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1961-10-17 第39回国会 参議院 予算委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十七日(火曜日)    午前十時四十三分開会     ————————————— 本日委員天埜良吉君及び基政七君辞任 につき、その補欠として谷村貞治君及 び向井長年君を議長において指名し た。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小山邦太郎君    理事            苫米地英俊君            平島 敏夫君            村松 久義君            米田 正文君            永岡 光治君            藤田  進君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            小沢久太郎君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            梶原 茂嘉君            古池 信三君            小林 英三君            小柳 牧衞君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            手島  栄君            野上  進君            一松 定吉君            武藤 常介君            村山 道雄君            谷村 貞治君            横山 フク君            阿具根 登君            大矢  正君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小柳  勇君            田中  一君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            森中 守義君            山本伊三郎君            相馬 助治君            向井 長年君            石田 次男君            市川 房枝君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    総理府総務長官 小平 久雄君    行政管理庁行政    管理局長    山口  酉君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    大蔵省主計局長 石野 信一君    農林政務次官  中野 文門君    通商産業省公    益事業局長   樋詰 誠明君    労働政務次官  加藤 武徳君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十六年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について御報告申し上げます。  佐多忠隆君、基政七君が辞任せられ、その補欠として藤田藤太郎君、向井長年君が選任せられました。     —————————————
  3. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)、以上二案を一括して議題といたします。  昨日に引き続き質疑を行ないます。大矢正君。
  4. 大矢正

    大矢正君 私は、主として経済問題と、それから特に当面非常に世論の上においても直大な問題になっております石炭対策の問題について、総理大臣を初め各大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  まず私は、冒頭総理大臣にお伺いをいたしたいと思いますことは、衆議院の本会議、それから予算委員会におきまして、総理は、三十五年度の経済動向、それから三十六年度の経済見通し、こういう点について、特に国民総生産につきましては、三十五年度自由民主党経済計画は、十三兆六千億が基礎となっておる、しかし、結果としては、十四兆五千億という数字が三十五年の国民総生産として現われてきたことに関して、それは、党のいわば計画というものと私が考えている考え方との違いが現われているのであるというような話がなされておるようであります。それから総理は、三十六年度以降向こう三カ年間、九%強の経済成長を見込んでおられるわけでありますけれども、それはあくまで、十三兆六千億という当初の自民党案というものを基礎にして考えていくものなのか。それとも、十四兆五千億という三十五年度の実績基礎にして、三年間九%の成長という考え方で行こうとされるのか。まずこの点についてお伺いをしておきたいと存じます。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 党の公約といたしましては、十三兆六千億で行くべきと思います。しかし、今お話の十四兆五千億というのは、最近わかったことであって、この一月にお手元に出した一月の見込みというのは、十四兆二千億だったと思います。
  6. 大矢正

    大矢正君 ですから、私のお尋ねをしたいことは、総理は今、一月の経済見通しは十四兆二千たしか三百億だったと私も思っておりますが、これからは、その自民党のいわば十三兆六千億というものを一応消して、新たな立場で九%の成長ということを考えていかれるのか。あくまでも十四兆五千億というものを基礎にして、九%の経済成長というものを考えていくつもりなのか。いつまでも十三兆六千億という自由民主党の当初の計画に固執をしてこれからもやっていこうとするのか。それを聞いているのです。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) こういうものに何もとらわれる必要はございません。ただ、党の公約というのは十三兆六千億を基準としていっております。しかし、その後非常な成長率で、本年の一月ごろは十四兆二千億でございます。最近は十四兆五千億になる、こういうことでございます。どれを標準にするかということは、党の公約は厳然たる公約でございますから、これを動かすわけにはいきません。しかし、九%をどう解釈するかというときには、十三兆六千億を基準にしてもよろしゅうございましょうし、十四兆二千億を基準にしてもよろしゅうございましょうし、あるいは最近の十四兆五千億でもいい。ただ、党の公約の十三兆六千億を一応基準にしてはじき出します。
  8. 大矢正

    大矢正君 あなたの言われることは、私はどうも理解ができないのです。国民全般は、問題は、結果としてどうなるのだろう、こういうことをやはり考えていると思うし、そういうことを知りたいと思うのです。ところが、数字のとり方は、片一方では政府保守党公約が十三兆六千億だから、保守党公約からいけばこうなるのだ、総理見解からいえば、私が総理大臣として考えてみた場合にはこれはこうなるのだという、そういうさまざまな経済計画というか、考え方というものがあったのでは、これは、やはり国民は私は迷惑だと思うのであります。経済動向というものはときどき変わって参りますから、ですから、何を基準にするということも当然検討をされて、しかる上に立って、これからの経済成長という問題は、これを基準にしていくという確たる方針がなければ私はならないのじゃないかと思う。そうあるべきが私は国民に対して親切なる態度であるべきじゃないかと思うのですが、どうしても総理は、明年になっても、自民党の案の十三兆六千億ですか、これもあるし、政府の考えた結果として出てきた十四兆五千億もあるし、それから一月の経済動向として作り上げた十四兆二千三百億というものもあるし、そういうさまざまないわば統計と、さまざまな基礎をこれからも持ち続けていくつもりなのか。どうしてそれを一本にまとめることができないか。それは保守党の案々とおっしゃるが、あなたは保守党の総裁であるのだから、そういう意味合いにおきましては、保守党の今日までの計画は、この際十四兆五千億、大体その実績の中で、しからば何パーセントの経済成長をこれから三年間するというのか、やるというのか、そういう点を明らかにしなけれ、ばならないのじゃないでしょうか。
  9. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十三兆六千億を基準にして、一応の十カ年計画を立てておるのですから、これが基本でございます。そうしてその間に伸びたり縮んだりすることはありましょう。私は、十三兆六千億を基準にして、九・二%ということを一応考えておるわけであります。
  10. 大矢正

    大矢正君 企画庁の長官お尋ねをしますがね。経済十カ年計画構想につきまして、いろいろと最近は取りざたをされております。と申しますことは、経済動向が非常に変化をしてきておる。それに合わせて、経済十カ年、所得倍増計画と申しますか、これの構想もそろそろ検討し直さなければならぬ段階にあるのじゃないかと、こういうように言われておるわけであります。  そこで、まず第一にお尋ねしたいのは、結局、十カ年たった場合の国民総生産は一体幾らになるのか。それから、特に経済計画構想の中に示されておるわけでありますが、あの経済計画構想の中には、所得を二倍にすると、こう書いてある。所得を二倍にする。国民総生産も結果としては二倍になる。こういう表現をしておるわけでありますが、二倍になるというのは、何を基準にして二倍になるのか。何を基礎にして二倍になるのか。もう一回、これは将来のために聞いておきたいと思います。
  11. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま総理が言われましたように、この計画出発点は十三兆六千億です。そうして十年後に国民総生産二十七兆二千億、こういうことに計画の大綱がなっておるわけであります。したがって、十年後に二十七兆二千億達成できますれば計画の円満な遂行ができたと、こういうことでございまして、今総理の言われましたところは、出発点がそこにある、党も公約して出発している、こういうことでございます。
  12. 大矢正

    大矢正君 計画が十三兆六千億である。結果としては、その所得倍増計画のいわば初年度であるところの三十六年の前年すなわち三十五年度は、現実の問題としては、先ほどから申し上げておるとおり、十四兆五千数百億になっておるわけなんです。そこに数学的にはかなりの違いがあります。これをこのままの形で押していった場合には、将来、やはり十年後には、総国民生産においてかなり当初の計画と違ってくる面が出てくるのじゃないですか。これをどういうふうに考えておりますか。
  13. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のように、昨年の七月、当初党が公約しました出発点は十三兆六千億でございまするけれども、本年初頭の実績と申しますか、経過から見ましたのは、当時十四兆二千五百億と存じております。それで結果は、年度末には十四兆五千億になっております。十四兆二千五百億、そういうつまり成長がしてきたと、したがって、党の公約しておりましたよりも非常に成長の速度が速い。それが今日では十六兆五千億になっておる。総理は、三年間九%ずつ成長していけば、十七兆六千億になると言われた。その十七兆六千億に近い十六兆五千億というのが今日達成されつつあるのでございますから、これは行き過ぎだと、したがって、ある程度そういうことを抑えていかなければならぬということでありまして、どんどん伸ばして参りまして、たとえば十年後に二十七兆二千億よりもよけいになることは悪いことではございませんけれども、しかし、その勢いで、過程においていろいろひずみができますと、これはいろいろな経済界に支障を起こすわけでありまして、したがって、そういうひずみの起こらないように、国際収支にこれが影響してきておるのでございますから、そういう状態はある程度抑えていかなければならぬ、こういうのが現状でございます。
  14. 大矢正

    大矢正君 経済成長率の問題については、当然これは、通常国会でもかなり具体的な議論をされることと思いますから、私は、その問題については以上で終わります。  次に、大蔵大臣お尋ねします。最近の日銀貸し出し残高が大体どのくらいになっておるかということと、あわせて日銀発券高がどのくらいになっているのか、これを数字を出していただきたい。
  15. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 日銀発券高は、十月十六日、きのうで一兆四百二十九億円、日銀貸し出しは一兆百二億円。きのう現在でございます。
  16. 大矢正

    大矢正君 過去において、この日銀発券高と、それから貸し出しというものがこんなに接近をした実例は、過去にはかなりあるものでしょうか。
  17. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 貸し出し発券高をこえたということは過去にございません。この問が初めて出たようなわけでございます。
  18. 大矢正

    大矢正君 それじゃ、一体なぜ日銀貸出残高発券高を上回るというような結論が出てくるのでしょうか。これは、私は私なりに判断をしているけれども大蔵大臣見解一つこの際承っておきたい。
  19. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題について、今までの大体のことを申しますと、たとえば、本年の三月末の日本銀行貸し出し残高は六千四百六十二億円でございました。ことしの三月末。ことしの九月末になると、これが一兆二百七十二億円、非常に大きい領になって、この期間の増加が三千八百十億円、こういう三千八百十億円の貸し出し増は、どうしてこういうことになったかと申しますと、やはりこの原因一つは、その期間における政府支出民間収支との関係で、揚超がこの期間には三千六十八億円ございました。そうすると、貸し出し増の約八割ということでございますが、明らかに、日銀貸し出しがふえるということは、政府揚超関係が大きい原因になっておったということは、これははっきりわかると思います。こういう揚超、散超というような問題を度外視しましても、相当貸し出し日銀に今まであったということは事実でございまして、結局それは、資金需要が市中の供給量を上回っている。なぜ上回るかと申しますと、日本資本蓄積の問題もございますし、経済成長相当に大きくて、そうして資金需要が常に供給量を上回っているという、日本の今日までの特殊事情によって起こった現象でございまして、もともと日銀貸し出しは多いというところへもってきて、今回の場合は、この期間における政府揚超というものが非常にきつかったということに私は原因があるだろうと考えております。  そこで、じゃあこれは、今後第三・四半期においてどうなるかという問題でございますが、第三・四半期には、二千九百億から約三千億円の散超が見られるだろうと私どもは思っていますが、その散超があったら、日銀貸し出しはそれだけ減るかと申しますと、普通なら減るはずでございますが、この第三・四半期は年末でございますので、年末の需要というものは例年に比べても非常に大きい額でございますので、それだけ減るのか、この需要の方が大きくて、さらに貸し出しが減るかと申しますと、私は減らない、三千億の散超があっても、日銀貸し出しはある程度まだふえるのじゃないかと予想はしておりますが、そういう形で日銀貸し出しというものはなかなか減らぬということは、今のところ、やはり経済成長の問題と関係していることでございまして、経済が伸びている以上、金融引き締めということをやっておっても、必要な金融というものはせざるを得ませんので、そういう関係から、なかなか散超期にいっても、まだ日銀貸し出しは、政府引き締め政策をとっておっても、そう簡単に減るという情勢にはならないのじゃないかと思っておりますが、今度の一時的にそういう発券高を上回るという現象が起こりましたのも、しょせんはそういう関係から起こった一時の現象だと私は考えます。
  20. 大矢正

    大矢正君 比較的散超だといわれる十月から十二月のこの事態に、三カ月間においても、日銀のいわば貸し出しというものは減らないのだと、こういう大臣の話である。そうすると来年の一−三月の揚げ超期におきましては、引き揚げ超過が大幅に見込まれる来年の一月−三月における日銀貸し出しというのは一体どうなるのですか。
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは貸し出し政策一本でいくべきものか、前にも行なわれましたように、買いオペ方式というようなものも方式としてこれは併用されてもいい問題だと思いますが、ただいまのところはやはり金融引き締めという基調を堅持するために、買いオペという方式はとっておりませんが、しかし、これは一本調子にいくのがはたしていいか悪いかという問題が残っておりますし、第四・四半期の実情に応じては私ども貸し出し一本でいくか、その他の方法をもって対処するか、これから検討すべき問題であろうと考えているわけであります。そういう問題を十分に検討して、この期間には適当な善処方をするつもりでございます。
  22. 大矢正

    大矢正君 結局のところ、日銀貸し出しが非常に大きくなっているということの現象理由というものは、財政資金の問題からいけば、国際収支の赤字で、外為関係のいわば揚げ超が非常に多いという問題もあるでしょう、あるいは税収が非常に当初の予想より伸びて、その面における揚げ超が財政資金としては出てくるでしょう、あるいはまた経済動向が非常に過熱を帯びているために、先般政府が考えられましたように、銀行準備預金引き上げ、こういうものによって具体的に日銀貸し出しがふくらんだと見るのが当然だと私は思うのであります。そこで、準備預金の現在の額はどの程度になっているか、念のため承っておきたい。
  23. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 十四日現在で千百十七億円。
  24. 大矢正

    大矢正君 この日銀貸し出しが非常に大きくなっている、こういうことの大きな理由は、やはり国際収支に起因するところも私は多いのじゃないかと思うのです。特に本年四月から七月まで、それから七月から九月までの実績からいくと、政府の思惑とは相当大幅に違ってきていることは、今さらいうまでもないのでありますが、そういう面から輸入の激増によって国際収支の面でかなり悪化した、そのことのために、いわば日銀貸し出しもふくらむという因果関係が私は出てきたと思うのでありますけれども、特に九月の輸出の承認というものが、まあ政府から聞いたわけじゃありませんが、新聞等の報ずるところによりますと、約六億ドル突破して、去年のちょうど二倍をこえるような結果になっているということでありますが、九月のこの輸入承認が非常に大きくなったということの理由はどこにあるのでしょう。
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、九月に担保率引き上げをやりました。それで、その際AA物資手続とFAの物資承認手続手続が違っております。一方の割当制のほうは、通産省で許可されてから四カ月の猶予期間があるということになっておりますが、これが輸入についていろいろな抑制が行なわれるという情勢になりましたために、今まで猶予されて、猶予期間があったために、少しゆっくりしておったというものも、そこで一度に集中してきたという関係が働いたのだというふうに私どもは説明を聞いております。
  26. 大矢正

    大矢正君 この九月の輸入承認が非常に大きかったということの理由一つには、政府が結果としてはかけ込み輸入をさせるような、いわば事前の何と申しますか、担保率引き上げ問題、それを漏らしたのではないかというようなことを批判される向きがあるのです。この点どう思いますか。
  27. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今言ったように、かけ込みといっても急に許可したというものじゃなくて、もう四月前に許可されているものもあって、一度にこれがきたということでございますから、これはそういう気配を察して、手続をとってなかったところが大急ぎにとったものかどうかわかりませんが、輸入担保率をきめたときに私は日本におりませんでしたので、それが事前に漏れたかどうかという事情は存じません。
  28. 大矢正

    大矢正君 業者銀行とが結託をして、事前政府担保率引き上げというものを察知して、十六日に輸入を集中的にそこへ持ち込んできた、いわばかけ込み輸入をしたのではないかということで、大蔵省銀行業者方面に当たって調査をしている、また、通産省も大体そういう方向に動いておるということが報じられておるわけでありますが、そういうことを政府は全然懸念してないのですか、そういうことをやっておられないのですか、そういう不正があったのではないかと目されることについて。
  29. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 輸入担保率引き上げ、これが事前に漏れるということは、これは厳に戒めなければならぬ、かように思いまして、今回の輸入担保率引き上げに際しましても、極秘裏計画を進め、そうしてこれを発表いたしたのであります。しかも、これは金曜日にきわめて少数のところで決意して、そうして徹夜で作業して土曜日に発表いたしました。しかも、その土曜日は十二時過ぎにこれは発表いたしたのであります。烱眼な新聞記者諸君事前にはこれを察知することができなかった、こういうことでございまして、これは計画そのものは非常に極秘のうちに樹立され、進められ、そして実施された、私はかように思います。当時は、御承知のように台風下でございましたし、諸条件は秘密を保つのに非常に都合のいい状況にあったと思います。ただ、その後の状況におきまして、どうも急に輸入承認がふえておる、そこらに何か問題があるのじゃないかということで、新聞が報じておりますように、いろいろ調査はいたしております。しかし、ただいままでのところ、その調査の結果、御指摘になりましたような事態までには、私ども調査結論は到達しておりません。ただいま大蔵大臣が説明いたしますように、おそらく何らかの事情のもとというか、在来の輸入計画、そういうものがただいま申すような事態であったのではないかという程度でございます。しかし、通産省大蔵省と共同いたしまして、その点に、あるいは政府のこの計画、この実施、これがそのとおり守られていない、こういうようなことがもしあるならば、政府のせっかくの努力も効果を上げないものでございますから、そういう意味で、ただいま慎重に各方面調査をしておる、こういう段階でございます。
  30. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう懸念もございましたので、私のほうも通産省と一緒に、今慎重にその間の事情調査しております。
  31. 大矢正

    大矢正君 これは、確かに九月という月は上期の終わりでありますから、そういう意味輸入の問題については、大体これは毎年非常にふえることは事実でありますけれども、ことしは九月にこのように異常に輸入承認が多かったということは、やはり私は事前に業界というものが、担保率引き上げをそろそろ行なうのじゃないかという予測をしておったでありましょうし、もっと悪くとれば、実は内々で政府もそういうことを、上げるかもしれないぞという意思表示があったのかもしれないということを疑っても私は差しつかえない結果が出ておると思いますし、特に担保率引き上げの十六日以前の輸入承認というものが多かったという実例から照らしても、私はそういうことがいえるのじゃないかと思うのであります。そういうことから考えて参りますと、かりに国際収支改善をする場合に、業者銀行協力をしてもらって、その業者銀行との協力の間において国際収支改善をはかろうとか、あるいは総合対策をやろうと思っても、実際に業者銀行だけにまかせておいたのでは、とうてい国際収支改善対策というものは私は生まれてこないと思うのであります。やはりこの面に対しましては、もっと徹底的な政府のある意味においては介入も必要でありましようし、強い示唆も必要でありましょう。今のように業者銀行にまかせておれば、国際収支改善対策ができるのだというなまやさしいものではないと思うのでありますけれども、この点について通産大臣大蔵大臣、どう考えますか。
  32. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの法制のもとでは、なかなか行政指導のきめ手というものはございません。しかし、十分業界あるいは金融、そういうようなものと連携を緊密にすることによって、いわゆる行政指導で効果を上げる、かような措置をただいまとっておるわけであります。これは別に業界と金融にまかせておるというものではございません。そこで、通産省通産省なりに、また、大蔵省大蔵省なりに、絶えず経済動向を注視して、業界と緊密な連携をとり、行政指導をしておるというのが実情であります。
  33. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私のほうは、ことしの六月に設備投資を一割くらい繰り延べる指導を金融機関を通じてしていきたいということで始めておりますが、その後、その結果がどうなったかという再調査もいたしておりますが、相当民間側でも自重されるし、銀行側の指導も相当届いておって、ある程度の効果がはっきりあったという調査も最近まとまりつつある状況でございます。大蔵省大蔵省で、通産省はまた通産省で、そういうふうに行政指導をやっておるという形で、大体私のほうのねらいの効果が今出つつあるという状態になっておりますので、この調子でずっとやっていけば、私は相当の効果が期待されると思っております。
  34. 大矢正

    大矢正君 総理お尋ねをしますが、来年の秋になると、大体秋といっても九、十月ごろだと、私はそう思うのでありますけれども、あるいは年末かもわかりませんが、そのころになると、国際収支というものは均衡するのだ、こういう御発言があるのでありますが、来年の秋以降には均衡するという根拠は一体どこにあるのでしょう。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 輸入は来年はそうふえますまい、ある程度はふえる。輸出は輸出奨励策で相当ふえるのではないか。そうしてまた他面、資本収支でもある程度黒が期待されます。そういう関係で来年の秋の輸出時期には、一時的に均衡する、年を通じてはやはり私はまだ赤字が少し残るのではないか、こう考えております。
  36. 大矢正

    大矢正君 私の言うのは、そういう一般論を聞きたいのじゃない。そういう一般論は聞かなくてもわかるのです。そのくらいのことは。そういうことじゃなくて、具体的な数字の裏づけを持った、均衡するという考え方の根拠はどこにあるかということを聞いているんです。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) まだ具体的の数字を出すところまでいきません。私は総体論として、輸出をうんと伸ばし、輸入の伸び方がある程度ふえる。資本収支のほうも外資導入その他でやっていけば経済の見通しとしてはそうなるのじゃないかと思うのであります。また、干、うなるように今後の施策、あるいは来年度の予算等々、万般の点に注意を払っていくつもりでおります。
  38. 大矢正

    大矢正君 あなたは輸出々々と盛んに言われるけれども、かりに輸出の問題についてひとつ考えてみた場合に、アメリカの景気がよくなって国民の消費もふえる、こうなってくれば、それはもちろん日本の製品も輸出がふえるでしょうけれども、しかし同時に、反面、結局今日のように非常に内需が強いという態勢から、むしろ輸出を増進するため内需を抑制して、そうして卸売物価もそうでありますが、物価水準を引き下げる方向に政府が指導をし、同時にまた、もっと悪くいうと、賃金の引き上げはこれを極力押えて、コストを引き下げて、国内では品物が売れないからどんどん外国に伸びなければならぬという、そういう根本的な輸出対策というものをあなた自身は考えておられるのじゃないですか、輸出々々と害われるところを見ると。どうですか。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 賃金ストップとか賃金引き下げのような方法をとることは、私は生きた経済を取り扱う上において望ましいことではないと。やはり適当な賃金上昇も、そうして物価の安定も……。経済というものは、そう無理な措置をとることは私は全く考えておりません。
  40. 大矢正

    大矢正君 次に、私は経済企画庁二長官に貿易自由化の問題についてお尋ねをいたします。  当面自由化の現状と、それから将来についてどう考えておられるのか。
  41. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のとおり、今日の国際社会における、経済を拡大させていこう、そうして各国の経済の発展を期していこうというためには、各国がそれぞれ自由貿易を中心にして施策をしなければならぬ。で、これは戦後今日までの年限がたちまして、すでに各国もだんだん力がついて参って、復興の時期が終わって、新しい建設の時期に入って参りますれば、当然貿易・為替の自由化ということが将来の経済発展の大きな動向であることは申すまでもございません。したがって、日本といたしましても、今日この自由化の趨勢に応じまして、そうして輸出貿易を拡大していくということがひとつの重要な使命であることは申すまでもないことでございまして、そういう意味において自由化の態勢に応じてわれわれの経済も自由化ということを取り入れて進んで参らなければならぬと思っております。で、現在、御承知のとおりIMF等におきまして八条国移行の問題もございます。世界の工業国におきまして八条国に移行しない国というのは、先進工業国の間ではほとんど日本だけぐらいになっておりますので、まあそうした勧告も他方では行なわれるような情勢になって参っておりますから、日本としても、当然貿易為替の自由化に進んで参らなければなりませんので、三十四年六月でございますか、三カ年計画でこれを進めていこう、そうしてその三年のうちに日本の産業の本質をこれに耐えるように、政府の施策も対応さしていこう、こういうのが方針でございましたが、しかし、今申し上げましたようなIMF等の八条国移行に対する勧告等も強くございますので、日本としても、来年の九月一ぱい、十月一日から九〇%程度の自由化を行なうということで先般方針をきめたわけでございます。こまかいそうした内容につきましては、通産大臣からお答え申し上げます。
  42. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま企画庁長官からお答えいたしましたような方針のもとに自由化計画大綱を定めまして、これは昨年のことでございますが、そうして昨年の四月に自由化いたしましたのが四〇%、七月に四二%、十月にはさらに二%上がって四四%、本年の四月に六二%になり、七月には六五%、十月から六八%、こういうことになっております。本年の下期中にさらに七〇先に達する見込みでありまして、自由化品目数も、本年十月で約三千三百品目、下期中にはさらに三千五百品目に達する見込みでございます。
  43. 大矢正

    大矢正君 三十六年十月一日の自由化率は六八%だと、こういうお話でありますが、一般論は別として、なぜ自由化をするのだという議論は今さらやる必要はないと思いますから、私もしませんが、三十六年十二月に自由化されるもの、それから三十七年四月に自由化されるもの、同じく三十七年の十月に自由化されるものというふうに政府が分類して、具体的に貿易の自由化計画を出しておりますが、十二月では幾らになるのか、それから四月では幾らになるのか、十月は九〇%といっておりますからわかりますが、その二つをひとつお伺いしたい。
  44. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 十二月が七〇%、これは最初の予定は十月に七〇%にする予定でございましたが、しかし、外国との交渉の部分を残しまして、十二月に七〇%ということに考えております。三十七年十月には総自由化率を九〇%にする、こういうことでございます。
  45. 大矢正

    大矢正君 四月は幾らでしょうか。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 四月は、ただいま手元に持っておりません。
  47. 大矢正

    大矢正君 来年の十月には九〇%の貿易の自由化を行なうという方針をきめているのですが、これは確実にそれを実施すると政府は考えておられるのですか。もちろんこれはパーセンテージではなくて、品目を出してやらなければならぬ数字でしょうが、率からいうと、来年の十月には必ず九〇%にするという考え方なんですか、あるいはそれは経済動向によっては直すというお考えもあるのですか。
  48. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま計画を立てまして、計画を忠実に実施するということで業界の了承を得ておるのが現状でございます。申すまでもなく、自由化については、基本的に業界におきましてもいろいろの議論があり、また、各方面からもいろいろの議論があったわけでございます。ただいま大矢委員は、根本論についての議論はやめると、こうおっしゃられたように、業界といたしましても、ただいま自由化の方向に協力いたしておるのであります。そこで、大事なことは、政府が諸般の準備を進める、そうして業界もその準備を進めていただいて、その計画大綱を実施するということは、これは一つのよりどころでありますので、そういう考え方でただいま目標も示し、積極的な協力を求めておる次第でございます。
  49. 大矢正

