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1961-10-24 第39回国会 衆議院 地方行政委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月二十四日(火曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 金子 岩三君 理事 纐纈 彌三君    理事 高田 富與君 理事 渡海元三郎君    理事 丹羽喬四郎君 理事 太田 一夫君    理事 川村 継義君 理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    宇野 宗佑君       小澤 太郎君    大沢 雄一君       大竹 作摩君    亀岡 高夫君       久保田円次君    田川 誠一君       津島 文治君    富田 健治君       安宅 常彦君    佐野 憲治君       二宮 武夫君    松井  誠君       門司  亮君  出席国務大臣         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         建設事務官         (大臣官房長) 鬼丸 勝之君         自治政務次官  大上  司君         自治事務官         (行政局長)  藤井 貞夫君         自治事務官         (財政局長)  奥野 誠亮君         消防庁次長   川合  武君 委員外出席者         総理府技官         (経済企画庁総         合開発局総合開         発課長)    八塚 陽介君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         厚生事務官         (社会局施設課         長)      瀬戸新太郎君         建 設 技 官         (河川局防災課         長)      畑谷 正実君         自治事務官         (行政局行政課         長)      岸   昌君         自治事務官         (財政局財政課         長)      松島 五郎君         専  門  員 圓地与四松君     ————————————— 十月二十四日  委員亀岡高夫君辞任につき、その補欠として綱  島正興君が議長指名委員に選任された。 同日  委員綱島正興辞任につき、その補欠として亀  岡高夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 十月二十三日  国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する  請願二階堂進紹介)(第六〇五号)  同(門司亮紹介)(第七三四号)  同(伊藤幟紹介)(第七八一号)  同(丹羽兵助紹介)(第七八二号)  全日制市町村立高等学校教職員退職手当全国  通算に関する請願田中伊三次君紹介)(第八  六〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  災害対策基本法案内閣提出第四九号)  地方自治法の一部を改正する法律案内閣提出  第四〇号)(参議院送付)  地方自治法の一部を改正する法律案川村継義  君外二名提出衆法第五号)      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出地方自治法の一部を改正する法律案並び川村継義君外二名提出地方自治法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますのでこれを許します。松井誠
  3. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、政府提出されました地方自治法の一部改正案の中で、地方公共団体議会議員、長その他の兼職禁止規定該当するかどうかということを決定する手続を整備されたことにつきまして、それに関連をいたしまして、法律的な点一点だけを実はお伺いいたしたいと思うわけでございます。  その前に、この法律の実際の運用ということについて、やはり一言だけお尋ねをしておかなければならないわけですが、これはもう繰り返し質問されておることでもあり、参議院でもやはり同じ観点から質問がありましたので、非常に重複して恐縮ですけれども、この規定ほんとうの生命というものがそこにあると思いますのでお伺いをいたしたいと思うのです。  これは、いわばざる法の典型的なものだといわれておるわけですけれども、この兼職禁止規定ざる法でなくなるような、そういう結果をもたらすために、現行法のこの規定範囲で、その解釈運用によって、ざる法だという汚名を返上できるような解釈あるいは運用の方法というものが考えられないかどうか、まず行政局長お尋ねをいたします。
  4. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 請負禁止規定運用等につきまして、従来までいろいろ問題があったことは事実でございます。ただ、この規定は長い沿革を持っておるものでありまして、その間、解釈運用あるいは行政実例行政判例等においてだんだんと積み重なったものができ上がっておるわけでございます。ところが、現行法建前では、請負禁止規定該当いたしました際には、議員失職をするということが法律上はっきりいたしておりますけれども、これを決定をする機関というものが明白でございません。ただ単に、請負禁止規定該当すれば当然に失職するのだという建前に今なっておるわけであります。これは建前自体は、一見非常に割り切ってはっきりしておるようでございますけれども、その時点をどこに置くか、そもそも禁止条項該当するかどうかということの客観的事実というものが明白であるかどうかというようなことがございまして、運用上どうもうまくいってない面があることは御指摘の通りでございます。そこで、たとえば請負禁止規定該当しておるというようなことがございました場合におきましても、実際の措置としては、本人が自発的に辞職の手続をとられる、あるいは事実上自分はもう失職したのだから、それでもってもう議会には出てこないというようなことをされるということ、あるいはそういうことはほとんど期待もできませんので、議長の方で認定をいたしまして、議員が欠員を生じたということについての通知を選挙管理委員会に対して出すということ、あるいは今度は、知事なり市町村長側が、当該議員失職したということで、議員でなくなったのですから、報酬というものはもう支払わなくていいということで、報酬停止通告をし、措置をとる。そういうようなことが実際問題として行なわれてきておったのであります。しかし、このことは非常に運用上も明確でない部面もございます。そこで、事実上最近ございました事例では、議会でもって禁止条項該当したということの決議をしようというようなことになりまして、これが相当争いの種になって、一票の差で認定を受けたというようなこともございます。これは元来、議会決定機関であるというふうには書いておりませんので、もともと無権限なことをやったということになるのですけれども、そういったことでいろいろ問題が多いのであります。またそのために、今お話が出ておりましたようなざる法的な結果になっておる面が絶無とは言いがたいということもございます。そこでこの際、決定機関というものをはっきりいたしまして、責任を持ってやらしていくという建前にいたしますることが、事柄を明確にもいたしまするし、この規定が実際に実効を上げることを保証いたしますための措置として適切ではないか、かように考えまして本改正案を提案いたしたような次第であります。
  5. 松井誠

    松井(誠)委員 私のお伺いをいたしましたのは、この改正案に触れることではなくて、現行法のままで、その運用解釈によって、ざる法汚名をそそぐことができるのじゃないかということをお尋ねしたわけでありまして、現行法では、なるほどそういう認定機関というものを欠いておる、それも確かにざる法だということの一つ原因にはなっておるでしょうけれども、むしろ主たる原因は、そういう認定機関を欠いておったということではなくて、あの条文にありますように、取締役云々に準ずべき者というその「準ずべき者、」という解釈、あるいは主として同一云々というあの条文の「主として」という解釈、そういう解釈の結果、むしろざる法というそういう形になってしまうのじゃないのかということを実はお伺いをしたかったわけなんです。そこで、その「準ずべき者、」ということについて、今まで何度もほかの機会に御答弁をいただいておりますけれども、もう一度それをお伺いをいたしたいと思います。
  6. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 九十二条の二に、「主として同一の行為をする法人の無限責任社員取締役若しくは監査役若しくはこれらに準ずべき者、支配人及び清算人」こういう書き方をいたしておるのであります。問題は、「これらに準ずべき者、」ということでございますが、この「準ずべき者、」というのは、ここに列挙いたしておりまする無限責任社員とか取締役とか監査役とかあるいは支配人清算人というような名前に限定されずに、名前はこれ以外の名前でありましても、実質的にその影響力支配力がこれらの掲げられた名称にある者と同等の力を持っておる者、こういうふうに解釈され、現在まできておる次第でございます。
  7. 松井誠

    松井(誠)委員 そうしますと、取締役その他のそういう名称ではなくとも、実質的にそれと同じような支配力を持っておる者ということになりますと、たとえば参与だとか顧問だとかいうそういう名称さえも一切なくて、しかし事実上役員と同じような支配力を持つ、影響力を持つ、そういう者を該当するというように解釈してよろしいのですか。
  8. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そうではございませんで、やはり役職名前というもの、それがここに列挙してある以外の者でも同等の力を持っておる者、こういう意味でございます。おそらくお考えになっておられることは、実質役職につかないで、裏にあってと申しますか、全然役職につかずに事実上の支配力を持っておる者も入るのではないかという点ではないかと思いますが、そういう点はこの法律解釈上としては、それは無理だろうということであります。
  9. 松井誠

    松井(誠)委員 私はそれが無理だという理由がよくわからない。今のお話のように、参与とか顧問とか、ともかく何でもいいから名前さえついておれば、それが実質的に役員と同じような影響力を持てばそれでいいのだというところにいきますならば、何も参与とか顧問とかそういう名称はなくても、実質的に影響力役員と同じ程度にあるということならば、これに準ずべきものに含ませ得ないという根拠は別にないと私は思う。この日本語の準ずべき者というものが参与とか顧問とかそういう名称のいかんにかかわらずというところまで広げるならば、そういう名称は必ず必要なのだ、何かのポスト形式的に必要なのだという、そういう限定をしなければならない理由はないと思う。なぜ一体形式的なポストというものがどうしても前提にならなければならないのか、この準ずべき者という日本語解釈として、一体そういうふうに考えなければならないのかよくわからないのですが、あらためてお伺いしたい。
  10. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 準ずべき者という書き方で、その前に無限責任社員取締役監査役もしくはこれに準ずべき者という書き方をいたしております。従いまして、その名称はこれにとらわれないけれども、やはり役職についておるということは、この法文規定解釈上は当然出てくるものであり、これは従来長い間にわたってそういうような方向でもってことが解釈され・運用されて参っておるのであります。むろん今お話しになりましたような点は、立法政策として一つ問題点はあると思います。ただ現在のところ、そこまで私たちとしては踏み切っておりません。またそのことによって乱用に陥るということになりましても、この点は困るわけでございますので、それらの点をにらみ合わせながら、なるほど検討事項だと思いますけれども、それは立法論の問題であり、かりにここに法文に明記をいたしまするとすれば、今御指摘のようなものが入り得るということになるためには、法文解釈だけではなくて、この規定について改正を加えて事実上の支配力を持つ者、実質的な支配力を持つ者というような規定表現にしないと、現行法解釈としては無理だという意味でございます。
  11. 松井誠

    松井(誠)委員 事実上の支配力を持つかどうかという認定は、それは確かに非常にむずかしい、従って立証は非常に困難だ。そういう意味で、実際の問題としては単なるこれまた訓示的な規定にとどまるという結果にあるいはなるかもしれない。しかし、そういうものも含ませるという態度をとることによって、実はこれがこういう現象を予防するという、そういう効果を私はあらかじめ期待することができるのじゃないか、私は現行法解釈でも準ずべき者ということを、今局長の言われたように解釈しなければならない必然性は別にないと思います。しかし、もしどうしてもそういう解釈しかできないということならば、実は私は今お尋ねをしようと思ったんですけれども、立法論としてそういうことを真剣にお考えになる必要があるのじゃないか、もしこの規定というものを単に一種の、何かアクセサリーのように考えて、だれかのお義理に出したということでなくて、ほんとう地方政治を明るくするために、これをほんとうに活用しようという熱意があるならば、今言ったようなことを立法論的に真剣にお考えになってしかるべきじゃないか、そういうことを考えたわけです。  それからもう一つ「主として」という解釈ですが、大体これはどういう意味にお考えになっているのですか。
  12. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 「主として」というのは、当該会社なら会社ということにいたしますと、会社業務量の五〇%以上が当該地方団体との請負によって占められているという場合をさすというふうに解釈し、運用されております。
  13. 松井誠

    松井(誠)委員 業務量というのですが、私の何か読んだ記憶では、業務量あるいは請負金額でしたか、そういうように解説があったかと思いましたけれども、業務量請負金額とは必ずしも一致するわけではございませんので、どのようにお考えになっておりますか。
  14. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 一般的に業務量と申しましたが、正確には業務量または予算と申しますか、あるいは金額ということで表現する方が正しいかと思います。
  15. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると金額の半分以上の場合だけでなくて、業務量の半分以上という場合も主としてという解釈に含まれる、そういうことですね。
  16. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 業務量というのが普通の場合は請負金額金額によって表示されるということが多かろうと思うのであります。
  17. 松井誠

    松井(誠)委員 たとえばたくさんの仕事を請け負っておる、そのうち一つ仕事は非常に金額が多いけれども、あとの仕事は非常に金額が小さい、小さい仕事は全部合わせても五〇%以下だというような場合、しかし業務量としてはやはり圧倒的に多いということは、私は幾らでもあり得ると思う。従って金額だけに限定しますと、やはりざる法というものを助長するということになると思いますので、業務量というものでもう一つ縛ることが必要なのじゃないか、そういうことを考えましたのでお伺いをしたのですが、今の私のような考え方は別に間違いではございませんね。
  18. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 業務量はやはり金額で表示されることが普通であろうというふうに考えております。ただ単に業務量という場合でございますから、単に件数あるいは物品にいたしましても、紙の枚数とかそういうことだけでこれを解釈運用することは無理なのではないかというふうに考える次第でありまして、業務量という言葉を申しましたことで誤解を招いたかと思いますが、普通の場合はやはり請負金額というものをもって判定するのが通例の場合だと思います。
  19. 松井誠

    松井(誠)委員 金額の場合には、主としてという、五〇%以上であるか以下であるかということがすぐわかるわけですけれども、業務量という場合には多少その点があいまいにはなると思う。しかし金額業務量ということにイコールで結び着けられるように考えられるならば、むしろ金額にするということがいいわけですけれども、そこでやはり金額必ずしも業務量に比例しない場合があり得るということを前提とされるから、金額または業務量というふうにされるわけではないですか。
  20. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 金額だけによるということにあまり限局して考えることも、規定精神からしていかがであろうかという意味で申し上げておるわけでありまして、普通の場合は、やはり金額というものを主体にして考えられることが普通だと思います。
  21. 松井誠

    松井(誠)委員 どうもざる法ざる法でなくするという立場からこの規定解釈すれば、私はできるだけこの禁止範囲というものが広くなるような、そういう解釈の仕方をしなければならないと思うので、先ほど来いろいろお尋ねをいたしておるわけですけれども、現行法解釈の点はそのことといたしまして、次に私がお尋ねをしたいのは、今度改正案に盛られております決定ですね、いろいろな、選管とかあるいは議会とかが請負禁止規定該当するということを決定した場合に、その効果というものは具体的にいつから発生するのかということです。その問題についてお尋ねをしたいと思います。これは長であれ、議員であれ、その他の委員であれ、全部同じだと思いますので、そして議会決定するにしろ、選管決定するにしろ同じだと思いますので、全部ひっくるめて一つお尋ねをいたしたい。
  22. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 請負禁止規定該当した事実がある日から効力は生ずるものと解釈をいたします。
  23. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、該当するという決定をするときに、いつ幾日から該当事由発生したということを必ず決定の中には書かなければならない、こういうことになるわけですか。
  24. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 書くこともございましょうし、そういう形式にとらわれないで、事実認定でもっていろいろ決定書に書きます。その際に、いついっこういう請負という事実が発生したというようなことが決定書の中に盛られて参りますので、その日をもって失職をするという効果が生ずるわけでございます。決定書様式自体の中に必ずいついつから失職するということをここでもって必ず法定をしなければならぬという趣旨ではございません。
  25. 松井誠

    松井(誠)委員 ただしかし、こういう役職失職ということは非常に影響力が大きいわけですし、従ってその日時というものは、もう疑い余地のないような形で、きちっと書かないと、決定理由を読んで初めてはっきりするというようなことでは、不適当ではないかと思いますので、少なくとも行政指導の面では、やはりいつ幾日失格事由が生じたということを、疑い余地のないような形ではっきりすることが必要だと思うのです。実は、私がお尋ねをいたしたいのは、そのように解釈をいたしますと、たとえば選管なら選管で、自治法の百四十三条、百二十七条というようなところによって被選挙権を失ったという認定をする場合、特に議員の場合に住所を変更した、当選当時は住所当該公共団体の中にあったけれども、その後住所を変更して区域外に行ったというようなことで被選挙権を失う、そういう決定をする場合に、それでは一体その住所の変更によって被選挙権がなくなったという決定効果、従って失職効果というものは、いつから生ずるのかという問題とのつり合いがあると思うのですが、その点についてはどのように考えておられるか。
  26. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 被選挙権有無決定は、決定権者決定をいたした以後、その効力は生ずるわけでございます。その点、同じ条文に今度入るわけでもございますし、効力発生の時期について二、三の取り扱いにするということは適当ではないのではないかという御疑問ではないかと思うのでありますが、その点についてお答えを申し上げておきたいと思います。被選挙権有無決定というのは、これは決定機関が従来の沿革上も全部はっきりと書いてございます。被選挙権を失えば失職をするという規定のほかに、被選挙権有無というものは決定権者決定をするのだという両面の規定が整備されまして、今日まできておるのでございます。それと、非常に形式論ではございますけれども、書き方表現様式が、被選挙権のあるなしを決定するのだ、被選挙権を失うに至ったときという書き方をしておりません、被選挙権有無決定権者決定する、こういう表現の仕方をいたしておるのであります。それがまた従来から実際に運用されてきた姿であるわけであります。ところで今度の請負禁止規定該当する場合につきましては、一つは、従来の解釈では、決定権者がありませんでしたが、その場合でも解釈といたしましては、その運用は必ずしも万全にはいって参っておりませんが、請負禁止条項該当するに至った際には失職するということになっておるのであります。そのことは、私はまた事実上本禁止規定精神から申しても適当ではないかというふうに考えておるのであります。それを決定権者を今度きめる段階になりまして、被選挙権有無との均衡論からいって、決定権者決定したときからということにいたすことが、むしろ従来の解釈運用実態から申しても適当ではないかという感じがいたします。それと、該当するに至ったときということの規定該当するに至ったかどうか、その該当する事実があったかどうかということを認定するという表現になっておりますので、私たちとしましては、九十二条の二の例をあげますと、この規定該当するに至ったかどうかということの決定権者をきめるのだけれども、その効果は、この規定該当するに至ったときということの従来の解釈運用というものをそのまま踏襲することが適当であると認めた次第でございます。
  27. 松井誠

    松井(誠)委員 その今までの沿革とか、規定体裁というようなところからくる相違というものはよくわかりましたが、それは実質的に住所を変更したために被選挙権を失うという場合と、今のこの請負禁止規定該当するという場合と、統一的にそういう事態が生じたら、そのときから当然失職するのだというように考えるのが理屈の上で合っているのか、あるいはその決定権者決定をしたときに失職するというように考えるのが理屈に合っているのかという、今までのいきさつとか規定体裁を離れて考えた場合に、この二つのものについて効果発生起算点を区々にするという実質的な理由は私は見当たらないと思うのですが、実質的に考えてその点はいかがですか。
  28. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 実質的な問題をいいますと、なるほど根本的な相違をそこにどうして認めていくのかということについて全然疑問がないわけではないと思います。ただ被選挙権有無ということ、その中で特に住所が問題でありますが、住所については、なるほど事態によっては住所をはっきりと客観的に移してしまったということで、その日時が明確な場合もございます。しかし住所認定は、客観的なそういう居住の場所と、またそれを中心にした生活環境がそこに移っていくということのほかに、そこを生活の本居と認めるという主観的な意思というものも住居を認定するには重要な要素として配慮される問題でございます。そういうことが、個々具体的にいいますと、いろいろ問題もございます。しかし、被選挙権の得喪に関する重要な問題もございますので、その点はやはり時点を明確にしていく、そのことは他の刑罰法規に触れたというような場合、あるいは禁治産者になったという場合、これは判決等によってきわめて明らかとなって参りますので、そういうような意味で、それ以後に効果発生せしめるということは決して実質的にも意味のないことではないのではないかということと、もう一つは、そうかといって、今度の請負禁止規定該当有無という問題は、規定形式から申しても、また従来からの実質上の解釈運用実態から申しましても、これを決定権者決定をしたときからということにするのはいかがかというふうに考えた次第でございます。
  29. 松井誠

