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1961-10-10 第39回国会 衆議院 内閣委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十日(火曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員    委員長代理理事 草野一郎平君    理事 内田 常雄君 理事 堀内 一雄君    理事 宮澤 胤勇君 理事 飛鳥田一雄君       伊藤 郷一君    内海 安吉君       小笠 公韶君    高橋  等君       保科善四郎君    緒方 孝男君       岡田 利春君    杉山元治郎君       田口 誠治君    山内  広君       山花 秀雄君  出席政府委員         総理府総務長官 小平 久雄君         総理府総務副長         官       佐藤 朝生君         総理府事務官         (総理府特別地         域連絡局長)  大竹 民陟君  委員外出席者         外務事務官         (欧亜局東欧課         長)      都倉 榮二君         大蔵事務官         (主計官)   赤羽  桂君         大蔵事務官         (理財局国庫課         長)      稻村 光一君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 十月十日  委員柳田秀一君辞任につき、その補欠として岡  田利春君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 十月六日  傷病恩給の是正に関する請願坊秀男紹介)  (第一四号)  恩給年金等受給者処遇改善に関する請願(  濱田正信紹介)(第一五号)  同外一件(小島徹三紹介)(第九〇号)  同(椎熊三郎紹介)(第九一号)  同(渡海元三郎紹介)(第九二号)  同外一件(小島徹三紹介)(第一七七号)  福島営林局新設に関する請願八田貞義君紹  介)(第一六四号)  埼玉県武蔵町の保育所防音施設費国庫負担に関  する請願山口六郎次紹介)(第二五九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月六日  国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び  薪炭手当支給に関する法律の一部改正に関す  る陳情書(第九七  号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  北方地域漁業権者等に対する特別措置に関す  る法律案内閣提出第二二号)      ――――◇―――――
  2. 草野一郎平

    草野委員長代理 これより会議を開きます。  委員長が、台風の影響で汽車がとまっておるために、ただいま電報が参りましたので、指定によりまして理事の私が委員長の職務を行ないます。  北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律案議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。質疑の申し出がありますのでこれを許します。岡田利春君。
  3. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただいま議題になりました北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律案について、質問いたしたいと思います。  私は前国会でも、この法案について御質問申し上げたのでありますが、その冒頭に政府提案理由説明として、「歯舞群島色丹島国後島及び択捉島につきましては、わが国固有領土であるにもかかわらず、昭和二十年八月ソビエト社会主義共和国連邦により占領されて以来、事実上同国の支配下にあり、」このように提案理由説明がなされておるわけです。そこで私は端的にお聞きいたしたいのでありますが、択捉島以北四十キロのウルップ島からシュムシュ島のいわゆる十八島、これを俗に中部千島とか、あるいはまた北千島とか、いろいろ呼ばれておりますけれども、この十八島について、一体これは固有領土であるのかないのかという質問をいたしたわけです。これに対して、実は明快なるお答えはまだいただいておらないわけでありますが、この点についての長官見解をまずお聞きいたしたいわけです。
  4. 小平久雄

    小平政府委員 ただいま御審議を願っております法案におきましては、御承知通り歯舞色丹及び国後択捉、この四島が固有領土である、こういう建前でやっておりまして、それ以北諸島につきましては、何ら触れておらぬわけでございます。そこであらためて申し上げるまでもなく、北方領土の問題につきましては、今国会におきましても、各方面から種々論議がされておるわけでございますが、今お尋ねウルップ以北諸島固有領土であるかどうかということでございますが、本法案に関する限りは、別段そこに触れておらぬわけです。そこで私は総務長官という立場から申しますと、そのようなウルップ以北諸島の性格と申しますか、そういうことにつきましては、総務長官立場からお答え申し上げるよりも、外務省関係においてお答え願うのが適当であろうと考えております。
  5. 岡田利春

    岡田(利)委員 あとから外務省の方が来ましたらなお詳しく聞きますけれども、ただ問題は、この法案を出すにあたって、特に提案理由で、この四島については固有領土である、だからこういう措置をするのだということは、裏返しをすれば、これは固有領土でなければもちろんこういう措置をしないし、また逆にいうと、もう一つの側面からいうと、これ以外に固有領土であると認定された場合には、当然それらの諸島についてもこの措置が及ぶ、こう考えられてくるわけです。藤枝長官は前国会で、そういう点が明らかになった場合には、この法案の適用といいますか、あるいはまたこれと同様の措置は当然とられるものである、こういう見解が披瀝をされておるわけです。その点については小平長官もお変わりありませんか。
  6. 小平久雄

    小平政府委員 その点につきましては、前長官答弁申し上げた通りと心得ております。
  7. 岡田利春

    岡田(利)委員 では、その具体的な問題、専門的な問題はあとに譲りまして、もう一点長官にお伺いしておきたいのですが、しからば国後択捉島固有領土であるという根拠は、どういう根拠に基づいて固有領土である、こう言われておるのですか。
  8. 小平久雄

    小平政府委員 これらの四つの島が、わが国固有領土であるということは、歴史的事実からして当然これは固有のものである、さように心得ております。
  9. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務省の方も見えられたようでありますから、先ほど私は長官にこの法案提案にあたって、歯舞色丹国後択捉については固有領土であるという立場から、今回のこういう措置をとった、こういう説明があったわけです。しからばウルップからシュムシュ島の十入島は、これは固有領土でないと言われるのか、その見解について、外務省は一体どういう統一見解を持っておりますか。
  10. 都倉榮二

    都倉説明員 これは御承知の一八五五年の日露通条約及び一八七五年の千島樺太交換条約、この両者に照らしまして、国後択捉については、かつて外国領土になった歴史は全くございません。この両者は、われわれがサンフランシスコで放棄いたしました千島のうちに入らないというのが、政府のきちんとした見解でございます。そういう意味で、この歯舞色丹はもちろん北海道の島嶼である、これは申すまでもないことであります。国後択捉についても、これは歴史的に見て日本固有領土であるというふうに考えております。
  11. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、サンフランシスコ条約千島を放棄した、その千島概念範疇内に国後択捉が入っていないとか、歴史的にまだ一度も外国領土になったこともないというようなことを聞いておるのではないのです。問題は、放棄しようとしまいと、そういうことに関係なく、このウルップからシュムシュに至る十八島は、わが国固有領土であったのかないのか、こうお聞きしておるわけなんです。別に放棄したとかしないとか、私はそういうことを聞いておるのじゃないのです。これはどうなんですか。
  12. 都倉榮二

    都倉説明員 少なくとも国後択捉の方が、今申しましたように歴史的に見て、外国領土になったことはないという事実は、これは固有領土である建前が非常にはっきりしておるわけであります。このウルップ以北の十八島については、これは固有領土であるということを断言すべきかどうかは、私ここで差し控えさしていただきたいのですが、いずれにしましてもわれわれの建前としましては、国後択捉が歴史的に見て日本固有領土であるということをはっきり申し上げておるのであります。
  13. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、これはウルップ以北の十八島については、固有領土であるかどうか、外務省ははっきりしていないわけですか。これは歴史的には明治八年に樺太千島群島交換条約、特に千島群島という言葉が使われてこの交換条約が成立しておったわけです。しかしまたさかのぼってみれば、二百年前から千島樺太には日本人が長い間生存しておった。常にこの点紛争の種をまいておって、この交換条約によってはっきり南樺太ソビエト領土千島群島十八島については日本領土であるということが解明されたわけです。ですからこれは日露間でその見解についていろいろ紛争があったもの、認定がまちまちであったものを、明らかにしたということになると私は思うのです。この十八島が固有領土であるのかないのか、これは外務省でははっきりした統一見解がないのですか。放棄したとかしないとかは別にしてですよ。ないならないでけっこうです。
  14. 都倉榮二

    都倉説明員 この問題につきましては、さきの予算委員会でも総理及び大臣等の御答弁と同じになると思いますが、私ここではその点は答弁を差し控えさしていただきたいと思います。ただ国後、択捉については、とにかく日本人以外には住んでいなかったという歴史的事実がありますが、ウルップ以北については、その間に日本人以外の者も住んだというような歴史的事実もあるわけであります。そういう点で国後択捉については、われわれもはっきりした固有領土であるということを、いつも明確に主張しておるわけであります。
  15. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろん私もこの十八島、樺太については、これは日本人も住んでおったし、また当時のロシヤ人も住んでおったということは知っておるわけです。しかしながらそういう紛争のあるものをすっきりするために、明治八年に交換条約を結んで、榎本全権がこの問題について調印をしておるわけなんです。ですから、そういうことは知っておるのですが、ただその紛争のあったものを、交換条約によってはっきりしたわけです。別にこれは戦争とか、あるいは他動的な力によって解決されたものではなくて、日露間の友好関係を保つ、こういう意味でこういう点をすっきりしようということで、この条約ができておるわけですね。そうした場合に、いわゆる歴史的にただ日本人より住んでいないとかいたとかいう問題ももちろんある程度のウエートは持つでしょうが、そういう事実にかんがみる場合に、これは当然日本固有領土である、しかももう百年近くたっておるわけですから、われわれ日本国民がそういう認識に立つことはきわめて当然ではないかと思うのですが、この点はいかがでしょうか。
  16. 都倉榮二

    都倉説明員 繰り返しになりますが、それらの島々については、いろいろ議論も多いところでありますし、私どもは国後択捉についてのみ、とにかく固有領土という点をはっきりさせておるわけであります。
  17. 岡田利春

    岡田(利)委員 長官にお聞きしますが、先ほど長官国後択捉島は歴史的な事実にかんがみて、これは固有領土だ、あとの方は外務省の方、こう言われたのですが、ではそういう歴史的にも早くからはっきりしておった日本固有領土である国後択捉島から居住者が引き揚げてきた場合の引揚援護法引揚者給付金措置を見ますと、これは明らかに国後択捉本邦とみなさないと書いてあるわけですね。そういう前提に立ってこの引揚者給付金措置をとっておるわけです。これはどういう理由ですか。
  18. 小平久雄

