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1961-10-18 第39回国会 衆議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十八日(水曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員   委員長 櫻内 義雄君  理事臼井 荘一君 理事坂田 道太君  理事竹下  登君 理事八木 徹雄君  理事米田 吉盛君 理事小林 信一君  理事高津 正道君 理事山中 吾郎君    伊藤 郷一君   上村千一朗君    田川 誠一君   中村庸一朗君    原田  憲君   井伊 誠一君    野原  覺君   前田榮之助君    三水 喜夫君   村山 喜一君    横路 節雄君  出席国務大臣    文部大臣     荒木萬壽夫君  出席政府委員    文部政務次官   長谷川 峻君    文部事務官    天城  勲君   (大臣官房長)    文部事務官    内藤譽三郎君   (初等中等教育局長)  委員外出席者    専門員      石井  肋君 十月十七日  委員村山喜一辞任につき、その補  欠として田原春次君が議長指名で  季員に選任された。 同日  委員田原春次辞任につき、その補  欠として村山喜一君が議長指名で  委員に選任された。 同月十八日  委員山崎始男辞任につき、その補  欠として横路節雄君が議長指名で  委員に選任された。 同日  委員横路節雄辞任につき、その補  欠として山崎始男君が議長指名で  委員に選任された。 十月十七日  女子教育職員の産前産後の休暇中に  おける学校教育の正常な実施の確保  に関する法律の一部を改正する法律  案(文教委員長提出参法第一二号)  (予) 同月十三日  熊本県に国立工業高等専門学校設置  に関する請願坂田道太紹介)(第  三一七号)  高等学校生徒急増対策に関する請  願(坂田道太紹介)(第三一八号)  同(橋本龍伍紹介)(弟三一九号)  義務教育無償法の制定に関する請願  〔西村力弥紹介)(第三六五号)  民主教育の擁立に関する請願島上  善五郎紹介)(第三六大号)  同(島上善五郎紹介)(第四五七号)  公立文教施設整備に関する請願(小  平久雄紹介)(第四五六号)  著作権保護年限延長に関する請願  (佐藤観次朗紹介)(第五〇九号)  義務教育学校施設費国庫負担法に  よる資格坪数計算に関する請願(松  本一朗紹介)(第五六六号)  学校給食に従事する職員身分保障  に関する請願松本一郎紹介)(第  五六七号)  危険校舎改築費国庫負担率引上げ等  に関する請願松本一朗紹介)(第  五六八号)  中学校技術家庭科施設費国庫負担  等増額に関する請願松本一郎君紹  介)(第五六九号)  義務教育教材費及び給食費国庫負  担率等引上げに関する請願松本一郎  君紹介)(第五七〇号) は本委員会に付託された。 本日の会議に付した案件  公立高等学校設置適正配置及び  教職員定数標準等に関する法律案  (内閣提出第一二号)  学校教育に関する件
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議を開きます。  公立高等学校設置適正配置及び教職員定数標準等に関する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。小林信一君。
  3. 小林信一

    小林(信)委員 今委員長の方から定数法の問題ついてというふうなお話がありましたが、定数法というものに固定せずに、いろいろな面からこの際質問をして参りたいと思います。  これは来年度予算等も考慮して御答弁願いたいと思うのですが、先月文部省管理局の方が地方に出て、今後の学校施設の問題で文部省の構想というふうなものを述べておるのを聞いたのですが、資材が非常に高くなって、町村が建設に非常に困っておるというふうなことで、そういう点も考慮するとか、つまりこれは単価をもっと上げてやるとか、それから地方でも建築についての理解というものが高まって参りまして、木造建築よりも鉄筋が今後は建っていくというような傾向が非常に 強くなってきております。これに対して文部省としても即応するように努力をするというふうな話があったのですが、その中でこういう問題があったのです。たとえば高等学校昭和四十年ごろ非常に生徒数がふえるためにその対策考えていかなければならぬというようなことで、まあこれは定数法の中にもありますが、文部省方針では、その際には一学級生徒数というものをそのときに限って一割増員してそのピンチを切り抜けるというような考えが述べられておりますが、私は、これは教員数の問題、学級数の問題あるいは校舎建築に対する文部省の考慮というふうなものをばらばらな形でなくて、もう少し統一したもので考えていただきたい、こう思うのです。というのは、やはり根本的に、日本の小、中学校から高等学校の一学級生徒数というものは、世界情勢あるいは科学技術教育を向上していくというふうな大原則にのっとっても、減らしていかなければならぬと思うのですよ。そうすればこれから生徒数が減るということのために先生の数も減らしていくとか、あるいは校舎建築も減らしていくというふうなことでなく、一学級生徒数を減らすということで従来の建物ももちろん利用し、それから生徒数が減っていくから基備ももう一段落するというふうなことでなしに、特別教室をやはり補助の対象にするとかいうふうな方向をとっていかなければならぬと思うのです。ともかく建物の問題あるいは先生の問題あるいは生徒数の問題、こういうふうなものを文部省としてもう少し一貫して、一学級生徒数世界並みにするというふうな、そういうことはもちろん考えておると思うけれども、それを促進する意図があるのか。財政的にそういうことは不可能と考えておるのか。その点を初中局長官房長からお聞きしたいと思います。
  4. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 ただいまのお話でございますが、生徒数を減らしたいという傾向にあるわけでどぎいまして、すでに小、中学校につきましては、来年度予算で、小学校五十六を五十四、中学校五十四を五十ニにし、三十八年度で双方とも五十にする。そこで三十八年度以降の問題でございますが、だんだん生徒数も減って参りますので、これはできますれば四十人くらいに持っていきたいのでございます。  それから今お尋ねの高等学校につきましても、今の乙号基準は五十でございますけれども、農業と工業につきましては、今度の法案では四十を上回ってはならないとして、四十で押えておるわけでございます。普通の過程その他につきましては五十を認めておりますが、これも急増が過ぎましたら、できるだけ早い機会に四十くらいにいたしたいと考えておるのでございます。現在の校舎でも、都会地でほ五十五人とか六十人というものが若干ございますけれども急増期間中は、五人程度ふえたからといって店員の増の要因にはならない、こういう意味でございまして、できるだけ急増に対しまして新設とか、学級増加もいたしますが、ある程度すし詰めはごしんぼういただきたい、こういう趣旨でございます。  それから建物点等関係でございますが、これも同様に今後増期に備えまして必要な建物を建てる。この場合に特別教室等ももちろん考慮いたしておるわけでございます。御指摘のように、建築もだんだん鉄筋化されておりますので、今後は大幡に鉄筋木造構造比率を改めまして、鉄筋化の方に飛躍的に拡充していきたい。教室につきましても、生徒急増に必要な教室だけほ確保して参りたい。やがて急増が一段落いたしますれは、多少余裕も出て参りますので、その際に、先ほど お話しいたしましたように、余裕教室教員余剰等を勘案しまして、できるだけ四十という方向を目ざして文部省努力して参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  5. 天城勲

    天城政府委員 高校生徒急増対策施設の今後の全体計画の問題でございますが、御指摘通り、これは現場の学校に参りますれば、生徒の増、建物あり方教職員定款等は当然一体として考えなければならぬことでございまして、私どもも、関係の局が分かれておりますが、この点につきましてはそごのないように調整いたして、今後の案を考えて参っております。特に高校につきましては、三十八年から四十年にかけてのピーク時を迎えるわけでございますので、この問題を新しい施設計画の中に織り込まなければならぬと考えまして、従来実施して参りりました昭和三十四年から三十八年までの既定五カ年計画の大体三分のニほどを終了いたしたわけでございますが、この際高校急増対策も新たな課題として加わって参りましたので、昨年から新しい三カ年計画を立てまして、特に高校施設に関して、従来老朽校舎改築程度のことしかいたしておりませんでしたのを、全面的に急増対策として取り上げるという考え方をとったわけでございます。御指摘技術課程特別教室等につきましても、新たに三カ年計画積算を織り込んでおります。   それから時に耐火造の問題につきましては、今後新築するものにつきましては、できるだけ鉄筋鉄骨造を中心にするということで、特に小、中学校新設校舎、それから高校建物等につきましては、新設原則として一〇〇%鉄筋ないし鉄骨造でいこうというような考えカのもとに、予算積算を大蔵省と折衝しているわけでございます。
  6. 小林信一

    小林(信)委員 初中局長には、その定数法の問題でこの際少し私の考えを申し上げたいと思うのですが、今、高等学校の実績というものは、大体従来の中学校の形をそのまま継承しての生徒収容状態なんです。ところが生徒数というものは相当増加しているわけなんです。だから、特別教室というふうなものは十分にないわけなんですね。ことに、世界情勢から考えてみても、どこでも完全な中等教育を要望しているわけなんですが、その点では最も地方財政に一切依存するというふうな態勢でできております。日本高等学校教育というものは、日本教育の中で一番問題になっているところだと思うのです。だから、ここでは相当積極的な施策をしていかなければならぬと思うのです。教室等状態考えてみれは、かなり詰め込んだ状態であるし、余裕というものはない、そういう状態だと思うのです。そこで、三十八年から四十年までのこれに対する対策として、一学級生徒数をふやしてこのピークを切り抜けるという、あの法案の内容を見ると、これは一応当を得たように見えるけれども、今申しましたように、根本的にここで高等学校教育を躍進させるという態度を文部省が持てば、ああいう方法をとるのは非常に無策だと私は思うのです。かえってその機会に、五十人というのを、あるいは農、水、工などを四十人としておったのを、それをあくまでも厳守して、そうして足らないところは先生の数をふやす、その機会教室数をふやすという方索をとることがほんとうに完全な中等教育をやるという意図になると思うのです。あれを出したということは、急増するのに最もいい対策だというような考えも見えますが、本来の教育行政あり方からすれば、あそこの部分は撤回して、そうしてあくまでも高等学校整備のためにあの機会を利用すべきだと私は思うのです。もしそれをしなけれはもう機会がこない。依然として今のような狭濫と不完全な状態高等学校を推し進めていくことになりはしないか。従って、このピークを切り抜けるためには、地方財政に依存するということはなかなかむずかしいことですから、その際こそ政府が思い切って金を出したり、補助対策をとっていくべきだと私は思うのです。定数法の条文に触れてきたわけですが、この点どうですかね。どういうお考えでああいう臨時的な対策をとったか、御説明願いたいと思います。
  7. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御説の通り、わが国の教育行政の中で、義務教育は国が半額を負担し、大学は国立学校ということで国が経費を見ておりますが、高等学校につきましては十分な国の施策がいっていないという点は私どもも率直に認めるわけでございます。高等学校教育をどういう形で伸ばしていくかという点について、世界の大勢が後期中等教育の完成、充実という方向に向かっておりますので、できるだけそういう方向に向けていきたい。そこで今度の急増ももちろんこれを一つの絶好の機会であるとも考えますので、そういう方向高等学校教育拡充をはかっていきたいという御趣旨については、私どもも同感なんでございます。そこで今回は臨時的にせよ、ともかく急増期間中は従来は施設方面には国の補助がなかったのですが、施設については老朽校舎のほかに新たに急増校舎も国が助成の道を開こということで、ただいま予算に要求しているようなわけでございます。  なお、人権費につきましては、これは従来から地方負担でございましたが、交付税の方で考慮いたしておりました。ところが従来の乙号基準というのは省令でございますし、十分に守られなかった。ここにも欠陥がございますので、交付税において的確にこの教員定数を保障するような道を開きたいというのがこの法案趣旨でございまして、この定数ではじき出した分は、交付税において確実に保障する道を開きたい。今までは高等学校経費は、生徒一人当たり幾らというふうな算出の仕方をしておりましたが、この法案通りますれば、高等学校費生徒数のほかに教員数という新しい単位費用を設けたい。それによって必要な教員数確保したい。この法秦によりましても実は一万数千人の教員急増までに充足しなけれはならぬし、急増期間中は百二十万人の生徒収容するためにはどうしても三万名以上の教員になろうかと思いますので、なかなか大へんなことだと思います。私ども原則としてほ学校新設既設学校拡充ということでいくつもりでおりますが、何分にも急増というのは一時的な現象であって、三年、四年たったあとは急激にまた減少するという事態もございますので、一度にたくさんの学校新設拡充をしてしまって、その以後の点についてのある程度の見通しも立てなければなりませんので、やむを得ず一割程度すし詰めは認めたわけでございまして、御趣旨の点ほそういう方向でもちろん進んでおる。ただ従来生徒数が減少するということを予想しながら、実は急増期間中のある軽度のすし詰めほやむを得ないものと考えておるわけでございます。
  8. 小林信一

