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1962-02-28 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十八日(水曜日)    午後一時五十二分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 中曽根康弘君 理事 西村 英一君    理事 岡  良一君 理事 河野  正君    理事 山口 鶴男君       安倍晋太郎君    佐々木義武君       細田 吉藏君    松本 一郎君       西村 関一君    松前 重義君       三木 喜夫君    内海  清君  出席国務大臣         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府技官         (科学技術庁振         興局長)    前田 陽吉君         外務政務次官  川村善八郎君         外務事務官         (国際連合局         長)      高橋  覺君         郵政事務官         (電波監理局         長)      西崎 太郎君  委員外出席者         原子力委員         (宇宙開発審議         会会長)    兼重寛九郎君         科学技術政務次         官       鈴江 康平君         外務事務官         (経済局技術協         力第一課長)  齋木千九郎君         文部事務官                 (大学学術局審         議官)     岡野  澄君         参  考  人         (東京大学東京         天文台長)   宮地 政司君         参  考  人         (明治大学教         授)      新羅 一郎君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(海外技術協力に  関する問題及び宇宙科学に関する問題)      ――――◇―――――
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち、宇宙科学に関する問題について、東京大学東京天文台長宮地政司君及び明治大学工学部教授羅一郎君を参考人と決定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  参考人各位に一曹ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、本委員会調査のため御出席下さいまして、まことにありがとうございました。      ――――◇―――――
  4. 前田正男

    前田委員長 それでは、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  宇宙科学に関する問題について、まず宮地参考人より、宇宙科学に関する全般的問題について、次に新羅参考人より、宇宙工学中心とした諸問題について、それぞれ御意見開陳をお願いいたしたいと存じます。御意見開陳はおおむね十五分程度にお願いいたしたいと存じます。  それでは宮地参考人より御意見開陳をお願いいたします。宮地参考人
  5. 宮地政司

    宮地参考人 委員長の御指名によりまして全般的なことを申し上げます。  宇宙科学とここにございますが、われわれは宇宙科学宇宙技術または宇宙工学というものを区別しております。宇宙科学という言葉で、私は主として純粋な、基礎的な学問という面でお話したいと思います。  宇宙科学と申しますのは、御承知ように、数年前に、国際地球観測年という国際的な大きな事業が行なわれました際に、地球の外へロケットまたは人工衛星を打ち出しまして、そして観測をしようということから始まります。  地球の外で観測をするというのはどういう意義があるかと申しますと、私たちが地球の上で世界を見ておりますのは、空気というものがございまして、そのために、ある一部分の光しか見ておらないということであります。われわれは、いわゆる色めがねをかけてものを見ておるという状態でございます。ところが、外へ出ますと、色めがねをはずすことができる。ですから、われわれが見ることのできない光をもって宇宙の姿を見ることができるということでございます。そういうことによって、新しいことがたくさん出て参ります。新しいことがわかって参りますと、人間はそれを応用いたします。新しい世界が開けるということでございます。そこに大きな意義がございまして、かつてアメリカの副大統領のジョンソンが、従来は軍備だとか生産力とか、物量をうしろに控えて国際的な会議に臨めばそれで十分であったが、これからはそうではない、それは宇宙科学研究成果というものを自分の国で持っておることである、ということを述べております。そのように、宇宙科学というものが新しくできまして以来というものは、世界じゅう考え方が変わっております。非常に新しい世界ができようとしておる。今までのような既成の事実をもってものを判断はできないだろうという、新しい世の中が生まれようとしておるのであります。  そこで、それではどういうことに関係があるかと申しますと、これはあらゆる学問のすべてのものに関係があると言っても過言ではないと思うのであります。普通宇宙の、地球の外へ出て観測すると申しますと、何か天文の観測ように見えますけれども、実はそうではございませんで、現在一般学問分野自然科学分野というのが、世界じゅうでそういう団体を作っております。イクス(ICSU)と申しておりますが、そのイクスの中に含まれておる十四の科学分野がございます。たとえば、物理とか化学地球物理天文学生物学といったようなものがございますが、そのうちの十個の分野が全部この宇宙科学関係しておるということであります。そうして新しい事実、新しい問題というのは、その多くが宇宙科単を通してわかってくるということでございます。これは、たとえば物理の面でも化学の面でも、生物学の面でも、すべてこの宇宙科学を通して新しい分野が出てくるものが非常に多いということです。このようなわけで、あらゆる国で宇宙科学を大いに振興しております。  その姿を申しますと、御存じように、アメリカソ連とは、これはずば抜けて非常な金をかけて進めております。これはいろいろ理由があると思いますが、一つには、今申しましたような、純粋の学問を進めるという意味がございます。最近注目すべきことは、欧州でもって欧州研究機構を作ったことでございます。これは原子力でも同じことでございますが、米、ソという大国と、それに対抗して欧州の約十一カ国、――十一カ国または十二カ国の国が連合いたしまして、そして金も持ち寄り、また知恵も持ち寄って、科学技術者が集まって推進していくという機構でございます。そういうものを作ってやっておるということでございます。従って、地球の上では非常に大きなブロックが三つございまして、米、ソ、それに欧州というものが進めておるということです。  それからまた、その進め方といたしまして、先ほど申しましたイクスという、これは政府関係をしません学問団体があります。その団体が主体になりまして学問的な分野を進めております。それからコスパル(COSPAR)と申しまして、字面科学研究委員会という団体でありますが、それに各国が加盟をして、そしてお互い相談をしながら、資料を取りかわしながら研究を進めております。ここでは、アメリカソ連も、いずれも仲よく資料を、交換しながら研究を進めておるわけであります。ここはどこまでも純粋な学問分野自然科学分野でございまして、技術的なことは別でございます。そういったようなものはまた別の団体がございまして、たとえば、字面旅行協会日本で呼ばれておるものに相当する国際的な連合体がございまして、そういうところで、技術相談をしながら進めております。しかしながら、そこでは先ほどのコスパルように、自由な資料交換というのはございません。そういうものに、すべて日本も参加して進めております。  それからもう一つ御存じでございますが、こういう問題を国際的に自由に研究を進めさすために、現在国連の中に宇宙空間平和利用委員会というのがございまして、これは最初準備委員会日本松平大使委員長になりましてこれを推し進めたわけでございます。そして、最初はだいぶもめましたが、最近はソ連圏もそれに入りまして、国際的にこういった研究を進める場を作ろうというよう空気になっております。  それから、今のよう学問的な、自然科学としての研究が進められる一方、その新しくわかりました知識を使って応用方向に進めようとする運動が起こっております。これはあとから詳しいお話があると思いますが、大ざっぱに応用方面のことを申しますと、まず第一に通信でございます。これは新しい通信方式を使って、宇宙空間を利用した国際的な通信網を作ろうという動きであります。それから次は、気象の方の動きでございます。これも御存じように、気象衛星というものが現在飛んでおりますが、これまたはそれを改良したものを使いまして、今までなかなか見つけることの困難であった地球の全般的な気象動きを見ようという方向に進んでおります。こういったようなものは近いうちに実用化しようとしております。これは大きな変革でございまして、気象観測網といったようなものとか国際通信網といったようなものに非常に大きな変化を来たすと考えられるものでございます。そのほかに、天文台と称するよう装置を持たせましてこれを打ち上げて、今まで地上では見ることのできなかったような光または放射線を使って観測をするといったようなものも計画されております。それから全天候航海衛星と申しますか、曇っていても、あらしのときでも、飛行機または船艦が安全に航海のできるよう方式をしようとしております。これはロランとかショランとか、電子工学を使った航海法がございますが、それに匹敵する世界的な規模のものでございます。そういったようなものが考えられております。  こういったように新しい学問が芽生えて参りますと同時に、その裏腹になりまして新しい技術が生まれ、そしてそれが人間の社会に応用せられていくということです。その新しい技術はまたいろいろな思いも寄らない方面応用されております。宇宙空間研究のために使われておりますのは、ロケットというものがございます。それからもう一つは、非常に大きな方向としましてエレクトロニクス方向がございますが、それがいずれも宇宙空間のために発達したものが、将来は、たとえば航空機のかわりに超高速の輸送機として発達するであろうということも考えられますし、またエレクトロニクスの方ですと、非常に小さなそして性能の高いもの、新しい技術がどんどん生まれて、それがわれわれの生活の中にどんどんしみ込んでくるという状態であります。これは新しい技術の大きな革命が起こると考えられるものでございます。  それで、私が今ここで申し上げようとすることは、新しいこうした研究が起こりまして、そして非常にたくさんの金を使って二つの国が大いにやっておりますし、それから欧州機構というものができて、日本は一体どうしたらいいかという、これは非常に大きな問題で、現在総理大臣が諮問を出されまして、会長が見えておりますが、宇宙科学審議会というものができまして、せっかくそれの検討をしておるというのが日本現状でございます。日本では学術会議中心になりまして、先ほど申しました学問連絡のためのコスパルというものを通して研究しておりますし、それから、その研究日本ロケットを使って一部やっております。十分なことはできませんが、とにかくやっております。そして国際協力の形をもって進めておるというのが現状でございます。  大ざっぱな話でございますが、全般的なことを申し上げました。
  6. 前田正男

    前田委員長 次に新羅参考人よりお願いいたします。新羅参考人
  7. 新羅一郎

    ○新羅参考人 ただいま宇宙科学全般についてのお話があって、宇宙科学だけではなくて、技術方面も含んで相当おっしゃいました。そこで、私はそれ以外といいますか、大体概念的にはそれに含まれたことをもう少しこまかくお話よう、それからさっきのお話で、宇由科学全般とおっしゃりながらちょっと抜けたと思われる生物関係のことをちょっと補足しておきたいと思います。これは私の宇宙工学についての話と少し別かもしれませんが、宇宙工学といったときにそれに関連するのは非常に広いのです。その広い中にはいわゆる天文学とか物理学とか化学とか、そういうもののほかに生物学というものも含まれる。これは非常に重要なことでして、生命がどのようにしてできてきたかというようなことが、地球の大気のもとで生息している生物を、全く違った環境に持っていくとどういう変化が起きるかというようなことから、生物そのものの起源というような方まで解明されていくであろうというように思われますので、宇宙科学の中に宇宙生物単あるいは宇宙医学というような重要な問題もあるということをちょっとつけ加えておきます。  それで、宇宙工学というのは、今お話のありましたよう宇宙科学、それを実現させるための工学だといえると思います。ロケットがあったからこそ宇宙科学が始められたというさっきの宮地さんのお話ですが、そのロケットを作ることが、そうしてロケットを作るだけでなくて、当然そのロケットに積む計器、どのよう計器を作るかというのが宇宙工学です。そういう宇宙工学がどういう段階にあるかということを少しお話しして、そうしてあとでそれがどういう影響を持つかということをお話しすることにしたいと思います。  宇宙工学の現在の段階は、ロケットはもう皆さん承知ように、地球引力を脱する段階まできている。地球引力を脱するためにはある規定の必要な早さに達すればいいわけですが、その早さに達するようロケットが実現できた。これはもう数年前の話です。そこで今度はロケット発達方向としては、単に計器を送るだけではなくて、人をも送って観測の精度を上げるといいますか、いろいろな思わぬ状況に対する対応が十分できるように、計器だけでなくて人まで送ろうという方向に向かって、それをこの間実験した。それに関連をいたしまして、そのロケットに必要な早さあるいは必要な軌道をとらせるための誘導方法、これが非常に重要問題でして、現在どの軌道をとっているのかということを観測すること、そしてそれをどのように修正すればいいかということをすぐ計算機で出して、それを地上からの指令に基づいて修正をして所定の軌道をとらせる、そういう技術、それには電波あるいは電子技術というのが非常に重要な役割をします。そこで、それが現在ではある程度できるという段階にきたわけです。その技術は、これが当然普通の日常のいろいろな電気技術電気装置、そういうものに反映していくはずであります。まず、アメリカの方では、ロケットに積むということのために電子計器を非常に小型化するということに非常な努力を払いまして、それがある程度成功しています。さらにそれを発展させまして、現在あるトランジスター、あれをもっと小型にしよう小型にするためには、単に装置を小さくするというだけでは小型にもう限界がありますので、全く新しい原理に基づいた考え方にしようというので、一般モレクトロニクスという言葉でいわれているものができています。エレクトロニクスに対して、モレクトロニクスという言葉でいわれる技術が開発されています。こういう技術は、そのロケットに積む、宇宙開発という大目標がなければ、これはなかなか促進されないものだと考えられるわけであります。そこで、そういう中宮開発のために促進されましたこういうモレクトロニクスというような新しい技術、これはやがて非常に画期的な、便利ないろいろな電気器具として日常生活に反映してくるだろうと思います。  そのほか、さっき言われました通信衛星です。通信衛星の方は、これはもう可能性は十分にある。そして、それはどういうものがいいかというと、具体的にいいますと、方向二つあります。電波を受けてただそれを反射するだけのもの、それから電波を受けて上の衛星がそれを増幅してさらに送るもの、そういう大きい二つ方向がありまして、それぞれに一長一短がある。そこで現在は、その両方を一応開発しようというので、アメリカはすでにその電波を反射するだけのエコーというのを打ち上げましたし、そのエコーそのものを改良して、さらにこれをどんどん数を増そうとしています。それから、電波を増幅して出すという方法は、これもことしじゅうにRCAで作りますリレーという人工衛星を打ち上げる。そのほか数種の人工衛星がすでに製作段階に入っておりまして、やがて、というのは、ことしあるいは来年のうちには幾つか上げる。ただし、現在考えられていますのは、高さが数千キロメートルという程度のところですから、一個や二個では常に電波を送って常に受けるというわけにいかない。従って、数多く打ち上げなくちゃいけない。そのためには、どのくらいの数を打ち上げたらいいかという計算もできていまして、それに必要なのが数だけやがてできる。それから、さらにもっと高いところへ打ち上げます。高くて、人工衛星が一回地球を回る時間がちょうど二十四時間になるというところに打ち上げます。そのくらいの高さになりますと、これはもう三個か四個でいい。そういうことも理論的にわかっていまして、それを実現しようとする方向に向いているわけです。  気象衛星に関しましては、気象衛星というときには、人工衛星から雲の写真をとるわけですが、現在すでにアメリカタイロスというのが実現していますが、タイロスの場合には、カメラ方向が絶えず地球の表面に向かっているというふうにはできていない。従って、いつでもどこでも写真をとれるというふうにはなっておりませんので、カメラ方向を絶えず地球方向に向ける、人工衛星姿勢を絶えず修正してカメラ方向地球に向けるという技術が今進んでいまして、それが近く実現する状況にあります。そういうふうになりますと、いつでもどこでも写真がとれる。そのカメラを積みますから、レンズの設計、それからカメラ設計、そういうものも非常に進むわけでして、現在その人工衛星に載せるということのために非常に長い焦点距離の倍率の高いカメラができているわけです。  そのほかの問題としまして、やがては今度は月の方向に向かうわけですが、その場合に一番重要なのは――一番というのは語弊がありますが、今まで触れなかったことで重要なのは、相当今度は飛行距離が長い。時間が長いし、従って、それからいろいろな姿勢変化を修正しなくちゃいけない。そのためには電源が要ります。小さい人工衛星の中で、長い時間持ち、しかも軽い電源を積むという技術は、非常にむずかしいのですが、根本的には、普通の電池に太陽の光を受けて電気を発生させて普通の電池を充電する、そういう一つ方法。それからもう一つは、原子エネルギーを使って発電しようという方向。この二つ方向に非常な努力が払われていまして、そういう非常に小型で長い時間持つ電源が得られるということは、これは今後画期的にいろいろな方面応用されることになるのは明らかだと思います。  以上、技術面として大事なことを幾つか申し上げました。それで、そういう方向に関しまして、アメリカ状況は相当よくわかるのですが、ソ連の方のことは現在まださっぱりわかっておりません。さっき科学の方はコスパルその他でもって世界的な文献交換情報交換ができているというお話ですが、技術の方になりますと、その技術が相当軍事の方にも使われ得る可能性を絶えず持っていますから、そういうこともあると考えられますが、なかなか技術のポイントになりますと公開がむずかしいという状況で、ソ連のことは今わかっておりません。われわれとしましては、しかし少なくともアメリカ技術は絶えず吸収し、それからまた、日本独特の技術を発展させなければならぬ、そうして協力態勢を作らなくてはならぬと考えているわけであります。日本でどういうことをやろうかということは、宇宙開発審議会の答申に出ていますけれども、一言ここでお願いしておきたいのは、そういう情報交換というか、あるいは日本で独自のものを作るということのためには、これは相当の金が要るし、それはそれでやがてはいろいろな方面にすぐフィード・バックされるものでありますから、ぜひその方向を促進させなくちゃならぬと私は考えております。それからなお、いろいろな科学者技術者相互交換というのが非常に重要でありまして、お互いに行き来をするということのためにもそれが自由にできるように、ぜひその方面の配慮もしなくちゃならぬと思われますので、それもこの席でお願いしておきたいと思います。
  8. 前田正男

    前田委員長 以上をもちまして、参考人の御開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 前田正男

    前田委員長 それでは、これより参考人並びに政府当局に対する質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。岡良一君。
  10. 岡良一

