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1961-10-13 第39回国会 参議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十三日(金曜日)    午後一時三十五分開会   —————————————   委員の異動 十月三日委員大泉寛三君及び山本利壽辞任につき、その補欠として田中茂 穂君及び塩見俊二君を議長において指 名した。 十月四日委員田中茂穂君、小酒井義男 君、森元治郎君及び高田なほ子辞任 につき、その補欠として前田佳都男 君、藤田進君、野上元君及び加瀬完君 を議長において指名した。 十月五日委員白井勇君及び後藤義隆辞任につき、その補欠として古池信三 君及び苫米地英俊君を議長において指 名した。 十月六日委員中野文門君及び野上元辞任につき、その補欠として小林英三 君及び永岡光治君を議長において指名 した。 十月十二日委員占部秀男辞任につ き、その補欠として山本伊三郎君を議 長において指名した。 本日委員石田次男辞任につき、その 補欠として北條雋八君議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     小山邦太郎君    理事            苫米地英俊君            村松 久義君            米田 正文君            永岡 光治君            藤田  進君            田上 松衞君            千田  正君            加賀山之雄君    委員            小沢久太郎君            梶原 茂嘉君            金丸 冨夫君            小林 英三君            小柳 牧衞君            塩見 俊二君            杉原 荒太君            館  哲二君            手島  栄君            一松 定吉君            武藤 常介君            村山 道雄君            山本  杉君            横山 フク君            阿具根 登君            大矢  正君            加瀬  完君            木村禧八郎君            小柳  勇君            田中  一君            羽生 三七君            森中 守義君            山本伊三郎君            相馬 助治君            基  政七君            市川 房枝君            北條 雋八君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君    農 林 大 臣 河野 一郎君    通商産業大臣  佐藤 榮作君    運 輸 大 臣 斎藤  昇君    郵 政 大 臣 迫水 久常君    労 働 大 臣 福永 健司君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 川島正次郎君    国 務 大 臣 藤枝 泉介君    国 務 大 臣 藤山愛一郎君    国 務 大 臣 三木 武夫君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局次長   高辻 正巳君    法制局第一部長 山内 一夫君    防衛庁経理局長 木村 秀弘君    防衛庁装備局長 久保 忠雄君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    科学技術庁長官    官房長     島村 武久君    外務大臣官房長 湯川 盛夫君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵政務次官  堀本 宜実君    大蔵省主計局長 石野 信一君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省理財局長 宮川新一郎君    大蔵省銀行局長 大月  高君    大蔵省為替局長 福田 久男君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省管理局長 福田  繁君    厚生大臣官房長 高田 浩運君    厚生省社会局長 太宰 博邦君    厚生省児童局長 大山  正君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    中小企業庁長官 大堀  弘君    労働省労働基準    局長      大島  靖君    自治省財政局長 奧野 誠亮君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   参考人    日本銀行総裁  山際 正道君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事辞任及び補欠互選の件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和三十六年度一般会計予算補正  (第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十六年度特別会計予算補正  (特第2号)(内閣提出、衆議院送  付)   —————————————
  2. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) これより予算委員会を開きます。  この際、お許しをいただきまして、一言ごあいさつを申し上げます。  私は、このたびはからずも予算委員長の重責をけがすこととなりました。微力の上、なれないことでございます。さりながら、皆様の御協力を得まして、本委員会がその使命達成の上に、円満にしてしかも十二分に論議を尽くし、一般の期待に沿い得るように運営いたしたい、その願いで満ちておる次第でございます。どうぞ皆様の御協力を重ねてお願いいたします。(拍手)   —————————————
  3. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) まず、委員の変更について御報告を申し上げます。  十月三日、大泉寛三君及び山本利壽君が辞任され、その補欠として田中茂穂君及び塩見俊二君が選任されました。また四日には、田中茂穂君、小酒井義男君、森元治郎君及び高田なほ子君が辞任され、その補欠として前田佳都男君、藤田進君、野上元君及び加瀬完君が選任されました。五日に白井勇君、後藤義隆君・次いで六日には中野文門君及び野上元君、十二日には占部秀男君、また本日石田次男君が辞任され、その補欠として古池信三君、苫米地英俊君、小林英三君、永岡光治君、山本伊三郎君及び北條馬八君が選任されました。
  4. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 次に、理事梶原茂嘉君及び阿具根登君から、都合により理事辞任いたしたい旨の申し出がありました。これを許可することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕   —————————————
  5. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 御異議ないと認ます。  それでは、引き続いて理事補欠互選を行ないます。現在、当委員会には理事が四名欠員になっております。互選は、先例によりまして、委員長指名をもって行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 御異議なしと認めます。  それでは、理事苫米地英俊君、村松久義君、永岡光治君及び藤田進君を指名いたします。   —————————————
  7. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) それでは、昭和三十六年度一般会計予算補正ほか一件の取り扱いについて、先般来、委員長及び理事打合会を開き、協議を行なって参りましたので、その内容について御報告申し上げます。  質疑は本日より開始いたしますが、総括質疑三日間、一般質疑三日半の予定で審査を行なうことにいたしました。質疑時間につきましては、総括質疑は、自民社会おのおの百五十六分、民社無所属クラブおのおの四十五分、同志会三十分、共産十七分。また一般質疑は、自民社会おのおの百八十四分、民社無所属クラブおのおの五十分、同志会三十五分、共産十八分であります。質疑の順位は、社会党自民党、民社党、社会党無所属クラブ同志会及び共産党とし、この順序を繰り返して行なうことといたします。  以上御報告を申し上げたとうり運ぶことに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 御異議なしと認めます。   —————————————
  9. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) それでは、昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)、昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)、以上両案を一括して議題といたします。  これより総括質疑に入ります。木村禧八郎君。(拍手)  なお、この際お諮りをいたしますが、本日木村委員の御質疑に対して、日銀総裁出席要求がございました。山際日銀総裁に、参考人として本日委員会出席を求むることに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 御異議なしと認めます。  なお、この際お含みを願いたいのでございますが、総裁は、都合によって二時半から三時半に出席いたしたいとの申し出でございます。お含みを願います。  それでは御発言をどうぞ。
  11. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで日本社会党は、池田内閣所得倍増計画あるいは経済見通しにつきまして、その矛盾誤り、これを指摘し、警告し、その転換に対して、あるいは是正に対して警告をしてきたわけであります。しかし、何分所得倍増計画実施段階に入っておりませんでした。あるいはまた、経済見通しも、これは見通し段階で、現実段階ではなかったわけです。しかしながら、もう現在では、所得倍増計画も、第一年目ももう半年以上現実実施されてきているわけです。さらにまた、経済見通しも、今ではもう見通し段階ではなく、もう現実段階に入りてきている。そこで、倍増計画矛盾が特に物価の問題あるいは国際収支あるいは中小企業における労働不足とか、あるいは所得格差の拡大とか、そういう形ではっきり出てきたわけです。そこでわれ一われは、そういう現実の事実をもとにして、これまで政府政策について、何回も、衆参両院の本会議あるいは予算委員会大蔵委員会等質疑をして参りまして、政府答弁をしております。この答弁に対しては、政府責任を持たなければなりません、国会に答弁したのでありますから。そういう責任を私はここでただしたいと思うのです。現実と今までの政府答弁とがいかに食い違っているか、いかに政府見通し誤り、あるいは倍増計画実施を誤ったか、もうはっきり事実が証明しているわけです。この事実に基づいて、また政府のこれまでの答弁、これに基づいて、これから私は具体的に質疑をいたしたいと思うのです。  それで私は、政府のこれまでの倍増計画破綻、失敗、そういうものをただここで責めて、今までの政府答弁が間違っているではないか、だらしがないではないか、そういうことをただ追及して快哉を叫んだって、国民には一文も、一つもプラスにはなりません。ですから私は、責任はあくまでもただします。追及します。しかし、それだけでは足りないのであって、この跡始末は一体どうするか、むしろ今後の処理の問題こそ非常に重大な問題と思いますので、そういう点について重点を置いて、具体的にこれまでの事実をもとにして質問をいたしたいと思うのであります。  もうすでに池田内閣所得倍増政策破綻したことは、これはもう否定することができないわけです。それで、率直に私はまず池田総理にお伺いしたいのですが、この所得倍増政策破綻、あるいは経済見通しの間違いの根本原因は一体どこにあるかということです。まず、この、原因をただすことによって、政府のこれまでの間違いがどこにあったかということが明らかになりますし、したがって、今後どうすべきかということも、おのずから明らかになると思うのです。  そこで、まず最初に、その根本原因は一体どこにあったか、まず総理にこの点をお伺いしたいと思います。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) われわれの所得倍増計画破綻になったと、もう意味がなくなったとおっしゃいますが、私はそうは思いません。しかし、この問題は御質問でございませんから、お答えをいたしません。私らの計画しておったその計画が、計画よりも進み過ぎた、こういうことの原因について私の考えを申し上げます。  それは、日本国民のいわゆる経済成長力というものは相当強いのであります。私も、それは過去の実績からいってよくわかっております。木村さんの御質問に答えたかと思いますが、このままでほうっておいたならば、日本経済成長率は一二、三%行く。あるいは一一、二%行くのじゃないかと思う。それはしかし行き過ぎだ。だから自分は、最初の三年間は九%平均で行きたい、腹八分で行きたいというので、その計画で行ったのであります。しかるところ、結果は、私が行くかもわからぬと覆って心配しておった、そのところまで実は行った。これが私の経済見通し誤りと申しますか、現実がそうなってきておるのであります。それが一体いいか悪いかという問題ですが、原因は何かというと、成長です。設備投資、内需の増加、それによる輸入の急増、こういうことに私はあると思います。そこで、これが進み過ぎたということがいいか悪いか、計画より違った意味においては悪い。そこで、進み過ぎたというものをこれから直していかなければならない。あなたの言われる、進み過ぎた責任を追及するにとどまらず、追及すると同時に、今後のやり方をどうするか、こういうことについて申し上げますると、行き過ぎた点につきまして、これを補正するために、ここ三、四カ月前から手をずっと打っておるのであります。で、進み過ぎた、あるいは行き過ぎ原因国民成長力、そうして何と申しますか、一般自由主義経済もとにおきまするいわゆる普通の調整ではなかなかむずかしい、こういうことであるのであります。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 池田内閣所得倍増計画破綻していないとおっしゃる。それから第二には、民間設備投資政府予定した計画より行き過ぎた、それが原因になっておる、現在の事態から見て、所得倍増計画破綻をしていないということをどうしてお考えかですね。率直に伺いたいのですが、第一、政府は、国際収支については、経常収支は三十六年度一千万ドルの黒字総合収支においては二億ドルの黒字予定したのじゃありませんか。それが、経常収支におきまして八億ドルないし十億ドルの赤字総合収支において六億ドルからあるいは七億ドルという説もあります。その程度赤字を示すことになったわけです。一億ドルや一億ドルの違いじゃないのですよ。経常収支において一千万ドルの黒字と言ったのが十億ドルの赤字になった。こんな大きな間違いはない。それによって日本経済国民生活に、これまで、それから今後においても大きな影響が出てくるわけです。この影響については、具体的にあと各省別に私は伺います。これが破綻していないとなぜ言えますか。昔だったら総辞職ものですよ。私は、責任を追及するというのは、これだけの大きな−これからあとで具体的に伺いますが、大きな見通し誤りをやって、一億ドルや二億ドルではないのです。十億ドルの国際収支の間違いというものは、これは前後未曽有の、世界だってこんなことはないでしょう。世界にこういう記録があったら、総理世界のことはよく御存じですからお示し願いたい。これはほんとうは、ほんとう責任を感ずるならば総辞職でありますが、総辞職要求します。責任をとってやめるべきだ。間違った所得倍増計画は、その根底の理論から現実から見ても間違った。こんな大きな経済見通しを誤ったことは、これまでの歴史にないと思う、日本内閣歴史においてですよ。日本内閣においてもこれは間違ったけれども、それ以上の大きな間違いです。私は、総辞職をすべきだと思うのです。この点いかがです。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所得倍増計画というものが、当初の半年あるいは一年で見込みより違ったから、十年間の倍増計画がこれでだめになったということは、これは即断だと思います。長い目で見ていただきたいと思います。だから今国際収支にそれだけのものができたからといって、もう倍増計画はだめだというふうにお考えになるのは、少し気が短か過ぎるのではございませんか。私は、少なくとも日本経済成長は一段と高くなってきておる、高くなったのを、いかに調整して高い段階で推し進めていこうかということがこれからの問題でございます。で、十億ドルの赤字が出た、それは貿易収支でどれだけ出るかはまだはっきりしたことはわかりません。十億ドル出たにいたしましても、片一方資本収支のほうで相当の黒字が出て参ります。で、あなた経済の弱かった昭和二十八年あるいは三十二年をごらん下さいましても、三十二年の六月、緊急措置をやった六月を見ますと、その前にもやっぱり五億ドルくらいの経常収支に、毎月一億ドル近い経常収支の赤があったと思います。それで三十二年のあのとき危機だとか何とか言って、たいへんなことを言っておられましたが、それが幸か不幸か、薫十三年からのあの急激な国際収支黒字を見たのであります。で、日本経済につきましては、木村さん御存じのとおり、二十八年とか三十二年、そうして今日のように、ある程度の波を打つことはやむを得ません。しかし、波を打ったつど、これを国民はよく克服して、そうして高度の成長を導いてきておるのであります。十年計画で七%くらいでできましようが、今の日本経済の状況を見まして、新しい雇用の増大等考えて九・二%でやったのでありますが、それが予定よりも少し行き過ぎる、まあ少しと申しますか、相当行き過ぎた。これによってわれわれの主張する経済倍増計画経済成長もだめになったとあきらめるのは私はまだ早い、これは克服できるものだと思います。私は、克服し得る、今のじめじめしたあの低成長よりも、高度の成長で、そうして一つ難関は、これは難関にぶつかって後退すべきでなしに、これを調整し、克服していくところに日本民族の伸びる姿が現われてくるものと確信いたしております。