    小平政府委員 これは御指摘の通り、本来は本邦、すなわちわが国固有領土であるが、引揚給付金支給に関しては、特に本邦とみなさない、こういう意味だろうと私は解しておるわけであります。
  19. 岡田利春

    岡田(利)委員 ではその場合、歯舞群島色丹島については、どういう取り扱いをされたのですか。
  20. 大竹民陟

    大竹政府委員 歯舞群島色丹島につきましては、私実は援護法を詳しく読んでおりませんので、あるいは間違いがあるかもしれませんが、ここの引揚者につきましては、おそらく引揚給付金給付していないということに相なっておると思います。ちょっとお待ち下さい。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 給付金を出しただろう、みんな。
  22. 大竹民陟

    大竹政府委員 ちょっと調べてみます。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点はあとからもう一度質問いたしますけれども、私の記憶では、引揚者給付金は一律給付されておるわけです。特に国後択捉島に限っては本邦とみなさないということで区別して給付金支給されておるわけです。この点はもし今わからなければ、あとでいいですが、早急に一つ調べていただきたいと思います。
  24. 大竹民陟

    大竹政府委員 やっていないようでございます。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 支給していないのですね。国後択捉島引揚者給付金は、本邦とみなさないというのは、給付金に限ってという長官答弁ですが、これは私は問題があると思うのです。今外務省あるいは政府がとっておるように、これはもう歴史的に固有領土であって、しかも何ら疑念のはさむ余地もない、しかもサンフランシスコ条約については放棄した千島という概念範疇には入っていないという答弁をし、条約局長の前の答弁は間違いである、こうまできめつけて、高姿勢の答弁をしておるわけです。しかしながら戦後一貫して政府の取り扱った事務手続においては、この島の認定を、少なくともこれは本邦とみなさないという前提に立って行なわれたということは、政府見解というものが変わってきたと私は考えるわけなんです。この点はいかがですか。
  26. 小平久雄

    小平政府委員 その点は先ほど答弁した通りと私は考えておりますが、特にある法律で特定の措置をしようという場合に、その法律によって特に規定する場合が御承知通りありますから、そこで国後択捉島については、給付金に関する限り云々、こういうふうに規定したものと私は考えております。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 長官にこれ以上質問しても、これ以上答弁が出ないのではないかと思いますけれども、ただ少なくとも政府、特に保守党政府がずっと続いておるわけですが、この引揚者給付金本邦とみなさないという前提支給された。しかもまた当時、その後の国会において条約局長から特に説明されて、国後択捉島千島列島概念範疇に入るのだ、こういう答弁がされたことは、間違い、間違いないは別として事実なんです。だからどうも最近国際情勢の変化によって、その後日ソ平和条約の交渉を起点にして、政府見解というものが変わってきておるのではないかと思うわけです。特にこれだけは本邦とみなさなくて、領土的には国後択捉島固有領土だ、そうすると固有領土という概念は、その法案々々、その措置々々によって変わるものですか。また変わっていいものなんですか。
  28. 小平久雄

    小平政府委員 ですから反対に見れば、択捉国後に関して特に本邦とみなさないという規定を引揚者給付の際に給付の問題で規定しない場合は、これはむしろそのことによって本邦固有領土でないという前提に立つわけです。固有領土であるからこそ特に本邦とはみなさないのだ、こうしたわけであって、私はそれが当然だろう、別段それによって政府の解釈が変わったものだろうとは思いません。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はとても今の答弁では納得できないわけですが、この問題は一応提案理由に出ておりますから、先ほどのウルップ以北の十八島の問題とただいまの問題については、どうしても保留しておきたいと思うわけです。  次の質問に移りますけれども、今度の特別措置として国債が十億円交付をされたわけです。前国会で私は質問しまして、これは一体どういう積算基礎に基づいて十億円の国債交付という措置政府がとったのか、こういう質問に対して、大体漁業民主化のための内地漁業権補償として一応交付された、そういう算定基礎を勘案して算出をし、それが大体七億五千万、これ以外に北方協会のいわゆる業務あるいは当時漁業以外の四島に在住しておった人々に対するものとして二億五千万、こういうような考え方で十億円の資金というものが確定した、こう言われておるわけです。しかしながらこれもどうも明確でないわけですね。しからば内地漁業補償を行なったその積算基礎でこの四島を考えた場合、どういう数字になりますか。その数字一つお示し願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  30. 林田悠紀夫

    林田説明員 この十億円の算定基礎でございまするが、ただいまおっしゃいましたように、大体七億五千万円というものを漁業権補償基礎にしまして算定しておる、こういうことになっておるわけでございまして、それは終戦以後の漁業法の施行の当時に漁業権補償をいたしたわけですが、それの北海道本島に対する漁業権補償と大体歩調を合わせまして、それの漁獲高国後択捉歯舞色丹と比較いたしまして算定をしたわけであります。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 当然北海道漁業補償計算によりますと、優に百億を突破しておるわけです。しかしながら予算関係上、全国の総額から按分の比率を出して計算していくと、大体五十五億程度金額だったと思うのです。そういたしますと、どうしても漁獲高の実績なり、あるいはその北海道漁業補償基礎になった昭和二十四年、五年ですかの漁獲量の実績、こういうものから見ても私はどうも七億五千万という数字は出てこないと思うのですが、この点どうですか。
  32. 林田悠紀夫

    林田説明員 北海道全島昭和十四年から十六年平均の漁獲高というものは大体三百四十五億円程度でございます。それから北方諸島、すなわち歯舞色丹国後択捉、それが大体六十五億円くらいのものでございます。そういうふうなものと勘案いたしまして、大体均衡をとるようにして算定をしてあるわけであります。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと前会私が質問をして、将来国後択捉歯舞色丹日本に帰属をした場合に、当然漁業権補償という問題が私は出てくると思うのです。ところが七億五千万というものが見合っておるという確信を持っていうならば、将来帰属した場合の漁業補償額というものはこの七億五千万が大体妥当だ、こういうことに裏返しをすればなるのですが、そういう受け取り方でよろしいですか。
  34. 林田悠紀夫

    林田説明員 将来この島が完全に日本主権下に入ったという場合におきまして——漁業制度改正と申しますのは、ちょうど昭和二十四年に漁業法改正されまして、旧漁業権を抹殺して新しい漁業権漁業民主化のために交付するというその場合に、旧漁業権を抹殺したしましたので、それに対する補償として漁業権補償をやったというような経過がございます。従いまして、完全に日本領土権に入って、その場合に漁業法をどうするかということが問題になってくるわけでございまして、そのときには旧漁業権補償するということに大体なるのではないかというふうに考えられますけれども、そのときの状況によりまして、新たな措置が行なわれるのではないかというように考えております。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 それは端的に申せば、なってみなければわからぬというわけですね。しかし前会にも言われておりますように、北海道に対しましては五十二億ほどの漁業権補償を行なったということをあなたは説明されておるわけですね。しかもこれは当時の北海道漁獲量から考えて、四島の漁獲量あたりと比較すると、大体七億五千万。ですから、どこに基準をとるかは別にして、同じ時期を基準にして数字をはじき出すと、七億五千万というものは漁業補償に見合う、北海道の五十二億に見合うのが七億五千万だ、こういうことにどんぴしゃりなると思うのです。しかしそれは将来いずれを基準にとるかは別にして、少なくともこの同じ基準年次をとって計算した場合には七億五千万補償されるのだということになると思うのですが、この点そう理解してよろしいですか。
  36. 林田悠紀夫

    林田説明員 やはりそのときの基準年をどこにとるかというふうなことが、正確には問題になってくると思います。北海道本島漁業補償をいたしましたときは、大体十四年から十六年の漁獲量基準にして考えておったような次第でございまして、将来漁業権補償をこの四島について行なうという場合におきまして、はたしてそういう十四年−十六年の漁獲量を考えるのがいいか、いろいろそういうときには問題になってくると存じます。一応十六年で七億五千万というものを漁業権の方から算定したということにいたしてはおりますが、そのときの事情によりましてまた考慮がされるということになるのじゃないかと思います。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 では、この七億五千万積算基礎を公表することができますか。またわれわれに計算基礎を資料によって具体的に提示することができますか。いただけますか。
  38. 林田悠紀夫

    林田説明員 この七億五千万と申しますのは、実は先生も御承知のように、十億円を国債交付するという場合の大体の基礎を作ったということにすぎないわけでございまして、その基礎をどういうふうに作ったかという根拠はあるのでございますが、これがかっちりと漁業権補償金額だということにはなっていないような次第でございまして、そういうことで一つ御了承願いたいと思います。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 かっちりなってないけれども、大体なっているということになると思うのですが、大体の幅が、一億の幅か、五億の幅か、これはずいぶんあると思うのです。七億五千万に対して三億も四億も違うということになると、大体もかっちりも非常に縁遠いものだと思うのですが、その点はどうなんですか。
  40. 林田悠紀夫

    林田説明員 実は将来四島について漁業権補償をすべきであるという時期が参りました場合に、現在これが漁業権補償としてきまっておるものだというふうな金額を出しておくのもどうかというふうに考えられますので、あまりかっちりした金額をここへ出すというのはいかがなものかと存じまして、一応の根拠としまして七億五千万程度ということにいたしておるようなわけであります。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 長官、今漁政部長に私が質疑をしたわけなんですが、この十億というのは、前の藤枝長官も、十億のうち七億五千万は大体四つの島の漁業補償というものを考えて算出をした、あとの二億五千万北方協会の経費あるいは居住者に対する援護措置、こういうものを考えて二億五千万だ、こういう説明がなされたわけです。しかし今質問のやりとりによって明らかなように、これはそうきちっとしているものではなくして、まあ準拠を置いたとすればそういうところに準拠を置いて、何かこれはどうしてもやらなければいかぬ、そこでそういうものを勘案して、一応この対策として政治的に考えたのが十億だ、こういうことになると思うのですが、それでよろしいですか。
  42. 小平久雄

