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1962-04-26 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年四月二十六日(木曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君    理事 山口 好一君 理事 岡  良一君    理事 山口 鶴男君       安部晋太郎君    佐々木義武君       石川 次夫君    三木 喜夫君       内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       山本 利壽君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁振         興局長)    前田 陽吉君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      尾村 偉久君         厚 生 技 官         (医務局長)  川上 六馬君         特許庁長官   伊藤 繁樹君  委員外出席者         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         通商産業事務官         (公益事業局次         長)      宮本  惇君         参  考  人         (原子燃料公社         理事長)    高橋幸三郎君         参  考  人         (原子燃料公社         理事冶金部長) 今井 美材君         参  考  人         (原子燃料公社         理事開発部長) 三沢 英勝君     ――――――――――――― 四月二十五日  利根川上流放射線化学中央研究所設置反対に  関する請願加藤高藏君外一名紹介)(第四七  五六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会審査に関する件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(原子力行政一般  に関する問題)  発明及び特許に関する件  ガン対策に関する件  請願   一 放射能対策に関する請願大高康君紹    介)(第二一七号)   二 利根川上流放射線化学中央研究所設置    反対に関する請願加藤高藏君外一名紹    介)(第四七五六号)      ――――◇―――――
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  まず、閉会審査に関する件について、各般の事項について順次お諮りいたします。  まず、閉会審査申し出の件についてお諮りいたします。  本特別委員会は、閉会中もなお科学技術振興対策に関する件について審査いたしたい旨、先例により文書をもって議長に対し申し出を行ないたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     ―――――――――――――
  4. 前田正男

    前田委員長 次に、閉会中の委員派遣に関してお諮りいたします。  閉会審査を行なうにつき、委員を派遣して実地調査を行なう必要もありますので、その場合には派遣委員の数、その選定派遣地及びその期間並びに議長に対する承認申請手続等は、すべて委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     ―――――――――――――
  6. 前田正男

    前田委員長 次に、現に設置されております科学技術の基本問題に関する小委員会は、閉会中も開会することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     ―――――――――――――
  8. 前田正男

    前田委員長 次に、閉会中における理事並びに小委員の辞任及び補欠選任に関する件についてお諮りいたします。  本件につきましては、そのつど委員会に諮ることなく、その決定委員長に御一任願っておきたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     ―――――――――――――
  10. 前田正男

    前田委員長 次に、閉会審査のため参考人より意見を聴取する必要が生じることも考えられますので、その人選その他所要の手続等につきましては、あらかじめ委員長に御一任願っておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ――――◇―――――
  12. 前田正男

    前田委員長 次に、請願審査に入ります。  本日の請願日程第一、放射能対策に関する請願及び日程第二、利根川上流放射線化学中央研究所設置反対に関する請願を一括して議題といたします。  この両請願趣旨は、すでに配付されております文書表により御承知のことと思いますので、委員会における紹介議員説明並びに政府意見聴取を省略し、先ほどの理事会協議に従い、直ちにその取り扱いを決定いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  それでは、お諮りいたします。  本日の請願日程第一、放射能対策に関する請願は、採択の上、内閣に送付すべきものと決し、日程第二、利根川上流放射線化学中央研究所設置反対に関する請願は、その採否の決定を留保いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  ただいま議決いたしました両請願委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  15. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。     ―――――――――――――
  16. 前田正男

    前田委員長 なお、当委員会に送付されました陳情書は、放射能対策確立に関する陳情書一件でございますので、念のために申し添えておきます。      ――――◇―――――
  17. 前田正男

    前田委員長 これより科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  原子力行政一般に関し、原子力発電所候補地及びその他の事項に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  18. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私の御質問を申し上げたいのは、ずいぶん前に原子力発電所候補地選定に関して、当局はいかなる構想をもってこれに当たられるかという点に対して、御答弁が統一されておらないようなうらみがありましたので、十分原子力委員会においてもこの問題について御協議を賜わり、また、行政担当原子力局としても、それについて関係通産当局とも御協議を願った上で、はっきりとした将来の原子力発電所候補地選定に関する統一見解を承りたいという御要求を申し上げておったのであります。国会ももうすでに会期末に近くなって参りましたので、この際これに対して御答弁を願いたい、こう思っております。  と申しますのは、原子力発電は、十カ年間に百万キロ、二十カ年間に七百万キロという長期計画を立てられておるのでございますが、コールダーホールは東海村において建設中でございますから、ここ三、四年で完成するといたしましても、第二基目の炉は、今の原子力発電会社アメリカから適当な炉を選定いたしましてこれを建設いたしましても、なおかつ六、七年の歳月を必要とするだろうと私は思うのであります。この六、七年間における日本生産体制が必要とするエネルギーというものは、おそらく現状の倍以上のエネルギーを必要とするのではないかと思うのであります。そういう点から考えますと、原子力発電所の第二基目の完成というものを便々として待っておるというわけにはいかない。必ず重油その他による直ちにエネルギー源として使い得る発電計画というものが推し進められるのじゃないかと私は思うのであります。そういう点から見ますと、この原子力発電計画というものは、将来における日本産業構造図というものにも非常な影響があるわけであります。でありますから、こういう候補地をいかなる場所に選定して、いかなる産業構造図を新たに日本に築き上げるかということは、これは原子力政策としては非常に大きな分野でないかと思う。原子力委員会は、私が申し上げるまでもなく、原子力平和利用に関する政策決定するということが一番最初に掲げられ任務でありますので、そういう遠い見通しに立った大局論から、日本原子力発電というものはいかにあるべきか、その候補地というものはどういうふうに選定していくべきものであるか、というように御決定を願うのが正しいあり方じゃないか。株式会社という営利的な関係からのみこの候補地選定していくということでなく、やはり大局から、遠い先のエネルギー源としての原子力発電というものを考えて候補地というものの選定をやっていく。これは今国会で問題になっておりまするいわゆる新産業都市建設促進法案というようなものにも関係があるでありましょうし、国家全般にわたる総合エネルギー対策というものにも非常な関係があると私は思うのであります。こういう点は深く原子力平和利用対策の根本として間違いのないような線を打ち出しておかれて、そうして候補地選定というものは、行政庁であるところの原子力局がこれは担当してやるべきであって、ほかにこれをゆだねるべきものではない、私はそう考えておる。そういう線を出していただかないと、昭和三十八年度に対するところの予算において、この調査費をいずれにどのくらい要求するかということにも問題が関連して参るわけでございますから、一つこういう点に対して、はっきりした統一見解をお示し願いたいと思うわけでございます。
  19. 前田正男

    前田委員長 ただいまの齋藤憲三君の質問に対する御答弁とあわせまして、それを含めまして、今まで当委員会で問題になりました原子力行政に対して、原子力委員会統一見解をまとめられておるそうでありますから、これをまとめて一つこの際御発表を願いまして、そうして齋藤委員質問にお答えを願いたいと思います。
  20. 兼重寛九郎

    兼重説明員 ただいま齋藤先生から、原子力発電所立地についてかねて原子力委員会統一見解を求めておいたのであるが、それを聞きたいという御質問でございます。ところが、ただいま委員長から、そのほか宿題になっておりました統一見解につきましても先に一緒に御報告した方がよかろうということでございますので、そういうふうにいたしますからお許し願いたいと思います。  お手元に「原子力発電所立地等に関する統一見解について、三十七年四月二十六日、原子力委員会」という表題の資料が参っておるかと思います。その第一は、ただいま御質問を受けました「原子力発電所立地について」でございます。読みます。  (1) 原子力発電所立地について    原子力発電所立地については、安全性電力需給および産業立地諸点考慮されるべきであるが、当面原子力発電推進するにあたっては、地域開発観点もあわせて、考慮することが必要である。    なお、従来から通商産業省において一般的立地調査を行なっているが、今後原子力委員会としては上記の観点からこれが積極的推進を図ることといたしたい。  (2) 射爆場返還問題について    水戸射爆場の返還は、原子力委員会としてもかねてから強く希望しているところである。しかしながら、この返還代替地の提供が条件となっているので、今後共関係行政機関と協力して、返還が実現するよう努力したい、  (3) アイソトープセンターについて    アジアアイソトープ訓練センターについては、去る二月十五日IAEA事務局計画の概要を提示した。本件については、IAEA方針、同加盟国の意向についても考慮しなければならないが、当方としては、IAEA理事国と折衝を行なうとともに関係アジア諸国とも積極的に接触を図るなど、鋭意努力中であり、是非とも実現したい。  (4) アジア原子力会議について    アジア原子力会議については、IAEAの参加をえて昭和三十八年三月頃開催するよう準備中であるが、わが国においてIAEAの主催するシンポジウムの開催方も勧誘されているので同じ頃それに引き続いて開催することを考えている。   なお、アジア原子力会議開催については、会議内容をかため予算上の経費(外務省の国際会議費)を確定すると共に今後とも関係国と緊密な連繋を保つよう努力する所存である。  (5) 原子燃料国産化について   (イ) 天然ウラン燃料の製錬については、現在、原子燃料公社中心として探鉱から製錬までの技術開発を図っているが、将来は民間企業において事業化されることを期待しており、本格的事業化を促進する場合は、公社及び民間において開発された最も有利な製錬方式を採用することとする。   (ロ) 濃縮ウラン燃料については、長期的見透しの上にその開発を進めることとしており、長期計画の後期十年の後半にその一部の国産化を可能とすることを目標としているが、当面、公社及び原研を中心として一般的基礎研究推進に努める方針である。   (ハ) なお、加工を含めた今後の燃料国産化については、諸条件を勘案してなるべく早期に具体的プログラム確立したいと考えている。  (6) 核燃料の再処理問題について    使用済燃料の再処理については、かねて原子力委員会処理専門部会検討中のところ、四月十一日報告書の提出があったので、今後同報告書について検討するとともに関連する諸設の事情をも考慮して決定することとしたい。  こういうのでございまして、それぞれ何がしかの説明を加える方が適当かと思いますけれども、御質問にお答えする方がかえってお知りになりたいと思うことにお答えすることになって時間の節約になるかと思いますので、ただいまは一応これでとどめたいと存じます。  それでは、先ほどの齋藤先生立地の問題についてだけ御説明申し上げます。ここの(1)に書いてありますように、発電所立地につきましては、原子力発電所安全性ということを考える必要がございます。これはもちろん地質でありますとか、気象条件地質の中に入るのかもしれませんけれども、地震の履歴というようなこと、あるいは人口密度というふうに、いろいろ安全性に関連した事柄。それから電力需給上の問題、送電線のことなども考慮に入れる必要があろうかと思います。そのほか、産業立地諸点というようなことが考慮されるべきものであることは申すまでもございませんが、これからのわが国原子力発電推進するというようなことを考えますと、以上のことだけではなく、さらに地域開発というような観点考慮に入れて立地を考えることが適当であろうというのが原子力委員会として考えておることでございます。  そこで、そういうことから候補地原子力委員会あるいは行政庁であります原子力局がみずから調査をいたしまして、まず第一番目にはこの土地、その次にはこの土地というようなふうにすべきであるかどうかということになりますと、この統一見解から出ておりますことは、個々候補地原子力委員会の方で第一番目はここに置く、第二番目はどうというふうにすることは適当でないと考えておるわけです。そこで、従来から通商産業省一般的な立地調査を行なっておりますが、それがはなはだ微温的であるという御批判を受けることについては、そうではないというふうに申し上げるのは、やや私どもも困難を感じるところでございますので、今後原子力委員会といたしましても、先ほど申しましたような観点から、これを積極的に推進したいということでございます。それで、現在、原子力発電民間電力事業者の協力によってこれを進めるという建前をとっております。これが最近の情勢から、ただそのままでほうっておいていいかどうかということには問題があることは、かねて御指摘の通りでございます。その点をどういうふうにしていくかということについても、私ども検討中でございますが、ただいままで統一見解といって申し上げるほど固まってはおりませんけれども、従来、日本長期計画で立てておりました基本方針を根本的に変えるというのは必要もないし、適当でなかろうというふうに考える人が多いわけでございます。さりとて、今のままにしておいていいというのでもないことは言うまでもございません。従って、その基調をなす長期計画にありますようなものである限りは、やはり個々のものは設置者から申請を受けて、これを適当であるかどうかというような判断をするという建前は今まで通りとっていきたいということでございます。ただ、今後二十年の間には七、八百万キロワット以上の発電所を設けるということからいえば、かなりの個所が必要であることは申すまでもありませんので、そういう土地が非常に余裕を持って選べる状況であるのか、あるいはそれが相当窮屈であるのかということは、十分把握しておく必要がございますから、そういう点におきまして、従来以上にこれを積極的に推進したいというふうに考えるのであります。その点がただいま統一見解と申し上げましたことの主要点でございます。
  21. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 どうも、わかったようなわからぬような統一見解でありますから、あと速記録をよく読んで、はたして私の御質問申し上げた趣旨にかなう統一見解であるかどうか検討をいたしたいと思うのであります。きょうはたくさんほかに御質問があるようでございますし、しかもまた、時間一ぱいでおさまるかおさまらないくらいの問題があるようでございますから、あえてここでこの原子力発電所候補地に対する統一見解についてこれ以上の御質問を私は申し上げませんが、要するに、日本総合エネルギー対策一環としてこの原子力発電というものを考えてもらいたい。そうなりますと、原子力委員会は、従来のようなこそく因循な態度を一擲して、各関係行政機関との間で話し合いをしなければならないし、また大局に立って、日本の将来をになうところのエネルギー源としてどういう構想でもって原子力発電所を作っていくのかという根本問題に触れていかなければならない。ですから、それはどこか、やる会社適地だといって出してきたところを、こっちで適地であるか適地でないか調べに行くのだ、そんななまぬるい統一見解を僕は要求しているのじゃないのです。もっと国家の将来に対する総合エネルギー対策一環として、原子力発電というものはいかにあるべきかという大政策を立てた上に立っての統一見解要求しておるのであります。そういう点からいって、きわめて間幅の遠い統一見解のように考えられる。しかし、兼重先生は上手にそういうふうに言っておられるのかもしれませんから、私はよく速記録を読み、今度は間違いのない点で、これは急ぐことじゃありませんから、もう一ぺんやることにいたします。  その次の、射爆場返還問題であります。これも統一見解としては何らわけがわからぬのです。われわれが要求している射爆場返還問題というのは、大体見通しはどの程度でこの問題が解決できるのかということに対する見解要求しているのです。これなら従来と同じことで、あえて統一見解を求める必要はないのであります。この問題につきましては、私はあまり関係がありませんで、最も関係のある石川委員関連質問要求しておられますから、御質問をお譲りいたしますから、徹底的にお願いいたします。
  22. 中曽根康弘