    松井(誠)委員 私は、むしろ両方さかのぼることができるようにするか、あるいは決定の日にするかは別として、統一的に考える方がむしろ混乱を起こさないと思うのですけれども、この兼業禁止規定該当するという決定の場合に、今の局長お話で私ちょっと疑問になったのですが、いつ幾日に該当事由発生したということがあれば、その日から失職をするということであって、いつ幾日から失職させるという決定ではない。つまり該当事由発生したというそのときに縛られるのであって、それ以外の任意の点をとって失職効果発生させるというわけにはいかないのですね。
  30. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その通りでございます。
  31. 松井誠

    松井(誠)委員 今までそういう認定権者がいなかったわけですけれども、いろいろな方法によって決定という結果が出た。そしてそのときに、そういう兼職禁止規定に触れるという事由が、たとえば半年前なら半年前という決定がされる。そうすると、その半年前の該当事由発生したときに当然失職をしておるということになる。そうしますと、失職した日以後その決定のときまでの間というものは、首長なら首長は権限なくして行為をやってきたということになる、議員議員で権限なくして議員の職務を行なってきたということになる。そういうことで、さかのぼるということについては非常に私は行政上の混乱を起こしやしないかと思うのですが、実際上の今までの取り扱いの例からいって、そういう失職事由をさかのぼらしたということで具体的に起きた混乱、あるいはそれをどういう形で収拾したかということについて何か事例がございましたら一つ承りたい。
  32. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そのような事態が起きました際において、どういう争訟が起こるかということでございますが、普通の場合には、そのことのために争訟が起こったという事例はあまり聞いておりません。ただ争訟の事例が従来全然なかったわけではないわけでございまして、たとえば具体的に申せば、税に関する条例の制定、改正というようなことを通じて無権限者がこの条例に基づいて執行したというような場合に、その点に理由を求めまして、令書を受け取った側の住民から、それは無権限者がやった賦課行為だから無効であるというような争いを起こすことは可能であると思うのであります。その結果として無権限者であるかどうかという事実が争われることはあり得ると思います。ただそのことはあくまで一次的には徴税令書の有効、無効の問題でございますので、その過程において争われていること自体が半年の中で出て参りましても、そのこと自体が直ちに法律効果を生ずるわけではないということになるわけであります。ただ法律上の配慮といたしましては、裁判上の問題といたしましても、そのような場合におきましては、やはり行政秩序の維持をはかるというようなことから、その間の法律行為その他については有効であるとの擬制を行なっていくというようなことが日常行なわれておるようでございまして、そのことのために特に大きな混乱が起きたということは承知いたしておらないのであります。また議会の場合におきましては、普通の場合はその一人の方が有資格者であるかどうかということによって議決が有効、無効と争われる場合というのはごく少ないのでございます。普通の場合は多数決あるいは満場一致ということで事柄が進められますために、かりにそれの無効ということがありましても、効力自体は影響なかろうというふうに判定されるのが事実上多いというふうに考えております。
  33. 松井誠

    松井(誠)委員 議員の場合は、確かに法律的に問題というのは、まあもらった歳費をどうするかということぐらいなもので大したことはない。しかし首長の場合ですと、これは形式的には無権限の行為なんですから、その間の首長の行為というものは一切無効だというようにむしろ考えなければならぬと思うのですが、今裁判所がそれを救って有効なんだというように擬制をするべきだという考えだと言われましたけれども、それは具体的には行政法のどういう理屈でそういう理屈が出るわけでしょうか。
  34. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 擬制をするべきだというふうに積極的に私自身としても考えておらないのであります。事実上争われた場合にはそういうことになり得る可能性というものがあるのではないかということでございます。形式的にはなるほど無権限者が行なった行為でございますから、そのことは法律上欠缺を持った行為であるということは事実でございます。ただそれに基づいて日常のあらゆる市町村団体の行政活動が行なわれておるわけでございますので、それを全部ひっくり返すということになりましても、住民自体が困る場合も出てくるわけでございます。そういう混乱を生ずるための、あるいは行政安定のための配慮というものもなされる余地もあるのではないかという意味で申し上げたのでございます。
  35. 松井誠

    松井(誠)委員 これは、無効ではなくて取り消し得べき行政処分の場合は、御承知のように行政事件の訴訟特例で、これは元来は取り消すべきものなんだけれども、しかし取り消しが公共の福祉に反するときには取り消さなくてもいい、そういう具体的な規定があります。しかし無効な場合においては、そういうことによって救うべき理由というものは行政法上一体どういうことなんでしょうか。無効なんだけれども、しかしこれは有効なんだという、そういう理屈はやはりあり得るのですか。
  36. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 無効であるけれども有効ということになりますと、非常におかしいわけですけれども、法律上は欠缺の行為であることは確かでございます。確かでございますけれども、その推定を受け、その決定を受ける時点が後ほどになっておるという場合に、その間における行政処分としての効力をどの程度にこれを合法化していくかという——合法化というのも語弊がございましょうが、実態に合うようにそれを擬制を加えていくという程度の問題であるわけであります。この点むろん学説上もいろいろ議論のあるところでございますけれども、そういう考え方もあり得るのではないかという意味で申し上げたのであります。
  37. 松井誠

    松井(誠)委員 それはきずのある行政行為がいろいろな理由によって治癒される、そういう理屈のあることも私は存じておりますけれども、しかし、無効なものがただそういう年月を経たというだけで有効になるというふうに簡単に考えるわけにもちろん参らぬでしょうし、そういうような非常に無理な行政解釈からくるいろいろな混乱を冒してまでも失職該当事由が生じたときから失職するのだというような解釈をやはり固執すべきものかどうか。むしろ決定したときから失職するのだというように考えた方が問題の判断が簡明じゃないか。理屈にとらわれて、該当したときにはその職を失うと書いてあるからやはりそのときから効力発生すべきだというように無理に考えなくてもいいんじゃないかと私は思うのですけれども、その点どうでしょう。
  38. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 そういうお考え方も確かに一つございます。さらには立法論的に考えてもいい問題の一つであろうかとは思うのでございます。ただこれは従来の沿革、長い間の歴史の間に積み重なっております。むろん沿革があるからといって改正して悪いということはないわけでありますけれども、そのことのために今まで非常な障害が起きたという事例もないわけでございますし、また実態的に請負禁止条項精神というものから考えまして、決定権者決定がなされるその以後から効力を生ぜしめるというとともいかがであろうか。規定の仕方自体にこだわるわけでございませんけれども、そういうような運用の方がむしろ実態に合うのではないかという考え方で現在のところおるわけであります。
  39. 二宮武夫

    ○二宮委員 関連して。行政局長にちょっとお尋ねいたしますが、ただいまの九十二条の二についての改正案、その判定は当該議会においてやるということなんでございますけれども、そこでお尋ねいたしますが、地方自治体の長の兼業禁止の第百四十二条、この九十二条の二の議員の兼業禁止というものは、条文も全く同じでございますが、同性格のものだと思います。そう解釈してよろしゅうございますか。
  40. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その通りでございます。
  41. 二宮武夫

    ○二宮委員 そうなりますと、私は前の国会において質問いたしたわけでございますが、たとえば東京都知事が東京都何々株式会社というものを作って、そこの今列挙されたような役職について、あなたのおっしゃるような五〇%をこえない程度において東京都の工事を請け負う、こういうことも合法であるというように解釈されるわけなのですが、そのように解釈していいのですか。
  42. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 形式的には五〇%をこえないという場合にはそのようなことに相なるわけでございますが、ただその点は、われわれ行政指導といたしましても、従来から世論においても批判がございますから、行政指導としてはなるべくそういうことは好ましくないということで指導をいたしておるのでございます。
  43. 二宮武夫

    ○二宮委員 その行政指導云々というような言葉はまことにあいまいだと思うのです。私、今あげましたように、都道府県の長が、都道府県の行政執行の段階において、その都道府県の所管をする請負工事を民法六百三十二条に基づくところの契約によって請け負うということ自体が、これは政治の姿をきれいにするということにならぬと私は思う。従って前に私が質問いたしました際には、この九十二条の二については、その他これに準ずべき者というのが地方では非常に混乱を起こしておるのです。具体的にあなたは実例を御承知だと思いますけれども。私はこの際に、第百四十二条の長と同じように議員の立場もなされた、これは政治上非常に清潔な政治ができるような状況になったのだ、このように解釈して——もちろんもう松井議員指摘をされておりますように、その他これに準ずべき者というのが、あなたのおっしゃるような役職だというような解釈ではざる法です。これはあなたは実態を承知だろうと思うのですけれども、前の議会でも私は実例をあげましたが、たとえばあなたの方でこういうことをしてはいけませんよという行政指導をやるものだから、何々会社の社長が議員であった場合に、その議員が社長をやめて、全くそれとは違った人の社長というものを別個に作り上げる。ところが、実際の印鑑そのほか出納責任というのは自分がちゃんと握っておる、役職にはついておらない。こういうような実態でありますと、実際は議員という肩書きを利用して地方の請負をやるという事態が起こってくると思うのです。そこでこの問題は、その判定を判定機関がやるということよりも、私はそういう点についてもう少ししっかりしたことでやらないと、これは法が全くざる法になるというふうに考えるのです。  そこでお尋ねいたしたいことは、第百四十二条の立法の精神というものは、執行機関の長が一方ではある営利会社の社長をしておる、こういうようなことでは、たとえば請負金額というものについては一方ではちゃんと知っておるはずなんですが、その長が一方では請負ができる。しかも一年間の事業量の五〇%をこえなければ、それは合法であるというようなことをあなたの方が行政指導をやっておられたのでは、この法というのは全く意味ないと思います。従って私が今言ったように、百四十二条の地方の自治体の長に対して行政指導を実施されておるような姿というものは、ほんとう議員も同じ格になったのだ、地方自治体の長が自分の自治体の請負をやってはならないのだ、同様に議員もだめなのだ、こういうようなはっきりしたところの線を出さなければ、私はこの問題から起こるところの地方の政治の弊害というものは除去されない、このように考えるのですが、この点、行政局長の法的な解釈というのはわかりますけれども、実際運営の場合に非常に弊害を伴うと私は思うのです。法律はこうなっているけれどもこれはやってはよくないという行政指導でやる、そういう法律というものが現行法律として生きておるというようなことでは、私は非常に困ると思うのです。こういうばからしい法律はないと思う。  そこで政務次官にお尋ねしますが、今私が質問しましたように、地方自治体の長がその自治体の請負金額については自分が執行機関であるからわかっておる。わかっておる者が、一方では営利会社の社長をしておって、それが請負をしてよろしいというような精神というものはどうですか。あなた方行政官としての立場から、こういう法律が施行されて政治がきれいになるとお考えになりますか。
  44. 大上司

    ○大上政府委員 お説の通りと思いますが、ただもちろんただいまの御審議の過程においてざる法という言葉もあり、またはただいま行政局長が申し上げた点で抜けはせぬか、なおさらに各地方公共団体の長が実際上の公の仕事のいわゆる金額がすべて入札の前にわかっておるのじゃないか、従ってこれは行政的におもしろくないのじゃないかこれはその通りだと思います。ただ問題は、本人の自粛並びにただいま申し上げました行政指導にゆだねていかなければならない。ただし、そこでこの該当者はよほど精神的に、また政治的に、良心的に一つやらしていこうというのが行政指導の目的でございます。従いまして、この法案に盛り込みました運用面において十分管理監督をしていきたい。そこで結論的に、いわゆる政治的におもしろくないじゃないかというお説でございますが、ごもっともと思います。私たちの方としましても十分その点を考えて検討を加えて、そうして行政指導をもって所期の目的を達したい、このように考えております。
  45. 二宮武夫

    ○二宮委員 今の政務次官の答弁では納得ができませんよ。私が納得できないだけではなくて、国民やその地方自治体の人々は聞きましたら泣きますよ。そういうような行政指導をやらなければならないような法律を生かしておくということ自体、これは地方自治体としては全く言語道断だと思う。私はこの行政局長の答弁では一歩前進したというように考えておったのですが、今あなたがなさったような答弁では一歩前進だとは言えませんよ。これは法の体系上からいいますと、判定機関が当該議会にあるのだ、今までなかったものを補ったのだということだろうと思うのです。それで一歩前進だと自負しておるのかもしれませんが、これは何と申しましても、今の大上政務次官の御答弁を聞きましても、その地方自治体の長、同様に地方自治体の議員が、その地方自治体が主管しておる請負工事の五〇%をこえなければやっていいのだというような行政指導をやること自体、非常な誤りだと私は思う。地方の政治の実態をあなたは御承知かどうか知りませんが、地方の自治体では、この前も私は申し上げましたが、建設関係の委員会へ、議員をしておる人々はわれこそといって先に入りたがる。もしその委員会に入らなければ私は脱党しますというようなことを言ってその委員会に入りたがる。その委員会に入りたがるということは、その委員会に籍を置くことによって、その肩書きを利用して県の土木事業の請負をしたい。あるいは肩書きを表面はないようにしておいても、どこかでにらみをきかせて請負をしたいというようなことがそうした事態を惹起することの一つ原因であろうと考える。そういうことが今申されますような地方の長に許されるのだ、あるいは議員にも許されるのだ、しかも事業量が五〇%をこえなければいいのだという行政局の解釈の仕方というのは大へん誤っていると思う。私は地方の議会におります際にこれを土木部長に質問いたしましたところが、全然やってはならぬのだということが立法の精神であって、そういうことについては一つもうしろ暗いところがないようにするのが立法の精神だというような答弁をしておったことを聞いたことがあるのでありますけれども、行政指導をやろうというような行政局自体が、大体五〇%という数は一体どこから出たのですか。五〇%をこえなければ、事業量の半分をこえなければこれは合法だ。この五〇%という数は一体どこから出た計数なのか、そういうものさしというものをあなたはどこからお考えになるのですか。そういうような指導をやって、地方の長にも、やがて大上政務次官の言うような行政指導において自粛してもらうのだ、あるいは個人の精神的なものによってこの法を運営するのだ、こういうものの考え方というものは私は大へん誤っておると思う。これはこの法自体を、今あなた方が説明されるような法であるならば変えなければいかぬ。もしあなた方が地方の実態というものを十分把握されましたならば、必ずやこの問題についてはそういう悩みを持ってこられるだろうと思うのです。その点は大へんな行政指導の誤りではないかと思うのです。従って、五〇%がいいのだ、五〇%を一でもこえればいけないのだ、こういう考え方で地方自治体の議員に、その所属しておるところの自治体の請負工事をやらしてもいい、こういう行政指導というものは私は間違っておると思うのですが、行政局ではどうですか。
  46. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 この請負禁止規定ができました倫理的な背景と申しますか、これは今お話しになりましたような、そもそも行政の執行機関なり議決機関というものはこういうことにタッチするのはよくないのだということが前提となりまして立法されておることは、これは疑い余地はございません。ただその場合に、一般に議員という身分あるいは長という身分、こういう選挙を通じて出て参った者につきましてどのような兼業制限をやっていくのかということの限界の問題に立法論としての一つのめどがあるわけでございます。御承知のように議員の兼業禁止につきましては、これは一時全然規定がなくなった、削除された時代も実はあったのであります。われわれといたしましては、やはり地方行政の実態等を見て参りましても、どうしてもこれは放置することのできない問題だということで、国会の協賛を得ましてこういう規定を再び挿入したという経緯もあるわけであります。個人であれば請負はそのことだけで額の多少を問わずこれはいけない。法人、会社等につきまして、これをも全面的に、少しでもいけないというようなそういう立法論もございましょう。ございましょうけれども、そこまでいくのはいかがなものであろうかということで、その活動の主たるものというものが請負該当した場合には、その役職員もいけないのだというところに落ちついて、規定をされておるわけであります。しかもこの規定は、従来長く実は続いて参っておりまして、ある程度実例、判例等の積み重ねでもってその実績ができ上がってきておるわけであります。しかし、私たちといたしましては請負五〇%以下ならばやってもよろしいのだ、そういう言い方でもって指導しておるわけではございません。ただ、違法、適法と言われた場合におきましては、その限界は従来の行政判例、実例というものを頭に入れまして言わなければなりませんので、そういうような言い方になることもあるわけでございますけれども、論理的背景というのはわれわれといたしましても全く同感でございまして、その趣旨にのっとって行政指導の面でやれることはやって参りたいと考えております。  実は御承知の通りに、だいぶ前でございましたが、国会におきましても、こういう請負とかなんとかということでなくて、そもそも知事、市町村長あたりについては営利事業をやること自体も禁止をすべきじゃないか、あるいは会社の重役等に入ること自体もその任期の間は禁止すべきじゃないか、そういうような議論がだいぶ高まりました時代があったのであります。ただその場合におきましても、そういうふうにそもそも資格を制限していく、しかも公職で、住民の選挙でもって出てくる人について、あまりにも制限を加えるということは建前としていかがであろうか、むしろそういうことは本人の良識あるいは世の批判ということでもって落ちつくべきところに落ちつかせた方がいいのではないかというような議論もございまして、一応立ち消えになっているといういきさつもあるわけでございます。これらの点につきましては行政指導の面においても注意をして参りますし、今後なおこの問題はこれでいいのだということでなくて、実際の運営等を見まして、なお制度的にも改善を要するということを決意いたしました場合におきましては、その方向における改善措置もあわせて研究をして参る所存でございます。
  47. 松井誠

    松井(誠)委員 私も最後に一つ政務次官にお尋ねをいたしたいのですが、やはり今局長の言われた点なんですけれども、この規定ほんとうに実効を発揮するならば一応政治の明朗化というものに相当役に立つと思う。ところが局長解釈ですと、非常に形式的な解釈であって、結局ざる法ざる法たるゆえんを解釈においてむしろ助長しておるような、そういう傾きが非常に強い。このざる法ざる法たるゆえんの最大のかなめというものは「これらに準ずべき者、」というその解釈を、取締役云々ということで上にポスト名前を書いてあるから、やはり何がしかのポストがあるということが準ずべき者の一つの条件だというふうに解釈されておる。私は、必ずしも準ずべき者ということをそのように形式的なポストがあるということを条件にすべきものとは考えませんけれども、しかし、少なくともその準ずべき者ということをもっと厳重に解釈していくことによって、これがざる法だということがなくなる。従って、解釈論として不可能ならば、少なくとも立法論として、先ほど局長も具体的な文句までも言われましたけれども、ともかく実質的にこれと同じような影響力を与える者、これと同じような支配力を持っておる者というような形で、この請負禁止規定というものを実効あらしめる、そういう具体的な立法というものについて一つ真剣にお考えいただきたいと思うのですが、御意見いかがでございますか。
  48. 大上司

    ○大上委員 お答えいたします。ただいま二宮委員の御発言並びに松井委員の御質問の趣旨なりまたお考え方は十分のみ込んでおりますので、われわれといたしましても、ただいま提案し、御審議を願っております法案を、さらに将来突き進めて研究していく余地は十分あると心得ております。
  49. 松井誠

