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1961-10-24 第39回国会 衆議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年十月二十四日(火曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 早稻田柳右エ門君    理事 内田 常雄君 理事 岡本  茂君    理事 板川 正吾君 理事 田中 武夫君    理事 松平 忠久君       浦野 幸男君    小沢 辰男君       海部 俊樹君    神田  博君       齋藤 憲三君    始関 伊平君       首藤 新八君    白浜 仁吉君       田中 榮一君    田中 龍夫君       中垣 國男君    中川 俊思君       野田 武夫君    林   博君       原田  憲君    南  好雄君       山手 滿男君    岡田 利春君       加藤 清二君    久保田 豊君       小林 ちづ君    中村 重光君       西村 力弥君    大矢 省三君  出席国務大臣         通商産業大臣  佐藤 榮作君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         経済企画政務次         官       菅  太郎君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  曾田  忠君         通商産業政務次         官       森   清君         通商産業事務官         (大臣官房長) 塚本 敏夫君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         自治政務次官  大上  司君  委員外出席者         議     員 松平 忠久君         通商産業事務官         (繊維局長)  松村 敬一君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      大村 襄治君         自治事務官         (財政局財政課         長)      松島 五郎君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 十月二十日  商店街組合法案松平忠久君外二十八名提出、  衆法第一三号) 同月二十三日  低開発地域工業開発促進に伴う川薩工業地帯  の実現に関する請願池田清志紹介)(第七  七〇号)  鉱業法の一部改正等に関する請願楢崎弥之助  君紹介)(第八五三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  商店街組合法案松平忠久君外二十  八名提出衆法第一三号)  輸出入取引法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二八号)  低開発地域工業開発促進法案内閣  提出第六号)      ————◇—————
  2. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 これより会議を開きます。  まず参考人出頭要求に関する件についてお諮りをいたします。  中小企業に関する問題の調査のため、来たる二十六日木曜日午前十時より参考人として商工組合中央金庫理事長北野重雄君の出席を願い、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。さよう決定します。  なお出頭手続等委員長に御一任を願います。      ————◇—————
  4. 早稻田柳右エ門

  5. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 まず提案者より趣旨説明を聴取することにいたします。松平忠久君。
  6. 松平忠久

