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1961-10-14 第39回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十四日(土曜日)    午前十時二十七分開会     —————————————   委員の異動 本日委員館哲二君、前田佳都男君及び 藤田藤太郎君辞任につき、その補欠と して天埜良吉君、野上進君及び佐多忠 隆君を議長において指名した。     —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小山邦太郎君    理事            苫米地英俊君            村松 久義君            米田 正文君            永岡 光治君            藤田  進君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            天埜 良吉君            小沢久太郎君            太田 正孝君            梶原 茂嘉君            金丸 冨夫君            古池 信三君            小林 英三君            小柳 牧衞君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            手島  栄君            野上  進君            武藤 常介君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            阿具根 登君            大矢  正君            加瀬  完君            木村禧八郎君            佐多 忠隆君            羽生 三七君            山本伊三郎君            相馬 助治君            基  政七君            市川 房枝君            北条 雋八君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    国 務 大 臣 川鳥正次郎君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第一部長 山内 一夫君    総理府特別地域    連絡局長    大竹 民陟君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省欧亜局長 法眼 晋作君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長事務代理  高橋  覚君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    文部大臣官房長 天城  勲君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   説明員    外務省アジア局    北東アジア課外    務調査官    高島 省三君    日本専売公社総    裁       阪田 泰二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十六年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 予算委員会を開会いたします。  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)、以上両案を一括して議題といたします。  これより質疑を続けます。相馬助治君。
  3. 相馬助治

    相馬助治君 私はこの際、内閣総理大臣以下各閣僚に対して、若干の現在当面せる重要と思われる問題について質問いたします。  まず第一に沖繩の問題ですが、沖繩については、私は先般船田中氏を団長とする視察団の一員に加えられて、キャラウエイ高等弁務官の招待によって現地を見る機会に恵まれました。相当の心づかいをもって諸般の仕事をしていることを十分認めるのでございますが、沖繩の問題の中には非常に多くの悲劇的な要素が含まれておると思うのです。そうして、これは日本政府が責任をもって解決しなければならない性質のものであろうと私は考えます。  まず、ただいまホワイトハウス派遣調査団沖繩訪問中でありまして、帰路日本に立ち寄ると伝えられておりますが、この調査団大統領に対する報告というものは、今後の沖繩問題を律する際に非常に重要な意味を持つと思うのでありますが、内閣総理大臣はこの問題についてどのように考え、またこの調査団に対して何か考慮しておることがございますか。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 沖繩の問題につきましては、お話のとおり現地状況もだんだん改善されつつあるとはいうものの、まだまだ内地のそれに比べまして私は十分でないと思っておるのであります。したがいまして、先般のアメリカ大統領との会談におきましても、この問題に対しましてアメリカ政府の強い関心を払おれるよう私は要求いたしてあるのでございます。それによりまして、御承知のとおり、沖繩を加えまして日米間におきまして、沖繩の問題について十分協議を重ねて、そうして改善に努めていこうという委員会を設けることに相なりました。こういうことと前後いたしまして、アメリカ政府におきましても特別の調査団を出しまして、そうして沖繩の実地を調査し、それによりまして、われわれとの会談の準備をすることと私は期待いたしておるのであります。で、調査団が詳細に調査しておられるようでございます。また、その調査に基づきまして、われわれにも御報告があることを期待いたしております。まだそれを御報告を受けておりませんが、今後の沖繩に対します日米の施策に相当私はいい材料が出てくるのではないかと考えております。
  5. 相馬助治

    相馬助治君 帰路立ち寄る調査団に対して、その機会を利用して政府見解、それから沖繩の人々の要請している点、そういうものを十分に納得せしめるような努力がほしいと私は思って以上のことを申し上げたのであります。  で、十一月二日から開かれんとしておりまする日米合同委員会にはアメリカ主要閣僚も来朝すると伝えられておりますが、予想される議題の中に、重要な事項の一項として沖繩問題というのが見当たらないのでありまするが、今度のこの合同委員会では、これは話し合い材料となるものですか。それとも別段に新しい事実の発展でもない限りは、ここでは問題にならぬ問題であるとのお考えでございますか。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 何を議題にするかというところまで今いっておりません。どういう格好でいくかということをこちらのほうで検討しておるのであります。そうしてまた、その検討と同時に向こうでも検討しておると思います。そうして二十日ごろから両者話題を選定し合うという段取りに相なると思うのでございまするが、いずれにいたしましても、白米経済閣僚懇談会日米関係、ことに貿易、あるいは国際経済政策、あるいは後進国の開発、あるいはいろんな日米並びに世界経済問題につきましてフリー・トーキングしていこうというのがこの趣旨でございまして、今この問題を融れるとか、この問題には融れないとかいうはつきりしたものではないので、私は自由な立場で十分に問題を討議して、そうしてわれわれのほうから沖繩問題も小笠原問題も出してもよろしい——まだとの問題というふうにはさまっておりません。自由な格好で、日米経済、並びに後進国、あるいは広く世界の経済についてのいろんな見解を話し合う、こういうことにいたしたいと考えております。
  7. 相馬助治

    相馬助治君 沖繩の問題については、率直に申して、このサンフランシスコ条約規定条項を守っていないと私は思うのです。いわゆる査察権を伴う国連信託統治にするという、こういう考え方というものは現に実現しておりません。もっとも平和条約時代に予想した事態とは全く違うのでありまして、信託統治にするというととを一方的に申しても、それはソ連の拒否権その他から事実の問題としてはそれは無理であろうと私はこれを認めます。そういうふうに事情が変化しておりますけれども、しかし、ともかくサンフランシスコ条約が規定しいてる条項を守っていない段階がこうしてきておる。しかし、極東の緊張のためにどうしてもアメリカ沖繩に対して現在のような形でもってこれを占領していくとするならば、これはやはり大きく事情が変わっているという現実に立つべきであって、公式的に、ただ大声でわめくだけではなくて、施政権を返してもらいたいということをやっぱりこの際はっきりと基本的な態度として打ち出すべきではないか。たとえば北方領土につきましても、私ども千島返還安保解消の見合いだというような一つの論をとるものではありません。固有の領土に対して民族の要望を入れて、政府はこれを強く北方においても南方においてもその返還を迫るべきなのであって、その趣旨に沿って基本的にはやはり沖繩施政権日本に返すべき段階であるということを明瞭にすべきであろうと思うのでありますが、これにからまる国際情勢見通し、またなかなかそれが不可能であるとするならば、それらの状況総理より承りたいと思います。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国連信託統治になるまではアメリカがこれを支配するということに相なっていることはお話通りでございます。国際情勢の変化と申しますか、あの当時よりもそうひどく変化しているとは思いませんが、やはりアメリカが依然として施政権をとり、国連信託統治に持っていくまでの段階に至っておりません。したがいまして、われわれとしては、お話のように日本潜在主権があるから早く施政権も返してほしいということは、前内閣以来その前から極力これを言っているのでございます。しかし国際情勢、ことに極東情勢から言って、今施政権を返すわけにはいかないというのが向こうの主張でございます。しからば、われわれは一日も早く返してもらいたいけれども、それまでにおいてもなおかつ沖繩住民生活向上福祉増進に努めるべきじゃないかということが、施政権を返す前提としてもわれわれはそれを実行してもらいたいというのが、先般私が参りましてからの話でございます。この点につきましては、向こうも了解してくれまして、先ほど申しましたように、懇談会を開いて、沖繩島民福祉増進生活向上努力していこう、こういう段階に立ち至っているのであります。
  9. 相馬助治

    相馬助治君 よくわかりました。返還見通しに立って、それが不可能であっても、そういう展望に立って、行政水準レベルアップ努力するつもりだ、またしてきた、こういうことでありまして、その点はよくわかります。問題は、その行政水準レベルアップということを今後どのようにするかという問題ですが、私ども沖繩現地視察をして感じたことは、民政府もしきりにわれわれに対して視察の便宜を与え、もうあふれるばかりの好意を持ってその視察の効果を上げるように努力していることはわかるのですが、何と申しますか、まことにそのちぐはぐな見当違いなものが気分的にあるのです。たとえば今度国旗掲揚にしても、お盆の日に堂々と向こうの軍隊が出て、行政府の上に国旗掲揚をして、沖繩の人がだいぶ面くらって、これは善意のミステークだと言ったそうですが、そういうふうにアメリカのためにもならぬ、もちろん沖繩のためにもならぬ、しかしどっち毛本気であって、変な食い違いですね、そういうことを非常に多くわれわれは見かけるのです。それで私はやはりこの際は、行政水準レベルアップといいますが、自治権拡大をやるほかないと思うのです。そのことは沖繩行政府にまかせておくのではなくて、日本政府がこの問題をはっきりとやはり主張すべきだと思うのです。立法院はあります。しかし高等弁務官拒否権というのがあって、それは非常にたくさん出ております。この高等弁務官拒否権立法院にどのように作用したかということについて、政府当局でお知りだと思うので、ひとつ法制局もいるようですから、お聞かせ下さい。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話のような点は私も聞いております。しかし私としては、いかなる場合に拒否権が出たかという実績は私記憶いたしておりません。私の察するところ、お話のとおりに、沖繩島民気持アメリカ高等弁務官その他関係当局気持がぴったりせぬことが多々あると思う。したがいまして、今後は日・米・沖繩とこういうふうに三者合同でいろんな問題を話していこう、こういうことにいたしたのもそのためでございます。それから自治権拡大の点につきましても、政府首席公選にするか任命にするかいろんな問題もありましょう。われわれもこれはできるだけやはり沖繩島民自治権拡大してもらいたい、こういうことも言っております。そしてまた沖繩予算編成権につきましても、これはわが国が占領されたときと同様あるいはそれ以上の介入権と申しますか、指示権があるようでございます。しかし実際財政の規模を見ます〉、アメリカ政府財政の寄与は昨年全体の二割、一昨年は一割程度で、そうアメリカ政府沖繩財政に寄与していない。こういう点は内地の各府県と比べて私はよほど違う。アメリカはもっとやるべきじゃないか。われわれも二、三年来いろんな教育問題とかあるいは各方面の文化施設等に非常に力を入れている。アメリカはもっと入れるべきである。そうして、そういうようなことをすると同時に自治権拡大もできるだけ認めていくことが民主主義を守っていくアメリカのやり方ではないか。おのずから軍の必要さと民主政治の確立というものにはそこに限界があるのだ。そういう点は一つ検討しようじゃないかという話はいたしておるのであります。
  11. 林修三

    政府委員林修三君) 今お尋ね立法院の決議しました法令についての拒否権の問題でございますが、私のほうで詳しく実はトレイスしておりませんので詳しいお答えはできませんのでございまするが、本年においては今まで一件あったと聞いております。過去の事実は実は詳しく私ども調べておりませんのですが、本年においては一件だと聞いております。
  12. 相馬助治

    相馬助治君 やむを得ないと思われるような拒否権の発動でなしに、純経済的な問題についても拒否権がたくさん出ております。それからまた公務員の身分保障をしようというような積極的な立法についてはほとんどこれは拒否権が出ているという始末ですから、これらの問題についてはやはり首席公選の線に沿って政府が強力にその要求をすべきだと思う。  それから東京事務所というのがあります。これは今度私も資料を求めようとして尋ねようとしたところが、われわれ一般職ですから何にも言えないと言う、何にも資料は出せない。それから先生から電話が来たということも、まあ向こう様にはわからないようにしてもらいたいと言うから、こっちが電話するかどうかはあなた、自由じゃないかというようなことを言って、何の資料も入らなかったのですが、この東京事務所機構というのはどういうことになっておりますか。外務大臣でしょうか、これは総理府長官でしょうか。
  13. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) この機構につきましては、国内的にはわがほうでは南方連絡事務局総理府の所管のもとにあります。そちらのほうの政府委員から御答弁させます。
  14. 高島省三

    説明員高島省三君) お答え申し上げます。琉球政府東京事務所と申しますのは、当初講和前からあそこの民政府のトレイド・ミッション、貿易代表という形で事務所を作りましたのが発祥でございまして、その後講和条約後も引き続いてその形で民政府職員がヘッドになっておりまして、それから琉球政府職員がアシスタントの形で四、正名はおったかと思います。その後機構が変わりまして、琉球政府事務所だということで民政府からは直接離れたわけでございます。現在も職員がやはり代表といっておりますのが四、五名かと思います。ただしこれは単なる琉球政府事務連絡機関でございまして、国際間の機構というような性質じゃございません。従って琉球政府指示がない限りお尋ねのような公式な活動あるいは書類提出ということはおのずから制約されているのだと思います。
  15. 相馬助治

    相馬助治君 公式的に書類提出を求めたのじゃなくて、話し合いをしたいと思っても、私ども特別職じゃなくて一般職で、向こう様がちょっとこわいからごかんべんを願いますという調子なんでありまして、これはちょっとものの考え方が行き過ぎているから、日本政府でもこういう現実をつかんで、これは何とかしろということを私は言いたいと思うのです。まあその点考えておいて下さい。  その次に経済問題ですが、今ドル建てになっておりますが、通貨政策というものの心理的影響は非常に大きいのですが、これは円建てにするような努力日本は必要とお感じにならないでしょうか。この点について総理大臣なり大蔵大臣から御意見を承っておきたいと思うのでございます。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういう御意見もございますが、向こう施政権を持っておりますし、またいろいろな財政援助経済的なあれがありますので、私は今のドル建てであってもそう不便は感じません、安定いたしておりますから。これによって経済交通が非常に阻害されるというふうなことは私はないと思います。通貨が安定いたしておりますから、今のままで支障はないと考えております。
  17. 相馬助治

    相馬助治君 ただ単位として切りかえろというのじゃなくて、将来やはり日本為替管理法の及ぶような形において、これはドル建てから円建てへの切りかえというものを日本政府も研究しておく必要があると思うのです。それは民族的な心理的な問題からも私は向こうへ行ってみて非常に強く感じたので、この点の善処を要望します。  それから日本政府沖繩財政的な補助をするといってもなかなか困難である。今の制度では困難でむずかしい。そうしますと、沖繩でできる産業の中にパイン産業というのがあります。これは非常な努力をして最近は伸びているけれども、他の国のものに比べるとまだ高い。それを日本政府は来年十月自由化品目として関税引き上げによってこれを操作しようとする案を出しているようでありまするが、こういうものこそ保護をして、そして沖繩経済自身を助けるべきだと思うのですが、通産大臣、この点についてはどのようにお考えでございましょうか。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 沖繩パイナップルカン詰産業、これはただいまお話にありましたように、最近非常に伸びて参りまして、ことに沖繩の特産として琉球政府は特に力を入れているのでございます。従いまして、これが消費地としての日本へ強い要望がございます。私も数回代表団の方ともお目にかかり、折衝もいたしております。今日までのところは、御承知のように他の地域に対しましては二五%の関税をかけておりますが、沖繩についてはもちろんこれを免除しておりますし、また特定物資輸入臨時措置法、これは来年の六月まででございますが、この措置法もあります関係から、三割の差益金を他のものからは徴収しておる、これまた免除した形でございます。そういう意味でこの保護育成をいたし、私どもこれがりっぱな商業に成育することを心から期待いたしておるのでございます。ところで政府は、すでに御承知のように来年の十月にはパイナップル自由化する、こういう態度をとっておりますので、沖繩業界におきましても、この期間中にさらに品質の向上なり、あるいは合理化なり、これもしていただきたいと思います。また特定地域でございますから、これについて他と同様な扱い方をする考え方は毛頭ございませんので、他の地域関税率等については、これは適当に引き上げるというような方法が必要だろうということで、ただいま各省間で相談をいたしております。しかし事柄は、この自由化のうちでもパイナップルというような嗜好品に類似するものでございますからして、私ども考え方としては、弾力的な考え方をして参りたい。かように思っておりますので、沖繩産業に重大な影響を与えないように、方法をさらに工夫してみたい、かように私ども考えております。
  19. 相馬助治

    相馬助治君 今のお考えですと、将来関税操作だけでこれを守るというお考えのようですが、私の調査した範囲では、その値段の点からいたしまして六ドルを越えているこの沖繩パインというものは、関税操作だけでは、他のもの、他の国のハワイや台湾のものとは戦い得ないということが常識のようになっておるものですから、沖繩援助する、こういう口先だけのことでなくて、自分でものを作って、そうして日本の方に出して、それで自立しようというこの事態考えて、日本側から見れば単なる嗜好品で、あってもなくてもいいようなものだが、沖繩としては実に重大な問題だと思うので、この関税操作だけでは不可能であるとの見通しに立った場合には、これを特別にやはり別な保護政策をとるべきだと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えいたしましたように、そういう点について十分検討々遂げて参りたいと思っております。そういう意味で弾力的な態度をとりたいということを表明したわけでございます。
  21. 相馬助治

    相馬助治君 ただいま琉球政府としては、日本に対して約四十八億程度援助要請額々持っていると伝えられておりますが、こういう琉球政府意思というものは具体的に日本側に伝わっておるのでしょうか。
  22. 大竹民陟

    政府委員大竹民陟君) 来年度の沖繩援助につきまして、琉球政府側から四十数億円の援助要請が出ておるかという問題でございますが、琉球側から日本政府に対します援助要請アメリカの了解のもとにいたしております。こういうことになっております。今日まで琉球側アメリカ側との話し合いの途中でございまして、今後具体的に出るということであります。
  23. 相馬助治

    相馬助治君 琉球政府自身意思としては約五十億近いものを要請したいとしておる。ところが今度、やはりアメリカ側から日本に対して九億五千万円だけは要請してもいいが、それ以外のものはならぬということが、こういうことが言われておるようですが、これは今のアメリカ日本、そうして琉球政府との間においてはこういうことが事実上なされておりますが、このこと自体に対して日本政府はどういうお考えでしょうか。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 向こうから四十数億円の要請があるということはまだ私は聞いておりませんし、内容も見ておりません。アメリカがどれだけ賛成したかということも聞いておりませんが、先ほど来お答え申し上げておりますように、われわれとしてはできるだけ内地なみに民生の向上をはかりたいと、こういう気持アメリカとも相談していきたいと考えております。大体私の見るところでは、沖繩島民の一人の生活状況は大体鹿児島宮崎程度ではないか。あるいはそれよりもちょっと上じゃないかと思っておる。それは正確じゃございません。大体そのくらいではないか、平均であります。鹿児島県、宮崎県の平均くらいまでいっているのではないかと思っております。これは正確ではございませんが、今後アメリカ琉球日本、三者のときにはそういう基礎的なものからすっと考えてみたいと思っております。
  25. 相馬助治

    相馬助治君 正確ではないがというお話で、それを、そのあげ足をとるようでは恐縮ですけれども、これは全く違うと私は思うのです。大体この貧富の差が非常にはなはだしいということと、平均値だけでは抑えられないということと、消費生活が非常に盛んですから、よそ目にはよく見えるが、その生活の基盤というものは非常に脆弱であるというようなことから考えて、これはだいぶ違うと思うので、総理大臣に特段の御研究を賜わっておきたいと思うのです。で、問題はやはり社会保障制度なんか何もできていない。特に教職員なんかに対しても何ら身分保障が行なわれていない。公務員についても同断。今度琉球政府要請している、要請しようとしている中からも教職員の給与の補助、それから社会保障制度に対する補助、こういうものを日本側要請してはならないという態度向こうでとっているようであります。これは実にアメリカ態度も私は考えを違えているのではないか、こういうふうに考えるので、日本政府としてはぜひ強腰にアメリカ自身とも相談をされて、そしてこれらの問題を解決してもらいたい。文部省が教員の指導のために指導員を派遣しておきました。日本政府がこれを金を出して昨年やった。非常に能率を上げて、先方では感謝をしております。沖繩で……。ところが、それがアメリカ軍は気に入らないらしくて、これは日本人的にあまり教育されるという意味らしくて、今回は中止をして、日本政府もこれに対して来年度は予算から削ってやる。その問題を内閣総理大臣はどのように考えるか、そうして私は沖繩問題については質問を以上にとめますので、総括的に気の毒な沖繩の人のために、池田内閣総理大臣としてなさんとすることを、なお付加して申すことがあったらここで聞かしていただだきたいと思います。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほど来申し上げておるように、とにかく少なくとも内地並みに持っていきたいということが私の根本的の考えでございます。しこうして、それには大体アメリカにおきましてももっとお話のとおりあの土地または島民の感情等から言って、もっとやはり積極的にアメリカにもやってもらわなければならない。日本も主権を持っておる関係上、そして日本人でありますから、内地人並みにやって向上していこうというのが私の根本的な考えであります。私は、これにつきましてはアメリカも十分了解してくれるということを思っております。そうして今の教職員向こうに送った問題につきましてお話のような点もありますが、今後やはりわれわれとしては、そういうことは実行に移したいという強い希望を持っております。
  27. 相馬助治