    中曽根委員 関連して。ただいま原子力発電所立地の問題の質問がありましたが、このことに関連して私はお願いを申し上げたいと思います。  最近、エネルギー総合政策確立が非常に叫ばれておるのでありますが、その中で特に原子力委員の皆さんに注意していただきたいと思いますことは、原子力の問題が割合に閑却されているということです。たとえば、この間通産省は総合エネルギー懇議会を作るということに際しても、原子力サイドからの代表者を入れることを忘れておった。そういうことに気がついて、われわれも運動して、初めてあとから多分入れられるでしょう、そういうことになった事態があるのであります。ところが、世界的にも国内的にも相当な国費を使い、また将来性が約束されておる原子力の問題について、政府総合政策の中でその程度の関心しか払われておらないということは、原子力委員会の怠慢であるとすら言われても差しつかえないと私は思うのであります。  そういうことがなぜ起きたかということを考えてみると、一般風潮として、原子力はまだまだである、原子力政策は世界的に停滞しつつあるというような風潮世の中を支配しておる。そういう線から閑却されているという結果が出てきていると思うのです。それが事実であるならやむを得ない。原子力というものがほんとうにまだまだ迂遠のものであり、あるいは価格その他の点についても、われわれの現実政策射程距離に入ってこないというものであるならば、これはその通りやっていいと思う。しかし、私らは必ずしもそうとは思っていない。そういう面からして、原子力エネルギーの中におけるポジションについて、もう少し原子力委員会として世の中を啓蒙したり、政府に対して教育をする必要があるのではないかという気がいたします。  そこで、具体的な問題になりますと発電になりますけれども、この発電の中で今どの程度位置原子力発電は占めるべきかというエバリュエーションの問題が出てくる。われわれのところに外国のGEとかウエスティングハウスとか、いろいろな会社資料日本商社を通じて入ってきておる。私は相当たんねんにそれらを読んでおる。しかし、日本貿易商社を通じて入ってきておるその資料がどの程度正確性を持っておるかは、これは非常に疑問である。相当商業的なコマーシャルが入っておるとわれわれは考えざるを得ない。そういうような点を一つ正確に資料として把握するということが大事であります。先般前田委員長以下米国その他へお越しになりまして、かなり御研究になってきておるようでありますが、この際ここで私お願いいたしたいのは、そういうアメリカあるいはイギリスの各原子力発電タイプについて、最新の情報を資料として原子力委員会が出していただきたい。そうして、原子力委員会としての所見を書き加えて、これは書きものとして出していただきたい。  それと同時に、もう一つは、各商社委員長の方から連絡してもらって、三菱とか、三井とか、丸紅とか、いろいろございますそういう商社に対して、最も新しい原子力発電に関する資料を、正確なものを出してもらい、そうして参考人としてこれらの商社専門技術家を招致して、自分たちが担当している原子力発電について説明を聞く、有力なタイプについて説明を聞く。そうして、一体どのくらいのコストがかかるのであるか、どういう程度危険性が考えられるのか。それを今までのように、単に文書で郵便で送られているのを読むというだけでなくて、相当責任性のある発言を、日本商社関係会社をしてさせる。各タイプについて一々われわれが点検してみる。それに対する原子力委員会としてのエヴァリュエーションをやってもらいたい。必ずしもそれが何円何銭というふうに出るものではないと思いますけれども、大体の現在の原子力発電位置というものを知る上についてこれは非常に重要であります。そういうことを一回閉会後の委員会においてやっていただきたい。それによって総合エネルギー対策の中における原子力位置というもののアウトラインをわれわれはつかむこともできるでありましょうし、新聞その他ジャーナリズムにおいても、そういう認識を聞くことができるだろうと思います。そのことが立地の問題に先がけて現在一番大事な問題である。そういうように思いますので、その点を原子力委員及び委員長に対してお願いいたしたいと思います。
  23. 前田正男

    前田委員長 ただいまの中曽根君の御発言に対しましては、理事会に諮りまして、適当に御希望に沿うように善処いたしたいと思います。
  24. 兼重寛九郎

    兼重説明員 ただいまの中曽根先生からの御希望につきまして、私も意味を了解いたすものでございます。それで、できるだけそういう御希望に沿った資料を作るように努力いたしますが、責任のある評価を資料というものは非常にむずかしいことでございますので、それがどの程度御満足いくかどうか、今自信はございませんけれども、できるだけの努力をいたしたいと思います。
  25. 中曽根康弘

    中曽根委員 その時期は、必ずしも来月といわぬでもいいのです。あるいは二カ月かかってもいいから、現段階における最も正確を期したものを、一つみんなで作ってみようじゃありませんか。原子力委員会も、あるいは委員会側も努力して、二カ月かかってもいいから、一定の目標の時期をきめて、最も正確なものを出していきたい。そういうことにしたいと思います。
  26. 前田正男

    前田委員長 次に石川次夫君。
  27. 石川次夫

    石川委員 ただいま、原子力発電位置あるいは原子力発電の将来の展望について、総合エネルギー対策一環として、大いに将来性のある展望の上に立って積極的に発電所の設置その他を推進しなければいかぬという意見は、もちろんわれわれとしては原則的に全く同意見でありますけれども、私は立場上現地にコールダーホールの発電所、あるいは原子力研究所というものを持っておるものでありますから、そういう原子力の円滑なる発展を実現させるためには、やはりどうしても安全性というものが確立をされなければいけないという考え方を捨てることができないわけでございます。そこで、先ほど斎藤さんからも意見がありましたけれども、この統一見解は、そう言っては大へん失礼でございますが、「原子力発電所立地について」ということは、大体小学校を卒業した程度の人ならこの程度のことは考えておると思うのです。これを統一見解として発表するからには、やはり一歩突き進んだ意見を具体的に出しておいて、それについて世論の反発を受けて袋だたきになるかもしれないけれども、そこから一歩踏み出して具体的に一歩前進しようというかまえでないと、これでは何のための統一見解かさっぱりわからないと言っても過言ではないと思います。  そのことについての批判は申し上げても仕方ないと思いますけれども、三十七年三月三十日の「原子力発電所立地調査について」というのがあります。どこから出たのか、発行者名が出ておりませんが、おそらく政府委員室あたりの方から出ているのではないか、こう思います。その中で、いろいろ通産省において総合的視野に立って立地調査を実施してきた。その一つ条件として、実施状況の中で、水利、社会環境、地形、今後の調査というふうなものが出ております。これは原子力委員会の方としてはおそらく目を通されたのじゃないかと思うのですけれども、この水利あるいは社会環境の立地基準というものは学問的な異論がいろいろ出るかもしれません。しかし、曲がりなりにでも、こういうふうな一応の基準を設けて具体的に進めようと考えてきているという積極的な意欲というものは、一応評価してよろしい。ただし、この内容については、原子力委員会としてもいろいろ意見があるのじゃないかと思いますけれども、こういう一応の基準に基づいて原子力発電所立地調査というものを進めておるということは原子力委員会としては承知をしておるわけでございましょうか。
  28. 兼重寛九郎

    兼重説明員 この前、基準のことについて御質問がありまして、私お答えしたことがございますが、実情はそういうふうでございますから、非常に数字的な、はっきりした基準を立てて、これにかなう意味の場所を探すというほどはっきりはしておりませんけれども人口密度、地形、地質、まだそこには気象条件は入っていないと思いますけれども、さらにもう少し進んだ状況になればそういうことも調べるというふうに、安全性を主にした考え方で調査が進んでおります。しかし、通産省の方では、電力需給でありますとか、産業立地のことも同時に考えられると思われるのでありますけれども、私どもといたしましては、ただいま御指摘のように、安全性ということに重点を置いて調査を進めるように考えておるわけでございます。
  29. 石川次夫

    石川委員 あと質問が大へんつかえているようですから、あまり長々と申し上げたくないのですが、この通産省の出している基準の中で、社会環境というのを一つ例として申し上げておきますと、半径六百メートル以内にほとんど人家のない土地が得られること、それから地点の周辺一・五キロメートル以内に大きな部落がないこと、あるいは地点の周辺一・五キロメートルから八キロメートルの間に大きな部落の集落のないこと、それから地点を中心とする半径二十キロメートル以内に人口五万以上の都市の中心のないこと、こういう立地基準で、曲がりなりにも一応の基準としてこれに基づいてやっているわけです。どんどんやっているのだろうと思うのです。このやっていることに対して、原子力委員会原子力開発の最高権威といたしまして、これでよろしいのだ、あるいはもっとこれ以外の条件をつけ加えなければいけないのだというふうな指導といいますか、関連はどういうふうにとってやっておられるか。野放しにしてこのままでよろしいのだということでやっているのか。あるいはこれだけではまずいのだ、もっとそのほかに条件をつけ加えなければいけないのだというような注意を与えて、強引に指導してやっておられるのか。その辺の関係がわからないものですから、一応御説明願いたい。
  30. 兼重寛九郎

    兼重説明員 ただいま御指摘になりましたような条件は、通商産業省の方にできました安全関係委員会で作った基準でございます。それについて、私ども特にこれをどういうふうに改めるのがいいというはっきりした意見はございませんので、それで進めることを了承しておるわけでございます。なお、先ほど申しましたように、これにつけ加えるということも出てくると思いますけれども、現在調査の段険ではこれを基準にして調べるということで、さらにその基準をしぼる段階に至って次の問題が入ってくると考えておりますので、そういう連絡はとりながら進めておるわけでございます。
  31. 石川次夫

    石川委員 何か知りませんが、通産省が独走して、あとからついていっているという感じで、非常に原子力委員会の権威を疑われるようなことになるのではないかという懸念がありますけれども、しからば、社会環境の一応の基準としてこれは出されたものでありますが、これは東海のコールダーホールに当てはめるとどういうことになりますか。
  32. 宮本惇

    ○宮本説明員 お答え申し上げます。この基準は、当時いろいろ議論されましたファーマー論文を基礎として作成されましたもので、東海村はこの基準から見て差しつかえないものと考えております。
  33. 石川次夫

    石川委員 そうおっしゃいますけれども、私は、この基準では非常にきびしいとか甘いということを言いますと、あとで安全基準を設けるときに政治的配慮が払われるのではないかという心配がありますから、言いたくはないのですが、東海を中心として二十キロ以内には日立があります。水戸もその近所にあります。日立は十七万の人口です。二十キロ以内に日立がないということはだれも言えないでしょう。すぐ隣です。そういうことから見ましても、確然とこれに対しては抵触をしているという現実が出ている。安全基準というものが確立をされたならば、その基準は少なくとも最低限度守るという立場に立たなければならぬのですけれども、この基準からいったら東海村は全部抵触します。こういうようなことで、地元ではこれが出ると非常に不安を感ぜざるを得ないということになるわけです。こういうようなことをこの公開の席で言いますと、東海村の現状に合わせたような甘い立地基準ができては困るということも考えられますので、私はこの、質問をしていいかどうか多少ちゅうちょしておったのですけれども、少なくともこの立地基準は、東海村のコールダーホールには全部抵触すると見て間違いありません。従って、今後新しい発電所を設ける場合には――私は何も原子力発電の作業というものの足を引っぱろうという気持は毛頭ないわけでありますけれども、しかしながら、安全基準、立地基準というものを早く作る、作ったならばその立地基準に少なくとも合わせるという努力をしないと、非常に不安感を与えるというところから、この原子力発電というものが進捗をしないという結果になることを私としておそれざるを得ないわけであります。コールダーホールの場合にはまた、ファーマー氏の論文というものはあってもなきがごとき形でもって一応できてしまう。あとから見ると非常に甘い基準だと思うのですけれども、ことごとくこれに抵触しておる。こういうのが現実になっておる。従って、私は足を引っぱる気持はありませんけれども、安全、立地基準というものを原子力委員会が最高権威として早く設けてもらう、特に立地基準が中心になると思います。それで安心感、安全感を与えた上で、総合エネルギー対策の中核としての原子力発電推進するということをぜひ急いで――これは急ぐといっても、あまり非学問的なものは困りますけれども、やらなければならぬ段階にきておるということを強く要望申し上げておきたいと思います。この点についてはあらためてまたよく検討し、御質問したいと考えておりますけれども、これは大へんな問題に発展をする可能性があるということを申し上げておきます。  それからあと一つ、これも時間がありませんから簡単に結論的に申し上げます。二番目の射爆場返還問題につきましても、あの地方では一カ月に一ぺんくらい大挙陳情が参りまして、非常に困っている問題です。今大臣の説明か何かございますそうですから、結論だけ申し上げて、あとの機会に譲りますけれども、この統一見解は出してもらいたくなかったということです。この統一見解を出されることによって後退するということを私は申し上げたい。ということは、たとえばこの返還代替地の提供が条件になっておるということは、なるほどそうかもしれません。われわれはそのいきさつはよく承知をいたしております。しかしながら、茨城県の地元の立場からいたしますと、この射爆場が返還されるという条件原子力研究所というものは持ってきたわけです。従って、これは原子力研究所は誘致しよう、コールダーホールも来てよろしい、射爆場は当然返還になるのだということは、今の立地基準からいっても当然のことでしょう。これは立地基準よりも異例の、論外のさたといわなければなりません。原子力発電原子力研究所の隣に射爆場があるということは、非常識もきわまれりというべきでありましょう。従って、返還をされるということは当然の条件として地元としては受け入れた。ところが、これで見ると、「代替地の提供が条件となっているので」云々となっておる。これが原子力委員会あるいは科学技術庁ではない、ほかの第三者が言うのならわかるのです。しかしながら、原子力発電あるいは原子力研究というものを推進しなければならない当面の責任者である原子力委員会自体が、地元のこういう意思もかまわないで、ともかく代替地の提供が条件になっておるというようなことを言ったのでは、私はにっちもさっらもいかぬと思うのです。地元といたしましては、全県をあげて無条件に返してもらう、代替地の問題はわれわれとは関係がないという立場で、言っていることは多少言葉に無理があるかもしれませんが、地元の気持としては、いきさつからいうと当然であるし、特に原子力委員会としてこういう弱い態度で臨むということは、この代替地提供の問題について水をさす形になる。従って、私は統一見解を書き直してもらいたいと思うのですが、いかがですか。これは大臣に伺いたい。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 今のお話はごもっともであります。地元の感覚としてはそうであります。しかし、これは委員会に対する統一見解として、正直に実態を申し上げた方がいいということで、こういうふうにこういうところに障害があるのだということを正直に申し上げたのであります。実際問題としてこの日米の正式の議題にしておるということであります。返還を正式に昨年政府要求して――そうして政府とすれば、射爆場が原子力センターに隣しておるという事実はだれが見ても不適当なことは当然でありまして、代替地なしにでも返してもらえれば一番いいのでありますが、向こうが強くこれを要求しておるわけでありますので、一つの外交交渉と申しますか、相手のあることでございますので、この点にこれがおくれておる原因があるのだということを正直に統一見解の中では述べたのであります。われわれの感覚としては、そのもの自体がああいう原子力の施設と隣しておることは不適当であるという考え方は、今御指摘の石川委員の考え方と変わらないのでありまして、こう書いたからといって、この問題に対して熱意を持っていないのではない。あるいは私自身も、場合によっては、そういうことでアメリカ側とも話をしたいという計画もいろいろ持っておるわけでございますので、これで熱意がないというふうにおとりにならないでいただきたい。委員会に対して正直に実態を申し上げることが適当だと思って、こういう統一見解を出したのでございます。それは熱意がないわけではないのであります。
  35. 石川次夫

    石川委員 時間がありませんから、この点についてはあらためてまた質問をする機会を得たいと思っております。熱意がないということはないでございましょうけれども、しかしながら、この返還代替地の提供が条件だということになっておることは、一応説明する意味で載せたとおっしゃるけれども、非常に受ける印象が弱いという気持は、少なくとも地元のわれわれとしては受け取らざるを得ないわけです。しかも、三百六十万坪という膨大なものが返還された暁におきましては、原子力の関連施設を設けようという一応の構想があるわけです。従って、原子力委員会として、積極的にこの返還の実現をしなければならぬという立場にある当面の責任者としては、何か代替地ということにこだわってしまうことになれば意欲が鈍るのではないか。がむしゃらに返還してもらうのだという強い意欲を持って当たってもらいたいということを要望いたしまして、一応私の質問を終わります。
  36. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 関連。この射爆場の問題は、私も非常に責任がある問題で、常に頭を悩ましておる問題であります。この射爆場返還問題については、私ども委員会の総意を現わした決議丈を――今度長官は五月の末にアメリカに行って、日米科学技術合同委員会に出席されるでしょう。まだきまっておりませんか。
  37. 三木武夫

