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1961-10-03 第39回国会 衆議院 予算委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月三日(火曜日)     午前十時九分開議  出席委員    委員長 山村治郎君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    井出一太郎君       稻葉  修君    今松 治郎君       臼井 莊一君    仮谷 忠男君       北澤 直吉君    久野 忠治君       周東 英雄君    田中伊三次君       床次 徳二君    中垣 國男君       中曽根康弘君    中村三之丞君       西村 直己君    羽田武嗣郎君       八田 貞義君    藤本 捨助君       船田  中君    松浦周太郎君       松野 頼三君    三浦 一雄君       山口 好一君    山本 猛夫君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       木原津與志君    小松  幹君       河野  密君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       長谷川 保君    松井 政吉君       春日 一幸君    西村 榮一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  佐藤 榮作君         運 輸 大 臣 斎藤  昇君         郵 政 大 臣 迫水 久常君         労 働 大 臣 福永 健司君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 藤枝 泉介君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君         国 務 大 臣 三木 武夫君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         総理府総務長官 小平 久雄君         大蔵事務官         (主計局長)  石野 信一君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 十月三日  委員佐々木良作君及び門司亮君辞任につき、そ  の補欠として春日一幸君及び西村榮一君が議長  の指名で委員に選任された。     —————————————  本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)      ————◇—————
  2. 山村新治郎

    山村委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算補正(第1号)及び昭和三十六年度特別会計予算補正(特第2号)を一括して議題といたします。質疑を行ないます。野田卯一君。
  3. 野田卯一

    野田(卯)委員 私は自由民主党を代表いたしまして、主として外交問題及び経済問題に関しまして質問をいたしたいと存じます。  外交問題を第一の質問といたしまして、最近の世界情勢を見ておりますと、形勢はまことに重大でありまして、緊張の空気がみなぎり、実に息詰まる思いがいたすのであります。世界はまさに戦争か平和かの関頭に立っております。ケネディ大統領も九月二十六日の国連総会における演説におきまして、「人類戦争終止符を打たねば戦争人類終止符を打つ」という言葉をもちまして現在の情勢に警告を発しております。今日ほど世界人類戦争の危険をひしひしと感じている時代はないと思います。総理大臣はこのような緊迫した状態が発生しました根本原因がいずこにあるとお考えでありますか、御所見を承りたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 見方によりましてひしひしと戦争の危険が感ぜられるという考え方があります。しかしそれと同時にこの戦争がぜひとも起こらないようにしなきゃならぬという努力も非常に払われておるのであります。戦争の危険の原因は、やはり従来からの東西対立と、これがときどき先鋭化する、これは今までも例があったことでございます。しかし今の状態におきましては、先鋭化しまするが、みんなの努力で私は消えていくと考えておるのであります。
  5. 野田卯一

    野田(卯)委員 去る六月総理大臣アメリカを訪問されましてケネディ大統領と会談をされましたが、その折、当然に現在の世界情勢に関する情報や意見交換をされ、また総理自身独自にこの政局に対処する態度について、日夜深く思いをめぐらしておられることと思います。最近の日本国際的地位は大いに向上いたしまして、自由主義陣営において、英国とともにアメリカのよき相談相手たる地位にあります。それだけに世界政治世界の平和、人類の幸福に対する責任もまた重大であります。世界の一部の人々は、第三次世界戦争が不可避であると考え、その準備に取りかかっておると伝えられております。この次の戦争核兵器戦争であります。現在の発達した核兵器による戦争がいかなる惨害を人類社会にもたらすか、今さら言うを要しないところであります。われわれの努力しているいかなる経済建設も、福祉の増進も、一たび戦争が勃発するなれば根本からくつがえされ、すっ飛んでしまうのであります。従ってこの危機に際会しておる現在の世界政治家の最もなさねばならぬことは、何としても戦争の勃発を回避して世界の平和を守ることである、それが政治家の第一、最大の任務であると思います。総理大臣はいかなる方法をもって戦争を防止し、世界平和を維持せられんとするか、その抱負、御構想を承ることにいたしたいと思うのであります。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどのお話通り戦争人類の破滅をもたらすものであります。これみなよくわかっておるのでございます。しかしそれが先鋭化していくということは、そこにやはりお互い信頼理解がないからだと思います。われわれは国際連合を通じまして、ここにおいて十分戦争防止の話し合いをしなければならぬ、また国際連合だけで足りないときには、特定国々特定の問題で話し合って、とにかく国連あるいはそれ以外の場で、ほんとうお互い理解を深めていく努力によって戦争が防止できると考えております。
  7. 野田卯一

    野田(卯)委員 総理国連を中心として、これを強化して平和を守り、また足らぬところは関係諸国間の協力提携によって、これを防ごうとする御構想を拝承したのであります。次に現在の世界には二つの大きい対立があると存じます。その一つ自由主義陣営共産主義陣営との対立でありまして、もう一つ対立植民地主義ナショナリズムとの対立でございます。アジア・アフリカの地域は過去久しきにわたって西欧諸国植民地として、その支配と束縛のもとにあったのであります。この西欧支配下にあったAA地域民族に、民族独立の希望と闘志を持たせるに至ったのは、明治以来の東アにおける日本の目ざましい発展であったことは、歴史の明らかに示すところであります。AA地域に盛り上がった民族意識は、各地に、あるいは執拗なあるいは激烈な独立運動発展させまして、世界の地図は徹底的に塗りかえられることになっております。しかもこの塗りかえは今日においても継続をいたしておるのであります。そしてこの二十世紀民族独立世紀民族解放世紀としようとしておるのであります。植民地主義民族主義に席を譲らなければならないと存じます。わが国はこれらの民族独立あるいは勃興の運動に対しまして、これまで同情と理解ある態度をとってきましたが、今後におきましても国際政治の場に臨んで、この世界の大勢に順応し、必然の流れに沿って賢明なる行動をとるべきものと思いますが、総理の御所見をお伺いいたします。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、われわれは民族主義に絶大なる支援を与えておるのであります。今後ともその方針でいきたいと思います。
  9. 野田卯一

    野田(卯)委員 民族主義に対しまして大きな支援を与えるという場合におきましては、従来の植民地を持っておった国々との関係につきまして、いろいろな問題が生ずるのでありまして、この点につきましては特に総理大臣の御決意を要望したいと思うのであります。  問題は最近ともしますとこの植民地主義ナショナリズムとの対立東西陣営対立、すなわち自由主義陣営共産主義陣営との対立と混淆して参るということでございます。私は、わが国としてはこの両者の混淆を極力防ぎ、国際勢力が混乱に陥らないように最善の努力をなすべきものと思います。この点はきわめて困難な事柄でございますけれども、どうしてもやらなければならないことと存じます。また自由主義共産主義との対立につきましては、お互い経済社会文化等の面において大いに競争するのが適当であろうと思います。いずれの主義がよろしいか、いずれの主義がまさっておるかということは、平和のうちの競争において決定せらるべきものと考えまして、武力をもって争う、あるいは血を流して自己の主張を押しつけるという必要もなければ、全くそうすべきものでもないと考えられますが、この根本的な問題に関する総理大臣の御所見を承りたいと存じます。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 民族主義ナショナリズム対立に対しまして、東西関係の間に錯綜しておる、あるいは共産圏国々民族主義の方に加担する、あるいは西側がナショナリズムに加担する、こういう考えがないことはございません。ある程度見受けられるのですが、しかし事柄は全然違うわけでございます。最近独立いたしましたブラザビル・グループ、フランス系のあれでございます。これは独立させましたが、やはり自由主義をはっきり守っております。そうしてまたその他の国につきましても、共産主義が利用しようとしておりますが、断固これを排撃している国もある。だから一がいに錯綜しているように考えますけれども、その間は全然区別すべき問題であると私は考えておるのであります。私はそういう基本方針によりまして、先ほど申し上げました民族主義を擁護し、そしてその間に揣摩憶測のあるような東西関係との錯綜というものを厳然と区別しなければならぬ、こう考えております。
  11. 野田卯一

    野田(卯)委員 その問題に関連いたしまして、自由主義陣営共産主義陣営との対立の問題、この点について御答弁をお願いいたします。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 自由主義陣営共産主義陣営とは、何も武力をもって争うべきものじゃない、どの主義がいいかということは、やはり民族発展とか国民生活向上、これによってどの主義がいいかということを競争したらいい。私は先般もミヤコン氏が来られたときにその意味のことを言いました。そしてわれわれ日本人は、自由主義国家内において自由主義が最も民族発展生活水準向上にいいんだという標本に日本がなっておるわけでございます。私はお話し通りに、武力でこういうものを競争すべきものではない、やはり平和的発展で、経済の復興で競争して、どちらがいいかということは自然にわかってくる問題と思います。
  13. 野田卯一

    野田(卯)委員 次に北方領土問題等に触れたいと思いますが、去る九月二十九日、ソ連政府から手交されました、池田総理返書に対するフルシチョフ総理大臣回答及び日本核実験への抗議に対する回答に関しまして、政府見解をただしたいと思います。  右の回答において、フルシチョフ首相は、領土問題は一連の国際協定によってすでに解決されておるにかかわらず、貴下がこの問題を持ち出されることは、日ソ関係の完全な正常化の途上に人為的障壁を作ろうとしているとの感がある、こう言っておるのであります。私どもは南千島日本固有領土であることを主張して参りましたし、またこれを主張する幾多の根拠を持っておるのでございます心また過去の国際語協定においてもこの問題は解決されておりません。従いまして、このフルシチョフ首相言葉はまことに大いなる暴言であると言わざるを得ないと存ずるのでございます。この回答に対しまして、総理大臣の御見解を承りたい。なおこの返書に関して今後何らかの措置をとられんとするか、あわせてお尋ねをする次第であります。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 北方領土の問題に対しまして、フルシチョフ氏がああいう回答をしてきたことは、事実を無視した暴論である、私は絶対にこれに承服するわけには参りません。お話し通り幕府時代日露条約にいたしましても、また明治八年の南樺太千島交換の場合におきましても、千島とは得撫島以北十八の島をさすことに国際的になっておるわけでございます。クーリル・アイランズとは、得撫島以北十八島になっておるわけでございます。だからそれに含まない択捉国後、歯舞、色丹は、当然これは日本固有領土であります。カイロ宣言を受けましたポツダム条約をわれわれは受諾いたしたのでございますが、カイロ宣言には、やはり固有領土を侵害するものではないということをはっきりきめてある。そしてヤルタ協定ソ連は持ち出しておりまするが、アメリカにおきましても、これを今では否認する気持になっておる。また先般日ソ共同宣言のときも、アメリカにおきましては択捉国後日本固有領土であるということを言っておるのであります。これは国際的にも認められておる。しかもサンフランシスコ条約に調印しないソ連が、サンフランシスコ条約得撫島以北クーリル・アイランズを放棄したものを、自分の方に放棄したということを言うのは、これはとんでもない矛盾撞着であると私は考えます。その後におきましても松本全権が、領土問題は平和条約のときに話をする、こういうグロムイコとの協定があるのであります。私はこういう事実から申しまして、われわれの主張は絶対に歴史的にも国際的にも正しいと考えておるのであります。
  15. 野田卯一

    野田(卯)委員 それで、この間のあの暴言に対しまして、総理大臣は今後何らかの措置をとられるかどうか、その点についてお伺いしたいと同時に、さらにまた核兵器実験再開に関する抗議につきましては、この抗議世界人類の悲願を背景としておるものであるにかかわらず、ことさらに焦点をぼかして、顧みて他を言うような不誠意に満ちた回答を出しておるのでありますが、これは平和を愛する国民に対する重大な侮辱とも解すべきものであると私は考えるのであります。これに対しましては、あくまでも目的貫徹のために今後必要なる措置をとるべきであると思いますが、総理大臣のお考えを伺いたいと思います。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 北方問題についてのフルシチョフ氏の回答は、ミコヤン氏が来られたときの親書に対する私の回答と、そうして核実験開始に対しまする私の抗議と、この二つあったのでございまするが、ソ連におきましては、前の私に対する書簡に対する私の回答は発表しておりませんです。そうして核兵器に対する抗議が行きまして、それを二つ一緒にして発表してあるわけであります。だから私はそういう経過から申しまして、今の北方問題につきましてまた再び抗議をすることは、かいないことだとただいまのところ考えております。適当な機会に、また私は北方問題については意見を言うつもりであります。  核兵器実験に対しましての向こうの回答は、お話し通りに顧みて他を言うことでございます。私はこの問題につきましては、国連におきましてこれを持ち出して、しかも一番従来から関心を持っておるわが国でございます。国連におきまして、はっきりわれわれの意向を申し述べて、そうしてこれに列国の共同歩調を得るようにいたしたいと思っております。先般も申し上げましたが、列国議会同盟におきましては、わが方より持ち出しまして、絶対多数で議決をした状況であるのであります。
  17. 野田卯一

    野田(卯)委員 次に中国問題に触れたいと思います。  総理大臣は先日の施政方針演説におきまして、中国代表権問題に触れて、中国大陸国民親近感を感じつつも、すでにわが国平和条約を結んで友好関係にある中華民国の将来に至大の関心を持たざるを得ない、こう言っておられます。また、これが世界的規模を持つ重要問題であり、国連で十分討議され、世界世論の納得のいく公正な解決を期するために努力する考えだ、かように述べておられまして、表現に非常に苦心の跡が見られるのであります。しかしながら、かつて朝鮮動乱以来、国連においては中共侵略者として取り扱われており、今日私どもが東南アジアの方面に参りましても、中共侵略的態度を著しく感ずるのであります。現に私どもが先般インドに参りましたときに、インド青年諸君が十数人私たちのそばを通り過ぎたのでございますが、その青年諸君が私ども一行中国人と見誤りまして、痛烈な罵声を投げかけて通ったのでありまして、インド大衆中共に対する反感をまざまざとわれわれは見せつけられたのであります。チベット問題あるいは中共国境侵犯の問題でさんざんな煮え湯を飲まされて参りましたインドネール首相は、最近中共の侵略的な態度が改まらない場合には戦争も辞せないというふうなことも漏らしておると聞いておるのであります。従来中共友好関係にあると言われておりましたビルマにおいても、最近ウー・ヌー首相は著しく反中共態度に変わってきております。中共のまことに強圧的な態度国内撹乱工作に対する怒りより発したるものと認められるのであります。世界の視聴を集めていますラオスの騒乱と中共との関係については今さら説明を要しません。カンボジア国家主席であるシアヌーク殿下は従来共産圏に対しましても友好的な態度を持しておりましたが、最近一たん辞職されまして第五次内閣を組織されたのでありますが、それ以来共産主義に対してきわめて警戒的なる態度を示すに至られました。それはラオスベトナムにおける共産分子の活動がひたひたとカンボジアに押し寄せて参りまして、カンボジア政府のこれまでの共産主義者に対する穏やかな態度を硬化させるに至ったものと言われておるのであります。また南ベトナムの治安は共産ゲリラであるベトコンの跳梁によっていたく撹乱され、同国の政治経済に大きな影響を与え、ベトナムの前途に暗雲を漂わしておるのであります。このような中共政府近隣諸国を脅威する侵略的ともいうべき態度について、アジアの一員であり、アジアの国のうちでは兄さん分と見られております日本総理大臣として、いかなる見解を持たれておりますか、お尋ねをいたしたいと思います。  また私たちは本年三月台湾を訪問いたしまして、親しく現地の実情に触れる機会を得ましたが、現在台湾には千百万人の住民がおりまして、これらの人々は、それが戦前から居住しておる台湾人でありましても、また蒋介石総統とともに台湾に渡って参りました中国人でありましても、いずれも共産主義に対しましては徹底的な反対の態度をとっておりまして、またわが国に対しましては大きな信頼親近感を持っておるのでございます。またこの際私たち思い出すべきことは、終戦の際に中国大陸にいた数百万人に上る軍人や民間の人々の運命が最も案ぜられたのでございますが、その際暴に報いるに暴をもってしてはならぬと国民を教えてわが同胞の生命を守ってくれたのは蒋介石総統であります。また北海道の東北半分を、釧路留萌ライン以北ソ連が占領したいという要望に対しまして、これを拒否してわが国内に三十八度線を設けさせなかったのは、マッカーサーのごとく伝えられておりますけれどもほんとう主張者は、ほんとうにこれを実現させたのは、まさに蒋介石総統でございます。また多年にわたりまして膨大なる損失をこうむりましたにもかかわらず、真の友愛の精神からわが国に対する賠償の権利を放棄をいたしましたのも、実に蒋介石総統であるのであります。  中国問題の処理にあたっては、それらの事情につき十分なる考慮を払うべきものと思いますが、これに関する総理の御見解を承りたいと存じます。  なおもう一点ありますが、昨日のニューヨーク発共同通信報道によりますと、国連日本代表部は、中国代表権問題に関しまして、積極的に重要問題として議論するが、結局は中共国連加盟するのを認め、その結果中共だけ国連加盟となっても、国府が国連外独立国として存在するならやむを得ないという構想で進むかのごとく伝えておりますが、この報道はまことに重大でございますから、これに関する政府見解を御表明願いたいと存じます。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の第一点は、中共侵略行為をしておるという事実を並べられました。私は、インドビルマ等につきましての実例は知りませんが、ベトナム等における問題は、新聞その他で承知しております。ただ、国際的に中共侵略者であるということは、国際連合で決議せられた事実はございます。今中共が、朝鮮以外におきまする行動につきまして、まだ国際的に正確には、せられておりませんが、とにかく朝鮮問題につきましては侵略者であるということを、はっきり国連で決議しておる。これは、今度の国連中国代表権問題を討議するときの一つの材料になると私は思います。  それから台湾における問題、ことに蒋介石総統が、戦争中のあの暴力にかわるに暴力をもってせず、親愛の気持で処理せられたことに対しましては、私は記憶に新たでございます。よく頭に入れておるのであります。また北海道釧路を起点としての分割の問題も聞き及んでおります。しかし、いずれにいたしましても、私は蒋介石総統のとられた態度につきましては、国民とともに感謝の意を今も持っておるのであります。従いまして、サンフランシスコ講和会議後におきましても、われわれは中華民国戦争し、中華民国がわれわれの賠償を放棄し、そうして中華民国条約を結んで友好関係を維持している、これは一つの厳然たる事実であります。国際的の事実であります。そこで、いろいろ問題がございまするか、きょうのある新聞でごさいましたか、中共を認めるべきだという、これは関東地方だけでやった調査を聞いておりますが、中共を認めるかという問題につきますと、これは五一%になっておる。それなら台湾をどうするか、こういうふうになりますと、それはちょっと困った、台湾はその事実を認めなければならぬ、こういうことになります。そうすると、これはいかにも二つ中国を認めるような結果になるのじゃないか、こううかがわれるのでございますが、しかし、二つ中国ということは、台湾中華民国も、あるいは大陸中共政府も、絶対にこれはいかない、こう両方とも言っております。だからわれわれは、この蒋政権考え方、また中共政権の方の厳然たる考え方に水をさすようなことは、今われわれとしてとるべきところじゃございません。従いまして、こういう世界的に重大な問題、ことに日本としてはほんとうに最も関心の深い問題につきまして、従来十一、二年間、この中共代表権問題をたな上げすることにわれわれは賛成しておりましたが、私は、今やたな上げ案でいくべきじゃない、この重大問題は国連に持ち出して十分討議し、世界的に公正な結論を出すべきだ、こう考えておるのであります。だから、われわれは国連総会でこれが審議せられ、そうして両政権と申しますか、台湾政府中共政権とが英知を働かせ、そうして国際的に公平な、りっぱな結論が出ることを祈念し、それに向かって努力いたしたいと思うておるのであります。  しこうして今の第三番目のお話の、国連において中共政権代表権を認められ、台湾がどうなるかというふうな問題は、まだ一度も国連で討議せられていないことでございます。私はそういう揣摩憶測に対しまして、この重大な立場にありまする日本政府として、とやこう批評することは差し控えたいと考えます。
  19. 野田卯一

    野田(卯)委員 先ほどの電報でございますが、ああいう電報日本に伝わりましてでかでかと掲げられる。それが日本代表部がこういう考えをもって進んでいるのだなどということは、私非常に重大な問題と考えるのでありまして、これに対しまして政府部内において適当な措置をとっていただきたいと存じます。  次に日韓問題に入りたいと思います。  日本と韓国とは御承知のように一衣帯水の間にございまして、その地理的なあるいは歴史的なあるいは文化的と、あらゆる関係からいたしまして最も親近なるべき間柄にございますが、終戦以来今日に至るまで正常な国交が開かれない、きわめて不自然な状態にあります。私どもはこの状態を打開するために、本年五月、初めて韓国を訪問し、韓国各方面の方々と親しく接触し、率直に意見交換し、両国間の両国民の間にわだかまっておりました誤解と猜疑心を取り除くために努力し、日韓親善の大勢を築き上げることができたと信じております。その後、御承知のごとく政権は交代いたしましたが、新政権におきましても対日関係はそこなわれない、むしろ新政権は、従来のいかなる政府より親日的であることを標榜しておるのであります。革命に伴う国内の整備もようやく一段落いたしまして、日韓会談を再開する運びとなったことはまことに喜ばしいことでございます。外務省においては会談の準備のために韓国側と接触し、また先般金副総理日本に来られました際にも意見交換をしておられるのでありまして、従ってある程度の見通しを立て得る立場におられますので、お尋ねをいたしますが、韓国の現状からしてこの会談は一日もすみやかに成立させる、国交の正常化を実現して、引き続いて経済協力をして、両国の経済のすみやかなる復興、発展と民生の向上をはかる必要があるのでありますが、この日韓交渉というものは、本年内に妥結の見通しがあるかどうかについてお話を承りたいと思います。  また日韓会談の中心テーマは結局請求権問題にあると思いますが、この解決についてはいかなる案を持っておられますか。すでにこの問題について先方との間に金額の点まで話が出ておると新聞はこれを報道をいたしておりますが、いかなる状態にございますか、これまたお話を願いたいと思います。私は、請求権問題は高度の政治的見地に立って解決すべき問題であり、その方法においても正当なる請求権の支払いのほかに、無償譲与あるいは有償協力などの組み合せと申しますか、コンビネーションによって処理することも一案ではないか、そういう見解を持っておりますが、これに関する外務大臣の御所見を承りたいと思います。
  20. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 日韓関係を改善せねばならないという気持においては、政府野田議員に同じ見地に立っております。従いまして、今度できました政権もようやく二年後には文民政権になるという目標を明らかにいたし、人心の安定も徐々に回復しつつございますので、この機会に会談を持ちたい、さように考えております。先方からの申し出に応ずる、かようなことでございます。しかしながら、御承知のように問題は請求権等、漁業の問題、李ラインの問題でございますが、この請求権の問題につきましては、ただいまお話しのように、いわゆる大所高所に立って、日韓将来のために解決すべきでございまするが、何分にもやはり請求権というもので考えまする場合には、やはりそれに即応する一定の根拠がなければならぬと思います。従いまして、その根拠を事務的に探索いたしましたる上において、あるいはまた必要に応じて政治的な解決をはかるということも必要であろうかと思っております。その政治的な解決という中には、今お話しのように無償の譲与とか、有償の協力というものの組み合わせということもあるいは必要かとも思います。しかしいずれにいたしましても、こういう話を話し合おうという段階になっております。請求権の問題は、過去十年以上にわたる交渉の中においても全然触れられなかった問題であります。ようやくことしの四月になって、初めて若干請求権の問題に触れたという程度でございまするから、もう少しこれを事務的に煮詰めてみる必要がありはしないか、かように思っております。従いまして、本年中に解決したいということは、早ければ早いほどよろしいとは思いまするけれども、やはりその交渉の過程においてどのような結論になりまするか、今のところ何とも申し上げることはできない、かように思っております。
  21. 野田卯一