    小平政府委員 その点前回の委員会でもお尋ねがあったわけですが、私は今岡田委員がおっしゃる通りであろうと考えております。十億というものが何らかのきちんとした根拠があって出たかといえば、必ずしもそうではないのじゃないか。そうかといってまたあまりにばく然としたと申しますか、つかみ金式でも困るということで、一応漁業権補償等についても大体どのくらいになったものであろうかという算定をしてみるし、またお話しの通り一般引揚者等についての援護ということもございますから、それらあわせていわばお言葉通り、政治的に全体として十億ときまったものと心得ております。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に移りますが、本法の二十二条の第五号でありますが、北方協会の事業の内容として、「北方地域に関する諸問題の解決促進を図るため必要な調査研究及び啓もう宣伝を行なうこと。」こうあるわけです。私は端的にお伺いしますが、この北方協会は、この号に基づいて、今まだ国会でも検討中の北方領土の問題の解決促進のために運動を起こす、積極的な啓蒙宣伝を行なう。もちろんこれは政府もこれからかわるかかわりませんか疑問がありますけれども、その政府の方針に基づいて、そういう北方領土問題の解決のために、積極的に啓蒙宣伝運動を起こす、こういうことが入るか入らぬかということをはっきりお伺いしたいと思います。
  44. 大竹民陟

    大竹政府委員 ただいまの点について私どもの考えを申し上げますと、北方問題の一番中心になりますのは、やはり領土の問題、あるいはまた安全操業の問題の解決というようなことがあろうかと思うのであります。これらは主として外交上の立場におきまして、政府がみずから実施していくという当然の仕事でございます。こういう仕事を北方協会が主になって調査研究あるいは啓蒙宣伝をしていくということは、これは私どもとして考えておらぬのでございます。むしろこの協会の仕事の重点は、引揚者と申しますか、関係者の生活の安定をはかっていくというところに重点があるわけでございます。同時にまたこれらの関係者の現在置かれております状態、あるいは今後移り変わります模様というふうなものを内外によく認識していただきまして、北方関係者の立場に絶えず理解をいただいていくという必要もあるわけでございます。そういった意味合いの関係者のいわば身辺に関する事柄、身のまわりに関する事柄につきましても調査研究する、あるいは国内に対しまして御了解をいただいていく、こういうことをこの条項で考えておるわけでございまして、領土問題を正面から掲げて、これが啓蒙宣伝をしていくのだ、こういう立場にあるものではないというふうに考えております。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 これはただいま答弁をいただいたわけなんですが、前国会では藤枝長官は、特にこの問題については、領土問題というのは、政府の外交ルートにおいてやる問題であるから、協会でこういうことを積極的に啓蒙宣伝をしたり、運動をするというようなことをやっていただく意思は毛頭ない、従って協会の首脳その他がきまると、十分その趣旨は徹底したい、そうして協会が政治的な目的で動くことのないように十分注意をしたい、こういう答弁を実はなされておるわけであります。そこで私は特にこの点念を押して確認しておきたいのでありますが、しかしこの条文では一応できるわけなんですね、条文から言えば。政府としては、今私が端的に質問した問題については、これは含まれない、少なくとも啓蒙宣伝運動を行なうがごときそういう積極的な面は含まれないということを、はっきり長官から断言していただきたいと思うのですが、いかがですか。
  46. 小平久雄

    小平政府委員 局長が答弁申し上げた通りであり、またただいま岡田委員の御指摘の通りと心得えております。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 それからもう一つ。第五の中に含まれると考えられる大きな要素は、今局長からも若干答弁がありましたが、安全操業の問題があるわけです。これはきわめて重大な問題でもあるわけです。しかも北方協会の場合、前会の答弁の中でも安全操業等の問題が当然調査研究、あるいはこれらに関する啓蒙宣伝ということが、協会としてやる範疇に入る、こう言われているわけなんです。従って、この際お聞きしておきたいのでありますが、政府北方地域における安全操業についてどのように考えておるのか、その見解を承りたいと思うわけです。
  48. 都倉榮二

    都倉説明員 安全操業の問題はもうずいぶん長い問題で、困難な問題でありまして、政府としては、ソ連側に対しても従来から繰り返しわが方の主張を伝えまして、安全操業に関する協定の案までも一時は向こうに提示して、これについて平和条約ができないでも、安全操業を可能ならしめるような協定をしたいという意思を表示して参っているわけでありますが、遺憾ながらソ連側が、これは平和条約の締結を見なければこの問題は解決できぬという立場を終始一貫して堅持しているわけでありまして、今日までこの問題が解決していないわけであります。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 拿捕事件というものは非常に社会問題に実はなっているわけです。すでに三十六年八月三十一日現在で拿捕隻数が七百七そう、人員にして五千四百五名、こういう膨大な数字も出ているわけです。そこで、私は今政府の考え方を聞いたわけなんですが、では、今日の時点においてこのソビエトの拿捕は一体妥当と考えるのか、不当と考えるのか、いずれですか。
  50. 都倉榮二

    都倉説明員 漁船がどの地点で拿捕されたかということは、時に非常に解明がむずかしいこともございますが、われわれとしましては、御承知のように領海三海里説をとっております。先方は御承知のように十二海里説をとっておりまして、これに関する見解の対立というものがございまして、それに基づく拿捕というものが非常に多くあるわけであります。そこでわれわれとしましては、たとえば十一海里というようなところで拿捕されるというようなものについては、そういう拿捕は妥当なものでないという建前をとっているわけであります。
  51. 岡田利春

    岡田(利)委員 妥当か不当かと私は聞いているわけです。外務省は拿捕された船一そう一そうがどの地点で拿捕されておるかわからぬでおるわけではないでしょう。全部知っておるでしょう。調査しておるでしょう。こんなに日本人が船に乗っていってソビエトに拿捕されているのに、どういう地点でどういう状態で拿捕されたのか、それが妥当なのか不当なのか、一隻々々わからぬという話はないと思うのです。あなたの話を聞いていると非常にばく然としていて、それがどうなって、どこにいて何をやっておって拿捕されたのかわからぬというような印象を受けるのですが、この点はどうなんですか。
  52. 都倉榮二

    都倉説明員 この点は、実は北方で拿捕される船には、御承知と存じますが、南の方で、たとえば朝鮮の方で拿捕される船なんかと違いまして、レーダーの施設もない、ほんとうに四、五人乗っている小船というものがしょっちゅうあるわけであります。こういうものについては、その船員自体が相当勘でもって操業しているという事例が非常に多くあるのでありまして、海上保安庁の船で確認したものももちろんございますけれども、そうでない場合ははなはだ不明確で、いわば水かけ論的なことになるような事例というものは、現にたくさん遺憾ながらあるわけであります。
  53. 岡田利春

    岡田(利)委員 これははっきりしないのはあなたの方であって、私はその拿捕された状況なり地点というのははっきりしておると思う。むしろはっきりしてない方があなたの方じゃないかと思うのですがね。もちろんコンブ船もあるわけですから、あなたの言うようにレーダーの装置もない、そういう小船が拿捕されておるという事件も、今度のコンブ船のような大量拿捕事件もあるわけです。しかし大体コンブ船以外の沖合い操業しているものについては、レーダーその他の施設が充実しておるわけです。ですからそういう意味では、あなたが言っておることがどうも私は理解ができないわけです。ですからもう一つ論議を進めていくと、では、政府は今日の時点で安全操業の海域と指定しているのは一体どの範囲か。これは閣議決定も私はあると思うのですが、それはどうなんですか。
  54. 都倉榮二

    都倉説明員 これは海上保安庁の方から御説明いただく方が正しいかと思いますが、私、承知しておりますのは、講和条約が成立しまして直後に、漁船の紛争がいたずらに起こらないように、この地点からはなるべく入らぬ方がいいというような、何と申しますか、哨戒ラインのようなものを閣議決定に基づいて作ったということを承知しております。たしか昭和二十七年だったかと思います。そういう線が、これは海上保安庁の方で一応指導する基準になつでおるところというふうに承知しております。
  55. 岡田利春

    岡田(利)委員 では、漁政部長にお聞きしますけれども、今答弁があったように、大体今日安全操業海域といいますか、そういうものが指導されておるわけですね。では、水産庁として、漁業権の免許はどの範囲内に規定して漁業権の免許を与えておるのか。これは今の安全操業区域内と想定されている内だけか、外もあるということなんですか。
  56. 林田悠紀夫

    林田説明員 漁業権の免許につきましては、これは県知事の免許になっておるわけであります。それで、その日本の領海として、日本が主張しておりますのは三海里説をとっておるわけでありまするが、知事の権限がどこまで及ぶかという問題につきましては、必ずしも三海里ということには限定していないわけであります。すなわち、無限の漁区ということはないわけですけれども、大体相当の沖まで及んでおるというのが実情でございます。北海道の場合におきましても、三海里で限定せずに、そこの漁場の実情に応じまして漁業権を免許しておるという実情でございます。
  57. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろんあなたの言う通り、何海里までも免許を与えることはできますよ。私の言っているのは、いわゆる歯舞色丹国後択捉の四島があって、ここで安全操業の海域というものの行政指導を行なわれているわけでしょう。しかもそういう点で監視船も指導に当たっておるわけですね。危険海域であれば警告するわけでしょう。私はそういう点において質問しておるわけなんです。だから、知事が漁業権の免許を与える。安全操業海域外も、三海里説だからそこもいいのだということで免許を与えておるのですか。
  58. 林田悠紀夫

