運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-10-11 第39回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十一日(水曜日)     午前十時十四分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 重政 誠之君    理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 横路 節雄君       相川 勝六君    今松 治郎君       臼井 莊一君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    北澤 直吉君       周東 英雄君    田中伊三次君       床次 徳二君    中垣 國男君       中曽根康弘君    中村 幸八君       中村三之丞君    西村 直己君       羽田武嗣郎君    八田 貞義君       藤井 勝志君    藤本 捨助君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 頼三君    松本 俊一君       三浦 一雄君    八木 徹雄君       山口 好一君    山本 猛夫君       淡谷 悠藏君    井伊 誠一君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    河野  密君       實川 清之君    田中織之進君       高田 富之君    滝井 義高君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       野原  覺君    長谷川 保君       松井 政吉君    井堀 繁雄君       佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 灘尾 弘吉君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 迫水 久常君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 小平 久雄君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君         大蔵事務官         (為替局長)  福田 久男君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ――――――――――――― 十月十一日  委員赤澤正道君、稻葉修君、井出一太郎君、田  中織之進君、永井勝次郎君及び春日一幸辞任  につき、その補欠として中垣國男君、八木徹雄  君、藤井勝志君、滝井義高君、實川清之君及び  佐々木良作君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中垣國男君、藤井勝志君、八木徹雄君及び  滝井義高辞任につき、その補欠として赤澤正  道君、井出一太郎君、稻葉修君及び井伊誠一君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員井伊誠一君及び實川清之辞任につき、そ  の補欠として田中織之進君及び永井勝次郎君が  議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)      ――――◇―――――
  2. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。横路節雄君。
  3. 横路節雄

    横路委員 去る三日から当予算委員会が開かれまして、幾多の質疑応答がかわされたわけですが、そのうちで政府答弁の明確でない点、なおまたまだ質問しておりません二、三の点につきまして、経済外交の全般にわたって総理大臣初め関係大臣お尋ねをいたしたいと思うわけです。  委員長最初通産大臣にきょう相当お尋ねをしたいと思っていますから、できるだけ急いで、それから厚生大臣にはきのうから言ってあるのですが、一番最初に質問をいたしますから、こういうように言ってあるのですから、厚生大臣が来ましたら……。
  4. 山村新治郎

    山村委員長 厚生大臣が参りました。通産大臣をすぐ呼んで下さい。
  5. 横路節雄

    横路委員 それでは最初外務大臣お尋ねをいたしたい。  この間から、私の方から委員長を通じまして資料要求をいたしてあるのですが、去る六月の十日にアメリカの戦後対日経済援助処理に関する日米覚書につきまして交換をしたのですが、その中で二回の予算委員会にわたりまして、私の方から一体アメリカの方から援助されたという額は幾らなのか、こういう点についてお尋ねをしましたところ、先般の国会では、その額はきまっているんだ、しかしまだアメリカ側交渉の途中だから国会では御答弁はできない、いずれアメリカ側との交渉がはっきりしたならばこの国会で明らかにします、こういうことでございまして、しかもその後覚書発表になりますと同時に、通産省側発表として具体的な数字発表になっておるわけでございますから、きょうはぜひその点明らかにしていただきたい、こう思うわけです。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点に関しましては、むしろ通産大臣からお答え願う方がより適当ではないかと思うのでありますが、この対日援助問題の処理にあたりましては、われわれいろいろな資料を集めまして先方交渉いたしたのでございますが、率直に申しまして、われわれの方で受けたと考える数字先方援助総額といって示しておりました数字、それは一九五四年当時アメリカ側が示しておるのでございますが、これは総額にいたしまして十九億五千四百万ドルになっております。この中にはもちろんプレ・ガリオアガリオア余剰報奨物資米軍払い下げ物資、いろいろあるわけで、われわれの方としては、この示されたことだけでそうでございますかと言うのもいかがかと思いまして、占領軍当局が残置いたしました資料について一つ一つ当たって参ったわけでございます。しかし、これは何分にも残置した資料でございますから、これ以外のものは絶対にないというだけの挙証能力はわれわれにないわけでございます。従って、これを一つ一つ積み上げたものを先方に出しまして、アメリカ側としましても、日本政府の努力というものには非常に驚いて、よくこれだけ集めたものだというようなことでございましたが、いずれにしましても、先ほど申し上げたように、これは挙証能力に欠ける点があるわけであります。そこで、われわれの方としては、こういう数字があるので、これから米軍からもらったもの、あるいはどうもわれわれとしては納得できないと考えるもの、そういうものを引いたり、対韓債権であるとか、沖繩に対する清算勘定であるとか、そうしたものをいろいろ控除いたしまして、そうして政治的解決と申しますか、そう言った方が妥当かと思いますが、四億九千万ドルという額を覚書によって正しく合意したわけでございます。これはもちろん前に例がございますわけで、西独との間にアメリカ当局処理したその処理仕方等参考になったわけであります。
  7. 山村新治郎

    山村委員長 通産大臣が参りました。
  8. 横路節雄

    横路委員 通産大臣、この間の国会椎名通産大臣は、ガリオアエロアについての援助総額幾らであるか、この点はきまっているけれどもお答えできない、いずれ両国間で話し合いがついたらお答えをします、こういうことになって、さきの国会では、きまっているがお答えできないということですが、今度は四億九千万ドルを返すということにきまったわけでありますから、従って通産省がはじいたガリオアエロア援助総額幾らであるのか、この点をきょうは一つはっきりと御答弁願いたい。
  9. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ガリオア関係通産省算定援助物資総額ガリ才ア物資十七億一千六百万ドル――万ドル以下省略きしていただきまして、十七億一千六百万ドル、軍払い下げ物資七千八百万ドル、合計して十七億九千五百万ドル、それが当方で出しました基礎数字であります。このうちから控除物資がございまして、控除金額は、贈与と考えられるもの、沖繩へ再輸出したもの、あるいは米軍返還して、米軍朝鮮等に使ったもの、これを合計いたしますと四千八百九十万ドル、こういうことになります。  そこで純援助物資額、これはただいまの控除いたしましたもので、その結果が十七億四千六百万ドル、こういう数字になります。
  10. 横路節雄

    横路委員 通産大臣お尋ねしますが、それでは今あなたからお話がございました控除金額は四千八百九十万ドルだ、そのうち沖繩朝鮮等があるというのですが、具体的にお尋ねします。  第一点は、こちらに今農林大臣としておいでの河野一郎氏が、かつて予算委員会で対米債権四千七百万ドル、それからこの間の国会で私が指摘をしました、帝国議会時代の第九十臨時議会における、いわゆる朝鮮米軍の軍人の建設資材として十億ですか、当時の金に直して四千三十万ドル、これらは一体どうなっているのか。これは一体十七億四千六百万ドルから控除していくのか、それとも今あなたの言った四千八百九十万ドルの中に入っているのか。入っているとすれば、今私があげただけで八千八百万ドルからあるが、この点は一体どうなっているのですか。
  11. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今のお尋ねは、通産省で算定した援助物資総額幾らかというお話でございますので、通産省にあります資材で全部積み上げたものが、ただいま申すように十七億九千五百万ドルという総計になり、控除額、これの四千八百九十万ドルの内訳を申し上げますと、ガリオア物資として二千四百三十万ドル、それから軍払い下げ物資というものが二千四百六十万ドル、こういうことになります。  それから今のアメリカ側のものが出て参りましたが、アメリカ側決算による資料は、アメリカ側としては日本に対して十九億五千四百万ドル出したという資料でございます。これはアメリカ側決算額通産省通産省にあります資料でやりまして、それより小さい十七億九千五百万ドル、こういうことになるわけです。このアメリカ側資料と、通産省側資料との相違、それはどういうところにあるのかということになって参りますが、この点がいわゆる外交交渉でいろいろ折衝を重ねられたものだ、かように私は理解しております。
  12. 横路節雄

    横路委員 それでは小坂外務大臣お尋ねをしますが、今通産大臣から御答弁がございましたが、私は、四千八百九十万ドルというのは、農林大臣河野さんがここで対米債権四千七百万ドル、この間私が国会指摘をしました帝国議会の第九十臨時議会に出した予算の、そのいわゆるドル換算で四千三十万ドル、そういうものとは関係がないようでございますので、一つ外務大臣から四億九千万ドルと最後に両方合意をしたその積算基礎はどうなるのか、その点について一つお答えをいただきたいと思います。
  13. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 いわゆる対韓債権といっておりますものの中にわれわれは韓国の港湾の経費も含めまして勘定をいたしまして、四千七百十二万五千ドルというものを充てました。さらに琉球への清算勘定残高が百六十二万九千ドルというものがある、こういうことで外交交渉をいたしました。この問題は確かに考慮されまして、これは本来のこの話とは別個のものであるから、総額幾らときまった、そのものからこれを引いたものが四億九千万ドルになる、こういうふうな形にいたした次第でございます。しかし、冒頭に申し上げましたように、これはわれわれのはじいた数字でございます。われわれの資料から持って参りますと、そういうことになるわけであります。しかしながら、どうもその辺なかなか全体の金額についての合意が、率直に申しまして、敗戦当時のこんとんたる事情からいたしまして、アメリカ側としてもっとあると言い出すと、なかなか厄介な点もございますので、要するにわれわれの計算では、さようなことにして四億九千万ドルをはじいた、こういうことであります。
  14. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私がお尋ねしておるのは、今あなたが苦労して、アメリカのは十九億五千万ドルだ、日本は十七億四千六百万ドルだ、その四億九千万ドルとしたのは政治的に解決をしたのだ、こう言うことは、一応あなたの答弁としてはわからないわけではないが、私がお尋ねしておるのは、四億九千万ドルとはじいたその積算の仕方はどうなんだということを聞いておる。今あなたが西独方式参考にしてやったらやったと、それならば三分の一を切り捨ててどうしたとか、そういうような点を明確にしてもらわなければ――きのう私は連絡員が来ましたから、きょうは時間もないことだから、そういう点は一つ的確にここで話をしてもらいたいと言った。こういうことで時間をとるということは不本意ですから、四億九千万ドルと算定したその基礎はどうなのかということです。何をどう引いて、何をどうして三分の一を落としたらどうなった、三分の二を落としたらどうなった、こういう点をもっと明確に話をしてもらわなければだめですよ。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私限りではきわめて明白に申し上げています。しかし、いろいろな関係各省関係がありまして、私がこうしたという程度の答弁とお聞き取りを願いたいと思います。よろしゅうございますか。私ども西独方式参考にいたしましてこの問題を計算いたしました。西独におきましては、御承知のように三十億一千四百万ドルというものが援助総額になっておりまして、十億ドル払う、こういうことになっておりますから、三三・一七八%というものが総額にかけられて、それが払われたということになっております。ただ、そのほかに二億ドル以上のものが別途に支払われております。これは余剰物資という形でございます。それからわが方のは、今申し上げましたように十七億八千万ドルばかりの金額にこれをかけてみまして、そうしていろいろなものを控除いたして参りますと、これは米軍に対してわれわれが当然受けたと思われないと思うものがあるとか、あるいはもらったものであると思うというようなものがありまして、それらのものを控除いたしまして、そうしてそれに西独金額を勘案いたしまして、そうして出たものから今申し上げたような対韓並び琉球債権を差し引きますと四億九千万ドルになる、こういう勘定になっているわけでございます。これは米側資料十九億何がしというものから逆算いたしますると、この四億九千万ドルというのは二五・八%になるわけでございます。わが方の十七億の資料からいたしますると二八・五%、こういうことになっております。その点では西独の三三%に比して非常に比率はよろしい、有利な格好になっておる、こういうことが言えると思います。
  16. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、私が聞いているのはもちろんそのことも聞いていますよ、今あなたの二八・五%引いたら何だということはわかりますが、何を幾ら引いたのかということを聞いておるのです。十七億四千六百万ドルから何を幾ら引いてやったのか、それとも十七億四千六百万ドルに先ほど言う三三・一七八という西独のパーセントをかけて出たものから引いていったのか、どうなんです。十七億四千六百万ドルから先に引いていって、それからやったのか、何を幾ら引いたのか、こういうことを聞いているのです。だからこの前の国会ガリオアエロアだけ二時間から時間をかけてやったじゃないですか、もっと具体的に答弁してもらいたい。今また外務大臣の御答弁の中に、私個人意見を聞いていただけるならばと言われたが、私は何も小坂さん個人意見を聞いているのじゃないんです。覚書に調印をしたのですから、だから聞いているのです。もっとそういう点をはっきりして下さいよ。だから私も重ねて聞きますが、外務省の関係員の諸君に外務大臣からもっと明確に答弁をするようにちゃんと用意しておいてくれ、この点を聞きますよとちゃんときのう言ってあるのです、外務大臣答弁して下さい、何をとうやったのか。――委員長、催促して下さいよ。こんなことで時間をとったらしょうがない。
  17. 山村新治郎

    山村委員長 事務当局の方、説明を願います。
  18. 安藤吉光

    安藤政府委員 お答えいたします。先ほど大臣から御説明申し上げました通り、日本側通産統計によりますと十七億五千万ドルでございます。それから先ほども説明がありました贈与分とか返還分を考慮されます。それから四億七千万ドルの御説明でございます……。
  19. 横路節雄

    横路委員 四億九千万ドルを聞いているのです。
  20. 安藤吉光

  21. 横路節雄

    横路委員 何を言っておるのです。私が聞いたのは、あなたの方でアメリカに四億九千万ドル返すことにきめたでしょう、その四億九千万ドル返すことにきめた積算の根拠は何かと聞いているのです。そこを聞いているのだから、そこを言いなさい。
  22. 安藤吉光

    安藤政府委員 順次申し上げます。四億九千万ドルは、先ほどの通産統計で申し上げますと十七億五千万ドル、米側統計で申し上げますと十九億五千万ドル、そういった数字基礎にいたしまして、それから返還分とか、あるいは贈与分とかその他のものを控除いたしまして、特に対韓オープンアカウントマーカット声明もございますし、これは全額を十分考慮いたしまして、種々交渉の過程において協議いたし、その結果四億九千万ドルとなった次第でございします。
  23. 横路節雄

    横路委員 一体今の御答弁総理大臣、私はきょうはあなたは熱がおありのようだから、私もきょうは関係閣僚にできるだけお答えを求めたいと思っているのですが、前の国会二回やっているのですよ。贈与分とか返還分、それは一体幾らなのかと聞いているのですよ。初めからこのことをきちっと答弁してもらいたいと言っている。またこういうことで長い時間ごたごたかかってもあれだから、まだ政府部内で検討していないなら検討してないと言ったらいいでしょう。総理大臣が工合が悪ければ、小坂さん、あなたが答弁できるならして下さい。
  24. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 それでは申し上げます。今回通産省が算定いたしました援助総額は、総額におきまして十七億九千五百万ドル、この内訳ガリオアプレ・ガリオアエロアを含んだ一本のものに勘定しております。ドイツはいろいろ分けておりますが、私どもは一本にした方が有利である、こういう考え方で一本にしております。これが十七億一千六百万ドル、端数は略します。それから余剰報奨物資が三千四百万ドル、米軍払い下げ物資が四千三百万ドル、この中でもって受領の際、あるいは後日連合軍司令部からの話で、援助でなくて贈与であるという旨の指示のあったもの、あるいは受領指示によって沖繩へ再輸出したもの、あるいは米軍返還した分などを控除した純受領額は十七億四千六百万ドルでございます。これから二千四百万ドル引いておるのでございますが、これは贈与分としまして千六百万ドル、それから米軍への返還琉球への転送、そういうものが百三十万ドルばかりでございます。それから米軍石油運賃が六百四十万ドル、これだけのものを引きます。それから米軍払い下げ物資、これは返還したものやスクラップの廃品類、あるいは英連邦軍物資引き渡し分、そういうものを引きますと八百九十万ドルばかりになります。そういう引き渡し分を合計いたしますと八百九十万ドルばかりになっております。それから余剰報奨物資として米軍返還したものが一千五百六十万ドルばかりございます。そこで四千八百九十万ドル。それから見返り資金から支出したものが二千七百五十万ドル、こういうようなものを考慮いたしました。その他韓国琉球向け建設資材が五千百万ドル、船舶運営会の人員、物資輸送費が二千五百万ドル、これらのものを控除いたしまして、さらに日韓清算勘定残高が四千七百十万ドル、日本琉球清算勘定残高百六十万ドル、合計しますと、この日韓琉球の分が先ほど申し上げましたことですが、四千八百七十万ドル、こういうものを考慮いたしまして、そうして先ほど申し上げたような西独方式参考にいたしましてはじき出した四億九千万ドル、こういうことになっております。
  25. 横路節雄

    横路委員 今の点は、全部引いたあとで西独方式で二八・五%をかけたわけですね。小坂外務大臣、違うのですか、それはどうなんですか。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 われわれの計算ではさっき申し上げた対韓と琉球、これは全部引いて、それに西独方式参考にした数字をかけたものから、ネットから引いたというわけです。先ほど御答弁しましたように、この問題は関係ない、こういうことで関係ないのだが、このガリオアエロア交渉妥結の際に考慮して、あわせて解決するという話になっておったということを建前といたしまして、これはネットから控除したということであります。
  27. 横路節雄

    横路委員 この金額につきましては、いずれ次の通常国会に債務としての国会承認を求めてくるのでしょうが、ただ私がここで一つだけ申し上げておきたいのは、今お話アメリカ援助総額は十九億五千万ドルだ、日本通産省計算からいえば十七億四千六百万ドルだ、それが両方合意で四億九千万ドルを返還するということになったということは、それはどうも政治的配慮というか、大体ここら辺でいいんじゃないか、こういうことになったのではないかと思うが、きょうは他のことについて多くの時間お尋ねしたいと思いますから、これはあらためて次の通常国会お尋ねをします。  覚書の第四項に、「合衆国政府支払い金の大部分を適当な国内立法措置を経ることを条件として開発途上にある諸国に対する経済援助に使用する意図を表明した。開発を必要とするアジア諸国の現状にかんがみ、支払い金の大部分はその開発日米両国の利益であるこれら諸国に対する援助に使用されるものと予想される。」このアジア諸国という中には韓国は入っているのでしょうか、どうでしょうか、この点を一つお尋ねをしておきたい。
  28. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 一般的にアジア諸国といっておるのでございまして、アジアにある国は全部入っておる、すなわち韓国も入っておるということだと思います。
  29. 横路節雄

    横路委員 今の点で、一般的にアジア諸国というのは韓国が入っている、こういうわけでございしますから、この点はそれでわかりましたが、そこで、今の問題につきましてお尋ねをしたい点があるのです。それは、ガリオア返済金開発借款の使用は否決をした、これは七月二十日のアメリカ上院外交委員会で。これはアメリカ上院外交委員会は七月二十日、「ケネディ大統領が提案した長期開発借款を可決した。」「ケネディ提案はこのほか日本ドイツその他に対するガリオアなどの債権返済金開発借款に回すことにしているが、この条項は、外交委員会否決された。」こういうように報道されているわけです。そうするとあなたの方では大使との間に覚書でこういうことをかわされたが、アメリカ上院外交委員会では否決をした、それではこれはどうなるのですか。
  30. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 覚書には、アメリカの憲法上の所定手続を経ることを条件としてということになっております。すなわち、所定手続を経て、議会承認を得るという手続だと思うのでありますが、それは今お話しのように否決をされたということであります。この構想は、こういうものを全然国庫の歳入にしないで、いきなりリヴォルビンク・ファンドのようなものに振り込む、そうしてそのまま使っていく、こういう構想否決されたのでございまして、これは国庫に入るということは、議会の意思によってそうなったわけですが、それを出すことはいけないというという議会の決定はないわけでございまして、その意味において、その目的のように使われていくことは、これはアメリカ政府の意思として、何といいますか、政治上、道徳上の一つの義務を先方は負うているものであるというふうに私は思っております。
  31. 横路節雄

    横路委員 外務大臣お尋ねしますが、今までの日韓交渉で、このガリオアエロアについての、いわゆる援助資金の返還について、このうちから韓国に対する経済援助に幾分か回したい、こういうことについては日韓会談についてはあなたの方からそういう意向は漏らしたことはございませんか。
  32. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ございません。
  33. 横路節雄

    横路委員 いずれガリオアエロアにつきましては、通常国会で重ねてお尋ねをいたしたいと思うので、この程度にいたします。  次に、総理にお尋ねをしたいのですが、さきの通常国会で、ここにおられます予算委員長山村さんが国会対策委員長、私たちの社会党の山本国会対策委員長、それから社労の理事の諸君が集まりまして、大臣室で総理並びに官房長官立ち会いの上で、この七月一日から値上がりになりました医療費の問題で、国庫の療養給付の負担金につきまして、現在の二割を二割五分とするということで話し合いをした結果、総理はこう言っておるのです。近い機会に、国保の国庫負担金問題は最も重点的に措置をする。第二番目、その実施期日については両国委員長に一任する。そこで両国委員長会談では、これを十月一日から実施するということで、社労の理事の諸君の同意を求めまして、先般通常国会では社労の委員会はそれぞれスムーズにいわゆる法案審査をしたわけです。ところが今回の補正予算にこの点が入っていないわけです。よく総理は、池田はうそを言いませんと、こう言うので、何とまたこういうはっきりしたことのうそをおっしゃるのだろうかと思いまして、ぜひこれはお尋ねしておかなければならぬ、こう思いましたので、一つぜひこの点総理からお答えをいただきたいと思います。
  34. 池田勇人