    松平議員 ただいま議題となりました商店街組合法案につきまして、日本社会党を代表して、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  近年、百貨店、スーパーマーケットなど大資本による商業部門への進出支配は顕著となり、このため一般小売商業者経営はきわめて困難な状態に陥っております。しかし、消費者との利害関係を考慮するとき、単に大資本による進出支配を排撃するだけでは、今日、一般小売商業者経営難を打開する適切な道とはいえません。大資本による不当な進出や不公正な取引行為を規制することはもとより必要ではありますが、他方で一般小売商業者経営自体を近代化し、消費者に魅力ある水準までに引き上げる積極的な措置がとられなければならないと考えます。  しかるに現状では、かかる一般小売商業を積極的に振興する国の措置には、全く見るべきものがなく、常に法律上または行政上の助成措置のらち外に放置されたままであります。協同組合等中小企業のための組織を通じて若干の助成が行なわれてはいますが、今日の段階では協同組合法団体組織法等現行組織関係法現実の事態にそぐわず、その組織率はきわめて微々たるものであります。さらにそれら法律に基づく組合も、大半は睡眠状態にあることは、すでに政府調査によって明白であります。そして現実には、法律に基づかない任意団体としての組織が、必要に応じて無数に形成されているのであります。一般小売商業部門を見ましても、いわゆる商店街は全国で約二万に達しておりますが、そのうち法律に基づく組織はわずかにその数%にしかすぎません。これら大多数の任意組織たる商店街は、法人格を持たないがために、国の法律上または行政上の助成を全く受けていないのであります。  この矛盾は、これら任意団体現行組織関係法に基づく組織に転換せしめる方法によっては解決することはできません。むしろ、現行法欠陥がこれら商店街任意団体にとどめているのでありますから、逆に現行組織関係法の是正が必要なのであります。この意味において、必要な組織として、自主的に結成されている既存商店街を、そのまま法律上の組織として認め、これにあらゆる国の助成措置を及ぼしていくことが、最も現実的な、適切な施策と考えられるのであります。かくして、既存商店街事業を近代化し、その協同化を促進することによって、初めて大資本を背景とする商業活動に対抗し得るものと信ずるものであります。また同時にかかる措置の中でこそ、その従業員に対する福利厚生活動も成果をおさめることができるのであり、今日の求人難に対する打開策を発見し得るものと考えるのであります。  これが本法律案提出する理由であります。  次にそのおもなる内容を御説明いたします。  その第一は、商店街組合は、従業員三十人以下の小売商業者組合員として組織されるものであり、組合員五十人以上をもって、市、町、村並びに特別区に設立することができるのであります。ただし、組合員の三分の二以上の同意があれば、従業員三十人以上の事業者をも組合員とする道を開いているのであります。これらの単位組織のほかに連合会組織を認めていることはいうまでもありません。もちろん、加入脱退はあくまで自由であります。そして、従来の組織関係法欠陥である設立要件並びに手続の複雑な点を是正して、これを簡易化し、既存商店街をそのまま本法案の対象としてとらえ、これに法人格を与えることといたしているのであります。  第二に、商店街組合事業といたしまして、共同店舗街路灯、アーケードなどの共同施設資金の借り入れ、商品切手発行等共同経済事業や、組合員並び従業員のための福利厚生に関する事業などとともに、休日、開閉店時間や従業員労働条件の改善に関する調整事業をもあわせて行ない得ることにいたしているのであります。そして、特にその調整事業が有効に実施されるために、当該地域内の商店に対して、一般的拘束力を持たしめ、これに違反するものに国が従う旨の勧告を出し得ることといたしたのであります。  第三に、商店街の振興をはかるため、商店街組合に対する国の助成措置を義務づけ、なかんずく、商店街街路灯に対する電気料金特別減免商店街組合運営のための事務費補助、商工中金に別ワク資金の設置など、緊要な措置を講ぜしめることといたしているのであります。  以上が本法律案提出いたしました理由及び内容概要であります。何とぞ、慎重に御審議の上、すみやかに御賛成下さるようお願い申し上げます。
  7. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  8. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 次に輸出入取引法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。質疑を続行いたします。久保田君。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私はこの前もお断わりした通り全くしろうとですからしろうと論の御質問をしますが、一つばかにせずに親切に教えていただきたい、こう思いますので、どうかその点御了承いただきたいと思います。  一番最初にお伺いしたいのは、自民党政調会長田中さんが二十三日の新潟談話におきまして、次年度において貿易省を設置する、さらに中小企業省を新しく作るということを談話として発表されておりますが、これは政府の方としても、もうすでにお考えになっておることか、あるいは決定されておることか。もう一つは時間の節約上申しますが、これは何をねらいにしたものか、こういう点を最初に、はっきりお答えをいただきたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 政調会長がただいまのような発言をしたというようなことは、ただいま私初めて伺うのでございまして、かねてから中小企業省を作れ、あるいは動力関係動力省を作れ、あるいはただいま御指摘になります貿易省を作れ、いろいろの議論はございます。私どもに対しましても中小企業が、特に重点を置いての政策であるべきであって、これがどうも一外局では十分の仕事がやれないのではないか、そのためには行政機構を整備する必要がある。同様の理由エネルギー対策につき、あるいは輸出貿易につき、ただいまのようなお話がございます。全然ないわけではないのでありまして、しかして私自身はどういう気持でいるのかと申しますと、機構拡大ということはよくよく検討してやらないといかぬ、これは慎重を期すべき問題のように思う。そうでなくても行政機構はともすると膨大になりがちでありますし、そのことがむしろ逆に事務を渋滞させ、いわゆる官僚化と申しますか、そういう危険がある、繁文褥礼に流れる、こういうことは避けなければならない、かように実は思っておりますので、政府自身でそこまで決意したわけじゃございませんが、当然諸政策がおくれておりますと、責任の所在を明確にして、そこを中心にしてその仕事を処理させよう、こういう意見があります。その意見がただいま政調会検討しておる問題だろう、かように私は理解します。しからば政府はどう考えるかと言われると、先ほど申しますように政府自体としても慎重に扱わなければならない問題だ、こういうように考えます。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その点に関連いたしまして、最近特に日本産業構造ないしは経済構造が相当大きく変化をしてきておりますし、同時にまた今後なお変化を明確にしなければならぬという点もありましょう。また同時に日本を取り巻く国際的な経済情勢も、これからは相当急変しようと思う。従って従来の機構そのままでいいとはだれも考えません。これはすべてを総合して、ほんとうに合理的なしかも能率的な運営のできるような機構を作るということは必要だと思います。しかし今お話しのように、下手にするとこれが官庁のなわ張り争いになって、かえって事務を停滞させる、あるいは官僚主義を助長する、あるいはいたずらに官吏の機構膨大にして、民間の創意あるいは活動というものを抑制するという弊害が非常に出てくるのです。特に今日ではその弊害の心配の方が大きくはないか、こう思われるわけであります。ですからこれは自民党さんの方でも慎重に御検討いただくことはけっこうでありますが、政府としてはなお一段と十分に検討をされることを望むわけであります。  しかしもう一度この点についてお伺いをいたしますが、すでに政府はこの点の検討に着手し、来年からそういう機構の改編をすでに準備されているのですか、この点はどうなんですか。
  12. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま御指摘通り政府は慎重でなければならぬと思います。ところで私通産省に参りまして、通産省行政事務全般にわたって見ますると、まことにこの役所はまとまりの悪い役所でございます。私自身さように感じますので、おそらく商工委員会皆様方もずいぶんへんな役所のようにお考えだろうと思います。そういう意味から通産省内部でいろいろな議論もあります。ありますが、これが動き出す程度までにはいずれも実が入っておりません。ことに私自身がただいま申し上げますように通産省で、今日大事な仕事はすぐわかるのでございますから、そういう点を大臣あるいは次官というものが中心になって責任をもって処理しよう、かように取り組んでおりますので、機構自身とは切り離してしかるべきだ、かように思っております。まだ具体的に中小企業省を作るというような話は省内ではございません。しかし一部軽い意味の研究的な意見は、発言のあったことは否定はいたしません。私自身予算要求までする段階ではもちろんございません。それだけは明確にお答えしたいと思います。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それでは最近の経済情勢なり政府政策について、要点だけお聞きをいたしたいと思います。  今度の総合景気調整政策といいますか、これによって一応政府の当面の段階に処しますいわゆる引き締め政策、こういうものは一応出尽くしたという一応の段階だと思います。その要点は要するに内需引き締めて輸入を押え輸出を伸ばして、その結果国際収支の赤字の解消の状況をできるだけ早く作るということに帰すると思います。そこで内需引き締めの問題について、通産省管轄、特に佐藤さんの管轄の問題について、二、三私はお尋ねしてみたいと思うのであります。  その一つは、言うまでもなく内需引き締め重点は、設備投資の一〇%引き下げということだと思うのであります。これがなかなか実際には私はむずかしいのじゃないかと思うのであります。特に当面の段階で、私どもしろうとが見ておりましてよくわからない点があります。それは、第一の点はこういう点であります。内需の一〇%引き下げというか、それはすでに始められております。設備投資の支払いの繰り延べをすることも一つでしょう。同時に、工事の繰り延べをすることも一つ方法として考えられる。それからさらに、新規の着工を繰り延べるというようなことも一つでありましょう。しかしながら、これらの点だけでは問題の解決にはならぬと思うのであります。池田内閣としては、一番強く反省をしなければならぬ点は、例の十カ年の長期計画所得倍増計画というものが出まして以来、各大企業動向を見ますと、大体十カ年を見通した企業ごと長期計画というものが、ほとんど立っておるようであります。しかも、これは非常に膨大なものであります。しかも、その基礎というのは、政府のいわゆる十カ年計画というもの、これを、無批判ではありますまい。実際の企業運営する人としては、無批判にできるわけはありませんから、実勢的にある程度はやっておりましょうけれども、しかし、これは結局過去三年間あるいは二年間の実績の延長ということが、やはり基本の性格になっておると私は思うのであります。ところで私は今後の、これはなかなかわからないことでありますが、内外情勢なり、世界経済動向なり、国内経済動向というものは、そう単純な、いわゆる算術計算的な引き延ばしの上に、簡単にはいかないのじゃないか。特にこの間には、相当大きな根本基調変化というものを、まだはっきりわかりませんけれども、見る必要がある。しかもそれなくして、いわゆる過去の二年ないし三年の実績の上に、あるいはもっといえば、戦後の特異な状況の中で行なわれた高度成長の、いわゆる実績を延長するという、この基礎の上に立った政府長期計画、それをまた一つの土台にしたところの各企業長期計画というものの第一着手として、今それぞれ企業設備投資計画をやっておるわけであります。ですから一番基本は、政府としては、この各企業のいわゆる長期計画なるもの、それを政府は今現に持っており、また池田さんは盛んに、当面の段階は行き過ぎであって、根本の十カ年計画倍増計画は変えないと言っておりますが、私は今ここで変えると言ったら、政策変更になるとかならぬとか、そういう言葉の上でのつまらないことではなくて、私はやはりこの点を根本的に、企業政府とも反省をする必要があるのじゃないか。こういう点で繰り延べ、あるいは一〇%削減々々と言いますが、へたをしますと、当面の段階糊塗策になってしまうという危険が非常に私はあると思う。この点は佐藤さんとしてはどうお考えになっておるのか、現にとっておる諸方策はどうかという点が一点であります。  今の問題と連関をいたしまして、第二の問題は、はたして企業設備投資抑制ということが、合理的に行なわれるのかどうかという点が非常に危険であります。あらゆる点で、むしろアンバランスが大きくなるのではないかということであります。これは自民党野田さんでしたかの予算委員会質問に対して、総理がお答えになっている。それはどういうことを言われておるかというと、設備投資といっても、一がいにこれを全部パーでもって平均的に扱うのじゃないのだ。つまり、自由化に対処するための合理化投資というような設備投資は、全面的に助長していくのだ。それから基本的に需要が増して、これに見合っていくものも押えはしない。ただし、各企業のいわゆる営業シェアといいますか、シェア拡大するというだけのものは、これは十分にきびしく押えていくのだ、こういうお話で、これは非常に合理的であります。私ども、ほかの点では池田さんの意見には不賛成な点がありますけれども、この点については、考え方自体は賛成であります。ところで問題は、はたして今の、特に大企業設備投資が、こういうふうに三つのカテゴリーにはっきり分類ができるかというと、私はむずかしいと思う。今や行なわれております大部分のものは、この三つの要素をそれぞれ持っておりますが、企業自体設備投資根本の流れは何かといいますと、これはすべてシェア拡大ということをねらったものが大部分であります。こういう点をどういうふうに区分けをされて、あなたの方では、いわゆる銀行なり、あなたの方の行政指導なりで扱いをされておるかという点であります。特にこの点に連関して具体的に問題になる点は、私は三つあると思う。  その一つは何かといいますと、いわゆる鉄鋼石炭化学工業、こういった点で行なわれているような、極度の新技術を中心とする過当競争過当投資、これははっきり過当な、あるいは非常なむだな二重投資が行なわれております。しかもこれは、日本のこれからの花形産業であります。そして力も一番強い。こういうものを現実にどういうふうにあなたは押えていかれるつもりかという点が一点であります。  それから第二点はどうかというと、各企業は今、将来の不況その他に備えるために、御承知通り経営多様化ということをやっております。多様化投資というものが、私は相当よけいになっておるのじゃないかと思います。特に、最近ではこの傾向がひどい。ちょっといいものがあれば、各企業が全部、だっとこれに食らいついていって、そして一つときたっと、いわゆる優勝劣敗ということになる。たとえば、私は今まで農業関係を担当しておりましたが、いわゆる農業基本法などに連関いたしまして、御承知通り水産資本丘上がりをして、食肉加工くらいならまだよろしゅうございますが、豚を飼ったり、鶏を飼っている。ところが水産だけじゃなく、今度御承知通り貿易商社がこの方に出てくる。最近におきましては、薬屋資本あるいはその他いろいろの大資本が、この弱い農業面に、特にこれからの選択拡大方向へも、ぐんぐん出てきている。これは企業としては、不況が来た場合の危険分散として私は必要かと思います。しかし、これを国民経済的に見ますと、これはめちゃくちゃであります。いわゆるこういう面に対する設備投資を、どうさばこうとされておるのかという点が第二点であります。  第三点は、御承知の石油や鉄鋼その他を通ずる、いわゆるコンビナート投資であります。これも今新しい花形であります。しかし、これも実態がつかめませんので、今のところしろうとなりの推測でありますが、これも私はある意味においての過剰投資になり、またある意味での独占力を非常に強くする、国民経済的には、プラスの面もありますが、マイナスの面も相当あるのじゃないかという点が考えられるわけであります。このコンビナート投資に対して、どういう態度をとられるかということも、当面の設備投資というか、あるいは日本のこれからの工業力を発展させていく合理的な方向としては、重要な問題だと私は思う。これに対しまする政府の方針は、ほとんど今まで明らかにされておらないように思うのであります。そういうことと連関いたしまして、今度の国会にも出ておりますが、つまり産業地方分散といいますか、こういう問題が、所得均衡化という点から出ております。しかし、これはそういうことと連関して、既設の投資が行き詰まっている。同時に新規のものをやるというても、簡単に所得論や何かでは私は片のつかぬ問題ではないかと思う。そういう点で、たとえば道路の関係や、港湾の関係や、あるいは船舶の関係その他いろいろな点でアンバランスがひどくなる傾向を非常に持っております。しかもこれは今のような構想でいけば、地方の未開発地域の連中の全般的な幸福とか、あるいは生活の安定向上には必ずしも寄与いたしません。詳しいことは、私はその法案が出たときに実例をもってお話ししたいと思いますが、今の状況からいいまして、こういう点でアンバランスがこれからうんとひどくなる。こういう点については設備投資削減なり抑圧の中で合理化していくほかにはない。この点を通産省としては当面の担当者としてどういうふうにお考えになっておるのか。ただ単に一〇%なり五%なり押えるのだといってみたところで、私はこれは意味が少ないことではないかと思う。下手な押え方をすれば、これはなお問題が将来に大きく引き延ばされる危険性があると思うのであります。まずこの二点をお伺いいたしたいと思います。
  14. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいま久保田さんからしろうとだがと前置きされてお尋ねになりました。また御意見もつけて御質問でございますが、実は私どもが苦心し苦労しておるもの全部にわたったお尋ねでございます。結論から申せば、当面いたしております私ども設備投資抑圧、これがただいま御指摘になりましたような点に支障がないようにという考え方でございます。少し詳しく説明してみますと、最初七月に産業合理化審議会設備投資抑制考えました。そうして一割縮減をしよう。そのときのデーターになります数字は、十分のものがなかったかもわからないと思いますが、大体通産省関係設備投資としては一兆八千億程度が予想されておった。これの一割減というところで一兆六千五百億、こういう計画を立てたのであります。これはペーパー・プランでございますから、そういう計画が必ず立つわけであります。一兆六千五百億、こういう数字を立てた。ところで、その一割縮減を指導し発表した後のその後の見通しを今度立ててみますと、なかなか一兆六千五百億にならない。どうも一兆六千九百億か一兆七千億程度になるのではないか。これでは総体の産業構造から見ていわゆる設備抑圧の効果を生じない、こういうことでございますので、今度はさらに合理化審議会の議にも諮りましたが、同時に各業種について個々に相談をいたしまして、そうして個々の業界からの申し出とそれに対する当方の行政指導というものとあわせて、ただいま私ども通産省関係で予想する金額は大体一兆六千億前後、だからその一兆六千五百億よりさらに五百億削った金額を一応の目標にいたしております。その場合に問題になりますのが、ただいまそういう切り方をすれば合理化について不都合を来たさない、貿易の自由化に備える対策として必要なものはまかなえる、あるいは市場のシェア獲得というような点は、こういうことで過当競争の防止が可能か、こういうこともいろいろの見方をいたしました。まず切りました際は、生産に直接影響のあるものは最後の段階に残す、生地に直接関係のないものでいろいろあるのではないか。工場を作る場合において同時に本社の建設等を必ずやっておりますし、あるいはこの際に相当膨大な土地の手当をしたいというようなこともありますし、そういう点も将来のことを考えると必要には違いございませんが、背に腹はかえられないと申しますか、急場の問題としてはできるだけそれを押えていただく、あるいは厚生施設等、これは生産に関係のあるものでありますが、幾分か時期を延ばしていただくことは可能じゃないか。その辺は一つよく相談していただきたい、こういうような考え方で業界の自主的な相談をまとめ上げたのでございます。  今御指摘になりますように、設備投資という事柄を今やりかけておる事業、その工場自身を九割で切るとか、こういうことのできないことはよく承知いたしておりますので、金の使い方でただいま申し上げるようなことがあるのじゃないか、あるいはまた工事の進行工合等で、工事にかかる時期をやや引き延ばすとか、こういうような方法もあるだろう。しかし、でき上がったものについて支払いを延ばすというようなことは最も拙劣な策だから、それは一つ避けてくれ、こういうような意味で、各関係業界との相談を緊密にいたしたのであります。そういう場合に、ただいま御指摘になります鉄鋼だとかあるいは石油だとか、こういうような産業についてはいの一番に実は相談を持ちかけたのであります。ことに鉄鋼自身にしてもまた石油にしてもエネルギー源としての、これは双方とも基礎産業でございますから、将来のことを考えますと、いたずらに生産力を抑圧することは、所得倍増計画にも支障を来たすおそれなしとしないということを考えますから、ただいまのような点を避けまして、いろいろ相談を持ちかけて参りました。具体的に申しますれば、たとえば溶鉱炉などにいたしましても、あるいは平炉等の定期検査その他等がございますが、場合によりましたら、そういう事柄を状況等を勘案して少し期間的に延ばすことも可能じゃないか。そうして生産を下げないでただいま申し上げる所要の設備を遂行していく、こういうことを一つやろうじゃないか、あるいはまたお互いが得意の業種があるのだから、その得意の業種を伸ばすことについてはわれわれもできるだけ力をかすけれども、いたずらに経営多様化することは鉄鋼業自体においても十分慎んでいただきたい。そういうことでないと、ここらに過当投資の競争が始まる、こういうようなことで、業界との懇談は、よほど内容に立ち至ってのお話をいたしたのであります。しかし、もちろん大臣と社長ではそういう事柄は要領を得ないのでありますから、さらに事務担当の重役と事務当局との間で折衝を遂げていく、そういうことでただいまのところ、先ほど申しました一兆六千億程度押える協力を得て参ったのであります。非常に困難なことである。ペー・プランで縮減計画は立ちますけれども、これを実地に行ないます場合に非常に困難がある。ことに各会社とも工事を始めた時期が同一ではございませんから、スタート・ラインに立っておるのがそれぞれ違っておりますから、そうすると今までやったものはいいけれども、おくれたものはばかを見る、こういうことがあったり、あるいはまた正直に政府の指示に従って協力をした、どこかでその政府の指示を了承しないで勝手なことをする、いわゆる正直者がばかを見るような結果になりはしないか、こういう事柄も業界から忌憚なく指摘されております。そういうことにならないようにというので、まず、全部の業界を集めて話をしますが、さらに事務当局同士で話をしますが、その前には業界自身の自主的な相談によりましてお互いが抑制し合う、そして業界自身政府に対してこういうようにするという案を持ってくるというような指導をいたさせたのでありまして、その点は比較的円滑に参ったのではないか、かように実は思っております。しかしもちろん一回や二回の会合だけで、複雑な経済界の問題が簡単に片づくとは思いませんから、通産省としてはあらゆる機会に業界と緊密な連携をとりまして進めていくということを、今日も怠らないつもりでございます。ただいま仰せになりました経営多様化の問題なども、この意味においては私どもが非常に気をつけなければならない。ことにこれが商社関係においてしばしば露骨に出て参っておるのであります。だから商社の本来の性格から見まして、とにかく貿易に重点を置いてもらいたい、どうも国内の卸の問屋筋と同じような仕事をしたり、同時に商社でありますから問屋、小売と両方の関係をやられては実は困るのだから、なるべく貿易関係重点を置くように商社にもいろいろ指導しております。ことに最近は商社が土地を所有し、生産業者と関連を持ち、非常に各方面に手を出しておるように思います。ただいま久保田さんが御指摘になります農業部門あるいは養鶏、養豚あるいは卵の加工とか、いろいろ問題が起きておるようでございますから、今の自由経済のもとで利潤を追うことはけっこうだけれども、こういう際にはとにかく慎んでもらいたい、こういうことを実は申しております。これは十分効果が上がったとは申しません。しかし少なくとも商社が貿易の方に重点を置くように指向されつつある、かようには私自身は看取しておりますが、まだまだ今まで手広くやっておりますだけに、これはそう簡単なものではないと思います。  それから石油コンビナートの問題、これは最近の一つの新しい形態の産業でございまして、これは通産省で認可して参る事業でございますし、すでに計画されておるものは、それぞれの分野で進んでおるのでございますから、先ほど申しますように生産自身には関係のないような方法で協力をしていただきたいということを実は強く要望しております。ただこれから計画するもの等についてはその取りかかりの時期がおくれることはやむを得ないのじゃないか、そういう意味で業界の指導をしたいと思います。過去の石油関係はコンビナートといわず、精製業等も同様でありますが、しばしば規模の小さなものを数多く許しておく、そして外貨割当の面で生産を通じてそれを指導し、抑制しておるというような形をとっておりますが、この事柄は石油業界など一そう弱体化し、お互いを競争へかり立てている、こういうまずい点があるように思いますので、今後の問題といたしまして、石油精製業そのものの指導には、ただいま申し上げるような過当競争を避けるような意味で、業界の指導が可能じゃないだろうか、こういう意味でしばしば業界とお話をしております。この点は、石油業がただいまはもうかっておりませんけれども花形産業でありますだけに、精油業界の調整はまことに困難で、これは通産省なりわれわれがよほどしっかりしていかないと過当競争になり、国内重油はもちろんのこと、外国資本に押しまくられる危険が多分にある、かように思います。これは石油精製です。また石油コンビナートの方はただいま申し上げますように、今後の問題としては合繊あるいは化繊等の衣料企業との関係も十分勘案し、新しいものについての考え方はこれは慎重に扱わざるを得ないというのが現状であります。しかし石油コンビナートが持つ化学産業としての意義は高く評価されなければならないと思います。私どもは今後は特にこの方面は伸ばすつもりでございますが、ただいまちょっと時期的には足踏み、こういうことにならざるを得ないのではないか、かように思います。  それからいろいろ基本的な問題といたしまして、本来の所得倍増計画にどういう影響を来たすかということでありますが、私はこれは短期的に見る必要はない、かように思いますのでその支障はない。ただいまのように生産力を押えることはできるだけあと回しだということを考えますならば、投資されましたものが生産力として残ることになりますので、必ず他日の経済の発展には役立つ、かようにしたいものだというようにも思いますし、そういう意味では所得倍増計画本来にはこれは問題を起こさないだろうと思います。ただ今言われます地方分散地方産業開発との関係、こういう点から先行しておるものはともかく、おくれておるものは時期的に時期があと回しになる、こういう焦燥感が一つあると思います。また今回の設備抑制の場合において、先ほどは港湾等をあげられましたが、港湾だとか電力だとかあるいは交通の問題だとか、こういう基礎産業の面を押えることは、経済に大へんなアンバランスを生ずることになりますので、設備抑制に際しましての各産業の持つ意義を十分勘案して、バランスのとれた抑制方法をとる、これはもう根本でなければならぬと思います。ただ理屈はわかっておりましても、現実の問題として御指摘になりました点のような間違いが起こらないようにする、また私が先ほど来次々に申し上げておりますような困難さをどれだけ現実の問題で克服できるか、ここに全部がかかってくるのではないか、かように思います。そういう場合に一体どうするのか、これは私どもの建前とすれば、業界の自主性を尊重する、そういう意味において業界との連携を一そう緊密にしてやる、絶えず業界との話をつけて進めていく、これ以外にはないのだ、業界も最近はよほど組織も強化されておりますから、先ほど来申しますような基礎産業部門に考えられる業種は、組織もよほど強化されておりますから、自主的な話し合いも非常に進みやすいようであります。たとえばセメントなどは、みずからが輸出をするという意味で各社とも輸出振興のために調整金を積み立てて、そして責任輸出トン数をきめる、あるいは鉄鋼もまた輸出量を自主的にきめておる、それぞれそういう団体も強化されておりますので、そういうことを通じまして実際の面でできるだけこれは万全を期すると言いたいのですけれども現実にはなかなかそうは言い切れません。できるだけ間違いが起こらないように、支障がないように円滑にこの大事業、大難事を遂行したい、かように考えております。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 今大へん親切なお答えをいただきましてありがとうございました。どうもまだ私としては食い足りませんが、しかし時間の関係もありますし、なお突っ込んだ点は次に機会がありますれば御意見を承りたいと思います。  なおそれに連関をいたしましてやはり問題になりますのは、私ども見ておりまして、なるほど通産省所管の千五百四十九ですか、これについてはかなりいろいろお話し合いをされているようです。ところが通産省所管以外の農林省だとかあるいは厚生省だとかその他の方の所管の企業特に大企業、こういうものの方は案外通産省も力を入れていないのではないか。各省の大臣もあまり力を入れていないのじゃないかというふうに実は考えられるのであります。これは実力者のあなたもおられることでありますから、こんなところに抜かりはないと思いますけれども、通産大臣だけあるいは企画庁の長官だけが一生懸命やって、いろいろのほかの関係からほかの人は割合冷淡な態度をとっているということでは、むしろそういう面の影響を受ける他省所管のこういう大企業の方の設備投資の影響の問題にしましても何の問題にしましても、要するにその方から受ける国民の弱い層、この影響の方が強いのであります。ですからこの点はなお一つ十分に御相談をいただきまして、各省大臣ともに足並みをそろえてやるように、この上とも御努力をいただきたいと思うのであります。  この問題についてはいろいろありますが、なお二点だけ私はお伺いしておきたい。  一つは、いわゆる資金調達面で最近、特にことしになってから外資導入ということ、特にアメリカからの資本導入ということが非常に多くなっておるようであります。せんだって大蔵省の発表したところによりますと、ことしのいろいろの外資導入については、技術の導入においても大体において前年度の申請数から見ると、上期のものだけを見ても前年度に比べては二四%くらいふえておる。それから外資ローンは計画が三億一千一百万ドル、全部上がるかどうかわかりませんけれども。それから株式取得が三十五年度の六千八百万ドルに対して三十六年の四−六の間だけで四千八百万ドルに計画が上がっておる。あるいは民間会社の外債発行が七千四百八十万ドル。総合しますと五億何がしという相当大きな額になるわけであります。せんだっての新聞で見ますと、そのうちの前期の分として一億八千万ドルだけがまとまったんだ、だから後期に相当持ち越すということになります。これは一面から見れば、要するにドルの不足を補ない、一面から見れば国内の設備投資企業の立場から順調にやるという点では便利であろう、ということだと思うのです。しかしこういうふうにして特に対米貿易面の、つまりアンバランスの是正が今必要なときに、しかも大勢はアメリカ側から日本への輸入のおつき合いはやるけれども日本輸出については拒否的とは言いませんけれども、いろいろの制限をやっておるというときに、一面において大資本資本導入をどんどんやるということは、つまり貿易面での調整、特に日本側が強い主張を出す場合に一つの大きな牽制材料になると思うのであります。これは今度のアメリカとの日米合同会議でいろいろお話になるでしょうが、この点についての貿易面の是正は主張され、理解を深められるでしょうが、やはり貿易のごとき問題は最後には、こっちが意図すればこうやるぞというきめ手がなければ、なかなか向こうも承知はしないと思います。話し合いだけして了解をして何とかうまくやってくれという程度のことでは、向こうは向こうの事情があって追い詰められているのですから、そう簡単に、いかに日本といえども話し合いだけでオーケーということは、今まで現実にいっておらぬのであります。今後はますますその危険性が多いと思う。従ってやはり日本側の態度としては、アメリカがこっちの要求を十分聞かなければ日本としてはやむを得ずこういう手をとるぞというきめ手を用意してかからなければ、うまく話が進むわけはないと思う。そういう場合にこの外資導入に大企業がたよるという方式は、非常に大きな牽制材料になるのじゃないかと考えるのであります。これらについてのお考えはどうかということを一つお伺いしておきたい。  それからもう一つ。少し問題が飛びますが、それじゃ中小企業設備投資にはどういうふうに対処されようとしているのかということであります。中小企業分の設備投資あるいは近代化の設備投資がどのくらいあるかということは、私どもにはよくわかりません。しかしことしの六月末の各銀行の中小企業向けの融資を見ますると、大体において市中銀行ないしは地方銀行の融資が二兆数千億であります。それからいわゆる専門銀行のものが一兆何千億、政府銀行が二千四百なんぼ、こういうふうになって、総額で四兆ちょっとくらいになろうと思います。これは全体の銀行の貸し出しの大体において四割かちょっとくらいになるのじゃないかと思います。しかしそういう中で今後引き締めがある場合においては、そういうようにどうしても全般の金融がしわ寄せされる中で、特に輸出その他に連関を向けておりまする中小企業にあらゆる面で設備投資押えられるという格好が出てきはせぬかと思う。中小企業の金融全般が問題でありますけれども、その中で特に通産省としては、中小企業の近代化ないしは輸出振興というふうな設備投資については、具体的にどういう手を打たれるつもりか。この二点だけを追加をしてお聞きしておきます。
  16. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように今外資の導入はなかなか多いです。この外資の導入は、総理が言っておられるように、経済自身についての信用を物語っているのだという点でございますが、どうも日本を信用しないと金は貸してくれませんから、そういう意味では外資導入が多額に行なわれるということは大へんいいことだと思います。資本の面では大体ことしは一億五千万ドルの黒字が今日まで予定されておると思いますが、上期に八千万ドル入り、下期に七千万ドルだ、こういう数字でございます。ところが最近さらに次々に入っております計画どもいろいろございますから、下期の予定分の七千万ドルは必ず入ってくる、かように思います。資本の収支の面ではことしは一億五千万ドル以上におそらく黒字を出してくるのではないか、かように私どもも期待し、さように思います。そういう場合に、一体貿易の面を借金で片づけるとまずいじゃないかという論があろうかと思います。今までの日米貿易では通常貿易以外にいわゆるICA資金の買付があり、あるいは特需がある。これが四万ドル前後毎年あるというような数字を示しております。従いまして過去において非常に多額な対米貿易が赤字になりますと、こういうものを入れましてもそれは片がつかないというか、どうしてもまずい結果になります。しかし三十四年などは、ほとんどこの貿易の面でとんとんになっていたようなこともあり、特需並びにICA等でおそらく対米間は三億七、八千万ドルか四億ドル近い黒字を現出したのじゃないかと思います。今後も対米貿易の面では、ICAの問題あるいは特需の問題等、これは相当ウエートを置いてしかるべき問題じゃないかと思います。だから日米貿易の場合に必ず同等の金額であるということは、これは望ましいことですが、そこまで主張しなくとも、この資本のことを除きましても、貿易だけお黒字になるような方法は、アメリカの資金の使い方いかんではあるのじゃないか、かように思いますから、今後アメリカとの折衝の場合に、ただいま申すような点をやはり指摘したいと思います。問題は対米貿易の問題であり、これは何と申しましても日本がアメリカに対して特殊な輸出品について自主的な規制をいたしておりますが、これは自主的規制であり、同時にアメリカ側の強い要望もあり、これをやらないと向こうで積極的に日本に対して排斥、関税その他の処置をとる危険も多分にあるから、そこらが話し合いで進んでおるのでございますが、根本にはアメリカ自身日本産業についての理解を改めてもらうというか、認識を改めてもらうことである。これは絶対に必要であると思う。しかしアメリカには、ただいま久保田さんが御指摘のように、アメリカ産業の観点に立ってアメリカの中小企業の立場あるいはレーバーの立場、そういうところから政府日本同様に鞭撻を受けている、そういうものがございますので、その辺は結局最後に話し合うところに落ちてくるわけであります。アメリカ側の事情をわれわれも知らぬわけではないが、アメリカが力にまかして弱い日本にのしかかってくるようなことがあっては困る。日本産業についての正確な認識を持っていただくこと、これはもう絶対必要なんです。だから日米合同委員会ではそういう点をよく話す必要があると思います。労働賃金等についていわゆるテープ・レーバー、あるいはレーバー・ダンピング、こういうような言葉を今なお信じておる向きも多数ございますので、こういうような点を、生活の実態等をよく話して解決させることが基本だろうと思います。  ところでただいまのそういう貿易問題の日米の対等の主張、これは当然私どもやるわけでありますが、外資導入の形のもの、これはやはり技術提携という形で外資が入ってくるのが大多数であったり、あるいはアメリカの品物を売るという意味で向こうの輸出入銀行の借款なども相当の金額に上るわけでございます。しかしこれは新しい機械等が入ってくるのでありますから、この借り入れでは全部アメリカ側の利益であって当方のマイナスだと考える要はない。これによって日本の近代化が進むということにもなるのじゃないか、かように思いますが、私はただいまのように日本産業について期待あるいは信用が高い、そういう状態のもとにおいての外資導入、かように実は思うわけでありまして、これは必ずしも心配をしたり危険視する必要はないだろうと思います。また日本の株式の取得がただいままでのところソニーが代表的なもので、アメリカに売りましたけれども、今後二、三の会社等で、もう少し株式市場の拡大をはかったらどうだろう、こういう計画を持っている向きもございます。私はこういう事柄は、事業の性格等を考えてみまして適当であるならば、そういう株式市場の拡大をはかっても差しつかえないのじゃないか、かように思います。進んでどうしてもやるというわけではなしに、それらの技術提携等において、ただいま申し上げましたような方法が行なわれることはやむを得ないというか、物事の当然の進み方だ、こういうように実は考えます。第一段のお尋ねは、以上のような考え方で進むつもりであります。  第二の中小企業設備投資の問題でございますが、ただいま金融の引き締めをいたしておりますから、金融の引き締めの場合に中小企業の特殊性であるとか、あるいは石炭産業の特殊性を考慮して金融しろということを申しましても、なかなか徹底しかねると思います。しかし政府は当然さような主張をするわけであります。この主張は相当徹底しておると思います。石炭産業については中小炭鉱ばかりでなく、大手筋も非常に金融に困っておる。石炭産業の特殊性にかんがみて、大手についての金融も特別に配慮するように、大蔵省は日銀その他に連絡をとり、そうして日銀を通じ金融の引き締めについての特例を考えるように行政指導をするつもりでございますし、中小企業においても実は同様な処置をとっております。その場合に、これは申すまでもないことですが、年末金融等が金額が少なくなりまして、一般には金融を引き締めておる際に、中小企業向けに三百五十億の特別金融の処置をとつた、あるいはオペレーションで二百億考える、こういう事柄は本来引き締めの時期に際しても、中小企業は特段の注意を払って留意をしておるその証拠だと思います。これは私はただいまとりました金額で十分だというつもりではございません。今後の金融等の情勢を見て、政府はもちろん必要な金融措置は弾力的に考えていくつもりでございます。そういう場合に先ほど大企業について御指摘になりましたと同様に、中小企業にもシェアの問題もありますし、あるいは自由化を前にして近代化し、さらに拡大発展をはかる、その意欲の強いものもございます。こういうものはそれぞれみな当然のことでありましてけっこうなことではございますが、今回のような措置がとられますと、中小企業は思うように経営意欲を発揮するわけには参らないと思います。そこで政府として最も必要なのは、自由化に備えての近代化であり、また輸出産業としての国際競争力を十分養成する、こういう観点が一番大事でございます。だからその二つには特に注意をしておるわけでございます。たとえば中小企業設備の近代化等についての施策は、そういう意味でこまかく指導していこうということを考えておりますし、また輸出産業については、輸出振興の観点から大企業であろうと中小企業であろうと、区別なしに特別措置をすでに発表しておりますが、そういう意味の指導も一そう注意して参るつもりでございます。金融の問題になりますと、総体のワクなり総体の方向なり、これは一応考えられますけれども、やはり個々の業者が金融の引き締めに当面した。それに対していかに指導し、いかに相談に応じて力をかしてあげるかというところに、実は尽きるのではないかと思うのであります。中小企業全般について中小企業庁でもそこまでの留意がまだ届いておりませんけれども、今回中小炭鉱については地方通産局に融資あっせん班を設ける、こういうような処置をとりまして、今回の十五億の貸付等について御便宜をはかるばかりでなく、相談に応ずるばかりでなく、一般の商業手形等の割引についても、相談に応ずるような機関を設けるという処置をとりました。中小企業全般につきましては、今後の推移等を見なければならないと思いますが、石炭業に対して取りましたような措置、そういうこまかな具体的処置に際していかに扱うかという、そこまでの気を使わないと、今日の状況を円滑に処理することは困難である、かように思います。だから大筋の方針はもちろん近代化に必要な資金は確保します、あるいは輸出産業には迷惑はかけないようにします、かように申しておりましても、それだけでは事足らない。最近の行政の実体は、具体的に処理する、そういう現業的な仕事に私ども行政もならざるを得ない、かように実は覚悟しておる次第でございます。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 中小企業設備投資の大筋はあなたのおっしゃる通りだと思います。しかし現実がその通りにいくかといいますと、銀行のそれぞれの立場がございましてなかなかうまくいっていないのが今の実情だと思います。この点についてはなお突っ込んでいろいろお話ししたいのですが、時間がありませんから省きます。  ただ外資について一言だけ聞いておきたい。今のお話では、日本が信用があるから、アメリカから金をどんどん入れるというなら入れた方がいい。何もあえて押える必要はなかろうというお考えのようですが、なるほど片方において特需がなくなり、あるいはまたICAその他がだんだん細ってくる、軍の関係のものも少なくなっていく、こういう状況であります。ですからそれをカバーしながら、そうしてしかも日本産業の水準を上げていくというのは大資本中心にすればいいと思います。しかしさっき言いましたように、国と国との全体の経済のバランスをとっていく、均衡をとっていくということで大きな支障になりはせぬかということと、もう一つはことしあたりはどのくらい入ってくるか知りませんけれども、借りた金なり持ってきた技術は、要するに利子なり元本をみな払わなければならないわけです。それが相当ふえてきておる。通産省の三十五年度のあれを見ますと、ロイアルティその他いわゆる支払いの分全部を入れますと、一億九千五百三十七万四千ドルというふうになっております。おそらくこれは今の状況でいけば、ことしのうちに二億五千万ないしはそれ近くになるのではないかと思う。そうするとある程度、三億や三億五千万の金を入れても、今度は利子払いやロイアルティ払いに追われるという格好になって、特需はなくなるは、ICAは、これもだんだん細る一点張りだ、そして、借金ばかりふえて、結局入れたときは当分いいかもしれません、企業自体としてはいいかもしれない。しかしながら、国際収支全体のバランスをとるという点になりますと、貿易がこれをカバーするほどどんどん伸びていけばよろしゅうございます。しかし、それが今非常に問題になっているときであります。しかも、こういうようなロイアルティや利子払いは、これは待ってくれというわけにはいかないでしょう。こういう点も一つ十分お考えをおいて、御検討いただきたいと思うのであります。  それから時間がありませんから、その次の問題に移りますが、その次の問題は、これは今のような政府の方針でいかれますと、当面の需給調整なり景気調整というもの、あるいは設備押えはできましょうけれども、遠からず私は日本全体が大きな生産過剰というふうなことにぶつかりはせぬかということ。それが同時にまた貿易面についても、あるいは国際収支面についても、非常に大きな支障を来たして、にっちもさっちもいかなくなるのじゃないかということであります。この点はどういうふうに調整をされるつもりかということであります。御承知通り、大体この三年間で、ことしの暮れになりますと、約九兆、工業の設備投資が行なわれるわけであります。これがどのくらいの生産力になるか、それからこれが輸入依存度はどのくらいになるか、機械その他あるいは原材料でどのくらいになるか、はっきりしたことは私にもわかりませんが、少なくとも九兆というのは、日本の今までの工業の生産力について、非常に大きなパーセンテージを持つものだと私は思います。これだけのものを動かすには、どんどん原材料をよけい入れていかなくちゃならぬ。作ったものが国内でうまくはければいいが、これがなかなかはけない。国内においてはかすのには、重化学工業が重点である限り、やはり設備投資をどんどんやっていくよりほか手はない。外国へ出すにはなかなか簡単には出ない。こういうことになったら、今でさえ外貨が非常にあやふやになってきた際に、将来はにっちもさっちもいかぬで、結局は操短だ何だといって、そのしわ寄せは労働者なりあるいは中小企業者に、今より激しい形でくる、その時期はそう遠くないというふうに私は思うのであります。こういう点については、政府は案外今まで楽観し過ぎているというふうに私は思うのですが、この点どうです。
  18. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 楽観はしておりません。設備投資の過大と申しますが、生産の需給は一応にらんであるわけであります。ことに最近は、御承知通り近代化なり老朽施設の交代というものもございますから、新しく今設備投資をしたものが、全部が全部生産力の増加、かように考える筋のものでもない。一部は、老朽したものを取りかえたというものもございます。一番大事なことは、生産過剰が起こらないようにすることであります。また同時に、基本的には、日本などのように外国から原材料を買わなければならない、また設備投資も、いろいろなものを買いますが、原材料その他外国から輸入するその代金は、必ず輸出で支払う。これは基本的な問題で、日本の経済は当然そこになければならないのです。だから貿易の問題では、そうたくさんの輸出が必要だと私は申しませんが、最小限度輸入代金だけは輸出代金でもうけて払うのだ、これだけは絶対に必要なことだと思うのです。これは、最近輸出振興を特に唱え、そして経済のあり方を申し上げているのも、そういう点にあるのであります。今の生産過剰云々の問題も、これは輸出ということを考えますと、消費は国内消費だけではない。やはり国外消費というか、国際市場における消費というか、これもやはり勘案して、この生産を進めていくことが大事なことだと思います。現在でも、特殊なものは操短をやっている産業があるわけであります。だからこの操短自身が、こういう際に操短はおかしいじゃないかといわれますが、やはり国内需要と国際市場の需要というものをにらみ合わせて見ると、操短が適当だというのでございます。だから生産過剰という問題は、国内だけの問題を見てはいけないし、また本来の経済のあり方から見まして、輸入代金は輸出した収入で少なくともまかなっていくのだ——そう残す必要もないわけですが、それだけは絶対必要で、この大原則は守っていきたいと思います。ただいま御指摘になりますような、いわゆる生産過剰になり、急に操短をし、そして失業者が出てくる、こういうような事態を起こさしては、これはもう政治家の責任になりますので、そういう点は十分私どもも計算に入れて、ただいま対策を立てておる次第でございます。  それから、先ほどの外国からの借り入れの問題でございますが、アメリカに対して、もう君のところから金を借らぬと言うことは、実はアメリカに対してあまりおどしにならない。アメリカ自身のドルの蓄積もだんだん減ってきている、こういう状況でありますし、借りたいところはずいぶんある。だから日本が借りないと言えば、特別な借款を設けてでも、低開発国その他に貸すかもわからないししますから、貸してくれることはけっこうです。とにかくアメリカ自身に対して一番強いことは何かというと、日本商品を買ってくれ、買ってくれなければ、おれの方は君の方から買わないぞと言うことが、一番強いということであります。そういうことが言えるか言えないか、ただいまの状況では、遺憾ながらそういうことはなかなか言えない。そういうところに問題があるのです。これが、そういう肩を怒らした話を日米間でしなくても、そこはお互いに認識を改めれば、そう肩を怒らさぬでも済むのじゃないか、実はこういうことを申し上げたく、またそういうことを申し上げておる次第でございます。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私がアメリカに対して、何かきめ手を持ってやれと言うのは、お前の方から金は借りないぞ、そんなことはききませんよ。向こうは貸す方だから、借りる方が開き直ってみたところが、向こうは何ともない。きまった話です。私はそんなことを申し上げておるのじゃないのであります。この点については、貿易構造の全般に関する問題ですから、きょうは議論を省きます。それで、直接の今後の貿易なり何なりの見通しについて、私ば二、三重点だけをお聞きしたい。  まず、今度の企画庁の発表されたあれによりますと、輸出の方は、上期は、前年同期に比べて四・四%の伸びであります。ところが下期の計画は二十二億六千万ドルで、これは前年同期に比べて一一・七%の増になっております。それから輸入の方はといいますと、上期は二十五億七千万ドルで、そして三二・六%の増になっている。ところが下期はこれを二十三億九千万ドルに減らしていこう。これは一八・七%で、三二・六%のちょうど半分にしよう。だから簡単に言いますと、この数字だけで比較はできませんけれども、要するに輸入の方は、伸び率からいうと、下期におきましては、上期の約半分に落としていこう、それから輸出の方は、下期の方は倍に伸ばしていこう、こういうふうにとっていいと思うのであります。これをやりまして、なおかつ全体の収支をやると、六億何がしの赤字になる、こういう計算であります。問題は、上期はなるほど予想通りにいったということであります。それはしかし修正したから、七月ごろに作った数字ですから、大体において合うのは当然でありまして、しかも当初の計画からいえば、いずれも相当に後退をしたり金額が狂っておるわけであります。外貨それ自身にしましても、べらぼうな大きな狂いがきておるわけです。そこで問題は下期であります。下期にはたして、政府が企画庁の計画でやっているようにうまくいくかというと、私はむずかしいと思う。というのは、まず輸入の削減ですが、これはうまくいくかというと、政府のいわゆる下期の外貨予算を見ますと、上期は生産が、御承知通り、その前期に比べまして二二・一%ですか、ふえているわけですね。これをとたんに、上期に比べて下期は鉱工業生産を五・九%落とそうという計画が土台になっております。二二・何がしふえたものが急に五・九%という三分の一に減るか、現実には工業生産のあれなり何なりがそう減っておりません。ここで在庫がどういうふうな関係になるかということが問題だろうと思う。在庫がなくてあと入れられないということになれば、片方は御承知のようにどんどん生産施設は伸びているのですから、これはどうしたっていや応なしに繰短せざるを得ないじゃないですか。この通り計画通りにやろうとすれば操短せざるを得ない。おそらく操短してやっていくというのは、今お話しのように、私は、少なくとも今の内閣としてはやり得ないと思う。そうなってくると、輸入の方は予定通り減らない。現に九月は認承額が、六億以上になっておる。これは特殊の事情ですが、十月は二億くらい減ったといっても四億くらいカバーしましょう。十一月どうなる、十二月どうなるかは楽観できない。政府の言うように伸び率を半分に減らそうということは私は非常に困難だと思う。それから輸出の方にしましても、上期は四・四%の増で、それをとたんに一丁七、かれこれいえば三倍ですよ。三倍の伸び率にしようということは、どういうプラス要因を考えておられるか。このプラス要因として今政府考えておられるのは、内需引き締めによって輸出マインドを強くしていこうということが一つでしょう。それからいろいろの奨励策によって、要するに輸出を有利にしようということが第二でしょう。近代化によって競争力がふえてきているから、これによってある程度伸びていくというのが第三でしょう。第四は、アメリカなりヨーロッパの景気がよくなったから出るだろう、こういうことだろうと思うのです。これは全部そうだろうと思うのです。そういうことが、要するにプラス要因として政府がこれを期待されている根本だろうと思う。しかしこの一つ一つについて検討してみますと、かなりあぶないものばかりだ。あぶないものばかりで、おそらくこの通りいかないという見通しの方が大きいと私は思う。こういう点について佐藤さんはどう思っておられるのか。そういうところから出てくる下期におきまする、上期の末の外貨収支は、御承知通り十六億一千万ドル。この内容も洗ってみればあぶないものです。ほんとうのネットとしては、実際には六億一千万ドルくらいしかない。そうすると、三十二年度の四億とどれだけ違いがあるかということになれば、ネットとして考えた場合に、そんなに余裕はないです。これがさらに下期になって悪くなるということは、私は必然考えなければならぬところだと思う。総理は、そんなことがあったって、それはIMFから借りればいい、なるほど三億ドルは借りられましょう。さらに政府の方では、アメリカの民間銀行三行から、大体二億ドルの借款をするという計画をしておる。五億ドルあれば、一応正面の金繰りはできますよ。しかし借金は残ったまま、ずっとついていくということにならざるを得ない。そうなってくれば、よく首相の言われる、心配しているのは日本人だけで、アメリカやほかの国は、みんな日本はうんと信用があるから心配しなくてもいいと言いますが、現にユーロ・ダラーあたりは、短期の資本としては相当危険な動きをしているじゃないですか。それからユーザンスの決済問題にしましても、必ずしもこれから先はプラス要因とは考えられない。こういう点を考えてみた場合には、借金するのはやむを得ないでしょう。借金はしても、今のような政府の不徹底な態度では先々大きな心配がある。これは産業人として、特に金融マン等、日銀等が心配するのは当然だと思う。政府としてはこの下期の見通しさえ非常に甘くて、しかもこの機会にうまくやっておかないと予算編成がうまくいかないとか、あるいはなんとかいうことになるんだろうと思います。そういう政治的な要因から問題を特に甘く見ているんじゃないか。これは私どもとすれば納得がいかない。この点については佐藤さんお一人の責任じゃありませんが、少なくとも国際収支なり国内の景気その他貿易に一番大きな責任を負っておられる佐藤さんとしては、以上の点についての御見解はどうなんですか。この点は藤山さんにもお聞きしておきます。
  20. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この国際収支の問題は、ただいままだ数字が申し上げかねるのであります。ただいま御指摘になりましたように、目標の数字は、いずれも輸出は大きくなり輸入は減る、こういう数字でございます。これは基本的に考えまして一般的にいわれますことは、日本の貿易は上期と下期では実情が違っておる。上期はいつも輸入が強い、下期は輸出が強い、こういう形をとっておる。そういうところへもってきて、今度は輸出振興についての特別の措置をとる、あるいは設備抑制を急に強めていく、そういう意味から見てある程度の機械その他の発注は延びていくだろう、こういうことがいわれる。もう一つは、ただいまおあげになりましたように、自問自答していらっしゃるように、私どもも同じように考えておりますけれども、もう一つ違うと思います点は在庫についての見方であります。今日まで、在庫はほとんど横ばいの状況で推移しておる、かように申しましたが、現実にはある程度の輸入増がございます。現在の状況から見ますと、在庫は、ことに原材料の面では少しはゆとりを持っておるようだと思います。これは自由化した結果だと思います。一例をとって申すならば、鉄鋼、くず鉄などは大体年間え百万トン余になるが、上期にその三分の二近い四百万トン近く入っております。そういうことを考えますと、在庫の繰り延ばしというものは必ず可能だろうということを実は考えます。問題というか、勝負といいますか、今いわれます数字の勝負は、結局年が明けて一−三月にどういうような輸入の状況になるか、ここにかかっていくんじゃないかと思います。今日までとりました国内の設備投資抑制なり、輸出振興なりあるいは輸入抑制なりは、おそらく一−三月には出てくるだろうということを実は期待しておるわけであります。またそれが出ないようだと、今日までとりました諸政策が効果が上がらないということにも実はなるんじゃないか、かように思っておりまして、ただいまの数字だけから見ますと、いかにも非常に大きな見込み違いというか、見積りをしたんじゃないか、輸入は減らし輸出はふやした、それはいずれもが、うんと見積りしたんじゃないか、こういうように今の数字だけからなら見られますが、政府としては、年が明けてからの一−三月は、おそらく輸入も落ちついてくるんじゃないかという見通しもし、輸出の面も、上期は本来なら伸びない輸出でございますけれども、これは、今の輸出振興策もその辺になれば効果が順次上がってくる、こういう見方を実はしておるのでございます。これは、企画庁長官から数字等は御説明願います。
  21. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 将来の見通しを作ります場合に、当然慎重にいたさなければならぬことは申すまでもございませんし、お話しのように予算編成にごまかした数字を作れば、あとでもってたたりがくるということは当然なのでございますから、私としてはそういうことのないように十分配慮してやって参るつもりでございます。御承知通り、先般政府は総合的な対策を立てました。ただいま通産大臣が貿易面について言われたように、私どもも現状から見ると考えております。従ってこれらの総合対策がほんとうにきいて参ります来年の年初以降の動向ということが大きな影響だと思います。むろん年末までにもきいてくることは当然だと思います。しかしそのきき方がはたしてどの程度にきいてくるかということは、あまり過大な評価はできないと思いますけれども、これだけの相当きつい総合対策を立てたことでございますから、その後においては相当なウエートを持って影響して参ることだと思いますので、まず今日の場合、その程度の暫定の中間見積りとしては適当ではないか、こう思っておるわけでございます。
  22. 久保田豊

