運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-11-01 第39回国会 参議院 地方行政委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十一月一日(水曜日)    午後三時三十六分開会    ――――――――――  出席者は左の通り。    委員長     小幡 治和君    理事            小林 武治君            西田 信一君            秋山 長造君    委員            小柳 牧衞君            西郷吉之助君            館  哲二君            津島 壽一君            鍋島 直紹君            湯澤三千男君            占部 秀男君           小笠原二三男君            加瀬  完君            鈴木  壽君            松永 忠二君            赤松 常子君   事務局側    常任委員会専門    員       福永与一郎君   説明員    警察庁警備局長 三輪 良雄君    法務省刑事局公    安課長    川井  英良君    ――――――――――   本日の会議に付した案件 ○地方行政改革に関する調査  (地方教育公務員職務に関する件)    ――――――――――
  2. 小幡治和

    委員長小幡治和君) ただいまから委員会を開会いたします。  地方行政改革に関する調査を議題といたします。  御質疑の方は順次御発言を願います。
  3. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 本日、私、警察庁当局お尋ねしたい点は、文教委員会等でも騒がれましたが、全国的に文部省が企図した学力テストというものが先般実施せられましたが、その中で特に顕著な事例として、福岡県あるいは岩手県のような事態が起こったのでありますが、それに対して、警察当局が直ちに大観模捜索を行なったのであります。それで、その捜索が全国的にいろいろな影響を与えるものですから、私、当委員会として取り上げて、警察当局見解もただしておきたいと存じたのであります。そこで、どういう犯罪の容疑で強制捜査が行なわれるに至ったか、その点を明らかにしていただいて、順次同僚委員によって質問したいと存じます。
  4. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 十月二十六日に施行されました全国一斉学力テストに際しまして、若手県教組におきましては、指令を発しまして、早朝職場大会職場集会、あるいはその後平常授業等を行なうということによりまして、学力テストそのものを拒否をする結果を生んだわけでございます。その結果、実施予定校三百二十九校中二百七十一校が、これは全くテストをすることができなかった。パーセントにいたしますと八二%でございます。その他一部不能になったというのも少しあるようでございますけれども、そういうことがございましたので、岩手警察本部におきましては、地方公務員法六十一条四号にいいますところの違法な行為争議行為をあおり、そそのかしたということに該当する疑いがありまするので、その証拠等を入手いたしますために、家宅捜索を必要な個所に行なったということでございます。
  5. 加瀬完

    加瀬完君 違法だと断定したわけですね。違法だと断定いたしました法律的な根拠は何ですか。
  6. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) このたびの学力テストに対しましては、市町村教育委員会がそれぞれ学校に、校長に対しまして職務命令を出しておるのでございます。その内容は、あるいは文言等一定ではないかと思いますけれども、今回学力テストをやることについて、これを貴校校務として滑りなく行なうように、貴校校長はそのテスト責任者となり、それから校長責任において適当な職員テスト補助者として任命をして滞りなくやれ、なお、それについて、こういうことをしろというような職務命令が出たのでございます。ところが、これに反しまして、先ほど申しましたように、一斉職場集会が行なわれ、あるいは十時ごろから多くの学校通常授業が行なわれたということによりまして、この職務命令が守られなかったという結果に相なったわけでございます。そこで、形の上で平常の授業が行なわれておりまするけれども、これは地方公務員法にいいます「同盟罷業、怠業その他の争議行為」の「その他の争議行為」に該当するものというふうに考えて、今捜査をしておるということでございます。
  7. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、警察庁としての見解は、この職務命令適法だと、こういう御見解なんですね。そのまた適法である根拠……。
  8. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 実行いたしましたのは、御承知のとおり、今ここで警察組織のことを申し上げるまでもございませんが、御承知のとおり岩手警察本部がやったわけでございまするけれども、この法規解釈について、私どものほうにも意見を問われておりますので、私どものほうの意見をここで申し上げることも無意味ではなかろうかと思うわけでございまするが、市町村教育委員会校長命令を出しましたこの職務命令は、私ども適法であるというふうに考えておるわけでございます。その根拠でございますが、これは地方公務員――公立学校でございまして、地方公務員たる教職員市町村教育委員会との関係でございまするけれども、これはいわば特別権力関係にあると申しますか、そこで、教育委員会につきましては、市町村教育事務について、これは教育管理運営いたします全般について権限を持っておるわけでございます。そこで、もちろん学校学校としての独自の教育活動があるわけでございまするけれども、その学校校務というものに対しまして、特別権力関係にあります市町村教育委員会が必要な命令を発する、職務命令を発するということは、これは本来適法なものであるというふうに考えておるのでございます。
  9. 加瀬完

    加瀬完君 これは警察庁でもお認めになるでしょうね。職務上の命令ですね、いわゆる業務命令の要件というものは大きくいって三点あると思う。一つは、権限のある上司から発せられるものでなければならない。二は、当該職員職務関係に関することだ。三は、当該職員職務上の独立権限範囲に関するものではないと、この三つ条件は、これは内閣法制局でも認めておりますから、お認めになりましょうね。
  10. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) ただいまのお尋ねの限りでは、そのとおりかと思います。
  11. 加瀬完

    加瀬完君 そうすると、岩手の場合は、職務範囲内であると、こう御認定になっておるようですね。その職務というのは校務だと、こうおっしゃいましたね。
  12. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) そのとおりでございます。
  13. 加瀬完

    加瀬完君 職務校務だということが何か、教育関係あるいは地方公務員関係にどこかありますか。教員職務校務であるということがありますか。
  14. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) お答えをいたしますが、学校教育法に、二十八条でございますが、「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」ということになっております。そこで、所属教員児童教育をつかさどるといいますか、そこでこの読み方でございまするけれども学校校務ということがもともと何であるかと申しますと、これは三十二年の判例にもございますように、学校運営につきましての校舎等物的設備教員等人的要素並びに教育実施、この三点につきましてその目的を達成するための諸般事務をいうのだ、こういうことをいわれておるわけでございます。そこで、校務というのは広く校長がつかさどります仕事範囲でございまして、その中で教員は主として教育をつかさどり、用務員は用務をつかさどるというふうな分担がございますわけですけれども、そういうものを全部含めまして校務と考える。その校務のおのおのを教員用務員、あるいは校長それぞれの職分において分担をしておるものと考えるのでございます。
  15. 加瀬完

    加瀬完君 あなたのおっしゃった大部分のものが、その固有の事務として教育委員会事務に属するものが多いのですね。で、教育委員会校長に委任しているものもありますけれども教員には委任されておらない事務、場面もたくさんありますね。たとえば校舎管理とか、そういったものは教員には責任ありませんよ。で、学校教育法の二十八条には「小学校には、校長教諭養護教諭及び事務職員を置かなければならない。但し、特別の事情があるときは、事務職員を置かないことができる。」「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」、「教諭は、児童教育を掌る。」「事務職員は、事務に従事する。」、同四十条は「中学校に、これを準用する。」とあります。教諭の主たる任務は、児童教育をつかさどることなんです。事務である場合は、事務職員がつかさどることが本体なんです。職務命令がですね、児童教育をつかさどることに限定されておるのですね。教諭がですよ。教育事務としてとあなたおっしゃった。教育事務としてのことならばですよ、職務範囲にはこれは入らない。なぜならば、常識的にあなたがおっしゃるように、校務だから教育委員会が命じたものは何でもやらなけりゃならないということは、どこにも書いてないですよ。教育委員会法といわれるいわゆる改正された地方教育行政法の三十三条には、教育主体活動というものと教育行政というものは限界を持っていなきゃいけない。この三十三条は、この限界を一応示したことを内容としているものだ。なぜならば、教育主体活動そのものは、これは独立した権限であるからです。そこで、教育活動というものは校長並びに学校にまかせられたものだ。これに包括的な管理権があるからということで無制限に教育内容に入るととはこれは教育独立を侵す。そこで、管理運営規則を作って、この管理運営規則のワクで、あと教育主体活動学校側にまかせるのが三十三条のねらいだということを文部省説明しているのです。文部大臣もこれはしぶしぶ認めておる。したがって、教育活動権限というものは、先ほど言ったこれは侵されることのない当該職員職務上の独立権限なんです。で、そういう権限事務教員にはあります。しかし、事務をしなければならないという責任は、法律命令のどこにもないと私は思うのですけれども警察庁業務命令内容だと御判断した点をもう少し御説明下さいませんか。
  16. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) まず第一に、先ほど申しましたのは、教員のつかさどります教育のことも、これは校務に入るというふうに私は考えるわけでございます。そこで、校務の中で主として教員が扱うのはこういうことだという、いわば分担と申しますか、その校務の中における職分を扱ったものかと考えるわけでございます。そこで、今の御質問は、いわゆる教育活動と申しますか、先生が教える教育そのものというものは、いわゆる教育行政というものが立ち入るべからざるものであるというような御見解に基づいてのお話のように思うのでありますが……。
  17. 加瀬完