    岡委員 宇宙開発が進められ、人間の英知の力で宇宙の秘密というものが解明されることになりまして、私どもしろうとの予想ですが、新しい生活圏宇宙に発展される、文化圏が発展されるということになると、これまで持っておった古い概念というものはたたきこわされるのではないかということまでも私考えるのであります。たとえば政治学における主権国家というよう概念はどうなるのだろうというようなことも私どもは考えるわけでございます。しかし、自然科学人文科学に挑戦をしておるという意味じゃなく、もっと広義に統一された新しい世界観が生れる前夜にあるのではないか、と新聞などを見て感じたわけです。そういうことから、その道の御専門の皆さんの御意見を聞いて、政府としても政策的に特に予算的にうんとがんばってもらいたいということで、きょうは皆さんの御意見を拝聴いたしましたが、関連して若干の質問を私はいたしたいと思います。  まず、国連局長にお尋ねをいたします。私どもがこうして話しておる間にも、目には見えないが、われわれの頭上を幾つかの人工衛星が飛んでおるかもしれない。そこで、この宇宙開発国際協力平和利用というようなものを進めるためには、大気圏外宇宙空間というものは絶対に平和利用すべきである、軍事利用してはならないという国際的取りきめが私は大前提だと存じます。この点では、先ほども宮地さんから御指摘のように、松平国連大使平和利用準備委員長に就任しておられまして、その後の国連大使も御努力ように聞いておりますが、宇宙空間平和利用、そのための国際的取りきめという方針について、外務当局としてはどのような御所信を持っておられるか、またどのような御努力をされる御方針であるか、まずこの点をお伺いいたしたいと思います。
  11. 高橋覺

    高橋(覺)政府委員 お答え申し上げます。国際連合におきまして宇宙開発宇宙空間平和利用委員会というものが最初に作られましたのが今から三、四年ほど前でございます。ここにおきまして、いろいろ今後の宇宙空間開発利用につきまして科学的な面から、あるいはいま岡先生がおっしゃいましたように、各国が利用したときに法律的にどういうことになるかというような法律的な面、各方面からこの問題を取り上げて研究ようということになっておりますが、まだ具体的な取りきめができるという段階になっておらないわけでございます。これは三、四年前の宇宙平和利用委員会設立の経緯、それからその後の経過で関係国間に意見の一致がなかったということで、先ほど申されましたように、わが国の松平代表が委員長になって会議が開かれましたときも、ソビエト及びその与国はこれに参加しなかったということでございます。その後この構成を変更しまして、新しい委員会をその翌年に作りましたが、これも二年間ほとんど仕事をいたしませんでした。それから、昨年の総会におきましてまた若干構成国をふやしまして、この問題の研究のために委員会を存続させる、そうしてこの委員会が今度二月十九日から開かれるということに決定されたようであります。ここにおきまして、ただいま外務省といたしましても、代表団の編成その他関係庁と協議いたしておりますが、おそらく科学面あるいは法律面からいろいろの検討がなされると思います。このときに、ぜひ宇宙開発は平和的目的のみに利用すべきであることを主張したいと存じております。
  12. 岡良一

    岡委員 十九日から開かれる宇宙平和利用の委員会には、議題としてはどういう議題が出ますか。
  13. 高橋覺

    高橋(覺)政府委員 まだ議題に関しては何ら通告を受けておりません。
  14. 岡良一

    岡委員 地球観測年に発しました南極観測が、ついに世界科学者の合意によって南極条約に発展したことは御承知の通りでございます。あの条約は、南極はお互いにどの国も軍事基地として利用しない、南極はあくまでも非武装地帯としてとどめるという、非常に崇高な理想がうたわれております。従って、私は政府が今回の平和利用の委員会に御出席になるならば、わが方の代表は、まず宇宙の軍事利用は禁止する、南極条約同様に平和利用専一に字面研究開発の国際協力をすべきである、という趣旨を強く御提案になる御用意があるのかどうか、重ねてこの点を一つ承っておきたい。
  15. 高橋覺

    高橋(覺)政府委員 先ほど申しました昨年の国連総会におきまして、大気圏外宇宙空間平和利用委員会をさらに継続させるという問題が討議されましたときに、岡崎代表の発言のうちで、われわれは宇宙空間の利用というものは平和目的に限るという原則を承認されることがきわめて望ましいということの見解を述べております。従いまして、この十九日から開かれます会議におきましても、日本代表団としては、それと同趣旨の主張をさらに強くするものと考えております。
  16. 岡良一

    岡委員 ぜひそのように御努力を願いたいと思います。これは宇宙科学の発展という見地から見ましても、大国が軍事利用に供すると、どうして毛秘密のベールの中に開発の成果が多く隠されてしまう。これでは真の国際的な協力が不可能でございます。とにかく外務省としては、岡崎演説の趣旨を、来たるべき機会にはさらに具体的に積極的に強く推進していただきたいということを心から要望いたします。  なお、日本における宇宙開発の基本的な原則でございます。原子力基本法には、原子力研究、開発、利用は、平和の目的に限り、民主的に運営をする、その成果は公開するという原則がうたわれております。私は日本における宇宙開発も、この原則に立って推進さるべきものと信ずるのでございますが、兼重さんの御所見を聞きたいと思います。
  17. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 ただいまの御意見に全く同感でございます。そこで、答申としてはもう少し時間がかかりますので、今答申の中でこうだというふうに申し上げることは適当でないかと思いますけれども、私どもこれまでやっております中には、今の基本原則その通りと申してよろしいかと思いますが、わが国における宇宙空間研究開発は平和の目的に限るということをうたいたいと思っております。それから学者の自主性を尊重することでありますとか、特に公開を原則とすること、国際協力を重視することというようなことを基本原則にして立てたい、こう考えておるわけであります。
  18. 岡良一

    岡委員 科学技術庁から鈴江次官が御出席でございます。あなたにお尋ねをするのは妥当かどうか、やはりこの原則を法律的に確立をする必要があるとも考えますが、技術庁としてはいかがお考えでございますか。
  19. 鈴江康平

    ○鈴江説明員 私ども宇宙開発につきましては、兼重先生が委員長をやっておられまする宇宙審議会の答申の線に沿って努力して参りたいと思いますが、御承知ように、宇宙開発の問題は関係する技術分野あるいは科学分野、非常に広範でございますので、この点当庁といたしましては各省とも十分連絡いたしまして、協力体制を作って進んでいきたい、かように考えている次第でございます。
  20. 岡良一

    岡委員 何と申しましても、アメリカの来年度予算は七千億をこえ、昨年の予算が四千四百八十億、まあ大へんな予算的努力をしておる。とてもこれは日本はまねをいたしかねるわけでございます。しかし、それにいたしましても、やはり日本も相当高い水準の科学的なポテンシャルを私は持っておると思う。だから乏しい予算、乏しい施設、あるいはまた少ない人間であっても、これはやはり目的意識と申しますか、とにかく一つの目標に向かって協力一致の体制を整えていくということがやはり日本宇宙開発のための至上命令だと私は思います。  そういう立場から若干お尋ねをいたしたいのは、まず郵政省が昨年の暮れからパラボラ・アンテナを作っておられます。これはどういう目的のもので、どういう実施状況にありますか、お尋ねいたします。
  21. 西崎太郎

    ○西崎政府委員 先ほどお話がありましたように、通信衛星というものがアメリカ中心にして相当急速に開発されている。こういった趨勢に対処して、おくれをとらないという考え方から、郵政省の電波研究所におきまして、地上におきまするその対抗施設という意味で昭和三十五年度から三十七年度まで、一応三カ年計画ということで、直径三十メートルの日本におきまする最大のアンテナを建設しまして、そうして通信衛星との交信であるとか、あるいはそれに伴ういろいろ基礎的な実験を行ない得るようにするために予算をちょうだいしまして、そして現在茨城県で建設中でございます。三十七年度米に完成する予定になっております。
  22. 岡良一

    岡委員 最近の新聞紙を拝見いたしますと、またこういう記事が実はありました。それは、日本の国際電信電話会社がアメリカの電信電話会社と非公式な話し合いで、これも茨城県下に直径二十メートルの基地局の建設を進めておる。これは今おっしゃったパラボラ・アンテナと同じものですか、別のものですか。
  23. 西崎太郎

    ○西崎政府委員 それは違います。と申しますのは、通信衛星を使いました国際通信というものが実用化の段階になりますれば、日本においては当然国際電電というものが、端末と申しますか、地上局を運営して参るということになりますので、国際電電としましてはそれの実用化の面からこれの計画をいたしておるわけでありまして、郵政省としましては、これはもちろん今の通信衛星の実用化に必要な基礎研究もいたしますけれども、それだけでなくして、今後いろいろ宇宙開発には電波利用面が多々あるわけであります。こういったものに必要な基礎的な研究面というものが、たとえば電波の伝わり方の問題であるとかいろいろあるわけであります。そういった意味でそういう基礎研究の施設を作る、こういうわけでございます。
  24. 岡良一

    岡委員 それでは、こういう宇宙開発のための第一段階である研究施設としてのパラボラ・アンテナの建設というようなことについては、宇宙審議会なりあるいは科学技術庁なりは関知しておられるのでございますか。兼重さんと杉本局長に……。
  25. 杉本正雄

    ○杉本政府委員 通信衛星以外のパラボラ・アンテナに対しましては――以外と申しますか、電波研究所でもって、先ほどお話もございました通信衛星その他一般人工衛星からの通信に関します研究川のパラボラ・アンテナの大型アンテナに関しましては、各省庁のそういう研究の調整の役目を持っておりますから存じ上げておりまして、及ばずながら推進方を努力しておるわけであります。国際電電に関しましては関係省庁ではございませんので、直接の調整その他の業務をやっておりません。
  26. 岡良一

    岡委員 科学技術庁は今度研究調整局ですか、そういうような局も新しく設けて、日本科学技術行政の全般的な調整をしようという御意思も長官の所信の中に私はあったと聞いております。ところが、今この手掛開発というこの問題の研究の第一階段においてこのパラボラ・アンテナが無関係に作られている、こういうようなことでいいのですか。これでは宇宙開発というものの統一的な調整というものがはたしてできるかどうか、私は非常に疑問に思いますが、その点の御所見を伺いたい。
  27. 杉本正雄

    ○杉本政府委員 科学技術庁の事務局といたしましてもそういうことの必要性を痛感しておりまして、先般来宇宙開発審議会で今後の根本方針というものを御審議願っております。その御答申を待ちまして適確な処置をとるよう研究中でございます。
  28. 岡良一

    岡委員 いずれこの問題は、単に宇宙開発だけではなく、日本の現在の科学技術行政全般を貫く一つの大きな問題でございますので、具体的にこの問題についての三木長官の御所信をぜひ一つお伺いをいたしたい。  それから、電波監理局長にお尋ねいたします。ケネディ大統領の教書によると、すでに通信衛星は実験研究段階から企業化の段階に入ったということを先般の教書で申しておる。ところが、アメリカでは通信衛星法案は、御存じように株式は半分は公開する。これはアメリカような資本主義体制の国においては私は異例なことだと思う。おそらくテネシー・ヴァレー・オーソリティに次ぐ異例な措置だと思う。こういうような形で政府の責任というものをはっきり資本的に確保しておるという体制です。だから、あなたは容易に、実務は国際電電がやるであろうというふうにしておられますが、それは一体政府方針なのですか。
  29. 西崎太郎

    ○西崎政府委員 御指摘の、米大統領が米国議会に提案した通信衛星会社法というものはまだ確定したわけではありません。これから米国会においていろいろ審議の対象になるものである、こういうふうに承知しておりまして、われわれの方でもこの法案を取り寄せまして、現在いろいろ研究はいたしております。従いまして、最終的にアメリカの案がどういうふうにきまりますか、現在のところはわからないわけであります。やはり何と申しましても、こういう通信衛星というものは世界的な問題であります。そういう意味で、当然各国がどういう格好でこれに参加するかということが問題になるわけであります。日本としましても、どういうふうにこれに対処したらいいかということを現在検討中でありまして、先ほど少し言葉が過ぎたかもしれませんが、必ずしも国際電電がこれを最終的に担当するようになるかどうかということはまだ確定はいたしておりません。日本ように国際通信というものが国際電電の独占といったようなことになっております国においては一応そう考えるのが常識じゃないか、この程度でございまして、先生のおっしゃったようにまだ最終的に確定したわけではございません。
  30. 岡良一

    岡委員 先ほど申しましたように、これはアメリカにおける産業界の事情もあるようではございますが、今度議会に出した通信衛星法案では、通信衛星会社を作る、しかし株式の半分だけは公開する、半分は政府出資だ。だから、一種の公社ですな。そういう特殊な形をとってこの通信衛星の企業化に乗り出そうという事実を見まするときに、私は日本のあり方はどうかということは慎重に御検討願いたい。単にこれは通信衛星の企業化という角度からでなくて、やはり宇宙開発の第一歩としての通信衛星に対しても、政府自体も基本的な態度として、郵政大臣並びに科学技術庁長官は十分検討をされて、そして日本のあるべき姿というものの結論を私は出してもらいたいと思います。これは一番初めにも申しましたように、予算もない、人も足りない、設備も悪い、この日本がおくればせながらかけ参じていくため宇宙開発という大事業ですから。アメリカでも、御存じように、やはりソ連に大きな立ちおくれをしたミサイル・ギャップというような問題が一時問題になった。これは一昨年でしたか、アイゼンハワー大統領が思い切って陸海空軍のなわ張り合いをNASA一本に統一した。そして宇宙開発に統一体制で乗り出したということで、これが私はグレン中佐の成功の大きな要因だと思う。そういう意味において、今や日本の場合はこれに学ぶべきだと思う。ただ、企業化という線から、ある会社の抜けがけに向こうの会社と連絡をする、その既成事実の上に立ってパラボラ・アンテナを作る、それもよかろう、こういうよう考え方でなくて、一つこれは真剣に政府部内においても担当大臣が十分検討し、研究を重ねて基本的な態度を打ち出していただきたい。この点は強く鈴江長官にも、次官にも、長官によく一つ御連絡をいただきたい。  それから、気象衛星の問題。これは宮地さんの専門でございますが、この実用化にはまだだいぶほど遠いのでございましょうか。
  31. 宮地政司

    宮地参考人 現在私たちが承知しておりますのは、最初上げましたタイロス一号というのはアメリカと豪州との間で実験的に使われております。そしてしかも、それはかなり成功したと伝えられております。アメリカではかなり大規模に実際にそれを利用しておると聞いております。それで問題は、まだこの気象衛星幾つか改良せられまして、たとえばニンバスとか、そういったような形に改良するという方向一つと、それから一方は、実際にそれを実用化しようという、二つ方向がございます。現在のものでも、ある程度実用化ができる段階になっていると思いますが、問題は、やるならば世界じゅうがこれを利用しようということで、結局世界に局部的なセンターを置くというようなことが考えられて、そしてその解析の方法、それから各所への資料の伝達の方法、そういうことが現在世界気象機構でもって検討されておると聞いております。それから一方、これは近いうちに開かれます国連の方の委員会でも、いわゆる世界的にそういうものを取り扱うということが検討されるものと思います。従って、これをやろうと思いますれば、割合に早いときに実用化されるという見込みは十分ございます。ただ、非常に金がかかるものでございますから、世界じゅうがよほどよくまとまらないといけないと存じます。
  32. 岡良一

    岡委員 向こうから文献をいただいて読んでみますると、三号まで今上がっておるようです。そこで、気象衛星が写した写真、それに基づいて飛行機を何十機か飛ばす、そうして種をまいたり、沃化銀とかドライアイスですか、それをセルの前の方にまいて、そこで台風のエネルギーを分散させる、あるいは台風の方向を誘導する。どうも昨年の実験では、相手方のエネルギーが強過ぎて思うにまかせなかった。だからやはり、タイロスをもう一ぺん上げるなりして、そうしてもっと発生の未熟のときに幼弱なセルに対してそういう措置を講じてみて、その結果をこういうことでいるんだというような説明が書いてあるようです。これはアメリカではハリケーン、日本では台風、あるいはインドへ行けばモンスーン、私はよく専門的なことは存じませんが、大体似たような発生機伝のものではないか。厳密に学問的にはいろいろありましょうが、しかも、これは関係各国には非常な大きな自然災害をもたらしておる。日本でも、年々二千億をこえる災害予算の中で、おそらくその大きな部分は台風の災害にさかれていると思う。これはモンスーンに見舞われる国でも、ハリケーンに見舞われる国でも、御同様だと思う。してみれば、この気象衛星中心とする実験の成果というものは、単に学問的な興味ではない。モンスーンやタイフーンやハリケ-ンに関係するすべての国々にとっては、非常に政策的な関心事だと思う。そういう意味で、日本はその声をどうあげていいのかということなんですが、宮地先生、具体的なこれまでの経緯もありましょうから、御所見があったら承りたい。
  33. 宮地政司

    宮地参考人 お答えする前に、私お断わりしておきますが、先ほど私が気象衛生を実用化するのはそれほど遠くないと申しましたのは、実用化に供するという内容でございます。私の申しましたのは、一応現在行なわれておりますよう気象の予報、特に長期予報なんかによく使われると思いますが、そういう方向のことを意味して申し上げました。いま岡さんの言われましたのでは、たとえばタイフーンとかハリケーン、モンスーンなんかを、いわゆる気象を制御するという意味のことをおっしゃいましたが、これは今後の研究に待たなければならないと思います。ああいったものは、御存じように赤道方面から発生いたしまして、どこかにああいうものの発生する場所があるわけであります。今のは大てい赤道から起こるわけであります。中には別のところで起こるのもございますが、そういう発生の最初のころの状態をよくつかみますれば、そのエネルギーは人間が動かすことのできる程度のものだと思います。だんだんそれが育っていきますと非常に大きなものになりますから、これをコントロールすることはむずかしいことだと思いますが、最初をとらえるならば、何とかできるかと思います。しかしながら、こういうような問題は非常に将来の問題だ、今すぐどうなるという問題ではないと思います。  さて、今御質問の、日本がどういうようにするかということは、私は気象自体の問題はよく存じませんが、世界気象機構というのが政府機関の連合体としてございまして、そこで国際的に進めるべき問題だと思います。ですから、そこで研究問題として決定されるならば、当然日本も参加し――ことに最近のタイロスの第三号などの問題になりますと、これまた私十分知りませんが、アメリカでは日本との協力ということをしきりに言っております。ですから、かつて第一号がオーストラリアの非常な協力を得られたように、日本の役割というものはかなり大きなものだと思います。現在では、こういった実用の問題になりますと、いまさっき通信の問題がちょっとございましたが、それを主として担当しております気象庁が直接世界機構またはアメリカ気象庁と連絡をとりながら進めておるというのが実情でございます。
  34. 岡良一

