを願いたいと思います。  今私が申し上げたような事実を含めて、一体オランダの外相と十分お話し合いをなさり、将来に禍根の残らないような方法を講じ、そうして、そのことを国民に明確に知らせ、納得をさせる、こういう御努力をおやりになる意思があるかどうか。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私どもの考えておりますことは、いわゆる西イリアン問題の解決でございます。そのためには、私どもは、双方の渦中に入らないという形において、しかもアジアの一員でもあり、しかも工業的に高いレベルにある国としまして、この問題の平和的な解決にできるだけ寄与したい、こう考えておるわけでございます。その観点からいたしまして、私どもは相当にこの前途に明るさを覚えておるのでございます。しかし、これは今申し上げる段階ではございません。いずれ申し上げる時期があろうかと考えております。  しかし、一方におきまして、今カレル・ドールマン号お話がございましたが、よく御承知のように、われわれ一度あの入港許可いたしました。ということは、オランダの側においては、日蘭修好三百五十年のお祝いに行きたい、こういうことでございますから、友好国としてお祝いにお見えになることを断わる理由はございませんから許可したのでございますが、その後、インドネシア側において非常にこの問題に対する感情がおもしろくない、こういうことでございましたので、あえてこれの拒絶をまたいたしたのでございます。従って、艦隊そのものの入港はございませんけれども、先ほどお聞き及びのような経緯でもって、ミッドレヒト号というものが日本商業船としての許可を税関で受けて油を積んでいった、こういうことでございます。しかし、今お述べになりましたように、また、こちらの大蔵省の関税局長が申しましたように、積載量が大体二万トン程度の船であるものが、三万二千トンの石油を積めたものか、これは確かに問題だと存じますが、どうも物理的に不可能なことではないかというふうに私どもは思わざるを得ないのであります。そこで、この問題についてはインドネシア側も了解しておる、ミッドレヒト号が寄港したことについては、じゃもういいですとうことになっておるのでございます。従って、この問題については、私どもは過ぎ去ったことと考えてよろしいと思っておるのであります。現在何も紛糾の種になっておらない。  なお、KLMを使っての軍人輸送というようなものについては、私ども、はなはだこの問題については困りますので、このことについては、昨日新聞にも出ておりましたように、私はルンス外相とお目にかかった際にお話いたしました。ルンス外相においては、この問題について日本に今後は絶対に御迷惑をかけぬ、今まで自分の方は、——彼らの言い分によりますと、ビアク島を通じて豪州に移民が行っておる、そこで、その移民の諸君をKLMの北回りで送る、こういうことを実はやっておったのであります。しかし、一方において、西イリアンにおった軍人がクリスマスの休暇で昨年暮れにたくさん帰った、その減っておる部分についてこれを補充せざるを得なかったということでありますけれども、そういうことについて、インドネシア側も非常に激高されたことで、私どもも非常な迷惑を感じたということを申しましたところが、もう今後絶対にさような御迷惑をかけることはいたしませんということを強く誓っておられるのでございます。そういう経緯もさることながら、いわゆる西イリアンの問題が平和的に解決されるということに向かって、私ども立場から全力を尽くしたいと考えておる次第でございます。
  59. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 西イリアンの問題を平和的に解決したい、それは私たちだって同じです。しかし、解決のためには、少なくともわれわれがお互いに誠意を尽くすということが重要です。にもかかわらず、うわべで断って、陰で燃料を供給し、あまつさえ、あるいは米軍の航空用ジェット・オイルにあらずやと思われるものを一万六千トンも積み込ませてやるような事実を繰り返しておって、向こうが気がつかないからいいわ、知らないからいいわで済むものではありません。従って、あなた方がそういうことをおやりになる以上、国民はかなり疑惑を持ちます。ですから、オランダの外相とお会いになりましたときにも、もう御迷惑はかけません、こういうことでありましたが、今後西イリアンで問題が起きましたときに、この西イリアン島に対するこの国の一番兵力増強の近道は、やはり飛行機輸送です。その飛行機輸送の道をそう簡単に放棄してしまうかどうか、この点ははなはだ疑問にならざるを得ないと思うのです。こういう点において、あなた方のお話は、オランダ発表しないで黙って通ってしまいますから黙認して下さいというようなことにならないという保証を取りつけていらっしゃいますか。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いろいろな人の言を引いて申し上げることは、外交の常識から私いたしたくないと思いますけれども、どうぞ一つ御信頼を願いたいと思います。私は、さような点においてわが日本国に迷惑がかかるようなことはいたさないということを固くお誓いする次第でございます。
  61. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ともかく、国民は心配をしておるのですから、この点についての明確なる態度を今後もおとりになることをお願いをして、一応私は終わります。
  62. 森下國雄

    森下委員長 関連質問の通告がありますので、これを許します。岡田春夫君。
  63. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 関連ですから、この後にあらためて詳しく質問をいたしたいと思いますけれども、ただいまの飛鳥田君の御質問に対する答弁で、条約解釈の点で明確になっておらない点が一点ございます。これは条約解釈ですから中川条約局長に伺っておきたいと思いますが、先ほど飛鳥田君の質問では、ICAOの三十五条の適用によって、軍需器材並びに軍需品、これらの軍需物資の輸送制限を行なっている、それでは軍人兵員、これらに対してはICAOの条章の何条によって制限を加えているか、この点については特段なる御答弁がなかったのでございますが、この点について、何条によって制限を加えているのかをはっきりしていただきたいと思います。この点が第一点。  第二点は、法眼欧亜局長に伺っておきますが、口上書の中に軍事要員という言葉が使われている、ミリタリー・パワーという言葉を使っているらしいのですが、この軍事要員というのは法的にはどういう意味でお使いになったのか、この兵員軍事要員の違い、こういう点について伺っておきたいと思います。  まず第一点は、ICAOの適用上の問題について、きょうはICAOの審議をやっているのですから、中川さんは調べてきておられるかと思いますので、伺っておきたいと思います。
  64. 中川融

    中川政府委員 ただいま御指摘のありました通り、ICAO条約の三十五条自体では、軍用器材及び軍需品輸送について制限しておるわけでございまして、軍人自体、人員については直接これの規定が三十五条からは出てこないわけでございます。軍人輸送することが一体ICAO条約違反であるかどうかという点でございますが、軍人であるからといって、これを輸送する場合、ICAO条約違反、あるいはICAO条約で禁止しておる、こういうことはないわけでございまして、もしもICAO条約の適用範囲外である場合がありとすれば、それは民間航空機でないわけでありまして、これは、ICAO条約民間航空条約でございますから民間航空機だけに適用がある、つまり、国家の飛行機ということになりますと、これは民間飛行機でなくてICAO条約の適用外になる。この点は、ICAO条約の第三条に、「この条約は、民間航空機のみに適用する」ということをはっきり書いてあるわけでございます。どういうのが国の飛行機になるかということの一例といたしまして、第三条のb項で、「軍、税関及び警察の業務に用いる航空機は国の航空機とみなす。」ということが書いてございます。従って、軍の業務に用いる航空機という定義に当てはまる航空機であれば、これはやはり民間航空機にはならないで国の航空機になるということになるわけでございまして、それでは、どういう場合が軍の業務に用いる航空機かという場合でありますが、これは、やはり、航空機全体が、軍が専門的、専轄的にと申しますか、使用する、軍用機はもちろんでありますが、軍がチャーターしておる飛行機、こういうものは当然策の航空機である、かように考えます。従って、民間航空機軍人々乗っけた場合に、民間航空機民間航空機でなくなるかということは、必ずしもそうすぐには出てこないのでございまして、もしかりにそういう場合があったとすれば、それは民間航空機を軍が専用に使う、こういう場合には、これはやはり軍の業務に用いる航空機ということになろうと思います。現実の問題としてのKLMの飛行機はまさしく民間航空機でございまして、それに軍人が相当数乗っておるというだけのことでございますので、やはり、ICAO条約の適用範囲内である、かように考えます。
  65. 法眼晋作