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 所得倍増計画実施されてまだ半年足らずなんですよ。十年間と言われましたけれども、半年足らずのうちに物価は上がってくる。国際収支は、今十億ドルも経常収支赤字総合収支は七億ドルくらい赤字、半年足らずじゃないですか。それで十年間こういう調子でやっていかれたらどういうことになりますか。スタートが大切ですよ。しかも、そればかりじゃないのです。われわれが何回もこうなるということを指摘したわけですよ。池田さん、今もう水かけ論じゃありませんよ、現実のようになったのです。ですから、前に私は二、二%までいくでしょうと言ったら、池田さんもそういう危険があると言われた。それならなぜそのときにそういう措置をとらなかったか、そのときに大丈夫大丈夫と言っておったじゃありませんか。あなたは政策については低姿勢をとって、野党の意見は合理的であるならばこれを採用するにやぶさかじゃないと言われたじゃありませんか。それなら社会党見通し現実とはぴったり合っておるのですから、これまで主張したとおりなんです。それをなぜいれなかったか。これがどうしても予想のつかないことでありましたならば——これまでの経済成長率については、われわれといえども神様じゃありませんから、これまで成長するとは確かに思いませんでした。しかし、もうすでにわれわれが指摘したときから、本年あたりからはこうなるということは、もうはっきりと指摘したのです。わかるのです。租税の税収の見積もりについてもそうなんです。はっきりわかるのに、また、われわれが指摘し警告したのに、経済のことはおれにまかしておけ、しろうとが口を出すなと言わぬばかりの非常な高姿勢をとって強引にやりましたからこうなったのです。責任追及は、総辞職に値するくらいの大きな影響が出てきておることについては、具体的にあとでそれを伺った上で、もう一度総辞職要求をいたしたいと思いますが、そこで、総理は、まだそれがこういう破綻を示すに至った根本原因は何かということを十分に答えていない。そのお答えは、民間設備投資政府予定より高過ぎたと言うのでしょう。じゃ、その政府予定よりも高くなった原因はどこにあるのですか。どうして高過ぎるようになったか、その原因がどこにあったかも伺いたい。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは先ほど申し上げましたように、国民成長意欲でございます。そうして、それを強力に行政指導では押さえ切れなかった。しかも、またその押さえる時期につきまして、あるいはおくれた点があるかもわかりません。そこで、おくればせと申しまするか、われわれとしてはこれに対する適当な措置をとりつつあるのであります。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど総理は、行き過ぎたことは悪いと言われたでしょう。国民がその成長に対する意欲が高ければそれでいいのですか。行き過ぎたら悪いのでしょう。だけれども、行き過ぎるような国民意欲ですよ、それがどうして調整できないのですか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自由主義経済もとでは、なかなか調整できないのであります。したがいまして、そうしてまた行き過ぎることも、あなたが想像的に言っておられました、たとえば設備投資にしましても、あのころから三兆一千億とわれわれは予定しておりましたが、それが三兆六千億になる、そういうことはなるべく控えたいように指導いたしますと、こう言って指導したのであります。しかし、いかにせん、いかにも強く、そうして、また片一方国際収支の問題にいたしましても、自由貿易建前で、相当統制をはずしておりますだけに、世界市況等に支配されて、相当輸入が増加したこともあるのであります。しかし、これが輸入が増加したからといって、そう早くから手を打ち過ぎて、伸び過ぎるというので不当に心配してもいけない。適当にそこを考えながら、伸びる必要があるところは伸ばして、これ以上伸びてはたいへんだというところまできて、それ以上伸ばさぬような指貫をしたのであります。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自由経済もとでは調整がつかないと——、だから前にこれはわれわれ指摘したわけです。自由企業原則もとで、大企業が、あるいは合理化投資とか、あるいは貿易自由化に備える投資、いろいろ各社競争しておるわけです。自由企業原則もと所得倍増計画をやる場合には、必ずこういう破定がくるということを、われわれ口をすっぱくして指摘したわけであります。それがここに現われたでしょう。ですから、一番の根本考え方が間違っていたということになるのです。それが調整できるというなら証明していただきたい。なるほど直接統制はできないでしょう。間接的にいろいろ金融面、税制の面、あるいはその他間接的な統制のほかないでしょう。しかし、間接的統制にしても、これもあとで具体的に質問しますが、もたもたして、ちっとも適切な手を打たれてない。ですから根本的に、一体、池田内閣自由企業原則でやったからこういう矛盾が出てきたのですから、それについて反省をする必要はないのですか。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 超高度成長が絶対に悪いんだという建前——私は、長い目で見たら、案外これがよかった場面も出てこないことはない。それをひとつお考えいただきたい。だからモデレートに九%程度のものならこれはいい。しかし、それをこえた場合において、そのこえたところの調節ができるならば、先ほど申し上げましたように、超高度の分も、高い経済水準にいく一つの手段である。だから問題は、高度成長をこえた超高度のものをいかに処理していって全体をうまく発展さすかという結果を見なければ、私はとやこう言うべき問題じゃないと思う。調整をしなければならぬということは、これは普通に考えたら悪いでしょう。調整をせずにいくような方法がいい。その意味においては、行き過ぎはためなければならない。ためなければならぬということは、それを長い目で見たときに、それが悪かったか、こういう問題になると、これが案外いいもとになる場合もあり得る。で、われわれはそういうほうに向かって進もうといたしておるのであります。具体的の問題になりますと、昭和三十二年のときにもいろいろ議論がございました。いろいろ議論がございましたが、しかし、私は、この前も申し上げましたごとく、公平に見て、あの措置があって、そうして高度成長もとをなしたものと私は考えております。二十八年の一兆円予算も、私は、二十八年のあの災害が、かえって高度成長もとになったということも考えておるのであります。だから、普通のたんたんたる高度成長でいく場合と、時に超高度になる場合、超高度になったら、これを絶対悪だということでなしに、その超高度の分を絶対悪でなしに、いい方向に向けていくことがわれわれの努力じゃないかと思います。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、高度成長政策を否定するものではありません。社会主義国であっても成長政策をやっている。世界どこだってやっている。問題はそのやり方なんです。自由企業原則はこれまでのやり方でよかったというのですか。これまでのやり方で失敗したじゃありませんか。これはもう歴然たる事実ですよ、国際収支物価等々。だから、この根本を直さなければ、たとえ今後赤字処理ができたって、十年間にまた景気変動が起こりますよ。また繰り返しますよ。ですから、根本考えなければいかぬということを言っているのです。要するに、池田内閣には、特に総理には学がない。学がないと言うと、これは失礼です。経済学がない。下村理論は、あれは経済論じゃない。よくお聞き下さい。あれは数字をあやつることは官庁技術経済学です。技術学です。池田さんはいろいろな数字をよく覚えておられ、これをあやつることが、これが得意であります。しかし、これはけっこうです。われわれは学ばなければなりません、その点は。経済学というのは経済の法則です。経済の法則をどうしてこれを明らかにするか、これが経済学でしょう。経済の法則は、自由企業原則所得倍増計画をやればこういうことになるのが経済の法則なんです。いわゆる経済の法則が貫徹されたんです。池田さんが、経済のことはおれにまかしておけ、しろうとは口を出すなと言われても、かりに国民池田さんにまかしたって、経済の法則は許しません。経済の法則の処罰なんです、これは。とがめがきたんです。この点をなぜ反省しないか。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自由主義経済もとにおきましては、こういうふうなことはどこでもあるのであります。どこでもある。それを克服していって、そうして共産主義のあの統制経済よりもより高度の成長をするのが自由主義経済の取り柄でございます。あなたは超高度成長が絶対悪であるように言われますが、これによって取り返しのつかぬようなことになったという結果が出たならば、私はそれは責任を負います。しかし・今までの経過を見て、各国とも、たとえばイギリスのあの措置によってイギリスの経済破綻したということは言えません。日本経済はまだそこまでいっていない。だから、超高度の成長高度成長に改めなければならぬ。しかし、超高度になったからといって、その超高度を福に変える。いいことにするもとにしたならばたいへんな成功じゃないですか。そこで、私は、この超高度成長は、ほんとうに自分の計画よりも行き過ぎておるから、これを調整して、そうして高度成長を続けていく。経済というものは時に動きますから、その動いたときだけで、もうだめだというようなあきらめは、自由主義経済、長い国民経済成長というものについては、私はとるべき策ではない。行き過ぎたものを調整して、そうしてこれを正常化しつついくのが高度成長の持つ味であり、それがどこの場合でもある経済学の本質でございます。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはまあ強弁というもので、じゃ、景気変動がいいというのですか、あなたは。資本主義の経済学でも、景気変動をなくそうとして一生懸命いろいろ具体的な統計数字やなんか集めて景気調整策をやっておる。経済企画庁だって、安定的成長といって苦心されておる。安定的成長が望ましいことは明らかです。資本主義のもとで景気変動が起こることはよくないということは、国民にとって、景気のいいときは大資本がもうけるが、不景気になったときには、その犠牲が国民にしわ寄せされる。今度の場合だってそうであります。景気変動を経て資本の蓄積をやってきているというのが資本主義経済なんです。そこに問題がある。社会主義には景気変動がないのです。もちろん、経済計画については、いろいろ計画どおりいかない場合もあります。しかし、資本主義の国と違って、景気変動による犠牲がないのです。この点は能率的なんです。何と否定しようとも能率的なんです。ことに高度成長政策、新しい技術革新をやるときには、社会主義の国では、思い切ってこれはどんどんできるんです。今、社会主義、資本主義の論争をやるわけではありませんが、要するに、池田内閣倍増計画破綻を示して行き詰まりをして、もう半年足らずのうちにこういうことになったのは、その根本が間違っているからなんです。これについては水かけ論になるようでありますから、それでは、さらにこういうことが一体いいのかどうかということを、もっと具体的な事実に基づいて質問しまして、あと総理にまたその責任を問いたいと思います。  この倍増計画破綻影響について次に伺います。この破綻影響が一番大きく出てきているのは、物価国際収支赤字でありますが、まず物価について伺います。  経済企画庁長官に伺いますが、政府は、三十六年度予算編成のときに予定した卸売物価、小売物価と、現在の物価との間にどういう開きがあるか。また、今後どういう見通しに立っているか。まずこの点について伺います。
  24. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 本年の一月初頭におきまして、物価見通しは、卸売物価については〇・一%ぐらいな下回った弱含みで推移するだろう。それから消費者物価につきましては一・一%ぐらいな上昇で横ばいでいくだろう、そういうことであったわけでございます。ところが、御承知のようにその後の物価は次第に高騰して参ったわけでありまして、八月になりますると卸売物価四・五%、あるいは消費者物価四・七%というような……。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 はっきり言って下さい、その点重要ですから。
  26. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 数字については、いずれなお事務当局からはっきり申させますけれども、というような状況でつまり上昇してきたわけでございます。で、この卸売物価の上昇の原因というものは、主として木材価格の高騰でございまして、建築材料という部門が上がっておるのでございます。その他の点につきましては、ほぼ横ばいと推定されるのでございます。それから消費物価につきましては、御承知のとおり、季節的な影響というものを除いて見ますると、いわゆる第三種産業におきます労働者の賃金高その他によりますいわゆるサービス料金の高騰というような関係において上昇をいたしてきておるのでありまして、その他の面につきましては、そう著しい変化はないと思っております。  で、今後どう見るかということでございますけれども、われわれといたしましては、今日総合的な対策を講じまして、そうして成長のある程度の抑制をいたして参るわけでございます。そこで、それらのものが全体的に当然影響してくると思うのでございますが、卸物価につきましては、木材等についてはすでに緊急な対策を講じておりますので、今日、木材等の価格が横ばいになりつつあるのでございまして、そういろ状況から見まして、今後は大体横ばい、あるいは弱含みの横ばいでいくのではないか。で、消費者物価につきましては、今申し上げましたような状況から来ている面がございますので、必ずしも低落をいたしてくるというわけには参らぬと思いますが、しかし、今申し上げたような諸般の政策が並行して行なわれて参りまするし、むろん政府としては、季節的な野菜等のものにつきまして、需給のバランスを欠くものについては特段の措置をとって参りますから、したがって、今後まず大体横ばいでいくということを申し上げて差しつかえないと思います。  なお、こまかい数字等につきましては事務当局から詳しく御説明いたします。
  27. 中野正一

    政府委員中野正一君) 数字について申し上げます。  まず卸売物価でございますが、日銀の卸売物価について、九月発表されておりますので申し上げますが、九月の水準は、ことしの三月から申し上げますというと、二・五%上がっております。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは新指数ですか、旧指数ですか、どっちですか。
  29. 中野正一

    政府委員中野正一君) 日銀の卸売物価でございます。経済企画庁の新しい指数ではございません。ただ、これは木材を除いて考えますと、三月から一・一%の上昇になっております。なお、八月と九月を比べますと、総合物価指数で〇・一%の上昇、したがいまして、木材を除きますと、八月から九月にかけまして〇・一%、木材を除いた卸売物価は下がっております。これは卸売物価が初めて九月になって弱含みに転じたものと判断をしております。なお今後、今、長官からお話がありましたように、木材を除きましては九月以降やや弱含みになるというふうに見まして、三十六年度は三十五年度に比べまして四・五%の上昇というふうに今度の中間見通しで訂正をいたしたわけでございます。なお、消費者物価でございますが、三月からどういうふうになっておるかと申し上げますというと、これは八月の数字まで出ておりますが、三月から八月までに四・七%上昇をいたしております。これは今後、季節的に食糧費等が下がってくる。というのは、この間来の豪雨、あるいは集中豪雨あるいは台風等の影響で、野菜類を中心として非常に高騰いたしておりますので、今後秋野菜等の出回り等を見まして、昨年も相当野菜は年末にかけて下がったわけであります。ただ、御承知のように、住居費でありますとかあるいは修養、娯楽、教養等を中心とした雑費、これは年々サービス料金あるいは手間賃の上昇を反映いたしまして上昇いたしておりますので、それは今後上昇するものと見まして、三十六年度は三十五年度に比べまして、消費者物価は四・七%上がっている。これは去る一月の見通しでは、御承知のように一・一%と見ておったものが四・七%上がった。ただ、公共料金等につきましては、御承知のように、閣議了解の線で相当強くおさえていっても大体これぐらいになるのじゃないかというふうに見ております。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今伺ったところだけでも、三十六年度卸売物価は四・五%上がった。政府最初、当初予算を組むときには〇・三%下がるということだったのですよ。それから消費者物価について一・一%−鉄道運賃を上げて一・一%上がる。四・七%上がるということになっている。ところが、総理府統計局の発表によると、本年度は六・七%ぐらい消費者物価は上がるであろうということに新聞には出ているのであります。いずれにしても、今後のことはとにかくあとにまたおきます。しかし、現在すでに三十六年度の予算の積算の一番基礎になっている物価とこれだけ違っているんですね、卸売物価が。この値上がりによる影響ですね、これはまず総合的に経済企画庁長官に伺いたいのですが、日本経済、貿易あるいは財政とか金融、国民生活に具体的にどういう影響を与えているか、こういう点伺いたい。
