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1962-02-21 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月二十一日(水曜日)     午後一時四十四分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 齋藤 憲三君 理事 中曽根康弘君    理事 西村 英一君 理事 岡  良一君    理事 河野  正君 理事 山口 鶴男君       安倍晋太郎君    佐々木義武君       保科善四郎君    細田 吉藏君       松本 一郎君    石川 次夫君       西村 関一君    松前 重義君       三木 喜夫君    内海  清君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小坂善太郎君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         科学技術政務次         官       山本 利壽君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    杉本 正雄君         総理府技官         (科学技術庁振         興局長)    前田 陽吉君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         外務政務次官  川村善八郎君         文部政務次官  長谷川 峻君         農林政務次官  中馬 辰猪君  委員外出席者         科学技術会議議         員         (日本学術会議         会長)     和達 清夫君         科学技術会議議         員       茅  誠司君         外務事務官         (国際連合局科         学課長)    栗野  鳳君         文部事務官         (大学学術局審         議官)     岡野  澄君         参  考  人         (東大名誉教         授)      兼重寛九郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件科学技術振興対策に  関する件(南極地域観測に関する問題及び科学  協力に関する日米委員会に関する問題等)  南極地域における科学調査に関する件      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。すなわち、科学協力に関する日米委員会に関する問題について、昨年十二月十三日より十五日まで開催されました科学協力に関する日米委員会の議長をされました東京大学名誉教授兼重寛九郎君を参考人と決定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。      ————◇—————
  4. 前田正男

    前田委員長 次に、科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  本日はまず前会に引き続き南極地域観測に関する問題について調査を継続し、次に、科学協力に関する日米委員会に関する問題について、関係当局及び参考人に対する質疑を行ない、最後に、海外技術協力に関する問題について調査を進めたいと存じます。  それでは、南極地域観測に関する問題について質疑通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  5. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 最初質問趣旨を申し上げて、それに沿うて御答弁をお願いいたしたいと思います。  南極観測が、宗谷及びヘリコプターの問題から継続不可能であるという理由のもとに、昭和基地閉鎖されたのであります。このことに関しましては、かねてこの特別委員会を通じまして、再三再四にわたって、継続するように当局の善処を促して参りました委員の一人としては、まことに遺憾を表明せざるを得ないのであります。と同時に、新聞紙あるいはその他の報道機関の文意にも、きわめて国民的な遺憾の意が表されてあるのであります。私が本日御質問を申し上げんとすることは、一たん昭和空地閉鎖ときまりました以上、直ちにこれを再開をしてくれということを申し上げても、なかなかこれはむずかしい問題もあるかもしれませんが、政府当局といたしましては、南極観測国家的重大性にかんがみて、なるべくすみやかに昭和基地再開をはかってもらいたいという趣旨に基づいて御質問を申し上げるのであって、あながち今までの問題に対して非難的追及を加えようとして質問を申し上げるのではありませんから、その点はあらかじめ御了承願いたいと思います。  ただ、私の本問題に関しまする感覚から申しますると、この南極観測は、最初国際地球観測年一環として、十二カ国がこれに参加して南極観測を始めたのであります。この地球観測年が二年間の年月でもって終わりますので、参加いたしました十二カ国に対しては、南極というものの国際的な重要性から、アメリカ首唱者となって、南極を平和的にかつ科学的に、南極重大性を保持していこうという建前から、南極会議というものを持ちまして、そして一年間に五十数回という会議を持って、その間に日本ワシントン駐在下田公使が非常にあっせんをいたしまして、この南極条約締結に成功いたしたということは、私から申し上げるまでもなく、各位の御承知のことと思うのであります。従いまして、この南極観測は従来の国際地球観測年一環として、参加十二カ国がお互いの申し合わせによってやっておった南極観測から南極条約締結をされ、各国の批准を見て効力が発生いたしました。そのときからこの問題というものは、南極条約によって行なわれるということになったのだろうと思うのであります。私から申すまでもなく、条約は、条約締結いたしました国々の間のこれは合意でありまするから、その条約締結されますると、必ず国内的に権利義務というものが生まれてくるはずであります。従いまして、この南極条約の、いわゆる条約精神に相反する行動を一国がとる場合には、南極条約国会において承認を求められておる事項でございますので、その条約締結されておる精神に相反するがごときことを行なうときには、やはり国家としては相当量大問題と考えていかなければならぬと思うのであります。ところが、南極条約を読んでみますと、今度の昭和基地閉鎖国会にも何らの相談なく行なわれたということになりますと、やはり国会側としてもこれは黙認できない問題ではないか、そう思うのでございますが、この条約の取りきめと今度の宗谷の問題、ヘリコプターの問題からして、国会に何らの相談もなくして昭和基地閉鎖したということに対して、政府当局はどうお考えになっておるか。これは当然の行動であるとお考えになっておるのか、これは少し軽率であったと考えておられるのか。その点を一つ答弁を願いたいと思うのであります。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 当然のこととは存じません。やむを得ないことと存じております。要すれば、お説の通り国会に何らかの機会に事前にでも御報告申し上げるということが望ましいことであったかとは、今御注意を受けまして思います。ただ、一般論として申し上げれば、条約の御承認をいただいてそれを運営していく、条約趣旨に沿って政府側として措置する、その過程の問題でございますから、政府側責任において、全然廃止するわけじゃございませんから、一時都合によりやむを得ず中止するという事柄でございますから、純然たる概念論から申し上げれば、必ずしも直接にはおしかりを受けるほどのことでなかろう、こういうふうに私は感じ取っておりました。しかし、当然のことと心得たわけではありませず、当初申し上げました通りに、遺憾ではあるけれども一時中止せざるを得ない、こう判断した次第であります。
  7. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私がそういうふうに申し上げますのは、この問題をたびたび本特別委員会で問題といたしまして、政府当局関係者の御意見を伺いますと、いずれ何らかの処置がきまった場合には報告をする、話をするというような御答弁をちょうだいいたしておる速記録が所々方々にあるのであります。それですから、われわれといたしましては、科学技術特別委員会という立場からいたしますると、いやしくも科学に関しまする問題につきましては、国内、国外にかかわらず、責任を持って取り組んでいかなければならないと思っておりますし、この南極条約を見ますると、ここで読み上げますまでもなく、第二条に「国際地球観測年の間に実現された南極地域における科学的調査の自由及びそのための協力は、この条約規定に従うことを条件として、継続するものとする。」こう書いてあります。これが南極条約大前提なんです。もちろん南極条約の中には、第一条に「平和的目的のみに利用する」ということはございますけれども、平和的目的に利用するというワク内における大前提は、「国際地球観測年の間に実現された南極地域における科学的調査の自由及びそのための協力は、この条約規定に従うことを条件として、継続する」と書いてある。ですから、この条文を全部読んでみますると、この国際地球観測年に参加した十二九国は、みんな南極に行って観測をやっておる。この南極に行って科学的調査をやったところの国は、そのままの形態を継続して、そうして科学的調査の自由及びそのための協力を行なうのだというのが、この条約大前提になっておるわけです。今度はその第三条には、この条約内容の一部が盛られておるわけです。すなわち、「締約国は、第二条に定めるところにより南極地域における科学的調査についての国際協力を促進するため、実行可能な最大限度において、次のことに同意する。(a)南極地域における科学的計画の最も経済的なかつ能率的な実施を可能にするため、その計画に関する情報を交換すること。(b)南極地域において探検隊及び基地の間で科学要員を交換すること。(c)南極地域から得られた科学的観測及びその結果を交換し、及び自由に利用することができるようにすること。」これだけのことを書いてある。一つは、いわゆる条約を批准したところの締約国として継続してやろうということをきめたのが、この南極条約精神だったと私は思う。ところが、昭和基地閉鎖してしまうと、探検隊及びその基地の問で科学要員を交換することもできなければ、ここに書かれたところの各個条は事実上履行不能ということになってしまうわけです。そうしますと、いわゆる南極条約締結に対してあっせんの労をとった当事国日本としては、これは条約締結した精神に非常にもとる結果になりゃせぬか、こう私は思うのでありますが、この点はどうお考えになりますか。
  8. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先ほど申し上げましたように、将来に向かって閉鎖してしまうのじゃなしに、やむを得ず遺憾ながら中止する状態でございますから、遺憾ではございますが、今御指摘になりました条約趣旨に基本的に違反することもあるまい、ただできるだけ条件を整備しまして再開する努力をすることが、むしろ条約趣旨に沿うゆえんでもあろうか、かように考えております。
  9. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 文部大臣言葉じりをつかまえるのじゃありませんけれども、そうしますとわれわれは、はっきり南極観測再開するという意味をもって一次閉鎖した、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  10. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その通りでございます。
  11. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 そうしますと、これは南極条約締結しておるところの各国にもその旨を通報せられまして、日本は一時都合によって中止をするのだ、また条件を整えて南極観測再開するのだということは、締約国に御通知になっておるわけですね。
  12. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 通告いたしておりません。今後適当なルートを通じまして通告をすべきならばするということでして、今お話のような常識が、私自身には実は念頭にございませんでした。御指摘を受けてこの場で感ずることでございますが、今後検討しまして、適切なルートを通じてそういう通告をするような措置を検討したいと思います。
  13. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 実はこれはとの前の委員会において質疑応答の中で出て参ったのでございますが、わが方において事情があって南極観測を一時中止するという、まあ的確な意思の発表ではなかったと思うのでありますが、そういう意向アメリカ側に漏れたので、アメリカ側は、日本は一体なぜ南極観測中止をするのか、そういうととは非常に惜しいことだから、それは中止をしないようにしろ、会議の席上で、締約国日本南極観測を継続すべき話し合いまでもやっておるのであります。そこでアメリカは、宗谷という船が古くて用いられなかったならば、あるいはヘリコプターの使用が日本において非常に困難ならば、日本南極観測重大性考えて、アメリカでもって輸送には協力しよう、だから南極観測はやめないようにしてくれ、という意思表示があったのであります。これは確かにあったと思うのであります。でありまするから、われわれといたしましては、そういうような友邦が日本南極観測の功績というものを惜しみ、その能力というものを認めて、南極観測を継続すべきであるということで協力を惜しまないというものをも断わって、これを一時中止するのでありますから、締約国間においては日本の一瞬中止するのやむなきに至ったことは了解事項として取りつけたのじゃないか、私はそう考えたのでございますが、ただいま文部大臣の御答弁によりますと、そういうこともやっておらない。ですから、締約国から見ますると、いわば突然として南極観測を一時中止したという結果になったのだろうと私は思うのであります。  ただ、私が今南極観測をやめたということに対して非常に遺憾の意を表しておりますることは、これは条約締結過程を見ますると、日本が特別の立場に立って非常な努力を払ってきたということなのであります。これは昭和三十五年三月、南極条約説明書として外務省から出されたものでございますが、これを読んでみますと、その間の経緯がよくわかります。と同時に、今一つここで念のために伺っておきたいことは、こういうことも書かれておる。「なお、わが国条約署名国の一国として、条約発効後定期的に開かれることになっている会合に常時参加でき、しかも、特別の権利を与えられているが、」ということまで書かれておるのであります。これはちょっと外務省にお伺いいたしますが、ここに書かれておる、日本に対する特別の権利を与えられているという、その「特別の権利」というものは、一体何を意味するのか、念のために一つ答弁を願いたいと思います。
  14. 川村善八郎

    川村(善)政府委員 まず、お答えする前に皆様におわびを申し上げておきます。  本日当委員会外務大臣出席をして御答弁申し上げるはずでありましたけれども、ただいま外務委員会が開かれておりまして、条約等の問題もやっておりますから、条約局長もこちらに参ることができません。従って、私、かわってお答えを申し上げますが、どうぞよろしくお願いいたします。  ただいまの御質問でございますが、南極条約から見ますると、わが国南極地域観測事業を継続実施すべき国際的義務を負っておるということにはならないように私は判断をしております。しかし、同条約精神にかんがみまして、わが国観測事業実施して、南極条約国の間の国際協力に効果的な貢献をするということが非常に望ましいことではなかろうか、かようなことに相なっておりまして、ただいま条約文も読んでいただきましたが、条約文趣旨は、日本に特別の権利を与えられておって協力するということじゃないか、かように判断をしております。なお、詳細にわたっては事務当局からお答えさせます。
  15. 栗野鳳