    法眼政府委員 これは一般的意味で申し上げたのでありまして、その軍人軍事要員ということ、個々のものというよりも、大量を大規模に送るという点に重点を置いてオランダ側に申し入れているわけでございます。ですから、個々の軍人についてはただいま条約局長お話しの通りでありまして、軍事要員というのは軍人であります。問題は、それをオランダ側では日本を通ってそういうものの増強をやらぬ、こう言っているということに重点を置いてお考えを願いたいと思います。
  66. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は条約解釈を聞いているので、その重点をどこに置いているかという問題を聞いているんじゃない。軍事要員というものは、あなたの御答弁によると、軍人であるということですが、それならば、軍人または兵員と書けばいいわけです。ことさらに軍事要員という言葉を使ったということは、これは、軍人でありながら制服を着ないで、事実上継続的に軍人輸送ができるような形の——今のオランダがそういうもぐりをやっているわけですが、そういうもぐりをやっていることについてもこれを制限したいという考え方に立っているから軍事要員という言葉を使ったのではないですかと、こういうことを聞いているのです。
  67. 法眼晋作

    法眼政府委員 これは一般的意味に使っているのでございまして、特にごく一般的意味に使っておるということを御了解願いたいと思います。
  68. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 一般的な意味には、あなたが新聞記者会見をやったか、あなたであるか情文局長であるか私は知らないけれども、あなたが説明をしたときに、軍事要員というのは制服を着ないで実質上兵隊である、そういうものも含めて広い意味でそういう言葉を使ったのだというように、あなたか情文局長はお話しになっているようですが、それが一般的な意味だ、こういうように私は解釈して参りたいと思います。  それから、中川さんの条約解釈は、ちょっとおもしろいことを言ったんだが、あなたは、三十五条では、軍需品輸送制限している、軍人制限はないからICAOによっては軍人を運ぶということは違法ではないという解釈をとられるのだ、こういうことに解釈してもいいわけですね。そういう意味ですね。
  69. 中川融

    中川政府委員 三十五条の解釈としてはさように考えます。
  70. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私は三十五条と言いませんよ。ICAOと言ったんです。ICAOの解釈はどうなるのだと聞いたんです。
  71. 中川融

    中川政府委員 民間航空機に単に軍人を乗せただけ、その事実からICAO条約違反ということは出てこない、かように申しておるわけであります。
  72. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは、伺っておきますが、ICAOの第四条並びにICAOの第四条に基づく目的、この目的はどこにあるかというと、ICAOの前文にある。この前文の目的というものは、軍人輸送するということが目的ではないはずです。ICAOという条約それ自体の全体の意思は、軍事輸送のために民間航空機輸送することを許すという条約ではないはずなんです。民間の航空についてどのようにするか。それは、ここでことさらあなたが解釈をされた第三条で軍、税関、警察の業務に用いる航空機は云々というのは、これは民間用の飛行機の航空安全を保障するために軍用の飛行機との区別をここに明確にしてあるのです。区別を逆に使って、逆用して、このICAOの条約軍人輸送についての何らの制限がないから、だからICAOの条約によっては制限がないから違法でないとして、軍人輸送が法的にできる、こういう解釈は、明らかに条約解釈を乱用しているとしか言えないじゃありませんか。あなたがそういう解釈をするならば、日本政府オランダ政府に対して抗議をしたこと自体がおかしいということになるじゃありませんか。条約根拠のないことを抗議したのだということになるじゃありませんか。法眼局長が先ほどから何度も言っているように、実質的に実体的に軍人である者が継続的に運ばれることを押えるためにそれをやったんです。それを押えるためには、第四条というのがあるから法眼欧亜局長は言えたんでしょう。ところが、それを条約上何ら論拠がないから運んだっていいのだというのが中川条約局長の答弁なんです。それでは、オランダは合法的にやっている、日本は、合法ではあるけれども、それはやめてもらいたいという単なる請願をやったんだ、陳情をやったんだ、こういう解釈にならざるを得ない。私は実態論を聞いているのではない。初めから申し上げたように関連質問ですからこれ以上言いませんが、条約解釈を伺っているのです。この点はどうなんです、中川さん。
  73. 中川融

    中川政府委員 軍人民間航空機で運んだ場合にICAO条約違反にならないということは、これは当然法律的に言えると思います。また、現に、この民間定期航空はたくさん世界を飛んでおりますが、軍人が幾らでも乗っておるのでございまして、これをもし違反と言うならば、これは世界各国みな違反をやっているということになります。問題は、第四条によって、「この条約の目的と、両立しない目的のために民間航空を使用しないことに同意する。」ということが書いてある点でございますが、この民間航空条約の一番大きな目的は、各国の民間航空をお互いの摩擦をなく発展させる、それで世界の平和に貢献するというのが国際民間航空条約の一番大きな目的であります。なお、同時に、この前文では、「国際民間航空の濫用は、一般的安全に対する脅威となることがある」ということも言っておるのであります。一般的にこういうようなことをしないように民間航空を使っていくということを第四条で書いておるのでございます。しかし、これからすぐに一般民間定期航空に軍人を相当数乗せた場合にこれが違反になるということは言えないのでございます。民間航空軍人が相当数乗って旅行しておる。私服を着ている場合もあり、制服を着ている場合もあり、これは通常行なわれておるのでありまして、問題は、それがたとえば一国が一国を侵略する、戦争がすでに起こっておるというような場合に軍人輸送するということは、これはICAO条約自体でも戦時には適用はないということを言っておるのでありますが、そういう事態においてはこれは考えなければいかぬことでありましょう。しかしながら、まだインドネシアオランダとの問題は平和裏に外交交渉をやっておるのでございます。この間に中立規定等が適用がないこと、これもまた明らかでございます。従って、KLMオランダ軍人が私服で、あるいは制服の場合でも法律上は差違はないと思いますが、軍人が相当数乗っておるということからICAO条約違反ということは出てこない、かように考えるのでございます。オランダに対していろいろ申し入れをいたしましたのは、一番先に私が口上書趣旨として申し上げたように、政治的な理由外交的な理由から、そういうことをやらないようにしてくれということを強く要望しておるのでございまして、法律的論拠に基づく要求という形ではしていないのでございます。
  74. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 関連ですから、もうこれで終わりますし、留保いたしておきますが、あなたは戦時国際法の適用なんということをここで出さなくたって、わかり切っていることです。たとえば、あなたの言う例を言えば、自衛隊という軍人民間航空に乗ったからこれはICAOの条約に反しないかどうか、こういうような一人、二人の自衛隊の軍人が乗った場合の例をあげて、それで違法であるかどうかということ々言っている。先ほどから法眼欧亜局長が言っているところによっても、口上書として提出しているのは、(発言する者あり)今うしろで言っているように、継続的に軍人輸送している、そういうことについて口上書で出しているはずなんです。あなたは、法律的論拠はないのだけれども、法律的にはオランダの言う通りなんだが、お願いをしているんだ、こういうようなことを口上書として出したのだと言う。そういうことならそういうことで、口上書内容でありますから、それとして承っておきますが、私は、この問題については、去年の十月にすでに、オランダKLMを使って兵隊を輸送している事実があるではないかということで質問している。これに対するお答えの問題もまだ私は留保いたしておりますから、このときに一緒に質問を続けて参りたいと思います。     —————————————
  75. 森下國雄