    小林(信)委員 もちろんこの法案の持っております趣旨には僕らも賛成ですが、その点がいいからといって、かえって今私が申し上げた点とか、そのほか二、三ありますが、非常に世間では心配しておる点もあるわけなんです。せっかくのいい法案でありながら、そういう心配を持っておるということは非常に残念なことなんです。今、局長に私が特に申し上げた点については、三、四年後にまた減少する時期がくる。そのときのことを考えれば、せっかく教室を作ったり先生の数をふやしたりしてもったいないという印象を受けるわけですが、そこが思い切れば踏み切るところだ、こう考えて申し上げているわけなんです。ほんとう高等学校教育というもむを充実するためには、何といっても生徒教というものを現在の五十人、この法案が持っておる五十人で満足しているような状態でははんとうの進歩じゃないと思うのですよ。やはり五十人を四十人にし、さらに三十人にするという大方針というものを立てていくべきじゃないか。そうすれはここでもって急増対策に一割増し方法でもって間に合わせるということでなくて、その際にその急増する分は校舎も建てる、先生確保する、施設も完備することに努力することによって、今度は三、四年後に生徒数が減りてきたときに、いよいよ五十人が四十五人になるとか、あるいは四十人が三十五人になるとかいう理想にだんだん追いつくことができるのではないか。そういうことをなぜやらないのか、あるいはやれないかということを聞いておるわけなんで、もちろん三、四年後に減少するということはわかっておるけれども、それがわれわれの目的に到達する方向にいくことではないか、こういうことなんです。
  9. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御趣旨まことにごもっともでございまして、一応私どももそういう方向計画を進めておるのです。たとえばあまりに急激な変化を与えますことは教育界にいかがと思うわけでありまして、急増は一時的現象でありますから、その一時的現象を利用しながら恒久的な施策を一面に考えておるわけです。公立学校で八十万、私学で四十万、百二十万の収容計画を立っておるのですが、この公立学校八十万のうち学級増加、つまり既設学校での学級増加で四十万、そのほかに高等学校新設でニ十万という計画をしておる。すし詰めの分は二十万足らずであります。ですからその分は急増が終わりますればまず第一にこれは減少する。これは附則にも書いてございますように、まず第一になくしていきたい。私どもとしては大体一ぺんに進学率をあげても、今度は入ってこないという状況もあるわけですから、進学率というものを徐々に向上させなけれはならない。昭和四十五年に大体七二%程度を目標にしておりますから、そこで急増期間が過ぎたら、すぐさますし詰めの方は解消しでくる。その次の手といたしましては、今御指摘通り五十を四十に引き下げるというような方向で次の手を打って参りたいと考えておるのでございまして、決してすし詰めでこの急増を乗り切ろうなんていうような考えは毛頭ないのでございます。御趣旨の点を尊重しながら、ただ教育界に急激な変化を与えないで徐徐に進学率の向上をはかっていくのがいいのではなかろうか、こういう見解をとっておるわけでございます。
  10. 小林信一

    小林(信)委員 法案を見ますと、その部分が相当なページをとって書いてあるわけです。非常にあそこから受ける印象は、一時的現象に対するところの、あらかじめこれを予測して対処するという点ではなかなかけっこうのように思うのですが、私の受ける印象というのは、やはり高等学校教育というものに対して非常に消極的であるというような考えを持つから、その点を申し上げるのですが、私はさらにこういう方面からも考えてもらいたいと思うのです。  今一般業界では、いかにして人間を獲得するか、これに非常に苦労をしておるわけです。私は文教行政をするにはいかにして優秀な教員確保するかということも、この際業界と同じように大事ではないかと思うのです。ただ号令をかければ先生が集まるというような考えでおってはならないと思うのです。現になかなか教員になることは至難だというふうなことと、もう一つ一般の財界の方の好況から、先生なんかにあえてなる必要はないではないかというようなことから、人材教育 界に集まらないような情勢にあるわけです。この急増対策の問題も、やはりこの点も考慮していかなければならぬと思うのですよ。だからそういう場合に、どこまでもいかにピークであろうとも一時のがれに生徒数をふやして間に合わせるのではなくて、あくまでもこの五十人を厳守して、先生の数もそのときに十分間に合わせる。そうしてこの法案の中にもあります養護教員確保するということを考えてはおるけれども、すぐに養護教員を養成することは不可能だ。だからこういうふうな措置をとるというようなことをこの前も御答弁があったと思うのですが、そのときになって間に合わないからなんということはほんとうは大きな手落ちなんですよ。やはりそれ以前に教員の数というようなものは、しかも質的にも考慮して対策を講じておかなければならぬと思うのです。だから私はあくまで一割増し五十五人というものは撤回して、そしてあらかじめ教員確保する、施設も完備する。そしてそのあと要らなくなるわけじゃない、それを利用して生徒数を減らしていくという方向をとることが私は大事だと思うのですが、教員確保というような問題につて、どういうふうなお考えを持っておるか、お聞きしたいと思います。
  11. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 先ほど申しましたように、この法案でも一万数千名増員しなければならぬし、さらに急増期間中には三万名程度の増員が必要でございまして、実は大へんなことだと考えておるわけでございます。そのどうして人材確保するかという点については、一つ待遇の面において改善をしていく。このたびの人事院勧告によりまして、今回は初任給につきましては前回のものよりさらに大幅に――大幅でもございませんが、少なくとも上級職甲よりは今度は改善したわけでございます。初任給も引き上げ、あるいは科学技術者に対する初任給調整手当も引き上げ、拡充をいたしたわけでございますが、これだけでも不十分でございます。育英資金については、従来は高等学校へ行った場合には返還が免除されませんでしたが、今回は高等学校に行った場合にも返還を免除する、こういうような措置も講じておるわけでございます。そのほかに教員採用の問題が実はあると思うのです。採用の時期が教育界年度末になることが多かったのですが、できるだけ一般業界とそろえまして、今教育長協議会等とも御相談しておるのですが、できるだけ十月に予定採用してしまう。年度末まで待っておるといい人材確保することは困難でございますから、採用の時期等についても検討を今いたしておりまして、いろいろな方面からこの教育界人材確保する、こういう方向で今努力をいたしておるわけでございます。もちろん今の給与改定だけで完全だとは思いませんが、今後機会あるごとに教員待遇改善については努力して参りたいと思っておるのでございます。
  12. 小林信一

    小林(信)委員 待遇改善をするなんということは当然のことなんですが、私どもがお聞きしたいのは、こういうときによけい人材というものを確保して、順次一学級生徒数を減らすことも行政上可能だという体制を私は作ってもらいたいと思う。そういうふうな心がまえを持っていなければ、業界へみんな人間をとられてしまう。だからその点では業界と同じような気持で人間というものを確保しておかなければいけないというわけなんです。ただ初任給をどうしたこうしたというふうなことだけでは、私はほんとう対策とは言いかねるということなんです。今初任給の問題が出ましたが、これなんかも最近の経済事情から考えても相当用心をしなければならぬと思うのです。少しぐらい初任給を引き上げたからといって私は満足していたらいけないと思う。大体日本の経済問題なんということは、この際何も議論する必要はないのですが、それは池田さんが所得倍増計画考えているからだんだん経済事情がよくなるのだというふうな印象もありますが、私はもっと根本的にこの問題を考えていかなければ、いろいろなところに問題が起きてくると思う。というのは、ヨーロッパあたり学校先生初任給というのは、大体六、七万円です。もちろん多少物価というものは高いかもしれない。それでもなお初任給は一応一般業界人たちよりもいいのですが、やがてそれが産業界給与等に相当な格差がつけられて、先生の方が悪くなる。従って先生になるのがだんだん少なくなってきて、これはいつかもお話し合いしたのですが、男の先生が必ずしも優秀というわけじゃないのでしょうが、男の先生というものは諸外国でだんだん少なくなっていく状態なんです。日本だけが非常に男の先生が残っておるというような状態だと思うのです。そういう世界情勢から考えても、今の日本のわずかな初任給引き上げなんということは、これはまた何もならないことになってしまうと思うのです。そういう点から、実はきょうは来年度予算というふうなものをめぐって官房長からお聞きしようと思ったのです。私は、この法案をこれから審議していくわけなんですが、さまぎまなところにそういう問題を考慮しなければならぬような事情になっていると思うのです。この急増対策という面からも、人間確保の問題、そしてやがては生徒数を急激に、五十人にするなんということでもって満足するということは、今までが今までであったからやむを得なかったわけなんですが、もっと急激に減らしていくという措置を講じなけれは、はんとうに科学教育技術教育なんというものはできない。数学の教育なんという個人指導を要する問題が、私は効果が少ないのじゃないかと思う。そういう状態で学力テストをやったって、私は意味がないと思うのです。それは同じ局長の管轄下にあるわけなんですから、こういうものを等閑視しておって、急増対策というふうな便宜的なものでやって、それで学力テストをやる、こんなところは私は大きな矛盾だと思うのです。この急増対策に対し ては何とかして与党の諸君にも文部省にも考慮してもらって、もう少しこれが一般人たちの理解のいくような姿にしてもらいたいと思うのですが、きょうはその程度にしておきます。  ついでですから、もう一つ問題になっておる、高等学校で全日制ならば三百名以上、定時制、分校ならば百名以上でなければその存立はさせないというきついものがあるわけなんですが、これに対して地方では心配をしておるわけなんです。附帯事項もつけたのですが、文部省にはさしてこれが影響するところがなかりたらしいのですが、一つその点の御解明を願いたいと思います。
  13. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 ちょっとその点は小林先生誤解があるのではないかと思うのですが、実は高等学校の規模をどの程度のものにするかという一つの基準があるわけでございまして、その際に、高等学校教育をなるべく充実したものにするには、本校で三百人、分校で百人ぐらいのものが適当ではなかろうか、あまり小さな学校を居きますとどうしても教員数が少なくて、不十分な教育になってしまう。義務教育の場合には、これは私どもやむを得ないと思うのです。通学距離の関係等から、三十人の学校がありニ十人の学校があってもやむを得ませんけれども高等学校教育として銘を打ってやる以上は、ある程度の規模がほしい、そしてできるだけ施設設備も充実し、教員組織も充実したいというのがこの法案のねらいでございまして、これは百人未満やあるいは三百人未満の学校をつぶすという法律趣旨ではなく、あくまでも基準をお示ししただけのことですから、基準としてお考えいただきたい。かりに三百名未満の学校があっても、あるいは百人未満の学校があっても、これは統廃合する趣旨のものじゃなく、現在のものはそのまま存置するように考えております。ただ今後の問題として、新しく学校設置する場合には、本校の場合は三百人以上、分校の場合は百人以上にしてほしいという希望の基準なんですけです。ですからかりにある地域で八十人しかなかった場合は、教育委員会は八十人で認可すればよい。決してこれは拘束基準ではない。一つ努力目標の基準でございますから、私はそういう努力目標というものを法律に明示しておいた方が、学校をお作りになる場合にいいのじゃなかろうか、それが高等学校教育の内容を充実させるゆえんではなかろうかと思うわけでございます。決してこれは認可の拘束基準ではないということを十分御理解いただきたいと思うのです。
  14. 小林信一

