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1962-02-15 第40回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十七年二月十五日(木曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長 前田 正男君    理事 赤澤 正道君 理事 齋藤 憲三君    理事 西村 英一君 理事 山口 好一君    理事 山口 鶴男君       安倍晋太郎君    稻葉  修君       佐々木義武君    塚原 俊郎君       保科善四郎君    松本 一郎君       西村 関一君    松前 重義君       内海  清君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房会計課         長)      松田 壽郎君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         文部事務官         (大学学術局         長)      小林 行雄君  委員外出席者         科学技術会議議         員         (日本学術会議         会長)     和達 清夫君         科学技術会議議         員       茅  誠司君         外務事務官         (国際連合局科         学課長)    栗野  鳳君         参  考  人         (原子力産業会         議副会長)         (原子力委員会         原子力船専門部         会長)     大屋  敦君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  科学技術振興対策に関する件(南極地域観測等  に関する問題)      ————◇—————
  2. 前田正男

    前田委員長 これより会議を開きます。  科学技術振興対策に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求の件についてお諮りいたします。  すなわち南極地域観測等に関する問題について、原子力産業会議会長原子力船専門部会長大屋敦君を参考人と決定し、意見を聴取いたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前田正男

    前田委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。      ————◇—————
  4. 前田正男

    前田委員長 これより、南極地域観則等に関する問題について調査に入ります。  まず、去る二月九日の南極地域観測統合推進本部から発表された、昭和基地を二月八日閉鎖し、昭和三十一年から始めました日本南極観測事業は一応中止するという発表の経過等について、統合推進本部本部長和達日本学術会議会長より説明を聴取いたします。和達説明員
  5. 和達清夫

    和達説明員 わが国南極地域観測の第一回は、一九五六年の秋に始まりました。それから回を重ねて参りまして、第六回目の派遣観測隊はただいま南極に行っております。  昭和基地は、観測基地としては好適な条件を備えておりますが、越冬観測物資の搬入には多くの困難がありました。宗谷基地付近に接岸できましたのは最初の一回でございます。また第二回以後も、しばしば悪戦苦闘の末、あるいは外国船協力を得て氷海を脱出し得たこともございました。この経験にかんがみまして、第三回以後大型ヘリコプターを使用して、資材、人員を輸送して参りました。しかし、現在使用しておりまする宗谷は、一九三八年に建造されたものでありまして、かつ砕氷能力を与えるために大規模の改造を加えたものであります。船齢とその船の能力関係上、今後継続して使用することは困難であると推定されております。またヘリコプター輸送につきましても、この航空要員を確保し、その訓練をいたす面に困難を生じております。また一方、この南極地域観測地球観測年国際協力を契機として始まり、その後その観測をますます意義あらしめるために延長を重ねて参りましたが、それをいたす体制が臨時的の色彩を持っておりまして、これを長く続けるには不便な状態にあります。このように輸送面の隘路を初めとし、その他の事情からいたしまして、わが国といたしましては、第六次の観測隊を、これは来たる四月ころ帰国いたす予定でありますが、この観測隊がただいまおります越冬隊を収容し、基地閉鎖して、南極地域観測を一応打ち切ることになった次第であります。  しかし、関係学者は、南極における科学的調査国際協力の促進をはかり、またその科学的調査日本科学に対する意義あることも認め、また南極条約の趣旨にもかんがみまして、できるだけ早くこの基地再開して科学的調査観測を続行することを希望しております。南極地域観測統合推進本部ではこの事業再開につきまして目下検討中で、まだ結論を得ておりませんけれども、三十五年九月二日の閣議了解事項にもありますように、南極地域観測は一態ここで打ち切るけれども、その後の処置については統合推進本部検討することということになっておりますので、今後も検討を重ね、でき縛れば、できるだけ早い機会再開いたしたいと存じておる次第であります。特に一九六四年から一九六五年にわたりましては、インターナショナル・クワィエット・サン・イヤーという太陽活動の静穏なる時期において、国際的地球物理に関する観測が行なわれることになっておりますので、できればこれに間に合うように再開したいというのが学者希望でありますので、これをも考えまして、目下検討いたしておる次第であります。     —————————————
  6. 前田正男

