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1962-02-14 第40回国会 衆議院 外務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十四日(水曜日)     午後零時二分開議  出席委員    委員長 森下 國雄君    理事 北澤 直吉君 理事 床次 徳二君    理事 野田 武夫君 理事 福田 篤泰君    理事 松本 俊一君 理事 岡田 春夫君    理事 戸叶 里子君 理事 森島 守人君       池田 清志君    宇野 宗佑君       椎熊 三郎君    正示啓次郎君       竹山祐太郎君    濱地 文平君       福家 俊一君    古川 丈吉君       稻村 隆一君    黒田 寿男君       西村 関一君    帆足  計君       穗積 七郎君    細迫 兼光君       松本 七郎君    門司  亮君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     大竹 民陟君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (アジア局長) 伊關佑二郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君  委員外出席者         外務事務官         (大臣官房審議         官)      宇山  厚君         専  門  員 佐藤 敏人君     ————————————— 二月十三日  委員古川丈吉辞任につき、その補欠として高  碕達之助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員高碕達之助辞任につき、その補欠として  古川丈吉君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員愛知揆一君稻村隆一君、勝間田清一君及  び西尾末廣君辞任につき、その補欠として宇野  宗佑君、野原覺君、西村関一君及び門司亮君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員宇野宗佑君、西村関一君、野原覺君及び門  司亮辞任につき、その補欠として愛知揆一君、  勝間田清一君、稻村隆一君及び西村榮一君が議  長の指名委員に選任された。 同日  理事松本七郎君同日理事辞任につき、その補欠  として森島守人君が理事に当選した。     ————————————— 二月十三日  海外技術協力事業団法案内閣提出第九二号) 同日  ドミニカ国ネイバ地区引揚者の更生に関する請  願(生田宏一料紹介)(第九一九号)  同(大竹作摩紹介)(第九二〇号)  同(藏内修治紹介)(第九二一号)  同(八田貞義紹介)(第九二二号)  同(上林山榮吉君紹介)(第九九四号)  同(阿部五郎紹介)(第一〇〇三号)  同(池田清志紹介)(第一〇九八号)  同(内海安吉紹介)(第一〇九九号)  同(辻原弘市君紹介)(第一一〇〇号)  同(野田武夫紹介)(第一一〇一号)  同(伊藤卯四郎紹介)(第一一三五号)  同(楢崎弥之助紹介)(第一一三六号)  同(飛鳥田一雄紹介)(第一二一〇号)  平和の擁護に関する請願田邉國男紹介)(  第一〇五八号)  同外四件(田邉國男紹介)(第一一八四号)  ドミニカ国ハラバコア地区引揚者の援護に関す  る請願岡田春夫紹介)(第一二四六号)  ドミニカ国移民引揚者の救済に関する請願(宇  田國榮紹介)(第一二四八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任の件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 森下國雄

    森下委員長 これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 森下國雄

    森下委員長 理事補欠選任についてお諮りいたします。  理事松本七郎君より理事辞任いたしたいとの申し出があります。これを許可するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 森下國雄

    森下委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお、理事辞任に伴う補欠選任につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 森下國雄

    森下委員長 御異議がないようでありますので、委員長から森島守人君を理事指名いたします。      ————◇—————
  6. 森下國雄

    森下委員長 ただいま森島委員より発言を求められておりますので、これを許します。森島守人君。
  7. 森島守人

    森島委員 審議に入るに先立ちまして、一言速記録訂正方委員長にお願いしたいと思うのです。と申しますのは、昨年の十月二十七日の当委員会におきまして、私は東アジアの問題について質問をいたしたのでございます。私の質問は、東アジアという表現を初めて用いたのじゃないか、そこには政府として何らか意図されるところがあるのではないかという趣旨で御質問を申したのでございます。しかるに、この速記録を見ますと、「この共同声明の中に東南アジアという字を特に使っておるのでございます。」、こうありますが、私の発言は、「この共同声明の中に東アジアという字を特に使っておるのでございます。」ということでございましたので、字は一字でございますけれども東南アジアの南という字をお取り消し願いたいのであります。事務局の方に委員長からしかるべく御指示を願いたいと思うのでございます。たった一字の問題でございますけれども、私が特にこの点を非常に重要視いたしましたのは、池田ケネディ共同声明の中に東アジアという字が初めて使われたのでございます。従来外務省において使って参りましたのは東南アジアで、そこに非常に大きな差を私は認めざるを得ないのでございます。小坂外務大臣は、この中には韓国を含んでおるということを肯定せられましたが、あとの答弁ではきわめて不明瞭でございます。私は納得していないのでございます。私は、今後本委員会における論議の過程において必ず大きな問題になることを予想いたしまして、その前提として御質問申し上げたわけでございますから、東南アジアの南という字を取り消していただくように、委員長よりお取り計らいを願う次第であります。
  8. 森下國雄

    森下委員長 御趣旨は了承しました。委員長取り計らいを一任願いとうございます。      ————◇—————
  9. 森下國雄

    森下委員長 これより国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを順次許します。稻村隆一君。
  10. 稻村隆一

    稻村委員 沖繩日本復帰は、九十万沖繩住民悲願であり、また同時に全日本国民の熱望であります。これに対しまして熱意を持って実現に努力することが、私は政府の義務であることはもちろんであると思います。  そこで、私は外務大臣にお尋ねしたいのでありますが、去る二月一日、琉球立法院国連植民地解放宣言による施政権返還決議を行なったのでありますが、政府は、これをどう評価し、どう対処されようとしているか、お尋ねしたいのであります。
  11. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 沖繩日本復帰に関しまして、私ども事あるごとにアメリカ当局にこれを強く要望いたしております。この悲願が実現いたしますように今後とも努力を続ける考えでございます。ただ、現在の国際情勢下において、アメリカ側が直ちにこの施政権返還の要求に応ずるということもなかなかむずかしいような情勢でもございますので、沖繩におきます民生安定についてわれわれも積極的に協力するという方針のもとに、先般の池田ケネディ会談の際にも合意されました趣旨もございまして、三十七年度の予算においては、特に、われわれとしても、アメリカ側と協力して沖繩の各種の民生安定の施策に予算的にも強く乗り出すというふうに措置いたしている次第でございます。
  12. 稻村隆一

    稻村委員 琉球立法院決議国連植民地解放宣言を引用していることに対して、二日に外務省見解が発表されております。これは政府公式見解であるかどうか、お尋ねしたいのであります。
  13. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 沖繩がいわゆる植民地であるかどうか、また、国連の言う植民地解放宣言対象となっておるかどうかということにつきましては、当委員会において昨年末いろいろ御議論のあったところでございました。政府としても政府見解を当委員会を通じて申し上げている次第でございます。従って、この外務省正式見解というものはこの趣旨に沿うておるものでございますが、何かその当時の事情を聞きますと、特別に外務省としてそういう見解の発表を声明いたしたわけではございませんで、ただ、新聞社の方が見えまして、これはどうだと聞かれたので、この国会の審議において政府から述べました趣旨を申し上げた、こういうことだと承知しております。
  14. 稻村隆一

    稻村委員 しかし、予算委員会においても、沖繩植民地ではないというふうな意見当局から発表されているように私は新聞で見ているのであります。特に琉球立法院がああいう決議をしたことに対して、政府見解などに対しましては、沖繩の全住民並びに日本国民の中には非常に強い不満となって現われておるわけであります。ああいうことは施政権返還の運動に水をかける結果以外の何ものでもない、こう私は思っております。外務省見解では、沖繩植民地ではない、こう言っておるのですが、そういう見解は一体どういう立場から言っておられるのであるか、重ねてお尋ねしたいと思うのであります。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 植民地とは、一民族が他民族支配しまた搾取する形態だ、こういうふうに考えられまするし、私どもは、アメリカ沖繩施政権を持っておりますけれども沖繩における同胞搾取はしていないと考えておるわけでございます。  そこで、この植民地解放宣言ができまする経緯につきましては先般の委員会でも申し上げたことでございまするが、その当時の起草者におきまして、インドネシア代表が起草したわけでございますが、沖繩はこれが対象として含まれておらない、こういうことの了解でなされておる次第でございまして、この点につきましては、予算委員会でもすでに御答弁申し上げたことでございます。
  16. 稻村隆一

    稻村委員 それは大臣の一方的な見解だと私思うのです。一九六〇年の十二月ですか、国連のあの宣言を見ましても、植民地諸国住民に対する独立付与に関する宣言、こういうものを見ても、私の見解でははっきり沖繩はこれに該当していると思うのです。たとえば、一例をあげるならば、日本人が沖繩に行くことも、これは米国民政府の許可がなければ行けないわけであります。名前民政府でありますが、これは実は軍政府であります。そして、その気に入らない者は行けない。沖繩から来る人もまた同様でありまして、アメリカ民政府の気に入らない者は来られないのであります。そういう一つの例をとってみましても、これは単純な現実から言って植民地である、こう判断するのは当然であります。現に、そこには日本憲法も適用されておらないし、むろんアメリカ憲法も適用されておらない。米国の民政府という名前の軍政の完全な支配下に置かれているわけであります。それは立法院というのはありますけれども、これは軍人の高等弁務官が幾らでも変えることができるわけであります。そうすれば、かつて日本支配しておりました台湾や朝鮮とちっともかわらない。これは、私は、どう理屈をつけても、植民地だ、こう考えざるを得ないのであります。これはどんな単純な子供でもわかる議論だと思うのです。植民地定義がどうのこうのということは別といたしまして、これは全く一九六〇年十二月十四日の国連総会における植民地諸国住民に対する独立付与に関する宣言に抵触するものであって、植民地以外の何ものでもない、こう思うのです。植民地でなくてこういう支配統治を受けている国がどこにあるか、私はその例を聞きたいくらいなんであります。これに対しまして外務大臣のお意見を承りたいのであります。
  17. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 植民地というものは、これは、一番大きく申しまして、一民族が他民族搾取を受けているということが大きいと思います。征服され、支配され、搾取されるということが、一九六〇年十二月十四日の国連決議に書いてございますが、そうした意味からいたしまして、私どもは、沖繩アメリカによって搾取されておるのではない、日本に対しまするサンフランシスコ講和条約第三条によって、沖繩に対する施政権アメリカが持っておる、しかしながら、日本アメリカとの話し合いによって、これはできるだけすみやかに、——しかも、この東西の状況というものが緩和するのを待って日本にその施政権が返ってくる、こういうふうになりつつあるのでございまして、こういう状態にある国がそれでは他にあるかと言われますと、これは、日本アメリカ沖繩との関係において沖繩問題一つしかないと私は思います。  しかし、それをどうするかという問題でございますが、私は、今のようなアメリカとの間の話し合いによって一方において沖繩住民福祉を、われわれ同胞福祉を高揚しつつ、しかも、アメリカとの話し合いによって、時の至るのを待って日本施政権復帰を完全に獲得するという方針で参りますのがよろしいのであって、これを植民地であるときめつけて、そこでアメリカとの間に非常に争うごとき形において施政権を奪い返すという形は、必ずしも、私どもとしまして、日本のためにも沖繩住民のためにもとらざるところである、かように思っておる次第であります。
  18. 稻村隆一

    稻村委員 これは議論になりますけれども立法行政司法三権が全くないところですから、住民意思に反して支配されているのですから、これは植民地ですよ。現実においては植民地に間違いないと私は思う。だからして、国連憲章に反しているのですから、そこで、その点はっきり日本政府としては強く沖繩即時返還アメリカに要求するということは、私は日本政府の態度ではないかと思うのです。  私は次いでお尋ね申し上げますが、日本国連に加入しておる今日、沖繩のような地域信託統治制度のもとに置けるかどうか、置けるならばどういう国際連合憲章条項によってであるかということをお尋ねしたい、こう思います。
  19. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その前に一つ申し上げておきたいと存じまするが、実は、昨年の国連総会においてソ連が植民地解放の提案をいたしました。沖繩国連管理下に置くということを提案したものではなく、アメリカ沖繩軍事基地として利用しているということを攻撃するために、特にこの点に言及されておるという事実もわれわれとしては考えてみなければいかんと思うのであります。そういう中にわれわれが入っていくということよりも、先ほど申し上げたような形で、アメリカにはっきりと講和条約で約束しておることでございますから、施政権を現在アメリカがとっているということは認めつつも、しかも、沖繩同胞の経済、社会的な条件というものを改善をして、そして遠からざる時期にわれわれの施政権下にこれを返してもらう、こういうふうに持っていくのがよいと考えておるわけでございます。  そこで、今お尋ねの国連憲章の何条に準拠して平和条約の第三条は行なうのかということでございますれば、これはやはり七十七条であろうかと思うのでございます。しかしながら、私どもは、そういう信託統治沖繩をするということよりも、その段階を持たずに直接日本施政権を返してもらう、こういうことをアメリカに交渉いたしております。また、ダレス氏も、講和条約の演説の際に、沖繩潜在主権日本が持っておるということを確認いたしておることでもございまするから、そういう回りくどい道よりも、直接日本施政権返還してもらう、こういうふうに考えて交渉いたしておるわけでございます。
  20. 稻村隆一