    岡委員 実際問題として、将来台風の予報と申しましょうか、全然雨が降らなくては困るというようなこともあるから、なくするわけにもいかぬと思いますが、やはり気象衛星幾つか飛ばして、それぞれ別な軌道で台風の幼弱なセルを発見しやすいようにするというようないろいろな問題もあろうと思います。こういうことも一つの大きな朗報になり得る問題として、政府の方でも積極的に検討をされる方向に今後お進み願いたいと思います。  それから、兼重さんにお尋ねした方がよいでしょうが、東大の生産研のロケットの発射の問題、これは糸川教授を初めずいぶん御努力願って相当な実績を上げてきております。しかし、また最近鹿児島に新しい発射場を設けたというようなことで、研究段階から、そろそろ応用化とでも申しましょうか、限度に来ておるではないかと思うのです。これは今後ロケット国産ということになるのかどうか。基礎研究から応用段階に来ておるならば、だれが取り上げるかということも政府として十分考えなければならぬではないかと思います。と申しますのは、バンデンバーグ基地からケープカナベラルはもちろん問題にはなりませんとしても、あの発信基地にはやはり相当人も常時要るでしょうし、また予算も要るでしょうし、いろいろなことで大学の研究から一歩踏み出ようとしているちょうど境目に来ておる。もしそうだとすれば、やはり宇宙開発審議会なり科学技術庁なりの責任において、これをどう進めていくかということを考え直すのがいいじゃないかと思います。この点について、まず専門の新羅先生から率直な御所見をお願いいたします。
  35. 新羅一郎

    ○新羅参考人 アメリカでもソ連でも、一方において人工衛星を飛ばしつつ、年間百個あるいは百五十個の観測ロケットはずっとまだ打ち上げている現状でありまして、そういう観測ロケットを作るということは日本でもずっとやらなければいけない。それが今おっしゃった研究段階を過ぎているというふうには、当事者としてはまだ考えていないじゃないかと思います。というのは、それを安く作るということと、性能を向上させるということにはまだ相当研究の余地があると私も考えますし、当事者も考えていると思います。それですから、まだしばらくはその研究をしてよい。しかし、これはやがて大学の手を離れてメーカーの手に移るべきものだ、そう思います。そうして、大学としては、全く新しい方向観測ロケットにしましても、たとえば滞空時間を非常に長くしよう。現在のは打ち上げてから滞空時間はぜいぜい五分とかその程度で、非常に短い。それをけた違いに延ばす。そういうことをすれば、一機によって非常に貴重な資料が得られますから、そういう新しい観測ロケットを作る。そういう研究テーマもありますので、大学としてすることもまだ相当残っていると考えております。
  36. 岡良一

    岡委員 最後に、せっかく三木長官が来られましたので、お尋ねをいたしたいと思います。  実は長官、私が先ほど来申し述べておりましたことの中で、特に長官の御所見を承りたいと思いますのは、この宇宙開発という問題も、いよいよ日本としても真剣に取り組まなければならないことになった。ところが、たとえば、アメリカでいよいよ国会に通信衛星法案を出される。いち早く国際電電会社が、アメリカの電電会社との間に非公式の了解の上で、パラボラ・アンテナの建設を始めようということが確定してきた。電波監理局では昭和三十五年からパラボラ・アンテナが建設をされている。そうかと思えば、東大の生産研では、関連の深いロケット研究が相当進んできている。これももう道川海岸では、聞くところによると、留守番が一人しかおらぬ。相当大きなものを打ち上げようということになりますると、危険という立場からも、私は相当な人員が必要になってきはしないかと思う。もちろん、製作には相当要する。そういうことになってくると、いよいよこの宇宙開発という仕事をすっきりと一本の形で推進ができないだろうか。アメリカで、やはり陸海空三軍が互いになわ張り争いをしている。それがミサイル・ギャップの原因だというので、NASA一本に宇宙開発を統合した。それがやはりグレン中佐の大きな成功の要因ではないかとも私は思うわけです。あれだけの予算を持ってさえもやはり協力一致体制をとっておるときに、日本が古色蒼然たる割拠主義のまにまに宇宙開発が運ばれるというようなことではなく、やはり日本の総理府なら総理府にその統一推進の機関を持つ。これが関係各省と緊密な連絡をとり、そして一つのプロジェクトの上に立って絶えず協力を推進しながら日本のこの宇宙開発を進める。そういう方針にそろそろ立っていいのじゃないかということをさっきから申し上げていたわけです。長官の御所見はいかがでございますか。
  37. 三木喜夫

    三木国務大臣 私も岡委員の御指摘のように、宇宙開発――日本は初歩的な段階であっても、こんなにばらばらに各省にまたがっておることはよろしくない。総理府の中に宇宙開発の本部を置きたいという考えでおるわけであります。これはしかし、三十八年度になる。そして、そういうことで、総合的な調整事務というのは科学技術庁で、研究調整局などにもそういう一課を置きたい。事務はやるけれども、全体としての大きな推進していく本部は総理府に置きたいという考えで、それは昭和三十八年度から実現をしたい、私はこういう考えでございます。
  38. 岡良一

    岡委員 一応、それでは私の質問をこれで終わります。
  39. 西村英一

    西村(英)委員 関連。私は事務当局にお願いしたいのです。大臣は三十八年度からと申しましたけれども、三十七年度の予算で宇宙開発に関する関係各省の予算はどういうふうになっておるか、調書を一つお出し願いたいのです。それだけお願いいたします。
  40. 杉本正雄

    ○杉本政府委員 後ほど書類をもってお答えいたします。
  41. 松前重義

    ○松前委員 関連して。宇宙開発のことを総理府でもってまとめて強力に推進されるというただいまの大協の御答弁は、非常にけっこうだと思います。ことにこれを強力に推進していただきたい。私はこのついでにちょっと一言、ただいまのような問題に共通な問題、行政上は共通な問題でありますから、これにつきまして伺いたいと思う。  それは海洋開発についてです。この間も大臣から、政府予算に脱落した今度のインド洋開発調査、この国際的な協力体制についてことしは脱落しておりますけれども、これは具体的に予算を差し繰って何とかやりたいというような御意図もございました。ところが、これらの問題は、南極の問題と同じように、従来文部省が大体中心になって動いております。海洋の開発のごときは、文部省、農林省、それから運輸省と、各省にまたがる問題であります。しかも、科学技術的に絶対にゆるがせにできない、当面のわが国の経済にも非常に大きな影響を及ぼす問題であります。国際的な協力体制はもちろんのこと、非常に大きな影響をわが国の経済に及ぼす。こういうことでございまするから、これまた宇宙と同じように、総理府において強力な推進をやるべきじゃないか。科学技術庁がやはり中心となって、来年、再来年は絶対にこういう脱落はないようにする、これが必要じゃないか。いな、脱落はないというような消極的なことじゃなくて、もっと強力にこれを推進していく必要があるのではないか。この前も申し上げましたように、アメリカのことしの予算教書などでも、アメリカの予算編成の最重点の項目は、国防と海洋の調査でありました。ソビエトにおいても同じようでありまして、この未開発の資源に対して人類はようやく目を向けて参りました。これは私は今、政治的に目をつけるべきときであると思うのであります。学者だけにまかしておく、学者に予算とりでも何でもやらせるというのではなくして、やはり政治がこれを取り上ぐべきときがきていると思うのであります。こういう意味におきまして、総理府における強力な推進、すなわち科学技術庁が中心となっての推進、この問題につきましてどのようなお考えをお持ちであるか、もう一ぺんお伺いしたいと思うのであります。
  42. 三木喜夫

    三木国務大臣 何もかも総理府に本部を置くというわけにもいきませんから、この海洋問題については、今度科学技術庁に研究調整局もふえますから、一段と各省間の連絡調整を強化いたしまして、今度のインド洋の問題も、実際ああいう問題に日本が参加して、そうして海洋の調査に寄与するということは、これはやはりせなければならぬ課題の一つであります。そういう意味で私は非常に残念に思って、これは何とか補いたいということは、御答弁申し上げた通りでございます。今後、機構の改革等ともにらみ合わせて、一段とこの総合調整の機能を強化していきたいと考えております。
  43. 前田正男

    前田委員長 次に、齋藤憲三君。
  44. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 地球観測年から宇宙観測年に急テンポで進み、ソ連アメリカ人工衛星の打ち上げに成功いたしまして、国会といたしましても、この急速な進歩について参りますにはよほど勉強いたさなければならぬのであります。とにかく、しろうとではなかなか了解に苦しむ分野に問題が展開して参っておるわけであります。そういう意味で、きょうお二人の先生においでを願いまして、科学技術庁が数年前から取り上げております宇宙開発の問題にわれわれも協力して、なるべく先進国に劣らないよう一つ国会でも努力をいたしたい、こういう意味お話を承ったのであります。何分にも、いわゆる何十万光年とか何百万光年とかいう、ちょっと私らの頭では計算のできない宇宙問題のお話でございますので、はたして肯綮に当たる御質問を申し上げて、さらに錦上花を添えることができるかどうか、はなはだ疑問でございます。  特に私が政治的に考えてお話を承っておきたいことは、これはどなたから御答弁を願いましてもけっこうでございますが、先ほど岡委員からのお話にも出ました通り、地球観測年に参加いたしました十二九国が南極観測を実施した結果、南極条約というものが締結されて、今強力にその条約遂行の途上、世界の人々の期待に沿うべく南極というものが平和基地として使用されるようになっておるわけであります。私の仄聞いたしましたところによりますと、この地球観測年が終わってから、世界先進国は宇宙観測年に目的を切りかえた。こういう話を聞いておるのでありますが、何か宇宙観測するという意味合いにおいて、各国においての話し合いとか、あるいは取りきめとかというものが現存しておるかどうか。外務省でも、どなたでもけっこうでございますから、お教えを願いたいと思います。
  45. 宮地政司

    宮地参考人 今のことで、純粋の学問研究の方のことだけを申し上げますと、地球観測年が終わりまして、その成果によって非常に重要だということになりまして進められておる幾つかの問題がございます。その一つが、先ほど申し上げました宇宙空間研究委員会、コスパル(COSPAR)という委員会ができております。これは非政府機関――政府の名において入っておらないのであります。学術団体として入っておる。日本でありますと学術会議が入っております。その宇宙空間研究委員会の国際的な協力で、これは相当に進められております。それから、先ほどの南極もそうでございます。これもイクス(ICSU)の中に特別委員会が設けられてやっております。ICSUと申しますのは、半間研究団体の親団体の名前でございます。それから海洋も同じでございます。従って、この海洋とか南極とか宇宙空間、そういう特別な研究というのは、国際宇宙観測年を契機にしまして、新しくできた大規模な研究の機関だと考えます。別に国際的な約束とか、特別なものはございません。ただ、みんなが集まって国際的に協力しながらそういう方面研究を進めていこうという団体でございます。それから、別に、これを国際的な政府機関の間の協定として進めておりますのは、国運またはユネスコを通して進められておるものでございまして、それは先ほどの宇宙空間平和利用委員会というのが、字面空間に関係したものでございます。同じようなものが海洋にもございます。南極も平和条約というものができて、やはり国際的な政府機関としての組織と、それから全然政府機関とは無関係な学術団体の組織と並行して進められております。
  46. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 時間もだいぶ過ぎましたので、あまりお話を承っておりますと御迷惑だと思いますから、簡単にお伺いいたします。  わが国では、昭和三十五年に宇宙開発審議会というものが法制化されたわけであります。この「宇宙科学技術調査」という文献によりますと、第一回の総会は三十五年の五月二十日に開催され、兼重先生が会長に就任された。第二回の総会は六月十三日に開催されて、内閣総理大臣より、諮問第一号、宇宙開発推進の基本方策というのが出て、それから第二号の、昭和三十六年度における宇宙科学技術推進方策という諮問について審議が行なわれた。私の手元にあります文献では、この第二号の諮問に対しては答申が行なわれたということがございますが、その後、総理大臣から、何か宇宙開発に関しての第三号、第四号という諮問が出ておりますか。
  47. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 お答えいたします。まだ第一号諮問に対する答申は審議いたしております。そのあと、第二号の諮問に対する答申はすでに出しましたが、それ以後は出ておりません。
  48. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 そうしますと、この審議会における総理大臣の諮問に対する答申は、諮問第二号の答申だけが一つ出ておる。第一号諮問の、宇宙開発推進の基本方策というものは、目下審議中で、まだ答申が出ていないということでございますね。いつごろこの基本方針の答申は審議会から出る予定でございますか。
  49. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 現在、審議会は二十二回を済ませまして、来たる八日には二十三回を開くことになっております。熱心に審議を続けておるのでございますが、年度末、三月末に諮問第一号に対する答申をまとめたいということで現在進んでおります。
  50. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 アメリカの一九六二会計年度における航空宇宙局の予算というものがここに出ております。これは日本の金に直して二千九百八十七億円。それに対しまして、日本の昭和三十六年度の予算を見ますと、各関係官庁の予算を総計いたしまして四億九千八百万円、六百分の一であります。先ほど西村委員から当局に対して御質問がありましたが、私の手元にあります昭和三十七年度各関係省庁の宇宙開発技術に関する予算の総額は六億二千九百万円、こういうような小さな予算をもって、宇宙審議会が、いわゆる何十万光年とか、もっと幅を広げて言えば何億光年、太陽系を中心とした九つの惑星に限って今宇宙という言葉をお使いになっておられるのだろうとは思いますけれども、とにかく、光年という、われわれに割り切れないよう言葉でもってはからなければならないような広域地域におけるところの問題を、こういう予算を前提として基本方針を打ち出されるということはきわめて困難だと思います。私はここで一つ、これは兼重先生にお伺いしたいと思うのであります。いろいろ文献を読んでみますと、また、グレン中佐の成功によって、私はアメリカ各界においての新聞記事もいろいろ読んだのでありますが、あのグレン中佐の成功に対しては、とにかくマーキュリー計画において四億ドル金を入れておるということです。そうしますと、邦貨換算一千四百数十億円の金が、あの成功にはつぎ込まれておる。そこで、月の世界に往復をするいわゆる月旅行の計画というものが、一体どのくらいの金をつぎ込んだら成功するだろうかという、新聞の上でアメリカ人との質疑応答に表われた数字は、大体二百五十億ドルから三百五十億ドルじゃないか。もし三百五十億ドルということになりますと、十二兆円という、日本の全予算を六年くらい食ってしまうような予算でなければ、月の往復はできないじゃないか。そこで、宇宙開発技術というものが、経済的な感覚からいって――軍事的とかいろいろな問題は抜きにして、日本の立場からいって、ここ十年とか二十年とかいう先行きを見越したわずかの期間において、一体経済的な価値というものが宇宙開発という点から考えられるのであるかどうかということですね。あえてそういうことはまだ考えたことがないという御答弁でもけっこうです。というのは、この間、二十五日の読売新聞の三面に、「国産人工衛星、どう上げるか」という記事の末尾に、「貧乏国がなぜ……」というので、「最後に宇宙開発審議会会長兼重寛九郎博士の話をつけ加えよう。「いや先日、新聞報道に日本でも人工衛星を打ち上げるという記事があったんですよ。そうしたらわたしは家族たちに、“日本ような貧乏なところでどうしてお金のかかる人工衛星を打ち上げなければならないんです”とつるしあげられましてネ。こまりましたよ……」これもまた現実である」と書いてある。私らもそう思うのです。マーキュリー計画においてグレン中佐があれだけの成功をおさめたのに四億ドルの金をぶち込んだ、一千四百四十億円という金がかかるのだという前提のもとに、日本がやはり宇宙開発技術とか、宇宙の神秘を探るために大いにこれからやっていくのだということが、一体国民の生活に何か直接関係があるのだろうか。ソ連アメリカならば、軍事的な競争の立場において、あれが大いに国民に安堵を与えるというような影響もあるだろうと思いますけれども日本ように戦争を放棄して、ひたすら平和を願っておる国家において、宇宙開発が行なわれると、生活が向上され、国民経済にプラスになるというようなことが一体あるのだろうかという考え方は、私はだれでも持っておられるだろうと思う。それが兼重先生の御家族の口から、日本ような貧乏国がなぜ金のかかる人工衛星を打ち上げるのですかという質問に変わったのじゃないかということを、私はこの新聞を見て思ったのであります。ですから、この宇宙開発というものが平和的な立場において考えられるときに、はたしてどれくらい日本の国民生活及び日本の経済に対してプラスをするかということを伺いたいと思うのであります。
  51. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 私は今、宇宙開発審議会会長という立場でございますので、できるだけその方の効果をはっきり申し上げたいと思うのでございます。  私が現在承知しております限りでは、原子力平和利用というのは、見通し得る近い将来において、人類に非常に大きな貢献をするということは、はっきりしております。それに対して、宇宙空間科学研究というのは、非常に先の長いことを考えれば、これはきっと非常に大きな貢献をするに違いないけれども、これはいつごろになったらという見通しは現在立たない。それ以上遠い将来のことであるというふうに考えている人が多いと思います。ただ、先ほども例にあがりました通信衛星の実用化というようなことは割に早いことで、その方の関係者が申しますのには、海底電線を敷設するよりも、通信衛星を上げておく方がもっと経済的にいくという意見もございます。従って、そういうものは割に早い。しかも現在の技術で申しますと、たとえばテレビの国際中継――国際と申しますか、ヨーロッパなどは別でございますが、かなり離れた地域の中継は、通信衛星を利用する以外に今のところまだ考えられないのではないかと思います。そういうような、金にかえられない面もございます。それから人工衛星も、天気予報あるいは長期予報というのがどれだけ国民経済に影響するかは、なかなかはかりがたいものではありますけれども、これも必要な業務でございますから、それに役に立つことは、ある意味でわれわれに直接役に立つことというのに入るかと思います。そのほか、航海などにも影響があると思います。しかし、多額の金を今つぎ込んで、それが近い将来返ってくるというふうには考えられない。従って、日本がやる宇宙開発というのは、やはり日本の実情に合い、また一本の最も得意とする面でこれに協力をする。何も日本だけが全部のことを同じようにやる必要はないというふうに、少なくとも私は考えております。私は音楽の専門家でないので、間違ったことを言うかもしれませんけれども、昨年諸外国へ宇宙科学技術調査に参りましたときに、いろいろ質問を受けました。特に女の人から質問を受けましたのは、一体日本は何のつもりでこんなに金のかかる仕事に乗り出すのか、ということであります。それに対して、いや、何も日本は、今アメリカソ連ような大金を使った仕事に乗り出そうとしてわれわれを派遣したのではない、しかし、宇宙空間科学ということは、将来の人類にとって非常に大事なことであるから、われわれ日本人もそれに対して貢献をしたいのだ、こういう問題は世界じゅうの人が協力してやるべきだ、日本人は日本人なりに、そのオーケストラのどういう楽器を受け持ったら一番有効かという、それを探すために歩いているという返事をいたしますと、少なくともその質問をした女の人はわかったような顔をしてくれるのであります。  そういうたとえ話は簡単でございますけれども、実際に始め、それを何でやるかということはむずかしいことでございますし、今私どもの手元で、どれくらいの金をつぎ込むのが一番適当かというようなことは、なかなか判断できません。それで、現在の宇宙開発審議会に参加しておりますものは、どちかとらいえばその方の専門の者でございますから、自分たちの仕事が非常に大事なことであり、それに相当の金をつぎ込む必要があると考えて、今までに使われた金よりも相当多額の金をつぎ込んで研究なり開発を進めるのが適当であるというような答申を出すことになろうかと思いますけれども、これは人情として、ある程度やってもいいと思います。学者が夢を持つということもある程度必要なことでございますから、そういう程度の磐田にはなるかと思います。しかし、二年近くもかかって相談しておりながら、こんな平凡なことしか考えられなかったのかという御批判も一方にはあろうかと思うのでございます。日本宇宙開発――今のようなことを開発という言葉で表わすのが適当かどうかには問題があるかとも思いますけれども宇宙空間科学研究なり、あるいはその一部分の実用化は、そういうふうにして進めるのがよかろうという、その根本は、やはり日本日本として得意な面を生かして受け持ち分野を進めていきたい、こういうことだと思います。
  52. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 これは同僚松本委員が、質問するときに忘れないで質問しておいてくれ、こういう関係で、これは私の質問じゃございませんが、宮地先生に質問を申し上げたいと思います。  先ほどのお話の中に、宇宙科学分野で、生物の起源がわかるといいますか、生命の起源がわかるといいますか、これは先生のおっしゃっておることと同じようなことが書いてある文献がここにあるのです。「日本のカッパー・ロケットによる電離層のイオン、電子の密度の測定は画期的成果を上げ、米国でも利用したいと希望があるほどです。このよう物理的研象のほかに、化学生物分野も開け、いん石の分析から、生命の起源に近い物質の発見や、火星を赤外線で分光すると、生物に近い炭化水素があるらしいなど、生物研究も興味深いものがあります。」宇宙科学分野にこういう文献がある。もしも宇宙科学の進歩によって生物の起源がわかり、生命現象に対する一新機軸が出れば、これは私は、人間として何ぼ金をかけてもいいんじゃないかと思われる。どんなに偉い人でも、どんなことを考えている人でも、究極はやはり科学、特に自然科学に対する希望というものは、生命の起源であり、いわゆる生物現象の実体というものに追求のメスを入れて、これが納得のいくような点までやってくれるということが、私は最終の目的だと思う。ですから、宇宙科学の進歩によって生物分野に大きな進歩発達が見られるということであれば、これはやはり日本人もへそくりを、出してもやってもらわなければならぬということに私はなるのじゃないかと思うのですが、これは一体どういうことなんですか。私代弁で御質問申し上げておるのですが、最もわかりやすいようにもしお話が願えれば、大へんけっこうだと思います。
  53. 宮地政司