    林田説明員 ただいま外務省の方から答弁がありましたように、昭和二十七年にマッカーサー・ラインが撤廃されまして、その以後におきまして、日本としては三海里説をとっておるわけですが、あの北方の四島の地帯につきましてはいろいろ問題がございまするので、一応海上保安庁と北海道庁が協議いたしまして、大体ソ連の占領下にある島々から十二海里ぐらいのところを基準にいたしまして、危険ラインというようなものを一応考えまして、そのライン内に漁船が入るということについて注意を与えておるのが現状であります。漁業権の免許につきましても、たとえばこの前コンブ船が捕獲されました貝殻島でございますが、これもマッカーサー・ラインの内部になっておったようなわけでございまして、北海道庁としてはあの辺については漁業権の免許はいたしていないような次第であります。
  59. 岡田利春

    岡田(利)委員 ですからこれは私が質問しているように、今までの拿捕は一体妥当なのか不当なのか、それから安全操業海域の問題と漁業権の免許の範囲というものを総合してみますと、これは不当なのか不当でないのかはっきりしておるわけでしょう。たとえば免許を与えていない海域に行って操業するということは、これは当然不当な漁業なわけです。そういう意味で私は現時点で考える場合に、今日行なわれている拿捕というものは妥当と考えているのか不当として考えておるのか、こう私は端的に質問しているわけです。もし不当ならば不当であるように、政府として措置をとらなければならぬでしょう。妥当ならば妥当で、ではこういう諸問題は一体どう解決をするのかということをまた考えてみなければならないわけでしょう。妥当ならば妥当性を主張しなければならぬし、どんどん交渉しなければならぬし、政府として当然とるべき措置をとらなければならぬと思うのです。ところが先ほど若干折衝されたようなことを言っておりますけれども、きわめて消極的であって、この問題はいわば放置されておるといっても過言ではないと私は思うわけです。ですから私は今日拿捕事件がひんぴんとして続いておりますけれども、これは政府として妥当なのか不当なのか、そういう見解を聞いているわけです。どうですか。
  60. 林田悠紀夫

    林田説明員 私がただいまお答えいたしましたのは、漁業権についての問題でございます。漁業には御承知のように漁業権漁業のほかに、船で沖までやる漁業もございますし、そういう場合におきましても許可漁業もあり、自由漁業もあるということになっております。漁業権はそういうふうに設定されていないわけでございますが、当然公海におきましては、公海自由の原則に基づきまして、漁業は自由であるわけでございます。公海上における拿捕というものは不当なものであるというように考えております。
  61. 岡田利春

    岡田(利)委員 外務省にお聞きしますけれども、公海上における拿捕は不当だ、こういう見解が出てきたわけです。わが国政府はその妥当、不当の公海の原則をどこに引いておりますか。
  62. 都倉榮二

    都倉説明員 先生の御質問は、どこに引くかというのは、線でございますか。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 ええ。
  64. 都倉榮二

    都倉説明員 これは当然三海里説をとっておりますから、それより外の地域は、われわれとしてはもしそこで拿捕されれば不当であるという基本的立場であります。
  65. 岡田利春

    岡田(利)委員 では、不当であるという見解に立てば、政府は今までソビエトに対してどういう措置をとっておりますか。あるいはまた不当であるとするならば、国際裁判にも提訴して積極的にこれは争うべき問題だと私は思うわけです。この点についてはどういう見解を持っておりますか。
  66. 都倉榮二

    都倉説明員 安全操業の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、あらゆる機会に在ソ大使館においても、またソ連側要人が参りましたときは外務大臣からも、またその他、常に安全操業の問題については向こうの態度に対して注意を喚起しております。これを放置しているというようなことはございません。ただ三海里、十二海里の問題につきましては、御承知のように全世界規模において行なわれた海洋法会議においても、依然として結論が出ないような事実もございまして、遺憾ながらこの点については国際的な結論が出ていない現状でありまして、そのためにこういう拿捕については、われわれの立場で先方の注意を強く喚起しておる次第でございます。
  67. 岡田利春

    岡田(利)委員 そうすると、日本政府が三海里説を固持して、海洋法国際会議等でもまだ結論が出てない。そうすると国際的にこれを訴えることもできるが、そういうこともしないということになりますと、あながち一方的に三海里説をとって、これは不当である、こうはきめつけ得べき問題でもないと私は思うわけです。あるいはまた日ソ漁業条約が毎年締結されて、北洋におけるサケ、マスの漁獲量の交渉をなされているわけです。こういう唯一の日ソ間の公式な接触の場面においても、これらの問題で日本政府が強く主張した、あるいはまた近海漁業についての漁業条約の締結についても強く主張した、こういう話は聞かぬわけです、実際は。あなたは大使館あたりによく言っているとか、抗議を申し込んでいるとか言いますけれども、もちろん外務省でなくとも、地元からも大使館に陳情あるいはいろいろな点で来ておるわけです。拿捕のあるたびに来ておるわけです。ですから、しょっちゅうやっておると言うけれども、政府のこの安全操業の問題を解決するに対する態度が非常におざなりであって、何か消極的な、おつき合い程度の感じで行なっている、こう認識せざるを得ないわけです。この点についてどうですか。
  68. 都倉榮二

    都倉説明員 ただいまの御発言ではありますが、われわれとしましては、拿捕の事実を承知いたしますと、これは必ず措置をとって、東京においてもモスクワにおいても、すぐに先方に対して抗議なり、先方の注意の喚起を怠ったことはございません。最近におきましても、コンブ漁船の例にいたしましても、数回にわたって相当強くわれわれは努力しておることは事実でございます。決してこの問題についてないがしろの態度をとっているということはないと確信いたしております。
  69. 岡田利春

    岡田(利)委員 政府は、ソビエトの方がミコヤン氏が来て話をした、あるいはまたソビエト大使館に行って話をする、こういうことでやっているが、なかなからちがあかぬということを言われておるわけですが、ではこの安全操業の問題や、沿岸漁業、あるいはまた沖合い漁業も入りますか、これらの漁業条約の締結といいますか、安全操業の問題とも関連する問題なんです。北洋については、年々漁業条約が結ばれて行なわれておるわけですが、これらについては日ソ平和条約の以前にも積極的におやりになる意思があるか、あるいはまた日ソ平和条約を結ばなければだめだからこれはやらぬのか。そういう積極的な、安全操業や沿岸あるいは沖合い漁業の協定ですね、これはやらぬのか、やる意思があるのかないのか。一体、平和条約の前にでもこの問題だけは解決するという点で積極的に手を打って、こっちが積極的に話を持ちかけていくということをやる意欲があるのかどうか、それとも平和条約が締結されない限りこれはだめなんだからということで、平和条約が締結されなければこれは解決せぬということで、あきらめの態度ですか、どちらですか。
  70. 都倉榮二

    都倉説明員 その点は、先ほど申しましたように、日本政府としては具体的な安全操業に関する協定の案まで、たしか昭和三十三年だったと思いますが、出しまして、一時はソ連側がそれに乗ってくるやの模様も見えたのでありますが、その後また先方の態度がかたくなになりまして、とにかく平和条約締結を待たなければだめだ、これがソ連側の態度でございまして、われわれとしては去年も、たしかイシコフ漁業大臣が参りましたときも、外務大臣から、さきに提示したあの具体的なわが方の提案に基づいて交渉を始めようではないかということを、強く要請したのも事実でございます。しかし遺憾ながら相手は、いや、それは平和条約を待たなければ問題にならぬというかたくなな態度を強く持しておるのでありまして、日本側が積極的意欲がないということは事実でないと思います。
  71. 岡田利春

    岡田(利)委員 日本側は積極的でないということは事実じゃないと思いますという消極的な答弁なんで、積極的な意欲がないと私は受け取っておるのですが、そういうふうに了解してよろしいですか。
  72. 都倉榮二

    都倉説明員 それでは言いかえますが、この問題については常に積極的に、ソ連側と平和条約前でも協定を結ぼうではないかという態度であります。
  73. 岡田利春

    岡田(利)委員 態度はわかったのですが、そういうことを具体的に行動に現わして、あらゆる国際会議に訴え、あるいは国際世論も喚起をする、政府としてもそういうように積極的に行動をするという意味ですか。
  74. 都倉榮二

    都倉説明員 国際会議——どういうことをお考えか存じませんが、たとえば国際司法裁判所にしましても、ソ連はかつてその応訴した事実というものは全くございません。結局直接ソ連を相手に問題を解決していかなければならぬのが、この問題の本質だと思います。そこでわれわれとしては繰り返し、機会あるごとに、この安全操業の問題のわが方の困難な事情を訴え、先方のこれに対する積極的な態度を要請しておるわけであります。
  75. 岡田利春

    岡田(利)委員 この問題は非常に大きな問題で、この場ではちょっとどうもこれ以上出ないと思うわけです。  次に漁政部長にちょっとお聞きしておきますが、今歯舞においてはコンブの問題で——漁民が非常に零細化してコンブ漁にたよっておるわけですが、たまたま流氷等があってコンブが不作である。しかも目の前に貝殻島が横たわっておって、ソ連側ではコンブをとらぬので、コンブが繁茂をしておるということで、俗にいうなら大っぴらに行ってコンブをとっておるというのが実態です。今度の大量拿捕事件は非常に珍しい事件です。島の周辺でコンブをとっておるのが、ノサップの灯台からはっきり見えるわけです。しかも拿捕されていくのもノサップの灯台から見えるわけです。私はたびたびノサップに行くわけですが、そういうことで非常に切なる願いとして、零細化している漁民の生活の実態から、これらの問題だけでも早急にソビエトに訴えて、何とかコンブがとれるような話し合いをしてくれないか、こういう住民の願いがあるわけなんです。これはあなた本十分御存じかと思うのですが、こういう点について、特に積極的にこれらの問題を解決するための努力をする考えがおありですか。あるとするならば、その具体的な考え方についてお聞きしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 林田悠紀夫