    稻村委員 私どもは、今アメリカ平和条約第三条によって沖繩支配しているということそれ自体が国連憲章違反であるというふうに考えておるわけであります。ところが、そうでないということを予算委員会外務大臣が言っておられるし、条約局長も言っておられる。そこで、私はそのことをお尋ねしたのでありますが、一体どういう条項によって沖繩信託統治になし得るのか、なし得るとすれば、こういうことをどういう条項によってしているのであるかということを具体的にお尋ねしたのでありますから、もう一度お答えを願いたいと思います。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この沖繩信託統治にし得る国際法上の約束というものは、これは平和条約の第三条にあるわけでございます。しかし、そういう第三条があるということを承知して日本国際連合に入れてもらったわけです。日本がそういう平和条約というものをアメリカとの間に持っておるということを承知の上で、各国が日本国連加盟を承諾してくれたわけであります。従って、あの平和条約第三条に言う信託統治沖繩をなし得るという規定があるということが国連憲章違反であるということにはならないと思います。これは事実問題から申し上げるわけでございますが、法律問題から申しますると、憲章の七十八条に、「国際連合加盟国の間の関係は、主権平等の原則の尊重を基礎とするから、信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」、これがあるから信託統治をその国が持つということは国連憲章違反する、こういう御議論かと存ずる次第でございまするが、これは、その国の全部がなるという場合の規定でございます。と申しまするのは、その前条、七十七条に、「信託統治制度は次の種類地域信託統治協定によってこの制度の下におかれるものに適用する。」、こういうことがございますし、第二項に、「前記の種類のうちのいずれの地域がいかなる条件信託統治制度の下におかれるかについては、今後の協定で定める。」こういうふうになっております。すなわち、国連に加盟しておる国においても、こういう協定によっていずれかの部分は信託統治になし得るということがこの国連憲章の中にあるわけでございます。従って、私どもは、信託統治制度というものを承認したことがすなわち国連憲章違反にならぬというふうに考えておる次第であります。と同時に、しかも、私が申し上げましたように、われわれは、信託統治にするというふうなことよりも、第三条によって信託統治になし得るということになっておるのでありますけれども、それよりも、それ以前の形において、アメリカ司法立法行政三権の全部または一部を持ち得る、こうなっている現在の情勢をそのまま日本施政権返還をしてもらう、こういうふうにするのがよかろう、こう考えておるわけであります。
  22. 稻村隆一

    稻村委員 それなら、平和条約第三条によって沖繩信託統治制度のもとに置けるなら、七十七条のどの条項によってやるのですか、それを具体的にお答えしていただきたい。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは条約局長から申し上げた方がよろしいかと思いますが、この第七十七条の一項のaは、「現に委任統治の下にある地域」、これは委任統治ですから適用しないわけですね。それから、bは、「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」、Cが、「施政について責任を負う国によって自発的にこの制度の下におかれる地域」、このbかとも思われますが、とにかく、現実においては、よく御承知のように、そういうことはなかなか実際問題といたしまして困難である、かように思われるわけであります。今の国連の運営の状況から見ましても、実際問題としてこれを適用することは困難であろうとも考えております。
  24. 中川融

    中川政府委員 今の外務大臣の御説明を補足いたしますが、bかcかという点でございます。これはbとも読めますしCとも読めるようでございますが、御承知のように、平和条約三条によりまして、信託統治に付するのは、日本ではなくてアメリカでございます。アメリカがこのどちらを考えておるかということは、サンフランシスコ条約当時にアメリカ代表がはっきり、これはbに該当するのだということを説明しておるのでございまして、私どもは、もし三条によって沖繩信託統治に付せられることありとせば、おそらくその際はこのbによって提案されることであろうと考えておるのでございます。
  25. 稻村隆一

    稻村委員 bは、「第二次世界戦争の結果として敵国から分離される地域」ですね。これがbでしょう。潜在主権があると言っているのだから、これは適用されないじゃないですか。沖繩植民地じゃない、潜在主権があると、こう言っているのでしょう。分離されていないじゃないですか。これを適用できないじゃないですか。
  26. 中川融

    中川政府委員 現在沖繩には日本潜在主権を持っておるのでございますが、現実行政日本から分離されておるのでございます。
  27. 稻村隆一

    稻村委員 適用されてないですよ。潜在主権があると言っているのだから……。植民地じゃないと言っている。
  28. 中川融

    中川政府委員 このb項の「敵国から分離される地域」という分離というのがどういう意味であるかということは、御承知のように、ここに定義が何もないのでございます。従って、主権を完全に奪ってしまう分離もありましょうし、主権は潜在的には残しながら実際行政をこれから切り離す、一時的には日本行政から切り離すという分離の仕方もあり得るわけでございまして、このb項を適用するとすれば、まさしく、分離というのをそういうふうな意味、つまり、主権は残しながら物理的には行政権分離する、こういうやり方の分離を当然含むものと考えるわけでございます。
  29. 岡田春夫

    岡田(春)委員 関連して……。  一問だけですが、中川さんの解釈日本外務省解釈というように決定してもよろしいですか、その点まず伺います。
  30. 中川融

    中川政府委員 外務省条約局長として申しておるのであります。
  31. 岡田春夫

    岡田(春)委員 国連憲章ができるときに、御承知のように、国連憲章制定会議があったのですが、そのときに、この信託統治制度については小委員会ができて、小委員会委員長南アフリカ連邦の首相であるスマッツ氏だったと思うのですが、小委員長になった。そのときに分離の問題についての解釈規定が行なわれた。その解釈規定によると、分離というのは主権分離意味する、この点は明らかに記録に残っておりますが、この憲章制定趣旨から言えば、このディスパッチですか、分離という意味主権分離意味すると小委員長は正式に報告して、会議で正式に承認されている。この点と外務省の今の解釈と違うのですが、その相違をどのようにお考えですか。
  32. 中川融

    中川政府委員 もちろん、外務省としての解釈をきめますにあたりましては、あらゆる入手し得る資料参考としてきめることは当然でございます。私ども岡田先生のただいま言われましたような御意見もかつて承ったこともあるのでございまして、その際もいろいろ調べましたが、われわれが持っている資料では、そのような分科委員会議事録というものは見当たらないのでございます。なお、そういう資料がもしありますれば、われわれももちろんそれを参考とするにやぶさかではございませんが、現国連憲章解釈といたしましては、日本政府としては、分離というものは、そういう物理的に分離されると申しますか、施政権分離されるというような沖繩のような事態の場合もこれに含まれ得るものである、こう解釈するのでございまして、そう解釈することによって、このサンフランシスコ平和条約というものと国連憲章というものとのつながりが出てくる、解釈はそういう解釈であろうと考えるのでございます。
  33. 稻村隆一

    稻村委員 先ほど、外務大臣は、その国の全部であれば違反になるけれども沖繩は一部であるから違反にならない、だから七十八条の違反ではない、こう言ったのですけれども、これは全く詭弁じゃないかと私は思うのです。日本植民地でなかった日本の固有の領土を、日本国民意思に反して信託統治することは、国連憲章第一条二項の民族自決原則に反すると私は思うのです。これは全く憲章違反であると思うのですが、大臣のお考えをお聞きしたい。
  34. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 憲章の七十八条は、ある特定の地域が独立して、そして国連加盟国となった場合に、加盟国となったその地域については信託統治制度を行なってはならない、こういう趣旨規定でございます。すなわち、日本講和条約ができてその後国連へ入った、そこで日本をまた信託統治にしておくということはできない、こういうことでございます。しかし、その前段の七十七条に信託統治制度を定める規定が書いてあるのは何かと言いますれば、当時やはり沖繩のような場合が予想せられるということでこの七十七条が書いてある、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。
  35. 稻村隆一

    稻村委員 そういう答弁には私は絶対に納得できないのです。国連憲章の百三条によれば、国連憲章加盟国間では他の条約に優先するわけですから、従って、平和条約第三条は国連憲章違反であり、無効であることは明らかだろうと思うのです。  私がなぜこういうことを言うかというと、沖繩の問題でありますが、これはやはり国際世論に訴えて解決する以外にないと思うのです。それはアメリカの感情を害するとかなんとかいうことではないと私は思うのです。それを、なるべくそういうことを避けて、そして、アメリカが黙っているときに、いやこれは植民地じゃないとか、いやこれはこうだとかいって、そうして沖繩復帰に対する非常に消極的な弱い態度をとっているのが今の政府だと私は思うのです。それでは全然効果がないと思うのです。これは私は、どう考えてみても、いろいろ法律論がありましょうけれども、それは、やはり沖繩復帰に有利な解釈をして、そうして、これはもう国連憲章違反の疑いが濃厚なんですから、それで国連に訴えるということ。それは何も私はアメリカに敵対するわけでも何でもないわけです。そういう立場から沖繩復帰の問題を取り扱わないと、これは非常に弱いものになる、こういう考えで私は大臣に御質問を申し上げておるわけなんであります。  時間がありませんからもうやめますけれども、百歩譲って、たといアメリカ信託統治するとしても、その瞬間に日本に返さなければならない。信託統治に入るならば、これは、実際上、ソ連がありますから信託統治できないのですよ。そのような法律的なことは、外務省の方がよく知っているのですから、私は申し上げませんけれども、できないのです。  ところが、われわれの最も憂えるのは、この間の大統領教書におきましても、沖繩は戦略的基地として当分——ある意味においては長くというふうにもとれるのですが、保有するというような意味のことを教書に言っているわけです。それからまた、ケイセン報告を見ても、広範な自治権を沖繩に与えるべきであるけれども、当分これは保有しなければならぬというようなことを言っているわけであります。こういうことになると、非常に危険なことになると私は思う。場合によっては二つの日本を作るようなことに発展する危険性が存在しているというふうなことを疑う人も出てくるだろうと思うのです。それだから、沖繩立法院植民地廃止宣言によって国連に提訴しようとするときに、国連に対して施政権返還運動を起こすことは、これは一番効果的だと思うのです。それを全然政府はやる気はないのです。ただアメリカと話をするなんという、そんなことでは何にもならないと私は思うのです。一体、沖繩復帰させるところのどういう具体的な方法があるか。ただ話をする話をする、そんなことでは絶対に私は百年河清を待つものだと思うのです。その点一つ大臣の具体的な御意見を聞きたい。  これで私の質問を終わります。
  36. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 純粋な法律論といたしまして、沖繩、小笠原を信託統治制度のもとに置くということが国連憲章違反にならないということは申し上げた通りでございますし、また、実際論からいたしましても、それであるならば、われわれ国連に入るときにこの問題を言うべきであったと思いますし、また、日本国連に入るときに他の国からその問題についての反対論があったと思うのでありますが、これは全然なかったということも先ほど申し上げたのであります。しかし、われわれは、沖繩同胞福祉考え、そうして、われわれの施政権下沖繩が入ることを強く希望しているという点については、これは稻村さんと全く同様でございますが、ただ、今の東西の情勢下にあって、この問題をアメリカから奪い取るがごとく施政権を取ることが一体適当であろうかどうか、こういう点が私は問題だと思うのでございます。しかも、先ほどちょっと触れましたように、ソ連が国連においての提案を行ないましたのは、やはり東西関係を反映しての提案でございまして、私どもは、その機会に藉口してこの沖繩施政権返還というものを強く言うということが一体われわれとしていいものかどうか、こう考えてみなければならぬと思います。私は、その点に関しましては、遺憾ながら稻村さんと少し意見が違うのでございます。やはり、現状において、われわれとしては、東西の緊張の緩和する時期、これをわれわれはわれわれなりに考えて努力して、その上で沖繩施政権返還というものが考えられなければならない。今もしこのような形において沖繩施政権返還というものをわれわれがアメリカから奪い取るということになりますと、これはやはり極東における非常に大きな情勢の変化が起きる、そうして、われわれ自身がその情勢の変化の中に非常に困惑した状態の中にもみ抜かれる、こういうことになろうかということをおそれる次第でございます。
  37. 森下國雄