    松井(誠)委員 以上で終わりました。
  50. 園田直

    園田委員長 ただいま議題となっております両法律案のうち、内閣提出地方自治法の一部を改正する法律案に関する質疑はこれにて終局いたしたいと思います。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  52. 園田直

    園田委員長 引き続き、これより内閣提出地方自治法の一部を改正する法律案を議題となし討論に入りますが、討論の申し出がありませんので直ちに採決に入ります。  内閣提出地方自治法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  53. 園田直

    園田委員長 起立総員。よって、本案は全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決しました。  次にお諮りいたします。すなわち、ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成については、先例により委員長に御一任を願いたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 園田直

    園田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。      ————◇—————
  55. 園田直

    園田委員長 次に、災害対策基本法案を議題といたします。  本案に関する質疑を継続いたします。佐野憲治君。
  56. 佐野憲治

    ○佐野委員 大上次官にお伺いいたしたいと思うのですが、実はこの災害対策基本法について大臣の説明によりますと、いろいろな点をあげておられるのですけれども、災害対策の総合化、災害対策の計画化、災害対策の緊急性にかんがみて、この三つを重点としてこの法案の作成に当たった、非常に検討すべき点が多くて時間がかかった、こういう工合に説明に述べておられるわけです。   〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕 私も、この百二十条に上る基本法を読ませていただきましたが、一体どこにそんなに大きな検討すべき問題があったのだろうか、理解されない点もありますので、その点をお聞きしたいと思うのです。  伊勢湾台風のときに石原自治庁長官が対策本部の副部長として現地に行かれる、そういうことから本委員会におきましても災害対策基本法を作るべきじゃないかということが種々討議されたわけで、おそらく大臣も自治省事務当局に対して災害対策基本法を作るように命じられたのは三十四年の末だったと思います。自来今日まで経過いたしておるわけですが、たしか三十五年の五月に内閣審議室から防災に関する基本とその推進について、こういう一つ法律が一応作られた。これを中心として自治省もその間において災害対策基本法をお作りになっておった。内閣審議室で作られたのに対して、自治省としてそれと同一の歩調をとりたいといいながらも一致点を見出すことができ得なかった。そういうわけで自治省が独自で去年の五月ですか、五月案といわれる災害対策基本法をお作りになり、そして六月には防災基本法と名前を変えて作っておられた。こういういろいろな経過をたどってきておるわけですけれども、そうした中で自由民主党の政調審議会における小委員会の喜多メモですか、これらも出て参り、いろいろな形において法案作成に至るまで論議が続けられた。一体各省においてどういう点が一番問題になったのだろうか、今読んでみますと、それほど大きく問題になるような——これは成案ですからそうなんでしょうけれども、この成案を読みながら、一体どういうところに大きな問題点があったのだろうか、こういう点を感ずるわけです。  それからもう一つそれと関連してお尋ねしておきたいと思いますのは、一応自由民主党の政務調査会と自治省その他内閣各省との間に一致の法律案ができて参った。防災基本法という名称で、私たちも原案をすぐ見せていただいたと思っておったのですが、それから内閣の法制局においてやはりいろいろな問題点指摘されて、相当原案が変わって今国会に提案されたんじゃないか、こういうことも聞くんですけれども、一体どういう点が一番大きな問題となったのか、こういう点に対して一つお聞かせ願いたいと思います。
  57. 大上司

    ○大上政府委員 お答えいたします。ただいまのは非常に問題が大きゅうございますが、本法案を一貫して流れるものは、もちろん災害復旧は論を待たないのですが、さらに防災体制を十分にしていき、より高度にこの能率を発揮したいという大きな柱を立てて参っております。従いましてなおさらに、こういうふうな一つの法案として提示して、どこにどういうふうな問題が潜在的にあるかということでございますが、これにつきましては、まことに申しわけございませんが、着任早々で、従来の経過は大体了承しておりますが、答弁の確実を期すために一応昭和三十五年、さらに遡及して事務当局より十分説明いたさせます。
  58. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 災害対策基本法案が成案を得ますまでの大体の経過につきましては、ただいま佐野委員から大体のお話がございましたその通りでございます。もともと災害対策についての基本的な体制を整備するための基本法というものが必要ではないかということは、従来からもかねがね論議され要請が出ておったのでございますけれども、これが特に強く押し出されて参りましたのは伊勢湾台風という非常に大きな災害が参りましたその直後、どうしてもこういうような繰り返しのことでは困るし、伊勢湾台風の実際の例に徴してもいろいろ欠陥がある。これについての基本的な体制というものを整備しなければならないということに相なってきたのであります。この点は総理大臣においても、当時対策基本法というものの成案を急ぎたいというような言明が国会を通じても行なわれた経緯もございます。その後、主として内閣審議室におきましてこの法案の取り扱いを進めておったのでありますが、審議室案の内容というのは、これはそのときの経過なり情勢でそうなったのでございますが、現在提案をいたしておりまする災害対策基本法よりも、もっとよほど簡単なものでございまして、いわゆる防災についての各省の責任者、責任者もトップ・レベルでなくて、要するに防災の主任官というような人を指名いたしまして、それらの人が随時集まって一つ連絡調整をとっていくという点、それと伊勢湾台風等におきましても実際に例のありました現地の政府の臨時的な対策本部、こういうものを法定をしていく、そういったことを主体にして、ごく限られた限度において各省間の調整をはかって参る場を提供していこう、こういうようなことを骨子にいたしまして、一応法案の準備がなされたのであります。並行いたしまして、自治省といたしましても、災害対策ということはやはり地方自治団体というものが第一線に立って何としてもやっていかなければならない、しかも総合的、計画的に事を運ばなければ効果の期待できない問題でもございます。そういう点もあり、自治省の性格というような点もございますので、寄り寄りこれについての対案を検討いたしておったのであります。ところが、審議室においてやっておりました案が、政府部内においてもいろいろ議論がございました。非常にもの足らぬではないかという議論もあり、また当面はそんなことで一歩前進にはなるのではないかというような議論もあったのであります。政府与党の間におきましても、こういうような微温的なものでは何ともいたし方ないではないかというような声も起きて参りまして、もう一度基本的に再検討をしていく。問題が問題であるからして、よほど慎重に検討を重ねた上で自信のある案にまとめ上げていくべきではないだろうかというような線から、その後作業が進んで参ったのであります。  自治省といたしましては、今お話にもございました初めは防災基本法という名称をもって一案を作っておりまして、これを各省の調整の基本といたしましていろいい話を進めて参ったのであります。その後は各省の共同作業というような形で案を進めて参ったのでありますが、ようやく各省間の意見の一致を見るという運びに相なりまして、先国会の終わりにおいて提案の運びになったのでりますが、先国会はああいうような関係で審議未了に相なりましたので、今国会にさらに再提案をいたすという運びに相なった次第でございます。  今までの経過を通じまして一番論議になりましたことは、どうしても各省も災害対策ということになりますといろいろ関係をする事項が多いのでありますが、この法案を閣議に請議をいたします際におきましても、外務大臣以外の各大臣が全部主務大臣として、いわゆる請議大臣といたしまして署名をしておるということから見ても明らかでございますように、関係各省にそれぞれ大きな影響を持つ問題でございます。治山治水の予防の根本問題はむろんのことといたしまして、その他応急措置の問題、災害救助の問題、復旧の問題ということになって参りますと、各省それぞれの持ち分があり、またそれぞれの対策があり、行政を行なっていく上においての基本となりますそれぞれの法律というものがあるわけでございます。その間の調整をどのようにはかっていくかという問題、これが何と申しましても非常に重要な点でございました。  それから現在の法律体系、各省の対策だけでは足らない面あるいはばらばらになっておる面というものがございます。その足らない面をどの程度補完をしていくかという事柄、これも各省それぞれの立場がございますので、その間に統一的な調整をはかっていくということについてもいろいろ意見の交換をし、そこに結着点を見るまでにかなりの手間がかかったということがあると思うのであります。  それから地方におきます組織といたしまして防災会議というものを考え、また防災計画というものを考えておりますが、その防災会議なりあるいは防災計画というものの効力なりあるいは効果なりあるいは組織なりというような面についても、かなりの論議があったことは事実でございます。  本法案のねらいは、究極には現在の防災体制というものの不備を補っていく、それとともに現在の防災体制の欠陥であります総合性がないということ、計画性に欠けておるということ、これを補っていくような体制を整えて、総じて国家全体の体制といたしまして総合化と計画化をはかっていこうということにねらいがございましたので、勢い各省間の調整におきましても、問題はその程度、やり方をどうしていくかということは、その中心の問題といたしましては、総合化、計画化ということをいかにして実施をし、これを実現するかという過程に問題の焦点はしぼられたわけでございますが、そのほかにいろいろこまかい技術的な点等につきまして、現行法とこの法律案に盛り込むべき規定との関係の調整をどうするかということも、これは実際問題としてはかなり論議の対象になった問題でございます。
  59. 佐野憲治

    ○佐野委員 鬼丸官房長が災害対策特別委員会の方に出かけられなければならぬそうで、とりあえず先に質問してもらいたいという要請がありますので、もっと建設省の皆さんに突っ込んでいろいろ御意見も関連して伺いたいと思ったのですけれども、急いでおられますので、まず治山治水整備計画、これが昭和二十九年に立てられて、三十四年までに一兆八千六百五十億の計画のうちどれだけ実施されておったか、この点を一つ伺いしたいと思います。
  60. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 建設省所管の治水事業の整備につきましても、治水事業の長期計画を、ただいま御指摘のように昭和二十八年の治山治水基本対策要綱という閣議決定に基づきまして長期的な一応の全体計画を立てたのでございますが、現在までの正確な実績数字は、ちょっとここに資料を持ち合わせておりませんので、あるいは後ほど提出させていただきたいと思いますが、三十二年から実際に計画を実行いたしております。三十二年は、これは治水事業だけを申し上げますと、三百二十七億六千万円余、三十三年は三百四十三億七千万円余、三十四年が三百七十億ちょっと、三十五年が四百七十五億、三十六年五百三十七億という予算で、逐年事業が増大いたしております。御案内のように昭和三十五年から治山治水緊急措置法に基づく十カ年計画、この十カ年計画は事業費にいたしまして九千二百億円の事業費でございますが、これを正式に決定いたしまして、三十五年からはこの計画によって着実に実施いたしておる状況でございます。
  61. 佐野憲治

    ○佐野委員 私の調べによると、今申し上げました二十九年度から三十四年度の六カ年間に一兆八千六百五十億円の計画目標事業量に対して、河川は一兆一千六百九十一億円、これが六カ年間において投資されたのが二千百七十三億円、こういうふうになって、全体としては一八%ということになっておるのですが、十年計画の六カ年間で一八%しか進まなかった、これはどういうところにおもなる原因があるわけですか。
  62. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 ただいま先生から御指摘の二十九年から十カ年間に一兆八千億という事業費の数字は、これは全体計画といたしまして先ほど申し上げました二十八年の治山治水基本対策要綱によってきめられたものでございまして、これが何年間にこれを実現するかという約束になっておらなかったのでございます。そこでただいまお話しのように、この一兆八千億という数字から見れば、三十五年まではまことに微々たる数字でございますが、こういう状況にかんがみまして、これをもっと計画的に一定の年限のうちにこれだけの仕事を達成しようということから考えられまして、先ほど申し上げましたように三十五年度から十カ年間の治水事業計画というものを特別な法律を制定いたしまして決定していただいたようないきさつになっております。従いまして現在はこの治水事業十カ年計画によって毎年度の予算が計上され、実施されておる。ただ私どもといたしましては、さらにこの十カ年計画につきましては、最近の災害状況等にかんがみまして、これを一そう促進する必要があるというふうに考えておる次第でございます。
  63. 佐野憲治

    ○佐野委員 昭和二十八年の大災害に直面して、治山治水、特に災害対策の抜本的な方策を立てなくちゃならない、こういうので長期政策が樹立された。にもかかわらず、一兆八千六百五十億円の閣議決定は、単なる計画目標であり、事業量をきめたものにすぎないということにしかならないとなると、昭和三十五年を起点とする今度の十カ年計画も、またそういうおそれがあるのじゃないか。特にお尋ねしておきたいと思うのは、建設省に直轄河川が百三十九、中小河川が一千、小規模河川が八百も存在して、戦争中の荒廃、戦後におけるいわゆる治山治水の忘れられたいろいろな諸条件が重なってきて、非常に災害に対して危険な状態に立っておる。これを皆さんの十カ年計画で一体直轄河川、中小河川、小規模河川に対してどの程度着工、完成される計画であるわけですか。大体のところでいいですが……。
  64. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 十カ年計画でどの程度の防災的な効果をねらっておるかというお尋ねの御趣旨だと思いますが、この点は先生から今御指摘のございましたように、私ども十カ年計画を策定する当初におきましては、従来の毎年の平均の災害の量を昭和時代の初期にまで減らすという考え方で策定いたしております。従いまして、との九千二百億円の事業を完全に実施いたしましても、大体昭和の初めごろの災害状態というふうにその効果の測定を予定いたしておるのでございます。  ところでただいま御指摘のその後の、二十八年以後最近までの災害状況等もいろいろ検討いたしておりまするが、災害の場所が御案内のように小規模河川の流域でありますとか、あるいは新しく開発された地域にかなり襲ってきております。そこで三十五年度から実施いたしておりまするこの十カ年計画につきましても、事業量は九千二百億円ということになっておりまするが、その中身につきましては、最も防災的な効果の高い、治水効果の高いところから重点的にやっていくということ、そういう考え方に基づきまして、今具体的に検討しておるところでございまして、毎年度の予算の要求につきましても、今申し上げましたような考え方によって要求をいたしておるようなわけでございます。
  65. 佐野憲治

    ○佐野委員 私の心配いたすのは、そのような形だけの皆さんの計画——これは計画目標と事業量ですけれども、わずか直轄河川にしてみますと前半で九つ、後半の五年で二十五、合わせて三十四、総数の二四%しか完成することができないのだ、こういう数字をお示しになっておるわけです。そこで、しかしながら現実問題として所得倍増計画なり、経済成長計画の進行に伴って民間の設備投資が続いておる。これに対する公共投資ですか、社会資本といわれる公共投資が行なわれておる。こういうことになって参りますと、治山治水そのものの計画が現実にそぐわないという問題が起こってくるのじゃないか、こういうことを考えるわけです。それと同時に、同じ建設省の所管の中における道路計画を見て参りますと、道路計画は五カ年計画で二兆一千億円、あとの五年合わせますと四兆九千億円という膨大な行政投資を皆さんの方でお考えになっておられる。ですから、この道路五カ年計画、あるいは後半の五カ年計画合わしまして四兆九千億円、こういう行政投資はますます産業基盤の拡充あるいは社会資本の充実、これと民間資本の拡大と、こういうために道路計画がとられておるのだろうと思うのです。それと治山治水、特に河川、ダム、あるいはいろいろな問題が起こっておる。そういう問題はますます困難な災害を呼び起こす原因を作っておるのじゃないか、こういうことに考えられるのですが、建設省としてこういう道路計画と、産業道路なりいろいろとられておる計画というものと、治山治水計画というものとをからませておられるかどうか。逆に防災という立場よりも、ここにいかに工業用水を確保するか、あるいはまた電源開発のために役立つような河川に対する管理が行なわれておるのじゃないか。そうすればますます災害に対して非常に危険な条件を作り出しておるのじゃないか、こういう工合に考えるのですが、その点はどうですか。
  66. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 ただいま御指摘のように近年の公共投資の増大あるいは民間の設備投資が相当ふえたこと等に伴いまして、特にあるいは道路でありますとか、あるいは電力関係の施設の問題とか、あるいは公共用地の造成開発というようなことと、治水事業なりあるいは河川改修、特に防災的なこういう事業との関連をどう考えておるかというお尋ねでございまするが、もちろんこの点は御指摘のように非常に重大な問題でございまして、私どもも、たとえば二十八年当時基本対策要綱で考えておりました内容につきましては、やはり根本的に、その後のただいま申し上げましたような諸般の情勢の変化に即応して検討しつつあるところでございます。なお、個々の具体の問題につきましては、もちろん治水と他の公共投資あるいは他の開発事業との関連を十分に考えまして、その関連づけを具体的に検討した上で、実際の防災的な効果が上がるように事業の実施をいたして参りたい。またそういう事業に重点を置いて具体化して参りたい。かような考え方で推し進めておる次第でございます。
  67. 佐野憲治

    ○佐野委員 官房長が急いでおられますので、私も急ぎたいと思いますけれども、こういうことをお尋ねいたしますのも、たとえば昭和二十五年に総合開発法という法律が出ておるわけなんです。この法律に基づいて、たとえば土地、水その他の天然資源の利用に関する事項、水害、風害その他の災害を防除に関する事項、都市及び農村の規模及び配置の調整に関する事項、産業の適正な立地に関する事項、いろいろ国土保全ということを中心にして、災害防除あるいは災害対策というものはこれが一つの柱になっておると思います。と同時に、戦後における敗戦の荒廃の中から、いわゆる地域開発を目ざしていかなければならない、いわゆる国土資源の利用開発、こういうことの中から生まれて参った法律だと思います。こういうりっぱな法律があって、それで各省の方々が特に水害あるいは風害、災害防除に関する事項を専門に担当しなくちゃならないという目的、計画が規定されておる。この総合開発法に基づいて、経済企画庁を中心としてどういう措置を一体今日までとって参られたか、こういう点をお伺いしたいと思うのです。
  68. 八塚陽介

    ○八塚説明員 国土総合開発法ができましたのはお話のように昭和二十五年でございまして、これもよく御承知のことかと存じますが、現在まで具体的に計画として閣議で決定されましたのは、その法律に基づきます計画のうちの特定地域に関する計画だけでございます。この総合開発法は、当時の終戦後の混乱した国土を前提にいたしましての法律でございますから、当時といたしましては、災害に対する関係あるいは食糧増産あるいは電力というような点を中心の柱といたしまして計画が作られて参ったわけでございます。一方この法律に基づきます全国計画につきましては、幾たびか計画も成案を得るべく努力をいたして参ったのでございますが、方法論と申しますか、そういう点につきましてもなかなか問題があったようでございまして、ようやくことしの七月に一応草案という形までまとまって参っております。私どもの現在の予定と申しますか、見通しといたしまして、何とか今年度中にこれを本決定にいたしたいということで目下努力をいたしておるような次第でございます。  その間、先ほど申し上げましたように、特定地域に関します限りは災害というものを頭に置き、あるいは前提とした計画を幾つか作って参っておりますが、現在、今申し上げました全国計画の草案の段階におきましても、やはり国土保全という点については相当大きな問題として計画の中で触れておるのでございます。ただ、全国計画の性質上、ある程度具体的になることはできませんので、いわば考え方もしくは各地域の配分がどうあることが望ましいかというようなことで触れてございます。全国計画の草案の段階で申し上げますのも若干恐縮でございますが、やはり先ほどからお話のありましたように、災害対策その他積極的な公共投資関係というものについては、十分考慮しなければならないということについても計画中指摘をいたしております。かつまた生産活動、経済活動の盛んな地域に対する災害に対する投資、それから先行的にやる場合についての投資というようなことについてもいろいろ検討をするようにということがあるのでございます。そういうことで、国土総合開発法が発足しましてから十年になりまして、その間いろいろ検討はし勉強はいたして参ったつもりでございますが、ようやく最近になって法律に基づく全国計画ができたような次第でございますので、若干そういう災害につきましても今まで触れることが少なかったわけであります。以上申し上げましたようなことで、現在の総合開発法の中でできるだけ災害についても考慮いたしておる次第であります。
  69. 佐野憲治

