○佐々木良作君 私は、
民主社会党を代表いたしまして、主として
政府提案の本年度
補正二件に対しまして、わが党の
組み替え趣旨を明らかにしながら
反対の
討論を行なうものであります。(
拍手)
組み替えの趣旨が入りますので、ちょっと時間をとるかと思いますが、御了承いただきたいと存じます。さて、わが党は、今回の
予算補正にあたりまして、まず第一に、単に当初
予算編成の後に必要となりました
災害対策費などの
増額のみを行ならにとどまらず、
政府の
所得倍増政策の
誤りによって
国民経済に与えておる
被害についても
対策を講じ、
予算補正を行ならべきであり、第二に、
政府が
補正財源に充てている
租税自然増見込み額は、おおむね
政府の当初
予算編成に際しての
歳入見積もりの
誤りによって生じたものであって、本来は当初
予算の財源として計画さるべき部分が大部分を占めております。従って、今回の
予算補正には、
災害対策費などの当然
補正のほかに、
租税自然増部分の納税者への直接還元、及び当初
予算の補給是正のための
補正措置も講ずべきである。こういう基本的な態度をとるものでありますから、
政府の方針とは根本的に異なるものでありますけれども、
政府案に対しまして、わが党の具体的な修正
内容を明らかにしながら論議を進めて参りたいと存じます。
まず、
災害対策費、
公務員給与改定経費、
食管会計赤字補てん経費などの、いわゆる当然
補正部分についてでありますが、
政府案は、これに対しまして
災害対策費を約百五十億円
計上しておるにとどまり、防災施設不備のために喪失された人命、個人財産に対する補償費を含んではおりません。また、
梅雨前線災害、第二室
戸台風災害の大きな特徴でありました狭い地域に壊滅的な
災害をもたらした事実を深く調査して、激甚地指定を行なったかどうかにも疑問があります。この点、私は
政府案の執行に対して不安と不信を抱くものでありまして、これらを含めて、少なくとも五十億円を
追加して、二百億円を
計上すべきものと信じます。(
拍手)
また、
公務員給与についてでありますが、
政府は
人事院勧告を十月一日より実施するよう
補正措置を講じておりますけれども、
人事院勧告は五月一日よりの実施を
勧告しております。
人事院勧告は、本年四月分
給与について、
民間給与が
公務員給与より七・三%上回っている事実を認め、国家
公務員の全職種平均の
給与水準をおおむね七・一%
引き上げることを
勧告したのであります。
政府がこれを十月分より実施する場合には、四月から十月までの
民間給与水準との
格差の
拡大、その期間における消費者
物価の
値上がりを参酌いたしまして、
勧告プラス・アルファをもって
給与引き上げとしなければならぬのは当然であります。元来、わが党は、
人事院勧告が常に
民間給与の
上昇と
物価上昇のあとを追っかけることにとどまりまして、
公務員給与はいかにあるべきかという根本的な問題について、一度も徹底した
意見を発表したことのないことをきわめて遺憾といたしておるのでありますが、特に、今回の
勧告は、現在の自民党
政府といえどもそのまま実施できるような妥協的
勧告とも称すべき、きわめて不満足なものでありました。しかしながら、
勧告は
勧告として尊重されなければなりません。本年度
予算に十分の余裕財源が認められる現在、
勧告通り五月一日より実施すべきは当然であります。従って、私は、このための経費といたしまして、さらに百五十四億円の
追加増額を主張するものであります。
今回の
補正は、以上のような当然
補正のほか、冒頭に述べましたごとく、
景気後退が迫っておる現時点に立って、
政府の
所得倍増政策の
誤りによる
国民の
被害に対していかなる
緊急措置を行なうか、また、今後の
景気後退によって
国民のこうむる
被害をいかに防止するか、この
二つの
対策を
予算化することこそ最も必要な
措置であったと存じます。(
拍手)
政府案がみずから最近の
物価値上がりめ事実を認めて、
生活扶助基準を五%
引き上げ、養護施設などにおける児童の飲食費などの単価を
引き上げ、かつ、文教施設、公営住宅の建築単価の