    林田説明員 先生御承知のように、貝殻島は満潮時におきましては波の上に出ていないのですが、干潮時には出ておるというような特殊の岩礁をなしておるようなところで、ここにおけるコンブ採取問題というのはきわめてデリケートな問題でございます。それでこの問題をソ連との間において、先ほど外務省からお話のありましたように、零細な漁業でありますから、それくらいはやらしてもらいたいということは、農林大臣も、向こうの要人が来ました場合は、向こうに頼んでおるというような実情であり、また外務省を通じてもそういう措置もして参っておるわけであります。しかしながらそればかりでは解決しないという問題でもございますので、根室の本土側に築磯を作りまして——実はこの八月にああいう拿捕問題がありましたので、急拠予算を流用いたしまして、そこに本年度もう石を入れて、コンブを繁茂させるというような措置もとりまして、今後できるだけ多くそういう石を入れる措置もとりまして、根室の本土側においてもできるだけコンブがとれるようにしよう、こういうことを措置いたしておるようなわけであります。
  77. 岡田利春

    岡田(利)委員 この点は、河野農林大臣は、日ソ共同宣言にもソビエトに行っておりますし、あるいは漁業交渉についてもずいぶん接触を多くされている方ですから、特にあなたからこの問題の解決のために、継続的に一つ努力を払うようにお伝えしておいていただきたいと思うわけです。  時間もありませんから次に移りますけれども、ただいまの二十二条の第四号なんですが、ここには市町村に対する、北方地域漁業権者等の福祉の増進に関する当該事業に必要な資金を貸し付けする、こうなっておるわけなんですが、どうもこの内容が明らかになっていないのです。もちろん初めは資金量も少ないわけですから、初めからどんどん市町村に貸し出しするというわけには参らぬと思うのです。この点もう一度お聞きしたいと思うのですが、福祉の増進を主たる目的としてどういう事業を考えられておるかをお聞きしたいと思うわけです。
  78. 林田悠紀夫

    林田説明員 ここで福祉の増進を主たる目的とする事業として考えておりますのは、たとえば市町村が漁港を作りますとか、あるいは公営住宅を作りますとか、そういうふうに北方地域の旧漁業権者等の福祉のためにやります事業について、融資をしたいということを考えておるわけでございますが、当初の間は資金量も少ないわけでございますので、この方はできるだけあと回しにして、もっと端的に漁業権者等の事業並びに生活がよくなるような融資を最初にやっていきたいというふうに考えております。
  79. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の答弁で道路とか港湾とか乾場とか、こういうことになってくるわけですが、まるっきり国債を現金でやっても十億円です。市町村は根室から釧路から渡島、非常に広範囲にわたっておるわけです。あるいは富山県に及ぶ、こういうことから考えると、あなたの言う港湾とか道路とかあるいは乾場だとか——乾場なんかの場合には多少考慮される面もあるかもしれませんけれども、それ以外にこういった道路、港湾のような土木関係の工事まで事業としてこれを考えるということになると、私はこの措置の趣旨から逸脱しておると考えるわけです。当然との福祉増進の面から常識的に考えますと、たとえば低家賃住宅に非常に困っておる旧島民がおれば低家賃住宅を建設する、あるいはまた、大体千島からの引揚者はまとまっているわけですね。四十軒とか五十軒とかまとまっている地帯が非常に多い。そうすると共同作業場を作るとか、あるいはまた衛生上非常に悪ければ簡易水道を作るとか、そういう民生安定的な面に、福祉の増進という場合にはすなおに考えらるべきであって、少なくとも今あなたの言われるような港湾とか道路とかいう土木関係は、これは十億の金ですからむしろ除外さるべきものだと思うのですが、これは長官、いかがですか。
  80. 小平久雄

    小平政府委員 御指摘のように資金がさほど多くありませんし、ましてや年々運用できる金というものが限定されているわけでありますから、岡田委員の御指摘のように当初は大体そういう使い方でいくのではないか。部長の説明は、将来相当資金が潤沢になった場合には逐次そういう方面に及んでいきたい、こういう趣旨と解釈しております。
  81. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし漁政部長長官も将来と言われたのですが、将来十年間まるまる金を使わないで貯金しておいてもこれは六億です。合計十六億ですね、十年間で。もちろん十年間利子を積算して計算すれば別ですが、大体二十億ちょっとの金でしょう。全資金量でそれだけしかないわけです。それで道路、港湾をやると言っても、これは私はちょっと理解できないわけです。しかし北海道でたとえば乾場なんかでは、物納で納めている地帯もあるわけですね、浜中あたり。そういうところにも千島引揚者がおるという場合、そういう点はある程度資金量が潤沢になれば考慮さるべき問題だけれども、あなたの言う道路、港湾等に準ずる土木関係の方面にまで、事業として貸付するということは行き過ぎではないかと思う。むしろその点はこれに含まれていないと解する方が妥当であると思うのですが、いかがでしょうか。
  82. 林田悠紀夫

    林田説明員 ちょっと答弁のよくなかったところがあると存じまするが、もちろん漁港とか道路とか、そういうものは国の補助事業として行なわれるのが当然でございまして、その場合には市町村は起債によって自己負担分だけをまかなう、そういうことになると思います。ただそういうふうな場合に、非常に小規模なもので、市町村が起債をするのは、自分が負担せずに、ただ北方地域漁業権者が固まっているというようなところにおきまして、たまたま北方地域漁業権者等が実際は負担すべきもので市町村がかわって負担するというようなものに対して、自己負担分の融資を一部やってもいいのではないか、そういうふうな見地でございます。これはもちろん順位はきわめて後順位になっており、最後の問題でございます。必要がありましたならば、そういうことも考え得るという程度に解しているような次第であります。
  83. 岡田利春

    岡田(利)委員 次に、順序はちょっと逆になりますが、二十二条の三号について質問いたしたいと思います。これは前回の委員会でこれに対する政令、省令の案文の見込みが実は大体出されているわけでありますが、これによりますと漁業協同組合を初め、中小企業協同組合や、あるいはまた農業協同組合、これらに対しては大体構成が五〇%、半分ですか。それから普通の合資会社、合名会社、株式会社、商事会社、有限会社等、この場合には株主総数の九〇%をこえるもの、そうして持ち株が九〇%をこえるもの、こういう二つの面で大体省令の見込みが出されているわけなんです。この点について私は若干疑問があるわけなんですが、九〇%ということは、一体どういう考えでこの基準を見込まれたのか。まずその考え方について、これは大蔵省の方でもいいし、あるいはどなたでもいいですからお聞きしたい。
  84. 林田悠紀夫

    林田説明員 この第三号の考え方は、やはり第一号、第二号の資金を主として考えるべきである。しかしながらそういう人が個々でやりまするのではどうも事業がうまくいかない、むしろ一緒になりまして法人を作ってやるというのがいいというような場合におきまして、そういう法人に対して必要な資金を貸し付けるのがいいのじゃないかというふうな見地から、規定したようなわけであります。従いましてその方法といたしましても、できるだけ北方地域の旧漁業権者が大ぜい集まって作っており、従ってそれ以外の者がそれに参加するという度合いが少ないものがいいというふうに考えているようなわけでございまして、資金量もそんなに豊富ではありませんので、そういうふうに北方地域漁業権者の色彩のきわめて濃い法人ということを考えているわけであります。それで協同組合の場合は、これは比較的公的な組織であります。従いまして五〇%をこえるものというふうに規定しておりまするが、会社につきましては、これは公的な度合いは薄いわけでありますから、九〇%をこえるものというふうに規定をいたしたいと考えているのであります。
  85. 岡田利春

    岡田(利)委員 もちろん法の建前としては一号から二号、三号とウエートがかけられてくることは、私も理解しているわけなんですが、ただ今の引揚者の方々の現在の生活実態等を見ますると、単純労務者というものが非常に多い。これに準ずるボーダー・ラインの層が非常に多いわけであります。おそらく所得では年間三十万以下のものが九〇%を占めておるのが実情でしょう。そういう点から考えていきますと、職業の転換とか、あるいはまたこういう共同出資に基づく会社とか組合を作って将来にわたって生活の安定をはかっていく、こういう措置が当然私は必要になってくると思うわけです。しかしながら今出されておる見込みを見ますと、組合の場合には五〇%をこえるものと厳格になっておりますし、それから法人、各会社については社員が株主総数の九〇%をこえる、それからまた株式所有が九〇%をこえる、非常に厳格なわけです。厳格なことは非常にけっこうなわけなんですが、といって個人に対する資金貸付というものはまた規制をされていく。この点はこれを一応基本にしてある程度の弾力性を持ってやるような態勢が、実際の行政指導をする場合、北方協会が実際にやっていく場合に望ましいのではないかという面も想定されるわけです。そういう点についてはある程度この点は弾力的に運用するという考え方があるかどうか、お伺いをしておきたいと思います。
  86. 林田悠紀夫

    林田説明員 それは協同組合の場合に五〇%をこえる、あるいは各会社の場合に九〇%をこえる、どうしてもボーダー・ラインはいつも何%にいたしましても問題になってくるわけでありまするが、先ほど申しましたように、できるだけ北方地域漁業権者のためになるようにいたしたいというように考えておるわけでございますから、御意見を十分参酌いたしまして今後考えていきたいと思います。
  87. 岡田利春

    岡田(利)委員 大蔵省来ておりますか。
  88. 草野一郎平

    草野委員長代理 見えております。
  89. 岡田利春

    岡田(利)委員 これはこの法案では主務大臣と大蔵大臣との協議事項になっておるわけですね。今私が先ほどから質問している点について、大蔵省としてはどう考えますか。
  90. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 これは主務大臣と申しましても、国庫大臣の立場とそれから金融関係の行政大臣としての立場とございますが、私ちょうど主計局でありまして、そちらの方はちょっと答弁する立場にないものでありますので……。銀行関係の者は出席しておりませんので……。
  91. 岡田利春

