○角屋
委員 ただいま議題となりました
沿岸漁業振興法案、
水産業改良助長法案、水産物の価格の
安定等に関する
法律案のそれぞれ提案理由を御説明申し上げたいと思います。
まず第一に、
沿岸漁業振興法案について提案理由の説明を申し上げます。
この法案は、第三十八通常国会に
提出いたしましたものでありますが、同国会において審議未了となりましたので、今回あらためて
提出することといたしたものであります。
戦後のわが国漁業の著しい発展にもかかわらず、沿岸漁業の衰退と関係漁民の窮乏には目をおおわしめるものがあります。
昭和三十三年の沿岸漁業臨時調査によれば、経営体総数の八六・一%を占める沿岸漁家の漁獲はわずか全体の一七・九%を占めるにすぎず、漁家一経営当たりの平均漁獲高は十九万二千円、しかも、これは、やや能率的な三トン未満の動力船によるものを含んでいるので、無動力船階層では一段と低くなっております。
昭和三十三年における階層別の漁業生産所得調査によると、三トン未満動力船階層の一経営当たり漁業生産所得は十九万八千百六十八円、同じく就業者一人当たり生産所得十一万三千六百八十九円となっているのに、無動力船階層では一経営当たり七万八千九百五十七円、就業者一人当たり五万九千五百九十円であります。このような低い所得を余儀なくされております関係で、漁家の消費水準はきわめて低く、農民一〇〇に対して九四%、都市一〇〇に対して六三%を占めるにすぎません。
沿岸漁業のこのような窮状は、沿岸から沖合いへ、沖合いから遠洋へと、もっぱら外に伸びることのみに目を奪われ、沿岸漁業への施策を軽視してきた歴代政府の行政上の誤りによるものと断じても決して過言ではないと存じます。荒廃し果てた漁業を改良し、沿岸漁業を振興し、関係漁民の所得及び生活水準を向上させるためには、あれこれの思いつきで当面を糊塗しようとする政府の無責任な態度を一擲せしめ、思い切った振興政策をしかも総合的に実施するのでなければなりません。すなわち、漁場条件の改善、水産資源の増殖、漁業の生産施設及び水産物の流通施設の整備等の卒業につき、総合的な計画の実施をはかるとともに、これに必要な助成措置を講じ、もって、沿岸漁業の近代化、共同化を
促進して、その経営の安定と沿岸漁業者の所得及び生活水準の向上に資する必要があります。われわれが
沿岸漁業振興法案を提案するに至ったのはこのためであります。
次にこの法案の概要について申し上げます。
まず、この法案でいう沿岸漁業の範囲についてでありますが、漁業権もしくは入漁権に基づく漁業(当該漁業以外の漁業で、総トン数十トン以上の漁船を使用して営むもの以外のものを含む)をいい、沿岸漁業者とは、沿岸漁業を営む者及びその者のために沿岸漁業に従事する者をいうことといたしました。
第二点といたしましては、この法律でいう沿岸漁業振興事業とは、国、地方公共団体、漁業協同組合または漁業協同組合連合会が沿岸漁業を振興するために行なう事業であって、農林大臣が沿岸漁業振興審議会の意見を聞いて定める基準に適合するものをいうこととし、その主要なものを例示いたしました。重ねて申し上げますが、沿岸漁業の振興は、一、二の施策を思いつきで施すことによっては不可能であり、強力な施策をしかも総合的に施すことが肝要であります。従って、第二条第三項に例示いたしました項目は、どれ一つとして重要でないものはありませんが、中でも、一号から七号までは、漁場の豊度を高めることによって漁業の生産性を向上するための事業であり、私どもの最も重視しているものの一つであります。すなわち、第一号から第五号(特に人工ふ化放流事業)に至る事業を大がかりに推進することによって水産資源の増大をはかるとともに、第五号から第七号までを推進することによって、いわゆるとる漁業から育てる漁業への発展を目ざそうとしているのであります。なお、特に一言申し添えておきたい点は、養魚事業のうちきわめて大きな将来性を持つものと考えられる海面養魚事業の
促進のため、漁協の自営を条件として特に補助率を高めた点であります。また、漁業の生産施設及び水産物の流通施設等の整備を推進するほか、特に、集団操業の指導のための施設の設置に関する事業及び漁業生産組合の育成に関する事業を推進することによって、漁業の共同化を
促進することもまた私どもの重視している事業であります。