    大矢正君 来年の十月には九〇%にしなければならない、あるいはしたほうがいいんだというのか、その辺はよくわからないが、一体その根拠は、九〇%にしなければどういう問題が日本に起こってくるのでしょうか。
  50. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申し上げるように、自由化の計画はいろいろ批判がございますから、やはり政府の腹づもりというものをはっきりさすことが必要だし、業界の協力を求めることが必要でございます。そこで、あるいは完全自由化、あるいは九五%の自由化、いろいろ議論があるわけでありますが、私どもが国内の諸準備等を考えました際は、九〇%以上の自由化は、非常に国内産業に与える影響が大きい。そこで、われわれとして今日考えられる自由化目標は九〇%、こういうところに落ちついたのであります。あるいはお尋ねの趣旨のうちには、一部外部からこういうことでも使嗾されたのではないかというような疑いがあるのかもわかりませんが、むしろこの九〇%をきめたこと自身は、国内離業の実情等から、政府が独自に判断してきめた目標数字でございます。
  51. 大矢正

    大矢正君 藤山さんにお尋ねしますが、かりに貿易の自由化が積極的に進められたと仮定して、来年の十月に九〇%自由化になるというわけですが、九〇%自由化になった場合に、現実問題として、どの程度この自由化の影響によって輸入増加があるか。これは多少思惑的な輸入もありますから、確実な数字は出ないにしても、大よその数字は出ると思う。それから、全般的にほとんど一〇〇%近い貿易自由化をした場合にはどの程度輸入がふえる見込みを持っておられるか、お尋ねします。
  52. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 全然何にもしないでもって自由化をした場合、それは私は日本人の心理状態からいいましても、相当な外国品が入ってくると思います。が、しかし、今日では国内の産業がそれに対抗するように、諸般の自由化、合理化の施設を諸大臣も指導しておられますし、また、民間の業者とメーカーが非常な設備投資の意欲があるというのも、そういう状態に対応して、外国品に劣らないものを作ろう、あるいは作ろうだけでなく、むしろ積極的にそういうものを輸出していくというふうな意欲をもってこれに対しておられます。一方では、今日のような状況でございますから、したがって輸入の抑制、国内消費の抑制という方面にも力を注いでいるのでございますから、それも作用してくると思います。したがって、今日自由化を九〇%やってどの程度の金紙がそれによってふえていくか、あるいは増加しないかというようなことを今推算することは非常に困難な問題でございまして、私はほとんどそういう諸般の状況が折り重っております場合には、不可能とまで申し上げてはどうかと思いますけれども、むずかしい問題だと思います。
  53. 大矢正

    大矢正君 経済を企画しなければならぬというふうな立場で、九〇%自由化になった場合にどのくらい外貨を必要とするのか、輸入増があるのか、そのことによって国際収支にどんな影響があるのかということが全然わからないで経済計画が立ちますか。全然そういうことをお考えになったことはないのですか、率直に言うと。もう一回御答弁願います。
  54. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 考えれば考えるだけ、今言ったように、諸条件がずっとついているわけです。輸入の抑制のための担保率引き上げ、あるいはその他のいろいろな施策を行なっております。今申し上げましたように、金融面からも全体の抑制措置をとっております。したがって、今後自由化でない場合でも、現在の輸入量、輸入金額がどの程度に下がるかということを推定することはなかなか困難だと先般来申し上げておるわけでございまして、それと自由化との金額の差がどの程度になるかというようなことを推算することは、私は、これは現実に経済を扱っておるものとして、非常にむずかしいと思います。ただ、しかし、むろんわれわれとしても、できるだけそういう影響を、国内抑制策の効果等がどの程度に現われているかということを推測いたしまして、また、自由化をやりました商品のその後の輸入動向、あるいは国民嗜好の上の問題等を考えてみまして、そうしてわれわれとしては、その材料の上に立って判断せざるを得ないのでありまして、怪々にどういう金額がふえていくのだというようなことだけは私は申し上げかねると思います。でありますから、十分慎重にそういうデータをできるだけ早い博期にそろえて来年度の経済の見通しを立てて参りたい、こういうふうに考えておるのでございまして、全然来年度の経済の見通しを立てないとは申しておりませんけれども、そういう十分な慎重な態度でやって参りませんと、こういうことがすぐにまた民間経済人の心理にも影響して参りますから、慎重を要することだと思います。
  55. 大矢正

    大矢正君 これは国民はどう考えたっておかしいと思いますよ。いいですか藤山さん、片一方では設備投資が中心になって経済が過熱をし、そのことのために公定歩合の引き上げを二度にわたって行ない、いいですか、そうしてどんどん中小企業が今倒れているのですよ、経済金融引き締めその他を通じて。そこへもってきて、国産品の奨励だといって、なるべく外国の品物を使うな使うな、買うな買うなといって奨励しているじゃありませんか、そうでしょう。それだのに、今度は逆に外国の品物をどんどん自由化して、どうぞお入り下さいというのは一体どういうのですか。国民は単純に考えてみても、どうも政府のやることはおかしいのじゃないかと、こう考えると思います。ですから、この際、来年の十月に九〇%自由化をするなどという方針は、これはむしろ今までの平常の状態で、経済が過熱をしない状態の中でいわば考えられても、なお自由化はもっとあとのはずだったのです。もっと先の話だったのです。それが景気が過熱をして、金融引き締め政策をされて、さらに経済がデフレ的な動向に入りつつあるというのにどんどん自由化をやっているという根拠は一体どこにあるのですか。
  56. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先ほども申し上げましたように、世界の趨勢に応じて、一昨年の六月でございましたか、自由化は、いわゆる三年間の計画によって自由化を進めていくということに方針がきまったわけでございます。それを本年の六月でございましたか、IMFとの関係がございまして、そうして九〇%の自由化を来年の十月一日から実施する、半年最初の計画から見れば繰り上がったわけであります。われわれは、そういう情勢で、今申し上げましたように、国際的な情勢、そういう情勢の上で自由化の計画をすでに遂行してきておりますので、その上に立って、一体経済の今度の過熱の状態をどういうふうにしてやるかということを考えたわけであります。したがって、今度の抑制策そのものが、方法としては、ある場合には相当きつかった。担保率引き上げ等も、三十二年のときよりもかなりきつい引き上げをやったというようなことでありまして、そういうことが今日までの過去の経過から見ます状況なんでございますから、その上に立って今の対策をとりましたというのが現実でございます。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお答えで十分だと思いますが、通産省所管の立場から少し補足しておきたいと思います。申すまでもなく、自由化が経済の大原則だと、かように申しましても、国内産業を痛めつけるような自由化をする意図は毛頭ございません。逆な表現をいたしますならば、国際競争力のあるものを自由化する、そういう考え方で自由化の品目を整理しておるわけであります。そこで、最近の設備投資のうちに、いわゆる自由化に備えての設備投資なり産業合理化なり機械化なり、そういうことが次々と行なわれておる、こういうことは私ども承知しております。そういう意味から、今回の設備投資に際しましても、そういう産業合理化なり、自由化に備えての設備投資は、これを抑圧しない方法を考え、こまかに注意しておるわけであります。ことに中小企業の面等におきまして、貿易に関係する設備投資などは、そういう意味で指導しておるのでございます。  そこで、もう少し具体的に申しますと、しばしばいわれております対日十六品目、こういうものがアメリカから指摘いたしております。そのうちで最後に残るもの、私どもがこれを自由化しない、あと回しにしておりますものに四品目ありますが、それはたとえば大型工作機械、あるいは大きな出力のある発電機、あるいは自動車、もう一つ電子計算機の大型ですね、こういうものはわが国の産業の状態から見まして、これを自由化をさせるわけにいかない、かような立場から、これはあとまで残っておる、これは非常にはっきりした実例でございます。自動車などは、もうすでに御承知のように、バスだとかトラックは自由化いたしておりますが、乗用車に関しての制限をただいま残しておるわけであります。で、先ほど来九〇%だとか、あるいは七割と申しますものも、十分その産業の力を勘案いたしまして、これならば国際競争にもひけをとらない、こういうものを自由化いたしておるのであります。同時に、また、日本から輸出いたします場合に、いろいろの制限を外国が日本にしておる、差別待遇しておる、三十五条を初め、そういうものが多い。そういう結果から、どうしても日本の国際市場は狭い、こういうことが指摘されております。今回日本が自由化することによりまして、在来の差別待遇に対して、今度はわれわれも対等の立場でこの差別待遇の撤廃を強く要望毛できる、いわゆる国際貿易の市場も拡大することができる、こういうことに相なるのでございます。で、問題は、ただいまこの大事な自由化を控えて設備投資を抑圧することはいかにも矛盾じゃないか、こういう御指摘でございますが、設備投資のうちでも、生産に関する面は、私どももなるべく設備投資を抑制しないように、しかも、また、貿易に関する面で産業自体を強化するいわゆる合理化、あるいは近代化のこの資金は確保していく、こういう立場でございまして、別に政策的には矛盾はしていない、かように私ども考えております。
  58. 大矢正

    大矢正君 輸入の中心というものは、何をおいても、やはりアメリカだと思います。もちろん輸出もそうですけれども、そのアメリカが、先般来質問が出ておりますように、かなりの保護政策を貿易上とっておるようであります。にもかかわらず、日本は、国内の産業が非常に心配をしておるにかかわらず、むしろ自由化を早めているということは、これはとうてい私には理解ができない。ちょうどことしの春、私は大蔵大臣に、景気が過熱しそうな危険性があるときに金利を引き下げれば、むしろもっと景気が過熱をして、国際収支の悪化を招くのではないか、だから金利の引き下げはおやめになったらどうですかと質問したら、大蔵大臣は、いやいや、これは国際比較において金利は日本は高いから、この際やらなければいかぬと、こう言うた。ところが、どうでしょう、こういう今日事態になっているじゃありませんか。と同じように、貿易自由化問題が、本来ならば、今日のようなこういう経済動向の中にあっては、自由化をむしろあとに延ばすのが当然だと思うのだが、積極的に自由化をやろうという政府の態度はとうてい納得できません。しかし、これはこまかく議論やっていると、時間の関係もありますから、この辺で終わります。  次に、総理大臣お尋ねをいたしたいと存じますが、衆議院の予算委員会でも言われたんですが、先般の当委員会の羽生委員の質問にも総理は答えているのでありますが、ことしは非常に景気が過熱して、今引き締め政策がとられている。当然のことに明年もやはり引き締め政策というものをとらざるを得ないだろう。そうすれば来年の経済成長というものは、かなり低くなるのではないかというようなことから、来年はデフレという結果が出てくるのじゃないか。来年はデフレになるのではないか。こういう質問が衆議院においても、参議院においてもなされておりますが、それに対して総理は、いやいやデフレじゃない、デフレにはならぬ、こういう御答弁をされているのですが、そのデフレというのは、一体どんなものをさしてデフレと総理は言われているのか。これをちょっと将来の参考のためにお聞かせ願いたい。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) デフレにはならぬと私は言っていないと思います。デフレにならないようにいたしたいと思っておるのでございます。デフレというのはどうか。これは、極端にいえば、生産も落ちるし、物価も下がるし、賃金も上がらないで下がる。そうして増税とか、いろいろなものの価値の状態が、そうなってくるのであります。  最近はどこの国でも、デフレ政策はとっていないようですが、ただ先般のイギリスの金利引き下げ、六厘の公定歩合の引き下げ二%、そうして教職員の賃金ストップ、そうして間接税の一割増等々とか、これは一つのデフレ施策といえましょう。
  60. 大矢正

    大矢正君 今あなたの言われた、たとえば通貨量が減ってくるとか、雇用が落ちてくるとか、物価が下がってくるとか、生産が停滞をする、もしくは減退をする。こういうことを称して、一般的にはデフレ的傾向に陥ったとか、デフレ状況だとか、こういう説明、これはもう経済の小辞典見ても、そんなことぐらい書いてある。そんな一般論をいうのではなくて、デフレというものにあてはめてみた場合に、アメリカの場合、日本の場合、イギリスの場合、その国の経済情勢経済の力関係によっても違うと思うから、イギリスの場合はこうだから、日本の場合はこうだということは、一律には言えないと思う。  しかし、いずれにしても、経済動向がどのくらいになったらデフレだという、あるいは経済成長の問題や雇用関係や物価の問題や、そういう面から判断ができるのじゃないですか。そういうものができないですか。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう定義は、だれもしておりますまい。私が今申し上げた程度の説明が、いわゆるデフレの説明として通っていると思います。
  62. 大矢正

    大矢正君 だれも私は学者が、そういう定義をしていると言っているのじゃない。それはあなたのおっしゃられるとおり。あなたはどう考えているのかと聞いているのだ、私は。  たとえば経済成長は来年かりに五%だと仮定しても、もしくは五%以下、四%だ、こういう場合には、経済成長からみた場合には、デフレなのかデフレでないのかという議論もあると思いますが、そういう具体的な問題についてのお答えを願っているのです。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済成長率だけで議論することは間違いを起こします。やはり物価の問題、賃金の問題、雇用の問題、通貨量その他の問題等々で考えなければならぬと思います。
  64. 大矢正

    大矢正君 昭和二十九年の年は、これは一般的にはデフレ経済と呼ばれている。デフレだといわれておったのですが、経済成長率というものが、たしか五%前後だったと思うのでありますが、こういう状態に、かりに明年がなっても、経済成長がそういう状態になってもデフレではないと、こういうように判断をするからには、そういうやはり通貨の問題や物価の問題や生産の問題や雇用の問題については、私は昭和二十九年とはかなり違ったような動向が出るのだということを、総理は確信を持っておられると思うのですが、そういう点で、どうですか。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昭和二十九年の状態、三十二年の状態をデフレというかどうかという問題につきまして、議論があると存じます。二十九年の場合におきましても、これは二十九年をとるか、二十八年のいつごろからをとるかということが問題になります。また三十二年にいたしましても、五月に緊急措置をとって、そして十月から黒字になり、そうしてデフレだという三十年にいたしましても、これは総生産は実質で三・四%ぐらい上がっておりまして、そうして物価はある程度下がりました。しかしこれがデフレ政策をとった、デフレであるかどうかという問題につきましては、いろいろ議論があると思います。で、リセッションという言葉が使われますが、アメリカで昨年は行なわている、リセッションと言っておりますが、デフレとは、なかなか言っていないと思います。だから、こういう問題は、成長率がどれだけだからデフレだとか、この程度ならリセッションだと、こういうことを言うのは、なかなか学者でも言いにくいと思います。
  66. 大矢正

    大矢正君 大蔵大臣、あなたにお尋ねしてみますが、先般永岡委員が、この公定歩合の引き上げに伴って、預金金利を一体どうするのだと、こういう質問をしましたら、あなたは、預金金利はさわらないのだと、こういうお話でありました。  そこで、私に言わせると、あなたの御答弁は、かりに今度の場合には、金利を引き上げても、中小企業に対する貸し出しは、これは引き上げないのだから、そういう意味で預金金利をいじることはできないのだという御答弁がありました。  しかし考えてみますと、都市銀行が、中小企業に貸し出している金の比率というものは、先般衆議院の予算委員会で資料が出ておりますけれども、三割程度ですね。あとの七割は全部大企業にいっているわけですね。それからいくと、この際貯蓄奨励を政府が積極的に打ち出しているのでありますから、当然預金金利を引き上げることによって、貯蓄奨励の気持を国民の中に起こさせるのは当然じゃないか。また消費をある程度政府は抑制したいと言っているのであります。個人消費は抑制したい、こう言っているのでありますから、それならばそれに沿う意味において、当然預金金利は考えてもいいことじゃないでしょうか。  それからもう一つ、何回も立つと時間がかかりますから、もう一つ。  大蔵大臣は、先般の御答弁で、やはり預金者に対する保護として、税制上の考慮をすると、こう言っている。税制上の考慮は、一体何か、お答に願いたい。
  67. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 預金金利を引き上げないのは、中小企業に対して金利を引き上げないからできないのだと、そう申したわけではございません。金利水準を引き下げることと、金融情勢に応じて金利を上げ下げするという臨時的な弾力的な運営とは別に考えていいのだと、今度はそういう意味で、預金金利の引き上げを見送ったのだと申したつもりであります。  それで、こういう時でございますから、貯蓄奨励は積極的にしなければなりませんし、預金者の優遇政策というものはも大だと考えておりますので、これについての考えは、また別に持っている。まだ政府部内できまったことではないが、自分の考えとしては、税制で考えたいということは、今何万円まで  三十万円なら三十万円まで、預金の利子課税については、優遇の措置をとっておりますが、これをもっと大幅に広げるという手もございましょうし、そういう点でこの際いろいろ消費抑制というようなことをやる以上は、この抑制された消費部分が、できるだけ貯蓄に回ってくれることが好ましいことでございますので、そういう意味で、頭金金利の優遇というようなことをやりますが、また配当についての問題が起こりましょうし、そういうものを十分勘案して、何らかの対策を立てたい、こういうつもりでおります。
  68. 大矢正

    大矢正君 私は、おそらく大蔵大臣の腹のうちは、そういういろいろな理屈を並べているようだけれども、実際はそういうことじゃなくて、今株式が大暴落をして、いわば株に向かっていた金が、このまま推移すると、銀行預金にみな流れてしまう。ここでもう一歩預金金利を引き上げれば、なおさらのこと、株式に回った金がこっちへ流れてくるから、預金金利はいじらない。そうすることによって、証券業者の方にまず顔を立てて、銀行屋のほうに、預金金利は引き上げないから、総理も認めておられるけれども、一、二厘引き上げることによって、三百六十億円年間利益が上がるが、これは預金金利を引き上げないことによって銀行がもうかる、こういう両天びんを、大蔵大臣も考えているのじゃないかと思う、率直に言うと。私はそういうところから、今度の問題はきていると思う。だからむしろそういう問題に対しては、国が税制上、税金を安くまけてやることによって顔を立ててやろう、政策をやっていこうという方向にそらしていって、証券業者銀行屋にもうけさせるためのそういう考え方があるんじゃないかという気がするけれども、これはまあ議論だから、あなたはおそらく、そんなことないと言われるだけで終わるでしょうから、答弁は要りませんけれども、私はそう考えている。
  69. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういうふうに勝手にきめておられちゃ非常に迷惑ですが、この前もちょっと言いましたように、預金金利が高いというのは、日本の従来からの特殊事情で高かったんですが、いつかこれを下げる仕事をしない限り、日本の金利水準を下げるということは不可能でございます。それで昨年機会を見てこの仕事をやったわけですが、この預金金利を下げるという仕事をするときには、これはやはり金利体系をくずしたやり方をしては、これは影響が大きいので、配当との関係も見なきゃなりませんし、一方貸付金利のほうの、長期、短期の貸付金利の体系も直していかなきゃならぬし、全体として部分的にこれはさわれない問題で、この厄介な問題を去年片づけたときでございますから、できるだけ金利水準を下げるというこの仕事はくずしたくないという考えがあることは確かでございます。  そこで、こういう情勢によって、一時的にでも金利を動かしたら、それに対応する預金金利も上げていいという議論は当然に起こりますが、私どもは、今言ったように、別個の立場からそういう方策は考えることにしても、この際は動かさないときめたわけですが、かりにこれを動かすとしますというと、御承知のように、金利は民間で自由にやれるものもございますし、政府の指導でやれるものもございますが、たとえば郵便貯金というようなものについては、国会できめてもらわなきゃならぬというような問題もございます。で、それらを考えますと、短期間になかなかこの預金金利を体系的にいじるということは非常にむずかしい問題でございますので、私どもは今回は見送ったということでございます。必要があれば、これはまた考えるということはいたしますが、しかし、これを動かしてしまうというと、せっかくの日本の低金利政策というものがなかなかこれはできない。しかも自由化を前に控えて、そこまで恒久政策を変更するということは適当でないと、私自身は考えております。したがって、これはこれでおいて、そうして公定歩合を引き上げたり引き下げたりというような臨機的なこととは別に考えて、これは差しつかえない問題だというふうに考えての措置でございまして、これが証券界に義理を立ててどうやるとか、銀行界にどうこうという考えでやったんじゃなくて、預金金利をいじるということは相当大きい問題でございますので、私どもは慎重になっているというだけでございます。
  70. 大矢正

    大矢正君 あなたは短期で問題が解決をするようなことを言われるが、今度の景気調整という問題は、そんなに簡単に解決できるんですか。たとえば、ことしの年内とか何かに終わる、そんなことじゃないと思うのですよ。総理も言われているとおり、来年の秋、ひょっとすると来年一ぱいは、これは国際収支の面では均衡しないと言われているんですよ。金融もむしろ、これはこのさっきから言うているとおり、十月から十二月の間は比較的財政資金も散超だからいいにしても、明年一、二、三月の揚超期におけるところの金融の逼迫の度合いなんていうのは、想像以上のものがあるということは、銀行屋も経済界も認めていることでしょう。それなのに、その時期に公定歩合の引き上げた分だけとても戻すなんていうことは考えられないし、金利が下がるなんていうことは考えられないでしょう。そうすれば、遠からず一年間はこのままでいかなきゃならぬ問題が出てくる危険性があるんでしょう。短期じゃないですよ。むしろ、あんた、公定歩合はもう一回上げなきゃならぬのじゃないかという説くらい出ているときに、そんな短期で、そういう説が出ているから、だから金利はこの際いじらないほうがいいという議論は、私は納得がいかないのですが、どう思いますか。
  71. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国際収支の回復というものは、相当長期的な対策を要すると、私どもも思っております。しかし、経済でございますから、どういう事情にならないとも限らないことであります。この回復の方向へ向かってきて、もういいというときには、今までの一連の措置を次々と解除していくという場合もあるでございましょうし、ことに金利の問題については、この前総理も言われましたよろに、日本の金利による経済調整力というものが、どれだけ大きい比重を占めるかという問題になりますと、問題は、国際収支の回復というための金融引き締めは、量の問題でございますので、量の調節がうまくつくというときには、これで目的を達するわけでございまして、金利というものの上げ下げということについては、もっと弾力的な考えを持っていいというふうに私どもは考えているのでございますので、これがいつまで続くかということは、そう簡単に予想はできません。情勢によってはそういうこともあり得るというふうに私どもは考えております。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣の御答弁矛盾していると思うのです。国際競争をつけるためには低金利政策をとらなければならぬということを言っているわけですね。全般的に金利を下げなければいかぬ。金利機能というものはあまり重要視していないということを言いながら、金利については非常に重要視しているわけなんです。実際には。だから国際競争やるには、日本の金利は国際的に高いから下げなければいけないというので、前に大蔵大臣大蔵委員会で、強引に引き下げるのだということを言われたのです。私は、当時資金の需給関係からいって、金利は何といったって資金の需給関係からきまるという面が一つあるわけです。そればかりじゃありませんけれども、あの当時下げることは、需給関係からいって無理じゃないかと言いましたら、大蔵大臣は、無理でもなんでも国際金利にさや寄せするために、ここで強引に指導して金利を下げるのだということを言われたのです。当時あの実勢からいって無理だったのです。それを今度、これはまた、ほんとうは上げなければならない、需給関係からいって上げなければならないのに、預金の金利も上げない。前は無理したのです。また実勢に合わなかった。今度公定歩合だけについては、預金金利は上げない、その点については、ただいま大矢委員の言ったように、これは私間違っていると思うのですが、さっき大矢委員が言ったような意図で、株式のほうと、証券業界とあるいは銀行ですか、両方に顔を立てるというように推測されてもいたし方ない、それよりほかにどうも筋道の立った解釈の仕方がないのですよ。政府の金利政策は全く矛盾しているんですよ。いかがですか、この点。
  73. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この公定歩合の上げ下げが弾力的に今まで行なわれなかったことが、むしろ私は間違いであったと思います。これを非常に市大に考えて、一ぺん上げたらなかなかもう下げない、下げたらなかなか上げないということがいけないので、これはもう金融情勢に応じて上げたり下げたり、もっと情勢をこれは気楽に考えて、弾力的にやるべきものだと考えておりますので、将来も私どもはそのつもりでおります。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私の質問に対して答弁になっていないのです。私は公定歩合を言っているわけじゃないんです。ここで私は、大蔵大臣に質問する必要ないと思うのですが、一体、金利というのは何かです。金利は日銀の公定歩合じゃないのです。金利の中心は、預金の貸し出しですよ、これはボリューム一番大きいのです。それを中心として考えるべきでしょう。私は預金金利を言ったのです。前に大蔵大臣は、無理して預、金金利を下げた。それで預金金利は全般の金利に影響するから慎重に考えなければならぬといっておいて、今弾力的に運用しなければならぬ、それはしかし日銀の公定歩合については、前にあまり弾力的でなかったことは、これは世間の批判があったのですよ。預金金利について質問しているのです。
  75. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき申しましたような事情によって、今回は預金金利に手をつけなかったのです。
  76. 大矢正

    大矢正君 これ以上今の問題について大蔵大臣とやり合ってもしようがありませんから、時間の関係上次に移りたいと思います。あなたのおっしゃられることにはとうていこれは納得がいきませんから、いずれまた大蔵委員会その他でもってやり合いたいと思います。  そこで次に、私は石炭の問題に入りたいと思いますが、特に、今から二年前、ちょうど三十四年の十月の三十日に、私は本会議で社会党を代表して石炭問題に限って質問しておりますが、そのときに、当時の総理大臣は岸さんだったのです。大蔵大臣は、今の通産大臣佐藤さんで、通産大臣は逆に今の総理池田さんですが、そのときにこういう答弁がある。政府はすみやかに石炭問題に対する恒久的な対策を立てたい、こういう答弁がある。当時の岸総理がなされておる。それを当時の池田通産大臣も、佐藤大蔵大臣も、同じ席におってそれを認めて、同じような答弁をされておるのです。確かに最近は炭鉱から千人ばかり従業員が上がってきて、総理にも会って陳情をして、そのおりには総理も、これからはもっと積極的な石炭対策を立てたいと、こう言われておりますから、その意味においては私も了承をしますけれども、しかし二年前の本会議で答弁をされたことが今日までなされていないというこの事実は、これはもう政府が責められてしかるべきものだと私は思うのであります。政府が積極的にこれから石炭対策をやってくれるであろうことを私も信じてはおりますけれども、何せこの二年間はなおざりにされてきたという事実だけは歴然として残っているわけでありますから、そういう点について、まず第一に、私は政府に対してなぜ二年間もこうやって放ってきたのか。それから特に総理お尋ねをしているわけですが、これからの石炭対策というものを一体どうされようと考えておられるのかへまずこの点からお伺いしたいと思います。
  77. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 二年前に石炭問題が大きくクローズ・アップしたとき、今までの措置とは違った相当強い措置をとったことは御承知の通りです。ただ従来にない措置をとりましたが、その後の事情がよほどまた悪化してきておることは事実です。だから何にもしなかったということは、私は当たらない。仕方が経済情勢を見て足りなかったという非難に私は受けます。したがいまして、今回はもっと突つ込んだ、もっと相当な変化があってもこれにたえ得るような施策を講ずべきだ、何もしなかったということは少しひどいのじゃないかと思います。
  78. 大矢正