    岡田(利)委員 これはずっと見ましても、ずいぶん主務大臣が大蔵大臣と協議をしなければならぬ事項が多いのです。立て方は、大蔵省ががりっとひもをつけているという法案の内容です。法案あとの大蔵大臣と協議する事項を見ればわかりますが、ずいぶん私もしるしをつけましたけれども非常に多いわけですね。一々これは大蔵大臣と相談をしなければならぬという事項になるものですから、担当でなければやむを得ませんから、次に進みたいと思います。  次の二号の問題なんですが、これは漁業協同組合あるいはまた農業協同組合あるいはまた中小企業協同組合、この構成員に資金の転貸をする、こういう内容なわけです。あとの方に業務の委託、二十三条に「協会は、主務大臣の認可を受けて、金融機関に対し、前条第百万から第三号までに掲げる業務の一部を委託することができる。」前回この質疑の中で、金融機関という解釈の中には漁業協同組合も企業協同組合も農業協同組合も入るのだ、しかし法の立て方からすれば、組合の転貸というものをはっきり第二号で規定されておるわけですから、あとの方の二十三条の金融機関という金融機関の概念の中には、これらの組合は含まれないものと解釈をされる、そういう前提でこの二十三条の法文が立てられておると私は理解するのですが、いかがですか。
  92. 林田悠紀夫

    林田説明員 先生のおっしゃる通りでございます。
  93. 岡田利春

    岡田(利)委員 では二十二条の一号に関して質問をいたしたいと思うわけです。これはずいぶん前回も論争したところでありますが、特に先ほど申し上げました通りボーダー・ラインの層が非常に多いわけです。従って生活資金という問題がきわめて大きなウエートを持ってくると思います。今回出された「業務方法書の主要規定見込事項」として、生活資金の条項がずっと一から五までについて書かれておるわけなんですね。特にこの貸付対象資金の中で、修学資金については無利子ということで、あとは大体更生資金の金利見合い分の三分で貸付をするということになっておるわけです。しかし私の持っておる資料から判断をいたしますと、今日ただ資金を貸してそこで生活が立ち直り安定するという、こういうわけにはなかなか参らない階層が非常に多いと思うのです。そのためにはもちろん漁船を作ったりあるいはまた漁具を購入するとか、いろいろ漁業関係の方の職業転換やその方面に関する生活の安定も考えられますけれども、しかしこの職業分布が非常に広範であって、全部がその方で吸収されるなんということはとうてい判断できないと思うわけです。そうすると技能修得、あるいはまた技能修得のための期間に対する措置というものが非常に大きい問題であるし、最近特に中高年令層が非常に多くなってきているわけですから、今度釧路、根室あたりが五〇%以上を占めておる。釧路には国立の職業訓練所もできる。すでに今年度着工して来年度から開設をする。あるいはまた北海道庁でも道立の職業訓練所があるわけです。そうするとここにおるよりも技能さえ身につければ、ほかに行ってそこで生活の安定をはかりたい。こういう人も出てくると思うのです。しかし現状職業訓練所に入って、生活はまた生活で別にして、自分は出かけていって職業訓練所に入って技能を修得して就職をする。そういうことはこれは非常に困難な問題なわけです。今回炭鉱の合理化によって炭鉱の離職者に対しては、特にこの職業訓練手当やあるいはまた生活保障、別居手当等が考えられておるわけなのですが、少なくとも戦後抑留され帰ってきた。帰ってきても漁業はできない。そうして単純労働者や零細な職業でもって甘んじておる。この資金が有効に出されて、生活が立ち直りできることを期待しているという階層が多いわけですから、そういう意味で当然職業訓練所に入って職業転換をする、こういうような場合には国の産業政策、雇用政策からいっても、あるいはまた各産業への積極的な吸収等を考える場合、大きい見地からいっても、その面については最大の措置をすべきではないか。もちろん資金量の関係はあります。それを計画的にやっていくということが非常に大切な問題ではないか。そうするとこれらの資金は単に三分で貸付をする。三分の利子で借りてそれを返せるなんということは私は出てこないと思う。これは残念ながら資料がまだ的確に把握されていないわけです。そういう点で大蔵省もなかなか利子を取る方に頭が働くのではないかと思うのですが、そういう面が出てくれば、当然その点についての補助金的な手当、生活保障の手当とか、あるいは補助金的たものを出すということが考えられなければ、この法案は生きてこないと思うわけです。この点についても大蔵省の考え方はいかがですか。   〔草野委員長代理退席、堀内委員   長代理着席〕
  94. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 ただいま御質問になりました点でございますが、補助金を考える余地はないかということでございますけれども、先ほどお話に出ました十億円の交付を決定いたします際に、七億五千が一応のめどといたしまして漁業権補償額に相応する額、あとの二億五千が啓蒙宣伝その他一般事業費というようなことで積算をしたというようなお話が出たわけであります。その二億五千の六分利回りといたしまして大体年間千五百万というものを、事業費並びに管理費として事務的には試算いたしたものというようなことがございまして、補助金というようなものをそのほかにまたさらに考えるといったようなことは、今のところ考えておりません。
  95. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし大蔵省はきわめて事務的に明快に答弁をしておるのですが、まだこの引揚者の生活の実態やそういうものが的確につかまれてないですね。的確につかまれてないということはあなたも御存じでしょう。しかも四島にいて漁業をやっていて、うちも船も全部置いて抑留されて、樺太経由で帰ってきた人が七〇%です。そのうち漁業についている人は二五%程度よりおらないわけです。これは大体の概算見込みです。ですから、漁業をやっておって漁業権補償をされるのだけれども、漁業を営んでいない、単純労働者やそのほかの職業についている人が非常に多いわけです。ボーダー・ラインの人が非常に多いわけです。所得は年間三十万円以下の人が九〇%です。十五万円以下の人というのが大半を占めているわけです。そうすると、漁業補償ということを考えられて、十億円の国債交付されるのだけれども、その人間は漁業もできない。全国の方から金を借りて漁業をやるということもなかなかできない。だからこの際、自分は漁業はできぬから職業転換その他を考えて、長期にわたる生活の安定をはかろう、こういう人が多数おることはこの事実から見ても私は想定がつくと思うのです。せっかく十億を出すわけなんですから、そのことによってやはり数多くのものの生活が安定しなければならぬわけです。その趣旨からいって意味がないわけです。そうすると、家族がおるのに職場訓練所に入る。遠いところもあります。根室から釧路の職業訓練所に入る。そうするとこの資金を三分の利子で借りて、自分で半年間教育を受けて、それから仕事につくといっても、とてもできるものではないですね。ですからそういう面で、あなたは明快に言われておりますけれども、実態も明らかでないわけですから、大蔵省は単に大蔵省の立場だけで、そういうことは考えてないと言われますけれども、そういう考えはむしろ業務の運営に重大な支障を来たすのではないか。この実態が明らかになれば、これは協会からもいろいろな積極的な話し合いも持たれるでしょう。そういうことに対してできるだけ理解をしてやるという態度でなければならぬと思う。そういうことがすでに想定されるわけなんですから、そういう点については十分協議をして、大蔵省としても業務方法書を作る場合に考慮を払っていく、こういう態度があってしかるべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  96. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 お話のような事情は多々あると存ずる次第でございますけれども、   〔堀内委員長代理退席、草野委員長代理着席〕 今回の十億円の交付の趣旨でございますが、そういった事情を総合的に勘案いたしまして、ほかにいろいろな補助——個々的に補助金を出しますとか、見舞金を出しますとかいったようなことは考えずに、とにかく全体として総合的に十億円の交付を決定いたしたのでありまして、ただいまのところそういった別のことは考えていないわけです。
  97. 岡田利春

    岡田(利)委員 あなたは別のことを考えてないと言うけれども、実態がまだ解明されてない面もある。それはあなたもお認めでしょう。実態を正確に資料としてつかんでおる、こういうことをあなたは断言できないと思う。ないのですから、われわれが要求してもその資料が出てこないのです。しかも大体の階層としては、今言ったように非常に零細化しているということもはっきり想定がつくわけです。しかしどの程度かということははっきりしないわけです。想定は一応つくわけです。そうすると当然考えていないということだけでは済まされない問題だと思うのです。北方協会を作って国債を十億やるわけですから、しかも十年間かかるわけでしょう。六千万でしょう。しかしながら金を出すということは、その漁業権を持っておった人、あるいは旧島民の人の生活が安定できて、日本の産業、経済に寄与でき、しかも民生の安定の面にも寄与していくことができるということになれば、国としても望ましいわけですね。そういう面はこの趣旨からいって、対象は一万数千に限られておるのでありますから、当然その点については積極的に考えていくべきではないか、理解の態度を示していくべきではないかと思うのですが、長官、このことは無理でしょうか。
  98. 小平久雄

    小平政府委員 ただいまこの法案を御提案申し上げて御審議願っておるこの際においての大蔵省の考えというものは、私は一応やむを得ないものと考えます。ただ岡田委員も御指摘のように、旧島民の現在の生活の実態等も必ずしもまだ正確にとらえられておるわけでもございません。そこで今回出します十億といろ交付公債でありますが、本来の性格が補償とかあるいは見舞、手当といったような考え方ではなくして、生活の援助資金と申しますか、基金とでも申しますか、そういう関係でありますから、これを手当なり見舞なりとしてやりっぱなしと申しますか、くれっぱなしというか、そういうことは少なくも考えられないのではないかと思います。しかし三分の金利という点につきましては、これも先ほど冒頭に申します通り、この出発早々からこれがいいのだと言い切るわけにも大蔵省の都合からいえばいかないと思いますが、この金利の点等につきましては、実態に即して将来十分検討してしかるべきものであろう、私はかように考えております。
  99. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の答弁でも不満足ですが、長官の誠意ある答弁でその点は一応了といたしまして、生活資金の貸付の中に一応事例が列記されて、等がついておるわけでありますが、たとえば住宅資金となるとだいぶかさんで、十万円以内で解決できぬ問題です。たとえば追い立てを食って自分の住むうちもない場合に、最低の生活を営むうちを建てる場合に該当するかどうか、あるいはまた住宅があるのだけれども、零細化してうちを直すこともできないといううちの補修、あるいはまた零細な店舗があるのだけれどもその改修をしたいというときにこの中に入るのか、こういう点についてお伺いをしておきたいと思います。あるいはまたうちが八畳一間でどうしてももう一間ほしい、増築をするというような場合に該当するがどうか。それから十万円以内ということがここに一応出ておるわけです。私は初めのうちはやむを得ぬと思うのですが、資金量が多くなってくるわけですから、この十万円というものは今言った内容を消化するとすれば、考慮さるべきではないかと理解をしますが、これはいかがでしょうか。大蔵省でもいいし、総理府でもいいのですが……。
  100. 大竹民陟