    久保田(豊)委員 実はもう少し突っ込んでいろいろお話したいのですが、時間がないからもう一点だけお聞きします。  それは今年の下期の見通しに連関しまして来年度の見通しであります。これについては、この間の長官のお話では、おそくも十一月の二十日過ぎくらいには発表するということですから、この時期の追及はいたしませんが、今年の下期の見通しと、来年度を通ずる見通しにつきまして、実は一番心配になる点が三つあると思うのであります。一つは総理も言っておられるが、五%にしても自民党としての公約は果たせるのだが、それじゃデフレになるから、それよりもっと高くする、それじゃどれだけにするかということはまだわからない、こういうことです。しかし、私どもが新聞その他で漏れ承るところによりますと、通産省も企画庁もすでに来年度の見通しについての計算を始めておられる。また始めておらなければ間に合うはずがありません。それらを仄聞すると、大体七・一ないし七・二というのが国民総生産の伸び率というふうに推測されるわけです。これは経済の成長を、あるいはスローダウンをなだらかにするという点では非常にけっこうな数字ではないかと思うのであります。しかし、この場合に輸出関係はどうなるかということを、私はもう少し真剣にお考えいただきたい。私どもの推算でよくわかりませんけれども、少なくとも七・一ないし七・二ということになれば、来年度の輸出は本年度に比べてなお一八%以上ふえなければならぬはずであります。それから輸入は本年度の一〇%増くらいの程度押えなければ、これは国際収支の均衡はとれないはずであります。この場合の年間の赤字が三億になるやらどうやら、まだ私にははっきりしたそろばんが出ませんが、そうなる。それが今のお話では、輸出の方は一−三ごろになると、いろいろ政府考えられたことが効果を出して伸び出してくる、それから輸入は、少し原材料の入れているのがあるから、それを食い延ばしていけばそんなに来年はふえないというのですが、生産力がどんどんふえるのですから、私はそんなことでは追っつかないと思う。その点で、来年のある時期になりますと、借金をしてもそれを食いつぶして外貨の赤が大きくなって、第二段の、もっとひどいスローダウン政策をとらざるを得ない時期がくるのではないか。特に自民党内の政治的要因を考えれば——これはわれわれも同じですけれども、七月の参議院選挙には勝ちたい。やはり総理としては七月の選挙に勝って、もう一度総裁になりたいというあれがありますから、それは当然のことであります。ですから、それまではいいかげんに甘っちょろいことを言って甘く甘くやって、それからあとになったらがたんとやるよりほかに方法はない。池田さんはその方の名人ですから、幾らうまいことを言ったって信用しませんよ、何回もそれをやっているのですから。これは私のしろうと論ではなくて、財界や日銀、その他の方面で非常にこの点を心配しているわけです。ですから、私はこの点で政府三つの点について考え直してもらいたいと思う。  その一点は何かといいますと、池田さんが総理になって所得倍増論が期待されているが、その基本の理論になっているのは御承知通り下村理論です。そればかりでもありますまいが、大体下村さんの言うことを聞いて、企画庁の言うことを聞かないというのが池田さんの今までのやり方です。ところがあの下村理論というのは、今ここで詳しくどうこう言うつもりはありませんが、簡単に結論を言えば、輸出というものを非常に軽視していると私は思う。輸出は要するに国内の総生産なり国民経済を伸ばすための手段としてだけしか考えておらない。従ってこの伸びは国内生産が順調に伸びる場合は一〇%程度を維持しておればいいのだ、こういう簡単な理論です。問題は、あくまでも国内の消費なり何なりだということでありまして、こういう単純な理論では日本の経済全体はもう割り切れない。その失敗が今度の失敗になったわけです。ですから私は、日本経済全体の中に置かれた輸出の地位について、内閣全体が根本から反省することが必要だ、しかも現在の輸出だけではなくて、もっと国民経済全体と結びついた構造的な面までしっかり考え直さなければだめだと思う。これなくしては、いかに借金で来年一年食い延ばしをしてみたところで、その次の段階にはもっとひどいことがくる。この点を私は来年度の見通しを立てられる機会に徹底的に反省をしてもらいたい。この反省のないところに七・二だの七・一だの、ほかの点の基礎的な条件の変更なくしてそういう安易な数字が出てくると思う。ですから私はこの点を強くお二人にお願いをするわけです。これについての御見解を聞きたいと思う。  もう一つ輸出の母体といいますか、輸出をふやしていく一番大きな要因は、国内のいろいろの要因もありますけれども、何といっても今のところ政府考え方は、アメリカなりヨーロッパなりの景気が回復するから日本輸出は伸びていくだろうという従来と同じような安易な考え方があるのじゃないか。しかし今国際経済も大きな曲がりかどに来ているのじゃないかと私は思う。はっきりはわかりませんが、その要諦はどこにあるかというと、国際的に見て少なくとも資本主義世界においては、大きく見て生産力と消費力のアンバランスがある程度の限界に来て、いわゆる生産過剰状況というものが顕在すると潜在するとにかかわらず大きくなりつつあるというのが事実であります。しかもこれが御承知通り、私どもの言葉で言うと帝国主義的な市場競争という形になって現われて参ってきております。従って景気、不景気の動向だけで、各国の輸入や輸出がふえたりするという状況ではない。その以前にいわゆるアンバランスが出てきて、国際通貨の不均衡という問題が非常に大きな要因になっている。ですからもう景気、不景気の動向だけで決定するような経済状態ではないということです。従ってそれと結びついた世界の政治情勢によって、少なくとも貿易面につきましても政策的な要因というものがこれから非常に強く働いてくる。これを十分に見ずして、景気がよくなるとかあるいは生産が回復したからとかいうだけの要因で、少なくともこれからの輸出の問題を考える時期は過ぎている。この点は私はしろうと論でよくわかりませんが、どうもそういう感じがいたします。こういう点については十分なスタッフを持っている経済企画庁等においても通産省等におきましても、いわゆる業界の常識論やあるいは業界の経験論だけでなくて、資本主義経済、世界経済全体の底に動いておる新しい方向が何かということをしっかりつかまえて、その上に立った基本的な輸出政策なり、それに合ったところの産業構造の合理化なりをやっていく段階に来ているのではないかという点であります。これは非常にしろうと論で抽象論であります。これをもう一度この機会に、来年までに間に合うかどうかわかりませんけれども、これは保守であろうと革新であろうとこの点は課題として、日本の経済施策の基本として考えなければならぬ段階に来ているというふうに思いますが、これについての御見解を一つお伺いいたしたい、こう思うのであります。  この二点だけ、三つありますが、あとのやつはまた長くなりますから二つだけにとめまして、最後にこの二点をお伺いいたします。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほどからしろうとしろうとと言われますが、しろうとかくろうとかよくわからないのです。ただどうも参議院選挙を引き合いに出されたり、総裁選挙を引き合いに出されたりすると、しろうとかなと思ったのです。しかしそれ以外の点については、私は通産大臣で専門家であるのですが、その方が追いまくられるような御議論でございます。大へん傾聴いたしたのであります。こういう大へん失礼な言い方をして恐縮でございますが、私先ほど申しますように、何としても輸入の支払いは輸出によってまかなう。これは絶対だと先ほど申しましたが、その点とおそらく同じ御議論じゃないかと思いますので、私は第一点については申し上げる必要はないだろうと思います。これはどういうところから指摘されてもその通りだと思います。ただ下村理論をそのまま進めるとすれば、消費は国内消費にとらわれない国際消費の水準でものを考えもいく、こういうことだろうと思う。だからこれは少し牽強付会の議論にもなりますので、やはり輸出ということはその意味で非常に大事だ。これはどこの国でもそれをやっておるのですし、日本だけが特例があるわけじゃございません。だから今のところは過去の蓄積を食ったという感じがどうしてもいたします。外貨の事情というものは輸出にもう少し重点を置かなければならぬ。少なくとも輸入を支払うその力は輸出、そこにあるわけです。これは絶対必要なことだと思います。  それから第二の点についての景気論でございますが、もちろんただいまは単純な経済景気論では終始しておらないと思います。やはり政治的な政策論とこれは一緒になっておる。たとえばその一番典型的なものは低開発国の開発の問題でございます。この低開発国開発のために資金を投入するということ、これは低開発国の生活水準を高め、同時にそのことが国際消費を刺激するということだと思います。だからいわゆる国際景気動向に左右されることはもちろんでございますけれども、そういう意味政策的な産業開発計画は至るところに進められる。これは私どももそういうことを考えていくつもりであります。ただ、いわゆる一般の景気が上向いてきますと、低開発国の開発にいたしましても非常に積極性を持ってくる。これが見のがし得ない点でありますから、国際景気と全然別だとはなかなか言えない。どんな政策をやるにいたしましても、政策の力というものがそこに出てくるのだと思います。そういうことを考えて参りまして、あるいは久保田さんはそこまでのお話はございませんが、東西両陣営の対立のさなかにおいて、自由陣営だけで貿易拡大をしても意味ないじゃないかということも指摘されたいのだろうと思いますが、私どもはこの貿易の面においては、共産主義諸国とも貿易を拡大することにおいて絶対やぶさかでございません。これは進めて参りたいつもりでございます。しかし共産圏におきましても対日貿易の関係においては、貿易の大体同等というか、対日貿易拡大といえば日本にうんと品物を売りたいということを実は主張いたしておりますので、やはり輸入を輸出でまかなうという面から見ると、ただいまあまり多くは期待できない。この間ミコヤン副首相が来た際にいろいろ話をしましたが、なかなか思うようには参りません。ことに中共貿易はただいまのところはけたはずれになっております。せめて第四次民間協定当時のような片道一億ドル近く、あのときは九千八百万ドルになっておりますが、一億ドルにでもなればこれは大へんしあわせだと思いますけれども、多少でも貿易拡大をされれば国内消費により以上の効果があるだろうと思いますから、大へんしあわせだと思いますけれども、なかなかそこまでも進めない。私ども別に毛ぎらいをしておるつもりはございませんが、それでは今簡単に言われるようにシベリア開発も積極的に日本の経済が協力できるか。シベリアについて今度は北村君は視察団を出すような話をしておりますが、ミコヤン副首相との話では、シベリアに関してはなかなか実情を話してくれないというのが実情でございますから、当方としては片意地になっておらない、それだけは御理解をいただきたい。むしろ私どもは、後進国開発という問題で、共産圏の進出と自由主義陣営の進出と、これが衝突している、これをどういうように今後政治的に解決していくか、こういう問題に実は当面しておると思います。だから政策の問題と経済問題は切り離せないが、もしも今の自由主義の考え方でいって後進国開発の問題で自由主義陣営がおくれをとるならば、それは日本にも経済的に非常なマイナスであるばかりでなく、政治的にも大問題になるだろう、かように私は心配をしておる。それだけ一つつけ加えておきます。とにかく経済は経済だけでというが、最終的にはやはりただいま申すように政策的なものの関連のあること、これは御指摘通りでございます。
  24. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 加藤清二君。
  25. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 本日はただいま審議中の輸取法を上げるお約束になっております。また低開発関係法案も参議院へ回さなければならぬ時期が差し迫っておるわけでございます。そこで私は委員長とのお約束を完全に遂行するために、お約束した時間内に質問を二、三いたしたいと思います。  そこで大臣にお願いしたいのでございますが、大臣の答弁を承っておりますと、大臣の頭のよさということがよくわかりました。そこで今度は一つ簡潔に、私も簡潔に質問いたしますから、簡潔にお答えをいただいて、頭のよさでなくて、腹があるかないかというところをお示し願いたい。第一点。株価がどんどん値下がりしている。そこへもってきて糸値がまたぐんぐん下がって参りました。大へんなことでございます。これで輸取法が行なわれたからというので、はたして糸へんの輸出の目標は所得倍増計画にうたわれている通りのことが実行できるのでございましょうか。これについてすでに大蔵省では、株の値下がり対策が行なわれたようでございます。通産省、経企庁におきましてはこの糸へんの値下がりに対して、はたしていかなる対策をお持ちでございますか、まず伺いたいところでございます。  御承知通り四八双糸千二百二、三十円程度ではすでに採算割れでございます。この結果は中小企業は原料高の製品安、原料を買うときには高いものを買わされて、売る時期になったら大へん安い値ぎめをしなければならぬというので、これは倒産が続出することと思います。いわんやこの政府の経済諸施策によるところの金融引き締めは、中小企業にも容赦なく参ります。この原因が過剰投資である、過剰投資のゆえにかかる政策引き締めをしなければならぬという話であります。ところが繊維関係はこのたびの過剰投資には参加していないわけなんです。罪を作っていないわけなんです。罪を作っていないものが罰だけを一様に受けて倒産しなければならぬという問題についてば、これは黙視できない問題でございます。それは椎名さんや迫水さんはこのことをさきの国会で指摘いたしましたおりに、いや大丈夫でござるとおっしゃった。あの人たちはやめて行く先があるからけっこうであります。しかし中小企業はやめて行く先はございません。行く先は首つりです。どうしてくれますか。
  26. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事柄が事柄ですから、あまり簡単にお答えしてもいかぬかと思いますが、簡単に結論を申し上げます。ただいまの市場の動きは私も十分注意しております。これは大へん心配な状況であります。こういうような状況では、せっかく輸出だと申しましても輸出振興の実が上がらない。だからこれは一日も早く安定さすことが必要であります。必ずその手を打ちます。これだけお答えします。
  27. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 同じ質問を経企庁の長官に。迫水さんとどう違うか。
  28. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 糸価の安定策につきましては、通産大臣を信頼いたしております。
  29. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 通産、経企両々相待って、一つぜひこの急場と申し上げますよりも、さきの政府がお作りになったしわをこの際取り除いていただきたい、こう思うわけでございます。  もう一つ、具体的に輸取法が行なわれましても、私はこのままでは輸出振興ははかりがたいと思うのでございます。その理由を申し上げますならば、繊維の関係はすでに行なわれております繊維設備制限法によってただいまでも設備がなお制限されているのでございます。綿において一五%、毛において三〇%、スフにおいて二二%。ところが問題は、貿易の自由化の繰り上げ政策によりまして、原綿、原毛がすでに自由化されたという事実であります。設備は制限されているのでございます。ところが材料だけはふんだんに買うことができるようになったのでございます。通路は閉じられて、水上の水はどんどん流れる、こういう勘定でございます。はたしてこの状態がどれだけ続くでございましょう。今日の繊維設備制限は、はたして輸出に貢献するとお考えでございましょうか。この点についてぜひ承りたい。
  30. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、ただいま操短をやっておりますのは繊維産業の一部にございます。これはもう操短もやめて、一つやったらどうかということも今まで申しましたが、ただいま御指摘のように最近はまた事情が少し変わっておりますから、これはいまのままでいいかと思います。私は、糸価安定は別に操短強化というような処置をとらないで、別な方法があるのじゃないか。その具体的方法はおまかせ願いたい、かように思います。
  31. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 それは当然大臣におまかせすることでございますが、問題は正直者がばかを見ないようにしていただきたいということでございます。つまりすでにこの繊維設備制限法が行なわれている最中に、なお幽霊織機、紡機が八十万錘もございます。正直にまともにこの法律を受けて操短をした中小企業はぶっ倒れていきました。材料が設備に割り当てられているときでさえも、なお幽霊があったのでございます。今この制限を生かすための何物がございましょう。材料は自由でございます。どうしてこの制限が保てるでございましょうか。さすれば、正直者はますますばかを見るという結果に相なるのでございます。これを一体どう処置していただけますのか。特に私が問題としなければならぬと思いますのは、ここで輸取法が行なわれます、私どもきょうは通すことにやぶさかではございませんから、行なわれるでございましょう。ところが妙なことに、輸出せんければならぬところの製品に対するものまで設備制限、生産制限が来ているのでございます。一体これは何事でございましょう。そんな国がはたしてよその国にあるでございましょうか。もう一つ、綿、毛の設備においては、御承知通り過剰であったかもしれません。しかし合成繊維に至っては、これは朝日の産業、これから伸ばさなければならぬ産業です。これに同じような制限ワクを引っかけられているという意味が、私にはわからないのでございます。なるほど届出制であるとか合議制であるとかおっしゃるかもしれませんが、そのことによって増設される設備は、こま切れになるのでございます。このこま切れによって行なわれる設備が、はたして世界の合成繊維に伍していくことができるでございましょうか。御承知通り合成繊維は膨大設備をもって、これに臨まなければ太刀打ちができないというのが今の世界の現状でございます。イタリアしかり、アメリカしかり、イギリスしかりでございます。そういうやさきにあたって、この法律にこだわって伸びるべきものをよう伸ばさずにおくということが、はたしてよい施策でございましょうか、大臣の御答弁を……。
  32. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまもいろいろお話がございましたが、今まで紡績の面でいろいろ指導しておるというか、糸の供給で織物ができるわけでございますから、いわゆる紡績が中心考えられる。そうしてこの前、織物業者の方は一応過剰生産だということで、機械の買い取りまでした、そういう苦い経験がございますから、そういう意味で業界についての特別な指導等をいたしております。しかしただいま加藤さんが御指摘のように、その後、法網をくぐってという言葉が適当かどうかわかりませんが、だんだん織機がふえておるのじゃないか、こういうことが指摘されております。これはもちろん今後の指導の問題として私どもも注意するつもりでございます。これが一点。  もう一つの点は、合繊についてこれを指導しろというお話でございます。これも御主張はよくわかりますが、やはり繊維関係の代替的な性格も相当あるのでございますから、そういう意味で純綿、化繊、合繊というものの連携を相互にとる必要がある。この点はそういう意味で私どもは指導しておる、かように御了承いただきたいと思います。
  33. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 こういう制限が慢性的になって参りますと、悪の方、形骸のみが残って、そのよさが失なわれていくのであります。特に今日私ども考えなければならぬことは、たとえばワク内のスイッチで移籍が行なわれるということに相なっております。その移籍が行なわれるたびに一台について三万円とか、あるいは一錘について二万五千円とかいう権利金の授受が行なわれているのでございます。こういう状況において、はたして世界の自由国と競争ができるでございましょうか。この権利金は設備投資設備資金よりももっと高価に値するわけでございます。今日どんな高い紡績でも一錘二万円。ところが権利金が三万円ということになりますと、設備に要るところの資金よりも、権利を買うために必要な資金の方が上回るという格好になる、こんなばかげたことが許されてしかるべきでございましょうか。これは事実でございます、お調べいただければけっこうです。  次に、もう一つ私は引き続いてお尋ねせんければならぬことは、こういう状況を放置されておくのか、このままの姿で四十年まで延ばそうとなさるのか、その音曲味が私にはわからないのでございますから、四十年まで延ばそうとおっしゃるならば、一つここでぜひその根拠をはっきりしていただきたいと思う。
  34. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど申し上げましたのは、紡績の方でなくて織機が自然にふえたという話をしたのですが、紡績の方、糸の方の輸出について、ただいまのようなお話しがあったかどうか私存じ上げませんので、事務当局から答えさせたいと思います。同時にまたその措置法の扱い方なども事務当局から答えさせます。
  35. 松村敬一