    ○佐野委員 今のは八塚課長さんですが、私は鬼丸さんが急いでおられますので鬼丸さんの方からお伺いしたい。課長さんの方はあとからいろいろお伺いしたいと思いますが、建設省としてはどうですか。こういう総合開発法があり、経済企画庁の開発局に対しましては、皆さんの方からも職員を派遣しておられるわけで、あるいは農林省からも行っておられる。そういう形で各省が集まって、しかもこの法律ができてから十年たった今日、この法に規定されていることの第一次草案なるものが七月にようやくできた。私も拝見さしていただきましたけれども、十年間計画も立てられなかったということ、これについて建設省としてどういう工合に考え、総合開発法を守り法の趣旨を生かすために努力して参られたかという点について簡単にお伺いしたいと思います。   〔渡海委員長代理退席、纐纈委員長代理着席〕
  70. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 国土総合開発法の運用の面におきまして、建設省といたしましては、先生から御指摘もありましたように非常に重要な関係を持っておりますので、かねて経済企画庁その他関係各省とも十分打ち合わせをし検討して今日に至っております。特にこの国土総合開発法の中で特定地域総合開発計画というものがございますが、この計画につきましては建設大臣が、内閣総理大臣が諮問する場合の要請大臣という立場に立っております。これは企画庁長官と同様に要請大臣という立場に立っておりますので、この計画はかねて建設省としても実際に掘り下げて所要の調査をし、具体的な計画をとりまとめ、この計画の中に災害対策というものを積極的に織り込みまして計画の内容をとりまとめ、企画庁と御相談いたしまして、この計画がすでに二十二と思いますが、決定いたしておるような次第でございます。なおその他の都道府県計画あるいは地方総合開発計画等につきましても、それらは具体的に確定するまでには至っておりませんけれども、私どもといたしましては、もとより防災という観点から、常日ごろ企画庁の当局と十分相談いたしまして検討を続けてきておったような次第でございます。ただ先ほどお話もございましたように、これをコンクリートな計画として固めますには、やはり総合開発計画でございますから、なかなかむずかしい点がございまして、これは企画庁も非常に努力されておるということは私ども重々承知いたしております。私どもも決してこれをほったらかしにするとかあるいはあまり協力しなかったということではなしに、ただ事柄の内容が非常に困難であった。そのために、今日研究、検討に長い時間をかけたということを御了承いただきたいと思います。
  71. 佐野憲治

    ○佐野委員 全国計画、府県計画、今言われるところの特定地域計画、五つの計画があるうち、特定計画の方だけは少しはやった、それは了解できると思います。これは電源開発を中心として、企業の資本充実のために急がれた。昭和二十五年から三十年、特に企業の近代化に対する電源エネルギーの不足、こういうことで皆さんの方がせき立てられたのであって、防災とか災害を予防するという計画はほとんど盛られていないんじゃないか。そのためにはまっ先に府県計画というのが出てこなくちゃならない、基本計画が出てこなければならない。これが何ら出ていないというところに問題があると思うのであります。そういうことが先ほどの治山治水計画をおくらしておる。朝鮮動乱が起こり、特需、その次は不況、この波の中で皆さんの治水計画も混乱を続けておる。道路計画を見て参りますと、四兆九千億円という莫大な行政投資をつぎ込むという計画を立てられて、公共事業の中に占める道路のパーセンテージが非常に多くなってきておると思うのです。これもそういう意味におけるところの防災なり地域開発という観点からなされておるのじゃないということは、皆さんの方が一番よく御存じの通りだと思います。社会資本充実という要請に基づいてやられておるのだろうと考えるわけですが、そういうことになって参りますと、ここで急いでおられますので、二つの点を確かめておきたいと思います。  一つは災害対策基本法ができて、いろいろな訓示規定はありますけれども、この総合開発法というような当時の配慮の中から最も民主的な建前をもって生まれて参った法律すらも無視されてきておるときに、災害対策基本法ができたからといって、この訓示規定はありますけれども、これによって防災の目的を——この法案は広い意味における防災という言葉、あるいは狭い意味における防災という言葉を使って、まことにややこしい法案になっておりますが、一度は防災基本法だと言っていたのが、また国会に提出するときには災害対策基本法だ。防災というのがあまりおこがましくなったので、災害対策基本法という形をとらざるを得なかったのだろうと思いますけれども、そういう非常に訓示規定の多い、倫理規定の多い法案で、あなたたちほんとうに防災というものに全力をつぎ込んでいけるかどうか、こういうことを一つ伺いしておきたい。  もう一つは、治山治水十カ年計画にいたしましても、皆さんの所管ですが、道路五カ年計画にいたしましても、法律を見て参りますと、道路五カ年計画の中に府県が管理している地方道までも入れておられる。これは何ら管理者である地方自治体と協議するということが法律上抜けておる。審議会の意見を聞いて建設大臣がこれを決定する、こういう治山治水の法律を見ても、そういうことが出てきて参っておると思うのです。このことに対して、どうお考えになっておられるかという点です。一体公共事業を進めるために、地方自治というものをこういう法律をもって押えることが適当と考えられるかどうか、なぜこういう法律の体系をとっておられるのかというのをお聞きいたしたい。  それから大蔵省から宮崎主計官もお見えになっているそうですが、先般佐藤さんが大蔵大臣をやられたときに、どうしても公共事業というものは中央集権の性格を内部的に持っておるものだ、やむを得ないんだということを言われたわけですけれども、今日地方行政を担当する主計官としても、そういう考えをお持ちになっておりますか。それから藤井行政局長も、こういう形で地方の管理すべき道路、あるいは河川の場合でも、国が一方的に、県知事と協議することなく勝手に審議会の意見を聞いて大臣が決定をする。決定をしたことを地方自治体は実施しなくちゃならない、こういう形で進められてくる。そういう法律が多くなってきていると思うのです。先般衆議院を通りました水資源開発法案の場合でも、何らこの地方行政委員会と連合審査さえ持とうとされない。しかも、そういう法律によって県知事の持っている権限が奪われている。こういう法律がどしどし建設省から出てくるわけですが、一体どういうところに原因があるのですか。その点官房長としてはどういう態度で臨んでおられるか、あるいは大蔵省としてもそういう傾向に対してどうお考えになるか、自治省としてはそういうことに対してどういう態度をとっているかということもあわせてお伺いしておきます。
  72. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 お尋ねのうちまず第一点は、災害対策基本法と治水事業その他防災的な事業との関係でございますが、御指摘のように、この基本法には訓示的な意味を持つ規定ももちろんございます。しかしながら、私どもは政府の一員といたしまして、この法案が成立いたしました暁におきましては、その訓示的な規定といえどもその趣旨を体して、この治水その他防災対策の推進に一そうの努力をいたしたい、かように考えております。御承知のように、この法案の第八条におきまして、国及び地方公共団体の重点施策として十分配慮を要する事柄といたしまして、建設省所管の事項といたしましては、治水その他の国土保全事業あるいは都市の防災の事業等につきまして規定しております。こういう趣旨を十分体しまして、治水事業を初めといたしまして、都市の防災関係の事業その他国土保全の事業につきまして一そうの推進に努めたいと考えておる次第でございます。  第二点の、治水事業計画あるいは道路整備計画というものと地方自治との関係と申しましょうか、計画を中央においてきめて、それを地方自治体に押しつけてやらせるのではないかという御趣旨のお尋ねでございましたが、道路整備五カ年計画にいたしましても、あるいは治水事業の十カ年計画にいたしましても、これはそれぞれの法律に基づきましてその手続を踏んで決定をされておりますが、それの実施段階にあたりましては、御承知のように、毎年度の予算に所要の経費が計上されまして、これに対して地方財政の裏づけもなされまして、また具体的な事業のやり方につきましても、河川法、道路法等の法律によって行なわれておりますので、現行の法体系から申しまして、地方公共団体あるいは地方自治体に対しまして計画そのものが無理に押しつけられているというものでは決してございませんので、それぞれの法律に基づきまして、それぞれの法律がまた矛盾することなく事業が実施できるような体制に相なっておることを一つ御了承いただきたいと思います。
  73. 佐野憲治

    ○佐野委員 ほかの局長さんの御答弁はあとにしていただいて、なお私は建設省の方にお伺いしておきたいのです。  たとえば公営住宅の場合には、市町村長が計画を作成して建設大臣と協議する、その上で決定をされる、こういう法の建前になっておりますが、私は押しつげたとかなんとかというのじゃなくて、法の建前がそうなっておるじゃないか。ここにはそれらの協議する余地がない。私の方で立てるのだ、しかも四兆九千億円という膨大な道路行政をやられる、これに地方道も含ませる、こういう形でいかれるということは非常に危険ではないか。やはり何としても地方自治と中央集権というものをどう調和させるか、これが一番大事でもあるし、皆さんの計画をほんとうに正しく効果を上げるためには、政治にしろ行政にしろ、やはり民衆に接触することによって、健全な実施というものができるのではないか、こういう点をお忘れになっておられるのではないか、こういうことも考えますと同時に、これはたとえば国土総合開発関係者の間で行なわれた座談会ですが、国土の昭和三十年六月の山越さんその他が出席しておられる座談会を読んでみましても、総合開発という内容は非常にいい、と同時に国民を引っぱっていくのに非常によかったのだ、しかしながら各省の調整ができなくて、実は何ら進んでいないのだ、非常に困った問題だということをおのおのが述べておられる。これからの総合開発はいかにあるべきかという題の座談会ですけれども、そういうことになって参りますと、先ほどあなたが言われたような、訓示規定であっても政府の一員としては忠実にこれを実施していくのだと言われる。しかしながら、こういうりっぱな民主的な建前に立っておる国土総合開発法があっても、忠良なる政府の一員として、各種のなわ張り争いによってこれを実現することができなかったので、同じ役人がある座談会において悲鳴をあげておるということになって参りますと、この災害対策基本法は、訓示規定は総合開発法よりももっと弱い形をとっておるのではないいか。そういうときに建設省としての考え方というものをもう少しはっきり伺っておきたいと思います。
  74. 鬼丸勝之

    ○鬼丸政府委員 私どもといたしましては、国土総合開発法につきましても先ほど申し上げました通りで、決してなわ張りを主張して、特に企画庁あたりと話し合いがつかずにじんぜん日を経たということはございません。建設省としましては、ほんとうに総合開発の観点から申し上げるべきことは申し上げて、お互いに研究を続けておった、こういうことでございます。  それからなお治水事業にいたしましても、あるいは道路の計画にいたしましても、公営住宅の計画にいたしましてもそうでございますが、これは実は計画を立てる段階におきましては、地方の要望なり、あるいは地方の実情というものを特に十分具体的に調査いたしまして、これを積み上げるという一つの方式をとっております。ただそればかりでも、全国的に見た場合に必ずしも合理的な計画になりませんので、そのほかに合理的な一つの基準を作りまして、これによってあわせて計画を立ていく、この計画は地方の意思を無視したということには私ども考えておりません。ただ長期計画でございますから、これを実施いたします場合には、結局毎年度のきまりました予算によって、それぞれの法的な手続、あるいは予算上の手続によりまして地方におろして参るわけでございますから、その場合に地方公共団体等が事業をやりたくないというものを無理に押しつけるようなことは決していたしておりませんので、むしろ最近の地方公共団体の要望から申しますと、道路にいたしましても、住宅にいたしましても、もちろん治水事業にいたしましても、もっとやりたいという声の方が圧倒的に強い、こういう状況でございます。
  75. 佐野憲治

    ○佐野委員 私の指摘しておきたいのは、この総合開発法によって防災という点に非常に重点を置いておる。私ども県議会議員をやっておりましたので、この法案ができたことを非常に喜んで、地域住民もまたこういう中から新しい民主主義的な祖国の復興ができると考えておったと思うのです。不幸にして朝鮮動乱がこの法律そのものの機能を衰退させたと思うのです。しかしながら、皆さんの治山治水計画にしろ、道路計画にしろ、そういう点は、やはりそういう時代の流れと一緒に、企業内における近代化、資本の充実、こういう方向に向かって皆さんの計画が進められていく。それから三十一年度ごろから産業基盤強化という形をとっていかれる、そのことは皆さんにおいて公社、公団をお作りになる、あるいは特別事業、特別会計をお作りになる。一般の財政法から別の方向を持ってこられるという、財政法に許されておる一つでありますけれども、しかしながら、そういう方向をとっていかれるところに、一つの大きな方向に対して皆さんは突き進んでおられる。そこで非常にじみな、しかも産業基盤なり社会資本を充実していかなければならぬという緊迫しておる問題と、防災という非常に長期の展望を持ってやらなければならぬ仕事との間に相剋が起こっておるのではないか。そういう場合において、そういう災害という問題が軽視されておるのは過去における実績が証明しておると思う。皆さんの個所づけを持ってきて、配分を検討すれば明らかに出てくると思う。そういうことをやって参りますと、今ここに災害対策基本法が生まれて参ったけれども、はたしてどうであろうか。私、冒頭の質問において述べましたように、昭和三十四年に伊勢湾台風の惨状の中からやはり防災基本法を作らなくちゃならぬといいながらも、今日までおくれてしまっておる。あるいはまた基幹都市の問題にいたしましても、建設省の皆さん、あるいは通産省、あるいは自治省、経済企画庁、それぞれが固執になって現在まで法案を国会に提案することができ得ないという現状だ。こうなって参りますと、官庁間におけるセクショナリズムと申しますか、相当深刻なものがあるのではないか。そういう中に、この訓示規定でもって自治大臣が登場なさっても、ほんとうに防災という面において非常に心配になるわけです。応急対策なりそれらの面に対しましてはわかりますけれども、防災という点が非常に心配になる。それだけに所掌事務をやっておられます建設省の皆さんとしてもほんとうに十分考慮していただきたい、かように一つお願いしておいて、急いでおられますから、官房長への質問は一応終わりたいと思います。  大臣お見えになっておりますので伺いますが、大臣の提案理由の説明の中に、日本は災害国であって、連年各種の災害が頻発して、甚大な被害を繰り返していることははなはだ遺憾だ、こういう工合に客観的に抽写しておられるわけですけれども、しかしながら、この災害によって昭和二十一年から昭和三十五年度までに、水だけの被害で三兆円、三万人の人命を奪われておるわけですが、こういうことに対する原因は一体どこにあるかということですね。こういう点に対する反省の中からやはり防災基本法というものは提案になったんだろうと思います。大臣がお見えにならない前に、いろいろ質疑をしておりまして、防災というものは広義の意味における防災という解釈がとられて、狭義の意味における災害の防除という点が欠けておるのではないかという感じがいたします。と同時に、これほど大きな国民の財産あるいは人命に犠牲を与えておることから考えて、抜本的な防災対策を進めていくんだ、こういうことでありますならば、私は、教育基本法の場合を見て参りましても、あるいは農業基本法の場合を見て参りましても、前文にこのことを明らかにして、これはやはり政府の施策の責任だ、そういうことにおいで非常に迷惑をかけたということに対する反省、これがにじみ出て、だから今後におけるところの国の責任を明らかにしていく、そういう災害をこれから防止していくんだ、こういう考え方がはっきりうたわれるべきじゃないか。そういう点において、大臣の説明には、これはまことに遺憾でございますと、ちょっと触れてありますけれども、この法律条文を読んでみましても、そういう真剣に災害と取り組む気魄に欠けておるし、過去における教育基本法にいたしましても、あるいは農業基本法にいたしましても、そういう前文をつけて、法の目的、性格というものを明らかにしておる。そういう態度が必要じゃないかと考えるのですけれども、どうしてそういう態度をおとりにならなかったかという点をお聞かせ願いたいと思います。
  76. 安井謙

    ○安井国務大臣 この法律案が非常に広範な包括的なものを対象にしておって、防災そのものずばりの具体策がどうも欠けておるのじゃないか、あるいはこれに対する国の負うべき責務が明確でないじゃないかという御批判かと存じますが、これはたとえば教育基本法とかあるいは農業基本法といったようなものは、一つの目的のために一つの省が責任を持ってすべてを網羅できるという特徴があると思うのであります。ところが防災という観点になりますと、いわば政府の各省の機関がすべてといっていいほど関連のある仕事になってこようかと思うのであります。従いまして、そういう意味では、この基本法というものはそういうものを総合的に基礎づけをして、今後それぞれの機関がそれぞれ十分な機能を発揮しなければならない、こういう意味での非常に包括的なものに一応まず基礎のスタートはならざるを得ないと思うのでありますけれども、国の責任につきましては、やはり三条にもございますように、国が十分な責任を持ってあらゆる面からの防災対策に対処しなければならぬ、こういう点もうたっておりまして、表現その他の方法で、あるいは感じ取り方でまだ弱いのじゃないかという御感想もあろうかと思いますが、意図しておるものは、御趣旨の線に沿うものを十分に考えて、この法律案を作っておるつもりでございます。
  77. 佐野憲治

    ○佐野委員 やはり私は、災害に対してその原因なりについては、技術的な行政的な欠陥というものが大きかったと思うのです。それからまた恒久的な防災対策というものを科学的に技術的な立場から検討する、そういう解明をして、その中から深刻な反省が必要じゃないかと思うのです。そういう意味において、たとえば農業基本法にいたしましても、あるいは教育基本法にいたしましても、憲法にいたしましても、やはりそういう重大な各省にまたがり、しかも国民の生命財産に影響を及ぼすそういう法体系を総合し、整備し、確立しようということである以上、今までどこに行政欠陥があったか、これは解明する必要があると思うのです。そういう中からこそ、今後どうするかという問題が出て参るだろうと思うのですが、そういう点が欠けておるのじゃないかという点を私は指摘しておるわけです。それは各省にまたがっておるわけですけれども、やはりそういう態度が必要になってくるのじゃなかろうかというふうに考えるわけです。
  78. 安井謙

    ○安井国務大臣 そういう点が今まで防災対策を遂行していきます場合に欠けておろうかと思うのでありまして、これは御指摘の通りなのであります。そこで今度の法律によりまして、中央防災会議というものを作りまして、各省のそれに関連する機関を網羅して、一つ総合的に防災対策の具体案を進めていきたい、これが今度の新しい試みであろうと思います。これが一省だけでやれるものでありますと、すぐそこから出発して、これもやりたい、あれもやりたいというふうに、この法律で具体的に最初から具体化ができやすいかと思うのでありますが、その点はもう一歩地固めをまずやって、それによって御趣旨のようなものをさらに強く出していきたい、こういう趣旨で防災会議というものを置いて計画を進めていくというふうに考えておるわけであります。
  79. 佐野憲治