    大竹政府委員 ただいまの中で店舗の補修というようなことでございますと、一部事業資金にも当たる面もあります。そういう面から可能だと考えております。簡単な住宅の補修、これも生活の援助という面から可能だと思います。なお住宅を新しく建てます際の資金の貸付、そういう点につきましては現在まだ検討中でございまして、今の段階ではむしろ資金の量その他から申しまして困難ではないかと考えております。増築も規模によるかと思いますが、まだその辺ははっきりきめておりません。
  101. 岡田利春

    岡田(利)委員 資金の十万円は、当初は資金量が少ないわけですから理解できるのですが、そういう点でいきますと若干資金が余る場合が想定されますね。ですから将来資金量が三年、五年とたって潤沢になれば、その限度に固執するものではないと理解してよろしゅうございますか。これは大蔵省、いかがですか。
  102. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 その点につきましては、将来貸付金の償還金の状況などによりまして、全体の資金量がふえて参りますような事態になりますれば、そのときはまたそのときで、今の考えをそのままずっと固執するのだということは必要ないと思います。そのときはそのときにまた考える。
  103. 岡田利春

    岡田(利)委員 これは事業計画から業務方法書から全部大蔵大臣と主務大臣が協議して認可をするわけですから、そういう点で特に考慮を払うように将来お願いをしたいと思うわけです。それから事業資金関係ですが、事業資金関係については、金利は中長期五分、短期日歩二銭程度ということになっておるわけです。そこでこの場合据置期間とか、あるいはまた一応原則は五分とか二銭五厘でありますけれども、将来の事業計画等にあたって、こういう点についてはケースがいろいろ出て参りますから、そういう場合には一応原則として、ある程度弾力性を持って運用する考え方があるかどうか。据置期間というものは、大体全部据置期間を考えるのではなくして、その問題々々、ケース・バイ・ケースにおいてそういう点も考えて、弾力的に運用する考え方があるかどうか、この点については大蔵省はいかがですか。
  104. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 その点もやはり将来の資金の状況によりまして考えて差しつかえないと思います。
  105. 岡田利春

    岡田(利)委員 前回には、内地漁業補償については、当初五年を二年に繰り上げ償還をしたこともあるわけです。大体今回の措置の性格等から考えても、できるだけ繰り上げ償還をされた方が望ましいと思いますし、その点について私は前の長官見解もただしたわけです。藤枝長官は、私の意欲的にやるかという質問に対しては、意欲的とかそういう問題は別にして、誠意を持ってそういう点についても私は考えていきます、こういう明確な態度が表明されたわけですが、小平長官もその点については趣旨は変わりがないかどうか、また大蔵省としてはどう考えておるか、お聞きしたいと思います。
  106. 小平久雄

    小平政府委員 前長官がさように答弁したことも承知いたしておりますから、それを踏襲します。
  107. 稻村光一

    ○稻村説明員 ただいまの交付国債の繰り上げ償還の問題でございますが、現地の段階といたしましては、これはいわば北方協会一つの基金でございますので、その趣旨からいたしまして、繰り上げ償還ということは適当でないというふうに考えております。しかし将来の問題は、これまたそのときの状況でございますが、この国債交付ということに対しましては、制度の趣旨からいたしまして、繰り上げ償還ということは現在のところでは適当でないというふうに考えております。
  108. 岡田利春

    岡田(利)委員 現在すぐやるのであったら、初めから現金を出せばいいのですから、そういう答弁はけっこうなんですが、そういう点について、これから一応十年間の期間があるのですから、十分考慮を払ってもらいたいと思うわけです。  次に事務的なことになりますけれども、北方協会の設立委員がこの法案が通ると任命されるわけです。これは非常に階層分布があるわけですから、設立委員については、そういう面を考えて任命するという考え方があるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  109. 小平久雄

    小平政府委員 設立委員は、言うまでもなくその主要な任務が定款の作成等でございます。そこで法案上はこれを何人にするかという規定は別段ございません。しかし設立委員が将来の運営についても大体関与をいたしていくような方向で、人選する方が適当ではなかろうかと考えております。従って具体的に申しますと、評議員であるとか、あるいは役員であるとか、関係の役所の者であるとか、とういった者の中から、大体ただいまのところでは十五名前後くらいの者を任命したらどうだろう、かように考えております。
  110. 岡田利春

    岡田(利)委員 新聞辞令でありますけれども、会長については北海道知事の町村金五氏を予定しておる。主務大臣である農林大臣河野氏も、それから池田総理大臣も、町村さんが一番いいのではないかというようなことがちまたに流布され、新聞辞令にも出ておるわけです。われわれもこれにはもちろん反対する理由はなく、大体これが常識だと思いますが、前の委員会でも与党の委員から質問されておりますが、大体そのように理解してよろしいのですか。
  111. 小平久雄

    小平政府委員 まだ具体的な人選には入っておりません。しかし北方協会の性格あるいはその事業、あるいは旧漁業権者等、これらの点を考えますれば、最も関係の深い、またこれらの事業をやっていく上において適切な立場にある人、こういう人を会長として将来選んで参りたい、かように考えております。
  112. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は、今長官の言われた趣旨からいうと、立場は違いますが、町村知事が非常に適任だと思います。しかし今度社会党の知事が北海道にできたからといって、これは適任じゃないということになると問題ですが、これからの事業の面で経費が要るという面からいって、知事が一番いいのではないかと思います。しかしそれがたまたま自民党の知事だからいい、社会党の知事ではだめだということになると、ちょっと問題ではないかと思っております。  それから事務所の問題ですが、前回の私の質問に対して、主たる事務所は札幌で、従たる事務所を設ける。その従たる事務所はどこに設けるかということに対して、根室の場合には大体五〇%近い人がいるから、根室に設ける、そしてこれは支所という名称だと私に答えております。分布状況で申しますと、根室、釧路、渡島、その次くらいの富山というところに七%くらいの人がおります。当初は、私の聞いたところでは、根室と富山に従たる事務所を作るということを聞いておったこともありますが、この事務所関係は経費の面からいっても、六千万円のうち一千万円も一年にかかる、そういう面から、できるだけ経費の節約ということを考えていかなければならない。そういろ面から考えていくと、支所それから連絡員を置くということの答弁が出ておりますが、これらの配置は、場所的に大体どういうところを想定しておられますか。
  113. 大竹民陟

    大竹政府委員 御注意がございましたように、経費の点もありますので、なるべく簡略な姿でこれを実施して参りたいという考えで検討中でございまして、ここがきまったというふうなことを申し上げる段階ではなくて、むしろ今後実際の業務にあたって一番経費が安く、かつ便利なところということで、地元の関係者と話し合いを進めるべきものであるというふうに考えております。事務所というような大げさな組織を持ちませんでも、連絡員というものを必要な地域に置きますとか、あるいは先ほどお話に上りました組合あたりに業務を委託しまして、そういう形でやっていきたいというように考えております。
  114. 岡田利春

    岡田(利)委員 私も事務所としては大体根室でいいのではないか、あと北海道は非常に広大な地域で、渡島と根室とでは端と端、札幌から函館まででも急行で六時間も七時間もかかる、そういう面からいって連絡員の配置ということが、二義的に考えられるのではないかと思いますので、特にその点を配慮していただきたいと思います。  そこで経費が年間大体一千万円かかる、こう一応説明されておるのですが、この詳しい内訳は出ないでしょうけれども、大体この内訳はどうですか、人件費、事務費、それからそれ以外の秘書とか連絡員、そういう関係等を考えて……。あるいはまた代理貸付、転貸の場合に、金融機関に委託した場合に、手数料を払うという問題も出てくるわけですね。これは別途なもので経費の中に含まれていないと思うのですが、そういうような見通しの点についてどうなのか、こまかい点になりますけれどもお伺いしておきたいと思うわけです。
  115. 大竹民陟

    大竹政府委員 一千万円ということで考えておりますけれども、その趣旨も資金の全体の量に見合いまして、なるべく少額で済ませたいということでございます。具体的に何人、人を置いてどこに事務所を設けて、あるいは委託のための経費を幾らにするかということは、目下検討中でございまして、実はできますならば初年度あたりは、一千万円よりもさらに縮小したものでやっていきたいというふうに考慮いたしております。
  116. 岡田利春

    岡田(利)委員 初年度はこれは法案通りまして、設立委員が任命されて協会ができて、業務方針、事業計画を出して認可申請を出して、これが具体化する。しかしこれは逆ざやですから、おそらく来年の七月前後でなければ金は北方協会に六千万が出ないと思うわけですね。しかし業務は大体半年間近く行なわなければならないわけです。だから資金の借り入れという問題が初めから想定されているわけです。これは一体どうなのか。それから初年度六千万、しかもその次年度また六千万、三年度目六千万ということで、六千万ずつ逆ざやで出されてくるわけなんですね。ですからせっかく協会ができても、これから一年ないし二年ぐらいの間は、あまり大したことがやれぬということになるわけです。一時借り入れについては法文上きびしい規定もありますし、前回十億の国債交付したのだから、これを担保に入れて当面多くの人々の期待にこたえる最小限度の事業をしていくということが積極的に望ましいのではないかということで、この論争ははっきりしないままに終わっておるわけなんです。これらの点についての見解を伺っておきたいと思うわけです。それから借り入れ資金等についての大蔵省のお考えも、あわせてお聞きしておきたいと思います。
  117. 大竹民陟

