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木村(睦)
政府委員 ただいま御質問のありました先般東京都内におきますタクシー
会社であります志村観光自動車株式
会社につきまして監査の結果、道路運送法に基づく行政処分を東京陸運局長においてやっておるのでありますが、監査の内容を申し上げます前に、一応それまでの当局が関知いたしました事柄を
前提としてまず申し上げたいと思います。
実は、昨年来、東京都におきまして、ハイヤー、タクシーの輸送力が足らないということで、輸送力の増強
措置をして参ってきたのでありますが、一方におきまして、運転手がかなり足らないというふうな
実情のために、車はふやしたい、一方運転手がなかなか手に入らないというのが
実情でございまして、そういう状況下におきまして、昨年の暮れ時分だと思いますが、この志村観光自動車
会社が札幌の
方面に運転手を探しに参りまして、約四十名くらいを引き抜いたというふうな情報を陸運局はキャッチしたわけであります。さらに、一月に入りまして、一月の下旬、今月の二十三日ころでございましたか、このスカウトされました運転手のうち代表者の者が数人東京陸運局に参りまして、募集されたときの条件とこちらに来ての実際の待遇と非常に違うということにつきまして、るる陳情があったわけでございます。そこで、当局といたしましては、ただ単に雇用
関係が契約と実質と違うということだけでは取り調べようもございませんので、
一般的に道路運送法にのっとって適正な事業をやっておるかどうかという観点から、去る二十四日に、早朝から午前中にわたりまして、この
会社を東京陸運局は監査をいたしたわけでございます。その監査の結果につきまして、道路運送法あるいは道路運送法に基づきます諸規則に抵触して、適正な運営をやっていないというふうな事実が相当発見されたわけです。
その内容につきまして、ただいまの御質問のお答えとして申し上げたいと思います。
第一点は、道路運送法に基づきます運輸規則によりますと、運転日報というものを作成して、常に保管しておかなければならないということになっております。運転日報と申しますのは、個々の運転手が作業、勤務についた場合の運行の実績等でございますが、従って、この運転日報を見ますと、一日にどのくらい走ったかということもわかるわけであります。この運転日報を明らかに改ざんしておると認められるものが相当ありました。二十八両のうち十八両にそういう事実が発見されたわけであります。単に改ざんということだけですと、まともにはこの規則に触れるわけではございませんが、改ざんされた中身を検討いたしますと、一日三百六十五キロの走行キロの制限が付されておりますが、どうもこの制限をこえて運転しておるというふうなことを推定するに足る事実も発見したということであります。
それからその次は法規の違反で、相当ひどいものも小さいものもありますが、この際でありますので、小さいのも一応あげておきますと、道路運送法の施行規則によりまして、事業用自動車の場合には、車体にタクシーの旨の表示をすることになっておりますが、このタクシーであるということの表示をしない車が十両あったのであります。
それから、同じく運輸規則によりますと、労務員の仮眠施設とかそういった休養施設、そういうものが十分できていなければならないのでございますが、この
会社を監査いたしましたところによりますと、仮眠室はありますが、そこで必要な員数の運転者が休むための寝具が非常に
不足しておる。この場合大体三十二組の寝具が必要であるのでございますが、十八組しか寝具がなかったというふうな点でございます。
それからその次は、昨年の十二月二十八日付で仮採用した十八名の運転者がございますが、これは日雇いのままで本年の一月一日から現在までずっと
業務に服させておった。正式な雇用契約の締結をしていないという事実が発見されました。これは普通車一両につきましては、大体二・四人分の運転者が必要でありますので、この二・四人に相当する運転者は、正式な雇用契約のもとに採用した運転手でなければならないのでありまして、それ以上に運転手を補充的に使う場合には日雇いのままでいいのでありますが、この必要な員数内において日雇いの運転手を使っておったということが運転規則に違反しておるのでございます。
それからその次は、
労働基準法によりますと、連続勤務は二十八日ということになっておりますが、運転手の場合につきましては、勤務の状態あるいは事故防止の観点から、十四日以上続けて勤務をさせることはよろしくないというふうに運輸規則になっておるのでございますが、事実を調べてみますと、昨年の十月二十六日から同じく昨年の十二月四日までの間に十五日以上の連続勤務をされられた者が十一名もおった、必要な休暇を与えていなかったという事実がございました。
それから自動車事故につきましては、事故報告規則によって、重大事故につきましてはその都度報告をすることになっておったのであります。監査の結果、三十五年の十一月六日、同じく十一月十日、それから三十六年の一月十一日、それぞれ重大事故を起こしておるのでございますが、重大事故の報告を全然していないというふうな事実も発見されたのでございます。
なお、次に車両法によりまして、常に使用車両につきましては十分
整備しておく必要があるのでございますが、検査いたしました二十二両の車両のうち、八両は
整備不良の車があったということでございます。
そういった違反事実が発見されましたので、このように多数の項目にわたって、道路運送法あるいは車両法、それに基づく省令等に違反して、運営の適正がはかられていなかったというふうな事実が発見されたのでございます。