    森下委員長 帆足計君。
  38. 帆足計

    ○帆足委員 ただいま稻村委員が述べました論理は、論理をわきまえる者であるならば、これは当然のことであろうと私は思います。過日、沖繩立法院が、アメリカ軍政下にある行政府の弱腰を乗り越えまして、国連憲章主権平等、民族自決趣旨と、植民地廃止宣言趣旨から、沖繩の他国支配からの解放と祖国復帰につきまして内外に訴え、日本国民としての大義を明らかにされたことに対しまして、私どもは満腔の敬意を表し、これを支持したいと思っておる次第でございます。サンフランシスコ条約のときに、インドがこの問題を心配いたしまして、アメリカは戦勝に乗じて、また国防に名をかりて、永久または半永久的に沖繩を占拠しようとする疑いがある、これは日米両国人民の友好にも役に立たないし、将来の両国の平和友好に災いの種を残すおそれがあるという警告の書簡を発しまして、サンフランシスコ条約に調印しなかった事情は御承知の通りでございます。これに対しまして、ダレス代表は、何を思ったのか、急に居直りまして、インド代表に対して、あなたは信託統治という制度を知っておるか、やがて信託統治にするまでの暫定期間占領を継続する程度にすぎないという弁明をいたしまして、信託統治という美名で、その約束で列国の賛成を得ましたことも御承知の通りでございます。これに対しまして、イギリスの代表は、若干軽卒に次のような発言をしております。速記録の八十二ページにありますが、沖繩日本主権が残るだけでなくて行政下に置かれるものと自分は思っておる、こう言っている。これは一体英国代表としてどういうふうにこの問題をお考えになったのか、あるいは軽率にお考えになったのか。この発言とダレスの発言を引きまして、吉田首相は、ただいまの発言と英国の発言趣旨において私は講和条約のこの条項を承認する、こういう発言をされております。これらを通覧してみますと、アメリカは、沖繩が自己の国防上軍事基地としてほしいために、これを軍事基地として確保すると言えないものであるから、国際信託統治に置くという美名で諸国を納得せしめて、その実は占領軍として居すわっておる。十七カ年にもなってなおかつその支配を国際信託統治にしようとしない。これは、私は、まことに陋劣な、いわば結婚詐欺のような手口ではあるまいか、明朗でないと思うのです。ダレス代表はこのときなかなか美しい言葉をいろいろ述べておりますけれども、上手の手から水が漏れたと言いますか、うまくしてやったつもりでありますけれども、やはり、間違ったことは間違ったことでありまして、従って、国際連合憲章との間にいろいろの矛盾が出てくる。ありのままに言えば、こういう事態が、これは善悪は別として事実であろうと私は思うのです。アメリカは、沖繩がほしいために、いいかげんのことを言って、そしてこれを握って離さない。  従いまして、私は外務大臣にお尋ねいたしたいのですが、アメリカはなぜ信託統治にさっさと約束通りしようとせずに占領軍政をそのまま継続しておるのか、それについて外務省当局として話し合ったことがあるのか、あるいはまた、サンフランシスコ条約のこの条項解釈について話し合ったということを先日の予算委員会で拝聴しましたが、どういう内容を話し合ったのか、まずそれをお尋ねしたいと思います。
  39. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 サンフランシスコ条約の第三条の規定に関連いたしまして、これは一体いつまで信託統治にすることを怠っておるのか、あるいはいつ信託統治にするのかということを聞いてみたわけであります。ところが、これについては、日本の言い分は十分自分らも承知しておって、日本国民施政権返還を望むということもよくわかっておるということでございまして、私どもとしましては、信託統治などということよりも、アメリカが直接日本施政権を返す、こういう気持になっておるのであろうということを非常に強く印象づけられておりますわけで、従って、それまでの期間にできるだけ早く日本考え方というものが沖繩同胞に及ぶように諸種の配慮をせられたいということを要望し、歴代の内閣がこれをやってきたわけであります。昨年の池田ケネディ会談におきましてもこの点が非常に強く先方に反映いたしまして、たとえば、日の丸を揚げる件とか、あるいは祝祭日の件であるとか、いろいろ懸案を解決いたしましたのみならず、ケイセン博士を団長とする視察団を送りまして、大いに私ども考え方というものに対して同調する方針をとってきておるわけでございます。
  40. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、お伺いしますが、第一に、信託統治のもとで軍事基地が置けるかどうか。これは、お答えを待つまでもなく、現在の諸情勢のもとでは軍事基地は置けません。置けないから信託統治に持っていきたくないわけです。それで、そのまま占領を継続しておる。事実は事実として、与党もそれを認め、その事実の上に立って与党は与党なりの論理を貫かれることが、私は日本国民のためにしあわせだと思うのです。  この植民地解放宣言趣旨沖繩に適用できないと大臣は言いますけれども、一体その定義はだれがきめるか。国民に都合がいいように、経済的搾取が大して行なわれていないところには植民地定義は当てはまらないと申しますけれども植民地定義は解放宣言の中に詳しく書かれておりまして、そうして、インドネシアの代表が何とか触れたことについてあとで申しますが、六項目にわたって定義をしております。すなわち、従来の形の古典的形態の植民地ばかりではなくて、信託統治地域、非自治地域、または国土の一部または民族の一部が分断されておるような場合、その他住民の自治と独立が達成されていない一切の地域、ここまで詳細に定義してあって、曲学阿世の徒によってこれがぼやかされる余地がないくらいです。これはなぜかというと、長い間植民地政策で苦しんだアジア、アフリカ諸国が起草委員になって作りましたから、詳細に定義がしてあります。従いまして、経済的搾取という一点だけをとって、そうして沖繩植民地状況でないというならば、これは白馬馬にあらずと言うような詭弁のたぐいである。  そこで、お尋ねするのですが、この定義は一体どこできめるのか。私は、植民地解放宣言の文章できめるべきであると思う。同時に、アメリカ代表もまた、はっきりと、その住民の自由なる意思を無視した他国勢力の継続的支配、こういうふうにアメリカ代表自身が定義しておるのですから、従いまして、大臣にお尋ねしたいことは、この植民地定義は一体どこできめるのか。それから、大臣の言われるような、経済的搾取がなければもう植民地と言えない、他国の支配下にあっても言えないという論理はどこから生まれるのか。このことを明確にお答えを願いたい。
  41. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 植民地とは何ぞやということでございますが、今の御質問趣旨は、植民地解放宣言に言うところの、文面に表われたその解釈はだれがきめるか、こういうことでございますけれども、これは、この決議をなした者一同が認識することであろうと思うのであります。その際、決議起草者でありましたインドネシアの代表が、沖繩は含まれておらぬ、こう言っておりまするので、われわれはそういう趣旨でこの決議はできておる、かように了解しておるわけでございます。  それから、なお、私から申し上げるよりも条約局長から申し上げることが適当と思いまするけれども、この信託統治制度のもとにおいて軍事基地を持てるか持てないか、こういう問題でございますが、必ずしもこの法律解釈は帆足さんのおっしゃる通りでないようでございますから、これは条約局長から申し上げます。
  42. 帆足計

    ○帆足委員 法律解釈ではない。事実問題ですから。
  43. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 事実問題でしたら、これはお答え要りませんでしょうね。
  44. 帆足計

    ○帆足委員 ええ要りません。それで、常識で考えまして、国際連合ともあろうものが、特定国の防衛のための基地を許すということは、国際連合ではいたしません。これは世界の平和全体のために必要かどうかという判断をとります。従いまして、反対国が拒否権を発動いたしますから、そういうことは事実問題として問題にならぬことは常識でございます。  そこで、お尋ねいたしますが、植民地定義につきましては、今沖繩は含ませないということですが、一体、廊下の隅でささやいたのか、インドネシアの代表にとってはまことに御迷惑なことだと私は思うのです。何か不用意にそういうことを言われたか知りませんが、それは速記録に残っておるのか、または委員会ではっきり確認を得たのか、速記録ならばどういうところに残っておるか、松平大使から報告があったと言いますが、その報告の文章も見せていただきたい。また、たまたま松平さんと二人の間にそういうささやきがあったとしても、それが国際連合の舞台における公式の確認というふうには考えられないし、また、それが公式の確認であるならば、この問題が国会を通過するときに政府沖繩についてだけは奇妙なる解釈を持っておられたことになる。すなわち、日本政府解釈でなくて、アメリカに都合のいいことをひねり出しておる。私は、そういうような外務省当局ならば、月給を減らす必要があると思う。(笑声)私は保守の立場はわかるんです。保守党としては歴史的に一定の役割があるということもわかります。しかし、あまり見苦しいことは、子供の教育上よくない。(笑声)そういうことをするから子供が不良化するわけです。アメリカがほしいならばほしい、地代は幾ら払うか、そんな安い地代じゃ貸すことはできない、こういう論理ならはっきりしておるけれども信託統治などという美名のもとに、こっそり、美字麗句のありったけをダレスさんは並べたてて、そのあげくの果ては、なに、占領政策をずっと継続しているのだ、——信託統治にするということは当時夢にも考えていない。インドはこの問題を指摘して、やがて日本国民アメリカとの間に不幸なる感情を醸成する場合となることをおそれて、インドはこれに調印しなかった。全くネール首相は先見の明があると思います。  それで、この問題に関連しておもしろい話があります。たとえば、ゴアにつきまして、ゴアは植民地である、これはだれしも小学校の子供でもそう思いますが、ポルトガルではそう言わない。ゴアは東南アジアにおけるわがプロヴィンスであると言う。そこで、そういうコアの解放についてインドが国連事務総長に交渉したときに、今度の事務総長は、この問題に理解のある人ですから、ゴアの問題でポルトガルに反論した。これはプロヴィンスであるとポルトガルが言ったら、ばかこけ、そんな解釈をどこの小学校で一体学校の先生が教えているかと言って一蹴されたことは、これは有名な事実です。  アメリカは、これはスマートですから、アメリカのプロヴィンスとはさすがに沖繩に対しては言わない。従って、潜在主権とか信託統治とか、そういうようなことを言って、実際は自分が占領したい。占領したいなら占領したいで、こういう必要があるから貸してくれと言えば、また話は別問題でございますけれども、こういうような詐欺的な手段によってなさるということは、これはダレス氏の趣味に適合するかもしれないけれども日本国民の趣味には合わないと思うのです。われわれはそれほどばかじゃありません。今日の沖繩は、三権は剥奪されて、少女がジープでひかれても治外法権。敷島の大和の国の中に治外法権の地域があるなんていうことは、五年や六年は敗戦の痛手でやむを得ませんけれども、十七年間もほおって置くということは、私はこれは許すべからざることであると思う。  従いまして、植民地定義について、植民地というもののリストが一応できているそうですが、そのリストを外務大臣は御存じでしょうか。ちょっとそのことをお尋ねします。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 リストとおっしゃいますと、どういうことですか。
  46. 帆足計

    ○帆足委員 植民地解放宣言による植民地とはどういう国々であるかということをその委員会が書いたリストです。それすら御存じないんですか。
  47. 中川融

    中川政府委員 そういうリストがあるという事実は存じません。
  48. 帆足計

    ○帆足委員 驚くべきことだ。これは驚いた。それでは、さっそくそのリストを取り寄せていただきたい。リストはありますから、そのリストを取り寄せていただいて、そのリストは、植民地解放実施委員会またはその前の委員会において、または国連事務局においてどのようにして準備したものであって、現在暫定的なものであるかどうか、また、その手続等はどうなっておるか。  ついでに委員長にお願いいたしたいのですが、昨年の秋にさらに追加されました植民地解放宣言実施監察委員会につきまして、そのときの宣言文、国連総会議事録、小委員に選ばれた国の名前及び代表者の名前委員会の組織及び活動状況、その委員会事務局の所在、その事務局長名、二月七日より活動を開始し始めたという電報を拝見いたしましたが、その活動開始の状況、それらについて今の植民地一覧表とともに資料をわれわれの審議を合理的になすために要求したいと思いますが委員長のお取り計らいをお願いします。
  49. 森下國雄