    大矢正君 総理、今の答弁は半分しかない。これからどうするかということ。
  79. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それだから、今までの経験にかんがみて、もっと突っ込んだ、そうしてまた相当な変化があってもたえ得るような根本的な措置を講じたい、これが今後の措置です。
  80. 大矢正

    大矢正君 どうも総理の言うことは抽象的でさっぱり私にはわからないのですが、たえ得るということは、具体的な何か形が出ているのですか、どうすればたえ得るのかいう問題、これは総理が答えないで、だれかほかの大臣が答えるわけですか。
  81. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 総理が離職者の問題をこうしますとか、あるいはスクラップ・アンド・ビルドの問題をこう考えますとか、そういうことはやっぱり所管大臣が答えるべきであると思います。根本のもっと突っ込んだ、根本的な、そうして相当たえ得るようなことぐらいが、総理の答弁として適当だと思います。
  82. 大矢正

    大矢正君 これは総理、あなたの言うことはどうもおかしいと思うのだが、たとえば二年前に私は総理に石炭を中心とした、油を従としたエネルギー政策というものを、政府がこれからも考えていくのかと、これはやはりエネルギー政策の根本ですから聞いたら、当時の岸さんは、そのとおりやっていきたい、それから池田さんも、そのとおりやっていきたいと答弁されているわけです。ところが最近見ていると、現実には油と石炭の比重はほとんど接近してしまって、おそらく一、二年のうちに油の方が石炭を乗りこえて、油の占める比率が大きくなってくる。そうすればこういう根本問題は通産大臣とか大蔵大臣の問題じゃなくて、総理がまず考えてもらわなければならぬ問題だと思うのですが、どうですか。
  83. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 石炭を主にして油を従で考えるということは、取りようだと思います。今、あなたは、石炭と油がほとんどとんとんだと、しかし、経済の見通しを立てる人は、将来石炭よりも油の使用がうんと多くなるということは、もうわかり切っているから、そういう意味の石炭と油の主従の問題じゃありません。あの当時だって石炭五千三百万トンあるいは五千五百万トンでいこうとしておるのであります。油のふえようは、電力のほうがずっと先に伸びるということは、これはだれでも、三才の童子とは言いませんが、ほとんど経済がわかっている人は言っておるのであります。ただ、石炭というものの対策を真剣に考えるということで、油のほうは放っておいても相当輸入も楽にいけるし、油不足ということはない。石炭というものは、石炭自体よりも雇用関係、外資の関係、あるいは安定的なエネルギー源ということから考えまして、分量的に石炭と油とがとんとんだ、石炭のほうが多いというようなことは私は、申した覚えはないと思います。
  84. 大矢正

    大矢正君 これは総理政府が考えている考え方を何も知らない私が質問するならば、今のような答弁でもこれはけっこうだと思いますよ。しかし、私どもがやはり具体的に、衆議院ではどういう議論がされて、二年前から石炭問題についてどういう議論をされてきているのかということ、同時に政府がある程度こういうことは考えているのだということを基盤にして私は質問しているわけですから、たとえば昭和四十五年度あるいは五十五年度になっても国内炭というものは五千五百万トンほどしか使わないというような、こういう態度というものが、それは炭主油従という問題外にまで私はエネルギー分野においては変わってくる、本質的に変わってくると、こういうふうに思うのです。ですからそういう点に対する総理考え方はどうなのかと聞いている。
  85. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは今後の石炭施策によって違うと思います。すなわちスクラップ・アンド・ビルドはどの程度にやっていくか、そうしていろいろな電力、重油の関係からいって五千五百万トンをいつ七千五百万トンにするかどうかという問題は、これは掘り下げてもっと私は研究しなければなりません。ただあのときの考え方は五千五百万トンで三十八年までいこうという考えであったのであります。十年先の石炭問題というような問題は、これは他のエネルギーとの関係もありますから、これは今後研究していかなければならない。私は三十四年当時の状況を言っておるのであります。
  86. 大矢正

    大矢正君 通産大臣お尋ねしますけれども、石炭鉱業審議会が答申をして五千五百万トンという生産目標、需要見込みですか、これに盛んに固執をされて五千五百万トン以上はやらない、出すべきじゃない需要をそれ以上見込むべきじゃないという考え方を固執される根拠は一体どこにあるのですか。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま総理がお答えいたしておりますように、三十八年目標、これが五千五百万トンとなっておるわけであります。で、私どもはただいまの時点に立って考えました際には、まず三十八年度五千五百万トン、千二百円下げる具体的にどうしようか、その努力をしているただいまの段階でございます。将来の、今お話にもありましたように、十年先、二十年先どうするのだ、こういう問題になりますと、いわゆる総合エネルギー対策というものでいろいろ各方面の意見を徴しておりますから、まだ全部がまとまっておりません。総合エネルギー対策のほうでは、まず石炭部会だけ答申をして、ただいま石油関係調査に出かけておるのであります。十一月の半ばになりますと、これが帰って、意見を答申して下さると思いますが、それらのものをあわせてただいま恒久的のものは考えたい、かように思いますが、ただいま、とりあえずの問題といたしましては、二年前に決定をいたしました基本方針、それの具現化に最善の努力を払っておるという状況であります。五千五百万トンの数字そのものについて、あるいはもうすでに五千五百万トンをこしているじゃないか、こういうような意見が一部にございます。一部にございますが、私どもの見る数字から申しますと、そこまではまだいっておらないようであります。ただいまお話でちょっと出ておりましたように、五千三百万トン、さらにそれを二百万トン上げる、そういう場合にはスクラップ・アンド・ビルド、それはどういうふうにするか、同時にまた離職者等に対する対策が十分の手当ができるか、いろいろ関係する問題が多いのであります。あるいは流通機構の面で千二百円をいかにして下げることができるか、これは労使だけの合理化にあらずして、政府もそういう意味ではその責任を分担していく、こういうような考え方で、まず今まできめましたものの具現化と取り組むというのがただいまの段階であります。その観点に立って見ました場合に、それでは雑炭その他を入れて、あるいは六千万トンにいく場合、六千三百万トンにも将来なるかどうか、こういうことを需要の面からだけではなかなか立てかねるのじゃないか、ことに国内炭のいいところは、何と申しましても、供給が安定しておる、あるいは雇用の問題から見ましても、非常に重要基幹産業であるという面だとかあるいは外貨支払いの面から見ても、これは円で済むのだ、いろいろ問題があるわけでありますし、また価格そのものも、ただいまの石油価格が恒久的の石油価格とは考えませんけれども、千二百円下げを計画したときの私どもの予定した石油よりも今安くなっております。そういうようなこともありますので、合理化にいたしましてもやはり限度があるだろう、こういうことでございますから、将来の計画を今とやかく言うことはちょっとできかねる。しかしながら三十八年度に五千五百万トンといっているこの計画だけは少なくとも持続していきたい。これが政府が五千五百万トンにこだわっておる、そういうふうに見られる数字でございます。同時に五千五百万トンのうち、これは恒久的に需要されるというか、そういうものを考えなければならない。大体五千五百万トンといたしました場合には、電力その他で七割程度は長期引き取りの契約をする、そういうことで石炭は今の値段でいきますから、千二百円下げというその結果ののちにおいて、電力その他は七割は必ず引き取る、こういうような計画を立てておるわけでございます。これらのことはしばしば説明をいたしましたので、御了解はいただいておることだと思いますが、私ども五千五百万トンに絶対にこだわっておるというのではございません。ただここで業界を指導し、あるいは組合側の協力を得るにいたしましても、確たる目標を示すこと、これは政府として責任のあることだと思います。そういう意味からただいま実現しておらない五千五百万トンという数字を目標にして、そうしてそれに対する協力を労使双方に求めておるというのが現在の状況でございます。
  88. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連して。あとでまた関連でお願いいたしますが、今の問題だけに限って総理大臣通産大臣に質問いたしますが、将来の問題はエネルギー総合対策部会に諮問をしている、こういうことを言っておられるわけなんです。ところが政府が作っておる総合エネルギー部会では昭和三十一年に二十カ年の総合対策を立てておる、その場合、石炭六千五百万トンと答申されている、さらに昭和三十二年には七千二百万トンの石炭が要るだろうという答申がされておる、その線に沿って従ってきたところが、それから二年もせんうちに五千五百万トン、こうなってきた、大体そういう審議会を作って答申をさせてその線に沿っていくのか。朝令暮改で次々にこういう事態を生んでくるから信用ならない。今度また総合エネルギー対策部会が出した案でも、一年しないうちにまた元のもくあみになって、こういう事態になりはしないか、そういうことがありますので、将来の確固たる考え方総理並びに通産大臣に聞いておかねば、いかに審議会がいい答申をしても、私の持っております資料では、すでに四年前に七千二百万トンの石炭を使わなければならないのだという答申が出ておったはずなんです。その点について御答弁を願います。
  89. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 三十一年、三十二年のお話が出ておりますが、その当時の石油の値段がどうなるかという問題が一つあったと思います。そういう事柄で、当時の計画予想いたしました石油の値段のほうが変化を来たしているということがございます。ただいま私が指摘するまでもなく、消費者の自由選択という原則はとっておりますが、この原則に立つと、石炭は非常にくらい考え方に陥らざるを得ない。しかし、先ほど申しますように、外貨支払いあるいは雇用の面、あるいは安定的供給、こういうふうな面から基幹産業としての石炭というものを維持する、これが政府考え方でもって、これが三十三年度に採用されたものだと思います。三十三年の国内の生産、これは一体どうなっているか、これは一応参考に申してみたいと思いますが、これは四千八百四十八万九千トンでございます。それからさらに三十四年は四千七百八十八万六千トン、三十五年がようやく五千二百六十万トン、こういうふうな数字になっております。したがいまして、ただいまの五千五百万トンというものは雑炭その他も入れれば、あるいは計算によっては六千万トンというような言い方をする方もありまするけれども、今日の目標自身が低いものじゃございません。これを外国の例等で見ると、ドイツなどはたいへん石炭対策に力を入れた国だといっておりますが、これは順次国内炭の出炭量が減る計画でございます。私ども数字の上から申しますと、ただいま説明いたしますように、ただいまのところまだ五千五百万トンに到達していない。その目標が達成し、そうしてその数字を横ばい方向にもっていこう、なお、需給の関係等を見て、それを調節するにやぶさかではございませんけれども、私は大体の見通しをする場合、五千五百万トンの七割の需給計画、長期引取計画を立てるというのが現在のエネルギーの面から見ましてまず考えられる点じゃないか、かように実は申しておる次第でありまして、五千五百万トンに絶対にこだわるというわけではなくて、ただいままだそれまでに及んでおらない出炭の状況でありますから、相当高いものであるということを一つ御理解をいただきたいと思います。
  90. 大矢正

    大矢正君 そうすると、通産大臣、私はこう理解していいんですか。たとえば政府の一部の中には昭和四十五年度になっても、昭和五十五年度になっても、国内炭の需要見込みというものは五千五百万トンなんだという審議会やあるいは政府の一部にある、そういう考え方は、これは今の段階ではとうてい考えておらぬことだ、それはそういうことは全然考えていない、だから五千五百万トンと考えているのは、昭和三十八年度千二百円のコスト・ダウンを大体予定した三十八年度においてのみ五千五百万トンと考えているのだ、こういうふうに理解していいんですか。
  91. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのはちょっとニュアンスが違うと思います。私がただいまとっておる段階は、三十八年の五千五百万トン、これを説明いたしております。同時にまた阿具根さんにただいま御説明いたしましたように、将来のことを考えてみましても、五千五百万トンという数字は、やはり今日私どもがまず考えられる数字じゃないだろうか、こういうことを申しておるのでございまして、将来非常な変化があれば、もちろんこれは考えるところでありますが、ただいまのところの計画、四十五年あるいは五十五年も同様に五千五百万トンの計画というか、一応の数字を策定しておるというのが現状でございます。
  92. 大矢正

    大矢正君 五千中三月万トンであれば、いいですか通産大臣、五千五百万トンであれば将来需給も安定するし、価格の面においてもさほど問題が起こらない、こういうあなたの考え方でしょう、違うのですか。それじゃ五千五百万トンというのはね、五千五百万トンというものが絶対的にいいのだという根拠を抽象的でなく具体的に答えてもらえないですか。
  93. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) スクラップ・アンド・ビルド等をやっておりまして、そうして価格等で一応考えられる合理化の線が五千五百万トン、こういう、声でございます。で、これは基礎的に五千五百万トン出した数字があるわけでございます。それで、どうして、先ほど来議論になります石油のほうが供給が非常に楽じゃないか、まあここの席ではただいまございませんけれども、そういう議論があるわけですね。そして一部では石炭は五千五百万トンは多い。三千万トンでけっこうだ、こういうふうな議論すらあるわけです。それに対しまして私ども考えますのは、やはり供給の安定性なりあるいは雇用の問題あるいは外貨支払いの問題なり、そういうふうなことを考えると五千五百万トン程度の石炭産業は持続すべきだ、こういうただいま結論になっておるわけでございます。で、将来石油が非常に値段が高くなりあるいは供給の道が絶える、あるいはまた石炭の合理化で今日予想しない新鉱が発見される、採炭の能率でも非常に上がってくる、こういうような事態になるとこれはまた模様が変わると思います。けれどもただいまのところで想像される採炭技術の改善その他から見ましても、まああまり多くは期待できないのじゃないか。それでまず五千五百万トンというこの数字が永続的というか恒久的な見通しであるなら、石炭産業そのものとしてもやはり頼る数字があるのじゃないか、この数字が四千万トンになったり、三千万トンになったりするようなことのないように私どもは最善の努力をして、これはずいぶん無理な話なんですが、少しお尋ねのうちにはなかったですけれども、たとえば自由選択なら電力の発電は一キロ当たりで大体二円八十八銭、こういうような数字が出ております。しかしながらこの石炭だとどう見ましてもそれが三円五十銭から四円くらいの見当になる。しかしながらそういうような状態であっても、やはり石炭は先ほど申すような理由からこの数字目標は将来とも続けていきたい、これは私どものねらいなんです。
  94. 大矢正

    大矢正君 まあ五千五百万トンの問題であまり議論をしていればこれは時間がなくなりますから、この問題はいずれあらためて質問することとしても、とりあえず聞いておきたいことは、通産省として、通産大臣、あなたのところの所管として石炭対策として考えられたこれから新たにやられようとする政策、それから今まで行なわれておる政策に対してこれをもっと強化しようという政策、それを具体的に一つこの際明らかにしてもらえないでしょうか。新聞等でも一部ばらばらには出てきますけれども通産省が当面緊急対策として、あるいは来年度からの予算編成の恒久的な対策として考えておる石炭対策の新しいものと、それから従来のもに対する強化策。  もう一つそれからこれは労働省ですが、きょうは労働大臣おられないのですが、労働大臣にかわってお答えをいただきたいと思いますが、労働省のほうには労務者対策を中心とした離職者対策その他雇用問題、こういう点について同様にこの際体系的にお答えいただきたいと思います。
  95. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 石炭対策は先ほどお話がありましたように、通産大臣——私当時大蔵大臣でございましたが、そこで基本的大綱は樹立いたしたわけであります。その際の基幹になりますものがスクラップ・アンド・ビルドであります。いわゆる低能率の炭鉱はこれを整理し、そして炭鉱の能率のあるものを整備強化する、こういうまあ基本方針、で、その線をさらに今回も重点的に力を入れていくわけであります。そうするとその場合において在来から問題になっております。あるいは鉱区の整理であるとかあるいは租鉱権の問題であるとか、そういう問題にもふれなければならないと思います。また流通機構の面で十分対策を立てていかなきゃならない。これが運賃の問題ということになると思います。また最近の情勢の変化によりまして、当時予想いたしましたのが一人当たり二六・二トンですが、この生産目標を最近の事情等から見ると、さらにまだ二トンばかり上げて二八・四トンくらいにしなければ、十分の効果が上がらないのじゃないかとかように実は思います。そういうような点を今度は機械化なりあるいはこの整理についての、事後処理についての適当な予算をつけるとか、あるいはまた産炭地振興の問題といたしまして、産炭地は炭を掘って振興することが第一だと思いますが、低能率炭鉱等におきましてはそういうわけにも参りません。適当な事業が起こるように、同時にまた適当な事業が起こるならばその土地で発電することが最も望ましい形であります。今日までもいわゆる山元発電ということをいたしておりますが、そういう計画も進めてしかるべきだろうと思います。しかしこれはやはり産炭地方に適当な産業が起こらないということには、山元で発電するわけにいかない、山元で発電してそれを遠隔の地へ送電することは、ロスが非常に大きいですから、これは私ども必ずしも賛成しない、そこで出炭いたしました五千五百万トンの七割の長期引取計画を実施する、こういう意味から申しましてもあるいはその揚げ地に発電所を設けることが望ましいのじゃないか、こういうような議論がございます。これは結論が出ているわけではございませんが、そういう議論があるということを御了承願いたいと思います。さらにまた今回の措置をとって参りますと、必ず離職者が出てくる、ことに最近の傾向から見ますと、中傷年令属、いわゆる家族持ち、相当多数の家族を持っている方の離職という問題が起こるのじゃないか。そういう方に対する特別な措置が必要になってくる。あるいはまた最近の炭鉱労務者の賃金カットの問題、これなどいろいろ考えてみますと、賃金のあり方、その適正化、ことに地下数千尺で働く炭鉱労務者のその特殊性を考えての賃金の問題、こういう問題もあるわけであります。いろいろ各方面、各般にわたっての問題があるわけでございますので、これは通産省だけで処理できる問題ではない、かように考えまして政府部内に関係閣僚の石炭の懇談会を持っております。労働大臣や企画庁長官、また大蔵大臣も、かく申す私も入りまして、そうして具体的な対策は樹立するということであります。これが基本的対策だと思いますが、これにはなおエネルギー対策部会からすでに答申を得ているものもございます。各界、各方面からいろいろ検討をいたした具体策等がございますので、それらのものを取り上げて取り組んでいきたい、かように思います。  ところでもう一つただいま当面している緊急性とでも申しますか、緊急性の問題が起きている。それはおそらく中小企業が主体だと思いますが、中小企業炭鉱の面等におきまして、この合理化の千二百円というのはなかなか実現が困難であります。今日まで大体五百円近い値引きができております。さらに今後八百円、三十八年までに八百円の合理化を進めて参りたいと思いますが、これにはいろいろ問題がある。ただいまの中小企業は大体最近の金融引き締め状況等から見まして大へん困窮しておる問題がある。一面大手筋においてもただいま申す目標の炭価のカット、合理化、これを進めておりますので、その面におきましても、いわゆる労使間においていろいろ問題が起きておる、かように実は思います。これらが当面する緊急の問題、そういう意味で近く私も筑豊に出かけるつもりでございますが、本日は労働大臣は筑豊に参りまして、そういう関係大矢さんのお許しを得て出かけたものだと思いますが、そういうことで私どもさらに現地に参りまして実情等も十分視察し、そして緊急的な措置も講じなければならぬだろうと思うし、また基本的な対策等も十分審議をしたい。幸いにいたしまして、当時の基本方策を樹立されたときの通産大臣総理大臣であられますので、そういう意味ではたいへん話もうまく対策も立て得るのじゃないか、かように実は考えております。
  96. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 石炭産業におきます離職者対策の問題が重要でありますことは、大矢委員の御指摘の通りでございまして、この問題につきまして、ただいま通産大臣の言葉にございましたように、労働大臣は北九州に離職者対策の問題につきまして参っておりますので御了承願いたい、かように思うわけであります。  そこで離職者の対策につきましては、県内におきまする一般職業紹介によりまして、再就職の機会をつかんでいただくことはもちろんでございますが、臨時措置法によりまして広域の職業紹介も行なって参っておりますし、また特殊の職業訓練等も行なって参っておるわけでございます。あるいはさらに広域紹介に伴ないますところの宿舎の問題とか、あるいは移動資金の問題、かようなことは御承知のように、炭鉱離職者援護会の業務を引き継ぎました事業団でやって参っておることも御承知の通りでありまして、今後は今日までやって参っておりました援護措置をさらに強化いたしますと同時に、新しい政策というか新しい考え方についても、いろいろ検討いたして参っておる最中でございます。
  97. 大矢正

    大矢正君 通産大臣と労働省から、まあ項目は数あるのでありますが、それがどこまで具体的には石炭対策になるのか、私もちょっとわからないんですが、数は非常にあるようです。しかし内容的にそれがどの程度石炭対策になるのか、私は実はちょっと心配です。そこで三十八年度までに千二百円のコストダウンをすることが、三年間の目標として現在行なわれておるわけでありますけれども、実際問題として千二百円のコストダウンをきめるときの競争エネルギーでありますところの石油との、特に重油との関係におきましては最近の重油の値下がり動向から推して、かりに千二百円下げてみたところで現実問題としては、とうてい重油と価格の面において石炭が競争できるものではないと思いますが、この面は通産大臣どう処理されるおつもりですか。
  98. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 石炭の価格を石油の値段、ことにカロリーあたりに換算して均衡をとれと言われても、これはまずできることではないと思います。しかもエネルギー源でございますから、これが低廉であり豊富であることが産業の基盤であるだけに望ましいことである、これは指摘ができるのであります。そこで私どもこの二つのものを消費者に自由に選択させないで、やはり行政指導によって、先ほど来指摘するようにその出炭の七割程度を長期引き取りをさせる、それによって産業の基盤が確立するのじゃないか。そういう場合にまず重油について関税を上げる、そうして重油の価格を引き上げたらどうか、こういう御意見もございます。もちろん私どもも研究しないわけでもない、ただいまそういう意味で外国に調査に出かけておりますが、その調査団が帰りましたらそういう点でも意見が聞けると思います。しかし私どもが大まかに見ますと高い石炭は高い石炭・安い重油は安い重油、これを両方ミックスして使うことによって、高い石炭だけを使ったときよりもコストダウンができる方法があるのではないか。それが私どもは産業を指導する上において、長期引き取り等を指導できるゆえんだと思うのです。これは石炭だけ使えという無理を申せば、必ず電力が非常に高いものになります。しかしながら一部安い重油を使う。そうすると発電総量としては高いものと安いもので、そしてモデレートなコストになる。こういうことをやはりねらうべきではないか。これが大まかに申して、ものの考え方だと思います。政府がしばしば今日まで申しておりますのは、千二百円下げという基本的なものはぜひとも御賛成を願いたい。ただ、いま千二百円を変える考え方はない、これは労使双方ともこれに協力していただきたいと思いますが、第一段の三十八年度までにそういうものが実現したのちに、さらにどういうことをするかということはただいまのところではございません。ございませんからただいまのところでは今の高いものと安いもの、それを総合して使うことによってエネルギーのコストダウンを考える。言いかえますれば高い石炭と重油を価格の面で競争さすようなことをしない方が本筋ではないか。こういうことが産業のあり方として望ましい姿じゃないか。かように思います。もちろん石炭業自身もさらに工夫のできるものは工夫を願いたいと思いますが、先ほども申しますように新しい鉱床でも発見されて非常な成績を上げることができれば、私どもが五千五百万トンにこだわる必要はないということを申し上げたのですが、そういうものだと考えております。
  99. 大矢正

    大矢正君 通産大臣ね、三十八年度で千二百円下がっても、なおかつ三十九年度以降値下げのためにまだまだ大幅な合理化、コスト引き下げのための合理化対策をやらなければならないわけでしょう。石炭対策としてその点は。
  100. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 産業はひとり石炭といわずあらゆる部門におきまして、たえず合理化なりあるいは近代化なりというか、能率を上げることが工夫されていると思います。だからただいま一応石炭対策としてきめましたものも一応の目標である。だからそとまでいったら一切出ないのだ、こういうものでは私はないだろうと思います。これはやはり産業そのものとしてはたえず工夫していく。しかしその工夫をする場合に、はたしてその工夫をしたが、さらにこれを下げ得るかどうか。ただいまの状況ではなかなかそういう名案が見つかっておらない、というのが今日の時点における考え方であります。また三十八年度になりまして、それまでに新しい技術が導入されれば、これはまた別だと思います。あるいはしばしば言われておりますように地下で直ちにガスにする方法ができるか、あるいはただいま水圧採掘の方法も一部実施しているようですが、新しい採掘技術ができる。あるいは石炭の使い方が新しくなる。これはもう別の問題だと思います。これはひとり石炭ばかりではございません。あらゆる産業においてたえず工夫されている。かように御理解いただきたいと思います。
  101. 阿具根登