    三木国務大臣 まだきまっておりません。
  38. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 アメリカに行かれたら、そのときに、一つアメリカ当局と十分折衝して、政治的にこの問題を早急に解決するように取り計らっていただきたいと思いますが、そういうことはどうですか。長官、できますか。アメリカに行かれたとき、この射爆場問題を、こっちの決議文を持っていって、出先の人間と折衝しないで、アメリカ日本との大局からこの射爆場の返還を迫るということをやっていただきたいと思いますが、どうですか。
  39. 三木武夫

    三木国務大臣 相手のあることでございますから、ここでどうということは言えぬが、十分に理由のあることですから、この問題はやはり説得力を持っておるものだと思います。だれが見たところで適当でないことは明らかであります。しかし、どうなるかということは、これは相手のあることで、今予測はできません。
  40. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 できるならば直接ケネディ大統領にぶつかれば、一分間で解決つきますよ。そういうことをお願いをしておきたいと思います。
  41. 前田正男

    前田委員長 次に岡良一君。
  42. 岡良一

    ○岡委員 今齋藤委員石川委員から問題となっておるこの射爆場の返還決議は、昨年の三十六年五月十八日、三党共同提案として、とにかく「各種原子炉の集中せんとする茨城県東海村が、米軍射爆撃場に隣接し、その上空が危険空域として指定されている、実情は、世界的にも異例のことである。」すみやかにその撤収を求めるという強い三党共同の決議案が出ておるのであります。当時の原子力委員長も、善処方をかたく約束をしておられるので、これは一つ長官としても、原子力委員会としても、責任を持って善処してもらいたい。  そこで、私はただ一点だけお伺いをいたしておきたいのです。同時に、この原子力損害の賠償に関する法律案に三党共同の附帯決議をいたしております。この共同の附帯決議の中で、「本法実施に当っては、政府は左の事項の実現を図り、」といたしまして、その第一項に「安全基準を速かに設定し、」とうたってある。そうして当時の池田国務大臣は、ただいまの附帯決議についてはいずれもごもっともなことでありますからして今後万全の措置を講じます、ということを約束しておられる。損害の賠償に関する法律案はすでに発効しておるはずであります。ところが、私どもが幾ら原子力委員会統一見解を求めましても、安全基準の提出を求めましても、いまだに全然お答えがございません。これでは、原子力委員会は原子炉の安全性というものに対してまことに無責任であり、誠意がないといわれてもいたし方がなかろうと私は思う。あるいはまた、われわれ委員会の決議というものに対して非常に誠意がない、われわれの意図というものを無視しておるといわれてもいたし方がないのではないかとも言えるわけでございます。でありまするから、私は強く要望をいたすのでございまするが、どうか原子力委員会としてはもっと責任を持って委員会の決議を尊重し、すみやかに安全基準というものをお示し願いたい。今いただいておる「原子力発電所立地について」というこの文書を見ましても、春の日長のうつらうつらとした作文としては私は了承いたしまするが、少なくとも原子力委員会の出した統一見解としては、こういうものであってはならないと私は思う。こういうものが世間に出されたら、日本原子力委員会というものは私は権威がなくなるのではないかとさえ心配しておるのであります。どうか一つ、この安全基準については、もっと責任を持って、真剣に善処していただきたいということを私は強くこの機会に求めておきます。
  43. 兼重寛九郎

    兼重説明員 安全基準につきましては、ただいまばかりでなく、これまでもたびたび御批判を受けまして、私としては、はなはだ苦慮しておるところでございますが、先ほど決議を無視しておるとか、それに対する誠意がないとかという御批判に対しては、私はそれはどうも納得いたしかねるのでございます。(岡委員「発効までに出して下さいと言っておるのを出してない。」と呼ぶ)そういうことについてかねて私ここで御説明しておりますが、きょうは時間のないところで繰り返すことはいたしませんけれども、私どもとしては十分努力はいたしておるつもりでございます。そこで、そういう基準ができない、それでは何もしないでほったらかしておるかと申しますと、決してそうではなく、それに当たるようなものを念頭に置きながら個々の場合に審査に当たっておるということを御説明申し上げました。そういうので日本としてはいましばらく進むのがやむを得ない状況であると考えておりますが、たびたびそういう御指摘を受けておりますので、今後一そう微力を尽くしてなるべく早く御要望に沿うようにいたしたいと考えております。
  44. 岡良一

    ○岡委員 兼重委員とお話をしておると、きわめて駘蕩たるさみだれ問答になりますが、しかし、できるだけ疾風迅雷的に安全基準を示していただきたい。そのことを重ねて私は強くお願いをしておきます。
  45. 前田正男

    前田委員長 次に、放射性降下物に関する問題について議事を進めます。  この際、本問題についての現況及び政府の対策について、三木国務大臣より発電を一求められておりますので、これを許します。三木国務大臣。
  46. 三木武夫

    三木国務大臣 新聞等で御承知のように、不幸なことではありますが、アメリカが核爆発の実験を開始し、その通知を受け取ったわけでございます。外務省よりの連絡によりますと、「米国の太平洋における一連の核実験の最初の実験は、現地時間二十五日朝に行なわれるが、正確な時間は不明である。」こういう連絡を受けたのであります。まだ公電が入っておりませんが……。本日、日本時間の午前零時四十分ごろ、それも公電がありませんので正確なことはわかりませんが、非常に大型ではないという模様であります。公電があってから正式なことを申し上げた方がいい。われわれの知識も新聞の知識でございます。それと同時に、アメリカ政府からアメリカ原子力委員会の今度の核爆発実験に対する保健安全措置というものの通告を受けました。これはあまり長文でもございませんから、読み上げてみたいと思います。   保健安全措置     アメリカ原子力委員会  (1)フォールアウトを出来る丈少なくする様に核爆発実験の規模、回数等を制限し、去年のソ連の核実験のフォールアウトよりはるかに少なくする。  (2)局所降灰の被害をなくするため、コンピューターなどの改善された技術を用い予想を強化する。  (3)海洋調査を含め放射線生物学的な調査と検査を拡大する。  (4)一般的周知事項   (イ) 実験区域内への許可のない者の立入りを監視するため海空の捜査が行なわれる。   (ロ) 十五の特別の気象ステーションが設けられる。   (ハ) 今回の実験ではそのフォールアウトの一-二%が実験地区内に降下することが期待され、のこりの九八-九九%は赤道地区の上高くに拡散されるであろう。そしてそこでショートライフの核種の放射能は減衰するであろう。   (ニ) 十六のモニタリングステーションが、洋上の島などに設けられる。   (ホ) 重要な食品の分析が重要な核種について行なわれる。そしてスポット検査(spot-check analys-es)は実験区域の外に送られる。例えばまぐろやココナツについて行なわれる。   (ヘ) 全β放射能は海水について調べられる。   (ト) ワシントン大学は洋上の多くの島の生物について調査を行なう。   (チ) 研究所の調査船ギルバード号が放射能分析のために魚を集める。   (リ) アメリカの諸州における放射能嗣査は前回と同じ様な要領で行なわれるであろう。そしてパブリックヘルスサービスによって調査データは毎月刊行されることになっている。  これだけのことが、正式に日本アメリカから通報を受けた文書でございます。  そこで、われわれといたしましては、きょうは午前十時から放射能対策本部の会議を開きまして、この事態に対して、アメリカの核爆発実験というものが今後どういう影響を与えるであろうかという、いろいろな検討を行なったわけでございます。私は会議の途中で出て参ったのでございますが、大体実験を行なった地区のフォールアウトが、降下するのは一ないし二%というようで、九八%ないし九九%は上空高く拡散されるというこの文書からして、おそらく核爆発実験は非常な上空において行なわれるであろう、二万メートル以上のような上空において行なわれるであろう。従って、今直ちに大量なフォールアウトが日本に降下するということは考えられない。今後二年ないし三年という長期にわたって成層圏上空に吹き上げられたフォールアウトが、降雨時期などにこれが降下するので、相当長期のものである。半減期の短いものに対しては二十日ぐらいの間に日本にくるであろう。しかし、それは量としてはあまり多くない。大部のものは成層圏に吹き上げられて、それが長期にわたって徐々に降下するということでございます。  そういうことで、さしあたりとして、われわれの対策としては、こういうことが予測されましたので、今日まで対策として講じておりましたことは、水産庁から漁船に対し、あるいは運輸省から貨物船に対して、危険水域のこれを明示して、警戒の注意の伝達をすでに出しておるわけでございます。また、漁船や貨物船に対して、どういう予定を持っておるかという調査をし、そしてその漁船や貨物船に対して警戒するように注意を伝達した。それから漁船などに対しては、できるだけ計測器類を持ち込むよう水産庁から指導し、いろいろな指示を今後与える場合に、それを接受できるだけの設備を船が持つような指示を与えております。また、厚生省では、漁船の船員、貨物船の乗組員などに対して健康診断を実施することにいたしておる。そういう水域近くを行った漁船や貨物船に対しても健康診断を実施する。それから、漁獲物に対しては、東京都の魚市場等において抜き取りの検査を、もうすでに三十五日から開始をしておるわけでございます。現在の段階では、そういう危険水域近くに行くような漁船あるいは貨物船に対して十分な注意を与え、それに対していろいろな指示を受け取れるような設備をすることを指示し、それから漁獲物に対しての検査をする体制を整備し、あるいは乗組員の健康管理を、実施していこうとしております。  こういう体制でございますが、今後どの程度アメリカの爆発実験が行なわれるかということは、これはなかなか途中では――今回の場合は開始を通告してきたわけであります。おそらく終了を通告するでありましょうけれども、間ではいろいろなことを通告しないでありましょうから、二、三カ月続くものと見て、その間どういう状態になるかということも勘案していろいろな対策を考えておるわけでございます。現在として対策本部でいたしております手はずというものは以上申し述べたところでございます。  ただ、天水の飲用者については、これは単にフォールアウトのことばかりでなく、いろいろな衛生上からいっても、天水を濾過することが健康保持の上からいっても好ましいので、これには何らかの対策を講じたいということで検討をしておる。あまりその費用が多額になってもいけないし、また、その濾過装置などに対して維持するために多額の費用がかかることもいけませんので、できるだけ複雑でなくて、費用もかからない方法で、天水の飲用者に対しては何とか処置をとりたいという考えで、きょうも検討を加えておる次第でございます。  なお、今後、ソ連の核爆発実験による半減期の長いフォールアウトなども累積されていく傾向にありますし、アメリカの核爆発実験によって、そのフォールアウトというものもこれに加わるわけでありますので、一応行政的な措置の目安として、一般的な事態に対しての指標――ここまでフォールアウトが累積してくれば何らかの行政措置をとらなければならぬという指標、これとまた持続的事態――ただ一ぺんにかっと来る場合と、これが徐々にフォールアウトが累積されてくる場合とに分けて、この指標を、放射能対策本部の作業班で結論に達したわけでございます。それで、本日は放射線議会にかけてこれに検討を加えておるわけで、作業班から放射線の、審議会の手に移っておる。きょうも会議を続けておりますが、この結論を得次第、できるだけすみやかに指標を発表して、政府の行政措置の責任を明らかにしたいと考えておる次第でございます。
  47. 前田正男

    前田委員長 次に、原力局長より補足説明を聴取することといたします。杠政府委員
  48. 杠文吉

    ○杠政府委員 ただいま大臣から大綱について、対策本部の対策を中心とする、アメリカの核実験に伴うところの放射能対策に関しまして御説明がございましたが、現在までにフォールアウトはどんなような状況になっておるのかということを補足的に御説明申し上げたいと思います。  昨年の九月一日、ソ連が核爆発実験の再開をいたしましてから、雨水中における放射能というものは漸次高まって参りまして、当初、と申しますのは三十六年の九月の初めごろ、一マイクロマイクロキューリ・パー・CC――一立方センチメートル当たり一マイクロマイクロキューリーぐらいでございましたのが、ピークを示しましたのが、昨年の十月の初めから半ばへかけてでございまして、これがほぼ八十四マイクロマイクロキューリーになっております。それからずっと急激に減衰して参りまして、年度末におきましては五マイクロマイクロキュリー、そのままでずっと持続して、今日横ばいの状況になっております。いわゆるスプリング・マキシマムといわれておりますが、春先ないしは晩春から初夏にかけてのピークはどうかというので、今非常に慎重に調査を進めておるわけでございます。きょうもこうやって雨が降っておりますけれども、ただいまのところ横ばい状態より抜け出しておりません。なお、晩春からのことも考えられますけれども、スプリング・マキシマムと申しますのは、先ほど申し上げておるように、早いときには三月ごろ、おそいときには五月ぐらいから始まって参りますので、そのころのピークはどうなるだろうかということを厳重に見守っておりますけれども、目下のところ横ばいの状況でございます。それが雨水中における放射能でございます。  次には、核種としてのストロンチウムがどうなっているかということでございます。これも昨年末におきまして、野菜の中のストロンチウムは、なまのキログラム当たりにしまして三十七マイクロマイクロキュリーあったわけでございます。それから最近の分析――と申しますのは、分析に相当手数がかかりますので、時間がかかっておりまして、二月までの資料が今整っておるわけでございますが、この新しい情報にまいりますと、七十一マイクロマイクロキュリーに上がっております。上がっておりますけれども、これは先ほど大臣がおっしゃいました暫定指標から考えましても、さほど心配するには当たらないであろうというふうな評価をいたしております。ことに牛乳につきましてのヨード、これは日本における特殊事情といたしまして、非常に低くなっております。たとえば昨年の年末におきましては、リットル当たり二十四マイクロマイクロキュリーでございます。これは東京における調べでございます。それから、英国におきましては百五マイクロマイクロキュリーあるというような状況でございまして、牛乳におけるところのヨードの量も非常に心配するという状況にはない。また、ストロンチウムにおきましても、ことしの初めリッター当たり平均値としまして五・一マイクロマイクロキュリーございました。それが二月には四・四マイクロマロイクロキュリーというふうに下がっております。しかし、地表上におけるソ連の核実験に伴うストロンチウムの蓄積量はどのようにふえておるかと申しますと、これは平方キロメートル当たりの計算になっておりますが、昨年ソ連が実験を始める前の、すなわち九月までは二十ミリキュリーあったものが、昨年の年末からことしの初めにかけまして三十ミリキュリー、すなわち平方キロメートル当たり十ミリキュリー蓄積量がふえておるということでございます。これはやはり徐々にではございますが、漸次ふえていく傾向にあるということでございます。先ほど大臣からも御説明がございましたように、今回アメリカが中部太平洋において実験をいたしました場合、日本においてのフォールアウトの直接の影響というものは二十日ぐらい後に現われてくるだろうと思われますので、以上のようなバック・データの上にどのように積み重なっていくかということを今後も慎重に見守っていきたいというふうに考えるわけでございます。もしも、アメリカから外務省へ公式に通報してきておるように、赤道地帯高く打ち上げられるとしましたならば、おそらく影響は二十日以後というよりも、ずっと後に続いてくるのではなかろうかというふうに予測するわけでございます。何しろ気象庁におきまてしも、前回ビキニの例もございますし、非常に警戒を厳重にしております。徴気圧計等におけるとらえ方についても、最近新しい機械を入れて注意深くフォールアウトの状況をとらえようとしておるのが現状でございます。
  49. 前田正男