    ○佐野委員 私はさっき大臣がお見えにならないときに、国土総合開発法昭和二十五年に法律第二百五号をもって公布されたこの法律に、はっきりと、水害、風害その他の災害の防除に関する事項というのを重要なる計画として規定してあるわけです。しかもこのための全国的な計画を立てなくてはならない。そして府県の住民も参加する地方自治の建前から国土の資源の利用、特に防災というものを確立しなくてはならない。それにまた二つ以上の府県にわたる場合には協議会が設けられている。また特定地域に対する計画等、常に地域住民が計画に参加する。そういうふうにして災害の根本を切りくずしていくことが必要である。そのために、各省にまたがっているから経済企画庁が担当するのだ、こういう意味における民主的な建前をとっている法律だと思うのです。こういう法律が存在しているにもかかわらず、十年間——先ほど総合開発課長さんにお聞きいたしますと、ようやく今年の七月、十年たって初めて全国計画の第一次草案——第一次草案ですよ、これを皆さんの御検討をわずらわしておる。非常に苦心のほどは、私も読みながらもそれはよくわかるわけですけれども、そういうところに災害というものは来るのだ。しかも戦争中に荒廃しており、戦後におけるところの手当が不足しておる。また電源開発におけるダムその他工業用水、いろいろな形によって災害が逆に誘発される原因を作っておる。地盤沈下にしろ、あるいは現在における所得倍増計画なり、あるいは産業基盤充実方針、こういう計画がどんどん進められているが、これが逆に災害を誘発してきている。こういう原因は明らかになっているわけでしょう。しかも、だからこそこれを防ぐために国土総合開発法が十年前に登場してきているわけです。そうすれば、水害、災害に対して政府責任として、各省にわたっているから、これを防除する応急策をどうするか、復旧策をどうするか、それに対する財政的な扱いはどうするかということは、それぞれの単独法が現在二百五十の関連法が出てきておる。そして一番問題になる点の災害をいかに防ぐかという点が総合開発法の大きな使命となっている。しかもそれが政府のいうところでは、単に災害基本法の中に置かれているような中央防災会議を作って、そこで基本計画を立てるのだと全く簡単にやっておられますけれども、この総合開発法の場合にはもっと詳しい規定があるでしょう。しかもこれは地域から積み上げて、地域の創意と地方住民が自治行政に参加していく、その中で計画を作り、それが二つ、三つにわたる場合には協議機関を設けることができる、そういう中から特定地域の開発計画をやる。こういうことを参考にして全国計画というものを作って災害の防除というものをやっていこう、こういう基本計画がちゃんと規定されているわけでしょう。あるいは都市及び農村の規模及び配置の調整に関する事項ということも、今日における地盤沈下なり、あるいはまたいろいろ問題になっていることに対しても措置するようになってきているわけです。そういう法律があるにもかかわらず、これが実行されなかった。そして逆に公共事業の推移を政府の発表しておる統計から見て参りましても、この統計自身の中に、あるいはまた今後における十年計画の行政投資の内訳を見て参りましても、そういう点が抜けてしまっておるでしょう。やはり産業基盤の強化、これに関連するいわゆる構造改善政策というものが最近とられてきているけれども、すべて集中しておるのは社会資本の充実——三十年以前においては、企業におけるところの近代化なり、企業内における資本の充実のために公共事業が導入されていっておる。そのために治山治水が狂ってくる、あるいは先ほど建設省の官房長が言われるように、治山治水計画は二十八年度の災害にびっくりして立てて、緊急災害協議会を内閣の中に設置した。そこで立案して、十カ年計画でこれで大丈夫だと思ったけれども、六カ年たっても一八%しか進まない。ところが伊勢湾台風が三十四年にやってきたので、あわ食ってまた三十五年度からやり直しだという形をとっておられますけれども、しかしその計画の中にも、工業用水の確保、水資源の確保、電源の確保というようなことが重点となって計画され、予算が計上されている、これまでに見ても。あるいは公共事業に対するところの比率の少なかった道路計画がぐんぐん伸びて参って四兆九千億円、こういう膨大な道路計画が進んできておる。しかもこれに対する計画に地方自治体は何ら協議することもできなければ、参加することもできないという法律建前になっており、しかも片方の総合開発の場合には、ちゃんと住民が地域計画の中に参加できる建前をとっている。その中から全国計画というものが作られる。こういうようなりっぱなものがあるのにかかわらず、これをやってこなかったその怠慢が、今日のような悲惨な災害を惹起しておるのではないですか。もちろん対策も大切です。この問題もまたあとから質問していきたいと思いますけれども、問題は対策よりも災害をいかに防除するか、これに対するところの政府の行政的欠陥、そういうことが起こった原因の科学的な解明を国民の前に明らかにしていくことが一番大切じゃないかと思う。その上に立って防災基本法を作るのだといってこそ国民もそうかと思います。しかも府県の場合あるいは市町村の場合、一体市町村の場合なんかにも法律規定するのはどうかという疑点がある。いずれまた逐条質問の中でもお聞きしたいのですが、消防組織法によってもちゃんと、消防本部長並びに府県知事は町村消防の管理運営、行政に対しては干渉してはならぬという強い規定をもって町村自治体消防の性格を明確にしておる。この前の国会において、それを、府県知事並びに国家消防本部長は、その町村の自主性を妨げてはならぬ、尊重しなくてはならない、こういう条文に置きかえようとしたのを、本委員会において削除して、再び干渉してはならぬという規定にしたわけなのですが、そういうように町村消防を国が指揮できるような印象を与えるような形で——消防組織法において明確に規定しておるのも、戦争前において水防法並びに消防法というものがいかにゆがんだ方向に行使されたかという反省の中から、消防組織法はここに明確なくぎをさしておると思うのであります。それを皆さんが勝手に、町村には設けなければならないというようなきびしい規定を設けるということ、これもいろいろ問題の中において御説明を求めていくといたしましても、私の一番考えるのは、そういう行政欠陥なり政府責任というものが災害を呼び起こしておるのだ。反省して、遺憾だったと言うのではなくて、災害を呼び起こした原因を明らかにすることこそが、この基本法を生かすかどうかという立場に立つのではないか、そういう点が非常に遺憾だと思うわけです。この点がやはりはっきりしてこないと、あとに、特にこの倫理規定は百二十条となっていますが、はたしてこの倫理規定がどうなるだろうか。あるいは現在の災害関係法は二百五十からありますが、この二百五十あるのを一応基本法の中にうたい入れておる。だから重複しておるし、まことにこれは読みづらいところがたくさんあると思いますけれども、そういうことは別といたしまして、そういう根本的な態度がはっきりしていない以上、この条文が非常に読みづらくなってもおるし混乱しておるのじゃないかということを考えるのでありますが、一体災害基本法は宣言法という考えに立って考えられたんですか。あるいは一般法という考え方なのですか。あるいは特別災害に関する法律として作られたんですか。そういう点に対する心がまえをお聞きしておきたいと思うのです。
  80. 安井謙

    ○安井国務大臣 結論的に申し上げますと、今の宣言法であり、一般法であり、あるいは特別災害に対する法律であるのかという御質問に対しましては、私は全体を含んでおると思うのであります。今までの仕事の実績に対する反省が足りないじゃないか、これは私ごもっともかと思います。災害そのものが日本における特殊の状況であって、これが完全に天災であるという場合も私は相当多かろうと思います。また同時にもっとこうすればよかったであろうというものも今まであったことであろう、これも御指摘の通りであると思うのであります。そういうものをほんとうに今後積極的にやります際のやり方というものをこの法律できめよう、今御指摘のように国土総合開発法というようなものでも、相当総合的な民主的な災害の条項があるのじゃないか、こういう御指摘でありますが、これは総合開発法だけに限りません。各省がいろいろの仕事をやっていきます場合、建設とか運輸、港湾をやる場合につきましても、それぞれ災害というものに対する配慮は今まででもやっております。それぞれの法律においても災害に対する面はたくさんあるわけであります。何度も言いますように、ほんとうに災害そのものを目標にしたところの十分な総合的なもの、災害のみを対象とした積極的な施策、あるいは総合性という面に欠けるところが今まであったわけであります。これまでそれぞれの機構、それぞれの法律によって災害対策が立てられておりながらも、十分な効果が発揮できなかった面もある。そういう意味で、ここに総合性を持たせて一つ中央防災会議なり防災基本計画なり、防災の実施計画というものを作り上げていこうという意図でこの法律を出してきておるわけであります。具体的な問題で若干足りないという点につきましては、今申し上げましたように、また今まで申し上げましたように、大体二段がまえでいこう、具体的の問題については各省各機関にまたがる問題でありますから、この基本法と防災会議を基礎にいたしまして、それぞれの各省各機関が積極的にやっていかなければならない体系を今後作っていこうというつもりで法案を出しておるわけであります。
  81. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 佐野委員、大臣は四十分からあれだそうですから、なるべく簡単に……。
  82. 佐野憲治

    ○佐野委員 もう休憩の時間が参っておりますのでなんですが、委員部の方からお配りになった朝日新聞の総合開発の資料がありますが、御参考までにこの資料によりますと、ハンブルグの新聞が書いておるのは、数年のうちに人間が月の世界まで飛んで行けるようなこの御時世に、日本人は台風の前に生命財産を保障されていないのである。こう新聞社説に載っておるそうですが、大臣はこれを日本の特殊性と言われますが、世界の人たちはこういうことをびっくりしてながめておるということも一つの参考になるのじゃないかと思います。私は具体的に、そういう災害の起こるべきたくさんの原因、そういう行政的な欠陥をやはり明らかにしていくことが大切ではないかということを指摘いたしておるわけであります。ですから、災害防除ということが一番大きな眼目であり、そのために総合開発法ができて各省間の調整をやるわけであり、これは担当が経済企画庁であって、経済企画庁の総合開発局には、それぞれ建設省からも来ておるし農林省からも来ており、各省からそれぞれの専門家がみな派遣されておるわけで、その中で総合的な災害防除を中心にしてやる。その防除を怠った原因は何であるか。治山治水計画や道路計画を見ても、あるいは港湾計画、海岸保全の今日までの歩み方を見ても、地方自治体が地方財政計画で、災害防除に充てる予算を計上されましたか。三十五年度、三十六年度を見ても、一体地方自治体ではどれだけ災害防除にさけますか。地方自治体は災害防除をするために何らでき得ないということが地方財政計画の中に出てしまっているじゃないですか。あるいは国庫補助の問題を見て参りましても、国庫補助の制度そのものはほとんど産業基盤の強化、社会資本の充実という方向にこそ持っていっているじゃありませんか。そういうことがこういうおそろしい災害を続出させているのだし、これを防除するために国民と一緒にやろうじゃないか、そのために政府は重大な決意を持って原因を明らかにしてやるのだということがはっきりしてこなければ、防除の点だけはそういう工合に簡単に基本計画を作るのだ、国土総合開発は弱いものにして、あと災害が起こったらどうするのだ、応急措置はどうするのだ、しかも二百五十もある法律を適当に一本そこへ入れてきて、総合性があるのだ、計画性があるのだ、これは訓示規定にならざるを得ない。あとには各省がそれぞれ持っておる法律があるのだから、この法律を研究するんだ、これを強化するんだ、これを整備するんだ、この点には財政的にも現実に合おないところがあるとか、応急災害なら、災害が起こったときの処置なら処置としても、そういう態度がその中に出てこなければならない。これはそのままほうりっぱなしでしょう。ただ現在あるのをこの条文の中に入れていくだけですから、訓示規定形式をとらざるを得ないことになっておる。しかも大事な災害の原因を究明していくという努力はほとんどなされていない。それを前文の中に明らかにして、今後の政府の施策の方向を明確にすることこそが、この基本法を作る責任じゃないか、かようにも考えるわけですが、時間がありませんからあとまた続けさしていただくことにして、これで終わります。
  83. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 午前の会議はこの程度にとどめます。本会議散会後再開することとして、これにて休憩いたします。    午後零時五十二分休憩      ————◇—————    午後三時七分開議
  84. 渡海元三郎

    ○渡海委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  災害対策基本法案を議題とし、質疑を継続いたします。佐野憲治君。
  85. 佐野憲治

    ○佐野委員 休憩前に引き続き、大臣が来られないからまた変わってしまうので、非常に困ると思うのですけれども、次官がおいでになりますので、お伺いいたします。  こういう重大な国民の生命、財産に犠牲を与えておる災害、昭和二十一年から三十四年まで三兆億円の財産、三万人の生命を犠牲に供しておる。こういう災害に対してやはり抜本的な対策を講じたい、また講ぜねばならないということは、しばしば岸総理大臣も、伊勢湾台風の惨状の中から、国会においても言明しておられたわけですけれども、それだけに災害対策基本法に対しては、やはりこういう災害が繰り返されることに対して、政府としても行政的な施策の欠陥、あるいはそういう原因を科学的に解明して、そういう中から国民に対して災害を防除するのだという決意を明らかにすることこそに基本法制定の意義があると考えます。その意味から、やはり教育基本法の場合におきましても、前文をつけてこれからの新しい教育はどうあらねばならないかという政府の決意、責任を明らかにしてあると思いますし、農業基本法におきましてもやはりそういう態度で、今日の農業の陥っておる現況とこれに対する政府責任、農民に対する呼びかけを力強く訴えておる。しかるにかかわらず、今度の災害対策基本法になって参りますと、どうもはっきりしないのではないか。先ほど次官にもお尋ねしておった国会に提案され、上程に至るまでのいろいろのいきさつを見てみましても、何だかすっきりしない。そういう点は非常に残念だと思いますが、そういう態度がはっきりしなければ、災害をどう防除するかという基本的な計画なり方針が生まれてこないのではないか、こういうことを大臣にもお聞きしておったわけです。  そこで、大臣もお見えになりましたが、今次官にも休憩前の考え方に対しての話を進めておったわけですけれども、そういう基本法に対する政府のはっきりした考えなり、決意なり、責任を明らかにしていないという点は、あの条文を見て参ります場合において、そこに原因があるのじゃないかという感じがするのです。特に第七条において「住民等の責務」という項目を設けておられますが、これはどういう意味において挿入されたわけですか。
  86. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 先刻来からるるお話のございまする点につきましては、われわれといたしましても同感でございます。災害対策基本法といったようなものを考える際には、災害というものがいかに大きな国土並びに国民の財産に対して被害を与えておるか、またその被害を最小限度に防止していく、あるいはそもそも災害というものが起こらないための予防措置に万全を期していかなければならないにもかかわらず、その体制というものが従来必ずしも十分ではなかった。そういうことに対する反省の上に立って本問題を取り扱っていかなければならないということは、その通りであるというふうに考えております。そういう反省の上に立って基本法案の立案作成というものも進められて参ったということは疑いのないところでございまして、そのような趣旨から、御意見もございますけれども、原案自体におきましては、随時にその点を明らかにして、将来の向かうべき方向、施策において改善を要する点といったような点を明らかにしようというふうに、積極的な意欲を見せておるつもりでございます。基本法案におきましては、今までも御説明申し上げておりますように、その一つのねらいといたしまして、総合性を確立し、あるいは計画性というものを確保していくとともに、国、地方その他を通ずる責任の所在というものを明確にしていくということも、これまた非常に重要な事柄でございまして、ある事柄についてだれが責任を持っておるのかわからないというようなことでは、いざという場合の防災体制というものが十分なものとは言い得ないのであります。そういう意味から、本法案の総則におきましては、国の責任あるいは地方団体の責任、その他地方公共機関責任というように、およそ防災に関して責任のある立場にあります機関責任というものを明確にいたしたのであり、これとともに住民自体につきましても、やはり直接災害が起こった場合に被害をこうむるというのは国民自体でございますが、国民につきましても、従来も災害時におきましてはそれ相当の機能を発揮して、防災のために御努力を願っておるわけでございまして、その点住民だけに責任を押しつけて他は知らないのだというような体制はむろん許されません。第一義的には、防災ということについては国が責任を持つ、また地方団体が責任を持って参らなければならない。その点はまず強調しなければなりませんけれども、それと同時に、住民等につきましても、責任の所在、持場々々においてやれるだけのことはやって参るということをはっきりさせますることが、責任の所在を明確にするという意味からも適当ではないかということで、規定をいたした次第であります。ただ、住民について過重な負担その他の期待を寄せますことは、立場上もそういうことはございませんので、そういうことで地方公共団体の住民は防災に寄与するように努めていかなければならないという精神的な一つの訓示的な規定を置くことにいたした次第でございます。
  87. 佐野憲治