    前田委員長 次に、南極地域観測等に関する問題について質疑の通告がありますので、これを許します。齋藤憲三君。
  7. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 この南極観測につきましては、ちょうど昭和三十一年の四年十八日に、科学技術振興対策特別委員会茅誠司先生永田武先生長谷川万吉先生の御三人がおいでになりまして、日本学術会議南極特別委員長という資格南極地域観測隊長という資格日本学術会議国際地球観測年研究連絡委員長という資格でお三方が、南極観測を行なう目的並びに計画その他準備について、懇切丁寧にわれわれに御説明をして下さったのでありますのそれに対しまして、当委員会といたしましては、南極観測というものは地球観測年間に関する行事であるけれども、いわゆる自然科学という観点からいくと、きわめて重大な意義を有するものである。従って、その研究対象も気象、地磁気、電離層、太陽表面現象宇宙線、夜光、経緯度、海洋、地震、測地、この十項目に向かって、世界の水準に劣らざる観測調査研究を行ないたい、こういう御説明がありましたので、この委員会といたしましては大いにその事柄に賛成の意を表しまして、一つ十分な活動のできるように、その当時わずか七億五千万円の予算では不足なのではないか、もし予算措置において欠くるようなことがあったならば、南極観測に向かう同胞の生命その他にも危険が生ずるから、その点に対しても大いに協力を惜しまないで努力をする、というわれわれの意見もその際申し上げたのであります。  その後、ただいま御報告がございました通り、いろいろな問題が起きまして、国民ひとしく昭和基地におけるわが南極観測隊成果には一喜一憂、非常にたくさんの声援があり、また世界的に関心を集めたこともあったのでありますが、これにつきましてわが科学技術特別委員会といたしましては、たびたびこの問題について関係者並びに当局経過報告、それから将来に対するところのあり方についての御説明を願って、当委員会としても相当強い希望を述べ来たっているのであります。はたしてこのことが過去におけるような形態で将来力強く推進できるものであるかどうか。もっと行政的に体系を変えて、科学技術庁に一切の責任を負わせるような体系をとって、本式に南極観測の実をあげるということが、日本の将来における問題を解決する意味からいっても非常にいいのではないかというような意見も、この速記録を見ますと随所に出ているのであります。そのときは当局といたしましては、一々ごもっともでございます、いずれ御相談を申し上げて、ということまで言っているのでありますけれども、さっぱりその御相談された結論がわれわれにわからないうちに、新聞を見ますと、ただいま御報告にありましたように、昭和基地が今度はついに締められる。そうして、希望としては将来再開をしたい。しかし、これは希望なんですね。一たん昭和基地というものを閉鎖してしまって、そうしてさらに再開希望するというだけでもって、何ら将来に対してはっきりした結論を出さないで基地閉鎖をやられたのではないか、こう思うのであります。とにかく、ただいま御説明にありましたように、昭和三十九年のIQSY太陽活動が静かな期間の国際共同観測にこれを必ず再開するのであるということを決定して、一時閉鎖のやむなきに至ったのである、こういうのでありますが、とにかくこれは閉鎖をするのである。そうして三十九年四月から開始されるIQSY再開をしたいのだ。これは希望なんです。一体どちらが正しいのであるか。必ず再開するということをきめて閉鎖したのか、そうでなくて、単に再開をしたいという希望を持っているだけで、その希望実現されなければ永久に昭和基地閉鎖される運命にあるのか。これを一つ、どなたでもけっこうでございますから、御答弁を願いたいと思います。
  8. 和達清夫

    和達説明員 先ほども申し上げましたように、この南極地域観測を継続いたすことに非常に困難に直面したという現実的の事柄と、これを行なう一つの大きな動機である学術会議勧告が、あと二カ年延長ということで昭和三十五年五月に出ております。これに対して、実際の困難性から残念ながら一年しか延長できなくて、ここに一時休止のやむなきに至った次第であります。これを再開いたしますことは、先ほど申し上げましたように、ある意味におきましては新しく出発するということにも相当通ずるものでございます。と申しますのは、今までやって参りました施設経験はもちろん生きておりますけれども体制といい輸送方法といい、また新しい学者の結集した意気込みというものを盛り上げる、また国民にも、今後における半永久的継続に対しての理解も後援も十分得たいという面におきまして、私どもにおきましては強い希望を持っておる。そうして、その実現努力しておる次第でございます。  なお、学術会議の方では、特別委員会といたしまして二カ年の延長勧告しましたが、一カ年しかできなくてここで終わったということに対して、この次の総会におきまして特別委員会提案によりまして、今後どういうふうにするということが議論されるわけでございまして、特別委員会の意向としては、できるだけ早く再開したいという原案になると思うのでございますけれども、これも学術会議総会におきまして学者の総意がどういう形をもって決議されるかは、まだちょっと申し上げることはできない状態であります。  しかし一方、こういう学問的見地に立ちまして、この学問的の価値につきましては、今までに上げてきた成果と今後期待される成果については何人も疑うことではございません。また、南極条約というものの精神からいたしましても、私どもはできるだけ早く再開いたしたいという希望であるということを申し上げておきます。
  9. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 きょうは担当大臣並びに科学技術庁長官も御出席になっておられませんから、まず大体伺っておきたいことをきょうはお伺いいたしまして、なるべく近い機会において担当大臣出席のもとに、この問題の一切を検討して参りたいと考えます。  ただいまの御説明によりますと、とにかく二カ年の延長勧告学術会議から行なった。学術会議から行なったということになりますと、この担当学術会議責任部会というものは何であるか私はわかりませんが、最初日本学術会議の中に国際地球観測年研究連絡委員会ができて、この連絡委員会から最初科学技術行政協議会を通じて勧告をして、この南極観測、いわゆる地球観測年間日本も参加するということになったわけでありますから、そういう経路をとって二カ年間延長勧告をされたのが、文部省に今南極観測に関する統合本部があって、そこに勧告がされております。それをいろいろ検討を加えてみた結果、一カ年しか延長できなかった。それで昭和基地閉鎖された。将来再開希望はある。しかし、将来再開をしてさらに南極観測を続けていくということは、今のお話によると、むしろ新しい出発になるというようなことがあったのでございます。これは新聞証事にも、今後の再開検討しているのは南極本部学術会議であるということになっておるのでありますけれども、すでにこの南極観測には国費三十一億の予算が投ぜられておる。そうして単なる学術観測という問題をもう飛び越えて、ただいまもお話がありました通りに、国際間の南極条約というものが締結されて、これに参加いたしておりますところの十二カ国の間における条約によっての大きな責任日本は負っておるわけであります。ですから、この南極条約締約国意見を交換せずして昭和基地閉鎖して、そうして今度やるときには新たに出発するのだということになりますと、一ぺん閉鎖したということから、日本はこの南極条約から脱退するということを意味するのか、私はこの点を外務当局から説明を聞きたいと思っておるのであります。どうも私は条約文に対する知識はございませんけれども、この南極条約をずっと読んでみますと、南極観測を二年も三年も停止して、そうして南極条約に加盟している一員たるの義務を遂行するということは私はできないと思う。ですから、当然の結論として南極条約から脱退する、脱退しないまでも、これに参加をしている資格が喪失するのではないかというふうに考えられるのでありますが、この点どういうふうにお考えになっておられるか。どなたでもけっこうでございますから、御説明願いたい。
  10. 和達清夫