  31. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 御承知のとおり、予想しましたより以上に物価が上がりましたことはまことに遺憾でありますが、これの影響でございますが、いわゆる財政方面におきましては、御承知のとおり、政府がいたします公共事業その他公営事業等におきます単価の値上がりというような面に影響を持って参りますので、したがいまして、今回の補正予算にも若干の単価の補正を提案いたしているわけでありますけれども、そういう面において工事量というものの遂行に支障を来たしておりますことは当然でございますし、特に木材等の建築資材の値上がりというものが非常に影響が多いと思います。その他一般的な政府の需要いたしますものにつきましても影響があること、これは当然だと思います。また一般的な世間の経済活動から申しますれば、同じ設備投資をするというような面において単価が高騰してくるという面が見られますので、設備投資等におきましても、ある程度のそのために金額の増大ということはこれはやむを得ないことに相なろうと思います。また国民生活に対しまする影響というものは、卸売物価の面については、これは問題ではございませんけれども、消費者物価の面の高騰ということは、国民生活に大きな影響があること申すまでもないことでございまして、これらの面は賃金の上昇に対しましてある程度のマイナス条件にならざるを得ぬということは、これはもう率直に認めざるを得ないのでございます。特にこうした面の高騰の内容的な問題が日常生活必需品方面にありますというようなことになりまするというと、なかなか影響が重大でございまして、ただ単に指数の上で現われたよりも国民的な生活感情の上にも影響を及ぼすものでありまして、そういう点については相当重大な影響が起ってくることを心配いたしておるのでございます。したがって、物価のできるだけな高騰を防止していくということについては極力やって参らなければならぬと、そう考えております。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理に伺いたいのですが一池田内閣が、所得倍増計画の内容は二つありますが、高度成長政策と格差解消、縮小政策、格差の解消政策はおやめになったのですか、どうか。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 格差解消の一つの方法としても高度成長政策をとっておるのであります。しかし、格差というものは一朝一夕にすぐ直るものではございません。だんだんに直していかなければならぬと思っております。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 実施段階に入ってから格差が拡大しているのはどういうわけですか。
  35. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ものの見方をそう、十年計画のところを半年ぐらいですぐ拡大したとかいうことでなしに、長い目で見てもらわなければいかぬと思います。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは倍増政策の基本に触れる問題です。短期間でこれほど拡大するのだから十年間にはもっと拡大するということになるのです。具体的に拡大しているのですよ。あなた、それ否定されるのですか、総理は。実施段階に入ってからです。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 実施段階に入ってからということよりも、長い目で見て、日本経済の動きで、経済の膨張によってごく低所得階層が非常に苦しくなったということの実例は私は見ません。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなことを私聞いているのではないのです。経済企画庁長官に伺います。あるいは総理府の発表にあったかと思うのですが、所得階層別に、五階級の分位でいいです。それで本年度に入ってから所得階層別にどのくらいの所得の伸びになっているか。それは資料が発表されているはずですから、お示し願いたい。
  39. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 調整局長のほうから数字を詳しく御説明申し上げます。
  40. 中野正一

    政府委員中野正一君) 御説明申し上げます。  総理府のほうで発表しております本年の一月から七月までの可処分所得の伸び、消費指数の伸びの数字が発表されておりますので、これについて申し上げますと、一月から七月では平均で一〇・五%所得は伸びております。御指摘のように低所得のほうの伸び方のほうが少ないわけです。たとえば第一分位につきましては六・五%、第二分位につきましては七・四%というふうなことになっております。なお消費水準につきましても、これは総理府のほうのとり方が、消費者物価総合指数で一律に割り算をしておりますので、非常に影響が低所得者が多く出ているようにわれわれは観察しております。これをこういうやり方でなしに、所得階層別の消費者物価指数というものを一応試算をいたしまして計算をいたしますというと、違った数字が出て参りますが、いずれにしましても、三十五年には、今御指摘ありましたように、平均が、可処分所得の伸びが一〇・五%、第一分位につきましては一一・二%というふうに、非常にまあ低所得のほうが伸びたわけでございます。ただ、これをわれわれのほうで少し内容について調べてみたわけでありますが、三十五年度につきましても、低所得者の伸びが、上半期につきましては、第一分位が六・五、第二分位が七・七、その次が七・五、八・四、九・四という伸びになっております。ところが、下半期になりますと、これはほとんど逆になりまして、第一が一五・四%になり、一二・六、その次一〇・〇、一一・二、一四・九というふうに、一番低所得者の層が下半期に一番の伸びを示している。その結果、三十五年度につきましては、先ほど申しましたように、低所得者のほうが非常に伸びたということで、この半年だけの数字を見ては、まだ何とも、判断するのには少し早いのじゃないかというふうに事務的には判断をしております。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十六年を聞いているのです。
  42. 中野正一

    政府委員中野正一君) 三十六年上半期につきましては、今数字を申し上げましたように、低所得者の伸びが可処分所得については少ない。ただ昨年の実例を見ますと、下期になると低所得者の伸びが非常に多くなる。年度間としては低所得者の伸びがはなはだしく多かった、平均より多かったということを……。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三十六年に入ってからの数字を聞いている、第一順位から。
  44. 中野正一

    政府委員中野正一君) 第一分位が六・五、第二分位が七・四、第三分位が八・六、第四分位が一〇・〇、それから第五分位が二三・七というふうになっています。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうですか、本年の上期、一月から六月まで、この間は倍増計画実施段階が含まれている。第一分位が低所得者が六・五%しか伸びておりません。一番高額のほうは一三・七%伸びて倍以上ですね。しかも、総理は、前に所得倍増の場合に格差解消について私にこういう答弁をしたのです。所得倍増、月給二倍、賃金二倍論というのは低所得者のほうは倍じゃ済まないのだ、三倍、三倍半にも引き上げて上のほうはあまり引き上げなくてもいいのだとおっしゃった。ところが、現実はこうじゃありませんか、現実は。ですから格差解消政策は放棄されたのですかと聞いたのです。長い目で見てくれ。短期でこうなんでしょう。長い目で見るといったって、これは単なる現象として現われているのじゃないのです。自由主義の経済もとにして、力の強いもの、経済力の強いものを自由競争させれば力の弱いもののほうが負けるにきまっていますよ。そうでしょう。だから、自由企業原則、利潤追求をもととするこの資本主義の今の経済の仕組みに問題がある。どうしても格差が出る。投資行き過ぎるのです。景気変動が出る。経済の法則のとがめが来るのです。そこに問題があるでしょう。その根本を改めなければならぬ、反省しなければならないということを言っておる。あなたが口をすっぱくして長い目で見てくれ、十年後を見てくれと言っても、格差は開くばかりですよ。現実に開いているこの事実をどうしますか。
  46. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 木村さんはよほど勉強なすって、その特点々々につきましては、おっしゃるとおりに今年の上期、一月から六月までの分につきまして、可処分所得につきましては、今、中野局長が言われたとおりでございます。しかし、三十五年だって所得倍増の先駆をなしているわけでございます。三十五年の状況はどうかと申しますると、上半期につきましては、三十五年の上半期におきましては、やはり第一分位として一番下のほうの可処分所得の増加は五%何ぼでございます。しかし、下期を見ますと一五%になっている。下期は一五%、平均して七%何ぼで、やはり三十五年の実績は第一といいますか、一番下のほうが一番多いですよ。三十五年はそうなっております。三十五年は一番上は別です。二、三、四、五と一番下は……。一番上は別です。高額所得は別でございますが、五分の四のうちでは下が一番上だと思っております。だから三十六年の一−六月だけで議論をなすってはだめだ、三十五年の実績をごらん下さい。だから三十五年はやはり所得倍増の先駆をなして一〇何%の実質増、すなわち三十五年の実例をとると……。三十六年だって前年と同じような状況で、下半期が下がふえるようになるかもしれません。(「かもしれませんではだめだ」と呼ぶ者あり)ふえるようになるでしょう。だからそういうふうに、だんだん長い目で見ていけばそうじゃございませんか。所得倍増十年間の分で今ちょっと半年間違ったから全部だめだとか、三十六年の一−六月の階級別の低所得層は下だった、これが全部資本主義の欠陥だというふうに即断なさるのは少し早過ぎるのではないか。やはり大局から見て、長い判断、しかもえてして資本主義経済もとにおきましては、あなたの言われるような場合が起こりやすいということは私は認めます。しかし、それをわれわれ、片のような資本主義でなしに、社会保障制度の拡充とか、下の方をよくしようとこれから努めていこう。こういうのでございますから、今十年の前年も否定し、それから一部の、半年分だけの議論では少しこれは早過ぎると思います。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理は、少し閣内の意見とか資料を統一されたらいいのですよ。あなたが三十五年だけ言われた。三十四年はどうです。五年ほどうです。やはり長期的に見なければならない。ところが、経済企画庁で出している経済白書をごらんなさい。あの中に分配構造の変化という編があります。国民所得格差は拡大していくということがちゃんと書かれていますよ。たとえば勤労者の賃金の上昇率、三十四年から三十五年までは二三%、重役の俸給は四七%ふえているのですよ。このときに生活保護の基準が一三%しかふえていない。どうなんですか。あなた、長期々々と言うから、過去においても長期の統計をとらなければなりません。しかし私は、過去のことを論じたらこれはきりがない。もっと矛盾がたくさんありますが、所得倍増計画に入ってからの段階を問題にしているのです。倍増計画倍増計画といいますが、それに入ってから格差が拡大しているのはどうなんだと言っておるのです。たとえば三十五年において拡大してないといったら、今度は逆に三十六年度に入って拡大したのはどうなんですか、先駆をなしておる、これはもう詭弁ですよ。先駆といったらどこまでが先駆ですか。三十五年が都合悪ければ三十四年も先駆と言うでしょう。それは詭弁ですよ。政府ははっきり三十六年から倍増計画第一年目として予算も組んでいるのでしょう。いろんな各般の政策もそれに基づいてやっているのです。ですから、それはやはり詭弁ですよ。それはごまかしです。もう現実の数字はごまかすことはできない。  それからもう一つ伺いたいのです。このように所得格差が開いておる上に、消費者物価影響、これは経済企画庁に伺いたい。階層別にどういう影響が現われているか、これも数字で伺いたい。階層別にどういうふうに消費者物価影響が現われているか。
  48. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 調整局長から数字的に御答弁申し上げます。
  49. 中野正一

    政府委員中野正一君) お答え申し上げます。三十六年に入りましてからは、今御指摘がありましたように、高所得者層におきまする所得の伸びが大きいために、消費水準の伸びも高所得者層の方がやや大きくなっております。ただ低所得者層におきましても、三十六年上半期におきましては三十五年の下半期に比べて実収入、総支出もともに七・五%程度増加をいたしておりまして、物価の上昇を考慮しても実質消費水準は相当の増加となっておるわけでございます。ただその前に階層別にわれわれの方で消費者物価をはじいてみたわけでございますが、これによりまするというと第一分位につきましては二・五%の実質消費増加、第二分位につきまして二・五%、第三分位につきましては二・九%、第四分位が四・一%、第五分位につきましては二・七%という数字になっております。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは答弁ではない。消費者物価影響が階層別にどういう影響をしておるかということを聞いておるのですよ。全く別の答弁です。
  51. 藤山愛一郎

    国務大臣藤山愛一郎君) 今数字的に申し上げましたのが現実の数字でございまして、したがって、それを要約して申し上げますと……(「数字を言え」と呼ぶ者あり)
  52. 中野正一

    政府委員中野正一君) どうも失礼しました。勤労者世帯の現金実収入五分位階層別消費者物価、今年の一−七月の対前年上昇率を申しますと、第一分位が四・九%、第二分位が四・九%、第三分位が五・〇%、第四分位が五・〇%、第五分位が五・二%という数字になっております。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも経済企画庁の階層別の消費者物価影響は統計の取り方がおかしいですね。そんなはずがないのです。だって高額所得層のテレビとか自動車とかは下がっておるのですよ、そういう方の消費するものが。食糧関係が上がっておるのです。ですから低所得層に消費者物価の値上がりが大きく現われるのはあたりまえですよ。格差のいろいろ試算したものもあります。たとえば一例をとってみると、これは三十五年十一月の例ですけれども、一万円から一万四千九百九十九円の人に対する物価の値上がりの影響は、可処分所得に対する影響が三・一三%。ところが八万円から約九万円の人の影響が約一・九九%なんです。こんなに違うんですよ。所得格差が大きくなっておる上に、消費者物価の値上がりが階層別に見ると低所得層に大きく現われておる。二重の意味所得格差は拡大しているのです。所得倍増計画で格差を縮小する、解消する、こう言われましたが、いよいよその倍増計画実施段階に入って、かえって拡大しているというところに問題があるのです。もし、そうでないというならば数字を示してもらいたい。私は数字をもとにして今論じておるわけですから。そうすると公約に違反しておる。総理は短期間だから長期を見ろと言うが、短期間でそうであるから十年であればもっと格差は拡大する。そこを問題にしておりますから……、その格差をどうして直すのですか。
  54. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 木村さんは三十六年の一−六月をおとりになりましたので、それで議論を進めております。しかし、これはどうなるかわかりませんが、私は三十五年の実績を見ますと、一—六月は低所得者の方が非常に悪かったが、七—十二月は非常によかった。総体では私は低所得者の方がよくなっておると思う。私は内閣統計局の表を見ております。だから令年の一—六月をおとりになるのならば、三十五年を参考にしてもらいたい。三十四年はお話のとおり多分下の方が低かったと思います。三十四年、三十五年は変わった現象を起こしております。三十六年の一−六月というものは毎年の例を見ましても下半期によって低所得者の方が多くなる。そこで一つ議論をしてみましょう。先ほど申し上げましたように、えてして資本主義経済では上の方に厚くということになる。今までの歴史からいってそうです。しかし、われわれは現代の財政金融いろいろな諸政策から申しまして、それを古い資本主義経済でなしに新しい観点に立って、この所得格差をやるのには、やはり伸ばしていきながら、その間に調節していくよりほかに私はないと思う。そこで私は、所得が伸びる場合におきましては下の方に厚くなるような施策を今度とって、下のほうに厚くなるような施策をとるのには、やはり成長政策よりほかない。社会保障制度の拡充強化もやはり高度成長政策によって拡充強化ができると、私はこう考えておるのであります。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは総理は誤解しているのですよ。成長政策というのは、これはお天気になれば雨が降り、雨が降らねばお天気になるということと同じです。どこの国だって成長政策を否定する国はありません。いわゆる消費物資の生産がどんどんふえるのは悪いことはありません。ただ、成長政策のあり方、池田内閣の下村理論に基づいて民間設備投資をどんどんやって、企業に絶対信頼、そして企業家というものは賢明で損するような投資はしない。だからまかしておけば過剰投資行き過ぎになればちゃんと調整すると言われたけれども、それはだめだったじゃないですか。自由企業原則もとにおける所得倍増計画高度成長政策は、こういう景気の変動を起こして、そして国民物価騰貴その他でしわ寄せして、むしろ格差を拡大している。総理成長政策が格差を解消すると言っているが、逆なんです。現実に出てきているのがそうなんです。事実に基づいて私は議論しているのです。総理のこの御答弁は非常に重大ですよ。なぜならば、今後資本主義でいくか、社会主義でいくかということの、一つのこれは具体的なテストになるのですし、日本だけでなくて、後進国に対しても大きな影響が出てきますよ。後進国と言っては語弊がありますが、未開発国、低開発国に対して大きな影響が出てきます。池田さんが今度東南アジアとか方々へ行かれますが、自慢になりませんよ。日本みたいな高度成長政策、それは国内であなたは自慢していいかもしれませんが、それは失敗しているのですから、やはり低開発国の東南アジアのその他の国は資本主義の開発ではだめですよ。やはり社会主義的な、総合計画的な高度成長政策でなければだめだということを、一生懸命にあなたは証明されている、そういうことはわれわれの考え方、政策が正しいということに貢献されているようなことなんですけれども、ただ、その過程において国民の犠牲が大きいのですよ。そこで、早く改めていただけば非常に犠牲が少ないのでありますから、池田内閣でもいいです、あなたでもいいですが、われわれの主張する政策ほんとうにやってくれれば、それでいいのですが、しかし、それができないところに問題があるのですよ。  そこで、私はさらに具体的に伺いますが、これまで総理が私に答弁しました所得格差をなくす方法としては、三十六年度に減税をやり、社会保障をふやすと、こう言われました。ところが、消費者物価の騰貴によって、あるいはその他の公共料金等の値上げによって、減税も社会保障も実質的には意味をなさなくなっているのですね。この点どうお考えですか。
