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1961-10-17 第39回国会 衆議院 地方行政委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月十七日(火曜日)    午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 園田  直君    理事 金子 岩三君 理事 纐纈 彌三君    理事 高田 富與君 理事 丹羽喬四郎君    理事 太田 一夫君 理事 川村 継義君    理事 阪上安太郎君       宇野 宗佑君    小澤 太郎君       亀岡 高夫君    久保田円次君       田川 誠一君    津島 文治君       永田 亮一君    前田 義雄君       佐野 憲治君    二宮 武夫君       野口 忠夫君    松井  誠君       山口 鶴男君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      新井  裕君         警  視  監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君         自治政務次官  大上  司君         自治事務官         (選挙局長)  松村 清之君         消防庁長官   鈴木 琢二君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         議     員 川村 継義君         総理府技官         (経済企画庁総         合開発局総合開         発課長)    八塚 陽介君         大蔵事務官         (銀行局特別金         融課長)    橋口  收君         厚生事務官         (社会局生活課         長)      翁 久次郎君         厚生事務官         (社会局施設課         長)      瀬戸新太郎君         通産事務官         (中小企業庁振         興部長)    川島 一郎君         建設事務官         (計画局参事         官)      志村 清一君         建設事務官         (河川局次長) 鮎川 幸雄君         建 設 技 官         (住宅局住宅建         設課長)    尚   明君         建 設 技 官         (国土地理院地         図部長)    中野 尊正君         自治事務官         (大臣官房文書         広報課長)   雨森 和雄君         自治事務官         (行政局行政課         長)      岸   昌君         自治事務官         (財政局財政課         長)      松島 五郎君         専  門  員 圓地與四松君     ————————————— 十月十七日  委員薩摩雄次君辞任につき、その補欠として前  田義雄君が議長の指名で 委員選任された。     ————————————— 十月十三日  国庫補助事業に対する地方自治体の超過負担是  正に関する請願橋本龍伍紹介)(第二八三  号)  公営・準公営企業債等の増額に関する請願(橋  本龍伍紹介)(第二八四号)  消防団員退職報償金制度完全実施に関する請  願(床次徳二紹介)(第三七七号)  個人県民税賦課徴収独立に関する請願(松本  一郎紹介)(第五三六号)  地方財務会計制度改正促進に関する請願(松  本一郎紹介)(第五三七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  災害対策基本法案内閣提出第四九号)  地方自治法の一部を改正する法律案川村継義  君外二名提出衆法第五号)  警察に関する件      ————◇—————
  2. 園田直

    園田委員長 これより会議を開きます。  去る十三日本委員会に付託されました、川村継義君外二名提出地方自治法の一部を改正する法律案議題といたします。
  3. 園田直

    園田委員長 まず提出者より本案提案理由説明を求めます。川村継義君。
  4. 川村継義

    川村(継)議員 私は、提案者を代表し、ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明いたしたいと存じます。  特別区における自治行政円滑化をはかるため、区長選任方法議会による選任制から、住民による直接公選制に改める必要がある、これがこの法律案提出する理由であります。  その要旨は次の通りでございます。  御承知のように、昭和二十七年八月、地方自治法の一部改正が行なわれ、特別区の区長区議会が都知事の同意を得て選任する間接選挙制に改められました。日本社会党といたしましては、このような地方自治法改正では、行政機構中央集権化を強め、住民自治原則にもとるものであるという態度を、その当時より今日に至るまで一貫してとって参っております。  改正案が成立して以来九カ年を経過しました。その間に、私たちが指摘した通り各種の欠陥や矛盾が顕著に現われてきました。特に区長選任のために長期間を費やし、区政の渋滞を生じ、区政運営上重大な悪影響をもたらしているという事態は、一刻も早く解消させねばならないと考えます。今や渋谷区を初め特別区の議会は、あげて区長公選制の復活を強く要望し、全都民運動にまで発展しようとしています。  この際、民主政治の根底である住民自治の発展を期するため、現行地方自治法第二百八十一条の二とそれに関連する法規を改正し、二十七年八月の改正以前の状態に戻し、特別区の区長選任住民の直接選挙によるように改めることにするというのが、この改正案のねらいであります。  以上がこの法律案提案趣旨でございます。何とぞ慎重に御審議の上可決下さるようお願いをいたします。
  5. 園田直

    園田委員長 以上をもちまして提案理由説明は終わりました。本案に関する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 園田直

    園田委員長 次に、災害対策基本法案議題といたします。  質疑を続行いたします。亀岡高夫君
  7. 亀岡高夫

    亀岡委員 ただいま提案になっております災害基本法案について、総括的な立場から若干の質問を試みてみたいと思います。  大災害のあるたびごとに、災害基本法はどうしても作らなければならぬという声が数年前からあったわけでありますが、災害対策のいろいろな事業が、その本質上各省間にわたり、またその性質の複雑多岐というような、非常にむずかしい問題等もあって、なかなかまとまらないできたわけでありますが、このたび完全ではないけれども、一応のまとまった内容を持った基本法が、大臣初め自治省当局の非常な努力によって、各省間の調整をはかって今国会提案の運びにまでこぎつけたという点に対しては、一応の敬意を表するものであります。提案しました以上、本国会においてどうしても成立させたいと大臣以下強く考えておられることも理解できますし、また自治省当局の、何とかして本国会において通したいという気持もわかるわけであります。私どもとしても、ぜひ今国会に成立させまして、毎年々々尊い人命と莫大な国の富を奪っていく災害を完全に防止したいという気持は、与党野党も一致した気持であろうと思います。しかしながら、国民の負託を受けまして立法府にあるわれわれといたしましては、国民安心のできる、だれもが納得のできる、与党野党も、また全国民が、この基本法ができて、もう災害に対して国は思い切った力をいつでも尽くしてくれるのだというふうな、りっぱな基本法にしなければならぬというのがわれわれの務めではないかという気持からいたしますと、この法案を通続してみますと、何か物足りない点があるような気がしてならない次第でございます。この点については、おそらく大臣以下自治省当局も同じような気持を持っておられるのじゃないかというふうに推察できるわけです。と申しますのは、提案理由説明の終わりの方を拝見いたしますと、「今後さらに整備充実をはかっていくべき点は少なくない」というふうにお書きになっておられるわけですが、この点からしても、自治省当局も完全なものであるとはお感じになっておらないようでございます。  御承知のように、今さらちょうちょうして申し上げるまでもなく、日本の地勢から申しましても、あるいは自然的な条件から申しましても、非常に災害を受ける確率が高いわけでありまして、台風とかあるいは豪雨、豪雪、地震、高潮、津波といったような災害によって年々多数の人命年間平均二千数百億に上る莫大な損失をこうむっているために、日本経済復興が非常に大きく阻害されておるということは、これはだれしもが認める事実であります。従って、これらの自然災害から国土を守っていく、また人命を防衛いたしまして国民生活安心感を与えるということは、わが国にとって非常に大きな仕事であるわけでございまして、これは国会政府も一丸となってりっぱな基本法を作らなければならぬということを示しておるものと存ずる次第でございます。でありまするから、各省間においても、ややともしますと、なわ張り根性的な傾向がなきにしもあらずというふうにも見られる節があるわけでございますから、より高い見地から、各省間も相協力してこの案がまとめられたものの、もっともっと内容の充実した法案たらしめたいという気持を私ども持っておる次第でございます。このような立場から、一つ内容について御質問をいたしたいと思います。  まず第三条でございますが、これは同僚議員小澤君からもいろいろ質疑が行なわれたわけでありますが、災害予防災害応急対策、それから災害復旧基本となるべき計画の作成、あるいは法令に基づく実施総合調整等の方に重点が置かれておりまして、これらを実施するために必要な財政的な措置という点に関しましては、単に「災害に係る経費負担適正化を図る」というような非常に弱い表現が使ってあるということは、私どもとしてはどうしても納得のできない点でございます。もっともっと強く災害に対する国の意思表明をはっきりとこの三条に打ち出すべきではないか。私ども、さきの国会農業基本法を作ったわけでありますが、あの法律の中を見ましても、その点は非常にはっきりと明示してあるわけでございます。農業基本法条文を見ますと、国はもろもろの政策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならないと強く規定いたしておるわけでございます。こういう観点から考えましたときに、せっかくこの災害国会において災害基本法を作ります場合においては、原案のような表現であっては、今後この基本法が、大臣提案理由を見ますと、大きな前進であるというようなことは言ってありますけれども、担当される方々は非常にお困りになるのではないか。でありまするから、最も大事なこの第三条をきっちりと、もっと強く、はっきりとした国の財政支出責務を明示すべきであろう、こう思うわけでございます。原案のような条文でありましたのでは、何のために基本法という名前をつけたのか、名前が泣くのじゃないか、こう私自身考えるわけでございます。この法律に書いてありますような防災組織体制が幾ら完備いたしましても、またいかにりっぱな計画ができましても、結局これを運営する、また災害予防対策実施するための経費がなかったのでは、結局絵にかいたもちというような格好にならざるを得ないわけでありまして、どうしても三条にもっと強い表現をお出しになる必要があると考えるわけでありますが、自治省当局のこれに対する御見解をまずお尋ねしたいと思う次第であります。
  8. 大上司

    大上政府委員 お答えいたします。ただいまの御趣旨と申しますか、この法案提出いたしました根幹の一部をなしておることは、第三条に国の責務としてうたわれておることは御指摘通りでございます。従いまして、これの表現方法が不十分であるという点につきましては、われわれはさらに法律上のテクニックと言っては語弊がありますが、さらに検討を加えてもいい、このように考えております。従いまして、この三条の規定において国民の受ける感情と申しますか、法の運営等につきましては、さらに御指摘あるいは御審議の過程においてわれわれも検討することはやぶさかでない、このように考えております。
  9. 亀岡高夫

    亀岡委員 実は、私がこの点を強く申し上げるゆえんのものは、災害関連経費に対する国の意思表明を明らかに、しかも強力にしておくことが、今後この法律実施していく政府立場から見ましても災害対策が非常にスムーズにいくからでありまして、もしも原案のような表現であったといたしますならば、大蔵省といろいろな折衝をいたします場合にも、いつものらりくらりと逃げられまして、そうして十二分な災害対策事業の推進ができない、これが過去における実例であったわけでございます。思い切って災害対策をやっておけば被害が軽くて済んだというような事例も、伊勢湾台風あるいは今度の第二室戸台風というような災害におきましてもはっきりしておることでありまするから、こういう場合に、この第三条をもっと強く表現をしておくということは、結局ひいては災害による人命損失を防ぎ、富の亡失を防ぐという根本になるわけであります。関係各省大蔵省折衝しました場合に、いつもこの点で、やれ単価を引き下げろの、やれ防潮堤の高さはもっと低くていいの、あるいは裏の方は舗装しなくてもいいのというようなことが、結果的に大きな災害をもたらしてきたという実例が非常に多いわけでございますから、この点は格段の御配意をやっていただきたいという次第でございます。政務次官からただいまさらに検討をいたしたいというような御答弁があったわけであります。各省から見えておられますが、各省においてこの表現に一応は皆さん納得されたようでありまするが、おそらく気持の中ではもっと強い表現を使ってもらった方がよいという気持を持っておられると思うのでございますが、まあ行政事務を担当していろいろな財政当局との折衝を過去にやってきております行政課長のお気持一つお聞きしておきたいと思います。
  10. 川合武

    川合政府委員 ただいまの御質問の御趣旨に対しまして、私どもも同じような考えを持っておるわけでございますし、先ほどの政務次官の御答弁通りに、さらに事務的に努力すべき点があればいたしたいと思っておりますが、先生も御承知のように、各省、非常に多くの省にまたがっておりますし、外務省を除く他の全部の省の共同責任によりましてこの法案を閣議にかけました次第でございます。一応現在の段階におきましては、できるだけの努力をして作り上げた法案のつもりでございますが、十分な御審議をいただきたいと思っております。
  11. 亀岡高夫

    亀岡委員 またこれに関連しまして、災害予防、それから災害復旧といったような面における財政的な措置というものが書いてあるわけでございますが、この書き方も、もう少し親切と申しますか、はっきりと書くべきではないか、第九十一条のところを見ましても、「災害予防等に要する費用負担」ということがここに規定してありますが、「予算範囲内において特別の措置を講じている場合を除くほか、災害予防及び災害応急対策に要する費用その他この法律の施行に要する費用は、その実施責め任ずる者負担するものとする。」という、何と申しますか、非常にありきたりのような、特に災害に対してもっと強く取り組んで、突っ込んで、そうして何とかしょうという気持がどうもうかがい知ることができないような気がしてならないわけであります。これを具体的な問題に当てはめて考えてみましても、実施責め任ずる者負担する、いろいろな水防資材あるいは予防気象関係のいろいろな施設というようなものも、年々各関係省庁予算要求をしてやっておるわけでありますが、気象庁のことを考えてみましても、定点観測といったようなことが、今まで二点か三点あったものを一点にしてしまって、それに従事しておる船もぼろ船である。台風があると、もう台風のそばにおれないので、どこかに退避しなければならぬというような船で気象観測をやらなければいかぬというような問題、あるいはまた、航空観測というような点については、気象庁には一台の飛行機もない。みんなアメリカさんの観測資料にたよらざるを得ないというようなことで、最も大事な気象予報というような点についても非常に大きな手落ちがあるわけでありまして、こういう点を急速に整備をして、気象予報の完璧を期さなければならぬわけでありますが、そういう立場にある気象庁がもしこの法律を読んで、はたして気象庁予報施設と申しますか、気象観測機関観測態勢を充実するためにプラスになるかどうかというような点を非常に疑わざるを得ないわけであります。そういう点から、この財政金融措置の第九十一条というものについても、一つ政務次官の方から、御提案になった立場からは修正をするとかなんとかいうことは言いにくいと思いますけれども、これで十分かどうかという点に対するお気持一つお聞かせいただきたいと思います。
  12. 大上司

    大上政府委員 仰せの通り、第九十一条の災害予防等に要する費用負担の面は、確かにその通りでございますが、全体的にわれわれは考えまして、この八十八条の規定現行制度があれば相当の飛躍があると考えられます。従って不十分な点のあるように御指摘は受けておるのですが、これもそう急な、いわゆる急激に云々ということも、国家行政機関等関係もあり、漸次これを解決して御趣旨に沿いたい、このように考えております。
  13. 亀岡高夫

    亀岡委員 またこの条文の「その実施責め任ずる者負担する」こう書いてあるわけですが、これは県や市町村というふうに読んでいいわけでありますか。
  14. 大上司

    大上政府委員 その通りでございます。
  15. 亀岡高夫

    亀岡委員 そうしました場合に、そうでなくても苦しい地方財政の中において、その責め任ずる者負担するということでこれは一応まかしたような格好になっているわけですから、従って小河川といいますか、市町村が管理しなければならぬようなものは全く野放しになっているというような事態も多いわけでありますから、この責め任ずる者負担するとここに書いてあります以上、負担しなければならぬわけでありますが、負担し切れないという事態がおそらくたくさん出てくるのではないか、そういう場合にはどういう処置をおとりになるのか、それも一つ明らかにしていただきたいと思います。
  16. 大上司

    大上政府委員 ただいまの御質問ごもっともと思います。従いまして、一応事務当局から十分説明いたさせます。
  17. 松島五郎

    松島説明員 この規定は、現在でも災害に際して、実施主体であります地方公共団体なり国なり、それぞれその実施主体の分に応じまして経費負担をしておるわけでございます。その原則を、ここで災害基本法各種予防という形で鮮明にしただけでありまして、別に新しい字句をつけ加えたわけではございません。ただ、今御質問のような事態が生じました場合には、現在でも、地方公共団体負担に属しますものにつきましては、時には国庫補助特例を制定して地方団体負担を軽減する措置を講ずるほか、地方団体負担に属します分に対しては地方債を配分して措置する、あるいはさらに特別交付税交付によって措置するというようなことをやっているわけであります。今後ともそういう方向で地方団体負担に属します分につきましては適正な措置を講じて参りたいと思います。
  18. 亀岡高夫

    亀岡委員 今の御答弁ですと、せっかく一番初めに申し上げました、これだけの基本法を作るわけでありますから、今までやってきたことをそのまま法律に書いて満足するというようなことでは、どうしても私どもとしては理解できないわけでありまして、何とかもっと災害基本法の名に恥じない内容にして参らなければならぬ、こう思う次第でありますが、これはまた後ほどに譲ることといたしまして、次に、個人災害に関する問題ですが、これは私の不勉強のせいですか、この法案を通読いたしまして、どこに書いてあるのか、私の見ました範囲では、個人災害に関しては全く触れておらないように考えるわけでありますが、特に今度の第二室戸台風災害を私が見て参りましたのですが、大阪、三重、それから新潟等においては非常に個人災害が多い。特に住宅——県庁に勤めているサラリーマンの諸君、また会社勤めをしておられる方々が、家が半分こわれて、しかも出勤していかなければならぬ。直すにも金がなくて非常に困っておるというような例が非常に多いわけでありますが、どこに行っても金も借りられない。無理やり借金をして何とかかんとか急場を間に合わしてしのいでおるという例が非常に多かったわけでありますが、こういう点に関しては、この基本法規定すべきであると私は考えるわけでありますが、自治省当局の御見解一つ承りたいと思います。
  19. 大上司

    大上政府委員 個人災害につきましては、防災計画において重点に置くべきことといたしております。従って激甚地域特別法では特に被災者の特別の助成をすべきものというような考え方でおり、なおそのようにいたしております。
  20. 亀岡高夫

    亀岡委員 特別法ということでございますが、いろいろな特別法が、これに別の法律に定めるところという点がたくさんあるわけですが、大体この基本法に基づいてお出しになる、作らなければならぬ、こうお考えになっておられる関連法とでも申しますか、特例法の概容を一つお聞かせいただきたいと思います。
  21. 大上司

    大上政府委員 細部にわたりますので、事務当局より御説明いたさせます。
  22. 川合武

    川合政府委員 法案によりますと、九十七条、九十八条、九十九条に出ておりますところのいわゆる激甚災害に関する特別の法律でございます。
  23. 亀岡高夫

    亀岡委員 そうしますと、そういうふうに一応提案を予定されておる法案については、その内容と申しますか、概要と申しますか、それが条文に載っておるわけですね。ところが個人災害に対して特例法をお出しになるという場合に、それだけの条文がこれには見えてないようですが、その点はどうですか。
  24. 川合武

    川合政府委員 法案の第九十九条の三号に含めましたところが、その意味でございまして、すなわち「激甚災害の発生に伴う被災者に対する特別の助成」、この条文がただいま御質問意味の、予定されております条文法律の基準でございます。
  25. 亀岡高夫

    亀岡委員 まあ私ども非常に不勉強で、そういうふうに言われてみるとなるほどと思う点もおそらく質問にもたくさんあると思うんですが、やはり法律はもっとわかりやすく、一見しただけで、ああこういうふうにしてもらえるのだというふうな感じ国民に与えるように作るべきではないか、こう思うわけでありますが、本来でありますれば、この基本法と同時に、政府が前の国会農業基本法出しましたときにも十七かの関連法案一緒提案しておるわけです。でありますから、本来でありますれば、こういう関連法案もこの基本法一緒に御提案になっていただくと、私どもも非常に検討いたしやすかったのではないかという気がいたすのでありますが、これは今から申し上げても仕方ありませんから、とにもかくにもこの基本法をもっと、何回も申し上げますけれども、りっぱな安心のできる法律にして参りたいと考える次第でございます。  次に災害復旧の問題でお尋ねいたしたいと思っておりますが、従来三・五・二の比率で災害復旧がなされておるわけでありますが、国の財政事情も非常によくなってきておりまして、まあ自然増収等もある。この機会にもっと速度を早めるような方策をお考えになっておられないかどうか。またこういう点も基本法のどこかにはっきりと明示した方が、特別法に譲るよりもこういう点については基本法に明記すべきではないか、こう思うわけでありますが、自治省、建設省の方からの御説明をお聞きしたいと思います。
  26. 川合武

    川合政府委員 法案におきましては第八条の三項におきまして基本的な問題すなわち施策における防災上の配慮のところでございますが、「国及び地方公共団体は、災害が発生したときは、すみやかに、施設の復旧と災害からの復興に努めなければならない。」これが原則でございまして、さらに第八十八条におきまして災害復旧事業費の決定は「適正かつすみやかにしなければならない。」かように基本法におきましてはその根本の、ただいまお尋ねのような意味趣旨のことを記載いたしました。さらに、この問題は申し上げるまでもなく個別の法律の、すでにございます東京都あるいは農林水産その他の法律の問題ともなるわけでございますが、基本法案といたしましては、ただいまのような基本原則をうたっておるのでございます。
  27. 亀岡高夫

    亀岡委員 今まで災害復旧といえば三・五・二の速度でやって参ってきておるわけですが、これをもっと速度を早めて、今まで三年で完全復旧をするというシステムでやって参ってきておったわけでありますが、これを二年くらいでする意向がないものかどうか、建設省関係あたりではそういう御意向がありませんかどうか。
  28. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまの災害復旧事業の速度の問題でございますが、お話しの通り緊要事業につきましては三・五・二の比率で復旧をいたすようにただいまやっておるわけでございます。なお、直轄事業につきましては二カ年の復旧の原則でやっておるわけでございます。しかし、災害を早急に復旧いたしますことは私どももかねがね考えておるところでございまして、特に本年度の災害におきまして早期に復旧しておくという点も多々あるわけでございます。私どもは今年度災害におきましても、地方の復興の状況、あるいは地方団体の意向等も勘案いたしまして、でき得るところは三・五・二のあれにもとらわれず、できるだけ復興を促進するようにということで指導いたしておるわけでございます。  なおさらに三・五・二の復興の比率につきましては、明年度以降におきましては財務当局とも十分に話し合いをいたしまして、二カ年復旧でもやったらどうかという点でただいま話し合いをいたしておるという状況でございます。
  29. 亀岡高夫

    亀岡委員 災害復旧の速度を早めるということも、せんじ詰めますと、国が災害に対してどれだけの熱意を示すかということによってきまってくるのではないか、こう思うわけでございます。また国の災害に対する財政支出の意思というものがいろいろな計画にも非常に大きな影響を持ってくるのではないかというふうに思うわけでございます。かつて昭和二十八年でしたか、十三号台風の際に当初計画が、これは海岸堤防ですか、防潮堤ですかの復旧工事の際に、三百二十七億円の金が要るという計画であったのに対して、大蔵省が百八十五億円で間に合うということで、それで工事をやったために伊勢湾台風のときには非常に大きな災害をもたらしたという実例もあるわけでありますから、事業に対する財政支出の強化という点を、この基本法にはっきりと書くことにより、またこの災害復旧の速度というものも大いに早められるわけでありますから、こういう点についても、どうしてもこの第三条というものがもっと真剣に検討される必要がある、こう思う次第でございます。  それから、災害緊急事態の問題についていろいろと言われておるわけでありますが、政府当局の御説明によりますと、災害に限って、かつての戒厳令といったようなものではないのだ、いろいろな人心を抑圧したり、自由を束縛したりするような点はないのだというふうに言っておられるわけでありますが、もう一度、どうしてもこの措置をとらなければいけないのだということを詳しく一つ説明を願いたい。
  30. 大上司

    大上政府委員 ただとま御質問の「災害緊急事態の布告を発することができる。」という条文をうたっておりますが、これにつきましては、これは常識的観念から治安の面もありましょうし、あるいはさらにまた被災者の緊急なるところの医療施設等々もあるでしょう。そこで、われわれは許せる範囲内において、いわゆる復旧に漸進的に持っていく基本といいますか、民心安定というか、そういう面から考えまして、本事態を法文に織り込んだのでございます。  なお補足説明事務当局からさせます。
  31. 川合武

    川合政府委員 法案規定いたしました場面は、たとえば関東大震災の場合のような状態でございまして、帝都に非常に大混乱が起きた場合に、何とかしなければならないという場合でございますが、本法案に定めましたように、国会でおとりきめをいただくいとまがないとき、かような場合に限ってこの特別な措置をとる旨を規定したわけでございまして、裏を返して申し上げますと、本法案の百十二条におきまして各項にわたりまして記載いたしましたように、国会の臨時会の召集を決定する、または参議院の緊急集会を求めてその措置を待ついとまがないとき、かようなときには最小限度に事項を限定いたしまして、かような措置をとるということは、必要にして、かつ、やむを得ないのではないか。ことに、この措置は長く続くものと予定しているわけではございませんで、国会がお開きいただきますときには、直ちにその御決定におまかせする。かようなふうに法案規定いたしておるわけでございまして、くどくなりますが、国会の召集、集会のいとまのないときに、この程度の限定いたしました事項につきましては、何らかの措置を必要とするのではないか、かように考えております。
  32. 小澤太郎