    和達説明員 正確なことは外務省からお答えいたすべきかと思いますが、私の理解いたしますところでは、休止いたしましても直ちに資格を失うとか、脱退せねばならないということではないと思います。この条約に加盟している以上は、できるだけ観測するのが常態であろうかと思う次第でございます。なお、この条約に加盟しておる国の中にも、現在休止しておるものもございます。
  11. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは、休止している国もあるかもしれません。しかし、まずこの条約文の第二条を読んでみますと、「国際地球観測年の間に実現された南極地域における科学的調査の自由及びそのための協力は、この条約規定に従うことを条件として、継続するものとする。」と書いてあります。それから、第三条にはこの継続すべきところの内容が書かれている。そうすると、閉鎖しておったらこれはできやせぬですね。ですから、いわゆる休止して、この南極条約あり方というものによっての結論というものはどう出るかわかりませんけれども、いわゆる南極条約に加盟しているところの一つ大国的体面からいきますと、この条約文内容に継続するということが書かれてあって、継続すべきところの内容というものが第三条に書かれている。それは昭和基地を閉塞しておったのでは実行ができない。そうすれば、当然その南極条約に加入しているところの資格というものは、積極的にはどうかということがあっても、消極的に、ない。たとえば、まずその第九条なんかを読んでみますと、第九条の二項に、「第十三条の規定に基づく加入によりこの条約当事国となった各締約国は、科学的基地設置又は科学的探検隊派遣のような南極地域における実質的な科学的研究活動実施により、南極地域に対する自国関心を示している間は、1にいう会合に参加する代表者を任命する権利を有する。」ですから、閉鎖してしまうと、この「1にいう会合に参加する代表者を任命する権利」というものはなくなってしまうのですね。そうすると、実質的に休止したから、南極条約加盟国から除外されなくても、実質の活動においては除外されたと同じような結果になってしまう。日本がせっかく南極条約を締結するために、軍事基地にならないように、平和的にこれを持っていこうというあっせんを大いにやって、そうして領土権の放棄もみずからこれをやって、世界各国、これに加盟する十二カ国も領土権の請求をしないという、まことに南極というものを平和にして、かつ条約の第一条に書かれてあります通り、「南極地域は、平和的目的のみに利用する。軍事基地及び防備施設設置軍事演習実施並びにあらゆる型の兵器の実験のような軍事的性質措置は、特に、禁止する。」「この条約は、科学的研究のため又はその他の平和的目的のために、軍の要員又は備品を使用することを妨げるものではない。」とにかく日本のように戦争を放棄して平和のみに終始している国があっせんして、ようやく南極というものをここまで平和の目的を達成するだけに限定していこうとする大きな南極条約の重大な責任を負っているところの日本が、これから三年も四年も昭和基地閉鎖して、そこにだれも人を置いておらぬで、どこの国がどんなことをやったって、日本はこの条約規定したところの目的遂行のために役割を果たすということはできなくなってしまうではありませんか。私はそう思うのでありますけれども、そういうことをよく御勘考になって、そうしてこの重大な南極、すなわちアメリカ大陸の一倍半も一あるような大陸、今後どういうふうに転換するかわからないけれども、この南極条約考え方からもっていたしますると、その第十三条の二項には「この条約効力発生の日から三十年を経過した後、第九条に定める会合代表者を参加させる権利を有するいずれかの締約国寄託政府あての通報により要請するときは、この条約の運用について検討するため、できる限りすみやかにすべての締約国会議を開催する。」と書いてある。三十年たったらこれを一つ変えたっていいではないかというような半永久的な条約を締結する中枢的な役割日本がやっておりながら、宗谷が古ぼけているから、とても南極観測は続けられないのだといって、ここで停止をして、あとは四、五年たったら再開するかしないかわからないが、再開したいのだという希望だけ残して、消極的にでもこの条約国に参加する資格を喪失していくということは、私はある意味においては三十一億の国費というものを効率的に使用したのではないという結論になるのではないかと思うのです。これは一体、どこにどういう責任があるのか。学術会議文部省のいわゆる南極本部というものに責任があるのかよくわかりませんが、これは単なる南極観測というそのこと自体のみに局限された問題ではなくして、これは日本国家として重大な責任体面の問題ではないかと考えておるわけであります。でありまするから、これに対して私どもは、この委員会を通じて、再々にわたって当局の重大な決意をうながして、もし間違うようなことがあったら、日本としては非常な損失がくるのではないか。特に現在のごとく宇宙科学分野世界各国が国連をかけて突進している最中に、この重大な基地というものにもっと重点的な施策を行なっていかなければ、日本科学技術の進歩というものは阻害されるのではないかということを、速記録を見ると各委員が述べておるのであります。  これに対して、常に当局はお説ごもっとも、よく一つ話し合いをいたしまして善処いたします。善処いたすどころか、われわれと考えが全く反対な結果をここに出している。私どもはこういうことに対しましては、はたしてこういう問題に関係している機関が国会の意思というものをどう考えているか、これさえ今日になってみると、すこぶる疑わしいと思わざるを得ないのでありますが、しかし、もう昭和基地閉鎖してしまって、今どうにもこうにもならないわけです。今からいろいろな文句を言ったって、死児のよわいを数えるようなことになってしまうと思うのでありますが、私といたしましてこの際特に、きょうは大臣がおられませんからいたし方がございませんが、念のためにお伺いいたしておきたいことは、一体どうしたら早急に再開ができるかということです。私はこの前、昭和三十六年十二月二十日のこの特別委員会におきましても、日米科学委員会において南極観測の問題が取り上げられれたのではないか、それに対してはアメリカは前々から、もし宗谷が使えないために日本南極観測をやめるということがあったならば、それは世界的に見ても惜しいことであるし、日本としてもそれは絶対に排除すべき問題であるから、アメリカ輸送責任だけは負うてあげよう、だから南極観測だけは続けろという提案があったのではないか、それに対して一体どういう論議がかわされたかという質問をいたしたのであります。これに対しては、茅先生がこれに説明をいたしておられます。そういうこともあったけれども、その問題は「こちらには統合推進本部というものがあって、目下それを検討中であるから、いずれ当方の話のつき次第、御相談申し上げることがあるかもしれないということを私は申し上げました。向こうはそれに対してはうなずくという程度でありまして、言葉の上での発言はなかったのであります。」それでありまするから、「学術会議南極観測特別委員会とも連絡をとりながら、どういう協力方法が最も望ましいかということが出てくるのだと思います。そういう線でやっていきたいというので、特にあの報告書等にはそれは書かなかった、こういう次第であると私は考えております。」という御答弁があるのであります。私はこのときに御質問申し上げて、とにかく統合推進本部というものがあって、その統合推進本部というものが結論を出して、学術会議南極観測特別委員会とも連絡をとりながら、アメリカ援助を要求するなら援助を要求するということになるのだというような御答弁でありましたので、宗谷が使えないでやめるくらいなら、これは当然アメリカからそういう輸送援助の申し入れがあるとするならば、とにかくこれに頼ってでも二、三年の間継続してやっていく、そうしてできるだけ予算措置を講じて、他国に迷惑のかからないような体制をとって、この観測だけは続けていく、その間に可及的に日本自国の力をもって南極観測を続けていけるような体制を確立する。そういうふうな結論になるのではないかというふうに、私は希望的観測をいたしておったのでありますが、そういうこともなしに終わってしまった。だから、そういう努力というものは一つも行なわれなかったのじゃないかと思うのでありますが、その点に対しては一体どうなったのでありますか。その経過を、大体でけっこうですから、御説明願いたいと思います。
  12. 和達清夫