    ○松村説明員 ただいま御質問の臨時措置法の問題でございますが、御指摘の権利金と申しますのは、結局全体の設備の新増設が制限されておりますので、現在の法律に基づきまして、法律の施行中に繊維の部門別に若干の出入りがございまして、結局余っておるところと足りないところとあるわけでございますが、たとえば合繊部門のようなところに足りないままで新設を認めますと、全体といたしまして余っておるところと新しく足したところと合わせまして、設備全体がますます過剰になる。そういう意味で新設をいたしますときには余っております方から移してやる、そういう場合に御指摘のような権利金というものが発生することも一あるわけでございまして、これは困った現象でございますので、できる限りそういう権利金というようなものを低くいたしますように、場合によって団体が間に入りまして、あまり高い権利金の要求がないようにというふうなことのあっせんをやってもらうことを、現在やっておるわけでございます。  それから、結局そういうことは御指摘のような臨時措置法のございます結果でございますが、御承知のように措置法は現在昭和四十年までの時限法になっておるわけでございまして、これにつきましてだんだんひずみが出て参ります場合には、四十年を待たず途中に改正をするという必要も出てくると思うわけでございますが、その点につきまして、措置法に基づいてできております審議会がございますので、その審議会の総合部会で改正の問題を近く審議をする、そういうような手順にいたしております。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 関連して。ただいまの局長の御答弁ですが、何か取得したる権利いわゆる繊維工業臨時措置法による登録織機の件、これを先ほどの答弁では譲渡を認められたまうな答弁ですが、ああいう権利は譲渡の対象になりますか。登録のそれを渡譲する、それが権利になるか、こういう質問ですが、それに対してあなたはなるべく金額は安いように指導したい、そうすると譲渡するという、そういう権利を売買するという、こういうことを認められたことになるのですが、それは法律上どういうことになりますか、譲渡が認められる権利でしょうか。
  37. 松村敬一