    ○池田国務大臣 会見したことは確かでございます。そして国保の問題につきましては、重要な問題ですから、将来考えましょうと申した記憶はございます。しかし、十月一日からどうこうということを言った覚えはございません。
  35. 横路節雄

    横路委員 いや、私は総理にもう一度、二つに分けて私は総理にお話をしたのですよ。一つは、あなたが、近い機会に国保の負担金問題は最も重点的に措置をする、実施期日については、両国委員長に一任する、こういうことであなたはお話をしたから、別に十月一日ということではなかった、しかしあなたのお話の意向を受けて、ここにおられる予算委員長山村さんが国対委員長で、社会党の国対委員長との間に十月一日から実施するということで話し合いがついたから、了解をして、一つ社労の委員会をやってもらいたい、こういうことで始めた。総理、責任がありますよ――ありますよ、あるんじゃないですか。あなたが国対委員長に一任する、こう言ったから、国体委員長が話をして、十月一日から実施するから、それで社労の委員会については、円満に運営してくれというので始めたのです。総理はお忘れになったのでしょうか。忘れたら忘れたでいいですよ。うそと忘れたのとは違うのです。
  36. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は、国保の問題につきまして、それの取り扱い方、しかもどれだけ上げる、いつからやるということを国会対策委員長に一任した覚えはございません。この問題は重要だから、自分としては関心を持って将来検討する、こういう気持で話しておるのであります。私がこういう重要な問題で国会対策委員長に全部、どれだけ上げていつからやるというふうなことの委任はできるはずのものではないと思うのです。
  37. 横路節雄

    横路委員 それでは総理大臣、あとでこの委員会を終わるまでに私どもの山本国会対策委員長並びに滝井理事長に来てもらいまして、私とのこの問題について、あとで関連してやります。  灘尾厚生大臣お尋ねをしたいのです。この問題は、あなたの方は十分承知していると思う。そこでこの今回の補正予算に出ないということは、非常に不当なんです。そこであなたはこれをどうなさるのか。なお、この点については、あとで、初め一〇%引き上げがさらに追加されて、一二・五%、それが先般小児科、内科等で、さらに二・三%の引き上げとなった、この点についてはどうなさるか、厚生大臣として一つお答えをいただきたいと思います。
  38. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 さきの通常国会におけるいききつについて、ただいま総理大臣お尋ねがございましたが、私も総理大臣お答えになりました以外のことは承知いたしておりません。国保の療養給付に対する国庫負担率を引き上げるという問題は、これは恒久的な国保制度に関する問題でございますので、政府といたしましては、臨時国会で御審議を願う性質の問題としては適当でない、やはり通常国会において御審議を願うのが適当であろう、かような考えのもとに、今回の臨時国会には提案をいたさなかったのでございます。なおまた、去る七月に医療費改定をいたしまして、若干の引き上げを行ないました。また先般中央医療協議会において、これまた医療費について若干の改定を行ないましたわけであります。その関係からいたしまして、既定予算ではまかない切れないものが出てくると考えますので、これにつきましては、当然予算の補足をしなければならない時期があると思うのであります。これはこれとして、私は年度内に解決いたしたいと考えております。
  39. 横路節雄

    横路委員 それでは大蔵大臣お尋ねしますが、今の厚生大臣お話で、年内に解決する機会があるという。ということは第二次補正という意味なんですが、第二次補正はいつごろおやりになるか、今そういう御答弁をしたのでありますが、第二次補正はいつごろおやりになるか。
  40. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 第二次補正の必要が生じた場合は、いつもの例によって、明年度の予算とあわせて出すということになるのじゃないかと思います。
  41. 横路節雄

    横路委員 厚生大臣お尋ねしますが、七月一日からの一二・五%、十一月一日から二・三%の増、これは一体あなたの方としては、いわゆる患者並びに保険者に負担をかけるのですから、どれだけ一つ国の方でみようというのか、大体の金額についてお話をしていただきたい。
  42. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題は、現在の時点を基礎として考えますれば、いろいろな数字が予想されるわけでありますが、今後の国民保険の医療の状況等を勘案いたしまして、比較的正確なものをつかんだ上で、必要に応じて予算の補正等の措置を政府部内で講じたいと考えておる次第であります。
  43. 横路節雄

    横路委員 厚生大臣灘尾さん、第二次補正には組んでもらうのですね。その点一つ明らかにしてもらいたい。
  44. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 第二次補正を組むか組まぬかということは、今決定しておる問題ではございません。ただ、私といたしましては、必要があれば、第二次補正でもお願いしなければならぬ問題だと考えております。
  45. 横路節雄

    横路委員 次に、労働大臣お尋ねしますが、実は今度生活保護並びに児童施設の処置その他につきまして五%の引き上げをしたわけです。これと見合って失対事業の労賃についても、当然これは見なければならなかったと思うのです。この点は先般本会議でも指摘をされ、ここでも指摘をされているのですが、この点はどういうようになさろうというのか、この点について一つ労働大臣から明確な御答弁をいただきたいと思うのです。
  46. 福永健司

    ○福永国務大臣 生活保護基準の引き上げとただいま御指摘の失業対策事業就労者の賃上げの問題は、別の問題ではございますが、御指摘のように、一方に措置されれば、他方にもっと要るということは、私も望ましいと存じます。今度の補正予算にそうした数字がまだ出ておりませんことを遺憾としますことは、本会議でも申し上げた通りであります。そこで、私としましては、今次補正予算に計上するというような措置以外の何らかの措置で、年度内のものについても何らか、要するに失業対策事業就労者の所得が増す、いわゆる全体として一連の低所得者に対する対策を講じたいというので、ただいま鋭意検討、折衝中でございます。
  47. 横路節雄

    横路委員 労働大臣、せっかくここで具体的なことを私は聞いているのです、たとえば、かりに生活保護あるいは児童施設に対して五%、これは不満ですが、同様にかりに措置するとすれば、たとえば今日平均賃金の三百八十六円について五%を上げていくというのか、それとも就労日数について今日二十一・五日なんで、それを一日ふやすというのか、こういう点についてもっと明確に一つ話をしなければ、ここで何とかという言葉では、ここは最後の締めくくりをやっているのですよ。一つ具体的に話をしていただきたい。
  48. 福永健司

    ○福永国務大臣 今横路さんの言われるように、いろいろな方法がございます。ただし五%増していくということになりますと、直ちに補正予算数字との関連になるわけであります。従って今何らかの措置をと申し上げましたことは、最終的に政府として今直ちに申し上げ切ることができない事情にありますので、私は出かかっている言葉も申し上げずにおるわけでありますが、今横路さんも申されたような方法等もございますので、そういうことも考慮しつつ善処いたしたい。これによって御了承いただきたいと存じます。
  49. 横路節雄

    横路委員 それでは池田総理にお尋ねしますが、今ここに山本国会対策委員長、それから社労の理事滝井君も見えておりますから、この点はあなたはうそだといって、そういうことを言った覚えはないと言っております。これは非常に重要な問題だから、この点はそれでは滝井一つ関連をしてやって下さい。
  50. 山村新治郎

    山村委員長 関連質問で滝井君の質問を許します。滝井君。
  51. 滝井義高

    滝井委員 総理は、私は決してうそを申しません、こういうことを今まで政治の信条として言ってこられたのであります。御存じの通り、前の国会で、われわれ社会労働委員会におきましては、国民健康保険が非常な危機に直面をしておる、それはどうしてそういう危機が深まってきたかというと、二つの面から深まってきた、一つは医療内容、医療費を改定しなければならぬという問題から、一つは結核と精神病について何らかの前進をはからなければならぬという、こういう二つの面から医療費が急激に増加をしてきた、従ってその医療費の増加分は地方自治体の一般会計から国民健康保険の特別会計に金をつぎ込まなければやっていけなくなった、年々地方自治体は三十四、五億の金をこの国民健康保険につぎ込みつつある、もし医療費が一割改定をせられ、あるいは結核と精神病の世帯主について七割の給付というものが前進をしていきますと、これは総医療費において約三百三、四十億の増加が出てくるわけです、こういう状態になってきますと、これは大へんなことになるわけです、そこでこれを何らかの形で打開をせなければならない、特に社会保険で一番困るのは国民保険だから、こういうことで国民健康保険の患者の負担増、保険料の増約五十五億に見合うものとして、二割の国庫負担を五分だけ上げたらどうだという意見を、私たちは謙虚な気持で出したわけです。これは与党の理事の諸君も、筋が通っておるので、何とかしなければならぬというので、八方奔走しましたけれども、なかなかうまく打開ができない。そこでようやく、しからばこれは総理と官房長官立ち会いの上で何とか打開をはかろう、こういうことになったわけです。そこで四月二十日に院内の大臣室でお会いをした。もちろん私たちも政治家ですから、そこで何月何日から何分だけ上げるということは、これはなかなか言えないでしょう。しかしお互いに政治家同士ですから、腹と腹とお互いに以心伝心でものというものはわかるわけです。そのときに総理は一体以心伝心の形で何と言われたかというと、国民健康保険は重大だから、一番早い機会に最重点に滝井君の言うその問題については措置をいたします、こういうことになっておる。その結果、あとでわが党の山本国会対策委員長がわれわれのところにやってきまして、今幸か不幸か予算委員長の席に着いておられる山村当時の国会対策委員長との間に話し合いをした結果、滝井君、十月一日から必ず国民健康保険については五分の引き上げを実現をするから、この際今までのいろいろの行きがかりはあろうけれども、社会労働委員会を軌道に乗せてやってくれ、こういうことになった。そこで一ヵ月余り審議の停滞をしておった社会労働委員会は、全力をあげて社会労働委員会にかかったすべての法案を上げてしまったわけです。従って、当然公党が約束したものについては、われわれは四月一日からとか七月とかいっておりましたけれども、今の段階ではそう前にさかのぼるというわけには参りませんから、少なくとも十月一日から半年分だけはぜひ計上していただきたいというのがわれわれの主張です。この主張は少しも無理ではございません。従って、今横路君の質問に対してそういう約束をした覚えはないという御意見だそうですか、なるほどかちっとしたそういうことことは言われなかったと思います。それは私ははっきり言います。しかしお互いにその場面でああいう話し合いをして事態が展開したということは、それはお互いに以心伝心、そういうことがあったということ、しかも、そのあとの裏づけが両国会対策委員長の会談でされたというところに、われわれは政治家として任務を果たしたわけですから、当然内閣としてはそれだけの任務をやはりこの際果たしていただかなければならぬ。しかも医療費は一割の引き上げのほかに、さらにそれから二・五の引き上げがあり、さらに二・三%の引き上げがあったわけです。それによってもさらに国民健康保険の被保険者の負担増というものが、おそらく四十億をこえる増が五十五億の増に加わってくるわけです。ますますわれわれの主張が合理的な科学的な、しかも今の客観的な政治情勢に合った主張であるということになるわけです。一つこれはうそを言わないと言われた総理に、この際大乗的な見地に立たれて、この問題の打開をはかっていただくことを私は希望して、私の関連質問を終わります。
  52. 池田勇人

    ○池田国務大臣 先ほど申し上げましたごとく、あなた方とお会いいたしまして、国民健康保険の問題は重要な問題でございますから、早急処置しなければならぬ問題と私は心得ておりますと、こう言っただけで、以心伝心、これから上がる分までみな今度の補正予算で出せというところまで私は申し上げたことはない。それはお互い政治家でございますから、あなた方はそうお考えになっているかもしれません。私は重要問題だから、できるだけ早く処置したいということを申し上げました。しかし、いつどれだけということは言っておりません。またあそこで会ったときに、総理大臣がいつから何ぼということを申し上げる筋合ではないと思います。やはりこういう問題は、党と党の関係、そして大蔵大臣の考え等から来ることでございますので、重要な問題であって、できるだけ早く処理しなければならぬということははっきり申し上げます。いつどうこうという問題ではございません。しこうして、私が今考えます問題は、お話の通りに一二・五%引き上げ、今度また中央医療協議会で二・三%上げる。こういうことになってきました。これをいかに処理していくかということは、この健康保険制度のもとをなすもので非常に重要な問題でございます。三十七年度以降どうやっていくか、そして国民健康保険と申しましても、いろいろな団体がございますから、これは保険制度の建前を堅持しながら、どう持っていくかどいうことが非常に将来の重要な問題でございます。私は大蔵省としても厚生省としても相当検討いたしておると思います。
  53. 横路節雄

    横路委員 この問題は、予算委員長である山村さんは、非常に関係があるわけです。だから、ほんとうはこれがきょうの総括の前であれば、ここで一たん中断をして、予算委員会は前の国対委員長であったあなたと社会党の山本国対委員長、うしろにおりますが、二人とも証人に来てもらって、その点のいきさつを明らかにして、そうして私はこの問題の解決をはからなければならぬと思う。本来からいえばここで他の問題については幾分省略しても打ち切って、中断をして理事会を開いてやってもいいのですよ。あなた自身の問題でもある。これからあなたが予算委員長として運営されるのに、何か社会党にあなたがうそをついて、社会党をごまかしたということになれば、予算委員会の運営はうまくいきませんよ。だから私はきょうはたくさんの問題をかかえていますから、これから他に続いて質問をいたしますから、一つ理事の間でこの問題の処理について、私の質問が終わるまでの間にしていただき、重ねてあなたにお尋ねをします。そうでなければ、私の質問は途中で中断をしてでも証人としてお呼びをしてやらなければならない。今日この医療費対策問題というものは一番大きな社会問題だ。しかも、総理もお聞きをいただきたい。この国民健康保険というのは、所得倍増によって最も所得格差ができているいわゆる農民や漁民、零細な商工業者なのだ。そういう点からいけば、あなたは何をおいてもやらなければならぬことなのだ。あなたは今そこで、腹と腹とだってそういうことをやったことはないと言うけれども、そういうことは非常にいかぬのです。だから私はここでもっと時間をかければいいが、これは一つ委員長理事間で十分話をしてもらって、私の質問の終わるまでにこの問題について一つ結論を出しておいてもらいたいと思う。
  54. 山村新治郎

    山村委員長 横路君に申し上げますが、非常に重要な問題でございますし、政治信義にかかる問題もございますので、事の真相を明らかにしたいと思います。ただあなたの貴重な時間に食い込むことを実はおそれておって発言しなかったのですが、ただいまお話もございましたから、理事の諸君でお話を願いまして、場合によりましては多少十分、二十分の時間を延長しても、この問題ははっきりしておいた方がお互いのためになるのではないか、議会信義のためになるのではないかと考えております。従って、理事の諸君に、どう運びますか御相談を願いたいと思います。いつ何どきでも、私並びに山本さんも幸いおられますから、証人に出まして、あなたの御質問にお答えいたしたいと思います。相談してくれませんか。  お進め願います。
  55. 横路節雄

    横路委員 それでは総理、これはあとでこの問題ははっきりしたいと思うのです。  藤山さんにお尋ねをしたいのです。国際収支についてでありますが、すでに当委員会に出してある資料をずっと見ますと、   〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕 総合収支で五月は七千九百万ドル、六月は四千二百万ドル、七月は六千八百万ドル、八月は一億三百万ドルですか、それから九月は一億一千三百万ドルですか、あるいは数字にちょっと間違いが二、三あるかもしれませんが、赤字になっていますが、経済企画庁としては、まず第一番にお聞きしたいのは、十月、十一月、十二月、まずこの三ヵ月について各月とも大体どの程度総合収支については赤字が出るというように見通しをされているのか、その点についてお尋ねをしたいと思います。
  56. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 十月、十一月、十二月という三ヵ月どういうふうな見通しであるかということは、実は今申し上げることははなはだ困難かと思います。しかし今、信用状面から見た関係から言いますと、決して好転はしておらぬように思いますので、年内はやはり赤字が続いていくのではないかというふうに考えられます。
  57. 横路節雄

    横路委員 藤山さん、その点具体的な見通しは立たないと言うが、十月、十一月、十二月の国際収支の赤字は、各月とも大体どういう見通しなのか、こう聞いているのです。どうなんです。
  58. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、十月は何千万ドルという赤字になりはしないか、あるいは十一月は何千万ドルになりはしないかということを申し上げることは、まだむずかしいと思います。しかし、今申し上げましたように、年内は赤字が続いていくということは考えられなければならぬと思います。
  59. 横路節雄

    横路委員 藤山さん、あなたの答弁はおかしくありませんか。十月、十一月、十二月について各月とも大体どの程度の赤字が出るかということは全然わからぬ、ただ赤字にはなるでしょう。よくそういうようなことで、三十六年度の国際収支についての修正見通しなんというものを出されたですね。何ではじいたのです。この間、総理はここで鉱工業生産について言っているではないですか。大体十月までは、七月は鉱工業生産は二八・九だ。八、九、十は二ポイントずつ上がってくる、十一月は一ポイント上がって、十二月から三月までは横ばいだ、こういうことを言っておるではないですか。あなたは経済企画庁の長官として、大体十月から――私は分けて聞いているんですよ。十月から十二月まで十、十一、十二の三ヵ月の各月はどうなんですかと聞いている。全然わからぬで何で一体修正見通しを立てたのです。もう一ぺんお答えになっていただきたい。そんないいかげんな答弁ってないですよ。
  60. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま申し上げましたように、各月別に金額を申し上げることは、私はむずかしいと思います。従いまして、われわれとして見通しを立てましたのも、中間暫定的なものとして一応御報告をいたしておるのでありまして、各月、十月はじゃ何千万ドルだ、十一月は何千万ドルだというような数字は、これは今正確に申し上げるわけにはいかないと思います。
  61. 横路節雄

    横路委員 それでは私はあなたに伺いたい。一体経済企画庁がそんなあいまいな見通しで何で三十六年度の国際収支の見通しを立てられたんですか。どういう根拠に基づいて修正したんですか。日本銀行の福地という営業局長は、三日の日銀の政策委員会で、本年度第三・四半期、十月から十二月の資金需要の見通しについて報告したが、国際収支じりは各月ともそれぞれ約七千万ドルの赤字と見込まれると報告している。しかしきょうの新聞等によると、大体十月は八千万ドルでないかといわれている。こういうように、日銀においては、それぞれ見通しを立ててやっているんですよ。経済企画庁としては全然見通しはないんですか、あるけれどもここではお話ができないんですか、どちらなんです。
  62. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん各方面の、日銀のそういう試算されましたものも、われわれは参考にいたすことは当然でありまして、経済企画庁自身は、そういうような各方面の実態をつかまえた統計の上に立って、しかし今度行ないましたいわゆる総合対策等の影響等も考えて一応の見通しを立てて参るわけでありまして、企画庁自身が、今何千万ドル、十月はどうだ、日銀のそれが正しいか正しくないかというようなことを申し上げるわけにはいかないと思います。
  63. 横路節雄

    横路委員 それじゃ藤山さん、一体あなた三月末に十四億四千万ドルになるというその基礎はどうなんです。各月ともどういうように立てたんです。そういうものが全然なしに、三月末の外貨は十四億四千万ドルだというそういう見通しは立たないじゃないですか。それじゃ、十四億四千万ドルについて見通しを立てた、十月から十二月、第三・四半期はどう、第四・四半期はどうという一体積算の根拠を出してもらいたい。そうでなければ十四億四千万ドルは出ないじゃないですか。九月末は十六億一千万ドルですよ。その十四億四千万ドルを出したのは、第三・四半期はどう、第四・四半期はどうというように、どういうように一体考えられたのか、それを出してもらいたい。
  64. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 現在の段階におきましては、上期の輸入と比較して下期の輸入がどの程度に三月末まで行なわれるか、あるいは輸出におきましても、上期の輸出に対して下期の輸出が今後の政策遂行によってどういうふうに行なわれるかというような点を勘案しまして、この間も出しましたように、輸入は全体でもって四十九億六千万ドル、輸出は四十二億四千万ドルでございましたか、そういうよな数字からして、われわれとしては出しておるのでありまして、むろんそういう数字を出しますについて、どの程度の傾向がいくかというようなことは、われわれとしても若干調査をいたしておりますけれども、各月別に幾らいくかというようなことを数字的に正確に申し上げるということは、非常に困難だと思います。
  65. 横路節雄

    横路委員 藤山さん、自信があったらここで答弁したらどうなんです、自信があったら……。あなた一体何とおっしゃっているんです。「エコノミスト」の十月十日の対談会で、あなたは、今どんなに輸出、輸入についていろいろやっても、輸入契約、輸出契約があるから、従って大体十二月の終わりでなければ効果は出てこない、だから九月、十月、十一月、十二月というのは従前通りだ、こう言っているじゃないですか。それからあなたは、私はここで指摘をしたいが、九月末は十六億一千万ドル、三月末は十四億四千万ドルというのが外貨だ。そうすると、見て下さい、ここで六ヵ月間で一億七千万ドルの外貨しか減らないという、一月計算でいくと大体二千八百万ドルの外貨しか減らない計算になる。そんな計算は一体どこから出まずか、そういう計算が出ますか。現に今月、十月は最低七千万ドルから八千万ドル、こう言っているじゃないですか。どこに輸出が伸びますか。一月から六月までの対米輸出についての昨年同期と比べて八六・五%でしょう。それを下期において一四%対米輸出を伸ばすという、そういうことができますか。それじゃ藤山さんにお尋ねするが、九月末の外貨準備高が十六億一千万ドル、それが三月末で十四億四千万ドル、その差は、一億七千万ドルしか減らない。六カ月で一億七千万ドルといえば、一月平均二千八百万ドルだ。そんな計算でいけますか、いけたらいくと御答弁願いたい。いけますか、そういう予想で。
  66. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 私ども三月末の外貨の事情が大体どうあるかということを一応まず検討しなければ、自由化の計画の推進の際においても資料として困るわけであります。従って、そういう意味において、先般のものは暫定中間予算として出したわけであります。むろん総合対策等が強力にきいて参りまするのは、輸出につきましても、輸入につきましても、当然若干の時間ずれができるということはやむを得ないことでありまして、またそうあることが貿易関係の当然のことでございます。すでに三ヵ月以上前の契約ができている、あるいは手続ができているというのでございますから、そういうものが年内なかなか影響しにくいということを申したわけでございます。  そこで外貨の問題になりますけれども、むろん貿易収支の上から申しましても、われわれとしては決して楽観はいたしておりません。しかしながら、総合収支の関係、特に資本収支等の問題は大蔵省等の御意見も伺いまして、そうして今後の情勢を見て、一応われわれとしては、中間暫定の試算としては先般申し上げたような数字を出しておるわけでありまして、私は決して楽観もいたしておるわけじゃありません。非常に重要な時期でございますから、こういうものにつきましては、できるだけ正確を期して参りたいということは考えておりますが、それだけにわれわれとしては、十分な試算をして、そうして世に問うべき場合には誤りなきを期して参りたい、こう考えておるのでございます。
  67. 横路節雄