第三点といたしましては、沿岸漁業振興事業は、都道府県及び国の定める毎五カ年を各一期とする沿岸漁業振興基本計画及びそれに基づいて国及び都道府県が作成する沿岸漁業の振興年度計画に基づいて行なうこととし、それぞれ計画の作成方法その他について詳しく規定いたしました。これは、従来の水産行政の最大の欠陥である場当たり行政を排し、長期的な展望と計画を持った行政を確立することによって、より効果的に沿岸漁業振興事業を推進しようとの念願によるものであります。
第四点といたしましては、国の沿岸漁業振興年度計画または都道府県の沿岸漁業振興年度計画に基づく沿岸漁業振興事業を実施する着は、漁業権に属する区域内においては、当該沿岸漁業振興事業を行なおうとする場合には、当該区域にかかる漁業権者、入漁権者及び漁業法第八条の規定による漁業を営む権利を有する者の同意を得なければならないと規定することによって、これらの者の権利を保護することといたしました。
第五点といたしましては、規模が著しく大であり、かつ二以上の都道府県の沿岸漁業者によって利用される施設及び高度の技術を必要とするものについては、国がみずからこれを行なうこととし、国の穂極的な施策を期待することといたしました。
第六点といたしましては、都道府県に対し、都道府県が農林大臣の承認を受けた沿岸漁業振興年度計画に基づいてみずから行ないまたは補助を行なう事業に対する国の補助率を法律で定め、かつ現行の補助率を引き上げることによって、振興事業の
促進を期することといたしました。由来、沿岸漁業振興の基本対策は財政政策との対決にあるとさえ言われております。次に述べる低利長期資金の貸付けとともに、私どもの最も力を入れているものの一つであります。
第七点といたしましては、資金の貸付けについてでありますが、農林漁業金融公庫(以下単に公庫という)は、第三の規定により農林大臣の承認を受けた沿岸漁業年度計画に基づいて沿岸漁業振興事業を行なう漁業協同組合または漁業協同組合連合会に対し、当該沿岸漁業振興事業の実施に必要な資金で公庫法第十八条第一項第五号、第五号の二、第七号または第八号に掲げるものの貸付けを行なうものといたしました。なお、貸付条件は、都道府県が補助を行なう事業にかかる沿岸漁業振興事業の実施に必要な資金として貸し付ける場合には、利率は年五分以内において、その他の沿岸漁業振興事業の実施に必要な資金として貸し付ける場合には、利率は年三分五厘以内、償還期間(据置期間を含む。)は三十年以内、据置期間は先年以内において、公庫がこれを定めることといたしました。なお、沿岸漁業振興計画の実施に必要な資金を貸し付けるための原資として、
昭和三十六年度に一般会計から新たに五十億円を公庫に繰り入れることとしております。
第八点といたしましては、この法律によってその権限に属させられた事項をつかさどるほか、農林大臣の諮問に応じて沿岸漁業の振興に関する重要事項を調査審議し、及びこれに関し必要と認める事項を農株大臣に建議するため、水産庁に付属機関として沿岸漁業振興審議会を設けることといたしました。
以上がこの法案の提案理由及びその内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決いただくようお願い申し上げる次第であります。
次に、
水産業改良助長法案の提案理由を御説明申し上げます。
この法案は、
昭和三十四年三月
提出され、自来継続して御審議を願っていたものでありますが、昨年十月の衆議院解散により廃案となりましたので、若干の修正を行なった上で第三十八通常国会に
提出いたしましたが、同国会において審議未了となりましたので、今回またあらためて
提出することといたした次第であります。
わが国の水産業は、近来目ざましい発展を遂げ、年間約六百万トン、三千億円に上る漁獲をあげ、国民経済の成長と安定の上に重要な役割を果たしているのでありますが、一たび漁業生産の内部構造に目を転じますならば、そこには企業形態の相違による生産面の断層はきわめて著しく、資本漁業の漁獲は零細なる漁家漁業のそれを圧倒しており、多数の漁民を擁する沿岸漁業の悲運は日に深刻の度を加えていることは、もはやおおうべからざる事実であります。
ここにおいて、このような現実の事態に対する反省の上に立って、ようやく水産政策の重点を沿岸漁業の振興対策に指向し各般の施策をここに集中すべきであるとの機運が次第に譲成されて参っておることは各位の御承知の通りであります。しかしながら、これらの諸施策が真に実効をおさめるには、漁業者の自主的な再建意慾を盛り上げ、その活動を助長するための裏づけとして、技術と経営に関し国と地方公共団体とが協力一致指導と援助を行なうことができる基本制度の確立がはかられなければならぬことは、言うを待たないところであります。