    加瀬完君 御見解でなくて、そういうように文部省解釈しているのです。
  18. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 地方教育行政組織及び運営に関する法律の二十二条を見ますというと、これは教育委員会仕事の中で、たとえばその二十三条の五号を見ますと、「学校組織編制教育課程学習指導生徒指導及び職業指導に関すること。」というようなことがありまして、これは教育内容に立ち入ってはならない、そういうものは入らないのだというふうに私どもは考えないのでございます。文部省解釈というものがございますならば、裁判の際に、ある程度これは参酌をされることと思いまするけれども、私どものただいまの見解は、そういうことでございます。
  19. 加瀬完

    加瀬完君 その「学校組織編制教育課程学習指導生徒指導及び職業指導に関すること。」とありますが、これらのことは、三十三条によって「基本的事項について、必要な教育委員会規則を定めるものとする。」と、こういう規定があるのですよ。それで、この三十三条の説明を、こう文部省は言っている。三十三条の規定は、「学校等はその特質からしてそれ自体ある程度の主体性認められているものであり、教委管理権があるからといって、その行使の程度、方法については、学校主体性との関連において一定の妥当な限界がなければならない」「三十三条はこの点を、管理機関の側から、学校管理権内容とその行使態容を客観的に規制し、包括的な管理権自己規制を加えることによって教委学校との術者権限責任を明確にし、学校主体的教育活動の促進をはかったところにそのねらいがある」という文部省説明なんです。それで、学校組織編制教育課程学習指導生徒指呼の具体的な計画というものは、これは学習指導要領にも、校長が定めると、こう書かれておる。それから管理運営規則のほとんども、たとえば東京都の公立学校管理運営に関する規則を見ますと、教育課程編成は、「教育目標を達成するため、適正な教育課程編成するものとする」と、そして教育課程編成基準としては、「学校が、教育課程編成するに当たっては、学習指導要領及び委員会が別に定める基準による」と、こう書いてありまして、十五条には「校長は、翌年度において実施する教育課程について、次の事項を毎年三月末日までに、委員会に届け出なければならない」と書いてある。釜石市の小中学校管理運営規則には、「校長は、毎学年実施すべき教育指導計画を五月末日までに教育委員会に届け出なければならない、校長は、当該学年終了後、その実施状況を五月末日までに教育委員会に報告しなければならない」、こう書いてある。小学校学習指導要領には、「各学校においては、教育基本法学校教育法及び同法施行規則小学校学習指導要領教育委員会規則等に示すところに従い、地域や学校の実態を考慮し、児童発達段階や経験に即応して、適切な教育課程編成するものとする。」、で、この編成する権限は、校長にあると、こう規定している。校務というのは、あなたは校務というのを全部に解釈していますが、校務というのは、文部省関係の法令の中で示されているものは、たとえば指導要録を作成することとか、出席簿を作ることとか、未就学児童に対して、あるいは長期欠席児童に対して督促することというのが、校長校務というふうになっている。その中に一斉テストのごときものをやらなければならないということは、どこを見ても出てきませんよ。これはあなたも御存じでしようけれども労働基準法の十五条、同施行規則の第五条、これは地方公務員法の五十八条の二項によりまして、地方公務員にも適用されるということになっている。あるいは国家公務員法の百五条は、やはり地方公務員に準用されるということは、これは当然です。その国家公務員法の百五条は、職員は、「法律命令規則又は指令による職務を担当する以外の義務を負わない。」と書いてある。ここで指令というのは、法律的には法規たる性格を持ったものと解釈すべきでありますから、やたらに、包括的管理権があるから、命令するものがそれは指令だとはお受け取りにならないと思う。そうしますと、いろいろのたとえば教育基本法学校教育法あるいはその施行令、それから指導要領、各教育委員会で作られておりますところの管理運営規則、こういうものに定められている以外には、これは百五条の準用によりまして、職務を担当する義務はないわけであります。それを局長のおっしゃるように、ただ校務という言葉があるから、何もかも教育委員会がやったことはみんな校務だろうと、こういう解釈は、少しここの解釈としては妥当を欠くように思われるのですが、その点どうですか。
  20. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) ただいまおあげになりました法律で、私まだ研究の不十分な点もあります。したがって、先ほどお答えをいたしました範囲を出でないわけでありますけれども市町村教育委員会学校長あるいは学校職員との関係は、特別権力関係にあるということは、先ほど申し上げましたとおりであります。もちろん教育という特性から、いかなることも特別権力関係であるからということで命令をするということはできないということは、これは当然であろうと思いますけれども、しかし、校務なりやいなやと申しますか、という点については、これはまあはっきりどれとどれとどれとが校務であるかということが明らかにされていないところは私もそのとおり、したがいまして、私ども扱います限りでは、裁判判例等に依拠してやっていくということになるわけであります。そこで、先ほど申しましたように、校務というのは、判決例によりますというと、教育実施を含んでおるということでございます。したがいまして、おあげになりましたように、教育活動というものを非常に狭く解釈をいたしまして、いわゆる事務に当たりますことは、全部これは教員が扱うべき限りでないというふうな考え方には、私ども立たないのであります。
  21. 加瀬完