    小澤(太)委員 関連。この前のこの委員会で私から御質問をいたしました。それに対する自治大臣並びに行政局長の御回答を得たのでありますけれども、ただいま亀岡委員の御質問に対する回答の状況を伺っておりますと、私がこの前受けた説明と多少変わったような感じがするのであります。と申しますのは、この法案の一番大事なところは、国が積極的に今後天然その他の大きな災害、そういうものに対して国民をその被害から免れさせるための基本的な法案である、こういう積極的な意図を持ったものである。そうでなければ意義は薄らいでくる。ただ行政の組織なりその運営を規定した組織法的なものであってはならないという私の考え方、それに対する御回答として、いやお前の言う通り積極的な意欲を盛り上げたのである、こういうお話であって、その法律の解釈上はやや疑念がありますけれども、それは私どもが協力いたしまして、さらによき完璧なものにしたい、こういうことを希望申し上げて、私の質問を打ち切ったわけでございますけれども、ただいま第三条の解釈につきましても、まことにこれは物足らぬものがある。特に一つ法律の中にありまする用語は、一貫して同じ内容を持ち、同じ観念でもって解釈されなければならぬと思うのでありまして、たとえばここにあります「災害予防」という言葉、これはこの法案を通じて見ますると、至るところに出ておりますけれども、この「災害予防」という言葉の持つ意味は、場所によって非常に狭く、あるいは場所によっては広く解釈できる、こういうことでは相ならないと私は考えます。  そこで第三条の「災害予防」という言葉は、治山、治水、国土保全の積極的な施策、これを含むのだという御回答であったので、一応満足いたしたわけでございますが、ただいま政務次官の御回答では、意に足らないものはなお考えていこう、こういうことでございまして、多くの示唆に富んだ御回答であります。としますと、やはり政府当局におかれても、この三条が適正でない。表現が、ほんとうの政府の意図しておるものを法律が表わしておらぬということが言えると思うのであります。  さらに、それに関連して伺いたいことは、この百二条であります。第百二条の第一項の第二号に「災害予防災害応急対策又は災害復旧自治省令で定めるものに通常要する費用で、当該」云々と、これについては起債をもって財源とすることができる、こうあります。しからば、この災害予防というのが、先般の御説明のように治山、治水の根本対策、国土保全の積極的施策というものを含むならば、どういう範囲内でそういうものに対する地方自治体の負担すべきものについて起債をもって財源を認めるか、こういう問題が出てくるわけでございます。一応そのことを伺いまして、さらに私二、三つけ加えて御質問申し上げたいと思いますので、よろしくお願いします。
  33. 大上司

    大上政府委員 お答えいたします。ただいまこの第三条規定についての政府考え方はやや違うじゃないかというように承ったのですが、私といたしましては、この法案がいわゆる災害予防重点を置いているということは、前回大臣または行政局長からそれぞれお答え申したことであろう、これは間違いございません。従って、本日の亀岡委員の御質問は、主としていわゆる財政上の処置についてのように私承りましたので、その点について触れさせていただきました。  なお第二のいわゆる地方債の云々につきましては、事務当局より十分説明いたさせます。
  34. 松島五郎

    松島説明員 ただいまお尋ねのございました第百二条に、災害予防災害応急対策または災害復旧自治省令で定めるものに通常に要する費用で、当該地方団体負担に属するものの財源とする場合は、地方債をもってその財源とすることができるという規定がございますが、これは御承知通り、現在の地方債は、地方財政法第五条の規定によりまして建設的な経費の財源に充てる場合に限られているわけでございます。従いまして、災害が起きました場合に、第一号にありますような税の減免でありますとか、あるいは災害の諸対策に要します一般的な経費、一般的と申しますか、私どもの通常使っております言葉で申しますならば消費的な経費と申しますか、そういったものについては現在の制度上は地方債の発行が認められておらないわけでございます。そこでいつも災害のありますたびごとにそういった経費に要しますものにつきましても地方債発行の特例法の制定をお願いをして、いわゆる歳入欠陥債あるいは災害対策債というようなものの発行をしているわけでございますが、そのことをここに掲げたものでございまして、災害予防にいたしましても、積極的な、たとえばいわゆる建設事業については一般的な方針に従って処理されるわけでございます。
  35. 小澤太郎

    小澤(太)委員 そうしますと、今後はこの災害予防という言葉で表現されておりまする地方自治体の負担する治山治水の基本的な計画実施、これについては起債をもって財源とするということが、はっきりこれで積極的にそうするのだということがいわれるわけですね。
  36. 松島五郎

    松島説明員 私の今申し上げましたのは、いわゆる建設的経費に属しないような、たとえば修繕費的な経費災害予防のために支出したというような部分が、ここにいわゆる地方債特例として発行を認められるという意味で申し上げたわけでございます。さらに積極的な意味災害予防事業なりあるいは災害対策事業というような建設的な事業を行ないます場合、御指摘の治山治水事業を行ないますような場合の財源をいかにすべきかということは、この条文とはまたおのずから別個のものではなかろうかと思います。そういう場合に地方債をもって処理するのが適当であるか、あるいは一般財源をもって処理するのが適当であるかということにつきましては、いろいろ問題があることでございまして、一般に仕事をやっていきます場合に、将来に負担を残さない方がむしろ財政運営としては適当ではないか。そのためには地方の財源を充実することによって治山治水事業を積極的に行なえるような態勢に持っていくことの方がより健全ではないだろうか、こういうふうに考えている次第でございます。
  37. 小澤太郎

    小澤(太)委員 それであなた方のお考えと申しますか、非常に消極的な気持ということがわかったわけです。と申しますのは、私は、財政理論からして、起債をもって財源に充てることを拡張しろということは少しも考えておりません。地方団体財政運営の面から起債にたより過ぎるということは妥当ではないということはよく存じておるわけであります。  そこで私はこの第三条にもう一ぺん戻りたいと思います。ここでは国が国民の生命、身体、財産を災害から保護するために災害予防計画を作成するということがありまして、その災害予防という言葉が、ただいまの御説明にありましたように、積極的な治山治水についてはこの百二条の第二項では触れておらないということになりますならば、同じ言葉を使っておりまする第三条の災害予防という言葉は、そういうものに触れてないということになるわけであります。こういうことがまことにおかしい。さらに先ほどから御答弁がありました第八条でありますが、これは国及び地方団体、これは国が責任を持っておるということをはっきりしていない。つまり国が災害予防については全責任を持ってやるんだというその気魂、もちろん事業によっては地方自治体が持つものもありましょう。しかし原則として国が積極的にこういうことをやるんだというような気魂なり、そういったような考えが根底にあっての法律でなければ、基本法と銘打つのがいかがかと私は思うのでございますが、第八条にはそのような気魂がありませんし、それからまた先般時間がなかったので十分お尋ねできませんでしたけれども、たとえば三十五条ですかに防災基本計画について書いてありまするが、防災計画の中で防災業務計画並びに地域防災計画について重点を置くべき事項をこの基本計画に立てて、そうして第二項におきましては、防災業務計画、地域防災計画において重点を置くべき事項はおおむね次の各号に掲げる通りであるとしてあって、「災害予防に関する事項」とありますが、この中には治山治水的なものは一つも掲げてありません。現に事務的に措置するようなことばかり書いてある。こういうふうに災害予防という言葉がきわめて狭義に解釈されるように使ってあるし、そうして今の御答弁のように、私は起債をもって財源に充てることは適当であるとは思いませんが、国が原則的に負担して、また地方自治体が負担すべきものにつきましては、起債もまたこれを積極的なものに充て得る、そうしてその起債に対しさらに国が責任を持って現在の災害復旧と同じように国がある程度の責任を持って交付税その他において措置をしていく、こういうふうな一連の、国の責任を明確にするような規定であるかと思ったのでありまするが、そうではない。ただいまの御答弁きわめて不満足でございます。大事なことはほかの法令に譲って、ただ消費的な事務費的なものだけを見てやろうというくらいのことであるとすれば、麗々しくここに掲げるほどのこともないと私は思うのであります。そういうふうに末端的なこと、事務的なことだけが強く浮かび出て、そうして肝心な基本法に盛り込むべきものが載っていないという印象を強くするものであります。先ほど政務次官は、亀岡議員の御質問に対する回答は財政の問題だと言われましたが、私の申し上げているのももちろん財政の問題であります。国の責任を明確にして、そうして国が法制上、財政上の措置をとり、金融上の措置をとらなければならぬというふうな、一本の大きな柱を立てなければ、この法案は画龍点睛を欠くどころか、体をなさない、背骨がない、こういうふうに考えるのでございまして、幸いに政務次官の御答弁で、これについてはさらに考慮するということでございましたので、先般質問をいたしましたときに最後に申し上げたように、私どもはよりよき法案を早く作りたい、これは国民の要望であります。従ってこのために協力いたしたい、こういう考えでございますので、政府側の答弁も、またその内容につきましても、もっと腰を入れて本気になってやられるような国会委員会における御答弁が願わしいと私は思います。これだけ申し上げまして、私の質問を終わります。
  38. 亀岡高夫

    亀岡委員 第五条のところでお伺いしたいのでありますが、第二項の中に「住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織の充実を図り、」ということが書いてあるわけでありますが、こういう組織を作ってこれを動かしていくわけでありますが、これらに要する市町村経費というようなことはお考えになっておるのかどうか。また、これらの自主的な防災組織というものはどういう実態の組織をお考えになっておられるのか。また過去の災害においてこういう組織がほんとうにりっぱな働きをした実例があるのかどうかというようなことについて一つお伺いしておきたいと思います。
  39. 川合武

    川合政府委員 お尋ねの住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織の例といたしましては、過去北海道の十勝沖震災あるいは最近におきます伊勢湾台風等におきまして、その必要が感ぜられ、ことに名古屋市におきましては、伊勢湾台風直後におきまして自発的な住民組織がほぼでき上がっている状況でございます。申し上げるまでもなく、住民の自発的な組織の充実を期待しておる、こういう法案意味合いでございます。
  40. 亀岡高夫

    亀岡委員 どういう組織ですか。青年団とかあるいは……。その実態について一つ伺いたい。
  41. 川合武

    川合政府委員 地域的なものがおもになっておるのでございますが、青年団、婦人会その他の結びつきも考えられております。ただ問題は、その地区地区の災害から守る、もっと具体的に申しますと、警報の伝達あるいは災害が起きましてからの救助あるいは物資の配給その他につきましての混乱しております状態に対処し、そしてお互いの間で助け合うというような要素も加わりまして、主として地域的な組織でございます。ただ、青年団、婦人会というものとの連関も考えられておるような状況でございます。
  42. 亀岡高夫

    亀岡委員 市町村においてすらここまで考え防災をやらせようというその意図を法律に盛っておるにもかかわらず、また最初に戻るわけでありますが、どうも災害そのものに対する国の意欲と申しますか、積極的な考え方と申しますか、そういうものが何となく消極的にしか考えられないということは、どこを見ても感ぜられるわけであります。先ほど小澤委員からも質問があり、また私も最初に申し上げました通り、せっかくこうやって災害基本法というものを作ります以上、もっともっとりっぱな、国民がこれによって安心だという感じを与えられるような法案にするために、われわれも大いに協力いたしますから、政府においても、各省ともより高い見地から、こうするとおれの省の方が都合が悪い、こうすればおれの方がよくないというようなことを抜きにして、一つ一致協力していい法案を作るようにしていただきたい、これを要望申し上げまして、質問を終わります。
  43. 園田直

    園田委員長 太田一夫君。
  44. 太田一夫

    ○太田委員 私は、ちょっと角度は違うのですが、まず建設省の方にお尋ねをしたいのです。  水の問題でございますけれども災害対策基本法の中には、もちろん水ばかりではありません、その他の天災も入っているわけでありますけれども、現在、第二室戸台風あるいは十三号台風、あるいはその前の幾多の台風被害を振り返ってみますと、水というものを除外して防災ということはないのです。この基本法について今議論がありましたけれども、応急救護対策だとか、応急の臨時の対策、復旧対策、私はそういうものを今問題にしませんから、もうちょっと先のことをお尋ねします。  この水の問題が防災の中心です。建設省としてはこの水をどう扱うつもりかということです。承るところによると、一年間に降る雨が六千億トンぐらいだといわれています。六千億トンというとどれくらいあるかと聞いてみると、地表から一メートル半くらいの高さに日本国土をおおう。水は幾らでもある。水は幾らでもあるけれども、京浜工業地帯、中京工業地帯、阪神工業地帯、北九州工業地帯は水が足らない、こういう問題が起きているでしょう。ところが、この災害基本法でも、水が大きな災いのもとであるという思想から、どうして水の災いをなくそうかということを中心にしておるが、水がなくて困っておるのが今の日本なんです。水をどうするのですか、この基本的な考え方について建設省にお伺いいたしたいと思います。
  45. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいま水の問題をどうするかという、非常に広範な角度からの御質問でありまして、そのポイントが私もちょっとはっきりいたしませんので、あるいはお尋ねの点と少しそれるかと思いますけれども、御指摘のように、わが国におきましては水による災害というものが非常に大きいわけであります。これに対しまして治水事業を行なっておるわけでございますが、治水事業につきましては、御承知のように治山治水緊急措置法に基づきまして治山治水十カ年計画を樹立いたしまして、これに基づきまして今後の水による災害を防止するという態度で現在事業を進めて参っておる次第であります。  それから次に水の利用の問題でありますが、水によって災害が多い反面、また渇水期には水が非常に足らないわけでございます。特に工業用水、あるいは水道用水等が最近におきます産業の発展や人口の増加等に伴いまして非常に増して参りました。もちろん農業用水等の増加も多いわけであります。こういう水の需要の増大に伴いまして、水の利用をどうするかという問題が出て参っておるわけでありますが、これにつきましては需要に即した水を供給する必要があるということで、現在関係各省及び経済企画庁等と一緒になりまして、この国会に水資源開発促進法及び水資源開発公団法の二法案提案されまして、これによって水の供給の万全を期したいというふうに考えておるわけであります。
  46. 太田一夫

    ○太田委員 もうちょっと承ります。今農業用水は非常に増加することも多いというようなお言葉がその中にありましたが、あなたのおっしゃる昭和三十五年度から始まる治山治水十カ年計画の終わる昭和四十五年ごろに都市用水、工業用水、農業用水の需要の割合はどの程度に見込んでおられるか、どんな数字から今のお話が出たのですか、数字を承りたい。
  47. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 全般的な数字はただいま申し上げかねますけれども、私どもの方といたしましては、各地域について現在及び将来を、昭和四十五年あるいは五十年ごろには各種用水がどの程度あるかということを見込んで、それに対する水の開発を行ないたいと考えておるわけでございますが、ただいまその数字を手元に持ち合わせておりませんので、必要であればまた後ほど御説明申し上げます。
  48. 太田一夫

    ○太田委員 それは先ほどの亀岡小澤委員、あるいはこの前の会議を開きましても、だれに聞いたら災害対策基本法のことがわかるのか、だれが一番よく知っておるかわからないのです。みなちょこっとしか知らない。小指の先しかわからない。その人が何百、何千人集まってようやく全部わかるということになるなら一体これはだれが運用するか、早く言うならば、やる人はだれに聞いたってわからないから自分の解釈をすることになると思うのです。今のお話でも、水というのはこれは河川局の次長さん、それは相当変わってくるから、もちろん課長さんかだれかが一番数字が詳しいか存じませんけれどもへ数字そのものというのは三が四であるか五であるかということに絶対問題があるわけじゃない。けれども、都市用水はどういう傾向になるのか、十年間で農業用水はどういう傾向になるのか、工業用水はどういう傾向になるかわからなくて、新産業都市法案もないじゃないですか、あるいは国土建設もないのじゃないですか、開発もないじゃないですか、水資源開発もないじゃないですか。その基本的なものを今私はお尋ねをしておるわけです。どうですか、もう一回念のためにお尋ねしますが、大ざっぱにどんな傾向をたどるでしょうということについて何かお考えがございますか。
  49. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 今のお尋ねは水の利用がどういう方向にあるかというお尋ねでございますが、これにつきましては、工業用水につきましては通産省、あるいは農業用水については農林省、水道につきましては厚生省、それぞれの官庁で主管いたしておりまして、それぞれのところで試算いたしておるわけでございます。建設省といたしましては、そういうような水の需要に対しまして現在どういうふうな開発をしたらいいかということを考えておるわけでございまして、現在の河川の水について申し上げますと、わが国におきましてはたくさんの水、降雨量はありますけれども、渇水期に安定して使える水は一〇%程度しかない。従いまして、その一〇%程度の水をさらに二〇%あるいは三〇%程度にも高めて、そして安定した利用をいたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  50. 太田一夫

    ○太田委員 そういうことでございますか、水資源開発促進法というのは建設省の所管でございますね。建設省でやっているのですか、どこでやっているのですか。
  51. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 水資源開発促進法は経済企画庁で所管いたしております。なおそれに関連します水資源開発公団法がございますが、これにはそれぞれ主務大臣がきめられておるわけでございまして、その主務大臣は内閣総理大臣と、それから建設大臣、農林大臣、厚生大臣、通産大臣となっておるわけでございます。
  52. 太田一夫

    ○太田委員 できた後どこでやるということはいいのです。しかし治水の問題はしょせん建設省でありますから、建設省に一番よく御存じの方がいらっしゃると思うからお尋ねをしておるのですが、私の知る限りでは、農業用水というのは十年先にふえない。あなたはさっきふえるとおっしゃったが、ふえないと思っているのです。農林省の方はきょうはいらっしゃるのですか——だから水資源開発ということになって、川の上流が多目的ダムによって水がとめられたとしましても、その多目的ダムとそれからもう一つの専用ダムと申しますか、農林省の灌漑用水ダム、これとの関連が現在地方でうまくいっておらないのですよ。これはどうですかね次長さん、うまくいっておるのですか。目的の調整ということはうまくいっておるのですか、水の利用ということはうまくいっていますか。
  53. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいまのうまくいっているかという御趣旨がよくわかりませんが、特に農業専用ダムあるいは多目的ダムの運用につきまして非常に困っておるという事例はあまり聞いておりません。
  54. 太田一夫

    ○太田委員 困っていないということになると天下の争いというのはわれわれ理解できない。新聞には幾多それが出ているわけです。ずいぶん出ているんですよ。農林省のダムは、これは農業用水を取るためなのだからその水というものは全部小河内ダムによってたんぼに持っていってしまう。それから多目的ダムになりますと、これはもう少し違いまして、国土開発、水資源利用という思想が現われてくるから、農林省の農業用水というものは少し影が薄くなってきて、都市用水、工業用水、こういうことと、河川を常時水を流さなければならないという、こういう河川の使命、こういうものに多目的ダムというものが使われておる。その中で産業用には、特に工業用水というそのもう一つもとの、つまり水力電気の発電用というものが法案にも書いてあるけれども、こういうものにも使える。ところが、農業用の水であろうと工業用水であろうと、天から降るときにしるしは打ってこないのですね。たまたま降ったところが農林省のダムだったらたんぼに入れなければならぬという運命が出てくる。これは人間が作ったということ。建設省のダムに入ったら今度はそれは工業用水に主として供給される、あるいは上水道に供給されるという運命をしょわされる、こういうことになる。だから水というものが日本の国の政府の政治のあり方によって区分されている。その区分されているやり方は上流の水だけでなくて、下流に行けば、海岸の防波堤などにも築堤にもそれが現われて、これは伊勢湾台風から指摘されておりますけれども、農林省の堰堤は強い弱い、建設省の築堤は強いとか、運輸省に至ってはまことにしっかりしておるとかなんとか、いろいろ言っていますね。こういうような差異が現われてきて、その差のすき間に災害のもとがあるのです。農林省は農林省でダムを作ればいい、建設省は建設省で作るなんて、そんなばらばらのことでは日本の国の六千億トンの水を国民の利益のために使うことはできない。私はそう思う。  そこで先ほど治水事業十年計画というお話がありましたが、あれは前期と後期と五年ずつに分けて十年で予算はどれくらいでしたか。
  55. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 十カ年計画で総額九千二百億円になっておりまして、前期に四千億円、後期に五千二百億円になっておるわけであります。
  56. 太田一夫

    ○太田委員 十年で九千二百億円、今までの年間の水による被害が、物的な被害だけで年間平均二千億円からある。平均して二千九百人が死ぬと言われている。二千億円が年間の平均なら十年で二兆円、まことにもって治水事業に投ぜられる金額は少ないと思いますが、これはさらに地方自治体並びにその受益者負担というものを伴っていますね。治水事業、治山治水、砂防、ダム、いろいろなものがありましても、受益者負担というものが伴って参りますと、これはなかなか総体的には大きなことになると思うのですが、今おっしゃった九千二百億円というのは建設省の予算でございますか。
  57. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいま申し上げました予算は、治山治水緊急措置法に基づきましてそれぞれの事項についての数字の総額でございますが、その中身は河川の改修事業あるいは砂防事業、建設機械を整備する、いろいろの中身になっておるわけでございます。その中身の費用負担関係は、それぞれの法律に基づいて負担区分がございますが、先ほど申し上げました数字は事業費の総額を申し上げたわけでございます。
  58. 太田一夫

    ○太田委員 そうすると事業費で九千二百億円なのですから九牛の一毛、損害の一割にもならない。損害はどんどん出るんですよ。たとえば一回災害が起きた。一千億円の災害が起きた。それをほっておいて再度災害になって直すと、これは一千億円に対して二千五百億円、大体二・五倍だといわれておりますね。再度災害は復旧費が倍以上かかるといわれておる。そういうように、再度災害を防止するという建前からいきましても、今回の事業費というのはよほど大幅に見積もらなければならないが、私ども考えまして、九千二百億円というのは九牛の一毛だと思う。あまり本腰が入っておらぬ。さらにそれには高潮対策は入っておりませんね。高潮対策は前期と後期とに分けてどんな工合ですか。
  59. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 高潮対策は治山治水十カ年計画に入っております。正確なことについては申し上げかねますが、東京、大阪両地区におきます高潮対策事業といたしましては、約三百億ないし四百億が一応予定されておりますが、しかしこの高潮対策事業は、なお私どもは全体計画としましてはそれ以上のものが必要であるというふうに考え検討しておる最中でございます。
  60. 太田一夫

    ○太田委員 大いにこの予算をふやすことを考えなければならぬと思うのです。この基本法を見ても、この基本法の中にはそういうことは書いてない。基本計画を立てるとかいうことになっておりますが、現状がこのような状態である限り、ほんとうの防災なんというものは絵にかいたもちだという気がするのです。  そこで先ほど水の問題がありましたが、私が知る限りの統計なんですが、全体の水は、都市用水に現在大体四十三億トンくらい、工業用水が百四億トン、農業用水に五百億トン、こういう工合で使われていて、十五年くらい先、昭和五十年の想定があるのですが、五十年の想定の数字で見ますると、都市用水が三倍、工業用水は四倍、農業用水はちょぼちょぼ、こういうような工合になっている。実はそこで私はちょっとお尋ねしたいのは、その中で工業用水のことなんですが、工業用水法というのは現在あるんですね。これは地盤沈下対策にかなり力点があるように思うのですけれども昭和三十一年六月十一日ごろからこれができて、工業井戸というのが大体許可制になっておりますが、さて実際上はあまりこれは取り締まられておらない。それが大阪における今回の地盤沈下、あるいは中京、あるいは京浜地区の地盤沈下の最大なる原因をなしておるわけです。そこできょうは建設省のなかなか専門の方が来ていらっしゃいますから、少し近くの東京のことでお尋ねをしてみたいと思うのです。江東地区の地盤沈下というのは実は非常に注目をされておるようでございますが、現在どれくらい地盤沈下の状況が現われておるのですか。東京地区、京浜地区を限って一つ説明いただきたいと思うのです。
  61. 中野尊正

    ○中野説明員 現在東京地区で一番下がっておりますところは、一年間に大体十七センチでございます。
  62. 太田一夫

    ○太田委員 大体東京の地盤沈下の著しい地区というのは、昭和の初期に比べて二メートルから三メートルぐらい下がっておる、こういうことを聞くんですが、今の一年に十七センチ下がるというのは最近の実績でございましょうか。たとえば江東地区とか丸の内だとか、あるいは川崎だとか横浜だとか、こんなようなところはわかりませんか。
  63. 中野尊正