  76. 大久保武雄

    ○大久保委員 それでは、外務大臣の御都合もありますから、外務大臣の出席の時間の範囲内でまず質問をいたしまして、残りました問題は後刻また外務大臣の御出席をいただいて質問を継続いたしたいと思います。  私は、タイ特別円協定及びガリオア・エロア協定に関し、主として外務大臣に質問をいたしたいと思います。すでに同僚議員からもしばしば本委員会において質問が行なおれておりますが、本日は、第一のタイ特別円については、東南アジア低開発国への協力の見地並びに日・タイ親善の見地に立ち、また、第二のガリオア・エロアに関しましては、論争の中心である債務性ありやなしやの点に焦点をしぼって質問をいたしたいと思います。簡潔率直にお尋ねいたしますので、政府の答弁も要点を具体的に明らかにしていただきたいと思います。  まずタイ特別円協定からお尋ねをいたします。  本日から東京でエカフェの第十八回の総会が二週間にわたって開かれることになっております。これは東南アジア経済協力について関係国の意見を交換することになるわけでありますが、タイ国は東南アジアにおきましても重要なる国でございます。このエカフェの東南アジアにおける新しい協力関係を設定しよう、こういう情勢を背景としてタイ特別円協定日本国会で審議されているわけでございます。私は本問題もかかる視野から考慮を払っていくべきであると思いますので、逐次数項目にわたりまして質問をいたしたいと思います。  タイ特別円協定に対しまして、政府はしばしばこういうことを言っておられます。すなわち、政府は大所高所から三十年の特別円協定第二条に規定された九十六億円の経済協力を無償に切りかえることにした、こう言っておられる。しかし、大所高所からと言っただけでは国民には何のことだかさっぱりわからぬ。大所高所と言うからには一段高い視野から問題の解決をはかったということでありましょうが、それには、そういう判断に基づいた具体的な事由、すなわち、そうすることが東南アジア協力に対しても有利であり、またわが国にとっても利益であるとの判断があったはずであります。タイ国は日本の東南アジアにおける活動の中心でもあるわけであります。そこで、まず、今回の解決が東南アジア協力を含めてわが国にとってどのような具体的な利益をもたらしたものであるか、この点を具体的にお答えをいただかないと、大所高所という言葉がきわめて抽象あいまいもこたる言葉になってしまうわけでありますから、政府はこの点を明快に国民の前に具体的にお示しをいただきたいと思います。
  77. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お答えを申し上げます。  タイの特別円協定というものは、大久保さん御承知のように、わが方とタイとの間に防衛同盟が昭和十六年にあったわけでございますが、この関係に基づいて昭和十七年の七月に特別円の協定が結ばれたわけでございます。ところが、二十年の九月になりまして、タイ側からこの協定を廃棄するという通告をしてきたわけでございます。そこで、廃棄されたこの特別円の協定でございますから、通告があった以後はこの協定は無効になる。すなわち、これに含まれておりましたところの金約款等はこれは無効になるわけでございます。しかしながら、終戦当時のこの日銭にございましたタイの特別円に残高が十五億円何がしあったわけでございますが、これについては、いわゆる商業ベースの金の供給を約束したものでございますから、これは何とかせねばならぬということになりまして、日・タイ間に話し合いが持たれたわけでございます。ところが、問題は、その金約款もございませんので、何によってこれを評価するかという点が問題であったわけでございます。わが方は、タイ側に金の引き渡しを約束をしておったもの、あるいは金を売却する約束をしておったもの、そういうものが残っておるわけでございまして、金の売却を約束をしておったものが四千四百万円でございましたわけでございます。これを終戦時の価格金一グラム四円八十銭というもので割ってみると、九・一七トン何がしになるわけでございます。それから、約束をしてまだ引き渡してない分が〇・五トンあったわけでございます。そこで、その十五億何がしの中から、この九・一七トンのものに三十年当時の価格——現在の価格もそうでございますが、金の価格一グラム四百五円というものをかけてみますと、大体三十七億円見当になります。〇・五トンの金に四百五円をかけてみますと二億何がしになるわけでございます。この二つで大体四十億見当になる。そこで、十五億円の残っておりまする残高から四千四百万円を引いたもの、すなわち十四億円何がしのものを加えまして、そうして五十四億円というものを出しまして、これはスターリング・ポンドで払う、こういう約束をしまして、これは実行したわけでございます。ところが、問題は、そうした残高を何の基準で評価するかというところに問題があるわけでございまして、タイ側としては、この一ポンドが十一バーツという当時の価格で計算したい、そうすれば一千三百五十億円になるというようなことを言って参りましたこともございますし、あるいは、それを四割に切り下げて——当時、日本とフィリピンとの間の賠償交渉がやられておりまして、いわゆる大野・ガルシア協定というものが、フィリピンの十億ドルの要求を四億ドルでどうだという話をして、この話がまとまりつつあったような事情も背景にございましたりして、フィリピン並みの四割でどうだ、そうすれば五百四十億円だというようなことを言って参ったこともございます。しかし、日本側としてはやはり一バーツ一円ということを強く主残しておりましたので、その後になりまして、今度は一バーツ一円として、そうして一ドルが二十バーツということで換算すればこれは二百七十億円になる、そこで、まるい数字で二百五十億円でどうだというようなこともあったりいたしまして、その二百五十億円をスターリング・ポンドで払う場合にはこれを倍とみなす、物の場合は全部この場合の表示の円でほしいというようないろいろないきさつがございまして、結局、タイ側としては、百五十億円というものはこれは最低の線だ、こういう主張を強く言っておったわけでございます。そこで、いろいろ折衝の結果、御承知の三十年協定ができまして、五十四億円というものはスターリング・ポンドで払って、あと九十六億円は投資あるいはクレジットの形式で供給する、こういうことになりましたわけでございます。  しかし、そうした経緯からいたしまして、二条にさようなことがございまするが、四条にこれを実行する方法が書いてあるわけでございます。この第四条においていかなる形で投資あるいはクレジットの方法を見出すかという点で、全く合意ができませんで、協定ができた直後からこれが日・タイ間の争いになっておったわけであります。  一方、アジアにおけるタイの地位というものは、よく御承知のように、輸出においてはこれは最大の市場でございまして、千人の邦人がおりまして商業活動に従事し、これが輸出の面で見ましても一億一千万ドルの輸出がなされておる、こういう状況でございます。私ども、このタイ側からの六年にわたるところの条約の改定の要求に対していろいろ話をいたしておりましたのでございますが、先方は、この条約文をたてにして言われたら一言もない、しかし、そういうばかな協定を結んだのはこれはタイ側の落度であるけれども日本側がそういうことを押しつけてくるならば、こういうことでタイ条約をたてにとられて屈服せざるを得なかったということをタイの青史に残すのみであるということを申すのでございます。すなわち、もう日本との関係はこれはどうなっても知ったことじゃないぞというふうな態度でございまして、千人からおりまする邦人の諸君も非常に心配をされまするし、わが方といたしましても、東南アジアにおいてのタイがわが方と非常に大きな経済関係を持ち、あるいは長く友邦として来た関係等も考慮いたしまして、大所高所に立って、九十六億円というものはこの際無償で供給する、ただし、その内容は、日本人の役務あるいは生産物、資本財、こういうもので供給する、こういうところに踏み切りました次第でございます。  繰り返して申し上げますと、くどいようでございますが、結局、三十年協定のできましたときに、双方がその価格をいかなる法的な基準で見積るかというところの完全な了解というものが実はなかったと申しますか、きわめて不十分であった。なかったというのは言い過ぎでございますが、不十分であった。こういうことで、実際協定を動かすに際してはかかる大所高所に立たざるを得ないという判断をした、こういうことでございます。
  78. 大久保武雄