    ○阿具根登君 その意味はわかりますが、通産大臣に御質問いたしますが、政府は五千五百万トンに頭を押えて、そして千二百円単価は下げろ、一人当たり二六・二トン出せ、ここまできめればおのずからそれでは人件費はどのくらいか、あるいは資材費はどのくらいかということが、はじいてあるはずです。そうじやなかったら頭はぴしゃっと押えておいて、能率もきめておいて、そしてこの前の国会でも問題になりましたように、千二百円下げろと言っている口の下から政府は運賃を上げたじゃないか。トン当たり六十円どうするのだという質問をしたけれどもそれに対する対策は政府はとうとうしなかった。そしてその結果はどうかというと、二六・二トンをもう一トン上げちゃどうか、もう二トン上げちゃどうかということを言っている。一トン上げれば七千人の首が切られることになる。二トン上げれば一万五千人の首が切られることになる。そういうふうに上も下も率もぴちっとワクにはめておいて、そして労使を争わせておいて、そしてしかも今日のような状態に追い込んでいる。私どもは一千人の陳情者に聞いてみましたが、これで政府が私たちの言うことを聞いてくれなかったらもう私たちは打つ手がございません、大阪のスラム街で問題が起きましたが、それ以上の問題が炭鉱で起きましょう、責任は皆政府にあることです。こういうことを言っておるわけです。そうすると、政府は出炭の軍をきめ、能率をきめ、価格をきめ、それできめつけてしまうならば、おのずからその出炭の率によって人数はきまるわけです。十七万なんぼか数字を持っておりますからあとで申し上げてもいいのですが、そうすると、それに対する待遇は一体どう考えているか、こういうことになるわけです。一体どういうふうに考えているか、なぜ一万円も賃金が下げられなければいかぬか、その点御質問申し上げます。
  102. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 石炭に限っては、これはもう阿久根君御承知の通りに、マスプロと申しましても限度がございます。だからこれが五千五百万トンが六千万トンになればもっと安くなる、こうは必ずしも言えないだろうと思います。問題はそこなんです。それと先ほど数字を説明いたしましたように、ただいままだ五千五百万トンの出炭には到達しておらない。だからしたがってこれを五千五百万トンに上げることが、現状において直ちに一トン上げることが七千人の首切りだ、こう即断ててしまうこともいかがと思います。ここらに私は労使双方の工夫が要るんじゃないか。したがってその石炭が、先ほども大矢さんにお答えしたように、事情が変わってきて非常に安くなるならば、これを自由選択にほおっておいても必ず使うと思います。またそういうことであってほしい、そういう意味の合理化は今後も続けてほしいと思います。しかし私はどうもお互いの持っている知恵から見まして、急速にそういうような事態が来るとは思えない。だからそこで五千五百万トンにこだわるわけではないので、三十八年度の出炭目標、まず第一の目標はひとつ実現したい、これが私どもの念願であると、そういう意味の御協力を願っておるわけであります。  そこでただいま労働問題というか対策のお尋ねがございましたが、これで今まで私どもが組合の諸君と会い、あるいは経営者の諸君と会って双方の話を聞いてみますると、どうも炭鉱労務者の特殊性というものについての理解をぜひとも深めてほしい。そこで最低賃金制も中小企業に対するものと違っての最低賃金制を考えろ、こういうような御要望が強く出ている。これは私どもここで数字を申し上げてもいいのでございますが、これは労働大臣の耳にも入っております。また今後退職する者が必ず中高年層にいかざるを得ないだろう。ことに炭鉱自身が将来とも五千五百万ント以上の炭が出るということになれば、基幹産業としてりっぱにできていくところであるから、これならば若い人をも引きとめ得るんだ。こういうようなお話しが出ておるわけであります。だから私ども先ほど来のお答えで誤解はないだろうと思いますが、一部で申しておるような、これを三千万トンに切り下げろ、こういう説にはもちろん賛成しませんが、ただ今一部炭鉱の方々が、雑炭その他を入れれば相当な数になるのだ、それをどうして五千五百万トンにカットダウンするのか、こういう説にも賛成できないのです。先ほど申しましたような基本的数字を根拠にしての立案でございます。そういう意味でこの対策を進めていきたい。だから今労働省自身といたしましても、そういう意味で炭鉱労務者についての考え方を現地に行って、事実を見てくる、ことに一番問題になるのは、今廃山した山が、やめてしまったそういう整理でなくて、スクラップ・アンド・ビルドで廃山してしまいます。そういう場合の失職者の行く先きというもの、これは若年も中同年もない、全部でございます。こういう方々に対する何らかの処置がなければならない、こういうところにただいま私どもも腐心している、そういう対策に腐心しているのが実情でございます。
  103. 阿具根登

    ○阿具根登君 そこで、通産大臣も御存じのようでございますが、今、炭鉱労働者の平均年令は大体三十七才を越したと思うのです。そういたしますと、今のような状況で進むならば、今後石炭の需要がふえてくるということになっても、これは石炭産業自体にもう若い労働者はおらないということだ。これは労働省一番御存じですが、西独なんかに行けば同じように、日本と違って海を越えてこない、パイプで油の来るところでは、これは炭鉱の労働者は足らないのです。だから日本の労働者もドイツに行っている。そういう傾向が私は起きてくる、こう思うわけなんです。だから、今手を打っておかねばこれは将来の炭鉱問題についてもたいへんなことになってくる。御承知のようにスエズ運河が一つ国有になれば日本の燃料会社は大騒ぎしなければならぬ、こういうように外国に依存している。ただ自由経済だ、自由貿易だという名のもとに、日本の石炭業界がこういう状態にあるということは、私は相当考えなければならぬのじゃないか、こう思うのです。  それから、総理大臣にこの際御質問申し上げますが、今、総理大臣を長にして非常に政府が石炭政策に真剣に取り組んでおられることは、私も了承いたしております。なおまた労働大臣が現地に行っておられることも知っております。今後大蔵大臣通産大臣が行かれることも知っております。そうしておみこしを上げておられることも承知しておりますが、その結論がいつごろ出るのか、あるいはその結論の出る前に重大問題が起きてきはしないか、こういう考えを私持つわけなんです。とするならば、それだけ政府も石炭問題について力を入れてここまできたならば、その結論の出るまで労使の紛争がないように、極端にいえば、首切りしないように、極端にいえば賃下げしないように、その期間だけでもはっきりこれをとめる意思があるかないか。そうしなければならぬと私は思うのですが、総理大臣お尋ねしておきます。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 問題が起こってそれを処理しようとしているのでございますから、その問題がこれ以上悪化しないようにしなければいけません。したがいまして、お話しのように労働大臣も現地に参りまして、ごく最近に通産大臣大蔵大臣にも行ってもらって、そうして首切りが行なわれないとか何とかいう問題じゃなしに、困られたところ、たとえば中小企業の金融を早急にどうするか、こういう万般のものを現地に行ってもらって策を立てたいと思います。重要な問題でございますから、いろいろな事情を未然に防ぐよう万全の措置をとりたいと思っております。
  105. 阿具根登

    ○阿具根登君 私はあと一言で……、未然に防ぐような万般の措置といわれるけれども、こういう情勢の中にあって政府も抜本的な政策を立てつつある。だからその結論が出るまで会社は首切りとかあるいは賃下げということをやめなさい、こういうことは言えないのですか。
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 具体的な問題につきましては、現地を視察いたしまして、所管大臣等が打ち合わせしてからとるべきであって、私はここで首切りはやめなさいとかいうことは研究の上でないといかぬと思います。ただ答え得ることは、できるだけそういうことの起こらないように、金融の道をつけるとか、話し合いをつけるとかすることが適当な方法だと思います。
  107. 大矢正

    大矢正君 通産大臣にお伺いをしますが、聞くとこによると、これは特に通産省の中に先ほどから言われているようにスクラップ・アンド・ビルド方式、従来の方式政府はこの際強化して、数量的には従来の六百二、三十万トンに対して、それと同等くらいの数字を画度これで買い上げ炭鉱にして処理したいという考え方があるようであります。もしこれが事実であるとすれば、しかも大体三十九年度までにその整理を完了したいというような方針も同時に出ているようでありますが、前の六百二、三十万トンですか、整理のときには、これだけで約三万人の人間が完全に離職しているわけです。そこで次に新たに六百万トン以上を買いつぶすことになりますと、これまた三万人以上の人間が整理される格好になるわけです。しかもその期間は三十八年、三十九年と、わずか二年間のうちに、三万人以上のこれだけで離職者が出るという結果が出て参ります。もちろん離職者はこれだけではなくして、大手初め中小の生き残った炭鉱の合理化によるところの犠牲もかなりあると思いますが、そうなって参りますと、非常に離職者が集中をする結果が出て参りまするし、少々の離職者対策では、もう再雇用の機会がないことになるんじゃないか、こういう心配がありますので、私も、今ある炭鉱を全部これをそのまま生かすことが必要だと、ここまでは申しておりませんし、その気もありません。当然、政府が言う通り、あれでは採算がとれない、年令もないような、そういう炭鉱については整理しなければならぬであろうことは、私も認めますが、しかし、今通産省が考えているような、短期間にこれをやろうとすることを認めるわけにいかないのです。それをやれば離職者が集中して、収拾のつかないことになりますから、通産省としては、同じ買い上げにしても、もっと長期の期間をかけてやる、買い上げをするというような方向で問題を処理すべきじゃないか。かりにその期間において、採算がとれない赤字の炭鉱があった場合、どういうふうにして政府の応急措置をとるかということは別問題としても、かりに離職者として出して、その人たちに対して離職のための、たとえば失業保険であるとか、あるいはまた生活資金であるとか、そういうものを出すことも、それから、かりに炭鉱をそのまま継続しておいて、恒久的にではないが、やらしておいて、それに対して政府があらゆる面から協力することも、結果として同じでありますから、そういう意味において、私は、むしろ通産省の場合は、考え方をこの場合改める必要性があるんじゃないか。こういうように考えておりますが、通産大臣見解を承りたい。
  108. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま御指摘のように、第一回、六百三十万トンの買い取り計画をいたしました。そうして、ただいま残っておるのが、約二百万トンまだ残っております。で、最近の情勢で、事務的にいろいろ調べている点があるやに聞いておりますが、最終的な決定ではございません。問題は、通産省で将来のことを見越してのスクラップというか、そういう買い取り計画と、やはりそれに対する対策、これが万全でないとこれはたいへんな社会問題であり、政治問題でございますから、その点は私どもも考える余地があろうと思います。しかし、もちろん買い取り計画、つぶす計画を進めて参ります場合に、具体的な対策など十分検討いたしまして、そういう問題を起こさないようにすることが政治の責任であろう、かように思っております。ただいま、あらためての六百万トン云々、これははっきりきまったものではございません。しかし、どうも実情等から見ますると、中小炭鉱等は、将来の見通しなど立てますと、そういう必要を、やめていく必要があるようでありますし、大きい山ももうすでに寿命のきたものがあるのでございます。最近つぶれる炭鉱の中に入っておると思いますが、大手住友の忠隈炭鉱なども寿命のきている山でございます。そういうものに対するあとの処置、これが問題だろうと思いますので、その辺ひとつ十分監視を願いますが、私のほうも対策に万全を期したい、かように思います。
  109. 大矢正

    大矢正君 大蔵大臣にお伺いしますけれども、かりに石炭対策というものが、まあ石炭産業に対する対策はもちろん必要であるけれども、それこそ総合的な対策が必要になってくるわけでありますが、特に価格競争の面においては、油との対比ということは、これはもうゆるがせにできない重要な問題だと私は思いますが、そういう意味で、やはり政府も関税をきめるにあたりましては、いろいろお考えをされてきめたことだとは思いますけれども、この際、非常に重要な雇用問題をかかえている石炭産業の問題でありますから、ある一定期間だけはやはり関税で価格の面の多少なりともカバーをする、そのことによって、石炭だけに限らず、石炭の産業を立て直すための、そのためのいわば、何といいますか、負担を、あらゆる産業の、油を使う部門にも、この際負担をしてもらって、そういう中で石炭産業を立て直す、こういう方向が私は好ましいのではないかというふうに考えますけれども、関税問題をいじられるお考えがないかどうか。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は、やはり石炭対策を考究するときの一つの研究事項でございますので、今関係者と検討いたしておるところでございます。
  111. 大矢正

    大矢正君 検討しているだけじゃ答弁になりませんが、時間もありませんから次に移らしてもらいます。  通産大臣、ボイラー規制法の期限切れの問題につきましてお伺いいたしますが、石炭鉱業審議会の答申の中には、ボイラー規制法は期限が切れた、この際絶対に再延長はすべきでないという強い何か審議会の結論が出ているように私は聞いている。そういうふうに私も実は考えておりますが、これはどうでしょう。ボイラー規則法というものは、今日非常に重要な役割を果たしていると私は思うのでありますが、この面は、審議会の答申どおり、期限が切れたらやってしまおうというふうにお考えでしょうか。今すぐの問題ではございませんけれども、やはりそういう問題についても政府の恒久的な、総合的な方針がないと、石炭界においても安心ができないと私は思うのです。そういう意味でひとつお答えをいただきたい。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 答申の出ていることは御指摘のとおりであります。答申が出ております。政府というか、通産省がただいまやっておりますことは、電力業界を初め、その他の業界と話を進めまして、行政指導で長期引き取りの方法をとっております。しかし、それ自身が不安だ、こういうような一部の御意見もあるやに聞きます。したがいまして、ボイラー規制法の今度の処置も、答申どおりになりますかどうか、もう少し研究さしていただきたいと思います。
  113. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 大矢委員にちょっとお諮りいたします。  衆議院のほうから、大蔵大臣をこの際、大蔵委員会で御質疑を申し上げたいから、御都合を願いたいということをしばしば言っておりまするので、大事な問題でございまするから、十分御質問を願いたいのでございまするが、あなたの大蔵大臣に対する御質問があれば、この際お願いをして、できるだけ御融通を願いたいと思うのでございます。
  114. 藤田進

    藤田進君 議事進行について。今、寄り寄りその件につきましては、与党のほうの御要求もあり、やっている最中であります。ただ、一言この際申し上げておきたいのは、私ども大矢委員の質疑は、大体十二時を予定してわが理事会はいたわけであります。なぜおくれたかといえば、衆議院のほうで今朝総理の出席を求められた様子であります。開会が非常におくれてきたわけであります。それをこの際、おくれているのはけしからぬ、大蔵大臣早く回せとおっしゃる。衆議院のほうでも少し御反省をいただきたい。  なお、委員長の御希望の線には沿って、おそらく大矢委員は質疑をせられるでありましょうが、しかし、今申し上げた趣旨を十分体して、委員長は運営をはかっていただきたいと思います。
  115. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 藤田委員の御発言はごもっともと思います。大臣政府委員はもちろんですが、われわれ委員の中にも、出席がおくれたために、開会がおくれましたこと、まことに遺憾に思いますが、ただいま非常に大事な質疑を行なっておりまするので、その方面に時間をお使い下さることは、若干時間が経過しても、これはよいと思いまするが、どうぞ藤田委員のお話のとおり、大蔵大臣に対しましては、できるだけ御都合をお計らい願いたいと思います。  大矢委員の質問を続けていただきます。
  116. 大矢正

    大矢正君 労働省にお尋ねをいたしたいのですが、これは、今までの離職者数というのは非常に大きな数に上っておりますし、それから今、通産大臣のお答えにもありましたとおり、これからまた買いつぶし、その他によって新たに発生する離職者数というものもかなりの数字になります。そうなって参りますと、それを実際的に受け入れなければならぬと申しましょうか、その再雇用を考えなければならぬ、その生活保障を考えなければならぬ労働省の立場においては、かなり私は問題点が多いのじゃないかと思うのでありますけれども、それについて具体的に労働省としては、これから新たに発生をする離職者に対しては、生活の面においても、再雇用の面においても十分の措置ができるとお考えになっておられるかどうか。
  117. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 先ほど御答弁いたしましたように、従来、労働省として、炭鉱離職者の就職のあっせん、あるいはその他の措置につきましてやって参っておりますることを拡充強化いたしますと同時に、新しい施策につきまして、ただいま検討いたしておる最中でございますので、新しい施策につきましては、しばらくの間猶予願いたい、かように思うわけでございます。ただいまの御質問の御趣旨の・労働省といたしましては、生活の不安のないように、また、再就職の機会を十分得られるような最大の努力をして参りたい、かように考えるわけであります。
  118. 大矢正

    大矢正君 何を聞いても、ただいま検討中でありまして、具体的な答弁は一つもないのですよ。その点は私も非常に遺憾だと思いますが、おそらく、意識的に答弁をされないだろうと私は想像しているのです。これ以上あなたに聞いても仕方がありません。  大蔵大臣、具体的に、石炭対策というものは、すべて金の要る問題なんですね。これは、離職者対策にしても、あるいは石炭産業の合理化にしても、金の要る問題なんですが、そこで、来年の予算ができ上がる三月三十一日以降まで問題を持ち越せるならば、私はそれでいいと思いますけれども、そんなゆうちょうなもので私はないのじゃないかと思うのです。やはり今日、離職者対策の問題についても、あるいは石炭産業それ自身に対する対策にしても、手を打ち、資金的な裏づけをしていかなければならぬ問題がかなりあると思いますが、もしそれをやる場合に、一体どうやってやるのでしょう。たとえば、補正予算を組むこともあるでしょうし、あるいは予備費を使うこともあるでしょうが、予備費といえども、災害が非常に激増している今日におきまして、なかなか石炭対策まで回るかどうか、実は心配のあるところですし、補正予算にしても、今政府が出している補正予算には、もちろん石炭対策は出ておりませんから、もしやるとすれば、新たな補正予算を組まなければならぬ。しかし、国会はもう三十一日で終わってしまうということになるわけです。かりに、あなた方がこれから対策を立てられて、はたしてこの臨時国会に、応急措置としても間に合うのか間に合わないのか。間に合わないとすれば、具体的にどうされるのか、お答えを願いたい。
  119. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき労働省から検討中と答えたことについていろいろ御意見がございましたが、そのとおりでありまして、実は、石炭に対する閣僚協議会において、当面すぐに各省間で検討すべき事項というものをきめまして、それによって、たとえば離職者対策、中小炭鉱への金融の問題、運賃の問題、そういうようなものは、さしあたり関係省で結論を得ようという相談のもとに、今関係省でそういう問題を一つ一つやっている最中でございますので、近いうちに結論は出すつもりでございます。それまでは検討中でございます。
  120. 大矢正

    大矢正君 おかしいですね。対策は検討中だが、当然金の要る問題だから、金が要ることになった場合に、あなたはどうされるかと、僕は聞いているのです。
  121. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その対策によって、どこへどういう金が要るかというような問題も出て参りますので、それによって、私のほうは考えるという立場で、今具体案を各省間で練っているところでございます。
  122. 大矢正

    大矢正君 自治大臣にお伺いしますけれども、最近の炭鉱がある市町村の財政状況というものは非常に悪化しておることは、あなたもおわかりだと思います。ことに、北九州地帯における町村のごときに至りましては、町財政の四割から、ひどいところになると六割ぐらいまで生活保護、失対事業に食われてしまって、あとは人件費だけで精一ぱいだという町村もあるように私は聞いております。これは非常に町村財政の点から見ますると、石炭問題というものは重要な問題であります。しかし、石炭の問題をあなたがやるわけじゃありませんから、その面は別といたしましても、具体的に、そういう非常に財政上困難を来たしておる地方自治体に対して、あなたのとられようとする措置は、はたしてあるのかどうか。あるとすれば、どんな措置があるのか、お答えいただきたいと思います。
  123. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 石炭対策につきましては、今、種々御問答がありましたし、また、自治省としましては、地方団体が政府の進めておる政策に順応いたしましてできるように、行政のやりくりができる、あるいは地方団体固有の財政を保持できるように、できるだけ配慮をいたしたい。たとえば、三十五年の例といたしましては、鉱害対策費、あるいは緊急、就労対策費、また失業対策、あるいは鉱産税の減収補てん、生活保護費、こういったものに対しまして、それぞれ特別交付税を配付いたしております。なお、起債につきましても同様に、起債ワクを拡張して財政補てんをしておるわけであります。今後新しく特別交付税としては約八億程度のものを、それぞれの関係団体に出しております。起債にしましても二億六千七百万円程度のものを出しております。それから新しい施策によって必要とする財源は、十分これからも勘案してあっせんをするつもりでおります。
  124. 大矢正

    大矢正君 時間が参りましたので、私の質問を終わりますけれども、特に石炭対策の問題は緊急を要する問題であると同時に、将来を見きわめて、やはり恒久的な対策を立ててもらわなければならない重要な課題でもありまするし、それから、わが国の雇用問題の上におきましても、それからわが国エネルギーが外国資本に占められるという経済上の問題からも、非常に重要な意義を持つものでございますから、政府としてもすみやかに、しかも慎重に検討されまして対策を樹立していただきたいことを最後にお願いしまして、私の質問を終わります。
  125. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 以上をもって総括質疑通告者の発言は全部終わりました。総括質疑は終了したものと認めます。  午後の再開は一時五十分といたします。  休憩いたします。    午後一時八分休憩      —————・—————    午後二時二十四分開会
  126. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) これより予算委員会を再開いたします。  一般質疑に入るに先だちまして、一言申し上げます。  予告をいたしてから三十分余を経過いたしました。主として大臣出席の遅刻からでありまするので、この際特に御注意をいたします。田中一君。
  127. 田中一

    ○田中一君 災害に関連する質問をいたしますが、最初に、今回衆議院に提案されておりますところの水資源公団法並びに水資源開発促進法、この二つの法律案がどういう経緯で前国会並びにこの臨時国会に再び提案されたか、そして、閣内における調整という点もどういう形で行なわれたか、経済企画庁長官から最初に伺っておきます。
  128. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 水資源促進法案と水資源公団法の二つは、かねて御承知のとおり、水資源の利用という問題が日本経済開発の上で非常に大きな今後の課題になって参るのでありまして、これを合理的に、しかも有効に活用する道を開いて参りますことは、工業発展の上に  今日日本の工業がいわゆる重化学工業に構造を変化しつつある時期において特に重要だと思われます。したがいまして、そうした道を開いていきますと同時に、水道方面あるいはその他水を農地方面等にも利用する場合に、十分これを有効に活用する意味でこの法案の必要が迫られてきておるわけであります。したがいまして、政府といたしまして前国会に提案をいたしまして、そうして審議途中に終わったわけでありますが、今回の国会におきましてもこれが急速に御審議を願って、そうして将来の備えにして参りたい、こういうことで提案しておる次第でございます。
  129. 田中一

    ○田中一君 そういたしますと、現在提案されておりまする法律案いわゆる水資源公団によって、水資源の開発ということを全部の河川に対してやらせるというお気持でいらっしゃるのか、その点をもう一度伺います。
  130. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 全部の河川というものを当面考えておりません。利根川、淀川等の重要な工業地帯の水を利用する方面についてまず第一に考えている次第でございます。
  131. 田中一

    ○田中一君 中村建設大臣伺いますが、一体今回提案されている法律案の目的というものは、これは水の管理をしようという点にウエイトを置いているのか、あるいは建設しようとするのか、どちらに建設大臣は考えておられるか、伺います。
  132. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 結局水資源の総合開発を行ないまして、洪水の調節等、水の管理ということも一面考慮に入れ、また他面水の合理的な利用ということも含めまして、この二つの大きな目的を果たそうとするのが、促進法及び公団法の使命であります。
  133. 田中一

    ○田中一君 従来まで治山治水十カ年計画を前国会できめ、そしてその効用、利用の面も相当大幅に前進する形になっておりますけれども、今までの各省の持っておりますところの方針では足りないという点は、どこが足りないということを考えられて、今回の提案になったのか、もう一度伺っておきます。
  134. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 先ほども御意見がございましたように、すべての河川について、この促進法及び公団法を適用していこうというのではありませんので、現に水の非常に逼迫しているところ、あるいは将来逼迫する可能性のあるところ、あるいはさらに工業地域として開発をされるようなところで水の需要程度の高いようなところについて、水系別に内閣総理大臣が審議会の議を経て指定して行なって総合開発を進めてゆく、こういう建前でございまして、従来からの治水計画としましては、やはり多目的ダム等によりまして洪水調節を行ない、一面水の利用ということを治水事業として考えておるわけでありますが、しかしながら、水の重要性というものは一そう時代の進運とともに高まってきておりますので、できるだけこれを従来のような農業用水とか、あるいは上水道でありますとか、あるいは発電用とかいうことだけでなしに、すべての水の需要というものに対してこれに対処する総合的な開発促進をはかろうというのがこの両法案の使命であると考えております。かような角度に向かいましてできるだけ水が高度利用され、しかもそれが総合的に活用されるように進めて参りたいというのが今御審議をいただいておりまする両法案の目標であると考えております。
  135. 田中一

    ○田中一君 そういう目的でやっておられるのだろうと思いますが、一体水に対する水の行政権と申しますか、管理権と申しますか、各省大臣はこの水の行政に対してどういう見解を持っていらっしゃるか。農林大臣は農業用水というものが慣行水利権として優先するものであるという考え方に立っているのか、建設大臣は河川の行政権、管理権の元締めをしておりますけれども、利用の面につきましては今までも、現在までの政府としても、もうこれは幕府時代から水の問題に対しましては一番大きな政治問題として取り扱われておるものなんです。ところがこれに対して常に水の分け取りということが行なわれておる。その分け取りから来るところの政治上の貧困というものが今度のような形の水資源公団等の行き方になっておると思います。  そこで伺っておきたいのは、従来とも災害時においては電力会社は単独で自分の方の施設その他を災害から守るために放水をするというような事例がたくさんございます。慣行水利権としての農業用水は、これは時期的なものでありまして、必要なときにほしいものである。しかしながら発電に要するところの水というものは、これは必要な時期にのみこれを求めておりますが、それを今言うとおり災害時には何ら農業その他に関係なしに放水しておるのが現状なんです。そこで今この二つの法律案によって考えられようとする水行政に関しては、管理面につきまして何かの態度、政策をきめておるのか、ただ事務的なそういう管理面におけるところの総合的な立法化と申しますかをきめておるのか、災害から守るための管理方式というものをきめておるのか、その点を経済企画庁長官並びに各省大臣から伺っておきます。
  136. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 公団法の中に管理規程を作りまして、そうしてそういうような災害のとき、あるいは常時でも遺憾なきよう期して参りたい、こういうことに考えております。
  137. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 今回の公団法の中におきまして、水資源総合開発に関する施設ができましたら、その施設の管理規程を水資源開発審議会の議を経、また主務大臣の認可を経ましてきめて参りますし、これを決定いたしまするには、都道府県知事、関係行政機関の長に協議をいたしまして、そして万全を期した管理を遂げていこうという建前にいたしておるわけで、従来の場合よりもさらに一そう前進するものと私ども考えております。
  138. 田中一

    ○田中一君 今経済企画庁長官は宇治川または利根川にはとりあえずこの方式でもって水の総合利用のための仕事をしようというお考えでありますけれども、他の河川はどうでしょう、それ以外の河川。
  139. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ただいま私が申し上げたのは、とりあえず公団が発足いたしまして、審議会等の議を経て、そうして地点をきめて参るわけでありますが、一応水利用の問題が今日一番重要になっておりますところは利根川水系もしくは淀川方面だと、それ以外の毛のにつきましても当然考慮いたしますし、あるいは審議会等におきまして、順を追うて公団が仕事をするというような段階に入ると思います。
  140. 田中一