    前田委員長 本問題について質疑の通告がありますので、順次これを許します。岡良一君。
  50. 岡良一

    ○岡委員 いよいよアメリカが核実験験を再開いたしました。私はこのことは、フォールアウトの被害というよりも、もっと大きな政治的な意味で非常に残念だと思います。たとえば先般アメリカが核実験再開の決意を表明したときに、軍縮委員会でゾーリン・ソ連代表は、委員会から手を引くかもしれないというような発言もしております。また、先般二十四日のグロムイコ外相の演説によれば、もしアメリカが核実験を強行するなら自国の防衛上われわれもまた核実験をやるであろうということを申しております。こういうことで、全世界の人々が大きな希望と期待をつないでおった軍縮委員会なり、あるいはまた、核実験停止会議そのものが中断されるということが、私どもとしては非常に残念至極でございます。しかしながら、この実験時間ということになれば、放射能対策、なるフォールアウトの対策を講じなければならないことは当然でございまして、この点、この委員会でもフォールアウトの対策はおそらく十分過ぎるほど十分に論じられて参ったわけでございます。ことにまた、委員会の要望に従いまして、原子力委員会放射能対策の中核としていよいよ積極的に乗り出されることになり、この点私は委員長の御努力に敬意を表したいと思うのでございます。  ただ、この際一、二点お伺いしておきたいのでありますが、まず第一点は魚類の汚染、海洋の汚染ということでございます。今御披露になったアメリカ原子力委員会からの通報によりますと、赤道の非常に高いところで実験が行なわれるということでございますが、本日の新聞を見ますとこういう記事がございます。ワシントンからのある新聞の特派員の報道でございますが、米国の実験内容は、潜水艦から発射した核弾頭魚雷が海面から空中に飛び出し、相手の潜水艦に向かって推進した後、再び水中にもぐって目標近く爆発をする実験、実はこういう記事がございました。私はこの記事を見て実にはっとしたのでございますが、こういう実験をやるのかやらないのか、これはわが方としては重大な関心事でございます。こういう報道に対して、原子力委員会としては、あるいは放射能対策本部として、もっと突き詰めて事実を知る必要がある。何らかの対策を持っておられるかどうか。
  51. 三木武夫

    三木国務大臣 外務省からアメリカ政府に対して、実験の内容を知らしてもらいたいということを要求をいたしました。まだ私が委員会に出るまでにはこの情報が参っておらなかったのですが、これは近く来るものと期待をして、外務省も待機しておるわけでございます。われわれも新聞報道だけでしか承知いたしませんので、私から申し上げるよりも、そういうものの根拠のあるもので申し上げた方がいいと思いますので、現在のところではどういう内容のものか申し上げる段階には立ち至っていないのでございます。
  52. 岡良一

    ○岡委員 アメリカで一九五八年からすでに議論されておるのは、核爆雷の生産ということでございます。今度新聞などの報道で見ると、ポラリス潜水艦が太平洋へ回航になって、今度の実験の目的の一つに出動されるようでございます。もちろんこれと実験目的は違うと思いまするが、核爆雷の実験がもしあるならば、海洋が直接汚染されるということになりますと、これはわれわれとしては重大な関心事だろうと思います。でありまするから、これはぜひ一つ放射能対策本部としても、日本原子力委員会としてアメリカ原子力委員会に直接確かめられてごうも差しつかえないと私は思う。こういう問題はぜひ一つ、はっきりしためどをつけていただきたい。また、このようにワシントンの特派員として明確に実験内容を幾つか羅列した中にこれが加わっておりますので、私は海洋の汚染対策という問題をいま少しくお聞きをしたいと思います。  前回のクリスマス島の実験におきましては、日本調査船を出しまして、海洋汚染、ひいてはプランクトンの汚染等についても相当綿密な調査をいたしたのでございます。私はこういうことがあり得るとすれば、やはり海洋汚染の調査について、放射能対策本部としてはすみやかに必要なる海域に調査船を派遣すべきだと思う。
  53. 三木武夫

    三木国務大臣 われわれとしては調査船を派遣した方がいいのじゃないかという考えのもとで、先ほど申し上げましたごとく、きょうの放射能対策本部において現在検討を加えております。
  54. 岡良一

    ○岡委員 それでは放射能対策本部としては、海洋汚染の調査のために調査船を派遣するという方針でございますか。
  55. 三木武夫

    三木国務大臣 派遣をしたいという――これはいろいろ各省庁の協力を得なければなりませんので、そういう方針のもとに今具体的な検討を加えておるという段階でございます。
  56. 岡良一

    ○岡委員 それからいま一つは、かつてビキニのときにはマグロ騒ぎということがあるくらいに大へんなうろたえ方をいたしました。そこで、いよいよ海洋が汚染される、プランクトンが汚染されるということになりますると、特にわれわれ日本人は蛋白脂肪源を主として魚類に仰いでおる関係上、魚類というものが大きな問題であります。同時にまた、これは漁業界にとっても大へんなセンセーショナルな、ショッキングな問題になってくるわけでございまするが、これについては、具体的にどういう対策を用意しておられますか。
  57. 杠文吉

    ○杠政府委員 前回のマグロの場合は、御承知の通りに廃棄基準というものをきめまして、これはグロスと申しましょうか、要するに水揚地を指定いたしまして、その指定港に揚がったところでもってマグロを並べておいて、十センチ離れたところで百カウト以上あれば廃棄するというような措置をとったことは御承知の通りでございます。それはきわめて放射能に対する知識の貧弱なとき、しかも用意がないときに突如として、行なわれた処置でございましたので、その後厚生省においても相当研究を進めておりまして、今回の場合におきましてはそのような措置は必要でないであろうというのが一応の結論でございます。と申しますのは、その後の研究によりますと、マグロの肉のうちに入る放射能というものはきわわめて微量である。大部分はえらの部分あるいは内臓の部分に集まるということになっております。ところが、えらや内臓というものは、現場で漁船としては冷凍の関係その他ございまして捨てている。ほとんど肉にしている。従いまして、その際に問題になりますのは、肉のいわゆる皮の部分でございます。その皮膚表面の放射能がどうなっているかということが問題でございます。  そこで、市場におきましては、抜き取り検査と先ほど大臣からおっしゃいましたが、その抜き取り検査の方法として、皮つきのまま肉片を切り取って、国立栄養研究所その他で検査をしてもらうということにいたしております。その際どの程度にしからば放射能検出がなされたおりに、それに対してどのような措置を講ずるかということは、あらかじめきめておく方がもちろんけっこうだと思いますが、諸般のデータがまだそこまで至っていないという関係から、あらかじめはきめておりませんが、今盛んに実験ないしは計算を厚生省においていたしておるという状況でございます。先ほど大臣から、東京の市場に対するところの厚生省の指令と申しますのは、四月十九日に厚生省の環境衛生局長から東京都知事あてに依頼状が出ております。それに検査要領等をいろいろ書いてございます。放射能対策本部におけるところの対策も添えてございます。対策本部でこのようにきめられたから、それに基づいてどういうことをとりあえずしてもらいたいというので、検知班というものを置いて調べてもらいたいということでございます。そして、現場からの水揚げの魚が高くなってきているかどうかというようなことを何よりも早くとらえたい。とらえた上で、先ほど申しましたように、精密検査の必要がある場合には国立栄養研究所その他で精密な検査をして、その上で行政措置を講じたい、というような段取りになっているわけでございます。
  58. 岡良一

    ○岡委員 今度はセシウムの検査をどうするのです。
  59. 杠文吉

    ○杠政府委員 セシウムは御承知の通り、肉に入るわけでございますが、セシウムについてもやはり検査をするというふうになっております。厚生省の依頼状でもこのようになっております。
  60. 岡良一

    ○岡委員 御存じの通り、セシウムは遺伝的障害の元凶でございます。現在専門の学会においても、確かに遺伝的に悪影響はあるが、しかし、どの程度の悪影響があるかわからないという問題となっておるわけです。  そこで、具体的に、それでは一体どういうふうな指示を厚生省は与えておるのですか。
  61. 杠文吉

    ○杠政府委員 それでは、ここに通牒文がございますので、その要点だけ読み上げさせていただきたい。  先ほど申しましたように、日付は四月十九日付であります。「クリスマス島及びジョンストン島における核爆発実験に伴なう漁獲物等の調査について」というのでございます。その調査は、検査要領が別添ございますが、それに基づいて調査の実施方について依頼するから御配慮をわずらわしたいということでございまして、その検査要領を要点だけ申し上げます。  「漁獲物に対する放射能検査要領」、I、検知班の編成――人員として、班長以下数名の班員をもって検知班を編成して、入港する船舶の数、積載量及び深夜または早朝作業の点などを考慮して、作業員というものは十分な数を備えておいてもらいたい。その器具類は、シンチレーション式サーベイメーター、乾電池、コードなどの準備をしておいてもらいたい。それにまたいろいろ補助器具等もございます。それから、II、検知の要領です。どうやって調べるか。検知の方法といたしまして、あらかじめバックグラウンドのカウント数を測定しておく。二十五日から始めておるというのはバックグラウンドの測定をやっておるということであります。一定の距離、たとえば約二十センチメートル以内において測定する。この際検知管には汚染防止のためポリエチレン製の袋をかける。次は魚の検査。船倉ごとに順序よく水揚げさせ、魚類について魚体の両側面、えら部、ひれ、尾のつけ根及び腹部を検査すること。なお、臓器を有するものについては、必ず検知管を腹部に向けて丁寧に検査する、ということでございます。それから、精密検査。「さらに精密の検査を要すときは、随時、国立衛生試験所及び予防衛生研究所においてこれを行なうものとする。」ということになっております。
  62. 岡良一

    ○岡委員 非常に抽象的なんですが、セシウムの検査というのは、シンチレーション・カウンターその他で相当な、マイクロマイクロキュリーの放射能が証明されたときに、一体その魚をどうするのですか。どこへ持ってきて、だれがやるのですか。
  63. 杠文吉

    ○杠政府委員 これは厚生省とその点よく話を詰めていかなければなりませんが、先ほど来申しますように、相当の日数がかかってこちらに戻って参ると思うのであります。その間の時間的余裕はあろうかと思うわけでございますが、精密検査をやはりして、その結果によって、まずグロスでもって描ければ、もちろんこれを出荷させるというような措置は一応とめることになります。その上、精密検査をして、今後基準をいろいろ検討しようとしておるわけですが、もしもその基準に照らして廃棄処置が相当だとすれば、もちろんその分については廃棄させることに相なると思いますが、それは何しろ精密検査の結果に待つべきであろうと思いますし、グロスでもってもそれをどういうふうに精密検査の結果と結びつけていくかということに今後の課題があるだろう。暫定措置として、グロスでもって相当高い場合には一応出荷をとめなければならぬ。そのとめるときに、それでは、どういう精密検査との関連があるかということは、先ほど今試験をしておるということを申し上げましたが、今後、試験し、計算した結果、それをとりあえず適用するということに相なると思います。
  64. 岡良一

    ○岡委員 いろいろミルクなんかでも、人工栄養児も多いし、周到な注意をしてもらいたいと思う。御存じの通り、ノバヤゼムリアのソビエトの、実験に際しましては、英国の政府は数日分の粉、ミルクを政府自身の責任においてストックしておる。万一、生乳を全部廃棄しなければならぬときにはというので、決素131の被害を防ごうというところまで非常に周到な注意を払っておる。おくればせながら放射能対策本部もいろいろ手は講じておられるようだが、何か肝心なところでちょっと一本抜けているような感じがして仕方がないので、これはいろいろ委員会で論じ尽くされたことですから、この際になっては私はそう詳しく重ねて申しませんが、やっていただきたい。ただ、御存じの通り、伝えられるところによると、これから実験される核兵器の規模は大体二十キロトンから一メガトンまでの時間だろう。そうすると、国連の科学委員会の報告を見ると、一メガトンで二十三キロのキノコ雲が吹き上がる。それから十キロトンでは約十五キロ。従って、相当長期間にわたって、いわゆる成層圏の割れ目から中緯度の一本へ注いで落ちてくるというわけだから、対策本部は今後相当長期にわたって腰を落ちつけて、組織的に、計画的に、全国的なネットワークの中でぜひその作業を進めていただきたい。それから、長官に重ねて要望いたしたいのでございますが、わが方としてもこの実験があったかどうか、その実験はどういう規模のものかということを探知する、放射能対策本部としては、そういう方面に努力をする、そういう組織を持つことが非常に必要なことじゃないかと思うわけであります。これは何と申しましたところで、実験内容を公開をするということは考えられないことだし、求める方が無理だから、ぜひ探知機能を、よほど勉強してもらって打ち立てるという努力をなさるべきではないかと私は思いますが、いかがでしょうか。
  65. 三木武夫

    三木国務大臣 先般、放射能対策を強化するというので、微気圧計なども東京などには新しく入れまして、今度の場合も今調査をしておるのですが、多少の異変があったということで、精密にいろいろ全国の地震の状態なども調査しておるということを申しておりましたから、相当正確な、そういう日本自身としても探知できるような施設はだいぶん強化いたした次第でございます。
  66. 岡良一

    ○岡委員 これは御存じの通り、先般来の核実験停止会議でも、中立八カ国案として、やはり科学委員会のようなものを国連が設けて探知機構のネットワークを国際的に作るべきだ、その決議案が米英、ソ連側からも受諾されておるようなことでもあり、日本は地震国でもあり、また再々原水爆の実験で直接被害も受けておるのでもあり、科学委員会における日本のデータというものは、非常に高く評価されておるという事実にかんがみても、ぜひこれを努力してやっていただきたいと思うわけです。  それから、これも重ねての質問ですが、いよいよ補償問題が日程に上って参りました。これについての政府の態度はどういうものでございますか。
  67. 三木武夫

    三木国務大臣 政府アメリカにも通告してございますように、損害があった場合には、損害賠償の請求をするということでございます。
  68. 岡良一

    ○岡委員 その損害というのは、間接的な損害、いろいろあるわけですが、そのすべてを含んでの損害という意味でありますか。
  69. 三木武夫

    三木国務大臣 間接、直接、むろん含むわけであります。御承知のように、長期にわたってのフォールアウトの被害はなかなか測定することは困難と思いますが、われわれの計算し得る間接、面接の損害ということでございます。
  70. 岡良一

    ○岡委員 この前ビキニの場合には、いわゆる慰謝料というか、見舞金というか、わが方が二十八億要求したところが七億で事済まされておる。この点政府は損害賠償を要求をする権利を保留するというが、保留してみたところで、相手方の出方によってはまたビキニの轍を踏まないとは限らない。この点、損害賠償をほんとうに求めるならば、単に権利を保留するということだけでは、私どもは納得しかねるのでありますが、積極的にどういう態度を持っておられますか。
  71. 三木武夫

    三木国務大臣 損害賠償の権利を留保するということは、まだ実験が行なわれてないわけですから、損害が現実に起こってないときには外交文書としてはああいうふうになることは当然だろうと思うのですが、現に現実に損害が起こったということになれば、今度の場合は予告もしてありますように、アメリカに対して損害賠償という形でそれを要求する。外交機関を通じてこれは前もって日本が予告もしてあることでございますので、日本としてはその趣旨の貫徹に努力をいたすということでございます。
  72. 岡良一