    相馬助治君 次に経済問題について基本的な点を承りたいと思いますが、池田総理大臣は、本年一月三十日の本会議における施政方針の演説において、国民総生産の率も上がり、卸売物価も安定を保ち、国際収支も依然として黒字基調を維持し、外貨準備高も年度末には二十億ドルに達する見込みでありますと申されております。しかるに現実はこれと全く違って参ったことは御存じのとおりであって、昨日木村委員もこの点についていろいろお尋ねになりました。その質疑を聞いてみて、内閣総理大臣の返答をたずねてみましても、これから一体どんな政策をとるのか、日本の景気はどうなるのか、いつごろ回復するのか、あるいは深刻な不況が予想されるのか、だから国民はこういうふうにしなければならないのか、というような国民の向こうべき道というものは依然として示されていないように思うのですが、端的にだれでもわかるように、国民の安心のいくように、この際政府としては説明を率直にすべきだと思うのですが、内閣総理大臣はいかがでございましょうか。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 昨年の一月に私が施政演説で申し上げたとおりで、三月まではきたわけでございます。外貨も二十億ドルになりました。しかしその後におきまして、いろいろな事情で昨日来お話しているように、高度成長をこえまして、超高度成長になって、超高度成長になったから、日本経済はこれでだめだ、もう再び立つあたわざるような状態になった、こういう御批判がございますけれども、私はそうは見ていない。これは行き過ぎでございますから、予想以上に商い経済水準になる、だから予想以上の高い超高度の分をこれを調整していく。そういうことにいたしておるのであります。調整がうまくいけば、私は、超高度成長はやはり災いのようだったけれども、これがよかったのだという場面も現出するよう努力いたしておるのであります。これはどういうふうなことをやっていくかと申しますると、まず第一に、超高度成長というのが、一つには設備投資が予想以上なぜ膨大になったかと申しますると、これは貿易自由化を唱えて近代化、合理化を非常に急いだこと。またもう一つは、国内における各会社と申しますか、各産業別に会社が非常に競争をしておる、こういうことでございます。したがいまして、自由化のための合理化、設備投資というものは、これは私はある程度認めていかなければならない。そうしてまた、産業の増大に基づく基幹産業、たとえば電気というようなものにつきましては考えていく、また斜陽産業といわれる石炭等につきましては、これは強力に措置しなければならない。しかしそう今急がなくてもいいというようなものにつきまして、いわゆる国内競争的のもの、あるいは国内の需要増加に対応するというふうな分はできるだけ抑えていこう。これが今とっている設備投資に対しまする調整方式でございます。そしてまた、輸入の状況を見ましても、これが一つには国内の生産の増強ということにも起因しますが、将来を見越してのある程度の何と申しますか、思惑とは言いませんが、十分一つ原材料を持っていこうという意欲のあるものも考えられます。その証拠には最近における港湾施設のあの麻痺状態になっていることも一つの例でございます。こういう点につきましては輸入をできるだけ正常化していくということに、国内の生産の伸びが少し落ちるに合せまして、輸入の正常化ということで、いわゆる輸入担保率の引き上げをやっているわけでございます。そしてまた貸し出しにつきましても、ある程度の金利とか、あるいは日本銀行からのオーバー・ローンの状態を是正する意味におきましても、金融的の措置をとる、こういうふうに景気の行き過ぎを調整する方法をとっております。しかし一方では、それによりましてしわ寄せを受ける中小企業その他の脆弱産業につきましては、これは合理化もやっていかなければなりませんし、それからまた金融的の特別の措置も考えなければいけませんから、そういう措置をとっているのであります。私は、こういう措置をとったその影響を、ここ、二、三カ月の間見まして、そしてその状況を勘案しながら来年度の政府の施策、ことに財政金融の施策をどうして行くか。そしてこれに対しての民間の協力をどうするかということを考えて、来年度適正な財政金融措置をするならば、私は日本経済は正常化していくものと確信しております。また、そうするのが私の責任であるのであります。私はその意味におきまして、この行き過ぎの点を是正してよかった、まあよかったという状態を現出するために、渾身の努力を傾けているのであります。こういうことで政府は進んで参っておりますので、国民、経済界の方々もこの気持をくまれて、政府に協力して下さるならば、私は先般来言っておりますように、来年の秋ごろ日本の輸出の伸びる時期には、大体均衡の状態を現出し得るものと考えて、それに向かって努力いたしているのであります。
  29. 相馬助治

    相馬助治君 藤山長官に伺いたいのですが、国際収支の見通し、それから均衡を取り戻す時期、どのようにお考えでしょうか。
  30. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 先般為替の割当をいたします際に、中間暫定的な試算をいたしたわけであります。今日ではそのときの見通しといたしましては、輸出において年初四十三億ドル台を見込んだのでありますが、現在では四十二億ドル台であるということで見通しを立てております。また輸入につきましても、四十一億ドル台の輸入の見通しでございましたけれども、今回は四十九億ドル台の見通しにいたしたわけであります。来年三月末に十四億、総合収支においてプラスになるものを加えて十四億四千万ドルというような大体の見通しを立てております。
  31. 相馬助治

    相馬助治君 均衡を取り戻す時期はいつという確信を持っておりますか。
  32. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体今各種の総合対策を講じておりますので、その総合対策が効果をあげてくることを、われわれは期待しているのであります。そこでいつという見通しを立てるということはむずかしいのでありますけれども、私としましては、少なくもこういう状況が一日も早く改善されることを望んでおります。したがって、一日も早くと申しても、あまり短期にやりますと、急激な変化を来たしますから、まず来年の秋には、総理は十二月前後と言っておられますが、私どもも大体そこを中心にして、総合収支において黒字が出てくるように、また貿易の、輸出入の基調もそこにあってできるだけいくように、そしてその上で積極的に伸ばし得る態勢に持っていきたい、こういうことで諸般の総合的な政策を集中してやって参りたい、こう思っております。
  33. 相馬助治

    相馬助治君 世に実力者内閣といわれている、そしてそれに国民が期待したものは、やはり変転する国際情勢の中で、強硬な政治体制をしくということと、もう一つはやはりこの危機にさらされている日本経済をどういうふうに乗り切るかということだと思うのです。  そこで、伝えられるところによると、経済閣僚懇談会においては、池田佐藤、水田、こういう方々は楽観論で、藤山さんを中心にして、河野、三木、こういうような人は悲観論であるというようなことも世上うわさされておって、また事実、それが各種の発言に現れて、そうして、やはりこういうときに明確に打ち出す一つのこととしては、来年度予算の基本というものをなるべく早く明瞭にして、国民に対しても、やはり一種の安堵感を与えるべきだと、こう思うのですが、この点について、水田大蔵大臣はどういうふうにお考えでございますか。来年度の予算の基本的態度について。
  34. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 別に閣内において、経済見通しについての意思不統一というようなことは今のところございません。ただ、来年度の予算を編成する場合には、御承知のように、来年度の経済見通しというものをまず先に立てなければなりませんが、今のようないろいろな措置をとっているときでございますので、なるたけこの見通しは正確なほどいいのでございますから、できるだけ今の推移を少しみて、ぎりぎり一ぱい、ほんとうの見通しを固めるときは、時期がおそいほうが私はいいんじゃないかと考えております。したがって、今私どもの大体の日程は、この国会が済んでから十一月一ばいかかって来年度の見通しを立てる。そしてそれによった予算の編成方針をきめようというのが今の日程になっているところでございまして、まだ編成方針というものを固めてはございません。しかし、どういう態度で予算編成に臨むかと申しますと、これは、先ほどからいろいろ論議されておりますように、経済が少し伸び過ぎている。これを押えることによって、国際収支の均衡を少なくとも来年じゅうには回復しようという私どもは目標でやっておりますので、そのための今回の措置の精神を生かした方向で予算編成はすべきだ、こういう基本的な考え方は持っておりますが、方針というものは正確な見通しの上に立てるべきである、この作業は大体十一月中に私どもはやりたいと、こういうふうに考えております。
  35. 相馬助治

    相馬助治君 次に、私は具体的な問題として、株価の問題について政府見解を承っておきたいと思うのです。  御承知のように、最近株が大暴落をいたしました。政府はこれに対して、口証金の貸出ワクの拡大、証拠金率の引き下げ、代用証券の担保掛目の引き上げというような措置を考え実施したのでありまするが、これらはいずれも証券業者の利益を直接に守る目途のもとにとられる政策のように思われるのであって、問題は、大衆投資家をどのように保護しなければならないかということであろうと思うのです。したがいまして、この問題について大蔵省が今日何か積極的に考慮されている点があらば、この際承っておきたいと思います。
  36. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大衆投資家の保護ということについては、私どもが一番証券行政で気を配っておる問題でございます。で、御承知のように、一時、市況を見ますというと、人気化、投機化という傾向がはっきり現われてきた時期がございましたので、そういう傾向をそのままにしておくことは大衆投資家の保護にならないと考えまして、各種のいろんな制限をいたしまして、そういう傾向を防ぐためのいろいろな制限をいたしたのでございますが、今日そういう傾向はもう薄らいでしまったおりますので、したがって、前に特にそういう投機化を防ぎ、いたずらな値上がりを防ぐというためにとった措置は逐次一つずつ解除し緩和するという措置を今日までとってきておることは御承知のとおりでございます。今後長期的な採算の上に立つ大衆投資家の保護ということはあくまでも必要でございますので、そのためには証券界の安定ということを考えなければなりませんので、それに必要ないろいろの策というものを適時政府はとっていくという考えでございます。
  37. 相馬助治

    相馬助治君 公定歩合の問題について閣内においても種々な発言があり、上げるべきである、上げないほうがよろしい、こういうふうな、中で経済情勢の点において意見が必ずしも一致しないということはわかるけれども、そういう放言のために、くろうと筋が株式操作においてさまざまな巨利を博したと、こう伝えられておりますが、このこと自体に対して、大蔵大臣は監督すべき立場にある者として、どのようにお考えですか。
  38. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公定歩合を上げるか下げるかということは、それ自身一つの問題であると同時に、これがたとえば漏れるというようなことによりまして、きのうの質問にもありましたように、それなら前のときに金を借りておけばよかったという人も出ましょうし、証券界にもむろん響く問題でございますので、こういう経済の一番微妙な大きい問題は、元来世間に漏れるというふうなことがあってはなりません。したがって、これに関係する責任当局というものは、こういう問題についてやたらに論議したり、世間にそういうものを出すべき問題ではございません。ところが、今回の場合は、日銀におきましても、私どもにおきましても、当事者の間にこういうことが論議されている事実はございませんが、そのほかのところにおいてこういう問題がいろいろ論議されたというこのあり方は、私は遺憾であると思っております。しかし、今回の場合は、そういうあり力は遺憾ではございますが、こういう論議が新聞を通じたり、いろんなところで非常に長い間論議されたことは事実でございますので、それによって先を見越して、その間いろんな動きをした者があったのではないかと思いますが、そのためにどういう悪い影響があったか、いい影響があったかということははっきりわかりませんが、ああいう問題が論議されるようなあり方というものは好ましい姿ではないと思っております。
  39. 相馬助治

    相馬助治君 一つの例として、水田蔵相が国際基金会議においでになった、それと前後して山際総裁、そうしてまた財界代表としては石坂さん、株式界からは野村の奥村さん、こういう人たちが渡航して、日本を離れた所で日本経済変動の裏街道の情報を交換し合った。こういうふうに、外国通信の一つが伝えておるということもお気づきであろうと思うのです。これは、いやがらせの発言かもしれない。しかし問題はこういうところにあるのであって、また一方においては、最近金回りのいいこの証券会社から、自民党の中の各派閥に対してかなりの献金があるというようなこともうわさされておる。そうしてまた、世上その数字まであけてこれを説明する者もある。こういうようなことを見るときに、やはり政府としては、証券会社に対して、ただすべきものはただすと同時に、法制的にまた財政上の監督なり何なりいろいろな方面から、証券業界に対しても十分な反省を求めると同時に、政府自体においても今の公定歩合問答を中心として起きておるあなたたちが予想もしなかったであろうその悪い評判、こういうものに将来対処していくべきであろうと私は思います。で、こういう問題についての具体的なことについてはいずれ口を改めて資料をそろえてお聞きしたいと思いまするけれども、特に大衆投資家のために、今問題になっている投信の問題について、政府はどのように考えておるか、オーブンの決算がこの間なされましたが、一口手取り三十五円で決算をしたようですが、損は次期に繰り越しておる。このままでいくとこれはオープンもユニット型もえらいことになると思うのですが、大蔵大臣はこの点をどのようにお考えですか。
  40. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 投信制度の合理化ということは、投信がこれだけ大きい規模に拡大しているときでございますので、しばしば問題になっておりますから、政府も近くこの制度全般について証券取引審議会にいろいろ諮問する予定になっております。で、それまでの間、大衆投資家を保護するために、投信の委託業務の分離をまずやるという方向でずっと指導して、今十四社の分離も行なうし、また収益分配方式を改めたり、信託財産の運用方法の合理化によって、投信の内部留保に努めるというふうな指導は、今日まで十分してきたつもりでございます。御承知のように、投信は株式を中心にして財産運用を行なう以上は、元本の保証というものはないものでございますから、これは当然でございますが、そういうことが十分に投資家に徹底されないで不測の問題を起こしてもいけないということに特に気をつけまして、この募集の、投信宣伝広告というようなものについては厳重な取り締まりをずっとやってきていまして、あくまで投資家の責任においてそうしてやって、いろいろの誤解や、知らなかったということから、いろんな問題を起こさぬようにという指導もいたしますし、一方今申しましたような投信制度自身の合理化という点についても相当私どもは気を配って、今日までやってきたつもりでございますが、今後まだこれについて合理化すべき問題が多いと思いますので、これはこの審議会にも制度全般の問題をかけるということにいたしたいと思います。それからまたこれはいろいろ時期々々によって、先ほどのように政府が規制したり規制をまたゆるめたり、証券業者のためにじゃなくて、大衆投資家の擁護のためにいろいろ弾力的な措置もとらなければならぬと考えております。で、今いろいろ投信の問題はワクの区分とかあるいは総ワクの規制とか、そういう問題についていろいろの問題もございますので、これは私どもは現在の実情に即するようないろんな適時必要な措置も政府からとるというような形で、大衆投資家をあくまで擁護するという行政を行ないたいと思います。
  41. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると、投信といえどもやはり株式なんだから、どんな状態になろうとも元木の保証——一部保証でも何でも、そういうことは考えていないと、こういうことですか。元本の保証というようなことは一切考えられないということですか。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 投資信託の制度自身がそういう制度になっているものですから、これが投資家が知らなくていろいろ問題を起こすようなこともございますので、これは元本の保証というものはもともとない制度だということを、いかにもあるような書き方の広告や何かが一時出たことがございますので、これはもう政府としても厳重に警告し、今、広告に一々自主的に業界から関与してもらうというような方法をとって、大衆の誤解を招かないような措置を今日までとってきましたから、大体そういう点は、投資家にも現在わかっておることと思っております。
  43. 相馬助治

    相馬助治君 水田さんが大臣になってから、そういう心がけでやってきたかもしれませんが、問題は別なのです。もちろん投資信託の制度からいっても、政府が元本を保証するという筋合いのものではございません。ところが問題は、投信を始めたころの証券会社の広告の実態を知っておりますか、当時新聞にも言われたように、「銀行よさようなら、株式よ今日は」と、そうして株に対して大衆は目を向けてきたけれども、大衆は株はこわいものであるという頭がある、そのときの証券会社が「貯蓄にかわる投資信託、安全にして確実な投資信託、あなたのマネービルは投信で、ある証券会社は、政府の力で保証されている投信制度」、こういう広告をやって、それに輪をかけたように、セールスマンが口から出まかせに、それこそ上あごと下あごがぶつかりほうだいにうまいことを言って回った。そうして投信制度は伸びてきた。ところが今日はどうですか、ユニット型でもそれからオーブンのほうでも、このままではとても来年度に至っては、この価格を維持することはできない、制度がこうなっておるから、これは大衆投資家自身が損害をこうむるべきもので、今後は注意しますでは私は片づかない。一攫千金を夢見てローンをやっているものとは違って、投資信託に金を出している者は、退職資金を入れたり、それこそほんとうに血の出るような金をためた人たちが投信に金を出している。投信の問題について財政的な考慮は大蔵省はできないのですか。
  44. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 過去においてそういうことがあったかもしれませんが、それだけ今度は委託業者が大衆のこの保護に徹底すべきものでありますので、その受益者を保護するためのいろいろな内部留保のやり方とか、いろいろなことについて私どもは行政指導を今日まで強化しているということでございます。それでもまだ不測の損害を与えるというようなまた事態が起これば、これはまたそれでは私どもはさっき申し上げましたように、適切ないろいろな措置をとり、資金についての考慮もするというようなことをやらなければならないと思っておりますが、現在までのところは、この経済の行き過ぎに対して政府がこういう総合措置をとったということから、先行きの見通しというようなものについて、大衆がいろいろ迷ったという点もあろうと思いますが、株式市場内部の要因によるいろいろな問題もあって、現在の値下がりを起こしておるという状態でございますが、先ほどから総理が言われておりますように、この本質的に日本経済が悪くなっているというのじゃなくて、むしろこのまま置いたら伸び過ぎる、伸び過ぎることが国際収支の問題にからんできておるところから、この抑制措置をとらなければいけないというのが実際であって、それだけの措置をとっても、日本経済が急に伸びがとまるというようならけっこうですが、相当の措置をとっても伸びの潜在力が強いのですから、まだまだある程度の高度成長を続けられるだろうというような状況であって、日本経済の前途にそういう心配というものはないことははっきりしておりますから、そういう見通しの上に立って大衆が、長期採算という観点から投資されるという限りは、この投資を私どもはどこまでも保護していくという態度はとるべきでございますので、それに対応したいろいろな措置は、証券界においても、投資信託制度の運用においても今後十分気をつけてやっていくつもりでございます。
  45. 相馬助治

    相馬助治君 現行の証券投資信託法は、親会社である証券会社の役員との兼務を禁止しておりません。だからどういうことができておるかというと、一方では株の値上がりによって証券会社はべらぼうにもうけておる。ところが一方では別法人のこの投信会社というものは、こういうふうな時代が来ると利益がなかったというので分配金を減らしてくる。したがって、投信を集めるときは野村なら野村というものの全部の機構とその系列をもって、投信というものを野村自身がやっているようにこれを宣伝をしてそしてかき集める。こういう損が来るというと、それは投信会社のほうがやるのだからといってそこでもってものを片づけて、証券会社の親会社のほうはびくともしない。また一方証券会社は不動産会社などというものを傍系に作って、財産をそれに隠匿しておる。全く今の日本の証券界というものは、代理業から売買業から中継ぎ業から一つにやれるのであるからして、悪いことをやる気なら何のまねでもできる。こういうふうに言われておることが、事実として今日心配になってきておるわけです。将来証券投資信託法についてどういうふうに大臣はお考えですか。アメリカの制度のように全然切り離してやらせようとするような考えはありませんか。
  46. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう方向をとりたいということでこの分離の仕事を始めておりまして、ようやく十四社の分離というところまで進んでおるという状態でございますので、この方向は今後さらに続けていきたいと思います。
  47. 相馬助治

    相馬助治君 将来はそうするとしても、今までのところではこの証券会社の分配金の身勝手な減額を許さないという態度で、法律の許す限りにおいて証券会社を監督して、大衆投資家に損害を与えないようにひとつしてほしいと思うのです。さっきもちょっと触れましたように、現在の証券会社というものが、この代理、売買、中継ぎ、三つの業務を一緒にやれるという日本の制度は健康なものだとお考えですか、大蔵大臣は。
  48. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ディーラーとしての業務とブローカーとしての業務を一緒にやっておるということが、いいか悪いかという検討は絶えずいたしておりますが、これはそれぞれ利害得失があり、また今までの証券業者のあり方、歴史的な今日までのあり方と関連しております問題でございまして、これを今急に解決するということは実情に沿わない。それぞれ長所あり短所あり、なかなかむずかしい問題でございますので、私ども検討はしておりますが、当分これをはっきり分離するという方向はとるべきではないのじゃないないか、というような考えを持っております。
  49. 相馬助治

    相馬助治君 十分な検討を願います。今のような複雑な形では、いかに堪能な行政府でも行政監督もできないし財政監督もできません。そしていろいろな情報というものがそこに踊って、これでは証券界というのは、政治献金の最大の温床に将来もなるであろうと言われていることを裏づけて、政府がこういうことを助長しているということすらも、言えるような状態であろうと思うのです。利害得失があるというようなことだけでなくて、疑惑を政府自身が持たれないように、この問題についてはひとつ徹底的に研究されて毒処していただきたい。特に四大証券というものが今の株式取引の八割までを占有して、この四大証券会社というものがそれぞれの政府筋と組んで、いろいろな早耳その他株の摸作によって巨利を博している、というようなことがうわさされている際でもありますので、正すべきことは十分に一つ正していただきたいとかように考えます。そうして政府の出方によって、われわれとしても具体的な資料をもってこの問題について再度質問をして参りたいと、こういうふうに存じます。  この株価の問題についてはいろいろ大蔵大臣と討論をいたしましたが、総括的に総理大臣としては何か御所見がございましょうか。
  50. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 経済の復興は貯蓄の増強がもとであり、その貯蓄の増強はやはり銀行を通じてやるものと、大衆が直接に株式あるいは社債に投資する、この二つの方法が行なわれると考えているのであります。銀行に対します監督は多年にわたって相当行き進んでおります。ただ証券会社に対しましての監督というものは、いろいろな形態がだんだん変わって参りますので、お話のように十分でない点があると思います。しかし、将来を見ますると銀行の行政もさることでございますが、証券業に対する行政というものも相当ウエートが加わって参りまして、今後も加わっていくものと見なければなりません。したがって、これに対する監督あるいは法規の整備というものも十分に検討して、お話のような点のないように厳重にやっていかなければならぬと私は考えております。
  51. 永岡光治

    ○永岡光治君 関連。金利の問題が今論議されているわけでありますが、日銀の公定歩合引き上げによりまして、自然それによってしわ寄せをされて、民間の銀行その他の金融機関の貸し出しの金利も引き上がってくると思いますが、預金者のほうの金利の引き上げ、したがって、民間の金融機関の金利の引き上げだとか、それから政府機関として問題になるのは郵便貯金の金利の問題だと思います。その引き上げについてはどういうように考えているか、今そういう金利を引き上げようとする考えがあるかどうか、郵便貯金についてあるかどうか、ないとすればいつごろそういうことを考慮されるのか。これはそうでないとすれば、預金者のほうの金利はそのまま据え置いて、貸し出しの金利はどんどん上がっていくということになりますと、今相馬委員の政治献金云々の問題で心配されるのと同じように、やはり金融機関においてはもうけが大きいわけでございますから、その預金者の利益を保護しなければならないと思いますが、その点について大蔵大臣あるいは郵政大臣はどのように考えておるのか、御答弁いただきたいと思う。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この公定歩合を上げたり下げたりするということは、そのときの経済情勢によって臨時的ないわば措置で、経済調整を金利によってやろうという必要の出たときにこれは随時やるべき措置でありますし、一方金利水準を下げるということは、これは一つの恒久的な政策でもございますので、せっかく私ども国際金利にさや寄せをするという方針のもとに、金利水準を下げるということをやり、そのときに、問題の順金金利も長い間日本の金利が高かった、この一番の原因は、やはり資本蓄積の必要から預金金利を優遇するという形で資本蓄積をやったいきさつから、これが非常に商い。これをやはり時期を見て下げるということが一つの問題でございまして、ようやくその仕事をやったところでございます。そこで、その金利水準を下げるということと、そのときどきに公定歩合を上げたり下げたりするということとは、少しも矛盾しないことだ、こういう考えであのときにやったことでございますので、できるだけ預金金利のほうはそのままにしたい。ただ金利をあまりに多く上げるというときには、当然そのときに預金金利も上げることを考えるべきでございますが、今回程度の場合はまあ見送ろうという方針を私どもはとったわけでございます。そのかわり、それじゃ預金者を今擁護しなくってもいい時期かというとそうじゃございません。むしろこの際は、やはり貯蓄奨励ということを私どもはやるべき時期でございますので、この貯蓄を奨励するという方法は、別のいろいろな措置によってこの問題を解決したい。今回は臨時的な金利の調整につれて、麺金金利は上げないでおきたいという方針を今とっているわけでございますが、また経済のこれからの推移によりまして、金利を上げるということ——これはもうこれ以上すぐにはそういう事態は起こらないと思いますが、そういうときには当然考えられるべき問題だと思っていますが、現在のところでは預金金利はそのままにして、御金者の保護という形は別のものでとりたいという考えでございます。  もう一つ、今金利を上げれば銀行だけがもうかるというようなお話もございましたが、これについては、私ども十分の配慮をいたしまして、公定歩合を上げましても、御承知のように、中小企業向けの金利は引き上げないという措置をとりましたし、長期的な貸付の金利というものも今回は据え置いたというようなことで、全部が一律に金利が上がったわけではございませんし、同時に預金準備の率を引き上げるという措置と、高率適用の強化というような措置もあわせてとりましたので、それらの関係において、銀行が不当に今回の金利引き上げによって利益するというような事態も、私はある程度避けられているのじゃないかと思っております。
  53. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 郵便貯金の利子も預金利子の体系の中の一つでありますので、今私のほうでは郵便貯金の利子だけを引き上げるという考えは持っておりませんで、全体的な預金利率の問題との関連において将来大蔵省と相談して考えてみたいと考えております。
  54. 永岡光治