    ○松村説明員 たとえば現在織機の例で申し上げますと、タオルの織機が、全体でタオルの生産が足りないということで、タオルの織機の増設を、先般これは中小企業の安定審議会で御審議をいただいてきめたわけでございますが、そうした場合にタオルの織機の増設だけを認めますと、タオルの織機だと称しまして、普通の綿織物の織機が実際上できてしまうわけでございます。そういう意味でタオルの織機を増設を認めます場合に、普通の綿織機あるいは人絹織機、絹織機そういう方でまだかなり余っておって、実際には動かしておりませんが権利として持っておる、そういうところがございますので、そういう余っておる人から織機の登録を譲ってもらう、そういうことになるのであります。そうした場合にそれがどういう財産権であるかというお尋ねだと思いますが、これはもちろん法律でそういうことが認められておるわけではございませんが、実際問題としてそういう権利を譲るという場合に、余っておる織機を、動かしておりませんが、一応持っておればいつかは動かすことができるかもしれない、それをやめて足りない方のタオルならタオルに譲り渡すという場合に、持っておる方は当然何かの報酬を要求するということが実際に行なわれるわけでございますので、それをいわゆる権利金というふうに言われるわけでございます。そうした場合に非常に高い額を要求するということになりますと困りますので、その場合に団体が間に入りまして、あまり法外な権利金を要求してもらわないようにということを、余っておる織機を持っておる人に話をしてもらう、そういうことをやっておるわけでございます。実際にそういう意味で、これは外に出た値段ではございませんけれども、ある程度金銭の授受が行なわれておるわけでございまして、それをどういう権利か、どういう価格かというお尋ねですが、これはただ実際の授受が行なわれている、こういう意味でございます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 実際にそういうことが行なわれておる、これをあなたの方は黙認せられるのですか。あなたの説明であると、必要以外の者に、特定の人間に権利を与えておる。それが動いていなければ、その段階において処理すべきである。なるほど機械は譲渡の対象になるかと思うが、その機械にプラス権利金ということ、この権利金の対象になるものはいわゆるこの法律に言う登録ですよ。そういうのが法律的に所有権譲渡というものの対象になるかどうか、私は問題があると思う。それは一つのいわゆる無体財産ですか。登録ということはどういう権利になるのですか。それが売買譲渡の対象になるには、どういう根拠によってなるのですか。
  39. 松村敬一

    ○松村説明員 ただいま申し上げましたのは、実際に織機の例で申しますと、織機をそのまま譲ってもらっても、その通りすぐに使える場合とそれをこわしまして新しいものにしなければいけない場合とあるわけでございますから、そういう場合に実際上は新設した方の人は、新しい紡機の値段とそれにプラス若干の金をどうしても払うことになる、こういう意味でございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 これはおかしな答弁です。私はここでこのことについてごちゃごちゃ言って、この採択を何しようとは思いませんが、これは法律的に見て大きな問題です。いわゆる形のある機械そのものは譲渡の対象になる。しかし登録というこの権利これが現実にプレミアムがついて売られておるということを、繊維局長がこれを認め、通産省がこれを認めるということは、私はどうも法律的に見ておかしい。そういうことがあるならとめるという態度をとるべきだ。そうしてそういうのを消して必要なところへ登録を与えたらいいのですよ。そうでなかったら、そういった無体財産というか権利の上に眠ってあぐらをかいておるものを、ますます助長させることになる。これは法律的におかしい。これはきょうは問題にしませんが、あらためて法制局を呼んで所有権の問題として、いわゆる権利の対象になるのかならないのか、そういう点を掘り下げてみたい、こう思います。
  41. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 本件については、これは現在の一繊維局長責任ではないのです。私はこの際それを責めようなどとは思っておりません。これは歴代の通産大臣の英知と腹の問題なんです。今の大臣ならばよくおわかりのことと思いますが、運輸関係のベテランでいらっしゃるから、ハイヤー、タクシーのそういう権利を、売買、譲渡を表向きに許しているかいないかが、その他の状況をお調べになれば、結論は簡単なんです。ぜひ一つその通産大臣の英断——だから私は腹のあるところを聞きたいと、最初に前置きしたわけでございます。  次に問題となります点は、政府の輸入計画の繰り上げは、やがて繊維製品の輸入をも早く招来することに相なったようでございます。つまり輸入繊維製品、これが自由になるわけでございます。これに対して、政府は一体どのような施策で臨んでいらっしゃるかということを承りたい。私が今まで知っておる範囲でございますと、関税障壁を設けるということを、この四月の国会で行なわれました。はたしてそれだけでもって、施策としてはよろしいのであろうかということでございます。今日のこの繊維の生産態勢を見ますると、まん中の生産手段だけが制限されておる。しぼられておる。材料の方は自由でございます。また、今度製品の方も自由に入ってくるわけでございます。まるで、この経済はヒョウタン経済でございます。ぜひ一つヒョウタンからこまなど出していただきたい。
  42. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 今の御意見ですが、ちょっとお尋ねの点がよくわからないのですけれども、純綿の場合ですと、国際競争力は十分であると、実は私ども考えております。それからものによりましては、まだまだ国際競争力のないものが大へんにございます。そういうことで、それぞれ仕分けして対策を立てていかなければなりません。従いまして、緊急関税というものが、その場合に問題になるわけでございます。そういう点が事務的に順次整備されて参る、かように私理解しておりますし、今外国品が入ってきて、国内繊維に非常な脅威を与える、かような心配は、総体としては実はいたしておらないというのが私どもの現状でございます。
  43. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 しかしこの四月に、あの関税を引き上げしたいという希望をお出しになりましたときに、一番打撃を大きくこうむるのは紡毛関係であろう、こういう御意見でございました。従って、これに対して従量税、従価税を併課されたわけであります。高きは六五%、平均三八%という関税に相なり、この結果は、イギリスからも抗議を受け、それに対する施策を行なわれたはずでございます。ところが、ここに問題となる点は、もし、しかくさようであるとするならば、政府のおっしゃる通りに、紡毛製品が打撃を受けるであろう、その相手はイタリアの製品であろうとおっしゃるならば、私はお尋ねしたいことがある。それは内地の繊維製品に対しては、品質表示をしろという法律がございます。輸入毛製品、輸入繊維製品に対して、この法律を適用する用意があるかないか。
  44. 松村敬一