    ○岡委員 そこで、相手方がその支払いをがえんじなかった場合、どういうことになるわけですか。
  73. 三木武夫

    三木国務大臣 外交交渉に対して、いろいろな場合を仮定してどうだこうだということを今申し上げることは私は適当でないと思う。政府はその政府方針に従って、その政府の考え方を貫徹するところに外交の責任があるわけですから、がえんじなかったときどうするかというようなことを考えないで、日本政府方針を貫徹できるように全力を外交はあげることが日本外交の責任だと考えております。
  74. 岡良一

    ○岡委員 前回のビキニの場合のような形で、一方的に補償が打ち切られた場合には、今度は政府はやはりあのときのように泣き寝入りをなさるおつもりですか。
  75. 三木武夫

    三木国務大臣 今申したように、いろいろな外交交渉の場合、仮定してああだこうだと申し上げることは私適当でないと思う。政府が損害賠償を要求するのだといっているのだから、国民にもそれを公表しておるのですから。外交は相手方を説得して、そしてその自分の方針を貫徹することが外交の国民に対する責任なんで、聞かれなかったら泣き寝入りするのか、せないのかというようなことは、それは日本の外交として泣き寝入りなんかがしょちゅうあってはいけない。泣き寝入りせないで、目的を貫徹するように努力することこそ日本外交の責任であるというふうにそれは考えております。
  76. 岡良一

    ○岡委員 だから、私はビキニの例を持ち出して、具体的にそういう事例があるから、ないとは限らない。これは私は相当根拠のある仮定として持ち出しておるわけなんです。単なる仮定、思い過ごしではないと私は思う。  そこで、これは私はこの前にも三木長官に申し上げておったのですが、それこそまだアメリカが実験をやるかやらないかわからないという仮定のときでございました。御存じのように、こういう公海自由の原則とかいうもろもろの国際法の原則というものが無視されておるわけでございますね。しかも、一方的に、一方の国の抗議にもかかわらず、実験が強行されるという状態の中で、しかもそれが相当大きな影響を与える、そういう被害を与えるというような場合、これは国際慣例上かつてないことなんです。だから、この際やはり当然一つの国際慣行を作る、国際司法裁判所なら司法裁判所に提訴するというような形で、国際慣行をはっきりする。万一今後こういうことがあった場合には、どういう権利義務、債権債務ができるかということを明確にする。そこまで日本が立ち上がっていいのではないか。また、すべきだ。核実験禁止を願う日本とすれば、当然そこまで積極的な手を打ってしかるべきだと私は思うのでございます。長官、いかがでしょう。
  77. 三木武夫

    三木国務大臣 御承知のように、国際司法裁判所には相手国の同意も要りますし、こういうことが国際司法裁判所の議題として解決できるとは、現実の問題として私は考えてない。むしろこういう問題はもう少し高度な、あるいは軍縮会議、あるいは核実験停止協定会議とか、そういう一連の国際会議を通じてこの問題は解決をすべきであって、司法裁判所でこの問題を解決できることとは私は思わない。だから、世界の世論も非常にやかましく、核実験をやる国も世論には相当気がねをしながらやっているのでしょう。しかし、まだ決定的な威力を世界の世論が持たないということは、人類のために非常に残念に思うのですけれども、核実験の停止というものは国際世論の前に何らかの協定を結ばなければならぬ時期が必ず来るということを私は信じておる。それは国際司法裁判所という場ではなくして、もう少し高度な国際的な会議の舞台でこの問題は解決すべきではないか、かように考えております。
  78. 岡良一

    ○岡委員 非常に抽象的におっしゃいますけれども、それは具体的にどこで解決されるのですか。
  79. 三木武夫

    三木国務大臣 軍縮会議のようなものが行き詰まっても、必ずまたこの問題というものは蒸し返される。大国自身がやはり非常に矛盾を感じておるのに違いない。原子力、原爆などによる大規模な世界戦争はできない、こういう状態の中で盛んに原爆を作り、軍備を拡充する大国の軍事政策に対して、矛盾を感じておるのに違いない。世論もまた次第にやかましくなっていく。だから、非常に短い目で見れば、軍縮会議というものがうまくいかぬというような悲観的な考え方も出ましょうが、それは行き詰まっても必ずいつかまた再開されて、そして方向としては核実験の停止、軍備の縮小、これがやはり大きな世界政治の方向だと私は信じておる。従って、日本もいろいろな日本としての考え方を世界に述べることが、世論を喚起することが無力だという感じであきらめないで、われわれはあらゆる機会を通じて核実験の停止あるいは軍縮、こういうものに対して世界世論に訴えることが、やはり日本としては必要だと考えておるわけでございます。
  80. 岡良一

    ○岡委員 長官のおっしゃられる高度な国際的な会議、国際的な舞台というものは、いわば軍縮委員会なり核、実験停止会議のようなものであるということがわかりました。もちろん昨年九月二十四日にアメリカとソビエトが合意に到達をして国連に提出したあの共同軍縮提案の中では、もう核実験の停止どころか、核兵器の廃棄までが含まれているわけです。だから、ああいう場ではそういう軍縮問題が、核兵器の問題をも含めた軍縮問題が討議される場である。  ただしかし、われわれの目の前に起こっておる問題は、やはり公海の自由という原則まで明らかにじゅうりんをされている。しかも、一方の、わが方ならわが方の強き抗議にもかかわらず、要求にもかかわらず、実験が強行され、その結果として不当なる損害を日本国民がこうむらなければならないという問題は、私は法律問題だと思う。でありまするから、相手国が同意するかしないかということを前提にしないで、日本としては、この問題はやはり国際法なり、また新たな核実験という事態に伴って起こった債権債務の問題、損害賠償の問題として、国際司法裁判所が当然取り扱うべき筋の問題だと私は思う。これは高度もへったくれもない。やはり司法裁判所で問題は解決するという方向に、党々と日本は立ち上がられていいのではないかと私は思っているのです。どうなんでしょう。
  81. 三木武夫

    三木国務大臣 それは私は岡さんと見解を異にするのです。この問題が国際司法裁判所の問題だとは思わないのです。こういう問題こそやはり世界政治の中心の課題である。大国もこの問題は悩み抜いている問題であるに違いない。従って、今何といっても戦争と平和の問題が国際政治の一番中心の課題ですから、この問題というものは、そういう国際司法裁判所という――今手続としても相手国の同意が要ったりする。そういう法律問題だとは言いますけれども、やはりこれは世界政治の中心課題である。法律問題を越えた、もっと高度の政治的な課題である。それを国際司法裁判所というような法律的な場で解決できるとは私は思わない。もう少し国際的な軍縮会議とか、核実験の停止協定会議とか、あるいは国連とか、こういう場でこの問題というものは推進さるべきである。どうも国際司法裁判所というようなところで、この世界の人類が悩み抜いておる課題が解決できるとは私は思わない。
  82. 岡良一

    ○岡委員 何というか、非常に並行線でございますが、別に論理をひねくり回しておるつもりじゃないと思っておるのです。とにかく軍縮委員会、今長官もおっしゃった通り、アメリカもソビエトも究極兵器を持ってみた。蓄積して、これを使ったら共倒れで、まかり間違えば人類は絶滅だ、これを使ってはならぬという気持になってきた。だから、その結果が、おそらく九月二十四日、昨年の国連に出した米ソの軍縮協定にもなったんでしょう。あるいは核停会議で中立八カ国が出したあの調停案にも、米英なりソ連が一応合意を与えたというのも、そこにあると思う。であるから、問題はいい方向へ向かいつつあったわけです。その方向で解決される問題は、要するに核兵器が廃棄される、従って、生産も実験も停止されるということ。ところが、当面の問題はそうじゃなくて、当面はまだなそこまで行っておらない。そこで、わが方の要望にもかかわらず、向こうは実験を強行した。その結果わが方は損害を受けた。しかも、このような実験は、広範な地域を、船舶の航行、航空機の飛行も禁止するという状態において、日本の平和なる漁民なり、平和なる旅客なり、平和なる商船会社なり、飛行機会社に対しても、直接間接の影響を与える。また国民に対しても、たとえばフォールアウトの中の悪質な放射能によって、特に不安と恐怖と事実上の損害を与えようとしておる。こういう問題は、これは法律問題として債権債務じゃないのでしょう。あるいは国際公法上の海洋の自由という原則をはき違えておる。こういう点は、日本とすれば、軍縮委員会だとかあるいは核停会議じゃなくて、目前の問題として国際司法裁判所で解決してもらうほかに、どこにこれを持ち出せましょう。当然私はすべきものだと思う。また、そういうこともこの原子力委員会として、放射能対策本部の放射能対策の基本的な一つの問題点だと思います。ここであなたと議論して、並行線をたどってもいたし方ございませんから、打ち切りますけれども、私はそうすべきだと思います。ぜひ原子力委員会としても慎重に御検討いただきたいと思います。
  83. 前田正男

    前田委員長 次に、齋藤憲三君。
  84. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 簡単にフォールアウトに関して、意見と御質問を兼ねて申し上げます。時間もございませんから簡単にお答えを願いたいと思います。  フォールアウト対策に対する大局論は、ただいま岡委員の御質問に対しまして当局がお答えになり、大体尽きたと思うのでございます。新聞によりますと、ソ連がやり、またアメリカがやる、またソ連がやると、空中においてソ連のフォールアウトかアメリカのフォールアウトか、ごっちゃになって、どこがどうやら、どっちにどれだけの賠償を要求していいか、よほど日本ははっきりした態度を持ってこの調査に当たらなければならぬと思うのであります。そういう点に対しましても万全を期してもらいたいと思います。  それから、どういう対策をやりましても、国民がフォールアウトによって身近に生命の危険を受けるという点に対して、一体どういう処置をとったらいいかという問題について、当局のお考えをただしたいと思います。先ほど長官は、天水濾過に関する試案を進めておるということなんであります。これは原子力局においても、簡単な天水濾過の装置を二万個用意して、離島及び天水をもって飲料水にかえておる地帯について、放射能対策を進めておるということは承っております。私は山師のはしくれでございますから、これは非常にいい試みだと思う。バーミキュライト、いわゆるひる石がセシウム一三七、ストロンチウム九〇を吸着するという実験の結果は、きわめて顕著であります。なお、私の手元に届きました「放射能対策とバーミキュライト」という調査報告がございます。これを読みますと、これは平山という博士が調査したのでございますから、一応当局にも調査をしていただきたいと思うのであります。これは今原子力局計画をいたしておりますセシウム一三七及びストロンチウム九〇を、活性炭素とバーミキュライトで濾過装置を作ると、大体九〇%ないし八〇%の有効性を持っておる。ですから、これが広く行なわれれば、一応飲料水はこれでもって安全性を保ち得ると思って私は安心をいたしておるのであります。また、野菜その他にこのフォールアウトが付着した場合に、他の洗剤にまぜて野菜を洗うと、きわめて有効にフォールアウトがとれる、こういう結果が出ておる。おそらく他の洗剤を使わなくても、水でこのバーミュキュライトをまぜて洗えば、結局放射性の降灰はとれるんじゃないか。これはぜひやっていただきたいと思う。われわれが中性洗剤を問題に持ち出したのも、あの有毒な中性洗剤でもって放射性降下物を洗うことになったら大へんだ、しかし、われわれがこの委員会でもって論議をするには、その代替物を持たないで論議しても何にもならないと思っておった。ところが、今、世の中では、ひる石でもって洗うとそういうものはとれるという実験報告がどんどん出ておるわけであります。これを早急に実験してもらいたい。また、バーミキュライトを食物に混入して体内の放射性物質を防ぐ方法ということで、動物実験をやった。これも相当効果があるという報告が出ておる。でありますから、具体的方法としてこういう研究世の中に行なわれておるとするならば、放射能対策本部としては直ちにこれを実験に移して、こういうふうにやれば降灰物も相当防げるんだ、だから相当の程度においては責任を持って一切の水及び野菜、その他の食事に対しても対策はできるということを発表してこそ、私は、国民に安心を与えられるんじゃないか、そう思うのであります。そういう点に対してどれだけの研究と対策を原子力局及び対策本部では今進めておるか、簡単でいいですから……。
  85. 三木武夫

    三木国務大臣 天水など飲用水の濾過については、すでにやっております。野菜のことはやっていないのであります。齋藤委員のお話もあり、これはやらしてみます。野菜を洗浄する場合、ひる石を含めれば非常に効果があるということはやっておりませんが、一ぺん実験をやらすことにいたします。それから、動物実験もあわせてやらしてみたいと思います。
  86. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私は昭和三十九年からひる石の研究をやっておるのであります。このひる石は日本に相当多量に生産されておる。花崗岩地帯にシンチレーション・カウンターを持って行くと放射能を感ずるというのは、やはりひる石のあるものには放射能がある。このひる石は、残念ながらまだ法定鉱物に入っておらぬのであります。きょうは通産省の鉱山局の人が来ておると思うのでありますが、私は鉱山局に対して、このひる石は相当将来大きな鉱物としての価値を見出されるようになるから、早くひる石を調査して法定鉱物に入れるべきであるということを一、二度忠告をしたことがあるけれども、さっぱりそういう動きがないようであります。だから、もし原子力局でそういう天水を濾過するのにバーミキュライトが非常に有効である、これは非常に大きな工業的な価値づけを見出すのだということであったら、そういうものはすぐ鉱山局と連絡をとって、これは法定鉱物に指定してしまうということでなければ、私はそういうものの大量を今度ほしいといっても採取することができないのじゃないかと思う。ですから、この点は一体鉱山局はどう考えておるのか。だれか鉱山局は来ていないのですか。
  87. 杠文吉

    ○杠政府委員 ただいまのバーミキュライトを法定鉱物に指定する御提案につきましては、われわれも、最近の研究でございますのでまだ鉱山局との連絡をとっておりませんが、至急連絡をとって、できるだけ御希望に沿うように努力したいと思います。
  88. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私は、なぜこういうことを早急にやってもらわなければならないかと申しますと、降灰、放射性物質の入った天水を濾過して、それが九〇数%除去できた、安全にしてこれは飲み得られるのだということになりますと、一般の家庭にこれが及んでくるわけです。特に野菜を洗浄するのにバーミキュライトを入れればいい。あるいは常に体内のストロンチウム及びセシウムを除去するために人間もこれを飲むのだということにもしなったとすると、バーミキュライトの高騰というものはおそるべきものになってしまうのじゃないか。だから、ほんとうに国民全体の安全性をそれによって確保できるのじゃないかということになったら、ある一つの放射性降下物に対する対策としては、国家が大きくこれを持って、非常に安く国民全体にこれを供給するという体制をとらなければいかぬわけでしょう。もうアメリカもソ連もどんどん打ち上げて、灰が降ってくる。いや何ぼ降ってきた、何ぼ降ってきたという報告だけはするけれども、これに対して国民が安全性を獲得するだけの具体策を持たない対策本部なんというものは、百あっても私は何にもならないのじゃないかと思う。ですから、こういう問題が起きてきたら、こういうものに対して具体的にもっと真剣に法定鉱物に指定する、そういうものはどれだけの値段で、全国民の安全性を確保するためにどうしたらこれを政府が獲得できるか、はたして日本に産出するところのバーミキュライトで足りるのか、あるいはアフリカからとってくるのか、あるいは世界的にどこに分布しているのか、そういうことを調べて、どんなに放射性物質が降ってきても人間に対しては絶対に害毒を防げるという、そういう具体的な問題を扱ってこそ初めて対策本部の存在の意義が出てくるのじゃないかと思う。私は自分のところへこういうものがきているから、当然原子力局も法定鉱物その他の手はずをしておられると思っておったが、まだしておられないということだから、それは早急にしてもらいたいと思うのです。  厚生省の公衆衛生局長もここへお見えになっておられるそうでございますが、こういう問題を厚生省ではどう考えておられるか、一応御答弁をお願いいたします。
  89. 尾村偉久