  56. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは意味をなさないとおっしゃいますが、私は今国民の心配しておられるのは、今後どうなるかという問題だと思います。全体的に見まして、私は、先ほど申し上げましたように、経済はよほど明るくなっている。明るくなり過ぎるので、まばゆいくらいになっていると思う。そこで、まばゆいくらいになっているから、それを直すのがほんとうだ。今の雇用の関係も非常によくなってきておりますし、そして農村の二、三男をどうしようか、こういう心配もなくて、農村は新しい産業組織に向かわなければいかぬという機運がほうはいとして湧いている。低賃金の問題も予想しているよりも、中小企業の方は今ちょっとお困りでございますが、少なくとも賃金関係におきましては、木村さんが想像しておられた以上に、私はよくなってきつつあると思う。非常に明るくなっている。それを明るいからといって戸を閉めていくというような逆コースはとるべきじゃない。この明るさを、いかにしてまばゆくならないように、安心してこの明るさを続けていこうかということが今後の問題だと思うのであります。私は、これは皮膚をもって感じたら、消費者物価が上がって因る、こういう気持があるでしょう。もちろん私もよくわかっております。しかし、それならどうやっていくか。だからそれを規制するのに、貸金の上昇も、私はある程度の生産性の向上ならいいじゃないか。そうして社会保障制度もおくれぬようにやっていく。こういった上のところで、予想以上の上の段階に行ったのを、地盤固めをするのがわれわれの政治だと思う。だから上になったから絶対だめだ、下へ下げろというわけにはいきません。私は成長はそこにあると思う。そこでまばゆ過ぎるところをまばゆ過ぎないように、これからの措置をしていってからのことが問題で、それが失敗すればわれわれの責任で、私は、今のところは行き過ぎただけで、これは逆コースに行くべきではない。まばゆいところを直していく、こういうことで進んでいきたいと思うのであります。もちろん、十年間の計画につきましては、いろいろの問題は起きると思います。しかし、われわれは過去の実績からいって、国民はこれを克服して下さる。日本国民はそれだけの能力があるので、その能力を調整しながら進めていこうというのが、われわれの考えであるのであります。消費者物価が高くなりました。しかし、それにも増して所得はふえていると私は考えております。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この自由企業原則もとですと、行き過ぎた景気変動が来たり、物価が高くなって低所得者にいろんなしわ寄せをする。そういう政策根本においてとっておいて、あと調整をするというのでしょう。大幅な赤字を出すような政策をとっておいて、それからデフレ政策をとって調整していこう、こういうのでしょう。それから格差を拡大する政策をとっておいて、自由主義だからしようがない、格差を拡大するのはあたりまえだ。そこで拡大さしておいて、社会保障だの、減税だのやる。それなら最初からそういう景気変動や、格差の拡大をしないような政策をとればいい。それが社会党の主張している政策なんです。そういう不経済なことをやらないで、最初からそういう政策を、総合計画的にやればいいのではないですか。そこが根本的に違うのです。自民党の総合政策考え方と違います。  それから次に、さらに質問を具体的にしていくために、物価の問題についてもう一つ伺いたい。三十六年度予算は、さっきのように卸売物価〇・三%下がる、消費者物価一・一%上がる。これを前提にして編成されていることは周知のとおりです。ところが、さっきの経済企画庁で説明されたように、卸売物価も消費者物価も上がっているわけです。したがって、この予算を組んだ当時と現在とでは、大きな変化がきているわけですね。各省別にこれを伺いたい。当初予算ではやっていけなくなってきているのです。これをどういうふうに調整するか。各省別にいろいろ影響があります。具体的に私は聞きたい。まず建設省、次に農林省、それから厚生省、文部省、運輸省、通産省、労働省、防衛庁、自治省、この各省に私は連絡してあるつもりです。ですから物価騰貴の各省に及ぼす影響、これは予算の編成当初と非常に違っているのですから、具体的な大きな影響がきているのです。省によってもいろいろ影響の仕方は違うでありましょうけれども、程度の差はあっても、ことに自治省関係、建設省、農林省あたりはかなり大きな影響が出ているはずです。各省別に具体的にその影響と、それからどうしようとしているのか、その予算措置を、それを伺いたい。
  58. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 建設省といたしましては、御承知のとおり全く現実として何とかしなければならない。公営住宅関係、これを最も重視いたしまして、これにつきましては今度の補正予算に単価是正を見込んでいくことに相なっているわけでございます。その他の問題につきましても関係がございますが、たとえば住宅、公団の住宅等につきましては、住宅公団の資金操作等を十分に検討をいたしまして、できるだけの方法によって予定の戸数は建設をしていくということで、今のところは、まかない得ると思っております。  一般の土木事業等につきましては、幸い資材でございます鉄、セメント等はむしろ弱含みの状態でございますが、賃金が上がっておりますることは現実の状態でございますので、これについてはできるだけ方法を研究し、あるいは機械化をはかり、設計等いろいろな角度から工夫をこらしまして、現実には事業童を縮小しなくてもやれるようにということで目下努力をいたしております。結果的に年度末にどうなるかということにつきましては、まだ見通しを立てるわけにはいかないのでありますが、予定の事業量は進め得るようにいたしたいというつもりで努力いたしております。
  59. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えいたします。  農林省所管におきましては、水産関係と植林と土地造成の土木事業、こう三つあります。そのうちで水産関係の漁港等につきましては、御承知のとおり値上がりの大きい鋼材もしくは木材の使用が非常に少のうございますので、工事の進捗にはたいして支障はございません。また、造林につきましては、御承知のとおり人夫賃の値上がり等もございますが、事業の進捗も非常に努力いたしまして早期に事業をやっておりますので、これも所定の事業は大体やっておりましてそう支障はございません。ただ、土地改良の事業につきましては、最近特に機械化いたしまして、工事の施工の期日が進んで参りまして、これもそれぞれの事業進捗に極力支障がないようにやっておりますので、差しあたり私どもの省といたしましても仕事に支障はございません。
  60. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 単価の値上がりにつきましては、今の公共事業費関係については、建設省でそれぞれ規定の単価値上がりの作業をされたわけであります。これ及び災害対策費と合わせまして、これは地方財政の起債面で百十一億を今度の予算で計上いたしておるわけでございます。なお、人件費あるいは生活保護費の関係につきましては、これも同様に計算をいたしまして、今の地方交付税の二百十三億で十分まかない得る予定でございます。
  61. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  文部省関係におきましても単価の値上がりの影響はございます。この対策としましては、義務教育諸学校の学校建築等の施設費及び工業高等学校の関係に限りまして補正措置を講ずること一にいたしております。その金額が十億六千万円でございます。大体値上がりの率は、ただいま申し上げましたような学校施設に関して申し上げますと、鉄筋で九・二%・鉄骨で一一・五%、木造が一九・五%、こういう補正率を考慮いたしまして補正予算を要求いたしておるわけでございます。なお、給食費につきましては、御案内のとおり、小麦の輸入価格が一定しております。さらに脱脂粉乳も一定しておりますので、あまり影響はございません。ただ、おかず、運賃、加工費等が幾らか値上がりがございますけれども、具体的に給食費そのものに大幅な影響は、全国的に見ますと参っておりません。ただ、遺憾なことは、一部値段を上げられない実情にございますので、カロリーをある程度落として価格を維持しているというところも見受けられますので、その範囲内においては、影響はあったかと申し上げざるを得ないと思います。なお、学用品は三%ないし七%見当の値上がりで、万年筆その他の比較的金額のかさみます学用品はほとんど横ばいでございます。でございますから、主として学校施設の建築につきまして、値上がりの影響は、先刻申し上げました程度影響を持っている。  以上お答え申し上げます。
  62. 斎藤昇

    国務大臣(斎藤昇君) 運輸省といたしましては、鉄道の建設あるいは港湾、飛行場等のいわゆる公共事業費が大部分を占めておるのであります。しかしながら、これらの工事は、比較的木材を使うことが少のうございまするし、セメントも若干値下がりをしております。労務賃は相当上がっておりまするけれども、これらの工事はほとんど機械力に依存することが多くて、労務者をたくさん使うというわけではございませんので、今日では予算単価を上げなければその事業量が遂行できないという状況ではございません。現在の状況で何とかやっていけるというふうに考えております。
  63. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 労働省の関係では、予算との関連におきましては、主として失業対策事業でございます。一部には思わしからぬ事情もございます。御承知のとおり、雇用事情が全体といたしましては割合によくなっておりますから、事業量との関連において予算が足りないというような事情ではございませんけれども、失業対策事業就労者の賃金が今次補正予算の場合において値上げになっていない、かような意味において悩みのある問題はある。そこで、これらにつきましては、ただいま何らかの形においてこういう低所得者の所得を増す措置を講じたいというので鋭意検討中でございます。他の事務費その他につきましては、これは既定予算で何とかやっていきたい、このように考えているわけでございます。予算との関連でないことで、労働行政全体の面からの悩みということになると、中小企業等においていろいろ考慮すべき問題等がある。こういう事情でございます。
  64. 藤枝泉介

    国務大臣(藤枝泉介君) 防衛庁の調達物品は、御承知のように非常に多種多様でございまするけれども、一括購入方式あるいは計画発注等を励行いたしておりまして、たとえば燃料等はむしろ予算単価よりも五%ほど低いことで契約ができております。かような結果、本年度の予算で予定をいたしました装備は十分できる見込みでございます。  なお、つけ加えて申し上げますが、九月末における調達の実績は、例年は二〇%未満でございますが、本年は三五%の調達をいたしておるような次第でございます。
  65. 灘尾弘吉

    国務大臣灘尾弘吉君) 物価値上がりの厚生行政に及ぼす影響といたしましては、特に配慮を要するものは、低所得者に対する施策であると思うのであります。これにつきましては、最近の物価の動向にかんがみまして、生活扶助基準及び児童福祉措置基準につき、今回五%引き上げによってこれに対処することといたしますとともに、その他いわゆる世帯更生資金でありますとか、母子貸付資金制度等の適切な運用をはかりまして、低所得者対策に遺憾なきを期したいと存じております。  そのほか、厚生行政中物価値上がりに関係あるものとして、環境衛生関係営業の料金問題があるのでございますが、御承知のように、現在この種の料金につきましては、都道府県ごとに都道府県知事の認可を得て業者が自主的に基準料金を定めることとなっているわけでございますから、この基準料金の決定にあたりましては、できるだけ慎重に対処するよう都道府県知事を指導いたしておるような状況でございます。
  66. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 公共事業費関係といたしまして、工業用水道事業補助金というものがございます。一部人件費等負担が増加しておる点もございますが、既定のワク内で大体消化するように努力しております。また、大部分が継続事業でもございますから、本年度予算の執行に困難というようなことはございません。また、石炭等の近代化資金の貸し付けの問題がございますが、これはもうすでに今時期が年度の半ばを過ぎておりますので、そういう意味から申しまして、さしたる支障はない、かように考えます。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 各省別に伺いましたが、今度の三十六年度の今問題になっておるこの補正予算は、大体災害関係の予算あるいは交付金とか予備費等を除いては、大部分が物価補正の予算です。そこで私は各省別に具体的に伺ったんですが、それでこの大蔵大臣の提案理由でも、建設費については単価の上昇を見ているけれども、政府は、国内経済情勢等にかんがみて、建築費関係の追加は行なわないとなっているのです。ただし、公営住宅と文教施設については補正しておりますが、そのほかはやらないことになっているんですね。その影響を聞いていきますと、みんなこれに合わせるように言っているのです。物価は上がっていることは事実です。ことに建築費はうんと上がっている、これは事実です。そして特に緊急を要するものとして、公営住宅と文教施設は補正せざるを得ないものとして出ている。しかし、この単価で十分な補正ができているかどうかは問題です。この調査したものもありますけれども、特に私は今の答弁で無責任と思ったのは自治大臣ですよ、あなたの答弁は、今の自治体がどんなに今の物価の騰貴で困っているのか、実情はあんた御存じのはずです。学校建築あるいはその他の建設が計画を変更せざるを得ない。競争入札をやると、ほとんど入札がもう成立しない。それで随意契約を、しょうがないからやる。二流三流のところにやらざるを得ない。今自治体は非常に困っているのです。物価騰貴の、ことに建築費のそのことについてはちっともあんた述べていない。実情はお知りになっているはずだけれども言わない。  それから農林省関係については、木材の騰貴が一番の物価騰貴の原因になっているでしょう。農林省の木材対策はどうしているのですか、この点については一言もあんた触れないじゃないですか、無責任ですよ。林野行政は一体何をやっているのです。木材の需給関係、木材価格、建築費の大幅の今の騰貴の根本原因じゃありませんか。これに対して何の手も打ってない、こんな怠慢なことがありますか。それで物価の問題を聞けば、一番肝心なことを言わない。一体この補正はしなくてもいいのですか。各省も今の話によると、大体物価補正はしなくていいように聞えます。そんならば必ず事業量の縮小になって現われますよ。これはあたりまえのことです。これは事業量の縮小になります。そうすると、最初の当初予算と実態が変わってくるのです。実態が変わってくれば、われわれが予算を承認したときと実態が違うわけでございますから、これは非常に無責任なことになるわけです。だから当初予算をわれわれが承認した——われわれは反対いたしましたが、成立した当時その前提になっているものと狂ってきているわけでございますから、それについて補正するのがあたりまえと思う。大蔵大臣に伺いたい、なぜ補正をしないのか、財源がないのか、その原因について伺いたい。
  68. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) 特に木村さんから木材の値上がりに対する対策を答えろというお尋ねがありませんからお答えしなかったのでありまして、これは非常に無責任だということでありますから一言お答え申し上げます。  御承知のとおり、卸売物価におきまして、また、ただいま御指摘のとおり、最近の物価値上がりの中で最も木材の値上がりは大きい。これは建築その他で非常に需要が多いのでありますから、その関係で木材が非常に値上がりを来たしておりますことははなはだ遺憾に考えまして、大臣就任以来、鋭意木材価格の騰貴を押えることに全力を上げて行政を進めているわけでございます。幸いにして、木材の値上がりは御承知のとおりとまった。むしろ一部は気配がゆるみがちになっております。たまたま最近の第二室戸台風で一時的に需要が増しまして、最近また一部強含みでございますが、私はこの臨時の需要が通過いたしますれば、現に林野庁において公有林あるいは民有林の相当の増伐の計画も立て、現に産地より消費地に輸送されておりまして、輸入材につきましても相当増加いたしておりますので、順次木材の価格につきましては下がる傾向にある、また、下がるものと期待いたしております。そういうわけで決して放擲いたしているわけではないのでありまして、できるだけのことをやっている、しかもこのために減税の措置に加えて林道の増設、その他の必要な施策も考慮を加えているのでありますから、その点御了承を願います。
  69. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 起債のワクを広げることによりまして、災害対策費とそれから公共事業の住宅と学校関係の地方の負担を補強すると申しまして内訳を申しませんでしたが、災害対策が九十億、それからその他の値上がりに伴うものが二十一億の起債のワクを上げているわけでございます。なお、御承知のように、地方財政は国の財政と違いまして、一つ一つを積み上げて計算するというわけに参りません。現在、交付税の配分につきましても、いわゆる分割法人の割当の再検討、追加配分をやっておりますし、いわゆる地方税の増収というものもありまして、今日予定されました地方計画というものを遂行することには不自由はないと考えております。