    加瀬完君 法的根拠を示しなさい。どこでそういう解釈が成り立つか。
  22. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) それは、先ほどお答えをいたしております各条文によりまして、市町村教育委員会というものがこれは包括的に、一般的に、その市町村におきます教育運営管理について権限を持った機関でございます。その機関学校校長職員との関係特別権力関係にあるということは繰り返し申し上げたとおりでございます。したがいまして、教育という特性からいかなる幅の命令も出せるということは、もちろん言えませんけれども校務といわれる範囲の問題につきまして、職務命令ができるということは私は言えると思いますし、その校務範囲が単に建物を管理するという事務ばかりでなしに、教育実施ということの内容についても、この目的達成に関する諸般仕事が入るのだということは、先ほど申しました判例の示すところでございます。そういう意味でこのテストを行ないますことは、これは私は教職員職務として命令された限り、その命令に従うことが、これはまた必要だと思うのでございます。法的に申しますると、これは教職員市町村教育委員会並びに職務上の上司命令には忠実に服従しなければならないということに相なっておりますので、そこで、そういう職務命令が発せられましたことにつきまして、その命令違反をするということは、この規定違反をいたしますので、その他の職務行為に当たるというふうに私ども考えるのでございます。
  23. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 警察当局がそういう判断に立つということは、その判断は、その限りで部内においては自由でしょうけれども、立法したわれわれ、あるいは法が客観的に解釈されるもの――というのは、警察だから、文部省だから、自治省だからとでたらめに解釈が変わっては、これは法というものではないと思うのですね。そういう意味であなたのおっしゃることに疑義がある。疑義の点を法律根拠に基づいてただしているのだから、それに対して、あなたの立論が正しいというなら、一々反駁してもらわなければならぬ。私はそう思うのです。それを見解相違だと、こういうことでは、これはこの委員会などの質疑としては、これは乱暴だと思う。だから、少なくともここに将来被疑者が現われるなら現われるとして、そのことが、検討してこの点で妥当なんだ、間違いないというようなものでなくちゃならぬ。それがだんだん、われわれも国会として取り上げて質問しておる。だからただ、見解相違でございます、これではうまくない。騒ぎなら騒ぎが大きくなるだけだ、それでさっきから皆さんのおっしゃるのを聞いていると、教育は特殊だ特殊だ、特殊だからそれは認めるが、と言いながら、一般公務員等上司下司関係、あるいは官庁と職員関係、そういうふうにとりがちなんだね。命令それ自身で指揮しておる国警内部行政の頭がそのままこの教育関係に何として解釈されるように聞き取れる。これは誤解であればあやまりますが、少なくとも教育基本法というものが教育行政全般基本法です。そしてこれが学校教育法が一本立てられ、この学校教育の運用、そのほうの行政組織がさっきいう地教行法ですが、そっちのほうにあるのです。だから、行政といえば片方のほうにあるわけですが、あなたが言うように、文部大臣がかりに県の教育委員会なり地方教育委員会にこれをやれといったら、それさえも私は違法だと思っているのです、私自身は。文部省設置法において、各省設置法にないような行き過ぎを自己規制する条項があるわけですし、そうしてその教育委員会というものが任命制であれ、何であれ、独立してあるものに対して、文部大臣がかれこれと命令し指示することは禁じられているわけです。けれども、まあそんなことはどうでもいいが、その問題が、学力テストの問題が、たとえばどこまで行政命令ができるかとなれば、それは市町村教育委員会にとどまるのです。内容としては、調査事務としてのそれは命令監督はあるかもしれない。そうなれば教育委員会にとどまる、地教行法のほうでいくと。それで委員会学校のほうに橋渡しをするルートというものは、上司下司関係にあるからといったって、学校に対して教育委員会は所管するとある。学校を所管している。私立学校のほうの関係であれば、まあ中等学校なれば知事がそれを所管する。知事私立学校学力テストをやれとか、こういう教育をやれとか、そういう命令権がないんです。それと同じに教育行政という行政学校教育に介入をすることを避けるために、教育基本法以来二木立てになってきておるわけです。だから学校自身がそれをやっていいとか悪いとかいうことは別です。命令をしてやらせるのかをしてやってもらうのか、ここが問題なんです。で、われわれは職務命令というのだから、職務命令は、同僚委員が言うとおり三つ条件を備えたものでなければならない。そうして、あなたのおっしゃる校務というものは三つ条件があるとかりにしましょう。あるとしても、学校教師教育活動をやることを本務としておる。それに学力テストというものを教育委員会が命ずると、これは教師本務ですか。教師教育活動をやることを本務だとされるとしているならば、それが本務ですかということを尋ねておるわけなんです。だから、いい悪いでなくお答え願いたい。
  24. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 何か私の答弁が、言葉が足りなくて、全く見解相違と言ってその言葉をお取りになったのはたいへん恐縮であります。私は、私なりに法的根拠を示して見解を述べておるつもりでございますので、御意見に合いませんでしたらまた重ねてお尋ねいただきます。  私は、先ほど三つつまり権限上司であるのかどうか、それがその当該職員権限に属するのか、それから独立権限でないのか、三つの点で御答弁申し上げたのでありますが、第一の、市町村教育委員会がこの教育に関する一般的な権限を持っているという意味で、それと学校職員との間が特別権力関係にあるという意味で、権限ある上司というふうに考えるわけでございます。それからあとの二つの問題でございまするけれども当該職員がその仕事に属するのか、あるいは排他的な独立権限であるのかどうかということにつきましては、これは私の見解先ほど申しましたように、これは校務範囲内ということでございます。その校務というのは、先ほど来申しておりますように、いわゆる事務ということだけでなく教育実施という問題についての内容を含むということが、これは判決例で示されておりますので、私ども尊重するわけでございます。そこで、このテストをやりますその事柄が一体教員本務であるかどうかという端的なお尋ねに対しては、その本務の一部であるというふうに考えます。
  25. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういうふうに丁寧に答えてもらうと話がだんだん詰まっていっていいわけです。そこで、先ほどから私たちの言うているのは、教育委員会は、それはさっき言うた二十三条による権限を持っている。けれども、その権限行使するそれを三十三条で規定している、委員会学校との関係は。それは管理運営規則です。管理運営規則範囲外のことを、そうして一時的のことを教育委員会の恣意によって命令することができるという根拠は、三十三条の規定がある限りそれはないんだ、ないんだという判断を私たちはするわけです。しかも、今例示された管理運営規則では、年間の学校教育計画については、年一度、学校長がこれを作成して届け出ればいいわけです。学校長の独自のこれは権限なんです。教育計画を作成し、施行するわけですから、届け出だけでいいわけです。日常の教育諸活動というものは、これは校長権限内なんです。教育委員会権限ではない。ここをはっきり明確にしてもらわなければ、教育基本法の体系がくずれるのです。これは内藤さんだって認めるのだろうと思うのです。でたらめに何でもやっていいのだ、教育長が気にくわなければ、学校に行って指示したらいい。きょう運動会をしようというのを、やめろ、遠足に変えろ、これは命令だ、こういうことはできない。その点が一つ。管理運営規則というものの範囲で、教育学習指導でも計画でも、教育委員会意見を出して、是正させるなら是正させ得る。それは年間の行事計画としてやり得るのです。あとは政令なり法律なりの根拠があって、本日は祝祭日だ、何々の理由によって学校は休みますという命令等はでき得るが、年間きまった教育計画を、勝手に教育委員会が変更させる権限は一般的にないのです。ところが、あなたは公務だというのは、教育内容も一部含むのだと、それで学力テストというのは、それは教育内容だ、教育活動だということは、私それに賛成です。学力テストというのは教育活動でなくちゃならぬ。それは文部省から出ている指導要領に、これは評価という言葉ではっきり教育内容として出ていることです。だから、学力テストというものは教育活動である。ところが、今度教育活動だとなれば、それは何人もなし得るものではない。免許状を持った有資格者である学校長教員以外にこの教育活動に携わることはできない。それが今回のように、話はちょっと横にそれるけれども教師が拒否したら、父兄でもだれでもたずねていって、テストをやれと、だれが指導したか知らぬが、内藤さんそれをやったとは思わぬが、そういうようなことがあったり、かりに今度は教師がやるものだといったって、勤務校を変えてテスト補助員になってやらせろとか、こういうこと、これもあり得ない。話は横にそれましたが、それほど教育活動というものは厳粛なものなんです。検察庁における検事ぐらい独立権はないかもしれないが、慣行として、立法の精神として、それだけに他が介入してはならぬと思う。それで、これが教育活動だということになれば、そういうことを教育委員会管理運営規則においてやらせることはできます。命令することはできます。学力テストをやるということは、学習指導要領の学力の教育評価であるということであれば、その教師みずからが自己の児童に対して、指導要領に基づいた教育目的へ沿って自分が自主的に問題を作成して、そしてテストをするということでなければならぬ。文部大臣だってその場合は路傍の石で、文部省といえども何といえども、それがよそで作ったものを学校へ持ち込んで、命令してそれをやるということは、私たちから言えば、逆に教師教育活動命令してやるなら、それは阻害するものなんです。これこれの調査の必要があるから要請する、やってほしいということ以外に、それは命令することができないのだということがその根拠にあるというふうに私たち思うのですが、あなたがおっしゃるように、上司下司関係だから命令したらしたものだ、「忠実に」と法律にあるのだと、これでは少し私は乱暴でないか、かえって教育界を混乱させるのではないかと思うので、この点をわかりつつ、なおいいんだということであるなら、その根拠を示してもらいたい、こういうことなんです。
  26. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) これは、文部省見解と私ども見解との違いを先ほど来御指摘になりまして、せっかく文部省もおられますので、その御意見を明らかにしていただきたいだろうと思いますけれども、私ども見解は、先ほど来申しておるところでございまして、学力テストをやりますこと自体は教育内容の一部でありますし、その学力テストを一斉にやることによって教育効果を促進するという意味におきましては、先ほど来、文部大臣指令する権限はないということで、一般的には、文部大臣は府県に対しまして、あるいは府県教育委員会市町村に対しまして指導、助援をするという建前でございまするけれども、他面、地方教育行政法五十四条の二項によりまして、都道府県の「区域内の教育に関する事務に関し、必要な調査、統計その他の資料又は報告の提出を求めることができる。」というようなことで、教育内容でございますテストを、これを取りまとめて報告をし、これを施策に使いますということは、これは文部大臣のできることかと思うのでございます。そういう系統で市町村教育委員会から報告を求める。市町村教育委員会は、その調査と申しましても、教育内容に全く関係のない調査を引き受けることはないのでございまして、これはその学校の学力を調べるという意味において、本来の教育的な問題でございまするので、この内容について、市町村教育委員会から業務命令が出せる、職務命令が出せるというふうに考えるわけでございます。
  27. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 ここがまた大事なところだから、あとで内藤さんにはずっとお尋ねするから……今の五十四条の何項かで調査、統計、これらの報告を求めることができるとちゃんと規定してあるじゃないかと、その通りなんです。求めればいいんです、調査も報告も。それは教育委員会の段階だけなんです。そうでしょう。そとだけは求めるのだ。ところが、これは学校の予算とか児童数とか、学級の組織編成とか、あるいは教員の給与なり、あるいは学校建築の状況なり、坪数なり、それぞれ文部省教育行政の施策のための資料として、それは調査や統計の事務、そういう事務についてできる。だから、教育委員会はそういう調査をしてどんどん出しておるのだ。けれども調査の結果を得たいがために、教育委員会が突如として単独に学校の中へ何日の何時何分からこういう教育活動をやれ、もしも、かりに適法教育活動として、学力テストは、これは適法なものだと私は思わぬ。思わぬが、だとして、そういう調査をほしいために、そういう目的によって学力テストという教育評価を教育委員会が命ずることができない、それは違うのだ、五十四条の二項ですか、それのいうている教育行政事務としての調査、統計その他の資料、報告を求めることと今回のこととは違う。たとえばあなたは学力テスト教育活動だというたが、学力テスト以外にそういうものがほしいということで、児童生徒の個人の家庭の事情、経済事情、あるいは学習の成績の結果なんていうものを、あからさまに強権的に学校から取り上げるということは、教育基本法にまっこうから反する、そんなことは。みんな赤裸々にすっぱだかにしてそれをやるということは行き過ぎです。けれども、そんなことはともかくとして、調査や統計というのは教育委員会から求めるのだ、その調査の結果をほしいがために学校に命ずるということとは問題は別です。この条項は、そういうところから学校にまで命令するという根拠が出てこない、そう思うのです。この点はどうですか。
  28. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) もとよりお話のとおり、この五十四条二項によって参りますものは、市町村教育委員会まででございます。したがって、私も、文部大臣が各学校長にじかにそういうものを求めることができるとお答えしたのではないので、ただそういう場合にも、小笠原委員のおっしゃったように、その学童の家庭生活の状態をみんな出せということは、これは市町村教育委員会権限ではないのでありまして、その調査にいたしましても、やはり教育委員会の持っております仕事範囲でやるべきだと思うのでございます。ところで、この学力テストというものは、なるほど文部省では全国の資料を得るということでございましょうけれども、それぞれの学校において、その学校の生徒の学力をそこで把握をするわけでございまして、それ自身は、お話のように、教育活動自体だと思います。そこで、そういう教育活動自体として適当なことと判断をし、これを教育委員会業務命令を発して集めて、さてそれを今度は調査資料として文部大臣に送ることになると思うのであります。ただ、そこで一点、市町村教育委員会は、管理規則を定めるという一般的なもの以外には指示、命令というものができないのだという点で、非常に分かれるわけでございますけれども、私は先ほど来申しておりますのは、その事柄にもちろんよりまするわけでございますけれども市町村教育委員会が、今回のテストのような場合に、これを業務命令を出しますことは、これは学校運営の基本を定めるというとの規定にまっこうから反するものだというふうには考えていないのであります。
  29. 加瀬完