    ○尾村政府委員 厚生省も、今対策本部でいかにして国民を放射性降下物から守るかということでは一緒になってやっておりますので、今のような有効なものが安価に手に入るというようなことは喜ばしいことであります。これは伺っておりますが、ただ副作用があってはいけません。鉱物でございますので、もし水の中に逆にこれから有害なものが溶け出るというようなことが万万一ありまして、中性洗剤のごとき問題があとから起こるといかぬので、至急そういうものを分担して衛生試験所で実験するということで、これはもうまっ先に化学の方から数日間でできると思います。それを着手するということがきょうきまったわけでございます。早くこれが有効で害がないということが確定して、早く使えるようになることを願っております。
  90. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 バーミキュライトというのは、花崗岩にはさまれておるところの雲母なんです。雲母だから毒物がない。しかも、これは六百度で焼くのです。私らは毎日これを飲んでおる。だから、幾ら降ってきたって私は大丈夫だと思う。雲母に何で毒物が含まれておるか。六百度で焼いて使うのですから、何も毒物はない。そんなものは一時間か二時間検査すればすぐわかるわけなのです。そういう現実の問題を等閑視して、形だけ対策本部のあり方を整えたって私はむだだと思う。これはちゃんと科学技術庁の報告書なんです。ですから、もうこういうものをどんどん推し進めていって、こういうものを発表して、そうして発表する前にバーミキュライトに対する万全の策を立てて、一つやっていただきたい。これは問題は小さいようですけれども、アメリアの核爆発実験も、ソ連の核爆発実験も、とどのつまりは上から降ってくる放射能で、お互いがどうやられるかという不安なんです。それさえ除けば、一尺積もったって、なに、こんなもの、と人は考えるようになるかもしれないから、現実に国民の生命に対する不安を除去するという方向に、寸暇を惜しんで対策を立てられんことを要望いたしまして、私の降下物に対する質疑はこれで打ち切ります。      ――――◇―――――
  91. 前田正男

    前田委員長 この際、原子力行政一般に関する調査を暫時中止することとし、科学技術行政一般についての議事に入ります。  発明及び特許に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。岡良一君。
  92. 岡良一

    ○岡委員 私は自由民主党、日本社会党並びに民主社会党共同の提案にかかる発明及び特許に関する決議案を提出いたしまして、その趣旨の弁明をいたしたいと存じます。  まず、案文を朗読いたします。    発明及び特許に関する件(案)   科学技術の画期的な振興を期するためには、新たなる発明の気運が高まり、発明者の業績が埋れることのないように、その環境及び諸条件が完備することが肝要である。   これがため、政府は、新規発明に関しては、常時各方面における発明の現状を遺漏なく調査し、その積極的助成に努めるとともに、その特許の迅速なる審査を行ないうるよう特許行政並びに機構の整備充実を行なうべきである。   右決議する。  この決議案に対する若干の趣旨弁明をいたします。   明治十八年に特許制度が行なわれ、また、三十八年には実用新案制度が創設されましてから、日本における特許件数は合計二十六万二千余件、実用新案五十五万二千四百件、これは昭和三十五年六月現在の数字でございまするが、そのうち権利として生きておるものは、特許が八万七千件、実用新案が十三万八千件に及び、昭和三十三年の出願件数においてはわが国は世界第一位を占め、旺盛な発明活動を行なっておるのでございます。しかしながら、わが国の発明は、西独などに比べてまだその程度も低く、国民のすぐれた発明のための潜在力というものが十分に開発されたとは言えないと存ずるのでございます。  そこで、私どもはこの決議案を、具体的に科学技術庁としてもぜひ実施していただきたいのでございまするが、その実施の具体的な若干の点に触れたいと存じます。  まず、施策でございます。  第一には、基本的な科学技術基本法の確立をすべきだと存じます。科学技術基本法を定めまして、振興の目標と計画確立し、官公私研究機関の整備、その活動の調整、基礎研究の向上、新技術開発研究者の養成などを一貫的に組織的に行なうべきでございまして、そのためには、われわれは、科学技術庁は独立の一省として、科学技術行政の統一強化、また財政措置の充実、技術研究促進のためにはまた所要の税制等の整備なども必要であろうかと存じます。  第二に、日本の現状において特に指摘いたしたいことは、特許行政の整備拡充の問題でございます。特許庁に対する特許、実用新案、意匠、商標の出願件数は年々十七万件をこえ、戦前の二倍にも及んでおるのでございまするが、審査、審判能力の不足のために処理未済件数は三十万件に達し、一件の出願の処理に三年を要するとさえもいわれておるのでございます。まことに、はなはだしい渋滞ぶりと申さなければなりません。一方、特許庁予算はわずかに八億五千万円、特許手数料収入を下回るという貧弱な予算でございます。これでは特許制度というものが文字通り軽視されておるのでございまするから、具体的に、あるいは審査官、審判要員の増員なり、あるいは特許資料の整備、公報の充実、職員研修の強化などを含めまして、特許行政の機能を予算の面で裏づけながら充実をすること。また、発明振興開発行政とあわせて、この特許庁は当然科学技術省に統合さるべきものであろうかと存ずるのでございます。  第三に、国民の発明活動の振興と発明思想の普及でございます。これも三十七年度の予算を見ますると、発明奨励関係予算は特許庁関係で発明実施化助成費、これは外国の特許出願助成、発明協会の補助金も含むものでございまするが、昨年の五百八十万円に比べましてことしは五百六十三万円と落ちております。科学技術関係におきましても、発明実施化試験助成費は二千五百四十七万円九千円で、これは昨年と同額でございまするが、地方発明モンター助成費は三千七百六十四万五千円と、昨年に比べましてこれも落ちておる実情でございます。従いまして、発明振興のための国の予算はわずかに五千八百七十五万円程度でございまして、これでは一台のジェット機にも及ばないことは申すまでもございません。  われわれは科学技術振興を推進するという立場から、埋もれた国民大衆の発明思想を振興し、また、国民の工夫、創意、考案を生み出し、自由な創造活動を豊かにすることが大事なバックグラウンドであると存ずるのでございまして、われわれはこの立場から、この提案をぜひ皆さんが御賛同いただくように切に念願をいたしまして、趣旨の弁明を終わりたいと思います。
  93. 前田正男

    前田委員長 本件について別に御発言はありませんか。別に御発言もないようでありますので、直ちに採決いたします。  ただいまの岡委員よりの御提案の通り、発明及び特許に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  94. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、ただいまの決議に対する政府の所信を聴取いたします。三木国務大臣。
  95. 三木武夫

    三木国務大臣 国産技術を奨励して、日本の外国依存の状態から脱却するために、独創的な発明に対してこれを奨励する諸条件を整備するようにという御決議の趣旨は、同感でございます。政府も、その趣旨に沿うて今後善処したいと考えております。
  96. 前田正男

  97. 伊藤繁樹

    ○伊藤政府委員 ただいま特許行政の充実につきましての御決議をいただきまして、まことに恐縮に存じております。  御指摘の通り、現在特許の審査におきましては、平均二年以上要しておるような実情でございます。その原因は、出願が非常に激増しておりますのに対しまして、十分な審査の陣容を確保できないことが根本的な原因でございます。特許庁といたしましては、従来から事態の改善に鋭意努力をして参ったわけでございますが、今回の決議を契機といたしまして、さらに覚悟を新たにして、定員及び現員の増加充実をはかりますとともに、いろいろな方策を講じまして、できるだけ能率を増進いたしまして、特許の審査の遅延が発明の意欲を阻害することのないように努力していきたい、かように考えております。      ――――◇―――――
  98. 前田正男

    前田委員長 次に、ガン対策に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。西村英一君。
  99. 西村英一

    西村(英)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党、三党共同提案になりますガン対策に関する決議案を提出いたします。  まず、案文の朗読をいたします。    ガン対策に関する件(案)   最近におけるガンによる死亡率増加のすう勢にかんがみ、政府ガン対策について積極的にその推進を図り、特に左記事項の実現に努むべきである。  一、中央及び地方におけるガンセンターの設置については、その一層の整備、充実を期し、予算その他に万全の措置を講ずること。  二、ガンの発生機転の究明に関する研究に重点を置くとともに、その予防及び治療に関する研究については、前記中央ガンセンターを中心として官民各方面の総合協力体制を実現し、新たなる研究の成果が速かに結実するよう、格段の配慮か行なうこと。    右決議する。  もう私が詳しくいろいろなことを申し上げる必要はありませんが、人類の三悪の一つである病苦を追放するということは、われわれ政治家の一つの大きな務めであろうと思うのでございます。  最近、科学の力によりまして、人類の寿命も非常に延びるようにはなりました。しかし、病気のうちでこのガンは、今までいろいろな科学者あるいは医学者等が真剣な努力をいたしておるにもかかわらず、いまだその根本的な究明ができないのは、まことに遺憾であります。ここでもしガンに対する究明が一歩でも進むということは、人類の非常な幸福でありますので、政府はそのためにどれだけの予算をさいても惜しくないのであります。従いまして、政府といたしましても、これに対しまして十分予算あるいは機構の研究対策につきまして格段の努力を払われるようにいたしてもらいたいのであります。  以上が本決議案を提出した趣旨でございます。どうぞ皆様の御賛成をお願いいたします。
  100. 前田正男

    前田委員長 本件について別に御発言はございませんか。――別に御発言もないようでありますので、面らに採決いたします。  ただいまの西村委員よりの御提案の通り、ガン対策に関する件を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  この際、ただいまの決議に対する政府の所信を聴取いたします。三木国務大臣。
  102. 三木武夫

    三木国務大臣 ガンの研究については、科学技術会議でも重要研究課題として取り上げることになっておりますので、御決議の趣旨に沿うて、厚生省とも相談をいたしまして、ガン研究推進したいと考えております。
  103. 前田正男

  104. 川上六馬

    ○川上政府委員 ただいま御指摘のように、ガンの問題は、国民保健上きわめて重要な問題になって参っておりますので、厚生省といたしましても、ただいまの御決議の事項につきまして、できるだけすみやかに実現を期するように努力いたします。     ―――――――――――――
  105. 前田正男

    前田委員長 なお、ただいまの両件の決議につきまして、関係当局へ参考送付いたしたいと存じます。その手続等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  106. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ――――◇―――――
  107. 前田正男

    前田委員長 次に、核原料物質及び核燃料物質の製錬等に関する問題について質疑の通告がありますの、で、本問題について議事を進めます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  本問題について、原子燃料公社理事長高橋幸三郎君、同公社理事開発部長三沢英勝君及び同公社理事、冶金部長今井美材君を参考人決定し、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  108. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ――――◇―――――
  109. 前田正男

    前田委員長 それでは、質疑を許します。赤澤正道君。
  110. 赤澤正道

    赤澤委員 時間がありませんので、一問ずつ、おいでになった皆さんに御質問申し上げたいと思います。繰り返しませんので、詳しいことは次の機会に譲りたいと思います。  まず、大臣にお尋ねいたします。ウランが核燃料として登場いたしましてから、最初は非常に希少価値があるように喧伝されましたけれども、だんだん世界的に開発が進むにつれて、価格その他でずい、ぶん変わって参ったわけです。にもかかわらず、燃料公社では国産資源の開発にずいぶん努力をしておるわけでございます。この国際的なウランの現状にかんがみ、その中におけるきわめて残念な貧鉱しかない日本の国産原料の位置について、大臣の御認識、これをどういうふうに将来お取り扱いになるお考えであるか、御決意を再確認しておきたいと思います。
  111. 三木武夫

    三木国務大臣 赤澤委員御指摘の通り、日本の品位は〇・〇七%という低い品位であります。しかし、国産のこういう鉱石というものは、そういう国際価格と比べて非常に条件が悪いからといって捨ててしまうべきものではない。やはりこれを開発をしていかなければならぬ。そのためには、今後この採掘法などに対しても改良の余地はないかということで、検討を加えております。それから、貧鉱処理の方法を適用しなければなりませんので、鉱石の湿式の選鉱試験験というものを現場で今やっておるわけです。そういう点からも、条件の悪い日本のウラン鉱というものを、できるだけ条件をよくしたい。今後は国際価格と比べて非常に競争力がないということでウランの開発というものを見捨てるべきでないという考えでございます。
  112. 赤澤正道

    赤澤委員 今度は兼重先生に御質問します。  今、政府統一見解をいただいたわけですが、(5)の(イ)に天然ウラン燃料の製錬について見解が発表されておるわけです。当初この公社を作りますときには、開発民間方式がいいか、政府がやる方がいいかということは、ずいぶん議論が白熱したことですが、当初においては、民間開発を重視するという方針であったと記憶しておるわけでございます。しかし、ものがものですから、なかなか民間で手がつけにくいので、原子燃料公社を作って、これが開発中心になって進めてきておるのが現状でございますが、今や民間でも貧鉱処理等についていろいろ研究が進んで参っておる次第です。この文面を見ますと、「本格的事業化を促進する場合は、公社及び民間において開発された最も有利な製錬方式を採用することとする。」ということは、公社民間とを並列して能力のある方へやらすということでございますか。
  113. 兼重寛九郎

    兼重説明員 ここに申されておりますことは、現在は製錬方式について研究を進めておるわけでございますが、将来これが本格的事業化ということを考えます場合のことでございますから、今それがいつごろ出てくるかということをはっきり予想はしておりません。そこで、その最も有利な製錬方式を採用するというときに、公社開発しましたものを民間業者に使わせるということは考えられるかと思いますけれども民間開発したものを公社で使うというときには、協議がととのわない限りできないと思います。従って、ここにそういうことを原則的には申しておりますが、実際にやります場合にどういうことになるか、ちょっとわかりません。従って、現在は本格的事業は、さらに民間でやる、必ず公社でやるということは、きめていない現状であります。と申しますのは、日本における資源は、だいぶふえて参りましたけれども、まだそうあり余るほどになっておりませんから、これを最も有効に使うということのためには、単に経済的とかなんとかいうことだけではいかぬだろうと思います。そういう意味では、全く並列というふうに考えておるのじゃないというふうにお考えをいただきたいと思います。
  114. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 関連して。「公社及び民間において開発された最も有利な製錬方式を採用する」、これは一体どうしてきめるのですか。
  115. 兼重寛九郎

    兼重説明員 その最も有利であるかないかということの判定ということについては、こういうことが必要になりましたときまでの経過は十分調査をいたしまして、経済的が主になるかと思いますけれども技術的に信頼できるとか、あらゆる面を考慮してきめなければならぬ。それをどこでどういう方法できめるかということまで現在はっきりきめてはおりません。そのときに最も適切な方法というものを考えたいというふうに思っております。
  116. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 原子力局長から……。
  117. 杠文吉

    ○杠政府委員 兼重委員からお答えになりましたが、まだきめておられないことは確かでございますけれども、やはりこれは原子力委員会に専門部会を設けて、そこで広く検討してみる必要があるだろうと思います。そうしませんと、たとえば一原子力局でこれが有利であるとか有利でないとかいうことは、やはり見解の狭さ、経験の浅さ等もあるかと思いますので、専門部会を設けるという行き方が正しいのじゃないかと考えております。
  118. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 原子力委員の方はどうですか。
  119. 兼重寛九郎