    ○田中一君 これはちょっと私も意外なんです。その御答弁は。そういたしますと、今おっしゃっている利根川、宇治川のほかに、審議会の議を経れば、どの水域もやるというお考えなんですか、それはどうなっておるんです。先ほどはとりあえずこの二法案の仕事をするところは利根川、宇治川等にやるんだと言っておるけれども、他の河川、いわゆるたくさんダムがございます。たくさん現在動いておりますところのダム群ですね、これに対するところの管理の問題はどういう考え方かと伺っておるんです。
  141. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今申し上げましたように、公団が発足いたしまして、すぐにどこを着手するかということについては、審議会の議を経て決定してゆくわけでございますけれども、現状においては水の最も合理的に利用を必要とする、また利水においていろいろな必要を感じておりますような地方といえば利根川もしくは淀川、あるいは木曾川、あるいは九州の北部地帯というようなことに相なってゆくと思うのでありまして、そういう点から見て今申し上げたようなところは取り上げられてゆくんじゃないか、しかしこれが取り上げられましても、将来財政事情その他の状況により、公団の運営状況によりまして逐次他の方面にもむろん手を伸ばすわけで、これに限られた問題ではございません。
  142. 田中一

    ○田中一君 一体公団によらなければ、公団方式によらなければ水の利用ができないという根拠はどこにございますか。なぜ公団方式をとったかということを一つ御答弁を願いたいと思います。
  143. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のとおり、水資源の開発をいたしますためには、都道府県、各県に相当関係がございまして、一つの県だけではございません。そのほかに、なお資金面においても弾力性を持って活動できるわけです。そういうような利点が、公団におきまして、これを運営いたしますときに、起こってくるわけでございますから、適当な措置だと思っております。
  144. 田中一

    ○田中一君 国がなぜそれを行なわないのですか。公団等にたよるよりも、国が直接おやりになればいいのです。聞くところによりますと、あなたのほうの、与党の田中角榮政調会長は私のところへ参りまして、何とかひとつそういうものを一元化するように、これはわれわれ社会党が三年以来要求しておりますところの国土開発省的な一元化するものを作ろうではないかということを提唱しております。自民党にもそういう考えがあるらしい。あるときには新聞等にも出ております。なぜそういう方式をとらないで、今のような公団方式をとるかということになると、これは問題があります。それはお互いに違っても、政策でございますから、あえて言いませんが、ダムがたくさん築造されておりますところの他の河川につきましての管理規定というものは、どういう方法をおとりになるかということを伺っているのです。これは三べん伺うのです。経済企画庁長官の御答弁を願います。
  145. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 公団のできました上では管理方式を作りますが、今お話のように、他の河川につきましては、先般来いろいろ洪水の際にも問題になっておりまして、それぞれ各所管庁がそれに対する管理方式を再検討している状態でございます。
  146. 田中一

    ○田中一君 これは藤山さん、あなた検討しておりますか。検討しておらないはずでございます。私は、国土総合開発審議会というものが生まれてここ十数年というものは審議会の委員をやっておりますが、その中に水制度部会というものを作っておりまして、各省——農林省、建設省、厚生省等、主として学者のほかには各省の出身の先輩技術家と申しますか、そういう方々が集まってこの水制度を審議しております。そうして二十九年の十二月に一応の答申を出しております。この制度につきましても。ところが、これに対しましては、農林省の出身の委員は農林省中心の意見を出しております。建設省出身の委員は建設省の中心の意見を出しております。したがって、水資源に対しますところの何ら結論が出ておらないのであります。今、藤山さんは、経済企画庁でそういう面の研究調査をしているという御答弁でございましたが、それは間違いございませんか。これは、私は、実際にそういう検討をやっているのならば望ましいことでございますが、間違いありませんか。これは経済企画庁のほうです。建設大臣には関係ございません。
  147. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今のお話ですが、私、ちょっと質問の御趣旨を聞違いましたが、今検討しておりますのは、この間洪水等で問題になりました、いわゆる通産省関係のダム管理の規定を検討していると申し上げたのでございます。つまり、農林省の立場でもって水をどう管理するか、通産省の立場でどう管理するか、建設省の立場でどう管理するか、こういう点について今企画庁が総合的にやっているということはございません。
  148. 田中一

    ○田中一君 なぜなさらないのですか。経済企画庁がそういう考えでいるから、水に対する認識が足りないのです。一体水はだれのものです。一体水というものはだれのものであるか、行政上だれが所管すべきだというお考えを持っておりますか。これは根本の問題です。水というものは、だれが政治的に、行政的に所管すべきものだというお考えを持っているか、経済企画庁長官に伺っておきます。
  149. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 非常にむずかしい問題だと思いますが、今日までの歴史的な関係から見れば、一元化されておらないのでございまして、そういう意味において、ただいまお話のように、これを将来一元化していくということによって円滑な運営ができることは望ましいことでございますが、ただ、現在までそうなっておらないのが実情でございます。
  150. 田中一

    ○田中一君 これは率直に藤山さん御答弁になったらいかがです。水はだれのものです。私は、太陽からくるところの光と熱、この宇宙にある空気、これによって生きている。水も同じような性格です。生存に不可欠なものです。だから歴史をひもといても、御承知のように、社会というものの草創は水辺にある。飲める水、海水ではございません。淡水にあるわけです。これは人類ばかりではございません。あらゆる生物の不可欠の要素です。これが政治の上においてだれのものかわからぬ。だれが掌握するものかわからぬ。だれが主管するものかわからぬというところに、今まで数々の問題が起こっているわけです。もう今日、水の問題というのは、科学文明の発達した今日におきましては解決されなければならぬ問題です。原子力の時代と申しまして原子力をつかもうとするときでも、まず藤山さんのようなお金持ちでも、一日にとる水というものは量がきまっております。一番低所得者も同じです。したがって、この水の行政、水の政治というものは、すべてに先行して解決されなければ、当然日本の国土保全ということは期待できないわけです。したがって、この大きな水の問題というものに政治の上において正面から取っ組むという気がまえが経済企画庁長官になければならぬ。あなたは経済人であり、実業家であり、日商の会頭も長くやっていらっしゃって、経済の方はお詳しいかもしれないけれども、しかし政治家になる以上、経済の問題はずいぶん仲間がいらっしゃるでしょう、あなたがいなくてもできる面があると思います。しかしながら、この水の問題だけは、何といっても早急に解決されなければ災害からも守られないのです。治山治水という大きな政策を掲げながら、水というものは放置しておく。水に対する、だれが持っているというような行政上のポジションもないということになると、これは治山治水というよりも災害待ちでございます。災害を期待しておる。災害によって政治的な手を打って、これがいい政治であるというような印象を与えているわけでございます。したがって、もう一ぺん藤山さんに、これに対するところの、将来この水の問題をどうしようか——あなたはお聞きになっておらぬと思いますけれども、あなたが所管するところの国土総合開発審議会のうちの水制度部会でもって結論が出ておらないのです。これは各省大臣ともに利用する面にのみ自分の関心の目が向いてしまう。そのほうが政治家としてのはなやかな面でございますけれども、実際に水の制度の面については、国民の政治の面においても、社会の面においても十分に国民のものになるというような制度を作らなければならぬと思うのです。くどいようですが、経済企画庁長官としてもう一ぺん御答弁願いたい。
  151. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 水の重要なことについては存じておるつもりでございますが、しかし水の過去の歴史的なそういういろいろな重要な問題、また今お話のような根本的な問題については、あまり十分な知識を持っておりませんでしたが、御意見はごもっともと思いますので、今後十分水の問題について力を注いで参りたいと思います。
  152. 田中一

    ○田中一君 そこで、累年の災害というものは水の管理が不十分だという点であります。私は今回の水を、むだをなくして建設費を安くする。そうして国民のあらゆる生存のために使うという方法に対しては当然国がすべきものであるけれども、一歩下がって、各省のなわ張り主義というものが、これは大臣に言っているのではございません。あそこに並んでいるところの事務次官以下の諸君のなわ張り主義です。セクトです。こういうものが悪い形でもって公団方式になったということに対して、一歩前進ではあるけれども、遺憾の意を表します。そういたしますと、この方式というものも、利水の面から見た場合に分取り主義じゃ困るのです。またアロケーションによるところの、施設の負担金によるところの分け取りでも困るのです。それが水の政治でございます。そこで一体、管理方式というものを二つの水域に対して一応検討して作るといいますけれども、他の水域に対してはどうするか。これは建設大臣伺います。あなたが河川行政をつかさどっているのですから……。どうしようとするのか。そのために多くの人命を失い、財産を失っている国民がたくさんあるのです。管理方式をどういう工合に持っていこうとするか、また今後どうするかということ——現在はないのですよ。余分な答弁は要らぬです。ありませんから、そういうものはみんな分け取り主義なんです。力でもって水を取っているのです。
  153. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 田中さんは河川法に最も精通していらっしゃるお方で、私どもから申し上げるのはどうかと思いますが、現在のところでは、国及び都道府県知事等河川管理者が、水の管理及び利水に対する許可権等を持っておるわけでございますが、したがって、これですべての河川、あるいは水系についてよろしいかといいますと、もっと高い角度から総合的な判断を下し、総合的な管理方式をとらなければならないということが考えられます。今度の促進法及び公団法は、そういう角度でできるだけ総合的に、関係各省が今まで割拠いたしておりましたのを一本の線にしぼりまして、高い角度で管理を合理化していこうということでありまして、若干われわれとしては十分とは言えないかもしれませんが、前進をいたしておるつもりでやっておるわけでございます。
  154. 田中一

    ○田中一君 この二本の水系については、おやりになるならよろしいけれども、他の河川をどうするかということです。たくさん上流にダムを持っている、この河川をどうするかということです。
  155. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 先ほど企画庁長官からお答え申し上げました二水系につきましては、さしあたり進めなければならない目標として考えておりますが、いずれにしましても、適用事業といいますか、水系に指定をしまするのは、内閣総理大臣が審議会の議を経てきめて参りますので、私どもが勝手に予測することはどうかと思うのであります。そこで、水系に指定されたもの以外の他の河川及びその河川にある利水ダム等はどうしていくのかということのように拝聴いたすのでございますが、ダムにつきましては、最近、ダムの管理規定はございますが、さらに掘り下げて技術的に研究をする必要がございますので、建設省、通産省等の専門家が中心になりまして、連絡会議を作って、目下その問題について検討をいたしておる次第でございます。その他水の管理につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、国及び都道府県知事等河川管理者がその任に当たって、できるだけ災害その他利水の面にわたりましても遺憾なきを期していく以外にはないと思いますので、そういう方向で万全を尽くして参りたいと思っております。
  156. 田中一

    ○田中一君 そうすると、他の河川についても現在管理規定がある。また、あるものをもう少しより有効にするために検討するという御答弁なんですか。私は河川法によるところの一つの管理というものはあると思います。しかしながら人工的にダムを作った場合に、この利水の面について、ケース・バイ・ケースなんです。多目的ダムといいながら、それぞれ一つ一つの特徴がございます。用途もございます。それが今あなたのように、そういうものにもみなあるという御答弁は、ちょっと私は受け取れないのです。これは河川局長にひとつ答弁してもらいたい。あるならば、特にお示しを願いたいと思います。河川ごとの管理規定というものをお示し願いたいと思います。
  157. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ちょっとその点行き違いがあったようでございますが、水の管理につきましては格別規定はございません。しかし水を利用し、あるいは洪水調節を行ないますための多目的ダムあるいは利水専用ダム等につきまして、ダム管理規定がありますることは御承知のとおりでございます。これについて目下さらに研究をいたしておるというのが今日の段階であります。
  158. 田中一

    ○田中一君 大体において国から委任されるところの河川の管理権というものは、知事が持っているわけです。しかしながらこれは、ただ単に河川の監視です。監視の面が主です。むろん水利権等これに対する許可権も持っておるでございましょう。しかしながら利水の問題について、水をいかに有効に使うかという面については、残念ながらできておらないのです。現在私が承知しておりますところの赤石川の流域変更というもの、赤石川から一つの川に落として、その川からまた別の川に落として、そうして東北電力が発電をやっておる。この場合にいわゆる慣行水利権といいますか、農民が自分の必要なときに水が来ないということじゃ困るから、一つの協定、管理方式というものを作った。そういう場合には——これは一つの例ですけれども、十人の委員会を作って、そうして七人までが農民です。知事並びに市町村の委員、それから東北電力という十人の委員で作っております。こういう形こそ慣行水利権を守るということなんです。アロケーションによって、いわゆる建設費の負担によって、水の量というものがきまるのだという考え方は、実際にあってはならないのです。で、この点については、一水系ごと、一ダムごとにその問題があるわけなんです。これはもし今不十分ならば、必ずこれを完全なものにして、ことに水の有効な使用というものは、これは一水系ごとのものじゃなくして、それを二つも三つも、あるいはちょうど四国の銅山川のように徳島県に流れておる川の水を香川県の方に流すことによって、大きな目的を達するということなんです。利用しなければ海水に流れてしまう。こういう流域変更等の問題につきましても、これは積極的にやるべきであるという考え方を持ちますけれども、それには何といっても、慣行水利権あるいは慣行諸権利というものを守る方法以外にないわけです。この点につきましては十分に検討するおつもりですか。で、早いうちにこれらの点を法律あるいは法律でもって基準をきめるのもよろしい。そういう方法をおとりになるかどうか、伺っておきます。
  159. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 慣行水利権につきましては、努めて尊重し、それらの関係者が協定をいたしましたり、あるいは過去の慣行によりまして、利水といたしておる者に障害にならないように努めていきたいと思っております。
  160. 田中一

    ○田中一君 次に伺いますのは、ダムを築造する−大体において一つのダムは百年たてば埋没するという想定のもとに、設計のもとに計画されております。ところが、天龍川の泰阜ダムは、だいたい二十五年でもって今のような状況になっております。上流の砂防が足りないために埋没する例がたくさんある。美和ダム等は、三年で三〇%以上土砂がたまって、経済的な有効な生産はしておらないわけです。  そこで伺いますのは、多目的ダムを築造したら、上流に必ず土砂の流出を防ぐための砂防堰堤というものを作らなければならないというような強い決意を持っておられるかどうか。これは予算上の問題もありますから、大蔵大臣にも伺いますけれども、予防的な意味のダムを——これは必須条件です。多目的ダムを作るときには上流も荒れるであろうと予想される水域、支流に対してはことごとく堰堤を作る、砂防堰堤を作るというような方法をとらなければ、今言う通り有効適切に川の水を使うなんていうことは言えないわけなんですよ。いわゆるざるの政策なんです。漏ってしまう。この点は経済企画庁長官、建設大臣、それから大蔵大臣にその意味の予算化をはかろうとするのか、その点を伺っておきます。
  161. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今度の公団の運営にあたりましては、十分その点を考慮いたしまして運営をいたす所存でございます。
  162. 田中一

    ○田中一君 これは経済企画庁長官伺いますが、ここで法案の審議をしているのではないのです。災害対策のために一応法律案を適用したにすぎませんから、あなたの持っておりますところの全河川、また過去の河川、これからの河川もどうするか、伺っておきます。あなたのほうが国土総合開発のほうの主管大臣であるはずなんですから、その点を伺うのです。もう二つの水域の問題についてはよろしゅうございますから、他の水系に対して御答弁願いたいと思います。
  163. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 河川、ダム等その他諸般の水利施設をいたしますとき、お話のようにそれに関連いたしまして治山治水を十分に行ないまして、そして水そのものの確保と同時に、今お話のような砂防、そういうようなことによって山林が荒れていくというようなことを防止しなければならぬこと、これは当然のことでございまして、全般的にそういう河川の水の利用にあたって考慮することは必要だと考えております。
  164. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) かねてから砂防の重要性につきましては承知いたしておりましたが、特に最近の豪雨災害等の実情を見ますると、一そう砂防の重要性を痛感いたしておる次第でございます。また御指摘になりましたように、ダムの上流が多少上昇しておるというようなことも砂防と重要な関係があると思います。したがいまして、砂防事業につきましては、今後私ども一そう力を注いで参りたい。また中央構造線のように非常に土壌の悪いようなところは、先ほどもお話がありましたように、天龍川水系のように非常に河床上昇の激しいところがございますので、そういう地域的な配慮もいたしまして最善を期して参りたいと、かように考えております。
  165. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私のほうは建設省の要望を聞いて善処いたします。
  166. 田中一

    ○田中一君 最近閣議決定ですかどうか、新聞等で公共事業を二割方抑制しようというような考え方があるようでございます。私はこの春きめられた治山治水十カ年計画前期五カ年計画は不十分であるという点を言わなきゃなりません。これに対しては建設大臣は日ごろどうしても必要なものは先に繰り上げて公共事業を行ないたいという考え方とちょっと矛盾するような気持がするわけでございます。むろんこれは必要なものはやるのだ、必要でないものは延ばすのだというお考えかもしらぬけれども、私は前国会できまった治山治水十カ年計画というものは五年でしなきゃならないというくらいな緊急性があるものと思います。その点につきましてはどういう考えでおられますか伺います。
  167. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 公共事業につきましてもある程度の繰り延べをするということに、御承知のとおり国際収支改善の方策の一環としてきめておるわけでございますが、これはすべての事業について一律に繰り延べをしようというのじゃございませんで、緊要な事業につきましては、さようなことなしに進めて参りたいと思っております。で、全体としましては、年々若干の繰り延べ等も起こりまするので、私どもとしましてはこの国際収支改善の、要するに国の大きな立場から見た方策については、公共事業は非常に重要であり、緊急であるものが多いのでありますが、その中においても若干の協力をすべき性質のものである、かような角度に立ちましてあのような決定をいたしたのでございますが、緊要性のある公共事業を推進することにつきましては、矛盾のないように極力取り計らって参りたい、具体的に進めて参りたいと考えております。
  168. 田中一

    ○田中一君 民需等も抑制しようという——いわゆる建築ですね、民需のもの等をも抑制しようという考え方が出てきておりますけれども、それはどういう政府の権限でおやりになるのか、またそういうものに対しては金を貸さぬとかいうような金融措置でおやりになろうとするのか、それをひとつ建設大臣大蔵大臣にその点を伺っておきます。
  169. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御承知のように、建築基準法の上から見ましても、自動的に承認になる近ごろの制度でございますから、権力を持ってこれを押さえるということは至難でございます。しかしながら、問題ごとに関係省が集まりまして協議をして、そうしてできるだけ勧告の方法によって何といいますか、行政指導と申しますか、そういうような方法によって抑制の道をはかっていきたい。かつて昭和三十二年のときも同じような方策でいたしたのでございますが、実績を見ますると相当の効果をあげておりますから、今回もさような方法によりまして国際収支改善に寄与して参りたい、私どもさように考えておる次第でございます。
  170. 田中一

    ○田中一君 通産大臣が見えましたからちょっと一緒に……、通産大臣と両方で関連して御答弁願いたいのですが、これは非常に悪循環でしてね、河川の上流に砂防堰堤を作りますと、いわゆる河口面ですね、河口の方は決壊、地盤沈下が起こるのです。たとえば新潟の例にしても、信濃川の上流に砂防堰堤を作ると、あるいは放水路を作ると、新潟の河口というものは地盤沈下を起こす、そうして決壊を起こすものなんです。これは一体どういう工合に政治的に解決していこうとされるか、ひとつ伺っておきたいのですが、これは通産大臣にも……。工業用水を吸い上げるということも一つ原因になりますけれども、その前に砂防堰堤を作って土砂の流出が少なくなりますと決壊が起こるわけですね、海岸線に決壊が起こる。これはひとつ通産大臣と建設大臣にどういうお考えを持っているか、それに対する対策を伺っておきたいと思う。
  171. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 確かに河川は下流に砂及び石が流れて参りませんと、下流の決壊を来たしたり、あるいは正常な海洋への流出が変化したりするようなものと私ども承知いたしております。かようしな角度に立ちまして、実は今後ダムの上流には自然土砂及び砂礫が堆積をいたしますので、これをダムの効用とは関係なしにどういうふうに下へ降していったらいいかというようなことも技術的に研究をする必要があると思いまして、最近、私省内の技術陣に命じまして、そういったことにつきましても実は具体的に研究をいたしておるわけでございまして、まだ適正な結論を得ておりませんが、御指摘のような点につきましては、今後配慮をしていきたいと思っております。
  172. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) やはり自然の流れで一つの状態ができておる、それに人工的なダムその他を作ると、下流に変化が起きる、これは御指摘のとおりだと思います。ただいま建設省から河川管理の面からいろろい工夫しておるというお話でございます。通産省としても、そういう点については、もちろん協力すべきだと思います。また、今お尋ねのうちに一言触れられましたが、地下水を工業用水に使う、これが地盤沈下の大きな原因であることは、もう指摘するまでもないと思います。そこで工業用水法という法律ができ、その法律の運用によりまして新規なものはこれを禁止する、一定の地域における地下水の吸い上げというものを制限をしております。これなどはたいへん効果が上がっておるようでございます。これは一面その意味においては効果が上がっておりますが、工業関係の用水に事欠くということにもなりますので、私どもはやはり工業用水道、これも整備すべきだ、かように考えております。積極面、消極面から工業用水の確保ということをはかっておる次第でございます。
  173. 田中一

    ○田中一君 大蔵大臣、先ほどの建築抑制についての大蔵大臣考え方をひとつ伺います。
  174. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 建築抑制については、さっき建設大臣がお答えしたとおり、一応七人委員会と申しますか、こういうものによって大口の建設については政府がその内容を見、そして必要なものと、あるいはこれは繰り延べしてもらえると思われるものは、その勧告をするというような行政指導において、ある程度の効果を発揮したいと考えております。
  175. 田中一

    ○田中一君 そうすると、行政指導も現在……建築というものは現場にかかるという場合には、もう三分の一ぐらい仕事が進んでおるのです。それをどの辺から指導して中止なら中止させよう、抑制させようという考え方ですか。御承知のように、現場にかかるときには三分の一の工程が進んでおるという現実を一つ承知おきになって考えなければならないと思うのです。その点はどうですか。
  176. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済効率を著しく阻害するようなやり方ということも問題でございますので、これは実情に応じて無理のない勧告をするのが一番適当だろとう思います。
  177. 田中一

    ○田中一君 どうもばらばらになって安井君もどこかに行くのではないかと思われますので、その前に聞きますが、陸前高田で昨年のチリ津波のために相当堤防の決潰があった。そこで調べてみると、大体三カ年事業で五億八千万円かかる。ところが、この市の財政規模というものは約二億円である。そうすると、年々六千万円程度のものを負担しなければならない。これはとてもできるものではない。こういうものは全額起債でまかなうという方針をとっているのか。それとも、こういうものはもうしようがないからうっちゃっておけという方針をとっているのか。現状において陸前高田の堤防の問題は、どういう措置をとっているか伺っておきます。
  178. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 高田の災害につきましては、災害そのもの、高田市の災害については、それぞれ高率補助の災害対策費を支給しておるわけでございますが、今御指摘の堤防五億八千万円、三年計画というのは、これは市の財政負担では困難であろうということから、これは県で負担をしております。したがいまして、あそこは今年から実施をしております補助費のかさ上げ率も加算されまして六〇%、三分の二の補助にさらに二一%の補助が引き上げられて、残りの残額につきましては、適当な率をさらに起債でまかなっていくという、こういうふうにしておりまして、今御懸念のようなことは現在ではないようにしております。
  179. 田中一

    ○田中一君 それから行管にちょっと伺っておきますが、先ほど質問したように、水の管理方式がばらばらなんです。所管としては、そういう点について勧告なり調査、指摘なりしたことがございますか。
  180. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 水の問題は、きわめて重要でありますだけに、これに関係する各官庁が、水の開発、管理、利用等にきわめて熱意がありまして、それがために自然各省の間でもって調整がつかぬと思うのであります。私は長官になりまして、行政全般につきまして共管事項を調査いたしております。水のごときは特に重要な問題として取り上げておるのでございますが、もちろん結論にはまだ達しませんけれども、なるべく早い機会に各省より離れてより高い見地からこの問題の解決の必要に迫られている、こう考えております。
  181. 田中一

    ○田中一君 そこで、それに対する対策といいますか、実情というものは調査をしたのですか、しようとするのですか。
  182. 川島正次郎

    国務大臣川島正次郎君) 各省の共管事項につきましては、今調査を命じておりますが、過去の実例につきましては、政府委員からお答えいたさせます。
  183. 山口酉

    政府委員(山口酉君) 監察をいたしましたことがございまして、ただいま御指摘のような点にも触れております。ただいままでのところ解決をいたしておりませんが、所管のそれぞれの各省におきまして検討中であると存じます。
  184. 田中一

    ○田中一君 これは建設大臣に伺っておきます。来年の三十七年度の公営住宅は、一体どういう考えを持って予算化しようとするのか。非常に材料、手間等が上がったから戸数を減らそうという方針でいくのか、あるいはどういう考えを持って建てようとするのか伺っておきます。
  185. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お答え申し上げます。戸数につきましては、できるだけ既定の計画を確保して参りたいと思っております。なお、単価につきましては、今臨時国会にも単価是正の道を織り込んでいただきまして、補正予算の御審議をいただいているわけでございますが、来年度予算編成にあたりましては、この単価の問題も十分検討いたしまして、適正なる道を講じたい。ことに労務費につきましては、今労働省とも連絡をいたしまして、できるだけ職種別に実態の把握をして、予算積算の基礎を作りたいということで目下努力中でございます。
  186. 田中一