    野田(卯)委員 日韓関係は繰り返して申し上げるまでもなく、極力早期に一つ妥結に至るように御努力を願いたいと思います。  次に密輸の取り締まりあるいは韓国の国内撹乱工作員の取り締まり等の問題がございますが、これにつきましては、両国の官憲の間において緊密なる連絡体制を整えまして万全を期すべきものだと考えるのでありますが、これに関する御意見を承りたいと存じます。日韓国交の正常化は、わが国民のほとんど全部をあげて念願しておるところでございます。しかるに社会党は韓国とわが国との国交調整は、朝鮮の統一を阻害するものとして反対の態度をとっておりますが、これはまことにいわれなき反対であると思います。今日北朝鮮ソ連及び中共とかたい攻守同盟を結びまして、共産圏の確固たる一員となっておることは御承知の通りであります。この北朝鮮自由主義を奉じて朝鮮動乱によって痛めつけられ、北鮮に対して深刻なる反感と憎しみを持っておる韓国が、今にわかに合体をすることは、現実の問題としてはとうてい考えられないところでございます。また日韓の国交回復は将来の南北朝鮮の合体に何ら支障を及ぼすものではございません。ただ北鮮優位の統一、すなわち北鮮がイニシアチブをとった南北統一を企てておるものにとりましては好ましくないというにすぎないのであります。社会党はドイツの問題については、政治の現実に即して東独の存在を認むべしと、この間も成田君は言っておられる。そういうことを主張しておきながら、朝鮮については、現実を無視して韓国の正当なる要望に反対し、完全なる矛盾を露呈して、精神分裂的な主張をなしておるものと認められる。これに対して外務大臣の御答弁を承りたいと思います。
  22. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 最初の密輸の問題につきましては、これは厳に取り締まる方針で臨んでおります。  次に統一の問題でございまするが、御承知のように一九四七年の十一月の国連の決議によりまして、国連監視下の自由選挙ということを韓国側は言っておりますし、北鮮側は、自主的な選挙ということを申しております。いずれも統一は好ましいということは言っておるのでありまするが、しかしながら人口が違うのであります。御承知のように韓国は二千五百万をこえております。北鮮側においては一千百万人程度、そこで、選挙をすればいずれの方に有利であるかということは、明瞭だと思います。従って、そこに統一ははなはだ困難である、これが現状でございます。そうした現状を認めながら、当分統一ということは困難であるとすれば、わが国としては、非常に近くにあり、しかも漁業その他で非常に密接な関係を持つ韓国との間に諸種の経済問題を解決していくという態度に出るということは、きわめて当然であろうと、かように考えております。
  23. 野田卯一

    野田(卯)委員 次に東南アジア訪問に関してお尋ねするのでありますが、総理大臣は、臨時国会終了後にインド、パキスタン、ビルマ、タイの四カ国を訪問される予定と承っております。これらの国々におきましては、いずれも強く経済協力を要請されることと存じます。しかしビルマとタイについてはそれ以上の問題といたしまして賠償の増額と特別円の解決の問題がございます。私はこの二つの問題は、総理の御出発の前に解決すべく努力をされておると聞いておるのでございますが、ビルマ賠償、タイの特別円については、どういう方法でこれを解決されようとしておるか、そのお考えを御答弁願いたいと思います。  なお、総理大臣は東南アジアを訪問する際に、それらの諸国の首脳者とアジア共通の問題について忌憚なき意見交換したい、かように述べておられますが、この共通の問題というのは一体具体的にはどのような内容のものであるか、お漏らしをいただきたいと思います。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 ビルマ国との賠償の問題、タイ国との特別円の問題、お話し通りでございます。ビルマとの賠償協定は、他の国よりもいち早くやってきてあります。しこうして、その話し合いのとき、他の国との賠償の状況を見合わして、また考え直すことあるべきという条項を入れておるのであります。従いまして、フィリピン、インドネシア等の賠償の額を見まして、ビルマからもっと賠償額をふやすようにという要求が二、三年前から参っております。政府といたしましては、誠意を持って今交渉中でございます。一昨々日ビルマの大蔵大臣一行がこの賠償の問題の交渉に来られました。あす、あさってから交渉を始めると思います。またタイの特別円の問題も、多年の懸案でございまして、戦争中にタイの物資を徴発しましたそれに対する補償として、一応百五十億円支払うことにいたしまして、そのうち五十四億円をすでに払っておるのであります。残りの九十六億円の支払いについて一応は交渉の妥結を見たのでございまするが、その文言に両方に誤解がございまして、われわれは無償でやるのでなしに、貸付で、そうして長期間で支払うということに考えておりましたところ、向こうは、いや無償でやるんだ、こういうことを強く主張してきております。これも懸案でございまするが、われわれは、タイ国との従来の関係考えまして、誠意を持って一つ交渉に応じたい、こういう態度で交渉を始める考えでおります。  第二の、私が東南アジアに参りますにつきまして、四カ国とアジア共通の問題について話す、こう施政演説で言っております。これはもちろんアジアの平和を確立し、世界の平和にお互いに貢献しようという問題につきまして、いろいろ忌憚のない意見をかわすと同時に、お話し経済協力、技術協力につきまして、現地を見、そして各国の首脳者と話し合いまして、われわれとしてできるだけの協力をしようという気持で私は参りたいと思います。すなわち東南アジア発展が即日本発展に密接な関係があることは、すでに御承知の通りでございます。私は経済問題につきまして特に具体的な話をしていきたいと考えております。
  25. 野田卯一

    野田(卯)委員 次にアジア共同市場の問題に触れたいと思います。  各国がその経済発展のために、地域的な経済協力の問題が近年大きくクローズ・アップして参っております。ヨーロッパでは御承知のように一昨年初め欧州共同市場が生まれました。西ドイツ、フランス、イタリア、ベネルックスの六カ国が参加し、また昨年の一月には欧州自由貿易連合が結成せられまして、英国、スカンジナヴィア三国、オーストリア、スイス、ポルトガルの七カ国が参加いたしました。この二つの組織はその後大へんにその機能を発揮いたしまして、両組織に加盟した国々経済状態は顕著な改善を見つつあるのでございます。最近は英国のヨーロッパ共同市場参加が具体化しようとしておりますが、それが実現いたしました暁には、共同市場と自由貿易連合との合体も予想せられるのでありまして、欧州諸国の経済の一体化というものが現実化するものと見られております。またアメリカ州におきましても、南北米の地域的な経済協力の問題が日程に上ってきておるのであります。このような動きに対しまして、アジア地域においても地域経済協力の可能性を検討する機運が生まれて参りまして、国連の機関でありますところのエカフェではこの問題を取り上げるに至りました。私は前からアジア・コンモン・マーケットの考え方について検討いたしておるのでございますが、ヨーロッパあるいはアメリカにおける最近の発展の状況から見まして、それがアジア各国の経済繁栄のために必要である、また有益であるということを痛感するに至りました。もっともこの事業は幾多の困難を伴い、容易のことではないのでございますが、アジア地域各国がばらばらに経済を営んでいるよりは、お互いに相協力いたしまして、でき得る限り相互間の通商障害を撤廃いたし、円滑な経済交流をはかる方が、それぞれの国に有利であるのみならず、アジア全体の発展にも大いに寄与するものと考えられるのでございます。最近とかく日本西欧のみに目を向けて、アジアを忘れがちであるという声がアジア各地で聞かれるおりからでもございまして、私はこのアジア地域経済協力の問題は進んで取り上げて、関係各国と連絡いたしまして、エカフェのごとき国際機関のもとに推進をはかるべきものと考えておりますが、これに対する政府の御見解お尋ねしたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 構想としては、しごくけっこうな構想でございます。しかしヨーロッパ経済共同体の発生の経過を見ましても、ベネルックス三国がまずでき上がりまして、そしてドイツ、フランス、イタリアが入った。これは初めから申しますと、もう十年以上かかっておる状況でございます。しかもこの六カ国は長い歴史を持ち、そして経済あるいは国民生活が、ほとんど共通であるといっても過言でないぐらいの解け合う立場になっておるのであります。だから、非常にりっぱな成果を上げました。そして続いてできましたイギリスを中心とする自由貿易連合、これは経済共同体のように基盤ができておりません。従って共同体に見るような発展は見られない。そこで最近は、貿易連合の中心であるイギリスが共同体に入ろうとしていろいろ議論せられておるようでございます。やはりこの共同体になり、あるいは連合になる場合におきましても、その加盟国の経済状態ということが非常に影響するのであります。南米におきましてのこういう考え方も、アメリカが非常に莫大な金をつぎ込んでやろうといたしております。南米における各国の状況も違いますが、アメリカ合衆国という非常に強力な力でこれを押していこうとしております。そして東南アジアを見ますと、南米諸国までもいっていない。ばらばらでございます。そしてアメリカほどの力を入れるだけの力が日本にはございません。しかし構想としては、りっぱな構想でございます。私は昔ライス・バンクということを言い出したのも、この思想であるのでございます。しかしこの構想に向かって着々進めていくということは、われわれ日本人としては、そしてまた先ほど申し上げましたように、東南アジアとの提携がアジアにおける民族発展のもとでございます。私は、そういう構想のもとに徐々に進めていきたいと考えております。今回の四国訪問につきましても、そういうことについての意見を聞いてみたいという考えでございまして、構想は大賛成でございますが、実際にどうやっていくということは、なかなかむずかしい問題でございます。ことにOECD、DAGの問題等も出て参りまして、そういうものと見合いながら日本の役割を考えていきたいと考えております。
  27. 野田卯一

    野田(卯)委員 来月の二日から、箱根において日米貿易経済合同委員会が開催せられることになっております。この委員会の開催は、去る六月総理大臣アメリカを訪問されました一つの大きな成果であると私は思いますが、私はこの会議日本アメリカとの経済提携、相互援助の実効を上げるために最大限に活用されるように政府に要望したいのであります。特に海外経済協力につきましては、世界各国の要望というものはきわめて多額に上っておるのであります。また、地域によりましては、東西陣営の競争は激烈をきわめておりまして、日本アメリカ両国は、相互に緊密な提携をとりまして、円滑な、有効適切な、最も能率を発揮するような経済協力をいたす必要があると痛感いたしました。従って、特にこの点について話し合いたいことを希望するものでございます。  また、今後の日本の海外経済関係におきますところの幾多の障害を取り除きまして、不平等待遇の是正を求め、その発展を保障するためには、ぜひともOECDすなわち欧州経済開発機構に加盟することが必要でありますが、これにつきまして、アメリカ側の側面的援助を確保するように努力されたいことを強く要望するものでございますが、これにつきましての外務大臣の御見解とお見通しをお伺いいたします。
  28. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総理大臣が訪米されました大きな所産の一つといたしまて、日米貿易経済委員会が開かれることになりました。アメリカの有力閣僚六閣僚が参りまするので、この機会を、野田さんのお話のように、十分有効に活用したいと思います。主たる考え方は、日米相互の間の貿易経済の伸展、それから経済協力ないしは経済援助の問題、あるいは国際機構への日本加盟の問題、また、主としてヨーロッパにおける日本に対する差別待遇を、アメリカ側として自由陣営全体の立場から大いに撤回するように話して、側面的な援助をしてもらうための理解を求める問題、いろいろあろうかと思いますが、主として私は日本経済の実態、あるいは日本そのものに対する認識を主要閣僚において深めてもらうということに大きな収穫があるのではないか、かように期待いたしておる次第であります。
  29. 野田卯一

    野田(卯)委員 それではこれから経済問題に入りたいと思います。  最初に景気調整の問題でございますが、最近におけるわが国経済は高度の発展を示し、国民生活水準向上し、雇用状態も著しく改善せられました。産業の近代化、合理化もかなり進んで参ったのであります。総理大臣演説でお示しになりましたように、昭和三十六年度の国民総生産は十六兆数千億に達するものと見込まれ、昨年度の実績に対して実質約一〇%の伸びでありまして、この伸びは、一昨年度の実質一七%、昨年の実質二二%には及びませんが、当初の予想を上回っております。この成長は、国民生活国民経済に幾多の喜ぶべき現象をもたらしておりますが、他面におきまして卸売物価、消費者物価の高騰あるいは輸出の伸び悩み、輸入の激増を来たし、わが国国際収支の状況は月を追うて悪化して参りました。当初二億ドルの黒字を予想された本年度の収支じりは逆転して、先ごろは六億ドルの赤字を示し、外貨保有高は年度末に十三億ドルに落ち込むのではないかと予想されるようになったのであります。かかる事態を放置いたしますなれば、明年度の国際収支もまた赤字を続けまして、わが国の外貨事情は危殆に瀕するおそれを生じて参りました。政府は、これに対しまして、六月には一連の輸出振興の対策を決定、実施に移し、七月には公定歩合の一厘の引き上げ、一割程度の設備投資の抑制を勧奨し、また九月に入ってからは外国為替銀行の海外店舗における現地貸し出しの規制をなし、また輸入担保率の引き上げを断行して事態の改善に努力したのでありますが、さらに去る九月二十六日に至りまして、御承知のごとく国際収支の改善対策を決定し、翌々二十八日には公定歩合の再引き上げ、預金準備率の引き上げ、高率適用強化の三措置を決定するに至りました。このようにいたしまして、総合的な国際収支改善の方策は一応整備されることに相なったのであります。しこうしてこのような国際収支の悪化は、予想外に旺盛な内需によりまして輸出が押えられ、輸入が増大したためであると見られておる。そうしてこの内需の旺盛は、設備投資があまり盛んに行なわれたことと消費需要の増大によるものと見られておるのであります。  そこでまずお尋ねしたいことは、この設備投資と消費需要とが内需を増大せしめた原因としてどんな比重を占めているのかということでございまして、この点につきまして、経済企画庁当局の明快なる御答弁をお願いいたします。
  30. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま内需の問題につきまして、個人消費と設備投資とがどういう状況になっておるかという御質問だと私は思います。  個人消費は、三十五年度七兆五千四百億に対しまして、三十六年度は八兆三千五百億円、約一〇・七%ふえております。また設備投資の方は、三十五年度二兆八千五百億円に対しまして、三十六年度三兆一千四百億円、一〇・二%と見込んでおったのでございます。ところが御承知のように、この二兆八千五百億円という三十五年度の見積もりは、実は非常に過小であったというのでございまして、三十五年度の個人消費の方は七兆六千七百億に対して約二二・五%の増加の八兆七千億円であったわけであります。ところが設備投資の方は、三兆五百億に対して二三%程度増の三兆七千五百億円に達する見込みが現在なのでございます。そういうことでございますから、一月の見通しでは、個人消費も設備投資も約一〇%の増だという見込みをいたしておったのでございますが、最近の見通しでは、個人消費の方は三割くらいな増、しかし設備投資の方は倍以上の増というようなふうに、現実に実績が出てきておるのでございます。こういうことでございますから、どうかいたしますと、年度間でもって四兆近い設備投資が行なわれるのじゃないかという心配も出てきて参りましたので、これを何とか抑制して参って、少なくも三兆六千億台くらいには年度間を通じておさめていきたいということを考えて、諸般の対策を考えたわけでございますけれども、現状そこまで圧縮するということは、なかなか困難ではないかというふうにも考えられるのでございます。  なお国民総生産における個人消費の割合を見ますと、日本は外国と比べてかなり低いのでありまして、たとえば英国では六五%、西独では五九%程度であるのに対しまして、わが国では一月の見通しでは五三・五%でございます。最近の見通しでは、伸び率が高くなったにもかかわりませず、構成比で申しますと五二・六%と若干低下しておるのではないか、そういうふうに考えておるのでありまして、これは、結局設備投資の伸び率の方が急速であったためで、その結果設備投資の構成比は、一月の見通しで二〇・一%よりも最近の見通しでは二二・七%というふうに高まっておる状況です。そういう関係で設備投資と個人消費との関係はあると思います。
  31. 野田卯一

    野田(卯)委員 今の藤山長官の御説明は、お話にありましたように、最近の金融引き締め等の調整措置をとったあとの計算では二倍何分、もしそれをとらずにおいたならば四兆ぐらいになってしまった、こういうことでございますが、そうしますと設備投資の伸び率が三倍近くにもはね上がりそうになったということは、政府昭和三十六年の計画を立てましたときに、企業の側でも、もう昨年も相当設備投資があった、一昨年もあった、であるから・良識があり、そろばんをとっておるなら、それ以上むやみに設備を拡張することもないだろう、こういうような推定に立っておられたのが、それを完全に裏切ってしまいまして、どんどんと相変わらずの調子で拡張が行なわれたのであります。この設備投資の内容を分析してみますと、今後の自由化に備えまして、対外競争力を増大するために、設備の近代化、合理化をはかるためのものが一つあります。その次は需要が増してくる、いろいろな注文がふえて、それに応じなければならぬというわけで、需要が増してくるから、それに応じて拡張するというものもございます。またもう一つは、市場における自社のシェアを確保する、すなわち各商社、各会社がマーケットにおける自分の会社の取り分というものを確保する、あるいはさらにそれをふやそう、こういうことのためになされるものと三種あると思われるのでございます。この関係というものはきわめて大切なものであり、特に投資調整をやるというようなことになりますと、きわめて重要なる問題でございますから、一体設備投資におけるこの三つの種類のものがどんな割合になっているか、どんな比重を占めておるか、この点についてお尋ねをしたいと思います。  私は、設備投資については、需要の増大に応ずるもの、それから自由化に備えてなされるものというものは、これをそうむやみに押えることは困難であると考えます。というのは、需要の増大に応ずるためになされる設備投資を抑制しますれば、結局物資需給の不均衡から物価騰貴を誘発するに至ります。また自由化に備えるものをあまり押えれば、輸出の減少、輸入の増加、国際収支の悪化ということになって、はね返ってくるわけであります。従って、抑制する場合の重点は、どうしても市場占拠率の確保、増大、マーケットのシェアをできるだけ拡充しようとする、そういう設備投資に重点が置かれなければならないというふうに考えられるのであります。そうして、しかもこの選別というものは、一律的な金利の引き上げ等によってはきわめて困難でございまして、実態に即した個別的な措置がとられなければならぬ、かようにも考えるのでございますが、この点に関する総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  32. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りでございまして、設備投資の問題につきましては、さきの国会のときにもいろいろ議論かあり、あまり行き過きないようにということは、この席でも私たびたび言ったのでございます。当時はそうでございます。昭和三十五年は二兆八千五百億だったのであります。三十六年は三兆一千億、すなわち一割くらいの増であります。しかるところ、いろいろここで議論して、ことしの一月、二月、三月くらいに三兆一千五百億じゃ見込み少ないぞ、こういう議論がありました。現に三十五年度に二兆八千五百億ではない、三兆円をこえておるじゃないか、それを三兆一千五百億では少ない、三兆六千億くらいになるんじゃないか、三兆六千億というのは、所得倍増計画の四十五年の投資計画に似ているじゃないか、こういう議論が出まして、三兆六千億というのは少し多過ぎる、これは押えなければいかぬと、こうわれわれも思っておったのでございますが、あにはからんや、三兆六千億どころか、今は四兆円になろう、この六、七月ごろからなろう、そういう状況になって参りましたので、金利の引き上げと同時に、一割削減ということを大蔵省、日本銀行の肝いりで、通産省が入りまして、業者に協力を求めたのであります。どの程度になりますか、今進行中でございます。この設備投資を金融で引き締めようといったって、なかなかききません。今言ったように、需要の増大ということだけならば、ある程度金融で引き締められます。しかし、お話しのように自由化に備えての設備投資ということは、これは将来のみならず、現在においても必要なことである。ですから、この点につきまして、いろいろどの程度に押えたらいいかということは、数学的にも困難を生じますし、また法律的にこれをやるという手はない。だから良識に訴えるほかはない。ことに第三番目の産業界における自分の会社の占拠率といいますか、ウエートを高くしょうというのでやる分は、この際絶対にこれをやめてもらわなければならない。これはよくない。国際的には今お話しのように、ヨーロッパ経済共同体のように各国が分業をして、そうして盛んにしようとしておる、それを、日本国内でシェアで一つ競争しようといったことは、時代おくれであります。私は、第三番目の市場占拠率確保のための設備投資は、絶対にやめてもらわなければならない。  それから自由化のための設備投資、需要増大のための設備投資、これは合理的でございます。しかし、需要増大ということは、これは今の例で申しますると、たとえば、鉄鋼業というのは、製鉄はことにここ二年くらいは二割五分くらいずつの上昇を続けました。もう今年は、鉄鋼国のイギリスをはるかに抜きました。それで需要があるわけです。ですから、需要の点からいくと、鉄鋼業の設備投資ということは、経済的にはそう悪いことじゃない。悪いことじゃないですけれども、鉄鋼業の設備投資というものは、自分の資本金以上のものを毎年やろうとしておる。これはいかに需要があったといっても、やはり国際収支から見て、またいろいろな点からいっても、需要の増大があるからというだけで設備投資を要求通り許すということは、なかなか経済的にはむずかしい。だからわれわれは市場の占拠率といったものは全部やめてもらう、需要の増大ということもできるだけ手控える、そうして自由化の問題につきましては、これはやはり日本経済国際収支の上からいって認めていかなければならぬ、こういうような段階で考えておる次第でございます。
  33. 野田卯一