    加瀬完君 一応おっしゃることはわかりました。整理しますと、業務命令を出したのは教育委員会だと、こうお考えですね。その業務命令内容はどういうことですか。
  30. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) これは最初にお答えをいたしましたが、業務命令を出しましたのは、まさしく市町村教育委員会でございます。校長に依頼いたしまして、今回の学力テスト貴校校務として、学校校務としてこれを行なうように、校長テスト責任者としてあるいは校長が今度はその責任において所属職員テスト補助者として、その責任者、補助者等は要綱にあるようでございますけれども、そういうものといたしまして、これをとどこおりなく行なうようにという業務命令でございます。
  31. 加瀬完

    加瀬完君 地方公務員法の三十二条に、「職員は、その職務を遂行するに当って、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司職務上の命令に忠実に従わなければならない。」という文句がある。そこで、この職務上の命令は、前段の「法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程の」中のものでなければならないとは御認定になるでしょう。
  32. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 必ずしもそうは限らないと思います。
  33. 加瀬完

    加瀬完君 それじゃこれに違反しても、その業務命令は有効だという御見解ですか。
  34. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 私の答えが、あるいは間違ってとられたかもしれませんけれども、その条例なり法令なりにきめられたことでなくても、一般に特別権力関係として、その業務を円滑に運営いたしますためには、法令なり条例なりに、一々かくかくすべしということがないことでも、その上司命令すれば具体的にしなければならないことがあるという意味で、これこれの教育活動について……。
  35. 加瀬完

    加瀬完君 それはあなたの錯誤が二点ありますから、私は意見になりますが、指摘いたします。  一つは、さっき言ったように、国家公務員法の百五条は「職員は、職員としては、法律命令規則又は指令による職務を担当する以外の義務を負わない。」こう書いてある。これは地方公務員法にも準用する、これは既定の事実だ。ですから、法律命令またはこの指令というのは、さきの三十二条に照らすならば、「機関の定める規程」ですね、「機関の定める規程」による職務の担当以外は義務はないのです。これは百五条で明文だ、明らかだ。しかも、教育活動とあなたはおっしゃる教育活動について、地方教育委員会は何でも命令していいという権限がございますか、法律のどこかに。地方教委教育活動の主体的な内容について、無制限に指揮監督する権限というものはどこにもありませんよ。三十三条だなどというばかなことを言っているから例を引いているけれども教育基本法には何と書いてある、そんなでたらめなことを言っているから問題になるのだ。教育基本法には、あなた方文部省教育基本法説明のときにこう言った。「教育行政は、教育内容に介入すべきでなく、消極的には不当な支配の侵入を防ぎ、積極的には教育を守り育てるために諸条件を整備確立することを目標とすべきであり、ここに教育行政の使命とその限界を明確にしている。」と教育基本法説明のときに文部省はそう説明されている。そうして教育基本法にも「不当な支配に服することなく、」云々という中に、「教育目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」と書いてある、第十条、教育基本法の。そうして教育活動というものは、これは学校教育法によりましても、教員でなければできないのだ、教育活動というものは、文部大臣たりとも、地方教育委員会たりとも、教育内容の主体的活動といいますか、活動を主体に、免許状を持って任命された教員以外は携わることができないわけでしょう。それでさっき言った規則、規程の中には、あるいは指導要領の中には、教育委員会がやるべきものではなくて、教師がやるべきものだという諸規程がちゃんときめられている。学力テストといいますか、テストをやるという働きは、これは教育活動なんです。それは教育委員会では行ない得たいものなんです、教育活動は。この御認識がないと思う。この間文部大臣は教科をするという、これは教育活動かとお認めになった、同じものだとお認めになったですね。それは教育委員今が指揮命令の監督権があるから何でもやってもいい、そんなばかなことは一般公務員だって認めませんよ、これは労働法にも規定がある、国家公務員法にも規定がある、これは法律の常識だ。  そこで、問題をさきに返して、私は、権限のある上司ということが成り立つかという問題、職員職務だということが。一斉テストを、命令されてやらなければならないという職務だということが成り立つか。それから評価というものは、テストということは、職務上の独立権限範囲ということではない。それを委嘱するのではなくて、命令してやれ、こういうやり方が法律的に成り立つかということを伺っておるのです。との最初に指摘をした二点を、局長の御見解法律的に質したいと思います。  それからもう一点、あなたはさっき判例々々というが、一斉テストのごときものは、今まで行われたことはないのです。判例があるはずありませんよ。合わして三点。
  36. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 第三の点からお答えいたしますが、判例が一斉テストについてあるということを申し上げたのではありませんで、私は、公務というものは何だということにつきまして判例を引いたのでございます。その判例の起こりました事実というものは、例の宿日直に対しまして、これを拒否したという問題についての判例の中で、公務というものはかくかくであるということを言っておりまするので、具体的な公務という問題についてお触れになりましたときにこの判例を引用いたしたわけでございます。  それから、教育基本法の中で、第十条に、教育が不当な支配に服することがないようにするのだ、その教育目的を遂行するに必要な諸条件の整備などを目標として行なわれなければならない。御引用になりましたが、この諸条件の整備と申します中には、私ども見解によれば、物的の施設ばかりではなく、教育的な内容に及ぶものと考えるのであります。それでは、その内容が具体的にどうなっておるかと申しますから、教育行政法の二十三条の中に触れております諸条項の中にこれに当たるものがあるというように考えるわけでございます。  それから、先ほどの私の答えにも関連するわけですけれども法律命令範囲内であるということについては、われわれが服務しなければならないということは、法律命令範囲内でなければならないことは、これは疑いのないことであります。先ほど御引用になりましたような、そういう法律に従い、かつ、上司命令に従うということになっておると私は思うのでございますけれども、私の申し上げましたのは、法律命令の中に、具体的にやるべきことを列挙といいますか、各条項に触れておることもございますけれども、しかしながら、教育公務員は、教育という目的を達成するために、あるいは警察官は治安維持という目的を達成するために、それぞれの法律の中に明文に示されておりませんことでも、上司がその大きな目的範囲内で命ずることには従わなければならないという意味で、必ずしもその法律に明記してある必要がないということをお答えしたのでございます。そういう意味では間違いがないと思うのでございます。  それからもう一つ、規則を定めるというふうになっておりますけれども、その運営規則を定めるといいますことと、そういう規則を定める以外に、個々の教育内容についての指示、命令ができないかどうかという問題については、私どもは、その内容が適当なものであればできるというふうに考える。しかし、一般的に申しますと、服務の監督をするということが明記されておるわけでございまして、そういう内容に触れるものというふうに私は考えるのでございます。
  37. 加瀬完

