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齋藤(憲)
委員 それは、
休止している国もあるかもしれません。しかし、まずこの
条約文の第二条を読んでみますと、「
国際地球観測年の間に
実現された
南極地域における
科学的調査の自由及びそのための
協力は、この
条約の
規定に従うことを
条件として、継続するものとする。」と書いてあります。それから、第三条にはこの継続すべきところの
内容が書かれている。そうすると、
閉鎖しておったらこれはできやせぬですね。ですから、いわゆる
休止して、この
南極条約の
あり方というものによっての
結論というものはどう出るかわかりませんけれ
ども、いわゆる
南極条約に加盟しているところの
一つの
大国的体面からいきますと、この
条約文の
内容に継続するということが書かれてあって、継続すべきところの
内容というものが第三条に書かれている。それは
昭和基地を閉塞しておったのでは実行ができない。そうすれば、当然その
南極条約に加入しているところの
資格というものは、積極的にはどうかということがあっても、消極的に、ない。たとえば、まずその第九条なんかを読んでみますと、第九条の二項に、「第十三条の
規定に基づく加入によりこの
条約の
当事国となった各
締約国は、
科学的基地の
設置又は
科学的探検隊の
派遣のような
南極地域における実質的な
科学的研究活動の
実施により、
南極地域に対する
自国の
関心を示している間は、1にいう
会合に参加する
代表者を任命する
権利を有する。」ですから、
閉鎖してしまうと、この「1にいう
会合に参加する
代表者を任命する
権利」というものはなくなってしまうのですね。そうすると、実質的に
休止したから、
南極条約の
加盟国から除外されなくても、実質の
活動においては除外されたと同じような結果になってしまう。
日本がせっかく
南極条約を締結するために、
軍事基地にならないように、平和的にこれを持っていこうというあっせんを大いにやって、そうして
領土権の放棄もみずからこれをやって、
世界各国、これに加盟する十二カ国も
領土権の請求をしないという、まことに
南極というものを平和にして、かつ
条約の第一条に書かれてあります
通り、「
南極地域は、
平和的目的のみに利用する。
軍事基地及び
防備施設の
設置、
軍事演習の
実施並びにあらゆる型の兵器の実験のような
軍事的性質の
措置は、特に、禁止する。」「この
条約は、
科学的研究のため又はその他の
平和的目的のために、軍の
要員又は備品を使用することを妨げるものではない。」とにかく
日本のように戦争を放棄して平和のみに終始している国があっせんして、ようやく
南極というものをここまで平和の
目的を達成するだけに限定していこうとする大きな
南極条約の重大な
責任を負っているところの
日本が、これから三年も四年も
昭和基地を
閉鎖して、そこにだれも人を置いておらぬで、どこの国がどんなことをやったって、
日本はこの
条約に
規定したところの
目的遂行のために
役割を果たすということはできなくなってしまうではありませんか。私はそう思うのでありますけれ
ども、そういうことをよく御勘考になって、そうしてこの重大な
南極、すなわち
アメリカ大陸の一倍半も一あるような大陸、今後どういうふうに転換するかわからないけれ
ども、この
南極条約の
考え方からもっていたしますると、その第十三条の二項には「この
条約の
効力発生の日から三十年を
経過した後、第九条に定める
会合に
代表者を参加させる
権利を有するいずれかの
締約国が
寄託政府あての通報により要請するときは、この
条約の運用について
検討するため、できる限りすみやかにすべての
締約国の
会議を開催する。」と書いてある。三十年たったらこれを
一つ変えたっていいではないかというような半永久的な
条約を締結する中枢的な
役割を
日本がやっておりながら、
宗谷が古ぼけているから、とても
南極観測は続けられないのだといって、ここで停止をして、
あとは四、五年たったら
再開するかしないかわからないが、
再開したいのだという
希望だけ残して、消極的にでもこの
条約国に参加する
資格を喪失していくということは、私はある
意味においては三十一億の
国費というものを効率的に使用したのではないという