  70. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはずいぶんまあお義理の答弁ですが、それは基準財政需要の単価の問題、それから補助単価の問題と、これは大きな問題ですよ。しかし、その点をこまかく質問すると時間なくなりますから、これはまた別の機会に質問します。  それから、農林大臣が今、万全の策をとっていると言いますが、これはこの前、国有林野事業の特別会計改正のときに指摘したんですよ、われわれは。あのときは周東さんが農林大臣でしたか、それで、大体今までの農林省のこの特別会計のやり方自体に問題があるんです。これは総理も聞いておいていただきたいと思います。それは、大体森林資源の蓄積維持がこれまでの方針であったのです。木材の需給関係とか、価格安定というものを第二位にしておった。そういうことがやはり今日の木材価格を騰貴させる、全部じゃありませんが、大きな原因になっているんですね。そういう点に今後改正を加えていこうとして、この間国有林野事業特別会計の改正をやったのでありますけれども、しかし、今度また、そのこと自体がまた木材価格を騰貴させるんですよ。というのは、民有林に協力するとして、積み立てしなきゃならぬ。そこで、どうしても国有林はもうけなきやならない、利益をうんと出さなきゃならないので、木材価格の騰貴を期待するような傾向になる。あるいはまた、森林地主に対する今の税金の優遇措置によって、過熱林の切り惜しみというものが非常にあるんですよ。ところが、今度木材の需給を調節するので民有林を切らせる、その政策のためにまた税金面から優遇措置を与えようとしているんですが、これは逆ですよ。それをやると、ますます売り惜しみ、切り惜しみしますよ、今までの政策がそうなんですから。これは需給の安定になりませんよ。逆になります。過熱林の切り惜しみになります。この点はまたあらためて質問いたしますが、今のは木材価格を安定させる御答弁に十分なっておらないと思うのです。  そこで、大蔵大臣、とにかく各省別に聞いても、全然物価騰貴の影響がないわけじゃありません。今、非常に不十分でありましたけれども……。それで、十分に物価補正をしてないわけですね、今度の補正で。その点を伺いたい。
  71. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは、予算と物価の関係は、もう大村さんも御承知のとおり、予算編成の際におきましては、その当時の物価と実績、こういうものを基礎にして積算する。そうして予算をきめますが、さて、この実行というときになりますというと、各省がいろいろな調整や操作を加えて実行の単価をきめて、そうして最初の目的の事業を遂行するということになっております。これは毎年そうでございますが、今回の場合は、特に今度の措置によりましてどうしても必要なものはやりますが、少し時期を延ばして着手していいというようなものの繰り延べ措置も相当多くやるということを各官庁できめたようなわけでございまして、したがって、必要な事業はこういう形でこういう単価でやればやっていけるというようなものを、各省ごとに折り合って仕事を進めていくというようなことで、大体弾力的な運営によってしのげるということになりましたので、全般としての予算の補正ということはいたしませんでした。ただし、その場合にどうしても低所得者対策としての公営住宅の問題とか、それから義務教育の教室の問題とか、こういう問題については内容的にこれを操作することが非常にむずかしい問題がございましたので、こういう問題についてだけは、これは予算補正をせざるを得ないというので、こういう問題にしぼって、ほかのほうは予算の弾力的な運営によって切り抜ける、またこれが各省ごとの相談によってやれるという見込みがつきましたので、この予算の補正はいたしませんでした。
  72. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後は補正しますか。
  73. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今後の問題は、御承知のように、いろいろな措置をとることによって行き過ぎ設備投資を押えるし、物価も上げないというような政府は方針をとるつもりでございますから、ただいままでは困難はございましたが、今後の問題は今までと同じような形で切り抜けていけるという見通しでございます。
  74. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 財源の点はどうなのです。財源にやはり限界があるという点も十分な補正ができないという一つ原因になっているのですか。どういうふうにお考えですか。
  75. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財源の問題というよりは、むしろこういう経済情勢でございますので、工夫をこらして目的事業が遂行できるなら、できるだけそういう操作や調整でやりたいという方針で、財源の問題ではございません。やはり今の経済情勢に即応して、この予算を増額するということをやりたくないという考えから出ております。
  76. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうでしたら、どうして生活保護基準を五%引き上げにとどめたのか。あるいはまた、人事院勧告の給与の実施を、またどうして延ばしたのです、昨年のように。財源にやはり限界があるので、こういうことをやったのではないのですか。
  77. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 生活保護基準の変更も、これは予算の建前としたら、本来ならばこういう大きな政策的な問題でもございますので、これは新しい予算の編成期において考慮されるのが本筋だと思いましたが、しかし物価高という現実の問題が出ておりますので、特に生活保護階層の方に対しては、この際物価の上昇率を勘案して五%程度臨時に引き上げることが妥当である、こういう判断から特に例外的に行なった措置であります。
  78. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 人事院の勧告のほうは。
  79. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 人事院勧告を十月から実施したという問題は、この間参議院本会議でも御答弁しましたとおり、諸般の事情を考えて、昨年の例にならって十月一日に実施するのが妥当だという判断で決定した次第でございます。
  80. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 諸般というのは、それは財源も一つの理由になっているのですか。
  81. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 財源の問題もございます。それはひとり国の財政だけではきめられない問題でございます。この措置は同時に地方公務員のベース・アップということに続くのが従来の慣例でございますので、地方財政の実情というものも勘案しなければならぬ。いろいろそういう問題を総合判断しての上の決定でございます。
  82. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうでしょう。財源については言えないと思うのですが、そこで三十六年度の自然増収はどのくらいお見積もりですか。
  83. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 三十六年度の自然増収はどのくらいあるかという問題ですが、私どもがこの夏ごろまでに予想した一応の見通しというものはございましたが、御承知のようないろいろな措置政府はとることにしましたので、これからの推移を見ないというと、正確な自然増の予想がつかない。いずれにしましても、今回の補正予算の金額は九百億、約一千億でございましたが、これは今見込まれる確実なものとしましては、もう少し財源が見込めることは事実でございましょう。今後の問題というものはそう簡単に予測がつきませんので、今のところどのくらいあるかということは申し上げかねる段階でございます。
  84. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これまで総理にたびたびやはりこの自然増収の見積もりについて伺ってきたんですが、政府は何回も誤まりを犯してきて、倍増政策の、あるいは経済政策見通し誤りと同じように。私の計算では少なくとも三千億は見積もれます、少なくとも。前に私はぴったり当たったので言うわけじゃありません。それは何も、計算していけば当然なるんですよ。それを意識的に私は過小見積もりをやっていると思うのです。それはいろいろな理由があるでしょう。財源をたくさん出すと、自民党の人たちが予算をよこせ、よこせと言ってぶんどるんで、そうなっちゃ困るというので、隠しておくという手もあるかもしれませんが、しかし見積もりが百億や二百億の違いなら、それはいいんです。今度の補正で九百九十七億組んで、それ以外に私はまだ二千億は自然増収見積もれますよ。これをどうするんですか。これだけまた自然増収の見積もり過小をやり、それがまた金融面だって私は非常に圧迫をすると思うのです、引き揚げ超過。それで、貿易は赤字だから、その上にまた金融が締まる。さらにその上に金利を上げる、高率適用あるいは預金準備率を上げる。そういうことで、うんとまた金融を圧迫するでしょう。そういういろいろな影響があるんですよ。私は二千億見積もれます。総理、どういうふうにお考えになりますか。
  85. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 所管の大蔵大臣が答えたとおりでございます。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二千億円について聞いているんです。
  87. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この租税の収入というのはなかなかむずかしいので、まあ今度の措置をとらずに今までのようにずっとやった場合と、こういう緊急措置をやった場合と、よほど違ってくると思います。相当今変動しております。普通にいけば、それは木村さんはその道の達人でございますから、そのくらいいくかもわかりません。ただ、事情がだいぶん変わってきつつありますから、なかなか見積もりがむずかしいと思います。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いつも将来に属することになるとぼかしてしまうのですが、今まで何回もこれは私はくどく、自然増収のことばかりしょっちゅう取り上げるのはいやですよ。まあ自然増収屋みたいになっちゃっていやですけれども、それは政府が百億や二百億の見積もり違いじゃないんでありますから、とにかく池田内閣になってから間違える規模がでっかいですよ。国際収支は十億ドルでしょう。そして昨年度は自然増収の見積もり違いが大体三千億——二千九百億ですな。ことしは三千億あると思うのです。それだけ財源——これは国民から税金を取り過ぎているんでしょう。これを一体どうするのか。公務員の給与を五月にさかのぼって、ここで実施せよと人事院は勧告している。財源がないとは言えないのです。あるのです。それだのに延ばしてしまうでしょう。生活の扶助の基準だって、五%の引き上げで厚生省はがまんできるはずがないんです。前に大蔵省に予算要求をしたときは、二〇何%を一〇何%に切り下げられているんですから、これだけ財源があれば、なぜ主張しないのですか。財源がないわけじゃないんですよ。税金を取り過ぎているんですから、あるいは国民に返すか何かに使うかしなければ、また金融政策としても引き揚げ超過、こんなへまなことをやっているんです。それでいいんですか、大蔵大臣。
  89. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まだ今のところ過小評価しているわけではございませんし、今までの政府の見込みは、確かにときどき違ったことがあるかもしれません。そうじゃなくて、事実ほんとうに見込んだだけ税収があがらなかった年も四、五年前にはあったとおりでございまして、たとえば、よくなるときにはいろいろなものが一斉によくなって、税収見込みが違ってくる。収納率において、たとえば三年間に納めればいいと納税の余裕を与えておった人が、一度にみんな納めてくるというようなことになると、これはもう相当な見込み違いで、これだけは取れぬものと予定しておったものが、一度にみんな入ってくるということもございます。また、経済の引き締めによって苦しくなり、今まで一度に納めると言っておった人でも、今度は何年間にこれを納めるように猶予してくれという問題が出てこないとも限りません。こういうことがちょっとでも行なわれますと、そこに大きい見込みの変化が出てくるものでございますから、今のところもう少し推移を見なければ、これがどのくらいの自然増になるかということは、やはり私どもとしては言えないと思います。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これはまた、あと事実が証明すると思います。  それでは、物価の問題についてはこの程度にしまして、国際収支赤字影響について伺いたいのですが、特にその中で大幅な赤字の出現した結果として、金利を、日本銀行の金利を上げざるを得なかったということは、一つの大きい影響だと思います。そこで、私は山際日銀総裁に、お忙しいところ御出席願ったのですが、まず総理に伺い、それから日銀総裁にも所見をただしたいと思う。  まず、総理に伺いたいことは、日本銀行が公定歩合を上げる場合、事前に政府がこれを漏らしていいかどうか、この点についてまず伺いたいと思います。
  91. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この問題は大蔵大臣の所管でございますから、大蔵大臣からお答えいたします。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは事前に漏らすべき問題ではないと思っております。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ところが、政府は事前に漏らしているのですから、その責任はどうしますか。
  94. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 政府というのはどういうのか知りませんが、少なくとも責任者である私に関する限り、公定歩合の問題は事前に云々したことは、いまだかって一ぺんもございません。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、政府を代表して総理に伺います。内閣記者団に官房長官が、二十八日の午後四時五十分に、公定歩合の引き上げを発表しております、決定したことを。それは事実でしょうか。それで、そのとおり総理は御承知と思うのです。官房長官がそういう発表をされているのですから、御了解与えておると思うのです。
  96. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は大蔵大臣から聞いたのがあの日の三時過ぎ、三時半か四時ぐらいだったと思います。その事実はございます。三時半か四時ごろだったと思います、大蔵大臣から聞きましたのが。それは官房長官に申しました。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 山際日銀総裁に伺います。二十八日の政策委員会は何時ごろ蚕で聞かれて、何時ごろ散会されましたか。
  98. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまのお尋ねにお答えいたします。私の記憶では、正確なことは覚えておりませんが、大体四時ごろ全員参集いたしまし出て、約一時間ぐらい討議して終わったように記憶しております。
  99. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四時ごろ参集して一時間ぐらいかかったら、五時ごろ散会しているはずでしょう。五時ごろ結論が出ているのですね。その前に、三時か四時ころか—総理はそれを三時ころと言い、あるいは四時ごろと言う。どっちでもいいのです。まず政策委員会が開かれる前ですよ。それを総理が大蔵大臣から伺って発表しているのです。四時五十分に発表しているのです。そうして政策委員会はまだ開かれて結論が出ていない。これは影響大きいですよ。株にも影響しますし、いろいろな方面に影響するのであって、こういう公定歩合の引き上げは、これはもう非常に慎重に扱うべきものです。しかも政府が発表するという——私も新聞記者をやっておりました。日銀記者をやったことがあります。政府から日銀の公定歩合の発表を首相官邸で聞いたなんということはありませんよ。日銀で、大体、総裁に会って聞くのです。今度は異例のことです。異例に属しますね。こういうことは政府はいいことだとお考えですか。
  100. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、この公定歩合の決定につきましては、他の機会に申し上げましたごとく、大蔵大臣と日銀総裁できめるべき問題である、自分はタッチしない、こう言っておったのです。これは堅持しております。私は大蔵大臣から、四時半ごろに発表するということを聞きました。それで官房長官にそれを言ったのでございます。事情につきましては大蔵大臣からお答えいたすと思います。
  101. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) こういう問題は、御承知のとおり政策委員会がきめるべき問題でございますが、大きい問題は日銀と政府は一体になっていろいろな意見の調整も行なうのが例でございまして、私どもも政策委員会がこういう方向で行くという連絡を受けて、それがきまった場合には、お互いに四時半に発表するということでございまして、これが交通の事情やその他ございましたそうですが、打ち合わせの時間がずれたということでございまして、そういう約束のもとでございましたので、政府側としてそういうことの見込みだと大体言ったものと思います。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 とにかく食い違っていることははっきりしていますね。四時五十分に発表した。ところが日銀の政策委員会はまだ終わっていない。四時ごろ開かれて一時間くらいで終わっているというのですよ。ですから、政策委員会の結論が出ていない前に、官房長官が発表していることなんです。事前に漏らしていることなんです。これは単なる形式の問題じゃないのですよ。今度の利上げについては非常に政治的な問題が介入しておるのであって、非常に不明朗ですよ。それがはっきりと具体的に発表の形に現われて、政策委員会できまらないうちに政府が発表した。これは単に形式の問題じゃありません。日本銀行の自主性はこれで確保できますか、こんなような形で。私は山際日銀総裁に伺いたいのです。