    横路委員 それでは藤山さんにお尋ねしますが、今のあなたの御答弁一つはっきりしたことは、十六億一千万ドルから十四億四千万ドルについての、その中で、大蔵省でおそらく短期の外貨の債務について他から借り入れが行なわれるだろう、そういうものも見込んで十四億四千万ドルとしたのだ、こういうことですか。今のあなたの答弁はそうですよ。大蔵省では三月までにそういう手当をするだろう、こういうことですか、お答えいただきたい。今あなたはそう言ったんだから……。
  68. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 むろん財政金融面において、直接の仕事を企画庁がいたしておるわけではございません。従って、そういう面につきましては、大蔵省その他からの意見というものを聞かざるを得ないのは、これは当然のことだと思います。またわれわれ日銀の資料等を参考にすることも当然のことでありまして、企画庁自身がそういう政策的な問題を扱っておりませんから、その意見を聞くのであります。
  69. 横路節雄

    横路委員 それじゃ大蔵大臣お尋ねしますが、大蔵大臣、今の企画庁長官の御答弁については、だれが考えたって十六億一千万ドルが十四億四千万ドル、この六ヵ月間で、一億七千万ドル、月平均二千八百万ドルなんというわけにはいかぬのです、これは。そこで今企画庁長官の御答弁は、三月までに大蔵省は、というのだから、大蔵大臣は、この短期の外貨債務について相当手当をするだろう、こう言っておる。おれの方はもっと減るんだけれども、いわゆる経常収支については減るんだけれども、しかしいわゆる資本収支についてはあなたの方で手当するんだろう、こう言っておる。どれだけ手当するんですか、お話をしていただきたい。
  70. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 経済企画庁のさっき申した見通しの中では、別にこの手当は見ておりません。ことしの、三十六年度の一月のときに、短資一億七千万ドルと見ておったものが二億になっておる程度でありまして、特に短資を借りるというようなものを想定した数字ではございません。
  71. 横路節雄

    横路委員 企画庁長官、おかしいじゃないですか。あなた御自身考えたって、赤字は経常収支で一億七千万ドルの帳じりなんということはないのですよ。あなたは現にそう言っているじゃないですか。大体十二月まで同じだと言っているじゃないですか。私も一億ドルとは思わないけれども、最低八千万ドルとしても、この三月で二億四千万ドル落ちるじゃないですか。さらに一、二、三というのは輸入がふえる時期でございましょう。それがかりに政府の言う総合施策が現われたとしても、最低月かりに五千万ドルとしても、そこで一億五千万ドル、合わせて四億ドルから落ちるのですよ。あなたの方で言う一億七千万ドルに比べて二億三千万ドルくらい違うのです。あなたは良心的な大臣だとみなからいわれている。そんなあなたが一億七千万ドル、これはあなた自身も考えていない。だから今あなたは、大蔵大臣がこの短期の外貨債務についてはめんどうを見るだろう、いわゆる資本収支については黒字になるだろう、こういうことを言ったのだけれども、そうじゃないじゃないですか。どうなんですか。あなたはだんだんからを閉じ込めて言わない風がございますが、もっと率直に言ったらどうですか。それとも総理大臣の前で御遠慮して言えないのですか。どうなんでしょうか。もっとはっきり言ったらどうですか。
  72. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 大蔵大臣が新しい何か借款をするというようなことを考えておられないということは、今言われた通りでございます。従って、そういう意味でないことは当然かもしれませんが、しかし資本収支において一億五千万ドル程度の黒字が見込めるのでございまして、それは大蔵省の方面の御推算から見て、そうわれわれも考えざるを得ない。従って、そういう暫定的な中間試算を出したのでありまして、そういう金融面の方の見方というものは、やはり尊重して参ることが必要だと思います。
  73. 横路節雄

    横路委員 それでは藤山さんに、またこの問題についてはどうしてもはっきりお答えをしていただかなければならぬですが、いろいろお尋ねしたいこともございますから、大蔵大臣に、九月の外貨準備高の内容はどうなっているのか、一つ明らかにしてもらいたい。
  74. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 九月の十六億一千万ドルの内訳は、金が二億七千二百万ドル、外貨が十三億三千八百万ドル、外貨の内訳は、預金が七億七千二百万ドル、証券で五億六千六百万ドル運用しているということでございます。
  75. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、十六億一千万ドルのうちで、この外貨準備高のうちで、どれがまず手がつけられるのですか。これはおそらく預金の七億七千万ドル等については手がつけられないのではないか。金についての二億七千二百万ドルはどうなのか。この点について、この外貨準備が減ってくる場合に一体どれに手をつけていくか。
  76. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 外貨の金繰りで手をつけられるものは、証券が一番先でございまして、証券だけだと思います。
  77. 横路節雄

    横路委員 そうすると、証券につきましては、今ございますのは五億六千六百万ドルですね。そうしますと、大体今各月ごとに一億ドルくらいずつ減っていっているわけですね。八月から九月にかけては一億一千万ドル減っているわけですから、そうするとまずこの財務省の証券五億六千六百万ドルに手をつけていくわけですね。間違いございませんね。  それでは次にお尋ねしたいのは、九月末の短期外貨債務についてはどうなっているのか、その点一つお尋ねしたいと思います。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 正確な数字事務当局から言いますが、大体十三億ドル前後だと思っております。
  79. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、何かちょっと勘違いをなすっているのではないでしょうか。九月末の短期外貨の債務はどうなっていますかと聞いたのです。十三億幾らですか、大蔵大臣、そうではないでしょう。
  80. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今申しましたのは、輸入ユーザンスで、これが十二億五千八百万ドル、そのほかユーロ・ダラー、無担保借り入れ、そういうものを全部入れまずと、約十九億くらいになると思います。
  81. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣お尋ねをしますが、この外貨準備――これは総理大臣から信用程度の問題だということでございますが、今お話のございました、約十九億五千一百万ドル、その短期の外貨債務のうちで、もしも国際収支の経常収支が悪化をしてくる、そういう中で引き揚げをされるということば、これは最悪の場合でしょうが、いわゆる動かされる、そのときの経済事情で動かされる、そういう短期の外貨債務はこのうちのどれになっているのか、大体金額はどの程度なんですか、この点について一つお答えをいただきたいと思います。
  82. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは、たとえば日本の国際収支が悪くなったというようなことで、信用の問題が出てきます場合に動かされるのは、やはりユーロ・ダラーということになるわけでございます。ユーロ・ダラー、これが……。
  83. 横路節雄

    横路委員 ユーロ・ダラーだけですか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これが一番大きいと思います。
  85. 横路節雄

    横路委員 ユーロ・ダラーの三億一千四百万ドル、自由円の一億四千四百万ドル、無担保借り入れの一億八千五百万ドル、これが動かされてくる金になるのでしょう。その一番最初に動いてくるのがユーロ・ダラーの三億一千四百万ドルだ、こういう意味ですね。大蔵大臣、どうなんですか、もっとはっきり言ってもらわないと困る。
  86. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう意味です。しかしこのほかに、御承知のように、この短期債務に見合う短期債権は、九月現在で約九億五千万ドルというものがございますので、それとの関係において、そう動くという場合にはほかのものが全部そういう形で動くということも考えられませんし、やはり一番動きやすいのはユーロ・ダラーだと思っております。
  87. 横路節雄

    横路委員 藤山さんに重ねてお尋ねをしたいのですが、この前井手委員から質問をされて、きょう答弁の用意をされていると思うのですが、三十七年度の国際収支の見通しは、大体のところでいいですが、これも今までのお話ですと、九月が一番底になって、十月ごろから回復するのではないか、十一月ごろから回復するのではないか、そういうお話は何べんも聞いたのですが、大体のところ、三十七年度の国際収支のいわゆる全体の総合収支は、一体黒字になるのか赤字になるのか、大体黒字になるとすればどの程度のことを考えているのか、赤字になるとすればどの程度のことを考えているのか、その点を一つお尋ねしておきたい。
  88. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 三十七年度の予想を今立てますことは、非常に困難だと私は思います。従いまして、どの程度になるかという数字的なことを申し上げることは、せっかくわれわれは総合対策その他をやりまして、その結果等も見ながら十分慎重に案を作って参りたいと思っておるのでございまして、これがあまり不適当なものができますと、財界にも影響を与えますし、いろいろな副作用が出て参りますから、十分慎重に予算の時期までには作って参りたいと思います。  ただ、九月とか十一月とかいうようなことを言うじゃないかと言われたのでございますが、私どもは、この経済の現況を、三十二年とは違いまして、そう短期に解決することはむずかしいと思っておりますが、しかしそうかといって、これを非常に長期にそのままアンバランスの状態で置くわけには参らぬと思います。従って、今後の諸般の政策を、来年の秋には、少なくも貿易収支がある程度赤字であってももう底をついたんだ、これから上昇に向かうんだ、また総合収支においてはできるだけプラスになるように、諸般の政策をそこに向かって努めていくということを申したのでございます。
  89. 横路節雄

    横路委員 私は藤山企画庁長官に申し上げますが、あなたの方で立てている三十六年度の国際収支の修正見通しは、必ず次の通常国会でもう一ぺん訂正されると思うのです。今私がもう一度重ねて言いますが、あなたに聞いていただきたい。それは、あなた御自身だって、これが六ヵ月間に一億七千万ドルでとどまる、月平均二千八百万ドルでとどまるということはないのです。もしもこれが十月から十一月、十二月までに、今私が指摘しましたように七千万ドルでいけば、二億一千万ドルの赤字になる。そうすると、一月から三月までは逆に四千万ドルの黒字にならなければならぬ、そういうことは絶対ないのです。だから私はもっと正しく、あなたからここで御答弁いただけると期待をしたのです。どこに一月から三月まで、四千万ドルないし五千万ドルの黒字が期待できますか。そういう経済見通しを立てているからこそ、いわゆる設備の過剰投資が思うように縮まらないのです。そういう事態について非常に楽観的で、国際収支について甘い見通しを立てているから、財界が言うことを聞かないのです。これは必ず三十七年度の予算の編成の中で、三十六年度の国際収支のいわゆる修正見通しは誤りだということが出ますよ。私はそれは断言しておく。あなただって、今私から指摘をされたように、これが八千万ドルの赤字でいけば、三、八、二十四だから、一月から三月まで七千万ドルの黒字になる、そういうことは絶対ないのです。  そこで、きょうは池田総理お疲れのようだから、大蔵大臣に聞いておきます。大蔵大臣お尋ねしたいのは、この国際収支のわれわれの見通しの悪化からいって、絶対に三月末までには公定歩合は二厘引き上げなければならぬ、今のような甘い事態ではない、こういうように言われているんですが、まずお尋ねしたいことは、絶対に公定歩合は上げないかどうか、その点だけ聞いておきます。
  90. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 公定歩合というものは、上げるとか上げないとか、前もって言うべき問題ではございません。今見通しの問題でいろいろ御指摘を受けましたが、私どもは企画庁のこの見通しの作業にも参加しております。おりますが、この間のような措置をとることによって、私は相当事情が変わってくると思います。毎年の上半期と下半期の国際収支のあり方というものを全部検討して、今年度においては、こういう措置をとることによってどういう改善がなされるかというものは、相当こまかく検討しております。従って、たとえば輸入担保率の引き上げというようなことによって考えられることは、今原材料がどういう状態になっているかというのが一つの問題でございますが、思惑はないと言っておりましたものの、自由化が行なわれたあとでは、ある程度の余分な数量の買い込みというものはどこの国でもあるということは通例でございますし、それが幾らあるかという見方が非常に問題でございますが、いずれにしても、輸入しなくても当分済むだろうと思われる原材料の蓄積というものも、私どもは考えられますし、そういうものと、輸出のこれからの伸び方というもの、輸入がそういう意味においてある程度抑制されるというような要素をみな入れる。それからさっき企画庁長官が申しましたが、短資はわれわれは見てありませんでしたが、長期の資金というものは、この半年の間に相当の予想がつきますので、その関係においては、一億五千万ドルくらいの黒字を私どもは見ておりますので、こういうことを全部勘案しますと。私は、今度の措置によって、私どもがねらったある程度の行き方がここに出てくるのではないか、十四億ドル以上の外貨保有ということがあり得る、またそれを期待するという立場でいろいろな措置をとっているわけでございますが、なかなか計算通りには動いてこないのではないかと、その点は私考えております。従って、今後の対策でございますが、もう少しとの推移を見なければわかりませんが、今ここで、もう当然こうなるのだから次の措置はこうとるというようなことは考えておりません。
  91. 横路節雄

    横路委員 今、大蔵大臣、あなたの御説明で、短期融資については考えていないが長期融資については相当考えているので、従って、資本収支については一億五千万ドルの黒字を考えている、こう言った。そこで、長期融資については、どの程度、どこから考えておりますか。あなたは今、資本収支について一億五千万ドルの黒字を予定している、しかもそれは長期融資だと言うのだから、どこから何ほどか、お話ししていただきたい。それは、そう言った以上は、ここでお話ししてもらいたい。大蔵大臣、言った以上はお答えしていただきたい。IMFからどうなる――話によると、アメリカのいわゆる市銀からも、あなたの方は長期の借款をしたいと言っておる。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 IMFじゃなくて、現在世銀との交渉をやっているのもございますし、米国市場で起債の問題もございますし、そういう一応予定したもので、来年の三月までに見込まれる長期という意味でございます。
  93. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、だから、私はどの程度ですかと聞いておる。あなたは資本収支は一億五千万ドルの黒字になるというのだから、しかも長期の融資をしてもらってというのだから、そうなら、どうなんですか、大体幾ら見込んだか、聞いておるのです。幾ら見込んでいるというお答えがなければ、一億五千万ドルの黒字に、なりますということにならないじゃないですか。私は何も変わったことを聞いているのじゃないですよ。大蔵大臣、御答弁下さい。言わなければ聞かないが、言うのだからお答えいただきたい。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 こまかい点は、為替局長から答弁します。
  95. 福田久男

    ○福田(久)政府委員 お答えいたします。  三十六年度におきまして、長期資本の受け払いの差額、いわゆる収支でございますが、年度間で一億五千万ドルの黒字と見ております。そのうち、下期におきましては八千万ドルと見込んでおります。たとえば開銀債とか、あるいは日本の企業が借入金をするとか、それらのものがこの中に入っているわけであります。
  96. 横路節雄

    横路委員 大蔵大臣、あれで御答弁ですか。あれで御答弁になるのですか。一億五千万ドルの黒字、これからあなたの方ではいろいろ長期の融資をしてもらう、借款してもらうのだ、こう言っておる。だから、どの程度、どこからするのですかと聞いておる。もっとはっきり言って下さい。
  97. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今の答弁の通り、上期が七千万ドル、下期において今後予想されるのは、まず道路公債が四千万ドル、これは世銀からであります。開銀債が二千万ドル、その他民間企業のいろいろの借款というでことであります。
  98. 横路節雄

    横路委員 実は大蔵大臣に三十七年度の予算の規模についてもお尋ねしたいのですが、どうしても通産大臣一つ聞いておかなければならないことがありますから、先にそれを聞いておきたいと思います。私は通産省に、この間日本に来られましたIMFの為替制限局長にあなたの方から出したいわゆる自由化計画――いいですか、時間がないから私読みますから、三十八年度に完全自由化した場合の影響というものについていろいろ伝わっているから、一ついろいろ誤解を解くためにもぜひ出してもらいたい、こう言ったら、あなたの方の省では委員長を通じて私に何と言ってきたかというと、これは外交上の機密文書だから出せません、こうなった。事実そうなんですか、答弁して下さい。
  99. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 お答えしますが、ちょっと用語が不正確ですが、IMF自体が国際基金だから、国際基金、IMFの関係のものは、そういうものは出さないという、これは申し合わせがあるわけでございます。そういう意味でその点を申したので、いわゆる外交上の機密ということじゃなくて、IMFが国際基金だということであります。これはもう数回にわたって要求なさいましたものを、頑強にお断わりいたしまして、大へん申しわけないのでありますが、ただいま申し上げるような事情であります。
  100. 横路節雄

    横路委員 お出しいただかないで非常に残念で、かえってそのためにあなたの方は誤解を招くと思うのです。これはもちろん新聞発表ですよ、当時の。三十八年度に完全自由化した場合の影響として、一つは機械化部門、二番目は火力発電機の輸入増加額、三番目は電子機器、四番目は工作機械、五番目はエネルギー関係、そこでこういうように言っているのです。これが完全に自由化した場合、三十八年度には年間の輸入増加額は十億ドルふえて、そうして失業者は二十万人発生する。細部にわたってこう出ているから、私はこういう問題については、もっとはっきりしておいた方がいいのではないか。だから、できるならば出していただいて、これが間違いなら間違いだ、そういう点を明らかにした方がいいと思って、私はぜひ出してもらいたいと言ったのですが、あなたの方で外部にこういうのが漏れたのでしょう。あるいは取材した関係から言えば、三十八年度に一〇〇%の貿易自由化で、輸入増加額は年間十億ドル、二十万人の失業者が発生するのだ、これは非常に大きな問題なんです。こういうことが誤解であるならば、誤解を解くためにも、なぜお出しにならないのですか。こういうことは間違いですか。
  101. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま申し上げた通り、IMFの関係資料は、国際機関だからこれは出せない、これは一つ御了承いただきたいと思います。またその当時いろいろの新聞記事が出ておると思います。それの中には、想像のものもあるだろうと思いますし、あるいはスクープしたものもあろうかと思います。ただいま御指摘になりますのは、全部が全部その通りだと私は申し上げるものではございませんが、ただいまあげられました失業者の数その他は、ちょっと問題だろうと思います。しかし今御指摘になりました重電機その他のもの、もちろんただいま自由化から除外しておるものでありますが、これらまで自由化することは、大へん国内産業に影響がある、これだけはもうはっきり言えるわけでありまして、ただいま育成するような産業部門を除きまして、いわゆる九〇%自由化、こういう決意をしたわけであります。新聞に出ましたものが、全部が全部その通りだ、かように私は申し上げません。幾分か間違っている点があるように私は事務当局からも聞いております。
  102. 横路節雄

    横路委員 なかなか今の通産大臣の御答弁、重大だと思うのです。新聞でいろいろ発表になっている数字は、幾分間違っているところがあると思います、そして来年の九月三十日までには九〇%の自由化、それが残された一〇%についてさらに一〇〇%自由化が行なわれれば、失業者の数は別にして、年間十億ドルの輸入増については、大体あなたは肯定された。実はこの問題、もっと時間をかげてやりたいと思ったのですが、今ここに私は資料を持っているのです。何の部門についてはどれだけふえて、どれだけ失業者が出るかということは持っているのだが、大体においてあなたは今お認めになった、完全一〇〇%の自由化の場合は。幾分か間違いがあるということですね。そうですね。その点、大事なんです。幾分という日本語は大事なんです。
  103. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘になりましたような重電機その他の機器、これは全部が全部輸入する、完全に設備投資その他がやられる、そういう自由化に完全にこたえる、そういう場合の計算はいろいろあるだろうと思います。しかし、経済の実情から見まして、そういうことはなかなかあり得ないことですから、ただいま私どもの見方では、この数字自身は相当誇大した表現じゃないか、かように思っております。
  104. 横路節雄

    横路委員 今通産大臣お答えで、この数字はあまり誇大なものではない、一〇〇%自由化された場合。そういう意味で幾分か、数字について二、三の疑義があって――ほんとうはこれを私の方で読めばいいのだが、時間がないので、委員長、あとでこの数字は速記の方に回しまして、全部速記に載せていただきたいのですが……。
  105. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 承知いたしました。     ―――――――――――――   〔参照〕    IMF為替制限局長アービング・S・フリードマンに提出した自由化計画   三八年度に完全自由化した場合の影響(読売七・三・夕刊)  一、機械部門 自動車輸入増加額三億ドル……国内メーカー市場の四割の整理、大手メーカーの生産減、関連中小企業の倒産による失業者……五万人  二、火力発電機輸入増加額 一億八千万ドル    三八年度二五〇万キロワット電源開発計画のうち国内能力七〇万キロワット、従って一八〇万キロワットは国外メーカー-……三万人の失業者  三、電子機器 三八年度 六千万ドル輸入増……一部製品をのぞき国内メーカー全滅  四、工作機械 三千万ドル輸入増……失業者一万一千人  (機械工業部門五億七千万ドル輸  入増……失業者一〇万人)  五、エネルギー 三億五千万~四億ドル 石炭主要揚地の需要は外国製品……失業者九万五千人    年間輸入増加額 一〇億ドル……一一〇万人失業発生    自由化率   当初三八年四月 六五%~八〇%     ―――――――――――――
  106. 横路節雄