    ○松村説明員 御質問の品質表示法によりまして、繊維品の関係の品質を表示いたす、あるいは表示させることができるということになっておりまして、これは輸入品についても同じことでございますが、今加藤先生の御指摘は、特に輸入品について、輸入品であることを示すようにしろ、こういう御趣旨でございましょうが、これは組成を示す、何でできておるかということを表示するということになっておりますので……。
  45. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 これは、今突然繊維局長にそんなことを言うても、答弁に困られると思う。だから大臣によく訴えて、あとでけっこうですから、よく御検討を願いたい、そういう意味で申し上げておるのです。と申し上げますのは、日本の繊維製品は全部品質を表示せぬければならぬことに相なっております。ところで問題は、自由化になりますと、イタリアのものを日本にずいぶん輸入されてくる。このために、多くの関税障壁を設けられた。しかし、それでもなお日本の紡毛業界の立場からいけば、安心でもなければ、またおそらくやられるだろうと思う。コストの点において、柄の点において……。そこで私が訴えたいのは、日本の繊維製品に対しては、日本政府は品質表示を要求いたしております。ところが輸入繊維製品に対しては、そのことを要求しているのかいないのか。私は不敏にして、輸入毛製品あるいは輸入繊維製品に対して、その生産国の名前は聞き、メーカーのマークは見たことはございますけれども、品質表示というものを、いまだかつて見ておらないのでございます。このことをすることによって、イタリアの紡毛製品は、極度に制限することが可能であると思うのでございます。なぜかならば、紡毛製品は、御承知通りくずをガーネットにかけて作った製品です。材料は非常に悪いのです。何がまじっているのやらわからないのです。材料は悪いのだ、耐久力がないのだということがわかれば、いかに外国製品にノスタルジアを感ずる日本人としても、それにごまかされるほど日本人は頭が悪くないのです。従って、せっかくこういう法律があるのだから、これもあわせてやっていただきたい。つまり、繊維製品を輸入しなければならぬとおっしゃるならば、これもやむを得ぬでしょう。しかし自由化にあたっては、でき得る限りきめこまかい検討をなさって、自由化は輸入の自由化にとどまらず、やがて輸出自由化に持っていっていただくようにしていただきたい。それが私の念願です。  最後に申し上げておきたいのは、そういうように材料も自由化された、製品も自由化された、まん中の生産部門だけが輸出に関するまで制限されている、こういう間違った、アンバランス産業構造において、なおやり得る問題がある。それをぜひ——その格好でヒョウタン経済でいくというなら、それも一時やむを得ぬでしょうが、それでもなおやり得ることは一体何であるかといえば、これは第一、輸出の積極策として、私は先般五つの項目に分けて大臣質問を試みました。満足する答弁が得られません。最後に一つだけ申し上げます。外貨が割当時代には、輸出振興策としてこれが大きに功績を発揮いたしておりました。すなわち輸出ボーナス制度、リンク制度というものがございました。綿に十七万俵、毛に十二万俵もございました。これは全部なくなりました。つまり輸出のつっかい棒というものは、全部なくなってしまったわけでございます。これに対してどう身がわり、肩がわりの施策を行なわんとするのか。  もう一点は、最初お尋ねいたしましたところの三品市場におけるコストの問題に関連してであります。戦前は、これを三品と申しておりました。今日もそう申しますけれども、実は二品でございます。なぜかならば、それは原毛、原綿が自由化でなかったからでございます。自由化された今日では、どこの世界市場でも、羊毛、原綿のみならず、豚の毛まで上場されているのが資本主義の行き方でございます。私の質問は、社会主義の経済をやれと言うているのではない。資本主義の経済でもなおやり得ること、すでに世界各国、先進国がやっていること、それをやる勇気が一体日本政府にありゃいなや、そういう腹と英知があるかないかということをお尋ねするわけでございます。
  46. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この委員会ではだいぶ問題をしょい込みましたが、先ほどの田中さんの関連質問の問題、これは私も聞いていてどうもよくわかりません。これは研究します。ただいまお話しになりました品質表示の問題も、研究課題として引き受けておきます。この二つ、研究問題としてあずからしでいただきます。  それから、輸出振興としてリンク制の問題、これは最近米綿借款の場合などは、これの割当をリンク制にするといいますか、輸出の成績を基準にして半分は割当をやる、こういう状況でございますが、もう少し徹底したらどうかということであります。しかし、なかなか業界のことでございますから、あまり思い切ったリンクはできません。最近米綿借款も、もう少し金額がふえるというような形でもございますので、ふえた際は、これは輸出とリンクさせよう、かように考えております。だから、あなたがおっしゃったようにはすぐはならないにいたしましても、順次なろうかと思います。  それから、三品の問題は、冒頭に申し上げましたように、これはやはり国内においても大へんですが、輸出の観点から見ますと、安定することが絶対に必要でございます。だから、生糸などは生糸の安定帯が設けられている。だから、この三品にいたしましても、全部でなくとも、綿に対してその措置、安定の方法が講ぜられますならば、必ず他の部門にも十分影響がある、安定するものだ、かように考えております。もうすでに具体案なども検討いたしておりますから、これは一つおまかせいただきたいと思います。
  47. 田中武夫

    田中(武)委員 実は私、最終的にこの法案について締めくくりの質問をいたしたい、このように考えておりましたが、約束の時間もだいぶ過ぎましたので、簡単にしたいと思います。なお、与党の諸君も、この法案は四年越しの法案でございます、従いまして、採決にあたりまして少しの時間ぐらいはお待ち願いたい、このように思います。  先ほど通産大臣は、この二つの問題で研究したい、こうおっしゃいましたが、もう一つ研究してもらわなければいかぬ問題があるので申し上げます。それは、先ほどの久保田さんの質問に対する御答弁の中で、セメントの輸出に関連いたしまして、現在セメント業界がとっておりますことについて推奨せられるような発言がございました。この発言会議録を見ないとはっきりしたことは言えませんが、感じたところでは、独禁法違反の行為に対して、通産大臣がこれを奨励する、こういったような発言に受け取れましたので、この点につきましても御検討願いたい、このように思います。先ほど加藤委員からもるる繊維のことについて質問がございました。実はきょう、今から読み上げます二つの電報を私受け取ったのです。内容を見てみると、どうも佐藤大臣に打つべき電報を間違って野党の私に打ってきたのじゃないか、このように思いますので、一応読んでみます。「メンシ・メンプダイボウラク」ユシツカイシャオウシ」シキュウアンテイサク」ナゼヤラヌカ」」こういう電報です。発信人は関係の貿易業者のようです。もう一つは「センイボウラク」キョウコウニヨリ」ワレラキキニヒンス」シキュウタイサクセヨ」」こういう電報が来ております。これは大臣に打つべき電報を間違って私に打ってきたのじゃないか、こう思うのです。その意味において、私もちょっといい気にはなるのですが、残念ながら野党の一議員といたしましては、対策は立てられません。そこで、先ほど来加藤委員からいろいろと質問をいたしておりましたが、一点だけお伺いいたしたいのです。それは、三十三年、四年ごろにやはり暴落した場合があります。しかし、そのときよりか今日の方がひどいようで、すでに三〇%以上、株価の暴落以上だそうであります。三十三年ないし三十四年のときは買い上げ機関を発動さしたという事例がございます。そういうような応急措置をおとりになるのかどうか。この電報は大臣の方へお渡ししたい、このように考えますが、これに対する答えを、電文程度でけっこうでございますから、簡単に一つ
  48. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 先ほど来申しますように、私試案を持っておりますが、その案は当委員会で御説明する筋ではないと思います。これは一つ私の方におまかせをいただきたいと思います。
  49. 田中武夫

    田中(武)委員 まかせとおっしゃるからおまかせいたしますが、そういうような電報がどんどん来ている。これは何をかいわんやで、私の方へ何で言ってきたのか、大臣にもっと打てと言いたいようなことなので、それを申し上げておきます。  それから、本法案の改正点でございますが、これは貿易連合と輸出入調整規定その他若干でございまして、輸出入調整規定を除くならば大した問題はなかろうと思う。ところが、輸出入調整規定は、運用いかんによっては中小企業へそのしわ寄せを起こす、こういうことが心配になります。現に自主調整という名のもとに行なわれていることは、大体が中小企業へしわ寄せせられている、こういうことでございますので、そういうことがないようどういう運用をせられるか。そういうことをお尋ねいたしますとともに、これもそれに関連してのことになりますが、御承知のように、日本からアメリカの方へ運動具、ことに野球のグローブとミットのようなものがたくさん行っております。数字を見ますと、アメリカの去年の生産高が二百六十五万個、日本から出たのが二百四十万個程度。そうすると、二人に一人は日本の野球道具を持っている、こういうことなんです。これに対して、今年は百七十万個に押えろ、こういうアメリカの出方のようです。それを何か聞いてみると百九十万個で自主調整をする、こういうことになっているようですが、その自主調整が実は零細な業者にしわ寄せせられており、そのためにもう食べていけないというような事態が起こっているという事実。なお、このグローブとミットのことに関連いたしまして、われわれ先日アメリカへ行ったときいろいろ話をしたわけなんです。欧州各国、その他で、アメリカはもちろん、ジェトロが輸出振興のために努力をしておられることは大へんけっこうだと思います。しかし、ニューヨークに駒村というなまいきなおやじがおりまして、よく聞いてみるとこれはジェトロの日本人顧問、こういうことになっておるようですが、そのことについて、ここにおられる岡本委員と若干の議論があったわけです。私それを聞いておりまして感じましたことは、駒村氏の言わんとするところは、私は顧問である、顧問というものは相談を受けて初めて動くのだ、こういう感覚の上でものを言っておられる。なるほど顧問制度はどういうものかといえば、相談を受けたときに意見を述べる、これが顧問制度だと思うが、彼は、こういう問題について申しましたところ、おれはそんな話は聞いていない、あるいは、おれは部下は持たないというようなことを言っておりました。これは、文字通り顧問とはジェトロから相談があったときに動くのだ、こういう上に立っての発言であって、こういう消極的な男は困る。同時に、同じアメリカの顧問としてデューイという人がおりますが、この人は一体何をしたか、こういうことを聞いたときに、こうこうこういう輸出のときに役立ったというどんびしゃりの回答ができなかった。なるほど顧問というようなものの存在については、このときにこう役立ったということはないかもしれませんが、考えてみましたら、いろいろと話を聞いてみますと、顧問的存在はあくまで消極的な態度である、こういうことしか言えない。デューイのごときは、十万ドルか何か払っておる。従って、この顧問がそれだけの値打を発揮するよう、もっと積極的に動いてもらうよう、一つそういうような対策を立ててもらいたい、そういうことを申し上げておきます。  まだあるのですが、皆さんだいぶお待ちのようですから、この程度にしておきます。
  50. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この法律は、私ども、ぜひとも早く成立さしていただきたいと心からお願いをいたしております。これは、前国会に提案いたしまして、皆様方の御意向を聞いて、そうして所要の修正を加えた法律案でございます。もちろんこれが成立を見た暁において、法律も運用その人を得なければ、大へんな結果にもなることだと思います。御指摘のような点については十分注意して参るつもりでございますし、また、運用の途上等においていろいろお気づきの点がございましたら——必ず御批判もあることだと思います。そういう点も、今後私どもの運用の面から、また法のあり方等について、十分尊重して参りたい、かように思います。  また、顧問の問題についてのお話が出ております。これはいろいろ問題があるやに伺いますけれども、大体顧問というものは日常の仕事はあまりしないものでございまして、顧問がしょっちゅう働かなくてはならないようになりますと、それはまた……。非常に大きな問題の場合に役立たすというのが、あれを作りましたときの当初の目的でありました。おそらく直接に顧問の御厄介にならなくとも済むかもしれない、しかしながら、大きな問題にぶつかった際に一つ役立たせようじゃないか、最初からそういう意味で作ったデューイ、駒村のコンビであります。従いまして、日常の問題について、どうもかゆいところに手が届かない、こういうおしかりもございましたが、私も参りました際にそういう感じがし、デューイに直接注文をつけたこともございます。そういう点もございますので、今後なお気をつけたい、そういう趣旨でございますから、大筋は御了承願いたいと思います。
  51. 田中武夫

    田中(武)委員 大体それでけっこうだと思うのですが、ともかく受けた印象は、どこまでも文字通りの顧問で、どうも消極的である。運動具の輸出の問題等は、大きな問題なんです。そのことを、知らない、おれに言うてこないじゃないか、こういうような発言をしておる。どうも今大臣がおっしゃった顧問とは、言海か辞苑でも引くと、そういうように出てくると思う。しかし、そういうような顧問では、ことにこういう時代において、輸出振興には役に立たぬと思うのです。また、顧問が執行部に入ってくることも困る。しかし、もっと積極性を持って動いてもらうように、これは一つ大臣を通じて要請いたしたい、このように考えます。
  52. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 承知いたしました。
  53. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 お諮りをいたします。  この際、本案に対する質疑を終局するに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  55. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 引き続き本案を討論に付したいと思います。  討論の申し出がありませんので、直ちに本案を採決いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。  本案を採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  57. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  58. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 御異議なしと認めます。さよう決しました。      ————◇—————
  59. 早稻田柳右エ門

  60. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 審査に入ります。  まず、趣旨説明を聴取することにいたします。経済企画庁長官藤山愛一郎君。
  61. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 ただいま議題となりました低開発地域工業開発促進法案提案理由と、その要旨を御説明申し上げます。  わが国の経済が、最近目ざましい発展を遂げつつあることは御承知通りでありますが、他方これを今後も維持し、さらに一そうの均衡ある伸展を期するためには、解決すべき幾多の問題があることも事実でありまして、特に産業の開発の程度が低く、かつ、経済の発展の停滞的な地域、すなわち低開発地域産業の開発を促進して、地域間における所得格差の是正をはかることは、きわめて緊要のことと考えるのであります。  政府は、さきに、国民所得倍増計画を決定し、わが国経済の発展の方向と目標を明らかにしたのでありますが、この計画及びこれと同時に決定された同計画の構想におきましても、低開発地域の開発の促進及び所得格差の是正には重点を置くべきことを明らかにしているのであります。  このためには、今後、国土総合開発法及び各地域の開発促進法に基づいて、開発の促進に努めますほか、低開発地域に工業の開発を促進して、高い生産性の産業を分散させ、また農業等の近代化をはかり、低い生産性の産業自体の生産性を高める必要があります。  ことに低開発地域における工業の開発は、地域間の経済格差是正に資するとともに、雇用の増大にも寄与するものでありますので、工業開発のための政府関係金融機関による低利資金の融資額を増額する等の措置を講じて参りましたが、さらに、この促進をはかるために、新たに、低開発地域のうち、特に税制上の特別措置等を講ずることによって工業の開発が期待されるような開発の程度の低い地区を対象としまして、工業開発のための所要の措置を講ずることといたしたいのであります。これが、この法律案提案理由であります。  次に、この法律案の要旨を申し上げます。  第一点は、内閣総理大臣は、関係都道府県知事の申請に基づき、低開発地域工業開発審議会の議を経て、低開発地域内において、一定の要件を備えている地区を開発地区として指定することができるものとしたことであります。なお、北海道及び首都圏の地域につきましては、申請等に関する手続上の特例を設けることとしたのであります。  第二点は、内閣総理大臣の諮問に応じ、低開発地域における工業の開発の促進に関する重要事項を調査審議するため、総理府に学識経験者をもって組織する低開発地域工業開発審議会を置くものとしたことであります。  第三点は、開発地区内に新設され、または増設される工場の機械及び装置並びに工場用の建物については、租税特別措置法の定めるところにより、特別償却を行なうことができるものとしたことであります。  第四点は、地方公共団体が、開発地区内に工場を新設し、または増設する者に対して、事業税、不動産取得税または固定資産税の減免をしたときは、当該地方公共団体に交付される地方交付税の算定の基礎となる基準財政収入額の算定につき、特別の措置を講ずるものとしたことであります。  第五点は、国及び地方公共団体は、開発地区内の工業の開発を促進するため、必要な資金の確保及び産業関連施設等の整備の促進に努め、また、これらの施設の用に供するため必要な土地の取得につきましては、農地法等の規定による処分にあたり、特別の配慮をするものとしたことであります。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。
  62. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 以上で趣旨説明は終わりました。     —————————————
  63. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 質疑の通告があります。順次これを許します。西村力弥君。
  64. 西村力弥