    ○佐野委員 しかしながら、やはりそこにも根本的に考えなくてはならない問題が含まれておるのじゃないかと思うのです。国民は憲法で健康で文化的な生活をすることを保障されておる。そのために行政府を持っておる。そのために義務として税金を払っておる。ですから、臨時的な意味において住民として協力していくことは、これは国民として当然でしょう。しかし、そういうのじゃなくて、このような人災がどうして起こったか、ここに国の大きな行政的な欠陥もあり、治山治水、いろいろな問題が明らかになってきておると思うのです。そういうのをはっきりさせないところに、責任の所在を明確にするのだといいながら、住民の責務というものを挿入しなければならないことになってくるのじゃないかと思うのです。その点は、たとえば防災基本法が災害対策基本法という工合に法制局によって変わって参ったという、私は法制局の考え方は正しいと思うのですけれども、この条文を読んでみますと、これは防災ということに重点を置いているのじゃなくて、災害の起こった場合における応急対策、復旧あるいは治安、こういうところに重点が置かれているのじゃないかと思うのですが、最初の皆さんの意気込みは、やはり防災ということに重点を置いて、どうすればそれを防除することができるか、これに全力を注がなければならないというところに重点があっただろうと思うのです。ですから、今までの経過をいろいろ見てみましても、そういう力強い意図があったと思うのです。総理大臣の国会答弁を見て参っても、あるいは当時の石原国務大臣が伊勢湾台風の現実をつぶさに体験されて、本委員会において説明されたことも、もっと根本的に災害に対して取り組まなくてはならない、それが政治責任であるという考え方を強く述べておられたと思うのです。それが変わってきてしまった、前文もつかなくなると同時に、変わってきてしまったということなのではないか。たとえば防災基本法の中を見ましても、計画をきめる内容として国土総合開発計画及び特定地域総合開発計画における水害、風害その他災害防除に関する事項という工合にして、総合開発法というものとの関連性を明確にし、その責任を明らかにすると同時に、今まで十年間も放任しておった、しかもそれが電源開発なり、今日景気調整対策をとらなくちゃならぬような、いわゆる行き過ぎ投資、行政投資あるいは民間施設投資、こういうものも、やはり事の欠陥が、防災に対する根本的な取り組みを怠った責任が、やはりこの災害対策となって現われてきたのじゃないかという意味において、防災基本法の原案の中に盛られておる方が積極的な態度があったのじゃないかという感じがするのです。そういうのは全部削り取られて、あっさりと防災基本計画に関する件という工合になってしまっておるといろことと同時に、今申し上げた住民の責務なんてつけなくてもいいことまでついておるのじゃないか、こういう点が私納得できないと思うのですが、やはり先ほど申し上げましたように、住民としては、行政府を持ち、しかもそれによって税金を納めて、災害の起こらないようにやってもらうとい4、これがやはり私は国民としての基本的な人権を守る上においても当然な態度だろうと思う。それを行政府の方から押しつけがましく住民の責務という形でやられるというような、防災という点が非常に隠れて災害対策本来における災害応急対策あるいは復旧、こういうところに重点が変わってしまった。だからこういう言葉が入ったというように感ずるのですが、その点はどうですか。
  88. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 もちろん災害対策というのは、国が第一義的には責任を持ってやらなければならぬことでありまして、住民に対して責任を転嫁していくというような態度はとるべきものでないということは、これは申すまでもございません。ただ、災害という、そういうような非常事態におきましては、それぞれの持ち場、持ち場で協力していただく部面があること、これまた事実でございまして、それらの点について応分の防災に対する寄与の努力はやっていただきたい、その程度のことを住民に対して責務として規定いたしますことは、非常に出過ぎたという事柄には当たらないのではないかというふうに考えておる次第でございます。  防災基本法が災害対策基本法ということに変わりました経緯については、これは法制局でそのようになったわけでございます。しかし、根本的には、防災基本法でもって考えておりました構想ないし体系というものと災害対策基本法の骨子というものが変わっておるものではございません。言葉の表現の仕方、規定の内容等において若干の整理はございますけれども、基本的な骨子というものは変わっておらないのであります。その場合に、防災というふうに表現をしておりました場合におきましても、防災というのは、これはただ単に考え方といたしまして災害の予防、災害の未然防止ということだけを考えておったわけではない。ただその場合に、若干従来足りなかった災害予防的なこと、災害の未然防止的なことに重点を置いていかなければならないという配慮をいたしておったことは事実でございます。ただ、内容といたしましては、災害未然防止という点ではなくて、災害時における応急対策なり災害復旧、そういうものを全部一貫して網羅して規定することにいたしておりましたので、そういうことになりますと、災害予防という語感から参りますることが、若干災害対策とは違った、予防だけしかやらぬのか、かえって重点を置き過ぎたことによって、それしかやらないというような誤解を与えるということになりましてもどうであろうかというような意見もございました。その点ももっともであろうというふうにわれわれも考えたものでございますから、法制局の意見に同調いたしたような次第でございます。内容の骨子において根本的な変改を受けたわけではございません。また、言葉を変えることによって、災害予防、未然防止ということに対して関心を薄めたというようなことでもないという点を御了解賜わりたいと存じます。
  89. 太田一夫

    ○太田委員 関連して。今の意見にお尋ねしますが、住民の災害対策に対する協力を求められたということは、住民個人の立場からいいますと、おそらくその力から勘案しましても大きなものじゃない、何か精神的なものであり、場合によっては海岸に住んではいけないぞと言われたときは海岸から引っ越しをしなければならないという義務の方が強調されるような気がする。そこで、あなたは、防災というものはあるけれども、当面する問題が、ここに中心を置いて通るというふうにおっしゃったように聞こえたのですが、かりに防災面を除いて災害が起きてからの時点にこの問題をしぼって考えてみても、この法案の中には、災害が起きると、その際に対策委員会とか何かが発足していろいろな活動をする、災害が起きた時点において当面する緊急の活動を始める、これは相当強くわれわれに印象づけられるものが書いてありますね。ところが一応災害が済んで、そのあとの湛水の排除、公共土木施設の復旧あるいはそれぞれの施設の復旧に関する諸費用の捻出というようなことになりますと、それが書いてない。あるのは一部だけだ。自治省に関することは一部具体化して書いてありますけれども、建設省や何かのことに対してや大蔵省関係に至っては、はなはだ希薄だ。きょうは衆議院本会議でたまたま災害対策委員会から上がって参りました法案が五つ可決されたのです。その中にありますたとえば公立の学校の建物等の災害復旧に関する特別措置法案、こういうような特別措置法はきまり切った災害、風水害しかございませんけれども、基本法ができたらこの暫定法としての特別措置法が恒久法化してくる、こういう約束があってこの基本法ができた、しかしそれはわからぬ、計画の中でもう一ぺん練り直しをしたいということであるか、どちらですか。
  90. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 激甚災害に関する対策については特に規定を設けて、個々の災害ごとに個別に特別法をやっていくというようなことは避けて、統一的恒久法として制定するのがいいということが従来からの要望事項にも上がっております。もちろんその方が事実問題といたしましても適当であるということを考えておるのでありまして、その関係の規定は激甚災関係の特例法案をまとめて恒久法にするということは、はっきり法律でもっても明示をしておる次第であります。従いまして、今次の国会においても、今審議中でございまする各種の特別法案というものにつきましても、将来恒久法として激甚災害時における特例法の中に吸収されてくることを期待をいたしておるのであります。
  91. 太田一夫

    ○太田委員 激甚災害の激甚というのは別のところでまたきまる。激甚という概念の決定はまた特別なんです。今度の災害は何も激甚地に対してこうなるというだけでなくして、一般の場合はこうだ、激甚地の場合はこうだ、二本立てに災害対策がなっている、だから、災害があった場合は全部激甚地だというのではない。普通災害と激甚地という特殊な災害地帯と分けて対策が講ぜられておりますけれども、その激甚地というのはどうなるかということは、この法案の中では別に定めることになっている。そうしますと、伊勢湾台風のときにできた二十五なり二十六の特例法案を中心としておるが、第二室戸台風を中心とする特例法も十幾つ用意されておりますから、これもあわせて、これらのものは基本法ができたら全部この条件で固定される、コンクリートされるとわれわれは思っていいのか、それは期待をするということだけであるのか、それは明らかでないと思うがどうですか。
  92. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 激甚以外の一般の現在ございまする土木災害とか、あるいは公立の教育施設の災害であるとか、あるいは農林関係施設の復旧でありますとか、こういう法律がございますが、この法律自体を一本にまとめるということは、この法案自体においては直接に義務づけてはおらないのであります。ただ、それらにつきましても当然今後基本法の精神にのっとりまして、再検討を要するものがあれば再検討していく。立法形式といたしましてもこれを統一的にしていく、そういうことがよろしければそういう方向にも事柄は進んでいくわけでありまして、それらを含めて国における経費負担の適正化をはかるべきであるという趣旨のことを、国の責務としてもうたっておるつもりであります。
  93. 太田一夫

    ○太田委員 責務としてそういうことをうたっておるつもりであなたはいらっしゃるけれども、それはここにこれができたらこの法律が制定されますという何も出ておらない。提案されておりませんから、基本法しかないからわからない。恒常立法は、今まで公共土木施設の災害復旧に関する国庫負担法とかいうものは別にあるといたしましても、二十八年災以来数度の災害に特例法案が次から次へとそのつど特定の災害を対象して作られてきた。それが今度基本法ができたらそういうことは一切なくなって、最上の条件以上のもので恒久立法化されるのかどうか、それは確約されるのかどうか。そんなことは私はあたりまえだと思うのですよ。この今の特例法だってちっともよくないのだから。十分の九の国庫負担なんてちっともよくない。全額の国庫負担をせよとじゃんじゃん地方から来ているでしょう。現状のものを最低線としてそれ以上のものは必ず出せる、出るという確約があるならまだいいのですが、ないと思うのです。ほんとにあるのですか、局長
  94. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 その点は、法律自体に、それが最低線であって、必ず今後のものはそれ以上のものでなければならないというふうに基本法案でもって義務づけてはおりません。おりませんですが、しかし、従来の実績というものは、おのずから重なってきておるわけでありまして、それに対応いたしまして、地方団体におきましてもそれぞれ具体的な計画を予想し、これに対して対処をして参っております。従いまして、そういう実績が基本法ができることによってかえって無視されてしまうというようなことはあり得べからざることでありまして、当然そういったような実績は貴重な実績として考慮されて参るというふうに考えております。
  95. 太田一夫

    ○太田委員 だから、それはあり得ベからざることだとわれわれも思うのですよ。思いますけれども、何年何月の風害だ、何年何月の水害だといって一々特例災害をあげて、特例災害に対する特別措置法案という形でできてきておる法律案は、地方公共団体ないし住民の陳情の要旨からは離れて、はるかに遠いものであります。だから、これ以上のものができなければいけないと思う。国の責任だとか国民の責任だとかいうあの文字を強く印象づけて読むならば、これ以上のものができなければならないと思いますが、その用意があるとはどうしても思えない。この辺に不安がある。  それから、これは大臣に一つお答え願いたいのですが、今局長にお答えいただきましたが、特別措置法案は必ず恒久法化して出します、これを断言できるかどうかということと、それからもう一つは、先ほどの住民の責任と国の責任の関係と地方公共団体責任との三者の関係ですけれども、これができたらば、国の責任というのは強くなって、今までの法律の中で変えなければならぬものがたくさん出てくると思うのです。私はそう理解しておった。たとえば海岸法などは改正をして、最大なる可能なる限り海岸保全の責任は国の責任であるという、こういう建前法律にならなければならないと思う。地方公共団体にまかせておるという建前は改めらるべきだと思ったのですが、それも思い違いであったかどうか。それは期待してもいいのかどうか。海岸の保全の責任は国の責任となる。建設省所管のもので海岸保全の諸工事が行なわれる。たとえば防潮堤が和歌山や大阪の災害対策委員会でもみにもんでおるのは、防潮堤そのものをあまり建設省でやりたくない、予算が足りないというところに二の足を踏んでいるのです。これは海岸保全の責任は海岸法によって地方自治体のものだからというような規定は今後改めて、国の責任として建設省直轄のもとに大規模なる海岸保全が行なわれる、高潮対策による防潮堤なるものは、災害が起きた地帯でなくて、全体的に起こるべきおそれがあるところになされるものと私は期待しておる。これは期待が間違いだったのでしょうか、そうなるのではなかったのですか、これを大臣から一ぺん伺いたい。
  96. 安井謙

    ○安井国務大臣 災害の復旧対策等につきまして国と地方団体の負担区分を明らかにして、そうして国がやるべき仕事を迅速にやらなければいかぬ、これはこの法律の全体を通じての精神でございまして、今御質問の通りの趣旨が盛られておるつもりでおります。
  97. 佐野憲治

    ○佐野委員 いろいろお聞きしたい点もたくさんあるのですけれども、大臣がお見えになっておりますので、大臣に伺いたい。どうも私、やはり納得できぬと思うのは、災害を防除する、このことは非常に大きな問題だと思うのです。それだけにこの問題と取り組む姿勢をくずしておられるのじゃないかという点が一番気がかりなわけですが、災害というものは国の責任なんだ、これはやはり明確にして、しかもそのことに対して責任を持つという態度がなくちゃいかぬと思うのです。私も県議会議員をやっていたころ、昭和二十五年に、先ほども申しておりました国土総合開発法と一緒にシャウプ勧告が出て参って、災害復旧に対してはこれは国の責任として全額負担すべきだ、こういう勧告に基づいて、二十五年はそういう措置がとられたと思うのです。そういうシャウプ勧告の趣旨がわずか一年ちょっとしてくずれ去ってしまった。この中にやはり当時における地方自治体なり地方住民に対する政府の不信感、あるいは申請の査定に対してもいろいろな皆さんにおいて不都合だと思われる点があったかもしれませんけれども、しかし、その考え方はやはり正しいんじゃないか、そういう考え方から出発して、じゃ国土総合開発法を作って地方計画を立てようじゃないか、そうして国土を保全しようじゃないか、こういう新しい希望に満ちて、地方自治体が戦後の荒廃から立ち直っていこうとする姿があったと思うのです。それにこうしてシャウプ勧告がなされてきて、法的なそういう姿勢がとられた。ですから、そういうことも考えてみるときに、特に最近における災害の問題を真剣を考えなければならない。しかもこれは先ほども申し上げますように、皆さんほんとうに災害の問題と取り組もうとすると、どうしても治山治水十カ年計画と取り組まなければならぬ、あるいは港湾整備五カ年計画と取り組まなければならぬ、あるいは道路整備十カ年計画、あるいは海岸保全の整備計画と取り組まなければならない。そういう問題と取り組んでいきますと、どうしても災害を防除するということがその計画の中に出てないわけですね。大臣自身も閣議において決定された行政投資十六兆一千三百億円の中身を検討されても、これは災害防除というのはほとんど縁の遠い存在でしょう。やはり高度経済成長政策の中で、特に社会資本の充実、産業基盤の強化、これが重点となって行政投資は組まれてきておる。そうなって参りますと、そういう膨大な計画に対して、これは中央防災会議の性格もあとからお伺いしたいと思うんですけれども、そういう会議がチェックすることができるだろうか。今進行していっているこの経済成長に伴う、いわゆる立ちおくれておるところの社会資本を充実しようという、こういうところにブレーキが——進んでいってしまっておるそのときに、災害の復旧はこれは政治的にやらなければならない、予防のためにやることがはたしてできるであろうか、中央防災会議は一体それだけの権限を持っておるだろうかどうだろうか、そういうところが皆さんも立案過程においてぶつかられた壁じゃないかと思うのです。そこで、中央防災会議の事務局は、一体どこが担当することになっておるわけですか。
  98. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 中央防災会議におきましては、事務局が置かれることに相なるわけであります。この点は政令その他によって漸次明らかにされていくことに相なると思いますが、立案の過程においていろいろ論議をいたしましたところでは、一応現在の自治省の外局でございます消防庁がこれに当たっていく、そこに関係各省は職員を派遣をいたしまして、それでもって事務処理の円滑と連絡調整をはかっていくということがよいのではないかというふうにされておるわけでございます。
  99. 佐野憲治

    ○佐野委員 大臣にお伺いしますが、総合開発法ができて、しかも経済企画庁の中に、いわゆる課長が建設省から来れば次長は農林省から来る、こういう形にして人員を配置して、あれ自体が一本になってやっているにもかかわらず、十年間草案すらも出すことができ得なかった、こういう現況でしょう。しかもいろいろな各省における計画がどんどん進んで参っておる。それを一体そういう災害予防という大きな治山治水の問題をめぐり、政府あるいは各省の中に考え方を相当改めてもらわなければこれはやれないというときに、この消防庁を中心にする事務局が一体チェックしていけるんですかね。他の問題は別ですよ。災害を予防する、防除する、こういう目的のためにやっていけますか。経済企画庁が同じ任務を与えられて、法によってできて、十年間やってもチェックできなかった。逆に防災の予算が、大臣も国家予算の経緯を静かに思い起こしてもらえばわかると思うのです。昭和二十九年、三十年、一体公共事業はどういう変化を遂げてきておるか。二十八年の痛手にもかかわらず、どいう工合に変わってしまったか。だから防災というものは各省でこれを統一する、大臣のいわゆる計画化していくということがはたしてできるかどうかということですね。その二点について大臣はどうお考えになりますか。
  100. 安井謙

    ○安井国務大臣 事務局はあくまで事務局でございまして、ねらいとするところは総理を中心にしました防災会議、それによる防災基本計画の樹立、さらにそれに基づいての各省の実施計画、これを大きな骨組みにしていきたいと思っております。
  101. 佐野憲治

    ○佐野委員 ですから、それは現在ある国土総合開発法のもとにおけるいわゆる災害の予防、防除、これを計画の主たる事項として国土保全をうたっておる。これが各省におけるところのいろいろな考え方の調整ができなくて、十年間作れなかった、こういうことを明らかにされておるのに、そういう同じ法律があるにかかわらず、防災計画、防災会議なんだ、基本法を作るんだ、こう言ったって、これを裏づけるものが一体どうだろう。事務局は事務局だと言われますけれども、実際膨大な計画を調整していくのに、大臣が行って、これは数字的にもできるものじゃないでしょう。結局これは事務局において調整しなければならないと思うのですが、そういう点に対して災害の防除、しかもこれは国家の責任である、だからこれは過去の欠陥を明らかにして、どうしても国家の責任で解決していくんだ、こういう態度があれば、これらの問題はやはり出てくるだろうと思うのです。それがないところに、中央防災会議を作るんだ、総理大臣を長とする行政機関の長が集まってくるんだ、事務局は事務局なんだ、大臣でやるんだといっても、これがはたしてできるだろうか。今現にこの所得倍増計画に基づく十カ年計画が進行している途上において、そういうことがはたしてできるだろうか、もしできるくらいなら、今のいわゆる基幹都市構想にいたしましても、やはり通産省なり何なりの中においてなおも意見の一致を見ざるままに、現在いわゆる草案なるものが伝えられておりますけれども、そういう現在における現実の時点に立って、今こういう防災会議を作るんだ、そこでは基本計画を立てるんだ、各省がこれを実施するんだ、こう言われても、どうですか、私は大臣が確信を持ってやれるという根拠を一つ明らかにしていただきたいと思うのです。
  102. 安井謙

    ○安井国務大臣 ちょっとお言葉を返すようで大へん恐縮なんでございますが、佐野さんのお話の御心配というようなことはいろいろあると思うのです。災害の復旧費というものは全部国が持って乗り出してやってしまえばいいじゃないか、あるいは今の事務局というものが大きな働きをしなければ仕事にならぬじゃないかということは、これは私、一面そういう点は確かにあると思うのでございますが、やはり今の仕事の形から申しましても、国と地方の自治体とはやはり相互の関連を持ってそれぞれ負担を分任しなければならぬ。あるいはまた今度防災計画を立てるにいたしましても、これはやはり事務局が強力であるからそれでできるということであっちゃ、ほんとうの政治じゃなかろうと思います。やはりこれは時の最高の責任者及び学識経験者がほんとうに基本計画を立てる事務局は、事務局としての職務を果たすという形でなくちゃなるまいということを私たち考えておるわけでございます。国土開発総合計画につきましてもいろいろな御批判がありますし、私は他の部門が進み過ぎておるとか減っておるとかというふうには申しませんが、あそこに防災とございましても、あれの目的とするものはやはり国土開発の基本的な進め方という問題が中心なので、それがあるから防災を直接対象にした基本計画の樹立というものはしばらく要らぬじゃないかというふうにはなるまいかと思っておるわけでございます。
  103. 佐野憲治