    小林(信)委員 その理想では最も妥当な条項だというふうにお考えになっているようでありますが、これは、ほんとう文部省にすわっておって、何も地方の実情なんということを考慮しない人の言い分だと私は思うのです。こういう条文を出されたら地方がどうなるかということをもう少しお考えになっていただきたいと思うのですよ。はたして地方教育委員会、というよりも自治体というふうなものは、これをどういうふうに悪用、といぅことでなくて利用しなければならぬか、その財政事情というふうなものをお考えになってもう一ぺん御答弁願いたい。あなたのお考えになるように必ず地方人たち教育的な理解を持ってこの条文を、あなたの考えるように履行するかどうか。
  15. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これは多少従来のいきさつがございまして、御心配の点は私ごもっともだと思うのです。ただ従来は地方財政が非常に因っておりまして、定時制の学校等の統廃合が行なわれたことは、これは事実でございます。今庄は統廃合の行なわれないように、財政的に十分保障をいたしますから、無理な統廃合はないと思うのですが、この点は文部省も積極的に指導をいたしまして、現在あるものが無理な統廃合にならないように、十分な財政保障を一方にしながら、一方においてはそういう無理な統廃合の行なわれないような行政指導を強化して参りたいと思います。  それから今後の問題としても、あまり小さな学校を作っていただきましても、学校経営にも困りますし、その意味では私はその学校の子供たちもかわいそうだと思うのです。わずか数人の先生高等学校教育だとおっしゃるのは少し困るのじゃないか。中学校の場合は義務教育だからある程度やむを得ないにいたしましても、高等学校教育義務教育じゃないのですから、できるだけある程度財政の規模はあった方が望ましいという意味であって、決してこれは強制する基準ではないのでございます。  それから地方でかつてそういう御不安があったのは、地方財政が非常に困っておったときの状況でありまして、現在では無理な統廃合はやっていないはずであります。ただ、やるとすればこれほ私は当然であろうと思うのです。財政上の見地からの無理な統廃合は現在はいたしておりません。
  16. 小林信一

    小林(信)委員 今の、百人以下なんかでは教育が成り立たない――大体こういう言葉はこの条文の中にひそんでいるわけです。そこをやはり地方で強く印象づけられて、必ず現在あるものをつぶしていく方向をたどるのじゃないかと思うのですが、大体文部省考えているそういう財政的な裏づけとか、あるいは条文で云々というふうなことだけでもってこの分校指導などをなさっておるから私は問題だと思う。実際あなたの今満足するような定時制分校の経営というものが成り立っておるとお考えになるかどうか。問題はその内容とか運営方法、これに対する善処がないから、高等学校の定時制分校というものはなるべくなくそうという方向にいっているんじゃないかと私は思うのです。だからもっとその内容あるいは学校運営というようなものに対するできるだけの指導あるいは補助というものがなされておれば、こういう条文が出ても、八十名であろうが七十名であろうが規制はされないのだ、だからおれのところではまだ存続させるということになるのですが、一面そういう指導がなされなくて、ただ形骸だけで定時制分校は放置されておる。だからこういう条文が出てしまえばこれはますます影をひそめて、ほんとうに恩恵を受ける高等学校の本校に通えない人とか、あるいは働きながら勉強をしようという人たちは、いよいよ高等学校教育といぅものからは取り残されていくと思うのですが、そういう点はどうですか。
  17. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 定時制がこのごろ減少の方向をたどっておりますことは事実であります。ということは、金日制にどんどん切りかわっておる。従来は高等学校の数も少なかったせいか定時制に行っておった。ところが景気もだんだんよくなったので全日制に変わっていく分が非常に多いのであります。その関係において定時制が減少しておるということは事実であります。ただ私どもが今のままで定時制がいいかということを考えますと、決してそうではないと思います。定時制の教育内容なりあるいは運営の方法に根本的な改善を加えて、もっと魅力のあるものにしていきたいということでいろいろ検討しておるところであります。いずれにいたしましても、学校教育法等でこの前御審議を願いましたように、技能者養成施設との連携をはかるとか、あるいは通信教育と並行してやるとか、そういうようなことな考えながら、同時にも根本的な検討を進めながら、もっと魅力のあるような形に持っていきたい、そして勤労青少年教育の一そうの振興をはかっていきたいという趣旨については私どもも同感でございます。
  18. 小林信一

    小林(信)委員 定時制が全日制に移行したいということは、今局長がおっしゃったように定時制の内容が整っておらないから、せめて全日制に移行して、そうして三年間行けば卒業資格がとれる、そうして上の学校にも進学できる資格がとれるということで、もう定時制には魅力がないわけです。魅力がないから、せめて全日制の高等学校と同じ資格をとるというところにせめてもの望みを実現しようとする移行だと私は思います。ほんとうに魅力のある定時制高校の運営というものがなされておれば、何も全日制なんか移行しなくとも私はいいと思う。農村の中にありましても、農村青年を育成するとか、あるいは農村を近代化するというような魅力ある内容の定時制高校の運営というのがないわけです。そういうふうなものを一面持ちながら、こういう法案を出せば、これはもう地方人たちも、なくなるならば仕方がないというような気持になるし、それから地方の自治体の財政事情からすれば、いい口実を与えることですから、ますます私は影をひそめていくのじゃないかと思います。だからこの条文というようなものは、今のようなお考えであればとってしまって、そうして文部省はもっと責任を感じて定時制高校の内容というものにこの際画期的な対策を講じて、充実していかなけれはならないと思いますが、私たちの県といたしましても、順次定時制高校というものは減って参りました。そうして今百名を割るような学校が多分に出ておるわけであります。この法律が出れば、おそらく地方財政事情からしてこれをなくしていく、父兄のカでも、あんなものがあったって意味がないのだ、それよりも、できたら本校の方に通うか、あるいは全日制に移行しょうじゃないかというような運動が行なわれておって、ほんとうに定時制というものがなくなってしまうような形だと思います。私はその本来の目的といぅものが達せられないという考えでおるわけですが、私の考えるところでは、この条文というものは定数法という非常にいい法律の中の最もまずい点で、これがあるがために、かえって世間から定数法というものが忌みきらわれるような感じもなきにしもあらすでありますが、これについては関連質問があるそうですから……。
  19. 竹下登

    ○竹下委員 関連して、今の議論でありますが、私ほ議論の角度が少し違いますけれども、内藤局長の御答弁で努力目標という言葉が出ておりますが、現実問題として、実数は確かに百名を割っておるところが多い。しかしこの条文ではその生徒収容定員が分校百名、こういうことになっている。収容定員というのは現実問題として百名のところはないと思うんです。全部五十名ならニ百名、四十名でも百六十名、三十名でも百二十名、だから収容定員を努力目標で示すということは、現実それよりもすべてが上回った定員だから、努力目標を現在よりも下げていくという表現になりはしないかという角度の違った疑問を持ったわけです。これについてお答え願いたい。
  20. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 お説の通り一学年四十人としましても三学年で百二十名になるわけであります。だからその点を考慮して百名ぐらいが一つの基準ではなかろうか。百名にしますと、一学年が三十三名ということになる。だから三十人以下の学年というものは学校の規模としてはあまりに小さ過ぎやせぬでしょうか。定時制は四年ですから、実は一学年二十五名になるわけですね。一学年二十五名ごでざいますから、ニ十五名の四学年でございますから、百名というのは今お話のように非常に少ないのじゃなかろうか。少なくとも収容定員は一学年三十名以上になっている。三十名とすれば三、四、十二で百二十名になるわけでございますから、これよりも割ることはまずなかろうと思うし、しかも現実には一つの基準を示して、できるだけ今小林先生お話のように高等学校教育を充実したものにしたい。あまりちゃちなものを作ってほったらかしておくことはよくないのじゃなかろうか。できるだけ基準以上のものを育てていくような方向努力して、教員定数もよけい配当し、資質も向上していく、こういうふうな方向努力すべきではないかと考えるわけでございます。
  21. 竹下登