  103. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまのお尋ねでございますが、私どもとしましては、どこまでも日銀の自主性、法律に定められた自主性に従って行動しておるつもりでございます。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはもう山際総裁は自主性はあくまでも貫くと言われているが、実際に自主性が侵されているのです。今の発表のことについては、あれはいいことですか。日銀政策委員会できまる前に政府で発表している。官房長官が発表している。そういう発表の仕方は正しいとお考えですか。
  105. 山際正道

    参考人山際正道君) ただいまのお尋ねの点は、私どもとして全く望ましくないことは申すまでもないと思います。
  106. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 日銀の自主性がそこなわれておるというようなお話でございましたが、こういうことは、私から申し上げておきますが、これは実際ございません。日銀の政策委員会がきめる問題について、私どもがこれに賛成をしたということで、この発表の時間が狂ったということでございまして、本体については、日銀の考えておることを私が賛成したということでございますから、日銀の自主性に関した本質的な問題ではございません。
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは詭弁です。もうわれわれは知っておるのですよ。実情を知って質問しておるのですから、正直に答えていただきたい。ただ、この予算委員会でやりとりして、それで問題を済ませるという問題じゃないのです。政策委員会では政府のその利上げについては反対だったはずです。いわゆるトロイカ方式と称して、公定歩合の引き上げと準備率の引き上げ、高率適用の率の引き上げ、これをトロイカ方式と呼ばれております。これには反対があって、むしろオーソドックスに考えて、二厘ぐらいの利上げ一本でいくのがよろしいのじゃないかというのが政策委員の大方の意見であったと聞いております。そこで池田総理は、二厘利上げをすると、政策転換であると、そういうような非難を受けるといけないからというので、一厘にしてトロイカ方式にしたと聞いております。そこで大蔵省がそれを日銀に押しつけたような格好になっておるようにわれわれには見られるのです。そこで、政府のほうで先に発表しちゃっておる。政策委員会もまだ議論しておったのです。トロイカ方式かオーソドックスの利上げか、結論がつかないうちに政府が発表しておる、こういうことになっておる。ですから実質的において日銀の自主性をそこなっていないと言いますけれども、政策委員会考えに対して、政府は、私は押しつけをやっておると思うのです、実際においてですよ。そういうことは日銀の自主性をそこなうものだ、これは私は事実だと思うのですが、総裁、そういうことになっておるのじゃないですか。その間の経緯をちょっと伺いたい。
  108. 山際正道

    参考人山際正道君) 日銀公定歩合の変動の問題それ自体、なかなか重要な問題でございますので、今回の場合においては各方面から非常にたくさんの議論が出ておりますことは御承知のとおり。したがいまして、常に私どもといたしましても、なるべく各方面の意見を尊重いたしまして、それを十分な参考といたしましてやっておるわけでございます。しかし、最終的に決定いたしますのは日銀自身でございます。参考としては各方面の意見を十分尊重して聞いておるのですけれども、決定自体は、私は自主的にやったと言って何らはばかることはないと確信いたしております。
  109. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣どうですか。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その問題で、今、総理大臣が引き合いに出されて大へん申しわけないと思っておりますが、公定歩合の問題について総理大臣は一切この問題で私に対して関与した事実もございません。私の責任でやりましたが、日銀の自主性の問題については、先ほどお答えしたとおり、日銀の意向に私は賛成したということでございまして、日銀の自主性を実質的にそこねたという事実はないと思います。
  111. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 佐藤通産大臣に伺いたい。新聞の伝えるところによると、通産大臣は利上げに反対だったというふうに新聞に伝えられておりますが……。
  112. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 利上げに賛成だとか反対だとか、いろいろ新聞記事に出ました。本来、私どもがとやかく申す筋のものでは実はない。新聞からいろいろ聞かれますと、私ども口を緘するつもりでありましても、なかなか功妙な記者にかかって引っ張り出されることはあります。そういう場合に、必ずしも真意を伝えておらない場合がございます。たとえば私に対する質問に対して、公定歩合の引き上げ、これに賛成かどうか。私は公定歩合の引き上げはきらいだ、だれか好きな人がおりますかという話が出た。ところがそれが反対だというふうな意見に報道されたわけでございます。もともとこういう事柄は、もちろん先ほど来お話がありますように、日銀、大蔵で決定することでございますし、他の省が関与することではございません。新聞等に出ましたのは、ただいま釈明いたしますが、以上申したような経過で記事が出ているわけでございますので、御了承いただきたいと思います。
  113. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理に伺いたいのですが、金融政策の一環として、日銀の利上げの問題、利上げ問題ばかりでなく、準備率の引き上げとか、あるいは高率適用の問題とか、いろいろそういう問題がありますが、これは非常に影響するところが大きいわけです。あまり政治的にこういう問題を私は取り上ぐべきものではないと思うのですが、この点について総理のお考えを伺いたい。  それからこういう利上げをせざるを得なくなったということは、これまで政府は低金利政策をとってきたわけで、それが所得倍増計画の金利政策の面における一つの大きな柱であったわけです、低金利政策というものが。それがここで転換するわけですから、大きな政策転換の一つの基本になるわけです。ですから、これははっきりと私は政策転換であると思うし、その影響は、もう金融面においてかなり深刻になってきているのですよ。総理は、デフレはとらぬ、とらぬと言っておりますが、デフレ的影響が起こってきているのです。その責任について、政府政策誤り見通し誤りから利上げをせざるを得なくなり、金融を締めざるを得なくなり、それで深刻な影響がここに出てきているのです。金融面のそういう影響についての責任をどういうふうにお考えになりますか。
  114. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 公定歩合の問題につきまして、いろいろ私も経験がございますが、大蔵大臣時代に、公定歩合の引き下げ、引き上げは、私たびたびやりました。総理大臣に相談したことはございません。事後報告でございます。したがいまして、今回の問題、七月の引き上げのときも関与いたしておりません。全然私は関与いたしません。そしてその次のとき、改造前でございましたか、問題がやかましくなった。新聞に出るようになりまして、閣議後、私の部屋に、大蔵大臣と迫水企画庁長官二人が入って来られまして、公定歩合の問題がやかましくなりましたが、総理どうですかと言うから、私はそういう問題には関与しませんよと、総理大臣はそういう問題に関与することはない。自分は大蔵大臣時代に総理大臣に相談したことは一ぺんもありません。どうぞ大蔵大臣お聞き下さいと、こう言ってやったわけです。それをいろいろ揣摩憶測してやられるということは、私は総理大臣として、まことに不徳のいたすところといいますか、ほんとうに困るのでございます。  それから公定歩合につきまして、私は大阪で聞かれましたときも、ふふんと言っております。どっちとも言いません。これは、佐藤君のように政治的に言われるとかえっていかんと、ふふんと言って、何にも言葉は出さない、こういう工合に努めてやって参りました。  それから公定歩合の引き上げということにつきまして、いろいろ議論はございます。私は経済学者でも何でもない、数字とかなんとか言われるが。私の今の公定歩合の考え方は、これは昔のオーソドックスな考え方とは違ってきておると思います。ことに今、日本の置かれた状況から見まして、公定歩合はオーソドックスな人が考えるほどそう力があるものだとは思っておりません。しかしこれは考え方で、公定歩合によってよほど違うと思われますが、公定歩合はよほど政策を持つものだ、影響するものだと思いますが、実際はそこまでいっておりません。ことに、この公定歩合は、昭和三十二年のときのような、思惑輸入とかなんとかいうときには相当響きます。設備投資の場合、もう各社が国内競争的にやっているときに、一厘や二厘の問題で設備投資を押えるということはなかなかむずかしい。ないよりはよろしゅうございます。しかし、これのみに頼るわけにはなかなかいかない、今の状態から申しますと。そういう私は観念を持っておりますから、大蔵大臣におまかせしますと、そういうふうに努めて逃げておった状況でございますので、御了承いただきたいと思うのでございます。
  115. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 われわれ、こまかい内部の事情については知るよしもないのですが、新聞とか、あるいは雑誌等、いろいろ伝えられるところによりますと、今回の利上げについては、非常に政治的に取り扱われておる。日本銀行の自主性は、これは寒心にたえない、こういうふうに観測されているわけです。したがって山際日銀総裁におかれては、あくまでもやはり日銀の中立性、自主性というものは貫いていただきたい。日銀総裁については、国民はかなり信頼をしているのです。人格その他非常にりっぱな方だと私は思っております。それで、強引な政府政策に押されて^巻き込まれるということは絶対に避けていただきたいと思います。これで総裁に対する質問を終わります。どうもありがとうございました。  次に伺いたいのですが、金利政策の内容については別の機会に伺いますが、問題は、物価値上がりとかあるいは大幅の国際収支赤字出現等の問題が出てきたわけです。これを総理は、今後どういう手順で、いつごろまでにこの跡始末、調整をされようとしておられますか、その考え方を伺いたいと思います。
  116. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) どうもこういう問題は、総理自身が先走るよりも、やはり各省々々の所管事項で、その閣僚がお答えになった方がいいと思いますが、私は、施政方針演説で申し上げましたごとく、今は行き過ぎておる、いろいろな手でこれを押えております。そしてなるべく早い機会に国際収支の均衡というものを見出したい。たとえば来年度で、一年を通じてというわけにはいきません。また、いつぴしゃっと、というわけにはいきません。三十二年のときのように、思惑輸入が主たる原因の場合におきましては、これはかなり正確にいくと思うのでございます、信用状その他から申しまして。しかし、こういうような設備投資とか、内需も輸入も非常に……、あるいは輸出もなかなか思うように伸びないというときには、これはそういついつということは言いにくいと思うのでございます。私の考えとしては、今のような措置をとり、そしてその措置の結果を見ながら・来年度の予算の組み方等々によりまして、私は国際収支の均衡というのは、来年の終わりごろにはその月だけの均衡はやれる、年を通じては別でございます。それからまた国際収支の均衡ということも、どこを基準にしていくかというと、貿易収支の均衡というのはなかなか経常収支だけではむずかしゅうございます。しかし、御承知のとおり日本国際収支には資本収支というものが相当大きい部分を占めております。また、日本ばかりでなしに、イギリス等もまたそうでございます。資本収支というものがどうなるかということが相当重要な問題でございます。資本収支の問題は、外資導入その他借款等々いろいろな問題がございますので、私はこういう問題は、自分の見通しとしては、各省大臣に来年の秋ごろは均衡という方向で進んでいこうじゃないか、こう言っておるのですが、いかなる施策を講ずるということにつきましては、各省所管大臣からお答えするのが適当だと思います。
  117. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は総理が衆議院におきまして御答弁しておりますので、それに基づいて質問しているわけです。総理は大体来年の十一月か十二月ごろまでには国際収支の均衡をさせたい。しかし年度を通じてはかえって赤字になる、二億ドル、三億ドルくらい。それは大体総理もお聞きになったと思うのですが、勧銀の調査ですか、あれなんか見ましても、大体総合収支でも二、三億ドルという赤字が出ております。しかし、それでは鉱工業生産を、大体来年度は三十六年度の横ばいぐらいにしていかないと、そうならない計算になります。その鉱工業生産を横ばいにしていきますと、成長率は五%以下になると思う。ところが総理は五%になると非常なデフレになるから、自分は五%をとりたくないと言っておられます。そうすると五%以上、企画庁では七・二%程度に下げるというふうに聞いておりますが、そうだと来年秋には国際収支の均衡はとれません。この点、どういうように総理はお読みになっているのか。もし、来年十一月、十二月に均衡をとろうとすると、かなりひどいデフレ政策をとりませんければ私はそうなりませんと思いますが、この点どうですか。
  118. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そこで、木村さんの計算はまだ見ておりませんが、勧銀の計算につきましては私はふとしたことで見ましたところ、在庫投資一つもふえぬのであります。在庫投資一つもふえぬということは、かなりのデフレの考え方で行っておる。これは私は勧銀の調査が間違いだと思います。在庫投資が一切ふえぬ。今まで八千億とか七千五百億ふえておる。あるいは昭和三十二年の時期には在庫投資が減っておりますが、ああいう状態が起こることがいいか悪いかという問題でございます。そういう問題は、私は今後の問題として考えたいと思いますが、在庫投資一つもふえぬということにはならないのじゃないかと思います。ゼロというわけにはいかぬ。  それからもう一つは、この鉱工業生産の成長は、横ばい——今の三十六年度に比べて二八八—二九〇程度でずっと、私は三月ごろまではそれで横ばいでいくということを予想して——いくとは言っておりません、いくことを予想して、今年度国民総生産が十六兆五千億、これは予定して、想像して、そうしてその想像した分が三十七年度におきましてもずっと横ばいでいくかどうかということはもっと経済情勢を見なければいかぬと思います。これをどの程度、いつごろから上げていくか、そうして鉱工業生産が三十六年度に対して三十七年度がどのくらいでいくかという問題でございますね。五%ということになると、鉱工業生産は三十六年度に対して一〇%以上ふえるというわけに参らぬでしょう。そうすると、結局、鉱工業生産がどれだけ上っていくかということと、もう一つは輸出をどれだけやるか、海外投資をどれだけやるかということも問題です。それから在庫投資と輸出、そうして海外投資、これがやっぱり鉱工業生産をきめる場合の相当のファクターになるのでございます。で、個人消費をどう見るかということも問題でございましょう。しかし、個人消費の問題は、これは大体、年九%ないし一〇%に見ております。ことしは二三%になったんでございます。この個人消費の問題も出てきます。それからまた、木村さん専門の財政投資の問題も出て参りましょう。そこで、鉱工業生産だけはどうか。こうやったらデフレになるのだという断定はなかなかむずかしい。各アイテムを見、そうして今後日本の貿易で輸出をどれだけしていくか、それから海外投資、プラント輸出をどうするかという問題等が相当のキー・ポイントになると思いますから、鉱工業生産だけを取り上げてやるということはなかなか議論にならないと思います。
  119. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 木村さん、ちょっと申し上げますが、あなたの持ち時間は十分に御利用になったことになっておりますから。よろしくどうぞ。
  120. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよっと伺いますが、総理はどのくらいの在庫投資を予想されておられますか。
  121. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 勧銀のようにゼロと見込む人もありましょうし、去年、おととしのように八千億程度と見込む人もありましょうし、あるいは最近では企画庁も今年度七千五百億に見ておると思いますが、あるいは来年は七千億と見る人もありましょう。これは今後の状況を見てでないとなかなか計算はできにくいことでございます。
  122. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 在庫投資を七千五百億、八千億見込みましたら、在庫投資輸入依存率をかりに二五%と見ても五億ドル以上の輸入がふえる。そんなに輸入がふえて、そうしてその来年の十一、十二月に収支の均衡をとるということは不可能ですよ。ですから、総理はそこに矛盾があるのです。在庫投資を八千億見込んでごらんなさい。輸入依存率を二五%として五億七千万ドルが輸入増加の要因になるのです。この点が非常に矛盾しているのです。ですから、もし来年の十一、十二月までに均衡をとろうとすれば、非常なデフレ政策をとらざるを得ない。成長率は五%以下にならざるを得ないのですよ。もしそうでないとすれば、これは国際収支均衡はとれません。総理の言うように、非常に長期にかかります。昭和三十二年と違うところは、三十二年は思惑輸入で原材料がたくさんあったわけですね。ですから金融措置で、ただ輸出をする場合には輸入をふやさなくていいわけなんです。ところが最近は在庫率は大きくないのですよ。思惑輸入じゃないのですよ、設備投資ですから。輸入したものはみんな消化して食っているわけです。ですから輸出をふやそうとすれば輸入がふえるのです、どうしたって。ですから国際収支の均衡はそんなに簡単にとれませんよ。特に在庫投資を八千億見込むといったら赤字はなかなかなくなりませんよ、七・二%、八%でいけば。この点からも倍増計画は非常な失敗ですよ。危機に陥っている。この点、非常に矛盾していると思うのです。小松さんに対する総理の御答弁矛盾しています。いかがですか。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国際収支を来年秋に均衡さすためにはいろんな施策があります。私は来年の在庫投資を八千億と言った覚えはありませんよ。今言ったように、見る人は八千億という人もあります。あるいはゼロと言う人もあります。ゼロということになると相当デフレになりますよ、と、こう書っておるので、私は来年の在庫投資を八千億と答えた覚えはありません。そういう在庫投資が幾らになるかということは、国内の個人消費、財政消費、そうして輸出、輸出もブラント輸出をどうするか等々から考えていかなければなりません。あるいはおっしゃるとおり三十二年度においては思惑輸入があった。今は、思惑輸入はないと言う人もあります。それは輸入原材料の在庫率というものは、これは大体平均で一カ月前後であります。しかし、非常に生産が伸びておりますから、絶対額は非常に多いのでございます。多いのでございますが、在庫率ということになりますと、絶対数量は多くてもパーセンテージは少ない。そこで今度は、生産が今のようにずっと上がらずに横ばいとか何とかいうことになりますと、在庫率を上げる。しかもこれで見ますと、港湾施設その他でかなりの、為替ではもう支払いにのっておるもので、まだ在庫になっていないものが相当あるやにわれわれも聞いております。それを見まするというと強気の議論が出てくるのであります。その、船その他にあるものを幾らに見るかによって強気はあくまでも左右されるわけであります。こういうことでございますから、今のようにここ二、三カ月の様子を見なければ、なかなか来年の生産の伸びとか個人消費とか財政のあり方等々につきましては結論を見出すことは早過ぎるのじゃないか、こういうふうに思っております。