    ○永岡光治君 今の、預金者の金利はそのままにして、その保護についてはいろいろ別の面で考えるというのですが、具体的に、今あなたが考えておるそのいろいろな方法というものはどういうものですか、二、三例をあげて示していただきたいと思ます。
  55. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まだ関係当局との相談ができておるわけではございませんが、私は、預金者の保護というものは、やはりある程度税制で考えてみたいという考えを私個人としては持っております。
  56. 相馬助治

    相馬助治君 私はタバコ収納価格の点について承りたいのですが、総裁来ておりますか。
  57. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) おります。
  58. 相馬助治

    相馬助治君 自民党は、農業基本法を出して農村の他産業との収入の格差を縮めるというような熱意を示しておる。また一方、たばこの消費というものは増大しておる。しかるに、タバコ耕作者は今日飢餓生産にさらされておるというのが実態です。総裁に承りたいのですが、三十六年度葉タバコ収納価格の実績、それから本年度の見込み、そうしてまた公社自体が考えておるこれの対策、概括して承りたいと思います。
  59. 阪田泰二

    説明員(阪田泰二君) ただいまタバコの収納価格の問題についてお尋ねがございましたが、昭和三十六年度産の葉タバコの価格につきましては、ことしの一月にきめましたのでありますが、そのときはいろいろそれまでの情勢その他を考慮いたしまして、大体種類によって違いますが、前年度の価格に対しまして平均で六%余の引き上げになるような価格をきめましたわけでございますが、その後いろいろと経済情勢の変化等もございましたので、ことしの九月になりましてたばこ耕作審議会をさらに開きまして、そのきめました価格に対してさらに平均いたしまして五・二六%、これだけの引き上げを決定いたしました。合わせまして大体前年価格に対しまして一一・六五%の引き上げになるわけでございます。これは種類によっていろいろありますが、二割くらい上がったのもありますし、そう上がらない種類もあります。平均いたしましてそういうことになります。こういう価格で現在もうすでに収納が始まっておりますが、葉タバコの収納を実施いたしておるようなわけでございます。
  60. 相馬助治

    相馬助治君 耕作反別の変動について示して下さい。
  61. 阪田泰二

    説明員(阪田泰二君) 耕作反別の問題でございますが、これは御承知のように、最近は毎年多少ずつ減って参っておる、こういったような状況でございまして、ことしの検査反別でございますが、実際作りました反別は約五万八千ヘクタールでございます。これがこういうような情勢では、昨今たばこの消費は非常にふえておりますので、将来葉タバコの供給が不足するといったような情勢になって参りましたので、来年度の耕作反別、これは大体今年度の一割強増加いたしたいといったような見込みでただいま来年度の見通しを立てて、またいろいろ耕作者等に対しましても勧奨いたしておる、こういう段階でございます。
  62. 相馬助治

    相馬助治君 この耕作反別が当局のやっきの増反運動にかかわらず減っておるという事態を私どもは重視したいわけです。帳面づらではなるほど一一・六%の価格引き上げが行なわれたということになっており、予算からいうても三十億ほどの予算を盛ったといわれておるが、現実には、現地では鑑定という制度があります。それで、私は栃木県ですが、栃木県はタバコの特産ですが、鹿児島であるとか茨城であるとか神奈川であるとか、そういう方面に照会をいたしましたが、やはりいずれもこの鑑定のところでたたかれて、大体一等級差を下回って買い付けが行なわれておる。したがって、予算上は価格を上げたのだけれども、今までのこの収納価格というものはほとんど上がっていないというのが現実の姿のようでありますが、その問題については公社としてはどのように指導をされておりますか。
  63. 阪田泰二

    説明員(阪田泰二君) 葉タバコの収納価格をきめます際の鑑定の問題でありますが、この等級の鑑定につきましては、これは葉タバコ耕作者の利害にお話のように非常に関係のある問題であると思うのでございます。公社といたしましても、これは非常に慎重に、また公平な結果が出るようにやるように今までもかねがね努力をいたしているようなわけであります。御承知と思いますが、葉タバコの標本を従来と同じような方法できめまして、まあそういう方法に従って、鑑定も二人の鑑定員によってやる。また耕作者の代表、耕作組合長といったような者も必要によりましては立ち会いをさせる。鑑定の設備等につきましても、いろいろと従来適当でないというようなものはできるだけ改善していくといったようなことを考えまして、本年もそういうような趣旨におきまして、できるだけ公平に、耕作者の皆さん方も御納得していただけるような措置をとっているつもりでございます。
  64. 相馬助治

    相馬助治君 時間がないのであまり具体的には触れられないのですが、このたばこのほうの審議会は、米価審議会等に比べますと全く秘密主義で、耕作農民の意思をじゅうりんしているというような世上うわさがされており、その速記録等も外部の者にはなるべく見せないようにしているのだというようなことも聞き及んでおります。で、どうかひとつ総括的に、これは大蔵大臣に尋ねようと思っておったことでありまするけれども大蔵大臣、時間の都合で退席されて、私もこれを了解しておりますので、総裁に申し上げるべき筋のものではございませんが、要するに、法律的にもこのたばこ専売法、それから耕作組合法、こういうものの抜本的改正について、あなたたちも積極的な意思を持つことを期待しますと同時に、あなたの専売公社自身の合理化の——今の合理化といわれる問題、耕作農民が困ることです。具体的には。このことについても慎重なる配慮をひとつこの際期待しておきたいと思います。  次に、私は郵政大臣に承りたいのですが、この仲裁裁定が郵政当局と組合側との話し合いがつかずに、三公社五現業の中でこれのみが解決していないということだそうでありまするが、具体的にはどのような状況で、そうしてどんな見通しでございますか。
  65. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 仲裁裁定につきましては、省側から組合に一つの案を出しましたし、組合のほうからも案が出まして、団体交渉を重ねて参りました。考え方の相違というものは、省側では、階層別に大体全部一割程度アップになるようにというものを考え、組合側のほうは、下のほうは一割以上になるけれども、上のほうは一割以下になる、こういうような考え方で、まあ両方ともなかなか折り合いがつきませんので、九月五日に、公労委に対して最初は仲裁決定をお願いしたいと思って組合のほうにも同意を求めたのでありますが、組合の同意を得られませんので、省側単独で調停の申請をいたしました。目下その調停が進行中でございます。その調停が得られました場合において、それを基礎にして、さらに団交を重ねて、なるべく早く答えを得たいと思っております。
  66. 相馬助治

    相馬助治君 民間企業なんかの例においても明らかなように、団体交渉でその基本と総額がきまれば、配分については組合の意思というものが非常に高い程度に動くべきなのであって、現在問題になっている遅配問題などを含めて、この際、郵政大臣はこの問題を早急に解決するように熱意を持ってやることを期待いたします。  それからこの人事院勧告によって、国家公務員の場合には年末手当の問題が解決をしておりますが、三公社五現業の場合、特に郵政大臣の立場から見た場合に、この郵政の部内において年末手当の問題はどういうふうにされる見込みですか。いわゆるお前らの企業の中でやれという政府の命令を受けてその企業の中で片づけようとすることに相なりますか。それとも、やはり国家公務員並みに、政府自身財政的な措置をもさせてこの問題を解決させようとしておりますか、ひとつ見解を承っておきたいと思います。
  67. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) ただいま郵政の現業の扱い方は、予算の立て方等におきましては、一般の公務員あるいは他の四現業と違いまして、若干三公社のほうに近い形になっております。年末は御承知のように、郵政事業というのは平常の月の三倍以上の分量がありますので、そこで団交によって年末手当をきめるというような格好になっておりますので、とかくごたごたが起こりがちなのでありますが、その点については、来年度の予算の要求の形においても、あるいは一般公務員並み、すなわち、他の四現業と同じような格好にするほうがいいのじゃないかとも考えますし、同時にまた、それでは私のほうの現業が他の四現業とやや異なりまして、三公社のほうに近い立場にあるというようなことも考え、今のところ適当な解決策を得たいと思って、目下検討中でございます。
  68. 相馬助治

    相馬助治君 この進んだ今の日本の行政の中で、特定郵便局制度という前時代的なものがございます。この問題について郵政大臣は何かお考えになっていることがございますか、現行でよろしいと思っておりますか。
  69. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 特定郵便局の制度につきましては、去る昭和三十二年、そのほうの審議会から答申を得ましたので、その答申の線に沿いまして、現在局舎の問題、局長任用の問題、人員配置の問題等について、答申の線に沿って整備いたしつつあるのでありまして、一応今の形でいいと考えております。
  70. 相馬助治

    相馬助治君 今の特定郵便局制度をやむを得ずやっているのだと思ったら、これでよろしいということは、非常におそれ入ったことで、御承知のように特定郵便局の中で長い間局長代理として勤めたような者も局長になることはできません。村の物持ちが、今まで大工をやっていても材木屋をやっていてもいいが、金を持っているものが郵便局を建てる、それが任用されてすぐ局長になれる。こういう制度だものですから、局員をあごで使って、ふろくみまでさせている、こういう事態が現に村に起きている。こういうものを認めますか、これは運用が悪いのだというだけの問題で片づきますか。
  71. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 御指摘のように、そういうまことに不都合な事態のあったことも私たち承知いたしておりまして、そういう事態はなくなるように、したがって、先ほど申しましたとおり、局舎の設置の面あるいは局長の任用の問題等について、答申の線に従って適正を期して、そういう不都合な前時代的な状態が残らないようにしようと思って、目下努力いたしておるところでございます。
  72. 相馬助治

    相馬助治君 次に、文相にお尋ねいたします。  終戦後のベビー・ブームによって急増する中・高校の生徒の収容対策の問題というものは、実に重大な問題だと思っております。現在の構想並びに今回の物価高による計画の変更、そういうものがあれば、この際総折的に承っておきたいと思います。
  73. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  御指摘のようにたいへん児童生徒が激増する段階でございますが、中学につきましては、三十七年度でピークが終わります。これに対します対策は、本年度の補正予算と本年度の予算を合わせまして、全部施設設備等は対策が済んでおります。そこで、物価高の関係でほうっておきますれば、事業繰り延べ等もやらざるを得ない事態でございましたので、特にこの関係は補正予算の中に小・中学校等合わせまして十億六千万円を計上して御審議を願うわけですが、それによって、現に生徒がおるわけでございますから、経済状態の変動で繰り延べなんということに適しない、最も顕著な場合でございますので、そういう措置をしまして、遺憾ななきを期しております。三十八年から三十九、四十と、ベビー・ブームのピークが高等学校に移って参るわけでございますが、これに対しましても、三十六年度の予算と明年度の予算を合わせまして、三十八年度のピークの第一年に対処する対策をいたしております。  ですから、この関係は物価局の影響はむろんございますけれども、ことしと来年度で合わせて一本の対策で間に合うわけでございますから、特に二業高等学校のことだけを補正予算で補正をいたしまして、本年度予定しておる仕事の量も多いわけでございますから、本年度予定しておるものは支障なきを期したい。普通高校につきましては、ことしのし残りがもしあるとしますれば、明年度と合わせて努力をしまして、三十八年初頭に遺憾なきを期しよう、こういう考えでおるわけであります。
  74. 相馬助治

    相馬助治君 中学校においては、三十七年度に七百三十万人というピークを示し、高校においては四十年度に百二十万人余の増加というふうに数字が示しております。最初からこのことはわかっていたのにもかかわらず、やっと去年の補正から前向きの対策が出てきて、本年度予算において何とかこれを全面的にやるのだということでございまするけれども、なかなか事態は計画どおりに進んでいないと思うのです。この問題について、大蔵当局との意見の食い違いはありませんか。
  75. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申します。  中学校に関します限りは、大蔵当局と意見の食い違いはございません。
  76. 相馬助治

    相馬助治君 高校はどうですか。
  77. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 高校につきましては、さっきも申し上げましたとおり、ピークに対処しますためには、今年度と三十七年度と合わせて、そうして三十八年度のピーク第一年に対処するわけでございまして、三十六年度の、すなわち前向きの第一年度の対策につきましては、幾分か食い違いはございましたけれども、三十七年度でその食い違いは全部埋め合わせたいと意図しておるわけでございます。
  78. 相馬助治

    相馬助治君 別な委員会大蔵大臣が明瞭に述べておることは、中学校の分は義務教育だから、これは政府は苦しいのだけれども考える。高校のほうは、ちょっと子供がふえるというだけで、また減るのだから、まあがまんしてもらって、そうして何とか私立学校等をうまく活用をしてやってもらうほかはないと、こういう意味のことを委員会で述べておる。ここで個人的な話を出しては恐縮だが、私が個人的に大蔵大臣に伺ったときにも同断のことをおっしゃっておる。明らかにこういう財政当局の、主管者の意思が文部省と食い違っている場合には重大だと思うので、その点については、ひとつ責任を持って文部大臣が解決をして——これは戦争処理事項ですからね。ひとつ池田内閣の責任においてこのベビー・ブームの急増対策はやってほしいと思うのです。  それから次に、農業高校の問題でちょっと聞いておきたい。政府は農業基本法を出して、農村のことを考えるという段階にきておる。ところが、一方では工業高校の増設というようなことを進めておる。このことはけっこうだが、府県によりますと、長野等にその実例が現われておりまするが、農業高校をやめて他の種類の工業高校にかえるというような傾向がある。これは将来の日本の大勢を展望した場合にもゆゆしい問題だと思う。この問題について実態はどうなっておりますか、どのように文部大臣は対処されんとされております。
  79. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  御指摘のように、現在あります農業高校を工業高校に切りかえたいという考え方で現にやっておる県が、私の承知しますところでは長野県と静岡県だと思います。その他にもあるかしれませんが、まだ存じません、しかし一部あることは確かでございます。一般的に申し上げまして、農業高等学校が、今日の段階におきまして、まあ多過ぎると申しましょうか、希望者が少なくなっていると申しましょうか、実質的には同じことですけれども、特に農業高等学校の中の学科の中で、農学科を志望する者が激減していることは一般的な傾向でございます。ですから農業高等学校そのものを文部省として減らそうなどということは毛頭思っておりませんが、御指摘のような、実情はある程度減っていく傾向は示しておるものといえるかと思います。まあそれはそれとしまして、本来、都道府県みずからが設置者といたしまして、県の、地方の実情に即して処置をすることでございますから、一応都道府県の実情にまかせてよろしいかと、その点は思っております。  ただ内容的に、まあ農業基本法も制定されまして、その意図する方向は、一つには経営規模を大きくして自立できるようにという考え方、そしてまた、近代化し、合理化していこうという考え方、それに応ずる必要もございますと同時に、また大学等におきましては、何か少し違いはしますが、工学部と農学部の分界点が少し不分明になるくらいの科学技術の進化が影響を与えている。それと同じことが農業高校におきましても現に問題になりつつありますし、将来を考えましても、その必要性があろうかと思います。したがって、農業高校の内容面のことでございますが、今申し上げますような意味におきまして、たとえば米麦中心の農業経営ということから、もっと畜産、園芸等を加味した多角的な経営による自営者農業の育成をはかるという見地から、そういう学科をふやしていきたい。さらに、第二段の問題としましては、農産加工あるいは農業土木というようなものの学科をふやすことによりまして、さっき申し上げた工業と農業のボーダー・ライン的な現実の必要に応じますための措置を講じまして、そして農業高校を出ました後の就職の幅を広くするという考慮を払う必要があろうと考えるわけでございます。それで、まあそういう必要に応じますために、施設設備の充実に金がかかりますから、三十七年度には各都道府県に一校ないしは三校程度のモデル・スクール的なことを構想いたしまして、そのための施設設備の経費の補助金を約四億円概算要求をいたしております。ぜひ成立を期しまして、現実の必要に応じたいと思っておるところでございます。
  80. 相馬助治

    相馬助治君 最後に、厚生大臣に承りたいと思いますが、医療問題についてですが、医療問題について医療懇談会というものを作ってきめなければならなかったという、あの事態、これについては、厚相はどういうふうにお考えでございますか。
  81. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) お答えいたします。  医療問題は、なかなか複雑な問題を含んでおります。関係者がお互いに理解し合って協調的な態度で物事を進めてもらうということになりませんというと、この医療問題を前向きに解決するということは、なかなか困難であるというふうに私は考えるのであります。支払い側あるいは医療団体側、それぞれ利害を異にいたしておりますし、また事実上、これまでいろいろな行きがかり等がございまして、かなりその関係もむずかしいような状況にもなってきておったように思うのでございますが、こういうところを解きほぐして参りまして、お互いに相手の立場を理解しながら日本の医療保障の進歩のために寄与する、こういうふうな形にならなければ、厚生行政としても進展を見るわけには参りませんので、さようなことを考えましたので、私は、これはほんとうに私の発意でやったことでございますが、関係者の諸君に集まってもらいまして、まあかみしもを脱いで、いろいろお話し合いをしていただく、こういうふうな場を作りたいとこう存じまして、いわゆる医療懇談会というものを開催しましたようなわけでございまして、別に正式の機関でもない、あるいは諮問機関とか決議機関とか、そういうものではございませんので、ただ私がお話を伺う機会を得たい、あるいはお話を願う機会を得たいと考えまして作りましたものでございます。
  82. 相馬助治

    相馬助治君 形式的な議論をすれば、この懇談会は問題がありますが、あの際、こういうふうなものを作って問題を解決したということ自体については、私は、やむを得なかったし、またけっこうだと思います。  ただ問題は、今後ですが、医療内容というものが、この近代医学の進歩とともに向上して参り、何時にこの医療費の値上げということは起きてくるのは当然です。  そこで、厚生省の従来の指導がうまくいかなかったためか、どうしても支払い側と医師会側との意見が一致せず、そうしてこの社会保険医療協議会という法的にできている機能がうまくいっていなかったことは御承知のとおりなのです。この協議会が改組されるまでは懇談会というものは大臣は持続させていくつもりですか。あるいはもうすでになくなったのですか。
  83. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 今申しましたような趣意で懇談会というものを設けましたわけでございますが、これは、いつまでやろうとかどうしようとかいうふうな、きまったものでも何でもございません。ただ私は、かような形における話し合いの場というものも、これは今後なお続けてよろしいのじゃないか。格別な議題がなくても、ときどきは集まって関係者が話し合うというようなことがあってよろしいのじゃないかと思います。  したがって、医療協議会にかわる機関というふうには、もちろん考えておりません。医療協議会は、御承知のように法律に基づく正式な機関でございまして、それはそれとして、まあ改組の問題についても、いずれ御審議を願いたいという心持で検討を進めておりますが、これはこれとして進めていくことにいたしまして、当分のうちは、まだ医療懇談会というふうな場もあってよろしいのじゃないかというふうな考え方をいたしております。
  84. 相馬助治

    相馬助治君 実態はそうかもしらないが、これはやはり私は、正すべき毛のを正すという意味で問題だと思うのです。  それで、厚生大臣は、この前の医療協議会で、協議会の改組を、この臨時国会で成立させるということを約束したと聞いておりますが、そういう事実はありませんか。
  85. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 私といたしましては、この臨時国会で医療協議会の改組を行ないたいということを申し上げた事実はございます。
  86. 相馬助治

    相馬助治君 改組案がいまだ提出されていないが、いつ提出いたしますか。それは三十八国会の厚生省案をそのまま出すということに相なります。
  87. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) せっかく出しましても、この医療協議会に参加する方々の気持がそろいませんというと、改新した意味もないわけでございます。  さような意味合いにおきまして、今いろいろ検討いたしておるところでございますが、なるべく早く結論を得まして、国会の御審議を、願いたいと、こういうつもりで進めておるわけでございます。
  88. 相馬助治

    相馬助治君 そうすると、この前の厚生省原案に、若干手を入れて出すという意味ですか。
  89. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) その点は、まだ決定いたしておりません。大体、この前の線に沿うた考え方でもって検討いたしておるわけでございますが、最後的には、まだ結論は得ておりません。
  90. 相馬助治

    相馬助治君 前国会において、社会党、民社党、これらから修正意見を申し上げたのですが、政府は、これをいれなかった。そうして結果的には、問題は解決せずに、医療懇談会というようなところで問題が解決をいたしました。で、将来のことを展望する場合に、やはりここに問題があろうと思うので、この医療協議会の改組を、納得する形で、日本も早く出す必要があろうと、こういうふうに私は考えます。  次に、国民医療の問題から重大な影響を持ちますので、一つこの医療品の乱売問題について、厚生大臣の見解を承っておきたいと存じます。  最近、スーパー・マーケットが各地にできて、この法的な規制が明確でございませんので、そのスーパ一・マーケットの経営者の中には、国民の保健衛生に直接関係のある医薬品を、販売政策上のとおりとして使って、大乱売をやっていて、何が薬局なのか、何が薬販売屋なのか、わけのわからない姿が、各地で起きている状態をお知りであろうと思います。  そういう現実をお知りでございますか。そうしてまた、何かそれに対してお考えが現在ございますか。
  91. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいまお述べになりましたような事実が、ところどころに現われておるということは私もよく承っております。それによりまして、薬品に対する一種の、市場を混乱させると申しますか、そういうようなことで、関係業者が迷惑しておると、こういうふうな事実も承知いたしておるわけでございますが、何とか適正な姿に引き戻したいものと念願して、業界に対しまして、いろいろ話し合いをいたしておるようなわけでございます。
  92. 相馬助治