引き上げ措置を講じたのは、いずれも、
政府の
所得倍増ムードが、消費者
物価、卸売
物価の双方を
引き上げた
政策の
失敗をみずから告白しているものと言って過言ではありません。(
拍手)私は、
政府が
生活扶助基準の
引き上げを行ならならば、同時に、日雇い登録
労務者の
給与も
引き上げるのが当然でありましょうし、また、建築単価の
改定を必要と認めるならば、公共事業費全般にわたって
予算単価の
引き上げを行ない、実施機関たる地方公共団体をして
物価高による事業難に陥らしめないように、
補正措置をとるべきが当然であると存じます。(
拍手)
私は、この考え方に立ちまして、
政策失敗に基づく
物価上昇に対して、日雇い登録
労務者の
給与を十月一日より一日平均二十八円
引き上げて四百四十円にするため約九億円を
計上すること、並びに公共事業のそれぞれの単価を平均五彩
引き上げるために約百七十三億円を
計上することを主張するものであります。これら最小必要限度の
補正措置を怠っては、今回の
補正予算編成の成立条件を欠いておると言わざるを得ません。
次に、今回の
政府案の大きな特徴は、九百九十七億円余の歳出
補正増額の財源を、すべて本年度税収の
自然増をもって充てようとしているところにあります。本年度
租税印紙収入の伸びは、七月末をもって
予算額の三七・二%を収納いたしております。これは、三十五年度の七月末が三二・一%であったのに比べれば、四月より七月までの四カ月間に五・一%の伸びを示しているのでありまして、今日までの
企業活動、個人所得の伸びをもってすれば、八月以降の徴税最盛期を
考慮すれば、年度末には、
予算に対する収入歩合は二〇%近くに達し、
自然増は三千億円近くに達することは明らかであります。このような大幅な
自然増は何ゆえに生じたのか。われわれは、当初
予算審議に際しまして、
政府の
所得倍増ムードが
企業活動を刺激し、かつ、個人消費を刺激して、法人税、関税、物品税などの税収は
政府案をはるかに上回る、従って、
政府歳入予算は見積もり過少であると警告をいたしました。このようなわれわれの予見
通りに、税収は、年度末には三千億円の
自然増をあげる
テンポで進んでおるのであります。このような過大な
自然増は、
政府の
経済刺激の行き過ぎによって生じたものでありますが、同時に、
政府のとってきた
政策の当然の結果でもあります。従って、これらの財源は、単に当然支出の
補正財源に充当するだけではなくて、当初
予算に
計上さるべき財源でありますから、本来、
政府が当初
予算において
計上すべきであった歳出経費に充当するのが、また当然となってくるのであります。
われわれは、この見地に立ちまして、今回の
補正は、医療保険
関係予算並びに農業
対策関係予算の双方において本年度
予算の根本的補強を行ない、かつ、所得税の年度内減税を行なうべきであると考えるのであります。すなわち、第一に、
国民皆保険が実現した現在、診療費の
値上がり、医療
内容の充実が
国民の
医療費負担を重加しないよう、各医療保険会計
予算に対する
国庫負担率を
引き上げるべきであります。第二に、
貿易自由化に備えて、農業近代化を急がなければならない現在、農業系統資金をフルに活用するように、制度化された農業近代化資金の原資を、当初
予算の三十五億円程度より積極的に大幅
引き上げを行なうべきと信じます。私は、各種医療保険に対する
国庫負担率の
引き上げを十月一日より実施するために、約三百二十七億円を
計上し、農業近代化資金
関係に六十五億円の
追加増額を行なうべきであると主張するのであります。
まだ、所得税の基礎控除と配偶者控除をそれぞれ一万円
引き上げるよう、明年一月より実施するように主張いたします。これによる税収の減少は五十億円程度に達しましょうが、これは、本年度の
自然増をもって優にまかない得るのであります。このような
政策補強を行なうことこそ、今回の
補正予算の大きな任務と信ずるものであります。
さらに、私は、ここに注意を喚起いたしたいことがございます。すなわち、
政府は、
医療費値上げに伴う
補正措置を第二次