    宮地参考人 今の生物の問題については、二通りの方向がございまして、一つは、従来の航空機というものとの関係でございます。これは人間が将来中宮旅行をするといったような前提に立ったいろいろな研究がございます。もう一つ方向は、今おっしゃいました地球外の生物という問題でございます。大体こういう生物の発生ということを考えてみますと、地球というものの小で、ある特定の条件でできたものだと考えられるわけです。ところが、一歩外へ出まして、たとえば火星に生物がいるかどうか。それから、さっきお話がありましたいん石なんかにも有機物が出ております。そういったようなものがやはり研究の題目になっております。これを、一たび空気の外へ出ますると、いろいろな方法観測が十分にできるということ。それからまた、将来、月とか火星まで人間が行くようになりますれば、もっと直接に研究ができるだろう。そういうことを通しまして、生命というもの、生物というものの普遍的な形というものがわかってくるだろうと考えられるわけであります。ただいま、生物ができた由来というのが、これは宇宙最初できまして、無機物の中から有機物ができ、有機物からまた生命というようなものが生まれる過程というのは、ある程度試験管の中でもわかりつつあります。それが外へ出ますと、普遍的な宇宙の形の一つとしてつながりが出てくるだろうという想像がされております。その方向研究も、これから字面科学一つとして重要な部門の一つになってくる。これは今生物だけを齋藤先生はおっしゃったのですが、必ずしも生物だけではございませんで、これは物理でも化学でも、あらゆる学問の、最初申し上げましたように、最先端の行き詰まったものの解決の一つとして、宇宙空間研究というものは重要である、とそれに関係しておる科学者たちは考えております。従って、相当の金をつぎ込むことになるわけですが、これは日本としては日本の分があると思います。いま兼重会長が言われましたように、オーケストラのどの楽器をわれわれはひくかということは、それぞれ得意の面がございますので、そういうものを通して、これは金もかかりますから、どうしても、アメリカであろうと、ソ連であろうと、一国の力でできる問題ではないと思うのです。従って、ほんとうに世界じゅうが一緒にならなければいけない。その一つの面を日本がになっていかなければならないと思うわけです。そういう意味から、学問主体としましても、宇宙空間科学、これを通してやるという学問の発展というものが期待されておる。これは非常に重要だと思います。
  54. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 お話で、だいぶ宇宙開発技術というものに対する認識を得まして、私自身としては非常に感謝申し上げるわけでございます。今までのお話を総合してみますと、宇宙科学宇宙技術宇宙工学というようなものを追求していくと、要するに、最高レベルの科厚技術分野というものがはっきりわかってくるのである。だから、これは世界的な総合力によってどこまでも追求していくというところに、人類社会の進歩発達も促されるのである。ただし、どの線を日本が音楽としてかなでるかということは、これは基本方針としての打ち出し方であるから、目下検討中である。一番日本人としての得意な場面を世界的に受け持つ、そして世界の要求する宇宙科学宇宙工学等におくれをとらないように責任を果たしていくということが、日本科学技術振興の一つの大きなテーマである。かようお話になって、私もこれは非常にすっきりしたのであります。  そこで、長官がせっかくおいでになったから、最後に長官に御質問を申し上げておきたいと思うのであります。今まで日本が、宇宙開発と申しますか、超空間、高度空間と申しますか、私はよくわかりませんが、とにかく、空気のない層にものを打ち上げたというのは、東大生産研究所ですかのロケットです。カッパー8、今カッパー9が上がったか上がらぬか、とにかく三百五十キロぐらいまでぶち上げることに成功したのでありますから、私は、この功績というものは非常にわれわれ国民として多とすべきだと思うのであります。そういうことで的確にわかったことは、六十キロから九十キロには電離層のうちD層というものがあって、これは長波に非常に関係がある。あるいは百十キロから百五十キロにはE層というものがあって、これはブロード・ウエーブ、すなわち中波に非常に関係がある。三百キロから四百キロにはF層というものがある。だから、そういう電離届を利用して自由自在に無線通信を行なえるということの分野においては、日本も相当の認識を得たのだろうと思うのでありますが、すべて、今お話がありましたように、日本がこういう新しい科学技術分野に力をいたして、先進国に劣らざるような体制を作り上げんとするならば、行政的にやはりしっかりした角度から長官にお考えを願って、日本の総力を結集して推進するという体制を作っていただかなければならぬ。とにかく、先ほど例示いたしました通り、日本の三十六年度における宇宙科学技術に関する予算が四億九千万円、それに対してアメリカは二千九百八十七億円。六百分の一の金を使っている。負けないよう一つやれなんといったって、これは政府の力、行政の力としては、言うべくしてとうてい先進国に追随はできません。そこで、われわれとしては、大いなる力を求めて、先進国におくれをとらざるよう世界的な分野を背負っていくところの力というものを国内に求めていけば、これはやはり民間の力も持ってきて、そして官民がすべて一体をなしてある一つの目標に向かってその力をいたすような行政指導というものがなければ、単なる官庁の予算なんというものを持っていって大それた仕事をやろうなんといったって、これはほんとうに九牛の一毛にも足りないところの予算になりはせぬかと私は思うのであります。でありますから、私は、きょうは時間がございませんから、長官にあえてこれ以上は御質問申し上げませんけれども、そういう点において現在の科学技術庁のやり方にはたくさんの欠陥があるのではないか。これを一々例示しろというなら例示しますけれども、それは時間がたくさんかかって御迷惑だろうと思いますから、これはなるべく長官と相対で、ほかの方に時間的に迷惑のかからないときにやろうと思うのです。ただ、きょう伺っておきたいことは、こういう世界的な大きな問題ができ上がってきて、それを遂行していくところの力の中心は、何といったって科学技術庁に来ているのです。その科学技術庁が、日本の貧弱な予算でもってこれだけのものをやり切っていこうというならば、やはり民間の力を糾合して、一体化してこれを推進していくかということに結論づけられるのではないか。そういう点から、科学技術庁の行政というものは過去において一体どうあったか、現在一体どういうことをやっているかということに対しては、一つ厳重なる検討をお加え下さいまして、今度長官にお目にかかるときには、おれは万全を期しているという御答弁を承れるようにしていただきたいと思うのであります。これに対して長官は、よろしいという御答弁をいただけるかどうか、この点だけ伺っておきたい。
  55. 三木喜夫

    三木国務大臣 なかなか、よろしいなどという大それたことを申し上げる自信はないのであります。何分にも、役所としても歴史は新しいし、科学技術の新歩は、日本が戦争でまごまごしている間に、非常に長足の進歩を先進諸国はしておるわけであります。そういう意味において、科学技術庁のあり方というものにも私は検討を加えておることは事実であります。きょうもそういう会議を朝いたしたのであります。齋藤委員もかつて政務次官として豊富な御経験をお持ちになっておるわけでございますから、御意見等も承って、この時代の進運に即応した科学技術庁にしたいと考えておる次第でございます。
  56. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 私は、長官の所信表明に対する質問はまだ終わっておらないのであります。次の機会、次々の機会において、さらに長官の御所信を詳細に承りたいと思っておるのであります。それにつきましては、委員長に正式にお願いを申し上げておきたいのは、科学技術庁の付置機関、研究機関、並びに科学技術庁の責任下にある特殊法人、研究機関等に対して、できるだけ詳細な現状に対する資料を提出していただきたいと思う。あまり膨大にして専門的な資料を出されても私らはわかりませんから、どういうことをやった、どういう状態にあるかというよう資料を一ぺん早急に出していただいて、それを拝見した上で、その付置研究機関及び関係特殊法人等を視察して参りたい、さように考えておりますから、一つよろしくお取り計らい願います。
  57. 前田正男

    前田委員長 齋藤憲三君の御要望に対しましてはできるだけ善処いたしたい、こういうふうに考えます。  次に、河野正君。
  58. 河野正

    ○河野(正)委員 ただいままでいろいろと各委員から宇宙開発のあり方についての質疑が行なわれたわけであります。特にその中でもこの平和利用についての意見が非常に多かったと思います。私も、そういう平和利用ということを強く考えて参りますと、特に宇宙は人類共有の場であるという考え方に立たなければならぬというふうに考えるわけです。従って、その所有、あるいはまた運用というものも、特定の国だけが、たとえばアメリカとかソ連とか、そういう特定の国だけが独占すべきではない。平和利用という基本的な考え方に立ちますと、特定の国だけが独占すべきではない。従って、この宇宙開発に関しましては、運用にいたしましても、全地球人というものが発言権を堅持していかなければならぬ。そこで、先ほども宇宙開発の経済価値の問題がごさいましたけれども、私はその点はきわめて重要な発言だと思うのです。少なくとも宇宙開発というものを平和的なものにしていく、あるいはまた、特定の国だけが宇宙開発を独占するという考え方を否定するためには、私は経済的な価値よりも、むしろそういう宇宙開発研究その他に日本が積極的に参加をしていく、極端に言うと、経済を無視してもそういう研究開発に日本が積極的に参加していく、そうして宇宙開発に対する発言権を日本が堅持することによって、いわゆる特定国だけが宇宙開発を独占するという考え方を否定する、そういう方向で進んでいかなければならぬというふうに私は考えるわけです。この点は、宇宙開発のあり方に対しまする基本的な考え方としては、私はきわめて重要な考え方だろうと思うのです。  そこで、そういう宇宙開発の基本的な考え方に対しまする御所見というものが非常に重要でございますから、まず三木長官、さらにはまた、先ほど兼重先生からもこの問題に対する御発言がありましたので、今申し上げますような基本的な態度というものは非常に重要でございますから、この際お二人の方からあらためて御所見を承っておきたい、かように考えます。
  59. 三木喜夫

    三木国務大臣 今お話のございました宇宙開発についての御意見、しかし私は、御指摘のよう宇宙開発に対するナショナリズムの立場はとらない。これは日本が一切のものを犠牲にして人工衛星を上げろというようなことはできるものでもないし、またそういうものでもない。むしろ、今後宇宙の開発といいますか、宇宙の空間の平和利用というものは、国際的協力というものが進められなければいけない。宇宙の空間というものは独占すべきものでないということは、御意見の通りだと思う。昨年でありましたか、国際連合などにおいても、宇宙空間平和利用委員会というものができて、事務局も置き、これで活動を始めようという決議がなされたわけであります。こういう形で、国際連合などのような形で――みなおのおの国としての分野があるわけですから、こういう形で国際協力の実を上げるべきであって、宇宙の空間を、自分が人工衛星をよその国よりも早く飛ばしたからといって、それを独占する思想はいけない。これは人類のものである。そのためには、国連という機関が、もう少し平和的な宇宙開発に対しては国際協力の実をあげるべきである。日本が米ソに対抗して、無理をして人工衛星を飛ばせという考え方には、私は賛成しない。むしろ、そういうことをする前にしなければならぬものがたくさんあるのですから、やはり日本日本としての――まことに残念ですけれども、私も人工衛星の一発くらい上げたらいいとは思いますよ。しかし、それはやはりそれだけの技術的な基礎も要るし、また国力も要るわけでございますから、日本日本分野において国際的な協力をしていく。そして宇宙は全人類のためにということで、大国の独占を許さない。こういう国際協力という実をあげるよう日本もしむけていくことがよろしかろうと考えておるのでございます。
  60. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 初めに岡先生の御質問に答えましたように、日本宇宙開発というものは平和利用に限り、公開の原則で進むというそのことは、何も私一人が特にやらないでもみんなそうしてくれると思っておりますから、何も心配はないと思います。ただ、国際的な問題になりますと、これにはそう簡単ではない問題もあると思います。そのときの発言権を少しでも強くするために、今アメリカソ連のやっているようなのに近い、あるいは欧州連合のやろうとしていることと同じようなことを日本がやるということは、それがそれほど目的に合うかどうか、私も疑問に思っております。お話ような趣旨を達成する努力はいろいろな方法でできると思いますので、そういう別な方法努力することには、私もこういう立場におります限り一生懸命やるつもりでございます。方法はただいまおっしゃったようなことがいいというふうには、すぐ考えられないのでございます。
  61. 河野正