結論になるのではないかと思うのです。これは一体、どこにどういう
責任があるのか。
学術会議と
文部省のいわゆる
南極本部というものに
責任があるのかよくわかりませんが、これは単なる
南極観測というそのこと自体のみに局限された問題ではなくして、これは
日本国家として重大な
責任と
体面の問題ではないかと
考えておるわけであります。でありまするから、これに対して私
どもは、この
委員会を通じて、再々にわたって
当局の重大な決意をうながして、もし間違うようなことがあったら、
日本としては非常な損失がくるのではないか。特に現在のごとく
宇宙科学の
分野に
世界各国が国連をかけて突進している最中に、この重大な
基地というものにもっと重点的な施策を行なっていかなければ、
日本の
科学技術の進歩というものは阻害されるのではないかということを、
速記録を見ると各
委員が述べておるのであります。
これに対して、常に
当局はお説ご
もっとも、よく
一つ話し合いをいたしまして善処いたします。善処いたすどころか、われわれと
考えが全く反対な結果をここに出している。私
どもはこういうことに対しましては、はたしてこういう問題に
関係している機関が国会の意思というものをどう
考えているか、これさえ今日になってみると、すこぶる疑わしいと思わざるを得ないのでありますが、しかし、もう
昭和基地を
閉鎖してしまって、今どうにもこうにもならないわけです。今からいろいろな文句を言ったって、死児のよわいを数えるようなことになってしまうと思うのでありますが、私といたしましてこの際特に、きょうは
大臣がおられませんからいたし方がございませんが、念のためにお伺いいたしておきたいことは、一体どうしたら早急に
再開ができるかということです。私はこの前、
昭和三十六年十二月二十日のこの
特別委員会におきましても、
日米科学委員会において
南極観測の問題が取り上げられれたのではないか、それに対しては
アメリカは前々から、もし
宗谷が使えないために
日本が
南極観測をやめるということがあったならば、それは
世界的に見ても惜しいことであるし、
日本としてもそれは絶対に排除すべき問題であるから、
アメリカは
輸送の
責任だけは負うてあげよう、だから
南極観測だけは続けろという
提案があったのではないか、それに対して一体どういう論議がかわされたかという質問をいたしたのであります。これに対しては、
茅先生がこれに
説明をいたしておられます。そういうこともあったけれ
ども、その問題は「こちらには
統合推進本部というものがあって、目下それを
検討中であるから、いずれ当方の話のつき次第、御相談申し上げることがあるかもしれないということを私は申し上げました。向こうはそれに対してはうなずくという程度でありまして、言葉の上での発言はなかったのであります。」それでありまするから、「
学術会議の
南極観測特別委員会とも
連絡をとりながら、どういう
協力の
方法が最も望ましいかということが出てくるのだと思います。そういう線でやっていきたいというので、特にあの
報告書等にはそれは書かなかった、こういう次第であると私は
考えております。」という御
答弁があるのであります。私はこのときに御質問申し上げて、とにかく
統合推進本部というものがあって、その
統合推進本部というものが
結論を出して、
学術会議の
南極観測特別委員会とも
連絡をとりながら、
アメリカに
援助を要求するなら
援助を要求するということになるのだというような御
答弁でありましたので、
宗谷が使えないでやめるくらいなら、これは当然
アメリカからそういう
輸送援助の申し入れがあるとするならば、とにかくこれに頼ってでも二、三年の間継続してやっていく、そうしてできるだけ
予算措置を講じて、他国に迷惑のかからないような
体制をとって、この
観測だけは続けていく、その間に可及的に
日本は
自国の力をもって
南極観測を続けていけるような
体制を確立する。そういうふうな
結論になるのではないかというふうに、私は
希望的観測をいたしておったのでありますが、そういうこともなしに終わってしまった。だから、そういう
努力というものは
一つも行なわれなかったのじゃないかと思うのでありますが、その点に対しては一体どうなったのでありますか。その
経過を、大体でけっこうですから、御
説明願いたいと思います。