    ○竹下委員 現実問題としてすでに定時制ではおそらく日本全国どこへ行っても百二十名よりも下の収容定員の学校はないと思います。現在のやつよりもさらに下の基準をもって努力目標にするという考え方が矛盾ではないかという私の議論です。実数で押えますとよくわかるんです。だから逆にいえば、収容定員だから、これは今思いつきでありますけれども収容定員を明示したものであるから、実数がそれよりも下回らないようにということではないから、収容定員の問題だから、現実百二十名以下のところはないから、百名という努力目標を掲げる必要もないではないかという印象です。
  22. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 お説の通りなんでございますが、収容定員が一学年三十名としまして、三、四、十二で百二十名が定員になるわけでございます。ですから実際問題として定員が百二十名以下のところはあり得ないという竹下先生の御意見は全く同感でございます。ただ百名と規定したのは、それでもなおかつ百二十名よりももっと少ないものもあり得るわけだと思いまして、百名というものを基礎にいたしたわけでございます。
  23. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 今の学校の規模に関連してお聞きしますが、適正の規模というのは、あな方いつも最低ばかりを考えているんですが、教育的に適正の規模というのは、多過ぎるときこそ不適正になるので、少ないほどいい教育ができるんですがね。百名以下なら適正規模でないなんという議論はどこから出てきたんですか。教育的に答えて下さい。
  24. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 百名以下でございますと、まず教員定数の面で困ってしまう。
  25. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 それは財政的な問題じゃないですか。
  26. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 教員定数の問題として、百名以下の学校にそうたくさんの教員を配当するわけに参らぬのでございます。そうなると一人の先生がたくさんの教科を受け持たなければならない。義務教育の段階ですとある程度それも可能でございますけれども高等学校教育は相当専門的な事項が多いのでございますから、なるべく教員数の多い方がいいと思うのです。その多いことを望むならば、あまり小さな生徒数のところには教員定数をそうよけいに配当することは、これはまた財政上から考えてむだが多いのではなかろうか。だからその辺のかね合いが私は問題だと思う。
  27. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 だから不適正規模じゃなくて、財政的に困るというだけでしょう。一番理想的なのは、先生一人、生徒一人なんです。これが最大の適正規模なんです。(「それは違うよ」と呼ぶ者あり)よけいなことを言うな。そうでしょう。だから大きな学校になると会社みたいになるのですから、こいつは教育的に、これは大量生産なんということで人間ができるものじゃない。あなたは、文部省的感覚からいえは、最低、人数の少ないほど教育的なんですよ。自治省的な感覚でおっしゃっはいかぬと思うのです。法律的に適正規模という感覚を最低ばかりをいつも考えるのは迷信だと思う。だから江戸時代の塾教育だって、あれは適正規模でないとはいえない。そうでしょう。法律に、やたらにいつでも適正規模を最低ばかりとるのは、いわゆる教育的でない表現で、非教育的だと思うのです。そうじゃなくて、文部省はそうでもないけれども、どうも自治省その他から圧迫されてこうなったのだといえばわかりますよ。だから局長のおっしやるのは詭弁ですよ、そうじゃないですか。
  28. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 寺子屋教育のように大体人間形成とか、人格陶冶ということが主の場合は私どももそういうものがあり得るものと思うのです。一クラスの人員ほなるべく少ない方がいいと思いますが、これも経済規模を無視してむちゃくちゃに少ないということはあり得ない。家庭教師なら一人で済むのでございますけれども、それでも各教科をやる場合は、高等学校教育になれは英語も、数学も、理科もみんなできるという家庭教師はないわけでございます。そこでやはり諸外国の例を見ましても学校経営の経済的規模があるわけでございます。学校経営の経済的規模から見れば、三十人くらいが……。
  29. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 諸外国とはどこですか。
  30. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これはイギリスでも、アメリカでもみんな同じでございます。ですから学校経営の経済的規模を考えますと、もうむちゃくちゃに小人数にするわけにも参らぬと思います。そういう点を考えますと、二十五人なり三十人なりというものは、これは規模としては最低だと思います。これ以上に縮めますことは、今度は財政負担が非常にかかり過ぎるということにもなるわけでございます。
  31. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 私ほまじめに育っているのですがね、別な角度から、農村の分校というのは、地方教育からいったら最も重大なことなんです。全日制の高等学校を卒業した者はその村から全部離れて都市へ行っちまうのです。そうして農学校の卒業生も六、七割は農業経営者にならないのですよ。国あるいは県の費用で教育を受けた者がその村に土着して生活改善その他に一つの指導的役割を果たすのは分校の卒業生だけなんですよ、実際は……。だから県においてもー番大事な教育は分校なんです。分校は十人ずつ入ってもそれは大切にしてやっていかなくちゃならぬというのがほんとうの僕は教育政策だと思うのです。そこで百名以下とかそういうふうなことをおきめになることは決して農村教育にはならない。農業基本法までできて、そうした一方で農業教育推進なんという法律ができているのですから、百名以下を、教育委員会が知事部局と予算編成するときに牽制されるようなものを、私は出すべきじゃないと思うのです。それは必ずそうなりますから、そういうことは文部省の窓からながめての感覚で、農村の農業教育の分校というのはそんな適正規模を最低限にきめるものじゃないです。適正規模は上をきめればいい。何百名以上はいけないということになればいい。それはおやめになるべきだと思いますが、そういうふうなことで国会議員をだましてはいけません、だめです。こういう法律というものは必ず地方へいったならば教育の抑制になるのです。都市の夜間教育、そういうのならいいのです。定時制ならけっこうですが、農村の分校ですから一番響く。それでこの卒業生だけは土着する、ほかの人は東京へ来ます。東北なら東北を例にとったならば、どんなに少なくても分校だけは置いてやりたい。そうして、そのときに都市のような精細なる分化した各学科担任の先生を置くということは要らない。医業形態と同じで、東京では産婦人科、外科、内科と分化している。食材においてそんな分化した医業を置いたって、これは成り立たない。農村にいけば、よろず屋形態の教育ほんとう教育なのです。そこでほんとうの農村人ができるのでございまして、そういう形式論はおやめになった方がいい。この法案の中で一番いけないのはそこだと思うのです。そこで最低限だけの教育の適正規模というのはうそだ、教育的にはそんなものは要らない。最高限をきめるのが教育的に論議すべきことであって、文部省ほもっと勇敢に教育的にやるべきで、みずから非教育的な考えを各省――大蔵省とか自治省から押しつけられて、そうして作るような法律ではいかぬと思うのです。だから僕は自治省の人や大蔵省の人を呼んで聞きたいのですが、初中局長がそういうことを言っては困ります。だからこの法案をそこだけ排除すべきだ。  政務次官、長谷川さんに聞きますが宮城県の農村の分校を調べてみなさい。こうい法案ではだめなのです。農村教育を低下させるだけです。だから国会でこういうものは修正すべきだと思いますが、次官に聞きます。
  32. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 今お話を伺いましたが、結局教員数はどうでもいいのだ、一人で八百屋のように何でもやっていいのだ、人間形成が主だということは、私は一つの御意見だと思うのですが、これはやはり高等学校教育をやるなら、内容的に高等学校の指導要領に即応した教育をしていただかなければ、高等学校卒業生としての資格に欠けるものがあるだろうと思うのです。ですから、やはり国語にしても教学にしても理科にしても、その他の教科にいたしましても、ある程度の水準というものは維持していかなければならぬ。そのためにはある程度教育数を配当いたしませんと、高等学校教育は相当程度が高いですから、一人で何もかもできるというわけには参らないと思う。そう考えますと、やはり私どもとしては百人というのは最低の規模ではなかろうか。おっしゃるように最高の規模も必要であろうと思います。ただ現在のところ、いろいろな土地の条件その他によって、やむを得ずたくさん入れておるところもございますので、学校経営としては少しふくれ上がっている面もありますけれども、これは一面行政指導の面でできるだけ過当な学校については制限を加えるようにして参りたいと思っておるわけですが、今回のこの法令の場合には、ある程度以上のものはできるだけ法律で保護していきたい。この規定をほずしますと、今度は小さな学校な保護する規定がないわけなのです。かえって私はそういう小さな学校はほったらかしになってしまって、あまりその進展ができないのじゃないか。それこそ自然消滅してしまうのではなかろぅかという不安さえ私は持つのであります。この点はあなたと実は見解を異にしているわけです。
  33. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 見解じゃなくて、事実に反します。次の機会にその問題をもう少し掘り下げたいと思いますが、今のようなことを言われては困る。百名という規定を作ることによって、百名以下の分校を保護するために作る、そんな詭弁をされては困る。これは知事折衝したら必ずけずられます。規定がこうなっているのだから、たった五十名の、十名ずつの場合は四十名ですからけずられますから、ほんとう教育委員会は困る。これは隠してもらった方が一番いいのです。もちろん農村の先生というのは、都市の先生のようなサラリーマン心理じゃないのですから、農村に入って、何とかしようとして盛んに勧誘して歩くのですが、それでも入らない。教育関心が少ない。農業というやつは教育は要らないという常識がある。だから農村の分校というのはもっと啓蒙的に法律を作るべきであって、今のような形式的なことでは私はいかぬと思います。僕ら痛切にそれを感じておるのですから、分校百名は隠していただきたい。それは理論としてはそんなことを言っても通るかもしれませんけれども、少なくとも農村教育の振興という場合には、百名というのでは東北六県では半分くらい統廃合になる。県会においてはどういう質問になるかというと、一人当たりの教育費が非常にかかる、生徒数が少ないから、だから廃止せいという論です。そうして教育委員会には個々の県会議員はうちの分校は廃止しないでくれといってまた陳情に来る。そういうような矛盾がどこの県でもできているのですから、こういう法律をお出しになると、知事部局の方では法律的根拠というものをもってきて統廃合して、毎年の予算で縮小されて参ります。だから百名以下の実員になっている分校を保護するということをおっしやるのはあまりにも詭弁過ぎる。これは関連質問だから一応きょうはやめておきますが、もう少し真剣に論議していただきたいと思います。
  34. 長谷川峻

    ○長谷川政府委員 私も山中議員と同じように東北ですが、私も地方の定時制を見て歩て、農業基本法やらできる今日において、地方に定着する人がそうした勤労青年であることは認識しております。ここの場合は、法案で出ているこの条項は、百名というのを収容一つの基準目標として、そこに努力してもらいたいということですから、あなたと地方の現状の認識は同じですが、この法案努力目標といぅものはお認め願いたい、こう思っております。
  35. 山中吾郎

    ○山中(吾)委員 これで終わりますけれども、長谷川さん、農村にそんなことを言ったら、ほんとに文部次官だめだと言われますよ。努力目標じゃなくて、これを掲げることによって抑えられるのですから、それは部内でもう少しお考え下さい。
  36. 小林信一

    小林(信)委員 定数法の問題へ入っちゃったけれども、私の質問する問題はほかにあったわけですが、たまたまこっもへ入って大へんな論議になったのですが、仕方がないから大臣が来るまでその点でやります。たしかにこの法案は、前回にはああいう国会事情もありまして、私たち協力してこの法案を実は全会一致で通したわけです。しかし廃案になって、新たにここで論議するわけですが、そのときに与野党ともこれに対する付帯事項をつけたわけです。それに対して次官も、この次官でなくて前の次官が了解したわけです。その中にやはりこの問題については、強力に、この法案では非常に心配であるということをうたったわけです。次官も十分それを了とされたわけです。従って、もし誠意をもって、文部省の中に坐っておるのでなくて、地方情勢というものを十分お考えになって、再度提案されるならば、この条文というものは相当考慮されて出されてこなければならぬと思うのですが、今関連質問等に対するところの御答弁を聞きましても、どうもそういう反省の色がない、これでいいというような態度に見えるのですが、ほんとうにそのときの与野党の意見を尊重しておるかどうか、あるいは文部次官がはっきりその通りでございますとわれわれの意思にも賛成をしたその態度があるのかどうか、そこを一つ御答弁願いたいと思うのです。それに附帯しましてほかの要望事項が五つありますが、そういう点がどういうふうに考慮されて再握案されたのか、御答弁願いたい。
  37. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 この前の国会で附帯決議が出ました事項でございますが、高等学校の最低の規模を明らかにしたことから、定時制の分校の統廃合を促すことのないように留意しろ、こういうことでございましたので、私どもとしては、高等学校の最低規模を定めることは、高等学校教育の水準を維持する意味から必要である。しかし既存の定時制分校については、無理な統廃合を行なうことのないように、この法案が出ますれば、私どもは、積極的に通達なりあるいは教育会議なりを開きまして、この趣旨は十分徹底させるつもりでございます。それで、定時制教育の伸展に妨げのないように、今後とも強力な指導をして参りたいと考えておるわけでございます。そのほかの点については……。
  38. 小林信一