    相馬助治君 それで、この小売業者の保護育成という問題は、百貨店法であるとか、小売商業、調整特別措置法という問題で、いわば通産大臣の管轄下において、その市場の規制ということが実施されているわけですが、いわゆる通産省のものの見方と、それからその監督権のらち内では解決できない、直接人間の命に関係のある医薬品が、めちゃくちゃに乱売されているところが問題だということを私は申しておるので、これは関係当局、特に通産大臣とよく話し合いをされて、そうしてこの格別の措置をするように、特段両大臣に希望をいたしておきたいと存じます。  それから、これも通産大臣と重要な関係を持つ問題なんですが、かつて環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律という、いわゆる環境衛生法というものを作って、関係業者を保護し、別な面では監督し、そうして業者自身が団結をして、その向上をはかるというふうな法律を作ったのですが、これが全くの実効の伴わない法律になっていて、関係業者が非常に困っておる状態でございますが、厚生大臣はこの問題について、どのようにお考えでございますか。
  93. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 環境衛生の適正花に関する法律の趣旨は、国民衛生の状態を良好な状態に置いていこう、こういう趣旨から出ておるものと考えるわけでございます。われわれといたしましてはその趣旨に沿いまして、この法律の運営に遺憾なきを期したいと、かような考え方をいたしておるわけであります。  これにつきまして、関係業者の間に、またいろいろ御意見もあり、御希望もあるように伺っておるわけでございます。さような点につきましても、ただいま申しましたような見地において、十分われわれとしても検討していきたいと思います。
  94. 相馬助治

    相馬助治君 本法の適正な運営を期したいということをおっしゃっているが、それじゃだめだということを私は言うておるのです。  というのは、中小企業の経営の安定を要件として、別には中小企業団体法という法律もできておる、こちらで環境衛生法ができておる、この二つの法律を比べて、団体法はざる法案だなどといわれておるが、その法案にも劣る、その法案ほどの法律上の規制の力も持っていないというのが環境衛生法なのです。ですから、最低はこの中小企業団体法なみに、この法律を改正する必要があるのです。で、むしろこの際、理想的にいえば、より高度に法改正をやって、そうして人間の文化生活に、われわれの生活に直接関連のある環境衛生業者というものを助けるとともに、やはり保護育成し、別しては、この中小企業に類するこれらの人々を、国は保護育成すべきだと、こう思うのです。  したがって、私は、現行法を妥当と思うか、思うというならおかしいのであって、あなたは、今のを適正に運用すると言っているのですから、これは大体妥当だと思っていらっしゃるようだが、妥当でないのであって、この問題について、どのようにお考えか。再度答弁をわずらわしたいと思います。
  95. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) ただいまもお答えを申しましたように、現在のところといたしましては、現行法の適正な運用をはかっていくと申し上げたわけでありますが、同時に、先ほど申しましたように、この法律につきましては、いろいろな問題がある。ことに関係業者その他の間にも、改正に関する御希望もあるということも伺っておりますので、そういう点を十分検討させていだきたい、かように申し上げたわけであります。
  96. 相馬助治

    相馬助治君 善処いたしますか。実態を調査して善処したいという積極的な意味も含んでおるのですか。
  97. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 実態の調査もいたしましょうし、また、御希望の点なんかも十分承りまして、不備な点があれば、是正するにやぶさかじゃございません。
  98. 相馬助治

    相馬助治君 以上で質問を終わります。
  99. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 再開は午後一時十分といたします。  しばらく休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      —————・—————    午後一時二十二分開会
  100. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) これより予算委員会を再開いたします。  委員の変更について御報告申し上げます。  本日、藤田藤太郎君及び館哲二君が辞任され、その補欠として佐多忠隆君及び天埜良吉君が選任せられました。     —————————————
  101. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 休憩前に引き続き質疑を続けます。羽生三七君。羽生三七君 三十六年度の補正予算審議に際して、主として外交経済の二つにわたってお尋ねをいたしますが、最初に、まず外交問題について質疑をいたします。  いわゆる北方領土の問題については、今日まで両院の質疑を通じて大体政府見解が明らかになりました。また、私はこの問題について自分なりの考えは持っておりますが、きょうはそれに触れるつもりはありません。私の質問したいととは、総理もこの前本会議で言われましたように、この問題については一歩も譲らない、あるいは外務大臣が昨日堂々と主張すると、こう言われておりますが、そういう言明をしただけで解決できる性質のものとは思われぬのであります。しからば、具体的にはどのようにしてこれを処理し解決せんとするかという問題であります。すなわち、現に北方領土を支配しておるソ連が、先方から領土問題の譲歩を前提として平和条約を提起してくるということは近い将来にまずあるまいと思います。それじゃ国連アメリカはどうか。これまた、頼まれもせぬのに、みずから進んで厄介な問題をかかえこむために発議することはないと思います。それじゃイニシアチブはだれがとるのか。日本以外にはないはずであります。したがって、結論的には日本自身が何らかのイニシアチブをとらない限り、半永久的に解決できないと見てこれは間違いないと思います。しからば、政府としてはそれでよいのかどうか。問題処理に対する具体的な方針、つまり局面打開の具体的見解をまず総理から承りたいと思います。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の点は、私は現実的な点で、われわれもその問題について悩んでおるところでございます。私はこの領土問題につきましては一歩も譲らぬと申しておるのは、これは択捉、国後、歯舞、色丹はもちろんわれわれの固有の領土である、法律的にもまた政治的にも私はそう考えるということをはっきり言っておるのであります。しからば、解決策はどうかという問題になりますと、今お話しのとおりでございます。そしてまた、これを国際司法裁判所に提訴しようと申しましても、ソ連が応じなければだめであります。だから、どうやっていくかということが問題でございます。それには、やはり私は国内的にもこの問題について国論の統一がひとつ必要であろうと思います。その点に向かって私は今後努力いたしたいと思いますが、国際的にはやはりお互いに、ソ連とその気持ちになって話し合う場を作るように努力することが必要であろうと思います。両方とも譲らぬと、こう言っておりましても、領土問題を片づける上におきまして、領土だけということでなしに、両国がお互いに誠意を披瀝し合い、譲り合うという場面を作り出すことも、これは必要ではないか、その方向へ行くよりほかに、は今は私はないと思います。
  103. 羽生三七

    ○羽生三七君 心がまえとしては、まさに総理の言われる通りだと思います。先ほども触れましたように、しからば、どうしてその契機をつかむか、実際問題として、この共同宣言の際に平和条約ができれば、歯舞、色丹だけは返すとソ連は言いましたが、その後、安保条約によって外国の基地が存在する限り、これは見送りということになりましたが、しかし、私は率直に申して、この安保条約がかりにあっても、そういう条件の変更によってこの領土返還という問題が左右される性質のものではないと思います。これは私はそういうふうに確信いたします。しかし、現実問題としてはなかなか打開の道がないので、だれが発議をとるか、それじゃ日本が国会で論議をして、いつまでも質疑応答をやっておれば、自然にソ連が耳を傾けて何らか向こうが発議してくる、そんなことは絶対にない。だから日本が発議する以外にない。ところがその場合に発議するのに、ただ領土を返せと言ってもだめであるから、私は安保条約にソ連が非常な危惧の念を抱いているのであるから、むしろ、日ソ不可侵条約等の締結を提起して、そういう機会に両者の話し合いの契機、つまり局面を転換する契機を持つ、これは単なる思いつきじゃない。これは二、三年来、本会議や予算委員会でそのつど申し上げておることであります。一貫して申し上げておることであります。必ずしも日ソ不可侵条約だけに限定されることはありません。ほかのことでもよろしい。何らかの話し合いの契機、つまり、ソ連も一つ日本の話に乗ろう、そういう契機をどうしてつかむか、そうでなければ、国会の本会議や委員会で、いつまでたっても質疑応答をやってお互いに自己満足しておる、そんなことではだめであります。だから、局面打開の契機をどうして作るか、国論が分裂しておることはよくありませんから、これはこういう問題につきましては、できる限り与野党の意見の一致が望ましいことであります。そういう点については、わが党も新聞等で御承知のとおり配慮しておると思います。それはともかく、どういう形で契機をつかむか、一つ具体的に構想を承りたいと思います。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 具体的にどうやったらいいかということは、相手のあることであります。やはりただいま申し上げました領土問題につきましての議論もさることでございますが、ほかの経済提携、文化交流その他につきまして、お互いが融け合う機会を持っていくことだと思います。
  105. 羽生三七

    ○羽生三七君 融け合う機会はよろしいのですが、平和条約締結なり、領土問題について何らか漸進的な発展の契機をつかむには、ただそれだけでいいのかどうか、そのものオンリーでもって何か転換の契機をつかむ具体策をもっと真剣に考究すべきではないかと思います。向こうがおりてくるまで永久に待つというようなことでは、これは問題にならぬと思う。これは外務大臣どうですか。
  106. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 総理も言われましたように、まず、私どもは議論の根底にあるわれわれの認識というものを、国内では統一することが先決だと思うのでございます。その意味段階ができてから、さて、それではどうするかという問題になろうかと思いまして、現在は、まず国論の統一ということに努力すべきだと思うのでございます。
  107. 羽生三七

    ○羽生三七君 私、実はこの問題は、日ソ国交回復のときに、いろいろな具体的な問題を提起したことがあります。たとえば、返還される領土が外国の軍事基地として利用されることのないよう、政治的保障を与えて問題の討議に入るとか、あるいはもちろんこれは残余の島が、実際問題として、留保条項なんかに残されるような甘い条件ではありませんから、今そういうことについては一々触れませんが、しかし、先ほど私が申し上げました日ソ不可侵条約の問題にしても、あるいは今の私が申し上げた問題にしても、これは思いつきではなしに、局面打開に何らかの糸口をつかむには、そういうこと以外にはないという、しかもソ連の今までの態度からみて、イニシアチブは日本がとる以外にないと思ったから申し上げたのでありますが、私はこの問題はこれ以上深くは入りません。  次の問題は、日韓交渉の問題でありますが、この首席代表を杉道助氏にきめて、その後、韓国の動きもあり、また、近くは二十日ごろから再開というような動きにもなっておりますが、私、非常に疑問に思うことは、日韓交渉の性格というものが一体どこにあるのか。もしこれが当面の財産権の請求とか、あるいは経済協力というような、純経済的な問題であるならばとにかく、もしそれが基本条約の締結をも含むような基本的な性格の交渉である場合に、そういう財界人の代表なんかでいいのかどうか。ですから、今回の交渉の基本的なねらいというものは、単なる当面の経済問題なのか、財産権請求、李ライン問題というような当面の問題だけなのか、それとも基本条約にまで及ぶ基本的な問題なのか。これは代表の人選にも関連する問題でありますが、どういう性格のものでありますか、お答えをいただきたい。
  108. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) わが国は朝鮮の独立を平和条約で認めまして、これに対する請求権に応ずる義務を持っておるわけでございます。したがって、この関係の問題を解決していくことは、私どもはどうしてもしなければならぬことだと思うのが一つ。それから、非常に両国が近い関係にございますので、先般もここで議論がございましたように、李ラインの問題をめぐっても、同胞がいろいろ拿捕されるというような厄介な問題があるわけでございます。その他経済的にも関連が深いわけでございます。そういう関係を国交調整しまして、そしてこういう問題が出ないように、軌道に乗せたいという考え方でございます。代表はそうした問題の処理のために、両国の交渉の代表として杉道助氏が選ばれたわけでございますけれども、やはりこの条約を結ぶ責任者は政府でございますから、そういう点で、できるだけ幾多の経済問題その他について深い造詣を持つ杉氏がよかろう、こういう判断をしたのであります。
  109. 羽生三七

    ○羽生三七君 そうすると、交渉が発展していって、基本条約にまで及ぶ、それまでの権限が今度の杉代表にある。こういうことでございますか。
  110. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) さようでございます。
  111. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は少なくとも、そういうことにまで及ぶ交渉の代表である場合には、私は財界人なんかを選ぶのは適当でないと思うのです。これは私、これ以上は申し上げませんが、十分お考えをいただきたい。  それからもう一つは、財産権の問題に関連しますが、米国が没収して韓国に引き渡した日本財産、それに文化財、船舶等以外に、韓国が財産請求権に基いて日本に要求しているものはどういうようなものなのか。ちょっとわれわれのみ込めない点は、韓国にあった日本財産を米国が没収して、それを韓国に引き渡した。それ以外に文化財だとか、船舶の問題がある。その米国が韓国に引き渡したものと、日本から没収したものとの間に大きな開きがあれば別ですが、それ以外に財産請求権という場合には、つまり金塊とか、何かそういうようなことなのか、もう少しこの財産請求権という場合には、内容について——金額等はよろしゅうございます。具体的に示していただきたいと思います。
  112. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 韓国との間には、御承知のように十年にわたる交渉をしていることになっているのであります。しかし、その間の交渉で、財産請求権とか、あるいは漁業——李ラインの問題に触れましたのは、きわめて最近でございまして、ことに財産請求権については、去る四月になってようやく触れましたわけでございます。先方から八項目という要求が出ているのでございますが、そのうちだんだん説明して参りまして、六項目ぐらいのところまでいったところで、御承知の政変がありました。それ以来、とだえているわけでございます。したがって、私どもはもっとこの点について先方の考え方を知らなければならぬかと思うのでございます。もちろん内容も同様でございます。そういう段階でございまするので、私は十分先方の話を聞いてみないと、今ここで御答弁申し上げるのはいかがかと思います。
  113. 羽生三七

    ○羽生三七君 もう何年もおやりになって、一から十まで、すいも甘いも全部御承知だと思うけれども、それはそれでよろしゅうございます。  そこで、米国が日本から没収して韓国に引き渡した財産ですね。それが日本から没収したときと韓国に引き渡されたときとの間に、もし相違がある、量的に質的に相違があった場合には、それはどこの国の損失になり、またどこの国の責任になるのですか。額等は触れません。どこの責任になるのですか、それはアメリカか、韓国か、日本が背負うのか、どこの国の責任になりますか。
  114. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 敗戦と同時に、日本の韓国におきまする財産は米軍に接収されました。それで、軍令三十三号というもので韓国に引き渡されたわけであります。日本講和条約によって、その軍令の処理の効力というものを承認させられたのであります。したがいまして、日本としては、この問題について直接の責任というようなものは、その間の事情を聞いてみないと何ともわからない。これは一々具体的な問題についてでないと、私がここで申し上げる段階にないと思います。
  115. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはまたいずれ外務委員会等で詳細に承りたいと思いますが、これはおそらく外務大臣も御存じだろうと思うし、政府委員は詳細にそれを知っているはずだと思います。しかし、これも私これ以上は申し上げません。問題は、私は日韓交渉は国連総会の決議にもあるように、民主的な政府であるということが前提条件であると思います。今日の韓国の実情をみる場合に、私はこの交渉は、当面必要やむを得ざるものの問題の処理に限定すべきだと思う。あえて将来に事をかまえるような形で問題を処理すべきではないと思います。しかも、韓国は二年後に文民政府に移行しようという、それならば、どうして二年間待てませんか。それを待つことの方が、私は正しくまた賢明な解決のあり方だと思います。なぜそんなにお急ぎになるのか。たとえば、李ラインと申しますか、平和ラインの問題にしても、あるいは日本経済協力をしようといえば・向こうが、経済協力なんか、まだそんなことを話す段階ではないという、俗に言う踏んだりけったり。それでもなお日本が、経済援助を受けていただけませんかという式の交渉を依然として続けている。しかも国連でいう民主的な政府でもない。あるいはまた、これはしばしば多くの人に論議されるように、言論人が死刑を求刑されている。そういう政府に、日本が今のような態度でどうしてこんなにお急ぎになるのか。完全な文民政府に移行するまでの間どうしてお待ちになれないか、これは国連の決議の精神に沿うことだと思います。お急ぎになる事情を承りたい。
  116. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 急ぎます理由は、主としてこの問題が懸案であり、しかも非常に国が近いという関係から、いろいろ李ラインの問題もあり、また経済的な問題もあるわけでございます。われわれ非常に特殊な関係を韓国とは歴史的に持っているわけでございまして、韓国の民生が安定するということは、やはりわれわれとしても、ちょうど兄弟が、弟が困っているというような気持で、兄貴がみるような気持で見るほうがいいのじゃないか、こういうふうに私は思っておるわけです。二年後に文民政権に移るということを約束いたしておりますから、今度この交渉がかりに妥結いたしましたならば、この問題は当然文民政権に受け継がれる、こういう前提のもとに、今申し上げましたような事情では、早く懸案を解決したほうが両方のためによろしいと思われる問題が多いから、急ぐわけでございます。
  117. 羽生三七

    ○羽生三七君 だから、最初に申し上げましたように、そうであるならば、純然たる当面の問題に限定すべきで、先ほどは、杉代表が行った場合に話が発展するならば、基本条約まで及ぶというわけでしょう。そういうことは早過ぎる。だから、当面どうしても処理しなければならぬ問題があるなら、その問題に限定して当面の問題の処理を行なって、あと基本条約、つまり北鮮に関連するような諸問題については、私は、文民政府に移行し、世界の情勢も十分見きわめた上でやってもおそくないのじゃないか。私はそういうことを要求しておるわけです。
  118. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お考えはよくわかりました。そこで、北鮮に対する問題でございますが、韓国の現在の政権が三十八度から北に及んでいない、こういう事実ははっきりした事実でございまして、私どもその事実の上に立って交渉する考えでございます。したがいまして、請求権その他の問題は、現在の政権の支配の及んでいる範囲ということになると思います。北のほうには及んでいないのでございますから、その部分は、ちょうど空白、ブランクのようなものになろうかと思います。
  119. 羽生三七

    ○羽生三七君 外交問題は他にたくさんお聞きしたいことがありますので、みな中途半端みたいなことになりますが、これに関連して総理に承りたいことは、総理が渡米の際の日米共同声明を見ますると、従来よく使われておった東南アジアという言葉にかわって、東アジア、こうなっております。つまり総理大臣はこれに関連して東アジアに対する開発援助に特別の関心を表明した、こうなっておりますが、ここでいう束アジアとはどこをさすのか、どこの国をさしますか。また、特別の関心を表明したという場合、どういうことをその国に行なわんとするのか、この辺を明らかにしてもらいたい。
  120. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 東南アジアということになりますと、朝鮮を含むか含まぬかという問題も私は起こってくると思います。私は、朝鮮問題につきまして非常な関心を持っておるということは、アメリカ大統領にも申したのであります。朝鮮問題を東南アジアに含める、こういう意味で束アジアという言葉を使ったのであります。
  121. 羽生三七

    ○羽生三七君 これはあとからだんだんに触れますが、率直に申し上げて、日本の外交は、朝鮮でいえば南の韓国、中国問題でいえば台湾、ベトナムでいえば南と、これはみんな紛争の拠点であるほうとだけ手を握っておる。これは自由陣営の一員であるということを言っておられますから、それは思想的には共通の部面があるでしょうが、外交からいえばあまりに片寄っておる。だから、韓国問題についても、私は、特に東南アジアということをわざわざ東アジアにして、韓国に重点的に指向するという考え方には賛成できません。これは要望だけにとどめておきます。  次は中国問題でありますが、今次国連総会の中心議題は、何といっても中国問題であると思います。しかし、私はきょうはここで中国問題の内容に具体的に触れて、一つの中国か二つの中国かというような議論を詳細にわたって論議するような意思は毛頭ありません。私のここで質問したいことは、この問題に対する政府の基本的な方向、つまりおおよその方向です。どうせ国連総会には日本代表が発言を迫られるときが来る。しかし、そこでは世界的に明らかになるのに、国会においておおよその方向が明らかにされないという理由はないと思う。私は、代表権問題がいよいよ討議されるときに、どっちの側に立って賛成するとか、どっちの側に立って反対するとか、そのときの政府はどういう投票をするとか、そういう立ち入った質問は絶対いたしません。しかし、これほど大きな世界的な問題で、また日本の国民も非常に大きな関心を持っているこの問題について、しかも国連総会における討議が目前に迫っているのに、なお基本的な方向すら毛この国会で御説明ができないということは、私はふに落ちませんので、この問題をお尋ねしたいと思います。もし実際問題として日本政府が中国問題のたな上げに反対するだけでも一歩前進ではないか、この前総理が言われておりましたが、もちろん世界の大勢がそういう方向に向かえばそれ以外にないと思います。それらの前進とかなんとかという問題でなしに、それは大勢に沿って当然だろうと思う。しかし、問題は、米国等がこの問題を重要事項と指定して、かつ総会の三分の二の賛成が得られるであろうという票読みをして、その結果を見通してのこの行動であるといたしますと、これは実質しのたな上げと同じであります。その効果をねらって一種の非常に手のこんだやり方をとるということになる。伝えられる特別委員会の設置問題も私は同様だろうと思う。したがって、日本政府としてはこういう問題について基本的にはどういう考え方を持っているのか、あとからさらに伺いますけれども、まず総理からお伺いし、外務大臣からも聞かせていただきたい。
  122. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 中国問題は、お話のように、国際的に最も重要な問題の一つでございます。と同時に、われわれにとりましても非常に重要な問題、また世界の人も日本態度について注目をしているということはお話通りであります。しかく重要な問題でございますから、われわれは国連総会においてこの問題を十分討議しなければならぬ。国連の今までの中共に対する決議もございます。また、その後の変化もございます。だから、この問題を国連で討議してここまでいっているのであります。しこうして、その討議の場合にどういうふうな態度に出るかということは、まだ世界の情勢を見てからきめるべき問題で、私の気持を今ここで申し上げることは早過ぎるのではないかという考え方であります。
  123. 羽生三七

    ○羽生三七君 外務大臣、同じですか。
  124. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 同じです。
  125. 羽生三七