    ○河野(正)委員 私の言葉に足りぬ点があったと思いまするけれども、経済価値から宇宙開発を考えていくということは非常に危険がある。端的に申し上げますと、どうせもうからぬものだから、それならやめておけという考え方でやっていきますると、たとえば三木長官が言われました国際協力を進めていく、こういう形でおっしゃっても、何も研究に――それは日本なら日本の経済能力に対しまする持ち分がございますから、そういう持ち分を離れて、そういう経済能力を無視してやれというわけではない。ただもうからぬから、やったって大したことがないという考え方では、たとえば平和利用をやるべきだといって日本が発言権を持たなければならぬけれども、その場合に発言権というものがあるかないか、これは非常な疑問があるのです。そこで、国際協力三木長官の言われますように進めていくためにも、経済力に応じた研究なり開発というものに参加していかなければ発言権というものはない、そういうことを私は申し上げたのでございます。もし私の言葉が足りないでの御回答でございますならば、一つように御理解をいただきたい、かように考えるわけです。  と申し上げますのは、先ほどもいろいろと触れられたようでございますが、アメリカの議会におきましても通信衛星会社法というものを提案されておる。この問題を平和的に見て参りますると、これはきわめてけっこうな法案だと思うのです。新聞に書いておりますように、全地球で同じテレビを見ることができるというようなことで、これは一例でございますけれども、そういう利点があると思います。ところが、この通信衛星を打ち上げたという技術は、これは本来から申すとアメリカ技術であります。この技術アメリカ技術だというようなことで、いろいろと一方的に活用してもらうということになると、これは先日もテレビの座談会を聞いていますと、通信衛星が軍事的に利用される可能性があるというふうな講師の方の御指摘もございました。そこで私は、やはり今申し上げまするように、この通信衛星にいたしましても、宇宙は人類共有の場所である、こういう理解に立っていかなければいけない。そういう意味におきましては、この通信衛星の本体、あるいはまたその打ち上げた技術というものは特定国であっても、その管理運営というものは、三木長官が触れられましたけれども、国際管理という形で推進していかなければならぬということは当然のことだと思うのです。ところが、そういうことを日本が推進しようと思いましても、さっき私が御指摘申し上げましたような経済価値ばかり論じて、そしてその開発に日本が積極性を失うというような場合には、その国際協力を推進するという場において非常に力が弱くなっていくと思うのです。そこで、私はこの宇宙開発のあり方を考えて参る場合には、もちろん日本の現在の経済力ということを考えなければいけない、一切無視してやるということは非常に大きな問題である。けれども、これは先ほど兼重先生も触れられたようでございますが、それは日本の現在の経済力のもとで、あるいはまた現在の日本科学技術のもとでどういう方面を担当するかという判断については、いろいろあろうと思います。あろうと思いますけれども、ただ基本的には、今言ったように経済価値を基点として考えることは非常に危険性がある。この点は私は基本的に非常に重大なことだと思います。私の最初言葉が足らずにそういうような御所見の開陳があったとするならば、今申し上げたことが私の意思でございますので、そういう意思に基づいて長官がどういうようにお考えになりますか、一つあらためてお伺いをしたいと思います。
  62. 三木喜夫

    三木国務大臣 よくわかりました。私が最初に申し上げたのは、何か発言権を確保するために無理してでも人工衛生を上げることを考えたらどうか、というような御趣旨に受け取ったわけでございます。その考えはないということを申し上げたのであります。しかし、その過程に至るまでの間、いろいろ通信気象、こういう面についても従来細々ながら日本もやって参ったのでありますから、これにもう少し力を入れてやる価値がある。そのために岡委員の御質問に対しても、ばらばらでどこが中心になっておるかわからないような今のあり方を改善して、そして総理府に宇宙開発の推進本部のようなものを設けたいということを私が答弁したのは、単にそういう機構ばかりでなく、予算も大体七億程度の予算しか今年はついていないわけで、これはむろん私は少ないと思います。七億円くらいの予算ではなかなか推進本部を作りましても、その活動は相当な経費もかかるわけでありますから、こういう予算の面においても機構の面においても、一段と宇宙開発と申しますか、そういう研究に対して力を入れていく。それは損得という――国というものは、一々損得で考えておったのでは国のバックボーンはできるものじゃない。ときには損得は離れなければならぬし、ことに科学技術などは、一々そろばんをはじいて、今もうけにならぬからやらぬというのでは、何もできない。そういう点ではお説の通り、長い目盛りで人類の将来を考えて、今すぐに損であろうが得であろうが、こういう大きな人類の課題になっておる宇宙開発に、日本は分相応な寄与をするだけの下地を作りたい、こういう考え方は、今お話しになった通りに私も考えております。
  63. 河野正

    ○河野(正)委員 いま長官からお説のような御所見を伺いましたが、そういう考え方は私ども全く一致をいたしておりますので、ぜひ宇宙開発の基本的な考え方としてはそういう方向で推進をしていっていただきたいというふうに希望を申し上げておきます。  なお、先ほど参考人の方々から現在の宇宙開発の現況を見ておると、大体米ソあるいは欧州というふうな三つのグループに分けられるというようお話がございました。しかしながら、現実に私どもが仄聞するところによりますと、大体現状においては、米ソ二大国の間で宇宙開発の競争が行なわれておるかのような感じを受けるわけです。こういうふうに各国お互いに競争をして宇宙開発を行なうということは、ある意味においては切磋琢磨すると申しますか、そういう意味では非常に効果があろうと思います。ところが、考えようによりますと、その反面におきましては、宇宙兵器のデモンストレーションを行なう、こういう格好になっていく危険性もある。そこで、宇宙開発を推進していく意味におきましては、一方においてはそれぞれ競争をして、そうしてお互いに切磋琢磨をしていくことが必要であるが、それを野放しにしておきますと、今度は宇宙兵器のデモンストレーションというふうな格好になって、ある意味におきましては宇宙開発というものが邪道にそれてしまう。そういう可能性が出て参ります。  そこで私は、先ほどもお話がございましたよう通信衛星、これはさっきの話ではございませんけれども通信衛星を軍事的に利用する可能性も出ておるというような御心配もございましたけれども、一応私どもは率直に平和利用ということで理解をしたいと思います。こういう通信衛星なら通信衛星、こういうものを一つの手始めとして、最近新聞を見ましても、この科学技術の協力体制というムードがだんだん出てきた。最近アメリカがずっと進んで参りましたので、ソ連も今度はむしろ協力していこうというふうなムードも出てきたというよう状態でもございますので、できればこういう時期というものを一つの契機として、共同開発という方向にむしろわれわれは推進をしていくという役割を果たすべきではなかろうか、かように考えるのでございます。そういう点につきましては、どういうふうにお考えになっておるか。また、それぞれ専門分野においては、今日までそういう点についてはどういう御努力をなさって参られたか。この点については、一つ宮地先生の方からお聞かせ願えればけっこうだと思います。
  64. 宮地政司

    宮地参考人 科学研究という方向につきましては、国際協力というのは非常によく行なわれております。先ほど申しましたコスパルという会議でございますが、この会議には、ソ連及びアメリカが、何といいましても人工衛星を打ち上げておるということで、中心になっております。次のクラスが日本を含めまして五カ国、これはイギリス、フランス、それからオーストラリア、カナダの五カ国でありますが、それが第二クラスに入っております。最近イタリアとかドイツが入ってくるわけでありますが、そのほかにロケットも打ち上げていない国というのも入っております。そうした国が自由にその委員会に入ることができます。しかも、そこでは何ら秘密もございませんし、あらゆる資料を公開をして共同研究をやっております。従って、日本でたとえば人工衛星の運動を研究したものは、すぐ必要な場合には電報でアメリカにも送りますし、同時にソ連にも送っております。各国のセンターがございまして、そういうところに連絡をとってやっております。従って、研究という面では、少なくとも各国とも非常に仲よくやっております。一番最近のコスパル会議はイタリアでございましたが、去年の四月でございますが、あのときたまたま人間を乗せたソ連人工衛星が飛んだのであります。そのときも各国の人たちが非常にそれに称賛を与えたというように、非常に仲よくやっております。  それからあと、ただいま申されました軍事的な画のお話でございますが、これはすべて応用の面で、ことにロケットの面でそういうことがあると思います。これはどうも大へんおかしいことでありますが、あらゆる科学技術というものが使いようによっては悪い方にも使える。しかしながら、いい方向に使えるならば、これは政治的な問題でございますけれども人間の社会に役立つように使えるわけでございます。従って、科学技術そのものの研究ということになりますと、各国の協力というのは非常に望ましいことで、おっしゃる通りでございます。この点については、各国の間で現在行なわれておりますのは、二国間の協力とか多数国間の協力という形で進められておりまして、これは現在は、今ソ連が申しておりますよう世界中が一団になってやるという機構は、まだできておりません。できようとしつつあると言っていいのじゃないかと思います。こういったようなことは、今後開かれる国連での土俵の中で論議されることだと思います。われわれも、そういうような事態になれば、非常に研究はしやすいと思いますし、同時に、先ほども何回か申しましたように、これは地球の上全体で、非常に金がかかる研究で、しかもやらなくちゃならないことだと私は思いますので、これは国際的に協力してやるのが最も経済的に進める方法だと思います。そういう方向へ次第に向いておることも事実だと思います。
  65. 河野正

    ○河野(正)委員 いま宮地先生から御説明がございましたように、国際協力というような面で資料交換をしたり、あるいはまた意見の調整をしたりというようなことはきわめて望ましいと思いますが、一方におきましては、さっき申し上げましたように、それぞれの国が競争で開発を行なう。そうなりますと、一例でございますけれども大気圏外にたくさんなロケットが飛び回って、そのために研究が阻害される。あるいはまた、これも先般ちょっと承ったのでございますけれども、針の衛星を飛ばして、そうして電波研究を阻害するというふうな動きもあるやに実は承っております。そこで、やはり共同開発が国連の中で一つ大きく取りまとめて行なわれるということが望ましいと思いますけれども、今申し上げますように、そういう段階に行かない過程において、今非常に開発というものがそれぞれ阻害される傾向もあるのじゃなかろうかというような説もあるわけです。そういう点については、いかがでございましょうか。
  66. 宮地政司

    宮地参考人 今のお話、ちょっと私も言葉を落としましたが、今ソ連アメリカがいかにも別々に研究を進めておるように思われますが、大部分のものは、先ほど申しました宇宙開発委員会という国際的な委員会がございまして、そこで各国の人たちが寄って相談をした線に沿って進めております。ですから、二重にはならないように進めておるはずでございます。そのほかに軍用のものがありまして、これはわれわれの手の届かないもので、一部はそういうものがございます。  それからもう一つ、先ほど針の衛星と申しましたのは、ウェスト・フオード計画と申しまして、これは実は最初アメリカの軍関係でもって計画されたものでございます。これは、小さな針をたくさん積みまして、そして空間に飛ばします。その針が反射体になりまして、ちょうど通信衛星ような役割を果たすものであります。この問題は非常に大きな問題であります。と申しますのは、その針をまかれますと、実はわれわれは非常に遠い空間からの電波、天体からの電波を受けていろいろな研究を進めておりますが、それが受けられなくなると思われる。そのためにわ、れわれは非常に反対いたしました。これは私たちが反対をしただけではなくて、アメリカ科学アカデミー自体が、これは重要なことであるというので調査会を作りまして、非常にこまかくそれを調べ、アメリカの国内でも相当論議されました。それから、各国のアカデミー関係者にその資料を配りまして検討を加えたものでございます。その結果、一応これは非常に危険である。これはもちろん軍事的にも撹乱することができます。そういうものをまきますと、今の宇宙通信をやろうと思うものが全部とまって、できなくなります。そういうことがありますので、非常に重要な問題であります。一方、科学研究もそのために非常に阻害される。そこで各国に、ことにアメリカ政府にも、こういうことをやるためには十分専門の科学者相談をして、その了解のもとでやってもらいたいということを申し入れたわけであります。それで、実はその申し入れをしましたあとアメリカは打ち上げたのでございますが、これはうまくいかなかったと思われます。しかし、その打ち上げたときには、十分に科学者の要望を入れた打ち上げ方をしたことは事実でございます。一応各国政府には今の学術団体の方からそういう申し入れをしながら、お互いにじゃまをしないよう研究方法をとりながら進めていこうということが行なわれております。
  67. 河野正

    ○河野(正)委員 この宇宙開発を平和的ならしめる、そういう意味でも共同開発の実をあげていくということが私はきわめて重要な要件だろうかと思います。そこで、いま宮地先生からいろいろ御意見がございましたように、ぜひ日本としてはそういう態度で今後とも強力に推進していただいて、宇宙開発というものが平和利用の方に進んでいくように、今後とも御努力のほどをお願い申し上げたいと考えます。  それから、先ほど新羅先生でございますか、お話がございました生物化学の問題について若干お伺いをいたしてみたいと思います。  御承知ように、宇宙問題を解決していく問題の中で、やはり切っても切り離すことのできない問題というのは、生物化学の問題あるいは宇宙医学の問題というものが、非常に大きなウエートを持つものではなかろうかというように考えます。特に、開発をして大気欄外に人間が出ていくということになりますと、生物化学には二点問題があるというような御指摘でございました。そのうちの、人間を送り込む、この問題が非常に大きな意義を持って参りますので、私は宇宙開発の問題を論ずる場合に、この生物化学の問題を軽視して宇宙開発を論ずるわけに参らぬというふうにも実は考えるわけです。ところが、御承知ように、さきの国会におきましても、当委員会で慈恵大学の杉本教授が意見開陳を行なっておられます。その意見を承って参りましても、宇宙医学についてはどこから手をつけていいかわからぬというふうな御意見開陳があったようでございます。実は私も先般九大へ参りまして、かつて航空医学をやりました連中に意見を承って参りました。私は戦時中、実は航空医学に手を染めたことがございます。そこで意見を承って参りましたが、今の日本宇宙医学というものは、大体航空医学から入っていこうとする一つの趨勢があるようです。そうしますと、航空医学に関心を持っておったこれら研究者ないし学者が、まず第一に宇宙医学には大きな開発の手を伸べていくべき宿命であろうし、またそうでなければならぬと考えるわけです。ところが、国会におきまする杉本教授の発言を見て参りましても、また私どもが個人的に承ったいろいろな事情からも、全くこの方面の開発というものは見るべくもないということになりますと、どうも字面開発というものがアンバランスになっておるような気持も受けるわけです。  そこで、日本の現在の生物化学研究の実態、開発の実態というものがどういう地位にあるのか、この辺の事情をお聞かせを願えればこれまたしあわせだと思います。
  68. 宮地政司

    宮地参考人 この方面はあまり詳しく存じませんが、私の知っておる範囲で申し上げます。宇宙医学または地球外の生物といったよう方面研究生物学的な宇宙研究というのは、世界的に見ましてもそれほどまだ進歩してない、これから始めるという段階だと思います。アメリカも、去年でしたか、初めてそういった研究所を作ったといったよう状態でありまして、従来ありましたのは、今申されましたように航空医学の続きとして進められておるというのがおもであります。  日本は、それではどうしておるかと申しますと、日本では数カ所そういう研究に関心を持った大学または研究所がありまして、そうして進めておられます。それからまた、学術会議宇宙空間委員会の主催によりまして、生物学関係のそういった問題についての討論会というのを去年一度開いております。これは全国的にそういう方々が集まって、将来日本でどのように進めるべきかという討論がなされております。その一部には計画も作られつつございます。現在の情勢はそういう段階でございます。従って、まだ予算化されておらないのですが、その前の段階にすでに来ていると申し上げたらいいと思います。
  69. 河野正

    ○河野(正)委員 いま宮地先生から御説明がございましたように、なるほど宇宙医学につきましては世界各国とも非常におくれをとっておるということは、私どもも大体承知をしております。しかしながら、最近でございますけれどもアメリカ等におきましては、宇宙医学というものを非常に重視をして、そして宇宙医学研究室の強化拡充に非常に大幅な国の予算を出すという決定をいたしておるようでございます。おくればせながら、先ほど宮地先生から、学術会議においても討論その他が行なわれ、そして実験の前段階の態勢についてのお話がございましたけれども、しかしアメリカあたりはすでに予算がついて、具体的に実験をするという段階に一歩前進をしておると思う。それですから、さっきお話がございましたように、宇宙開発についてロケットを飛ばすと非常に莫大な金がかかる、それについては日本の今日の経済能力という面からも非常に問題な点もございます。ところが、この宇宙医学と申しますか、生物化学の開発という問題については、いま日本科学陣のスタッフからいっても、まあロケットを上げるほどの莫大な予算がなくてもかなりの研究ができるのじゃないか。たとえば戦争中、航空医学は、それはもちろん名古屋あるいは東北あたりではやっておられましたが、航空医学の研究所がなくても、各大学においては予算がないままでかなり航空医学に対する研究をやって、しかもかなりの実績をあげておる、こういうことがございます。これは残念なことですけれども日本の学者は案外そういう困苦欠乏に耐えて研究し得る能力がある。先生も学者の一人でございますけれども、私も十年近く研究しておりまして、そういう体験がございます。ですから、私はこういう方面にはある程度国が予算の裏づけを考えていただければ、相当程度今の日本科学陣で成果をあげ得るのではないかというふうに考えるわけです。そういう点について、文部省の方が来ておられますれば、一つ文部省から、この宇宙医学に対する研究の体制を今後どういうふうに考えておられるのか。あるいはまた三木長官の方では、今後どういうふうにお考えになって推進されようとするのか。そういう点について御問答を願えればけっこうだと思います。
  70. 岡野澄

    ○岡野説明員 宇宙医学というよう研究につきましては、現在組織的に大規模に各大学において行なわれるというよう段階ではないわけでございますが、各大学においてそれぞれ御関係の向きで基礎的な研究をなすっておられると存じます。詳細は、私も十分この席で申し上げる余裕がないわけでございますが、ただ一つございますのは、名古屋大学に環境、医学研究所というのが、御承知と存じますが、ございます。これは元来航空医学研究所という研究所でございましたのが、戦後名称を変えまして、環境医学研究所となって存続しておるわけでございます。ここに昭和三十四年に新しく研究部門を設けまして、航空医学の部門を増設いたしました。小規模でございますが、ここにおいて低圧下における生理的な研究だとか、あるいは加速度等、身体平衡機能の研究だとかいうよう研究を本林教授を中心にして研究いたしておるわけでございます。大学全体の航空医学の研究の体制というのはまだ組織的にできておりませんが、現状では率直に申してそういう次第でございます。
  71. 三木喜夫