    ○大久保委員 数字的な見地から、千三百五十億円と換算されるものが交渉の段階において百五十億円になった、また、タイ側が、条約上はまことに申しわけないが何とか頼むといった一つの情義的な、日本に寄りかかるといったような立場で来たので、そこで大所高所から判断をした、そういう御趣旨は一応わらかぬではないのでありますけれども、しかし、経済的に言って何かもう少し具体的な問題が私はあるんではなかろうかということを思うのです。この際、いろいろタイ側との間に今後こういうことによってこういう点が具体的に日本人のためによくなるんだということがあったならば、一つ具体的にここでお示しになった方がよくはなかろうかと思います。
  79. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 タイ外務大臣タナット・コーマン氏が朝日新聞の記者に会見いたしまして、今度の協定ができることによって日・タイ間の関係は無限に広がったと、非常に先方日本に対する歓迎の意を表しておるのでございまするが、近くタイの側においては工業大臣が日本へ参られることにもなっておりまして、タイ側は、まだ鉱業の調査をどこの国にもさせたことがないのでございまするが、どうぞ一つ日本にお願いして、鉱業の調査団を出してタイの鉱産物資源を十分調べていただきたい、こういうことを申し出て参っておるのでございます。その他いろいろジョイント・ヴェンチャー等もできるだけ日本との間でやっていきたいということで、非常に日本に対する寄りかかったか感じを見せておるわけでございます。私は、東南アジア貿易が現在日本の輸出の三二%を占めておりまするが、その中で一番大きな輸出市場でありまするタイがそういう気持になっていくということが、今後の輸出貿易が東南アジアに伸長する上に大きな力になるというふうに確信をいたしておる次第でございます。
  80. 大久保武雄

    ○大久保委員 私は、タイ国には数十年前から——数十年といってもそう生きておるわけじゃありませんけれども、数回参っておりまするし、タイ国の日本に対する伝統的な友好関係、また日本人がタイ国に非常にたくさんおる、東南アジア活動の中心であるといったような面から、今後タイ側が日本に友好的な態度をとってくれますことは、これは日本人自体といたしましても非常に有利であろうというふうに存ずるわけであります。  そこで、そういったような日・タイ間の今後における具体的な相互利益の増進というものは一つどんどんお進めを願いたいと思うのでございますけれども、しかし、今回の無償供与に切りかえたという一つの事実がここに設定されましたわけでございますから、東南アジアにはタイ国のほかにビルマ、フィリピン、インドネシアといったような国々があるわけであります。そういう国々とわが国が賠償協定締結しました際に約束しました経済協力があります。その経済協力を無償供与に切りかえてくれ、こういったような要望が起こってきはしないか、そういう連鎖反応がありはしないか、また、もしそういったような要望がかりにあったとする場合に政府はいかなる態度をとろうとしておられるのか、この点を一つ明確に御答弁を願いたいと思います。
  81. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 タイの特別円は、申し上げるまでもないことでございますが、日銀の帳簿じりにタイ側に対する残高がございまして、その解決のためにこうした問題が出てきておるのであって、賠償等とは全然性格を異にするわけでございます。従って、タイの特別円問題が解決して九十六億円が無償供与になったと申しまして、他の経済協力がそれにならうというような理由づけはどこからも出てこないと存じますけれども、かりにそういう問題が出て参りましても、政府としましてはこれに絶対に応ずるわけには参らぬと存じております。
  82. 大久保武雄

    ○大久保委員 そういったような諸国に対する問題とは事柄の本質が違っておるから均霑することはない、こういう御答弁でございますが、一応それを了承することにいたしまして、先ほど外務大臣発言されましたように、タイは特別円協定を含めまして同盟条約を終結したものとするという通告をかつてわが国にして参ったわけであります。この通告があるから特別円は払う必要がないんだ、日本銀行に十五億円の勘定の帳じりがあっても債務性はなくなったのじゃないか、こう言う人があるわけであります。この点は国民もきわめて事情を聞きたい点でございますし、また、政府は多額の金をタイ国に支払うわけでございますから、この点は一つ疑問を明快にこの際解いておかれることが政府の責任だと思いますので、外務大臣より明確に御答弁を願いたいと思います。
  83. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 同盟条約を廃棄するという通告がございまして、従ってまた、その関連においてもタイ側とのオブリゲーションはないのじゃないか、あるいは、特別円協定の廃棄の動きもあるのだからこうした問題は考慮せぬでいいのじゃないかという御議論もございますけれども、これは、先ほどちょっと触れましたように、日銀の帳簿じりでございまして、いわば商業勘定でございます。われわれお互いに個人の場合でも、あの人との間の仲が昔ほどでなくなったからといっても、その人に対して銀行勘定を持っていると、銀行の勘定というものはこれは決済せねばならぬ。それと同じような理屈で、日銀の帳じりというものはいわば商業勘定の残でございますから、これはやはり決済しなければならぬと思います。ただ、問題は、特別円協定にございました金約款というものがなくなっておる点でございます。金約款がもしついておって特別円協定が生きておりますれば、金の兌換の換算をいたしまして、一千二百六十七億円払わなければならぬ、こういう数字が出て参るわけでございまして、そういうことにはこれはとうてい応ずるわけには参りませんのでありますけれども、やはり、その勘定の決済というものはせねばならぬ、こういうことに存じておる次第でございます。
  84. 大久保武雄