  124. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間がなくなりましたので最後に、今度の国際収支改善対策について、一番重要と思われる点について質問いたしたいと思うのです。で、国際収支改善対策は、要するに輸出をどうしてふやすか、輸出振興政策と、輸入をどうして抑制していくか、いわゆる内需の抑制、この二つに分けることができると思うのです。その中で特に内需の抑制につきまして、私は金融面を締めて、金融をうんと締めて、設備投資等を押えるとなると、これは中小企業その他に全般的な非常に深刻な影響が出ると思うのです。それで今度の倍増計画破綻、長期政策破綻の一番の原因民間設備投資行き過ぎたということにあるわけです。そこに集中的に一つの手を打つ必要がある。それは金融面からうんと押えるのではなくて、いわゆる租税特別措置ですね、租税特別措置を活用しまして、それによっていわゆる減価償却、特別償却をうんと安くしたのです。これまで総理昭和二十六年ごろから、ドッジ・ラインのころから、資本蓄積の一つの方法として租税特別掛買をやってきたわけです。それが設備投資を非常に刺激し、資本の蓄積を非常に伸ばした大きな原因になっております。それが設備の拡張を過大にさした大きい一つの要因になっておると思う。そこでこの租税特別措置をここで停止する考えはないか。租税特別措置によって一番恩恵を受けておるのは大資本です。中小企業はあまり受けていない。この租税特別措置をここで一時停止することによって大企業のほうのその行き過ぎ設備投資ですね、これを私はチェックできると思う。諸外国でやっておるのですからすでに。イギリスではやっております。そして必要があったらこれは復活すればまた活用できるのです。われわれは、社会党としてはこの租税特別措置は反対であります、そういう資本蓄積の方法は。しかし、当面としてここに租税特別措置の停止を行なって——イギリスなんかやっておるのですから、それで行き過ぎをこれでチェックする。そういう私は対策がここで必要であると思う。そういう対策を講ずるお考えがあるかどうか最後に伺いたい。これは非常に重要な問題ですから総理と大蔵大臣に伺います。
  125. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大蔵大臣の所管でございますから大蔵大臣から答えるほうが正確と思います。  租税特別措置につきましてはいろいろ御議論は承っておりますし、そうして最近の傾向といたしましてはこの特別措置中小企業にも及ぼすと同時に大企業につきましても特別措置を相当引き締めていきつつあることは御承知のとおりでございます。方向としてはそっちのほうへいっておりまするが、すぐ全廃ということにつきましては必ずしも私は賛成いたしません。ただ、所管の大蔵大臣がお答えすることと思います。
  126. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう問題の検討も政府部内においては当然いたしました。しかし、御承知のとおり日本はやはり自由化に対処するために必要な合理化投資というものはまだやらせなきゃならぬという一方の基本的な要請もある問題でございますので、しかも最近の設備投資が云々されましても、大企業設備投資だけじゃなくて、中小企業が自由化に備えて必要な合理化をやろうという意欲が非常に多く今出てきておるというのも今の段階に見られる一つの特色、特徴にもなっておるときでもございまするし、しかもこの特別措置はひとり大資本だけに通用されておる法律じゃございません。中小企業に及んでいる。しかも中小企業には前回の国会におきまして特にこの恩恵を強くするという措置までとっておるときでございますので、そういう一連のことを勘案してここですぐに停止するというような措置は私どもは適当でないという判断で今回はそういう措置は見送ったという次第でございます。
  127. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は今すぐ撤廃と言ったのではないのです。停止をしたらどうか。それで税制調査会の答申にもそういう案が出ておるわけですね。イギリスにおいては新投資特別償却、それから期初特別償却についてこのブームが行き過ぎた場合にはこれを景気対策として停止すると、こういう措置がなされておるのです。日本においては租税特別措置はそういうふうに活用したらどうかというのです。それで、そうすると、今のこれからの国際収支改善対策は金融引き締めを中心にして行ないますと、どうも大資本の合理化投資や自由化に備える投資はこれは押えられないと思う、実際問題として。そうしますと、結局中小企業にうんとしわが寄る。そうしてまた消費抑制でしょう。消費抑制によって国民一般に犠牲を負わせて、大企業がうんと行き過ぎてもうけておいて、不景気になると中小企業国民にしわ寄せすると、だからそういう対策ではなく、さしあたり一番大企業にこれまでうんともうけさしてきたこの租税特別措置をここで停止する必要がある。一応停止する。私は今全廃とは言わないです。まず、停止をしろ、それによって大企業本位の国際収支改善対策を改めなきゃならない。こういうことを主張しているわけです。要するに私は、時間がなくなりましたから最後にその点についてもう一度伺いまして——われわれ社会党としてはこの高度成長政策について社会党政策があるわけです。長期政治経済政策というのがあります。総理もそれをごらんになったこともあると思うのですが、ですから、社会党高度成長政策反対じゃないのです。社会党のようなやり方をやればこのような景気変動がなくて、そうして国民の生活を安定させるいわゆる安定的成長というものが可能である。自由企業原則としてですよ。そうしてこういうことをやったなら格差は拡大するし景気変動がきて、こういうことを十年間も繰り返す。このような倍増計画は私はおやめになる、と同時に総理はこの重大な責任をやはり感じまして総理をおやめになって、責任を痛感しましておやめになって、新しくまた内閣を作って、そこでわれわれの言うような政策を行なえばそれは安定的成長はできます。一応私は時間がありませんから、もっと具体的に伺えばこの失敗の影響がいかに深刻なるものであるかということがわかってくるし、今後さらに深刻な影響が出てきます。非常なデフレ政策をとらなければ、総理が言うような収支均衡なんてとれやしませんし、非常にまた長期にわたって不景気が続きます。この点について最後に、総理責任について最後に伺って私の質問をこれで終わりにいたします。
  128. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は責任はいつでもとります。私は責任をとっているからこの行き過ぎの過熱を押えてそうしてなだらかな、われわれが国民に公約いたしました所得の倍増を実行して実現していく、これが私の責任だと考えます。で、なだらかな成長でいくことに責任をもって今後努力するはずでございます。
  129. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 杉原荒太君。
  130. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 主として対外政策に関する問題について総理大臣並びに関係大臣に質問いたします。  第一点は、経済成長政策とのつながりから見た国際通貨機構及びその運用に対する政策に関する問題についてであります。世界の情勢を見まするに、今日最も注目すべき現象の一つは、国際間に経済成長競争という新しい方式の戦争が始まっておるということであります。ソ連はフルシチョフの表現によれば、資本主義を埋葬してしまうという共産主義の究極目標はこれを堅持しながら目標達成の手段として経済成長においてアメリカを追い越すことに重点を指向してきておる。このことは  フルシチョフのかねての主張、政策、来たる十七日から開かれるソ連共産党第二十二回大会で採択を予想されておる新しい党綱領草案の内容を見ても明らかであります。アメリカにおいてもケネディは一九六〇年代の大変革の時代において世界の勢力のバランスを決する基本として経済成長、エコノミック・グロースの問題を取り上げておるのであります。私は昨年のちょうど今ごろ大統領選挙たけなわの際にニューヨークにおりまして、ケネディがこのエコノミック・グロースの問題を論ずるとき示したあの真剣な誠実な顔つきを忘れることができません。NATOの首脳会議でも共産主義の脅威が軍事面のほか経済闘争の分野に強く出てきておることを確認しておるのであります。要するに、二十世紀の後半において、国際政治上の勝敗が決せられるのは、経済成長競争という新しい戦争の分野においてであると称してもあえて過言ではないと思う。政府の追求しておられる経済成長政策は、もとより国民福祉の向上を目的とするものに違いない。しかし、その基本線は国際政治の趨勢の角度から見ても、時代の要請に沿う政治路線として、客観的の根拠があるものと思う。しかし経済成長政策を進めていくにあたって、日本の場合、同様の客観的条件にある他の国々の場一合と同じく、その制約条件が特に国際収支面に集中的に現われてくる傾向があるということは、あえて指摘するまでもありません。しこうして、国際収支面に関する対策のうち、ここには特に国際通貨機構及びその運用に関する政策の問題にしぼって質問をいたしたい。  広く世界的視野において見たとき、世界貿易拡大の要請に対応して金その他の対外決済準備、すなわち決済手段としての国際流動性が不足してきておるということは、戦後の世界経済根本的な欠陥の一つであると思う。以下申し上げる数字は間違っておれば訂正していただきたいのでありますが、世界各国の金その他対外決済準備の保有高と世界貿易額との比率、すなわち、いわゆる国際流動性の比率は、戦前一九三七年には一〇二%であったものが、戦後次第に低下して、一九六〇年には六二%と大きく低下してきたと言われている。今後たとえば十年間のことを考えてみましても、世界貿易の拡大率や、新しく産出される金の供給額その他関連事項についての専門家の計数的の推定などを見てみますというと、今後新たに特別の措置が取れない以上、対外決済準備の不足高は相当の額に達するであろうということが見込まれておるようであります。さればこそ、これが対策について世界の識者が頭を悩ましておる。有名なトリフィン、アラン・ディのような学者たちだけでなく、アメリカの上下両院合同委員会などでもこの問題を取り上げ、ベルンスタインなど専門家の証言を求めて検討してきておる。またアイルランド政府などは、本年二月のIMF理事会にこの問題の対策について独自の提案をしておる。さらにまたIMFのヤコブソン専務理事は、本年二月対策としてIMF資金の増加、IMFの資金の利用、引き出し通貨の多用化、借り入れによる不足通貨の補充、資本取引に関することなどを五項目にわたって、IMFの将来についての構想を披瀝しておることは御承知のとおりであります。また日本として経済成長を進めていくにあたって、国際収支対策について特に重視していく必要があることは論を待たないところでありますけれども、その中において今後長期にわたって経済成長政策を進めるための貿易拡大の見地から、国際通貨機構及びその運用の改革ないし改善の面についても、真剣な対策を検討する努力が必要であると思う。いずれ遠からずIMF八条国に移行を覚悟されなければならない事情に置かれている日本には、特にしかりであります。  そこで政府にお尋ねいたしたい第一点は、今すぐ実現をするというわけにはいかないとしても、将来、機の熟するを見て提案する予想のもとに、国際通貨機構及びその運用の改革ないし改善策について、日本日本としてのしっかりした対策を持つために、今から政府部内に特別の研究態勢を整えて、周到な準備に当たるつもりはないか。  第二に、前に触れたヤコブソン構想のうち、特にキー協定で七条に基づく不足通貨の借り入れ取りきめの提案については、先月開催されたウイーンの総会においても審議されたことと思うが、日本政府としてはこれに対していかなる態度をもって望んでおられるか、またこの提案に対する他の関係諸国の態度はどうであるか。さらにこれが実現の見込み、時期の大よその検討などもお示し願いたいのであります。
  131. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) IMFの機能についてのいろいろの論議があることは御指摘の通りでございまして、日本も研究をしなければならない問題だと思っております。しかしこういう議論が出てくる直接の原因は、御指摘のように国際流動性の問題に、当面IMFがどう対処すればいいかということが中心の問題でございまして、これについてヤコブソン提案が幾つかなされております。引き出しの通貨を多用化することとか、あるいは資本取引のためにもIMFの資金を利用できる道を開くとか、あるいは資金の利用条件を緩和するとかいうような問題が提起されておりましたが、これはすでにもう解決をして実行に移されて、各国の通貨危機の克服に貢献をしておることは御承知のとおりであります。今度のウイーンの総会で問題になりましたのは、いわゆるスタンドバイ取りきめ案でございましたが、これはIMFが必要とするときにはいつでもその資金が借り入れられるように、主要国と前もって条件とか借入額とか、こういうものを相談をしておきたいという提案でございましたが、これについては各国とも相当いろいろの議論がございまして、総会ですぐにこれをきめるというわけにいかないような事情がございまして、日本としましては、この趣旨にはもちろん賛成である。しかしこの割当の仕方その他について各国の国際収支の状況も考えないで一律割当というような方式がとられることは因る。最初事務局案がそういう方向に来ておりましたので、そういう方法は困るという条件をつけて私どもは賛成するつもりでございましたが、この問題については、総会が開かれる前に各主要国の事前の相談会が何回か持たれて、そういうふうなやり方はしないという一応話し合いがつきましたので、結局やり方については理事会で今後具体的な方式をきめる。大体本年の十二月までに具体案をきめるということにきまって、各国とも全部賛意を表するということでこの総会が終わった次第でございますので、この具体的な案は年末になっておのずからIMFから示されるものと思っています。それをもとにして私どももいろいろ条件その他の検討をして、これに対処したいと思っております。
  132. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、従来の欧州経済協力機構十八カ国と、アメリカ、カナダも加わって二十ヵ国で形成されて、去る九月三十日に正式に発足しました国際経済協力開発機構、すなわちOECDとわが国との関係についてお尋ねいたします。  OECDは、従前の欧州経済協力機構と異なりて、欧州の地域的性格から脱却して、その理念においては広く世界的視野に立って、ことに自由世界経済的結束をはからんとするものであります。したがって、広く国際的協力によって高度の経済成長を持続的ならしめるための経済政策調整、低開発国援助の促進及び国際貿易の拡大を三つの大きな柱としておる。従前の欧州経済協力機構が、欧州に対するマーシャル・プランの実施を背景として成立したのに対して、新たにできたOECDは、ソ連を中心とする共産圏からの経済的挑戦が、特に経済成長と低開発国援助という二つの世界的課題をめぐって、近年ますます激化してきておるという背景のもとに生まれたものであることは、あえて指摘するまでもありません。このような目的と背景を持つOECDに、わが国が、下部機構の一部である開発援助委員会以外には正式メンバーとして加盟を認められていないということは遺憾にたえません。ことに自由世界の先進工業国のうち、日本だけが除外されているという結果になっておることはまことに残念であります。もっとも、前内閣以来、このOECDへの参加方につきましては外交的努力が重ねられてきておることはよくわかる。また、その努力も全然無効であったわけではない。現に、この機構の正式発足前から事実上活動を始めておる後進国に対する開発援助団にはわが国も加わり、その地位はOECDの下部機構たる開発委員会のメンバーとして引き継がれることが認められている。それは実際上きわめて困難な状況のもとにおいて前内閣が非常な努力を重ねられた結果に違いない。また池田総理がケネディ大統領と会談の際や、小坂外相のアメリカ及びヨーロッパ訪問の際などにおいても、この問題に対するわが国の立場については、それぞれ関係国側の理解を深めるよう最善の努力を尽くされたことと思う。そうしてそれが将来に対する伏線として、外交上重要な意味があるであろうことは想像にかたくありません。しかし、それにもかかわらず、今後長期にわたって貿易の拡大、その他国際協力を通じて、経済成長政策を進めていかなければならない立場にあるわが日本として、OECDの正式メンバーでないということは、わが国にとって重大な問題に違いない。しかも、それは単に日本だけの利害の上から見てだけでなく、広く国際的な立場から見通してしかりと思う。  第一次大戦後、世界平和の確立と国際協力の促進というこの二大目的を持った国際連盟の時代におきまして、実際には国際協力の促進、ことに経済の分野における国際協力の面において各国が失敗したがために、それが導因となってついに世界平和は破壊され、第二次大戦に導かれるに至ったということは歴史の教うるところであります。第二次大戦後は、この歴史の教訓にかんがみて、国際通貨基金や世界銀行や国際貿易の憲法とも言うべきガットなどができて、また今回OECDの発足を見るに至ったことは、経済部面における国際協力の面からだけでなく、広く国際平和を保つ基礎条件をつちかう上から見ても歓迎すべきことに違いありません。しかるに現実の事態を見ますと、一方において、第一次大戦後ほどではないとしても、国際間には経済上の行き過ぎたナショナリズムや古い型のブロック的地域主義などが足跡を全然絶ったわけではありません。ややもすればこれが台頭し、拡大する危険すらないわけではありません。このような事態のもとにおいて、OECD、その他国際経済協力機構の使命と責務は大なりと申さなければなりません。  以上のような観点から見まして、OECDとわが国との関係の問題については、われわれは重大な関心を持たざるを得ないのであります。  そこで、政府にお伺いしたいのは、第一に、政府はOECDに対し今後どういう基本方針で臨まれるか。第二に、OECDへのわが国の加盟問題に対する関係諸外国の態度はどういう方向に動いておるか。また、わが国の加盟に対する障害は主としてどういうところにあるか。今後加盟への道を切り開いていくためにはどういう点に努力を集中していく必要を認めておられるのか。  第三に、OECD条約によりますと・OECDは理事会の定めるところによって、OECDの活動に加盟していない政府の参加を求めることができるということになっておるが、わが国は加盟前といえども、この機構の重要機関である経済政策委員会、特に経済成長に関する作業部会及び国際収支均衡維持政策に関する作業部会並びに通商委員会等に、何らかの資格においてある程度参加が認められる余地があるかどうか。またわが国は、開発援助委員会には正式メンバーとして認められているのであるから、低開発国援助の問題がOECDの理事会において議題となる場合においては、何らかの資格において理事会の会議には出席し、発言することが認められてしかるべきものと思うが、その辺のところはどうなっているか。  第四に、実質的にはすでに認められているわが国の開発援助委員会への正式参加の手続は、いかなる形式、いつごろ行なわれるのか、そういった点、この四点についてお尋ねいたします。