    加瀬完君 服務の監督といいますものは、その服務というものは、あなたのように、一切がっさい常識で考えて、教師にやらせればやれるものが全部服務という考え方は、法律的には成り立たないでしょう。服務というものは、たとえば分限、懲戒その他の身分取り扱い、あるいは職員の勤務条件その他職員の服務に関する必要な事項、こういうように法律にありますように、用例があるわけです。で、勤務に専念する義務上司の命に服従する義務とか、信用、名誉を保持する義務、秘密を守る義務、営利行為に携わらない義務とか、こういうものが教育行政法にも掲げられておりますけれども、そういうものはすでに法令によって明記されておるわけですね。服務の内容というものは明記されておらないものを、無制限にいわゆるあなたのおっしゃる上司義務づけて、それをやらなければならないという義務は、私が引例した百五条によってもこれはない。百五条も法律ですから、適用されるわけでありますから、明らかなわけです。それで、あなたは二十三条の五項で、学校組織編成教育課程学習指導生徒指導及び職業指導に関することは何でもできる、こういう考えのようです。その前文を読んでごらんなさい、権限に属する事務ですよ。事務内容として、組織編成に関する事務教育課程学習指導生徒指導等の事務が二十三条ですよ。で、小笠原委員も指摘したように、四十八条には、あなたも御引例になりましたが、文部省の、あるいは教育委員会の立場というものは、これは基本的立場というものは、ここに明記されておるわけでありますけれども、あくまでも指導、助言または援助、こういう建前です。指揮命令権というものは文部省にはないわけです。勧告というものが最大のこれは権限ですよ。こういう立場をとっているわけです。あくまでも事務なんです。それで、さらに他の法律では、教諭児童教育をつかさどる、教育内容そのものは、教員の免許状を持って任命された教諭でなければできないというふうに書かれておる。それを教育委員会であれば、教育内容にわたるものでも、何でもかんでも命令していいという解釈は成り立たないと思う。これは意見になりますから……。もう一つ言うと、われわれは通常そういうものを解釈するときには、立法の手続がどういうふうに行なわれてきたか、あるいは立法の趣旨説明がどういうふうに行なわれたか、あるいはそのときの執行者の法的解釈というものがどういうふうに説明されたかということは、これは重要な一つのポイントになると思う。で、文部省は、その当時の担当課長でありました地方課長の木田さんの名前で一応解説書を出している。その中には先ほども申し述べましたが、三十三条において、管理機関の側から学校管理権内容とその行使の大要を客観的に規制し、包括的な管理権自己規制を加えることによって、教委学校との両者の権限責任分野を明確にし、学校主体的教育活動の促進をはかるところに三十三条のねらいが説明されており、主体的教育活動の役目は、これは学校教師が受け持つべきであって、これに無制限に教育委員会が、あなたのおっしゃるように、包括的権限があるからといって教育内容に入ることは、これは教育の伸展のためにも、厳に避くべきである。それは管理運営規則というものを作って、ここに教育委員会の意思をもって、その中で諸法規に定められた教育計画なり教育活動なりというものを学校側が行なうべきものだ、こういう建前になっている。ですから、地方公務員法の三十二条によりますれば、そういう法規は完全に守っているんですよ。岩手教組の場合は守っているでしょう。法律に一つも違反していない、きめられた管理規則のとおりにやっているでしょう。そこに業務違反だという烙印がどうして押せるか、あるいは今言ったように、教師権限、独自の教師権限の他に業務命令が出せるという御説明にしては、まだ法的根拠が足りないじゃないか、この点をもう少し御見解を承りたい。
  38. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 それと一緒に、同じ意味のことをお尋ねするから、お答えを願いたい。あなたが主張されるように、教育内容にわたる日常の活動内容について、教育委員会がああせいこうせいと職務命令学校に出すことができるんだと、そういうことになったら学校というものはどういうことになるか、これは文部省側のほうにも意見があると思いますが、想像してもわかるんです。法の解釈は、その法の目的と立法の精神から解釈してもらわなくちゃいかぬ。警察行政から解釈されちゃ困る。教育基本法教育の政治や行政からの介入を避ける、そういう建前で憲法に準ずる法律としてできて、それから演繹されて各種の教育関係法律が出てきているんです。そこのところからまず判断してもらわなくちゃいかぬと思うのです。それで管理運営規則があって年間の学校教育計画があるのを、突如として教育計画の変更を命ずるという場合には、それは相当法律的な根拠がなければならぬ。管理運営規則以外のことをやろうとするなら法律的な根拠がなければならぬ。ところが、先ほどから伺っておると、その法律的な根拠はない、二十三条に包括的にあるんだから何でもやれるんだという思想なんです。何でもやることが教育を阻害するから、三十三条によって一つのルールを作っているわけなんです、ルールを。だから校長が、それは困ります、だめですとなったら、それはそこまでで終わりなんだ。まして、校長が、たとえば英語の教師が免許状を持って教科担任者として教育活動を行なっているのに、外から持ち込まれた問題をもって、お前このテストをやれということを命ずる権限校長にないんだ。それは英語担任教師の主体的なそれは権限なんだ。それを一々右左とやるんなら、それは免許状要らずだし、学習指導要領も要らぬし、教育計画も要らない。教育が混乱しますよ。そういう立て分けを考えながらこの関係解釈できないかということを再三さっきから申し上げているんですよ。それに私ひとつ申し上げるんだが、これは全然今までの角度とはまた別なんですが、それは教育活動だということは、これは言えないのじゃないか。それよりはあなたのほうの解釈ならそれは調査だ、事務だ、こうなるとすれば、それはなぜそういうふうに私言うかというと、あなたが一体学校長に対して、教育委員会は、テスト実施責任者になれと命令した。ところが、テスト実施責任者は、教員をこのテストの補助員として命じろ、こう言うておる。おかしいじゃないですか。学校教育教育活動なら、校長教師関係学校教育が行なわれる。テスト実施責任者に教育委員会任命したということは、これは教育委員会事務の一部を学校長にやらせようとしたものなんです。その限りにおいては、学校長が自分の労務を提供するということで同意を与えられるなら、あるいはそれは合法になるかもしれません。しかし、その場合の校長たるものは、テスト実施責任者という教育委員会の一事務職員なんだ。その事務職員が、教師の日常の教育活動をやっておる教師に、無関係テストの補助員になれという命令をしたからといって、それは教師本務ではない。教育委員会の一事務職を委任された者から、教師に対して、お前はテスト実施という仕事事務、全くこれは教育ではないですよ、事務なんです。なぜなら、補助員になれというのですから、それは自分の本務外だから拒否するという場合も、その立論のほうから言ってもあり得るのではないですか。もしもほんとうの教育活動であるなら、校長としてやらせ、教員として教育活動としてやらせるべきだ。それを何でテスト実施責任者だ、何で補助員だ。補助員とは実施責任者の補助員だから、教育委員会の一部事務をやれと命ずるんだ。教育委員会の一部事務学校長なり教師にその任務外のことを命ずる権限がどこにあるか。また、そんなことを拒否したからといってどこが違法です。これは全然今までの論理とは立場を変えますよ。はっきりテスト実施責任者、補助員の任命ということを教育委員会が企画したことは、この学力テストというものは、文部省の意向による一斉全国テストであるから、そうして調査報告をこれこれと求められておるから、調査事務であるということで命じたのだ、今教育活動なんだかんだといったって、そうならば、教師なり学校長本務からいえば労務提供であり、校務外の雑務です。それで一つお尋ねしたいのは、テスト実施責任者として教育委員会任命したというのは、教育行政の一環、教育事務の一環として、当然教育委員会がやる仕事を一部学校長にやらせようとしてそれを与えたのだ、その場合の学校長たるものは教育委員会の一事務職員だ、こう考えられるのか考えられないのか、その点をお伺いしたい。
  39. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 先ほど来のお尋ねは、二十三条にある事柄を無制限にやれるかどうかというようなお尋ねでございますけれども、これは行政一般のことでございますけれども、合理的なその事柄の目的範囲内でございまして、今回の学力テストというような問題についてそういう命令ができるというふうに考えるわけでございます。  それから、今のテスト補助員なりテスト責任者の問題でございますけれども、これは今後の捜査の過程でいろいろ明らかになると思いますけれども、ただいままでのところでは、私ども考えておりますのは、これはやはり学校の本来の先生が、その本来の生徒に対してテストを行なう、それが全国的に集計をされることによって全国的なある調査の対象になるということでございますので、これは私は個々の学校、個々の先生にとっては、教育活動自体であろうかと思うのでございます。  それから、個々の先生の教育というものは、免許状を持った先生しかできないという事柄と、その先生が教育をするあるワクの問題について地方教育委員会職務命令を発することができるということと、私は両立することだと思うのでございます。
  40. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 やかましい議論でないのだから、テスト実施責任者とか補助員とかいう必要がないじゃないですか、教育活動であったら。学校長なり教師本務であるなら、何でそういう肩書きをつけ、何で命ずるのですか。それは全国一斉にやるものであるからということなら、まことにそれは違法のものです。けれども、事実はそうなんです。指導されているんです。こういうふうな全国的に学校長テスト実施責任者とする。テスト実施責任者は教師を補助員として使え、使えなんですよ。この場合に、それを教育活動だといえますか。テスト実施責任者として命ずるということになったら、それは教育委員会本来の事務である、調査をするとか、文部省に報告するための調査の本来の事務である、それをわかち与えるがために学校長テスト実施責任者とするのだという私の解釈判断は間違いですか。それは教育委員会内の一事務職員、また、まして教師テスト実施責任者が命ずるということを、教師の本来の仕事でないということで拒否したとするならば、それは当然のことですよ。教育活動なら、校長として、教師として本来の仕事なんだからやれと、命令ということが私はこれはあり得ないと思うが、なぜそういう命令をしたのか。だからやっぱりそれぞれの権限範囲をわきまえたからこそそういうことをやったのだと思うのです。しかし、それは同意が得られなかったら、それは終わりです。じゃ、それなら他に父兄なり何なりを委嘱するからといって、それが学校に乗り込んでそういう調査をするということは、学校長の同意なしに行なわれるものでなしに、それに同意を与えるような学校長なら、それは懲戒処分でもしなければならぬ。外部の者に児童生徒々提供して、教育計画を中断して勝手のことをやらせるということになったら、それは法の命ずるところじゃないんです。だから私の申し上げることは、時間もきていますが、教育活動としても、それは教育委員会が個々のことについて命令をするということ、それはできないのだ、ルールがあってしか教育内容に立ち入ることができないのです。このことがあなたの解釈と真っ向から食い違う。これは教育基本法なんかを十分読んでもらいたい。この法の趣旨、精神というものをわきまえてもらいたい。そうでなかったら、国家試験によって免状などを付与して教員を教壇に立てる必要がない。一々内容について命令し、指示することができるなんていうことになったら、教育委員会学校との間の、だから指揮命令関係を考えないんです。所管するとだけあるのですよ。学校長教育委員会とは、上下の関係があっても、学校全体は教育活動の場である、学校というものは教育委員会が所管するとある、この点をもう少し御研究願いたい。私立学校知事が所管するとあるだけだ、そこにのこのこと手を入れていくということはできますか。そこの限度、限界というものを文部省なりあるいは立法の人なりが考えているから言葉の使い分けをしているのだ、そういう点をもう少しあなたのほうでも御検討願わなければならない。それで端的にお尋ねしますが、あなたの答弁では、テスト実施責任者というものに学校長任命したということは、教育委員会の一部事務を、これは本来の教育委員会事務ですよ。調査、統計、そういう教育事務を一部やらせようとしたということに解釈することはできませんか。
  41. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) テスト責任者、補助者という名前について、ただいまの御意見、これも十分考えられることでございますけれども先ほど申し上げましたように、職務命令内容校務としてやれということになっているようでございます。したがいまして、それは個々の人たち市町村教育委員会事務職員として臨時に補助として使ったということではなく、これはそういう名前はどういうふうにつけ、何でそういうふうなつけ方をしたのかということについては、これから捜査活動でもよく検討はいたしてみますけれども、地元でもいたすことになると思いますけれども、しかしながら、校務としてやる、それは先ほど来お話のように、たれを持っていってもそこでやればいいのだということでなしに、本来の先生が本来の生徒に対して学力をテストをする、それはその学校自体のためでもあるわけですし、それが集まれば、その府県なり市町村なり、あるいは国全体としての資料になるというような意味でやられたわけでございますから、たれを持っていっても、そこに集めてやってもいいということはなかったろうと思います。そういう意味で、私はこのテスト教育活動として行なわれたものだというふうに考えるわけでございます。
  42. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そうすると、例をもってしますがね。市町村教育委員会が管内の学校に対して、どうもあの学校は成績がよくないようだ、あの学校はよさそうだ、この際問題を作って学力テストしてやる、そういうものを作り、やれと命ずる、こういう行為が合法であるとおっしゃるんですかね。
  43. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 合法であると思います。
  44. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういうことが許されるということになれば、その根拠は何かというと、この二十三条の規定でやれる、こういうことなんですね。
  45. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) そのとおりでございます。
  46. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 そういうことがやれるのだということになったら、これはあとで十分内藤さんと論争しなくちゃならぬが、全く問題を作成する者が免許法による有資格者じゃないんですよ。そうして、それでもいいでしょう、教師だってたまたまいろいろな問題集をもって、これが適当なりとしてとって学力評価する場合がある。しかし、教師判断は一つもないんです。教育評価に対する判断教師が本来持つ判断を取り除いておいて、そうしてテストがやれる、それが強制できるのだということだったら、これは教育というものは破壊されますよ。どこに教育の自主性というものがあるか、もしもそういうことを慣行的にどんどんやれるとなったら、これは教師なり、学校長はどこを向いて教育したらいいんですか。どこを向いて教育したらいいのか、どこを向いて。そういうことは重大なことで、軽々にそれはかまわない、合法なんだ、どんどんやりなさいというようなわけにいくものじゃないんです。少くとも教育活動であるというなら、責任のある者は教師なんです。責任のある教師が問題を設定し、そうして評価して、そしてそれを教育上有効に使う、処理する、こういうことでなくちゃいかぬと思う。他から強制されることは、教師みずからの本来の教育活動を侵害されることなんです。そういう原則を立てなかったら、これはもう学校教育というものは行政の支配か権力の支配か知らぬが、直接間接侵害されるんです。そういうことこそ文部省が指導あるいは助言し、勧告し、そして法の精神が成り立つように規制していかなくちゃならぬことなんだと私は思います。ただ字づらで見て三輪さんは合法だと言うけれども、それは教育関係者でないから、警察権を行使する立場で解釈して言うことだろうから、ここでは黙っておきますけれども、それは文部省なりあるいは自治省なりの法を運用する側からいって、これがもう適正なんだというようなことになったら、これは大問題だと思うんです。で、われわれはさっきからはっきり何度も申すとおり、服務とかあるいは監督とかの立場からいうても、あるいは学校教育、こういう建前からいっても、こういうテストというようなものが、外から強制される筋合いのものでないんだという法律根拠をさまざまな形で示し、いわゆる職務命令としての要件を満たしていないという立場でお話を申し上げたんです。たしか三輪さんは、そういうことはそうかもしらぬが、おれの警察側の解釈はこうなんだからそれで捜査し、あるいは立件送検する。それでそれが立件されたら裁判で争えばいい、こういうお考えでしょう、端的にいえば。そうして自信もあるとおっしゃるでしょう。しかし、そのことの結果が、裁判の結果が、かりにもわれわれが称するようなことが是とされるというようなことになったら、これは教育界を混乱させたそういう責任は、これは免れない。だから私は、委員会の、地方公務員法なりを所管したわれわれとしても、こういう解釈があるぞということで示すことを、ただ単に軽々に鎧袖一触ということではなしに、十分慎重に研究していただきたい。そして、極力この教育界の混乱、それが長年にわたって尾を引くというようなことを排除しつつ、事件にする自信があるなら、そういうふうな慎重な扱いを私は望むんです。まあそれだけここで申し上げておきます。
  47. 加瀬完