    小林(信)委員 そんな答弁ではだめだ。もう少し反省の色を見せなければだめだ。
  39. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 御趣旨はまことにごもっともなので、この法案が通った場合には、御趣旨の線に沿って強力な行政指導をいたしまして、無理な統廃合の起こらないように、文部省は最善の努力をして、御趣旨に沿いたいと考えておるわけでございます。  それからあと、「本法が施行されるにあたっては、現在各学校に配置されている教職員の実績を尊重し、その現状を下廻ることのないように配置すること。」こういう附帯決議がついておりましたが、これは私どもとしては、大体今の法案で、各県とも総数においては上向っておりますから、問題はなかろうかと思いますが、いやしくも個々の学校についてそういう実績を下回るようなことがありますれば、これは下回らないように、教育委員会が今度定数を配分する際には十分考慮するようにこの法案が通過しましたら、教育会議等で趣旨を説明し、徹底をはかって参りたい、この点についても御不満のないようにいたしたいと考えておるわけでございます。  なお、政令基準以下の都市で高校新設についての制限は、実情に即するように留意しろという附帯決儀がございますが、政令基準は、今のところ大体人口十万程度考えておりますが、人口だけではなくて、市町村の財政能力も十分考慮いたしまして、実情に即するようにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。 それから、事務職員や実習助手の適正な配置のできるように行政措置をするようにという附帯決議でございますが、この法案によりましても、実習助手、事務職員それぞれ二千名以上の増員を見込んでおるわけですが、もちろん十分ではございませんので、実数に比べましては低いところも若干あろうかと思いますけれども、先ほど来申しましたように、これはあくまでも算定の基礎でございまして、各府県、市町村の教職員総数の定員を定めるのがこの法案のねらいでございますから、この点については実情を考慮して配分するように、なお今後の問題として機会あるごとに、この実習助手、事務職員の増員については改善をして参りたい。次の法案修正の際には、特にこの点に留意していきたいと考えておるのでございます。  なお、教育効果をあげるために、将来高等学校設置基準甲号を指向して努力しろ、まことにごもっともなのでございまして、この点は高校急増対策が一段落しましたら、さっそくこの点はそういう方向努力して、甲号基準に全面的に近づけて参りたい。今回の法案でも、農水と工業につきましてはほぼ甲号基準に近づいておるわけであります。その他の点につきましても、御趣旨に沿って努力して参りたいと思っております。  最後に、私学との間の格差是正のために適切な対策を考慮しろ、こういう附帯決議でございます。従来から私学に対しては及ばずながら努力して参りましたが、今後一そう国の予算の面におきましても努力するように、来年度予算に私学振興会の出資金なり補助金を要求いたしておりますので、これが実現をはかると同時に、地方財政の面におきましても、現在各都道府県に、昨年までは三百万円でございましたが、これな九百万円に本年はふやしましたけれども、これを大幅に増額して、私学の助成の道を開きたい。従来はこの私学に対する助成はその他教育費の中に一括してあったわけでありまして、どこに入ったかわからぬような点がありましたので、今回は、できるならば、私学振興費という特別の目をその他教育費の中に設けまして、私学助成を積極的に行なうように、ただいま自治省とも打ち合わせをいたしておるところでございます。
  40. 小林信一

    小林(信)委員 大臣が来ましたからこの程度でもって終わりますが、今の御答弁をお聞きしておると、まことに委員会の意向というものを非常に軽視している感が強いのです。なめているというような、どうせ多少の意見があったのだ、その意見を調整するために附帯事項が出たんだろうというような印象しか私は受けない。とにかくあのときは、非常にこれは問題だったのですが、国会が国会だから、とにかくいいところもあるから、一応通せというような点で、じゃ、これだけはどうしても文部省において善処させなければならぬといぅふうに与野党とも意見が一致したところでつけられたものです。それに対して、今の御答弁を承っておりますというと、そんなことは少しも検討したような様子がない。今附帯事項を読み上げて、思いつきのことを局長がしゃベっておるにすぎないような、まことに遺憾なものが見えるわけです。これじゃどうももう一ぺんしっかり審議をし直して――おそらく与党の諸君も、これを出した以上はもう少しこれに対する具体的な納得できる御答弁があるものときっと思っておられると思うので、今のような御答弁では、与党すらもあまり賛成をしないのじゃないかと思うのですから、これは相当決意を新たにして、次の委員会に臨まれるようにお願いしたいと思うのですよ。どうも抽象的な、しかも簡単なごまかしの御答弁が多くて、これでは定数法は簡単には審議できないという意向を申し上げて、それでは大臣が来ましたから、私の質問は終わらせていただきます。
  41. 櫻内義雄

    櫻内委員長 引き続き、学校教育に関する件等について調査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。横路節雄君。
  42. 横路節雄

    横路委員 文部大臣に、十月二十六日に予定されている学力一斉テストについて、この間からの各委員との問の質疑応答から申しまして問題点がたくさん残っておりますので、これらについて一つお尋ねをしたいと思うのですが、その前に、二、三文部大臣に対してお尋ねしたい点があるのです。  第一番目の問題は、文部大臣ほ、憲法は改正すべきであるとお考えになっておられるのかどうか、この点について一つ文部大臣のお寺えをお聞かせいただきたいと思います。
  43. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 改正すべきかどうかを、法律に基づく、憲法調査会法によっての調査会で検討中でありますが、その結果を待って私は考えをきめたいと思います。
  44. 横路節雄

    横路委員 教育基本法についてはどうでございますか。実は、教育基本法については荒木文部大臣は、何か改正なさる意思があるようにお話をなすったように私聞いているわけです。ですから、教育基本法について改正なさろうというお考えがあるのかどうか、なお改正しようというお考えがあれば、どういう点について改正なさろうとしているのか、その点一つ考えをお聞かせいただきたい。
  45. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 昨年ある席で教育基本法は再検討さるべきものであるという趣旨の意思表明をしたことがございます。それは教育基本法制定の経過にかんがみまして、なるほど教育刷新委員会のメンバーの方々が真剣に討議され、原案を作られた経過も承知いたしておりますが、何せ占領下でございまして、自由な意思が表明されないままに原案も作られたであろうと推察されます。そこで平和回復後十年になんなんとする時の経過もあります。その間教育基本法の趣旨に従って教育が行なわれてきたでありましょうが、さかのぼって教育基本法を再検討するという時期にもぽつぽつきているんじゃなかろうか、そういう気持から、あたかも憲法が法律に基づいて再検討されつつあるがごとき同様の意味におきまして、一文部大臣が改正するんだなどという独断的な立場ではなくて、しかるべきその道のべテランの方々に国民にかわって検討してもらうという考え方で、再検討すべき課題ではなかろうか という意味で申しましたし、その意味では今でもそう思っております。ですけれども、おのずから再検討するにしましても、その方法なり何なり、あるいは政党政治の今日の姿のもとにおきまして、私の立場から申し上げれば、与党内にはたしてそういう機運が動いておるかどうかということもあわせ考えなければ、行動を起こすべきじゃない、こう考えまして、議題としてはそう思いますけれども、具体的にいつからどうしてということは、今念頭にはございません。
  46. 横路節雄

    横路委員 実は最初に大臣に憲法のことをお尋ねしましたのは、教育基本法との関連があるからお尋ねをしたわけです。今大臣は、教育基本法については再検討すべきだという自分の所信は変えない、しかし具体的にどうするという行動はまた別だ。しかし教育基本法は私は憲法を改正しない限り変えられるべきものでないと思う。今大臣に申し上げるのは、そこにお持ちでないからですが、重ねて私は教育基本法の全文、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育のカにまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。ここに、日本国憲法の精神に則り、教育の目的を明示して、新しい日本教育の基本を確立するため、この法律を制定する。」こうなっているわけです。この点は、私が申し上げるまでもなく、大臣十分御承知なわけです。ですから私が先ほどお聞きをしましたように、今大臣は、今でも教育基本法は再検討すべきである、再検討すべきであるというのは、改正すべきであると思っている、しかし行動はまだ起こしていない、こういうお考えですが、教育基本法を改正しようということになれば、この教育基本法の前文から、憲法の精神にのっとって教育基本法はできているわけです。そうすると、大臣のお考えとしては、やはり日本国憲法は改正すべきだ、こういうことは先ほどのお答えの中にはなかったけれども教育基本法を再検討すべきである、改正すべきである、こういう大臣のお考えからいけば、当然私は憲法は改正すべきであるというお答えになると思うのです。そうでなければ、この教育基本法の全文の関係から私は出てこないと思うのですが、この点どうでしょう。
  47. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私個人としての、一代議士としての意見があるかないか、憲法についてそういうお尋ねであるとしますれば、以前私は憲法調査会の委員をしらばくではございましたが、しておりまして、その立場におきましては憲法は再検討し、かつ改正さるべき点があると思っております。先ほどお答えしましたのは、閣僚の一人として、政府としてどうだという立場においてお答えすべきものと思いましたから、それは国会の御審議を経て決定されております憲法調査会法に基づいて目下審議されつつある、その趣旨は改正すべきかいなかということから検討されつつあるわけでございますから、現に公にそういう動きが政府の立場においても行なわれつつありますときに、内閣の閣僚の一人としては個人的なことは申し上げるべきじゃない、こういうつもりで申し上げたのであります。  なお、教育基本法との相関関係お話がございましたから、ついでながら申し上げさしていただきますが、憲法がかりに一言半句も改正されない、また改正すべきでないという立場をとりましても、その憲法の趣旨に基づいている教育基本法それ自体にも、教育基本法の制定経過等から考えまして再検討さるべき性質を持っておるのじゃなかろうか。先刻も申し上げましたように、それは、刷新委員会の一人々が、占領下なるがゆえに、たとえば義務教育課程においては日本地埋、日本歴史、修身、道徳教うぺからでとGHQの意思として日本政府に厳命を下した直後でもあります。すべての意見は、法律の内容に影響をもたらすようなものは、ことごとくGHQのアブルーバルなしには、当時の国会におきましても帝国議会におきましても実現することは不可能であったという客観情勢のもとに、刷新委員会の人々もそのことを付度し、あるいは国会におきましても自由潤達な信念が吐露されず、その考えがありましてもGHQあるがゆえに原案に対する修正ということは許されなかった、あるいは許されないであろうと思って具体的な意思表示はなかったということは、推察にかたくないと私は思っております。そういう前提に立ちまして、先刻も申し上げた通り教育に関する専門家の権威ある方々、日本のトップ・レベルの人々に十分に国民にかわって検討してもらって、改正すべき点があるならば改正案を作ってもらって、それが国会であらためて検討されるという、そういう筋道をたどることを念頭に置いて、再検討さるべき謙題ではある。また憲法が改正されたと仮定しますれば、改正されたことによって教育基本法に影響なもたらすことありせは、むろんその関係において教育基本法が修正され検討されるということが出てきましょうけれども、そうでないといたしましても、私は検討さるべき課題ではなかろうか、こう思っておるということを先刻申し上げたわけであります。
  48. 横路節雄