補正に持ち越し、その他の、私が述べた必要緊急
補正をすべて見送ることによって、
補正規模を一千億に三億円足りない九百九十七億円に押えて、これで
景気に対する刺激効果を回避し得たとしている
政府の
責任回避的な態度についてであります。
政府は、閣議決定をもちまして
国際収支改善策を打ち出し、その中において、官庁営繕費や公共事業の不急部門を繰り延べる方針を明らかにしておきながら、なぜ、これを今回の
予算補正の中に具体化しないのでありましょうか。このことは、
政府は、一方では、
設備投資の膨張抑制、輸入
金融抑制のために
金融引き締めを行ないながら、みずからは、財政面の不急不用費の節減の努力目標すら、具体的に掲げないことを意味するものであります。これは、
中小企業金融は締めるけれども、官庁事務費、行政費用はたっぷり
予算そのままにしておこうという官僚独善の標本的態度であります。私はこの際、本年度下期において、
一般会計予算の三彩
相当額を節減ずるよう
予算補正を行ない、行政当局がみずから行動をもって
国際収支改善政策に努めることを
提案いたすものであります。(
拍手)この程度の財政努力すら示し得ないとするならば、そのような
政府の態度こそは、現在の
経済情勢に対して全く真剣ならざるものと断定せざるを得ません。
今や
わが国の
経済情勢は、
池田総理の
答弁のいかんにかかわらず、刻々と
景気後退に向がいつつあります。前回の三十二、三年の
景気後退に際しましては、三十二年五月に
金融引き締めを始めて、十月には
国際収支は黒字に転じました。三十二年の
国際収支は総合収支で五億三千三百万ドルの赤字を生じましたけれども、主十三年は五億一千百万ドルの黒字になりました。デフレ
政策に転じて一カ年半で
国際収支は
均衡し、黒字幅転じたのであります。当時の外貨危機は、思惑輸入による在庫投資を急激に引き締めることによって、一カ年半の期間で
国際収支改善を遂げたのでありますが、今回は単なる在庫投資の行き過ぎではなく、
設備投資の行き過ぎが
原因で、
金融引き締めは、過剰
生産、過剰供給をもたらすおそれが三十二年不況よりはきわめて増大しております。しかも、
政策転換は、
政府が公定歩合を引き下げた一月に、逆・に公定歩合
引き上げをもって開始すべきであったのであります。
政策是正は半年から九カ月もおくれていると言っても過言ではありますまい。従って、
国際収支が黒字に転ずるのが明年末でありましょうし、
国際収支の
均衡を
回復するのは、早くても明後年の春以降でありましょう。
政府はこうした
経済見通しを隠して、これから
金融難に向かう
中小企業に対して、わずかに三百五十億円の財政
融資を行なったにとどまっているのは、むしろ
中小企業金融の危機を隠蔽しているものと言わざるを得ません。
かかる見地に立って、われわれは、本年度の
財政投融資計画は、開銀
関係の大
企業向け融資の繰り延べを行なう一方、はっきりと
中小企業向け財政
融資として七百億円の
追加増額を行なうのが至当と考えるのであります。これが財源には、
資金運用部資金と簡保年金の財布の底を傾けて充当して可なりと思うのであります。今回の
財政投融資計画の
改定は、このような決意と危機感をもって当たるべきなのであると信じます。
以上申し述べて参りました私の主張は、いずれも現在の時点における
予算補正が当然なすべき最小限かつ緊急なる
措置のみでありまして、これに必要な額を
合計いたしますと、
政府案の九百九十七億一千四百万円に対しまして、
財政投融資計画分を含めて二百八十億円の
増額と相なります。私は、この程度の
補正が実施できないようでは、
池田内閣はこの
経済危機を乗り切ることはもちろん、明年度
予算をさえ満足に編成し得ないのではないかと存ずるのであります。
私は、以上の趣旨により
政府案に
反対し、
政府が私が主張いたしました趣旨に基づいて
組み替えを行なって再提出するように要望するものであります。同時にわが党の
組み替え内容を明らかにすることによりまして、
社会党提案の
組み替え動議にも
反対の意思を明らかにして、
討論を終わります。(
拍手)