    加瀬完君 ちょっと今の問題と関連だから一緒に……。
  48. 小幡治和

    委員長小幡治和君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  49. 小幡治和

    委員長小幡治和君) それじゃ速記を起こして。
  50. 加瀬完

    加瀬完君 局長ね、どうも教育関係の今までの法規運用の慣習というものに十二分に御納得がいっていないので、やっぱり一般的な見解にどうしても陥るんじゃないかと思う。この問題は重要ですから、法務省並びに自治省も来ておられますから、なお、文部省もあわせてお尋ねしたいんですが、教育活動だとおっしゃるならば、教育活動としての評価は、学習指導要領によって、これは学校長教員の固有の職務のものだと規定されておるんです。文部省は、これは教育活動とはおっしゃっておらない、事務だとおっしゃっておる。教育活動とおっしゃるならば、それは教育委員会といえども法律命令できめてあるとおりのことを教師がやっておって、今度はいけないということですから、そこに問題が出てくるわけです。そこでくどくなりましたが、あなたが法律命令のワクの中でやっておるにもかかわらず、上司という立場で権力関係にあれば、法律命令規則違反する職務命令というものを出せるという御見解なのかどうか。
  51. 三輪良雄

    説明員三輪良雄君) 端的にお答えいたしますけれども法律命令に反する命令などは、これは出せません。しかし、法律命令範囲内として正しい仕事をしているのにかかわらずという前提は、私は同意いたしません。
  52. 加瀬完

    加瀬完君 法務省にお尋ねいたしますが、この指導要領によれば、評価をしたり指導要録に記入したりするものは、これは校長教師権限となっておる。また、専属的な職務といいますか、ということになっておる。ですから、評価というものを教育活動だと、一斉テストというものは教育活動だとすれば、やるやらないは、これは教師独自の権限にあるわけです。それを今度は文部省がいろいろの手続でやれと、まあ名実ともに命令するわけです。それを受けて地方教委が、今、小笠原委員の指摘するように、おまえは実施責任者だ、おまえは補助員だ、こういう命令を出せるという御見解なんですか、ここに疑義があるとお感じになりませんか。
  53. 川井英良