近年、沿岸漁村においては、青壮年による研究グループが続々と結成され、沿岸漁業振興の推進力として実践活動を行ない、その成果には見るべきものが少なくないのであります。国及び都道府県における試験研究機関の相互の連絡を一そう緊密にし、能率的に試験研究を推進助長するとともに、漁民の要求にこたえ、あるいはみずから進んで彼らに接触し、漁撈、養殖及び加工の各般にわたり技術の改良と経営の刷新に役立たしめるよう広くこれを提供し、あわせて生活改善の原理と技術を授け、もって、水産業の合理的な発展と漁民生活の安定に資することができる基本法制を整備いたしますことは、現下の最も重要かつ適切な施策と考えられる次第であります。
このことは、最近におけるわが国農業生産力の顕著な発展と安定が農業改良助長法に裏づけされた農業に関する試験研究及び普及事業の強力な推進によることに徴しても明らかなところであります。水産業にあっても、農業に劣らず、かねてよりその必要が痛感されつつも、立法化がおくれ、辛うじて若干の行政措置により当面を糊塗して参ったというのが現状であります。三十六年度予算によって見ましても、関係予算四千三百九万円であって、新たに設けられることになった沿岸漁業改良普及員は僅かに百名にすぎず、従来からの普及員を加えても百九十六名、一普及区(五漁協の地区を一普及区とする)一名ずつを配置する計画のようでありますが、一普及区わずか一名という劣勢をもってしては、真に漁民の話し相手となって、複雑な漁業の実態と取り組み、困難な問題を解決することはほとんど不可能と言わざるを得ません。
以上申し述べました趣旨に即し、この際、農業改良助長法の例により、所要の法的措置を講じ、水産業改良普及事業の積極的発展の基礎を固めたいと存じ、ここにこの法案を
提出いたした次第であります。
次にこの
法律案の大要について御説明申し上げます。
第一に、試験研究に対する助長措置でありますが、水産業改良普及事業に関する試験研究を推進するため、国は、都道府県その他の試験研究機関に対し、次の各号に定める経費を補助することといたしました。
(一) 水産業改良研究員の設置につい
て都道府県の要する経費の三分の
二。
(二) 改良普及事業に必要な試験研究
を行なうための試験研究施設の設
置及び運用について都道府県の要
する経費の二分の一。
(三) 国及び地方の実情から見て緊急
と認められる都道府県及びその他
の試験研究機関の行なう特定の試
験研究に要する経費の全部または
一部。
(四) 都道府県の行なう水面の総合利
用をはかるため必要な調査並びに
試験に要する経費の二分の一。
第二に、農林省の試験研究機関の協力についてでありますが、都道府県水産試験場は、この法律の目的を達成するために行なう試験研究に関し、農林省の試験研究機関に対して必要な助言と協力を求めることができることといたしました。
第三に、水産業改良普及事業に対する助成でありますが、国は、都道府県に対し、水産業改良普及事業に要する経費のうら、次の各号に定める経費を補助することといたしました。
(一) 水産専門技術員及び水産改良普
及員の設置のために要する経費の
三分の二。
(二) 水産専門技術員または水産業改
良普及員の巡回指導、出版物の配
布、講習会の開催、器材の利用そ
の他の手段による漁民に対する水
産業または漁民生活の改善に関す
る教示及び実地展示のために要す
る経費の三分の二。
(三) 水産業改良普及員の養成及び研
修のために要する経費の二分の
一。
(四) 水産専門技術員または水産改良
普及員に協力して水産業または漁
民生活の改善を推進する漁民の育
成のために要する経費の二分の
一。
(五) 漁村における研究団体の自主的
な活動を助長するために要する経
費の二分の一。
第四に、水産業改良普及事業の実施についてでありますが、この法律の規定により補助金の交付を受けた都道府県は、水産業改良普及事業の実施にあたっては、農林大臣と協議して定めた方針によらねばならないことといたしました。