    和達説明委員 ただいま先生のおっしゃる意味は、十分私どもにも理解され、また共感する点も多いのでございます。が、実際におきまして南極の一時休止のやむなきに至りました事情は、前に申し上げました通りでありまして、これが国として南極観測を継続すべきものであるということと、学者がこの意義価値を認め、現在いろいろ学問分野で振興させねばならぬものもあるが、南極はこれだけの費用と労力をつぎ込むに十分な価値のあるべきものであるという強い認識、そういうものを十分にまとめまして、これに出発いたさねばならない次第であります。また、国際協力といいましても、単にその場でいたすだけでなく、わが国の将来の確固たる計画、またそれの実現性等を見ましてその後でないと、なかなか国際協力というものも、非常に簡易なものは別といたしまして、根本的なことはできがたいというために、統合推進本部におきましても、あるいは学術会議南極特別委員会におきましても、この検討はそれ以後でき得る限りいたして参ったと存じております。わずかのことでありますけれども、その資料を保管、整理するとか、そういうものを研究し、将来の南極磁気観測一つの中核にもなろうかという施設科学博物館の中に作られようとしておることでございます。そういうようなことにおきまして、先生のただいまのお話に対しましては、的確に、あるいは力強いお答えができないということは非常に残念でございますけれども関係者といたしましては、できるだけの努力はいたして参ったと思う次第であります。しかし、御指摘のごとく、南極条約の精神にかんがみましても、日本南極観測休止いたして、その再開のめどもはっきりしないということでは、はなはだ残念なことでございますので、さらに関係者一同は御趣旨をよく胸にとめまして、今後も努力いたしたいと思う次第であります。
  13. 前田正男

