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佐藤国務大臣 ただいま
久保田さんから
しろうとだがと前置きされて
お尋ねになりました。また御
意見もつけて御
質問でございますが、実は私
どもが苦心し苦労しておるもの全部にわたった
お尋ねでございます。結論から申せば、当面いたしております私
どもの
設備投資の
抑圧、これがただいま御
指摘になりましたような点に支障がないようにという
考え方でございます。少し詳しく
説明してみますと、
最初七月に
産業合理化審議会で
設備投資の
抑制を
考えました。そうして一割
縮減をしよう。そのときのデーターになります
数字は、十分のものがなかったかもわからないと思いますが、大体
通産省の
関係の
設備投資としては一兆八千億
程度が予想されておった。これの一割減というところで一兆六千五百億、こういう
計画を立てたのであります。これはペーパー・プランでございますから、そういう
計画が必ず立つわけであります。一兆六千五百億、こういう
数字を立てた。ところで、その一割
縮減を指導し発表した後のその後の見通しを今度立ててみますと、なかなか一兆六千五百億にならない。どうも一兆六千九百億か一兆七千億
程度になるのではないか。これでは総体の
産業構造から見ていわゆる
設備抑圧の効果を生じない、こういうことでございますので、今度はさらに
合理化審議会の議にも諮りましたが、同時に各業種について
個々に相談をいたしまして、そうして
個々の業界からの申し出とそれに対する当方の
行政指導というものとあわせて、ただいま私
どもが
通産省関係で予想する
金額は大体一兆六千億前後、だからその一兆六千五百億よりさらに五百億削った
金額を一応の目標にいたしております。その場合に問題になりますのが、ただいまそういう切り方をすれば合理化について不都合を来たさない、貿易の
自由化に備える対策として必要なものはまかなえる、あるいは市場の
シェア獲得というような点は、こういうことで
過当競争の防止が可能か、こういうこともいろいろの見方をいたしました。まず切りました際は、生産に直接影響のあるものは最後の
段階に残す、生地に直接
関係のないものでいろいろあるのではないか。工場を作る場合において同時に本社の建設等を必ずやっておりますし、あるいはこの際に相当
膨大な土地の手当をしたいというようなこともありますし、そういう点も将来のことを
考えると必要には違いございませんが、背に腹はかえられないと申しますか、急場の問題としてはできるだけそれを
押えていただく、あるいは厚生施設等、これは生産に
関係のあるものでありますが、幾分か時期を延ばしていただくことは可能じゃないか。その辺は
一つよく相談していただきたい、こういうような
考え方で業界の自主的な相談をまとめ上げたのでございます。
今御
指摘になりますように、
設備投資という事柄を今やりかけておる
事業、その工場
自身を九割で切るとか、こういうことのできないことはよく
承知いたしておりますので、金の使い方でただいま申し上げるようなことがあるのじゃないか、あるいはまた工事の進行工合等で、工事にかかる時期をやや引き延ばすとか、こういうような
方法もあるだろう。しかし、でき上がったものについて支払いを延ばすというようなことは最も拙劣な策だから、それは
一つ避けてくれ、こういうような
意味で、各
関係業界との相談を緊密にいたしたのであります。そういう場合に、ただいま御
指摘になります
鉄鋼だとかあるいは石油だとか、こういうような
産業についてはいの一番に実は相談を持ちかけたのであります。ことに
鉄鋼自身にしてもまた石油にしてもエネルギー源としての、これは双方とも
基礎産業でございますから、将来のことを
考えますと、いたずらに生産力を
抑圧することは、
所得倍増計画にも支障を来たすおそれなしとしないということを
考えますから、ただいまのような点を避けまして、いろいろ相談を持ちかけて参りました。具体的に申しますれば、たとえば溶鉱炉などにいたしましても、あるいは平炉等の定期検査その他等がございますが、場合によりましたら、そういう事柄を
状況等を勘案して少し期間的に延ばすことも可能じゃないか。そうして生産を下げないでただいま申し上げる所要の
設備を遂行していく、こういうことを
一つやろうじゃないか、あるいはまたお互いが得意の業種があるのだから、その得意の業種を伸ばすことについてはわれわれもできるだけ力をかすけれ
ども、いたずらに
経営を
多様化することは
鉄鋼業自体においても十分慎んでいただきたい。そういうことでないと、ここらに
過当投資の競争が始まる、こういうようなことで、業界との懇談は、よほど
内容に立ち至っての
お話をいたしたのであります。しかし、もちろん
大臣と社長ではそういう事柄は要領を得ないのでありますから、さらに
事務担当の重役と
事務当局との間で折衝を遂げていく、そういうことでただいまのところ、先ほど申しました一兆六千億
程度に
押える協力を得て参ったのであります。非常に困難なことである。ペー・プランで
縮減の
計画は立ちますけれ
ども、これを実地に行ないます場合に非常に困難がある。ことに各会社とも工事を始めた時期が同一ではございませんから、スタート・ラインに立っておるのがそれぞれ違っておりますから、そうすると今までやったものはいいけれ
ども、おくれたものはばかを見る、こういうことがあったり、あるいはまた正直に
政府の指示に従って協力をした、どこかでその
政府の指示を了承しないで勝手なことをする、いわゆる正直者がばかを見るような結果になりはしないか、こういう事柄も業界から忌憚なく
指摘されております。そういうことにならないようにというので、まず、全部の業界を集めて話をしますが、さらに
事務当局同士で話をしますが、その前には業界
自身の自主的な相談によりましてお互いが
抑制し合う、そして業界
自身で
政府に対してこういうようにするという案を持ってくるというような指導をいたさせたのでありまして、その点は比較的円滑に参ったのではないか、かように実は思っております。しかしもちろん一回や二回の会合だけで、複雑な経済界の問題が簡単に片づくとは思いませんから、