    兼重説明員 そういう方法も適切なことの一つであろうと思います。
  120. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そういう方法も適切な一つの方法であろうと思いますということは、きわめてルーズな御回答なんです。今私の申し上げておるのは、原子力局長がそういう方法を採択するのが一番いいと思っておると、こう言うから、それに対する御見解を承っておる。それよりほかに方法があればお示しを願いたい。というのは、ウランの製錬方法というものは世界的な問題でありますから、あらゆる方法というものはもう出尽くしたと思っております。そこにまだ世界的に行なわれなかった、一本でもって特許になったようなものがあるならば、そういうものを重点的に調べて、世界の今までのウラン製錬と対比して日本が新たに開発したところの新しい技術の方が有利なら、これを採択するというはっきりした線を出していくならいいけれども、それは一つの方法かもしれぬというくらいで今のせっぱ詰まった問題を解決することは、私はできないと思っております。どうなんですか。
  121. 兼重寛九郎

    兼重説明員 今私がお答えいたしましたのは、たとえば専門部会を設けて検討するというような方法が適当な方法の一つであろうと申しましたので、今の日本における開発日本で新たに開発されたものというのは重要であることは申すまでもございません。第一、日本産の鉱石は外国産の鉱石と性質も違いますから、外国で開発された方法がそのまま日本に適用されるとも考えられぬ節が多いのであります。ですから、最も有利な方法と申したのは、経済的なほかに技術的に信頼できるというようなこと、そういう意味も含めてのことでございます。御質問の意味をちょっと取り違えて御返事をしましたが、技術的あるいは日本開発したものについてのことは、原子力局長が申したことと同感でございます。
  122. 赤澤正道

    赤澤委員 山本政務次官にお伺いします。あなたは裏日本から出ておられるわけですね。最近重油生だきの火力発電がだんだんできるようですけれども、これはみな太平洋ベルト地帯にできる。何といっても工業発展のためには動力源が確保されなければならぬ。そこで、今度原子力発電ども、ここに統一見解立地条件に関する統一見解が出ております。もちろん立地条件が整わなければ妙なところに置くわけにはいきませんけれども、やはり地域格差を縮めてなくするということも政府の方の発表の一つの目標になっておるわけであります。確かに日本は傾いております。今原子力関係でも、敷地問題で点々とあっちこっち出ておるわけです。そういう際に政治家として将来こういう、具体的には申しませんが、現に予算が計上されてあるし、すでにどっちの敷地を選ぶかという問題にもなってきておりますし、また近い将来にもそういう問題が出てくる可能性が点々と見えておるわけです。これに対して大臣にかわって一つ山本政務次官の御見解を承っておきたいと思います。
  123. 山本利壽

    ○山本(利)政府委員 ただいま赤澤委員からお尋ねがございましたが、私も裏日本の方から出ておりますので、僻地の状況はよく存じております。このいろいろな方面の生産性あるいは収入の格差を縮めてもらいたい、そのためには産業を興してもらいたいとか、工場を誘致してもらいたいとかいう声は非常に強いのでございます。ちょうど鳥取県の方面においてはウラン鉱が出ておるのであります。さらにその隣の私の県におきましてもそれの出る可能性が非常に濃厚であるというようなこともいっておりまして、地方の人々もこれの開発に期待を、かけておるようなわけでございます。こういう国家的に見ても非常に大切なことでありますから、国家全体として僻地の開発という意味からも、十分に、しかも早急にこの方面に向かって力を注ぐべきであると考えます。
  124. 赤澤正道

    赤澤委員 高橋理事長にお伺いいたします。国会開会中に一度公社にいろいろ立ち人って質問したい問題点を考えてあるのですけれども、だんだんおしまいになりまして、ほとんどきょうは最終日であろうと思います。国会が終わりましても、もう次の計画が、すでに予算要求をすべきもの等も御腹案がありましょうし、燃料公社として三十八年度予算要求に対しておおむねどういうところに重点を置いてお考えになっておるか、計画について一つ述べていただきたい。
  125. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 燃料公社としましては、何といっても現段階においてはウラン鉱の埋蔵量を確保する、これが何よりも今重点的に――過去六年間やって参りましたが、最初のころと現在とは格段の差がございます。差と申しますのは、初めのころは日本のウラン鉱というものに対して非常に悲観的な見方が多かったけれども、現在は必ずしもそうとは限りません。現実に御承知の通り、初めのころは人形峠や、つまり岡山県あたりがウランの探鉱対象になっておりましたが、ここ二、三年の間に鳥取側の日本海方面の方が非常に優勢な状態を示しております。現に現在最も主力を注いでおりますのは鳥取県と岡山県の境の神ノ倉地区であります。これはどんどん急速に発達して参りまして、この開発が三十八年、度のおもなる仕事の対象になると思います。何と申しましても、品位が悪くてもとにかく鉱量が確保できれば、それに対する対策は今後の研究によって、われわれは国産のウランというものを何とかして経済的に開発したい、こういう念願は常に持っておるわけでございます。  先ほどからいろいろ製錬問題についてもお話がございましたが、ウランの生産原価といいますか、経済性をわれわれは絶えず頭に持って考えて処理して実行に移しておるのですが、御承知の通り、鉱山という仕事は非常に、プリミティブな仕事とも思われますけれど、しかし、実際の生産原価に占める採鉱費の比率というものは非常に大きいものです。一応われわれが現在やっておる仕事を、かりに生産に移した場合にどういう原価になるかということを試算しております。それによると、大体六割が採鉱費です。六割が採鉱費というのですから、採鉱費というものの経済性といいますか、技術の改良その他のあらゆる施策、経験、技術の分もそうですし、いろいろな設備の面もありますし、人件費もありますし、いろいろな面で原価に占める採鉱費をどうして下げるかということが、われわれの一番大きな現在の課題になっております。先ほどから製錬のことについていろいろ議論がありますけれども、先ほど齋藤先生がおっしゃった通りに、ウランの製錬についてはわれわれは初めのようなそんな苦労はしておりません。というのは少し言い過ぎかもしれませんけれども、大体めどがついておりますから、いかにこれを経済的に実際に当てはめていくかということが今後の問題になるだろうと思います。何といっても、採鉱費をどうして安くするか。それについては、ああいう日本で初めて出たウラン鉱が世界にも類のないウラン鉱であることは皆さんも御承知だと思いますが、ああいう世界にもないような産状を呈しているあの鉱体を、どうして安く安全に経済的に掘るかということが、われわれ鉱山技術者の大きな課題であると思います。そういう点、今、たとえば水力採鉱をやるとか、あるいは水洗選鉱をやるとか、いろいろのことを考えておるのですが、要するにこれは採鉱費をどうして下げるかというところに目標が置かれておるわけでございます。なお、そういう採鉱面についてのこまかい技術面は担当の今井理事が並んでおりますから、もし御希望であれば後ほどお聞き願います。
  126. 赤澤正道

    赤澤委員 きょう両氏をお招きしたのは、私も意味があって注文したわけです。それは、三沢理事は冶金工法をやっておられますね。今度は理事長としてどっちの仕事に重点を置いてやっておるかということを言わされるようになったら妙なことだが、しかし、明らかに開発が焦点だ。粗製錬段階でも精製錬段階でも、齋藤委員民間の状況をよく調べておられて、重大な関心を持っておられるわけです。あなたの方は現地でいろいろ発表をやっていますね。われわれはおぼろげながら知らぬわけではないけれども、そう明確に国会の舞台であなた方からお聞きしたわけじゃない。三十七年度に調査を終わって、そして三十九年には建設を終わって、寝以降には操業を開始する、こういうことを発表していらっしゃるのですが、これは一体どういうことになっておるわけですか。これは開発部長でも理事長でもいいですが、お答え願いたい。
  127. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 おそらくそれは新聞にそういう記事が出たのじゃないかと思いますけれども、われわれの現段階は、先ほど申し上げた通りに、開発中心になりまして、それを生産に移すということはまだ先のことだと思っております。粗製錬の問題については、実験室の段階からほんとうの生産に移る段階にもう一つ段階がある。中間試験所とかパイロット・プラントとかいうことなんでございますが、製錬に関する限りはそういうふうな研究民間でも進んでおりますし、公社でも相当進んでおりますから、そういう段階には確かにきておると言えるでしょう。しかし、本格的生産というのは、世界的な情勢をよく判断しなければできないことである。いわゆる経済性をわれわれは非常に重要視しておるものですから。そういう技術面の問題は、あるいは割合に早く、その技術確立するという立場から必要かもしれません。しかし、経済的にこれを掘って、たとえばウランの鉱石何百トン処理して、そのできたウランを国産原子炉なり何なりに使うという段階には、まだ時期が少し早いと見ております。しかし、技術的に早く確立して、いつでも必要があれば掘れる態勢に公社はおるべきではないかというのが私のふだんの考え方でございます。
  128. 赤澤正道

    赤澤委員 政務次官の政治的な立場からの御判断、並びに現地の見込みについて理事長のお話があったので、方向はややきまっているような気がするのです。ただ、敷地の問題は、どこでもなかなか厄介な問題を引き起こしますので、やはりこれを地元に火をつけるというような形で御発表になることはまずいと思うのです。今、兼重先生も悩んでおられますが、ある問題については、こういうことになりますと事態は収容しがたいことになる。公社だけのお考え方でものがきまらぬことになってくると思うのですよ。こういうふうに、今場所をきめたのだというようなことを軽々しくやってもらうと、はなはだしく迷惑するし、また、公社でも将来とも非常にやりにくい面が出てくるわけです。今大体の御方針がわかりました。これは公社が自分だけの考えで粗製錬をやるということでもないということです。  今度は粗製錬のやり方についてです。私も科学知識は不十分ですから、どの方式がいいという判断もできませんけれども、しかし、そういうことにも立ち入って御発表になっておるのですよ。公社としては世界的水準の優秀な方法を発見したのだからこれをもってやるということですが、一体どういうふうな貧鉱処理の方法をすでに御発見になっておるのか。それはパテントがとれたものかどうか、まだ発表の限りではないのかどうか、そういうこともあわせて今井理事から伺いたいと思います。
  129. 今井美材

    ○今井参考人 お言葉のように、ぎょぎょうしいことを申し上げるつもりは全然ないのです。しかし、ここ三、四年間、私どもイエロー・ケーキを作るまで、粗製錬に及ばずながら最大の努力を払ってきたつもりであります。そして、お尋ねに対しては、ただいまどこまで行っているかということをお答えすれば私の責任を果たせると思います。  当初から今日に至るまで、一つならず、いろいろな方式を検討して参りました。もちろん、そのベースになるものは国際的技術というものであって、おおむね一つの流れがあるのであります。それにつきまして、私どもの方式というものは、あまりに品位、グレードが低いので、それを少々いじくり回すというようなことではとうてい採算の見通しがつかない。それが今日まで長らく進行を阻害した原因になっております。それで、ただいまたった一ついささか自信をつけていることは、一たんイエロー・ケーキというものを作りまして、それをまた製錬してメタルを作りますけれども、究極の目的から見ると、一つの段階においてなぜイエロー・ケーキを作らねばならないかということです。日本の国情と外国とは違っておりまして、イエロー・ケーキを作るために〇・何%というような貧鉱を有利にやることは世界どこの国でも不可能であります。だから、八〇%、九〇%に一たん濃縮しておいて、それを運ぶということになったわけであります。しかるに、日本は必ずしもそうしなくてもよいというのが現、実の姿でもありますし、またそのようなところでコスト・ダウンの可能性は相当ある。つまり、イエロー・ケーキを作るために、一たん水を飛ばして、分解して、焼くというようなことで、もう一ぺん解かしてしまう。常識的にも、もしそれをやらないで済ませることができましたならば、相当のコスト・ダウンになることは自明であります。かようなことは、私どもメタルのプラントを作るときも一つの目標としてやっておりましたけれども、先ほども申し上げましたように、そう簡単にはつながらない。つまり、それを飛ばしてしまったらよいというけれども、すっ飛ばすことができるかということ自体技術の内容でありまして、これをやりますのに、いろいろなことをやって参っております。ただいまそれにつきましては一つの方式ができ上がっております。あまり技術の内容に立ち入って申すのはどうかと思いますけれども、要するに、精製錬の段階でやって、粗製錬の段階でもやっておる。それはイオン交換樹脂を使うとか、アミン溶媒を使うということでありますが、それを一ぺんにしてしまうことができるか。そうすると、イエロー・ケーキというものは間に位しておるから、なくなってしまう。そのことにつきましては、私ども変換法と名づけておるようなプロセスを一つまん中に入れます。それは何の装置も要らないことであって、薬品を使うだけでありますから、きわめて簡単なことであります。そのことを、実験室では昨年ごろ見通しを置いておりましたが、今年にかけて東海村のパイロット・プラントで実験をいたしまして、長期運転もできるのでありますから、これならばできると考えております。  どれくらいのコスト・ダウンが期待できるかということでありますが、これは本来なら大きな装置をもってやるべきでありますけれども技術屋としては当座の見通しがつかなければできませんので、二五%くらいのコスト・ダウンになると思っております。  また、特許のお話がございました。特許は相当時間がかかりまして、まだ確定はいたしませんが、一年くらい前に特許の申請をいたしております。  かようなわけで、私どもといたしましては、スタートいたしましたときの当初の目的が、ようやくここでほぼ見通しがついたというような感じを持っておりまして、貧鉱処理のできる自信を深めたというふうに解しておる次第であります。
  130. 赤澤正道

    赤澤委員 自信を深めたといったような説明をなさっております。しかし、公社の幹部の発表では、それはもうすでに確定してしまって、今三沢理事の手元で粗製錬工場の構想計画、着手中であるという御発表のようです。これは書いたものもありますけれども、新聞社のもののことですから、それを読むのもおかしいから、深くは申しませんけれども、しかし発表があるのです。  そこで今、今井理事の言われたことからいうと、まだ結論的にこれでやるんだという確信があるようには受け取れないのですがね。しかし、三十八年度の予算要求にこの粗製錬工場が出されるとすれば、やはりその予算規模、施設の規模等については、すでに何か腹案を持っておられるだろうが、うわさに聞けば四、五億程度という。四、五億程度ということは、こういう工場にしてはちゃちなものですが、いわゆるパイロット・プラント的なものをおやりになるのか、あるいは本腰を入れた方式でおやりになるのか。これはどうなっておるかという腹案がおありになるのですか、簡単に一つ……。
  131. 三沢英勝