    ○田中一君 私はもうこの辺で公営住宅を補助事業とする性格を変えなければならぬ時期がきているのじゃないかと思うのです。それは全額国庫負担でおやりになる。ただ全額国庫負担にしますと、負担が重いから大蔵大臣はおそらく許可をしません。そこで家というものの考え方を変えてみる必要があるのじゃないかと思う。造作、畳、障子なんというものは、これは住むためのものなんです。家の一つの住み方の要素なんですね。だから鉄筋コンクリートにいたしますと、鉄筋コンクリートの住める空洞の家を全額国庫負担で出す。これは義務づける。そこで住み方の問題は、これは都道府県にまかす。ということは、そういたしますと、都道府県なり市町村は、農村には農村向きの家を作り、中小企業のたくさんあるところは中小企業向けの家を作り、住まい方をするでしょうし、そういう方法をとったらどうかという考え方を持つわけです。というのは、家賃の算定というものが、この基準というものがどこまでも畳、建具からげた箱までつけたものが建築費に入り、算出する家賃ということになっておる。終戦後十五、六年もたって、公営住宅ができましてからもう十年以上もたっておる。そこで十年たった後に家を求めようとすると、今のような状態では三十七年度に公営住宅に入る人たちは十倍も高いような家に住まなければならないことになってくる、十年前に比べますと。でありますから、家のほうで技術的なそういう方法を考えるとか、あるいは家賃の算定基準というものを変えるという方法を考えなければ、低家賃の家には入れないことになる。この点につきましては、建設大臣並びに大蔵大臣はどういうお考えを持っておられるか、家賃は今でも一種の公営住宅は鉄筋コンクリートの場合は三千円から四千円しておる。これが六千円、七千円になり、このままでは地価も上がる、この点ではどういう方法を考えておるか、伺っておきます。
  187. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 確かに御指摘の点は研究に値する問題であると思いますが、お話のように、いわゆるスケルトン方式といいますか、これで参りますと、建具その他設備は居住者がするということになりますと、むしろ単価は高くつくのではなかろうか、住宅公団が一括してやります場合には、最低に切り詰めた経費でこれらの諸設備ができますけれども、骨組だけ作って貸してやるということになりますと、居住者が個々に依頼をする、人によっては縁故のある方は特に安くやれる人もあるかもしれませんが、まあ大勢としては大口需要よりも高くつくのではなかろうか、この点が実際上居住者の利害にどう響いていくであろうか。もう一つは居住者の流動性でございまして、だんだんと市街の中心部に敷地がございませんから外のほうに新しいものができて参ります。したがって、外のほうにいる者で中にあいた部分ができますと中に移動する、そのあとまたほかの人が入るということになりまして、流動性の上から見ましてその建物に付着しました造作類が個人の所有である場合にはどういう影響を来たすのであるかということにつきまして、目下住宅局を中心に研究させておるわけでございますが、まだどちらがいいという正確な結論を得ておりません。今のところの考え方としては、今申し上げた次第で、従来のようにやって、そうしてできるだけ完成費を節約いたしまして、できるだけ縮めて家賃は安くするという行き方のほうがいいのじゃないかというふうに考えておるわけでございます。
  188. 田中一

    ○田中一君 家賃は、算定基準を変えるということは……。
  189. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 家賃につきましては、やはり二種公営住宅のようなものにつきましては別といたしまして、その他の公営住宅あるいは公団住宅、ことに公団住宅につきましてはやはり公団は資金を政府の融通を受けまして、あるいは公団債を発行しまして、それによって資金まかないをいたしておりますので、これに対する若干の利子等所要の必要経費というものは織り込んで算定する以外に方法はないと思いますので、算定方式についてどう改善をするかという今目標を持っておりません。今後家賃が上昇するのは、自然建設単価の関係で起こって参りますから、とれらにつきましては検討はして参りますが、住宅公団の公団法による建前として……。
  190. 田中一

    ○田中一君 公営住宅です。
  191. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 公営住宅につきましても、従来の算定方式をどう変えるかということになりますと、結局国庫の持ち出しをどうするかということになって参りますので、国の財政等の関係もありますので、私どもとしては、実は今改善策の持ち合わせばないわけでございます。
  192. 田中一

    ○田中一君 今の前段の入れものだけ、スケルトンだけを全額国庫負担という場合には、地方公共団体がメインテナンス、いわゆる造作の賃貸をするものを作って、大量生産をしておいて、これをはめ込むわけですよ。借りる人は賃貸料、損料を払うわけです。こういう行き方をしたらどうかというのです。私の言葉が足りませんでしたから、もう時間もありませんからきょうはこれ以上伺いません。いずれ建設委員会で伺います。  で、公団の家賃の問題は、単価が上がっていくならば、当然高い家賃にお入りなさい、こういうことですね。十年前には十二坪の鉄筋コンクリートの住宅は九百円から千円程度。ところが、来年は単価がうんと上がるから、その場合には六千円でも七千円でもお入りなさい、こういうわけですね。方法がございませんということは、国が補助率を上げなければやむを得ない、高くなりますよ、こういうことなんですよ。したがって、大蔵大臣、あなたのほうで低家賃にするところの財政投資をするかどうかという点で御答弁願いたい。
  193. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今公営住宅を国が全額負担をしたらどうかというお話がございましたが、これはやはり私は筋としては、この低所得者に対する一つの福利施設でございますので、これを一番よく知っておるのはやはり地方の公共団体であり、また、その直接責任というものは地方公共団体にあるのでございますから、都道府県、市町村がこれを作るという場合に、国がこれに補助を与えてその建設を助ける建前が本来あるべき建前だと思っております。かりにそうでなくて、これが全額国費で作るのだといって、全国にどういう割り振りをつけられるかということは非常に問題でございまして、やはり直接責任者である地方公共団体が作るものに対して国がこれを補助するという立場が筋として、やり方として正しいやり方だろうと思います。その場合に、建築費の増高とか、いろいろなことによって、低所得者に対する施設であるべきものが、その目的が十分に貫けないという事態になったら、また、それは国として考慮するということは必要であるかもしれませんが、やはりその立場で考えるのが私は正しいのではないかと考えております。
  194. 田中一

    ○田中一君 ちょっと大蔵大臣も誤解があるのですが、現在一種住宅は三分の二の補助です。そうすると、三分の二で入れものだけお作りなさいということなんです。大体内部造作その他というものは、三割から三割五分程度かかるのです。そうすると、三割といたしましても、七割は国が負担しているのだから、それを全額入れものだけ作ってやってしまいなさい、あとの造作の面、三割の面はこれは地方公共団体にやらしたらどうか。政府からいろいろな制肘を受けないで済む。地方地方の必要に応じた施設をして住めるということなんです。かえってこれは国としては財政上はっきりとして、もう物価が上がるからどうこうということがなくていいのではないかと思う。そのかわり、ぜいたくな家を作るものもあれば、そうでないところもございます。このほうが国も安定した財政措置ができ、地方もそのために政府の監督といいますか、こまかいことまで、これはここに畳を敷かなければならないとかなんとかこまかい指図を受けなくて済む。国も楽ではないかということを申し上げておるので、その点だけはちょっと誤解があったと思いますから、訂正をいたします。その御答弁をしてもらうと同時に、やはりあなたの今のような、物価高と申しますか、建設費が上がった場合には、それに見合うところの家賃でやむを得ません。したがって、来年度は、建築単価が上がっているならば、当然これが家賃になりますから、それはやむを得ませんという御答弁なんですね。
  195. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどのスケルトン建築の問題、これは、私は個人としては、そういう構想はいいんじゃないかと思っています。現に、現在いろいろな所にできる都会のアパートは、そういう形で、中の造作は一切住む人にまかせるという形をとっておるのが実情でございますので、これはいいんじゃないかと思いますが、問題は、それが低所得者層の住宅という場合に、これは個人持ちのそういう部分が多くあるほうが、その居住者に大きい負担をかけることになりはせぬかという点を考えて、今建設省もいろいろ研究しているようでございますので、この点は、私は、建設省の検討の結果に待ちたいと思っております。  それから単価が上がった場合に、したがって家賃をすぐ上げるかどうかという問題は、今日起こった問題じゃなくて、過去からもしばしばそういう問題がありましたが、その場合には、できるだけ家賃を上げなくて済むようにという建築上の工夫をこらしたり、設計上の工夫をこらしたり、いろいろのことをやってきましたので、そういう余地があるならば、そういう方面を十分検討して対処するし、そういう余地がなくて、どうしてもこういうふうにやらなければいかぬという必要が出たときには、またそのように私どもは考えたいと申しておるわけでございます。
  196. 田中一

    ○田中一君 もう一つだけ、これは大蔵大臣伺います。  御承知のように、建築職人の手間というものは、PW、いわゆる職種別地方的な賃金で押えてあるわけです。これは労働省の亀井次官に聞きますと、これはわれわれのほうは非常に迷惑なんだ、労働省が労働者の基準賃金というものを押えているなんということはありようがないのだと。聞いてみると、これは何といいますか、職安に登録している労働者の賃金の基準だそうです。こういうものを廃止される気持はございませんか。一昨年でございましたか、当時の堀基準局長は、どうしてもこれは廃止します。何にもなりません、また自分のほうでそういうものを持っているものじゃございません、こう言っておったのです。ところが、大蔵省から相当な抵抗があって、どうしてもこれは予算の基準として、賃金の基準として必要だから持っていてくれということがあったそうでございますけれども、きのうちょっとあなたに聞くと、知らぬと言っておりますから、知っている人が答えていただきたい。このPWという標準賃金というものをとっておこうとするのか、それともこの際やめるか、一体、労働者の賃金を国がきめるというようなことはありょうがないです。それは国が直接雇用をするものだけならかまいませんけれども、建築職人の賃金というものは——たくさんいる、百何十万もいるのです。請負の場合には算定基準がないとおっしゃるけれども、事実において労働者の賃金を国がきめているとかいうことは、これはありようがございません。したがって、その点はどういう考え方でおるか。私が要求するのは、これは直ちに廃法して下さい。どっちみちこれは準用しておる法律でございますから、三十七年度までに廃法とするという決意が私は望ましいわけです。ここはどう考えになっておるか、詳しく御承知なければ、事務当局から伺って、あとは、これはあなたのほうで廃止するなら廃止するという答弁を大臣から伺っておきます。
  197. 石野信一

    政府委員(石野信一君) ただいまのPW、これでございますが、これは労働省のほうでとっております統計でございまして、一つの標準賃金としてその統計がございまして、大蔵省が廃止するとかしないとかいう問題ではございませんが、お尋ねの点は、これは予算の単価、特に最近の建築単価の労務費をこれを参考にしたのはどうかという御質問かと思いますが、その点につきましては、建設省等といろいろ単価の取り方につきまして検討いたしたのでございますが、公的な賃金の基準といたしましては、今のところ毎月勤労統計が一番適当だということで取りました次第でございます。  先ほど建設大臣から御答弁ございましたが、今後なお検討するということでございましたが、どういう判断をするかは、建設省においてなお今後の問題としては検討していく余地があると思いますけれども、ただPWの標準の統計を廃止するかどうかという問題は、これは大蔵省の問題ではございませんですから、その点は御了承いただきたいと思います。
  198. 田中一

    ○田中一君 ちょっとこれはおかしいですよ。一体建築職人の手間だけは法律で残さなければなりませんですか。大工は幾ら、ブリキ屋は幾ら、東京都においては最低幾ら、最高七百七十円、大工の手間というものを、どうして残さなければならぬ必要があるのか、労働者の賃金というものを政府が法律できめるなんということは恥辱と思いませんか、その労働者にとっては……。どうして大工なり左官なりの手間というものを法律できめなければなりませんですか。そういう労働者の賃金体系というものは、他の産業にございますか。賃金というものは雇う者と雇われる者との間で協定されるのが賃金なんです。これは、大蔵省はおれの方は関係ないとおっしゃるならば、労働省がやめようとやめまいと自分の方は一こう差しつかえございませんということでいいんですね。そうすると、今度は次の機会に、予算委員会ございますから、その場合に労働大臣大蔵大臣とに対決してもらいます。
  199. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 賃金の基準を見るために労働省が調査統計しているものでございまして、これによってそのとおりに労働賃金を押えなければならぬ、法律的にどうかしていくという性質のものでは、これはございません。ただ今度の場合は、そういう調査によって昨年の六月からことしの六月までその基準がどういうふうに上がってきているかという上がる率を、単価をきめる場合に参考にしているだけでございまして、この調査によって労働賃金を現実に何百何円に押えるというような行政をしている一わけではございません。     —————————————
  200. 小山邦太郎

  201. 向井長年

    向井長年君 私は、まず最初通産大臣に質問いたしたいと思うのでございますが、きょう突然各委員の机の上に電力白書が出ておるようでございますが、特にこの問題は、高度の経済成長の過程にありまして電力需給の危機がただいまきておる、こういう中からいろいろと発表されておると思いますが、具体的にかかる問題について通産大虎にお聞きいたしたいと思うわけでございます。  この問題につきましては、まず第一は、激増する電力需用、なおまた拡大する電源の開発、あるいはまた資金調達、あるいは供給の安定、こういう四つの問題から、今後電力というものはどういう形に、あるいはまたどういう運営をやっていかなければならぬかというところに根拠があろうと思います。したがって電気事業は、御承知のごとく昭和二十六年の再編成以来十年を経過いたしておりますが、ただいまいろいろな矛盾が企業内部においても、あるいはまた政府の施策の中においても生じておると見ておりますが、こういう点について、政府自体として根本的な電気事業のいわゆる形態、言うならば再々編成、こういう問題を若干考えておるようなことが、るるいわれておりますが、この点について、根本的な問題としてまずお聞きいたしたいと思います。
  202. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 電気事業の実態、ことに最近の電気需用というものは、たいへんわれわれの予想をしばしば上回るというか、しばしば変更せざるを得ないような状況になっております。そこで、基本的な問題といたしまして、いろいろ答申等もあり、私案等も出ておりますが、それらは十分検討いたすつもりではございます。しかし、その審議会の答申そのものにとらわれるというようなことをするつもりはございません。今後の需用等に対処して最善を尽くす案を作るという謙虚な態度で臨むつもりでございます。  なお詳細につきましては、局長から御説明いたします。
  203. 向井長年

    向井長年君 今、私が質問したのは、そういう審議会で具体的に開発計画をどうするとか、あるいはまた資金問題をどうするとか、そういう問題じゃなくて、いわゆる電気事業が十年前に再編成されまして今日に至っておる。特にこれは公益事業であるという性格と、一方においてはやはり私企業であるという性格、こういう二つの性格を持っておると思います。そういう中から、政府はできるだけ公益性を発揮していろいろな統制も加えてくるし、あるいはまたそれに対するところのいろいろな政策もとってくる。しかしまた、経営者の方では、これについてできる限り私企業という性格を出したい。こういう状態が白書に表われていると思います。そういう状態の中で、今申しまもたように、四つの問題から電気事業の今後の危機というものが非常に強く現われているのじゃないか。こういう点について再び電気事業を再々編成をするというような考え方を持っておるか、あるいはまた将来そういう構想を考えなければならぬと思うか。こういう根本的な問題を通滝大臣伺いたい。
  204. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 電気事業のあり方の基本的問題につきまして、私どもの耳にもいろいろな意見が入っております。しかし、ただいま通産省自身といたしまして再編成に取りかかっておるとか、あるいはその方向をきめたとかというものはございません。もちろん公益事業ではございますし、ただいまの形態のもとにおいて、需用にこたえるだけの開発計画なりあるいは資金計画なりその他のものが調達できるかどうか、ただいまのところではやり得ると、かように実は思っております。また、公益性と私企業的な経営者の立場との調整もとり得るのじゃないか、かように私どもは考えております。
  205. 向井長年

    向井長年君 今、ただいまのところはやり得る、こういう考え方ですが、しかしながら、事実上、新聞にも出ておるように、いろいろな各社間の矛盾、これは需給関係においても、あるいは開発関係においても、電発を含めてこういう問題がやはり具体的にあるわけですね。これについて、やはり今後形態の問題まで検討しなければならぬ事態がくるのじゃないか。したがって、今は通産省ではそういうことはきめていないと言うが、今後こういう問題に対処するために、特に池田内閣の実力者である佐藤通産大臣が、やはり電力行政、いわゆる通産行政に携わっておる以上は、今後の大きな見通しの上に立ってこの問題を検討しなければならぬ時期がきていると思います。こういう点を、今はきめていないが、今後これに対する構想はどうか。まずこういうことをお聞きしたい。
  206. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへんむずかしいお尋ねでございますが、ただいま現時点に立って考えておること、これを申し上げることが誤解を受けなくてよろしいのではないか、かように思いますので、先ほど来申し上げましたお答えを重ねて繰り返しますが、ただいま再編成等については考えていない。御了承いただきたいと思います。
  207. 向井長年

    向井長年君 しからばお聞きしますが、広域運営という一つの制度をとっておりますが、これは、現在の企業形態の中でスムーズに需給の問題なりあるいはその他についての運営を全うするための一つの方策としておりますが、この広域運営の今後いわゆる徹底ということを通産省は考えておるようですが、しからばどういうところに広域運営の徹底をはかろうとするのか。ただいままでの広域運営はどこに大きなプラスがあり、あるいはまた支障があったか、こういう点をあわせてお聞きしたいと思います。
  208. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの広域運営は、すでに御承知のとおりに行政指導も加わりまして、会社間相互に相談をして円滑にやっておるわけでございまして、まず順調にこれは進んでおる、かように考えます。しかし非常に広範な地域にわたっての広域運営ということになりますと、もちろんただいまの技術の面では不十分な点があるように思います。これらのことは、もう少し技術が進んで参らないと長距離送電等なかなかうまくいかないのじゃないか、技術的にも研究しておる面はございます。で、ただいまの電力需給の関係から見まして、その発電地と消費地との関係等、ただいま運用で一応順調に推移しておる、かように私どもは見ております。
  209. 向井長年

    向井長年君 重ねてお聞きしますが、大体広域運営という方式そのものは、現在の形態では非常に無理がある。いわゆる各社間の需給関係合わせて。こういうところから発足しておるということになれば、当然これは再々編成の一途を現在の形態の中でたどっておると、こうとしかとれないわけです。そういうことであるならば、当然再々編成を今後やる構想も考えなきゃならぬということが出てくるのじゃないですか。この点はどうですか。
  210. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあただいまのところ、ある程度効果を上げておる。現在の需給の状況では効果を上げておる、こういうことを申したのでございまして、かように考えますと、さらにそれより進んで一本経営が必要なのかどうか、これはまあ別のことだろう、かように実は思うわけでございます。で、さらにまあ今後の問題になりましていろいろ事態も起こるかもわかりません。しかしそういう事柄に対しては、その際に十分考えましょうし、もちろん関係者自身が納得のいくということが第一の基本的の問題だろうと思います。今日は、それぞれの会社が話し合いをいたしまして相互に融通し合うと、こういうことで需用にこたえるという状況でございますから、いわゆる再々編成にまでこれを進めなきゃならないと、そこまでは私どもも決意しておらないという状況でございます。
  211. 向井長年

    向井長年君 先ほど申しましたように、需用が無制限にただいま拡大しつつある、こういう中で、特に供給責任の建前から考えて、おそらく採算を度外視してそうしていわゆる電源開発を行なわなきゃならぬ、こういう事態がただいまきておると思います。そういう中で、一方におきましてはあらゆる原価の高騰、いわゆる建設単価の値上がり、こういう問題から、何としても電気料金の値上げをしなきゃならぬということが先般来も起きてきて、九州なり東京が値上げしておる。で、一般の政府の物価政策としては、できるだけ公共料金とかこういうものを上げちゃいかぬと、われわれもそういう考え方を持っております。そういう点から考えて特に年々これの、いわゆる開発資金というものが、まあ五カ年の平均をとって、この白書に出ておるように四千五百億くらい要ると、こういう問題があるわけです。したがって、これに対していわゆる物価政策と相待ってこういう資金の調達というものはどういうところに基礎を置いているか、もちろんいろいろあると思うのですが、こういう具体的な問題について、これは大蔵大臣関係するかもしれませんが、ひとつその資金調達の問題について明確にしていただきたいと思います。
  212. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国内におきましても低利な資金を確保する、こういう点に重点を置き、また外国等からの融資なども政府が保証その他の形であっせんをしておる、かような状況でございます。
  213. 向井長年

    向井長年君 いや、外債とか、あるいはまた財政投融資の開銀の問題とか、あるいは自己資本とか、あるいは増資とか、いろいろあると思うのですよ。そういう問題はやはり構想を持っておられると思うのですが、何かそういう問題について若干具体的に発表していただきたい。
  214. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) 大体、来年度は全体で約五千億、九電力だけで四千億に上る資金が必要ではないか、こういうふうに考えておりますが、これに対しまして、まず企業努力によりまして内部留保をできるだけ捻出したい。これは今年約一千三十億、このほかに繰り越しが二百六十億ございまして、全体で今年は千三百億ございましたが、来年はこれを千百億程度確保したいと思っております。それから、増資でございますが、今年度七百六十億で六百億の手取りがございましたが、来年度は千二百億円で大体手取りを九百五十億程度に考えております。それから、社債の発行につきましては、大体本年は八百六十億の発行で七百七十億程度の手取りと考えておりますが、それを来年千三百億円、手取りを千百億円程度というふうにいたしまして、そのほか債券発行、銀行、信託銀行あるいは生命保険団というものからの借り入れを期待し、それでも約五百億程度は不足すると考えられますので、通産省といたしましては一応開発銀行にあとの五百億程度はお願いしたいというふうなことで現在考えております。     —————————————
  215. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) この際、委員の変更について御報告いたします。  天埜良吉君が辞任され、補欠として谷村貞治君が選任されました。
  216. 向井長年

    向井長年君 ただいま大体具体的な数字が答弁されましたが、この中で特に企業努力、いわゆる各社の合理化といいますか、こういう問題がやはり企業努力の中に含まってくると思うのです。そういう中で非常に現在言われるような形においての捻出をしようとして、いわゆる企業内においての労働力の問題、あるいはまた合理化という名前においてのいろんな施策、こういう中から——少なくとも公益事業である以上は、十分なる一般大衆に対するサービスが最も必要であるにもかかわらず、そういう問題があまりにも過重であるがために相当圧迫を受ける状態が現われておると思うのです。私は事実を知っておりますが。こういう問題について政府はどう対処していくか。今言われた資金調達の中から企業努力、合理化という名前において、いろんな人的な問題あるいは資金面あるいはサービス面、こういうところに無理を生じておる点が多数あると思うのですが、こういう点について、通産当局はそういう資金の調達面からいわゆるこういう問題をどう今後指導していくか、この点をひとつ伺いたい。
  217. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一般的に申しまして、もちろん労使の協力になりまして、ただいまのような企業努力になる成績を上げたいというように思います。そこで、ただいま向井さんも御心配のようでございますが、これが労働者の負担にならないように私どもは十分気をつけて参るつもりでございます。
  218. 向井長年

    向井長年君 なお、開発関係で最も大きな問題は、いわゆる公共補償の問題が相当大きくなっておるようですが、この問題は何としてもやはり原価に繰り入れられるわけでございますが、この点についてきょうの新聞を見ますと、政府は若干補助を考えるというようなことを書いておりますが、これはやはり根本的には、公共補償というものはあらゆるエネルギー、あるいは一般の電燈にもこれがすべて加わって電気料金というものが出てくるので、こういう問題については政府が負担をする、こういう立場を今考えておられるのかどうか、この点を明確にしていただきたい。
  219. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近は補償の問題がたいへんな問題でございます。過日、私、名古屋に参りました際も、送電の鉄塔、ここの一坪当たりの補償についてちょっと法外な金額であるかのように伺ったのでありますが、もちろん最近電気事業ばかりでなく水道、ダムその他の場合にも、土地の値上がりというものは非常に補償を要求する。漁業補償その他も同様でございますが、そういう意味でこの話が片づくまで工事が進まない、こういうような事態がしばしば起きておりますので、さきに法律を制定願い、その法律に基づいて法外な事態が起こらないように話をつけるという態度をとっておりますので、したがいまして、今後は今までのこういうような事例とはやや変わった方向に行くんじゃないか。また、行くことを私どもは期待いたしております。しかし、それにいたしましても、将来の実績がものを言うわけでございますから、これらについて十分検討しておく必要があるんじゃないか、こういうことが新聞等で伝えられておるのでありまして、ただいま政府が直ちに補助するとか、こういう結論が出ているわけのものではございません。この点はやや記事で誤解を受けているんじゃないかと、かように思います。
  220. 向井長年

    向井長年君 通産大臣、その問題についてただいまの新聞ではそういう報道をされているということですが、公共補償をすることによって、したがっていわゆる先ほど言った料金問題の抑制ができるんじゃないか。そういう点から、公共補償という問題は当然やるべきじゃないかと思うが、やる意思はないかどうか、こういうことを伺っているのです。
  221. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この公共料金はもちろん安いことが必要でございまするし、また、政府自身も公共料金の適正化ということについては今日まで努力し、抑制できるまでは抑制して参りました。しかし、必要やむを得ざる部分につきましては、閣議決定の線があるにかかわらず、東電等の例でおわかりのように、料金の改訂をいたしたわけでございます。今後もこういうような問題はもちろん起こるだろうと思います。したがいまして、私どもはただいまの補助によって公共料金を据え置く、こういうことを考える筋合いではなくて、やはり公共料金の適正なあり方というものを、これを経営者をして工夫させるということが本来だろうと思います。したがいまして、要すれば、料金の改訂も必要だろう。しかし、本来公共性の強いものでありますから、それが安いことであることが望ましいのです。そういう意味の指導もする。もちろん、経営者の負担においてそれを処置していくということでなければ、いろいろ金がかかるから、直ちに補助する、こういうことではいかない、かように私どもは思っております。
  222. 向井長年

    向井長年君 ちょっと、通産大臣、違うのですが、そうすると、原価主義は認めないか。発電が原価主義である。原価主義で電気料金ができているが、これは今若干くずれつつあるが、それは認めないのですか。
  223. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん、ただいまの考え方でよろしいと思います。将来非常に高いものがかかり、不当なものがかかったりした場合に、そういうものを全部普通あるがままの条件のもととして基礎に取り上げることが適当であるやいなや、こういう意味で今のような補助とかというような議論が出るのだと思います。しかし、私がただいま申しますように、法外な補償額というものが適正なところでとどまっていくならば、料金、そういうものの中に吸収していくことが本来の姿であり、そうなくちゃならないということを実は申し上げたわけでございます。
  224. 向井長年

    向井長年君 そうすると、そういうものに包含していくということであれば、いわゆる公共補償というものは、原価主義の中から料金が算定されてくるわけです。したがって、公共補償を各社に出させておるということになれば、これは当然料金は上がってくるわけです。だから、抑制しようとするならば、そういう問題は政府が考えていくということになれば、これは当然理論的に抑制ができていくわけです。そういう点を私は指摘しておるのですが、それを企業努力の中から考えていくということになれば、原価主義というものを全く初めから否定するような考え方になるじゃありませんか。
  225. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういうことじゃなくて、補償金はもちろん建設費の中に入っていると思います。しかし、法外な補償というものが出る、こういう場合にそういうことが許されるか許されないか。だから、法律を作って法外な補償というものをとめるようにし、またそういうものが適正であるように私どもは期待しておる。それが適正なものである限り、当然建設費の中に入るべき筋のものだ、かように実は申しておるわけでございます。
  226. 向井長年