    森下委員長 それでは、中川局長から……。
  50. 中川融

    中川政府委員 今御要求になりましたような資料は、外務省にあります限り取りそろえてお届けいたします。
  51. 帆足計

    ○帆足委員 さらに、インドネシア代表からそういうささやきか発言があったということですが、私は、長い間植民地で苦しんだインドネシアの代表が、同じ苦しみを、今別な新しい角度でこれらの国々はそれをよく新植民地主義と言っておりますが、そういう苦しんでいる沖繩に対して、そういう軽率なことを言葉でささやいたとされたならば、それは遺憾なことでありますけれども、まさか公式の議事録でそれが明らかにされていようとは思いませんし、また、国連の権威ある解釈を、一起草委員がそういう内容を勝手に判断する、またきめるということは不可能だと思うのです。それよりも、植民地定義は、一点の疑う余地もないくらい詳細に解放宣言の文章の中に六項目にわたって書かれてあるのですから、私は、政府の答弁はインドネシア代表を傷つけるものであると思います。しかし、こう発表された以上はやむを得ませんから、それは一体どういうことであったか、どういう議事録があるか、いつ、何月何日か、午前か午後か、それから、どういう人とどういう名前の方か、その松平さんの報告書はどういうものであったか、それを全部いただきたい。御返答願いたい。
  52. 中川融

    中川政府委員 これは、一昨年十一月四日のAAの委員会におきまして、問題になっておりますこの宣言案を起草したのでございますが、その起草小委員会におきまして、インドネシア代表から——インドネシアがいわば起草に当たったわけでありますが、インドネシア代表から発言したところでございます。わが松平代表にささやいたというわけではなくて、その席上で発言した言葉として、松平代表から公電で報告しておるところでございます。  なお、起草委員会議事録は、おそらくとっていないと思います。しかし、そのときに居合わせましたわが代表がそのときさっそく報告してきたものでございますから、事実に間違いないと考えておる次第でございます。
  53. 帆足計

    ○帆足委員 それは、起草委員会における議事録のないものというのはどういう意味であるか。あるいは、松平大使がアメリカとよい関係があるので、刺激したくないので、ささやいたかもしれぬが、これは国際法上効果のあるものか。とにかく、その松平報告の文章を委員会に提出していただきたい。これは与党にとっても野党にとってもきわめて重大な問題です。さらに、その法的効力について条約局長の御答弁をお願いしたい。
  54. 中川融

    中川政府委員 これは、もちろん起草委員会におきます起草者であります代表発言でございます。しかし、その宣言自体はその後国連の総会で決議されたわけでございますから、その宣言の法的解釈として、インドネシア起草委員発言が法的拘束力ありやという点になりますと、法的拘束力というのはその意味では出てこないと思います。しかし、この解釈をするにあたって非常に重要な参考資料となることは、これまた事実であろうと思うのでございます。  なお、資料の点につきましては、そういうふうに取り計らいいたしたいと思います。
  55. 帆足計

    ○帆足委員 これはよくあることであるが、隣りにすわっている人が渋い顔をしているときに、つい慰めの失言をされた。常識で考えて、こんなことで責任をインドネシアの代表に課することは、私は、政治的感覚を欠如したものである、他国の外交代表を傷つけるものであると思う。自己の責任においてやらねばならぬことを、たまたま委員長が好意的発言をしたからといって、それを取り上げるということはどうかと思うのです。  そこで、お尋ねいたしますが、今度は沖繩立法院がこれを決議いたしまして行政府に出した。行政府は外交権がありませんから、キャラウエイ高等弁務官が、これは無用なことだと放言している。一職業軍人がこういうことは明白だから無用だと言うのはあたりまえであっても、無用でなければこそ、彼らがそう言えばこそ、立法府は、そうではなくて、解放の手順を整えてもらいたいということでありますから、キャラウエイ氏がこれは無用なことと言ったことは、職業軍人として出過ぎた言葉であって、これは沖繩立法府を侮辱するものであり、内政干渉にもわたるものであると私は思う。そういうことを言わずに、職業軍人、弁務官としての自分は、ちょっと痛い思いがするけれども、とにかく聡明なるケネディ大統領並びにアメリカ国務省に取り次ごうと言うのが、私は礼儀だと思うのです。外務大臣は、国際的礼儀について、すなわち、立法府のこの発言に対する取り扱いについて、一体どのようにお考えですか。
  56. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 今帆足先生の言われたような報告を、私まだ詳細に受けておりませんのですが、大体私の承知しておるところでは、この立法院決議というものは、やはり、行政府の大田主席に渡されて、しかる後にキャラウエイ高等弁務官に行くのが筋ではないかと思うのです。従って、その前にどういうことがなされたか、これは私として即答の限りでないと思います。
  57. 帆足計

    ○帆足委員 まことに控え目の御答弁で恐縮ですが、沖繩のことを私どもがかく言いますのは、これは、どちらかと言えば、全責任を持っている与党の方こそ先頭に立ってなすべきことであると思う。私は今社会党の立場から発言しておりますが、同時に、一人の日本国民として、超党派の気持もあるわけです。福沢先生は、「天は人の上に人を造らず」という一句から「学問のすすめ」を始めましたが、その福沢先生の言葉の中に、「独立の気風強からざれば、国を思うこと深くかつ切ならず」、これは与党にとっても野党にとっても大いに感銘すべき言葉だと思うのです。従いまして、この際日本の立場を明らかにすることはぜひとも必要であって、そして、沖繩立法府のこの要求について、政府は、何か水をかけるようなあらゆる工夫や工作を、アメリカに都合のいいようになさっている。そういうようなことでなくして、この国際世論の波を活用して、沖繩の他国支配からの解放を急ぐというふうに持っていっていただきたい。外務大臣は、少なくとも沖繩が他国の支配下にあるということは認めますか。また、もし認めるとするならば、植民地解放宣言の、少なくともその趣旨と精神は、やはりこういうような他国支配というものをなくしたということに、広義に解釈すればそういうことにあるということは、少なくとも認められるかどうか、その点を伺いたいと思います。
  58. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどから申し上げましたように、第十五回の国連総会における植民地独立宣言の本旨を正しく理解するということが、まずこの沖繩問題考える場合に必要であろうと思っておるわけでございます。その意味におきまして、この宣言趣旨が正しく理解されているかいないか、これは非常に大きな問題であります。私どもは、この趣旨を正しく理解する意味においては、沖繩植民地であってこの宣言違反であるという考え方には同調し得ないわけでございます。また、われわれとしましては、講話条約の第三条によって条約上の取りきめをしておるわけでございます。しかも、なお、沖繩同胞がわが国民であって、同胞としてのわれわれも、この条約下にあっても、できるだけ早くその経済的・社会的な福祉の向上というものに努力をしたい、こういう趣旨においてこの問題を考えるべきであります。しかも、現在東西の関係がかような状態であるときに、この問題を、今のような形で、施政権返還を強引に、この宣言決議と結びつけて、アメリカに対して奪い取るごとき形で強く迫るということは、われわれ日本人として、いわゆる大所高所に立って考えた場合、適当ならずというふうに言わざるを得ないと考えております。
  59. 帆足計

    ○帆足委員 われわれは、奪い取るなどということは言っておりません。国際法の論理に従って、そして返してもらいたい、こう言っているわけです。サンフランシスコ会議速記録の七十五ページに、ダレス代表は、「外国の支配はいかに恵み深い場合といえども支配を受ける人々の自尊心を励ますものではない。他国の情けを当てにする国民に、真の自尊心を期待することは無理である。」、こう言っております。従いまして、外務大臣アメリカの経済援助等もあるからまあぼつぼつということでありますけれども、私どもは、施政権ははっきり返還してもらって、貧しくともすがすがしい沖繩にしたい。これはだれしも望むことだと思うわけです。  そこで、お尋ねしますが、たとえば、今日沖繩に参りますのに、旅券すらなかなかおりない。大内兵衛教授は社会保障制度審議会の会長をされておりますし、中野好夫君はラジカル・デモクラートであることはだれしも認める。そういう人の旅券すら出ないと聞いております。国会議員が沖繩の視察旅行など希望しましたときに、かりに旅券が出ないとすれば、そういう場合に、小坂さんは、もちろん国会議員の味方として、アメリカを説得し、抗議しますか。われわれがかりに沖繩の民情視察をしたい、そういう場合にすら旅券が危ぶまれておると世間では言うておりますが、そういうようなことが常識であることがいいでしょうか。
  60. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この関係は、南方連絡事務所でやっておられまして、総務長官が幸いここにいらっしゃいますから、総務長官の方からお答えいたします。
  61. 小平久雄

    ○小平政府委員 沖繩への渡航許可の問題でございますが、これにつきましては、各方面から、これを自由にすべきだ、こういう御要望がございますので、われわれの方としましても、なるべくその線に沿って事が運ぶように努力はいたしておるのでございますが、現在はまだそこまでいっておりません。しかしながら、実際問題といたしましては、三十六年度におきまして不許可になりましたのは、全体の希望者のわずかに〇・三一四%、こういうことで、一%に達せぬという実情にございます。のみならず、この率は年々減少いたしておるのでございまして、三十五年度には〇・七%、三十四年度には〇・八%からあったのでありますが、いずれも一%未満でございます。それにもかかわらず、なおかつ今申す通り実際的に減少している、こういう実情でございます。
  62. 帆足計

    ○帆足委員 国会議員の場合は当然許可されるものと考えていいですか。
  63. 大竹民陟

    大竹政府委員 国会議員の場合、国会議員であるからというそれだけの理由で許可されなかったということを承知いたしておりません。また、当然許可なしに行けるということではないと思います。
  64. 帆足計

