○永岡光治君 私は、日本社会党を代表して、ただいま議題となっております
昭和三十六年度
予算補正二案に反対の討論を行なわんとするものであります。
反対の第一の理由は、本補正
予算そのものが、
池田内閣の
経済政策の破綻によってその編成を余儀なくされるに至ったものであるにもかかわらず、その
経済政策の失敗による国民生活の犠牲の救済についてほとんど何ら有効な
予算措置がとられていないということであります。
池田内閣は昨年の秋以来所得倍増、高度成長を唯一の旗じるしとして積極
予算の編成、低金利
政策の強行等によりいやが上にも成長ムードをあおり立て、その結果民間設備投資は三兆八千億円ないし四兆円という驚くべき高水準に達したのであります。この水準は所得倍増計画のその最終年度である
昭和四十五年度に予定している三兆六千億円を、さらにはかるかに突破するものでありまして、この一事をもってしても現在のいわゆる高度成長が、いかに均衡を失した、かたわの成長であるかがきわめて明瞭にわかるのであります。このため内需は異常なまでに、旺盛となり、輸入は激増し、他面輸出は伸び悩み、その当然の結果として国際収支を極度に悪化させるに至ったのであります。すなわち一月以来九月まで毎月約一億ドルの経常収支の赤字を続けるという、まことにいまだかつてその例を見ないほどの容易ならざる事態を招来するに至ったのでありますが、このため、
政府は、ついに先般、国際収支改善のための総合
対策を財政、金融、その他すべての分町にわたって実施せざるを得ないという羽目に追い込まれたのであります。また、物価の面におきましても、当初における
政府の見通しは、卸売物価は〇・三%の
下落、消費者物価は一・一%の上昇ということであったにもかかわらず、物価騰貴の現実はいかんともしがたく、さすが頑迷固陋の
政府も、やむなく最近に至っては卸売物価は四・五%、消費者物価は四・七%、それぞれ上昇ということに見通しを改定せざるを得なくなったのであります。この補正
予算において、わずかではあるが、生活保護基準の引き上げや建築単価の改定等を行なわざるを得なかったのも、もっぱらこの物価騰貴のためであります。
このように、わが党がその当初よりじゅんじゅんとその誤まりを指摘したとおり、不幸にして、
政府の所得倍増、高度成長
政策は、実施後わずか半年にして完全に破綻してしまったのであります。しかも、
池田内閣の大資本木位の高度成長
政策の完全な破綻によって、日本
経済は今や重大な危機に直面しているのであります。しかるに
池田内閣は、この段階に至ってもなおかつ高度成長
政策は誤ってはいない、ただ、その行き過ぎを是正するだけだと強弁して、その
責任を回避しようと努力しているのでありますが、このように
責任を回避しつつ、他方では現実の必要に進められてこれまでの
政策に急ブレーキをかけ、金融、その他各般の引き締め
政策を強力に進めておりまして、そのしわ寄せはすでに深刻に国民の各層に及びつつあるのでありまして、これに対してもまた、緊急かつ適切な手当を必要をいたしているのであります。しかるに今回の補正
予算は、これらの点について何ら必要な措置をとっておらないのであります。すなわち、まず誤れる高度成長
政策に基づく物価騰貴による低所得者層の生活水準低下を防止する必要があるにもかかわらず、本補正
予算では、わずかに生活保護基準が五%引き上げられておるだけであります。これではきわめて不十分でありまして、わが党が衆議院における補正
予算組みかえ動議の中で提案したように、少なくとも一〇%の引き上げは必要であります。また、この補正
予算が、日雇い労働者の賃金引き上げを行なっていないということは断じて承服できないところでありまして、これも物価騰貴の影響を考え、やはり少なくとも一〇%の賃金引き上げは必要であるのであります。また、医療費の値上げに伴い、社会保険の被保険者、患者等の負担増を軽減することがぜひとも必要であるにもかかわらず、何らその
予算措置をとっておらないのは、はなはだ
政府の怠慢と言わなければなりません。さらに
政府の高度成長
政策の破綻による金融引き締め
政策のしわ寄せを最も深刻に受ける中小企業に対しましては、特に手厚い
対策が必要でありますが、
政府は財政融資において、中小企業金融の三機関に対しまして、わずか三百五十億円の
資金手当をしておるにすぎないのであります。金融引き締めの強さと、それの中小企業へのしわ寄せの深刻さを考えまするならば、さらに五百億円程度の増額は絶対必要なのであります。
なお、現在大きな社会問題となっております炭鉱労働者の
政策費でありますが、全くこの補正
予算に計上されていないということは、言語道断でありまして、
政府にその一片の誠意すら見ることができないのはきわめて遺憾であります。石炭
政策転換の根本問題については、わが党が別に要求することとなっているのでありますが、少なくとも、この補正
予算において最小限度のものでも緊要な
対策費を計上することが絶対に必要であるのであります。このように
池田内閣は、この補正
予算において、その
経済政策の失敗によって危殆に瀕した国民生活の安定を確保するための
予算措置をほとんどとっていないのでありまして、このことこそ、この補正
予算の根本的な性格の問題として、わが党は断じてこれを承認することのできない第一の理由であります。
反対の第二の理由は、本補正
予算の四つの柱であります災害
対策費、給与改善費、食管会計への繰り入れ及び地方交付税交付金は、いずれもその
予算措置がきわめて不十分であって、とうてい当面の急需に即応できないと思われることであります。
まず第一に、災害
対策費でありますが、
政府の災害
対策はきわめてお粗末であります。最近の集中豪雨等による災害の頻発に対しましては、根本的な