    横路委員 実は私がこのことをお尋ねしているのは、たとえば今度小学校の教科書が改定になった。そうするとその中には憲法を守りましょうというような教材は入っていない。一番大事な憲法を守りましょうということが、改定前の教科書には随所に見られたのに、今度の改訂教科書の中では全くない。そこで、これは一体どういう意図なんだ。それで文部大臣教育基本法については再検討さるべきだ。また今大臣からお話しのように、文部大臣としてではなくて一国民として、あるいはまた衆議院議員荒木氏としては憲法は改正さるべきだと思っている。しかしこれは文部大臣としての考えというても、衆議院議員としての持っている考え、一個人として持っている考えというものは、やはり文部大臣という立場にあって、それを全く二重に使い分けるということはなかなか容易でないわけです。ですから、私どもはそういう意味で大臣のお考えがだんだんそういうところに浸透してきているのじゃないか、こういうように考えるわけです。事務当局の内藤さんが答弁したいようだけれども、実は大臣は十時四十分からおいでになるというので待っておったのだから、だいぶ時間が過ぎましたので、きょうはできるだけ大臣に御答弁を願いたい。私は大臣に今このことを申し上げているのは、私もこの前の文部委員会で、大臣が愛媛の市町村の教育長協議会あるいは新潟のPTA会の大会等に行かれたときの談話についていろいろな議論を聞いておりましたが、現場の教員の大臣に対する一つの率直な不満――大臣というよりは文部省全体に対する不満は、今日の教育はあくまでも憲法並びに教育基本法によって行なわれているのに、それを再検討または憲法を改正すべきだ、そういうことが随所に出てくる、そこに私は現場の教師が文部省に反発してくるところがあると思う。これは何も文部大臣一人ではないのです。内藤さん以下のいわゆる文部官僚に対する反発もあるのです。そういう意味で私はこの問題についてお尋ねしたわけなんです。この点は文部大臣もただ単に日教 組相手にけんか腰でお話をなさるというのではなくて、何であんなに現場の教師が自分に反対をしてくるんだ、それは私は一にかかってここにある、こういうように思う。  次に大臣にお尋ねしたいのですが、教育基本法の第十条に、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきものである。」第二項には、「教育行政は、この自覚のもとに教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなけれはならない。」私は、教育はやはり国家権力並びに地方権力の不当な支配に服することがあっては絶対にならないと思う。そこで、私は、教育が国家権力や地方権力の不当な支配に屈することがないためには、今日政府のカでおやりになっているいわゆる地方教育行政の組織運営に関する法律に基づいての教育委員ではなくて、やはりあの法律の前に教育委員が公選されて、教育委員が独自の権限を与えられて、そして国家権力からも地方権力からも独立をしていた、こういう立場における教育委員の公選、これが基本法第十条にいう教育が不当な支配に屈することがない、こういうことになると思う。やはり今の教育というのは池田自民党内閣の文教政策、これは大臣も違うとはおっしゃらないと思う。だからどうしても文教政策というものはそのときの政治権力を持っている政党の意向というものが強く入ってくもわけです。だからそういう意味からいけば、やはり基本法第十条にいう「教育は、不当な支配に服することなく」という点からいけば、今日の地方教育行政の組織、運営に関する法律に基づく教育委員では、何といっても国家権力、地方権力というものの意向に左右されてくる。だからそういう意味で、われわれが教育基本法を守る立場からすれば、当然教育委員が公選されて独自の権限によって政治的にあくまでも中立だということでなければならぬと思う。この点お尋ねしておきたい。
  49. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 教育基本法にいう不当な支配に屈してはならない、影響を受けてはならないという趣旨のことは、私は、かつて軍閥その他の不当な支配があったと推定されている、そういうことが繰り返されてはならないぞということが根本の趣旨だと思います。国家権力とか地方権力とかいう自体が悪いものではないと私は思いますが、ただ権力が憲法や法律に違反して介入するときに不当であって、そういうことが民主主義下の法治主義下の、また現行憲法のもとにおける一般行攻はもとより、特に教育の面においてそういうことは許されざること、これは鉄則でございますから、そのようなことがあるはずがない、むろんやってはならないという心がまえでおります。政党政治から、自民党に基盤を持つ池田内閣だから、池田内閣の教育政策が行なわれておる、そのこと自体がけしからぬとのようにおっしゃったかどうかはちょっと読み取れませんけれども、私は主権在民の政治形態のもとにおいて、選挙を通じて国民主権のいわば委任を受けて国会議員が国権の最高機関の構成員として国民にサービスする、このあり方は通称政党政治といわれております。何をなさんとするかは、国民に公約をして許されて当選をした者どもが、その公約を果たすということが行なわれておると思います。ですから、その範囲において教育政策について公約しましたことは実行することが必要であって、その意味で池田内閣の教育政策が行なわれておる、とおっしゃればその通りだと思います。その通りでありましても、そのことは悪いことではなしに、むしろ今の憲法の趣旨に沿った歩き方である。そのよしあしは国民が審判する、それが主権在民のあり方だと思います。その審判は次の総選挙において、その他の選挙を通じて、国民の意思によって、それが適切でないとすれば、自民党内閣を引きずりおろすという結果づけをもって審判が下る、そういう約束ごとで行なわれることが民主政治であろうと存じております。さりとて自民党政策、池田内閣の教育政策と申しましても、憲法の趣旨に断じて従わざるを得ない。憲法の趣旨を取り入れて、それを念頭において制定された教育基本法はもとより、もろもろの法律というものもそのらちを越えるものではないはずでありますから、その定められた法律に従ってそののりを越えないで行なわれることも当然であります。ですから、私が担任しましてから一年ばかりでございますが、その間今申し上げた趣旨に一歩でも逸脱したことはやっていないと確信を持っておる次第でございます。
  50. 横路節雄

    横路委員 今の大臣のお話の中で、なるほど戦前の教育は軍閥の支配下にあったということがあったのですが、しかしその軍閥というのは、やはり時の政権を持っておるものの中に構成されている。ですから戦前の教育というのは軍閥がやったのではない。そのときの、いわゆる政権を担当している政府教育を行なったのだ。それは結局軍閥を強くして、そして海外に出て領土を拡大していこうということなんです。その中には、この前だいぶここで優秀民族か劣等民族かという議論もございましたが、やはりあのときは八紘一字という精神で、日本民族こそ最優秀民族で、日本民族こそ指導者である。これは何も軍閥がやったのではない。それは全体の関係において、そのときの政権を担当している内閣がそういう教育方針を出してきたのです。この点は、何か軍閥だけが悪くて、そのときの内閣全体の責任ではないというような、そういう印象を、先ほどお話を聞いていて受け取りました。そうでは断じてないわけです。ですからその点は、戦前のあれだけの無暴な戦争、ああいう状態の根源をなしたのは、一つには学校教育がある。そこで、憲法から、教育基本法の全文から、今私が申し上げた教育基本法の第十条へと、こういう関連がある。今大臣が、われわれは選挙の結果自民党が多数を取ったのだ、だから選挙のときに公約した文教政策をやるのは当然じゃないか。悪ければ、次の選挙でまたひっくり返したらいいじゃないか。しかし教育そのものが、やはりそのときの政権を担当している政党の考え方というものに大きく左右されてはならないというところから、実は御承知のように教育委員の公選が行なわれたわけです。だから、やはり何といっても教育委員は公選されて、そうして国家権力や地方権力から独立をした機関であって、そうあることが、いわゆる教育の政治的な中立という点からいえは、また不当な支配に屈しないという点からいけば、そのことが当然だと私は思うわけです。この点は、実は私もこれらにつきまして長く大臣と討議をいたしたいと思いますが、そんな時間的な余裕もありませんから、最初にこのことだけを申し上げておいて、あと学力テストについてお答えをいただきたいと思います。  そこで、昭和三十七年度文部省予算の中には、この十月二十六日に予定されているような中学校の学力一斉テストを、来年度は小学校並びに高等学校にこの学力一斉テストをおやりになろうとして予算要求なすっているかどうか。予算要求ですよ、その点だけ一つお答えをいただきたい。
  51. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 来年度の概算要求には、この二十六日にやろうとしております中学校の一斉学力調査並びに小学における同様趣旨の学力調査、その両方をやりたいという趣旨の概算要求をいたしております。高等学校については要求いたしておりません。
  52. 横路節雄

    横路委員 わかりました。そうすると、今の大臣のお話で、来年度昭和三十七年度予算要求の中には、小学校について、十月二十六日に予定されている中学校と同様の学力一斉テストをやるための予算要求をしている。そうすると、これは私からお尋ねしておきますが、小学校五年、六年を対象にしているのか、何年から対象にしているのか。科目については国語、算数、理科、社会、この四つであるのか。何年からか、科目はどうなっているのか、この点について大臣一つ……。
  53. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 正確を期しますために、政府委員からお答えいたします。
  54. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 小学校の五、六年を対象にし、科目につきましては、国語、算数、理科、社会の四科目を予定しておるわけでございます。
  55. 横路節雄

    横路委員 それじゃ初等中等局長に、その予算の総額は、小学校分は幾らになっていますか。
  56. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 小中学校合わせまして二億五、六千万と記憶しておりますが、今ちょっと数字がここにございませんので、後ほどお答えいたします。
  57. 横路節雄