通産省としてはあらゆる機会に業界と緊密な連携をとりまして進めていくということを、今日も怠らないつもりでございます。ただいま仰せになりました
経営の
多様化の問題な
ども、この
意味においては私
どもが非常に気をつけなければならない。ことにこれが商社
関係においてしばしば露骨に出て参っておるのであります。だから商社の本来の性格から見まして、とにかく貿易に
重点を置いてもらいたい、どうも国内の卸の問屋筋と同じような
仕事をしたり、同時に商社でありますから問屋、小売と両方の
関係をやられては実は困るのだから、なるべく貿易
関係に
重点を置くように商社にもいろいろ指導しております。ことに最近は商社が土地を所有し、生
産業者と関連を持ち、非常に各方面に手を出しておるように思います。ただいま
久保田さんが御
指摘になります農業部門あるいは養鶏、養豚あるいは卵の加工とか、いろいろ問題が起きておるようでございますから、今の自由経済のもとで利潤を追うことはけっこうだけれ
ども、こういう際にはとにかく慎んでもらいたい、こういうことを実は申しております。これは十分効果が上がったとは申しません。しかし少なくとも商社が貿易の方に
重点を置くように指向されつつある、かようには私
自身は看取しておりますが、まだまだ今まで手広くやっておりますだけに、これはそう簡単なものではないと思います。
それから石油コンビナートの問題、これは最近の
一つの新しい形態の
産業でございまして、これは
通産省で認可して参る
事業でございますし、すでに
計画されておるものは、それぞれの分野で進んでおるのでございますから、先ほど申しますように生産
自身には
関係のないような
方法で協力をしていただきたいということを実は強く要望しております。ただこれから
計画するもの等についてはその取りかかりの時期がおくれることはやむを得ないのじゃないか、そういう
意味で業界の指導をしたいと思います。過去の石油
関係はコンビナートといわず、精製業等も同様でありますが、しばしば規模の小さなものを数多く許しておく、そして外貨割当の面で生産を通じてそれを指導し、
抑制しておるというような形をとっておりますが、この事柄は石油業界など一そう弱体化し、お互いを競争へかり立てている、こういうまずい点があるように思いますので、今後の問題といたしまして、石油精製業そのものの指導には、ただいま申し上げるような
過当競争を避けるような
意味で、業界の指導が可能じゃないだろうか、こういう
意味でしばしば業界と
お話をしております。この点は、石油業がただいまはもうかっておりませんけれ
ども、
花形産業でありますだけに、精油業界の調整はまことに困難で、これは
通産省なりわれわれがよほどしっかりしていかないと
過当競争になり、国内重油はもちろんのこと、外国
資本に押しまくられる危険が多分にある、かように思います。これは石油精製です。また石油コンビナートの方はただいま申し上げますように、今後の問題としては合繊あるいは化繊等の衣料
企業との
関係も十分勘案し、新しいものについての
考え方はこれは慎重に扱わざるを得ないというのが現状であります。しかし石油コンビナートが持つ化学
産業としての意義は高く評価されなければならないと思います。私
どもは今後は特にこの方面は伸ばすつもりでございますが、ただいまちょっと時期的には足踏み、こういうことにならざるを得ないのではないか、かように思います。
それからいろいろ
基本的な問題といたしまして、本来の
所得倍増計画にどういう影響を来たすかということでありますが、私はこれは短期的に見る必要はない、かように思いますのでその支障はない。ただいまのように生産力を
押えることはできるだけあと回しだということを
考えますならば、
投資されましたものが生産力として残ることになりますので、必ず他日の経済の発展には役立つ、かようにしたいものだというようにも思いますし、そういう
意味では
所得倍増計画本来にはこれは問題を起こさないだろうと思います。ただ今言われます
地方分散、
地方の
産業開発との
関係、こういう点から先行しておるものはともかく、おくれておるものは時期的に時期があと回しになる、こういう焦燥感が
一つあると思います。また今回の
設備の
抑制の場合において、先ほどは港湾等をあげられましたが、港湾だとか電力だとかあるいは交通の問題だとか、こういう
基礎産業の面を
押えることは、経済に大へんな
アンバランスを生ずることになりますので、
設備抑制に際しましての各
産業の持つ意義を十分勘案して、バランスのとれた
抑制方法をとる、これはもう
根本でなければならぬと思います。ただ理屈はわかっておりましても、
現実の問題として御
指摘になりました点のような間違いが起こらないようにする、また私が先ほど来次々に申し上げておりますような困難さをどれだけ
現実の問題で克服できるか、ここに全部がかかってくるのではないか、かように思います。そういう場合に一体どうするのか、これは私
どもの建前とすれば、業界の自主性を尊重する、そういう
意味において業界との連携を一そう緊密にしてやる、絶えず業界との話をつけて進めていく、これ以外にはないのだ、業界も最近はよほど
組織も強化されておりますから、先ほど来申しますような
基礎的
産業部門に
考えられる業種は、
組織もよほど強化されておりますから、自主的な話し合いも非常に進みやすいようであります。たとえばセメントなどは、みずからが
輸出をするという
意味で各社とも
輸出振興のために調整金を積み立てて、そして
責任輸出トン数をきめる、あるいは
鉄鋼もまた
輸出量を自主的にきめておる、それぞれそういう団体も強化されておりますので、そういうことを通じまして実際の面でできるだけこれは万全を期すると言いたいのですけれ
ども、
現実にはなかなかそうは言い切れません。できるだけ間違いが起こらないように、支障がないように円滑にこの大
事業、大難事を遂行したい、かように
考えております。