    三木国務大臣 河野委員の言われますように、核物理学の次にくるものは生物学だと私は思います。そういう意味において、宇宙医学というものも、医学、生物学の基礎の上において研究開発されるものでしょうから、力を入れていく値打ちのある課題である。今文部省からお話のあったような、名古屋大学とか慈恵会医科大学などで小規模な環境医学的な研究をやっておるわけです。その環境を宇宙に広めていこうという初歩的な研究段階でありますが、これはもう少し取り組んでいくべき課題である。われわれとしても、今後関心を持ってこういう問題と取り組んでいきたいと思っております。
  72. 河野正

    ○河野(正)委員 先ほど文部省の審議官から御答弁がありましたが、名古屋その他では若干の研究を行なっておる。その他はそれぞれ各大学において基礎的な研究を行なっておるだろうというような御説明でございましたけれども、実際に大学その他現場に参りますと、どこから手をつけたらいいのかわからぬ、これが実態です。しかし、かつては航空医学に非常に関心を持っている学者、あるいはまた研究者の皆さんが、そういう考え方を持っておられる。非常に間口が広い。たとえば無重力状態に対しますいろいろな問題もございます。あるいはまた遠心力に対する諸問題があります。あるいはまたロケットで上がりますと三千度に近い非常な高熱を発するそうでございますが、そういう問題に対してどういうふうに対処するか。あるいはまたロケットで参りますと、非常に孤独で心理的な影響というものが非常に強い。そういうような心理的な研究をどうやっていくか。こういうようないろいろな問題があって、実は最も関心を持っておられると思われる研究者あるいはまた学者の方々が、どこから手をつけていいのかわからぬのだという考え方でおられるわけです。そういう実態であるにもかかわらず、名古屋あるいは東北大学あたりにちょっぴり予算を出して研究させる。今、三木長官も、いろいろとこういう方面に力点を置いて進めていかなければならぬというようお話もございましたが、現状は今申し上げますようなことです。せっかくりっぱな御答弁をいただいても、これでは実際その実をあげることは全く困難であろうと存じます。もちろん、世界のレベルというものが非常に低いわけですから、日本が低いのはあたりまえだというお考えでおられるかもしれませんけれども、やはり日本も積極的に中庸開発をしていく。しかも、実際生物科労の研究についての予算が当初どれほど要るかわかりませんが、私はロケットを打ち上げるよりもこれはずっとささいな予算で済むんじゃなかろうかと思う。研究に金をかけることは必要ですけれども、幸いにして日本科学者というものは、案外困苦欠乏にたえて研究する一つの美点といえば美点がある。ですから、ある程度国がそういう予算の裏づけをやってくれれば、かなり大きな成果を上げ得るのじゃないか。ところが、今申し上げるような実態では、なんぼけっこうな答弁をいただいても私は満足するわけにはいかぬ。  そこで、今申し上げるような実態に対して、審議官にここで政治的な御答弁を願うことが適切かどうかわからぬけれども一つここでどういう決意で臨んでいただくか、その決意のほどを承っておきたいと思います。
  73. 岡野澄

    ○岡野説明員 この問題は、われわれが出しておる経費が非常に少ないという点から研究が発展しないという面も、確かに御指摘の通りあるかと思います。同時にまた、学界の方のどういうプログラムで宇宙医学を進めたらいいかという組織体制と申しますか、それが先ほど御意見にございましたように、何から手をつけていいかわからぬというよう状態であるわけでございまして、その点さらに学術会議の御専門の先生方の御意見を聞きまして、打つべき手を打っていきたいというふうに考えております。
  74. 河野正

    ○河野(正)委員 今御答弁いただいたことは首末転倒しておるのではなかろうかというふうに私考えるのです。と申し上げますのは、何らかの方法でそういう研究なり開発に手を染めていきたいという意欲は現場においては非常に強いわけです。そこで、むしろ政府が、今後宇宙開発特に生物科学の開発についてはどういう方向で進むべきだという基本方針を進めていただく。そういう政治力、指導力というものを発揮していただく。そのことが研究者を啓発し、研究者の研究というものが今後大きく軌道に乗っていくゆえんでなかろうかというふうに私は考える。体制ができぬから金を出すわけにいかぬ、予算の内訳をきめるわけにいかぬということでは、私はいつまでたっても軌道に乗っていかぬと思うのですよ。  そこで、もちろんこれは工学関係がおもだと思いますけれども科学技術庁でも科学技術会議があり、あるいはまた学術会議の中でも宇宙空間研究委員会等があるわけですから、そういうところで、今後生物科学の開発というものはいかにあるべきかという基本方針をすみやかに示して、しかもその方針に沿うて財政的な裏づけをやっていただく、こういうことが私はきわめて望ましいと思うし、緊要であると思います。その点は長官、さらには宮地先生からも御所信を述べていただければけっこうだと思います。
  75. 三木喜夫

    三木国務大臣 河野委員の御指摘のように、今文部省の答弁は――また実際問題として体制もできてない面もあると思います。しかし、とにかく政府としても、こういう学問の将来というものがこれからの非常に大きな課題であるということに対応いたして、これを推進していくために相当――これだけに重点を置くというわけにはいきませんから、お金もいろいろな問題があるが、やはり今後開拓していくべき分野であるということは認めまして、できるだけのことをいたしたいと考えております。
  76. 宮地政司

    宮地参考人 先ほど申し上げたのでございますが、学術会議におきましては宇宙空間研究連絡特別委員会というのがございまして、そこで実は検討しておるわけでございます。で、先ほどお答えしましたように体制がまだ十分できておらない段階でございまして、実は総理から日本における宇宙開発をいかにするかという諮問がありましたのが一つの契機になりまして――もちろんそれ以前から学術会議の中の宇宙空間研究連絡特別委員会はあるのでございますが、そこでは学問的にいろいろ検討しておりましたのが、総理の諮問を契機にしましてかなり具体的にその中でいろいろ論議をされております。いろいろな研究体制とか研究問題といったようなものを具体的に検討しております。従って、その中で今指摘されました航空医学とか宇宙生物学といった方面が最もおくれておる、一番あとからついてくる状態でございます。もう一つ化学の方がございますが、これもまだそれほど芽が出ておりません。しかしながら、化学なんかに比べますと、今の生物学の方がもっとよく検討されておると私は見ております。現在そういう状態で、これはいずれ宇宙開発審議会の答申が出ます際にはある程度具体的な形をとるものだと思っております。
  77. 河野正

    ○河野(正)委員 体制ができておらないし、今後そういう体制を作るために御努力願うわけですが、それらにつきましては一つ今後とも格段の御努力をいただきたいというふうに考えます。  ところが、実際には、いろいろの書物なんか読んでみますと、必ずしも体制ができなくてもやれる方法があるんですね。私は寡聞にして一、二の例しか知りませんが、たとえば無重力に対する研究。これについては根本的研究としてはやはりかなり予算が伴うことであろうし、金が必要だと思いますけれども、一例としては自衛隊で大きな爆撃機を飛ばしてやりますと、計画的ではないけれども、一時的現象として無重力状態が起こってくる。そうすると、計画的な研究はできませんけれども、偶発的研究ですが、その瞬間をとらえての研究というのは可能である。ところが、そういう今日できることについて実際頭を向けていただいておるのかどうか。ただその体制ができておらぬ、あるいはまた金がないというようなことだけでこの問題をほおかむりしてしまって、やるべきことも怠るというようなことがあっては非常に困ると思うのです。それですから、なるほどさっき長官からも御指摘がございましたように、予算が非常に少ない。そういうことは私どもも今後努力を願わなければならぬことですけれども現状はわかります。現状はわかりますが、現実にできることがある。そういう問題についてはもう即刻手をつけてもらわなければならぬというふうに考えますが、どうであるのか。特にこれは党が違いますからイデオロギーが違うと思いますが、自衛隊は戦略訓練は今まで非常に熱心におやりになる。しかし、そういう平和的に活用する面があるのです。もちろん私どもは自衛隊は認めておりませんけれども、現実に自衛隊はある。その中で平和的に活用できる面がある。そういう点については、今までお考えになっているかどうか、わかりませんが、お考えになっておったらばそのようにお答え願いたいし、そうでなければ今後即刻手をつけていただかなければならぬ問題でございますので、そういう点に対します御見解もあわせて承っておきたいと思います。
  78. 三木喜夫

    三木国務大臣 河野委員の御指摘のようなことは、今まだ実際に行なわれてないと思います。今後いろいろ進めていく上に検討する材料にいたします。今は、やっておらないと思います。
  79. 河野正

    ○河野(正)委員 時間も非常にたちましたので、どうも知っておる知識を全部吐き出すようですけれども、もう一つ御参考のために申し上げて、御所見を承っておきたいと思います。  それは、私ども、にわか知識でございますけれども人間宇宙に打ち上げるその場合に、やはり地上におけると同じような条件に置くという研究が行なわれなければならぬ。これはもう常識です。そこで、その一例として申し上げるわけです。たとえば無重力の状態のもとにおける栄養の摂取、これなんかはクロレラの研究によってかなりその目的を達することができるというようなことも言われておる。それはもちろんそれのみでは、酸素を吸入したり栄養を摂取したりということには事足りぬと思いますけれども、しかし少なくとも、その研究によって一部はその目的を達成することができるということは、大体科学的に証明されておる。そこで、一例でございますけれども、そういう具体的事実については、さらに積極的に研究を進めるべきであると思う。これなどは現在もやっておるわけですから、すぐできるのですね。それを結局宇宙開発に結びつけていけばいい。そういうような点もあるわけでございます。そういう具体的な事例については、今日まで御検討願っておるのであるか。願っておらなければ、さらにやっていただかなければなりませんから、今後に対する御所見を承っておきたい。
  80. 宮地政司

    宮地参考人 今お話のありましたクロレラの研究、そういった種類の航空医学、それをもう一歩進めまして、宇宙船の中の閉鎖された系の中での人間生活、そういったようなものは、先ほど申しました学術会議の中のそういう専門家の集まりました討論会で検討されております。ですから、検討しつつあると申し上げておきたいと思います。  それから、今のそういういろいろな研究事項で、今すぐ手がつけられるものもございますけれども、今われわれが考えて、私たちが今申し上げておる宇宙開発という言葉でいう研究は、かなり総合的なものでございまして、やはり従来の研究とそれの積み上げと申しますか、その関連において進めるべきだというように考えております。ですから、飛び越えていくということは非常に危険だと考えられるわけです。従って、各専門家が寄りまして、従来の研究を積み上げるのにどういうよう方法をとり、どういうような協力をしながら進めるかということをまず検討いたしまして、そして研究を進めるというのが大体宇宙開発の面でやるやり方でございます。もしそれが、それからはずれて、今のように特別に無重力状態だけをやるということになりますと、これはわれわれは従来各個研究と申しておるものでありまして、総合的なものではないと思います。今、宇宙開発審議会で検討しておりますのは、そういった総合的な進め方、そういったようなものをむだのない、しかも一名研究者が協力しながら進める方法というのを検討しております。そういう状態でございます。
  81. 河野正

    ○河野(正)委員 時間がありませんから、最後に申し上げたいと思います。いま宮地先生にお答え願ったことと私の要望しておりますことについては何ら不一致はないと思うのです。と申し上げますのは、総合的な研究をやらしていただくということは非常にけっこうだと思います。しかしながら、無重力の問題、あるいはまた栄養摂取の問題、こういう過去の実績があるわけですね。その積み重ねによって総合研究が行なわれるという別な立場からの見解もあるわけなんです。それですから、私がおそれておりますのは、宇宙開発、特に今主として宇宙医学の問題について論及して参りましたが、そういう方面に非常に関心を持っておった人が多い。多いけれども、どこから手をつけていいかわからぬという実情なら、そういう従来の研究を積み重ねるのも一つ方法ではなかろうか。もちろんそれは、大きく早く総合的指導方針が出てくれば非常にけっこうだ。ですけれども研究の積み重ね、それがひいては総合した研究一つの大きな体制になるわけですから、そういう現在までの実績というものを尊重して、それはそれなりに進めていくということも一つ方法ではなかろうかというふうに申し上げたわけです。それについては、私は宮地先生の見解と不一致の点はなかろうと思います。  いずれにいたしましても、宇宙開発といういうものが、今日世界原子力開発と同時に、これだけの大きな問題となっておるわけでございますから、日本としてもこの宇宙開発に発言権を持っていく。特に国際協力あるいはまた平和利用という面に対しまする推進的な役割を果たしていく。そういう意味からも、やはり日本が積極的にこの問題の研究、開発に当たらなければならぬということは、これは否定することのできない事実だと思います。世界的なレベルもそうでございますけれども、特に日本宇宙医学については、おくれをとっておるというようなことでございますから、一つこの際格段の御努力を願って、そして特に宇宙医学の場合は、これは実際にやってみなければわかりませんけれども、比較的金が要らないで済むのじゃないかという気もするわけですね。ですから、私は日本の場合は特にそういう方向に重点を指向すべきじゃなかろうかという感じもするわけです。そういう意味で、一つ今後とも格段の御努力をお願い申し上げ、そして特に今申し上げましたように、予算の裏づけ等もございますので、これについては三木長官として格段の御努力を期待いたしたいと思いますので、一つ最後に御決意のほどを承って、私の質問を終わりたい、かように考えます。
  82. 三木喜夫

    三木国務大臣 いろいろ河野委員から有益なお話を承って、私も参考になることが多かったことを感謝いたします。今御指摘になったような問題は、いずれも重大な問題でございますので、むろん程度の差はございますけれども、今後関心を持ち、力を入れていきたい所存でございます。
  83. 前田正男

    前田委員長 以上をもって宇宙科学に関する問題についての参考人及び政府当局に対する質疑は終わりました。  参考人各位には本問題について貴重な御意見をお述べいだたき、本委員会の調査のためきわめて参考になりました。委員会を代表いたしまして私から厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。      ――――◇―――――
  84. 前田正男

    前田委員長 次に、海外技術協力に関する問題について調査を進めます。  本問題に関しては、政府より海外技術協力事業団法案が提出されておりますので、同法案についてその概要について説明を聴取いたしたいと存じます。川村外務政務次官
  85. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 海外技術協力事業団につきまして、その概要を申し上げます。  わが国の対外技術協力は、技術研修員の受け入れ、専門家の派遣、海外技術協力センターの設置、運営、公共的な開発計画に関する基礎的調査の実施等、さまざまな形でアジア地域を初めとする開発途しにある諸地域に対して実施して参ったのであります。  この技術協力の第一義的な目的は、一言で申し上げますれば、開発途上にある諸国の経済的、社会的発展に資するため、知識及び技能を伝達または提供することにあるのでありまして、この目的から国の行なう技術協力はすべて無償供与の形でなされ、これら諸国の経済発展、ひいてはわが国との経済交流を促進して参った次第であります。  最近においては、特に開発途上にある諸国に対する経済協力が世界経済の発展と国際政治の安定のために不可欠のものであることが、世界的にも強く認識され、一九六〇年代は開発援助の時代であるとまでいわれております。その中でも、開発途上にある諸国の一般技術水準の向上と開発計画に関する基礎的調査が、これら諸国に対する資本協力の効果を上げるために不可欠であることが再認識され、技術協力の重要性が国際的にもその比重をとみに増大しております。従来わが国がコロンボ・フラン地域等を中心として行なっておりました技術協力は、昨年のコロンボ計画協議委員会においても非常に高くその成果を評価されており、今後ともわが国の技術が、これら開発途上にある諸国の経済的発展に寄与することが国際的にも期待されている次第であります。  このような諸般の情勢からいたしまして、技術協力はわが国の重要な施策の一環として今後ともなお一そう拡充強化して参らねばならないと考えるものであります。  このような見地から、アジア地域その他の開発途しにある諸地域に対する条約、その他の国際約束に基づく技術協力の実施に必要な業務を効率的に行なわせるため、との法律に基づく特殊法人としての「海外技術協力事業団」を設置することといたしております。  次に、法律案の内容につきまして、その概略を御説明いたします。  第一章総則におきましては、海外技術協力事業団の目的、法人格、事務所、資本金等について規定いたしておりますが、事業団の資本金につきましては、当初これを二億円とし、政府間ベースの技術協力という事業の性格からいたしまして、政府がその全額を出資することとし、政府は、必要と認めるときは、予算の範囲内で、事業団に追加出資をすることができることといたしております。  第二軍役員及び職員におきましては、事業団に、役員として、会長一人、理事長一人、理事四人以内及び監事二人以内並びに非常勤の理事四人以内を置くこと、会長理事長及び監事は、外務大臣が任命し、理事会長が外務大臣の認可を受けて任命すること、その他役員の任期、欠格条項、解任、兼職禁止、職員の任命等について規定いたしております。  第二章運営審議会におきましては、事業団に、会長の諮問に応じ、事業団の業務の運営に関する重要事項を審議する運営審議会を置くこと、運営審議会は、事業団の業務の適正な運営に必要な学識経験のある者のうちから、外務大臣の認可を受けて会長が任命する委員十五人以内で組織すること等を規定いたしております。  第四章業務におきましては、事業団は、アジア等の地域からの技術研修員に対する技術研修を行なうこと、アジア等の地域に専門家を派遣して技術協力を行なうこと、アジア等の地域に設置される技術協力センターに必要な人員の派遣、機械設備の調達等、その設置及び運営に必要な業務を行なうこと、アジア等の地域における公共的な開発計画に関し基礎的調査を行なうことを国の委託業務として行なうほか、技術研修員のための研修施設及び宿泊施設の設置運営、これらの付帯業務、並びにその他事業団の目的を達成するため必要な業務として、外務大臣の認可を受けた業務を行なうこと等を規定いたしております。  第五章財務及び会計におきましては、事業団の事業年度、事業計画、資金計画及び収支予算、財務諸表、短期借入金、余裕金の運用等について規定いたしております。  第六章監督におきましては、事業団は、外務大臣が監督すること、その他外務大臣の監督権限について規定いたしております。  以上のほか、本事業団の業務の運営につきましては、関係各省の協力が是非と毛必要でありますので、大蔵大臣その他の関係大臣との協議を規定し、さらに事業団に対する交付金の交付及び必要な罰則について、第七章雑則、第八章罰則の各車において規定いたしております。なお、附則におきましては、事業団の設立手続、社団法人アジア協会からの引き継ぎ、税法上の特例措置等について必要な規定を定めております。  以上が、この法律案の概要であります。     ―――――――――――――
  86. 前田正男