第五に、改良研究員、専門技術員及び改良普及員の任務その他についてでありますが、改良研究員は最も高い資格を有する研究者を充てることといたしており、改良普及事業に必要な試験研究を行なうことをその任務といたしております。専門技術員は、試験研究機関及び水産改良研究員と密接な連絡を保ち、専門の事項について調査研究をするとともに、水産改良普及員を指導することが任務となっております。改良普及員は直接漁民に接して水産業または漁民生活の改善に関する科学的技術及び経営上の知識の普及指導に当たることを任務といたしました。日常漁民に接し、技術・経営及び生活改善についての普及指導に当たるのは主として改良普及員であり、その能力のいかんは水産業の発展と漁民生活の改善に大きく影響いたします関係から、水産改良普及員の養成と研修を穂極的に行なうことといたしております。
第六に、水産改良普及所についてでありますが、各都道府県の特性を勘案し、水産改良普及所を設置し、水産業改良普及員の行なう水産業改良普及事業に関する事務の連絡調整、その他水産業及び漁民生活の改善に関する科学的技術及び経営上の知識の総合的な普及指導に関する事務をとらせることといたしました。
以上が本案を
提出した理由及び法案のおもな内容であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決下さらんことを希望いたします。
次に、水産物の価格の
安定等に関する
法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。
この法案は、第三十八通常国会に
提出いたしたものでありますが、同国会において審議未了となりましたので、
今回あらためて
提出することといたしたものであります。
わが国の水産業は、戦後他の産業と同様に著しい復興の過程をたどり、
昭和二十七年に漁獲高は戦前水準を越え、その後においても引き続き年率三%の割合で伸び、
昭和三十五年の総漁獲量六百十九万トン、その金額は約三千五百億円と達したのでありますが、ここに見落としてならないことは、かような漁業生産力の発展の槓杵となりましたものは、イカ釣漁業、あぐりきんちゃく網漁業、サンマ棒受網漁業等、中小漁業者によって営まれる漁業であって、その主なる魚種は、イワシ、イカ、サンマ、アジ、サバ等一般家庭の食ぜんをにぎわす大衆魚であるということであります。
これらの大衆魚は、北海道、東北地方あるいは九州方面等水揚地点における受け入れ態勢の不十分な漁場に片寄って、しかも短期間に集中的に漁獲されるという特徴を持っておるのであります。従いまして、これらの多獲性大衆魚は、全国的に見ますならばその供給は必ずしも需要を上回っていないにもかかわらず、地域的または時期的には、はなはだしい過剰生産の様相を呈し、その価格は暴落し、せっかく大量の漁獲をあげながらも、漁業者の所得ばかえって減少し、漁業者はあすの油代、あすの生活費にも事欠くという事態をしばしば招来しているのであります。
大漁貧乏という言葉はあまりにも多く人口に膾炙されておるのでありますが、不思議なことには、このような場合におきましても、これらのものの消費者価格は生産地における魚価の低落をそのまま反映しないのが通常でありまして、ここに水産物の流通価格政策に重大な欠陥の存することを指摘せざるを得ないゆえんのものがあるのであります。このことは、単に漁家経済あるいは漁業経営の面からのみならず、国民生活の観点からもゆるがせにできないところであります。
農業におきましては、米麦をはじめカンショ、バレイショ、大豆、菜種等重要農産物に対しては、内容は不十分ではありましても、とにもかくにも価格安定装置ができ上がっておりまして、農作貧乏のなげきを緩和できるのでありますが、水産業におきましては、多年にわたる水産物価格安定対策樹立の強い要望にもかかわらず、いかんながら今日まで無為無策の放任状態であると申して過言ではないのであります。
政府は、
昭和三十四年度において、わずかにサンマかす及びスルメに限り、系統機関が共同保管した場合、その組合員に対する前渡金の金利の一部に相当する金額を補助する措置を講じましたが、これは全く一時的な糊塗策であったにすぎないのであります。また、第三十八通常国会において
成立を見ました魚価安定麺金法及び漁業生産調整組合法にいたしましても、その考え方はきわめて消極的であるばかりでなく、あとで申し上げますように、池田内閣の中心政策である所得倍増計画と矛盾する考え方のしに立っており、私どものとうてい納得し得ざるものであります。すなわち、同法によれば、新たに創設される魚価安定基金は、漁業生産調整組合に対し同組合が組合員に調整金を支給する場合、その支給に要する経費の全部または一部に相当する金額を支給することにしたほかは、サンマかすの調整保管に要する金利及び倉敷料の一部を補助するための仕組みにすぎず、従来政府が予算上の措置として実施してきた範囲を多く出ないものであります。