    説明員(川井英良君) 大体三輪局長がお述べになりましたところと、大綱は私ども同じように考えておりますけれども、多少考え方といいますか、説明の何といいますか、順序として、一応のその点に関する考えをお答え申し上げたいと思うのですが、教育基本法と、それから学校教育法ないしは社会教育法というような、一連の教育に関する法規の精神というようなものにつきまして、私どもも私どもなりに、一応の研究はしているつもりであります。その中に流れておる基本的な精神というものは、先ほど来御指摘になりましたように、学校教育というものの中立性といえば一番いいんでしょうか、そういうふうなものに法の勢力といいますか、政治性といいますか、そういうふうなものが加わらないように、その適当なバランスをとっていくというところに、やはりこの法の精神というものは一番基本的なものがあるというふうに私どもは考えているつもりであります。そこで問題は、具体的に法規の条文を解釈としてその基本的な原則というものをどういうふうに個々に解釈していくかというところでいろいろまた説が分かれてぐるのじゃないだろうかと私は考えるものであります。そこで、一番重要な、本件につきまして問題になっております学校教育法の二十八条の「校長は、校務を掌り、所属職員を監督する。」それから次項に教諭権限その他といたしまして「児童教育を掌る。」こう書いてございます。われわれの解釈といたしまして、その教諭職務権限、第二十八条の四項だと思いますが、「教育を掌る。」という、その言葉のその「教育」という法律用語の概念とでも申しましょうか、それは絵にかいたように、先生方がおっしゃるようにきちんとして、きわめて明白な、あらゆる事務についてここまでが教諭だけがつかさどらなければいけないところの本質的なところの教育である、それをはずれたものはそうじゃないのだ、こういうふうに解釈できるものかそうじゃないのか、その限界というものは、一応法律的には、抽象的には限界はきまっておりましょうけれども、「教育を掌る。」あるいは地方教育行政法ですか、五十四条に書いてありますように、教育に関する事務に関し、調査だとか、あるいは二十三条に書いてございますように、教育にかかわる調査だとかいうふうに書いておりますので、それらの法律に書いてある教育に係る」、あるいは「教育に関する」とか、あるいは「教育を掌る」。というふうな法律用語の概念というものを純粋法律的に解釈をしていきますというと、その中には精神がきちんとしておらなければいけませんけれども、やはり概念としては、その周辺といいますか、ぼけたという言葉はいけませんけれども、若干の幅を持った基準というようなものがやはりあるのじゃないだろうかというようなことを、私ども解釈として従来も考えておったわけであります。そこで、結論といたしまして、その教育を掌る」。と、こう書いてありますから、これはもう本質的なものでありまして、校長ないしは地教委、市教委、府県教委、あるいは文部大臣というような機関が介入することができない固有の分野があることは、これはもちろんだと思います。しかし、その若干の幅を持った周辺というものには、やはり教育に関するというふうな言葉で読めるような、教育をつかさどるということに関連した若干の事務というものは、やはり付加されているのじゃないだろうかという、そういうようなことを従来考えていたのであります。
  54. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、それはよくわかりました。そうすると、もし純粋に教育そのものというものは、これはあなたのおっしゃるように、教育委員会たりとも、文部省たりとも介入すべきでない、教育主体性というものは生かされておる、こういう御見解ですね。
  55. 川井英良

    説明員(川井英良君) 先ほど小笠原先生の御指摘の中に、検察庁における検事の職務ほど独立したものでないかもしれないがという御趣旨のお言葉がありました。
  56. 加瀬完

    加瀬完君 そういう性格はあるね。
  57. 川井英良

    説明員(川井英良君) それが検事の場合においては、そういうものがあると思います。教育においても同じような趣旨のものはあるかと思います。
  58. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、教育をつかさどるというものに、そのつかさどる教育の基本的な法令というものは学校教育法であるし、あるいは具体的な教育活動としての根拠指導要領だと思うのです。これは文部省もお認めになりますね。その指導要領には、テストをいつやるとか、何をするかというようなことは校長が定めると書いてある。ですから、校長権限なんです。そう法令にもきまっておれば、規則にも大体同じようにきまっておる。それに教育委員会というものは法令違反をしようとするわけです、今。テストをやれ、こういうことが許されるか、これが一点。  それから教育内容じゃございません、事務だと、こう今まで文部省がおっしゃってきたとすると、教員の身分を規定するものは、服務を規定するのに、教育公務員特例法には、二十条の三項には、「研修」という項があります。これには、教員は、授業に支障のない限り、本属長の承認を受けて研修の機会が与えられるべきだと、授業に支障のない限りということは、教育をつかさどる、あるいは授業をするということだと、こう解釈してこれはよろしいと思います。二十一条には、教育に関する他の職、他の事業、事務の従事は云々とあって、任命権者の許可で従事することができる。教育に関する他の職、他の事業、他の事務ですね。他の事業、事務の従事、教育事務の従事は、任命権者の許可で従事することができる。ですから、教師本来は、任命権者が他の事務を命ずることができるとはなっておらないのですよ。もっと裏を読めば、任命権者が他の事務を命ずることができないとも読みとれると思う。他の事務をやりたいという申し出があった場合、任命権者が教育に支障ないという場合は許すということなんだから、事務そのものは教師本務でないということがここで明らかになっておる、服務の上で。それから学校教育法の二十八条にも、「事務職員は、事務に従事する。」とあるのですよ。それで、「教諭は、児童教育を掌る。」とあるでしょう。事務の分野が教育活動の分野と分けてある。そう読むのが私は当然だと思う。こういう身分法から見ても、与えられた事務を無条件にやらなければならない職責上の本務というものは教師にはないと解釈できると思うのです。  次に、二つ私は質問します。一つは、あなたのおっしゃるように、あなたというのは、三輪局長のおっしゃるように、教育活動としての業務に携わるのだとするならば、教育活動内容は法令できまっているのだから、それを教育委員会が不当に変更させる権限というのはないのだ。したがって、おまえ一斉テストをいついつやれという職務命令は存在しないのじゃないか。  それからもう一つは、これは事務だとおっしゃれば、事務事務職員が担当することに法規できまっている。また、教育公務員特例法からみても、本体は授業をすることなんだ。事務の場合は、こういうことで願い出て許可される場合はあり得ても、事務というものはすべきじゃないという基本精神で二十一条というのができておるところから見れば、事務命令教員に出すということはできないのじゃないか、こういうように解釈するのですが、これはいかがでしょう。
  59. 川井英良

    説明員(川井英良君) たいへんめんどうな問題でありますが、私の考えているところを率直に申し上げたいと思います。  最初の問題と、それからあとの問題も、大体関連しているのじゃないかと私は理解しているのですが、その行政事務の執行にあたって、上級の機関から下級の機関にいろいろな指示が出るということは当然あることでありますが、その場合に、一般的、抽象的に言って、言うまでもないことでありますけれども、そういうことを命じ狩る権限が上級機関法律上あることが必要でありますし、同時に、また、下級機関職務として、そういう事務、命ぜられた事務内容職務上行ない得る法律上の根拠がなければならないということは、これもあたりまえのことだと思います。そこで、問題になっておりますのは、具体的には今一斉学力テストでありますけれども、その一斉学力テスト内容というものを、先ほど私が申し上げました一連の法律体系の中でどういうふうな事務と理解するかということでいろいろの御意見が出てくるのじゃないだろうかと、こういうふうに理解しておるわけでありますが、一斉学力テストの私ども理解しております範囲テスト内容なり、あるいは目的なり、そのテスト実施の状況なり態容なりというようなところから一応考えてみまして、その事務は、先ほど地方教育行政法にありました、文部大臣教育委員会に命ずることができるところの事務であり、同時にまた、その命ぜられたところの教育委員会は、二十三条に基づいて、(「命ずることはできませんよ」と呼ぶ者あり)命ずることが適当でなければ、言いたい精神は――その流れ方を申し上げたいと思うのですが、さらに教育委員会は、校長に対して校務としてそれを命ずるというふうなことができ、かつ、それについて、今回の場合は補助ですけれども、補助を命ぜられた教諭が、その本来の教諭職務権限に基づくものとしてその補助をしなければならない、服務の義務法律上そこに生じてきた、こういうふうに解釈ができるとするならば、これは一連の解釈とするならば、私は結論といたしまして、先ほど三輪局長がるる申しましたように、今の法体系のもとでそういうような一連の法規解釈ができる、またそう解すべきだと、こういうふうに解釈としては考えます。
  60. 加瀬完