    野田(卯)委員 次に、今回の国際収支の悪化に対処する各種の方策につきまして、民間の一般は、どうもおそきに失したのではないか、もしこれが何カ月先に実行されていたなれば、今日のような不安と混乱は引き起こさないで済んだのではないか、かように見ておるようであります。これに関する総理の御所見を承りたい。  また、公定歩合の引き上げその他の金融調整の措置については、日本銀行のイニシアチブをもっと認めたらどうか。日本銀行としても、政府方針考え方も十分のみ込んでおるのであるから、もっとそれにまかせるようにしたらどうかというような批評をなす者も多いのでございますが、この点に関しまして大蔵大臣はどう考えておられますか、お伺いをいたしたいと存じます。
  34. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 対策がおそきに失したのではないかということにつきまして、数カ月前にやったらというのですが、数カ月前といえば、予算の編成期になってしまうのですが、予算編成期にその基礎になった経済見通しについていろいろ問題があったことは、今総理や企画庁長官から説明された通りでございます。当時におきましては、私どもは、設備投資の見方はどのくらい、従って、国際収支も上半期、六月前後まではある程度の赤字はむろん覚悟しておりますが、下半期にいって出る程度の回復を期待した見込みで出発したのでございます。先ほどお話がありましたように、五月になってみますと、経常収支だけじゃなくて、総合収支の赤字を出すというような事態になりましたので、そこで、これに対しては相当の対策をとらなければならぬという態度から、一連の措置を五月以後始め、合理化審議会で、先ほどお話の出ましたような設備投資の吟味も十分に行ないましたし、その吟味を通じて、一応設備投資の認められたものにつきましても、これを一割削減するというような要請を、公定歩合の引き上げを初めとして、その結果を見ながら、今回の措置をとったということでございまして、私はそうこの対策が特に政府としておそきに失したとは考えておりません。  それから、その間において、日銀のイニシアチブの問題が出たようでございますが、これは御承知のように、日本銀行は政府と表裏一体になって金融政策の運営をすべき中央機関でございますので、私どもも十分その自主性は尊重して、今日まで日銀とは緊密な連絡のもとにいろいろな施策をとっておる、こういう事情でございますので、この点は、十分日銀の自主性というものを私どもは尊重しながらやっておる実情だと思っております。
  35. 野田卯一

    野田(卯)委員 次に私は今後の経済計画の運営上の問題についてお尋ねしたいのでありますが、わが国のように自由主義経済制度をとっておるところでは、経済計画を立てまして、その計画通り経済を進めていくということはきわめて困難であります。どうしてもあるいは計画を上回り、ある場合には計画を下回る。ある場合には計画からはずれるというようなデビエーション、食い違いがあることはやむを得ないのであります。問題は、そのデビエーションの幅をいかに少なくするかにあると思うのでございますが、数年間をとれば経済計画の数字に合うのだと申しましても、その間に大きな上がり下がりがあれば、国民生活は不安と動揺にさらされまして、その最も大きな災いをこうむり、苦難に陥るものは、経済的、社会的の弱者であります。そこで私は、自由主義経済のもとで成長計画をできるだけ円滑に、デビエーション、食い違いを少なくして進めていくためにはどういうような措置をとり、具体的にどんな態度を必要とするか、これはかなり重要な問題でございますので、総理の御所見を承りたいと存じます。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 経済成長におけるデビエーションの問題でございますが、これは高度成長の場合におきましては、非常にデビエーションが多いわけであります。イギリスのように大体年に二、三%程度の上昇率でも、相当のデビエーションがあるわけであります。イギリスは大体過去七、八年間二、三%あるいは一%切れたこともございます。マイナスのときもありましたが、大体二、三%のときでもデビエーションがありまして、御承知の通り賃金ストップ、一割間接税の増税、金利六厘引き上げ、こういうふうな強硬な措置をイギリスはやっております。アメリカのように三、四%程度の経済成長率のところでも、ドル防衛とか、バイ・アメリカンというふうないろいろなことをやりまして、景気の上昇があり、今でも五、六百万人の失業者がございます。そこで最近アメリカが非常によくなった。年五千億ドルの所得が、ただいまのところ年率換算五千三、四百億ドルのベースで今進んでいっております。来年はこれが六千億になるだろう。今年は大体五%、六%の上昇で、来年は一一%の上昇であるということを有力な雑誌が書き、みんなもそう認めておるようでございますが、さあ五%のニュー・フロンティアをやったケネディが、来年一一%の上昇になろうという、二年間で二割の上昇になろうというところに対してどういうふうな対策をとりますか、これはなかなかむずかしいことでございます。ドイツなんか昔一〇%程度の上昇をしております。今非常に下がっております。今ドイツの生産の上昇は一〇%以下で、六、七%と覚えております。ドイツはほんとう自由主義で、しかも外貨も相当持っております。経済共同体という強い基盤がありますので、割にドイツは少ないようでございますが、しかし四、五年前のドイツの上昇率と今の上昇率とを比べますと、ドイツは非常に落ちると同時に、コスト・インフレの状況に相なっておるようでございます。それに比べて日本は、二、三%とか、五、六%でなしに、一七%、二二%というような上昇を急いでやる場合においての今の食い違いということは、私は好みませんけれども、ある程度はやむを得ない。高度成長の場合には、デビエーションはよその国よりも多いということは覚悟しなければならぬ。しかしデビエーションおそろしさに伸びる力を押えていくということは、いつまでも日本国民生活水準が先進国に対して劣るということになりますから、日本人の力の伸びる程度のものを腹八分目といいますか、その程度まではやっていかすように、ある程度のデビエーションは経済施策によってこれを調整していくという考え日本を伸ばしていくことが、私はわれわれのとるべき策と考えておるのであります。昭和二十四年に私が財政当局になりまして以来、常にこういう方針でいきまして、世界の人が驚くほどの上昇をしておる。私はこの実績とこの燃え上がるブームを、デビエーションおそろしさにどうこう言うことはいかぬ。で、われわれは伸びるのを相当程度伸ばして、デビエーションが起こらないように考えると同時に、また起こった場合に、そのデビエーションをいかによく収拾していくかということを政治家として考えるべきだと思います。で、日本のデビエーションは、その成長率からいって、各国に比較のならぬほど私は少ないものと考えていいと思います、過去の歴史が。そうして今後、今度の問題でも相当起こって参っておりますが、私の聞くところでは、IMFに行かれた人とか、あるいは世界を歩いてきた人に聞きますと、日本の成長率は驚くべきであり、日本のデビエーションに対する政策は、過去は満点だった、こう言っておるのであります。私はそういう過去の経験を生かして、このデビエーションと成長度というものをいかに調整していくかということが、池田内閣の苦心のところでございます。その苦心を乗り越えてきたところに、われわれ自由民主党の成果が国民に現われてくると考えておるのであります。
  37. 野田卯一

    野田(卯)委員 総理大臣の言われます御苦心のほども十分お察しできるわけであります。一つこれは御健闘をお祈りいたします。  次に、私どもはこの前、昭和三十二年にやはり国際収支が非常に悪化をいたしまして、その国際収支均衡のために総合改善対策というものを決定いたしたことがあるのでございます。そのときに、将来あのようなことを再び繰り返さぬようにというわけで、経済企画庁を中心といたしまして経済情勢を予測し、それから前広に適時適策を講じて円滑な経済成長をはかるよう、それに必要な機構等をも整備することといたしたのでございますが、それが一体今日までどのように実行されてきたのか、またそれが十分なる働きがなされていないとするならば、いかなる改善策を持っているか、これらの点についての企画庁長官の御答弁をお願いいたします。
  38. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 三十二年のときから経済企画庁がどういうように活動を倍化しているかという御質問だと思うのでございますが、われわれも、経済企画庁としてその機能を十分発揮するように歴代長官も努力されてきたわけでありまして、機構の整備等につきましては、及ばずながら相当な進展を見ておるように思います。ただ企画庁の資料等を集めます者は、各省とも協力して参らなければならぬのでございますが、従って各省と緊密な連絡をとりながら、それぞれ主務官庁としての対策を講じておられます官庁から統計等をとって参りまして、そうしてそれを整備して参るわけでございます。ただ、残念なことに、まだ必ずしも統計全体というものが、日本でそう進歩しておらぬ点もございますので、そういう点については、これからも企画庁の仕事として、十分にこれらの問題に対しては充実さしていくように進めて参らなければならぬと思っております。われわれは企画庁の仕事をいたします場合に、経済問題につきましては、特に過去の数字等につきまして十分な検討を加えて、正しい統計の上に立って物事を判断して参り、それによって将来の見通しを立てて参らなければならぬのでございまして、ただ単に統計上だけでは、実は経済界の動きというものを判断するわけにはいかぬ場合もあるのでございます。経済人の心理状態というものがいろいろに作用して参りますから、過去の統計の数字をそのまま延長していくことだけでもっての判断というわけにも参らぬ点が多々ございます。まして、経済自体が動いておりますし、そういうような影響も考慮して参りますと、数字だけで将来を見通すということも正確にはいかぬ場合もありますので、その点はわれわれも十分考慮しながら、これらの数字を適当に判断をして、そうして将来の政策の決定に十分な、万遺憾なきを期していくように、企画庁としては努力いたして参りたい、こう存じております。
  39. 野田卯一

    野田(卯)委員 私は、従来の経済企画庁のあり方を見ますと、以前にはかなり大胆に前向きの発言をされた、ところがなかなかそれが当たらないものですから、もう将来のことは言わぬことにしようじゃないかというわけで、どちらかといいますと、うしろ向きの企画庁みたいになったような感じがいたすのです。ところが、企画庁は私はレーダーの働きをしなければならぬと思う。でありますから、前向きのレーダーの働きをするという観点から、やはり経済企画庁でも真剣にどうしたらいいか、予算が要れば予算を取って、そして大いに考えていただきたいということを注文いたしたいのでございます。  それから、このたびの国際収支悪化等のために、所得倍増計画に根本的な改定をせよとか、あるいは手直しをせよというような要望があるのでありますが、私は倍増計画自体には少しも誤りがないのではないかと信じております。倍増計画によっていかにわが国経済発展をいたし、国民が働く機会に恵まれ、生活水準向上しつつあるかということは、ここに申し上げるまでもございません。今回の事態はあまりにもたくましい民間企業家の発展意欲のために設備投資が行き過ぎて、これを主たる契機として起こった景気過熱に基づく現象でございまして、わが国経済の本質的な弱点から生まれたとか、あるいはわが国を取り巻く国際環境に予想外に大きな変化が起こったというものでもございません。従って、わが国経済の自信と、成長政策に対する信任は、これを失う理由がないと思いますが、この点に関する総理の信念を承りたい。  なお、自民党政府にて——ここをよく聞いていただきたいのですが、自民党政府において昭和三十六年度より三年間平均九%の成長率を発表したときに、社会党のスポークスマンは、こんな成長はできないとこきおろしておきながら、その舌の根のかわかぬうちに、同党の発表しました政策では、昭和三十六年度に八%、昭和三十七年に一〇%、三十八年一〇%の成長率を掲げておられる。また民社党でも三十六年、三十七年、三十八年の各年度にそれぞれ八・八%の成長率を当時打ち出しておられる。従って、両党とも自民党政府が過度の成長というものを企てたとか、あるいは見込んだという非難めいてそういうことを言われる資格は全然ない、かように私は思うのでありますが、総理の所感をお尋ねします。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 まあ、所得倍増ということは経済成長の意味なんでございまして、経済成長ということについて、私はだれも世界の人は異存はないと思います。この部分だけは、東西のあらゆる国を通じて、経済成長と言っております。ソ連は二十年間の計画を立て、当初の十年間に鉱工業二倍半、そして農業二倍半と、われわれとは違いますが、そういう計画。われわれの経済成長のうち、それじゃ日本はどうやっていくか、経済成長をどの程度見込んでいくかということを考える。これは歴史的に、イギリスは二十五年で十割増、イタリアは五年で五割増ということになっておる。私は過去の実績からいって、十年以内に十割増にしたい、こういうことを打ち出した。いかにも突拍子のようでございまするが、お話し通りに、私も社会党、民社党が所得倍増——十年に倍増、しかも私どもよりももっと強気の何を出されたことも知っております。しかし、他党のことはいざおいて、私はそういう考え方で参っておりますので、所得倍増、経済成長、十年以内に倍、こういう基本方針は誤っていない。ただ、今の現象が少し行き過ぎる、このまま続けていったら、十年じゃございません。六、七年でできる。しかし、いかんせん片一方の国際収支が赤字になっております。昨年一七%、ことし実質で一二・三%、こういうことは、少し私の九%よりも上になっておりますから押えていく。しかし、これはずっと進みが早いというので、根本政策が、倍増がだめになったというのじゃない。これはあまり進まないとだめになるということでありますが、行き過ぎておる。それを押えるのですから、これはますます倍増は確保できるものと考える。非常に条件が整ったと思っております。
  41. 野田卯一

    野田(卯)委員 最近とられました景気調整の措置によりまして、金融は引き締まり、設備投資も相当抑制されまして、一般の消費も従来の上昇線にある程度ゆるみがくるんじゃないか、かように認められますが、これらの結果を十分に織り込んだ上の政府の見込みでは、昭和三十六年度では、国際収支の経常収支におきましては、年間に赤字が八億八千万ドル、資本収支におきましては、年間に黒字が三億五千万ドル、総合収支じりは年間赤字五億三千万ドル、そうして年度末における外貨の準備高は十四億四千万ドルとなっております。そこで私お尋ねしたいのでございますが、これらを算出する基礎となりました昭和三十六年度の国民総生産、あるいは経済の成長率、設備投資、個人消費などにどんなふうにお見積もりでありますか。経済企画庁よりお伺いをいたしたいと思います。
  42. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 先ほどもちょっと触れましたが、本年度、三十五年度の国民総生産というものは、十四兆五千六百億円に対しまして、名目二二%台の増加になっておるのでございます。これが十六兆五千億円程度に達するものと予定されますので、実質では約一〇%程度の成長率を見込まれるわけでございます。そのうち個人消費は、三十五年度七兆六千七百億円に対しまして、一三・五%増の八兆七千億円、民間設備投資は、同じく三兆五百億円に対しまして二三%増の三兆七千五百億円というふうに見込んでおるのでございます。
  43. 野田卯一

    野田(卯)委員 次に、昭和三十七年度の見通しをお聞きするのでございますが、総理は、国民の協力を得ればわが国国際収支は昭和三十七年度中には均衡を回復することができる、こう言っておられますが、一体三十七年の何月ごろに均衡を得られるか、これが年初であると年末であるとでは、わが国の外貨デポジションに及ぼす影響も大いに変わって参ります。もし年末近くに均衡するというような場合には、この間に外貨が不足を来たして、IMFよりの借り入れを必要とする場合も生じてくるものと認められますが、この点に関する御見解お尋ねしたい。  それからまた、私はIMFの資金は最高限五億ドル、それから二億五千万ドル程度までは比較的容易に借り入れることができるということになっておることも知っておりますが、IMFの資金の利用は、あまりかたばらないで、気楽に使うようにすべきではないか、かように思うのでありますが、大蔵大臣の見解お尋ねするのであります。この点につきまして、先般大蔵大臣がIMF総会に出席のためにウイーンにおもむかれた折りに、IMFのヤコブソン専務理事にお会いになって、借款を申し入れられたとかどうとかいうことにつきましてだいぶ大きな問題になっておるようでございますが、私は、IMFのメンバーである日本の大蔵大臣が専務理事にお会いになることはあたりまえの話でありまして、そういうことを問題にすること自身がナンセンスであり、常識はずれである、かような見解を持っておるのでありますが、これに対する大蔵大臣の御所見も承りたい。
  44. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 IMFの幹部と何回もお会いいたしました。しかし、IMFの借款の申し出ということはやったことはございません。ただ会っている間にみんな、ひとりIMFだけじゃなくて、各国とも日本国際収支の問題については、いろいろ関心を持って説明を求められましたので、説明いたしました。日本は、今までIMFへの協力は百パーセントでございまして、この八月、九月の総合収支が大幅な赤字とかなんとか言われておりますが、もとをただせば、これは国内事情からの赤字もむろんございますが、英国の危機を助けるために五千万ドル日本が引き出しておるということも大きい原因になっておることは、御承知の通りでございますし、その他インドに対しても同様で、日本国際協力は十分にしておりますので、いつでも日本が来たら応援するが、と向こうからたびたび言われたのですが、私は、いや今考えていない、日本は少し設備投資が行き過ぎなので、これに対する措置は自分でとらなければならぬと思っているし、こういう措置をとることによって、国際収支の均衡を自分の手で回復する措置日本はとるつもりだから、どうしても困るというときには、これはそういうことがあるかもしれぬが、今のところ考えていないと言ったのです。むしろよそが応援したがっているのですが、私の方は、自分自身でその措置をとるんだと言ってきた事情でございます。またIMFというものは、おっしゃられる通り、こだわるべきものでございません。そのための国際機構でございますから、必要なときは援助を受けるのは当然だと思いますが、私は今度の場合、日本はまだ自分自身でこれからの策をとって国際収支の均衡をはかるつもりだからと言って、貸してくれという申し入れはしてきませんでした。
  45. 野田卯一

    野田(卯)委員 総理からの答弁が漏れておりますが、それもあわせて、先ほど申しましたように、三十七年度中にと言われたその時期がいつごろであるかということと、またこれから申し上げる問題とあわせて御答弁を願いたいと思います。  三十七年度のわが国経済の成長率につきましては、種々の見解もございまして、経団連は七%、総合政策研究会は四ないし五%を適当とし、総理は先日の本会議の答弁において、この点に触れられまして、五%程度でもよいというような感じを与える発言をされたように承ったのでございますが、この点に関する総理大臣の御見解を承りたいと思います。  なお、できますならば、明年度の国際収支のしりがどんなふうになるかということもあわせてお答え願いたい。
  46. 池田勇人

    池田国務大臣 どうも皆さん数字をおきらいになるのだが、非常に数字をお聞きたがりになります。なかなかこれはむずかしいのでございまして、私は施政演説で、昭和三十六年度は十六兆数千億と申しました。今藤山さんがお答えになったと思いますが、十六兆五千億とお答えになった。この十六兆五千億というのがなかなかむずかしいのでございます。それは十月からの鉱工業生産をどう見るかという、三十年を一〇〇にいたしまして、今鉱工業生産は二八八でございます。月別にいたしますれば、今まで二ポイントずつ大体上がってきておりますので、十月は普通にいったら二九〇になりましょう。あの措置がなかったら。十一月は二九二、十二月は二九五、六になるでしょう、逆に計算してみて。それをあの措置によって、今まで二ポイントずつ毎月前年同月に比べて上がってきたのが、いつごろから二ポイントが一ポイントになり、これから二ポイントが何月続き、そして一ポイントになり、そしてその上がったままで三月まで横ばいになるか、その見通しがなかなかむずかしい。そこで今までは、先ほど申し上げましたように、毎月前年に対して二二%の鉱工業生産の増加、これを十六兆五千億に見込んだ場合においては、鉱工業生産をどう見るか、輸出入をどう見るかということなんです。補正予算を考えましたときに、国民消費をどう見るかということで、なかなかむずかしい問題がありますから、まだ相当引き締め政策の結果を見なければ言えぬと思います。十六兆をこえることは確かですが、十六兆五千億とは言われないのです。これはなかなかむずかしい、私の計算するところでは。企画庁と違うかもわかりませんが、私の見るところでは、大体この十月、十一月はある程度上がって、十二月くらいから横ばいになるということになりますと、今年度三十六年度の総生産、鉱工業生産並びに農業は前年に対してどのくらいふえるかという計算をしてみますと、大体一八・五%です。これは、農業を入れずに鉱工業生産で一八・五%——一八・五%と申しますと、一昨年は二九・五%、去年は二五%、ことしの今までは二二%が一八・五%になりますと、一月からの生産はずっと横ばいになるということになる。その横ばいが今度来年のいつごろから上がっていくかということを計算しないと、来年の総生産がわからぬわけです。GNPもわからぬ。輸出入もなかなかむずかしい。こういうことで、来年のことを今言うことはむずかしい。ことにこの緊急措置をとっておる場合において言うことはむずかしいのですが、私はあの緊急措置国民の協力を得て、うまくいくならば来年の末ごろ、秋と申しますか、十一、二月ごろには、その月は均衡する。これはほかの人たちも申しましたが、明年じゅうには均衡すると申しますと、来年の四月、五月、六月は輸入期ですから、赤が相当出るでしょう。私の見込みでは二億くらいの赤になるのではありますまいか。そうして八、九月ごろからその赤がだんだん少なくなって、十月、十一月、十二月、これはクリスマスその他の輸出期ですから、十一、二月くらいにその月が大体平均する。しかし四月から累計しますと赤ですよ。そういう見込みを私は自分で立てておるものだから、そうしてまた協力を願う以上、やはり国民に希望を持ってもらわなければなりませんから、十一、二月のつもりでおったのですが、明年じゅうにはできる。これが昭和三十二年のときのように思惑輸入で、もう原材料が、普通の適正の原材料よりも五、六億ドル思惑輸入で入れた場合におきましては、輸入はうんと少なくなってきますから、私は三十二年の六月に、十月には黒字になります、こう言った。十一月、十二月からぴたっと黒字になった。これは当てることが楽なんです。今のように設備の行き過ぎ、内需の増大のときに、緊急措置でこうやっておる。そうして在庫品がある程度あります。羊毛とか綿花につきましては、三十万俵くらいずつ普通の在庫よりもたくさん入っておる。そうしてくず鉄も入っております。そうして鉄の生産を、少し内需が減ってきてあれすれば、今までは二百五十万トン入れておった銑鉄も非常に少なくなってくる。こういったように、ずっとわれわれの希望条件を並べてみましても、まだ来年の四月、五月くらいは上がるということで考えておるのであります。  そこで、今IMFの問題がありましたが、これは向こうが心配しておるので、いつでも日本には応援するから、一つ要るときには言ってきなさい。これは親切なことで、日本を信用しておるからです。これはまた三十二年のときも、私は、岸さんがちょうどアメリカに行っておられましたから、そのときに、日本の出資は二億五千万ドルですから、一億二千五百万ドルを借りて下さいといって借りました。全部は使いませんでした。こればかりではございません。EXIM、いわゆる輸出入銀行から六千万ドルの綿花借款——綿花をふやすだけではございません。大豆、小麦についても、輸出入銀行は日本に融資することをやってくれ、よろしゅうございますというので、輸出入銀行からも三、四千万ドル、三十六年度に一億一千五百万ドルぐらい借りるつもりだったのですが、三、四千万ドルで済んだわけです。IMFにしても、これはフランスなんか二年前の危機のときですが、大へんな出資相当額、これは例のないほどであった。イギリスも今度は十五億ドル借りております。日本は五千万ドル借りている。これはちょうど商売をするときに、銀行へ金を預けておいて、要るときには借りますから、一つ銀行の支店長さん、準備しておいて下さい、こういう形と、あるいは支店長の方から、あなたの方は非常に商売が発展しているから、要るときはお貸ししますよという、これは当然なことでございます。どこでもあることを日本でもやったことなんです。そればかりではございません。いろいろな手があります。そういうことは国際的によくございませんから言いませんが、日本の外貨が十四億ドルか十二億ドルになることを心配するということよりも、日本の信用が落ちたか落ちないかということがもとなんです。借金はしておりませんが、借金が多いからといって心配はありません。あの人はりっぱな人で、まじめに商売をやっているのだということが信用のもとです。私は数字を好むといいますが、十二億ドル、十三億ドルになるという心配はあまりなさらぬ方が、われわれが政府をおあずかりしておるのですから、とにかく地道にずっとやっていただければいいと考えております。
  47. 野田卯一