    栗野説明員 ただいまの政務次官の御答弁に、ちょっと補足させていただきます。  御質問条約承認を求めたときの説明のときに、南極条約実施のための会合において特別の地位を与えられておるという意味は、第九条の第二項に、もともとの締約国以外の国は南極観測にいろいろ実際の活動を行なっておって、そのことによって南極地域に対する自国関心を示している間はこの会合に参加できるとなっておりますが、日本はもともとの締約国でありますから、それがあってもなくても参加できる、そういう意味で特別な地位とここで言っておるのであります。
  16. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 今、最初締約国十二カ国で南極に実際基地を持って観測に従事していない国というものは、一体何ぼくらいあるのですか。
  17. 栗野鳳

    栗野説明員 ベルギー及びノルウェーでございます。
  18. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 この南極観測について、南極条約に定められた締約国の一員としての日本が受け持つ役割の問題は、第七条でしたかにきめられておりますところの、代表者をきめ、監視員を指名して、そうして自由に一切の施設に対するところの監視を行なう、これは軍事目的に使われているか使われていないか、はたして条約目的である科学的調査の自由とその協力が行なわれているかどうかということを、監視員をもって一切監視をするということが非常に大きな役割なんです。  それで、私の非常におそれておりますことは、この第九条です。一体この南極条約というものは、先ほど私が申し上げました通りに、最初南極観測に従事した十二カ国が、相なるべくはその形をそのまま継続して、そうして共同体的な活躍によって科学的調査及びその協力を継続していくということであるのですから、最初南極観測に従事した国は当然代表者会合に参加せしめ、そして監視員を選定するところの権利を有するということにしてあるわけなんですね。ただし、これには、私はこの条約を見ていますと、やはりそれは南極観測に従事したその体制を継続していくという、その合意の上に条約が結ばれておるのであって、十二カ国は南極観測を継続していくところの義務とまで言わなくても、条約上の責任があると解するのが私は当然だと思う。でありますから、その後に「第十三条の規定に基づく加入によりこの条約当事国となった各締約国は、」と特にここに条件のつけられておるのは、「南極地域における実質的な科学的研究活動実施により、南極地域に対する自国関心を示している間は、1にいう会合に参加する代表者を任命する権利を有する。」これは当然なことです。あとから入ってくる人は南極観測をやっていないのだから、南極観測をやっている間だけは代表者を任命する権利を有する。最初の十二カ国は初めに南極観測をやっておって、そのままの体制を継続していこうという申し合わせなんですから、それは当然代表者が決定されるのだ。もしそれを南極観測というものに実質的な関心を示さないようになった締約国があったとしたならば、それは会合において、普通観測実施している国と同等の発言権とか、権利を有することができるんですか、それを一つ。私の質問趣旨はわかりましたか。
  19. 川村善八郎

    川村(善)政府委員 条約文内容に入ってくることでございますので、私は詳しいことはわかりませんから、事務当局から御説明申し上げさせていただきます。
  20. 栗野鳳

    栗野説明員 率直に申しますと、齋藤先生がお考えになったと同じことを私も実は考えまして、この九条の二項を見つけたときは非常に喜んだのでありますが、どうもこれは解釈がいろいろございます。たとえば一つ解釈といたしまして、現締約国はやめてもその権利を持てる、いわば排他的な、あとから入ってくるものは特別な義務を課するというような規定というふうに解釈もされ得る可能性があると思います。従いまして、条約局責任者意見では、これに準拠して日本義務があるということまでは言えない、その点は非常に遺憾だと思います。  しかしながら、先ほど政務次官が言われましたように、この条約全部を通してみまして、もともとこの条約最初にIGYの観測などを共同でやってきた国が大体それを継続するということを予想して作られたものと了解いたしておりますから、この条約目的あるいは精神から見まして、そういう実行的な協力日本も続けることが非常に望ましいと思います。  それからなお、去年の八月以来この第九条によります協議会というものが、大体一年に一度は開かれておりますが、そこでいろいろ科学協力の議題が論じられますときにも、日本が実際に参加しているとしていないでは、非常に協力内容も違ってくると思います。
  21. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私がさっき文部大臣に、各国に一時閉鎖するということを通告して了解を求めておやりになったのかどうかということを伺ったのは、その条約文を読んでみると、専門家事務当局も非常に疑義があるんです。私は条約文にこういうふうな段階を設けることは、なかなかない場面ではないかと思うのです。最初から締約国として南極観測に当たっているものは、当然それを継続するのだという条約大前提があるから、みんな継続することに同意をしているわけです。三年や五年やって、それでぽつんとやめるなんということは全然そのときには考えられておらないから、ここに当然代表者を参加させることができるという規定をやっているのです。南極観測に参加してない国があとから締約国として入ってくるのだから、そのあとから入ってきた国が代表者を持つということは、事実上そこに観測基地を設けて、ここにございます通り自国関心を示している間は代表者を持つことができると規定してある。だから、最初締約国も、基地閉鎖して探検隊科学要員も全部引き揚げてしまった、あと三年か五年か再開がわからないというような状態に立ち至ったときに、日本というものはいかなる立場に立つのか。それでもなおかつ南極観測基地を持って探検隊をそこに派遣し、科学要員をそこに駐在させておるときと同じ権利を保有することができるのかどうか、ということなんです。これはできるのですか、できないのですか。そういうところをはっきりしておかないと、一般南極に対する日本既得権利というものが、もしここで一時でも喪失するということがあったのでは、せっかく日本が仲介の労をとって南極を平和的に持っていこう、領土権は全部放棄させて国際協力のためにこれを推進していこうという、その中心的な日本立場というものがなくなってしまったのでは、私は非常に大きな問題となりはせぬかということを心配して御質問申し上げておるわけであります。それは一体どうですか。
  22. 川村善八郎

    川村(善)政府委員 同条約はただいま齋藤先生がおっしゃられるような精神で作られたものだ、私はこう考えております。ただいま文部大臣からお答えをいたしたように、これはやめるのではない、一時休止するのだということでありますが、いずれにしても、再開するときには必ず代表者が出るだろうと考えて、私も大いに期待をしておるような次第でございます。
  23. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 事務当局、今の質問、どうですか。
  24. 栗野鳳