    前田委員長 茅さんがちょっと何か答弁したいということですから……。
  14. 茅誠司

    ○茅説明員 ただいま齋藤先生の御意見、私非常に感激をもって伺ったのであります。私の日米科学合同委員会においての南極観測に関する説明について御意見がございましたので、ちょっとその点補足さしていただきたいと思います。  昨年の暮れに私が申し上げましたことは、私はすでに一応基地閉鎖することは既定の事実であると頭の中で考えておったわけであります。そうしていつ再開するか、たとえばこの次一年休むのか、あるいは二年休むのか、これはむずかしい問題でありますけれども、休む期間はできるだけ短かくして、何とか静かになる太陽年の観測には参加したい。その間に日本では恒久的な対策を立てる。その恒久的な対策と現在との間でいかなる援助アメリカに求め得るか、そういう問題を頭に置いてお話し申し上げたのだと私は記憶しておるのでございます。そういう意味におきまして、南極基地閉鎖するということはもうわれわれ既定事実としてやむを得ない、しかし、いかなる方法にたって、できるだけ早い期間に再開するかということは、恒久的対策ともにらみ合わせて考えなければならぬ。それを立てた上で、もしすべての賛成が得られるならば、アメリカ輸送方法その他等について協力を求めるという段階がくるのではないか。そういうのを持たないで、ただ単にすぐアメリカ協力してほしいというのでは、ちょっと日本の自主性がおかしいという立場から、すぐにアメリカの方に協力方を申し出るということはしない。われわれの方でまず関係者で相談して——というのは、学術会議等においても、どういう恒久的な対策を立てる必要があるか、科学者が一致を見たそういう案を待って、その次の段階として、それまでの間どういう協力を要請するか、そういう問題があったのであります。私は考え方が少し違っておったかもしれませんが、はなはだ残念ながらことしはもう閉鎖せざるを得ないのではないかということは、あきらめてしまっておったのであります。それだけ申し上げておきます。
  15. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 それは私の御質問申し上げたのも、「日本政府は、いろいろな関係からこの南極観測を一時打ち切り、地球観測年が終わってしまったからかどうか私よくわかりませんが、世界は宇宙観測に入って、ますます力を入れて南極観測——むしろ南極を足場として宇宙の開発をも行なわんとする意気込みにあるように思われるのであります。これに反して、日本はいろいろの事情があるのでございましょうが、南極観測の打ち切りを今行なわんとしておるのであります。これに対して両国間の委員会において、アメリカ側は、日本南極観測を打ち切るべきじゃない、協力してでも何とかそれを継続する方法はないのか、アメリカはできるだけこれに協力をしてもいいという申し出があったやに聞いておるのでありますが、」という前提で私は言っている。もうこれは全然やめてしまうのだというのであれば、何もアメリカに対して協力を申し入れる必要はない。日本が打ち切るのだという意思表示をしたら、アメリカは、それは惜しいと思うからおれの方で協力しようじゃないかということを申し入れてきたということを聞いておるから、これに対して一体どうするかということについて御質問申し上げてあるわけなんであります。ですから、いろいろ相談してそれに対する答えが出てくるだろうと思ったら、これに対しては何も操作が少なくて、単に打ち切りということが出てきたように感ずるわけであります。これは委員長府に着いておられます前田委員もおられますが、委員長にこういうことができるかどうかわかりませんが、一つお伺いいたしますが、委員長アメリカに、科学技術全般に対する調査団を編成して参られたときに、アメリカ当局との話し合いにおいて、日本はこの際何も観測を打ち切るべきじゃない。アメリカはあらゆる協力を続けていきたい。だから日本はどう考えておるか、だからこの際アメリカ協力において続けられるならば、一つどうかこれを続けてもらいたいというアメリカ当局の意思表示があったと私は聞いておるのでありますが、それは事実でありますか、事実でありませんか。
  16. 前田正男

    前田委員長 お答えいたします。過般海外を視察いたしましたときに、アメリカ当局の方において、日本南極観測につきましてこれを中止するというようなことについては、世界の全部の関係国が、ニュージーランドの会議だとかあるいはメルボルンの会議等で、ぜひこれを継続すべきであるというふうに決議をしたりあるいは一致して要望しておる、そういう事実から、アメリカ協力できることがあればこれに協力しようじゃないか。そこで日本科学会議も開くんだから、その議題にこれを取り上げたらどうか、そうしてできるだけの協力は惜しまない、こういうような話がありまして、私すぐにそれを三木大臣の方に手紙で、視察の途中でありましたけれども報告をしたわけです。行きました一行の者は全部、世界各国の要望ならぜひ継続するように、いろいろとそういう便宜も利用してやってもらうのが適当じゃないか、こういうような意見だったものですから、大臣までここで議題に供するようにお願いをしたわけです。
  17. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 私もそういうアメリカの意思がはっきりしているということがわかりましたので、文部当局にもこれは慎重に考えてもらいたい。とにかく自国で何も観測ができないといっても、これはすでに南極条約というものが締結されて、加盟十三カ国というものが共同体制に入っておる。だから、一国で補いのつかないものは、他国がこれを補ってくれるということは当然あってしかるべきだ、南極をいかに平和的に、しかも科学的に大きな役割を果たす基地として使うかということは、共同的な考え方からいかなければいけないのだから、この際アメリカ援助するというならば、援助方式をよく検討して、それにより日本南極観測を続けていけるならばやってもらいたいという希望は、文部省の政務次官にまで私はちゃんと申し入れをしているのであります。でありますから、私といたしましては、その欠陥から昭和基地閉鎖、しかも再開希望というだけの条件付でもって閉鎖したということに対しましては、国民の一人として非常なふんまんを感ぜざるを得ない。ふんまんというか、義憤というか、こういうことはあるべきことじゃないと私は思う。そういう意味から、私といたしましては、さらにこの問題は、将来再開するといたしましても、国会がこれをどう取り扱うかということが今後あるべき唯一の残された原動力だと思うから、皆さん方にも再々御出席を願って、国会を通じて、なるべく早く南極観測、いわゆる昭和基地再開に向かって努力を傾けていかなければならないと思うのであります。この新聞記事によりますと、一方では昭和基地閉鎖しているのに、それから三百キロも離れない近間にソ連はまた基地を作っている。そうすると、日本昭和基地閉鎖して、その三百キロ近くにソ連が基地を作って観測を始める。せっかく今まで営々として設営してきて、いわゆる人命の損傷まであえてして、あれだけの困難を冒して今まで作ったところの昭和基地観測、今持っているところのいろいろな条件というものは、三年、四年休んでいるうちにみんなソ連基地に移ってしまって、あと、十二カ国加盟の条約国においてさえ、昭和基地再開価値なしという判断が出てくるかもしれぬでしょう。なぜ日本人がこれだけの努力をしたものを——しかも、この南極条約の締結について承認を求めるの件を国会に提案されたところの提案理由を読んでみると、こんな簡単に昭和基地を閉じるなんてことはできないはずです。そんな提案説明はしていない。もっと恒久な国家の繁栄と人類に寄与するところの大目的をもって提案説明をやっておるのです。  伺いますが、南極本部におられる方とかいろいろな方々は、一体南極条約をお読みになり、政府がいかなる意図を持ってこれを提案提明しているかということを御検討になったことがあるのでしょうか。私はおそらくないのじゃないかと思う。もしそういうことを御検討になったことがあるとしたならば、昭和基地閉鎖に対してはもっとやるべき手段があったと思うのです。これは外務省、文部省というものは、こういう問題についてほとんど連絡がなかったのじゃないかと思う。一体どうなんですか。外務省からお見えたなっているようですが、南極条約の建前から、こういう提案説明をやられて、こういう南極条約を締結しておる日本は、相当中枢的な役割を果たすべきところの義務と言わなくても、条約内の約束がある。それを今果たし得ざるような状態に持ち込む昭和基地閉鎖に対しては、外務省、文部省学術会議の間にどれだけ真剣な討議が行なわれたか、伺いたい。
  18. 和達清夫