    野田(卯)委員 総理大臣から五%の成長率について……。
  48. 池田勇人

    池田国務大臣 五%の成長率というのは、本会議で申し上げたのは、初めの当初計画にはいろいろな議論がありましょう、十三兆六千億というものを見まして、そうして三十五年度十三兆六千億というので出発しまして、九%の上昇率になったから三十八年には十七兆六千億、しかるところ十三兆六千億を基準にいたしますと、一七・四%か一七・七%上昇して、もうずっと上へ行っているわけで、九%よりうんと上へいっている。そうすると三十八年の十七兆六千億の目標額に対して、もとが上がっていますから、九%も要らぬ、七%も要らぬ、五%くらいなら、今の規模にいたしまして、三十七年、三十八年は五%なら十七兆六千億になります、こういうことであります。しかし、これは数字を、そろばんを入れただけのもので、味も何もありません。しかるに去年実質一七%、ことし一二%あまりの実質の増を見込んで、実績がそれだけ上がっておるのにかかわらず、来年五%にしたならば、これはかなりのデフレ政策になります。そういうことはよくない。賃金はストップはしませんが、上がりません、物価は相当下がってくるということは、政府としてとりたくございません。そこで、初めの十三兆六千億から十七兆六千億まで今上がったから、あとあと五%でいいかというと、なかなかむずかしい。これはだれも賛成しないと思います。しからば三十八年の十七兆六千億を御破算にして、ここから出発したときに、景気の動向を見ながら、何%にしたらいいかということは、今の一連の緊急措置をした結果を見ながらやるべきであると思います。これは今の十月、十一月、十二月の様子を見て、そうして来年度の予算を組むときの参考に、もう少し動きの様子を見なければいかぬと思います。大事なことでございますから、さよう御了承下さい。五%というのは十七兆六千億を見たのか、九%は要らないで五%にするか、しかし六%にするか、七%にするか、また九・二%にするか、いろいろ問題はございましょうが、よく皆さんと御相談いたしまして、適正にきめたいと思っております。
  49. 野田卯一

    野田(卯)委員 五%の意味はよくわかりました。  それから次に、このたびの総合対策について、特に輸出振興に重点を置かれておりますことは、まことに適切であり、意を強うするところでございます。これと関連いたしまして申し上げたいのでございますが、わが国の輸出の今後は、どうしても機械類の輸出、特にプラント輸出に重点を置くことが必要でございますが、現在の輸出入銀行の資金は量的に非常に不十分であり、また条件も他国の同じ機関の種類に比べまして厳格に失するように認められます。でありますから、その量の増加と条件の緩和をはかることが絶対必要と認められますが、これに関しまして通産大臣、大蔵大臣から御所見を伺いたいと思います。  なお、海運関係につきましては、国際収支改善対策は、邦船の積み取り比率の低下防止の措置をとることになっておりますが、具体的には一体どんな方法をとられるか。わが国の海運は、戦争中に外航船のほとんど全部を喪失いたしまして、政府よりの補償金は全部打ち切られてしまって、惨たんたる打撃を受けました。その後の海運の立て直しはもっぱら外部よりの借入金に依存して参りましたが、その金利も最近までは海外注文船に比べまして不利な取り扱いを受け、万年不況をかこつ産業に堕してしまったのであります。まさに政府の政策のギャップに沈湎し、苦悩を続けるという姿でございましょう。しかも政治家政府も、海運業の救済育成の問題につきましては、どういうものか熱意が足らない、あるいは弱腰のようにも見受けられるのでありますが、倍増計画に基づく輸送要請に応ずるためには、また海運収入の——これは国際収支上の大問題でございますが、海運収入の確保増強のためにも思い切った助成の措置をとるべきものと考えますが、この点に関する総理大臣の御所見を承りたいと思います。  なおもう一つ政府国際収支改善の一策として外資導入を積極的に推進する考えを持っておられるかどうかという点であります。わが国が輸出した場合、もちろん外貨の手取りになりますが、それには輸入原材料を使うことが相当多いのでありまして、その全部が手取りとはならないのでありますが、外資導入は、その総額そのものが外貨手取りになるという点から見まして、外資の充実のためにはきわめて有効な手段でございまして、活用すべきものと存じますが、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。  なお、外資導入にあたりまして、その条件につきましては、緊急の際でもございますから、平常時に比べましてこれを緩和ずる特別の考慮が必要と考えられるのでありますが、これについてもあわせて大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  50. 山村新治郎

    山村委員長 野田君、最初に運輸大臣に答弁を求めますか。
  51. 野田卯一

    野田(卯)委員 どちらでも……。
  52. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 貿易外収支の改善に関連をいたしまして、今後の日本の海運強化の問題についてお話がございました。日本経済成長に伴いまして、船をたくさん作っていきませんと、どうしても積み取り比率がだんだん低下して参ってくることは申すまでもないことであります。今日すでに輸出の面におきましては、なお五〇%以上の積み取り比率をやっと保っておりますが、輸入貨物につきましては、四六%という低下をいたしております。従いまして、今後船舶の増強は、どうしても日本経済を円滑に発展させていくためにも必要だ、かように考えております。今までの考えといたしましては、大体ここ五カ年間に四百万トンの新造船が必要であろう、平均年間八十万トンという割合になるわけであります。さような意味からいたしましても、本年は自己資金によるもの二十五万トン、計画造船二十五万トンということでありましたが、これをさらに二十五万トンを増加をいたしまして、自己資金の分を入れまして、大体八十万トンくらいは今年並びに来年の初めにかけてはできるんじゃないだろうか、かように考えておるわけであります。来年度新しくまた八十万トン程度は作っていかなければならぬ、かように考えております。しかしながら、おっしゃいますように、日本の海運企業の基盤は非常に脆弱でございまして、たくさんの借金をかかえて、たくさんの利払いに苦しんでおる、元本の償還遅滞を来たしておりますのが約七百億もあるわけでございまするので、従って、海運界の国際競争力を高める、そして日本の海運界が過去のように世界の海運業界に雄飛ができるようにいたしますためには、この際思い切った海運企業の改善方策を考えていかなければならぬ、かように考えております。ただいま海運合理化審議会にその方途についても諮問をいたしておりますが、その諮問の答申と相待ちまして、抜本的な具体策を考えて参りたい。また、先ほどちょっとお触れになられました輸出船に対する金利と、それから国内船を建造する際の金利に、若干国内船の方が不利なような立場もございますので、この点を是正いたしますのみならず、少なくとも船舶建造につきましては、諸外国の海運界における金利で船ができるようにいたして参りたい、かように考えまして、ただいまいろいろと来国会に提案をいたします法案その他について慎重に研究中でございます。
  53. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 外資導入の問題でございますが、これは御承知の通り国民経済発展に寄与するということと同時に、これが国際収支の改善に寄与するという限りの外資については、日本はこれを歓迎するという立場で、戦後この導入をはかって参りましたが、国民経済の事情によって、国の力が回復するに従って、この条件を緩和しながら今日まで来ました。社債の発行と貸付金債券の取得というような問題につきましても、国内で過重投資にならないようにという配慮を十分にしながら、そのときどきの妥当な条件というものをきめて、そうして外資導入をやって参りましたので、最近もこの導入実績というものは非常に上がっておる現状でございますが、今後もそういう方針で必要な外資の導入ははかっていきたい、こう思っております。  それから、株式の問題についても、これは御承知のように、ことしの五月から大幅な緩和の措置を講じまして、従来は二年据え置きで、日本の株式を買った場合に、この売却代金を向こうへ送金するというようなことも大きい制限をつけておりましたが、これも大幅な緩和をいたしましたために、最近日本の株式取得というような形の外資導入も、相当実績で昨年の何倍かになるというような情勢になっておりますので、逐次こういう方針のもとに必要な外資の導入をはかっていく方針でございます。
  54. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 輸出振興で大事なのは、申すまでもなく金融あるいは税制、こういう点が取り上げられるわけであります。輸出入銀行に対する出資は、この国会に大蔵省から提案いたしております八十億の出資並びに百二十億の融資を計画いたしております。もちろんこれは当面の計画でございます。  なお、お尋ねになりましたプラント輸出等の延べ払いの問題でございますが、これは各国とも輸出競争の際に、それぞれ工夫をいたしております。その内容等はなかなか公表いたしておりませんからわかりにくいのでありますが、それぞれの方法で各国がとっておる内容等も参考にいたしまして、ただいま関係省で特別委員会を設けて、これまでとまっておりましたプラント輸出その他を促進するように、八月以降実施いたしております。
  55. 野田卯一

    野田(卯)委員 このたびの景気調整の総合対策によって最もおそれられておりますのは、中小企業に対する圧迫であります。中小企業はそれでなくても大企業に比べまして、各種の悪条件に悩まされておりますが、今回の金融引き締めの措置によりまして、銀行からの資金の融通について困難を感ずるのみならず、この支払い条件等においても非常な圧迫を受けておりまして、このままの情勢でいきましたなれば、黒字倒産が各地に続発するのではないかというふうに思われるような深刻な状況でございます。これに対しまして政府の方でも、特段の注意を払われまして、中小企業関係三機関に対する財政投融資を三百五十億円追加されるのほか、中小企業金融を緩和するために、二百億の買いオペレーションを行なうことに決定されました。しかしながら、現在並びに今後の状況を見ますと、これではとうてい足りないと思われます。三十二年度のときの経験によりましても、中小企業は二千億円の金融の引き締めを受けておると言われております。私は、どうしても、今後の見込みから申しますと、この三機関に対する投融資あるいは買いオペレーションを合わせまして、さらに四百数十億円、すでに決定したものを加えまして一千億円程度というものが見込まれなければならないのではないか。そのくらいの腹を政府はきめておかなければならぬのではないかというふうに感ずるような次第でございます。  なお、民間金融におきます中小企業向けの貸し出しのシェアを確保するとか、あるいは拘束預金を抑制するとか、また、金利については、せんだっても総理大臣が本会議場におきましても力強く、金利は上げさせないんだということをおっしゃいましたが、これを必ず励行していただく、できればものによっては下げる方にも持っていっていただくということが必要と考えられるのでありますが、この点につきましては、通産大臣並びに大蔵大臣の御答弁をお願いいたします。
  56. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは先般の本会議でも申しましたように、中小企業金融の一番のにない手は、何と言っても市中の金融機関でございます。たとえば信用金庫を見ましても、信用金庫の中小向け貸付は一兆円に及んでおるというように、全体の市中金融機関の貸付は何兆円というものに及んでおるのでございますからして、この資金を切られることが中小企業には最も痛いことでございます。政府関係機関の資金量というものは、御承知の通り、それに比べたら非常に比重の低いものでございますので、私どもが一連の金融引き締め措置を講ずるときには、一番心配しなければならぬのは、やはり市中金融機関が中小企業への貸し出しの率を落とさないということと、それから、金利を特に上げないということでございますので、この点に対する措置については、今行政指導を徹底させております。公定歩合は前後二回上げましたが、そのつど中小向けの貸付金利は上げないようにと要望して参りましたが、これは政府の要望通りに、市中金融機関でも申し合わせによってそれを行ない、また信用金庫、相互銀行も、これは管下みな通達で徹底させるというような措置をとっておりますので、今の点は、この点で相当うまくいっているのではないかと思います。しかし、それでもなおかつ中小企業の金融というものは窮屈になっていることは、はっきりしておりますので、政府においても、とれるだけの対策はとるという方針をきめまして、政府機関の国民金融公庫以下三つの機関に対しては、年末需要を考慮して、三百五十億円の手当をする、また同時に、中小企業に特に貸してくれる市中銀行に対しては、市中銀行の持っている金融債等を政府資金で買い上げてやるという買オペの道もここで開こう、これは必要に応じてどんどん強化していくというような一連の策を準備しましたので、この点については、私どもも十分今後ともこの中小企業金融については気をつけて参るつもりでございます。
  57. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま詳しく大蔵大臣からお答えいたしました。政府考えは同一でございます。もちろん私どもとしては、弾力的な運用ということに特に重点を置いて、今後の金融の実情に対処するということで参りたい、かように考えております。
  58. 野田卯一

    野田(卯)委員 中小企業の金融問題はきわめて深刻な問題でございますから、将来その資金の増額等につきましては、格段の政府あげての御協力、御努力をお願い申し上げておく次第であります。  次に貿易の自由化でございますが、貿易の自由化は世界の大勢でございまして、これは外から押しつけられたものじゃなく、日本自身の問題として、わが国経済の堅実な発展世界経済に対する発言権を強化するためにも、どうしても進まなければならない道でございます。政府は貿易・為替の制限緩和に関するIMFとの話し合いの過程におきまして、明年十月を期して、九〇%の自由化に踏み切りまして、これを四段階に分けて実行すべくぜん立てを発表いたしました。私はこの自由化の問題に関しまして、数個の点について政府所見をただしたいと思います。  その一つは、今回の自由化繰り上げが、依然として外から押しつけられた感じがする、それが非常に強いことであります。わが国としてもすでに一定の自由化計画を立てまして、三十八年度半ばまでには、現在発表されました程度の措置とほぼ同等の自由化の実行を予定しておりましたのでありますが、八条国移行の勧告を振りかざしまして迫られた結果、ついに明年十月九〇%に繰り上げを認めることになったとわれわれは見ております。私は交渉のしさいには通じておりませんが、このような強圧的な感じを与えない方法と程度において、話し合いはできなかったものか、今後のこともあるので、この点を大蔵大臣にお伺いいたします。  その二といたしまして、今回の国際収支改善に関する一連の施策との関係でございますが、それらの施策によりまして、わが国の企業が、特に大企業が金融面において抑制を受け、設備投資のごときは困難となるものと認められますが、もっとも政府は、貿易自由化のための緊急を要する合理化投資については、周到な配意を加えるということになっておると言っておられ、現に先ほども総理大臣からも、その意味の強い御発言がございましたが、問題は、実際にそれがどの程度実現せられるかということでございまして、当事者としては疑いと心配なきを得ないのでございます。政府といたしましては、自由化を繰り上げて実施する以上は、どうしても自由化に必要な設備投資については、格別の取り扱いをなさるべきものであると考えるのでございますが、その具体的方法について通産大臣より承りたいと思います。  その三といたしまして、わが国に対しましては貿易の自由化を強く唱え、あるいは押しつけがましいことを言っておりまして、その国自身は、日本に対しては貿易上の差別待遇をしておるという国々に対して、わが国のとるべき態度であります。ガット三十五条を援用して、わが国に平等待遇を与えない国がなお十五カ国に上っております。また実際上わが国に対して輸入上差別待遇をしている国がございます。これらの国々に対しては、日本としては、こちらからだけ無条件に自由化をするというのは、どうも筋が通らないのであります。政府は、これらの差別待遇をしている国に対して、その差別を撤廃せしめるためにいかなる措置をとられようとしているか、またその見通しはどうかということについてお伺いをいたしたいのであります。  またアメリカとの関係におきましては、バイ・アメリカン、あるいはシップ・アメリカンの方針が堅持されておるようでございますが、国際収支が危機に瀕して、これを乗り切るための一時暫定の方法として、一応了承できないこともないのでございますが、今日のように、米国は景気の回復上昇がきわめて快調でありまして、彼我の関係が一年前とはところを異にするの感がある今日、アメリカに向かいまして、わが国に対する方針に改変を要求すべきものと思うのでございますが、これに関する政府当局の見解をただしたいのでございます。  その四は、対象品目と自由化時期との問題でございますが、根本方針として、すでに発表されましたところによって実行すべく、万全の国内措置を講ずるが、しかしながら各般の情勢上、それが十分に効果を上げ得ない、自由化に危険の存するような場合には、決して無理をして破綻を招くようなことのないように、弾力性のある運用がぜひとも必要であると思いますが、これに関する御意見を承りたいと思います。また品目によりましては、適切な関税の引き上げなどの関税制度の活用によって対処し得るものは、十分にこれを考慮していくべきものと思われますが、これに関する御意見を承りたい。  次に、その五は、舶来品ムードの打破と国産品愛用の問題でございます。わが国民のうちには、まだまだ舶来品尊重の観念がうせておりません。このたびの自由化促進を契機として、これがまた頭をもたげる傾向にございます。最近の自由化計画の実行にあたって、当初予定されていた奢侈的な品目が数品目削除されましたことを聞きまして、その良識を多とするものでありますが、今後も十分に注意せられまして、舶来ムードの打破のために、業界を指導して適切な施策を講ぜられるべきであります。また国産品愛用運動をこの際強調して、日本品はかつて安かろう悪かろうといわれておりましたが、これが今日では安かろうよかろうというふうに変わってきておるのが、海外における評価でございます。従って国産品の愛用は、昔に比べまして自信を持って推進し得る状態にあると思います。特にわが国の国産の機械のごときは、機械類の生産が今後わが国経済発展の大黒柱となり、数年後におきましては、輸出におきましても、その半ばを分担せねばならぬ状況が予想せられております。従ってわが国の機械産業の育成は、最も緊要な国策として推進せられなければなりません。この意味において、機械を中心として国産品愛用を強力に推し進めるために、あるいはその輸出を増進するために、国産品愛用促進法ともいうべき法律の規定を考慮してはいかがかと考えるのでありますが、この点に関する通産大臣の御意見をお伺いしたいと思います。  その六といたしまして、石油の自由化と石炭産業及び本邦系石油鉱業との関係でございます。わが国の石炭産業は、先年打ち立てられました合理化計画に基づきまして、三十八年度までにトン当たり千二百円切り下げの目途をもって、鋭意合理化に努力しておりまして、相当の成績を上げてきておるのでございますが、最近における資材の価格の高騰などは、その前途に赤信号を点じておるのであります。そこへもって参りまして、今度の石油の自由化の決定であります。今日すでに石油の価格は、石炭に比べまして割安といわれておりますが、今後石油の価格は、さらに下がっていくことが予想せられるのであります。これは石炭産業にとりましては一大脅威でありまして、もしほうっておきますなれば、石炭産業は壊滅的打撃を受けることは、必至であると考えられます。これに対しまして、政府はいかに対処する考えでございましょう。これに対しまして通産大臣、並びに労務者の問題に関連いたしまして労働大臣の御答弁をお願いしたいのであります。また国内で生産されます石油や、本邦系の会社がアラビア、スマトラ等において生産する石油は、外国系石油会社の石油と価格面におきまして競争することは困難となるものと認められます。政府においては、これらに対していかなる対策をお考えになっておるか、お伺いをいたしたいと存じます。
  59. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 だいぶん時間がない結果か、盛りだくさんでございましたが、あるいはもし落ちておりましたら追加させていただきます。  第一に、設備投資抑制、これが自由化に対処する場合にうまくいくかどうかという御指摘であったと思いますが、申すまでもなく、設備投資の抑制にあたりましては、私ども直接生産に関係ある部門はあとにするつもりでおります。先ほど総理とのお話の間にもありましたように、まずこの際に拡大するというような点は抑制をいたしますが、いわゆる設備投資のうちにも、直接生産に直結しない部分も相当あるわけであります。たとえば社屋の建設等、こういうものがまず第一に抑制の対象になってくる。今日まで鉄鋼業界その他の業界と話し合いを進めておりますが、今予定されております一割削減というか、そういうことには各界の協力を得つつあるように思います。また、この設備投資の場合に、私どもが特に気をつけなければならないと思いますのは、中小企業の部門において、産業の近代化等、これには設備投資が十分効果を上げ得るように、抑制もそういう点で実態を十分把握していきたい、かように実は考えておるわけでありまして、この指導もただいまそれぞれ軌道に乗りつつあるように考えます。また、エネルギーの面におきましても、設備投資の面では、私どもが特別に工夫を要するように考えております。  第二のお尋ねの、差別待遇をしている国に対してはいかなる処置をとっていくかということでございます。もちろん貿易の基本的な原則は相互主義であるということが、これはあらゆる場合に主張され得ることでありますし、もうこれは国際上の大原則でございます。従いまして、当方といたしまして差別待遇を受けておりますものに対して、相互主義の原則に立って話し合いを進めてみたい、かように思っております。当初予定いたしました十月一日から実施する自由化の品目のうち、すでに欧州等差別待遇をしておる国に対して、これに対応する処置をとろう、かように考えましたが、新聞記事等であるいは報復の処置というような記事が出まして、これは大へんまずいことで、私ども、報復じゃなくて相互主義に立つということでございまして、これらの国々とは外務省が交渉を始めまして、十、十一月の二カ月の間に、相互主義の原則に立つ、そういう解決の方法でただいま交渉することにいたしております。従って、十月に予定した自由化の品目のうち、一部は十二月一日まで実施をおくらした、かような状態になっております。これも御了承いただきたいと思います。  また、アメリカの、バイ・アメリカンあるいはシップ・アメリカンの問題でございますが、これなども、相互主義の原則に立って貿易を拡大するという立場になりますと、いろいろの議論があり、アメリカ政府自身も、ドル防衛の当初に申した点からは相当後退しておるようにも見受けております。従いまして、十一月に開催されます日米合同委員会等におきましては、これらの点についてもさらに懇談を続けていくつもりでございます。  また、自由化と、かように申しますと、関税も、あるいは数量の制限等も一切やらないかのように一部で考えておりますが、特別な品種のものにつきまして、関税なりあるいは数量制限等の考え方、これはもちろんわが国産業の育成の見地から必要なことだと思いますので、具体的に対処して参るつもりでございます。  また舶来品にかえて国産品愛用の運動を展開してはというお話でございますが、これはPRを十分にすることによりまして、国民の協力を得ることが必要だと思います。ことに高級品は舶来品だというような考え方は、今日の状態においては私ども納得がいかないのであります。ことに、御指摘になりましたように、国産機械の優秀性、これは特に私ども国民の間にも呼びかけたいし、今後の輸出の品目といたしましても、機械類の輸出に特に力を入れるつもりでございます。ただお話がございましたように、国産愛用についての法律を用意してはどうかという御指摘でございましたが、ただいまの段階では、そこまでは参っておりません。各団体等の協力を得まして、十分国産愛用の効果が上がり、外国品にとってかわる、こういうような状態を作りたい、かように実は思っておる次第であります。  また自由化について、中小企業についての特別な配慮は、先ほどちょっと触れましたが、同時に私どもが特に自由化の際に気をつけなければならないものは、石炭の問題であります。石炭の問題につきましては、過去におきましても、石炭産業に対する特別対策を樹立いたしまして、今回はその内容を充実することによりまして、ある程度対処できるのではないか、こういう考え方もございますが、どうも急激に、しかも非常に短期間の間に効果のあるような処置をとる、そのためには政府全体がこれと取り組むことが必要であろう、かように考えまして、政府部内に石炭関係閣僚会議を設けることにいたしまして、そうして基本的対策について十分検討を続けて参る。さらに、その内容の充実をはかっていきたい、かように考えております。今日までとりました大綱なるものは、申すまでもなく、ただいま御指摘になりましたように、三十八年度以降五千五百万トンの数量、これは絶対に確保する。その場合に千二百円の炭価の引き下げ、この基本線は守り抜いていく。業界におきましても、この点においては一応御了承を得ておるようであります。ただ最近の物価変動、あるいは炭価形成の各条件等が相当悪化いたしておりまするから、経営者側においてもさらに合理化を進めないと、千二百円の炭価引き下げはなかなか実現が困難ではないかと思います。そういう場合の基本の考え方として、スクラップ・アンド・ビルドと申しますか、非能率炭鉱の廃止等の計画の実施を進めて参りまするし、また長期にわたっての石炭の引き取り契約、これは行政指導でいたすつもりでございますが、大体石炭の七割程度を電力その他で引き取らす長期契約を実施いたしたい、かように考えております。  また当然に予想されます離職者対策、しかも今回の離職者は中高年層であるだろう、かように考えますと、これについても特別な方途を考えなくてはならない。あるいは産炭地振興についての事業団等も計画いたしておりますが、これももちろん政府部内でさらに十分検討を要する問題のように思います。  また石油と石炭との問題でございますが、この基本的な考え方では、総理も本会議で表明されましたように、安い石油と、また炭価を引き下げるといたしましても、これと比較すれば高い石炭、それをそのままの姿で競争さすということは、私どもも必ずしも適当でもないと思いますが、安いものは安くあり、また高いものは高くあっても、総合的にエネルギーを使用することによって、双方でコスト・ダウンも可能ではないか、石炭のコスト・ダウンも可能ではないか、こういう総合的対策を樹立したい、かように考えております。  また、石油の問題につきまして、特に国産石油、国内の石油あるいはアラビア石油、スマトラ石油等の民族資本によるものと、外資系との調整の問題、これは今後の私どもが取り組む大きな課題になっております。この点につきましても、自由化計画の一つとして、来年の十月を目途にして計画をいたしておりますが、これに対処する場合に、関税その他と結び合わして考えていきたい、かように考えます。
  60. 福永健司