    栗野説明員 最初にちょっと御説明いたしますが、昨年八月に豪州のキャンベラで最初会議が行なわれましたときに、日本中止せざるを得ない情勢であるということを各国に言うか言わないかということを私ども非常に考えまして、言いたくないと思いまして、要するに南極条約精神から見てもそういうことを日本がする、しかも去年の六月の二十三日かに条約が発効したわけでございますが、条約発効直後に日本が打ち切るということは言いたくない。そこで、それ以来極力早く再開されることを望みながら、関係者に非公式に各国意向を打診をするという程度にとどめていただいて、正式に日本がやめるという通知はいたしておりません。  それから、結局これは条約言葉の問題になりますが、やはり条約に基づく義務に違反していいかとか、あるいは条約上そういう義務があるかということにつきましては、条約専門家意見としては、条約上の条文解釈としては直ちにそういうことは言えない。ただ、条約精神あるいは従来の経緯から見まして、日本はそういう協力を積極的にやるべきである、やることが望ましいというわけであります。
  25. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これには条約上の義務という言葉はないようですね。しかし、先ほども申しました通り条約というものは、二国以上の国がある問題に対しての合意を行なったということであって、その合意を行なった目的の遂行に対してはお互いに責任というものが出てくると私は思う。でありますから、どう解釈いたしましても、この南極条約締結いたしました大前提からいたしますと、日本締約国に何らの意思表示なくして昭和基地を一時閉鎖したということは、その責務においてはやはり欠けるところがあるのじゃないか、こう私は思うのであります。そういうことはできないのじゃないか。お互いに相談して南極観測をこれから続けていこうじゃないか、国際的な協力を継続してやろうじゃないか、あるいは南極の問題に対しては全世界的に一つ平和的な基地としてやっていこうではないかという申し合わせをやって、これこれをやろう、これこれをやろうということを全部聞いておいて、それをぽつんと、日本日本だけの御都合で、相手国に何も相談もせずしてやめる。むしろ日本は、そういうことをやめるな、やめるよりは、おれたちが協力するからそれを継続したらどうかというアドヴァイスも受けながら、どういう理由かといって御質問してみますと、宗谷という船は用いるに足らないし、ヘリコプターの使用がきわめて困難だという。私はこれは悪意に解釈するわけではございませんけれども、もしも善意にこの南極条約というものをほんとうに考えて、南極観測というものを日本一つの大きな科学的調査の大目標に掲げたとするならば、今までの間にこれを継続すべきところの幾多の手段、方法があったのではないかと思うのです。そういうことをやらないで、当然落ち込むべきところの事態に問題を追い込んでおいて、締約国にも何らの通報をしないでもって、ぽこっとやめてしまうということは、これはいわゆる南極観測に関するところの行政事務として、許される問題であるか許されない問題であるかということになるのではないかと私は思う。しかし、今これを追及してみても、南極観測が直ちに再開されるとも私は考えられないので、私はそういう点に非常に一つの義憤を感じておるわけなのであります。  一体、宗谷が長く使用にたえるとかたえないとかいうことは、宗谷を初めて出したときからの問題なんです。毎年この問題に突き当たっておる。しかも、南極条約を見ると、第十二条でありましたか第十三条でありましたか、もしこの南極条約を変えようとするときには、代表者がこれから三十年たってからやろうじゃないかという、半永久の条約締結しておる。しかも、その条約を読むというと、義務とは書いていないけれども、責任はあるのです。責任が果たせないような状態に持っていってやめるということは、何ら南極観測に対して行政的な熱意を示してなかったということじゃないかと私は思うのであります。仄聞するところによりますると、アメリカから一つ援助をしようじゃないかという申し入れを日本が受けたときも、何か相談がまとまらなかったというのであります。一体南極観測の推進というものは、現実においていかなる体制のもとにこれが推進されておったのか。これは念のために、どなたでもけっこうですから、御説明を願いたいと思います。
  26. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御質問の焦点がちょっと私に理解できないままで立ちましたが、文部省に南極観測の推進本部が御承知の通り置かれまして、ここに関係各省の関係者が席を連ねまして、相談しながら今日まで推進し、具体的なお世話は文部省の力で担当してやるという形で今日まで参っております。これは私お答えせぬでも、齋藤さんよく御承知のことなんで、そのほかにどういうことをお答えをすれはいいかがぴたっと参りませんが、一応以上申し上げます。
  27. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 いや、文部省が南極観測推進本部ですか、南極本部ですか、統合本部ですか、そういうものを設けられて、文部大臣がその大将になってやっておられるということは知っておるのであります。しかし、これを実際推進していくときに文部省だけの考え方ではいけないので、どこかに相談を持っていって、そこの了解を得ないというとその推進ができないような体制にあったのではないか。今まで私が質問した点からいきますと、文部省だけではいかないで、どこかに相談をぶって回らないというとこの問題がスムーズにいかないというような組織になっておるのではないか。そうでないと、あれだけ特別委員会でもって当局に要求しておるのでありますから、そのはね返りというものは、もっとシャープにわれわれのところにはね返ってこなければならないものだと思っております。ところが、さっぱりどうも、ぬかにくぎを打ったような形になっておって、そして何だかわからないうちに昭和基地閉鎖ときておる。ですから、この南極観測を推進していくのには、文部当局だけで自由自在にやれないで、どこかに相談をぶっていかなければ、やれない組織になっておるのかどうかということです。
  28. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 文部省だけではむろんやれない本質を持っておりますから、推進木部なるものができておると理解するのでございますが、その構成メンバーはきわめて多岐にわたっております。ただいま申し上げましたように、本部長に文部大臣が当たることになっておりまして、副本部長がたくさんございます。日本学術会議会長、総総理府総務副長官、文部事務次官、本部長が特に指定する関係省の事務次官の委員がそれに加わっておるわけであります。副木部長が三名、さらに委員が十四名、日本学術会議の事務局長、科学技術庁計画局長外務省国際連合局長、大蔵省主計局長、文部省大学学術局長、その他十数名、その他さらに学識経験者のうちから文部大臣が委嘱する者若干名、という構成でもって委員がおりまして、本部長、副本部長という形で総合的に推進するという建前でございますが、なかなか長鞭馬腹に及ばないという傾向があったと推察されます。もっと齋藤さんのおっしゃるようなたくましさを持って着実にやれる機構がほんとうはなければ、恒久的な推進は困難であった事情のもとに発足し、そのまま今日に来たっておる。露骨に申し上げればそういうことも言えようか、というくらいの体制であることは御懸念の通りだろうと思います。
  29. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 ことに朝日新聞の二月十日の記事がございます。今、大臣の御答弁を伺いますと、この記事がまさに肯綮に価するものだということもわかるのであります。こういうことが書いてございます。「以上のような「成果」は南極観測継続論につながる。」非常に大きな貢献をしたということはわれわれも認めるのであります。最初に十項目の調査、いわゆる観測目標を定めたのに、さらに五項目ふえて、極光・夜光、宇宙線、電離層、地磁気、電波物理、気象、海洋、地理、地質、測地、氷河、地震、重力、地球化学、生物、これだけの十五項目について日本南極観測学術報告書というものが将来出てくるのでありますから、過去において三十一億円の国費を投じて数カ年にわたって南極観測を行なったその功績は、私は相当高く評価してもいいだろうと思うのであります。その評価が高ければ高いほど、一時中絶をしたというその損失は、反動的に非常に大きいのだ。しかし、以上のような成果を上げたということが、——成果が上がらなかったならばこの南極観測の継続はできないかもしれぬけれども、非常に大きな効果を上げておるから継続への希望というものがつなげる。「地球物理学者をはじめ関係者の間では、当然だが、今度の基地閉鎖を惜しむ声が高い。南極に限らず政府事業は一般に「継続するのはやさしいが、いったんやめると再開は至難」というのが常識。それでも打切らざるを得なかったところに、日本南極観測の問題点がある——と関係者はみる。1この事業が「IGY参加のため」という応急、一時的な臨時体制で出発したこと。南極本部の実体は多くの関係省庁の寄り集りであり、本部事務局のある文部省はじめ各省庁とも南極は片手間の仕事。早く逃出したいと考えている様子がみえる2その代表例であり、またいちばん苦しいのが海上保安庁だ。」こう書いてある。でありますから、ただいま文部大臣が御答弁相なりましたように、きわめてその組織は広範多岐にわたり、そうしてこれを遂行せんとすれば、その目的に向かって直進することがきわめて困難だというような体制である。私は過去を責めて能事足れりとするのではないのであります。私といたしましては、この南極というものに対する国民的な一つの希望、及び国家的な今後発展すべきところの地球ないしは宇宙観測に及ぶところの科学的な立場から考えての価値というものを非常に高く評価するのでありますが、これに対して今までの体験上から、文部大臣はいかなる組織といかなる方法をもっていけば南極観測というものは強力に再開のめどに向かって進め得るか、もしお考えがございましたら、一つお漏らしを願いたいと思うのであります。
  30. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その前に、何度も齋藤さんも御指摘に相なりましたように、もともと国際地球観測年昭和三十二年から三十三年末までというものに参加することから始まって、推進本部の体制も今申し上げましたように臨時応急的な体制でございました。また南極観測をじっくりとやるについて、越冬隊員の交代等をいたしますについての輸送機関というものも、御承知のように宗谷というものを充てざるを得ない状態でスタートをしまして、宗谷の船長以下乗組員のいわば決死の覚悟で今日まで、現に今も輸送に従事してもらっております。齋藤さんのおっしゃるような、そういう継続的な、真剣な学術探求の意欲に燃えて、それに応ずるような体制は、輸送機関を初め、またこれをお世話をする機構も応急的なものという性格と内容のままで今日まできておるところに、中止せざるを得なかった遺憾な原因があろうと思うのであります。このことは、政府側の関係各省を初めとして、関係者は感づいておりましても、なかなか大事業でございまして、簡単に整備するということがめどがつかない。しかも一方、越冬隊員は交代しながら常時いる。食料の問題あるいは越冬隊員本人の身体的な、あるいは家庭的な事情等から、交代も当然必要である。隊員はこれまた宗谷の船員に劣らざる情熱をもって、生命の危険もあえて念頭に置かないで真剣な調査研究を今日までやってきた。そのことは御指摘通り、国民的な感謝を、あるいは国際的にも感謝されるような成果を上げていることは喜ばしいことですけれども、その背後に何かしら決死隊的な覚悟をしなければやれない。輸送機関が不備であるために、天佑神助をこいねがいながらしかやれない場面もあったと思います。また現地では、福島隊員が不幸にして職に殉ずるということもございました。事柄の重大性と、御指摘のように、こういうことは一時限りでは意味がないので、要すれば継続的に研究を続けることこそ必要であることは関係者みんなわかっておるのですけれども、それをそうするのにはあまりにも問題が複雑であり、関係者が多過ぎる。それに応ずるてきぱき動くような体制作りもなかなか容易でないということを嘆きながら、手っとり早く整備するという意欲と努力が行なわれ続けておりましても、実現困難だという実情に直面しまして、やむなく中止をいたしたわけであります。  従って、これを再開しようとなれば、その一番のウイーク・ポイントを整備することが第一であろうと思います。その一つは、輸送機関である船舶を新造する。駆逐艦もかなりのものが日本でできるようになったと聞きます。何も軍艦を持っていくのが能じゃありませんが、それだけの造船技術を持っておる日本で、南極の氷の状態等も経験上わかっておるわけですから、砕氷能力もあり、また南極の気象状況にたえ得るような自信のある、決死隊で行かぬでもよろしいようなものを作ることが第一でなければならぬと思います。さらに、御指摘のように、ヘリコプター等の航空機がなければ実施不可能なことも当然でございますから、これも防衛庁から無理算段して拝借に及んで使うなどということでなしに、南極観測用の特別に作られたものでも入手できるならば入手するくらいの条件が整備されなければなるまいとも思います。  さらにまた、先ほども御指摘がございましたように、腰を据えてやれるような体制を整備することも必要かと思います。寄り合い世帯のままでお義理を果たしているようなことでは、半永久的に継続さるべき本質を持ったこの研究調査が、実際問題としてとても困難でございます。現在は文部省の大学学術局がお世話役を実際上しておりますが、これとても、片手間という気持ではございませんが、必要の人員もほとんど整備されないままに、さらにまた南極観測にふさわしい専門家、もしくはこれを継続するに必要な能力を持った人々をもって整備されてもいないわけでございますから、その点にも難色があったわけであります。従って、国をあげて、関係省庁はもちろん、民間の学識経験者もあわせての推進本部的な体制もむろん必要でございましょうが、現実にお世話をするその担当部局というものが、それにふさわしいものとして整備されませんことには、なかなか容易なことではなかろう。  繰り返し申し上げれば、輸送関係の機関の整備、及びこれを推進実施していくに必要な事務的機構及びその内容の整備、そういうものが基本的な再開のための前提条件だろうと思います。
  31. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 だいぶ時間も長くなりましたから、私の質問は最後に追い込みたいと思うのであります。私もしろうとでございますから、南極観測というものがどれだけ国家的に重大性を持つものであるかということを、別段的確につかんでおるわけではないのでありますけれども、新聞記事なんかによりますと、南極を中心として日本がやるべき仕事というものはまだまだたくさんあるように書かれております。先ほどの十五項目にいたしましても、なおかつ科学的な研究から参りますと、非常な前途が私はあるだろうと思います。それがやはり宇宙開発につながり、太陽科学につながっていって、日本の前途を切り開くのに大きな示唆を与えられる材料になるのではないか。特にこの新聞記事によりましても、「クジラ資源をはじめ将来、南極の鉱物資源開発などが国際問題になったとき、南極観測参加の実績が日本発言権に大きなプラスをもたらすだろう。」でありますから、まだ未知の世界でありますから、こういうものに対しましては世界各国は非常な力を注がんといたしておるように見えるのであります。朝日新聞の二月十三日の記事には、「南極にソ連の新基地」として、昭和基地のわき三百キロのところにソ連はまた新たな基地を作り始めておるというのです。三百キロであるから、この基地が活躍し始めると、日本昭和基地は今度は、要らないということになってしまうのではないか。わずか三百キロのところにりっぱな基地ができる。そしてソ連が大々的に活動を始める。日本昭和基地はいつ再開されるかわからない。やっているうちに、日本昭和基地というものは南極における観測基地としては何ら価値がないというふうになりはせぬかと思われる懸念も、この新聞記事を読むとあるわけなんです。世界は今南極に向かって相当の力を科学的に注ぎかけておるのに、日本がやりかけておる途中でもってやめて、そして一体何年先に再開ができるのかというと、まず昭和三十九年、太陽の静かなるときですか、その年限に再開をしたい。こういう希望だけで、その再開の年限はわからないわけなんです。そういう点からいきますと、私はこの問題に対しましては非常に一種の残念といいますか、義憤を感じざるを得ない。でありますから、ただいま文部大臣の御答弁にございました通り南極観測推進の確固たる体制を整えられて、一日も早くこの再開をはかっていただきたい、こう私は希望するわけであります。  と同時に、私は科学技術庁にも一つ注文をつけておかなければならないと思います。というのは、これは南極条約にございますが、技術という字はついておらない。科学立場に立った研究の自由——でありますから「科学技術」という言葉は使っていないけれども、科学技術庁の立場から見ますと、これは文部省にも関係があるし、外務省にも関係があるし、その他の官庁にも関係がある。すなわち総合的な立場から、科学立場南極というものを見なければならない。科学技術振興対策特別委員会におきましては、何回となく南極観測の問題を取り上げて、時の長官にもこの問題には真剣に取り組んでもらいたいという、他の委員諸君の希望も速記録へ載っておるわけであります。こういうように、科学の研究というものを総合的に推進していかなければならない。特に国際的な問題に関して、科学技術庁もいわゆる総合官庁たるの立場から、もっと積極的にこの問題を考えて、そうして欠陥があるならばこれを剔抉して、国家目的に向かっていわゆる科学的推進をはかっていくということにおいては、これはどういう立場科学技術庁が入っておるのか入っておらないのか私はわかりませんけれども、こういうものこそ、科学技術庁設置の非常に大きな目標ではないかとも考えられるわけであります。こういう点に対して、三木長官は今までどういうお考えを持たれたかは私はよく知りませんが、昭和基地一時閉鎖という問題と関連して、科学技術庁はこの問題と真剣に取り組んで、いやしくも科学立場に立って日本の将来というものを推進していくという角度から、何らかこれに対して御所信をお持ちになっておるのではないか。もし何らかの御所見がございましたら、この際一つ承っておきたい。
  32. 三木武夫

    三木国務大臣 科学技術庁は、推進本部に今委員を出して協力しておることは、御承知の通りであります。しかし、南極観測というものは科学技術と関係が非常に深いことは、齋藤委員の御指摘通りでございます。従って、今文部大臣からも、いろいろな原因があって一時昭和基地閉鎖したのだけれども、できるだけすみやかに再開をしたいという意思表示がございまして、私もその同じ考えを持っておるものであります。しかし、ただそれは気分的に再開したいということではだめなんで、再開できるような体制を整えなければなりません。文部省内部にある推進本部の体制も、われわれも協力してもう少し強力なものにして、そして一次参加して途中でやめるというような不体裁なことのないように、やれば継続してやれるだけの見通しと準備を整えて速やかに再開するように、科学技術庁も協力をしたいと考えております。
  33. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 重ねてお願いを申し上げておきます。過日、日米原子力産業会議が開催せられましたときに、この前の委員会でも私申し上げたのでありますが、バンザントというアメリカの国会議員が、会議が始まってから着席いたしたのであります。開口一番、自分は今南極から戦闘機をかつてこの会議にようやく間に合った、アメリカは今南極に原子力発電所を作りつつある、という話をされたのであります。私は、世界各国が原子力発電所までを作って南極というものに対する熱意を燃やしているというのに、日本がかくのごとき状態において一時中止のやむなきに至ったということに対しては、何と考えても割り切れないものがあるわけであります。これは私一人じゃないと思う。特にあのタロー、ジローの犬の話から、いろいろな南極というものを胸に刻み込んだ青少年の胸中を察したら、私より、より以上に割り切れない日本というものが浮かび上がるのではないかと、こう思うのであります。従って、私は重ねて政府当局にお願いをするのであります。とにかく日本の体面挽回というだけでなく、実質的にこの南極というものに対する日本のあり方というものを世界に表示する意味において、体制を確立し速力を早めて、南極観測再開されることを切にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。      ————◇—————
  34. 前田正男