    横路委員 そこで、三十七年度の予算等についていろいろお尋ねをしたいのですが、予定の時間もだいぶたっておりますので、時間が残れば一番最後に、大蔵大臣に三十七年度予算の規模について御質問を申し上げてお答えをいただきたいと思うのですが、その間、ちょっとこの間河野委員から質問されました北方領土の問題について、総理大臣並びに外務大臣並びに河野農林大臣お尋ねをしたいと思う点があるわけです。  そこで、私はまず第一番目に総理大臣お話を申し上げたいと思いますのは、実はこの間海上保安庁に私の方で資料要求をしまして、戦後拿捕された船の数、あるいは人数、こういうものについて李ラインの関係、相手方韓国、北方海域の問題について詳細な資料を出していただいたのです。ほんとうは総理大臣もこれをごらんいただいて私の質問を聞いていただくといいと思うのですが、できれば、海上保安庁の方で私に出した資料があるわけですから、総理にも一つお渡しをいただきたいと思うのです。まず私が総理に申し上げたい点は、昭和二十一年から北方海域で拿捕されました船の数は九百六十三隻、人数につきましては八千百八十名、これが李ラインの関係で相手方韓国に拿捕されました隻数は二百七十八隻で、三千四百三十九人、これを見ますと、北方海域において拿捕されました船の数は、李ライン関係韓国側に拿捕された船の数に比べて実に三・五倍、人数については二・五倍となっておりまして、その被害は北方が甚大なんです。   〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕 特にその被害の内訳は、それをごらんいただくとわかりますが、根室海上保安署の関係が大体総体の漁船にして七割、人数にして六割を占めているわけです。特にことしの八月の二十三日にはコンブ船が十一隻とカニかご船が二隻拿捕されておりまして、このコンブ船というものは御承知だと思いますが、大体三トン未満、乗組員も二人ないし三人という最も零細な漁民です。今日、たとえば歯舞漁業協同組合に入っている人々のほとんどはコンブの専業者です。そして年間の経費を差し引いた生計費は二十万円ないし三十万円で、一戸当たりの人数は大体六・八人から六・九人です。年間二十万円といえば、今度政府の方でお出しになられた東京都五人家族の生活保護、それに国が支給する金がちょうど年間二十万です。働かないでじっとしていれば死なないで済む金、これが東京都の保護世帯に対する年間二十万、これが北方海域における歯舞漁業協同組合に入っている、コンブをとっている約二百五十戸の人々のこれが生活の実態です。一体こういうようなこの北方海域における安全操業の問題について、総理はこの実態を知っていらっしゃるのかどうか、これをどういうようにして一体総理は解決をなさろうというのか、その点について一つ、総理はよく、私は総理大臣として国民一人々々の生命財産を預かっているのだ、こうよくここで言われるわけです。これだけの、今私が指摘をいたしましたように、この膨大な数に上る船の拿捕、これだけの人々が抑留されている、こういうような実態からして、この北方海域における安全操業をすみやかに確立をすることが、私は総理大臣として、ここでたびたび言われているように、国民一人々々の生命、財産を守るという総理大臣としてのお仕事だと思う。任務だと思う。どうなさるのですか。その点について一つ総理の御所見を承りたい。
  107. 池田勇人

    ○池田国務大臣 北方のわが領土に出漁する漁民を拿捕するということは、まことに私は遺憾千万でございます。そういうことはあり得べからざることでございますが、何しろ力の関係上、われわれは不法な、何と申しますか、この処置に対しまして、ふんまんをおぼえるだげでございます。そこでこれが解決策としましては、すでに御承知の通り、さきの国会におきまして、こういう漁民の方々に一定の補償をしようという措置をとって善後策を講じておるのであります。
  108. 横路節雄

    横路委員 今の総理大臣お答え、遺憾千万なんです。これは一体総理大臣、遺憾千万だといってあなたがここでふんまんをぶちまけてそれで済むことでしょうか。あなたは今、さきの国会でいわゆる困っておる漁民についてどうこうというようなことを言ったが、あなたは勘違いしていませんか。あなたがさきの国会で出されて、今内閣委員会で審議をされている法律案は、国後、択捉、歯舞、色丹から引き掲げた漁民についてどうするかということなんです。根室近海でコンブ、カニかご、帆立その他のいろいろな漁業に従事している者が、全部が全部国後、択捉、歯舞、色丹からの引き揚げだなどとあなたがお考えになって、さきの国会に提案して、この国会で提案している北方地域からの引揚者に対する零細漁民に対する措置でそれで十分だなどということをお考えであれば、これはもってのほかですよ。問題の本質は違うのです。問題の本質をずらして、歯舞、色丹、国後、択捉から引き揚げた、北方地域から引き揚げた人々に対する、わずか何ぼですか、十億、年間六千万円程度の利子ではございませんか。そういうことでこの問題の解決はできないのです。あなたがただ遺憾千万だ、不法なやり方だ、こう言っただけではこの問題は解決しないんです。どういうようにして解決なさろうとしているのか、その点についてお答えをいただきたい。
  109. 池田勇人

    ○池田国務大臣 私は帰還者に対しましての補償をいたしました。しかしそれは、全然今操業している人と関係ないというわけのものじゃないのです。操業している人は、帰還者の人も相当加わっておると思います。しかし新たにそういうことをやられた方についてはいかぬかもわかりません。問題は、理屈では違うけれども、実際は相当同じような場合はあるのであります。しこうしてこの歯舞、色丹等におきまする安全操業の問題は、今まででも機会あるごとに日本政府あるいは漁業代表者が言っておることを聞いております。しかしいかんせん、ソ連といたしましては日本のそういうものを、私から言えば不法拿捕と思いまするが、拿捕している現実は、力の関係でいかんともしがたい。従いまして、そういうお困りの方々には、補償をいたしましてもなお足りないところは、ほかの方法でやっていくよりほかにないと思います。
  110. 横路節雄

    横路委員 今総理大臣、あなたの御答弁の中に、不法拿捕だ、遺憾ながら力の関係で仕方がないんだ、われわれの方が実力があれば断固はね返してやるんだ、今力がないから不法拿捕だががまんしているのだ、こういうこの北方海域における今日零細漁民の人々が、安全操業をできるようにしてもらいたいと願っているその零細漁民、国民の希望と、相手は不法なんだ、力が足りないから仕方がないんだ、やがて力があればやり直してやるのだ、こういう考え方というのは、総理大臣としては私は不適当だと思う。あなたは今、北方海域から引き揚げた者についてやれるじゃないか、相当措置をしたつもりだと言うが、あれは一体十億円の交付公債でしょう。年六千万円でしょう。年六千万円程度で何がやれるのですか。しかも現にたとえば歯舞漁業協同組合にいるこれらの諸君はどうしても貝殻島に、コンブは接岸してその岩にはえているのをとるのですよ。海でとるのでないのですよ。あなたが不法だとかなんとかと言ったって、今日相手が現に支配しているその地域、その島に行って、その岩にはえているコンブをとらなければならぬのです。あなたはとるなというのですか。政府の方では危険推定線というのをきめて、これ以上入ってはだめですよと言っているが、こういうやり方で、あなたはこの北方海域における安全操業については、相手は不法だ、遺憾千万だ、力が足りない、そのうちに日米の安保条約でおれの方がうんと軍事力持ったら一ぺんにやってやるさ、それまでがまんしていろ、こういうわけですか。あなたの今の話はそうですよ。これは大へんな御答弁ですよ。だから私はそういう意味で、この問題が正常な外交交渉解決がされるようにあなたはさるべきだと思う。この点を聞いているのですよ。正常な外交交渉でこれが解決さるべきだ、そういうことについておやりになっているのかどうかと聞いているのです。ただここで、不法千万だ何だと、何ぼ声を大にしたって解決しないのです。だから、どうやって外交交渉でこれを解決なさるのか、それについて私はお聞きをしておる。
  111. 池田勇人

    ○池田国務大臣 力があったらばね返すんだというふうなことにおとりになるのは、私はあなたが間違いだと思います。私は、そういうことを言っておるのじゃございません。力があったらばね返すということは絶対に言っておりません。そういうようにお考えになることは、力ずくでこれを解決しようというのが腹にあるから出てくるのであります。私は先ほど申し上げましたように、それはコンブはもちろん岩にはえている。接岸のところでとることは私は知っております。しかし安全操業の問題はコンブばかりじゃない。零細な漁民のために、北方地域におきまして操業のできるようにということは、今までも代表から申し出ておるのであります。そういうことを解決するために、われわれは日ソの間におきまして貿易あるいは文化協定等々でだんだんほぐしていこうという努力をいたしておるのであります。だから、それが今解決できないから、これはもうだめじゃないかというわけのもんじゃございません。努力を続けることと同時に、そうしてまたその方面で漁業をやっておった人、また今後やりたいという方々の生活の保障につきましては、内政問題として考えていかなければならぬ、こう申しておるのであります。
  112. 横路節雄

    横路委員 いや総理大臣、あなたが力が足りないからと言ったから私が言ったのです。あなたの考えを推測して言ったのです。  そこで、私はあなたにお尋ねをしたいのだが、今総理の私に対する答弁は、この問題を本質的に解決することとは違うのではないですか。今あなたはソビエトとの間に文化協定をやるんだ、ソビエトとの間にいわゆる通商条約を結ぶんだ、貿易拡大をやるんだ、そういうことを積み上げていく中でこの問題を解決をしようと言ったって、できるわけはないじゃないですか。一体この問題はどこが障害になっているのか。あなたはこういう根本的な解決に触れないで、先ほど言ったわずか年間六千万円足らずの金で引揚者に対してやれば事足りる、それでも足りなければもう少しやったらいいじゃないかという考えは、この問題の解決にはならないのです。これは一体何が障害になっているのです。外務大臣お答えがもしできるのでしたら、お答えしていただいてもけっこうです。
  113. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この安全操業の問題は、ただいまお話しのように、非常に零細な二トン半くらいの船に乗って、コンブやカニかご漁船が拿捕されておるという問題で、実に人道的な問題だとわれわれは考えておるわけです。これらの人たちは何百年も前から、その地帯に行ってなりわいを立てておったわけです。しかもコンブというものは、ソ連においては食べないものです。不要なものです。ですから、そういう点について考えて、これをもっと大きな人類愛の見地から問題を考えてもらいたいということを、しばしば先方に機会あるごとに言っておるのであります。実は先般ミコヤン副首相が見えましたときにも、この話が出ました際に先方の言われるには、それはよくわかっている、わかった、しかし安保条約があるから困る、こういう話です。それは非常に違う。安保条約というものは政策的な問題であり、しかも共同宣言を調印した際に、すでに日本は安保条約を持っておることをソ連政府においては承知の上であれに調印されたのではないか。とすれば、そういう体制に日本があるということは、日本の国内の問題として、しかも共同宣言で言っておるように、国連憲章五十一条にいう個別的、集団的な安全保障を相互に認め合う、しかも内政に干渉しない。こういう立場を前提にして結んでおるのだから、すでに御承知のことであろう。領土不拡大といい、人類愛といっておるソ連も、これはすでにその当時の状況から見て、しかも何百年も前から同じことをやっておる漁民の生活を、ことさらにこじつけがましい理屈でもって脅かさぬようにすることを特に御配慮願いたいということを言っておるのであります。私どもはこういう立場を続けるつもりであります。
  114. 横路節雄

    横路委員 総理大臣、今外務大臣は、この問題は人道問題として解決をしたい、そういうようにされておる。しかしこの問題は十二海里、三海里の問題ではないのです、そういう問題もありますが……。実際は三海里以内に入らなければならぬ。三海里以内どころではないのです。接岸しなければならない。そういう問題なんです。これがただ三海里、十二海里だけの問題ならば、いろいろ問題はございましょうが、日本でも言っている領海は三海里だという三海里以内に入らなければならぬ。三海里以内どころではなくて、接岸しなければならない。歯舞、色丹、国後、択捉は現にソ連が支配しておるのです。これは人道問題として解決をするとしても、基本的には領土問題が解決しなければ、この問題は解決しないではありませんか。その本質的な領土問題の解決をはからないで、問題は本質をそして、そしてこれを、いわゆる国内における零細漁民に、一つは引揚者にこうします、これから困れば、なおこうします、そういうことで、これが解決できますか。今の池田内閣のやり方は、端的にいうならば、この本質的な領土問題を解決しない限り、この北方についての安全操業は解決しない。その領土問題について解決をする意図がない。池田内閣は、この安全操業については解決しようという考えはない。従って、北方地域に対する零細漁民の生活を考えようというような態度は毛頭見られない。もしも見ようというならば、この問題については、日本は人道問題として解決しようとしても、相手が領土問題の関係なんです。三海里以内の問題なんです。接岸の問題なんです。一体どうして領土問題として本質的なこの解決をはかろうとしないのですか。問題の本質をそらして、そしてただ単に不法だ、遺憾千万だ、力が足りない、こういうことだけで、この問題の解決ができますか。――待って下さい。総理大臣に私はお聞きしているのです。こまかな点はあとでゆっくり外務大臣に聞きます。
  115. 池田勇人

    ○池田国務大臣 われわれは、人道問題よりも、まず日本の固有の領土を返してもらいたい、これでいこうといたしておるのであります。しこうして、向こうが返しませんから、今まで何百年やっておった零細漁民に、接岸してコンブその他の漁獲をできるようにするのがほんとうじゃないかということを言っておるのであります。本質は択捉、国後を、歯舞、色丹はもちろん、早く返してくれというのがわれわれの主張でございます。
  116. 横路節雄

    横路委員 今の池田総理の話は一歩前進したのです。なぜ一歩前進したかというと、今まであなたのお話は、問題の本質をそらして派生的なことで解決しようとしている。だから私は先ほどから、領土問題について解決しない限り、この問題についてのいわゆる本質的な解決はできないのではないか、こう言っている。そこで今あなたから、安全操業の問題についてはやはり領土問題が解決することがその基本だということになったことは、少なくともこの委員会における、今私とあなたとわずか十五分かそこらしかまだしていないが、その十五分の中でもあなたの考えは一歩前進したのです。問題の本質に触れてきたのです。  そこで、これから私は河野農林大臣お尋ねしたい。河野農林大臣に私がお尋ねしたいと思います点は、日ソ共同宣言について全権としておいでになったのは、今鳩山さんはなくなっておりますし、松本さんは今ここに御答弁をしていただくという政府委員の席にはおりませんから、そういう意味ではあなたが当時の全権であり、今日農林大臣として、とりわけあなたは漁業問題についても、零細な漁民についても生活を確保するための重要な職責にもある。そういう意味で、私は日ソ共同宣言調印の際における若干の疑問点について、いささかあなたにお尋ねしたい。  この問題についてはこういうようになっていることを、あのときあなたは十分御承知だが、国会の議論について若干お話をしてから御答弁をいただきたいのです。まずここで一番問題になりましたことは、なぜ日ソの共同宣言の中に、領土条項を含めてといいますか、領土問題を含めて引き続き平和条約について交渉するというように、ここで書かれなかったのであろうか。疑問点ですよ、今私があなたに申し上げているのは……。あるいはもっと具体的にいうならば、歯舞、色丹は平和条約締結の後に引き渡す、この共同宣言の中で国後、択捉の問題がかほど問題になっている今日、当時あなたは予測できなかったわけはないんだから、なぜこの問題がもっと明確に出されなかったのかということが、そのときの国会においても  三十一年十一月二十日のあなたの答弁をこれから申し上げますが、その前に鳩山総理は、答弁説明に非常に苦労している跡が歴然と現われているわけです。どういうように言っておりますかというと、まず三十一年十一月二十二日、衆議院の委員会において、わが党の穗積委員がこう聞いています。択捉、国後の返還を将来求めるためには、歯舞、色丹を含めて一括継続審議とした方が適切ではなかったのか、問題の核心をお尋ねしています、と聞かれましたところが、鳩山さんは、その方がよいとの意見も出たが、歯舞、色丹の引き渡しをソ連が同意したあとだから、もとに戻せとは言いにくかったと述べて、さらにモスクワ交渉で歯舞、色丹の譲渡を明記することになったときに、ソ連側は継続交渉について領土問題の字句を削ることを強硬に主張して譲らなかった、われわれとしてはその字句が書かれなくても、それまでのいきさつから見て、領土問題が継続交渉になることは明らかだと信じていると答えた。ここで十二月の二日に参議院におきまして、当時社会党の曾祢委員が、今の鳩山さんの説明は重大な説明である、総理の説明では、共同宣言に歯舞、色丹の譲渡を書くなら領土の継続審議を落とせとソ連が主張し、日本側がそれに賛成したという。これでは、日本は歯舞、色丹のかわりに継続交渉をひっ込めることに賛成した結果になるではないかとこう聞いているのです。これは非常に重大な問題なんです。しかし鳩山さんは抽象的に、今までの経過から見てそうなるまいと思う、こういう御答弁だが、この間のいきさつは、今日あなたしかわからないのです。当時の全権であるあなたしかわからぬ。そのあなたに対して各委員から質問されている点を、私は一つあなたに読んでみたいと思うのです。あなたの言った通り読んでみます。ここではあなたはこうなっているのです。ここの答弁では、共同宣言は数次にわたるフルシチョフ第一書記との会談の末、あの内容が妥当ということで結論づけられた会談内容は言えないとこう言いますが、この点をさらにあなたの言葉の通り読んでみます。松本七郎君からの質問にあなたは答えて「御承知の通り、フルシチョフ氏と数次にわたり話し合いをいたしまして、いろいろな角度から十分話し合ってみた結果、結論に出ましたように、ああいうことで結論づけることが、双方の理解を深め、協力して参るのに妥当であるということでいたしたのでございまして、私と二人で話し合いました内容にはいろいろな問題がありまして、これは両国のために私はここで申し上げない方が適当と考えますので、差し控えさしていただきたいと思います。」国民だれしもが、なぜ一体この平和条約の交渉には領土問題が継続交渉になるということが入らぬのか、なぜ削られたのか、しかも鳩山さんの答弁では、歯舞、色丹を譲渡することにしたからそれを削れということで了承したと答弁されている。あなたに聞くと、この会談の内容は絶対言えないと言う。今日この北方に対する安全操業の問題、とりわけ今あなたの方で非常に重大な問題にして、この国会でもわれわれが質疑をかわしているこの国後、択捉島の問題については一体どうなっているのか。あなたが両国のためにその会談の内容は言えないと言うが、これだけ国会で重大問題になり、日ソの両国の間でこれだけ問題になって、国民が非常な関心を持っているのだから、従って、当時の全権の一人であって、重要な任務をなさった、今日しかも農林大臣であるあなたが、この際ここで明瞭にされることが、私は最もよい機会であると思うのです。  ちょっと話が長くなりましたが、お忘れになっていると困ると思いまして、前の経過をその通り、私は当時の速記から全部拾い上げてあなたに申し上げて、注意を喚起して、一つあらためてこの点について御答弁をいただきたいと思うのです。
  117. 河野一郎

    河野国務大臣 外交上の問題でございますから、今も、当時のフルシチョフ氏と会談いたしました会談内容を申し上げることは、適当でないと考えます。ただし、私は領土問題についてそれが前提となっておりますこと、またこれは今後の平和条約締結の際に交渉の対象になるということは、当然のことでございまして、それを一々、明記してある、してないということは問題じゃないということを申し上げることはできると思います。
  118. 横路節雄

    横路委員 河野さん、あなた、会談の内容について言えないと言うが、ここで言われた方がいいんじゃないですか。その会談の内容について言っているじゃないですか。他の外部の者にあなたはいろいろと話をされて、なぜ国会で御答弁ができないのか。どうしてできないのですか。やはりこの問題は、池田内閣自体としても重大な問題なんです。池田内閣ばかりでなくて、日本国民全体としても重大な問題なんです。あの日ソの共同宣言のときに、なぜ平和条約の継続交渉について、この領土問題について入っていないのか。しかも鳩山さんが、ソ連側は歯舞、色丹を譲渡するということにしたから削りなさいということで、いろいろその間のいきさつは、言い合いはあったにしても、結果的には削っているではありませんか。だから、こういう記録をずうっと通して見れば、あなたの方では、歯舞、色丹を平和条約締結と同時に返す、締結の後返す――重大ですよ、この問題は。しかし、その国後、択捉がなぜ落とされたのか。その数次にわたる交渉について、事外交上の問題だから言えないということでは、国民の疑惑は一掃できない。国会全体は、あなたが何か約束したに違いないと言っている。だから  一部では言っていますよ。今池田内閣が強硬な態度でソ連とこの領土問題で交渉したときに、相手方からばーんと、数次にわたる河野・フルシチョフ会談の内容について、もしも向こうから出されたらどうしますか。何を一体言ってきたんだろうということを、みんな非常に懸念をしているのです。しかもあなたは言っているじゃないですか。なぜここで言えないのですか。もう一ぺん、あなたがどうしても言えないなら言えない――ここで私は言った方がいいと思う。池田総理だって、うしろで心配しているよ。
  119. 河野一郎

    河野国務大臣 当時からしばしば、何を約束したとか、何かが出るだろうとかいうことをおっしゃいますけれども、断じてございません。そういうことを私はいたしたことはないのであります。しかも、今お答え申し上げましたように、当然領土問題について結論を出す次の平和条約交渉の際には、領土問題について交渉するということが前提になっておりますことは、申すまでもないことであります。
  120. 横路節雄