    和達説明員 南極条約につきましては、南極関係者は、十分に存じておると思います。また、統合推進本部のメンバーには外務省の方もおられ、常にこの線に沿って議論がなされておると私は信じております。ただ、この南極観測を推進する原動力が、日本においてはもっぱら科学のためでありまして、科学者、研究者が中心になってやっておる現状であります。それで、こういう南極条約こともの十分存じておりますので、南極条約の精神に基づきということをいつも科学者、技術者の方から申し上げて、この方面の重要性は十分認識していることと存じます。
  19. 栗野鳳

    ○栗野説明員 私、途中から参りましたけれども、先ほどから齋藤先生のおっしゃいましたことを聞いておりました。私、南極本部連絡会その他におきましては、毎度外務省を代表いたしまして同じようなことを申し上げて参りました。ただ遺憾ながら、私は先生ほど迫力のある雄弁はできませんでしたけれども文部省その他の方もそのことはよくおわかりだと思います。  私は条約の専門でございませんので、条約そのものの解釈からどうなるかということは今申し上げられませんけれども条約の精神の理解、それから日本の置かれた今の南極に関する問題、その他いわゆる対外関係国際協力関係については齋藤先生が先ほどおっしゃったこと、まことにその通りだと思います。
  20. 小林行雄

    ○小林政府委員 統合推進本部は、御承知だと思いますが、関係各省の関係者すべてが出席してやっておられることでございまして、これは文部省だけでやっているわけではございません。南極条約については、これは南極の地球観測の一番根本的な規約でございますので、この条項に従ってやるということについては、統合推進本部のメンバーはすべて十分に理解しているところでございます。
  21. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 この提案説明を読むまでもございませんが、「わが国を含む署名国は、この条約に参加することにより、この条約実施に関して開かれる定期的会合に常時参加でき、かつ、その会合で特別の地位を与えられることになり、さらに、わが国国際地球観測年中に南極観測を通じて果たした科学的業績と、今回の南極会議において条約成立のために示したわが国の貢献とか、世界に高く評価されていることを考え合わせますと、わが国がすみやかにこの条約を批准し、南極の平和的利用及び科学的調査国際協力に貢献することは大いに意義があることと考えます。」ということなんですね。私はそういう提案説明を聞いたことがあります。今、宗谷一隻でもってこれをやめるとかやめないとか、そうして十二カ国の南極条約の中枢的役割を一時的にもここでストップするということは、いわゆる科学という意味において日本科学水準を高めつつあるということ、それから科学によって平和的に貢献せんとしているところの大眼目を、みずから一時的に放棄するということになりますから、文部省でやれないなら、やれるところにこれを移譲してやれるようにしたらどうか。いろいろな点から、この特別委員会においては南極観測継続に対してアドバイスをしてきたと思うのです。それを当局は、どこのやつが何を言っているのだという調子で受け取ったのかもしれないけれども、そういう熱意に対してちっとも反応を示しておらない。そうしてついに閉鎖する。閉鎖すると、もうそのわきに新ソ連基地が堂々と設営をやり始めている。こういうことをやられてしまって、朝日新聞の十日の切り抜きにございますように「雪原に尽きぬ思い、さようなら昭和基地」というこの一文を読んだ者が、日本国民として一本どう耐えられるのですか。日本は一体こんな終末に追い込まれなければならないほどの力しかないのですか。私はそうじゃないと思う。一体日本予算というものは、もう二兆円をこえている。宗谷一隻作るのに一体何ぼかかるか。なぜこの南極観測に対して、国家的あるいは人類的な目的の上に立って、責任ある当局というものは万全の措置を講じなかったか。万全の措置を講じないと、今に何か困ったことが起きるといけないからというので、何回となくわれわれもこの問題に対して言っておる。この責任はあくまでもわれわれは追及しなければならぬと思うのでありますが、こういう問題に対して、きょう参考人としておいでを願いました大屋先生は一体どういうふうにお考えになりますか。一つ忌憚のない御意見を発表していただきたいと思うのです。
  22. 大屋敦