    横路委員 それでは今の点は、私から重ねて、小学校の分はどう、中学の分はどう、こういうように一つ……。  文部大臣、今のお答えでだいぶ明らかになったのですが、これから私は中学校の学力一斉テストについてお尋ねをするのですが、文部省が来年度予算要求されている小学校五年、六年の国語、算数、理科、社会についての学力テストをやるということになると、これは大へんな問題になります。これはとても今度の中学校の学力テストどころの比ではないです。私は、こういう問題についていろいろ私たちの意見を述べたりいたしたいと思うのですが、しかし、文部省考えがはっきりしてきましたから、この来年度予定している小学校五年、六年の学力一斉テストの問題についても、これは社会的に非常に大きな反響を呼びますから、あとで他の委員からもお話があろうと思いますので、私は一応お聞きだけしておきたい。これは非常な問題です。  次に私は文部大臣法律上の見解を一つお尋ねをしたいと思うのです。それは当委員会におきまして、中学校の学力一斉テストをやるのは、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の第五十四条の第二項だ、こういうようにお話をされて、ずいぶんここで議論をされている。この中にありますのは、「文部大臣は」とこうなりまして、「それぞれ都道府県又は市町村の区域内の教育に関する事務に関し、必要な調査、統計その他の資料又は報告の提出を求めることができる。」この学力一斉テストというのは教育事務なんでしょうか。教育事務といえば、実はあなたの方から私は今資料をいただいたのですが、その資料には、テストの結果につけるいろいろな、生徒の進学状態がどうとか、あるいは教員の免許状を持っているのがどうとか、それはどこを出たとかなんとかとあります。それは確かに一つ教育に関する事務です。生徒はどれだけいるか、男女の性別はどうか、学年はどうか、教員は何 人か、免許状はどう持っているか、一教員当たりの児童数はどうか、そうして児童数と坪数との関係はどうか、あるいはそれぞれの都道府県における単級、複式の数等はどうなっているか、小、中の併置校は実際にはどうなっているか、確かにそれは教育に関する事務でございましょうが、その学力テストというのは、教育に関する事務ではなくて、教育内容ではありませんか。この点は大臣、どう思うのです。この学力テストそりものは教育内容でありませんか。これが何で教育事務なんですか。まずこの法律的な見解についてお尋ねをしておきたい。
  58. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 地方教育行政法にいいますところの教育に関する事務という概念は、学力調査のごときものも含んでおる概念を規定しておると承知いたします。
  59. 横路節雄

    横路委員 文部大臣、承知しているというのは、それは大臣はどういう見解でそういうことを承知しているのですか。教育に関する事務、教育に関する調査と、この法律の中でははっきり言葉を分けてありますよ。決して法律は、そういうように拡大解釈ができるようにはなっていないのです。教育に関する事務、教育に関する調査、別々ですよ。ここの五十四条の二項の教育に関する事務の中に――学カテストというのは教育内容でしょう。文部大臣その点はどうでしょう。その点は大臣の見解を一つお尋ねしておきたい。私は教育内容だと思います。
  60. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 試験、テストそのものは教育そのものだと思います。教育に関する事務をこう理解すると申しましたのは、たしか地方裁育行政法第二十三条の中の文言をさして私は申し上げたつもりでございますが、必要ならば政府委員からその点を具体的に読み上げましてお答え申し上げます。
  61. 横路節雄

    横路委員 文部大臣、二十三条の十七項は私も百も承知しております。私もここに特っております。ただ私があなたにお尋ねしておるのは、学力テストそのものは教育内容なんだから、教育に関する事務ではないんだから、五十四条ニ項にいう教育に関する事務の中に入りますか。私は五十四条二項を聞いておるのです。ほかのことはほかのことでまた聞きます。五十四条のニ項の教育に関する事務、その中に一体――学力テストというのはあなたがおっしゃったように教育内容なんです。これは法律の見解だから大臣からぜひ一つ……。
  62. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 五十四条のニ項の用語も二十三条の用語もあわせ読むべきものという考え方のもとに、二十三条の教育に関する事務の中に教育調査に関することも含んでおると解釈されるという意味で申し上げております。
  63. 横路節雄

    横路委員 文部大臣法律上の言葉について、五十四条の第二項は教育に関する事務です。その教育に関する事務も教育に関する調査も同じだという法律的な用語はないですよ。法制局が作っている法律が、教育に関する事務とうたってある言葉も、教育にかかわる調査あるいは教育に関する調査、そういうものが同じなんだという拡大解釈があとになりてできるものじゃないですよ。少なくとも法律を運営する文部大臣として、教育に関する事務も教育にかかわる調査も同じなんだと、もしもそんなことを言うならば、あとで法制局長官を呼んでやってもいいですよ。どうですか。私が聞いておるのは、五十四条二項には教育事務とわざわざ書いてある。大臣、教育に関する事務じゃないですか。あなたは先ほど学力テストは教育内容だと言ったのですから、その点は違うじゃないですか。私は五十四条二項を聞いておるのですよ。
  64. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 法律の用語は、当該法律で同じように使っておるものは、条文が違いましょうとも、その内容は同じだ、こう考えるのが原則だと思います。ニ十三条は教育に関する事務というのは次のようなことであると列記いたしております。それが教育に関する事務と法律が使っておる用語の内容である、こう理解します。従って、五十四条ニ項で引用しております教育に関する事務も、二十三条でいう教育に関する事務も、その範囲、内容等は同じであるのが当然である。もし連うとするならば、五十四条二項で引用していますときには、ニ十三条と違う趣旨が明らかになっておるのが通例じゃなかろうか、そういう考え方に立ってお答えしておるわけであります。
  65. 横路節雄

    横路委員 今の大臣のお話で、五十四条ニ項も教育に関する事務だ、ニ十三条十七項も教育に関する事務だ、教育に関する事務なら、何も私は聞いていない。今大臣はそうおっしゃった。そうじゃないのですよ。もう一ぺんお読みになって下さい。二十三条十七項の方は教育にかかわる調査で、そこには教育に関する事務とはなっていないのです。条文を見て下さい。私ども少なくともここでお互いに議論するときは、もっと法律に従って用語をきちっとして議論しなければならぬと思う。教育に関する事務と書いてあれば同じです。しかしあとの五十四条ニ項――あなたはここで何べんも、学力テストをやるのは五十四条二項だと答弁されるから、それならば学力テストは教育内容なんだから事務ではない。そうすると、あなたがここで五十四条二項でやるのだということは、法律的にはその根拠がずれてしまうのですよ。だから私はお尋ねしておる。文部大臣わかりますか。前の方は教育に関する事務と書いてないのですよ。あなたは、前の方も教育に関する事務、あとの方も教育に関する事務と書いてあるというが……。速記を見てごらんなさい。ちゃんとあなたの答弁通り覚えておいて、今お話ししておる。教育に関する事務なら同じなんですが、あとの方は教育に関する事務で、前の方は違うのです。だから、どうもこの点は――内藤さん、きょう私がとことんまで言ったからといって、荒木さんが、わかった、横路君の意見に屈服した、あやまりますとはおっしゃらないんだから……。しかし法律上の見解については用語を正しく使って議論するのでなければならない、こう思って私はお話をしているのです。内藤さん、あなたにはいつでもゆっくりとお話できるのだから、大臣一つその点。
  66. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 さっきも申し上げた通りですが、ニ十三条には教育に関する事務のいわば内容的な説明が加えられております。ですからおっしゃる通り教育の調査という言葉と教育に関する事務というのが同じだとは私は理解しない、さっき申し上げた通りであります。しかし教育に関する事務というのは教育に関する調査を含むところの、もっと広い概念でこの法律は使っておる。その意味で使っておる。地方教育行政法の法律上の用語である教育に関する事務は、二十三条であろうと五十四条であろうと、その他の条文のどこにあるかは私も記憶しませんけれども、もしあるといたしましても同じ意味だ、同じ内容だと理解するのが当然の解釈だと思います。
  67. 横路節雄

    横路委員 この点は大臣、教育基本法の第十条の第二項に「教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」とある。教育行政ですね。教育を行なっているものは現場の教師なんです。しかし文部大臣以下文部省のそれぞれの役にあるもの、あるいは都道府県教育委員会、市町村教育委員会等は、いわゆる教育行政の立場にある。教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行なうというのが、教育行政を行なっている人々の立場なんです。この点は、教育に携わっているものと教育行政に携わっているものとは画然たる区別をしておかなければならぬ。そういう意味で、教育事務はいわゆる教育行政の内容に入っている。しかし学力テストというのは教育内容である。それは現場の教師が行なっている。だから、そういう意味で五十四条二項をたびたび大臣が引用されて、私もていねいに速記録を読みましたが、そういう意味では五十四条ニ項の、いわゆるこの教育に関する事務というのは大臣の拡大解釈である。拡大解釈ばかりではなくて、そういう字句の上の解釈ばかりではなしに、教育基本法、学校教育法、そういうものを通して、やはり私はその教育内容である学力テスト等について、都道府県教育委員会、市町村教育委員会を通して現場の教師に命令する権限はないと思う。この点ですよ。一つは字句上の問題もある。しかし字句上だけの問題ではない。これは教育基本方、そういう立場からいって明確なんです。だから、あなたたちがおやりになることは、教育に関する諸条件を整備確立することが任務なんだ。それぞれの学校において、それぞれの年間を通した教科課程の中で案を立てて、それを遂行していくというのは現場の教師に与えられた権限なんです。この点は、この間から大臣の本委員会におけるお答えを聞いたり、あるいは速記録を読んで、文部省のこれに対する解釈は、教育基本 法、学校教育法、そういう基本的な立場からいっても違うし、また法律のそういう解釈からいっても違う、私はこういうふうに思う。この点は、ここで今大臣と――今ここであなたを説得しようとしてもなかなかがんばるから……。
  68. 野原覺