    ○三沢参考人 ただいまのお尋ねの点でありますが、先ほど理事長からも申し上げましたように、山の開発というものは、一日数百トン採掘して製錬をやるというふうな段階に至りますまでの間に、パイロット・プラントと申しますか、中間規模試験と申しますか、そういう段階を経るのが常識だろうと私どもは考えております。従いまして、私どもが現在種々社内で技術的に、また経済的に検討いたしております点は、どういう工合にやるのが一番試験の目的にかない、しかも有効に国費を使用しなければならないという観点から、なるべく少ない経費でもってやりたいというふうなことを考えまして、今その検討をやっておる最中でございます。御承知のように、昭和三十八年度の予算は、六月ごろに原子力局と十分打ち合わせをいたしまして提出案をきめるという段階になっておりますので、社内の計画を取りまとめいたしまして、来月の末あたりから原子力局協議して最終案をきめたい、こういう段階でございます。そのお尋ねの規模と申しますのは、中間規模、すなわち一日五十トンないし百トン処理という程度が最も適当ではないか、こういうふうに現在では考えておる次第でございます。
  132. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ちょっと関連。私、さっき赤澤委員の御質問関連質問を申し上げたのは、今原燃御当局が御答弁なさいましたようなことじゃないかと思って関連質問したわけなんです。時間がありませんから、私、三十七年の四月六日のこの委員会において粗製錬に関する質疑をいたしてありますから、それを一ぺん御読み取りを願いたいと思うのであります。と申しますのは、古河電工でやっております粗製錬プラントはもう特許が七件確定いたしました。そして五百万円の助成金が出ておる。これは当局も御検討されて、みごとに成功しておるという結論なんです。ただ問題は、その経済性がどうか。私は、経済性ということになったらば、パイロット・プラントを現地に持っていって、そしてテストしてもらいたいという要求をした。それは、原子燃料公社がやられるというなら原子燃料公社にやっていただいてもいいじゃないかというところまで申し上げたわけです。今あなた方の方のお話を承ると、まだ特許出願中である。特許出願中というのは、ことしきまるか来年きまるかわからぬということですね。特許出願中のものを持っていってこれを事業化するということは、原則的に私はできないんじゃないかと思う。どこかから特許違反の異議の申し立てがあるかもしれないですね。  ところが、人形峠とか倉吉地区に、この地方新聞によりますと三十八年度で予算をとってやると書いてある。そこで私は質問したのですよ。一体どっちの方法がいいのかどうしてきめるのだ、そういうことなんです。ですから、この新聞記事がうそなら別ですよ、しかし、この新聞記事を発表されたのは原子燃料公社の重要な職責にある方が発表されておるのです。読むまでもないと思うのですが、ここではもうちゃんと金のことまで触れて、やりたいと書いてある。そこに問題があるので私は関連質問を申し上げておる。これは重大な問題なんです。ですから、今の関連質問を申し上げた趣旨は、この新聞記事がほんとうであるか誤りであるかということに対しての御答弁をお願いできればいいのです。
  133. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 その記事を私も拝見しましたが、それを発表したのは現在まだ現地におって今視察しておる人ですから、その人が帰ってからよく直接聞いた上でなければ、その真偽を判定することはできませんから、今ちょっとここでは御答弁できないから、あしからず……。
  134. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは一つ、現地におられる方がこういうことを言われたって、理事長及び理事は連帯責任でなければならないわけですから、これは委員長においてしかるべく真相をお突きとめの上、御報告を賜わらんことをお願いいたします。
  135. 赤澤正道

    赤澤委員 きょうはこれで質問は打ち切りますけれども、いろいろな問題がありますから、なるべく早い機会に、詳しく質問をして事を明らかにする機会を作っていただくことを希望いたします。
  136. 西村英一

    西村(英)委員 ちょっと関連して。私は、ウランのことではないのですが、今の考え方の問題で、赤澤さんを応援することになるのかどうかわからないのですけれども、貧鉱の処理ですね。私が考えるのに、ウランのみならず、あらゆる金属は、文化が進めば進むほど貧鉱処理に向かわざるを得ないのです。これはどうしてもそういうふうになってくると私は思う。ことに日本では、あらゆる金属において貧鉱なんです。そのためにいろいろな金属を輸入しなければならぬ。たとえばインドの国民等が、相当文化が進めば、鉄にしても銅にしても、地上からなくなるということになると、相当貧鉱処理に進まざるを得ないのです。今公社の方々の意見を拝聴しておると、経済性がないから、貧鉱であるから、しかしやらなければならぬからと、殺しもせぬ生かしもせぬというような、何か非常にあいまいな態度のように受け取れるのです。このウランの貧鉱を処理することによって、それがもとになって、他の金属の貧鉱処理に一歩を進めるということにでもなれば、これは本件のみならず、非常に資源の開発になると私は思うのであります。従いまして、皆様方はどうか、あなた方の務めはウランの開発ではありましょうが、それとともに他の鉱物の貧鉱処理ということを私は考えておるのでございます。従いまして、どうか自信を持っておやり願って、予算の獲得等についても、そういう意味においてわれわれ非常に応援したいと思います。これは赤澤さんの御意見のウランの問題についてどうなるか私は知りませんが、私は貧鉱処理の点について非常に関心を持っておりますから、一言、あまり関係のないことでございますが、高橋さん、何か所見がございましたらお聞きしたいのです。
  137. 高橋幸三郎

    ○高橋参考人 大へんけっこうなアドヴァイスでございまして、私どもその点を非常に苦心し、また勇気を持ってやっております。その一つの現われですが、つまり万分の三とか四とかいう、とうてい経済的には引き合う見込みのないような鉱石を、簡単な水洗い選鉱でもって洗いますと、こまかい、水について流れてくる、その中にウランが濃縮するという事実を、今までわれわれがいろいろ試験してわかったのでございます。これは現在、もうすでに予算で認められまして、三十七年、本年もう工事に着手せんとしております。その工事がこの九月ごろできまして、十月ごろには大体運転するだろうと思います。そういたしますと、われわれの実験では、万分の三とか四とかいう低品位の鉱石が、千分台まで品位が上がるのです。その場合の実収率といいますか、そういうふうな冶金的な問題に対してどうなるか。実験室だけではそれがすぐいいとか悪いとかいう判断がつきかねるものですから、そういう中間的な、一日約三十トンというのですから小さなものですが、そういうものを現在山に作りつつありますので、本年一ぱいでその結果はわかると思います。それによってわれわれは今後の粗製錬、また採鉱計画の方面に非常に大きなプラスになるのじゃないかということを期待いたしておりますので、御報告させていただきます。
  138. 前田正男

    前田委員長 次に、岡良一君。
  139. 岡良一

    ○岡委員 簡単にこの機会にお尋ねしておきたいのです。先般、核原料物質の民有化ということが閣議の了承を得られた。これはどういう理由をもって民有化されたのか。兼重さんから……。
  140. 兼重寛九郎

    兼重説明員 あのときには、原料の所在を突きとめる道が法律的にも完備されましたので、必ずしも政府が持っていなければならぬという事情は解消した、そういう意味で、民有を認めて差しつかえないという事情になったので認めたということでございます。
  141. 岡良一

    ○岡委員 それでは、原子力燃料公社法第一条「原子燃料公社は、原子力基本法に基き、核原料物質の開発及び核燃料物質の生産並びにこれらの物質の管理を総合的かつ効率的に行い、原子力開発及び利用の促進に寄与することを目的」とする、こう書いてある。それを受けて第三章業務の方では「公社は、第一条の目的を達成するため、次の業務を行なう。」そして一から七まであげてある。この中には核原料物質の探鉱、採鉱、選鉱、輸入、買い取り、売り渡しなども書いてある。でありますから、当然これは原子燃料公社の大きな仕事の中のものであって、それを民有化にしてしまうということになれば、これは原子燃料公社法というものをすなおに解釈した場合において、原子力委員会のとられた措置は非常に疑義があるのじゃないかと私は思うわけですが、法律的な見解はいかがですか。
  142. 杠文吉

    ○杠政府委員 ただいま岡先生がおあげになりました事項につきましても、原子力委員会が民有の線を打ち出されるにつきましていろいろ検討したわけでございます。検討いたしましたが、今お読みになりました条文によりますと、独占するというような形にはなっておりません。管理をするということが即独占であるというふうな解釈にはならぬという結論でございます。
  143. 岡良一

    ○岡委員 それは非常に詭弁だと私は思う。そういう解釈もあり得るとしても、それでは原子力委員会として、第二十条「公社の業務は、原子力委員会の議決を経て内閣総理大臣が定める核原料物質の開発及び核燃料物質の生産並びにこれらの物質の管理に関する基本計画に基いて行なわなければならない。」ということが書いてある。要するに、原子力委員会は核原料物質の開発等について基本計画を定めなければいけない。それは定められて、発表もされておる。しかし、そこで核原料物質を民有に移すということになれば、計画は責任を持って遂行されますか。
  144. 杠文吉

    ○杠政府委員 民有に移されたとしましても、それはやはり探鉱計画というものはあくまで、御承知の通りただいまのところ公社が当たっておりますから、いわば探鉱については事実上独占が成立しているというふうに考えてよろしかろうではないかと思うわけでございます。ただし、事実上の独占と申し上げておるのは、法律的に他を排除し得るところの規定がなされておるというふうには考えてない。従いまして、他の方で探鉱をやるということがございましたおりにそれを法律的に排除するということは不可能である。しかしながら、御存じの通りに事実上の独占は公社においてなされておりますから、民有にそれが移されたからといって、その事実上の独占までもが排除されていって、従って計画の変更が行なわれなければならぬというような道筋にはならないというふうに考えます。
  145. 岡良一

    ○岡委員 しかし、民間産業にゆだねてしまえば、要するに一口に言えばウラン、原鉱を採鉱し、選鉱し、粗製錬し、天然ウランにしたものを、メタルにしたものをまた成型加工するとまで含まれておるわけですね。そして、民間の手にゆだねますと、民間会社とすれば、金詰まりでその会社がとてもやれないという場合、原子力委員会は責任を持って資金的なバック・アップをする気がありますか。あるいはそれが採算ベースに合わないからといって民間会社がやらない場合、それをあなた方はさせる力がありますか。また、そういうようなコントロールができるということになれば、これはもういわゆる今日の経済体制とおよそ原則的には違ったことになってしまう。そうすれば、民間会社はその景気の波の浮き沈みによる、あるいは金融の事情とか、あるいはその会計を維持するに必要な採算ベースというような、いわば原子力開発という基本的な条件とは違ったそういう経済条件によって動くということを、これはどうすることもできない。そうすれば、原子力委員会が内閣総理大国の議決を経、内閣総理大臣が承認した計画というものは、そこで頓挫しませんか。頓挫するでしょう。
  146. 杠文吉

    ○杠政府委員 ただいま例をあげていろいろ議論が展開されておりますが、その理論によるならば確かにそのような事態も起こり得るかもわかりません。わかりませんけれども、そのような際にはやはり政府としては、公社というものは御承知の通りに全額政府が出資しておりますから、公社の業務の拡張というような形においてそれをカバーすることもでき得るというふうに考えております。
  147. 岡良一

    ○岡委員 言ってみれば、都合の悪いときには公社にやらす、そして民間会社がくれくれと言うから、その御要望もだしがたく、やる。都合が悪ければ公社にやらす。それでは日本原子力政策というものの基本が狂ってしまうのじゃないかと思うんだけれども。またいんぎん無礼な君の答弁を聞いておったってしようがないから、聞かないけれども、大きな問題点だと思う。委員長、時間もないし、腹もへったから、やめましょう。
  148. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 もう一点だけ、あとは時間がないから……。  統一見解の(4)「アジア原子力会議について」、これはこの前御要求申し上げたのですが、ここには「三十八年三月頃開催するよう準備中であるが、わが国においてIAEAの主催するシンポジウムの開催方も勧誘されているので同じ頃それに引き続いて開催することを考えている。」こういうふうに書かれておりますけれども、これはなるべく早く一つ開催をしていただきたいということを、この前私は御要望申し上げた。と申しますのは、三月とか二月というと、アジア各国は大半暑いですから、向こうから来られる人は服装を整えるのに大へんです。それよりこっちの九月ころに開催してやれば、向こうは気候がいいし、時期としても非常にいい。なぜ一体三十八年の三月を目途として準備をされるのか。三十八年の九月を目途としてと変えられたらどうかと思うのですが、その点どうですか。
  149. 西村熊雄

    西村説明員 その辺の事情を御説明申し上げます。日本側で考えておりますアジア原子力会議が、アジア諸国によって快く受け入れられるためには、どうしてもIAEAの協力の形をとるのがいいという結論に達するわけでございます。そういうわけで、IAEAから日本が主催国となることを希望されているシンポジウムが開かれる機会に、わが方の希望するアジア原子力会議開催したらいいという結論になるわけでございます。ところで、IAEA側の計画によりますと、今年度の事業計画は全部確定して、それを遂行中でございます。日本がわれわれの計画をもってIAEAに折衝をしたときに、日本が主催国となることを希望された会議はその次の年、三十八年度の計画でございます。ところで他方、私ども開催しようとしているアジア原子力会議に関する予算は、本年度の予算に載って、御承認を得ております。ですから、この二つの要望が重なる時期だけに、IAEAの希望と日本の希望とが合致した形で会議が開けることになりますので、齋藤先生のお気持、またわれわれの気持も同じでございますけれども、暑いときにやった方がいいのではございますが、どうしても来年の一月ないし三月の間にという結果にならざるを得なかった次第でございます。御了承を願います。
  150. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうすると、向こうの予算は暦年予算でしょう。
  151. 西村熊雄

    西村説明員 さようでございます。暦年予算でございます。
  152. 岡良一

    ○岡委員 その点、これは私、質問するのではないのですが、こういう事実があるのです。一九五八年の九月下旬だったと思いますが、この特別委員会の有志が、当時の委員長であった菅野和太郎氏、小金義照氏等とともに、ジュネーブのパレ・デ・ナシオンで、当時IAEAの事務総長であったスターリング・コール氏と会った。そのときに、IAEAの憲章には後進国における原子力開発をうたっておる、アジア諸地域はまさしく後進国に該当するということで、この際アジア諸地域における原子力に関する協力体制というものを進めて、原子力の平和利用を発展させたいと思うがどうか、この点については原則的に賛成である、しかしIAEAの実態から見て、資金の供与をするところまではいかないという話でございました。しかし、それは大いに歓迎する。そこで、私ども帰りにアラブ連合に寄り、インドにも寄った。インドに寄りましたときに、インドの原子力委員会のバーバー博士はおられなかったが、他の原子力委員と会いました。そこで、スターリング・コールもこう言っておられるから、ぜひ日本が音頭をとって原子力平和利用会議をやりたいということを言ったときに、インドの方で最初に質問を投げかけてきたのは、中共をどうするかということでした。中共はIAEAに入っておらない、IAEAに入っておらないものを原子力平和利用会議に入れるわけにはいかないではないか、こう申し上げたところが、インドの方では、それはおもしろくない、ぜひ中共を加盟さすべきだ、何らかの形で加盟させる必要がある、ということを最後まで主張しておられました。私はその後帰りまして、翌年の三月、本会議における緊急質問で、当時の藤山外務大臣にアジアにおける原子力開発の共同体制を作るべきではないかという質問をやった。そのときに藤山外務大臣も、そのための平和利用会議をやりたいということをはっきり言明しておられる。おそらくそういういきさつからこの予算が生まれたものだと私は思います。問題点は、要するに中共を加盟させるかどうかということが、特にこの中立主義の国においては大きな関心事になっておる。だから、これを具体的にどうほぐしていくかであります。何と申しましても、この平和利用会議にインドが参加するかいなかということは、アジアにおける原子力平和利用会議の権威にかかわるという重大な問題でございますので、この点については、それこそ西村さんのようなエキスパートがインドに出かけていって、よく了解を求めて、万般遺憾のない措置を講ぜられるように、私はこの機会に強くお願いしておきたいと思います。
  153. 前田正男

    前田委員長 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  長時間にわたりお待たせいたし、本委員会調査に御協力いただき、委員会を代表して御礼を申し上げます。まことにありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十六分散会      ――――◇―――――