    横路委員 しかし、河野さん、それじゃあなたは御約束したことはないのですか。会談の内容は言えないと言うが、約束したことはないのですか。池田内閣がこの問題について、正規の外交交渉にまだ移していない。平和条約の交渉については、あなたがここで聞いているように、相手が返すという意向がはっきりしない限りやらぬと言っている。私はこういうやり方はおかしいと思う。池田内閣が平和条約締結に関して正常な外交交渉に乗せて、いよいよ領土問題が両国の代表の間で話し合いになったときに、この会談の内容について出ませんか。だから、そういう意味で、そういうことについてはなぜ言えないのですか。あなたが言わないとすれば言わないとするだけ、国民全体の疑惑が、河野さん、何かやってきたな、あとでばーんと相方から来るな、あれだけの実力者が言えないわけはない、こうなりますよ。だからこの点は、もう一ぺん御答弁をいただいてから、私は、あなたと対談をした人の記事の内容を申し上げたいと思うのです。もう一ぺん、できれば池田内閣のために、あなたが閣僚の一人として、はっきりここでその会談の内容について、こうであったということを言われるべきだと思う。
  121. 河野一郎

    河野国務大臣 たびたび同様な答弁を申し上げて恐縮でございますが、ただ最後に、もう一ぺん、交渉の際にソ連の方からパーンと出てくるよというお話でございますが、パーンと出てくれば私の方もパーンと言うだけのことがあるのでございまして、それは今私が申し上げた通り、決して国家のために不利益のようなことはいたしておりません。信念を持って申し上げます。
  122. 横路節雄

    横路委員 いや、それでは河野さん、一つ聞いて下さい。私は本来から言えば、あなたも御承知のように、あまり他の意見とか他のものとかを引用をしないで、できるだけ国会におけるそれぞれの委員会の会議録、これを忠実に引用して今まで聞いてきたのです。しかし、この点は非常に重大ですから、私はぜひあなたにお尋ねをしたいのです。  それは、ことしの六月二十六日に池田総理が渡米中に「朝日ジャーナル」の依頼で自民党の実力者の意見を聞くべく、その一人の河野一郎氏を東大の助教授の寺沢氏が実は訪問した。あなたばかりでなくて、たしか藤山さんも佐藤さんも実力者といわれる人々のところはみな行った。そのときに当然問題は、この日ソ共同宣言の中になぜ一体国後、択捉についての領土問題が継続にならなかったのかという点についてはだれしもが心配であるので、あなたにいろいろとお尋ねをした。ところが、当日の会談の内容は、当日というのはことしの六月二十六日、東大の助教授の寺沢氏とあなたとの会談によれば、あなたのお話として、交渉も最終に近いある日  おそらく十月十七日のことかと思われる。フルシチョフ全権は河野全権に対して、領土問題に関するソビエト側の最終提案を手交した。それによると、歯舞、色丹は日本に引き渡す用意があることを示すとともに、国後、択捉も明記して、これらに関する交渉を平和条約締結にあたって継続交渉すると述べられていた。そこであなたは鳩山首相と手をとり合って喜び、日本から随行した外交官も、その夜本国に公電を打つとともに、ホテルで交渉の成功に祝杯をあげた。ところが、一夜明けて、あなたはフルシチョフ全権と会うや、昨日提案されてきたこの国後、択捉の撤回方を求めた。あなたは内心しまったと思いながら、こちらから出した案ではなく、あなたの方から出されたものではないか。それについてお互いに了解し合ったのに何事かと難詰したが、強く撤回を求められた。それから一時間ばかり別室で彼らの協議が行なわれた結果、示されたのが現在の共同宣言の条項である。それはすでに記した歯舞、色丹に関する規定の前段を構成している部分で次のように述べている。「日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する」こういうふうにきまった。このあなたの経過からいけば、なるほど一たんは提案されたでしょう。しかしそれが削られて、そうして最終的にはそれを了解した。その了解したいききつが当時の鳩山首席全権からは、この歯舞、色丹について譲渡を明記したのだから、これは当然削るべきだ、こういう向こう側の強い意向が最後まであって、そうしてあなたの方ではやむを得ず今お話をしたように、平和条約の締結に関する交渉を継続するいうことで、国後、択捉はもちろんのこと、領土問題については一切ここで削除されているではございませんか。こういう点については、あなたはもちろん国会でもお話をしていない。これは他のそういう雑誌の依頼に基づいて、そういう人々が行ったときにはあなたは気軽にお話をなさる。私はこれがその全部の内容とは思わない。しかしこれも数次にわたる会談の一つには違いない。しかも最終的な会談の一つでしょう。こういうふうに、他の方にはこれをお話しなすって、それが一般的に雑誌に伝えられて多くの人に読まれている。そういう国民の疑惑を、もしもあなたがそうではないのだ、歯舞、色丹の譲渡だけであって、国後、択捉等の領土問題についての継続はそうではないのだ、あとで削られたのはこういう理由なんだ、なぜここではっきりおっしゃらないのです。なるほど三十二年の十一月二十日のときには私たち社会党も日ソの共同宣言についてはこれは積極的に賛成ということで、当時の鳩山内閣を鞭撻をした。しかし、今あらためて問題がここまできて、しかも私が特にあなたに聞いておるのは、当時の全権であるということが一つ、もう一つは、安全操業の問題がこれだけ重大になって、しかも三海里、十二海里ではなくて、三海里以内に入って、コンブは接岸をしてとらなければならぬ。このことは、根本的に領土問題を解決をする平和条約を締結する以外にこの安全操業についての解決はない。北海道の零細な漁民についての生活の確保はない。私はそういう意味で、今池田内閣の閣僚としての農林大臣としてのあなた、同時にあなたは当時の日ソ共同宣言交渉の際における鳩山総理を助けて重要な役割を果たしたあなたとして、ぜひここで明らかにいしていただきたい。あなたは全権としてここで明らかにする責任があると私は思う。その数次の会談の一こまをここでお話をしておるではありませんか。ぜひお話をしていただきたいと思うのです。
  123. 河野一郎

    河野国務大臣 重ねてお答えいたします。  私が全権としてフルシチョフと交渉いたしました経緯におきまして、歯舞、色丹、国後、択捉を日本の固有の領土として、これをわが方に返還すべく努力いたしました。その結論を得るに至りませんでしたから、これは後日に譲って、平和条約締結の際にあらためて交渉するということが、私とフルシチョフ氏との結論でございます。この点はっきり申し上げます。  なお、横路さんは先ほど来、安全操業は領土問題であるから、領土問題の解決がなければないということを独断でおきめになっていらっしゃいますが、私はそうは考えておりません。これは私当時参りました際にも、領土問題とは別個に安全操業の話はいたしました。しかも、先方はこれに対して相当了解的な返事もいたしておりました。ところが、その後の国際情勢の変化がこの安全操業の問題を困難にいたしておると思うのでありまして、安全操業と領土問題とは関係ありませんということを、私はソ連との交渉の経緯にかんがみて明確にお答え申し上げることができると思います。
  124. 横路節雄

    横路委員 河野さん、東大の助教授の寺沢君と会ってのこの内容は間違いないですね。その点が一つと、もう一つその次に、何べんもお立ちいただくのもあれですから、次にお答えいただきたいのは、あなたはたびたびの漁業交渉の中で、この安全操業の問題は領土問題とは関係がない、必ずやれるんだ、こう言うならば、今度あなたは幸い農林大臣になられて、その職責からいえば、来年の漁業交渉についてはあなた自身が固辞をされない限り、私は当然日ソの漁業交渉についての全権としておやりになるべきだと思うが、それならば、今あなたがお話をされた、領土問題とは切り離してこの問題が解決できるんだ、こう言うならば、その具体的な方策について一つお話をしていただきたい。二つです。
  125. 河野一郎

    河野国務大臣 安全操業と字に書いてあります通りに、私は領土が解決するなら安全操業という言葉はないと思うのであります。自分の領土で自分の周囲で漁業するのに、安全操業というのはおかしな言葉であります。それがそうでないから安全操業という言葉が出てくるのでありまして、それを領土の問題に結論づけられることは間違いだ。私は当時領土問題が解決をいたさぬから、これは平和条約に譲るんだ、その間出漁することができないことは困る、そこで当時非常に友好的に話し合いまして、それは別途考えようということであったのでございますが、その後の国際情勢が非常に緊迫いたしました等の経緯からかんがみて、今日結論が出ていないということでございます。でございますから、私は、命を受けましてソ連に参りまして、今直ちに安全操業の問題に入りましても、この緊迫いたしておりまする国際情勢のもとにおいてはなかなか困難である、こう私は考えます。  雑誌の点につきましては、私もその雑誌を読みました。しかし、これは各所に誤謬の点がございまして、これを全部私は正確なものとは申し上げることはできません。
  126. 横路節雄

    横路委員 それでは河野農林大臣お話では、今の国際的な緊張の中では、あなたが全権としておいでになられても、安全操業については何ら根本的な解決はできない、こういうように御答弁になったが、それでよろしゅうございますか、もう一ぺん一つ。この問題は、零細な漁民ばかりでなしに、全国漁民が非常に期待をしておるのですから。
  127. 河野一郎

    河野国務大臣 私が万一参りましたそのときに、どういう国際情勢になっておるかということは、私にはちょっと判断がつきません。またそういうことでございますから、今ここでこの問題の結論が出るということも言えませんけれども、さればといって、先日ミコヤン氏が参られました際に、当時千葉県の漁民が拿捕された問題について依頼いたしましたところが、直ちに釈放いたしてよこしておる事実もございます。そういうことでございますから、十分努力はいたしますけれども、努力の結論がどうであるということは、お答えしにくいのであります。
  128. 横路節雄

    横路委員 今の河野農林大臣お話で、安全操業の問題については根本的な解決はできない、こういうお話です。私は、池田内閣の存する限りこの問題については本質的な解決はできないと思う。  そこで私は総理にお尋ねをしたい。この間、私は河野委員の質問に関連をしてあなたにお尋ねをしましたので、わずか一つだけ、当時のサンフランシスコ平和条約に関する――あなたは当時全権です。そこで西村条約局長国会における答弁を引用してお話をしたわけです。そこで私は今までずっと、あなたばかりでなしに、吉田総理のサンフランシスコ会議における全権としての演説、その後のアメリカ側からのいろいろな回答、覚書、あるいは歴史的なそれらの事実、こういうものを詳細に検討したのですが、あなたたち自身が、千島列島の中には国後、択捉は入らぬのだ、こういうように吉田全権から当時一貫してあなたたちは言っていると言うが、そういうことについてはあとでこれからあなたに一々お尋ねをするが、そういうように解釈できるようには言っていない。私はこの点をあなたにこれから聞きますが、その前に一つ小坂外務大臣お尋ねをしたいのは、日本はサンフランシスコ条約で千島列島を放棄した、南樺太を放棄した、その放棄した根拠は何ですか、ただ放棄しなさいと言うから勝手にやったのですか。そうではないはずですね。台湾、澎湖島等については、それぞれこれを放棄する根源が明らかになっている。そこで南樺太、千島列島について、当時吉田全権が行ってとの条約に調印をして、南樺太並びに千島列島について放棄をしたというその根源、根拠は何ですか。
  129. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本が終戦に至りますまでの間、御承知のようにカイロ宣言が出、そしてこれを受けてポツダム宣言が出ているわけであります。そこでこの諸条章に基づきまして、われわれはこれを男らしく承諾するということで講和条件をのんだわけでございます。その結果といたしまして、南樺太並びに千島の放棄の問題が出てきたわけであります。
  130. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、重ねてこの点お尋ねしますけれども、今あなたはカイロ宣言のことを言いましたね。では私もカイロ宣言の文について持っていますからお尋ねします。カイロ宣言には「右同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国ガ奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満州、台湾及澎湖島ノ如キ日本国ガ清国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ日本国ハ又暴力及貪欲ニ依リ日本国が略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルベシ」南樺太、千島列島はこのカイロ宣言のどこに適当するのですか。どこなんですか。
  131. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お読み上げになりましたから私も読み上げますが、そういうカイロ宣言を受けてポツダム宣言の第八項に「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島二局限セラルベシ」すなわち連合国が決定する諸小島、その中に千島並びに南樺太が入るという問題が明記されておるということであります。
  132. 横路節雄

    横路委員 今あなたはカイロ宣言を引用されたでしょう。だから私はカイロ宣言のどこに入っているのですかと聞いた。なるほどポツダム宣言はカイロ宣言を受けていますよ。しかしカイロ宣言には明確に「千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ」云々、二番目には満州、台湾、澎湖島は日本が清国から盗取したのだ、盗んで取ったものだ、その次は「暴力及貪欲ニ依り日本国が略取シタル他ノ一切ノ地域ヨリ駆逐セラルベシ」これがカイロ宣言です。南樺太と千島列島はこのうちのどれに当たるのですかと聞いている。ポツダム宣言はカイロ宣言を受けていることは私も百も承知していますよ。しかし、これはカイロ宣言のどこにあるのですか。
  133. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ポツダム宣言は、カイロ宣言を受けているけれども、そういう条章があって、日本はそれを無条件に受諾した。そこで講和条約の際にも、吉田全権からこういうことを特に言っておられるわけです。「千島列島及び南樺太の地域は日本が侵略によって奪取したものだとのソ連全権の主張は、承服いたしかねます。」ということをはっきり言っておられるわけです。なおこの歴史的な由来を言っているわけですが、「日本開国の当時、千島南部の二島、択捉、国後両島が日本領であることについては、帝政ロシアも何らの異議を差しはさまなかったのであります。ただ得撫以北の北千島諸島と樺太南部は、当時日露両国人の混住の地でありました。一八七五年五月七日、日露両国政府は、平和的な外交交渉を通じて樺太南部は露領とし、その代償として北千島諸島は日本領とすることに話し合いをつけたのであります。名は代償でありますが、事実は樺太南部を譲渡して交渉の妥結をはかったのであります。その後樺太南部は、一九〇五年九月五日ルーズベルト・アメリカ合衆国大統領の仲介によって結ばれたポーツマス平和条約で日本領となったのであります。また、日本の本土たる北海道の一部を構成する色丹島及び歯舞諸島も終戦当時たまたま日本兵営が存在したためにソ連軍に占領されたままであります。」という事実を述べまして、しかし無条件に降伏したのであり、ポツダム宣言を受諾したのでありますから、こういう歴史的な事実を述べて引き下がっておるということであります。
  134. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、今のあなたの御答弁はちょっとおかしいですよ。なるほど吉田全権の当日の演説内容を私も今ここに持っておりますから私は申し上げます。しかし今私が聞いているのは、南樺太と千島列島が一体カイロ宣言のどこなんですかと聞いている。それを聞いているんですよ、外務大臣。だからあなたが、日本がこの千島列島並びに南樺太を放棄したのは、カイロ宣言にいう、日本国は暴力及び貪欲によって取ったのだと、こうわれわれはカイロ宣言でうたわれて、それをポツダム宣言でわれわれは受諾をしたから、このカイロ宣言のこの条項をわれわれは承認をしたのだ。だからこれは放棄したのだと、こういう御答弁ですか。吉田さんが何を言おうと――吉田さんのお話も申し上げるが、これは論理的にあまり筋の通っていないことをこの中で言っていますよ。しかし、私が今あなたに聞いているのは、われわれはポツダム宣言を受諾したのだ、その前提はカイロ宣言だ、それならば、カイロ宣言のどこの条項によって南樺太、千島列島を放棄したのかと聞いているのですよ。その点です。
  135. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 間接的にお答えしているわけでありますが、カイロ宣言には、あなたがお読みになったようなことが書いてあるわけですね。これを受けてポツダム宣言にいろいろ書いてあるのですが、その第八項に、連合国がわれらの決定する諸小島に限られる、日本国の領土を本州、四国、九州、北海道のほかにこれだけだと、こう規定している。その中に南樺太と千島列島を入れているわけです。そこでその主張を受けて、吉田全権がこのソ連の主張は承服しかねると、日本はこれは侵略によって奪取したものではないということを言っているわけであります。
  136. 横路節雄

    横路委員 あなたは今カイロ宣言の話をされて、そうしてポツダム宣言の第八項に「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」外務大臣、この第八項における条文のあなたの解釈はおかしいですよ。これは二段に分けてあるのです。そうでしょう。第一段は「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」だから、一つは第一次世界戦争以降、一九一四年以降のあの島々、これが一つ。それから台湾、澎湖島の問題が次。これがカイロ宣言なんだ。どこに一体、この南樺太並びに千島列島がお互いの了解の中で――日本がいわゆる貪欲によって、日本が不法侵略によって、どこにわれわれがこれは取ったものですか。暴力や貧欲ではないでしょう。あなたたちもそう理解をしているだろう。だからカイロ宣言ではないのでしょう、どこなんです。カイロ宣言なんですか。その点明らかにしてもらいたい、外務大臣
  137. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府委員から補足させまするが、カイロ宣言の中には、その南樺太並びに千島という部分は入っておらないことは御指摘の通りであります。ただ、これを受けてできたポツダム宣言の中において、連合国が日本の所有する領域をきめるということになっておりまするので、連合国の主張に従って無条件降服をした日本の立場として、南樺太並びに千島を放棄したということであります。
  138. 横路節雄

    横路委員 中川さん、ちょっと待って下さい。外務大臣、私も条約局長にたくさん答弁してもらいたいのですが、やはり時間の制限もありますしね。  そこで今あなたは、カイロ宣言の条項を受けてですか、ここが一番問題なんですよ。だからそこでまた日本国の主権は、今あなたがおっしゃるのは、「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並二吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」と、これに基づいて放棄したのだ、こういうのですか。それともいわゆるカイロ宣言の中にある暴力あるいは貪欲で取ったときめつけたから、やむを得ずわれわれはポツダム宣言で受諾したからやったというのなら、これがこれからのソビエトとの外交交渉の重大な問題じゃないですか、どうでしょう。
  139. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 カイロ宣言の中には、そういう特定の島をあげていないわけです。ただ貪欲あるいは暴力によって取った土地はいかぬ、これは返せとこう書いてある。そこでソ連側の主張もあったんでございましょう、それは私はつまびらかにしませんが、南樺太並びに千島というものは日本がそういう趣旨で取ったのであると、こういう主張を当時の関係国が考慮に入れたんではないかと思います。従って、そういう要求が講和条約の草案の中に出ておる。日本は、当時の情勢いかんともしがたく、これを放棄した、こういうことだろうと思います。
  140. 山村新治郎

    山村委員長 この際事務当局から説明願います。中川条約局長
  141. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま御指摘になられ、御質問になられましたように、われわれが降服いたしました際に受諾いたしましたポツダム宣言は、カイロ宣言を引いております。と同時に、カイロ宣言の条項は履行せらるべく、また日本国の主権は四つの島と連合国が決定する諸小島に局限せらるべしということが書いてあるのでございます。このポツダム宣言全体を日本は受諾いたしておるのでありまして、従ってサンフランシスコ平和条約によりまして、日本の領土でこれが日本の権利を放棄せられたもの、これはもちろんカイロ宣言に基づくものということもできましょうが、第一次的にはやはりポツダム宣言に基づいて行なわれたものと、かように考えるのが至当であると思うのでありまして、ポツダム宣言第八項、これに基づいて行なわれておる、かように考えております。
  142. 横路節雄

    横路委員 条約局長、私が限定しているのは、台湾、澎湖島その他みな聞いておるのではないのですよ、南樺太と千島列島です。第八項の全部を受けるのですか。第八項の「又」というその後段だけ受けるのですか。これもポツダム宣言なんだから。どうなんです。
  143. 中川融

    ○中川政府委員 われわれといたしましては、南樺太、それから千島列島全体、いずれも貪欲または暴力によって日本が略取した土地とは思っていないのでございまして、これをサンフランシスコ条約によって放棄いたしましたゆえんのものは、ポツダム宣言自体に基づいておる、かように考えておるわけでございます。
  144. 横路節雄