    ○羽生三七君 この問題がむずかしい問題であることは、総理がおっしゃるまでもなく、私もその辺の事情を考慮して、こまかい問題に触れておらないわけです。しかし、本質的にはこれはおそかれ早かれ解決を迫られる問題であることも、これまた決定的な事実であります。問題は、日本がこの問題に対する正しい解決のあり方に基づいて一歩進めるかどうか。先ほど総理は、国連総会における世界の動きを見ながら慎重に討議すると言われた。それは当然であります。だから、日本が問題の前向き、前進的な解決のために一歩進めるのかどうか、それとも世界や国連の様子を見ながらすべてを国際情勢待ちにするかどうかということです。ですから、その辺は私は世界の様子を見てもいいと思います。国連のあり方を検討されて、十分案を練られるのは、それはよろしゅうございます。それは当然だろうと思う。しかし、日本にこういう姿勢なしに、大体の方向はこれでいくという姿勢なしに、ただ世界の様子を見てしかるべく動く、要領よく動く、つまり極端にいえば、世界の様子を見ながらしかるべく動く日本外交、これは極端な表現かもしれませんが、私はそう申し上げられると思う。ですから、問題は、日本としては、もう一度繰り返しますが、万事国際情勢待ちなのかどうか、それとも日本として正しい解決のために一歩踏み込んだ積極的な考え方を何か持っているのかどうか。それがしかも総理の言われる近親感、これに通ずるのかどうか。ですから、実質上のたな上げにする、世界の様子がそうだから実質上のたな上げにする、世界の様子がこうなったから、あるいは代表権の交代か、新規加盟かどうか知りませんが、とにかく場合によったら賛成をする。あなたまかせである。そうでなしに、日本自身としてどういう些末的方針で中国問題を処理しようとしているのか。大体の方向ですね。私はこまかいことを言うわけではないのですから、少なくとも前進的、一歩前進のかまえでやるのがどうか、世界の様子を見てからあとから態度をきめますということなのか、その辺を一つはっきりしていただきたい。
  126. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、台湾政府の存在を認めておりますので、この問題を頭に置いて考えなければなりません。これは既成事実でございます。そうして中国大陸の国民に対しましても、歴史的、また経済的にいろいろな慣習がある。そこで、この問題を日本だけできめ得るか。私は、まず第一に重要なことは、国連がうまくまとまるということが絶対に必要だと思う。国連がうまくまとまる。この問題で国連が危殆に瀕するとは申しませんが、非常にあと味の悪いことになってくるということは私は考えなければならぬと思う。だから、日本がこういう腹づもりでおるといっても、そうはいくものじゃございません。この取り扱いにつきまして、今の拒否権を持っておる五大国の、五つの国の考え方はどうか。また、ソ連を除いた国々の考え方につきましても、いろいろの違いがあるわけです。歴史的にもいろいろな違いがある。そういうことも考え、また世界の大勢からいっても、どういうふうな状態になっているか。私は、国連自体が大事だということを考えまするから、国連の様子を見て、自分らの態度を変えるという意味じゃなしに、固めていきたいという気持でございます。国連が大事だということを私は頭に買いておるから、そうして拒否権を持つ理事国の五つの国の考え方、そうしてまたその他の国の考え方を十分見て、国連がうまくこの問題を処理するように持っていくことが必要だと思います。
  127. 羽生三七

    ○羽生三七君 もし国連に何らかの、まあ危機というのもどうかと思いますが、トラブルが起こるとすれば、私はアメリカだろうと思う。それは、アメリカの国内には中国問題の処理いかんによっては国連を脱退しようというような暴論もあるくらいですから、もし問題が起こるとすればアメリカだろうと思う。そこで、ちょうど総理からそういうお話もあったから承りますが、この問題について日本の立場は終始アメリカと一体なのか、あるいは事と次第によっては独自の立場をとることも当然総理がいつも言われる自主性の中に入っているのかどうか。アメリカとつまり異なる立場をとることも場合によってはあり得るのかどうか。運命共同体的にアメリカと一切を終始行動をともにされるのかどうか。ちょっとやぼな質問ですけれども
  128. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題につきましては、英米関係状況も御存じと思います。そうしてフランスがどういう態度をとっておるかということも御存じだと思います。ただ、申し上げることは、私はアメリカと常に一緒にいくという態度ではございません。国連をりっぱなものにし、そうして日本の利益のためにやっていく。それがアメリカやあるいはイギリスと一致することになるかもわかりません。一致するための態度ではございません。あくまで国連中心、そうしてわが国の利益を考え、世界の平和に貢献するという立場で進んでおるのであります。
  129. 羽生三七

    ○羽生三七君 どうかそういうことで中国問題が一歩前向きの姿勢で正しい解決を結ぶことを、私は心から希望いたしておるのであります。  この機会に、私は、これと関連して、日本外交の姿勢といいますか、そのあり方という問題について特にお尋ねをしたいと思いますが、御承知のように、ベルリン問題を中心に、ソ連の核実験の再開、続くアメリカのそれ。国際緊張が激化していることは憂慮にたえませんが、しかし同時に、一面国連総会を機会に軍縮交渉を進める米ソの共同宣言が国連提出されております。また、続いてベルリン問題について米ソの接触が行なわれておるわけで、前途なお予断を許さないけれども、私はこれは明るい希望を持ち得る一つの問題だと思います。そこで、私はこれと関連してお伺いしたいこと、は、米ソ共同宣言にも示されておりますように、これは国連提出されたやつです。すべての国は平和的な手段によってすべての紛争の解決を求めるべきであり、かつまた、戦争はもはや国際問題解決の具ではないと、こういう基本的な立場をこの米ソ共同宣言は示しておるわけでありますが、これはもちろん当然総理も賛成であろうと思うのです。問題は、こういう国際情勢の中にあって、日本国際的にどういう寄与をするか、日本国際的にいかなる寄与をしようというのか、この問題であります。  日本外交には、率直に申して、平和維持に関する積極的かつ建設的な意欲と具体策が乏しいのではないか。今度の国連総会に日本は核実験の停止決議案を出すといわれておる。どこまで一体本腰なのか。たとえば核兵器の日本への持ち込みや甘木自身の保有については、政府は今日まで、そういうことはしないと言明されておる。それなら、なぜ日本政府が一歩進んで核非武装の宣言ができないのか。日本政府が全世界に向かって核非武装の宣言をし、あるいはまた国会において核実験停止と完全軍縮の決議案がなぜ難航するのか、これはあとでこれだけ別に申し上げますが、なぜ難航するのか。もし国連総会に日本の核実験停止決議が出された場合、その場合においても、政府がかりに核非武装の宣言を行なうとか、あるいはまた国会において核実験停止、完全軍縮等の決議がスムーズに行なわれるならば、私は日本の決議というものはより生き生きとして精彩を放つものになるのではないかと思うのです。また、日本の真意もそれによって実証されるのではないかと思う。たとえばベルリンの問題がなぜかくも大きな問題になっておるか。その大きな条件がいろいろあるでしょうが、そのうちの一つに、西独核武装化を防止しようとするソ連のこの気持というものが大きく支配しております。これは間違いのない事実であります。たとえばアメリカのフルブライト氏すら先日ロンドンにおいて——アメリカ上院の外交委員長フルブライト氏、それがロンドンで談話を発表しておりますが、ソ連とある種の合意に達する見通しがつけば原子兵器は西独に与えるべきではない、こう言っておる。  問題が少し横にそれますが、日米安保条約について、これは全く防衛的な性格のものだということを政府はしばしば言われておる。しかし、私はきょうこの問題について論議する意思はありません。しかし、甘木に対する近隣諸国の不安は多い。そこで、日本政府としては、今申し上げたように、核非武装の宣言をするとか、あるいは核非武装地帯の設定をするとか、つまり甘木が平和国家として生き抜く姿をいろいろな機会に証明していくことが肝要であると思うのです。なぜもっと積極的、建設的に平和維持に関する問題に本腰を入れて取り組むことができないのか。情報によれば、中国の陳毅外相はロイター通信のコール氏に、中国が核兵器を持つのは、これは、原爆を持つのは近い将来、おそらく二年以内であろうというようにも言っております。こういう場合に、中国が核兵器を持てば、アメリカ日本への核兵器の持ち込みも現実の問題になってくる。ベルリンの場合、西独が核兵器を持つ場合も同様であります。しかも、それを防止する効果的な方法があるか。その場合には、私は今申し上げましたように、まず日本自身が核非武装の宣言をするとか一これは政府です。国会としては決議をするとか、そういうことをやる。こういう熱意を持ってこそ初めて私はこの国際的に寄与する日本外交のあり方というものが宣明できると思う。国連にしかるべく動く、極端なことをいえば世界の動きを見ながら適当にという、こういう外交で、どうしてこの困難な、しかも中国が近く核兵器を持つことが明らかになり、アメリカの核兵器の持ち込みも現実の問題として起こらないとも限らないときに、なおかつ今のような静観的態度でよろしいのかどうか。もっと積極的な平和維持に対する熱意を求めたい。  よく外交の自主性ということが言われますが、これは客観的評価です。主観的には、総理が、政府は自主的にやっておるのだといえばそれまででありますから、私は自主的という言葉は使わない。あえて建設的、創造的と言います。そういう意味国際的寄与というものはどこにあるのか。これをまず総理から伺いたい。総理からひとつ先に、基本的な問題ですから。
  130. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 外交の姿勢の問題が主でございましたから、私から御答弁させていただきます。  まず第一に、日本は憲法において軍備を放棄しているのでございますから、日本こそ平和国家であるということは各国知っているわけでございます。もちろん核武装の持ち込みはしないとか、核兵器を保有しないということは、常に育っているわけでございます。しかもなお、日本国内においてすら、再軍備への方針であるとか、いろいろ言う人があるくらいであって、外国においては、一部の国は非常に日本はそういう意図があるごとくに言っている向きもあるわけでございます。そこでそういう不信が存在する、国際間に現実に不信があって、東西間に非常な緊張もこれはだんだんいい方向に努力されるというふうに私ども思う。また、われわれも及ばずながら、その方向でやっているわけでありますが、現実にそういう緊張があるこの段階において、日本だけがこういう態度をとったからといって、それが世界の大勢を支配するには、それ相応の時期があろうかと思う。現在の日本が、そういうふうにしても、これは必ずしもおっしゃるような効果があるかどうかということは、私は相当疑問があると思っているのであります。要は、私は先ほど総理も言われたように、国連というものが、ほんとうに世界平和維持の唯一最高の機関としての実体を備えるように、日本はその場において、自分のまた立場において、自分の能力においてできるだけの寄与をしていくことがいいんじゃないかと思っております。何か自分だけで計画をきめて、そしてこれでなければいかぬ・みんなこれでやればついていくだろうという考え方は、今の日本において持ちますことは、まだ私はその段階ではないのじゃないかと、かように思っている次第であります。
  131. 羽生三七

    ○羽生三七君 私は、根本的に違います。日本だけではないのです。中立諸国の首脳も二十五カ国が集まって、真剣にこの問題を討議している、問題のアメリカ、ソ連すら共同決議案を国連提出している、あるいは欧州においてはポーランドのラパッキ一案、核非武装地帯設定案が出されている。世界それぞれの立場において、みな真剣にこの問題と取り組んでいるのに、すべて日本国連の動きを見てしかるべきという、私はもっと建設的な積極的な意欲を日本外交に求めたい。そこで総理大臣にお伺いいたしますが、今の核非武装地帯の問題とか、あるいは核武装宣言、これは政府にやってもらいたい。それから国会としては……、ではなぜこの核実験停止決議あるいは完全軍縮の国会の決議案すらが衆議院で難航するのか、参議院の場合も社会党が試案を用意しております。ちょっとこれは委員長時間外にしていただきたい。ちょっと読んでみますが、「本院は最近のソ連及び続くアメリカの核実験再開という行為が、その理由の如何を問わず国際緊張を一層激化し、戦争の危険を増大し人類平和の基礎を危くしている事実を深く憂慮し、且つ世界唯一の原爆被害国であり、また特に平和憲法をもつ国として、関係各国に対し、一切の核兵器実験の即時無条件停止と効果的国際管理を伴う核実験禁止協定を早急に実現するよう強く要請する。  またこれと共にわが国が国連を中心に、またあらゆる機会を通じて世界各国と協力し、核兵器および通常兵器を含む、全面的完全軍縮実況のため、全力を尽し、もって恒久的世界平和の基礎を確立するよう要請する。  政府はこの国民の総意である本院の意志に応えて速やかに適切な外交措置をとるべきである。右決議する。」これが社会党が出している試案です。これは悪いでしょうか、ですから私は総理に核実験の今、議会で問題になっている決議案、これをなぜ与党が賛成できないのか、政府として核非武装の宣言とかあるいは中国のそういう動きを前にして、もっと真剣にこの問題について取り組むことができないのか、抽象的な議論ではだめですから、具体的にそういうことをやる意思があるかないか、総裁として総理にこれに御賛成かどうかお伺いしたい。
  132. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この考え方の大体は賛成でございます。そうしてわれわれは、今まで核実験停止の問題につきましては、常に国連においても言っておるので、機会あるごとに、施政演説で申しましたごとく、列国議会同盟には日本が進んでこれを提案いたし、私は列国議会同盟でこれが決議されるよう、特に理事である福永君を差し向けて、大多数で可決したような状況でございます。  国連におきましても今二カ国から出ておるようであります。日本はそれを調整いたしまして、この決議が、核実験停止の決議が多数をもって国連で決議されるよう努力いたしておるのでございます。われわれの今までの努力、今後の努力、これはあなた方の期待に沿うようやっておるわけでございますので、この問題を党と党で決議するという場合におきましては、いろいろ時期的な問題もありましょうし、折衝の過程であろうと思いますが、その経過は私まだ総裁として聞いておりません、核実験停止、全面軍縮、私は精神においてしごく賛成でございます。
  133. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 国連におきまする状況等につきまして簡単に補足させていただきます。  国連におきましては、今御承知と思いますが、米英案、これは核実験停止のジュネーヴ協定、あれを再開して、あの線に沿うた協定を作れという案でございますが、これが出ております。それから一方インドが案を出すということを申しております。この案の内容はまだきまっておらない、したがって、議題として正確に取り上げておらないのでございますが、日本といたしましては、この両方を同時に審議しろという形を今とっておりますが、時期を見て最も効果的な案があれば日本案というものを考えてもいいと思っております。しかし、いずれにしても、日本案にこだわらない、いずれにしても実効性のある核実験禁止の案が採択されるよう努力しようと思っております。御承知のとおり、昨年の国連総会におきましても核実験停止の決議案ができておるわけでございます。できていても、今日のような情勢があるわけでございますから、もっと有効なものを作らなければならない。もう一つの方法は、特別政治委員会において、カナダと日本が共同提案をいたすことにしておりますが、人体に放射能の及ぼす害について科学委員会から正確な報告を求めるという提案をしておりまして、これを優先的に議題として取り上げるようにいたしております。いろいろな方向からまことにおそるべき害悪を持つ核兵器というものを地上から葬り去るというような方法でわれわれ有効に国連の力を盛り上げるような努力をしたいと考えております。  それから完全軍縮との関連でございますが、これは、核実験の停止というものはやろうと思えばできる問題でございますから、まずできる問題を、完全軍縮といういろいろな込み合った問題を一緒に取り上げると、せっかくここまで参りました核実験の禁止の問題がうやむやにされるおそれがある、そのことでこの問題は分けて考えた方がいい、こういうふうに考えておるわけであります。
  134. 羽生三七

    ○羽生三七君 総理としては、この決議案の趣旨には賛成だと言われたのでしたら、どうか総裁として与党を督励していただいて、すみやかにこの決議案が、衆議院はたいへん難航しておるようですが、参議院はやろうと思えばいつでもできると思います。自民党の良識のある方々がだいぶおそろいですから、できると思いますから、すみやかにそういう方向に持っていっていただきたいと思います。  それから、先ほど外務大臣は、核非武装地帯設定とか、非核武装宣言というような問題は日本だけでやってもだめだと言われましたが、世界ただ一つの憲法を持っておる日本こそやるべきではないか、それで国連でそういう決議を熱心に推進される御意思があるならば、なぜ日本でその程度のことすらできないのか。しかも中国が原爆を持った場合、いろいろな影響が起こりますよ、アメリカについて、いよいよ日本が東西の谷間で非常に困難な条件が起こってくる、そのときにむしろ日本が率先して、しかもフランスの原爆保有、続いて中国、核兵器保有国の拡大を防止する意味においても、すみやかに私は国連でこれを全面的に禁止する処置がとられることが望ましいと思いますが、しかし、今外務大臣お話しあったように、段階がありますから、この決議案でも、前とあととちゃんと分けてあります。いわゆる実験禁止とそれから完全軍縮ということは別々の項目にうたってある。われわれ自身もそういう配慮をしている。今の非核武装地帯、非核武装宣言、そういう問題について、もう少し熱意のあるひとつ態度で問題を検討していただきたい。
  135. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほどお話のございました。ポーランドのラパッキー氏にも私は会ったことがございますが、先生あたりに直接聞いてみても、あの言い出した当時と今日では非常に情勢が変わっておって、局部的にそういう地帯を設けても、あの当時自分が考えたことと世界の情勢が変わっておるということを本人も言っているくらいでございまして、やはり根本は、核武装をやめるということであれば、全世界がやめるという気持にならなければ非常に危険である。今日の不信の存在する現段階において、ある特定の国、ある特定の地域だけがこれを持たないんだと言ってみても、これは実効が伴わないというふうに考えるのがまあ今日の世界一般の通念のように私は心得ております。
  136. 羽生三七

    ○羽生三七君 いや、ラパッキー氏の考え方は、必ずしも今nに至ってもそのとおりではないと思いますが、しかし、この問題をこれ以上申し上げません。ただ、政府としては、先ほど来私繰り返して申し上げるように、結局私は政府の力の均衡政策に平和のよりどころを求めておるんじゃないかと思う。どうもそうとしか受け取れない。結局のところ、この均衡政策は、矛盾を拡大再生産するだけで、根本的な問題の解決にはならない。ですから、そういう意味で、私は一つ一つこの平和の基礎というものを築き上げていく必要があると思う。そういう意味の甘木外交の自主性というもの、むしろ建設的、創造的な意欲というものが日本外交に乏しいのではないか。全部国連まかせでしょう、何を私がお尋ねしても。両院のどんな質問をやっても、結局国連の様子を見てということで、日本みずからが発意してどういう国際的に寄与をするか、そういう積極的な意欲が全然ない。力の均衡と、あとは国連の様子待ち。これはちょっと批判がきびしいかもしれませんが、私実際はそうだと思う。もっと何とか積極的、創造的な意欲というものを日本外交が持ってしかるべきだと思う。たとえば日本がベルリン問題でアメリカから相談を受けるほど大国の地位にのし上がったといって満足すべきではないんで、また、相談を受けるからには責任も伴う。したがって、それ相応の責任もあるのですから、日本としてももっと広い視野と将来を展望しての見識を持ったりっぱな外交をやってもらいたい。当分国連中心ということはわかります。われわれは国連を尊重しますから。しかし、全部国連まかせで、日本外交にそういう積極性、建設的な意欲が何にもないということは、どうもさびしい。事実そうなんですから。私の主観的批判ではない。現実にそうなんですから。なぜもっと積極性を持つことができないか。これを承りたい。
  137. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御批判は傾聴いたしまするけれども、外交というものは、あまり気負って自分だけがいい知恵を出したつもりになりましてかえってリアクションが大きい場合もありまして、われわれそういう苦い経験を過去においてやったわけでございます。国連まかせというのは、おそらく中国問題に関してから特におっしゃられたのではないかと思うのでありますけれども、中国問題は、これは総理も言われましたように、非常にむずかしい問題でございまして、両方の政権があることは、これは事実でございます。われわれもまた、台湾の国民政府とは戦後処理の関係を結んで日華条約を持っており、現在非常な友好関係にございますことも事実ですし、中国の大陸において現実に地区を支配する政権があることもこれはそのとおりであると思うのでありますけれども、両方とも二つの中国ということはきらっておる、心から反対しておるわけであります。そこで、この問題の処理いかんによりましては、極東の平和にも世界の平和にも大きな影響のある問題でございまするから、やはり国連において各種の立場から各種の意見が出て、その意見によってこれが国連の権威のもとに最も効果的にさばかれるということが一番望ましいと思うのであります。もちろんその中における日本の主張なり立場なりというものはございますわけであります。それを通じてやる。日本だけが気負ってやるという考え方は、私は得策ではないのではないかと思っております。
  138. 羽生三七

    ○羽生三七君 言葉を返すようですが、気負ってやっておるのは日本政府が、たとえば韓国と気負った外交をやっておる。中国の場合もそうです。台湾と気負った外交をやった。もっと慎重にやればこんなことはなかった。ですから、気負ってやっておるのは日本外交でしょう。むしろそういう意味で。しかも、片方の平和維持なりそういう意味国際的な寄与というのは気負わない。何にもやらぬ。ですから問題がある。すべて問題の起こっておるのは、二つの政権が存在する朝鮮あるいはベトナムあるいは中国、その片方とだけ手をつなぐ。そういう場合にはいつも日本は気負うが、世界平和については少しも今私が申し上げたような積極的な建設的意欲がない。それを申し上げておる。私も外交にそんな奇想天外な妙手があるなんて毛頭考えていない。私も外務委員は十年もやっておる。そのくらいのことは承知しておる。問題は、そういう意味の積極性、創造性、そういうものが日本外交にない。これは事実であります。どうも私はこういうことを言うのはあまり好きなほうの人間ではないのですが、その好きでもない私が言うのですから、他の同僚議員の心境は推して知るべしだ。これは御了解いただきたい。これ以上この問題は申し上げません。  次に問題は、経済外交に関連することですが、政府も御承知のように、米国のドル防衛方針と関連をして米商品優先、米商船優先、あるいは米航空機優先と、こういう問題が強く推進されて、繊維関係を初めとして輸入制限の動きは絶えるところがないわけです。日本としても、政治的には、われわれから見ると、必要以上に過度の協力をアメリカにしておる。ところが、経済面において米国がなぜこのような強力な規制措置をふだんに続けるのか、遺憾にたえない。日本政府としても、かかるアメリカの動きに対して修正を強く要望すべきではないかと思う、現にある程度やっておられると思いますが。これと関連して来月二日から開かれる日米経済合同委員会、これに臨む政府態度です。私は一々の議題は承りません。この種の日米の片貿易といいますか、差別待遇、シップ・アメリカンあるいはフライ・アメリカンあるいはバイ・アメリカン政策に対して日本が何らかの規制を要求するよう今度の日米経済合同委員会に強く私は要請されるべきであると思いますが、この場合、現下の経済事情から勘案して、これに臨む政府の基本的な態度をまず総理から伺いたい。
  139. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日米関係には、他の国よりも特にその範囲において種類において非常に深いものがあります。そうしてまた、単に日米関係のみならず、日米として共同になすべき低開発国の援助等々がございます。いろいろな観点から経済を中心として——経済ばかりではございません、経済を中心として両国の閣僚が忌憚のない意見を交換するという建前。で、ここで何をきめるというあれではございません。いろいろ意見を交換し、お互いの理解と認識を深めるということが主でございます。しかして、その場合におきまして、今お話のような片貿易と申しまするか、バイ・アメリカンあるいはシップ・アメリカン、そうしてまた、日本の特定商品の排斥、輸入制限という問題もこちらから出したい。また、向こうでは貿易自由化の問題も出てくると思います。そういう話題でお互いの考え方を話し合うということが主たる目的でございます。だからいろいろな話題が出てくると思います。そのときに、限られた時間でございますから、やはりこういう問題ということをあらかじめきめたがいいだろうというので、今われわれとして話すべき問題を選んでおるわけでございます。向こうもそういう問題を研究しておるようでございます。
  140. 羽生三七