    大屋参考人 南極観測というものは、日本国際事業として非常に高く評価されております。しかも、これが設定されましたときは、まだ宇宙空間科学というふうなものはほとんど関心がなかった時代でありましたけれども、これに踏み切ってやられたのでありますから、私たちも一事業家として、また科学を理解する人間としては、いかにも遺憾だという感じは、齋藤さんの雄弁を待たずしても私は感じておりました。そういうことで、宇宙空間科学というものは、だんだんに日本役割が大きくなっているときに、南極というものに日本観測基地を持っていくということは、世界的に非常に有利な立場になるのでありますから、そういう点を忘れぬように、国会も政府も一御考慮を願いたいことをこの機会に申し上げます。  それに関連しまして、せっかくの話を中断するようになって相済まないのでありますけれども、この観測が中止になった大きな原因は船にあったように思われるのであります。結局予算の問題でありますが、船にあったと思うのでありまして、船が解決をしておれば、またあるいは責任者も違った考えを持たれたかもしれないのであります。  そこで私は観測再開されるということを前提にしまして、一つの重要な問題を提起いたしたいと思うのであります。それは、南極観測の往復に原子力船を使ってもらいたいということであります。原子力船の問題につきましては、ここで申し上げるのは少し見当はずれでありますけれども、御承知の通り、原子力というものを動力に使う場合には、陸上よりもむしろ船の方がいいのだということはもう公知のことでありまして、現にアメリカのごときは航空母艦、戦闘艦、巡洋艦、駆逐艦、潜水艦、みな原子力船に今なりつつあるのでありますから、原子力船というものが技術的に問題がないということはそれでもわかりますが、ただ最初のスタートを切るのに非常にむずかしいものでございますから——今私も原子力委員会の中にできました原子力船専門部会の部会長をやりまして、その問題の推進に一はだ抜いておるのでおります。それで、専門部会と申しますけれども、部会の委員というものは財界、それから運輸省、そのほかの最高の人がなっておるのでありまして、いわゆる専門家ではないのであります。銀行家もおりますし、あるいは造船、海運等の社長級の人がみんなその中に入っておりまして、どうしても日本は一歩先んじて原子力船を試験船としてやらなくてはいかぬということで、大体結論が一致したのであります。ただ、その第一船をどうして作ろうかということにつきまして一番困っているのは、第一船を何に使おうかという問題であります。それで、第一船をコマーシャルに使うということになりますと、またいろいろそろばんをはじいての議論もありますので、これをどういう方に使うかということについてまだ結論が出ておらないのでありますけれども、私はこの会に出まして、南極観測というものが非常に重要である、それは科学の立場ばかりでなしに、日本国際上の位置を高める意味において非常に重要である、こういうお話を承りましたので、これは第一船は一つ原子力でもってやろうじゃないかということの気持を持ち始めてきておるのであります。もっとも、これは相当の国費を前提にしておりますので、そう簡単にはいかぬと思いますけれども、少なくとも原子力船というものは、長途の航海をすみやかな速度でもってやるということについて、従来の船舶よりもはるかにひいでておるのでありますから、その特色を利用して、そうして原子力船を南極観測用に使いましたら——それができるまではアメリカから臨時の援助を頼むにいたしましても、先々は日本世界に先がけて原子力船をこの問題にからみ合わしたということになれば、南極探険の意義が一そう深くなるような感じがするのであります。  こまかい議論は差し控えることにいたしまして、それだけ申し上げることにいたします。
  23. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 時間もだいぶ経過いたしましたし、大臣もおりませんから、私の質問も次会に譲ることにいたしますが、ただいま大屋先生の原子力船を観測用ないしは砕氷用に使用していくというお考えにつきましては、私も非常に賛成なのであります。いずれ来週は原子力問題についてこの科学の技術委員会が開かれるそうでございますから、そういう際にこの問題を一つ譲って、大いにその点から当局考え方もただしてみたい、さように存じておりますので、きょうは御意見としてありがたく拝聴しておくことにいたします。  ただ私は、原子力の問題について今お言葉が出ましたから申し上げるのでありますが、昨年日米原子力産業合同会議が開かれましたときに、アメリカの下院議員バンザントという人が日本に来られまして、ちょうど会議が始まって、アメリカの国会議員はだれも来ないのかなと考えておりました。もう会議が始まってからバンザントという国会議員がやって参りまして、席に着いたのです。その開口一番のあいさつに、私は今南極から軍用機をかってようやくこの会議に間に合ったのだ。南極に行った目的は、南極に原子力発電所をアメリカは作りつつあるのだというあいさつであったのであります。あまりに南極に対するアメリカ日本との考え方が開いているということに、あぜんたる感じを抱いたのであります。日本は口を明けば科学技術の振興を言うが、しかし、それは単なるお題目で、六法も踏まなければ初段もやらない。ただお題目を口にするような感じがある。その最も端的な現われというものは、こういうふうな南極観測によって出てくるのであります。一方は原子力発電所を作って、未来永劫の基地としてやろうという心がまえ、一方は宗谷一隻しかないからやめる。宗谷一隻は、ほかの方を借りかえるというか、買って装備するのに、大体幾ら金と日時が要るのですか。日本に一体宗谷一隻しかないような考え方でやっている。そんなばかなことでもって、日本世界の先進国に伍して国家の繁栄を企図するということは、そんなことでできるものじゃないと私は思います。そういう考え方が私は根本的に間違っておると思う。ですから、あのバンザントがやってきて、日本という国もおれたちと同じように、一つ原子力を中期開発して——私はこのバンザントという人の出生地を聞いたら、石炭生産地なんです。だから日本に来てよけいなことを言わなければいいが、原子力なんか石炭を使ってからやれということを言わなければいいと思ったがそうじゃない。もう日本の宿命として原子力というものに対して重点的な考え方を持つべきである。そうしてこれをやる。おれなんか今南極に原子力発電所を作っているのだ、というようなことですね。ですから、ほんとうにこういう重大な問題を責任者として預けられたところの行政庁、関係機関は、この質疑応答の中に出てくる当局の答えというものは、実に紙の上にのりをつけたような答弁なんです。その通りやるかというと、ちっともやってない。いやしくもわれわれがこういう問題に対して質問をする以上は、未来永劫まで速記録に残るのだから、ほんとうに情熱を傾けてやらなければいかぬということで質問をしているのだけれども当局答弁というものは、いつでもおざなりの答弁です。その通りやってくれるかというと、ちっともやらない。一体自分がどういう答弁をしたか、その答弁を読み返しておるところの政府委員がおるかどうか。そういう点は一つお互いに十分注意をして、責任政治のあり方をはっきりしてもらわなければこういう結果になるのではないか、こう思う。きょうは大臣がいないから文句を言ってもしようがないけれども、しかし、南極探検というものは特に情熱を燃やして、かくのごとき結果になったことに不満の意を述べるのは、白瀬中尉というのは私と同じところに生まれた人なんです。今から五十二年前、死を決して南極探検に向かったということです。目的は違うかもしれない。が、しかし、日本人が五十数年前にわずか数百トンの船に数十名の同士がいわゆる血判を押して、死を覚悟して南極洋に向かって、そうして日章旗を立てた。これはやはり日本の歴史であります。そうして一昨年はその五十周年記念をすべく、国家は十円切手を八百万枚発行している。それくらいのムードを上げておいて、二年もたたないうちに昭和基地宗谷一隻のために閉鎖するなんということは、さっきお話を申し上げた通りに、一体若き日本国民にどういう影響を与えているか。日本の教育日本の教育といって、文部当局は一生懸命になって教育をやっておるが、その教育効果を昭和基地閉鎖によって抹殺している。プラス、マイナス、ゼロじゃないですか。こんな政治、行政というものは、私は世の中にはないと思う。でありますから、今度大臣が十分に時間をさけるときにここに来てもらって、その責任において、いかにしたならば昭和基地が最も早く再開できるかということについてわれわれは質問をしていきたい、こう思っております。きょうはこの程度で終わります。
  24. 前田正男