    前田委員長 それでは本問題について質疑の通告がありますので、これを許します。松前重義君。
  87. 松前重義

    ○松前委員 ただいまお読みになりました事業団の計画、またこれの法律案、政府提案に対しまして科学技術庁長官としてどういう御交渉があったのか、またどういう関心をお持ちであるのか、これを伺いたいと思います。
  88. 三木喜夫

    三木国務大臣 科学技術庁は、単に国内に限らず、国際的にも科学技術に対する総合調整ということはやらなければならぬ、そういうことで、初めはこういう法案は共管にでもしたらいいという感じもあった。ところが、いろいろそうなって参りますと、各省ふえてくるのです。科学技術庁ばかりではない、いろいろな省として科学技術関係がある。たとえば農林省も通産省もいろいろ入ってくるので、窓口は外務省にしてもらいたい。そのかわり、科学技術庁の関連するような問題、それ以外にも十分連絡をとって協議をするから、それで外務省の専管にしてもらいたいという話があって、これに承諾をしたのであります。しかし、法律には協議するということも入っておりますし、また外務省との間にもいろいろ話をいたしまして、科学技術庁とは非常に緊密な連絡をとり、協議をし、しかもいろいろな資料を提供して、そしてこういう科学技術に関してはしろうとの外務省が独断専行しないように、そういうことの建前になっておるものでございます。
  89. 松前重義

    ○松前委員 今最後のお言葉のしろうとの外務省というのは、まことに適切な表現だろうと思うのです。外務省はいろいろ協議はなさるにしても、この海外技術協力事業団の事業の遂行、これに対して外務省として、しろうとさんとして、十分な自信をお持ちでございますか。
  90. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 外務省といたしましては、あらゆる関係各省と十分協議をいたしまして事業を遂行するのでございますから、必ずこれは成功するものと思っておりますし、また自信を持ってやらねばならない責任があると思っておるような次第でございます。
  91. 松前重義

    ○松前委員 しからば、具体的にどのような事業をもくろんでおられるのでありますか。予算大体ついておることだろうと思いますから、事業計画はある程度でき上がっておると思う。それは具体的にどのようなお仕事をなさろうとするのか、伺いたい。
  92. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 その事業等につきましては、細部にわたることでございますので、事務当局から御説明をいたさせます。
  93. 齋木千九郎

    ○齋木説明員 ただいまの松前先生からの御質問に対しまして御答弁さしていただきます。いろいろな事業計画と申しますか、今度の事業団の事業内容といたしましては、この法案にも掲げておりますように、主としていわゆる低開発国と申しますか、アジア等の諸地域から日本技術を学びたいといってくる研修生を受け入れまして、それの研修をさせる。それからもう一つは、こちらから専門家を各地域に派遣いたしまして、現地でいろいろ教えてやる。それから第三に、海外に現在作っておりますが、技術訓練センターというものを設置し、それを運営しあるいはそれの教官になる人を派遣する。第四に、やはりこの法案にうたっておりますが、各低開発国の地域の諸政府におきまして、何か公共的な開発計画について日本政府に基礎的な調査をしてもらいたいというふうな要請があった場合に、各専門家を派遣いたしまして基礎的な調査をやらせる。大体これが事業団にやらせる四大事業でございます。現在わが国政府としましては、コロンボ・プランの加盟国といたしまして、国連その他相手国政府の要請に基づきまして、現在こういうふうな仕事をやっておりますし、だんだん事業規模が拡大して参りまして、しっかりした体制を作らぬといかぬというふうな状況になりました。関係各省とも御相談いたしまして、特に科学技術庁とも密接な連絡、協議を重ねまして、この法案を提出した次第でございます。  それから、予算案といたしましては、これも現在国会にかかって御審議を願うことになっておりますが、出資金といたしまして二億、それからその他この事業団の運営のための人件費、諸雑費としまして、交付金としまして約八千万円、それから私が最初に申し上げました事業のために要する事業費といたしまして、約十一億の事業予算を一応政府部内の予算案では獲得いたしております。当初は、この事業団を健全に発達さしていくということに眼目を置きまして、事業規模もあまり拡大しておりません。むしろ内容といいますか、質的な整備をはかりまして、徐々に拡大をはかっていきたい、そういうふうに今考えております。
  94. 松前重義

    ○松前委員 こういうものができると、今のようなお仕事をなさるというのでありますが、仕事をするのは人間でありますから、おそらく相当の有識者をこの中にお入れになると思うのです。何か具体的にこのような人――だれということは私は申しませんけれども、おおよそこういうよう方面から人材を求めたいとか、科学技術の専門家というよりも、それに対して総合的な知識を持っている人を入れたいとか、そういう人事構成に関しまして何か具体的な、個人の名前はいりませんけれども、大体の方針をお持ちであるか、それを伺いたいと思います。
  95. 齋木千九郎

    ○齋木説明員 御答弁申し上げます。この事業団の発足は、法案が通りましたら、一応七月一日ということで、今大体諸準備を進めております。それから会長理事長、その他の重要な幹部の人選につきましては、まだ具体的にこの席上で申し上げる段階に至っておらないと思います。これにつきましては内閣総理大臣、外務大臣、国会その他からいろいろ御意見も伺いまして、きめることと思います。その他理事の人選とか事務局職員の問題につきましては、これは関係省のみならず、広く民間からも人材に来ていただきたい。特に科学技術関係の問題につきましては、この法案にも書いてございますように、運営審議会というものがございまして、この運営審議会でこの事業団の運営に関する重要問題を審議して会長に答申することになっておりますので、この中にぜひ入っていただいたらどうかというふうに考えております。これにつきましては、また外務大臣と科学技術庁長官の間で御相談申し上げて、適当な方に入っていただくということになるのではないか、そういうふうに私は考えております。
  96. 松前重義

    ○松前委員 これは科学技術庁長官に御相談があるそうでありますから、まことにけっこうだと思うのです。長官にお尋ねしますが、まさか役人のうば捨て山にはなりますまいね。
  97. 三木喜夫

    三木国務大臣 役人も、優秀な人ならば私は毛ぎらいをいたしませんが、御相談があれば、この場合は民間人を推薦したい。
  98. 松前重義

    ○松前委員 けっこうであります。うば捨て山というのは、あまり役に立たない役人という意味で私は申し上げたのです。  そこで、この事業の内容について先ほどお話がありましたが、私どもはかつてインドに行っていろいろ事情を調べたところによりますと、西ドイツ、ソビエトあるいは英国等は、海外に貿易の基盤を作りたいために、各国において非常に活動していることは皆さんもよく御承知の通りであろうと思います。私がインドで見た一つの顕著な例は、西ドイツだったと思いますが、カルカッタの大学に工学部の大学院を寄付いたしております。そうして大学院の建物や設備ばかりでなく、先生までも西ドイツから出しているのであります。またソビエトは、ニューデリーだったと思うのですが、そこの大学の工学部に大学院の建物と設備一切を寄付して、その他先生を派遣して、教育に協力している。英国もこれに負けじと、これはポンベイでありましたか、その辺の土地と国との関係は明確ではありませんが、大学院を寄付し、同じように先生まで無料で派遣している。こうやって現地において人材を養成し、しかも職工を養成するのでなく、トップ・レベルの人材を養成して、その国の行政を通じて自国の輸出品、あるいは貿易ばかりでなく外交的な折衝等についても有利な立場を堅持せんとしているのであります。  ただいま承ったところによると、どうもまだ竹細工や、せいぜい紡織の機械の指導くらいのところであります。あるいは電源開発くらいはあるかもしれません。その程度のところにとどまるのであって、もう少し基本的なところにわれわれ日本人としては根をおろしておかないと、将来いろいろな意味において閉め出しを食う可能性が起こると思うのであります。同時に、その事業内容その他、算内容等を拝見すると、非常に小規模であります。外務省としては、列国がこのように大学院の教育を通じてトップ・レベルの教育に積極的に乗り出しておる、こういう現象に対して、この事業団は将来についてどういうふうにお考えであるかを伺いたいと思います。
  99. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 事業団は先ほど申し上げましたような事業をやるのでございますが、さらに事業のふえ次第に予算もふやしていただく、資金もふやしていただく、かようになっております。でありますから、言いかえるならば、日本の人材をあまねくその中から選んで、そうして万遺憾なきを期したい、かように考えておるのであります。
  100. 松前重義

    ○松前委員 長いですから、これであまり議論はいたしません。ただ問題は、大学教育、ことに大学院教育等に各国が関心を持って、そうしてそこに基礎を置いて、長い目でもってその国の経済に大きな影響を及ぼしたいというよう考え方で、経済だけじゃありません、これは外交的な面におきましても非常に有利に展開するだろう、こういう点に非常に力を入れている。日本では職工教育ばかりやってみても、先ほど話があったように仕方がない。職能訓練所みたいなものを作ってみたって、仕方がないとは申しません、作らないよりはやった方がいいと思いますが、やはり私はトップ・レベルの教育をやるべきだ、こういうふうに思うのでありまして、今までのところ全然こういう案がないものでありますから、この辺は大いに今後文部省とも御協力になって、努力されなくちゃならない点じゃないかと思うのであります。  今度は、時間もありませんから簡単に御質問いたします。大体技術協力というのは日本が優位な立場、すなわち技術的に高いレベルにあるという前提に立っておるのでございますね。
  101. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 その通りでございます。
  102. 松前重義

    ○松前委員 そうすると、いろいろな問題がそこから起こって参ります。日本科学技術庁を作り、三木長官のような有力な人がその主宰者としてやられるゆえんのものはどこにあるかというと、科学技術のレベルが非常に低いからです。昨年のごときは、日本が使っておる外国の科学技術の特許権、そのために払っているロイアリティ、すなわち特許の代償は三百億円に上がっております。これなども外貨がだんだん流出する一つの理由にはなっておると私は思う。しかも、これは物は何も入らぬで、ただ特許であります。頭脳の資源、これを入れるだけでそうなっておる。それほど低い。しかも低いばかりか、ここに問題がある。その特許を日本に使わせるときには、外国の会社、ことにアメリカあたりの会社、ドイツでもそうですが、日本の会社にその特許を使わせるけれども、その会社の製品は日本だけに売ることができる、海外に輸出してはいけませんよという契約が成り立っております。この契約は、これは特に科学技術庁長官に御承知願いたいと思うのです。もう御承知かもしれませんが、表面には出ておりません。しかし、ちゃんと裏でそういう約束がなされております。従って、現在わが国が外国特許を使って生産したところの生産品が、総生産のうちで何%だけ海外に輸出されておるかということを、この間科学技術庁を通じて調べてみましたところが、電気機械の面におきましては大体九・三%くらいでしたか、その程度が海外に輸出されております。それから交通機械におきましては三%。ほとんど海外への輸出は絶無に近いのです。なぜであるか。それは特許を使わせるかわりに、国内だけに売ってよろしい。ほかの市場は、日本ような低賃金の国で生産されて安く売られた日には、日本に市場を荒らされるからというので、そこに輸出を禁じている。ここに基本的な問題があります。  一体、技術協力、技術援助というものが、そういう体制のもとになされ得るかどうかという問題です。この基本的な問題がありますから、外務省だけが日本技術的に優位だから、教えてやるのだから、教育してやるのだからと、うぬぼれていらっしゃるかもしれませんけれども科学技術庁の立場から見ると、まだまだそれどころではない。私はこれに反対じゃありません。やってもいいけれども、この問題に対して、こういう現象、現実に対して、目をおおってやってはならないという意味において、私は質問したわけです。こういうよう状態において、どういう具体的な面においてこの技術援助あるいは技術指導をなさるつもりであるか、この点を伺いたいと思います。どういうつもりでお作りになったか。
  103. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 御注意はまことにありがとうございます。しかし、われわれは外務省だけでやるという――これは所管は外務省でございますけれども、外務省だけでやるというのではなくて、優秀な三木科学技術庁長官もおりますし、その他いろいろな各省の方々の意見もよく聞き、そこで外務省自体も大いに勉強してやりますから、仕事には間違いないと私は確信を持っております。しかしながら、今のお話ような、いわゆる特許の問題でございますが、これらは私はほんとうにしろうとでございますからわかりませんけれども、そういう特許を使ってやるというようなことがあまり用いられないでやるだけの技術を、われわれも大いに勉強してやっていかなければならないのではないか、かように考えております。
  104. 松前重義

    ○松前委員 これは所得倍増計画と関連性がありますか。
  105. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 関係ございます。さらにまた、アジア等の未開発地域に対する援助というような面も大いに含まれている、これが主たる目的でございます。
  106. 松前重義

    ○松前委員 所得倍増計画と関係があるといえば、輸出の増進ということに関係があるということになりますね。
  107. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 その通りでございます。
  108. 松前重義

    ○松前委員 輸出の増進に関係があるということになりますと、これは非常に基本的なことに触れると私は思うのです。それはセメントの輸出とかあるいはその他鉄鋼の輸出とか、そういうものには多少役に立ちましょう。けれども日本の所得倍増計画の基本的なねらいはどこにあったかといえば、やはり設備投資をやった。いわゆる経済の成長と称して設備投資をどんどんふやした。この面はやはり日本における生産工業、ことに電気とか機械とかいうような生産工業の面に相当に設備投資がなされた。それらの会社なり企業体というものは、アメリカの特許権でやるものが非常に多いのです。あるいは西ドイツの特許権でやります。あるいは英国、フランス等のでやりますが、みんな市場制限を受けているのです。市場制限を受けたところへどんどん設備投資をおやりになるから、海外には輸出ができないということになります。そういうことを所得倍増計画と関連せしめるというところに、これはちょっと矛盾がある。まるで関連させられないよう状態――多少のことはありましょうけれども、これは原則としては関連させられないものだと私は思う。どういうわけで一体、そういう所得倍増計画と関係があるとおっしゃるのですか。
  109. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 技術的な問題でございますから、課長から御説明を申し上げさせます。
  110. 齋木千九郎

    ○齋木説明員 御答弁申し上げます。先ほどから日本科学技術水準の点から見ていろいろ御指摘があったわけでございますが、われわれといたしましては、日本が非常に優位に立っているから教えてやるのだ、どういう技術を教えてやるのだ、そういうふうな考えは持っておりませんで、むしろアジア、アフリカ、それから南米諸国も含みますが、日本の持っておる非常にいいところはぜひ教えてもらいたいという要請が非常にたくさんあるわけでございます。それに応じまして、ずっとこの七年間やってきたわけでございますが、今後はさらにやはりこっちから行く場合に、技術も持ち、しかも語学のできる、どこへ出しても恥ずかしくないというような人をできるだけそういうふうなところへ出ていってもらいたい。また向こうから研修生を受け入れる場合、ただ日本へやって来るのじゃなくて、責任のある体制においてそれを受け入れて、それからまたいろいろなところに責任を持って教えるようにしてもらうというふうな体制を作らぬといかぬというのが、この技術協力事業団を作りたいという一つのあれであります。  それから、今の輸出市場の確保だとか、あるいは民間の企業進出、それとの関連においての御質問があったわけでございます。これは、われわれ考えておりますのは、日本は、全般的なからみ合わせにおきまして、輸出振興はもちろんやらなければいけないし、それから海外に対する進出も、もちろんやらなければいけないでしょう。しかし、これはむしろ民間の自発的なあれに基づいてどんどん出ていってもらえばいいのであって、われわれが考えておりますこの技術協力事業団はいわゆる政府ベースといいますか、政府が向こうの政府からの要請を受けまして、それで政府が責任を持って、それじゃ一つ技術協力をしましょうというラインでくる。そういうふうな事業を中心として考えておるわけでございます。そういうふうに政府がやることによって、あるいは中小企業にしろ、あるいは農業にしろ、あるいは電気通信にしろ、それが直接間接に日本の産業の振興に資するということは当然出てくると思いますけれども、いま松前先生が御指摘になったようなことを主目的としまして、この事業団を作ろうというふうなあれじゃございません。その点一つ御了解願いたいと思います。
  111. 松前重義

    ○松前委員 私が指摘したようなことで事業団を作ろうというのではないというのは、言いかえると、所得倍増計画にひっかけてこれができたのではない。政府の主要なる所得倍増計画の一環としてできたのではない。そうけると、政務次官のおっしゃるのと違うのですね。
  112. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 もちろん、それが主なるものではございませんけれども、私は所得倍増計画と関係があり、これは輸出を中心にしての問題とも関連があり、あらゆる日本の国内のいろいろな産業とも関係があって、所得倍増の線に乗せていかなければなりませんし、またいくものと期待しておるような次第でございます。
  113. 松前重義

    ○松前委員 それでは、さっきのを取り消さなければ……。
  114. 齋木千九郎

    ○齋木説明員 答弁させていただきます。こういうことでございます。結果としまして、政府の施策をやる場合、所得倍増政策にも結果としてあるいは関連が出てくることを期待いたしますが、所得倍増計画の直接の一環としましてこの事業団を作るということではない、そういうふうに私は御答弁申し上げたのであります。
  115. 松前重義