    ○福永国務大臣 石炭産業の現状及び将来については、労働省も特に深く憂うるものであります。今日まで炭鉱離職者臨時措置法によりまして、政府としましては広域職業紹介、あるいは特別の職業訓練、あるいは緊急就労対策事業への吸収、こういった一連の施策を講じて参りましたし、また雇用促進事業団をして移住資金、あるいは職業訓練手当の支給、移動労働者用住宅の建設、住宅確保奨励金の交付等、こうしたこともやらせて参りました。今度自由化と関連いたしまして、ただいま通産大臣が言われたようにいろいろ施策を講じて参り、労働省としては、できるだけ離職者を多く生じせしめないようにということを願うのであります。しかしある程度のものが不可避であるとするならば、もとよりこれに対処していかなければなりません。よって労働省といたしましては、今申し上げましたような施策を中心としまして、さらに一そう考慮を払って、より充実した対策を講じていきたい、かように考えます。
  61. 野田卯一

    野田(卯)委員 なおもう一つ昭和三十七年度の財政について質問を予定しておりましたが、時間が経過いたしましたので割愛いたしまして、私の質問は終わります。
  62. 山村新治郎

    山村委員長 それでは、午前中はこの程度にいたしまして、午後は正二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  63. 山村新治郎

    山村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  予算補正二案に対する質疑を続行いたします。河野密君
  64. 河野密

    河野(密)委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、首相並びに外務大臣、関係閣僚に対しまして、主として外交問題を中心としてお尋ねをしたいと思います。  本第三十九臨時国会におきましては二つの問題が課題となっておると思います。一つは外交問題、現下の国際情勢にいかに対処すべきかという問題であり、いま一つ経済問題、曲がり角にきた日本経済をいかに指導すべきかという問題であると思います。  世間では池田首相は自他ともに許す財政経済のベテランであり、外交問題についてはしろうとである、しかるに政治の成果を見ると、くろうとのはずの財政経済政策で大きなミスをやるのじゃないか、かえって外交の面で点をかせぐのではないか、こういう評価をいたしております。これは池田首相としてはおそらく心外なことであろうと存じまするが、世間の評価はそういうふうであるのであります。  しかし世間が点をかせぐのではないかと言っておりまする池田内閣の外交政策そのものに対して、私たちは決して安心しておるわけには参らぬと思うのであります。経済政策の是非は直接国民の生活にはね返って参りますので、国民関心もきわめて高く、その成敗利鈍がてきめんにわかって参ります。しかし外交問題になりますると、結果の反応がゆっくりとわかって参りまするので、ややもすればなおざりにされがちであります。しかし国家百年の大計を考えてみるときにおいては、外交政策こそ重要に考えなければならないと思うのでありまして、この意味から、私は具体的な問題につきまして、池田総理の外交政策について、率直なる御見解を尋ねたいと思うのであります。  第一にお尋ねをいたしたいのは日ソ関係であります。見本市が開かれたのを機会といたしまして、来朝いたしましたソ連のミコヤン副首相が、八月十六日にフルシチョフソ連首相の親書を池田首相に手渡しました。これを契機として、一連の書簡の往復があったことは御存じの通りであります。池田総理は、フルシチョフ首相主張を反駁して返書を送った中において、平和条約締結の前提として北方領土の解決を求める、こういうことを回答いたしましたのに対しまして、フルシチョフソ連首相から重ねて書簡が参りまして、北方の領土はすでに解決済みである、すでに日本が権利、権原を放棄した領土について、今さらにその死点——死んだところから動かそうとすることは無理だ、こういうことを述べておるのであります。これに対しまして池田総理は、先般の参議院の本会議場を通じまして、領土問題には一歩も譲らない、こういう強硬な見解を吐露いたしまして、本日の本委員会における午前中の質疑におきましても、同じようなことを池田総理は繰り返しておられたと思います。  そこで私は事の順序といたしまして、この領土問題、南千島日本領土なりと主張する理由はどこにあるのであるか、池田総理領土問題は一歩も譲らぬと言われるその根拠はどこにあるのであるか、これを一つ組織立てて御説明を願いたいと思います。
  65. 池田勇人

    池田国務大臣 お求めでございまするから、時間がかかるかわかりませんが、しばらく御清聴を願いたいと思います。  幕末におきましてわが国民が相当北方に参りました。あるいは千島にあるいは樺太に参りましたことは御承知の通りでございます。しこうしてそういう問題がございましたので、日露の関係におきまして一八五五年、領土に関する条約が結ばれたのであります。その当時も、われわれは択捉国後日本固有領土であるということを確認いたしております。次に明治八年、一八七五年におきましては、日露の間に南樺太千島交換がございました。そのときに千島、クーリル島というものは、初めて国際的に得撫島以北十八島ということに相なっておるのであります。このことを考えますと、ちょうど吉田全権がサンフランシスコにおきまして、われわれはきん然とこの平和条約を受諾いたしまするが、歯舞、色丹は日本領土であり、択捉国後はいまだかつて日本より離れたことはないのだ。ここに日本固有領土であるということをはっきり宣明いたしておるのであります。これが、私が日本固有領土であると言う根拠でございます。  その次に、国際的にこの千島に対しましての帰属の問題が出たのは、一九四一年、大西洋条約でございます。その後において、カイロ宣言におきましては領土不拡張——大西洋条約でも領土不拡張、カイロ宣言でも領土不拡張ということを確認されたのであります。そうしてわれわれは、カイロ宣言に基づくポツダム宣言を無条件に受諾いたしたのでございますから、領土不拡大の原則によって、古来からの日本領土であった択捉国後というのは、日本から離れるべきものではないという確信を持っております。あるいはいわく、フルシチョフ氏は、一連の平和条約によってもう既定の事実になっておる、こういうことを言われますけれども、その条約とは何であるか、これはヤルタ協定でございます。ヤルタ協定におきましては、三者の間において樺太、千島ソ連に渡すという密約ができたらしい。われわれは関知いたしませんが、カイロ宣言は関知いたします。その密約によりましてかどうか、サンフランシスコ平和条約の草案につきましては、参議院の本会議でも述べたと思いまするが、昭和二十六年の二月ころのダレス氏の草案は、南樺太ソ連にリターンする、返還する。千島ソ連にハンド・オーバーする、譲渡するという草案であったと私は記憶いたします。その草案ができたゆえんのものは、察するにヤルタ協定にあったから、アメリカもそういうことを草案に書いたのかもわかりません。しかしわれわれが二十六年の九月にサンフランシスコへ参りましたときに議題になりました平和条約につきましては、ソ連に樺太を返すとか、あるいは千島ソ連に譲渡するということは一つも見当たりません。われわれは御承知の通りに樺太、千島に対しまする権利、権原及びあらゆる請求権を放棄すると言っておるのであります。だれに放棄するのか、平和条約に調印した相手国に放棄するのであります。しこうして今の外務大臣のグロムイコは、外務次官、首席全権として参りましたときにこれを指摘しております。草案と違うじゃないか。違うんです。もう返還とか譲渡じゃないのです。これは、日本国が権利、権原、あらゆる請求権を一方的に放棄するというだけであります。ソ連は何の理由があって今までこれを占領しているのでしょう。私は、その平和条約に調印しないソ連が、もう国際的にきまりきった問題だと言うことはフルシチョフの独断だと考えます。しこうして千島の問題につきまして、どこからがクーリル島かということは、先ほど歴史的に申し上げた通りであります。吉田さんも、これは日本領土から離れたことはないのだ、ヤルタ協定に対しまして、アメリカがこれを有効、無効と言うことは別問題である。ヤルタ協定で話されたより違った平和条約が出てきて、そうしてそれに調印したのであります。私はこのゆえをもちまして、大西洋憲章あるいはカイロ宣言、ポツダム宣言、平和条約のそれからいって、当然日本のものであるということを主張いたしたいのであります。またアメリカにおきましても、この千島の解釈につきましては、一九五六年、択捉国後日本固有領土であるということを宣言しているのであります。
  66. 河野密

    河野(密)委員 千言万語を費やして御説明になりましたが、私が今池田総理が言われたことを要訳してみますと、その国後択捉は歴史的に見て日本固有領土だ、こういうこと、それからヤルタ協定というものは秘密協定であって、これは認めることができないのだ、こういうことが理由であると思うのであります。その通りでよろしゅうございますか。
  67. 池田勇人

    池田国務大臣 ヤルタ協定につきましては、日本は周知いたしておりません。
  68. 河野密

    河野(密)委員 私は、この領土の問題はきわめて微妙な問題でありますから、誤解をしないように一つ聞いてもらいたいと思うのでありますが、この固有領土ということを、どういうとこから平和条約あるいはカイロ宣言、ポツダム宣言——固有領土ということがどっかに使ってありましょうか。
  69. 池田勇人

    池田国務大臣 領土不拡大という原則が打ち立てられております。従って領土不拡大ということの前提には、固有領土ということがあるわけでございます。
  70. 河野密

    河野(密)委員 大西洋憲章、それからカイロ宣言、ポツダム宣言、これは一貫していることはお話し通りであります。しかしカイロ宣言は大西洋憲章とは内容が同じじゃありません。ポツダム宣言はカイロ宣言の条項は守らるべしとは書いてありますけれども日本領土に関する問題については別なことが書いてあります。四つの島に限らるべし、並びにその指定する付属の島嶼に限らるべし、こういうことが書いてあるわけであります。ポツダム宣言を受諾している。サンフランシスコの平和条約は、これは池田総理は全権としておいでになったのだからよく御存じだと思うのでありますが、このサンフランシスコの条約は、内容に南樺太あるいはそのあれをハンド・オーバーと書いたとか書かぬとかいうことは別としまして、そのサンフランシスコの平和条約がこのカイロ宣言、ポツダム宣言を受けておることは間違いのない事実だ。そうしますと、ポツダム宣言を受諾し、そうしてサンフランシスコの平和条約を受諾したものが、どうして千島二つに分けて千島列島という中にある南千島だけを取り出して問題にするか、その理由はどこにあるか、これを私は聞いておる。
  71. 池田勇人

    池田国務大臣 これは先ほど申し上げましたごとく、今まで千島列島とは、歴史的に得撫島以北とわれわれは考えられる事実があります。それは千島列島として樺太と交換したとき、あるいはまた一八五五年のあの日露条約でも、私の記憶するところでは、ソ連千島列島の領土と認めたのは、得撫島以北の十八の島と私は心得ております。しこうして、こうやってみますと、四つの島とは何ぞやというときに、われわれは千島得撫島以北千島、樺太は含みません。しかし択捉国後は、われわれ固有領土であるということを考えておりますし、大西洋憲章並びにカイロ宣言領土不拡大ということは、固有領土は認める、そうしてそれが四つの島ということになっております。四つの島のうちと私は考えておるのであります。
  72. 河野密

    河野(密)委員 それは池田総理、あなたがお考えになるだけであって、国際的にそういう考え方が認められておるのですか。あなたはけさも言われたと思うのでありますが、アメリカにおいても歯舞、色丹はもちろん、国後択捉日本領土であると認めておるのだ、こうおっしゃいましたが、一体だれが認めておるのですか。どういう根拠によってこれを言われるのでありますか。
  73. 池田勇人

    池田国務大臣 まず日本国民択捉国後わが国固有領土と認めておる。(河野委員アメリカが認めておる」と呼ぶ)まずです。まず日本国民がそう認めております。しこうして一九五五、六年のあの日ソ交渉のときにも、一応問題になりましたときに、アメリカ政府は、択捉国後日本固有領土であるとメンションしたと記憶しております。
  74. 河野密

    河野(密)委員 ただアメリカが明確に公文書あるいは公的の宣言等において明らかにしたかどうかは、それははっきりしていただきたいと思います。私の記憶するところによれば、このヤルタ協定について通訳をしておったボーレン氏がアメリカの上院で証言をしておると思うのでありますが、その中においても、ヤルタ協定は無効であるというようなことをアメリカ政府が言ったことはないと思います。
  75. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 これは一九五六年の日ソ共同宣言ができまする際に、アメリカ側としてクーリル・アイランズというものの解釈をしておる。すなわち、総理からお答えになりました通り、得撫以北占守島に至る十八島がクーリル・アイランズであると解釈しているということであります。
  76. 河野密

    河野(密)委員 私はそれじゃ率直に池田総理お尋ねいたしますが、池田総理は全権としてサンフランシスコの平和条約に出席されておるのであります。もしそういう考えがあったならば、なぜサンフランシスコの平和条約を承認するその席上において留保するかあるいはそういう主張をなさらないのであるか。ただ日本がそう思うのだ、あとになってそれを言っても無理じゃないですか。
  77. 池田勇人

    池田国務大臣 今のヤルタ協定の効力云々の問題につきましては、私は先ほどお話し申し上げますように、ヤルタ協定におきましては、南樺太千島ソ連に返還あるいは譲渡する、こういうことになっておったのを、草案を作りましたアメリカがそれを変えまして、ヤルタ協定より違った案を出したのでございます。だから私は、ダレス氏並びにアメリカ政府は、ヤルタ協定と違った案を出していることによって、アメリカ気持がわかると思うのであります。しこうして、そんな重要な問題を講和会議でなぜ言わなかったか、こう言われますと、講和会議では吉田首席全権は発言しておられます。固有領土ということが問題になりますので、歯舞、色丹はわが国領土であり、言葉は、択捉国後はいまだかつて日本から離れたことはないという言葉を言われておられるのであります。これは、はっきりサンフランシスコの平和会議の壇上で言っておられるのであります。
  78. 河野密

    河野(密)委員 私は、池田総理の善意をかりに否定しないといたしましても、これはだれにお聞きになってもわかりますが、法律上の効力というものはこの心理留保——心の底で自分はこう思っていたのだから、リゼルバチオ・メンターリスというのは効力を持たないのです。あなたがそのとき以来どういうことを考えられておったとしても、法律的に効果のあるような行動をしなければ何ら国際的に意義はないわけであります。アメリカはそれならばこのソ連の領有に対して何らかの抗議をしたことがありますか。あるいは平和条約に調印をした諸国のうち、ソ連が樺太、千島列島を領有することはけしからぬ、こういう抗議をした国際的な事例がありますか。
  79. 池田勇人

    池田国務大臣 吉田首席全権がそう言われましたとき、いわゆる固有領土であるということを言われたときに、何らこれに対して異議を差しはさむものはございませんでした。私は、これが自分だけ思ったから意味がないのではないかと言われますが、そうではない。われわれの宣言に対して、その発言に対して何らあれはなかったのであります。しこうして今ソ連千島を占領しているこの事実については、まことに遺憾です。しかし遺憾だからといったって、合法性を持たすべきものではない。しかもまた千島列島は択捉国後を含むものだという事例が、今までの歴史にどこにございますか。千島列島のうちに択捉国後を含むのだという積極的なあれはないでしょう。千島列島、クーリル・アイランズというものは得撫島以北だという事実は、厳然としてあるのであります。これをお考え願いたいと思います。
  80. 河野密

    河野(密)委員 日本では、日本人がそう考えることはちっとも差しつかえない。私もそう考えたいけれどもヤルタ協定を締結をした当事者あるいはそれに基づいて条約を、草案を作った平和条約の立案者並びにポツダム宣言等を立案した人たち、それはそういうことを考えておるという証拠はどこにもないのです。これは水かけ論じゃありませんか。そうなると、あなたがおっしゃる、あなたはそう思うけれども国際的にそれを立証すべき何ものもない、こういうことになるじゃありませんか。
  81. 池田勇人

    池田国務大臣 どうもお話の点が十分徹底していないようでございますが、領土不拡大ということは、はっきりしているのでございますよ。これはお認めになるでしょう。しかる場合において、ヤルタ協定は、領土不拡大という原則に立っておるかどうかは存じませんが、南樺太得撫島以北千島列島をソ連に返す、譲渡するというヤルタ協定を結んだアメリカが、平和条約の草案にはあったけれども、それを削除いたしまして、ただいま申し上げましたように、日本千島南樺太に対する権利あるいは権原、あらゆる請求権を放棄するということは、条約の調印国に言っているわけであります。そこでヤルタ協定ソ連に返すということは、平和条約では消えてしまっている、消えておりましょう。それを私ははっきりお考え願いたい。しこうして草案者のアメリカは、ヤルタ協定と違う草案を作ると同時に、その後において、択捉国後日本固有領土であるということをアメリカは言っている。これに対して調印した連合国は何とも言っていないのですから、これは、はっきりした事実じゃありますまいか。
  82. 河野密

    河野(密)委員 私はこうだと思うのです。総理の言うようにヤルタ協定を認めるか認めないかということは、これから私は論じますが、平和条約ヤルタ協定が消えておるというのは、それはどこに証拠があるか。私は外務大臣にお尋ねしますが、昭和三十年に外務省からアメリカに対して、この千島の問題について照会しているはずでありますが、その回答はどういう回答があったのですか。
  83. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 外務省は、九月十三日にこの覚書を発表いたしておりますが、これは「最近のロンドンにおけるダレス国務長官との会談に際し、重光外相からなされた要請に応じて、国務省は今回の日ソ平和条約交渉中に提起された諸問題につき、とくにサンフランシスコ平和条約の署名国としての米国の利害関係に照らして、検討を行なった。国務省はこの検討に基いて次の通り意見を開陳するものである。領土問題に関しては、さきに日本政府に通報した通り、米国はいわゆるヤルタ協定なるものは、単にその当事国の当時の首脳者が共通の目標を陳述した文書にすぎないものと認め、その当事国によるなんらの最終的決定をなすものでなく、また領土移転のいかなる法律的効果を持つものでないと認めるものである。サンフランシスコ平和条約——この条約ソ連邦が署名を拒否したから、同国に対してはなんらの権利を付与するものではないが——は、日本によって放棄された領土の主権帰属を決定しておらず、この問題は、サンフランシスコ会議で米国代表が述べた通り、同条約とは別個の国際的解決手段に付せらるべきものとして残されている。いずれにしても日本は、同条約で放棄した領土に対する主権を他に引き渡す権利を持っていないのである。このような性質のいかなる行為がなされたとしても、それは、米国の見解によれば、サンフランシスコ条約の署名国を拘束し得るものではなく、また同条約署名国は、かかる行為に対してはおそらく同条約によって与えられた一切の権利を留保するものと推測される。米国は、歴史上の事実を注意深く検討した結果、エトロフ、クナシリ両島は(北海道の一部たるハボマイ諸島及びシコタン島とともに)常に固有日本領土の一部をなしてきたものであり、かつ、正当に日本国の主権下にあるものとして認められなければならないものであるとの結論に到達した。米国は、このことにソ連邦が同意するならば、それは極東における緊張の緩和に積極的に寄与することになるであろうと考えるものである。一九五六年九月七日」これが、私さっきちょっと申し上げましたことの詳細であります。  なお、ついでに申し上げておきたいと存じますが、この十八島嶼というものは、内容はことごとく明らかにされておるのであります。南千島国後択捉の両島は、一貫してわが国領土であるということを先ほどから申し上げておるのですが、その島の内容でありますが、これは一八五五年の日本国、ロシア国通好条約、それに……。
  84. 河野密

    河野(密)委員 古いのはいいです。
  85. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 新しいもので全部島の名前があるのです。時間がないからやめることにいたしますけれども、非常に明らかに島の名前が一々明記してありますことを、特にこの際申し上げておきます。
  86. 河野密