    ○大久保委員 そういう廃棄通告がありましても支払わなくちゃならぬという根拠を一応承ったわけでありますが、今回の新しい協定の前文に、「特別円問題に関連するすべての問題を解決し、」という字句が書いてございます。この点、若干ふに落ちぬ点があります。このすべての問題ということは具体的にはどういうことをさしておるのか。特別円問題は三十年協定で一応解決したわけでありますが、三十年協定のしりぬぐいをしたといったような意味であるのか、このすべての問題ということがどういう具体的な問題をさしておるのか、この点を一つ明らかにしていただきたいと考えております。
  85. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 三十年協定は、協定としてできましたけれども、これが動かなかった。そこで、動かない理由がいろいろあったわけでございますが、そういうもろもろの言い分というものは全部氷解した、こういうことでございます。すなわち、第四条というものもなくなりましたわけでございます。第四条によって合同委員会を作って双方で相談をしていく、そういう問題も含めて全部この問題は解消した、こういうことでございます。
  86. 大久保武雄

    ○大久保委員 次に、私は、協力の具体的な内容について御質問をしたいと思います。昨年の暮れでございましたか、一週刊雑誌に、タイは今度の九十六億円で日本から軍艦を買いたい意向だといったような記事が載っておったのを見たことがございますが、タイ国はこの協定によって軍需品を調達することができるのかどうか。タイ国はSEATOの中心をなす国でありますから、この点は明確にしておかなければ誤解を招くおそれがありますので、この点についての明快な御答弁をいただきたい。  また、協定の第三条で、タイ日本から調達する日本の生産物は資本財及び設備を主とするとされてありますが、資本財及び設備とは具体的にどういうものをさすのであるか、この点は前段の問題とあわせて明らかにしていただきたいと考えております。
  87. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ある週刊誌の記載は、われわれにとってははなはだ迷惑なことと考えております。そういう考え方は全然私ども持っておらないのみならず、この協定の合意議事録の第九項におきまして、「協定第三条1の適用上「設備」は、武器及び弾薬を含まないと解釈される。」、すなわち、そうした軍需品は一切含まれない、こういうことになっておる次第でございます。この点はきわめて明確にいたしております。  なお、この資本財及び設備というのは、いわゆるそうしたものでございまして、機械とか工場の施設であるとか、あるいはそういった要するに一般の生産に必要なる資本財がおもなものになろうと思います。
  88. 大久保武雄

    ○大久保委員 生産に必要なる経済的な資本財であって、条文上武器、弾薬は含まないという御答弁がありましたから、一応それを了承いたしたいと思っております。  次に、新協定は、三十年協定の第二条のほか第四条をも廃止することにしておるわけであります。昭和三十年協定の第四条には、同協定の円滑な実施のため両国政府代表で構成する合同委員会を設置するということを定めてあります。一方、今次の協定では、九十六億円全部を無償供与に切りかえたとは申しましても、日本の物資及び役務をタイ国に供与することによりまして両国の経済協力関係の強化を目的としておるのでありますから、この合同委員会の必要は、私は今後におきましてもあるのではないかと思うのでありますが、どうしてこの第四条まで廃止したのであるか、第四条まで廃止したのは少し筋が通らぬのではないかと思うのでございますが、この点はいかがでございますか。御答弁をいただきたいと思います。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 旧協定の第四条に合同委員会というのがございますのは、ジョイント・ヴェンチャーのような仕事を考えておりまして、すなわち、インヴェストメントあるいはクレジットの形式において九十六億円を供給するという形、そういう合弁事業のごときものを想定したわけでございますが、その点では話が合いませんで今度の協定になりましたわけで、今度の協定では資本財あるいは設備というようなものを供給するのでございますので、特に合同委員会の必要はないと判断されるわけでございます。御承知のごとく、第五条には、この九十六億円の供給については絶えず両者緊密に連絡する、かようなことが記載されてあるわけでございまして、大久保さんの御質問の趣旨に全く合致する規定になっておると思います。
  90. 大久保武雄

    ○大久保委員 特別円関係の質問の最後にお尋ねしたいことは、この協定には、解釈や実施に関する紛争が起こりました場合の仲裁条項がないようであります。これは三十年協定にもたしかなかったと思っておりますが、そのために、第二条の解釈について相互の見解の対立が生じましても、あるいはタイ側に押し切られたのじゃないかといったような疑いもないではないわけであります。今次の協定にはかかる対立が絶対に生じないということを外務省としては言い切れるのでありますか。また、もしそのような紛争の事態が起こりました場合に、仲裁条項がないのでありますから、紛争をいかようなる方法で解決しようと考えておられるのでありますか。この点を明確にしていただきたいと思う次第でございます。
  91. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今度の協定は非常に簡単にできておりますので、また、規定各条文において非常にその点詰めて精緻に書いてございますので、紛争はおそらく起きないものと考える次第でございますが、万一起きました場合におきましても、双方の国におきまして国際司法裁判所の強制管轄を受諾しておる次第でございますから、そういう問題が起きました際には、国際司法裁判所の裁定を仰ぐということになろうかと思います。前協定の際には、わが国は国際司法裁判所の強制管轄を受くるということにいたしておりませんでしたので、この問題が未解決にならざるを得なかったのでございますが、今後においてはさような事情に相なっておる次第でございます。
  92. 大久保武雄