    ○羽生三七君 アメリカ日本に東南アジア援助を求めながら——アメリカが求めているのですよ。ところが東南アジア向けのICA資金は、ドル防衛上日本には投下しないという矛盾もあるのです。近ごろの話では、韓国向けの肥料入札についても、価格は米国よりも安いにもかかわらず、日本は締め出しを食らっている。こういう矛盾がある。こういう問題は、一々所管大臣にこれを伺うのもどうかと思いますが、私は議題の内容には立ち入らぬけれども、こういう問題も含めて、あるいはもう一つは、ボナー法というものもあるのです。海運界においては、これは世界最悪の悪法と言われているボナー法案の問題がある。その内容は、私ここに持っておりますが、そういうものも今度の合同委員会に——委員会の正式メンバーから運輸大臣ははずされているようですが、しかし、どなたかがこういう問題について積極的に発言されるべきだと思う。政治的にはことごとくアメリカに協力を求められて、日本が前面的に協力をして、経済だけはこういう差別待遇を受けている。しかも、ただ、今度漫然と日米のトップ・レベルが顔を合わして、ただ懇談をするというだけでなしに、十分日本意思を利手に伝えるような機会に、今度の合同委員会の場を使ってもらいたい。これはぜひお願いしたい。やっていただけますか。単なるフリー・トーキングでなしに、積極的にその意思を述べていただきたい。
  141. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 日本の対米貿易は、三十四年を除きまして、最近ことに、お話のように日本が大きく入超になっていることは御指摘のとおりであります。これは主として日本自由化に備えて機械設備を合理化するというような関係で機械輸入がふえているとか、あるいは綿花の自由化のために非常に綿花輸入がふえているというような一時的な現象もございますが、やはり今お話のような点が非常に多いわけでございます。そこで、われわれとしては十分そういう問題について意見を交換し、われわれの考え方というものを率直に先方に伝えて、理解を深めるということが必要だと思っております。また、ボナー法についてでございますが、これは非常に商業的な海運の運賃というものを、政策的に政府が決定するという点に非常に困った問題があるわけでございます。しかし建前はそうなっておっても、それをきめる場合には、よほどわれわれがそのいうふうに思っておるということを頭に入れて、妙なきめ方をせぬように、これは十分アメリカ当局の認識を深めねばならぬと思っております。ただ、あの法案はわれわれがかなり先方に強い抗議を九月中にもしておりますが、十月四日大統領の署名が終わりましたのは、結局アメリカとしては——池田総理が訪米されたときにもこの問題を出しておりまして、二つの点を強く言ったのでございますが、一つは今の問題、もう一つは外国にございます船会社の帳簿を検査するというような問題でございます。これは絶対にいかぬと  いうことを言ったのでございますが、その点は先方で下りております。ただ十月の十五日に二重運賃制度に対する特別法が切れますので、これが切れてしまいますと、われわれ非常にアメリカとの間には貨物の往復が多いわけでございますが、その二重運賃制の根拠法がなくなる、こういう点で、二重運賃制を認めたボナー法というものは、一時的にはよい点もあるわけでございます。しかし悪い点は、今お話通り強く抗議する考えでございます。これはわれわれのみならずイギリスにおいても、イタリーにおいても、フランスにおいても、同様な考え方を持っております。ぜひ妙なことにならぬようにしたいと思っております。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。
  143. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) よろしゅうございますか。——木村君。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今のドル防衛協力の点についてちょっと関連して質問したいと思いますが、この前、ドル防衛協力の問題を問うたときに、私に対して総理は、この問題は極端にアメリカからいろいろな輸入制限をされれば別であるけれども程度がわずかであれば、ワサビみたいなものである。少しならば、これは刺激になって日本貿易その他に非常にかえってプラスになる。災いを転じて福となす、こういうことを言われたのです。ところがドル防衛協力をやって以後の対米貿易を見ますと、非常に変わってきておりますね。本年一月から七月までの対米貿易を見ますると、輸出が五億四千九百万ドル、昨年は六億三千五百万ドルであったのです。アメリカに対する輸出が非常に減ってきている。これに反して輸入はどうかといいますと、本年一月から七月までの輸入は、十一億九千四百万ドル、昨年は九億一千三百万ドルです。輸入が著しくふえている。輸出は減っているのです。昨年よりも。そうして輸入超過。外務大臣が言われましたが、入超が昨年の倍もふえてきておる。それで自由化のための設備の合理化機械をアメリカからどんどん買わされている。そのことがまた設備の行き過ぎの原因にもなっているのです。そうして今度は輸出は、アメリカのほうがドル節約のために制限している、これが実態であります。単なるワサビじゃないのであります。このことは、日本の最近の国際収支の赤字、大幅赤字の全部の、原因ではございませんが、大きな原因になっているのです。ですから、今、羽生委員の言われますように、この日米合同委員会が開かれる機会に、こういう事実をもとにして、ドル防衛の協力段階に入ってから急激に変わっているのですし、これが国際収支の赤字の大きい原因になっているのですから、この点、はっきりこういう立場から向こうに認識させる必要があると思うのです。いわゆる国際収支改善対策の大きな柱がやっぱりここにあると思うのですよ。ところが政府国際収支改善対策を見ますると、こういう点にはちっとも触れてないのです。この点はひとつ十分考慮される必要があるのじゃないか。総理大臣、この前私の質問に対して、総理はお答えになりましたので、総理からこの点について御答弁をお願いしたいのです。
  145. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ドル防衛の問題につきましては、日本アメリカとの問題とICAの問題と二つに分けて考えなければならない。私がそういうことを言った場合におきましても、ICAの問題で、ただいま出ました朝鮮に向ける硫安の問題、これはアメリカでは硫安の製造は、もうフルに動いている。だからドル・ドライブだからというので、朝鮮にすぐアメリカの肥料をやるとは思いません。しばらくの間日本の肥料を入れていく。最近アメリカが生産がふえたようで、お話の点も最近出てきております。いずれにしても日本日本としてこういう苦難を切り抜けていかなければならぬということを申し上げたのであります。  それから木村さんは数字に詳しくて、御説の通りですが、しかし日米買切というものは、ずっと沿革的にお考え願いたい。従来、戦後におきまして昭和三十四年、一九五九年に、初めて大体日本の輸出が十一億ドル、向こうからの輸入が十一億ドル、昭和三十四年よりとんとんになっておる。その前の年はどうですか、その前の年は七億ドルです。それが昭和三十四年に十一億ドルになった。五割五分−六割、ですからこれは異常なときであります。普通に考えると、原材料を輸入し機械を輸入する。日本としては常に片貿易になりがちなんです。これは戦前も生糸の消費が非常に多いときだって、どうしても片貿易になる。これは宿命的なんです。それがたまたま三十四年にはとんとんになった。それから今度その次に、今お話になりましたように、自由化の問題と、また日本産業基盤強化の問題で機械の輸入が非常にふえて参りました。大体全体から申しまして、機械の輸入は去年は三億ドルくらい、ことしは六億ドルくらいになりますか、来年は八億ドルこえるくらいの情勢でございます。為替収入で申しますと。で、これは今与えられた日本の立場として、機械の輸入はある程度やむを得ないと思います。それから今年非常に多くなったのは、大体四月からの綿花の自由化の問題と、それから綿花の先出し高というので相当入ってきております。大体三十万俵ばかり多いのであります。こういう特定のことで今年は非常に多くなっている。だから、昭和三十四年の分を基準にして、ここでとんとんになるのだ、それが日米貿易の本然の姿とお考えになると間違いです。しかし今の非常な片貿易、ことに上半期は非常な片貿易です。上半期は常に片貿易ですが、それを下半期で補う。その状態を見て、非常なドル・ドライブという問題よりも、日本貿易自由化と、そうして設備の近代化というものが、影響いたしておるのであります。しこうして私は、先般アメリカへ参りましたとき、ニューヨークの三商工会議所主催で演説いたしました。日本の倍増計画はアメリカに対して非常ないい結果をもたらす。アメリカから大量の輸入を非常にしなければいかぬ。日本の倍増計画が実現したならば、アメリカの輸入は三倍になる。この事実をアメリカは知るべしといって演説をしました。だからニューヨーク・タイムズは社説で、池田ははっきりものを言っている。アメリカはこういうことを考えなきゃいかぬということを、二十三日か四日の社説に載せております。私は言っておるのであります。何も日米閣僚懇議会でこの問題を新たに出すのでなく、ニューヨークで大衆に向かって叫んでいるのであります。こういう関係でございますから、もちろん私は今度の経済懇談会には出ませんけれども、各閣僚はあなた方の気持を十分体して、意見の交換をすると思います。
  146. 羽生三七

    ○羽生三七君 外交でまだ二、三お尋ねしたい点がありますが、時間がありませんので、続いて経済問題についてお尋ねいたします。私の経済問題に対するお尋ねは、大体の基本的なことは昨日の木村さんの御質問で尽きておりますが、ただ問題は、この経済の高度成長ということが、設備投資の過剰ということ、それと国際収支という面でほとんど論ぜられておる。私はもちろん国際収支が一国の経済指標の重要なファクターであるという事実は認めておる。しかし同時に、問題の重点は、国民生活の安定という立場からも考える必要があるんじゃないか。これは木村さんの指摘されたとおりです。率直に言って、国際収支が今日ほど赤字を記録しては困りますが、国民生活の均衡が維持されて、また赤字が短期に解消される見込みがあり、あるいは均衡がすみやかに回復するというのであれば、私はこんなに問題にならなかったと思う。したがって、問題の重点は次のようなことじゃないかと思う。つまり、政府は、国民生活向上、これは経済の一番の重点ですが、国民生活向上という基本的な問題を解決するかぎが、高度経済成長政策を進めさえすれば万事解決する、こういう形で、いわば高度成長政策にすべてをかける、こういう偏向があったのではないか。私は成長政策に反対するなどということは毛頭考えておりません。高度成長が問題解決に役立つ場合もある。しかし、先ほど来、今申しましたようにすべてを高度成長にかけたけれども、しかし必ずしも問題の解決にはならない。これはあとからだんだん申し上げますが、そういう偏向があったのではないか。その点は、もちろん総理はお認めになると思いますが、その点いかがですか。
  147. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 高度の経済成長、高度成長自体が目的ではないのでございます。私は国民生活の安定と向上、そうしてみながよくなる。ことに低所得者がよりょくなるということが目的でございます。だから、高度経済成長自体を目的のように私は初めから考えておりません。これは今までもよく言っていることなんです。  そこで、国際収支の問題等々議論になっております。私は、あなたのおっしゃるとおりなんです。国際収支は一時的には赤字が出ても、国内の状態がどうかということが第一でございます。いろいろそれは批判はございましょう、しかし、日本全体としての国民生活の水準は相当上がってきております。私は、今まであれしておりました最低賃金の問題あるいは農村の次男三男坊の問題を、何といいましょうか、じめじめした気持でやるのでなしに、明かるく前向きにこの問題が解決しつつある。農業基本法を設けるまでもなく、これを絶対に必要とするような農村の廃業構造が変わりつつある。中小企業もいたずらに最低賃金制をとらずに、もう四千円とか五千円という事態じゃなくなってきている。国全体が前向きになってきているということを私は知ってもらいたいと思います。だから、あくまで国民生活水準を引き上げていく。そうして全体を引き上げていく。そうして、きのう木村さんあれなさいましたが、最低所得のほうの生活を保障しておりますし、また最低の階級の分の上がり方、一番下の者、その次の者等々の——一番子の者は貯蓄はほとんどできませんが、四番目、三番目、二番目の人々の貯蓄性向というものは年とともによくなってきている。全体を長い目でほんとうにお考え下さるならば、日本経済は非常によくなってきているわけであります。そういう一つの目的は達した、達しつつある。  ただ問題は、国際収支の赤字。そうしてあまりに設備投資が行き過ぎると生産過剰になって、そこにまた非常な不景気がきはしないか。この二つの問題であると思います。だからこの二つの問題は、今の一連の措置によって私は解決する見込みを立てております。自分一人で立ててもだめで、やはり国民の協力を得なければなりません。だから私は、じめじめした考え方でいくよりも、やはり超高度はいけませんけれども、高度成長で日本経済力を他国よりももっと上にし、国民生活をほんとうによくしようという方便——方便と言っちゃ何ですが、そのための高度成長でございます。それが超高度になったときの二つの問題——設備過剰の問題と国際収支の問題——をこれからやっていこうとしているわけであります。だから高度成長はいい。超高度は絶対に悪いのだ。超高度は悪いということは、生産過剰の不景気と国際収支の赤字という結果がくれば、超高度は悪いのでございます。しかしそれを克服した場合におきましては、私は超高度も悪くはない、こういう考えでいっているのであります。
  148. 羽生三七

    ○羽生三七君 高度成長それ、自体が目的ではなしに、国民生活安定ということが目的だ。それは総理もお認めになったわけですが、それができてないのではないかというのが、きのうの木村君の質問であったわけです。そういう点で、私は特に総理に注文をしたいことは、その今の総理気持はわかりますが、実際に今の政府のやっているところを見ますというと、昨日来論議されたような二重構造の是正とか、格差の是正あるいは地域格差の是正、それは地域格差、所得格差、農工格差、いろいろありましょうが、そういう格差是正、それを高度成長が解消するような——役立った面もあります。私はそれは認めます。しかし、そうでない面もある。たとえば私は成長に取り残された階級、成長政策から取り残された階級あるいは今度の成長政策の調整のしわ寄せを受ける階級、そういうものに対して具体的にどう対処するかという問題があると思います。成長政策から取り残された階級、今度の高度成長するその調整過程でしわ寄せを受ける階級、これをどう対処するか。この問題がある。  ちょっと話が余談になって恐縮ですが、今年の六月に集中豪雨による大災害がございました。それを含めての今度の補正予算です。ところが今年の八月一日、当予算委員室を使いまして、五つの災害関係の連合委員会がございました。そのときに、関係閣僚に申し上げたことがありますが、当時新聞にこういうことが出たのです。政府部内には災害等の補正予算を多額に細めば景気を刺激する、極力これを、圧縮すべきである、これは閣内の有力な意見としてそういう意見が出ておるということは、これは二回にわたって新聞、ラジオ、テレビで報道されております。私そのときに閣僚に伺ったことがあります。もちろん私は補正予算にも限度があると思う。三兆八、九千億に上る設備投資で景気を刺激しておいて、親を失い、兄弟を失い、家を流し、田畑を流し、災害で惨たんたる人、この惨状を受けている人を救うわずか百億、二百億補正予算を組めば景気を刺激する、ここに私はこの経済認識、ここに、むしろこの性格ですね、こういう性格にむしろ問題があるのじゃないかと思うのです。これはやはり私はいろいろな角度から、昨日木村君が論ぜられた点もこの点だろうと思うが、ここに問題がある。ですから、そういう意味で、私はこの高度成長が、それ自体が目的ではない、国民生活の安定ということが目的だと言われる総理の真意は疑いませんが、そうであるならば、なぜもっと具体的に生活保護基準の引き上げとか、あるいは農業の近代化、合理化、これに積極的な、もっと、投資、融資、利子補給、あるいは中小企業ということを言いますが、さらに零細企業にわたって十分な対策を講じる、あるいは世は賃金アップをいわれておるのに、きょうも大蔵大臣お会いになったのでしょうが、炭鉱労働者は月三千円から九千円のベース・ダウンを受けておる、そういう状態なんであります。だから、そういう問題、あるいは社会保障の拡大を通じて、今申し上げた成長から取り残された階級やあるいは成長政策、成長は調整ですね、調整のしわ寄せを受ける階層にもっと配慮をしてこそ、初めて均衡のとれた成長政策になるのじゃないか、これをお伺いいたします。もちろん総理も御異議がないと思います。重ねてお伺いします。
  149. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この災害対策が景気に影響を及ぼすなんということは、これは経済も政治も知らぬ人です。景気の問題以前の問題だと思います。私はそういうことは閣僚だれも言ったと思いませんが、また新聞もそれは認めません。もしあったとすればたいへんな間違いでございます。そういうことはございません。それからお話のとおり高度経済成長がきますと、まず第一私が考えたのは農村でございますから、農業基本法を出したのであります。そうしてまたお話のように生活保護費の問題、これも私は当初は実を申しますと二二%くらいのつもりでおったわけなんですが、なかなか大蔵大臣が聞きません。それで一八%で、結局の中はほかの教育費その他であれして、実質は二〇%くらいになっておるのであります。で、これも今までにないほど私は生活保護費を本年度から上げたのであります。なおかつ補正予算に生活保護費を組むべしということは、幹事長が私と相談したり、一番先に言ったりしております。私はこういう点はあなた方に負けない気持で言っております。そうして高度成長によって、そういうもののみならず、中小企業に対しましても、今のように引き締めのときに、三百五十億、買オペで二百億、五百五十億、これは片一方で非常に引き締めておるのに、それくらいのものを出すということも、これはわれわれがやはりそういう中小企業、零細企業に対して関心を持っておる、こういうことをもっても、景気の抑制に害があるから中小企業対策をしないということは毛頭考えておりません。そういうときにこそこれはすべきものなんです。何も五百五十億、総体は五百五十億ですが、これをもって大蔵大臣はいいとも言っておりません。情勢によってはまた考える、こういう気持は私はあなた方に負けないようなつもりで努力をしておるはずでございます。えてして、とにかくきのうも申し上げましたが、資本主義経済のもとにおいては、どうしてもそういうところにいきやすいのです。しわが寄りやすい。だから今度の金利の問題につきましては、中小企業に対しましては、金利は上げないということを大蔵大臣からきつく銀行に言っております。そういう点につきましては、われわれとしてもできるだけの配慮を加えておるし、またこういう機会にあなた方の意見を聞くこともわれわれ非常に喜びとしておるところでございます。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。今総理大臣ですね、非常にいいことを言われたんですが、生活扶助の基準については、総理は大体二二%引き上げくらいをお考えになったということですが、私は今実際生活保護を受けている人の生活の実態ですか、これは今の費用では幕らせないわけですね、大体八割くらい引き上げないと実際の生活はできないことになっておるのです。これは実態調査があります。総理は二二%引き上げの考えをお持ちになったということは、これはかなりの総理としては思い切った考えと思うのです。ところが、大蔵大臣がこれを削られたようなことを言われた、そうしますと、問題は財源だと思います。かかって財源にあると思うのですよ。財源はきのうも御質問したのでありますが、今年度は三千億も自然増収があるのです。かりにですよ、これをもっと内輪で見ましても、かりに二千億あるとしましても、今度の補正で九百九十七億の補正を組みまして残りは千億あるのです。そうすると、大蔵大臣が悪者になる、悪者ということはちょっと語弊がございますが、それはいろいろ大蔵大臣も理由があってされたのかもしれませんが、われわれどうしても納得いかない。総理が二二%引き上げを、そういう考えがある、財源はあるのです。財源はある、それだのに、どうして一七%ですか、一八%ですか、今度の五%は、これは積極的な引き上げではありません、これは物価が上がったから、消費者物価が上がったので、物価補正でありますから、これは問題にならない。その点、どうしても国民としては削り切れないと思う、この点納得いくようなひとつ御説明を願いたい。
  151. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 二二%というのは、御承知のとおり二六%という厚生省の案もありまして二六%、それからいろんな点を考えて、私の個人的の希望でございまして、閣議で決定したのは一八%でございます。この社会保障制度というものは、財源だけの問題ではございません。長い年度で見ていかなければならぬ、長い年度で見ていかなければいけません。過去の実績も見ていかなければならぬ、こういうことで私は大蔵大臣の査定に賛意を表したのでございます。ただ一時的の気持だけを申し上げたわけではございません。政治のやり方としてのそういう気持を持ってやっておるということであります。一八%にきめたのは、大蔵大臣におまかせして大蔵大臣がそういうことをしたのであります。私の気持を申し上げた、政治する気持を申し上げただけでございます。
  152. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いろんな政策というものは、ただ財源の問題だけではございません。やはり諸政策が均衡がとれなければいけないということは当然のことでございまして、たとえば生活保護費の問題を考える場合に、一応、たとえば二二%がいいという意見も確かにございましたが、あのときに私ども考えたのは、保護基準を何%上げるということも必要であるが、同時に施策としては、生活保護費はもらっておっても、まだ働ける余力のある人は別に働いて悪いということではない、外部でどんどん働いて、この働いて収入を得ることは望ましいことでございますが、それまでの制度では、働いて余分の収入があったら、すぐに生活保護費をその分だけ切られるということが、非常に生活保護者の労働意欲を抑えておることであって、むしろ生活保護者の希望は、それだけ最低限に保障してもらったら、あと自分たちが働いたら、働いただけそれを自分たちの生活がよくなることに使いたいというのが生活保護者の希望でございますので、その点を緩和してやることがやはり重要だという点を考慮して、その点と率との均衡をほかのものに合わせてとったということでございまして、そう不当なことをやったわけではございませんので、この点とのにらみ合わせでいろいろ政策的に考慮されたのがあのときの査定の実情でございます。
  153. 羽生三七