    河野(密)委員 私が最初にお断わりしましたように、領土の問題はきわめてデリケートな問題だから、一つ冷静に聞いていただきたいと思うのですが、今いろいろお話しになりましたが、結局するところはこういうところになると思うのであります。  ソ連千島を領有するのはヤルタ協定に基づくものである、しかしヤルタ協定というものは、これをわれわれは認めないんだから、そのヤルタ協定というものに拘束されることはないんだ、こういうことが私は一番根本の問題だと思うのであります。  そこで、これから私の見解を申し上げますが、一つ冷静に聞いていただきたいと思うのです。ポツダム宣言を受諾しました。ポツダム宣言は、カイロ宣言の条項は守らるべしということは書いてありますが、日本に関する条項の点については、カイロ宣言より一そうきびしくなっております。そうして四つの島並びに連合国が規定する島々に日本の主権は限らるべしということになっておるのであります。そこで、ポツダム宣言を受諾して、そのポツダム宣言の精神をそのまま継続したと当然考えられる、これはいかに理由づけをしたとしてもそれは考えられるサンフランシスコの条約というもので、日本は権利と権原を放棄したのであるから、正面からそれらの島々に対する日本の領有であるという主張をすることは非常にむずかしいということは、私ははっきり言えると思うのであります。しかし、この領土ソ連が領有するということはヤルタ協定に基づくのであるから、ソ連が領有するということに対して、これは領有すべきものであるとかないとかいうことは、これは言えると思うのであります。しかし、それはヤルタ協定をわれわれが認めないという立場に立っているのでありますが、しかし、アメリカにしてもイギリスにいたしましても、ヤルタ協定というものに拘束される、少なくともそれに対して拘束されるということを考えておることは間違いのないことであります。これは現にサンフランシスコの平和条約そのものに、日本の権利、権原を放棄せしむるという、放棄せらるべしという条項を平和条約の中に入れたこと自身が、ヤルタ協定というものを尊重している証拠であると私は思うのであります。サンフランシスコの平和条約ヤルタ協定自身を内包している。そこで私の見解によれば、アメリカがかりにヤルタ協定には縛られぬのだ、今お読みになったように、ヤルタ協定には縛られぬのだ、これはソ連世界平和のために日本主張に同意するならば非常に望ましいことだという考え方を持つとするならば、アメリカ自身がそういう国際的な何かのイニシアチブをとるとか、動きをするか、新しい会議を持つか、あるいは新しい宣言をするか、そういうことをする必要があると思うのであります。それでなければ、幾ら二つの国の間で文書の交換によって、これはそういうものであるべきだといっても、それは国際的な効力は持たないと思うのであります。  そこでその場合において、今度は新しく千島列島、いわゆる日本の手を離れて、権利、権原を日本が放棄して、しかもソ連がそれを領有すべきでないということが決定した、その島の処遇という問題については、これまた国際的にそれらの関係諸国においてきめるべきものであって、日本ソ連との間においての話し合いだけでそういう問題が解決するとは私には考えられないのでありますが、そういう点についての見解というものがきわめてあいまいであると思うのであります。そこで私たちソ連に対して主張し得ることは、われわれはヤルタ協定というものはわれわれの関知し得ないところである、関知せざるところである。秘密協定であるがゆえに、われわれはこれは国際信義の上からもこれに拘束されることはないのだ。しかし、われわれはこのサンフランシスコの平和条約によって、権利、権原をすでに放棄しておるのだから、これに対して正面切って主張するわけにはいかないけれども国際平和の大局的見地から、ソ連はこの問題について日本と何らかの話し合いをするあれがないかどうか。こういうこと以外に、私は領土の問題に対して日本主張すべきことはないと思うのであります。これはどうでしょうか。
  87. 池田勇人

    池田国務大臣 まず第一にサンフランシスコ平和条約ヤルタ協定を内包する、それを含んでいるというお話でございまするが、私はそう思わないということは、先ほど来るる言っておることでございます。ヤルタ協定におきましては、樺太、千島の問題は、ソ連に返還あるいは譲渡するというのが、ヤルタ協定であったのであります。しこうして一九五一年ですか、昭和二十六年の初め、一月ごろにはヤルタ協定のあのソ連に返還するという草案が考えられておったと私は承っております。しかるにわれわれが調印いたしました条約には、ヤルタ協定に含まれておった樺太、千島ソ連に返すというのは全然ないのです。日本はあの調印した国に権利、権原、一切の請求権を放棄するということでありまして、この点は、平和条約ヤルタ協定とは違っております。そこで内包するとは私は言えぬと思うのです。違っていると申し上げておきます。  それで第二に、この千島、樺太というものは、ソ連が調印していないのですから、しこうして日本は完全に放棄したのですから、この得撫島以北千島と、あるいは樺太というものは、あの平和条約に調印した国々がきめるべき問題であって、日本はこれにタッチすべきものではございません。だから私は、ある機会にこの問題を連合国で一つきめてもらいたいということは、ごく非公式に言ったことはございます。だから第二段目の点は国際的にきめるものだということは、私は同感です。しかし、それにソ連が含むか、含まぬかは論外ですよ、ソ連は調印していないのですから。調印していない国に、一方的にわれわれは放棄したわけではないのです。そして今われわれの問題にしているところは、択捉国後日本固有領土であるか、カイロ宣言に言っている固有領土であるか、固有領土であれば、今までの歴史が示すごとく、南千島は放棄したうちに入らない。これは平和条約会議で、吉田さんがあえて発言した事実があるのであります。
  88. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 先ほどちょっととりまぎれまして失礼いたしましたが、十八島嶼の名前を申し上げます。クーリル・アイランズというのは一体どこかというのは、一つの問題点だと思いますから、ここで申し上げます。千島、樺太交換条約にあげられておる十八島嶼とは「第一シュムシュ島、第二アイランド島、第三パラムシル島、第四マカンルシ島、第五オネコタン島、第六ハリムコタン島、第七エカルマ島、第八シヤスコタン島、第九ムシル島、第十ライコケ島、第十一マッア島、第十二ラスツア島、第十三スレドネワ及びウシシル島、第十四ケトイ島、第十五シムシル島、第十六プロトン島、第十七チエルポイ並びにプラット・チェルポエフ島、第十八ウルツプ島」こういう合計十八の島を全部列挙しております。これで、何がクーリル・アイランズということは明瞭だと思います。
  89. 河野密

    河野(密)委員 固有領土は動かさないということは、これを私がさっきから聞いておるのは、固有領土は動かさないということをきめたというその証拠はないわけなんです。念のために私はヤルタ協定のあれを見ますと、ヤルタ協定では、先ほど総理も言われましたように、二つのものを区別しているわけであります。そのヤルタ協定で、南樺太については、これは南樺太とその近海の諸島の回復と、こういうことになっております。それから千島列島をソ連は獲得する、こういっております。固有領土も何もないのです。千島列島を獲得する。これを千島列島を獲得する、こう言った以上は、その千島列島の中に固有領土が含まれているかいないかというようなことは、ヤルタ協定においては問題になっておらない。これだけは間違いのない事実であります。そうすると、それを平和条約ヤルタ協定とは内容的にも違うのだとあなたは主張されるわけなんですが、それは当時の吉田総理演説の中で、今あなたがお述べになったようなことを言われたことも私は知っております。知っておりますが、これはこの条約に対する留保条項をつけたのだ、こういうことを述べているのじゃないのであります。ただ日本意見を述べたにすぎないのであって、一つ演説であります。日本としては、おれはそのとき述べたのだ、こういうことになるかもしれませんけれども、そういうことじゃない、ただ述べたにすぎないのであります。そういうことであります。  そこで問題は、しぼって参りますと、もしあれだけ世界のことに敏感であるアメリカが、ヤルタ協定というものの権原を認めない、ヤルタ協定というものに拘束されないと考えたならば、私は、日本に命じて千島列島、南樺太の権利、権原を放棄させるというはずがないと思うのであります。それを放棄させて、しかもあなた方は調印してちゃんとその放棄を認めて帰っていらした、そうなんでしょう。そういうことになっておって、問題はヤルタ協定をどういうふうに見るかということであります。もしほんとうアメリカが誠意を持って、ヤルタ協定というものは秘密協定であるからこれはこういうものに拘束を持たすべきじゃない、将来の世界平和のためにこういうものは認めてはいけないのだという考えがあるならば、国際会議においてなり、国際的な宣言においてなり、何らかの行動を起こさなければならぬはずだ。ただ日本が照会したことに対してアメリカ見解を述べるということによってこの問題の解決にはならないのであります。私たちヤルタ協定は認めない、われわれはああいう秘密協定は認めたくないという考え方においてはあなた方と一緒であります。一緒であるが、そのヤルタ協定を認めないということになったそのあとの問題というものは、これはわれわれの言うところによれば、ただ認めないからおれのものだ、こういうことでソ連が何だということでいくのじゃなくして、われわれとしては世界平和の見地から、これはそれをソ連が同意するようにしたら非常に世界の平和のためにもなるのじゃないかという方法を見出さなければならない。これは私たちとあなた方との違うところであって、あなた方はただ強がりを言っておればそれで事が足りるような考え方でありますけれども、われわれはそうは考えない。もし日本が言う前に、アメリカほんとうにそう思うならば、なぜソ連の領有に対して抗議をしないのですか。当然今までほかのラオスの問題にしても、あるいはベトナムの問題にしても、エジプトの問題、チベットの問題にしても、アメリカ抗議をしておるのです。抗議をしておるけれども、それにもかかわらずこの問題に対しては何らの抗議をしてないということ自身を、あなたはどうお考えになりますか。それはヤルタ協定そのものが平和条約の中に内包されておるという、何と弁解しようと、どう言おうと、これは否定できない事実だと私は思うのであります。これは否定すべからざる事実で、ほかのことを言うならば、すべてそれは私は詭弁だと思うのでありまして、しかもヤルタ協定というものは、チャーチルの回顧録を読んでもおわかりになりますように、これはルーズベルトとスターリンと二人だけで話し合って、ハリマンとかそういう人が入っておるけれども、そういう人たちがきめたので、イギリスのチャーチルはただ自分はめくら判を押したにすぎないのだ、アメリカがどうしてもこうしなければいけないというから、それをやったのだ、日本に対してソ連の参戦を求めるためにはどうしても必要だということであるから、自分はそれに対して同意を与えたのだとちゃんと書いておるのです。自分は決してあの条文を作成するについても、協定を作るに対してもタッチしておらぬのだ。アメリカソ連だけでやったことなんです。そのアメリカソ連に道義的にか、あるいは政治的にか縛られておる。こういうことがずっと尾を引いておるという事実をわれわれは否定するわけにはいかぬと思うのでございますが、どうですか。
  90. 池田勇人

    池田国務大臣 繰り返して申し上げるようでございますが、アメリカヤルタ協定を守っておりません。それは守るべくやったところ、守らないことに変わったということで、ヤルタ協定できめられたごとく南樺太千島の問題をソ連にリターン、あるいはハンド・オーバーする、返還譲渡するということが草案の草案には載っています。これは、ヤルタ協定に基づくアメリカの草案でございます。しかしわれわれが調印した講和条約では、ヤルタ協定とは違って、ソ連に樺太、千島を返すということが載っていない。これが私はヤルタ協定を内包していない、こう断定する証拠でございます。しこうして今のヤルタ協定その他の問題のときに、千島とは何ぞやという問題については、何らきめられていない。クーリルアイラズというもには、今言うように一八七五年のあの交換条約にきめられたように、十八島というのが歴史的に残っておる事実であります。また明治八年のときも得撫島以北であります。だから、今のヤルタ協定の問題と、択捉国後固有領土ということは別のカテゴリーでございます。ヤルタ協定というものは、サンフランシスコ講和条約にあの協定とは違った案が出ておるから、内蔵していない。しからばあなたの言われる得撫島以北千島並びに樺太を今ソ連が占領しておるからという問題につきましては、われわれは択捉国後に対しましては抗議を申し込みますが、日本としては、得撫島以北千島南樺太は連合国に放棄した。これはソ連が占領しておる事実は知っておりますが、われわれは放棄したものでございますから、連合国とソ連との間の問題と心得べき問題だと思います。
  91. 河野密

    河野(密)委員 それでは池田総理お尋ねしますが、国後択捉の問題が片づけば、あなたはソ連との間の平和条約は即時にでも締結する、こういうお考えですか。
  92. 池田勇人

    池田国務大臣 私はそうしたいと考えております。択捉国後の問題を日本固有領土として返還してもらう、これが平和条約を結ぶ領土問題の前提でございます。
  93. 河野密

    河野(密)委員 私たちがこの領土問題について今までどういう努力をしてきたかということを一言申し上げたいと思うのでありますが、われわれは今池田総理が言われるように千島列島を分けて、南千島、北千島というように分けて考えてはおりません。われわれはヤルタ協定そのものを、大国間の秘密の決定によって第三国がこれに拘束をされるということは、国際信義の上からいって、国際平和の上からいって非常に望ましくないことである、こういう観点に立って私たち領土問題に対処しております。従って、私たち領土に対して、このヤルタ協定に基づくソ連の領有というものはやめてもらいたいのだ、こういうことをわれわれはいろいろな機会においてソ連側に申し入れをし、会談をいたしております。日ソ共同宣言ができた翌年、片山団長を中心といたします訪ソ使節団が参りまして、この点についていろいろ話し合いをいたしました。それから昨年は鈴木さんが参られまして、その点について話し合いをいたしました。それらの点を総合してみますのに、ソ連側の言い分はこういうことであります。千島々々と言うけれども千島というものは経済的価値はないのだ。何ら経済的価値を認めるべきところではない。日本もかつてはあれを領有しておったが、領有しておった千島列島に対して、りっぱな道路一つ作ってないような状況であって、政治的には全く放置されておった。しかし経済的に価値がないけれども、残念なことには軍事的に非常な価値を持っておる。その軍事的価値を持つがゆえに、わわわれとしてはこの千島の問題というものを非常に重要に考えておる。こういうのがその結論のようであって、ここに軍事基地が作られないという保障は一体できるか、千島に軍事基地が作られないという保障がはたしてあり得るか、こういう点が問題の焦点にしぼられておるように思うのであります。そういう点から考えると、私はあとからお尋ねいたしますが、沖繩施政権の返還の問題、こういうものとにらみ合って解決をする以外にこの問題の解決はない、こういうふうにわれわれは考えるのであります。そうしてもし交渉の結果によって軍事的な基地が作られない、軍事的にこれが利用されないという保障ができるならば、その問題については将来の考慮の余地のある問題である、こういうのが私は偽らざるソ連側の意向であると思うのであります。(「甘い甘い」と呼ぶ者あり)甘いか辛いか、それはわからないけれども、とにかくこういう点が領土問題の核心であって、さっきから池田さんが声を大にして言われるような固有領土が、一八七五年の条約から引き出してクーリル島がどこからどこまでかというような問題が、領土問題の解決のキー・ポイントじゃないということだけは、私ははっきり申し上げることができると思います。どうでしょうか。
  94. 池田勇人

    池田国務大臣 私は歴史的に、条約的に、またわれわれの固有領土ということの説明のために申し上げておるのであります。しこうして問題は、サンフランシスコ平和条約というものがもう一つの厳然たる事実でございます。あとから、沖繩問題も出るそうですか、そのとき申し上げてもよろしゅうございますが、今のいわゆる択捉国後を除いた千島、樺太、これにつきましては、連合国に放棄いたしておるのであります。それ以上のことは日本としては申されません。
  95. 河野密

    河野(密)委員 そこで私は領土の問題はお互いに平行線でなく、一つの解決の道を見つけ出すというところにしぼって参りたいと思いましたが、どうもただ固有領土とかいうところにだけ固執されておることは非常に残念であります。  そこでもう一つお尋ねいたしますが、池田総理のお考えでは、日ソ平和条約の交渉は、それではお始めにならぬ、当分はやらぬ、こういう考え方でありますか。
  96. 池田勇人

    池田国務大臣 領土問題について意見が一致する見通しがつけば、なるべく早くやりたいと思います。  なお、河野さんがヤルタ協定を認めないというお気持を言って下さったことを、非常にありがたく感じております。
  97. 河野密

    河野(密)委員 ヤルタ協定を認めないというのは、われわれも数年前から主張している。われわれの方の刷りものにもちゃんと出ておりますから、どうぞ勉強してほしいと思います。  そこで、日ソ問題だけに時間をとるのですが、日ソ関係というものは最近非常に憂慮すべき状況にあると思うのであります。あなたとフルシチョフ首相との書簡の応酬にも現われているように、事ごとにいろいろな点において対立状態があるように思われるのであります。七月の六日にソ朝軍事同盟が締結され、ソ朝軍事同盟というのは、日米軍事同盟に対抗するものといわれて、公然と日本を対象としておるのであります。八月三十一日には核実験が再開され、引き続いて太平洋ロケット射撃の実行などが行なわれまして、わが国としてはこの日ソの関係というものは、非常に看過し得ない状態にあると思うのであります。しかも、これはあとから外務大臣からお答え願いたいと思うのですが、漁船の拿捕も相当に多くあるように聞いております。こういう情勢に対処して、何かここで日ソ関係の打開の道を見つけなければならないと私たち考えるのでありますが、総理は一体これをどう打開しようと考えておるのであるか。それともこれは自然の成り行きにまかせようというのであるか。日ソ関係の前途に対してどういうふうにお考えになっておるか、この点をお答え願いたいと思うのであります。  さらに、日ソ貿易も、昨年は輸出が六千五百万ドルに達しまして、前年に比較して二・三倍と伸びておりまするが、これは決して満足すべき状態ではないと思うのでありまして、日ソ貿易の前途というものも、やりようによれば大いに発展の余地があると思うのであります。  さらに、日ソ文化協定でございますが、日ソ文化協定の締結も、五月に日本側の案を示して、ソ連側からこれに対する回答が来ておるはずでありますが、今日に至るまでこの文化協定というものがどうなっておるのでありましょうか。ソ連と英、米、西独との間においてすらも、この文化の実施協定が締結されておりますが、日本がこれをちゅうちょしている理由はどういうところにあるのであるか。アメリカは対ソ貿易でも、はるかに日本を上回るところの輸出入を行なっておりますし、ソ連旅行者の中でも、一番多いのはアメリカ人である。アメリカソ連との間に二カ年間の文化の実施協定、全面的な文化協定を結んでおる。なぜ日本はこういう問題について消極的であるのか、こういう問題について一つお答えを願いたいと思います。
  98. 池田勇人

    池田国務大臣 日ソ関係の友好の度を増していくことに努力いたしたいと、私は常々から考えておるのであります。平和条約ということになりますと、今のところは領土の問題が出て参りますので、なかなか今のように先鋭化するようでありますが、その前提におきまして、日ソの好転ということは、常に私は念願しているところでございます。従いまして、まず日本からモスクワの見本市を開催し、今年向こうから来られた。また貿易支払協定も、一年でございましたが、今度三年に延ばしまして、そして延べ払い等々につきましても話し合いを進めておるのでございます。私は今後貿易の面につきまして、飛躍的な発展が遂げられることを期待いたしておるのであります。  なお文化協定の問題につきましては、外務大臣からお答えいたさせます。
  99. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 今総理大臣からお答えいただきましたように、経済面におきましては、なかなか最近活発になりまして、一億数千万ドルに上る貿易ができているわけでございます。  今お尋ねの文化協定でございますが、日本側の案にかなり歩み寄った先方の案が示されまして、最近われわれといたしましては、わが方の案をまた先方に提示いたしました。ほどなく先方から何か言ってくると思いますが、そういう際でございますから、内容につきましては発表することを差し控えさせていただきますが、要するに相互主義によって、両国の図書の交換、あるいは科学技術者の交換、あるいは映画会というようなものを相互に開催するということでございます。何分にも予算の制約がございまして、われわれの方といたしましては、ソ連の持っている文化関係の予算、それに相互主義の建前から、相応ずる程度のものでなければできないという点がございまして、樽爼折衝を進めておるわけでございます。
  100. 河野密

    河野(密)委員 その折衝が、きわめて簡単な文化協定であるにかかわらず、長い間かかっている。しかも、いつできるかわからないというような状態では、これは私はあまり日本の名誉にもならないと思うので、すみやかに協定を成立するように望むのであります。  さらに、先般ミコヤン副首相が来たときに、延べ七千人の警官を必要としたというような情勢は、これは非常に日本として不面目なことであると思うのでありまして、これらの点についても十分考慮してほしいと思うのであります。  そこで私は、次に沖繩施政権の返還の問題についてお尋ねしたいと思うのでありますが、池田総理は、先般日米会談において、沖繩施政権の返還という日本国民の悲願について、米国側と十分話し合ったと言っておりますが、当時の新聞報道では、この問題について特に話し合いはなかった、こういうふうに報道されておるが、どちらがほんとうであるか、話し合ったとすればその具体的な内容、成果は一体どういうものであるか、これを具体的にお答え願いたい。
  101. 池田勇人

    池田国務大臣 ケネディ大統領との会談の一つの問題でございまして、話し合いいたしました。そしてその結果は、共同声明にも出ておる通りでございます。共同声明に出ております以外につきましても、具体的な問題があるのでありますが、施政権の問題につきまして、われわれ日本国民——沖繩住民も国民でありますが、この悲願を私は訴えております。ただ向こうにおきましては、極東の現情勢では、今施政権を返すわけにいかないと、従来言っていることを主張しておるのであります。われわれはなるべく早く返してもらいたいけれども、それまでにおいても、具体的に沖繩住民の福祉、生活向上について、われわれの方も犬馬の労をとる、アメリカの方におきましても、十分考えてもらいたいという方針意見が一致いたしまして、今後その方向で進むことになっておるのであります。
  102. 河野密

    河野(密)委員 池田総理は、先般本会議の席上におきまして、先方が施政権を返すのがいやだというのを、力ずくで返せというわけにはいかないのだ、だからその施政権返還の問題は、まだ具体的にはできなかったのだ、こういうことを言っておられますが、それでは、その施政権を返還しない、アメリカがいやだという根本的な理由は、一体どういうところにあるのでありますか。
  103. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほども申し上げましたように、極東の情勢から考えて今は返せない、こういうことでございます。
  104. 河野密

    河野(密)委員 極東の情勢から考えて今は返せない、そういうばく然としたことではわれわれ納得がいかないのでありますが、その極東の情勢というのは一体どういう、何をさしているのであるか、どういうふうに、いつそれではその交渉に応じようとするのであるか。ことにこの問題について、本議席においてもしばしば問題になりましたが、一体沖繩の施政権アメリカが持っておるという根拠はどういうのだ、平和条約第三条との関係において、アメリカが施政権を持っておるという点は、いつまでも持っておる、無期限に持っておるということは許されないはずだ、こう思うのでありますが、これはどうなっておりますか。こういう点について話し合いをしましたか。
  105. 池田勇人

    池田国務大臣 平和条約第三条にはっきり、国連の信託統治になるまではアメリカが施政権を持つと書いてあります。従いまして、施政権は現にアメリカの権利としてアメリカが持っておるわけです。しかしわれわれは高度の政治性の立場からいって、条約で施政権を認めましたけれども、沖繩の住民のことを思い、そして日本に主権があるのだからなるべく早く返してもらいたい。これは、私は政治的には当然のわれわれの要求だと思っております。向こうでは今の極東の情勢——まあこれは西欧情勢とも関連いたしますが、今の状態では、極東の平和、安全のためにアメリカがここを確保する必要がある、こう言っておるのであります。
  106. 河野密

    河野(密)委員 この平和条約の三条によると、これは国連の信託統治になるまでというのでありまして、アメリカが一体沖繩を国連の信託統治にするという意思を表明したことがありますか。
  107. 池田勇人

    池田国務大臣 私の記憶では、国連の信託統治に移すという表明は聞いておりません。一にアメリカ考え方できまるのでありましょう。外務大臣より詳しくはお答えいたします。
  108. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御承知のように第三条によりますと、アメリカ国連の信託統治にするということを言い出せば、日本はそれに従う。しかしそれに至るまでの間は、そういう提案がされ可決されるに至るまでは、三権の全部あるいはその一部をアメリカが行使する、こういうことになっておるわけであります。従ってアメリカはそういう権利は持っておりまするが、いつまでにそういうことをせねばならぬという義務を負うているわけじゃないわけです。従いましてアメリカがそれを言い出さぬ限りにおいては、アメリカの現在の三権を持っておるという立場は変わらぬわけでございます。しかし講和条約の調印に際して行なわれましたアメリカのダレス、あるいはイギリスのヤンガーの演説の中にも、潜在主権という問題が指摘されておるわけです。先ほどのお話ですと、そういう際の演説はあくまでも演説だということでございましたけれども、そうではございませんで、それに対する異議がございませんでしたから、われわれとしては、潜在主権というものは認められておる、こういうことでこの沖繩、小笠原の問題を見ているわけでございます。
  109. 河野密