    加瀬完君 そこで、上級というけれども文部省は地方教委の上級官庁ではありませんよ。それから、調査を求めることはできるのです。命ずることはできません。文部省は、求めることができるという言葉を、強制権を持つものだと、受けるほうは義務を負うものだと解釈しておりますが、五十四条の二項をどういうふうに読むか、強制権を持つというふうに読み取ることができますか。また義務があるという読み取り方は私はできない。しかし、それは一応本筋から離れますから抜きまして、校務というものは、教育法規で定められたものが校務です。そうでしょう。そうでなかったら、国家公務員法の百五条というのは、あったってなきがごときものですよ。あるいは労働基準法の十五条なんかというのは、意味をなくしてしまうのです。しかし、一斉テストをするのが校務だというきまりは、どこをどう見たってないですよ。したがって、職務権限というものは、法律命令指令にきめられた範囲でなければならないという、これは百五条の規定があるのです。公務員法に地方公務員法は準用するわけです。そうであれば、そういうきまりはどこにもないですよ。そこの御認識が私は足りないのじゃないかと思うのが一つ。いいですか。文部省は上級官庁じゃありませんよ。指揮命令権というものは、文部省は持っておりませんよ。教育行政について監督してはならないと、文部省の設置法に書いてあるくらいです。ところが、事実は、今度は指揮命令をしているわけです。むしろ警察が縛ってもらわなければならないのは、文部省です。それは別としましても、校務々々と言うけれども、そんな通俗的な考え方では困りますよ。校務というもの、法律的にきまっているもの以外に校務というものが、派生的に、教育委員会文部省の考え方からやたらむたらにできてきたら、これは教職員としては、どうにも自分自身服務の律しようがありませんよ。ところが、そういうものはないのです。あらゆるものを見ても、そう書いてある。ですから仕方がない。五十四条二項でできるとか二十三条の五がそうだとか言っているけれども、五十四条の二項にしても、二十三条にしても、文部省の文部行政の基本態度はどうだということについて、教育基本法なりその当時の立法の経過というものを見れば、今度のようなことがなし得るものではないということは、これは常識だ。これは警察にもよく知っていてもらわないと困る。で、あなたは中立性と言っているけれども、中立性だけじゃない。教育活動主体性学校にある。これには容喙すべきではない。こういう一つの線も、教育基本法の強い線です。外に対しては、教師個々は、教育を与える教師としての中立性というものを要求されるのです。しかし、本体としての教育主体性、他から不当なる支配に侵されない主体性というものは強調される。これが教育基本法の精神です。教育基本法やあらゆる法規は、みなそれを基礎にしてできている。だから教育活動そのものは学校のやるべきものだ。指導要領にちゃんときまっている。だから今度のように、いつテストをやるかどうかということは、校長権限によってきまるわけです。届け出てやればいい。変更の権限校長にあると、そうなっている。その規則のとおりに学校側はやっているのです。ですから、岩手の具体的な場合、校長がきめた、本日は授業をやるべき日だ、何時間日は英語、何時間目は数学だったら、英語や数学に出ている先生方の授業をやっているのが、どこが職務命令違反になりますか。校長管理規則で許され、法律で許されている指導計画に従って教師がやっているのに、業務命令違反になりますか。法令のとおりに動いていて、業務命令違反というのはどういうわけですか。この点についての見解お答えができなければ、十分御検討いただいて、後ほどお答えをいただきたい。
  61. 小幡治和

    委員長小幡治和君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  62. 小幡治和

    委員長小幡治和君) 速記をつけて。
  63. 小笠原二三男

    小笠原二三男君 あなたのおっしゃっていることは、日本だけだ。混淆しているのじゃないですか。あなたは、今回の学力テストは、文部大臣が、命令というほどではないが、指導、助言、監督して、調査事務として報告を求めることができるという規定を適用してこれはやったものだ、こう言い、今度は学校のほうには、校務だ、調査事務じゃない。調査活動というものは教師本務じゃない。その反証としては、たとえば教育委員会は、学校一覧表を作成して出せ、何の調査をして出せとかいうことを学校に命ずることはできないし、そんなことはしていない。みな委託調査なんです。契約を結んで業務を提供させている部面ですから。日宿直の問題も、それが大騒ぎになって、文部省がはっきりものわかりのいいようにきちんとしたから、今、本来の教育活動の免許状を付与された教師は、火事が起ころうが、何が起ころうが、寝泊まりで学校管理する責任は本来ないのです。ないけれども規則的にそういうことをやられているので、がまんしてやっているだけです。こんな警備なり何なりは、市町村教育委員会が独自にそういう者を採用してやるべきだ。諸外国で教師が、掃除の監督から、あるいは日宿直から、こんなことをやっている国は、文明国といい、共産国といい、そんな学校の形態は、どこにもないのです。そういうものはないのです。事務員、用員あるいは警備員、ありとあらゆる専門職を雇って仕事をさせている。教師授業、これだけをやる。それが済めば、自宅勤務でも、どこへ行っておってもいい。諸外国の例はみなそうなんです。日本だけです。財政上の諸問題等があったり、旧来の慣行、慣習があるのに便乗して、教師教育活動以外の雑務を――雑務です、教師からすれば。これをやらせておるのは……。まだまだありますよ、日本の教育の中に雑務は。これは内藤さんが整備というのは、教師を本来の本務に専念できるようにするのが、教育条件の整備なんです、話は横にそれますが。あなたはそれで調査事務としてやったものを、今度は、学校には校務だ、教育活動だ、こういうことは、論理一貫しません。いずれにしても、警察庁当局の考えも、あなたの考えも、まっすぐにそろっておるようでありながら、そろっていないところがあるのです。今のような点です。あるいは内藤さんに言わせたら、これはどういうことを言うか非常におもしろいが、内藤さんは終戦以来私よく知っている。教育基本法を作り、何を作り、私自身教育刷新審議会委員の一人として六・三制の法律の諸関係の審議をさせられた一人として、その当時の事情をよく知っている。六・三制の教育委員会任命制に変わろうが、法律の題目が変わろうが、教育基本法のある限り、その精神は生かされておる。生かされなければならない。また生かされていることを主張して、ああいう教育二法が改正されて、何ら差しつかえないことを、内藤さんも当時の大臣も強調したことなんです。それが現在は、過去の立法の精神も、法の趣旨も何もない。便宜拡張解釈してやり得るなどということは、厳にこれは慎まなければならぬ部分があるのです。だから、これ以上法律論争を私はしろうとだからやろうとはしないが、もう少し文部省も、教育基本法を作り、日本の民主教育がどういう方向へ行かなければならぬかということについて責任を持つということであるなら、もっともっとその学力テストなどというものも、包括的に強制的に末端でやられるようなことは避くべきだ。福岡県でどうしました。これは最後に聞く。福岡県では、これは教師本来の仕事であるのかないのか、私、文章は今わかりませんが、いろいろな疑義があった点から、これは教師判断実施せいということになっている。やりたくない教師はやらぬ。やってためになると思うところはやれという意味でしょう。私は新聞でざっと見ただけですが、事実でしょう。同じ文部省として、文部大臣は何とでも言っておりますが、文部省調査事務としてでも何でも報告を求めるということで、このテストをやれやれと全国に迫ったものが、福岡県のように任意に教師の自主的な判断で行なうべきものだとして、これを排除したところもあれば、あるいは県の教育委員会命令でやれというのに、地方教育委員会はこれを調査を委託するという形でやったところもあれば、それからテスト内容として、その諸条件文部大臣が指定して出してやったのにもかかわらず、その諸条件教育の本来の姿に変えて、そうして自主的な教育活動という形にはまるような形にしてやった神奈川県や、その他の地方教育委員会もある。やり方がばらばらになってしまったのです。これは法の解釈がばらばらだからです。本来公務で命令し得るものであるならば、これは整然と全国的に命令しなくちゃいかぬ。それがどうでもいいんだ、どっちでもいいんだということが行政当局によって行なわれていると思うんですよ。県の教育委員会なり地方教育委員会なり、行政機関そのものにおいて、その判断が行なわれているんですよ。こんなことは、抵抗あるなしにかかわらず、やるべきことではないでしょう。調査目的があって、文部省がやったことを勝手に地方で動かしておったこの事実というものを考えるならば、これはある県は命令だとしたから、それが命令違反したから、これは捜査する、あるいは逮捕する、刑事事件に問う。あるところは、同じテストをやりながら、これを教師の自主的な判断に待つことになったから、その点は免れるのです。こういうようなことは、私、判断すれば教育上の問題からいうても、警察の何といいますか、刑事政策というのか何というのか、そういう点からいっても慎重に配慮しなくちゃいかぬことだ思う。行政機構がばらばらな判断でこれが実施に当たったのでは、ただ単にそこの一機関命令だとして、それでそれに従わないとして、そうして刑事事件にまで問われる、あるいは、一方行政処分の対象になる。これは相当慎重に配慮しなかったらいかぬことだというふうに私は考えます。  それから内藤局長に対しては、速記などつけなくても、私はあとで何度もこれは御懇談申し上げます。これは私は仲がいいのですから、内藤さんと御懇談申し上げる。いずれそういうわけですから、もうこれで終わりますが、あるいはまた、その推移いかんによっては、見解もたださなければいかぬと思いますが、事教育上の問題であり、こういう質疑の過程においていろいろな法律根拠による議論の行なわれる問題もあるなら、十分な慎重な御検討と配慮によって、教育界がいたずらに混乱する禍根が将来に残るというようなことを極力排除するような姿勢でやってもらいたい。おそらく、どこの教師といえども、やったことについて悪びれるなどということはないと思う。皆さんもまた、その点ははっきりした態度でやっていただきたい。これで終わります。
  64. 小幡治和

    委員長小幡治和君) 本日はこの程度といたします。  次回は、通常国会召集の前日といたしまして、これにて散会いたします。    午後五時三十八分散会