    ○羽生三七君 今後の国際収支や景気を測定する一つのポイントになる今年下期から明年にかけて、今日までのこの設備投資がどの程度完成してその生産というか産出作用によって輸入がどれだけ防遏でき、輸出がどれだけ増進するか、効果がどれだけ現われたか、この測定評価の問題が一つ重要だと思うのです。これはどういうふうに測定されておりますか。これはどこなんですか、通産か経済企画庁か、お伺いいたします。
  154. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) なかなかむずかしいお尋ねでございますので全産業部門というわけにはなかなか資料ができませんので二、三のものを拾い上げて説明してみたいと思います。比較的輸入防止、これに役立ったのはティピカルなものとして石油化学の設備投資、これが説明できるかと思います。これを一つ取り上げてみますると、石油化学については三十六年度ポリエチレンで年間能力増加が八万七千、年度末能力十四万六百トン、また三十七年度は年間能力の増加が五万六千、年度末能力十九万六千九百トン、こういうようにポリエチレンでは計画いたしております。また合成ゴムにおきましては三十六年度の能力増は三万、年度末能力は八万七千、三十七年度の能力増は二万二千、年度末能力が十万九千。ベンゾールで三十六年度の能力増が二万八千四百六十トン、年度末能力五万一千五百トン、三十七年度は能力増一万二千四百トン、年度末能力六万三千九百トン、こういうようになっておりますが、これらが一体どういうことになるのか、この三十五年度の輸入防遏として一応私ども考えますのが一億五千万ドル、こういうことに三十五年度はなっておると考えますが、三十六年度はこれの五割増しで二億二千万ドルが防遏の効果が上がるのじゃないか、また三十七年度におきましてはさらに八千万ドル、これが防遏できる、結局三億ドルの防遏ができる、こういうような推定をいたしておるわけであります。もちろんこの計算はこの設備が需要面から推しまして大体九〇%前後の操業が可能である、こういうように判定し、かつ石油化学製品はその生産の全量が輸入代替効果を持つという特殊事情がございますので、そういうような意味でただいまのような計算を持ったわけであります。  また自動車工業について御説明いたしますと、三十三年度から三十五年度の間におきまして大体販売価格で二三・七%程度これは安くなる、かように考えますが、三十六年度以降の設備投資、三十八年度までの設備投資、これではさらに販売価格におきまして二二・四%これを安くする。こういうような効果が上がる、かように実は見積もっておる次第であります。一、二の例を御紹介いたしました。
  155. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこでこの設備投資の異常な伸びというものが、政府の説明では——政府の説明を待つまでもなくわれわれも同じですが、貿易自由化に備えての企業の合理化、近代化意欲の現われだ、こう思っているのです。そこでこの場合に、今の通産大臣から生産の伸びについてお話がありましたが、輸出競争力の強化という点でコスト・ダウンがどれだけの実を上げたか。卸売物価がずっと続けて横ばいになっている。政府は非常にこれを物価安定の重要な基礎のように言われておりますが、確かに横ばいなんです。しかし、近代化、合理化が進んで何年も膨大な設備投資をやって、それで依然としてコストが同じだ。なぜ鉄鋼初めもっと下がらないのか。また下げたならばもっと私は違った要素が出てくるのじゃないか。この辺の関係はどうなるのでありましょうか。結局その輸出競争力が伸びなければ近代化、合理化にどんどん金をつぎ込んだとこで結局資本家がもうかるだけで、日本の輸出振興、輸入防遏にはあまりならない。その辺のコストの関係はどうなっておりますか。
  156. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 最近の設備増加による近代化なり合理化によりまして生産が上がっておるから、その面からだけ申せばコストは低下する。しかし、諸情勢は日々に変わりつつあります。労賃にいたしましても、あるいはその他の、原材料等もそれぞれ騰貴して参りますから、そういうことを考えますと、マス・プロによってやはり今のような価格にこれを維持できている。これが私どもが設備投資を奨励するゆえんでございます。そのことは同時に、外国におきましても同様の事柄はいたしておるわけでございます。そういう点で負けないようにするということがただいまの設備増加あるいは近代化、そのねらいでございます。
  157. 羽生三七

    ○羽生三七君 それは確かに労賃等も上がって、その他のいろいろな関係もあるでしょうが、しかし、労働の生産性のほうが労賃を上回っているのです。現在では。これは統計を見て参ればわかります。ですから、そういう点でもっと基礎産業の、特に鉄鋼等について、ただ価段が横ばいだというだけでなしに、もっと何らかの、もっとコストを下げる具体的な処置を指導すべきではないかと思いますが、いかがですか。
  158. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろんそれらの点につきましては十分私ども考えまして、すでに御承知のように配当その他が最近の計画から見まして非常に高騰しているかといいますと、むしろそれは横ばいの形あるいは物によっては下がる方向に向かっております。これなどは内容を資料によって御了承いただきたいと思います。
  159. 藤田進

    藤田進君 関連。コスト・ダウンの問題に関連いたしまして二、三の点をお伺いいたしたいと思います。例を自動車産業にとってみますときに、これは通産大臣にお伺いをまずいたしたいのでありますが、私の検討いたしましたところによりますと、わが国の場合に自動車一台に対する、車種によっていろいろありますが、いわゆる乗用車、わが国で作っている中型、小型をとってみますと、原材料費、材料費が約七割五分と見ていいのではないか、人件費が約一割、一〇%ですね、その他の経費がその残分である一五%ぐらいになると思われるのであります。これは企業によって若干の差はございます。諸外国の例を見ますと、これは全く人件費などの一〇%などは二〇%前後という倍にはね上がっているところであります。そこでまず第一に、コスト・ダウンということで自由化に備え、おそらく昭和三十九年くらいまでは自由化をなさらないのかもしれませんが、それ以後、自由化ということは必然ではないだろうかということで、コスト・ダウンを相当今研究している段階だと思います。しかし、原材料費について、いわゆる七五%を占めるものについて二割——二〇%のコスト・タウンをすれば、その製品−車に対して大体一五%くらいなコスト・ダウンになるだろうと思う。しかし、人件費一〇%、さらに加えて経費、両方で二五%ばかりに相当するものを、半分一五〇%ばかり切り下げたとしてみましても、コストに与える影響は約五%くらいじゃないだろうか。こういうふうに考えてくると、今、羽生委員の指摘されているような、原材料について政府が大きな施策をとらない限り、一自動車産業で解決するということは、きわめて大きな問題がある。いわゆる三S対策というものが進められているけれども、現状を、たとえば共通部品というものがそんなに大幅に私は実現するとは思われないと思う。企業の再編成がしからば大量生産の面で月産二万台以上のような状態になるかといえば、これもなかなか、御承知のような日本の企業の性格上、むつかしいのではないだろうか。こうなって参りますと、さなきだにフォルクスワーゲン等がもう国内価格四十万、それ以下にという目標のようであります。そうして、これに対しておよそ六割前後商い日本のまあ自動車に例をとればコスト、こういうふうになってくると、これはとうてい太刀打ちのできない状態が生まれてくるし、ひいては中小企業と大企業の格差の問題にまで問題は及んで参ります。ある会社等では、下請企業が親企業よりもその従業員においてはるかにオーバーしております。そうして、その下請に対してはかなり親企業が圧力を加えて、専業部品屋になれということを言って、従来四割ないし五割——半々くらい他の部品製造をやっていたものが専業化されるような方向になる。これには信用保証をつける程度援助しか親企業はしていない。したがって、下請企業の労務費というものが非常な大きなしわ寄せを、今も受けておりますし、同時に、将来受ける。また同時に、親企業自体においても、いわゆる本雇の職員、工員というものよりも、僅々三カ月前後の新陳代謝によるところの臨時雇という方法がとられて、すべての労働条件が低下させられている、まあ、こういうところになっていると思うのであります。したがって、具体的に私は自動車産業を例にとったわけでありますが、この点についてお答えをいただきたい。  それから、これに関連して不可分の問題として、従来あまり触れられておりません。池田総理は記者会見において若干触れられていたように思うのでありますが、御承知のように、今日はすでに一国経済段階を絡まして、ついにブロック——地域の非常なかたい団結のもとに対抗する状態になりまして、御承知のとおりラテン・アメリカにおいても、昨年二月にはモンテヴィデオ条約が結ばれて、かなり強固な団結のもとに発展しよう……。今日またOEECが、さらにEECあるいは自由貿易連合ですね、これらに分かれていて、これはかなり政治的なねらいも当初にあったように私は思いますが、しかし、現段階ではイギリス自体がこのEECに加入しようと、その交渉を始めたという状態であります。イギリスは老いたりといえどもいわゆる旧イギリス植民地というか、今日の連邦を持っております。いわゆるヒンター・ランドを持っている。これがEECに加入する。そして眼を転じて見ると、アジア地域におきましても、すでにフィリピンその他を中心に、あるいはアフリカといったように、強大な経済力を持っているところのアメリカは別といたしまして、このアジアに孤立した形で、これまた経済的に日本というものが、はたして今のままで、コスト・ダウンはしかりとして、同時に、経済、外交の面でブロック経済というものに対する対抗的な問題という形において、どういう政策を持とうとされるのか、この点は池田さんにまずお伺いしたいのであります。関連質問でありますので、そうたびたび立てませんから、おそらく三、四回しか立てないと思いますから、御丁寧に御答弁をいただきます。
  160. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 関連質問をなさる方に申し上げます。  なるべく簡潔に、豊富なる御意見をお述べになる場合には、何時間あって足りないほどの御意見をお持ちであろうと思いますが、理事会においてもお約束のあることでございますので、関連質問けっこうでございますが、なるべ簡潔に、意見をあまり加えずに質問の点におとどめ願いたい。
  161. 藤田進

    藤田進君 了解。
  162. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) ただいまの関連質問に六分要しました。
  163. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自動車について申し上げますと、先ほどの三十六年度から三十八年度について、原価の低減率二二・四%、かように申し上げました。この内訳は大体こういうように考えているのであります。購入部品の価格の低下、これが一二・七%、自社内合理化によるものが七%、これが先ほどの価格部分に多分に影響してくる問題であろうと思いますが、やはり商品というか、製品、最終価格にも利益を均霑させるというのですか、どれだけの率ということは申し上げかねますが、やはり安い良質のものを提供するということにならないといかぬと思います。そういう意味から、私は特別に先ほど配当の例を申し上げましたが、そういう意味の工夫がなされていると思います。素材購入価格の低下によるものが二・七%、こういうことでありますので、ただいま申し上げたような二割二分四厘、さらに安くなるだろうということを実は考えているのでございます。絶えずこの設備投資にいたしましても、合理化にいたしましても、各部門について詳細なコスト・ダウンの計画を立てないと、実現するわけのものではございません。また、ただいま自動車のお話で諸外国との競争の話が出ておりますが、御承知のようにトラック、バスは自由化いたしているわけであります。今自由化で残っているのは乗用車でございます。日本の乗用車は御承知のように中型以下でございます。一部において大型車の希望があり、将来いつまでも中型車にとどまるわけではないだろうと思いますが、大型単にこれは変わっていく、こういう意味の問題もあるのであります。自動車工業の諸君といろいろお話をしてみますと、他の部門においては大体において競争できるが、乗用車の面で大型車が非常に国民大衆から愛されるということになると、われわれとしても非常に困るのだ。また、外国に輸出する場合におきましても、いわゆる高度成長国に対しては、中型車というものは比較的魅力が少ない、こういうような意味で、輸出等についても、将来さらに工夫を要するのではないか。ただいまもちろん中型車以下の乗用車も相当量輸出はされております。で、自動車工業としての重点が今のような点にあるわけでありますが、同時に、相当国内の競争も熾烈でございますから、こういう点についてお互いがお互いの分野で守り得るようなことができれば、自動車業界の発展にも一そう役立つのではないか、かような見方をし、さらに行政指導等もこまかな点についてまで十分連絡をして参る、かような考えでございます。
  164. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際分業はやはり自由貿易を建前として行なわれるものでございます。自由貿易が前提でございますが、なかなか自由貿易の理想は直ちに全面的というわけには参りません。そしてまた、分業はやはり国力、経済力の均衡があっての分業ということになりますので、理想型としてはお説の通りでございます。現実の問題としてはまだ相当に時間がかかると思います。
  165. 藤田進

    藤田進君 通産大臣にお伺いしたのは、一つの例をあげましたが、現実にコスト・ダウンのうちの原材料費を安くする、ことに輸入面その他で安くする具体的な方策いかんということであったのであります。行政指導云々と言われたわけですが、もっとこれにふさわしいお答えをもしあれば、お持ちでなければ仕方ありませんけれども。  それから総理大臣に対しては気長なことも必要でありましょうが、ほかはどんどん進んでおるわけでございまして、ブロック経済の、御承知のとおりと思います。簡単に言えということで内容は繰り返しませんが、これに対して日本が今のままの姿で対抗し得るのだろうか、高度成長というものはすなわち国内の有効需要消費と、そして外国へ輸出せられるものとに見合う成長でなければならないんじゃないだろうか、それが超高度成長であれば、それに見合うものがあればそれは問題はないんでございます。しかし、その障害となるものにいわゆる市場の開拓なり、あるいは関税その他においてだんだんと日本の位置が悪くなりつつあるのではないかという意味で申し上げたわけで、こういったブロック経済地域経済というこの状態、現実に対して日本の立ち向かおうとする大きな政策はどうお考えでしょうかという点でございます。
  166. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) もちろん原材料が安く手に入らなければ困ります。しかし、特殊なものにおきまして自由化等を進めた場合に、国内帝業に影響するものがありますし、保護をしなきゃならないものもございます。なかなか一がいに安いというものだけに、その方向へ努力はいたしますけれども、実現しない面もあるということ、これをひとつ御承知置きを願います。たとえば特殊金属などになりますと、国内資源がまことに貧弱でございますから、こういうものは外国に依存度が強いわけであります。しかし、これなどが自由化されますると、国内産業にも非常な影響がある、こういうようなわけで安いものを入手するというのにいろいろな工夫がある、これはひとつ御了承を願います。
  167. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはっきりわからないのですが、ブロック経済を作るべしというお考えになりますると、今の日本の置かれた状態ではなかなかむずかしゅうございます。  それからもう一つ、ブロック経済を作っているところとの貿易の伸展をどうするかという問題になりますと、御承知のとおり、アメリカ向けの輸出はあまり伸びておりませんが、去年からことしにかけまして、ヨーロッパ向けの輸出は相当伸びておるのであります。二割以上伸びておると思います。そしてブロック経済のいいということは、今の経済共同体の各国間の輸出入貿易というものは一四、五%ぐらいになっております。貿易連合のイギリスなんかの輸出入は五、六%、非常な違いなんです。これはブロック経済がいいんです。非常にいんです。これも関税障壁がない、それが理想なんです。だから、それを作りたいのですが、日本としてブロック経済というものは、今のような経済の発達の歴史が違うし、地域的にも相当離れているというので、これはむずかしゅうございます。だから、日本としてはそういうブロック経済を相手にして、自由貿易をしていきたい。それにはやはりガットの問題等々がございます。これを徐々に変えていくよりほかにないと思います。
  168. 羽生三七

    ○羽生三七君 次に、政府が今度設備投資をある程度抑制する場合、その稼働率はどの程度になるか、生産能力指数等私はここに持っておりますが、本年六月現在で稼働率は八五・五%ですが、調整が進んだ場合には、それは何%ぐらいになるか。三十二年の引き締めのような操短や失業は起こる見通しなのか、そんなことには全然ならないのか、それに対してお答え願います。
  169. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 現在の稼働率は大体八五%から六、七%だと思います。この程度はかなり稼働率としては高い稼働率だと思うのであります。したがって、調整が進みますと、これは落ちざるを得ないのじゃないかと思います。
  170. 羽生三七

    ○羽生三七君 どのくらい……。
  171. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) ことに設備投資がふえて、そうして全体の景気をあおる、私ども考えておりますのは、六〇%台に落としてはならないと思います。そうしますと相当危険ではないかと思います。したがって、できるだけ、落ちましても七〇%台程度で、七五、六%程度には維持しなければならぬのじゃないか、こういうことで施策を合わせていくのが適当じゃないかと、こう考えております。はっきり数字的にどの程度まで落ちるかということは、現在施策を進めているところでありますから、申し上げかねると思います。
  172. 羽生三七

    ○羽生三七君 これと関連して、この設備投資の抑制ということから、一部には内需抑制ということが言われておる。もちろん設備投資に関連していろいろ有効、需要のことですが、その中に議論が発展して、最近では労働賃金の上昇を抑える、チェックするという議論にまで発展していることは、設備投資抑制の議論が、賃金抑制にまで発展するのは間違いだと思う。内需抑制議論が……。その点は総理大臣からひとつ。そういうことは私間違いだと思う。この設備投資抑制論が、賃金抑制、ダウンにまで至るような、最近見られる論議は私反対でありますが、総理はいかがでありますか。
  173. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この経済論議についてはいろいろ前提がございまして、なかなかむずかしいのでございます。それは今の稼働率の問題につきましても、私は設備投資を抑えたならば、稼働率が直ちに当然減るべきものかどうかということについても、いろいろな場合があると思うのですよ。内需がどうだ、そうしてどんどん内需が伸びていった場合において、設備投資をやったならば稼働率は上がるでしょう。今の鉄鋼のように普通稼働率は一〇〇%こえる部分もございます。八五%ぐらいの分もございましょう。そのときに、設備投資を抑えたときには、稼働率が直ちに六〇%、七〇%になるかならぬかということは、他の条件できまるべきものだと思うのであります。内需が同じならば稼働率が上がる、そういうことでありまして、内需が減ったならば稼働率も下がってくる。ですから、経済的にいろいろな前提がございますので、総理大臣としては、その前提をよく聞いた上でないと、これがいいとか悪いとかというわけにいかない。私は貸金が下がったり生活が困るようなことをするのは、経済の調整ではない、経済のこわしだと思う。そういうことのないようにしたい。私は賃金が下がるというのは、稼働率の問題と別個にしても、賃金が下がるということはよくない。経済を取り扱う者として厳に慎しまなければならぬ。稼働率の問題と別個に考えております。
  174. 羽生三七

    ○羽生三七君 基本的にはそのお考えを進めてもらいたいと思います。  そこで、これと関連をして、明年度の予算の重点はどこに置くか、これを承ります。先ほど来御質問いたしておるように、明年度予算は、私の考えですが、高度成長の調整の結果しわ寄せを受けた部分、あるいは成長から取り残された階層の生活水準引き上げに重点的に施行すべきだと思う。ほかにもありますよ。政府がいろいろ選んだような支出が一ぱいあると思うが、明年度予算の重点をどこに置くべきかと言えばそこに置くべきだと思う。だから私は、額を幾らにするかとか、減税、社会保障、公共投資、その割りふりは幾らで額はどれだけ、そんなことはもう聞きません。しかし、明年度の予算の重点というものはどこに置くべきかと言えば、私はそこではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  175. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昨日申しましたように、まだ予算編成の方針というものが固めてございませんが、今言われたようなものも当然編成のとき考えられるべきことの一つの重点であると思います。
  176. 羽生三七

    ○羽生三七君 当然考えられるのはあたりまえで、それはどんな予算だって入っていますからね。重点はどこに置くか、総理大臣、どう思います。これは成長政策を単なる成長が目的ではないと言われる、国民生活の安定向上が目標だと言われるから。
  177. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国民生活の安定向上が目的であります。安定向上の場合には不安定であるものを置いてはいけません。やはり不安定のものを安定にする、それから安定もできるだけ高度の安定にしていかなければならぬ、これがもとなんであります。社会保障制度を確立するのも、私は高度成長によってできることだと思うのであります。そうして高度成長のもとをなすものは、やはり経済基盤の強化によって行なわれる、みんな関連いたしております。やはり心すべきは、低所得者、お困りの方に施策の重点を置かなければならぬことは当然であります。
  178. 羽生三七

    ○羽生三七君 実は時間がないので、むだ言しゃべっていると終わってしまので、簡潔にして要を得なかったと思ういますが、もう少し私は具体的に明年度予算の重点的に施行すべき政策を承りたかった。しかし、もっと次に進みますが、そこで、一部には経済調整資金として財政収入の相当額をたな上げするという構想もあるようです。これはもちろんそんなことは固まった意見ではないから言う段階ではないとお答えになると思いますが、かりに、全くこれはかりにです。かりにもしそういうことがあり得るとすれば、そのねらいはどこにあるのでしょうか、大蔵大臣にひとつ。
  179. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まだそういう固まった構想は今のところはございません。過去においてそういう予算を組んだことはございました。ただ、その問題についてはいろいろ論議もありますことで、財政と金融政策がよほどうまく一体に運営される場合には、こういう構想もあるいはいいかと思っておりますが、実際において、国が予算の一部を使わない、たな上げという形をしたことによって、一方では金融でそれだけ日銀の貸し出しがふえるということになれば、これは効果というものは減殺されてしまうものですし、それなら減税でも行なえば、一部は国民が当然これを貯蓄する。貯蓄は生きた産業資金、社会資金として動くというようなことにもなりますので、その効果との比較はどうかというような、いろいろな今そういう問題に対する意見があるところでございますので、私どもは十分いろいろな意見検討してから構想を固めたいと思っております。
  180. 羽生三七

    ○羽生三七君 しかし、有力な一つの意見としておそらく御検討なさったと思いますが、これと関連して、実は三十二年の引き締めのときに、当時私は一萬田大蔵大臣、それから山際日銀総裁にこういうことを申し上げた。あのとき四百三十六億の経済基盤強化基金、いわゆるたな上げ基金を予算の中に組みましたね。三十二年から景気が落ちたでしょう。三十三年がなべ底で、三十四年は、三十三年の政府の施政方針演説で、三十四年は景気好転のとし、そうすると底は三十三年、この底のとしにこそ不況対策をやらなければならぬ。もちろん、その場合すぐ外貨事情にはね返ったり、国際収支を悪化させる意味の不況対策じゃありません。先ほど来私が申し上げておる合理的な国民生活安定という意味での不況対策、今度の場合でも、昨日木村君が指摘したように、自然増収というものは莫大なものが予想される。しかも、この経済調整で相当なしわ寄せを受け、稼働率がどうなるかわからぬが、しかし、実際問題としていろいろな影響が起こってくる、そういう場合に、私は、多額の調整資金を残すということはどういう見通しを持っておるのか。これは財政収入、つまり税の収入にも関連いたします。所得税は伸びるでしょうが、法人税はあるいは調整の結果どうなるか、その辺の見通しもあると思います。だから、経済調整資金を使う場合においても、結局、大企業の将来の経済的な調整をやるための基金、そういう意味の予算処置ということでなしに、それだけの余裕があるなら、むしろ私は現在調整を受けてしわ寄せを受けた者、成長から取り残された階層、これにもっと重点的にやはり施行すべきだと思います。ですから、三十二年のときとやはり同様だろうと思う。私は、それだからこの基金が、経済調整資金というものが、固まった意見では承っておりませんが、そのねらいはどこにあるかと承ったら、そこである。ですから、そういうこととも関連してもう一度大蔵大臣の御見解を承りたい。
  181. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今申しましたように、まだいろいろな議論がございまして、私どもはそういうものを検討しておる段階でございますので、まだ固まった意見は申し上げるまでに至っておりません。
  182. 羽生三七