    ○中野説明員 大体地盤沈下というものが東京地区でわかりましたのは関東震災の直後に、私どもの前身である陸地測量部で水準測量の結果、東京下町地区で非常に大きな地盤の下がりがあるということがわかりました。それ以来毎年ほとんどずっと調べておりますが、昭和十九年から二十年まではひどいところで二十三センチばかり下がっております。それからその時代において、銀座とかあるいは太田区あたりですと大体一年間に五センチから一センチ程度、それから川崎地区はずっとおくれまして、大体第二次大戦の前のころから非常に大きく下がりました。それで川崎の場合には、最近では工業用水に水道を作りまして、地盤沈下の量はずっと減っております。しかしそういうように見ていきますと、おわかりになりますように、地盤の沈下度というものが、同じ東京の下町の中でも、丸の内とか銀座とかいうところと、荒川放水路に囲まれた周辺の地域では大きな差がある。大体三倍くらいの違いがいつの場合にもあるものとお考え下さればよろしいかと思います。
  64. 太田一夫

    ○太田委員 かなり顕著な地盤沈下が東京にも現われておりますね。その京浜地区の地盤沈下というのは工業の発達と密接不可分なものがあると思うのですが、そういうことは御検討なさったことがありますか。
  65. 中野尊正

    ○中野説明員 東京の下町に工業地帯が広がって参りましたのは、大体大正の六年から七、八年、そのころから以後でございます。工場が荒川放水路の特に西側の地域に広がってくるとともに地盤沈下の量が、年々ひどくなっております。それに伴って、これは常識的になっておりますが、井戸が抜け上がったとか橋床にひびが入るとかいろいろな現象が起こっているわけです。最近ではそういう沈下量と実際の地下水位の変化について東京都でいろいろ観測をしておりますが、その間の並行関係昭和六年から八年のころにすでにわかっております。
  66. 太田一夫

    ○太田委員 私の申しておりますのは、そういう地盤沈下が工業の発達と密接不可分なものでございましょうということを言っておる。だれかこれにはっきり答えて下さい。
  67. 中野尊正

    ○中野説明員 私たち地盤沈下の研究をしている者の間では、地下水をくみ上げる工業と密接不可分な関係にあるというふうに考えております。
  68. 太田一夫

    ○太田委員 地下水をくみ上げることと密接不可分な関係があるとするなら、地下水をくみ上げている工業、その工業の発達に伴ってビルができ、ビルの冷房用ないしは自家用水、これが地下水くみ上げの根本で、一般の市民が井戸からくみ上げておる水が地盤沈下の原因じゃないでしょう。中野さん、いかがですか。
  69. 中野尊正

    ○中野説明員 ただいまの点についてお答えいたします。地盤沈下がかりに十センチなら十センチ下がっているという場合に、その九割くらいを工業用水的なものが占めているというふうに考えております。残りがその他の揚水、地下水くみ上げにおける問題とか、あるいはやわらかい泥が自然に収縮するというようなことによる沈下が含まれている、そういうふうに判断していいわけです。
  70. 太田一夫

    ○太田委員 そうですね。あなたは理学博士でいらっしゃいますから、そういう点は政治的なものでなしにお答えがいただけると思う。しかし、あなたには地図部長という仕事の肩書きもありますから、政治的な色も多少あるかもしれませんが、これは一つ理学博士の立場で特にお答えいただきたいと思うのです。たまたまいいお話になりましたから、これもまじめな議論ができますね。その通り、地下水のくみ上げである。地下水くみ上げによって地盤の収縮もあり得る。その他地盤の収縮とおっしゃいましたけれども、地盤というのは、いつでしたか、何か関東平野が中央が低くなって周辺が高まったすりばちのようになったというのがありましたが、あれはいつごろでしたね。そんなことがありましたか。
  71. 中野尊正

    ○中野説明員 ただいまの件についてお答えいたします。関東平野のまん中で盆地状に下がっていくということ、こういう事実がわかりましたのは、これまた先ほどちょっと出ましたが、関東震災のあと、大体大正十二年以降、特に昭和六年ごろにそういう研究がなされているわけです。これは関東地方だけでなしに、十勝平野とか、あるいは濃尾平野とか、その他の地域についても指摘されていることであります。
  72. 太田一夫

    ○太田委員 関東大震災、大正十二年、一九二三年以来ですね。一九二三年以来の何か特殊な現象が関東平野の中央部の陥没ということになってきた。それは今も続いているのですか、とまっちゃったのですか。
  73. 中野尊正

    ○中野説明員 現在、これは日本国じゅうどこでも大なり小なり動いております、関東平野の場合でも、盆地のまん中が全体としては下がっていくような傾向で沈降運動を続けているわけです。その割合は大体一年間に五ミリないし八ミリ程度というふうに私たちは計算しております。
  74. 太田一夫

    ○太田委員 なるほど、現在もなお動いておる。しかし、それと相対的な立場でいって海岸部が隆起するという事態は、先ほど地盤沈下ということがありますから、絶対にないのですね。
  75. 中野尊正

    ○中野説明員 関東平野の場合には、軟弱な地層のところで地盤沈下が起こっております。それから房総半島の先、あるいは三浦半島の先というようなかたい山石でできておるところでは、大きな隆起をしております。大体その隆起の早さというのは、一年間に直しまして、やはり五ミリから七、八ミリという値が計算されております。
  76. 太田一夫

    ○太田委員 そういたしますと、中央がへこみつつあるということは、これは地下水の流れからいいますと、逆に江東並びに京浜地区というところの工業用水の多く要るところ、特にこの江東デルタ地帯などにおきましては、ほとんどくみ上げ用水によっているわけですけれども、こういうところの水は年々減りつつあるのだ、水が減っている。くみ上げているというところは、天然自然的に傾斜があるのだから、低いところに水が流れますから、これはあの辺の水だって相対的に水資源というのは枯渇している、こういうことが言えるのですか。
  77. 中野尊正

    ○中野説明員 地下水の供給源というのは大体天水、つまり空から降ってきた雨水に依存しております。従いまして、供給される水以上に地上でくみ上げますと、だんだん地下の中における地下水の保有量というものが減って参ります。そういうことが地下水圧のバランスをくずして地盤沈下に結びつく、また同時に、浸透圧のバランスがくずれますから、地下水が塩水にかわるという現象、つまり塩水化現象というものが引き起こされるというふうに考えられております。
  78. 太田一夫

    ○太田委員 地下水の増減というものは非常に大きな地盤沈下並びに災害を誘致するもとだということが明らかになりつつあるのですが、特に江東地区というのは、ゼロ・メートル地区といわれておりますけれども、実際は江東はゼロ・メートルじゃない、これはもっと低いのです。しかも、そこで工業用水というものが非常に多量に使われておる。くみ上げた地下用水が使われておる。工事用水道というものがない。だから地下水がたくさんにくみ上げられているというのが江東デルタ地区の実情だとしますと、これは現在の時点において高潮がきたという場合に、東京では、ひざを没する以上の深みになるところはどの辺でございますか。
  79. 中野尊正

    ○中野説明員 高潮がきた場合ですと、大体伊勢湾あるいはその他の高潮について調べてみますと、高潮で非常に水位が高い状態というものは、台風の通過する間の三十分から四十五分くらいとお考えいただければいいと思います。そういう場合には、これは高潮の発生する時間と、それから天文潮位、つまり潮汐によって起こっている潮位との関係によって水位の状態が変わって参りますから、最悪の状態を考えますと、東京の場合には、いわゆる普通の中等潮位から四メートル以上ふえるということか計算によって——気象庁の専門家が計算しておりますが、そういう数字が出されております。そういう状態のときには、これはひざを没するという状態を通り越して、みなお魚のえさになるような、そういう水の中に水没する状態にかわる。しかし、時間が経過して普通の潮汐の状態で下町が水につかっている状態でございますと、大体荒川放水路の周辺の約三十五・五平方キロの範囲が、これは普通の中等潮位でも海面よりも低いところ、つまり水につかっていることになりますし、それから満潮位ですと、大体東京下町では百十五平方キロが海抜一メートルくらいですから、われわれの胸のあたりまでくる、水びたしの状態が起こる可能性を持っておる。これは物理学的な問題ですが、そういう可能性を持っておるということを、われわれは答えを出しているわけです。
  80. 太田一夫

    ○太田委員 世間の人が簡単に考えている考え方でお尋ねしますが、銀座から丸の内付近、あるいは文京区の春日町ですか、春日町まで水がくるのですか。それとも丸の内付近でとまってしまうのか。丸の内はどのくらい、銀座はどれくらい……。
  81. 中野尊正

    ○中野説明員 大体あの土地の高さで一メートルくらいまでが高潮で直接被害を受ける範囲というふうに考えられます。ところで、その一メートルくらいの線というものは、これは詳しく調べてございますが、大体銀座から丸の内あたりで申し上げますと、東海道線から外側、海寄りの部分、つまり銀座寄りの方は、場所によって盛り土をしておりますので高い。従って一メートルより高いというふうに言ってよろしいかと思います。しかし神田から須田町あるいは両国の橋を渡りまして、いわゆる江東地区に参りますと、ほとんど全部が一メートルより低くなります。それから春日町の付近ですと、これはいわゆる高潮によって被害を受けることはないというふうに考えていいだろうと思います。
  82. 太田一夫

    ○太田委員 そうすると、やはりどうしても東京の場合の防災、水という問題、高潮ということを考えると、江東が中心になりますね。江東というところは中小企業ですが、中小企業庁の川島振興部長がいらっしゃいますから、ちょっとお尋ねをしますが、中小企業をこれから何とか振興しなければならぬということは、あなたの所管であるし、国会の使命でもあるわけでありますけれども、江東並びに今度第二室戸台風におきまして阪神を襲いましたあの被害でも、同じように一番被害の大きいのが中小企業なんですね。その中少企業というものを災害、特に風水害から守るにはどういうことをしたらいいとお考えになりますか。今度でも一番多かったのは大阪でしょう。大阪の堺を中心とし、あるいは南部臨海地帯を中心としまして中小企業が一番多くやられた。中小企業がやられたのはいろいろ理由があると思うのですが、具体的に、何といっても今度は中小企業台風だと言われたくらいですから、中小企業を風水害から守る、江東地区の中小企業あるいは京浜地区並びに中京から阪神地区の工業地帯の中小企業を守るのは、どういう施策があったらばいいとお考えになりますか。
  83. 川島一郎

    ○川島説明員 ただいま御指摘のように、毎時災害におきましては、中小企業の災害を受けた比率が非常に多いわけでございますけれども、この点はすでに御承知通り、あるいは工場あるいは店舗等におきましても、九〇%以上が中小企業が占めておるというふうな情勢から、いわば蓋然的に中小企業の被害状況が非常に高いということにならざるを得ないような構造になっておることも事実でございます。ただ御指摘のように比較的条件の悪いところに、しかもたとえば建物その他の施設も貧弱で、あるいは防災のための対策も貧弱であるという形で中小企業が放置されておることも事実でございまして、そのために中小企業の被害も大きくなるということも争われないことでございます。ただこれらの地域におります中小企業は、それぞれ従来からのあるいは取引関係なり、あるいは原料その他の受け入れ関係等いろいろな面におきまして、今直ちにその地区からどこかいいところへ移り変わるということも、これは実際問題といたしまして非常にむずかしい状況でございますので、私どもといたしましては、やはりその地区におきます住民のいわば安寧福祉と申しますか、そういう意味の対策が全般的に充実される以外には、やはり中小企業だけで解決し得る問題というものはなかなかむずかしいのじゃないかというふうに考えております。
  84. 太田一夫

    ○太田委員 そういうことだと金がかかるでしょう。移るのは、中小企業団地をどこかに作るということができないとすれば、これはそこに置いておいて守ってやるということだから、それはあなたは住民の安寧福祉の充実だ、こうおっしゃった。安全にそこで仕合わせなる生活ができるように守ってやるとしたならば、ずいぶん金がかかるわけですね。これは今あなたは、今度の災害対策基本法ができて、住民の安寧福祉の充実は大丈夫かなえられるとお考えになっていらっしゃいますか。
  85. 川島一郎

    ○川島説明員 そういうふうに今後国をあげて努力されていくものと信じております。
  86. 太田一夫

    ○太田委員 信ずるというのは祈るということでしょう。信ずるということ、祈るということだったら、創価学会も立正佼成会もあるいはイエス・キリストも何も変わりないじゃありませんか。「世界大戦争」という今映画がありますけれども、あの中でフランキー堺が言うことは、おれは何も悪いことをしなかったけれども、どうして天罰を受けるがごとく原爆によって蒸発しなければならないかと言うでしょう。最後に祈るでしょう。信ずる。おれは悪いことをしなかった。この世の中において一生懸命家のために世の中のために仕事のために働いた。そのために被害を受けること、罰を受けることはあり得ないと言ったって、天の神様は残念ながら原爆の前に一網打尽にしてしまう。「世界大戦争」を見てごらんなさいよ。そうしてみると、あの人たちには住むところもなし、工場を持つところもないという悲惨なる実情を、あなたは振興部長だから振興しなければいけませんね。信ずるということで信じて、その相手が信ずるにこたえる人は、この中にどなたかいらっしゃいますか。あなたの信ずるにこたえますと言える人がいらっしゃったら一つ手を上げて答えて下さい。次官どうですか。——委員長こういうことでやれないじゃないですか。進めますかこれで。私はなるべく具体的なことと基本的なことにつながりつつ、この基本法というものを分析しようと思っているのですがね。次官もいらっしゃらない、大臣も。だれが答えて下さいます。それでは神様ですか。中小企業庁の振興部長は、私はそれを信ずる、可能ということを信ずるとおっしゃった。行政局長いらっしゃらないから岸課長さんに答えていただきますか。
  87. 岸昌

    ○岸説明員 私で恐縮でございますが、ただいま御指摘のような点をここに御検討いただきまして、それによってわが国の防災体制というものを確立していただくということは、私どもも念願をいたしておるところでございます。ただ先ほどのお尋ねの中にもございましたように、一人で防災行政について何でもわかっておる、こういう人が遺憾ながらおらぬというのが、現実の防災行政の姿でございます。こういうことでは御指摘通り、わが国の防災行政を確立して参ります上に、はなはだ遺憾であると存じまして、私どもはその一歩前進、こういう意味でこの基本法を用意いたしたわけでございますが、この基本法におきましては、各省関係の仕事を、国の定めました防災基本方針に基づきまして、防災基本計画の中にどういう事項を重点的に取り上げていくか、それは治山治水の問題も、中小企業保護の問題も含めまして、どういう事項を重点的に取り上げていくか、それに対する財政措置をどうしていくかというようなことを、すべて関係各省が集まりまして相談をいたしまして、国の方針を打ち出していく、そういう仕組みにいたしておるわけでございます。従いまして一歩前進という意味におきまして、ただいまのような御指摘の点にもお答えできるのではないかと考えておる次第でございます。
  88. 川村継義

    川村(継)委員 ちょっと関連して。今の中小企業に対する災害対策等の問題については、あとで大臣か次官がこられてからもう一ぺん太田さんは答弁いただくそうですから、私は今太田さんのいろいろ質問を聞いておりまして、河川局の次長さんですか、ちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  それは治山治水と災害復旧という問題の関連ですね。これはまたいずれお聞きしたいと思いますが、この法案を見ると八十八条に災害復旧についての一つ規定を書いております。「前項の規定による災害復旧事業費を決定するにあたっては、主務大臣は、再度災害の防止のため災害復旧事業とあわせて施行することを必要とする施設の新設又は改良に関する事業が円滑に実施されるように十分の配慮をしなければならない。」なかなかおさとしみたいな言葉で書いてありますが、この災害対策基本法ということになりますと、災害復旧というこれは最も大きな柱をなす考え方に立たなければならぬとわれわれは考えております。  そこで先ほどあなたの治山治水十カ年計画で九千二百億の事業費をもって進行しておる、こういうことでありますが、あなたの方の事業関係だけを考えてみても、治山治水の計画されている事業と、それから災害復旧という点についてどうお考えになっておるか、これを一つお聞かせおき願いたい。と申し上げますのは、私たちは、災害があった場合の新設あるいは改良等のいわゆる関連事業というようなものは、今までのやり方はまことに残念きわまるやり方だと見ております。原形復旧などという言葉も使われておるようでありますけれども、原形を復旧することだけに災害の復旧の手当をして、当然やらなければならぬ新設その他の関連事業、改良事業等をなおざりにしておったから再び災害が起きている。作ってはこわし作ってはこわすという結果になる。だから、こういう点は根本的に考え直す施策が必要ではないか、こう考えておるのです。  そこで、もう一歩進めて申し上げますならば、今後災害復旧を国が考える場合には、もう新設も改良もないではないか、そこがこわれたならば、当然二度と再び絶対に災害を受けないというような事業をやるべきである。こう考えると、今までの予算上の措置どもこれはまことに微々たるもので、問題はその辺に残っているわけです。そとで建設省として治山治水事業を進めておられるが、治山治水事業には九千二百億も一応計画を乗せておるが、災害復旧等については、私が今申し上げたような点はどう考えておられるか。もりと突き詰めて申しますなら、これは変な言い方ですけれども、たとい治山治水の事業を縮小するようなことがあっても、必要な災害復旧事業は十分にやる、そういう考え方に立っておられるのかどうか、その辺のところのお考え一つこの際聞かせておいていただきたい。
  89. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 ただいま災害復旧事業河川改修の点についてのお話がありましたが、原則的には河川につきましては一定の計画を立てまして未然に災害を防止する、河川改修その他の治水事業を行なっておるわけでございます。しかし、それでもなおいろいろな異常な天然現象等によりまして災害が起きてくるわけでございますが、その災害復旧を行なう場合に、原形復旧だけでは不千分ではないか、もう少し改良的なものもあわせて考えるべきではないかというお尋ねかと存ずるわけでございます。  まず現在の災害復旧原則は、御指摘通りに、災害にかかりました際の施設を原形に復旧するということが原則になっておるわけでございます。しかし、この原形に復旧する場合におきましても、原形に復旧することが困難である、あるいは改良的なものをもって復旧することが必要であるという場合には、これも原形復旧と同様な考え災害復旧事業を行なっておるわけでございます。なお、このほかに災害復旧事業とあわせて改良的な事業実施いたしておるわけでございますが、これを災害関連事業と申しておるわけでございます。これは再度災害の防止のためにそういう関連事業をできるだけあわせて施行して災害を未然に防止していく。こういうことで、たとえば原始的な河川災害が起きた場合におきましても、改良的なものをあわせて事業を行なう、そういういろいろな問題がありますが、   〔委員長退席、纐纈委員長代理着席〕 私どもも努めて災害関連事業災害復旧事業とあわせて実施するように考えておるわけでございます。
  90. 川村継義

    川村(継)委員 もちろんそうなければならぬと思います。また、私が申し上げたようなことをやろうとするには、負担法等の改正問題等も当然出てくると思います。私が言おうとしておるのは、災害基本法が出ておる、しかも災害復旧というようなことは、災害対策基本法一つの大きな柱をなすものでなければならぬ。ところがこの法案を見ると、たった四カ条ばかり並べてある。しかもその中で一つ考えてみても、今お尋ねした非常に重要な問題がからんでおる。災害復旧には原形復旧あるいは改良だ、あるいは新設だ、そういうような考え方でなくて、いわゆる災害復旧として当然やるべき仕事は、二度と災害にあわせないように十分にやる、そういうような考え方に立つべきである。そうなると、それに伴って相当の金も必要になってくる。これは大蔵省等の見解も聞かなければなりませんが、そういう場合に皆さん方は、従来のようなやり方で、関連事業については十分考慮をする、配慮はしたいのだけれども、従来のようなやり方でやっていこうと考えておられるのか。治山治水というような事業は一方で進めなければならない。私は治山治水事業を削れとは言いませんけれども、治山治水事業の進行が予算的に見ると大事であって、災害復旧事業の関連事業等の問題についてはまた違うのだというように考えておられるのか。その辺のところを建設省のお気持を、次長さん、失礼かと思いますけれどもお聞かせ願いたいと思うのです。
  91. 鮎川幸雄

    ○鮎川説明員 治山治水事業を今後どういうような角度で考えていくかというお尋ねかと存じますが、治山治水基本計画は、過去の災害その他の経験等を考えまして作られておるわけでございます。今年におきまして御承知のように六月には梅雨前線の豪雨、第二室戸台風、その間において台風や水害等がございまして、いろいろな災害を経験いたしたわけでございます。その中でたとえて申しますと中小河川がはんらんをした、あるいは土砂くずれによる被害が大きかった、あるいは高潮による被害も激甚であった、その他冠水の問題があった。いろいな点で現在の治水事業について検討しなければならぬという点が出て参ったわけであります。そこで私どもといたしましては、現在の基本計画に基づきまして仕事はやるわけでございますが、そういうような最近におきます災害の経験を加味いたしまして、できるだけ事業の促進を大幅に繰り上げて実施いたしたい、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、このほかに御承知のように、本年度の災害につきましてはそれぞれ特例法を設けまして、高率の補助、負担等もいたしておるわけでありまして、先ほど御指摘災害関連事業につきましても、従来以上の負担によって再度災害の防止をするように考えておるような状況でございます。
  92. 川村継義

    川村(継)委員 今の問題についてはいずれ建設大臣等に来ていただいてお尋ねをいたします。
  93. 太田一夫

    ○太田委員 次官がいらっしゃいましたからお伺いいたしますが、先ほど中小企業庁の川島振興部長が、中小企業の中心集団地は、東京においては江東デルタ地帯、京浜地区並びに大阪などにおきましては、今回甚大なる被害をこうむった臨海地帯にあるのです。そこで中小企業を将来災害から守る対策としてはどういう具体的な決意があるか、措置があるかということをお尋ねしました。ところが、集団的に移れというようなことはできないから、そこにおって仕事をやるより仕方がない。従って住民の安寧福祉の充実のみでこの災害を防いでいきたい、こういう御決意であったわけであります。そのことをやっていただけるか、中小企業振興部長といたしましては、そういう期待に政府は応じていただけるものと信ずるという御回答でありましたが、自治省政務次官といたしまして、きょうはそれ以上お答えいただくことはありません。あなたが責任をもってその期待にこたえて必ずその人たちを泣かせないということにつきまして、今度の基本法からあなたはここで言明ができますか。
  94. 大上司

    大上政府委員 中小企業の問題につきまして、ただいま太田委員から私に対するいろいろな決意なり、方法なり、あるいはこれを行政面に施策として移す場合に決心があるかというような御質問のように伺いましたが、もちろんただいま中小企業庁の方から答えた範囲内に含んでおりますが、私といたしましては、いわゆる防災なりあるいは災害復旧等については、もちろん国の全体的な、あるいは地方公共団体災害復旧並びに防災は当然と思いますが、その中には一中小企業に限らず、諸般の企業があると思います。その意味から、これは当然立法する場合に十分計算に入れて考えられ、この法案に移行せしめたという過程を持っております。従いまして、法律的にはどうかということになりますと、本法案の第三章の防災計画の点に、第三十四条で「防災基本計画を作成する」云々とありますが、特に三十五条に移りまして、「防災基本計画は、次の各号に掲げる事項について定める」その中の「一 防災に関する総合的かつ長期的な計画」この項に織り込んで、この法案実施することになれば、ただいまの御趣旨に沿って十分研究して、これを実施に移したい、このように考えております。
  95. 太田一夫

    ○太田委員 いきたいとお考えになるだけの話であって、いくという保証がない。私はそういう答弁では満足するわけにいかないのです。というのは、一つ具体的な話でお尋ねをしますけれども、今度出るか出ないか、新産業都市法案というのがうわさされておりますが、この指定される地域というのは、ずいぶんたくさん、何十都市という地域がありますが、その中に現在において工業用水不足の地帯というのがあるのです。たとえば千葉、駿河湾、豊橋地区、和歌山、姫路、それから四国では徳島、高知、仙台、塩釜、秋田、八戸、ちょっと見ただけで工業用水不足地帯といわれるところが入っておる。工業用水の不足なところに工場をたくさん作って、そうしてこれを新産業都市として発展せしめようとしても、水の問題の解決がない限り、これはやはり地盤沈下を起こし、高潮の被害を増大し、そうしてそのために被害を受けるものは一番金のない中小企業と貧乏な住民だけなんです。この新産業都市法案というのは、防災じゃなくて災害誘致法案だ、こういうことも言えるのです。海岸はだれが守るのですか。大阪でも海岸を高潮から守らなかったじゃありませんか。たまたま東京へ来なかったからよかったが、来たら江東デルタ地帯だけではありません。全都にわたって非常な大混乱が起きることは想像されておりました。こういうことから、あなたのおっしゃる基本計画だとか、基本計画内容を定めるということだけで、保証があるとは私は受け取るわけにはいかない。保証はないのですね。そういう考え計画はあるが、保証はない、こういう法案でございますね。
  96. 大上司