    向井長年君 法外な補償というが、公共補償でございますから、一般民間の補償の問題じゃないわけですよ。だから、公共補償というものは法外なものが出ないと思う。当然これは、あんた、公共のものですからね。そういう点については、これは当然政府が考えるべき筋合いのものじゃないか。そういうことによっていわゆる料金抑制もできるんじゃないか、こういうことなんですがね。
  227. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の補償金額というものは非常に高くなっております。これは御承知のとおりだと思います。この前、私、名古屋に参りましたら、鉄塔の下の一坪が三十二万円だというお話がございました。それから、たんぼの中の一坪が三十二万円、これはまことに法外な私は価格だと思います。そういうような点が一々建設費にかかってくる、これは望ましいことじゃないんじゃないか。しかも、話がつかないで工事もできないというのが今の現状だと思います。だから、そこで工事は進行し得る、またそうして適正な価格をきめていく、こういうことが今とられているわけでございます。だから、今御指摘になります。あるいは水没する民家に対する補償なり、あるいは海岸における漁業補償なり、いろいろの補償というものがあると思いますが、最近の重要産業で一番問題になりますのがこの補償金の問題でございますから、これは関係方面の理解のもとに、この適正であることを望んでおる、またそれを期待しておる、かように実は申し上げておるわけでございます。
  228. 向井長年

    向井長年君 じゃ、次に、特に石炭対策の問題とも関連するわけでございますが、いわゆる最近産炭地発電、あるいはまた揚げ地の発電であるとか、コンビナート問題が出てきておるわけでございますが、こういう問題について、具体的にただいまどういう具体案を持っておられるかということが一つ、それからこの産炭地の発電の問題については、根本がやはり石炭救済から出てきておると思います。だから、これは救済しなければならぬということはわれわれも了解いたしますけれども、ただ問題は、そういうところに発電所を作って、いわゆる需給の地域、こういう間に大きなロスが生じアンバランスが生ずるんじゃないか、こういう心配がある。だから、石炭確保の量にも関係ありますが、こういう問題について通産省は大体どういう構想を持って対処しようとしているのか、これをひとつ具体的にお伺いしたい。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいままで議論しております産炭地発電、あるいは揚げ地発電、これはいずれにいたしましても、電力で消費する石炭を確保するといいますか、石炭消費の数駐を確保する、これから考えついた事柄であります。そこで、産炭地の近くに需用地があるなら、これは産炭地で発電するのが一番都合のいいことであります。しかし、せっかく産炭地で発電しましても、その付近で消費するような適当な事業がなければ、これを遠隔の地へ輸送することになると、たいへんなロスになる。だから、遠隔の地へ持っていくなら、むしろ揚げ地発電のほうが適当だ、こういう実は結論になっておるのであります。この問題は、石炭の消費壁の確保ということと同時に、またもう一つ産炭地振興、こういう問題も一つございますので、ただどちらに作れば電力のロスがないとかどうとかいうだけの問題では、なかなかきまりかねる問題でございます。通産省といたしましては、石炭の生帝を確保する、それはすなわち消費を確保するわけでございますから、消費に適当する場所で火力発電を経営する、こういうことにいたしたいと思います。  その場合に経営主体はどうするのか。共同火力のような経営形態もございますが、現存する電力会社そのものがみずから火力発電を経労することが、技術その他から見ましても望ましい形ではないかと思います。もちろん、今から経営主体まで考えてどうこう申しているわけではございません。ただいまのところ、九州地方における産業の発達状況、あるいは北海道地方における産業の状態、それなぞを考えてみますると、いわゆる産炭地の北海道や九州で発電をいたしましても、どうしても過剰電力になるおそれが多分にあるようでございますし、やはり関西なり、中京なり、あるいは京浜地区なり、こういう所が大消費地でございますから、そういうことを考えますと、石炭を適当な場所まで船で送るということが望ましいのじゃないか、こういう結論になっているのであります。
  230. 向井長年

    向井長年君 特に先ほども触れましたように、電気料金の原価主義がそろそろくずれつつある。こういう状態の中で、特に最近は石炭の不況から石炭対策ということが叫ばれて、政府もその対策をとっておりますが、いわゆる電力向けの用炭といいますか、こういう問題については最近新鋭発電所、特に火力の発電所を作るならば、これは重油でやればコストが安くつく、こういう考え方を持っているわけですし、また事実そのとおりでございますが、特に電池であるならば九千九百カロリーが七千円程度である、石炭であれば四千五百カロリーが五千円程度である。こういう一つのカロリーの計算と単価が違うのであります。そうすると、昨年の夏にも重油ボイラー規制法の三年間延長という問題、これが国会で通過いたしておりますが、そういう中からはやり何としても石炭の問題が不況であったので、その救済なり、あるいはその対策の関上電力に若干のしわ寄せをされてくる。しわ寄せをされることによって料金が上がってくる。それがやはり国民の負担になり、あるいは他の産業の負担になってくる。何だか一つの産業の不況を救うためにこういう悪循環をやっているのですが、こういうことについて、少なくともかかる問題について国のあらゆるエネルギーの総合対策としていわゆる重油、石炭、電力、原子力という問題をあわせて、総合的にやはりエネルギーという立場において、一般の電灯とかそういう問題じゃなくて、ぜひそういう点を十分考えていかなければならぬ時期に来ているのじゃないか。この点に対して、少なくとも正式の政府機関においてそういう問題を総合して今後対処する考えを持っているのか、あるいは現在構想はどう考えているのか、その点をひとつ。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総合エネルギー対策の重要な点は、向井さん御指摘のとおりであります。したがいまして、通産省も総合エネルギー対策を樹立すべく各界の有力な方々からなる委員会を設けて、そこでいろいろ御審議をお願いいたしております。すでに石炭部会においては石炭についての答申が出ております。近く石油部会におきましても、ただいま欧州各国に調査中でありまして、十一月の半ばに帰って参りますから、これも近く答申が出るはずだと思います。しかる上で総合エネルギー対策を樹立する、こういう運びに相なろうかと思います。大体の傾向として見ました際に、新しい原子力発電というものは、国内の状況におきましては、まだ四、五年のところあまり大きな期待を持つことができないように思いますし、水力も漸次もうダムサイトがいいものが見つけにくくなっております。やはり石油、石炭、この二つがエネルギー源の大きな柱だ、かように考えますわで、両者の調整によるエルギー対策、これを樹立する、かように努力中でございます。
  232. 向井長年

    向井長年君 次に、続いて通産大臣にお聞きをしたいのですが、電気事業法案のいわゆる制定の問題でございますが、これについて、ちょうど電気事業は、昭和二十五年の十二月に公益事業令が施行されて以来、臨時立法として来たわけですが、そういう法律は、法体系が非常に不備であって、その後いろいろの問題が出て参っております。たとえば電気工事費の問題も出ておりますし、あるいはまた電気保安上の問題が出ておる。こういうような一貫性のない現在の中で、いわゆる電気裏業法案について、早急にこれを制定化する意思を持っておるかどうかということを、まずお聞きしたい。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 去る三十二年に一度第七次試案というものができたようです。しかし、もちろんこれにとらわれるつもりはございません。さらに私ども検討をして、最善を尽くして参りたい、かように考えております。
  234. 向井長年

    向井長年君 今政府考え方を聞きますと、電力審議会等をもって、そこで十分一つ一般の意見を聞きたい、こういうことを考えておるようですが、しからば、電力審議会というものはいつごろ作る予定ですか、あるいはまたどういう構成で作る考え方でおられるか、その点、まずお聞きしておきたい。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 審議会のメンバーは、もちろん学識経験者等各界の方を網羅して作るつもりでおりますが、まだ顔ぶれはきまっておりません。
  236. 向井長年

    向井長年君 いつごろ作られる予定ですか。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まだそこまで進んでいないと思いますが……。局長から説明します。
  238. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) この次の通常国会には、通産省の設置法の改正をお願いいたしまして、電気事業審議会というものを設けていただきたい、そういうように考えておりますので、正式には来年度早々から発足したいと考えております。
  239. 向井長年

    向井長年君 次の通常国会で審議会を設ける。そうすると、この電気事業法案の提案はその次の国会でやるという考え方であるのか、あるいはまた時期的にどういう時期を選ぼうとしているのか、その点。
  240. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) 何と申しましても、非常に大きな問題が含んでございますので、子のために第七次試案までできながら、政府全体としても提出するという決心がつかないというものでございます。しかも、その間、先ほど先生御指摘になりました、急速な需用増に対して開発を責任をもってやらなければならぬといったことになった場合に、また新しい問題が加わって参ります。したがいまして、ちょうどこれは三年前に、鉱業法の改正審議会を二年間の期限つきで作っていただきまして、いろいろ検討していただきまして、結局三年延びましたけれども、大体結論を得たというようなところでございますので、われわれ事務当局といたしましては、二年程度の間に結論を出すということで、期限つきの審議会ということでお願いしたい。できるだけ結論を急ぐようにしたいと思います。
  241. 向井長年

    向井長年君 これは通産大臣、答えていただきたい。その審議会に労働者代表を入れるか入れないか。学識経験を持つ労働者代表を入れるか。
  242. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまだれを入れるかということを申し上げるわけにいきませんが、希望は希望として伺います。研究させていただきます。
  243. 向井長年

    向井長年君 今後作られようとするその法案は、少なくとも現在の実態から見まして、いわゆる電力供給の責任あるいは義務、こういう問題、義務の限界と申しますか、その問題、あるいはまた監督権のいわゆる範囲、なお企業形態から来るところの料金制度、こういう問題がおそらく柱になろうかと思うのですが、そういう問題について、現在、まあ先般第七次試案が出ましたが、これは何といっても、先般あった公益事業令から見まして非常に統制を強化された状態で現われておりますが、今通産当局においては今後審議会を設けるまでに、具体的にやはりそういう構想なりあるいはまた起案というものはなされると思うのですが、そういう点について、ただいまはどういう状態になっておるか、そういう状態が技術的に今進められておるのか、あるいはまたまだであるのか、あるいは今後どういう構想であるか、こういう点を説明していただきたい。
  244. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) 法案の内容をどういうふうにするかということにつきましては、これは事務当局としてはいろいろの検討はいたしております。しかし、これはまだあくまでも担当者のそれぞれの検討という段階でございまして、第七次試案というものを今後どのように変えていくかということにつきましては、審議会で各委員の御意見等を承った上で法案の作成に取りかかりたい。ただ、その際にいろいろ事務当局の意見を求められたらということでの各方面の勉強は、ぼつぼつと今やっております。
  245. 向井長年

    向井長年君 きょうの朝日新聞にこういうことが、通産大臣、書いてあるのですが、今後こういう危機を乗り切るためには、電力系統の連絡強化など、各社のですね、広域運営の徹底と経営の合理化、あるいは固定資産税、事業税、増資配当に対する課税の減免、電気税の撤兆、また電源開発地点の開発促進対策の一つとして、たとえば、先ほど言った公共補償の問題、こういう問題が、やらなければならぬというような形で新聞には書いてある。事実、通産省ではこういうことを今考えておられるのか。考えておるとするならば、具体的にどうやるのか、答弁いただきたい。
  246. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) 通産省でこういうふうに形態を直すというようなことではございませんで、いろいろ問題がございますから、たとえば現在の形態というものはそのままにしておいても、非常に公益性が強いというのであれば、固定資産税について特別の考慮というようなことも払い得る余地もあるのじゃないか。この点につきまして、いろいろ問題が一応ある。この問題点の指摘ということでございまして、新聞の記事が実はどういうふうになっておりますか、ただいろいろの電気事業が、急激な伸びに直面して、現行のままじゃむずかしい、行き詰まりのような格好になっておる。それを打開するためにいろいろな方法があるということの示唆はしてございますが、こういうふうな方向でやるのだというようなことにはなっておりません。現行形態をかりに前提といたしましても、いろいろまだやるべき道が残っておるのじゃないか、そういうふうに考えております。
  247. 向井長年

    向井長年君 現行形態の中でまだ道が残っておるというが、やる道が残っておるんだったら、電気料金を値上げしなくていいのじゃないですか、もっとそういう題問をやればいいのじゃないか。
  248. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) 電気料金は、御承知のように、先ほど来先生御指摘の原価主義でやっておりまして、原価でやっております。ただ、その原価の中には当然公租公課というようなものも入っております。したがいまして、その公租公課というものが下がるということになり、あるいは道路といったようなものを建設した場合に、若干建設省の見ていただいておるものもございますが、そういうような範囲がまた広がるというようなことになるというようなことにでもなれば、これは現行体系のもとでも十分はかれますし、それから、あるいはまた最近、御承知のように、だんだん技術等が発達いたしまして、発電の能率等も上がっております。最近の火力発電等は、昔の火力発電に比べまして、大体昔は五円以上かかったものが、このごろは三円五、六十銭でできるというような、非常に技術革新に伴う下げる要素というものがある。片一方、非常に供給範囲がふえるということに伴う非常な投資から来る資本の増大という問題もある。現在のところ大体とんとんと申しますか、非常にぎりぎり一ぱいという格好になっておりますけれども、またそれらのおのおのの、要素をいろいろやり方を変えれば、それは現行でも変わる余地は十分に——十分にと申しますか、若干はあり得るのじゃないか。ただ、公益事業という立場からできるだけ電気料金を安くするということが、これは電気事業のやはり一番の考えだと思われますので、どういうことをやったら一番安くなるかということについて、われわれとしてはできるだけのひとつ方法を考え出して、そうして具体化できるように努力したいと考える次第でございます。
  249. 向井長年

    向井長年君 公益事業局長と議論をしようとは思いませんけれども、こういうことをやらなくても、固定資産税とか、あるいは電気税の撤廃とか、あるいはその他電源開発地点の問題、やらなくてもまだまだやれる余地があると、こう言われるのだが、そういうことであるならば、ここに書いてある、新聞で今、私が読んで先ほど言いましたが、こういう問題は全然考えなくても、考慮をしなくても、これは電気事業はやっていかれると、こういう立場なんですか。
  250. 樋詰誠明

    政府委員(樋詰誠明君) 今後増大します設備投資というものに対応していくということのためには、今先生の御指摘になったようなことがない限り、あまり大幅な値下げということは非常にむずかしいのではないかと考えております。
  251. 向井長年

    向井長年君 いろいろ申しましたが、あまり了解しないところがたくさんありますが、次に移ります。  次に、きょうは労働大臣はおらぬようでございますが、特に電気事業に伴う問題で、スト規制法についてでございますが、この問題については今問題になっておりますところのILOの八十七号の条約に非常に大きく関連するわけでございます。で、この法案はちょうど昭和二十八年に三年間の時限立法として提案されて、その後三年たって恒久立法になったわけですが、これは何といっても、いわゆる国際的にもILOの八十七号で決定されているように、これは労働者の権利を封殺する法律である。したがって、憲法二十八条に抵触する問題である。こういう問題を当時から大きく労働界においても、一般世論においても、いろいろと主張された問題でございますが、したがって、今日にあってILO八十七号が本国会にも出して批准をやっていこう、あるいはまた早期に条約を締結しよう、こういう中にあってこの問題を撤廃するところの考え方政府は持っているかどうか。また、撤廃しなければならないとわれわれは考えるが、この点についてどうであるか。
  252. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) ただいまの、電気産業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律、いわゆるスト規制法は、御指摘のように、昭和三十一年以来恒久立法として存在いたしているのでございますが、この法律は憲法二十八条の違反ではないか、かような御質問と承るのでありますが、違反ではないか、かように考えているわけでありまして、御承知のように、このいわゆるスト規制法は争議権とそうして公益との調整をはかったものなのでございます。争議権といえども公共の福祉に反することは許され得ないのでありまして、かような点での調整規定なのでございます。憲法十二条なりあるいは十三条に明記しておりまするように、憲法二十八条といえどもやはり公益という制約を受ける、かように解釈しているのでありまして、憲法違反ではないと、かように考えているわけであります。  なお、この法律を廃止する意思があるかどうかと、かような御質問でございますが、ただいまのところ廃止するというような意思はございません。
  253. 向井長年

    向井長年君 憲法違反でないと、こう言われておるのですが、これは当時をさかのぼって考えればわかるのですが、静電気の組合が電源ストをやったことは確かにあります。こういう中でいろいろと問題が提起されて、裁判所の判決が二十五件も、これに対しては争議権の行使である、こういう判決が出ておるのですよ。したがって、そいつを別に憲法違反でないということを明確にすることは、私はあまり基礎がないのじゃないか。二十八条には完全に、労働者の団結権、あるいはまた団体行動権、罷業権というものが認められているのです。公共の福祉に反する  とかなんとか、こう言われるけれども、いわゆる電気においても炭鉱においても、これはストライキというものが目的でないので、これは一つの手段である。そういう立場から物事を平和的に解決しよう、こういう立場に立つてこの問題を出されているわけなんです。そういう中から考えて、電気の場合をとっていうならば、電源というのは発電所であり、また変電所である。こういう中で労務を提供しているわけですね。労務を提供していろいろ問題があって紛争になった場合に、労務提供をしない、こういう立場をとるわけなんです。しかし、労務提供をしない立場になるならば、今送っておる電気をそのままにスイッチをしておく限りにおいては非常な危険状態に陥る。そういう場合においてはそれこそ大きな問題だということで、スイッチを押す、こういうことなんですよ。だから、根本をずっと考えていくならば、そういうように罷業権というものは憲法で保障されている。それに対する言うならば職場放棄の形をとっている。経営者はみずから自分で送電してやればいいのですよ。電気をとめるというのじゃないのですよ、組合のほうは。だから、そういう問題については公共の福祉に反すると言うが、これは職場を去ってそのままおきっぱなしにしておけば、それでいいのだ、それは絶対に公共の福祉に反しないのだ、こういう問題が出てくるわけだ。したがって、今言われるような回答はおかしいのじゃないかと。  したがって、それと同時に、現状においては、この問題についていろいろ問題があるが、特に池田内閣が、いわゆる現在の国際的な二大陣営の問題もあわせて考えるならば、力の均衡というものが平和を保っておると言うのでしょう。武力の均衡、力の均衡というものが平和を保っていると、こういうことを言われる。したがって、労使というものは常に対等の立場で、あらゆる問題を、しかも平和的に話し合いの中から解決するというのが建前です。したがって、経営者のほうは、これは経営権を持っております。労働者がそういう規制をされてスト権を取られた場合に、どういう対処する方法があるか。力の均衡が大きく不合理になる。そういう中から、かえって労使慣行というものはうまくいかない。スト規制法を廃止したために、今直ちにストライキをあすから敢行するとか、そういう問題じゃなくて、物事を、労使の紛争を平和的に解決しようとするならば、お互いが力の均衡を持って、そういう中から話し合いを進めるというのが建前でなければならぬと思うのです。そういう立場から現在の労働の事情を考えても、確かに過去において、この当時は行き過ぎがあったと、われわれもそれは認めます。そういう中から一応時限立法として作られたやつが、いつまでも恒久的にこれを進められるということは、どうもおかしいと思うのですが、現在のそういう労使慣行の問題と力の均衡、あるいは平和的に解決する問題、こういうものをあわせてひとつ答弁願いたい。
  254. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) このスト規制法にきめております争議行為の制限は、御承知のように、争議権を本来的に否認しておるものではないのでありまして、まあ本来なら著しく不当である、あるいは妥当性を非常に欠いておる、かような行為を列挙いたしまして、かかる行為は行なうべきではない、かように規制をしておるにすぎないのであります。したがって、この程度の規制によりまして、労働者の基本的な争議権が侵されておる、かようには考えないのでありまして、このほかに経営者に、使用者に対抗いたします有力な争議手段が幾らでもあるのでありまして、したがって、このことによって労使対等の立場が認められておらない、かようには考えないのであります。ここで憲法論争をしようとは思わないのでありますが、先ほど答弁いたしましたように、この法律を直ちに廃止しようという考えはございません。
  255. 向井長年

    向井長年君 確かにほかに争議手段がないとは言いません。それはあると思います。しかし、先ほど申しましたように、基本的な問題であります。いわゆる労務提供をしておる、その労務提供を拒否するということは、これは固有の権利なんです。労働者の。そういう問題を規制するということは、これは先ほど言うように、公共の福祉といわれると思いますが、しからば経営者に力があれば、自分たちで送電すればいい。だからそういう形は当然固有の権利として保障されてしかるべきだと、こういう立場に立っておるわけです。で、重ねて伺いますが、そうすれば電気のスイッチ・オフをしては、これは規制法に引っかかる、スイッチオフせずして職場を離脱する、こういうことはしからばいいのか、この点労働省の見解伺いたい。
  256. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 作為によりましてこの法律に禁止しておりますような結果が生まれます場合には、この法律の適用を当然受ける、かように考えますと同時に、ただいま御指摘のような不作為といえども、またこの法律に問われる場合もあり得る、かように解釈をいたしておるわけでございます。したがって、その見解は、先ほど申しましたような争議権と公益との調整をはかった法律の規定なのでありまして、公共の福祉ということが法律の基本的な考えになっておる、かように理解いたしておるわけでございます。
  257. 向井長年

    向井長年君 加藤政務次官、ILOの八十七号批准は政府はやるという考え方を持っていますね、ただいまこれをやれば、これは当然保障されることになって、これはなくなるわけなんですよ。そうでしょう。ILOの八十七号批准とこの関連性はどう考えますか。
  258. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) ILOの八十七号条約は、御承知のように、民主的な自由な立場における労使の関係、これを規定した条約なんでありまして、本国会におきましてもなるべく早く上程いたしまして、条約の批准承認並びにこれに関連をいたします法律改正を願いたい、かように考えておるわけでございますが、ILOの条約八十七号批准を承認いたしましても、直ちにいわゆるスト規制法を擁する、かようには考えておらない次第であります。
  259. 向井長年

    向井長年君 考えておらないって、ILOの八十七号が批准されると当然これは権利を認めなければならない形になるんです。私もILOの総会に出てきたんですが、そうなるんです。そうなると、もっともいわゆる、いろいろな国内法で制限するというのはこれはできますが、したがって、そういう形で引き続き置いておこうという、こういう考え方なんですか。
  260. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 国内法でILO八十七号条約の精神にもとる規定が多々あるのでありまして、これはいわゆる関連法案といたしまして、公労法なり、地公労法の改正案も同時に上程される、かように理解をいたしておるのでございますが、先ほど来申しますように、スト規制法に規制いたしております行為は争議行為を本来的に制限するものではないのでありまして、これは社会通念上著しく妥当性を欠いておる、あるいは不当である、かような行為を列挙いたしまして、かような行為はすべからざるものとして明確に定めておるにすぎないのでありまして、固有の争議権をこの法律によって制限を加えておるわけではないのであります。したがって、八十七号条約は批准承認されましてもこれと矛盾をする法律であるとは考えておらないわけでございます。
  261. 向井長年

    向井長年君 通産大臣がすぐ退席しなければならぬ、何か国際的なだれかが来ておるようですから、通産大臣一つだけ先に聞いておきますが、労働大臣への問題はちょっとそのあとにいたします。  そこで、電気ガス税の問題ですが、自治大臣にあとで聞きますが、通産大臣としては、これは先般の国会でもこの問題を取り上げられまして、一応三百円の免税になっておりますが、これは三十八国会の予算委員会池田総理も、当時の椎名通産大臣も、悪税であるから撤廃をしなければならぬと思う、しかし、今直ちにはどうか、こういう話があったわけであります。したがって、今通産大臣も言われましたので、電気ガス税を撤廃する、こういう腹がまえを持っておられるか。この点明確に……、あとは自治大臣にお伺いしたい。
  262. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 通産省としては、この税はやめてもらいたいという強い考え方を持っております。
  263. 向井長年

    向井長年君 そうしたら通産大臣、やめてもらいたい、こういう考え方であると言われれば、これはもう撤廃すべきだという意思だと思いますが、しかし、これは地方財源でございまして、これは自治大臣の問題になるのですが、現在四百億からの地方財源があると思うのです。その問題について。したがって、いわゆるこの徴収の仕方が非常に不合理なんですが、今直ちにこれが撤廃できないというような状態であるとするならば、現在の三百円の免税は、これは非常に不合理だ、税の構成から考えるならば……、基礎控除であるならば話はわかりますが。そういう点から考えて、もっと大幅に、基礎控除をまず第一段階としてやる意思を持っておるか、この点……。
  264. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まあやめてもらいたい税でございます。したがって、二次的な案を考えることはしないほうがいいのかと思いますが、いろいろ財源等の都合もございましょうから、そういう場合におきましては、その三百円をもう少し上げて、五百円とかあるいは六百円にして、それを基礎控除にするとか、まあそういうような工夫も一方法かと思います。しかし、通産省としては、そういうものじゃなしに、やめてもらいたいという強い希望を持っております。
  265. 阿具根登

    ○阿具根登君 関連ですから最後にしたいと思っておりましたが、通産大臣退席されるそうですから……。  先ほどの質問の中で、私の聞き間違いであったならば御答弁要りませんが、向井君の質問の中で、いわゆる北海道、九州の産炭地発電は過剰になるおそれがあるから、発電所は京阪神方面に持っていきたいと、こういうような御答弁があったように私は考えたわけなんです。事実そうだとするならば、石炭の運賃をどのくらい見ておられるのか。産炭地で発電して電気を送る場合の電気の費用がどのくらいかかると考えておられるのか、詳細に聞いておかねば、非常に重大な問題だと思いますし、通産省が今日まで出しておるものでも、産炭地発電あるいは揚地発電という問題は当然予算にまで細れたものでございますので、今思いつきでそういことを言われたのか、あるいは根本的に政策を変えられるのか、その点を聞いておきたいと思います。
  266. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほどお答えいたしましたのは、おそらく速記にはっきり出ておるだろうと思いますが、産炭地で発電することが一番いいのでございますと、それには産炭地の近くで電力が消費されることです。ところが不幸にいたしまして、九州なり北海道でさらに発電をふやしました場合に、それを十分消費する見込みが立ちません。そこで遠隔の地へ持っていかざるを得ない、こういうお話をしたのでございます。で、ただいま御指摘になりますように、そこで運賃の問題というのが出てくるわけであります。これはただいま関係閣僚の間で、どういうように処置したらいいか、前回処置されておりますものがございますから、その跡始末などを十分検討するという今考え方でございます。よろしゅうございますか。
  267. 阿具根登