    河野(密)委員 沖繩の施政権を返還しろということに対して、アメリカがこの施政権の返還を渋っている一番大きな理由は何かということになりますと、軍事基地の問題であろうと思います。軍事基地を確保するということのためにアメリカはその施政権の返還を渋っている、私たちはそう思うのですが、どうですか。
  110. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 現在の東西間の緊張した状態というものは、極東においてもあるわけであります。そういう状態をなくなすべくわれわれ国連その他においても、あるいは二国間の間においても努力しておるのであります。そういう状態が解消した暁においては、施政権の返還というものがなされる、こう思っております。
  111. 河野密

    河野(密)委員 それでは日本としては、この国際情勢の現状が続く限りにおいては沖繩の施政権の返還というものはあり得ない、大体そういうふうに考えておるのですか。
  112. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 国際間の緊張と申しましても、いろいろな程度があるわけであります。われわれはできるだけ早く施政権の返還を望む、こういうことを申しておりますが、現段階においては、われわれの希望する状況と一般的に認識せられる状況というものにまだ若干隔たりがある、一日も早くわれわれの希望するような状態になりたい、かように思っております。
  113. 河野密

    河野(密)委員 アメリカが沖繩の施政権を返還することを渋る最大の理由は、軍事基地の確保がはたしてできるかできないかという問題、ここにあると思うのであります。先ほど来総理と応答いたしました千島の問題にいたしましても、ここに軍事基地が設けられるか設けられないかということが、ソ連側の一大関心事であるということと私は相呼応しておると思うのであります。そこでこの問題を何らかの形において現状を打破しない限りにおいては、沖繩の施政権返還もできないし、北方における領土の問題の解決も、これは百年河清を待つようなものである、こういうふうに思うのでありまして、ただ領土を返還しろと強いことを言って、そうして国民の、何といいますか、悪い言葉で言うならばショービニズム、そういうものに迎合する、最近の西ドイツがやっていることと同じようなことだと思うのでありますが、そういうこと以外にないと思うのでありますが、どうですか。
  114. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 それは、どうも河野さんのお話ですけれども、非常に違うと思います。私どもは、固有領土というものは、領土不拡大の方針からいって、これは当然われわれに権利を認められるべきものである、こういう主張をしておるのでありまして、これはきわめて当然のことであると思います。沖繩、小笠原の問題についても、潜在主権は認めておるというのが現在の立場であります。しかし極東の情勢があるから、そこに基地が保有されており、その施政権はまだ日本に返ってこない、こういうことであります。北方領土の問題は、これは最初から日本の潜在主権も、日本領土であるということも認めていないわけなんです。従って、固有領土であるから認められるべきものであるということをわれわれが主張することは、何もあなたのおっしゃるような、一般の民心にこびるショービニズムであるとか、そんなようなことは全然考えておらないのであります。どうもそういう条件と本質を混淆された議論をされることは、私ども残念であります。
  115. 河野密

    河野(密)委員 アメリカに行かれるときに、私はこの席上から施政権返還の問題について、池田総理に強く要望したと思うのであります。国会でも施政権返還の決議をしようという動きのあったことも御承知の通りであります。それは要するに南の方の領土が解決をしない限りにおいては、北の方の領土の問題も解決しないのだ、そういう国際上の情勢というものは一貫しておるのでありますから、その国際上の情勢、これに対処する日本態度、立場というものを変えない限りにおいては、これは領土の問題を、幾ら施政権は返還要求します、あるいは領土の問題について、われわれはこういう強いことを言うのは、それは要するに国民を扇動するだけにすぎないのだ、こういうことを私は言う。これがどこが悪いのですか。その通りじゃありませんか、今の国際情勢は。
  116. 池田勇人

    池田国務大臣 私はその通り考えません。択捉国後の問題は、これは条約以前の当然の問題として私は論議しておるのであります。当然の日本固有の権利として言っているのであります。それから沖繩の問題は、条約アメリカが施政権を持ち、そうしてアメリカの意思によってこれを国連の信託統治に置くことができる。ただ日本の主権は、先ほど申し上げましたように、米英の代表が日本の主権を認めるという演説をしたのであります。これは私は適当な演説で、われわれもそれをありがたく、そして主権を主張しているわけであります。沖繩の問題に条約上施政権が認められたからといって、固有領土であり日本のものである択捉国後を不法占拠しているソ連の行為を認めるわけにはいきません。事柄が違います。
  117. 河野密

    河野(密)委員 この沖繩の問題も——総理、よく聞いて下さい。沖繩の問題も平和条約の問題であります。それから北方の領土の問題も、同じあなた方が調印してきた平和条約の問題であります。しかも沖繩の施政権条約の上に明文があって、これは国連の信託統治にするまでアメリカを唯一の施政権者とする云々という文句が書いてあるわけであります。そういう信託統治にするまでの間、アメリカに施政権を認めていくのだ。だから日本としては、これはいつ信託統治に移すのだ、信託統治に移す意思がないならば施政権を返せ、これは条約上、堂々と言えることなんです。北方の領土の問題は、日本は権利権原を放棄しておるのであります。それは国後択捉までは放棄してないというのは、あなた方が演説の中でそれを言っただけであって、それがはたして国際的に認められておるか認められてないかということはわからないことなんです。あなた方の主観においてのみ存在することなんです。しかも南の方の施政権の返還の問題は、平和条約第三条に明確に書いてある。それに従ってアメリカに善処を求めるということ。それは条約上からいえば、軽重からいうならば、南の方のことの方がはるかに重いことなんです。これは今の国際情勢から、一貫して、南の方では、軍事基地を確保することができなければ困るという意味において握っておこうとする。北の方では、ここに軍事基地を設けられては困るという意味において握っておこうとする。そこで日本の現在の政治情勢、あり方、外交の方針というものに対して何らかの工夫がなければ、ただいたずらに強がりを言うだけにおいては、これは単に国民を扇動するにすぎないじゃないか、こう言うのがどこが悪いのですか。
  118. 池田勇人

    池田国務大臣 河野さんは法律家でございますから、物事をはっきりおっしゃる方かと思ったのですが、どうも私はそう受け取れない。北方領土とは、何をあなたは言っておられるのですか。私は平和条約の上からいって、得撫島以北あるいは樺太は、あなた方は日本に返せということを言っておられるようでございますが、私は得撫以北の千島南樺太は、日本領土でもないし、主権も何にもありません。しかしあなた方が言われておる択捉国後日本が放棄した北方領土とお考えになったら大へんな間違いで、今までここで議論したことは何にもならぬことであります。しかもあなたは、ヤルタ協定を認めないのだとおっしゃる。ヤルタ協定を認めないということならば、当然講和条約で言った場合もあるし、歴史的なあれがあるのだから、日本国民全部が、択捉国後日本のものであるということを、ここではっきりしようじゃありませんか。そうして択捉国後日本のものであれば、これはアメリカの施政権を認め、そうして将来国連の信託統治を認めるという条約上の義務を日本が持っておるわけです。固有領土択捉国後と、日本平和条約で施政権を認めたことを一緒に取り扱うことは、私は法律的によくないと考えます。
  119. 河野密

    河野(密)委員 私は池田総理がここで日本人に向かってそういう演説をする前に、なぜ十年前にサンフランシスコにおいてそういう演説をしなかったか、そういうことを主張しなかったか。せめて留保条項でもつけておけば、あなたがそう言われても、われわれはなるほどと頭を下げますが、そうじゃないのです。言うべきときに言わずにおいて、今になってそれを言って、おれはあのときからこう思っていたのだ。だから私はさっき言った。あなたは私を法律家だと言うから、甘んじて法律家になって申し上げますけれども、心理留保というものは法律上は通用しない。リゼルバチオ・メンターリスは通用しないからそういうことを言っておるのです。だからほんとうにあれするならば、国際会議を開くなり何なり、国際的舞台においてあなた方は主張しなければならぬ。ほんとうにあなた方が国後択捉の問題を主張しようとするならば、国連という舞台もあるじゃありませんか。なぜそこへ堂々と主張しないのでありますか。私はその点についてあなた方が、ただ国民に向かってだけ強いことを言っておるのは決して賛成できない。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 私の方からお聞きしては、まことに恐縮でございますが、もしよかったらお答え願いたいのでありますが、択捉国後の問題については、平和会議で首席全権がはっきり日本固有領土であるということを言っておるわけでございます。これだけはもう記録に残っております。(「黙殺されておる」と呼ぶ者あり)黙殺されておりませんからこそ、アメリカは一九五六年において、日本固有領土であるということをはっきり認めた言明をしておるのであります。だから私は申し上げますが、われわれは択捉国後日本領土であって、平和条約アメリカの施政権を認めた沖繩とは違うのだということを考えておりますが、あなた方は日本領土であると思っておられますか、思っておられませんか、それによって違うわけであります。
  121. 河野密

    河野(密)委員 私がお答えしますかわりに総理もお答えを願いたいと思いますが、われわれは国後択捉の問題でなく、いわゆる千島列島というものを考えておるのであって、それは一括してわれわれは考えております。ただもしわれわれの考えが違うとおっしゃるならば、平和条約を国会におかけになりましたそのときに、なぜあなた方は千島という中には北も南も区別はありませんということを言ったのですか。そういうことを言った。私は今実は速記録を持ってくることをあれしましたが、その説明をして、条約局長がはっきりと、千島には南も北もありませんということを言って国会の中において承認を求めております。それは一体どうなんですか。それをどうお考えになりますか。
  122. 池田勇人

    池田国務大臣 第一点の問題は、あなた方は、千島は全部日本のものだとお思いになっておるような言質でございますが、私はそうは考えません。得撫以北は連合国に放棄いたしまして、日本のものじゃありません。条約上放棄いたしました。これは日本の発意で、そういう平和条約に、北千島は放棄する、こういう条文にわれわれは欣然と応じた。なぜ応じたかといえば、国際情勢で応じた。しかし南千島日本固有領土であるということをあのとき言った。しこうして委員会で政府委員がそういうことを言ったかもわかりませんが、私の考えでは、その政府委員の発言は間違いと考えております。
  123. 河野密

    河野(密)委員 私は、政府委員が言ったのは政府を代表するものでないというならば、その当時の速記録を取り寄せて一つあなた方にお見せしてもよろしいと思います。政府を代表してはっきりとそういう答弁をしておるのであります。あなたがあまりその国後択捉の問題をサンフランシスコの平和条約からずっと一貫して主張しておるように言われるから、私も言うまいと思っておったけれども、あまりそう言われるから私も言ったのですけれども、それははっきり言っておるのです。はっきり言っておるのですよ。千島の中には北も南もありませんとはっきり言っておるのですよ。
  124. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 外務省に関する答弁のことでありますから、私からお答えしますが、千島というものは北とか南とかはなかったというのは、日本の行政区画の上においてはあったわけです。いわゆるクリール・アイランズ、千島というものについては、南とか北とかいうような国際的なものはない。要するにわれわれが主張しておるのは、国後択捉日本固有領土であって、千島ではないということを言っておるわけであります。
  125. 河野密

    河野(密)委員 そういうことを大臣は言われるけれども、あの平和条約を審議する議会においては、そういうことは一ぺんも言われたことはない。千島全体を含むものである、こういうことで平和条約は権利、権原を放棄する、こういうことで承認されたわけであります。この点はあなた方があれするならば、まあほかの問題もあるから、この問題だけで私も時間を取りたくないのであれしますが……。
  126. 山村新治郎

    山村委員長 河野君、ほかの問題をお進め願えませんか、時間もございませんから。——それではほかの問題をお進め願います。
  127. 河野密

    河野(密)委員 それでは速記が参りましたらもう一ぺんあらためてその問題を取り扱うことにして、次に私はベルリン問題、ドイツ問題について政府の所信を伺いたいと思います。  ベルリン問題は即ドイツ問題でありますが、ドイツ問題は御承知のように一九五八年の十一月にソ連フルシチョフ首相が提案をしてから、最近はベルリン問題、ドイツ問題が特に火をふいて参ったのであります。しばらくこの問題は提案されたままくすぶっておりましたが、本年六月、ウイーン会談の際にフルシチョフソ連首相がベルリン問題、ドイツ問題はどうしても年内に片づけるのだということをケネディ大統領に明言したと伝えられておるのであります。そのあとを受けて、本年の六月二十一日に、フルシチョフがドイツ問題を解決するためにドイツと平和条約を締結するように提案する、東西両ドイツとの平和条約ができない場合には東ドイツとだけ単独で講和条約を締結するのだ、こういう声明が出されましてから、にわかにドイツ問題がやかましくなって参りましたことは御承知の通りでありますが、去る八月十三日に東ドイツがベルリンの境界を封鎖するに至りまして、戦争の危機ということが強く主張され、意識されるような状態になったわけであります。池田さんが先般アメリカに行かれた場合においては、このベルリン問題はまだ火をふいておらないときでありましたが、今申し上げましたように、ケネディ大統領フルシチョフソ連首相との会談の際に、はっきりベルリン問題あるいはドイツ問題を聞いておるわけであります。そこで私の知るところによりますと、池田さんと会談をしたときに、一番最初にアメリカ側から持ち出した問題は、このベルリンを含むドイツ問題であったといわれておるのでありますが、このドイツ問題について池田内閣としてはどういうふうに考え、どういうふうに対処していこうとするのであるか、これをまず承りたいと思うのであります。
  128. 池田勇人

    池田国務大臣 ケネディ大統領との会談におきまして、ベルリン問題は出ました。ウイーン会談における両巨頭の話題に上り、そうしていろいろそれを中心として話をいたしたことは事実でございます。その後におきまして、お話通りベルリン問題、東独問題等非常にやかましくなって参りました。あのときとはだいぶん情勢が変わったといいますか、緊張の度を増してきたのであります。私は、とにかくベルリンの自由は守らなければならぬということは申し上げましたが、その他の点につきましては、今の情勢下におきまして詳しく御報告することを差し控えたいと思います。
  129. 河野密

    河野(密)委員 ベルリン問題ということは、結局するところはアメリカ西欧政策ということになると思うのでありますが、これは一体どういうふうにアメリカ西欧ベルリンの問題、西欧のドイツの問題を解決しようというふうに考えておるか、これはあなたから、直接聞いた点を、差しつかえなかったら、私は、はっきりここで述べてほしいと思うのであります。アメリカのドイツ問題に対する考え方はどうなんだということを私は聞きたいと思います。
  130. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど申し上げましたように、非常に緊張しておるときでございますから、私はアメリカのドイツに対する政策の基本の点につきましては聞きましたが、ここで申し上げることを差し控えさしていただきたいと思います。
  131. 河野密

    河野(密)委員 それじゃ私の方からいろいろ申し上げて、これに対してお答えを願いたいと思うのですが、私たちはベルリン問題がちょうど火をふいておるまっ最中にソ連から東欧の諸国を回っておりましたので、そのわれわれの知り得たところあるいはわれわれの感じたところ、観察したところによりますと、ドイツ問題というものは、ヨーロッパを歩いて初めてその真相がわかるというふうに感じたのでありますが、ドイツに対する周囲の国々の恐怖心と申しますか、警戒心というものは、われわれが想像する以上に深刻なものであるということをわれわれは知り得たのであります。ソ連は、ドイツに対しても非常な警戒心と申しますか、これを持っておること、これをわれわれは忘れてはいけないと思うのであります。核実験の再開の声明の冒頭にも、この前の大戦においてどれだけドイツから攻撃を受けたかということを強く言っておりますが、ドイツに対する警戒心というものは非常に強いということをわれわれはまず念頭に入れる必要があると思うのであります。その次に西ドイツが核武装をするんだということに対するその警戒というものが非常に強い、それからドイツのいわゆるレバンチズムといいますか、報復主義と申しましょうか、それに対する一つの脅威あるいは警戒というものがきわめて熾烈であるということを私たちは感じたのであります。このドイツを取り巻く周囲の国々の持っておる民族的な感情というものを忘れては、ドイツ問題を正当に理解ができないのじゃないか、こういうふうに考えるのであります。西ドイツは現在NATOに御承知のように加わっておりまして、NATO方は軍備を十二個師団持っております。三連隊からなる一個師団で、核武装もしております十二個師団を持って、この十二個師団の兵力約十七万人は、一九六三年までには三十五万人になるんだ、こういうことであります。ソ連、東欧諸国、西欧の諸国も入れて、これに対する警戒というものは非常に熾烈なものがある。これがドイツ問題、あるいはベルリン問題の核心をなしておるということを私たち考えなければならないと思うのであります。こういうふうなこのドイツに対する周囲の諸国の民族的な感情というものを土台にして考えた場合において、現在西ドイツが非常に主張しておるところの東西両ドイツの統一であるとか、あるいは核兵器を持つ、NATOを核兵器化しようという張本人であるドイツ、これに対する周囲の国々考え方というものをわれわれは十分計算に入れる必要があると思うのであります。ことに西ドイツのアデナウアー首相が言った、その国境をオーデル、ナイセの線できめようなどということは、これは再検討をするのだというような問題、これが非常に周囲の国々を刺激しておる。ここにドイツ問題、ベルリン問題のむずかしさがある。東西両ドイツの統合ということは、理論としてはみんなこれはある程度認めても、感情的には、あるいは政治的にはこれを認めることができない。これが私はドイツ問題の実態であると思うのであります。こういう点についてぜひ考慮をわずらわしたいのは、私は西ドイツにあるという核武装あるいは軍備の強化の主張や、それからレバンチズムというようなものが、オーデル、ナイセの線を変更しなければならぬのだという、そういう考え方というものが、いかに周囲の国々に大きな脅威を与えているかということをわれわれは反省しなければならないと思うのですが、これらについて総理は一体どう考えておられるか。  それからわれわれは中立諸国と一緒に、この際ドイツ問題解決の方途としては東西両ドイツを認めて、東西両ドイツと平和条約を結ぶ以外にはないのだ。ベルリンは自由都市にしてベルリンに対する自由は確保する。しかし東西両ドイツが別々に講和条約を結んで独立国となった場合、その東西両ドイツの関係をどうするかということは、それは東西両ドイツそのものが話し合ってきめるべきだ、こういうような線くらいは、これがドイツ問題を解決するたった一つの解決の道ではないかというふうに考えるのでありますが、これらの点についての総理見解を承りたいと思います。
  132. 池田勇人

    池田国務大臣 最近ソ連並びにその付近の衛星国をお回りになりまして御視察になり、今視察談をお聞きしたことを私として非常に喜びといたします。お話しのような点は、私は最近他の地方をお回りになりました方々からも同様なことを聞いております。そうしてまた、そういうドイツの第二次世界大戦の際にとりましたあの残虐なことを思って、ドイツに対して非常な憎しみを感ずると同時に、またあの付近の国々は、残虐を憎むと同時に、戦争自体に対しまして、戦争を避けなければならぬという強い理念も持っておるように聞き及んでおるのであります。しこうして第二段の東西両ドイツの問題、ベルリンの問題につきまして、新聞その他ではいろいろ聞いておりまするが、今のオーデル、ナイセの問題だとか、あるいは東西両ドイツということは新聞に載っておりますが、私は、日本としてこういう問題につきまして自分の判断を申し上げることは適当でない、あるいはまた時期尚早、こういう気持を持っておりますので、このいろいろな説に対しましての批判はお許しを願いたいと思います。
  133. 河野密

    河野(密)委員 私はベルリンの問題あるいはドイツの統一の問題、それを考える際に、これは日本にとっても頂門の一針だと思うのであります。日本戦争に負けて平和条約を結んで、こういう事態になったからもう日本戦争責任というものは帳消しになったというふうに考え、ドイツでも私は西ドイツのあれはそう考えておると思うのです。そこであるいは核武装をするのだとかオーデル、ナイセの線を変えてはならぬのだとか、そういうことを持ち出してくると思うのであります。これが周囲の国々に、数回にわたってドイツ民族の圧迫を受けた人々にどういう印象を与えるかということにつきましての深刻なる気持というものは、ドイツ人にわからない。私はこれが日本人にとっても再思三省しなければならぬ点だと思うのであります。われわれが領土の問題とかいうことをいうのも、ドイツのいわゆるレバンチストがそのオーデル、ナイセの線がどうとかいうことと同じようにとられるのです。それはただ総理の言うように固有領土だとかいうような議論でいけばそういうことにとられるのです。そこに問題があると思うのです。政府委員ばかりではなく、吉田総理のあれもありますから一つ……。「千島列島の件につきましては、外務省としては終戦以来研究いたしまして、日本見解は米国政府に早くすでに申入れてあります。これは後に政府委員をしてお答えをいたさせますが、その範囲については多分米国政府としては日本政府主張を入れて、いわゆる千島列島なるものの範囲もきめておろうと思います。しさいのことは政府委員から答弁いたさせます。」これは単に外務省の政府委員が言ったようなことではなく、吉田総理が答えさせている政府委員である。「条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。」西村政府委員であります。それから西村政府委員の「平和条約は一九五一年九月に調印いたされたものであります。従って条約にいう千島がいずれの地域をさすかという判定は、現在に立って判定すべきだと考えます。従って先刻申し上げましたように、この条約千島とあるのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。」これはこういうふうに吉田総理が言わしておる政府委員の答弁である。しかも歴史でなく現在に立って判定すべきであると考えます、こういうことを言っておるのでありますが、池田総理は当時の全権として一体これをどうお考えになりますか。
  134. 池田勇人

    池田国務大臣 全権としてと言われましたが、私は日本の全権としてのみならず日本国民政治家として申し上げます。その前に先ほどお読みになった、吉田首席全権がその問題についてアメリカによく言っておる、こう書いてあったようでございますね。それは、言っておるということを言われたのは、吉田さんから当時ダレスにも、千島の問題については、日本はあれを主張するのだと言われたと私は記憶しております。非公式であります。だから、あの講和会議のときに歯舞、色丹は日本固有領土である、日本領土であり、択捉千島はいまだかつて日本の手から離れたことはないと平和条約のときに言われたのであります。今お読みになったところ、またあとにもあるように思いますが、吉田さんは、この問題についてはアメリカにも言っておるとこう言っておられるのは、その意味のことを言われたのだと思います。従いまして政府委員の分は、私はおりませんでしたが、その問題につきましては、私は条約局長の言っておることは間違いと思います。   〔「間違いとは何だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  135. 山村新治郎