    前田委員長 この際、山口鶴男君より南極地域における科学調査に関する件について発言を求められておりますので、これを許します。山口鶴男君。
  35. 山口鶴男

    ○山口(鶴)委員 ただいま齋藤委員からいろいろな質問があり、政府の所信も述べられたのでありますが、このような南極観測事業中止になりましたことにつきましては、われわれといたしまして心から遺憾に思う次第でございます。従いまして、各位の御賛同を得まして、南極地域における科学調査に関する件を決議として御提案申し上げますので、各位の御賛同をいただきたいと思う次第であります。    南極地域における科学調査に関する件(案)  政府は、国際地球観測年の一翼として連年継続実施して来た南極観測事業を来年度をもつて一応中止することとしたが、本件について当委員会はかかる結果にいたることのないよう数次に亘り政府当局の注意を喚起したのであって、この結果に対して改めて深甚な遺憾の意を表明するものである。  本事業の実施に当っては、国民各層から一致した熱意と協力が示された経緯にも鑑み、この際突如としてこれが中止を見るに至ったことは一般国民の感情特に青少年の志気にとつて好ましからぬ影響を与えるものといわなければならない。  元来、本事業は単に学術の進歩向上に重要な意義があるばかりでなく、今日において我が国は締約国の一員として、南極条約南極科学調査協力する国際的責務を有するのであるから、本事業の中止は、国の威信の上からも看過できない出来事である。  仍て、この際、政府は南極地域における科学的調査実施に関し従前の臨時的体制に捉われず、新に事業推進本部を内閣に置く等の措置により、恒久的且つ総合一体的な機構を確立するとともに、輸送船に原子力船の建造利用を考慮する等最新の科学技術を採用することとし、積極的に国際的協力の実をあげ国民の期待にこたえて万遺憾なき措置を講じ、本事業再開の速かな実現に格段の努力を傾注すべきである。   右決議する。  皆様の満場一致の御賛同をお願い申し上げます。
  36. 前田正男

    前田委員長 本件に対しましては別に御発言がないようでございますので、ただいまの山口鶴男君よりの御提案の通り南極地域における科学調査に関する件を本委員会の決議とすることに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認め、よって、さように決しました。  この際、ただいまの決議に対する政府の所見を聴取いたします。荒木文部大臣
  38. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいま決議されました南極地域観測事業再開につきましては、決議に示された本委員会の御関心と御熱意に対して、推進本部を預かる者としてまことに心強く、感謝申す次第でございます。私どもといたしましても、この御決議の御趣旨を尊重して、学会その他関係各省庁とも十分協議して、すみやかに結論を得ますとともに、再開の場合の時期、方法、組織等について、さらに熱意を込めて検討を重ねて参りたいと存じます。
  39. 前田正男

    前田委員長 なお、ただいまの決議につきましては、関係当局へ参考送付いたしたいと存じます。その手続等については委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  41. 前田正男

    前田委員長 なお、この際、本南極観測問題に関連いたしまして、松前重義君より発言の通告がありますので、これを許します。松前重義君。
  42. 松前重義

    ○松前委員 ただいま南極問題を取り上げて政府の御所信を伺ったのでありますが、大体これと同種類の問題で、非常に遺憾なことが一つあります。この問題にりきましては、文部省は相当に努力をされた傾向があるのでありまして、相当努力されてもなおかつ予算がとれずに、これが実行できなかったのじゃないかというように、関係の方々からは私は伺っておるのであります。しかしながら、この問題の影響するところは非常に大きいのであります。この点はまた外務省にもある程度関連を持ち、科学技術庁に相当の関連を持っておるものでありますから、ここにお伺いをいたしたいと思うのであります。  問題は、インド洋の国際調査であります。この経費が来年度は全然削られたということであります。このインド洋の問題に関しましては、私からいろいろ申し上げる必要はありません。しかし、このインド洋の調査が非常に重要であるということは、海洋の総合的な開発というものには各国とも非常に力を入れていることは御承知の通りであります。昨年のケネディの年頭の教書によりますと、相当ページを費やして海洋開発の重要性を主張いたしております。本年の予算教書においては、アメリカの予算の最も重要なる項目の一つとして、しかも第一項において、国防と並んで、国防並びに海洋の開発としてこの重要性を主張して予算を編成いたしておるのであります。またソ連等においても、御承知の通り、この岡、晴海埠頭を訪れましたいわゆる海洋調査船なるもの、五千何百トンかあるそうでありますが、実にりっぱな研究所を持った海洋調査船であります。こういうふうに、各国とも非常に力を入れて、日本海溝の底のところまで全部調べ上げつつある。領土権のない海洋を目ざして、その資源の開発に対して世界じゅうが非常に大きな関心努力を払っておるこのときであります。またフランス等でも、近く訪れるそうでありますが、例のバチスカーフという潜水船、ああいう調査船を持ってどんどんやっております。  こういうふうなときに、国際インド洋調査に関する昭和三十七年度の予算、四億一千五百万円が否決されているのであります。まことに残念しごくであると言わなければならないのであります。この国際インド洋調査につきましては、文部省、運輸省、農林省から政府に要求したものであります。三省から要求して、これがついに否決されるに至っておるのであります。日本がこの国際協力に参加することができなくなるといたしますならば、これは国際信義の立場からは申すに及ばず、日本科学及び科学者に与える影響はきわめて重大なものがあることは言うまでもございません。また、そればかりではございませんで、日本の経済界に与える影響が非常に大きいということを深刻に認識しておかなければならないのであります。たとえばインド洋における漁業に関しては、日本が一番恩恵を受けております。マグロのわが国の全生産量は四十三万二千トンでありますが、そのうちインド洋のみで十一万一千トンを生産しております。すなわち四分の一以上を生産しているところのインド洋であります。この生産金額は大体百十一億円に上っております。出漁しております船は、三十五年度で八百九隻に及んでおります。その他、底びきというようなやり方によりましてアラビア海やベンガル湾等でエビその他の魚をとっており、日本の水産経済に対しては非常に大きな影響のある、日本の死活に関する問題であります。  こういうふうな大きな関連性を持っている、この日本経済に影響のあるものが、今度はこの調査から脱落をして、そうして仲間入りもできない。とりに行けば、それは勝手にとってくることになりましょう。恩恵はほとんど全部日本がちょうだいしているようですが、しかし、わずかの金は負担いたしません、こういうことをやって、一体いいものかどうか。関係の学君たちは、現在このことの通過しなかったことに対して、絶望をいたしているような状態であるはかりか、アメリカのシュナイダーという海洋関係の事務局長が、このことを憂えてあすの晩、日本に到着いたします。私も関係の学者の皆さんと一緒に会うことになっておりますが、何といっても顔向けがならぬ。同時にまた、魚をとりに行くことも遠慮しなければならない。とういうようなことになっている。重要な問題が脱落しております。この点、いろいろ理由はありますけれども、政府のその間における消息、今日まで努力された跡、相当努力されていること私は承っておりますけれども、結果において成立しなかったということはまことに遺憾千万である。この問題につきまして、いきさつを一応解明していただきたいと思うのであります。
  43. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 国際インド洋の調査に関しまする政府側としての予算措置等が、結局成立をいたさなかった経緯等は御指摘通りでありまして、その点につきましては、努力の足りなかったこともむろんございますが、それと同時に、この調査昭和三十五年から九年にかけて、特に三十七、八両年度にかけて重点を置いて実施されることになっております。日本といたしましても、文部省の測地学審議会で審議の結果、三十七年度に文部省、水産庁、気象庁、海上保安庁、それぞれ四官庁が合計五隻の船を出しましてこの調査に参加し、学術調査実施する計画であったわけです。おりあしく予算折衝当時までには、これに関係しております各国、すなわちアメリカ、イギリス、フランス、ソ連、オーストラリア、パキスタン、インド、南ア連邦、ドイツ、この九カ国の調査計画がまだ十分に判明していなかったわけであります。そういうはっきりしない状態の毛とに、日本がいち早く実施体制を具体化するということもいかがだろうというふうな弱点もございまして、結果としては御指摘のようなことに相なったのであります。  お話の通り、このことの持ちます価値、必要性、私ども同感でございまして、今日ではこれらの各国計画等もだんだんはっきりして参りましたことも考え合わせまして、昭和三十八年度から何とかしてこれに参加できますようにぜひ措置したい、かように考えておるところであります。
  44. 松前重義

    ○松前委員 事情は承りましたが、これが通過しなかったという結論はまことに遺憾であり、同時にまた、その調査費として成立しなくとも、何らかの方法によってこれを継続していかなければ、これは発言権を失うばかりか、日本の経済にとって、ことに水産経済に対して非常な大きな影響を及ぼすことは言うまでもないのでありまして、この点について特に関連して伺いたいと思うのであります。このインド洋というのが、大体いわゆる文明国からほど遠いところにあるのでありまして、従って、科学的にも非常に未開発の海であります。だからして、これを世界中でこぞって一つ調査しよう。その間に日本はどんどん行って、魚をとって、日本の水産経済に大きな寄与をなしておる、こういうような状況であります。でありますから、ここに調査というものを通じて全人類の福祉に貢献する責任があることは言うまでもございません。ですから、日本もまた進んでこれをやらなければならぬと思うのであります。ところが、どうもよそがあまりはっきりせぬから日本はやめだ、これじゃ、ちょっと何だか情ない感じがするのであります。アメリカにおきまする国際印度洋調査事務局の事務局長のシュナイダーという人が、何とかしてくれということを、あしたの晩の飛行機でアメリカから積極的にやってきて、訴えるようであります。こういうようなイニシャティブをとらなければ、私はどうもほんとうに積極的に文化やあるいは科学の開発等に、人類の福祉に貢献するとは言えぬと思うのでありまして、今の文部大臣の御答弁はあまりにも消極的な表現であると思うので、まことに私は不満であります。  しかしながら、この問題は何とか本年しなければならぬと思いのであります。何かこれに具体的な方途はないものか。これを今やめるということは、大へんなことになって、おそらく大蔵省もこれほど切実な問題と考えていなかったと私は思うのです。先般、科学技術庁は海洋調査委員会ですか、海洋審議会のようなものをお作りになりまして、海洋に関する一応の審議会を持って、これに対する関心を持たれるに至ったことは、何と言っても喜ばしいことであると思うのであります。そういう見地からいたしまして、少なくとも本年度は重要研究調整費のうちから、海洋調査として何らかの名目を持って出す、そういう予算もありますから、この点について三木長官はどのようにお考えであるか、伺いたいと思うのであります。
  45. 三木武夫

    三木国務大臣 今、文部大臣もお話しになりましたように、予算が計上されなかったことはまことに遺憾でありますが、文部省内にある測地学審議会で検討中のようであります。本格的な予算要求にあった四億円というものは研究調整費の中から支出することはできませんが、しかし、聞くところによると、既定計画で水産庁あるいは文部省の練習船を利用して、やめたというのでなくして、本格的なものができないまでも、ある程度の調査をしたらどうかという話もあるやに承っております。そういうことならば、ある調査費というものも一応限度がありますから、特別研究調整費を出したいと考えております。あるいはそれがあるならば、何らかほかにも予備費等の支出もありましょうし、それがいかないときには、特別研究調整費を出して、その程度の調査は継続せしめたいという意向でございます。
  46. 松前重義

    ○松前委員 重要研究調整費と言いますか、科学技術庁に重要研究調整費がどのくらいの程度に取ってあるかは存じませんけれども、ただいまのお言葉によって、相当の熱意を持ってこの研究調査の継続のために努力される、こういうふうに承ってよろしゅうございますか。
  47. 三木武夫

    三木国務大臣 よろしゅうございます。
  48. 松前重義

    ○松前委員 そこで、文部大臣に伺います。今のような科学技術庁の御発言に対して、文部省としては、従来のこの問題の事務担当者としての努力をしてこられたと思うのでありますが、各者との間に、農林省あるいは運輸省と連絡をとられて、科学技術庁との密接な連絡をとり、ただいまの重要研究調査費をもってしては必ずしも足りないと思うので、何らかの方法によって各省からしかるべき名目によって支出せしむることによって、この目的を達成せしめる、こういうような努力を続けられるのであるかどうか。その点を伺いたいと思います。
  49. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先ほど三木長官から答えられました趣旨にむろん私どもも同感であり、そういう線に沿って微力ながらやっていきたいと思っております。なお、今日の状態におけるもっと具体的なこの問題に関する進捗状況は、政府委員からお答えさしていただきます。
  50. 岡野澄

    ○岡野説明員 インド洋の調査につきまして、経過は御承知の通り、御期待に沿わない点は遺憾であったわけであります。本年度、何とかして一部だけでも実施したいという考え方で、目下検討中でございます。  さらに、もう一つ具体的に申しますと、水産大学の海鷹丸が練習航海を兼ねて行くことになっておりますので、それに合わせて実施できないかという案で、現在具体的に検討中でございます。そのことを申し上げます。
  51. 松前重義

