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井堀委員 私は民主社会党を代表いたしまして、ただいま
議題になっております
社会保険審議会及び
社会保険医療協議会法の一部を
改正する
法律案並びにこれに対する自民、社会両党の
修正案に対しまして、反対の
討論をいたしたいと思います。
ごく簡単にその
趣旨を申し述べたいと存じます。
政府原案は、保険制度の
改正が要望されました
趣旨に沿いますには、
内容がきわめて不十分であるだけではなく、この方法をもっていたしましては、今日紛糾を続けております問題の解決をなしがたいものと判断するからであります。
言うまでもなく、今日国民皆保険を指向しております最も重要な時期に当面いたしまして、その中でも国民の健康を左右し、かつ社会保障制度の重要な一方をにないます医療保険制度につきまして、医療給付いたします機関とそれを受ける方の側においては、この制度の成り行きはきわめて重視されなければならぬことは申すまでもありません。現に大きな社会問題を誘発しておりますことも、その
理由を
意味することであります。でありますから、
本案はその解決に十分な役割を果たすものでなければならぬことは申し述べるまでもないのであります。しかるに
本案作成にあたりまして、さきに社会保障制度
審議会、
社会保険審議会にそれぞれ
政府は諮問いたしました。その経過並びにこれに対する答申の
内容などからも判断できるのでありますが、たとえば社会保障割度
審議会が二回にわたって諮問を受け、答申をしております中で、三月一日付の答申の
内容の中で、私
どもの非常に重視いたしております点は、少なくともこの制度の紛糾を解決するためには、まず医療報酬に関する解決を、この協議会だけにゆだねておったのではとうていよい結論は出がたいという点を指摘いたしまして、しかも具体的に医療報酬問題を解決するために、内閣に適正なる診療報酬設定のルールを確立し、及びそのために必要なる調査を行なう中立的な機関として、医療報酬調査
委員会を設けたらどうかという答申であります。私はこれはきわめて重要な答申であると思うのであります。この
説明を省きますが、少なくとも今日の三者ないし四者といいますか、利害
関係者が相集まって協議をいたしますには、その基礎になるべき、すなわち
原案ともなるべきものは、今日のように科学の非常に進歩した医療制度の
内容を、またその
内容に十分見合うようなりっぱな医療費というものを設定していくためには、この
委員会だけでは不十分であるという点であります。ですから、当然
調査会を先に作って、その
調査会の提案に基づいてこの
委員会が取り組むという形が望ましいという答申は、私はきわめて重大な意義を持つと思うのであります。しかるに
政府案の中にこれが考慮に入れられていないという点は、非常なミスであると思います。
いま一つは、四月七日の答申の中には、このようなことが警告されております。すなわち、今問題になっておりまする医療協議会の
機構や組織の改組よりは、その
運営にあるのであるから、
委員の選任あるいは専門事項等についての
審議方法のあり方を十分考慮しなければならぬという点を指摘しておるのであります。
私
どもは、当局を責めるのではありませんけれ
ども、元来、従来の紛争の経過から判断をいたしましても、医師が今日医療費の値上げを要求するには、それぞれのりっぱな社会的
理由があるでありましょう。あるいはそれに基づくそれぞれの資料も、うなずくものがたくさんあると思うのであります。しかし、保険の経済の中からくる
経営並びに被保険者といった、それぞれの異なった利害
関係の上に立っておりまする人たちが医療費の問題を適正にきめようとすることは、最初から困難なことは
説明を要しない。でありまするからこそ、
審議会がこの答申の中で強調いたしておりまするように、科学的な
内容を、全く中立的な
立場に立って大所高所から判断できる人たちによって
原案が作成され、その
原案に利害
関係者がそれぞれの
意見を述べ合って結論を出すという形が望ましいことを、私
どもは強調しなければならぬと思うのであります。この点が配慮されていないということでは、この案は死案になっている。
先ほど来の質疑応答の当局の
答弁を伺っておりますると、なるほど社会保障制度
審議会、
社会保険審議会などの答申を全面的にうのみにするというようなことは、もちろん私
どもも望むところではありません。
国会の
意思もありましょうし、
行政府の
意思ももちろんあることであります。しかしながら、その答申の急所がどこにあるかということは、われわれは十分
考えていかなければならぬのであります。その答申を尊重することこそが、
審議会制度に対する今日の民主的な制度としての効果を高く評価されるのであります。ところが、この点が、今具体的に指示したように全く無視された。
さらに
政府は、どういう事情に基づくか知りませんけれ
ども、以前は二回あるいは三回にわたり両
審議会に諮問をいたしたにもかかわらず、今回の