    ○松前委員 おかしい。それは次官の言ったこととちょっと違うじゃないか。
  116. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 松前さんにお答えを申し上げます。もちろん所得倍増という問題については、直接これを大きく広げていこうとは考えませんけれども、やはり東南アジア地域その他の地域の開発によって、いろいろな第一次的なものが生産され、さらにそれがまた日本に返ってきて、日本でその販売ができるようになりますと、所得倍増につながってくるのだ。しかし、この事業団は所得倍増を主たる目的として設立をするものではないということだけは申し上げることができます。
  117. 松前重義

    ○松前委員 それ以上申しません。  そこで、科学技術庁長官にお尋ねいたします。この問題に関連いたしまして、少し横にそれるかもしれませんけれども、非常に密接な関連がありますから伺います。特許に対するロイアリティを毎年三百億程度海外に払っておる。それだけなら私どもはまだいいのでありますが、市場制限を受けておる、この問題であります。科学技術庁あたりの方々に伺うと、市場制限は大してございませんとおっしゃいますが、そうでないのです。それは表面にその市場制限の問題は出ておらないのです。会社間の秘密協定になっておる。それは政府の為替管理に対する許可をとる場合には、この問題は表面に出ません。  この問題について特に長官の所見を伺いたいと思うのですけれども、所得倍増ということでいろいろ設備投資を各会社がやりました。やりましたが、大体投資をして工場を作ったりいろいろした部分は、相当技術を海外から導入した部分が多いのです。そして導入したのは、結局特許料を払うことはあたりまえですが、市場制限を受けておるのです。ですから、先ほどお話ししたよう電気の機械においては九・三%、交通機械では三%くらいしか海外には輸出されてない。しかも、これは私の想像でございますが、一、二の例から類推いたしますと、台湾と沖繩と朝鮮、この辺だけはアメリカがどうも日本の輸出を許しているようです。それ以外の輸出は相当強く縛っている。ものによっては縛ってないものもありますが、大部分が縛っております。西ドイツだって、どんどん日本の会社を縛っております。作っても出せないのです。いいものができたって、その会社の製品全体を押えられてしまう。ところが、特許を使ったものだけは売ってはいかぬというものもあります。いろいろありますが、その影響としてわが国の輸出ができない。そこにめちゃめちゃ――めちゃめちゃと言うと語弊がありますが、多額の投資をなさった。生産して海外に輸出するというつもりで政府はおやりになったのですが、輸出ができないところにうんと投資した。所得倍増というのは、輸出によって、貿易によって日本が外貨を獲得することによって国民生活の向上、所得倍増をやるというのでありますが、それは初めからできないのです。これは科学技術日本のレベルが低いからです。そこにあるのです。同時にまた、財界あたりがあまり海外の技術ばかりに依存しているからそうなる。日本でいい技術があっても、それを採用しないで、海外のものばかり追う。同時にまた、為替管理というものが無責任に行なわれているような感じがして仕方がない。この点について、科学技術庁長官はどういう御所見ですか。この所得倍増計画と技術導入、これは逆の方の導入する方です。導入した技術を海外に教えてやるというようなことも、事業団の方で許されておりません。輸出も許されてないばかりか、技術を教えることも許されておりません。だから、こういう関連性においてどういうよう技術中心にした御見解を持っていらっしゃるか。これは所得倍増計画の完全な失敗だ、できない相談をやってきた。だからこんなにきゅうきゅう言わされて、とにかくぎごちない経済情勢が訪れたと私は見ておる。これが有力な失敗の原因だと私は思うのでありまして、科学技術庁が、この問題について現在において少なくともこの実態を見きわめて、将来を誤らないようにしなければならぬときだろうと思いますから、一つ御所見を承りたいと思います。
  118. 三木喜夫

    三木国務大臣 御指摘のような而もありますけれども日本の非常に旺盛であった設備投資が、全部海外の技術導入に伴うものであるという見解はとっていない。自由化を前にして設備の近代化をやろうということで、それは技術導入を伴った場合はむしろ少なかったと私は思う。だから、技術導入が非常に過剰な設備投資をした、これは私はそういうふうに断ずるわけにはいかぬ。しかし、御指摘のような面、日本の新しい技術が海外に依存し過ぎているという事実は、私も松前委員と同じように、何とかして国産の技術をもっと開発せなければならぬということは、その必要を痛感しております。だから、技術導入の場合においても、科学技術庁も外資委員会に参加しておるのですが、やはりかなり厳重にやるようにという指示はしておりますし、また積極的に日本の国産の技術を開発するために、今までよりももう少し思い切った処置を私はとろうと思って、今研究をしております。そういうことで、やはり国産技術を開発せなければならぬという意欲をもう少し民間にも持たすような税制上の処置を私は今検討を加えておるのです。そういうことをやると同時に、今言った海外の技術導入については、これを許す場合にもできるだけ厳格な態度をとり、一方においては国産の技術を開発するために一そうの努力、そういう意欲をみなに持たすような方途を講じていきたい。しかし、現在までのところ、これだけ立ちおくれておったのですから、技術導入によってそれが日本の経済規模を拡大した功績というものも、これはなかなか無視するわけにはいかぬ。しかし、いつまでもいつまでも海外の技術を買いあさって、それに依存するという気風は次第になくしていかなければいかぬ。一ぺんにやるわけにはいきませんけれども、そういう考えを持っておるのでございます。また、技術を導入した場合に、表向きは市場を制限されておるような条項は少ないのですけれども、松前委員の御指摘のようなことは、実際問題として裏では行なわれておるのかもしれません。これについては、われわれももっと具体的な調査をいたしたいと考えております。
  119. 松前重義

    ○松前委員 そういう場合は少ないとおっしゃいますけれども、その技術を使って生産をした品物を海外に出してはいけないというような市場制限をすることは、これはもうその特許を使わせるときに当然のことなんです。自分の会社が従来輸出しておった市場が、日本の低賃金で、多少器用な国民によって生産された品物によってどんどん占領されていく、縮小されていくということは、だれも好まないのでありますから、当然技術導入による市場制限というものは伴ってきております。この点は、今大した影響はないとおっしゃいますが、実際大いに影響があるのです。これはほんとうにまじめに一つ調べていただきたい。私は何もここで政治的な取引きの問答をしておるわけじゃないのです。ほんとうに憂えて私らの意見を申し上げておるわけなんです。というのは、ある会社、名前は申しません、日本における有力なる電気関係の会社ですけれども、それはある国の有力なる会社と提携をしております。提携をしておりまして、技術導入はほんのわずかしかしておりませんけれども、数年前に向こう十五カ年間というような協定を、いわゆる技術導入とあわせて今の市場協定をちゃんとしておる。表面は市場協定は出ておりません。けれども、裏にあります。私はちゃんときのうも聞いてきた。有力なる会社です。設備投資をどんどんやっております。そういう会社がたくさん日本にある。ことに最近における精密機械の工場等は非常にそれが多い。大メーカーというものはそうです。小さな中小企業はありませんけれども、大メーカーは相当にこれが多い。多いどころか、私はほとんど全部に近いんじゃないかと見ておる。  ですから、たとえば、自分のことを言っては、はなはだ口幅ったい話ですけれども、私がドイツへ行ったときに、ちょうどジーメンスのある技師が私を尋ねてきた。フランクフルトの駅へ尋ねてきました。そして、昔よく知っておったものだから、年をとっても思い出して迎えにきた。そして、君を迎えたらおれはインドへ行くのだ、君を迎えて電報を打てばそれで使命は終わるのだから、と言う。なぜインドへ行くのかと聞くと、君が発明した無装荷ケーブルを全面的にドイツが注文を受けた、こう言うのです。私が二十四、五年前にドイツへ行ったときに、無装荷ケーブルはできないと言って大いにドイツは反対した。それを思い切ってやった。ところが成功した。成功して日本の会社に作らしたが、輸出ができない。日本で発明して、日本の輸出ができません。日本の会社全体が押えられているからです。片やアメリカに押えられ、片やドイツに押えられている。だからその会社は特許権が切れたので、どんどん作って輸出しておる。日本は出ていけない。遺憾ながら、日本の国産技術でありながらも、海外に輸出ができないのです。そこに私は基本的な問題があると思う。  そういうような協定をしている会社が、相当むちゃくちゃな設備投資を今やっております。ですから、国内市場だけです。ああいう妙な広告の何とかテレビ、何とかラジオというような大きな立て看板が至るところに、町の交差点あたりにはどこにも林立しております。ああいうのは世界に珍しいと思う。みんなそれぞれ、おれはウエスティングハウス、おれはゼネラル・エレクトリック、おれはRCA、おれはレイテオン、おれはジーメンス、おれは何々と、それぞれコネクションをつけて、みんなやっておる。それがみんな日本の名前で看板が立っておる。外国のひもつきの市場争奪戦が日本国内で行なわれておる。こういうような現象を呈して、それに設備投資を相当にやっているはずです。これは具体的に調べれば、私は非常におもしろい今後の経済政策のデータになると思うのです。ですから、西ドイツやあるいはまたアメリカや英国など――英国は多少低いのですけれども、そういう国の経済学者が書いた論文や、やり方などをそのまま踏襲して、そして経済企画をやるような経済企画のやり方では、日本の経済は決して復興しない。大体輸出制限をされておる国、科学技術の低いレベルの国でありますから、その現実を認めた上で、やはり日本的な性格の上においてやるべきものだ、こういうふうに前々から考えておったので、所得倍増計画でいつか論議してみようと思ったのですけれども、まあ遠慮して、しなかった。とにもかくにも、こういう現実を私どもは認めなければならないし、同時にまた為替管理の委員会等に出てくる各会社の申請の資料というものには、こういうことは出ておりません。市場制限の問題は裏でちゃんと契約はでき上がっております。だから、今後科学技術が基本的な役割、経済の復興に対して責任を持っているわけであります。それを市場制限を受けているのはわずかしかないという御認識は、一ぺん、相当にあるという前提の上に立って、まじめに御調査になっていただきたい。そうして、将来の日本の建設をやらなくてはならぬ、こういうふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。それともやはりまだ、わずかしかないとお思いですか。
  120. 三木喜夫

    三木国務大臣 私が申し上げたのは、契約の表面に出てきておるものはごくわずかですけれども、裏でいろいろそういう御指摘のようなことがあるのかもしれません。これはやはり日本の将来の輸出増進の上に重大な影響を持ちますから、十分調査をいたすということを前に申したのでございます。
  121. 松前重義

    ○松前委員 先ほどの技術協力事業団ですか、そういうわけでありますから、なかなか外務省がお考えになっておるようにはいかない。おれは偉いんだとお思いになっているようです。おれたちはアメリカと大体同じようなレベルになっておると思って、こういうものをお作りになったのでは、これは向こうの受け入れ体制もおそらく違うのです。日本はだいぶ低いから適当なものだけもらおう、というぐらいのところじゃないかと実は思うのです。けれども、それだって、やらぬよりやった方がいいのであって、私はこれは反対ではありませんよ。反対ではないけれども、今の現実を認めてかかる。日本がやはり本質的に――日本エレクトロニクスなんかも相当の域に達しております。西ドイツよりもエレクトロニクスに関しては上です。上であるのにもかかわらず、低いつもりで、どんどん外国と事業家の方々は御提携なすっておられる。そういう点について特に科学技術庁に注意を喚起したいと思ったわけでもありますけれども、とにもかくにも、この事業団というものが将来運営される上において、海外に対して日本のいい技術、すなわちすぐれた技術を植えつける。日本的なものを植えつける。すなわち海外の市場制限を受けないものを植えつける。植えつけるというと語弊があるけれども、教えてやれるものは教えてやる。こういうよう意味において、やはり最低レベルの教育も、それはやらぬよりもやった方がいいでしょう。けれども、同じ金を使うなら、なぜトップ・レベルをやらないかということです。そうして、向こうの指導階級をこちらの手に握る、と言うと、はなはだどうも工合が悪いけれども、友好的気持をもってお互いに協力できるようになぜなさらないのか。この点を私は特にこの事業団に関して感じておるわけであります。これは別に御答弁は要求いたしませんけれども、一応私の所見を申し上げて注意を喚起しておきたいと思うのです。
  122. 齋藤憲三

    ○齋藤(憲)委員 関連して。今の松前委員のおっしゃった特許、それからノー・ハウ、合わせて三百億だと思うのでありますが、それの内容を一つ資料としてできるだけわれわれに知らしていただきたいと思います。日本の輸出入の体系と、特にパテント、ノー・ハウの関係、それを一つお願いいたします。
  123. 前田正男

    前田委員長 それでは御要望に沿うよう科学技術庁にお願いいたします。  次に山口鶴男君。
  124. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 時間もだいぶおそくなりましたので、一つだけお尋ねしたいと思います。  ただいま、海外技術協力事業団の趣旨といいますか、目的といいますか、その問題について松前委員からお尋ねがありまして、外務当局からお答えがございました。いろいろ答弁については訂正をせられたりされておりますが、全体として感じられる点は、たった二億の海外技術協力事業団でもって、あわよくば輸出を伸ばし、輸出振興に役立たせ、所得倍増計画を達成する一環にしていきたいというような、何か非常に見えすいたといいますか、ちゃちなといいますか、そういうお考えでこれをお始めになったような感が私どもいたすのであります。  この低開発地域に対して技術協力を進めていこうという構想は、相当古くからあったと私は思うのです。一九五五年のフランスのフォール提案以来、あるいはスティーヴンソンの提案、あるいはケネディの経済大構想、こういうふうに今から七年ぐらい前からすでにいろいろな形でこの構想は発表せられておるわけです。そういった構想の出て参りました趣旨は一体何であるかといいますと、一九五五年のフランスの当時の首相であるフォール提案に見られますように、各国が軍備拡張競争を一生懸命やっておる。これではいかぬ。だから、軍備の費用を削減して、これを低開発地域に対する技術協力という形に回すべきだ。そうして、世界の平和を達成する一つの大きな事業としてこの問題は推進すべきだ。こういうきわめて遠大な理想から、こういった海外協力の問題は発生したと思うのです。  そこで、外務政務次官にお尋ねをいたしたいと思うのであります。そういった考えは全くなくて、先ほどお答えがありましたような、きわめてちゃちな考え方から出発しておるのではないか、その点をお聞かせ願いたいと思います。
  125. 川村善八郎

    ○川村(善)政府委員 外務省といたしましては、戦争などということをしようとも考えませんし、もちろん平和でなければならないのであります。低開発地域の方々は、日本技術の進出を非常に望んでおります。従いまして、われわれはできる限りの協力をしてやって、低開発地域の開発に寄与し、これが世界平和をもたらすものにしたい、かように考えておるような次第でございます。
  126. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 フォール提案を見ますと、軍縮問題は単に軍事的ワク内ではなく、経済的協力組織の中で積極的に打開する方法として、軍縮より生ずる余力を後進地域に対する援助に使用するようにしたらどうか、こういうことをはっきり提案をしておるのです。また、グロムイコも受けてそういう提案をしております。ですから、私ども社会党としましては、五年ほど前から和栄対策特別委員会というものを作りまして、特に憲法第九条にあるように、あくまでも平和を国是にした日本こそが、ほんとうの意味でこういった低開発地域に対する純粋な意味において――経済侵略というよう意味でやるのではなくて、純粋な意味における技術協力、そうして平和の道に貢献をしていく、こういう形を実現するのに一番いい国ではないか。そういう意味ではもっとこういう問題については力を入れるべきではないか、こういうことを前から主張して参りました。そういう観点から拝見いたしますと、事業費が十何億かかるというような課長さんからのお話でございました。かりに十億程度といたしましても、日本の国の予算のうちの一万分の五くらいのものでしょう。アメリカでは予算の立て方も違うと思いますけれども、一九六二年のアメリカの総予算八百億ドルのうち、実に一億九千万ドル、国の総予算の四百分の一をこれに充当しておるという状態です。そういう意味からいいまして、先ほど松前委員からいろいろ技術的な面で御指摘もございました。私、先ほど申し上げたように、日本こそがこういった構想に対して最もふさわしい国であると思うが、こういった考え方の出発点も政務次官のお答えではどうも少し横にそれておるような気がいたします。また、事業費の額を考えましても、きわめて僅少に過ぎるような感がいたします。そうじゃなくて、私が申し上げ、また松前委員からも御指摘のございましたような点を加味して、もっと雄大な構想を――ことしはもう予算ができたから仕方がないかもしれませんけれども、来年こそはもっと雄大な構想を進めていくという御熱意が外務当局、またこれを補佐する科学技術庁にございますかどうか。この点をお尋ねをいたしまして質問を終わりたいと思います。
  127. 三木喜夫

    三木国務大臣 御指摘のように、これは政務次官が言われたのも、回り回って日本の将来の市場としても、東南アジアなどが生活水準も高くなれば、市場としての期待もありましょうし、そういう意味では日本の経済とも関連があるわけです。しかし、その出発点は、低開発国が日本の周辺にもたくさんあるのだから、これを何とかしたいということはやはり日本の良心でなければならぬし、ことにアジアの一員という以上は、自分たちのアジアの中に、いまだに非常な低い水準で暮らしておる人がおるのですから、これを何とかしようというそれだけの責務をやはり日本は感じなければアジアの先進国とは言えないわけですから、よほど今後力を入れていかなければならぬ。この技術協力あるいは経済協力も御承知ように基金もあるわけですけれども、やはり全体として日本のアジアに対する寄与は私は少ないと思う。もっとやらなければいかぬ。この技術事業団も、これは出発点でありますから、こういう予算の規模も小さいけれども、もう少し予算の面でも充実し、あるいはまた機能も強化して、こういう面でもアジアの後進諸国に対して日本が誠実な寄与をしていくということが非常に大事だ。今後、やはり明年度においては、さらに予算の規模もこの事業団の機能も強化していかなければならぬという考えを持っておるものでございます。
  128. 前田正男

    前田委員長 本日はこの程度にとどめ、あすは午前十時より開会します。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十一分散会