    ○松前委員 大体これは予算の問題なんですけれども、検討というのは、どういう検討をしておられるか、お伺いしたい。
  52. 岡野澄

    ○岡野説明員 予算について検討中ででございます。
  53. 松前重義

    ○松前委員 その予算は、どういうところから支出されますか。
  54. 岡野澄

    ○岡野説明員 既定予算のワク内で実施できないかということを、水産大学の海鷹丸については現在検討中でございます。
  55. 松前重義

    ○松前委員 従来の調査継続ができるつもりでおられますか。
  56. 岡野澄

    ○岡野説明員 何とかしてその点やってみたい、やりたいというふうに思って、そのつもりで検討いたしております。
  57. 松前重義

    ○松前委員 それは文部省だけとして御検討になるのですか。ただいま科学技術庁長官は非常に理解ある御答弁がありました。その辺の関係、あるいはまた運輸省との関係、その他はどういうふうになりますか。
  58. 岡野澄

    ○岡野説明員 現在この問題は測地学審議会において扱っておりまして、予算が成立しませんので、それならば各省のうちどの船か、あまり金がかからずに、三木長官のおっしゃったような費用もできれば出していただきまして、できないかということで、検討しておるわけでございます。
  59. 松前重義

    ○松前委員 これは各省にまたがる問題のようでありますが、今度はどこが中心になってやられますか。予算の支出は、科学技術庁が相当に担当されるそうですけれども、一体どこが中心になられるのです。科学技術庁ですか、どこですか。
  60. 岡野澄

    ○岡野説明員 この予算は、各省々々で大蔵省に予算を要求したものでございまして、従って科学技術庁が調査船を出すとすれば、現在耕洋丸が行けるか行けないか検討中でございますが、これはその省に出していただく、科学技術庁から出していただくということになると思います。また、文部省の船につきましては、国立学校の経費のうちそれに充当できるかどうかということで検討いたしておる、こういうことでございます。
  61. 松前重義

    ○松前委員 これに対しては、どこか中心にならないと歩調もそろわぬことになるかと思うのですが、それは文部省ですか。
  62. 岡野澄

    ○岡野説明員 これは経過を申しますと、国際インド洋調査をしたいというのは、学術会議から政府に勧告があったわけでございます。この勧告につきまして、政府は科学技術会議において審議いたしました結果、本調査実施につきましては、文部省の測地学審議会が関係者機関の連絡調整に当たることが適当であるというので、三十五年の八月に科学技術庁長官から文部大臣あて善処方の依頼があった、こういう経過でございますので、測地学審議会において、これには関係各省がお入りになっておりまして、そこで現在検討を重ねておるということでございます。
  63. 松前重義

    ○松前委員 検討をしておられるそうでありますが、あすの晩アメリカのシュナイダーという人が来るそうでありますが、もし来たらどういう返事をなさいますか。まだ検討中だ、ちょっと考えさせてくれ、ということですか。それとも、いつまでにわれわれとしては結論を得てどうするということになさるのですか。その辺、一つ明確に……。
  64. 岡野澄

    ○岡野説明員 たびたび申し上げますように、すみやかに結論は得たいと思っております。
  65. 松前重義

    ○松前委員 すみやかにというのは、いつまでですか。
  66. 岡野澄

    ○岡野説明員 年度内には見当をつけたいと考えております。
  67. 松前重義

    ○松前委員 年度内にでもつけばいいのでありますが、規模的に、これは大体学会から要求された内容は満たされるつもりですか。それとも、まことに細々と、言いわけだけにおやりになるくらいの規模でありますか。その辺を。
  68. 岡野澄

    ○岡野説明員 残念ながら、初め五隻の船が行く計画でございましたのが、五隻全部出すということは困難でございます。しかしながら、インド洋の調査は三十七年度並びに三十八年度、両年度やる計画でございますので、今年とりあえず予備調査いたしまして、三十八年度にぜひ予算を計上して、各省に予算を計上するように各省とも御協力をお願いしまして、やっていきたいというふうに考えております。
  69. 松前重義

    ○松前委員 大体予算規模はどのくらいですか。
  70. 岡野澄

    ○岡野説明員 本年度におきましては、まだそれほど数字が固まっておりません。また三木長官のお話のように、幾ら出せるかということも、これも関係方面とも話し合いをしなければならないのでございますが、可能な範囲で、できるだけ支出したいというふうに考えております。
  71. 松前重義

    ○松前委員 どうも、できるだけが多くてまことになにですが、この問題は先ほど来お話ししましたように非常に重要な問題であって、日本の産業とも関連するし、同時にまた、調査だけは人にさしておいて実入りは全部日本が持ってくるというような、まるでどろぼうみたいなこともできないだろうし、いずれにしてもこれは各省にまたがる問題であるだけに、私はどうも各省とも何か身が入らない傾向があるのではなかろうかとも邪推しております。しかし、各省にまたがっておるだけに、非常に大きな日本の資源開発、ことに水産経済に対して非常に大きな役割を持ち責任を持っておる。ですから、この点は、ただいま三木科学技術庁長官の御発言によりまして、重要研究調整費等からも支出を願うという明言がありました。文部省においても、各省とのほんとうに熱心な協力をされまして、できるだけこの要望に沿うように努力をされたいと希望をいたします。特に文部大臣に御所見を承りたいと思います。
  72. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいま政府委員からお答えしたように、年度内に何とかしたいという御要望からいけば、何というか、非常におもしろみのないお答えでおそれ入りますが、もともとこういうような各省にわたって調査しなければならないような課題は、本来これを考えます当初に何か特別の機構を作ってやるのでないと、思うようにてきぱき動かないうらみを感じるわけであります。各省庁にまたがることが、現在の制度からいきますれば、たとえば文部省から他の省に要求がましく申す立場にない。これは松前さんも万々御承知の、機構が明確であればあるほど総合的なことが困難な欠陥を暴露します課題でございますから、真剣に考えれば考えるほど、特殊の機構を作ってでも取り組まないことには、ぴしゃりといかないではないかという気持がいたします。ただ、そんなことを申し上げても急場の間に合わないわけですから、三木長官もお話しのような科学技術庁の御推進によりまして、各関係省が可能なできるだけのことを懸命にやっていこう。また仄聞しますれば、農林省でも水産庁が現実にある程度の調査をし始めているとも承知いたしております。便法でございますので、御指摘趣旨には沿いかねるとは思いますが、極力実行案的なことを考えてでも御要望に沿いたい、こう思います。
  73. 松前重義

    ○松前委員 これは一つお願いします。  そこで、農林政務次官にお尋ねします。あなたは遅刻されましたけれども、その前にずっと質問をしております。その内容は、もう一ぺん簡単に申しますが、インド洋における海洋調査のために日本の学界から出した予算が削られた、脱落したわけです。これは国際調査なんです。それが脱落した。ところが、そのインド洋の水産というものは、日本が、ことにマグロ等においては四分の一くらいを引き受けておるのです。すなわち、インド洋は大事な水産の宝庫なんです。とるだけとって、調査には参加しないというようなことは、まことに国際的にも申訳ないことである。ことに、アメリカの海洋調査のシュナイダーという事務局長が、日本では予算が落とされたそうだ、大へんなことだというので、あすの晩、飛行機で飛んでくるらしい。そういうふうに熱心に、外国では日本という国が脱落したことを残念に思っている。同時にまた、日本だけが魚とりの名人だそうですから日本はうんととってきている。そういうことになって、これから脱落するということは大へんなことになるのじゃないか。また、魚だけじゃありません。ああいう未開発海域ですから、今後これから出るいろいろな資源というものは、海中の資源、海底のいろいろな鉱物資源もあるだろうし、石油資源もあるでしょう。海底の開発というものはこれからだと思う。そういう意味からして、非常に重要なことだというので、質問を申し上げてみたのです。  科学術庁長官は、重要研究調整費の方からある程度さいてでも、これを一つやるようにしよう、こうおっしゃる。文部省は、何とかして予算を差し繰って、そう大々的にはいかぬけれども、一応船を出して調査できるように、今具体的に考究をしておられるらしい。農林省は、これに対して一体どういうお考えをお持ちであるか。一番大事な、とる方の側でございますから、これはとる方からも金を出さなくちゃならぬと私は思う。少しは金をお出しになりますか、どうですか。抽象的な御意見よりも、具体的な予算の支出、これにいかに御協力になるかを伺いたい。
  74. 中馬辰猪

    ○中馬政府委員 農林省といたしましては、インド洋の調査のために、先般の予算編成におきまして七千八百万円を要求いたしましたけれども、査定においてこれが全額削除されたのであります。しかし、ただいま仰せの通り、水産資源その他においてきわめて重大な問題でありますから、ぜひとも一つ、七千八百万程度の予算ということは申しませんけれども、最小限度の予算といたしましては、大体一千万くらいあれば最小限度の調査ができるのではないか、こういう方針のもとに、ただいま大蔵省あるいは科学技術庁等とも相談いたしまして、極力船を出したい、こう考えて、ある程度の見通しは持っておるつもりであります。
  75. 松前重義

    ○松前委員 本年は玄関口から入っていく予算要求は通りませんでしたが、しかしただいま、何とかこれを継続して、列国に伍して調査に参加するという問題についてのある程度の御熱意は承りました。この上は、一つただいまの御発言を中心として、先ほども、できるだけという言葉が二、三度ありましたが、これをできるだけ規模を大きくして、そうして日本発言権を主張できるように、国際的な問題でもありますから、具体的な実行に熱意を持ってやっていただきたい。このことを政府の各省庁に御要望申し上げまして、私の質問を終わります。      ————◇—————
  76. 前田正男

    前田委員長 次に、科学協力に関する日米委員会に関する問題について調査を進めます。  それでは、本問題について参考人及び政府当局に対しての質疑に入ります。  質疑通告がありますのでこれを許します。岡良一君。
  77. 岡良一

    ○岡委員 日米科単委員会が昨年の十二月に第一回を催されまして、引き続き本年の五月には第二回の委員会が催されると聞いております。そこで、まず第一にお尋ねいたしたいことは、三木長官もこの委員会には非常に積極的な関心をお示しでございますが、日米間の科学協力はまず基本的に平和の目的に限るということ、第二には協力、研究の成果は必ず公開さるべきであるということ、さらに日本の学界の意向というものを尊重して、この委員会の運営にはこれを反映させるということ、私はこの三つの基本的な条件が日米科学委員会の成果を全うするためにも最も適当と存じます。この点、まず三木長官の御所信を承りたいと思います。
  78. 三木武夫

    三木国務大臣 日米科学合同委員会の基本的な立場といいますか、それは岡委員と全く同感であります。そうあるべきだと私も信じております。
  79. 岡良一

    ○岡委員 そこで、日米の科学協力が平和の目的に限るという形で進められながら、一方ではアメリカは核実験の再開に踏み切ろうとしておる。こういう二つの矛盾した事実というものは、やはり国民としても割り切れないものを感ずると存ずるのであります。そういう意味で、私はこの科学協力に関連をして、特にアメリカの核実験再開に対する政府の方針について、担当責任の衝にある外務大臣の御所信を承りたいと思います。  まず第一点でございますが、すでに去る八日のアメリカとイギリスの共同声明で、中部太平洋のクリスマス島をアメリカの大気圏内の実験場として使用するということが公表されました。御存じのように、日本では放射能対策本部を設けましてこの対策に大わらわになり、三月四月には、ストロンチウム−九〇もいよいよふえてくるのではないかというので、政府も国民もそれぞれの立場で心配をしておるのでございます。従って、この共同声明に対しまして、政府としてはいち早く、この再開を思いとどまってもらいたい、こういう要請をなされるのが筋道ではないかと私は思うのでございます。この点、外務大臣の御所見はいかがでございましょうか。
  80. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お話のように、二月八日の米英の共同声明におきまして、ソ連の核実験によって作り出されておるこの現状に対処するために、米英といたしましても核実験の再開に踏み切らざるを得ない、こういう趣旨の声明がございました。われわれこれを深く遺憾といたしまして、二月九日に、外務省の情文局長の談話をもって、これに対して強く反省を求めるという趣旨の談話を発表いたしました。米英両国は核実験の準備を進めるということであるが、それと同時に、三月十四日に開催予定のジュネーブにおける軍縮会議というものを成功せしめるために、これに先立って米英ソ三国の外相会議を開催するということをソ連に申し入れた由であるけれども、われわれとしては核実験の禁止に対する人類の悲願にもかんがみまして、ぜひとも管理を伴った軍縮並びに核兵器実験禁止協定が一日も早く成立して、核兵器の実験の必要がなくなることを衷心より希望しておる、という趣旨の談話を出したのであります。越えて十四日にケネディ・アメリカ大統領が声明を出しました。その中におきまして、三月十四日に軍縮委員会の開催されるまでの間は核実験を少なくとも行なわない、ということを言っておる次第であります。われわれとしては、いかなる国が行なおうとも、いかなる大洋で行なわれようとも、核実験については断固反対する、こういう態度をとっておるのであります。
  81. 岡良一