    横路委員 小坂外務大臣、そこで問題がある。今条約局長から御答弁のようにわれわれはポツダム宣言を受諾した。そこで第八項にカイロ宣言の分については、南洋の島々、台湾、澎湖島、そうして南樺太、千島については今政府が言ったように、このポツダム宣言のいわゆる第八項後段の「又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」とこういっている。そこで問題がある。これは昭和三十一年の七月三十一日モスクワにおいて開催された日ソ交渉第一回の会議において、重光全権は次のように声明した。ソビエトの外務大臣並びにソビエトの全権団各位に、重光全権が声明を発表された中にこう言っているのです。重光さんのお話は、ソビエト側はさきにロンドン交渉において領土の問題は決定済みであると主張された。なるほどポツダム宣言は、日本に帰属すべき島嶼の範囲は連合国側が決定すると書いてあります。しかるに日本政府が確かめたところによれば、連合国側においてはいまだかつてこの決定が行なわれていないことが明白であります。重光さんは、わざわざこの昭和三十一年の第一回の日ソ交渉の際において、重光全権は今話したようにポツダム宣言の第八項の後段では連合国が決定するのだ、だから重光全権は従来における外務省の方針に基づいて南樺太並びに千島列島は、このポツダム宣言によって暴力または貪欲によって取ったものではない。ポツダム宣言第八項にいうカイロ宣言に基づいてやったものではない。ポツダム宣言第八項における連合国がその島嶼を決定する、それに基づいて日本は放棄をしたのだが、ここまでは中川条約局長小坂さんとみな同じだ。しかし日本政府が調べたところでは、連合国側においてはいまだかつてその決定が行なわれていない、こう言っているではありませんか。何で一体ポツダム宣言の第八項で、南樺太、千島列島、特に今問題になっている千島列島については、私があなたに今申し上げているのは、あなたたちが国後、択捉は日本の固有の領土である、しかしウルップ島以北の十八の島々については、これはわれわれは放棄したのだ、こう言っている。日本固有の領土ではないから放棄したのだ、こう言っている。しかしそうはいっても、重光全権は明らかに言っているじゃありませんか。連合国が決定していないのだ、連合国が決定していないものを、何で一体放棄したのです。何でおやりになったのですか。だから私たち社会党は、あなた方が国後、択捉は日本の固有の領土だというが、千島列島全体は、この前の国会からここで言っているように、これは歴史的に見て、日本の本来の領土ですよ。しかもあなたの方御自体がこの問題について、南樺太までひっくるめてポツダム宣言第八項の後段にいう連合国の決定によってなされたのだ、こう考えておったが、決定されていないのではないかと言っているじゃありませんか。それならば当然この問題は、あなたたちが国後、択捉の問題というのではなくて、なぜ一体千島列島全体は日本本来の領土であるという立場に立たないのだ、こういうように言う以上は、明らかにそういう主張をすべきではありませんか。それを決定もされていないのに、ウルップ島以北の十八の島は放棄したのだ、こっちだけはおれの方のものだ、一体こういう国際的なことが言えますか。あなたの方自体からでも言えないのではありませんか、どうなのです。今までの経過からですよ。
  145. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 だいぶ違うと思います。ポツダム宣言第八項、すなわちその後段の「吾等ノ決定スル諸小島」ということがございますから、これは連合国が決定しなければ、どの島が日本の領有を離れるかということはきまらぬわけでありますが、その決定が行なわれていない、すなわち決定の行なわれていない島は、日本の領有に属しておるわけなんですね。日本の島であるわけです。ただ千島並びに南樺太については、これは日本は講和条約で放棄するということを承認して調印をしております。ですから、これは日本は放棄をしておるわけであります。ただ、この帰属はどこに帰するかということについてはまだきまっていない、こういうことなのであります。ただ国後、択捉は放棄した千島の中に入っておらない。歴史的に見てもいろいろな植物学等の学説から見ても、これはもう日本固有の領土であるということは、明瞭であるということを言っているわけであります。すなわち放棄していないのだ、こういうことを言っているのであります。  私はついでに、もしお許しを願えれば伺いたいと思いますが、横路さんの論拠は、それでは日本が放棄したのはあれはうそだったのだ、こう言えとおっしゃるのでございましょうか。どうもその辺が少し明瞭を欠いておるように思います。
  146. 山村新治郎

    山村委員長 横路君に御注意申し上げます。問題が重要問題ですから、委員長は特別な計らいをもって、だいぶ時間も超過いたしましたから、結論を結んでいただきたいと思います。
  147. 横路節雄

    横路委員 外務大臣、この点は私も、ここで今私が言って、あなたが私の主張になるほどよくわかった、それでは今までの考えは間違った、だから社会党の言う通りやると言うことは、これは私たちももう一ぺん、この短時間の中でそういうことをあなたが御答弁できるとは思わない。しかし問題の本質を、これだけ大きな問題になったから掘り下げておく必要があると思って申し上げたのです。こういう意味で一つお聞きを願いたいのですが、今あなたから、いわゆる千島列島の問題について出ましたから、私もほんとうからいえば初めにこのことをお話ししたがったのですが、ちょっと簡単に申し上げます。  明治二年八月十五日、それまで松前蝦夷地と呼びならわされていた地方を北海道といって、国郡を分けたとき、北海道本島の東北部に位置する国後及び択捉の二島を一国として、これに千島の名称を与えた。これは経過ですよ。その次に、明治八年、一八七五年、千島樺太交換条約によってウルップ島からシュムシュ島に至るいわゆるクリル諸島がことごとく日本領となって、これらの島々を千島国に編入した。ここで千島はこのとき初めて地理学上のクリル諸島と一致したので、クリル諸島は日本では千島列島と呼ばれるようになった。これは日本だけではなしに、世界のあらゆる国々の地図はいわゆる千島列島とは何か、いわゆるクリル諸島とは何かというととは、戦争前の地図を見れば全部国後、択捉が一環になっておる。あなたがそうやってがんばるから、私もそのことをお話したので、あとで何かのときにごらんになればいい。  次に、私は、時間を委員長から催促されていますので、ほんとうは一問一答でしたいと思いましたが、一括してお話します。それはまずこの国後、択捉の問題については、昭和三十一年三月十日、重光外務大臣が衆議院の外務委員会でお話をしておる。いわゆる松本・グロムイコ会談の後に、松本さんが帰られてから、この国後、択捉とクリル諸島について疑義が出たので、アメリカ、イギリス、フランスに回答したが、その回答文が出ておることはあなた御承知ですね。その回答の一つは、クリル諸島については平和条約中にもサンフランシスコ会議会議録中にも何らの定義が下されなかった、こう言っておるのですよ。それから御承知のようにあのダレス国務長官の答弁は、千島列島に歯舞、色丹は含まれないと言っておる。この点は明らかなんです。そういう意味であなたたちの言う国後、択捉の問題は、平和条約のときにおけるダレス全権のお答えにはないのです。歯舞、色丹だけです。それからあわせて今お話の松本・グロムイコ全権の会談以降における日本側アメリカに対する文書回答もこうなっておる。それがこの間ここでお話の一九五六年九月七日のアメリカ国務省のこれに対する回答がある。これも歴史的に一九五六年になって検討したところが、歴史的には国後、択捉は入るものだという判断に立ったということだ。サンフランシスコ会議においては、吉田全権はあなたたちが期待するようなことを何ら言ってないのです。だからそういう意味で私たち社会党は、この問題についてはすでに声明を出して、新聞に出、あなたの方もこれに対して声明を出して新聞に出ておるように、社会党としては、あなたが先ほど御答弁になっておるように、われわれは千島列島全体を本来の領土である、こういう立場に立っておる。しかし今安全操業その他の問題、さらに日ソ間における友好関係をより一そう増進するためには、この際やはり私どもとしては歯舞、色丹、これについてもほんとうは河野さんにお答えをいただきたかったが、時間が過ぎましたから言いませんが、この問題は、これは日本政府の重大な失態なんです。平和条約締結と同時に、あるいは平和条約発効の日に歯舞、色丹は日本返還さるべきである、こういうように書くものを、平和条約締結の後にという、時間的に何ぼでも余裕が置かれるような、こういう点について外務省は条約問題については非常に不勉強だし、将来に問題を残しておる。千島樺太交換条約を見てごらんなさい。クリル諸島についてはウルップ諸島何々と十八の島を全部書いてあるじゃないか。なぜそういうふうにしないで、極東の範囲だとかなんとかわけのわからぬことを書いて問題にするのです。私はこの歯舞、色丹の返還についても、こういう意味で外交上の大失態だと思う。しかしわれわれはこの際、歯舞、色丹の返還による日ソ平和条約締結――しかしこの問題は極東におけるいわゆる緊張緩和、完全軍縮、こういう問題との関係で、沖繩、小笠原の返還と見合って、この日ソの平和条約においては、われわれは歯舞、色丹の返還、同時にその間においては、極東の緊張緩和、沖繩、小笠原の返還、そういう国際的な情勢の変化に基づいてこの千島列島については協議をするという、こういう立場をその条約の中に明らかにきめて、日ソの平和条約について締結をすることが、日本の平和、極東の緊張緩和になるというのが私たちの立場です。  実は委員長が結論を言いなさいと言うから、これで結論を申し上げたわけです。ほんとうは歴史的なこれらの問題についても、もっとやりたいと思うのですが、時間もだいぶ過ぎましたから、以上で私は社会党の立場を明らかにしておきたいと思うのです。
  148. 河野一郎

    河野国務大臣 私はこの際明確にいたしておきたい点があります。  歯舞、色丹の返還を平和条約締結の後にとしてある、それが非常に失態であるというようなことでございますが、今から御主張になって失態であるとかないとかいうことになるかもしれませんけれども、私はソ連当局も決してそういう用語は使わないということを確信を持っております。その当時フルシチョフ氏と私とかわしました話の内容によりまして、これは平和条約締結の際に当然返還されるというものであるという点が一点。今横路さんの御主張になりました点は、当時フルシチョフ氏から私に、こういうふうにあるべきじゃなかろうかといって、そういう意味のことを私はたびたびフルシチョフ氏から聞きました。しかし、われわれといたしましては歯舞、色丹、国後、択捉、これをどうしてもきめなければいかぬという立場をとりましたために、結論に達することができなかったということをここに明確にいたしておきます。
  149. 山村新治郎

    山村委員長 外務大臣から発言を求められておりますので、討論にならぬように、一言許したいと思います。外務大臣小坂善太郎君。
  150. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 意見は抜きまして、一言だけ申し上げますが、通常領土の移転にあたりましては、三ヵ月ないし六ヵ月ぐらいの経過期間を置く必要がございまして、その間に軍隊の接収、国有財産の処分等を行なう例がございます。その意味で、平和条約が締結された後ということは、現実に国際慣習上さようなことになっておるということでございます。
  151. 山村新治郎

    山村委員長 それでは横路委員並びに皆さんに申し上げます。  先ほどの国保の問題につきまして、その後別室におきまして、予算の与野党の理事諸君並びに社労の委員長並びに社労の理事諸君及び両党国会対策委員長並びに私が集まりまして協議をいたしました結果、先ほどの政府答弁を聞きましても、本問題解決についての積極的意向が認められましたので、同問題については、社会労働委員会を中心にして結論を出すことに意見の一致を見ました。何分御了解をいただきます。内閣総理大臣
  152. 池田勇人

    ○池田国務大臣 ただいまの委員長の御報告を了解いたします。
  153. 山村新治郎

    山村委員長 以上をもちまして昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)に対する質疑は終局いたしました。  午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時七分休憩      ――――◇―――――    午後二時十九分開議
  154. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。  昭和三十六年度一般会計予算補正第(1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)に対しましては、横路節雄君外十五名より、また井堀繁雄君外一名より、それぞれ編成替えを求める動議が提出されております。  この際、順次その趣旨説明を求めます。小松幹君。     ―――――――――――――   昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替えを求めるの動議  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)については、政府は撤回し、左記要綱によりすみやかに組替えをなし、再提出することを要求する。  右の動議を提出する。   昭和三十六年十月十一日    提出者     横路 節雄  井手 以誠     川俣 清音  淡谷 悠藏     岡  良一  木原津與志     小松  幹  河野  密     田中織之進  高田 富之     楯 兼次郎  堂森 芳夫     永井勝次郎  野原  覺     長谷川 保  松井 政吉      記   今回政府の提出した補正予算は、災害対策、公務員給与改善、食管会計繰入れ、地方交付税等を主体としたもので、経済政策失敗による国民生活のぎせいの救済については、ほとんど予算措置がとられていない。   よつてわが党は、政府昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を次のとおりすみやかに組替えることを要求し、その大資本本位の政策を転換することを求める。     組替え要綱  (一) 歳入及び歳出   一 歳入    (1) 大法人向け租税特別措置は、大資本の過大設備投資を促進している要因であると同時に、著しく租税公平の原則に反するので、次のものについては廃止または縮減する。       合理化機械等及び重要機械等の特別償却、貸倒準備金、価格変動準備金、重要機械類の輸入関税の免税重要外国技術使用料課税の特例、重要物産所得の免税、交際費課税の特例等。     右により約二百億円の歳入増加をはかる。    (2) 石炭対策のため、石油輸入関税を引き上げる。     右により約三十三億円の歳入増加をはかる。    (3) その他諸税の自然増により約二百十八億円の歳入増加をはかる。   二 歳出    (1) 災害対策費については、干害対策費を追加するとともに、第二室戸台風被害対策のもっとも緊急なる予算を計上する。またとくに、個人被害の救済対策を強化するため、り災者援護法(仮称)等を制定し、そのための必要予算を計上する。     右により約百億円を増額支出する。    (2) 物価騰貴による低所得者階層の生活水準低下を防止し、かつこれを積極的に引き上げるため、生活保護基準および失対労務者賃金をそれぞれ一〇パーセント引き上げる。     右により約十五億円を増額支出する。    (3) 医療費値上がりによる社会保険の被保険者・患者等の負担増を軽減する。すなわち国民健康保険については、さきの第三十八回国会での池田総理の内諾に基づき、国庫補助率を五分引き上げる(三十五億円)。さらに今回の改訂(四・八パーセント引上げ)による社会保険の医療費増(六十五億円)を国が負担するものとする。また、小児麻ひ絶滅のため生ワクチン無償投与を引き続き行なうため十億円を支出する。     右により約百十億円を計上する。    (4) 当面、炭鉱労務者の雇用安定のため、職業訓練の拡充強化、職業訓練手当の引上げと失業保険との併給、訓練者の別居手当、再就職者の住宅確保、前職賃金との差額補償、産炭地振興等の対策を行なう。     右により約百二十二億円を増額支出する。    (5)歳入の組替えによる三税収入の増加に伴い、地方交付税交付金を増額する。     右により約百四億円を増額支出する。    (6)公務員給与改善費については、公務員関係労働組合が要求しているように給与の不合理の根本的是正をはかり、交渉の最終的結果について所要予算を計上する。  (二) 財政投融資   (1)大資本の過剰設備投資を抑制するため、開発銀行等の大企業向け融資を約百億円削減する。   (2) 中小企業への金融引締めのしわよせを防止し、かつ中小企業の設備近代化を促進するため、中小企業向け投融資をさらに五百億円増額し合計八百五十億円とする。   (3) 災害対策の促進のため、地方債の起債わくをさらに百億円拡大し、合計二百十一億円とする。   昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)の編成替えを求めるの動議  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)については、政府は撤回し、左記要綱によりすみやかに組替えをなし、再提出することを要求する。  右の動議を提出する。   昭和三十六年十月十一日    提出者     井堀 繁雄  佐々木良作      記  一 政府は今回の予算補正に当たっては、    第一に、単に当初予算編成後に必要となった災害対策費等の増額のみを行ならだけではなく、政府の所得倍増政策のあやまりによつて国民経済に与えている被害についても対策を講じ予算補正を行なうべきが当然であるにもかかわらず、これらの措置を軽視している。    第二に、政府が補正財源に充てている租税自然増見込額は、おおむね政府の当初予算編成に際しての歳入見積りのあやまりによって生じたものであって、本来は当初予算の財源として計上さるべき部分が大半を占めている。よって今回の予算補正は、災害対策費等の当然補正のほかに、租税自然増部分の納税者への直接還元、当初予算の補強是正のための補正措置も講ずべきである。    右の見地にたって、政府案に編成されていない新たな補正項目として、物価値上げに伴う日雇登録労務者給与の引上げ、医療費値上げに伴う国民の医療費増額を抑制するために医療保険に対する国庫負担の引上げ、物価高のため事業実施難に陥っている地方財政に対して公共事業関係の補助率の引上げ、農業基本法施行に伴う農業近代化資金の原資増額、所得税の年度内減税、歳出予算全般を通じての不急支出の繰延べ減額、以上の六項目の予算補正を要求する。    また政府案に編成されている項目のうち、災害復旧対策費の増額と、公務員給与引上げを人事院勧告どおり本年五月より実施するための経費計上を要求する。  二 歳入補正の組替え    本年度租税収入の自然増は明らかに三千億円をこえ、かつ明年度租税収入は本年度当初予算に比べて三千億円以上の増収になることは明らかなので、明年一月より所得税は、基礎控除、配偶者控除をそれぞれ一万円引上げ、家族五人世帯の給与所得者は、年収約四十二万円まで免税とする。  三 歳出補正の組替え   1 災害対策費     六月ないし九月の災害地域のうち、被害激じん指定地域の範囲を拡大し、災害による死亡者に弔慰金をおくる。(政府案より五十億円増)   2 給与改善費     本年五月分給与にさかのぼつて人事院勧告どおりに給与を引き上げる。(政府案より百五十四億円増)   3 登録日雇労務者給与費     消費者物価上昇にかんがみて現行の賃金日額三百八十六円を、十月一日より四百十四円に  引き上げる。(九億円増)   4 医療保険の国庫負担費     医療保険の医療内容の充実と診療費引上げとが国民の医療費負担を増額している現状にかんがみて、本年十月より、健康保険と船員保険の国庫負担率を二割に、国民健康保険は同じく四割に、日雇労働者健康保険は同じく五割に引き上げるよう、それぞれの経費を増額する。(三百二十七億円増)   5 公共事業関係費のうち、治山治水、道路整備、港湾漁港空港整備、林道都市等整備、農業基盤整備、災害復旧、鉱害復旧の各事業費については、地方財政に対する国庫補助率を各項目ごとに、平均五パーセント引き上げる。(百七十三億円増)    なお、この措置に基づき公共事業関係の民間賃金も引き上げるよう行政指導する。   6 農業近代化資金融通促進費     当初予算で計上された農業近代化助成資金繰入れ等の諸経費合計約三十五億円は少額にすぎるので、新たに六十五億円を増額する。(六十五億円増)   7 不急歳出の支出繰延べ     毎年度決算によると歳出予算の平均九パーセント程度が未支出になっている事実にかんがみ、各官庁は、不急歳出について再検討し総平均三パーセントに相当する金額の支出繰延べを行なう。(五百八十五億円減)  四 組替えによる補正規模の変更   1 歳出補正の増額組替え合計額は七百七十八億円   2 歳出補正の減額組替え額は五百八十五億円   3 歳出補正組替えによる政府案に対する差引増額は百九十三億円   4 歳出補正における組替え差引増額百九十三億円計上に伴う地方交付税交付金及び臨時地方特別交付金の組替え増額分は八十七億円   5 政府案に対して組替えし歳出入補正規模は千二百七十七億一千四百万円となり、政府案より二百八十億円の増額となる。  五 財政投融資関係    中小企業関係の財政投融資は、最近の金融ひっぱくを緩和し、かつ年末金融の円滑化をはかるため、国民金融公庫百九十五億円(政府案より百億円増)、中小企業金融公庫百九十億円(政府案より百億円増)、商工組合中央金庫三百十五億円(政府案より百五十億円増)、合計七百億円(政府案より三百五十億円増)を追加融資する。    融資原資は、資金運用部資金収入の自然増のうちより五百五十億円、簡保資金収入の自然増のらちより百五十億円をあてる。     ―――――――――――――   〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  155. 小松幹