    ○大久保委員 それでは、次に、ガリオア・エロアの問題に入っていきたいと考えております。  先ほど申しましたように、私は、ガリオア・エロアの債務性ありやなしやという点に焦点をしぼりまして政府の見解を率直にお尋ねをいたしたいと考えておる次第であります。  政府は、ガリオア・エロアに対して、債務と心得る、こう言っております。しかるに、社会党の皆さんは、これはただでもらったんだ、こう言っておられます。この点に、考え方が全く正反対である。しかし、考えてみると、社会党は、対米従属より脱せよ、自主外交を展開せよ、こうしばしば言っておられるのでございますが、くれるというものをもらうことすら、事と次第によってはこれはちょっと従属的根性ということになりますのに、くれないというものをくれろくれろと訴えましたり、くれないと言っておるものを、いや、もらったのだと、こう言い張りますのは、どうも私は国際的に見て人聞きのよいせりふではないように思うわけであります。言ってみるならば、対米従属どころではございません。米国に対してどっちかというと哀願的な態度であったり、また、借金を返すときになって因縁をつける、国際的な言いがかりということを言われても仕方がないわけであります。ここのところは国民が一番知りたいところである。そこで、政府国民にここのところを一つわかりやすく説明をしていただきたい、こう思うわけであります。
  93. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 仰せの通りでございまして、私は、結局この問題は、相手方とわが方の希望それぞれあるわけでございますが、わが方だけの考え方ないし希望では解釈ができない問題だと考えております。われわれは援助を受けたわけでございますが、一体その援助をしたアメリカがこれをどう思っておるか。アメリカが、あれは全部あげたものですと、こう言えば別でございますが、アメリカは、あれは援助であって、そのうちの何がしかは返してもらおうと思っているんだ、ごう言っている以上は、わが方だけが、あれはもらったものだと言っても、これは筋が通らぬと存ずるのでございます。それを、むりやりに、もらったんだから払わない、ありがとうと言ったじゃないかということでございますと、私どもこれから国際的に大手を振って渡ろうと考えておりますのに、アメリカに対して、あのときにお助けいただいてありがたかったということだけで、負い目を感ずる、これはやはりいけないことじゃないか、こう考えておる次第でございます。  また、一方の論者に言わせますと、債務というものをもっとはっきりしておいたらよかったんじゃないか、こういうお考えもございますが、それじゃ、そういう債務をはっきりいたしまして何がしが債務になったか、こう考えますと、あのときの援助は全部債務だったということにいたしますと、アメリカの言い分の十九億五千万ルドというものが日本の債務になってしまいますので、これはとてもわれわれとしては耐え得ざるところであるし、事柄の性質上もさように解釈し得ない。こういうことが、非常にくだいて言った場合の真相ではないかと思っておる次第でございます。  アメリカ側としては、日本に援助物資を出しますときに、この代金について、あるいは支払いの方法については後日相談しますというただし書きをつけて、そうして物資を放出しておるのでございます。日本の方におきましても、その物資をどうしてもらったかというと、日本政府が物資の放出を連合軍に懇請しまして、そうしてもらっておるわけでございますので、やはりそのときに債務性というものは生じているということに解釈をせざるを得ないと思います。  それから、アメリカのそう言っている根拠につきましては、極東委員会の決定、降伏後の対日基本政策であるとか、あるいはアメリカの当局者のアメリカ議会においての証言とか、今私の申しましたスキャッピン一八四四−A号とか、いろいろ出てくるわけでございますが、要するに、先方が、これはいずれかのときに解決する、そうして何がしか返してもらうんだ、こういうことでございますので、先方の援助をしたものの四分の一ぐらい返して、そうして大手を振って対等につき合うなら、それはその方がいいというのが私どもの考えでございまして、感謝決議をしたからただじゃないか、こう言われる方もございますけれども、感謝決議というのは、あのときは非常に食糧難でございまして、輸入食糧を確保してくれ、そうして輸入食糧を放出してくれ、こういうことを言い、かつ、そのことに感謝しているわけでございまして、輸入という事柄からすれば、これはただというふうには出てこない。また、今日において無償であると主張するなら、そのときに、もう少しはっきり、無償において放出してくれてありがたいと言っておけば、非常にこの点強いこちらの主張が出るかもしれませんけれども、どなたも無償ということについては言及しておられない、こう言わざるを得ないのです。  そのような事情でございますが、いろいろ長くなりますから、後に御質問にお答えして続けたいと思います。
  94. 大久保武雄

    ○大久保委員 ただいま外務大臣から御発言がありましたように、ガリオアの債務性の根拠として、一九四七年七月の援助物資が引き渡されました当時発せられましたスキャッピン一八四四を見ますと、支払い及び計算の条件は後日決定せられると書いてございますから、債務でないと論ずる根拠は全くないように考えられます。  そこで、ガリオアを受け取っておった時代には、歴代内閣のうちで社会党内閣も組織されたはずであります。片山内閣ができております。社会党内閣時代に何らか債務性を否定したような文書を米国に送りましたような事実がありましょうか。社会党は、債務でない、もらったんだとおっしゃるから、それならば、受け取ったときにこれは債務とは心得ませんよという付せんかなんかつけて差し出されぬと、その受取証文があとで不渡り手形になってしまう。金を払うと言ったのを向こうが持っていますから、不渡り手形になってしまう。これははなはだ国際信義上も許されぬことになりますし、もしそういうことがないといたしますならば、社会党は債務性をすでにもうかって承認しておられたということにもなりまずし、また、社会党が最近債務ではないと言い張っておられる根拠が全くなくなってしまうわけでございます。この点はきわめて重大でございますから、政府は過去の事実をはっきり一つこの際御答弁を願いたいと思う次第であります。
  95. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国会に資料として提出申し上げておりますものの中にございますように、一九四七年の二月にマッカーサー元帥がアメリカ議会に対して発したメッセージは、米国予算からの支出は日本の債務となるが、援助は慈善でなく、また日本国民も慈善を欲していない、こう申しております。社会党内閣はその直後にできました。そうして、一九四七年六月十九日に極東委員会の次定がございますが、これはまさに社会党内閣のときにこの決定が発せられております。それから、スキャッピン一八四四によりますところの物資についても、社会党内閣の時代は非常にインフレの高進した、われわれの記憶でも、非常につらい時代に政権を御担当いただいたわけでございますが、その際において全部一八四四を御承知で受取書をお出しになっていらっしゃいますので、この点は、どうも債務でないということはあの当時お考えになっていなかったんではないかと結果的には言えるわけでございます。
  96. 大久保武雄

    ○大久保委員 驚くべきことでございまして、今の外務大臣お話がもしすべて事実であるといたしますならば、どうも社会党は、時間の経過というものをすっかり波が押し流したような形にしてしまって、昔のことは昔のこと、今のことは今のことといったようなことになるので、公党の態度といたしましてははなはだ不信であると思われる、友党でありながらそういう気持がいたすわけでございます。そこで、今後社会党も、債務性というものを発言されます場合は、そういう時代のことを前提として質問に立たれることがよかろうと思う次第でございます。  そこで、常に問題とされる点に西ドイツとの関係があります。社会党は、米国と西独との間には援助物資に関しましてあらかじめ債務と考えるという協定があったが、日本との間にはそういう協定がないから、日本に関する限り債務ではないんだ、こう言っておられます。しかし、西独の立場日本立場をいろいろ明確に検討していく必要があろうかと思う次第でございまして、政府として、この両国の立場を明確にして、債務性があるとする根拠一つこの際明らかにしていただきたいと思う次第でございます。
  97. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 西独の場合、御承知のように、分割占領が行なわれたわけでございます。アメリカ占領地区、イギリス占領地区、フランス占領地区、それぞれ地方政権があったことでございます。一九四九年にアデナウアー政権ができまして、やはり統一されたる政府との間に今までの決算をするという必要があったのではないかと想像されるのでございますが、日本の場合は、党派は違いましても、自由党内閣、あるいは社会党内閣、自由民主党内閣、それぞれ日本の単一政府が続いたわけでございますので、これは、先ほど申し上げたような、スキャッピン一八四四、あるいはまた極東委員会の決定、あるいは日本という国に対するところの陸軍省からのガリオア予算支出についてのアメリカ当局者の議会における証言というようなもの、あるいはまた阿波丸事件の解決に対して国会の決議等もございましたし、それに附属了解事項等もございましたりした等の問題もあって、日本の場合は、一貫した政府一つの国にあって、そうしてこれに責任を持たせることができる、こう考えた点もあろうかと思っております。  なお、ECA協定、いわゆるマーシャル・プランがヨーロッパには行っておる、日本には来ていないんだから、これは違うとか、あるいは、西独の場合は経理が初めから非常に明確なものがあったとかという説もございます。あるいはまた、極端なのは、要らないものは全部西独は突っ返した、しかし、日本政府は腰抜けで、食えないものまでもらって、その勘定じりまで払わせられておる、こういうような説もございますわけですが、まず、マーシャル・プランの援助は日本にはなかったおけです。なかったわけですが、マーシャル・プランによる援助の分も、ガリオアによってなされた分も、一括して同じ率をかけて返済させられておるので、これは日本の場合とちっとも違わないと言えると思うのであります。それから、要らぬものを突っ返したじゃないか、こういう話もございますので、私ども西独政府にも照会してみましたが、当時、地方政権であって、そうして、その地方政権の代表者が占領軍に対してこれは要らないから返すなどということはとても言えた義理じゃなかった、そういう事実は一度もなかった、こういうことで、日本の場合とちっとも違わないようでございます。ただ、援助を受けたものを全部払ったなら別でございますか、ドイツの場合は三分の一切り捨て、日本の場合は四分の三切り捨てということで大きく切り捨てておりますので、そういうことも問題にならぬのではないか、かように思っておる次第でございます。
  98. 大久保武雄