    ○岡委員 今仰せの事実は、新聞等の報道を通じて私も承知いたしております。しかし、大平官房長官の新聞談話によりますると、大統領が明らかにしたのは、一カ月以内に米国も大気圏内核実験をするかどうか結論を出そうとするものだから、直ちに日本政府がこれに対応する措置をとる必要はない、実施するときまれば、政府の既定方針に基づき抗議するつもりだ、こう言っておられます。外務省としては、あるいは情報局長等の談話でこれに遺憾の意を表されたとしても、アメリカの政府に対して具体的にこれを取りやめてもらいたいという要請をなされたかどうか、この点でございます。
  82. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これはアメリカ政府として、あるいはイギリスの政府として、ソ連の核実験が現実に行なわれておる、そうした事態に対して、いわゆる力の均衡の、原理からいたしまして、アメリカ、イギリス、ともにこのことを考えねばなるまい、とこう言ったわけでございます。現にそのアクションをとるということでありますれば、そのことに対して、正式に先方に対して反対するということでこちらもアクションをとるわけでございます。そういう声明が出たのでございますから、こちらとしては、日本の政府、ことに外交関係を代表する外務省といたしましての見解を天下に声明した。もちろんこの声明はアメリカに届いておるわけであります。
  83. 岡良一

    ○岡委員 それでは、重ねてお尋ねをいたします。アメリカ政府に対して実験の再開は停止をすべきであるという申し入れを、はっきりとなさったのでございますか。
  84. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先方が実験をするということを明らかにいたしましたら、これは反対である、かねて承知のようにわが国は反対であるから、それはやめてもらいたい、こういう正式の抗議をいたす考えでございます。現在のところは、そういうことにならざるを得ないという状態考えておるが、三国の軍縮協定の際に、この核実験を取りやめようじゃないかという話をしてみる、こういうことでございますから、日本政府はあくまでもそれに反対であるのだ、ぜひそういうものはやめてもらいたい、こういう趣旨を言っておるわけであります。
  85. 岡良一

    ○岡委員 新聞紙の伝えるところによりますと、とにかく大統領の決定のあるなしにかかわらず、すでに八千万ドルという予算がさかれて、そうしてクリスマス島海域における実験のために合同機動部隊も編成が進められている、こうAP電は伝えておる。しかも、今度の実験は、もし始まれば早春から初夏に及ぶだろう。いわば非常に長期にわたるであろう、ということも伝えられております。このように、相当大規模な実験が予想されるわけです。ところが、いよいよ大統領の決定として実験を再開しろという命令が出た上で初めて抗議をする、政府の態度はそういうことである。ところが、これは外務大臣も御存じのように、実験再開の権限というものは、これは三軍統帥の権に準ずる大統領のみに帰属した重要な権限である。もし大統領がこの権限に基づいて実験を再開しろという命令を下したときに、さて日本がやめて下さいと言ったのでは、一体この法定をくつがえすことができますか。これまでの例の調子で、一体そういうことができると思われますか。
  86. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 でございますから、わが方としてはこれに反対である。しかも、反対であるのみならず、ソ連との間にも話し合いをしてこういうことがないようにして下さいという希望を表明し、希望といいますか、わが国の強い意思を表明して、このことは当然アメリカの大統領に知られておるということであります。
  87. 岡良一

    ○岡委員 日本外務省の情報局談話というものは伝えられるでしょうが、ただ問題は、日本政府の意思としてアメリカ大統領に対してその意思が直接伝わる、要請をするという行動をとられていない。それでは、いかに外務大臣が実験再開には反対だ、原水爆実験反対は人類の悲願だと言われても、ただ文学的な美しい文字にすぎないではないでしょうか。なぜケネディ大統領に対して、日本政府の意思としてやめてもらいたいということを申し出られないでしょうか。
  88. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは先方に十分伝わっておるのであります。日本政府は核実験禁止の主張を強く持っている。従って、こういうことはやめてもらいたいということは、アメリカ政府あるいは大統領に十分伝わっていると思います。
  89. 岡良一

    ○岡委員 それならば、伝わっているというのは、ただ外務省の情報局長がそういうお話をされたとか、あるいは昨年池田さんがケネディと会われたときにそういう意向を漏らされたということ、にもかかわらず、こうして準備が進められておるということなんです。さらに強く実験をやめるようにお伝えなさるということが、国民の悲願に忠実なゆえんではないか、こう申し上げているのです。しかも、ニューヨーク・タイムスのハンソン・ボールドウィンが伝えるところによりますと、ワシントンでは実験再開の可否をめぐって相当深刻な論争が行なわれた。アメリカの部内においても実験の可否をめぐって深刻な論争が今行なわれている、といわれているのです。深刻な反対理由の大なるものは、国際世論を考えろという論拠に立っているといわれている。いずれが賛成派で、いずれが反対派であるかということも、ハンソン・ボールドウィンは伝えております。こういうように、アメリカ政府部内、アメリカ国内においても、この実験を再開すべきかどうかということで相当深刻な論争が行なわれている。しかも、反対派が国際世論ということを反対の大きな論拠にしているならば、日本が国際世論の先頭に立って、やめてもらいたいということを単刀直入に申し入れる絶好のチャンスではないかと思う。ただ間接的に日本がやめてもらいたいということは、従来ともしばしば言っているから、ケネディもよくわかってくれているだろう、そうでなくて、わかっているけれども、やろうとする。それに対してアメリカ国内でも賛否の対立がある。こういう時期こそ、日本はさらに強く、ぜひやめてもらいたいという意思表示をする。これが正しい政府のあり方ではないでしょうか。国民の悲願に忠実なゆえんではないでしょうか。
  90. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私の言葉が足りないために、あるいはそういう御質問になったかもしれぬと思います。外交上抗議をするという場合は、何か事があって、それに対して抗議をするわけです。たとえばソ連の五十メガトンの核実験が行なわれる。そこで抗議をするわけです。いよいよするぞ、こういう宣言があった、それに対して抗議をする。するかもしれないというものに対しては、反対であるということはもとより伝えるわけでございます。そこで、私が先ほど申し上げたので、あるいはおわかりかと思っていたのでございますが、われわれの意思というものが明らかになり、それがアメリカに伝わり、二月十四日にケネディ大統領が、三月のジュネーブの三国の軍縮会議のときまでは核実験はせぬということを言っているということは、十分われわれの意思というものが考慮に入ってやられておるものとお考えになってしかるべきだと思います。われわれはどういうアクションをとったということを、一々申し上げられない場合もございます。またその方がよろしい場合もあるので、かようなお答えをしているわけであります。
  91. 岡良一

    ○岡委員 もちろん始めたわけではないから、とんでもないことをやったと言って抗議をする必要はない。私がさっきから申し上げていることを外務大臣は十分御理解をいただけないかと思うのでございますが、とにかく再開をするという決定は大統領の最南の権限にかかわっており、事実上その再開の準備は予算措置等も講ぜられて進められておるということは、外務大臣もすでに御存じだと思う。従って、やられるかもしれないという可能性はある。ただこの間、この軍縮会議は首脳者をもっての首脳会議にかえるかえないというようなことから、たまたま三月十四日以前には再開はしないというケネディさんの意思表示はありました。それ以後にやるかもしれないという可能性は依然として残されておる。その可能性を裏づけるように準備が進められておるとすれば、やはり日本政府としては、抗議というような表現がまずいとしても、再開をしてくれるなという意思表示を当然すべきではないのでしょうか。むしろ国民に忠実であろうとするならば、すべきであると私は思う。ただ時期を見送っておるならば、そしていよいよ実験が再開されてから抗議をするということであれば、これは率直に申し上げて、全く国民に対しては欺瞞と申し上げて差しつかえない、そうも私は言いたいのです。
  92. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 私は、アメリカ自身としても核実験がいいものと思っているはずがないと思うのであります。ただ、ソ連が御承知のように非常にしばしば、しかも非常に大量に核実験を現実に行なった。そこで、それに対してこれを傍観しておったのでは、力の均衡がくずれる場合も考えられるので、これに対処するために米英としても実験を再開しなければならない。こういうことだと私どもは認識しておるわけであります。しかし、それにしても、ソ連が聞かないから自分の方がやるのだということでは困るので、われわれの、人類の悲願とする核実験の禁止については、米英ともにぜひともその気になってもらいたい。しかし米英は、ソ連がやるので自分の方がどうしてもこのままに手をこまねいているわけにはいかないというならば、ソ連との間の話し合いによって相携えてやめるようにしてもらいたい、こういうことを言っているわけです。また、この方向で努力しましょうということで、ジュネーブの会議が持たれるということでございますから、われわれはその成功を心から念じておる、こういうことでございます。
  93. 岡良一

    ○岡委員 外務大臣もお忙しいようですから、それでは、外務大臣のさっきからの御趣旨は、こういうことでごさいますか。ソ連が核実験を続けざまにたくさんやった、そこでアメリカ自国の核兵器の開発、ソ連の実験の成果から見て、なおさらに実験をする必要があると感じて実験をするならば、それは自由諸国の防衛のためにやってくれるのであるから、日本政府としてはこれをやめてくれということは言えないのだ、こうおっしゃるのですか。
  94. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 そうではございません。われわれはあくまで反対であって、この世の中から核実験のごときものがなくなることを望み、核兵器そのものがなくなることを望んでおる。それについて、国のいかんを問わず、どの国に対してもこれはやめてくれということを言っておるわけでございます。しかし、その効果があって、現在核保有国の最大のものがお互いにやめましょうということになれば、これに越したととはないわけでございます。その方向で話ができるということを望んでおる、こういうことでございます。何もわれわれはそれを容認しておるわけでは少しもない。ソ連がやめてくれることは、もとよりけっこう。米英がやめてくれることはもとよりけっこう。両方やめてもらいたいというのが、私どもの考えであります。
  95. 岡良一

    ○岡委員 もし外務大臣が言われるように、核実験というものは、およそいかなる国といえどもこれをやらすべきではない。やってもらいたくはないし、やめてもらいたいのだというととであれば、何としても、やはり核実験の競合という悪循環を断ち切らなければいかぬ。核実験にはあくまでも反対をするという信念に立たれるならば、あくまでもその悪循環を断ち切らなければいかぬ。とすれば、これはやはりアメリカに対しても、抗議ではないまでも、核実験再開の準備を進めておられる、その時日が迫っておればこそワシントンにおいても深刻な論争が行なわれておるというこの機会に、日本政府としては核実験の再開の停止を要請されるくらいなことは、もし前段のような信念なりあるいは政策に立っておられるならば、当然なさっていいことじゃないでしょうか。
  96. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日本政府が核実験の禁止を望んでおるという要請は、十分先方の政府に届いておるはずでございます。
  97. 岡良一

    ○岡委員 それでは、クリスマス島の使用を認めて、いよいよ大気圏内の核実験再開の準備が進められるということが、米英の両巨頭の声明によって明らかになった以後、アメリカ政府に対して再開の停止を求められるような要請を文書でいたされましたか。
  98. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 政府のそうした文書を一々御発表申し上げるわけにいきませんけれども、私としては、日本政府というものは核実験の禁止を強く訴えておるのでありまして、この趣旨は十分先方に届いておる、こういうことを申し上げておるわけでございます。おわかりでございましょうね、ソ連に対して核実験はやめてもらいたいということを言い、現実にソ連は核爆発をやって、そのたびに抗議をしているわけです。しかも、五十何回やったわけです。日本政府の方は、今度はアメリカ、イギリスに対して、そういうことをやられるそうだが、これは困るということを言っているわけです。先方もそれに対して、苦衷はいろいろ述べておられるのであります。しかし、私どもの方は、その点はよくわかるけれども、そういうことをされるとはなはだわれわれとしては困ることであるし、日本の国民もそのことの禁止を強く要望しておるということを十分あなた方もわかっておるはずだ、ということは言っております。
  99. 岡良一

    ○岡委員 それでは最後に一言だけ。どうも私はっきりのみ込めないので、頭が悪いのかもしれませんが、もう一ぺんお聞きしておきたいのです。あの八日に米英の両巨頭が、クリスマス島でアメリカの大気圏内の核実験を再開するという共同声明を発せられたあとに、日本の政府としては、アメリカ政府に対して核実験の再開を停止するような文書を公式に出されたのですか。私はそれが出されたという報道がどこにも見当たらないので、先刻からお尋ねを申し上げておるのです。出されたのですか。
  100. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それでようやく話がわかりました。私も非常に頭が悪いので失礼いたしましたが、私どもはこのことは文書で一ぺん突きつけるというようなことでなくて、日本アメリカの間が非常によく意思が疎通している面もございますので、そのことは常に先方に十分届くように話してある、こういうことを申し上げておるのであります。
  101. 岡良一