対策が必要と思うのでありますが、このような根本問題はしばらくおくといたしましても、今回の補正
予算に計上された災害
対策費は、あまりにも不十分であって、少なくともこの上に早害
対策費を追加するほか、第二室戸台風被害
対策の最も緊急を要する部分は、予備費というようなあいまいなことでなく、明確に災害
対策費として計上すべきであります。
さらに災害復旧について、公共施設の復旧の必要なことは言うまでもありませんが、それと同時に、被害を受けた国民の生活をすみやかに救援し、その生活再建を援助するという罹災者援護措置がきわめて重要なことは論を待たないことである。ことに恵まれない環境の中に生活しておる低所得者層が常に最大の被災者であるということに思いをいたしまするならば、なおさらこのことは緊急の必要事であります。この補正
予算がこのような個人被害の救済
対策について何ら考慮していないのは、はなはだ遺憾千万であります。いずれにいたしましても、この補正
予算の災害
対策費百四十九億円では不足すること明らかでありまして、わが党としましては、さらに約百億円の増額を必要と考えておるのであります。
第二に、給与改善費でありますが、われわれから見れば、八月の人事院勧告そのものが、すでに本年の物価及び生計費の
上昇率の
実情からして、昨年の勧告よりも小幅の給与水準の引き上げにとどまっておることに不満であり、かつまた、従来から公務員職員団体が
要望しておる給与体系の是正が無視されておることにも、はなはだ不満であるにもかかわらず、
政府はさらにその実施時期を、勧告の五月から十月におくらせるなど、人事院勧告からさえも大幅に後退した
予算措置をとっておるのであります。公務員給与改善費につきましては、公務員職員団体が要求しておりますような、給与の不合理の根本的是正をはかり、交渉の最終的結果について所要の
予算を計上することが当然であると思うのであります。
第三に、食管会計への繰り入れについてであります。食管会計の赤字補てんのための繰り入れば、もとより当然の措置でありますが、ただ、この際、食管の赤字に関連をいたしまして指摘しておく必要があると思いますのは、この赤字の中には、
政府の
責任で赤字となっておる分もあるということであります。すなわち、その第一は、金利の部分で、
政府は食管の金繰りについて、国庫余裕金もあまり使っていないために、金利の負担がかさみ、これが赤字の
原因の一部となっておるという
事情があります。さらにまた、食糧庁の公務員給与等の行政費、あるいは国鉄運賃値上げによる輸送費の増大等もまた、それぞれ赤字増加の一因をなしておるのであります。これらは、しかし
政府としては当然その補償、裏づけをすべきものであって、その裏づけをしないで、膨大な食管の赤字をすべて消費者、生産者に負担させる立場に立って、赤字を特に強調するのは、
政府の
責任のがれであると言わざるを得ないのであります。
第四に、地方交付税交付金でありますが、大
法人向け租税特別措置は、大資本の過大な設備投資を促進しておる要因であると同時に、著しく租税公平の原則に反するので、これを廃止し、または縮減すべきであります。その他、租税の自然増収も、
政府がこの補正
予算に計上しているよりもはるかに多いことは確実でありまするから、地方交付税交付金は二百十三億円程度ではなく、もっと大幅に増額されなければならないことは当然であります。
以上申し述べましたように、災害
対策、公務員給与、食管会計への繰り入れ、地方交付税交付金のいずれも
予算措置が不十分で、わが党としてはとうていこれを承認するわけには参らないのであります。これがこの補正
予算に反対する第二の理由であります。
これを要するに、最初に指摘しましたように、
池田内閣の高度成長
政策は、その実施後わずか半年にして完全に破綻を来たし、一方では高度成長に基づく国際収支の危機を克服するため、高度成長そのものを押えざるを得なくなったと同時に、地方では高度成長で利益を受ける大企業や高額所得層と、成長
政策から取り残され、そのしわ寄せを受ける中小企業、労働者、農民、その他の低所得層との所得格差はかえってますます拡大の一途をたどりつつあるのであります。このような、いまだかつてない
経済政策の失敗に対しまして、
池田首相は何ら
責任をとろとしないばかりか、今後の対処策に関しても何ら具体的な方策や明確な見通しを示そうとしないのであります。
池田首相は、来年秋には国際収支の均衡を回復すると言っておりますが、来年中に国際収支の均衡を回復するためには、来年度の
経済成長率を思い切って低下させなければならないこと、つまり強烈なデフレ
政策をとらざるを得ないことは、
経済の原理に照らして必然の帰結でありましょう。しかるに、
池田首相は、一方、来年の秋には国際収支を均衡させると言いながら、他方デフレ
政策はとらないと言い、しかも来年度の
経済成長率については言を左右にしてこれを明らかにしないのであります。わが党
委員によってその矛盾を追及されますや、国際収支の均衡回復は一応来年秋をめどとしているが、
事情によっては少し延ばしてもよいなどと、きわめてあいまい、かつ無
責任きわまる
答弁をいたしておるのであります。高度成長
政策に失敗した
池田内閣が、その収拾についても何らの成算も確信も持たないことは、この一事をもってしてもきわめて明瞭であります。私は、高度成長
政策の破綻に伴う国民生活の犠牲の救済について何ら適切な措置をとっておらない本補正
予算には断固反対するとともに、この破綻した高度成長
政策、大資本中心の誤れる
経済政策の一日もすみやかなる転換を強く要求いたしまして、私の反対討論を終わるものであります。(拍手)