    山村委員長 外務大臣が答弁されます。静粛に願います。
  136. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 総理の答弁の通りでございます。  なお補足しますと、先ほど私が読み上げました一九五六年のアメリカの解釈におきましても、択捉国後両島は、歯舞、色丹とともに常に日本固有領土の一部としてきたものであり、かつ正当に云々というのがあるわけですね。ですから、このアメリカによく言ってあるということは、これをもっても、アメリカの解釈もさようであるということは明瞭だと思います。  なお今おあげになりました答弁についてですが、全権がサンフランシスコの会議演説において特に明らかにされた通りでありますと、あの見解日本政府としても今後とも堅持していく方針であるということを、たびたび国会において総理から御答弁があった通りであります。こういうことを言っているわけです、同じ人が。ですから、今の総理の御答弁の通りでありまするが、なお吉田さんの言われたサンフランシスコの講和条約における演説は、この関係のある部分を読みますと、ソ連全権の演説に触れ、千島列島及び南樺太地域は、日本が侵略によって奪取したものだとのソ連全権の主張には承服できぬこと、特に日本開国の当時択捉国後両島が日本領土であったことについては、帝政ロシアといえども異議を差しはさまなかったものであること、さらに一八七五年の日露両国政府は、平和的外交交渉を通して、当時日露両国民の混住の地域であった南樺太を露領とし、同じく混住地域であった得撫以北の千島諸島を日本領とすることに話し合いをつけたものであること、最後に、北海道の一部たる色丹島及び歯舞島は、終戦当時ソ連軍に占領されたままであることを明確にしたものである、こういうことになっておるわけであります。従って、この全文を読んでごらんになりますれば、これで明瞭であると考えるのであります。
  137. 山村新治郎

    山村委員長 横路委員から関連質問を要求されております。これを許します。横路君。
  138. 横路節雄

    ○横路委員 総理お尋ねをしますが、西村条約局長の当時の答弁は間違いであるというお話ですが、何も条約局長だけではないのです。これは平和条約及び日米安保条約特別委員会の会議録の第四号、昭和二十六年十月十九日、本委員会におきまして、第五区選出の高倉委員の御質問に答えてのところであります。重ねて私はこの中の点を全体的にちょっと総理お話しを申し上げたいと思います。当時の吉田総理はこの千島列島の問題と歯舞、色丹の問題を二つに明確に分けて実はお答えをしているわけです。今河野委員からお話がございましたように、もう一度申し上げますが、吉田総理から「千島列島の件につきましては、外務省としては終戦以来研究いたして、日本見解は米国政府に早くすでに申入れてあります。これは後に政府委員をしてお答えをいたさせますが、その範囲については多分米国政府としては日本政府主張を入れて、いわゆる千島列島なるものの範囲もきめておろうと思います。しさいのことは政府委員から答弁いたさせます。」こういうので、総理の指名によりまして西村条約局長が答弁をしております。「条約にある千島列島の範囲については、北千島と南千島の両者を含むと考えております。しかし南千島と北千島は、歴史的に見てまったくその立場が違うことは、すでに全権がサンフランシスコ会議演説において明らかにされた通りでございます。あの見解日本政府としてもまた今後とも堅持して行く方針であるということは、たびたびこの国会において総理から御答弁があった通りであります。」それはそう思います。ところが重ねて高倉委員質問に答えて、西村条約局長は「平和条約は一九五一年九月に調印いたされたものであります。従ってこの条約にいう千島がいずれの地域をさすかという判定は、現在に立って判定すべきだと考えます。従って先刻申し上げましたように、この条約千島とあるのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。但し両地域について、歴史的に全然違った事態にあるという政府考え方は将来もかえませんということを御答弁申し上げた次第であります。」そこで、明らかになるほど総理からお話があったように、当時の吉田総理はサンフランシスコ会議でそういう演説をなさったのでしょうが、それは日本の希望です。日本の希望ですから、先ほどお聞きしていると、総理は、各国の全権が黙っていたから、それは承認したのだろう、こういうお話だが、黙って聞いていたということは、黙殺をされたというようにも解釈されるわけです。そこで西村条約局長は、日本政府としてはそういう考えだが、平和条約にいう千島というのは、北千島及び南千島を含む意味であると解釈するのだ、こういう点を明らかにしたのです。そこで誤解があると困りますから、ここで歯舞、色丹の問題とは別に分けてお話をしています。そこで高倉委員が「過般の講和会議においてダレス全権が、歯舞、色丹諸島は千島列島でない、従ってこれが帰属は、今日の場合国際司法裁判所に提訴する道が開かれておると演説されておるのであります。」一体これはどうなんですかということを吉田総理お尋ねをしたところが、吉田総理はこの点についてはこう言っているのです。「この問題は、日本政府と総司令部の間にしばしば文書往復を重ねて来ておるので、従って米国政府としても日本政府主張は明らかであると考えますから、サンフランシスコにおいてはあまりくどく言わなかったのであります。しかし問題の性質は、米国政府はよく了承しておると思います。」従ってまたダレス氏の演説でも特に歯舞、色丹の両島について主張があったものと思います。ここはこうなっているのです。だから歯舞、色丹の帰属の解釈の仕方と、それから政府としては千島列島についてはそういう希望は持っている、そういう解釈の仕方はしている。しかし条約にいう千島列島とは、そこには北千島も南千島も含まれているんだ、こう言っているのです。これは十月二十日、同じくこの条約の特別委員会で草葉政府委員からもこういうように申し上げております。「昨日でありましたか、条約局長から申し上げましたように、現在は千島と申しますと、一帯を千島として総称されておると、一応解釈いたしておる次第であります。」こうなっておるのです。ですから、この点は今総理が、一九五六年の九月の何日ですか、いわゆる日ソ共同宣言の交渉の際におけるアメリカ側の言い分を今さら持ってきて、この条約にいういわゆる千島とはどこか。これはあとに至って解釈をしたのであって、この条約にいう千島と明らかに吉田総理が了解し、そのもとに条約局長がこういう答弁をしているわけです。この点は池田総理がどういうようにここで強弁されようと、それは全く事態を誤るし、しかも条約局長の答弁が間違っておるというような、そういう言い方は私は少なくとも一国の総理としては正しくないと思うのです。
  139. 池田勇人

    池田国務大臣 今お読みになりましたことを、私は自分でもう一ぺんずっと翫味してお答えする機会があるかもわかりません。今お読みになったことは、私の記憶と合う点が多い。それは吉田さんが言っておられるように、千島のうちには択捉国後は入らないというお気持がはっきりそのときあったのです。だから、ダレスにそういうことを言われたわけです。南千島とか北千島ではないのです。択捉国後は、歯舞、色丹と同じように、日本固有領土であるということをはっきり口頭で言われております。だから、そこにそういうニュアンスが出ておるわけです、アメリカへ言っておりますと。だから、そのあとにたびたび申しております通りと、こう条約局長が言っておると思うのであります。で、私はそんたくするのに、われわれ南千島とか北千島というものはないのです。私の考えではありません。千島というものは、クーリル・アイランズというものは、今の十八の島を言われておるのでございます。だから、南千島というのはどこから出たことか知りませんが、あれは、私の考えでは千島のうちに中千島、北千島、南千島があろうはずはありません、条約上からも歴史からも。そこで条約局長の言うたことが間違いというのは、平和条約千島のうちに択捉国後は含まないのだということは、重光外務大臣等たびたび私は言っておられると思います。しからばどっちがほんとうか、どっちが間違いかということになれば、結論的には、私は今までの歴史から考えて、条約局長の言うのが事実に反しておる。間違いという言葉が悪ければ取りかえますけれども、私の考えからいうと違っております。こういうことを申し上げておる。だから、そういう問題については、私はあのサンフランシスコで吉田さんが苦労されてダレスと話をされたときも知っておりますから、それをもう一ぺん私は読んでみたいと思います。
  140. 横路節雄

    ○横路委員 池田総理お尋ねいたしますが、池田総理、今あなたがおっしゃった意見は、この十月十九日の特別委員会で、北海道第五区選出の高倉委員から、その点をさらに詳細にお尋ねしておるわけです。今あなたの言ったようにおかしいではないか。これは得撫島から占守島に至る十八の島々、そういうことを言うのじゃないか。それを一体同じように言っておるのはおかしいじゃないか。そこで重ねてこの千島列島というものの翻訳をどういうように考えておるのか、もう一ぺん一つ説明をしていただきたい、こういうことを、今あなたがおっしゃったことは、だれしもがみんな不思議に思ったから聞いたわけです。そうしましたら西村条約局長が重ねて、先ほど言いましたように、この条約千島とあるのは北千島及び南千島を含む意味であると解釈しております。そうしてその次高倉委員から、歯舞、色丹については、それは千島列島に入るものじゃないのではないか。いわゆる北海道に付属している島嶼ではないか、こういう点が指摘をされて、吉田総理からその通りだ。だから私はアメリカ政府との間に文書交換をもって歯舞、色丹は千島列島には入っていないのだ。こういう点は明確になったんだ。こういうようにはっきりとお答えになっているのです。だからそれは、私は先ほどからのいきさつを聞いて、一九五六年のいわゆる日ソ共同宣言締結に至るときにいろいろないきさつがあって、そしてアメリカの方からいわゆる文書でもって、先ほど外務大臣からお読みになられたように、国後択捉についてはいわゆる「固有領土であると解釈さるべきものであると思う。」あそこの文章は非常に微妙なんですよ。固有領土とは言っていないのです。「固有領土であると解釈さるべきものであると思う。」こうなっておる。この点はあとのアメリカ側の考え方の違いであって、この条約が調印をされてきて、国会で説明があり、その質問に答えたときは、こういう答えがその当時の国会における答弁なんです。それをこの時点において西村条約局長の答弁は間違いだということは、絶対に総理の答弁はなっていない。今の時点において考えが変わったんだ、アメリカ考えが変わったのだとかいうことを言うならばそれは別でしょうが、この時点において条約局長の答弁がそれは間違いであるということは、私は絶対に言えないと思うのです。関連ですからこれで……。
  141. 山村新治郎

    山村委員長 横路君に申し上げます。  総理はすでに間違いという言葉が不適当であれば、それは取り消すにやぶさかでないということをおっしゃっておられます。その点は一つ……。
  142. 池田勇人

    池田国務大臣 まず私は聞かなければならない。南千島ということについての定義をまだ聞いていない。北千島も南千島千島でありますということ、南千島とは何ぞやということをもう一ぺん検討してみなければならぬと思います。しかしいずれにいたしましても、当時の全権の一人として、首席全権がアメリカに交渉されたことにつきましては、厳然たる事実で、私は記憶いたしておるのであります。択捉国後は入らない。そうして平和条約の席上、首席全権としての演説にも載っておるわけです。歯舞、色丹はもちろん、択捉国後というものは、日本の従来からの領土である。これははっきり認めてもらわなければならぬ。事実ですから言っておる。そこで速記のことになってきますが、その速記は、南千島と北千島は一体でありますというときに、南千島というものの定義は私はまだ見ておりませんから、南千島択捉国後だということになれば、これは私の考えとは違います。しかし重光外務大臣は、たびたび千島には択捉国後は含まないのだと言われたことも、これは横路さんも長い間の国会議員だから御存じと思います。そしてこの問題は、そういうように今まで問題があったわけです。しかし私は、そういう問題をずっと考えてみまして、重光さんの方がほんとうである。重光さんの方がほんとうであれば、択捉国後というものは南千島で、日本が放棄したものに入るという方に解釈した条約局長の解釈はどうかと思います。どっちか事実は一つだ。そういう意味において間違いと申し上げたのですが、違います。重光さんの言っている考え方とは違っております。私の考えとも違っておりますということを申し上げるのであります。
  143. 横路節雄

    ○横路委員 総理、私はきょうは関連ですからこれで終わりますが、この問題については絶対に私は承服できませんで、いずれ最終質問のときに重ねてお聞きする機会があると思います。
  144. 河野密

    河野(密)委員 私は横路君のあれで大体わかったと思うのですけれども総理もこういうところにあんまりこだわる必要はないではありませんか。こだわる必要はない。実際にこの時分には、もう一ぺん言っても、千島クーリル・アイランズという中には北千島・中千島、南千島が入りますと、こう言って政府委員が答弁しておるのです。吉田総理の前で答弁さしておる。あなた方がかりにそういうふうな考え方を持っていたとしても、平和条約を締結した時分においては、一般に外務省もあるいは国会におけるところの答弁の衝に当たった者もそうじゃないのだと、皆が千島はみな含むのだということを解釈しておった。その事実を、あなたはここで今になってこれを否定することはできないはずだと思う。それは変わって参りました、われわれは諸般の情勢上そういうことを改めましたというならば、私は実は前からそういう考えを持っておったが、言い出す機会がなかったが、今度それをはっきり申し上げますというならば、これは私は意見として承ってちっとも差しつかえないのです。何もそういうことにこだわる必要はないじゃありませんか。あなた方も実際、ずっと一貫して主張してきたわけではないのだから。最近になって初めて言い出した。あなたも総理大臣になるまでは、この千島の問題なんか言ったことがないのだ。それはいいじゃありませんか。そういうことにこだわる必要はないですよ、ちっとも。私はそういうところはどうも池田さんの悪いくせだと思う。率直に、そういうことは虚心たんかいに考えたらいいじゃないかと思う。私もこれを速記録まで持ち出すつもりはなかったけれども、あなたがあまりにしつこく言うから、私に質問までするから速記録を持ち出したのです。  それでは、おかげで質問するものが半分でおしまいになってしまったのですが、いずれ中国問題とかそういうものはぜひ聞きたいと思うのでありますが、これだけ一つお尋ねをしたいと思うのです。中国代表権の問題について今度国連総会においてどういう態度をおとりになるか。これだけは一つはっきりしておいてほしいと思うのであります。中国問題についてもいろいろ話すと思いますが、第十六国連総会中国問題に関して二つの案が出ておるわけです。国連憲章第十八条によって重要問題として取り扱うというニュージーランドの案と、それから中国代表権を北京政府に認めようというソ連案と、この二つが明確に出ておるわけです。日本政府はこの二つの案のどちらに賛成するのか、どちらに投票するのか、これを一つ明確にしておいてもらいたい。
  145. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 中国問題に関しましては、おっしゃるように二つの案が出ております。しかしその内容は、今お述べになりましたようなものではなくて、ニュージーランドから中国代表権に関する問題というのが出ております。それからソ連等から、中国の代表は中共であるべきであるという意見が出ております。この二つの案が議題となっておるのでありまして、今お述べになりましたような議題はございません。
  146. 河野密

    河野(密)委員 その重要議題として取り扱う、代表権の問題を取り扱うという二つの——ニュージーランドの案はアメリカの代案だといわれておるのですが、これは一体政府としては、どっちの案に賛成をしようというのですか。
  147. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 ニュージーランドの案がアメリカの代案であるというふうには私ども考えておりません。ニュージーランドは主権国でございます。ニュージーランドの考え方に基づいて出しております。要するに、この案が議題になっておるわけでございます。そこで、この案が議題になって十分討論をされるわけでございます。  そこで、私ども中国問題というものを考えてみまする場合に、御承知のように、わが国中華民国の正統政府である国民政府と日華条約を結んで戦後処理をいたしております。今日国交が非常に友好関係を持っておるわけであります。一方、中国本土におきまして、六億以上の国民を有する政府中共政権ができておる、これも事実でございます。しかし両方とも、この二つ中国という考え方には強く反発をしておることも御承知の通りでございます。従いまして、この問題の扱い方によりましては、非常に極東の平和に重大な影響を及ぼす場合もなしとしないという、非常に重大な国際問題になる可能性も持っております。従って、これは非常に重要な問題でございますので、われわれといたしましては、この問題が十分国連において審議をされて、そして国連加盟各国のいろいろな考え方、また当事国の英知によって十分妥当なる結論に達することを望んでおるわけであります。これ以上のことは、現在国連で審議されて、いろいろな国がいろいろな考え方を述べるに先立ちまして、不要なる摩擦を生むことになると思いますから、私ども考えは差し控えさしていただきたい。
  148. 河野密

    河野(密)委員 私の聞きたいのは、単刀直入に、日本はどうするのだということを聞いておるのです。いろいろな立場があって困っておるということは、これはもう総理から、国会史に残る名文だと思うのですが、中国大陸国民親近感を感じつつも、すでにわが国平和条約を結んで友好関係にある中華民国の将来に至大の関心を持たざるを得ない。これは何のことやらわからぬですが、実に天下の名文だと思うのであります。こういう立場で、といって今お話のありましたように、二つ中国は、双方とも二つ中国ということに反対をしているのだから、これに発言もできない。こうなりますと、一体日本はどうしようとするのだ、どこに日本の自主的な道を見出そうとするのか、日本の自主的な立場、これは一体どういうのだ、これを単刀直入に言ってくれ、こういうのが私の質問です。どうですか。
  149. 池田勇人

    池田国務大臣 なかなかむずかしい問題でございます。そこで私は、今までのようにたな上げ案ということじゃなしに、国連の舞台で十分討議して、そして、先ほども言ったことがございまするが、中華民国と中華人民共和国——中華人民共和政権と申しますか、この二つが英知をもって物事を考え、そして、片一方の国連の総会における各国がいろいろ議論をなさるうちで自主的に私はきめていきたい、こういうことでございます。
  150. 河野密

    河野(密)委員 総理の立場をわれわれの方の言葉で言えば、ひより見主義と、こう言う。ほかの方の動きを見てからというようなことだろうと思うのですが、方法論というものは、問題の解答にはならないのであります。討論をするということは、ただ手続の問題でありまして、それに対してどういう結論に持っていくかということが問題なのであります。方法論は答えにならぬということだけは、肝に銘じておいていただきたい。  時間がありませんから、最後にお尋ねいたしますが、池田総理は、先般アメリカを訪問して日米会談を開いた際に、ケネディ大統領に対して、共産主義というものは、自分を弱く見せるとすぐつけ込んでくるものだ、だから共産主義に対する態度は、常にはっきりした強い態度で臨んでほしいと、ケネディ大統領を激励したと伝えられておるのでありますが、これは、はたしてそういう事実があったかなかったか。私はこれがあったにしろ、なかったにしろ、この池田総理考え方そのものに、何か一貫して流れているものを感じざるを得ないのであります。それはさっき私が西ドイツのことを申し上げましたように、態度に現われておるような、領土問題にも現われているような、一つのレバンチズムといっては語弊があるかもしれないのでありますが、日本の大国主義を振り回すといいますか、そういったような、昔の夢よもう一度というような考え方があまりに強過ぎるという感じがするのであります。この点について、私は総理の外交方針に非常な危惧の念を感ずる。強がらぬでもいいところに強がっておるという感じが非常にするのでありまして、この外交の将来に対しては、心配、憂慮の念にたえないのであります。私は、先ほど申し上げましたように、西ドイツの態度に対して、最近ベルリンで起こった問題というものは、頂門の一針として、大いに反省をする必要があるのじゃないか。西ヨーロッパの諸国は、みな西ドイツの態度に賛成しているかというと、決してそういうものじゃないわけでありまして、イギリスあたりにいたしましても、イギリスの労働党のクロスマンなんかは、東西両ドイツを認めるべきだという考え方、両方と講和条約を結べという考え方をしております。デンマークに行っても私は感じましたが、デンマークであっても、ドイツに対しては非常な警戒的な感じを持っておる。そういう点からいくと、池田総理の外交方針は大いに反省をしてほしいという点を、私は強く申し上げたいと思うのであります。  過般の施政方針演説の中で、池田総理はこういうことを言っております。国際情勢の緊迫のあれが強まったということを述べたあとで、この国際緊迫の情勢において、日本地位と責任が重大であるということを言っておる。この日本地位と責任が重大であるというのは、一体総理は何を頭に置いて言っておられるのであるか、考えようによっては、きわめて憂慮すべき考え方があるのではないか、私はこう思うのであります。私の思い過ごしであればけっこうでありますけれども、私は総理が、日本地位と責任が重大になったということについて何を考えておるのか、明確にしてほしいと思うのであります。と申しまするのは、ドイツの問題について、最近はドイツの情勢も非常に緩和し、ベルリン問題についてもやや明るい見通しが出てきたように考えられて、御同慶にたえないのですけれども、しかしベルリン問題を受け取った側においては、私は決してそんななまやさしい考え方ではなかったと思うのでありまして、相当に深刻な受け取り方をしておったと思うのであります。ソ連もそうであろうし、アメリカもそうであろうし、そういう点で、日本地位と責任が重大である。これと関連して考える場合においては、私は非常に心配すべきことがあるのであります。一体池田総理は、このベルリン問題を話し合ったときに、そういうような問題について、日本が責任を負うというようなことは何も約束がないと思うのでありますが、そういう事態はなかったということを明確にしてもらうならば、非常に仕合わせだと思うのであります。
  151. 池田勇人

    池田国務大臣 私の外交は、いろいろ批評がございますが、決してひより見ではございません。私は国連というものがほんとうお互いに胸襟を開いて誠実に議論して、国連を強化していくためには、いろんな方法があると思います。そこでみんながりっぱな結論が出るように努力しよう、こういうのでございます。この問題につきまして各国の真意を探り、そしてお互いに協調していくようにしたいというのが念願であるのであります。  それからベルリン問題に対して日本が責任を負う、私はそんな大それたことを思っておりません。どんな責任が、日本にあるのでしょう。ただ日本が責任があるのは、四大国がよく話し合い、そして国連においてこういう問題が理解と和解のうちに解決するということにつきまして、努力する責任はあります。しかし、ベルリンの問題に日本が責任を負うというようなことは、私は考えたことはございません。  それから日本地位が上がったということにつきましては、世界をお回りになりまして、河野さんもお感じになったと思うのですが、たびたび参りまして毛、日本人に対する信頼は相当各国とも強いようであります。これは、国会議員の方々の御報告を聞きましてもそうであります。それは何かと申しますと、やはり今まで国連日本がいろいろ働いて参りまして、片方では経済援助その他に日本も一役加わる。低開発国のあれに一役加わるとか、あるいはコロンボ会議の問題につきましても相当やっておる。こういうことで、日本経済力の上昇と日本人のよさがだんだんわかって参りまして、日本に対する信頼が深まるということは、私はいろんな書きものでも、またみずからの目からも感じておるのであります。  そこで、世界の各国の信頼を受けると同時に、信頼にはやはり日本としても責任を感ずるわけでございますから、武力は持ちませんけれども、先進工業国の一員として、世界各国の平和と経済成長に努力していこう、こう思っておるのであります。
  152. 河野密

    河野(密)委員 私は、まだ国連の問題、あるいは日韓会談の問題、またILO条約問題等についてもお尋ねしたいと思ったのですが、時間がありませんでしたから、適当な機会に譲ることにいたしまして、国際情勢というものは、先般池田総理が言われたように、非常に緊迫した情勢にある。われわれはその緊迫した情勢のもとにおいて、日本の安全を守り世界の平和を守っていくことは、非常な努力の要ることであると思うのであります。この点について、池田総理の外交方針というものについて、もっともっとお尋ねいたしたいことがあるのでありますが、時間がありませんので次の機会に譲りたいと思います。  これをもって私の質問を終わります。(拍手)
  153. 山村新治郎

    山村委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十六分散会