    ○帆足委員 変なことを言わないで下さい。そういうことを属僚から聞こうと思わぬのです。もうやがて時間ですから一、二問だけです。  そこで、今、沖繩住民は、とにかく基地問題についてもあぶないから消極的でありますけれども、それよりも、まず施政権を戻してもらいたい。ところが、沖繩住民意思に反して、また国際連合趣旨に反して占領政策を継続しておるとするならば、アメリカは他国を侵犯しているということになるおそれがある。先日ある高等学校の子供たちの座談会で私はこのことを指摘されまして、われわれおとなは答えるのに非常に困ったのです。すなわち、日本政府沖繩同胞三権をお預けしますと言っているならやむを得ない、しかし、みな戻してくれと言っている、本土のことを祖国と言ってなつかしみ、そして復帰を願っている、しかるに、無理に占領軍によって他国の支配を受けておる、それならば、それがもっと悪化すると、アメリカ沖繩に関する限りは侵略国だと言われるが、先生どうお答えになるかと言うのです。たとえば、キューバなどが、アメリカ沖繩において侵略国の体制をとっておるのではないかともし国際連合で騒がれたら、アメリカは困ると思うのです。そういうことにならないために、アメリカからコンロン報告の起草者のスカラピノ教授が来訪したのもそのためです。また、ケイセン調査団を寄越したのだろうとわれわれは善意をもって解釈するのですが、そういうことにならないうらに早く問題を改善せねばならぬ。私は、現段階において固執されるならば、もはやアメリカ沖繩に関する限りは侵略国の疑いがあるということを東南アジア諸国から提案されるおそれがあると思う。すでにわれわれはその情勢を見てとっております。従いまして、すべて善意の警告をアメリカに対してするわけですが、キャラウエイ君なども、このことを心配して、自分は一職業軍人であるけれども沖繩住民意思を表明したところの立法府の決議についてはこれをケネディ大統領に取り次ぎますと、こういう態度をとるのが弁務官殿にとってやはりよいことである。もちろん、アメリカ合衆国の最高政策と日本政府との間の交渉でこれはいかようにでもなることでありますから、一弁務官の段階ではないと思う。それを、弁務官が、立法府について、こういう提議をしたことは無用であると言うならば、そういう事情こそ、植民地状況であるということの立証を問わずして語っていることになっていると思う。こういうことになろうと思うのです。  実は、私、もう二、三時間やりたいのですが、いかに努力しても野党の立場から外務大臣を説得することはむずかしいでしょう。また、いかに誠意を持って説いても、与党全部を説得するということは人力の及ぶところではありませんが、この際日本の国民に論理と正義はどこの側にあるかということだけは明確にしておきたいと思います。そして、保守党といえどもあまりにも目に余ることをしてもらいたくない。野党もまた同じく目に余ることはないようにわれわれも自粛自戒して努力しますが、与党も目に余るようなことをしてもらいたくない。子供との討論会で負けるようなことはしていただきたくないのです。アメリカ信託統治という美名のもとにだまそうとしても、なかなか賢い愛国の議員が日本にいて、未遂に終わったということになることの方がほんとうなんです。先日コンロン報告のスカラピノ教授が参りましたときに私も会いました。そして、私はこういう例を引きました。もし日本アメリカとの間に軍事同盟がやむを得ないことであって、かりに日本憲法でも変わって自衛隊がサンフランシスコにやられて、そして、その兵隊のために、貧しい娘たちの何%かがパンパンとなる、子供たちはジープで引かれても治外法権だからどうすることもできない、あるいは、カリフォルニア大学のスカラピノ教授はやや進歩的であるということのために、ニューヨークに行くのにパスポートがおりる見込みがなかなかないということになったときには、アメリカの市民としてこういう治外法権はやめてもらいたいということを誠意あるアメリカ国民ならば主張するでしょう、東洋の言葉に「おのれの欲せざるところこれを他に施すことなかれ」という言葉があるが、このくらいの言葉は知っていなければ、アメリカの民主主義というものも東洋では単なるから念仏に終わるおそれはないであろうかと私は語ったことでした。  最後に、時間がありませんから、せっかく防衛庁の方が来ておりますから伺いたいのですが、一体、防衛庁の方は、沖繩及び日本の国防のことを主として考えておられるのか、または、アメリカの国防のことに対して御熱心であられるのか。戦略の専門家であるならば、沖繩の地位はアメリカの前線基地、原爆犠牲基地になる戦略的宿命を持っておることはだれしもの常識だと思う。アメリカ新聞を見ると、遺憾ながら沖繩はアッツ島にたとうべき場所であるということで、これはどの戦略の本でもそう書いてある。しかも、アッツ島ならば無人島でありますけれども沖繩には八十万の同胞が住んでいる。これをアッツ島なんということをあなた方は考えたことがあられるか。前に職業軍人であったということやそうでなかったということは、これは歴史の宿命に過ぎませんが、今、私たちは、日本をどうして救うか。これにはいろいろな方法があります。碁を打つ道がいろいろあるように、最善の方法というのはなかなか見つかりません。お互い、次善の策でもってでも、何とか数カ年の険しい世の中を切り抜けなければならぬ。防衛庁にお尋ねしますが、そのときに一体沖繩というものをどう考えておられるか。これはほんとうは総理に聞かなければならぬことです。沖繩には今どういう装備がなされつつあるか。防衛庁はそれらの大綱くらいは知っておられるか。知っておられるならば、次の機会に私は外務委員会で秘密会を開いてでも一応のことは知っておきたい。沖繩を再びひめゆりの塔にしたくない。十分間で五千機のジェット機が飛び立つと言われておるが、その指令系統はあいまいであると言われておる。大統領の手から参謀総長または国防軍の手に移ったとも言われておる。ミサイルは二千キロとも言われ、二千五百キロだとも言われておる。ソ連の一万四千キロとの間に一万キロのミサイル・ギャップがあって、その穴埋めのために沖繩を使っておるから、やがてアメリカで一万キロでミサイルができた暁には、アメリカの前線は後退してもいいとも戦術家は言っております。こういう問題に対してわれわれ外務委員は全くつんぼさじきでおったならば、私は国民に対して相済まないと思う。従いまして、きょうは時間がありませんから、いずれこの問題につきまして理事会の御承認を得たいと思っておりますが、これは防衛委員会や内閣委員会だけにまかせるべきことではない。国防というものはもはや職業軍人の専門の仕事ではありません。国民の高い良識と、自分のわが国土に対する責任感、この二つがあれば、大かたこの問題についてある見通しを立てることもできるわけですから、防衛庁当局がこれについてどう考えるか、同時に、正確な情報を沖繩から得られるような仕組みになっておられるかどうか、これらのことについて、もう時間がありませんから一問だけお尋ねしたい。  同時に、私は、一番いい方法は何かとかりに防衛庁側から聞かれるならば、前にもたびたび申し上げましたように、アメリカ上院議員の奥様とお嬢様はなるべく器量のいい方々を沖繩に参観交代していただくことも一つの方法であろう。先日東西ドイツの問題が激化しましたときに、在住諸君の家族は直ちに引き揚げの準備をしたということです。引き揚げの準備をするアメリカ人はいいかもしれませんけれども沖繩八十万の同胞は引き揚げることはできません。行く場所もありません。こういうことに対して、私どもからこう言われると、防衛庁は千々に心が乱れるであろうと思いますけれども、張り切るばかりがさむらいではないから、今後はときどき外務委員会に来て、こういう議論もお聞きになって、そして、従来の武力のみがものを言わぬ原爆・水爆の時代に、どうして日本の安全を保つかということを外務委員会でも真剣に取り上げるべきだと思います。防衛庁の責任者が参っておりますから、ちょっと所感の一端だけでも伺っておきたい。
  65. 海原治

    ○海原政府委員 私、防衛局長でございますので、所感の一端ということでございますから、申し上げる筋合いはないと思いますが、ただいま諸先生のいろいろお尋ねの点の中で、私の所掌の範囲だけをお答えさしていただきます。  まず、自衛隊は、防衛庁法及び自衛隊法によりまして、その任務がはっきりと規定されておりまして、自衛隊の任務というのは、あくまでわが国の安全と独立を守るということでございます。と同時に、日本の安全ということは、これは、日本だけのことではございません。極東の安全ということとは不可分一体のものと私ども考えております。沖繩の戦略的な重要性ということにつきましては、これは、先生が先ほどからおっしゃっておりますように、極東における軍事上の意味におきましては非常に重要な拠点であると私ども考えております。現在、沖繩におります米軍の部隊は、陸軍関係では空挺戦闘団が一、これはナイキの部隊であります。海軍関係では海兵師団が一つおります。それから、航空関係では、やはり航空師団が一つおります。これらの諸部隊を支援いたします関係諸部隊が現在沖繩に駐屯いたしております。
  66. 帆足計

    ○帆足委員 一つだけ象徴的にお尋ねしておきたいのですが、アメリカのおおむねの戦略家たちは、ハンソン・ボールドウィンたちも含めて、沖繩アメリカの外線基地、犠牲基地、緒戦基地、こう規定しております。従って、人口八十万を擁する、アッツ島のような戦略的状況にある。これについてあなたの御意見を伺いたい。第二には、沖繩にある兵備の状況を機密にわたらぬ範囲においてわれわれも知りたいのですが、当然知る権利もあるのですが、これは機構的に沖繩の大体の状況は防衛庁に伝えられるようになっておるかどうか、または防衛会議、国防会議に伝えられるようになっておるかどうか。きょうは時間がありませんから、この二つの点だけをお尋ねいたします。
  67. 海原治

    ○海原政府委員 沖繩をアッツ島と御比較になってのお尋ねでございますが、私どもは、沖繩をアッツ島とは考えておりません。ただ、先生のおっしゃいました前線基地、前衛基地、犠牲基地と申しますのは、いろいろその使われます意味におきまして幅がございます。従いまして、どういう意味においてそれをお使いになっておるかということになりますが、これは意見にわたりますので答弁は差し控えさしていただきます。  さらに、沖繩の米軍諸部隊の状況につきましては、私どもは、在日米軍指令部との間に常時連絡機構を持っておりますので、一応のことは承知いたしております。
  68. 帆足計

    ○帆足委員 時間が限られておるから、きょうは残念ながらこれで中止いたしますが、またこの問題については質問を留保いたしておきます。
  69. 森下國雄

    森下委員長 川上貫一君から関連質問の申し出があります。これを許します。川上貫一君。
  70. 川上貫一

    ○川上委員 私のは、時間が大へん大事なときの関連でありますから、御答弁だけ願いますが、それについての再質問はいたしません。この問題についてはこの次の国際情勢の機会に質問をさしてもらいますので、その用意にまとめて質問をいたしますから、これに対してお答えだけを聞いておきたいと思います。  第一点は、帆足委員に対する御答弁を聞いておると、大臣情勢ということを非常に言われます。そこで、この点をちょっと聞いておきたいのですが、どういう情勢になれば返してもらうつもりなのですか、それを具体的に一つ聞いておきたい。情勢々々と言われたんじゃわからない。田中発言のようなことになればいいのですか、その点を具体的に一つ聞いておきたい。  第二点、池田さんは大統領とお会いになった時分に沖繩の問題についても話し合った、こういうように承っておるのでありますが、どういう話をなさったか。これは、返してもらうことを要求なさったのですか、嘆願をされたのですか、この点です。  それから、第三点は、平和条約条項その他によって日本返還を請求する権利があるのかどうか。全部であれ一部であれ権利があるのですか。頼み込むのですか。この点だけでいいのです。長い答弁は要りません。  第四点は、これは繰り返しになりますけれども、要求権、請求権利というものが全然ないのなら、とにかくお願いしますということを言っておるだけなのですか。これがはっきりしないですから、この点をはっきり今後のために聞いておきたい。  それから、第五点は、平和条約の第三条ですが、第三条を改めずして沖繩施政権問題についての移動があり得るかどうか、この点です。第三条に触れずして、——第三条はアメリカ日本の両国の条約ではありません。これは連合国と日本との間の国際取りきめでありますから、この第三条そのものをそのままにしておいて、これで施政権問題についての変更、移動があり得るのかどうか、これです。  もう一つの点は、第三条は、全部及び一部となっております。アメリカ施政権を行使するのは、行政司法立法の全部及び一部、こうあるのですが、あれは英文の原文はどうなっておりますか。これはオール・アンド・エニーとあるんじゃないかと思うのです。これは何でオアとなっておらぬのですか。ここは日本の訳は間違いじゃないか。原文は一切がっさいとなっておる。全部及び一部となっておらぬのじゃないか。これは非常に問題があるかと思いますので、議論の余地もありましょうけれども、きょうは続いて私は質問をしませんから、政府考え方はこうだということを言うておいて下されば、私の質問は全部あとへ残します。  以上の六つの点をお答え願っておけば、きょうはけっこうなのです。外務大臣からお答え願います。
  71. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 逐次お答えいたします。  第一点は、どういう情勢になったらということでありますが、われわれは、極東における東西緊張の状態が緩和されたとわれわれが認識される状態、そういうものを考えております。  第二は、ケネディ大統領に対して池田首相が要求したか嘆願したか、こういうことでございますが、われわれは、われわれの立場を堂々と述べて、先方との間に十分理解を深める話し合いを行なったということです。
  72. 川上貫一

    ○川上委員 返還を要求したのですか。
  73. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 返還についてのわれわれの希望を堂々と述べた、すなわち、要求ということにおとりになってけっこうであります。  第三に、平和条約上当然に返還要求の権利があるのかということですが、これは条約上はございません。ただ、政治的に返還を要請する、こういうことは十分考えられる、また、それが逐次功を奏しつつある、こういうことだと思います。  それから、第四番目は、政治的にどうこうというのですか、第四番目をもう一度すみませんがお願いします。
  74. 川上貫一

    ○川上委員 お願いをする以上のことは何にもできないのかということです。
  75. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 結局、第三条から読みとれるものは、この条約をそのままに読みますれば、第三番として申し上げたようなことになると思います。しかし、講和条約審議の際に、ダレス・アメリカ全権も日本潜在主権を認めておることでありますから、これを政治的に解決するということは十分可能だと思います。  第五番目は、平和条約の第三条のこの規定から言って、話し合いによって、条約改定を要せずして変え得るのかということだったと思います。これは、そういうことはできると思います。奄美大島の場合、この返還協定によって行なっておるわけでございます。さようなことでございます。ただ、この点について主要連合国との間に話し合いをするという義務があるかどうかということでありますが、これは先方の問題でございますが、わが国の関係においては、これはできる、こういうことであります。  第六点でございますが、これは、御承知のように、「行政立法及び司法上の権力の全部及び一部を行使する権利を有する」、全部または一部ではございません。「全部及び一部」と書いてある。すなわち、全部、こういうことであります。英文の方はアンドという字が使ってございます。「オール・アンド・エニー・パワース・オブアドミニストレーション」となっております。
  76. 川上貫一

    ○川上委員 これは、一切がっさいですか。
  77. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 「全部及び一部」ですから、全部でございます。
  78. 川上貫一