    ○佐野委員 しかしながら、大臣、防災基本法の中にはちゃんと国土総合開発に基づく部分ということが挿入されておったのが、今度の草案から消えておるので、やはり一応これを中心としていくのが建前であると思うのです。現に役所もあるのですから。それをわざわざはずしてしまう、しかもあの条文を読んでみると、大きな柱として国土保全——まああれができたのは、二十二年、二十三年、二十四年の災害、戦争によってほとんど伐採されておる、山が荒らされておる、こういうことから、もう一雨くると災害々々で追いまくられたのが、実情だったと思うのです。大臣も御存じだろうと思うのです。二十二年災害、二十四年災害が、二十九年ごろにいくと三年間でやるというのもやれない。四年、五年になる、もうしようがないから五年以後のものは切り捨てだ、五年たっても復旧やらぬやつはもう切ってしまえというような形で切られてしまったというような状態であったわけでしょう。それだけにやはり国土を守りたい、災害を防止したい、それにわれわれは参加しようじゃないか、こういうのが府県計画を作るという住民の参加による地域計画、こういう民主的な建前で前進方向を示したのがあの当時の情勢だったと思う。ですからその点をやはり勘違いしてもらっては困るのです。ただ問題は、現在進められておる治山治水が災害防除に役立つのではなくて、逆に災害を呼び起こしておる。ダムを作る、発電をやる、それが河床の変化を起こしてくる。それからまた産業基盤の整備、このことが四大工業地帯に人口の集中をもたらす。地下水の吸い上げをやる、宅地のむちゃな造成をやる、ここにも現在の災害の原因が出てきておる。道路計画なりあるいは治山治水計画なりを進めていけば進めていくほど、災害を誘発する原因を今日作っておる。しかしながら、これを少なくとも所得倍増計画の路線に乗せていくためには、この事業は進めていかなくちゃならない。それが災害の原因になってくる、これをどうチェックしていくかという問題になってくると、はたしてほんとうに取り組んでいけるかどうかという点が一番大きな問題、これが実は抽象的に軽く葬られてしまって、防災基本計画に関する件となっている。府県にいたしましても、現在大臣自身が地方財政計画を検討されて、府県あるいは市町村の公共団体、自治体が一体やっていけると思われますかね。独自でどういう防災計画を一体立てていけるか。国の防災計画はどうしても地方町村における防災計画というものをしんしゃくして、やはり府県が防災計画を立てていく、これに基づいて国が大きく防災計画というものを打ち立てていく。また法案の組織の中においてもそういうルートが積まれているならまだしも、それは大臣の言われることはわかるんですけれども、そうじゃなくて、国は国でやるのだ、県は県でやるのだ、何はやるのだ、国の方針に従っていかなくちゃならぬぞ、こういう工合にして、町村の計画、地方自治体の計画、国の計画、これは一体どこで調整していくか。国の方針に従わなくちゃならないという規定だけは入っていっておる。国土総合開発のように下から住民が参加して作っていくことを府県が参考にして、こうやっていく。府県のやつを総理大臣に提出してこの審議会にかけていく、こういうところにも食い違いがあるのじゃないか、こう私は考えるわけです。ですから、実際にそういうことは県は県でやれと言ったって、一体地方財政計画の中にそんなものを組んでありますかね、やれるだけのものが。財政基準需要の中にそういうものが組まれているかどうか、組まれておりやしないでしょう。結局は今の治山治水あるいは道路計画、港湾計画、こういう計画に合わせる交付税、単位費用その他の補正増——これに合わせるための財源の保障をやっておられる。これに国自体の方も補助率のいろいろな問題を出して、それで受け入れるような態勢を作ってきている。こういう形をとっておるとき、そういうのに追われておる現在の県の財政の中から、いわゆる防災のために、災害を防除するために、独自の施策をするという財源が一体あるかどうか。国自体の現在進められておる計画をそういう形に切りかえることができるかどうかというと、そういう問題はともかく、それは困難な問題じゃないかという不安を感ずるわけなんです。ですから、皆さんのあとの条文を見ていくと出てきますのは、非常に熱意を込めてやるのは、災害が起こった、これは起こったらしょうがない、どう応急対策をとるか、これにはどういう訓練をするか、起こるのだから警報をどうするか、通報をどうするかというところに重点を非常にこまかく置いて、災害復旧はこうだ、こういうことになる。今言われるまでもなく、大体直接だと見られるものでも百五十ある。関連する法規を合わせると二百五十くらいあるのじゃないですか。災害復旧なりその応急措置に対してこれくらいの法律というものがある。しかしながら、防災ということになってくると、法律一つないといってもいいのじゃないですか。一体どんな単独法があるだろうか。これは松島財政課長さんもおいでになっておりますけれども、交付税の中においても、雪なら雪の一つの補正係数を見て参っても、これは問題にもならない。雪がどういう工合に災害として積雪寒冷補正の中へ組まれているかを見て参っても、独自のものはほとんどないでしょう。しかもこの間も豪雪に対するところの基本法を作ってもらいたいといろいろ地方住民から要望があった。しかしながら大蔵省なり皆さんの考え方は、防災の基本計画ができるから、そんなものを作ったら二重になる。こういう形に押えておる。事防災に関する法律だと、ほとんど押えている。予算を伴うから、これは閣議決定でやっちゃならないとか、こういう形で全部押えてしまう。ところが災害復旧——それがはたして妥当かどうかは別ですよ。あるいは応急措置に対する法律はどんどんできて参っておる。二百何十も現在存在しておる。こういうことから考えてみても、防災という点に対して、これは非常に不安な感じを私は持つわけです。そういう点に対していろいろお聞きしておきたいんですけれども、まあ大臣もなんですから、それ以上聞くのはやめてもよいと思いますけれども、どうもこの点は私ちょっと不安な点だと思いますし、消防庁の次長さんも来ておられるのですが、どうですか。そういう経済企画庁あたりが十年間苦しんできたことを、皆さんが、事務局は事務局で、大臣が政治家として決定するのだとはいいながら、事務的な折衝やその他に対してやっていけるかどうか。先ほど午前中には建設省の鬼丸官房長をお呼びして聞いてみますと、どうも政府の役人ですから、命ぜられる通りに一生懸命にやりますと言っておられますけれども、こういう点に対して、これはまだまだ政令できまっていないのですけれども、これに対する心がまえとして、皆さんはどういう感じを持たれますか。内閣審議室の草案には、消防庁を事務局とするというのは入っておったですから、皆さんも相当これらに対する心がまえなり検討なりもされておると思いますが、この点はどうですか。
  104. 川合武

    ○川合政府委員 消防庁は、できます事務局の構成は、先生ただいまお話の通りでございまして、政令の段階でございまして、まだはっきりした決定と申し上げられるかどうかというところでございますが、行政審議会の答申には、事務局を消防庁をもってあてる、かようになっておりました。今回の災害対策基本法の考え方におきましては、消防庁が事務局に当たるというわけではございませんで、これもくどくなりますが、まだ各省の間の大体の話し合いの現段階での話でございますが、消防庁が事務局に当たるというのでは必ずしもございませんで、事務局は各省から集まりまして、そうして事務局を構成する。そうしてその事務局の庶務を消防庁で行なう、かようになっております。と申します理由は、先生御承知のように、消防組織法、消防法で災害の問題につきまして消防が広くこれに当たる、こういうように組織法、消防法でお定めをいただいております。建設省、厚生省、農林省、大蔵省、各分野にわたりますこの災害の問題でございますが、広く災害一般に消防活動をもって関与いたしますのは消防庁でございますので、さような組織法になっております関係から、この庶務に当たる、かようなふうな話し合いが進んでおる次第でございます。
  105. 佐野憲治

    ○佐野委員 まあいいでしょう。しかし、もう一つついでに消防庁の方にお聞きしたいと思うのですけれども、午前中もちょっと言っておりました、町村に防災会議を置く、こういうことは、消防のいろいろな任務なんかも出てくるわけですけれども、これらに対してあなたが言われる消防組織法の十九条ですかの中にある国会消防本部長、府県知事は市町村消防に対して、行政管理その他に対しては干渉してはならない、こういう規定が特に挿入されておる意味から、ああいう工合に置くのだと規定をするよりも、置くことができる、それを行政指導によって作るとか、いろいろな形が出てくるのじゃないかと思うのですが、この点は一体消防組織法の関係からどうお考えになりますか。
  106. 川合武

    ○川合政府委員 一つの計画でございますか、ちょっと失礼いたしましたが……。
  107. 佐野憲治

    ○佐野委員 町村防災会議を置かねばならぬという規定になっていますね。
  108. 川合武

    ○川合政府委員 市町村にですか。
  109. 佐野憲治

    ○佐野委員 条例によって置くというんじゃなくて、置かねばならないという、こういう規定を国が基本法の中に置いてやるということは、特に過去の戦争中、戦争前において、消防というものが非常にいろいろな国家権力のためにゆがんだ道を歩いたということから、民主的な消防を再建するために、組織法を作ったわけでしょう。この中にそういう明確な規定が挿入されておるのに、この基本法においては置かねばならないという規定を設けられたことは、消防組織法の趣旨から考えて、どういう工合に理解されますか。
  110. 川合武

    ○川合政府委員 組織法の十九条は運営管理、行政管理の問題でございまして、申し上げるまでもなく「市町村の消防は、消防庁長官又は都道府県知事の運営管理又は行政管理に服することはない。」という規定が御指摘規定であると思いますが、市町村防災会議は別に消防庁長官あるいは都道府県知事との関係がございませんで、市町村におきますところの市町村長が会長となりまして、市町村内の各機関との間で設けられますところの防災会議でございまして、縦のただいまの十九条の問題と抵触いたさないと思います。
  111. 佐野憲治

    ○佐野委員 私ども消防組織法をずっと全般にながめてみて、どうしても私たち考えているのと逆で、地方の意見を参酌して次の計画を立てる、それだから基本法が出てくるというのではなくて、この組織論の組み立て方は、中央ががっちり作る、府県はこれに従わなければならない、町村もまたそうだ、こういうことになって参りますと、国の方の計画が結局は町村消防までも支配するという運営管理が必然的に出てこないですか。法律上はそういうことは一応逃げられるけれども、実際上の運営管理という面において、この組織の建前からいくと、支配し、干渉しなければやれなくなってくるのじゃないですか。
  112. 川合武

    ○川合政府委員 市町村の防災会議は市町村長が会長でございまして、消防機関もその市町村長の、旗本といいますと語弊がありますが、防災活動におきます中心として、その重要なる要素をなすことはもちろんでございます。市町村間におけるところの連絡をよくする、この点だけは消防としてもむしろやりいい、こういうふうに思います。ただお尋ねの、計画が上から下へ流れてきまして、そしてそれによって消防活動に制約を加えられるかどうかということでございますが、市町村の防災会議において設けられますところの計画は、その市町村内におきます具体的な活動の面におきましては、上の都道府県あるいは国の基本計画の指図を受けるというような場面はないと思います。むろん十九条の法律の消防活動をいたしますときには、組織法の十九条の制約を受け、十九条の範囲内におきまして消防活動をいたすわけでございまして、ただいまのお尋ねのような点はないものと考えます。
  113. 佐野憲治

    ○佐野委員 国会における問答としてはそうなるのですけれども、皆さんの方は、一昨年十九条を改正して町村の消防の自主性を尊重しなくちゃならないというふうにこれを変えようとされた、そういう原案を出された。それから二十何条において、上級機関は指導なり助言ではなくて調査権も持つことができる、こういう改正案を出されたでしょう。それでは消防組織法の根本精神をくずすものである、こういうことで私たちも反対し、そして政府の方も自主的に撤回されたのはわずか二年前の話でしょう。そのとき皆さんは、町村消防は信用でき得ない、町村消防はだらしない、だから調査権を持って調査しなくちゃいけない、それから自主性を尊重するにとどめて、運営管理に対してもやはりある程度干渉していかなくてはだめだ、こういうことがやはり提案理由の中にあったと思うのです。はっきりした理由としては言われないといっても、そういう考え方があったので、いわんや、今言われるような災害あるいは非常事態、こういうときに直面すると、当然今の組織論の立場からいえば、中央から非常に強力なる運営管理がなされてくる、こういうことはやはり予想できるのじゃないかという点を私たちは心配するわけです。長官もおられないのであなたにこういうことを言ってもなんだと思いますけれども、しかしながら、あなたの方も事務局を担当される、それは庶務でしょうけれども、しかしそういう中においてやはり防災というよりも、災害が起こったらどうするか、非常事態が起こったらどうするか、こういうことが役所の関心事であって、防災なんてちょっと大それているというような感じだろうと思うのです。ですから、これ以上問いません。  それから、瀬戸さんがお見えになりますが、次の災害対策委員会の方に行かれなければならないというお話なので、質問させていただきます。  私、ちょうど帰っておって経験したことですが、新潟県の長岡市においてことし五回の災害を受けておると思います。第一回が昨年の十二月三十日から正月にかけて豪雪による災害、二月二日には長岡周辺の地震、それから梅雨前線の水害、これは六月から七月、八月に入って集中豪雨、それからまた八月二十日の集中豪雨、五回の災害を受けておるわけです。そういうことから私も二回調査に行って、市長さんその他とお話をしたときの記録を中心としていろいろ考えさせられるのです。特に雪の被害によって大体六億二千九百万円の損害を出した。地震によって八億八千四百万円の損害を出した。非常に惨たんたる災害を五回も年度内において受けて、同情する問題なのですけれども、こういう中で皆さんの担当である災害救助法、この二十三条による救助の程度、方法、これは命令、政令で定めるということになっておりますけれども、この場合たとえば第一項の収容施設の場合に、これは太田地区、長岡の近郊で町村合併によって市に入ったところですけれども、このところで避難所を設けるのに、設置費用が一日一人当たり四円五十銭となっておる。冬のときには一円五十銭の暖房費が加わるわけですけれども、これだとほとんど謝礼金と、夏なら蚊取り線香、こういうもので実際問題としては消えてしまうのではないか。あそこでは二百人を四日間収容して法定費用が二千七百円、六カ所に分けておったが、三カ所がお寺で、一寺に五百円の謝礼金を出して千五百円、残りが千二百円で六カ所の収容者の費用に充てなければならない。こういうことでは市から持ち出さなければやっていけないわけです。こういう点に対して、大体三倍ないし四倍の金がかかるというわけです。こういうことの単価。それからたき出しの場合にいたしましても、食事の単価が十六円六十八銭だったのが二十三円三十三銭に改定されたわけです。一日七十円、これでは握り飯かパンしかやれない。しかもこれらの人たちは災害の応急処置のために労働しなくちゃならない。同じところに自衛隊が出動しておりましたが、自衛隊の諸君たちはカン詰めをもらって栄養のあるものを食べておる。片方の方は国家からのわずか一食二十三円三十三銭のものでやらなくちゃならない。これではどうですかね。野犬をつかまえてきて殺すまでの、厚生省が払っておるのは一日幾らですか、この前までは五十円です。こういうことを考えて参りますと、災害救助法による項目一つ一つ見ていけばなんですけれども、私は全部記録してきたんですけれども、これは一体どういうところから算定されてきたんですか。
  114. 瀬戸新太郎

    ○瀬戸説明員 前段の収容施設、すなわち避難所の経費の問題でありますが、これは建前としましては、なるべく学校とか公民館とか、公共建物を使うように努めておるわけでございます。そこで、一日四円五十銭、冬季六円といいますのは、その収容所の維持管理の費用——大体公共建物であれば使用料は無料という予想に立っておるわけでございます。従いまして、大体従来の実績からいたしまして、この程度でまかなえてきておるということで、この程度の金額にきめておるわけでございます。しかしこれが、ところによりましては、公共建物もなくて、民有の建物を相当長期にわたって借りなければならないという事態もあり得るわけでございます。さような場合におきましては、必要な実費を出すという扱いをいたしておるわけでございます。それから、たき出しの費用にいたしましても、これは救助法に基づきます救助全体が、全く一時のしのぎという建前になっておりまして、平常時の十分なものにはなっておらないわけでございます。しかし、たとえば伊勢湾台風のような場合におきましては、湛水が一カ月も二カ月も続きまして、長期間むすび、乾パンというものでは罹災民の栄養の問題もありまして、当時は五十円でございましたが、これを三週間日からは七十五円になりまして、さらに一カ月目からは九十円、こういうふうに引き上げて手当をして参っておるわけでございます。従いまして、今きめております基準は、従来の災害の経験にかんがみまして、応急手当としての額としては一応やってこられた額というふうに考えておる次第でございます。
  115. 佐野憲治

    ○佐野委員 太田地区というものは、行って参ったんですけれども、交通が途絶してしまっておる、しかも無医村である。こういういなかですから、公共施設を利用するということは現実にできないわけですね。ですから、こういう事態に対して災害救助法というものは、実際現実的にいってないんじゃないか。たとえば、家屋が全壊した困窮者に対して、坪二万円で五坪以内だという。どんないなかだって、山だって、この節坪二万円で五坪、十万円の家なんてものはできやせぬです。勢い二戸当たり五万円ぐらい足し増さなければやっていけないというのが、市の負担になって出てくるわけですね。それから学用品の場合を見て参りましても、全壊、流失した場合に小学校は二百十円だ。ところが半壊、床上浸水の場合には七十円でしょう。床上浸水してくると、ほとんど小学校の学用品なんというものは流されてしまうわけです。全壊した場合には二百十円です。七十円じゃほんとのお見舞代にも足りない。学用品の支給にはならないのじゃないか。学用品の給与です、第八項に出ておりますね。これなんかはやはり現実的な計算から出てきておるわけですか。
  116. 瀬戸新太郎

    ○瀬戸説明員 災害救助法に基づきます救助の基準でございますが、御承知のように、災害というものが千差万別でございますし、その様相も常に一定しておらないわけでございます。従いまして、救助法に基づく基準といいますものの、一般の、たとえば生活保護の基準とかいうふうなものといささか性格が違うわけでございます。ただ、何もございませんと応急の際のやるよりどころがございませんので、一応基準を定めてございますが、あくまでもこれは一応のめどでございまして、災害の実態に応じて相当弾力性のある運用をしていくというやり方をいたしておるわけでございます。ただいま先生が御指摘になりました学用品にいたしましても、一応全壊、半壊という区分はいたしておりますけれども、半壊でも全壊と同様の状況にあるというものにつきましては、全壊並みの給与をいたしますし、また衣料、寝具等でございますが、たとえば伊勢湾台風の場合、相当長期間家屋が浸水したわけでございます。そこで家は確かにあるわけでございますから、半壊程度という判定になるわけでございます。ところが長期間浸水しておりましたり、また波に洗われまして、衣料、寝具は全く皆無になってしまった、こういう世帯が相当あったわけでございます。これらの世帯は、家は半壊でございますが、衣料、寝具については全壊の扱いをしておる。こういうふうに実態に応じまして弾力性のあるやり方をいたす方針になっておりますし、またその心組みで運用をいたして参っておる次第でございます。
  117. 佐野憲治