    ○阿具根登君 私たちは今まで通産省とも相当突っ込んだ議論もいたしまして、産炭地に火力発電所を作って相当長距離にやってもそれを売るほうが安くなる、いわゆる需用者に対しても非常にそれのほうが便利である、安い電力を供給できる、こういうように私たちは解釈もしておるし、そういう資料も持っておるつもりでございますが、あなたのお考えでいくならば、相当量運賃が安くならねばならぬ。たとえば専用船を作るとおっしゃっても、専用船は北海道から、京阪神まで、九州に専用船を作る構想は今ないと言われている。そうした場合に、九州から陸運をやって、陸送をやって、それがその需用地に発電を起こした場合に見合うような運賃の値下げというものは考えられない。私はそう思うし、あるいは海上輸送をやっても、今度はずっとコストが高くなる、かように考えておるものですが、非常にその点、根本的な違いがあるようです。産炭地発電を主に考えておられると思っておったところが、そうじゃないという御答弁なんで、ちょっと了解できかねるのです。
  268. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ちょっと説明をつけ加えます。たとえば九州で発電をいたしまして、そうして、これを超高圧で送電をする、そうして関西地区へ持ってくる、こういう場合の送電線、送電設備、また送電器具のロス、これなどを考えますと、これは現在の技術で十分な確信が持てない。また、送電線の設備に非常に多額のものを必要とする、こういうことでございます。また、北海道で発電をいたしまして、それを本土に持ってくることが困難なことは、まあ地理的に御了承がいただけるかと思います。そういう意味から申しまして、その産炭地発電、これは望ましいことだが、これを遠距離に送電するということは、今日の技術上から見ても、また、経済的にも、たいへん疑問がある、こういうことを申し上げたのでございます。で、ただいままでの大体の傾向を見ますと、九州側から見ると、九州はやはり瀬戸内海を輸送して、電力の大消費地である関西に発電所を設けるのがいいんじゃないか、これが一つ考え方のようであります。また、北海道の場合は、発電所そのものもさることだが、海上輸送の面で能率的な石炭専用輸送船を考えるほうが手っとり早い、こういうような意向になっておるように見受けます。それらのいずれをも十分参考といたしまして、考案をして、そうして結論を出していく、こういう考え方であります。ただいま、石炭関係閣僚の間で早急に取り上げてみようという問題は、離職者対策並びに賃金問題、同時に輸送面の運賃問題、こういう問題を取り上げてみようということで、ただいま研究している、かような実情にございます。
  269. 向井長年

    向井長年君 そこで、労働大臣は——労働政務次官、引き続きですが、その問題は一応またの機会に譲りまして次に進みますが、今、中労委の推薦の問題がございますが、これは公益委員は国会の承認になりますが、労使の推薦というものは各なにからやるわけです。これについてもう二年間以上、これは遅滞しているわけですが、どういう理由で遅滞しているのか、この点を明確にしていただきたい。  なお、もう一点、公労委の任命について非常に問題点がある。この問題は特に、政務次官は今度なられたばかりでありますが、石田労相時代に非常に問題になった問題でございまして、公益が五名の、労使が三名ですか、こういう構成でございますが、特に労使、いわゆる労働者側委員の推薦について非常に疑問を感じるわけです。ということは、どういうところを基礎として労働者側の推薦をされておるのか、どういうところに推薦依頼をしておるのか、こういう問題をまずお聞きしたい、二つ先に。
  270. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) ただいまの御質問は、中労委の委員と、公労委の委員、この三者構成による両委員会の委員の選任についての御質問でございますが、最初の御質問の中労委の委員につきましては、御指摘のように、一昨年すでに任期が満了いたしておりますのに、今日改選されておらない。これはきわめて遺憾なことでございまして、一日も早く改選を行ないたいと、かような方向で絶えず努力をいたしておる次第でございますが、いまだ十分な見通しが率直に申してついておらないのでございます。そこで、中労委の改選が困難である原因につきましては若干ございますが、率直に申しまして、最大の原因と申しまするか、おもな原因一つは、労働者側委員の推薦にあたりまして、労働団体相互間におきまする調整が十分についておらぬ、このことが大きな原因である、かように理解をいたしておるのでございまして、労働省といたしましても、極力努力をいたしまして、この間の話し合いをおつけ願うような努力を重ねておる次第でございます。  それから二番目の御質問の公労委の委員の任命でございますが、御承知のように、公労委の委員も三者構成でございまして、経営者側、労働者側おのおの三名、公益委員五名、かような十一名から構成されておるのでございまして、労働者側委員の構成につきましては、これは本来的にはこれまた労働団体の御推薦を願うのでございますが、そうしてその選任は、これはやはり労働関係団体の姿といいますか、具体的には、労働組合員の姿等を重要な要素として、その他いろいろな点を総合勘案いたしまして人選して参りますのが妥当であろう、かように考えておるわけであります。
  271. 向井長年

    向井長年君 そうすると、中労委関係は、労働者側の調整がつかないから非常におくれておる、しかし、労働省としては格段の努力をしておる、こういうことですか。これは一応話はわかります。そうすると、公労委の推薦については、スムーズにこれが労働省としては推薦されて選任されのたか、この点どうですか。これは本年の六月か七月ごろ決定された……。
  272. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) ただいま御指摘のように、公労委の委員の選任につきましては、必ずしも関係団体間に完全な意見の一致があったとは言い得ないことは、きわめて遺憾なことでございまして、今後はさようなことのないような、さらに十全の努力が要る、かように考えておる次第でございますが、御指摘のように、三名の労働者側の委員の選任につきましては、これは関係団体間に完全な意見の一致は見ないままに選任をいたした次第でございます。
  273. 向井長年

    向井長年君 そうすれば、どうして中労委の場合は、しかも、二年有余も調整するために努力をされたか。一方においては調整がつかないままに任命した。どうも労働省の一貫性の任命の態度が明確でない。一方ではまだまだ努力しておる、しかも二年間。公労委の場合は、期限が来てすぐやっておる。しかも、それは労働者側の意見が調整がつかないままに強引にやった。これはどういうわけですか、一貫性に対して。
  274. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 先ほど申し上げますように、労働関係団体の完全な意見の一致が望ましいのでありますが、しかし、それにも私は、おそらく限度といいますか、限界があったのではないかと理解をいたしておるわけでございまするが、理想的には、今申し上げまするように、関係団体の完全な意見の一致が理想的な形である、かような基本的な態度には変わりがないのであります。
  275. 向井長年

    向井長年君 それは苦しい答弁をしておりますが、とにかく、中労委は二年有余延ばしておる、期限が来たのに。  そのために努力しておる。公労委は延びていない、すぐ無理をして任命した。これは話が通らない。しかし、それは話が通らないことを、今あえて苦しい答弁をしておると思いますが、しかしながら、公労委の推薦についてどういうところを基礎にしてやったか、これは先の国会で公益委員の任命を承認したわけなんですが、そういう中でも若干石田労相に指摘をしておいた問題でございますが、特に今後の問題があると思うんです。そういう立場からどういう見解であるかをただしたいと思うんですが、御承知のごとく、公労関係の組合は二つあると思うんですよ、大小は別です。これは。二つあります。一つは膨大な五、六十万の労働組合、あるいは一方においては四、五万かと思います。こういう二つの労働団体があるわけなんですが、これは数でそういう問題を任命しようとするのか、あるいは数じゃなくて、やはり少なくともその組合なりそういう団体のやはり性格、あらゆる主張、こういう問題はおのずから違うと思うんです。同じ労働者側の団体であっても。そういう問題を意図するならば、少なくともこういう振り合いというものは、数だけの問題じゃなくて、当然やはりそういう性格を見、あるいは職種を見て考えなければならぬと思うが、この点についてどう考えるか。
  276. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 公労委に関連を持つ公労協の組合員諸君の数はおそらく九十二、三万と理解をいたしておりますが、九十数万の組合員の方の二つの団体に分かれておる数の読み方につきましては、いろいろ見方があると思うのでございまして、私はいかなる数字が正しいかはここでは確たる答弁をいたす資料がないのでありますが、片方の団体が非常に大きく、いま一つの団体は必ずしもそうではない、かようには抽象的に言い得ると思うのであります。そこで、公労委の委員の任命でございますが、もちろんその人の人格なり、手腕、力量なり、その他いろいろの要素を勘案して任命さるべきであるとは思いますが、しかし、基本的な考えといたしましては、やはり公労協の諸君の背後にある勢力といいますか、数がやはり重きをなさざるを得ない、かように理解いたしているわけでありまして、かような観点から先般三名の委員が任命をされた、こう私は理解をいたしているわけであります。
  277. 向井長年

    向井長年君 数にものをいわしたというんだったら、そうすると、一方のほうの団体について中労委はこれまたおかしいと思うんですよ。それは、その中から、すべてその団体が全部包含しておるというんじゃなくて、そういう人たちの利益を代表するのはどれぐらいであるか、こう考えれば、これは中労委の場合は今の推薦はおかしいですよ、どう考えましても。これはもう率直に言うて、官公労諸君、あるいは特に官公労諸君を除けば民間というのはどういう形になるか。こういう問題と同じようにすれば、どうしても中労委関係と公労委関係は矛盾するわけです。そういうものを力点とするならば、そうすれば、少なくとも、先ほど言うように、やはり利益を代表する、そういう一つの利益代表なんだから、そういう人たちはわずかな数であろうと一つの性格、団体の性格を持っておられる、あるいは利益の主張も違う、そういう人たちの利益代表というものは当然そういう中に加えなきゃならぬじゃないか、こういう主張を先般の国会にもしましたが、当時の石田労相は、もちろんそういう点も考えられますというような格好で、今後善処したい、こういうことを言っておられましたが、今、いずれまた近くこれも改正があると思いますが、そういう中で労働省としては今後そういう問題をあわせて考えていく面があるのかどうか、これを明確に願いたい。
  278. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 先ほど来申しておりまするように、労働関係団体の完全な意見の一致が望ましいのでございまして、今日まで意見の一致を見まするための努力が不足をしております点があるといたしますならば、今後さらに十分努力をいたしまして、の一致を見ていただくような努め方を今後いたしたい、かように考えておるわけであります。
  279. 向井長年

    向井長年君 その問題は一応そういうことで努力するということで了解しますが、次に定年制の問題ですが、これは厚生省に若干わたると思いますけれども、厚生大臣きょうおいでになっておりませんが、労働者のほうで最近、これは民間が中心になられたと思いますが、五十五才というのが定年のいわゆる常識になっております。しかし、最近の状態を見ますと、労働力の不足の問題が第一点、第二点には、やはり人間のいわゆる寿命がふえたというか、あるいは体力が増進している、こういう状態の中で、五十五才になってもまだこれは働けるだけの十分体力を持っている。あるいは一方においては、定年退職をして何がしかの退職金もらってはこれでは将来生活できない、まだ子供も十分教育しなければならない、こういう状態の中から再びどこかで働かなければならぬ、こういう状態が現実の状態だと思います。そういう中で定年延長という問題ですね、五十五才から六十才というような形の問題も今後考えていかなければならぬと思いますが、特に政府としてはこういう点についてどういう見解を持っているか。一応簡単に。
  280. 加藤武徳

    政府委員(加藤武徳君) 民間企業等におきまして、五十五才なりあるいは五十八才、六十才という定年制が設けられているところがあるのでありますが、今、向井委員の御指摘のように、労働力の不足が非常に目についてきた、また健康状態が非常によくなりまして、平均寿命も相当伸びている。したがって五十五才あるいは五十八才になっても必ずしも労働意欲が低下しない、また労働能率もじゃんじゃん上がっている、かような状況であるので、定年制を延ばしたらどうか、かように御意見を承るのでございますが、これは考え方におきましては、ただいま向井委員の御意見のとおりであろうと思うのであります。ただ、政府でやり得ます措置があるかどうかにつきましては、別個の検討が要ると思うのでありまして、御承知のように、定年制は各企業体におきまして、人事管理の観点から、労使対等の立場に立ちまする労働協約あるいは就業規則、かようなもので規定している場合が多いのでありまして、法律等によりまして一律に定年制を画一的にきめるということはいかがであろうか、さような方法は今直ちにとるべきではない、かように考えているのでありますが、しかし、御指摘のように、大きな方向といたしましては、定年制は逐次延びるべき性格を持っている、かように考えているわけであります。
  281. 向井長年

    向井長年君 次に自治大臣にお伺いしたいと思いますが、先ほど通産大臣にも若干質問をしておいたのですが、地方税の問題です。特に電気ガス税の問題ですが、私たち漏れ承るところによりますと、先般の国会でこれが三百円の減税が一応税制改革の中できめられました。このときに、池田総理も現在の佐藤通産大臣もこんなものはやめてもらいたい、こういう意見を言っているわけであります。そういう中で三百円の免税が先般見られたのですが、その当時実際に通産大臣であった椎名前通産大臣は、できるならばある程度基礎控除をやってもらいたい、こういう意図が通産省の意見であったようでございますが、最終的には三百円の免税で終わっております。もちろんこれは財源の関係からきた問題とは考えますけれども、何といってもこういう不合理な、いわゆる免税という不合理な形は、これはまあ税の公正を欠くのじゃないか。いわゆる末端のわずかなところにおいては三百円免税であろうけれども、そこから一円でも二円でも上がれば、もうすべてが税金に全部賦課されるというようなことは、税の公正の上から考えてもおかしいのではないか、そういう立場から考えて、少なくともこれは撤廃という問題が本旨でありましょうが、こういう免税という問題よりも基礎控除という形を考える余地はないのかどうか。現在は三百円でございますから、全国の電気の家庭用の平均というものは約六百円、少なくともこの平均値まで、これは生活の必需品ですから、日常の生活の必需の水あるいはその他米と同じような形ですから、それまでは無税にするというのが当然だと思うんです。そういう問題について自治大臣はただいまどういう考えを持っているか。今後どう処理しようとされるか。
  282. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 電気ガス税につきましては、いろいろ御批判や御意見のあることは承知しております。また、先ほど通産大臣もできればやめてほしいという希望を述べられております。しかし御承知のように、この市町村税として非常に大きな額を占めるし、非常に普遍的な税でもございますので、これは地方財源という意味から見ましても、なかなか簡単に手がつけられにくい税であることは御承知のとおりであると思います。したがいまして、昨年税制改正やります際にも、いろいろ論議になりました結果、三百円の免税点というものを置かれたのでありますが、この目的は零細な消費者に対する免税ということを主体にしており、今御指摘の基礎控除ということになりますと、普遍的に相当ぜいたくに使っておる人でもだれでも一律に適用するということでなければ理屈に合わないと思います。これは私ははたしてどうだろうかという感じがいたしております。しかしまあ、今までの免税点ははたしてこれは全然一分のすきもないりっぱなものだと必ずしも全般的に考えていないのであります。いろいろとこれは検討を要する問題だと思います。地方財政の現状、また、税が消費税として非常に普遍性を持っているし、従量課税という建前から見ると、あながちこれは悪税だと言ってしまうような性格のものではないように思います。いずれ税制調査会でも検討中でございますので、今後も検討は進めて参りたいと思っております。
  283. 向井長年

    向井長年君 この税金はもう御承知かと思いますが、戦後昭和二十二年か三年ごろに地方自治体が非常に財源的に困窮した、こういったときに最も手っとり早く、そしてまたよりよくとるためには電気にかけるのが一番いいだろうということで、これがまあ施行された。地方財源の確保から出た、全くその当時の救済の意味でとられた問題だと思うのです。そういう中でも、そういう中にあっても、しかも免除をしておるところはたくさんあるわけですね。いわゆる一般の動力の中で重要産業に対しては免税をしておりますよね、これは。私鉄にしても、アルミにしても肥料にしても、そういうところの工場は全部免税にしておるのですよ、国民生活に影響があるといって。そして一般の生活に必要のある最低限のやつに一割という税金をかけているでしょう。今のような経済成長した中において、池田内閣が所得倍増を唱えている中において、こんなところに税金をかけているというのは恥ずかしい状態だと思うのですよね。考えてみなさい。一般の重要産業のやつは免税していながら、すべての国民に対して一割という電気の——電気というのは生活の必需品なんですよ、あかりは。これにすべて税金をかけるということは、これは何といっても考えなければならぬ。これに対して池田総理大臣は、これは悪税である、一日も早くやめてもらいたい——やめてもらいたいという無責任な話ですが、そういうことを言っておる。担当の自治大臣が地方財源という問題に立って税の性格というものを十分理解していないのではないか。理解しているか、していないのか。財源というものが頭に入っているのでそういうことを言うのですが、こういう点は自治大臣は率先して国民生活から考えて、必需品としてやはり税はやめるべきであると考えます。これはどう思うか。今直ちに財源やめられなければ、免税点を少なくとも基礎控除という形で大幅に引き上げるべきである。電気ガス税は四百億と言われております。ただいまの免税点は十七億。したがって、免税点をやればもちろん若干財源ふえますよ。しかし、そういうことは国民生活に対して公正な形であるのじゃないか。こういう考え方を持っておるので、この点再び御答弁を願います。
  284. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 電気ガス税のいろいろの御意見のあるところは私もよく拝承しておるところであります。しかし、この地方財政の財源だけという観点からこれを現状のままで存続しようとは必ずしも考えておらぬわけですが、この税がかなり普遍的に使用者の従量に応じてとられるという点においては、ある程度合理性があるのではないかというふうに考えます。しかし一面、今のような御批判もあるところでございますので、これはむろん税制調査会等でも御検討になっておりますので、その検討の結果につきましても十分配慮はいたしたい。ただいまのところこの基礎控除はあまりにも普遍的になり過ぎるので、高額所得者にまで及ぶ必要もなかろうという考えもありまして、基礎控除、あるいは免税点を云々するというきまった考え方をまだ持っておりません。
  285. 向井長年

    向井長年君 この問題、了解しませんが、またいずれ適当な時期にやりますが、次に自治大臣に引き続きお聞きしたいのですが、特に選挙関係についてでございますが、先般の国会で来年六月か七月に予定される参議院選挙に対して自民党の党の方からですか、これは改正が出された。それがまあそのままになって流れてしまったのですが、再び政府として選挙法改正をやるという考え方を持っておられるか、まず第一点。  それから最近特にいろいろ私たちは聞いたり見たりしているのですが、来年の六月なり七月に予定された選挙に対処して、政府の高級公務員といいますか、官吏といいますか、こういう諸君が特定の候補を、しかも地方公共団体の、これまた地方高級公務員に選挙の依頼をして、その諸君が、しかも一般の出入り商人、あるいは建設もありましょうが、その他もありましょう。こういう商人に対してその地方公務員が選挙のいろいろのことをやっている。こういう問題は、先般も武州鉄道の問題がだいぶ問題になっているようでございますが、そういうように今後やはり不純な、いわゆる政府なり役所と一般のそういう商人との間に不純な問題が生ずるおそれが非常に多いのじゃないか、そういう問題が現にあります。私はこれは特定の候補でございますから、名前も言いませんし、どういうところにあるということは言いませんが、事実そういう点はあります。こういう点について、特に関係大臣、各大臣はどういう考え方を持っているか、そういう点については絶対今後やらせないような方途をとろうとするのか、あるいはまたそれは当然だ、やむを得ないという考え方を持つのか、こういう点、明確にしていただきたい。ただ個人的にいろいろと言うのじゃなくて、そういう正式な政府なり地方団体の機関を通じて、しかも業者との結託という問題が事実出ております。非常にこれは今後不純な汚職問題が再び起こるような事態もないとは言えない。そういう点についてまず自治大臣、担当大臣としてどう考えるか。
  286. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 前段の参議院で議員提案になりました選挙法の一部改正の問題につきましては、前国会で審議未了になったわけでございます。政府といたしましては、御承知のとおりに今審議会に諮っておりまして、その審議会の答申出次第善処をいたしたいと思っております。あの法案をそのまま、あるいはその一部を政府から出そうというつもりは現在持っておりません。  なお、公務員が地位を利用いたしまして、いろいろ選挙運動をやる、これはもうまことにけしからぬ話でございます。私どもそういう事実がありますれば厳重に戒め、また、それぞれの関係省庁とも十分連絡をとって、そういうことのなからんことを期したいと思います。
  287. 向井長年

    向井長年君 建設大臣、この問題についてどう考えますか。今申しましたあとの問題。
  288. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ただいま安井自治大臣のお答えになったと同じ考えを持っております。
  289. 向井長年

    向井長年君 建設大臣、考えというよりも、そういう事実が各所にあるということを私は知っておりますが、そういう事実は今後は絶対やはり所管大臣として厳に戒める、こういうことですか、はっきりして下さい。
  290. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) そのとおりでございます。
  291. 向井長年

    向井長年君 建設大臣、現状そういう点がこれは建設省関係にもあります。あるいはまた農林省関係にもあります。そういう点、運輸省にもあります。これは運輸大臣、きょう来ておりませんが、各所にそういう点が、地方のいわゆる高級公務員ですか、地方団体のこういう諸君は弱っている。なぜ弱っているかといえば、政府に、やはり各省にいろいろなごきげんを損じた場合には、いろいろな予算問題とか、その他の問題について非常に困る。何とかこれを受け入れなければならぬ、こういうことを非常に苦情をもらしている。苦情をもらして、やはりそういう苦情をもらしながらも、やはり自分のところの県の、あるいは府のあらゆる政府の施策を講じてもらいたいといって、自分一人ではどうにもならぬから、出入り業者にこの問題については何とかひとつやってくれ、こういうことを各省でやっていることを事実知っているのですよ。だから、そういう点について簡単に大臣考えられているけれども、現に建設省にありますよ。あるいはまたその他の省にもあるわけです。そういう問題についてやはり今後どういう態度を持って臨むか、この点を明確にしていただきたい。
  292. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御指摘のような事実がもし事実ありとすればよろしくないことでございまして、かような点は厳に戒めて参りたいと思います。私の承知しているところでは、今回近い機会に建設省の役人で選挙に立つという者は聞いておりませんが、もしそういうような事情があって、御指摘のような事実があるとすれば、そういうことがないように厳に戒めて参りたいと思います。
  293. 向井長年

    向井長年君 あなたの省で立つとか立たんとかそういう問題ではなくて、特定の候補を高級官吏が、高級公務員諸君が、しかも職権を利用して自治団体にそういうことをやっている事実があります。これは苦情を聞いておりますからね。だから、そういう点についてはそれは大臣知らないでしょう。したがってそういう問題については各省の中でそういう諸君に対して厳重な訓戒をして将来やらさない、そういうことがあるとすれば今後やらさない、こういう態度であるのか、このことだけ明確に。
  294. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 厳に戒めてそういうことのないようにいたして参りたいと思っております。
  295. 向井長年

    向井長年君 総理府総務長官おられますか。総理府総務長官にお聞きいたしますが、人事院勧告の問題もございますけれども、その前に同和対策審議会の問題でございます。この問題につきましては時限立法で一年前にこれが制定されたと思いますが、その後もう一年以上たっております。少なくとも同和問題は非常に緊急ないろんな問題だと思います。いわゆる環境改善等もありますし、今後の指導教育もありますし、そういう中から、こういう同和対策審議会というものが作られたと思いますが、法案が通りましたが、その後その審議会の委員の任命すらできないというような状態、これはどういうところに基礎があるのかわれわれはわからないのですが、少なくともこういう問題は、そういう法ができた以上は早急に審議会を作り発足さして、そうしてあらゆる問題に対処すべきだと思いますが、どうしてこれをやらないのか、これをひとまず聞きたい。
  296. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 同和対策審議会は、その設置法が昨年の八月十三日に公布になっております。自来一年数カ月たっておるわけでありますが、御指摘のようにいまだに審議会が発足できないでおりますることははなはだ遺憾に存じております。実は私といたしましては七月の半ばに就任をいたしまして、そういう状態にあることを承知いたしましたので、直ちに関係方面ともいろいろ打ち合わせ等もいたしまして何とか早く発足ができますようにせっかく努力を実はいたして参ったのでございます。しこうして最近に至りまして大体のところは関係方面の御了解も得ることができまして、もちろんまだ十分とは申しかねますが、大体のところは了解を得られましたので、近々のうちに発足ができますようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  297. 向井長年

    向井長年君 そうすると、大体発足できる人員の態勢ができたということでございますが、若干われわれの聞く範囲では問題があったようで、少なくともそういう問題は公正に学識経験者とかあらゆる分野があると思いますが、こういう問題についてはいろいろな圧力に屈せず堂々とやはり選任をさるべきだと思います。この点について伺いたい。
  298. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 先生のおっしゃるとおり、私としましてはあくまでも公正にやるつもりでございます。先ほど申し上げますとおり、必ずしも十分意見が調整されたと申しかねる点もありますが、しかし、この期に及びましては一日も早く一つ発足したい、さすべきであると、かように私ども信じて進めておるわけでございます。
  299. 向井長年

    向井長年君 最後になりますが、公務員の給与の問題でありますけれども、これは人事院の勧告が先般出まして政府が今度尊重すると、こういう形をとっておられるわけですが、特にこの公務員給与について根本的にいわゆる民間給与との格差とかいろいろな問題もありますが、ただ人事院勧告を尊重するとかそういうことではなくて、根本的にやはり公務員給与という問題を検討し考えていくという考え方を持っているかどうか、特に民間給与の問題との比較においても非常に変なアンバランスがあると思うのです。こういう点についてどういう考え方を持っているか。  それからもう一つは、人事院の勧告を尊重すると、これは大蔵大臣も言われておりますけれども、財源の問題もありますが、これは何といっても人事院の勧告を尊重するならば十月でなくて五月に実施しなければならぬわけですが、こういう点について今なお十月ということで考えておるのか、こういう問題、この予算の中に出ておりますけれども、これは当然人事院の勧告を尊重して正月にやるべきだと思いますが、こういう点についてどうお考えになりますか。
  300. 小平久雄

    政府委員(小平久雄君) 御承知のとおり人事院勧告が八月八日に出まして、自来政府といたしましてもこれを慎重に各方面から検討いたしたわけでございます。しこうして現在のところは人事院の勧告に従いましてこれを尊もして公務員の給与をきめるという方法がやはり一番妥当であろうと、かような立場に立っておるわけでございます。  なおまた五月一日にさかのぼるべきであると、こういうお話でございますが、その点につきましてもわが国の現在の経済情勢等を全般的に、また総合的に判断をいたしまして、今回は昨年同様十月一日から施行することが適当であると、かような結論に達したわけでございます。
  301. 向井長年

    向井長年君 完全な答弁ではございませんけれども、時間がきましたのでこれで終わります。
  302. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 明日は午後一時開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十八分散会