    ○川上委員 そうすると、ここの日本の条約の文によりますと、「全部及び一部」とありますから、一般の日本語の解釈によると、すべてかあるいはその一部分か、たとえば、九分九厘までいってもよいし、あるいは三分だけいってもよいし、どっちでもいいというふうにとれる。ところが、今の大臣の御答弁では、全部だという明瞭なお答えがあったのですから、けっこうです。全部というなら、日本語は間違っておりますから、これはその通り解釈して、この次の質問に譲ります。  これでけっこうです。
  79. 森下國雄

  80. 西村関一

    西村(関)委員 外務大臣に対してはあとから質問をいたしたいと思いますが、まず小平総務長官にお尋ねをいたします。  長官が昨年の十一月でありますか沖縄においでになりましたときに、西表島開発については計画がまことにずさんであるという御発言新聞記者会見でなすっておられますが、どういう内容をもってこの計画がずさんであると言われるか、そしてまた、現在その開発状態はどうなっておるか、また、一部西表島におきましては米軍のジャングル戦の演習が行なわれておりますが、これと開発との関係はどうなっておるか、その点お伺いしたい。
  81. 小平久雄

    ○小平政府委員 お答え申し上げます。  西表島の開発につきましては、私が昨年十一月末あちらへ行く前からこの話を聞いておりました。あちらへ参りまして、直ちに西表島の視察を行なったわけでございますが、今のお話によりますと、私が、向こうで、西表島の開発計画がずさんである、こう言ったように新聞紙上に伝えられているということでございますが、ずさんであるというよりも、むしろ、まだ計画が固まっていないようだという意味のことを私はあちらで発言をいたしたのであります。そこで、私が西表へ参りましたのは、西表の現地というものをつぶさに見たいという全般的な考え方と同時に、また、当時、西表の開発と関連をいたしまして、港を作る、すなわち築港をどこにするかということが現地では非常に話題になっておったようであります。御承知と思いますが、そのいわば候補地といたしまして、船浮、白浜の両地点のいずれになるのかということが、現地では非常に話題を呼んでおったようでございます。そこで、新聞記者等から、一体どっちがいいと思うかというような質問も再三にわたってございました。そこで、先に申します通り、どちらがいいか、自分としては技術者でもないからよくわからない、しかし、基本的には、西表の開発について、日本からもすでに二回ほど調査団を出し、アメリカ側としても調査団を出しておる、しかし、これをまとめた全体の計画というものがまだきまっておらぬようだ、全体の計画ができて、この西表の開発計画というものはこういう必要性に基づいてこういう目的でやるんだということがはっきりして参りますならば、それに伴った計画、内容というものはおのずからきまるだろう、そうなれば、船浮、白浜のうち築港の適地としていずれがいいかということも自然にきまってくる問題ではなかろうか、そういうことは常識的に自分も言い得る、そういう意味において、開発計画というものが全体としてまとまったものになっておらぬのじゃなかろうか、そういう意味のことを私はあちらで申したのであります。  そこで、お尋ねの、西表鳥を来軍がジャングル戦の演習基地と申しますかそれに使っておるという話も、実は開発問題あるいは特に築港問題とからんでいろいろ現地の人たちの話に出ていました。事実、西表島におきまして米軍がジャングル戦の関係の演習等も多少やったようでありますが、そういう点から、西表の開発というものが、昔から何か軍の必要性からしてやるんじゃないかといったようなことを言う向きもございます。私はこういう軍の必要からおそらくやるんではあるまいと思うが、われわれとしては、日本が援助するということになれば、産業の開発と申しますか、沖縄は御承知の通り非常に人口の稠密なところでございます。また、この西表につきましては戦前においても再三移住などもやったところであります。そういう見地からの必要性ということがおそらくあると思うということを私はあちらで申したのであります。責任ある立場の人たち、は、産業開発あるいは移住の必要ということから開発の必要性を申しておりました。そういう話も出ましたので、先に申しました通り、私どもといたしましては、全体の計画というものがとにかくはっきりすることが必要であるし、それに関連して築港の適地等も起こるのではないか、こういうことを言ったのであります。  そこで、開発の現状ですか、今申しました通り、米側と日本側と両方から調査団が行って、それぞれの報告が出ておるという段階であります。
  82. 西村関一

    西村(関)委員 時間がありませんから突っ込んで聞かないのですけれども、キャラウエイ高等弁務官も、西表島における米軍の演習は必要であるし、続ける、こう言っておるのであります。しかし、それは、道路もつくし、むしろ開発にプラスになるというようなことを言っておるのですが、実際、常識的に考えてみて、一方においては米軍が熾烈な演習をやっておる、一方においては開発を続けておるというようなことは、非常な矛盾があると思うのです。それらの点につきましても、私は、長官が計画がずさんであるということを言われたのは、何かそこに問題があるのじゃないかというふうに受け取ったのです。今の御答弁によりますと、そういう意味ではなかったということでありますから、一応長官の答弁は了承いたします。しかし、どうもなお軍目的とそれから開発を目ざす目的との間に割り切れないところのものがあるということはおおえないと思うのであります。  そこで、沖縄におけるところの開発並びに経済援助というものが今後どういう形で行なわれていくか。そしてまた、日・米・琉懇話会等におきまして計画がなされて、日米協力のもとに経済援助が行なわれていくということであるようでありますが、しかし、そういうようなことによりまして沖縄県民の祖国復帰運動、施政権返還悲願達成というものがすりかえられる、そういうことを積み重ねていくことによって施政権返還の県民の強い要求を緩和していく、そういう意図がもしあるならば、これは非常に大きな問題だと思うのであります。なお、アメリカの沖縄に対する経済援助はギフト形式をとっているのでありまして、これはやはり明らかに沖縄県民に対するところの懐柔的な意味が含まれておると判断しなければならぬのでありますが、それらの点につきまして、今度の立法院決議等によりましてこういうものが突きつけられるならば、沖繩に対するところの経済援助も手心を加えなければならないといったような意見が一部あるというようなことも聞くのでありますが、責任ある総務長官といたしまして、これらの点に対してどういう御見解を持っておられますか、簡単にお答えを願います。
  83. 小平久雄

    ○小平政府委員 今後の開発の問題でありますが、御承知のように、昨年アメリカからケイセン調査団が参りまして、この調査団の報告が目下調製されつつある、こういうふうに承知をいたしております。それによりまして、アメリカ側の今後の態度というものも、あるいは計画というものもはっきりして参ることと思いますが、それが出ますれば、これは日本側にももちろん連絡があることと存じますので、それらを中心にして、今後日本がどういう援助をいたすべきか、これを子分アメリカ側とも協議の上に、今後の日本の援助というものを日米共同声明の線に沿って拡大いたしていくべきものと心得ております。  それから、それとの関連におきまして、この懇話会でございますが、今後援助がさらに発展するということになりますならば、これは、どういう形かにおいて、日、米、さらには琉も含めまして、この連絡機関と申しますか、そういうものが必要になって参るもの、ただし、それが実際にどういう形で持たれるかはまだはっきりいたしませんが、何らかの形は必要だと私ども考えております。  さらに、この援助をすることによって施政権返還問題がすりかえられるのじゃないかというお言葉でございますが、施政権自体のことは外務省の方の所管でございますが、私どもといたしましては、いわゆるすりかえというようなことは全然考えておりません。援助は援助としてやっていくべき、もの、かように心得ております。  なおまた、今度の立法院における決議と関連いたしまして、ああいう決議が行なわれるならば援助を考え直すべきだというような声が一部にあるということでございますが、われわれはそういうことは全然考えておりません。
  84. 西村関一

    西村(関)委員 小坂外務大臣にお伺いいたしますが、先ほど、立法院決議に対しまして、施政権返還の要求は何回も強くアメリカ政府としてはやっておるという御答弁でありました。先ほどの川上委員の関連質問に対してもお答えがあったのでございますが、さらに、池田ケネディ会談以外に、いつ、どこで、だれに、どういう施政権返還に関する要求を政府としてなさいましたか、具体的にお答え願いたい。
  85. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 これは歴代の政府がやっておるのでありまして、私が直接承知しておるのは、一昨々年岸さんが総理大臣の際に行かれてこの要求をなすったと承っております。その後藤山さんも外務大臣として行かれてこの要求をなすったと聞いております。私も、一昨年参りまして、当時のハーター長官との間にいたしました。昨年池田総理が行かれまして、これはケネディ大統領との間になされました。私もラスク長官との間にいたしております。その以前にももちろんあると思いますが、今ちょっと直接責任を持って申し上げられません。おそらくその前の重光さんの時代にももちろんあったかと思います。
  86. 西村関一

    西村(関)委員 今の点につきまして、具体的に外務省の方で御調査を願って、いつ、どこで、だれに、だれが、どういう、要求をしたということを正式な文書で委員会資料として提出を願いたい。委員長においてその点をお取り計らいいただきたいと思います。
  87. 森下國雄

  88. 西村関一

    西村(関)委員 なお、その点に関連をいたしまして若干のことをお尋ねいたしたいと思います。  施政権返還の要求をする政府のかまえでありますが、これは、沖繩植民地の状態であるからというので直ちにそのような状態を克服するためにアメリカに対してこれを戦い取るというような姿勢はよくない、これは植民地の状態ではないのだから、アメリカと話し合ってすみやかに施政権返還してもらうように諸般の努力を積み重ねていきたい、こういう大体の態度であったと私は承ったのでありますが、その点に関しまして、植民地状態であるかどうかということが、国連の起草委員会におけるインドネシアの代表発言とか何とかいうようなことでなしに、日本政府として植民地状態が沖繩に現存しておるかどうかということを認識するかしないかということによって、返還要求のかまえが変わってくると思うのであります。先ほども、常々とこちらの態度を主張したというふうにお答えになっておられましたが、それならば要求したかという川上委員の言葉に対しては、明確にお答えにならなかった。私は、植民地状態が現存しておるという認識に立つか立たないかということによって、政府のアフリカに対する施政権返還の要求のかまえが変わってくると思います。  そこで、あくまで法理論的に植民地状態ではないというふうにお答えになっておられますが、事実のしから申しまして、沖繩にはアメリカ支配が行なわれておる、また搾取も行なわれておるということは、目をおおうことのできない事実であります。私は、昨年の六月、自民党の船田中代議士を団長といたしまする各党の国会議員団によって編成せられました沖繩視察団に加わりまして、親しく現地を見たのであります。そのときの印象から申しましても、祖国復帰、——祖国という言葉を使っております。そして、また、当時は日の丸の旗は米高等弁務官によって掲出することを禁ぜられておりました。しかし、禁を犯して日の丸の旗をへんぽんと翻して祖国復帰運動を続け、あくまでも施政権返還してもらいたいという要求を叫び続けておる状態に触れたのであります。この日の丸の旗は、祖国への血のつながりを意味しており、祖国復帰の旗になっておるのでありまして、今日はそれが許されたとは申せ、これは感情を融和させるために許しただけのことでありまして、この旗によってシンボライズされておるところの祖国復帰悲願をどのように政府は受け取っておられるか。われわれが回りましたときに、一体日本の国会議員は祖国復帰決議一つしないでどうしてここまでやって来られたかというふんまんが、いろいろな機会にぶちまけられたのであります。これは、沖繩の自民党、社大党、人民党を含めて全議員の人たち、また九十万の県民の一致した希望であったのであります。そういう沖繩県民の悲願、これは、事実敗戦後苦しめられ、圧迫せられ、支配せられ、搾取されて、われわれをアメリカに里子にやってまま子扱いにされておる、これを一体本土の政府はどう考えていてくれるのかということが沖繩県民の偽らない心情であると私は感じたのであります。そういう点につきまして、政府は、事実沖繩植民地支配、また搾取が現存しないという考え方に立っているのであるか、法律の解釈とかなんとかいうことは別問題として、事実認識の上におきましてどういうふうにこれをお考えになっておられるか、その点外務大臣の御見解を承りたい。
  89. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お話の中に、私が、沖繩の問題で、要求したか、嘆願したかということについて言葉を濁したようなお話がございましたが、これは要求しておるのでございます。  それから、なお、沖繩復帰について、沖繩住民の、われわれの同胞の希望というものは、私どもはよくわかっておるつもりでございます。ただ、全般の国際情勢考えて、この現状において早く東西両方の緊張が緩和される時期になり得ますように、われわれはわれわれなりに努力して、そして、その上で復帰を実現する、こういう方向で私ども考えておることは、申し上げた通りであります。
  90. 西村関一