    大上政府委員 ただいまの工業用水の問題でございますが、目下検討をしております。なお、さらにこれに対するいわゆる個人補償と申しますか、中小企業に対するところの補償があるかないかという問題ですが、これにつきましては、まだ十分なる結論を得ておりませんが、諸先生の審議の過程におきましてさらに検討したい、かように考えます。
  97. 太田一夫

    ○太田委員 だからそうなるというと、これは基本法ではなくて、基本法を作りたいという願望法案だ。こういうことになるなら少し法律ということにはならないのじゃないか。憲法でももっと詳しいですよ。  そこで今の中小企業に関連をいたしますが、伝え聞くところによりますと、近畿七府県が第二室戸台風によって受けた六百六十五億の中に中小企業の関係とされるものが八〇%ある、こういうことがいわれておる。これは何ということですか。これは一体何が原因だろうか、それは中小企業は金がないので建物が弱い、従って遠慮会釈なく浸水もします。その上景気の後退で金融がつかない。非常にむずかしくなっている。その上公定歩合の引き上げで銀行の窓口はどんどん規制されている。元来系列会社に入っていたところも親会社のめんどうがだんだん手薄くなったために、これは改良復旧も何もかも手がつかない。第二室戸台風によって被害を受けた人たち、今後被害を受ける人たちが、金融の規制あるいは公定歩合の引き上げということによって新築改良等を認められないとするならば、ますます中小企業の被害は増大する可能性がふえてくる。そうするものはだれかといえば、それは池田総理を中心とするあなたの内閣がそういう被害を甚大ならしめる施策を行なっているとしかこちらから見ると思えない。こういうことを解決するものがない。この基本計画でできますか。  そこで具体的なことですが、きょうはせっかく銀行局の特別金融課長さんがおいでですから、お尋ねしますが、第二室戸台風によって八〇%という大へんな被害を受けた中小企業の人たちに対して、今後金融上の手心を加えるお考えをお持ちですか、それを伺っておきたいと思います。
  98. 橋口收

    ○橋口説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、第二室戸台風災害に伴う中小企業に対する金融対策としましては、商工中金、国民金融公庫、中小公庫等政府関係の諸機関につきましては、低利適用限度としまして五十万円まで金利を六分五厘に引き下げる措置をとったわけであります。その後さらに災害の状況の逐次判明して参るのに伴いまして、低利適用の限度を五十万円から百万円に引き上げるという対策をとることに内定しております。この措置につきましては、中小企業庁と十分相談しまして、近くそういう措置をとることにしております。  さらに災害に伴う中小企業に対する金融対策としましては、やはり何と申しましても、ただいま申し上げました政府関係の三機関の資金量を確保するということが必要でございますので、さきに年末金融対策、金融引き締めに伴う中小企業に対する金融対策を含めて三百五十億円の資金の追加をしたわけでございますが、そのうち五十億円程度を災害に予定しているわけであります。その他民間の金融機関につきましても、災害の場合を含めて、中小企業については公定歩合の引き上げに伴う一般の貸し出しの金利の引き上げにもかかわらず、中小企業については金利の引き上げをしないように、あるいは民間の金融機関の中小企業向け貸し出しの比率を下げないようにということを強く希望しております。  大体以上のようなことでございます。
  99. 太田一夫

    ○太田委員 スズメの涙みたいな金でこの被害が救われたり、また将来の防災対策ができますか。大阪だけでも商工業の被害は、工業が三百九十三億、商業が百二十四億といわれております。全くもってその被害から立ち直るのは大へんでありますが、さらにそれを再び起こさないためには膨大な金が要る。ところが、それに対して今あなたの方は対策がない。五十万円、百万円、これは何か単位が違やしませんか。五百万円を一千万円とおっしゃればわかるような気がするが、単位が違う。今度の第二室戸台風において顕著なる例は、金が台風からその企業や人命を守っております。その住居を守っております。それは大阪では中之島公園が水没いたしましたね。そのときは、御承知通りに、関電ビルというのは、アルミの防潮壁によって、これは守られたのです。アルミの防潮壁は、それをどうやって作るのだという最近問い合わせがある。これはけっこうな話ですけれども、全部作れればいい。関電ビルの防潮壁が幾らかかったか。一口に二千万円かかったといわれております。雨戸を作るのに二千万円かかるのです。そうすると、中小企業は同じことをやろうとしても、せいぜいシャッターしかできない。シャッターじゃだめです。こう考えてくると、金というものがいかに大きな威力を持っておるか。この金を握っておるのが大蔵省で、それであなたみたいなちゃちな考え方では、とても中小企業は防災という立場から守られるわけにはいかぬ。今度の室戸台風でも、大企業で被害が大きかったのは、関西電力が鉄塔なんか倒れて二十六億、大日本塗料が五百万円、旭化成においては雨漏りがあっただけ、住友金属あるいは久保田鉄工に至っては、ほとんど被害がないといわれておりますのはなぜかと言いますと、これはそれだけ自分で自衛したのですよ。とても防潮堤じゃ安心できないから、自分で防潮堤を作り、自分で擁壁を作り、そして門のところには土のうを積んでそして外側は濁流であったが、中にはついに水が入らなかった。こういう自己防衛で助かった大企業があるのであります。そういうことにしようということになったら、これは東京の江東だって、あるいは中京の臨海地帯にいたしましても、あるいは今の大阪にいたしましても、貧乏な人が自分のうちを守ることは、これは金の面から制約されてできません。中小企業にはできません。先ほど中小企業庁の川島部長もおっしゃった社会福祉だとか、住民の安寧ということの充実ということが、なるほど大事であることはわかる。政府の中にもその気持がある。それしかないでしょう。政府はその要望にこたえなければならぬ。そうすると金を出さなければいかぬ。金は今のところ五十万円を百万円に引き上げて低利にする。こんなことで何ができますか、というような気がするのです。きょうは特別金融課長さんもおいでになっておりますが、今お話がありましたけれども、この大阪の例から見ましても、東京を守ることがいかにむずかしいかということはおわかりになったと思いますが、この基本法ができて、基本計画の中で、あなたはさらにその前例、今までの経験を基礎として、決して金がないから、あるいは資本が少ないから、貧乏だから命を失ったり、財産を流してしまったということをさせないために、徹底的な金融措置を講ずる、住民の期待に沿い得る措置を講ずるという御決意あるいはその構想をお持ちでございましょうか。この点をお答えいただきたいと思います。
  100. 橋口收

    ○橋口説明員 ただいまの御質問の点でございますが、災害対策基本法におきましては、主として災害の復旧に関する金融措置規定しておるように承知をいたしております。ただいまの御質問趣旨は、災害復旧よりさらに一歩進みまして、防災上の見地からの金融措置に万全を期すべきであるという御意見かと思いますが、中小企業の防災全般につきましては、先ほど中小企業庁からもお答えがございましたように、一企業でやり得るものと、やはり公の立場措置すべきものとあるかと思います。一中小企業者として措置し得るものにつきましては、これはおのずから限度があると思いますが、その中小企業者の防災施設の拡充につきまして、金融措置でやり得るものがありますならば、さらに検討もいたして参りたいと思いますし、要は中小企業のための資金量の確保ということでございますから、将来財政投融資の資金の確保等についてさらに努力をいたして参りたいと考えております。
  101. 太田一夫

    ○太田委員 ついでですから、念のためにお伺いをいたしますが、昭和二十七年に全国知事会が災害金融公庫法というものをぜひとも頼むというような発意があったと承っておりますが、もしも今のお話のように、災害の場合、この防災とあるいは復旧と両方あるでしょうけれども、特に復旧の方だけでも、災害金融公庫法というものでも制定して、そして深く広く大きく、一般の国民並びに地方自治体の要望にこたえるというこのお考えはいかがでございますか、それに対して何か御検討なさったものがありますか。
  102. 橋口收

    ○橋口説明員 ただいまの災害金融公庫でありますが、私寡聞にして十分承知しておりませんが、ただいまの大蔵省考え方といたしましては、政府関係金融機関の増設はできるだけ消極的に考えて参りたいということでございます。
  103. 太田一夫

    ○太田委員 それだから基本計画なんというものをどんなに作ってみたって、次官、大上さん、だめじゃありませんか。金が要る、金が要るということを私はさっきから強調している。防災にしても、その災害復旧にしても金が要ると言うのです。その金の要る中で、災害復興の災害金融公庫でも作ったらどうか、今から十年ほど前に全国知事会あたりが非常に熱心におっしゃったことも、そんなに金庫をたくさん作りたくないということでお断わりなさるということになれば、基本的な対策というものの前進はわれわれは考えられない。災害対策防災の前進が考えられない。いかがですか、何か最後になると、当局は、基本法の方でそれはみんなに協議してもらうのだとかなんとかおっしゃるけれども、少し具体的な例を突っ込めば、みんな最後はしり切れトンボじゃありませんか。どうです、次官。
  104. 大上司

    大上政府委員 お答えします。太田委員のさいざんからのいろいろな御質問についてよくわかるのです。従って、この基本法出した根幹は、過去のことは別として、その過去において欠陥があった、たとえば行政府それぞれの連絡が不十分であったとか、あるいは制度との関連性においてこれも不十分であったとかというようなものがよってきてただいまのような事実も認められます。そこで問題をしぼりまして、金融云々につきましても、私らの方の考えといたしましては、これを通していただいて従来の欠陥を補っていく、さらに当面の問題にしては、今日の財政の事情から、いわば災害公庫の必要は今のところはないと判断しておる。そのかわりにたとえば交付税あるいは財政法第五条の規定を除外して起債で埋めていこう、このような考え方で現在おります。ただし、ただいまの御意見がさらに必要性があるという場合は、これが発動になって初めて実施できると考えられる問題も潜在的に含んでおるのではないか、このように考えます。
  105. 太田一夫

    ○太田委員 天下泰平で済めばそれでいいです。天下泰平なれとあなたはうちわ太鼓で祈っておるという気持だけを今おっしゃったと思う。いざというときのかまえがありませんよ。消防庁の方いらっしゃいますね。川合さん、今ああいうようなお答えで、個人的に金を貸してくれといってもなかなか貸してもらえぬし、基本的に何か制度を作るといっても、新しい金融公庫さえもできぬということですが、先ほどから問題にしております江東三角デルタ地帯、あそこは三十平方キロくらいあって、三十万かそこらの人がいるとして、そこの人口というものは夜も昼も変わらないでしょう。そうすると、仕事しながら夜もそこにいるというわけだ。昼夜を問わず三十万人が江東地帯におるとして、そこに高潮がきた。打ち続く雨と、それからその上に台風で大きな高潮がきたときは逃げ出さなければなりませんね。逃げるより方法がないでしょう。先ほどから中野地図部長がおっしゃったように、あの辺は何メートルか、背が立たなくなるというのですから逃げるしかない。逃げて人命を救助する、避難させて人命を救助する御確信がありますか。
  106. 川合武

    川合政府委員 東京消防庁は、その問題につきましてかねてと申しますか、ことに最近は非常に熱心に検討しておりまして、はなはだ潜越な言い方かもしれませんが、十分な努力をいたしますならば、被害の程度にもよりますが、相当程度の御期待に添えるというふうに思っております。
  107. 太田一夫

    ○太田委員 ほんとうですか。高潮は一体予報されてからどのくらいできますか、高潮がくるとわかったときにはすぐくるということが言われておる。あの狭い道と櫛比しておる家屋、しかもそのすぐ裏に裏山があるわけではない。どこに避難させるのですか、承ります。
  108. 川合武

    川合政府委員 先般の災害におきましても、東京に高潮がくるのではないか、幸いにして参りませんでしたが、気象庁その他の御努力で比較的早く手が打てましたこともあるかと思いますが、大体あの場合におきましては、それぞれの地点に避難をさせ防御の備えができたと思っております。
  109. 太田一夫

    ○太田委員 広島の原爆が落とされたときには、一たん警報が解除されて、その後敵機二機南方海上から侵入しつつあるということで、再度何か偵察の目的であるかのごとしという発表で、広島市民は原爆の洗礼を受けました。あなたは消防庁の次長として、きょうは消防庁長官はいらっしゃいませんが、長官にかわって東京都の防災を担当される今までの職責上からいいまして、高潮がくるという気象の的確な予報があったときには何とかなるとおっしゃった。先ほどの大型台風、何号でしたか、あの台風のごとく、目がどこにあるかわからないというために右往左往しておったという例がありましたが、幸いにしてあのときは避難命令が出なかった。避難したということはあまり聞きませんが、あれがほんとうにぶつかったときに、今度の第二室戸台風の場合、あなたは確信を持って避難をし得た、人命は守り得たとお考えになりますか。
  110. 川合武

    川合政府委員 ただいまの御質問に対しまして、私どもといたしましては諸般のいろいろな場合を研究いたしまして——むろんお尋ねのように時間の問題が伴いますので、非常に努力し、苦労し、またむずかしい問題でございますが、できるだけのことをいたしたい、かように思っておりますので、一つ御了承願いたい。
  111. 太田一夫

    ○太田委員 できるだけのことをしたいというせめてもの人間の願望が人間の善意であり、それが消防庁の善意だと信じましょう。けれども、江東デルタ地帯は一メートルから三メートルのマイナス地帯だということを考えると、その何十万という人をどうしてやりますか、できっこない。  ついでに中野さんにもう一回お尋ねしますが、江東デルタ地帯において、避難場所として高層建築は建てられますか。
  112. 中野尊正

    ○中野説明員 私から可能性についてお答えするのはどうかと思いますが、すでに幾つかのコンクリートの建物が避難場所として指定されております。実際には泥の厚さがおそらく問題になるわけですが、最近承りますところによりますと、そういう技術が進歩して、そういう地域に避難の場所をコンクリートで建てるという御計画方々でお考えのように聞いております。
  113. 太田一夫

    ○太田委員 あなたは地質の方は御専門でしょうが、江東付近の地層は沖積層ですね、そういうやわらかいところでしょう。これは建物の上からいうと、なるべく薄い方がいいのですね。建物を建てるには薄い方がいい、浅い方がいい。ところが江東は一番深いじゃありませんか。聞くところによると三十四メートルもあるのだといわれております。こんな深いところの高層建築はどれだけ金がかかるかしれません。基礎を打つにしても何をするにしても大へんなことじゃないですか。そんな高い建物はできません。あなたは江東においてそういうビルによって避難場所ができるとおっしゃるけれども、そんなに三十万人も四十万人も収容するところがあろうとは私には絶対に思えない。どうですか。
  114. 中野尊正

    ○中野説明員 建物の建築の強さの問題につきましては私からお答えできることではないと思いますが、泥の深さについて申し上げますと、東京のデルタ地帯とか、いわゆる沖積層という非常にやわらかい、ぶよぶよの地層の厚さは、一番深いところは六十メートルくらいに達しております。この深いところが大体現在の荒川放水路に沿うて地下を河口の方に延びております。それからその両翼はだんだん地層の厚さが薄くなりまして、銀座あるいは小岩のかいわいでは地層の厚さ十メートルないし十五メートル、しかもこれが砂礫質に変わって参ります。
  115. 太田一夫

    ○太田委員 沖積層が六十メートルのところが荒川放水路の河口に向かって延びておるということは、建築の耐震度あるいは建築の堅牢度を弱めているということの御証明です。従って、今私は高潮という、水のことを申し上げておりましたけれども、見地を変えて関東大震災のような地震のことを考えたら、沖積層に立てた建物なんというのは、砂上の樓閣と昔からいっているように、がらがらとくずれるじゃありませんか。地震は今度の基本法の中に入らないのですが、入るでしょう。そうすると、地震が起きた場合も想定にお入れになっていると思うが、三十メートルから六十メートルという深い沖積層の江東地区などには、砂上の樓閣という言葉の通り、高いビルができないというのは常識です。そこで水の被害から守るために高いビルを作ってそれを避難場所にしたいが、地震から守るためには低い家にしておきたい、こう  いうことになるでしょう。地震と水、両方兼ねて江東三十万、四十万の人を守るあなたの構想は、建物においてはどういうことになっておりますか。どういうふうにこれから指導しようとしていらっしゃいますか。
  116. 川合武

    川合政府委員 かつての関東大震災程度の災害を受けました場合にどういう状況になり、対策があるかということにつきまして、これは残念ながら、現在の状況におきましては非常に困難だというふうな結論に一応なっております。私どもの方では、関東大震災の被害が、死者はほとんど火災によるものであったというふうにも承知いたしておりますので、大震災におけるところの対策としては、火災を発生せしめないように防ぐという、初期防火に努める、こういう点に重点を置いていきたいと思っております。
  117. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 太田委員、まだ質問はだいぶ長くありますか。きょうは各省からもお見えになっておりますが、本会議もございますし、適当なときに一応打ち切って……。
  118. 太田一夫

    ○太田委員 一時になりましたし、それから先ほどの話を聞いておりますと、防災基本的な調査研究というのはこれからに譲られるのか、さだかでありませんし、特に防災災害を防ぐ、予防ということに対するかまえがない、こういう点などについて今までの私の質問に対するお答えは不明確、不十分なものばかりでありますから、さらに引き続いてやりたいと思いますし、きょうはせっかく多数の方がおいでになっていらっしゃいますから、それぞれ専門のことをお尋ねしたいのでありますけれども、今までのような状態では、これ以上三十分や四十分やったってどうにもなりませんし、一応この辺で打ち切って、この次までこの質問を保留していただきたいと思います。
  119. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 では、午前中の議事はこの程度にとどめます。本会議散会後に再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時一分休憩      ————◇—————    午後三時十一分開議
  120. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  警察に関する件につきまして調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。阪上安太郎君。
  121. 阪上安太郎

    ○阪上委員 先般来から警察問題が審査の対象になっておるのです。そして前会までに、御承知のように、公安条例の問題が一応質疑が終わったわけでございますが、私はきょうは釜ケ崎事件を中心といたしまして、スラム街対策、これにつきまして若干の質問をいたしてみたい、かように考えております。  御案内のように、釜ケ崎事件は、例の交通事故の取り扱いをめぐりまして、これが導火線となりまして、八月一日の夜半には交番の焼き打ち、それから一般通行中の自動車に対する放火、さらに西成署本署の襲撃、こういうふうにだんだんと事件が発展いたしまして、三日から四日にかけまして、さらに国電、市電、南海電鉄、こういった無関係なものに対する襲撃が行なわれ、一方町の状態をながめてみますると、猟銃や日本刀を持った暴力団が横行濶歩して、ちょうど映画に出てくる西部劇のような状態があの釜ケ崎の地帯に発生したわけであります。そして、ついに警察は実力行使に入りまして、相当がまんしたようでありますが、最終的には六千名の警棒のあらしによってようやくこれを鎮圧した、こういうような状態であります。この事件に際しまして、当時植木法相は、思想的な背景の究明、こういうような推定をいたしまして、思想的な背景を追及しようというかまえになっておる。また大阪府の公安委員会は、かつて公安委員会がこういった事件に対しまして告示をしたということはないのでありますが、異例の告示を出した。地検もまた異例の捜査本部を置いて、そして騒乱の罪の適用を検討するというような状態に入っております。この事件に対しまして、池田総理は特に発言せられたようでありまして、関係各省初めての連絡協議会、こういうようなものを作らなければならぬようなところまで発展してきた。このようにいたしまして、中央も地方も調査であるとか視察であるとか、あるいは資料の収集であるとか、それに伴って会議を持つ、こういうような大騒ぎになったわけであります。そして、その結果、きわめて弥縫的ではありますけれども、街灯を三十カ所くらい作るとか、あるいはスラム街の緑化を進めようとか、あるいは第二愛隣会館の設立、あるいは大阪府の労働部の西成分室を設置するとか、あるいは簡易な、しかも恒久住宅、高層建築をやろう、こういうような策が関係自治体としては出てきた、こういうような状態であります。しかしながら、この問題は、はたしてこの程度でいいのかどうか。私どもといたしましては、こういった問題は、これは必ずしもぴったりと同じケースとは言えませんけれども、ちょうど一年前の同じ日に発生いたしましたところの東京の山谷の事件とかなり様相が似ておるということで、大へんこれを重大視いたしますとともに、今言いましたような程度のことでいいのかどうか、こういうふうにわれわれは考えるわけであります。地元の声を聞いてみましても、一般の人々の人権は守られてきているけれども、一体こういったカスバと称されておるところに住んでおるおれたちの人権というものは、全く守られることがないのか、こういうような声が、当時私も現地を視察したのでありますけれども、出ておったようであります。前回、山谷の事件が起こりました当時も、わが党の方からも国会におきまして質問をいたしまして、再びこのような事件が起こらないようにということでもって、強く要望をいたしておったわけでございますけれども、非常に遺憾ながら、再びこの事件が、山谷の事件よりもさらに大きく上回って発生した、こういうことでございます。結局、結論は簡単な言葉で言い得ることだと思いますけれども、スラム街があるからこういう事件が起こるんだ、こういうことじゃなかろうかと思うのであります。そこでスラム街を解消するということがこの際非常に重大な対策になろうかと思いますが、このスラム街を解消することによってこういう事件の発生を防止していくというところの大きな、抜本的な対策を打ち立てなければならない、かように、われわれはこの事件から判断するわけであります。  そこでこの際二、三伺ってみたいと思いますが、非常に基本的な話でございますけれども、こういったスラム街を解消するためには、スラム街のできるところの原因というものを追及しなければ対策が出てこない、かように存じますので、スラム街の発生の原因は一体那辺にあるのか、こういったことにつきまして、最初に自治省の方からその見解を伺ってみたいと存じます。
  122. 大上司

    大上政府委員 ただいまの御質問にお答えしますが、政府当局なり自治省として、これがどういう原因で発生するかということを討議したことも、まだないようでございますが、ただ、私の主観的な考えのみにとどめさしていただきますと、もちろん労働条件もあれば、あるいは既往における犯罪者心理と申しますか、いわゆる村八分というか、こういうひがみ等もある。しかし、根本的には正業につかせ、これをよりよく指導するというのが根本問題かと思います。ただ、しかし、一部におきましては、従来はしょうちゅうであったものが、労働賃金が上がったのでこれがビールにかわっておるというようなことも、これは新聞等で見たりしたようなことがあるのですが、それとてもどういうふうに指導していくかというような問題については、いろいろな方面の原因があろうと思いますが、お説の通り、これをざらに慎重に研究し、そして善導するということは、われわれ政府の重大なる使命と心得ております。
  123. 阪上安太郎

    ○阪上委員 さらに大上さんにお伺いいたしますが、今おっしゃいましたことは、発生したものについての対策としてはこういう対策を講じていかなければならぬ、こういう意味のことを示唆されたと思う。私先ほどお伺いいたしたのは、なぜスラムができるかということなんです。こういったものをはっきり握っておりませんと、スラム解消にはならない。こういうことでございますので、私はお伺いしているわけで、なぜスラムがこうできてくるのか。特に大都市のまん中にああいったスラムというものができ上がるのか。このことなんでありますが、これに対する見解を伺いたい、こういうことなんです。
  124. 大上司

    大上政府委員 ただいまも少し触れました通り、いろいろな原因が潜在的にあろうとも思います。ただここでどこに原因があるか。原因も、遠因あるいは近因等にも分かれるとは思いますが、ただ私から率直に申しますと、いわゆる政治の貧困という面も一部現われておるのじゃないか。この程度より私としては申し上げにくいと思います。
  125. 阪上安太郎