    ○佐野委員 この場合でも、災害救助法の第一条の目的に照らして、国の方は国民に対して、非常災害に際してこれを応急的に保護するという責任を持っておる、そのためにやるんだ、しかしやるのは県や市町村が実施しろ、こういう形になってきておると思いますが、この場合においても、国が責任を持って国民の災害に対して保護するという明確な立場に立つ以上は、やはり実態に即してやらなくちゃいけないんじゃないか。こういう場合でも個人の責任という問題が出てくるかもしれませんけれども、しかしこの太田地区の場合、行って参りましても、やはり戦争中に乱伐したのが大きな原因となって、今までは治水しておったやつがどうっと流れてくる。そのためにあの村が一朝にして全滅してしまったという悲惨なことが起きておる。それでなくても、長岡市の町へ入って参りましても、結局信濃川のはんらんが、中小河川のはんらんの一番大きな原因となってあの水害をもたらしておると思うのですが、その場合を見て参っても、結局信濃川の川自体を見てもそうなんですけれども、直轄河川でありますから、河口は運輸省の管轄、これから上流は直轄河川、これからは県の河川ということになってくる。それからまた建設省の砂防になってくる。横へ入るとまた農林省の砂防になってくる。それからまた横に入ると、今度は県の砂防になってくる。一本の川自体が、直轄河川といいながらも、そういう形をとってきておる。そういう信濃川の中におけるところの防災というものがいかにむずかしいか。各省のやっておる砂防、県の砂防、郡部の砂防、こういうものが入り乱れてしまって、統一性が保たれていないということの中から出てきておる。しかも市内を流れるところの中小河川、そういうものは市の責任だという。ところが市としては、その直轄河川におけるところの改修、管理を行なった結果として出てくるところの災害だという。その災害の中に巻き込まれる国民大衆、その人たちがほとんどひどい災害をこうむっておるわけです。そうするとこれは一体どういうことになりますかね。やはりこの困窮者に対する生活保護ということは国の責任になってくるのじゃないか。先ほど行政局長もいろいろな意味において個人の責任なり協力を説かれますけれども、大臣としてどうですか。こういう場合、災害救助法の適用を受けても、これは現実的に予算のワク内があるから、こういうことになるのでしょう。しかし、現実問題として、行なわれておる結果として起こっておる原因は何か。長岡なら長岡を一つ見ても、太田地区の場合は昭和八年にやったきりそれ以後なかった。昭和八年のときの農地災害の借金をようやく去年返した。まだ返さないものがあるというようなときに、そこへまた山くずれで田畑を埋めてしまった。これも個人の責任だなんといわれても、どうにもならぬ問題じゃないか。それと同時にそれに対する災害救助は、ほとんどこれではやっていけないのじゃないか。あるいは町の中におけるところの直轄河川の改修の不備の結果行なわれたところの、あるいは行政上の欠陥として、統一しているところの施策がやられていなかった。あるいは発電その他によっていろいろな河床の変更が出てきておる。これは電気エネルギーの国策のために当然とられたことがその災害を巻き起こしていった。その結果として中小河川、小規模河川のはんらんで多くの家が倒壊する。水びたしになる。そこに生活困窮におののいているという人たちが現実に出て参るということに対して、一体どういう責任を明らかにしていったらいいかということです。
  118. 安井謙

    ○安井国務大臣 いろいろ佐野委員から防災上の欠陥、災害対策上の欠陥についておあげになりました。あるいは弁解のできるものもあるし、また非常に御指摘のような問題もあろうかと思います。そういう問題を、私どもは、今度は地方防災会議というようなものを総合的に取り上げまして、そういうようなものをだんだんとよくしていきたいというのが一つのねらいでございまして、今までこれが国にあるか、地方にあるか、あるいは自分の責任かという具体的な点につきましては、所管の事務当局から御答弁願いたいと思います。私どもは、そういうものを一つ総合的に少しでもよくしていくために、大いに前進体制を作っていきたいというのがこの法案のねらいでございますから、一つよろしくお願いいたします。
  119. 佐野憲治

    ○佐野委員 大臣の答弁としてはそう言われるのはやむを得ないと思うのですが、ただ、災害救助法というのがある。この救助法の二十五条、二十六条、二十七条、ここに掲げられておることを、途中の中のやつはこの適用でいく。あとの二十六条、二十七条は災害対策基本法の中にそのまま入れていく。こういう点は、この法文の作成過程において一体どういうところから出てきておるわけですか。
  120. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 災害対策基本法案の立案にあたりまして、他の法律との関連、それらの調整という問題につきましても、できるだけの考慮を払ったのでございますが、ただ先般来申し上げておりますように、現行法について改善を要するものは今後改善はいたしていきますけれども、法律の体系その他につきましては、基本的な変改を及ぼさない、各省はその権限に応じてそれぞれの所管の法律の執行を通じて災害対策を進めていく、そうして根本的な態度をもって本法案の作成にあたったような次第でございます。ただ、今御指摘になりました災害救助法二十六条の関係でございますが、この点はただ単に災害救助ということだけではなくて、災害応急対策の面で必要な面が出てくるわけであります。その点救助ということだけでなく、応急措置その他についても必要になって参りますので、この点は必要な規定として基本法案にも盛り込んだのであります。  そこで、基本法案ができ上がりますと二十六条との関係はどうなるかということになりますが、この点は整理法ではっきりさせるつもりでおりますけれども、大体の方針といたしましては二十六条は救助の関係でこれが動いていく。基本法案の関係は、その以外の措置につきましてやっていくということに相なろうかと思いまして、その点は七十一条において災害救助法を引きまして、二十四条から二十七条までの規定によりというふうにやっておりまして、その実体的なやり方につきましては、災害救助法二十六条を援用することによって措置の遺憾なきを期して参りたいという関係になっておるわけでございます。
  121. 佐野憲治

    ○佐野委員 関連してですが、水難救護法の二章の漂流物及び沈没品の二十四条、二十五条、こういう規定が水難救護法にありますのと、もう一つは漂流物に対する今度の基本法にあるのと、保管責任者の関係はどういうことになるのですか。
  122. 岸昌

    ○岸説明員 私からお答えいたしますが、水難救護法におきましては、市町村長が原則として漂流物を保管することになっておるのですが、基本法におきまして六十六条を設けましたのは、現実の漂流物等のものにつきまして、漂流物と遺失物との境が非常に明らかでない、こういうような事例がございます。狩野川の場合あたりにおきましても、水難救護法によって漂流物として整理するか、遺失物法によって遺失物として整理するかというような権限争いがあったような事例もあります。そういう事例にかんがみまして、警察署長もまた水難救護法による漂流物を保管することができる、こういうことにいたしまして、実態に合うようにしたのであります。
  123. 佐野憲治

    ○佐野委員 そういたしますと、水難救護法を見ておる人は、災害にぶつかって、これを一体警察官が何でやるのか、おれが保管責任者であるのに勝手なことをするなという混乱が起こって、なおさら法の統一をやる必要があるのじゃないですか。現実的に伊勢湾台風のときにそういう権限争いが起こった。だからこっちの方に警察官もできるようにしたのですが、これは水難救護法だけを見ておる市町村長は、これは法に基づいておれが保管すべきじゃないか、こういうことを強硬に主張してきた場合は、なおさら、二つの解釈があって、なお複雑になってくるのではないですか。こっちの方を訂正するとか修正するとか、何かの改正をしなくては、両方解釈があったらなおさら紛糾してくるのではないですか。その点はどうですか。
  124. 岸昌

    ○岸説明員 その点はむしろ市町村長もできる、警察署長もできるというふうにいたしました方が災害の実態に合うのではないか、こういうふうに考えたわけであります。
  125. 佐野憲治

    ○佐野委員 どうもその点は、実際問題として、同じ法のもとに立った二つの解釈があって、こっちは水難救護法というのを災害に関する法律として皆さんの方があげておられるわけですね。実は当然災害に関しては水難救護法が法としてなるものだ、こう解釈する市町村長としては、そのためにあえて警察官がこういうところに立ち入ることは好ましくないことでもありますし、これは水難救護法の趣旨でもあるでしょう。明治三十二年という、こういう古い時代にできて、しかもそれがずっと守られてきている法律でもあるわけですから、それが今度の新しい基本法によっては、警察署長にもその権限があるんだ、それこそ見解の争いが起こってこないですか。水難救護法でいくべきだという立場をとる市町村長と、いや災害基本法によっておれに権限があるのだという警察署長との間に問題が起こってこないですか。もしそういう紛争が起こった場合に、この二つの法律があると……。
  126. 岸昌

    ○岸説明員 現行法の水難救護法によりますと、警察署長が漂流物または沈没品を取り除きました場合には、市町村長に保管を移しかえなければならないということになるわけでございます。市町村長が初めから保管しております場合は、もちろん市町村長が保管いたしますが、警察署長がさらに市町村長に移しかえをしなければならない。こういうことになります点を、警察署長が漂流物または沈没品を取り除きました場合には、引き続き保管することができる。こういうふうにしたわけでございまして、その点はおっしゃるような混乱は起こらないと思います。
  127. 佐野憲治

    ○佐野委員 災害対策のことにつきましては現在二百五十からあるわけですから、それが訓示規定的にずらっと入っておるのですから、これはもう皆さんの方においては調整されて統合されたと考えられるかもわかりませんけれども、現実的にこれを読んだってわからないのだから、二百五十あるやつを全部読んで見なくちゃやれないわけなんです。この一般法があって、特別法をもう少し整備して出されてきてこそ、この基本法と一般法とそのもとにある特別法の関係がはっきりしてきますけれども、特別法は二百五十そのままにしておいて、しかも不備なやつもあり欠陥もある。こういう点は災害応急対策の場合ですけれども、あるいは復旧の場合におきましてもある。それを大臣も提案説明の中で言っておられますから御存じのことと思いますけれども、そういたしますと、そういうのを整理して出されることこそが親切な態度じゃないですか。二百五十もあって、これは欠陥もある、これから整備していくんだぞ、君たちはこれを見ればわかると言ったって、ちっともこれじゃわからない、そうでしょう。水難救護法、明治三十二年法律第九十五号のやつを引っぱり出してみなくちゃわからないということになってしまえば、これはちっとも統一されたり総合されたりしてないじゃないですか。だから訓示規定だけで一応項目を起こして、こうだぞ、ああだぞというお説教は、まことに順序よく一章々々なっていっておるが、実際問題として災害が起こったら、これを引っぱり出してみなければ、どうも実際において間に合わないじゃないか、応急の場合あるいは災害復旧の場合に。  それからもう一つ、災害復旧の場合におきまして、やはりお聞きしておきたいと思うのですけれども、先ほど太田さんの質問にも答えられて、今までにおける災害時に特別立法をすることをやめにしていきたい。これは法律で定めるのだ、こう言われるのですけれども、法律においては一体どこまで基準を出されるかということが大きな問題じゃないかと思うのです。今の災害救助法のように政令で定める。これとこれにはこんなものをやるのだ、しかしあとは政令で定めるぞと言われてしまったら、基準はなるほど出ているけれども、政令となってくるとちょっとわからなくなる感じもいたしますが、この点はどうですか。
  128. 安井謙

    ○安井国務大臣 この法律の構成全体がちぐはぐじゃないかという御質問なら、前にもあったわけでありますが、最初にも御説明申し上げましたように、法律そのもののある場所をそのまま一応は置いておいて、それに総合性を求めるということと、   〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕 さらに今の法律で明らかに現実に欠陥がある場合には、ここでそういったものを例示的にでも直していくというような態度をとっておるわけでありまして、それを一本の法律にして一つの庁にするとか省にするとかいうようなふうにこの法律自身が考えていないものでありますから、そういった御指摘も若干あろうかと思うのであります。しかし、ほんとうに災害対策あるいは予防というものは非常にむずかしい問題でありまして、あらゆる場合を想定していき出せば、これは際限がないということもあります。また地方、国の財政、いろいろな面から見て十分なことが今まででき得なかったこともあるし、またこれさえできればそれが全部十分になるともむろん考えていないわけでございます。しかし、そういう今までなかったようなものをここに基本的な線に出し、そうして現実の活動面で不足な面を補うことによって、大きく災害対策あるいは予防について前進をさせようというのがこの法律のねらいなのでありますから、そういう趣旨で一ついろいろと御審議をいただければと思うわけであります。
  129. 佐野憲治

    ○佐野委員 私どもが聞いておるのは、大体質疑の中から、この法律の組み立て方はわかって参ったと思うのです。しかし、今特別立法の場合において、基準は法律で定めるという工合にして、そのつどはやめるのだ、こう言われるのですが、その基準とは一体どの程度まで法律で定められるか。災害救助法のように具体的な項目をあげて、あとは政令できめる。基準は出してあるじゃないかというのも基準の問題だと思うのですが、そういう基準に対してはどうですか。
  130. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 激甚災に対する統一立法につきましては、九十九条において内容として規定をする事項を三号にわたって書いておるわけでございます。その場合に、具体的な内容としてどういうものを持っていくかということにつきましては、今後その法文精神にのっとって各省と打ち合わせをしながら、調整をとりながらきめて参らなければならぬと思うのでございますが、中には法律自体でもって補助率、負担率というものをはっきり書いていくというものもございましょう。しかしながら、事柄の性質によりましては、やはりどうしても政令等に事務的、技術的な面では委任をせざるを得ないという面が出てこようと思うのであります。それらの点は、従来の立法例その他の実情を参酌しながら適切なる措置を講じて参りたい、かように考えておるのであります。
  131. 佐野憲治

    ○佐野委員 その点が非常に重大な問題だと思うのですが、単にこの基準を明確にしないのだったら、いっそのこと、やはりそのつど、そのつど国会の立法権を尊重して、具体的災害の態様あるいはその起こっておる事態に対して、やはり立法権が必要になってくるのではないか。それをそういう問題も行政権に委任してしまうというて簡単な基準だけ出して、あとは政令でこれを定めるということになって参りますと、これはなおさら大きな問題が出てくるのではないかと思うのですが、この点に対して一体どういう配慮を持っておられるかという点ですがね。
  132. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 九十九条にも、「特別の財政援助及び助成措置を必要とする場合の基準」ということを書いており、また地方団体に対する国の特別の財政援助ということも具体的に項目としてあげておるわけであります。そういう点から申しましても、一般的な基準として重要な点はやはり法律に盛り込むという方針で参らなければならないというふうに考えておる次第であります。
  133. 佐野憲治

    ○佐野委員 一応災害時における応急対策あるいは災害復旧、これは大体現行法が現在生きておるし、それをやっていって順次改めていきたいのだ、これを一本化して調整する、あるいは統一する、こういう意図は持っておられたのですけれども、実はこれはでき得なかった、こういうことになってくるのではないかと思うのです。そういう点が非常に遺憾だと考えられます点と、もう一つやはり財政的な裏づけをもう少し明確にしなかったら、これは単なる訓示規定に堕していく危険性があると思うのです。そういう点から考えてみますと、まだ災害復旧なり災害応急対策に対しては、一応の国会の立法権もいろいろな意味において発動いたしておりますし、ある程度まではやられると思いますが、しかしながら、やはり一番根本になる災害をいかに防ぐか、防災措置政府責任においてどう遂行していくか、こういう一番かなめになる点が抜けてしまうのではないかという点、と同時に、もう時間もおそいので、またあしたからいろいろ質問があると思いますから、私はとどめたいと思いますけれども、ただ皆さんの考え方の中に、現在あるものをただ項目だけは整理しておいた、現在二百何十ある関連法はそのまま生きていくのだ、欠陥のあるものは是正していくのだ、財政的な面までも入ると大へんなことになるから、これは実態に応じて修正していくのだ、こういう工合になってしまってくる。そうして一番入ってくるのは災害非常対策ですか、そういうところに相当入ってくるのではないかと思うのです。こういう点も非常に大臣としても考えていただきたいと思うのです。私繰り返して申し上げますけれども、やはり公安条例ができて参りましたのも、いろいろ占領軍の諸君らが、私ども県会議員に対しましても緊急議会を開けと脅迫のような形で、ああいう公安条例がやられたのです。しかし、そういう朝鮮動乱の事態もありましたけれども、ああいう公安条例が出て参った当時の情勢というものは、福井における震災、それらを中心として、いろいろな問題があったのですけれども、この中でやはり治安確保という形で公安条例が示唆されてきて、これが最初の火ぶたを切っていったと思うのです。ですから、災害ということになって参りますと、治安立法が必要だ、こういう考え方が抜け切れないのではないか、この点は日本のずっと過去における津波なり、あるいはまた明治から大正にかけていろいろな災害が起こったときに、必ず非常立法というものが用意されてきておる。治安というものを非常にうるさく考えておられる。そういう考え方が、やはりこの中にも出てきておるのではないか、そういう点が非常に遺憾だと思いますし、これらの措置に対しましても、これは法制局も相当皆さんに対して憲法上の問題を中心として慎重な意見が述べられたようにも聞いておりますけれども、これは非常に重大な問題だと思います。そういう点に対して私は、国が防災に対する明確な責任を果たすのだということを基本法の前文に明らかにして、その行政欠陥なり過去におけるそういうことを科学的に解明していく、こういうみずからの努力をなして災害を防止するのだ、と同時に、起こった場合にはこうなんだという形をとって参られたら、治安対策なんというものはそう心配しなくてもいいんじゃないかと思うのです。やはりそういうことがなされていないので、ダムができたためにやられた、山が荒らされたために起こった、こういうことに大衆はふんまんを持ってくる。しかも今言う災害救助法の発動がおくれる、あるいはまた緊急の措置がとれないということになってくるために、一つの社会不安的なものが出てくるということは当然だと思うのですけれども、そういうときにやはり自信を持っていけるということが、政府、地方自治体が一致して災害を防除することがわれわれの任務なんだという日ごろの取り組んでいる形が国民に対する信頼感を与えておるのではないか。その中から準備、資材なり何なりの備蓄も出てくるのではないか。それがほとんどなされてない。そういたしますと、結局災害を受けると、労働組合の諸君らが、同胞の苦しみを見殺しにできぬじゃないか、それ、行ってやろうじゃないか、医者の皆さんも進歩的な人たちは、部外にも出ていって、医療をやろうじゃないかということになる、無医村もたくさん日本にあるわけですから。そういう活動をやると、じゃまになってくる。ですから、町村長の区域設定というものもそういうところから出てくるし、あるいはまた緊急事態宣言ということも非常に心配されるということになってくるのではないかという点も十分私たちもこれから審議の中において検討していきたいと思いますけれども、やはり政府においても考えていただきたい問題だと思うのです。このような形できますと、どうもかなめのところが全部訓示規定になってしまって、防災の根本に対するところの政府の決意なり国民に対する統一した責任を明らかにしてない。そうして、非常事態だとか、そういう点に対して非常に主になっておる。しかも防災計画にしても、中央から県へ、県から町村へとおりてくる。いわゆる国民の創意なり工夫なり、お互いが地域を守る、国土を保全するという熱情が集まっていく、こういう形をとられていないということも非常に残念なことなんです。そういう意味において、大臣の先ほどからのいろいろの質疑を通じて善意の気持は私はわかると思うのです。しかしながら、しばしば言われるように、法律というものは、やはり立法化されてしまいますと、一人歩きする危険性もたくさんあります。あるいはまた内容に盛られている乱用の危険性、これが間違って使われる危険性もありますし、そういう意味において、ギリシャの格言として古く言われておるところの「危険な贈りもの」だ。これはトロイとの戦いにおける有名な言葉です。地方自治を滅ぼすものは委任事務だ、あるいは補助金制度だ、危険な贈りものだという工合に表現されておるのと同じく、今、災害対策基本法だということで非常に国民の関心は強いと思うのです。しかしながら、実際内容を考えてみると、逆に危険な贈りものになることも私たちは憂慮するわけです。その点もあしたから同僚の皆さんがまた本格的に、具体的に質問を展開されるそうですから、私は一応質問を終わりたいと思います。
  134. 園田直

    園田委員長 本日の議事はこの程度にとどめます。  次会は明二十五日開会することとして、これにて散会いたします。    午後四時四十七分散会      ————◇—————