    ○岡委員 常に申しておられることは私もしばしばお聞きしておるのだが、問題は具体的になったということですね。具体的になって、場所が指定され、予算が出され、その調査のための機動部隊も編成されるという、こういう具体的な時点になった。三月十四日まではしないが、それ以後はし得るという可能性が如実に迫ってきたというこの時点で、積極的に政府は核実験の再開停止を要請すべきではないか。これがしてない。おそらく政府は核実験の大統領の命令が下されるならば、抗議をされるでしょう。それではもはや、大統領のそのように高い権限による決定をくつがえすことはできない。それでは、極端な表現をすれば、一編のサル芝居に終わるのではないかとさえも私は言いたいのです。
  102. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 あなたは、文書で出したか、出したかとおっしゃるのですけれども、もっとそれ以上深く、こういう声明があって以来日本の政府は日本国民の要望を正確にアメリカ政府に伝えております、こういうことを申し上げておる。いつ幾日文書を出したということは、私は実は申し上げる筋でないので、もっと深く問題を強く申しておるということを、さっきから申し上げておるわけでございます。
  103. 岡良一

    ○岡委員 それでは、非常に勝手なお願いですが、具体的にどういうふうになさったのですか。
  104. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 具体的には外交ルートを通しまして、十分私どもの意思を通じております。
  105. 岡良一

    ○岡委員 外交ルートを通じてというのは、たとえば大体何月幾日ということまでも事こまかには申しませんが、どういうふうに、だれがだれに会って言われたのです。これは二月八日以後のことで、日もないことですから、御記憶だと思います。
  106. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 外交ルートというのは、一般論として申し上げますと在米の大使に私が訓電を発しまして、どういうことをしろというようなことを言っているのが外交ルート。あるいはこちらにおりまするアメリカの機関に外務省がどうこうという意思を伝える。それがアメリカへいって、アメリカの政府に伝わる。それが外交ルートでございます。
  107. 岡良一

    ○岡委員 それで、アメリカの政府の方でも特に日本の国民の気持もおもんぱかって、もし核実験再開の余儀なきに至るならば、その事前におそらく先方の事情等をも通告をするというようなこと、すでにその通告を政府は受け取っておられるのではないかというようなことも伝えられておるようでございまするが、そういう通告は国務省からきておりませんか。
  108. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは先ほども申し上げておりますように、ジュネーブの軍縮会議の中においても核実験の問題に触れて、ぜひこれを成功させるようにしたいとアメリカは真剣に考えておるようであります。
  109. 岡良一

    ○岡委員 それでは、どうぞ外務大臣お帰りになっていただきたい。  この機会にちょっと委員長にお許しを得て、五分だけ、茅先生がおられますのでお聞きをしたいと思います。  実は核実験の再開云々の問題と同時に大事なことは、第五、第六の核実験国が現われることだと思います。ましてや、これがアジア地域にでも現われるということになれば、日本の国民に与える不安、恐怖というものは相当憂慮されるのでございます。  そこで、まず三木長官にお尋ねをいたしますが、本年度の予算にはアジア原子力科学会議というものを開催するというので、若干の予算が盛られております。このアジア原子力科学会議というのは、どういう構想のものでございますか。
  110. 三木武夫

    三木国務大臣 国際原子力機構とも協力をいたして、今具体的にはいろいろ検討を加えておるのでございまして、まだこういうというふうな具体的なことを発表する時期には至っておりません。とにかく、アジア地域において原子力の主たる責任を持っておる人たち、そしてアジアにおける原子力開発に対して今後協力していく問題について討議をして、アジアの原子力開発に対する国際協力というものを推進したいということで、計画を今検討しておるわけでございます。
  111. 岡良一

    ○岡委員 私はこの際、茅総長に御所見を承りたいと思います。と申しますのは、茅総長あるいは湯川博士等は、この核実験の問題に対しては常に適切なアピールを国民に出しておられます。そのつど、私どもも非常に敬意を表しておるのでございます。単にあの七人委員会だけではなく、さらには朝永博士なり坂田博士なりも、やはり原子力の平和利用には大きな関心を寄せられ、そしてまた核実験の再開に対しては適切なアピールをしておられます。そこで私は、核実験の拡散を防ぐためには、少なくともアジアの科学者が原子力の軍事利用には協力しないという意思統一ができないかということなんです。これは先例はウイーン宣言もありまするし、ゲッチンゲン宣言もありまするし、あるいはバートランド・ラッセル卿のパグウォッシュ会議もございます。私は、政府はアジア原子力科学会議を開く若干の予算を計上しておられまするが、このアジア原子力科学会議においては、アジアの科学者が原子力の軍事利用には協力しないんだという高い意思統一、こういう機会としてこの会議を役立たしめるということが、従来たびたびアピールをしておられる日本の原子力科学者の皆さんの御希望に一致するのではないか、こういうふうにお察しをするのでございまするが、茅総長の御見解を承りたい。
  112. 茅誠司

    ○茅説明員 私は、たしか昨年オスロで開かれたと思います核兵器の拡散の問題についての科学者の国際会議がございまして、湯川夫人が出席されたということを記憶しております。この問題は私ども非常に大きな関心を払っておりまして、逐次核兵器を持つ国がふえてくることに対しては大きな憂慮、非常な心配を持っているのであります。それで、あらゆる機会を通じて、このような科学者の英知によって作られたそのものが殺戮のために使われないようにしたい、そういう機会をとらえることを念願としておるのであります。ただ、このアジアの原子力会議等の機会が適当であるかどうかということについては、私はまだよく検討しておりませんけれども、それも一つの機会だということは頭に浮かぶのであります。ただ、私まだわれわれの仲間ともそういう問題について話し合っておりませんので、このアジア原子力会議というのが適当な機会であるかどうかということ、またその性格等もまだ存じておりませんので、ここでは、はっきりとしたことは申し上げられませんと思いますけれども、しかし、そういう考えをあらゆる機会に宣明するということは非常に重要なことだと私考えていることを申し上げます。
  113. 岡良一

    ○岡委員 三木長官にお尋ねをいたしたいのです。国際原子力機関の憲章第二条には、この機関は原子力の平和的利用を通じて人類の福祉と経済の繁栄に貢献せしめることを目的とする、とうたってある。従って、この国際原子力機関につらなる地域的な、たとえばアジア・ブロックの会議であれば、当然機関憲章というものが貫かれなければなるまいと私は思うのです。ただこの場合、御存じのように、IAEAには中共が入っておりません。ところが、事実今アジアの諸国において原子炉が現に稼動し、またその数において一個ならず稼動しておる、相当な専門の技術者もいるということになりますと、そういう国はおそらくアジアでは日本、インド、まあ中共もその中に入ると私は思うわけです。  そこで、アジア科学会議が国際原子力機関の下部機構的なブロックの会議であるならば中共を除外しなければならぬが、しかし私はそうであってはならないと思う。少なくとも、やはりアジアの各国科学者の原子力の平和利用のための会議であるのだから、やはりこの会議には当然入り得る資格のある中共は招請をする必要がある。この問題は、おそらくアジアの他の国々が参加するかいなかというときにも、非常に大きな関連を持ってくる経験が、私はあるのです。長官としてどう思われますか。やはり中共をまぜるという形でこの会議を開かれる必要があると思いますか。
  114. 三木武夫

    三木国務大臣 将来は、やはりアジアの科学技術の会議等には中共も加えることは好ましいと思います。しかし、今回私どもが計画しておるのは、国際原子力機構との関連において考えておりますから、今回は中共を招聘しようという意思は持っていないのであります。
  115. 岡良一

    ○岡委員 これは御参考までに申し上げておきますが、中共を加えるか加えないか、オブザーバーとしてでも加えられないかという非常に強い関心を持っておる国は、特に私はインドだと思います。これは一つぜひ希望として申し上げておくのでございますが、このアジア原子力会議というものを、ほんとうに成果をおさめるようなものたらしめるためには、やはりこの際こうしたアジア諸国、特に原子力の平和利用に相当な実績を上げておる国の意向も十分一つごしんしゃくになって、そうしてこの会議が、やはりその名に値するような会議になるように、構成国については——今長官は呼ぶつもりはないとおっしゃいましたが、しかしやはりそれを希望する国がアジアにたくさんあるわけであります。ですから、そういう点を十分考慮せられて、そうしてこの会議がりっぱな成果をおさめるように、偏見なく一つ努力願いたい。このことを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。
  116. 前田正男

  117. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 この科学協力に関する日米委員会のあり方につきましては、昨年の十二月二十日に、きょうおいで願いました兼重先生、茅先生からいろいろお話を承ったのでございます。そのときの茅先生の速記録をお読みいたしますと、「五月二十一日から二十三日まで、ワシントンで第二回の日米合同科学委員会を開こうということにきめたわけであります。それまでの間に、もっと具体化した話ができるように両方で準備しようじゃないかということになりまして、その中間においては、先ほど御報告がありましたように、両議長、兼重・ケリーのラインを通じて、お互いに連絡をとって準備を進めていくということになったのでございます。」こういうのでございますので、きょう兼重先生に参考人としておいでを願ったわけなんでございます。と申しますのは、これは池田・ケネディ会談によって、この科学協力に関する日米委員会というものが生まれて、新聞紙の報ずるところによりますと、三木科学技術庁長官はオブザーバーだ。ところが、科学技術庁計画局から出されましたそのときの次第書を見ますと、三木科学技術庁長官が開会のあいさつをされ、閉会のあいさつをされる。兼重議長は外務大臣から、任命ですか、委嘱ですか、委員として任命されておる。私たちはどの科学協力に関する日米委員会の性格というものは一体何かという御質問を申し上げたところが、科学技術庁の鈴江次官からの答弁として、これは勧告機関だ、こういう。私もそのとき考えたのでございますが、アメリカの大統領と日本の総理大臣がワシントンにおいて話をして、科学協力に関する日米の合同委員会を開く。それは勧告機関だ。しかも一回切りでなく続けてやるのだ。だんだんこれを拡大強化をしていくのだ、ということになると、一体どういう性格を帯びているのか。勧告機関といっても、いろいろあるわけですが、私の乏しい感覚から申しますというと、両国の代表者が話し合いをやって、一つの機関を作るということは、これはやはり両国間の合意でありますから、条約とまではいかなくても、何か覚書か、あるいは交換公文とでも申しますか、そういうものに類する、いわゆる国際的な一つの機関という性格を帯びるのではないか、こう思うのでありますが、その後この問題につきましてどういう進展が行なわれたか。一つ兼重議長からお話を承りたいと思います。
  118. 兼重寛九郎

    ○兼重参考人 ただいまの齋藤先生の御質問に、全部私が答えられるわけではないかと思いますが、最初お話になりました両国委員の間の連絡の状況についてだけ、事実を申し上げます。  昨年の十二月半ばに、東京で第一回の会議がありましてから、今年の一月十九日に日本側のそのときの委員が東京に集まりまして、打ち合わせを行ないました。その結果は、一月二十五日付で私からアメリカのケリー博士あてに書簡が出してあります。その書簡は、外務省でタイプにしてもらいまして、それをワシントンの日本大使館を通じて先方のケリー博士に届けてもらっております。一方、一月の三十日にアメリカ側委員もワシントンに集合、打ち合わせをいたしました。その結果は、二月六日に東京のアメリカ大使館を通じて公式に連絡がございましたので、私は翌七日付で日本側の各委員に対してこれを通報いたしました。とれも外務省がそういうことをして下さいました。それから、二月十二日に、二月七日付の兼重あてのケリー博士の書簡が、アメリカのナショナル・サイエンス・ファウンデーションの東京事務所を通じて届きました。この件につきましても、二月十七日付で私の名前で日本側の各委員に通報してございます。このように、両方の間の通報の点については、十二月に東京で打ち合わせをいたしましたルートも、私自身の感じでは相当活発に動いておると思うのであります。来たる二十三日、明後日、日本側の委員は第二回の会合を東京で開く予定にいたしております。  そこで、こういうような実際の活動はしておりますけれども、どういう性格であるかというふうなお尋ねに対しまして、私があまりいいことばかり申し上げると、場合によっては、関係の当局には御迷惑になるようなことになるかもしれません。私自身その辺がそうであるのかないのかわからないために、ありのまま申し上げますが、今の科学協力に関する日米委員会というのは、形式上ずっと存在しております。しかし、日本側の委員といいますのは、一回の会合出席する委員としまして、三人の関係官庁の職員を含む十四人の者が外務大臣の委嘱を受けたのでございます。これに対しましてアメリカ側は、民間の科学者七人を委員に、これも国務長官が委嘱をしておるようでございますが、そのうち六人が第一回の会議出席いたしました。しかし七名とも現在もそのまま委員として続いておるようでございます。そこで日本側といたしましては、便宜的に第二回会議に対する委員が決定いたしますまで第一回会議の用務が残っておるものといたしまして、その身分を今日まで続けておるわけであります。従って、普通会議出席委員というようなものは、その閉会式が終わりました瞬間に身分がなくなるというふうに考えるのも常識的じゃないと思いますけれども、そう長く身分が続くのではないと思われますが、今度の場合はまだその用務が残っておるという形で、十四人の者がそのまま委員のつもりでおるわけでございます。従って、外務省としてその間の連絡その他は十分便宜をはかっていただいておるわけでございます。  さて、これから第二回の会議は、さっき五月二十一日から二十三日とお話がありましたが、これは最近両方で相談をいたしまして、二十一日から二十四日まで一日延ばすことになりました。ワシントンで開く予定ということを連絡してきております。もちろんこれが正式に決定いたしますのは、いずれその外交ルートを通じまして、もう少しあとになってからきまるものと思いますが、内定といたしましては二十一日から二十四日でございます。  さて、その会議の性格とかなんとかということになりますと、これはお話をどなたかほかの方から願った方がよろしいように思いますので、一応私はこれで終わりにいたしたいと思います。
  119. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 外務省事務当局はどうですか。
  120. 川村善八郎