しかも、価格安定のための漁業生産調整組合法は、さきにも申し上げましたように、池田内閣の中心政策である所得倍増計画と矛盾する考え方の上に立っておるのであります。農林漁業基本問題調査会の計算によりますと、国民所得の成長率を七・八%とした場合における水産物に対する需要は十年後には八百四十万トンに達するが、その供給は七百四十万トンにしか達し得ないことになっております。国民所得の倍増を達成し国民生活の向上をはかるためには、水産物の生産を増大させるための諸施策を今後とも強力に推進する必要があるわけであります。従いまして、多獲性大衆魚の生地制限を基調とする魚価安定対策は、国民所得倍増案にそむくものと言わなければなりません。
第三十八国会において魚価安定基金法及び漁業生産調整組合法の
成立を見たにもかかわらず、それにかわるものとして本法案をあえて
提出することといたしましたのは、以上の二法によっては関係漁業者の所得の保障と多獲性大衆魚の適正な魚価水準の実現は到底期し得ないと信ずるからにほかなりません。
以下
法律案の骨子について御説明申し上げます。
第一点は、この法律で対象とする魚種を、アジ、サバ、サンマ、イワシ、スルメ、イカ等の多獲性大衆魚としたことであります。これらの魚種は、その魚獲量においていずれも重要な地位を占め、年間三十ないし五十万トン程度の漁獲を示し、しかもその平均販売価格は一キログラム当たり十五円ないし三十円という最も低廉なものであります。
第二点は、農林大臣または都道府県知事は、組合の申請に基づき、また、漁船等の生産能力を基準として、それぞれ組合ごとに標準販売数量をあらかじめ決定、この数量の限度内において価格を保証することとし、その手続規定を定めたことであります。
第三点は、政府は、多獲性大衆魚につき、その生産費を基準として水産物価格安定審議会に諮った上その保証価格を定めなければならないこととする一方、漁業者が漁業協同組合または同連合会を通じて指定市場において漁獲物を共同販売することを条件として、その平均販売価格が保証価格に達しない場合には、政府はその差額に標準販売数量の限度内における販売数量を乗じた額に相当する金額を組合に交付することとしたことであります。また、交付金の交付を受けた組合は、その組合員に対し、組合員の販売数量に応じて按分してこれを交付しなければならないこととし、組合員の出産費等を補償することといたしております。
第四点は、組合が多獲性大衆魚を販売する市場は指定することとし、その指定市場の開設者は、組合が多獲性大衆魚をその市場において販売した場合には、その販売価格及び販売数量を農林大臣に報告しなければならないこととし、これに要する経費は国が負担することといたしております。
第五点は、多獲性大衆魚を原料として製造した魚かすの低落を防止し、その価格の安定をはかるため、農林大臣は、必要に応じ輸入魚かすの輸入業者に対しその輸入した魚かすを水産物購買販売事業団に売り渡すべきことを指示することができることといたしたことであります。
第六点は、多獲性大衆魚の価格の安定に関する重要事項を調査審議するため、
委員二十人以内で組織する水産物価格安定審議会を設置することであります。
第七点は、多獲性大衆魚等の適正な魚価水準の実現をはかるため、特殊法人として水産物購買販売事業団を設けることであります。事業団は、多獲性大衆魚の保管等のため生産地及び消費地において冷蔵庫の建設、運搬施設の整備等を行なうほか、多獲性大衆魚及びその製品が著しく低落もしくは騰貴し、生産者または消費者を保護する必要がある場合における買入れ、売渡し、あるいは大衆魚の需要の増進等に関する義務を行なうこととし、その資本金は、政府出資額二十億円と都道府県、水産業協同組合等の出資額の合計額(
成立当初の資本金は三十五億を予定)とし、その他の組織規定は他の同種組織体の例にならってこれを設けることといたしております。
なお、この法案の施行にともなう関係法案の整理については別に定めることといたしております。
以上が本案の提案理由及びその概要であります。何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことを御願い申し上げます。