    ○阪上委員 警察庁長官はどういうふうにお考えでございますか。
  126. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 非常にむずかしい問題と思いますが、私はこういうスラム街等ができてくる基本は、やはり貧困、いわゆる定職のない貧困層というようなもの、それをさらに突き詰めて言えば、社会における一種の落後した層、定職につかない落後した層というものの吹きだまりと申しますか、そういうものが自然に集まってできてくるのではないか、基本にはそう思います。しかし、ただいま自治政務次官のお話のように、そういうものが起こってくるのは一体何だということになれば、社会の現実がそうさせているんだと、一がいに申し上げる以外にはないかと思いまするけれども、そこにはやはりそうした労働関係においてできるだけ定職につくような施策というものが十分に講ぜられない。それから先ほどこれもお話しの中に出てきましたように、あのスラム街におる人たちを分析してみますと、その中には一部でございまするけれども、身寄り、縁故というようなもののない者、またそういうものがあっても、そういうものからしいて離れて生活したいというような人が、ある意味の非常に貧困的なものではありまするけれども、そういう自由といいますか、拘束を受けない生活というようなものに望んで入っていく人もあるということのようであります。入っておる構成についても非常に複雑でありますので、一々についてその原因を究明していく必要があるかと思いますが、概括的に申し上げまして、やはり貧困、そしてまた貧困者をああいうふうに集まらせる社会的環境、政治の問題というような点が非常に大きく原因しているのではないかと思います。
  127. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今警察庁長官は、一言にしていえば、社会で落後した者の吹きだまりという現象だ、その通りだと私も思います。しかしその社会の落後という問題は、それがどういう原因で落後するかということについて、政治の貧困だという言葉も一つ出ておった。これは大上さんからもそういうお話がありました。私はやはりそういった社会的な面からも一つ原因がある。同時に考えなければならぬことは、個人的な面がやはり一つある、こういうことでなかろうかと思います。こんなことを私ここで皆さん相手に楽しんでおっても仕方がないので、私ども考えとして申し上げてみたいと思うのであります。結局は、一つは社会的な原因としてスラムができてくるということは、やはり資本主義の都市におけるところの必然性を持っているんだ。従って、こんなものを除去していくためには、どうしてもその点にはっきりと大胆不敵に取り組んでいかなければできない問題である。それをおおい隠しておいて、いくら百万言言辞を弄してみても、この問題は解決しない、こういうふうに私は思っているわけであります。これはおいおい御質問を申し上げたいと思います。  そこで厚生省の社会局生活課長さんが見えておりますが、あなたはこういった問題について直接担当しておられるように思いますので、お伺いいたしますけれども、先ほど申し上げました個人的な欠陥を除去する一つ方法がある、いま一つは社会的な欠陥を除去していくということでありますので、この際個人的な欠陥、個人的な原因をスラムに対してどういうふうに握っておられるか、このことを一つお伺いいたしたいと思います。
  128. 翁久次郎

    ○翁説明員 スラムについての所管課長といたしましてお答えいたします。ただいまの御質問は、スラムをどのように把握しているかというように承ったのでございまするけれども、スラムということは、もちろん御承知だと思いますが、先ほど来御答弁のございましたように、貧困あるいは定職、定住のない人々の吹きだまりということでございますが、客観的に申しまして、スラムといわれるものは、不良住宅地区が密集しておりまして、外見的に、環境が保安上あるいは衛生上きわめて危険であるというふうに考えられ得る地域をスラムとさしているように解しております。  なお釜ケ崎あるいは山谷のように外見上不良住宅地区の密集ではないけれども、そこに問題があるといわれております通称ドヤと申しておりますのは、定まった住居を持たない人々が簡易宿泊所を宿といたしまして、そこで生活を繰り返し、そこから毎日いろいろ日雇いに出たりあるいは土木工事に出たりする人たちが、集団的に住んでいるというような地区をドヤというように申しておるのでございます。  そういうものもあわせまして通称スラムと言っても差しつかえないではないかと存じますが、そういった地域の人々に対して、現在の施策といたしましては、貧困な人々に対しては御承知生活保護法あるいはそう他国民保険、医療保障等の施策がございますが、ただこういうところに住んでおられる人々の中には、そういった籍を持たない、いわゆる登録と申しますか、居住のはっきりした人がおりませんために、ただいま申し上げたような生活保護法とか医療保障という法律制度の網にかかってこないというような方々がおられるのでございます。もとよりそういった人々の問題につきましては、現行制度ででき得る限りの個人的な施策としての救済と申しますか、保障は行なわれておるのでございますけれども、われわれが所管している限りにおきましては、こういった人々が気やすく相談のできる、またそれを利用して定職につき得るような機会を与えられる隣保事業と申しますか、生活館、先ほどおっしゃいました愛隣館のようなものがそれに該当するわけでございますが、そういったいわゆる窓口となってお世話をするような施設を作っていくということを一つ考え方といたしております。それ以外になお建設省がおやりになっております住宅地区改良法による改良住宅を建てまして、そこに共同利用施設として将来は共同浴場とか、共同作業場とかいったものが設置し得るようなことを助成して参りたいというように考えている次第でございます。
  129. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私はまだそこまで質問していないのですが、あなたはお先に答えられたわけであります。そのスラムの定義はいろいろありましょうが、あなたは不良住宅地区、こういうふうにいってもいいということを今言われた。私が聞いているのはそうじゃなくして、スラム街に居住するその居住の原因となる個人的な原因は何かということを聞いている。そういうことについて、あなた方は研究していられるのですか、データをお持ちですか、この点一つ……。
  130. 翁久次郎

    ○翁説明員 大へん先走ったことを申し上げて失礼いたしました。先ほどの御質問の、そういうところに住んでおられる人々が、どうしてそういうところに住むようになったかということを御質問だと思います。従来社会局では、生活保護被保護世帯に対しまして、定期的に世帯調査というものをやっております。あるいは生活保護基準の算定のために、通常の世帯を含めた調査をやっております。ただ、おっしゃいましたような、こういう地域自体におけるこれらの人々の何と申しますか、こういうようになった経過を詳細に知るような調査というものは、いたしておりません。
  131. 阪上安太郎

    ○阪上委員 だから私は、こういった原因を実は質問しているわけなんです。おそらくそうだと思います。それじゃ結局、スラム対策などということを幾らやかましく言ってみたとしたって、くつの裏から足をかいているようなものです。そういった基本的なものを、はっきりと特に厚生省あたりが持たないといけないのであります。これはあなたに言っても仕方がないから大臣に言いましょう。そこで私ども考えとしては、これは何も学のあるところを言うわけじゃないのですが、やはり諸外国ではこんなものははっきりとつかみ上げてしまっておるのです。たとえばスラムに住むようになった個人の不幸なタイプというものが、ずらっと並べてある。そういったものを基礎にして、対策というものが講じられている、こういうことになっております。たとえば一つの例をあげてみれば、経済的な破産等によるところの破綻、これなんかははっきりした一つ理由になっております。それから疾病が一つの大きな理由になっておる。その結果としての、就業が不能であるという問題が一つ出てきている。それからこれは家庭争議とかいろいろなものがあるのでありましょうけれども、情緒的な不安定、その結果としての就業不能、こういうふうな問題がはっきりとつかみ上げられている。離婚、アルコールの中毒、麻酔薬の常習、賭博、犯罪、非行、売春、それから不規則な性生活、色情の倒錯、それからなおかつ働く能力というものがそこに限られている。これは今度の釜ケ崎でもよくわかることであります。ほかにいろいろな職業を選択するだけの能力を持っていない。当然、対策として職業訓練等のものが考えられるのでありますが、そういった個人的な原因というものを、欲をいえばもっと。パーセンテージまで出して、どういうようなものがスラムに居住しておるか、その原因は何かということを追及していかない限り、スラム対策なんというものはできっこないのです。先ほど建設省の分野にまで触れられましたが、今日は建設省は来ておりませんけれども、私どもといたしましては、さらに大きな問題が建設関係にあると考えております。社会的な大きな原因の一つといたしまして、建設省関係の施策がぜひ要求されなければならぬと思っております。  しかしながら、今日は見えておりませんので、次に、やはり社会的な原因の一つとしまして、今申し上げました、しかも最近大へん問題になっております経済成長、政府の所得倍増十カ年計画、こう言ってしまえば身もふたもないのでありますけれども、この経済成長の速度の問題、これから出てくるところの地域間のあらゆる格差の拡大、こういった結果、その経済の繁栄から置き去られた底辺に住むスラムの住民というものが一つ考えられやしないかと思うのであります。最近建設省では広域都市建設構想、自治省では基幹都市建設構想、それから商工では例の低開発地域工業何とかいうものがありますが、こういった構想が必要であるそのこと自体の中に、スラムの発生する原因がある。これは、言葉をかえていえば、資本主義の都市計画の問題も入ってきておるわけなんであります。そこで、自治省として、あなたの方では基幹都市建設計画構想というものを持っておられるのでありますが、かつてスラム街の対策として、あるいはその構想の中に、スラム街解消の構想を持っておられたかどうか、このことを一つ伺っておきたいと思います。
  132. 大上司

    大上政府委員 ただいま御質問の、この法案について特にスラム街を織り込んだかという御質問と心得ますが、それについては考えておりません。
  133. 阪上安太郎

    ○阪上委員 しかしながら、地域の格差の拡大という問題がスラムを作る一つの原因になるということはお認めになりますか。
  134. 大上司

    大上政府委員 もちろん経済速度あるいは格差の程度というもの等によって、個々のいわゆる私経済はそれぞれの様相を呈すると思いますが、今直ちにそれを即答は——しばらく検討させていただいてお答えをさせていただきたいと思います。
  135. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは、原因についてはまだはっきりとつかんでおられないように私は思います。  次に、やはり社会的な原因の一つとして、警察にお伺いいたします。この事件の中でわれわれが察知した一つといたしまして、あの釜ケ崎のスラムの中には、反社会的な集団があるということなんであります。その一つは、手配師といわれているところのものであります。言葉をかえていえば、これは私設の職業安定所みたいなものができ上がっておる。一日千五百円程度とれる労務者が、これらのものによって大体において九百円くらいはとられてしまう。あとの六百円が本人の収入になる。これは新聞の報道でありますけれども、早朝そういうような者が横行いたしておりまして、まじめに働いていきたいという人たちが地下たび姿であの辺を歩き回っておりますると、この手配師がやってきて、手とり足とりこれを押えつけまして、待たしておいたタクシーの中にはうり込んで、そうして自分たちの関係のある職場にこれを運び去るというようなことを在来からやっておった、こういうことであります。こういった反社会的な集団である一つの手配師、それからいま一つは、売春暴力団とも称すべきものがあるわけなんでありますが、これらの実態につきましてもつぶさにはわれわれは承知いたしておりませんが、いわゆる婦女に対してひもつきとなって、そうして肉体を提供さして売春さして、それの上前をはねておる、こういういわゆる愚連隊がおります。それからいま一つ、これも新聞等で多少片鱗が出ておったようでありますが、あの地域には黒い組というものがある。おそらくこれがあの事件のまっただ中に日本刀と猟銃を持って歩き回って、もちろん警察からそんなことを頼まれた覚えは絶対ないということを彼らは言っておりますし、否定もいたしております。これらの連中が背後に回って、あの当時のあの暴動を起こしておるところの大衆の裏からあおって、前へ出てきてはこれを阻止するんだ、何とか鎮圧するんだということを頼まれもしないのに勝手にやっておる。しかも銃砲刀剣類等所持取締法に違反するような日本刀と猟銃をそういった場所で振り回しておる、そういうことであります。こういった一連の反社会的な集団、これがやはりああいった釜ケ崎事件の原因の一つになっておるんじゃないか、私はこういうような考え方をするのでありますが、警察庁ではそういうふうにお考えになりますか、どうでしょう。
  136. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 釜ケ崎地域におきまして、ただいま御指摘のような暴力的な手配師あるいは売春暴力団、そのほかに麻薬の取引をする連中、いろいろ反社会的な集団がありましたことは御指摘通りでございます。また、いわゆる暴力団といわれるようなものも相当な数に上っておるようでございます。ただし、これらが直ちに計画的にあの騒ぎを起こしたというふうなところまでは確証は握れないのでありまして、あるいは表になりあるいは裏になって策動するというようなことももちろんあったかという想像はできるのでございますけれども、そのどれがどういう程度にやっておしったというようなところの確証は得ておらぬのでございます。  あるいは御質問に対するお答えになっていないのかもしれませんが、そういうふうなスラム地域におきまする反社会的集団というものが非常に輻湊しておるということが、一そうあの地域を暗いものにしておるということは事実のようでございますが、この手配師等につきましても、私はこれは法律違反である、さらに暴力を使うようなものは全く許しがたいものであるというふうに考えますけれども、同時にまた職安に登録して仕事につく者の数という点から見ますると、そういうことでなしに生活をしている、たとえば手配師を通じてピンはねをされながらも、むしろ職安よりも有利な賃金を得ているというような者も相当おるわけでございまして、こういう点につきましては、やはり職業あっせんと申しますか、就労の機会を軌道に乗せて、法的にそういうことが堂々とできるような仕組みというものをさらに強化していかなければ、目に余るものを取り締まっていくということだけではなかなか根絶しにくいものではないかというふうに思うのであります。  売春、麻薬等につきましても、警察としてかなり取り締まりを強化しておりまするけれども、これも客観的に見ますれば、私は、九牛の一毛とは申しませんが、徹底しないものであったのではないか。ただ、うわさされることによりますと、そういう取り締まりということが警察に対する反感を買っておる。そういうことがまた騒ぎを大きくする一因になったというふうな見方をする人もあるくらいなわけでありまして、確かにただいまお話しになりました反社会的な集団というものがあそこに暗躍をしておることによって、事態を一そう暗いものにしておるということは、これはいなめない事実だろうと思います。
  137. 阪上安太郎

    ○阪上委員 その手配師の問題、それから売春暴力団といいますか、その問題、それから黒い組というのがおるのですが、あなた方の方で、今そういった暴力団が、反社会的集団がおるという事実は認めますか。
  138. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 そういうものがあるということは、先ほどお答えの中にも申し上げましたように、相当の数の団体がございます。非常に大規模なものではございませんが、小規模なものが相当数存在しておるということは承知いたしております。
  139. 阪上安太郎

    ○阪上委員 私どもの調査によりますると、手配師は大体二千人くらいおる。売春暴力団というものがどのくらいおるか、愚連隊でありますが、これもやはりそれに近いものだと私ども承知しております。ただ、黒い組というのは、これはちょっと性質が違うようでありまして、今そういう大規模な組織でないと長官は言われましたが、私どもが知っておる筋としましては、これはかなり根強いところの地方政治の相当枢要な部門と関係のあるような人物が親方になって、その黒い組というものを作っておる。そうしてパチンコ屋とか何かで得てきたところのたばことかなんとか、あのいわゆる景品であります。ああいうものも一手にそれが処理をしておる。こういうようなことでありまして、そういった仕事から奪われていく者も、あのスラムの中に、はきだまりとして、たまってきておるということまで聞いておる。これはかなり広範な組織である、こういうふうに考えておりますが、その点、あなたの方でおわかりになりませんか。
  140. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 地方政治につながる相当な勢力のある者ということまでは承知いたしておりませんが、たとえば、博徒についても十二団体、テキ屋六団体、青少年不良団十五団体、売春暴力団二十団体、その他というようなことで、六十くらいの、先ほどお話しの反社会的な団体というものがおり、その構成も千名余に上っておるというような状況でございますし、その中には相当に名前を売っておるような何々組、何々会というようなものもあるわけでございまして、あの土地におきましては、かなり強い勢力を持っているということが言えると思うのであります。
  141. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今まで原因をどういうふうに皆さん方が考えておられるかということについて質問を申し上げてきたわけでありますが、これらの点につきましては、各省各庁とももっと努力していただいて、ほんとうにスラムの発生する原因というものをそれぞれの部門によってよく調査研究されて、そしてその対策を立てていくという方向というものを皆さんで総合的に考えていただかなければならぬ、こういうことでございます。  そこで、特にこの中で、建設省、自治省と最も関係の深い問題でありますが、具体的な対策について、どういうふうに今後スラム対策をやっていくかということについて一つ伺ってみたいと思うのであります。質問があまり上手でありませんので、かえって混乱を生ずるおそれがありますので、私の方から問題点を出してみたいと思います。先ほど申し上げました建設省の関係も非常に深いのでありますが、都市計画面におけるところの考え方なのであります。建設省は来ておりませんので、どうにもしようがない。そこで、自治省にかわって見解を述べてもらいたい、私はかように思うのであります。結論はやはり大都市の集中排除をやらなければいけないんだということであります。これについて、地域開発関係の施策等はもう不即不離のものであるというふうに私は考えておるわけなのであります。そのことを忘れてしまって、ほかの対策ばかりに頭を使っおっても、どうにもならぬ問題がこのスラム問題である、こういうことだとわれわれ考えるのですが、この点について先ほど伺ってみましたところ、せっかくはなばなしく打ち出されたところの地方開発基幹都市建設構想などというものの中には、全くそういうものが含まれていない、こういうことであります。おそらくこの問題については、建設省の広域都市構想の中にもスラム解消の問題というものは含まれていないのではなかろうか。ましてや現在提案されているところの低開発地域工業開発促進法の中に、工場立地の問題はあったといたしましても、あるいは地域格差の拡大を縮小していくのだというようなことはうたい文句としてあったといたしましても、あるいは雇用の安定というものを考えていく方向であるというようなことをうたっておりましても、このスラムの問題が、そういった地域開発と不即不離のものであるという透徹したものの考え方というものは、おそらくないのじゃないかと私は思うのであります。  そこで、一つ次官にお伺いいたしますが、そういった大都市集中排除、都市の改造、こういったことについて、スラム解消という問題を今後頭に置いてそういう法案の作成その他を考えられるかどうかということなのであります。これはどうでございましょうか。
  142. 大上司

    大上政府委員 お答えします。もちろん基本方針なり自治省の全般的な政策につきましては、大まかは、私も行政官に就任した以上、基礎的には承知しております。ただ、いわゆる専門的なことになりますと、少し勉強が足りないので申しわけございません。率直におわび申し上げますが、ただいまの問題につきましては、当然阪上委員が御指摘されたごとく、将来この法をもっていくについては、当然国全体の面から考えなければならぬと私は考えます。従いまして、将来これを運営し、または実際法治国家としてこれを施行する場合においては、十分考えますと同時に、さらに私個人といたしましても、幸い明日政務次官会議がありますので、新しい問題として私は出していきたいという決意だけを披瀝しておきます。
  143. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは次官からお答えいただくのは非常に無理かとも思いますが、やはり一連の地方開発という問題につきましては、各省間でそれぞれ連絡もとっておられる、そうして聞くところによると、新産業都市建設促進法などという、どこにポイントがあるかよくわからぬような法律が出てきそうでありますが、そういう関係から、自治省としても全然それは建設省がやる仕事だというふうにいうわけにはいかない問題ではなかろうかと思うのであります。私一例をとってお伺いしてみたいのでありますが、そういう新都市計画なり都市建設計画なり大都市の改造計画なりというような問題を、新しい法律に求める以前に、現在すでにそういったスラムなどというものが全然頭にないところの膨大な都市計画というものが進められているのであります。一例をとってみますと、たとえば、大阪府の問題なのでありますけれども、大阪府の衛星都市である吹田市の一画に四百億円からの金をぶち込みまして、いわゆる今はやりのニュー・タウン建設が行なわれておる、こういうことなのであります。このニュー・タウン建設の内容につきましては、こまかくは知りませんが、どうもその方向を考えてみますと、これは全くニュー・タウンではなくて、単なるベッド・タウンにすぎない、こういうことであります。これは大なり小なり東京の郊外においても行なわれている問題ではないかと思うのであります。あるいはその他の都市においてもそういう考え方で、漫然とベッド・タウンを作ることによってニュー・タウンだなどというような、非常にあさはかな都市建設計画が進められている、こういうことなのであります。今どき世界のいろいろな都市計画なりあるいは新都市建設なりの実態をながめてみましても、スラム街の解消を頭に置かないような新都市計画などというのは、世界のどこにもないです。日本だけであります。そうして単にベッド・タウンを作って、新都市計画だ、新都市計画だというような言い方をし、しかも膨大な行政投資をこれにぶち込んでおる。そして大都市の姿をながめたところが、今言ったような吹きだまりがあって、もううみがどんどん出ておる。この様相を考えてみるときに、全く関係地方自治体も、あるいはそれを指導している自治省も、こういう面においては全く無為無策であって、一体何を考えているのかということを私は言いたいのであります。四百億円の行政投資をやって町作りをやっておる、私は先年ヨーロッパの方へ視察に参ったときに、ちょうどロンドンの郊外にあるスティーブネージという新都市を見てきたのであります。この新都市計画内容をながめてみると、まず第一番にロンドンのスラムを解消する役割を果たさなければならぬ、こうなっておる、そうして職のない人に対して、住居と職場をその新都市の中で一挙に与えていこうという計画が実現されているわけなのであります。これは、ニューヨークの場合も、パリの場合も同様であります。そういったほんとうにスラムを解消していこうということが不即不離の関係において新都市建設につながっておる、こういうことなのであります。ところが日本で今あの住宅公団等がやっております、あるいは都道府県の直営でやっておりますああいったベッド・タウンの建設は一体何であるか、ああいうことをやっておるならば、いつまでたってもこの吹きだまりは除去されないのであります。それに対して建設省も、自治省も、もろ手をあげて賛成して、膨大な投融資のあっせんの役割を果たしてみたり、こういうことをやっているわけなのであります。今どき都市開発をやり、新しい都市建設をやるものが、雇用という観点を離れて、どうして地域間の格差というものが是正できるか、こういうことであります。私は、自治省なり、建設省なりのここ数年来とってこられたところの都市計画に対する考え方を、根本的にこの際是正されなければいけないと思う。それから同時に、この関係地方自治体なんかの意見を私は聞いてみたのでありますけれども、こういうことを言っております。あのスラム街の環境を浄化するのだ、花を植え、木を植えるのだという、それはいいでしょう。それから住宅が非常に不良住宅であるということ、これはその通りです。従って、鉄筋五階建のアパートを作って、安い家賃で貸すのだということ、これもよかろう。あるいは今言ったように、愛隣館をもう一つ建てるのだ——一つや二つでは足りませんけれども、愛隣館をもう一つ建てるのだ、それから西成分室をもっと拡張するのだ、こういうことを言っておりますが、それをじっと考えておりますと、そのことは明らかにスラム街の改良にはなる、少し今より程度のいいスラム街を作ることにはなるけれども、スラム街を改消するという方策は全然この中には含まれていない。最近関係各省の次官を集めて何かスラム街対策協議会とかいうのを作っておられるそうですが、自治省はその中に入ってないように思うのでありますけれども、一体これは何を考えておるのか、私にはよくわからない。新聞発表等によってながめて見ますと、当然今までやらなければならなかったことをやっておらなかったので、これをやるのだという程度にすぎません。当該自治体自体が、そういうものの考え方で、徹底的に解消する、そうしてあの建物はブルドーザーでもって一挙にぶちこわすのだ、こういうようなほんとうに解消していこうという熱意がない。それが証拠に、せっかく新都市を作っておきながら、ベッド・タウンを作っておきながら、その中にスラムの解消対策というものを全然含んでいない。なぜあんなものを自治省が許されたか、なぜ建設省があんなものに対してもろ手をあげて賛成しておるか。貴重な公共投資をするのでありますから、もっと真剣な態度で、しかも昨年苦い経験を山谷においてわれわれは持っておるのでありますから、スラム対策に対して、もっと抜本的にこれをなくしてしまうのだという考え方をぜひとも私は持ってもらいたいと思うのであります。このことについて、各関係省でもって十二分に私は検討してもらいたいと思うのでありますけれども、一体その協議会というのは、そういったものを内容としてスラムを解消することの決意に燃えた協議会であるかどうか。これはどれだけの権限を持っておる協議会か。自治省がなぜ入っていないのか。そういう点について一つ次官からお答え願いたいと思います。
  144. 大上司

    大上政府委員 いろいろの御質問が含まれておると思いますので、順次申し上げます。  ただいま吹田等においていわゆる地方公共団体が四百億円余りのベッド・タウンを作っておるじゃないかというお話でございますが、私も聞かぬことはございませんでしたが、これにつきましては、建設省は特に、先行法と申しますか、基礎法としては、いわゆる不良住宅の改良法とそれから市街地改造法によってこれをやっておるの、だろうと思いますが、さてそこで、私たちの省の関係になりますと、お説の通りいわゆる財政投融資、すなわち公共の国家財政がより効率的に使われておるか、その効率を分析しますと、ただいまのようなスラム街の解消というものを潜在的に考えたかどうかというような御質問と思います。従いまして、その効率を分析するのには、当然ただいま申しましたように、これを許認可する事項があれば考えたと思いますが、その経過につきましては、事務当局から答弁させます。  次いで、スラム街は、次官会議があるが、これに入っておらぬじゃないかということですが、この会議には自治省も入っており、現に八月二十四日の会合には文書課長も出席したそうでありますが、たまたま当委員会にも出席しておりますので、その模様が必要とあらば、答弁いたさせます。  最後に、この方法としていろいろな観点から見ますと、お説の通り、われわれも、さいぜん申しましたようないわゆる財政の効率的な適用の面と、国家施策の細部までの浸透という面から申しまして、スラム街の解消あるいはこれに付随する労働問題等は十分に検討して、将来実施したいと考えております。
  145. 阪上安太郎