    ○大久保委員 西独の場合と日本の場合は、西独が、分割占領からアデナウァー政権の西独政府に組織がえがあって、その関係協定ができたのだ、こういう一応の経過説明といたしまして了承いたすわけでございます。  次に、社会党ではこういうことを言っておられます。米国予算法あるいは商務省発行の刊行物に、日本に対するガリオア援助が債務であるとの明確な規定を欠いている、また、グラントすなわち贈与の中に含められているといったような理由で、これは債務性がないのじゃないかという主張があるようでございますが、この点は若干誤解を招くおそれがありますから、政府の見解をこの際明らかにしていただきたい、かように考えております。
  99. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今お話しの点は、商務省が発行しているブレティンで「フォーリン・エイド」というのがございますが、それを引用しておられるのであろうと思いますが、御承知のように、ガリオアの予算というものは陸軍省の予算でございます。これを商務省が一般にPRするためにこの内容について記述して刊行したものがある。それにガリオアというものはグラントに入っている。だから、グラントだから日本語に訳せば贈与じゃないか、従って債務性はない、こういうのが御議論のようでございます。ところが、これに注釈がございまして、援助というものは二つのカテゴリーに分けられる、一つはクレジット、一つはグラントである、そうして、クレジットというものは、これは全額回収させられる、グラントというものは、贈与であるけれども、そのうちには後日相談してそのうちの何割かを返させるものも含まれておるという注釈がございまして、日本の場合二十一億何千万ルドというものが日本に対するグラントというところで入っておるわけです。しかし、入っておるのは西独の場合もグラントに入っている。ですから、私どもは、この商務省発行の「フォーリン・エイド」の記載しておりますところのものは、これは、ガリオアあるいは、マーシャル・プランの援助というものは全額回収するものじゃない、債務性はあるけれども全額すなわち債務ではないのだ、こういう趣旨においてグラントという言葉を使い、その中に入れてあるのであって、クレジットの意味では、十九億五千四百万ルドといっておるもの、その雑誌にある二十一億何千万ドルが全部日本から回収されるということになってしまう。ガリオアの援助すなわち債務ではございませんが、それは債務性のあるものだ、こういう私ども解釈以外にこの問題の解決の方法はない、こういうふうに思っておる次第でございます。
  100. 大久保武雄

    ○大久保委員 グラントとありますから、非常に国民誤解されやすい点をつかまえてそういう発言がなされておるわけでございますが、ただいま外務大臣の答弁によりまして、このグラントの中に注釈があって、日本のガリオア・エロアは贈与ではないということがきわめてはっきりしているということでございますから、一応それを了承することにいたします。  次に、米国の一九四八年の経済協力法、ECAによりますと、無償の経済援助に対しては見返資金積み立ての義務が負わされておる、日本のガリオアに対しましても見返資金を積み立てておりますから、日本に対する援助は無償と考えるべきである、こういう主張が社会党方面でもあるようであります。私は米国の経済協力法は日本に対しては適用がないものと了解しておりますが、政府の見解をこの際明らかにしておいていただきたいと考えております。
  101. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御指摘のように、経済協力法は日本には適用いたされません。しかし、この経済協力法において見返資金を積み立てろということが書いてある、従って、日本もまた見返資金を積み立てた、だから、経済協力法による贈与は、日本に対しても見返資金を積み立てられた分は贈与であるのだから、これはただである、こういう主張は私は間違っておると言わざるを得ないと思うのです。実は、ECA法によって西独に供給されました援助は十五億二千万ドルということになっております。しかし、この十五億二千万ドルのECA法によるところの贈与、いわゆるグラントと、それから、、ガリオアによるところのグラント十五億三千万ドルと今わせて三十億ドルというものがドイツの援助になり、その三分の一の十億ドルというものがドイツの債務になったわけでございます。日本の場合も、これはECA法の適用はございませんが、ガリオア援助というものが向こうの計算だと十九億五千万ドルあり、こちらの計算ですと十七億九千万ドルあり、そうして、こちらの計算をとって御承知のように四億九千万ドルというものを債務と確定したわけでございますから、これを支払うということでございます。ただ、日本の場合の見返資金というものは、これは援助物資特別会計法第三条第三項に規定されておりますように、向こうが持ってきた援助物資はそのままこちらに見返資金として積み立てる、その等額のものを積み立てる、こういうことをわが方できめたのでございまして、その前にいろいろと受けておった援助物資の代金というものは、あるいは複数為替レートのしりぬぐいになったり、あるいは価格差補給金になったり、そういうことで非常にどこへ使われてしまうかわからないことになる、そこで、やはり一本に積み立てて日本の経済復興のために使おうということで、わが国の作った見返資金の制度であるということでございまして、社会党の方のおっしゃると伝えられるその御説は、私は当たらないと存じます。
  102. 大久保武雄