    ○小松委員 私は日本社会党を代表して、ただいま議題となりました昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)並びに同年特別会計予算補正(特第2号)について、編成替えを求めるの動議を提出いたします。  次に、動議とその内容の大略を申し上げて提案いたします。     動 議   昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)については、政府は撤回し、左記要綱によりすみやかに組替えをなし、再提出することを要求する。   右の動議を提出する。  今回政府の提出した補正予算は、災害対策、公務員給与改善、食管会計繰り入れ、地方交付税等を主体としたもので、経済政策失敗による国民生活の犠牲の救済については、ほとんど予算措置がとられていない。よってわが党は、政府昭和三十六年度一般会計予算補正及び昭和三十六年度特別会計予算補正を、次の通りすみやかに組みかえることを要求し、その大資本本位の政策を転換することを求める。  次に、組みかえ要綱を申し上げます。  まず、歳入の部に至りましては、大法人向け租税特別措置は、大資本の過大設備投資を促進している要因であると同時に、著しく租税公平の原則に反するので、次のものについては廃止または縮減する。合理化機械等及び重要機械等の特別償却は、これは特別法をもって選別、その大部分を停止する。貸し倒れ準備金、価格変動準備金については、積立率を現行の二分の一にする。重要機械類の輸入関税の免税、重要外国技術使用料課税の特例は、新規契約の分については今後廃止する。重要物産所得の免税、これも新規契約については廃止する。交際費課税に関しては、否認の部分を強化し、増徴する。右により約二百億の歳入増加をはかる。  次に、石炭対策のために石油輸入関税率を現在の暫定定率六%より一〇%に引き上げる。右によりて約三十三億円の歳入増加をはかる。  その他諸税の自然増によって、約二百十八億の歳入増加をはかる。  以上が歳入でありますが、社会党が最も力を入れているのは、歳出をしっかりやろうと考えて、ここに提案しておるものであります。  一つは、災害対策費については干害対策費を追加するとともに、第二室戸台風被害の対策の最も緊急な予算を計上する。また特に個人被害の救済対策を強化するため、罹災者救護法(仮称)を制定し、そのための必要予算を計上する。右により約百億円を増額支出する。  物価騰貴による低所得者階層の生活水準低下を防止し、かつこれを積極的に引き上げるために、生活保護基準及び失対労務者賃金をそれぞれ一〇%引き上げる。右により約十五億円を増額支出する。  次に、医療費値上がりによる社会保険の被保険者、患者等の負担増を軽減する。すなわち、国民健康保険については、さきの第三十八国会での池田総理の内諾に基づき、国庫補助率を五分引き上げる。これは三十五億円、さらに今回の改訂による四・八%の引き上げによって、社会保険の医療費増額六十五億円を国が負担するものとする。また小児麻痺絶滅のために生ワクチン無償投与を引き続き行ならために、十億円を支出する。右により約百十億円を計上する。  次に、当面炭鉱労務者の雇用安定のために、職業訓練の拡充強化、職業訓練手当の引き上げと失業保険との併給、訓練者の別居手当、再就職者の住宅の確保、前職賃金との差額補償、産炭地振興などの対策を行なう。右により約百二十二億の増額支出する。  次に、歳入の組みかえによって三税の収入の増加に伴い、自然的に地方交付税交付金を増額する。右によりて約百四億円を増額支出する。  次に、国家公務員給与改善費につきましては、公務員関係労働組合が要求しておるように、給与の不合理の根本是正をはかり、その政府との団体交渉による最終結果について所要予算を計上する。  以上が歳出の組みかえの要点でございますが、なおまた財政投融資につきましては、大資本の過剰設備投資を抑制するために、開発銀行等の大企業向け融資を約百億円削減する。  次に、中小企業への金融引き締めのしわ寄せを防止し、かつ中小企業の設備近代化を促進するために、中小企業向け投融資をさらに五百億円増加して、政府が補正したものと合わせて合計八百五十億円とする。  災害対策の促進のために地方債の起債ワクをさらに百億円拡大し、合計して二百十一億円の起債額とする。融資の原資につきましては、資金運用部資金、簡易保険資金等の自然増から充てるわけであります。  以上が大体組みかえ要綱の全部でありますが、その補正数字は大体十月以降六ヵ月を見込んだものであります。  以上で大体提案の趣旨は申し上げましたが、この際、簡単でありますが、わが党の提案の理由を三、四点にわたって申し上げたいと思うわけであります。  ここに提案の趣旨として申し上げたように、今次補正予算の編成にあたりまして、何よりも私どもが考えていることは、池田内閣の経済政策の誤りとその失敗によって起こったところの欠陥を補正するという意味で、緊急助成の措置として必要最小限の予算の組みかえをはかったわけでございます。  まず第一に災害対策でございますが、災害は、一面天災でありますとともに、防災対策の不備によって起こる連年災害の繰り返し、すなわち人災でもあるのでありまして、それによって起こるところの国土の災害、犠牲を受ける被害者の救済は、すみやかに国費をもって復旧または援助をすべきであると考えるのであります。  治山治水の災害対策あるいは高潮対策とともに、被害者である個々の罹災者の援護にまですみやかに万全の措置を講じ、災害をして人災の嘆きから救いたいという所存であるのであります。  次に石炭対策でありますが、わが国の国有エネルギー資源である石炭の確保の上から、石炭対策は、産業の開発とともに、重要な国策の一つであったはずであります。しかるに、今日まで政府に石炭産業の根本的な対策がなく、いたずらに資本の群雄割拠と乱掘にまかせ、しこうして、その結果として、輸入石油の市場拡大に抗し得ず、ついに石炭産業の行き詰まりを来たしたのであります。これ全く永年にわたって保守政権が取りに来たった石炭政策の失敗によるものが多大であると思うのであります。政府はこのたびこの隘路打開のために、にわかに合理化対策を取り上げ、一方的に石炭労働者に一切の犠牲をしい、これによって石炭資本を守ろうとする政策に出ていることは、はなはだ遺憾とするところであります。わが社会党は、この合理化対策の推進を労働者の一方的犠牲にすることに反対いたします。同時に、当面石炭労働者の雇用の安定をはかるために、予算上緊急措置をとらんとする所存で、この予算を計上したものでございます。  次に中小企業援助対策でありますが、政府経済政策は、設備投資の拡大を主軸とする巨大資本投下の成長政策であります。そのために、国際収支の均衡は破れ、金融の大企業集中、中小企業の金詰まり、圧迫が、最近強度に積み重ねられてきたのであります。このまま推移すれば、中小企業はその立ち行きさえも困難になり、企業の縮小、倒産と、その転落を招来することは必至な情勢でございます。池田内閣の経済政策の失敗は、かくて必然的に犠牲を中小企業にしわ寄せしてきたことは、疑う余地もございません。今回行なわれる補正予算案に、中小企業向け金融三百五十億の財政融資が見込まれてはいますが、この程度のことで、今日の金詰まりの解消もできないのであります。その救済もできないことは明白であります。わが党といたしましてはこの点を深く憂慮し、中小企業向け金融を倍加して八百数十億の計上を見たのでございます。  次に、物価値上がりによる措置でございますが、政府は物価横ばい、経済の均衡成長を主眼として、卸売物価並びに消費者物価の上昇を当初において極小に押えることであったのであります。しかるに昨今の経済状態は、国内市場では卸売物価は四%以上、消費者物価は七%以上の値上がりを来たしているのでありまして、これが国民家計を圧迫し、国民生活を困惑せしめていることも事実であります。このことは低所得者層の所得格差の拡大、所得の低下と相待って、失業者、低賃金労働者の生活の実質的切り下げ、貧困化に拍車をかけているようなものでございます。これが救済は物価政策の以前に、われわれとしては緊急に財政的に予算的な措置を講ずる必要がある、かように考えてこの予算を計上した次第でございします。  次に、租税特別優遇措置の停止でございますが、政府はこれまで企業合理化の促進、あるいは貿易自由化対策の対策として大資本企業を擁護するため法人税の特別優遇減税措置を実行して参りました。これがために資本は設備の増設あるいは新設の大部分が償却減税の恩典に浴し、それであるがゆえに自転車操業的な設備投資の拡大となり、過大投資、過大成長を招来したのであります。わが党はこの点を考慮し、当面不必要な大資本、大法人向けの租税の特別優遇措置を廃し、ないしは縮小し、税の不均衡を是正するとともに、大資本に片寄った経済のびっこの成長を、健全なる均衡成長に変えていきたい所存であります。  最後に、なお今回政府が提出した補正予算案に対してでございますが、生活保護費の引き上げにしても、あるいは公務員給与ベースの改定にしましても、その基準とする点がきわめてあいまいであります。計上された予算もまことに中途半端なものに終わっております。まことに申しわけ的な予算計上に終始している感がございます。また失業者対策費の当然の引き上げ、いわゆる失対費の引き上げ、これが見送られ、あるいは先ほどの予算委員会でも問題になりましたように、池田総理みずからが約束したところの医療費の値上げ等につきましても、国民健康保険会計の国庫補助の予算が出ていないということは、国家均衡行政の上からこれは手落ちであり、あやまちであったと思われるわけでございます。  以上、数点にわたって私ども社会党の考えるところにより、この予算組替えの動議を提出した理由でございます。何とぞ各位におかれましては、このわが党の趣旨に賛同、この動議に御賛成あらんことをお願いして趣旨説明を終ります。(拍手)
  156. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 井堀繁雄君。
  157. 井堀繁雄

    ○井堀委員 私は民主社会党を代表して、政府提出の本年度予算補正二案に対して撤回を求め、その組み替えを要求するの動議を提出いたすものであります。わが党の本動議に対する趣旨説明をごく簡単に申し上げたいと思います。要約して次の三点をまず取り上げたいと思うのであります。  第一の理由は、今回の予算補正は、当初予算編成に生じた緊急を要する所要経費を追加したものであって、政府はこのように説明をいたしておるのでありますが、実際には災害対策、公務員給与、食管会計の赤字補てん、地方交付税などを主体としたものでありまして、肝心かなめの政府の所得倍増計画のあやまちによって生じた国民経済に与えた甚大な被害について、この際対策が行なわれていないのみならず、予算補正を行なうべきであったと思うのでありまするが、その責任を回避しておる点であります。  第二の理由といたしまするのは、政府が今回補正の財源に充てておりまする租税の自然増収の見込み額でありますが、これは当初予算編成に際して政府が歳入見積もりを誤ったことによって生じたのであります。本来当初予算にこれらの財源は計上しておるべきであると思うのであります。でありますから、これらの点につきましては、今回の補正予算にあたって租税の自然増収の部分は、国民に直接還元できるような方法をとるべきではなかったかと思うものであります。この点が全く軽視されておるのであります。  第三の理由といたしましては、政府は現在、みずからその失政をぬぐうために金融の引き締めを強化しておりますが、この間に当然の措置とは申しながら、補正予算の編成は財政の散超要因を作り上げておるのであります。これは金融と財政の一体化の見地からいたしますれば、財政自身における自粛措置を欠いたものと申さなければならないのであります。しかも最近の歳出予算全般を通じてみますると、不要不急の支出の繰り延べ、減額、すなわち毎年度の多額の使い残しを初めといたしまして、不要経費の節約を行ならなど、現在の政府の財政努力の重要な目標として要請されておるにもかかわらず、これらを全く怠っておるのであります。  以上の見地からいたしまして、われわれは次の項目をあげて組みかえを要求するものであります。  すなわち、一は、物価値上げに伴う日雇い登録労働者の給与の引き上げ、二は、医療費の値上げとともに国民の医療費負担を軽くするための医療保険に対する国庫負担の引き上げ、三は、物価高のために事業実施の困難に陥っております地方財政に対する公共事業補助率の引き上げであります。四は、農業基本法施行に伴う農業近代化資金の原資増額、五は、所得税の年度内における減税、六は、歳出予算全般を通じて不急支出の繰り延べ、減額など、以上六項目のこの際予算補正を要求いたすものであります。また政府案にありまする災害復旧対策費の増額、公務員の給与引き上げを人事院勧告通り本年の五月から実施するための経費を計上するなどを要求いたしておるのであります。  次に、ごく簡単に各項目にわたって説明を申し上げたいと思います。  災害対策費につきましては、政府案が合計百四十九億円余計上いたして、特に九月の第二室戸台風災害に対しまして、かつての狩野川台風、伊勢湾台風並みの特別措置を講じておりまする点については、賛意を表するにやぶさかではありません。しかしながら災害防止施設が十分でありませんために、甚大なる被害が各地に起こっております。ことに本年の災害の特徴とも申すべきものは、山間部の農村などに限られておりまする小地域で、自力によって再起不能に陥っておりまする激甚被害地が漏れておるのであります。当然これを指定し、また政府は今回の災害対策にあたりまして、災害対策基本法案を提出いたしておるのでありますが、この法案においても、災害施設の不備のために受けまする人命並びに個人財産の喪失に対する補償を援護の基本規定を、何ら含んでおらないのであります。いわんや今回の政府の災害対策費は、その点を全く無視しておるのであります。これらの点よりいたしまして、災害対策費は政府案より五十億円増額を要求いたす次第であります。  次に、給与対策費についてでありますが、政府案は人事院の勧告を十月一日より実施としておるのでありますが、本年度のように、財政上の余裕が十分にあり、かつ五月以降の消費者物価の値上がりを考慮に入れますならば、給与引き上げは当然人事院勧告の通り、五月にさかのぼって実施いたすべきであると信じます。この点政府に不満を持ちますと同時に、わが党は百五十四億円の増額を要求いたすのであります。  次に、日雇い登録労働者の給与単価の引き上げと公共事業補助率の引き上げについてであります。政府案は、歳出補正として生活保護費、児童保護費の単価の引き上げ、あるいは建築単価の改正のための経費を計上いたしておるのでありますが、これらの歳出項目は政府の政策の失敗によります消費者物価の値上がりのある意味におけるしりぬぐいの経費とも申すべきであります。生活保護基準と深い関係のありまする日雇い登録労働者の給与単価の引き上げは、これらの点からいたしまして、当然この際取り上くべきものであったのにかかわらず、これが無視されております。また物価の値上げの影響によりまして、行き悩みになっております公共事業費の全体について、予算単価をなぜ補正しないか。公営住宅の建築単価の引き上げだけ緊急補正して、災害のため治山治水や港湾整備など、緊急補正を要すべきものがあったにもかかわらず、これがなされておりません。前にも申し述べましたが、今回の補正予算の大切な任務は、第一には災害対策費等の当然補正、第二は予算項目全体にわたって物価高の影響を検討いたすべきであったと思います。この見地に立ちまして、最小限度の補正を要する項目といたしまして、私どもはさきに述べた日雇い登録労働者の給与を十月一日から四百十四円に引き上げ、その経費として約九億円、公共事業については、地方財政に対する国庫補助率の平均五%引き上げ、経費といたしまして、百七十三億円の増額を要求いたすのであります。  次に農業基本法施行に伴う農業近代化資金の原資増額についてであります。政府が本年度より実施しようとする農業近代化助成資金の原資はわずかに三十億円であります。農業信用保証協会への出資補助金はわずかに三億円、利子補給補助金はわずかに一億七千万円であります。わが党は農業資金をフルに活用して、農業における生産と流通の両面の近代化を促進いたしますために、余裕財源の中から新たに六十五億円をこれに充当いたすことを要求するものであります。  食管会計への三百億円繰り入れにつきましては、政府案に賛成いたすものであります。  次に、所得税の年度内減税についてでありますが、政府案は歳出補正九百九十七億余円をすべて本年度の租税収入の自然増によっておるのでありますが、本年度の税の自然増収は、おそらく三千億円程度が見込まれるものと思うのであります。これらの自然増による余裕財源は、当然に国民に直接還元できるような施策に充当すべきであると思うのであります。この自然増収分を直接国民に還元する方式として、所得税の年度内減税を行なうべきであると考えます。今日の税制改正のうちでも、特に所得税の減税は必須の項目になっておるのであります。わが党はこの見地から、明年一月より所得税は基礎控除と配偶者の控除と両方をそれぞれ一万円引き上げて、五人世帯はおおむね年収四十二万円までを免税とするように要求いたします。これによって明年一月以降所得税の収入は、約五十億円ほど減収するものと見込まれます。これは優に本年度の自然増の伸びによってまかなうことが可能であると考えます。  次に、医療費の値上げについてでありますが、国民の医療費負担を軽くいたしますためには、医療保険に対する国庫の負担率を引き上げる以外にはないと思うのであります。税の自然増収分は、さきにも申し上げましたように、国民に還元する施策の一つとして、特に国民皆保険が叫ばれております今日、医療保険についての国民負担が医療費引き上げによって加重きるべきがごときは、まさに時代逆行と申さなければならないのであります。この見地からいたしまして、十月の一日から健康保険と船員保険につきましては国庫負担率を二割に引き上げる。国民健康保険につきましては四割に引き上げ、日雇健康保険につきましては五割に引き上げるよう、それぞれ経費を増額いたします。このために要する経費は三百二十七億円を計上いたすのであります。   〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  次に、歳出予算全般を通じて、不急支出繰り延べ減額についてであります。最近毎年度の一般会計決算報告を見ますると、予算に対する毎年度の使用済み額は、昭和三十三年度は九二・五%、三十四年度は九一・九%、三十五年度は九一・八%でありまして、平均して九二%程度になっておるのであります。従って毎年度に多額の使い残しを生じておりまする、特に防衛庁の費用のごときは不要不急の経費がたくさんあるのであります。こういうものの節約を行なうべきことは、今日の時点における政府当局にとりましては、財政努力の重大な目標としなければいかぬと思うのであります。わが党はこの意味におきまして、年度半ばをすでに過ぎておるのでありますが、現在では行政当局に当初予算の平均三%、すなわち約五百八十五億円の経費節約を要求するものであります。  以上わが党の組みかえの要求によりまする歳出補正は、政府案に対しまして差引百九十三億円の増額となるのであります。これをまかなうべき所得税と法人税の自然増の繰り入れば、政府案より二百七十億円の増額となっておるのであります。そのうち二八・五%分に相当する八十七億円は地方交付税交付金の増額に充当し、残りの百九十三億円をもって歳出補正の増額組みかえ財源に充当いたします。以上のごとくわが党は政府案に比べまして、補正規模におきまして二百七十億円の増額を要求するものであります。  なお政府は中小企業に対する財政投融資の融資について、三百五十億円の増額を見込んでおり、このほかに買いオペによる短期資金の供給も講ずることにしておりますが、現在始まっておりまする金融引き締めは明年一ぱい継続されるのでありますが、これは総理の言明にもありましたように、政府みずからが国際収支の均衡回復を明年末と見込んでいるのでありますが、これを換言して申しますならば、明年末まで設備投資と輸入金融をゆるめることはできないと政府が言明したことになるのであります。この政府の方針をもっていたしまするならば、今後予想されまする中小企業に対する金融引き締めは、二十九年の不況、三十二年、三十三年の不況当時にもまして、激烈になることは明白となったのであります。私どもはこの見通しに立ちまして、資金運用部資金、簡易保険資金などの財政融資の原資に余裕のある限り、できるだけ中小企業関係への財政融資を増額すべきことを要求するものであります。すなわち、具体的に申しますならば、資金運用部資金より五百五十億円、簡易保険資金より百五十億円、合計七百億円の自然増を繰り出して、これを国民金融公庫に百九十五億円、中小企業金融公庫に百九十億円、商工中金に二百三十五億円の追加融資を行なうよう要求するものであります。  以上、わが党の組替え動議の内容を説明いたしましたが、政府案は、当然補正の面でもきわめて不十分であり、かつ、みずからの失政のしりぬぐい補正の面はきわめて不誠意であります。みずからの歳入の見通しの誤りにより三千億に近い税の自然増を生じながら、これを国民に還元する施策を講じていないことが、政府案に断固反対する理由であります。  なお、社会党案につきましては、歳入歳出両面における組みかえ要求の内容は、いずれも私どもの賛意を表するところでありますが、要求範囲があまりにも広範囲に過ぎまするので、今回の政府案の欠点是正としまして不十分でありまして、わが党の案を出しまして、政府の案を撤回され、わが党の組替え動議を採択されまするよう要望いたしまして、私の討論を終わりたいと思います。(拍手)     ―――――――――――――
  158. 山村新治郎

    山村委員長 これにて編成替えを求めるの動議の趣旨説明は終わりました。
  159. 山村新治郎

    山村委員長 これより横路節雄君外十五名提出の編成替えを求めるの動議、井堀繁雄君外一名提出の編成替えを求めるの動議並びに政府原案を一括して討論に付します。八田貞義君。
  160. 八田貞義