    ○阪上委員 どうも政務次官だけで、あと各省の方は肝心なところが抜けてしまって、歯の抜けたような格好になっておりまして、この際会心の回答を得るわけにいかないようであります。従って、またこの問題は適当な時期を得まして、さらに質問を続けていきたいと思いますが、当面結論からいいまして、このスラム協議会というのは、一体どういうことをやろうとするのですか。新聞の内容は私は存じておりますが、あの程度のことでしょうか。あれを思い切ってスラム街を撤去するスラム街撤去法案というものをこの際打ち出して、総合的に、抜本的にスラム街を解消していくのだとことでやっておりますかどうか。
  146. 大上司

    大上政府委員 ただいまお説の会議は、関係課長会議だそうでございまして、お説の通り政務次官会議でもしてもらっておりますれば、ただいまの阪上委員のおっしゃるようなことはぶちますけれども、御了解を願いたいと思います。
  147. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこでこの際、先ほどからの経過を考えていって、ただ単に不良住宅をなくすという程度の甘い考え方では、スラム街はなくならないのだ、そこにはやはり雇用の安定というものが維持されていかなければならない。日雇いか何かが手配師のピンはねの対象になるような、そういう不安定な状態でなしに、まじめにそこに定着して働くことができる雇用の態勢、それと住居というものを一緒に与えなければならぬ。ですから、ニュー・タウンというのはそこです。せっかく作るなら、そういうものを作って、そこに何割かはほうり込んでやる。そうして今はそんなことは行なわれておりませんが、ただ住宅を建てるだけでなしに、そのまわりに中小企業団地なり、あるいはその他の工場立地を求めてきて、そしてその町に住む者はその職場に行く。そういう形の中でスラムの解消をやっていく。住宅さえ与えればいいということではだめです。それでは程度のいいスラム街ができ上がるということだけであって、解消にはならない。安定した職業を一緒に与えていくということが必要だと思います。  それから、先ほど厚生省からも言っておられるように、もっともっと個人的な原因を追及して、おれたちだけがなぜ法律から守られないのだ、保護を受けられないのだという点をよく頭に入れて、そういった社会保障制度というものも一緒にぶつけて、そこへ持ってきて警察の治安対策というものがぶつかっていって初めてスラムというものは解消できるのだ。従って、そういったものを内容とするスラム街の撤去法というようなものを、この際政府関係各省が寄ってほんとうに真剣になって作り上げて、そして撤去に一路遭推していくという方途を考えなければいかぬと思うのであります。これは総理も、スラム街対策については考えるということを言っている。いつ考えるかわからない、このごろまだ考えていなくて、将来考えるのか知りませんけれども、そんなことじゃこれはだめですよ。まして、今伺ってみたら、私は次官会議ということで多少有力だと思っていたが、課長会議にしかまだ発展していない。一体何をやっているのですか。この点どうですか。自治省でもスラム街撤去法というようなものを出しなさいよ。
  148. 大上司

    大上政府委員 本委員会の冒頭に阪上委員にお答えしましたように、明日幸いにして政務次官会議がありますので、新しい観点から、またるる教えていただいた点を責任を持って次官会議に提起し、またその結果は後日の委員会で御報告したいと思います。そこで言い得ることは、われわれ政府内部においてどういう形でもって出るかわかりませんが、いわゆる所管課長会議よりも権力を持ち、そして十分実施でき得るような考え方で持っていこう、この程度の答弁で御了解願いたいと思います。
  149. 阪上安太郎

    ○阪上委員 なかなか了解できないところですが、そこで次に質問を進めまして、スラムが発生した原因じゃなくて、あの暴力事件の発生の原因についてお伺いしたいのです。先ほどの質問には出ておりませんが、この導火線になったのは、あの老人がタクシーか何かにはねられて、そして生きているか死んでいるかわからないが、現場に居合わせた警察官が死んでいるものと判断した。そして救急車ではなく、たしか警察の車であったと思うが、ようやく来たときにはもうすでに二十数分を経過しておった。こういうことが導火線になったというように私は承っております。そこで消防庁長官に伺いたいのですが、私もその当時これは導火線であったと思いますが、この導火線自体が非常に人権無視の重大な問題だ、かように私は考えますが、そこでそれらの点についてはいろいろと批判も出ております。その点を私はとやかく言いませんが、一体大阪市に救急自動車は何台あるのですか。
  150. 鈴木琢二

    ○鈴木政府委員 大阪では救急車と言わずに救出車と言っておりますが、六両あります。
  151. 阪上安太郎

    ○阪上委員 東京都に何ぼありますか。
  152. 鈴木琢二

    ○鈴木政府委員 東京都は全都域で六十一台。
  153. 阪上安太郎

    ○阪上委員 政務次官、これをどうお考えになります。あの大大阪市が六両であります。それから東京都が六十。あの付近にあります人口二十万くらいの都市でも二台や三台持っておる。私がかつて市長をやっておった高槻市でも一台はある。人口六万から八万。一体これをどうお考えになります。これほど政治の貧困さはないと思うのですが、どうでございます。
  154. 大上司

    大上政府委員 私も率直に申し上げまして、聞いてあぜんとしております。
  155. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あぜんとされた結果、どういうようにお考えになりますか。
  156. 大上司

    大上政府委員 全く、私も実を申しますと大阪にずっと居住しておりました関係上、あの地形並びに家屋の密集状態あるいは人口等も十分承知いたしております。それだけに六台ということを聞いてあぜんとして、ただいまここで、じゃ政務次官として、いわゆる行政官としてどう処置するかと言われますと、言葉がないので、一晩ゆっくり考えさせていただいてお答えいたしたいと思います。
  157. 阪上安太郎

    ○阪上委員 かつてのこの国会周辺を取り巻く安保のときに、ちょうど樺美智子という人が死んだ、あのときに相当なけが人が出ておりました。事件のよしあしを言っているんじゃない。そのときに私は、ここにおられる長官に、あのときに三台しか来ておらなかったので電話いたしました。さしずめ手配をしてくれて四十台の救急車が来た、もちろんちゃんと医師もこれについております。その事件の問題は別といたしましても、こういう手厚い救急の措置というものが行なわれておった。ところがあの大都市の大阪に六台しかない、災害救助も何も私はできたものじゃないだろうと思うのであります。それがただ単なる、釜ケ崎事件のあの問題が特殊事情に火をつけたということでありますけれども、この種の問題は、あの状態ならば間々起こってくるんじゃないか。聞くところによると、警察から電話をした、ところが消防の方では、死んだ人間は救急車じゃ運ばない、それは霊柩車の範囲だということで出動を拒否しているのです。消防長官、これはあなたは報告をお聞きになったと思うのですが、どうでしょう。それから何も消防とけんかしてくれとは私は言いませんが、どうでしょう、こういう状態は。これで警察は責任を持って人命救助をやれますか。
  158. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ただいまお話しのような事情であったということは、私聞いております。ただ、ああいう場合におきましては、消防の救急車に限らず、警察の車でも何でも、すみやかにやはり措置するという配慮が必要であったのではないか。そういう意味におきまして私は、必ずしもあのときのあのことが、交通事故に対する措置のためにああ大きくなったというふうには必ずしも考えませんが、あのときの措置というものについては大いに反省すべき問題があるように、警察自体として考えておるわけであります。
  159. 阪上安太郎

    ○阪上委員 消防の方へ伺いますが、ああいった事件の場合に、警察官がおって、そうしてこれは医者じゃないが、これはもう死んだんだ、しかしながら本人も不安でありましょうから、消防の方に連絡があった。ところが消防の方では、それは死骸は霊柩車だ、こういうことで断わった。仕方がないのですぐ警察本部か何かに連絡してやっと警察の車が出てきて処置した、こういうことになっております。それで何ですか、消防の方の指導としては、そういう死んでいるか生きているかわからぬ者については、一応人の言うことを聞いて、死んだ、こういうふうに判断して救急車は出動させない、こういう組織になっているのでしょうか、どうでしょうか。
  160. 鈴木琢二

    ○鈴木政府委員 救急車の救急活動はあくまで救急でございまして、死体運搬には使わないことになっております。これは救急車を持っておる東京都などでもそういうことになっております。ただ、現実に釜ケ崎事件の場合のことを報告を基礎にして判断いたしますと、私ども受けております報告は、一日の午後九時五十分、派出所から一一九をもって、東田町交差点において交通事故のために死んだが、運搬してくれという派出所の巡査から連絡があった。消防の方で、すでに死んでいるのであれば救出車で運搬はできない旨を回答をいたしましたら、そうですがといって電話を切った、こういう報告に一応なっております。もちろん死んだことが明らかであれば、先ほど申し上げましたように、救急車は、御承知のように、救急業務のために、サイレンを鳴らして、ほかの車をとめてまでも運搬をするということになっておりますので、死んだことが明らかな者を救急車で運搬するということは、原則としてしないことになっております。この場合にもちろん確実に死んだことであれば救急車は行かないことになっておるわけですが、警察官が、死んでしまったとこう言った。まあ言った、言わないの問題はあるかと思いますが、死んだか死なないかは、これは専門家が見なければわからぬわけですから、その点でどうも警察と消防とが、救急業務に対する理解がお互いに足りなかったと申しますか、意思の疎通が十分できてなかったといううらみがあったのではないか、こういうふうに考えます。
  161. 阪上安太郎

    ○阪上委員 医者でない警察官から、死んだものと思われる、しかしながら救急車を出してくれという要望があったことは事実なんです。その場合に消防当局のお考え方として、そういうふうに言ってきたんだからこれは死んだものと断定する、従って、これはもう出動しないのだ、一体これでいいんですか。人命、財産を犯罪から防止するのは警察の役目でありましょうが、災害から防止するのがあなた方の役目でしょう。それでいいんですか、その点もう少し確かめておきたいと思います。
  162. 鈴木琢二

    ○鈴木政府委員 単にそういう言葉のやりとりだけで断定して救急車が出なかったというのは、必ずしも適切な処置ではないと私は考えます。
  163. 阪上安太郎

    ○阪上委員 柏村長官に伺いますが、三輪さんからでもけっこうですが、しかし警察官が死んだということを断定することは、このこと自体どうなんですか。
  164. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 私の聞いております限りでは、しろうと目といいますか、警察官が行きましたときは全く動いていない、口と耳から血を出しておる状態、脈がないという状態、そこで即死と判断をしたようでございます。これはしかしまことに慎重を欠いたものでございまして、先ほど消防庁長官もお答えいたしましたように、ほんとうに生命がなくなったという判断をするのは、これは医者でなければできないことだろうと思うのでございます。そういう意味で、しろうと目に判断をしたということは、慎重を欠いたと思っております。このことについては、これを契機といたしまして、交通事故の処理の適切を期する意味で、警察庁長官から各県に通達をいたしまして、注意を喚起いたしまして、今申し上げましたように、死んだというふうにしろうと目に思われても、まず救護に当たるということを先決と考えるようにということを通知をいたしたような次第でございます。
  165. 阪上安太郎

    ○阪上委員 この問題はもう多く論議されている問題でございますので、警察としても反省すべきところは反省し、あるいはそういう声明も一部出しておられるように私は記憶いたしております。従って、この問題は私はこれ以上追及しようとは思いません。  そこで、二番目にお伺いしたいのは、先ほど手配師だとか黒い組、それから例の売春暴力団だとか、これは私は端的に言ってもっと徹底的に取り締まるべきだ、こういうふうに思うのです。今までは別といたしまして——今までやらなかったとは私は言いません。検挙数も相当あるようであります。しかし、今後もっと本腰を入れてこの問題と取り組まないと、当面の応急対策すらも成り立たぬと私は思う。この点について、その後警察当局はどういう態度を持っておられるか、これを伺ってみたいのであります。
  166. 三輪良雄

    ○三輪政府委員 最初に暴力手配師の問題でございますが、従来あそこで手配師として、いわゆるやみ手配師としてやっておりましたものは、山田組、若桜組、五十名と三十名くらいのものがありまして、山田組の方はほぼ一日千人くらいの人夫を手配しておった。若桜組の方は三百人くらいの人夫を天王寺公園を中心に手配をしておったというようなことでございまして、これは実は先ほど長官からもお答えしましたように、ピンはねについては不満を持っておりますけれども、職安に行って自分は身分をあかしたくないというような考え方もあるようでございますし、また職安の給与そのものが、職安に行った場合には手配師の頭はねをされた後の給与に比べても必ずしもよくないというようなことで、これに行っておったわけでございます。従って、取り締まりをやる一面、これにかわる職業あっせんをしてやる必要がございますので、西成分室という大阪府労働部の分室を作って、これで自来手配をいたしますと同時に、警察本部では、職業安定法違反捜査班という警部補を長とする五名の者を特にこの地域の手配師の連日にわたる取り締まりに当てまして、現在少なくとも街頭にこれが出て手配をしておるという状態はございません。まだ実はドヤ街等に行って内々でやっているのは絶無とは申せないようでございますけれども、少なくとも今までのような大っぴらな顔出しをしていない。そこで、西成分室の方では、今一日平均千四百人ぐらいの人をやっておりまして、一方職安の西成出張所の方では二千九百人ぐらい、これは従来もやっておったわけでございます。職安の方でやりますというと、失対事業では三百五十円ないし五百円、西成分室の労働部の新しくこしらえましたところでは八百五十円ないし終夜までやりますと千八百円というような賃金であっぜんをいたしておるようでございます。売春の方は、これは従来とも相当きつくやっておりまして、三十六年上半期に、釜ケ崎及びその周辺では、売春防止法違反で検挙いたしましたものが五百四十四件に及んでいるのでございます。麻薬につきましても、西成で犯行を起こしましたもの二百六十八名、西成の居住者によるもの百十六名、こういうものをこの地区で検挙をいたしておるのでございます。そういうことで、取り締まりの強化もやりまするけれども、同時に、たとえば手配師の取り締まりにつきましては、今のように別にかわってあっせんをするものを作る。これと今協力しつつ、両面の行政を行なっておるというふうに聞いておるのでございます。
  167. 阪上安太郎

    ○阪上委員 今まで伺いましたところによりますと、ちょうど彼らがほんとうに不平を率直に言っておりますように、法の取り締りまりという対象には若干なっていくのでありますけれども、全く法の保護というものを受けていない。従って、一番彼らを搾取しておりますところのこういった反社会的な集団に対しては、今伺いまして多少心を丈夫にしておりますけれども、私は、もっと抜本的な撲滅対策というものを警察当局は立てなければいかぬと思う。こんなものを放置しておいて、どうして彼らの生活を守ってやることができるかということになろうと思うのであります。この点については、今後一つもっと撲滅対策に力を入れてもらいたい、こういうふうに思うのであります。なるほど、この問題につきまして、当初警察の態度、手の打ち方が非常に緩慢であったというようなことをよく言われております。しかし、現地に行って本部長その他から意見を聞いてみますと、山谷のドヤ街の事件の経験に徴すれば徴するほど、高圧的な手というものを最初から打つということはかえってまずいのだということを、るる私ども説明もいたしておりました。私はこれはもっともだという考え方を持っております。ところが、国家公安委員の中では、先ほどからいろいろと質問申し上げておりますようないろいろな深い原因というものを持っておるこのスラム対策に対して、単に警察は当初から強権をもって徹頭徹尾、ああいう蜂起した暴力者に対しては弾圧を加えるべきだというようなことをとうとうとしゃべっておる公安委員がある。これは新聞等で私は見たのであります。それがまた今度の改選に際して公安委員となっておる、こういうことなんでありますが、大上さんどうでしょうか、そういう公安委員というものをほんとうにあなたの考えで適当な公安委員だとお考えになりますか。どうでしょう。
  168. 大上司

    大上政府委員 お答えいたします。実はこれは国家公安委員関係で、私、政務次官としての所管外でございますので、御了解を願いたいと思います。
  169. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それじゃそのことは安井国家公安委員長にいずれ聞くことにいたしましょう。  そこで、私最後にお伺いいたしますが、この事件の余波ともいうべきものだと思うのでありますけれども、非常に警察の威信を失墜するところの事件が発生いたしております。それは警察官によるところの人権侵害事件であります。私は新聞の報道だけしか持っておりませんが、大阪の淡路署でもって釜ケ崎事件の公務執行妨害容疑者が二人の刑事に暴行されて、釈放寸前になって暴行の事実は絶対に口外するなと、余罪と取引にかたく口どめされた事件がそれであります。この事件についての今までの取り調べの状態を御説明願いたいと思います。
  170. 新井裕

    ○新井政府委員 御指摘のように、公務執行妨害といいますか、投石の容疑で取り調べをいたしておりました被疑者に対して、二人の刑事が暴行をしたという疑いがございましたので、警察といたしましては、検察庁に全面的に捜査を依頼して、公平な立場から真相を究明していただこう。こういうことで今全面的に検察庁におまかせをしております。ただ、今御指摘のありましたうちで、余罪を追及しないから暴行の事実を言うなという取引をしたということでございますけれども、これは若干誤解がございまして、実はこの被疑者は昨年は窃盗の被疑事実によって手配をされておったことは事実のようでありますが、軽微なものであり、なかなかつかまらないというので、昨年の五月にすでに手配解除になっております。従いまして、取引の具に使われるという客観的な状況にはなかったようでございます。ただ、そういう余罪というものが、去年手配になっておったけれども、お前何しておったのだと聞いたところが、私は窃盗じゃなくて臓物をあっせんしたのだということを言っておる、こういうことでございます。これらの問題につきましても、いずれ真相は明らかになると思いますけれども、取引の具に供するという客観的な状態でなかったということだけ申し上げます。
  171. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それでは拷問の事実はどうですか。
  172. 新井裕

    ○新井政府委員 ただいま申し上げました通り、私の方で監察官が調べましたことが最初の日はあったのでございますけれども、事件が事件でございますから検察庁に全部おまかせして、先方で真相を追及していただこう、こういうことでございます。監察官はあまり大して時日もございませんから十分に追及いたしておりませんけれども、その調べでもそういう疑いがあるということで報告を受けております。
  173. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これに対する警察庁長官の感想はどうですか。
  174. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 刑事被告人の取り扱いにつきまして常に慎重を期するように指導をいたしておるのでありますが、今回こういうふうな暴行事件というものが非常に疑い濃厚なものとして出ましたことは、私として非常に遺憾に存じております。常々申しておることでございますが、今後さらにそうした不祥事件の起こることのないように厳戒して参りたいと考えております。
  175. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは私から申し上げるまでもなく、公務員の拷問というのはほんとうに重罪であります。明治憲法においてすら拷問というのはやはり禁止されておったのであります。ましてや新憲法三十六条によりまして「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。」と非常に強い口調をもって憲法はこの点を保障しております。今回のこの拷問の事実は、目撃者は病院の窓から見ておったわけなんでありますが、証人もあるわけであります。ことにこれは警察の威信を失墜するおそるべき事件だ、私はかように考えております。従って、刑法第百九十五条であるとか第百九十六条等の規定によりましても、あるいは刑事訴訟法等によりましても、これに対して準起訴手続というものを認められておる。だから、かりにこれが不起訴になったといたしましても、被害者から起訴手続をとることができるところまで、法はこの問題については救済もし、保障もしておる問題であります。こういう事件がたまたま釜ケ崎事件等の捜査の過程で出てきたということについて、私はこれは非常におそろしいことであるというふうに考えておるのです。なぜおそろしいことかといいますと、冒頭に私が申し上げましたように、この事件は騒乱罪を構成するかもしれないという検察庁の態度もあった、それから植木法相はこの事件に対して徹底的に思想的背後というものを洗い出せというような強い発言もしておった、そういう中で、この事件の公務執行妨害その他の被疑容疑でもって取り調べをされておる。しかも世間では、私はそうは思わないが、一般的には警察の態度が最初非常に不手ぎわであったというような言い方が出てきており、国家公安委員の一人は盛んにその点についてもっと徹頭徹尾やるべきだったというようなことを平気で言っておる。こういったこの事件を取り巻く雰囲気の中でこの捜査が行なわれている、こういうことなんであります。その結果出てきたのが、憲法が絶対禁止しておるところの拷問でこれが捜査されている。何か警察当局はそういうふうにして、それにこたえるために、この事件は警察が不手ぎわであったためにああいう発展をしたのであるということをおおい隠そうというような魂胆から、拷問までしてでっち上げをしようというような考え方になっておるのじゃないか、私はこういうふうに考えるのです。もちろんあなたに質問してみても、長官は、いやそうじゃございませんというだろうと思うのでありますか、こういった客観情勢をずっと考えていくと、あまりにもこれはそういうふうな考え方をせざるを得ないような取り調べの方法である、私はこういうふうに思うのであります。柏村長官も現場に行っておられますが、なかなか強硬な態度を持っておられたようであります。警察の責任じゃないのだ、うしろから何か思想的に扇動しておる者があるのだということでもって、責任回避の方向への一つの道具立てとして、こういうことが行なわれているのじゃなかろうか、こういうふうに思うのですが、それはどうでしょう。
  176. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察の責任を回避するために強い取り調べをするというようなことは、毛頭考えておりません。これははっきりと申し上げるわけでございます。私も大阪に参りまして、ただいま非常に強硬な態度だったというお話でございますが、私はやはり警備の実施措置というようなものについて、やり出したらぴしっとやるということが必要であるという問題と、容疑者については徹底的に追及するということがやはり必要である。これは公正に警察の責務を果たす上において必要なことでありまして、是が非でも無実の者までつかまえて白状させるというような意味の強さというようなものは、私少しも考えたことはございません。私は警察がその本来の使命に従って、責務に基づいて、仕事をするについてちゅうちょすることのないようにという意味において、強く言い、態度をとったように世間で受けておるかもしれませんが、私としては、あの事件について初め手ぬるかったので、あと非常に強くやって挽回しようというようなさもしい気持は、毛頭持っておらないことを付言しておきたいと思います。
  177. 阪上安太郎

    ○阪上委員 そこで、先ほどお伺いしておりますと——今の御答弁は、それは当然そうあるべきでありますが、こういった拷問、これが事実にならなければ、これに対して警察庁としては何らかの行政措置はとられませんか。
  178. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 ちょっと今の御質問がわかりませんので、もう一度お願いいたします。
  179. 阪上安太郎

    ○阪上委員 それではもう一度。今被疑の段階でありまして、取り調べ中であります。そういうことが明確になり、裁判の結果を見なければ、警察としてはこういった拷問事件——私は拷問事件、こう思っておるのですが、これに対して何か善処方というものはお持ちになっていないのですか、このままで黙って判決を待って、それからじっくり考えていく、こういうことですか。
  180. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この事件について、刑事事件としては今検察庁に送っておりまするので、その方で十分真相を究明していただくことになるわけでございますが、必ずしも裁判の最終の決定を待ってでなければ一つの行政的な措置がとれないというものではございません。われわれの——われわれと申しますか、県警察の幹部において判断し得る材料が出ますれば、それに基づいて適切な措置をとり得ると考えておるわけでございます。
  181. 阪上安太郎