    ○西村(力)委員 自治大臣がせっかくおいで下さいましたので、自治大臣に対する質問を簡単にいたしたいと思います。藤山さんは、何か御用でしたら、どうぞお引き取り願ってけっこうです。後日またやりますから。  それで自治大臣お尋ねしたいのですが、ついこの間、静岡市で自治労の自治研大会がありまして、いろいろと今議題になっておる工業誘致の問題につきまして、地方行財政を守り、住民にサービスをするという本来の立場から検討した、こういうことでありまするが、その詳細について大臣は聞かれておりまするかどうか。それを聞かれましての感想というか、それを聞く聞かないにかかわらず、現在進められておる市町村による企業誘致が、来てもらいたい一心から過大な優遇措置を講じて、みずからの上に犠牲をかぶせておる、そうして結局は住民に対するサービスが低下する、ないしは地方自治体職員の待遇あるいは労働条件というものまでにも強く影響してくる、こういうことに対しまして、大臣はどういう工合に現状をお考えになっていらっしゃるか。
  65. 安井謙

    ○安井国務大臣 静岡のその大会の内容については、私まだよく伺っておりませんが、今御指摘がありましたように、地方団体が工場等を誘致することに熱心な余りに、減税とか土地の提供というような面で、ときどき必要以上に無理があるじゃないかというような点が見受けられたこともございまして、私どもの方からも、そういうことのないようにという通牒をかつて出したこともございます。
  66. 西村力弥

    ○西村(力)委員 静岡であった自治研の大会というのは、自治労の全国組織の大会でありまして、あなたのあまり好まない団体かもしれませんけれども、これは自治行政の伸長をいかにしてやろうかという立場からの真剣な検討、そういうテーマに基づく研究集会でありますので、それについてはやはり自治省としても真剣に検討さるべきである。まあお知りにならないことはやむを得ませんが、私は、いささか不満というか、そういう気持がいたします。  ところで、この法案を作って提案するまでには、自治省側と経企庁側あるいはその他の官庁と、それぞれ事前打ち合わせをしておるだろうと思うのですが、第一番に、私は、この法律提案理由というものにいささか不備な点があるのではないかとい5気がするのです。それは何かというと、所得倍増計画に基づく地域格差の是正ということをやるのだと言うけれども、その反面、先ほど指摘したように、自治体がこのやり方によって受けているいろいろな損害なり、あるいはしわ寄せなり、ひずみなり、そういうものを是正するためにもこの法律は作るのだという主張が、やはり自治省側から強く出されなければならぬ。それは一部出ております。それは何かというと、第何条でしたか、固定資産税、あるいは事業税、あるいは不動産取得税、そういうものを減免した場合には交付税でこれを補てんするということがありますから、いささかそういう具体的な現われはありまするけれども根本において、ただ所得倍増計画のために地方分散をはかるのだ、その企業が来やすいようにするのだというばかりでなく、それを本気になって受け入れておる自治体側も、無理している、そういうひずみというものを埋めるのだ、企業が来やすいようにするばかりでなく、自治体がこの問題から置かれてきているいろいろな犠牲というものを埋めるのだ、それで正常な自治体行政ならしめるのだということが、この法律立案の一つの柱となってこなければならない、こういう工合に考えるのです。その理由のもとにおいて、一方が薄い、自治省側の主張、私の言うもう一本の柱というものが薄い、こういう点につきまして、私はいささか十分でない気持がするのですが、そういう点はどういう工合になっておりますか。お答えを願いたい。
  67. 安井謙

    ○安井国務大臣 この法案に、どうも自治省側の主張と食い違うというか、本来の主張と多少合わないものがあるのではないかという趣旨の御質問かと思いますが、実は先ほどお話のありましたような、地方自治体が企業を誘致するというだけの目的で勝手な行き過ぎがあっては、自治体自体に迷惑がかかる場合もあり得るということで、この点については、実は従来も注意をいたしておったわけであります。ただ、今お話のように、地域格差をなくしていくという建前から、いろいろな方策が目下とられておると思うのであります。そういう意味からは、地方の小都市に工場が誘致されるということを、各市町村が合議の上で、十分合理性をもって今後進めていくということは、大へんけっこうだと思います。今度のこの法律が施行されますと、そういう意味で、いわゆる減税等の措置に対しては、法的に交付税等で十分めんどうを見るということに、積極的に乗り出しておるわけであります。自治省も、そういう地方開発という観点から計画的に進められていきます措置については、大いに積極的に協力いたしたい、こういうわけであります。   〔委員長退席、岡本(茂)委員長代理着席〕
  68. 西村力弥

    ○西村(力)委員 お話でありますけれども、工場が地方進出する、それに便ならしめるという方向考え方だけが先にいって、そのことによって自治体がこうむるいろいろな負担、損失、そういうものをもっともっと十二分に埋めてもらわなければならないのだという主張が、自治省側の主張としてはもっともっと強くあってしかるべきだ、私はこういう考えを持つのです。では大臣にお聞きをしますが、そういう工場がいって、住民が一人ふえた場合に、そのためのその自治体の負担というものはどのくらい増加するか、そういう算定は、あなたの方でなさっていらっしゃいましょうか。
  69. 安井謙

    ○安井国務大臣 突然でございますが、一応のものは事務当局からお答えさせたいと存じます。
  70. 松島五郎

    ○松島説明員 ただいまお尋ねの件でございますけれども、これは元値になります団体の人口によって違ってくるわけでありまして、人口百万のところに一人ふえても、これは百万の中に吸収されてしまう。しかしながら、十万になり、一万になり、あるいは五千になりというふうに、人口段階が低くなるに従いまして、一人、二人の増加した人口を吸収するために要します経費というものは違ってくるわけであります。そういう点から、一律には申し上げかねますけれども、現在の交付税制度は、御承知通り、いろいろな測定単位というものを使っておりますけれども、非常に大きな部分を占めておりますのは、たとえば消防費にいたしましても、あるいは学校などの経費にいたしましても、児童の数というような形で、間接的に人口を基準にとっておるというようなところから、人口がふえるに従いまして財政需要がふえていくという形をとっておるわけであります。しかも、その財政需要は、御承知通り段階補正という補正を使いまして、人口の少ないほど一人当たりの経費が割高になるという形で補正をいたしております。従いまして、今申されましたような点は、非常に相対的な問題でありますので、必ずしも幾らかかるのだというふうには私どもまだ突きとめておりませんけれども、大体、従来の経験に徴しまして、段階補正によって補正するというやり方をしておるわけであります。
  71. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私の言うのは相対的だということでございましょうが、低開発地域開発の意味の工業誘致、そういう地方団体の規模を前提としてお尋ねをしておるのです。この件については、経企庁の開発局長もいらっしゃるようだが、あなたの方ではどうですか。それはこれにちょっと書いてあるので、大臣お読みになったらよかろうと思うのですが、朝日ジャーナルの十月二十二日号にこういうことが書いてある。「経済企画庁が経験から得た結論によると、一万坪の工場ができると、住宅、教育施設や、関連産業などでさらに三万坪の用地が必要になる、ということになっており、また工場誘致によって人口が一人ふえれば、財政需要が二万円ふえる、といわれている」、こういうことを助言者である宮本憲一という金沢大学の助教授が発言しているわけです。これによると、そういう工合にあなたの方で経験から割り出したように書いてありますが、経済企画庁ではどうですか。
  72. 曾田忠

    ○曾田政府委員 今先生がお述べになりました資料につきましては、実は申しわけありませんけれども、私どもは十分よく存じておりません。ただ、低開発地域に工業が開始されます場合におきまして、つまり当該地区におきまして二次産業のウエートが相当大きくなっていく場合、将来においてはその市町村の財政力が相当豊かになるのじゃないかという前提で、この法案考えております。
  73. 西村力弥

    ○西村(力)委員 松島財政課長、どうですか。前提が、相対的ではなくて、低開発地域といわれたようなところにいった場合に、その財政需要が一人について何ぼくらい増すか、こういう前提を立ててのことに対しては、答弁はどうですか。
  74. 松島五郎

    ○松島説明員 大へんむずかしいお尋ねでございまして、先ほど来申し上げますように、人口の増加が一定数以上に達しませんと、たとい非常に小さい団体でも、ある程度の既定財政規模に若干のプラスで吸収し得る余地はあろうかと思います。たとえば学校の規模にしましても、御承知通り、町村にいきますほど、一学級の生徒数が三十人なり四十人なりというような状態であるわけでございます。これは一律には申せませんけれども、一般的にそういう傾向がございます。従いまして、それが五十人なり、あるいは、現在の小学校では五十六人でございますが、かりにその程度まで入れるといたしますれば、その程度の増加でございますならば、あえて学級の増設という必要はなくて、生徒の増加に伴う学級経費と申しますか、経常経費の増加にとどまるわけでございます。ところが、それをこえますと、学級増設が問題になりまして、一躍大きな経費になって参りますので、これは、それを受け入れます団体を具体的に見て参りませんと、受け入れる団体について一定の想定をして試算することは可能でございますけれども、一律にどうかという計算はちょっとむずかしいのじゃないか、かように考えます。
  75. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そうだろうと思うのですが、いずれにしましても、教育施設、住宅あるいは関連産業、そういうものをいろいろと地方自治体で金をかけて考えていかなければならぬ、そう  いう形でなく、やっぱり好ましいことではないけれども——今現実に、私の県なんかではこういう事例があります。それは、工場を誘致した。ところが、その敷地購入にあたって、どうしてもその会社側で坪三百円しか出さぬ。ところが、それを手放す農民は、ぎりぎりにしぼっても坪千二百円だ。その差額九百円をどうやって埋めるかということになるわけです。それでだめなら来ないということになるものだから、この町では九百円の半分の四百五十円出す。それから工場の行く部落において財産を処理して四百五十円、あわせて九百円を補給してやったという。それから、その工場ができれば、そこに通ずる道路を相当整備しなければならぬ。また、水路その他も直さなければいかぬ。そういう場合に、一つの工場を誘致するために、自治体のなさなければならない、あるいは現実になしている、そういう負担というものは相当大きいのです。私たちは、このことは痛しかゆしです。私も、低開発地域ぎりぎりの、ほんとうにクマの出るようなところにおりますから……。ところが、いろいろそういう事態があって、やはり工場誘致そのものがずばりと地方開発に寄与するとは言えないのだ。そうは言うけれども、なおかつやはり工場でも誘致してやらぬことには、このおくれた地域の所得格差を縮めることができないということで、この希望ははかないものであるかもしれぬけれども、そういうことに希望をかけて無理押しをするということになりますので、これは自治体の自己責任であるかもしれぬけれども、やはり工場を誘致することによる自治体の負担というものは、相当大きいものであるといわざるを得ない。ですから、自治省の立場は、それは全面的に埋めるという基本方針を立てていかなければならぬのじゃなかろうか。それを立てて実現しないと、住民のサービスや、先ほど申しました自治体職員に対する財政のしわ寄せという形になって現われてくることになりますので、工場誘致に伴う低開発地域の自治体の負担となる分は、国の施策で全面的に埋める、こういう基本方針を強く貫いてもらわなければならない、こう私は思うのです。これは、大臣だって異議のないことじゃないかと思う。さてそれをどうやるかというと、やはり詳細に検討して、自治体そのものを十分に把握して対策を立てていかなければならぬ。この法案で不備な点は、これから自治省の主張によってこれを修正していくというような方向をとってもらわなければならぬと私は思うのですが、いかがですか。
  76. 安井謙

    ○安井国務大臣 御趣旨のことはまことにごもっともな点もありまして、弱小自治体あるいは低開発地域のある自治体が、ただ工場さえ誘致すればいいのだ、どんな犠牲を払ってもやればいいのだということで、逆に自治体の財政負担がふえるといったようなことは好ましくないので、今まででも十分注意もし、指導もしておったわけであります。従いまして、今後そういう工場を開発させることによって、その土地全体が潤って税収もふえる、あるいは雇用も増大するということに相なるという見込みで、この工場誘致をできるだけ計画的に進めたいという意味で、この法律案は、地方の知事がその町村とも十分協議をして申請をし、そして地域の開発を進めていこう、こういう計画でありますから、私どもこれは今後の開発のために非常に好ましい方向であろうと思いまして、そのために必要な税の減免措置に対する財政上の補給といったようなものも、この法律考えておるわけであります。
  77. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは、都道府県知事と相談するのは、低開発地域の開発地区の指定の場合でありまして、どういう工場をどういうところの相談は、この法案にはちょっと見当たらぬように思うのですが、どうですか。どこへどういう工場を誘致して、そして地方自治体の負担にならないように都道府県知事と相談してやるということは、どこにあるのですか。
  78. 安井謙

    ○安井国務大臣 もともと今度の開発地域の指定が、地方知事の申請に基づいて総理大臣がきめる、こういう建前になっておりますので、その自治体の知事が申請をいたします場合には、十分にその指定を受けるべき自治体と協議も行なわれることと存じております。
  79. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは、この地域を開発地域と指定してもらってこの法律の恩典にあずかりたいというので、それは相当競願の形になってくるのじゃなかろうかと私は見ておる。このことによって、この企業というものがどうこうというところまでの相談には、なかなかいかぬのじゃないかと私は思うのです。それはまあよろしゅうございます。  ところで、この法律で不均一課税ということを認めたことを前提として、そうした場合にはこれを埋める、こういう工合になっておりまするが、不均一課税というものの許される限界は、「公益上その他」とこうなっておる。原則上は公益上ということになっておるわけでありますが、この公益上というものの解釈は、幅広くもできますし、狭くもできるわけです。このところは、自治省の基本方針は一体どっちをとるのか。
  80. 安井謙

    ○安井国務大臣 「公益上その他」ということになっておりまして、これは一般の目的が公益的なものに著しく違反しないとか、背馳しないとかいうものであれば相当幅広く考えてもいいのじゃないかと考えております。
  81. 西村力弥

    ○西村(力)委員 そういうような工合に考えられると、これは税の公平という原則をみずから放棄したということになる。そうすれば、その地域における既存産業というものが、その競争力において相当のギャップが出て参ります。しかもまた、税負担の公平という原則をくずすというのですから、あなたのおっしゃるように、公益に反しない限りは公益上その他に入れてよろしいというような工合になると、これは事重大だと思うのです。そういう解釈をとるということは、自治省の見解として私は初めて聞きましたが、これは、できるだけ限局するということは当然じゃないかと思うのです。公益に反しないなんといったら、そういう広義の解釈をしたら、道ばたでモクを拾って歩く人だって、これは道をきれいにするから公益上に利しているということになるのです。そんな広義の解釈は、自治省としては、今の答弁は訂正してもらいたいと思う。
  82. 安井謙

    ○安井国務大臣 ちょっと言葉が足りなかったかもしれません。「公益上その他」と書いてありますので、たとえば、工場ができるというのが一体何が公益だ、これは単に企業者が企業を作るだけのものじゃないか、金もうけのためじゃないか、こういうふうにとられますと、なかなかむずかしい議論も出ますので、そういう意味では、公益に反しないという意味から広くと申しましたが、今西村さんのおっしゃるように、何でもかんでも広義の解釈をして、できるだけ広く広げて制限なしにやるのだという趣旨でないことは、御指摘通りでございます。
  83. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは不均一課税というものの特例を地方税法か何かに規定しておる理由は、相当やむを得ないというときに不均一課税も認めるということ、こういう趣旨に立っておるのでありまして、これは地方に寄与するからとか、あるいは公益に反しないからとか、地方自治体でこれを希望しているの、だから、こういう理由だけでそういう課税を認めていくというようなことは、相当注意をしないと、問題をはらんでくると私は思う。自治体側としては、やはりせっかく来てくれた、それはお百度踏んで話をして、そしてとんでもない条件までのまされても、みんな目をつぶって来てもらっているので、そういう税の特例なんかについても、最初からのまされてきているのだから、そうやるだろうと思うのですが、この県の指導というものは、税の本質的な立場に立ちましても、自治省としてはこれは相当指導しなければならぬ、こう思うのです。そういう点にあたりまして考えられる点は、ではそういう取り扱いをすることを認める限界、基準というものをどういうところに求めるか、こういうことになりますが、そういう基準の問題が、たとえばあの工場を置いて雇用がどれだけ拡大した、こういうことを基準にするとか、直接的な雇用というものがどれだけ拡大したかというようなことを基準にするとか、何かそういう基準というものは、政令その他において考えらるべきじゃなかろうか、こう私は思うのです。ただばくとしたる考え方で、「公益上その他」に該当するから、こうむちゃらくちゃらとやったのではやはり問題がありますので、特別措置をやる場合の基準というものが相当厳密に立てられていかなければならぬじゃなかろうか、こう思うのです。これに対する御検討はございませんか。
  84. 安井謙