法案を
国会に提案するにあたりましては、この
審議会に諮問をいたさなかったということは、私は、はなはだしく民主的な手続を軽視した
政府の手続上の欠陥を非難しなければならぬと思うのであります。しかし手続のことよりは、私は、この
審議会の答申の中に重要な意義が漏れておる点を繰り返し強調いたしまして、
政府案の
原案の一々については批判を避けます。たとえば、従来の六・六・六・六の二十四人を八・八・四にしたというあたり、なかなか苦心の跡はよくわかります。しかし答申案の中では、八・八・八にして出したというところに、なるほどこれをもって
内容を左右するものとは私は存じませんけれ
ども、こういう点を、
政府が答申案に対して
変更をいたしておるという点を重視するからであります。こういう点に意を用いるならば、なぜ前に申し上げたような根本的な問題にメスを入れようとされなかったか、こういう点はまことに遺憾しごくといわなければなりません。
残念ながら、その労は多とするのでありますけれ
ども、以上の
趣旨からだけでも反対をせざるを得ないのであります。
次に、時間がありませんから、
修正案について簡単にわが党の
立場を述べたいと思うのであります。
社会党並びに自民党の方々の御努力に対しては、敬意を払うことにやぶさかではありません。非常な御努力を願いまして感謝にたえぬところであります。大体その意図するところもわからないではございません。しかし
決定的にわれわれが同意のできない点を一つ指摘しておきたいと思います。それは、今度の協議会の八・八・四のことで、四人に該当する公益側
委員を両院の同意を得るといたした点であります。法律的にいいますれば、国家
公務員の特別職に該当するものをここに充てた点であります。なるほど、その
説明によりますと、公益側
委員の権威を高めるという
趣旨のようでありまして、権威を高めるということについては、私は決して反対するものではありません。しかし
政府原案が、先ほど申し上げたように、答申によりますと八・八・八であったものを四に削っているが、これを八に戻すということの
意味もあるかもしれませんが、それより
決定的な問題となるべきものは、厚生
大臣の諮問機関であるこの協議会を異質の
委員によって構成することは、いろいろな
意味において今後重大なる波乱を巻き起こすのではないか。ことにこの諮問機関の制度は、
説明を要すまでもなく、利害
関係を持つ人々の
意見を十分反映せしめようという精神にほかならないのであります。もともと売手と買手の
関係をとる場合もありましょう。あるいは
経営の
立場からのみ一方的な利益を主張する
委員もありましょう。また一方では生活権とか、あるいは健康を守ろうとするいろいろな
角度からそれぞれの
理由をもって主張される諮問機関であります。ところが、その中にあって、公益側の
委員だけが
公務員法に規定される種々の
条件を持って、他の
委員とは異にいたしております。一例をとりまするならば、国家
公務員の特別職でありますから、これは公の
意味における秘密を保持する義務が強要されるのであります。私の老婆心であればけっこうでありますけれ
ども、もしその四人の
委員が、秘密を守らなければならないという一事をたてにとって、この協議会に参加しても、これこれのことについては発言を差し控える、あるいはこれこれのことについては別個の協議をするという主張がなされたときに、八・八の一般の
委員が反対ができるでありましょうか。結局四人の秘密
会議が持たれましたり、あるいは四人だけの特別の判断に基づく協議が別個に行なわれるということが最初から規定されるということは、望ましくないのであります。他の機関にありますように、三者構成で公益側の人がイニシアチブを握る場合が非常に多い機関があります。しかしその場合には、同じ
立場に立って論議し合い、
検討いたし、しかる後に両者の了解を得て、おのずから別個の
会議を持ったり
決定をすることが従来の慣行であります。またこれが当然な民主主義のルールを守る方法であると思います。初めから一つの権力を与え、初めから一つの地位が保障されております者と、しからざる者とが対等の
立場に立って協議することは、最初から非常に困難があるということよりは、矛盾した制度になってくるのでありまして、こういう点で将来混乱を巻き起こすのではないか。ことに多数の被保険者の利益を代表する人々、また医師会の強い要求な
どもあるととでありますから、両方の
意見が必ずしも
一致するというようなものではないことは、最初から明らかであります。こういう
意味におきまして、その配慮は非常にけっこうであり、また敬意を表するのでありますけれ
ども、その配慮のうち、今言ったような問題だけを取り上げても、むしろ今後混乱を生ずるのではないかと思いますので、この一点についてわが党は非常な不安を感じ、
賛成をいたしかねるのであります。両党の御努力に対しましては、かえすがえすも残念でございますけれ
ども、反対の
意思表示をいたしまして、私の
討論を終わりたいと思います。