    ○野原(覺)委員 関連して。  今横路委員からお尋ねをしておる事務の解釈の問題ですが、私はこれは非常に重大だと思うのです。今の横路委員指摘しましたように、これは確かに拡大解釈です。あなたの方は教育内容の調査も事務に入るのだ、こういう見解でございますが、これは大へんな問題だと思う。そこでこれはあとで法制局においでを顧って――こういうような解釈で教育行政が行なわれますことは非常に問題でございますから、これは明確にしておかなければなりませんから、あとで法制局長一つお越しをいただいて究明したいと思のであります。そこでお尋ねをしたいことは、文部省から「昭和三十六年度全国中学校一せい学力調査実施要綱」というのが出されておりますが、これを読んでみますと「7調査の系統・組織」その(1)中に「法律第五四条第ニ項の規定による調査とする。」こう書いておるわけです。今文部大臣の御答弁を聞きますと、若干混乱がございまして、地方教育行政組織の第二十三条だ、これを一緒に考えればこうなるのだという解答弁がございますが、それではなぜこの第二十三条をこの調査の実施要綱にお示しにならぬのか。あなたの方は五十四条二項でやるのだといってこれを全国に流している。第二十三条でやるならば、なぜ第ニ十三条というものをこの要綱の中にお書き入れにならなかったのか、この点についての御見解を承っておきたいと思います。
  69. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 調査報告を求める権限の所在は五十四条二項という意味で書いておるものと思いますが、先ほど来の横路さんのお尋ねに対するお答えを申し上げております意味は、教育に関する事務とは何ぞやということを中心のお話でございましたから、地方教育行政法で使っておる教育に関する事務というものの具体的の内容は、ニ十三条にさかのぽってみればはっきりするという意味で引用したのでありまして、指導要領に掲げましたのは、その権限の所在だけを中心に書いておるということだと思います。
  70. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部省にいたしましても、それから都道府県の教育委員会にいたしましても、校長を通じていろいろな調査をやっておるわけであります。たとえば生徒児童が何人おるか、こういう調査もなされておるし、あるいは教職員の配分は、男子の教員が何名で女子教員が何名か、こういう調査もなされておる。それからまた校庭は、子供一人当たりについての面積は何坪であるか、こういう調査も、これは必要な調査であります。これは確かになされておる。こういうことが事務ではございませんか、重ねて承っておきますが。これと教育の内容とごっちゃにされることは非常に問題があると思いますが、もう一度、法制局に来ていただいて究明する上の参考にしたいと思いますから、お聞きしておきます。
  71. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 教育内容は、校長以下教職員学校で行なうというのが本則ではございますけれども、小学校につきましては、学校教育法第二十条に、教科に関することは文部大臣がこれを定めねばならないということで、この間のお尋ねにもお答えした通りでございますが、教育地方分権の建前で原則的にはやるんだが、教科に関することだけは文部大臣の権限として留保してやれよということを、学校教育法それ自体が規定しておるのであります。教科のことに関連しましては、法律上 も、学習指導要領を文部大臣の責任において定めろ、教育課程も編さんしろというような事柄が指定されていると私は承知いたしております。その範囲においては、まさに教育それ自体を、小、中学校については、義務教育なるがゆえに、文部大臣が全国的に責任を持つ立場でやれよということになっておる。従ってそのことに関します限り、実態を把握して――先ほど横路さんが引用されましたように、教育基本法第十条にいうところの教育の場の改善に資する責任が文部大臣には負わされておる。その費任な果たすための一つ方法として、一斉学力調査を通じてその改善をすべき根拠を得たいということでありまして、その文部大臣に与えられました権限と職責は、一斉学力調査を通じてしかわかり得ない、全国的な視野からわかる方法は他に求められない。そこで調査報告を求める具体的な権限も、また地方教育行政法によって与えられております。その手段を通じて、今申し上げた目的を達しよう、こういう考え方に立っておるわけであります。
  72. 横路節雄

    横路委員 今大臣からお話がございましたが、学校教育法施行規則の第二十五条ですね、ここには「小学校教育課程については、この節に定めるものの外、教育課程の基準として文部大臣が別に公示する小学校学習指導要領によるものとする。」とあります。これは大体中学校も同じでしょう。ですからそういう意味で、文部大臣が今お話をなすった、いわゆる教育内容にまで入ることができるんだ――それは小学校の場合においては――中学校の場合も同様だが、この学習指導要領によって公示する、ここまでがあなたの権限ですよ。それを年間を通じてどういう教科課程を組んでいくか、一学期、ニ学期、三学期でどう組むのか、そういうことは現場の教員にゆだねられたことなんです。だから現場の教師は、自分たちの学校、自分たちの地域、自分たちの子供の親、地域の経済的ないろいろな条件、そういうものを勘案していわゆる教科課程の編成をやっていけるんだ。その中でやっていくのだから、その結果については、教師みずからがいわゆる学力テストにおいてどういう自分たちの指導の結果が出てきたかということを判断するためにやることは当然必要だが、それを文部省がこの五十四条二項によって文部大臣の権限として命令をもってやらせるということはないですよ。これはどこからも出てこないですよ。しかも大臣の今のお話では、それを命令をもってやらせる、その学習指導要領に基づいての学習その他が一体どうなっているかということは、学力テストによって自分が全部掌握しなければならぬのだ、こういう考え方、先ほど私が指摘をしましたけれども教育行政財政、その上に教育の内容、しかもその細部にわたってまで一切のものを文部省が全部掌握しておかなければならないというところ、これによっていわゆる教育が国家権力によって左右されてくる、教育が国家によって統制されてくることになる。この点が私が先ほど大臣と議論をした。少なくとも教育は国家権力や地方権力からは独立をしておかなければならぬのだが、あなたは全部掌握しておかなければならぬ、教育行攻はもちろん、財政上ももちろん、今度は教育内容もそう、指導方法もそう、全部あなたが掌握しなければならぬ。小学校中学校教育一切について全部権限をあなたの手で掌握しておかなければならぬというところに、今日の文部省教育に対する間達った考え方がある。これはどうですか。文部大臣がおやりになることは、いわゆる教育課程については学習指導要領を公示する。そこまでですよ。そこまでを法律では規定している。どうですか。
  73. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 先ほど申し上げた、今も引例されました学校教育方ニ十条その他に基づいて、小中学校の教科に関することを定める権根と責任が与えられておる。そうしてまた学習指導要領を公示して、それに準拠して現場でも教育が行なわれねばなりませんよということになっておるということは、私もむろん承知いたしております。ところで、現場の教師がそれに基づいて教科課程を組んでいく、もちろんそうなっております。またそうするについては、その根拠となるべき地方の直接の手だてとしては、教育委員会が、地方公共団体が条例あるいは委員会の管理規則等で、その基準というか準則を定めて、その線に従って当該学校が今お話通りのことをやるという立て方でずっと行なわれておることは、私も承知しておるわけでございますが、先刻も申し上げましたように、なるほど学習指導要領を公示することで、具体的な文部省としての行動はむろん一段落ではございます。ですけれども、その文部大臣に留保されておる責任が果たされておるかどうかということは調べないことにはわからない。しかも学習摘導要領は都道府県のそれぞれの特色を具体的に織り込んで定められるものでなくして、義務教育なるがゆえに、日本全国どこでも、端的に申し上げれば、画一的な基本線は少なくともこれだけは守られて教育が行なわれねばなりませんよということを要請しておる。その要請に基づいて定められておると私は理解いたしております。ですから、その指導要領の限度内のことが最少限度どの程度に到達しておるかということは、与えられた権限と責任を国民に対して果たします角度からいいまして、文部省みずからが知らねばならない範囲であることは当然だと心得る。知って初めてそれに基づいて、教育基本方にいうところのもろもろの教育条件の改善ということを考える具体的な、合理的な根拠の一つが与えられる。そういう必要性からくるたとえば学力調査というがごときものは、学校教育法第二十条その他に規定するものの中に当然含せられた文部大臣の国民に対する責任の範囲だと思います。それを今度地方公共団体ないしは教育委員会学校長等との相互関係において何を根拠に発動するかというならば、その意味において五十四条ニ項で調査報告書を求めるという手段が与えられておりますので、それに結びつけて今申し上げたような責任が果たされる道が開けておる、そういう考え方の学力調査の法律的根拠事項と考えておるわけでございます。
  74. 横路節雄

    横路委員 実は大臣、けさ大体十時半からニ時間くらいで質問をある程度めどをつけたいと思ったんですが、大臣は一時には他に何か約束もあるようですから、私一つだけお聞きして、明日きっと委員会があるでしょうから、継続してこの問題について重ねていろいろお尋ねしたい。  きょう内藤局長さんに一つお尋ねしておきたいことは、昭和三十三年五月十七日に岩手県の教育委員会教育長から、あなたに対していわゆる質問書が出ている。それはこの学力一斉テストについてです。ほんとうは全文を読むといいんですけれども、時間がありませんから。たとえば第一番目に「県教委は「学校一覧表による学校調査」を実施しているが、市町村教委は、地行法五十四条二項の規定により、報告提出の法律上の義務を負うものと解すベきか」とあります。これは学校一覧表による学校調査です。この間い合わせの第五番目に「指定統計調査以外で、国が行なう学力調査等委託統計調査について、当課事務を教委が受諾した場合においても、前記二及び三の場合と同様に解してよろしいか」とあります。ここであなたの問題になるのはニつあるわけです。一つは国が行なう学力調査は委託統調査だということが一つ、それからこの委託統計調査については、当該事務を教育委員会が受諾した場合において――受諾したということになると、いやだということもあり得るわけだ。これに対しましてあなたの方は、「昭和三十三年五月十七日、三十三総第二五九号で照会された標記のことに対して、下記の通り回答します。一から五までお見込みの通り」と書いてある。これは昭和三十三年のときの答弁ですが、これは変わったんですか。この中でははっきりと学力調査は委託統計調査だ、それから教育委員会が受諾した場合、こうなっておって、あなたはしかりと答えておる。これは間違って回答書を出したんですか。これはどうなんです。文章はきっちりなっているのですよ。あなたの名前で回答しておるのだ。
  75. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 それについては私は今手元にございませんが、後刻検討いたしましてお答えいたしたいと存じます。ただ一般的な調査で、先ほど来申しましたように、五十四条二項で、文部大臣が報告を求むる場合と、それから委託してこれをお願いする場合があるわけでございます。ですからその法律的根拠がどうなっておるのか、その当時の文章を記憶しておりませんから、それを検討いたしまして、後刻お答えいたします。
  76. 横路節雄

    横路委員 今の点は非常に重大なんです。わざわざ五十四条二項を引用しているのですから。それではこの問題はあす勢頭に文部省の方から御答弁をいただくことにいたします。
  77. 野原覺

    ○野原(覺)委員 明日は法制局長官においでを願う、このことを正式に要請いたしておきますが、同時に重ねて私、念のためにお聞きしておきたい。事務の中に教育内容も入るのだという法的根拠は、ニ十三条の第五項をさされるのではないかと思いますが、いかがですか。
  78. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 ニ十三条をお聞きいただきますと、ニ十三条の冒頭に「教育に関する事務」と規定して、以下列挙してあるのでございますが、その列挙された中では五項をさしているわけでございます。
  79. 野原覺

    ○野原(覺)委員 もう一点だけ。そこでこの二十三条の前文を読んでみますと、「教育委員会は、当該地方公共団体が処理する教育に関する事務及び法律又はこれに基く政令によりその権限に属する事務で、」とこうあるわけですね。そこでこれは「法律又はこれに基く政令」ということが問題になってくると思うのだが、その法律または政令はどういう法律で、どういう政令をさすんですか。
  80. 内藤譽三郎

    内藤政府委員 これはもろもろの学校教育法その他たくさんの法律がございますが、その法律教育委員会の所掌事務に属していることは全部入るわけです。またその法律によって委任された政令に関する事項も当然入るわけです。ニ十三条に規定されている事項が全部ではございませんが、一応列挙すればこの程度、これ以外にもたくさんあるということであります。
  81. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この問題は当然法律解釈で、先ほど来申し上げるように、非常に重要でございまするから、もろもろの法律では困る、もろもろの政令でも困る。学力調査が教育事務だ、学力調査とはテストをする、試験をやる、採点をする、成績の評価をする、そのことと、子供一人当たりの運動場が何坪だということが同じ事務の系統の用語の中に入るという以上は、そういった法律または政令を明確に出してもらいたい。それは教育に関するどの法律の第何条だ、どの政令の第何条だ、明日でけっこうです。
  82. 櫻内義雄

    櫻内委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十九日木曜日午後二時三十分より開会することとし、これにて散会いたします。   午後一時十四分散会