    西村(関)委員 先ほど総務長官のお答えもありましたが、日本から沖繩への渡航の自由も大幅に制限せられておるし、同時に沖繩から祖国への渡航というものはそれ以上に大きな制約を受けておるのであります。その点、沖繩の県民が本土へ、祖国へ渡りたいという申請をいたしました申請数と、それから、そのうちどれだけが許可されたかということを年次別に、——今お答えをいただくと時間がかかりますから、あとでこれも資料として御提出を願いたい。同時に、日本から沖繩に渡航したいという申請に対して、そのうちのどれだけが許可されたかという点も、年次別に資料として御提出をいただきたいと思うのであります。委員長、よろしくお願いいたします。  そのことを申し上げますのは、これは、日本の国有の領土でありますところの沖繩に対して著しく日本国民の権利が制約されておるという事実を指摘いたしておるのでございまして、こういうところにも具体的なアメリカ支配が行なわれている。これはもちろん軍事的な理由によることでありましょうけれども、そういうような点、それからまた、民政府というのは名前だけでありまして、先ほども同僚委員から指摘のありましたように、高等弁務官は現役の陸軍中将であって、れっきとした軍人である。軍政にひとしいところの軍政官が最高の権限を持って、立法院決議したことでも布令によってこれをひっくり返されるというような政治の形態というものも、またこれは明らかにアメリカ支配沖繩に行なわれているという事実であると思うのであります。また、県民の土地は、不当に買い上げられておる、不当に取り上げられておるという事実が多々あるのでありまして、非常に膨大な地域が軍用地に接収されておる。しかも、それが銃剣によって不当に奪い去られていっておるという事実は、私が今指摘するまでもございませんが、例のクリスチャン・センチュリーというキリスト教のプロテスタントの権威ある週刊誌でございますが、それに、沖繩のかつての宣教師でありましたオーティス・W・ベルという人が寄稿をいたしております。その文章を見ましても、いかに不当な支配搾取が行なわれたかということが明白なのでありまして、これらの点につきまして、政府は一体沖繩現実をどう受けとめておられるか。あくまでもこれは植民地ではないのだという御見解をおとりになるのであるか。事実に目をおおうて植民地ではないのだという考え方を貫こうとしておられるのかどうか。もしそうであるならば、私は、この目で見て回りましたこと、この耳で聞いて回りましたこと、この足で調べて回りましたことを一々具体的に申し述べて政府見解をただしたいと思いますが、しかし、今はそういう時間がございません。ただ、政府沖繩に対する態度、沖繩県民に対するところの真情、そういう点につきましては、今まで外務大臣の御答弁ではまだ十分満足がいきませんので、重ねてその点について御見解を承りたいと思います。
  91. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 最近、沖繩の民生・経済に対する日本側の意図というものがアメリカに十分伝わりまして、非常にこの点積極的に日本も乗り出していくことができるようになり、アメリカ側もまた積極的に沖繩住民、われわれ同胞の熱意にこたえてできるだけのことをしようという気分になっておりますことは、すでに西村先生も御承知のことだと思うのでありまするが、私どもは、施政権返還ということの早いことを望むのではございまするけれども、四囲の情勢もございまするので、それに至る間はできる限り民生・経済の安定にわれわれ寄与していきたいという点を、今大いに努力いたしておる次第でございまして、私どもの気持というものは、沖繩における行政に携わっておる方々からも非常に高く評価いただいておるということは、私も感じておるわけでございます。
  92. 西村関一

    西村(関)委員 一体、今沖繩全土に対しまして軍用地として接収をしておる、使用しているところの土地は何エーカーありますか。この点総理府の特連の方にお答えを願いたい。
  93. 大竹民陟

    大竹政府委員 昭和三十六年二月の調べでございますけれども、二万六百町歩でございます。
  94. 西村関一

    西村(関)委員 私の調査いたしました点と若干違うところがありますので、正確な資料を御提出をいただきたいと思います。  沖繩は、軍用地として接収せられまするときに、土地を買い上げるのだが、その評価額の六%を年々払っていく、こういう形式になっておるのですが、評価委員会というものはどういう構成になっていますか。
  95. 大竹民陟

    大竹政府委員 詳細を今お答えする用意をしておりませんが、米琉間で委員を出しまして、五年ごとに評価をしかえていくという方法でやっておるというふうに承知しております。
  96. 西村関一

    西村(関)委員 それはいつからそうなりましたですか。そして、米側と琉球側との委員の数は何名々々になっておりますか。最初は、沖繩委員を入れろという要求に対して、アメリカ高等弁務官は全然耳を傾けなかった。いつからそうなりましたか。
  97. 大竹民陟

    大竹政府委員 正確なことを今申し上げかねますが、土地問題が大体地元でおさまって参りました時分でございますから、昭和三十三年以後かと思いますが、その時分から現在の形でやっております。
  98. 森下國雄

    森下委員長 ちょっと西村君に申し上げます。もう時間が来ておりまして、それから、このあとに門司委員質問を控えております。参議院の方から予算関係大臣の出席を要求しておりますので、御注意申し上げます。
  99. 西村関一

    西村(関)委員 時間がございませんので、はなはだ不徹底な質問に終わることは遺憾でございますが、最後に一点だけお尋ねをいたしまして終わりたいと思います。  アメリカ沖繩に投下いたしました資本、これは、膨大なミサイル基地を建設いたしまするために使った費用、また、これを維持管理いたしまするために年額投入いたしておりまする費用、また、アメリカの国家資本が、電力、水道、住宅、各公社、石油、倉庫、金融、保険、製氷等の事業に投資されているところの総額は実に膨大なものがある。しかも、それは、沖繩県民の利益のためではなくて、沖繩に在住するところの五万くらいのアメリカ人のために優先されておるというような点につきまして、今お答えをいただく時間がございませんから、そういう実態について、アメリカの資本が沖繩に投入せられて、沖繩の開発のためではなくて、むしろ沖繩に対する支配搾取を行なうために使われておるという事実があると思われるのでありますが、それらの点につきまして、後に資料を提出していただきたい。  この問題につきましては質問を保留いたしまして、後日に質問を続行いたしたいと思います。
  100. 森下國雄

    森下委員長 門司君、大へん恐縮ですが、二時三十分に参議院の予算委員会と約束でございますので、どうぞ二時三十分までに終わるようにお願いいたします、門司亮君。
  101. 門司亮

    ○門司委員 それでは、ごく率直に簡単に質問しますから、一つそのつもりで御答弁願いたいと思います。  最初に聞いておきたいと思いますことは、今まで沖繩に対します施政権返還でかなり長い間議論があったようでございますが、沖繩返還の請求権は、私は当然日本にあると思います。請求すべきだと考える。その根拠の一つは、やはり国連憲章が国際的のおのおのの国の領土不拡大を原則としておりまする以上は、少なくとも現状の沖繩に対しては日本の領土であるということを強く主張する権限があり、さらに、これを日本返還要求する権利が日本政府にはある。ただ話すというだけでなく、私は権利があると考えるのだが、その点はどうですか。
  102. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 平和条約の第三条におきまして、アメリカ沖繩を自分の領土としておるわけではございません。従って、これは当然に領土不拡大の原則というものに反するというわけでもございませんが、われわれとしましては、先ほどから申し上げておるように、潜在主権を持っておるのだし、住民も希望しておるのだし、ぜひ早く施政権を返してくれ、こういうことは言っておるわけです。
  103. 門司亮

    ○門司委員 こちらに請求権はある。ただ、三条に信託統治ということが書いてありますが、これは条約上向こうの義務になるのですか。それとも、さっきの大臣の答弁の、奄美大島を返したから三条を改正しなくてもいいんだということからしますと、この条約に書いてある信託統治というのは義務ではないというように考えて差しつかえないと思うのですが、その通りですか。
  104. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その通りでございます。義務ではございません。ただ、先方のアメリカ信託統治にする権利を持っておるわけです。しかし、その権利もいつ幾日までにしなければそれが失効するということも言えないわけです。しかし、要するに、義務ではないわけです。
  105. 門司亮

    ○門司委員 そうなってきますと、だんだんおかしなように議論ができてくるのですが、このことだけそう長く聞くわけにいきませんから、長く聞きません。  その次に聞いておきたいと思いますことは、沖繩の船舶は現在どこの国の国旗を立てて公海を歩くことができるかということです。これは一体どういうことになっていますか。
  106. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど私の答弁で簡単に申し上げましたので、誤解を生ずるといけませんから申し上げますと、義務ではないというのは、アメリカ信託統治にすることがアメリカの義務ではないということでございます。(「そんなことはわかり切っているよ」と呼ぶ者あり)私の思いましたのは、アメリカはそれじゃ日本に返す義務がないのかということでございますが、これは、信託統治にするということだけで、日本の領土でございますから、行く行くはアメリカは返す義務がある、こういうことでございます。この点を申し上げたくて申し上げたわけであります。  それから、今の国旗の件でございますが、政府委員から申し上げます。
  107. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 今お尋ねでございますが、旗の件につきましては、調べました上でお答え申し上げます。
  108. 門司亮

    ○門司委員 これは、調べなくても、一応ちゃんと規定があるのですよ。書いてあるのですよ。私はなぜそういうことを聞いたかといいますと、現在沖繩には日本の国旗を使用することが許されております。従来の規定から言いますと、沖繩の船であっても、日本の港、日本に籍のある船は日本の国旗を使ってもよろしい、沖繩に籍のある船については、アメリカ軍政府が特別の旗を何かこしらえて、——ここに書いてありますけれども、そんなものを読んでいると長くなりますからやめますが、特別な旗をこしらえて、こういう旗を掲げて歩けということがちゃんと本に書いてあります。ところが、さっきおっしゃいましたように、日本の国旗を掲げることが許されておりますが、そうすると、この辺が変わってきたかどうかということを念のために聞いておきたかったのですが、どうなんですか。これはやはりわかりませんか。
  109. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 そういう詳細につきまして、調べました上で御返答申し上げます。
  110. 門司亮

    ○門司委員 その次にごく簡単に聞いておきたいと思いますことは、沖繩の諸君の海外旅行に対して、これを保護する国は一体どこかということであります。従来の慣例から言いますと、日本に来た人が日本から外国に行こうとする場合には、日本政府のビザをもらっておるようであります。沖繩にいる人が沖繩の現地から出かけていくときには、アメリカの証明書をもらっているようであります。しかし、その間に問題の起こったのは、アメリカ側から出たビザというものは、これはアメリカ市民ではありませんから、アメリカの市民と書くわけにいかない。ただ、こういう琉球の人間がこういうところを通るから適当に一つ保護してもらいたいという、こういうただし書きが書いてあるだけです。そこで、それを受け取った外国では、これはおかしい、一体お前さんはどこの国の人なんだ、アメリカの身分保証を持っていながら、おれのところの市民ではないと書いてあるんだということで、日本政府に要求してくる。しかし、日本の出先官庁も、どうも直ちに日本の国民だとしてこれに保護を加えるということは困難だということで、非常に迷惑しているというのが現状だと思うのですが、こういう点に対して外務省はどういうふうにお考えになりますか。
  111. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 ただいまの御質問の通りでありまして、琉球からまっすぐ出ます場合には、アメリカ側の発行します渡航証明書を持って参ります。日本に寄りまして日本の旅券を持っていく場合もございますが、海外において日本の公館に出頭しまして日本の旅券がほしいと言えば出しておりますので、最近はそういう点は非常に改善されております。
  112. 門司亮

    ○門司委員 その保護はどうなんですか。これは、日本の外交保護権が、日本人としてそこでビザをちょっと書きかえればよろしい、こういうように解釈されているのですか。
  113. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 旅券の問題は、海外で公館に出頭して旅券をほしいと言えば出しております。また、旅券を出しません場合でも、海外におきましては、日本人として保護いたしております。もちろん、アメリカ側も保護をいたしますが、問題が起きまして、日本の公館に保護してくれということになりますれば、当然保護をいたしております。
  114. 門司亮

    ○門司委員 それから、さらに聞いておきたいと思いますことは、沖繩住民日本の国民であることに間違いはない。従って、戸籍上からいけば、福岡の法務局は大体登録することになっておる。しかし、これが完全であるかどうかということについてはいろいろな疑問がありはしないか。私どもの聞いておる範囲では、沖繩同胞は大体八十八万二千と現在言っておりますが、福岡の法務局に届けられている戸籍上の問題は、これより数がはるかに少ないように聞いているのですが、この辺について外務省はどういうように取り扱いをされておりますか。
  115. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 日本におります琉球籍の人につきましては、福岡の法務局に身分上の変動というものが届けられております。そして、琉球におります人は向こうで変動が届けられる。ところが、その間の調整を要しますので、お互いに情報の交換をいたし、整理をいたしております。
  116. 門司亮