    ○八田委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました政府提出の昭和三十六年度予算補正両案に賛成し、社会党及び民社党からそれぞれ提出されました予算組替えの動議に反対の意見を申し述べたいと存じます。  御承知の通り、最近におけるわが国の経済は、高度の成長を示し、国民所得並びに国民の生活水準は向上し、雇用の状態、産業の近代化、合理化等いずれも著しく改善を見るに至っているのでございますが、他面におきまして、物価の高騰あるいは輸出の伸び悩み、輸入の激増等を来たし、ために、国際収支の状況は悪化していることも、また見のがせないところでございます。このような状態を放置いたしますれば、明年度における国際収支はさらに赤字を増大し、わが国の外貨事情は憂らべき事態に瀕するものと思われるのでございます。  政府は、このような事態に対処して、すでに去る六月には一連の輸出振興対策を決定、実施に移し、七月には公定歩合の一厘引き上げ、設備投資の一割削減、さらに九月に入って、外為銀行の海外現地貸し出しの規制、輸入担保率の引き上げ等を断行して、事態の改善に真摯に対処し、さらにまた、去る九月二十六日に至りまして、内需の抑制とざらに一そうの輸出振興対策並びにこれに伴う中小企業への配慮を中心といたしまして、国際収支改善対策を決定し、二十八日には再度日銀公定歩合の引き上げを断行し、あわせて預金準備率の引き上げ、高率適用の強化等の措置を決定、実施に移し、一応当面考えられる方策はほとんどこれを網羅されることに相なったわけでございます。かようにして、わが国の外貨事情は漸次好転の方向をたどり、明年秋ごろからは国際収支のバランスは黒字基調に転ずるものと期待されるのであります。  このような政府の措置に対しまして、野党の諸君は、本会議あるいは本委員会におきまして、政府の三十六年度経済見通しは大きく狂ったと指摘し、成長ムードをあおった責任を追及するなど、すべてこれを所得倍増計画の本質的な誤りによる失敗であると強調されたのでありまするが、われわれは、予想以上の民間設備投資の行き過ぎによって国際収支が悪化し、景気調整を必要とする状態になったことはこれを認めるにやぶさかではございませんが、野党の諸君が指摘される政府の所得倍増計画及び経済の高度成長という考え方、それ自体には誤りはないと思うのであります。要は、旺盛なる内需、貿易の自由化に備えての民間の設備投資が、政府の計画以上に行き過ぎたというところに問題があるのであって、わが国の経済をできるだけすみやかに増大し、国際競争力をつちかい、国民生活の安定向上をはかるための方法あるいは目的としての所得倍増計画は、少しも変更する必要はなく、また間違っているものではないと思うのでありまして、野党の諸君の攻撃は当たらないと存じます。なぜならば、昨年九月、政府並びにわが党の所得倍増計画に基づいて、三十六年度から向こう三ヵ年間平均九%という経済成長政策を打ち出した当時、社会党や民社党におきましても、これに追随するかのごとく、ほぼ政府案と大差のない成長率を天下に発表するとともに、三十六年度予算の組みかえ要求もこれに基づいて提出し、大いに成長ムードに乗りおくれまいとしたのではなかったか。当時、社会党は、三十六年度八%、三十七、八年度はそれぞれ一〇%、民社党は、三十六年度から向こう三カ年間平均八・八%の成長率を打ち出したのでありまして、ここに至って、ひとり政府の責任のみを追及するという態度は、顧みて他を言うのたぐいにひとしいと申さねばなりません。戦後、わが国は幾多の難局に遭遇しながらも、今日まで克服して参ったところのすぐれたる国民性と国民の勤勉努力を考えるとき、私は必ずや近い将来には再び経済のバランスを回復し、さらに目ざましい成長、発展を遂げるものと確信するものであります。  さて、本補正予算は、以上申し述べました経済の情勢を深く考慮して、景気への刺激を避けつつ、真に緊要にしてやむを得ない最小限のもの、すなわち、本年度発生災害に関する対策、人事院勧告による公務員給与の改善、食管会計への繰り入れ、生活保護基準等の引き上げ、公立文教施設の一部及び公営住宅における建築補助単価の改定並びに地方交付税交付金に限定して提出されたものでございまして、予算規模は歳入、歳出ともに九百九十七億円となっております。  まず、災害対策費百四十九億円について申し上げますと、本年は、五月の八戸大火に始まり、六月の集中豪雨による災害、続いて九月の第二室戸台風による災害等数々の災害に見舞われ、その被害は全体として相当大きな額に達し、政府は、すでに関係法令に基づいていち早く予備費をもって応急の対策を講じたのでありまするが、今回さらに被害激甚地に対して、公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法を初め、各種の特例措置を講じて、その万全を期したのであります。また、八月以前発生の災害分で現在までに事業別、所管別割り振り等の確定し得ない経費及び第二室戸台風を含めまして、九月以降の災害対策費としては、予備費百二十億円が追加され、今後の調査によって予備費でまかない切れない事態が生じた場合には、さらに適当な措置が講ぜられるものと思うのでございまして、これによってすみやかな復旧が期待されると思うのでございます。  なお、この際一言つけ加えたいことは、政府ほ今国会において、わが国における災害発生の状況と災害対策の重要性にかんがみ、国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護し、もって社会秩序の維持と公共福祉の確保をはかるため、災害対策基本法を制定し、今後の災害にさらに万全の措置を講じようということでございまして、このような積極的な災害対策が推し進められますことはまことに喜ばしいことであり、私は、ここに国民とともに心からなる賛意を表するものでございます。  次に、公務員の給与改善費百八十四億円でありまするが、これは公務員と民間給与との所得格差を是正するため、人事院勧告をほぼ完全に実施するものでありまして、昨年の補正による公務員給与のベース・アップに引き続く政府の努力と善意に対し敬意を表するととも、この際公務員各位もさらに一そうの勤勉と能率の向上に精励きれることを希望するものであります。  食糧管理特別会計への繰り入れ三百億円は、本年もまた昨年を上回る豊作によりまして、米麦の買い入れ数量が当初を上回ることになったこと、及び生産者からの買い入れ価格の引き上げ等によるもので、今日の食管制度から見まして、当然の措置であると存じます。  また、生活保護基準の引き上げにつきましては、当初予算において一八%の生活扶助基準の引き上げを行なったことは御承知のところでございますが、今回さらに五%の引き上げを行ない、同時に児童保護費につきましても、これに対応して、養護施設の拡充、飲食物費及び日常諸費の単価引き上げ等、六億二千万円が追加されたのでございまして、わが党並びに政府の公約たる社会保障政策は強力に推進されているのでございまして、まことに同慶にたえないところでございます。  その他、公立文教施設費、住宅建築費等の基準単価の改定、地方交付税交付金等、いずれも時宜に適した妥当な措置として賛成するものであります。  最後に、本補正予算と関連して、財政投融資におきまして、日本輸出入銀行に対し輸出振興対策として二百億円を追加し、災害関係として地方債の起債ワクの増加百十一億円、また年末金融対策を中心に、災害対策等を含めて中小企業金融に計五百五十億円の資金手当を講ずるなど、いずれも時節柄まことに当を得たものとして賛意を表する次第でございますが、特に中小企業金融につきましては、最近における経済情勢、来たるべき貿易の自由化対策等を十分に考慮して、さらに格別の資金増加の措置を講ぜられますよう、特段の配慮を政府に強く要望するものでございます。  以上、私は政府原案に対し賛成の意見を申し述べましたが、次に、社会党並びに民社党の組みかえ案に対しまして、簡単に反対の意見を述べてみたいと存じます。  まず、反対の第一点は、両案はいずれも政府の所得倍増計画が誤りであるということを前提としたものでありまして、この点、先ほど私が申し述べましたごとく、われわれとは基本的に見解を異にするものであります。  第二点といたしまして、その内容は、いずれ明年度予算において処理すればよい経費をことさら総花的に羅列し、いたずらに予算規模を増大させております点であります。  第三には、政府の高度成長政策を批判する一方におきまして、このような経済の実態を無視し、景気に刺激を与えるがごとき態度であります。  さらに、もう一点、社会党の組みかえ案の中で見のがすことのできない重大なことは、公務員給与について、団体交渉の最終的結果を待って所要の予算を計上するという点でございます。御承知の通り、公務員には、法的には団体交渉は与えられていないのであります。だからこそ、人事院が公平な立場から勧告を行ない、政府はこれを尊重するという立場をとっているのでございまして、このような社会党の法を無視し、人事院勧告を完全に無視した態度は、まことに重大であります。しかも、法的に許されていない公務員が一体いつだれと交渉するのか。またその結果が出るまで、この補正予算に組まれている公務員に対する給与改善は行なわないというのか。まことに不可解しごくと申すほかありません。  以上申し述べました理由によりまして、私は社会党、民社党両党の組みかえ案に反対するものであります。  以上をもちまして討論を終わります。(拍手)
  161. 山村新治郎

    山村委員長 野原覺君。
  162. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、政府提出の補正予算案並びに民社党の組替え動議に反対、社会党の編成替えを求めるの動議に賛成の討論をいたさんとするものであります。  私は、ただいま自民党の代表の方の本予算案に対する討論を拝聴いたしたのでございますが、いかに与党とはいいながら、政府を弁護することにのみきゃうきゅうたるその論旨には、国民の皆さんとともに大きな失望を感ぜざるを得ないのであります。(拍手)  そこで、私は、少しく時間を要しますけれども、詳細に、端的に、私ども社会党の今次補正予算に対する見解を述べたいと思うのであります。  まず、今回の補正予算の位置づけの問題でありますが、現在のわが国の経済危機は、明らに池田内閣の大資本本位の所得倍増計画によってもたらされたものであります。池田内閣が成立以来とって参りました政策を数えてみますと、成長金利と称して公定歩合を引き下げたのであります。輸入ユーザンスの期限を延長したのであります。公社債投資信託を開始したのであります。自己資本充実のためと称して、従来からの大資本本位の租税特別措置に加えて、新たに企業課税を軽減いたしたのであります。また、実質二兆円に達する公共投資優先の大型予算を組みました。こうした政策が民間の設備投資を刺激するのは当然でありまして、今回の国際収支の危機は、まさにこのために引き起こされたのであります。また、物価の問題につきましても、以上のような設備投資の過熱に加えて、政府みずからが、国鉄、電力、地方公営企業等々の基礎的公共料金を引き上げたことが、一般の卸売物価、消費者物価の上昇を招いたことは明らかであります。この中で、好景気を謳歌する大企業と、成長政策に取り残された農民、中小企業者あるいは高物価に苦しめられる低所得階層の所得格差は拡大の一途をたどってきたのであります。これらのことは、遺憾ながら昨年以来わが党が政府の所得倍増計画を批判してきたことがその通りの事実となって現われてきたものであり、今日の事態を招いた池田総理の責任はまことに重大であるといわなければならぬのであります。まさに今日の日本経済の動き自体が、池田内閣の政策に対する痛烈なる不信任を表明していると私は思うのであります。ところが池田内閣はこの責任をとろうとしていません。池田総理は、所得倍増計画自体は正しいものであるが、そのテンポが少し早過ぎたので、今日の狂いを生じました、テンポが早過ぎたのは民間企業が設備投資を急ぎ過ぎたからであると、その責任を民間に転嫁して平然としていらっしゃるのであります。  現在の国際収支の赤字を解消し、これを何とか明年度末までに収支均衡させるには、今後鉱工業生産を抑制し、経済成長率を大幅に低下させなければなりません。わが党の計算によれば、明年度は経済成長率を二ないし三%にまで低下させなければ、年度末に国際収支均衡に到達することはできないと思うのであります。これは申すまでもなくおそるべきデフレであります。すでに公定歩合引き上げ、輸入担保率引き上げ等の金融引き締めのしわ寄せは中小企業や勤労者へ深刻に及びつつあることは言うまでもありません。大独占資本の勝手きわまる設備投資によって国際収支の危機がもたらされ、そしてこのためにとられるデフレ政策のしわ寄せは、大資本以外のものが負担させられているのであります。本来ならば、このような情勢のもとで編成されたこのたびの補正予算には、現在の経済政策破綻によってしわ寄せを受ける国民各層に対する緊急対策を盛り込むのが、当然の政府の責務でなければならぬのであります。ところが、責任を他に転嫁して恥じないところの池田内閣は、このような緊急対策をほとんど計上しておりません。これがまず第一に政府の補正予算の根本的な性格の問題として、わが党がこれを承認できない理由であります。  第二に補正予算の内容の問題であります。災害対策につきましては、政府の対策はきわめて不十分であります。最近の集中豪雨等の災害で目立っていることは、小河川のはんらんによる被害がきわめて激甚なことであります。また洪水調節や発電等の目的で設けられたダムがかえって災害を激甚ならしめている傾向は重大問題であります。これらの問題は治山治水等の見地から根本的に再検討されるべきであるのに、これが政府案には意欲的施策として何にも現われていないのであります。また伊勢湾台風の際の名古屋、このたびの第二室戸台風の際の大阪の経験は、臨海都市の防災対策が一日も早く講じられなければならないことを示していますが、これも政府案ではそのつど主義の域を出ないものであります。災害復旧の見地から見るとき、局部的に激甚な被害を受けた地域では高率補助の適用を受けることが必要でありますが、被害激甚地指定の基準によってこれがきびしくしぼられるという弊害が是正されておりませんし、小災害復旧事業が相変わらず補助対象からはずされていることも遺憾であります。さらに災害復旧の場合、公共土木施設なり、農林、水産業施設等の復旧もさることながら、被害を受けた国民の生活を緊急に救援し、その生活再建を援助するといろ罹災者援護の措置がきわめて重要であります。この点については、わが党はかねてから声を大にして要求しておるところでございますが、依然として政府の施策に取り上げられていないことは、災害対策の基本が国民生活の防衛であるという趣旨を政府与党が理解していないからではなかろうかと思うのであります。国の防衛と称して役に立たない再軍備には二千億円もの予算を計上し、そのようなことをする政府が国土と国民生活を守る災害対策には予算を出し惜しむという本末転倒の態度を強く糾弾しなければならないと私は考える次第であります。  次に公務員給与改善費の問題であります。このたびの給与改善は人事院勧告に基づいて行なわれるものでありますが、わが党の立場から見れば、この人事院勧告そのものが給与体系そのものを根本的に是正してほしいという公務員関係労働組合の要望を全く無視しております。また平均七・一%という給与引き上げの幅も不十分であります。われわれはこれを認めることは断じてできないのであります。ところが、政府の編成いたしました給与改善費は、たとえば給与引き上げの実施を五月から十月に引き下げる等々、人事院勧告の趣旨からも大きく後退いたしておるのであります。政府与党、あるいはその背後にある財界の中には、公務員給与を引き上げると、それが民間給与の引き上げを招くとか、あるいは物価の上昇をもたらすとか、あるいは消費増大を通じて輸入増加をもたらすとか等々の意見があるのでございますが、これらは申すまでもなく、原因と結果とを逆にした謬見であるといわなければならぬのであります。何となれば、現在の公務員給与は、民間賃金に比べて低いという実態があるからこそ、これを引き上げなければならぬのであります。あるいはまた今までの物価上昇によって、公務員の実質給与が低下しているという実態があるからこそ、これを引き上げなければならぬのであります。しかるに政府は、あまりにも低過ぎる公務員給与の額を是正することなく、国際収支の逆調を理由として、輸入削減のためには国民消費を緊縮しなければならず、そのためには引き上げは好ましくないという議論のもとに公務員給与を決定することは、まさに自分の経済政策の失敗のしりぬぐいをその被害者になすりつけんとするものであって、厚顔無知もまたはなはだしいといわなければならぬのであります。  次に生活保護基準のわずか五%の引き上げについてであります。本年度当初予算に際し、厚生省は保護基準の二六%引き上げを公約いたしましたが、実際の引き上げはわずか一八%にとどまり、今回の五%の引き上げを加えましても二三%にすぎず、当初の厚生省の公約にも及ばないのであります。しかも、この間に、物価の上昇は、政府統計によっても約五%というのでありますから、低額所得者ほど、みそ、しょうゆ、といふなどの日常生活物資の値上がりの影響を深刻に受けておるのであります。池田総理は、長い目で見てもらえば、低額所得者もそのうちに所得が上がるだろうと言っておられますが、生活保護の対象になっているような低額所得者は、きょうあすの生活が問題なのであって、長い目で見ている余裕など全くないのであります。ここにも池田総理の庶民の生活への無理解が現われているのであって、わずか五%の引き上げは、全くスズメの涙にもひとしいといわなければならぬのであります。  なお日雇い労務者の賃金引き上げを見送ったということも、同様の理由からわれわれは断じて承服することができないのであります。このような池田内閣の施策であればこそ、大阪市西成区釜ケ崎事件が勃発いたしたのであります。その再発の要素は依然として社会、に充満するであろうことを、私はここに指摘いたしたいのであります。  また、社会保障関係で見のがすことのできないのは、医療保障であります。最近医師会等の医療費引き上げ要求に基づき、本年度当初予算の編成にあたって一〇%、本年七月に二・五%、そしてこのたびは二・三%引き上げられることになりました。この結果として当然社会保険の被保険者や患者の負担が増大いたします。ところが、政府は国の負担において国民の社会保険負担の増加分を軽減すべきであるのにかかわらず、ほとんどその予算措置を講じておりません。ことに、さきの第三十八国会でわが党委員の要求に対し、池田総理は、国民健康保険の国庫補助率を五分引き上げる、両党の山村、山本両国会対策委員長の約束を黙認されたにもかかわらず、このたびの補正予算においてはそれすら計上されていないのであります。信義を重んずべき政治家として、総理の違約は、国民の名において非難されなければならぬと私どもは考えておるのであります。  次に、現在大きな社会問題となっております炭鉱労務者の対策が全く予算に計上されていないことは、わが党の看過できないところであります。炭鉱労務者諸君は、直接的には貿易自由化を背景とした政府の合理化政策により、また間接的には外国資本に支配された国際石油カルテルの圧力により、一日々々と首を切られて山を去らねばならぬ立場に追い込まれておるのであります。これに対するエネルギー政策転換の根本的対策は、わが党が別に要求することになっているのでありますが、この補正予算においては、当面の施策として、職業訓練の拡充強化、職業訓練手当と失業保険金の増額、再就職者の住宅確保、産炭地振興等の最小限の予算を計上することが必要であったのであります。ところが、政府はこの予算をびた一文も計上しておりません。まさに血も涙もない態度であります。私は二十数万の石炭産業労働者諸君とともに政府の無情を悲しまざるを得ないのであります。  最後に中小企業対策であります。この点においては、政府の補正予算は、財政投融資において中小企業金融の三機関へ三百五十億円の資金手当をしておるにすぎません。しかしこれでは全く問題になりません。当面の国際収支の逆調を立て直すためには、設備投資を削減しなければならないのでありますが、その影響は必ず大企業の下請企業に対する下請代金の支払い遅延とか手形決済期間の延長等の形で中小企業へ転嫁されるのであります。あるいはまた金融機関の中小企業に対する歩積み、両建等の貸付も強まることは必至であります。ざっとした概算で申しましても、約四兆円の設備投資の一割を削減するには四千億の金融引き締めが必要であり、その半分が中小企業へしわ寄せされるとして二千億円の引き締めとなるのであります。これに対しわずか三百五十億円の資金手当では不充分なことは子供にもわかる算術であります。ことに政府アメリカの要求によって貿易自由化の計画を繰り上げようとしている現段階においては、中小企業の体質改善のための設備近代化投資は今こそ必要なのであります。これらのことを考え合わせるとき、今次補正予算に含まれている中小企業への財政資金手当は申しわけの域を出ないものであり、全く誠意を認めることができません。  以上を要約いたしますと、とのたびの政府の補正予算は、第一に、みずからの経済見通し及び経済政策の失敗の責任にほおかぶりし、それをデフレ政策で国民へ犠牲を押しつけて切り抜けようとしている無責任、無節操の予算であります。第二に、しわ寄せられる国民生活の救済援護には一文の予算をも出し渋っているところの冷酷無情の予算であります。よって、わが党は、政府の補正予算案に対しては、断固として反対せざるを得ないのであります。  なお、民社党の組替え動議は論外でございます。  そこで私は、わが党から提出いたしました補正予算案の編成替えを、求めるの動議について、今日の情勢にまことに適合したものであるとして、以下内容の若干を申し上げ、皆様の御賛同をいただきたいと思うであります。  先ほどのわが党同僚委員の提案趣旨説明にもございましたように、本動議は第一に、大法人向けの租税特別措置の廃止または縮減により、あるいは財政投融資での開銀融資の削減により、大企業の過大なる設備投資を抑制することを主張いたしております。第二に、災害対策を拡充し、個人被害の救済対策を強化すべきものと主張いたしております。第三に、生活保護基準及び失対賃金の引き上げ、国民健康保険の補助率引き上げ及び医療費値上がりによる社会保険の被保険者、患者の負担増の軽減、小児麻痺対策等々の国民生活への緊急対策を主張いたしておるのであります。第四に、当面の石炭対策として、石油関税の関税定率の引き上げ及び炭鉱労務者の雇用安定のための諸施策を主張いたしておるのであります。第五に、公務員給与につきましては、公務員関係労働組合との話し合いにより、給与の不合理の根本的是正をはかることを主張いたしておるのであります。第六に、中小企業金融として、財政投融資において、さらに五百億の資金を増額することを主張いたしておるのであります。これらの内容が池田内閣の大資本本位の政策を転換きせるための第一歩としての意味を持つものであり、国民の今日の要望を忠実に反映していると私は信じて疑わぬのであります。よって、私は本動議に心からなる賛意を表し、政府がすみやかにこの補正予算案を撤回して組み直すことを求めるものでございます。  以上をもって社会党を代表する私の討論を終わります。(拍手)
  163. 山村新治郎

  164. 佐々木良作

    ○佐々木(良)委員 私は民主社会党を代表いたしまして、政府原案に反対をいたしまして、同時に井堀委員提出のわが党組みかえ案の動議に賛成をするのでありますが、自民党の討論並びに社会党の討論を伺いまして、最後に立ってこれらに対して十二分に私どもの考えを申し上げたいと存じます。しかしながら、委員長もずいぶん時間に苦労されておるようでございまするので、内容はすべて本会議に譲りまして、本補正予算に対するかまえの問題だけを申し上げて討論にかえたいと存じます。  私は、まず今回の補正予算にあたりましては、第一に災害対策費などのいわゆる当然支出増の補正のほかに、所得倍増計画に基づく物価騰貴、国際収支の悪化等に対する政策是正に必要な補正措置を講ずるのが当然であると存ずるわけであります。八田さんのお話ではございませんけれども経済は観念ではございません。今さら所得倍増政策がよいの悪いの、根本的に金持になることがよいの悪いのというような論議をするのではありませんので、その過程において行き過ぎや足らないところがあったならば、それを是正する政策をやらなければならぬのが当然であります。それこそ本当初予算に対する今度の補正予算の内容でなければならぬ、こら考えるわけであります。従いまして、当然に今度の補正にあたりましては、政策の行き過ぎを是正するための予算措置やら足らざるところを補らための政策是正の財源を適度に使うことが必要であると存じます。  さらに第二番目には、政府は今回の補正財源といたしまして、約三千億円が最終的には予想せられておりますととろの租税の自然増に求めておりまするが、この財源は、当初予算における政府の、いうならば歳入見積もりの誤りによるものであります。八田委員の言を借りますと、それは来年度の予算にどうすればよいということらしいのでありますが、そうではありません。当初予算の論議にあたりまして、ほとんど明らかといっていいほど予想された内容の財源なのであります。従いまして、この財源は単に今度のごとき当然支出補正の財源に充てるだけではなくて、還元のための減税を含めて、当初予算の、いうなれば歳入補正の立場からの根本的な予算補正に取り組まなければならなかったものとも考えるのであります。かくのごとくに、当初予算を提出いたしまして、後において、支出増の当然の変化と、それから歳入見通しに対する当然の変化と、これを適当に適度に組み合わせて、万遺憾なき予算を作り上げるのが今回の補正の立場でありまするから、これらをほとんど取り入れずに、単なる当然支出増だけに向いておりまするこの予算の立て方に、私どもは根本的な反対をいたすものでありまして、これに対しまして、わが党は井堀委員からさきに提案をされました組みかえ内容に明らかなるような内容をもって、新たに政府が組みかえられんことを要望するものであります。従いまして、政府原案に反対をいたします。  社会党の補正の組替え動議に関しましては、これまた論外といたしたいと思います。
  165. 山村新治郎

    山村委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず横路節雄君外十五名提出の編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  166. 山村新治郎

    山村委員長 起立少数。よって、横路節雄君外十五名提出の編成替えを求めるの動議は否決されました。  次に、井堀繁雄君外一名提出の編成替えを求めるの動議について採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  167. 山村新治郎

    山村委員長 起立少数。よって、井堀繁雄君外一名提出の編成がえを求めるの動議は否決されました。  次に、昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して採決いたします。  以上両案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  168. 山村新治郎

    山村委員長 起立多数。よって、昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)は、いずれも可決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました予算補正両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  169. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ――――◇―――――
  170. 山村新治郎

    山村委員長 この際お諮りいたします。  本委員会において閉会中審査を行なう必要があります場合において、閉会中審査案件の申し出、その他閉会中の委員派遣の問題等につきましては、理事諸君と協議の上、委員長においてその手続を進めることといたしたいと思いますので、この点委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  171. 山村新治郎

    山村委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。  これにて散会いたします。    午後三時三十四分散会