    前田委員長 関連して、松前重義君。
  25. 松前重義

    ○松前委員 今与党からえらい激励の言葉があったのですが、これは与党も野党もございません。しかし、われわれは今齋藤さんから言われたより以上の熱意を持ってこれを熱望しております。大臣がおるなら少しばかり言うた方がいいかと思うのですが、おりませんから簡単に申し上げます。大体アメリカの大統領の新年の教護に、海洋の開発というのは重要であるということをうたっております。ことしの年頭の予算教書には、そのアメリカ予算の一番根幹をなしておるものの第一項目に、第一として国防と海洋の開発に全力を注ぐということを前提としております。海洋というのはいろいろなものを含むだろうと思うのです。南極ももちろん含む。いろいろな意味において新しい未開の分野を開発するというところに情熱を燃やさなければ、日本の国力は伸びないということであります。国際的ないろいろな問題もありましょうが、国力は伸びません。少なくとも科学の力によって開発しなくちゃいかぬ。これは日本を今後拡大していく最も基本的な線でなければならぬと私どもは思うのであります。それをおやめになるというのは、私は当局の方々に熱意がなかったばかりでなく、それを取り巻いておられる諸団体その他の方々に、このようなパイオニア的な精神が欠けておったと思う。しかし、いずれにしても、そういうことは別問題にしまして、国会におきましてこれがいよいよ取り上げられました以上は、今後委員長においてしかるべく取り計らわれまして、これが推進役となって今後しかるべく——もし放棄した役所ならば、もうそんなところにやらせる必要はありません。これは新しいものを作って、そこにやらせなくちゃいかぬ。これはやらぬと言ったやつにやらせる必要はない。そんな熱意のやつにやらせる必要はない、こういうふうに私どもは思うのであります。少なくとも今後この委員会が中心となって、日本の将来の方向を決定する重要な問題であると思います。目先にころがっている問題に食いつくようなことだけが政治ではないと思う。少なくともこういう基本的な問題に取り組み、委員会としてしかるべく行政の問題、担当官庁の問題、あるいはまた新しい機関を作るかどうか、これらの点につき、またこれの続開について、一つしかるべきこの委員会としての意思表示をされんことを希望いたしまして、これは質問でも何でもありません、われわれの立場を明白にしておきたいと思います。
  26. 前田正男

    前田委員長 ただいまの松前さんの御発言に対しましては、理事会等で相談いたしまして、しかるべく善処いたしたいと思います。
  27. 齋藤憲三

    齋藤(憲)委員 質疑応答の時間を省略する意味で、せっかくきょう外務省から栗野科学課長がおいでになりましたから、お伺いしておきましたが、南極条約を読んでみますと、日本がここ三年か四年閉鎖する、しかし、再開もきまっておらないというような立場から、この条約内容を読んでみると、ずいぶん条約内容に盛られている権利というか義務というか、そういうものからオミツトされるようなことがたくさん出てくるのじゃないかと思うのです。ですから、この昭和基地一時閉鎖によって日本条約から受ける制約というものは一体どうなるか、それを一つお調べの上、参考資料として出していただきたいと思います。お願いいたします。
  28. 前田正男

    前田委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。これにて散会いたします。   午後零時十七分散会