    ○阪上委員 これは警察庁にお伺いしなければならないのですが、地方自治体では、私の考えでは、法の占有領域を越えても、集団示威行動等については、条例をもって自主的にああいう取り締まりの強化というのですか、wpやっておる。一体、先ほど言いましたような黒い手だとか、ああいったものについて、公安条例はこれを取り上げないのか、同時に、今言ったような、これは裁判の結果を見なければわからぬ、こう言われるかもしれないけれども、ほぼ私は明白だと思うのですが、こういった行為をやったところの警察官に対して、どうも在来からうやむやになっておる傾向があるのではなかろうかという気持がするのであります。この際ほんとうに警察の品位を保っていくために——いかに上の方で良識をもって警察行政が行なわれたとしても、遺憾ながら末端において不心得な心得違いをする者も、これはなきにしもあらずであります。もう少しこういった問題について、公安委員会というものが、ただ単にああいったデモ条例みたいなものばかりに取り組んでいないで、こういった問題とも取り組んで、そういうことのないように、条例を作れとは私は言いませんけれども、そのくらいの気持になって、公安委員会がきぜんとして警察官のそういった不法行為というものに対して、これを全然なくしていくというような方途というものを考えなければならぬと思うのです。もしそれを考えないようでしたら、これはやはり警察監察委員会でも作って、そうして民間の手でもってでも、やはりそういった、ことに憲法で絶対に禁止するといわれているものが、たとい一名でも二名でも出てくるというような状態に対して、これは放置するわけにいかないと思うというような気持になるのですが、そういった考え方について、私は警察庁長官のあなたにお伺いするのは気の毒かと思うのですが、公安委員長がおれば私はほんとうに公安委員長に迫っていきたいくらいなんです。私は、こんなものは新憲法下に一つ出してはいけない問題だと思っているくらいなんです。しかしどうしてもこれは警察でもって撲滅できないというようなことでありますれば、公安委員会がほんとうにそれに対して、そういったものをなくするところの措置というものを十二分に講じていかなければならぬ。ところが現在の公安委員会というものは、これは軒並みには言えませんけれども、あまりその方へのものの考え方というものは徹底していない。そうなれば、むしろこうなってこういった事件が発生するのだから、民間でもってでもそういったものを監察していくというような制度というものができなければならぬというような気がするのですが、この点どうでしょう、そういうものを作ってやってもらうのは非常にけりこうだというふうにお考えになるでしょうか。
  182. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、警察官の規律、特に人権の保護ということについては、私どもとしましても口やかましく指導をいたし、警告をしておるわけでございまするし、国家公安委員会初め、各府県の公安委員会等におきましても、そういうお気持でやっておられるわけでございます。従いまして、警察全体の空気としては、私は相当にそういう気持を強く抱いておると信じておるわけでございますが、遺憾ながら今回のような事件が出まして、まことに申しわけないというふうに考えておるわけでございます。従来とも、警察におきましては、そうした不当な、不法な行為については十分に部内において措置するという建前をとっており、今回も直ちに監察官によって調査をし、なお警察だけでこれをやるということが世間の誤解を生ずるというようなこともあるいは起こり得るということから、公正に検察庁において捜査していただくようにしたわけでございまして、被疑事実についての捜査は検察庁でやっていただきますけれども、部内規律の問題としては、警察の責任において十分適切な措置をとることになると思います。決して、部内がゆるい気持であるから、むしろ民間の方にそういうことをお願いしたいというような気持は、現在のところ毛頭持っておりません。
  183. 阪上安太郎

    ○阪上委員 あと門司委員の御質問があるようでございますので、これで終わりたいと思いますが、どうぞ一つこの釜ケ崎事件につきましては、ほんとうに政府関係各省一つ十二分に連絡をとられまして、そしてスラム撤去の徹底的な方策というものをこの際打ち立ててもらいたい。  なお、警察当局につきましては、当面のスラムの治安対策のために、先刻からるる申し上げておりますような問題について、特にああいった暴力団とか反社会集団撲滅のために、一そう一つ努力願いたいと思います。  これだけ希望を申し上げまして、私の質問を終わります。
  184. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 門司亮君。
  185. 門司亮

    ○門司委員 私は今の阪上委員質問に関連して、自治省当局に聞いておきたいと思います。  そのことは、例のスラム街の改善にはいろいろ策があると思うのです。一つは新しい家を建てて、そして収容する場所をこしらえるということが当然一つの策として考えられると思うのです。その場合に、自治省はこれに対する起債認可等についてはどういうふうに考えておりますか。自治体は、新しい家を建ててやって、そこに収容してやるということがよろしいと考えておっても、事実上金がなければやれないことです。これについて起債を認めるという態度はございますか。
  186. 大上司

    大上政府委員 ただいまの点につきましては、従来の諸規定と申しますか、法律等の施行の面からどの範囲までそれに該当し得るかという問題と思いますが、それにつきましては事務当局から説明いたさせます。——恐縮でございますが、次の委員会に現在施行の事務規定と申しますか、内部規定と申しますか、そのものに照らしてお答えした方がはっきりすると思いますので、そうさせていただきたいと思います。
  187. 門司亮

    ○門司委員 これは特に一つ次官に頼んでおきたいのですが、この問題は何も大阪や東京だけではないのです。都市という都市のほとんどにあるのです。どこでも手をやいていることは事実なんです。だから、それを早く処置しようとすれば、結局やはりああいう地帯の撤去と新しい施設がどうしても必要になってくる。この地域は、私はほとんどといっていいほど全部不法建築だと思うのです。公有地の占拠というようなことはこれはつきものなんです。それを放任しておく自治体もよくないが、しかし放任せざるを得ない社会環境が悪いのであって、それをなくしてやろうとするには、やはり特別の財政措置が講じられなければ、地方の自治体ではそれはなかなかやれないと思うのです。別に大した収益があるわけでもありませんし、従って、もし起債の認可等が十分にできたり、あるいは特別の補助規定等があるなら、今お尋ねをしたようなこれらの不法占拠をしておる地域を改めることは、私は容易だと考える。そうむずかしい問題ではないと考える。これらについて一つ十分自治省としての態度をはっきりしておいていただきたいと思います。  それから、ついでにもう一つ警察側にこの問題について聞いておきたいと思いますことは、先ほど阪上委員からかなり詳細に聞かれましたので、必要ないと思いますが、私どもが心配するのは、警察行政の今日までのあり方が、どうもならず者という言葉はあまりいい言葉じゃありませんが、かつての犯罪者というような者の潜行している場所、あるいは潜在している場所というようなものは、大体きまっていると思うんですね。どの辺にどういう犯罪を犯した人が集まっているということが、割合に一ところに集めておくということが、警察が取り締まりの上から実際は便利だと思うんです。これが散らばってしまったのでは、なかなかどこにいるかわからないので、取り締まりにくい、警察にはこういうふうな変な今までのしきたりがある。だからある程度の犯罪者というものは、飼っておくという言葉は悪いかもしれませんが、容認しておく。そうすると殺人罪を犯して逃げてきたような者がそこに集まりやしないか、潜伏しやしないか、それらを手づるして検挙して取り締まることができるというので、警察には一種異様な反社会的のものの考え方がある。それが、何としても今日まで行なわれていることは、事実だと思うんです。そういうものとの関通性で聞いておきたいと思いますことは、これらの人たちの集団的の生活、いわゆる一カ所に集めるという一つ方法を警察は望まれるのか、あるいは分散を望まれるのか、その点は警察行政の面からどうなりますか、お考えがあるなら一つはっきりしておいていただきたいと思います。
  188. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 犯罪者が一カ所に集まることが望ましいかどうかという御質問のようでありますが、犯罪者はできるだけすみやかに逮捕するということが望ましいのでありまして、これがどこにたまり場があることが望ましいかというようなことは毛頭考えておらないわけでございます。
  189. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、警察側としては、そういうことが望ましいのだということは、おそらくあなたは言えないでしょう。どこか一カ所によりどころみたいなものをこしらえておいて、それで検挙するのが便利だということは言えないでしょうが、事実はそういうことであって、実際問題としてはなかなか警察側の思うように取り締まりができないということですね。やはり何かどの辺にどういう犯罪者が集まるのだというようなことは、大体従来の警察行政の中では考えられていると思う。もし警察がほんとうに警察行政だけの形で取り締まりをしていこうとするには、私はそういういろいろな問題があろうと思うから、それではっきり聞いておきたいと思いますことは、自治体がかりに現在のスラム街の全部をなくして、そうして新しい住居を与えて、さらにそこに職安を設けまして、十分法の保護が受けられて、さらに職業が安定するような形をとっていくというような場合に、一カ所にこれらの諸君が集められるということは非常に困難だと思いますが、処置としては一カ所に集めるのがよろしのか、あるいは分散して往ませるようにしたのがよろしいのか、これはおのおの自治体の財政関係があると思います。しかし、私たちの考えとしては、一カ所に集めて、いかにもあそこはスラム街だというような地理的条件からくる、あるいは地理的環境からくる一つの歴史的なものの考え方のようなところは、実際はこしらえたくはない。やはり住宅、それから周囲の環境等も十分に一般人としての環境のようなところに置いて、そうしてスラム街自身というものが偏執的な考え方にならないようにこれを指導していくということも一つ方法だと思う。そうすればスラム街を解消する、解消すると言いますけれども、それらの諸君の住居というものは分散するがよろしいか、集めるがよろしいかという二つの議論が出てくると思う。こういう場合についての警察側からの考え方を、この際一つ伺っておきたいと思う。
  190. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察の犯罪捜査というような点からは、別に集めるのがいいとか、分散するのがいいという考えは私持っておりません。これはもうばら都市計画、あるいは労働関係の需給関係というようなことから、それぞれ専門的に考究されるべき問題であろうというふうに考えるわけでございます。警察としては、特別にそういうものはすぐに犯罪のたまり場所というふうな考えを持っておりませんし、従いまして、そういうものが集まる、集めておいたがいいとか、あるいは分散したがいいということは、警察の見地からは、犯罪捜査の面からも、そういうことは考えておらないわけであります。
  191. 門司亮

    ○門司委員 あとはこの次の委員会等に、根本的にそういう対策、住居の対策、さらに職場の安定等の対策についてはまた機会があろうかと思いますから、譲りたいと思います。  きょうは選挙局長も何かお忙しいようでございますが、総括的に私申し上げておきたいと思いますのは、昨年の八月一日に行なわれた島根県の益田の市長選挙並びに市会議員の選挙に対して、ことに対象が市長選挙になっておりまするが、現在訴訟事件として出ておるのでございまして、ここで訴訟事件が起きているものについて、選挙の効果についてとやこう言う必要はないと私は考えておる。しかし、選挙の実態の訴願の内容等を見てみますると、事実上選挙が公正に行なわれるについては、かなりいろいろな複雑怪奇と言っていいほどの問題が取り扱いにあったのじゃないかということ、これは何も私の推測でも何でもない、この島根県の選挙管理委員会から発行をされておりまする裁決書の中に実は現われてきております。従って、これをずっと見て参りますると、かなり選挙事務あるいは選挙の運動というものはずさんだ——という言葉を使うのはどうかと思いますが、われわれの常識に反した行為がかなり行なわれているやに、実はこの書類を見て私ども考えるのであります。だから、従って、これらについては、すでに選挙局長は昨年の八月の一日のことでありますので、十分報告も受け、さらにこれについての意見等についても私は求められた事実があると思うのですが、これについて報告をどの程度受けられて、そうしてどの程度の御返事をされておるのか、一応この機会に聞いておきたいと思います。
  192. 松村清之

    ○松村政府委員 実は、報告と申しましても、この裁決書を送っていただいた以外に、これといって私は報告は受けていないのでございますが、この事件の県の選挙管理委員会の審理の過程におきましては、法律的な問題について、私ども事務当局の方から若干の法律見解は述べたことはあると思います。それ以外訴願の審理でございますから、事実問題についてどうとか、そういうことは一切関与しない建前になっております。
  193. 門司亮

    ○門司委員 訴願になって、訴訟事件になっておりますので、おそらく選管として、あるいは中央の選挙局長としては、これに指示をしたり、あるいは訴願の決定その他に対して不当な——という言葉も行き過ぎかもしれませんが、ある意味の圧力をかけたり、あるいはある意味の示唆を与えたりするようなことは、これは自治省としては当然慎しむべきことであると思います。しかし、問題の焦点は、事選挙に関する構成で私の聞きたいと思いますことは、これからずっと事例をあげていけば大体二十五、六個所の事例があるようにこの書類に書いてありますけれども、この一々の事例について選挙局長に承りたいと思いますが、総括的に見て、たとえば選管の裁定書を読んでみましても、不正の事実を認めている点があるのです。幾らかそういう不正の事実があった。しかし、それは選挙の効力に関係がないからと突っぱねた。なるほど選挙の効力には関係がないかもしれない。一票か二票不正の行為があったところで、二百何十票違っておるので、選挙の効力自身については差しつかえないかもしれない。しかし、そういうことがいけないことであるということは事実なんです。だから、その法律上の取り扱いについて、こういう訴願事件については、これは裁判じゃありませんから、訴願事件について選挙管理委員会はある程度不正を認めておるが、しかし、それは選挙の効力に関係がないからということでこれを葬ることがいいか悪いかということです。これは選挙の根本に触れる問題だと思いますけれども、二百五十票違っておるのだから、一票くらい不正があったって、それを差し引きしてみたって、選挙の効力には差しつかえないじゃないか、こういう議論が、ほんとうに裁判の結果としては私はそういうことが言えると思いますが、選挙を行なっておりまする過程における選挙の秩序をどう保っていくかということについては、必ずしもいいことではないのです。選挙の効力にさえ関係がなければ、どんな不正があってもよろしいのだという理屈は、私は成り立たないと思う。従って、その間の自治省選挙局長としての考え方は、そういうことがあってもよろしいのだという考え方であるかどうかということを、この際承っておきたいと思います。
  194. 松村清之

    ○松村政府委員 訴願人の申しております事柄全部につきましての真偽のほどはともかくといたしまして、ただいま門司委員のおっしゃいましたように、県の選挙管理委員会もその事実の一部を認めておることは、この裁決書で承知いたしておるのでございます。しかし、選挙管理委員会選挙の無効の訴願を裁決するにあたりましては、選挙の管理規定に違反していることと、そしてその結果、あるいはそういう違反がなかったならば選挙の結果が異なったものになるであろう、こういうような二つの事柄がない限りは、選挙の無効というわけには参らないのでございます。しかし、選挙の無効、有効の問題は別といたしましても、選挙の管理規定におきまして、たとい部分的にもせよ、管理規定に違反するような事実が一部ありましたことはまことに遺憾に存じておりまして、この点につきましては、選挙の管理事務につきまして、市町村選挙管理委員会に対しまして、都道府県の選挙管理委員会なり私どもの方なりで十分注意するようにいたすべきであろう、そういうふうに考えております。
  195. 門司亮

    ○門司委員 次に聞いておきたいと思いますことは、この選挙の訴願については、御承知のように、当該選挙の無効の訴願あるいは訴訟と、当選無効の訴訟と二つの関係があります。この場合には、おのずから同じ一つの事件でありましても、取り扱いが違うわけなんです。不正があったからといって、直ちに選挙全体が無効になってやり直すようになるのか、あるいは候補者自身がそれによって失格をするのか、二つの事案がある。その場合に出て参りますのは選挙法との関係であって、警察関係の問題がそこにどうしても浮かんでくる。罰則の問題が浮かんでくる。それらについて選挙全体が無効であるというなら、これは選挙の管理が悪かったとか、あるいは選挙方法に誤りがあったということが出て参ります。ところが、買収の事実であるとかあるいはその他の問題は、選挙全体が無効になるというのではなくして、当選が無効になる、こういう形が出てくるわけです。これは当然私はそういう形が出てくると思います。選挙全体は公正に行なわれた、事務その他については公正に行なわれた、しかし、選挙の過程においては買収があったということが当然あると思います。選挙無効の訴訟というのは、御承知のように、選挙の手続その他について間違いがあって、公正を欠いた場合には、選挙無効の訴訟が当然行なわれる。しかし、それは直ちに選挙法の違反として、いわゆる犯罪としての行為ではないのであって、秩序が乱れておったということは、勢い選挙無効になる。しかし、買収だとか供応だとか個別訪問だとかいう選挙法に書いてある違反事項が起こったからといって、私はこれは選挙無効にはならないと思う。議員の当選の無効か有効かという議論は当然行なわれるが、その間の選挙管理委員会に対して、自治省選挙局としては、今日までどういう指示をされているか。この訴訟事件は二つを加味しているのであります。一面、いかにも選挙無効の訴訟を一応しております。しかし、内容を読んでみますと、結局内容については当選無効に値するような内容を含んでおりまして、裁決書を読んでみましてもそういうことが書いてあります。選挙のやり直しを要求している。しかし、こういう事犯は当選無効にあるいは当たるかもしれないが、訴願の趣旨が違うというようなことでこれが却下されておる。いわゆる取り上げられておらない、こういう事実が書いてあるのであります。そういたしますと、これは市長でありますから、事実上は選挙が無効であるのも、それから当選者が失格をするのも、結果は同じことなんです。選挙のやり直しになるのです。しかし、取り扱いの上においてはそういう二つの取り扱いが当然行なわれる。この訴訟は選挙無効の訴訟であるから、当選無効に該当する条項は当てはまらないというようなことが、ところどころに書いてあるのです。そういう問題については、一体自治省選挙局長はどういう指示を与えられて、おりますか。
  196. 松村清之

    ○松村政府委員 この問題につきましては、訴願人は、選挙無効の訴願とそれからただいまおっしゃいました当選無効の訴願と両方出してきておるのでございます。ただ、選挙無効の訴願の方は法定の期限内に提起しておりますけれども、当選無効の方はその訴願提起の期間を相当過ぎてきておりますので、この点につきましては、選挙管理委員会といたしましては訴願を却下するということで、この点については従って問題にしていなかったのでございます。
  197. 門司亮

    ○門司委員 私の聞いておりますのは——これはこれに書いてあります。書いてありますから読めばわかるのでありますが、問題は、結果は同じ結果になるのですね。結果としては、当選無効であろうと選挙無効であろうと、どちらでも同じになる。ところが、たまたまそういう手続規定の中で、二十日ですかの期限内に訴願をしなければならないという規定があるので、その期限を過ぎているから、従って、「二十一日以内に提起すべきものであるところ本件訴願はこの期間を経過した後に提起されたものであるから、争訟提起の要件を欠くものとして却下をまぬがれない。」こう書いてある。当選の効力に関する、いわゆる当選無効の訴訟は却下された。そして選挙無効だけが取り上げられている。従って、そういう結果的には同じものが出てくるのは、こういう手続規定によって、そのまま片方は取り上げられないからで、そうすると、これは勢い行政訴訟する以外に手はなくなってくる。こういう形は、ある程度までは、いわゆる当選無効の訴訟で当然ケリがつくべきものが、日にちが過ぎたからといって、今度は選挙無効の訴訟に変えなければならない、こういう形が出てくる。これについて、そういう姿で、同じ効力であり、同じ結果になる二つの行き方がある。議員選挙のときには個々の問題が当然対象になりますから、全体を対象とするわけにいかないと思います。しかし、市長選挙の場合は大体対象が一つでありますから、こういう結果が必ず生まれてくると私は思います。   〔纐纈委員長代理退席、委員長着席〕 たくさん議員さんがおいでになるときには、買収事件があったからといっても、それは個人の問題であり、選挙全体の問題ではない。しかし市長というのは一人の問題ですから、ことにこういう場合は二人で争っておりますから、結局片方に買収、供応等があれは、当然選挙は無効であったという結果と同じ結果が招来することは事実であります。だから選挙の違反につきましては、供応、買収等の問題については、この場合に非常に慎重な態度で警察側も臨まなければならない一つの大きな問題だと思います。これについて今選挙局長答弁を聞いてみますと、ただ法文上の解釈だけであって、そのほか何もお答えがないのでありますが、私は、こういう姿で益田市の選挙の実態を見まして、反面には警察側に聞いておきたいと思いますが、この選挙の過程において、たくさんの人の告発事件が起こっております。そしてこれは買収も多少書いてあるようでありますが、いずれも供応事件であるわけであります。ことに供応を受けたという人が出しております。ですから、これはそういうものがあったということをちゃんと口述して、それが供述書として告発状の中に書いてある。単に第三者が、こういうものがあったという仮定のものではなくて、自分がこういう供応を受けた、自分はこういうことにあっておるという供述書をつけて告発状が出ておる。こういうものについて警察当局のとった態度について、警察庁が報告を受けておるかどうかということを、この機会にまず最初に聞いておきたいと思います。
  198. 新井裕

    ○新井政府委員 三回告発がございまして、第一回が三十五年の九月、第二回が三十六年の四月、第三回が三十六年の五月、第一回の告発は詐欺登録の問題でございまして、三名の取り調べをいたしまして送っております。第二回は買収の関係で四十二名の取り調べをいたしまして、検察庁に送致いたしております。第三回は、これもやはり買収と供応でございますが、七名の取り調べをいたしまして、検察庁に送っております。
  199. 門司亮

    ○門司委員 これは実はいずれも検察庁の調べは不訴訟になっておりますが、告発人の書類を見てみますと、第三回の分になりますが、告発人のつけた供述書によりますと、島根県益田市大字益田稲積町、大同病院長斉藤幸成という人であります。この人は病院の院長であり、医学博士であるということで、相当社会的な地位のある方だと考えます。この人の供述書というものがちゃんとつけてあります。「昭和三十五年七月二十二日午後五時頃益田市衛生課長田原栄が払方へ来て、「椋木助役からですが、先生に一度お会いしてお願したいことがあるので、御都合を聞いて来いと言われたのでお伺いいたしました」とのことであったが、私は確答しませんでした。ところが、その翌二十三日に前記田原衛生課長が再び払方へ来て、私に対して、「ぜひ御足労を願います」と三回までも迎えに来たので、何事か判らぬままに、午後六時頃自動車で益田駅前の博世館に行き、椋木助役(少しおくれて来た)吉村水道課長、田原衛生課長、私と四人同席で、ビールと肴(刺身、鮎の塩焼、酢物、テキ等)が出され馳走になり、暫くして椋木助役が私に対して「先生は伊藤氏とは特別の関係があるのですから、今度の選挙にはぜひ伊藤氏を応援して戴きたい」と話を切り出したので、長居はせぬ方がよいと思い、よい加減にして退席しました。その帰途、近くの安部電機へ立寄ったところ、益田の紫明樓のおかみも居合せていたので、前記のことを話して帰宅いたしました。博世館の宴席にいたのは、シゲ子という仲居(元志乃家旅館にいた背の高い女)であったから、安部電機主人、紫明樓おかみ、シゲ子等が前記の事実を立証してくれると思います。更にその翌二十四日、桐田酒店の店員が「吉村水道課長からたのまれました」といって、ビール半打を持って来たが、私は受取る理由がないので、持ち帰らせました。ところがその後吉村水道課長自身がそのビール半打を持参して、私方の勝手の方へ無理やりに置いて帰りましたので、私はこれを八月三日に吉村水道課長宅に送り返した。以上のことは私の妻や女中もよく知っているから、その事実を立証してくれると思います。右のことは相違ない事実であります。昭和三十六年四月二十八日、右、斎藤幸成」こう書いてある。こういう本人の供述書をつけて告発されておるのであります。これに対して警察当局はどういう取り調べをしたのか、もし報告があるなら、報告を聞かしておいていただきたいと思います。
  200. 新井裕

    ○新井政府委員 今お述べになりましたような詳しいことは、ここに資料がございませんのでわかりませんが、告発された者だけでなく、関係者も十分取り調べをした上で送っておるのでありますが、検察庁がどういう理由で不起訴の処分にいたしましたか、そこまでは私ども承知いたしておりません。
  201. 門司亮

    ○門司委員 私はこうした事実に対して、どういう取り調べをしたかわからないと言われれば、それだけだと思いますが、この書類は告発状でありますから、おそらく警察当局にあるはずであります。ないわけじゃありませんね、本人の供述書をつけて告発すると書いてあるのですから。私どもはこう考えて参りますと、いろいろな意図はあろうかと思いますが、往々にして選挙に対しまする警察の態度というものが割合に公正を欠くきらいがあることが、ときどき非難されることもないわけではないと思います。私はこの種の事件については、見込みの捜査であるとかあるいはほかから聞き込んだというのとは違うと思うのです。そういう供応を受けた人が、おかしいからこういう告発をしている。告発人ではございませんが、告発人の告発状の中にこれがついて出ているのですね。従って関係人を取り調べてくれ、こういう書類が出ている。これについて警察側がどういう態度を一体とられたのか。その点について、もし今わからなければ後日でよろしゅうございますが、警察側のとった取り調への内容を——これは検察庁に出したのではございませんで、益田警察署長坂根寅夫殿と書いて告発状が出ておりますので、当然警察で知っておると思いますから、一つどうぞそういう取り扱い——あとは大体この事件はたくさんこういう事件があります。第九回まで実は告発事件が行なわれておりますが、第一回と第三回を除いてあとはいずれも地検に対する告発状でありまして、警察がどういうふうに調べられたかということも、これから全部読めば書いてありますけれども、私がそこまで言わなくても、直接警察にあててこういう本人の供述書をつけて告発したものに対する取り調べというものがどういう形であったかということを一つわかるだけ詳細にこの際出していただきたいと思います。このことは、私は警察の名誉のためにも必要だと思います。往々にしてこういう地方の選挙になって参りますと、いろいろな関係でややともすれば公正を欠くかのごとき非難を受ける処置がございますので、警察の名誉のためにも、一つこのことについては、きょうお答えができなければあとでよろしゅうございますから、一つ詳細な報告書を出していただきたいと思います。
  202. 新井裕

    ○新井政府委員 ただいま申し上げましたように、告発は今秋の方には三回出ておるのでございます。三回のいずれも被告発人に限定をいたしませんで、その関係者も十分に取り調べをいたしました上、告発人からも補充調書をとりまして送っておるのでございます。従いまして、検察庁でどういう見解で不起訴にしたのか、私の方からお答えするのはやや筋違いかと思うのでありますけれども、私の方の取り調べは通り一ぺんのことでなく、十分な調べをしているように思います。それからまた告発事件以外の選挙の事例を見ましても、必ずしも一方に偏したというふうに言えないのじゃないか、私どもはさように見ておるわけでございます。
  203. 門司亮