  133. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 九月三十日にOEECがOECDに衣がえをし、発足するわけでございます。この成り立ちにかんがみまして、わが国が直ちにOECDの加盟国になるということについては、目下のところまだ成算が立っておりません。しかしながら、ただいま御指摘のように、わが国はかつてDAC−開発援助グループの重要メンバーであったわけでございます。これがDAC——すなわち開発援助委員会に引き継がれまして、わが国は当然、この重要メンバーとして参加をいたすわけでございます。したがいまして、まずもってDACの委員会の方に出席いたしまして、OECDの上部機構において、この関係の問題が討議されるときには、わが国としては、これに出席するということについて非公式に打診をいたしておりますが、多分これは許されることになるだろうというふうに考えております。  ただいまお話のように、経済政策委員会とかあるいは通商委員会、こういうものについても、これはわれわれとして重大な関心を持つものでございますから、漸次これが参加方について打診を行ないたいと考えておりますが、要するにOECDというものが発足いたしまして間もないことでございますし、御承知のように、欧州経済機構から経済協力開発機構というものにかわったわけでございます。従来のいきさつからして、直ちに日本のみの参加をこの際認めるということは、いろいろの観点で困難が若干あるわけでございます。新たに入りたいという他の国に対する考慮もあるわけでございますから、われわれとしては、今申し上げたように実績を作りまして、順次これに加盟していくという見通しを立てておりまするし、その見通しについては、私はある程度の成算という気持ちを持っておる次第であります。
  134. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、日米間の科学上の協力の問題についてお尋ねいたします。  経済成長政策の一環としても、科学振興の重要性はだれが考えてみても、いかに強調しても強調しすぎるということはない。たとえば年々国民所得の少なくとも何パーセントぐらいは科学振興費に振り向けるというような国策が確定されても、ちっとも不思議ではないくらいだと思う。しかし本日は、政府の科学振興方策一般についてお尋ねするつもりはありません。ただ、だれしもが重要性を認めておるこの科学振興のことを念頭におきながら、これに関連のあるただ、一つの問題についてお尋ねいたします。  日米新条約締結承認に関する国会審議の際、私は同条約の経済協力条項の具体化の一環として、日米間の科学上の協力を促進する措置を強く要望しました。しこうして池田総理大臣がケネディ大統領と会談の結果、貿易及び経済に関する日米合同委員会のほか、日米間に科学上の協力を促進する方途を研究する委員会を設立されるに至ったことはよかったと思う。貿易及び経済問題に関する日米合同委員会等は、来月箱根において開かれるまでに具体化してきているものでありまするが、科学上のこの委員会はどうなっているのか。具体的にどう構成され、またいつごろから、その活動を発足するのであるか、その点をお尋ねいたします。
  135. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 去る六月に池田総理が訪米せられました際に、ケネディ米国大統領との間において、今お話のように、三つの委員会を作るということの合意ができたわけでございます。科学に関する委員会、これにつきましては、平和的な科学技術の振興という目標で、そうした委員会もとうということになりまして、今時期等について打ち合わせをいたしております。ただ、両国におきまする行政機構の違いとかあるいは科学者自身の代表を出す場合の組織というような、日本では学術会議というものがあるわけでございまするが、これに関連いたしまして、時期、人選等が若干まだ未確定な分がございますが、目下のところ、十一月の末ころには、第一回の会合をもたれるのではないかと、かようなふうに考えます。その方向でいたしております。
  136. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 次に、核実験の問題について、簡単に一点だけ政府の見解をただしておきたい。  アメリカの有名な原子学者ラップ博士は、去る八日のラジオ放送で、ソ連の核実験による放射性降下物の量が、すでに年間の安定度をこえていると述べたと伝えられております。核実験による放射性降下物が安全度をこえて人体その他に被害を及ぼすに至れば、それは単に人道上の問題であるばかりでなく、国際法上の不法行為を構成するものだと私は思う。その点に関する政府の見解をただしておきたい。
  137. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 核爆発による放射能の降下物、これはもう人道上から言っても、これは許しがたいものでございますけれども、人体に対して、どの程度影響力を与えるかということになれば、たとえばビキニのような場合には、これは明らかであります。しかし、どの程度人体に与えるかということになってくると、遺伝等の問題については、まだ科学的に解明されていない点もありまして、直ちに、多少の影響はあるということはわかりますけれども、人体にどの実験も非常に大きな影響があるというまだ立証はされていないわけでございます。これが立証されるならば、国際法上も、私はそれは不法な行為に判定されるものと考えるものでございます。
  138. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 最後に、北方領土の問題と日米安保体制に関することについて、若干政府の見解をただしておきたいと思います。法律論と政治論とに分けて質問いたします。  まず、法理論の方から入りますが、第一は、われわれはヤルタ協定、ポツダム宣言の受諾、降伏条項、サンフランシスコ平和条約、日ソ共同宣言などいずれをしさいに調べてみても、問題の北方地域の領土権が確定的にソ連に移転したという法律効果を発生する根拠となる法律事実は、何一つ見出すことができないと思う。この点に関する政府の見解はどうか。時間の関係上、もう少し一括して質問いたします。  第二に、問題の北方地域に対し、ソ連が権力を行使してきておるという事態は、事実上の関係から見れば、日ソ共同宣言の効力発生の日の前とあととで別に変わりはないけれども、法理上の観点から見ますると、大きく変わってきておると思うのです。すなわち日ソ共同宣言の効力発生前までは戦時国際法上の、占領の法理によって法律上説明のつくものであったとしても、日ソ共同宣言の効力発生の日に、日本とソ連との間の戦争状態は終結しておることは、日ソ共同宣言の明らかに示しておるところであるから、戦時国際法上の、占領の法理によって法的に根拠づける基礎は失なわれてきておることは明らかだと私は思うのです。この点に関する政府の見解はどうであるか。なお、続けてやります。  第三に、問題の北方地域の大部分が、国際法上の先占の法理によって、ソ連に帰属するに至ったというような論をなす者が国内にあるようであるが、この場合、それは先占の法理の適用の錯誤であると私は思うのです。この点に関する政府の見解はどうであるか。次に、続けてやりますから……。  次に政治論、政策論にわたる二つの問題について、政府の見解をただしておきたい。  その第一は、北方領土問題の処理と、日米安保体制のあり方に関する基本方針についてであります。鳩山内閣当時、日ソ国交調整をはかるにあたり、われわれはソ連との交渉に入る前に、わが方としての基本方針をきめました。その基本方針のうち、交渉上あくまで貫徹をはかる絶対的条項換言すれば、もしその要求がいれられなければ、交渉破裂もやむなしと腹をきめてかかる条項、その条項の中には、日米安保条約を含めて第三国との関係は、国交調整条件から除くということ、つまり、両者は、これをせつ然と区別して互いにからめ合わさないという方針を策定しました。それはわが国の外交政策の立て方として、絶対に必要であると確信したからであります。そして日ソ交渉の全体を通じて、この方針は絶対に堅持し、これを貫徹してきました。今後といえども、わが国としては、北方領土問題の処理に関する基本方針として、この立場を、これを堅持していくべきものと私は思う。しかるに、国内の一部には、北方領土問題の処理と日米安保体制の存否とをからめて、安保体制の解消とにらみ合いながら、北方領土問題の処理をはかるという考え方があるやに聞くのでありますが、われわれの見るところでは、そのようなことは、そもそもわが日本の外交政策の立て方として不可解千万であると思う。  かりにそのような行き方をとったとすれば、その結果は日本の立場は収拾すべからざる事態に立ち至ることは必至であると思う。さらにまた、そのような考え方の前提には、きびしい国際情勢の現実に対する認識が不足しておると思う。率直に言って、そのような行き方は、いわゆる現実離れの典型的なものであると思う。この点に関連して、私はソ連が日米安保条約の存在する以前、日米安保条約はまだ存在していなかったとき、すなわち一九四六年二月二日付、ソ連邦最高会議幹部会令をもって、問題の北方地域を自国領に編入するという一方的措置をとっている事実を思い起こさざるを得ないのであります。この事実は、一体何を物語るでありましょうか。ソ連は、日米安保体制が存在するから、それだから北方地域を自分のものにしておくのだというわけでないことは、この事実そのものが雄弁に物語っておるではありませんか。そればかりではありません。その上さらに日本と戦争状態に入る前から、いわんや日米安保体制などというものは、影も形もなく、夢想だにされなかったころ、すなわち一九四五年二月に、ヤルタにおいて、スターリンはルーズヴェルトとチャーチルに対し、北方領土に対するソ連の領土欲の本音を吐いておるではありませんか。ソ連は、北方領土の獲得を参戦の条件としたことは周知のとおりである。日ソ中立条約を破ってまで日本に戦争をしかけたのは、何の目的であったか・ソ連自身の自白による証拠事実は明瞭ではありませんか。北方地域に対する領土欲の満足こそが、ソ連の対日戦争の目的であったということは、今日では明らかに歴史が証明しておる。ソ連としてはその戦争目的を達したればこそ、スターリンが終戦直後、日露戦争の復讐なれりとして盛大な祝賀会をやっておることも、われわれはそういう意味にこれを読み取っているのであります。  第二にお尋ねいたしたいのは、日ソ平和条約の問題を考うるにあたっての政府の基本的の心がまえについてであります。国内の一部には、安保体制解消運動と裏腹をなして、日ソ平和条約締結促進運動なるものが行なわれんとしておるやに聞くのでありますが、われわれは日ソ平和条約問題を考うるにあたって、まずその前提として二つのことを銘記してかかる必要があると思う。  その一つは、平和条約といっても、対ソ関係の場合には、他の一般の場合と異なった面があるということであります。  その二は、国際間における領土問題が、本質上いかにきびしいものであるかということ。すなわち領土問題の峻厳性について、甘い幻想を持ってかかってはならないということであります。あえて力説するまでもなく、日ソ共同宣言によって、日ソ間の戦争状態の終結と平和関係の回復は、すでに確定されておる。またその上両国間の相互の関係を規律する指針として、武力による威嚇、及び武力の行使はしてはならぬということ、及び国内干渉はしてはならぬという原則も確認されておる。この意味において、日ソ共同宣言そのものが、実質的には一種の平和条約の性格を持つものであることは、一点の疑いをいれません。われわれは深く考えてこの条約を作ったのであります。したがって、今後いわゆる平和条約を結ぶといっても、まだ戦争状態の終結及び平和関係の回復が確定していない場合の普通の平和条約とは、名は同じであっても実質は異なるものである。ただ、領土について日ソの意見が同じでなく、問題が残っておるから、それを確定するのは新たな日ソ間の合意に待つわけで、それがいわゆる平和条約であるから、この場合のいわゆる平和条約の本体は、実は領土条約にほかならないことは、当然過ぎるほど当然であります。しこうして、事いやしくも国際間における領土の処理に関する問題になると、本来きびしい国際政治の現実の中で最も峻厳なるものであることは、実際の事例によって国際政治の歴史がこれを証明しておる。古今東西の歴史を通じて、国際間の領土問題の処理が、ねじはち巻の集団運動や署名運動などで決せられたという事例を私は聞いたことがない。国内の集団運動のごときものによって、目的を達し得るかのごとく思う者があるならば、手段選定の方法を誤ったものだと思う。そればかりでなく相手国の政略上の術策に乗ぜられる危険すらあると思う。  質問の趣旨を明らかにする意味において、私見をまじえて申し上げたのでありますが、この私の質問に対する答弁を通じて、政府の腹からの確信を、以上の諸点に対する政府のそういった深い確信を国民の前に明らかにしていただきたい。
  139. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御質問、またその中に盛り込まれました御意見の趣旨については全く同感でございます。  そこで順次お答えを申し上げますが、わが国はサンフランシスコ条約によりまして、クリル諸島すなわちウルップ以北の千島を放棄したのでありますが、これらウルップ以北の千島について、どの国のために放棄したということはきめてないのでありますから、その帰属は決定されておりません。従いましてこれら諸島がソ連の領土であるという根拠は、御説のとおり全く見当たらないのであります。ソ連は千島列島領有の根拠といたしまして、ヤルタ協定を主張するのかもしれませんけれども、この間の事情について、米国政府は、ヤルタ協定はその当事者の目標を陳述したにすぎないのであって、領土に関する何らの権利の移転等を伴うものでない、権利を付与するものでないということを一九五六年九月七日の覚書においても、また一九五七年五月二十三日の対ソ覚書においても、はっきりと述べているのでありまして、これに徴してみましても、ソ連政府の主張は無根拠なものである、根拠がないものであると言わざるを得ないと思うのであります。サンフランシスコ条約に申しまするクリル諸島以外でソ連が占領しておりまする北方領土中、歯舞群島及び色丹島に関しましては、ソ連といえどもわが国の領有権を認めておるのでありまするが、他の領土問題は、日ソ間では依然未解決であり、共同宣言によって領土問題が解決したというソ連側の主張は無根拠なものである、根拠のないものであるというように思わざるを得ないのであります。したがって国後、択捉の両島が、日ソ共同宣言署名後に両国間で交渉することに合意された領土問題に当然属するものでありまして、ソ連側が共同宣言以後領土問題は解決済みであるという根拠なき主張を行なって譲らぬために、今日なお平和条約締結に至らぬことは御承知のとおりでありまして、かかるソ連側の主張が不当であることは、全くお説のとおりであります。  次に、北方領土返還問題と日米安全保障条約とが、全く別個の問題であるということも明らかなことでありまして、これを関連せしめることは、いたずらに問題を紛糾せしめようとする悪意のある意図に基づくものであるか、さもなくばお説のように全く現実を無視したことから生ずる結果であると憂わなければならぬと思うのであります。したがいまして、政府といたしましては、かりにもわが国固有の北方領土の返還問題と、日米安全保障条約とを関連せしめるようなことなく、今後とも引き続き断固たる態度で北方領土の返還を求める所存であります。  なお共同宣言につきましては、その性格は御説のとおりでありまして、あの共同宣言は、御承知のとおり、日ソ両国間においては、問題の解決は話し合いでする、あるいは武力の行使を慎しむとか、あるいは武力による威嚇を慎しむとか、また、国連憲章五十一条に基づく個別的または集団的な安全保障の権利を相互に尊重するとか、相互に内政に干渉しないとか、全く条約と同等の性格を持っているということは、これまたお説のとおりであると考えております。
  140. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 本邦の領土問題に対しましての杉原委員のお考えは全く同感でございます。ことに法律上の問題、政治的問題、私は全く同感であることをはっきりと申し上げておきます。
  141. 小山邦太郎

    委員長小山邦太郎君) 明日は午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時一分散会