    ○安井国務大臣 これはお話通りでありまして、非常に野放図もなく広がっていくというような一面の弊害は、十分警戒しなければならぬ。一定の政令等によりまして、むやみな広がりになるとか、あるいは弊害の現われないように、十分気をつけた指導はいたしたいと思います。
  85. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは十分注意してもらいたい、こう思うのですが、私が言うのは、端的に言いますると、第八条の地方税法というものの取り扱いにおいて、基準を政令で相当定めるようにするか、指導にとどめるか、どういうことになるかということ、その点を一つ明確にしてもらいたいと思うのです。
  86. 安井謙

    ○安井国務大臣 これは第八条にありますように、一応の政令で定めた基準内での措置、こういうふうに考えております。
  87. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それでは、その政令の基準というものを御検討ありますれば、その概略を示してもらいたい。
  88. 大村襄治

    ○大村説明員 ただいまお尋ねの点でございますが、現在関係方面と協議の上検討中でありますが、大体の方向におきましても、たとえば、ただいま御発言趣旨からいって、一定の制約を置くというような点につきましては、たとえばこの法律自体が新設、増設に限られております。いわゆる改良は含まれておらない。そういった趣旨からいたしまして、その増設なり新設に伴う雇用の増加数に一定の限度を設ける、あるいは取得された土地等の資産が必ずその用途に一定の期間内に充当せられるとか、そういったような要件を現在検討しているわけであります。さらにこの第八条関係地方税の公益上の減免に基づいて、当該地方団体の減収分について交付税の対象としてどこまで見るかという関係につきましては、この法律に上がっております事業税、固定資産税、不動産取得税、これらにつきまして、他との均衡も考慮しながら適切な基準を設けたい、今そういう方向検討中であります。
  89. 西村力弥

    ○西村(力)委員 だいぶ人もいなくなったのですが、国政の審議は熱心であるべきでありますので、しばらくがまんを願いたいと思うのです。そして次回の審議の際には、自治大臣においでを願わぬでも済むように、こう思っておりますので……。  今のお話で、政令の中身についてはまだ私たちはこれを把握することが不可能ですが、既存産業が相当影響されるという点が一つと、それから一つは、やはり地方に出ていこうとする企業が無理をいうことを牽制するという意味も含めていかなければならぬじゃないか。これを野放しにしておきますると、せっかくこういうものを作って新設企業というものが優遇されておるにもかかわらず、なおかつ、条件というものは少しも緩和されないということになる、こうなるだろうと私は思うのです。それは、条件はその地方自治団体に負わせるだけ負わせていって、そしてこの所得税の優遇措置とかその他の措置の取り分は、全部それにかぶせていく、それは取っただけ得だ、こういうことになってきては困るのです。こういう優遇措置をしたならば、端的な悪い言葉で言うと、企業のそういうわがままというか、そういうものはやはり牽制、制限されるという方向に持っていかなければならないと思うのです。そういう意味において、私は、そういう政令は相当検討されなければならないと思うのです。二つの意味から、その地域の競争関係にある既存産業というものがあまり不利な地位に立たないようにすること、もう一点は、そういう進出をはかる企業というものがみずから自粛してくるような方向に持っていかなければならない。この法律はせっかくできたけれども、自治体の受け入れ条件というものが少しも緩和されないとするならば、われわれは、この法律はいたずらに大企業奉・仕とか独占奉仕とかいうきめつけ方をしなければならない法律になってしまうと思う。その点は一つ十分に検討してもらわなければならぬ。ただいまの参事官のお話では、まだどういうことを考えていらっしゃるかわからぬ。何もないと言ってもいいくらいです。言葉は悪いのですが、それはお許しを願いたい。  ところで、せっかく税の減収分を埋めるんだという工合にずっとなっておりますが、私は、この点が少し足らぬところがあると思う。それはなぜかと言いますと、事業税でも、これは事業税としてその自治体が条例なら条例を作って事業税の率とかなんとかを低くして負けてやったという分だけを補てんする、こうなっております。ところが第七条では、租税特別措置法でもって、所得というものは初年度においてがっぽりと削って、損金に落としているわけですね。だから、そのときの税というのはうんと少ないのです。事業税の損失補てんについても、この租税特別措置法によって失なわれたものを補てんしていかなければならない。これは都道府県民税、市町村民税においても、同様のことが言えると私は思う。こういうところが十分に補てんしたとは言えないと思うのですが、それについてはどうですか。これは事務局でけっこうです。
  90. 松島五郎

    ○松島説明員 ただいまのお尋ねの減価償却に伴います事業税等に自動的にはね返って参ります分は、本来の事業税なり県民税なりが減るわけでございます。御承知通り、現在の交付税の制度は、その団体の意思によらずして減収が起こるというような事態が生じますならば、それは当然交付税の算定上基準財政需要額の減少となって現われる、その差額は交付税の分となってふえていくという仕組みになってくるわけでございます。従いまして、減価償却の影響で事業税が当然減少するという分は、普通交付税の従来の方法によって補てんされる、こういうことになるわけでございます。
  91. 西村力弥

    ○西村(力)委員 それは十分に入るかどうか。あなたの方では交付税にみな入った、入ったと言いますが、交付税というのは、酒税とか所得税、法人税の約二八%、調整が何ぽかあるでしょうが、そのワク内でやるのですから、結局これは優遇措置といっても、その交付税の資金という中の内部操作にすぎない、こういうことなんです。あなた方はだいぶ頭のいい人ばかりで、何も入った、かにも入ったという工合に計算はなりますけれども、一体金が入ってくるかどうかわからぬ。だから、交付税の内部操作で、あっちをやったりこっちを優遇すればこっちが減るにきまっているのですから、そういうことだけで物事が処理せられたと考えることは、私は、これはあまり喜んでもおれないのじゃないかと思うのです。ですから、交付税の上積み等をして最低限特別交付税でそれを見るんだ、こういうような方向であるとすれば、まだよほど話はわかるのです。松島君は、自治体の責任によらざる減収は交付税で見るんだという交付税の計算の方式をお示しになりましたが、交付税のワク内操作だけでは、決して優遇だとは言えない。いたずらに喜ぶことはできない。これに対する解明はどうですか。
  92. 松島五郎

    ○松島説明員 御指摘通り、交付税の総額が一定であります以上、甲の団体か乙の団体か、団体間の問題でしかないのじゃないかという点は、お話通りでございます。その点は、特別交付税にいたしましても、特別交付税は交付税の総額の六%というふうに額がきまっております以上、これまた甲の団体にいくか、乙の団体にいくかという問題であるわけであります。ただ、そういうように考えました場合におきましても、全体を見まして、それが地方財政の上に大きな影響を及ぼすというような事態に相なりました際は、交付税の繰り入れなりあるいはその他の財政措置をどうするかという、もっと大きな観点に立って問題を考えなければならないと思います。ただ、団体間の多少の操作と申しますか、やりくりで処理のつく範囲か、あるいは地方財政全体からさらにプラスをもって考えなければならない問題であるかという点に問題がかかってくるのじゃないかというふうに考えております。   〔岡本(茂)委員長代理退席、委員長着席〕
  93. 西村力弥

    ○西村(力)委員 私は、そういう点、もう少し検討されていいんじゃないかと考えるのです。私の言わんとするところは、地方自治体は、工場誘致をすることによって、この法律で埋められるようなことでなく、もっともっと大きい犠牲を払わされておる、こういうことでありますので、このことによるあらゆる地方団体の負担というものを完全に補てんする、そして自治体の行政水準を落とさずにやる、これはやはり自治省の責任においてやってもらわなければならぬということで、そのために十分検討を願って、これに対する今後の修正の意見なり何なりを、ぜひ一つ自治省側から発議してもらうということが必要ではなかろうか。そういう負担の解消部分という消極的な意味ではあるでしょうけれども、やはり企業がもっともっときやすいように、またきたあとの自治体の側の面も、十分に考えてもらわなければならないと思うのです。それについては第九条においても、地方団体が開発に寄与する必要資金確保に努めなければならぬ、こういう訓示規定がありますが、具体的にはどういうふうにするのか。これも相当真剣に考えて参らないと、すべてが自治体行政にしわ寄せになって参りますので、こういう点も一つ十分に御検討願いたいと思います。  時間になりましたので、以上のようなことを大ざっぱにお尋ねをして終わりたいと思いますが、最後に、自治省側としては、この開発地域に指定をする都道府県、あるいは狭くいって市町村に対しては、どういう検討をなさっておるのか。企画庁としても、この法律の主管庁として、開発地というものをどういうふいにするか、どういう基準で指定するかということで政令なんかを検討中だろうと思うのですが、これは自治省においても、相当その立場の意見というものが必要だろうと思うのです。これについては何か御検討がありますか。
  94. 安井謙

    ○安井国務大臣 この指定をやるにつきましては、十分現地の知事と市町村団体と協議をされ、合理的なものだと思われる場合に指定がなされるわけであります。自治省も当然その際に合議を受けると思いますが、自治省の考え方といたしましては、財政力支出が一定の標準以下だ、こういうものを特に重点に置いて、しかも開発可能なところというものを重点に置いて考えていきたいと思っております。
  95. 西村力弥

    ○西村(力)委員 きょうはこれでやめますが、急いでやりましたので、この次またおいで願うかもしれませんが、きょうはこの程度にします。しかし、よその人が出席を求めることについては、私はどうもできません。以上で終わります。
  96. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は、次に質問しようと思いますが、きわめて具体的に質問したいと思いますので、それに対する資料の要求をいたしておきます。だいぶたくさんありますから、一つ書きとめていただきたい。  第一は、ここ五カ年くらいの間に、都道府県並びに市町村で工場誘致条例の制定をしたのが、全国で、府県別でどのくらいあるのか。その内容は大体わかっておりますが、おもな内容はどうかということです。これは税金の面と、御承知通り、ほかのいろいろな施設の面その他がたくさんあります。ありますが、この内容を、こういう法案を出される以上は準備ができておるはずですから、一つ一覧表にしてはっきり出していただきたいということが一つ。  第二、特に最近五カ年くらいの間で工場誘致等が行なわれた市町村におきまして、大体都市計画等が行なわれる場合が多いわけですね。その都市計画が行なわれた場合の具体的な問題について、一つ一つ注文を出します。それは道路は国道、府県道並びに市町村道であります。これのいわゆる根本的に、つまり新しく作る場合、それから補修、いわゆる改装する場合、そしてそれが舗装と非舗装とがあるはずです。こういう場合におきまする補助率は、どうなっておるのか。そうしてその補助率に付随いたしまして、府県でもっていわゆる追加補助をしている場合があります。こういう場合の内容がどうなっておるのか。これは道路です。これは橋も含みます。橋の場合もいろいろあります。御承知通り、木橋の場合その他いろいろありますから、それの担当のいわゆる中央におきます官庁ですね、建設省であるとかあなたの方とか、いろいろあるはずです。これは道路と橋であります。そのほか、水道についてはどうなっておるのか。これも普通水道、上水道の場合と、簡易水道の場合と、あります。その場合のいわゆる補助率がどうなっておるのか。それから下水の場合がどうなっておるのかということ、それから屎尿処理の施設についてどうなっておるかということ、補助の関係、それを出す官庁の場合ですね。それから公園その他の公共用地がたくさんできておるはずであります。そういう場合におきまする補助率その他、そういったものはどうなっておるか。  それから工場用水、工場汚水あるいは煤煙等の処理の施設をした場合におきまする補助なり何なりの関係は、中央で出しておるのか。出しておれば、それに要する経費の何ぼを補助するのか、あるいは府県で出しておる場合にはどうなっておるのかという問題、こういった点です。  それから、学校を今までの木造その他から鉄筋コンクリートにする場合が、大体多いわけですね。そういう場合に対します補助の実態は、どうなっておるのか。それから保育所、公立の病院、これらの改造ないしは拡充に対します補助はどうなっておるのか。  それから工場用水の整備についての工事に対する補助がどうなっておるのか。  それから工場誘致をすれば、必ず農地がつぶれて、今までその農地にくっついておった土地改良がやり直しになります。御承知通り、国営のやつをやる場合はほとんどありません。県営もしくは団体営であります。あるいは小団地であります。こういう場合のやり直しの経費の補助が、どうなっておるのか。その場合に、大てい過去の借金があります。その借金の始末をどういうふうにしておるのか。新規にやる場合の補助率は、どうなっておるのか。そうしてそれに対します新しい資金の提供は、どういうふうにやっておるのか。この資料を担当の部局同時に出してもらいたい。  それから都市計画について、今までの中に都市計画部分が大部分入りますけれども、特に都市計画について申し上げたいのは、都市計画税、これは御承知通り、千分の四になっておるはずです。この都市計画税の市町村別ないしは府県別の総額は、現在幾らになっておるのかわかっているはずです。大きなところ、特に工場誘致等が行なわれた場合のそれがどうなっておるのか、そういう点を区分けができますれば、区分けをして示してもらいたい。  それから都市計画の、特に区画整理に連関いたしまして、減歩をとられておるはずです。減歩という言葉はおわかりにならぬのじゃないかな。減歩がわからないようじゃ、とてもこういう問題は扱えない。実際には、大体減歩の率が、町村によって、またこういうものの進め方によって、うんと違います。その減歩の大体の内容と、一番大きいのと少ないの。それから全体として多いのはどうか。減歩をとる場合に、工場に買収された土地が、減歩負担の基礎になっておるのかどうか。これは基礎になっている場合と基礎にならぬ場合とあります。この点を区別をして、わかったら示してもらいたい。  それからもう一つ、減歩に連関しまして、減歩所要地、要するに、減歩ということをはっきり言えば、公共用地をただ取ることです。その場合に、やり方は二つあるわけです。要するに、道路その他の公共用地を都市計画であらかじめ買い上げる場合があります。そういう場合の例がたくさんあるのかないのか、こういうこと。  それから都市計画について特にこれから問題になりますのは、部落移転もしくは住宅移転の場合の補償がどう行なわれているかということであります。これは必ず出てきます。一番解決の困難な問題です。その実態はどうなっておるかという点を、一つ実例があれば示してもらいたい。特にその負担をどこでやっておるかという問題であります。  それから御承知通り、農地については、いわゆる赤線、青線と称して、そのほかの国有地があります。これは面積だけの場合が多い。実態はわかりません。実際には、特に土地改良等が行なわれた場合においては、非常に入り組んでいまして、これはほとんど登記面上で整理ができておりません。しかし、相当の数になるはずであります。これは国有地ですから、規則からいえば要するに大蔵省所管であります。従って、いつも問題になるのは、この国有地を市町村等がいわゆる会社側に無償提供する場合が相当多いのであります。あるいは都市計画用地として無償没収をする場合が相当多い。しかし、これは一つの問題です。そういう国有地の比率、これは赤線、青線並びにそれ以外の土地があります。こういうものの実例をどういうふうに扱っておるかというふうな点ですね。大体そのくらいの点を、大へんめんどうな資料要求をして済みませんが、しかし、この次には、御承知通り、新産業都市計画の問題が出てくるのであります。こういう点を、ほとんど各官庁でも、政党でも、議会の人も、無視しております。私どもは身をもってこういう問題の解決に今まで当たって参りましたので、多少わかるわけです。そういう点。  それからもう一つ、都市計画について一番大事な問題は、こういうむずかしい問題があります。特にこれは住宅関係のニュータウンを作るときに起こる問題であります。それは、都市計画の区画整理をした場合に、あとのいわゆる土地の交換分合——この交換分合のやり方について二つの例があります。これの実態を、一番極端なもの二つを出してもらう。こういうものは、大体建設省ならばわかるはずであります。住民側に非常に都合のいい場合と、会社なりそういう新しいものに都合のいい場合と二つあります。ですから、極端な場合二つを比較して、どういうふうにやったかということを、一つ資料を出せたら出してもらいたい。これは少しむずかしいかもしれません。一つこの程度の資料は、大へんごめんどうですが——しかし、めんどうなようですが、少なくともこういう法案を御用意して出される以上は、それだけの点の検討がなければ、私は出せないはずだと思うのです。ですから、そういう点をはっきり出していただきたいと思うのであります。
  97. 安井謙

    ○安井国務大臣 いろいろ御注文がございまして、できるだけ調べたいと思いますが、自治省だけでもやりにくい問題がたくさんある。主管省にもお願いして、でき得る限りは資料を出して、総まとめは企画庁の方で取り扱いを願うようにしたいと思いますので、よろしくお願いします。
  98. 早稻田柳右エ門

    早稻田委員長 できるものから一つ出していただきます。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる二十六日木曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後二時十三分散会