    大竹政府委員 この国会でこれが成立いたしました後の取り運びについてでございますけれども、一番関係が深いのは北海道庁でございますので、北海道庁あたりの意見を十分聞きまして、具体的な計画の進め方を検討いたしておるのでございます。先ほどお話にございましたように、資金需要がなお詳細に調べなければ十分判明しないというふうな問題もございます。なるべく早く設立手続はやらなければならぬと思いますが、それらの調査をいたしまして、なるべく資金がこの法律の趣旨に従って運用されますように、具体的な計画を地について立てますためには、なお若干の調査期間と申しますか、そういうものが必要であるということであります。ただいま大体初年度と申しますか、来年の三月の終わりごろまでの間に、事務費として一応五百万円程度のものが要るのではないかと思っております。来年度になりましたならば、最初の利子の交付があるわけでございますから、それに従ってだんだん必要なところから手をつけていきたいというふうに考えております。初年度の借入金といたしましては、大体今申しましたような五百万円程度というふうなことが、現在の事情におきましては話題に上っておるというような格好になっております。
  118. 岡田利春

    岡田(利)委員 大蔵省どうですか。初年度資金について……。
  119. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 大体今局長から申された通りだと思います。
  120. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただ初めは資金を借り入れることははっきりしておるわけですね。この協会ができましても、金は来年の七月ごろでなければ来ぬわけでしょう。ですからこれは借り入れることははっきりしておるわけですよ。そうすればこれは六分で借りたり七分二厘で借りたのでは話にならぬと思うのです。前にも、低利で誠意を持ってやるという答弁をされておるわけです。これは金の問題になると、なかなか総理府は弱い。そういう点については大蔵省はどういう考えですか。どちらからでもいいです。
  121. 大竹民陟

    大竹政府委員 初年度からなるべく地についた大量の仕事をしていきたい。またそういうことがこの法律の趣旨でもあるわけでございます。先ほど大蔵省側からもお話のございましたように、ただいまの考えといたしましては、繰り上げ償還というふうなことも考えの中には入っておりません。しかしながら先ほどお話のございましたように、そのときになればまたその事情によって検討していきたいというふうなことでございます。私どももそういう気持でやっていきたいというふうに考えております。
  122. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の問題はけっこうなんですが、資金の問題ですね。借り入れするわけでしょう。そうするとこれはただでは借り入れできないわけでしょう。たとえば資金運用部資金から出すとか、いろいろあるでしょう。必ず貸さなければいかぬでしょう。はっきりしておるでしょう。これは既成の事実ですよ。その運用をどうするかということですよ。いかがですか。これは貸さなければ作っても何にもならぬです。業務できぬですよ。よそから借りてこいというのか、銀行から借り入れろというのか、どういう考えですか。
  123. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 当初資金需要のために、一応建前といたしまして、一時借入金ということをただいまお話しでございましたが、もちろん考えておるわけでございます。それ以外に財源がないわけでございますが、それをどこから借りるということにつきましてただいま検討いたしております。今資金運用部というお話も出たわけでございますが、その点については一応今のところ考えておりません。なお国債の利子の問題が一応ございますけれども、利子は大体普通一回でございますが、この北方協会につきましては、特にそういった金繰りの問題を勘案いたしまして、年二回にするということにいたしております。
  124. 岡田利春

    岡田(利)委員 大体いいですが、資金はどこから出てもいいわけですね。しかし普通資金を貸し付けるということになると、これはやはりどうも法案の趣旨からいっても、せっかくこういう措置をとりながら、逆ざやですから、初めの資金を借り入れることははっきりしておる。それが六分だというのでは、これは話にならぬじゃないかと私は思うのです。この金利の面についてはどうですか。資金は大体事業計画ができて認可を出して、それはどこから出るかわからぬけれども、しかし金利の問題あたりは、当然この法案ができたときにある程度もう想定しておかなければならぬ問題だと思いますが、いかがですか。めどがありませんか。
  125. 小平久雄

    小平政府委員 御指摘のように、借入金で当面まかなっていかなければならぬという事態でございますから、一般の金融機関等から借入金をして、それを資金として今回のこの本法に定むる貸し出しをしていくということになりますと、御指摘の通り逆ざやでありまして、おそらく相当の出費を要するということになろうと思います。そこで先ほど大蔵省の方から、一般の場合には国債の支払いが年一回であるが、今回本件については特に二回にというお話がございました。それらあわせて考えますと、私はいずれにしても根本的にはなるべく早くこの国債の利子を払い出してもらう、払ってもらうということが、やはり根本的な望ましい姿ではないかと思います。もちろんそれにはいろいろ法規上その他の制約があると思いますが、それらの点については今後大蔵省とも話し合いをいたしまして、なるべく早く国債の金利を払ってもらう。従って逆ざやにならぬで貸し出しができるように、こういう方向に一日も早く持っていくことが先決ではないか、かように考えております。
  126. 岡田利春

    岡田(利)委員 長官のせっかくの誠意と努力を期待したいと思います。特に今年度はすでに補正予算にも組まれていないわけですから、二回にわたって十二月にも出っこないわけですね。来年度予算でこれをするということ以外にないわけですね。そうすると来年度二回やるならば、九千万の利子を予算上計上しなければならぬということが出てくるわけでしょう。その点は今大蔵省の人が言明されましたので、特に私はそのことに期待したいと思います。当面の借り入れ資金の対策については、十分配慮を願いたいと思います。それから今の答弁を総括すると、国債の担保なんということは考えられない、こういう理解でよろしいですか。交付された国債を担保にして将来金を借りることは考えられない、こう理解してよろしいでしょうか。
  127. 稻村光一

    ○稻村説明員 国債を担保にいたしますということは法律上禁止しておりませんし、事実問題としまして、国債を担保にいたすということは可能でございます。ですからそういう意味で当初の乗り切りをどうするかという点に関しましては、先ほど赤羽主計官からも申し上げましたが、私どもは大体普通の交付公債は年に一回というのが利払いの普通の例でございますが、今回は特別に年二回ということを考えておりまして、それまでたとえばつなぎといたしまして、国債を担保にして借りるということも法律上は可能でございます。あと北方協会でそういうことをされるかどうかという問題でございます。たとえばいつごろできますか、これが成立いたしますと、たとえば十月の末に成立するといたしますと、来年の五月ぐらいには第一回目の利払いが可能となるだろうと思います。
  128. 岡田利春

    岡田(利)委員 法律的には国債を担保にするということは可能なんですが、将来事業計画を組むと、事業計画を認めるか認めないか別だということになるわけですね。そういう解釈なわけですか。
  129. 稻村光一

    ○稻村説明員 私が申し上げましたのは、法律上で可能だけれども、あとは行政上押える、そういう意味ではございません。これは国債交付を受けました北方協会として、担保にするかしないかという決定をいたすかどうかという意味で申し上げました。私の方は担保としてはいかぬということは申しておらないわけであります。
  130. 岡田利春

    岡田(利)委員 時間もおそくなりましたから、もう一点か二点でやめますが、もう一つ先ほどのに関連して業務取り扱いがいろいろ考えられてきたのですね。先ほど言われたように協同組合でも考えておるとか、いろいろ言われるのですが、特に北海道のような場合ですと、市町村単位くらいでやらなければ、別海村一つで、これは香川県くらいの広さがあるのですからね。だから受益者の利便を考えると、分布が非常にまばらですから、市町村単位くらいで考えなければ北海道の場合は無理だと思うのです。そういう点は前回も質問されておるのですが、特にそういう単位くらいで、これに固定するということは要求しませんけれども、そういうことを一応筋にして考えないと、なかなか受益者側が、利用側が土地が非常に広大ですから困ると思うのです。だからそういうような点は、そういうことで要請になりますが、もしそういうことを考えておるというならばけっこうな話なんですが、この点はどうなんですか。
  131. 大竹民陟

    大竹政府委員 おっしゃいましたよらな実情もあろうかと思いますので、実際の業務に支障を来たさないように北海道側と申しますか、今後できますものとも十分相談をいたしたいと思います。
  132. 岡田利春

    岡田(利)委員 この際特に長官一つ要請しておきたいと思うんですが、最近陳情も出ておるのですが、北方地域の季節労務者の問題なんですが、これは大体千島関係の季節労務者というのは、長い間、十数年にわたって継続的に季節労務者として行って、そこで得た収入によって生活をしておる。家族は北海道におったり、あるいはどこかよそに住んでおる。内地府県にもおる。しかも当時何年も抑留されて樺太経由で帰った。この人たちに対する引揚援護法に基づく給付がなされていなくて、最近いろいろ関係方面の御理解を得て解決の方向に向かっておるわけなんですが、これは国後択捉だけでも四、五百人おるのじゃないかと思うのです。さらにウルップ以北の島々にも季節労務者がおったわけです。この点は理解を得ておることを非常にありがたく思っているわけですが、この点について特に早急に問題解決のために、理解ある態度を示していただきたい。これは単なる季節労務者とは違って、北方関係を歴史的に調査すればすぐわかることであり、しかも抑留をされておるのですから、その者が放置されておったという実態だったわけです。この点特に御配慮をお願い申し上げたいと思います。  なお、北方領土の問題あるいは安全操業の問題については非常に不明確でありますが、これはまた別な方で、わが党の予算委員、あるいはまた別な方で、また外務委員会かであらためてお伺いすることにして、以上で私の質問を終わることにいたしたいと思います。
  133. 草野一郎平

    草野委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十七分散会