    ○羽生三七君 だから、時間がありませんから、だんだんもう締めていきますが、最終的には、結局は零細企業、中小企業に対する対策、農業の近代化、農民生活向上等に対する重点的施策、それから低額所得者に対する社会保障、こういう方面に明年度は重点的に施策をして、高度経済成長の影響を受けた部分を補正していくという、それが私は明年度予算の基本的性格でなければならぬ。もちろん要求は一ぱいあるでしょうから、いろいろの金は使わなければならぬでしょうが、私はそういうことに重点的に施行してもらいたいと思いますが、もう一度重ねて総理にこの点だけ簡単でよろしいから見解を承りたい。
  183. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣が答えたとおりでございます。財政資金のたな上げの問題につきましては、私が張本人でございましたが、あのときの考え方を安易に受けてはいかぬと思う。たな上げ資金をどういう格好で置くかという、えてして今までは後年度ということで、しかも、議会の協賛を受けることを前提としております。こうしますと、弾力的の使い方ができない。たな上げ資金をどういう格好で置くかということが問題。もし置くとした場合に、置く置かぬかについては私は意見を申しません。やはり大蔵大臣の言うとおり、昔自分がやったことに対する、そのたな上げ資金をどういう格好で置くかということが第一。一般にはたな上げ資金たな上げ資金と、非常に財政経済通の人々が言っておられるようです。その使い方をどういう格好でたな上げするかということが一番の問題。どれだけの金額ということが問題です。減税とか、あなたのおっしゃるように、ほんとうに経済拡大し、そして社会保障、また、零細農村、中小企業等のことを考えました上での余裕で考えます。金額によります。問題は、私はどういう格好でたな上げするかということ。今それが、予算が非常にふくれることもよくございませんが、御承知のとおり、昭和三十六年度の施策から後年度へ続いてくる分が、かなり大きい当然増があることを私は期待せなければならぬ。それから今の状態において一般に論議されている増収があるかどうかというととも疑問でございます。当然増と今後の施策と、こういうものを考えるとき、やはり大蔵大臣が言っているとおりたな上げするかしないか、どれだけの金額かということでなかなか問題。もしたな上げということがきまったときに、それはどういう格好で置くかという問題が私は一番の問題だと、だから、あなたがおっしゃったように、三十三年のときに不景気だった、こう申されます。三十三年は全体として不景気ではございません。三十二年の五、六月ごろから不景気で、三十三年の一、二月ごろになったらもう上向いてきております。しかし、予算はやはり五、六月ごろの不景気のことが頭に入って、十月から黒字になりましたけれども、やはりこれは不景気が頭にあるものだから、三十三年がああいうふうになにした。やはり持って行き方、たな上げの仕方が問題だと思います。私は、たな上げ資金はいいか悪いかという問題につきましては、大蔵大臣の言うとおりで、まだ結論を出していないのでございます。
  184. 羽生三七

    ○羽生三七君 明年度予算の性格を、重点をもう一つ。
  185. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは先ほど来お答えしたとおりで、高度成長を長きにわたって続けていく、そうして高度成長によってしわの起こったところは調査していく、これでございます。こまかい金額のほうはお聞きにならぬ。考え方としてはそれだけでございます。
  186. 羽生三七

    ○羽生三七君 明年度の経済成長率の問題ですが、実は衆参両院の本会議、それから昨日の木村さんの御質問等を通じて見ても、どうしても私不明確でのみ込めない点がある。あるいは藤山さんのように、この間エコノミストを拝見したら、パーセンテージは言えないが、調整策を実施した結果を見て、そこに出てきたものが合理的な一つの成長率かもしれぬという、こういう見解を述べられておりますが、それは、もちろんこれは一番わかりやすいことで、それじゃ政策にならないから伺うわけですが、ですから九%成長率大丈夫という方もあるのです。それから、調整策をとっていくと大体七%ぐらいじゃないか、中には、勧銀筋の言うように、五%の成長率ではないかという筋もある。どうも政府がはっきりしたことを言わない。もちろんそんなにはっきりしたことがぴしゃっと出てくるわけでもないでしょうが、しかし、現に今政府がとりつつある調整策を進めていった場合、これをもとにして来年の成長率はおよそどのくらいになるのか。これはそんなに別にそれによってどうこうということじゃないと思いますから、ひとつお教えいただきたい。
  187. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今、羽生さんが御指摘になりましたけれども、明年度の成長率をどうするかということをまず私はきめる前に、やはり今度の調整策をとりまして、そうして調整策というのは、つまりひずみができたわけですから、そのひずみを直していくのに適当な処置をとってきたわけです。したがって、そのひずみが直りながら、漸次回復に向かっていくという方向に進めて参らなければならぬのでありまして、そういう状態を堅持する場合に、四囲の状況をずっと見て参りまして、そうしてまあその結果何%になったらそれで仕方がないということでなく、それをさらに伸ばしていく場合には、もう少し刺激を与える、あるいはこれの状態でいけないから、もう少し停滞させなければいかぬというときには、成長率を若干抑さえて考えていかなければならない。したがって、そういうところにおいて最終的に私は成長率をきめなければならぬので、何%がいいとか悪いとかいうこと自体は、今非常に私は困難だと思います。それは抑制が進行している過程でございますから、その結果を見ないとわからぬ。慎重過ぎる、あたりまえのことを言うというお話かもしれませんけれども、私はそう考えます。
  188. 羽生三七

    ○羽生三七君 総理はどうですか。それと関連をして、ついでに答えていただきたいと思いますが、意味のない議論になるかもしれませんが、一体デフレ政策はとらない、成長率でいうと何%ぐらいから下がデフレになるのか。これは単なる水かけ論をやる意味じゃないのです。しかし、勧銀筋その他の五%成長という場合には、非常な大きなショックが出てくる。ですから、これはなかなか重大な問題だと思う。それはもちろん進行の過程を見なければ軽々には言えないと思いますが、しかし、それは私はなかなかたいへんな問題だと思うのですが、もう少し具体的に——昨日のどうもお話ではよくわからなかった。別にそうたいしてむずかしい——むずかしいには違いないけれども政府がそれを言ったから困るという性質のものでもないと思いますので、忌憚なくひとつお聞かせいただきたいと思います。総理大臣にひとつ−…。
  189. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 企画庁長官がお答えになったとおりでございまして、なかなか申し上げにくいのでございます。成長率とは何ぞや、これからお聞きいたしますが、実質的の成長率でしょうか、名目的の成長率でしょうか。
  190. 羽生三七

    ○羽生三七君 もちろん私たちが言う場合は、前年度に対する本年度の実質成長率でございます。両方の場合もございます。
  191. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それがなかなかむずかしいのでございます。この実質的と名目的の問題でございますが、消費者物価に関係いたしまして、サービス料金のいわゆるデフレーターの使い方でございます。デフレーターの使い方をどうするか、これがデフレ政策とのかね合いになる。前からのあれを申し上げましょう。三十三年は不景気だった。しかし、国際収支は非常に黒字でございました。三十三年はそうすると成長率はどうかと申しますると、物価が平均として、ある程度下がっておりますから、成長率は二コンマ数%だった。名目的には二・五、六%、実質的には三%五%ぐらいだった、実質の上では。非常にデフレだった。国際収支はうんとよかった。それから三十四年は、もう名目で申しますと二一、二%で、実質が一七%、去年は一六%で二二%、ことしはデフレーターをある程度変えましたけれども、相当こたえて参りまして二一丁九%、九・七%と、こうなってくる。そこで、今のようにデフレ政策をとるかとらぬかとらぬかという問題で、とらぬと言った場合に、デフレーターでいくかどうするかという問題、しかし、実際問題として、名目とかあれとかいっても、人気ものでございますから、デフレーターを使った場合はこう、使わぬ場合はこう、それからデフレーターを使う場合につきましても、私は、今議論が出て参っておりますが、これから相当議論が出てくると思います。景気不景気と関係いたしまして、なかなか——ことに今のような状態では、五%になったら絶対にデフレになってくるかという問題、必ずしもそういかぬと思います。それからいわゆるひずみがどこにできていくかと言ったら、国際収支と、それから片方では中小企業、あるいはいわゆる労働問題、それから消費者物価、卸売物価でなくて消費者物価と、技術者あるいは労務者の不足、国内的にはこれ。国際的には国際収支の赤字、この国際収支の赤字をいつやるかということは、来年の秋ごろということになりまするが、この様子によったらもっと早いかもわからない。  それから私は、非常にフレキシブルに考えなければならぬことは、デフレで非常に困るような状態ならば、何も来年の秋を見越して国際収支をとんとんの状態に持ってくることよりも、二カ月先に延ばしても、やはり国内が困らぬような政策を立てなければいかぬ。そしてまた設備投資の問題、国民消費の問題、財政のワクの問題等がございますから、私は、この問題はなかなかここで議論しましても、十人十色で、なかなかできぬと思います。だから私は、企画庁長官のおっしゃるのが一番ほんとうなので、企画庁長官におまかせして、結果をひとつ見さしていただこうということで、今議論をいたしますのは無理だと思います。
  192. 羽生三七

    ○羽生三七君 そこで、今とっておる経済政策の手直しですね、諸般のいろいろなやり方、これは来年の秋まで待たなくとも、今後のしばらくの貿易事情その他を見て、またこれはいつでも直すこともあり得るわけですね。来年の秋まで固定的にこういうのを続けるということでなしに、今のお話でいくと、貿易事情等によっては、また修正することもあり得ると、こう理解してよろしいですか。
  193. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体私が見るのに、国際収支のいゆわる外貨が十四億五千万ドルと、こう見ておる。これで違ったらまたしかられると思いますが、それなら十四億五千万ドルを維持するためにエキジム、IMFから金を借りたらどうか、これは楽にできる。そういう国際収支の実質の問題と外貨の実質を考え日本の信用を度外視して、数字ばかりにとらわれることはいかがなものかと思います。で、もし非常な輸入増加があるときには、やはりあるいはユーロ・ダラー無担保借り入れとか、いろいろな問題がありますから、大蔵大臣は適当な措置をとられると思いますから、だから数字にとらわれず、経済の実態がどこにひずみがあるか、国際収支にひずみがある。その国際収支のひずみをどういうように直していくか、その現われの外貨をどう持っていくかということにつきましては、国際経済的にいろいろの手があるのでございます。あの十四億ドルにつきましても、それでこれは十三億ドルになることはないと思いますが、大蔵大臣がそれじゃ三億早く借りたらどらなるか、これは借りたからといって、十四億ドルあれをしても何も意味をなさないことで、私は、国際収支にひずみがあるといって、それを強く言って、もう経済はだめになったと言うことは早いのです。それから中小企業あるいは一般の労務者、これは非常に今あれしております。片方からいって、最低賃金制の問題は、自然に経済の原則によっていっておる。この問題につきましても、これは一つはいいけれども、一つは悪いことだ。ただ問題は、新規労働者が、三十七年、八年、九年というのが早くなったから、三十六年八十万人、来年百七十万人、これが三十六年から出てきたというのは一年早過ぎた。私はこれではいけないので、三十六年をあれぐらいにしたら三十七、八年に百七、八十万人の新規労働者を受け入れられると思っておったのが、一年早くきたから、ちょうどピークの八十万が出てきた。これが不測のあれなんですが、だからいろいろの点において考えなければならないので、私は生きた経済を活眼をもって見ていかなければならないと思っております。
  194. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 活眼をもって池田総理にひとつ御質問をします。  来年度の見通しは、なかなか数字的には言えないというようなことを繰り返し言っておられますが、しかし、方針としては、三十七年度の秋あるいは末に国際収支はバランスするということを目途にやるということをお話になっておると思うのですが、それならば、その秋あるいは末にバランスするということは、三十七年度の年間を通じて国際収支がどういうふうになるというふうにお考えになるのか。しかも私は、秋ごろにバランスさせようとすれば、年間を通じて、総理のしばしば言っておられるように、若干の赤字が出ると思うのです。そのような赤字が出た、その程度の赤字にとめるためにも、鉱工業生産なり、あるいは経済成長ということをよくいわれておりますように、三十六年度よりか鉱工業生産は若干低目に、あるいは少なくとも横ばい程度にしなければならないというような問題になってくると思うのですが、そうなると、成長率は非常に落ちてくることになる。これはあなたの言われる九%の成長率とか、あるいは正常な七・二%の成長率というような高度成長政策が完全に破綻を来たすという結果が明瞭に現われてくるのではないか、私はそう思うのですが、総理はどういうふうにそれを具体的に考えておられるか。もしそれを避けようとすれば、さっきもちょっと示唆されたように、どうしても外貨保有高が不足することになるから、国際通貨基金なり何なりから手当をしなければならない。それで何とかあなたは危機を切り抜けていくということをお考えになっているのかどうか、その辺を明瞭にお話を願いたい。総理から今の問題について明確なお答えを願う前に、現在の実情を知る意味において、経済企画庁当局から、現在における三十六年度経済見通しを、一応現在の時点においてどう見通しておられるか、それをまず御説明願いたい。
  195. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) なお、答弁のある前にお諮りをいたしますが、たいへん大事な問題を中心に関連の質問もあります。自然時間も延びるわけでございますが、予定の質問者もまだありますことであります。そのために、若干五時を過ぎるようなことがありますので、皆さんの御勉強をわずらわしたいと思います。
  196. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 大体「三十六年度経済見通し中間暫定試算」というのをお配りいたしてありますので、それをお読み申しましょうか。それとも、お配りしたものについて何か御質問がありますれば……。
  197. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 一応それを簡単に説明して下さい。
  198. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 経済の中間見通しでは、個人消費を八兆七千億、それから設備投資を三兆七千五百億、これは約一割程度抑制されるもの見ておるわけですが、それから在庫投資が七千五百億ということでありまして、大体総需要というものを十八兆七千六百億、国民総生産を十六兆五千四百億程度に見まして試算をとってみたわけでございます。
  199. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その場合に、国際収支、外貨保有高、年度末の……。
  200. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) その場合の国際収支は、輸出が四十二億六千ドル、輸入が四十九億六千万ドル、そうして外貨準備が十四億四千万ドル、二ページのほうの表に出ております。
  201. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あと総理に……。
  202. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体来年の輸出期に収支均衡の状態が出る。三十七年度を通じましては、私はある程度の赤だと見ております。しかし、これはやはり貿易の問題は、経常収支の問題が非常に大事でございますので、国際収支、外貨の問題ということになりますと、資本収支、短期、長期の問題が相当でございますので、私は、外貨の問題がどうなるかという問題になりますと、これはまた来年の秋がとんとんとか十四億、ことしの繰り越し分のままというわけじゃないと思います。
  203. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 年間を通じては多分赤になるだろう、年間を通じて赤を消すことはできないだろうということを繰り返し総理は言っておられたと思うけれども、もしそうなれば、今企画庁で試算しておられる十四億ドル幾らというものをさらに切ることになる。それを切った場合には、通貨基金なり何なりから特別な手当をしなければならぬというふうにお考えになっているかどうか。そういう用意を考えておられるかどうか。  それから、その外貨は別として、今のような国際収支の場合に、国際収支をそこまで持っていくためには、国内の生産をうんと締めなければならないという問題が出てくるのだが、その場合に、総理は、鉱工業生産をどの程度に持っていったらいいというふうにお考えになり、したがって、また経済成長率はどれくらいというふうにお考えになるか。総理は、原則的に、高度成長経済は破綻をしないと言い切っておられるから、それには今私がお尋ねしているようなことに対する概括的な計数的なお見込みがあっての御答弁だと思いますが、それを具体的に御答弁願いたい。
  204. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際収支が均衡ということは、一般には資本収支のことを入れずに言われております。だから普通の貿易収支と貿易外の収支で言っておるのであります。それから、外貨の問題になりますと、資本収支が入ってきます。それ、が相当大きくなりますから、だから全体として赤になるというときの問題は、貿易収支の問題を主にして言っております。それから国際収支の問題は別にして言っております。そこで、貿易収支の分は、大体経済の動きとか何とかでわかりますが、資本収支の問題、ことに短期の問題、短期の収支、ユーザンスの問題はわかりますが、普通のユーロ・ダラーとか円勘定というものはなかなかわかりにくい。だから一がいに言えません。大体今までのような歩みとして、あまり変わりがなければ、特に外貨がうんと入ってくるということがなければ、そうして、また特に日本の信用が悪くなって、ユーロ・ダラーとか、円資金が急激にたくさん出ていくということがなければ、私は、経常収支はある程度赤、資本収支も加えて、ある程度の赤くらいじゃないか。その赤は、私はそう大きいものじゃないと思っております。それから、それによってどのくらいの赤が出るか、年間を通じて。これはなかなかむずかしい、資本収支の問題がありますから。それから、それによって来年度の生産がどうとかこうとかいうことは、もうたびたび申し上げておるとおりでございまして、何べんお聞きになりましても、これは神様はおわかりかもわかりませんが、今のところ、ちょっとむずかしいのじゃないでしょうか。
  205. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 高度成長は絶対に失敗しない、そのままやっていけるのだとおっしゃるから……。
  206. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そこで問題は、この数字の九%三年平均と、こう言っております。だから来年が、たとえば三十一年のように二、三%になったときに、そうすると、その翌年に今度は一七%実費がふえる、こういうふうな状況もあることも考えなければなりません。だからそういうものがないようにしなければならぬので、私が言っておるように、十三兆六千億を基準にしたり、ことしの一月に言っておった十四兆二千億を基準にしていろいろやってみましても、大体党が公約した数字の分は実現できる。そのときに九%か七%か五%——五%になったからといって、絶対のデフレというわけでもございませんよ。五%になったからといって、絶対なたいへんなデフレだということにはならぬ。三十二年、三十三年のときの二、三%のときでも、生産は落ちておりません。しかし、物価が下がる、こういうことになるので、ある程度の景気後退で、非常なデフレではございません。景気後退の程度のものである。アメリカやイギリスあたりとは程度が違います。そこで、五%だったら、絶対にどんな条件があってもデフレだという断定は、それはできないと思います。それはいろいろな点を研究いたしまして、通常国会に企画庁長官が詳しく御説明になると思いますから、そのときまでお待ち願いたいと思います。
  207. 羽生三七

    ○羽生三七君 総理も御不快のようですし、時間も過ぎましたので、この間で終わりますが、最後に、国民総生産、国民総所得で、これが総理の言う所得倍増ということだろうと思いますが、そうでなしに、国民の各層、各個人を含む実質的な正しい所得倍増をやるという場合には、私は別な青写真が必要じゃないかと、こう思います。何かそういうことはお考えにならないかどうか。  それからもう一つは、昨年三月、総理大臣通産大臣のときに、私は当委員会で、資本主義、自由主義の経済下で、この種の選挙のキャッチ・フレーズにはいいが、そうでなく、実質的な意味の成長政策をやる場合には、むしろ私は長期経済十カ年計画と呼び方を変えたらどうか。所得倍増計画でなくして、長期経済十カ年計画と呼称をお変えになったらどうか。国民総生産、国民総所得でなしに、外側人の実質的所得倍増をやるには別の青写真が要るのじゃないかということを申し上げましたが、これに対するお考えを承りたいのが一点。  もう一点は、ある意味においては意味のない議論になるかもしれませんが、外貨の危機ラインということが盛んに言われておる。十三、四億を割ればどうとかこうとか、しかし、これは国際信用に関連すると総理はいつも言われておりますが、私も若干その気持はわかります。そこで問題は、今も佐多さんが言われたけれども、IMF等から借りて何らかの補強をして乗り切っていくのか。そんなことをしなくても、ときに十三、四億を判っても、そういうことは先に明るい見通しがあれば差しつかえないのか、その辺はどういうふうに対処されるのか。十二、三億割れたらたいへんなことになるというような議論が盛んにありますけれども、私は若干別の考えを持っておりますけれども、それはとにかくとして、危機ラインということで、ただいまここでは意味のない論争をしようとは思いませんが、その場合にIMFでカバーしていくのか、それとも若干落ち込んでも、将来見通しがあればそれでいいのか、その辺の外貨保有に対する基本的な考え方を承わりたい。この二点だけで私の質問を終わります。
  208. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増十カ年計画としたらどうかというので、その考え方もございまして、企画庁からのあれは所得倍増十カ年計画になっておりましたが、これはこの前の国会で申し上げましたが、一つの構想という考えでございます。私は、計画的にどうこうと言っても、資本主義経済のもとで十カ年ということはなかなかむずかしいと思います。ただ心がまえをやって、そうして当座の問題は二、三年ということでやっていくのが実際的だと思います。そこで、総生産というか、国民総所得というか、個人の所得というか、それはいろいろありましょう。総生産に対しましての国民総所得というのは、大体もうこれは一つの形式でわかってきますから、一人当たりということになりますと、人口の動向の問題、これだけの違いだと思います。  それから第二点の、外貨はどれだけあったらいいか、IMF、これは国際収支の問題と別に、金繰りの問題、金繰りの問題と外貨のあり方の問題は非常にこんがらがっておる議論が日本で行なわれておる。そこで私は国際信用と、こう言っておる。金繰りの問題です。それから外貨の問題は、これは国際信用の問題、しかし、えてして金繰りの問題が、日本では国際信用につながるというふうに、一つの別の考え方があるようでございますね。銀行から借りたということは非常に罪悪だと思われる、私はそういうことはないと思う。しかし、その辺の金繰りの問題は大蔵大臣が専門でございますから、大蔵大臣から一お答えさせます。
  209. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今総理の言われたようなことでございまして、私ども国際収支を回復するということが本筋の政策的な仕事でございますので、これは総当たりでなければなかなかむずかしい仕事で、政府もそういう方針で今総合施策をとりましたし、また、来年度の予算編成、金融政策そのほかにおいてもこの線を貫いて、国際収支の回復ということへ施策を集中するということは、これはもう御承知のとおりでございます。それと今の金繰りの問題は別でございまして、日本がかりに払えなくなって困るというようなことは、政府の責任でそういうことはできるものではございませんし、まあ経済の問題は、総理がよくまかせてくれと言われたそうですが、その金繰りの問題だけはこちらにまかせていただきたい。
  210. 羽生三七

    ○羽生三七君 これで質問終わりますが、先ほど来申し上げますように、希望だけしておきます。答弁は要りません。どうか国際的にもっと日本がほんとうに平和の維持に寄与できるような、建設的、創造的な外交をやっていただきたい、これが一点です。  それから、今申し上げましたように、経済の点についても、高度成長から取り残された人、調整のしわ寄せを受ける人を重点的に施策するよう、明年度予算の編成の骨格はそこに置いていただきたい。この二点を強く要望いたしまして私の質問を終わります。
  211. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 北條偶八君。     —————————————
  212. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) この際、委員の変更について御報告を申し上げます。  前田佳都男君が辞任されまして、補欠として野上進君が選任せられました。     —————————————
  213. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) お諮りをいたします。  先ほど委員長は、羽生委員の御質問のあと、北條委員に発言を求めたのでありますが、理事間の連絡が十分でなかったためか、質疑は進みません。委員長としては審議に時間を尽くすのであるならば、どのような時間をかけても国民の前にけっこうと思うのでありまするけれども、かかることのために長時間を費して、しかも、これから審議を進めるとすれば、もはやこれからでは、はなはだしく予定の時間を超過する結果となりますので、残念ながら、先ほど申し上げました北條君の発言は次回とし、十六日の本委員会は午前十時から開くということにいたします。  なお、かようなことで時間を空費することの将来ないように、理事諸君にお残りを願いまして、御相談を進めたいと思います。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十九分散会