    ○門司委員 検察庁がどういうふうで不起訴にしたか、私は不起訴の理由を聞いているのではない。これは検察庁に聞けばいい。私の言うのは、警察の取り調べがどういうふうになっていたかということを聞いている。検事がじかに調べたわけじゃない。警察に告発をしているから、警察はむろん検事の指揮を仰いでやったには間違いないと思いますが、警察自身も取り調べていることに間違いはないと思う。そのほかの第四回目には松江地検へ告発とこう書いてあります。これは地検がやったことだと思います。その内容をここで申し上げることも非常に長くなりますので、これはあとにしまし、まず第一段階としては警察に告発した。その受けた警察がこの事件に対して、こういうはっきりした証人が出てきている事件についてどういう取り調べ方をされたかということを一応聞いておきたい、私はこう思うのです。不起訴にするかしないかということは、これはなるほど検察庁の仕事でありまして、何も警察がタッチする必要は毛頭ないと思う。
  204. 新井裕

    ○新井政府委員 私自身ここに十分資料を持ってきておりませんけれども、今申し上げました以上、たとえば何のたれ兵衛と何のたれ兵衛を調べたというようなことを申し上げればあるいはいいのかもしれませんが、御承知のように書類は全部検察庁へ送っておりますから、どういう取り調べをしたかというのは、今調べるといっても、私の方にはそういう書類が全部ございませんので、たとえば第一回は三十五年九月二十日付で告発されまして、この問題は住民登録の問題でございます。この問題は不起訴でない——一部は不起訴でありますけれども、一部起訴されておるのでございます。従いまして、おそらくおっしゃいましたのは、三十六年になりまして四月と五月に出されたものをさしておいでになると思うのでございますが、四月二十日付で出されましたのは益田の市の民生課長と美濃の支所長が買収行為を行なったという告発が益田の警察署でなされまして、これに対しましては告発人の補充調書を作成いたしまして、そのほか関係者四十二名を取り調べをいたしまして、三十六年六月六日所轄検察庁に送付いたしたのであります。ところがこの告発事件とは別に、買収事件が発覚いたしまして、これも六月六日に検察庁に送っておるのでありますが、検察庁におきましては、このあとから告発以外に発覚した事件についてだけ処分がございまして、それ以外は不起訴処分にいたしておるのでございます。三十六年五月十八日付で益田の助役ほか市役所の職員二名を買収供応の行為があったというので、益田の警察署長に告発状が出されまして、益田警察署では告発人の補充調書をとると同時に、関係者七名を取り調べをいたしまして、これも六月六日付で検察庁へ送っております。これも門司委員の御指摘のように不起訴になっておるわけでございます。
  205. 門司亮

    ○門司委員 大体この報告書を見ますと、その通りだと思います。五月十八日に椋木助役と吉村、田原という課長を告発しておるのでありまして、従って私はこういう問題についての、検察庁が不起訴にしたかどうか、これはまた検察庁に聞くべき問題でもあろうと思います。同時にこのことは今裁判になっておりますので、おそらく裁判の過程の中でもこういうものが出てくると思いますが、警察のとった態度というものについてのもう少し詳しい資料がありましたら、一つこの際ぜひ出しておいていただきたいと思います。そう思いますことは、この事件は非常に好ましい事件じゃございません。こういう事件について、あまり好ましい事件でも何でもありませんし、それから町村の秩序といいますか、平穏といいますか、平和というような面からいけば、一人の市長選挙に対して告発があったとか、あるいは選挙無効の訴訟が行なわれるというようなことは、実際は自治体自体としては好ましい事件じゃございません。いわゆる派閥が二つ自治体の中にあって、そうして相争うということは自治体のためにならぬことでありまして、できれば自治体はきわめて平和に円満にいくことが正しいと思っておりますが、しかし事件が出ております以上は、これはいかんともしがたいのであります。住民の誤解その他を解くことのためにも、一応この事件に対する警察側のとって参りました態度等について、繰り返して申し上げますが、もう少し詳細なものの御報告を願いたいと思います。  それからその次に聞いておきたいと思いますことは、今申し上げましたように、この種の選挙については、そういう選挙無効と当選無効という二つの関係がどうしても出てきまして、選挙無効の方については主としてこれは選挙管理委員会との関係が大体関連してくるわけでありまして、当選無効の方は、むろん警察関係の方にやや犯罪関係が出てくればこれは当然当選は無効だという形が出てきますから、二つにまたがるわけであります。その点に対する自治省見解、これは今選挙制度の審議会も行なわれておりますので、いずれまた選挙改正の際にそういうことがあるいは議題になるかもしれませんが、今の法律では二つの建前になっておるものですから、結果は同じ結果になっても、これを二つ論議しないわけにはいかないので、これから私は事実に基づいて、一応いろいろなことが書いてありますので申し上げたい。  処断をいたしました人の条項をあげてみますると、項目別にして二十五、さらにその中でこまかいことを書いたのがございまして、これを区分して参りますと大体三十幾つかに理由書がなっておるのであります。だからこの一つ一つについて、ふに落ちないからといって申し上げておりますると、夜が明けるかもしれませんから、そう長くお話し申し上げることはどうかと思いますが、われわれが遺憾に考えている点等について、ごく二、三の問題を聞いておきたいと思います。  最初に聞いておきたいと思いますことは、この選挙に際して選管のとっておりまする態度は、先ほど申し上げましたように、訴願が現実に選挙無効の訴願になっておる。だから、当選が有効か無効かということには当てはまるかもしれないが、選挙無効の原因とはならないということで大体つっぱねられております。一つの例を取り上げてみましても——これを全部読むのはあるいは非常に長くなりますから省略いたしますが、特定の人が居住の関係で当然資格がなかった、無資格者が結局登録されておった。それによる一つの訴願理由が書いてあります。それに対して選管の言いわけというのはこういうことを書いております。前文は省略しますが、「益田市に対し、昭和三十五年四月三十日有効に住民登録の手続きを済まぜていることを確認した上これを受理し登録したものであって、」これは補充名簿であります。従って、こういうことが書いてあります。「偶々住所要件の実質的審査に欠けるところがあり、ために無資格者が登録されたことは適当でなかったとしても、当該選挙人名簿は有効に確定している以上選挙の効力を左右するものではない。また他にこれと同様な事実も認められない。もしかりに、選挙人名簿に虚偽の登録申請をし、詐欺投票したものがあったとしても、かかる行為は、選挙管理執行機関の管理執行に関する規定違反ではなく、それらの投票の存在は、いわゆる潜在無効投票としての当選無効の原因となることはあっても、選挙無効の原因とはならない。」こういうふうに実は書いておるのであります。従って、前段を見てみますると、どうもこれは他都市から来ておりますから、住民登録はしておるが、しかし居住関係で当然選挙権がなかったということは暗に了承しておる。しかし、そういうことがあっても、選挙の無効には関係しない、だから差しつかえないのだという答弁書がちゃんと出ている。そういうものがあったということを確認いたしておりまする以上は、これに対する自治省の処置といいますか、考え方をもしできたら一つお伺いしておきたいと思いますことと、それから、これから先ずっと私が申し上げることについて、自治省は益田の市の選挙管理委員会、あるいは島根県の選挙管理委員会に何らかの示唆をしたという——言葉は悪いかもしれませんが、連絡をされたことがあるかどうか、そういうことがございまするなら、それもあわせて一つお聞きしておきたいと思います。
  206. 松村清之

    ○松村政府委員 ただいまお話しの問題につきましては、これはやはりこの選挙管理委員会の裁決で述べておりますように、選挙無効の訴願でございますから、実態的には遺憾なことでありましょうけれども、こういうふうに裁決をせざるを得ないというのでございます。これが当選無効の訴願の方でこういう理由をあげて参りますれば、これはまた別の問題でございます。  それで、次にこの問題につきまして自治省の方で何か示唆をしたかどうかというお話でございますが、私といたしましては、選挙管理委員会の訴願の裁決というような問題は、いわば違法に関連する問題でございまして、選挙管理委員会自体が法律とその良心に従って裁決すべきでありまして、これにつきましては、示唆を与えたり、あるいは何らかの関与をするということはやってはならない、いつもそういうように選挙局の担当者に申しておるのでございます。従って、先ほど申しましたが、法律解釈の点において若干の見解は述べたことがあるかもしれませんけれども、そのほかの点におきましては何ら関与しましたことはないのでございます。
  207. 門司亮

    ○門司委員 それで、なおこの問題でもう一つ聞いておきたいと思いますことは、今秋が読み上げましたように、選管自身も「偶々住所要件の実質的審査に欠けるところがあり、」と書いてありまして、実質的審査をしなかった、ただ住民登録があったから補充名簿に登録したということになっておる。選挙法からいいますと非常にやかましいのであるが、当日多少記載されているものが間違っておろうと、おらなかろうと、一応選挙権があるというふうにきめてあるから、あとで問題が起こっても、その当時は有効だということになっておるから、おそらくそういう行使が行なわれたんじゃないかと考えます。しかし、この点について自治省自身としても、これはいいことであるという御答弁はできないと思いますが、こういう手違いがあったということだけはこの選挙の中でやはり認めて——というよりむしろ不正な行使が行なわれたものであるということだけはお認めになっても私は差しつかえないじゃないかと考えるのですが、どうですか。
  208. 松村清之

    ○松村政府委員 ここで裁決で選管が申しておりますように、実質的な審査をしておれば登録ができてなかったであろうと思いますが、その点は私もこれは工合悪いと思いますけれども、しかし、選管に当時そういう実質的な審査までも負担させるということは、これは各種選挙を通じて実際はなかなかむずかしい問題でございまして、法律の建前としては一応形式的な審査で登録しておく、こういうことになっておるのでございます。
  209. 門司亮

    ○門司委員 それでは、この問題で押し問答するのは長くなりますから次の問題に移りたいと思います。  これも一つの大きな選挙に関する問題だと思いますが、この選挙に対しましては、開票に立ち会った諸君が消しゴムと黒の鉛筆を持っておったということを選管も認めているのですね。ところが、選挙の開票事務に立ち会う人が鉛筆と消しゴムを持っておってはいけないということは選挙法には何も書いてありません。いいとか悪いとか書いてない。しかし、選挙は御承知のように、白票に個人の名前を書くというようなことを綿密にやらなくても、相手方を陥れようとすればわけはない。ちょっとバッと点を一つくっつければみんな無効になるわけです。そういう凶器にも等しい消しゴムと鉛筆を多数の人が持って開票事務に携わったということは、開票事務については大きなミスだと思うのですが、これを選管で認めて、そういう事実があったということをちゃんと裁決書に書いてある。そうだとすれば、法律に書いてないことだから、何も私は法律的な違反だとは言いませんが、しかし、選挙事務としてはきわめて不手ぎわなことで、これは十分疑いを受けるに足る問題ではないかと考えられるのでありますが、この点についての自治省見解を承っておきたいと思います。
  210. 松村清之

    ○松村政府委員 門司委員がただいまおっしゃいましたように、選挙の開票の関係者は鉛筆、消しゴム等は持つべきでない。これは法律規定にはございませんが、持つべきでないのでございまして、この裁決書によりますると、選挙管理委員会でもそういうような指示をしておったようでございます。それが何か前日の仕事の関係でそのままポケットに持っておった。それで普通の場合においては問題にもならないのでございましょうけれども、たまたま非常に対立した選挙でありましたために、他党の候補者の側に対して疑惑の念を抱かせたということは、特に今回のこの選挙の管理にあたっては遺憾なことであったと思うのです。
  211. 門司亮

    ○門司委員 そうしてこの場合の裁決書を読んでみますと、それだけでなくて、「鉛筆または消ゴムあるいは再発行に用いた入場券の余分または書き損じ分を携行していたことは容易に認めることができるとしても、」こう書いてあるのですね。選挙事務に携わる人が入場券の余りを持っておったり、それから投票の書き損じと書いてありますが、書き損じというものが選挙理事務の人の手にあるかないかということも、これは問題だと思うのです。これは投票立ち会いのときには、あるいは書き損じがあるかもしれない。しかし、それはそれとして処理をさるべきであって、開票立ち会いのときに、投票したときの書き損じがあったということになりますと、投票用紙を渡したのと投票の数とが符号しないですよ。書き損じたのがあるのですから、証拠書類がちゃんとそこにあれば、これは書き損じたのだということができますけれども、立会人側が自分で持っていたということになると、これも選挙についてはいささか私はふに落ちないものがあるのです。しかし、これらも選挙法違反とは言えない。選挙法にはそんなことは何も書いてないんですから、直ちに選挙法違反とは言えないが、その辺の事情を見るとおかしいのですね。鉛筆を持っておったり、それからここには、「入場券の余分または書き損じ分を携行していたことは容易に認めることができるとしても、」こう書いてある。どうもそういうことはあるべきことではないと私は思うのですよ。投票で書き損じたものが開票立会人のポケットに入っておったなんということは。こういうことは一体選挙管理をされておる自治庁としてはどう考えられますか。この問題は選挙法には触れないのだからそれでよろしいということでは通らぬと思うのですがね。
  212. 松村清之

    ○松村政府委員 もちろん選挙管理の上において不都合なことだとは思っております。従いまして、選挙の管理に関しましては常々十分注意するようにいたしておりまして、たとえば少なくとも年に一回くらいは模擬の投票所、開票所等を作りまして、選挙関係者に講習等もしておるような状況でございまして、法律に触れる、触れないは別としまして、常に他から不審を抱かれるようなことにつきましてはごうもないように注意いたしておるのでございますけれども、今回のこのような事実が一部にせよありましたことは、私は当事者としてまことに遺憾に思っております。
  213. 門司亮

    ○門司委員 それからその次に聞いておきたいと思いますのは、これも選挙事務の問題でございまして、選管でちゃんと認めておるのでありますが、投票用紙に対する選挙管理委員会の印の——ここでは押印の乱れという言葉を使っておりますが、判を押したのが非常に乱れておった。これは三百五十票と選管の方ではちゃんと書いておりますね。私は、投票用紙に選挙管理委員会の捺印をいたしますときに、それが上の方に押されておったりまん中の方に押されておったりするものではないと思う。しかもそれが三百五十票もあったということが書いてあります。私が言うのではなく、選管の答弁書の中に書いてあります。これはいろいろ問題がありますが、前段のことだけ読んでおきますが、「この作業の後最終点検を行ったところ更に印刷ミス(活字ズレなど)のため使用不適当と認められるもの百六十五枚を発見結局正規の投票用紙として使用可能な枚数は三万四千八百五十枚(このうち市委員会印の押印ズレと認めたもの三百五十枚を含む)となったものである。」こう書いてある。これは選管自身もお認めになっている。少なくとも選挙の際の投票用紙の選挙管理委員会の判が一番大事ですから、この判がまん中に押してあったり、上に押してあったり、横に押してあったりするようなことはないと思うのです。しかもそれが三百五十もあったというのですね。これは選管自身も認めている。一体選挙事務というものはきわめて神聖であるべきものが、いいかげんと言うと選管の諸君に怒られるかもしれませんが、きわめてずさんであったということは明らかな事実ですね。  そこで問題になりますのはこういう事実なんです。選挙用紙の配付あるいは投票に用いた用紙の枚数が書いてありますが、ずっとこの項を読んでみますると、実際は符合していないということが大体書かれているのでございますが、これらの問題について、管理されている自治省としては一体どういうふうにお考えになっておりますか。その点を一つお伺いしておきたいと思います。押印の乱れ等についてはどういうふうにお考えになっておりますか。
  214. 松村清之

    ○松村政府委員 これは他の御指摘の問題と同様に、選挙管理上まことに遺憾な事柄であると申し上げるよりほかにないのでございます。
  215. 門司亮

    ○門司委員 私は、そういう答弁だけではもうどうしようもない。それは、そういうことが間違いであったということは書いてある。しかし、それは選挙の効力に関係ないからだめだという裁決書になっているのです。ただ、問題になりますのは、そういう選挙の際に非常に不手ぎわがあったということが、結局こういう訴願事件にまで発展させたのだと実は考えておりますから、もし必要があるなら、あなたの手元にもあるでしょうが、私の手元にあるこの裁決書を全部読んでもいいですよ。そうすると全貌が幾らか明らかになってくる。  最後に私はもう一つこの項について聞いておきたいと思いますが、こういう押印の乱れがあるとか、あるいは投票用紙について結局数が合わないというようなことが一応この訴願の理由になっておるのであります。そうして、それに対する最後の項目としてこう書いてあります。「当委員会が調査した結果、各投票所あての収支及び受渡の記録は一応整備されているが、偶々選挙期日の前日八月一日第一投票所及び第三投票所に対し不足補充分として投票用紙を各一枚づつ交付した事実があるにもかかわらず、これの受渡しの記録がなされていなかった。この点市委員会事務局長青木美和及び当時本件投票用紙の交付の事務に従事した市委員会書記安達敦子並びに第一及び第三投票所各投票管理者及び事務員等の供述によって認めることができる。このように投票用紙の収支について若干の不手際があり、訴願人らをして疑惑を招来せしめたことは市委員会としては大いに反省を要する点ではあるが、その他に投票用紙を不正に使用したという証拠もない以上、この一事をもって選挙の公正が著しく阻害されたということはいえない。」こういうふうに書いてあります。これらについても、ここでは選挙管理委員会は一票であるということをいっておりますが、その以前をずっと見ますと、印刷した投票用紙と、さらに配った投票用紙というようなものの間に、いろいろな計数上の相違が出てきているようでありまして、結局投票用紙の十七枚というものが足りなかったというようなことが計数上出てくる。あるいはさらにそれをつき詰めていって、結局投票用紙の不足数というのは十二枚だというようなことまでずっと書かれております。これらの問題についても、投票用紙の配付といいますか、投票の記載についても、一票か二票かは選挙の効力について関係はないということでしりぞければそれだけでありますが、しかし問題は、そういう不正があったということはちゃんと認めているんですね、選管は。認めておって、そしてさっき申し上げましたように訴願人の単なる憶測と考えるというようなことは、この点については私はどうかと思うのです。事実を認めている以上は、やはり事実を認めたということを率直に認めて——そういうことがあったから選挙が無効だということ、あるいはほかにもそういうようなことがあったのではないかということは、むろん憶測かもしれない、しかしここに、この裁決書を見てみますと、いずれもこれを、どの項でも訴願人の憶測と考えるということで、みんな葬り去られているという事実があるのでありますが、私は、こういう点について選管はもう少し率直に、ここでは「大いに反省を要する点」というふうに書いておりますけれども、率直に事実を認めて処置することが妥当ではなかったかというふうに考えるのですが、こういう点についてどういうふうにお考えになりますか。これは全部そうなんですよ、ずっと見てみますと、必ず不手ぎわであったとか、反省を要するということがずっと書いてあるのです。これらの点について選挙局としてはどうお考えになるか、もう一度お聞きしておきたいと思います。   〔委員長退席、纐纈委員長代理着席〕
  216. 松村清之

    ○松村政府委員 県の選挙管理委員会も十分な時日を費やしまして詳細な調査をいたした結果、そういう事実を認めておるのでございましょうから、これは一応この段階では選挙管理委員会見解に従わざるを得ないと思います。それらの事件を含めまして、今この事件は広島高裁に審理中でございますから、裁判の過程において選挙管理委員会の認めておるところが間違いでありますれば、そういうことは追って明らかになるだろうと思います。現段階では選挙管理委員会の裁決について一応認めておかなければならないだろうと思います。
  217. 門司亮

    ○門司委員 それからもう一つは不在投票の問題でありますが、不在投票について高島という一つの島でありますが、この島の選挙民五十七人中四十五人が当日不在投票を行なったと書いてありますが、島で何か出漁の関係で全部当日そこにいられないので不在投票にすることにしたといっている。そのときに、一つは不在投票の用紙を人間の倍持って行ったというのですね。それからもう一つは、島民でない者が選挙の立会人に指定された。選管については、島民でなければならないという規定がないから当然益田市の市民であればよいのだということが書いてあるのです。しかし、常識では、不在投票を済ます場合の立会人をおか——と言うと少し語弊がありますが、ほかから連れていって、島の人に立会いをさせなかったという——させなかったという言葉は悪いかと思いますが、しかし事実上そういうことが履行されなかったということは、どう考えても——選挙違反にはならないかもしれませんけれども、当該選挙区の有権者であれば立会人に指定することは自由投票の場合は自由ですから、これはやれるかもしれません。しかし常識的に考えて、離れた島の人で、ある意味においては、投票に来る方が本人であるかないかというようなことも実証できるような建前をとることが、私は選挙の立ち会いについては必要だと思うのですね。そのことのために選挙管理委員会で立会人を指定いたします場合には、できるだけ地方の名士というか、あるいは比較的顔の広いと申しますか、そういう方を、間違いのないように指名しているのが常識だと思う。ところがこの場合は、全然島の人でない、土地に関係のない人をほかから連れていって、法に違反しないからこれでよろしいんだという断わり書きが書いてある。こういうことも、私は選挙の常識からいえば危険だと思う。そのことのために不正があったかなかったかということは、事実認定に基づきますからわかりません。しかし、選挙の不手ぎわだったということだけは確かに言えると思うのです。こういうことが、法に触れないからそれでよろしいんだということを裁決書に書いてありますが、これでいいかどうかということです。局長は、この点どうお考えになりますか。これはほんとうにべらぼうなことだと思いますよ。実際は選挙人名簿に登録してあるから、立会人はどこの人であろうとよろしいんだという理屈が立つんなら、選挙を立会人にまかせるわけにいかなくなりはしませんか。選挙立会人の仕事は、やはり公正に選挙を行なうということが一つと、もう一つの問題は、できるだけ不正のないように公平な人を選ぶということですね。片寄った人でなくて、やはり公平な人を選ぶという形がほんとうにとられなければならない。そうすれば、やはり地理的にも人間的にも地方の実情に明るい公平な人を選ぶということがよろしいと思う。機械的によそから連れていった者が一番安全かもしれない。因果関係がないかもしれません。しかし、土地の事情にきわめて暗いということは間違いない。これも常識上から判断してみれば、私はおかしなものだと思うのです。それについても、もし御意見があったらこの際聞いておきたいと思います。
  218. 松村清之

    ○松村政府委員 投票用紙をたくさん持っていったり、地元の人でない人を立会人に連れていったり、どういう事情であったか、その辺は私どももつまびらかにいたしておらないのでございますが、こういうことは、確かに選挙管理の上で、法規には触れないにいたし律しても、他人の誤解を招く点においてまことに遺憾な事柄であると思います。
  219. 門司亮

    ○門司委員 委員長、どうですか、あともう少しありますが、これをやっているともっと時間がかかりますが、まだやりますか。——ぜひ選挙関係で聞いておきませんと、二重投票があったり、入場券が二重に配付されたりなんかしているのですね。みな選管が認めているのですよ、こういうものがあったということを。実情を見てみると実にむちゃくちゃなんです。そういう問題でほんとうにここで明らかにして、全国で再びこういうことのないようにしておきたいと思う。選挙は何でもやりさえすればよろしいんだ、あとは訴訟に持っていこうとどうしようとかまわぬのだということになっては困ると思うのです。選管自身が認めている。遺憾であるが、とみんな書いて、当選無効にはならないと書いてある。これはむちゃくちゃですよ。こういうのはある程度、いい悪いは別にして、明らかにしておいて、そうして再びこういうことのないようにしてもらいたいと思うのです。この事件はむろん裁判になっていますから、裁判の結果を待たなければいい悪いは言えないので、これにどうこう言うつもりはありませんけれども、それも一方的な書類ならこんなことは言やしませんけれども、選管の書いた裁決書にちゃんと書いてある。二重投票があったとか、あるいは入場券を一人に二枚ずつ配ったというようなことは、その事実があったということをみんな書いてあるんです。だからそれを——他の問題についても一応警告ということになろうと思いますが、委員長にお伺いしておきますけれども、ほかの機会にこういう機会を与えられるならば、私は、きょうはあまり長くなりますから……。
  220. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 それでは、きょうは大へん時間も長くなりましたし、またあとの理事会で一つ協議しまして、別の機会に残った分をやっていただきましょう。
  221. 門司亮

    ○門司委員 そういう了解で、きょうは一応これで終わります。
  222. 纐纈彌三

    ○纐纈委員長代理 それでは、本日はこれにて散会いたします。    午後六時一分散会