    ○門司委員 そして、さらに戸籍のことでもう一つ聞いておきたいと思いますが、沖繩同胞日本人であることに間違いありませんから、日本に向こうから渡航してきて、そうして日本に永住するということについては大して支障はない。しかし、沖繩の人に言わせれば本土といいますから、この機会に本土という言葉を使っておきたいと思いますが、本土からかりに沖繩に嫁に行くというような場合には、何か向こう側の永住許可証をもらわなければ長くいられないということになっているように聞いておりますが、それは事実ですか。
  117. 宇山厚

    ○宇山説明員 婚姻の場合は転籍が自由にできます。高等弁務官の許可が出るようになっております。許可されないというケースはございません。
  118. 門司亮

    ○門司委員 その他の永住についてはどうなっておりますか。婚姻の場合はそれでよろしい。
  119. 宇山厚

    ○宇山説明員 永住の場合は一々許可を要します。婚姻の場合には、原則としてすぐ許可されております。
  120. 門司亮

    ○門司委員 とにかく、許可をすることには同じことだと私は思います。問題は、日本人であって、日本人の籍があって、そうして、ただ施政権を持っているというだけで、一体戸籍に対してそういう処置ができるかどうかということです。戸籍の権利は日本にあるのであります。日本人であります。その戸籍の権利、いわゆる人間の最大の基本的の人権ですね。自分の籍を明らかにするということですから。この戸籍の権利が日本にあるといたしますならば、婚姻で向こうに行った人が少なくとも原則として許可を要することになっているということでは、日本潜在主権というものについて、私は日本外務省というものはよっぽどどうかしていると思うのですが、どうなんですか。もう少し強く、当然日本人としての取り扱いをさせることができないかと思うのですが、どうですか。戸籍が入ればそれでよろしいんだということになるんじゃないかと思いますが、どうなんですか。
  121. 伊關佑二郎

    ○伊關政府委員 御質問の御趣旨がよく了解できないのでございますが、戸籍上の権利ということと居住するということとは別の問題じゃないか、こう考えます。戸籍上の権利、戸籍行政という点になりますと、向こうは向こうでやっておる、こちらはこちらでやっておる、それで食い違いができないように今調整をやっておるわけであります。戸籍上の権利とおっしゃる婚姻だとかなんとかは自由だと思いますが、ただ居住の問題で今そういう問題が出てきておるわけであります。
  122. 門司亮

    ○門司委員 こういうことになるんじゃないですか。少なくとも日本人としての戸籍を有する者は、日本人としての領土の中には自由に行っても差しつかえないんじゃないか。だから、沖繩住民諸君は内地に来れば何も日本の許可を得ているわけじゃないんですよ。永住ができるのですよ。ただ、本上から沖繩に行った場合に許可を得なければならない。日本では婚姻というものと永住というものはそうやかましいものではない。これは一致していなければお嫁に行けないんですよ、まごまごしていると。戸籍上の取り扱いが、それを許可をするというようなこと自体が、私は少しおかしいんじゃないかと思う。いわゆる結婚をして同棲をするということは、それはいずれの府でありましょうとも当然の人間としての考え方であるはずです。それが、一方的に、夫婦であるけれどもお前さんは許可がなければ住んではいけない、こういうことは私はおかしいと思うのですが、どうなんですか。
  123. 中川融

    中川政府委員 これはもちろん日本の領土であり日本潜在主権がある地域でございますが、平和条約三条によって立法司法行政三権は全部及び一部を行使する権利をアメリカは持っておりまして、日本はそれを認めているわけでございますから、その行政権の現われといたしまして、そこに今まで住んでいない住民、たといそれが日本人でありましょうとも、入ってくる者に対してアメリカ行政上のコントロールをするということは、これはできるわけでありまして、その一つの現われとして、日本からの渡航というものにある種の統制を加えているというわけでございます。従って、これを日本の領土であるから当然日本人は行けるんじゃないかということには、必ずしも法律はならないわけでありまして、一般日本人の渡航も、先ほどからお話しになりましたように、一々アメリカ側が許可するわけでございます。これと同様なことになるわけであります。
  124. 門司亮

    ○門司委員 私は渡航の自由は認めらるべきだと思いますが、この議論をしていると長くなりますから、ただ婚姻だけに一応限ったのでありますが、これは普通のところと違うのですね。また、向こうの施政官がおって、この人間は好ましからざる人間だから入国を拒否しておこうということで、今まで国会議員を国会議員としての立場から入れたことはほとんどないです。私も正式に二回行っておりますけれども、みんなこれは向こうの施政官の招待ということで、向こうから指名してこっちから行っておる。それはある程度向こうでやれるかもしれない。しかし、この問題については問題がございますが、少なくとも、婚姻によって向こうに同棲しようとする者が、アメリカの許可を受けなければお嫁に行けないということになると、実に人道上の問題だと思うのですけれども、これ以上あなた方に聞いても回答ができなければ、時間が来ますから申し上げません。  次に問題になりますのは、財政上の問題で日本政府はどう考えているかということでございますが、沖繩に対する財政上の援助としては、御承知のように、アメリカのプライス法があります。プライス法によれば、六百万ドル以上にこえてはならないという規定があって、結局一年に二十一億何がししか援助はしない。しかし、その他の援助をしているようでございまして、統計を見ておりますと、一年に大体五十億くらいのものが出ておるようでありますが、これはいずれも軍事目的のためにアメリカが使う金が加算されておって、必ずしもプライス法によって出された金とは考えられない。ところが、沖繩をかりに日本の他の府県と同じように考えて、鹿児島県、宮崎県あるいは山梨県というような類似県と比較いたしてみますと、当然交付金だけでも五十億ないし六十億くらいのものが私は行かなければならぬと考えておる。同時に、沖繩は、県としての処置だけではございませんで、小さいながらも何か国のような形で、支出は非常に多いのであります。そういうものに対して政府はどういうふうにお考えになっているか。これは財政基盤の確立のためにも私は非常に重大な問題だと考える。沖繩経済は全くアメリカの軍の経済に委任をしておるのであって、そうして、独立した関係はちっとも持たれておりません。われわれはどうしても日本からアメリカの軍基地を早く撤廃してもらいたいと思いますが、軍の基地がなくなった場合には、やはり沖繩は独立しなければならぬということを考えると、少なくとも日本政府はその準備をすべきである。そうして、沖繩の財政力の培養のために相当の援助をする必要があると考えておるが、この辺はどうですか。新しい確固とした法律か何かでやれませんか。
  125. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私もその点は今の門司先生の御意見と全く同感でございます。大いにその点を改善いたしたいと考えまして、池田ケネディ会談におきましても、その点強調いたしまして、いわゆる県並みということを目標にして双方で考えていこう、こういうことになっておるのであります。ケイセン報告というのが出て参りますと全貌が判明いたしますけれども、間もなく何か出るようでございますが、それが出た上ではっきりしたことが申し上げられると思います。
  126. 門司亮

    ○門司委員 それから、その次に聞いておきますが、沖繩の実態をほんとうに日本政府が責任を持って、また日本の国会が責任を持って十分に知るという意味から言えば、当然日本の国会の自発的な意思に基づいて国会議員の派遣が行なおるべきだと考える。しかし、これについては、従来の考え方からいけば、アメリカはかなりこれを阻止しておる。また、なかなか許可をしてこない。こういう点について外務省は一体どうお考えになりますか。今日まで占領されて十何年の間に、アメリカは、アメリカの上院議員、下院議員がほとんど毎年のようにアメリカの国会を代表して視察に来ておる。日本の領土であり、日本の八十が以上の国民が住んでおるのに、日本の国会議員はまだ一ぺんも正式に国会の代表として行ったことがない。国民代表として行ったことがない。こういう不都合な話はないと思うが、この点について外務省はどうお考えになりますか。
  127. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 渡航もだんだんに自由化されてきておるのでございますが、原則的に、私は、門司さんの御意見はそうだと思うのです。ただ、この問題については徐々に今おっしゃるような方向にいくべきだと思いますけれども、これは国会の御意思というものに対して行政府がどうと言うべきではございません。われわれも、御意見として、原則としてはそうあるべきだと思っております。
  128. 門司亮

    ○門司委員 えらい遠慮されておりますから、さらに突っ込んで聞いておきますが、国会がそういう意思決定をすれば、外務省ははっきりあっせんをしますか。今の段階ではアメリカはなかなかそう言うことを聞きそうにないのですが、あっせんされますか。
  129. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 実は、先方が高等弁務官の招待ということにしたいということで、先般もさようなことで議員の方々が行かれたわけでございます。先般はそういう状況でございましたので、なかなかこれは私今ここで一存でどうこうと言うことは自信がないのでございますが、先方はまだそういうことを言うだろうと思います。
  130. 門司亮

    ○門司委員 われわれは渡航の一般的の自由を要求している。また、沖繩の諸君もそれを要求している。しかるに、日本の国民の代表であります国会議員の渡航ですら外務省で交渉する自信がないということでは、これは大東亜戦争の最大の犠牲を背負った沖繩住民に対してはなはだ申しわけないことなんです。われわれも申しわけないことなんです。それと同時に、高等弁務官や何かの招待で行ったということは、これは、向こうのスケジュール通りで、たとえば視察も何もできゃしません。向こうさんの都合のいいことだけしか教えてくれない。ほんとうに沖繩の実態を知ろうとすれば、やはり国会独自の立場で行かなければ、産業も経済も住民の生活というようなこともこんりんざいわかりゃしない。私は三十一年に国際自由労連の代表として参りましたが、そのときに行ったときと、去年の夏行ったときの関係というものは、めちゃくちゃなんです。何もわからぬ。ただ行って、ぐるぐると、目隠しをされた競馬馬みたいに回ってくれば、それでおしまいだ。こんなことでは沖繩を見たということにはならないでしょう。沖繩に行って二、三日おったというだけであって、沖繩を見たと私は言えないと思う。こういうことが、戦争の最も大きな犠牲者になっております沖繩住民に対する日本の国の、あるいは日本政府の態度かということです。外務大臣はもっと強く、アメリカに遠慮しないで、そういうばかな話はないじゃないか、お前の方の国会議員は毎年々々来ているじゃないかということで交渉すべきです。行政権はないにしても、潜在主権はある。その沖繩住民を国際的にも保証しなければならない責任のある日本の国会の代表すら、向こうに視察に行くことが困難だというに至っては、これはめちゃくちゃな話だと言うべきだと私は思うのです。外務省、どうです。もう少し強く、はっきり交渉される意思はございませんか。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 具体的なお話がございましたら、私は大いにごあっせんを申し上げます。
  132. 門司亮

    ○門司委員 どうも心細い話で、そうアメリカに遠慮しなくてもいいと思うのです。  それから、もう一つの問題は、沖繩代表日本の国政に対する参与、これについての考え方であります。安里君が参議院の全国区に立候補するということを一応宣言いたしました。これはアメリカも一応認めざるを得ない。戸籍が日本にある限りにおいては、戸籍法が国際的にも認められている環境においては、これは当然立候補できると私は思う。しかし、居住の制限その他がある場合は、これも直ちにやることはなかなか困難があります。こういうことではほんとうに沖繩の八十八万の住民意思を祖国に反映させることは私は困難だと思う。国会の代表者すら向こうに行って十分に視察ができないで、そうして沖繩を論ずるということ自身、私は僣越しごくのことだと思う。沖繩を論ずるなら、やはり、沖繩の諸君が日本の国会に籍を置いて、そうして沖繩の実情というものを訴えて、沖繩の実態というものが明らかになってくるということが私は正しいと考えておる。そういう問題について外務省はどのように考えておるか、一応聞かして下さい。
  133. 宇山厚

    ○宇山説明員 現行の公職選挙法は、被選挙資格といたしまして、日本国民たること、それから、衆議院議員たるためには年令満二十五才以上、参議院議員たるためには年令満三十才以上であること、それから、法定の欠格条件がないということ、この三つの点を規定しているだけでございます。従って、本土に居住していることを要件としておりません。よって、日本国民であります沖繩住民が公職選挙法の規定に従って本土の所定の手続をとります場合には、立候補が認められるべきものだと考えております。
  134. 森下國雄

    森下委員長 本日はこれにて散会します。    午後二時三十一分散会