    川村(善)政府委員 齋藤さんのお尋ねでございますが、委員会がどういう性格を持っておるか、その機関がどういう性格を持っておるかということかと思います。私ここに第一回の会合の細部の書類を持っておりますが、大体、太平洋に関する学術の調査、太平洋地域の動植物、地理学及び生態学、それからガン研究、この三つを取りまとめて、それを採択をいたしまして報告したということになっております。従って、私はこの機関は決定する機関ではなくて、要するに勧告かあるいは報告する機関である、かように私の方では解釈をいたしております。
  121. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 これは三木長官にお尋ねした方がはっきりするのではないかと思います。先ほど私申し上げまし通りに、ケネディ・池田会談で科学協力に関する日米委員会というものが生まれたわけですね。これは条約でもないし、交換公文でもない。また日本には準拠すべき法律は一つもない。そうして委員外務大臣から任命する。今兼重先生のお話を承ると、任命されて一回やったけれども、あとはそのまま続いているのか続いていないのか、これはわからないわけですね。それで、五月二十一日から三日間、今度はワシントンでこの会議を開く。十四名の委員が任命されているけれども、一体いかなる性格を帯びた委員として任命されたのか、それもわからない。任命されたときに、今のお話によりますと、とにかく第一回の科学協力に関する日米委員会を遂行するために委員として任命されて、そうして議長の役を兼重先生がやられた。そのときには兼重・ケリー・ラインでもって今後の相談を取りきめていくんだということであります。私はこの前も御質問申し上げたのですが、今度五月二十一日からさらに第二回の会議アメリカでやるというとき、私の考え方からいたしますれば、予算措置、いわゆる国家予算というものを使います根拠というものが何らかそこにはっきりしたものがなければ、一文だって予算というものは使えるものじゃない。ですから、池田・ケネディ会談でもってできたこの日米科学技術合同委員会というものを、一体どういう形でもって今政府当局は見ておって、そしてこれをどういう形で継続していくのか。将来これを一体どういう形に持っていこうとしているのか。そういうことがよくわからないのです。そして世間にデビューする形というものが、新聞なんかによると、きわめて大きくこれはクローズアップされておる。いかにもアメリカ日本との科学技術の提携がこの線からさらに親密化して大きくなるように感じられるのでありますが、内容を聞いてみると、さっぱりよりどころがない。科学技術庁の所管にあるのか、外務省の所管にあるのか。外務省の所管にあるならば、この科学協力に関する日米委員会には常々と外務大臣が開会のあいさつをし、閉会のあいさつをすべきだ。ところが新聞を見ると、三木長官はオブザーバーだと言っていながら、今度は開会のあいさつをし、閉会のあいさつをしておる。だから、兼重議長以下十四名の委員の皆さん方は、どういうことでおれは委員になって、一体何をやるのか、今後に対して責任があるのか、一回限りで責任は免除されているのか、さっぱりわからない。これは科学協力に関する日米委員会だ、私はそういうふうに感じるのですが、一体長官、これはどうお考えになって、そして今後どう善処されるおつもりですか。国務大臣としてお答え願いたい。
  122. 三木武夫

    三木国務大臣 これは池田・ケネディ会談で突如として——突如としてという言葉を使ってもいいと思うのですが、前からこういう予定ではなかったのです。それが会談の結果、こういう委員会を置くということになったのであります。しかし、その趣旨はけっこうなことだ、国際的な科学技術の協力ということ、これは進めていかなければならぬ。そこで、その趣旨に沿うて第一回の会合をやってみようということで、ああいう形でやったわけであります。しかし、日米が科学技術の面で協力するためにはどういう仕組みがいいか、どういう仕組みで協力するならば実績が上がっていくのか、それをお互いに研究しよう。そうして、そのできた結論に対しては、政府に対してこれを勧告といいますか、これは両方の最高首脳者がきめたのでありますから、しかもその委員会できまったものは、当然に両国の政府はこれを変更しなければならぬモーラル・オブリゲーションはあるわけですから、そういう意味において、やはり相当この結論に対しては影響力を持っているわけであります。そこで第一回をやって、第一回の結果、御承知のような三項目ですか、人事の交流とか、情報の交換とか、共同研究とか、こういう問題があるわけです。共同研究の中でも三つばかり項目をあげたわけです。そこで今やっておる作業は、項目ごとに日本で主査をこしらえておるのです。それで、人事の交流には、日本側の主査はだれ、アメリカでも主査をこしらえる。両国においてどうすれば日米の科学技術の面における協力というものはうまくいくか、どういう仕組みがいいんだろうかということを研究しておるわけです。ガンの問題にしても、ただ両方の代表が寄って、そこで研究するというのではなくして、日本はどういう分野を研究の中で受け持ったらいいだろうか、アメリカはガンの面においてはどういう部門を受け持ったらいいであろうか、どうしたならば共同研究の成果が上がるであろうか、これを今両方で作業しておるわけです。第一回のときは、今言ったように、準備があってやったのではないですね。急にできたものですから、正直に言って至って準備は悪いです。そこで、一回やってみていろいろな経験ができたものですから、今度それだけの準備を整えて、ワシントンに行ってお互いに研究すればもう少し具体化する。私の考えは、これは今は第一回を任命したわけで、しかし向こうが七名しか来ないのにこっちは十何人も行くのはよろしくないから、こっちも今度は七名ぐらいにしようと思う。そんなにたくさん、向こうとバランスのとれないような人間が行くことはよくない。七名ぐらい行って、そして両方がもっと準備を整えた上でいろいろディスカッションをやって、そこで一つの恒久的な——今はだから、第一回が任命した委員は第二回のための準備を引き続いてやっておるということですね。二回に行くときには十四人全部に行ってもらうわけではないのですから、第二回の会議には新たにそういう人を任命して、その委員がワシントンに行くわけであります。だから、第一回の委員の任務が終わるのは、第二回の会合の準備が整えばそこで終わることになると私は思います。しかし、今後は、そんなに一回ごとに人がかわるようなことでは成果も上がりませんし、アメリカはかえないでしょうから、この二回の会合一つの恒久的な委員会にしたらいいと思うのです。そしてまた、日本の希望も入れて、皆さんの御熱心にときどき主張される台風とか地震とか、こんな問題も太平洋学術調査の中には入れたらいい。そしてそういう合同委員会でこういうふうにすべきだという勧告を受ければ、それをやるのはこういう委員の人たちがやるのではないですからね。これをやるのは行政機関がやる。そこで、私などの地位についても、今思案にくれているのです。(笑声)どういう地位がいいのか。あるいはオブザーバーというのもおかしな話で、窓口は外務省でいいと思います。しかし、この委員会の推進に対しては、もっと科学技術庁が責任を持たないと、外務省科学技術のスタッフというものは、ちっとはおりますけれども、外務省は弱いですからね。そういう点で、もう少しやはり科学技術庁が実質的には責任を持つべきだと私は思っている。しかも、それは二回目の会合を通じて、日米でもう少し委員会をきちんと固めて、事務局のようなものを置いた方がいいと私は思っているのです。そういう形でこれを固めていきたいという私の考えであります。そういう考えでおるわけであります。
  123. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 時間もだいぶたちましたから質問を終わりますが、今の兼重先生並びに三木長官のお考えも、科学協力に関する日米合同委員会のあり方についてはまだコンクリートされておらない。これからコンクリートされる。窓口は外務省で実質は科学技術庁、これも一つの非常にいいあり方かもしれませんが、私といたしましてきょう御質問を申し上げました趣意は、午後長々と質問をいたしまして、決議が上げられました南極観測についても、一体日本のあり方というものは常に統一した協力体制というものに欠けがちなんです。表題はみんな非常にいいですね。しかし、実費を解剖してみると、きわめて薄弱な、しかも不透明な体制で、力が出ていかない。私はおそらく今度五月二十一日からワシントンで開かれますこの合同委員会のあり方、日本のあり方によって、アメリカは満足するか失望するか、これは重大な問題だと思っておるのであります。私がケリー博士に会いましたときに、これは将来大きな予算を伴う問題だから、日本もほんとうにやるならば覚悟をして十分な処置を講じてもらわなければ、こういうことをお互いにやったって効果が薄いだろうということを、私が科学技術庁で会ったときに言っておられたが、五月二十一日といえばあと数カ月しか残っておらぬわけであります。せっかく両首脳会談によって生まれた合同科学技術会議を、どれだけ効果あらしめるかということは、よほどしっかりしてかからないと、アメリカから笑われるような状態で向こうに出席をしなければならないようになってしまう、私はこう思うのであります。アメリカは、そのほかの問題でもそうでありますが、私の関知しておりますところによりますと、きわめて問題は現実的であります。この三つの項目について、きめられたこの課題に対してだって、相当の具体案というものを持っていかなければ、日本は軽視されるだけだと思うのです。しかも、将来どうしていくかというようなことについては、万全を期して、対等の立場に立ち得るような条件をはっきりときめていかなければ、こういうものを作ったって、かえってマイナスになるんじゃないか。そういうことを私はおそれているわけでありますから、どうか一つ政府の内部において、この問題についてよく御検討を加えられまして、はっきりした体制と強力な行動力を持つような具体策を作られまして、そうして一つ第二回に出席をするように取り計らっていただきたい、こう思うわけであります。
  124. 三木武夫

    三木国務大臣 やはりこういう科学協力の面では、日本学術会議などの協力を得ないと、それは政治的なものではないのですけれども、しかしこれは今お話しになったような予算も伴うし、どうしてこれを実現していくかというととはやはり行政の部門ですから、これは科学協力の面では日本学術会議などの非常な協力も要りますが、とれをどういうふうに将来していくかということは、政府の責任に属する。そういうことで、これはワシントンに行って恥をかかないだけの、日本としてもこうだ、日本はこういう考えだというととで、こちらの成案を持ってワシントンに行く準備をしたいと思っております。
  125. 川村善八郎

    川村(善)政府委員 ただいま齋藤先生の御趣旨は、全く私も同感でございますし、三木科学技術庁長官のお話も、私はほんとうに感銘を受けております。私、外務省の者といたしましては、全く私もふに落ちない点がたくさんございます。しかし目的は、この委員会は、平和目的のため、日米両国間の科学協力関係を今後一そう円滑ならしめるための方途を探究し、その結果を両国政府に報告ないし勧告することを目的とすると、目的だけはある。だけれども、機構と人事のことについては何も書いてないところを見ますと、片一方は十人、片一方は七人というふうなアンバランスもある。しかも、三木先生がオブザーバーでありながら技術庁の代理をしたような格好になるということも、好ましくありません。もっとしっくりしたようなものにして、今度のワシントンの会議には臨むように、私の方でも科学技術庁とよく相談をいたしまして、善処いたしたいと思います。
  126. 前田正男

    前田委員長 本日はこの程度にとどめ、兼重参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は本委員会に御出席賜わり、ありがとうございました。大へん参考となりました、厚くお礼を申し上げます。  次会は明二十二日午前十時より委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会