    ○大久保委員 だんだん債務性の問題の焦点が明らかになって参りまして、債務性がないという論拠がだんだん薄弱になってきつつありますが、なお私は二、三最後にお尋ねをいたしてだめ押しをいたしたいと思っております。  その一つは、米国議会においてドッジ氏は、米国の余ったものを日本に供給するのであるから、米国の負担とはならない、また、日本は膨大な終戦処理費を負担しているのであるから、ガリオア援助を供給すべきである、こう証言しております。この証言を引用して、ガリオア返済の必要はないのだ、終戦処理費を負担しているからくれると言っているではないか、こういったような議論があるわけでありますが、この点に関する債務性ありとする政府の見解を明らかにしていただきたいと考える次第であります。
  103. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その前にちょっとお断わりいたしますが、先ほどの見返資金の問題でございますが、これは、当時の池田大蔵大臣が日本立場において考えられて、国会に御賛成をいただいて作ったものでございますが、そのもとは、やはり、スキャッピンが出ておって、見返資金を作れというスキャッピンが出ているそうであります。この点は補足させていただきます。  それから、ドッジ氏の証言でございますが、当時、やはり、アメリカの納税者の側においては、敵国であった日本日本のために非常にひどい目にあった、子供も殺されたというような家族もあるわけでございますから、そういう人たちの側に立って言えば、日本にそんなにまたわれわれ納税者が負担することはないのではないかという議論もあったように承知しております。そういう議論に対しまして、やあ実はこれは過重な負担をかけるのではないのだ、この金はアメリカのCCC、すなわちアメリカの商品信用公社でアメリカの農産物を買い上げて、その買い上げてあるものを日本に渡すのだ、こういう説明をして、ガリオア予算を国会に通過させるために証言されたものと私ども承知しております。しかしながら、日本がこのCCCに持たれてあった物資を受けたからといって、その当時日本として他からもっと安く買えたのにそういうものを受けたというのではないので、日本としては当然の負担として負担を払ってその品物を受け入れるよりほかに方法がなかった、こういうことであって、何も、余ったものをくれたからただでいいのではないか、こういうことにはならぬのだと存じております。
  104. 大久保武雄

    ○大久保委員 その点は、余ったものをくれておろうが、乏しいものをくれておろうが、それが債務であるならば債務であるのであって、その点混同するわけにはいかないと私は考えております。  今までの質問で、大体政府の見解はわかり、債務性がだんだん明らかになってきたようでございますが、さらに、最後の一問を申し上げる前に、日本世論もガリオア・エロアの債務性を支持しているように私は考えております。昨年の六月十日の東京の有力新聞の社説にはこういう記事が載っております。返済条件はわれわれにとってほぼ満足すべきものだと思う。むろん日本の一部にガリオア・エロアを債務と認めない人がおり、そういう人々にはどんな条件であれ返済することが不満だろう、だが、われわれがそういう見解にくみしないことは、すでに本欄で繰り返したところである、われわれはこれを債務と見て返済すべきものだと思う、こういうことがちゃんと新聞に載って、堂々と社説として下張されている。また、四億九千万ルドで妥結しましたことは、今大臣が申しましたように、西独が三分の一切り捨てで、こっちは四分の三切り捨てる。西独よりも有利であり、ことに、返済金の使途が日米文化交流や低開発国援助に使われることになった。返す金の使い道までこっちが注文をつけた。若干虫がいいですが、そういうことが、その社説においては、わが外交の成功と言えようと、こういう結論をいたしておるわけであります。国民の良識ある世論は、今回のガリオア・エロアというものは、日本が債務性を持っておるから堂々と返すべきものである、こういうことに賛意を表しておると私は考えております。  また、社会党の側の質問を聞いておりますと、どうも自由主義陣営の国に対しては非常につれない態度をとられる。くれないものももらってしまえ、借りたものは返すな、こう言われるかと思いますと、共産陣営の国に対しましてははなはだ緩慢でありまして、中国賠償のようなものも、蒋介石が賠償は要らないと言っておるのに、いや、中共に賠償を払え、こういうことを委員会で言われるわけであります。これは安保委員会で私も委員としてそういう主張を承ったわけでありますが、そういうことを言われる。要らないと言うものを払えと言われる。どうも、中立という立場の公平な考え方から、私はいささかこの点が矛盾をしておるように思うわけであります。国の世論、良識ある新聞の社説といったようなものが、ガリオア・エロアは当然債務性があるのだ、こういうふうに認めておりますことは、われわれといたしましても納得ができるわけであります。  最後にお尋ねいたしたいことは、イタリア、オーストリアはガリオア援助を返済する必要がないことになった、イタリア、オーストリアがガリオア援助を返済する必要がないのであるから、日本はこれらの国と同様ガリオアを支払う必要がないのだ、こういう議論があるようであります。イタリアもオーストリアも、戦争中における立場は若干日本と違っていたようにも思う次第でありますが、この点に関する政府の明確なる見解を承りまして、私の質問を終おりたいと思っております。
  105. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ガリオアに関する返済金は、実は、あの見返資金に積み立てましたのは、二千九百十九億円ございまして、これが道路や住宅やいろいろな方面に産投を通じて入っていったわけでございますが、開銀を通して非常にまたたくさんの利息——回収金ですか、要するに利子をかせいでおるわけであります。そういう金が全部で四千億円あると言われております。そこで、この四千億円の中から今度また十五カ年間かかって返していくわけでございますが、二分五厘の利子がついてはおりますけれども、この金から大きな利息をさらに生んでいくわけでございまして、四千億円の中から、ガリオアの二分五厘の利子をつけても二千八十五億円、このくらい返しても、元金は全然手がつかぬのでございますから、私は、このくらいのことは日本国民の襟度において当然やっていただく、この収入が片方にあって、そのうちから一部返すのでございますから、これくらいのことはせぬと、やはりわれわれとしては六下を振って歩くことはできない、いろいろな対米交渉をする場合に工合が悪いのではないか、こう思っておるわけでござ、います。  最後の御質問の、イタリアあるいはオーストリアでございますが、イタリアにおいては、枢軸国として連合国と戦ったわけでございますが、終戦直前にバドリオ政権が寝返った。そこで、バドリオの寝返りによって非常に終戦が早く来たというふうなことで、その効果を認められたということでございます。すなわち、四億一千万ドル、これがガリオアのイタリアに対する援助のようでございますが、金額も少ないし、敵国として終戦を迎えたわけじゃないから、これは別だ、こういうことになったと聞き及んでおります。  それから、オーストリアの方は、いわゆる解放地区でございまして、一九五五年独立いたしまするまでに、いわゆる解放地区として米ソ英仏等がそこに駐屯しておったわけで、このオーストリアに対する援助は五千六百万ドル、非常に金額も少ないし、事柄の性質も違うということで、これはガリオアの日独に関する扱いとは違うものになった、すなわち、ガリオアの資金からは出ておっても、旧敵国に対するものと対象が違う、かように承知しております。
  106. 大久保武雄

    ○大久保委員 質問を終わります。
  107. 森下國雄

    森下委員長 ただいま関連質問がありますので、これを許します。森島君。
  108. 森島守人

    ○森島委員 関連質問と申してよいかどうかわかりませんが、ただいま大久保委員発言中、社会党が、安保特別委員会の席上におきまして、中共に賠償を払えという趣旨のことに賛成しておるというふうな御発言がございましたが、そのような発言は絶対にございません。絶対に事実に反しておりますから、委員長におかれては、議事録をごらんの上、適当に修正されんことを望む次第でございます。
  109. 森下國雄

    森下委員長 速記録をよく調査の上善処いたします。  これにて本日は散会いたします。    午後一時十七分散会